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1966-06-10 第51回国会 衆議院 運輸委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月十日(金曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 古川 丈吉君    理事 壽原 正一君 理事 關谷 勝利君    理事 田澤 吉郎君 理事 田邉 國男君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       有田 喜一君    川野 芳滿君       木村 俊夫君    高橋清一郎君       高橋 禎一君    長谷川 峻君       増田甲子七君    松浦周太郎君       小川 三男君    勝澤 芳雄君       泊谷 裕夫君    野間千代三君       山口丈太郎君    内海  清君       竹谷源太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中村 寅太君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  亀山 信郎君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局参事         官)      高林 康一君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 六月九日  委員小川三男君及び勝澤芳雄辞任につき、そ  の補欠として山本幸一君及び久保田鶴松君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員久保田鶴松君及び山本幸一辞任につき、  その補欠として勝澤芳雄君及び小川三男君が議  長の指名委員に選任された。 同月十日  委員泊谷裕夫辞任につき、その補欠として久  保田鶴松君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保田鶴松辞任につき、その補欠として  泊谷裕夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  内航海運業法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五二号)      ————◇—————
  2. 古川丈吉

    古川委員長 ただいまより会議を開きます。  内航海運業法の一部を改正する法律案について審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。關谷勝利君。
  3. 關谷勝利

    關谷委員 内航海運業法につきましては提案理由で御説明があったのでありますが、その提案理由の中に「わが国内航海運国民経済進展に即応するには、船腹量増加を抑制するのみならず、過剰である老朽経済船を整理し、近代的経済船建造をさらに促進するとともに、内航海運企業零細性にかんがみ、企業規模拡大経営適正化等によりその健全な発達を図る必要があります。」こう述べられておるのでありますが、この事柄と、その次にありますところの「内航海運業を従来の登録制から許可制に改め、特に内航運送業につきましては、許可基準として一定支配船腹規模基準を設けることとしたことであります。」こういうことになっておるのであります。  そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、最初に私が申し上げました船腹量増加抑制、それから不経済船の整理、海運企業規模適正化というようなことにつきましては、承るところによりますと、去る五月十日に閣議でいろいろな具体策決定せられたと承っておるのでありますが、その内容をよくわかるように説明をいただきますと、これからあとの人々が質問をする上におきましても非常に時間の節約もできると思いまするので、その点を明快に詳細に御説明を願いたいのと、この法律の中で一番問題となりますのは、許可基準として一定支配船腹規模基準を設ける、これが一番大きい問題であろうと思いますので、その二つにつきまして、詳細御説明を願いたいと思います。繰り返して申し上げておきますが、これをよく納得のいくように説明をしていただきますと、次からの質問者の時間を省略することができますので、ひとつその点お含みになって、十分に御説明を願いたいと思います。
  4. 亀山信郎

    亀山政府委員 ただいま、提案理由に申し上げました事項についての質疑でございますが、まず第一に、国民経済進展に即応するための内航海運合理化近代化、それと同時に過剰船腹老朽経済船を整理する、こういうことについての閣議決定内容について簡単に御説明申し上げます。  内航海運日本国内輸送における非常に大きな役割りを果たしているのでありまして、日本産業が重化学工業化してまいる、その近代的な設備を持った大規模な工場が臨海地区にどんどんできてくるということから、内航海運はそれらの原材料、物資の輸送につきましては、他の自動車、鉄道に比べまして総輸送量の約七〇%ないし、八 〇%、それからその他の雑貨類建設資材等を含めますと、全体の総輸送量の約四〇%というものを内航海運によって輸送しておるわけでございます。これらの輸送は、産業の伸展に伴って近代化をしていく必要がございますけれども、現在の内航海運界の実情は非常に古い船がございまして、不経済な船が多いと同時に、全体としても過剰であるということから、この際この過剰船腹を整理して、経営基盤を強化するということが必要であると同時に、ただ単に船腹量の調節のみならず、新しい、近代化した経済的な船を持つということが必要であると考えた次第でございます。  したがいまして、閣議決定内容過剰船腹処理近代的経済船の整備、この二つを両方やろうということでございまして、まず第一に、従来船舶公団中心としてやっておりましたスクラップ・アンド・ビルドをこの際拡大をする。つまり新しい、いい船をつくる、量をふやす、それと同時に、スクラップの量をふやしてまいるということでございます。  第二に、スクラップ・アンド・ビルドを、スクラップのほうを三年分一ぺんにやって、建造のほうは三年に分けて各年次にやっていくということによって、当面非常に過剰になっておるものを一応解消するという方策を考えた次第でございます。  そこで解撤を先行せしめ建造を逐年行なうということによって生ずべき船主の負担をいかにして軽減するかということが一番問題でございまして、これがうまくまいりませんと、やはり解撤することによって営業の手段を失い、またそれに乗り組んでいる船員の働く場所を失うということになりますので、それらに対する手当を中心として、閣議決定解撤についてはなされておるわけであります。  繰り返しますと、まず従来七万トン程度規模であった解撤による新造量を、今後年々十三万トン程度増加せしめるということが第一点。この場合に古船の解撤を、新造一に対して一・五を義務づけるということであります。さらに三年間に予定しておる老朽船を一挙に解撤をし、建造を逐次行なう。その逐次行なっていくために、解撤後新造までに一年ないし二年の待機期間というものがございますので、その間の金融について長期低利金融を行なうということにいたしたわけでございます。その場合の金利は三分五厘で、貸し出し期間据え置き二年、償還据え置き後七年、つまり九年ないし十年という長期にわたる資金融通する。この融通公団をして解撤船買い入れ資金につきこれを融資をするということが第一でございます。そのために公団における金融を、公団資金を調達するのにしやすいように、政府債務保証あるいは損失補償という措置を講ずることとしたわけでございます。  第二の過剰船腹解消は、一時的に過剰船腹解消せしめるために、老朽船以外の船舶について、内航海運組合による共同係船を行なわしめる。そしてこの共同係船に必要な係船の費用というものを、国の財政資金の一部をもって、船舶公団から海運組合に対して長期低利資金を供給する。そうすることによって係船を円滑に行なわしめようということでございます。公団係船を行なうにあたりまして組合に貸すものにつきましては、年利五・五%、償還期限七年という、一般の資金よりもはるかに長期かつ低利資金によって係船を行なおう。このように解撤資金融通係船資金融通につきまして、それぞれ長期低利融資公団が行ないます関係上、これに対して政府としては利子補給を行なうという措置が必要でございます。そのこともあわせて決定しておるわけでございます。これが大体過剰船腹解消並びに新造船の、経済船建造規模拡大ということで、閣議決定内容でございます。  その次に御質問がございました許可制をしくことによってその事業規模適正化していくというための法律改正でございますが、その場合における許可基準というものは何であるかということでございます。御承知のように、内航海運業界は非常に零細な事業者が多く、その経営基盤も非常に貧弱でございます。先ほど申し上げましたように、現在国内輸送が非常に大きな部面を占めておる。今後ますますこの輸送分野というものは拡大してまいる。しかもその輸送は迅速かつ低廉で、経済的な輸送でなければなりません。そういう社会的な内航海運の使命あるいは国民経済における役割りを果たすためには、企業の体制があまりにも乱立、小規模という事態であります。これでは近代的な船舶建造あるいは大量の輸送にこたえるということについて不十分と考えられますので、ここで一定の適正な規模を持ったものが内航海運を行なうのだというふうに持っていくために、この許可制をしこうとするわけでございまして、その許可基準が一番問題でございますが、根本の趣意は内航輸送需要に対応するだけの一定規模を持ってもらう、それと同時に、過当競争によって運賃を切り下げるというようなことのないように、業界零細規模拡大させて、中堅的な企業に育て上げていくということが主眼でございます。現在過当競争によって運賃を引き下げるということの一番大きな部面は、船舶所有者というよりは、その船舶を運航しておる内航の輸送運送を行なうものでございますので、船舶所有者についての船腹規模より、現在特に必要なのは運送業一定支配船腹運航船腹について一定水準を設けることが必要であると特に考えられるわけであります。しかしながら、現在におきまして内航海運実態は非常にバラエティーに富んでおりまして、これを一律の船腹規模にする、一挙にそこへ持っていくということは非常に困難であるし、また非常に摩擦も生じ、事業者に対して大きな衝撃を与えることでございますので、それにつきましては、内航海運業輸送活動における実態に合うように私どもは考えたい。と申しますのは、木船鋼船では輸送分野も異なります。その働きの国民経済に及ぼす影響にも違いがございます。まず鋼船木船では、内航運送業適正規模というものは違っていいのではないかというふうに考えております。また、ごく地域的な限られた輸送を行なうもの、全国的な規模において北海道から京浜、あるいは阪神、あるいは瀬戸内、北九州というふうに全国にわたって経営を行ないます内航運送業と、ごく地域的な、あるいは荷主が限定されておる業界というものについては、やはり適正規模についても異なるべきではないか、かように考えております。この点につきましては、具体的なトン数規模等は省令で決定するということに相なっております。それに具体的な基準につきましては、今後私ども十分各般の事情を検討を続けてまいる。なお、海運造船合理化審議会意見を聞くと同時に、内航海運業界意見も十分聞きまして、当面適正な規模を目標にするということで規模をきめたい、かように考えております。  現在考えておりますのは、鋼船につきましてはおおむね五千トンぐらいの支配船腹が適正ではなかろうか。今後三年間に、その程度規模にまでいろいろな方法で持っていってもらう。さらに木船につきましては、地域的な輸送で、非常に需要も限定され、活動範囲も限られておりますので、五百トン程度が実効的ではなかろうかというふうに考えております。これらの点につきましては、ただいま申し上げましたように、今後内航海運業実態十分検討いたしまして、それによってこの具体的な規模実態に応じてきめていく。さらに、必ずしもこの支配船腹というものを会社合併とかいうふうなことだけによらないで、やはり内航海運業の業態に応じて協同組合化というふうなこととか、あるいは運賃プール計算、あるいは船腹融通、そういう中小企業実態に即したやり方による、いわゆる協業化法人というふうなシステムによっても、支配船腹一定量を持っておればそういうものも認めていく。必ずしも会社合併等によらないというふうなきめのこまかい基準設定いたしたい、かように考えておる次第でございます。  たいへん簡単でございましたけれども、ただいま御質問の要点についてお答えを申し上げました。
  5. 關谷勝利

