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1965-12-11 第50回国会 参議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月十一日(土曜日)    午前一時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十五号   昭和四十年十二月十一日    午前一時開議  第一 日本国大韓民国との間の基本関係に関   する条約等締結について承認を求めるの件   (衆議院送付)(前会の続)  第二 日本国大韓民国との間の漁業に関する   協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関   する水域設定に関する法律案内閣提出、   衆議院送付)(前会の続)  第三 財産及び請求権に関する問題の解決並び   に経済協力に関する日本国大韓民国との間   の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産   権に対する措置に関する法律案内閣提出、   衆議院送付)(前会の続)  第四 日本国に居住する大韓民国国民法的地   位及び待遇に関する日本国大韓民国との間   の協定実施に伴う出入国管理特別法案(内   閣提出衆議院送付)(前会の続)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 日本国大韓民国との間の基本   関係に関する条約等締結について承認を求   めるの件(衆議院送付)(前会の続)  一、日程第二 日本国大韓民国との間の漁業   に関する協定実施に伴う同協定第一条1の   漁業に関する水域設定に関する法律案(内   閣提出衆議院送付)(前会の続)  一、日程第三 財産及び請求権に関する問題の   解決並び経済協力に関する日本国大韓民   国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国   等の財産権に対する措置に関する法律案(内   閣提出衆議院送付)(前会の続)  一、日程第四 日本国に居住する大韓民国国民   の法的地位及び待遇に関する日本国大韓民   国との間の協定実施に伴う出入国管理特別   法案内閣提出衆議院送付)(前会の続)      ―――――・―――――
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一ないし第四(前会の続)を一括して議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。日韓条約等特別委員会理事草葉隆圓君。(発言する者多く、議場騒然登壇中の議員は各自の議席にお着き下さい。(議場騒然草葉隆圓君、御登壇を願います。    〔草葉隆圓登壇拍手
  3. 草葉隆圓

    草葉隆圓君 ただいま議題となりました日韓基本関係条約等締結について承認を求めるの件及び関係法律案につきまして、日韓条約等特別委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  わが国韓国との間の諸懸案を解決し、国交を正常化するための交渉は、十四年の長きにわたって行なわれました結果、ようやく妥結し、本年六月二十二日、基本条約、四協定等の署名が行なわれたのであります。  まず、基本関係条約は、両国間の外交及び領事関係の開設、国連決議百九十五号(III)を引用することによる韓国政府基本的性格確認国連憲章原則に適合する協力等両国岡の国交を正常化するための基本的な事項規定したものであります。  漁業協定及び二つ交換公文は、公海自由の原則確認漁業水域設定暫定的共同規制措置取り締まり等に関する旗国主義等両国漁業関係を規律する事項を定めたものであります。  請求権問題の解決及び経済協力に関する協定は、両国及び両国民の財産及び請求権問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認するとともに、両国間の経済協力を増進するため、韓国に対し、三億ドル相当の生産物及び役務の無償供与、二億ドルまでの長期低利貸し付け等を定めたものであります。なお、韓国に対する三億ドル以上の民間信用供与が期待される旨の交換公文が、参考文書として提出されております。  在日韓国人法的地位及び待遇に関する協定は、戦前からわが国に居住している韓国人及び一定範囲直系卑属に対し、申請により永住を許可すること、それらの者に対する退去強制事由及び待遇について規定しております。  文化財及び文化協力に関する協定は、両国民間文化協力、及び、その一環として、一定文化財韓国政府に引き渡すことを定めたものであります。  紛争解決に関する交換公文は、別段の合意がある場合を除くほか、外交経路を通じて解決できない紛争は、合意する手続に従い、調停によって解決をはかることを定めたものであります。政府説明によれば、ごの交換公文は、竹島問題の解決をはかることを目的としたものであります。     ―――――――――――――  次に、三法律案は、それぞれ関係協定実施に伴い必要となる事項を定めたものであります。  漁業協定関係法律案は、協定第一条1の漁業水域は政令で定めることなどを定めたものであります。  請求権及び経済協力協定関係法律案は、協定規定に基づき、わが国にある韓国または韓国民財産等に対してとるべき措置として、わが国及びわが国民との関係において、一定の場合を除き、韓国または韓国民の債権及び担保権を消滅せしめること、韓国または韓国民の物を保管者に帰属せしめること等を定めております。  法的地位及び待遇協定関係法律案は、出入国管理令特別規定を設けるものであって、協定で定める韓国人は、申請により永住を認められること、その手続協定永住者に対する退去強制事由等を定めております。  以上の諸案件は、十一月十二日衆議院から送付され、十三日の本会議におきまして本特別委員会の設置を決定し、十九日の本会議において趣旨説明及び質疑が行なわれ、翌二十日、本委員会に付託されたのであります。  委員会は、二十日、委員長及び理事の互選を行ない、二十二日、提案理由及び補足説明を聴取し、二十四日から質疑に入りましたが、二十九日には、大阪及び福岡で、いわゆる地方公聴会を、また十二月一日には公聴会を開いたほか、十二月四日までの間、日曜日を除いて連日委員会を開き、政府側から、佐藤総理大臣椎名外務大臣、その他関係大臣及び政府委員の出席を求めて、慎重なる審議を行なったのであります。  以下、委員会におけるおもなる質疑応答のうち、まず、佐藤総理の国政についての基本姿勢日韓条約性格政府外交方針両国政府間の条文解釈食い違いの問題、条約締結に際しての国会軽視の傾向、この四つの総論的質疑について申し上げます。  第一は、「今回の衆議院における強行採決は、総理が組閣以来再三表明してきた政治姿勢と矛盾するのではないか。与党総裁として、どのように責任を感じているか。」との質疑に対し、総理から、「かように異常な処置をとらざるを得なかった事情について残念に思っている。話し合いは十分尽くすべきだが、民主主義のたてまえから、最終的には多数決原理によらざるを得ない。議会政治の円満な運用のために、与野党の協力を期待する。」との答弁がありました。  第二に、日韓条約性格政府外交方針について、「政府平和外交を口にしながら、アジアの平和のために、いかなる努力をしたか。日韓条約は、これとどうつながるのか。」との質問に対し、「東南アジア諸地域への技術援助などにより、平和に徹する外交を展開している。隣国としては、ソ連、中共北鮮もあるが、日韓正常化は、そのスタートである。」との答弁がありました。また、「日米安保条約に基づく軍事均衡政策は危険である。不可侵条約締結非核武装宣言等により緊張緩和につとめるのが、わが国の安全を守る道と思わないか。」との質問に対し、「不可侵条約だけで安全を確保できぬことは、すでに経験済みであり、安保条約こそ安全確保のためのものである。また、非核武装宣言は、一国だけでは効果がない。核問題の国際会議に招かれれば、核拡散防止非核保有国安全保障等について意見を述べることにしたい。」との答弁がありました。また、「中国国連加盟を阻止する重要事項指定方式提案国となるのは、アジア平和確保の上から問題ではないか。」、「中国国連に入れると同時に、国府議席も確保する方向で、米国AA諸国意見を交換すべきではないか。」との質問に対し、「中国加盟は国際的に慎重にきめられるべきで、重要事項指定提案国となることは、隣国立場から当然の措置である。」、「流動する世界情勢を絶えず注視するが、中共国府も、「一つ中国」を主張している以上、「一つ中国一つの台湾」方式は困難である。」との答弁がありました。また、「韓国が南ベトナムに派兵をしている現時点で、特に急いで日韓条約を結ぶことは、軍事同盟疑惑を深める。現に韓国側は、日韓正常化は韓・日・米三国の提携を強化すると言っていることをどう思うか。」、「日韓交渉妥結促進のため、米国政府日韓両国に、しばしば圧力をかけた事実があるではないか。」との質問に対し、「韓国がいかなる期待を持とうと、日韓条約軍事同盟ではない。交渉は十四年も行なわれたもので、特に急いだことはない。」、「長年の交渉過程で、米国その他の友好国が関心を示した事実はあるが、米国圧力を受けるようなことは全くなかった。」との答弁がありました。「基本条約で、国連憲章原則により緊密に協力することを特に規定したのは、国連警察行動に対する自衛隊の協力にまで発展するおそれはないか。」との質問に対し、「国連軍に対する日本協力は、吉田・アチソン交換公文国連軍協定によりすでに負うている以上の義務を負うことにならない。」との答弁がありました。「政府は、海外派兵があり得ないとする根拠を憲法に置いているが、与党内の改憲論や、米中対決激化等に押されて、第九条を改正することになるのではないか。」との質問に対し、「憲法改正について、いまだ結論を得ていないが、第九条の平和主義の精神は守り抜く考えである。」との答弁がありました。また、「旧条約は、圧力による不平等条約ではなかったか。いま友好関係を結ぶというが、政府の態度は過去に対する反省に欠けているのではないか。」との質問に対し、「過去に不幸な関係があったことを深く反省している。」との答弁がありました。  第三は、韓国国会議事録等を引用して、「韓国管轄権範囲、旧条約失効の時点、竹島問題の解決等に関し、両国政府間に、条約解釈食い違いがあるが、はたして合意が成立したと言えるか。」との質問に対し、「条約解釈は、本来成文そのものによるべきであり、韓国当局国内向け説明を意に介する要はない。両国政府間に完全な合意を見たから調印した。」との答弁がありました。  第四は、「法的地位協定合意議事録民間信用供与に関する交換公文等は、当然国会承認を求めるべきである。また、審議に必要な資料提出要求に対し、政府は十分にこたえていない。かかる事実は、条約締結に関し、政府国会軽視のあらわれではないか。」との質問に対し、「形式のいかんを問わず、法律事項財政事項、その他政治的に重要な事項規定する国際取りきめは、憲法第七十三条三号により、国会承認を求めることにしている。日韓条約についても、従来と異なる取り扱いはしていない。」、また提出できない資料に関し、「韓国政府の了解を得られないもの、純然たる行政部内の取り扱い基準等は公表できない。」との答弁でありました。  次に、条約協定等、及び関係法律案についての各論的質疑といたしまして、  まず、基本条約関係では、すでにあげた質疑のほか、「日韓間の国交正常化にあたって、なぜ基本条約の形式をとり、また、第三条で国連決議百九十五号(III)を引用する必要があったのか」、「条約上、日本北鮮との関係はどうなるか」との質疑に対し、「法律的には必ずしも条約を必要としないが、日韓間の歴史的関係等考え条約の形をとった。また、韓国政府基本的性格について疑念の余地を残さないため、国連決議を引用した。この性格から、管轄権範囲がおのずと示されるのであって、領土または条約適用範囲を定めたものではない。」、「この条約は、北鮮については何ら触れておらず、北鮮との関係は、従来どおりケース・バイ・ケースで処理する」との答弁がありました。  次に、漁業関係では、「韓国では李ラインは健在であると言っているが、撤廃されたのか」、「協定有効期間六年のあとには復活することはないか。」、「李ライン関係国内法を、協定と抵触する部分だけでも改定させるべきではないか。」との質疑に対し、「協定により、公海自由の原則確認され、また、取り締まり旗国主義によることとなるので、拿捕のおそれはなくなり、李ラインは実質的に撤廃されたことになる。」、「漁業協力により、韓国漁業は向上するであろうから、韓国側協定を解消するようなことは考えられない」、「関係国内法は改定させる方向で努力したい。」と答弁し、「韓国漁業水域の基線の引き方や、入り会い権放棄等は、譲り過ぎではないか。」、「対韓漁業協力九千万ドルの一部について低金利措置を講ずることとしているが、一方では、四千隻をこえるわが国沿岸漁業出漁隻数を千七百隻としているなど、国内零細漁民に対する保護に欠けるのではないか。」、「韓国水産物輸入増加要求にどう対処するか。」、「拿捕漁船補償は免税とすべきではないか。」などの質疑に対し、「入り会い権放棄等は、両国間の国交正常化及び両国漁業の繁栄のため、大局的見地から譲ったものである。」、「千七百隻は、共同規制水域内で同時に操業し得る隻数であり、ほぼ実績を確保したものである。」、「漁業近代化構造改善策につとめている。輸入方式等については、零細漁民に悪影響を及ぼさないよう考慮する。」、「拿捕漁船に対する給付金は、免税を含めて考慮中である。」との答弁がありました。  次に、請求権及び経済協力関係では、「個人の請求権まで経済協力にすりかえたのは不当ではないか。無償三億ドル、有償二億ドルの根拠いかん性格は何か。」、「個人の請求権には憲法政府補償義務があるのではないか。」、「北鮮との請求権の処理はどうなるのか。」等の質疑に対し、「時間的経過朝鮮戦争等により、請求権の法的、事実的関係が究明できないので、大局的見地から経済協力と並行して解決することとしたが、わが国財政能力及び諸外国分離国家に対する援助の例等から、かかる金額とした。両者は事実上関連はあるが、法的関連性はない。」、「憲法上、在外財産補償義務はないが、審議会の答申をまって別途政治的に結論を出す。」、「北鮮との間の請求権の問題は残っているが、交渉する考えはない。」との答弁があり、また、「日本経済侵略過当競争両国の汚職、利権化を生むおそれはないか。」、「韓国の低賃金労働及び低廉な農水産物等の輸入で、日本労働市場及び零細な農漁民中小企業を脅かす危険はないか。」等の質疑に対し、「韓国では、資金管理委員会や公正な入札制度が設けられ、わが国も、汚職、過当競争を排除するために万全を期する。」、「現行法令上、韓国一般労働者の導入はあり得ない。また、農水産業中小企業等については、構造改革等をはかりつつ、保護育成する。」等の答弁がありました。  次に、法的地位及び待遇関係では、「協定永住者とそれ以外の朝鮮人との間に、待遇の面で、いかなる差異が生ずるか。」との質疑に対し、「両者の差があまりかけ離れることは好ましくない。協定永住者に対して一定待遇を与えることが日本政府義務とされる点が異なるが、退去強制事由を除き、一般的な処遇については大差はない。」と答弁し、「韓国人朝鮮人に対しては、過去の歴史にかんがみ、血の通った政策をとるべきである。朝鮮人についても、日本教育を希望しない場合は、自国民のための教育を積極的に許すよう好意的に検討すべきではないか。」との質疑に対し、「日本では日本教育が行なわれるべきであって、原則として外国人の学校は認可しない方針である。在日外国人が自国民のために行なう教育は、反日的なものでない限り問題はないが、わが国がこれに積極的な保護を与えるかいなかは別問題である。」との答弁がありました。また、「外国人登録証に記載された「韓国」は、今後国籍とみなし、朝鮮籍への再書きかえは認めないという政府統一見解は、従来単に符号だと信じて「韓国」に書きかえた人々を救済できないのではないか」との質疑に対し、「日本政府としては、外国人国籍変更を決定する立場にない。ただし、権威ある証明書が提示され、あるいは手続上の誤りによったことが明らかな場合は、変更を認め、また、人道上の事由ある場合は個々に検討する。」との答弁がありました。  次に、文化財及び文化協力協定に関しては、「この協定は、文化協定というより、文化財引き渡し協定と言うべきではないか。引き渡される書籍は、価値がないものばかりだとも聞くが、政府は誠意をもって臨んだか。」、「民間文化財引き渡しに報償を考えてはどうか。」との質疑に対し、「文化財引き渡しについては、韓国に同類のものがあるかいなかの点、及び、学術研究上の必要の二つを基準とした。」、「民間文化財引き渡しについては、今後報償を払う必要もあり得る。」との答弁がありました。  次に、竹島問題に関しては、「韓国側は、あくまで自国領土とし、紛争解決交換公文の対象にならぬと言明している。韓国実力占拠を続けている以上、事実上放棄したことになるのではないか。具体的な交渉方針及び成算はあるのか。」との質疑に対し、「両国の主張が明らかに食い違っており、また、ほかに両国間の紛争もないことから、これが交換公文の対象として解決さるべきものであることは明白である。日韓友好という背景のもとに、あらゆる機会を活用して、解決のために努力する。」との答弁があり、また、「韓国竹島占拠による漁業上の損失に対し、補償すべきではないか。」、「韓国竹島専管水域設定する場合、わが国もこれを設定して、漁業協定上の紛争として、話し合いのきっかけをつくってはどうか。」との質疑に対し、「補償すれば領土権放棄ともとられるので、補償を行なう考えはない。」、「専管水域設定等については、どうしたら現状に即応した措置がとられるか検討中である。」との答弁がありました。  その他、質疑の詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  十二月四日の委員会において、植木委員から、質疑打ち切り直ちに討論採決を行なうことの動議が提出され、多数をもってこれを可決し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、次いで採決の結果、多数をもって、日韓基本関係条約等締結について承認を求めるの件を承認すべきものと決定し、同じく多数をもって三法律案を原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告をいたします。(拍手、発言する者多く、議場騒然
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 質疑の通告がございます。順次発言を許します。森元治郎君。     〔森元治郎登壇拍手
  5. 森元治郎

    森元治郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました日韓条約案件について、若干の質問をいたします。  ただいま草葉委員長代理――われわれは、まだ委員長代理になったことを知らないのでありますが、委員長代理から、委員会における経過並びに結果の御説明がありましたけれども、委員会では、もう単に「委員長」ということばだけで、質疑打ち切りもなければ、討論採決もなかったし、委員長にこの委員会の結果の報告書作成について委任をしたこともなかったのであります。まことに暴挙というほかはないのであります。こういう重大な条約が、衆議院でも暴力のもとに採決が行なわれ、参議院でも、それを上回るような、ふかしぎなことによって通過した、可決されたということについて、私は非常に将来に不吉な影を持つものだろうと思います。総理大臣はこの点についてどういうふうにお考えになるか、まずお伺いをいたします。    〔議長退席、副議長着席〕  ところで、皆さん、この条約がいよいよ効力を発生しますと、たちまち条約違反の第一号の発生が待ち受けております。それは漁業協定第一条からであります。この協定第一条によると、締約国は、自国沿岸から十二海里までのところに排他的な漁業専管水域設定することをお互いに認める、相互に異議を申し出ないということになっております。韓国政府は、竹島は自分の領土であるから、ここにこの漁業水域設定すると声明をしております。よその国の領域に専管水域を設けるというのでありまするから、歴然たる協定違反を構成するわけであります。一般紛争交換公文によって解決すると政府は言っております。もっとも竹島も入るそうでありまするが、しかし、事、漁業に関しては、第九条によって、協定解釈実施についての紛争解決には、まず外交交渉で、それでもだめならば仲裁委員会にかけると、特に詳細に規定をいたしております。国交正常化の第一歩からたいへんな局面にぶつかるわけであります。政府は、韓国がその権利を行使することがわかれば、漁業協定規定に従って直ちに外交談判を始める用意があるかどうか。また、竹島自国であると信ずるならば、その沿岸専管水域権利を行使すると宣言をされないのか。紛争は自己の正当な権利を主張して争うところに解決があるのであります。外務大臣答弁において、領土権が確立していないから、そんな専管水域なんかでき上がるはずがないというような、評論家みたいなことを言っておられますが、これでは放棄に通ずるものであります。外務大臣の所見を伺います。  ところで、竹島領土権についてでありますが、私は、大平外務大臣時代にも、また、本院における提案趣旨説明に対する私の質疑においても、竹島日米行政協定に従ってアメリカに提供した事実を示して、政府答弁要求しましたが、なぜか答弁がないのであります。まことにふしぎに思われますので、この際、政府にしっかりとただしたいと思います。日本政府は、昭和二十七年六月二日、日米合同委員会を通じて竹島アメリカ軍爆撃演習場としての使用に合意しました。この日は李承晩大統領宣言より五カ月のあとでありますから、竹島李承晩ラインの中に組み入れられた事実をアメリカも承知のはずであります。それに、この区域の点については、演習場として一日二十四時間使う、となっております。これは外務省告示にも掲載をされております。しかも、翌年の二十八年三月十九日、同委員会においては、アメリカ軍竹島爆撃場をもはや必要としなくなったので、これを解除することに同意したと、外務省告示に出しております。アメリカ軍は、日本領土だから、合同委員会を通じて施設・区域の提供を求めたことは明らかであります。日本領土最終決定平和条約によってであります。竹島は除かれております。竹島日本から放棄する中には入っておりません。日本に残されおります。政府は、なぜにこの事実を援用して韓国のあやまちを正さないのか。竹島については、数十回の抗議の応酬をやったということになっておりますが、外務省から日韓特別委員会に出されました両国政府間の往復口上書、この参考資料にも、この事実は載っておらないので、いよいよ疑惑は深まるのです。そこで御質問申し上げまするが、なぜアメリカ見解をただし、その正当性証明を求めないのか。一体、求めたことがあるのか。もし求めないとすれば、その理由は何か。求めて、回答はあったかどうか。その内容を明らかにすべきであります。アメリカには当然発言すべき義務があると思います。なぜ沈黙を守っているか、了解に苦しみます。アメリカ国務省は、韓国要求にこたえて、昭和二十七年四月二十九日付で、平和条約第四条――例の請求権処理に関してその見解を、平和条約起草者としての立場から明らかにしております。したがって、竹島についても長い間の日韓間のいざこざがあるのでありますから、アメリカは、平和条約起草者として、また、みずから安保条約に基づく行政協定日本と貸し借りをした関係上、事情を明らかにすべき政治的責任があるはずであります。そうすれば、一ぺんに解決するはずであります。一方、当時、韓国の活発な対米工作、対米平和条約工作、ことに日本関係でありますが、その工作を展開していたことでありまするから、アメリカに何らかの工作をして、表ざたにしないようにしたとも消息通は伝えております。真相を明らかにすべきであります。なお、竹島は、日米安保条約に言う「日本国の施政の下にある領域」であると思うが、外務大臣から見解を承りたい。また、韓国武装兵の占拠については、これは安保条約に言う協議を構成するから、当然、条約実施という点から、第四条による「随時協議」をしてしかるべき事項と思うが、こういう協議をしたことがあるかどうかを、あわせて伺います。李承晩ラインというようなものは、近隣に、はなはだ迷惑でありますから、これはやめてもらうことが当然であります、政府は、今回の漁業協定によって、漁業に関する限りは実質的に解消した、あとは国防ラインといい、平和ラインといっても、われわれの関知するところではないと言ってあります。ところが、昭和三十八年に、韓国日本の運輸省との間に、日韓間の航空情報区の取りきめをやっております。この航空情報区区分の境目がちょうど李承晩ラインに当たっておるのであります。空の李承晩ラインを認めたことはどういう理由でありましょうか。また吉田・アチソン交換公文というようなものもありまして、日本国連軍に対して日本の国内及びその付近で国連軍を支持し協力するという約束がなされているところから見て、将来何かしら、この空の李ラインというものが、日韓あるいは日本国連韓国に駐在する国連軍との軍事的協力一つの境界線というようなものになってくるんではないかと思います。この点について、運輸大臣と防衛庁長官にお伺いをいたします。また総理は、特別委員会で、核兵器を持てるようになった中共政策の脅威を説く一方、平和に徹すると言いながら、憲法九条についても、その精神はあくまで貫くが、必ずしもあの条文をそのままではないというように、憲法改正に強い意欲を示唆しました。そうして、今度は、核兵器開発能力のある国にこれを保持しないとする国の安全を保障してもらうという方針を打ち出しております。裏を返せば、その保障が得られないとすれば、自分で保障を考えなければならぬ、自分で開発しなければならぬと読み取れるような、そういう核の拡散防止政策を見せ始めております。佐藤外交は、脅威とか不安とかいうことを取り上げると、すぐ自分の国の防衛ないし軍事的対抗手段に目を向けますが、外交的手段によって緊張緩和の努力をするという様子が全然ないことは、まことに遺憾であります。日韓条約がこんな心がけで結ばれるとすれば、条約そのものに直接軍事的要素がなくとも、やがては、さきの防共協定から三国同盟、そして世界戦争に入っていったように、遠からず日韓間の軍事的のつながりが強まり、軍事協定にまで発展してくると思うが、いかがでありましょう。日韓条約軍事同盟ではないと言うが、なるほど条文には具体的には書かれていません。しかし、私の最も心配するのは、条約を運営する人、すなわち、佐藤総理の、力でものごとを片づけるというその心と、情勢に流されていくその姿が、最もおそろしいのであります。私は、条約発効後の朝鮮半島はなかなかやかましい情勢になると思います。国連主義と総理は言いますが、古い決議や決定を墨守することではなく、新しい事態には新しいやり方で行くべきであります。最近、国連の信託統治委員会においても、民族自決と基地の撤廃ということが、たいへん多くの票数――七十六票というような票数で決定もされておりますし、韓国承認した七十二の国の中にもすでに十一カ国が中共承認しているという事態を頭に入れなければなりません。日本は非常任理事国になろうとするのでありまするから、国連でも、もっと指導的に活動しなければなりません。その一つとして具体的に、北鮮の代表も国連の朝鮮問題討議に参加させるように働きかけなければなりません。このことは、決して韓国に非友好的な行為にはならないと思います。真の友情的な行動であろうと思う。国連軍の撤退も望ましいものであります。すぐにできなければ、私は、現在の安定した対峙状態にある南北の兵力を削減する方向に知恵を働かすことができるはずだと思います。ただ敵視のみでは局面は打開ができません。話し合いの余裕ある姿勢を見せれば、中共北鮮アメリカが口をきくチャンスも生まれてこようというものであります。硬直した外交は平和の敵であります。朝鮮問題の解決国連方式一本というのも、まことに芸のないととで、もっと柔軟な政策をなお政府は再検討すべきではないかと思います。外交とは、広く、遠く見渡してやるべきものでありまして、この条約交渉にあたって、北鮮への配慮や含みある態度がとれなかった佐藤外交は、大失敗であります。佐藤総理見解を伺います。  次に、条約形式と内容について特徴点をあげつつ若干伺います。  この条約の特徴の第一は、韓国はいかにして多く日本から取るか、日本はいかにして出し分を少なくしてまとめるかという戦いであった点であります。第二は、いかにして韓国が朝鮮におけるただ一つの代表政府であるかを強く印象づけるかに、日本側が苦心した点であります。第三は、国家間に権利義務関係を生ずる条約締結にあたっても、三十余年の迷惑をかけてきたという負い目があるのでしょう、日本政府は情と理がどうもごちゃごちゃになってしまいまして、種々の疑惑の多い、はっきりしないものをつくり上げてしまいました。佐藤総理は、満点ではないがベストと言っておられます。これはただ案文をうまくつくったようで、私は落第であって、しかも時限爆弾のような内容を持っているものと思います。第四点は、日韓親善を口にしながら、元来は、終戦で総司令部から日本韓国と接触を持たされたのであります。こちらの意思で韓国と結んだのでもないのに、盛んに日本韓国二十年の関係というようなことを言っておりまするが、こういう経過から見て、日本の熱意は最近になって強いだけであって、初めはないのでありまするから、交渉も、もたもたした。そこを韓国につけ込まれて終始押されっぱなし。だから、ある意味では、強制された条約、ディクテートされた条約といえるような姿であります。そうでしょう、条約形式を見ても、共同宣言でいこうと言えば基本条約でいこうと言われてしまうし、その他のいろいろな点を見ても、さんざんな、ていたらくであります。