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1966-06-03 第51回国会 衆議院 運輸委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月三日(金曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 古川 丈吉君    理事 關谷 勝利君 理事 田澤 吉郎君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       有田 喜一君    浦野 幸男君       小渕 恵三君    川野 芳滿君       木村 俊夫君    砂田 重民君       高橋 禎一君    長谷川 峻君       松浦周太郎君    山村新治郎君       小川 三男君    勝澤 芳雄君       泊谷 裕夫君    野間千代三君       山口丈太郎君    内海  清君       竹谷源太郎君  出席政府委員         運 輸 技 官         (船舶局長)  芥川 輝孝君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人日本         小型船舶工業会         専務理事)   宮田三代司君         参  考  人         (株式会社村上         造船所取締役社         長)      村上 忠二君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 六月三日  委員砂田重民君辞任につき、その補欠として松  浦周太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月一日  川崎市臨海工業地帯上空飛行禁止に関する請  願外十件(秋山徳雄紹介)(第五二二八号)  同外十五件(小泉純也君紹介)(第五二二九号)  同外九件(田川誠一紹介)(第五二三〇号)  同外五件(中嶋英夫紹介)(第五二三一号)  同外九件(野間千代三君紹介)(第五二三二号)  同外一件(門司亮紹介)(第五二三三号)  臨時行政調査会及び地方制度調査会答申に基  づく運輸行政分断反対に関する請願池田清  志君紹介)(第五二八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小型船造船業法案内閣提出第一二〇号)      ————◇—————
  2. 古川丈吉

    古川委員長 これより会議を開きます。  小型船造船業法案を議題とし、審査を進めます。  これより、本案に関して参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、社団法人日本小型船舶工業会専務理事宮田三代司君、株式会社村上造船所取締役社長村上忠二君、以上二名の方であります。  参考人各位には、本日御多忙にもかかわらず御出席を賜わり、まことにありがとうございました。本法律案につきましては深い御識見を有せられる参考人各位から、それぞれの立場に立って忌憚のない御意見を承り、もって本案審査参考に供したいと存ずる次第であります。  御意見開陳はおおむね十五分程度におまとめいただくようお願いいたします。御意見開陳は、委員長指名順に御発言を願うことといたします。なお、御意見開陳あと委員から参考人各位に対して質疑を行ないますから、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、宮田参考人
  3. 宮田三代司

    宮田参考人 私、ただいま御紹介いただきました田宮でございます。  この委員会で御審議をいただいております小型船造船業法案対象となります小型船造船業者会員といたしまして、昭和三十八年の六月に運輸大臣認可を得まして設立いたしました社団法人日本小型船舶工業会をお預かりしておるわけでございます。  本日は、この委員会参考人といたしましてお呼び出しをいただき、意見を申し上げる機会を得ましたこと、このことは諸先生方がこの法律の運用をより一そう充実したものとして成立させてくださる御配慮によるものと拝察いたしまして、心から敬意を表しますとともに、七百会員を代表いたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。  御承知のように、私ども工業会は、その組織をあげてこの法律案成立させていただきたいといたしまして、諸先生方陳情または請願をいたしておりますが、ただいまからその理由について申し上げたいと思います。  申し上げるまでもないことでございますけれども、私どもの会は、いわゆる会員のための会員の会でありますとともに、社団法人でございまして、公益法人としての立場からこれを運営していかなければならない、これを忘れてはならない、かように考えております。この観点からいたしまして、この法律案に賛成いたしておりますし、これの成立をこいねがっておるわけでございます。  そもそも私どもの会がこの登録制度を手がけ始めましたのは、実は創立総会のときにさかのぼるわけでございます。創立総会には全国の各地から約五百名の者が参加いたしまして、会の運営について真剣な討議を行なったのでございますが、その中で最も強力に主張されましたことは、実はこの登録制度の問題であったわけでございます。すなわち、われわれの企業は、規模中小、零細でありますけれども四面環海国日本といたしましては、きわめて重要な産業であり、地域社会発展に大きく貢献しておるのでございます。にもかかわらず、現状は全く野放しといっても過言でない状態であることはまことに遺憾である、すみやかに事業を国に登録することによって企業の秩序を確立し、もって設備近代化合理化とともに技術向上をはかるべきであるといったものであるわけでございます。  したがいまして、このことによりまして、工業会はその創立総会におきまして、その定款の中の事業一つ登録制度研究に関する事項を挿入するという、全く異例の措置を講ずることを議決したのでございます。このことは後に運輸大臣定款の認証の場合問題になった点でございますが、当局もこの措置に対する業界の強い要望実情をお認めくださいまして、認可を受けることができたのでございます。  そこで本会は、学者を含めましたいわゆる学識経験者業界代表委員に委嘱いたしまして、昭和三十九年の一月から四十年の四月に至る間、約一年半にわたりまして登録制度研究委員会を開催しておったのでございます。その内容は、登録制度必要性が実際にあるのかどうかという問題、それから登録制度というものがはたしてお認めいただけるということになるのかどうか、その可能性の有無、それらの点を研究し、十分慎重審議を進めてまいったのでございますが、たまたまこの間におきまして、わが業界が、第一には近代化促進法指定業種指定を受けたということでございます。それから第二には、小型船舶海難事故の続出がありまして、船舶安全性に関するところの行政管理庁勧告が行なわれたわけでございます。そのようなわけから、いよいよ登録制度の絶対必要性ということを確認することに相なったのでございます。  そこで、登録制度研究委員会といたしましては、それらの事情をあわせ考え研究いたしました結果、簡単でございますのでただいまちょっと読み上げますが、答申をしたわけでございます。その答申を読みます。「本委員会は、昨年一月十四日、別紙目的をもって発足し研究を開始したが、当初の研究目的にかかわらず、その後木造船業中小企業近代化促進法指定業種として、経営合理化設備近代化をはかることとなる一方、内航海運業法施行によって船舶需要は著しく減少し、急角度な鋼船化傾向と相俟って、木船需要環境は大きく変貌するに至った。又、最近における海難事故の続発から、小型船舶安全性に関する行政管理庁勧告も行われた。  よって本委員会は、これら国の諸施策にかんがみ、造船所設備技術向上による船舶安全性確保をはかり、あわせて業界の秩序ある発展確保するため、鋼船を含めた小型船舶製造並びに修理業対象とする事業登録制度を確立するものとし、これが法制化について、運輸省、並びに国会陳情すべきであるとの結論に達した。」以上が委員会答申でございます。  この答申を、昭和四十年の五月招集いたしました総会に報告いたしますとともに、これを満場一致で承認いたしまして、同時に登録制度に関する陳情請願運輸大臣国会の諸先生方紹介議員お願いいたしまして、衆参両院議長さんあてに提出することを特別議決したのでございます。その趣旨と理由につきましては、すでに諸先生方にはとくと御承知をいただいておりますので、これはここでは省略させていただきます。  以上、申し上げましたことで御理解いただけると思いますが、わが業界はこぞってこの法律案成立施行を鶴首いたしておるわけでございます。同時にまた、私ども業界に関連いたします船主にいたしましても、また造船所に働く労働者にいたしましても、小型船造船業が秩序ある経営合理化近代化される設備技術向上が伴う結果と相なるのでありますので、もろ手をあげてこれに御賛成くださるものとかたく信じて疑わないものでございます。  なおこの際、先生方に特にお願い申し上げて、ぜひとも御聴許を願いたいことがございます。その第一点は、繰り返してお願いいたしておりますように、私ども工業会は過去三カ年にわたりまして、その組織をあげてこの法律成立一筋にといっても過言でないほど、精力的に熱望してまいりましただけに、万が一にもこの国会成立させていただくことができないような結果に相なりますと、工業会組織はまことに憂慮すべき事態を予想されるわけでございますので、どうかこの際ぜひともこの国会成立をきせてくださるよう、くれぐれもお願い申し上げる次第でございます。  第二にお願いを申し上げたいことは、この法律施行になりました場合、団体すなわちわが小型船舶工業会役割りを重要視していただきたい、尊重していただきたい、こういう点でございます。具体的に申しますと、登録にあたっては工業会の推薦あるものにするとか、あるいはまたそれに準ずるところの何らかの方法についてお考えを特にお願いしたい、そのような行政指導お願いいたしたいのでございます。この点は業界から強く要望されておるところでございまして、その道がもし確立されない限り、工業会存立の意義なしとまで極論されておるわけでございます。他にその例もあることでございますので、特にこの点はお願い申し上げておく次第でございます。  第三にお願い申し上げたいことは、事業分野の確立と仕事量確保についてでございます。すなわち、せっかく法律をりっぱに成立、実施いただきましても、対象造船所仕事量確保されませんと、その効果が望めないからでございます。どうか大企業がわれわれの分野に進出することのないよう、われわれの分野仕事量確保できますような措置を、この法律施行と並行いたしまして強力に推し進め願いたいという点でございます。特に、内航海運対策として実施されておりますところの老朽船代替建造は、ぜひともわれわれの業界対象にしていただきたいのでございます。このことは、内航海運業法がこの委員会で一昨年成立いたしました節、木船造船業仕事量確保するため、財政資金等により措置すべしとする附帯決議をおつけになっておるわけでございますので、どうか今後五百総トン以下につきましてもこれが対象としていただきますように別特に御配慮願いたいのでございます。  第四には、現在の鋼船化ムードの是正についてでございますが、当局鋼船化近代化の印象を与えるような指導をされておるように受け取れるのでございます。鋼船木船より経済的ですぐれているというデータは、現状ではないはずでございます。この点はあと村上さんから事情の御報告があるかと思いますけれども、ぜひこの点は御一考願って御協力賜わりたいと思うわけでございます。  以上まことに簡単でございますが、時間の制約もございますので、わが工業会意見と希望を要約して申し上げまして、どうかわが業界並びに当工業会実情を御賢察いただきまして、ぜひともこの会期内において成立させてくださいますようここに重ねて、このとおり深くよろしくお願い申し上げる次第でございます。御清聴をいただきまして、この機会をお与えいただきましたことを重ねて深く感謝申し上げまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
  4. 古川丈吉

