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1965-12-09 第50回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月九日(木曜日)    午前一時四十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第十三号   昭和四十年十二月九日    午前一時三十分開議  第一 日韓条約等特別委員長寺尾豊問責決議   案(藤田進君外一名発議)(前会の続)  第二 日本国大韓民国との間の基本関係に関   する条約等の締結について承認を求めるの件   (衆議院送付)(前会の続)  第三 日本国大韓民国との間の漁業に関する   協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関   する水域の設定に関する法律案内閣提出、   衆議院送付)(前会の続)  第四 財産及び請求権に関する問題の解決並び   に経済協力に関する日本国大韓民国との間   の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産   権に対する措置に関する法律案内閣提出、   衆議院送付)(前会の続)  第五 日本国に居住する大韓民国国民法的地   位及び待遇に関する日本国大韓民国との間   の協定実施に伴う出入国管理特別法案(内   閣提出、衆議院送付)(前会の続)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 日韓条約等特別委員長寺尾豊君   問責決議案藤田進君外一名発議)(前会の  続)  一、議長不信任決議案大和与一君外四名発  議)(委員会審査省略要求事件)  一、副議長不信任決議案鈴木強君外四名発  議)(委員会審査省略要求事件)      ―――――・―――――
  2. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、日韓条約等特別委員長寺尾豊問責決議案(前会の続)を議題といたします。  鍋島直紹君外一名から、成規賛成者を得て、  討論終局動議が提出されました。  これより本動議採決いたします。  表決記名投票をもって行ないます。本動議賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  3. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない方は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――ただいま行なわれております投票につきましては、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。すみやかに御投票を願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――時間がまいりますれば、投票箱閉鎖いたします。すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。  制限時間に達しました。投票箱閉鎖いたします。    〔投票箱閉鎖
  4. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより開票をいたします。投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  5. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         百五十三票   白色票           百十九票   青色票           三十四票  よって、討論は終局することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名     百十九名       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    白井  勇君       梶原 茂嘉君    岡村文四郎君       木暮武太夫君    大野木秀次郎君       草葉 隆圓君    宮崎 正雄君       柳田桃太郎君    山内 一郎君       山本茂一郎君    園田 清充君       船田  譲君    藤田 正明君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    日高 広為君       亀井  光君    石井  桂君       稲浦 鹿藏君    大竹平八郎君       柴田  栄君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       大谷 贇雄君    青柳 秀夫君       佐藤 芳男君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    中野 文門君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    玉置 和郎君       内藤誉三郎君    任田 新治君       西村 尚治君    高橋雄之助君       長谷川 仁君    岡本  悟君       奥村 悦造君    楠  正俊君       黒木 利克君    栗原 祐幸君       久保 勘一君    岸田 幸雄君       米田 正文君    谷村 貞治君       村上 春藏君    木島 義夫君       山本  杉君    徳永 正利君       大谷藤之助君    天坊 裕彦君       西田 信一君    仲原 善一君       松野 孝一君    津島 文治君       斎藤  昇君    塩見 俊二君       植竹 春彦君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    青木 一男君       郡  祐一君    安井  謙君       小林 武治君    小山邦太郎君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    近藤英一郎君       田村 賢作君    谷口 慶吉君       北畠 教真君    金丸 冨夫君       青田源太郎君    赤間 文三君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    木内 四郎君       紅露 みつ君    上原 正吉君       増原 恵吉君    中山 福藏君       小柳 牧衞君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      三十四名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    黒柳  明君       矢追 秀彦君    石本  茂君       中尾 辰義君    浅井  亨君       田代富士男君    二宮 文造君       多田 省吾君    宮崎 正義君       小平 芳平君    渋谷 邦彦君       鈴木 一弘君    和泉  覚君       柏原 ヤス君    白木義一郎君       達田 龍彦君    前川  旦君       戸田 菊雄君    大森 創造君       小柳  勇君    田中寿美子君       中村 順造君    千葉千代世君       武内 五郎君    秋山 長造君       阿部 竹松君    大倉 精一君       藤原 道子君    岡田 宗司君       加藤シヅエ君      ―――――・―――――
  6. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて休憩いたします。    午前三時五分休憩      ―――――・―――――    午前五時四分開議
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  これより、日韓条約等特別委員長寺尾豊問責決議案採決をいたします。  表決記名投票をもって行ないます。本案賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  投票漏れはございませんか。投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより開票いたします。投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百九十五票   白色票            八十三票   青色票            百十二票  よって、本案は否決せられました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名     八十三名       原田  立君    山高しげり君       黒柳  明君    矢追 秀彦君       石本  茂君    市川 房枝君       高山 恒雄君    田代富士男君       二宮 文造君    宮崎 正義君       小平 芳平君    渋谷 邦彦君       鈴木 一弘君    北條  浩君       辻  武寿君    和泉  覚君       柏原 ヤス君    白木義一郎君       鈴木 市藏君    達田 龍彦君       前川  旦君    戸田 菊雄君       竹田 現照君    山崎  昇君       木村美智男君    村田 秀三君       矢山 有作君    野々山一三君       瀬谷 英行君    杉山善太郎君       小柳  勇君    横川 正市君       藤田藤太郎君    相澤 重明君       岡  三郎君    永岡 光治君       藤田  進君    柳岡 秋夫君       北村  暢君    鈴木  強君       大和 与一君    岩間 正男君       須藤 五郎君    春日 正一君       森  勝治君    鈴木  力君       中村 波男君    川村 清一君       大橋 和孝君    田中 寿美子君       稲葉 誠一君    吉田忠三郎君       渡辺 勘吉君    小林  武君       松本 賢一君    佐野 芳雄君       中村 順造君    野上  元君       千葉千代世君    山本伊三郎君       武内 五郎君    森中 守義君       松永 忠二君    占部 秀男君       光村 甚助君    伊藤 顕道君       中村 英男君    久保  等君       秋山 長造君    大矢  正君       亀田 得治君    阿部 竹松君       近藤 信一君    大倉 精一君       松澤 兼人君    小酒井義男君       椿  繁夫君    成瀬 幡治君       鈴木  壽君    木村禧八郎君       藤原 道子君    加藤シヅエ君       羽生 三七君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      百十二名       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    白井  勇君       梶原 茂嘉君    岡村文四郎君       木暮武太夫君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    山本茂一郎君       園田 清充君    船田  譲君       藤田 正明君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    日高 広為君       亀井  光君    石井  桂君       稲浦 鹿藏君    大竹平八郎君       柴田  栄君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       大谷 贇雄君    青柳 秀夫君       佐藤 芳男君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       林屋亀次郎君    杉原 荒太君       中野 文門君    後藤 義隆君       堀本 宜実君    山本 利壽君       玉置 和郎君    内藤誉三郎君       任田 新治君    西村 尚治君       高橋雄之助君    岡本  悟君       楠  正俊君    黒木 利克君       栗原 祐幸君    久保 勘一君       岸田 幸雄君    米田 正文君       村上 春藏君    木島 義夫君       山本  杉君    徳永 正利君       大谷藤之助君    西田 信一君       仲原 善一君    松野 孝一君       津島 文治君    斎藤  昇君       塩見 俊二君    植竹 春彦君       新谷寅三郎君    迫水 久常君       松平 勇雄君    八木 一郎君       青木 一男君    郡  祐一君       安井  謙君    小林 武治君       小山邦太郎君    高橋  衛君       吉武 恵市君    廣瀬 久忠君       近藤英一郎君    田村 賢作君       谷口 慶吉君    北畠 教真君       金丸 冨夫君    青田源太郎君       赤間 文三君    井川 伊平君       江藤  智君    森 八三一君       三木與吉郎君    西郷吉之助君       木内 四郎君    紅露 みつ君       上原 正吉君    増原 恵吉君       中山 福藏君    小柳 牧衞君      ―――――・―――――    〔議長退席、副議長着席
  11. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 大和与一君外四名から、委員会審査省略要求書を付して、  議長不信任決議案が提出されました。  おはかりいたします。  議長不信任決議案は、発議者要求のとおり、委員会審査を省略し、日程に追加して、これを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  よって、本案議題といたします。  鍋島直紹君外一名から、賛成者を得て、  本案議事における発言時間は、趣旨説明については二十分、質疑討論その他については一人十五分に制限することの動議が提出されました。  よって、この時間制限動議について採決をいたします。  表決記名投票をもって行ないます。本動議賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  13. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない諸君はすみやかに御投票願います。――まだ投票をなさらない方はすみやかに御投票願います。――投票をなさらない方は、すみやかに御投票を願います。――まだ投票なさらない方はすみやかに御投票願います。――ただいま行なわれております投票については、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらぬ方はすみやかに御投票願います。――時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。――すみやかに願います。――すみやかに御投票願います。  制限時間に達しました。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  14. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより開票いたします。投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  15. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百八十七票   白色票            百十六票   青色票            七十一票  よって、本案議事における発言時間は、趣旨説明については二十分、質疑討論その他については一人十五分に制限することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名      百十六名       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    白井  勇君       梶原 茂嘉君    岡村文四郎君       木暮武太夫君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    山本茂一郎君       園田 清充君    船田  譲君       藤田 正明君    平泉  渉君       八田 一朗君    土屋 義彦君       木村 睦男君    高橋文五郎君       内田 俊朗君    大森 久司君       丸茂 重貞君    源田  実君       熊谷太三郎君    山崎  斉君       川野 三暁君    温水 三郎君       日高 広為君    亀井  光君       石井  桂君    稲浦 鹿藏君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鹿島 俊雄君    鍋島 直紹君       横山 フク君    大谷 贇雄君       青柳 秀夫君    佐藤 芳男君       平島 敏夫君    剱木 亨弘君       古池 信三君    田中 茂穂君       石原幹市郎君    重政 庸徳君       笹森 順造君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    中野 文門君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    玉置 和郎君       内藤誉三郎君    任田 新治君       西村 尚治君    高橋雄之助君       長谷川 仁君    岡本  悟君       奥村 悦造君    楠  正俊君       黒木 利克君    栗原 祐幸君       久保 勘一君    岸田 幸雄君       米田 正文君    谷村 貞治君       村上 春藏君    木島 義夫君       山本  杉君    徳永 正利君       大谷藤之助君    天坊 裕彦君       西田 信一君    仲原 善一君       松野 孝一君    津島 文治君       斎藤  昇君    塩見 俊二君       植竹 春彦君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    青木 一男君       郡  祐一君    安井  謙君       小林 武治君    小山邦太郎君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    近藤英一郎君       田村 賢作君    谷口 慶吉君       北畠 教真君    金丸 冨夫君       青田源太郎君    赤間 文三君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    木内 四郎君       紅露 みつ君    上原 正吉君       増原 恵吉君    小柳 牧衞君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      七十一名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    黒柳  明君       矢追 秀彦君    石本  茂君       市川 房枝君    中尾 辰義君       浅井  亨君    田代富士男君       二宮 文造君    宮崎 正義君       小平 芳平君    渋谷 邦彦君       鈴木 一弘君    北條  浩君       辻  武寿君    和泉  覚君       柏原 ヤス君    白木義一郎君       鈴木 市藏君    達田 龍彦君       前川  旦君    戸田 菊雄君       竹田 現照君    山崎  昇君       木村美智男君    村田 秀三君       矢山 有作君    野々山一三君       瀬谷 英行君    杉山善太郎君       林  虎雄君    小柳  勇君       横川 正市君    藤田藤太郎君       相澤 重明君    岡  三郎君       柳岡 秋夫君    田中  一君       北村  暢君    鈴木  強君       岩間 正男君    春日 正一君       森  勝治君    鈴木  力君       中村 波男君    川村 清一君       大橋 和孝君    田中寿美子君       稲葉 誠一君    吉田忠三郎君       小林  武君    松本 賢一君       佐野 芳雄君    中村 順造君       野上  元君    千葉千代世君       山本伊三郎君    武内 五郎君       森中 守義君    松永 忠二君       占部 秀男君    光村 甚助君       久保  等君    秋山 長造君       大矢  正君    阿部 竹松君       小酒井義男君    藤原 道子君       加藤シヅエ君      ―――――・―――――
  16. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより発議者趣旨説明を求めます。大和与一君。     ―――――――――――――    〔大和与一登壇拍手
  17. 大和与一

