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1965-12-03 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月三日(金曜日)    午前十時五十分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月三日     辞任         補欠選任      曾祢  益君     向井 長年君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 梶原 茂嘉君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 近藤英一郎君                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 中村喜四郎君                 日高 広為君                 廣瀬 久忠君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君     国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大臣  石井光次郎君         外 務 大臣  椎名悦三郎君         文 部 大臣  中村 梅吉君         農 林 大臣  坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         国 務 大臣  松野 頼三君     政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁長官官房         長       海原  治君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         防衛庁教育局長 宍戸 基男君         防衛庁人事局長 堀田 政孝君         防衛庁経理局長 大村 筆雄君         防衛庁装備局長 國井  眞君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 津田  實君         法務省入国管理         局長      八木 正男君         外務省アジア局         長       後宮 虎郎君         外務省北米局長 安川  壯君         外務省経済協力         局長      西山  昭君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         文部大臣官房長 安嶋  彌君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         農林大臣官房長 大口 駿一君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         水産庁次長   石田  朗君    事務局側         常任委員会専門         員       増本 甲吉君         常任委員会専門         員       結城司郎次君         常任委員会専門         員       坂入長太郎君         常任委員会専門         員       渡辺  猛君         常任委員会専門         員       宮出 秀雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付) ○派遣委員の報告     ―――――――――――――
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。本日曾祢益君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案  以上四案件一括議題とし、質疑を行ないます。中村英男君。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと資料について。  委員のほうから、いままで再三にわたってこの資料要求をやり、そのつど毎日の理事会におきましても要請をしておるんですが、本日の段階に至っても、なおかつ出さないというものが多々あるわけでございます。こういうことは、ひとつ総理外務、各責任者としては、十分反省をしてもらいたいと思うのです。  たとえば、政府提出できないと言うているものの中に、韓国から要求された文化財返還目録というものがあります。それで、これは韓国から日本政府あてにきた全文をそのまま出せないのであれば、何と何を要求されたか。その項目だけでも資料として出すべきだ。こういう要求をしておるのでありますが、そのようなことも今日まできちんと出されない。あるいは共産圏渡航に関する昭和三十一年の次官会議決定、これにつきましてもいまだに出そうといたしません。二つとも委員長理事打ち合わせ会におきましては当然これは出すべきだということで、一致してこれは要求しておるものであります。共産圏渡航に関する次官会議決定に関して、その出せない経過をいろいろ担当者から聞くわけですが、一つも納得のいく説明がございません。外務大臣からなぜ一体こういうものがわれわれに対して出せないのか、はっきりこの理由を示してもらいたい。担当者の若干の説明によりますと、これは確定的な標準ではないんだ、こういうことも言われます。おおよその基準だ、そういう説明がありました。おおよその基準でありましても、われわれ国民渡航を申請した場合に、やはりその基準によって処理されておるわけなんです。国民渡航に関する権利義務に重大な実際上の影響があるわけなんです。決して役所の中だけで隠して持っておるべき問題では私は断じてない。ことに、この韓国から要求された文化財返還目録ということになれば、これは若干外国との関係がありますが、われわれ国民が外に行くという場合の基準というものは外国には少しも関係のない問題なんです。なぜ、そういうものをあくまでも、理事会要求にもかかわらず秘密にしなきゃならぬのか納得できない。御承知のように、この基準北朝鮮に対しては特に厳格に強く適用されておるわけですね、北朝鮮に対しては特に。この日韓問題において北朝鮮との関係ということは非常に重要なこれは審議の対象なんです。そういうことに関連して、この資料要求をしておるわけでありまして、ただ軽く私たちがあったら見せてくれいと、そういったようなものではない。なぜ出せぬのですか、こういうものをいつまでも。外務大臣総理のはっきりとした見解をこの際承りたい。
  5. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまの外国渡航に関する次官会議申し合わせ事項及びこれに関連する閣議了解、これは純然たる行政の行為の大体の基準内部的にきめておるものでございまして、行政上のこれは一つの覚えとしてつくっておるものであって、いわゆる国会提出すべき資料というような範疇に属するものではない、こういうものは出すべきものではない、こうわれわれは考えております。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 委員長、そんなことで納得いきますか。行政内部のことだと、行政内部のことにきまっていますよ。行政以外のことなどこちらが要求しておるわけじゃございません。行政内部のことについて国会が調査をする権利を持っておるのに、あなたの説明からいうならば、行政内部のことだから、したがって、当然出すべきだという結論になるじゃありませんか。しかもそれは、私が申し上げるように、行政内部のことであって、単に役所の中の仕事の処理とその基準ということじゃなしに、同時に、それは国民権利義務に直接つながっておる問題ですね。つながっておる問題なんです。純然たる行政内部とはいえない、そういう意味では。われわれがまた審議するのも、行政内部国民関係のあることについてだけ特に審議したいわけなんです。そんな説明では納得できない。ことにこういう次官会議決定というものは、十年もすでにたっておるわけでしょう。はなはだこれは少し古過ぎると、手直しをしなければならぬのじゃないかというふうな意見が、外部はもちろん内部にも起きておる重要な問題なんですね。そうでしょう。だからそういう状態にあるものを、われわれが手直しをするならば、ここをこうすべきじゃないかとか、ああすべきじゃないかとか、そういう意見を出すのは当然だし、皆さんも、国会等においてそういう点の意見を聞いていただいて参考にもまたしてもらわなきゃならぬわけです。ただいまのような答弁で、ああそうですかと引き下がるわけにはまいりませんよ。行政内部のことだと、そんなこと言い出したら――各省にわたりまして国民関係のあることでありながら、しかし、行政内部でいろいろ処理をする基準というものがある。そんなものはみな見れぬようになるじゃないですか。国会は何を基準にして批判をすることになるのです。委員長から警告してください、出してくれるように。委員長理事打ち合わせ会できめておるわけですから、私だけ、われわれだけの立場が無視されるわけじゃない。委員長自身だってそういうことで引き下がれないはずなんです。どうなんです委員長国会立場考えてください、そんなことをあなた前例にされていったらたいへんですよ。委員長注意しなさい。あなた、新聞等によれば何か自民党のほうでこの審議についていろいろなことを画策を始めておるのでしょう。少なくとも資料くらいそろえなさいあなた。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかくいまから十年前にきめたものでもりまして、これはもう単に渡航許可すべきか、すべからざるかというような場合においてほんの参考基準として定めたものでございまして、その後提出をしばしば求められたようですけれども、これはもうほんのこの参考であって、これをもし公表するということになると、かえって許可、不許可基準として固定化するような形になる、一体そういうものではないのでありますから、それでただこれは提出すべきものではないというのでお断わりしてきておるのであります。どうぞその点を御了承願います。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 委員長、ああいうことでいいんですか、委員長、どうなんです。あなたの考えを聞かしてください。国会立場考えてもらわなければいかぬですよ。
  9. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) お答えします。一応最高責任者であられる椎名外相がいまあのような事情を話されたのですが、私はそれを全面的になるほどとも考えていないし、したがって、この問題についてはひとつ委員長おまかせを願って、私がまたこの委員会終了後にでもまた折衝をいたしまして、いよいよいかないものかどうか。まあ大臣がああやって言明されたのだからいかないとは思いますよ。思いますが、われわれはぜひにもほしいという皆さん方の御要望もあるので私におまかせください。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、それは委員長おまかせもしましょう。国会審議権というもりを十分尊重して、その立場でこの処理はしてもらいたい。ただいまの外務大臣説明を聞きましても、これは発表すると誤解を与えてもいかぬ、という意味のことも言われました。しかし、国会議員はそういうことは誤解しません。このものさしで全部処理しているわけではなしに、大体の基準だからそのつもりで見てくださいと言えば、もちろんわれわれはそんなことはそのつもりで受け取ります。マスコミの方々にしたって、ちゃんとそういうことで間違うわけがありません。そんなことで自分たちの持っておるものさしというものを秘密にしておくということは、そんなことは許されません。誤解などは一つもしません。したがって、そういうことは、委員長のほうから前向きで、この問題はきちっと片をつけてもらいたい。  それからもう一つ韓国から要求された文化財項目だけ明確にしろ、要求された全文そのものの写しを出せいというと、韓国との関係ができるから……項目だけでも明らかにしなさい、こうなっているんですが、これは一体どうなっているんです。これも委員長から言ってください。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 目録だけでもとおっしゃるが、目録すなわち実体を表明するものでありまして、これはいま外交折衝の途中でございますので、これはただいまの段階では差し控えさしていただきたい、こう思います。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 まあこれも委員長に一任しますわい。だめだ、そんな秘密外交は。
  13. 中村英男

    中村英男君 私は、日韓漁業協定竹島の問題について質問申し上げますが、この漁業協定につきましては、日本漁民、ことに西日本漁民安全操業ができるかどうか。ことにこの審議を通しましても韓国魚族保護法がそのまま残っておりますが、しかし、専管区域規制区域、そういう措置の中で解消されておると、こう思われますけれども平和ラインあるいは大陸だなの宣言は、きのうの渡辺君の質疑を通してみましても、向こうは廃止する、撤廃するということを宣言してない。そういう意味で非常に安全操業ができるかどうかということを非常に西日本漁民心配をしておる。同時に漁業面でいろいろ制限を受けたり、ことに、今日まででも魚族枯渇はしておるが、将来韓国漁業が発展すると漁族枯渇がなおひどくなって、実際には漁獲高が減ってくるじゃないか、収入が減るじゃないか、そういういわば希望と心配できわめて複雑な表情をしておるのが現時点における西日本漁民のように思うのです。そういうことですから、私はきわめて端的に素朴に質問申し上げたいと思います。  まず総理大臣にお伺いしたいが、李ライン不当性政府国民は言っておるが、一体具体的には不当とはどういうことであるかということをまずお伺いしたい。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういう問題は国際法上まずきめられる。これが国際法上から見まして、いわゆる李ラインなるものは私どもは違法、不法だと、かように考えて認められないものだとかように思っておるので、その意味主張をしておるわけでございます。
  15. 中村英男

    中村英男君 こういう不当なラインであるということを日本政府もかねがね主張しておるのですが、この不当なラインでたくさんな漁船があるいは船員が拿捕されているのですね。そういう点について私は今度のこの交渉を通して非常に不満なんですが、もっともこれは非常にむずかしいことと思うのですが、政府が、不当であればやはり拿捕された船、船員、それに対する請求国内補償にせずに、やはり韓国へして、不当性を明快にすべきであったではないかと思うのです。これはもっともむずかしいことなんです。むずかしいことですが、それはやはりすべきじゃなかったかと思うのですが、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中村君の言われるとおり、これは当方請求すべきことだと、こういう事柄折衝いたしまして、そして向こう側からもこちらへ請求するものがある、こちらからも請求するものがあるということが幾つか出てまいりましたものが、いわゆる請求権解決方法としての外交折衝であった。外交折衝外務大臣からしばしばお答えいたしておりますように、そういう意味請求権の確認問題では双方で話がつかない、別な形において、いわゆる経済協力の形で請求権問題も最終的に完全にこれを解消した、かようないきさつになっておるわけであります。この問題だけを切り離してみれば、中村君のお尋ねのとおり当方請求して、そうして処理すべきものである、いまの補償などのような問題でないというのが本来の筋でございます。
  17. 中村英男

    中村英男君 そういうことはわからぬではないんですが、そういう処理のしかたが、平和ラインが撤廃されずに安全操業ができるかどうかということを漁民心配していると思うんですね。そこで、これは藤山さんが外務大臣のときですけれども、やはりこういう点では総理処理しにくかったと思うんですが、日本国において収容されている韓国人及び韓国において収容されている日本人漁夫に対する処置に関する日本国政府大韓民国政府との間の了解覚え書きというのがあるんですね。これによると、大韓民国政府は刑を終わって大韓民国外国収容所、これは釜山ですが、外国収容所に収容されている日本人漁夫日本国に送還し、及び第二次世界大戦後の韓国人不法入国者の送還を受け入れる。この了解書は署名の日に効力を発生する、これは一九五七年の十二月三十一日に東京で作成されているんですね。藤山愛一郎金外相、こうなっているんですね。これはこのときにすでに外国収容所に収容されている日本漁夫は刑を終了しているということを確認しているんですね、日本政府が。日本人から言ったら何ら刑を受けるべきものじゃない。これは公海で漁業をしているのを拿捕しているんですから、これはきわめて不当な、不法なことなんです。それをここで刑を終了していると、刑を受けたのが当然だということを日本政府は認知して受け取っておるんです。こういうやり方を過去においてやられておるから、総理としては、引き継がれた総理としては、非常に私はこの問題はやりにくかったろうと思うのですよ。思うけれども、やはり李ラインがなくなったということを日本政府が言うなれば、やはりこの不当性を、請求権を相殺せずに、不当性を明快にするためには、やはり請求権というものはむずかしいことではあるけれども韓国が私は補償すべきであると、こう思っているんですね。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私がお答えいたしましたように、この問題だけ切り離していえば、ただいま中村君のお説のとおりの議論が正しいと、かように思います。日韓間の問題はいろいろ複雑な問題を持っておりますので、政府がいわゆる一括解決ということをしばしば申し上げてまいりました。こういうような事柄につきましても、日本側正当性あるいは韓国のこのことについては主張が正しくないとか、あるいはまた、韓国側で他の面においては日本要求するものもある。こう幾つも複雑な関係にありますので、その一つ一つについて裁定を下さないで一括して処理していく、こういうような方法をとっておる。まあこの点において、どうも一括処理といいながら竹島が残っているじゃないか、これは昨日もお答えいたしましたように、一括処理ができなかったのはまことに残念で、申しわけなく思っております。かように申している。ただ、これにいたしましても、将来の解決の方向というものはきめてある、そういうことでごしんぼういただきたいと、かように申しておるのであります。ただいま中村委員から御指摘になりますことそれぞれの問題は、理論的には私は異論を申し立てるものではございませんけれども、しかし、一括処理、全体をどうすれば親善友好関係を樹立するか、こういう観点に立って処理したい、こういうことでございます。また、他の面で、漁業協定等についていろいろの批判も受け、もっと日本は譲らないではっきりすべきじゃなかったか、かような激励も受けておりますが、これはしかし、申し上げますように、双方が互譲、互いに譲り合ってそうして初めてこのむずかしい交渉ができ上がった。そういう意味では妥協ででき上がっているものでありますということも率直に私どもが認めて説明をしているような状況でございますので、ただいまの問題もその一つの問題だ、かように御了承をいただきたいと思います。
  19. 中村英男

    中村英男君 いや、それは私もわからぬことはないんです。わからぬことはないけれども、少なくとも李ラインでどういうことをされたかということは、総理も山口県ですから御承知のことと思うんですが、非常にくどいようですが、私は、これは李ラインを宣言して今日まで漁夫が四千名拿捕を受けている。漁船にして二千三百二隻ですか、この中で沈没された船も三隻あるんです。また、未帰還の漁船も百七十三隻、死亡した人も五名ある。非常に抑留中に乱暴されて今日病床にある乗組員や、このために漁業ができずに転落して、生活の保護を受けている漁家もあるんですね。これらのことについては、後ほど国内補償の問題で農林大臣なり、大蔵大臣に質問したい思いますが、こういういわばこれは涙金なんです。こういう涙金処理されることを一体こういう被害を受けた人たちは金高の多い少ないじゃないんですね、こういう涙金処理されることは私は本意ではないと思いますね、そういう点をひとつ、私はいまの総理答弁はわからぬことはないですけれども、本意でないのだ、こういうことはひとつ御留意をいただきたい思うのです。こういうひとつやり方をされますから、国民感情としては、御承知のように、この李ラインを引いたためにたくさん拿捕されている、昭和二十七年ごろには西日本漁民ははち巻きを締めて東京へ出てきて非常にやかましかった、デモをしてやかましかったんです。そういう前後の日本国民感情としてはどういう感情になったかというと、韓国にばかにされているんだ、これは軍備を持たなきゃいかぬじゃないかという、そういう軍備の増強しなきゃならぬじゃないかという熱をあふったんですね。私どもアメリカ大使館に行ったんです、アメリカ居中調停ができる立場にあるじゃないか、韓国日本の間にあってアメリカはなぜそれを放任するか、居中調停をしてこういう不法なことをしないようにあなたのほうから、アメリカさんから言ったらどうかということを、私どもアメリカ大使館へ行って申し入れたことがあるんですね。こういう居中調停ができるアメリカが、今日までほうっておくということは、これはほかに目的があるんじゃないか、日本をして軍備を持たなかったらいかぬじゃないかということを刺激することにそれを利用しておるんじゃないかとさえ日本国民誤解したんですね。ですからこういう重大な経過があることですから、私は総理処理されたことはわからぬことはないですけれども、あまりに私は簡単過ぎる、こう思っておりますから、そういう点を総理に質問したような次第であります。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの点は私簡単に説明をいたしましたけれども、その簡単な結論が出るまでにはずいぶん複雑な交渉をいたしておるのであります。歴代農林大臣漁民あるいは漁業家の損害賠償について強い請求をし、しばしば交渉も持った。このことは中村君も経過は十分御承知だと、かように思うのでございますが、しかし、これの事柄をいろいろ説明し、いろいろ要求もし、話もし、交渉も続けたが、とにかくなかなか受け入れてくれない。そうして最終的にただいま申す結論的な一括処理と、こういうことで、やむを得ずそういう処理にいたしたと、かようなことを実は申しておるのであります。ただいま言われる事情をよく御理解をいただいておるが、歴代の農林大臣が、わが国の漁民漁業家等の保護のために正しい主張を何度も繰り返しておること、これまたこれも御承知願えておると思います。私は簡単な結論だけ申しましたので、非常にあっさりしているようにおとりかと思いますけれども、そういうものではありません。また、今回も補償、見舞い金等を出すにいたしましても、私は特に気の毒に思いますのは、零細な漁民、そういう方がただいまあげられましたように、日常の生活にも非常な苦痛を感じておられる、こういうようなことを特に勘案いたしまして、そうしてこれらの方々に十分手厚い処置のとれるような方法で、いま予算を要求しておるような次第であります。これらの事柄も、大企業ももちろん多大の損害をこうむるわけでありますが、しかし、これらについては救済の方法が、別途また保険その他の問題があるようでございますが、零細な漁民についてはそういうような救済の道もないのでありますから、政府が十分めんどうを見るということでなければならない、かように思って、こまかな注意もしておるような次第であります。
  21. 中村英男