条約などについて振り返ってみる場合に、わからないところがたくさんあります。日韓食い違いが目立つ、事実関係がわからない、これは政府が、必要な資料、たとえばおもなものとして韓国国会の議事録、請求権関係八項目の内容など、がんとして公表をはばんだために、われわれは架空の質問をしなければならなかったのであります。韓国国会では、懇切に条約交渉経過内容について報告をしておりまするが、日本の場合はまことに秘密外交に終わっております。  そこで、条約協定の内容について、重ねてこの際、念押しをして御質問をいたします。順序はいろいろ問題で前後いたします。韓国政府の合法性を証明するために国連決議を援用しておりまするが、これはその決議の必要個所全文を援用しなければ意味をなさない。政府提出資料を見ましても、アメリカ韓国と結んだ条約でさえも必要全文を引用しております。必要全文を引用してない国の場合でも、南半分の政府であることを明記して、一点の疑いをはさむ余地がないようにつくっております。これは決議の改ざんであります。外務大臣は一体どういうふうにお考えになりますか。  その次は、旧条約などの無効の確認の問題であります。無効は朝鮮に対しての無効であるから、そのように法理論を組み立てるべきであるにもかかわらず、ことさらに韓国の独立の日にした、これが北鮮にも及ぶかのような理屈をつけたのでありますが、これは、政権があって民衆のあることを知らぬやり方であります。総理は共産主義がきらいだから北鮮無視の態度をとっておりまするが、北鮮には千数百万の住民が南と同じ同族で、親戚、友人もたくさんおるわけであります。この分け隔ての、いやがらせに似たやり方を見て、この北の千数百万の彼らは、いかなる感情を持つと考えるか、外務大臣の御意見を伺います。  文化協定というものもありますが、皆さんが指摘したとおり、まことにお粗末で、メモというにすぎない内容の、寒々としたものであります。これは、条約全体のていさいをやるためにつくったものとしか思えません。  請求権の問題は最もむずかしい問題でありまして、池田・朴会談で、法的根拠のあるものについてやると言いながら、法的関係、事実関係もつかみにくい、また朝鮮動乱もあったので、どんぶり勘定の八億ドルの経済協力になったといいます。しかし、どうしてこうなったかは、とうとう、この国会で、どんなに攻めても、政府説明すら拒否したのであります。元来、本件は平和条約第四条に源を発して交渉を始めたのに、最後には、それとは全く離れて、財産請求権に関する問題、「権」に関する問題の解決ということで、すりかえてしまったのであります。国民の血税から支払われるのに、このようなことにしたことは、日本外交の汚点であると言わなければなりません。政府は、条約の効力発生以後は、この間の事情を明らかにするつもりか、このままやみに流してしまうつもりか、外務大臣に伺います。  なお、大蔵大臣には、この財産請求権交渉において相互に提示し合った金額の試算、あるいは非公式に見せ合った内容を、この際ここに明らかにしてもらいたいと思います。  交換公文というのが、くっついておりまするが、これは、どう見ても、日本側から頼んでつけてもらったとしか思えません。韓国は、竹島は自分のものである、日本のものとは断じて認めないと、がんばるので、とにかく何とかしてこれを懸案にしておきたいために、この条項をつくった。韓国のほうでは、おそらく、この交換公文をつくってもいい、その中には竹島は入っていないのだから、そういう意味でわれわれは了解する、というふうにして、つくらしてもらったようなていさいであります。  なお、韓国という国の領土、領域は、とうとうこの国会では明らかになりません。みんな、くろうとばかりではありませんから、これから条約を結ぶ相手国の韓国というのは一体どことどこまでが領土で、人口はどのくらい、ということを知りたい。また、われわれも、国会が終わって、説明をする場合に困りまするから、はっきり、領土、人口を教えていただきます。そうすれば、この韓国というものが、南半分だけであるのか、全韓半島の政府であるのかが、はっきりいたすと思います。政府は、北鮮とは、これからそのつどの外交をやると言っております。韓国は、この条約で、日本が北と関係を結ぶのを阻止したと言っております。これは、お互いに話し合って了解をつけての発言か、あるいは日本だけの、かっての発言かどうか。何らかの件で日本がオーケーしたのを、韓国から横やりが入った場合には、やめるのか、あるいは相談をして処置をするのか、この間の関係を明らかにしてもらいたいと思います。  朝鮮人は、さきに日本に併合され、そうして今度は戦争の結果、日本から離された。いずれも、本人の意思にかかわりはありません。今度、韓国籍を取った者は法的地位を受けられるが、そうでもない者は非日本人、国籍なしとなるわけであります。これは一律平等に待遇してやってしかるべきだと思います。ことに、もし北朝鮮が、日本にいる北朝鮮系の朝鮮人の利益を、どこかの第三国、たとえばチェコとかポーランドとか、あるいはスイスとか、そういう第三国に依頼して、その利益擁護の責任をとってもらいたいというような意向があった場合に、政府はどういうふうに措置するつもりでありますか。  また、農林大臣に伺いたいことは、これだけ長い交渉をやってきながら、韓国の領海というものは何海里をとっているのか、とうとうつかんでおらない。このようなことになるならば、将来、六海里であり十二海里であり、いろんなめんどうなことが起こってくると思います。どうしてこういうことを、はっきりとらなかったのか。また、入り会い権放棄がありますが、私は、この前もこの席で申し上げましたけれども、非常に残念なことは、こういうふうに、せっかく長い時間をかけて確立した国際慣行とか法規とかというようなものは、ほんとに大事に持っていかなければならぬ。このことは、日本憲法の九十八条にもその精神が書いてあるわけでありますが、こういうことを簡単に捨ててしまったということは、何としても醜態でありまするから、あらためて理由を、ここに、はっきりしてもらいたいのであります。  もう一つは、これも、この前申し上げたんでありますが、重ねて政府の間違った漁業交渉の一点を申し上げますれば、たくさんの魚がとれる黄金漁場、済州島の両側というようなところ、ああいうところでは、線一ぱいに日本の船が操業を続けるでしょう。線一ぱいで網を揚げたのでは、韓国専管水域に入って、たちまちつかまってしまいまするから、どうしても韓国専管水域の中のほうへ日本の船が行けるように、アローアンス――許容量といいますか、線一ぱいに魚をとってきた船が、その線で網を揚げる、それを船に収容する、流されて韓国専管水域に入る、入っても、漁撈ではありませんから、それは差しつかえないというような、それくらいの考えがなかったということは、まことにこの漁業交渉一つの大きな欠陥であろうと思います。  なお、終わりに、アメリカの極東外交日本との関係について伺います。デモクラシーの国アメリカが行くところは、南ベトナム、韓国、どうしてこういう国に民主主義が育たないのでしょうか。議会制民主主義があらわれずに、軍事独裁政権がいよいよ強化され、民衆は、生活苦と戦争の危険にさらされ、一向に国家として立ち直れないのであります。これに反して、北鮮、北ベトナムは、着々と見るべき発展をしている。この点は、深い反省と研究の題目であろうと思います。何といっても、民族の自決、独立、自由というものは、民族にとって、ほんとうに大事なもので、これなくしては、力強い発展をしていくことはないのであります。アジア外交を推進するとき、政府はこの事実を十分に胸にして当たる必要があることを警告しておきます。  いよいよ、この条約は、本日一ぱいをもって自然成立するわけでありまするが、全体の条約審議を慎重にやったつもりでありまするが、どこから見ても、直ちにこれで善隣友好になるとは思いません。かえって、あだになり、非常な心配なことが起こることを憂慮するものであります。  これをもって、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  6. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  特別委員会採決につきまして総理はどんな考え方をしておるかという第一のお尋ねでございますが、私は、特別委員会におきまして、衆議院における特別委員会採決、さらに、また、本会議採決の模様なぞについて、私の感じました点を率直に御披露いたしまして、どこまでも民主政治を守る、また、議会政治、これを貫く、そのために、これらの事項についてまことに残念だと、かような実は表現をいたしました。参議院におきましても、また同じような事態が起きたと、重ねて御批判をいただいております。私は、皆さまと、ともどもに、まことに残念しごくな事態だと、かように考えます。この上とも、一そう反省をいたしまして、徹底して民主政治また議会政治を守り抜く決意を一そう新たにしたような次第でございます。皆さまの御協力を心からお願いいたします。  次に、私の、憲法の精神を貫くという所論につきまして、どうも九条をそのまま守らないで、何か改正の意図があるように示唆したと……。それはともかくとして、この憲法の精神を貫く、これは佐藤の考えだが、同時に、外交手段によって緊張緩和の道を開くべきではないか、かような御指摘があったように思います。私も、その点におきましては、森君と同じ考え方を持っております。憲法の精神を貫くということは、申すまでもなく、外交手段で、あらゆる機会に――たとえば非核武装にいたしましても、また、その他の問題におきましても、この緊張緩和の道を開くべきものだ、かように考えます。この点では同一の考え方であります。この考え方からいたしまして、今回の日韓協定は軍事協定ではないか、さらに、これが防共協定、このような点から軍事協定へ進む危険があるのではないか、かように言われるのでございますが、これも、特別委員会でしばしばお答えしたところでございますから、重ねて多くを申しませんが、私は、今回の日韓条約並びに諸協定は、これは申すまでもなく、平和の協定でありまして、それより以上の何ものもないのだということをしばしば申しましたので、ただいま言われまするような、軍事協定へ進むような危険は絶対にないと私は確信しております。しかし、皆さま方の御注意もあることでありますから、一そうこれが徹底するようにいたしたいものだと思います。  次に、北鮮の問題につきましていろいろ言及されました。そして、私がとっております外交政策についての御批判があったのであります。北鮮が将来、国連総会等に招かれるというようなこともあるだろう、また、招聘すべきではないかという積極的な意見を述べられたのでありますが、そのためには、北鮮自身が、やはり国連の権威を十分尊重する、かような事態になってくれば、ただいま行われるような北鮮を招聘するような事態も起こるのではないだろうか、かように思います。とにかく、国連の権威を十分尊重するという、その態度が北鮮に対しては望ましいのでございますので、この点も、つけ加えて申し上げておきます。また、今回の日韓条約では、北鮮につきましては何ら協定をいたしたわけではないのでありますから、在来からの北鮮日本との関係は、そのまま続いておるわけでございます。この点は誤解のないように願いたいと思います。  以上お答えをいたしまして、最後に、森君の見方からの警告を政府に対して発せられたようでございますが、それらの点につきましては、十分伺っておきます。また、その他の問題につきましては、それぞれ担当大臣からお答えすることにいたします。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  7. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 日韓協定は軍事協定ではないかということに関連して、防共協定のように、漸次軍事協定に進む危険はないかという御質問に対して、大体の構想は、いま総理からお答えになったのでありますが、やや補足して私は申し上げてみたいと思います。  防共協定は、いわゆる攻守同盟というような高度の軍事協定では、もちろんありませんけれども、いろいろの情報を交換する、その中には軍事的な情報が多分に含まれているというような性質のものでございましたので、これは当初から軍事協定的な性格を持っているものであったのでありまして、当然、本格的な用事協定に進むという経路をたどったわけであります。今回の日韓条約は、これはもう、全然軍事協定的な性格はどこにもない、純然たる平和的な条約でございます。そのような危険は毛頭感じられない、こう申し上げておきます。  それから、今後の外交は、国連主義外交というよりも、新しい時代、情勢に即応した新しい方針がとられるべきではないか、こういうような意味での御質問であったと思うのでありますが、どんな場合でも、いつでも、新しい情勢には、やはりこれに即応した新しい行き方というものを考えなければならぬ。(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり)それは、あたりまえのことでありまして、それを国連の舞台を中心にしてやっていこう、こういうのが、いわゆる国連主義の外交でございますので、決して、言われているようなことが、国連主義外交と矛盾するものではない、両立するものであると、かように考えます。  外国軍隊の長期にわたる滞在はいけない。朝鮮においてできるだけ兵力を削減して、そうしてこれと相対峙している北の軍隊も、これに比例して軽減するような情勢をつくるべきである、こういうようなお話でございました。これは、原因と結果をあべこべにしているものでありまして、けわしい情勢下において、まず解決すべきものは、その根本的な態度であります。こういうふうに考えるのでありまして、ただそれを放置して、軍隊を減らしたから北も軍隊を減らすだろう、さらに減らせば向こうもさらに減る、おしまいにはなくなってしまう、というようなことは、これは全然現実無視の御議論ではないかと、かように考える次第でございます。  日韓条約は、譲歩に過ぎたやり方である、不合理である、ということでありましたが、これは、韓国でも、譲り過ぎたじゃないかということを言っている。やはり、一国と一国との条約でございますから、お互いに互譲の精神をもって譲り合う、どっちも満足しておらぬということは、すなわち譲り合ったということになるのでありまして、決して一方的に譲ったものではない。かように考えておる次第でございます。  なお、竹島問題でございますが、これは、アメリカにかけ合って、そうして証明してもらったらどうかというお話でございましたが、アメリカ証明してもらう必要はない。もう日本の固有の領土であるという、われわれは強い信念を持っておるのでありますから、他国へ行ってそれを証明してもらうというような、そういうなまぬるい考え方を持っておらぬということを申し上げておきます。  なお、専管水域の問題でありますが、これは、時期を失せず、しかも慎重に、この問題については対処したいと考えております。  なお、文化財文化協定については、きわめてずさんではないか、ほとんど何も内容がない、こういうお話でございました。文化財の返還の問題は、向こうから提起されましたけれども、これを実は返還する義務は毛頭ないのでございます。ただしかし、政府の管理している範囲内において、新しい国として発足したわけでもありますから、韓国の文化問題に関して、誠意をもってこれに協力する、こういうことで、これに引き渡すことにいたしたのでございまして、もともと義務があって引き渡すものでございませんから、その点を明記した。なお、文化の相互交流あるいは協力というような問題は、漸次今後発展してまいるものとわれわれは期待している次第であります。  それから第三条は、国連決議の全文を引用しておらない、そのために、韓国政府、政権というものの姿が非常にはっきりしない、まことにはっきりしない、こういうような御疑問が提起されたのでありますけれども、これは、引用された百九十五条をよく熟読玩味していただきますと、その中から、その決議された当時においては三十八度以南、その後、朝鮮事変がありましたので、休戦ライン、今日においては休戦ライン以南が韓国政権の有効な管轄権の及ぶ範囲である、こういうことがはっきりいたすのであります。韓国は、全半島が韓国領土である、ただ、事実上北半分に及ばない、それは不逞のやからが、それを占拠しているからだ、というようなことを言うのでありますが、現実の支配している地域は休戦ライン以南であるということが、はっきりいたします。なお、その範囲につきましては、約十万平方キロ、その人口は約二千七百万でございます。  それから請求権の問題でございますが、請求権の問題につきましては、八項目につきまして――金額は記入しておりませんが、八項目の内容について資料提供をいたしておるのでございます。しかしながら、その内容についてこれを追及いたしましたら、法律上の根拠も非常に明確でない、事実も証拠も、全く時が非常にたっておるし、朝鮮事変というのがあって、いかにこれを精細に調べようとしても調べることが不可能であるというので、全体的にこれを追及することをあきらめまして、そして別途、無償三億、有償一億、この経済協力というものによって、韓国の新しい門出を祝い、さらに経済建設に協力しようということにいたしまして、そして請求権の問題は、完全かつ終局的に、これはもう解決したものというふうに、両国の間に合意が成立した、こういう状況でございますので、これはたびたび申し上げましたが、御了承をいただきます。  もう一つ、三億ドル以上の民間信用供与というものは一体何だ、こういう御質問のようでありましたから、追加して申し上げます。このほかに民間の自発的な信用供与というものが期待される。当初は一億程度ということでございましたが、だんだん情勢が進んでまいりまして、そして韓国においても五カ年計画を立案して実行に取りかかっておるというようなことで、その他、今回の折衝の間において、民間信用の部分として、漁業協力あるいは船舶協力というような話が出まして、それらのことを考えますと、まあ三億以上を期待するというほうが実際の情勢に適しているのではないか。しかしながら、それは決して政府が特別の責任義務を負うものではない。あくまで民間の問の自由な信用供与である。ただ、これらに対しまして、漁業協力等につきましては、あるいは船舶協力につきましては、特別、行政上の取り扱いの過程において、できるだけ好意をもってこれを促進しよう、こういうととが合意されておるようなわけであります。  以上申し上げまして御答弁といたします。(拍手)    〔国務大臣中村寅太君登壇拍手
  8. 中村寅太

    ○国務大臣(中村寅太君) 航空情報区域に関する質問にお答えいたします。  御承知のように、飛行情報区は、昭和三十八年に国際民間航空機構の場におきまして、国際民間航空管制の必要上から、全世界を通じて設けられたものでございまして、軍事的性格を持つものではございません。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  9. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私に対する御質問は、対日八項目、その日本側から提出いたしました資料、また数字を示せと、こういうようなお話でございますが、ただいま外務大臣から申し上げましたような経緯によりまして、日本側から、この請求八項目に対して数字をもって公式に交渉したことはございません。ただ、その中で郵便貯金みたいなものがありますが、これにつきましては先方からも数字が示されたのです。わがほうからはそれに対して質問をする、またわがほうの見方ではこうだというような数字を申したことはあります。しかし、あくまでもこれは非公式なものと御了承を願います。(拍手)    〔国務大臣松野頼三君登壇拍手
  10. 松野頼三

    ○国務大臣(松野頼三君) 航空情報区分につきましては、防衛庁所管といたしまして、日韓の間で取りきめた事実はございません。また、今日その計画もございません。(拍手)    〔国務大臣坂田英一君登壇拍手
  11. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) 漁業に関する水域におけるアウター・シックスヘの入漁権でございますが、この入漁権は、国際法上の先例は少なくないが、国際法上、確立、確定しておるものではございません。しかしながら、わが国としては、交渉の過程においてこれを認めさせるよう交渉を行なったのは、国際法上の先例によったものでありまするが、今次の交渉にあたりまして、李ラインの実質的撤廃、操業実態の尊重を主眼としてまいりましたが、ほぼ日本側の主張を通すことができましたものと考え韓国漁業の実情をも考慮して、大局的立場からアウター・シックスの権利をし主張しないことにいたしたわけでございます。たがって、憲法に違背するようなことはないと思います。  それから、次には領海についての問題でございますが、漁業につきまして、漁業水域を認める範囲漁業水城外における取り締まり旗国主義等を明確にしており、これ以外に漁業協定において特に領海に触れる必要を認めなかったわけでございます。もっとも、わが国の領海を三海里と主張しておることは申すまでもございません。済州島と韓国木土間の漁業水域については、広大な海域の主張をいたしましたのに対して、低潮線による漁業水域設定するわが方の主張を認めさせたのでありまするが、この際、本土及び済州島からの外郭基線の接触する両端に深い切り込みができるために、操業上の紛争の原因となるのをおそれること等を考慮いたしまして、暫定的処置として、その切り込みの一部の水域を、当分の間、韓国漁業水域に含ませることに合意した次第でございまして、相当長い間の交渉を経たものでございます。なお、このような点においての潮流の速い海域においては、潮の流れ等に十分注意をして操業することが必要であると考えられまするので、これが指導にあたっては、一そう適切を期してまいりたいと存じます。(拍手
  12. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 森君、答弁漏れがございましたら、御登壇の上、御発言ください。    〔森元治郎登壇拍手
  13. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣にお願いをいたします。  何回――これで三べん聞いても絶対に答えないのは、この竹島日米行政協定による施設、区域の貸し借りなんですね。どうして述べないのですかね。だから、ますます疑惑が深まるという……。なかなか椎名さんも、すっとぼけたような顔をしているけれども、頭がいいので、私が証明をしてもらうというような表現をしたところをとらえて、人に証明をしてもらわなくてもかまわないと――そういう私の意味ではなくて、日本領土として貸し――爆撃場としての貸し借りをした。日本領土だから、日本は貸す、向こうは借りたわけですね。使い終わったから返した。だから――財産請求権では、日本も、条約起草者としてのアメリカ意見を聞いて、個人財産請求はできないのだということになったわけです。昭和三十二年の十二月の末日に、そういうことになって主張を撤回している。聞くことは決しておかしくも何でもない。当然聞くべきで、条約起草者としてのアメリカに聞くのは決しておかしいことではない。おそらく、これは韓国がたぶん――私は想像でありますが、韓国は自分に不利なことであるので、アメリカに働きかけて、このことは伏せてくれとでも言わない限り、当然、日韓間をいつも心配しておるアメリカとしては、こうやって長い間けんかしているんですから、いや、それは君、韓国が間違っている。あるいは、平和条約でははっきりと、条約起草者としては日本のものとしたんである、君の言うのは間違いだと、それで終わりなんですね。なぜ、この点に触れないのですか。それが私は非常に疑惑があるから、この点は、はっきりして、これは新しい関係に入るにあたって、竹島問題を明確にしたいと思うから伺うのです。この点、総理大臣もひとつ慎重に考えて、はっきりお答えを願います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  14. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 外務大臣から答えさせます。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  15. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) いまおあげになりました、日本がこれを爆撃場として貸し、アメリカ日本から借りたと、こういう事実は、アメリカに聞かなくとも、もう事実としては存在しておることでございます。でありますから、そういう事実は、特に借りた本人から聞かなくとも、どこへもこれは逃げない事実でございますので、その点を場合によっては主張するということも必要かもしれません。しかしながら、そういうようなことによって、領土権アメリカから確認してもらうというような必要は私はないと、こう考える次第でございます。重ねてお答え申し上げます。(「答弁になっていない」と呼ぶ者あり、拍手
  16. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田君。――答弁漏れですか。ちょっと待ってください。森君、答弁漏れですか。では登壇の上、言ってください。    〔森元治郎登壇
  17. 森元治郎

    森元治郎君 重ねて椎名外務大臣にお伺いをいたします。  そういう事実があったということは認めておられますが、われわれにくださった参考資料の中には、こういう事実があるということは一回も書いてない。それで、財産請求権の問題になりますと、「平和条約起草者は云々」というあの文言を絶えずわれわれに利用して、個人財産請求権はないのだという「あかし」のために使っておられるのですね。それならば、こっちの、私が伺ったように、領土最終決定平和条約できめるのですから、平和条約で――平和条約の前には、竹島日本から分離される島に入っていたこともあります。スキャッピン六百七十七号だったと思いましたが、そういうこともあったけれども、最終的には平和条約できまった。そのときに竹島日本のものでありました。日本のものであるから、李承晩大統領が二十七年一月十八日に、あれはおれのものだと言った。その五カ月あとに、アメリカ日本に向かって、貸してくれと言っていることは、もう李承晩の言うことなんて問題にしない、条約起草者アメリカは、自分で知っていますから。貸し借りの申し入れを、借りたいという申し入れをしたのであります。そういう事実に全然触れないようにしておいて、やっておるということは、何としても解せないから、ひとつ大臣、ここへ来て、条約局長、裏のほうから影法師としてやってください。全部明らかにしてください。    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  18. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) お話の点は十分拝聴いたしました。(発言する者多し)
  19. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田得治君。(「そんな不誠意な答弁があるか」「再答弁しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  外務大臣から答弁の補足があります。これを許可いたします。椎名外務大臣。    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  20. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) そういう事実は、歴然とした事実がございます。この歴然とした事実をもって説得力が増す場合におきましては、これを使うことにやぶさかではございません。(発言する者多し)
  21. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田得治君。(発言する多者し)亀田君の登壇を求めます。(発言する者多し)――椎名外務大臣。    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  22. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) どうも答弁が不足でございました。そういう事実を竹島の折衝の際に使ったかという点につきましては、これはも自明のことでして、使いませんでした。この、アメリカ日本から借りた、不要になったから返した、日本はこれに対して権原を持ってアメリカに貸した、こういう事実は、もう歴然とした事実でありまして、これは特に新しい――きわめて著明な事実でございますので、その問題を特に交渉の際にわざわざ持ち出す必要もない、こう考えて、実は使わなかったわけであります。さよう御了承を願います。     ―――――――――――――
  23. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田得治君。    〔亀田得治君登壇拍手
