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高木説明員 昨年、
宇宙開発推進本部長を併任いたしましてから、いろいろと企画したことをざっと申し上げまして、
科学技術庁の立てました四十五
年度に
実用衛星計画を実施する、それと
東大の
研究との関連を若干述べさしていただきたいと思います。
併任になりましてから直ちに
東大の
教授を、各
専門の
教授五人をお願いをいたしまして、それから
科学技術庁の中には
本部と
航空宇宙技術研究所がございますので、そのほうからも五人お願いいたしまして、それで
技術委員会をつくりまして、四十
年度のいろいろな
実施予算についていろいろと御検討いただきました。
担任者をきめまして、
委託交付金を行なうにつきましても責任を持っていただく、分担してそれぞれの御
専門に目を通していただきまして、さらにその
研究の進みぐあいもチェックしていただくようにいたしましたので、私は有効に
交付金が使われたと思っております。その
交付の対象も、
東大ではそういう
交付をいたしませんが、たとえば
東大でこういう
研究を進めていってほしい、将来の
人工衛星を
考えると、たとえば電源のようなものをいまから進めておいてほしい、そういう希望を申し入れまして、
科学技術庁でそれのほうを採用して進めてもらっておるのも何点かございます。そういうふうに小さいところからずっと
協力態勢を進めてまいりました。
それから
小型ロケットを昨年は十基未満上げましたが、これについても私
たち十分タッチいたしまして、
東大の
小型ロケットとの重複も避けましたし、そのうちの
一つのSBというのは、将来の
気象ロケットを
目標にして
本部のほうで長い間やっておりましたが、たまたま
東大のほうでもそれと
同種のものがございます。
東大のほうは、たとえば
外側のチェンバーは金属でございますし、
本部のほうは
強化プラスチックでやっておりまして、はからずもそのどっちがいいかというコンクールみたいになったわけでありますが、どちらも一応所要の
目的を果たしまして、来
年度からは
気象庁が独自の
立場でそのどちらを採用するかになるかと思いますけれども、
気象庁がそれを年間十二基打ち上げて
気象観測をやる。
最初の
実用ロケットが、
両方でデベロップしたものが
気象庁に移ったと言ってよろしいのではないかと思います。
一方、
液体燃料ロケットのほうも、これは
学術会議もサポートしておりまして、
液体燃料の
ロケットをやはり続けていったほうがいい、そういうバックアップもございまして、その
研究も進めておりますが、このほうは予定のスケジュールからは少しおくれておりますが、何とか行きたいと思っております。
さて、四十五
年度に
実用衛星計画というものを昨年立てましたが、それについても、
東大と
科学技術庁と合同の
技術委員会を
本部に持ちまして六回やりまして、大体
一段目、二段
目固体、三段
目液体、四段
目固体、
東大のほうは四段全部
固体でございますが、こういうものを進めておく必要があると
考えてやりました。その
一段目、二段目の
固体につきましては、
東大の
ミューロケットの
技術をすぐそのまま入れる。しかし、いろいろ計算してみますと、
ミューロケットは
科学衛星を百キログラムぐらいのものは、現時点では五百キロの高度に上げられるけれども、
実用衛星ですと百五十キログラムを少なくとも千キロメートルの高度に上げなくてはならぬ、こういう
使用者側の要望からどうしても
ミューロケットを大きくしなくちゃいけない。このことは、
宇宙開発審議会にも
技術部会がございましてたびたび
議論いたしました。
私
たちは、できるだけ
ミューの
技術を
本部に早く移して、それをちょっとふくらましたところで何とか
実用衛星を
考えておりましたが、
宇宙開発審議会の
技術部会では、もっと大きなプロジェクトにしたらどうだ、
ミューよりももっと大きなもので、将来の予想を
考えて十分な
実用衛星を上げられるようにしたらどうだ、こういうふうな御
意見もございましたが、直ちにそれを取り入れても、何とか四十五年の
計画には間に合うと
考えております。
と申しますのは、
ミューロケットの
地上の
開発というのは昨年もう済んでしまいまして、本
年度に
ミューロケットを二基上げたいと
考えております。
東大のほうの
計画を申しますと、今
年度中に
ミューの
一段目を上げ、その次には
ミューを二段
つなぎしたものを上げる、それから四十二
年度に
ミューの三段
つなぎ、それから
ミューの四段
つなぎ、それから
科学衛星、こういう
段階になるわけでございますが、一番大事な
エンジンのところは昨年二回やりまして成功したもので、実はその
エンジンを設計する
技術者、
技術者というか、
教授、
助教授――
糸川さんもそのうちの一人でございますが、もう手があいてしまったわけで、
東大としては
ミュー以上はやりません、
ミューより大きいものは
開発しませんということは
宇宙開発審議会でも私たびたび申し上げまして、
ミューより大きいものがどうしても
実用衛星に必要だということがわかっておりますので、これは
本部で
開発していただく。で、
ミューの
開発の
エンジンのところだけ一これからは羽をつけたり飛ばしたりというのは何回もやらなくてはいけませんが、
エンジンのほうの
教授、
助教授の方は手があきましたので、私はことしさっそく
本部のほうにそういう
委員会をつくっていただいて、当初は一・六メートルのものを設計するつもりでございますが、それよりもう少し広げたらどうなるどうなるという
机上計算を、設計をことしは早々に始めていただきたいと思っております。
この五カ年
計画では、その第一段、第二段というところのものは四十二
年度から
地上試験を行ないまして、そうして取りまとめて、できれば四十三