    中村英男君 椎名外務大臣にお伺いしたいのですが、これ竹島の問題なんですが、いままでの質疑を通して見ますと、大臣は、占領しておることを実力で排除しようとは考えていない、こういう御答弁でしたが、そうなると、大臣のおことばを信用しても、なかなかこの竹島の最終的な結論というものは相当の時間を要すると見なきゃならぬですね。そうすると、一体、この地域における漁業補償の問題も出てくるんじゃないか。これは外務大臣よりは農林大臣の所管かと思うんですが、それじゃ最初に農林大臣にお伺いしますが、相当長い時間、結論が出るのにかかると思うんです。竹島周辺における漁業政府も世間もきわめて簡単に考えておるようですが、これはもうたくさんあるんですね。ですから、こういう補償をどうするかと、こういう点をひとつお伺いしたい。
  22. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 竹島の問題については、いまのような関係に相なっておりますので、私どもとしても、やはり理論的には、どうしても向こう漁業水域十二海里を設けなければならぬと、こう思うのでございます、理論的には。しかし、それがいまのような実態にありまするので、かえってそれは紛糾を助長するようなことに相なってもなりませんというようなことも考えておりまするので、そういう方向はとらずに進んでいきたいと、こう考えておりまするが、補償等の問題については、いまそういう問題について検討中でございまするので、したがって、その問題もまだもちろん考えておらぬわけでございます。
  23. 中村英男

    中村英男君 漁業の問題は検討中でまだ考えていないということは、ちょっと私宅了解しにくいんですが、これは農林大臣、あそこはサバやアジの漁場なんです。これはまき網二十統で四月から八月までにやれば二万八千三百トンぐらいとれるんですね。これを数字ではじいてみると、大体十五万トンぐらいが水揚げが可能だと、こう言われておるんですね、十五万トン。十五万トンといいますと、いま規制水域内において規制されておる漁獲量なんですね。ですからたいへんなこれは漁場の放棄ということ、専管水域を設けぬということは。占領されたままでおると漁場に行けませんから、検討中ではあるが、まだ考えていないということでは因ると思うのですね、もう少し具体的に補償しなければいかぬとなれば。
  24. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、中村委員も御存じのとおりであると思いますが、あすこに共同許可線がございます。でしかし、いろいろいまのような実態にありまするので、それがいま許可されただけで、現在何もやらずに残っておると、こういう実態でございます。したがって、現在それらの問題についてもまだ活動しておらぬわけです。そこで私どもとしては、どうしても理論的には漁業水域設定すべき筋合いのものであることは、これは御存じのとおりでございまして、ただここへ賠償というものを、漁業水域設定しない前に、賠償という問題が出るということは、これは非常に私どもとしても領有権を放棄したようなことに相なっても困りまするような関係がございまするし、いま許可したやつも動いていない、長い間動いていないという実態でありまするので、それらの問題を検討しておるということでございます。
  25. 中村英男

    中村英男君 これは大臣間違えておいでになるのですよ。これは竹島の周辺は規制区域になっている。平和ラインの中には入っておったけれども、今度のこれでは、新漁業協定は、これは鬱陵島のところは規制区域に入っていっておる。竹島のところは規制区域からうんと離れておるのですよ。関係ないんですよ。それからいますぐというわけではないが、これは当然占領しておるのですから、私どもが視察に行きたくても行けない。こういうことですから漁業には行けないんです、現実には、どうあろうとも。ですから、これは形は何も金で補償するということじゃないのですよ。形はその他の統数を考えるとか、以東底びき、まき網のことを考えるとか、あるいはこれは隠岐の五個村の久見に所属しておるのですね、ですから、隠岐島の施設についてどう考えるとか、漁民をどうするとかいういろいろ具体的な問題があろうと思いますけれども、少なくとも占領して専管区域をいまのところは引かないということになれば、当然補償の問題が起こってくるのです。これは具体的にやはり考えなければいかぬですね。
  26. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いまお答えしたようなことでありますので、いま検討中でございます。ただ、補償するということにきめてしまいますと、どうも領有権の問題に関連する。共同規制水域でなしに、いわゆる十二海里の漁業水域のことを先ほど申したのでありまするから、そういう問題がいま現在それじゃ漁業水域設定したらどうかというお話もあろうかと思うのですけれども、それは現在の実態の状態のもとにおいてそれをやりますることは、かえって紛糾を困らすようなことになるのじゃないかということも考えておりまするので、その漁業水域、いわゆる十二海里の沿岸水域ということの設定についても、権利は持っておるつもりでおるわけですけれども、その竹島の現状から見まして、それもできない。それから補償という問題にしてしまいますと、領有権を放棄したようなことにもなるようなことも考えなければなりません。そういうこともむずかしいというので、それもできません。しかし、その竹島のほうに漁業をいたしておりましたる者も、最近は動いていないわけでございまするけれども、その地帯においての漁業者の問題を、別の意味でどこに働く場所があるかといったような問題については十分考えていきたいと、こういうふうに思っておるわけであります。
  27. 中村英男

    中村英男君 せっかく専管水域の話が出ましたから、もう一つお伺いしますが、これは韓国のほうも韓国の領土だと、こういうことで専管区域を設けると、こう韓国国会では言っておるのですね、日本国会ではあなたのおっしゃるように、これはなかなか日本の領土だから、専管区域を設けようと思うておるが、紛糾のたねになるからどうしようか、こういう御意見のようですが、私はこの際韓国のほうで専管水域設定すると言えば、日本日本の領土であるということになれば、専管水域設定したらいいじゃないですか、そうしますと、これはもちろん紛糾になります。漁業協定の九条に引っかかるものですね、九条に。九条に引っかかるということは、いまのような事態にほうっておくと、これはなかなか近い将来に解決のめどはつかないということは予想されるのですから、九条に引っかけたら私は紛糾になって、処理が早いのじゃないかと思っておるが、どうでしょう。
  28. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) その点については、私どもも非常に検討を加えておるのでございます。そこで今度この条約に基づく日本沿岸における漁業水域設定に関する法律をお願いしておるわけでありますが、そのときには個所を指定しないで、政令でその地域を決定するというふうにいたしましたのでございます。これはまあ御質問とは離れておりまするが、対馬の近海をやるということで、これはまあそういうことでいま準備中でありますが、竹島の問題につきましては、いまどうしたほうが一番いいかという問題もあろうかと思います。それらについて、先ほども申しましたように、検討中なんでございます。
  29. 中村英男

    中村英男君 これは検討中でなくして、私の言うように、韓国設定するというのですから、設定してしもうたらこれはやはり占領しておる、専管区域設定したということになれば、竹島韓国のものだということを確認するようなものです。ですから、これは日本のほうでやはり対島以外にもここを設定すれば、漁業協定の九条にひっかかるから、紛糾になって、紛争の場面に出て竹島処理が早いではないかということを私は進言しているのです。
  30. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いまの御進言についてはつつしんで拝聴いたします。
  31. 中村英男

    中村英男君 つつしんで進言を聞かれるということですから、私は大いに期待をいたしております。そうして早くこれを処理していただきたいものだと思っております。  これは椎名外務大臣にお伺いしたいのですが、竹島が占領されておる。いろいろ施設をされております。これを実力で排除するつもりはない、こう言われるのですが、そうなってくると、なかなか近い将来に調停にかかりそうにもないし、非常に長い時間がかかると思うのですが、私は、外務省はどうも勉強が足りなかったのじゃないかと思うのです、この処理の問題で。それはどういうことかというと、竹島韓国の領土であるという宣言を韓国がしてこの方、十数回の口上書で日本外務省は強い抗議をされておるわけです。されておりますが、その過程において、この長い年月の間話し合いの場面が数回あったわけです、韓国外務省と日本外務省が。したがって、そういう単なる口上書でなくして、竹島の問題は話し合いの場面に出すべきだった。しかも出して――私のこれは考えでは、外務省が勉強が足りないというのは、これは歴史的に見て、鬱陵島を昔は竹島と称しておったんですね、礎竹島あるいは竹島と。そうすると、いまの竹島竹島に名称を変えたのは明治三十八年である、それまではほかの名前だったんですね。ですから、これは日本外務省も韓国のほうも、鬱陵島の竹島をすりかえた、意識的か、作為的か、無意識的かは別としてすりかえられて、こういう間違いから、私はこれは日本のものだ、韓国のものだという、そういう争いが出てきたと思うんです。したがって、この歴史的なそういう経過についての私は外務省の勉強が足りなくて、そういう場面に出して、これはどうも名前の取り違いじゃないかという話はされなかったんじゃないかと思うんですが、外務大臣どうですか。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私その経過についてよく勉強しておりません。アジア局長から……。
  33. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘のとおり、この鬱陵島と、それからいまの竹島の名前が途中から変わったことが混乱を起こし、特に韓国側にいまの竹島韓国領であるがごとく思わせる一つの原因になったことは確かにそのとおりでございまして、この間、衆議院段階におきます参考人の御陳述の中にも、林子平さえも竹島韓国領と認めておるというような御発言がございましたが、これもやはり鬱陵島のことでございまして、日本人の中にもそういうふうに昔から間違った観念があったわけでございますが、この点は竹島問題が起こりましたときから外務省としては十分認識しておりまして、韓国側に出しましたこのメモと申しますか、抗議書にもその歴史的事実ははっきり指摘しておる次第でございます。
  34. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 関連。農林大臣に伺いますが、問題処理の前進の手段の方法として、竹島を専管水域設定するというただいまの中村委員の質問に対して、あなたはつつしんでその意を体すという意味答弁があったのですが、この関連する水域設定、法律に基づく政令が準備されていると思うのですが、現在ではどういう構想がこの政令の案になっているか、まず、それを伺います。  第二点は、もしも、その案に竹島水域設定の問題が取り上げられていないとしたならば、この問題を積極的に解決する手段の大きな手がかりとして、いまの意見のように、今回の政令にもこれを盛る意思があっての御発言のように、前向きに理解したのですが、第一点と第二点をひとつお尋ねをいたします。
  35. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この、今度の漁業水域設定に関する法律におきましては、御説明を以前申し上げたとおりに、その設定はこの条約によって、日本の沿岸にすべて設定する権利を持っているのでありますけれども、現在のところは対馬の沿岸に設定する考えを持っておるのでありますが、なお、それは法律にそれを書かずに、政令をもって定めるというふうにいたしております。その政令としては、第一に対馬を考えておるわけでございます。しかし、政令といたしましたのは、その後におけるいろいろの情勢に基づいて、それに即応して設定の必要なところには設定をしてまいる、そういう情勢に即応してやっていける意味合いからして政令でこれを定めるというふうにいたしたわけでございます。  それから、竹島の問題については、先ほど中村委員にお答えしたとおりでありまして、つつしんで御意見を拝聴いたしておる次第であります。
  36. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 つつしんで拝聴したという答弁に基づいて私は第二点の質問をしているのです。つつしんで拝聴した結果、この問題を前向きに解決するために、きのうの総理答弁では、やがて訪韓される外務大臣にこの問題を提起させるという発言がありましたが、それを単に、発言という場を強力に持たせ、しかもわが国の当然の主張であるものを一そう当然づけるために、この問題に対しては私はやはり政令に基づいて、その態度できぜんとしてこの問題のすみやかな解決のために前進する手段をとる必要があると思うのです。その意味で、大臣のつつしんで拝聴するという内容を前向きに理解したいのでお尋ねをしたのですが、その点はどうなんですか。もう少し質問に対して具体的に御答弁を願いたい。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの渡辺君の関連質問で私の名前が出ましたが、私はただいま言われるように、訪韓の際に取り上げるとはっきりは言っておらないように思いますが、いずれこれは速記をよく取り調べて申し上げる。これもいいチャンスだろう、そういう際に話しすることがいいか悪いか、十分検討さす、かように私は申したように思うのです。
  38. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ただいまの御質問でありますが、日本の領有でありますから、こういう問題に対してははっきりと漁業水域設定したらいいじゃないか、解決する一番大きな道ではないかというお話でありまして、それに対しては私もその御意見を拝聴しておるわけでありますが、反面において先進国と申すか、イギリスが北欧諸国といろいろの問題を、漁業問題の紛糾を解決する際においても、どういう方向にいったら実際現実においてよく解決されるかどうかという問題もあわせて考究すべきものであると、こう存じまするのであります。しかし、中村委員の先ほどの御質問に対しては、なお重ねて十分検討いたしたい、こう申したわけであります。その点で御了承を願います。
  39. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまの私と大臣との質疑は、当然これは韓国側も何らかの手段でその内容はキャッチすると思うのであります。再度触れるわけでありますけれども韓国国会では車農林部長官は、竹島に対しては専管水域設定するということを明らかに声明をいたしておるのであります。そういう韓国側の態度に対して、いまのようなきわめて割り切れないような答弁では一そうこの問題をうしろ向きにすることにはなるけれども、前向きになる手段とは考えられないのであります。もう一ぺんこれはさらに外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) よく所管の農林大臣と協議をいたしまして、善処したいと思います。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連して。この竹島の問題は領土問題として非常に重大な問題であるし、同時に、いま中村君が指摘されましたように、あの竹島周辺の漁獲高というものは相当ある、開発すれば相当な量にのぼるということが言えると思うのであります。これは経済問題としても重要だと思うのであります。  そこで、この問題について、いままでの御答弁を聞いておりますというと、この条約が発効してから後にどういう経路で交渉を始められるかということがあまりはっきり答弁されておりません。私どもは、もしこの条約が発効したとしても、この問題については長いことかかるから、あとでゆっくりやれというのではなくて、やはりこれは早急に取り上げるべき問題であろうと思うのであります。そのことは国民として、もしこのことを将来ずっと交渉までも延ばすということになりますれば、国民竹島をいよいよ放棄したのではないか、こういう疑惑を持つわけです。したがって、そういう疑惑を国民に生ぜしめないためには、先ほど総理もお考えになっているように言われた、外務大臣が批准の際に、韓国を訪問されたときに、その問題を持ち出すかどうかということがやはり重大な問題になると思うのですが、その点は外務大臣どうお考えになりますか。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今後あらゆるチャンスを活用してこの問題の解決のために努力したいとこう考えております。
  43. 中村英男

    中村英男君 これも椎名外務大臣にお伺いしますが、これは歴代の、歴代といいますか、佐藤総理国会において、やはり紛糾を処理するのが交渉だ、こういう言明をされておるのです。やはりこういう一番扱いにくい問題ではあるけれども、こういう形で竹島の問題が次に残されたということは、国民が非常に不満なんですね。ですから、これは友好関係が醸成されたら、自然にこの問題の糸口ができて、調停ができるだろうという希望的な解測をされておりますが、韓国はきわめてきびしい態度をかまえているのですね。占領もし、しかも専管区域を設けるのだというかまえ、こちらのほうは、中村君のお話を、まあ善処しましょう、誠意をもってしましょう。外務大臣に聞いてみても、外務大臣も、まあ所管大臣と相談してやりましょう。こういうことでは、いま渡辺君が指摘しましたように、積極的な処理は非常にむずかしいと思うのです。ですからこの際に、国民はあまりやかましく言っておりませんけれども、腹の中では釈然としないものがあるのですね、こういう問題をこういう形でたな上げしたということは。ですから、私はやはり外務大臣も所管大臣として、これはあなたの任期がいつまで続くかわからぬが、任期中に少なくともそういう雰囲気を醸成さして、そして先ほど言ったように、これは名前のすりかえがあるのです。島根県の田村清三郎君がきわめて緻密な資料を作製してます、本を作製してますから、ひとつ外務省も勉強してですよ。これは穏やかに話をすればできると思うのです、何も実力で排除しなくても。そういう点で早くこの問題を処理しないと、占領したまま残しておくということは、何かやはり既成事実をつくっていくということになりますから、そういう点を前向きに、積極的に外務大臣処理をしていただきたいと思うのです。これは議論をしたらいつまでも二時間も三時間もかかりますから、これは私はおきますけれども、非常に強い国民の内在した不満があるわけです。ちょっと御答弁をいただきたい。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 専管水域の問題に関連しての御質問と思いまして、所管大臣と協議してと、こう申しましたが、竹島それ自身の所属の問題は、これは所管は外務省でございます。この問題は、ただいま申し上げたように、あらゆる機会を活用いたしまして、問題の解決に努力したいと考えております。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 特に名ざしはされなかったのですが、ただいま外務大臣、農板大臣等から政府の意のあるところを十分お答えしたと、かように思いますので、御了承いただいたとは思いますが、事柄事柄でありますだけに、私、取りまとめて政府が責任を持って、あらゆるチャンスに私どもの要望を達するように最善の努力をするということをお答えしたいと思います。ことに中村君は土地柄、ただいまも田村それがしの話を引用されましたが、こういう意味でも何かと御協力を願うという、そういうことも必要だと思いますので、同じ目的を達するために、そのとるべき方向はあるいは違うかわかりませんが、その目的を達成さす、こういうことで最善の努力をいたしますから、どうか御協力のほどお願いしておきます。
  46. 中村英男

    中村英男君 これは同僚議員のまだ質問がたくさんありましょうから、この辺におきまして、農林大臣にお伺いしますが、今度の条約では魚族保護処置が不十分ではないかと、こうまあ思われる。これはもっとも後進国は魚族保護を第一に考えておる。いわば魚族保護第一主義なんですね。そういう立場です。これは未発達ですから当然そうなります。それから先進国は漁獲第一主義といいますか、略奪主義というか、そういう点では魚族保護はどうしてもあと回しになって、漁獲高を上げていくという、これは世界的にそういう立場に立つ。そこで今度の協定の中で魚族保護漁獲高を高めるということの調整というものは、どういう形でするかということが、非常に御苦心があると思うのです。むずかしいところと思いますけれども、一体魚族保護というものはされているか、されていないか、そういう点をまずお伺いいたします。
  47. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、魚族保護そのものは、やはり先進国においても非常に重要であると思います。今度の漁業協定における共同規制水域のごときは、やはり一つ魚族保護という意味も加わっておると思いますが、しかし非常に不完全なものであり、不十分なものであることは御説のとおりでございます。もちろん、これらについては実は科学的調査も全部ございませんし、また李ラインの間は特に調査もございません。そこで科学的調査をやる、これは相当やはり時日を要しまするので、共同規制水域においては暫定的規制をやってまいろう、こういうことが一つ、そういうわけでございまするから、やはり日本漁業の実態をあまりそこなわない範囲において、そこなわないということ、それと同時に、将来における漁業資源に大きな圧力を加えないということをも考えまして、暫定的に現在その規制を加えていく、こういういき方でいっておるわけでございまして、将来の科学的調査を待って、この問題はやはり相当合理的に進めていくべきものであるということを、御同感でございまするから申し上げておきます。
  48. 中村英男