  5. 村上忠二

    村上参考人 村上でございます。与えられた時間で御説明を申し上げたいと思うのでございます。  ただいま宮田専務理事から工業会あり方、その目的などをるるお話しがございましたので省略いたしまして、工業会会員でございますと同時に業者という立場で、ただいまの説明に多少専門的な内容を例に申し上げまして御説明を申し上げたいと思うわけでございます。  この法案が提案されまして目下審議中のものは、工業会組織をつくりました三年前から中央運動を行なっておるのでございますが、これは、各業者全国にわたりましてこの運動を展開しておったのは、過去二十年前からの切なる願いで、その地方地方組織において絶えず中央運動しておったのでございます。中央ということは運輸省に対して運動しておったのでございますが、各地域とも中央から見ますとはなはだ弱小的団体なもので、そのつど、法律をつくるということはなかなか容易じゃない、またそうした要望があるんであれば、これは全国的組織運動することによって初めて可能な道が開けるのではないかというようなお話などを、当時繰り返し聞かされることによって、全国業界に呼びかけまして、これが東北地区にまとまり、あるいは九州地区にまとまり、たしか四つか五つのブロックに組織がつくられ、そうして実を結んだのが三年前、現在の日本小型船舶工業会という強い一本の組織でもって、今日われわれの最も要望しておりまする法律案として提案されておるこれが、ここに先生方に御審議をいただいておるゆえんでございまして、われわれ業者が二十年来要望しておる、こいねがっておるものであるということを深く御認識をいただきたいと思うわけでございます。  なお、この法案によりましてわれわれが課せられた義務、あるいはこれによって是正される面がたくさんあるのでございます。  その中の一、二の例を申し上げますと、従来われわれの業界あり方というものは届け出制でございまして、何人でもどこでもかってに自由に船がつくられ、そうしてそれを届け出ることによって海運局検査事務を行なっておるというかって気ままな結果でございました。それらがただ届け出をして、船の小さいのを一隻ぐらいつくって、そしてそのまま放置され、あるいは消えてなくなる、それでも船がつくられたというのが従来の例でございまして、今後この法案成立することによって絶対にそういうことがあり得ないということが生ずるのでございます。  また、こうしたありさまが、工員がフリーランサー的に、自由に季節的労務者と変わりまして船主に雇用されて、そうして造船所の手を離れて自由に補修修理を行なう、そうしたものにも検査施行されるというようなことで、一本のものと化そうとしても、そうした工員の移動が防止もできませんので、虐待の上にさらに虐待しているというのが現状ではないかと思うのでございます。したがいまして労務者の側からいたしましても、ただ単にその日その日の収入が直接注文主からいただけるわけで、日額が高額になるということのみにつられまして、企業化している小さい造船所あるいは企業体から人が去っていくというような現状も、今後是正されるではないかと思うのでございます。また戦後二十年間のこうしたフリーランサー的な職業をする者が、今日労働基準法施行によって雇用関係のむずかしさなども生じまして、逐次やはり造船所というはっきりした看板を掲げ、内容の確立されておる造船所に定着するような状態にはなっておりますけれども全国的に見ますと、まだまだそうした傾向のものが十分あるではないかと思われるのでございます。  なお、本法律施行になりまして、内容的には多少きびしいところはあると思うのでございますけれども、われわれの企業近代化して秩序ある企業に持っていくためには、どうしてもこの法案内容程度の規制が必要ではないか。これは私だけの意見になるかもわかりませんけれども、全会員がこの内容に賛成している点ではないかと想像されるのでございます。こうした組織があって初めて統一された船をつくることが、すなわち安全性にすぐれた、そうして健全な、優秀なる船がつくられるゆえんがそこから生ずるではないかと思うのでございます。  なお、最近海難事故という問題が増発しておるのでございますが、これらの原因というものは一がいにこれだということは申し上げられませんけれども造船所が野放しの状態のために、ますます規模なり設備が不完全になるために弱められている。その弱められておるところに船主のほうからの強い要望、強い要望というものは無理な賃金の要求、あるいは船が小さいのに航海能力を遠洋化して、燃料の補給がないままに大きい容積を要する油の積載、あるいは漁獲量積載を増すために、ややもすると無理な設計を生じておるというのも海難事故につながる一つ理由にもなるではないかと思われるのでございます。そうしたことは、優秀なる技術を擁しておる造船所あるいはその内容健全化をはかっている造船所で、たとえて申し上げますれば、問題の三十九トンだとか、あるいは五十トンぐらいの木造船をつくりましても、こうした造船所でつくった船においては、私は海難事故につながる原因というものは一つもないではないかと思うのでございます。そうしたことは、すぐれた技術を持っておる造船所が責任を持って各船主の無理な要望を絶対聞かない、あくまでも船の安全航海という見地から船主を承服させてつくっておるということが、海難事故の起こり得ない大きい理由にもなっているではないかと思うのでございます。この点も深く御認識いただきたいと思うのでございます。  それから先ほど宮田専務お話し申しました鋼船化への移行というものがここ四、五年急激に起こっております。私どもも変わっておるのでございます。これは事業企業体でございまして、どうしても仕事の多いものに飛びつくという傾向で、鋼船というものの注文がたくさんあるのでございます。私などは両方やっておるのでございますけれども、どうしてこう鋼船化したかということは、建造資金の融資の道、これは農林中金などはその資金を融資する場合に、鋼船でやりなさい、鋼船がすなわち近代化であるというので、木船で持っていった建造計画に対しても、その指導する面においては鋼船ということで、資金の借り入れという面から大きく計画を変更しておるという事例もあるのでございまして、私から申し上げますれば、この日本において、木の資源を豊富に持つ国として、理想を申し上げますれば、小型というもの、その小型の大きさを申し上げますれば、漁船においては五、六十トン、あるいは貨物を運送する、そうした類似の船は百トンくらいまで、最高その程度までは木船でつくられることが経済的で、なおかつ何ら支障がないではないか。むしろそのほうを奨励し、またわれわれの企業というものがそれに結びつく理由にもなるではないかと、強く私から申し上げる次第でございます。実は鋼船というものをつくって、もうすでに五、六年経過している船もあるのでございます。この上架修理ということになると、鋼船のほうが莫大な修繕費がかかるのでございます。上架船底塗装、すなわち小修理の場合においても、年間木船の五倍から十倍の修繕費鋼船には必要ではないかというようなことが、両方合わせまして行なっておる関係ではっきりわかっておりまして、こうした面から見ても、今後経済的にあるいはその優位性において木船鋼船に劣るということは、その大きさにおいて、絶対あり得ないということを信じておるのでございます。  それから、これは船舶局並びに海運局当局お願いのようになるのじゃないかと思うのでございますが、この法案が通りました後において、この法案施行されたのでこれでいいのだというものは何ものもないのでございまして、当局におかれましてこれらをよく御指導いただくことと、その指導の中において検査事務というものがございますが、この検査事務回数を従来よりも多い製造検査というものを考慮されまして、その検査事務に合わせましてわれわれ業界指導してくれる、革新的な技術の導入を与えてやるのだというような目的も加味されまして、この製造検査内容あるいは回数等ももっと充実していただけるように、検査官を全国的に増員していただけることをお願いを申し上げたいと思うのでございます。なおそうすることによって、われわれ業界とそれから検査をしていただく役所と相はかりまして、今後の木造船あり方あるいは構造等研究というものも十分持たれるではないかということも大いに期待しておりますので、こうしたことも諸先生よろしくお考えいただきたいとお願いをする次第でございます。  以上、私から業者立場といたしまして例などを申し上げまして御説明し、御参考にしたいと思います。ありがとうございました。
  6. 古川丈吉

