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1966-04-28 第51回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会科学技術行政に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十八日(木曜日)    午前十時十四分開議  出席小委員    小委員長 岡  良一君       菅野和太郎君   小宮山重四郎君       中曾根康弘君    西村 英一君       前田 正男君    田中 武夫君       原   茂君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    梅澤 邦臣君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    谷敷  寛君         特許庁長官   川出 千速君  小委員外出席者         通商産業事務官         (特許庁総務部         長)      佐々木 宏君         参  考  人         (協和醗酵工業         株式会社社長) 加藤弁三郎君         参  考  人         (財団法人日本         発明振興協会理         事長)     君嶋 武彦君         参  考  人         (住友化学工業         株式会社副社         長)      児玉信次郎君         参  考  人         (社団法人発明         協会理事長)  高吉 友次君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事・高崎         研究所所長)  宗像 英二君     ――――――――――――― 四月十三日  小委員内海清君同日委員辞任につき、その補欠  として稻富稜人君が委員長指名で小委員に選  任された。 同日  小委員稻富稜人君同日委員辞任につき、その補  欠として内海清君が委員長指名で小委員に選  任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 岡良一

    ○岡小委員長 これより科学技術行政に関する小委員会を開会いたします。  科学技術行政に関する件について調査を進めます。  発明奨励及び国産技術育成等に関する問題調査のため、本日、参考人として、協和醗酵工業株式会社社長加藤弁三郎君、財団法人日本発明振興協会理事長君嶋武彦君、住友化学工業株式会社社長児玉信次郎君、社団法人発明協会理事長高吉友次君及び日本原子力研究所理事宗像英二君、以上五名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上あげます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとうございました。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見を御発表いただくようにお願いを申し上げます。  なお、時間の都合もございますので、参考人の御意見の開陳はお一人約十五分程度にお願いをすることとし、後刻小委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願い申し上げます。  それでは、最初に財団法人日本発明振興協会理事長君嶋武彦君よりお願いをいたします。君嶋参考人
  3. 君嶋武彦

    君嶋参考人 私、君嶋でございます。  本日は、先生方を前にいたしましてわれわれの意見を申し上げる機会を得まして、私非常に感激しておる次第であります。  御指示によりまして、発明行政特許行政に関する所見を申し上げます。  日本における発明国家的重要性は、先生方の十分御承知のとおりでございますので、いまさら私から申し上げるまでもないのでありますが、われわれ日本発明振興協会関係者は、いずれも発明実施経験者でありまして、その体験を通じ、創造的発明国家的、社会的重要性認識し、お互いはもちろん、関係方面とも協力をいたしまして、総合力発揮による発明実施化成果拡大をはかるとともに、業務以外におきましても、次の時代を背負う青少年創造的思想振興意欲を燃やしておりまして、現在までみずからの手弁当式財源において、できるだけの活動を続けてまいっておるのでございます。  この考え方のもとに、憲法がもし改正される場合には、新憲法にはぜひ発明振興の一項を入るべきであるという請願書昭和三十七年七月提出いたしておるのでございます。  発明行政の問題に関しては、発明がいかにして実施されるかの大略を申し上げ、行政上これを振興し、その成果拡大をはかるにはいかに考うべきかということについて所見を申し上げます。  発明者は、いずれも内容においていろいろ異なるところがありますが、常に将来に対し夢を持っており、現実のことに取り組み、いろいろなアイデア考え出すのであります。新しいアイデア現物化とその商品化に関しては、これを大別すると、三種類に分けることができるのであります。  第一は、新しいアイデアによって新製品開発を行なうと同時に、新しい需要を開拓することであります。  第二は、現存する一般需要状態をにらみながら、その実態に即応する新しいアイデアによるその製品化、すなわち商品化であります。  第三は、現在使われておる商品を、その性能、構造、材料、加工工程等、いろいろな角度から検討し、その改良のため新しいアイデア考え出し、設計並びに製法の改善を行ない、その使用価値製造単価の切り下げによる一般需要拡大をはかるとともに現状改善主体としたもの、以上の三種類になるのでございます。  第一の、新製品と同時に新需要開発は、発明家に共通する大きな夢でありまして、この問題は、目標が大きければ大きいほど、成功すればその成果はきわめて大きく、画期的なものも実現するのでございます。その実現一朝にしてできるものでなく、技術的にも資金的にも予想し得ないきわめて大きな負担となり、完成にも相当長期を要し、きわめて危険性の大きいものでございます。  第二の、現在の需要状況に応じ新構想による現物化商品化は、前の場合よりもリスクは少ないのでありますが、需要に対する認識の深い浅い、需要変化等もありまして、企業化実現必ずしも容易なものではないのが現状でございます。  第三の、現在の商品改善は、最もリスクの少ないものでありますが、他面、需要変化競争商品対処等、いろいろな問題がつながって出てくるのでございます。いずれにせよ発明の原動力は、現実のことを静かに深くながめ、それに基づく新しいアイデアとその実施に全力を注がんとする熱意であります。この創造の精神と実現熱意は、人生一朝にしてできるものでなく、幼い時代からの積み重ねで行なわれるのが普通でございます。発明者が日ごろ中小学生はじめ学生や若い時代方々創造性育成に深い関心を持っているのは、みずからの体験から生まれた興味であるのであります。したがって、発明行政の問題の発足は、文部省の教育方針にも深い関係がありまして、現在の学歴のみを重視し、上級学校への試験勉強主体体制は大いに検討を要するものがあると存ずるのでございます。  次は、経済的考えが出てまいりまする年齢以上の人々については、新構想による技術開発に関する工業所有権政府が確立いたしまして、究極において権利を与えることによってはげみをつくり出し、熱意を盛り上げることでありまして、これはあとから特許行政に関する所見として申し上げます。  発明実施化に関しては、発明種類アイデアの高い低い等によって、製品化並びに市場開発に関し設備、資金並びに期間等大小長短いろいろあり、また企業経営才能並びに実力によって事情は異なりますが、いずれの場合においても完成までにいろいろなリスクが存在し、完成までに自信を持って困難を突破するファイト基礎的力となるのであります。発明に関し着想等に非常な長所を有する人は、他面相当な欠点を有するのが普通でございます。国家社会成長発展という高い視野からすれば、これらの人々長所を活用し、その欠点を他よりの協力によって補うことが最も望ましいことでございます。現在発明実施化促進に関し、奨励とか補助金とか資金貸し付けとかいろいろありますが、いずれも部分的協力で、最も重要な問題である発明実施に関するリスクの安定のための分担とかあるいは援助、協力発明者欠点に対する補強ということはほとんど考慮されていないのが現状でございます。たとえば公的な金融機関の問題についてもちょっと申し上げますれば、表面的には国家目的に沿う発明実施化資金貸し出しはきわめて重要視されておるのでありますが、現実貸し付け担当部門では貸し付け金が確実に回収されなければならぬ、そのために発明実施化に関しては、資金の供給というものはほとんど行なわれないというのが現状でございます。したがって発明実施化は自力の範囲内にて行なう以外に、他に適当な方法がないのが現状でございます。今後特に中小企業の優秀なる発明実施化促進するためには、実施化に伴うリスクを負い得る民間企業体制において、発明者不信感を与えないような権利引き受け条件を確立いたしまして、発明家開発意欲技術を活用し、その実施化促進体制をつくることがきわめて必要であると存じておるのでございます。  次には、小発明価値を再認識する問題でございます。  先ほど申し上げた現在の製品改良に関する発明は小発明であり、その実施化にもリスクは少ないのでありまするが、中小企業において新製品開発による発展は、この分野から発足するのが安全であり、これに成功し、実力が上昇してから、その体験を通じ、発明意欲を一そう増しまして、さらに高級の発明に着手するのが、企業的に最も望ましい道であるのでございます。現在の経済不況のときにおいても活況を維持しておる大企業の主要なるもののうちには、小企業から発足し、新製品開発成功から成長したものがかなりの部分を占めているように私は見ておるのでございまするが、これらの企業は、もちろん内部組織が充実されているというようなこともありましょうが、まず小発明から逐次発足して伸び上がった結果によるのでありまして、この観点から見ますれば、小発明といえども、単なる外面的状況においてこれを軽視するということは、十分考慮せねばならぬ問題であると考えておる次第でございます。  次は、特許行政に関して申し上げます。  特許行政基本は、発明者に対し、常に夢を持って発明に関する最善の努力を続けるためのはげみを与えるように、工業所有権に基づき発明の秘密を公開した代償として一定の期間独占的権利を保証し、発明によるこれの商品化のために研究し、開発し、設備した費用回収に必要なる期間を与えるものであります。  したがって、競争者に対しては、特許権利は十分保護され、まねることのないように十分なる措置がとられなければならないのでございまして、競争者はむしろさらに新しい構想によって優秀品開発して、その新しい技術でもってこれと競争していくという方向に進むのが正道であろうと思っておるのでございます。  この原則に基づきまして、特許権所有者考えとしては、新技術開発して得た権利は、安定した状態において行使して所期の目的を達したいというのでありまして、これが達せられる状態におきましては、安心して実施化もでき、またさらに新技術開発にも邁進し得るのが、発明家一般の通念でありまして、社会的にもこれにより発明者才能が大いに活用できるのであります。  権利を有しない人々立場から見れば、その権利決定は厳格な審査を経たものでなければならぬと思うのでございます。これは当然のことでありまして、たとえばランニングにおきましてレコードをつくる、そのレコードが結局何等賞をきめるという基準になると同じで、こういうような思想でもって特許権も確立しなければならぬと思うのであります。現在は事務処理関係もありまして、見方によりましてはすべてがルーズになっておりまして、そのために権利に関する争いが相当多いということはまことに遺憾な次第でございます。  この機会にちょっと私ども体験いたしました実例を申し上げますれば、大企業自体は非常にりっぱな企業なのでありますが、担当者自分立場あるいは自分の功績ということを主体考えますので、往々にして他の会社の技術のまねをするというような問題があるのであります。この場合、これをまねられた企業は、自分の力が非常に小さい場合には泣き寝入りで争いをしないというものもありますが、場合によっては権利を主張して争いになるというようなことも相当起きるのでございます。そういった場合に、大企業はその争いに対する資金というものは相当持っておりまして、出る部門も違うらしいので、相当思い切ったことができるのであります。ところが中小企業になりますと、それに対応することはいかに主張が正しくともできない。そのために大企業思いどおりにならざるを得ない、あるいはそのために企業が非常な苦境に追い込まれるというような実例が多々あるのでありまして、この点は社会的に大いに考慮を要するものであると私ども考えておるのでございます。したがって、工業所有権というものは、それがいかに技術的にりっぱなものであっても、わが国の現状においては所有者実力によって実質的にその権利のあるなしがきまるというような、非常に道義的に再検討を要する時代であると思うのでございます。  工業所有権の保護に関しては、単に法律的でなく、社会一般正義感中心として、実力は小さいのであるが、正しい優秀な権利者権利社会の声として保護する方法を、ぜひ今後態勢を整えて講じてまいりたい、そう私ども考えておる次第でございます。  次には、工業所有権既得権利整理の問題でございます。  現在工業所有権既得権利が未整理でありまして、出願者が新しい特許出願の際にこれを調査する容易な方法がございませんために、約五〇%の重複出願が行なわれている現状でございます。このことは、官庁事務を必要以上に増すばかりでなく、実施化によるよけいな投資あるいは紛争の原因とかむだしか出てまいりませんで、これが非常に多いのでございまして、この整理方法は、理想的な準備、方法を講ずるのには相当な資金期間を要すると思うのでございますが、この困難を突破するのには、まず民間組織体で大いにファイトを燃やし、その完成に導くよう努力する方法によりましてこの成果を逐次あげていくことが現在では一番適していると思うのでございます。この体制が全部整いますれば、社会的にもずいぶんむだが排除できるものと見ております。  特許行政の問題については法改正についていろいろ問題がございますが、これはもし御質問があればお答えすることにいたしまして、これで一応終わります。  次には一般の問題に関して一、二所見を申し上げます。  第一は、各関係官庁間の連絡の問題であります。国民立場から大いに熱を増して発明振興に努力いたしましても、現在官庁の御協力を得なければなかなか成果があがりにくいというのが現状でございます。ところが、まことに失礼なことでございますが、現在日本の各官庁のセクショナリズムというものは、外から見ますれば相当ひどいように思う。こういう状況ではなかなか事務の問題が主体になって、いかにこれが社会国家に貢献するかということが従になる場合が相当多いのであります。一つの問題を処理する場合には、まずこの重点はどこにあるかということを中心にして各官庁協力いたしまして、官庁組織体を活発に運営するようにぜひ国民としてお願いする次第であります。  最後に、科学技術振興に関する予算に対しての希望を申し上げます。民間立場から予算の問題を見ますれば、予算投資的なものと消費的なものと二つに分けられると思うのであります。発明事業家発明実施化の順調である企業は、その業績は年々増大いたしておりまして、したがって国家に納める所得税も相当増加いたしているのが現状でございまして、この実例は多々あるのでございます。先ほど申し上げました発明実施化民間組織的な方法で積極的に国が協力して、できるならば普通現状では失敗に終わるであろうというような発明企業成功に導けば、国家将来の収入源としてもきわめて有望であると思うのでございまして、先生方もこの事情を十分御認識の上、発明振興に関して十分なる御協力お願いしたいと思うのでございます。  ごく簡単でございますが、これをもって所信の説明を終わります。
  4. 岡良一

