○亀田得治君 まあ、
総理のお答え、はなはだ不満であります。
日韓問題についての最後の機会になっておりまするので、私はこの機会に、
委員会で触れることのできなかった諸問題につきまして、少し具体的に、こまかくなる問題もあろうかと思いますので、確かめていきたいと思います。森議員の
質問と重複しないように、私は、主として
請求権並びに
経済協力の
関係及び
法的地位の問題について、お尋ねをしていくことにいたします。
まず、第一に、
請求権並びに
経済協力に関する
協定の第一議定書の第一条によりますと、
韓国政府が
日本から供与される生産物及び役務を定める年度
実施計画は、
韓国政府がまずこれを作成し、
日韓両
政府の協議によってきめる、こういうふうに
規定されております。私がお聞きしたいのは、この
実施計画に対しましては、
日本政府が修正意見を出し得るのかどうか、
日本政府と
韓国政府の
合意がなければならないことになっているのか、という点であります。法文の上では、
日韓両
政府の協議と、こういうふうに書いてあります。協議ととのわざる場合、
韓国政府が原案を押し切ってやるという意味になるのか。それではいけないので、両者の
合意が必要だというのであれば、この書き方自体が、もう少し明確であってよいのではないかと思います。第一議定番の
実施細目に関する
交換公文のⅠの4、ここを拝見いたしますると、両
政府間の
合意により
実施計画を修正できる、こういうことが書かれております。一たんきまった
実施計画を修正するには両
政府間の
合意が必要だと
交換公文には明記されております。修正の部分について
合意が必要であれば、逆に、さかのぼって、
基本計画をつくるとき自身に両者の
合意を必要とするというふうにも解されるのでありますが、この点は両
政府間でどのような理解になっているのか、明確にしてほしいと思うのであります。これは、大蔵と外務、どちらか明確に答えてほしい。
それから次は、無償三億ドルの点につきましてお尋ねいたします。
協定の第一条の(a)、このただし書き、そこを拝見いたしますると、両
政府の
合意によって各年度の供与の限度額を増額できる、こういう
規定があります。無償三億ドルの供与は十年に分けて
日本政府が供与することに本文はなっております。ところが、両
政府の
合意があれば、ある年度のものを増減できる、こういうことが書かれております。ところが、最近の新聞紙上で拝見しておりますると、
韓国の第二次五カ年計画に歩調を合わせるために、この十年間に供与する約束になっているものを、五年か六年の間に繰り上げて使用する、こういう計画が進められているのではないかと思うのであります。両
政府間でできました
協定では、
一つの年度のやつをふやすと、その次の年度は当然減ることになります。そういうことを認めておるわけであります。にもかかわらず、このただし書きを、乱用といいますか、悪用して、そうして、こう速度を早めていく、これは私は、それだけ
国会の
承認を得ないところの負担をかけるものであると言わなきゃならぬと思います。この
協定の正しい
解釈からは、そのようなことはできないのではないか。
協定も発効しないうちから大体そういう下相談をすること自身が、はなはだもってけしからぬわけでありますが、しかしまあ、多少の準備という意味と思いますが、いずれにしましても、新聞に報道するように、十年間で供与するとなっておるものを繰り上げるためには、私は
協定の改定が必要だと思うのであります。
国会が、われわれが受け取っているのは、そのようなことはできないものと
解釈しなきゃなりません。
外務大臣、大蔵
大臣の明確なお答えを聞かしてほしいと思います。
それから第三点は、第一議定書の第六条の4、ここには、
日本から供与された生産物を
韓国領域から再輸出してはならない、こういうことを明記しております。これは、今度の
経済協力というものが
韓国経済の発展に役立つものを供与すると、こういう
立場に立って行なわれている以上、当然の結論だと思うのであります。ところが、
合意議事録の7によりますと、加工輸出については例外であると、こういう
規定を設けております。本来ならば、こういう
合意議事録の
規定は、第一議定書の六条の4、その六条の4の中に、もしこういうものを書くならば、続けて書くべきなんだ。ここだけではございません。今度の
協定や、諸般のそれに関連した文書を見ますると、一方で、ちゃんと、
一つのことを前向きに書いてあるかと思うと、別な文書には反対のことが書いてある。これもその
一つでございます。私は、こういう
合意議事録の7に
規定されたことは、
経済協力を今回行なおうとする
政府の
