○森元治郎君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題となりました日韓
基本条約その他の
案件について、
政府の考えをただします。
まず私は、これら
案件がどろだらけになって本院に送られてきたことに痛憤するものであります。(
拍手)衆議院において、慎重御審議を願いますという口の下から、
委員会、本
会議と、抜き打ちに万歳で強行可決したことは、わが議会民主政治破壊の暴挙であります。しかも、相手
韓国の
国会も力で突破いたしております。こんな
国民を無視した
条約の前途は、まことに暗いものがあると一、言わなければなりません。(
拍手)また、衆議院段階にありながら、参議院の自由な審議権を拘束するような計画を練って、二院制の憲法のたてまえをじゅうりんした責任は重大であります。まだ本院が
条約案件を手にしないうちから、批准書交換の口取り、全権の人選を新聞などに流していることは、本院への侮辱であり、総理は参議院の存在をいかに認識されておるかを伺います。私は、総理の口からは、好ましくないが合法だという御答弁は期待しておりません。われわれは、あすの議会政治、憲法擁護の立場から、総理の真実の御答弁を求めるものであります。
次に、本論に入ります。
今度の
条約くらい、わけのわからない
条約は見たことがありません。簡単にいえば、
韓国は八億ドルあるいは十億ドルの金がほしい。
日本は李ラインで魚がとりたい、安全に。
——この辺から火がついたかと思うのであります。
国交を正常化する相手の
韓国というのは、一体どこをさすのか。休戦ライン以南であるとは聞いております。しかし、いやしくも国家という以上、そこに領土があり人民がある、それが存立の絶対条件であります。片方がないなんという国はないのであります。しかるに、
政府は、この
条約は、領土領域はきめておりません。必要はありませんと逃げております。なぜ逃げるのか。その
理由、及び領域、領土というものはどこなのか。
朝鮮は
日本から離れた国でありまするから、鴨緑江から済州島の島までであることは、われわれは、かつて領有していた
関係からよくわかるので、その辺の国境をはっきりと示していただきたいと思います。外務大臣、なぜ国連
決議百九十五号を引用しなければその独立を裏書きできないのでしょうか。国家の
承認の要件を満たすかどうかは、
承認国が認定すれば足りるのであります。あの国と仲よくしよう、あれはいい国だ、これでたくさんなんであります。何で、よその古くさい十数年前の
決議などを持ってきて、これを正当だと言わなければならないのか。この国連
決議なるものも、今度の総会における、この二十回総会における中国代表権の
投票の例に見られるように、いつひっくり返るかわからないのであります。そのときは一体どうするのか。合法じゃない
政府だといったらどうなるのか。
政府は、そのときには調整すると言っております。一体、領土、人民をどういうふうに調整するのか、伺います。
また、
朝鮮には二つの国家があるのか、
一つの国家があるのか。
政府は、北には
一つの権威がある
——それは
朝鮮民主主義人民共和国をさすのでありますが、どういうものか、
日本の
政府は、何かあるとか、権威があるとか、念頭に置いてとか言って、名前も言わない。この名前は私が教えますが、
朝鮮民主主義人民共和国であります。その権威があることは認め、一方、
韓国の
管轄権は休戦ライン以南で北に及ばないと言う。どうも、一般
国民の方々は、二つの国家があるように考えられるのではないか。そうすると、おもしろいことになります。
大韓民国政府というのは、休戦ライン以南にある
韓国の中の唯一合法
政府ではないか。
韓国の中のですよ。そういうふうに考えるが、
政府はどうでありますか。
韓国は、その領土は韓半島全域と付属の島々であると憲法に
規定している自分を
日本は認めたのであるから、自分以外に国家はないと言う。ところが、
椎名外務大臣は、衆議院の特別
委員会で、「伝え聞くところによれば、あの国の憲法にはそう書いてあるようであります」
——一体、他国と
条約を結ぶときに、
条約締結権の問題をはじめとして、相手国の憲法を知らずに
条約を結べるのですか。
条約第三条にある、
大韓民国政府は、
朝鮮における唯一の合法
政府であるというのは、国連
決議の都合のよい部分をつなぎ合わしたものであります。すなわち、