    關谷委員 大体いまの点で了解をしたのでありますが、この許可基準についてでありますが、お説のように私もそうだと思います。鋼船分野木船分野、あるいは地域的に全国的であるか地方的であるかということ、あるいは特定の荷主でありますと、その荷物の種類によってトン数が変わってまいりますことは当然だと思います。ことに、これは鋼船木船を問わず、全国的なものと地域的なものというふうなかみ合わせも必要でありますので、非常に複雑なものがここへ出てくることは私たちは予想はいたしておるのでありますが、それはすでに海運局あたりでは御検討済みであろうと思いますので、その政令の案と申しますか、草案といいますか、そのようなものでもあればお示しを願いたい。このことがどういうふうになるであろうかということで業界が非常に心配をいたしておるようでありますので、ほんの草案というような程度のものでけっこうだと思いますが、次の機会までにお示しを願いたいと思います。  それからもう一つ閣議決定の線で債務保証をするということになっておりますが、この解撤船単価でありますが、これはどの程度に見ておられるのか。現在では大体実際の解撤船売買価格は、トン当たり一万八千円ないし二万円と称せられておる。これをどの程度に見ておられるのか。もしこれを低く見ておられるようでありますと、この法案ができましても実際の面で非常にやりにくくなってくるということを心配いたしますので、価格をどの程度に見ておられるかということをお尋ねいたします。
  6. 亀山信郎

    亀山政府委員 解撤船価格というものは、解撤船需要と供給との関係で非常に変動が多いわけでございますが、従来の実績は、三十八年度におきましては戦時標準船は一総トン当たり八千五百円、三十九年度に戦時標準船以外の老朽船解撤公団で行なうようになりましたが、三十九年度におきましては木船は九千五百円、鋼船は一万五千六百円という数字になっております。昨年は若干の上昇を見まして、木船は一万七百円、鋼船は一万四千二百円、鋼船は当然ほんとうのスクラップの、くず鉄の値段が入りますのでこのようになっております。木船は、その船体は経済的には全く無価値でございますので、いわゆる解撤による新造船権利金というふうなことで、木船は大体一万円、鋼船が一万四千円というのが昨年度の相場でございます。これは今後解撤船の市況によって、あるいは仰せのように暴騰するという場合も考えられますので、私どもといたしましては、その間に好ましからざるブローカー暗躍等によって——実際に古船の所有者が、いわば転業資金と申しますか生業資金と申しますか、あるいは古い船に残っておる債務処理ということに必要な程度の正当な価格であるべきだというふうに思いますので、解撤船権利価格の好ましからざる暴騰を抑制するために、現在いろいろ研究をしておりますが、今後三年間の解撤船の量を想定をいたしまして各組合においてリストアップをさせる、つまり解撤船というものが、ある程度確定をしてまいれば、その間にブローカー暗躍の余地は非常に少なくなるということによって価格を抑制していこうと考えておりますが、予算的には、一応公団金融をいたしますために公団に対する利子補給あるいは債務保証等金額をはじく基準といたしましては、昨年度の実績あるいは最近の状況から考えまして、木船鋼船を平均いたしまして一総トン当たり一万二千円というふうに踏んでおります。これは計算上の単価でございまして、船によりまして、大型船小型船ではトン当たり価格も違いましょうし、また解撤量のいかんによってはこの一総トン当たり金額も変わってまいるというふうに考えますので、一応は最近の状況から推定をいたしまして一万二千円、これはおそらく昨年度ないしことしの初めごろにおけるマーケットの数字より若干高目である。その後、いろいろこういう措置が講ぜられるということから若干の値上がりが思惑的に起こっておりますけれども、これらについては、先ほど申し上げましたような解撤船を一応組合において決定をしていくというふうな措置を講じて、不当な値上がりを防止していきたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 關谷勝利