立場からいうならば、矛盾しているのではないかと思うのであります。私は、まさしく、これは
日本の資本象が
韓国の低賃金を、こういう形で利用していくという道を開くために行なわれているのではないかと思うのであります。
韓国経済の発展のために役立つと、こういう大
原則を掲げながら、
韓国で使わないものを初めから承知でそこへ持っていくと、これは全く
立場の異なる行動と言わなきゃなりません。いや、そういう加工輸出をやることも、広い意味では
韓国の経済の発展に役立つのだ、こういう詭弁を弄されるかもしれませんが、私の言うのは、そうではない。
日本が供与する生産物、その生産物は、
韓国経済に必要なもの、向こうが使うものと、こういう
立場で出発しているわけでしょう。そういう
立場と明らかに矛盾することをやっているのではないか。
次に、
合意議事録の2、ここを拝見いたしますると、
委員会で何回も問題になりましたいわゆる
韓国の対日請求八項目の消滅を、ここでは
規定しているのであります。ところが、伝え聞くところによると、
韓国の
国会に出された書類の中には、この(g)項が削除されている、こういうことも聞くわけでありますが、真相はどうなっているのか。
外務大臣から明確にしてほしい。
外務大臣は、
韓国の国
会議事録を実際は持っておりながら、見ておらぬようなことを言っておりますが、そういう詭弁は許されません。はっきりしてもらいたいと思います。もしそのことが真相だとするならば、
韓国においては、対日請求の八項目を、今度の
経済協力と引きかえになくしてしまうということに、別個な大きな苦しみを感じておる証拠ではないかと思うのであります。たとえば、その
一つとしてお尋ねしたいのは、この八項目の中を拝見いたしますると、明らかに、
韓国の人の個人個人の権利、しかも、それがはっきりしたものが相当あるわけでございます。
韓国政府は、そういう
韓国人の個人の権利に対しまして、どういう国内
措置を講ずることになっているのでしょうか。
日本でも、
在外財産の問題に関連して同性質の問題が起きておるわけでありまするが、
韓国の場合の対日請求八項目を見ますると、ほんとうに戦時中苦心さんたんしてかせいだ労賃とか、そういったようなものも多々含まれているわけであります。そういう、その人にとっては、たとえ金額はわずかでありましても、これは大切な汗の結晶でございます。それが無視される、そうして朴政権だけが
日本政府から大きな金を渡される、それと引きかえに個人個人の汗の結晶が消されていく――当然これは、こういう
協定をつくる以上は、それと並行して、
韓国内ではこういうふうに処置しますということがあってしかるべきものであろうと思う。向こうが言わなくとも、
外務大臣としては、それは聞くべき問題だと私は思う。なぜならば、相手方の
韓国の個人個人にすれば、
日本政府と
韓国政府がこのような
協定を結んだために、自分たちの権利が消されたんだ、
日本政府は三十六年間の
韓国の統治に対して反省をしているとかなんとか言っているが、やっていることは違うじゃないか、こういう恨みを買うような結果になるのであります。ほんとうに生活に苦しんでおられる人の気持ちになって
考えてやらなければいかぬと思うのであります。そういう意味で、他国のことでありまするが、
外務大臣として、具体的に、
韓国内では、この八項目の消滅と関連して、どういうふうにこれが扱われようとしているかを、はっきりここで答えてもらいたいと思うのであります。
それから次に、同じくその
合意議事録の2の(h)の項目です。
日本の漁船がたびたび
李ラインの問題に関連して拿捕をされた事件がありまして、それに対する損害
請求権というものがあるわけですが、これを
日本政府が放棄しているわけでありますが、これはたいへん筋の通らない処置ではないかと思うのであります。ほかの各種の
請求権とは、問題が本質的に違うわけでありまして、こういう損害
請求権というものは、ほかのものと相殺するような
考えを持つのではなく、そのものとして追求し、結論をつけなければならぬと思うのであります。なぜならば、あのような漁船の拿捕というものは、国際法に反している、違法だ、こういう
立場を
日本政府がとってきたはずであります。それを、何か各種の
請求権と、ごちゃまぜにして、そうしてどさくさまぎれになくなってしまった。こういうことでは、そういうような違法行為を今後とも断じてやらせない、こういう
立場から見るならば、まことに遺憾な
措置だと言わなければなりません。こまかい法律上のことを申し上げては恐縮でございますが、
性格の違う権利、こういうものの相殺というものは、簡単にいかないわけであります。そのことを