日本は、台湾のように、南だけを認めたい、限定
承認をしたい。
韓国は、それでは困る。そこで、苦心の結果、第三条の文言が出てくるわけであります。国連
決議には「唯一合法」とはないんですよ。「唯一」というのは前にあり、あとには「合法」とあるのですね。役人の
法律屋の頭のいいのが、前と、うしろを取ってきて、「唯一合法」と、こうくっつけたのです。こういうごまかしであります。これは、何としても北の人民共和国を狭いところに押しつけて無視していきたい、これが、
韓国へのサービスであり、アメリカへのサービスだ、などと思っているのでしょう。まことに残念であります。こんなあやふやなものを結んで、北とはケース・バイ・ケース
——総理は、
国会においては外国語らしいものは使わないでもらいたい、
日本語でやっていただきたいが、北とはケース・バイ・ケースで、貿易も、人間の往来も、在日
北鮮系の住民の処遇も、やると、先ほどの御答弁にありました。こんな、のんきなことを言ってたら、
韓国は直ちに
条約をぶち壊してくる、善隣友好などとたわけているうちに、この辺は戦雲に包まれるような騒ぎになると私は思います。総理、外務大臣、どういうふうにお考えになりますか。
われわれの義務は、たとえ時間をかけても、南北統一にあらゆる援助をして、統一
朝鮮と党々の
国交を
設定したほうがよいのであります。
日本の平和と安全の道は、
日本が一番よく知っておるのであります。これは、自主的にきめる国家の義務と
権利であります。統一を阻止しているのは、佐藤総理はよく、国連方式による選挙を、
北鮮が言うことを聞かないからだと言っております。私は、そんな簡単なものではないと思う。この統一をするには、まず、南北の対立を刺激するようなことをやらない、慎み、そして、おりあらば両者の話し合い、平和ムードをつくることを助けていくことだろうと思います。幾ら時間がかかってもかまいません。十四年もたっておるのだと総理は言うが、佐藤内閣はなくなり、お互いが死んでも、
韓国もあれば北
朝鮮もある。
日本もあります。ここを戦争の場にしてはいけないのであります。それから、休戦
協定の精神を生かすことであります。また、南北の対峙する兵力の削減、軍縮、国連軍の縮小から撤退への努力などをあげることができると思います。国連軍の駐兵は国連の
決議によると言うかもしれません。
政府はそう言って逃げております。しかし、派兵十六カ国は、これは、遠い国からアジアの国まで応援に来たのであります。もうとっくの昔に帰りましたが、この遠い国々は自分のことで手が一ぱいなのであります。ややこしい極東の端っこのことに巻き込まれたくないために、駐兵の
決議が国連総会の
決議として繰り返されておるにすぎないのであります。それが証拠に、この駐兵国十六カ国のうちで、国連が侵略者だときめつけた中華人民共和国を
承認をしている国が五、六カ国あるのであります。あざやかな
外交をやっております。五、六カ国ある。この事実を一体、
政府はどうごらんになるのか。
日本政府のやることとしては、国連の注意を喚起する、このことであろうと思います。
政府の口にする国連尊重は、ときに無為無策の隠れみのにすぎません。同時に、およそ国際
紛争や対立というものは、大きく外から客観情勢の展開に待たなければなりません。スケールの大きな
外交であります。これは、佐藤さんのように、一体、将来の
外交をどうするのだといえば、
朝鮮とはこうする、あるいは中国とはどうする、ソビエトとはどうする、そういうような、個別的な、外務事務官みたいなことを言っているんじゃないんです。大きな
外交であります。
朝鮮休戦がまとまったのは、何でまとまったか。北と南がくたびれたことも原因でありますが、スターリンが死んだ後にマレンコフの時代になり、ソ連の平和的なゼスチュアが非常にあずかって力があったのであります。また、つい先ごろの核実験停止
条約の成立というものが、どれほど米ソの対立と世界の緊張緩和に役立ったかを思い知るべきであります。佐藤
総理大臣は、平和に徹し、南北の統一にもあらゆる努力をすると言っておられまするが、その
外交展開の構想、具体策はどんなものでありますか。スケールの大きいところを伺います。
また、けさの新聞を見ますと、外務大臣椎名さんはモスコーに行かれて、日ソ間の
国交調整、できれば
平和条約の下交渉に入ると書いてありますが、ここで一体、領土問題について目鼻がついて行くのか、においをかぎに行くのか、あるいは