    ○岡小委員長 次に、高吉参考人お願いをいたします。
  5. 高吉友次

    ○高吉参考人 高吉でございます。  私は、発明協会に所属いたしております。発明協会という場からながめてまいりました狭い範囲かもしれません、あんまりいい知恵がございませんのですが、多少気のつきましたことを一、二申し上げてみたいと思います。  ただいま君嶋参考人からお話がございまして、たいへん有益なお話でございました。全面的に賛成でございます。私の申し上げますことはこれと相当重複するかとも思いますが、なお補足的に一、二を指摘してみたいと思います。  発明奨励特許行政といったようなものについての考え方でございますが、これはなかなか、特に発明奨励と申しましてこれ一発できめ手になるというようなものは考えつきません。ずいぶん昔から考えられていろいろ手も打たれてきておりますことで、このほかにうまい手というものは実はわれわれ考えつかないのでございます。要は、いままで考えられてきたことをきめこまかに、たんねんに、強力に推し進めていくという以外には実はないのではないかというような結果になるのでございますが、まず第一番の手始めといたしましては、やはり少年に対して一つの何といいますか印象を植えつける。私たちが子供のときに陸軍大将になるということは、一つの夢でございました。大発明家というものがこれから少年たちのあこがれの的であるといったような気持ちを植えつけるということから始まるべきものではないかと思います。つまるところ、大発明家事業国民の脳裏に強く焼きつけていく、こういうような、まことに迂遠な方法のようでございますけれども、その辺からまず力を入れていくべきものと思います。まあ方法にはいろいろございますでしょう。少しはったりめいたようなことが自然多くなってまいると思います。学校教育方面でも大きにこういうことに重点を置いてお考え願う。あるいは一つの思いつきでございますけれども、今度の万国博覧会、あのところに発明の殿堂といったようなものでも設けまして、大発明家の伝記なり業績なり、社会に貢献した偉績なりというものを永久に残していくとか、こういうようなことなんかもございますでしょう。こういうようなことで、発明というものを国民の心に深く植えつけていくということ。  それから次は、発明功労者の顕彰は、もとより現在も行なわれておりますが、中にはたいへんないい発明をしながらどうもそのときには受け入れられなくて、御本人いたって経済的に恵まれなかったというような人が、いま特に事例を思い出せませんけれども、そういうようなことがございますならば、その人の晩年あるいは遺族方々に対して何らか特別な救済の道を開くといったようなこと、これはよほどりっぱな発明でないとできぬわけでございますけれども、いわば金鵄勲章といったような考え方で、もし経済的に恵まれなかったら遺族にまで何か救済の道が講じられるというようなこともお考え願うとおもしろいのではないかと思います。むろん全般的な国が発明奨励に力を入れているということのPRは十分やっていただかなければならないことでございます。何かこの間ちょっと伺いましたら、科学技術庁にございます発明奨励審議会をこの際廃止したらどうかというようなお話まで出ておったというようなことを耳にいたしたのでございます。これが発展的解消で、大きくなるための廃止であるならけっこうでございますけれども単に数が多過ぎるから廃止したらどうかというようなことでございましたら、私たちはこれは反対でございます。御再考を願っておるというようなお話も伺っておりますので、そうであるならばたいへんけっこうだと思いますが、そういう声が出ますこと自体がどうも私たちには納得がいかないというような気持ちでおる次第でございます。こんなことで発明奨励の心理的な面はぜひ国として大きに太鼓をたたいていただきたい。  それから、発明と申しましても、これから先の大きな発明は、どうしても科学技術基礎の裏づけというものがございませんとほんとうの大きな発明は生まれてこないだろうと思うのでございます。ところで、要するに、このことは科学技術振興ということに通じるわけでございますが、科学技術振興はいろいろございましょうけれども、結局最後には相当な予算なんかも考えてやるということを真剣にお考え願わなければならぬのでございます。ところが、この研究だとかなんとかというものに対します評価というのは、人によりましてたいへん違います。夢を持って積極的なお方は、少々先の話になるかもしれぬけれども、この際投資だと思ってやろうじゃないかとお考えいただける方もあれば、一方には、なかなか成果があがらぬ、十に一つ成功すればいい、そんなものに対してちょっと金は出しにくいというようにお考えになる方もいらっしゃる。人によってこういう考え方がたいへん違いますので、自然予算化等につきましてかなり困難をお感じになるんではなかろうかと私は思います。こういう問題に対して一つの筋の通った思想のもとに運んでいくというためには、年末に御提案がございました科学技術基本法の要綱でございますか、あれを拝見いたしますと、まことによく意を尽くして、こまかいところまで配慮が加わっております。ああいう基本法というものを早く成立させられまして、長期的なビジョンでものごとを考える。それに沿ったこまかい計画で予算も組めば人の養成もするといったようなことをぜひ進めていただいたほうがいいんじゃないか。これもたいへん迂遠なことのようでございますけれども、その辺の考え方がふらふらしておりますと、どうも予算等に対しての個人的な見解が加わってまいりますので、そうなりますと足並みがそろってこない。ぜひこの基本法なんかは早く制定していただきたい、立法化を早めていただきたいと思います。  大きな発明は、やはりこういうような根本的な問題を解決しながら進むべき問題だと私は考えるのでございますが、一方また、町の発明家というような人も現在たくさんございます。こういう人たちにもいろいろな便益を提供しなければならないわけでございます。幸いにして科学技術庁地方発明センターというおもしろい考え方を導入して、もうすでに六カ所もあるそうでございます。そういう組織が、また考え方がございますので、これはぜひ生かしてこれに活動の場面を与えておやりになるほうがいいのじゃないか。私も二、三このほうを回って拝見してみましたのですが、現在なかなかこれが理想的に動いておりません。動いておらないのでいろいろ聞いてみますと、経費は全部地方発明センター自分でかせぎながら自分でまかなっていかなければならぬというふうなことになっておる。実際地方発明センターを利用いたしますのは、どうしても中小企業人たちとか、あるいは個人の発明家とかいったようなことに相なります。こういう人たちにこの運営の経費をみんなで分担せいと言いましてもなかなかそうはまいりません。自然発明センター自分でめしを食うためには、発明のお手伝いよりもむしろその辺の下請仕事でもちょうだいして自分でかせぐということが先になってまいります。これではなかなか発明家のお手伝いということに手が回りかねると思います。せめて経費の二分の一、三分の二は国で持ってやる、そのくらいなことはお考え願わなければいかぬのではないかと存じます。  どうも発明奨励といいましても格別のいい知恵もございません。思いつきましたことを二、三大小にかかわらず述べてみた次第でございます。  この発明奨励とうらはらをなします特許行政というものにつきましての一、二の感想でございますが、当面特許行政でたいへんな問題になりましたのは、いまべらぼうもなくたまっておる滞貨を何とか始末していただきたいということが第一番の問題でございます。実は発明協会はいろいろな種類の人の集まりなのでございまして、発明家もおれば、その発明を利用する方もおる、この発明をいろいろお世話をするたとえば特許弁理士のような方、こういう方もお入りになっていらっしゃる。いろいろな人の集団でございまして特別の資格があるわけではございません。会員の方はいろいろなお考えを持っていらっしゃるのでございますが、自然利害は必ずしも一致するとは申しがたいのでございます。昨年の夏、工業所有権制度改正審議会で一つの結論を得まして答申が出ました。私の発明協会のほうでこの答申につきまして会員にアンケートをとってみました。ところがその結果を見ますと、特許制度を改正して公開制を採用することの可否はどうじゃと問いましたところが、公開制を採用してほしいというのが八一・五%、公開にすべきでない、反対が一八・五%ございました。しかもこの公開は、出願後一年六カ月で公開してほしいというのが五三・七%、二年間置いておいて公開したほうがよかろうというのが二八・九%、三年後に公開したほうがよかろうというのが一七・〇%というパーセンテージが出ております。  また、実用新案制度につきましては現行のままがいいと思うか、あるいは廃止したほうがいいと思うか、もう少し何か手直しして存続したほうがいいと思うかというアンケートをとりましたのに対して、現行のまま据え置いてくれというのが二二・五%、やめてしまったほうがいいというのが一四・五%、やっぱりこういう時勢なら改正して実用新案制度というものを残しておいてもらいたいという希望の者が六三・三%ございました。同時に、改正して存続するということには公衆審査というようなことを導入しなければならないのだが、公衆審査はどう思うかということに対して、公衆審査はよかろうというのが七九・六%、公衆審査は困るというのが二〇・四%、こういう数字が出てまいりました。この数字を裏からひっくり返して考えてみますと、やはりこの段階ではどうにもならなぬ、早く何とか出願されたものを始末してくれ、勝負をつけてほしいということの思想が端的にあらわれていると私は思うのでございます。自然、特許行政の問題としましては、当面どんどん審査がおくれてくる、これが一向に改善のめどが立たないという状態を早く解消していただきたい。このためには、公衆審査といったような、民間としてもある程度犠牲を払うというようなこともやむを得ないという前提で、私たちは出発せざるを得ないと思っております。ぜひこの滞貨一掃、それから今後滞貨がたまらぬように早く処置をしていただくという方法を実行に移していただきたいということでございます。  それから第二は、ちっと古い統計数字でございますけれども、一九六三年の米国と日本のものを比較いたしてみますと、米国で六三年に官民の研究に投資された金額が六兆四千億ほどになっておるそうでございます。このうち四兆一千億ばかりが政府の出資、あと二兆三千億ばかりが民間の出資。これに対して日本の官民の研究投資が三千二百億円と、ちょうど二十分の一に当たっております。それであるのに、特許出願は米国が八万六千件、日本が七万二千件。日本はそのほかに約十万件の実用新案の出願がございますので、数から言えば、はるかに米国よりも多い。研究費は二十分の一だ。特許出願あるいは実用新案をこめると米国よりはるかに多いということになっております。これは六三年に投じた研究費が、すぐそのままその年に成果を得て、特許になるとか出願するとかというわけのものではございませんけれども、大体の傾向から見まして、そういうようなことを考えると、どうも出願の内容はだいぶ違うのではないか。米国のものの内容がずいぶん高いのではないかというように感じられます。それの裏づけをなすとでも申しましょうか、日本の出願の約半分は、先ほど君嶋先生もおっしゃったように、拒絶査定になるというような運命にあるそうでございます。どうも出願の件数が多いということだけで、あまりいばっていることは、私はおかしい。質の問題もあるけれども、同時に出願前の調査不十分ということが相当あるのじゃないか。その調査不十分で、すでに特許になっておるようなものをまた出してみたり何かする。そしてすぐ却下されるというようなことが多い。これは出願前の調査が不十分であるからそういうことになる。ぜひ出願前にもう少しよく検討して出願してもらうように指導すべきだと思います。  ところが、実際問題として、だれがどうやってそれを指導するかということになりますと、簡単ではございません。都会地になりますと弁理士さんもたくさんおられましょうし、相談相手も十分ございましょうが、地方へまいりますと、弁理士さんのいらっしゃる県なんて、至って少ないというような状態でございます。自然そういう特許なんかについての調査のしかたなんか、多少なれた方に相談するというようなこと以外にないのでございますが、そういう人も十分に養成されておらぬというような状態でございますので、自然、調査も粗漏になってくるということになろう。それがこういう結果になってきているのじゃないかと思うのでございます。どうしてももう少し地方地方でこういう指導機関をもうちょっと充実していかなければ困るのじゃないか。これを国が全部というわけにもいきますまいが、せめて地方の府県でもうちょっとこういう方面に力を入れて、公報の閲覧に対して便宜を与えるとか、あるいは二、三の職員を置いて指導していただくとか、これは私のほうの発明協会の支部がございますけれども、何分にもわれわれの団体だけの力ではとても及びもつかないことでございますので、府県のほうで力を入れていただけますれば、われわれのほうはどんなお手伝いでもする考えております。国と申しますよりは、むしろその辺は府県の問題かと思いますが、そういう府県が、もうちょっとこの特許行政というものに対して関心を持っていただきたいと思います。  そのほかもう一点申し上げますとすれば、日本では、人の出した特許の裏をかくというようなことばかり先に考えます。人の技術を尊重するという風習がございませんのは、はなはだ遺憾なことでございます。  これには私は一つ原因があるのではないか。競争意識ばかりでなく、特許の交流といいましょうか、実施権をお互いに譲り合うということに対しての一つのルールができておらぬ。もう少し気楽にお互いに特許権実施し合うという風習をつくっていくことが必要ではないか。  これには、結論から申しますれば、権威のある裁定機関を設けていただいて、そこへ、どこそこの特許を使わしてもらいたいんだが、話を取り次いでくれぬか、どのくらいの特許料をお払いしたらいいか、こういうことを相談して、そこがあっせんをしてやるというような仕組み、これも権威ある機関にすべきだと思います。こういうものをぜひ設けていただく。そうすれば、もうちょっと特許の交流というものが軌道に乗るのではなかろかと思います。  つまらぬことばかり申し上げまして、はなはだ恐縮でございますが、思いつきましたことを二、三申し上げました。
  6. 岡良一