    古川委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田澤吉郎君。
  7. 田澤吉郎

    田澤委員 宮田村上参考人にお伺いいたしますが、御承知のようにこの法案内容は、従来の届け出制から登録制にいたしまして、さらに近代化基本計画というものをつくりまして、そして技術あるいはまた設備の充実をはかっていくわけでありますが、問題は造船需要ですね。仕事の量というものは今後どういうような状態になるのであるか。ただいま村上参考人からも、木船がいいのか鋼船がいいのかというような御議論もありましたので、それも含めて将来一体どういう方向になるだろうかという見通しをお知らせ願いたいと思うのであります。
  8. 宮田三代司

    宮田参考人 先ほどもお願いいたしました点でございますが、いわゆる内航海運対策といたしましての、財政資金によるところの代替建造が実施されることに踏み切っていただきますれば、その建造分野がわれわれの業界対象としてくださる限り、漁船建造需要と合わせまして、かなりの需要が見込まれると考えます。なおこの法律施行されますことによって、設備近代化合理化をはかってまいりますので、今後は輸出市場の開拓という面に鋭意努力いたしまして、輸出を積極的に推進してまいる所存でございますので、この面に対する当局の強力な御支持、御指導があります限り、楽観は決して許されませんけれども、まずだいじょうぶ確保できるであろう、そのように努力しなければならない、かように考えておるわけであります。  それから木船鋼船優位性の問題についてでございますが、先ほど村上さんからもありましたし、私も特に強く御要望申し上げたいのであります。申し上げましたように木船鋼船優位性を決定づけるデータというものは今日はないわけでございます。村上さんからもお話しのように、むろんトン数の大きさにもよることでございましょうが、経済性の面からも木船のほうが優位である、このような御意見もございますわけでございます。なおちょっと名前を忘れたのでありますけれども、この春でございましたか、台風による膨大な漁船の集団的な遭難があったわけでございます。その際の例でございますけれども最後に一隻残ったのは実は木船であった。きょう欠席になりましたけれども岩本さんがお見えになれば、その点に触れられると思ったのですが、実はその船は木船であって、最後まで戦って、そして生き残って帰っておる。その船は岩本さんがおつくりになった船であったわけです。これは一つの例にすぎませんけれども、そのように木船は捨てがたいものである。むしろ今後鋼船化を是正しなければならない。見直されるときが遠くない、かように考えておるわけであります。終わります。
  9. 村上忠二

    村上参考人 私からも申し上げたいのでありますが、木船鋼船の優劣の問題でございますが、これは小さい船ほど木造のほうがいいということを私がはっきり申し上げましたのは、相手が海のことでございまして、遭難が起こり得る原因というものは、これは科学的にもつかめないのでございます。瞬間的な問題もあるのでございまして、しばしばの例を申し上げてみると、鋼船が転覆あるいは危険にさらされますと、その限度を越えますと瞬間的に海底に沈没していくのでございますが、そこへいきますと木船というものは、その材質そのものが浮力を伴うものでございますから、積み荷が過大であって、そういう沈没の状態になる場合でも、鋼船のように瞬間的なことは起き得ないのでございまして、すなわち人命の救助ということでは、私は、木船のそうした現状から見ましても、人命の安全性はあるんではないかということを、これははっきり事実として申し上げることができると思うのでございます。
  10. 田澤吉郎

    田澤委員 この法律の適用の範囲というのは、二十総トン以上五百総トン未満になっているわけでございますが、これに対して、直接皆さん方は船をつくっておられる方々でございますので、こういう点に問題がないかどうか、これが第一点でございます。  次は、この法律の第十条に、この法の第二の重要な点でございますが、主任技術者を置くということになっております。現在、この技術者の資格というものは非常にむずかしいと思うのでございますが、これがない人がたくさんあると思います。こういう点が一体支障がないかどうか、この条項でいいかどうか、そういう点、この二点をひとつお尋ね申し上げます。
  11. 宮田三代司

    宮田参考人 御指摘を受けました点につきましては、実は業界の中で、総会等で若干強い意見もございました。しかし、御当局にその点についての御注意をお願い申し上げたのでございますが、ただいままでにございますところの漁船法でありますとか、あるいはまた安全法など、まあその他の法律との関係もございまして、立法の技術上と申しますか、そういう関係で原案でやむを得ない、このように考えておるわけでございます。  それから次に、御指摘を受けました主任技術者を置くことが義務づけられておるという問題でございますけれども、この点はすでに御当局の御指導と御協力によりまして、大臣の認定制度の道が開かれておりますので、これに適格者となるような措置を講じていただいておるわけでございます。  具体的に申しますと、私ども工業会が主催をいたしまして、全国各地で相当長期にわたるところの技術講習会を設ける、こういうことであります。その予算は、船舶振興会から補助金をちょうだいすることにいたしまして、先般開きました総会におきましてこの原案を承認して、本年度着々その事業に入りたい、かように考えておるわけでございまして、決して心配はない、このように考えておる次第でございます。お答え申し上げます。
  12. 村上忠二

    村上参考人 二十トン以下の問題が出ましたけれども、私ども工業会の従来の会員立場から申し上げますと、もう二十トン以下の新造も十分つくっておるのでございまして、しからば問題は、二十トン以下のということばのあやでございますけれども、この造船法の中の登録というものは六段階に分かれておりまするので、私どもと職を同じゅうする、もっともっと小さい地方の島あるいは部落的に散在しておりまする造船所というものは、修理が主たるもので残っておるのではないか、新造を行なうという場合には、われわれの業界のほうに当然くるんではないか。それから内容的にきびしいということ、私も冒頭に申し上げましたけれども、これは従来の木船工場が鋼船工場に変わらんとするときに、この程度のきびしさがあってこそ初めて近代化に移行していくのではないかということと、従来の木船工場が鋼船化していくというためには、当然この点はなされねばならない義務的なものと私感じておるのでございます。
  13. 田澤吉郎

    田澤委員 次に、ただいま修理のお話が出ましたので、この法律の第二条に、「ドック又は引揚船台を使用してするものに限る。」というひとつの限定をしておるわけでございますが、これ以外に、本船などの沖修理あるいは船台を使わないで船をいろいろ修繕をするということが考えられるわけでございますが、この辺の事情をひとつ村上参考人からお聞かせ願いたいと思います。
  14. 村上忠二

    村上参考人 ただいまの沖修理あるいは船主がかってに雇用して臨時的に通ってやるもの、実はこれもさまざま地方的にも状態が違うのでございまして、あるいは内容的に最も充実しているのが瀬戸内海方面に、こうした請負業者と申しますか何と申しますか、そうしたものがたくさんあるのではないか、こう私も想像されますけれども、しかしこれは私はつかみようがないのじゃないかと思うのでございまして、もちろんわれわれ零細なる企業の一業者として、私どもと同じ手をにぎってやってもらたいということ、またそう指導もしたいのですけれども、はたしてどの程度つかめるかということがむずかしいのではないかと思うので、一応この法律案内容で私たちは望み、またやむを得ないという考えを持っておりまするのでございます。  なお、沖修理等の問題はどうなるのかということは、われわれも今後心配する点でございます。これは運輸省当局指導の面で何らかのそれの育成と保護的なこともあわせ、またれわわれも考えてまいりたい、こう思っておるのでございます。
  15. 田澤吉郎

    田澤委員 最後に、この法の第七条に、第五条の規定による登録の申請にかかわる特定設備運輸省令で定める技術上の基準に適合しない場合にはその登録を拒否しなければならないと、こううたってありますが、運輸省令というものを両参考人御存じでございましょうか。またそれに対する御意見がありましたらお知らせを願いたいと思います。
  16. 宮田三代司