相互不可侵
条約でもやろうという大きな手をぶちかけると同時に、アメリカ軍の沖繩徹退、択捉、国後を返せというぐらいのことを言うつもりなのかどうか。航空
協定ができたから、お祝いのカクテールを飲むようでは困るのであります。また、対中共政策も、世界の大きな流れに沿って、いまや大きく転換すべきときであろうと思いますが、あわせて
所信を承りたいと思います。
なお、
韓国は、この
条約の意義について、
日本と違いまして、共産主義侵略を防ぎ、極東の安全と平和維持について
日本に期待していると言っております。総理は、いかなる形でも、軍事的に結果する協力はしないと断言できるかどうか、伺います。
次に、具体的問題に入ります。それは竹島の問題であります。
政府は、ほかの懸案と一括して
解決すると断言されましたが、後には、せめて
解決のめどだけはつけておきたいと、
国会で割り引いて泣き言を言いましたが、これもだめ。竹島を一体放棄するのかどうか、総理に伺います。
政府は、いや、そのために
交換公文をつくってあるんだ、それには
紛争はまず
外交経路を通じて
解決するものとする、できなかったら調停にかけるんだ、その
紛争の中には竹島が入っているんだと、こういうふうな御答弁があります。一方、椎名外相は、
条約の解釈について、
社会党の皆さんは、うるさく言うけれども、それは
条約の文に書いてあるとおりに御解釈下さい。
——解釈します。
交換公文に竹島という字が一体どこに入っている。(竹島を含む)とも含まないとも、何とも書いてないのであります。この答弁の矛盾を外務大臣から伺います。
また、
韓国は、もし
日本があくまでその
主張を曲げないならば交渉を打ち切ります、すぐ帰りますと言っておるようであります。いつでもこの態度。去る六月だと思う、調印のために季外務部長官が佐藤さんにお会いになったときに、これは向こうの議事録でありますからはっきりわかりませんが、議事録によれば、佐藤さんは何とか顔を立ててくれないかと言ったと
——下品なことばであります。しかし、いまさらわが
韓国としては、こんなことをやったらダイナマイトに火をつけるようなものだから、この交渉ができなくて
条約をつぶしても、私は席をけって帰ると言ったと。そうしたら佐藤さんは音が出なくなった。何にも反響がなかったわけですね。それから調印に臨んだのでしょう。その間の事情をひとつ総理から明らかにしてもらいたい。どうも態度において、
韓国と
日本はどうも違うのであります。向こうが必死で、しつこいのであります。こっちは、ふわふわとしておる。一体、領土問題、これを総理は大きな問題と考えるのか、あるいは、たかが小さい岩礁だ、こう思われるのか、その認識のほどを伺いたいのであります。先ほど
草葉隆圓君は、竹島に警備兵がおって、鉄砲を持って武装し、かまえている、こういうお話がありましたが、今日でもなおいるようであります。昔は巡視船に鉄砲を撃ちかけてきたことがあります。本
条約には「国連憲章の
原則を指針とする」と、うたっております。
草葉さんも尋ねられ、総理もそのとおりだとおっしゃった。ところが、第二条にどう書いてあるか。領土保全その他について武力をもって威嚇し、これを行使してはならないと書いてあるのであります。
条約関係に入るというのに、憲章違反を一体、
政府はどう見ておるか。なぜかかる行動を黙認しておられるのか。私はこの事実を見て、まだ
韓国、
朝鮮の方々の中には、わがほうに対する警戒心が根強く残っていて、
条約締結の情勢にはほど遠いという証拠のように考えられます。
もう
一つ大きな問題が竹島にあります。それは
昭和二十七年、講和
条約の年の六月でありますが、アメリカは竹島を爆撃場として日米合同
委員会を通じて提起をしておる。
日本は承知いたしましたので向こうへ出した。しかし、翌年の二十八年三月に、もう使用しないからといって
日本に返された。これは皆さんも知っておられます。私も外務
委員会でやりました。竹島は、
平和条約で
日本が放棄する地域のうちに入るのか入らないのかという決定というものは、
条約起草者のアメリカがよく知っているはずであります。わがほうの個人の
財産請求権を放棄せざるを得なくなった、例の在韓
財産請求権問題で、
韓国と
日本の
意見が対立した。
日本はある、向こうはない。そのとき、