    中村英男君 これはまあ最初は韓国側魚族保護区域を主張して、途中で折半主義に変わったということは、そこら辺の事情を物語っておるものですが、なるほど規制区域日本十五万トン、上下一%ですから十六万五千トンですか、いまは韓国のほうは、政府説明によれば、漁業が発達をしていないから割り当ては五対五の比率ですけれども、これは魚族保護規制にはいまは幾らかなるでしょう。しかし従来の経過から見ると、大体あの地域で、李ライン付近で三十万トンくらい取っておったのです。ですからちょうど五対五になると三十二、三万トンですから、そういう意味合いでは従来よりはあまり変わらぬと、こう私も思っておるのです。思っておりますけれども大臣も御承知のように――、まああなたはあまり知らぬかもわからぬが、水産問題は。これは戦後、日本漁業が沿岸漁業から沖合い漁業、沖合いから遠洋へと、こう日本は指導したのですね。そういう中で沿岸漁業は、日本の機械化した沖合い漁業の圧迫を受けて非常に混乱をしたと、非常に困ってきたと、そこで二、三年前に、沿岸漁業振興対策その他の法律を出しまして、沿岸漁業の体質改善をはかって今日まできておるのですね。漁家の数も少なくなり、漁業をやりながら豚を飼うたり、鶏を飼うたりしなければいけんような漁民が出てきた。これは何を物語るかいうと、魚族がつまり枯渇してきたのです。魚族そのものが枯渇しただけでなくして、沖合い漁業が機械化して、電波探知器もあれば、光力も大きいのを使っておる。こういうことですから魚は、回遊魚は、もう魚道を断つのですから、網をおろしてから、海岸へ入ってこないのですよ。ですから沿岸漁業は魚が取れないのです。魚族枯渇と同時に、沖合い漁業が資本化して、機械化して、そういう形で日本の沿岸漁業を圧迫してきたのですね。今日ではあなた御承知のように中小企業は、そういうことをしてこの数年戦後発達したけれども、すでに魚族枯渇して、一そう当たりの漁獲量というものは非常にこの数年落ちてしまって、そうしてみんな、中小企業の漁業も全部赤字経営になっている、底引きもまき網も。今日でさえ枯渇してきたのですね。だから、そういう意味では私は、李ラインは不当なラインではあったけれども、軍事的な側面があってけしからんけれども魚族保護には結果的にはなった。なりましたけれども日本の発達した、機械化したこの沖合い漁業のためにこれが枯渇して、沿岸漁業は困るし、魚も枯渇してきたという現状が、今日の時点の現状なんだ。この時点に漁業交渉がされているのですね。ですから私はこの際、そういう事情ですから、非常に国内における調整はむずかしいでしょう。むずかしいでしょうけれども、やはりこの際魚族保護というものをもう少し強くこの漁業交渉の中、条約の中に織り込んでいくべきじゃないか。政府は、魚族というものはどこにおるか、どこで産卵をして、どこで生まれて、どこで冬眠をして、どう回遊しておるかわからぬ、だからこれは資源調査をするのだ、三、四年はかかる。ごもっともですよ。しかし、これは逃げ口上なんです。そういうことは必要なんです。必要なんですけれども、今日すでに枯渇して、たくさんな漁家が水揚げが少なくて赤字経営になっている。こういう事態ですから、これは共同規制区域で規制はされますけれども困る、これが一つ。  それから、もう一つは専管水域なんです。専管水域十二海里と、こう、朝鮮の沿岸は十二海里、対馬は――おもに日本は対馬だけをいま考えておる。竹島考えておるかもわからぬけれども、とりあえず対馬を考えるというのがいままでの答弁なんですね。そうすると、朝鮮の沿岸十二海里におけるこれは魚族保護になるかどうか、そういう点をちょっとお伺いしたい。
  49. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 中村委員の御質問ごもっともでございまするが、今度のこの漁業協定によって、日本の沿岸漁業が非常に困るという問題は、将来の問題としてごもっともだと思うのです。それらについて考えていきたいと思いますが、その漁業協定がなくても、その漁業協定ということと離れて、現在の日本の沿岸漁業そのものはどうかという問題については、御同感でございます。そういう意味からいたしまして、構造改善事業あるいは岩礁を置いて魚のよく住むような類のものをつくったり、いろいろまあやっておるのでございますが、なおその沿岸漁業に関連しての漁港の問題とか、そういういろいろな点、さらに流通の関係ですね、水産物の流通の関係という問題、それらの点も考え、また、その漁船の問題にしても、やはり沿岸漁業に対していろいろ考えていく点がたくさんありまするし、そういったことを総合的にいろいろ考えまする意味で、沿岸漁業等のいわゆる法律ができて、振興審議会でいまいろいろこの問題もまあ審議を願うことになっておるわけでございまするが、   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕 そういうわけで、沿岸漁業は確かにお説のとおり相当困っておる実情であると思います。  そういうわけでございまするので、この本協定によってどうという問題よりも、現実がさようなことになろう。今度さらに協定によりまして李ラインがなくなる。そして共同規制地域等もできてまいるということになりますと、さらに沿岸漁業としても、いままで入ることのできなかった、まあ入ろうとしても非常に困難な、警護の上に立って入らなければならなかった、いわゆる侵犯して入らなければならないところへも入漁できるということにもなりまするので、したがって、沿岸漁業に対してもこの協定は、当分悪い影響はない。好影響はあっても悪い影響はないと、私はかように考えております。しかし、将来韓国漁業の発展という問題がどういうふうに進むかという問題もお説のとおり、いろいろ考えなきゃならぬわけでございまして、それらに即応して、さらに日本の沿岸漁業その他の漁業も関連いたしますから、両方合わせてこれらの問題をよく検討を加えていかなきゃならぬことは言うまでもございません。  それからこの漁業水域設定する、いわゆる沿岸十二海里の設定をするのは、これはいま当分のさしあたり対馬ということにいたしておりまするけれども、それは、いま現在の韓国漁船の状態と、能率の悪い漁船の状態その他を見まして、まずその必要は当分なかろうと、こう考えてはおるのでありまするけれども、だんだんいま言ったように、日本としてもこの韓国漁業振興に協力するのでありまするし、また、その方向に進むことは当然でございまするので、必ずそれは、やはり日本の沿岸にも錯綜することも、それはどの程度かは別として、そういうことも考えられまするので、それに即応して、日本の沿岸にもこの漁業水域設定していくつもりでございます。いまのところ、それをやる必要はなかろうと、こういうふうに見ておるのでございます。必要があれば、いつでも設定してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  50. 中村英男

    中村英男君 専管水域の問題は、後ほどこれはいろいろ詳しく質問しますが、私が言うのは、魚族保護を第一主義に考えていないじゃないか、こういう立場からいろいろ質問をしておるんです。  そこで、そういう意味で、規制区域で規制はしておるけれども、十分な規制にならぬ。規制区域でほんとに規制するには……。きのうの質問でも、零細漁家の千七百そうを日本は制限したんですね。しかし零細漁業のごときは、あそこで幾ら一本釣り漁業しても延べなわをやっても、小さな船で、あんなものは乱獲にはならぬのですよ、乱獲には。政府はものをあべこべに考えている。第一に魚族保護考えて規制するならば、零細漁業は三千そうでも五千そうでも、韓国は五千そうあれば五千そう、長崎だけでも三千そうあるのですがね。それを西日本で一千七百そうに制限した、制限された。一体これはどういうことなのかというのは、私はきのう関連質問しなかったのですが、きょう後ほど触れますけれども、これは魚族保護立場から規制区域考えるならば、こんな小さい船で少量とったって、乱獲にはならぬのです。ここを考えるなら、大資本の企業、底びきですね。まき網、以西底びき、この大きな乱獲する船を制限すべきなんですね。それを十分制限をせずに、小さな漁家の船を制限をしたということは、魚族保護ということを第一に、一つも念頭にない交渉しているから、私はそういう不満を一点、たくさん言うとわからぬですから。
  51. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) どうもいろいろなことがあるものですから何でございますが、もちろん共同規制水域において、中村委員はよく存じておられるものだから、簡単にお話ししておるわけでございます。また詳しくは必要はなかろうと思うのでありますが、つまり共同規制水域における規制というものは、御存じのとおり、まき網、さば釣り、それから底びき漁業、これだけに規制を加えておるのでありますることは御了承のとおり。そういうわけでございまして、これらについては隻数、それから網目と、いろいろございまするから、そういうことで規制を加えておるということで御了承願いたいと思います。
  52. 中村英男

    中村英男君 これは水産庁長官でもいいのですが、いまの問題もそうですし、私が心配するのは、朝鮮の沿岸に十二海里の排他的な水域をつくっている。これは、従来朝鮮の沿岸は、政府答弁によると、漁業が発達していない、こういうことですから、これは魚族保護には、発達していなかったらなっているでしょう、乱獲してないから。しかし、今度は、日本が九千ドルの中で、五千ドルを零細漁民に援助をしよう、こういうことを答弁をされましたが、これは朝鮮の、韓国漁業が発達することはもちろん、私は、日本の資本がどういう形で朝鮮の漁業に寄与するか、こういう点から考えてみると、一つの形は――いろいろありますけれども一つの形は、船長は韓国の人、船も韓国の船で、技術者、労働者も韓国の人で、技術の提供と資本の提供があるという形の漁業一つ想像されるのですね。そうすると、朝鮮の海域の十二海里の中には日本漁船ははいれないけれども、朝鮮の船籍の船ははいれる、操業できるのですね。そうすると、朝鮮の船籍、朝鮮の船長で、日本の技術と金を提供した形の漁船というものは、十二海里の中に入っていけるのですね……。
  53. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  いまのあとの問題でございますが、たいへん法律的にはむずかしい御質問なのでございますが、韓国の現在の魚族資源保護法は、押え方が「漁業を営む者」で押えております。したがって、漁業を営む者が日本人である場合には、韓国の船を使おうと、韓国の人間を使おうと、当然韓国の法制では、許可なしに入れば取り締まられるはずです。  そこで先生のいまおっしゃいましたケースは、技術提携、資本供与という形でございますので、考えられる方法としては、合弁会社をつくって、その合弁会社が韓国法制による漁業許可をとって、船は韓国籍の船を使い、労務者は韓国人を使う、この形が一つ予想されるわけであります。その場合につきましては、海外投資に相なりますので、合弁事業につきましては、現在、大蔵、農林、通産各省で審査を個別にやっておりますので、その合弁の態様が不適当なものは認めないという処理を在来やっております。こういう立場で本件を処理するふうに目下考えております。  そこで、沿岸の魚族資漁との問題でございますが、今回の漁業協定魚族資源に無関心ではないかという点でございますが、非常に大きな問題点は、昨日も御指摘がございましたが、韓国が朝鮮半島の周辺に引いておりますところの底びき禁止区域は、日本も入らない、韓国も入らない、大型底びきとトロールでございます。それはほとんど沿岸の部分がその禁止区域に包摂されますから、いま先生御説明の、日本の大資本が合弁という形で沿岸に入って大々的にとろうと思いましても、底びきとかトロールとかいう形では、沿岸の魚族資源をとることは、その意味において不可能であると、かように考えております。
  54. 中村英男

    中村英男君 これは後ほどお伺いしてもいいのですが、長官の答弁のしまいのほうに、日本のトロールの規制はしてある。なるほど、西海岸のほうで、日本の以西底びきを、禁止区域がありますね、あれの四十マイルの中で。ありますけれども、そこでは韓国の船は、漁業は操業できるのです。そうすると、この合弁会社という明快な形でなくても、私はその他の地域においても、船長は韓国の人、船も韓国、労働者も韓国の人、技術の提供と資本は日本が出しておる。これは合弁会社かもわからぬけれども、しかし形はそういうすっきりした合弁会社でなくして、そういうふうな形で漁業をやるというケースは将来予想されるのですね。
  55. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 日本の国内法も韓国の国内法も、漁業を営む者に、あるいは漁業を行なおうとする者に許可するとかしないとかいう法制をとっておる。そのほかに採捕という事実行為を禁止しているのが二つあります。が、いずれにいたしましても、韓国漁業水域の中で漁業を営もうと思えば、漁業を営む者は韓国政府許可し得る対象でなければならないということに相なろうかと思います。  そこで合弁という形でございますれば、韓国日本人には許可しないけれども、合弁の者には許可するという形が予想され得るわけでございます。その場合には、先生御設例のような韓国籍船及び韓国人を使って、資本と技術は日本という形があり得るかもしれない。ただ日本人が、日本の会社が、日本漁業者が、韓国の船を使って韓国の労務者を雇ってやろうと思っても、韓国の法制では、それは日本漁業とみなされる。
  56. 中村英男

    中村英男君 そこで魚族保護の問題ですが、これはいまでも底びきの底ものの魚は枯渇してきた。ことに回遊魚のごときは昔は、昔といいますか、昭和二十年以前は、日本海では乗っかって歩けるようなサバやアジがいたのですが、このごろはこんなサバやアジしかいないのです。これは乱獲しておる証拠なんですね。特にああいう回遊魚はどこで一体育つかということです。これはおそらく沿岸だろうと思うのですね。資源調査をしなくても、魚の生育はこれは沿岸です。産卵もそうです。そうすると、沿岸における乱獲というものが魚族保護に非常に影響するから、私は十二海里という排他的な水域をつくられたが、いままでは韓国漁業は未発達だから、乱獲にならなくて、日本が相当乱獲したけれども、まだ――こんな魚しかいなくて枯渇してきたといっておるが、これは日本の資本が入ってきて韓国漁業も発達するし、日本漁業も発達するということになれば、そういう形で合弁会社もできて漁業をやるということになると、沖合い漁業はもちろん、沿岸におけるこの十二海里内における乱獲あるいは西のほうはあの広い七十海里、四十海里の支点がある韓国の西側の領域ですね、海域です。これにおける乱獲が起こってきて、私は、いまの漁業協定をこのまま進めていけば、いまでさえ困っている沿岸中小企業がここ二、三年で、この魚族の調査をする時期にはもう魚はいなくなるのじゃないか、こういう心配漁民の中にもあるし、私も心配している。ここ二、三年したら、調査もへったくれもない。日本海広しといえども魚がいなくなるのじゃないか。これは瀬戸内海を考えてみたらわかりますね。あの海が広いといっても、瀬戸内海で日本の沖合い漁業でやるようなことをしたら一たまりもないですから、制限したのですね。日本海広しといえども、いまの魚族保護というものを考えずにやったら、私は三、四年したら、もう日本海の漁業というものは、魚族というものは枯渇するのじゃないかという心配があるから、この際に、私はこういう条約を結ぶ際に、魚族保護するという立場主張というものを、そういう立場に立って私は協定なり、いろいろなことをすべきじゃなかったかという点を御質問しているわけです。
  57. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたしますが、ごもっともなお話でございまして、そのとおり考えております。ただ、今回の協定においてその点が全く無関心であったかという点につきましては、わざわざ光力とか網目とか、そういうものを詳細附属書でまできめたということと、それから両者の交換公文でお互いの禁止区域というものを尊重しようと、で、この禁止区域というものは、西海岸等におきましては、朝鮮総督府時代に、やはり稚魚を沿岸でとるということが、資源保護上問題がございますので、底びきというようなものは禁止するというのを韓国政府も引き継いでおるわけでございます。その魚族資源の保護韓国でやっている立場は、日本国も尊重して、日本の船は入らないように行政的に措置をとろう。向こう側日本の北九州に引いておる日本の底びきの禁止区域には入らないようにしよう。こういうふうに話し合いをいたしましたのは、両国とも、あの海域におきます資源を長い間にわたってできるだけ活用したいという基本的な考え方については意見の一致を見ているからでございます。
  58. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 委員長、関連。きのうの私の質問に対する冒頭の大臣答弁と、ただいまの水産庁長官答弁との中に、はっきりしなければならぬことが出ておりますので、魚族資源保護に関するただいまの質問に関連してお伺いをいたしたいのでありますが、共通して政府答弁されたのは、トロール禁漁線あるいは機船底びきの禁漁線には韓国側も入らないし、日本側はもちろん入らない。日本設定しておる同様のトロール、機船底びきの禁漁線には、日本ももちろん入らないし、韓国側も入ってこない、こういう意味の統一的な見解が述べられたのでありますが、これも国会議事録を見ますと、韓国の車農林部長官は次のように言うておるのです。「次に、その前にひいたのがいわゆる機船底引網という線であります。」こういう説明会議録で見ても、きのう政府が張ったようなああいう地図ではなくて、トロール禁漁線、機船底びき禁漁線というものを引いた地図をもって――本会議ですよ、これは。韓国の本会議で農林部長官が説明をしておる。そういう背景をまず踏まえて聞いてもらいたい。そういうので、機船底びき網という線であります。機船底びき網阻止線は、それが十二マイル専管水域の外側にあるけれども日本の機船底びき網はその中に入れない、このようになっております。ただ、その機船底びき網の禁止線を引きますが、わが国にはいま一つの特典があります。わが国の機船底びき網の中には五十トン以上のものと以下のものがありますが、わが国の機船底びき網は、五十トン以下のものは西海岸において機船底びき網線の中でも操業できる特典があります。しかし、日本の人はこれをすることができないようになっています。そうしてなお外務省から国会提出した資料の、韓国政府の「大韓民国日本国間の条約および協定の解説」の中で、この機船底びき禁止線に次のようなことを言うておるのであります。「一方、わが国の漁業制度上では、大型機船底引綱漁業禁止区域内の黄海の部分において、五十トン未満三十トン以上の中型機船底引網漁船の操業を許可しており、また東海のトロール漁業禁止区域内においては、六十トン未満三十トン以上のエビトロール漁船の操業を許可している。これに対して、日本側は当初同一の種類と規模の日本漁船だけが、一方的に当該水域から排除されるのは不公平であるとして、強力に反対したが、韓国側は、これは沿岸国の特殊漁業実態に合致するものであり、かつ、沿岸漁民の権益保護のためのものであることを、日本側をしてわれわれの制度をそのまま尊重せしめ、例外としてこれを認めることとした」、合意議事録八項の(b)をそのように解説しておるのであります。  したがって、真に両国が魚族資源の保護ということにもっと割り切るならば、なぜ日本が譲歩して韓国のこれらのエビ・トロールの入漁を認めたか、ここに私は大局的に魚族資源の保護に対する日本政府の軟弱さがはっきりと指摘をしているように、遺憾ながらこれを指摘せざるを得ない。この点は一体どうなっておるのですか。
  59. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは昨日も申しましたのでありますが、また、いまお答え申しておるとおりに、お互いにその国の禁止地域は尊重するということでいっております。西海岸の面におきましては、この現状どおりそれを認めたのでございまして、つまり五十トン以下の底びき網が韓国の場合は入るようになっておる、その現状を認め、ところが日本の場合は、元来が以西底びきについては許可をしていないのでありまするから、そういうのは以西底びきのほうへ、以西のほうには行けないということに相なっておるのでございます。それを現状のままつまり尊重して、この各国の漁業の規制地域を尊重していったということになっておるのでございます。もちろん、いま中村委員等からお話しのように、さらに進んで沿岸における稚魚をどう保護するかというような問題からどうするかという、こういう問題については、いろいろ検討すべきものがあろうと思うけれども、この両国とも禁漁区をお互いに尊重して、現状を尊重していこうということについては、いま申しましたようなことでありまして、その点については、別に甲乙をつけたわけではないのであります。
  60. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  61. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 速記を始めて。
  62. 中村英男