    大和与一君 私は、日本社会党亀田得治久保等稲葉誠一横川正市の諸君とともに発議し、ただいま議題となりました参議院議長宗雄三君の不信任決議案趣旨説明を代表していたします。(拍手)  まず、決議案を朗読いたします。    決議(案)   本院は、議長宗雄三君を信任しない。   右決議する。  次に、理由を説明いたします。  十二月四日の日韓条約等特別委員会は、委員の質問中に、委員長が突如として、無断で委員室を去ったにとどまり、いかなる採決も行われていないことは、明白なる事実である。しかるに委員長は、新聞記者会見を行ない、あるいは質疑を打ち切ったと発表し、後刻、採決もあわせ終了したと訂正したことは、立憲政治下においては空前のことであり、国会否認民主政治への冒とく行為を行なった。  議長は、参議院運営最高責任者として、このような暴挙に対して、民主主義議会政治の存続と発展を望む立場から、目前の多少の困難を克服しても、本道に則して、日韓特別委員会に差し戻して質疑を続行するよう、最善の努力をするのが当然の義務である。  しかるに議長は、政府、自由民主党の圧力に屈して、社会、公明、民社、共産、二院クラブ、野党五派完全に一致しての正当な議会民主主義を守る要請を無視して、採決の存在とその合法性を認め、今や、職権をもって本会議を開会し、条約等諸案件を上程した。言論を度外視して、でっち上げられた力ずくの決定が「合法」とするならば、法律自体が暴力の外装にほかならない。ファシズム、独裁と選ぶところのないこのような合法性の主張は、論理としても成り立たないばかりでなく、民主憲法の秩序をいたくそこなうものであり、第二院としての参議院の任務にももとり、国会全体の権威を大きく失墜することになる。国民は、議長のこの暴挙に対し、議会制民主主義が音を立ててくずれていく姿をながめ、りつ然と、はだえにアワを生ずる感を深くしている。(拍手)  われわれは、議長のかかる不明にして不敏、議会制民主主義を根底から破壊するこれらの行為を、絶対に容認することはできない。(拍手)  各党各派は、みずからの正しさに顧みて、本案に対して全会一致の賛成をこいねがうものである。  以上をもって、この決議案の提案理由とする次第であります。  そもそも、社会党の中で最もおとなしい、気のやさしいこの私に、党が議長不信任案の趣旨説明という大命を下したのは、何ゆえでありましょうか。四日のあの暴挙を目のあたり見ては、怒髪まさに天をつき、国民とともに、黙認している政府に対して、そそのかした自由民主党に対して、天誅を加えずんばやまずとの気概を持つであろうという配慮に出たからであります。選ばれた私として、一身の光栄、家門の名誉、これに過ぎるものはありません。  重宗議長は、痩躯ツルのごとく、顔は長く、馬づらではありましても、まなこらんらんとして人の心を射るごとく、豪放らいらくにして濶達、天性の資質明朗にして、男ぼれする度胸、男児の本懐、これに過ぐるものはないでありましょう。年寄りとしてのがんこさに至っては人一倍強いのでありますが、一方において参議院の象徴となり、他方において自由民主党をへいげいし、今回を除いては、おおむね実力者であり、清濁あわせのむ好々爺でもあるのであります。私は、かねてから尊敬おくあたわず、あしたに咫尺に接して教えを請い、夕べには、すし屋のとまり木に隣して歓楽を願い、参議院の権威を高からしめ、上院としての風格を輝きあらしめるために、応分の御協力を申し上げてまいったつもりであります。しかし、その議長に、本日はきびしく対決をしなければなりません。今回の重宗議長の職権開会に至る道程は、悪魔に魅せられたるか、気が狂われたまえるか、他人の圧力に屈したるか。まさに驚天動地、民主主義の殿堂は、その瞬間、国民の前にごう然たる響きをたてて倒れ去ったと嘆くものであります。  私たちは、国民とともに、若干の経緯を振り返ってみなければなりません。去る十二月四日、参議院日韓特別委員会で日韓案件の採決が強行された、というよりは、多数党である自民党によって、採決が行なわれたことにされた、と言うのが正確であります。わが党の横川委員の質問中に、自民党の植木委員が「委員長」と一言叫びました。混乱の中に、一分後には寺尾委員長をはじめ自民党側は退場しました。これが事態のすべてであります。植木君は、「委員長」と言っただけで、あとはまだ、なれない悲しさ、あがってしまって、一言も発言できなかったと自白しております。速記録には、「〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕、〔委員長退席〕」としか書いてないのであります。あの約十分前、わが党の亀田藤田両理事は、寺尾委員長に、「討論採決をするか」と確かめましたところ、委員長は「絶対にしない」と断言をいたしたのであります。寺尾委員長は、委員会場から衛視にかつがれて出る途中、ごうごうたるテレビに写されながら、某放送のデンスケ君に、質疑打ち切りをしたのだ、と吹き込んでいるのであります。しかも、奇怪なことには、自民党内にすら、どんな内容の採決が行なわれたのかわからない者もいました。委員長自身が、初め、新聞記者諸君質疑打ち切りだと発表し、その後に、委員会場にいなかった自民党幹部が協議した結果、日韓案件の一括可決まで済んだとの統一見解がまとめられたのであります。こんなばかげた暴挙が、国会の中で白昼公然と行なわれていることは、天人ともに許さざる行為であります。(拍手)これが真相である限り、採決はなされなかったのであります。それが証拠には、委員長質疑打ち切りだけだと思い込み、続いて若干間を置いて討論採決だと教えられていたので、散会を宣していないのであります。  余談ではありますが、この不手ぎわのために一番迷惑をこうむったのは、可憐な速記の女子、男子の諸君と、委員部の書記の諸君でした。真夜中の十二時まで、たいした超過勤務ももらえないで、しょんぼりとしていました。それらの方々がお気の毒でなりませんので、わが日本社会党は、私が代表してミカンを持って慰問をせざるを得なかったのであります。  私たちから見れば、参院自民党が、おそくも十一日までに案件を議決、成立させることに強くこだわった理由がわかりません。むしろ、わが党は、当時の情勢に即応して、烱眼にも、自然承認を待たず、十日の本会議での討論採決には応じてもよいと申し入れたのであります。その時宜に適した、とうとい申し入れを、鼻紙のごとく一顧だにもしなかったことは、十二月六日の朝日新聞の社説でも論じられております。何という見通しのないことかと慨嘆し、国民の声を代表して審議を尽くす方途をとらず、衆議院と同じ方法をとることの愚かさに対して、民主主義を守る立場から痛烈なる勧告をなされているのであります。  そこで、重宗議長は、活眼を開いて、孟子の言う大丈夫心に徹して、でっち上げられた議決報告書に対し、直ちに日韓特別委員会を再開させ、質疑を続行する正常な運営を、それこそ議長の権威と職権において命令を出すべきであります。もしそうなれば、野党五派が十分に意見の一致をみて議長に迫った統一行動が、国民から与野党ともに称賛され、重宗議長の株は上がるばかりでありましょう。しかるに何事ぞ、衆議院本会議の二の舞いとなり、参議院の良識なるものは、重宗議長みずからの手によって、天につばきする者は、そのつばきは、おのれが顔にかかるがごとく、最後の良心の一片すら「どぶ」に捨てることになったではありませんか。その責任たるや重かつ大であります。(拍手)  昔、シナと言った時代に、山東省の山の中に、人が悪いことをしたということを聞いただけで、そのたびに川に耳を洗いに行った聖人がおりました。あるいはまた、渇しても盗泉の水は飲まないという剛直なさむらいがおりました。あるいはまた、世相に憤激し、憤りを発して、食を忘れ、座禅三昧にふけったお坊さんもおりました。最近、日本の詩人の谷川俊太郎氏は、「わが候補へ」と題して、「わたしはあなたがきらいだ 私はあなたと話したことはないが 話したいとも思わない私はあなたの仲間ではない 私はあなたの味方でもない がらがら声で叫ぶあなた 大義名分を説くあなた 悲壮なあなた こっけいなあなた あなたは信頼によって選ばれるのでもない 単なる足し算によって選ばれるだけだ わたしはあなたに投票する やっとの思いであなたに耐えて」と、よんでおります。この国民の素朴な声を議長は何と聞かれますか。この国民の蒙を開くためにも、われわれの先頭に立って、猛省一番、国会運営を一党一派の圧力に屈しないで、正道に戻していただきたいのであります。  昭和三十九年六月十九日、第四十六国会で、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案をめぐり、法務委員会における採決の有効無効をめぐる紛争がありました。議長あっせんにいわく、「だんだん伺うところによりますと、この紛争の焦点は、討論省略の動議を可決し、直ちに採決された点にあるようでありますが、議長といたしましては、質疑省略や、討論省略などということは、全会一致の場合を除いては、行うべきでないと考えております。この機会に、両党幹部の皆さまに、この点を申し上げ、特に御配慮を要請する次第であります。」と、副議長、議運委員長、自社両党幹部の前で言明されました。今後は一切こんなことをしては相ならぬという裁定であります。自由民主党員である重宗議長が、日韓関係案件の運営の詳細について知らぬ存ぜぬとは断じて申されません。それならば、その行動を察知した瞬間に、「それは、やめたまえ、審議を尽くしたまえ、衆議院の愚を再び繰り返すな」と、事前に一言、自民党に注意してやめさせれば、参議院への国民からの信頼と、議会制民主主義の権威は、確立されておったのであります。死児のよわいを数うるにひとしいとはいいながら、なぜ議長は、わかっておって暴挙をやめさせなかったのですか。やればできたのであります。議長は責任をとるべきであります。  さらに事実を国民の前に明らかにしましょう。議長職権による開会――第四十二国会、昭和三十七年度補正予算のとき。第四十三国会、職業安定法、緊急失業対策法の一部改正のとき、これは中間報告。第四十六国会は、ききに申した暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正。第四十八国会、農地被買収者等に対する給付金に関する法律のときは中間報告。そして今度の第五十国会で五度目であります。重宗議長の手も完全によごれているのであります。孔子は言いました。「あやまちを改むるにはばかることなかれ」と。いまからでもおそくない。真勇をふるって、狂瀾を既倒に返す努力をしてもらいたいものです。そうでないと、神罰が当たります。神さま筋もおこっております。日本じゅうの労働者、農民、特に中小企業の諸君は、この年の暮れが越させないのであります。心から痛憤しております。自民党の諸君は、いつまでも自分たちだけが政権を握っておれると思っている。そんなことは断じてありません。議長さんも、いつまでも議長を続けるわけにはいかぬ。この間違った行ないを後継者にもやらせようというのですか。まさに民主主義の危機きわまれりと言わなければなりません。(拍手)フランスの哲学者のボルテールは言いました。「私はあなたの意見に反対である。しかし、あなたの発言については、死をもって擁護するであろう」と。こんな根本原則がじゅうりんされております。審議が尽くされるはずがありません。  私は、議長の今回とられた態度は、ひいては憲法にまで言を及ぼすべきものであると思うのであります。全く合法性のなかった日韓特別委員会の採決というものは、何ぴとといえども、その真実に触れるならば、明快に了解することができる。無法にして非道な処置、民主主義に似て非なるものであり、もしこれを認めるならば、多数党は、男を女にする、女を男にすることはできないが、それ以外のことであれば何でもできるのであります。たとえば、会議室の外からのサインによって国会の議決がなされ得るということになると、国会の否定であり、重大な冒涜である。主権在民と基本的人権の確立は全くないと言わざるを得ないのであります。(拍手)そのときに議長は、命にかけても、間違ったことは直ちに改めなければなりません。議長こそ、憲法の番人である。この憲法の精神は、これをこまかく規定した紙の上には宿らずして、これを読むところの国民の心のうちに宿るのであります。たとえ手に一冊の憲法参考書がなくても、なおかつ、笑って、おのれの心のうちにあるところの憲法の大略の精神を用い浮かべることのできる国民こそ、真に法の何ものたるかを知る者と言わねばなりません。憲法の理論はむずかしくとも、憲法の心は平易なものでなくてはなりません。これが生きた憲法ということであります。議長の今回やられたことは、主権在民ではありません。まことに残念だが、派閥の走狗となったのであります。あるいは、自己過信の増上慢でもあります。憲法の真髄からは、いかなる方途をもって検討しても、今回、日韓特別委員会が取り来たった議決報告書はインチキであり、それを認めて正式に受理したといわれる議長も、この際は全く同罪であります。  主権在民とは――たとえばわれわれは、かつて警察官職務執行法、小選挙区法という法律案の審議に入りかけたことがありました。そのときに、国民は憤激の極に達しました。なぜならば、この法律は二本とも、自由民主党が一党独裁化への広場にして、民主主義を否定すると、国民は直感したからであります。国民は賢明にも、この考えは全体主義への道であると断定をして、反対運動は日本全国津々浦々から、ほうはいとして起こり、各界各層、鬱然一体とした運動となって、ついに政府はみずからの手によって撤回せざるを得なかったのでありました。文字どおり国民の勝利であります。主権在民の花が咲きました。国民大衆は決して愚かではありません。民主主義における多数決の原理は変わるべくもないのに、いまや多数党の私利私欲の数の暴力によって、なしくずしに民主主義は累卵の危うきにあるとも言えるのであります。現在ただいま、国会は少なくとも息をひそめています。国民と直結されていません。重宗議長は、民主主義の大原則である「人民の、人民による、人民のための政治」を行なっておりません。議長としての公正な運営をしておりません。直ちに四日の時点にさかのぼって、議決報告書を特別委員会に差し戻し、質疑続行による再開をするのでなければ、私は断固、参議院議長宗雄三君を弾劾追及し、不信任実現に至るまで、不退転の決意を強く表明するものであります。  さん然たる良識が参議院にあるならば、全議員こぞって、全会一致の賛成を期待して、私の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手
  18. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて休憩いたします。    午前七時三十三分休憩      ―――――・―――――    午前九時三十二分開議
  19. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  議長不信任決議案に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。渡辺勘吉君。    〔渡辺勘吉登壇拍手
  20. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君 私は、ただいま、大和稲葉久保亀田横川の五議員によって提案されました重宗議長不信任決議案の提案の説明に対して、以下若干のお尋ねをいたしたいと思います。  まず、第一に、条約の承認権を有する国会の議長としての重宗議長の態度は、いかなるものであるべきか。また、重宗議長は、従来の言動からして、真に議長の重責に値するものであるやいなやについて、提案者稲葉議員にまずお尋ねをいたしたいのであります。一九五九年十二月十六日、砂川事件に対する最高裁の判決は、安保条約の違憲性について判定することを避けて、「本件安全保障条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりやいなやの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査にはなじまない性質のものである」としたあと、「それは第一次的には、条約の締結権を有する内閣及びこれに対して承認権を有する国会の判断にゆだねるべきものである」と述べております。これは今日における条約に対する国会の関与の意義を的確に表明したものというべきであります。ところが、安保条約の改定といい、今度の日韓諸条約といい、国の運命にかかる重要な案件になると、国会の審議はそこそこに、一方的な採決が強行され続けております。条約の締結に国会の同意を求められている意義は一体那辺にあるでありましょうか。条約の締結に国会の同意が必要であるという原則が制度的に認められたのは、日本国憲法第七十三条によるものでありまして、戦前の帝国憲法のもとでは、条約の締結は天皇の大権事項であり、議会の関与は全く認められていなかったのであります。つまり、条約は、国民に全く知らされないまま、内閣、枢密院という手の届かないところでひそかに準備され、締結されるという、仕組みになっていたのであります。それがはたしてどういう結果をもたらしたでありましょうか。その苦い経験を、われわれは、例の日独伊三国軍事同盟の締結の際、いやというほど味わわされているのであります。時の総理大臣近衛は、枢密院でのあいさつで、「最悪の事態の発生をも覚悟する必要がある、わが国運の消長に関する未曽有の重大事件と申すべきである」と述べている。この同盟条約の交渉は、実はほとんどだれにも知らされないで、ひそかにドイツ公使スターマーと松岡外相との間で行なわれ、彼一流の押しの強さで押し切ってしまったのが真相であります。そうして結局、この同盟をきっかけに、わが国は一歩一歩太平洋戦争への道を歩むことになったのでありまして、日米開戦の報に、病床に横たわっておった松岡が、三国軍事同盟の締結は、ぼく一生の不覚だったと後悔したのは、あとの祭りで、日本国民は、もはやどうにも救いようのない死の道へ追い込まれてしまったのであります。  日韓諸条約の締結が日米韓三国の核拡散共同防衛につながる背景の上に立っているだけに、この条約は、その締結の結果は、国家の運命や国民の生活に絶対的な力を作用してくるだけに、国民の声も聞かず、十分な審議もしないままで、議長の強権によって無理じいに成立させる道をばく進していることがきわめて危険であることを、三国同盟の経験から、われわれは深く考えてみる必要があることを、強調せざるを得ません。近代民主主義憲法におきまして、条約の締結に議会の同意が必要とされているのは、むしろ市民階級の政治への参加により、国民国家の観念が形成されるに伴って、条約の締結は、国民自身の生活に大きく影響する国民自身の問題だ、とする意識が高まってきたことによるものだと理解をいたします。まぎれもなく、今日では、国民は主権者として条約の締結に参加しているのでありまして、国会の討議は主権者たる国民の意思を条約に反映させるものとして、きわめて重要な意義を持ちます。怒号と混乱をあえてして採決されたと称する条約が、はたして国民の意思を反映したものといえるかどうか。新憲法によって、条約の締結に国会の同意が必要だとする制度を与えられながら、重要な案件になればなるほど、強行採決で押し切ってしまうという、制度の実質を全く骨抜きにし、憲法を無視してまかり通る、たび重なる暴挙に、政府・与党が不感症になり、国会の最高責任者たる議長が、また政府・与党のかいらいとなり下がって、慢性化してしまうということの結果は、一体どうなるでありましょうか。私は心からおそれるものであります。しかも、衆議院においての審議はほとんど尽くされぬまま、異例の議長の暴挙に次ぐに、本院においても、ようやく、基本条約、四協定、一交換公文、三国内法案の実質審議にやっと入りかけた四日に――一週間以上の審議日程を余している四日に、特別委員会における非常に一方的な成立ということ、これを受けとめている議長の態度は、私は断じて認めるわけにはまいりません。ユネスコ憲章の前文に、「政府の政治的及び経済的取極のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。」と述べている意味を、議長は十分に掬すべきだと思うのであります。以上が提案者である稲葉議員に対する私の第一のお尋ねであります。  私は、三十数年にわたる農民解放運動の中から、昭和三十七年に国会に出てまいりました。いままさに、新憲法が事実上じゅうりんされ、議会制民主主義が政府・与党の多数ファシズムのもとに累卵の危機に直面し、痛憤おくあたわざるを、はだえに感ずるとともに、勇気をもってこの暴挙に対決せねばならないとの思い切なるものを覚えております。先月二十四日には、わが国の学者文化人等百九十五名からなる、両院議長に対する、「強行採決の慣行化を憂い、国民の名において国会に要望する」旨の、次のような内容の要望書が提出されております。この要望書を、簡単でありますから、ここで朗読をいたします。   日韓条約について私たちは重大な関心をいだいて見守ってきましたが、最近にいたり、政府・与党は国会での審議を十分につくさないまま、批准を強行しようとしています。これはまことに遺憾であります。審議がつくされたかどうかは、単に時間の長短の問題でなく、どこまで実質的に疑点が解明されたかの問題であります。日韓条約には、これまでの国会審議でも明らかにされていない基本的な疑問が残っています。第一は、米国と中国との対決を軸としてアジアの軍事的・政治的緊張がいよいよ強まっている今日、日本が韓国のみとの提携に踏みきることは、朝鮮での東西対立を固定化することにならないか。また日韓条約締結の後、政府は北朝鮮とも友好関係を深めてゆく見通しと用意とを果してもっているのか、という点であります。   第二に、たとえば韓国の管轄権のおよぶ範囲、李ラインの存続、竹島の帰属などについて、日本政府と韓国政府との間には解釈の重大な不一致があり、したがってまた、日本国民と韓国国民との間にも解釈のくい違いがあるのが現状です。このような状態のままで条約が批准されるならば、それはかえって日韓両国民の間の誤解と対立とを将来に残す危険が多分にあると憂慮されます。私たちは、とのような疑問が国会審議の過程で解消されることを期待していました。また、このような期待にこたえることこそ国会の任務であると信じていました。しかし、これまでのところ、政府の答弁によっては明確な解答が与えられていません。それにもかかわらず、政府・与党は、基本的な疑点を明らかにしないまま、衆議院日韓特別委員会と本会議と、再度にわたり、抜きうち的に採決を強行しました。政府・与党がこのような手段をとったのは、かくして議案を参議院に送りこめば、仮りに参議院の議決がなくとも、三十日の経過と共に成立するという、いわゆる自然成立を狙ったものであることは明らかです。この行為は、昭和三十五年に行われた新日米安全保障条約の強行採決を想起させます。かりにも問題が国の外交方針と国民の基本的利益にかかわるという場合、国民世論の最大限の一致をうるよう最善の努力をつくすのが政府の責任であって、国会はまさにその場所であるはずです。しかるに事態は、今日、全くそれと逆行して進行しています。もしも、このようにして、重大な案件について国会の多数をたのむ強行採決が慣行化されるならば、――また、すでに一部にその傾向が見えているように、そうした異常の事態に対して国民がこれを怪しまないようなことになれば、日本の民主主義議会政治も、ついには全くの形骸と化するでありましょう。国民の将来にとって、まことにゆゆしい問題であります。   以上のように、日韓条約の問題は、このままでは、外交方針としても、また議会政治のあり方の点でも、将来に多くの難点を残すものであり、批准の強行によってなに一つ問題は解決されません。したがって私たちは、政府・与党が今回強行採決を深く反省すると共に、今後国会が残された疑点を徹底的に究明し、且つこの強行採決が現在および将来にわたってもたらす好ましからざる諸結果を取りのぞくため、可能な限り、あらゆる努力を傾け、手段をつくし、もって国民に対する責任を果されんことを強く要望します。  以上が要望書の内容であります。  これは、ただいま申し上げましたように、有沢教授その他の百九十五名の学者文化人等の連名によって、わが重宗議長にも提出されたものであります。この良識ある要望をも無視して、強行採決一筋に暴走する重宗議長は、議会制民主主義の破壊者だと私は断ぜざるを得ないのでありますが、提案者の亀田議員から、具体的なこの点に関する御解明をお願いいたします。  第三は、およそ条約なるものは、国家と国家との間の合意、すなわち、意思の合致点を文章化したものにほかなりません。しかるに、一方が白といい、他方が黒というのは、これは完全なる意見の不一致であります。したがって、これは条約や協定という約束ごとではありません、事実は。しかしながら、日本国大韓民国との間には、それぞれ合意がないどころか、完全に、解釈の二重可能性をも認め合った上での行為がなされているということを、私は指摘せざるを得ない。しかしながら、一方、国民的レベルでその条約をどう判断するか、深く審議もしないで結ばれた条約は、国家と国家の間では、かたく密着しながら、国家と国民の間では、そのような国家間の癒着に対して対抗関係に立つという、奇形的な構造を持たざるを得ない実態であります。そのこと自体が、条約の政治的脆弱性を決定的に性格づけております。かかる方向づけを、議長の権力をもって、なお一そう決定的ならしめようとする、重宗議長に負わされた責任は、きわめて、想像を絶して、重大なるものがあると思うのであります。この国家間ではお互いに合意し合いながら、その国家を構成しているわれわれ国民は、全くそれには対抗的な関係にあるという、そういう相互矛盾の内容を、もっと具体的に、提案者の横川議員に解明をしていただきたいのであります。  お尋ねの第四点は、重宗議長は、去る五日の産経新聞に、「どうする国会運営」という記者の質問に答えて、いろいろ述べておられます。その中で、以下私が提案者にお尋ねをするのに必要な個所だけを抜粋をして、まず御紹介をいたします。  「四日の日韓特別委員会における強行採決をどう思うか。」、こういう新聞記者の質問に対して、重宗議長は、「電話で、報告を受けた。その範囲では、採決が有効に行なわれていると思う。すでに委員長からの可決報告書が出ており、六日には本会議を開く予定だ。こんどの日韓案件をめぐる動きについて、いろいろいう人がいるが、ものには連鎖作用というものがある。衆議院であれだけもんでおいて、参議院が、平静にスムーズに行くとは思えない。やはり、衆院と同じくそれ相応の波乱があるのは当然だ。現在まで、参院の審議は、かなりひきのばされている。ここまで審議をつくせば委員採決を不当だとはいえないのではないか。」、このように、その所信を表明いたしております。また、新聞記者の「いよいよ日韓案件は参院本会議にかかるわけだが、議長としての気持ちはどうか。」という質問に対して、次のように答えております。「わたくしは日韓案件にたいする野党側の言い分はじゅうぶんきくべきだという態度だった。しかし、ここまでくれば、自然成立をまたず会期内に一括可決承認すべきだと信じている。」、これが重宗議長の五日の日に発表された、これからの参議院に対する「産経」を通じての所信の表明であると、私は受け取るのであります。この議長の考え方は、去る四日の日韓特別委員会のあの自民党一党独断による理不尽な暴走を肯定したものとして、これは見のがすことのできない考え方であります。わが党はこの暴挙に対して、直ちに椿会長の談話を発表いたしております。その談話は、これは四日の談話であります。「わが党は、昨日、日韓諸案件の重要性にかんがみ、慎重審議を行ない、しかも条約等は自然成立を待たず、十二月十日討論採決に応ずる。国内三法案は残余の会期に審議すべき旨、自民党に申し入れた。これに対し佐藤総理・総裁は検討すると確約した。しかるにその直後、横川委員請求権に関する質問中にその発言を妨害するものあり、寺尾委員長はこれに同調し、理由なく退場してしまった。その後記者の質問に答え、一条約、四協定、一交換公文、国内三法案の質疑打ち切り、討論を省いて採決を終了したと発表したことは、もちろん認められない。かくのごときことは参議院の伝統を踏みにじり議会政治を否認する結果となるので、すみやかに質問の続行を強く要求するものである。」こういう意思表示をいたしておるのであります。
  21. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君、時間が超過しておりますから、簡単に願います。
  22. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君(続) また、この点について、公明党、共産党、民社党、第二院クラブも、それぞれこの四日の特別委員会の採決は不法行為であるということを、時を同じゅうして一斉に意思表示いたしていることは、自民党の諸君も、あらゆる報道を通じて、とくと御承知のはずである。こういうことに対して、それから一体どういう筋道がたどられてきているか。ただ議長は、与党の申し入れを一方的に確認し、議長職権によって本会議を開き、議長職権によって予定のスケジュールをわれわれに歩かせようとしているのが実態ではありませんか。もはや、参議院の良識もなければ、そこにわれわれは国民に誇る何ものも持っていない。この点を私たちは十分この際勘案する必要があると思うのであります。議会制民主主義の危機――今日ほどそれが断崖に立たされたことは、かつてなかったでありましょう。議会制民主主義を守るか、多数ファッショのもとにわれわれは声なき声を地下に埋没していくかの、二つの岐路に立たされている、いま最も重大な時期であります。しかし、私は議長にも一片の良識があることをまた指摘せざるを得ません。皆さん、去る四月二日に、スーパーマーケット法案が、理事会も持たず、ましてわれわれ社会党理事の何らの了解もなく、突如として自民党のみが単独で委員会を夕方再開し、かってに質疑打ち切り、討論を省略、採決して、議長にいわゆるスーパーマーケット法案の可決報告書を提出した一幕があったはずであります。その後、世論のきびしい反撃に、さすがの議長も良心の一片をここに行使をし、議長に提出されたこのスーパーマーケット法案を委員会に差し戻すという異例の措置をとったことは、皆さん御承知のとおりであります。これは、私があえて重宗議長の良心の一片として指摘する点であります。重宗議長といえども、完全な悪人ではない。この良心の一片に、ともしびをさらにあかあかと、ともして、この議会制民主主義の危機を救う、そういう大きな勇気を持って立ち向かっていただきたいと思うのでありますが、この点に関する御所見を、私は提案者久保議員にとくとお伺いをいたしたいのであります。
  23. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君、簡単に願います。
  24. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君(続) 提案者大和議員が触れましたように、三十九年の六月十九日、第四十六回国会において、暴力行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律案の法務委員会における採決の、有効、無効をめぐる紛争についての議長あっせんは、どういう結論を下しておりますか。それは紛糾の焦点というものは、討論省略の動議を可決し、直ちに採決された点にあるようでありますが、議長といたしましては、質疑打ち切りや討論省略などということは、全会一致の場合を除いては行なうべきではないとされております。この機会に、両党幹部の皆さん――これは自民党、社会党であります、両党幹部の皆さんにこの点を申し上げ、特に御配慮を要請する次第であります。質疑打ち切り、討論省略などという、国会運営上最も忌避すべき非民主的行為は、全会一致の場合を除いては断じてしないと、一年前に重宗議長がわれわれ社会党の代表者にもお約束をしたじゃないですか。しかるにこの際は何です。あの四日の暴挙は、あれは採決でもない、何でもない。仕組まれた芝居が、へたに演じられた。そういう楽屋裏までさらけ出して、世間のもの笑いになり、国会を侮辱される醜態をあえてしている。全会一致の経過がありますか。あるならば、私はその点を――提案者に、とくとその間の事情をもっと具体的に伺いたい。久保議員からもこの点に触れて、なお得心のいく御答弁をお願いいたしたいのであります。  私は最後に、代表提案者の大和議員に若干の問題点をお伺いいたします。それは、重宗議長が、この「産経」にも出ておりますように、審議はおおむね済んでいるというような表現がありますけれども、事実上、参議院の審議の経過を見ても明らかなように、実質審議はやっとその緒についただけであります。これは、毎日の審議の実態を知っておるお互い同僚の参議院議員は百も承知のことである。しかも、われわれは衆議院で論じ尽くされなかった点に焦点をしぼって、これからいよいよ具体的な質疑をしようとするそのやさきに、あの暴挙をあえてしたということであります。私は、社会党が提案した四十数項目――矢山議員がきのう、うしろにいる議長にせかされて、かわいそうに、あの重大な四十何項目をべらべらと、かんなくずに火をつけたように、それを読み捨てましたけれども、あの四十数項目の一項目、一項目こそは、国民が最も疑問とする点、明らかにしなければならない問題のみを羅列しているのであります。なお、あそこに取り上げられなかった問題で、なおかつ、私が日韓特別委員会の一委員として明らかにしたい問題も十二件あるのであります。あれは大所高所から、審議の時間等も考慮して、制約に制約を加えてまとめた四十数項目であります。日韓特別委員会の審議に、特に私は漁業問題のみにしぼって、あそこに二点を整理しただけでありますけれども、事実は、まだまだ十二項目の多きにわたって、あの要約した以外に問題点があるのであります。その点は、衆議院でただの一度も触れたことがない、参議院においても一度も触れたことがない。こういう現実を前にして、議長が、審議はおおむね尽くされたと言うことは、何たる現実認識の不足であることかということを、私は指摘せざるを得ないのであります。私は、その十二項目のうちの一項目をまず取り上げて、その問題に関連していろいろ派生する問題点を、大和議員から詳細に伺いたいのであります。  第一点は……
  25. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君、簡単に願います。
  26. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君(続) 協定の適用範囲が全朝鮮にわたっているばかりでなく、中華人民共和国の領海の一部にも及んでいるという問題点であります。わが政府は、この基本条約及び協定の適用範囲は韓国の部分に限られているのだ、北朝鮮の問題については全然触れていない、そう繰り返し主張しております。しかし、これがまっかな偽りであることは、漁業協定第一条及び第二条の規定によって明らかであります。協定第一条で、「それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国が漁業に関する水域として設定する権利を有することを相互に認める。」と規定しております。問題は、韓国の自国の範囲であります。これについて、韓国政府が三月二十日発表した韓日会談白書は、「大韓民国の領土は、憲法第三条に明示されているように、韓半島全域と付属島嶼である」と明記しており、また八月十日、韓国会で文徳周外務部次長は、「基本条約第三条は、日本が大韓民国政府と基本条約を結ぶことによって、大韓民国憲法が規定する領土の管轄権を承認するというものであり、この前提のもとに、この基本条約が結ばれたものである」と答弁しております。日韓漁業協定がこの基本条約の考え方を受け継いでいることは、これは当然でありましょう。さもなければ、条約の適用範囲という最も重要な問題について、このようにただ単純に、自国というようなあいまいの規定をすることをわが国が認めるはずはありません。当然、三十八度線以南とか、あるいは軍事境界線以南の現に管轄している地域とか、厳格に規定しておくべきものでありましょう。それをせずに、単に「自国」としたことは、韓国憲法の規定する領土を暗黙のうちに承認していたと言うほかはありません。現に日本側の作成した地図に、三十八度線以北の水域について、線こそ引いておりませんけれども、以北は低潮線より十二海里と記入していることによっても、北朝鮮の水域をも対象として考えていたことが察せられるのであります。
  27. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君、簡単に願います。
  28. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君(続) 日韓両国は完全に朝鮮民主主義人民共和国の存在を否認し去ったものと言わざるを得ない。  第二条の共同規制水域に関する規定を見れば、前項の点は一そう明らかとなります。すなわち第二条は「両締約国は、次の各線により囲まれる水域を共同規制水域として設定する。」と規定し、「北緯三十七度三十分以北の東経百二十四度の経線」、(b)として「次の各点を順次に結ぶ線」として、内訳は省略いたしますが、その(x)として、「北緯三十七度三十分と東経百三十一度十分との交点」、(xi)として「牛岩嶺高頂」と規定されております。(a)項の規定が単に「北緯三十七度三十分以北の東経百二十四度の経線」とのみしてあることは、当然百二十四度の経線が行きつく沿岸までと読むほかはありません。これは中華人民共和国の……
  29. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君、簡単に願います。時間が超過しております。
  30. 渡辺勘吉