    關谷委員 実際の価格は、鋼船でありますと大体一万八千円というのがいま相場だそうであります。そんなことでこの計画が、五割減というようなことになりましてもたいへんでありますので、もしそのような価格で実際取引をせられておるということでありましたならば、その点の予算的な措置については十分大蔵省と折衝をしていただいて、せっかくのこの計画が五割減というようなことに終わらないようにお願いを申し上げておきます。  それから共同係船を行なう場合でありますが、船といいますものは、これは御承知のように、係船をいたしますとずいぶんいたみます。管理にも困りますし、ことにたくさんのトン数係船するということになりますと、港外では非常に危険のおそれがありまするし、港内ということになりますと、その港の面積をたくさん占有して、港の機能を失うことになりますので、非常にむずかしくなります。したがって、この係船はなるべくしないようにして、その係船にかわる外国売船政府当局としてはあっせんをして奨励すべきである、このように考えます。ところが、若齢船外国売船をいたします際には、老朽船でありますと解撤にかわる売船ということで、トン数を幾分減少しながらでも認められておりますけれども、若齢船ということになりますと、これを従来認めておりません。公団法関係だということになっておりますが、これは公団法をこの際改正をしてでも係船をなるべくしないようにして、外国売船をすべきだと思いますが、これに対しての御意見を伺っておきたいと思います。
  8. 亀山信郎

    亀山政府委員 仰せのとおり係船ということは、その間船の経済的な役割りを全然ストップするわけでございまして、その限りにおいてはきわめて不経済なことでございますが、他面、それによりまして全体の船舶回転率が向上していく、全体としての不経済輸送がなくなって経済的な輸送になるということで、今回も係船を実施いたしたいと考える次第でございます。  係船以外の方法によって同様の目的を達せられるならば、それによるのが当然だと思います。いまお話のございました外国への輸出ということは最も適切な方法でございまして、私どもといたしましても、輸出を促進するようにいろいろな措置を講じていきたい。先般の閣議決定におきましても、係船等にかかる船舶については東南アジア諸国への輸出を促進する、そのために延べ払い輸出を認めていくということが決定をされておる次第でございまして、この延べ払い輸出の奨励に大いにつとめていきたい。また、最近業界において東南アジア方面への視察調査団を派遣いたしまして、需要状況、買う場合の条件等について調査をし、それによって輸出の対策を立てたい、かように考えておる次第でございます。  それから、輸出によって解撤と同様の効果を持たせる若齢船輸出について認めろということでございますが、この点につきましては私も同感でございます。船舶公団法におきましては、現在老朽船等解撤ということが明示されておりまして、老朽船以外のものの輸出をもって解撤にかえるということは、法律上困難がございます。この点につきましては、いずれ、先ほど申し上げました公団による解撤融資係船融資ということのためには公団法改正が必要でございますので、その改正機会には、御意見の点を勘案いたしまして、必要な公団法改正をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 この公団法改正は急ぎますので、いずれ三党で協議いたしまして、この法案採決の際に修正案を提出いたしたいといま私は考えておりますので、その点あらかじめ御了承をいただいておきたいと思います。  それからもう一つ。先般、標準運賃を発表したといいますが、発表したのですかどうですか、ちょっと伺っておきたい。
  10. 高林康一

    高林説明員 今月七日、標準運賃を告示いたした次第であります。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 ところがその標準運賃がなかなか守られない。荷主あたりがこれに非常に強い抵抗示しているというのでありまするが、どうしてこの標準運賃すらも抵抗して守られないのかといいますと、標準運賃計算をいたしまするよりも、定期用船をしたものでやりますほうが安くつくというようなことから、標準運賃に対しても強い抵抗示しているというようなことも聞かされておるのでありまするが、今度この内航運送業許可基準設定いたしまする際の支配船腹のその中身でありまするが、これについて大手がいまトン数をたくさん扱っておりまするが、そのほとんど全部がオーナーから用船をしておる。したがいまして用船料をたたけばそれでこと足れりというようなことで、用船料を押えて低目にいたしておりまするために、オーナーはいつまでも苦しい経済で赤字を出しておるというような状態になっております。この点を改めまするためには、どうしても基準をきめます際には、船腹量だけでなくして、その船腹の何%かは業者自体手持ちの船でなければならない。自分手持ちがありますと、それを計算いたしまするので、どの程度でなければやっていけないんだということがわかりまするが、自分手持ちがないということになりますと、用船料をたたけばそれでこと足れりということになっておりまするのが、いまの内航海運運賃が非常に低廉に押えられて、そうしてどうにもならないという状態になっておる原因でありますので、この点を政令できめまする際によく検討をしていただいて、支配船腹の何%は必ず自己船でなければならない、社船でなければならないということをひとつ義務づけていただきたいと思いますが、これに対しての御意見はどうでしょう。   〔委員長退席田澤委員長代理着席
  12. 亀山信郎

    亀山政府委員 仰せのとおり、用船料をたたくことによって、運賃を低い水準に押えてもオペレーターはやっていけるということで、過当競争の結果そういう事態も現在起こり、また将来も起こり得るおそれが十分あるわけでございますので、私どもはそのために先ほど申し上げましたように、過当競争を防止するために、一応の支配船腹基準ということで健全な競争関係に持っていこうというふうに考えております。  なお、そのほかに現在内航海運業法によって、標準用船料というものを運輸大臣が必要に応じて決定できるということになっておりますので、標準運賃設定を行ないましたので、今後標準用船料設定という面も検討をしていきたいと思います。また御意見がございました支配船腹の中に社船を含めるべきであるという点も、まことにごもっともな御意見だと私ども考えます。十分検討をしてまいりたい、かように考えております。
  13. 關谷勝利