  24. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど草葉君から、寺尾委員長の代理として委員会報告がありましたが、しかし、この報告書の最後の部分というものは、全くこれは捏造記事であります。寺尾委員長が入院されましたのも、最終段階で、ここの場所で読むことをきらって入院されたものと思います。私は、こういう重要な問題につきまして、全く事実に反することが、堂々とこういう場所で述べられることに対しまして、これを聞いておりながら、心の底から悲しく感じた次第であります。私たちは、この報告の最後の部分というものは、いかなる意味においても、絶対に認めるわけにはまいりません。(拍手)十二月四日の特別委員会の状況につきましては、総理も、当日はその現場におられたわけでありまして、十分に前後の事情を御承知のことと思います。先ほど森議員の質問に答えられまして、衆議院の異例な採決に続いて、さらに参議院においてもこのようなことがあったことに対し、遺憾の意を表されました。しかし、私たちがいま求め、あるいは国民が心配をしているのは、ただ何か事が起これば口先だけでその場をつくろうようなことばを求めているのでは、断じてございません。ほんとうに佐藤総理が、このような事態がいけないという認識を持っておられるならば、なぜ一体、特別委員会をもとに戻すと、こういう努力をされなかったかということであります。特別委員会がああいう事態を起こしまして、その後八日から議長は職権でこの本会議を開きました。これに対して、自民党を除く各野党は、それはいけない、ぜひ特別委員会を再開してそうして軌道に乗せるべきだ、こういう主張をこぞってやっていたわけであります。なぜそのようなことが執拗に要求されたのでしょう。従来、国会の重要問題において、まま、採決のやり方について不明確な問題等を起こしたことはあります。しかし、十二月四日の委員会の事態というものは、だれでも今日ではもう周知の事実となっているわけでありますが、全く「ない」ことを「ある」と、こういう言い方をした問題なのであります。全然今日までのいろんな採決の紛糾とは違うのであります。寺尾委員長は、当日何も発言をしておりません。速記録でも、植木君が「委員長」と言うたことが載っておるにすぎません。植木君自身も、「委員長」と言うて、あとの動議は、しゃべっておりません。それだけのことなのです、事実は。寺尾委員長は、この問題が起きた後に、新聞記者との会談におきましても、植木委員の言うのが聞こえなかったと、こう言っております。聞こえないでどうして採決ができるのでしょう。あらかじめ打ち合わせてあったから聞こえなくてもわかるという意味のことを言っておりまするが、そういうことで、一体、正式の会議というものは成り立つものでしょうか。委員長自身が聞こえなかったと言っている。この事実をもってしても、あとはもう何もないわけであります。しかも、それだけではありません。寺尾委員長は、現に新聞記者に対しまして、委員会席から出た直後、「質疑打ち切りました、」そう言われました。録音にも載っております。それが、参議院自民党の執行部から、そうではないと、統一見解をつくるというて、急遽、おしまいまで言ったようにされて、そうして、寺尾委員長は新聞記者にその立場から再度お話になったわけであります。一体こういうことがですね、許されていいものでしょうか。足らない部分があるから少し補ったという問題ではないんであります。だから、自民党以外のすべての人は――この条約に賛成の立場を表明している民社までが、これはひどい、ともかく特別委員会まで返さなければどうにもならぬじゃないかと、こういうことで、その後の参議院が紛糾しているわけなんであります。なぜ紛糾しているか、佐藤さんはほんとうに問題の核心をつかんでおられますか。またやってるわい、といったような簡単なとらえ方をしておられるのではございませんでしょうか。どの新聞もこぞって、衆議院以上の暴挙だと、はっきりとこれは指摘いたしております。  せんだっての議長不信任案に関連して、百九十五名の学者、文化人の諸君が、国会に出されました要望書をここで問題にしたことがありますが、その諸君にするならば、あれだけ衆参両院に、衆議院強行採決後要望したのに、それを上回ることがまた再びここで起きた。ほんとうにこう腹の中が煮え返るような思いでおられると思うのであります。ほんとうに総理がこの事態を認識されその場にいたのですから、総理もわかっておられると思う。その現場に立ち会っておられました参議院の委員部の部長――委員部長も、ことばとしては植木君の「委員長」しか聞こえなかったと、こう言っております。そんなことで、一体、採決とか議事が行なわれたと、どうして言えるわけでしょうか。参議院の審議は、それまでは、ともかく一時間でも多くということで審議を進めてきたことは、総理もごらんのとおりです。もちろん、その間には、全体の委員会のルールができておりませんから、質問者の先陣争いといったようなことで、一日中断したこともありますが、それを除けば、連日審議を重ねてきたわけであります。突如として横川君の質問の途中に、こういう前代未聞のことが起きたわけであります。先ほどのような、ああいうきれいごとではなしに、具体的に一体、このようなことで会議があったと言えるかどうか。もし言えるとするならばその根拠委員長が何も聞こえないで、しかも何も発声しないで、それで一体、結論というものが出ることを認められるのかどうか、これを私は率直に承りたい。  第二にこの点に関して承りたいのは、なぜ総理は、参議院でこれだけこの点が問題になって紛糾しているときに、特別委員会に返したらどうかという総裁としての指導性を発揮されなかったのでしょう。二十四日に衆議院の事態につきまして、総理のお考えを藤田君と私がお尋ねしたときには、できるだけ院の運営には、さわりたくない趣旨のことを言われましたが、そんなことではこの場は通りません。総裁である。政党政治である。議員でない者までも、こういう事態にはたえられないということで、いろんなことを言ってきているのが現状であります。もう形式論は抜きにして、日本の政治の最高の責任者として、当然、これは避けるべき問題じゃなしに、率先して、これはどうしたらよかろうかと努力されるのが、私はほんとうの立場ではなかろうかと考えていたわけであります。これは直接聞いたわけではありませんが、途中、田中韓事長が参議院議長に対して、やはり特別委員会に戻したらどうか、それほど言うならば――というふうな、何か、進言といいますか、そういうこともあったやに、これは正確ではありませんが、漏れ聞いたこともあるわけでありまするが、しかし、結果は、ついにそのようなことにならないまま今日の事態に至ったわけであります。たいへんこれは残念なことです。私は、本日は、お尋ねしたいことも多々あるわけでございますが、まず、この点についての総理考え方を最初に明らかにしてもらいたい。その点がしっくりしませんと、あとが続かないわけであります。衆議院の二回にわたる強行採決無効――無効なものをわれわれが押しつけられた感じを持って今日まできている。それが、再び無効なやり方で押し切られて、そうして、うそっぱちの報告というものが先ほどなされたわけであります。われわれの立場に立ったら、一体、どうしたらよいのでしょう。これは。本来ならば、寺尾委員長あるいは代理がここへ上がったとたん、もうここを引き揚げるべきだ、こういう有力な意見も多々あったわけであります。しかし、われわれとしては、会議が開かれる以上、十分その場に行って総理見解もただすのが、よりいいのではないかということで、参っておるわけであります。どうか、総理の率直な――きれいごとじゃなしに、お考えをまず聞かしてほしいと思います。これはもちろん、あと本論に入るわけですから、これは別ワクです。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  25. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  参議院の特別委員会審議が行なわれました。しばしば衆議院における異常なる採決、これについてお尋ねがありました。これについては、私は、私の感じたことを率直にお答えいたしました。少なくとも参議院の特別委員会におきましては、衆議院において尽くさなかった審議も十分尽くしていただきたい、かように思いまして、政府としての答弁等も特に留意をいたしたつもりでございます。したがいまして、皆さま方からしばしば参議院特別委員会審議のしかたについて、また、その採決等について、お尋ねがございました。しかし、当時私が私の気持ちを率直に申しましたのは、私は政府だ、政府を代表してこの答弁に立っておる、国会審議は皆さん方のほうで十分尽くしていただきたい。ただいま特別委員会にはルールがなかったということを言われておりますが、まず委員会はルールがあるはずだから、理事会等において十分その段取りをおきめになることがいいのじゃないかと思っている。しかし、そういうことを私は指図をするようなつもりで申すわけではございませんということを申しました。亀田君もたしかその理事のお一人だと思いますので、そこらの点はよく御承知だと思います。私はどこまでも審議国会において尽くさるべきものだ。それについて、私自身が総理であり、同時に自民党の総裁だ、こういう意味で、その点も、総理としての立場はともかくも、総裁としては一体どうするのだ、こういうお話でございました。これに対しましても、国会におきましては、私は党には副総裁や幹事長がおりますから、そちらに運営のことはまかせてございます、私自身は総理として説明を十分――そのお尋ねにお答えをするのですと、こういうことを実は申して、まず御了承を得ていたと私は思っております。  以上が、この四日の日の採決を見るまでのいわゆる背景をなすものでありますし、また、私自身の考え方でもあり、その点では皆さま方の御了承も得ていたと、私はかように考えております。  四日の日の審議におきましては、ただいま申し上げるように、審議は皆さま方のところでやっていただくということでございますから、私自身が関与するものではございません。その審議自身が有効なりや無効なりや、こういう議論になれば、これまた国会のことでございます。私が、これは無効だ有効だと、かように指図するようなつもりはございません。この点は、長い国会生活をしていらっしゃる亀田君が十分御了承のことだと私は思います。ただ、亀田君の私に対してのお気持ち、言いたいところの気持ちは、こういう異常な状態を何度も何度も繰り返すな、こういうことが私に対して、議員としての責任として私に追及されているものではないかと、かように思うのであります。それがただいま総理・総裁としてどう考えるかということだと、かように思います。この点につきましては、森君にもお答えいたしましたように、まことに私もこのことは悲しいできごとだ、まことに残念なことだと、こういうことをしばしば申し上げたのであります。私どもは、真に民主政治を守る、ほんとうに議会政治に徹する、この考え方、決意を新たにして取り組もうとしているということを、森君に申し上げたわけでございます。どうか、これらの点を御了承いただきたいと思います。(拍手)    〔藤田進君発言の許可を求む、「関連を許せよ」「関連質問は許せない」と呼ぶ者あり〕
  26. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田君、登壇してください。――本会議においては、関連質疑は認められません。――亀田君、御登壇願います。    〔亀田得治君登壇拍手
  27. 亀田得治

    ○亀田得治君 本会議関連質問がないことは、これはわれわれも十分知っております、それくらいのことは。ただ、問題は、異例な事態というものが起きている、これのことのほうが大事なんであります。その問題を明らかにしたいと思って、関係者の方が関連質問を求めているわけであります。何でもかんでも関連要求しているわけじゃありません。そういう意味で、自民党の皆さんも考えてもらいたいと思うのであります。  そこで、総理からただいまお答えがありましたが、やはり私が念を入れて二つのことについて具体的に答えてほしいとお願いしたことに対して、そのままの答えがない。はなはだ残念であります。私は、このとき、一佐藤榮作個人立場でもけっこうでございます、こうなれば、どなたでありましょうとも。ああいうものが会議といえるのかと、この点を具体的に聞いているわけであります。動議の提出者がしゃべらない、委員長は聞こえない、委員長はしゃべらない、二回ほど手を動かしただけ、部屋から出たときには別なことを言った、これだけ総合してみても、これは私は、はっきりと、こう結論のすぐ出ることだと思います。自民党の皆さんがおやりになったことについて、総裁としてお答えにくい気持ちはわかりますが、しかし、それでは直らぬのであります。自分の部下が変なことをやれば、今後そういうことをさせないためにも、きちんとした意思表示をされることが私は大事じゃないかと思う。衆議院の問題につきまして、佐藤総理はこういうことを言われました。ちょっと思い出してください。私は、衆議院においてこういう事態が起こり、そして国会の権威を何かそこなわした、せめて参議院はその権威を取り戻す、こういう意味で国民の期待にこたえるようにしよう、これがお互いの責任じゃないかと、かように痛感するのであります。ともかく衆議院のあの事態は、はなはだもって遺憾千万、参議院でそれを回復してほしい。私たちも同じ気持ちでやっておりました。ところが、結果は、衆議院の事態以上のことが現出したわけです。それでお聞きしているわけです。佐藤さんも残念であるということは言われましたが、それだけでは済みません。これに反対している諸君は、あれは無効だ、あんなことが前例になっちゃもうたいへんだと。社会党にも――野党の委員長がおるわけですね。何かわけのわからぬうちにわっとなったと、政府提出の案件が否決されましたと、そんなことで、うそっぱちの報告書を出してくる、そんなことがやられたらどうなるか。これは同じことじゃありませんか。ただ少数党の委員長がそういうことをやれば、多数党はこれに対して処分をすると、結果はそういうふうに違ってくるかもしれません。いずれにしても、ああいうことがまかり通るようでは、これはもう国会会議というものの基礎はこわれてしまう、それで、私、お聞きしている。はっきり答えてほしい。  それからもう一つ特別委員会に戻す努力を――四日以降ずいぶんみんなが心配をし、ここでそのことが中心になってこれは議論されている、佐藤さんはそのことをされたのかどうか。したけれども、どうも参議院議長が、がんこでいかなかったとかなんとか、そういう事情があるのかどうか。ともかくこの二点だけをはっきりお答え願いたい。そうしませんと先へ進まない。これをおっしゃっていただければ、次にお聞きしたいことも多々あるわけですから、はっきりお願いします。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  28. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) いま、先ほど実はお尋ねになった点にお答えしたつもりでいましたが、もっと明確に申さないとぐあいが悪かったようです。私は、採決が有効なりやいなやということは国会でおきめになることだという見方をしております。それについて個人意見でもいいから聞かしてくれと、こういうことでありますが、これは亀田さんのお話ですが、この場所は本会議であります。私個人意見を申し上げる筋のものではない、かように思います。これだけはお許しをいただきたいと思います。それから私は、ただいま申し上げますように、この国会において――参議院において有効に採決がされたということで、この参議院の本会議の議事が進んでおるのであります。その際に、私自身が、国会取り扱い方は間違っておるんじゃないか、特別委員会に差し戻しなさい、かようなことは、私が申し上げるような筋のものではございません。その点は御了承をいただきます。先ほど来申し上げたとおりであります。(拍手)    〔亀田得治君登壇拍手
  29. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ、総理のお答え、はなはだ不満であります。  日韓問題についての最後の機会になっておりまするので、私はこの機会に、委員会で触れることのできなかった諸問題につきまして、少し具体的に、こまかくなる問題もあろうかと思いますので、確かめていきたいと思います。森議員の質問と重複しないように、私は、主として請求権並びに経済協力関係及び法的地位の問題について、お尋ねをしていくことにいたします。  まず、第一に、請求権並びに経済協力に関する協定の第一議定書の第一条によりますと、韓国政府日本から供与される生産物及び役務を定める年度実施計画は、韓国政府がまずこれを作成し、日韓政府の協議によってきめる、こういうふうに規定されております。私がお聞きしたいのは、この実施計画に対しましては、日本政府が修正意見を出し得るのかどうか、日本政府韓国政府合意がなければならないことになっているのか、という点であります。法文の上では、日韓政府の協議と、こういうふうに書いてあります。協議ととのわざる場合、韓国政府が原案を押し切ってやるという意味になるのか。それではいけないので、両者の合意が必要だというのであれば、この書き方自体が、もう少し明確であってよいのではないかと思います。第一議定番の実施細目に関する交換公文のⅠの4、ここを拝見いたしますると、両政府間の合意により実施計画を修正できる、こういうことが書かれております。一たんきまった実施計画を修正するには両政府間の合意が必要だと交換公文には明記されております。修正の部分について合意が必要であれば、逆に、さかのぼって、基本計画をつくるとき自身に両者の合意を必要とするというふうにも解されるのでありますが、この点は両政府間でどのような理解になっているのか、明確にしてほしいと思うのであります。これは、大蔵と外務、どちらか明確に答えてほしい。  それから次は、無償三億ドルの点につきましてお尋ねいたします。協定の第一条の(a)、このただし書き、そこを拝見いたしますると、両政府合意によって各年度の供与の限度額を増額できる、こういう規定があります。無償三億ドルの供与は十年に分けて日本政府が供与することに本文はなっております。ところが、両政府合意があれば、ある年度のものを増減できる、こういうことが書かれております。ところが、最近の新聞紙上で拝見しておりますると、韓国の第二次五カ年計画に歩調を合わせるために、この十年間に供与する約束になっているものを、五年か六年の間に繰り上げて使用する、こういう計画が進められているのではないかと思うのであります。両政府間でできました協定では、一つの年度のやつをふやすと、その次の年度は当然減ることになります。そういうことを認めておるわけであります。にもかかわらず、このただし書きを、乱用といいますか、悪用して、そうして、こう速度を早めていく、これは私は、それだけ国会承認を得ないところの負担をかけるものであると言わなきゃならぬと思います。この協定の正しい解釈からは、そのようなことはできないのではないか。協定も発効しないうちから大体そういう下相談をすること自身が、はなはだもってけしからぬわけでありますが、しかしまあ、多少の準備という意味と思いますが、いずれにしましても、新聞に報道するように、十年間で供与するとなっておるものを繰り上げるためには、私は協定の改定が必要だと思うのであります。国会が、われわれが受け取っているのは、そのようなことはできないものと解釈しなきゃなりません。外務大臣、大蔵大臣の明確なお答えを聞かしてほしいと思います。  それから第三点は、第一議定書の第六条の4、ここには、日本から供与された生産物を韓国領域から再輸出してはならない、こういうことを明記しております。これは、今度の経済協力というものが韓国経済の発展に役立つものを供与すると、こういう立場に立って行なわれている以上、当然の結論だと思うのであります。ところが、合意議事録の7によりますと、加工輸出については例外であると、こういう規定を設けております。本来ならば、こういう合意議事録規定は、第一議定書の六条の4、その六条の4の中に、もしこういうものを書くならば、続けて書くべきなんだ。ここだけではございません。今度の協定や、諸般のそれに関連した文書を見ますると、一方で、ちゃんと、一つのことを前向きに書いてあるかと思うと、別な文書には反対のことが書いてある。これもその一つでございます。私は、こういう合意議事録の7に規定されたことは、経済協力を今回行なおうとする政府立場からいうならば、矛盾しているのではないかと思うのであります。私は、まさしく、これは日本の資本象が韓国の低賃金を、こういう形で利用していくという道を開くために行なわれているのではないかと思うのであります。韓国経済の発展のために役立つと、こういう大原則を掲げながら、韓国で使わないものを初めから承知でそこへ持っていくと、これは全く立場の異なる行動と言わなきゃなりません。いや、そういう加工輸出をやることも、広い意味では韓国の経済の発展に役立つのだ、こういう詭弁を弄されるかもしれませんが、私の言うのは、そうではない。日本が供与する生産物、その生産物は、韓国経済に必要なもの、向こうが使うものと、こういう立場で出発しているわけでしょう。そういう立場と明らかに矛盾することをやっているのではないか。  次に、合意議事録の2、ここを拝見いたしますると、委員会で何回も問題になりましたいわゆる韓国の対日請求八項目の消滅を、ここでは規定しているのであります。ところが、伝え聞くところによると、韓国国会に出された書類の中には、この(g)項が削除されている、こういうことも聞くわけでありますが、真相はどうなっているのか。外務大臣から明確にしてほしい。外務大臣は、韓国の国会議事録を実際は持っておりながら、見ておらぬようなことを言っておりますが、そういう詭弁は許されません。はっきりしてもらいたいと思います。もしそのことが真相だとするならば、韓国においては、対日請求の八項目を、今度の経済協力と引きかえになくしてしまうということに、別個な大きな苦しみを感じておる証拠ではないかと思うのであります。たとえば、その一つとしてお尋ねしたいのは、この八項目の中を拝見いたしますると、明らかに、韓国の人の個人個人の権利、しかも、それがはっきりしたものが相当あるわけでございます。韓国政府は、そういう韓国人の個人の権利に対しまして、どういう国内措置を講ずることになっているのでしょうか。日本でも、在外財産の問題に関連して同性質の問題が起きておるわけでありまするが、韓国の場合の対日請求八項目を見ますると、ほんとうに戦時中苦心さんたんしてかせいだ労賃とか、そういったようなものも多々含まれているわけであります。そういう、その人にとっては、たとえ金額はわずかでありましても、これは大切な汗の結晶でございます。それが無視される、そうして朴政権だけが日本政府から大きな金を渡される、それと引きかえに個人個人の汗の結晶が消されていく――当然これは、こういう協定をつくる以上は、それと並行して、韓国内ではこういうふうに処置しますということがあってしかるべきものであろうと思う。向こうが言わなくとも、外務大臣としては、それは聞くべき問題だと私は思う。なぜならば、相手方の韓国の個人個人にすれば、日本政府韓国政府がこのような協定を結んだために、自分たちの権利が消されたんだ、日本政府は三十六年間の韓国の統治に対して反省をしているとかなんとか言っているが、やっていることは違うじゃないか、こういう恨みを買うような結果になるのであります。ほんとうに生活に苦しんでおられる人の気持ちになって考えてやらなければいかぬと思うのであります。そういう意味で、他国のことでありまするが、外務大臣として、具体的に、韓国内では、この八項目の消滅と関連して、どういうふうにこれが扱われようとしているかを、はっきりここで答えてもらいたいと思うのであります。  それから次に、同じくその合意議事録の2の(h)の項目です。日本の漁船がたびたび李ラインの問題に関連して拿捕をされた事件がありまして、それに対する損害請求権というものがあるわけですが、これを日本政府が放棄しているわけでありますが、これはたいへん筋の通らない処置ではないかと思うのであります。ほかの各種の請求権とは、問題が本質的に違うわけでありまして、こういう損害請求権というものは、ほかのものと相殺するような考えを持つのではなく、そのものとして追求し、結論をつけなければならぬと思うのであります。なぜならば、あのような漁船の拿捕というものは、国際法に反している、違法だ、こういう立場日本政府がとってきたはずであります。それを、何か各種の請求権と、ごちゃまぜにして、そうしてどさくさまぎれになくなってしまった。こういうことでは、そういうような違法行為を今後とも断じてやらせない、こういう立場から見るならば、まことに遺憾な措置だと言わなければなりません。こまかい法律上のことを申し上げては恐縮でございますが、性格の違う権利、こういうものの相殺というものは、簡単にいかないわけであります。そのことを政府としては簡単にやっているのかもしれませんが、私は、これはたいへんな間違いだと思います。そういうことによって、今後の不法な日本漁船の拿捕、こういう問題に対して、何か軽く問題があしらわれる足場をつくるようにも考えられるわけであります。はっきり答えてもらいたい。  それから次に、第一議定書の三条、これによりますと、実施計画に基づく日本から供与する生産物と役務、これを取得するための韓国側の当事者ですね、当事者として、韓国政府の使節団のほかに、韓国政府の認可を受けた業者というものを並列して認めてきていることであります。この点は、すでにいろんな人から指摘されている問題でありますが、やはり私は、このような経済協力というものは、韓国政府の正式の使節団、これだけが唯一の権限を持つものとして、日本政府なり業者と契約をすべきだと思うのであります。なぜ、このような使節団に並行して業者というものを認めなければならないのか。  次に確かめたいのは、合意議事録の4の(a)ですね、無償三億ドルの中で一億五千万ドル以上の消費財を供与する、こういうことがこの議事録で書かれております。政府は、初め、今度の経済協力というものは、韓国経済の再建、そのためにやるのだ、したがって供与する生産物は資本財をもってやるのだと、こういう方針をとられたはずであります。ところが、だんだん交渉が煮詰まってまいりますと、三億ドルのうちの半分以上のものが消費物資と、こういうことに、しかもこれは本協定からはずして、合意議事録、こういうところで挿入されてきておるわけであります。このことと、先ほど指摘しましたところの、業者をして正式の代表として契約をさせる、これらのことがからみまして、今回の経済協力というものは、はなはだ黒いうわさを生んでいるわけであります。  もう少し、この点についての見解を申し上げますと、こういう消費財を扱うのは、ただいま指摘しました韓国政府から認可を受けた韓国の業者が当たるわけであります。具体的に言うならば、韓国政府で必要とする消費財、その目録が作成されますと、韓国政府でそれを韓国の業者を相手に入札をする、落札をした業者が韓国のお金で韓国銀行にお金を納める、そういたしますと、その業者は日本にやってきて、日本の業者と、その落札した品物を引き取る契約をすることができるわけであります。その韓国の業者は、すでに申し上げたように、韓国政府にはお金を払ってしまっておるわけでありますから、当然、日本の業者から引き取る生産物を取得することになります。現在日本韓国内の消費物資の値段からいうならば、これが向こうでどれだけ大きな利益をもたらすかということは、想像にかたくないわけであります。こういう、からくりというものがなされて、したがって、問題は、その業者をだれに指定するのか、こういうところに、朴政権との結びつきというものが、いろいろ、うわきされているわけであります。朴政権の政治資金に関しましては、ずいぶんわれわれも、いろいろな情報を聞くわけであります。独裁的な政権といわれる朴政権でありながら、そういう黒いうわさのために、昨年以来、国会の監査委員会で調べを受けているわけであります。その中には、四粉暴利事件とか、いろいろな問題が多々連ねられております。そういう政権が、いま申し上げた経済協力、このからくりと結びついてきた場合に、どういう結果が起こるか、日本政府は一体、こういう点について確信を持てるのかどうか。日本の血税をつぎ込んで行なうところのこの協力が、結果におきまして、一部の政治家のふところを肥やす材料に使われた、こういうことでは、われわれ国民としては承知できないわけであります。そういうことを防ぐためには、私が先ほど指摘したような諸点につきましては、やはり経済協力を、当初考え原則にしっかり立って、そうして、きびしくこの中身というものを組み立てておくべきではないかと思うのであります。佐藤総理の、この点に関する所信をお聞きしておきたいと思います。  次に私は、法的地位に関する諸問題につきまして、これも委員会で聞くことのできなかった諸点につきまして確かめておきたいと思います。  まず第一に、総理に対してお聞きしたいのは、韓国人の帰化という問題について、どういう考えを持っておられるかということであります。戦前から日本の社会に入り込んで、非常に密接な関係につながっているわけであります。南北を問わず、朝鮮人の方々の帰化という問題は、一般の外国人とは相当違った考えで処理してしかるべきだと思います。根本的な方針をお尋ねしたい。  それから第二には、法務大臣にお尋ねいたしますが、今回の法的地位協定によりまして永住許可を与えられるのは、戦前から日本におりました韓国人でございます。並びにその子孫ですね。ところが、その子孫の点につきましては、協定の第二条によりまして、協定発効後二十五年までの間に、あらためて協議すると、こういう規定のしかたになっておりますが、その基本的な考え方はどこにあるのか。韓国政府としては、この交渉の過程において、二十五年後の協議を待たないで、ともかくすべての子孫に対する永住権を要求したわけでありますが、そういう点では、協定の二条は、両者の主張の妥協の結果生まれておるものと思いますが、この二条の精神というものは、どういうところにあるのか。二十五年後に協議をするときには、韓国側の要求があればその永住権を認めていくと、そういう腹で書かれているものかどうか。そういう点を明らかにしてほしいと思うのであります。そうでなければ、ないと……。どういう意味か明確にしてほしい。  次に、永住許可の申請をするには、合意議事録によりますと、国籍を証明するもの、または陳述書を提出する、こういうことが必要とされております。法務大臣にお聞きしたいのは、外国人登録の上で「韓国」と書いてある人には、特にこのような証明書が要らないのではないかということであります。