    ○渡辺勘吉君(続) したがって、日韓両国はこの協定を結ぶことによって、中国領海をも日韓共同規制水域の中に取り込んだものと言え、朝鮮民主主義人民共和国ばかりでなく、中華人民共和国とも紛争の種をまいたものと断ぜざるを得ません。しかも、北緯三十九度十六分以北の水域は、日中漁業協定の……
  31. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君の発言を禁じます。発言をおやめください。    〔渡辺勘吉君「漁業協定附属書あるいは合意議事録など……(議場騒然)文書のどこにもない領海という字が使われている点から見て、この中国の領海……(議場騒然)意味を持たせるため、わざわざ領海という字を使ったものとも考えられるのであります。したがって、私は、この問題が何ら審議することなく……」と述ぶ〕
  32. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 渡辺君の降壇を命じます。    〔渡辺勘吉君「また、この問題に関して、佐藤総理が言うように、北方のオーソリティーということを言うておりますが、この北方のオーソリティーとは、一体いかなる抽象概念であり、具体的内容であるかということを、わが党議員に明快な回答を求めまして、私の質問を終わります。」と述ぶ。(「議長けしからぬぞ」「国民を代表して言っていることを、言論統制するとは何事だ、まるきりファッショじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手〕    〔稲葉誠一登壇拍手
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただいま渡辺議員から、条約を国会の承認にかからしめた日本国憲法の趣旨からいって、重宗議長のとった態度は、日本国憲法の規定なり、精神というものに合致をするかどうか、――非常に高い次元の論点から、この問題を論じられたのでありまして、私に対しましても、さような点から、より詳細に、憲法なり何なりから、重宗議長不信任の論拠をさらに明らかにすべしという御質問のようでございますので、以下数点にわたりまして、主として自由民主党の議員諸君によくわかるように、お話を進めてまいりたい、かように考える次第でございます。(拍手)  そもそも、日本国の憲法におきまして、条約の問題を取り上げておりまするのは、御案内のとおり、六十一条と七十三条でございます。第六十一条は、「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。」、前条第二項は、第六十条の第二項でございまして、予算のことでございます。六十条の一項は、「豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」、これは準用いたしておりません。その次の、「予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合」のこの規定、これが第六十条の第二項にございます。それから、七十三条は、内閣の行なう事務を列挙してあるのでございますが、第七十三条、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」、七号までございまして、その第三号に、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の承認を経ることを必要とする。」、これが憲法の二つの規定でございます。いまから考えてみますると、きわめてあたりまえのことを規定したように、皆さん方もお考えになると思います。しかし、明治憲法のもとにおきましては、渡辺議員も指摘されましたように、いわゆる大日本帝国憲法十三条において、天皇の大権事項とされております。帝国議会の関与を、したがって国民の関与を許さない、天皇大権の規定によって処理されておったのであります。それが、現行憲法ができますときに、御承知のとおり、日本国憲法は天皇主権をやめまして、天皇は国の元首であるという大日本帝国憲法の第四条、この規定をもちろん廃止をいたしまして、国民主権のもとにでき上がったわけであります。そういう関係からいたしまして、国民の代表でありまする国会に条約の承認をかからしめる――これが近代憲法のあり方であるが、こういうようなたてまえになってまいりました。したがいまして、条約は、政府の――内閣の専権事項ではもちろんなくて、国民の代表である国会が、十分その内容を審議する。そして国民に対して疑点を解明し、行くべきところを明らかにするというのが、憲法の趣旨であることは、御案内のとおりであります。もちろん、各国の憲法によりましては、その内容といいまするか、歴史的な事情もございまして、いろいろ違っております。アメリカでは、上院だけにこの権限が与えられていることは御案内のとおりでございまするが、いずれにいたしましても、近代国家の憲法の中において条約の承認を国会にかからしめた趣旨というものは、行政権というものではなくて、立法権のある、国権の最高機関である国会において、国民の代表が相つどい、十分慎重に審議をし、国会の権威を高からしめるというところに主眼点があることは、私から申し上げるまでもない。それが一つは、大きく国民の権利を伸長するゆえんであることは、申し上げるまでもないことでございます。したがいまして、近代国家において、三権分立の原則が確立されている以上、国会は行政権の下にあるものではないわけであります。内閣の下にあるものでもないわけでございまして、国会はみずからの意思において、この条約を十分に国民に納得いくように審議をしなければならないという重要な義務を、私どもは、国民に対して負っていると考える次第でございます。  そういう観点からながめてまいりまするというと、第一段階として、私は、条約という名前、あるいは協定、共同宣言、あるいは合意議事録、いろいろ名前はございまするけれども、条約が、国家と国家との間に法律的な権利義務の関係を生ぜしめるものである、こういうふうなことでございますれば――政府は、そのように答弁いたしておりまするが、はたして一条約、四協定、こういうようなものと、参考文書として提示をされましたものとの間に、はっきり線を引くような問題ではなくて、国会の権威を高める意味におきましても、参議院議長は、みずからの責任において、特別委員会の委員長なりなんなりを指揮し、あるいは指導をしながら、具体的に、政府が参考として提示提出をいたしたものの中にも、当然、国会の承認事項であるべきものがあるはずである。こういう観点のもとに、私は、その内容を十分審査をするべき筋合いのものである。そうして、提案者が、本来国会にかけるべきものを行政的に、合意議事録あるいは討議の記録、こういうような形で出しておって、国会を軽視をしているのでありますれば、その点に対しては、院を代表して十分たしなめて、国会の優位の原則を守らなければならない重要な仕事が、私は、院の議長に最初に課せられていると考えるのでございまするが、そういう点については、全くやった形跡がないのであります。ただ政府から提案されれば、それを、うのみにいたしまして、右から左へという形で回しているだけが、私は参議院議長の職責ではない、仕事ではないと考ええるのであります。こういう点から言って、きわめて不十分な点がございます。そういうような形が進んでまいりまして、委員会にかかりましてからも、その内容というものについて、政府のただ言いなりになるというだけではなく、与党である自由民主党の言いなりになるのではなくして、十分な審議がそこに行なわれたかどうかということは、単に一自民党の議長であるということを離れて、私は、参議院の議長として、院の権威を高からしめる上においても、また国民の信託をますます高める意味からいいましても、絶えず日韓の特別委員会の審議の内容に対して意を配って、そこでまだまだ未解明の問題があれば――そういうようなものが出てまいる可能性があれば、当然そのことを特別委員会の委員長なりあるいは理事なり――自分のほうの政党のことでありまするから、そういう人に注意をするなりして、慎重に審議を行わしめる方向に進まなければならないはずでありまするが、そういう点については全く意を注いだ形跡がないのを、私は非常に残念に思う次第であります。いま渡辺議員の発言にもございましたように、あるいはあとで他の方から答弁があるかと思っておりまするので、私は多くのことをここで申し上げないのでございまするが、私ども社会党が、なお未解明として出した四十四項目、あるいは、いま渡辺議員が指摘をされました十二項目、これらの問題は、いずれも、日本の外交なり政治なり経済なり、私どもの生活に大きく影響がある問題でございます。一、二の例を、私が気づいただけをあげましても、より基本的な問題といたしましては、国連総会決議百九十五号の(III)をあげておりまするけれども、なぜその百九十五号の(III)をあげたかという理由が必ずしもまだまだ十分解明されておりません。自由民主党の杉原議員がこの本会議で質問をいたしましたときに、あれは韓国の基本的性格をあげたものであるというふうに言いました。それは二月、三月、四月というように、各委員会において椎名外務大臣の行なった答弁は違っているのであります。外務大臣は、あれは条約の適用範囲であると最初答えておりながら、突然それを変えてまいりました。私の手元に外務省の出した「想定問答集」がございます。どこから私の手に入ったかは、ちょっとここで申し上げるわけにはいかないのでございまするが、それによりましても、その条約の適用範囲だという答弁は避けるようにしろと、こういうふうなことがはっきり書いてあります。なぜそういう答弁を避けなければならないのか、条約の適用範囲であるという行き方が間違いであるのか、間違いでないのか。間違いではないけれども妥当ではないというのか。妥当でないとすれば、いかなる理由によってこれが妥当でないのか、というふうな点は、この条約全体の請求権なり、法的地位なり、各般の問題に、非常に大きな影響を及ぼすものでありまして、これはただ、ことばが間違ったから訂正するというだけで解決がつく問題ではないのでございまするが、この点についてはなかなか答えないところがございまして、まだまだ解明が十分ではございません。いわんや、請求権の問題になってまいりまするというと、全然と言っていいくらい問題にされておらないのでございます。これは自由民主党の諸君も御案内だと思うのでございまするが、途中で打ち切られてしまいました。対日請求権の八項目の問題で、六項目のところへいきました。六項目というのは何かというと、一項目から五項目までの間は韓国の日本に対する請求権の実体的な問題でございます。六項目は、一項目から五項目のものは、日韓に協定ができましても韓国の日本人に対するものは消滅をしないというのが、六項目めの規定でございます。横川委員がこれを質問をしておりましたときにも、政府はこの問題に対して十分答えておりません。この答えておらないということが非常に大きな意味を持っております。韓国人の日本人の私人に対する請求権は今度の協定によって消滅をするものであるかどうか。これは、むしろ消滅をしないで、その後日本の国内立法が必要になってくるという問題が起きてまいりますが、そういう点について解明されておらない。また、日本には、北と南の朝鮮人――韓国人への未払い賃金その他で、いわゆる政令二十二号をもちまして約一億円近い金が供託をされております。一体、韓国の請求権が消滅をいたしたときに、朝鮮人の、日本の法務局に供託をしてある金が消滅をするのかしないのか、それに対してどういう措置をとるのかというのも、非常に大きな問題でございまするが、まだまだ問題として出てまいりません。たくさんの請求権の問題その他がございまするし、法的地位は、国籍の問題にちょっと触れただけで、その他の問題には全然触れてない。しかも、法務大臣は、答弁の中で、私の質問ではございませんが、曽祢さんの質問に対して、明らかに間違いをいたしているわけです。間違いをいたしておって気がつかないで、法務大臣は、いるわけです。私は局長のほうに注意をしておきましたけれども、そういうふうなたくさんの問題がまだございます。日本の憲法といわゆる朝鮮動乱との関係、国連軍との関係――国連はほんとうに未解明で、ほんとうに重要な問題でございます。なぜ重要かといえば、最高裁判所長官の横田喜三郎さんは、「国連の行動というのは、これは侵略行動を排除するものなんだ。だから、平和行動なんである。あらゆるものが国際警察行動なんだ。だから、これに関与をするということは憲法違反ではない」と言って、明らかに国連軍に対する兵力の提供は憲法違反ではないという論文を書いているのであります。たくさんそういうような問題があって、なお、小泉防衛庁長官は、はっきり、国会で、私の追及した中で、日本と韓国が共同防衛をするということはあり得るのだと言っています。日本が攻撃をされれば日韓共同防衛がされるのだということを言っているわけです。これは非常に重要な問題ですけれども、この点については、私どもの力が足りなかった点もございまするが、まだまだ十分未解明であります。  こういうようにたくさんの問題がある以上、それらを慎重に審議を進めるように、院の議長としては、委員会に対し指導し督励をするというのが、当然なすべきことであると考える。それは議長が、国会に対し、国民に対して負うべき非常に大きな責任であると、私は考えるのでございまするが、きわめて遺憾でございます。
  34. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 稲葉君、時間が超過いたしました。結論をお急ぎ願います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) 第三の問題でございます。私は、いま言ったように、段階を分けてお話をしてまいりました。あの採決というものについての疑点、問題点は、たくさんの方が表明をされました。私はほんとうにこれは遺憾に思うわけです。ほんとうに情けなく思っております。植木君が、「委員長」と叫んだのを私も聞いておりました。植木君は非常に人柄のいい人であります。温厚な紳士でありまして、自民党にはもったいない人かもしれぬのでありますが、それはまあ、よけいなこととしまして、ああいう温厚な紳士でございますから、「委員長」と言っただけで、あとのことを言っておらないわけです。また、寺尾委員長も、全然それに対して答えておりません。答えないことであって、それが審査報告書に載っかったり、それが採決されたという行き方は、いかなる理由をもっていたしましても私は許せないことであると思うのであります。(拍手)こういう点について、私は、もっと寺尾委員長なりあるいは院の議長である重宗さんが、率直に見解を表明されて、悪いところは悪かったのである、自分たちの点もこういう点は誤りであったということを、率直に認めていただきたかったと思います。率直に認めて非を改めることから――そういうようなところから出発をしていくこと自身が、議会というものの権威を守り、国民の信頼を得る一番大きなゆえんだと思うのでありまするが、そういう点について全く意を用いないで、特別委員会の議決の内容に対しての判断も事実の調べも全然やらないでおいて、それを、うのみにしてやっているということについては、私は重宗議長のとった態度はどんなことがあっても容認できないし、このこと自体をもってしても、重宗議長議長として不適任であると断ぜざるを得ない次第でございます。(拍手
  36. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 稲葉君、時間であります。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) 問題は単にそれだけではないのであります。この問題は、私はこういうことをここで申し上げるのは好みません。好みませんけれども、この決議録なり、文書をつくって報告書を出したということは、現実に議決が行なわれておらない、しかもその議決というものは、寺尾委員長が言ったように、質疑の打ち切りだけである、こう発表いたしております。われわれは、それもないと思いまするけれども、それを信ずれば、その後において討論発言も求めて、あらゆる案件が採決をされたという、こういう報告書は、明らかに私は文書の偽造であるというような意見が出てくるのも、またやむを得ないと考えるわけであります。私は、ここで刑法のお話をするのを好むものではございません。刑法の話などしたくはございませんけれども、あの問題は、刑法にいう、いわゆる公文書偽造でも、百五十六条の有形偽造ではないところの無形偽造、公務員がその権限によって虚偽の事項を文書に記したという、あの無形偽造の問題が起きてくる可能性、危険性があるということを、指摘いたしたくはございませんけれども、指摘せざるを得ないような問題が、そこにあるということを申し上げなければならないと考えるのでございます。  しかも、そういうような採決の問題について、それを、うのみにしてしまい、それを放置しておって、それを前提としながらその後の措置を進めようとしているところに、私は、重宗議長の何といってもかんばしくないといいまするか、納得のできないところがございます。それは自由民主党という政党出身の議長であるから、私も、政党政治である以上ある程度のことはやむを得ないとは思いまするけれども、そういうように、内容に虚偽の疑いが多分にある文書をそのままにして、内容も調べず、それを前提として職権をもって会議を開き、その条約、協定案件の承認を求むるがごときは、私は権威ある参議院議長のとるべき態度ではないということを、声を大にして申し上げざるを得ないのであります。(拍手)悲しいことでありまするし、遺憾なことでありまするけれども、私はそういうような意味において、渡辺議員の提案者の一人である私に対する質問にお答えをしなければなりません。  日本国の憲法が、その条約の承認を国会にかからしめた趣旨というものを全く冒涜をしている、全くそれを無視してやっているところの院の議長を持ったということは、単に社会党とかそういう政党だけの問題ではなく、全議員の大きな怒りであり、大きな悲しみであると考えざるを得ないのであります。(拍手)しかし、考えてみますると、私は、これは自由民主党という政党の持つ一つの性格のしからしめるところではないだろうか、こういうふうに考えるのでございます。
  38. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 稲葉君、時間であります。簡単に願います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) なぜかといいますると、憲法というものがありながら、憲法に課せられた義務というものを全く守ろうとしないというのは、あに重宗議長のみではないのであります。自由民主党の総裁佐藤榮作君自身が日本国憲法を守ろうとする意思を持っておらないことを、私は指摘しなければならないのでございます。
  40. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 稲葉君、時間が超過しております。簡単に……。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) そういうように考えてまいりますると……。私は、議長から再三、簡単にということでございまするので、もう最後のところにかかっております。最後のまとめにかかっているのでございまするから、もう少しどうぞお許しを願いたいと、こう思う次第でございます。自由民主党は憲法を尊重する意思はないわけです。なぜないかといえば、昭和三十年十月十五日の党の綱領-佐藤総理が言っているように、党の綱領で……
  42. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 稲葉君、稲葉君。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君(続) 憲法を改正するということを言っているわけです。憲法を改正しようとする政党、しかも、国会の中で憲法九条を守ろうということを明言しない、こういうようなことであっては、私は全くなっておらないと思います。憲法九条を守ろうとはしない、憲法九条の文面をそのまま守ることをしないと、こういうことを――憲法九条をはっきり守るということを明言をしないところの佐藤総裁を仰いでいる自由民主党としては、憲法でせっかく各般の権利や義務を与えましても、それを守ろうとしないのはむべなるかなと思うのでありまして、私はこの点を非常に残念に思う次第でございます。いずれにいたしましても、私はいま申し上げましたような趣旨によりまして――十分その要点をつかんでおらないと考えるかもしれませんけれども、私は、憲法の趣旨なり、それから段階的な議長のとった態度を中心に申し上げまして、渡辺議員にお答えを申し上げ、遺憾ながら重宗議長を不信任せざるを得ないということを申し上げた次第でございまして、私の答弁は不十分でございますけれども、これをもって終わらせていただきます。(拍手)    〔亀田得治登壇拍手
  44. 亀田得治

    亀田得治君 国会の慣例から申し上げまして、答弁をするほうには時間の制限がないわけでございまして、たとえば、総理大臣の答えに制約を加える、そういうことをしたのでは、審議を深めることにはならないのであります。もちろん、私は総理大臣ではございませんが、この議場におきまして質問をしたり、あるいは答弁をする立場に立つならば、総理大臣、国務大臣と少しも変わらないのであります。  私はそういう立場で、私が答えたいと思うことがちゃんと終われば、それが五分でありましても降壇をいたします。しかし、熱心な質問が私に対してわざわざなされているのに、それに対して不十分な答えをするということは、これは議員の職責を果たしたものとは言えないと思うのであります。そういう立場から、以下しばらく御清聴のほどをお願いしたいと思うのであります。  私に対する渡辺君の質問の要旨は、去る十一月二十四日に、衆議院議長参議院議長の両名へ出されました百九十五名からなる有名な学者文化人の皆さんの要望書、これと、現在私たちが提出しました議長不信任案との関連、こういう立場から質問がなされたわけであります。私は、まずこの要望書なるものがどのような方から出されたものであるか、この点をまず明らかにしたいと思います。百九十五名の方々が署名をされておるのでありますが、全部は申し上げません。この要望書の性格を明らかにする意味において、若干拾い読みをいたしたいと思います。たとえば、有沢広巳、井上清、石本泰雄、皆さん御存じの方ばかりでございます。大内力、岡本清一、戒能通孝、桑原武夫、新村猛、高野雄一、――せんだって、わざわざわれわれの特別委員会の公聴会にまでお出かけいただいた方であります。寺沢一、長洲一二、藤田敬三、大内兵衛、黒田了一――大阪の地方公聴会に出られた方であります。坂本義和、上代たの、住谷悦治、辻清明、名和統一、日高六郎、小野義彦、末川博、恒藤恭、中川善之助、大西芳雄、清宮四郎、佐伯千仭、(「一人一人肩書きをつけてくださらんとわからんです。」と呼ぶ者あり)佐藤功、――佐藤さんは成蹊大学の憲法講座を担任されておられる方であります。その立場は、いわゆる左、右、そういう言い方を許されるとするならば、全く中立的な立場で憲法学を専攻されておられる方であるということは、知る人は知っておられると思います。あるいは我妻栄、――日本の民法学の大家であり、特に重要な点は、わが日本国法務省の特別顧問をされておられる方であります。そういう方までがこの要望書に署名をされておられます。あるいは長谷部忠、――これはテレビ、国会討論会等でわれわれには非常に近い方であります。決して長谷部さんは片寄った人とはだれも見ておりません。そのほか、一々申し上げますとたいへんたくさんになるわけでありまするが、芸術関係の方々など、合計百九十五名の方々が、今回の日韓案件に対する強行採決を心配されまして、この要望書となってきたものであります。  そこで、先ほど渡辺議員より、一応の要望書の朗読がございましたが、この中で指摘しておりますることは、端的に言うならば、今日、日本の全国民の方々が心配しておることをそのまま言いあらわしたものと言わなければなりません。その点をより具体的に分析してみたいと思います。この要望書が第一に問題として指摘しているのは、「米国と中国との対決を軸としてアジアの軍事的・政治的緊張がいよいよ強まっている今日、日本が韓国のみとの提携に踏み切ることは、朝鮮での東西対立を固定化することにならないか、」、こういう疑問をまず出していることであります。委員会等において、もちろんこの点は一つの大きな論議の対象になりました。しかし、佐藤総理の答えは、絶えず、韓国がお隣であるから、まずここと手を結ぶにすぎないのだ、北のことには特に触れるわけではないのだと、こういう立場で答えてきておられまするが、しかし、国民の多数の方は、政府がかりにそういうことを口だけで言っておりましても、必ずや南北対立の中に日本が巻き込まれていく、この点を非常な心配を持って見ておるわけであります。これは単なる杞憂ではないのでありまして、これも委員会でよく問題になりました韓国の国会議事録等によりましても、韓国政府としては、この日韓条約を締結することによって、今後、日本が北朝鮮と外交関係を結んだり接触することを遮断するのだと、こういうはっきりとした態度を表明しているわけであります。日本政府は、それは韓国が言っているだけで、おれのほうがそういう姿勢にならなきゃ済むじゃないかと、こういうことばだけのやりとりに終わっているわけであります。一体、国民の心配が正しいのか、あるいは政府のいう、そのようなことばの上の説明が正しいのか。これを判断するには、朝鮮を取り巻くところの各種の客観的な情勢というものを、あるいは軍事的な面、あるいは経済的な面、各種の面を分析して深めなければ、どちらが正しいかということが出てこないのであります。今日までの審議の過程の中では、政府と政府の態度を批判する者との一応の立場というものが出された程度でありまして、さらに、それを深めて客観的にその裏づけをし合うというところまでは、いっておらないのであります。私は、国会というものは、これは基本的な問題でありますから、そういうことこそ、うんと掘り下げて論議をすべきだと思います。根本がはっきりしてくれば、あとは専門の外交官等にまかしていいわけであります。その点がはっきりしないままで、かってなことをやられるということは、先ほど稲葉議員からも御指摘のとおり、国民が外交をやる、民主的な外交という立場からするならば、全く誤りであります。委員会におきましては、特に、わが党としては、羽生委員その他の方が、この問題について追及をいたしました。当然これは、たとえば憲法上の問題、あるいは中国との関連の問題、こういうことが出てくるのがあたりまえであります。ところが、そういうものが出てまいりますると、佐藤総理の態度はどうだったでしょう。そういうことはこの日韓案件とは関係がないのではないでしょうか、こういうものごとの見方の浅い立場で、この委員会に臨んでこられたということは、はなはだ私は残念だと思うのであります。したがって、国民の皆さんが、そういう基本的な問題についての掘り下げが足りないと心配され、こういう要望書となってあらわれていることは、けだし当然であろうと考える次第であります。  次に、要望書が具体的に指摘いたしておりますることは、この条約締結後、北朝鮮と、どのような関係になっていくか。第一に、いま私が触れたことと直接つながる問題でありますが、いま私が指摘している点は、北朝鮮との直接の交流ですね、こういう点がどうなるであろうか。これはもう、きょう、あす、毎日現実に起きている問題であります。北朝鮮とも貿易が若干できております。しかし、その貿易額をさらに高めるためには、そのことのために必要な人が往来できること、これは当然なことでありますが、それが閉ざされております。この国会中でも問題になりました。たとえばIEC――国際電気標準会議、これに北朝鮮代表が出たいと言ってきた。日本の政府は許さなかった。この会議は、皆さん御存じのとおり、電気に関する技術的な規格を世界的に統一しよう、電気に関する各種メーカーがいろんな品物をつくってもいいが、肝心なところはみんなが寸法を合わしていかなきゃならぬ、たとえば、ソケットの寸法が会社によって違うのでは、消費者はたいへんな迷惑を受けるわけです。全くこれは技術的な専門家の集まりでございます。ところが、これに対して入国を許さない。この会議には、共産圏、自由主義圏、全世界の人が出ております。北朝鮮代表の入国をめぐりまして総会が開かれました。アメリカですら、日本の態度は、かたくな過ぎると言って、入国に賛成をこの会議でいたしました。私どもも当時、それはあまりにもかたくな過ぎるということで、外務大臣にも会う機会がありましたので、入れないという合理的な理由は何か――何もございません。一事が万事、具体的な問題によって判断することこそ、これは正しい。委員会におきましてもそのことを聞きましたが、具体的な理由の説明はございません。外務大臣と接触したとき、国会外のことを申し上げては、はなはだ恐縮でございますが、ただ一言いわれたのは、韓国政府が入れてくれるなと、やかましく言ってくるからいたし方がない、この一語でございます。私は、こういうケースに具体的にあらわれましたように、今後、日韓条約の締結というものがあり、韓国と日本との関係がそういう悪い意味で強化されていくということは、はなはだ残念であると思います。日本の皆さんは韓国とももちろん仲よくしていいでしょう。しかし、そのことが、北朝鮮の皆さんを疎外するものであっては困る、両方とも一緒にやってくれ、政治という立場を離れてこの点はみんなが熱望しているところだと思うのであります。これが、第二の要望書の中の具体的な心配点であります。  次に要望書が指摘しておりますのは、あまりにも、今回の日韓関係諸案件につきまして、日本政府と韓国政府との間の言い分が違い過ぎる。これは、すでにたびたび各マスコミなり、あるいは委員会等で、論議され尽くしているところでございます。私たちは、この点に関して委員会の中で審議をやりましたが、非常に遺憾に思っていることは、そういう点についての審議を国会として深めるために必要な韓国国会の議事録というものが、正式に国会に提出されなかったということであります。理由はいろんなことを言っております。しかし、そういうものが正式に資料として出されたのでは、今度は、政府としては、その資料について具体的にわれわれから質問を受けることをのがれることはできないわけであります。
  45. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 亀田君、亀田君、結論を急いでください。簡単に願います。
  46. 亀田得治

    亀田得治君(続) その点を政府がおそれて出さない。われわれは、何もことさらに、外国の国会の議事録を日本の国会でのぞいてみなければならぬということを、一々の条約について申しているのではありません。異例であります、これは。異例な事態ができているから、それを見なければならないというのであります。政府は、結局、正式な資料として追及されることをおそれて、いわゆる食い違い問題というものをごまかしてきているのが、今日までの審議の状態であります。これは、私は、ひきょうであり、国民に対して申しわけないと言わなきゃなりません。そこで、この要望書が指摘しているのは、これは単に日本国政府と韓国政府の食い違いを意味するのではなく、結局は、日本国民と韓国国民との間の食い違いとなって残るのであって、政治家同士だけの食い違いではないんだ、そこを忘れないようにしてくれという指摘をいたしているわけであります。私は、表では日韓親善のためだと盛んに政府は言いますが、もし、そういうことであれば、内輪を全部さらけ出して、食い違っているところは、こうこう、こういう理由だと、あるいは、この点は食い違うと言われるがそれほど違わないのだとか、そういうふうにやってこそ、私はほんとうに両国民の間のきずなというものができると思うのであります。  そういう意味で、要望書が指摘するとおり、今日までの特別委員会の審議の状況というものは、はなはだ不自然でございまして、特別委員会が次に指摘いたしている重大な問題は、いわゆる多数をたのんでの強行採決というものが慣行化されてきている、この点を指摘しております。これは一日韓関係案件という問題を離れて、日本の議会制民主主義の基本的な問題につながるものとして、心配をされているわけであります。先ほどから、同僚の諸君からも多々指摘がありましたように、たとえば昨年の六月、ちょうど私も直接担当しておりました法務委員会におきまして、暴力行為等処罰法の採決にあたりまして、突然採決が強行されて、討論を省略しました。それで紛糾しましたから、当時の議運の諸君がいろいろ骨を折りまして、現在の重宗議長があっせんをされて、渡辺君から御指摘のような結論というものが出されたわけであります。よく世の中には、そういうことがあっても、それは前の人がやったんだ。それは同じ機関として継続しているわけですから――前の人がやったことを全部否認するわけではないが、はだ合いの違いというくらいは認めてくれというふうな、微妙なことをおっしゃる方も多々あります。私は問題によってはそのような理解をしなければならない場合もあろうかと思います。ところが今回の場合は、同一の議長であるその議長が、わずか一年ちょっと前にやられたそのことが――今回もっとひどい形で再度行なわれているわけでありますが、これに対して、特別委員会に戻してくれというのが、自民党を除いての各派の一致した要求であります。昨年、そのように議長が法務委員会の問題を処理された立場から言いましても、この野党の要望を断わるという根拠は絶対ないとわれわれは考えるわけであります。私たちは最後まで、議長は必ずこの要望を受け入れるだろう、こういう期待を持っておりました。最後にそれが蹴られまして、したがって、私たちは現在非常に激高していることは当然であります。しかし、これは単にわれわれの激高に終わっては意味がありません。このことがどのような形で結末をつけられるかということは、今後における国会のあり方に大きな問題を残すわけであります。国会は勢力分野が絶えず変わるわけであります。自民党が、いつまでも多数ではございません。参議院の現在の数だけを考えましても、少し野党のほうにその席がずれれば、自民党だけで過半数を誇るという状態は、破れる寸前にあるわけでございます。そういうことを考えましても、自民党自身に、やはりもっと高い、深い立場から、このようなことを真剣に取り上げてもらいたいと思うのであります。
  47. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 亀田君、亀田君、簡単に願います。
  48. 亀田得治

    亀田得治君(続) はい。まあ以上のような次第でございまして、この要望書は、百九十五名の、ほんとうに日本の良識を代表されている方々によって出され、その要望書の初めには、「強行採決の慣行化を憂い、国民の名において国会に要望する」、「国民の名において」とある。一体、国民を代表している国会議員が、国民の名において要望されるということは、よほどこれは深刻にお互い考えてみなけりゃならぬのではないでしょうか。私はこういう立場から、いまからでもおそくない。議長には、ほんとうにこの問題を真剣に反省してもらいまして、特別委員会に戻してもらいたい。戻すが、そのかわり社会党は、こういうふうに順序を立ててくれるか、――そういう条件は出してよろしい。私たちは、採決もなく、討論もなく、こういう重大問題が一方的に通り過ぎることに、がまんがならぬわけであります。したがって、議長が本気で、その気になって、条件を出されるのであれば、われわれも、議会制民主主義を堅持する立場から、当然これは協力をしなければならぬものと考えております。まあ議長はここにおられませんが、副議長から、ほんとうにこの点をもう一度伝えてもらいたい。この十二月四日の問題が起こりましたときに、たびたび新聞等でもご指摘がありますが、私は、三時二分の強行採決前に――十四、五分前に、ある人から、どうも自民党が約束を破って変な動きがあるようだ、ということを、責任ある人から聞きました。そんなことないだろう、どうしても自民党の立場で強行するにしても、質疑の打ち切りだと、不信任案は受けて立ちましょう、討論もやってくださいと、その一時間前まで自民党の理事の諸君から聞かされておりました。しかし、事はあまりにも重大だから、直接確かめたいと思いまして、二時五十分に委員長の席のところに行きまして、こういう、うわさがありますが、どうなんでしょうかと言いましたら、寺尾委員長は、とんでもない、そんなことは考えていませんと言われました。私は、それをそのときは真に受けました。真剣な顔で言われたから、真に受けました。ところが、その直後、違ったことが新聞社に言われたことを聞きまして、最初は非常に激高いたしました。だましたというふうに激高いたしました。ところが、さらに諸般の状況をずっと検討してみますると、委員長自身は質疑打ち切りのつもりであったのであって、私なり藤田理事をだましたのではないということが、逆にまた、はっきりしてまいりました。そこで私は、この委員長の考え方に圧力を加えた自民党の執行部、これは捨てておけないと考えております。(拍手)今日まで国会において重要問題で紛糾したことがたびたびありました。そうして採決が不明確だとか、いろいろなことがございました。しかし、そういう場合は多々ありましたが、それはどの程度はっきりしないのかどうかという問題であったのです。ところが、今回は、みなが指摘しているように、国会内部にあるところの委員長の言ったことを国会外の機関が曲げたと、こういう問題であります。私は、こういう意味で、このことは衆参を通じて初めて起きた現象でなかろうかと思うのでありまして、断じてわれわれとしてはあとに下がるわけにはいかないのであります。  最後に、もう一度要望いたしますが、すみやかに、議長はこの事態をほんとうに考えてほしい。録音の証拠もあるのです。どんなに強弁されようとも、録音の証拠を消すことはできません。そういうものも集めて、議長は事実の上に立って特別委員会に返してもらいたい。もしそれがどうしてもできないというのであれば、どうか自民党の皆さんにもよくお考えいただきまして、このわれわれが提出した議長不信任案に心から賛同してもらいたいことを要望しまして、私の答弁にかえます。(拍手)    〔横川正市君登壇拍手
  49. 横川正市