条約起草者の行司に見解を求めたのであります。なぜ、この際に見解を求めないのか。アメリカは、また、なぜ長い間、これだけの
紛争をやっているのに沈黙をしているのかも、まことに不可解であります。日米行政
協定は、
韓国領土の貸し借りをやったのか、外務大臣にお伺いをします。なお、この
条約が
実施され、円満なムードが出れば
解決するときが来ると、外務大臣はおっしゃっておりますが、そんな約束がいつ、だれとの間にあるのか、単なる希望であるのか。これもお伺いをいたします。
次に、
文化財、
文化協力協定について伺います。
文化といいますと、「かおり高い」という、まくらことばがつくのが、普通であります。かおり高い
文化。この
協定を見ると、お互いに
文化協力を緊密にしましょう、あんたのところから持ってきた
文化財を返しましょう、この二つしかないのですね。ひどい、冷たい
条約であります。冷たい
協定であります。
文化協定といえば、まあ
文化人もたくさんおられるが、もうたくさんの条項でいろいろなことを取りきめて、大いにそれをやろうという意欲を燃やしているのですが、
日本が、過去についての深い反省とあたたかい気持ちを持って、本来あるべきところへ戻してやるというところが見えないのは、どうしたことか。この点は、文部大臣、及び、気持ちでありまするから、佐藤
総理大臣に伺います。
文化協定といえば、どこでも、大体、判を押したようでありまするが、
日本とフランスやイギリスやその他の国々と結んだ中には、両締約国は、相手国の広範な知的、芸術的及び科学的活動に緊密に協力するのがねらいであって
——こんなふうに書いてあるのであります。
文化協力こそ、民族の真の理解を深める最も大事なものと思うが、それがないのであります。
政府・自民党は、
文化、芸術のセンスがあるのかどうか、疑わざるを得ません。文部大臣は、いかに考えられまするか。
文化財は、一体、向こうに引き渡すのか、返還するのか、要らないものだから持って行けというのか。どういうのか。この
協定文には、「引き渡す」とありますが、気持ちを伺います。引き渡される品物、美術品、図書類の選定の基準は、一体何か。
韓国の要求によるものであるのか、
日本が選んでやったものか。この間を明らかにしてもらいたい。重要
文化財に指定されたものがないのはどうしたわけか。国宝に指定されたものも入っていないようてありまするが、
日本には
韓国から
——朝鮮から持ってまいったもので、このような重要
文化財に指定されるものは一点もないのか、あっても引き渡さないのか、具体的に御答弁を願います。
次に、去る三十三年に、百六点の
文化財を
韓国に親善のムードづくりの名目で送っております。これらの品は、一体いまどこに保存されておるか、これをお伺いします。やったのだから、どこへ行ったって、海の中に落ちても知らないでは、済まされないのであります。聞くところによると、その品々はあまりいいものがないらしい。首飾りの玉が欠けておったり、本といえば、筆で写し直した複製品が少なからずあって、貴重な品とは言いがたいものがあるといわれております。そこで、向こうは本国にこれを送ることができないで、何か
日本の大使館の倉庫かどこかにぶち込んであるとかという話を聞くのであります。はなはだ大事な問題でありますから、この真偽のほどを明らかにしてもらいたいと思います。
ただ、最も重大なことは、今回引き渡される
文化財は、すべて
韓国に由来するものであって、
北鮮系のものは除かれているといいます。
文化財は民族伝統の宝であります。政治権力の所在によって区別さるべきものではないと思います。
文化財まで二つの
朝鮮の考えを露骨にあらわすに至っては、これは気違いのさたであります。その
理由をここに明らかにしてもらいたい。同時に、
北鮮のものは一体何点ぐらいあるのか。今後いかにこれを処置するつもりか。向こうから要求があれば引き渡すのかどうか。
終わりに、
総理大臣に伺います。
植民地の支配や侵略の過程で、西側の大国は、いろいろなものを本国に持ち込んで、博物館、美術館に飾っておりますが、これらは、それぞれ自分のあるべき国に返してやるのが筋だと思いまするが、
政府の
文化政策を伺いたいと思います。
漁業関係に移ります。
漁業関係といえば、何といっても李ラインの問題に帰着いたします。
政府は、一貫して李ラインが不法不当だから撤廃させると公言してきましたが、結果を見ると、この
協定によって実質的に撤廃されたとしております。しかるに