なぜ私がこういうことを聞くかといいますと、政府は、国籍問題が国会で紛糾した結果、十月の二十六日に統一見解を出されまして、「韓国」という表示を、単なる記号ではなく、国箱とみなす、こういう見解を発表されたわけであります。まあ、こういう見解の発表自身が、いままで政府がとってきた態度からいうならば、はなはだ筋の通らないところがあるのでございますが、しかし、それにもかかわらず、そのような見解を政府は発表しているわけであります。もしそのような見解に立つとするならば、外国人登録の関係で「韓国」となっている人は、もう国籍がはっきりするわけでありますから、なぜこの協定の中で、国籍を証明するもの、または陳述書を求める必要があるのでしょうか。もちろん、法務大臣のお考えは、この永住許可申請をする人すべて外人登録の上で「韓国」となっておらない人も要求してくるかもしれないと言われるかもしれません。そういう人には、もちろん、国籍を証明するもの、または陳述書というものが必要になろうということは、私もそれは認めます。しかし、とりあえず問題になるのは、外人登録の上ですでに「韓国」となっている人たちから、まず私は、永住許可の申請が具体的に出てくると思うのであります。そういう意味で、この点をお聞きしているわけであります。統一見解と、この協定に関する合意議事録規定のしかたというものは矛盾があると、こういうことを申し上げたいわけであります。法務大臣の見解を聞きます。  それからさらに、永住許可を受けた人の退去強制の事由について、法務大臣に二点お伺いいたします。  まず、その一つは麻薬犯罪者でありまするが、これは、もっと強く条件をしぼってよかったのではないかと思います。たとえば、この協定によれば、原則として三回以上麻薬犯で刑を受ける、そういうことになると強制退去の理由になるとなっているのですが、しかし、麻薬というものの非常な害悪から見るならば、たとえ一回でありましても、その者が常習的にやっているのだということが、事件を調べてわかる場合には、それでやはり退去強制の事由としてよろしいのではないかというふうに考えられるわけであります。なぜ三回まで、そのような場合でも待たなければならないのか、明確にしてほしい。  次に、協定第三条の(b)の犯罪でありまするが、これは外交あるいは公館等に関する犯罪でありますが、朝鮮の複雑な政治情勢から考えますると、たとえば、韓国代表部に対する犯罪といったようなものも考えられないことはないのであります。しかも、その中には、政治犯という範疇で考えるべきものも予想されるわけであります。こういう人たちにつきましては、この協定にいう退去強制を執行すべきものではないことは、政治犯人に対する扱いからしても当然だと思うのであります。しかし、従来の韓国政府の態度から見ますると、そのような犯人に限って、引き渡しを求めてくる、こういうことも考えられるわけでありまするが、法務大臣の、そのような場合に対する所見をお聞きしておきたいと思うのであります。  それから次に、合意議事録によりますると、韓国政府日本政府から退去強制される人の引き取りについて協力をする、こういうことが合意議事録並びに韓国政府の声明の中にうたわれております。過去において、日本政府としては、先方が引き取りを拒否して困ったことがあるわけでありまするが、この合意議事録並びに討議の記録の中にあらわれている韓国政府の意思表示によりまして、今後、韓国政府としては、日本政府が退去強制をする者に対して引き取りを拒むようなことは絶対にないのだと、こういうことが明確に約束されているのかどうか、明らかにしてもらいたいと思うのであります。  次に、在日韓国人の経済上の活動につきまして、日本人と比べてどのような不利な点があるのかという点を明確にしてもらいたい。その中身といたしましては、たとえば、土地その他財産の取得、そういう点で、どのような違いがあるか。第二には、金融機関の利用等について、どのような違いがあるか、単なる事実上の違いにすぎないのかどうか、そのような点。第三には、各種の就職の上でどのような違いがあるか、これも単なる事実上の違いにすぎないのかどうか、そういったような点に分けて、具体的な御説明をお願いしたいと思うのであります。なぜ、私がこのようなことをお尋ねするかといいますと、在日韓国人朝鮮人の方々の日本の社会における処遇というものは、日本人と非常に格差ができてはいけないのであります。同じ社会の中で、経済的な格差が、民族が異なるがゆえに生ずるということでは、いろんな派生的なマイナス面ができます。まあ社会保障なり、あるいは犯罪統計等にも、そういったような点があらわれているわけでありますが、根本的には、やはり、在日朝鮮人の経済的な基盤の確保というものが、ほんとうに考えられなきゃならぬと思うのであります。そのためには、まず、現状は一体どうなっているのか、そういう点について、法務大臣からお答えを願いたい。そうして、そういう点についての今後の処理ですね。そういう日本人とのギャップを完全に埋めるということは、これはなかなか、完全な意味では、いろいろむずかしいこともあるでしょうが、総理大臣としては、こういう問題についてどんな考えを持っているのか、はっきり示してほしいと思うのであります。  それから次に、国民健康保険の適用の問題について……(「厚生大臣いないぞ」と呼ぶ者あり)厚生大臣いませんね。それでは、法務大臣に、あわせてお答えを願います。国民健康保険についてお尋ねいたしたいのは、今回の協定ができましたことに関連いたしまして、厚生省令を改正して、全国一律にこの国民健康保険に加入できるようにしよう、こういうことをきめているわけであります。しかし、この点は相当問題があるのではないかと思うのであります。国民健康保険は、御承知のとおり強制加入であり、また、当然掛け金も必要なわけであります。日本国民自身からも実は問題が起きているわけであります。そういう状態のままで、それを在日朝鮮の方々にかぶせていくということが、はたして適切なのかどうか、疑問を持たざるを得ない。現在までは、各市町村の条例によって、市町村で、この地区では国民健康保険に加入してもらおうというふうなことがきまれば、その地区だけでやられてきました。私は、そういう扱いのほうが、現状ではまだ適しているのではないかと、逆に考えるわけでありますが、ただ、この協定並びに協定に附属している討議の記録を拝見いたしますると、厚生省令の改正をやっていくということが書かれておりますが、はたして、厚生省令の改正をして、全国一律に、との制度の中に入れるということが義務として負わされているのか、その点の書き方が、はなはだあいまいであります。だから、この全国一律強制加入ということが、日本政府としては、義務づけられたことになっているのか、あるいは義務とまではいけない、できたならばそういうことも考慮するのだという程度の意味で書かれているのか、その点をまず明らかにしてほしい。もし後者の意味だとするならば、はたして急いで全部をかぶせてしまっていいのかどうか、そういう点についての――まあ、法務大臣国民健康保険の実情をよくつかんでおらないから、あるいはお答えができにくいかもしれぬと思うのでありますが、厚生大臣おりませんので、かわって、ひとつお答えを願います。  それから次に、永住許可を受けた人が韓国に帰る場合の持ち帰り財産についてお尋ねをいたします。永住許可者が韓国に帰る場合には、原則として、すべての財産を持って帰ると、こういうふうに規定されておりますが、持っていけないものは一体どういうものがあるのか、具体的に明示してもらいたいと思うのであります。なかんずく、この協定並びに関係の文書の中で、持って帰る品物の中に、「職業用具」、自分の仕事の関係の品物と、こういうものが書かれております。で、これはどういう範囲のものを意味しているのか、明確に答えてもらいたい。解釈のしようによりましては、無為替で大量の商品が、そういう形で流れていくということも考えられるわけでありまして、職業の用具というのは、どの範囲のことをいうのか。できまするならば、具体的な職業につきまして、例をあげて、ひとつ御説明をお願いできれば、はっきりすると思うのであります。  それから次に、大蔵大臣にお尋ねしますが、永住許可を受けた方が韓国に帰る場合、一世帯一万ドルを持って帰る、こういうことが書かれております。これは、日本の外貨事情がどのようになりましょうとも、必ず一万ドルまでは持って帰らす、こういう窮屈な規定のものであるのかどうか。事情によっては、多少減らすといったようなこともできる意味で書かれているのか、明確にしてほしい。それからもう一つ、一般の外国人に比べると、この持ち帰り金額が多いわけでありますが、当然、韓国人にこのような道を開けば、ほかの外国人からも、日本政府に対する要請が出てくるのではないかと思うのでありますが、そういう場合には、どのように大蔵大臣として対処されますか。  それからさらに、現在北鮮に帰還する方々が毎月あるわけでありますが、この方々には、わずか百二十五ドルしか持ち帰りを認めておらない。あまりにもその差が大き過ぎるんですね。まあ、一方は日本政府と仲がいい、一方はそうじゃない。差別するのはあたりまえだと、そう簡単に私は割り切れないと思う。日本に在住する理由になった経過というのは、これは同一の人たちなんです。その人たちが自分の好きな祖国に帰ろうというのに、一方では一万ドル、一方では百二十五ドル、これは、あまりにも非人道的だと思うのでありますが、こういう点について、これは佐藤総理にお尋ねをしておきます。まあ、財政上の理由というよりも、こういう非人道的なことはよくないと、こういうことは、総理大臣が、はっきり方針を出されなきゃならぬ問題です。その上で、大蔵大臣が計算をされると、こういうことにならなきゃ、うまく運ばぬわけであります。  それから次に、まあ、いろいろこまかいことを聞いて恐縮でございますが、特別委員会を途中で打ち切ったりするものですから、こういうことになるわけですが、この討議記録によりますと、韓国政府は、在日韓国人の生活の安定、あるいは貧困君の救済、こういうことにつきまして日本政府から要求があったら、できるだけ協力する、こういうことを、この討議記録の中において韓国政府が意思表示をしております。これは一体、韓国政府として、具体的にはどんなことをしようという裏づけがあってこのようなことを言っているわけでしょうか、明らかにしてもらいたい。たとえば、生活保護なり、あるいは国民健康保険等で、日本政府等に相当な出費がある、そういったようなものについて、若干でもこの補いをするという、そういう具体的な意味までも持っているのかどうか。いや、そういうことは、もう日本政府にまかしてあるわけで、もっとほかのことを考えているというのかどうか。そこら辺のところを、交渉の経過の中で明らかになった限りにおいて明確にしてほしいと思います。  それから次に、法務大臣声明によりますと――本協定で扱われている在日韓国人、つまり、戦前から日本にずっと引き続いている韓国人以外の韓国人ですね。たとえば、戦前からいたが途中で一度韓国に帰った、これは本協定の対象にはならない。そういう方々が多々あるわけです。そういう人たちを対象にいたしまして、法務大臣声明が六月二十二日に出されているわけでありますが、まあ、これは一方的な大臣声明ということになっておりますが、これは相当強い約束をしているのではないかというふうに思います。韓国国会の議事録等を見ますると、これらの人たちは当然日本で在住できるのだ、こういうふうに向こうでは説明をしておりますが、その間の真相を明らかにしてほしいと思います。  それから次に、協定でも、あるいは法務大臣声明でも扱われておらない人、つまり、平和条約発効後に韓国から日本に渡って来た、いわゆる密入国者ですね、こういう方々の処置ですね、これは当然、密入国だから退去強制するのだ、出入国管理令からいえば、そういう立場になるわけでありますが、しかし、従来の実際の例から見るならば、相当数の者が、法務大臣の特別の許可によって日本に在留をしているわけであります。そういう点についての扱いというものは、一連のこういう協定ができましても、変わらないのかどうか。まあ、法務大臣が、こういう公の席で、今後の密入国者についても従来と同じように考慮するといったようなことをおっしゃることは、なかなか言いにくいことかもしれませんが、しかし、従来もそのような処置を相当とってきているわけですね。そこで、今後は、その点についてどういうお考えを持っておられるか、明らかにしてほしい。あわせて、現在まで、そういう密入国者について特別の在留許可を与えていることがあるわけですが、どういう基準でそのような許可を与えてきたか、そういう点を明確にしてほしいと思います。  それから次に、同じく協定ができました六月二十二日の入管局長の談話によりますと、日本にいる永住許可を受けた韓国人の親戚で韓国にいる人が、日本の近親者をたよって来る、こういう場合には好意的に扱う、こういう声明が出されておりますが、ここで言う近親者の範囲なり、あるいは日本滞留の期間、そういったようなものは、どの程度でお考えになっているか、明らかにしてもらいたいと思います。  それから、一連の関係書類によりますと、永住許可者に対して、再入国の許可ですね、これを普通以上に便宜をはかる、こういうことも出てきているわけであります。永住許可者が韓国に行って、また日本に帰ってくる、この再入国を、普通の外国人よりも便宜を計らう具体的な処理のしかたを明らかにしてほしいと思います。どの程度のことを考えているのか、明確にしてもらいたい。  以上、たいへんこまかいことが、ずいぶんありましたが、法務大臣から、抜けないように、一つ一つ答弁を願います。  もう一つ、つけ加えておきます。それは、法的地位に関する国内法の――名前が長いですから略称で言いますが、その第九条によりますと、今回永住許可の申請が、協定によって行なわれるわけですが、その許可申請をする者に対して威力を用いて妨害をした、こういう者がありますと、これに対して特別な罰則を加える、こういうことが書かれております。私は、これは少なくとも不要な、有害な規定ではないかと思います。なぜならば、永住許可申請をしよう、韓国国籍を持って、そうして、しよう。そんなことはやめておきなさいと。いろいろな立場がからんで、そういう問題も起こるかもしれぬと思います。しかし、そういうことがあった場合でも、相当行き過ぎた妨害行為があったということになれば、これは、現在でも、各種のいろいろな刑罰法規があるわけでして、それに該当するものは、それで処理すればいいわけでして、ことさらに重く、こういう問題を取り上げてくるということは、行き過ぎではないかと思う。そういう問題が起こる場合には、必ず、朝鮮民族同士の政治的な問題というものがからむ場合が多いわけであります。そういう民族問題の中に、日本政府が権力をもって介入していく、こういう結果を招くのではないかと思うのでありまして、このような罰則はやめるべきではないかと考えます。  最後に、総理にお尋ねいたします。今回の協定が発足いたしますると、永住許可を受けた人と、韓国系であっても永住許可を受けない、あるいは北鮮系で初めからそういう許可を受けようとしない、まあ大きく分けて、二つのグループができるわけであります。永住許可を申請しない人も、国籍不明の外国人ということで、法律百二十六号によって、引き続き日本に従来と同じように在留できることになっているわけですね。そこで、お尋ねしたいのは、許可を受けた人と、そうでない人、この間の差、違いというものを、できるだけつけないように、いろいろな処遇問題で最大の努力をすべきじゃないか。立場上どうしても差が出てくるということが起こる問題は、やむを得ないかもしれませんが、根本方針としては、もともと同じ理由で日本に在住し、現在に至っている同じ民族なんです。根本方針としては差をつけないのだ、こういうことを、総理として、はっきり言えるかどうか、お尋ねをいたします。  特に私がお尋ねしたいのは、祖国との往来の問題です。国内における経済上の待遇等の問題も重要でありますが、しかし同時に、人間にとって大事なことは、やはり血の通った人たちとの間の交流ですね。これが、今度の協定によりますると、先ほど私がこまかく法務大臣にお尋ねしましたように、永住許可を受けた韓国系の人に対しては非常な便宜が出てくるわけです。こちらから韓国に行って、また帰る。これが楽になる。あるいは韓国の親戚が日本に来て帰っていく。これも便宜を計らう。ひとり北朝鮮の関係におきましては、向こうに親戚があり、その方が病気になっても帰れない。現在でもそういう状態が続いているわけであります。一般的な渡航の自由とか、そういう理論を、いまここで申し上げようと思っているのではありません。ともかく、法律百二十六号によって、従来どおり、永住許可を受けない人も日本にずっとおるわけなんですね。お墨つきはないけれども、一種の永住許可みたいなものなんです、事実上は。その人が、ちょっと自分の関係のあるところへ行って、また帰ってくる……。北鮮という国を認めておらぬということだけで、そういう大きな違いというものが出ていいものでしょうか。ひとつ総理から根本方針をお聞かせ願いたいと思います。  それから、もう一つお尋ねしたいのは、日本人が北朝鮮に直接出かける、これがまた遮断されているわけですね。あるいは北鮮の人が日本にやってくる、双方とも遮断されている。共産圏渡航に関しては、昭和三十一年に例の次官会議の決定があり、それは閣議でも了承されて閣議了解事項になっているようでありますが、委員会ではその中身を見せてもらいたいと言いましたが、とうとう出しません。しかし、うわさには大体聞いているわけでありますが、しかし、もうあれは古い決定であって、再検討の必要があるというふうに内部でもいわれているようでありますが、私は、こういうものはこの際検討し直して、もっと人情の機微に合ったようなものにしてもらいたい。そういう考え方があるかどうか、明確にしてほしいと思うのであります。なかんずく、共産圏のうちでも特に北朝鮮との関係、これがもう全然遮断されるかっこうになっておるんですね。私は、どうして中国なりあるいはソ連なり、そういうところと大きな区別をつけられるのか、理解に苦しむわけです。総理は、ケース・バイ・ケースで今後もやっていくんだというふうなことを言います。ケース・バイ・ケースなんということをいいますと、相当多数何かそういう、入ってきたケースがあるような感じを受けるわけですが、ほとんどないわけなんです、これは。スポーツの関係で一、二あっただけでありまして、それ以外は全くないわけなんです。こういうことがあったら私は非常識だと思うのでありまして、それは具体的な事件を扱う場合にはケース・バイ・ケースになるでしょうが、ケース・バイ・ケースをやる、その基礎になる根本方針というものがはっきりしなければならぬと思う。それをひとつこの際総理から明確にしてほしいと思います。  農林大臣にひとつお聞きします。委員会でも若干お聞きしたことですが、足りませんでしたので、この際、確かめておきます。それは韓国沿岸の共同規制区域に出漁できる沿岸漁民ですね、これは千七百隻、こういうことに圧縮されました。農林大臣は現在、関係者府県にその千七百隻という数字を割り当てるのにたいへん苦労されているようでありますが、私は結論としてはどうも因る、私としては、共同規制区域のほうに行きたいのだ、こういう人が相当取り残されるのじゃないかと思います。質問の要点は、そのような取り残された方が、背に腹はかえられず、餓死するわけにいかないということで、島根なり山口の沿岸から共同規制区域にかってに出かけていく。こういうことになった場合に、これは処罰のしょうがないというふうに、私は関係法規をずっと見て確信を持つわけですが、農林大臣、どうなんでしょうか。委員会であなたにお聞きをいたしますると、沿岸漁民の船を千七百にしぼるということは義務ではないのだ、日本政府義務ではない、こう言われました。そしてまた、漁業協定の規制の対象からも、この沿岸漁民の小さな船というものは、はずれているわけであります。そうしてみれば、本来これは自由に行けるわけなんですね。千七百隻以外の方々も自由に行けるわけなんです。あなたは、この千七百隻は日本政府義務ではありませんと、はっきり委員会で言っているわけなんです。気持としては、千七百以上が行ってもらいたくないという農林大臣の気持ちはわかりますが、しかし、そのために漏れた方が、死ぬわけにはいかないからというので出かけた場合に、一体これを処分する方法がございましょうか。ないと思う。どうなんです。(発言する者多し)文部大臣に一点お伺いします。文化財の返還につきまして、今回返すのは国有のものばかり、民間の所有のものについては日本政府が勧奨すると、こういうことを言っております。具体的にはどういうことなのか。たとえば朝鮮の皆さんがたいへんほしがっている文化財民間にあると、そういうものについて、経済的な裏づけを日本政府がしてでも、場合によっては、全部じゃなしに、特殊なものについてはそこまで裏づけをしてでも、朝鮮民族のものは朝鮮民族に返すという立場で努力されることまで考えておられるのかどうか。ただ口先だけで、できるだけ返したほうがよかろうという程度のことなのか、明らかにしてほしいと思います。  まだ、いろいろあるのでございますが、答弁をされる方々もだいぶお疲れのようでございますから、一応ここで、私は再質問を保留して、答弁をお聞きをしたいと思います。(拍手、「総理、おかしいじゃないか」「前の発言取り消せ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  30. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 私、いまのお尋ねに対してお答えする前に、先ほど亀田君に私がお答えしたことが十分理解されていないようでございますので、もっとはっきり申し上げておきます。  私は、皆さん方が賛成されたと、社会党の方が賛成されたと言った覚えはございません。どこまでも、立法府のことは立法府でおきめになることである。私は政府の代表として答弁をしておるのでございまして――こういうことを申し上げた。それで、その立法府においてただいまの議決は有効だと認められておるのではないかということを実は申したので、社会党の方がこれに御賛成していらっしゃるというようにとられたら、これは間違いでございますし、そういうことを私は申したわけじゃございません。その点だけはっきり申し上げておきます。  ただいまお尋ねがありましたことについてお答えいたします。まず、一つは、経済協力について、これが利権化する、あるいは汚職のようなことが起こらないかというお尋ねであります。特に、日本からその経済協力として出されるのは消費財であったり、また、向こうのほうで、韓国のほうで使節団以外に認可した業者というものもあるようだと、こういうような非常に具体的に例をあげられまして、そうして汚職あるいは利権化する心配はないかと、こういうお尋ねであります。この点につきましては、かねてから私どもも、利権化するとか、あるいは汚職、そういうことがあっては私どもの真の目的を失うことになりますし、また、われわれの好意が相手の国にも十分理解されないことになる、これはとんでもないことですから、十分注意しておりますということを申しましたが、特にその具体的方法として公開入札をする。したがって、入札の方法も非常にフェアに行なわれる、そこらに暗いものは一切ないというような処置がとられ、あるいは野党をも含めての――与野党による財産管理委員会を設けてこの処置をつけるとかいうようなととが、とられておるようであります。その特別な認可された業者が入るということは、いかにも不都合なようですが、これは業者の育成ということもありましょうし、あるいはむしろ専門的な業者が入ることによって競争入札の公正が期せられる、こういうこともあるようでありますので、私は、今回の処置は、これは不適当ではないと思いますが、しかし、御注意のありました点は、利権化するとか、あるいは汚職と、こういうようなことについて、この上とも注意しろと、こういうように伺いまして、十分注意してまいるつもりでございます。  次に、韓国人の帰化の問題についてお尋ねがありました。もちろん長い間、日本人としてわれわれと同居もしていたと、こういうことでありますので、その同化のぐあいなり、あるいはまた、日本人との親戚関係その他もあるのでございますから、国籍法の許す限りにおきまして、好意をもってこの帰化の問題を処理してまいりたいと、かように思います。  その次に、在日韓国人財産取得その他につき、その処遇についてのお尋ねがありました。これは具体的なものとして法務大臣からお答えをいたしますが、一般的には、私どもも、在来も雑居し、同居していた。まあ同居というか、一緒に住んでいた、こういう関係もありますので、こういう点について特別な差別をすることは、これは望ましいことではございません。したがいまして、在来の取り扱い方に非常な変更を加えるようなことはしたくない、これが私の基本的な態度であります。この点は、いわゆる韓国人――南の国籍を持たない在日朝鮮人につきましても、在来の取り扱い方を変更するものではございませんから、特別に永住権を認められた韓国人としての特別な地位、これと同一にするわけにはまいりませんけれども、在来から取り扱っていたような朝鮮人に対する処遇、これは今日もこれができ上がりましても続けていくことになると御理解をいただきたいと思います。  ことに、お尋ねになりました祖国との交通の問題でございますが、これは今日までは北鮮への帰還船が出ておりますが、今後とも北鮮への帰還がある限りにおいて、これをやめていく、直ちにとめるというようなことをするつもりはございません。最近は非常に帰られる人が減っておりますので、帰還船が出ていく回数は減っておる、かように思います。また、いわゆる祖国との交通、これを特別に考えろというお話でございますが、いままでも人道上の問題という取り扱いはしていたと思います。しかし、これが再入国ということになりますというと、しばしば政治的な問題も引き起こしておるようでありまして、一様に、祖国に帰った、それ再入国だということで、実は簡単には処理ができないのであります。いわゆる政治的な問題を引き起こさない範囲における祖国との往来、これは私ども十分気をつけてあげたい、かように思います。  また、持ち帰りの財産、これにつきまして、一万トルが韓国人――いわゆる永住権を認められた者について考えられているが、その他にはそういう処置がない。御承知のように、その他の外国人は五千ドルということになっております。これだけが一万ドルということで特別待遇が与えられているということでありますが、この点は私どもも、まあ一応五千ドルと一万ドルということで、これが適当だと、かように考えたものでありますが、必ずしもこれにこだわるつもりはございません。お話がありましたので、十分大蔵当局とも相談をしてきめていきたいと、かように思います。このまま、五千ドルはいつまでも五千ドルだ、こういうようなつもりでないことを、この機会に申し添えておきます。  また、北鮮との――一般の北鮮へ直接に出かける、あるいは向こうから入ってくるとかいう問題でございますが、これについては亀田君の言われるとおりに、そのときの具体的な事例について考える、かようにお答えするわけでありますが、どうもケース・バイ・ケースではほとんど考えられないのじゃないか、こういうような御指摘もあります。今後私どもは、この方針をとりまして、直接、直行の道も考えてよいのだ、また、ただいま申しますように、政経分離の形においてこのことがスムーズに行なわれるように、なお一そう私ども努力してまいりますが、どうも、いままでとったケース・バイ・ケース、この方針を変えるという意味ではございません。その方法でまいりますが、非常に窮屈なものだ、かようにお考えになることはどうかと思いますので、私どもの真意をお伝えし、披露したわけでございます。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  31. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 請求権経済協力の問題についての御質問にお答え申し上げます。  まず第一は、韓国政府が年次計画を作成する、その際に、日韓協議とあるけれども、日本合意がなければ成立しないのか。こういうお尋ねでございますが、修正の場合には、合意によって実施計画を修正することができると、こうあります関係もあり、もちろん基本計画の作成につきましては合意が必要である、かように解釈しております。  それから無償二億ドル、各年度分の増額は、合意があれば可能である、こう書いてあるが、聞くところによると、韓国の第二次計画に歩調を合わせるために、大幅に繰り上げ、場合によっては、年度を縮小するというところまでいくということを聞いておるけれども、そういうことは乱用ではないか。もしそういうことをやるのであるとすれば、国会承認を要するのではないかというお尋ねでございますが、財政能力を考慮して増額をきめるのでありますが、清算勘定の支払いが十年にわたって行なわれる関係もありまして、最終年度の分の繰り上げのみでありまして、年限の短縮は考えておりません。さよう御了承を願います。  それから、日本から供与された生産物を再輸出してはならない、こう書いてあるが、しかし加工して輸出する場合はこれは例外である、この例外規定というのは矛盾ではないか。あくまで韓国の必要な生産物を輸出するのであるから、たとえ加工しようとしまいと、とにかく外へ出すのでは韓国経済協力にならないのではないかというお尋ねでございますが、原材料等を輸入して、これに加工してりっぱな製品にして、これを海外に輸出することは、いわゆる韓国経済に対する協力でありまして、一向差しつかえないという方針をとっております。  それから、対日請求八項目の処理に関して、第二項g項は、はずされておるというように韓国の議事録に記載されているということを聞くが、はたしてこれは事実であるかというお話でありますが、これは韓国政府国会に出しました韓国条約及び協定には、本件第二項g項を含む合意議事録が全文集録されておりまするので、何かのお間違いではないかと考えられます。