    横川正市君 渡辺君の私に対する質問の内容は三項にわたっておりますが、その一つ一つを、これは重複をしないようにお答えをいたしたいと思います。  まず第一は、総理と私どもとの間で質疑応答をいたしました中で、総理が遺憾の意を表明された点は、今日、民間協定でなお漁業関係のあと始末をしなければならないという問題や、あるいは竹島の紛争がどういうかっこうで解決するか、いまのところ全く見込みの立たないまま、これらの条約協定が結ばれたという点この点が、遺憾の意を表された点であります。  第二の、日本と韓国とのそれぞれの国会の議事録における相違点としてあげられました点は、  第一は、資料が国会に提出された責任あるものではありませんけれども――日本の国会の説明では、これらの条約等は純然たる経済協力でありまして、その他のたとえば軍事同盟的な内容をこれは全然含んでおらない。これが日本の議会での答弁でありますけれども、韓国における答弁の記録を読みますと、そうではなくて、中国の封じ込め政策のために、韓国の軍事力と日本の経済力とアメリカの国際政治力を結集して、地域的な勢力結成を意図しているということを、国会で答弁をいたしております。これが第一の食い違いであります。  第二の食い違いは、請求権の存在の問題をめぐりまして、日本では請求権のやりとりが六次まで行なわれたけれども、その証拠とするものや法的な根拠を立証するものがなかったので両者がこれを放棄をした、と言われておりますけれども、事実は、韓国の国会で、請求権の立証段階で、なるほどこれらのものが立証できない、あるいは確認、算定方式、立証等の問題でいろいろ食い違ったけれども、そういう問題の論議をする積み重ねの中から、無償三億ドル、長期借款二億ドル、さらにまた民間供与三億ドルというふうに、最終的に結論がついたので、請求権の問題とこれらとは関係があると国会で答弁をいたしておりますけれども、この点の食い違いが第二の問題であります。  第三の問題は、全体的な議事録の中に明確でありますのは、竹島の問題をめぐりまして、日本は紛争機関でこれを解決する目安がついたので、これをいつまでも持っておっては条約締結に支障を来たすということから、明るい見通しの上で竹島の問題を紛争処理事項に移したと答弁をいたしておりますけれども、この点について韓国の国会の議事録を数点にわたって調べてみますと、韓国では、たとえば、こういういわゆる状況説明をいたしながら、日本が竹島を放棄をいたしたという証明を国会で行なっております。佐藤首相が言うには、独島、すなわち、竹島問題、日本ではこれを竹島の問題として非常に重要視されており、参議院の選挙の演説で、今度これが解決をするということを言っておるのだから、もしこれが解決しないということになると私の顔が立たないので、ぜひ顔を立ててくれ、こういう状況説明をいたしまして、佐藤総理から懇請をされたが、私は、もし竹島の問題が解決しないのならば、ふろしきに書類を包んで帰るということを言って、ついに佐藤総理が竹島問題について放棄をしたと、状況説明が行なわれております。この点が食い違いの第三点であります。  第四点目は、李ラインをめぐっての問題でありますけれども、李ラインの問題は、なるほど、日本と韓国との間ではこれは事実上なくなったという説明をいたしておりますけれども、他の第三国については、あくまでもこれは存続をする、しかも、これは協約、協定の切れる後にこのことについての保障をつけておらない、こういう点が中心になりまして説明をいたしておるわけであります。しかも、最後に、「目的をもつ平和線は、現在、事実上また国内法的に認定を受けた内容によって健在であります。」というふうに、韓国の国会で答弁をされているわけであります。この相違点が今後どういうふうになるのかについて、実は私どもは国会の場で明らかにしたいと考えましたけれども、非常に総理大臣の答弁に微妙な点を私どもは発見をいたしたわけであります。どういう点かといいますと、総理大臣は、何か「かゆいところをほんとうにかいて満足するような答弁ができなかったのは非常に遺憾であるが、これをそのままに言いますと、せっかくの条約が何か相手側から一方的に破棄をされるような危険を感ずるので、日本の国会では、不十分な説明であったが了承してくれ」と言わんばかりの内容が速記録の中に載せられております。私は、これは、日韓交渉では常に相手側が爆弾をかかえておりまして、何らかの形で日本が筋を通そうとすると、相手側はその爆弾をちらつかせながら、実は韓国の要求を次から次へと通していってしまった、こういう印象が、この問題の中に明確に出ているのではないだろうか、こういうふうに考えるわけであります。私は、質疑が全く中途で打ち切られてしまいましたので、この問題について触れる機会もありませんでしたし、あわせて、私の質問の重点というのは、実は衆議院の段階でも、また参議院の他の同僚議員の質問の中にも、全然触れられておりませんでした経済協力の実態の問題、その中で、私は、韓国の政情というような今日の問題をイデオロギー的にとらえるのではなくて、純経済的にとらえてみて、日本がいま経済的に協力しようとする有償二億、民間供与三億ドル以上の返済についての問題等、これに私は十分触れてみたいと思ったのであります。なぜならば、国民の税金をこれに充てるわけでありまして、協定の中の一部分にありますように、返還が不能な場合には、これは償還期限が延びることがあるというような、いわゆるだれもが気のつかないような一行で国民の血税を使われることについて、私は心配を持ったからであります。その点で、たとえば韓国の経済事情というものを、それぞれの報道機関や書籍等によって見ますと、皆さんもこれは十分御案内のことと思いますけれども、アメリカからの経済援助の四十億ドル、地域にいたしまして日本の九州に匹敵するような地域、人口においてもこれらと全く同等と思われるような地域に一兆数千億の金が投入されて、そうして、今日見る韓国の経済事情というものは、われわれとしては考え得られない貧困のどん底にあるわけであります。たとえば、日本の経済の復興は、軍備の問題についてきわめて慎重にこれを今日まで打ち立ててきたために経済基盤が強化されたと、池田総理が国会の答弁で申しておりますけれども、今日、韓国の現状をそのままに置いておいて、一体、四十億を水泡に帰した韓国経済が、八億ドルの日本の有償・無償・民間供与で、経済的に立ち直るかどうかについては、私は非常に心配を持ったわけであります。たとえば、外資の導入については私どもも警戒をいたしますが、私どもが国民の税金を投入する場合に、それが利子がつかないまでも、返ってくるという保証がない、そういう金を出すということは、これは非常に私どもとしては賛成のできない点であります。ひもをつける、つけないという問題では、私はないと思います。そういう点から、これを明らかにいたしたいと思いました。しかし、それを明らかにすることができないまま、この本会議での審議というふうに移ったわけでありまして、私どもは、この点についてきわめて遺憾に思っているところであります。  さらに私は、参議院の良識が、もし今日のように、それぞれ提案者の自由民主党の皆さんと、社会党と、あるいは野党である各派の皆さんとの間に、全く妥協する余地を失った現状でも、やるべき仕事はあると思うのであります。それは何かといいますと、公共あるいは国営等の企業の中から政治資金というようなものを受け取ってはならぬというのは、これは一般に政治姿勢の問題で論じられております。私は、国民の血税を使って、しかも日本の国内にはいろいろな問題を持っておって、なおかつ韓国との間にこの関係を結ぼうとする、こういう状態から考えてみますと、これらのものを取り扱う、生産品とかあるいは加工品等々の取り扱いの商社あるいは会社等からは、政治資金を絶対に受け取らないというような政治姿勢は、これは私はとれるのではないだろうか、こういうふうに考えております。さらにまた、私は、もう一点つけ加えるならば、あなたのほうの青木会長さんも、私のほうの椿会長さんも、この点については話し合って、私は法律あるいは協定等の問題に発展させることも可能だろうと思うのであります。そういうふうに居ずまいをきれいにしてこそ、初めて自由民主党の言われることについての一部が通る点も出てくるでありましょう。こんな点は、私は、政治の姿勢として当然とるべきではないか、かように思います。  もう一つ、だれしもが、ことばにいたしますけれども、皆さん御案内のように、実質の勢力は、参議院の百二十五の過半数にわずか十四しか多くないわけであります。十四かわったときに国会の審議がどうなるか、これが私は国会を民主的に運営する基本でなければならぬと思うのです。数が多い少ないという現状において、多数で、ものごとをきめられるということは、決していい結果をもたらさないと考えるわけでありまして、議会運営についても、この点が私は今日きわめて重要な問題でないかと考えます。十四年間苦労されたという条約に、提出された瞬間から対決の場が生まれるというようなことは、好ましいことでないことは、だれしもが考えているのであります。外国との苦労を重ねるならば、なぜ、韓国との条約を結ぶのに、国内の世論が一致するように十四年間努力しなかったのか、これが惜しまれてならない点であります。  こういう点を考え合わせながら、この条約が、今日、非常に内容としてわれわれは納得しないまま、しかも議長の職権で行なわれたことに対して、きわめて遺憾だと考えておりますので、その点を申し添えまして、渡辺さんの質問に答えたいと思います。(拍手)    〔久保等登壇拍手
  50. 久保等

    久保等君 私は、重宗議長に対する不信任案の上程がなされましたことにつきまして、まことに残念に存じております。特に、議長は、申し上げるまでもなく、国会の最高責任者として、外に向かっては院を代表し、内におきましては議事を整理するとか、あるいはまた院内における秩序を保持するとか、あるいはさらにまた議院の事務を監督するとか、きわめて院内外におきまするその責任たるや重大でありますと同時に、憲法の規定にもございまするように、戦後における日本のいわば国権の最高機関でありますこの院の最高責任者が、本会議において不信任案が上程をせられる、まことに私ども野党といえども、そのことを悲しまざるを得ないのであります。私は、そういう立場から、しかもまた、国会運営にあたりまして党を代表する国会対策委員長という立場からも、私的にいろいろ、重宗議長のお人柄、あるいは手腕識見等につきましても、私もよく承知をいたしております。従来の自民党の中におきまして、重宗議長は、すでに自民党の会長もおやりになり、あるいはまた参議院の副議長も長くおやりになる、あるいはまた現在は議長としての重責に就いておられるわけでありまするが、参議院の要覧にも書かれておりまするように、戦前は民間の企業にもっぱら携わっておられ、戦後におきましては、勅選議員として、あるいはまた、ただいま申し上げましたように、戦後の民主議会における重要なポストを経験してこられた方であります。いわば、民間育ちの、野人育ちの方でありまするだけに、官僚の方々に見られない野人的な、そしてまた、きわめて反骨的な面を持っておられることに対しまして、私どもも実は内心大きな期待を寄せてまいっているものであります。そういう立場から考えてみまするときに、先ほど来問題になっておりまするように、十二月四日の日韓条約等特別委員会における、あの、それこそ前代未聞の不法なやり方、というよりも、事実ないものを、委員会において質疑の打ち切りをやったとか、あるいはまた討論採決等も済ましてしまったとか言っておりまする、全く事実に反した見解のもとに、さらに本会議を開会して強行成立をはかろうといたしておりますことにつきましては、まことにわれわれ、そのものが心から不審にたえないところであります。しかし、ただいま申し上げましたように、議長というきわめて崇高な、しかも重要な責任にあられる重宗議長に対して、私的にはまことに残念に存じまするが、しかし、事のあまりにも重大な、今回の日韓条約をめぐる特別委員会におけるあの運び方、これをしかも無批判的に取り入れて、さらに本会議における強行可決をはかろうとすることに対しましては、私情をこえて重宗議長に対する重大なる反省を求めざるを得ないのであります。まことに私どもはそのことを悲しむものであります。御質問になられました渡辺議員も、またそういう心情のもとに立って、なおかつ、今日置かれておりまする日本の議会制民主主義の危機をどうして立て直すか、そのことについていかに具体的な措置をとってまいるかということについての、切々たる愛情の中に立って、御質問がなされたと思うのでありますが、特に今日、議会制民主主義そのものが重大なる危機に直面しているという問題は、私がいまさらちょうちょうするまでもなく、今回の日韓特別委員会におけるあの問題は、単に参議院あるいは衆議院といったような問題ではなくて、衆参両院を通ずる、あの一貫した今日までの自民党諸君のとってまいっておりまする態度、また佐藤内閣のとってまいっておりまする態度に対して、心から私どもは、国民とともに、議会制民主主義を守る立場から憂慮にたえないところであります。  さらにまた、先ほど御指摘がございましたが、しかし、重宗議長も、つい最近、本年の四月のことになりまするが、例の食料品総合小売市場管理会法案、この法案等をめぐっての扱い方においては、やはり議長という立場から、冷静に御判断になられて、一片の良心を示されたではないかという御指摘がございました。なるほど、あの食料品総合小売市場管理会法案なるものは、すでに昨年の二月以来長きにわたって、衆議院においてもいろいろと議論を深めて衆議院を通過し、その後、参議院に送付せられてまいりましたが、参議院におきましても、四十六国会、さらには四十七国会を経て、さらに本年の四十八通常国会において、三たび継続審議という形で論議が深められてまいったのであります。ところが、本年の四月二日の日におきまして、参議院の農林水産委員会におきまして、残念ながら、自民党諸君の単独採決ということで強行可決をなされたのでありますが、しかし、このことに対する扱い方につきまして、その後いろいろと事態の内容を究明する中から、議長は、この法案に対しての扱い方といたしまして、再び農林水産委員会に差し戻すという英断をとられたのであります。その後において、農水委員会におきましては、十分に論議を尽くした上、もちろん社会党その他野党の多数は反対でございましたが、しかし、議論を尽くした以上、当然この法案の可決をはかるべきであるという大局的立場に立って、この法案の修正可決が五月の十一日になされておるのであります。しかも、それに先立って、もちろん委員会の扱い方といたしましては、すでにあの可決報告書が出されておりますることにつきまして、当然その報告書の撤回動議を出し、全会一致をもって、再びこの農林水産委員会でこの問題を取り上げて審議をするという態度を決定をいたしておったのであります。こういう扱い方というものは、おそらく戦後におきましても、衆議院において占領下にあるいは一件ぐらいあったかもしれませんが、少なくとも、占領下にあらざる国会におきましては、衆参両院を通じて、いまだかつてなかったところであります。しかも、この英断をとられた当時の議長の心境に対しましては、私どもも心から敬意を表するものであります。  さらにまた、これはやはり昨年の六月のことになりまするが、先ほどもちょっと触れられておりまするけれども、「暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正法案」、この扱い方につきましても、委員会においていろいろと紛糾を来たし、その収拾の問題について、議長がみずからあっせんに当たられて御努力をせられた結果、この法案につきましても、再び委員会において審議をする、こういう手続がとられておるのであります。すなわち、ただいま申し上げましたように、食料品総合小売市場管理会法案、あるいは暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正法案におきましては、すでに参議院において、昨年と今年と二回にわたって、委員会で可決成立を見た法案を再び委員会に差し戻すという措置をとって審議を行なったことがあるのであります。私どもは、したがって、こうした先例、いわばよき慣行とも言うべきものは、自民党が多数を擁するといえども、ぜひ十分なる寛容の気持ちを発揮せられて、この一つの芽を大きく育ててまいる、私はそこに民主主義の前進があり得るだろうと思うのであります。  特に、今回の日韓条約等の問題は、事はきわめて重大な問題であります。重大であればあるほど、この扱い方について慎重なる審議がなされることは当然であります。また、与野党間の意見が非常に強く対立をすればするほど、国民に十分に納得をしてもらう、国民が十分に理解をし、これに対する判断がつく審議がなされなければならないと存じます。ところが、御承知のように、新聞その他の世論調査等によれば、はたして国民の大多数が、この日韓条約問題に対して、十分なる関心と、そうして十分なる判断力を持ち得る段階にあるかどうか。御存じのように、残念ながら、過半数以上の方々が十分にわからない、こういう情勢の中にあるのであります。しかも、いわば、そういう国民不在の中で、日韓条約批准の問題について一日も早い成立をはかろうとする議長の考え方は、まことに私どもは遺憾と言うほかないのであります。  先ほども御指摘がございましたが、あの四日の日の問題の起こりましたその日であろうと思いまするが、産経新聞では、五日の日の記事が、先ほども述べられておりますように、議長のあの扱い方に対する態度をよくあらわしていると思うのであります。すなわち、今後の国会運営ということについて「産経」の記者の質問したことに対して、議長が何と答えているか。私は、議長の心境がきわめて端的に表明せられていると存じます。「衆議院であれだけもんでおいて、参議院が、平静に行くとは思えない。やはり、衆院と同じくそれ相応の波乱があるのは当然だ。」と、こういったことを、少なくとも参議院の最高責任者である議長が言明をいたしまするということは、まことに不謹慎きわまりないものと言わなければなりません。最後まで希望を捨てず、議長としては最終最後まで意見の調整をはかり、十分に審議を尽くすことが、議長の最高の任務であろうと私は思うのであります。それにもかかわらず、それこそ、きめたスケジュールによって、一日も早い可決をのみ考え、国民のこの条約関係に対する理解を深めようとする努力は一片だに見られない、ただいまの態度というものに対しては、まことに心から憤りをすら感ぜざるを得ないのであります。しかも、このことにつきましては、もう先ほど来、誓われておりまするように、私は、議長が一片の誠意を持ってあの十二月四日の事態についての認否をせられるとか、あるいはその内容等について検討せられるという努力が見られないことに、その誠意の一片をすら見出し得ないのであります。先ほど来いろいろお話がございまするように、委員会における状況は、私も直接あの場に居合わしておりまするから、よく承知をいたしております。単に植木君から「委員長」という一言が発せられたのみです。騒然としていたから聞き取れなかったとかなんとかということでなくて、動議を出した植木君は、「委員長」ということば以上一言も発しておらないのであります。また寺尾委員長みずからも、これに対して何らの受け答えがなされておらないのであります。しかも、あの状況のもとにおいて、委員長委員会の部屋から外に出られたその直後における発言等も、すでにこれまた、いろいろと新聞その他を通じて報道せられておりまするように、まことにこれまた、衆参両院を通じて、かつて見ない私は醜態であったと思うのであります。したがって、そうした醜態を――人間でありまするから、私は絶対、あやまちを犯したことそのものが、けしからぬとは申しません。しかし、そういったあやまちを犯したことに対する最善の善後措置をとるべきでありますし、特にこの善後措置をとり得る権威と力を持っておりまするのは、何といっても重宗議長であります。その場に居合わせなかったといたしまするならばなおさらのこと、その事態を十分に究明をする、そういう立場に立って事態の収拾をはかるべきでありまするが、ただいまも申し上げましたように、残念ながら、あの委員会直後において、産経の新聞記者の方々に、ただいま申しましたように、あたかも衆議院において、特別委員長なり、あるいはまた衆議院の議長が考えるであろうと思われるような考え方そのままのことを、参議院の議長が表明をいたしておりまするに至っては、まことに、あ然とせざるを得ないのであります。  私は、時間がございませんから、きわめて簡単に結論を申し上げます。  そこで、今後の問題としてどうすべきか、私は少なくとも、長い間、私ども社会党の強く主張し、ぜひ何とか国会の権威を高める立場から、日本の民主議会の権威を高めるために主張してまいっておりまする、やはり議長並びに副議長の党籍離脱という問題の実現をいたしますることが、もちろんすべての解決の問題であるとは思いませんけれども、きわめて端的な、しかも簡単にやり得る一つの有効な方法として、このことをぜひ実現をいたさなければならないと思っているのであります。(拍手)  まあ、このことにつきましては、すでに本年の七月、参議院選挙がありました直後の四十九国会におきまして、特に自民党を除いた各会派一致いたしまして、すでに社会党の佐多議員が提案趣旨の説明等もこの議場を通じて行ない、そうして、これに対して公明党の白木君の賛成演説等もなされた問題でございますが、いずれにいたしましても、この問題についての一つの結論を見出しますことが、今日のような、それこそ与野党激突の場面が、衆議院においても参議院においても繰り返されるという状態を救う、一つの具体的な有力な方法であろうと思うのであります。私は、そういう立場から、今後の事態収拾につきまして、ぜひ多数を擁する自民党の諸君の心からなる善意と良識を、ぜひお願いを申し上げたいと思うのであります。  なおまた、いろいろ、この党籍離脱の問題等については、詳細に御説明を申し上げ、お答えも申し上げたいのでありまするが、時間もございませんから、その点を省略をさしていただきまして、後ほどまた機会でもございますれば、十分にお答えを申し上げたいと存じますが、ぜひひとつ、私がただいま申し上げました最後の結論につきましては、自由民主党諸君の心からなる反省の上に立った今後の御努力を要請をし、お答えにかえたいと存じます。(拍手)    〔大和与一登壇拍手
  51. 大和与一

