○高
吉参考人 高吉でございます。
私は、
発明協会に所属いたしております。
発明協会という場からながめてまいりました狭い
範囲かもしれません、あんまりいい
知恵がございませんのですが、多少気のつきましたことを一、二申し上げてみたいと思います。
ただいま
君嶋参考人から
お話がございまして、たいへん有益な
お話でございました。全面的に賛成でございます。私の申し上げますことはこれと相当重複するかとも思いますが、なお補足的に一、二を指摘してみたいと思います。
発明奨励と
特許行政といったようなものについての
考え方でございますが、これはなかなか、特に
発明奨励と申しましてこれ一発できめ手になるというようなものは
考えつきません。ずいぶん昔から
考えられて
いろいろ手も打たれてきておりますことで、このほかにうまい手というものは実はわれわれ
考えつかないのでございます。要は、いままで
考えられてきたことをきめこまかに、たんねんに、強力に推し進めていくという以外には実はないのではないかというような結果になるのでございますが、まず第一番の手始めといたしましては、やはり
少年に対して
一つの何といいますか印象を植えつける。私
たちが子供のときに
陸軍大将になるということは、
一つの夢でございました。大
発明家というものがこれから
少年たちのあこがれの的であるといったような
気持ちを植えつけるということから始まるべきものではないかと思います。つまるところ、大
発明家の
事業を
国民の脳裏に強く焼きつけていく、こういうような、まことに迂遠な
方法のようでございますけれ
ども、その辺からまず力を入れていくべきものと思います。まあ
方法にはいろいろございますでしょう。少しはったりめいたようなことが自然多くなってまいると思います。
学校教育方面でも大きにこういうことに
重点を置いてお
考え願う。あるいは
一つの思いつきでございますけれ
ども、今度の万国博覧会、あのところに
発明の殿堂といったようなものでも設けまして、大
発明家の伝記なり業績なり、
社会に貢献した偉績なりというものを永久に残していくとか、こういうようなことなんかもございますでしょう。こういうようなことで、
発明というものを
国民の心に深く植えつけていくということ。
それから次は、
発明功労者の顕彰は、もとより現在も行なわれておりますが、中にはたいへんないい
発明をしながらどうもそのときには受け入れられなくて、御本人いたって経済的に恵まれなかったというような人が、いま特に事例を思い出せませんけれ
ども、そういうようなことがございますならば、その人の晩年あるいは
遺族の
方々に対して何らか特別な
救済の道を開くといったようなこと、これはよほどりっぱな
発明でないとできぬわけでございますけれ
ども、いわば金鵄勲章といったような
考え方で、もし経済的に恵まれなかったら
遺族にまで何か
救済の道が講じられるというようなこともお
考え願うとおもしろいのではないかと思います。むろん全般的な国が
発明奨励に力を入れているということのPRは十分やっていただかなければならないことでございます。何かこの間ちょっと伺いましたら、
科学技術庁にございます
発明奨励審議会をこの際廃止したらどうかというような
お話まで出ておったというようなことを耳にいたしたのでございます。これが
発展的解消で、大きくなるための廃止であるならけっこうでございますけれ
ども単に数が多過ぎるから廃止したらどうかというようなことでございましたら、私
たちはこれは反対でございます。御再考を願っておるというような
お話も伺っておりますので、そうであるならばたいへんけっこうだと思いますが、そういう声が出ますこと
自体がどうも私
たちには納得がいかないというような
気持ちでおる次第でございます。こんなことで
発明奨励の心理的な面はぜひ国として大きに太鼓をたたいていただきたい。
それから、
発明と申しましても、これから先の大きな
発明は、どうしても
科学技術の
基礎の裏づけというものがございませんとほんとうの大きな
発明は生まれてこないだろうと思うのでございます。ところで、要するに、このことは
科学技術の
振興ということに通じるわけでございますが、
科学技術の
振興はいろいろございましょうけれ
ども、結局
最後には相当な
予算なんかも
考えてやるということを真剣にお
考え願わなければならぬのでございます。ところが、この研究だとかなんとかというものに対します評価というのは、人によりましてたいへん違います。夢を持って積極的なお方は、少々先の話になるかもしれぬけれ
ども、この際
投資だと思ってやろうじゃないかとお
考えいただける方もあれば、一方には、なかなか
成果があがらぬ、十に
一つ成功すればいい、そんなものに対してちょっと金は出しにくいというようにお
考えになる方もいらっしゃる。人によってこういう
考え方がたいへん違いますので、
自然予算化等につきましてかなり困難をお感じになるんではなかろうかと私は思います。こういう問題に対して
