○西村(関)
委員 いまの
大臣のおことばですと、これは
アメリカの主張を口移しに言っておられるにすぎないと思うのでございます。やはり
日本がアジアの自主
外交をやろうというのであるならば、
アメリカの主張も聞かなければならない、また北の
ベトナム民主共和国側の意向、主張も聞かなければならない。またさらに、
戦争の当面の
相手である南
ベトナム解放民族戦線の主張も聞かなければならない。そういうことはお
考えの外に置いて、ただ
アメリカの主張を口移しにお述べになっておられるというのでは、これは私はアジアの自主
外交ということにはならぬと思うのであります。
私は昨年私費でずっとインドシナ諸国を回ってまいりましたが、ラオスへ参りましても、カンボジアに参りましても、南
ベトナムまた北
ベトナムに参りましても、どこへ参りましても
日本に対する期待は非常に大きいのであります。何とかこの際
日本がアジアの大国として、この悲惨な不幸な
戦争を合理的に終息させるために、力をかしてもらいたいという要望が民衆の中にわき起こっておる状態を見かつ聞いてまいったのであります。しかるに、いま
大臣の
お話を聞いておりますと、これは
アメリカの主張をそのまま口移しにお述べになっておられて、それが是である、こういうことでは私は
調停者としての役割りを果たすことができないと思うのであります。
日本では
発言力がない、まだ帰り新参だと、これは
国連における地位をおっしゃったのじゃないかと思うのですけれ
ども、私はもっと自信をお
持ちになっていいんじゃないかと思うのです。遠いアフリカの新興国ガーナのエンクルマ大統領でさえも、身の危険をおかしてハノイへ乗り込んでいこうという決意をしている。一衣帯水の
日本、特に
ベトナムとは非常に関係の深い
日本の
外務大臣が、エンクルマ大統領が遠いアフリカからそういう決意を持ってやってくる——何もガーナ共和国が力があるとかないとかいうことを私は言っているのではございませんが、非常に遠隔の地にあるところの新興国のガーナの大統領がそれだけの熱意を持っておるのに、なぜ
日本政府がもう少し積極的にこれに対応することができないのだろうか。そういうことを申し上げますと、
大臣は、今度横山大使を派遣して、できれば北
ベトナムとも接触をさせるのだということを仰せになると思いますけれ
ども、いまのような
大臣の御
見解では、私はとうていハノイ
政権は
日本の
政府の代表であるところの横山大使を
相手にしない、するはずがないと思うのであります。
ベトナム民主共和国側の主張もよく聞いて、そしてそれをのみ込んで
アメリカ側にも言うべきことを言うという
態度がなければ、この大事な時期におけるところの
ベトナム戦争終結という歴史的な役割を果たすことはできない、またそれを果たさなければならぬのでありますが、そういう状態では果たすことはできないと私は思うのであります。
第一、
大臣は、北からの侵略があるから、北が武力をもって南の
政権を脅かしておるから
戦争が続くのだとおっしゃいますが、またさらに南にあるところの民族解放戦線が、先ほどからの御答弁の中で伺っておりますとゲリラである、そういうゲリラ活動をやめなければ、そして北からの援助を断ち切って、南のゲリラがなくならなければ
戦争は終結しないということを言われますけれ
ども、
一体一九五四年のジュネーブ
協定の
条約の中身、その
条約の精神、その最終宣言や独立宣言の
趣旨を踏みにじっておるのは、はたして北の
ベトナム民主共和国側であるのか、あるいは南の南
ベトナム民族解放戦線側にあるのか、あるいは南の
ベトナム共和国を援助しているという
アメリカ側にあるのか、どちらがはたしてより大きくジュネーブ
協定を踏みにじっておるのかということについては、これはいまさらここであなたと論ずる必要がないと思うぐらいに明々白々であります。ジュネーブ
協定の中身をいまさらここで私は申し上げる必要はないと思うのでございますが、そういうことに対しては目をおおい、耳をふさいで、そうして北側だけを、南の民族解放戦線だけを責める、いわゆるベトコンだけを責めるという
態度では、私は
アメリカに対しても忠実な友人としての役割りを果たすことができないと思うのです。
私は昨年の七月、八月に
アメリカ合衆国へ参りまして、各階層の人々に会いました。ワシントンの要路の人たちにも会いました。そういう中で、
アメリカの人たちが求めておるところのものは、友人としての
日本の真実な忠言であります。ただ
アメリカの言っていることを一から十までそのとおりでございますと言うようなことを聞いて喜んではおりません。現に
アメリカはいま非常に苦悩している。
ベトナム戦争にもっと足を突っ込んで、どろ沼の中へ足を突っ込んで、どうしてこのどろの中から抜け出そうかと非常に苦悩しているのであります。この苦悩の中にある
アメリカの状態を私はつぶさに見てまいりました。そういう
アメリカに対して、
日本はほんとうのことを言わなければなりません。
国連のウ・タント事務総長は、
アメリカ人というものは
ベトナム戦争について事実をあまりにも知らされなさ過ぎると申しました。
アメリカの多くの人たちは実際知らないのであります。私が昨年の一月に北の
ベトナム民主共和国に参りまして、ホー・チ・ミン大統領に会い、各階層の
指導者や各階層の人々に触れて、北の
ベトナムの状態を
アメリカで話をいたしますと、非常に多くの人が耳を傾けてくれました。そういうことは知らなかったと申しました。事実を事実として受け取りたいということがいまの
アメリカの苦悩を救う第一歩であるということを思うのでございますが、私は
椎名外務大臣が遠くモスクワにおいでになって、
コスイギン首相をはじめ、
ソ連政府の要路に会って、
ベトナム戦争終結への道を求められたというその御努力に対しては、その労を多とするものでございますけれ
ども、先ほどの
大臣の御報告の中にもございましたように、成果をあげられることができなかった、それは先ほど述べられました
大臣のそういうお
考えでは、
ソ連は
相手にしないというのは、これは行かれる前からわかり切っておった、まことに失礼なことを申し上げて恐縮でございますけれ
ども。そこに私はもう少し自主的な
態度をもって、事実を事実として把握して、そうしてそこに
日本政府としての独自な
立場を打ち出していくということが、いまこの時代に課せられている
日本政府の大きな使命ではないかと思う。そうでないと、ライシャワー大使あたりからも、
日本政府はもっと
アメリカ一辺倒でないやり方をやれというようなことを言われる。私は非常に残念でございます。
椎名外務大臣が非常に優秀な頭脳を持っておられて、この間の事情はおわかりにならないことはないと思います。また優秀なスタッフを持っておられて、この
ベトナム戦争に対してどのような根本的な
解決の施策を打ち出していくか、先ほど
穗積委員が申されたようないろいろな
見解がすでに出ている、それらに対する検討もしておられると思うのでございますが、そういうことに対しては一向お触れにならないで、もう
ベトナム戦争が始まった当時から
アメリカが言っていると同じことをいまもこの
委員会の席上で述べておられる。私は非常に残念であります。もう少し自主的な
ベトナム戦争終結への
態度を打ち出していただきたいと思うのでございます。
そこで
一つお伺いいたしますが、一月六日の各紙によりますと、一月五日の外務省の幹部会におきまして、共産側にも、
アメリカ側にも片寄らない独自の
立場を打ち出していこうということをおきめになったということが報道せられておりました。これは
一体どういうことを意味するのでございますか。
ベトナム戦争終結のためには共産側にも
アメリカ側にも片寄らない独自な
立場をとっていこうということを外務省の幹部会で話されたということが一月六日の
新聞に出ておりました。これはどういうことを意味するのでございますか、お伺いをいたします。