    中村英男君 一つ規制区域の問題ですが、これは北朝鮮人民共和国のほうに専管区域は及んでいないという答弁、それはそうだろう。規制区域は及んでいるのですね、中国とソ連のあそこにずっと規制区域ができている。規制区域内における規制は、これは韓国日本だけです。そうすると、一昨々年、北朝鮮に社会党代表が行きまして、金日成に会った際に、金日成がこう言っておるのです。船もほしい、それから日本の漁師の方もどんどん、私のところは三海里ですから、あの李承晩ラインみたいな不当なライン考えておりませんから、どうぞ操業してください、こうじょうずを言っておるのです。あそこは昔、清津を中心としてイワシの産地で、魚がたくさんとれていたところ、いまメンタイにしても、カレイにしても、マスもたくさんおるのです。非常に漁場が豊富なんです。そういうところへ日本漁船規制区域許可されて行った場合に、北朝鮮人民共和国との摩擦競合が起こった場合にどうするかという問題が一つと、それから――何せ早くやれということだから……。沖合い底びき、以西底びき、まき網、合わせて十五万トン、上下十六万五千トンですね。船が制限され、漁獲量が一応制限されたわけです。ところが、従来、李ライン付近で三十万トンぐらい操業しておったんですから、ですから、船はまあいま数字は言いませんが、以西が幾ら、以東が幾ら、まき網が幾らと、期間と統数が制限されたわけですね。この制限された統数の数と、十六万五千トン、この数字とのバランスですね、これは一そう当たりに割ってみると、非常に漁獲高が少なくなるんですね、一そう当たりの。そういう点で、従来の赤字経営――これは大企業は別ですよ。中小企業は非常に経営が困っておるのに、こういう規制ができたために、こういう申し合わせができたために、一統当たりの漁獲量が非常に減って困るという問題が一つ出たが、それに対して、時間がなかったら、資料答弁。  それからもう一つは、そういう事情ですから、国内の以西、沖合い、まき網の調整が非常にむずかしいと思うのです。もしそういうことがわかれば、県別、業種別に、ひとつどういう国内調整をしようとしておるかということを知らしてもらいたい。  それから、まだあります。それから、これは一つの例ですが、沖合い漁業つまり以東底びきは、三百メートルより浅いところでは五十トン未満の船です。三百メートルより浅いところでは操業してはいかぬということなんですね。これは操業禁止なんです。その上に、以東底びきは、済州島の何度ですか、向こうに以東底びきの区域がありますね。あの区域の北のほうをちょん切られておるんです。今度の規制区域の中へ入っているんですね。ここで操業しておった以東底びきは、実は李ラインの中に入って操業しておったんですね。ですから、操業の区域というものが以東底びきは非常に制限されて狭まってきたんです。狭まってきて、正午を通知しなければならぬような規定になっておるんですね。これはもう手や足をくくって走れみたいなもので、以東底びきは非常に困ると思うんですね。ですから、以東底びきの主張としては、かねがね以西底びきの地域であった以東の続きのほうへ入り会い漁業として認めるべきじゃないかという主張が出てくると思うのですね。すでに出てきておると思う。以西底びきは資本漁業ですから、力が強いんです。力が強いから、私は政府が困られると思うんです。当然な主張ではあるけれども、大きな企業ですから、大資本ですから、なかなか入れてくれぬ。しかし、これは、理論としてはそこに入り会い漁業を許すべきじゃないかというこういう主張は当然な主張なんです。これは一つの例ですけれども、これらの国内調整というのは非常に困難ですから、そういうことを間違いないように私はりっぱな処置をすべきではないかと思う。これが一つ。  まだたくさんあるんですけれども、五分ぐらいでやめてくれという話ですから、一束にしてちょっと言うておきますが、それからもう一つ一番心配な点は、きのう渡辺君がノリの問題を黒い何とかだと言うて、話がちょん切られたので、これは引き継いで私がやらなければならぬかなと思っておったんですが、これがまたできないんですが、まあそういう黒い霧かどうかわかりませんが、一番心配なのは、韓国への経済協力の結果としてどういう結果が出てくるかといえば、北鮮は、地下資源もあるし、電気も豊富だ。農業を工業に切りかえる政策に成功しておるんですね。そうして貿易も競合しない。私は、数年前に、小坂さんが外務大臣をしておるときに、松本君と私と伊関君と四人で、北鮮貿易を踏み切りなさいと。これに対する日韓会談の反対の抵抗は違うじゃないかということで踏み切ったはずですね、外務省は。ところが、韓国との貿易というものは競合するものですね。坂田さんは、農林大臣として、そういう点は、水産はふえてでしょうが、農業の問題はえてですが、あなたになって、米というものをばかにしないで、米の増産をしなきゃいかんという主張をされて、私は非常にけっこうだと思う。歴代の自民党の内閣は米をばかにした政策をとって、去年からことしの端境期には非常に――去年もそうだ。ことしの端境期も非常に困ると思うんですね、米の問題では。日本経済援助をすれば、韓国で生産されるものは、電気、地下資源が少ないですから、基幹産業でなくして、農業、水産業、雑貨が発達すると思うんです。そうすると、一番端的に言えば、雑貨が逆輸入された場合に、日本の中小企業者は、向こうは低賃金ですから、コストが低い。それで逆輸入されてきて日本の企業を圧迫せぬかという問題が一つありまするし、これは通産大臣の三木さんの所管でしょう。米の問題についても、米が逆輸入されてきて、日本の農民がそういう形で――これは合理化してコスト・ダウンするのはいいが、そういう外国から入れてきて、そういう形で日本の米価を圧迫するということは忍びないことですね、増産しなきゃならぬという農民にとっては。非常に社会的に寄与している。  それからノリ、するめ魚ですね。いま、するめにしても、キロ五百八十円。これが、朝鮮のするめが入って、長崎では二百四十円ぐらいにたたかれておる。ノリがそのとおりですね。一円のノリが、思惑買いをして――これは業者じゃないですよ。朝鮮の金のある人が思惑買いをして、そうして日本に入れて、日本の商社もいま六十社か七十社かあるでしょう。商社か何かわからぬような商社があって、そうして日本に入れて、去年はよかった。ことしは五十四億ぐらい日本は生産するでしょう。官房長きょうおいでにならぬが、ノリを食う政策をやらなきゃいかぬというようなことを、しろうとですからそんなことを言ったけれども日本人韓国へノリを生産することを教えて、そうしてこれを今度持って帰って有明海その他でもノリを増産して、どんどん増産して、五十億できるんですね。これに日本の技術なり金が入ってくると、朝鮮のノリも五億から十億になるでしょう。日本が買ってやらぬと韓国の人は困るでしょうし、買ってやると日本の生産業者を押えるという結果。そうして、近ごろ漁業の体質改善だといって、エビをつくれ、タイをつくれ、やれハマチを養殖しろといって、せっかくそういう体質改善をしかけたところへ、向こうのブリがキロ百三十円ぐらいで入るでしょう。二百円のブリの小型なのが、百三十円。あぶらの乗ったブリですから、日本のそういう生産者はこたえますね。こういう問題が起こっている。サバやアジ、大衆魚が入ってくると、日本の魚価を圧迫する、こういう問題。これはもちろん流通機構を整備すると言われればそれまでですけれども、ノリの例を見ても、流通機構が整備されないんです。みんな中間マージンというかほかに逃げて、非常に生産者も消費者も困るという現実が出ているんですから、魚でも私はそういう点は混乱が起きると思んですね。  もう一つ一番心配な点は、これは基地が変動すると思うんです。少なくとも朝鮮海峡、日本海における漁業の主導権というものは、地場資本は駆逐されますよ、この協定以後においては。地場資本つまり中小企業の沖合い漁業というものは無力化してくるでしょうね。そして、大手筋が日本海、朝鮮海峡の主導権を握るでしょう、資本力が強いですから。そうすると、漁業の基地はどこに行くかというと、福岡、下関に集約されます。福岡の七十億が百二十億になり、下関の百億が百五十億になるけれども、浜田や境やその他の今日までの基地は三十億の漁獲高。浜田のごときはおそらく十億になるでしょうね。つまり、一、二の漁業基地は発展するけれども、その他の基地はこれは基地として無力化して、漁獲高が減って、経済の傾斜が起きて、非常に企業は困るという、こういう結果が出てくることが予想されますから、そういうことに対する将来の手当てというもの、措置というものを非常に緻密にやらないと、たいへんな混乱が起きると思うんですね。  私はたくさん二、三時間あるんですけれども、党のほうから五分でやめろということですから、一括してやりましたから……。
  63. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) それじゃお答えしますが、一番初めのやつをちょっと聞き落としましたから、あとから補充してなにします。  それからその次のやつは、隻数で規制しておるのに、そこでまた数量で行政措置でやっておると。それは十六万五千。それはもちろんそうで、行政的には十五万。十五万貫。いや、貫でない、トンです。(笑声)十五万トン、それに一割を加えてそこまではアローアンスをみようというんですから、十六万五千トン。ところが、沿岸漁業にはこれは及ばないわけでございます。それは御了承であろうと思う。つまり、対象漁業つまりまき網、底びき、それらに対しての規制数量として考えていこう。これも、どちらかというと、何も義務はないわけです。ただ、行政的にできるだけそういうところに押えていきたいということからきておるわけでございます。  それで、その結果としてはどうかと申しますと、まき網にしても――これはこまかい点を申し上げる時間もありませんが、まき網にしても、以西にいたしましても、また以東にいたしましても、いわゆる配分についてはそんなに心配はございません。というのは、(「あんた知らぬからだよ」と呼ぶ者あり)、いや、それは実態によく入っておりますから、その心配はございません。これはこまかい事情はまたありますけれども……。  それから数量の問題になりますと、これは義務ではありませんけれども、やっぱり尊重していきたいと私どもは思っておりまするが、これはやはりある程度は規制するのが必要な場合が多い。これは先ほども一昨日もどなたかにお答えしたのでありますが、二十万トンとれるというときには、非常に豊漁貧乏というのでもって、おそらく中村委員もよく存じておられるだろうと思う。そこで、どうしてもそれは規制しにゃいかぬというので、いままでのこの漁業協定のない以前から生産規制事業をやっておるという問題をお聞きしておるのでありますが、大体において十二万トンぐらいならば最も適当ではないかという御意見も聞いております。そういう点からいきますと、ちょうどまき網についてはそういうところへきておりますから、大体そういうところでいいのじゃないかと、こう思います。  それから、こういう問題についてはどういう方法でいろいろ各県の業種間においてそれらの規制を適当にやれるかという問題でございますが、それはでき得る限り自主的にやっていきたい、こう思うのでございます。しかし、全体の隻数がきまっておりまするから、一応は県に対してやはり幾ら幾らというふうに、いままでの実績と、それからしてその他のいろいろの実態なりその他のものをしんしゃくいたしまして、そしてよく御相談をして、そして各県に対する隻数ぐらいはやはりきめておいたほうがいいのじゃないかと、その範囲内においてそれぞれの業種が自主的にでき得る限り見てまいると、こういう方向に進んでいこうというので準備中でございます。いままだ結論は出ておりませんが、準備中で、事務当局ではもうしょっちゅうそれを真剣にいまやっておる次第でございます。  それからノリの問題でございまするが、ノリにつきましては、今年の三月でしたか、貿易のいろいろの会議がありましたときにおいても……
  64. 中村英男

    中村英男君 ちょっと……。そういうことは、時間がかかりますから、ノリについても流通機構をうまくしてちゃんとするということを言ったらいい。(笑声)
  65. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) だから、ノリの問題、するめの問題、その他の漁業の問題については、中村委員のおっしゃった御意見によく沿うようにして考えていきたいと、こう考えておりまするから、御了承を願います。(笑声)  それから米の問題ですか。これは、韓国は自給できたりできなかったり、年によって違いますから、これらはよくそういうことの困るようなことにならぬように考えながら進むということでございます。  それから北鮮貿易でございますが、これは北鮮の……
  66. 中村英男

    中村英男君 規制区域内における紛争はないかという問題……。
  67. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) そういう問題についても、いまお聞きしたことに即応して十分考えていきたいと、こう考えております。(笑声)なお、これは外務大臣ともよく打ち合わせをしながら進めてまいりたい、こう考えております。  大体、そんなことでございます。
  68. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 韓国の安い労働力でつくられたものが日本の中小企業を圧迫しないように、うまくやる所存でございます。
  69. 中村英男

    中村英男君 それじゃ、私けっこうです。  最後に、質問すると長くなりますから、要望を二点ほどしておきたいと思いますが、佐藤総理に最初李ラインの問題を質問したときにちょっと拿捕のことが出ましたが、これは同僚委員もあるいは衆議院の田口委員が質問されておりましたが、拿捕の問題は、どうも大蔵省は大蔵大臣がおいでにならぬが、これは一そう当たり計算してみると二百万円ぐらいなんです。なかなか再起にならないんですからね。ですから、そういう人たちが再起するような金高をはじいてあたたかい措置をすべきであると、こう思っております。これは希望です。  それからもう一つは、いま遠洋漁業へ農林省は切りかえを考えて、二十二統ぐらい考えておいでになるようですが、これはいま私はこまかい質問はしませんでしたが、西日本漁民というものは、魚族枯渇してそうして赤字が累積することが予想されますので、こういう割り当てについてはやはりそういう事情を勘案して遠洋漁業の切りかえはすべきであるという考えを持っておりますから、そういう点も十分考慮して、やはり零細漁民、中小企業、大企業も日本漁業は漁獲量が高まるような、そういう万全な措置を水産庁は緻密にすべきであるという希望を持っておりますから、これは私の希望でございますから、答弁は要りませんから、どうぞひとつ……。
  70. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 中村英男君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度とし、午後は一時二十分に再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十九分開会   〔理事草葉隆圓委員長席に着く〕
  71. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) これより特別委員会を開会いたします。  派遣委員の報告に関する件を議題といたします。  去る十一月二十九日、当特別委員会が行ないました日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件外三関係国内法案についての大阪、福岡における意見聴取のための委員派遣について、それぞれ派遣委員から御報告を願います。  まず、大阪に派遣の第一班の御報告を願います。大谷藤之助
  72. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 第一班の報告を申し上げます。  第一班は、日韓基本条約等案件に関する公聴会を大阪において開催するため、私のほか松野理事、亀田理事、森川理事、井川委員、黒柳委員の計六名が現地に派遣されました。  大阪公聴会は、十一月二十九日午前十時十五分より大阪府議会議場において開会、私が座長としてあいさつ、公述人及び委員の紹介、議事運営について説明を行なったあと、大阪市立大学教授黒田了一君、大阪スタジアム株式会社社長浅田敏章君、総評大阪地方評議会事務局長帖佐義行君、京都大学教授大石義雄君、京都学芸大学助教授関順也君、大阪地域婦人団体協議会会長辻元八重君、以上六名の公述人の意見を聴取し、次いで、各委員より熱心な質疑を行ない、午後三時四十二分に散会いたしました。  詳細の報告につきましては、会議録掲載方を委員長においてお取り計らいくださるようお願いいたしたいと存じますが、とりあえず以上のとおり御報告いたします。(拍手)
  73. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 次に、福岡に派遣の第二班の御報告を願います。久保勘一君。
  74. 久保勘一