    大和与一君 渡辺議員の私に対する質問の焦点は、朝鮮半島に三十八度線よりも北に一つのオーソリティーがあるのじゃないか、それは一体、話だけなのか、まぼろしなのか、現実なのか、現実にあるなら一体それは何だ、こういうお尋ねであるのであります。一九六〇年に私は行ってまいりました。約一カ月、ほとんど全国すみずみまで行ってまいりました。ですから、厳然としてあるのであります。あるならば、たとえば海や空のほうの接触ではどうなっているのだ、こういうお尋ねも含まれるのですが、これは私の専門ではありません。大和私見によれば、オランダのへーグの国際司法裁判所の歴史的判決で、公海自由の原則は三海里であります。その後、現実的に、大陸だなの問題、あるいはまた十二海里説が若干事実として部分的にあらわれているのであります。しかし、三十八度を境にした陸上では、私も板門店に行ってきたから見てまいりました。ちょうど三十八度線の両側に杭がある。三十八度線がそこを通っている。ですから、陸の上の境界は、必ずしも三十八度線に絶対に沿っていません。やはり力関係で、でこぼこがありますが、終戦当時の形のまま陸は対峙をしている。そうすると、海のほうは、あるいは空のほうは、韓国がかってに、海と空とは壁がないから、これはおれのものだ、こんなことを言っても、これは寝言であって、やっぱりこれはその三十八度線のところの対峙線を越えることはできないであろう、この程度にしか大和私見では言えないのであります。しかし、厳然としてあるんだったら、もうちょっと説明を加えていいんじゃないか。ゆっくり話して、一ぱい飲みながらやれば、あすの朝までかかるけれども――それはやめますが、しかし、もう少し申しましょう。  大体これは、なかなか簡単に行けないのであります。直接に交易がないから、行くのは、一つには、横浜から船でナホトカに出る、そうしてソビエトのお世話になって鉄道で北朝鮮、人民共和国の中に入る。しかし、これはきわめて異例の措置である。一般的には、羽田から香港へ行って、香港から深セン、そうして中国に渡って、広東から北京、昔の奉天、いまの瀋陽、そこを通って、安東、新義州、そうして「ピョンヤン」というか、平壌という都に着くわけであります。大体、朝鮮半島と日本との歴史は、これはまあ古いんだから、昔から日本人はそう偉いと思わないでいいんで、同じようなものです。私は中学時代に、竹越与三郎という人の「二千五百年史」という本を読んだことがある。そうしたら、日本の皇室が皇統連綿と言っておるけれども、「五百年間出」と書いてある。空間があるという意味です。神功皇后が船で朝鮮に行って、百済の、扶餘という都がありますが、そこへ行って、彼氏ができて帰れない、五百年も帰れなかった、こういうことが書いてあって、当時相当問題になったおもしろい本を読んだことがありました。それ以来、あるいは千二百十二年日本に仏教の伝来があったり、東京のすぐ郊外の吉見の百穴とか、あの辺には高麗からたくさんの織り姫とか、芸術家がたくさん来て、いまに至るまで交流はずっと続いておったのであります。  で、今度その人民共和国に行きましたのですが、私は、やはり産業経済的に日本として大事なことは言っておく必要があると思う。どれぐらいの力があるかというと、私は南北両方とも知っているのだが、南は、資源は取るに足るものは何もないのであります。しかし、人民共和国には、たとえば中国との境には、鉄の帯地帯と言われて無尽蔵の鉄が出ます茂山という町があります。掘っても掘っても幾らでもとれる。そして、价川というところに、最近もう一つ鉄の鉱山ができましたが、これは鉄をまた削る良質の鉄が出る。あるいは今度、電力は鴨緑江のちょうど川岸には水豊というところがある。そこに大きな水力発電所がありますが、タービンの一つの大きさは、丸ビルの大きさと同じです。それが十二ある。そういう発電所もある。あるいはまた、日本海側に興南という町がありますが、そこでは空中から窒素をとっている。これも、五万人ぐらいの労働者が戦争前もおったが。いまも二、三万はおります。あるいは、製鉄所は清津という町、城津という町、あるいは、黄海側の兼二浦という町など、工場がたくさんあるわけであります。もう一つは、決してべたぼめではなくて、私の感じたままを言うわけですが、いままで人民共和国のほうは米がとれなかった。南の米に依存して、米と労働力は南、そして、マイニング、資源は北と、こういうふうになっておったのでありますが、最近行ってみますと、非常にたくさんの水路を使って、米も自給自足できるようになっておるのであります。あるいは、金も大楡洞、雲山でとれる。銅もたくさんとれる。こういうふうに、日本の国でとれない鉄あるいは金、銀、銅、こういうものが、すぐ目の前にあるのです。なるほど、海南島にもある。インドにもある。ボルネオにもある。あるいは、揚子江の大冶にもあるけれども、それよりも一番近いところに幾らでもあるのだから、そこと交易をしたらいいのじゃないかという気持ちを持っているわけであります。  いまや人民共和国は、社会主義の国として、ソビエトと中国に接して、しかも、まさにモデルケースとして、その豊富な鉱物資源を生かして、そうして、りっぱに成長することはまず間違いなかろう。その中心人物である金日成という将軍はかつて「長白山の虎」と言われた男であります。関東軍がどうしてもつかまえることができなかった。こういう歴史的な事実もございますが、五十二、三の、まさに精悍というか、剽悍な金日成首相に会ってまいりました。いまの朝鮮の大陸の上における地理的立場、あるいはまた、その資源力あるいはその労働力、その祖国愛――朝鮮は四千年来、ほとんど独立したことは、まあ、ない国である。今度初めて真の独立をして、その祖国愛に対する気概というものに、私は深く胸を打たれて帰ったのであります。  このようなことをあまり言うと切りがありませんから、厳然として朝鮮人民共和国はある、このことを渡辺君にお答え申し上げて、簡単でございますが、答弁といたします。(拍手
  52. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十八分開議
  53. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  質疑を続けます。藤田藤太郎君。    〔藤田藤太郎登壇拍手
  54. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま大和横川稲葉久保亀田、五委員より提出されました参議院議長重宗雄二君の不信任決議案について、提案者に質問をするものでございます。  第一問でありますが、大和提案者に質問したいのであります。  重宗議長は、私の知る限りでは、与野党を問わず、われわれのよき先輩として、まことに謹厳実直な議員として、議会政治のとりでを守るにふさわしい人であると思っておりました。事実、議長の歩んできた道は、昭和二十一年に勅選議員になられて以来、英国的デモクラシーを身につけた参議院議員として、政治生活は、何よりもこれを実証するのではないかと思います。それゆえに、この人が議長になられたときは、この人ならば、国民に笑われない、議会人として恥ずかしくない、公平な議事運営をやってくれるに違いないと、私は大きい期待を持ったのであります。それが、どうでしょう。職権本会議の強行であり、私は激しい憤りで一ぱいであります。重宗議長は、明電舎会長として、二代目社長として、その良心的経営は、戦後派経営者とは比較にならない根性の持ち主だと、言われています。ロバート・オーエンの尊敬者と聞いているので、いかに事業の中に理想を追求したかを容易に想像することができるので、そこにおのずからの答えが出てまいるのであります。このような議長重宗君のスタイルは、育ちのよさから来ていると思いますが、育ちのよさは、一面において不正に対してがんこ一徹の激しい気性を示しますので、衆議院で演じられたような暴挙暴走は、参議院において、重宗議長は、ゆめゆめ演出などはいたさないだろうと私は確信しておりました。しかるに、このような挙に出たのは、決して重宗議長の本心ではなく、自民党の党利党略でないのか、それとも、かつて勅選議員としての封建的な感覚が、その残滓が、体臭が、重宗議長の真の姿ではないのかどうかを、大和提案者にお聞きしたいのであります。(笑声、拍手)  第二に、亀田議員にお聞きしたいのであります。  いま不信任を突きつけられて立っておられる重宗雄三君は、かつてわれわれが尊敬し、選良した議長であります。私は、重宗議長を前にして、静かに日韓条約の経過を振り返ってみたいと思います。  いまや批准されようとしてるい日韓条約について、朝鮮日報の社説を拾ってみますと、「今回の日韓条約を契機として、日本経済は、アジア人の血にぬれて太ってゆく」、さらに、八月十七日の社説には、「与党は、事実上、一党国会で批准案を強行可決した。最後の一刻まで期待を捨てなかった我々にとっては、無慈悲な破局宣言としか聞えなかった。与党はこれで論争に終止符を打ったと考えているようだが、このような奇妙な自信過剰こそ、収拾し難い、混乱の火種を投げつけるものとなった。」、以上のごとくでありますが、私は全く同感でありまして、これをそっくりそのまま自由民主党と重宗議長に進呈いたしたいと思います。日本の国会におきましても、日韓案件の審議に際して、政府、与党は、どのような暴挙暴走をしたかを客観的に申し上げますと、衆議院における委員会、本会議における強行採決をなした政府に対して、これを是として報道したのは、日本全国の新聞中わずか六新聞であり、いずれもローカル紙でありました。フランスの「フィガロ」紙十一月十三日の報道を引用すると、「事態は長引くかもわからなかった、生来せっかちな佐藤首相は、事を一挙に選ぼうとした、しかし、力は十分でないので、彼は術策を弄することにした。今朝〇時十二分、多くの議員たちがその議席で、うとうととしておった頃を見はからって、船田議長は、保守党議員の若手グループにちょっと合図をした。船田議長は挙手による投票を宣していた。保守党議員は天に向って両手をあげ、「万才」と叫んだ。私は、こんな状態でどうして数えることができたのだろう。私の理解の限界を越えた、まったく奇妙きてれつなできごとである」、以上のとおりでありますが、説明を要するまでもなく、聡明な重宗議長は、国際的感覚を身につけておられるので、非がいずれにあるか、十分にわかっておられることと思います。ここにおいて私は、哲人プラトンの、「人間の人間たるゆえんは、同じ誤りを再びくり返さないことだ」ということばを引用して、はたして議長は真にプラトンを理解することのできる人間なのかどうか、提案者にお尋ねをしたいのであります。亀田提案者にでございます。  重ねて亀田提案者にお聞きいたしたい。特に、法的地位の問題については審議が尽くされていないと思うのであります。それにもかかわらず、議長委員会に差し戻しをしないのは、納得がいかないのであります。この事情について詳細に御説明を願いたいのであります。  次に、横川提案者に質問いたします。  サンケイ新聞の重宗議長のことばを引用すると、「参議院の立ち場としては、条約その他は十一日の自然成立の前に通過させなければ意味がない。仮に条約は自然成立したとしても、社会党には、のこる国内三法を通す気持ちがない。しかし参議院の立ち場からみれば国内三法のほうが重要ともいえるのだ。条約が成立する十一日までに、三法案もともに本会議で成立させるのが、わが国の国際信義のうえでも必要だろう。」と言っております。ここでおかしなことは、参議院の立場として二点もあげております。さらに、十二月十一日までに案件を成立させないと国際信義に反するということを言っております。本来、国会における法案その他、審議案件は、審議を尽くして、主権者たる国民のすべてが守られる立場に立って結論を出すのが大前提でなくてはなりません。このような重宗論理は、現代の若い人にはとうてい理解ができないことであります。そして、若い人は次のように言っております。「修身で忠君愛国を習い、よき明治の道徳を身につけた人々は、主権者国民のために身をもってがんばる勇気を忘れてしまったのではなかろうか。彼は真実に人間を愛することを学ばなかったのかもしれません」と言っているのであります。重宗議長は、このことばをどのように解されておられるか、横川提案者は御存じなら御説明をいただきたいのであります。  その次は、久保提案者にお尋ねをしたいのであります。  議長、副議長の党籍離脱、国会正常化問題であります。昭和三十一年より、自由民主党が議長、副議長を独占した。そのために、最も公平であるべき議長、副議長が自由民主党の党籍を持っているのだから、参議院の全体の代表として公平にものが運ばれないのであります。でありますから、今度のごとき日韓条約案件が、特別委員会で審議不十分のまま委員長が強行採決したと言うのでありますが、私たち自由民主党以外の五会派は認めておりません。このような基本的国会ルールを乱し、また無視したやり方でも、取り上げて、職権本会議開会を議長が押し切ったのであります。昭和四十年七月、四十九国会において、社会党はじめ五会派一致して、議長・副議長の党籍離脱の提案をいたしましたが、自由民主党はこれを否決したのであります。国会の正常化、議会制民主主義を守るためには、議長・副議長の党籍離脱が前提であると思いますが、久保提案者の御意見を聞きたいのであります。  次は、稲葉提案者にお聞きしたいのであります。  日本社会党は、日韓条約の徹底審議を要求するものとして、十二月三日に、次のごとく、すなわち第一に、提出を要求する資料として六件、第二に、残されている疑点として、韓国情勢の評価並びに基本条約について十件、北朝鮮との関係について四件、請求権経済協力について十件、李ラインと漁業協力について七件、在日朝鮮人の法的地位について七件、竹島の帰属について二件、文化財、文化協力について三件、その他について一件、以上合計五十件の多数について政府に要求しております。これによって、さらに徹底的な審議を続行して、国民の前にその全貌を明らかにしたいと決意いたしております。佐藤総理は、所信表明演説で、民主主義の理性を高めるために寛容と調和で政治を進めたいと言っております。佐藤総理は、社会党のこの五十疑点と取り組もうとしていたのかどうか。また、議長はこれを知っていて、政府の疑点解明がない状態において職権開会をやった、これに対する提案者稲葉氏の御意見を聞きたいのであります。  次は、さらに具体的に申し上げると、「財産及び請求権に関する問題の解決並び経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案」中、わが党の横川議員の質問の中で、日韓両国政府がそれぞれの請求権を主張した際のその法的な根拠は少しも明らかになっていない。さらに、両国政府が、請求権を法的根拠のあるものに限り話し合うとした両者の了解事項の内容が、少しも明らかになっていない。  第二に、「日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等の締結について承認を求めるの件」に関するわが党の森元治郎議員の質問において、休戦ライン以北の領海を設定する権利を持つ国は明確でない。韓国の地図では、かってに専管水域線を引いているが、これは日本政府の答弁と矛盾しているのに、解明されておらない。  条三に、わが党の藤田進、渡辺、中村、三議員の質問中、「日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案」中、長い間紛争の的になっていた李ラインが撤廃され、日本漁民が拿捕されないという確実な保証については、政府は何の明言もしておらない。  さらに、歴史的に日韓条約を見た場合、一九五一年のダレス構想による予備会談から始まり、バンデイ国務次官補の橋渡しによる第七次会談までの経過を見ると、一貫してアメリカの指導のもとに軍事的な諸関係を完成させていく一つの段階として、日韓会談が進められていることは、国際的な感覚を身につけていると自他ともに許している重宗議長には、知らないとは言わせません。財界人議長宗雄三君の最も得意とする経済問題からこれを解明するならば、低賃金の韓国に対する日本の独占資本の進出は、南朝鮮におけるアメリカの植民地政策支配を、より前進させる役割りを日本が果たす経済協力の内容であります。したがって、日本独占資本の南朝鮮に対する膨脹は、NETOを完成させ、それを維持する経済的土台になる、きわめて軍事的な性格の強いものになるという、だれでも常識的に判断できるこの論理を、重宗議長は知っていて、今回の暴挙暴走に目をつぶっておったことは、断じて許せないと思うが、この間の推移に関し、横川提案者にお尋ねをしたいのであります。  最後に申し上げたいのであります。  日本は、平和と民主主義憲法のもとに戦後再出発したのでありますことは、私の申し上げるまでもありません。しかるに、日韓条約の締結をめぐって、この大原則がくずれようとしております。二千七百万国民を持つ韓国は、六十万の軍隊を持ち、この軍事費のために国民の生活が犠牲になっていると聞いているのであります。三十六年の長きにわたり日本が支配してきました朝鮮民族に対して、その生活擁護のために日本が力を入れる筋道はあるでありましょう。しかし、その一は、南北朝鮮が統一される、これに日本が力を添えることであり、二には、その国、国民が軍事費の犠牲にならない、平和に生活が守られる中で、その国民生活向上に力を添える、この原則が貫かれる立場を、日本国民が持つべきでありましょう。ところが、日本政府は、自由民主党政府は、根本問題に触れずに、アメリカの極東戦略体制に協力するこの立場より、日韓条約をはじめ、協定を締結する、このために、韓国の国会の与党の単独採決にならって、衆議院、参議院においても、野党の主張を押え、職権で押し切っております。イギリスの議会制民主主義――イギリスばかりではなく、ヨーロッパ諸国は、議会制民主主義のもとに、主権在民の国是を柱に発展しているのであまりす。日本も、戦後の発展の柱は主権在民であり、議会制民主主義でありました。これがくずれようとしているのでございます。  私は、ここで一言触れておきたいのでありますが、日本は主権在民の国家体制であります。私たちは、主権者国民の生活が豊かに守られているかどうかという、この重要な関心事と取り組まなければならぬと思うのでございます。  その一つの問題は、国内の経済は、いま深刻な不況でございます。物価の値上がりによって、国民は非常に苦しんでいるわけでございます。それは何が原因してきているかということでございます。その原因の根本は、国民所得を十年たてば倍にするという所得倍増計画に基因していると私は思うのでございます。外国が、国民総生産に対して、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスと、とってみましても、設備拡大は一二、三%でございます。日本のみが二二%――二五%、外国の倍以上の設備拡大をやってきたわけであります。この資金をどこから調達したか。今日の物価値上げは、全くもって、この資金調達のあらわれであると私は思うのでございます。ですから、物価対策を政府をやるといいましても、物価対策をやったら、いまのような行き過ぎた設備拡大が困ります。このことを考えないで、そしていまの経済が進んでいるわけであります。たとえば、政府の発表している労働者の実質賃金を一つとってみましても、昭和三十五年を一〇〇にして、四十年の各月の収入は、九五%ぐらいであります。十年たてば所得が倍になるというなら、五年たてば五割上がってあたりまえなんでありますけれども、むしろ三十五年の実質生活が維持されない。そして、それよりか五%低いというこの現状でございます。こういう現状でございますから、国民所得、購買力がございません。生産と消費のアンバランスでございます。私は、先日の予算委員会で政府に質問いたしましたら、操業は順調に進んでいるというのでありますけれども、日本の基幹産業は、五割もとまっている基幹産業が多いのであります。国民からしぼり上げて生産設備をこしらえ、そのこしらえたものが消費の面をつくらない、国民生活を守らない、この経済政策のもとに、ほこりをかぶって、とまっているのであります。そういうのにもかかわらず、設備さえつくったらよいという観念の経済政策、操業短縮で、中小企業が犠牲になっている。ここが、今日、日本の主権在民の国家体制との関係をよく考えなきゃならぬ問題ではなかろうかと、私は思うのでございます。たとえば今日、主権在国民の国家体制は、先進国をはじめ、世界じゅうの多くの国が、この施策を続けております。今日の日本が最も、取引というか、経済的関係にあるヨーロッパの各国は、国民所得の二〇%水準を社会保障費につぎ込み、働けない人の生活の購買力をつくっていく。子供の多い家庭には、貧乏を防ぐために児童手当でその生活を見ていく。そういう形で国民所得の二〇%水準をこえて、国内の生産力、生産設備は一〇〇%操業している。この所得保障は、自動的に経済の成長において上げていってバランスをとっている。主権者国民が第一に守られているという方式をとっているのが、今日の先進産業国の姿であろうかと私は思うのでありますが、日本はどうでございますか。日本の今日の社会保障はと見てみますと、六十五才以上の人には月千三百円、これだけあげましょうというのであります。千三百円で生活ができるはずがないのであります。
  55. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 藤田君、時間がきております。簡単におやりください。
  56. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君(続) 子供が多い家庭は、「のり」をすすって生活をする、これが生産機関で働いているわけでございます。皆さん、これが主権在民の国家体制の政治と言えるでありましょうか。国家の予算から見れば、国家の予算で政府が出している社会保障費は国民所得の二・二%でございます。あとは振りかえ所得であります。皆さん、こういうところで、まだまだ主権者国民にものを与えることを慈善や恩恵という観念、昔の財閥が、独占資本、大企業に集中されている、これだけ守ってゆけば日本の経済は進むんだという、こういう観念が、生産と消費のバランスをくずして、そしていまのようなどん底の不況が、いかに声をからして宣伝しても、もとに戻らないという、国民犠牲の経済政策をとっているというのが、いまの佐藤内閣の姿じゃございませんか。  今度の日韓会談、日韓条約を見てみましても、韓国の低賃金は、皆さん御承知のとおり、日本の何分の一という低賃金であります。日韓条約、協定をはじめといたしまして、国際条約で両当事国の見解が全く違うという、このような条約は、いままで例をほとんど見ないのであります。しかし、この条約を結ぶための下ごしらえは、何といっても、この低賃金の韓国に日本の独占資本が進出をしていく、あわせて日本国民を低生活に抑えて、この、いまわれわれが心配するような東北アジア軍事同盟、アメリカとの協力という問題を、ここでわれわれが心配しておりますが、むしろこの日韓条約というのは、こういうところに目的があるのではないかと疑いたくなるわけでございます。(拍手
  57. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 藤田君……。
  58. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君(続) もうすぐです。このくらいのことは議長は知っているだろうと私は思うのであります。日韓条約の批准にあたり、韓国は国論を統一せず、政府、与党のみで押し切った韓国の方向は、どう考えてみても、民主主義の立場に立っているとは思いません。これにこたえて日本が同じことをやることは許すことができないのであります。民主主義のルールに審議を戻すべきであります。文化国家日本と与党の諸君が言うなら、当然の筋道ではないのでありましょうか。提案者大和与一君の、民主主義ルール破壊者重宗雄三議長不信任案は当然であり、むしろ私は、ここで明らかにしてもらいたいことは、提案者がここで、議会制民主主義というのはどういうものだ、主権在民の国家体制の中で、ほんとうに戦争の悲惨事を起こさない平和の構想はどういうものかということを、ひとつ明らかにしていただきたい。このことを私は御質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔大和与一登壇拍手
  59. 大和与一

    大和与一君 わが党の質問も、だんだん勉強の度合いが高くなって、心理学的に、骨相学的に、倫理学的に御答弁をせぬと、なかなか正確な答弁ができにくくなってまいりました。  第一点は、重宗議長はたいへん尊敬をしている人格者なんだけれども、どうしてあんなになったのか、そのもとは一体何だろうと、こういうお尋ねであると思うのであります。私は、重宗議長はどこの人かと思って調べてみたら、山口県であります。山口県民性というものが一つある。やはり長州族という、なかなか日本では相当有名な派閥の大御所だ。そこで育ったものですから、まあ比較的に言うと、日本的に、ほかの県民性よりも非常に進取果敢な性格があることは歴史的な事実であります。あるいは明治の文明化に一役買ったし、あるいはまた南米に行ったり、あるいは朝鮮、満州に行ったり、なかなか進取の気象に富んでおりましたから、山口県民はずぶの封建性ではないのではないか、若干進歩性はあると、少し点数をつけてもいいと思うのです。しかし、勅選議員という、やはりお金をたいへん腐るほど持っていたそうですから、ここら辺に若干堕落の原因があったのではないかと思います。明電舎の話も出ましたが、これはまあ、最近何か株が下がって相当傾いたそうですが、どうやらまた持ちこたえているという話で、あまり詳しいことはわかりません。  結局、質問の要点は、まあ吉田松陰も出て、実にりっぱな日本の国の国づくりをした。われわれもかつて尊敬のできた人もおるし、そうかと思うと、きわめて対照的に、岸信介、佐藤榮作、こういうまたお方々もおられるわけであります。ですから、やっぱり重宗議長は、足して二で割るという流儀ではないけれども、そのほどほどのまん中くらいじゃないか、まあこのように考えてもよかろうかと思います。もしその平均点にすれば、では、なぜ今度こういうむちゃなことをやったか、あの気骨りょうりょうたる重宗議長が、認めたかということになりますと、やっぱり党利党略ということばが、どうしてもここで浮き彫りにされなければなりません。御本人は実にりっぱな人で、さっきもほめ過ぎたと思うのですが、しかし、自由民主党員である限り、いかに個人的にりっぱであっても、党できめたことに対しては、やはり何でも契って従う、こういうこともあり得るわけでありましょう。ですから、私は、やっぱり重宗議長は党利党略の謀略にかかって、あえなくそれを受諾せざるを得なかった、このように考えて、まあ間違いなかろうと思います。  第二点は、いわゆるフランスのフィガロという新聞社の記者の話ですが、大体、外国の連中は――ほんとうはピカソとかドゴールとか出ていなければいかぬだろうけれども、それは藤田さんは知っておって言わなかったのだろうから、それはだれでもいいとして、この記者が、日本の十二日のあの採決を傍聴して、どうもこれはわからぬ、なぜ一体あんなになったんだと。私は、藤田議員の言うのは、重宗議長は国際的な感覚にも非常に強く、新しい人なんだから、そのフランスの記者にわかるように、重宗議長の心境を、何でもない、しろうとの私にそれを打診せよ、こういうめんどうなお尋ねではないかと思うのであります。いま思い出したのですが、昭和三十八年だったかな、三十九年か、日仏友好条約というのが、ちょうど私、外務委員でしたが、外務委員会にかかっておったのですが、ちょうど重宗さんがフランスの議長から招待を受けておった。この条約が通らなければ行けないわけであります。それで、やっさもっさして、たいへんに気をもんで心配をしておった。そこを、社会党の大乗的な惻隠の情から、その条約を、協力をして通してあげた。それで、重宗議長はすぐにパリに飛んでいって、向こうで「ムッシュー」ぐらい言われて、たいへん喜んで、ごちそうになって帰ってきた。こういう経過があるわけであります。しかし、そういうことがあったからといって、まさか今度重宗議長は、国際的なそういうことで、この日韓条約を早く上げるとか、そういうことは、ややこれは無縁の状態ではないかと思うのであります。これはやや憶測が多過ぎますから、これもまた、やっぱり結局は、党利党略ということばを使わしてもらって、第一の質問も、第二の質問も、やはり重宗さんが一日も早く党籍を離脱されて、もっと自由人となって、公正妥当な権限をもって、そしてすべての国会の運営を差配する、こうなったら、私は一歩でも前進になる、このように意うわけでありまして、あまり、りっぱな答えにならぬかもしれませんが、一応藤田議員に対する御答弁といたしたいと思うのであります。(拍手)    〔亀田得治登壇拍手
  60. 亀田得治

    亀田得治君 お答えいたします。  先ほど藤田さんから、哲人プラトンの、「人間の人間たるゆえんは、あやまちを二度と繰り返さないことである」、こういう立場から見て、一体、議長はどのように評価されるのか、一口に言いますと、そのようなお尋ねであったように思うのであります。そこで私たちは、人を評価する場合に、抽象的にやってはいけないと思うのであります。具体的な事実に即して行なわなければなりません。そういう立場から考えますと、まさしく、衆議院における強行採決、そうして現在日韓案件が参議院に回ってきて、委員会では一応間違ったああいう事件が起きまして、最終的に議長がそれを補正することができるかできないか、こういうきわどい時点に立っているのであります。衆議院の十一月六日の委員会の事件――採決とは申し上げません、事件。十一月十二日未明の混乱、それに輪をかけたことが、この十二月四日、参議院の特別委員会で起きました。重宗議長は、このプラトンの標準から及第点をとろうと思うのであれば、これを是正するのでなければだめなんであります。ところが、どうも方向は、八〇%すでにどろ沼に落ち込んでしまっているのではないかと思います。しかし、なお二〇%は、いまからでも反省をして、なるほど、これはいろいろ聞いてみると、よくない、これは、やはりプラトン先生の遺訓からしても、この際勇猛心をふるって直さなければならぬ、この決意をすれば、できないことはないのであります。私たちは、この偉大な重宗議長が後世に悔いを残してはいけないということで、せんだって議長が職権でこの開会をやろうとしたときにも御忠告を申し上げましたが、聞きいれません。そのときの理由が実は気に入らないわけであります。重宗さんも、腹の中では、なるほどこれは、各マスコミがこぞって指摘するごとく、どうも衆議院以上の暴走のようであるということはわかっておるようでありますが、ただ一点困るのは、すでに議長の職権で公報に載せでしまったと、この点をただ一つの逆転できない理由として言われるのであります。私たちは、実質的に悪いことを認めながら、公報掲載というような単なる一片の形式的なところにとらわれているようでは、残念ながら先輩プラトンの遺訓から、はずれるものであると、藤田委員にお答えせざるを得ないと思うのであります。  第二の質問は、法的地位に関して、ずいぶん委員会で問題が残っているのではないかと、その点からいっても、あの暴走問題を抜きにしても、もっと委員会で論議をすべきではなかろうかという御趣旨のお尋ねであったように思います。簡単にお答えをいたしたいと思いますが、今回六つのものができ上がっておりますが、法的地位に関しまして国会に正式の承認を求めておりますのは、法的地位及び待遇に関する協定、これ一本であります。ところが、同じ六月二十二日に作成されましたところの合意議事録、討議記録、法務大臣声明、入管局長談話、文部省初等中等教育局長談話、これら五つのものは単なる参考文書としてしか出されておりません。しかし、この在日韓国人の法的地位が実体的にどういうことになるのかということを明らかにしようとすれば、この国会に承認を求めている一本の協定だけでは全くわからないのであります。そういうものでありまして、私たちは、その点につきましても、午前、稲葉委員から、政府は条約について、国会に、はかり方が悪いという点の指摘がありましたが、特にこの法的地位について、そのことを指摘できるのであります。  そこで、中身に簡単に触れて結びたいわけでありますが、たとえば、国会に、正式に、はかられておらぬ合意議事録、この中には、退去強制を受ける人の例外規定、こういうものが多々書かれております。あるいは退去を強制させられる韓国人、この引き取り義務が韓国側にあることが明記されております。これらは、両国間の明らかな義務です。われわれは、それらの問題につきまして、もっと具体的に、こういう場合にはどうなるのか、Aの場合、Bの場合、どうなるのかというふうな論議を、こまかく委員会でやらなければいけないのであります。衆議院段階におきましても、国籍の問題につきましては論議が多少ありましたが、いま指摘申し上げたようなことは、ほとんどなされておらないばかりでなく、参議院の委員会では若干は触れておりますが、しかし、それは総論的に触れているだけでありまして、日本の社会から見たら今後重要な関係ができるわけでして、もっともっとこまかく掘り下げられなければいけないのであります。あるいは在日韓国人の社会保障の関係、持ち帰り財産、持ち帰り資金の関係、いろんな具体的な問題が残されております。さらに、法務大臣声明を拝見いたしますると、この協定では全く触れておらない問題が、突如として「法務大臣声明」ということで、日本国に義務を負担させられているわけであります。形式は声明でありますから一方的なものという、表向きはそうは言いますが、韓国側はさようにはとっておりません。協定で問題にされておりまするのは、戦前から日本にずっとおられる韓国人、この方々につきまして永住権を与える等の問題を取り上げているのであります。ところが、この声明におきましては――「戦前からおりましたが一時韓国に帰りました」、これは協定からはずれるわけであります。そうして、その後、形は密入国の形をとる場合も多いわけですが、そういう形で入ってきたこの方々に合法的な地位を与えようと、こういう、日本にとっては重大な問題、その中でさらに、平和条約発効の前とあと、というふうに分けて、二つの種類があります。そういう点につきまして、これからまだまだこまかく論議しなきゃならぬのですが、なされておりません。あるいは、在日韓国人で永住許可を受けた方が、一たん韓国に帰って、また日本に帰る再入国の問題、あるいは韓国におられる親戚の方が、在日永住権者に会いにくる、こういう問題につきましても便宜をはかることが明確にされているわけであります。これらは、何といっても、現在の出入国管理令の例外措置になるわけでありまして、それは出入国管理令そのものの運用の問題だと言われるかもしれませんが、運用上そのように、特に厚くしなきゃならぬという義務を、やはり国としては負わされるわけであります。したがって、われわれとしては、具体的にいろいろ設例を設けて、きちんとした論議を、当然、しておくべき段階であると考えているのであります。  さらに、第三に重大なことは、北鮮系の人と韓国系の人につきまして、総論的に委員会では質問が出ました。それに対して、政府は、当初は、北鮮系の人はいままでどおりと言われ、韓国系の人は、今度の協定で、いままでよりもよくなる、こういうふうに答えておられましたが、しかし、そういう差別をつけるということは、日本民族と朝鮮民族との歴史的関係等から見れば、問違いではないかという立場の追及が、これもまだ本格的ではありません。若干あった段階におきまして、政府の答え方が、多少色をつけて、その間、接近させるようなことも言われるわけであります。しかし、これは六十万の在日朝鮮人の方の非常に重要な問題でありまして、そのようなあいまいな答え方だけで済まし得る問題では断じてないのであります。  こういったような問題は、ほかの漁業なり、請求権なり、各種の問題についてあるわけでございますが、特に藤田議員から法的地位に関連いたしまして、どのような状態かということの御質問がございましたので、概略を簡単に申し上げたわけでございますが、こういう立場から見ましても、重宗議長は、十二月四日の委員会のやり方ともあわせ、いち早くこの委員会に返しまして、一日でも二日でも、正規の場で、たとい一時間でも二時間でも、より多く論議を尽くさせるという措置を、われわれ不信任案共同提案者はお願いをしているわけであります。どうしても聞きいれられぬ場合には、午前にも申し上げましたとおり、自民党の皆さんの同調を得て、満場一致で不信任案の通過をお願いいたしまして、答弁にかえる次第でございます。(拍手)    〔横川正市君登壇拍手
  61. 横川正市