    ○岡小委員長 次に、児玉参考人お願いいたします。児玉参考人
  7. 児玉信次郎

    ○児玉参考人 私は化学工業に従事いたしておりますので、そういう立場から二、三申し上げたいと思います。  日本の化学工業は、その生産高の面におきましては、アメリカに次ぎまして、イギリス、ドイツ、フランスなど一流国とその二位の地位を争うに至っております。そういう点で戦後の日本の化学工業の発展というものは、世界の一つの驚異になっております。しかし、その内容を質的に見ますと、ウドの大木という観があるのでございます。具体的に申しますと、自分技術によって発達したのではなくて、人の技術の借りものによって生産高だけ大きくなってきたというふうに思われるのでございます。こういうことは決して健全な工業の発達の姿とは言い得ないと私は思うのであります。数字で申し上げますと、外国から技術を入れて、それに対して支払った額と、外国へ技術を売って受け取った額との比を見てみますと、受け取り勘定になっているのは世界じゅうでアメリカだけでございます。アメリカはその売りました技術料の五%しか海外の技術を買うのにお金を払っておりません。ところが、最も工業の発達しておるドイツにおきましても、受け取り勘定の二・五倍を支払っております。ところが、日本はどうかといいますと、その数字が二四・五倍と、ドイツの十倍ということになっております。せめて私はこれが半々、受け取り勘定と支払い勘定がバランスするところまで持っていくことが必要である。そうしないと、ほんとうに日本の工業が発達したということが言い得ないと思うのであります。  そこで、この原因がどこにあるか。私は、一つは歴史的な日本の工業の発達というところに原因があると思います。ドイツの化学工業を見てみますと、一つの新しい発明をやりまして、それで大きな収益をあげる。その収益によって次の研究をやる。それによってまた新しい発明を生むということを繰り返して工業が発達し、経営する会社が発展いたしております。具体的に申し上げますと、ドイツの化学工業というものは合成染料で始まったのでございますが、インドのインジゴ農業、天然のアイを全部駆逐してしまったというようなことで、非常に大きな収益を得まして、そういうものが基礎になってアンモニア工業、これはたいへんな金をかけて完成した新しい工業でございますが、こういうものを完成した。そういうことを繰り返しております。  ところが、日本の工業というのは、明治維新以来外国の技術を入れて発展するということに専心いたしておりまして、自分技術をつくろうという意欲が少なかったように思うのであります。私は、これは一番の大きな責任は経営者にあると思うのでございます。日本でも独力で技術開発しようという意欲さえあれば、いままでにもつとやれておったと私は思うのであります。  デュポンという会社がございますが、今日世界最大の化学工業会社で、その売り上げは一兆に達しております。ところが、デュポンが今日大きくなりました原因は、ナイロンの工業を完成したことであります。それまでは世界的にも二流会社であったわけであります。ナイロンの技術がいつ完成されたかといいますと、一九三五年から六年にかけて工業として成立した。ごく最近のことであります。ところが、一九三三年にデュポンの社長がどういう演説をしているかと申しますと、配当を無配にすることがあっても研究費は減らさぬということが、株主に対して最も忠実なやり方であると思うという演説をいたしております。こういう経営者の意欲というものが今日のデュポンをあらしめたもとになっておると私は思うのであります。  一九三三年というと、ごく最近のことでございますが、もうすでに日本の工業が相当の歴史を経た時代のことでございます。ですから、そのころに日本がそういう考え方をいたしておりましたら、今日もっともっと変わった姿になっておっただろうと思います。一に私は経営者の心得が悪かったということを申し上げたい。それで、私が一つの会社の経営陣におりながらこういうことを申し上げるのはまことに見当違いの話で、おまえこそしっかりせいと言われればそれまでの話でございますが、しかしこれは現実日本の姿がそういうことでございまして、もちろんそういう方ばかりではございません。だんだんまた改善されておることも事実でございますが、まだ根強くそういうことが残っておるということを認識していただくということが最も必要な一つではないか、私はこういうふうに考えるのであります。  それから、その次にもう一つ申し上げたいことは、近代の工業の発展というものは、新しい技術の生み出しということによって行なわれていくのでありますが、その技術を生み出す基礎は何かというと純粋の学問でございます。今日の工業の発展の工業的な研究というものが、毎日発達いたしております物理学なり化学なりの、純粋の学問の先端を自由に使うことによって発展していくのでございます。ですから、工業発展基礎基礎の学問であると言うことができると思うのであります。ところが、日本一般社会はそういう認識に欠けておると思うのでございます。私もかつて大学の教職についたことがあるのでございますが、最も基本的な研究をすべき任務を持っておる大学ですら、工業的な成果をうたうような研究題目でないと大蔵省は予算を出さないということを聞いておったのでございます。極端に申しますと、最も純粋な学問をやるべき理学部の教授が、工業的成果をうたうような研究題目を掲げることによって政府予算を得ておる、そういうようなことすらあったのでございます。これは現在はよほど改善されておると思いますが、しかしそういうことが理想的に行なわれておるとは私は思わないのでございます。これは大事なことであると思います。  最近、先ほどお話しのアメリカの研究開発予算というものが、大統領が議会へ提出したものを見てみますと、大体二兆になっております。そのうちで基礎部門が七千六百億、それから応用の部門が一兆二千四百億、基礎部分に非常に大きな金をかけておるのでございます。そういうことのあらわれが大学の設備が非常に悪いということにあらわれております。たとえば大学へおいでになるとわかりますが、われわれの会社におきましては、普通の社員が執務する部屋でも温度が調整された、エアコンディショニングを行ないました空気で冷暖房を行なっております。ところが日本の大学へおいでになりますと、世界的に尊敬されておる教授がみずからストーブに石炭をくべて暖をとっておる。夏は全く冷房なんかない、そういうような生活をして、そして研究にいそしんでおられるのであります。こういうことを見ますと、日本科学技術振興なんていわれて一体何をしているんだということを私は言いたくなるのであります。そういうことが、そういう末端のことではなしに、技術と研究の設備が完備しているかどうかという面にあらわれておると思うのであります。今日の化学、物理の研究というものには非常に高価な機械が使われております。こういうものを十分に整備いたしません限り、ほんとうの研究はできないのであります。昨日も私は友人の教授と話しておったのでありますが、自分日本で電子計算機を使える、与えられた時間は一年に六十分だという。一年に六十分しか電子計算機が使えない。ところがアメリカの大学では、ピッツバーグの大学でありますが、一年の借り賃が数千万円する電子計算機を四台持っております。そして、私の友人が結晶研究部門におったのでありますが、自由に使える。ほとんど一台その研究室に――日本でいうと一講座に当たるわけですが、独占しておる、こういうようなことでございまして、日本の設備というものがいかに劣っておるか。これを改善しない限り日本科学技術振興というものは私は期せられないのではないかと思います。  私が申し上げたいのは、戦後たくさん大学ができましたが、こういうのを全部そういうレベルに持っていくということは不可能なことであります。これは世界各国で不可能だと思います。日本だけではないと思うのでありますが、どうしても重点的にそういうことをやる必要があるように思うのであります。それから設備だけじゃなしに、研究費の一般的な使い方といたしましても、ソビエトでやること、アメリカでやることをみな日本がやろうといっても、これは私は不可能だと思うのであります。原子力の開発もやらなければならぬ、宇宙開発もやらなければならぬ、そういうことをみんな競争していくということは不可能であると思います。大学の設備をそういう状態に置いておいて、なおかつ、そういう背伸びしたことをやらなければならぬ、南極観測もやらなければならぬ、船までつくらなければならぬということに、私は非常に疑問を持つのでありまして、これは重点的に日本の研究費というものを使うということを考える必要があるように思うのであります。  その次に、科学技術の研究の基礎になるのは人であります。先ほどからもお話がありましたが、教育でありますが、日本の教育というのはヨーロッパやアメリカに比べまして、ことに大学の科学なり技術なりの教育が私はおくれておると思うのであります。どういう点でおくれておるかと申しますと、大学ではどんどん落第をさせて鍛練いたします。日本のは、大学へ入りますと、まあお情けで六十点やって及第させておこうということで、みんな免状をもらって出てくる。こういうことではほんとうの勉強した、実力を持った、日本の工業を背負って立つような人は養成できないのでございまして、そういう点では私は改善の余地が非常に多いと思います。  それから、それに関しまして大学の組織というのが一講座教授一人、助教授一人、助手二人というふうな形でございまして、ほんとうに教育をやるという、実習の世話をしたり、演習問題の世話をしたりする、そういう人が外国の大学に比べて非常に少ないと思います。研究という面からは日本の大学はそういう制度が非常によく考えられていると思うのでありますが、教育をするという面からいうて私はなお考えるべき余地があるように存ずるのでございます。  それから特許のことにちょっと触れさせていただきたいと思うのでございます。先ほどからもいろいろお話がございますし、私、特許協会に多少関係をいたしております。一番の問題は、何といいましても先ほどからいわれている滞貨処理の問題でございまして、これについては最近新しい法律も考えられておるようでございます。このことにつきましてはまた別の機会に申し上げたいと思うのでございますが、その趣旨は、やはり滞貨処理をしようという趣旨からその法律がつくられておるように思うのでございます。特許の問題というのはなかなか複雑でございまして、実際の問題にあたりますといろいろわれわれ意見のあるところがございます。十分こういう意見をお取り入れ願って、滞貨処理が早くなるように特許法の改正を急いでいただきたい、私はこういうふうに存ずるのでございます。  それから特許のことを一、二申し上げますと、先ほど申しましたように発明のレベルというのがだんだんと高くなってまいりまして、非常に高級な学問の基礎がないと理解できないような発明特許の出願が出てまいります。そういうような意味で、これをすみやかに妥当な判断をしていただくためには特許審査に従事される方の待遇をできるだけよくして、りっぱな方がそれに従事されるように御考慮願いたい、こう思うのでございます。場合によりましては、非常に画期的な独創的な発明であるためにかえって理解されずに特許が却下されるというような――具体的なケースがあったわけではございませんが、そういうおそれすら最近は出ておる、私はそういうことを考える次第でございます。ひとつ特許の制度をきちっと整備していただきたいと存ずる次第でございます。  簡単ですが、私の感じたことを一言申し上げさせていただきました。
  8. 岡良一