政府としては簡単にやっているのかもしれませんが、私は、これはたいへんな間違いだと思います。そういうことによって、今後の不法な
日本漁船の拿捕、こういう問題に対して、何か軽く問題があしらわれる足場をつくるようにも
考えられるわけであります。はっきり答えてもらいたい。
それから次に、第一議定書の三条、これによりますと、
実施計画に基づく
日本から供与する生産物と役務、これを取得するための
韓国側の当事者ですね、当事者として、
韓国政府の使節団のほかに、
韓国政府の認可を受けた業者というものを並列して認めてきていることであります。この点は、すでにいろんな人から指摘されている問題でありますが、やはり私は、このような
経済協力というものは、
韓国政府の正式の使節団、これだけが唯一の権限を持つものとして、
日本の
政府なり業者と契約をすべきだと思うのであります。なぜ、このような使節団に並行して業者というものを認めなければならないのか。
次に確かめたいのは、
合意議事録の4の(a)ですね、無償三億ドルの中で一億五千万ドル以上の消費財を供与する、こういうことがこの議事録で書かれております。
政府は、初め、今度の
経済協力というものは、
韓国経済の再建、そのためにやるのだ、したがって供与する生産物は資本財をもってやるのだと、こういう
方針をとられたはずであります。ところが、だんだん
交渉が煮詰まってまいりますと、三億ドルのうちの半分以上のものが消費物資と、こういうことに、しかもこれは本
協定からはずして、
合意議事録、こういうところで挿入されてきておるわけであります。このことと、先ほど指摘しましたところの、業者をして正式の代表として契約をさせる、これらのことがからみまして、今回の
経済協力というものは、はなはだ黒いうわさを生んでいるわけであります。
もう少し、この点についての見解を申し上げますと、こういう消費財を扱うのは、ただいま指摘しました
韓国政府から認可を受けた
韓国の業者が当たるわけであります。具体的に言うならば、
韓国政府で必要とする消費財、その目録が作成されますと、
韓国政府でそれを
韓国の業者を相手に入札をする、落札をした業者が
韓国のお金で
韓国銀行にお金を納める、そういたしますと、その業者は
日本にやってきて、
日本の業者と、その落札した品物を引き取る契約をすることができるわけであります。その
韓国の業者は、すでに申し上げたように、
韓国政府にはお金を払ってしまっておるわけでありますから、当然、
日本の業者から引き取る生産物を取得することになります。現在
日本と
韓国内の消費物資の値段からいうならば、これが向こうでどれだけ大きな利益をもたらすかということは、想像にかたくないわけであります。こういう、からくりというものがなされて、したがって、問題は、その業者をだれに指定するのか、こういうところに、朴政権との結びつきというものが、いろいろ、うわきされているわけであります。朴政権の政治資金に関しましては、ずいぶんわれわれも、いろいろな情報を聞くわけであります。独裁的な政権といわれる朴政権でありながら、そういう黒いうわさのために、昨年以来、
国会の監査
委員会で調べを受けているわけであります。その中には、四粉暴利事件とか、いろいろな問題が多々連ねられております。そういう政権が、いま申し上げた
経済協力、このからくりと結びついてきた場合に、どういう結果が起こるか、
日本政府は一体、こういう点について確信を持てるのかどうか。
日本の血税をつぎ込んで行なうところのこの
協力が、結果におきまして、一部の政治家のふところを肥やす材料に使われた、こういうことでは、われわれ
国民としては承知できないわけであります。そういうことを防ぐためには、私が先ほど指摘したような諸点につきましては、やはり
経済協力を、当初
考えた
原則にしっかり立って、そうして、きびしくこの中身というものを組み立てておくべきではないかと思うのであります。
佐藤総理の、この点に関する所信をお聞きしておきたいと思います。
次に私は、
法的地位に関する諸問題につきまして、これも
委員会で聞くことのできなかった諸点につきまして確かめておきたいと思います。
まず第一に、
総理に対してお聞きしたいのは、
韓国人の帰化という問題について、どういう
考えを持っておられるかということであります。戦前から
日本の社会に入り込んで、非常に密接な
関係につながっているわけであります。南北を問わず、
朝鮮人の方々の帰化という問題は、一般の
外国人とは相当違った
考えで処理してしかるべきだと思います。根本的な
方針をお尋ねしたい。
それから第二には、法務
大臣にお尋ねいたしますが、今回の
法的地位の
協定によりまして
永住許可を与えられるのは、戦前から
日本におりました