    關谷委員 標準用船料をつくりましても、これはあくまで標準であって、それの上、下一割とか二割とかいう幅があるということになってまいりまするので、なかなか守りにくいものでありますので、何かそこらが十分守れるような方法をとらなければならない。そうする場合には、やはり手持ちの船を持つということ、その手持ちの船の収支を出させてみたならば、どの用船料はどの程度でなければならないということがみんなわかるはずであります。自分の船の収支がどうなっておるかということを海運局のほうで資料を提出させましたならば、そこにおのずからいい線が出てくるということになりまするので、私はそのために申し上げております。そういうことをしないでも、標準用船料というものを守らなければならないような別の方法を考えるんだということなら別であります。そこの点をどちらにしますのか、標準運賃が、それの上、下どうでもよいのだというようなことならば、どうしても手持ち船を義務づけなければならない。運賃が運輸省で決定したものがかたく守られるということならば、そのような方法はとらないで済む、こういうことになりますので、いずれにするかということを、この法案通過までにひとつ腹をきめていただかなければならないと思いますので、この点よく御検討を願いたいと思いますが、御意見はどうですか。
  14. 亀山信郎

    亀山政府委員 実は支配船腹というものは、所有船、受託船、定期用船の三種類になっておりまして、それが受託船オンリーだ、用船オンリーだということが、はたして内航海運業者としてのあるべき姿であるかどうか。過渡的にそういうことがあるとか、あるいは所有者がオペレーターのために特別に一〇〇%の小会社をつくって、オペレーターだけ別の会社の形をとるというようなもの以外に、全く零細な船主だけを支配下におさめて自分の船一ぱい持たないやり方が、運送業者として健全なやり方であるかどうか。またこの法律改正の目的としております点について、所有船、受託船ないしは用船等の割合をきめる必要があるのではないかということで、実は検討を進めておるのでございます。これをどの程度にするかということは、なお結論を得るに至っておりませんけれども、ある程度の割合の所有を義務づけることは必要ではないかというふうな考えで検討を進めておるのでございます。
  15. 關谷勝利

    關谷委員 それも今度、素案でけっこうでありますので、もし示せるようでありましたならば、政令の一部として示していただきたいと思います。  これは御参考に申し上げておきますが、公団で石炭専用船をつくりまして、北海道炭あたりを運びます用船料をトン七百六十円というふうに決定して、公団荷主と一緒に申請をいたします際の書類にははっきりと書いてありましても、実際に支払われておりますのはそれを下回っておるというような具体的の例もありますので、そういうふうなことにならないように、ひとつよく運輸省のほうで監督をしていただきますようにお願いいたしたいと思います。内航の船主というものは非常に弱いものでありますので、昔から従属産業だといわれておるくらいのものでありますから、この弱いものをひとつ政府が指導して、そうしてたたかれ損にならないようにやっていただきたいと思います。それだけお願いして私の質問を打ち切ります。
  16. 田澤吉郎

    田澤委員長代理 久保三郎君。
  17. 久保三郎

    ○久保委員 私は歴史を聞きたいのでありますが、内航海運については、たしか説明にもあるが、四十六国会で内航二法として実は成立した、その内容は、言うならば適正船腹量を策定して、これによって船腹過剰を食いとめて、海運市況というか内航市況の安定をはかろうということであったのであります。だからその効果が今日ただいまどのように出ておるのか、あるいは欠陥がありとするならば、どの点で欠陥が出てきたか。それからいま提案しているこの法案は、四十六国会で成立した内航二法というか、その改正といかなる関係があるのか、それをまず第一にお聞かせをいただきたい。  それから運輸大臣は、重要法案であるから、でき得べくんばやはりここに御着席いただいたほうがいいのではないかと私は思う。質問の中途において大臣にもお尋ねしなければならぬような重要な法案だと思うので、ぜひ御出席を願いたい。
  18. 高林康一

    高林説明員 まず歴史についてでありますが、御指摘のございましたように、昭和三十九年七月にこの内航海運業法、当時小型船海運業法の改正をいたしました内航海運業法が公布になった次第であります。その後大体二年でございますが、その間におきまして、御指摘のございましたような適正船腹量、それから一定の条件のもとにおきまして船腹量の最高限度というものを定める、こういうことが当時改正の大きい内容でございました。それによりまして私どもといたしましても、適正船腹量を策定し、さらにまた、三十九年の十二月から船腹量の最高限度を設定した次第でございます。われわれの当時の見通しといたしましては、このような船腹量の最高限度の設定によりまして、船腹量増加というものを抑制するならば、相当程度航海運業界の秩序というものは確立できるであろう。しかも一方におきまして同じ法案におきまして、内航海運事業の全体的な登録というものを実施したわけでございます。ただ残念ながら当時の見通しと異なりまして、当時私ども考えておりましたところの輸送量というものは当時の不況の関係もございまして、対前年度比大体九七%程度にむしろ逆に減ってきたというような状況がございます。そこで、船腹量増加をある程度まで抑制するということをこの前の法律におきましては考えておりましたけれども実態的な面におきましては、船腹量がかえって非常に過剰であるという現象が、輸送需要の鈍化と相まちまして非常に大きくなってきた次第でございます。そういうような点で、単にこのように船腹量を積極的に増加することを抑制するということだけでなしに、いままであるところの船腹量というものは非常に過剰でございますので、そういうようなものにつきましてさらに何らかの過剰船腹処理ということが必要ではないかということで、まずいろいろ検討を進めてきた次第でございます。この点につきましては、船腹量の最高限度を定めます場合におきましても、海運造船合理化審議会に御諮問申し上げた次第でございますけれども、それにつきましては、現在ある過剰船腹処理が必要であるということが強く指摘されたわけでございます。一方また企業状況におきましても、当時御指摘いただきましたけれども、やはり零細企業が非常に多い、そしてまた今後の内航の大量輸送という姿から見ていきますと、このような零細企業によるところの過当競争というものが内航の秩序づくりといいますか、そういう面においては必ずしも十分ではないというような観点が、この過去二年間の経験によりましてはっきり出てまいりましたので、そういうような内航の今後の企業というもののあり方というものを、やはりもう一歩進んで考える必要があるのではないか、すなわちほとんど多くの場合が中小企業でございますけれども、従来のような企業体制のままでは、今後の国民経済の要請にはなかなかこたえられないのではないかというような観点から、企業規模適正化の必要が痛感されてきた次第でございます。大体過去そういうような内航二法の実施過程におきまして、そういうような過剰船腹の問題、企業体制の問題、この二点をもう一度やはり検討し直す必要があるということが感ぜられた次第でございます。
  19. 久保三郎