年度に飛しょうしたいといっておりまして、四十一
年度には
ミューの成果を待った上で、それを大きくしていったものをつくる
計画にしておりますので、
予算請求は四十一
年度はいたしませんでした。昨年の
予算請求の
段階ではしなかったわけでございますが、
ミューが順調に進みましたので、
予算はなくともさっそく本
年度四十一
年度、
大型のものを
本部を
中心にして、もちろん
東大のほうもお手伝いいたしますけれども、全国的に、そういう大きなものをつくることが意義があるかどうか、また、
実用衛星を上げるとすれば、どうしても
ミューより大きいものが必要だということが私
たちわかっておりますので、何がしかの
研究を早々に開始させていただきたいと思っておりすす。そうしますと、五カ年
計画にめどがつくわけであります。あと三段目、四段目、上のほうにたりますと、なるべく軽い
胴体が必要でございまして、
東大は重点を非常に張力の強いはがねのほうに向けて進めておりますが、
本部のほうは昔から
強化プラスチックの
胴体をやっております。そのほうは先ほどの
気象ロケットとしては完成しましたので、今度大きな直径のものを重点的に
本部のほうで開拓してほしいということで、もっともこれは今
年度強化プラスチックの
大型ロケットの
地上試験の
予算がお願いしていただけましたものですから、これをやっていただく。
東大にも、昨年から私、申請して文部省の
強化プラスチックの
研究班をつくっておりまして、
基礎研究をやっておりますので、その班と
本部とで一緒になって今
年度の
計画を効率よくやれるように同じく
委員会をつくって進めていくつもりでございます。
液体燃料のもう
一つの
ロケットにつきましては、これは
東大のほうに
専門家もあまりおりませんが、幸い
航空技術研究所のほうに若干おりますので、
航空技術研究所と
本部とが一体になりまして、推力三・五トンの
液体燃料の打ち上げを四十一
年度にはやりたいと思います。そういうふうなわけで、
本部のほうでは、
東大でやれない非常に大きなものをこれからやる。しかも、重点的に問題をしぼりまして、ただいまのMより大きいものの
固体燃料、それから
液体燃料の三・五トンクラスをデベロップする、それから特殊な
胴体、FRP、
強化プラスチックとか、こんなふうに進めてまいるつもりでございます。
それから
実用衛星の
使命と申しますか、どういう
実用衛星をやったらいいかということは、
宇宙開発審議会でもまだ
議論がやられているところでございまして、なかなかこれだというふうにきめることはいかない状況でございます。
世界情勢が一年一年動いておりますので、低高度の
通信衛星は
日本でもやれるなと思っているうちに、ただいまはもう
静止衛星の時代に三年たったら変わってしまった。私
たち四十五
年度までに
実用衛星を上げようとしたときに、どうしたらそのときの
世界情勢におくれないものがつかめるかという点で、いま急に
使命をきめるよりは一年一年ゆっくり
考えてきめたほうがよろしいかと思います。しかし、そのときにどの
程度の
実用衛星、つまり重さ、高さ、それを推定いたしまして、それに間に合うような
大型ロケットを
本部のほうでお世話する必要があると思いますので、いまその辺も十分
考えて、
ロケットの完成に少なくとも一二年かかりますので、三年たったときに、もしそれが役に立たなかったら、これはたいへんなことになりますので、ひとつ慎重に
実用衛星の
使命については時間をおかしいただきまして、その間にどれかには必ず役に立つ
大型ロケットを
本部の力で
開発してもらうというふうに、現在
両方、
東大とも
科学技術庁とも話し合いまして了解がついた点でございますので、この点を御報告させていただきたいと思います。
それから
人工衛星のたまの部分の
研究につきましては、これは
科学衛星というものが
東大のほうでデベロップしておりますと、それは全く同じく応用できますので、どういう
実用衛星が出ましても、その経験が即
本部のほうでそれにつけ加えて
大型にするとか電力を増すとかというところで解決できると思いますので、この点も時間的につながるばかりでなく、
計画がダブっているとは私は全然
考えないのでございます。時間的に先行して少しでも基礎的な部分は解決して、その上から応用して拡大するというものを全部
科学技術庁か、その他のほうでやっていただこう、こう思っております。
これは
人工衛星問題で申しますと、わずか
ロケットとたまだけの問題でございますが、
人工衛星になりますと
世界を回りますので、
世界にどういう電波
日本の上げた
人工衛星を電波で追跡して、あるいはカメラでとらえていくネットワークが必要でございます。
それからデータをとるためのステーションも国外の
協力あるいは自己で設置することも必要になるかと思いますが、こういうものはやはり早くきめなければいけませんが、また、国外にも
関係があるものでございますので、そういうものをどういうふうな
機構で進めていくか、そのほうの下
準備ができて初めて
人工衛星を上げることが意義があることになりますので、あわせてそういう点、また、データセンターとか大きな計算機センターも必要でございますし、国外との連絡通信線をどういうふうにつくるかということも必要でございますし、あるいは外交
関係の折衝ということも必要でございます。とりあえずわれわれが築いたこういうシステムが必要であるということを
宇宙開発審議会に申し上げまして、だんだんとそういう点を固めていただくようにしております。私一年、ようやく併任したばかりで十分努力ができなかったかもわかりませんですが、私なりに一生懸命に人間の融和と申しますか、有能な人材をどうやって
つなぎ合わせて、そうしてこの
東大で少しでも進んだことを早くどうやって移せるかということをいま一生懸命やっております。その点をちょっと御報告させていただきます。