    ○岡小委員長 次に加藤参考人
  9. 加藤弁三郎

    ○加藤参考人 私は、きょうは自分の所属しておる団体を代表するのではなくて、加藤個人としての感じを申し上げたいと思うのであります。  特許行政につきましては、何はともあれ審査期間を縮めてもらいたい、早くどんどん処理していただきたいということであります。これはもう先ほど来どなたかからもその御発言がありました。また私も、先般行なわれました特許法改正の審議会の委員も仰せつかっておりまして、そのときにも発言をいたしたのでありますが、何はともあれ早くイエスかノーかわかるようにしていただきたい。そういう趣旨から今般の改正法にも賛意を表した一人でございます。願わくは早く改正すべきものは改正され、増員すべきものは増員し、どんどんとひとつ滞貨を処理していただきたい。何さま今日は非常な進歩で発明が行なわれております。でありまするから、いままで三年であったものが今度二年半になればそれでいいじゃないかというようななまやさしい考えではだめなのでありまして、ほんとうに数カ月でもう発表ができるというくらいにやっていただきたい、こう思うのであります。  それからもう一つ、これは日本だけの問題でないのでありまして、すぐにはできない問題と思いますけれども、私自身不便を感じたことでありますのでお願いをしておきたいのでありますが、それは、特許法というものは願わくは万国共通でありたい、あるいは共通に近いような状況でありたい、こう思うのであります。現在は、無審査国というものが相当にございまして、そこへ出しまするとすぐ発表されるのであります。それがまたすぐ国内にもはね返ってきます。そうしますと、実に巧みにその裏をくぐられるというような危険が往々に感ぜられております。事実その被害をこうむったこともあります。そういうようなことでありますので、特許法というものは、万国をながめまして、日本が不利にならないような、そういう配慮をしていただきたいと思います。  もう一つは、高吉さんからも出ておりましたが、特許行政のうちに、特許法の実施について円満に実施されていく、少なくも国内の同業者たちが円満にそれを享受して仲よくやっていけるというようなあたたかい行政をやっていただきたいと思うのであります。それは、具体的には高吉さんのおっしゃったような何か組織が必要になるかもしれませんけれども、これも私は、いままであまり行なわれていない、そして今後行なっていただかなければならない特許行政一つのポイントだと思うのであります。  これはただ一例を参考までに申し上げるのでありますが、一つ発明がありまして、その発明日本におきまして相当プライオリティーを認められ、世界でも認められておる、たとえば内閣総理大臣賞あるいは科学技術庁長官賞ないしは学士院賞というように権威ある賞を受けておる、そうしてもちろん日本の特許になっておる、こういうことならば、私から見るとそれは非常にプライオリティーのある発明、研究だと思うのでありますが、ところが特許となりますとそう簡単ではないのでありまして、自分らの会社はその特許には触れることなくやっていける、こういうふうにおっしゃる、そういう実例があるわけです。そうしますと、ここに疑問が起こるのです。一方では内閣総理大臣、科学技術庁長官あるいは学士院、そういう方々がこれはプライオリティーがあると認められておる、ところが特許のほうからいくと、そんなものはまあ一向たいしたことでない、自分のほうはそれに触れることなくやれる、ここらにひとつ、今後こういう問題は、そこは常識をもって円満に仲よく業者が発展をしていくというふうに、親心をもって特許行政をなさっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  以上が特許行政に関する私のお願いのようなものであります。  それから次に、科学技術振興の問題でありますが、これにつきましては、たいへん大きなことを言って恐縮でありますけれども、私は、内閣総理大臣に強大な権限を与えていただきたいと思うのです。日本では外国ほど金があまりございません。そのなけなしの金で最も有効に研究をしなければならぬ。しかるにもかかわらず、現状は各省ほとんど――割拠ということばは遠慮いたしますけれども、それぞれにたくさんの研究所をお持ちであって、ある省のごときは五十七も研究所があるやに聞いておりますが、そういうふうにたくさんの研究所があって、それにはおのおの所長あり、部長あり、課長ありというふうでいろいろやっていらっしゃる。どうも何か私は、少ない金を分散して使われておってもったいないような感じがする。しからばどうするか、これは実際なかなかできないのです。経団連あたりからも再三陳情しておりますけれども、いざというときにはどこかでその声が消えてしまう、だめになってしまう。先般の佐藤さんの行政何とか改革についての答申等も、いまどうなっておりますか存じませんが、これも私はうやむやになるのではないかと心配をいたしております。とどのつまりは、内閣総理大臣に強大な権限を与えなければだめだというのが私自身の感じであります。世界のどこの国にも例のないほど強大な権限、この科学技術振興については――そのほかのことは別でありますが、科学技術振興についてのみは総理大臣に強大な権限を与えてほしい。しかし、総理大臣万能でないですから、そこに若干名の、まあ少数の、日本のほんとうにもうその道のだれが見てもあの人以上の人はないというような人を五名なり七名なり総理大臣の側近に置かれまして、そこで強大な権限を持って各省に号令して、たとえば研究所の統合というようなものも総理大臣の一喝でさあっとできる、こういうぐあいにやっていただくということがまず大先決あるいは大前提だ、こう考えております。  それから具体的なことになりますと、先ほども出ておったかもしれませんが、日本企業が研究に使っておりまする研究費はわりあいに出しておるのです。売り上げ高に対する研究費の割合というものは、そんなに劣ってはいないのであります。ところが大きにその内容に外国と違いがあります。外国は、企業が発表しております研究費のうちの約六〇%は何らかの形において政府の財政資金なのであります。ところが、日本企業の研究費は、まるまる全部企業負担においてやっておるのであります。実に私は日本企業家というものは、その点ではたいへんな奮発をしておる、かように思うのでございます。しかしながら、なぜ外国はそれをやっておって、日本ではそうなっておらないかといいますと、ここには一つの大きな違いがあります。というのは、外国には軍隊がありまするために、その軍のほうからの委託研究とかあるいは見本の作製というようなものがあります。たとえばロッキードのような飛行機会社は、売り上げの二二%の研究費を使っています。しかしながら、会社自体が出しているのは二%にしかならない。あとの二〇%はアメリカ政府が注文をしておるわけです。たとえば超音速の飛行機一機つくれ、できたら政府が買い上げる、こういうふうになっておるわけです。ところが、その費用が全部ロッキード会社の研究費として計上されて、そこにずっと出る。ですから、二二%の研究費を実際使っているのです。けれども、その中の二〇%は政府、こういうことであります。しかし日本には軍隊がありませんから、それと同じまねはできません。しかしながら、似たような措置はできると思うのであります。それには私は一番いいのは、やはり見本を買い上げてやるというそういう制度を何かの形でおとりになったらいいと思うのです。これはあらゆる分野にわたって申請をさして、よろしいそれはおもしろそうだ、それじゃそれができたら買おう、こういうふうにして、それはもうあながち自衛隊ばかりじゃなくていいのです。各省それぞれに、たとえば学校給食なりあるいは学童の着る服なりくつなり何なり、もうみな新発明というものが多々行なわれるのです。ところがその途中みんな金がなくて困るわけです。その場合に政府がその見本を買い上げるというふうな制度、これを制度化してやってくださるならば、町の発明家たちも大いに助かる。また大企業といえども、大きければ大きいだけのものをつくるのですから、たとえば飛行機にしましても、日本が世界に最も誇るべき何かをつくろうというふうに考えた場合に、やはり政府がそれを買ってやるというふうな制度をおとりになれば、これならばきわめて金が有効に、ほとんどこれというむだなく生きた金が使えるのであろう、かように私は思うのでございます。  はなはだ、私、とっさでございますので不用意でございましたが、感じだけを申し上げました次第であります。
  10. 岡良一

    ○岡小委員長 次に、宗像参考人お願いをいたします。
  11. 宗像英二

    宗像参考人 私は、ここに別の項目を表題にして書かれておりますので、そしてまた電話で連絡がありましたときに、こういう題目でということでございましたから、それに関して若干私の考えておることを申し上げます。  それは、原子力研究所に理事として関係しているそれでなしに、科学技術のことに若干経験を持っておりますので、それに関係して私が考えましたこと、それを申し上げて御批判を仰ぎたいというふうに思います。  日本の研究についてぜひ今後考えなければならないことは、もう皆さんよく御承知のように、世界が交通、通信の発達に従って非常に狭くなってきておりまして、日本でよそと離れて自分かってなことをやっていくことはだんだんできにくくなっている。日本でも昔は、たとえば幕府の時代に上杉鷹山が寒いところでお茶をつくった、あるいは島津藩で大砲をつくったとかいうふうなことをやったことがありますが、明治維新になって国が大きくなったときには、お茶をつくるのはもう米沢のほうではつくらないとか、大砲はもう鹿児島でつくらないでやはり大阪でつくるとかというふうに、大きくなればだんだんつくる場所が変わってくると同じように、世界が一緒なれば、日本で適当しないものはもう日本でやらない。外国で適当なものは外国でする。日本に適当なものだけは日本でするというふうな考え方、そういうような考え方でものをこれから研究していくその研究の方向づけをしなければいけないということは、ぜひみんな考えなければならない。まわりもそれを支持してあげて、むちゃくちゃに、向こうでやっているからこっちでもやろうじゃないかというようなことをしないようにする。で、日本でまねごとにしろ全部ができるということは、いずれは、せんじ詰めるとそういうことはできないのでありますから、よく私は例を言うのですが、世界じゅうに百万人の研究者がいて日本に十万人しか研究者がいないとしたら、世界じゅうの発明の一〇%ができればいいのだ、一〇%よりも上なら日本はすぐれているのだし、一〇%以下だったら日本は劣っているのだ。不幸にして、いまのところ一〇%よりはるかに低いだろうと思いますが、そういう考え方でこれからおやりになるといいというふうに思っているのです。  それと同時に、また世界が狭くなってまいりますから、日本人が方々発展していって、その研究の成果を発揮していいと思います。たとえば日本人がアラビアに行って石油を掘るのを手伝ったってかまわないだろうし、アラスカに行って天然ガスを利用するのだってかまわないだろうし、すでにもうアラスカに行ってパルプをつくっている会社があるのですから、あるいはアラビアに行って石油を掘っている会社があるのですから、そういうところへもどんどん出ていって仕事をしてもいい。そういうような考え方で、日本人が研究をするその方向づけを考えることが必要ではないか。私は、日本の国の産業のあり方が、どうせ原料を輸入して加工してまた輸出する。後進国にもあるいは先進国にも物を出すというようなことがありますので、やはり日本に持ってきて仕事をするというのじゃなくて、向こうへ行ってする、あるいは船の上に工場をのせてするというようなこともだんだん考えていいんじゃないか、こういう道を開けば新しい天地が開けて日本人の活躍する範囲が広がってくるというようなことを考えるのです。  しかし、そういうような方向に向かって研究をし、国産の独自の技術をつくっていこうとするときに一番大事なのは、考えること、アイデアの尊重であります。日本の国では、私に言わせますと、物の資本、お金ですね、お金の資本に対する尊重は非常な尊重をしています。しかし知能の資本に対する尊重さが欠けていると私は思うのです。ヨーロッパの国あるいはアメリカに比べて日本は、たとえば物的な資本に対しては金利が高いとかいうようなことで、量的によけいな尊重をしています。ところが知能的な資源に対しての尊重さは、たとえば外国から輸入した技術に対しては五%のロイヤリティーを払うのに、日本人は一%、一%でも高い、〇・五%だなんてするくらい非常に極端に知能資源に対する虐待をしています。これは大問題だと思うのです。これに対してどうしたらいいかということは、これからいろいろ考えなければなりませんけれども、とにかく知能資源を尊重するということをぜひ何かの形でしなければならないということを思います。知能資源の尊重がないものですから、つい知能というものはただ取りしていいんだという考え方から、アイデアを盗む。それがひいては日本では特許をたくさん出願する。これは大部分が盗みものを出すわけだろうと思いますが、そういうことになって出てくるわけですね。知能資源を尊重する、尊重すればやはり盗むことができなくなってくることに通ずるんじゃないかしらというふうに考えます。やはり知能資源の尊重ということを何かの形でしなければいけないということを考えます。その知能資源の尊重といったって、いまじきにはそれができませんので、これからそういうふうに育てていかなければならぬ。いままだ知能資源を尊重するということについては日本の国内はまだ未教育時代あるいは小学校に入る前というような状態で、これから育成していかなければならぬ時代でありますから、これをうんと大事に育てることをしなければならぬ。いままで勤勉とかいろいろなことを言われるのは、みんな物的資源を裏づけにして勤勉におやりなさい、結局はその物的資源のことについてのことだったのでありますが、知能資源を尊重するということをこれからうたって、その空気を強くしなければならないと思うのです。そのためには育成期にあるのですから、国が勘定したときには、教育は長い目で見たはね返りは考えておりますが、差しあたってのはね返りは考えないでするものですから、そういうような考え方で知能資源の開発、独自なものができたときにこれを開発していく。先ほど加藤さんやなんかからもお話がありましたような、そういうような新しい開発があったときにそれを育成する方法をぜひ考える。  〔小委員長退席、原(茂)小委員長代理着席〕 いま具体的には日本では新技術開発事業団というようなものがございまして、新しい技術を育てるんだということが言われております。まことにけっこうなことですが、これをもっと大じかけにして、そのうちの半分くらいはマイナスになってもいいんだ。それくらいしませんと、新しいもので、しかもためしてみなければわからない、ためしてみるんだって、ためしてみるものは一発でなかなかうまくいきません。しかし、がんばって二発三発とやっていれば必ずいくのですね。ところが三発四発まで続かないものですから、途中でやめざるを得なくなる。それでうまくいかないというものがありますので、勢い外国にある半分できたようなのを持ってくるとか、あるいはそれをかすめてきて、それのまねごとをするというようなことがいつまでたっても絶えないわけです。ぜひ少しくらいは赤になっても、新技術開発事業団のようなそういう組織をもっと大きくして、そしてそこで新しい技術を育てていくことをやられるようなことが必要だと思うのです。しかしそれよりも一番大事なのは、研究者、国産技術をつくろうとする研究者のパイオニア精神をどうして養成するかということだと思います。これは一番大事なことであります。先ほどもお話がありましたように、昔、勇敢であれというようなことの裏づけに、それに報いられるいろいろなことが考えられて、勇敢であるとか、あるいはそういうことを奨励したことがありますが、パイオニア精神、それで人の歩いた道を歩かないで新しい道を開いていくということをどうして育てるかなんであります。これは結局、私はやはりパイオニア精神を発揮して、それはしくじってしまう人もずいぶんあります、不運な人もありますけれども、しかしパイオニア精神を発揮して国産技術をつくった人に非常に大きな報い方をする方法をどうしても考えなければいけない。  それで特許のことにちょっと関係しますが、日本の特許法を見ていまして、私も前に会社の経営者をやっておりましたのでそういう時分にはなかなか言いにくかったのですが、日本の特許法はどうも、私に言わせると、使う人の便利なようにできている。特許法というものは発明者を保護するためにできたものなんですが、使う人の便利、使う人を保護するようにできている。外国から特許権を買ってきて使うものですから、ついそれになにして買ってきたものを大事に守るための便利さで特許法ができているように思われます。それで発明者奨励する、発明者を保護するような特許法、むしろそれに少し重点を置いたような改良日本では若干あっていいのじゃないか。それでもしも発明者が横暴したら、そのときに方法を変えたらいいじゃないか。一度そうしてみないと、いつも特許権者に有利な方法をやって発明者にはあんまり――特許法ができたときには初めは発明者を保護するという意味のなにだったに違いないと思うのですが、それに少し欠けているのではないか、私のひが目かもしれませんが、そう思うのですね。そういうところをひとつぜひ考えてもらいたい。それも一つ発明奨励方法ですね。  それからあと、ほかにいろいろ表彰をする方法とか、あるいは先ほどもここでお話がありましたように、特許庁の中に、あるいは特許庁がそれに関連した団体の中に特許実施関係する、仲裁をするあるいは判断をする機関をつくって、ことに日本ではそういうような思想を育てていかなければならぬ時期にあるのですから、そして発明思想、新しい技術をつくり出そうとする思想を大事に育てていくようなことを考える、裁定をするとか仲裁をするとか、そういうようなものをひとつ考えるのがいいのではないかとかねて思っているわけです。先ほど加藤さんのおっしゃったような、せっかくできたものをほかの人がかすめていくというようなのを、そういうところが権威をもって、あなたのはだめなんだと早くきめる。これは特許の争いというものは十五年間が権利期間なものですから、争って十五年持ち越してしまいますと、最後は勝負つかずでもって終わってしまう。そういうところへ持っていくことが非常にはやりますので、そういうことのないようにしませんと、ずるいやつが幅をきかしてしまうというようなことがないようにするために、やはり仲裁あるいは裁定をするようなものも、日本では特に知能財産に対する尊重といいますか、それを尊敬する意向が薄いですから、そういうものをぜひ考えて知能財産の尊重、いずれはパイオニア精神を発揮して新しい研究をするという人たちを保護し、またそれを奨励するというようなことを考えられるのがいいんじゃないか、私はそういうふうなことを考えております。
  12. 原茂