    ○久保委員 いま参事官からお話がありましたが、端的にいって内航二法の改正によって当面する内航の過剰船腹量の抑制というか、これを適正船腹量に切りかえるという作業はできなかったとでもおっしゃるのでしょうか。いまの結論は、できなかったということなのか、それともそうじゃなくて、別な意味でおっしゃっているのかどうかわかりませんが、長い話は別として、適正船腹量を片方で策定するということは、その適正船腹量を出るものについては許可はしない、許可はその船腹量の範囲内において許可をしていくのだというたてまえでしたね。ところがそういうたてまえにちっともいっていないのですか、幾らかはいっている分野もあるのですか。それはどうなんですか。
  20. 高林康一

    高林説明員 適正船腹量との関係におきましては、それをこえて船腹量がございます。先生のおっしゃいました適正船腹量の中に船腹量の最高限度量の関係の問題があるかと存じますけれども船腹量の最高限度につきましては、やむを得ず、現有船腹量が適正船腹量を上回っておりました状況でございますので、現有船腹量をもって最高限度量といたしました。したがって、その範囲内において一応進んでいったわけでございますが、適正船腹量との関係においては、船腹量というものはそれを相当オーバーしておったという状況でございます。
  21. 久保三郎

    ○久保委員 いまのお話、どうしてそうなったのか、それはどうなんですか。
  22. 高林康一

    高林説明員 適正船腹量というものを算定いたします場合に、われわれといたしましては、輸送需要というものの伸びの姿ということが一つ、それから現在の船腹稼動状況、この二つをもって適正船腹量を大体考えていったわけであります。ただ、それから見まして、ことに貨物船の分野におきましては、現有船腹量が現在の輸送需要を満たすに足る船腹量よりもすでに相当多くなっておったという事実がございます。したがいまして、その現在ありますところの船腹量を登録を取り消すというようなことは、事実問題としてできません関係上、その現有船腹量をもって船腹量の最高限度としたというやむを得ない措置をとっていたわけであります。さらにそれに輸送需要の鈍化ということが拍車をかけたというふうに考えております。
  23. 久保三郎

    ○久保委員 参事官、あなたの説明は非常にりっぱな説明なんで、実をいうとよくわからぬから、端的にいって、この適正船腹量を策定するという法律改正は、現実には用が足りなかったというのか、足りたというのか、いや大体少しは足りたということなのか、三者のうちどれですか。
  24. 高林康一

    高林説明員 適正船腹量といたしましては用が足りたと思います。ただ船腹量の最高限度という制度につきましては、それだけでは非常に不十分であったということでございます。
  25. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、現状は結局登録取り消しということはできないから、あるがままの姿で、いわゆる過剰船腹状態を呈しているということでありますか。
  26. 高林康一

    高林説明員 おっしゃるとおりであります。
  27. 久保三郎

    ○久保委員 三十九年、四十年、四十一年と、こうなってきたのだが、三十九年七月から最高船腹量あるいは適正船腹量という作業が始まった。しかし、始まってみたが、これはできないとお考えになって今日まで来たと思うのです。そうでなくて、やってみたのだが、一年たち、二年たち、初めて、今日ただいまではどうもこれを征伐する手はない。やはりスクラップあるいは係船ということで押えつける以外にない。それには強権を発動しなければならぬということなんでしょうか。
  28. 高林康一

    高林説明員 適正船腹量及び船腹量の最高限度につきましては、三十九年十二月及び四十年十二月にそれぞれ設定したわけでございます。   〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕 これにつきまして、先ほど申しましたように、適正船腹量につきましては、目標としての意義は十分確立されたと思います。船腹量の最高限度という規制も、これ以上多くしないという意味で、積極的な増加を抑制するという意味では非常に寄与してきたというふうに考えております。ただ、現在の船腹量が適正船腹量よりも過剰であるというようなところ、これを何とかやはり今後処理をしていく必要があるということが、過去において痛感された次第でございます。
  29. 久保三郎

    ○久保委員 どうもよくわからぬ。わからぬけれども、感じとしては、うまくいってないということですね。その当時も、海運局というか運輸省としては、そういうことは予想していたのじゃないですか。実際は予想していたんでしょう。今後こういうことをきめても、これはなかなかできかねるという考えはあったのでしょう。どうですか。
  30. 高林康一

    高林説明員 われわれといたしましては、今後の船腹増加というものは、船腹量の最高限度の制度で十分抑制できるというふうに考えておりました。また、そのように、事実三十九年におきまして、法律施行後直ちに制度を具体的に施行したわけでございます。ただ、残念ながら、輸送需要が、当時われわれ法律案を立案いたしましたときに比べまして、見通しが前年度に比べまして相当落ちた。大体七%伸びるつもりでおったのが、むしろ九七%程度に落ちた。そういうような客観情勢の変化というものがございまして、船腹量の過剰程度というものが非常に鋭く、ひどく出てきた、こういうような状況になっております。
  31. 久保三郎

    ○久保委員 そうだとするならば、これは参事官、三十九年度は、多少見込み違いをしましてというよりは、経済の大きな変化のために実は需要が伸びない、というよりは減ってきた。それに、大体前年度対比で比較してふえるであろうという前提のもとに策定した船腹だから、現状にマッチしなかったということなんでありますが、それならば、四十年度というかそういうときに、もう一ぺん修正作業をして、これを守っていくということだろうと思うのですよ。ところが、これはこの法律改正の審議の際にもたしか申し上げていると思うのでありますが、適正船腹量なりあるいは最高船腹量をつくっても、守らせる手段というものは積極的にはないのですね。消極的に、いわゆる登録というか、そういうものを押えていくというだけなんだ。そうでしょう。だからこれでは、専門的にお扱いになっている海運局自体も、押えつけていくというだけでは、これはとてもじゃないが不可能であると感じられたのではなかろうかと私は思うのですよ。われわれ自身は、専門家ではありませんから、わかりませんといえばそれまでですが、専門的に扱っている方々から見れば、それは、こういう数字を出しても、なかなか守られるはずのものではないな、こう思いながらも、一応の見通しとして、一応の尺度としてこれを出して、それに合わせるように、いわゆる海運組合も体制を強化してやっていこう、こういうふうに思ったのでしょう。ところが、それがだめだということです。これはもうだめだということですね。今度もこの最高とか適正とかいう船腹量をやっていくのですか。たとえばこの法案が通って、あるいはこの裏づけになる閣議了解事項がそのままそっくり来年度の制度、予算の中に入っていけば、もうこれは必要ないともいえるのですよ。最高とか適正とかいうのは必要ないと思うのですが、それはどうなんですか。
  32. 高林康一