韓国人でございます。並びにその子孫ですね。ところが、その子孫の点につきましては、
協定の第二条によりまして、
協定発効後二十五年までの間に、あらためて協議すると、こういう
規定のしかたになっておりますが、その
基本的な
考え方はどこにあるのか。
韓国政府としては、この
交渉の過程において、二十五年後の協議を待たないで、ともかくすべての子孫に対する
永住権を要求したわけでありますが、そういう点では、
協定の二条は、両者の主張の妥協の結果生まれておるものと思いますが、この二条の精神というものは、どういうところにあるのか。二十五年後に協議をするときには、
韓国側の要求があればその
永住権を認めていくと、そういう腹で書かれているものかどうか。そういう点を明らかにしてほしいと思うのであります。そうでなければ、ないと……。どういう意味か明確にしてほしい。
次に、
永住許可の申請をするには、
合意議事録によりますと、国籍を証明するもの、または陳述書を提出する、こういうことが必要とされております。法務
大臣にお聞きしたいのは、
外国人登録の上で「
韓国」と書いてある人には、特にこのような
証明書が要らないのではないかということであります。なぜ私がこういうことを聞くかといいますと、
政府は、国籍問題が
国会で紛糾した結果、十月の二十六日に
統一見解を出されまして、「
韓国」という表示を、単なる記号ではなく、国箱とみなす、こういう見解を発表されたわけであります。まあ、こういう見解の発表自身が、いままで
政府がとってきた態度からいうならば、はなはだ筋の通らないところがあるのでございますが、しかし、それにもかかわらず、そのような見解を
政府は発表しているわけであります。もしそのような見解に立つとするならば、
外国人登録の
関係で「
韓国」となっている人は、もう国籍がはっきりするわけでありますから、なぜこの
協定の中で、国籍を証明するもの、または陳述書を求める必要があるのでしょうか。もちろん、法務
大臣のお
考えは、この
永住許可申請をする人すべて外人登録の上で「
韓国」となっておらない人も要求してくるかもしれないと言われるかもしれません。そういう人には、もちろん、国籍を証明するもの、または陳述書というものが必要になろうということは、私もそれは認めます。しかし、とりあえず問題になるのは、外人登録の上ですでに「
韓国」となっている人たちから、まず私は、
永住許可の申請が具体的に出てくると思うのであります。そういう意味で、この点をお聞きしているわけであります。
統一見解と、この
協定に関する
合意議事録の
規定のしかたというものは矛盾があると、こういうことを申し上げたいわけであります。法務
大臣の見解を聞きます。
それからさらに、
永住許可を受けた人の退去強制の事由について、法務
大臣に二点お伺いいたします。
まず、その
一つは麻薬犯罪者でありまするが、これは、もっと強く条件をしぼってよかったのではないかと思います。たとえば、この
協定によれば、
原則として三回以上麻薬犯で刑を受ける、そういうことになると強制退去の理由になるとなっているのですが、しかし、麻薬というものの非常な害悪から見るならば、たとえ一回でありましても、その者が常習的にやっているのだということが、事件を調べてわかる場合には、それでやはり退去強制の事由としてよろしいのではないかというふうに
考えられるわけであります。なぜ三回まで、そのような場合でも待たなければならないのか、明確にしてほしい。
次に、
協定第三条の(b)の犯罪でありまするが、これは
外交あるいは公館等に関する犯罪でありますが、朝鮮の複雑な政治情勢から
考えますると、たとえば、
韓国代表部に対する犯罪といったようなものも
考えられないことはないのであります。しかも、その中には、政治犯という範疇で
考えるべきものも予想されるわけであります。こういう人たちにつきましては、この
協定にいう退去強制を執行すべきものではないことは、政治犯人に対する扱いからしても当然だと思うのであります。しかし、従来の
韓国政府の態度から見ますると、そのような犯人に限って、
引き渡しを求めてくる、こういうことも
考えられるわけでありまするが、法務
大臣の、そのような場合に対する所見をお聞きしておきたいと思うのであります。
それから次に、
合意議事録によりますると、
韓国政府は
日本政府から退去強制される人の引き取りについて
協力をする、こういうことが
合意議事録並びに
韓国政府の声明の中にうたわれております。過去において、
日本政府としては、先方が引き取りを拒否して困ったことがあるわけでありまするが、この
合意議事録並びに討議の記録の中にあらわれている