それで韓国におきましては、前に日本経済協力の供与から特別基金をつくって、そして個人請求ではっきりしているものについては、その基金から支払うという計画があるということを、つとに聞いたのでありますが、ただいまそれが確定しておるかどうか、まだつまびらかにしておりません。  それから日本の漁船が拿捕された、これに対する賠償請求権が当然あるはずだ。しかるに政府は、これを放棄している、これは不合理だと思うがどうかというお話でございますが、これは今回漁業全般にわたって非常な改善を見るわけでございますので、大局的見地に立って、これらの請求権につきましては、外交保護権を放棄した、こういう状況でございます。その結果、国内的にあと始末をせよというような御意見が相当ございました。政府は、十分にその点を考慮して善処するように、すでに具体案を国会に提出しておるような次第でございます。  次に、実施計画に基づく生産物及び役務を受ける際に、韓国の使節団のほかに特別の業者を指定する、そして日本との折衝の場合の当事者にするということは、どうもいろいろ暗い影がそこに出てくるので、おもしろくないのではないかというお話でございましたが、ただいま、これは総理からごく総括的にお答えがございましたので、私は省略したいと思います。  なお、無償供与のうちの一億五千万ドルの消費財を供与すると、こうあるが、これは何がゆえであるかというような御質問であったかと思うのでありますが、これは従来の賠償供与の問題にもそういう現象があらわれたのでありますが、いろいろなプラント等を日本経済協力いたします場合に、現地において人を雇うとか、あるいは生活物資を現地において調達するとか、いろいろそういう新しい事業をやる上において、現地において調達すべきものが相当ふえてまいる、その場合の現地調弁に振り向けるところの現地通貨が不足するために、せっかくこっちは用意しておるけれども、現地において問題を扱いかねているというような事態が非常に多いのでありまして、そういうことのないように、三億及び一億の有償無償協力、その両面にわたって問題の進行をなめらかにする意味において、消費物資を向こうに供与いたしまして、それを政府が売り払って、そして現地通貨をたくわえて、これをもって諸建設に充てる、それをスムーズに行なう、こういうのでございまして、これは絶対に必要である、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  32. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 持ち帰り財産についてのお尋ねでございますが、まず第一に、持ち帰り財産で持って帰れないものはどんなものか、こういうことでございますが、携帯品、職業用具及び引越し荷物は持ち帰りを認められておりますが、明らかに商品取引の対象となる程度のものは、輸出の承認がなければ持ち帰ることが認められないのであります。また、風俗を害するおそれがある書籍、図画、彫刻物等、日本の法令によって輸出が禁止されておるもの、その他法令に違反した品物は、持ち帰ることができません。それから、職業用具は持ち帰ることができるのかということでございまするが、ただいまのような関係で、これは持ち帰り可能の部に入るわけであります。その範囲は、本人みずから職業の用に供することを目的とし、かつ必要と認められる荷物であって、職業に関する認定にあたっては、本人の所轄市区町村長の発行する職業に関する証明書資料として認定をすると、かような手続を踏むことが必要であります。  それから、先ほど総理からお答えがあったのでありまするが、持ち帰りの現金の問題であります。ただいまは世界各国とも一人につき無制限に四万五千円、つまり百二十五ドルかです。日本銀行の許可を受けて五千ドル、こういうふうになっておるのであります。今回特に韓国に対しましては一万ドルということにいたしたわけでございまするが、貿易自由化というような態勢でもありますので、各国に対しまして一万ドルにこれを拡大したい、かように考えるわけであります。そう相なりますると、北鮮韓国との間には差別がなくなると、かように相なるのであります。  また、特に私を御指名になって、無償供与実施計画の決定は合意が必要なのかどうかという問題、また、三億ドルの無償供与は、これを繰り上げることができるのかどうかという、法的な解釈の問題のお問いがございましたが、これは椎名外務大臣がお答えいたしたとおりであります。  以上、お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣石井光次郎君登壇拍手
  33. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。  第一番目は、二十五年後における永住についての協議方針はどうかということでございました。これは、法的地位に関する問題の協定の一番前提に書いてありまする問題、すなわち、多年日本に在住している特別関係であるとか、まあ、そこに住んでいる大韓民国民が日本の社会秩序のもとで安定した生活を営むというようなこと等が、両国民、また両国関係を非常に親密ならしめるというようなことのために、この協定ができるのだというようなことを書いてある、これが根本でございまして、この精神を土台として、この協定ができているわけでございます。この心持ちで、二十五年後に相談するときも、考えていくわけでございましょうが、一体、そのときまでには、永住権を与えた人たちが、どういうふうな生活をやっておるかということも大体わかってきます。それから、そのころの内外の情勢も、いろいろ出てまいりましょうし、まあ、そういうふうな各般の情勢を考えまして、そのときに協議をするというようなことになりまして、いま、どういう点をどういうふうにしてやろうというようなことを考えておるわけではございませんけれども、そういうふうなことを頭に入れながら、寄り寄りこれから考えていく基礎をつくっていかなければならぬと思っておるわけでございます。  それから、第二の、永住許可申請について、国籍証明するものを添加させるとなっているが、外国人登録証には「韓国」の記載があって、もうそれがあるならば要らないではないか、別にいろんなものを証明する必要はないじゃないか、というのは、この間から、「韓国」というのは国籍を示すものだという統一見解政府は出したのだから、その必要はないではないかという御質問でございます。しかし、そのとおりに思えるのでございまするが、「韓国」と記載されているものは、それだけで韓国国籍証明されていると言えるかどうかということを、いまの時点から考えますると、はっきりしないものがあるのでございます。いまの場合において、この際において、はたしてそのとおりであるかどうかということを確かめる必要がございますので、今度のような話し合いによって、そういう手続をとるというようなことになったわけでございます。  その次は、強制退去の場合の麻薬犯が少し軽過ぎやしないか。もう一つ、第三条(b)項、外交上の問題でございまするが、そういう問題について、特に政治犯とみなされるような場合には保護すべきではないかということでございます。  麻薬の場合には、いかにも麻薬の問題だけを考えますると、一回やってでも、これは追放に値するくらいなものでございまして、これは一般の外国人の場合においては、入国管理の上において非常に厳重な取り扱いをしておることは、御承知のとおりでございまするが、この場合におきまして、われわれが永住権を与える人たちは、かつて日本人であった者、それが今度は日本人でなくなった、それに永住権を与えようというわけでございまするから、こういう特殊な事情考えまするというと、ほとんど日本人と同じようなところに考えてやるというふうなことだと、まあ、このくらいなところまで、しかたないじゃないかということで、話し合いの結果、そういうところへ落ちついたというふうに御了承願いたいと思うのでござざいます。  それから国交に関する問題のほうは、少し厳重過ぎるように思えるのでございまするが、これは内乱に――国内の治安に関する問題よりも、特に国の外交上の利益を害するというような問題は、外国人の在留管理の面からすると、厳格に取り扱わなくちゃならぬと思いまして、こういうふうな話し合いができたのでございます。しかし、お尋ねの点の、韓国の人で、もし政治犯となった者を、やはりこういうものによって機械的に韓国へどんどん帰すようなことになりゃせぬかというようなお話がございましたが、わが国の従前の方針といたしまして、本人の希望に反しまして迫害の待っている国には送還しないことに、こういう政治犯はなっておるのでございます。この方針は、今後とも踏襲することになっておりまするから、御心配のようなことは今後とも起こらないということを御承知おき願いたいと思います。  次は、退去強制についての韓国協力というのは、どんな程度のものか、はたして協力するのかどうか、というお尋ねがございました。韓国は、昭和二十七年の五月以降、戦前居留者の強制送還の引き取りを拒絶いたしておりました。わが国も、昭和三十二年十二月、抑留者相互釈放の覚え書きを取りかわしましてからは、送還を自分のほうで差し控えておったというようなことがございました。ところが、今度、法的地位協定されましてから、韓国側は、自国民を引き取る義務を当然なこととして向こうから認め、また、合意議事録、討議の記録においても、それは明らかにしておりますので、今後は紛議を生ずるようなことなく、必ず、こちらから強制退去させた者は、当然向こうが引き取っていくに違いないと、私どもは確信しておるわけでございます。  それから、在日韓国人日本における経済活動、あるいは仕事の上で、どんな不利があるかというようなお尋ねでございました。韓国人に対しましては、「外国人財産取得に関する政令」の適用がないのでございますから、土地建物に関する権利を取得したり、あるいは特許権等を取得するにも、特段の制限はないのでございます。国民金融公庫、住宅金融公庫等の特殊な金融機関から金融を受けることは、一般外国人と同様に不可能でございます。さらに、国家公務員とか水先案内人等には、法律によりまして外国人が就職することはできない職になっておりますので、韓国人も同様に就職は許されないのでございます。こういうふうな法律できめられた以外のものは何でもやれるということになっておるわけでございます。  その次は、法務大臣の声明についてのお尋ねでございました。六月二十二日に法務大臣の名前において声明が出まして、第一には、戦前から日本に居住していたが、戦後一時帰国して、平和条約発効後に再び来日した者と、もう一つは、戦後から平和条約発効までに来日した者については、すでにわが国の生活に非常になじんでおる状態であること等を考慮いたしまして、在留状況を十分勘案した上で特別に在留を許可する。また、情状をよく調べて、いい者には、出入国管理令によりまするいわゆる一般永住を、あるいは与えることがあるということを、この法務大臣の声明には、うたったわけでございます。それは、その日が、ちょうど条約調印の日でございまして、こういうふうなことは、法の範囲内のことをやる、取り扱う上に、こういうことに好意をもってやるぞというコンプリメントでございまして、法の範囲を出るものではないのでございます。まあ、その範囲において、こういういわゆる取り扱いを、仲よくする間柄になりましたから、やりましょうという意味の声明にすぎないのでございます。  次は、法務大臣声明から、はずされた密入国者の取り扱いについてはどうするか。――平和条約発効前の入国者については、いまのようにできておるが、発効後に韓国から密入国した者については、従前どおり、出入国管理令によって取り扱うことになる。また、その実例として、さっき亀田さんが言われましたように、何とかいろいろな手順でこれを寛大に取り扱って特別に在留を許すのか、それとも、そういうことはしなくなるのか、どうだ、というお尋ねでございましたが、これは、いままでどおり、情状によりまして法務大臣が特別に在留を許すということは、出入国管理令第五十条によりまして法務大臣が権限を持っておりまして、それによって、いままでもやっておりますし、今後もこのとおりの取り扱いをするつもりでございます。  その次は、入管局長の談話についてのお尋ねでございました。これは、協定永住を許可された者について、その近親者が再会のために日本訪問を希望する場合には、その入国について好意的な取り扱いをしようというような、ただこれも好意的な、その日のあいさつでございます。では、どんな人が近親者として来るだろうかと考えますと、親子とか配偶者とか、きょうだいくらい。在留期間は、法によって厳重に調べなければなりませんが、そういうふうな人たちが、今度国交が回復いたしますると、自然、寛大に取り扱われることになるだろうというような意味の発表であります。  その次は、入管特例法の、今度の法律の第九条で罰則を設けたのは、どうも要らぬことではないかということでございまするが、これは、うその申請をして永住許可を受ける者とか、あるいは威力を用いて永住許可の申請を妨害する者等がありまして、永住許可の手続等の進行を妨害し、あるいはその自由を妨げるというようなこと等があってはならないということで、必要最小限度の罰則を設けたという心持ちのものでございまして、これで朝鮮人の民族問題等に国家が介入するというような心持ちは毛頭ないのでございます。  それから、討議の記録で韓国が言明している意味はどういう意味だろうかというお尋ねであったと思いますが、日本政府から生活保護を受けている韓国人は、本来ならば韓国政府が当然めんどうを見る筋合いでありまするが、いますぐに切りかえる準備もないので、できる限り早い機会に、その実現に努力するという意向を示した程度のものでございます。  次は、厚生大臣にかわって私が御返事するのでありますが、国民健康保険の韓国人の加入問題でございます。これは、国民健康保険は、各市町村ごとの地域連帯の考え方からできていることは御承知のとおりでございまして、たてまえからいたしますると、外国人は加入させないことが、たてまえだと思うのでございますけれども、市町村において、住民でありまする外国人の生活実態から見まして、加入せしめたほうが適当と判断したときは、条例によって、その外国人を加入せしめることがたてまえになっておるわけでございます。永住許可を得た韓国民についてはどうしたらいいかという問題になりますと、一般の外国人以上に日本の生活になじんでおりまするし、市町村の地域住民として日本国民との関連性も深いものと考えられまするので、特に市町村の条例を待たずに、国民健康保険の適用を受けるようにしたらいいじゃないかということで、省令でこれの適用を受けさせるようにしたような次第でございます。  もう一つは、日本におりまする韓国の人が韓国に帰られまして、また日本に再入国するのはどういうふうになるか、寛大になるのじゃないかというようなことであります。そのとおりでございます。国交ができました関係上、自然、これは、いまよりは寛大になるだろうと思っております。  それからもう一つ私にお尋ねのありました、持ち帰り財産あるいは職業用具の問題は、さっき大蔵大臣が御返事申し上げましたようでありますから、もう私から御返事申し上げません。  これで私のお答えは終わりました。(拍手)    〔国務大臣坂田英一君登壇拍手
  34. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) 共同規制水域に出漁し得る沿岸漁業の千七百隻の限度については、今次交渉では、日本側が自主規制することとなっており、必ずしも法律的義務とはなっていないのでありますが、国際交渉了解したのでありまするから、これを誠実に順守することが国際信義であると考えます。したがって、政府といたしましては、沿岸漁業の数多い種類、地域、時期、グループ等も配意いたし、この線に沿った国内体制を整備することといたしたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣中村梅吉君登壇拍手
  35. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 合意議事録の中に、私有文化財について勧奨云々というくだりがございますが、この勧奨というのは、政府が何らか具体的な裏づけをすることになっているのか、こういうお尋ねでございました。この合意議事録の意味は、そこまでのことにはなっておりません。この合意議事録のくだりにございまする文言のとおりでございまして、政府補償をするとか、あるいは何らかの負担をいたしまして、具体的な裏づけをするというような意味は、全然含まれておりません。この文言にあるとおりでございます。それだけをお答え申し上げておきます。(拍手)    〔亀田得治君発言の許可を求む〕
  36. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 亀田君、何ですか。答弁漏れですか。――自席で御発言願います。
  37. 亀田得治

    ○亀田得治君 農林大臣、聞こえますか。――千七百隻から漏れた漁民が、共同規制区域にかってに出かけても、処罰をする道がないではないか、そこを聞いているのです。ほかのことを言うてもらわんでもいいです。    〔国務大臣坂田英一君登壇拍手
  38. 坂田英一

    ○国務大臣(坂田英一君) お答えいたします。  先ほど、体制を整備していきたいということを申しましたが、それができないときは、処罰もやむを得ないと存じます。      ―――――・―――――
  39. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 鍋島直紹君外一名から、成規の賛成者を得て、  質疑終局の動議が提出されました。  これより本動議の採決をいたします。  表決は記名投薬をもって行ないます。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  40. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) まだ投票されない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――投票なさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  投票漏れはございませんか。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  41. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  42. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数         百八十七票  白色票           百十五票  青色票           七十二票 よって、質疑は終局することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百十五名       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    白井  勇君       梶原 茂嘉君    木暮武太夫君       草葉 隆圓君    宮崎 正雄君       柳田桃太郎君    山内 一郎君       山本茂一郎君    園田 清充君       船田  譲君    藤田 正明君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    亀井  光君       石井  桂君    稲浦 鹿藏君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鹿島 俊雄君    鍋島 直紹君       横山 フク君    大谷 贇雄君       青柳 秀夫君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    中野 文門君       竹中 恒夫君    後藤 義隆君       堀本 宜実君    山本 利壽君       玉置 和郎君    内藤誉三郎君       任田 新治君    西村 尚治君       中村喜四郎君    高橋雄之助君       長谷川 仁君    岡本  悟君       奥村 悦造君    楠  正俊君       黒木 利克君    栗原 祐幸君       久保 勘一君    岸田 幸雄君       米田 正文君    谷村 貞治君       村上 春藏君    木島 義夫君       山本  杉君    徳永 正利君       大谷藤之助君    天坊 裕彦君       西田 信一君    仲原 善一君       松野 孝一君    津島 文治君       斎藤  昇君    塩見 俊二君       植竹 春彦君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    山下 春江君       青木 一男君    安井  謙君       小林 武治君    小山邦太郎君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    田村 賢作君       谷口 慶吉君    北畠 教真君       金丸 冨夫君    青田源太郎君       赤間 文三君    井川 伊平君       江藤  智君    森 八三一君       三木與吉郎君    西郷吉之助君       木内 四郎君    紅露 みつ君       上原 正吉君    増原 恵吉君       中山 福藏君     ―――――――――――――  反対者(青色票)氏名      百十五名       山高しげり君    石本  茂君       渋谷 邦彦君    鈴木 一弘君       達田 龍彦君    前川  旦君       戸田 菊雄君    竹田 現照君       山崎  昇君    木村美智男君       村田 秀三君    小野  明君       矢山 有作君    野々山一三君       瀬谷 英行君    杉山善太郎君       林  虎雄君    小柳  勇君       横川 正市君    藤田藤太郎君       相澤 重明君    岡  三郎君       永岡 光治君    藤田  進君       柳岡 秋夫君    田中  一君       佐多 忠隆君    北村  暢君       鈴木  強君    大和 与一君       須藤 五郎君    春日 正一君       森  勝治君    鈴木  力君       中村 波男君    川村 清一君       田中寿美子君    稲葉 誠一君       吉田忠三郎君    渡辺 勘吉君       小林  武君    松本 賢一君       佐野 芳雄君    中村 順造君       野上  元君    山本伊三郎君       武内 五郎君    森中 守義君       松永 忠二君    占部 秀男君       森 元治郎君    光村 甚助君       大河原一次君    伊藤 顕道君       中村 英男君    久保  等君       大矢  正君    亀田 得治君       加瀬  完君    阿部 竹松君       近藤 信一君    大倉 精一君       松澤 兼人君    小酒井義男君       椿  繁夫君    成瀬 幡治君       鈴木  壽君    木村禧八郎君       藤原 道子君    岡田 宗司君       加藤シヅエ君    羽生 三七君      ―――――・―――――
  43. 河野謙三

    ○副議長(河野謙三君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。羽生三七君。    〔副議長退席議長着席〕    〔羽生三七君登壇拍手
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっている日韓関係条約協定等について、討論を行ないます。  本問題の不当性あるいは不法性につきましては、すでに先日来、各種の決議案の提出の過程、並びに、先ほどの亀田議員の質問等において、余すところなく指摘されましたので、私は直ちに本論に入りたいと思います。なおまた、この日韓条約協定等の内容についての詳細な問題点は、後刻、同僚岡田議員から指摘されることになっておりますので、私は、総論的に、日本社会党が本条約に取り組む基本的な立場に立って、本条約の背景をなす国際情勢の検討を中心に討論を進めたいと存じます。  まず、本条約提案理由において政府が述べている見解に対する疑問から出発することにいたします。この中で政府は、「こうして、両国が久しく待望されていた隣国同士の善隣関係を主権平等の原則に基づいて樹立することが、両国及び両国民の利益となることは申すまでもありませんが、さらにアジアにおける平和と繁栄に寄与するところ少なからざるものがあると信ずるものであります。」と、こう述べております。この点に関する認識の相違が、実は本問題に関する最大の分岐点となることを、まず最初に指摘しなければなりません。また、佐藤総理は、日韓国交回復はアジア外交の出発点であるとして、さらに本五十国会の施政方針演説の中におきましては、こう言っております。「私は、政権担当以来、国民諸君の強い願望を背景として、わが国の安全を確保し、アジアの平和を守るため、あらゆる努力を傾注してまいりました。」、こう述べているわけであります。日韓条約は、はたしてアジア外交の出発点となるでございましょうか。また、国民の願望する平和と安全につながる条約でございましょうか。われわれは、この点については、遺憾ながら全く異なる見解に立っております。これを、日韓条約の背景となる国際情勢を検討する過程で明らかにしたいと存じます。  さて、日韓基本条約の前文には、「国際の平和及び安全の維持のため」というくだりがあります。また、日米安保条約にも、「極東における国際の平和と安全の維持」云々と、うたっております。政府も「平和と安全」をうたい、われわれもまた「平和と安全」に最重点を置いております。しかるに、どうして、今日見られるように大きな見解の相違や隔たりが生ずるのでございましょうか。そしてまた、日韓条約審議取り扱いに、なぜ、現に見られるようなきびしい対立が起こるのでございましょうか。問題は、平和と安全のための手段と方法が、あまりにも多くの相違点を持っていることにあると思います。そして、この認識の相違が――このような国際問題に対処する政府性格そのものが、実は、本条約審議や成立の過程に見られるような、その無謀さの上に、そっくりそのまま、あらわれているとも言えるのではないかと思います。  さて、政府の平和政策でありますが、これを具体的に申しますと、政府考え方は、一口に言って、力の均衡政策であり、そのために自由陣営の結束というととを最大の課題とし、また至上命令としております。日韓特別委員会におきまして、私がこれを指摘いたしますると、佐藤総理は、「それはイデオロギーの相違ということではないか。自由陣営の結束を強固にすること以外に方法があるなら、社会党の考え方を明らかにせよ」と反論されました。この問題については、あとからまた触れますが、ここで特に私が明らかにしておきたいことが一つございます。それは、第一に、外交はイデオロギーの問題ではないということであります。私は、政府与党が、アメリカの資本主義、自由主義を信奉しようと、それは全くの自由であろうと思います。また、共産党の諸君がどういうイデオロギーを持とうと、これまた自由でございます。われわれ社会党は、社会党としての独自の政策と主張を持っております。このようなイデオロギー上の自由は、何ぴとも、侵すことも拘束することもできません。それは全く自明の理でございます。しかし、それと外交とを混同してはならぬと思います。外交は、国家間に現実に存在している事態にどう対応するかという、きびしい現実認識を出発点としなければならぬと思います。前置きが少し長くなりましたが、こういう点を明らかにしておかないと、問題の把握のしかたに混乱を起こしやすいので、討論の出発点を明確にした次第でございます。  さて、政府の言うように、日韓条約アジア外交の出発点となるでございましょうか。また、日韓条約が、政府の言うアジアの平和確立にどういう寄与をするのでございましょうか。このようなわれわれの疑問について、政府は次のように反論いたしております。すなわち、「お隣りの人と朝夕のあいさつをしたり、つき合いをするのが、なぜ、悪いのか、国家間でも同じことではないか」、こういう反論をされております。もちろん、われわれは、隣人とあいさつをしたり、つき合いをすることに、反対をするような、ばかげたことは毛頭考えておりません。国家間においても同様でありましょう。あいさつどころか、貿易あるいは文化、あるいは人事の交流も、大いにやったらよかろうと思います。だが、お隣りは韓国だけではございません。本来、サンフランシスコ平和条約日本が独立を承認したのは、全朝鮮であります。これらの点の解明は、このあと、岡田議員から適切な指摘があろうと思います。いずれにせよ、隣国韓国だけではありません。北には、朝鮮民主主義人民共和国が、いわゆる北鮮が存在をいたしております。では、これとの関係はどうなるのか。北鮮隣国ではないのか。同じことが中国についても言えるでありましょう。日本は、台湾と国交を持っているが、中国、北京政権とはどうなのか。また、南ベトナムとは国交を持っているが、北ベトナムは、これを承認していない。これはどういうことなのか。このように見てくると、政府の言う隣人とは、隣組の中の気の合った人々とだけ、あいさつをするということであります。国家間では、自由陣営に属する諸国とだけの結束を固めるということになるのではございませんか。しかも、自由国家群との結束を固めることが、アジアの平和にどうつながるのか、どう役立つのか、こういうことになると、結局のところ、政府基本的な方針は、力の均衡政策であります。