韓国は、この
協定は、李承晩大統領宣言の
趣旨にかなうものであるから、いよいよもってその存在が明らかになったとしております。撤廃というのと実質的に撤廃というのとは、これは公約の大きな違反でありますが、何と
説明されまするか。
政府は、
関係水域で安全操業ができればいいので、向こうが李承晩宣言のことばを、いつどこで使おうと、
わが国は無
関係だと言いまするが、このラインは、はなはだかってきわまる話でありますが、
韓国の主権線と言っておりまするから、向こうの都合で、いつでも動き出すものであります。なるほど、
漁業協定があっても、国防というような、国家非常の場合には、また別な観点から、どんな
措置をとってくるかもわかりません。これは、こちらの知ったことじゃないでは済まないのであります。明快な
措置をなぜとっておかなかったか、外務大臣、農林大臣に伺います。
漁業の点からしても、
韓国には
漁業資源保護法という、李ラインを裏づける国内法があり、これを改廃する様子は全然ありません。
政府によれば、どんなものがあったって、国際法は国内法に優先するから、
韓国は
協定の相手国である
日本に対して、何らの拘束力を
主張し得ないのだ、こう言っております。ところが、ちょっと理屈ぽくておもしろくありませんが、国際法と国内法との
関係は、法理論として、昔から、国内法が上位であるとか、法域を異にするという二元論もあれば、
政府の言う国際法上位論をとる国もあります。新興国、こういうのはナショナリズムが強いから、国内法が上になるのだという見解をとっているところも多いのであります。国家はそれぞれの立場をとれるので、他国の制肘は受けないものであります。こんな法理論を振り回して政治問題を
解決しようというのは、これはわれわれは全然説得力はないと思いまするが、外務大臣の御所見を伺います。
外務大臣は、また衆議院において、
韓国の資源
保護法は、この安全操業を取りきめた
協定ができた以上、適当なときに廃止するのが
条約に基づく義務であり、それを期待すると発言しております。かかる
条約上の義務ならば、なぜ大好きな
条約文に書き入れていないのか。国内法の改廃は
韓国の国内問題だから、
わが国は関知しませんという従来の
政府の
説明とも矛盾するのでありまするが、外務大臣の御答弁を伺いたい。
政府は口を開けば、国際法や国際慣行は尊重しなければならないと言う。しかるに
韓国の
漁業水域の外側六海里の入り会い権の放棄をいたしております。
韓国はその気前のよさにあきれておるようでありまするが、なぜ
政府は、世界が長い年月かかってやっとでき上がってきた、この入り会い権というような国際慣行をあっさりと捨ててしまったのか。将来に大きな影響があると思いますので、農林大臣に伺います。
韓国の
管轄権の及ばない休戦ラインの北の
朝鮮民主主義人民共和国のほうまで
韓国の
漁業水域を
設定したり、
共同規制水域まで
合意をしてやっておられまするが、これは
韓国が
朝鮮の唯一の合法
政府であることのかっこうをつけてやるためにやったことかどうか。また、
日本漁船がこの方面の専管
水域あたりに出漁して事故があった場合、それは
韓国政府が責任をとってくれるのか、
韓国と話し合えば片がつくのか、その辺のことも伺いたいのであります。
次に、実質的な点をお伺いいたします。この
協定によって
日本は大きな漁獲高の影響を受けると思いまするが、その予想をひとつ数字で伺いたいことが
一つ。もう
一つは済州島付近の漁場であります。ここは黄金の漁場といいまして、済州局のこの左右
——東西、ここにはたくさんの魚が集まってまいりまするが、何ぶんにもここには大きな潮流があり、左右に分かれて北進をいたします。ところが、この潮の速さは一時間五ノットもある。まき網で、これは
共同規制水域の境目で一番魚がいるというところで網をおろせば、一時間で五海里は向こうの専管
水域に入ってしまうのであります。だから、たくられてしまいます。そうすると、たくられないためには、少なくも十海里なり十五海里、あるいは二十海里、
相当の距離まで下がって網をおろして、
協定線のところで揚げる。風に押し流される、潮に流されるで、しかもこの辺はたくさんの船が込み合いまするから、たいへんな事故が起こってくる。しかも
韓国にはみんなつかまってしまう。いい「えさ」になると思うのでありまするが、この辺について十分の対策と配慮を持っておられるのかどうか。また、