一つの筋の通った
思想のもとに運んでいくというためには、年末に御提案がございました
科学技術基本法の要綱でございますか、あれを拝見いたしますと、まことによく意を尽くして、こまかいところまで配慮が加わっております。ああいう
基本法というものを早く成立させられまして、長期的なビジョンでものごとを
考える。それに沿ったこまかい計画で
予算も組めば人の養成もするといったようなことをぜひ進めていただいたほうがいいんじゃないか。これもたいへん迂遠なことのようでございますけれ
ども、その辺の
考え方がふらふらしておりますと、どうも
予算等に対しての個人的な見解が加わってまいりますので、そうなりますと足並みがそろってこない。ぜひこの
基本法なんかは早く制定していただきたい、
立法化を早めていただきたいと思います。
大きな
発明は、やはりこういうような根本的な問題を解決しながら進むべき問題だと私は
考えるのでございますが、一方また、町の
発明家というような人も現在たくさんございます。こういう
人たちにもいろいろな便益を提供しなければならないわけでございます。幸いにして
科学技術庁で
地方発明センターというおもしろい
考え方を導入して、もうすでに六カ所もあるそうでございます。そういう
組織が、また
考え方がございますので、これはぜひ生かしてこれに
活動の場面を与えておやりになるほうがいいのじゃないか。私も二、三このほうを回って拝見してみましたのですが、現在なかなかこれが理想的に動いておりません。動いておらないのでいろいろ聞いてみますと、
経費は全部
地方発明センターが
自分でかせぎながら
自分でまかなっていかなければならぬというふうなことになっておる。実際
地方発明センターを利用いたしますのは、どうしても
中小企業の
人たちとか、あるいは個人の
発明家とかいったようなことに相なります。こういう
人たちにこの運営の
経費をみんなで分担せいと言いましてもなかなかそうはまいりません。
自然発明センターは
自分でめしを食うためには、
発明のお手伝いよりもむしろその辺の
下請仕事でもちょうだいして
自分でかせぐということが先になってまいります。これではなかなか
発明家のお手伝いということに手が回りかねると思います。せめて
経費の二分の一、三分の二は国で持ってやる、そのくらいなことはお
考え願わなければいかぬのではないかと存じます。
どうも
発明奨励といいましても格別のいい
知恵もございません。思いつきましたことを二、三
大小にかかわらず述べてみた次第でございます。
この
発明奨励とうらはらをなします
特許行政というものにつきましての一、二の感想でございますが、当面
特許行政でたいへんな問題になりましたのは、いまべらぼうもなくたまっておる滞貨を何とか始末していただきたいということが第一番の問題でございます。実は
発明協会はいろいろな
種類の人の集まりなのでございまして、
発明家もおれば、その
発明を利用する方もおる、この
発明をいろいろお世話をするたとえば特許弁理士のような方、こういう方もお入りになっていらっしゃる。いろいろな人の集団でございまして特別の資格があるわけではございません。会員の方はいろいろなお
考えを持っていらっしゃるのでございますが、自然利害は必ずしも一致するとは申しがたいのでございます。昨年の夏、
工業所有権制度改正審議会で
一つの結論を得まして答申が出ました。私の
発明協会のほうでこの答申につきまして会員にアンケートをとってみました。ところがその結果を見ますと、特許制度を改正して公開制を採用することの可否はどうじゃと問いましたところが、公開制を採用してほしいというのが八一・五%、公開にすべきでない、反対が一八・五%ございました。しかもこの公開は、出願後一年六カ月で公開してほしいというのが五三・七%、二年間置いておいて公開したほうがよかろうというのが二八・九%、三年後に公開したほうがよかろうというのが一七・〇%というパーセンテージが出ております。
また、実用新案制度につきましては現行のままがいいと思うか、あるいは廃止したほうがいいと思うか、もう少し何か手直しして存続したほうがいいと思うかというアンケートをとりましたのに対して、現行のまま据え置いてくれというのが二二・五%、やめてしまったほうがいいというのが一四・五%、やっぱりこういう時勢なら改正して実用新案制度というものを残しておいてもらいたいという希望の者が六三・三%ございました。同時に、改正して存続するということには公衆審査というようなことを導入しなければならないのだが、公衆審査はどう思うかということに対して、公衆審査はよかろうというのが七九・六%、公衆審査は困るというのが二〇・四%、こういう数字が出てまいりました。この数字を裏からひっくり返して
考えてみますと、やはりこの段階ではどうにもならなぬ、早く何とか出願されたものを始末してくれ、勝負をつけてほしいということの