韓国政府の意思表示によりまして、今後、
韓国政府としては、
日本政府が退去強制をする者に対して引き取りを拒むようなことは絶対にないのだと、こういうことが明確に約束されているのかどうか、明らかにしてもらいたいと思うのであります。
次に、
在日韓国人の経済上の活動につきまして、
日本人と比べてどのような不利な点があるのかという点を明確にしてもらいたい。その中身といたしましては、たとえば、土地その他
財産の取得、そういう点で、どのような違いがあるか。第二には、金融機関の利用等について、どのような違いがあるか、単なる事実上の違いにすぎないのかどうか、そのような点。第三には、各種の就職の上でどのような違いがあるか、これも単なる事実上の違いにすぎないのかどうか、そういったような点に分けて、具体的な御
説明をお願いしたいと思うのであります。なぜ、私がこのようなことをお尋ねするかといいますと、
在日韓国人、
朝鮮人の方々の
日本の社会における処遇というものは、
日本人と非常に格差ができてはいけないのであります。同じ社会の中で、経済的な格差が、民族が異なるがゆえに生ずるということでは、いろんな派生的なマイナス面ができます。まあ社会保障なり、あるいは犯罪統計等にも、そういったような点があらわれているわけでありますが、根本的には、やはり、在日
朝鮮人の経済的な基盤の確保というものが、ほんとうに
考えられなきゃならぬと思うのであります。そのためには、まず、現状は一体どうなっているのか、そういう点について、法務
大臣からお答えを願いたい。そうして、そういう点についての今後の処理ですね。そういう
日本人とのギャップを完全に埋めるということは、これはなかなか、完全な意味では、いろいろむずかしいこともあるでしょうが、
総理大臣としては、こういう問題についてどんな
考えを持っているのか、はっきり示してほしいと思うのであります。
それから次に、
国民健康保険の適用の問題について……(「厚生
大臣いないぞ」と呼ぶ者あり)厚生
大臣いませんね。それでは、法務
大臣に、あわせてお答えを願います。
国民健康保険についてお尋ねいたしたいのは、今回の
協定ができましたことに関連いたしまして、厚生省令を改正して、全国一律にこの
国民健康保険に加入できるようにしよう、こういうことをきめているわけであります。しかし、この点は相当問題があるのではないかと思うのであります。
国民健康保険は、御承知のとおり強制加入であり、また、当然掛け金も必要なわけであります。
日本の
国民自身からも実は問題が起きているわけであります。そういう状態のままで、それを在日朝鮮の方々にかぶせていくということが、はたして適切なのかどうか、疑問を持たざるを得ない。現在までは、各市町村の条例によって、市町村で、この地区では
国民健康保険に加入してもらおうというふうなことがきまれば、その地区だけでやられてきました。私は、そういう扱いのほうが、現状ではまだ適しているのではないかと、逆に
考えるわけでありますが、ただ、この
協定並びに
協定に附属している討議の記録を拝見いたしますると、厚生省令の改正をやっていくということが書かれておりますが、はたして、厚生省令の改正をして、全国一律に、との制度の中に入れるということが
義務として負わされているのか、その点の書き方が、はなはだあいまいであります。だから、この全国一律強制加入ということが、
日本政府としては、
義務づけられたことになっているのか、あるいは
義務とまではいけない、できたならばそういうことも考慮するのだという程度の意味で書かれているのか、その点をまず明らかにしてほしい。もし後者の意味だとするならば、はたして急いで全部をかぶせてしまっていいのかどうか、そういう点についての――まあ、法務
大臣は
国民健康保険の実情をよくつかんでおらないから、あるいはお答えができにくいかもしれぬと思うのでありますが、厚生
大臣おりませんので、かわって、ひとつお答えを願います。
それから次に、
永住許可を受けた人が
韓国に帰る場合の持ち帰り
財産についてお尋ねをいたします。
永住許可者が
韓国に帰る場合には、
原則として、すべての
財産を持って帰ると、こういうふうに
規定されておりますが、持っていけないものは一体どういうものがあるのか、具体的に明示してもらいたいと思うのであります。なかんずく、この
協定並びに
関係の文書の中で、持って帰る品物の中に、「職業用具」、自分の仕事の
関係の品物と、こういうものが書かれております。で、これはどういう
範囲のものを意味しているのか、明確に答えてもらいたい。
解釈のしようによりましては、無為替で大量の商品が、そういう形で流れていくということも
考えられるわけでありまして、職業の用具というのは、どの