    ○原小委員長代理 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  13. 原茂

    ○原小委員長代理 質疑の通告がございますのでこれを許します。岡良一君。
  14. 岡良一

    ○岡小委員 ちょうど昭和三十七年四月二十六日に、この委員会といたしまして発明及び特許に関する件についての決議案を与野党一致で採択をいたしました。簡単にその趣旨を申しますと、「科学技術の画期的な振興を期するためには、新たなる発明の気運が高まり、発明者の業績が埋れることのないように、その環境及び諸条件が完備することが肝要である。これがため、政府は、新規発明に関しては、常時各方面における発明現状を遺漏なく調査し、その積極的助成に努めるとともに、その特許の迅速なる審査を行ないうるよう特許行政並びに機構の整備充実を行なうべきである。」こういう決議をいたしておるわけです。いま五人の参考人の方の意見の中にも十分この決議に共通するものがうかがわれるのでありますが、これに対して特許庁あるいは科学技術庁として、その後この決議にこたえてどのような具体的な措置をとられましたか、この点をそれぞれ明らかにしていただきたいと思います。
  15. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  特許庁におきましては、この三年間に人員につきましては四百名の増員をいたしました。また予算につきましては倍以上の増額になっております。しかしながら、激増いたします出願と発明の内容の高度化によりまして審査がこれに追いつかず、滞貨が激増しておるという状況にございます。今国会には改正法案を提出いたしまして制度の改正に踏み切らなければならない、このように考えておるわけであります。
  16. 岡良一

    ○岡小委員 それでは現在まだ処理が未済件数として取り残されておる特許出願はどれくらいございまますか。
  17. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 本年の三月におきまして未処理件数は六十二万件、そのうち特許、実用新案の滞貨につきましては四十六万件、審査の期間で申し上げますと約三年半、こういう大きな滞貨をかかえております。
  18. 岡良一

    ○岡小委員 せっかく予算が倍額になり人も四百人ふやされたとはいいながら、ちょうど私どもがこの決議を採択いたしましたときの特許、実用新案、意匠、商標の出願件数の未処理は三十万件であった、それがいま六十二万件と倍にも増加しておるということは、やはり特許庁のことにこの審査能力において、科学技術革新の名のもとに進められている民間の創意くふうの発展に対応する力がないということを如実に暴露しているものではないかとも思いますが、その点についてはどう考えておられますか。
  19. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 昭和三十七年当時は出願の件数も十七万件から十八万件の前後でございました。三十三年ごろから三十七年ごろまでは大体横ばい状況でありました。ところがそれから後急速に年間三〇%あるいは二三%というようにふえまして、それに対処すべくわれわれのほうも全力をあげたのでございますが、世界の趨勢も同じことでございまして、アメリカ、ドイツ、オランダいずれも出願が非常に多くなってまいりまして、しかも審査の能力はどうしても追いつかないという状況でございまして、各国とも制度の改正に踏み切らざるを得ないという状況になっております。
  20. 岡良一

    ○岡小委員 改正法案は別途委員会において審議されることではございましょうが、事実上こうした民間の創意くふうに対する審査、審判能力が不足しておるという事実はお認めになるわけでございますね。  特許庁関係では発明に関してどのような予算をどのような名目で計上しておられるわけでございますか。
  21. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 お答えいたします。  われわれのほうは一番大きなものは人件費でございます。今年の予算額は二十二億二千二百万円でございます。そのうち十一億円が人件費でございます。それからあと大きなものといたしましては公報の発行費が約六億円、それに資料の整備費が相当多額でございまして一億六千万円ぐらいでございます。あとは電子計算機を動かしておりますので計算機関係が一億、そういったところが、おもな予算でございます。
  22. 岡良一

    ○岡小委員 発明奨励するというような形で運営される予算というのは、どういう名目でどのくらいことしありますか。
  23. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 発明奨励事業は、これは科学技術庁のほうでいまおやりになっておられるわけでございますが、われわれのほうとしましては、おもな事業としましては外国出願の補助金、それから発明協会の補助がございます。発明協会の補助のほうは、これは発明振興関係いたしまして発明思想の普及とかあるいは公報閲覧所の整備のための費用とか、そういったものでございます。そのほかの事業といたしましては特許の使用許諾を公示する、自分発明をほかの人に使わしてもよろしいといった場合に公報に表示をいたしまして、あとわれわれの相談所あるいは発明協会がその仲を取り持って実施化あるいは権利の使用の許諾についていろいろごあっせんをする、そういう費用、そのほか有用発明と申しまして、実施化ができるだろう、有用であろうと思われるものを年間二回ほど印刷いたしまして、そして地方の閲覧所あるいは各方面に頒布いたしまして、それによってまた実施化のあっせんをするというような予算がございます。
  24. 岡良一

    ○岡小委員 幾らでございますか。
  25. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 全額で五百万円くらいだと思います。
  26. 岡良一

    ○岡小委員 実はこの決議をした昭和三十七年にはこのような費目の総額が五百六十三万円、その前年は五百八十万円でむしろ減っておったのです。それが現在も五百万円程度ということでは、予算が膨大になったというけれども、事実特許行政の内容的な発展のための予算と純粋に直接には考えられないような形としか私ども印象を受けられないので、これは指摘するにとどめておきますが、科学技術庁関係では、発明等のための助成やあるいはそういう方向の費用としては、本年度予算はどれくらいですか。また内容もあわせて承りたいと思います。
  27. 谷敷寛

    谷敷政府委員 科学技術庁関係は、一番大きなものは発明奨励補助金でございますが、これは昭和四十一年度三千二百万円でございます。その他注目発明の選定事業をやりますための事務費若干、あるいは創意くふう功労者の表彰ということをやりますための事務費若干、あるいは発明奨励審議会を運営いたしますための事務費若干というようなものを合わせまして百万円前後の事務費がついております。  なお、地方発明センターに対する補助金につきましては、昭和三十七年度当時には二千数百万円ございましたが、実はこれは半額補助でございまして、先ほど参考人の方から御意見もございましたように、発明センターの財政状況が非常に苦しくて、残りの半額をなかなか負担できないというような事態もございまして、現在は、残念ながら地方発明センターに対する国庫補助はゼロとなっております。ただ通産省関係の小型自動車振興会等から大体千万円をこえる程度の補助金を別にもらっておる、こういう状況であります。
  28. 岡良一

    ○岡小委員 この決議をしましたときの趣旨弁明を当時私がしておりますが、当時私が調査したところでは、科学技術庁関係で直接発明に関する予算としては、発明実施化試験助成費が二千五百四十七万九千円、現在これはどのくらいでありますか。
  29. 谷敷寛

    谷敷政府委員 三千二百万円でございます。
  30. 岡良一

    ○岡小委員 地方発明センターの助成費が当時二千七百六十四万五千円、これは本年度は落ちている、こういうことですね。
  31. 谷敷寛

    谷敷政府委員 これは現在ございません。
  32. 岡良一

    ○岡小委員 そういうように国産技術奨励という立場からは、野における創意くふうというものを国が積極的に取り上げて育ててやる、そのためには十分な予算措置が必要である。官房長、一体昭和三十六年における国家予算はどれだけで、いま国家予算はどれだけで、どれだけの伸びになっておりますか。
  33. 小林貞雄

    ○小林(貞)政府委員 昭和三十六年の一般会計の予算は一兆七千七百億円、こういう数字でございます。その中で科学技術振興費、つまり各省の科学技術振興予算を集めたものでございますが、それが百五十五億でございます。それから四十一年の一般会計全体の予算を申し上げますと三兆六千四百億円、それからいわゆる狭義の科学技術振興費、先ほど申し上げました百五十五億に対抗するものが三百七億円、こういう数字でございます。  なお、ちょっと数字をさらに申し述べさせていただきますと、百五十五億円のほかに、実は科学技術庁予算百六十億円をこれに追加いたしましたものが、大学の研究費を除きました全体の国としての予算になるわけでございまして、したがって三百十五億円というものが昭和三十六年の科学技術関係予算でございます。四十一年は先ほど申し上げました三百七億に科学技術庁予算二百七十七億を足しました五百八十四億というものが科学技術全体の振興費、こういうことになるわけでございます。
  34. 岡良一