    ○久保勘一君 第二班の報告を申し上げます。  派遣委員は、草葉班長及び私のほか、日高、稲葉、中村、鈴木の各委員の六名でありました。  福岡公聴会は、十一月二十九日午前十時十二分から福岡市内の県学校給食会館講堂で開かれ、班長のあいさつ及び紹介ののち、日本社会党福岡県本部委員長緒方孝男君、弁護士山本彦助君、福岡県労働組合総評議会議長安永英雄君、福岡韓国貿易促進協議会専務理事塩沢豊君、九州大学助教授中植興君、長崎県漁業協同組合連合会副会長秋山秀雄君、以上六名の公述人から意見を聴取し、次いで各委員から質疑が行なわれ、午後三時八分に閉会したのでありますが、詳細の報告につきましては会議録掲載方を委員長においてお取り計らいくださるようお願いいたしたいと存じます。  以上御報告申し上げます。(拍手)
  75. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) ただいまの両班の御報告に対し、御質疑はございませんか。――別に御発言もなければ、派遣委員の報告はこれをもって終了いたします。  なお、御要望がございました派遣報告書につきましては、これを会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  77. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 日韓基本関係条約等承認を求むる案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。伊藤顕道君。
  78. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私は、衆議院の段階で自民党の多数暴力のためにわが社会党委員審議がきわめて短時間に寸断されたためにほとんど触れることのできなかった日韓関係に伴う軍事問題、この一点に問題の焦点をしぼって、佐藤総理をはじめとして、防衛、外務等の各関係大臣に御質問申し上げたいと存じます。  まず、最初に、順序としてお伺いしたいのは、バッジ・システムに関してでございますが、このバッジ・システムは、日本の自衛隊が第二次防の計画でこれを採用決定して今日に至っておるわけです。この日韓条約がもし成立いたしますと、日韓のいわゆる国交の正常化という段階になるわけです。その暁には、このバッジ・システムを韓国あるいは台湾のそれに連結することによって、両国のいわゆる軍事的つながりの一環として防空共同体制がとられると当然に考えられるわけです。この点に関する長官のお考えをまずお伺いしておきたいと思います。
  79. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) バッジ・システムは、すでに計画決定いたしましてから五年ばかりたっております。大体、四十一年完成が実は一年おくれまして、四十二年度に完成の予定で、まだ一部着工しながら完成は四十二年度でございます。さて、それが完成したあとでどうなるのかと。伊藤委員承知のように、防空体制というのは、自国を中心に防空網というものを張るべきである。ただし、領海、領空というだけでは防空の機能は達成いたしません。どこの国も相当広範囲な防空体制というものが公海、公空まで当然達しなければならないということだけでありまして、これが関連する関連しないは、それは想定の上において関連することもありましょうし、関連しないこともある。日本海などは両方の岸が近いんですから、両方の防空体制がここに網の目のようになるということはございます。ただし、日韓とかあるいは台湾とか、そういうものを中心にこのバッジ制度というものを考えたわけではございません。あくまで日本の領空、領海を守るためのバッジ・システム。しかし、電波で距離というものは相当遠くまで参りますので、それがどこへ行くか、これは別な話だと私は思います。
  80. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 長官のお答えでは、このバッジ・システムは韓国とか台湾とかこれを結びつけて第二次防計画で考えたのではないと、こういう御答弁ですが、こういうものを裏づける以下数点にわたって私が御指摘申し上げることによって、防空共同作戦がとられつつあるし、また今後とられるであろうと、そういう結論的のことが考えられるわけです。そういう意味で、最初にまず個々の問題についてお伺いするわけです。  一九五一年の九月に、トルーマン大統領は、サンフランシスコの講和会議における歓迎式でこういうことを言っておられるわけです。「太平洋地域の防空諸条約が発展すれば、日本防衛軍が生まれて、同地域の他の諸国の防衛軍と連携を持つことになろう」と、こういうふうに指摘しておるわけです。日韓会談の第一次の予備交渉が連合軍司令部のあっせんで開かれたのは、それから一カ月後であったわけです。こういうようなことからあわせ考えても、米軍の意図が察せられるし、これを受けて立つ日本考え方から、こういう防空共同作戦がとられるのではなかろうかと、こういうふうに考えられるわけです。この点はいかがですか。
  81. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 御承知のようにアメリカの発言でございますが、アメリカの今日の日台、日韓日本との安保条約、個々の実は条約がございます。その意味から見れば、そういうことばがあるいは理解できるかもしれません。しかし、日本から見るならば、日本の安保条約だけでございます、その相手方は。したがって、私たちは安保条約ということに限定されていいんじゃなかろうか。また、そのこともそういうふうに理解していいんじゃなかろうか。アメリカはまた別な条約がありますから、別な国のほうから見れば、一見そう見られます。しかし、われわれは日本だけの問題である。アメリカ日本を含めた網の話をしておられる。われわれはその網の一つの国であるということは言えますけれども日本がその網の結び目になるという意味では私はないと思います。
  82. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 また一つの事実を長官に申し上げたいと思いますが、最近では、元韓国の陸軍参謀であった姜議員が、韓国国会で、いわゆる軍事専門家としての立場から次のようなことを発言しておられるわけです。これは議事録に出ておるわけですが、「一九六二年十月に日米安全保障会議で採択されたといわれる書類が現在日本外務省に通達されているが、いわゆる日韓軍事協調に関する案件日韓間の軍事協調案といわれるものは、極東の対共防御のための政策においてアメリカがその責任をはずれて、日本にとりあえず代置させる」ということがその骨子となっております、こういう意味の指摘がされておるわけです。これはきわめて重大な問題だと思うわけですが、こういうことからも先ほどのことがうなずけると思うのですが、この点はいかがですか。
  83. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いろいろアメリカのほうの構想はそれは御自由でございますが、日本の今日私が端的に申し上げられるのは、いまの自衛隊法そのものをよく――伊藤委員も内閣委員会で常にお会いしていますけれども、自衛隊法そのもの以外には一歩も出られない、こう考えますと、いまの話は、アメリカの発表は御自由でありますが、われわれ日本としては、それより一歩も出られない、また出る意思もない、そう限定しますと、自衛隊法というものはそんなに外国と共同ということばはあり得ないと私は思います。日本だけを守るというのが自衛隊法でございます。したがって、相手方は別として、日本外国と共同ということばには立てないのじゃないか。したがって、共同的なというのは、それは相手方がどういう諸外国の方がおっしゃるか、これは御自由ですけれども日本の自衛隊法が厳然としてある限りは、共同ということばは実は出てこられない。そこにそのことばは現実の今日の私たち立場としては少し現実性から離れているのじゃないか。あえて私は批判する必要はないと思います。しかし、現実に、じゃそれが実現できるかといえば、自衛隊法にはそれはできません。したがって、そういうことは私は考えられませんということが一番の結論じゃないかと私は思います。
  84. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そういう御答弁でございますが、以下具体的な事例がたくさんあるわけです。そこで、いま一々長官の言うことに私は反駁いたしませんけれども、最終的にどうしてもそのつながりができるであろうということを総括的に申し上げたいと思います。したがって、個々の問題について一応明らかに最初いたしたいと、そういう意味で引き続きお尋ねしたいと思います。  この姜議員は、引き続いて次のように韓国国会で発言しておられるわけです。「その第一の内容は、日韓共同防空網の設置であるといわれている。私は現在の超音速飛行の速度が防空網を友邦国家と形成するに際し、おのずと日本韓国、沖繩、台湾を連結する線上において早期に警戒網が設置されねばならず、これに対する防空体制が確立されなければならないとするその必要性を切実に感じております」と、こういうふうな発言をなさっておるわけです。したがって、バッジ・システムいわゆる防空警戒体制、こういうものが韓国とまだなければ、今後連結されるであろうということがこういう点からも考えられるわけです。この発言に対する長官のお考えはどうですか。
  85. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今回バッジ・システムを設定いたしますのは、九州をかりに韓国に近いところを設定いたします。あるいは裏日本設定いたします。その範囲はどこかと、じゃそのバッジ・システムの及ぶ能力はどこかと、これをお考えいただけばその回答が出るのじゃないかと私は思います。したがって、その限度というのは、最大能力と申しましても、大体三十八度線前後のところまでしか実は及びません。したがって、韓国の必要な限度というのは、三十八度線よりも北のほうがおそらく防空というならば常識じゃないか。したがって、そのことばは一部は言えないとは言いませんけれども、現実から言うと、日本の国の防空網ですから、韓国に使えるものというものは私はないんじゃないかと思います。したがって、それはどういう御発表が国内でされたか、それは御自由ですけれども、今日私の考えている防空能力、防空のバッジの及ぶ範囲というのはそういう方向を目標にしたのじゃございません。あくまで日本だけの防空ということでございます。
  86. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 いまお伺いしたことに関連して、これを裏書きする一つの例証として、三十八度線近くのレーダー基地では、これはお伺いするわけですが、すでに日本人の技師がそこで働いておる、あるいは今後働こうとしておるのかその点は明確でございませんが、とにかくそういう体制がもうすでにでき上がっておる、こういうことを聞いておるわけですが、その点はいかがですか。
  87. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛庁の関係としては一つもございません、一つもございません。それからもう一つ、バッジ・システムとか、いろいろの制度がございますが、日本でただいま今日設定しようというバッジの会社、設備というものは、実は日本だけの新たな制度でございます。諸外国にはまだございません。日本だけのバッジ・システムは日本だけの実は制度、機械、会社、能力というものは日本だけで、実は相当開発と改造を国内でしております。はたして諸外国にこれが通用するかどうか、私はそれはわかりません。そういうことを念頭に置かず、日本だけの一番日本に似合うバッジ・システムをつくっておりますので、これが韓国とどういうふうな関係があるのか、私ども研究したこともございません。同じ機械でないということだけは私は申し上げられると思います。
  88. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお、引き続いてお伺いいたしますが、韓国では、いわゆる日米の安保条約が改定されました翌年の八月、これはちょうど韓国のクーデターのあった直後に当たるわけですが、いわゆる標準時間を三十分繰り上げて日本の標準時間にこれを合わせておるということは一体何を意味するものか、これは前々からこういうことを想定して標準時を日本に合わしたのではなかろうか、こういうことが当然考えられるわけです。その点はいかがですか。
  89. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三十分繰り上げたという話、実は私もまことにあれでして初めて実はお聞きしたわけで、繰り上げられたのか、繰り上げられなかったのか、それは私初めてお聞きいたしますというぐらい実は私ども防衛庁と軍事問題で話し合ったこともなければ、話す準備もなければ、私どもは何にも実はそのことさえ知らないわけです。また、今後打ち合わせる予定もございません。したがって、その事実は私どものほうからはお答えする自信がないので、繰り上げたのか繰り上げなかったのか、それも私は知りません。したがって、そういう関連がないことだけはここで証明できると私は思います。
  90. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 衆議院で防衛庁長官は日韓の共同防衛はあり得るという意味のような発言をされたその防衛庁長官としては、きわめてこの点については怠慢というほかないと思います。こういう関係のある標準時がいつどのくらい繰り上げて日本に合わせられたのかということが、いま全然知りませんという御答弁であったわけです。それでは日韓台と、台湾にも関係ございますから、この際関連あることでお伺いしておきますが、関係の防衛局長などおいでですか。――台湾が、やはりこの防空共同体制の一環として台湾がこの標準時を日本に合わせておるわけです。そのことについて、いつどういう要領で合わせたのかということを、関連があるので、この際お伺いしておきたいと思います。
  91. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいま伊藤委員のおことばの中に、私が衆議院で日韓の共同防衛があり得るというふうなお話でございましたが、そういう答弁は一切いたしておりません。一ぺんもございません。前の長官の話は昨日総理から釈明されて、私はそのようなことを考えてもおりませんし、答えたことももちろんございません。なお、ちょうどたまたまバッジ・システムの日米交換公文がございます。その交換公文を明らかにすることのほうが御質問に答えやすいかと思います。日米の交換公文には、三十九年の十二月に、日本の効果的な対空防衛設置としてという交換公文に「日本の防空のため」ということが明記してございますので、それ以外のことはわれわれは考えておりません。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまお話聞いてまして、これは関連ですから短かくしますけれども、たとえば衆議院の内閣委員会で、三十九年の十二月十八日に、これは海原防衛局長ですが、こういうふうに答えているのですね。これは日米の安保協議委員会に関連してですが、日米の問題に関連してですけれども、こういう答えがあるのですね。いろいろ日本アメリカとの作戦的なことを言っていて、「ただ、私どもとしましては、あしたいかなることが起ころうとも、この場合にはどうするという計画は持っております。」、こう言っているわけですね。そうすると、「あしたいかなることが起ころうとも、」というのですから、その「いかなること」の中に、当然三十八度線のところで火を吹くというか、そういう場合のことも当然想定されて、その場合にどう対処するかという計画があるはずだというふうに考えられるわけですね。これはそうじゃなければ論理的におかしいわけですよ。「あしたいかなることが起ころうとも、」というのですからね。日本の近辺で「いかなることが」ということになれば、これは三つ、四つ考えられるとして、その一つが三十八度線なり、いわゆる韓半島における問題であるということははっきりしているわけですね。これはだれが見たってそうですよ。常識ですよ。その場合にどうするかという計画は持っているのだとはっきり答えているのですから、だから、その場合、日本は安保条約で日米の間は共同防衛するが、それは日韓の間で直ちに共同防衛するというわけではありませんけれども日本アメリカとの間で共同防衛がある。アメリカ韓国との間で相互共同防衛があるということならば、こういう形になってくれば、アメリカを媒介として、当然日韓の間で何らかの話し合いなり、あるいは話し合いが行われないとしても、アメリカを媒介としての共同防衛に近いものなり何なりが当然考えられなくちゃならない。こういうように私は思うわけです。これは常識だと思うのです、一つの。これが一つの質問です。  それから第二は、いま言ったように、「あしたいかなることが起ころうとも、」というのは、一体具体的にどういうこととどういうことを想定して「あしたいかなることが起ころうとも、」と、こう言っているのか、それに対処する計画がある、持っている、こう言うのですから、その計画は何か、これをやっぱり明らかにしていくことが必要だと、こう思うわけです。
  93. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛庁設置法第四条、自衛隊法第三条に対する、あしたいかなることがあろうともということでございます。内容の条文は、御承知のように直接侵略、間接侵略、国内の治安維持、このことについて、あしたいかなることがあろうとも常時即応の体制をとっている。これは自衛隊の今日の姿でございます。三十八度線とか、さような話は自衛隊法の範囲ではございませんし、また、そんなことを念頭に置くには――それは注意はいたします、世界の情勢について。しかし、自衛隊の体制にはそういうものはございません。なお、台湾の話は、台湾まではおそらくバッジ・システムの網の電波は、そんな遠距離までは、実は防空体制はまだそれほどの性能はございません。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あしたいかなることがあろうともというのは、間接侵略だけでなくて、直接侵略も当然含むわけでしょう。それは三十八度線だけの問題というふうにぼくが言ったから、まああなたのほうはそういうことばをとらえたのかもしれませんが、それが拡大してきて、日本に対する攻撃と考えられる場合があるわけです。その場合のことを想定して、それに対する計画も当然持っていると、こういうふうに考えられるのじゃないですか。小泉さんの答弁はそれを裏書きするようなものとしてぼくは受け取るのが普通じゃないかと思うのです。三十八度線の中だけの問題なら、それは日本関係ないですよ。わかりました。そうでない。それが発展してきて、日本に対する攻撃というか侵略ということになるということも、あしたいかなることがあろうともという中には当然入ってくるのじゃないですか。それでなくてはおかしいのじゃないですか。
  95. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の領空、領海に限ってです。いかなることがあろうとも、範囲は日本の領空、領海においていかなることがあろうとも有事即応の体制をとっている、これであります。
  96. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお引き続いてお伺いいたしますが、七月四日と八月十日のいわゆる東京発のAP電によりますと、こういうことが報道されておるわけです。「日本韓国、沖繩、台湾にある五百有余の空軍基地」、この中には米軍基地も含まれております。「この基地はマイクロ線で結合され、レーダー情報でネットワークするようになった」と、これはなろうではなく、なったと断定しているわけであります。こういう意味の報道があるわけであります。こういうことにも関連してくると思うのです。このことはいかがですか。
  97. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日米間の連絡は密にしておりますが、韓国と直接私のほうでマイクロ線をつないだということはございませんし、今日の計画も軍事用にはございません。一般の民間用、これは私の所管ではございません。私が計画も作業もしたことはございません。
  98. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 一九六二年の十月一日の東京新聞によりますと、ここに実物ございますが、「防衛庁が日韓国交正常化後の純軍事的問題点として考えているのはバッジ・システムの連結による防空共同作戦」、それから以下幾つかをあげていますが、いまここに関係ございませんから三つほど省略して、「などである。」、そこで、この記事に対して、防衛庁は韓国と無関係日本の防衛が成り立つと判断しておるのかどうかという点が一点、それからこういう点からも日韓の防空共同体制が当然に考えられるではないかと、こういう二つの問題についてお答えいただきたい。
  99. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の平和を守る自衛隊の今日の任務としては、韓国のみならずソ連、中共、北鮮、近隣諸国において不安の起こらないこと、これが第一の私は目標でございます。したがって、韓国だけが日本の防空の窓口だという意思は毛頭ございません。北海道から九州まで、それに隣接するところに戦乱が起こらないこと、またその状況を常に把握すること、これが私の任務であると思います。したがって、韓国とどうということはわれわれは考えておりません。日本の周辺諸国が平和であること、戦乱がないこと、これに対し、情報を持ち、それに対して対応する、これが私の任務でありますので、特に韓国と固定して私たちがどうだということはありません。もちろん、韓国も隣接の国でありますから、平和であること、これは当然なことであります。また、それが戦況が緊迫すること、これに関心を持つこと、これは当然であります。しかし、直ちにわれわれが出動するとか、態勢をとるとかいうのはあくまで日本の国内に対する直接侵略、間接侵略あるいは治安の問題これだけであります。
  100. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そういう御意見であっても、いま直ちにこれに反論しようとは思わないわけです。先ほども繰り返し申し上げたように、個々の幾つかの問題がたくさんあるわけですから、その最終的段階でそれに反論を申し上げたい。そういう意味合いでさらに続いてお伺いしたいと思います。  十月二十七日の衆議院における特別委員会で、これは外務省に関係あるのですが、外務省の藤崎条約局長がこういう説明をされておるわけです。今年三月十七日の国連軍から韓国軍の領空権の移管に関して説明しておられるわけですが、「国連軍側から韓国軍のほうに航空管制の技術的なことを移譲された」ことではないか、こういう意味のお答えがあるわけです。そこでお伺いするわけですが、どういう理由で、それからいかなるものが移管されたのかということ、それから韓国空軍は航空警戒管制を握ったことになったのかどうかという点、レーダーサイトについては一体どうなのか、こういう具体的な、大事な問題が不明確でございますので、この点を具体的にお答えをいただきたいと思います。
  101. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ただいま御引用になりました私の答弁は、領空権というものが国連軍から韓国軍に移ったかのような新聞報道についての御質問に対してのお答えでございましたが、これは領空権というようなことじゃなくて、飛行場発着の航空管制に関する仕事が韓国側に渡されたというのが事実、その詳細については私存じませんが、なお照会中だということでございます。
  102. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、海原防衛局長おいでですか。
  103. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) かわりました。転勤しました。
  104. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 官房長でもけっこうですが、前の国会で、当時の海原防衛局長はこういう意味の御答弁をなさっておるわけです。自衛隊と米軍との共同作戦について重大な発言をしておるわけですが、その内容の一節は、自衛隊として米軍と共同作戦するということになると、これは実際問題として米空軍だけになる。具体的な協力関係は空軍だけでやるという意味です。新しいレーダーサイトによる情報が逐次個々の飛行機にそれぞれの諸元が通報されてくるので、空域を分けてその目標を与えることで双方共同の行動ができる。双方の司令官が同じ建物に、同じところにいる云々ということで、これは衆議院の予算委員会における三矢研究小委員会での御答弁があったわけです。この内容を見てわかるように、航空自衛隊と在日米空軍とは一体に行動しておるわけです。それから在日米空軍司令官が兼ねておる第五戦術空軍の指揮下に在韓米空軍があるわけです。そしてさらにそれと一体となって韓国空軍がある。これは現実の姿であろうと思うんです。こういう点からも考えられるわけですが、日米間のいわゆる空軍が一体である、少なくも航空警戒体制がこの間にとられておるのではなかろうか、こういうことが考えられるわけです。この点はいかがですか。