しかも、力の均衡の拡大となる性質のものでございます。  力の均衡政策は、今日の世界の必要悪であるかもしれません。しかし、絶対に問題の解決にはなりません。力の均衡政策は、一方が一〇〇の力を持てば、他方が二〇〇の力を持ちます。他方が二〇〇を持てば、一方が三〇〇を持つことになります。際限のない矛盾を繰り返し、結局、力の拡大均衡となって、その帰結として、世界のあらゆる地点に戦争を引き起こし、終局的には破局の運命をたどる以外にはないでございましょう。この危険を除去するためには、力の均衡の拡大ではなく、その縮小をはからなければなりません。しかも、われわれは、一挙に均衡の一方だけをゼロにせよというような極論を吐いているのではございません。冷戦を漸次緩和し、力の均衡の縮小をはかりつつ、最終的には、世界の完全軍縮、核兵器の実験、製造、貯蔵、使用等のすべてを禁止することを目標として、最終的には、力の均衡政策の廃絶を実現しようというのでございます。もちろん、これは理想でありますが、現実は、そう単純ではございません。しかるに、それにもかかわらず必要なことは、そういう目標に少しでも近づけるには、どういう外交政策政策が必要かということであり、日韓条約が、そういう方向に沿うものなのか、あるいはアジアの平和に何らか役立つのか、ということでございましょう。そういう角度から日韓条約を見ないと、結論は出てきません。したがって、日韓という特定の一部、特定の部分、これから出発するのではなく、アジア全体の国際情勢を十分に把握し、問題の所在を明確にして、それが平和とどう関連するかという、大局的、国際的視野に立って、その一部として日韓問題を位置づけるのが順序であろうかと存じます。  したがって、あのおそるべき朝鮮戦争を引き起こした南北のきびしい現実を考えるならば、韓国とだけ国交を回復し、北鮮との関係は、これを疎外するような立場に立つべきではなく、南北いずれとも、人事、文化、貿易等、各分野にわたる接触を深めて、南北統一の機運をつくり上げることが、肝要なのではないでしょうか。南北朝鮮の分裂を固定化するような、そして結局は、南北に新たな紛争が起これば、政府がどのように説明しようとも、事実上これに介入せざるを得なくするような、いかなる条件も、絶対につくるべきではございません。  さて、続いて、隣国中国の問題を見ることにしたいと思います。中国問題につきましては、日本は、さきの国連総会で、今回も、またまた重要事項指定提案国となりました。政府は、これについて、中国問題は重要であるからと説明をいたしております。中国問題の重要性については、政府の言をまつまでもなく、われわれもよく認識いたしております。いな、むしろ、われわれのほうが、より深くこの重要性を認識していると言えるかもしれません。しかし、重要なことは、中国問題が重要であるということと、重要事項指定とすることとは、別個の問題であり、本質的に違うということでございます。なぜなら、国連の場における重要事項指定方式は、中国国連加盟を阻止するための戦術であるからであります。さらに重要なことは、事もあろうに、日本がその提案国となったばかりか、むしろ、その先頭を切っているという事実でございます。この問題を指摘した際――これは日韓特別委員会でありますが、政府は、中国の戦闘的高姿勢に言及されました。ここでも、われわれが明らかにしておかなければならないことが一つございます。それは、われわれは、いかなる場合におきましても、中国外交方針政治姿勢をそのまま容認しているものではないということであります。日本社会党には社会党としての基本的な外交政策がございます。したがって、中国外交方針に対する評価とは別個に、必要なる現実問題の処理として、わが党は対中国政策を進めているのでございます。そういう立場に立って、政府中国政策、特に国連における再三にわたる方針を検討すれば、中国との国交回復が重要な戦後問題の処理として必要であるということに反するばかりではなく、冷戦緩和、国際緊張の緩和という立場からいたしましても、全くこれに逆行する方針と言わなければなりません。  総理は、核兵器を持つ中国は脅威であるとも言っております。わが日本社会党も、それがいかなる国であれ、核兵器の実験や使用には絶対に反対をいたしております。しかし、現実の問題として、ある特定の国だけは持ってもよいが、他の国は持つことができないという論理は成り立ちません。しからば、これを有効に規制する方法は何か。それは世界のすべての国が――たとえ、それがアメリカであれ、ソ連であれ、あるいは英国であれ、フランスであれ、そしてまた、中国であれ、国際的に、全世界的な規模でこれを規制することが必要でございましょう。したがって、中国を国際社会に迎えることは、その欠くべからざる前提条件でもございます。中国を除外して完全な軍縮ができるはずがないからであります。もちろん、それゆえにこそ、政府は、世界軍縮会議の構想が進められているではないかというかもしれません。なお、それには中国が参加するかどうかという問題も存在しておりますが、とにかく、中国も含めての世界軍縮会議でない限り、これは実質上無意味であることを、世界各国も承知しているがゆえに、今回の世界軍縮会議の提唱は特別の意味を持っているだろうと思います。  では、どうして中国国連加盟を阻止するのか、世界軍縮会議中国を迎えようとしながら、では、なぜ国連への加盟を阻止しようとするのか、はなはだ奇怪でありますが、これは結局、台湾政府との関連であろうかと存じます。この問題は、きわめて困難な課題であることを、われわれもよく承知しております。しかし、この台湾問題も、戦後二十年を経た今日、この間、激動し、変化を続けているアジア情勢、世界情勢の一環としんこれを把握しなければ、絶対に問題の解決にはなりません。また、太平洋戦争で、日本アジアの諸国に多くの犠牲をしいましたが、その最大の被害者は、中国本土七億の人民であるという事実を、ここであらためて想起する必要があろうかと存じます。さらに、台湾問題は、中国自身の内政上の問題であるという事実を忘れてはならないと存じます。さて、そのような中国に対して、歴代日本政府は、国連加盟阻止の役割りを果たしてまいりました。これが隣人外交でございましょうか。この中国を除外した外交で、アジアの平和が確立できるでございましょうか。今日、世界の冷戦あるいは熱戦――ホット・ウオーといわれるその地点はどこなのか。欧州にはドイツ問題があります。これは東西に分割されております。アジアではどうか。ベトナムも南北に分割されております。中国は、これも本土と台湾に分かれております。そして、これらの地点が今日世界の危機の発火点となっている。同一の国家・民族が二つに分かれていることから、ここに緊張激化が起こり、そして、それをめぐって、東西陣営の闘争が繰り返されているのであります。この貴重な経験をわれわれは無視すべきではないと思います。しかるに、今回、いままた、困難を将来にもたらすであろうところの、朝鮮の一方、韓国とだけ条約を結んで、しかも、これをアジア外交の出発点といい、平和外交一つの布石であるという。われわれが理解に苦しむのは当然であろうと存じます。  次に、ベトナム問題はどうでありましょう。アメリカは今日ベトナム戦局の有利を盛んに宣伝をいたしておりますが、だれの目にも明らかなことは……(「外務大臣を起こせ」「自分の問題じゃないか」と呼ぶ者あり)いや、寝たければおやすみなさい、御自由に。われ関せず焉であります。――アメリカは今日ベトナム戦局の有利を盛んに宣伝しておりますが、だれの目にも明らかなことは、現実にはそれがいよいよ解決しがたいどろ沼に進みつつあるということであります。このアジアの地域に起こっている悲惨なベトナム戦争の本質を、日本政府はどのように認識しているのでございましょうか。最近、先月二十一日でありますが、アメリカのニューヨーク・タイムス、これがしばしば北爆をやめろと――ベトナムにおける北爆をやめろと言っておりましたが、今度は南爆を再検討せよという社説を掲げまして、その中に、「このように空爆の激化に伴って南ベトナムの村落や部落に大きな犠牲を出しいている結果、タイなどの共産主義の脅威に当面している隣接国などには、米国に防衛してもらうよりも、共産主義者の支配を受けたほうが犠牲は少ないんじゃないかといった疑問さえ出始めている。」こうニューヨーク・タイムスの社説は述べております。また先日、八日でありますが、タス通信は、やはりニューヨーク・タイムスのレストン記者とコスイギン・ソ連首相との会見記を載せておりますが、その中の一節にこうあります。「ベトナムにおける戦争、ドミニカ共和国やその他における戦争を、あなた方はあなた方の言う平和のドクトリンを反映したものと考えているのか。この記録映画」――これは、たぶんベトナムを撮影した記録映画と思いますが、「この記録映画を見たまえ。米兵により殺されている婦人や子供たちを客観的に撮影したものだ。あなた方は人々を整列させ、銃殺しているではないか。これがあなた方の言う平和のドクトリンか。私は、あなた方が無防備の人々を殺す権利を持っているなどとは考えない。……そして、至るところであなた方は介入をはかり、戦争を拡大しようとしている。」こうレストン記者にコスイギン首相は述べたと伝えております。  で、この機会に私は、一言触れておきたいことがございます。自由とは何ぞやということでございます。これは簡単に申し上げます。アメリカは自由の防衛のために南ベトナムで戦っている、こう言っております。しかし、いま見ているように、ベトナムに自由があるでありましょうか。何らの自由も存在しておらない。真の自由とは、ベトナム問題はベトナム人民自身の解決にゆだねることも自由の重大な要素であることを、この機会に申し述べたいのであります。  このような悲惨な現実に対して、日本政府は、アメリカに対して一片の抗議も行なわず、また、戦争終結のための、具体的に何らの努力も払わず、ただひたすらに米国のベトナム政策を容認いたしております。政府はジョンソン大統領の無条件話し合いを支持すると言っておりますが、人のほおを左手でなぐって、右手で握手を求めても、握手に応ずる人がございましょうか。だれも応ずる人がないと同様に、北爆を強行しながら無条件話し合いなどと申しましても、これが現実に成功する可能性はほとんどございません。そればかりか、むしろ中国が本格的に北ベトナムの援助に乗り出した場合はどうなるでございましょうか。いわゆる米中対決でございます。われわれは、そんな不幸な事態を予測したくありません。また、そんなことにならないことを心の底から念願をいたしております。しかし、われわれのその願望にもかかわらず、もし万一、これが現実の問題となり、ベトナム戦争が拡大した場合、日本はどうなるのでございましょうか。このような場合には、朝鮮半島にもまた新たな事態が発生する可能性は絶無ではございません。このような情勢になったとき、佐藤総理がどんなに、平和に徹する、軍事関係は持ちませんと口約束をしたりされたところで、客観的な事態は、すべての口約を吹き飛ばすほどのすさまじさで発展するのではないでしょうか。それゆえにこそ、ベトナム人民の不幸、アメリカの兵隊の不幸という問題、それだけに限定するのではなくて、わが日本日本自身の問題として、ベトナム戦争の終結のためにあらゆる努力を結集しなければならぬということが、当面の最重要な課題ではないかと思います。  しかるに、日本は、無条件にアメリカ政策を支持し、自由陣営の結束を固めることだけが平和と安全に通ずる道と言っております。もし日本中国問題で正しい姿勢を示し、ベトナム戦争について戦争終結のためのあらゆる努力を傾注する、その中で、佐藤総理がさきに施政方針演説で述べました――すなわち総理が「政権担当以来、国民諸君の願望を背景として、私は、わが国の安全を確保するため、あらゆる努力を傾注してまいりました。」、こう言うならば、われわれは、その発言が客観的事実に裏づけられたものとして、これを承認するのにやぶさかではございません。また、そういう姿勢のもとで日韓条約と取り組んだのであるならば、おそらくその結果は、おのずから別個の形のものとなったと思います。日本を取り巻くアジアの情勢は、おおよそ、このようなものだと存じます。  ところで、日韓条約の電撃的側面の問題でありますが、確かに条約の内容には軍事的な条項は一つも存在いたしておりません。そうして、いわゆる東北アジア軍事同盟の杞憂、心配についても、政府は、いかなる軍事同盟も結ぶ意思はないと、言明もいたしております。しかし、日本米国とは日米安保条約で結ばれ、韓国と台湾は米国軍事同盟を結んでおります。この場合、これら諸国が直接的に集団的軍事同盟を結成してはおりませんけれども、これに、もし、日本の意思が加わるならば、それは直ちに有機的に結合する布石が今回の条約で打たれておるわけであります。もっとも、この場合、日韓基本条約に示されている国連憲章との関係、特に第四条あるいは吉田・アチソン交換公文等の意味する点につきましては、多くの問題点を内包しておりますが、これはさきに同僚議員からしばしば委員会で指摘されたところでございます。  さて問題は、日本の意思ということになるわけでございますが、政府・自民党の中には、日本の意思を有効に発揮したいと、その機会を待ち望んでいる方々がたくさん存在をいたしております。この意思の発動を妨げているものは何かというならば、ほかでもない。平和憲法、特にその第九条の制約でございます。この制約を突破するためには、憲法の改定が必要となるわけで、ここにいわゆる――これはマスコミの中の一部の方が言われるのでありますが、対決派といわれる一部の人々の役割りが存在するわけでございます。これらの動きにつきましては、特にここで私が指摘しなくても、賢明な各位がすでに御了承のことと思いますので、多くを申し上げません。このような国内動向とともに、米国の中にも同様な動きのあることを見のがすわけにはまいりません。特にベトナムの戦局が困難な局面に入るにつれて、アジアの平和のために米国が死闘――死にもの狂いの戦いを展開しているときに、日本は積極的に何らの協力もしないではないか、こういう形での不満と、あせりでございます。ベトナム戦争がさらに一そう拡大するような事態となれば、このような米国の不満は一そう熾烈となってくるでございましょう。さらに、ここでいま一つ指摘しておかなければならない問題がございます。それは、日本が近く、そしてたぶん確実に、国連の安保理事国に当選するであろうということでございます。これが実現した場合――この国連安保理事国に当選した場合でありますが、その地位にふさわしい義務、その地位に相応する協力なり貢献を求められることはないでありましょうか。――これについては、もう当選したという話もあります。これについて、日本政府は、日本には平和憲法があるから問題はないと言っております。しかし、実はそれゆえにこそ、改憲の動きがあるのでございます。また、今日、この平和憲法下においてすら、憲法はしばしば拡大解釈されているし、さらに安保の事前協議も、それがどのように都合よく解釈され、運営されているかは、あらためて指摘するまでもなく明瞭な問題でございます。このように見てくると、必要なことは、憲法論議もさることながら、日本がこのような選択を迫られることのない、それを必要としないような平和な国際的条件、平和的な環境をつくり上げることであろうかと思います。この場合、日韓条約は、はたしてどの道に通ずるでございましょうか。  さらにまた、この機会に触れておきたいことがございます。それは、先ほど最初に触れましたように、日韓特別委員会質疑の中で、佐藤総理は、自由陣営の結束を強固にする、つまり、日本の安全を守るために自由陣営の結束を強固にする以外の別の方法があるなら、社会党の考え方を示せと、こう言われましたので、私はこの機会に、いささかこの問題に触れさせていただきます。  自由国家群の団結だけの外交は、結局、力の均衡の拡大となることは先ほど申し述べたとおりでありますが、それでは国家の安全はどうして守るのかという安全保障の問題がございます。これをわれわれが、日本について見た場合に、われわれが予見し得る近い将来、日本を取り巻くアジアの諸国から、理由のない攻撃侵略を受ける危険性はまずないと思います、理由があれば別でありますが。つまり、日本を取り巻くアジアの諸国から、私どもは、予見し得る近い将来、理由のない攻撃侵略を受ける危険性はまずなかろうと思います。しかし、日本が他国に軍事基地を提供し、ここを基地として第三国に攻撃が加えられるならば、その攻撃を受けた国は、その報復手段として日本に攻撃を加えてくることは当然でございます。この場合、何も理由のないのに他国から攻撃侵略を受る危険性が、予見し得る近い将来あり得ないとするならば、いまの問題とかれこれ比較して、どちらに危険性が多いのか、どちらに安全の度合いが多いのか、言わずして明らかであろうと存じます。必要なことは、他国から攻撃侵略を受けるような危険な条件を排除することであり、さらに、国の防衛問題における外交の役割り、この役割りに、より高い位置づけをするような政策を確立することでございます。重ねて申し上げますが、そういうためには、この日本の国防あるいは防衛における問題に外交の果たす役割り、その位置づけに、高い位置を与える必要があるのではないかということを、私は申し上げているのであります。  総理は、この前、私に反論をされて、一片の条約文なんか当てにならぬと言われましだけれども、たとえば日中の国交を回復する、日中間で不可侵条約締結する。あるいは日ソの平和条約締結する、不可侵条約締結する。太平洋戦争の末期に、確かに総理の言われたような事実が存在したことはございます。しかし、それから二十年、今日の国際社会のもとにおいて、あのときのような事態が簡単に起こるはずはございません。まず相手の国、韓国をそれほど信用するならば、なぜ、ソ連、中国も、もっと信用いたしませんか。そして国交を回復し、あるいは平和条約を結び、不可侵条約締結する。さらに、日本はなぜ核非武装の宣言を世界にしないのでありましょうか。核は持たない。アメリカからの核兵器の持ち込みも認めない。こう政府はしばしば言われております。そうであるならば、日本みずから進んで――世界唯一の被爆国であるわが日本が、みずから進んで全世界に対して核非武装の宣言を行なうべきであります。外国と協議する必要はありません。どこの国の迷惑にもなりません。なぜそれがなし得ないのか。そういう努力を重ねて、政府がいろいろな発言をなされるならば、われわれはこれを肯定する場合もございますが、何一つなさ  したがいまして、国を守る道は軍事力の増強だけではないということでございます。あるいは自由陣営の団結だけでもないということでございます。この場合、特に一昨日でありましたか、ソビエトのタス通信は、この米ソの平和共存時代の凍結を思わせるような話を、やはりニューヨーク・タイムスの記者にいたしております。総理は先般、日韓特別委員会で平和共存を高く評価されました。いま、その平和共存のわずかなともしびすらも消されそうになっております。米ソの間はしばらくは凍結の時代を迎えようとしております。だれがそうしているのか。ほかならぬアメリカ自身であります。このような国際的な背景のもとで、いまや日韓条約は結ばれようとしているし、そういう条件のもとで日韓条約は出発しようといたしております。間もなく終着点を迎えるでございましょう。しかしながら、この場合、私どもは、なおかつ、非常に多くの問題について述べたいこともございます。問題はたくさんありますけれども、これはあとから同僚岡田議員も触れられるだろうと思いますし、あるいはまた、今日この段階において、あまりこまかいことを、くだくだ言うことにどれだけの意義があるかとも感じられますので、私は多くを申し上げません。  以上述べきたったもろもろの事実に照らして、日韓条約アジアにおける平和外交の出発点ではなく、むしろ危険な道への門出であると断じても、決して過言ではないでございましょう。また、善隣友好のための条約であるというのに、この条約はどうでございましょうか。日韓両国政府は、それぞれの国の国会において、ささやかな技術的な食い違いならとにかく、まさに本質的、根本的というような、あるいは条約の生命とも言うべき重大な基本問題について、全く相異なる説明をいたしております。椎名外務大臣は、この条約協定の活字の上にあらわれたものが、とれが両者合意した最終的な事実であると、こう言われておる。それはそうでしょう。しかし、今日まで、この国会審議の過程を見ましても、韓国国会の議事録すら、まだ資料として提出し得なかったこの不合理、この解義の過程、あるいはいまの驚くべき食い違い、このような条約の存在は、私は、かつて聞いたこともないし、また、私は過去十数年、外務委員としての生活をいたしておりますが、このような経験に出つくわしたことは一度もございません。驚くべき事実であります。というよりも、驚くべき事件であります。これらの問題を――たとえば領土管轄権の問題はどうか、李ライン問題はどうか、さらに竹島の問題はどうか、法的地位の問題はどうか、請求権の問題はどうか等々、数えあげれば際限はございません。今日また隣国韓国の国内事情はどうなのか、戒厳令にかわる衛戌令下で条約を取り結ぶような、その事態を見たときに、これがはたして民主主義国家のあるべき姿なのかどうかという疑問もあります。あるいはまた、マーシャル・プランに上回る何十億の援助アメリカ韓国に与えながら、韓国では、なぜ日本国民の何分の一の生活水準しか維持できないのか。六十万余の軍隊を維持しながら、はたして韓国経済は日本政府協力によって立ち上がることができるのか。何十億ドルのアメリカ予算を提供しても、なおかつ今日の状態であります。このようなことで、はたしてほんとうの日韓親善が確立できるかどうか、韓国の経済事情を検討するだけでも思い半ばに過ぎるものがございます。しかも、先ほど来申し上げましたようなアジアの国際情勢とは別個に、日本韓国、この二国間だけの外交交渉においても、この条約は、成立後、多くの困難、難問を日本政府に投げかけるだろうと思います。非常に困難な事態に当面するだろうと思います。このような矛盾に満ちた条約、それをなぜ、どうして、かくも強引に、そしてかくも無理をして通過させなければならぬのか、それがはたして善隣友好のためなのかどうか、その答えは、先ほど来、私が指摘してきた事実の中に求めなければならぬと思います。  われわれがいま、日本の内外情勢を見るときに、今日ほど、全国民の英知を結集して、真の平和と真の善隣友好と、そして、さらにまた、真の安全保障を確立することの必要性に迫られている時代はないと信じます。しかるに、いまや日韓条約は、われわれの抵抗にもかかわらず、間もなく、政府立場からいえば成立を迎えるでありましょう。衆参両院における本条約審議経過にかんがみ、本来存在しないはずの条約が、いま、あらゆる不条理の中でここに間もなく誕生しようとしているのです。しかし、どの道がアジアの平和に貢献するのか、いずれの主張が正しいかは、やがて歴史がこれを審判するであろうと信ずます。われわれは最大の抗議を込めて、私は最大の抗議を込めて、日本社会党を代表しての私の日韓条約に対する討論を、これをもって終わることにいたします。(拍手)     ―――――――――――――
  45. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 笹森順造君。    〔笹森順造君登壇拍手
  46. 笹森順造

    ○笹森順造君 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました「日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件」外三件の関係国内法について、賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)  日本国韓国とは、ともにアジアの東に位して、一衣帯水の隣国でございます。地理的にも歴史的にもお隣の国であることは言うまでもございません。ゆえに、この意味において、私どもが歴史の中に長い共存共栄の友好のきずなを持ってきたのでございますが、不幸にして、ある時代には、権力をもって他を圧迫したというような不正常なことも、なかったのではございません。したがって、大戦終結とともに、この両国の不幸な関係を清算して、国交を正常化するというのが、これまた私どもの願いであることは、与野党ともに同じであろうかと思うのであります。(拍手)この両国の間にわだかまっておった幾多の難問題を一括解決せんと欲して、両国政府当局が十四年の長きにわたって慎重審議し、取るべきは取り、譲るべきは譲って、完全なる合意に達する努力に全力をあげたことを、高く評価するものであります。それとともに、特に正式調印にまで取り組んだ現政府の、なみなみならぬ苦労に、深き敬意を表するものであります。(拍手)  この条約協定に、両国政府は、御了承のとおりに、本年の六月二十二日、署名し、韓国国会では、去る八月十四日に右を賛成、可決確定をしているのであります。これに呼応して、わが国会においても賛成議決をして、両国国交を正常化し、いわゆる唇歯輔車の実をあげるということは、政治外交の原理原則をわきまえる良識ある国会議員の当然なすべきことと思います。正しい理由なしに批准を拒否するがごときことは、国際信義に反するものと言わなければなりません。  以下、条約協定の内容の概要に触れて、賛成の理由を明らかにしたいと思います。特別委員会審議や、また、議場における質疑応答において、政府答弁は皆さま方お聞きになったとおりで、これによって詳細に解明せられるのであります。それは、議事録をごらんなさると、よくわかりますが、しかし私は、この際、この関係において、きわめて簡潔に、しかも平明に、問題点だけに局限して、この理由を述べさせていただきたいと思います。  第一は、両国が主権平等の原則に基づいて国交を正常化するという規定でございます。いままでは、日本韓国との間に、これが行なわれておらなかったのであります。つまり、代表権は一方通行でありまして、日本からのは認められていなかった。これが、平等の原則に従って、日本からも大使を送り、あるいはまた領事を双方に交換するということは、これはぜひなさなければならないことであって、この条約によって、それが、できあがるのであります。このことを、私どもは、まず第一に指摘しなければならない。  第二に、日韓併合条約など、一九一〇年八月二十二日以前に締結したすべての条約及び協定は、もはや無効とされて、わずらいをかもしてきました過去の残滓は、ことごとく払拭し去られ、ここに新鮮明朗な関係が樹立されるのであります。これに反対することができないことになるのであります。  第三は、合法的政府確認でありますが、大韓民国政府を、先ほどからしばしばお話がありましたように、国連総会決議第百九十五号(III)に明示されてあるとおりの、朝鮮にある唯一の合法の政府であると認めて、これを七十二カ国とともに尊重するというところに、今後の国際平和にも通ずる一つの意義があると思うのであります。  第四に、両国協力方針は、しばしば言われておりますとおりに、国連憲章原則にのっとって平和裏に進められ、かつ、通商航空協定締結交渉が可及的すみやかに開始されて、交流が敏速化されることは、喜ぶべき次第でございます。  次に、漁業協定について簡単に賛成の理由を申し述べます。  第一に、両国専管水域を各沿岸の基線から十二海里までとしたということは、特に両国の現状に顧みて妥当と思います。第二に、漁業資源のために共同規制水域範囲を暫定的に規制したことも、これまた適当であると思われます。第三に、専管水域の外側では、旗国主義によって、取り締まり権、裁判管轄権は漁船の属する国が行使するという定めは、従来のごとき同国間の紛争解消の方法として大きな進歩と信じます。第四は、共同資源調査水域共同規制水域の外側に設けられたこと。第五に、共同委員会が、規制措置、資源調査、水域範囲、操業の安定について、検討、勧告を行なうことなど、それぞれ適切な措置がはかられたのであります。  この協定有効期間を五年として、更新規定を設けたということも、両国の現状から見て賛意を表するところであります。  このようにして、公海自由の原則に立ち、両国間の漁業紛争の原因を除去し、わが国が国際法上否認している、いわゆる李ラインの事実上の解消となり、安全操業が確立され、かつ、漁業資源を永続的に拡充し、その生産性を高め得るということに注目して、これに拍手を送っております両国漁民とともに、賛成の意を表するものであります。  次に、財産及び請求権に関する協定について若干申し述べます。  第一.日本国は、韓国に対し、生産物及び役務を、十年間にわたり、無償三億ドル、長期低利貸し付け二億ドル供与する、この額は多からず少なからず、相互合意に達した点を、私は支持するのであります。  第二に、財産権請求権について申し述べます。両国は、相互に、自国財産及び請求権に関して、いかなる主張をもすることができないと定め、右により、日本国との平和条約第四条の規定は完全、かつ、最終的に解決されたことを確認するものであります。右のほかに、民間信用供与三億ドルの交換公文のあることも御承知のとおりであります。古来、両国の経済交流が行なわれてきたのでありますが、この条約によって、財産及び請求権の問題は完全かつ最終的に解決し、今後の経済協力がいよいよ強化され、アジアにおける共栄の実があがり、世界経済発展の一翼をにない、世界平和の繁栄の全体につながるものとして、喜ぶべきものと思うのであります。  次に、在日韓国人法的地位協定に言及したいと思います。  第一は、永住事項でありますが、終戦以前からわが国策にこたえて引き続き日本に居住する者、その直系卑族で終戦から協定発効後五年以内に日本で生まれ引き続き居住する者、また、その子で協定発効後五年以後に日本で生まれた者にこの特権を与えるということは適当であると信じます。第二に永住権者の直系卑族に関する協議、第三に強制退去規定、第四に待遇問題、教育、生活保護国民健康保険、帰国者の財産携行、送金並びに出入国の取り扱い等の配慮は、それぞれ最も適切に行なわれるものと信じます。私たちは、韓国人を信頼敬愛し、ともにこの国土に楽園を築くことが最も望ましいことと信ずるのであります。  次に、日韓文化協定について簡単に述べます。  日本政府は、韓国政府一定文化財引き渡して、その要望にこたえ、また、民間の文化関係増進に協力し、相互に自国文化財研究上の便宜をはかる定めは、歓迎すべきことであります、太古より、アジア大陸文明の伝達をわが国にもたらした韓国人の功績を尊重し、今後また、いよいよ相互の文化交流を盛んにすべきものと信じます。この協定によって、その道が開かれたものと確信するのであります。  次に、紛争解決に関する交換公文について述べます。  両国間の紛争は、まず外交上の経路を通じ、ないしは調停によって解決をはかる定めは、これまた国際外交上至当のことと信じます。しばしば論議の的となりました竹島の帰属問題は、明らかにこの交換公文の「紛争」に属するということは、わが政府当局の言明のとおりであり、その和的解決方向が示されておるわけでございます。  次に、右条約協定実施に伴う漁業水域設定に関する国内法律案大韓民国等財産権に対する措置法案出入国管理特別法案等は、すべて必要かつ適切なものとして、賛成をするのであります。  この際に、日韓条約に関して、賛否の論点となっているおもなる事項について、国民の正しい理解に資するために、若干言及したいと思います。  その一は、本条約が南北朝鮮の統一を阻害するとの論であります。南北統一は朝鮮民族の悲願であり、われらもまた、一民族一国家形成を、同情をもって、こいねがっているものであります。そのことが朝鮮に実現するためには、国連が示した方式、すなわち、自由な朝鮮人の意思による人口の割合に比例した選挙によってできた議員で統一案をきめるという、きわめて民主的な正しい案に対して、北鮮はまっこうから反対し、韓国等を仮想敵国とする中ソとの軍事同盟を結んで、韓国共産化併呑を意図しているということが、統一を妨げているゆえんであります。この背景をなす東西対立が解けない限り、統一は望みがたいのでありまして、これは、日韓条約をその原因とするものでは絶対にないのでございます。  また、北鮮人に韓国人同様の特典を与えないのは不満だとの議論がありますが、国交のある者と、ない者と、同じように取り扱えということは無理な注文であります。かつまた、この条約によって、外人たる北鮮人は他の外人と待遇上の相違がないことが、政府説明で明らかにされております。  その二は、本条約軍事同盟になるという論でありますが、この条約協定には、さような規定は一言半句もないことは、ただいま羽生議員の言われたとおりである。それのみならず、日本韓国に供与する生産物は、武器及び弾薬を含まないと明定していることも、御記憶願いたいのであります。かつまた、日本の平和安全は日米安保条約で確保されて、韓国軍事同盟を結ぶ必要もなければ理由もございません。  その三は、この条約日本経済侵略になるとの反対論でありますが、日本の供与及び貸し付けは、韓国の経済発展に役立つものでなければならないと規定され、歓迎されている。これに対して、いろいろな邪推の説もないではないのでありますが、これは全く憶測にすぎないことであります。  その四は、韓国内にこの条約に強い反対論があるから承認しがたいとの議論もございますが、かの国の国会において反対した野党が、かつて与党として政権の座にあった際には、わが国経済協力を望んで賛成にきわめて意欲的であったことを思い起こすべきであります。(拍手)  その五は、この条約に対して、両国解釈食い違いが多いから賛成しかねるとの議論がありますが、すべての条約の施行は、相互信頼の精神によって成り立つべきものであって、紛争がかりにあるならば、いかにこれを解決すべきかという方法まで規定されているのでございます。  反対論は、日韓協力の路線を故意に歪曲し、客観的実証に立たず、科学性を欠き、論理の矛盾をおかしております。あまつさえ、日韓を敵視する外論と符節を合するがごとき粉砕論は、断じて容認することができません。このたびの日韓条約等の案件に関する国会審議の過程を顧みますと、論議がきわめて真剣熱烈に展開せられ、また私どもは、野党議員の言論にも傾聴したものがございました。しかし、時には激論が過熱して、国会議員として常軌を逸するがごとき風景さえ見せつけられたのであります。(発言する者あり)そこで、私はこの際、与野党ともに冷静に立ち返って、参議院の、良識を失わないように慎みながら、英知をもって適切なる結論に達したいと念願するものであります。(発言する者多し)