    ○岡小委員 発明奨励あるいは発明実施に関する助成、そういうような直接いまこの委員会が問題にしておる予算では、特許庁と科学技術庁合わせて、前回は約三千万円程度であった。今年は約四千五百万円程度になる。大づかみのところそうなるわけでございます。それで、発明者がどんどんふえ、また先ほど来指摘されているように、外国に支払う対価が非常にふえておるときには、なおさら国内における国産技術奨励というものが重要な国の施策にならなければならないのに、予算的な伸びが一般会計予算の伸びに比べてはるかに落ちる。科学技術振興費の中でも、この部分がむしろ一種の停滞とはいえないまでも伸びが非常に低いということは、やはり政策上の問題として十分考えなければならぬ問題だと思います。きょうは大臣もお見えになりませんから、ひとつ振興局長に、こういう問題につきましては、特許庁並びに振興局としても、ぜひ御配慮を願わなければならぬと思います。  それから、実は先ほど児玉参考人また宗像参考人から御指摘のあった点、他の方からも一部御意見がございましたが、日本が外国の技術を買い込んで支払う対価というものが、外資法が導入された昭和二十五年から最近までに約三千億をこえている。ところが日本から技術を輸出して受け取った対価というものが百五十億になんなんとしておるので、パーセンテージにすれば五%弱か四%強というような額、この傾向は、戦後日本経済が復興した復興したといいながらちっとも改まっておらないというこの事実、これは日本の今後の国際競争力の上に重大なウイークポイントであるということは、この委員会でも常に指摘されておることなんです。  さて、具体的にそれではどうすればいいのかという、ここに問題があるわけです。われわれもその具体的な方法についてはあれこれ考えてはおりますが、率直に、児玉参考人なり宗像参考人の御意見があったら、この機会に承らしていただきたいと思います。
  35. 児玉信次郎

    ○児玉参考人 いま岡先生から御指摘のありました点、私も、先ほど申し上げましたように最も重要な点であると考えておるところでございます。  そこで、それでは具体的にどうすればいいかということでございますが、これは先ほど申しましたように、外国の工業というものは、新しい技術をつくるということによって発達してきました。たとえば染料の工業というものは、いまから百年ほど前に初めてできまして、そしてドイツの大きな化学工業会社でありますバディッシュ・アニリン・ソーダ・ファブリックであるとか、バイエル、ヘキストというものが昨年また一昨年にその百年祭を行ないまして、その創立百年のパンフレットを出しておりますが、いずれも、創立にあたってまずやったことは、研究室をつくって、そして研究を強化することであった。そういう伝統が今日の繁栄をもたらしたということが書いてございます。日本企業というものは、端的に申しますと、十分にそういう研究費を支出する余裕がないのも事実でございますが、しかし、先ほど申し上げましたように、できればまだまだやれたということも私は事実であると思います。結局、経営者がそういう意欲を持つということが最も大事な問題である、こう考えます。それから、それと同時に、先ほども申し上げましたように、幾ら意欲を持ちましても、手足となってほんとうに仕事をするのは高度の能力を持った研究者でございまして、この養成が一番大事な問題である。私はその二つが一番大事なことであると考えます。
  36. 岡良一

    ○岡小委員 この前の委員会で、実は日立、東洋レーヨンその他相当古い研究所を持っておられる会社の代表の方に来ていただいて、国の民間企業に対する対策としては、研究を助成するためにいかなる対策が必要か。現にこの研究費を調べてみても、外国では、十の研究費の中で七割政府が出している。民間の負担は三にとどめている。ところが、日本現状では逆である。こういう点政府の助成が足りないのではなかろうかなど、いろいろ意見も出たわけでございますが、そのときには、やはり税制面における重大な考え方、これをしてまいる。いわば研究投資というものを損金として落とすというような形において、自由な研究を進められるような措置を講じてもらいたいというような御意見に、当時の参考人の方の御意見はほぼ一致しておったと思います。この点について、あるいは加藤さんなり、また児玉さんなりの御意見をこの機会に承っておきたいと思います。
  37. 加藤弁三郎

    ○加藤参考人 それに関連を直接しないかもしれませんが、ちょっと私実例一つ申し上げたいと思うのです。いま岡先生のおっしゃいましたこと、それをどうというわけじゃ決してございませんけれども日本の外国から受け取っておる特許料は、わずかでありますけれども、やはり次第に増加はしてきておる、そう見ていいんではなかろうかと思っております。それからまた、これは自分の会社のことを申してたいへん恐縮でありますけれども実例でありますから申し上げますが、協和醗酵工業におきましては、この昭和二十七年以来の特許、外国へ払ったものと外国からもらっておるものと、もらっておるほうが多いのでございます。もらっておるほうを一〇〇として、支払ったものは全体で累計九六になっております。昨年のごときは、私どももらうほうが二倍半もらっておる、こういう実例もあるのでございます。  そこで、なぜそういうふうに幸いしたかということを反省してみますと、一つの点は、自分にちょうど合った独自の研究をしたということでございます。たとえば、いま申しましたように醗酵工業というようなものは非常に限られた工業でありまして、あまり普遍的な工業とは言えないわけです。言うなれば特殊工業であります。その特殊工業を持ったものが、その特殊性を生かすようにして、ひたぶるに自分の特殊性を発揮すべく一生懸命に勉強したということで、このような結果が得られたと思うのでございます。したがいまして、今後日本の研究も、一般的に見てやはり特殊のものを選んでやるという――この金の額とかあるいは組織の大きさとか頭数とか、それらはみな大事ではありますけれども、そういうことばかりではなく、やはり日本の特殊性、まあ分業的に見て日本ではこれをやろうというようなものを重点的にやるというようなことが、少なくも何がしかいまおっしゃいました線に沿う一つの線になってくるんではないか、かように思うのでございます。もちろん、その根本においては教育が大事でありまして、先ほど児玉参考人がおっしゃったように、教育からして、ほんとうに資格を持った実力のある人間を養成する、ここからたたき込まなくてはいかぬということは申すまでもありませんけれども、いま申しますように、私は、あまりあれもこれもというのでなしに、自分はこの任務だ、こういうふうにしていったほうがいい、こう考えるわけであります。
  38. 児玉信次郎

    ○児玉参考人 先ほどお話しの、研究費を損金で落とすことを認めるということはたいへんけっこうなことでございまして、これはもちろんやっていただきたいことであると考えます。  それから、研究費の国家負担でございますが、アメリカの話が先ほどから出ておりますが、国防予算のみならず、宇宙開発であるとか、それから一般予算も、会社方面へ非常にたくさん委託研究費の形で流れております。そういう予算によって、アメリカの工業というものは非常に大きな発展をしておると思うのでございますが、日本では、たとえば原子力というものを例にとりましても、アメリカの原子力予算の何%が国家でまかなわれておるか、よく存じませんけれども、その大部分国家予算でまかなわれておるんじゃないかと思いますし、フランスにおいてもそういうふうに思います。こういうようなことは、とても民間資金では研究できぬことでございまして、そういう国として非常に重要なこと、日本のような国では特にエネルギー資源が重要でございますが、たとえば原子力予算のごときは国家で十分の研究費を見るというような御配慮が必要かと思います。
  39. 岡良一

    ○岡小委員 私ども考えでは、先ほど来御指摘の方もございましたが、やはり基礎研究を充実しなければならない、その成果の上に応用研究があり、また実用化が行なわれる。大前提は基礎研究であるが、応用化、実用化をも含めて科学に対する投資というものは、やはり自然界のいわば諸原則を探究し、そしてその成果に基づいてこれを人類、社会あるいは国家経済に有用なものたらしめる重要な技術革新下における投資という考え考えていかなければならないという場合には、これは国もさることながら、民間もその点同様に考えて取り上げていかなければならないという考え方を持っているわけです。この点については、私もいろいろ資科を求めまして、若干結論めいたものも出してみておるわけでございますが、先ほどの加藤さんの場合は別にいたしまして、おおむね民間投資も非常に弱体であるということも言えると思う。そしてまた、それが不況になると研究費にしわ寄せしてきておるというような現状も実は聞いておるわけなので、こういう点は今後やはり官民の前向きの姿勢で科学技術振興に当たるために考えていかなければならない問題かと思います。ただ、宗像さん、先ほどやはり日本には日本独自な研究のあり方があってもいい、あるいはテーマの選び方があってもいいという御意見でございました。もちろんそれもそうでございましょうが、実は先ほど来数人の方から御指摘のように、今後の新しい研究開発というものは非常に巨額な資金が要る。電子計算機だけじゃなく、何らかのプロトタイプをつくろうとしても、それだけでも非常な金がかかるというようなことになってくると、どうしてもこれは単に安易な道を選んで、外国の技術を導入して安上がりでものまねをしていくというものまね国産であったり、ただ向こうの立てた理論をそのままにうのみにしていくというようなものでなく、もっと自主性のある国際協力というものが必要ではないか。ある国が独自な研究テーマを選び、それを開発するということは、もちろん必要なことであるが、同時に特に基礎研究の分野では、非常に大きな金がかかり、精密な電子計算機も要るわけなので、そういう意味の国際協力という問題が非常に大きくこれからは重要視されなければならないのじゃないか、単に日本が独自な、ある特定なテーマを選ぶということだけじゃなく、そのあらゆる科学開発基礎に横たわる基礎研究分野における国際協力という問題は、今後非常に重要な問題になってくるという気が私はするわけなんですが、この国際協力という点について、宗像さんはどういうようにお考えでしょうか。
  40. 宗像英二

    宗像参考人 実は私、原子力研究所の理事をいたしておりまして、私が担当しております分野は、原子力の製造工業に応用する分野、化学の工業に応用する分野という分野でございますので、いま御質問のありました点に非常に近い実例を持っておりますから、その点を申し上げて、私が先ほど申し上げました独自のものというものについての説明を少し補足したいと思います。  実は日本で、これは皆さんの御支持を得たためでございますが、原子力を化学のほうに応用する研究をしようということが数年前から具体的になりまして、いま私が担当しております高崎の研究所でそれを進めておりますが、現実日本とフランスの間で研究している分野が少し違う。お互いに違うものをやっているから協力ができるのでありまして、お互いに違うことをやっているから、あなたのほうのを知らしてくれ、こちらも知らしてやるということで日仏協力をやっております。つい先月の下旬に、アメリカの原子力学会に呼ばれて、行って話をしました。そのときにも、今度フランスと取り上げた問題と違う問題について、また向こうがそれを一緒にやろうじゃないか。一緒にやろうといっても、向こうはこれをやる、おれはこっちをやる、一緒にしたらあるものになるというものをやろうじゃないか、具体的に申しますと、ポリエチレンの製造を日本は溶融点以下でやる、アメリカは溶融点以上でやる。そうしますと日本のは粉ができる、向こうのは溶けたものができる。それを両方ともお互いに技術を交流し合って、そうしてお互いに進めていこうじゃないかということがいま進みつつあります。実は来週五月二日から六日までハワイで日米協力でこの研究分野をもう少し確認しようということをすることにして、私も来週参ります。そういうふうにしまして、同じことをやるということは、だれか先にやっていることをやるわけですから、同じことをやるというのは必ず追っかけることですが、違うことをやって、しかもその領域が近ければお互いに交換し合って大きなものをつくっていくということになるのでありまして、日本人だってアメリカ人だって実験をして世の中のものを見ることは同じなんですから、だから少しくふうをして、あっちは右側から調べる、こっちは左側から調べる、そうして一体をつくるというくふうをしていったら、国際協力をやって大きなものをまとめ上げていくということができるのじゃないかと思うのです。とにかく日本人たちに、これはどういう方法で刺激したらいいか、お金をたくさんあげるとかあるいは名誉をなにするというようなことをして、新しいもの、人のしないもの、人がこう言ったらそこはおかしい、こっちのほうに探求をしていこうというような、私が先ほど言いましたパイオニア精神といいますか、そういうものが盛んになるようにしたい。どうしたらできるだろうか、お金をたくさん出すこと、賞金をたくさん出すことがいいのか、あるいは特許権のようなもので、うんとその人を高く評価してそれをほめたたえるのがいいのか、とにかく研究はもとはやっぱり人間の頭でありまして、それを開発するにはお金が要ります、組織が要ります。しかしもとは頭なんですから、頭を刺激すること、それにはどうしたらいいかということを私はいつも考えているわけでございます。例に申し上げましたことがいろいろちぐはぐになりましたが、とにかく国際協力をするのにも、やっぱりこっちに特色があれば協力ができるというのじゃないかと私は考えます。
  41. 岡良一