    宮田参考人 御指摘の点につきましては、実はその基準というものが非常に厳格なものでありますと、犠牲が伴うということに相なります。そうかと申しまして、非常に寛大なものであります場合は、申し上げるまでもございませんけれども、法の効果が望めない結果に相なると思います。したがいまして私どもの希望いたしますところは、ちょうどその中間の程度でおとどめ願いたい、かように考えておるわけでございます。それは二カ年間の経過措置がございますので、その間にそれらの近代化促進法による実施計画を推進することと相まちまして、問題の解決がはかられるのではないだろうか、かように考えております。しかしながら、そういうことでありますが、この際、御当局並びに先生方お願い申し上げておきたいと思うのでございますが、業界意見を、この基準の策定にあたって、省令を定めるにあたって、ぜひとも私たちの意見が反映されるような措置、手続はおとりいただきたい、かように思うわけでございます。  なお、この点につきまして、加えましてお願いいたしたいことは、このことによってわが国の小型造船業の将来のビジョンというものが打ち立てられるわけでございます。われわれ直接関係しております者の考え方は、諸先生方の考え方と若干の差があろうかと考えております。その点につきましては、御当局並びに先生方のお知恵を拝借いたしまして、万全のものにしていただきたい、かようにお願い申し上げておく次第でございます。お願いかたがたお答えにかえる次第でございます。
  17. 古川丈吉

    古川委員長 久保三郎君。
  18. 久保三郎

    ○久保委員 宮田参考人にお伺いするのでありますが、この法律成立した暁にはそれぞれ適用になるわけでありますが、この法律から中小造船所、そういう企業が受けるところの、まあ利益と言っては語弊がありますが利益、利益というよりは、先年内航二法が改正された際、大きな問題は、いわゆる適正船腹量の策定、あるいは最高限度の問題、そういうところからいって、いままでの、特にその中でも木船業者仕事量が非常に減るであろう、それでは造船所としてやっていけないという声がかなり強かったわけです。今回、先ほど来のお話によりますれば、この法案の多少のところには問題があるけれども、大体においてこれが通ることは強く希望する、こういうお話でありましたが、それでは先ほど来申し上げたような、先年内航二法が改正になった。そして船腹量の策定ということがあった。今日ただいままた内航の対策手直しというか、そういうものが国会に提案されているわけであります。この中身については、まだ当委員会としては審議に入っておりませんが、あなたたちのほうでもこの法案というか、中身についておおよそ行く末については御検討をいただいておると思うのであります。そういうものを考えた場合に、その中でこの登録あるいは近代化を中心とする小型造船業法の改正、こういうものが皆さんが今日まで要望した点を十分カバーできるというふうに考えておられるのかどうか。先ほどのお話ではそういうふうにとれますが、どういう点でカバーできるのか、第一点としてお伺いしたいのであります。  それから第二点としては、宮田参考人から特に御発言がございました、この制度を生かすというか、実施する場合には、社団法人である日本小型船舶工業会、そういう団体を活用してもらわぬければ、法律がりっぱであっても実効はあがらぬという意味の御発言がありました。これはやりようによっては独占禁止法の第八条に抵触する心配も出てくるが、そういう独禁法に触れるようなことは、御発言の中には、ないということでありますかどうか。それが二つ目のお尋ねであります。  それから次には、たいへん恐縮ですがまとめて御質問申し上げます。第三番目には、大造船所というかいわゆる大きな造船所、中級の造船所、その他ということになるだろうと思うのでありますが、問題はやはり仕事の量にかかわる問題であります。そうなりますと、それが木船であろうが鋼船であろうが、先ほど来お話のあったように、中小造船分野を大造船のほうで侵略しないようにという御要請がございましたが、現在の体制の中では、そういうものの分野を確立するということは、残念ながら法律制度の中にはない。ないのでありますから、資本主義経済といってはたいへん誇張した言い方になると思うのでありますが、いわゆる力あるものは何でもできる、力のないものは自分ののれんさえはずさなければならぬという時代であります。だから、そういう点でほんとうに分野を確立してもらわなければ困るというならば、この法案以外にこれは考えをいたさなければならぬと私は思うのであります。その点についてどうお考えでありましょうか。  それから第四番目には、先ほど来田澤委員からも御質問がありましたが、木船鋼船との安全性及び経済性についての分野、こういうものはなかなか割り出しができないというような村上参考人のお話もございました。この点は村上参考人からお答えをいただきたいのでありますが、私どもの考えでは、ここまで来れば、やはり木船鋼船との経済性なり安全性についておおよその分野というか、そういうものの割り出しがあってしかるべきだと思うのであります。ただ感じで、木船が安全だ、遭難のときには鋼船はみんな沈没したが木船だけは助かったという例だけでは、残念ながらこの判定にはならぬと私は思うのであります。そういう判定の基準ならば、むしろ村上参考人お述べになったように、いわゆる船をつくってもらう人、船主の間違った考えを十分排除できるような造船所の健全な姿というものを考えねばならぬと私は思うのです。だから、繰り返し申し上げますが、そういう木船鋼船との一応の区分けというか、こういうものに使う船は木船のほうが安全であり経済である、ただし同じトン数でも、こういうものに使う船は鋼船のほうがいい、これはしろうとの考えでありますからよくわかりませんが、少なくともそういうことを今日ただいまおおよその筋を引いておかぬ限りは、単なるお涙ちょうだいのことになりまして、科学は進歩するのでございますから、それに逆行するようなことをいっときこいねがってとどめてもらっても、永久にはこれは栄えていかない、こう私は思うのであります。なるほど鋼船近代化であるというムードをつくってきたことは事実であります。しかし片方には、小型鋼船の海難が非常に多いということがあるわけであります。だから、その限りにおいては木船が優秀だというふうにはなるのだけれども、はたしてしからばそうなのか、こういう点からいって、しかも木船を何かの形で残していかなければならぬというようないわゆる理論的な、あるいはだれもがわかるような方法がなければ、単に概念的に、お述べになったように、木船より鋼船がよさそうだくらいの気持ちはだれにも事実あるのですよ。だが、鋼船も必要だが、木船はこういう分野ではどこまでもやっていかなければならぬ。そのためには近代化合理化、そのために必要な近代化資金を流していくというようなことが私は必要だと思うのです。斜陽化といえば語弊があるが、ともすれば斜陽化をいわれるような木造船造船所を存続させるという、ただ単に業界を保護し育成するというだけの方向では、私は間違うと思うのであります。だから、そういう意味で先ほど来申し上げたように、木船鋼船のシェアはどうあるべきか、こういうふうなことを考える必要があろうと思うのであります。  それからもう一つは、この法案が通過いたしますれば、先ほど来申し上げたようなことになるわけであります。どうもわれわれはこの法案が通っても、なかなか小型造船工業というか、そういうものは単にこの法案だけでは近代化の方向を取り得ないのではないだろうかという疑問が残ります。残りますというのは、なるほど、この法の適用によって、二十トン以上の船をつくるに際して、設備あるいは技術、こういうものを充実する。するには金が必要だから、金のめんどうも見ようということになっているのでありますが、そう手っとり早くはなかなかいかないと思う。そういう二年間の猶予もある法律でありますが、二年間のうちにほんとうにビジョンがつくられるんだろうか。そういうことをひとつ感じとして、どういうふうに——これは感じです。いま二年後の話をしても的確にはできない。そういうものをどういうふうに考えられているか、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。以上です。
  19. 宮田三代司

    宮田参考人 久保先生御指摘の点は、まことにごもっともな点だと考えます。第一点と第三点につきましては共通しておると思いますので、まとめてお答え申し上げたいのでありますが、確かに先生方のお力によりまして、内航二法が成立いたします場合に、附帯決議をおつけいただいておりまして、木船小型船の代船建造を財政資金によって確保して、仕事量は減らさないようにすべし、このようにお願いをしたわけでございます。したがいまして、その後この問題に関しまして、海運造船合理化審議会の小委員会のほうに私発言権を与えていただいておりますので、強く御要望申し上げてまいったわけでございますが、遺憾ながら、昨年度一年度の場合でございますけれども、それの実施にあたりましては、五百トン、原則としてということがついておるわけであります。原則として五百トン以上の鋼船に限るというふうに限定されてしまったわけでございます。そこで、木船は全くその対象にならなかった。また鋼船にいたしましても、原則はついておりますけれども、やはりその査定にあたりましては、これは必ず五百トン以上が対象になるということから、まことに残念でございましたが、第一年度の場合は、われわれの業界はその恩典にあずかることがきわめて少なかった、こういうのが実情でございます。しかし本年度はこの点を、さきに申し上げましたような審議会等で私たちの意見をお取り上げいただきまして、極力その線で対象にするように御配慮願っておる、かように考えておりますので、それが御嘉納いただきますればその心配はない、かように考えております。  それから、工業会を活用しないといけないという点について、活用することになれば独禁法の関係が生ずるが、どうか、こうおっしゃったわけでございます。私どもは、独禁法に触れるようなことまで求めることはとうてい無理でございますから、行政指導の面で工業会が生かされるような措置をぜひともお取り上げいただきたい、そのことによって工業会の存在の意義がある、かように考えておるわけでありまして、その点をさきにもお願い申し上げたわけであります。  それから分野の確立の点でございますけれども、これはやはり小型の五百トン未満の造船所がいかにがんばりましても、それ以上の船をつくることができないという制約があるわけであります。ところが、大企業小型の船をつくることができるわけでございますので、その点をどうかひとつ行政指導の面で、今後もこの法律と並行してお願いしたい。  一つの例を申し上げますと、公団で一昨年からはしけ並びに引き船を鋼船でつくっておるわけであります。この場合にもやはり大企業がこれを獲得しようとたいへんな運動を展開しておりまして、その際私どもは、これは中小企業分野であるからぜひともわれわれでさしてもらいたいというふうに御当局お願い申し上げまして、現状ではそのようにお取り扱いをいただいているわけであります。心配はない、今後もそのようにお願いしたい、かように思うわけであります。  私に対する御質問に対してお答え申し上げました。
  20. 村上忠二