    横川正市君 お答えをいたしたいと思います。  私は、何の場合でありましても、意見が対立するということは、これは、個人間でありましても、あるいは公の関係にありましても、これを消滅するということは、不可能なことでありますので、何かそういう問題が起こったときに、これを解決する共通の土俵というものが、常に人間の英知でつくられておく必要があるんだと思うのであります。その英知は、たとえばヨーロッパにおいては、キリスト教がその役割りを果たし、東洋においては、東洋、アジアにおけるところの哲学がその土俵をつくっていると、私どもは思うのでありまして、その点の認識の違いとか、あるいは意見の対立とかいうものは、十分な話し合いを行なうことによって解決できるものだと私は信じております。そういうことから、たとえば、十一日の段階で自然成立をはかるということをはばもうという、いわゆる参議院の独自性というものを、この日韓条約の審議の中に持ち出してきたということも、これは、言ってみますと、もっと共通の土俵の上で話し合って解決をすべきものであったのではないか。このことは、たとえば私どもが最も近くて遠い国といわております朝鮮の実情を見ますと、南の韓国では、これは、もう全く憎しみと憎悪と、それから相手に対してこれを抹殺しなければならないという極端な考え方のもとで、反共教育が、小学校からすべての人たちに徹底されてきております。北朝鮮の教育の内容を見ますと、これは、アメリカ帝国主義に対する、これまた憎悪といいますか、徹底した教育が行われております。この南と北の二つの状態というものを見ますと、これを緩和する共通の土俵というのはどこに求めるかといえば、私は、最も関係の深かった日本がその役割りを果たすべきだと思うのであります。そういうような意味合いからも、共通の土俵というものを失うことは何といっても不幸なことでありますから、これを失わないための努力をはかっていかなければいけないというふうに考えております。この問題が、たとえば三法を期間内に成立させるとうことで、国際信義の問題云々ということはありますけれども、私は、日本の国内で共通の土俵を失った形で、これが成立しようが成立しまいが、そのことのほうが国際信用を失墜する問題だと考えますので、成立する、成立しないにかかわらず、国内における外交案件についての問題について、私は今回の問題を十分教訓とすべきだと考えております。  さらに、請求権の法的根拠と両者の了解事項でありますけれども、私どもは請求権八項目について具体的な質問を政府に行ないましたけれども、資料も答弁も、ほとんどその体をなしておりません。たとえば、ドル換算の為替レートで請求権八項目の最終的な締めくくりが約八億ドルを少し上回る程度だというふうな計算がかりに成り立ちまして、そうして今度大平・金メモで妥結をいたしました三項の八億一千万ドル以上というこの金額と同等でありましても、政府は、請求権と経済援助は別個であると、こういうふうに説明をいたしております。そういう関係から、第六次会談まで、法的根拠のもとに請求権があると主張をしていたものが、どうしてこれは霧散したのか、また、それは国内的にどういう解決の方途を持っているのかについては、全く審議の過程で不明確であった点を指摘いたさねばならぬと思うのであります。また、一九五一年の予備会談、七次までの交渉の経過の中で、アメリカから、日韓の関係について、これをぜひ早期に妥結してほしいということは、これはもうたび重ねてあったことは間違いございません、ただ、それの受け取り方で、政府は、これらは圧力ではないと、こういうふうに説明をし、私どもは、この条約の持っております矛盾性、それから両国会でその受け取り方の違っているという拙速主義でもって解決した点、あるいは、たとえば軍事力は単に大砲や弾薬ではないという関係から、国内の生産の増強とか、あるいは「てこ」入れとか、いろいろな点を勘案してみますと、これはやはり、いわばアメリカの長期にわたる韓国援助の失敗の穴埋めではないのか。あるいはまた、今回のこのこと自体は、言ってみますと、韓国の軍事力を強化するための一つの「てこ」として用いられるのではないかということは、容易に判断のできるところでありまして、こういう結果から見ますと、アメリカが早期に解決を急いだという点は明確に言うことができるのではないかと思うのであります。  また、韓国の低賃金労働者が、どういうかっこうで日本の労働者の権益に入り込んでくるかについては、明らかではありませんけれども、一部伝えられるところによりますと、相当広範な計画と、また実施の細目をつけて具体的に動いているようであります。その動き方や、あるいはその効果については、私どもつまびらかにすることはできませんけれども、低賃金労働者の日本への影響というものは無視できないということは、はっきりと言えるのではないかと思います。  さらに、東南アジア軍事同盟の問題との関係でありますけれども、これは、あくまでも佐藤総理が、平和に徹し、憲法のその条項に忠実であるということをもって、総理の政治姿勢とされているようでありますけれども、その政治姿勢を私どもが評価どおり受け取ることができるかどうか、この点についてはいろいろな問題があります。たとえば、米韓、米台、そうして日米安保条約というふうな、アメリカとの縦のつながり方、日本と台湾、韓国との横のつながり方が、明確に軍事同盟という形をとらないまでも、協力関係にあることは、これは私は隠すことができないのではないか、こういうふうに考えておりますので、これを軍事同盟と言わない、言う、ということでの単なる抽象的な論議では済まされない問題であろうと思うのであります。さらに、日本の国民生活の保障がいまだ十分でないというときに、他国の困難な状態に対して、日本の状態を放置してまで手を出す、そういう余裕があるかどうか。これもまた政治姿勢と関係するところでありまして、たとえば総評の太田議長と八幡の藤井専務ですかが、それぞれの対談の中にその立場を明らかにいたしておりますが、私どもは総評の太田議長の意見を多とし、政府は藤井さんの意見を多としているということだけは、はっきりいたしているのではないだろうかと思います。これから日韓条約が締結され、これが具体的に歩きだしまして、どういう状態になるかについては、われわれは十分な監視をする必要のある、しかも多くの問題をはらんでいるということは、これは言えるのではないか、かように考えますので、この点、申し添えまして、お答えにいたしたいと思います。(拍手)    〔久保寺君登壇拍手
  62. 久保等

    久保等君 私は、先ほど渡辺勘吉議員の御質問に対してお答えをいたしました問題にも関連をするわけでございますが、ただいまの藤田藤太郎議員からの御質問では、国会の正常化をはかり、国会の権威を高めるにあたって、一体、重宗議長がどういう考え方を持ち、今日まで対処してきたんだろうか、こういうことについてのお尋ねが中心であったと存じます。したがいまして、先ほどの御質問にも若干関連をいたしまして、できるだけ簡単にお答えを申し上げたいと存じます。  今日まで、国会正常化あるいは国会の権威をいかにして高めてまいるか、このことについては、長い間いろいろと努力をいたしてまいったところでありまして、そのことについては、与党の諸君も、これまた大小の差はあるにいたしましても、特に国会の運営について、国会役員の配分等、いろいろ努力をいたしてまいった点もあるのでありますが、しかし、国会の最高責任者でありまする議長あるいは副議長の問題につきましては、残念ながら今日まで、がんとして自由民主党が正副議長を独占をする、こういう態度を堅持をしてまいっておるのであります。私とも――というよりも、私でありますが、昭和二十八年以来参議院に籍を置き、きわめてつたない体験でありますが、私の承知いたしておりまする範囲内におきまして考えてみましても、昭和三十一年に自由民主党が参議院において正副議長を独占いたしました。自来、今日までずっと正副議長とも自民党が独占をした形を持続してまいっておるのであります。しかし、さらに昔に振り返ってみますると、一体、帝国議会当時にいおてどういう情勢であったか。正副議長の党籍離脱の問題につきましては、大正十四年、当時の帝国議会の五十国会におきまして、当時の議長でありまする粕谷義三氏並びに副議長でありました小泉又次郎氏、いずれも大正十四年のことでありまするが、党籍離脱をして、公平無私の立場で院の運営を行なおうという、きわめて高潔な態度をもって党籍離脱をしたことを、私たちは忘れることができないのであります。戦後、新しい憲法のもと、民主議会が発足をいたしまして、たまたままた今回の国会はちょうど五十国会になるのであります。しかも、年数において、大正十四年と申しますると、ちょうど、まる四十年前になるのであります。帝国議会五十回の、四十年前の衆議院において正副議長がその党籍離脱をするという、当時といたしましても、私はきわめて称賛すべき態度であったと存じまするが、その後今日まで四十年間たって、なおかつ参議院においては、新しい民主議会のもとにおいて、自民党の独占という姿、また党籍離脱をしないという事実が、今日厳存をいたしておりますることは、何といたしましても、与党自民党の諸君並びにまた現在の正副議長に対しましても、厳重なる反省を私は求めざるを得ないと思うのであります。  しかも、重宗議長はよく私どもに申すのでありまするが、党籍を持っておっても、決して一党一派に偏したような、与党に特別加担するような態度をとらない、かように再三申してまいっておるのであります。すなわち、むしろ自民党という党籍を持っておることによって自民党の多数横暴を押えてまいることができる、自分はぜひそういう役割りを果たしたいために、むしろ自民党に籍を持つほうが有利ではないかと判断をしておる、かように申してまいったのであります。そのことが現実に言われるとおりに措置をとってまいれば、問題はないわけであります。また、本年の七月三十日に本院におきまして議長・副議長の選挙が行なわれましたことは、御承知のとおりでありますが、この本会議場において議長に当選をせられましたそのせつな、重宗議長は、本壇上から国民の前に、まあ公約をしたと言ってもいい議長の所信の表明がなされておるのでありますが、これを念のために申し上げてみますると、「議長の職責の重大なることを一そう肝に銘じ、その職務を行なうにあたりましては、常に公正無私、最善の努力を尽くし、議院の正常にして円滑なる運営をはかり、もって国民の信託にこたえたいと念願いたしております。」と、かように申しておるのであります。すなわち、公正無私、最善の努力を尽くして、院の正常なる運営に当たりたいと申しておるのでありまするが、はたして、今回行なわれておりまする議長のこの本会議の強行開会、職権開会の一つの事例をもって見ましても、残念ながら、本年七月、まだいまからわずか四カ月か、そのくらい前の話でありますが、議長のそうした態度表明にもかかわらず、全く事実は相反してまいっておりますることを、心から私どもは遺憾に存じますと同時に、議長に対して強く反省を求めざるを得ませんし、また、議長に対してその責任の追及を行なわざるを得ないのであります。私ども社会党は、昭和三十一年以来、この議長、副議長の党籍離脱の問題、並びに正副議長を一党が独占をいたしますことは、どうしてもやはり一党のその利害得失に拘泥をしてまいり、一党一派の考え方に偏してまいるということは、一つは人間の弱さからくる点もございまするが、そういった弊害を除くためにも、第一党が議長、第二党が副議長、こういう議長・副議長の配分を正しく行なうことによって、院の公平なる、そうして円滑なる運営をはかってまいるべきだ、かように主張いたしてまいっておるのでありまするが、あの昭和三十一年四月に、私どもまだ忘れることができませんが、議長には、いまはなき松野議長、そしてまた副議長には、今回たまたま、これまた日韓条約等特別委員会委員長になられた寺尾委員長が、昭和三十一年の四月に、松野議長とともに副議長に就任をせられました。その直後に起きた問題が、あの教育二法をめぐる、それこそ、これまた未曽有のこの本会議場における混乱でありました。すなわち、 正副議長が自民党によって独占をせられました直後において、教育二法の問題をめぐる未曽有の混乱を引き起こしたことを、私どもは、憲政史上一大汚点を残した問題として、忘れることができないのであります。さらにその後、ごく最近の問題にいたしましても、重宗議長が就任いたしましてからも、一昨年のあの失対二法案の問題、あるいはまた本年の農地報償法案等の問題、こういた問題を考えてみますると、結局、重宗議長の言明にもかかわらず、現実に重宗議長のとっておりまする態度というものは、全く一党一派、与党の立場に立って院の運営を行なうことにきゅうきゅうとしておることを、雄弁に事実が物語っておると思うのであります。  そういう立場からいたしまするならば、私どもは、本日こうした場所で、国会の正常化、あるいはまた国会の権威を高める問題について議論をいたしますること自体が適当でないと思うのであります。なぜかならば、一昨晩の夜半に、この国会が職権によって開会をせられ、いわば夜中に本会議議長職権によって開かれ、そうしてさらに、その後連続して、昨夜もそれこそ、この徹夜国会を経て、ただいまこの不信任案を上程をせざるを得ない事態に立ち至っておるわけでありますが、考えてみますると、夜連続して寝ないということになりますると、人間はどうしてもやはり神経も高ぶるし、あるいはまた真剣に議論をかわすということもできかねるのであります。そういう中で、これほど重大なる問題、すなわち国会の正常化なり、あるいはまた議会制民主主義そのものを守るという、最も基本的な重要な問題について、こうした場所で議論をしなければならないこと、議長不信任の問題に関連してこうした問題を論議をしなければならないことは、まことに場所としては当を得ないと思うのであります。まあそういう、はなはだ不本意ではございまするが、しかし私は、このいわば不幸を転じて幸いとなすという立場からでも、議長の賢明なるみずからの反省に基づきまして、この国会の正常化をはかる立場から、ぜひとも日韓条約批准等の問題につきましては、委員会においてさらに審議を深めてまいるという、ぜひ勇断を心から願ってやまないものであります。  さらにまた、ただいま申し上げましたように、従来から私どもが主張し、特に先般のあの七月三十日、本院において正副議長の党籍離脱に関する決議案が本会議場に上程せられました。残念ながら、与党自民党だけの反対によりまして、野党各五会派の強い念願と、また希望にもかかわらず、この決議案が葬り去られたことを思い合わせますると、あの当時、少なくとも、こういった具体的な問題に直面をしない平常なる状態の中で、あの正副議長の党籍離脱の問題を提議したにもかかわらず、そのことが実現せず今日に至って、この重要なる問題をめぐって与野党がきびしく対立をするという情勢の中で、再び党籍離脱の問題について言及せざるを得ないことを、まことに残念に思うわけであります。私は、そういう立場から、重宗議長に対して、今日までとってまいりました措置に対して、ぜひ議長の言明を具体的に実行せられることを心からお願いをいたしますと同時に、少なくとも、この職権本会議開会を直ちに中止をせられて、そして特別委員会にあの案件の差し戻しをはかること――もちろん、私どもは単に議長を不信任するために不信任案を上程いたしておるのではないのであります。したがって、そういう措置をとられることを心から祈りたいのであります。もちろん、議長がそういう措置をとらないといたしますれば、残念ながら、泣いて馬謖を切るという立場から、与党自民党の諸君にも、ぜひ私どもの意のあるところを御了察願いまして、本不信任案に対しまして全会一致で御賛同をお願いいたしまして、藤田藤太郎議員に対する答弁にかえさしていただきます。(拍手)    〔稲葉誠一登壇拍手
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 端的に藤田議員の質問にお答えを申し上げたいと思います。  私どもが、十二月三日に、日韓条約の徹底審議を要求すると、こういうことで、五十二点にわたって、資料要求を含めまして要求をいたしておるわけであります。これに対して、佐藤総理以下がどういうふうに答えたかと、こういうことでありますが、一部は答えました。答えましたけれども、その答え方というのが、国民に向かって疑点を積極的に明らかにしよう、こういう民主的な態度で答えたというのではなくて、むしろ、いつも逃げ口上で、何かしっぽをつかまれまいとするような形での答弁が主であったことを、非常に遺憾に思うものでありまするし、また、私どもが質問をいたしたことに対して、むしろ答えておらないところもありまするし、途中で打ち切った関係もありまして、私どものほうで当然出すべき質問は用意してありましたが、それがそこまでいかなかったのも、たくさんあるわけであります。  どういうようなものがそこまでいかなかったか、しかもそれが、国民が非常に重視しておる問題であるということについて、ちょっと申し上げたいと思うのでありますが、その場合に大きな問題でありますのは、私ども社会党が今度の国会の中におきまして提出をいろいろ要求をいたした資料がございます。この資料というものが提出をされませんで、論議がそこから新しい芽をふいて発展をするというところにおいて足りなかった、というのがあるわけでございますが、これはやはり、一にかかって政府のやり方というものが、何か問題を隠してしまっておこう、こういうような考え方が中心であったところに原因があると、私どもは考える次第であります。その提出を要求をいたしましたが最後まで出なかったものの一つに、韓国国会の議事録がございます。これは、韓国文の基本条約のテキストと日本文のテキストがございますが、それで四つの点において違っておるわけであります。こういうように、テキスト自身が、韓国文と日本文で違うわけでありますが、さらに韓国国会の議事録の中になってまいりますると、日本の国会で佐藤総理以下が発表し答弁しておるものと、基本的に違うわけであります。完全に合意が成立をしたのであるから、だから、提出をしたのだ、協定ができた、条約ができたのだと言われますが、完全な合意が成立しておるなら、私は解釈の基本的な点の違いがないはずだと思うのでありまするが、その点がどうも、はっきりいたしません。むしろ、はっきりさせない方向に持っていったほうが政府としては有利であったと、こういうことになれば、私は、国民の目をそのままにしておいて、ただこの案件だけを通せばいいという態度がそこに行なわれたというふうに考えるのでありまして、はなはだ遺憾に存ずるのであります。これが出てまいりますると、論議は、さらにさらに非常に発展をしていったと考えます。  第二には、請求権八項目の内容と金額、この内容、数字を出せということを再三要求をいたしております。これは前に、大平さんも、出してもいいということを言っておったのでありますが、出さないわけであります。なぜこれが必要かといいますと、ご案内のように、韓国の日本に対する請求権八項目は、今度の協定によって消滅をするわけであります。しかし、一体何が消滅をするのか、その範囲がはっきりいたしておりません。といいまするのは、韓国人の日本人に対する私的な債権、請求権財産権、こういうふうなものは消滅をしないと考えられております。その点が一つと、もう一つは、請求権八項目の中で韓国側が言っておりまするのは、北朝鮮の部分をも含めまして請求権というものを出しておるのがございます。こうなってまいりますると、それが一体消滅をするのかしないのか、するとすれば、具体的に日本の国内法で、あるいは行政措置で、どういう措置をとるのかということが、非常に大きな今後の国内の問題になってくるわけでございますが、そこまでの質問を横川さんがやろうとしたところで、それは切られてしまったわけであります。これは大きな問題でございます。といいまするのは、朝鮮人と韓国人両方を含めて、日本に徴用されたりなにかしておりました、そういう人の賃金を、会社は法務省に供託をいたしております。これは、ポツダム政令の二十二号によってやっておるわけでございますが、それが約一億円ございます。この中で、韓国分だけは消滅をいたしますが、北朝鮮人の分は消滅をしないということになってまいります。いまは、この朝鮮人関係は時効は進行するけれども、時効は完成をしないという、きわめておかしな措置をとっているわけでございますが、これをこのままの状態に置いて、権利を消滅させるということになってまいりますと、韓国と北朝鮮との間に非常に大きな差別が生まれてくるわけでございます。こういう点も非常に大きな問題でありまして、今後十分追及しなければならないのに、これが打ち切られてしまったことでもありまするし、前にお話しした八項目の中の六項目以下が、一体具体的にどういう意味を持っているかということが、大きな問題になってくるわけでございます。  第三に要求したものは、日本の在韓財産権消滅放棄に関する取り決めを要求いたしましてまいりました。これは、御承知のとおり、昭和三十二年の十二月三十一日、大みそかですが、たしか午後十一時三十五分に、外務省の官邸で、まとまったんですが、このときに、アメリカの覚え書きというのがございます。これは資料として出ておりますけれども、それ以前に、平和条約のときに、四条(b)項が、韓国がアメリカに泣きついてでき上がりました。これは、最後のときに平和条約の条項の中に入ったものでありますが、このとき、すでに韓国は、いわゆるアメリカ解釈というものをもらっておりまして、その解釈は、同じものが武内公使から日本に届いているわけであります。こういうようなことでありますから、当然、日本といたしましては、在韓財産請求権というものが平和条約によって消滅をした、こういうことでありまするならば、……そういう主張をずっとしていかなければならないわけであります。ところが、例の久保発言までは、日本は韓国に対して財産請求権というものがあるのだ、こう極力主張をいたしておりました。林情報文化局長の話では、韓国の日本に対する請求権は百二十億ドルくらい、日本のほうは百四十億ドルくらいで、逆に日本のほうが取り分があるのだという発表をいたしておるわけでございます。それが突然に、例の十二月三十一日に、李承晩ラインでとらえられておりました日本人漁夫の送還問題と引きかえに、日本では在韓請求権を放棄いたしたのであります。これは非常に大きな問題でございまして、最初からないものを、訴訟技術――訴訟技術でなくて、外交技術の上から請求をしておったというように政府は言うわけです。しかし、これは非常におかしいわけです。韓国側では、平和条約の前にアメリカから解釈をもらっておるわけです。その間の事情は十分知っているわけですから、外交の技術として在韓請求権があるという主張をしておったことは、非常に大きな自己矛盾になるわけです。だから、そうではない。そうではなくて、在韓請求権は、軍令三十三号の解釈をめぐりまして、日本にはまだあったんだ、韓国に対してまだあったんだと、それを李ラインにおきまする漁夫の送還その他と引きかえに日本が在韓請求権を放棄した、むしろ放棄させられたというところに、本質的に私は問題があると考えるわけです。ですから、昭和三十二年十二月三十一日のアメリカ解釈の口上書だけではなくして、その前に、平和条約に関連をしてアメリカが韓国あるいは日本に出したもの、そのものから全体を出してこないというと、この問題は解決いたしてまいりません。非常に私は大きな問題になってくると、こう考えるのでありまするが、この点は、資料を政府が出しませんものですから、十分な解決というところまで見なかったわけでございます。  第四に請求いたしましたのはフライング・ドラゴンの計画でございます。これは軍事機密だということはいわれておるようでございますが、日本とアメリカとの間で、海空においては共同作戦が何回かとられております。回数までは政府は発表をいたしておるのでありまするが、問題は、その海空の日米の作戦、合同作戦というか、それが具体的にどこで行なわれたか、いかなる想定のもとに行なわれたかということが重要なわけでありまして、これが日本海、朝鮮海峡の付近で行なわれた、こういうようなことになってまいりまするというと、そこからいわゆる日本とアメリカの安保条約、アメリカと韓国との米韓相互防衛協定という結びつきによって、日米韓三つが一緒になっての軍事演習というか、軍事的な取りきめといいますか、そういうようなものが出てまいることが考えられるわけであります。これは、アメリカのほうでは極端にきらっておることでございまするから、政府はなかなか出したがらなかったのでありますが、そういう面をも含めまして、事実を明らかにし、資料を出させて明らかにいたしませんというと、日本と韓国との、このほんとうの軍事的な背景というものはわからないのでありますが、そういうようなものは絶対に出さない方向に政府は進んできておったわけでございます。  それから日韓の追加合意事項の要求をいたしました。これはあるということが伝えられておる。なぜ出さないかというと、韓国に対するいわゆる延べ払いの金利、借款の条件等、――台湾に対するものと違うわけであります。