○
久保参考人 お尋ねのことに関しまして
お答えいたします。多少一般的な話になるかもしれませんけれ
ども、いままでの
質疑をお聞きしましたところから
お答えいたしたいと思います。
御
承知のように、ただいま
水銀の
毒性が問題になっておりますけれ
ども、私
たちが
農業用
抗生物質を
開発いたしましたのは、三つのおもな点があると思うのでございます。
一つの点は、低
毒性の
農薬で、しかも残留しないという
有機化合物の複雑な構造を持ったもの、これは
体内で分解いたしますので、
残留毒性がないばかりでなく、後遺症と申しますか、
あとに残るような症状もないという
可能性があるということが
一つでございます。
第二の点は、御
承知のように、
水銀というものは非常に貴重な物質でございまして、田畑にまくよりもむしろ原子力
開発であるとか、その他液体の金属としての特牲がございます。そういう方面の需要が国際的に高まっておりました
関係もございまして、何かそれにかわる新
農薬を
開発するというのが第二の点。
第三の点は、残念ながらいままでの
日本におきます
農薬は大部分外国
技術の導入または外国の原体の
輸入に待っているということ、いわゆる外貨節約ということがわれわれのやはり社会的な
一つの義務ではないか、こういう三つの点からであったわけでございます。
幸い
抗生物質の
研究には、ここに佳木
先生もおられますけれ
ども、
日本ではかなりの国際水準に達しております
関係もありますし、
いもちの病原菌に関する
研究につきましては、明治以来、
日本においては非常に深い基礎的な
研究の蓄積があるわけでございます。植物病理学的なバックグラウンドがあるわけでございますので、それにきく薬をさがすということは、われわれにとっては諸外国に比べて非常に楽な立場にある。テーマとして非常にいいテーマであったということでございます。
そういう
関係もございまして、
住木暁生を中心といたしまして、
農業用の
抗生物質を探索するという
研究が始められまして以来、幸いブラストサイジンというものが見つかりまして、これをわれわれ企業化いたしますには、
科学技術庁あるいは
農林省、
厚生省等の援助によりまして、新
技術開発ということで
開発銀行の融資も受けまして、そうして
昭和三十八年から実は発売いたしまして、以来逐年
生産を重ねておりまして、年間六十トンあるいはそれ以上も
生産しておる現在でございます。しかも、さらに最近は、お聞き及びのカスガマイシンというやはり
抗生物質も発見されまして、これまた、われわれのところ及びその他のところで
生産を開始いたしまして、本年度は原体といたしまして十トン近くのものが世に出るわけでございます。
そういうことでございますので、われわれは広い立場から新しい
農薬というものに切りかえていくということが、
日本にとってはまことに必要であろうということで、現状におきましては、先ほど
農林省の方の
お答えにありましたのとちょっと——私
たちがいわゆる業界で得ました資料から申しますと、現状の非
水銀の
生産能力というのを御
説明申しますと、
農業用
抗生物質が原体として年間百四十五トン、それから合成
農薬としては、こういうところであれですけれ
ども、商品名で呼ばしていただくことを許していただきたいと思いますけれ
ども、キタジソが五百トン、プラスジンが八百トン、いろいろ非
水銀農薬や合成
農薬がございますけれ
ども、そういうことで、これは粉剤換算にいたしますと合計二十万トンの
生産能力を現状において
生産会社、原体メーカーは持っておるわけです。
しかしながら、御
承知のように、われわれ
生産を担当しております者にとりましては、実は来年度
使用の原体をもういまからつくり出す計画でございまして、いまここである決定をされましても、ことしの
農薬についてはもう昨年それぞれ準備しておりまして、各社も原体として手持ちがあったり、あるいは昨年度の使い残りがあったり、あるいは現状においてもうすでに
生産を
農薬会社のほうでやっておるという現状もございますので、実際問題として本年度の
水銀をどうこうというようなことは、これはもうはっきりいって手おくれということでございます。それじゃ来年はどうするかということについても、実を申し上げますと、われわれが自主的にこういうふうに
生産体制をとってはおりましても、在来の流通機構なり、あるいはその他にありますものを考えますと、まだまだというような非常になまぬるい考え方をわれわれも持ちがちなんでございます。業界というものはもうちょっと自主性を持ってやれという態度が好ましいわけでございますけれ
ども、なかなか現実からいいますとイージーに流れがちでございますので、われわれといたしましては、なるべく新
農薬でいこうじゃないかという気がまえを持っておりましても、諸般の
事情から現実に流されているという現状がほんとうの姿でございます。そういう点でわれわれの新
抗生物質ばかりでなく、新しい
農薬というものは、世に出すまでにはいろいろな面で長い年月もかかりますと同時に、新しい需要者に対してその使い味をほんとうに浸透させるということは一朝一夕ではいかないわけでございます。ある面でわれわれの力が足りないわけではございますけれ
ども、その点はいろいろな方面からもお力添えをいただきまして、一日も早く——
水銀というものは、前に申し上げましたように非常な貴重なものでございますし、また、こわいものでございますから、あるいはそういう疑いがあるものでございますから、そういう点で何とかして新
農薬の
開発並びにその浸透ということにわれわれも
努力しておる現状でございます。