  105. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 在日米空軍は在日米空軍、名のごとく日本だけでございます。その中に第五空軍というのが少しダブっておるかもしれませんが、まず大体体制はそうなっております。海原防衛局長が答えた当時とはだいぶ日本の情勢も変わりまして、わが自衛隊も成長いたしまして、今日は米軍の空軍は非常に減少しております。大体、在日米空軍は非常に減っております。したがって、わが自衛隊が日本の防空管制あるいはスクランブリングを、ほとんどいま全部今日の場合は日本がやっております。その答えましたのは、おそらく非常の場合、非常の場合に日本空軍だけでやれるか、安保条約の規定によって米軍と共同作戦するのではないかという想定の答弁であったと私ども記憶いたしております。そのときに指揮命令権がどっちかという話から、指揮権は日本でございます。日本日本でございます。米軍は米軍でございます。ではどちらが指揮をとるのかということですから、米軍機については同じ管制によって米軍の司令官が米軍機に指揮命令する、同じ管制によって日本日本の自衛隊、これが指揮管理をいたします、そのときに同じ場所におってということばが出たわけであります。それは韓国の、もちろん当時ですから日韓問題もまだこんなに出ておらないときですから、日米間の問題で私はお答えしたと記憶いたしております。
  106. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この問題もそのままにしておいて次の問題をお伺いいたしますが、アメリカの原子力潜水艦の極東における大事な使命というのは一体どういうものですか、関連があるのでまずお伺いいたします。
  107. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 米軍の作戦行動については詳細に私たちも知るよしもございません。ただ知り得るのは、編成において第七艦隊に所属しておる。第七艦隊というのはハワイから以西ですか――ハワイの途中のところから線を引きまして以西である、そうして第七艦隊に所属しておるということだけで、行動、目的、内容については、これは軍の行動について知るよしもございません。われわれが知っておりますのはそれだけでございます。
  108. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 まあその米原子力潜水艦の極東における重要な任務の一環として、あるいは対馬、津軽、宗谷、こういう三海峡の通峡阻止作戦ですね、こういうことが非常に大事な任務の一つになっておると思うのですが、その点はいかがですか。
  109. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私もそれは正確にはわかりませんが、われわれが承知しておる能力と範囲から申しますと、原子力潜水艦は長期遠洋作戦がこの主目的であるとわれわれは性能上判断しております。どこにおるかまではわかりませんが、長期遠洋航海のために原子力潜水艦が開発されたと、したがって、相当長い距離、遠洋におるのじゃなかろうかと私は想像いたします。しかし、今日どこで行動しておるかそれは私はわかりません。しかし、その作戦計画を一緒にやったことはありませんので、日本の防衛範囲内にはこれは入らない問題じゃないかと私は思います。
  110. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 明答を避けて、遠洋航海が目標だというような意味のことを言っておりますが、あらゆる角度から見ても、われわれしろうとでもうなずけることは、対馬とか、津軽、宗谷、こういう海峡の阻止作戦を連日頭において訓練をしておると、こういうことは容易に想像できるわけです。そこでなおお伺いいたしますが、日本のいわゆる海上自衛隊の中で、日本の潜水艦の使命は一体どういうことか、そういうことをお伺いしたいと思います。
  111. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の潜水艦の性能は、必ずしもまだ最高な性能でございませんので、遠洋と申し美しても、そんなに長期間遠洋に潜水行動はできません。したがって、重要地点における交差点、交通の要路の交差点に対する保護あるいは警戒ということになります。したがって、日本の場合は、重要地点といえば東京湾とか、あるいは関西の大阪湾の入り口とか、あるいは九州の一番狭い海峡とかいうところに対する安全な航海に対する保護、これ以上まだ日本の潜水艦の性能としては不可能でございます。
  112. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今後この条約がもし批准されて、日韓の国交が正常化した場合ですね、日本のいわゆる海上自衛隊がその作戦行動の一つとして、計画の一つとしてですね、対馬海峡のいわゆる通峡阻止という計画を全然考えないのか、そういうことを考えるのか、現在はどうなのか、現在並びに将来にわたってのお考えをお聞かせいただきたい。
  113. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 朝鮮海峡、対馬の海域を守るということは、われわれ自衛隊の使命であると存じます。しかし、そこだけを焦点にしているわけじゃございません。北海道のほうもあれば、九州の豊後水道もあれば、太平洋、日本海、あるいは日本周辺全部に対して、われわれはどこから攻撃を受けても日本の安全が守れるという作戦でありまして、どこという、きめてこのとおりやっているわけじゃございません。ある年はこの地域で海上の訓練をする、ある地域は、太平洋でする、ある場合には日本海でする。日本中どこでも毎年場所を変えまして海上訓練をしている理由は、日本どこでも、その防衛の任務に当たれるという意味でやっておりますので、どこだという、そこだけをやっているわけじゃございません。もちろん日本の周辺ですから、そこも含まれておることはこれは事実でございます。
  114. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私がお伺いしたかったのは、一つの特定の地域、いわゆる対島海峡についても通峡阻止作戦を考えておるかどうか。もちろんそれだけをやってほかの訓練はやらないのだ、そういうことをお伺いしておるわけではないわけです。そういたしますと、対島海峡の通峡阻止作戦ということも考えておると、こういうことであったと思うのですが、そう理解してよろしいですか。
  115. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 通商阻止作戦という目的が少し私のことばの中に足らなかったかもしれません。日本の船の安全を保護する、外国から侵略があった場合にその安全を保護するのであって、日本の自衛隊はあくまでその阻止作戦が主目的じゃありません。日本の船の安全航海に対する警戒を、私たちは潜水艦もその一つの作戦としてやっているというわけで、その阻止というよりも日本の安全と日本の船の航行の保護ということが主目的であって、ことばはどちらでも似たようなものでございますけれども、目的とすると、私はそっちに実は目的の焦点を置いておるわけであります。
  116. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そういたしますと、米原子力潜水艦の極東における使命については、長官は明確なお答えなかったわけですけれども、これは諸般のあらゆる角度から検討してみても、われわれしろうとでも、当然、対島とか津軽、宗谷、この海峡のいわゆる通峡阻止ということを訓練の一つの大きな目標にしておるであろうということが考えられるわけです。そして日本の海上自衛隊の使命の一つに対島海峡についても考え、あるいは計画はあるということ、そういうことを結びつけ、さらにそれに加えて、先ほど申し上げました軍事専門家であり韓国国会の議員である姜議員が、このことに関連してこういう発言を国会でなさっておるわけです。「第二に問題となっているのは、前に挙げた第一は防空共同作戦のことだが、この第二はいわゆる韓・日共同探知網の設置であります。」、この点も私は同様の意味から正しい政策だと考えます。詳細にあるわけですが、ここでは省略いたします。こういうふうに韓国自体もいわゆる潜水艦の探知網の共同作戦ということを韓国の軍事専門家は考えておるわけです。そこで、こういうことからあわせ考えても、また日本の海上自衛隊の使命、極東における米潜水艦の使命、こういうことをあわせ考えると、いままでないとしても、今後、日韓の国交正常化に伴ってこういう通峡共同作戦が生まれてくるのではないか、こういうことが考えられるわけです。この点はいかがですか。
  117. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 朝鮮海峡は必ずしもそう広くないので、伊藤委員のおっしゃるような御質問のようになるかもしれませんが、あくまで対馬――日本の領土、領海、領空を守るためにわれわれの任務があるものでありまして、朝鮮いわゆる韓国側の海域水面についてはわれわれは演習もしておりませんし、またその作戦計画もございません。あくまで日本の――同じ朝鮮海峡にありましても日本の島嶼――島における領土、領空の実は保護ということが作戦でありまして、向こう――対岸のほうにわれわれはその作戦計画とか研究とかしておりませんので、必ずしもそこで共同ということばは私は出てこないんじゃないか。私は私のほうの目的、訓練はそのようなことはしておりません。したがって、その向こう側の対岸のほうまでには及ばない。そうなると、いまのことばが、この向こうの軍事専門家の御発表も、向こうのお考えは御自由ですけれども日本にはまだそのことばは通用しないと私は思います。
  118. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私が申し上げるまでもなく、日米は安保条約によって共同作戦がとられる、米韓は米韓相互防衛条約によって共同作戦がとられる、これは明確であろうと思う。で、共産侵略から韓国を防衛する場合があると仮定すれば、その場合には、国連軍司令官は全韓国軍のいわゆる陸海空全軍の作戦指揮権を持っているわけです。それと、それに加えて在朝鮮の国連軍の実体はいわゆる米軍である、現実の問題はですね。そして、なお国連軍司令官は米軍司令官である。こういうことをあわせ考えた場合、この海峡の阻止作戦が日米韓三国によって共同的な体制がとられるであろうことは容易に想像できるわけです、考えられるわけです。この点はいかがですか。
  119. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 国連軍は在韓米軍というものを指揮しておりまして、日本には今日はほとんど国連軍の所在はわずかの連絡員程度しかおりません。したがって、韓国に今日はもうほとんど全部しぼられております。   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕 そこで、その朝鮮海峡の話が、非常に卑近な近いところですからそういうお話もありますが、その作戦は、私はいまの状況で過去にも今日もございません。また、将来にも今日の自衛隊法の範囲を出ることはありませんので、私たちは日米安保の範囲を越えて今後進めるという考えは毛頭ございません。また、そういう装備も訓練もしておりません。したがって、その韓国ということは米韓間にはありますけれども日韓間には直接これを結びつき得ない問題じゃないか。もちろん海ですから、どこの海か、そういうふうな流れは近いのですから、いろいろその御意見もそれはもう十分わかります。しかし、作戦計画というものが日韓に結びつくということは今日われわれは考えられない。また、自衛隊法が厳然としてある間は私は考えられない、私はこう思います。
  120. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお個々の問題はたくさんございますので、具体的な問題に入っていきますが、一九六二年十月一日の東京新聞の報道によりますと、こういう意味の記事があるわけです。現物がここにございますが、韓国軍の操縦士などの委託養成が現在も日本の自衛隊において実施されているようであるが、詳しいことは省略いたしますが、こういう意味の記事があるわけです。そこでお伺いしたいわけですが、こういう前提に立てば、一体現在でも、いわゆる自衛隊とか学校で外国軍人の委託養成を受けておる現実はあろうと思うのです。これは自衛隊法の百条の二によって合法的にやることはできるわけです。そこでお伺いしたいわけですが、三十七年にこれが指摘されておりますから、その三十七年以後、現在まで養成部隊とか人員等にいって、これを年度別、国別、陸海空軍別に、ひとつその概要についてここで御説明いただいて、なお詳細な資料については、ひとつ資料として御提出いただきたい。
  121. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 外国の軍人を日本で委託教育したという例はございます。しかし、その韓国の者は今日はもうほとんどございません。それもタイから一名とか、留学生程度の一名という程度であって、部隊として訓練したことは私の記憶ではございません。なお、せっかくの御要求ですから、人数は教育局長からお答えいたさせます。そんなに大部隊を教育したことはございません。今日韓国は一名ももちろんございません。ただ、お互い交換学生というので、一名ぐらいずつのお互い交換したという例はございます。しかし、人数は、せっかくの御要求でございますから、教育局長からお答えいたさせます。
  122. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 外国の留学生を日本の教育課、自衛隊の教育課で受託して教育したということはございますが、韓国の人を受託したことはございません。タイ及びフィリピンと記憶しております。現在も、タイの留学生が日本に留学しております。
  123. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、愛知県の小牧空港には韓国軍のマークをつけた戦闘機が並んでおるということ、これは確かめるわけですが、そういう事実があるかどうか。もしあるとすれば、具体的にそのことを御説明いただきたい。なければならないでけっこうです。
  124. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛局長からお答えいたしますが、私の知っている範囲では、ございません。なお、政府委員のほうからお答えいたします。
  125. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 防衛局長でございますが、私もこの事実は承知しておりません。
  126. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、韓国軍兵器の修理とか補給の問題に関係してお伺いいたします。その前に、一九六二年十月一日の、先ほど申し上げた東京新聞の記事によりますと、こういう内容があるわけです。防衛庁は、韓国軍兵器の修理、補給などの計画を具体的に検討しておる。これはそういうことをきめたとは決して報道してないわけです。検討しておるということであります。それからすでに三カ年たっているわけですが、そこでお伺いするわけです。その検討の結果、どういうことになっておるのか、まずそのことからお伺いします。
  127. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう報道は私も拝見したことはありますが、現実にそういうことは防衛庁の仕事ではございません。また、私が防衛庁で検討しても、できないのじゃないか。ということは、韓国の戦闘機と日本の戦闘機とは非常に違っております。したがって、その機種の違うものが直ちに修繕できるとは私は思いません。したがって、それはもしあれならば、一般民需で研究されたかどうかそれは知りませんけれども、防衛庁で研究すべき問題ではございません。私の今日の常識では、非常に機種の違っておる飛行機の修繕は、そう簡単に三年や五年でできるものじゃないと、私は私の知る範囲の能力では思います。ただ、もしも検討されるならば、民需の研究はこれは私の所管ではございませんが、防衛庁でやるという仕事ではこれは毛頭ない。また、今日そういう検討は何も残っておりません。したがって、私の前任者もおそらく、検討された書類が残っておりませんので、私はおそらく検討されなかったのじゃないか、こう思っております。
  128. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 先ほどたびたび申し上げておる軍事専門家である韓国の姜国会議員が、前に引き続いてこういう意味のことを発言されておるわけです。「第三に、韓国軍装備は日本から修理、補給すると言われています。つまり、これはアメリカの対共防御の責任を日本の軍需省にとりあえず肩がわりさせるということです。」云々と、こういう意味の発言を国会でされておるわけです。こういうことからも、韓国が全然日本との話し合いなしにこういうことを考えておることではなかろうと思うんです。もちろんこの主体は米軍の考え韓国国会で述べておるわけですから、アメリカがそういうことを考えておることはこれはもう明確なわけです。そういう関連から、どういうふうに考えられるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  129. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いまの御質問は実は防衛庁といいますが、通産省の実は所管の事項に当たるんじゃないかと思います。ということは、航空機の修繕あるいは補給というのは、防衛庁の実は所管事項から離れまして、通産省のほうの所管になっております。したがいまして、製造は通産省、使用は防衛庁と、同じ品物が所管が変わっております。それで、修繕と補給というのは通産省の所管で、防衛庁の所管では実はない。したがって、あるいは通産省のほうに御質問いただくほうが適当かと思います。
  130. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお、本年の三月十七日に外務部の長官である李東元さんがマクナマラ米国防長官と会談された際、韓国がすでに送った二千名のほかに一個師団を南ベトナムに派遣する際、装備その他については日本が担当することに同意したと、こういう意味の報道があるわけです。このことは一体どうなのか、そのとおりなのかどうかということをも含めて、伺いたい。
  131. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 装備を日本から補給するという、いままではやったことはまだございません。したがって、それは一方的なお話であって、日本からまだ兵器輸出というものは、私、やった記憶もございません。また、それを認可した記憶もございません。したがって、それは現実にはまだそういう構想も私どもは何もございません。
  132. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 現在、韓国人の貿易商が日比谷の三信ビルの中に事務所を置いておりますが、この軍需物資が南ベトナムに送られていることについては、これはまあ直接日本の、日韓の軍事的提携であると考えられるわけです。日本の兵器、装備が送られていることは、この韓国人の貿易商を通してベトナムに日本のそういう兵器類、品物が送られているということ、ここにいろいろ問題があるわけですが、問題をしぼってお伺いいたしますと、このように韓国貿易商を通して日本から軍需品などが南ベトナムに、韓国の軍人に送られているということが、いわゆる日韓の軍事的提携とも考えられるし、また日本から日本の品がベトナムに送られているということは、ベトナム戦争に日本協力しているということにも考えられると思うのです。このことに対する総理のお考えはいかがですか。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねになりましたような事実は、私は知りません。ないと思っております。
  134. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この問題は私が実際扱ったわけでございませんので、なお今後私のほうでも確かめて、その上あらためてお伺いすることにして、質疑を保留にしていただきます。  次にお伺いいたしますが、アメリカの有力新聞で有名なクリスチャン・サイエンス・モニター、これが本年の八月二十四日に「極東の焦点」、こういう見出しで論説をあげておるわけです。その内容は、日本の世論は米国のベトナム介入を批判しているが、幾つかの日本の会社は黙々と利益をあげておる、米機がベトナムで投下しておるナパーム弾の少なくとも九〇%が日本の二つの商社から送られたものである、こういう記事が出ておるわけです。このことに対して一体どういうふうにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  135. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いまのナパーム弾のことは、私も政府委員も関知しておりません。
  136. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 関知していないということは、防衛庁長官としてそういうことは全然聞いていないということですか。私は知らないがあるかもしらぬとか、十分調べたがそういうことは全然ないとか、その辺を明らかにしていただきたい。
  137. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう事実があるということは知りません。したがって、ないということでございます。
  138. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 ただ、このことはいずれ時間が解決することで、防衛庁長官が国会の場でうそを言ったか正直な答弁をされたかということは、今後時間が解決するわけで、あえて深追いいたしませんが、そこで、次の問題をお伺いいたします。  自衛隊が学校とかあるいは部隊で朝鮮語の学習をやっているという事実があるかないかということ、なければない、あればあるでまたお伺いしますが、そのことをお伺いします。
  139. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の自衛隊の中では、御承知のように国際的ないろいろのことばの勉強をさしております。その一環として韓国語もあります。
  140. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 もしこの条約が批准されるということになりますと、日韓の国交が正常化され、経済も文化も、いろいろ盛んに交流されることになろうと思う。そうなりますと、経済人とか文化関係人が朝鮮語を学習するということは、当然にこれは最も自然に考えられるわけです。ところが、自衛隊は国の防衛を担当しているわけです。そこで、理屈はどうでもつきましょうけれども、防衛を担当する自衛隊が、目下問題になっている日韓関係のこういう非常にむずかしいおりから、その自衛隊が朝鮮語を学習するということは自然には考えられないわけです。いま長官のおことばでは、世界の各国語を研究する必要があるから、そういうことであったわけですけれども、その点をいま少し具体的にお聞かせ願います。
  141. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いま自衛隊で、自衛隊の語学教育課があります。全部隊にやっているわけではありません。ロシア語、ドイツ語、フランス語、英語、中国語、韓国語、そのほかに東南アジアのことばをやっております。それはそういう専門科だけの学校でありまして、全部隊でやっておるということではありません。非常に少人数がやっております。