韓国に対するほうが低く、有利になっておりますから、それを明らかにされるのをきらって出さなかったと伝えられておるのでありますが、こうした全体の問題を出してこないというと、私は、審議というものは徹底的に行なわれないと、こういうふうに考えるので、この点、出さなかった政府というもののやり方は非常に遺憾であると考えるのでございます。  時間の関係がございまするので、あとの点は短く申し上げますが、どういう点が、それではまだまだ未解明だっただろうということになってまいりますると、たとえば、一つは、政府自民党は、韓国の非常に窮迫した経済を救うために経済協力を行なうと言っております。しかし、アメリカの韓国に対する経済援助、軍事援助は、非常な額にのぼっておるわけでありまするが、それが一体、韓国の経済に安定をもたらしておるかどうか、この点をはっきりわれわれは分析をしなければいけないと思うわけです。こういうようなことをやりながら、韓国に安定をもたらさなかったといたしますれば、それでは、日本のわれわれの税金をもってやるものが、結局何のために行なわれるかわからなくなる。一部の日本の資本家と韓国の政商というか、そうした人々だけの利益のために行なわれることになってくることが考えられてまいります。こういう点は、まだまだ日本の国民として当然知らなければならない権利のあるところであると私は考えております。  それから、佐藤総理はなかなか答えないのでありまするが、私は、韓国にある国連軍というものの性格、朝鮮戦争――朝鮮事変というものの性格を明確にしなければいけないと思うわけです。これは、国連では、国連警察行動だ、トルーマンがそう言っておるわけでありまするから、警察行動であれば自衛隊がそれに参加をするということは憲法違反ではないというのが、最高裁判所長官の横田喜三郎さんの考え方であります。こういうような考え方が日本に行なわれておって、国連への協力ということの限度というか、限界というものを明らかにしない段階で、そのままほったらかしておきまするから、私ども国民は非常に日韓の問題に対して疑惑を持ってくる。まだ何か問題が隠されておるのではないか、故意にそれを隠しておるのではないかということが出てくるわけであります。日本が国連の非常任理事国から常任理事国になるという段階になってくれば、兵力提供の問題が当然起きてくるわけであります。こういう点から考えましても、いわゆる在韓国連軍と日本の憲法との関係、海外派兵その他の問題を明らかにすることが、私は国民に対してきわめて緊要であると考えるのであります。憲法のことに触れましたが、佐藤総理は、憲法のことに触れられるのを非常にいやがります。いやがりまするけれども、佐藤さんの口から、自分の在任中は絶対に憲法を改正しない 統一見解として、閣議決定として憲法を改正しないということが、言われない段階においては、国民はまだまだ、日韓条約の持つ軍事的な背景、協力、こういうことに対して疑惑を持つのは、私は当然過ぎるくらい当然なことであると考えるわけでございます。  その他、法的地位の問題については、亀田さんからもお話がございましたが、在日朝鮮人に対する基本的な政策というか、考え方が、政府の口から出てきたことはないのであります、いろいろなことを言っておりまするけれども。政府当局の者の書いたものによれば、在日韓国人、朝鮮人というものは、日本に同化をすることが必要である、日本にいるならば帰化をしたほうがいいんだ、帰化をするのがいやだったならば本国へ帰ったほうがいいんだというようなことを、はっきり書いておるのでございます。こういうような考え方を押し進めていこうとするのかどうか。これは私は基本的な問題であると思うのでありますが、こういう点についても解明されておりません。北朝鮮との延べ払いの決済の問題等につきましても、国連憲章の第二条を援用するならば、第二条の五項において、国連が敵対国と認めたものに対する援助を慎まなければならない義務を、日本が負うようになります。この義務を、今度の基本条約の第四条で負った場合には、一体、日本は今後、北朝鮮とどういう関係に立つのか、こういう点をさらに明白にしなければならないと私どもは考えるのでございます。  その他、たくさんの問題がございますが、私はほんの一部のことを申し上げただけでございます。私どもの要求をしておるのは五十二点、非常にこまかくなっておりまするが、ほんの卑近な例をあげただけでございます。これらのことすべては、なおかつ国民がほんとうに、まだまだ知りたい問題であります。国民は心の底から、国会の審議を通じて、それらが率直に明らかにされることを望んでおったのだと、私は考えるのでございまするが、それが、政府なり自由民主党、あるいは、それを十分な形で憲法を守り、そうして国会の運営に忠実でなければならなかった重宗議長のやり方によって閉ざされたということは、非常に遺憾でございます。私は、そういうような意味において、重宗議長は十分信任に値しない、不信任に価するということを考えておるのでございまして、この点をもちまして、藤田議員に対する答弁にかえさしていただきたい。かように考えます。(拍手)      ―――――・―――――
  64. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 鍋島直紹君外一名から、成規賛成者を得て、質疑終局の動議が提出されました。  これより本動議採決をいたします。  表決記名投票をもって行います。本動議賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  65. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやに御投票願います。――まだ投票なさらない方は、すみやかに御投票願います。-まだ御投票なさらない方は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――ただいま行なわれております投票につきましては、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。まだ投票なさらない方は、すみやかに御投票願います。――どうぞ御投票ください。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  制限時間に達しました。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  66. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより開票いたします。投票参事計算させます。議場閉鎖を命じます。    〔議場開鎮〕    〔参事氏名点呼
  67. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百九十一票   白色票            百十一票   青色票             八十票  よって、質疑は終局することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名      百十一名       植木 光教君    和田 鶴一君       中上川アキ君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       前田佳都男君    伊藤 五郎君       林田 正治君    吉江 勝保君       梶原 茂嘉君    岡村文四郎君       木暮武太夫君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    山本茂一郎君       船田  譲君    藤田 正明君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    大森 久司君       丸茂 重貞君    源田  実君       熊谷太三郎君    小林 篤一君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    日高 広為君       亀井  光君    石井  桂君       稲浦 鹿藏君    大竹平八郎君       柴田  栄君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       青柳 秀夫君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    近藤 鶴代君       井野 碩哉君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    杉原 荒太君       中野 文門君    竹中 恒夫君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    内藤誉三郎君       任田 新治君    西村 尚治君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       岡本  悟君    奥村 悦造君       楠  正俊君    黒木 利克君       栗原 祐幸君    久保 勘一君       岸田 幸雄君    米田 正文君       谷村 貞治君    村上 春藏君       木島 義夫君    山本  杉君       徳永 正利君    大谷藤之助君       天坊 裕彦君    西田 信一君       仲原 善一君    松野 孝一君       森部 隆輔君    津島 文治君       斎藤  昇君    植竹 春彦君       新谷寅三郎君    松平 勇雄君       八木 一郎君    青木 一男君       小林 武治君    小山邦太郎君       吉武 恵市君    廣瀬 久忠君       近藤英一郎君    谷口 慶吉君       櫻井 志郎君    北畠 教真君       金丸 冨夫君    青田源太郎君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    木内 四郎君       紅露 みつ君    上原 正吉君       増原 恵吉君    中山 福藏君       小柳 牧衞君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      八十名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    矢追 秀彦君       石本  茂君    中尾 辰義君       浅井  亨君    田代富士男君       北條 雋八君    宮崎 正義君       小平 芳平君    渋谷 邦彦君       達田 龍彦君    前川  旦君       戸田 菊雄君    竹田 現照君       山崎  昇君    木村美智男君       村田 秀三君    小野  明君       矢山 有作君    野々山一三君       瀬谷 英行君    杉山善太郎君       林  虎雄君    大森 創造君       小柳  勇君    横川 正市君       藤田藤太郎君    相澤 重明君       岡  三郎君    永岡 光治君       藤田  進君    柳岡 秋夫君       佐多 忠隆君    北村  暢君       鈴木  強君    大和 与一君       岩間 正男君    須藤 五郎君       春日 正一君    森  勝治君       鈴木  力君    中村 波男君       川村 清一君    大橋 和孝君       稲葉 誠一君    吉田忠三郎君       渡辺 勘吉君    小林  武君       佐野 芳雄君    中村 順造君       野上  元君    千葉千代世君       山本伊三郎君    武内 五郎君       森中 守義君    占部 秀男君       森 元治郎君    光村 甚助君       大河原一次君    伊藤 顕道君       中村 英男君    久保  等君       秋山 長造君    亀田 得治君       加瀬  完君    阿部 竹松君       近藤 信一君    大倉 精一君       松澤 兼人君    小酒井義男君       椿  繁夫君    成瀬 幡治君       鈴木  壽君    木村禧八郎君       藤原 道子君    岡田 宗司君       加藤シヅエ君    羽生 三七君      ―――――・―――――
  68. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。加瀬完君。(発言する者多し)加瀬君、御登壇願います。御登壇願います。    〔加瀬完君登壇拍手
  69. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案されました、議長宗雄三不信任決議案賛成するものであります。(拍手)  以下、賛成理由を申し上げます。  国会法第十九条には、皆さまも御存じのとおり、「各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。」とございます。この内容よりすれば、議事を整理すること、事務を監督すること、議院の秩序を保持することは議長の任務であります。しかも、議長がしなければならない議長固有の事務でもございます。重宗雄三君は、この議長固有の事務すら正しく施行しておりませんところに問題がございます。参議院規則第四十二条には、先日藤田議員が御指摘を申し上げましたとおり、「委員は、議題について、自由に質疑し、意見を述べることができる。委員から発言を求めたときは、その要求の順序によって、委員長がこれを許可する。」、こう定められてあります。原則といたしましては、委員発言の自由は完全に確保をされているはずでございます。これをもし制限するとすれば、同規則四十七条が示すように、「委員長は、委員会に諮り、」――慣例といたしましては、理事会の合意のもとに制限をいたしますか、そうでございません場合は、委員の違法行為または秩序を乱す行為等がなければ制限はできないはずでございます。したがって、議長の最大の任務は、議員の発言を確保することでございます。ところが、十二月四日の日韓特別委員会は、意義不明の植木発言があるまでは、何ら違法のかどはなく、秩序も乱されておりません。したがって、発言制限する何らの条件もなかったはずでございます。また、同規則四十九条によれば、「討論が終局したときは、委員長は、問題を宣告して表決に付する。」とございます。過日の委員会におきましては、これまた討論終局の事実もございません。問題を宣告しての表決もございませんことは、昨日からの各議員の発言によっても明らかでございます。こういうわけがらでありますならば、当然、議長の職権にかかる議事の整理と申しまするものは、このような討論の終局も、表決もない議案を、本院規則の手続を踏むように、委員長に差し戻すことでなければなりません。また、事務の監督とは、このような不正な手続を事務当局が進捗をいたしますならば、その不正不法をきびしく叱正をすべきが事務の監督でございます。議長宗雄三君は、このような判断の能力があったでございましょうか。また、このような義務を確実に果たしたでございましょうか。判断の能力もなく、義務を怠っておりますことは、皆さま御存じのとおりであります。昨日以来の正常ならざる運営も、秩序を保持すべき議長みずからが秩序を乱す行為をあえてするところにその原因がございます。これが議長を信任できざる第一の理由でございます。  第二の理由は、先ほど引例いたしました国会法にも、議長は議院の代表である、こう定められております。議長は議院の代表でございます。政党の代表でもございませんければ、まして、一じゆう自由民主党の代表ではなおさらございません。院の代表でございますならば、内は法規慣例によりまして各会派の意向を十二分に調整をし、円満な会議の運営を旨とすべきでございましょう。外に対しましては、国民の納得する審議の実態を示す責任があるでございましょう。重宗雄三君はどうでございましょう。党籍を離れて議会の指導的立場をとることすらもできません。議院の運営は自民党の党利党略を旨とし、院の品位に関する反省も、参議院の、より国民の信頼にこたうべき慣行の樹立をすら心がけてはおりません。今日の重宗議長のごとく、一会派の国対委員長のごとく、あるいはまた議事進行係のごとく、こういう境涯にとどまっておりましては、議会政治が成り立つはずはございません。院の代表でございますならば、党籍は離脱すべきであります。党籍を有して公平を期することは不可能でございます。不公平を原則といたしましては院の代表とは申せません。院を代表いたしません議長を、私どもは信任するわけにはまいりません。  第三の理由は、院の性格についての認識でございます。確かに、本院は衆議院に対しまして二院でございます。しかし、二院と申しますことは、衆議院の二軍ではございません。何事も衆議院のまねをして能事足れりとすることは、参議院の本質でもございませんければ、性格でもないはずでございます。参議院は、衆議院に比べまして、より本質的に、より専門的に、きめこまかに徹底した審議をするところに、その性格と存在がございますことは、参議院出発の経緯よりいたしましても当然であります。そうでありますならば、今日の審議状況はいかがでございましょう。衆議院の不法採決を、ためろうことなく受け付けることも、まことにおかしいことでございます。あるいは本院日韓委員会を正当と見るに至りましては、本院の権威を議長みずから放てきする行為と断ぜざるを得ません。このことは、ただに今回の日韓問題にとどまりません。審査もせずに中間報告を求めたり、発言時間をきびしく制限いたしましたり、衆議院よりもむしろ粗略な審査が日常茶飯事のごとく行なわれておりますことは、われわれのはなはだ遺憾と感じておるところでございます。なぜ、もっと審議に慎重と誠実を貫かないのでございましょう。格調の高い質疑をなぜ育てないのでございましょうか。育つように、議事運営をなぜ議長は進めないのでございましょうか。こういう反省に立つべきではないかと思うのでございます。この程度の常識すら重宗議長はわれわれの前に示してはくれません。この程度の常識すら、たびたび重宗議長はわれわれの前で乱してまいりました。議会運営の常識すら持たない者を、われわれは議長と呼ばなければならないことに、最大の屈辱を感ずるものでございます。(拍手)  第四の理由は、軍宗議長は、審議案件の内容につきまして、その重大性、あるいは国民が何を待望するかの価値判断、こういう点を正しく把握をいたしておらない点でございます。このたびの日韓特別委員会では、審議のために提出を要求されたもろもろの資料は、何ら提出をされておりません。資料のないところに完全な審議は進み得べくもございません。また、幾つかの疑点は、何ら解明されることなく、残されたままでございます。この程度の審議の条件整備をすら指導監督できないのでは、議長の職責を、私どもは果たしているものと断ずるわけにはいかないのでございます。たとえば、わが党は、審議の過程におきまして、韓国自身相当な設備投資を行ないながら、それが有効に稼働していない理由は何であるか。韓国が膨大な軍隊を維持して、その経済に重荷となっておりますが、このような情勢をそのままにしておきまして、今後も有効な経済建設が行ない得るのか。日本が自衛隊を含めて、韓国にある国連軍に協力する限度を具体的に示されたい。北朝鮮の関係におきましても、北朝鮮との貿易について、延べ払い、直接決済などを認めるのか。貿易拡大のために、貿易担当者、技術者などの入国を認めるのか、認めないのか。請求権経済協力におきまして、韓国の対日請求八項目と経済協力との関係を明らかにされたい。あるいはまた、請求権相殺方式を採用した場合、日本人引き揚げ者が日本政府に国家被償を要求した場合、政府はこれにどう対処するのか。韓国における日本の保税加工方式は、韓国の低賃金利用を策するもので、それは日本の労働者に対する賃金の切り下げの「てこ」となるものではないか。こういう質問が繰り返されましたけれども、何らの回答はございません。あるいは李ラインの問題で、李ラインが撤廃をされ、日本漁民が拿捕されないという確実な保証はどこにあるのか。あるいはノリ、アジ、サバなど、韓国の水産物輸入は、わが国の魚価を買いたたく武器として利用されることはないのか。あるいは在日朝鮮人の法的地位におきまして、韓国籍を持たない在日朝鮮人の利益代表を認めるのか認めないのか。認めるといたしましたならば、どの国あるいはどの団体を認めるのか。また、竹島の帰属問題、あるいは引き渡された文化財の美術的、学術的価値、こういうことに対しまして、あるいは資料を要求し、あるいは回答を求めたのでございますが、これらの重要なことが国民の前に明らかにさるべきはずでございますのに、何ら審議が尽くされておりません。  さらに、具体的な一例をあげますならば、日本の政治姿勢にもつながる問題に、韓国ノリがございます。韓国ノリの輸入単価と、それが消費者に渡るまでの価格の格差には、激しいものがございます。某年の、たとえばCIFは二百八十四円でございますのに、小売り価格は九百二十七円でございます。これは公定であります。一枚一円五十銭のものを、十五円、二十円で売っておる事実もございます。これは韓国側に非常な不満を起こさしております。私は、先般、韓国から帰りました人に伺ったのでございますが、経済協力と言うならば、韓国ノリを買いたたくような行為をやめてから経済協力を打ち出してもらいたい。韓国の公定を割るような価格で日本の商社が買いたたいて、しかも、内地に持って帰ってこれを非常な利潤を含めて高価に売る、こういうばかなことを、経済協力の名のもとにやっておりまする日本側の行為は、われわれは誠意がある行為とは受け取りにくい。経済協力はまことに名のみであると、憤慨をして語られたのを聞いたのでございます。ノリの輸入商社は、それではどうでございましょう。四十年度には六十五社ございます。ところが、この中に木材会社もございます、綿花会社も。ございます、建設会社もございます。当然ノリの輸入の権利を与うべきでない会社に、どういう関係か、ノリの権利が与えられております。韓国ノリの外貨割り当てをもらいまして、その権利売買を行ないますと、一億枚輸入の場合でも一%の権利が取れれば一千万円の利益がころがってくるわけでございます。目下この問題では、検察庁の調査の対象になっておる事実もございます。この輸入各社には、それぞれ関係の政界人あるいは有力な背景が存在をしております。このような韓国をたたいて日本のみが利益を得るような方法を繰り返しておりまして、ほんとうの親善、あるいはほんとうの経済協力が可能と言い得るでございましょうか。ここに政党献金の多くの疑惑も生じておるのでございます。民主政治の確立が、参議院のわれわれの一つの役目であるといたしますならば、政界浄化は、本院の大きな義務でございましょう。不当な利権が売買され、不当な金が政界の中に黒い霧をまき散らしました。そういう点を克明に調査もし得ないで、参議院は、はたして院の責任を果たしたと言い得るでございましょうか。議長の見識というものをあらためて確認をするならば、こういう不備な審議内容でございますならば、十二分に積極的に審議する機会と条件を与えるように立ち働くべきでございましょう。ところが、重宗議長はこういう審議案件の価値判断を持っておりません。それどころか、ことさらに国民の前にこういう事実を隠蔽をいたしております。許すべきことではございません。  第五の理由は、院の品位についてであります。参議院の品位とは、本院が民主主義議会政治の標準形式を示すことでございましょうか、また、議会主義とは、国民各層の意見が適正かつ公平に討議されることであろうかと思います。それは、議会内の自民党という多数派だけの意見で、日本の政治が左右されていいということでは、断じてございません。自民党は、衆議院あるいは本院におきまして――院の中におきましては絶対多数を誇るでございましょうが、われわれは自民党を内容のある絶対多数と見ることができないのでございます。なぜかと申しますと、去る参議院の投票に照合をいたしますと、社会党は二千百万、公明党その他は千九百万、野党の合計は四千余万、これだけの支持が存在するのでございます。自民党の支持は三千四百万、野党の総計に比べると、国民の支持率は低いのであります。こういう見方からするならば、多数国民を代表するものは野党の意見を聞くところから出発をする、こういう形をとらざるを得ないのでございます。今日のように、議員のみの多数決で国民の多数決のごとく錯覚をする考え方では、民主政治の振興はあり得るはずのものではございません。この多数国民の意見をどうくみ取り、取り上げ、適正にかつ公平にどう審議の場に乗せるか。すなわち、国民の納得のいく乗せ方をするところに、本院の品位というものをわれわれは認めるわけでございます。
  70. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 加瀬君、加瀬君、時間です。
  71. 加瀬完