    村上参考人 私に、木船鋼船の割り出しのけじめをはっきりいたすべきではないかという御質問なのでございますが、私、先ほど申し上げましたように、漁船の場合は、八十トン以下は安全性経済性、そのものの維持管理からして私は木船が絶対いいということを、業界並びに船主側にも申しております。過去二、三年前は百トンの線を引きましてよく話し合いをしておったのでございますが、鋼船のほうが技術的に進歩されまして、それを比較対照してみますと、安全性においてやや鋼船が改良されておるという点から、百トン程度が最近八十トンぐらいまで下げております。同時に、こうした受注にも呼びかけておりますけれども、先ほど申し上げましたように、建造資金融資の道の指導が、鋼船化ということで強く金融機関が働いているということが大きい影響があるということを強く訴えたい次第でございます。  それから二年後のビジョンについてですが、この法律施行されて確立されるかということでございますが、これはわれわれ業界会員の長年の切なる願いのものの完成でございまして、この小型船造船業法案も六段階がございますので、それぞれの立場、それぞれの地域業者がこの六段階に応じてはっきり確立した体制を自主的にとられるのではないかということを信じて疑わないのでございます。
  21. 久保三郎

    ○久保委員 もう一つお伺いしたいのでありますが、いまのお話に関連して、この法案が通れば近代化合理化、そういうものの計画的な実施がされるわけですね。そこで木船の場合は、近代化合理化、そういうものの余地が、鋼船というものに比べて非常に少ないのではなかろうかと思うのです。そうなりますと、鋼船分野では、いまよりはもっと経済的にコストダウンが可能であるということが考えられるのでありますが、木船近代化合理化はその実態から推して非常に困難だ、やっても少しの部分だということになりますれば、これは経済的な問題から鋼船木船との関係がさらに隔たりが出てきやしないか、こういうふうにわれわれは考えております。それはやってみなければわからぬと思うのでありますが、木船の場合は機械化というか、そういうものに限度がある。この限度はそんなにないということであるかどうか、これについて、村上さんは現実に船をおつくりになっているから、つくっておるあなたとしてのお考えを伺いたい、こういうことです。  それからもう一つは、あなたは木船もおつくりになっておるが、鋼船もおつくりになっておる。そうでしたね。ちょっとぐあいが悪いかもしれませんが、木船をつくったほうが、全体として、利益と言っては語弊があるが、造船所として、鋼船と比較して利益の部面はどうなんだろうか、その比較はなかなか的確に出ないと思うのですが、感じとして木船のほうがいいのか、鋼船のほうが仕事としてはメリットがあるのかないのか、そういうようなこともこの際お話を伺えれば、一つの基準というようなものを判断する場合の参考にもなろうかと思いますので、お述べをいただければけっこうだと思います。
  22. 村上忠二

    村上参考人 お答えいたします。  この近代化ということなんでございますが、ただいまお話しのように、鋼船を建造するにあたりましては、相当なる設備、それから相当なる機械を設備することが、能率という面にあらわれてくるのでございまして、すなわち建造能率が高まり、スピード化し、そうしてなお、よりよい安価な仕上がりをやる。ところが木船建造の場合の近代化ということは、残念ながら的確に、これこれを直ちにやることがこれだけの答えが出るというものは何もございません。それで、まず船をつくるよりも修理を行なう道の近代化、すなわち船の船底修理あるいは塗装の場合に、スリップ台をレール化して、そうして安全なる上架の施設を行なうとか、塗装なり、船の中には相当鋼材を使っておりまするので、たとえ木造船工場であろうとも、一部機械の補修あるいは鋼製部分の修理を行なうような部門まで、小さな造船所、木造船所とは言いながら相当程度は持たなくてはならないじゃないかということが、すなわちその企業としての近代化ということに当てはめて私申し上げておるのでございます。鋼船をつくっておる造船所のような、目立つような設備等というものは、木造船修理のみ行なうようなところでは絶対あり得ないのじゃないか、こう思うのでございます。  それから利益の関係でございますが、これは私だけの問題として申し上げたいと思うわけでございます。私は鋼船もやっておりますけれども鋼船をやるためには相当な設備をしなければならない。それの原価計算からし、また、これは他の競争的な問題がございまして、どうしてもそれをやろうとするのには、従来の競争に勝とうとするには、製造原価の安いというところが魅力の最大のポイントになっておるので、残念ながら利益というようなことは、新規開拓をしていくわれわれの立場では容易でないと思います。木造船の場合は、従来の実績と経験もあり、なおそれに付随する設備というものは従来持っておるのでございまして、これらは相当競争し、また安い場合でも利益というものは十分見られておるというような現状でございまして、私なども実は、全国的に少ない少ないという木造船製造隻数の中で、大体一年くらい程度の建造隻数をかかえておりますので、どうしてもまだまだ木造船のほうがウェートが強いのでございます。
  23. 久保三郎

    ○久保委員 そこでいまの問題に関連してもう一つ村上参考人にお伺いしたいのでありますが、いわゆる仕事の競争、受注の競争ですね。それは鋼船木船では、あなたが見た範囲では、どっちが競争が激しいでしょうか。まことにしろうとのお尋ねですが、どっちが激しいですか。  それからもう一つは、先ほどお話があったように近代化合理化というものは木船の場合は非常に範囲が狭いというお答えでありましたが、私もそうだろうと思うのです。そうだとするならば、残りの問題として考えるのは、いわゆる技術向上というのが木船の場合相当できるということならば、これまた違った考えが出ると思うのです。私は船をつくった経験のお話を聞くのもきょうが初めてくらいでありますからよくわかりませんが、たとえば木船の場合、合板というものの技術は今日相当に向上しておる。竜骨というのですか、一番まん中にある、ああいうのは、私のところにも多少漁船をつくる会社があるのですが、それを見ますと、どこか山の中へ行って、それらしき松の木を買ってくるんですね。それを中心にして船をつくっていくというのでありますが、だんだんそういうものも数に限りがありますから、そうなれば、こういうものは、いまの合板がそこまで技術的に進歩しているかどうかわかりませんが、もしもそこまで進歩させ得る、あるいは進歩しているというならば、やはり研究してみる値打ちはあるわけです。  それからもう一つは、接着剤というのがこれまた最近非常に高度の発達をしておるんですね。だから、機械化には乗らぬけれども、そういうものでコストを引き下げたり何かもできる。私は、そういうものが可能ならば、そういうほうの追及をすべきだろうし、そのために、もしも新たに資金が必要だというならば、そのための中身をこういう法律の中身としてやっていく必要があると思うのですが、そういう点はいかがでしょう。
  24. 村上忠二

    村上参考人 業界木船鋼船の受注の競争がどっちが激しいかということなんでございますが、鋼船関係の競争的なことはあまり経験がございませんが、聞くところによると、木船より鋼船のほうの競争が激しいということは、これは全国的なことでございまして、木船の場合は、東北の船主は大体東北、関西の船主は大体関西で造船している。鋼船に限りましては、北海道の業者が九州の造船所を使う、もう入り乱れておるということがすなわち競争の激しいゆえんではないかと想像されるのでございます。  それから木船技術的な面でございますが、実はこれも、私当初に申し上げたかった一つ理由なんでございますが、従来の木造の法律化されている構造規程というものは、これはたしか明治の初めにおいて、その当時、かつて木造船で干トンをこえた船をつくった時代に制定された構造規程を、今日なおわれわれが法規として守っておるのでございまして、内容的に、あるいは材質の使用等についても、私、相当な疑問も生じておりますので、これらが、ただいまのお話のように、合板製とか、あるいは接着剤というようなものを利用して、今後の船をつくる工程にそれを取り上げていきたいというような法律的な考え方などは、私は海運当局に強く要望したい、こう思うのでございます。もちろん従来においても、諸官庁の船は合板製でつくっております。こうしたものも、小さい漁船であろうとも、一般旅客貨物船であろうとも、こうした工法を取り入れて、今後その構造の技術的なことを御指導いただけるように、運輸当局に今後強くお願いしてまいりたいと思うのでございます。以上でございます。
  25. 久保三郎