範囲のことをいうのか。できまするならば、具体的な職業につきまして、例をあげて、ひとつ御
説明をお願いできれば、はっきりすると思うのであります。
それから次に、大蔵
大臣にお尋ねしますが、
永住許可を受けた方が
韓国に帰る場合、一世帯一万ドルを持って帰る、こういうことが書かれております。これは、
日本の外貨事情がどのようになりましょうとも、必ず一万ドルまでは持って帰らす、こういう窮屈な
規定のものであるのかどうか。事情によっては、多少減らすといったようなこともできる意味で書かれているのか、明確にしてほしい。それからもう
一つ、一般の
外国人に比べると、この持ち帰り金額が多いわけでありますが、当然、
韓国人にこのような道を開けば、ほかの
外国人からも、
日本政府に対する要請が出てくるのではないかと思うのでありますが、そういう場合には、どのように大蔵
大臣として対処されますか。
それからさらに、現在
北鮮に帰還する方々が毎月あるわけでありますが、この方々には、わずか百二十五ドルしか持ち帰りを認めておらない。あまりにもその差が大き過ぎるんですね。まあ、一方は
日本政府と仲がいい、一方はそうじゃない。差別するのはあたりまえだと、そう簡単に私は割り切れないと思う。
日本に在住する理由になった経過というのは、これは同一の人たちなんです。その人たちが自分の好きな祖国に帰ろうというのに、一方では一万ドル、一方では百二十五ドル、これは、あまりにも非人道的だと思うのでありますが、こういう点について、これは
佐藤総理にお尋ねをしておきます。まあ、財政上の理由というよりも、こういう非人道的なことはよくないと、こういうことは、
総理大臣が、はっきり
方針を出されなきゃならぬ問題です。その上で、大蔵
大臣が計算をされると、こういうことにならなきゃ、うまく運ばぬわけであります。
それから次に、まあ、いろいろこまかいことを聞いて恐縮でございますが、
特別委員会を途中で打ち切ったりするものですから、こういうことになるわけですが、この討議記録によりますと、
韓国政府は、
在日韓国人の生活の安定、あるいは貧困君の救済、こういうことにつきまして
日本政府から要求があったら、できるだけ
協力する、こういうことを、この討議記録の中において
韓国政府が意思表示をしております。これは一体、
韓国政府として、具体的にはどんなことをしようという裏づけがあってこのようなことを言っているわけでしょうか、明らかにしてもらいたい。たとえば、生活保護なり、あるいは
国民健康保険等で、
日本政府等に相当な出費がある、そういったようなものについて、若干でもこの補いをするという、そういう具体的な意味までも持っているのかどうか。いや、そういうことは、もう
日本政府にまかしてあるわけで、もっとほかのことを
考えているというのかどうか。そこら辺のところを、
交渉の経過の中で明らかになった限りにおいて明確にしてほしいと思います。
それから次に、法務
大臣声明によりますと――本
協定で扱われている
在日韓国人、つまり、戦前から
日本にずっと引き続いている
韓国人以外の
韓国人ですね。たとえば、戦前からいたが途中で一度
韓国に帰った、これは本
協定の対象にはならない。そういう方々が多々あるわけです。そういう人たちを対象にいたしまして、法務
大臣声明が六月二十二日に出されているわけでありますが、まあ、これは一方的な
大臣声明ということになっておりますが、これは相当強い約束をしているのではないかというふうに思います。
韓国国会の議事録等を見ますると、これらの人たちは当然
日本で在住できるのだ、こういうふうに向こうでは
説明をしておりますが、その間の真相を明らかにしてほしいと思います。
それから次に、
協定でも、あるいは法務
大臣声明でも扱われておらない人、つまり、
平和条約発効後に
韓国から
日本に渡って来た、いわゆる密入国者ですね、こういう方々の処置ですね、これは当然、密入国だから退去強制するのだ、
出入国管理令からいえば、そういう
立場になるわけでありますが、しかし、従来の実際の例から見るならば、相当数の者が、法務
大臣の特別の許可によって
日本に在留をしているわけであります。そういう点についての扱いというものは、一連のこういう
協定ができましても、変わらないのかどうか。まあ、法務
大臣が、こういう公の席で、今後の密入国者についても従来と同じように考慮するといったようなことをおっしゃることは、なかなか言いにくいことかもしれませんが、しかし、従来もそのような処置を相当とってきているわけですね。そこで、今後は、その点についてどういうお