思想が端的にあらわれていると私は思うのでございます。自然、
特許行政の問題としましては、当面どんどん審査がおくれてくる、これが一向に
改善のめどが立たないという
状態を早く解消していただきたい。このためには、公衆審査といったような、
民間としてもある程度犠牲を払うというようなこともやむを得ないという前提で、私
たちは出発せざるを得ないと思っております。ぜひこの滞貨一掃、それから今後滞貨がたまらぬように早く処置をしていただくという
方法を実行に移していただきたいということでございます。
それから第二は、ちっと古い統計数字でございますけれ
ども、一九六三年の米国と
日本のものを比較いたしてみますと、米国で六三年に官民の研究に
投資された金額が六兆四千億ほどになっておるそうでございます。このうち四兆一千億ばかりが
政府の出資、あと二兆三千億ばかりが
民間の出資。これに対して
日本の官民の研究
投資が三千二百億円と、ちょうど二十分の一に当たっております。それであるのに、
特許出願は米国が八万六千件、
日本が七万二千件。
日本はそのほかに約十万件の実用新案の出願がございますので、数から言えば、はるかに米国よりも多い。研究費は二十分の一だ。
特許出願あるいは実用新案をこめると米国よりはるかに多いということになっております。これは六三年に投じた研究費が、すぐそのままその年に
成果を得て、特許になるとか出願するとかというわけのものではございませんけれ
ども、大体の傾向から見まして、そういうようなことを
考えると、どうも出願の内容はだいぶ違うのではないか。米国のものの内容がずいぶん高いのではないかというように感じられます。それの裏づけをなすとでも申しましょうか、
日本の出願の約半分は、先ほど
君嶋先生もおっしゃったように、拒絶査定になるというような運命にあるそうでございます。どうも出願の件数が多いということだけで、あまりいばっていることは、私はおかしい。質の問題もあるけれ
ども、同時に出願前の
調査不十分ということが相当あるのじゃないか。その
調査不十分で、すでに特許になっておるようなものをまた出してみたり何かする。そしてすぐ却下されるというようなことが多い。これは出願前の
調査が不十分であるからそういうことになる。ぜひ出願前にもう少しよく
検討して出願してもらうように指導すべきだと思います。
ところが、実際問題として、だれがどうやってそれを指導するかということになりますと、簡単ではございません。都会地になりますと弁理士さんもたくさんおられましょうし、相談相手も十分ございましょうが、地方へまいりますと、弁理士さんのいらっしゃる県なんて、至って少ないというような
状態でございます。自然そういう特許なんかについての
調査のしかたなんか、多少なれた方に相談するというようなこと以外にないのでございますが、そういう人も十分に養成されておらぬというような
状態でございますので、自然、
調査も粗漏になってくるということになろう。それがこういう結果になってきているのじゃないかと思うのでございます。どうしてももう少し地方地方でこういう指導機関をもうちょっと充実していかなければ困るのじゃないか。これを国が全部というわけにもいきますまいが、せめて地方の府県でもうちょっとこういう方面に力を入れて、公報の閲覧に対して便宜を与えるとか、あるいは二、三の職員を置いて指導していただくとか、これは私のほうの
発明協会の支部がございますけれ
ども、何分にもわれわれの団体だけの力ではとても及びもつかないことでございますので、府県のほうで力を入れていただけますれば、われわれのほうはどんなお手伝いでもする
考えております。国と申しますよりは、むしろその辺は府県の問題かと思いますが、そういう府県が、もうちょっとこの
特許行政というものに対して関心を持っていただきたいと思います。
そのほかもう一点申し上げますとすれば、
日本では、人の出した特許の裏をかくというようなことばかり先に
考えます。人の
技術を尊重するという風習がございませんのは、はなはだ遺憾なことでございます。
これには私は
一つ原因があるのではないか。競争意識ばかりでなく、特許の交流といいましょうか、
実施権をお互いに譲り合うということに対しての
一つのルールができておらぬ。もう少し気楽にお互いに
特許権は
実施し合うという風習をつくっていくことが必要ではないか。
これには、結論から申しますれば、権威のある裁定機関を設けていただいて、そこへ、どこそこの特許を使わしてもらいたいんだが、話を取り次いでくれぬか、どのくらいの特許料をお払いしたらいいか、こういうことを相談して、そこがあっせんをしてやるというような仕組み、これも権威ある機関にすべきだと思います。こういうものをぜひ設けていただく。そうすれば、もうちょっと特許の交流というものが軌道に乗るのではなかろかと思います。
つまらぬことばかり申し上げまして、はなはだ恐縮でございますが、思いつきましたことを二、三申し上げました。