    ○久保委員 時間も何ですから、最後宮田参考人に二つほどお伺いしたいと思います。先ほどお答えになった大型造船所といいますか、そういうものと小型分野についてお話があった中で、いわゆる公団を通しての建造はまさに御指導いただいて、小型のほうに回していただいている、こういうお話でありましたが、それはそれでうまいぐあいにいっていると私は思う。しかし、それだけでは困るんでしょう。いわゆる中小というか、公団にかかる船だけみんなもらっても、これはしれたものだと思うんですね。はしけや何かにしても、年間そんなにつくられるわけはないのでありますから、公団からもらうのは、これはけっこうでありますが、私が聞きたいのは、あなたが分野を確立してくれというのならば、公団の御指導だけでは分野確立にはならない。大型造船所は小さいのからいろいろな仕事をやっておるわけでありますから、しかも資金や人間や技術からいけば、残念ながら小型造船所がさか立ちしたって太刀打ちできないのでありますから、やはりそういう業界を保護すべきだというならば、分野確立に関するところの制度を確立する以外に私はないと思うのです。そういうふうには考えなくていい、いまささやかながら公団のものは回してもらっているからけっこうだとおっしゃるならば、それでまたけっこうだと思うのでありますが、強くその分野をほんとうに確立してもらいたいのだということになりますれば、いま私が申し上げたことではないだろうかと私は思うのですね。  それからもう一つは、この法案が通ってそれぞれの戦線整理がなされるわけでありますが、整理の対象になるのは数にすれば全体の何%かで非常に少ない。運輸省説明によりますれば、現在の業者が大体そのまま二年後にはこの法律にいうところの小型造船所になり得る、こういうことなんでありますが、そうすると百幾つかだけがその中から脱落する、脱落といってはおかしいが、法律適用の範囲からは脱落していくということでありますが、私はそればかりじゃなくて、もっとたくさん転換をしなければならぬようなものができてきはしないか、こういう心配をしているのです。それはこの法律が通ったからそうなんじゃなくて、一般的な傾向、趨勢としてそういうふうになるのじゃなかろうか。これを押える道としては、先ほど申し上げたように、分野確立の制度を確立するということが一つですよ。あともう一つは、登録でありますから、登録を押えていけばいいんだというだけには私はいかぬと思うのです。登録を押えるために受注者が競争して造船所に殺到するということでは、反面困るわけですね。造船所は笑いがとまらぬということでありますが、船をつくってもらうという人は、半年なり一年なり待たなければつくってもらえない、これは極端な例ですからそういうことはあまり起こらぬとは思いますが、そういうことになる。だからこの登録制だけで一るの望みというか、防波堤として業界を守っていこうということは、私は十分な、一〇〇%の値打ちはないと思うのです。しかしこの際、皆さんのお話のとおり、審議中でありますが、これはあってしかるべきだと思うのです。この法律改正はいい。しかし法律改正したから十分だということは、さっき繰り返し申し上げましたが、十分だとは私は考えていない。いまのような経済体制のもとでは、この法律の守り得る範囲にも限度があるということです。むしろこの法律をたてにして体質改善を勇敢に行なわなければならぬ事態がきはしないか。そのときには宮田さんなりがその業界を生かして使っていけるといっても、いま考えていることだけでの生かして使い方は少し時代に合わないことができはしないか、こう思うのです。これに対して、もしも私どもの考えが少し頭でこね回した理屈だというならばこれは安心でありますが、そうでないというならば何かお考えをいただきたいものだ、こういうように私は思うわけです。  大体その程度できょうは私は質問を終わりますが、お答えをいただきます。
  26. 關谷勝利

    ○關谷委員 関連して。久保委員最後の御質問と私は同じような感じを持っておるのであります。この小型船造船業法をつくりますゆえんのものは、私は先ほどから村上さんのお話を聞いておりますと、東北方面は漁業の盛んなところで、これは木船でなければならぬものが多い。私もかつて視察に行ったことがある。あちらの使っております船は、三十トン前後の優秀な木造船を使っております。そのような需要の多いところと、瀬戸内海あたりの木造船業者とは、同じ造船業者といってもちょっと趣きを異にしておる。私は絶えず瀬戸内海の状況を見ておるので、それが基本になってくるのでありまするが、木造船業者は瀬戸内海が一番多い。こういうのをどうして生かしていくかというようなことを考えてみますると、この法律に基づいて、強制はできませんけれども、自主的に統合をせられて、そこに近代化せられた、そうして技術向上をはかることのできるような造船所をつくるというのが、これがこの法案のたてまえでなければならぬ、趣旨でなければならぬ。いま瀬戸内海あたりで木造船を専業でやっておるものは、これはもうほとんど仕事がなくなっておるというのが実情なんです。私も、昔は造船業をやってきた経験があるのですが、いまの木造船業者はやっていけないという実情にある。これをどうするかというのが、私はこの法案目的でなければならないと思うのであります。そこで私は、行政指導によって、強制ではない、自主的にやらすのではあるけれども、整理統合をして一定の基準のものをつくらして、そしてそれに木船部と鋼船部というようなものをつくって、そこでいままでやっておった零細なものが一つになって、安全性の高い船をつくる。しかもそれに対しましては強力に政府が助成措置をやって、やっていけるようにするというのでなければ、私はこの法律は意味がないと思う。登録制の意味もないと思う。私はどうしてもこの法律を出す限りは、その強い行政指導がなければならないと思っておるのですが、そういうふうなことは、これは宮田さんのところあたりではそういうお考えを持っておるのではないのですか。ただばく然と、いま組合に入っておるその人々がいまのままで何とかやっていけるようにというような、こそくな考え方を持っておったのでは、これから先の零細造船業者はやっていけない。統合してりっぱなものにしていこう、そしてそれについてはこういうふうなことを強力に助成をしてもらいたいんだという、政府に対する具体的な要望が出てこなければ、この法律は何の意味もなさない。これについてあなた方はどうお考えになっておりますか。いま村上さんのお話しの、木造船の受注を二年、三年も持っておるという、そういう木造船造船業者の場合と瀬戸内海の場合は違うのです。しかも、その違う零細業者が瀬戸内海には一番多い。これをどうするかが、この法律の根幹になってこなければならない。いま私が言うような姿に変わっていってこそ、初めてやっていける。私はそれを検討しての具体的ないろいろな御要望、御意見等が出るかと思っておったのに、何やらこの法案の趣旨説明のような参考人の御意見に終わったので、まことに遺憾に思っておる。これについては、あなた方はどういうふうなお考えを持っておられるのか、はっきりとひとつお答えを願いたい。
  27. 宮田三代司

    宮田参考人 ただいま久保先生と關谷先生から、わが業界を育成くださるおぼしめしをもちまして、非常に貴重な御意見をちょうだいして感激しておるわけでございますが、あわせてお答え申し上げたいことは、わが工業会といたしましては、御当局にもお願いをいたしました結果、いわゆる中小企業近代化促進法指定業種でございます関係で、その基本計画と実施計画をお立ていただいたわけでございます。現に実行に移ったわけでございますが、その中で、いま御指摘の業者の協業化、共同施工、この面を強く打ち出しを願っておるわけでありまして、会員各位はその線に沿って今後飛躍的発展を遂げていかなければならない、このような指導をしておるわけであります。そのことにつきまして、これまた御当局のお力によりまして、船舶振興会の設備の改善資金あるいはまた運転資金に至るまで、とりあえず本年度の予算で御計上を願っておるのでございまして、それは方法といたしましては工業会は経済行為は行ないません。それで基本計画の中で、協同組合、地方の組織の強化を強く打ち出していただいておるわけであります。それらの協同組合を基本といたしまして、それらの点を今後強力に推進していくことに相なっておる、かように考えておるわけであります。御指摘の線に沿って今後業界発展を期したい、そうして安全性の高い船舶の建造に専念申し上げたい、かような指導方針をもって工業会は臨んでおるわけでございまして、よろしくこの上とも御指導賜わりたいと思います。
  28. 關谷勝利