考えを持っておられるか、明らかにしてほしい。あわせて、現在まで、そういう密入国者について特別の在留許可を与えていることがあるわけですが、どういう基準でそのような許可を与えてきたか、そういう点を明確にしてほしいと思います。
それから次に、同じく
協定ができました六月二十二日の入管局長の談話によりますと、
日本にいる
永住許可を受けた
韓国人の親戚で
韓国にいる人が、
日本の近親者をたよって来る、こういう場合には好意的に扱う、こういう声明が出されておりますが、ここで言う近親者の
範囲なり、あるいは
日本滞留の期間、そういったようなものは、どの程度でお
考えになっているか、明らかにしてもらいたいと思います。
それから、一連の
関係書類によりますと、
永住許可者に対して、再入国の許可ですね、これを普通以上に便宜をはかる、こういうことも出てきているわけであります。
永住許可者が
韓国に行って、また
日本に帰ってくる、この再入国を、普通の
外国人よりも便宜を計らう具体的な処理のしかたを明らかにしてほしいと思います。どの程度のことを
考えているのか、明確にしてもらいたい。
以上、たいへんこまかいことが、ずいぶんありましたが、法務
大臣から、抜けないように、
一つ一つ御
答弁を願います。
もう
一つ、つけ加えておきます。それは、
法的地位に関する
国内法の――名前が長いですから略称で言いますが、その第九条によりますと、今回
永住許可の申請が、
協定によって行なわれるわけですが、その許可申請をする者に対して威力を用いて妨害をした、こういう者がありますと、これに対して特別な罰則を加える、こういうことが書かれております。私は、これは少なくとも不要な、有害な
規定ではないかと思います。なぜならば、
永住許可申請をしよう、
韓国国籍を持って、そうして、しよう。そんなことはやめておきなさいと。いろいろな
立場がからんで、そういう問題も起こるかもしれぬと思います。しかし、そういうことがあった場合でも、相当行き過ぎた妨害行為があったということになれば、これは、現在でも、各種のいろいろな刑罰法規があるわけでして、それに該当するものは、それで処理すればいいわけでして、ことさらに重く、こういう問題を取り上げてくるということは、行き過ぎではないかと思う。そういう問題が起こる場合には、必ず、朝鮮民族同士の政治的な問題というものがからむ場合が多いわけであります。そういう民族問題の中に、
日本政府が権力をもって介入していく、こういう結果を招くのではないかと思うのでありまして、このような罰則はやめるべきではないかと
考えます。
最後に、
総理にお尋ねいたします。今回の
協定が発足いたしますると、
永住許可を受けた人と、
韓国系であっても
永住許可を受けない、あるいは
北鮮系で初めからそういう許可を受けようとしない、まあ大きく分けて、二つのグループができるわけであります。
永住許可を申請しない人も、国籍不明の
外国人ということで、法律百二十六号によって、引き続き
日本に従来と同じように在留できることになっているわけですね。そこで、お尋ねしたいのは、許可を受けた人と、そうでない人、この間の差、違いというものを、できるだけつけないように、いろいろな処遇問題で最大の努力をすべきじゃないか。
立場上どうしても差が出てくるということが起こる問題は、やむを得ないかもしれませんが、根本
方針としては、もともと同じ理由で
日本に在住し、現在に至っている同じ民族なんです。根本
方針としては差をつけないのだ、こういうことを、
総理として、はっきり言えるかどうか、お尋ねをいたします。
特に私がお尋ねしたいのは、祖国との往来の問題です。国内における経済上の
待遇等の問題も重要でありますが、しかし同時に、人間にとって大事なことは、やはり血の通った人たちとの間の交流ですね。これが、今度の
協定によりますると、先ほど私がこまかく法務
大臣にお尋ねしましたように、
永住許可を受けた
韓国系の人に対しては非常な便宜が出てくるわけです。こちらから
韓国に行って、また帰る。これが楽になる。あるいは
韓国の親戚が
日本に来て帰っていく。これも便宜を計らう。ひとり北朝鮮の
関係におきましては、向こうに親戚があり、その方が病気になっても帰れない。現在でもそういう状態が続いているわけであります。一般的な渡航の自由とか、そういう理論を、いまここで申し上げようと思っているのではありません。ともかく、法律百二十六号によって、従来どおり、
永住許可を受けない人も
日本にずっとおるわけなんですね。お墨つきはないけれども、一種の
永住許可みたいなものなんです、事実上は。その人が、ちょっと自分の
関係のあるところへ行って、また帰ってくる……。
北鮮という国を認めておらぬということだけで、そういう大きな違いというものが出ていいものでしょうか。ひとつ