    ○岡小委員 私が申し上げたのは、その意味も若干ありますが、かりにたとえば、湯川博士がノーベル賞をいただいた、朝永博士がいただいた。これは言ってみれば新しいアイデアに対する褒賞である。しかし湯川博士が物質のいわば本質的な内部構造に触れたアイデアを発見された、あるいはまたその運動法則に触れたアイデアを発表され、これでノーベル賞を朝永さんがいただいた。しかしこれらのアイデアは実験されなければならないということが必要になるわけです。ただ私がこういうことを申し上げたのは、去年ドブナの研究所にちょっと行く用があって行きました。ドブナでは御承知のように世界で一番古い、しかも一番大規模な約三百億電子ボルトくらいのものをつくっている。ブルックヘブンにあるのが四百五十億電子ボルトだそうです。ドブナの所長が言うのには、負けないで、今度はおれのほうで一千億電子ボルトのものをつくるのだと言っておる。日本学術会議のほうでは、三百億電子ボルトをぜひつくってくれと言っておられる。それにしてもやはり三百億以上の金が要る。そういういうふうに、将来における技術開発基礎となる基礎研究の分野で、各国が資金のいわば競合をやりながら非常な二重投資を行なっている。科学の発展というものそれ自体が国際協力を要求しておるという時代に、お互いがそういう競合をやり、二重投資をやるということは、本質的な科学発展の政策という立場から見た場合に、どう評価すべきであるかという点が一つの問題点になっておる、その点についてのあなたの意見をお伺いしたいわけです。
  42. 宗像英二

    宗像参考人 私も小さいながら研究所をなにしておりますが、その中で意識して競合させてやっていくということもあると思うのです。意識して競争させながら進めていく。研究はクリエーションなんでして、クリエーションに基づきますから、クリエーションを指導することはできないわけです。このクリエーションが指導できるなら、指導できる人のクリエーションがその先を歩いておるわけですから、やはりクリエートする人が両方で競争してつくっていく。いまのお話のような場合には、それはやはりお互いにその解釈といいますか、クリエーションに相いれないものがあるから、別々のところでやるということになるのじゃないかと思うのですね。そういうものも当然あると思います。それからまた、お互いに、君はこっち側を分担していけ、ぼくはこっちを分担するというのもあると思うのです。ですから道を開いていくのには、やはり意識して競合させていくことが一つの強い刺激でいいのじゃないかと思います。しかし大体協力してやっていける分野はまたぜひ協力してやらなければいけない、そういうふうに考えております。
  43. 岡良一

    ○岡小委員 そういうような点で、ドブナにしたところで、あれはソビエトだけのものではなくて、いわゆる社会主義国の連合研究所なんですけれども、私どもに対してはフランクに、ぜひ日本の物理学者も来て勉強をしてもらうようにと言っておる。ブルックヘブンあたりでもそういう気持ちを言っておるわけです。だから非常に資金の要る大規模な研究施設を、ただ研究者が新しきアイデアを掲げて競合することはいいけれども、そういう大きな資金の要る施設というようなものは――もう飛行機で非常に時間も短縮されて、おそらくドブナにしたところでモスクワから二時間かからないのだから、羽田からモスクワまで今度航空協定ができればおそらく十時間程度でいけるのじゃないか、そういうふうにもう世界が小さくなってきているのだから、そういう状況考えた場合に、基礎研究の分野における国際協力というものがもっと世界的な規模で進められていいものではないか、これはやはり一国に閉鎖された科学政策じゃなく、国際的に開放された科学政策として世界的規模で進めていくというような考え方がもうそろそろ打ち出されてもいいのではないか、こういうようなことを考えましたので、あなたの御意見を承ったわけです。  いろいろけっこうな御意見も伺わしていただきましたが、私どももできるだけきょうの参考人方々意見を参考にして、今後十分に科学技術行政のあり方について研究を進めたいと思います。  私はこれで質問を終わります。
  44. 小林貞雄

    ○小林(貞)政府委員 先ほど岡小委員の質問に対しまして、私ちょっと数字を取り違えておりましたので、あらためて数字を申し上げさしていただきたいと思います。  三十六年の一般会計予算は二兆一千七十三億円でございます。そのうち科学技術振興費、つまり大学の研究費を除きました分が二百八十五億円、それから四十一年度は全体の予算が四兆三千百四十二億円、それに対して科学技術振興費は五百三十三億円ということでございます。   〔原小委員長代理退席、小委員長着席〕  この点を見てまいりますと、一般会計予算の伸び率ほど科学技術振興費は伸びてないということに相なるわけでございまして、過去の数字を見てまいりますと、昭和三十五年度ぐらいまでは大体一般会計予算の伸びに拮抗して科学技術振興費も伸びてまいっておったわけでございますが、その後必ずしも一般会計予算の伸び率に比例して科学技術振興費が伸びてないというような状況でございます。私どももはなはだ残念に思っておる次第でございます。いろいろ今後科学技術振興のためにさらに努力をして予算確保に力をそそいでまいりたい、かように考えております。
  45. 岡良一

    ○岡小委員長 原茂君。
  46. 原茂

    ○原(茂)小委員 いい機会ですから一つだけお伺いしたいのですが、参考人の皆さん経験がおありかどうか知りませんが、経験がおありでしたらお聞かせをいただきたいのです。もしなければ、官房長がおいでですから、官房長からも御答弁いただきたいのです。  先ほど宗像参考人の御意見によっても、およそ発明者をもう少し大事にするというウエートの置き方を考えていかなければいけないというような御意見がありました。まことに同感だと思うのですが、単に国内における発明国家的に重要視されることも必要なんですけれども発明されたものを国の立場で海外に対して、保護をするのはもちろんですが、これが十分に日本独特の発明としてPRされ、あるいは海外が進んでその特許、発明科学技術日本独自のものを採用し、利用し得るような、あるいはさせるような努力が国家的に行なわれていきませんと、単に一発明者が小さな力で発明をした、それが国内的には評価されておりましても、その評価されたものが国外にまで大いに利用されようとする、それだけの力を発明者はもちろん持っておりませんし、日本企業家がこれを重要視しようとしない限り、なかなか海外にこれが伸びていくということはあり得ない。先ほども日本の受け取るものと日本から出ていくものとに非常に差のあることのお話がありました。そういう点からいっても、国家的な見地で発明者を保護し、育成することも大事なんですが、発明されたそのものが海外に広く宣伝され、しかも海外で用いられるような、そういう意味での力をやはり国の立場でもあるいは企業家の立場でも思い切って注いでいかないと、せっかくの日本独自の発明なり科学技術が眠ってしまうおそれがあるというように考えるわけですが、そういう点、きょうおいでいただきました参考人の皆さんの中で、国の立場で皆さんの発明されたもの、現に持っておられます独自の科学技術が海外に広く宣伝をされるといいますか、利用されるような道を講じられたというような経験がおありなのか、あるいは何か法律の規定でそういったことがやれるような筋道があるのかどうか私知りませんが、そういう点、ひとつ参考人の皆さんからお聞かせいただけるなら、経験の中からお聞かせいただきたい。なお、私のような考え方が、何かこういう方法でやられたらどうかと思うという御意見でもありましたら、宗像参考人その他からお聞かせいただきたい。また官房長からは、そういったことが国の立場で考慮されているのかどうか、単に発明者発明が、日本の中で、企業家あるいは特許権者がこれはいいというので利用しようとしたときにのみ利用されているのか、海外に特段の国の立場でこれを大きく利用せしめようというような仕事をしたことがあるのか、またそういうルートもあるのかないのかということをひとつお伺いしたい。
  47. 宗像英二

    宗像参考人 いま御指名がありましたので、私がまず申し上げますが、きょうここにおいでの参考人方々の御関係の中では、私は加藤さんのところで御発明になった新しい技術がずいぶん国外に出ておるものと思いまして、非常に敬意を表しておりますが、結局出なかったというのは、せんじ詰めればやはり日本技術がそう高く買われるだけの実力を持っていなかったのが残念なんです、いま加藤さんのところのような実力のあるものはやはり出ていくわけです。ほかにもまだ実力のあるものでずいぶん発展しているのがございます。私どももずいぶん努力をしてやってはみましたが、やはり実力が足りませんものですから、外国に行ってよく宣伝をしますけれども、競合者がありまして、競合者があるときは国が保護してくれるといいなと思っても、客観的にはやはり五十歩百歩なものですから、もう少し保護してくれればあるいは勝てるかなと思うようなこともあったのですが、やはりそこらのところはこっちがやむを得ないのだなと思って引いてきたような例もあります。結局独自というか特徴のあるものをつくらなければいけない、それでなければ買ってくれないというふうに思います。しかし、五十歩百歩のものをうんと応援して、それでやはり日本のを取り上げてもらえるというようにすることについてはどういうことをやったらいいかということを深く考えたことはないのですが、現地に行きまして宣伝していてとうとうだめだったというときにずいぶんくやしいなと思ったことは何度かございます。そんなことで……。
  48. 加藤弁三郎

    ○加藤参考人 私、経験を二つだけ申し上げたいと思います。一つはちょっといまの御質問と反対なことになりますけれども、とにかく経験でございますからお話し申し上げたいのであります。  一つは、いま宗像さんがおっしゃいましたとおり、外国は非常にウの目タカの目でよく調査しております。したがいまして、こちらが何か発明してそれが価値あると見たら、もう実に早いのであります。すぐ電報をよこします。それからすぐ飛行機で飛んでまいります。そしてその特許はぜひうちへというてたいへんな熱意をもって買いに来るわけなんでございます。ですからその点では、そういう面に全く日本が、私自身ですが、勉強の足りないことを痛感しているわけです。われわれは、外国で何が発明され何が開発されようとしているかさっぱり実はわからぬのでありますが、外国のほうはその反対でありまして実によくわかってだーっと飛んでまいります。そういうことで、私のほうもいまおっしゃっていただきましたように相当出しておるのでございまするが、これはやはりいい発明をすることが大事であります。そのことはすぐ特許公報等に出ますから、先ほど申しましたように無審査国がございまして、そこでもうすぐ概要が発表されますから、もう、すぐ飛んでまいりますので、いい発明さえすれば客はついてくるというふうに私は深く信じております。ですから、大事なことは、もちろん国家のほうで何かしていただけるならありがたいのでありますが、しかし、何はともあれいい発明をするということが一番根幹であろうと存じます。  それからもう一つは、その反対でございます。もしこれが何か国家行政上差しつかえがあれば速記はあとで取り消していただきたいのでありますが、ただこういうことがあったという実情だけを正確に申し上げます。  それは台湾でございますが、台湾のほうから私のほうへ一つの特許を買いに見えまして、最初は、台湾の業者が一本になって一つの会社をつくるからおまえのほうの技術をここへ出してくれとおっしゃいました。そのとおり出したのであります。ところがその後、向こうの国内で仲間割れと申しては恐縮でありますが、独立なさる方がだんだん出まして、そこへまた日本から機具が流れてまいりまして別にやられる。そこで私のほうは契約しておる会社に対する義務がありますから、その押えにかかったわけであります。保証金を積んで裁判にすぐかけようといたしたのであります。ところがここに国際問題が起こりまして、日本の外務省からは、ちょっとこの際そういうことはやめてもらいたいというおことばがございました。それから台湾の国内では私のほうの特許はそのまま審査をされずにずっと今日までたな上げになっておるわけです。そこで再三再四交渉しておるのでありますが、国際問題であるからしんぼうせよとのことでございまして、しんぼうしておるところでありますが、ところが困ることには、今度は私のほうの特許をとって正々堂々と台湾でやっておられるその会社の立場は非常に困られるわけです。何だ、おまえのほう、何も日本から特許を買わなくてもいいじゃないか、ほかのほうはみんなこうしてやっておるのだ、日本に特許料を一銭も払わずにやっておるじゃないか、おまえのほうだけ大事なドルを出して払うなんて、それはまるで反国民的じゃないかというようなふうで、非常に苦しい立場に立たれる。そうして今度は日本に対してその会社は非常に不信感を持っておる。日本という国はもっとりっぱな国だと思ったのだが、これは一体どうしたことだ、特許もあいまいだし機具はぞろぞろと流れてくるじゃないか、こういうことをしておいてそれで特許料だけよこせと言われても払えぬじゃないか、こういうことなのであります。これは事実であります。しかしその会社は約束だけの特許料を払ってくれておりますので、したがってその会社と私のほうは何のわだかまりもございません。それは契約でちゃんと履行してくれますからいいのですが、実に妙な現象が起きておるわけであります。そういうふうで、すぐ国際問題だとおっしゃって押えられてしまうと、これは私、工業所有権というものが何だか少しはっきりしないなという感じを実は持っておるのです。工業所有権というものは非常な大事な財産だと私思うのでありますが、それがすぐ国家の都合でちょっと待ってくれといわれるのはどうであろうか。しかし、国家のためならわれわれも待たなければならぬというふうで、いま待っておりますけれども、そうしてだんだん時間がたてば、特許は十五カ年でありますから、切れてしまう。そうすると、せっかく発明した発明者もその発明権を持っておる会社も、全く泣き寝入りで済んでしまうということになるのであります。これは実例であります。これは国家が保護してくれるというよりは、むしろその逆なことを仰せつかっておる、こういうことで、こういう例もあるということをお含み願っておきたいと思うのであります。もしこれが行政上御都合が悪ければ、速記はお消しくださいませ。私は決して自分のためで申しておるのじゃなくて、こういうこともあるのだ、だからお互いに何か考うべき点があるなら考えようじゃないかという意味で申し上げておるだけでありますから、どうかよろしく……。
  49. 原茂