    ○關谷委員 宮田さんの団体で、どういうふうな姿にすべきものかという、この計画をつくることは、これは私は、これからの造船業者をどのような姿にしていくか、零細な業者をどうしていくかという、この青写真をつくって、そうしてこの程度のものにやるとこの地方はどのような人々が統合すればいいかというくらいな計画を持つということは、これはあってもしかるべきだと思う。何もそれが、この業界団体としての行き過ぎた行為ではない、それが当然やるべきことであって、それがなければならない。そうするとそれに対しまして、でき上がった姿のものにするためには、設備近代化資金がどれだけ要るか、また融資というような面ばかりでなく、こういうふうな零細なものに対しては、ほかの産業と違って、手をとり足をとってやってやらなければ、もうつぶれてしまうというような状態になっておるのだから、これに対しましては特別の助成も必要なんだ、補助もしてもらいたいんだ、経過措置の間にこういうふうにしてもらいたい、運転資金はどれだけくらい必要になってまいります、また設備近代化については融資がどれだけ要る、そして補助もこれだけくらいなものはしてもらいたい、いまだかつて政治の恩恵に浴したことのないこの団体に対して、団体傘下の業者に対して、これだけのものはしてもらいたいという一つ計画ができておらなければならぬ。この法律が出れば何とかなるであろうというばく然たることでは、これらの業界は救済することはできません。思い切った徹底的な措置を講じなければ、救済することはできません。しかもまたできてくる船が、安全性向上がなければ、そのようなところでやった船は、これは非常に質が悪いというふうなことで、おいおい細っていきます。そのようなものが細っていくことのないようにやっていかなきゃならないというのが、この法律の趣旨なのでありますので、私は、もうそろそろこの法案審議に並行して、ビジョンがどうあるべきかというものができておらなければならぬ、その計画が幾ぶん進んでおらなければならぬのだと思うのであります。まだそこらの御説明はないようでありますが、そこができておらないのなら、早急に設備近代化をするためにはどうしたらいいのか、またほかの産業以外にこれだけのことをしてもらわなければこれはやっていけないのだというものが、政府の助成がどのような方法のものがどれだけ要るのかというものが出てこなければならないと思います。その上で、運転資金がこれだけなければならぬ、そのような筋の通った計画をそれぞれ地方地方でさして、そしてそれがもうそろそろ集まっておるのではなかろうかと思いますが、まだのようでありますから、ひとつ促進するようにお願いをしたい。そうしてこの二年間には、その姿のものが、このようなものができるんだということにしていただきたいと思います。私は、これはいまそこまでいってないとか、いろいろ苦しいのなら御答弁要りませんが、そこへ持っていっていただきたいということを要望しておきます。
  29. 古川丈吉

    古川委員長 内海君。
  30. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろすでに御質問ございましたので、できるだけ簡略にいたします。いま關谷委員からもいろいろお話しございましたが、私もそのことについて常々考えておるものでございます。ただ、きょうお呼びした参考人は大体小型船舶工業会の方であるということでございますが、実際の小型造船業者というものは約千五百近くあるわけでございます。   〔委員長退席、田澤委員長代理着席〕 したがってその中の七百会員を代表された方でありますけれども、少なくともここでお述べいただきます場合には、やはり全国的な視野でお述べいただかなければならぬのじゃないか。もちろんあなた方は会の中の事情はよくわかっておりますから、それから類推されていろいろお話しあることは当然だと思いますけれども、そういう立場でひとつお答えいただきたいと思うのであります。  それで現在いわゆる造船法によって小型造船業を営んでおる人が千五百近くあるということ、ところがこれは、本法の施行に際しましては経過規定で二年間に十分な指導助成を当局としてもして、そうしてこの法の目的を達し得るような業界をつくり上げていきたい、こういうことだと思うのであります。その指導というのは主として船の安全性、これが中心的になるようであります。助成としては促進法あたりが中心になっていくようであります。  そこで一つお尋ねいたしたいのは、これによりまして、御承知のように、いわゆる運輸省技術基準というものにパスしなければ登録されないということであります。その点から考えまして、あなたのほうの七百会員のうちで、いま当局で考えておりまする助成は大体十億程度ということでありまするが、これで十分できるかどうか、あなた方の七百会員の中でもできるかどうか。さらにその他、あとの八百ばかり残るわけでありまするが、あなた方の会に入っておらぬ人々の状態から考えても、二年間でそういうふうなものが、大体この基準に達するようなことが促進されるのかどうか、これに対しましては少なくとも本法の成立を希望されます以上、そういう全国的な視野に立っての、あなた方の今日までのいろいろこれに対しまする積算と申しまするか、積み重ねも当然あるだろう、こういうふうに思うのであります。その点につきまして、ひとつ宮田参考人にお伺いいたしたいと思います。
  31. 宮田三代司

    宮田参考人 たいへん重要な点御指摘いただきまして、恐縮に存じます。お話の中で十億程度でできるかということでございますが、実はまことに遺憾ながら、業界の実態というものを把握することがきわめて困難でございまして、承っておりますと、御当局で各業界をピックアップした御調査に基づきまして、十億程度設備で十分であるという数字をおはじき願ったわけでございますが、われわれ業界といたしましては今後これらの問題と取っ組んで、先生方をわずらわしてぜひともその線で改善の道を開いていきたい、かように考えておるわけでございます。的確なる数字を申し上げることができませんことははなはだ遺憾に思いますけれども、いまの段階では御当局ですらその数字が妥当であるかどうか御研究願っておる段階だと考えております。どうぞよろしく御指導いただきたいと思います。
  32. 内海清

    ○内海(清)委員 事務当局におきましては、現在の業者の中から五百幾らですか、これを抜き出しまして、その調査に基づいて大体推定が出ておるわけです。でありますからこの問題は、業界こそが最も真剣でなければならぬと私は考えるのです。ただ当局がかように言うから、それではそれでできるのであろうということでは、業界としては相ならぬと私は思うのであります。したがってひとつこの点は、おそらく皆さん方のほうでこれをいろいろな調査によって全部調べるわけにもいきますまいが、推定されればあるいは違った数字が出るのじゃないか、こういうことも考えるのであります。そういうことこそ、きょう特に私がお聞きしたい一つの要点であったのであります。しかしこれはいま非常に困難ということで、ないようでありますから、これはやむを得ないと思うのであります。しかしいずれにいたしましても、業界としても一応の希望の数字、目途というものは持たるべきではないか、私はかように考えるのであります。  それから次にまいりますが、先ほど申しましたように、二年間の指導助成の今後の最もおもなるものは促進法であります。もっとも鋼造船におきましても措置法の適用されておるものもありますけれども、今後はこの促進法がいずれにいたしましても中心的になるのじゃなかろうかというふうにも考えるわけでありますが、現在の業者の中で促進法、いわゆる中小企業近代化促進法、資本金五千万円以下、従業員三百人以下というこれにはずれる業者がありますか、いかがですか。
  33. 宮田三代司

    宮田参考人 前段の、今後の計画について不勉強の点はまことに申しわけございません。おわび申し上げます。御指摘いただきましたことは激励のおことばと承りまして、今後その面で力を注いでまいりたい、かような決意でおります。  それから後段で御指摘の、二年間における助成の点でございますが、これはやはり促進法の基本計画と実施計画にまちまして御指摘の点が完全に実施されますよう、最善の努力を払う覚悟でございます。よろしくこの上とも御指導願いたいと思います。
  34. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、この促進法にはずれるものはございませんか。
  35. 宮田三代司

    宮田参考人 ただいまのところ、われわれの団体に所属しております。百会員の中には、促進法の対象の外になるものはございません。
  36. 内海清

    ○内海(清)委員 あるいはこれの外になるものは中級に入るのかもしれませんが、全体的に見れば、これは多少あるのではないか。したがって、いわゆる小型船造船業界としては、それらのことも、もしあるとすれば、当然これを考えらるべきである、かように思うのであります。  それから先ほど申しましたように、いわゆる臨時措置法の適用を受けておる小型鋼船造船所のほうはあるわけでございます。これが御承知のように、四十二年の三月までの時限立法になっておるのであります。これに対しまする業界の御希望なり御意見なりがあれば、伺いたいと思います。
  37. 宮田三代司

    宮田参考人 臨時措置法は時限立法でございまして、延長されまして四十二年までになっておるわけでございます。われわれの立場から申しますと、ただいまの会員の中では、この臨時措置法の適用を受けておりますものは、まず皆無と言ってよろしいかと思うわけでございます。と申しますのは、これは金融ベースの関係で、前段にも申しましたように、中小零細企業でありますために、遺憾ながらその適用を受けておりません。ただし、中に属する企業者はこの恩典にあずかって、今日までかなりの設備の改善が行なわれておるということを承っております。延長されました法律でございますので、さらにこれの延長を願いたいという声があるということは承っておりますが、それはわれわれの所属しております団体会員の中の声ではないわけであります。仄聞いたしますと、かように承っておるわけでございます。
  38. 内海清