  47. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御静粛に願います。
  48. 笹森順造

    ○笹森順造君(続) そこで、私はこの際、この議場あるいはまた特別委員会において、いろいろな論議があったといたしましても、ここに、ともども謙虚に反省し、ざんげし、いにしえの聖者の教えに従い、「人の罪をあげつらわず、むしろ、これを許すこと七たびを七十倍せよ」との教えに従って、いままで激しく反対をいたしておりました人々も、この際、思いをひるがえし、和解と、慈愛と、信頼と、共助の美しい花を、この参議院に咲かしめたいと思います。かくて、この条約と三法案とを成立せしめることによって、ここに両国の間に完全なる友愛の実が結ばれることを心から念願して、私の賛成討論を終わる次第であります。(拍手)     ―――――――――――――
  49. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 岡田宗司君。    〔岡田宗同君登壇拍手
  50. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、日本社会党を代表して、日韓関係条約協定等に対しまして、反対的立場から討論を行なうものでございます。さきに同僚議員羽生三七君から、本条約等に対しまして、国際政局の見地から反対論を述べられましたが、私は、ここに重複を避け、条約協定等の内容につき反対せざるを得ない点を指摘いたしまして、討論を展開したいと存ずる次第でございます。  第一に反対する理由は、この条約協定は、その締結され調印されたときから、日本側と韓国側政府の間に、条文に対する解釈がまっこうから対立しているという点でございます。佐藤総理、椎名外相の答弁によれば、たとえ解釈が違っていても、条約協定の諸条項の文章が一致を見ているのであるから、合意を見たものである、こう言っておりますが、従来、いかなる条約協定でも、調印早々のときから、両当事者によって、まっこうから対立する見解が、公式に両国国会を通じて述べられたというがごとき例は、聞いたことがないのでございます。あとになって事情が変わってまいりまして、そのために解釈の相違が起こる、紛争が生ずるということは間々ございます。しかしながら、日韓特別委員会におきまして、私がこの点に関し藤崎条約局長に質問いたしましたのに対しまして、彼は、かかる事例はないと断言しております。佐藤総理自身も、異例のことであると認めざるを得なかったのであります。条約、諸協定は、単なる学理ではないのでございます。それが効力を発生し、両国が、この条約協定に従って両国間の事柄を処理していくことになる場合、初めから条文の解釈がまっこうから対立しておりますれば、たちまち、両国のこの解釈の相違が、事態を解決するどころではなく、紛糾させることになってまいるのであります。したがって、本条約協定等は、事態を一つ一つ解決していくものではなくて、むしろ、今後の紛争の種を供給するもととなるものと言わなければなりません。(拍手)この条約締結されるまでに十四年間かかったとか、過去の日韓関係から見て、こういう条約協定を結ばざるを得なかったのであるというがごときは、外交史上全く異例な条約を是認する理由には、ごうもならないのであります。  具体的にあげてみますならば、基本条約の第三条でございます。第三条には、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」となっております。日本側は、この国連の決議第百九十五号(III)に、朝鮮の人口の大部分が住んでいる部分にあるこの種の唯一の合法政府である、とあるのに従って、大韓民国政府の主権の及ぶ範囲、すなわち管轄権は、休戦ライン以南である、としているのに対しまして、韓国首相、外相は、韓国国会におきまして、韓国の主権は全半島に及ぶと主張しているのであります。この食い違いは、単なる法理論上の解釈の相違だけではないのであります。韓国側は、日本がこの条項において韓国にある唯一の合法的政府確認したことによって、韓国は、日本が将来北鮮国交を結ぶことはもとより、貿易、文化交流等も防止し、禁ずることができると言っているのであります。日本政府は、いま分裂国家の一方を承認し、国交の正常化をはかった場合、他方を承認し、国交を持つことはできないと言っておりますが、朝鮮民主主義人民共和国が存在するという事実そのものを否認することは、できるものではございません。いまでも、年々、往復三千万ドルぐらいの貿易が行なわれているのであります。また、存日朝鮮人中には、北鮮を祖国とする人々が、韓国を祖国とする人々よりも多数いるのであります。両国赤十字によりまして、在日僑胞の北鮮への帰還も続けられているのであります。北鮮は、いま日本に対しまして敵対関係にあるわけではないのであります。むしろ、いまや、貿易、文化交流、人的交流の拡大を求めているのであります。たとえ、佐藤内閣が韓国との国交の正常化をはかったとしても、朝鮮休戦ラインの北に朝鮮民主主義人民共和国が厳として存在しているという事実の上に立って、この国と経済的、文化的、人的交流を積極的にはかることは、何で、日本にとって不利なことでありましょう。悪いことでありましょう。いわんや、国連決議を曲げて引用し、韓国に、日本の今後の北鮮との交渉を妨げることを許すがごときことは、断じて認めるわけにはまいらないのであります。  第二の、解釈の大きな食い違いは、竹島に関する問題であります。竹島は、いま韓国に不法に占拠されておりますが、日本領土であることは、日本政府も言明しているところである。われわれもまた、そう主張しているのであります。この竹島については、日韓交渉の過程において、しばしば政府は、この問題を一括解決すると言明してまいったのであります。そうして、佐藤総理も、椎名外相も、国会で、しばしばそう言明してきたではありませんか。それに、総理自身も認めるがごとく、この問題の解決を見ないまま、条約締結されてしまいました。これは、領土問題に多大の関心を持っている国民を裏切ったものと言わなければなりません。佐藤総理や外相は、この問題を解決するには至らなかったが、解決のめどをつける方法は取りきめた、それが「紛争解決に関する交換公文」だと言っているのであります。日本側の説明によれば、この「紛争」というものは竹島問題のことをさしているというのであります。しかるに、韓国側では、これは韓国領土であって、「紛争」の対象にはならない、日本側も、竹島韓国領土であることを、すでに確認しているではないか、と韓国国会において言明しているのであります。日本側が紛争問題だと持ち出してみても、韓国側が拒絶したら、どうしてこれを外交交渉対象とすることができましょうか。また、交渉対象となったとしても、両国の直接の外交交渉によって解決ができない場合には、両国合意する手続に従って、調停によって解決をはかるということになっておりますが、韓国側がそれを合意しなかったら、どうして調停による解決ができることになりますか。また、かりに韓国側が調停を受けることに合意したといたしましても、調停の結果が、日本に有利で韓国に不利な場合、いま竹島に警備隊を置き、灯台を建て、島の周辺に十二海里の専管水域までも設けている韓国が、はたして、すなおにこれを明け渡すと想像することができるでありましょうか。要するに、佐藤内閣は、日韓条約締結を急ぐのあまり、竹島問題をたな上げにした――もっと率直に言うならば、事実上、竹島韓国に対して放棄してしまったのであります。この交換公文は、将来紛争解決ができるがごとき見せかけをつくろっただけのものであって、何の実効も生じ得ないものであります。あたかも、将来解決できるがごとき装いをして、日本国民を欺くものと言わなければなりません。(拍手)この点もまた、本条約協定に対して、わが党が反対せざるを得ない理由であります。  次に、「日本国大韓民国との間の漁業に関する協定」について、論を進めてまいりたいと思います。  ここにも、この協定によって、いわゆる李ラインが撤廃されたか、されなかったか、両国政府見解がまっこうから対立しているのであります。日本側は、この協定の前文に記されている「公海自由の原則がこの協定に特別の規定がある場合を除くほかは尊重されるべきことを確認し」云々という文句があるから、李ラインは撤廃されたのであると言っているのであります。しかるに、韓国側では、李東元外務部長官は、国会における答弁で、李ラインは健全であると豪語しているのであります。李ラインの撤廃の問題は、日本側として、今回の日韓交渉にあたって最も重要な問題であったのですから、それこそ、はっきりさしておかなければならない問題なのでありますが、それが、一方は廃止されたかのごとく言い、一方は廃止せられず健全であると言うがごときは、一体どういうことなのでございましょうか。この漁業協定は五年間効力を存続することになっており、その間には、日本漁船がいわゆる李ラインを越えて入っても、韓国専管水域に入らなければ、従前のように拿捕されることはないことになっております。しかし、一九五二年一月十八日に李承晩大統領によって発せられました「大韓民国隣接海洋の主権に対する大統領宣言」、すなわち、李ライン宣言は、廃止されないまま残っているのであります。これに基づいて、国防ライン、大陸だな資源保護ラインとしての李ラインは、漁業協定締結されたにもかかわらず、存置されているのであります。  通常、国際条約国内法に優先するということが言われている。条約締結した国は、それに従いまして、国内法を、条約協定等に合するがごとく部分的に修正を加えて改正をする、あるいは新しい法律をつくる、布令を出すことになっております。最近の例をあげますならば、わが国では、ILO八十七号条約を批准すると同時に、それに適合するように国内法を改正いたしました。また、政府は、本条約協定等国会での承認を求めると同時に、国内法改正のための三つの法律案を提出しているのであります。これが、国際条約協定を結んだ場合の当然の措置と言わなければなりません。しかるに、この海洋主権宣言や、大陸だな魚族資源保護法は、韓国においては廃止されておらない。改正されておらないのであります。もし、五年たって、韓国側がこの協定の終了を通告したら、一体どうなるでありましょうか。それから一年たって無協定になれば、この協定の前文にうたわれている公海自由の原則もまた、韓国側では失われたものとして、また李ライン宣言が復活し、両国間に漁業紛争が再び起こることが予想されるのであります。対馬海峡から朝鮮付近の公海に出漁する漁民は、それを不安に思っているのであります。なぜ政府は、この宣言を廃止させるか、抵触する部分を訂正させるかの措置をとらなかったのでありましょうか。あるいは議定書または交換公文でそのことを取りつけなかったのでありましょうか。これは、この条約の重大な欠陥であります。この点もまた、われわれの断じて容認しがたいところなのであります。  次に、「日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定」についてであります。  終戦前から引き続き日本に居住する者、及び、その直系卑属として終戦の日からこの協定の効力発生の日から五年以内に日本で生まれた者に、永住権を与えることは、日本と朝鮮との従来の関係から、やむを得ない措置であるといたしましても、第三条において、さらにその子孫にまで永住権を与えることの協議を、二十五年先までのうちに行なうことを約束したことは、特権を与え過ぎることになりはしないか。これは、少なくとも第一条に規定する者だけで十分であったと考えられるのであります。また、この協定によって永住権を持つ韓国国民待遇についても、いろいろ論議すべき点があるのでございますが、特にわれわが容認できないのは、第三条におきまして、麻薬類を取り締まる日本の法令に違反した者、七年までの懲役または禁錮に処せられた者を、一般外国人に比しまして優遇している点であります。出入国管理令第二十四条によれば、外国人は麻薬取締法等によって有罪の判決を受けた者、無期または一年をこえる懲役または禁錮に処せられた者は、退去を強制されることになっているのであります。しかるに、永住権を持った韓国人には、麻薬等の犯罪を犯した者でも三年までの刑を受けた者は三回までは退去を強制することができず、また、刑期七年をこえる者でなければ退去は強制することができないということになっております。一体、これは何事でありましょう。しかも、合意議事録におきましては、これらの犯罪人の退去を強制しようとする場合には、人道的見地からその者の家族構成その他の事情について考慮することを約しまして、さらにこの犯罪人の強制退去を緩和さえしているではございませんか。長年にわたって日本に住む韓国国民永住権を与えることは、この協定の前文によれば、韓国国民が「日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことができるようにすることが、両国間及び両国民間友好関係の増進に寄与すること」にあるとなっているのであります。日本の社会秩序を乱し、日本の社会に害毒を流す者を、特に他の外国人犯罪者より優遇するこの条約は、断じて両国民間友好関係を増進するものではなく、逆に悪化せしむるものであると言わなければなりません。かかる犯罪者の優遇措置まで協定に明記せしめられたことは、交渉過程におきまして韓国側に押しまくられたものでありまして、この条項をのんだ日本政府のだらしなさ、ふがいなさには、あきれ返って、ものが言えないのであります。かかる協定を、どうしてわれわれは容認することができましょう。これをも容認する日本政府、自民党、民社党は、日本の社会に害毒を流すことを容認するものにほかならないのであって、まさに弾劾に値するものと言わなければなりません。(拍手)  次に、「財産及び請求権に関する問題の解決並び経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定」でありますが、この協定くらい不可解なものはありません。韓国側の主張する請求権は、確たる根拠のあるものは少なく、幾ら多目に見積もりましても七千万ドルくらいにしかならなかったのでございます。ところが、大平・金鍾泌会談の結果、この請求権韓国側放棄するかわりに、日本経済協力として、無償三億ドル、有償二億ドルの資金を韓国に供与し、また民間経済協力一億ドル以上を供与することを約束させられたのであります。しかも、今回の協定におきましては、民間経済協力資金は韓国側にこれまた押しまくられまして、ついに三億ドル以上ということにきめさせられてしまっているのであります。何ゆえに、あまり多額でないこの請求権なるものが、八億ドルの経済協力にすりかえられたのかは、少しも国民に明らかにされておらないのであります。十年間にわたって韓国に供与される総額八億ドル、二千八百八十億円の金は、はたして韓国の経済を復興させ、国民生活を向上させるのに役に立つでありましょうか。韓国の政情が不安定であること、李承晩時代以来の汚職、利権の横行、アメリカが四十億ドルもの巨額の金を投入して、なおかつ、経済が今日のごとく貧困にして、失業者がちまたにあふれていること、外国資本の導入によって最近建てられました工場の稼働率がきわめて悪い事例等から見ますれば、この経済協力が成果をあげ得る見込みは非常に少ないといわなければなりません。われわれの税金から支払われる三億ドル、千八十億円が、利権屋等のふところにねじ込まれたり、あるいは、みぞの中に捨てられたと同じようになることを、われわれは断じて看過するわけにはいかないのであります。  条約協定の内容について反対すべき理由は、これだけにとどまるものではございません。数え上げればまだまだたくさんございますが、近年このくらい不できな条約協定はないと申しても過言ではないのであります。この条約協定両国間の懸案を解決するどころか、新たな紛争を続発させるものといわなければなりません。かかる条約協定締結し、それをしゃにむに押し通そうとする佐藤総理、椎名外相等は、国民の前にざんきし、職を辞すべきであるのであります。(拍手)  さきに羽生議員が述べられましたところ、いま私が述べました諸点が、条約協定そのものに対する反対の論拠でございますが、政府並びに自民党は、この条約協定の不当なる点、日本にとって危険な側面のあることを、国民にひた隠しに隠して、しゃにむに押し通そうとして、韓国政府与党とほとんど同じ手段に訴え、また、いまも訴えつつあるのであります。十一月六日に衆議院日韓特別委員会において、安藤委員長の行ないました暴挙を皮切りといたしまして、同月十二日午前零時十八分、衆議院におきまして船田議長の行なった採決は、多数の力を頼んで法規慣例を無視し、議会政治の根本を破壊するものであり、日本政治史上に一大汚点を残すものでありました。しかるに、参議院の日韓特別委員会においても、また、かかる暴挙が、自民党幹部、寺尾委員長らによりまして仕組まれ、繰り返されたのである。心にやましいところのあるために、ついに不成功に終わった、あの採決は、参議院の権威を失墜させ、衆議院の暴挙と相まって、国会全体をどろまみれにし、議会政治を破壊するものと言っても過言ではございません。(拍手政府・自民党以外の者で、あの茶番劇を有効なりとする者は、はたしてあるでありましょうか。わが党をはじめ各党は、ことごとく、あの採決が無効であると断じているのであります。言論機関、心ある国民も、この暴挙に痛烈なる批判を加えているのであります。  われわれは、いままでは、国会審議を通じて、条約の不当性と危険性を国民に暴露するために、また、採決議会政治を破壊して行なわれたものであり、無効であることを明らかにするために、あえて本会議に出席して戦ってまいりました。しかし、いま、討論を終了し、最後の採決が行なわれるにあたって、われわれは、委員会において採決されなかった条約協定法律案に投票するわけには、断じてまいりません。(拍手)われわれ社会党議員は、ここに、この条約協定法律案等の採決に加わらざることを堂々と宣言いたしまして、私の討論を終わるものでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  51. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 向井長年君。   〔向井長年君登壇拍手
  52. 向井長年

    ○向井長年君 私は、民主社会党を代表いたしまして、日韓条約批准案件について、賛成の意向を表明いたします。(拍手)  本国会は、国民の要望している補正予算審議が、実質的には見送りになりましたことは、まことに遺憾であります。したがって、まさに本国会は、日韓条約国会になったのでありますが、現状はまことに惨たんたるありさまであります。私は、この本会議場におきまして、佐藤総理質問に立った際に、去る衆議院の醜態を、少なくともわが参議院においては絶対起こしてはならないということを警告したはずでございます。先日来の特別委員会並びに本会議の醜態は、国会に身を置く者として、国民に対して、皆さん、恥ずかしいとは思いませんか。私は残念でなりません。  本論に入る前に、私は、本案の審議過程を通じ、議会擁護の立場から、この壇上から、国民の皆さんに心から訴えたいのであります。日韓条約案件に対し、本院においては、良識の府らしい審議を行ない、国民の負託にこたえるべきであると主張してきたが、特別委員会においては、(「あれで審議したことになるか」と呼ぶ者あり、その発言する者多し)黙って聞け。――内容のよしあしは別として、与野党とも、ある程度の審議は尽くされたとしても、四日の当委員会において、自民党並びに委員長のとった態度は、いかなる弁明をしようと、実に議会政治を破壊するものであり、民主政治の否定であると考えるのであります。(拍手)まことに遺憾のきわみであります。自民党の諸君にも、これが反省を私は強く要望いたしたいと思います。今後かかる事態を起こさないように、院の名誉にかけても議長は強く善処をされることを、これまた要望する次第でございます。しかし、ここで、われわれが静かにその原因を探求するときに、政府・自民党並びに野党第一党の社会党の、日韓条約審議に対する取り組む姿勢に、大きなあやまちをおかしておったと私は思うのであります。政府与党が、何が何でも最善のものとして、多数を頼み強行通過せしめようとする態度は、議会民主主義の破壊であります。また一方、社会党は、国会に上程される以前より、日韓条約は絶対阻止、粉砕ということを掲げて、取り細まれた姿勢が、かかる混乱に追いやったといっても何ら過言ではないと思う。わが党は、政府の提案する条約案件等の疑点を国民の前に明らかにし、正常な審議を通じ決定すべきであり、これこそが、わが党が常に主張するところの議会制民主主義であります。したがって、民主政治を基調とする政党であるならば、自民、社会両党に私は強く反省を促したいのであります。  わが民社党は、日韓条約批准について、次の三つの基本理由のもとに賛成をいたします。  第一に、わが国がサンフランシスコ条約承認した以上、終戦処理事項として、たとえ、それがいかなる政府のもとであろうと、末処理国との間にすみやかに条約締結することは、国家的責務であると私は確信するものであります。(拍手)  第二に、したがって、当面、地理的にも、歴史的にも、かつ、わが国の平和と安全の上からも、最も関係の深い韓国との間に、国交正常化のための条約を結ぶことは、外交上の当然の責務であります。(拍手)  第三に、現在、朝鮮が、南北両鮮に分裂していることは、まことに不幸のきわみでありますが、外交は、あくまで現実処理の手段であります。したがって、南北朝鮮の統一が困難な現状におきましては、まず韓国との間に条約を結ぶのは当然の理であります。北鮮との間にも、友好関係の積み上げによって将来懸案の解決をはかることは、これまた、当然の方向でなければなりません。(拍手)  何ゆえに、わが党がかかる基本方針を堅持するか。この点についてのわが党の見解をここに明らかにいたしたいと存じます。すなわち、現存の世界政治は、米中対立が最大の焦点となり、国際紛争のおもなる舞台はアジアに移り、わが国に対する影響はきわめて重大になりました。しかも、四年後には、日米安保条約の改定期を控え、国論は分裂の傾向を濃くし、場合によっては、わが国の国運を危うくする事態になることさえ憂慮されるのであります。この重大な局面に向かって、わが国は、いかなる外交路線を進むべきかと申しますに、  第一に、アメリカに代表されるような中国封じ込め、これとの力の対立を通じて、自由世界を守ろうとする反共外交の道、これは、歴代の自民党の外交路線でありますが、これによってわが国アジア外交は停滞し、AA諸国からも孤立化し、対共産圏貿易においても大きな損失を招いているのでありまして、断じてこれを今後の外交路線とすべきではありません。  これと反対に、アメリカ帝国主義を世界人類の共同の敵として、力によってこれと対決せんとする中共外交路線があります。これは、わが国では、社共両党がとりつつある道でありまして、わが国を実質的に共産陣営に引き込み、国内に三十八度線を持ち込む外交路線でありまして、わが国は、断じてこの道をとるべきではありません。(拍手)  わが国がとるべき道は、第三の道として、民主主義立場をはっきりと堅持しつつも、共産国家とも平和的に共存して、わが国の利益を守り、かつ、世界平和に寄与していく平和共存の外交路線であります。四年後の日米安保条約改定については、米軍の常時駐留をやめ、駐留なき防衛の約束として貸与基地の原則的撤廃を要求し、一方では、ソ連との友好関係、経済交流を深め、中国とは経済交流の積み上げと国連加盟を促進していく平和共存の外交路線であります。このような、わが国の利益並びに平和と安全保障を守っていく見地に立ちまして、日韓関係の正常化は、欠くことのできない重要なる一環であります。(拍手)  このような観点に立つわが党といたしまして、今回の日韓条約批准案の承認は、日韓両国国交正常化の、まさに第一歩であり、同時に、これはわが国アジア外交の新しい出発点であるわけであります。条約協定の内容については、多くの不満があります。かつ、今後一そう明確化を要する点もありますが、両国の和解と友好親善のため、また、わが国の平和と安全の大局的見地から、全体としてこれを承認実施に移して差しつかえないものと判断いたします。ただし、次の諸点について、政府の善処を強く要求するものであります。  第一に、基本条約第三条に基づき、わがほうが韓国を、休戦ライン以南を実効的に支配するところの、朝鮮における唯一の合法的政府として、外交上正式承認することに異存はありませんけれども、北鮮に関しては、休戦ライン以北の事実上の政権またはオーソリティーとして、これを取り扱い、わがほうの自主共存外交に基づいて、経済、文化等の面での友好を積み上げることでございます。  第二に、竹島問題については、あくまで、たな上げでなく、両国友好の雰囲気をつくって、交換公文に示されたように、通常の外交ルートを通じ、もしくは第三者の調停に付するなどの平和的な方法で解決することについて、なるべく早い機会に、あらためて両国の意思が合致したことを公表すること、また、解決にあたっては、わがほうの領土権の主張の貫徹を期すること。  第三に、漁業協定については、これと抵触する韓国国内法宣言等は、近い機会をとらえて、韓国側がこれが改廃を行なうよう措置すること。また、協定の期限満了後、無協定の事態を招かないよう、万全の措置をとること。  第四に、在韓日本人私有財産については、在外邦人私有財産補償問題の一環として、他の戦争犠牲負担との振り合いを考慮しつつ、すみやかに適当な補償を行なうこと。  第五に、在日朝鮮系居留民の処遇については、永住権等の法律上の差異はしばらくおき、教育、生活保護国民健康保険等の取り扱いにおいては、事実上、韓国籍の者と北鮮系との周に差別待遇を行なわないこと。  第六に、日韓経済協力の実行にあたっては、協力援助が浪費され、ないしは政治的腐敗の原因とならぬよう、厳重に監視するとともに、日本側資本家が、韓国経済に協力するという口実のもとに、同国のチープ・レーバーを悪用して、わがほうの中小企業や労働者を圧迫するがごときことを防止するよう、経済協力並びに両国経済の交流については、政府は十分の管理と韓国側との密接な連絡折衝を行うこと。  わが民主社会党は、以上の条件を付して、日韓条約並びに関係法案に賛成するものでありますが、他方、みずからは、野党として、国民外交立場から、韓国に対して、政治犯の釈放、議会制民主主義の伸張、その他、全般的に韓国の民主化の一そうの徹底を要求し、日韓国交回復と、わがほうの経済協力が、他日、朝鮮の平和的統一の暁に、南朝鮮にゆるぎのない社会的基盤をつくることに貢献するよう、監視を怠らないことを、ここに明らかにいたしまして、私の討論を終わります。(拍手)     ―――――――――――――
