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福島参考人 私は
福島嘉雄でございます。本日お呼び出しを受けました
高分子原料技術
研究組合の
理事長は千代田化工建設株式
会社の玉置明善でございますが、おりあしく同人は海外出張中でございますので、理事をつとめております私がかわって出席いたした次第でございます。
科学技術振興対策特別
委員会の皆々さまの前で、皆々さまが特に国務御多端のおりからにもかかわりませず、現下の急務であります
科学技術振興のために特別の御配慮をされまして、私
どもの
高分子原料技術
研究組合に対し、現状を御報告申し上げ、かつ国会に対し期待しておりますことを御
要望申し上げる機会をお与えくださいましたことを、組合員一同にかわりまして厚く御礼申し上げます。
まず、順序といたしまして組合の誕生から申し上げたいと思います。
組合が結成されましたのは
昭和三十四年でございますが、そのころわが国でも欧米に比べまして相当おくれてはおりましたが、石油
化学工業がようやくその緒につき始めておりました。石油アセチレンに関しましてはベルギーのSBA、ドイツのヘキストなどのこの
関係の
外国技術導入がわが国の
関係業界で活発に検討され、カーバイド・アセチレンにかわるものとして石油アセチレンについての関心が急に高まってまいりました。
そのころ、一方において、高いロイアルティーの支払いを伴う
外国技術依存を脱却して国産
技術を
開発する必要性が強調されるとともに、また一方においては、
研究体制といたしまして、特に原料部門のような基礎、共通な
分野におきましては、同業あるいは
関係のある
企業が共同して
研究を推進するいわゆる共同
研究が高く評価され、官民を通じてこれが推進される機運にあったことは御高承のとおりでございます。
おりよくちょうどそのころ、千代田化工建設の
研究所でナフサ分解及び分解ガスの精製に関するベンチスケールの
研究が好結果を得ておりましたので、この
研究に関心を持った石油精製、石油
化学、
化学、肥料、製鉄などの
関係企業二十数社が相集まりまして熱心に検討、相談の結果、高分子原料
開発研究組合が任意組合として発足いたしました。
そして組合員の共同によるアセチレン、エチレンなど高分子原料の関発に関する
試験研究、その工業化
研究、その他組合員の
技術水準の向上にその
目的を置いたのであります。その後、
昭和三十六年に鉱工業
技術研究組合法が施行されまして、私
どもの組合が法律に基づく第一号の
研究組合として認められ、その名称も現在の
高分子原料技術
研究組合と改めました。同時に、それまでの
研究実績、その後の
研究計画に従って、
事業も
定款の中でこれを明確に具体的に規定いたしました。すなわちその要点を申し上げますと、一日
〇・五トンの小型の
装置による
企業化試験を始めまして、順次に一日三トンの中型分解炉による
企業化試験を含む、酸素を用いましてナフサを原料とするアセチレン、エチレン等高分子原料の
製造に関する
試験研究を行なうことになりました。
もとより組合の結成、運営あるいは多大の困難をおかしましてのその後の
試験研究の
実施にあたりましては、組合員たる各
企業、実際の
研究に従事した各社の
研究職員あるいは運転要員、それらが熱意をもって全力を傾注して共同
研究をいたしたのでありますが、この間直接、間接に御指導、御援助を賜わりました
関係大学の
教授、国立試験所、所管官庁である通産省工業
技術院などの御支援があったればこそ、世界に誇り得る
研究成果をあげたものと思っております。この機会に、組合といたしましてこれらの方々に厚くお礼を申し上げたいと思います。
次に、以上の
事業を
実施し、あげました
成果につきましてきわめて簡単に申し上げます。
特許権といたしましては、日本
特許三件、実用新案登録一件、米国
特許一件を獲得いたしました。英国
特許一件が現在公告中でございます。
この
研究は、ナフサを分解して工業原料に適するエチレン、アセチレンの混合希薄ガスをきわめて高い総合収率で得た点にあります。この
研究は段階を追って
昭和三十四年から
昭和三十七年に及び、第一次から第三次に分かれておりますが、
最初一日〇・五トンの炉から始めまして、最終的には一日九トン炉の試作並びに運転を行なって、石油アセチレンの
企業化の目途を樹立したものであります。
その他の
成果といたしましては、その後、組合の付帯
事業といたしまして、高純度の高分子物質分析試料の
製造な
どもございますが、主たる組合の
成果は以上のとおりであります。
なお、組合は、現在
技術の日進月歩に備えまして、次の
研究課題をあらゆる角度から検討いたしております。
以上の組合の
研究成果に関連して一言ぜひ申し上げたいことがございます。
組合で完成されました
技術をどう活用するかは組合員の課題であります。もちろん、
研究途中において得た貴重な資料、各種
技術、経験、ノーハウなどは、組合員が自社から派遣した
研究者、運転要員を通じて各自の
企業内で十分にこれを活用されましたが、この
技術を直接使用して自社の
技術とあわせて工業化されたのは組合員である呉羽
化学工業株式
会社であります。同社は別
会社をもって塩化ビニール年産三万トンプラントを建設し、
昭和三十九年の二月から今日まで順調に操業されております。またこのプラントは国際的にも多大な反響を呼びまして、ごく最近でございまするが、ソビエトに塩ビといたしまして年産六万トンの
規模のものが輸出されることになりまして、正式に輸出の許可がおりました。ある意味におきまして、国の内外にプラントが立ち、組合の
研究成果は一〇〇%完結したと言えるかもしれません。
当組合は、以上の
成果に対しまして、石油学会、燃料協会、日刊工業新聞などの表彰、また