    ○内海(清)委員 この臨時措置法は、中小型鋼船造船業に適用されることになっておる。ところが中のほうには適用されたが、現在あなたのほうの会員の方々等におきましては、これを適用されたものがないということであります。これはいままであなた方のほうとしては、それを甘んじて受けておられたわけですか。
  39. 宮田三代司

    宮田参考人 甘んじて受けておったというわけではございませんが、先ほども申し上げましたように、企業が弱体で、たとえば金融機関のいわゆる金融ベースに乗らない業者が大部分でございまして、そういう結果に相なっておるわけであります。  なお工業会が創立いたしましたのが、一昨々年で、日がまだ浅い関係で、わがほうの手落ちから、それらの措置の講ぜられております点を会員に流すことを怠っておった点もあろうかと反省をしておるわけであります。今後はかようなことのないような考え方で進めてまいりたいと思うわけでございます。申しわけございません。
  40. 内海清

    ○内海(清)委員 その点はいままで業者の方のいろいろな事情もございましょうけれども、せっかく法がある以上は、その恩恵を受けるように業界のほうで十分働きかけられることが、きわめて重要なことでございます。もちろん措置法によって融資されます原資につきましても限度がございますから、それがすべていくということではございません。したがって、小のほうにも当然これが適用されるべき範囲のものもあったのではないか。ただ、業界からさらにそういう働きかけがないから、小のほうでは必要でない。これはこういう法に対して強力に要請されるほうにこれが流れるのが常態になるということでございます。そういう点につきましては、ひとつ業界のほうでもお考えになりますと同時に、この法を活用するためには、この法が時限立法になっておりますけれども、今後業界でも考えられまして、この法の存続等に対する強い声を出されることが必要ではなかろうか、こういうふうにも考えるわけでございます。   〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、これは主として村上さんにお伺いいたしたいと思いますが、小型船の海難が非常に多いということは、単に造船技術だけではございません。ことに木造船等におきましては、過積みの問題もございますし、いろいろ他の要素があるわけでございますが、今度の法の一つのねらいも技術水準の確保と、それによって業界発展さして、船質を改善しようということがきわめて重要な問題でありますから、今後これを十分考えられまして、設備近代化並びに主任技術者の設置ということにつきましては積極的にお考えいただかなければならぬと思います。  木造船につきまして、先ほどお話がございました。これは關谷委員お話しになりましたように、確かにまだ地域によってそれぞれ今日の状態も違っておるだろうと思うのであります。特に村上さんのほうにおかれましては東北のほうでございますので、私はしろうとでございますけれども、私がいままで聞き及んでおりますところでは、特に北洋の冬季における漁船でございます。これはいま着氷ということが非常に大きな問題になっております。着氷によってトップヘビーになる。これが海難の非常に大きな一つの要素になっておる。ところが私が聞き及んでおりますところでは、着氷は確かに木船のほうが非常に率が多いということでございます。これは木船でありますと、何といいますか、だんだんささらのようになってくる。そうすると非常に着氷しやすいということですが、これらの点につきましてはどういうふうにお考えになりますか。
  41. 村上忠二

    村上参考人 北洋の出漁船の遭難には着氷ということが、それだけが原因でなくとも、それが原因につながるものではないかという御質問でございます。これは確かに、着氷の状態を見ますと、なめらかな外壁に対しては着氷しにくいのでございますが、木造船の場合には、どうしてもはたにでこぼこが多少あるというのが着氷の原因ではないかと思うのでございますが、これを防止するというような手段は、木船によらず鋼船によらず、考えておりません。それから、しからばその着氷するものの防止というようなことのくふうということもございますが、いまのところそうしたくふうというものは、構造上のくふうも、あるいは技術的なくふうというようなものも起こっておりません。従来のまま、着氷の場合は船員がそれを払いのけておるという程度現状なのでございまして、ただいま御質問の中の着氷問題についての適切なお答えは、残念ながらできないと思うものでございます。
  42. 内海清

    ○内海(清)委員 私、きょうは資料を持ってきておりませんが、着氷の速度などもかなりの違いがあるということでございます。したがいまして、ある方面からの意見では、北洋出漁は少なくともこれは鋼船がよろしいということであるというふうなこともあるわけであります。これは、私はまたいずれ海上保安の問題で当局にもいろいろそういう点をお尋ねしてみたい、これは研究を要する問題だ、かように考えておるのでございます。この問題につきましては、今後特に木造船の有利性を強調しておられる方面としては、十分お考え願わなければならぬ問題ではないかと考えておるわけであります。  それから、これは全国的な話ですが、木造船の場合、だんだん技術者が減ってくる。さらに従業員関係から申しましても、労務者関係から申しましても、なかなか集まりにくい、こういうふうな傾向があるように承知いたしておるのであります。それらの実情についてひとつお答え願いたい。
  43. 村上忠二

    村上参考人 最初の着氷問題については、鋼船関係は、まだ実行しておりませんが、そのほうがいいのじゃないかというくふうの一つとしては、電流を船体に流すことによって着氷の除去ができるのじゃないか。これは具体的に私のほうはどうということはわかりませんが、何かそんな意見などをちょいちょい聞いております。  それから次の、木造船に関しての技術者あるいはそれに従事する労務者の数が減っているのじゃないかというのでございますが、事実そのとおりでございます。これは全国的にそういう傾向であると思うのでございます。しかしわれわれが、直接木造船をつくっておる者として、技術者というものが年々なくなって、これでいいのだという考えは絶対持っていないのでございまして、もっともっと、たとえ小さな造船業者でも、企業内容を健全にして、そしてそれに従事する技術者というものを養成していかなければいけないということを強く信念に持っております。しかし経済の、あるいは社会の大勢、こうした造船界を見ますと、残念ながら木造船に従事する技術者、労務者というものを得ることはなかなか容易ではないという、きびしい将来ということは考えております。
  44. 内海清

    ○内海(清)委員 全国的にやはり木造船技術者というものが減っていく、あるいは労務者も集まりにくい。これは村上さんのような木船鋼船両方をやっておられるほうは、それぞれ融通もできて、その点はいいと思いますけれども、このことは木造船業界に対しましては、私は今後決定的な条件であると思う。でありますから、いかに木造船が必要である、これを存続させていかなければならぬ、木造船経済性あるいは安全性を説かれましても、この技術者の減少ということは決定的な条件になる。でありますから、これに対しましては、もちろん業界も考えられなければならぬだろうし、あるいはまた、それらの育成が同時に運輸当局として考えられなければならぬだろう。それらの点につきましては、やはり業界の姿勢がその方面に正しく向いていくということでなければ、私はいかぬと思う。ことに木造船業界は、先ほど申しましたように、地域によって状態が違うわけであります。したがって、今後業界におかれましても、そういう全国的な視野に立ってそれらの点をお考えになって、そうしてだんだん鋼船にしたほうが——もちろん木船一つもなくなるということはあり得ないわけでありますが、していったほうがいいというふうな地域もあるでございましょう。木船のほうが非常に有利であるという地域もございましょうが、やはり今後そういう全国的な視野に立ってのお考えが必要なのじゃなかろうかと私は考えるわけです。  それから、これで最後にいたしますが、工業会を今後この業法の適用によってひとつ十分活用せいということでありますが、最初に申し上げましたように、中小造船業というものはあなた方のいわゆる工業会のみでございません。半数以上の人がなお会に入っていないのであります。したがって、工業会が今後十分この組織を拡大されて強固にされることも必要でございましょうけれども工業会に加入しておらないものにつきましても十分働きかけになりまして、そうして中小造船業の伸展のためにあらゆる施策をお考えになることが、私はきわめて重要な点だろうと思います。そういうことを意見として申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。まだございますけれども、大体いままでの質問者の方で尽きておりますので、時間の関係がありますので、これで質問を終わりたいと思います。
  45. 宮田三代司

    宮田参考人 たいへんわが工業会に対しましてあたたかいおことばをちょうだいいたしました。叱咤激励されまして、ありがとうございました。あつく感謝を申し上げます。
  46. 古川丈吉

    古川委員長 参考人各位に一言申し上げます。  本日は御多用中のところ御出席をいただき、長時間にわたってきわめて貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。あつく御礼を申し上げます。  次会は、来たる七日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会