  142. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私も全部の部隊で朝鮮語をやっておるという前提に立ってお尋ねしておるわけではないのです。もう少し具体的にお聞かせいただきたい。学校でやっておるということだけでありますけれども、どこの学校で一体どの程度の学習の時間とか、そういう具体的な説明をしていただきたいと思います。
  143. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 数十人程度であります。それで、内容については教育局長からお答えいたします。
  144. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 語学を教えておりますのは、主として防衛大学及び部隊の学校の中では調査学校でございます。大部分は英語でございます。あとの中国語、朝鮮語、それからソ連語、そういったものは大体十数名から数十名単位の人数でございます。
  145. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これから総理にお伺いいたしますが、昨日の当委員会で、アメリカ日韓条約の成立をどういう意味で喜ぶのか、また、この日韓条約が成立するとアメリカのためにどういうプラスがあるのか、そういう意味の質問がわが党の稲葉委員からあったわけです。それに対して総理のお答えは、日韓がお互いに仲よくすることはたいへんけっこうなことであろうからと、そういう意味のきわめて単純な内容のお答えであったと思うのです。そこで、私がいまお伺いしているこの軍事問題に非常に関連をもつ事柄でございますので、昨日伺いましたけれども、私の立場からもいま一度お伺いしておきたいと思います。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨日のお尋ねで、アメリカがこれに関心を持っている、それは一体どういうわけであるか、こういうようなお話があったと思います。それに対しまして、いずれの国も、隣同士が仲よくしていくということ、これに対してはみんな関心を持っている。ひとりアメリカばかりではなく、ドイツもイギリスも、また自由主義陣営の諸国はみんな関心を寄せている。したがって、これができたということは非常に喜んでいる。ましてアメリカのように、日米安保条約を結んでいたり、あるいは米韓条約のあるその立場なら、アメリカが関心を寄せるのはあたりまえでしょう、かように私は答えたと思います。私は、アメリカ自身は、私がこれをさらにアメリカを頂点にして日韓で結んでいく、こういう意味ではございません。これは先ほど防衛庁長官がお答えしたとおりでありまして、アメリカが米韓、あるいは米台、また日米、こういうようなそれぞれの国と同盟を結んでいる、こういうことでございますから、アメリカ自身の立場からいろいろくふうし、またいろいろ考えているのは、これは当然のことだと思います。しかし、日本日本の独自の立場から考えても、そこまで発展はいたしておりません。アメリカについていくような発展まではしておらない、こういうような関係にありますから、アメリカがこの事柄に当然関心を示す、喜んでいる、かように私は思います。
  147. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 いまの御答弁は、もちろん、私から考えますとそのほんの一端にすぎないので、アメリカはただ、日韓関係が正常化する、もちろんそういうことを喜ぶでもありましょうけれども、そういう単純なことだけでアメリカが喜んでおるものではなかろう、ほかにもっと大きなねらいがあるんではなかろうか、こういう点についてお伺いをしておるわけなんです。そういうことについてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、別にアメリカが単純な意味でと、かようには申さない。アメリカが多大な関心を寄せるのはこれは当然でしょう。これはアメリカ日本との関係、またアメリカ韓国との関係、それぞれ密接な関係を持つのですから、その自分たちが仲よくし、あるいはアメリカ自身が防衛の一翼をになっているこの日本韓国が仲よくなっていく、これは当然いいことですから、みずからがそれを進めていく、かように私は思います。したがって、私どもがこの日韓の条約を締結することについてどういう反応を示しているか、かようにお尋ねがありまして、すでに御紹介をしたと思いますが、自由主義の諸国はみんなこれを心で喜んで迎えております。ただ、どうも共産主義の国はこれに反対を示している。これはもうすでに御承知のとおりであります。
  149. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 まあそういう御答弁ですが、私はこう思うわけです。アメリカ日韓間の条約が成立して国交が正常化すれば、そのことによって中国に対して日本アメリカ韓国、台湾、フィリピン、こういう一連のつながりをつけることによって政治的、軍事的な包囲体制を強化する、これがアメリカの本当のねらいではなかろうかと私どもはそう考えるわけです。もちろん、総理には総理のお考えがございましょうし、私にはいま申し上げたような考えがあるわけです。そういう考え方について総理はどういうふうにお考えになるのですか。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) しばしば社会党の方々から、これはNEATOの思想に通ずるものじゃないか、特別な軍事同盟を形成するものではないか、こういうお尋ねがしばしばございましたが、しかし、私どもが一貫して申し上げておるのは、これは日韓だけの問題で、ただいま申すような多数国間の話し合い、あるいはまたその同盟、こういうようなものではございません。また、そういうものを背景にしてこの条約が結ばれたものでもございません。どこまでも日韓間の善隣友好の関係を樹立する、そういう立場のものでございます。これを何度も繰り返して御説明をいたしたはずでございます。もう、ただいまお尋ねのような、いわゆる多数国による防共同盟あるいは反共軍事同盟、かような意味のものではございません。はっきり申し上げておきます。これはいままで何らの交渉を受けなかったばかりでなく、さらにこれを説明いたしますのに、わが国の憲法ではっきりしているじゃありませんか、またその憲法を具体化するような自衛隊法もあるじゃございませんか、これでおわかりでしょう、かように私はしばしば申しておるのであります。かりに伊藤君がどういうふうにお考えになられようと、それは御自由と申し上げたいのであります。しかし、私は、日本国民として、国民全体が平和に徹し、そして平和憲法をつくっておる、その考えから申しまして、社会党の方も、やはり国民の期待に沿うように、その考え方だけは直されたほうがいいんじゃないかと、私はかように思います。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連。総理にお尋ねするんですが、きのう委員会に要求して、いまの点に関連していただいた資料があるわけですが、それは一九六四年の十月三日に李東元韓国外務部長官とバンディ・アメリカの国務省極東担当次官補との間の共同コミュニケがあるわけです。いま配られたものですが、きのう私三つアメリカ韓国との間の共同声明を出してくれと要求したんですが、それの中のいまの李東元とバンディの共同コミュニケの(三)のところにあるわけですが、ちょっと読んでみますと、(三)のところは、「李東元長官は、日韓両国の関係について最近の事態を説明し、李東元長官とバンディ次官補は、日韓両国間の国交正衛化がアジアの平和に重要な貢献をする点に合意し、また、この問題に関する韓国の世論が、超党的立場に立脚した国家利益を認識するようになるだろうとの希望を表明した。李東元長官とバンディ次官補は、また、日韓国交正常化のための交渉が、早急な時日内に再開することができることを希望すると表明した。」、これから後になると思いますが、「バンディ次官補は、永らく続いてきたこの日韓問題を成功裡に妥結させ得るよう米国が適切な方法で支援する用意があるとすでに表明したところを再確認した。」と、(三)のところですが、こういうふうにはっきり米韓の共同コミュニケ一つをとってもあるわけですね。これはバンディが日本に来て、韓国に行って、この共同コミュニケを出して後にまた日本に来て、これは外務大臣に会ったわけです。椎名さんと会って、椎名さんはバンディとの間では日韓のにの字も出なかったと言っているのですが、これはまあ別として、はっきり出ておりまするように、「永らく続いてきたこの日韓問題を成功裡に妥結させ得るよう米国が適切な方法で支援する用意があるとすでに表明したところを再確認した。」と、こうはっきり出ておるわけです。  だから、私はアメリカが直接日本に対して干渉をしたとかなんとかということをいまここで言うのではなくて、少なくとも韓国に対して日韓問題を成功さすためにいろいろな方法で支援をしてきたと。支援ですね。単に希望の意思の表明ではなくて、共同コミュニケまで出しているのですから、韓国に対して日韓問題成功のためにこういうようにいろいろな形で支援をしてきたということは明らかではないかと、こう思うわけですね。このことは私は日本政府としてもこれは認めなきゃならないのじゃないかと、こう思うのですが、この点はいかがですか。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、この日韓の問題で日本が直接出しておることについては、もちろん責任がございます。しかし、韓国と米国とが声明を出したからつて、それに縛られる、かような状態は私は了承いたしません。  また、先ほど来この軍事協定云々のお話がしばしばございますが、この日韓の条約の調印を終了した後に、韓国筋のほうのこの軍事同盟についての意見として、東亜日報でしたかあるいは京城日報でしたか、報道しているところのものに、どうも自分たちは軍事的な協力が得られるように思ったけれども日本ではこれを夢にも考えていないようだ、こういうことをはっきり申しております。私が先ほど来説明をする日本政府立場も、ただいま韓国の李東元その他の意向として私が紹介するこの新聞記事なども、ただいまのようなお尋ねのような軍事同盟などでは全然ないという、それを裏書きしておることをひとつ御了承いただきたい。  ただ、いまお引きになりましたバンディとあるいは李東元と、そういう者が過去においてどういう声明をしたか、あるいは交渉を持ったか、そういうこととはいまは変わっておりますから、調印をしたこの段階において、どういうようにこれから動き出すか、またその期待がはずれたかというようなことを、十分御理解をいただきたいと思います。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 もう一つ関連。私が言っているのは米韓でこういう共同声明をしたから、それが何も日韓が軍事同盟であるということに結びつくと、こういうことを質問しているのではないわけです。こういうように声明を現実に出しておるではないか、だから、アメリカ韓国に対して日韓問題を成功させるためにいろいろな形で支援をしてきたじゃないか、このことは事実は事実として認めざるを得ないのではないか、ということを言っているわけです。そのことが直ちに日本にどうこうということを言っているわけじゃありません。これは問題は別だと思います、あなたの言われるところによればですよ。それが一つですね。こういうような結果でやって、その帰りにはバンディは日本に来て外務大臣に会っているわけです。椎名さんに会っているわけです。椎名さんは、そのことを聞かれても、バンディと会ったことは会ったけれども日韓のにの字も出なかったと言っているのです。ここで椎名さんをつかまえて、ではその結果として話が出たろうと言っても、椎名さんは例によって適当にごまかすだけの話ですから、私はそれはそれとして、いま言ったようう形が一つです。  それから、もう一つは、一九六五年の五月十八日、これはことしですが、朴正熈韓国大統領とジョンソン大統領との間の共同コミュニケがあるわけです。資料の三番目のものです。これは大統領と大統領との共同コミュニケですから、私は大きな権威があるものだというふうに考えます。その中の(七)というところにありますが、こういうふうに言っているわけですね。「朴大統領はすでにその内容について仮調印され、条約形式に起草中である国交正常化のための合意に関する日韓両国間の交渉を再検討した。ジョンソン大統領は、この成果を歓迎、賛成し、この日韓間の合意が完結されるときには、直接関連する両当事国の相互利益を増進ずると同時に、アジアの自由国家群を強化す然おるとの期待を表明した」、「アジアの自由国家群を強化する」ということが、それが私は日韓の軍事同盟だということを直ちに言っているのではありませんから、誤解をされると答弁がこんがらかりますが、そういう意味ではなくて、日韓間の合意が完結され締結されることはアジアの自由国家群を強化することにはなると、このことは総理は当認めになりますか。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二つお尋ねがございますが、アメリカ韓国に対しましてこれを支援する用意あり、これはまあ韓国と米国との問題でございますから、どういうような用意をアメリカ側でしたか、それは私どもは知らない。また、帰りに日本に寄ってまいったバンディが外務大臣と会ったということですが、これも外務大臣がお答えしたように、日本に来てはそういう点には全然触れておらないということでありますから、この米韓の問題は問題としてそのままにしておいたらいいだろう。これはまあ、アメリカが反対したというわけじゃないので、日韓交渉を心から喜んでおると、まあこういう意味なんだと思います。  それから、その次の第七の問題、朴大統領とジョンソン大統領、これはもう確かに権威のある問題です。いまお話にありましたように、これは軍事的協力を強化したと、かようには私も考えませんが、とにかく自由主義陣営の強化と自由国家群を強化するとの期待を表明した、これはそのことばどおりそのまま私も承認していい、あなた御自身が、稲葉君自身がこれで軍事同盟を強化したと、こういう意味には私も考えておりませんが、少なくとも自由主義陣営の強化になったと、かように私は思います。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 自由国家群を強化するということは、直ちに私は、そのことばが日韓の軍事同盟を意味するのではないということを言ってるわけですけれども、しかし、アジアの日韓が、自由国家群の強化になるということであれば、その中から問題として軍事的な提携というか、そういうふうなものが出てきたとしても、これは、私は論理の帰結として決して導き出さるべき筋合いのものではないと、こういうことを考えるわけです。(「それはおかしいよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)いや、これは私の意見ですから、あなたの答弁を求めているわけじゃなくて、ぼくはぼくの意見を言って、これは終わりにして、あとは伊藤君の質問に譲りたいと思います。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、私が別にお答えするわけじゃありませんが、こういう機会にこれははっきりさしておくことがいいと、かように私は思います。この自由主義国家群の強化、これはただいま、軍事的な方法ばかりじゃないと、おっしゃるとおりだと思います。経済協力、あるいは技術的強化、あるいは相互援助、これなどは確かに自由国家群を強化するものだと、かように私は思います。
  157. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、総理にお伺いいたしますが、佐藤総理は、しばしば当委員会で、特に、最初は二十五日の羽生委員の質問に対しまして、日韓条約は軍事的な同盟を背景にしたものでないと、そういう意味答弁をなさっておるわけです。なるほど条約の条文を見ましても、軍事同盟という文字は使ってない、それは事実です。しかしながら、ここで見のがしてならない重要なことがあるわけです。それは先ほども一たん申し上げましたが、日米安保条約と、そうして米韓相互防衛条約の二つの条約体制を通して、日韓間の軍事的つながりが、アメリカを媒介とし、アメリカを頂点としてすでに形成されつつある、こういうことです。しかし、このためには、条件が要るわけです。その条件というのは、そのささえとなる基盤が必要なわけです。ささえとなる基盤が。それは、日韓の国交の正常化ということ、そういう基盤があって、初めて日韓の軍事的つながりが形成される、そこで、この批准が通って、日韓両国の国交が正常化されれば、必然的に軍事的なつながりができる、そうして、その具体的な一つ一つの事例については、先ほど来、防衛庁長官を主体にお伺いしてきたわけです。バッジシステムの連結による防空共同体制とか、あるいは対島海峡の中共阻止作戦とか、あるいは韓国軍パイロットなどの委託養成等々の幾つかの事例をあげてきたわけです。しかしながら、防衛庁長官は、やはり日本の防衛庁長官の立場で、将来はいえることでも、いまはいえないことがあるわけです。そういうようなことを考慮して、立場を考慮して答弁をにごしておりますけれども、いろいろな現実を通して考えられることは、この一連の問題が、日韓間のいわゆる軍事的つながり――しかも、現在すでに進んでおるものもありましょうし、今後いわゆる国交正常化後に進展するものもありましょう。いろいろ個々の問題によって違いましょうけれども、そういう機運にあるということはいえると思うのです。そういうことは、賢明なる総理もおわかりになると思いますが、この点はいかがですか。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  なかなかうまい論理を展開されますけれども、確かに日韓間が友好親善関係を樹立していないときに、一足飛びに軍事同盟などは考えられない。まず、善隣友好関係を樹立した、これから発展していくんだと、必然的に軍事同盟に発展するのだ、こういう論理でございますが、しかし、国民皆さんから、これをお聞き取りになるほうからいえば、必然的に軍事同盟へ発展するという、これは非常な論理の飛躍だと、かように私思いますが、いかがでしょうか。これは確かに何も交渉持たないものが軍事同盟などする、これはないでしょう。しかしながら、これに善隣友好関係を樹立した。それからさきに必然的に軍事同盟へ発展するんだ。これは私はどうしても論理の飛躍だと思います。どうしても私が疑問に思っていたのですが、ただいまのような論理的飛躍をなさると日韓条約も不安だ、これは心配だ。こういうことに国民に呼びかけることにもなると思います。論理の飛躍はなさらないように、ただいまみずからおっしゃるように、この日韓条約を読んで見るとどこにも軍事的なものはない。これは書いてない。しかしながら、これを結んだら、この次に必然的に軍事的同盟に発展するんだ。これは論理の飛躍だと思います。私はそのためにも、私ども政府だけじゃないのだ、国民とともに約束をしておる。ちゃんと憲法があるのです。その憲法の精神を守って行きましょう。だからこういう論理的な飛躍は、これはひとつ願い下げをお願いいたしまして、そしてただいまの条約に書いてあるその範囲でこのよしあしを御判断願いたい。
  159. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 いま総理は私の質問に対して非常に飛躍しておるとそうおっしゃる、総理自体が非常に飛躍しておる。と申しますのは、私は本条約を通して、いわゆる日韓間に軍事的な同盟ということは言っていないのです。軍事的同盟ができるなんて一言半句も申し上げていない。それを、言わないことを私は軍事同盟だというふうに解して、一国の総理ともあろうものが、そういう飛躍した解釈をされることはきわめて遺憾です。私は軍事同盟などとは一言も言っていないのです。これは軍事的なつながりが云々と言っているわけです。軍事的なつながりと軍事同盟とは、これは全然異質なものです。こう混同して解釈されるから結論として総理のやることが飛躍された答弁になるのだ。今後そういうところに十分心していただきたいと思います。(拍手)  そこで、私は重ねて申し上げますが、アメリカを頂点として日本韓国アメリカ韓国の間には米韓相互防衛条約がある、日本との間には安保条約、これは言うまでもない。こういう関係にあって、しかも、今度は日韓のこの関係が、今度は軍事同盟とは申しませんよ、よく聞いてください。軍事同盟でなくして、日韓条約がいま批准されるかもしらん、まだわからぬ、批准されるかもしらん。そういうつながりができてきたときに、自然に、この日本の置かれた地位から考えて、また米国の意図は、何とかして日本韓国を結びつけて、ただ単に仲よくするということだけではなくて、中共に対する一連のいわゆる政治的な、軍事的ないわゆる包囲体制を形づくるためにも、アメリカはそういうことを強く願望しておるわけです。そういう情勢の中で、アメリカ一辺倒の日本政府として、アメリカの言うことを無視はできないと思う。いい悪いは別として、そういう観点から、この二つの条約を通して、アメリカを頂点とした、アメリカを媒介として、日韓関係が国交正常化、その暁に軍事的結びつきができないなどとどういう立場から言えましょうか。これは当然にできる。これが自然の成り行きです。そういう観点から、いま一度飛躍のない総理のお考えを伺いたい。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 飛躍のないお話をいたしましょう。どうか飛躍のないような論理の展開も願いたい。  ただいま米国を頂点としてというお話です。米国人として米国を頂点としてものを考えるのは、これは米国人の当然のことだと思います。私ども日本人は米国を頂点としてものを考えない。これは日本を頂点として考えています。ここが大事なことです。そしてただいま米国に従属的だとかいうような、従属とはおっしゃらなかったですか、一辺倒とおっしゃられたか、どう言われたか、とにかく、非常にアメリカの言うことを聞くんだというように言われましたが、ここらにも私は総理としての認識がございまして、私はさようなものじゃない。アメリカ事柄も、いいことはいい、しかし、私どもが賛成できないことは賛成できない。これはもうきっぱり言う。これは私は総理としてその考え方でございます。どうか、そこらの点はアメリカを頂点として考えないで日本を頂点としてものごとを考えていただきたい。そうすればおのずから結論が出てまいると、かように思います。
  161. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。ただいまの伊藤さんと昨日の稲葉君の質問に関連してですが、昨日、総理の御答弁の中で一つ確認しておきたいことがあります。それは、いまお話しのような、軍事同盟を日韓で結ぶ考えは毛頭ないと、ただ、しかし、その他の新しい条約を結ぶかどうかと言われれば、それはあえて拒否するともいまから申し上げられないと、こう言われました。そのことは、これは速記録にもはっきりあると思います。そのことは、たとえば日韓通商航海条約とか、あるいは領事条約のような通常のことを意味するのか、あるいはその中間的に何か直接の相互防衛援助条約ではないが、何かそれを意味するようなものがあるということを意味されておるのか、その点はひとつ明白にしていただきたいと思います。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 誤解はないと思ったのですが、私ども憲法を、これを守るというその立場でございますから、憲法違反のようなことは考えない。先ほど来申しておりますように、日韓間の問題にしても、経済協力あるいは技術援助、漁業協約等々の問題ならこれは問題ない。また、通商条約にしても、ただいま言われるように、あるいは領事条約にしても、とにかく私どもの行動するその基本になりますとか、その基盤といいますか、あるいは方向といいますか、これはもう憲法で示されておりますから、その点は誤解のないように願っておきます。
  163. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、防衛庁長官を主体に幾つかの具体的な問題をお伺いいたしますが、これは朝鮮に最も近い北九州に、もう長官もよく御存じのように、さまざまな新しい動きが見受けられるわけです。その一つに、例をとりますと、戦前東の羽田と並び称されておった、西の空の玄関といわれた例の雁ノ巣の空港は、朝鮮戦争後米軍に接収されておったと思うのですが、その後、福岡県警のヘリコプターとか、あるいは西日本航空、こういう会社がいままで使っておったわけです。ところが、今年九月になって、米軍の要請で日本の滑走路もつぶされてしまって、これが米軍に接収されようとしておる、こういう問題についてひとつ具体的に詳細に実情をまずお聞かせいただきたい。
  164. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 外務省のほうから答弁いたさせます。
  165. 安川壯