    ○原(茂)小委員 いま官房長からお答えいただく前に、貴重なお話があったので、いまの加藤参考人の話は、これはまさに重大な問題なのですが、一つの事例として名前はおあげになりませんけれども、そういうときに国の立場でどう対処するか、当然しなければいけないことがあるわけなのですが、その点もひとつお聞かせ願いたい。長官からもし御意見があったらそれも一緒にあわせてお伺いしておきたい。
  50. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 私からお答えいたします。  特許権争いにつきましては、おのおのその国にルールがございまして、審判を要求するとか裁判を要求する、こういう形で解決されていくのが筋道でございます。もちろんわれわれがいろいろ事件を聞きまして商標の盗用あるいは意匠権の盗用等ございます場合は、外交ルートを通じまして向こう側の政府に対して抗議を申し込むことは再三再四ございますし、またわれわれも外交ルートを通じまして諸国からいろいろ苦情を申し込まれることは多々ございます。それにつきましては一々回答し、また、あるいは行政指導の面でいけるものはそれをやってまいっておりますが、要は、工業所有権の制度の基本的なルールに従って解決されていく、こういう形で特許法等運用されているわけでございます。
  51. 谷敷寛

    谷敷政府委員 官房長に御質問でございましたけれども、便宜私のほうから申し上げたいと思います。  日本の優秀な特許を外国に宣伝するについて、政府で何かやっておるかという御質問でございますが、実は一般の特許の外国出願につきましては、特許庁なり主要な府県において補助金がございますし、あるいは国の研究機関等につきましては、それぞれの省が予算を組みまして外国出願ができるような措置はとっております。  それからまた、技術の輸出につきましては、いわゆる技術輸出所得控除制度がございまして、技術輸出が行なわれた場合には免税措置を講ずるというような間接的な推進策もとっております。ただ、具体的な宣伝そのものにつきましては、先ほど加藤参考人からの御意見お話もございましたように、外国のほうが非常に熱心にやっておりますので、現在のところ、政府として直接日本の優秀な発明の宣伝を外国に向かってやるということはやっておりません。むしろ反対に外国の新しい技術なり発明なり等につきましては、御承知の科学技術情報センターというものをつくりまして、ここで毎月何千という外国の文献等を抄録しまして、これを民間に頒布しまして外国の特許の国内宣伝というほうはやっておりますけれども日本のほうは現在はやっておらないわけであります。
  52. 原茂

    ○原(茂)小委員 あとからお伺いしようと思ったのですが、情報センターを通じて外国の優秀なものは民間に流す、これは非常にいいことだと思うのです。しかし、国内のものも外国がいいものは飛びつくだろうからほっておくのだという手はないと思うのです。せっかく情報センターがその種の活動をするなら外国のものを国内に流す、同時に、その前に国内のものを外国に流すぐらいのことは、私やることが必要じゃないか、こう思いますので、この点局長からもう一度御所見を聞いておきたいのです。  それからなお、先ほど佐々木さんから御答弁があったのですが、いまたまたま加藤参考人から国名が出たので言いにくいかもしれませんが、国名は出ないことにして、いま話をしたいと思うのですが、一つの例として、いまおっしゃったような程度のことで、もしこれから推移するとすれば、民間が独自で一つの国の法律を相手にして何かやっていかなければいけないというような感じを受けるのですが、その種の問題になったら、国の立場で相手国の法律との急速な折衝を行ない、解決をはかる、そこまで行ったら国が引き取ってやるというような何かルールがないと、問題の解決が常に弱い者の泣き寝入りということに終わる危険があるだろうと思います。これはやはり国の無形の財産ですし、非常に大きな――これは有形の財産といってもいいのかもしれませんけれども、これを保護する立場にある国が、特に特許庁は国の立場でその段階に来たら引き取ってやる、問題の解決を民間にまかせないというような何かルールがないでしょうか。もしないとするならば、きょう長官もおいでになっているようですから、これは自後考えていただいて、こうするとか、あるいはこういうことを相談するとかいうような御答弁をちょうだいできればいいと思います。
  53. 佐々木宏

    ○佐々木説明員 現在のところ、国でもって特許権の審査が悪いとかあるいは審判が悪いとか、こういうことは干渉できないということが工業所有権制度の筋道でございます。われわれ外交ルートを通じまして、不当であるとか不正であるとかいうようなことは、抗議を申し込むことは申し込みますが、しかしながら、日本もやはりそういうことを受ける場合が多うございまして、たとえば、イタリアの有名な化学会社から外交ルートを通じて審査が悪いあるいは審判が悪いというような抗議を受けます。しかしながら、これに対しては審査、審判の筋道を通し、また、裁判でもって争ってもらうというような形でございます。どちらかと申しますと、後進国に対して出願をした場合は、審査、審判は向こうの審査、審判の能力の問題もございますし、非常にわれわれ公平な立場からアンフェアだと思われるようなことを感ずることはございます。そういった場合には、民間からの要望もあれば、外交ルートを通じまして、この不当であるということは申し上げたり、側面的な援助はしております。
  54. 原茂

    ○原(茂)小委員 この問題は、別途にひとつ取り上げていかなければいけないだろうと思います。この場所は適当でないかもしれませんけれども、やはりいまのような問題に関しては、いま御答弁になったような、民間から申請があれば取り上げてやってやるのだ、あるいは外交ルートを通じてやるのだということすら、民間ではっきりルートを知っておればあるいは申請するかもしれませんが、うっかりするとそこまで知らない者は、小さな特許では――小さな特許ということはないが、まだまだ重要視されていない段階における特許というものに関しては、民間では泣き寝入りするおそれが多分にあると思うのです。そういうところに気を使ってやるのが国の仕事なんで、それをまるで問題を逃げるように、裁判だ、外交ルートだ、しかも、それも民間企業が申請してきたらという受け身なその思想がどうも科学技術振興する上からいって少し弱過ぎる。逆ではないか。もうちょっと積極的にその種の問題が起きたら、国の立場で解決するというルールを確立しなければいけないのではないかと思うので、この点は、きょう皆さんに申し上げて決定的な御意見を聞くことはむずかしいかと思いますから、別に問題として提起しなければいけないでしょう。党の立場でも、別にこれは政審あたりに出して、ひとつもう少し突っ込んだ形でルールを確立させなければいかぬなという感じをいま持っております。これ以上佐々木さんではお答えがむずかしいかと思いますので、あと谷敷さんからお答えいただきたいと思います。
  55. 谷敷寛

    谷敷政府委員 先ほど私ちょっと申し落としましたが、科学技術情報センターは海外の情報だけではなくて、国内の情報と両方やっておりますので、この国内の情報のまとまりましたものを外国にどんどん販売いたしますと、日本技術の宣伝になるわけでございます。情報センターといたしましては、大いにその意欲を持っておるわけでございますが、非常に残念ですけれども、四十一年度の予算におきましては、まだそこまで十分にめんどうを見るところまではいかなかったという状況でございまして、次年度以降におきまして、ぜひそういうことも検討をしたいと思っております。
  56. 原茂

    ○原(茂)小委員 最後一つだけ。現在までに既存の発明がたくさんあるわけですが、その発明を、ものまねではありませんが、Aという発明とBという発明とCという発明を総合して、また新しい発明というものが生まれる可能性というものが多分にあるだろうと思います。単に科学技術振興の上から、発明というものだけを単独にとらえるのではなくて、発明された幾つかのものを総合して、またその上に、発明とは言えない、あるいは新案か何か知りませんが、そういうものが考えられつつあるときに、一体それに対する助成なり、そういうものも奨励していくような国の立場で配慮されていくことがあるのかどうか、その点ひとつ振興局長に伺いたい。
  57. 谷敷寛

    谷敷政府委員 民間におきましては、たとえば、発明協会なりあるいは発明振興協会なりあるいは私どもがさきに指導してつくらせたという地方の発明センターとか、そういうようなところが一応そういう指導をするというたてまえになっておるわけでございますが、これはそれぞれの団体の資力なり能力等によりまして必ずしも十分に全部いっているかどうか、ちょっと問題がないわけではないだろうと思います。なお、先ほど申しました発明実施化補助金等につきましては、出てまいりました申請に対して、具体的な申請が出てまいりました場合に、われわれ事務当局がこれを指導といってはちょっとおこがましいかもわかりませんが、こういう点を改良したらどうかというような指導をやっておるわけでございます。  また、新技術開発事業団というものがございまして、この事業団の大きな事業は、新しい研究の企業化を、事業団が自分の金で企業に委託をしてやるというのがおもな仕事でございますけれども、この事業団の仕事のうちには、そのほかに新しい発明のあっせん、紹介とかをやっておるわけでございます。したがいまして、そのあっせん紹介をいたします段階におきまして、ただいま先生から御指摘がございましたように、関連した技術に注目をいたしまして、それはこういうものと一緒にしたほうがいいじゃないかとか、こういうものと関連づけてやったほうがいいんじゃないかというような指導あっせんをやっておる。現在は大体そんなような状況でございます。
  58. 君嶋武彦

    君嶋参考人 いまの件で申し上げたいと思います。  私の関係いたしております日本発明振興協会というのは、御承知のとおり中小企業関係のものが主でございまして、これは前からどうして海外との連絡をやったらいいか、しかもこれはいずれもそういうふうな経費は負担できないメンバーばかりであります。それで、これは私体験があるのですが、アメリカ大使館の経済部に交渉いたしまして、そうしてあそこに登録して資科を本国へ送りまして、そして商務省がフォーリン・コンマース・ウイクリーという雑誌を毎週出しておるわけでございます。そこへ載せてくれたわけです。そうすると、アメリカ国内の各方面からどんどん照会がくる。そればかりではなくて、それをまた雑誌に載せるものですから、イギリスからもき、それからオーストラリアからもくるということで、その連絡の効果は非常にあったわけです。そういう体験を通じまして、現在アメリカ人の経営しておりますコンサルタントがあるのですけれども、ここはもともとアメリカ大使館関係のメンバーでやっておるものですから、そこと協会として正式に打ち合わせをしまして、国内十一カ所の各国の大使館と連絡をとりまして、そうしてそういうふうな要望に関しては、その大使館を通じて本国のほうの何かの資料に出してもらうことにしております。まだ成果はあまりあがっておりませんが、われわれとしては、これは民間外交の一つ方法じゃないか。やはり外務省あたりを通しますと、途中に御用事が皆さん多いので、なかなかスムーズにいきにくいだろう。だから、なるべく金がかからぬでできる方法というので、そういうことも現在やっております。これもできるだけだんだんこの道を促進いたしまして、全国の連絡もよく密にしまして、できればお互いの技術交流というものがあまり経費をかけずにやれるような体制に持っていきたい、こう私ども考えてやっておるわけです。何しろ微力なものですから、なかなか十分いきませんが、その点をちょっとお話しておきます。
  59. 原茂

    ○原(茂)小委員 ありがとうございました。
  60. 岡良一

    ○岡小委員長 以上で質疑を終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時四分散会