    高林説明員 前の法律案のときにも御説明申したかと思いますけれども、適正船腹量はそれ自身法律的な効果はなくて、尺度といいますか基準といいますか、そういうような目安としての効果しかないというものでございます。一方、船腹量の最高限度というものは、それをこえて登録をしないという実際的な法律効果を伴うものでございます。この適正船腹量につきましては、毎年度、その年度を初年度といたしまして五カ年間の適正量をきめる、こういう内容になっておりまして、これにつきましては、三十九年度を初年度とするもの、四十年度を初年度とするものと、それぞれ策定してまいったわけであります。これにつきましては、やはり今後の船腹のバランスというものをはかっていきます場合、組合活動その他におきますところの大きな目安としての意味は、今後も非常にあるかというふうに考えております。この適正船腹量制度というものは、この改正案におきましてもそのまま存置さしていきたいというふうに考えております。  また船腹量の最高限度につきましては、これは常時発動するものではなしに、非常に急激に需要関係が変化したというような、経済状況の変動というようなことがあります場合、これを設定いたしまして船腹量増加を押えるというような効果を持つものでございます。今後におきましても、やはりいろいろな経済状態の変動といったようなことがあり得るというふうにも考えられますので、事業の許可制あるいは事業設備の新設の許可制というようなことは、平常状態といたしまして常にやっていきますけれども、やはり今後の変動というようなことがあり得ると考えまして、船腹量の最高限度につきましてもそのまま存置していきたいというふうに考えております。
  33. 久保三郎

    ○久保委員 私はあなたの考えとはちょっと別なんであります。あとからまた逐次、現在御提案になっていることについてお尋ねをしていくわけでありますが、私がいままでにこの改正案を見た限りにおいては、もはや適正も最高もその要はない。もしありとするならば、海運局内の参事官の部屋でそろばんがはじかれておればそれでよろしい。というのは、今度の改正では、適正規模というのは、法律事項にはならぬでも、ある時期にはそれに類するものが出てくるであろうし、それから、許可制でありますから、それぞれの注文もつけていくと思うのであります。そうなりますれば、一般的に法律事項にして効用のないものを法律事項にする必要は私はないだろうと思うのです。そういう制度というか尺度というか、そういうものは、お持ちになることは決して悪いことではないと思うのですが、しかしそれは法律的な効用をなさなくなるだろうと思うのです。今日ただいまでは、それきりないから多少の効用を果たしているのでありますが、いま改正法が出ているように改正されれば、もはやその効用はなくなる、効用のないものを法律に定めておく必要もないというような意味で、私は必要なくなるではないか、こういうふうに考えるのですが、そうではないですか。
  34. 高林康一

    高林説明員 適正船腹量につきましては、やはり今後の船腹のバランスというようなものをはかっていくというような意味においては、もちろん法律的には現在の制度におきましても直接効果はないわけでございますけれども、そういうような目安としては、やはり今後内航海運の必要という観点から見ますと必要というふうに考えます。また、最高限度制度につきましては、これは事業の許可に伴いまして不要にならないかという御質問でございますけれども、むしろ事業許可基準にもございますように、一定基準に合致いたしました場合にはそれを許可するということが、あくまでも許可の考え方でございます。しかしながら一定状況におきましては、そういうような許可基準に合致しておりましても、これ以上事業ないし設備の積極的な増加は好ましくないというような経済情勢もやはり出得るかと考えます。そういった場合におきましては、船腹量の最高限度制度というものを設定することによりまして、たとえ他の条項において許可基準に合致しておりましても、それ自身といたしまして非常に大きな効果を持ってくる、また、そういうような事態というものがやはりある一定の期間におきましては生じ得ることが考えられますので、私どもといたしましてはこの制度というものが本来の趣旨にのっとりまして、また本来の趣旨をほんとうに生かしまするために、今後の許可制の運用と相まって、ほんとうの船腹量の最高限度制度というものが生きてくるというふうに考えておる次第でございます。
  35. 久保三郎

    ○久保委員 私はあなたのお話どおりにはあまり受け取っていないのですが、この法律改正というか、そういう制度はやっぱり効用がなかったということに尽きやしないかと実は思っているのです。だから今度の改正の問題についても、非常にやっかいな内航の問題であればあるほど慎重に、しかもこれならばという自信を持っておやりにならないと、また再び三たび、どうも効用がなかった、この一点からほころびてしまったというようなことが出やしないかと私は心配しています。これは逐一これからのお尋ねの中心的なものの考え方として持っていくわけでありますから、あらかじめそういうふうにお考え置きをいただきたい、かように思うわけです。  それから内航二法のもう一つ組合法の改正でありますが、これは内航海運というか、そういうものの組織を強化していく、あるいは一ぱい船主のごときはどうも法律制度の中で把握しがたい、こういうようなことで、これは内航海運というものの乱れでもある、そこでこの法律改正組合法によってきちんと基盤を強化しようとねらったのでありますが、今日ただいまに至るまで、この法律改正による効用、すなわち組合の組織力、それから組合の仕事をやれる体制というのは十分に備えられているのかどうか。と申しますのは、何をするにも、そういう組合が基盤がきちっと固まっており、しかも仕事ができる体制にならなければ、どんな法律制度をつくっても意味のない話であります。だから、この改正後二年になりますが、いかようになっているか簡単にお話をいただきたい。
  36. 高林康一

    高林説明員 内航海運組合法の改正の大体の内容は、内航の従来の五百総トン以下の事業者のみならず、内航海運業全体といたしまして内航海運組合というものを組織できるというのが、この前の内航海運組合法の改正でございますが、その後二年間におきまして全国的な内航海運組合というものは、三十九年十月以来今日に至りますまで、大体五つ設立されております。のみならず昨年、四十年におきましては、この五つの全国的な内航海運組合を統轄いたしますところの日本航海運組合総連合会という全体的な組織もでき上がっておるわけでございますが、内航海運組合の活動状況といたしましては、現在内航それぞれの標準運賃設定ということと相伴いまして、調整運賃というようなものを設定しておりますが、北海道炭につきましての調整運賃というものを、昨年それぞれこれらの関係組合につきまして設定しております。また船腹規制というようなことについても、総連合会の手におきましてそれぞれ現在船腹規制規定というものを検討しておりまして、近く認可申請があるというふうに聞いておりますけれども、まあ組合法の改正以来二年間におきまして、端的に申しますと、このような組織の方向におきましては非常に伸びてきた。この組織化ということを組織化の率というような面から見ますと、現在におきましては、内航海運組合に加入しておらない業者というものは大体七%程度です。全体の九三%程度事業者はそれぞれ内航海運組合に加入しておるというような状況になっておりまして、組織化の面におきましては非常に大きい進捗を遂げたというふうに私どもは考えております。ただ残念ながら現在の内航海運組合、これは内航海運企業自身の問題かもしれませんが、組合自身の財政的なあるいは経理的な基礎というものは、必ずしも十分ではない。また何らかの船腹の調整をいたそうと思いましても、そういうような財政的な裏づけというものはなかなか困難であるというような状況でございます。そういうような点につきまして、やはり今後において、そういうような内航海運組合について、たとえば大きい問題でありますところの船腹の調整なり、あるいは運賃の調整なりということをやっていきます場合、当然そういうようなことの一つの財政的な基礎を確立するという方向で今後もさらに進めてまいりたいというふうに考えております。
  37. 久保三郎