総理から根本
方針をお聞かせ願いたいと思います。
それから、もう
一つお尋ねしたいのは、
日本人が北朝鮮に直接出かける、これがまた遮断されているわけですね。あるいは
北鮮の人が
日本にやってくる、双方とも遮断されている。共産圏渡航に関しては、
昭和三十一年に例の次官
会議の決定があり、それは閣議でも了承されて閣議了解
事項になっているようでありますが、
委員会ではその中身を見せてもらいたいと言いましたが、とうとう出しません。しかし、うわさには大体聞いているわけでありますが、しかし、もうあれは古い決定であって、再検討の必要があるというふうに内部でもいわれているようでありますが、私は、こういうものはこの際検討し直して、もっと人情の機微に合ったようなものにしてもらいたい。そういう
考え方があるかどうか、明確にしてほしいと思うのであります。なかんずく、共産圏のうちでも特に北朝鮮との
関係、これがもう全然遮断されるかっこうになっておるんですね。私は、どうして
中国なりあるいはソ連なり、そういうところと大きな区別をつけられるのか、理解に苦しむわけです。
総理は、
ケース・バイ・
ケースで今後もやっていくんだというふうなことを言います。
ケース・バイ・
ケースなんということをいいますと、相当多数何かそういう、入ってきた
ケースがあるような感じを受けるわけですが、ほとんどないわけなんです、これは。スポーツの
関係で一、二あっただけでありまして、それ以外は全くないわけなんです。こういうことがあったら私は非常識だと思うのでありまして、それは具体的な事件を扱う場合には
ケース・バイ・
ケースになるでしょうが、
ケース・バイ・
ケースをやる、その基礎になる根本
方針というものがはっきりしなければならぬと思う。それをひとつこの際
総理から明確にしてほしいと思います。
農林
大臣にひとつお聞きします。
委員会でも若干お聞きしたことですが、足りませんでしたので、この際、確かめておきます。それは
韓国沿岸の共同規制区域に出漁できる
沿岸漁民ですね、これは千七百隻、こういうことに圧縮されました。農林
大臣は現在、
関係者府県にその千七百隻という数字を割り当てるのにたいへん苦労されているようでありますが、私は結論としてはどうも因る、私としては、共同規制区域のほうに行きたいのだ、こういう人が相当取り残されるのじゃないかと思います。
質問の要点は、そのような取り残された方が、背に腹はかえられず、餓死するわけにいかないということで、島根なり山口の
沿岸から共同規制区域にかってに出かけていく。こういうことになった場合に、これは処罰のしょうがないというふうに、私は
関係法規をずっと見て確信を持つわけですが、農林
大臣、どうなんでしょうか。
委員会であなたにお聞きをいたしますると、
沿岸漁民の船を千七百にしぼるということは
義務ではないのだ、
日本政府の
義務ではない、こう言われました。そしてまた、
漁業協定の規制の対象からも、この
沿岸漁民の小さな船というものは、はずれているわけであります。そうしてみれば、本来これは自由に行けるわけなんですね。千七百隻以外の方々も自由に行けるわけなんです。あなたは、この千七百隻は
日本政府の
義務ではありませんと、はっきり
委員会で言っているわけなんです。気持としては、千七百以上が行ってもらいたくないという農林
大臣の気持ちはわかりますが、しかし、そのために漏れた方が、死ぬわけにはいかないからというので出かけた場合に、一体これを処分する方法がございましょうか。ないと思う。どうなんです。(発言する者多し)文部
大臣に一点お伺いします。
文化財の返還につきまして、今回返すのは国有のものばかり、
民間の所有のものについては
日本政府が勧奨すると、こういうことを言っております。具体的にはどういうことなのか。たとえば朝鮮の皆さんがたいへんほしがっている
文化財が
民間にあると、そういうものについて、経済的な裏づけを
日本政府がしてでも、場合によっては、全部じゃなしに、特殊なものについてはそこまで裏づけをしてでも、朝鮮民族のものは朝鮮民族に返すという
立場で努力されることまで
考えておられるのかどうか。ただ口先だけで、できるだけ返したほうがよかろうという程度のことなのか、明らかにしてほしいと思います。
まだ、いろいろあるのでございますが、
答弁をされる方々もだいぶお疲れのようでございますから、一応ここで、私は再
質問を保留して、
答弁をお聞きをしたいと思います。(
拍手、「
総理、おかしいじゃないか」「前の発言取り消せ」と呼ぶ者あり)
〔国務
大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