  53. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本共産党は、本案件が絶対に不法不当であり、無効であることを、強く主張するものである。  すでに明らかなように、本案件は、衆議院、参議院を通じて、国会法、衆参両院規則等、法規慣例に照らして、絶対に成立せざるものである。このことは、議会民主主義を守る上からも断じて容認できないものである。  去る十一月六日の衆議院日韓特別委員会並びに十一月十二日未明の本会議における政府、自民党のたび重なる暴挙は、議会の民主主義を完全にじゅうりんし、一党独裁による議会の否認と言わざるを得ない。特に、十一月十二日の衆議院会議では、船田議長は、わずか四十五秒で、かってに日程変更し、継続中の先議案件である石井法相不信任案件あと回しにし、次いで国会法第五十三条に基づく委員長報告を省略し、討論の余地を全然与えず、一気に日韓案件採決したと称しているのであります。これは、法規慣例を無視して、議長としての権威と職責を放棄した許すべからざる暴挙であります。これが、国会の否認であり、民主主義への露骨な挑戦でなくて、何でありましょうか。これは、単にわれわれが糾弾しているだけではなく、今日、広範な人々が、口をきわめて、これを非難し続けているのであります。たとえば、大河内東大総長は、日韓条約それ自体重要なことだが、それにもまして、強行採決の問題は、これが許されるとなれば、同じことが今後も許されることになる。このことは、きわめて重大であり、放置できない、と述べているのであります。また、二百名に及ぶわが国の著名な学者、文化人、さらには五百二十余名の法律家が、それぞれ連名で、今回の政府、自民党の暴挙に抗議し、国会解放、総選挙を要求している。これらは、広範な国民の世論を正しく反映しているものであります。このことは、自民党を支持し、日韓条約に賛成する立場の人たちの間でさえ、同様であります。十一月十七日の新聞の投書欄では、ある会社の社長は次のように言っている。「日韓案件強行採決の本会議の様子をテレビで見ていて、情けないというより、おそろしさを感じた。この調子では、治安維持法だろうが、通そうと思えば通してしまうだろう。議員が席にすわってもいないのに、議長が一人、早口に言うだけ言って、起立多数と認め可決とは、まさにペテンだ」と述べています。また、別な投書では、「満州事変が起こる前後の議会を思い出させて、不愉快であり、不満だ」と、はっきり言っているのであります。佐藤総理並びに自民党の諸君は、このような国民の声に全く耳をふさいでいくつもりであるか。われわれは、絶対にこのような暴挙を承認しないばかりでなく、国民の絶対多数とともに、あくまでも、この不当不法を糾弾するものであります。  しかも、かかる国会のルールを完全にじゅうりんした無謀な行動は、そのまま当参議院にも持ち込まれています。十二月四日の特別委員会における審議打ち切りは、これらの暴挙を、さらに上回る、国会史上空前の悪らつな陰謀であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)「委員長……〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕〔委員長退席〕」、これが速記のすべてではないか。これは一体何だ。十二月六日付朝日新聞の社説すら、政府、自民党の暴挙を追及し、次のように述べています。「日韓案件の、暗澹(あんたん)たる衆院通過があったあと、重ねてこのような事態に接する――寒々としたものが身体を通りぬけているような感じを、国民のすべてが味わっているに違いない。当事者たちに、あらためて問いたい。議会制民主主義への誠実な責任感を、どれほどに持合わせているのか。ある、というならば、なぜこんなぶざまな道を選ぶのか。」と言っているのであります。新聞論調で、最近このような痛烈な論議が、かってなされたでありましょうか。佐藤総理は、一体どのような責任をこれに対して感じているのか。一党の総裁として、ほおかむりで責任を回避することは絶対に許されないのであります。  佐藤総理、あなたは、この手を見てください。私のこの手は、ここ二カ月以来、はれ続けに続けて、はれている。連日、いまだに続く怒りの声、国会への請願書の山、握手、握手、握手。老いたる手、労働者の手、女性の手、若者の手。(発言する者多し)この怒りの声を、私は、この幾十万、幾百万の怒りのこもった手をもって、あなたを糾弾する。「糾弾するこの手を見よ 幾万の願いこもりてはれしこの手」――佐藤内閣は即刻退陣すべきであります。国会を即時解散すべきであります。(発言するもの多し)これは国民の結集された声である。  さて、このような不当不法を、あえてせざるを得なかったところにこそ、日韓条約そのものの本質があるのであります。わが党が一貫して主張してきたように、日韓条約こそは、戦争と侵略のための条約であります。アメリカのベトナム侵略戦争の失敗による戦略の立て直しのために、朝鮮半島からの侵略を準備するためのものであることは、あまりにも明瞭であります。そのねらいは中華人民共和国にあることは、これまた、あまりにも明瞭である。現に、アメリカ政府当局者は、こう語っている。(発言する者多し)諸君は盛んにやじっているが、こういう事実を知らない。だから、そう言っている。「わが国の対中国政策基本は、中国を絶えず軍事的脅威のもとにさらし、それによって、中国内部に内乱が発生することを期待するにある」、こう述べているのであります。これこそは、アメリカアジア政策基本であります。  こうして、日韓条約こそは、ベトナム侵略戦争を国際化し、極東全域に拡大しようとするアメカカ帝国主義者の、アジア侵略計画の最も重要な部分をなすものであり、これに日本が積極的に加担しようとするものであります。この日韓条約の、反人民的、反民族的な本質は、現に、第二の朝鮮侵略戦争を想定した三矢作戦計画、あるいはフライング・ドラゴン計画等に、明瞭にあらわれているではないですか。特に、三矢作戦計画によれば、国家非常事態法をはじめ、八十七件にのぼる緊急戦時立法は、あるいは委員会審議を省略し――よく聞いてください。あるいは特別委員会を設けて、これを能率化し、臨時国会の召集から八十七の全法案の可決に至るまで、わずか二週間でこれを通すと言っているのであります。これこそは、まさに今国会における数々の暴挙の中に、すでに実行されていると言わねばなりません。(発言する者多し)私は、この事実をはっきりここで指摘せざるを得ない。これこそは、まさに、ヒットラー、東条に劣らぬ、フアシズムヘの道であります。  しかも、佐藤総理は、この国会審議を通じて、憲法第九条改悪問題に触れ、「平和の精神に徹するが、条文がそのままであるとは存えない」と述べて、改憲の意図を明らかにしたのであります。憲法改悪は自民党の立党以来の方針である。しかも、その準備のため、一方では、憲法担当の国務大臣を置くことをほのめかし、さらに小選挙区制の推進を言明しているのであります。小選挙区制の問題が、憲法改悪とは切っても切れないものであることは、あまりにも明瞭であります。自民党の得票は、選挙のたびに減っている。三年前の参議院選挙のときの地方区得票四七%が、今度の選挙では四四%に低下した。このような、日に日に衰える姿を一挙に挽回して、三分の二以上をとり、憲法改悪の条件をつくる、これが小選挙区制のねらいであることは、あまりにも明白であると言わざるを得ません。現に、田中自民党幹事長は、最近、記者会見で、小選挙区制が国会に提案されれば、日韓案件のように一気にやると、はっきり言っているじゃないですか。ここに、今回の暴挙が、今後も自民党によって引き続き行なわれる危険が、はっきりと示されていることを明らかにしなければなりません。  以上述べたように、本案件は、その内容において、わが国を軍国主義と侵略戦争へ導く危険なものであるだけでなく、その審議経過手続は、国会の法規慣例を完全にじゅうりんした、全く不法無効なものであり、本日の本会議に提案する何らの合法性を備えていないものであるということを、はっきり私は断言したいと思います。このような不法無効な案件審議し、採決すること自体、政府、自民党の暴挙を認めることであり、わが国民主主義を破壊し、一党独裁のファッショ的政治に道を開くものであります。  日本共産党は、このような暴挙を断じて容認することはできない。本案件を十一月十二日以前の状態に返し、佐藤自民党内閣は、責任をとって総辞職し、国会解散、総選挙によって民意に問うことを、はっきりと主張する。したがって、わが党は、本日の会議において、日韓案件採決に付することは、絶対にこれに反対し、これを断固拒否するものであることを、ここに、日本人民の名において、明確に表明するものであります。(拍手)     ―――――――――――――
  55. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 市川房枝君。    〔市川房枝君登壇拍手
  56. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、第二院クラブを代表して、ただいま議題となっておりまする「日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件」、これに対し、反対の討論を行ないたいと思います。(拍手)  その第一の反対の理由は、この案件審議が、議会政治のルールによっていないということであります。すなわち、衆議院委員会及び本会議とも、自民党によって強行採決が行なわれ、国民の非常な不信を招いておりましたのに、さらに参議院の特別委員会において、三たび強行採決が行なわれました。この際は、強行採決ではなくて、何らの採決も行なわれなかったことを、私は自分の目で見ております。(拍手)それを、寺尾委員長は、社会党の稲葉議員がおっしゃいましたように、公文書を偽造してと申しますか、議長報告をなさいました。議長はそのことをよく承知しながら承認をして、議長職権でこの本会議に上程をなさいました。全くルール無視もはなはだしく、私の議員生活十二年間で初めてのことでございます。この事態に対し、社会党が、委員長の問責決議案、議長、副議長の不信任案を提出されましたのは、当然のことでありまして、(拍手)私どもも賛成をいたしました。もっとも、自民党の方々は、社会党が引き延ばし戦術をとったからやむを得ずやったのだ、悪いのは社会党なんだと言っておられるようですし、国民の間には、両方とも悪いんだ、こういう説も行なわれております。これについて私は、少数党である社会党が、反対法案審議に際し、ある程度の引き延ばし戦術をとることは、外国の議会にも例があり、それが合法的である限りは、私は許されてもよいと思います。(拍手)しかし、今度の場合、幾らか引き延ばしのための引き延ばしもあったきらいがあり、(拍手、笑声)その点を国民から批判されてもしかたがないと思います。少数党は結局まあ負けるのでありまするから、負け方といいますか、あるいはその時期を私は再検討してほしいと思います。多数党て、少数党の意見を十分に聞く、その上での多数である自民党は、たとい社会党が多少ルールをはずしても、大政党としての襟度を持って忍耐をして、少数党の意見を十分に聞く、その上での多数決、これが民主主義のルールであることは言うまでもございません。私は、どうせ最後は多数党である自民党が勝つのだから、何を急いであんなに無理をなさるのかと伺いたいのです。だから私は、両方が悪いのではないので、悪いのはやはり自民党のほうだと思います。民主主義政治にはルールが必要でございます、大事でございます。したがって、ルールを無視した、これを破壊した自民党は、それだけ非難されても当然だと思います。先ほど草葉委員長代理委員会報告で、採決したとおっしゃったのですが、これは偽りであります。このようなルール無視で審議された案件については、私どもは、その内容のいかんを問わず、反対であります。いや、今度の場合は、案件は成立していないのだ、ほんとうはここまで持ってくるのが間違っているのだ、こういうふうに私は思うのであります。日韓委員会強行採決の直前に、佐藤総理は――私はちゃんと聞いておったのですが、佐藤総理は、私は民主主義政治の確立に苦慮いたしております。――これは衆議院における強行採決についての感想といいますか、覚悟をおっしゃったわけなんですが、その直後に参議院のああいう採決が行なわれた。したがって、佐藤総理のおっしゃったことは、全くから念仏といいますか、ことばの上だけであって、佐藤総理兼自民党総裁に私は強く抗議を申し上げたいと思います。  第二の反対の理由は、条約協定関連国内法の内容に疑点があり、納得のできない点があるからであります。その重要な点の一つは、管轄権李ライン竹島等の問題について、韓国国会説明されていることと、日本国会政府説明していることと、全く反対になっていることであります。この点については、委員会で問題になり、いろいろな方から御質問があったのでありまするが、私にはどうしても納得ができません。一致するのを待って条約締結すべきであったと思います。  いま一つは、在日韓国人法的地位及び待遇に関する協定や議事録、出入国管理特別法等で、韓国人を優遇し、教育、民生保護、健康保険等を日本人と同様にするということには、私は賛成でありますけれども、さっき岡田さんがおっしゃったように、強制退去の条件を非常に緩和していることには賛成ができません。その内容は岡田さんがおっしゃったとおりでありまするが、他の永住権者に対しては、麻薬やアヘンで有罪になった者、あるいは一年をこえる懲役禁錮になった者、及び売春の助長行為によって罰せられた者、そういう者は強制退去の対象になっておりますが、韓国人の場合には七年以上、あるいは麻薬は三回まで、売春の問題は入っておりません。また永住権の資格を緩和し、特別に広い範囲に与えていることもやむを得なかったかと思いますが、ただ将来、少数民族の問題が起こってくるのが私は心配でございます。むしろ希望者には日本に帰化をさせる、帰化の条件をもっと緩和して、日本人の中にまじってもらうようにすることが適当だと、私は考えるのであります。ところが、今度の協定、法律等では、帰化の問題には全く触れておりません。現実には帰化の問題はむずかしくなっているらしいと聞きます。これは私のどうしても納得できない点であります。  第三の反対の理由は、今度の条約協定は、どうもNEATO軍事条約につながっていくらしいという心配がございます。(拍手条約協定には、佐藤総理、椎名外相がおっしゃいますように、軍事的な協力には全く触れておりません。総理は特に、海外派兵等は憲法関係もあってできない、絶対にしませんとおっしゃってはおります。しかし、特別委員会での論議、あるいは公聴会を聞いたりいたしているうちに、私の心配がだんだん出てきました。それはアメリカが最初から非常に熱心にあと押しをしていること、あるいは相手の韓国の朴大統領、あるいは韓国が出兵しているベトナムのカオキ総理等が、それをにおわせておられること等であります。私どもは、特に婦人の立場から、再び戦争に引っぱり込まれることは、まっぴらごめんでありまして、これは保守、革新を問わないと思います。この点を特に佐藤総理に申し上げておきたいと思います。  第四の反対の理由は、韓国でも日本でも相当な反対があること、特に韓国の反対が私は心配でございます。特別な関係にある韓国との友好親善に、韓国のほうに強い反対がある。国会では与党だけで採決をし、学生等の反対には軍隊をもって鎮圧をしているようであります。反対は少数であると政府は言っていらっしゃいますが、韓国の指導層が日本を信頼していない。再び日本から経済的な侵略を受けるのではないか等々の心配からだと聞きますが、これは非常に私は重大だと思います。なぜ韓国の野党及び指導層の人たちの支持が得られなかったのか。それまで少し、私は待ってもよかったのではないかと思います。  第五の反対の理由は、北鮮との関係に何の見通しもなく、また、日本国内にいる朝鮮人の間にいままで以上に三十八度線を深くする心配があるからでございます。朝鮮人という場合、私どもは、南北の差別なく、親愛の情を感じ、過去において日本の為政者のとった申しわけのない態度に対し、連帯の責任を感じます。したがって、南北統一後、全朝鮮と友好親善が結びたかったと思っております、しかし、それは遠い将来かもしれないから、まず韓国と親善関係を進めることもやむを得なかったと思います。そこで私は、総理、外相の、北朝鮮とは白紙で関係がない、こういう立場には納得ができません。たとえ共産主義はきらいでも、いわゆる政経分離で、経済交流、文化交流等を行ない、少しでも北鮮の人たちのしあわせになるように考えていただきたいと思います。政府は、インドネシアとマレーシアとの妥協の工作を買って出ておいでになりましたが、そんな遠いところより、近い南北朝鮮の統一に私は努力をしていただきたい。せめて東西ドイツのように、手紙の往復あるいはクリスマスとかなんとかいうときに、親子、親族が面会ができるように、私は、日本政府が将来尽力をしていただきたい、これをお願いしておきます。  なお、日本在留の朝鮮人の間には、すでにある程度の三十八度線があり、南北に分かれているようでありますが、今度の協定の結果、南の韓国人を優遇するようになりますが、政府は、日本国内での三十八度線をいま以上に深くしないように、南北平等の扱いをするように、私は特に政府当局にお願いをしたいと思います。  なお、私どもは、この案件採決には、いままでの自民党の採決のしかたに対してプロテストする意味において、私どもも参加しないことにいたしました。私どもを野党と一緒に行動させるということは、それは自民党の方があまりにひどかったからであります。  これをもって私の討論を終わります。(拍手)    〔発言する者多し〕
  57. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  まず、「日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件」を問題に供します。  表決は記名投票をもって行ないます。本件を承認することに賛成の諸君は白色栗を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  58. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  59. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  60. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百三十六票   白色票           百三十六票    〔拍手〕   青色票              なし  よって、本件は承認することに決しました。(拍手)      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百三十六名       瓜生  清君    片山 武夫君       中沢伊登子君    高山 恒雄君       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    向井 長年君       中上川アキ君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       中村 正雄君    前田佳都男君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    曾禰  益君       白井  勇君    梶原 茂嘉君       岡村文四郎君    木暮武太夫君       大野木秀次郎君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    園田 清充君       船田  譲君    藤田 正明君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       小林 篤一君    山崎  斉君       川野 三暁君    温水 三郎君       日高 広為君    亀井  光君       石井  桂君    稲浦 鹿藏君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鈴木 万平君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       大谷 贇雄君    青柳 秀夫君       佐藤 芳男君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    近藤 鶴代君       井野 碩哉君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    河野 謙三君       中野 文門君    竹中 恒夫君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    玉置 和郎君       内藤誉三郎君    任田 新治君       西村 尚治君    中村喜四郎君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       岡本  悟君    奥村 悦造君       楠  正俊君    黒木 利克君       栗原 祐幸君    久保 勘一君       岸田 幸雄君    米田 正文君       谷村 貞治君    村上 春藏君       木島 義夫君    山本  杉君       徳永 正利君    大谷藤之助君       天坊 裕彦君    西田 信一君       仲原 善一君    松野 孝一君       森部 隆輔君    津島 文治君       斎藤  昇君    塩見 俊二君       植竹 春彦君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    山下 春江君       青木 一男君    安井  謙君       小沢久太郎君    小林 武治君       小山邦太郎君    高橋  衛君       吉武 恵市君    廣瀬 久忠君       田村 賢作君    谷口 慶吉君       櫻井 志郎君    北畠 教真君       金丸 冨夫君    青田源太郎君       赤間 文三君    井川 伊平君       江藤  智君    森 八三一君       三木與吉郎君    西郷吉之助君       木内 四郎君    紅露 みつ君       上原 正吉君    増原 恵吉君       中山 福藏君    小柳 牧衞      ―――――・―――――
  61. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 次に、「日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案」、「財産及び請求権に関する問題の解決並び経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の家施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案」、及び、「日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案」全部を問題に供します。  表決は記名投票をもって行ないます。三案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  62. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票漏れはございませか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖    〔投票箱閉鎖〕
  63. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより開票いたします投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じす。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  64. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百三十七票   白色票           百三十七票   青色票              なし  よって、三案は可決せられました。(拍手)      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名     百三十七名       瓜生  清君    片山 武夫君       中沢伊登子君    高山 恒雄君       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    向井 長年君       中上川アキ君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       中村 正雄君    前田佳都男君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    曾禰  益君       白井  勇君    梶原 茂嘉君       岡村文四郎君    木暮武太夫君       大野木秀次郎君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    園田 清充君       船田  譲君    藤田 正明君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       小林 篤一君    山崎  斉君       川野 三暁君    温水 三郎君       日高 広為君    亀井  光君       石井  桂君    稲浦 鹿藏君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鈴木 万平君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       大谷 贇雄君    青柳 秀夫君       佐藤 芳男君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    近藤 鶴代君       井野 碩哉君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    河野 謙三君       中野 文門君    竹中 恒夫君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    玉置 和郎君       内藤誉三郎君    任田 新治君       西村 尚治君    中村喜四郎君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       岡本  悟君    奥村 悦造君       楠  正俊君    黒木 利克君       栗原 祐幸君    久保 勘一君       岸田 幸雄君    米田 正文君       谷村 貞治君    村上 春藏君       木島 義夫君    山本  杉君       徳永 正利君    大谷藤之助君       天坊 裕彦君    西田 信一君       仲原 善一君    松野 孝一君       森部 隆輔君    津島 文治君       斎藤  昇君    塩見 俊二君       植竹 春彦君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    山下 春江君       青木 一男君    郡  祐一君       安井  謙君    小沢久太郎君       小林 武治君    小山邦太郎君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    田村 賢作君       谷口 慶吉君    櫻井 志郎君       北畠 教真君    金丸 冨夫君       青田源太郎君    赤間 文三君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    木内 四郎君       紅露 みつ君    上原 正吉君       増原 恵吉君    中山 福藏君       小柳 牧衞君      ―――――・―――――
  65. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 本日は、これにて散会いたします。   午前十時十四分散会