    ○久保委員 お話のとおりかもしれませんが、私どもいまこういうような非常にめんどうな法律改正案を目の前にして、この海運組合の実力というかそういうものを見まするときには、どうも参事官の言うほどにも行ってないんではなかろうかと私は思うのです。もしも行っているならば、二年前にもお話し申し上げたと思うのでありますが、海運組合法に基づくところの、言うならば運賃に関するところの団体交渉もかなり強力に行なわれて、問題になるところの運賃そのものも、大半は海運組合の力によっておよそ妥当のところにきめられるはずでございます。組織率からいうならば、あなたがいま御発表になったとおりとすれば、これはやろうとするならばできるはずです。やれない原因は何かと言いたいのです。単にお金がない、財政的な裏づけがないというだけではないと思うんですね。金がないから団体交渉ができないというのじゃなくて、金があってもなくっても、団体交渉はできるものはできるのです。できないところは内航と荷主あるいは造船業、あるいは陸運との関係、そういうもの、あるいは主体的には海運組合の能力、いわゆる機能というか、そういうものが全然整っていない、このいずれか、あるいは全部かということに私は原因があると思うんですね。そのことを抜きにして、この法律改正により、あるいは制度を新しく来年度予算の中にぶち込んだとしても、これは残念ながら一時はいいかもしらぬが、まあ一年たち二年たつうちには、これはそうはうまくいかないと私は思うし、まかり間違えば、この法律改正をして、今年度一ぱいでかなりのスクラップをする、係船もする、そういうことができるかどうか、私は疑わしいのであります。疑わしいものについて、われわれは法律を制定してもしようがないじゃないかという気持ちになる。だからここで聞きたいのは、そういう組合の体制ではない、あるいは運輸省の政策としてもそんなものではないというならば、その証拠をぜひお示しをいただきたいと思うのです。  それからもう一つは、この海運組合、五つあるそうですが、連合会が統括するのでしょうが、いまわれわれが審議に入りましたこの法案、その中身である制度、こういうものについて歓迎しているのかいないのか。私は知らないと思うのです。その辺にも問題があると思うのです。歓迎するとして、どうとかこうとかじゃないですよ。内航の海運組合の中には全体として、内航はどうすべきかという強い決意というか、そういうものは、いまだしの感があるのじゃないか。そうでないとするならば——必要があれば、あとからまた参考人として来てもらって聞きますが、あなた方はどう見ているのか。どうでしょう。
  38. 高林康一

    高林説明員 御指摘のように、海運組合が設立され、組織化率も非常に上がっておりますが、しかし確かに主体的な力というものは、一番顕著な姿といたしまして、財政的な基礎というものは非常に弱いということを申し上げたわけでございます。もちろんそのほかに、構成員が非常に多数であるというようなことも、統制がしにくいという点であろうかと思います。また内航海運業というものは、どうしても荷主あるいは大企業というものに対して弱いというような状況もありまして、必ずしも組織ができたからといって直ちに、御指摘のような団体協約というものができるまでの体制には、いままでのところは非常に不十分であったというふうに私どもも考えております。しかしながら私ども、反面、そういうようなひ弱い内航海運企業でございますけれども組合という姿で団結した姿、このことは過去におきまして、もちろん設立後まだ日が浅いというようなこともございますけれども、やはりいろいろな面では相当活躍をしております。船腹規制の面におきましても、あるいはまた一般的なコストの問題にいたしましても、かなりこの内航海運組合というものが設立されましたことによって、大きな効果をあげてまいっておる。このような内航海運組合というものは、やはり一年二年では、そう一ぺんに何でもできるというような姿にはなかなかならないと思いますが、しかしながら、すでに非常に組織化率も高まっておるというようなこともあって、今後の活動というものは、私らといたしましても相当期待できるのではないか。ただ何といっても、そういうような場合に何らかの、金融その他の面におきまして誘因をつけないとなかなか伸びにくいということも実際問題としてございます。そういうような点にはわれわれとしても努力したいというふうに考えております。いま先生がおっしゃったように、まだ能力的にひ弱いということもある意味では事実でございますけれども、従来の姿に比べますとかなり高いものが出ております。また、こういうような方向を積極的に伸ばし得るものではないかというふうに、私どもといたしましても期待しておる次第でございます。
  39. 久保三郎

    ○久保委員 組合ができたからといって、すぐに団体交渉などできるはずのものではないとおっしゃるが、大体組合の目的というのは、その事業を遂行するのが目的であって、とにかく海運を全部入れなければならない、それが一番先だというのではないのです。事業によって組織を強化していく。事業のできない、ただ賦課金だけを取るという組織であるならば、こんなものはだんだん脱落していくわけです。もしも真剣にその組合が調整事項が一つやれるとか、ある荷物について団体協約で運賃をきめるとかいうことができれば、これは別に勧誘せぬでもそういう力に対して業者というか、組合員はかなり集まってきて強くなると私は思うのです。しかもこの法律は二、三年前にできた法律じゃない。組合法というものは、できてからすでに十年以上たっておる。だから十年たった今日でも、団体協約一つすら結べないというか、やれない、こういうところについてあらためて検討する——欠陥がどこにかあるのですよ。原因が……。団体協約ができるという前提は、何ものにも支配されない内航海運業者という前提があったわけです。そうでしょう。ところが現実にはそうじゃなくて、荷主に支配されておる。あるいはオーナーがオペレーターに、これはやれ、あるいは陸運との運賃の政策のゆがみから、これはだめだ、そういういろいろな点からひとつ来ているんじゃなかろうかと思うのでありますが、もしもそうだとするならば、その本質的な欠陥、病根というものをそのままにしておいて、御提案のようなスクラップあるいは係船方法によって体質改善をしようとしても、なるほど船の姿は近代的な姿になるかもしれぬ。しかし内航海運そのものの、輸送業というか運送業というか知らないが、業態としてはこれはちっとも前進がない。ちっともと言っては極端だから言い直しますが、比較的にはよくなるが、決定的には自主性を取り戻すことは不可能である。だから先ほど申し上げたように、その作業が終わってから二年たち、三年たつうちには、今日ただいまの海運業そのものの姿というか、中身ということになってくる。船は違いますよ。船は近代的になってくる。まさにりっぱになってくる。私はそういう心配をする。もちろんこれはほめた心配じゃない。だけれども、どうも三十九年につくった内航二法によって、組合の基盤を強化し、力も強くしていこうということが一つ、そして過剰船腹も押えようという、まさに問題のあらわれた二つの点でありますから、これに対応する法律改正をした。これは決して間違いじゃなかった。ところが、やる組合会社がこれを受け得る体制にはなかったという一語に尽きると私は思う。運輸省も、内航という政策そのものには間違いはなかったが、運輸省全体の政策の中の内航としては大きな誤謬を犯したとはっきり申し上げていいのです。だからその反省がなくして、またぞろと言っては語弊があるが、出してきたって、これはそう思うとおりにはなかなかいかぬと私は思うのです。だから、そういうことは考える必要はないのか。これは参事官より海運局長あるいは大臣に聞いたほうがよいことかもしれません。あなたの御意見はいま聞きましたから。どうですか、そういう心配、なければないと言ってください。
  40. 亀山信郎