    ○加瀬完君(続) 衆議院よりも下劣で破廉恥な議事運営を、参議院の議長みずからが先頭に立って行なっておりまして、国民はどこに参議院の品位あるいは良識を認めることができるでございましょう。「野に一人の不平も残さず」、そういう審議を、本院こそなすべきでございます。しかし、そういう見識は、今日の本院にはございません。ないことを当然と考え、ふしぎとも考えない重宗雄三君が議長であります限り、存在もしなければ、育ちもしないのでございます。院の品位をみずからこわすものを院の代表と認めるわけにはまいりません。  以上五点の理由をあげまして、議長宗雄三君不信任決議に賛意を表するものであります。(拍手)     ―――――――――――――
  72. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 占部秀男君。    〔占部秀男登壇拍手
  73. 占部秀男

    占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されております重宗雄三議長に対する不信任決議案に対しまして、国民の怒りをこめて、心から賛成の意を表するものであります。(拍手)  議院における議長の行動は、ある意味ではその院の動向を決するとさえ言われております。わが国の国会法は、この議長に広範かつ強力な権限を与えております。国会法は、ただいま同僚加瀬議員の述べましたように、その第十九条で、「各議院の議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する。」と規定しているのであります。いうまでもなく、ここに規定された議事整理権は、単なる議案を整理するということではございません。その内容からいえば、議事指揮権とも言い得るものであることは、国会法や議事規則の各条項に照らして明らかでございます。また、秩序を保持する権限にいたしましても、議場内での議員の発言や行動に関して議長は秩序を保たせるだけではないのでございます。懲罰事犯については、議長は職権をもってこれを懲罰委員会に付託することができますし、議院内部の警察権も議長の権限事項でありまして、特に、院の規則二百十八条では、議長は、みずから必要と認めるときは、警察官を議事堂内に導入をして、院内の警察に当たらせることができるとさえ規定されていることは、御存じのとおりでございます。去る第十九国会、衆議院におきましては、当時の堤議長が二百名の警察官を導入したのをはじめ、衆参両院にわたってたびたび警察官の導入が行なわれていることは、われわれの記憶に新しいところでございます。さらに、議長は、参議院傍聴規則等の各種の規則、規程を制定する権限を持っておりますし、人事や経費管理の面にまで及び、議院事務の監督権や、外部に対する議院代表権を持っておるのであります。事、議院の運営に関する限りにおいては、いわば行政、財政、立法、治安警察、あるいは外交などの、広範な領域にわたって独自の強大な権限を行使できるのが、現在の議長の地位でございます。一体、なぜ国会法は、議長にこのような広範かつ強力な権限を与えているのでありましょうか。いうまでもなく、国会は国権の最高機関であります。国会の動向は、わが国の社会、経済、文化の盛衰を生み、国民生活の福祉と平和をきめ、国の運命を方向づけるものであります。それゆえにこそ、民主政治の原則に従って正しい国会の運営がはかられることを、国民は常に要請をしているのであります。主権者である国民の、この期待にこたえた正しい国会運営を保障するために、国会法は議長に対して広範かつ強大な権限を与えたものであることは、言をまたないところでございます。したがって、議長にはその人を得なければなりません。一ぱいの水も、牛が飲めば乳となり、ヘビが飲めば毒となるとは、昔からのたとえでございますが、政治的な権力も全く同じでありまして、行使する者のやり方によっては、国民にとって毒ともなれば薬にもなるのであります。人格識見のすぐれた人が要請をされ、一党一派に偏せず、勇気を持って事に処する人が望まれるのは、当然の帰結でございます。しかるに、この国会を通じての重宗雄三議長の議会運営のやり方を見ますときに、この国民の期待はことごとく裏切られているのであります。私は、三つの大きな点を指摘しまして、重宗議長が、国民から寄託された議長としての責任を果たさず、いかに民主政治を冒涜しているかということを、立証いたしたいと思います。  第一に、寺尾特別委員長の可決報告書を重宗議長は有効と認めて、これを受理した点でございます。すでに、このことにつきましては、その経過と、当時とった議長の態度については、提案者である大和議員から詳しく述べられておりますので、私はここでは再言いたしません。ただ、当時の新聞の批判の一、二を引例いたしたいと思うのであります。事が起こった翌日の毎日新聞はこう書いております。「これまでも幾度か強行採決がくり返され、そのつど、有効・無効論がたたかわされてきたが、法的には多少の記録もとどめ、どうやら採決の体をなしていることが多かった。ところが、こんどの場合ばかりは、寺尾委員長自身、委員会室から退場した直後、「採決質疑打切りまでだった」と明言、「案件全部の採決を終わった」とする自民党執行部と大きなくい違いを示し、あわてて意思統一のあと、前言をひるがえし、「案件の採決も終わった」ことになったのだから、前代未聞の混乱ぶりで、国会不信の感をさらに深めるものといえよう。」、「〃電光石火〃で強行採決した、というよりも「採決されたことになった」といった方が正しいかもしれない。」、「国会の権威は地に落ちたものである」、かように批判をしております。また、同じ日の朝日新聞は、こういうようなやり方は、あたかも「あぶり出し以上の手品」ではないかと痛烈に酷評を下しているのであります。(拍手)思い出せば、五年前の安保改定の国会審議の際に、当時の岸内閣と自民党のとった無謀きわまるやり方に対しまして、同じ朝日新聞は、「天声人語」で、かくのごときやり方は、「すり、強盗、きんちゃく切り、かっぱらい、ペテン師のようなやり方である」と、こきおろしたことがございます。今回の新聞の批判は、あのときに劣らぬほどの厳しさを持っていると私は考えております。俗に「血は水よりも濃い」といいますが、よくもよくも、きょうだいそろって、全く同じやり方をして、天下に恥をさらし、マスコミからこっぴどくたたかれたものであると、あきれ返らざるを得ないのでございます。(拍手)  しかも、それ以上に奇怪なことは、重宗議長がこれを認めて、手品の上塗りをしたことでございます。もちろん、議決報告書を認めて、これを受理し、これを本会議に付することは、議長議事整理権であることは言うまでもございません。しかしながら、この場合の議事整理権は、すでに私が触れましたように、単なる議案の整理ではないのでございます。議題に供すべきものの内容を検討精査して、高度の政治的判断によってその当否をきめる権能を議長は持っているのでございます。そうすることが、議長としては、むしろ責任づけられているものであるといっても過言ではないと思うのであります。それゆえにこそ、議長議事を整理する権限は、単に整理する権限というにとどまらず、議事指揮権ともいうべきものであるとされている、そうしたゆえんは実にここにあると思うのでございます。にもかかわらず、議長は、その場にいなかったことを理由といたしまして、白昼公然と明らかに行なわれましたその事実を正しく検討もせずに、自民党の言うなりに、うのみにして、有効であるとしてこれを認めましたことは、みずから持っております議事整理権を放棄したものと言わざるを得ないのであります。国民に対する議長としての責任と、国会の権威を、議長みずからが踏みにじったしわざであると言わざるを得ないのであります。主権者である国民の名によって、かかる議長の存在を、われわれは絶対に許すことはできません。(拍手)  第二に、重宗議長は、議長が本来持っているところの調停者としての能力を全く失っているという事実であります。議長としての役割りのうち最も大きなものの一つは、政党間の対立からくる混乱を、中正な調停者としての立場から、議長の権威にかけて未然に防止し、国会運営の正常を保たせるところにあります。今度の国会波乱の原因が、自民党の暴走によることは、これはもう言うまでもございませんが、この間にあって、議長の権威の乏しさ、与党の圧力に対する無力さ、中正なるべき態度を放棄したことなどが、この事態に拍車をかけましたことは、国民のすべてが認めている事実でございます。なぜ重宗議長は、かくのごとく権威がないのでございましょうか。なぜ議長は与党に弱いのでありましょうか。そのほんとうの原因は重宗議長の党籍に問題があると思うのであります。一体、議長は不偏不党の性格を持たねばならぬことは、民主的な議会政治の原則でありまして、今日小学生でも社会科で学んでいるところでございます。西ドイツの連邦議会のように、その議事規則の中で、「議長議事を公正かつ不偏不党に指揮しなければならない」と明らかにしるしている国さえございます。したがって、英国をはじめ多くの国々では、議長の党籍離脱の慣行を生んでいることは、世間周知の事実でございます。諸外国のことは別にいたしまして、わが国におきましても、明治憲法の時代には、大正十四年、第五十回議会におきまして、当時の粕谷、小泉・衆議院正副議長が、それぞれ党籍を離脱して以来、おおむね正副議長は党籍を離脱いたしております。現在の国会におきましても、昭和二十八年の第十六特別国会におきまして、衆議院の堤、原・正副議長が党籍を離脱いたしたことがございます。ところが本院では、わが党からの多年の、要望にもかかわらず、ついに今日まで、この件は実現を見ていないのでございます。重宗議長が自民党の党籍を持つ限り、議長としての調停者能力を失い、自民党に偏して、再び三たび今日の事態と同じことを繰り返すのは、火を見るよりも明らかであると、私どもは考えております。私は、民主主義政治を守り、国会の権威を高めるためにも、このような一党一派に偏する議長には、断固としてやめてもらわなければならないと確信をいたしております。   第三には、重宗議長は、議長職権で本会議を強行することにつきましては、政治史上古今まれに見る熟練工でございまして、常習者であるという、そうした点についてでございます。議長就任以来、わずかに三年余りでありますが、すでに大和議員が指摘しましたように、五回にわたって職権行使をしているのでございます。そもそも、職権を行使しなければならないということは、議長にとりましては、ある意味では自殺行為でございます。自殺しては、そのたびに生き返って、職権行使を繰り返されたのでは、国民はたまったものではございません。良識ある議長であるならば、職権を行使する前に、正常な議会運営のできない責任をみずから悟り、みずから辞職して、国会の正常化を、国民の世論と議員の反省に託すべきであると私は考えるのであります。  最後に総括して申し上げますと、広範な議長の権限は、もともと正しい国会運営のために行使すべきものであり、国民の要請にこたえる道として使うべきものでありまして、一自民党の党利党略のために行使すべきものでは絶対にございません。重宗議長は、議会運営の責任者として、文字どおり不適格な人であると、私は断ずるのでございます。  以上の理由によりまして、私は、本決議案に心から賛成の意を表して、私の討論を終わります。(拍手)      ―――――・―――――
  74. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 鍋島直紹君外一名から、成規賛成者を得て、  討論終局動議が提出されました。  これより、本動議採決をいたします。  表決記名投票をもって行ないます。本動議賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、ご登壇の上、御投票願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  75. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) まだ投票なさらない方は、御投票願います。――まだ投票なさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票をなさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない諸君は、すみやかに御投票願います。――まだ投票をなさらない方は、すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――ただいま行なわれております投票につきましては、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない諸君はすみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  制限時間に達しました。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  76. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより開票いたします。投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  77. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         百六十五票   白色票           百十四票   青色票           五十一票  よって、討論は終局することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名     百十四名       植木 光教君    和田 鶴一君       中上川アキ君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       前田佳都男君    伊藤 五郎君       林田 正治君    梶原 茂嘉君       岡村文四郎君    木暮武太夫君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    山本茂一郎君       園田 清充君    船田  譲君       平泉  渉君    八田 一朗君       土屋 義彦君    木村 睦男君       高橋文五郎君    内田 俊朗君       大森 久司君    丸茂 重貞君       源田  実君    熊谷太三郎君       小林 篤一君    山崎  斉君       川野 三暁君    温水 三郎君       日高 広為君    亀井  光君       石井  桂君    稲浦 鹿藏君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鈴木 万平君    鹿島 俊雄君       鍋島 直紹君    横山 フク君       大谷 贇雄君    青柳 秀夫君       平島 敏夫君    剱木 亨弘君       古池 信三君    田中 茂穂君       近藤 鶴代君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       林屋亀次郎君    杉原 荒太君       中野 文門君    竹中 恒夫君       後藤 義隆君    堀本 宜実君       山本 利壽君    玉置 和郎君       任田 新治君    西村 尚治君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       岡本  悟君    黒木 利克君       栗原 祐幸君    久保 勘一君       岸田 幸雄君    米田 正文君       谷村 貞治君    村上 春藏君       木島 義夫君    山本  杉君       徳永 正利君    大谷藤之助君       天坊 裕彦君    仲原 善一君       松野 孝一君    森部 隆輔君       津島 文治君    斎藤  昇君       塩見 俊二君    新谷寅三郎君       迫水 久常君    松平 勇雄君       八木 一郎君    山下 春江君       青木 一男君    郡  祐一君       安井  謙君    小沢久太郎君       小林 武治君    小山邦太郎君       吉武 恵市君    廣瀬 久忠君       近藤英一郎君    田村 賢作君       谷口 慶吉君    櫻井 志郎君       北畠 教真君    金丸 冨夫君       青田源太郎君    赤間 文三君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    紅露 みつ君       上原 正吉君    増原 恵吉君       中山 福藏君    小柳 牧衞君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      五十一名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    市川 房枝君       中尾 辰義君    浅井  亨君       二宮 文造君    北條 雋八君       小平 芳平君    山田 徹一君       達田 龍彦君    前川  旦君       戸田 菊雄君    竹田 現照君       山崎  昇君    木村美智男君       村田 秀三君    小野  明君       矢山 有作君    野々山一三君       瀬谷 英行君    杉山善太郎君       林  虎雄君    小柳  勇君       横川 正市君    藤田藤太郎君       柳岡 秋夫君    佐多 忠隆君       鈴木  強君    岩間 正男君       春日 正一君    森  勝治君       鈴木  力君    川村 清一君       吉田忠三郎君    渡辺 勘吉君       小林  武君    中村 順造君       野上  元君    千葉千代世君       武内 五郎君    森 元治郎君       光村 甚助君    大矢  正君       加瀬  完君    近藤 信一君       大倉 精一君    松澤 兼人君       藤原 道子君    岡田 宗司君       加藤シヅエ君      ―――――・―――――
  78. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより本案採決をいたします。  表決記名投票をもって行ないます。本案賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  79. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) まだ投票なさらない諸君はすみやかに投票願います。――まだ投票なさらない諸君はすみやかに御投票願います。――まだ投票なさらない方はすみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。  投票漏れはございませんか。投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  80. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより開票いたします。投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  81. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         百九十一票   白色票           六十九票   青色票          百二十二票  よって、本案は否決せられました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名      六十九名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    市川 房枝君       中尾 辰義君    浅井  亨君       二宮 文造君    北條 雋八君       小平 芳平君    鈴木 市藏君       達田 龍彦君    前川  旦君       戸田 菊雄君    竹田 現照君       山崎  昇君    木村美智男君       村田 秀三君    小野  明君       矢山 有作君    野々山一三君       杉山善太郎君    林  虎雄君       小柳  勇君    横川 正市君       藤田藤太郎君    岡  三郎君       永岡 光治君    藤田  進君       柳岡 秋夫君    佐多 忠隆君       北村  暢君    鈴木  強君       大和 与一君    岩間 正男君       須藤 五郎君    春日 正一君       森  勝治君    鈴木  力君       中村 波男君    川村 清一君       大橋 和孝君    稲葉 誠一君       吉田忠三郎君    渡辺 勘吉君       小林  武君    松本 賢一君       佐野 芳雄君    中村 順造君       野上  元君    武内 五郎君       柴谷  要君    占部 秀男君       森 元治郎君    光村 甚助君       大河原一次君    伊藤 顕道君       久保  等君    大矢  正君       亀田 得治君    加瀬  完君       大倉 精一君    松澤 兼人君       小酒井義男君    椿  繁夫君       成瀬 幡治君    木村禧八郎君       藤原 道子君    加藤シヅエ君       羽生 三七君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名     百二十二名       植木 光教君    和田 鶴一君       中上川アキ君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       前田佳都男君    伊藤 五郎君       林田 正治君    吉江 勝保君       梶原 茂嘉君    岡村文四郎君       木暮武太夫君    宮崎 正雄君       柳田桃太郎君    山内 一郎君       山本茂一郎君    園田 清充君       船田  譲君    平泉  渉君       八田 一朗君    土屋 義彦君       木村 睦男君    高橋文五郎君       内田 俊朗君    大森 久司君       丸茂 重貞君    源田  実君       熊谷太三郎君    小林 篤一君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    日高 広為君       亀井  光君    石井  桂君       稲浦 鹿藏君    大竹平八郎君       柴田  栄君    鈴木 万平君       鹿島 俊雄君    鍋島 直紹君       横山 フク君    大谷 贇雄君       青柳 秀夫君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    近藤 鶴代君       井野 碩哉君    石原幹市郎君       重政 庸徳君    笹森 順造君       平井 太郎君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    中野 文門君       竹中 恒夫君    後藤 義隆君       堀本 宜実君    山本 利壽君       玉置 和郎君    内藤誉三郎君       任田 新治君    西村 尚治君       高橋雄之助君    長谷川 仁君       岡本  悟君    楠  正俊君       黒木 利克君    栗原 祐幸君       久保 勘一君    岸田 幸雄君       米田 正文君    谷村 貞治君       村上 春藏君    木島 義夫君       山本  杉君    徳永 正利君       大谷藤之助君    天坊 裕彦君       西田 信一君    仲原 善一君       松野 孝一君    森部 隆輔君       津島 文治君    斎藤  昇君       塩見 俊二君    植竹 春彦君       新谷寅三郎君    迫水 久常君       松平 勇雄君    八木 一郎君       山下 春江君    青木 一男君       郡  祐一君    安井  謙君       小沢久太郎君    小林 武治君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    近藤英一郎君       田村 賢作君    谷口 慶吉君       櫻井 志郎君    北畠 教真君       金丸 冨夫君    青田源太郎君       赤間 文三君    井川 伊平君       江藤  智君    森 八三一君       三木與吉郎君    西郷吉之助君       木内 四郎君    紅露 みつ君       上原 正吉君    増原 恵吉君       中山 福藏君    小柳 牧衞君      ―――――・―――――
  82. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて休憩いたします。    午後六時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後九時四分開議
  83. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  鈴木強君外四名から、委員会審査省略要求書を付して、  副議長不信任決議案が提出されました。  おはかりいたします。副議長不信任決議案は、発議者要求のとおり、委員会審査を省略し、日程に追加して、これを議題とすることに御異議ございませんか。
  84. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  よって、本案議題といたします。      ―――――・―――――
  85. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 鍋島直紹君外一名から、賛成者を得て、  本案議事における発言時間は、趣旨説明については二十分、質疑討論その他については一人十五分に制限することの動議が提出されました。  よって、この時間制限動議について採決をいたします。  表決記名投票をもって行ないます。本動議賛成諸君白色票を、反対諸君青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名点呼〕    〔投票執行
  86. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) すみやかに御投票願、います。――すみやかに御投票願います。――すみやか御投票願います。――ただいま行われております投票につきましては、自後五分間に制限いたします。時間がまいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやか御投票願います。――すみやかに御投票願います。――すみやかに御投票願います。(発言する者多し)御静粛に願います。――すみやかに御投票願います。――傍聴人は静粛に願います。――すみやかに御投票願います。――時間まいりますれば投票箱閉鎖いたします。――すみやかに投票願います。――まだ投票なさらない諸君は、すみやかに投票願います。――すみやに御投票願います。――まだ投票なさらない諸は、すみやかに御投票願います。  制限時間に達しました。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖
  87. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより開票いたします投票参事計算させます。議場開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票計算
  88. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          百八十五票   白色票             百六票   青色票            七十九票  よって、本案議事における発言時間は、趣旨説明については二十分、質疑討論その他については一人十五分に制限することに決しました。      ―――――・―――――   〔参照〕  賛成者白色票氏名      百六名       森田 タマ君    植木 光教君       和田 鶴一君    沢田 一精君       二木 謙吾君    野知 浩之君       伊藤 五郎君    林田 正治君       吉江 勝保君    白井  勇君       梶原 茂嘉君    草葉 隆圓君       宮崎 正雄君    柳田桃太郎君       山内 一郎君    山本茂一郎君       園田 清充君    船田  譲君       藤田 正明君    平泉  渉君       八田 一朗君    土屋 義彦君       木村 睦男君    高橋文五郎君       内田 俊朗君    大森 久司君       丸茂 重貞君    源田  実君       熊谷太三郎君    小林 篤一君       山崎  斉君    川野 三暁君       温水 三郎君    日高 広為君       亀井  光君    石井  桂君       大竹平八郎君    柴田  栄君       鹿島 俊雄君    鍋島 直紹君       横山 フク君    大谷 贇雄君       青柳 秀夫君    平島 敏夫君       剱木 亨弘君    古池 信三君       田中 茂穂君    井野 碩哉君       石原幹市郎君    笹森 順造君       杉原 荒太君    中野 文門君       竹中 恒夫君    後藤 義隆君       堀本 宜実君    山本 利壽君       内藤誉三郎君    任田 新治君       西村 尚治君    高橋雄之助君       長谷川 仁君    岡本  悟君       奥村 悦造君    楠  正俊君       黒木 利克君    栗原 祐幸君       久保 勘一君    岸田 幸雄君       米田 正文君    谷村 貞治君       木島 義夫君    徳永 正利君       大谷藤之助君    天坊 裕彦君       西田 信一君    仲原 善一君       松野 孝一君    津島 文治君       斎藤  昇君    植竹 春彦君       新谷寅三郎君    松平 勇雄君       八木 一郎君    山下 春江君       青木 一男君    郡  祐一君       安井  謙君    小山邦太郎君       高橋  衛君    吉武 恵市君       廣瀬 久忠君    田村 賢作君       谷口 慶吉君    北畠 教真君       青田源太郎君    赤間 文三君       井川 伊平君    江藤  智君       森 八三一君    三木與吉郎君       西郷吉之助君    木内 四郎君       紅露 みつ君    上原 正吉君       増原 恵吉君    小柳 牧衞君     ―――――――――――――  反対者青色票氏名      七十九名       鬼木 勝利君    原田  立君       山高しげり君    黒柳  明君       矢追 秀彦君    石本  茂君       市川 房枝君    中尾 辰義君       浅井  亨君    田代富士男君       北條 雋八君    渋谷 邦彦君       鈴木 一弘君    北條  浩君       和泉  覚君    鈴木 市藏君       達田 龍彦君    前川  旦君       竹田 現照君    山崎  昇君       木村美智男君    村田 秀三君       小野  明君    矢山 有作君       野々山一三君    瀬谷 英行君       杉山善太郎君    小柳  勇君       横川 正市君    藤田藤太郎君       相澤 重明君    岡  三郎君       永岡 光治君    藤田  進君       柳岡 秋夫君    田中  一君       佐多 忠隆君    北村  暢君       鈴木  強君    大和 与一君       岩間 正男君    春日 正一君       森  勝治君    鈴木  力君       川村 清一君    大橋 和孝君       田中寿美子君    稲葉 誠一君       吉田忠三郎君    渡辺 勘吉君       小林  武君    松本 賢一君       中村 順造君    野上  元君       山本伊三郎君    武内 五郎君       森中 守義君    松永 忠二君       占部 秀男君    森 元治郎君       光村 甚助君    大河原一次君       伊藤 顕道君    中村 英男君       秋山 長造君    大矢  正君       亀田 得治君    加瀬  完君       阿部 竹松君    近藤 信一君       大倉 精一君    松澤 兼人君       小酒井義男君    椿  繁夫君       成瀬 幡治君    鈴木  壽君       藤原 道子君    羽生 三七君       野溝  勝君      ―――――・―――――
  89. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより発議者趣旨説明を求めます。鈴木強君。(「定足数が足らぬぞ」と呼ぶ者あり)定足数はあります。     ―――――――――――――    〔鈴木強登壇拍手
  90. 鈴木強

    鈴木強君 私は、ただいま議題となりました「本院は、副議長河野謙三君を信任しない。」の決議案に対し、発議者・岡三郎北村暢、松永忠二森中守義、私・鈴木強の五名を代表して、提案理由を説明いたします。  まず、決議案文を朗読いたします。     ―――――――――――――  河野謙三君は、明治三十四年五月、神奈川県小田原市成田に生まれ、当年とって六十三歳、早稲田大学専門部商科を卒業後、日産化学工業株式会社に入社、その後、日本肥料株式会社理事、肥料配給公団理事、平塚商工会議所会頭等を経て、昭和二十四年衆議院議員に当選、現在は、日本陸上競技連盟会長、神奈川県陸上競技協会会長、湘南倉庫運送株式会社社長、新興海陸運輸株式会社社長等の要職につかれております。参議院議員には、昭和二十八年四月の選挙で、無所属として神奈川県地方区より立候補、十六万四千三百二十四票を獲得されて当選、当選後の昭和二十八年五月十八日、加賀山之雄、梶原茂嘉、上林忠次、岸良一、土田国太郎、豊田雅孝、前田久吉、森田義衛、北勝太郎廣瀬久忠小林武治三木與吉郎の各氏とともに、緑風会に所属されたのであります。  その後、昭和三十三年十二月十七日に至り、緑風会を脱会、自由民主党に入党され、翌三十四年六月の選挙には、自由民主党公認として神奈川県地方区より立候補、三十六万四千百二十票を、また、本年七月の選挙には五十一万九千二十七票をそれぞれ獲得されて、三たび参議院議員として当選されておるのであります。そして本年の七月三十日、第十代参議院副議長の栄誉ある重責に任ぜられ、今日に至っております。  申すまでもなく、副議長の任務は、国会法第十九条、同二十一条に明定されているとおり、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、副議長が、議長の職務を行うことになっており、副議長の職務は、厳正中立の立場に立って議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督することであります。  河野副議長は、経歴を見てもわかるように、有名なスポーツマンでもあります。およそスポーツマンは、すべからくフェアプレーをモットーとし、質実剛健、正々堂々事に処するという、崇高な精神の持ち主であらねばなりません。私は、河野君が副議長に選出されたときに、自由民主党の党籍を離脱されなかったことに対し、大きな不満を持った一人ではありますが、率直に言って河野君の今日までの、政界、実業界における豊富な御経験と、高き御人格と、加うるにスポーツマンとして日ごろ鍛えられた手腕を発揮されて、国権の最高機関たる本院の副議長として、その任務を必ずや果たしてくれるものと、ひそかに信じ、期待しておったのであります。しかるに、河野副議長が、今回の日韓条約等関係法案の審議にあたってとられた態度は、私の抱いていた期待を完全に裏切ってしまったのであります。こうして、いまここに、就任後、日なお浅き河野副議長に不信任案を提出しなければならないことは、まことに遺憾のきわみであります。  日韓条約等関係諸法案は、御承知のとおり、十一月十二日衆議院において、自民党は、憲法、国会法、衆議院規則、慣例等のすべてを全く無視して、議会史上かつてない、むちゃくちゃな強行手段を用いて、強引に可決したと称して、参議院に送付してまいったのであります。社会党は、衆議院では、日韓条約のうち、その基本をなす竹島の領土権、李ラインの撤廃、管轄権等、両国の意見が一致していない問題点をはじめ、請求権問題、特に関係国内法三案についてはほとんど審議がなされていないことを指摘して、参議院は、これらの点については慎重審議を行ない、疑問の点を国民の前に明らかにすることこそ、参議院に課せられた大きな使命だと心得、そのためには、特別委員会の設置は好ましくなく、条約、協定、交換公文は外務委員会へ、その他の国内三法案は大蔵、法務、農林水産の各委員会に、それぞれ分割付託すべきであることを強く要求したのであります。しかし、自由民主党は、議長は、われわれの要求をはねのけて、傲慢にも職権をもって、十一月十三日、十五日の二回にわたり、本会議の開会を強行し、日韓条約等特別委員会の設置と特別委員の任命を行なったのでありますが、その際、河野副議長は、一方的に議長と自民党に追随して、何ら具体的に問題解決への努力をなさず、与えられた任務を遂行しなかったことは、職務怠慢もはなはだしいと言わなければなりません。これが不信任の第一の理由であります。  不信任の第二の理由は、日韓特別委員会の審議と関係法案の扱いについて、河野副議長は、重宗議長とともに、野党各会派の要望にこたえて、衆議院段階におけるやり方はまずかったと自分も思うので、参議院ではその二の舞いはしない、慎重審議を尽くしたいとの約束をしながら、実際には、特別委員会の審議にあたっては、適切妥当な助言も指導も行なわざるのみか、逆に十二月四日、参議院日韓特別委員会において自民党が行なった、衆議院特別委員会を上回る、でっち上げの、不当な強行採決を無条件に認め、性こりもなく、六日の本会議開会を職権によって公報に掲載したのであります。当日は、野党あげての反対にあって開会を断念したものの、翌七日には、われわれの納得できるだけの最後の努力も、決断もせず、ただ自民党の圧力に屈し、何ら天に恥ずることなく、ずうずうしくも、短い本国会の会期中に、三たびにわたる本会議の職権開会を強行したことは、断じて許すことはできません。われわれは、特に問題にしなければならないことは、日韓特別委員会の採決が、かつてない不当なものであったことと、このような不当な委員採決に基づく委員長の可決報告書に対して、何らの実情調査も行なわず、これを、うのみにして本会議に持ち込んだことであります。この間の事情を、五日付の各新聞紙は、「与党さえまごつく」、「参院日韓委の採決内容」、「寺尾委員長一時質疑打ち切りだけだという」、「シドロモドロの強行採決」、「寺尾委員長前言をひるがえす」等の大きい見出しをつけて、解説を行なっています。先ほど占部委員討論の中で述べておられましたが、私も、多少重複するかもしれませんが、ここにその一説を御紹介してみたいと思います。すなわち、  「参院の日韓特別委は大混乱のなかで、日韓条約承認案件および関係国内法三案を衆院と同様「電光石火」で強行採決した。というよりも「採決されたことになった」といった方が正しいかもしれない。これまでも幾度か強行採決がくり返され、そのつど、有効・無効論がたたかわされてきたが、法的には多少の記録もとどめ、どうやら採決の体をなしていることが多かった。ところが、こんどの場合ばかりは、寺尾委員長自身、委員会室から退場した直後、「採決質疑打切りまでだった」と明言、「案件全部の採決を終わった」とする自民党執行部と大きなくい違いを示し、あわてて意思統一のあと前言をひるがえし、「案件の採決も終わった」ことになったのだから、前代未聞の混乱ぶりで、国会不信の感をさらに深めるものといえよう。しかも、記者会見では、「発言者の動議は全然聞こえなかったが、しめし合わせてあったとおりだったと思う」とか、「三度の採決を二回ですませた」など、シドロモドロの答弁。これでは衆院での強行採決にあきれていた国民も自民党の強弁する有効論には全く首をかしげざるをえないだろう。事実、速記録では「委員長」とあるだけだし、野党委員の怒号で、動議の内容がどんなものだったか、また委員長発言がどうだったか、だれにも聞こえなかった。それでも寺尾委員長が正規の手続を経て議長あてに可決報告書を提出し、重宗議長がこれを有効と認めたので、野党がいくら無効を唱えてもいまさら事態を元へはひき戻せない。それにしても、与党側は、かつて例のない手ぎわの悪さを露呈したものだが、これは与党内の意思疎通を欠いたことに原因があったようだ。日韓特別委の採決の方法をめぐって、参院自民党執行部は、衆院の二の舞いを避けるため奇襲策をとらずに、まず質疑打切りの段階でとどめ、このあとで討論採決に持ちこむ態度を貫いてきた。なぜなら、衆院同様の強行採決をやると、国会は衆参を通じて再び混乱に陥り、ますます国会への不信を高めるとの大局的判断があったからだ。だから、社会党が討論にはいらず実力で委員会審議をストップさせるような場合には、衛視を入れて排除するよりは、委員会における採決を断念して、本会議での中間報告を求める挙に出た。少なくとも、四日の正午すぎまでは、こうした考えは変わっていなかった。」「強行採決にかかる五分ほど前に、社会党の亀田藤田両理事のダメ押しに答えて、寺尾委員長は「絶対討論を省略するようなことはしない」と約束したともいう。」――こう述べているのであります。そして、当時の真相を明らかにいたしているのでございます。  衆議院の、不法にして無謀な強行採決に続いて、参議院においても、議長職権によってこの本会議を強行開会し、数ですべてを決しようとしていますが、これは、審議の中から真実を見出そうとしないやり方で、議会制民主主義を破壊する暴挙であり、国会の権威を地に落とすものであります。このような結果を招来した責任は、重宗議長とともに、河野副議長にあると断ぜざるを得ないのであります。  河野副議長は、三日の午前十一時半、社会党より申し入れた、「四日じゅうにも委員会強行採決、六日本会議上程」の新聞、ラジオ、テレビ等の報道が盛んに行なわれているが、特別委員会の審議は不十分である、社会党は四十四項目についての質問がまだ残っている、慎重審議を尽くすよう特別委員長に善処方取り計らわれたい、との要望についても、何らの措置をしていないことは、不誠意きわまる悪質な態度であります。昭和三十九年六月、当時、暴力行為等処罰法改正案の採決にあたり、自民党が、質疑打ち切り、討論を省略、直ちに採決する動議を出して、同法案を強行可決して、もめたことがあります。このとき、重宗議長があっせんに入り、議長としては、討論省略は全会一致の場合を除いて行なうべきでないと裁定して、やっとおさまったこともあります。  このような先例もあるのですから、正副議長はこの際、その権威にかけても、日韓特別委員会の不当にして無謀な採決は認めず、委員会に差し戻し、横川委員質疑を続行させるべきことが、残された唯一の議長としてとるべき道であると確信して、六日、野党五派は、次の申し入れを議長に行なったのであります。     申入書   一、四日午後の日韓特別委員会において、条約はじめ国内法三案を含めて一括可決されたとする議決報告書が、寺尾委員長から議長宛提出されていると聞くが、これは、明らかに事実をまげて、ねつ造した文書である。   一、従って、議長は日韓特別委員会の再開、質疑の続行を委員長に勧告すべきである。   右申入れる。昭和四十年十二月七日              日本社会党              公  明  党              民主社会党              日本共産党              第二院クラブ  このまことにもっともな申し入れに対しまして、正副議長は何らの回答もなさず、逆に八日午前一時に至り最終的な調停案を示してまいったのであります。  調停案の内容は、  「去る四日の日韓条約等特別委員会における混乱はまことに遺憾である。議長としては、今後かかることは再び起こらないよう祈念し、現在の憂うべき事態収拾のため、ここに各会派の協力により、別紙のとおり本会議議事を進めたい。  日韓条約と関連三法案は、一括して委員長報告を聴取するが、その後の議事の進め方は次のとおりとする。  一、まず日韓条約を審議し、質疑の後、明九日じゅうに議了する。  一、ついで引き続き関連三法案の審議を行なう。」、  こういうもので、あくまでも四日の日韓特別委員会での無法な強行採決を認めた上に立ってのものであり、これでは問題の解決には役立たず、われわれのとうてい容認できるものではありません。この正副議長のとった態度は、野党各派の申し入れの趣旨を無視したもので、正副議長が自己に与えられた職責を果たさず、相変わらず自民党の圧力に屈して、議会制民主主義を踏みにじったものであり、われわれは心から憤激するとともに、断じて許すことのできないところであります。  また、昨八日の延会された本会議の開会に際して、河野副議長は、午前十一時過ぎ、ひそかに議長室に行くと称して副議長室を抜け出し、第六控室の自民党政調会室に入り込み、本鈴が鳴ると、ここからあたふたと本会議場に入場、この議長席に着席し、あとから入ってまいりました重宗議長と交代されているのであります。このような行動をとることは、あらかじめ議長としめし合わせておったかもしれません。しかし、あまりにも卑屈なやり方ではなかったでしょうか。国民のひんしゅくを買う、こんなばかげたことをやられては、国権の最高機関たる参議院副議長の肩書が泣いています。ここまで来れば、すべてはおしまいで、もはや河野謙三君には副議長としての資格はなくなったと断ぜざるを得ません。(拍手)  私はここに厳粛に、副議長河野謙三君の退陣を強く要求いたします。同時に、正副議長が党籍を離脱しなかったことと、副議長を野党第一党の社会党に譲らなかったことも、今日のこのような国会不在の憂うべき事態を招来した大きな原因の一つではないかと確信いたします。したがって、一日も早く正副議長は党籍を離脱することとし、副議長は社会党に明け渡すようにすることをあわせて要求し、議員皆さんが本決議案に満場一致御賛同くださらんことを切にお願い申し上げ、提案理由の説明を終わります。(拍手
  91. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 本日はこれにて延会することとし、次会は明日午前零時十分より開会いたします。  これにて延会いたします。    午後十時三十五分延会