研究者は
科学技術庁長官賞、大河内記念
技術賞、高分子学会賞などを授与されております。
さて次に、
あとの
要望事項と関連がありますので、この
研究に要しました費用の概略を申し上げさしていただきます。
設備といたしましては二億五千八百万円余、使用した原料ナフサの代金を含む実験費が一億二千五百万円余、計約三億八千万円を要しました。これには
研究者、運転要員など延べ約四万五千人の人件費約一億円を含んでおりません。これは、組合員たる各
企業の直接
負担でございます。
人件費を含めますと、この
研究には総計四億八千万円、おおよそ五億円を要しております。これらに対し、
政府の補助金は
昭和三十四年、三十五年の二年度にわたって四千三百万円いただいております。この補助率は全体に対しましては一割に満たず、また人件費を除いた部分に対しても一一%余でございます。長期にわたり、かつ大型の
装置を動かす
試験研究におきましては、人件費、原料費がきわめて多額になり、しかもこれが補助の対象になっていないからでございます。
以上の前置きを申し上げまして、
最後に、組合を運営しました結果、数々の希望事項のうち、ぜひ
要望申し上げたい事項を四点に限って御
説明さしていただきまして、私の陳述を終わりたいと思います。
第一点は、補助率の実質的引き上げでございます。
現在
研究補助の対象になっている
研究に必要な
機械器具、
装置などのほか、原材料、
研究に必要な
最小限度の人件費な
ども含め、補助率を総費用に対して
最小限度五〇%になるようお取り計らい願いたいと存じます。
また、この種の
研究においては、蒸気、上下水道などいわゆるユーティリティが大量に必要であり、かつ実験場所は安全で、しかも公害防止の点から特殊の立地条件のところを求めねばなりません。これらは現在補助の対象外となっておりますが、今後は多額の経費
負担を伴うものと考えられます。これらの点にも特別の御配慮をわずらわしたいと思っております。
第二点は、
関係官庁、国の
試験研究機関などとの
関係の強化でございます。
もちろん、過去の私
どもの
研究の遂行にあたりまして、直接には
政府補助金の交付を受け、その他直接、間接に御指導、御援助を
政府関係機関からいただきまして、組合の
研究を支援していただきました。しかしながら、
政府におかれましても、通産省のいわゆる大型プロジェクトの
研究の推進をはじめ、各省庁で活発に各般の御
研究を推進されており、また国の
試験研究機関では豊富な人材、施設をもって基礎的
研究、
応用研究を進められている現在、今後の組合
研究の推進にあたっては、組合といたしましては、組合員の内部だけの限られた検討ではなく、これら
関係機関の強力なる御参加を得て、視野を広くしていく必要があり、また実験の
実施にあたりましては、国の
試験研究機関の権威ある
専門家の御助力を得たいと存じます。また、所管官庁のお立場を現在の単なる監督の立場から一歩進めて、
研究開発の特殊の任務上よき協力者の立場にぜひ強化していただきたいと存じます。
また、第三点といたしましては、
研究組合の活用でございます。
その一つの
方法として、
研究組合はそれぞれ
定款で
目的は明確にいたしておりまして、その
事業活動も、私
ども組合におきましては、前に触れましたように、きわめて具体的で、かってなことのできぬようになっております。また、この
研究組合の
研究能力は、
関係企業の
研究者の粋を集めたもので、
研究母体といたしましてはわが国ではきわめて高水準のものでございます。かつ、
研究組合は私
企業を母体といたしますが、この
研究また
研究成果につきましては公開性を持っております。一切をガラス張りの中でやっておるわけでございます。私はこの点から、
政府が今後国家的
研究を行なっていく際、そのうち、
研究組合に対し、その性質上適当な課題がある場合は、どしどし
研究組合と御相談の上、これに
研究を
委託して
実施させてはいかがかと思います。国産新
技術の
開発にあたりましては、国及び
企業の
技術を総動員する必要があると思いますが、以上のような
方法は、まさにこれにこたえるものだと存じます。
第四点といたしまして、ささいなことでございますが、組合の台所には甚大なる影響がございますので、税法の
関係のことをひとつお願いして、私の
要望を終わらせていただきます。
研究組合法では、組合員に金銭上の利益を絶対に返還できぬようになっております。
研究を任務とする組合である限り当然のことでございます。しかるに、一方、組合において
特許収入など
技術上の
収入がある場合、これは組合の
研究成果が大きければ大きいほど多額になるのでありますが、
事業収入として税金をどしどし課せられます。
研究が
収入に見合って容易に行なわれるものでありますれば、
収入のあるだけその年度中に
研究で使えばよいのでありますが、組合の
研究テーマになりますと、何年か十分な基礎
研究の上に多額の
研究費をかけて
実施するのでありまして、新しい
テーマがきまって、さて
開発研究を開始するときには、過去の
特許料
収入などはすでに税金でなくなっておるという場合も考えられることでございます。この辺、私は税法のことにつきましては全くわかりませんが、何か御配慮をいただきたいものと存じます。また、組合の事務当局といたしまして、このような
特許料
収入で組合が施設をした場合、ぜひ圧縮記帳ができるようにしてくれと強く
要望しております。この点もあわせてよろしくお取り計らい願いたいと存じます。
以上をもちまして私の陳述と
要望を終わらせていただきます。長時間にわたりまして、つたないことばをお聞き取りくださいましてまことにありがとうございます。御清聴に対しまして組合員一同にかわりまして厚く御礼申し上げます。