    亀山政府委員 内航海運荷主あるいは陸上輸送というものの圧迫を受けて、内航海運自体としての健全な発達ができないのじゃないかということでございますが、荷主による不当な支配というふうなものは、やはりこれは排除していく。荷主側は先ほど申し上げましたように、大部分が非常に大きな産業でございまして、独占的といいますか、非常に内航業者に比べれば規模が大きい石炭、石油、鉄鋼というふうな荷主が、内航海運業者の扱う荷物の大部分でございます。そういう荷主が大きいということから、未組織のままでは不当な支配を受けるということで組織化を進めてまいりましたけれども、何ぶんにもそのメンバーの一つ一つが非常に零細な企業である、また地域的に非常に散らばっておる。陸上のように組合同士が常に連絡をとるということが、船というものの性格上非常にむずかしいというふうな難点から、組合の活動が遅々としておるということは御指摘のとおりでございますが、参事官が申し上げましたように、どうしてもこういう姿でいかなければやっていけないと私どもは思っておりますし、最近の組合の動きは、調整運賃について、北海道炭につきましては昨年の六月にきめて、今後毎年、一年の期間をもって調整運賃決定していくということができております。私どもはやはりこの組合を強化していくということが、内航海運の独立性と申しますか、不当な支配、介入から脱して健全な姿に持っていく最善の方法であるというふうに考えております。  それから、今回ここで御審議をお願いしております内航海運業法許可制の採用ということは、実は組合の構成員である一人一人の業者というものを一定水準にまで高めていくということを、法律的に担保しようという考え方でございます。組合の健全な発達をささえるものという役割りを私どもは一部において持つ、かように考えております。
  41. 久保三郎

    ○久保委員 お話は、そうしますと何ですか、私の心配というか、そういうものは見当違いのようなお話にとる、そうでしょうか。簡単に、それならそうと言ってください。
  42. 亀山信郎

    亀山政府委員 見当違いと申し上げておるわけではございません。内航海運業界が陸上の輸送機関、あるいは大きな荷主から不当な支配介入を受けて、健全な発達を阻害されるおそれが十分にある業態である、だから組合をつくり、組合の個々のメンバーである業者も、自分たちがともどもに食い合いをしてそういう支配介入を受けることのないように、メンバーの一人一人も強くしていく、組合も強くしていく、こういう考え方で、今回の法律改正も、一部の目的としてはそういう点が入っておるということをいま申し上げた次第でございます。
  43. 久保三郎

    ○久保委員 今回の改正案の中には、組合を強化する条項はないようであります。しかし、組合を構成するメンバーが強化されるという意味でしょうね。だけれども、それはなかなかむずかしい。一ぱい船主といわれる者が小一万もあろうという業界でありますから、その処理はどうするのかという問題がこれから大きな問題になってくるわけです。だから、そういうことはむしろ、できるならば制度の中じゃなくて、組合の中でやってもらう問題が半分以上ある。ところが、その組合はそんな力はないと私は思うのですね。だから運輸省は、政府は、これからこの法律改正になれば、来年になるか再来年になるかわかりませんが、それまでには小一万にもなろうという一ぱい船主の処理について、じかに手を出す以外に方法はなくなってくるかもしれないと私は思う。それはそういうふうに予想しておるのでしょうか、いかがですか。
  44. 亀山信郎

    亀山政府委員 一ぱい船主が非常に数が多いというのは御指摘のとおりでありまして、今回御審議をお願いしております法律案におきましては、船主そのものより、内航海運業運送業のほうについて一定規模を条件にしたいということを申し上げた次第でございますが、船主自体が非常に零細であるのを、やはり規模を大きくしていかなければならないということは仰せのとおりでありまして、今後のスクラップ・アンド・ビルドという方策、船舶公団によりますスクラップ・アンド・ビルドの場合に、従来個々の輸送の大勢、輸送需要のあり方を見ますと、大型化、専用船化あるいは近代化という船でなければ内航の輸送需要に適合しない、またそこに働く船員の生産性の向上もできないというふうに考えております。船舶公団におきましてそういう生産性の高い経済的な船をつくるためには、やはりまず第一に現在のスクラップを——一対一ではありませんから、五百トンの船をつぶして五百トンの船をつくるということはできませんし、また五百トンの船では今後の輸送需要に適合性を持つ生産性の高い船ではないというふうに考えております。特殊な場合を除きまして、一般的には船が大型化する、専用化する。そうなると、一ぱい船主にはそういう船はできない。やはり一ぱい船主が寄り集まって、古い船を集めて、そして千トンの船、二千トンの船をつくっていく、そのことのために船舶公団長期低利による資金をもって、共有という方式で、大資本でなければつくれないような近代化船、船舶公団ということによって小船主がかたまってそういう船をつくっていく、そういう方向に現在持っていきつつあり、将来ますますその方向をかためていく。つまりスクラップ・アンド・ビルド。ことに新しい船の建造に対する政府の助成、公団による助成という形において、零細船主の中堅企業になっていくのを誘導していこう、こういう考え方でおる次第でございます。
  45. 久保三郎

    ○久保委員 連合審査の時間が正午だと思うので、十二時になりますので一応これで打ち切りにしておいて、来週また引き続きお尋ねしたいと思います。
  46. 古川丈吉

    古川委員長 次会は、来たる十四日火曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会