韓国には魚の冷凍や保存施設も十分でないので、とった魚をそのまま
日本の港に持ち込んでくることもあるでしょう。そうなれば市場は撹乱されると思うが、これにどういう手だてがありまするか。
次に、
請求権、
経済協力について伺います。
平和条約四条にちなんだ
請求権の
解決は、結局どんぶり勘定八億ドルという
経済協力に変わってしまったことは事実であります。
条約に
規定したこの
請求権解決の方法というのは一体どこへ飛んでいってしまったのか。また、この八億ドルの積算の根拠は何か。
韓国が
日本に出してきた対日請求八項目は、
政府の計算でもせいぜい五千万ドルとはじいております。それが八億ドルにふくれ上がったのは驚きます。大蔵省、外務省が試算するという五千ドルの根拠と八項目の
内容を
説明してもらいたい。李承晩大統領が出した七十億ドルの対日
請求権の要求は別としても、
韓国は大体これ一まで六−八億ドルの線で
日本に要求をしております。妥結したところを見ると、ちょうど向こうの数字にぴったり合うのであります。ですから、これはほんとうのつかみ金、どんぶり勘定と見なければなりません。
日本側も、個人の
請求権はだんだん額を上げて、五千万ドルぐらいあると、当時小坂外相が
主張したことがあるらしい。ここに双方の要求額を、日韓交渉以来のものを順序をつけて明らかにしてもらいたいのであります。何年度はこっちは何千万ドル、向こうが幾ら。ことに、
韓国が二十八年ごろ、終戦時の評価で九十億円から百二十億円の対日
請求権があると言っていたのに対し、三十六年から八年の間に八億ドルにはね上がってきたのは、どういうところをなめられたのか、これらを明らかにするのが
国民に対する
政府の義務であります。
アメリカは、三十億ドル以上の
経済協力を
韓国につぎ込んでいます。たいていの国は、援助というものがありますると、みな立ち直っています。それがなぜできないのかというと、
韓国がいたずらに反共を唱えて軍事に狂奔し、アメリカの援助政策もまた軍事中心であったために、経済の基盤が今日までとうとう固まっていないのであります。この誤った考え方の根本を是正して平和共存の方針に切りかえなければ、このわれわれの
経済協力は、いっときのささえにしかなりません。
日本の財界、産業界は、不況打開のため
韓国進出にしのぎを削っております。そして安い労働力に目をつけております。
韓国ではこの動きを
日本の経済侵略と見ている者が多く、一歩間違えば
国交開始前よりももっとひどい状況になります。この面からも
条約締結はやめるべしと思うが、外務大臣の見解を伺います。
政府は、北
朝鮮に対する
請求権が残ると言っております。残るのはあたりまえであります。
日本は
平和条約上、全
朝鮮と
請求権を処理すべき義務があるからであります。
北鮮政府とは、いつ交渉をやるのか。双方の
請求権はどのくらい残っているか、試算をしたものが当然あるはずでありますから、明らかにしてもらいたい。
なお、個人の
財産請求権の保障については、再再
政府から、審議会の答申を尊重するというお話がありますが、この尊重するということは、必ず実行する
——お金が大きくちゃ、たまげちまう。そうでなくて、実行してやるのだという御決心があるかどうか、承りたい。
これで終わりますが、これを要するに、この
条約は、いろいろな面で、将棋でいう詰めがなされていない。食い違いが多い。
条約交渉の中間報告といったような
内容のものであります。
基本条約と称せるものではありません。妥協の産物たる
条約でありまするから、これが
実施された暁には、
条約締結の心組みの違いというものが、
在日朝鮮人の
法的地位や
待遇の問題に加えて、ことごとく
日本にはね返ってまいることは必至であります。もし、この
条約がほんとうによいものであるならば、
日本におる
朝鮮人がみな
韓国籍になだれ込んで入っていくだろうと思います。しかし、約六十万の
在日朝鮮人のうち、
韓国籍が依然二十万、あとの
北鮮系、中立系その他の
朝鮮の人々は四十万
——動かないのであります。このことが、どういう
条約であるかをりっぱに証拠立てているものと思います。
私は、最後に、この
条約はせっかく椎名さんが御苦心しておつけになったが、もはや無効である、こう信じて私は終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