    政府委員(安川壯君) ただいま御指摘の雁ノ巣は、ずっと引き続いて米軍の施設でございましたけれども、たまたまそこに土地があいておりまして、米軍の使用に差しつかえがないということで、ただいま御指摘のように、民間のヘリコプター会社がこれを一時的に使用しておったことは事実でございます。ただし、これを使用します場合も、米軍に必要が生じた場合には使用許可を取り消すという条件で使用しておったものでございますけれども、本年の九月だったかと思いますが、新たにあそこにたしか米軍が通信施設を建設するということになりまして、どうしても民間のヘリコプターの使用はその通信施設に支障を来たすということで、従来の使用許可が取り消されたという経緯でございます。
  166. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私がお伺いしておるのは、この雁ノ巣の空港について、日本の滑走路がつぶされてしまって、今後空港としての使命を果たせない、そういう事実はあるのかないかということ、あなたの答弁では、たまたま雁ノ巣空港に空地があって、使わないところがあるので、それを空地利用の程度に米軍が云々という御答弁であったけれども、そういうことであるのか。日本の滑走路がつぶされてしまって、空港としての使命が果たせないということとはだいぶんかけ離れがあるわけです。その実情をありのままお聞かせいただきたいと思います。
  167. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 私もその土地の使用の具体的な事情がどうであったかというところの詳細は承知しておりませんので、これは防衛庁の施設庁のほうに具体的なことを聞きませんとわかりませんので、さっそく調べてから御返事申し上げます。
  168. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) なお、私のほうの施設庁の関係もございますのでお答えしますが、もともとこれは日本の旧軍時代の滑走路でありまして、近代的な滑走路というわけではございません。で、一時的、便宜的にヘリコプター程度が使えるということで民間使用を許可しておった、そこに通信施設をつくるということでありまして、その滑走路は実は通信施設のために必要でないというよりも、滑走路そのものが近代的な滑走路としては使用不能である、これが現状でございます。
  169. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 それではその滑走路がもう旧軍時代のでほとんど使用にたえないものだと、しかし、現実に福岡の県警とか、あるいは全日空とか、西日本航空、これがいままでよく使っておったわけですね、しかし、その滑走路をつぶされてしまえば空港としての使命はもうなくなってしまうわけです。そこのところがまだ明確でないのですが、空港として引き続き使える程度のものかどうかという点……。
  170. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 米軍の施設として、あいておったからそこにしばらくそれの使用を許しておった、今回使用するから、そのものはどいてくれ、これが第一義的。第二義的に、滑走路と申しましても、おそらく小さなまあ二人乗りか、三人乗りかの連絡機くらいで、ヘリコプターくらいの使用であって、そんなに民間機、旅客機が使えるような施設というものは今日ございません。おそらく西日本航空には小さな三人乗りか、四人乗りかのほんの小さな軽飛行機の使用をしておったのではなかろうか、したがって、ここに通信施設をするという条件でお貸ししておったのですから、米軍が使用するからこれの使用を取り消すという、こういういきさつでございます。
  171. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 いずれにしても西日本航空がこれを使っておったということは事実なんです。  さて、そういう論議は別として、そういう飛行場をアメリカは何の目的で接収したのか、そこには一体何の施設が建つのか、そういうことについてひとつ具体的にお聞かせていただきたい。
  172. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 当初は米軍の通信施設と住宅でございます。その通信施設を今度改良する。そのためにはいまの飛行場使用は困るというわけでございます。
  173. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、次は、博多港の埠頭については、これを専用にしたい。それから兵器、弾薬の荷揚げが非常に激増するので、この博多港をひとつ自由に使わしてほしい、こういう二つの要求を米軍が福岡市当局に対して出してきた。これに対して福岡市当局は超党派でこれに絶対反対をし続けてきておる。で、これは前のことですから、現在どのように措置されておるかということ、そしてまた、何のために米軍は兵器、弾薬をどんどん埠頭を専用しなければならない事ほどさように大量なものをこの際荷揚げしなければならないのか、そういう点にまでひとつ御説明をいただきたいと思います。
  174. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういういきさつもございました。しかし、地元の博多市だと私は思いますが、博多市の市長からもそういうお話がございまして、専用埠頭に貸すことはできないというお話でございましたので、今日ではそのまま、米軍の希望はありましたが、それは実現しておりません。主として今日までは雑貨類というものを実は荷揚げしておりまして、小倉のほうにも、両方に荷揚げしておりましたものを福岡市のほうに一本化したい、その意味でここを専用としてお貸し願えんか。いままではコマーシャル・ベースで埠頭料を払って今日までやってまいりました。しかし、円満にまいりませんので、現実は相変わらずコマーシャル・ベースでお払いをして、荷役賃を払って今日使用しております。
  175. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そうしますと、この博多港の埠頭の問題については未解決のまま現在に及んでおる、まあこういうことですが、大体博多港については朝鮮戦争当時に米軍が接収しておるわけです、朝鮮戦争当時に。そうしてその後返還になって、市当局がこれを整備して今日に至っておるわけです。そこで、米軍がそういう要求を出したということをいま長官はお認めになったわけですが、そこでお伺いしておるわけです。埠頭を専用しなければならぬということになると、これは相当の荷揚げになるわけです。しかもその内容は、申し上げておるように兵器弾薬だ、とすると、何のために米軍はそういう大量の兵器、弾薬を博多港の埠頭を専用して陸揚げしなければならないのか、これは非常に疑問が持たれるわけなので、この点を明らかにしていただきたいということです。
  176. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 博多港にいままで揚げておりますもの、また、今日ただいまのところは、兵器、弾薬にあらずして、雑貨類でございます。したがって、小倉と両方に揚げておりましたものを、福岡港ですか、博多港に一本にしたい、こういういきさつでありまして、先ほど目下保留中と申しましたが、もうこの問題はお断わりいたしましたので、もう継続しておりません。米軍のほうも要求を引っ込めました。日本からはお断わりいたしました。今日ではその問題は一応解決がしてあるようであります。揚げておりますものは今日雑貨類であります。そういういきさつであります。
  177. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 まあいずれにしても、これがいま長官の説明のように解決したとしても、ここで考えられることは、たとえこれが成立しようとしなかろうと、米軍からそういう要求があったことは事実ですね。そこにわれわれは疑問を持たざるを得ないわけです。博多港のりっぱな埠頭を専用してまで盛んに兵器、弾薬を荷揚げするんですよ、荷揚げ。そのために必要だから専用にさしてほしいという要求があったわけです。  なお、この問題に関連して、具体的な問題としては板付基地についても、夜間それをいままでは活用されておったわけです。たとえば、これは後ほど申し上げますが、日航のムーンライトという夜間飛行機、あるいは全日空、これも深夜発着しておったわけです、この板付基地で。ところが最近、深夜業によって滑走路の拡張工事がなされたために、この二つのいわゆる飛行会社は全然いま操業できないという結果になっておるわけです。そこでお伺いしたいのは、何のための滑走路の拡張なのかということ、それからこれとは別に、板付基地それ自体について考えてみても、これは長い間の地元の相当根強い反対があるわけです。非常にやかましいいわゆる騒音と危険性から周辺の人はあげて反対を続けてきておるわけです。そういう情勢の中であえてその滑走路を拡張するというのは、一体何のためなのか。この問題を切り離して考えてみても、縮小するのなら話は別ですが、そういう反対の情勢の中で滑走路をさらに拡張しなければならない、何の一体理由なのかと、こういう点をひとつ明確にしていただきたい。
  178. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 深夜の営業を取りやめたというのは、これは航空会社の問題だと思います。なお、その滑走路の延長という事実はございません。滑走路の延長という事実はございません。今日もございません。したがって、その深夜の営業をとめたのは民間上の問題だと私は思います。今日滑走路の延長工事も計画も板付港にはございません。
  179. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そうしますと、この板付基地に関して最近そういう工事は全然ない、そういう意味に解していいわけですか。
  180. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 今日滑走路の改修工事というものは計画にもございません。なお関連として、エプロンの修繕はやっておるようであります。エプロン、これは民間航空のほうのエプロンですから、滑走路とかいうのじゃありません。エプロンのほうの修繕をやっておるというように、まあ詳細に調べてみると、これはエプロンのほうの工事、これは民間航空のほうの使用のほう。それを少しやっているようです。
  181. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、特に北九州にある地対空ミサイルの基地ですね、ナイキアジャックスの、この基地が久留米とか築城、芦屋、こういうところに防衛庁として計画を持っておるわけですが、これは現状は一体どうなっておるかということをまずお伺いいたします。
  182. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の防空上必要でございますから、設置する予定にしておりますが、まだ設置の完了までは至っておりません。
  183. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 現在こういう計画があるわけですが、もちろんこれは後ほど核兵器の関連がございますので、そのほうでお伺いいたしますが、いわゆる非核弾頭のアジャックスをいま防衛庁としては第二次防の限界では考えておるわけですが、ここではほんの一言だけお伺いしておきたいわけですが、第三次防でこのナイキアジャックスをナイキハーキュリーズにかえようとする計画があるのかないのか、その詳細は後ほどの関連でお伺いしますから、ここではイエスかノーかだけでけっこうです。
  184. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まだ目下検討中でございます。なお、今日設置しようとするのは、もちろん御承知のように、非核でございます。今後とも核武装するものを設置する考えはございません。
  185. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 陸上自衛隊がいま佐世保で敵前上陸をも含むそういう演習をやっておる事実があるかないか、そういうことに関連しての具体的なことをお聞かせいただきたい。
  186. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 敵前上陸と言われると実は困るのですが、島を守るために、その島を守る演習というのは過去においていたしたことがございます。壱岐、対馬に対する守り、佐渡島に対する守り、島に対するその守りというものの演習はいたしておりますが、敵前というのがどういう条件のときに敵前になるか知りませんが、ことばが少し刺激的だといけませんから、島を守るために、その島を守る訓練はいたしております。佐世保でやったかどうか、そこまでは記憶いたしておりませんが、過去においてやったことはたびたびございます。
  187. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これは敵前上陸演習などという表現を使うとやっかいな問題になろうと思って、防衛庁長官の立場でそういう島を守るということばを使っておるわけでしょうけれども、それはことばをかえれば上陸戦の演習、そういうことにもとれるわけですね。そういうことはあとにして、なお続いてお伺いいたしますが、北九州市の小倉区に米空軍の倉庫があるわけです。この倉庫は在日米空軍の倉庫としては有数のものだといわれておるわけです。そこで問題なのは、これも北九州市に要求して、その途中のコース、通過コースの道路の舗装ということをいま要求したということを承っております。そういうことと関連して、このいわゆる米空軍の倉庫は、荷物、兵器、弾薬、特に弾薬が多いようですが、弾薬をいわゆる積みおろすのでなくて、陸揚げしておる。ここにも数字が調べてあるわけですが、その量が非常に激増しておるわけですね。驚くべき数字がここにあげられておるわけです。時間の関係がございますから一々読み上げませんが、こういうふうに陸揚げして、これを備蓄するということがいま盛んに行なわれておるわけです。  そこでお伺いいたしますが、まず、そういう事実がないということになると、これは話になりませんから、そういう事実があるのかないのかという点をまずお伺いして、そうしてそういう事実がありとするならば、それは一体どういう目的で弾薬をどんどん備蓄しておるのか、こういう点を具体的に御説明いただきたいと思います。
  188. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 小倉のおそらく山田弾薬庫という名称のものだと思います。これは門司から荷揚げして、小倉の弾薬庫ですから、弾薬を運ぶことはあります。ただ、しかし、激増したとか急にふえたというものではありません。大体平常のものの備蓄しか私たちはわかりません。弾薬庫ですから、弾薬を運んだ実績はございます。
  189. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そういう御答弁ならば、せっかくこちらが調べた数字を申し上げますから、それをメモいただいて、そういう事実があるのかないかということを後ほどお答えいただきたい。  私の調べによりますと、一九六一年は九百八十四トンであったわけです。六二年は千二百十一トン、六三年千六百九十三トン、六四年二千六百十八トン、六五年は、一月から三月までで締め切っておりますが、二千三百二十五トン。もしこの数字が正しいとすれば、非常に飛躍的に増加しておるということが言えるわけです。この数字は正しいのかどうかという点、これはもう間違っておるといえば御訂正いただきたい。これはいますぐ訂正できないでしょうから、後ほどでもけっこうです。こういうふうに、私はこの数字をあげたのが目的でなくして、何のためにこういう弾薬を、積みおろしでなく、陸揚げしておるか、何のために相当量の弾薬を貯蔵しなければならないのか、何のために使うのか、こういう点を明らかに知りたいという意図からお伺いしておるわけです。
  190. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 非常に明確なお数字をお示しいただきましたが、直ちに私どものほうで数量についてはわかりません。したがって、いずれの機会にかこの数量を調べてお知らせいたしますが、そんなに急激なものではないというのは、御承知のように、門司から運んでまいりますから、みなトラックの数というのは住民の方は御存じです。その道路を鋪装しようという問題であります。鋪装について賛成、反対がございまして、今日までまだ鋪装はできない。しかし、急激に一が十になったというものでもないようであります。それを何に使うか、これは主としてそんなに大きな弾薬の問題じゃありませんので、米軍がそれをどこに使うか、私にはわかりません。ただ、急激なものじゃない。鋪装問題である、その鋪装に賛成、反対があるということだけは私は承知しておりますが、数字はあらためて私どものほうで調べまして御答弁いたしたいと思います。
  191. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そこで、数字は問題にするところではございませんけれども、ただ、もしこういう数字の傾向が正しくして、相当増加の傾向にあるということであれば問題も考えられるわけです。そこで、何のためにということは当然出てくるわけです。そういう意味で、後刻御調査の上で、そういう傾向にあるならば、さっそくお答えいただきたいということをお願いして、この問題については保留にしておきたいと思います。  なお、引き続いて、佐世保には、私が説明するまでもなく、米原潜がしばしば入港しているわけです。八月二十四日にはパーミット号、そうしてさらには十一月の二十四日ですか、例のシードラゴン号が入港している。こういうものを通算すると、もう五回になっている。そこで、このことに関連して、私ども国民の心を心としてまっこうから反対し続けてきたわけです。そこでお伺いするわけですが、米原子力の潜水艦の極東の配備は一体どうなっているのか、このことに関連して承っておきたい。
  192. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 米軍の配置については、詳細にはわかりません。
  193. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 詳細にはわからぬとすれば、大体はわかると、こういうことに通ずるからその大体をお示しいただきたい。
  194. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三、四はいはおるのじゃないかと思います。御承知のように、編入のときの発表はございますが、これが除隊されたときの発表はなかなか私どもにはわかりませんので、想定でございまして、まことにこれは不正確でございますが、そこまでなかなか正確にわからない、われわれは三、四はいくらいはおるのじゃなかろうかという以上には答えられる資料がございません。
  195. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 それではこちらからお伺いしますが、極東における米原潜の基地は大体四つほどになっておるということをいろいろな資料承知しておるわけです。それが正しいのかどうかということの判断はつくだろうと思います。そういう意味でお伺いしますが、フィリピンのスビック基地と、それから横須賀、佐世保、そうして沖繩、との四つがあげられておるわけですけれども、これは防衛庁としてはこの点はどうですか。これは間違っておるなら間違っておると御指摘いただきたい。
  196. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) いまおあげになったのは、七艦隊の基地として一応ある程度公表されておりますが、原潜の基地というものとは少し違いますが、七艦隊の基地というならば、伊藤委員のおあげになったのが大体当たっているのではなかろうかと、私たちもそう思います。
  197. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 前の米原潜が入港した際に、パーミット号の艦長とか、あるいは水兵、そういう方々が日本の記者の質問に対して、サブロックを積んでおるかどうかということは言えない、そういうふうに答えておるのに対し、その当時の国会政府の御答弁は、絶対に積んでいない、こういうことを言われておるわけです。そこで、私がここで言いたいのは、米艦長とか水兵が、積んでいるかいないかということは言えない、それは立場上そうでありましょう、そういうふうにわからないものを、日本政府が絶対に積んでいないということを国会で答えられておる。この答弁についてはまことに遺憾の意を表さざるを得ないわけです。どういうわけでもっと正直にどうして答えられないかということをこの際お伺いしておきたいと思います。
  198. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 伊藤委員承知のように、米軍の配置、装備については、アメリカ自身においてもこれは重要な機密事項でございます。したがって、米軍の将校がその機密事項を、積んでいなくても、いないと言うことは、これはその機密事項を漏洩したことになるのではなかろうかと思います。国際間において安保条約を守っておるか、安保条約の規定どおり守っておるということ、すなわち、核兵器は持ち込んでいないということ、したがって、積んでいないと政府答弁いたしたわけでございます。ことばが三段論法になりますけれども、結論はそこにわれわれは根拠を求めております。
  199. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そのことは、いま私の主題ではございませんので、その論議は別途として、最近の新聞報道によりますと、いま原潜が非常に国民の間で不安感を持たれておるこのおりから、今度はいわゆる空母ですね、ないしは原子力駆逐艦、こういうものがアメリカの都合によって、アメリカの都合というのは、大西洋艦隊に所属しておった空母なり、原子力空母とか、原子力駆逐艦が第七艦隊に編隊がえになる、所属がえになるということになると、今後原潜のように、日本に寄港することが一応も二応も考えられるわけです。このことに対して政府としてはどのように考えておるかということをここでお聞きしておきたいと思います。
  200. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 政府の代表窓口は外務省でございますので、外務大臣からお答えいただくのが正しいと思いますが、私の所管する範囲においては、安保条約の規定、日本国民に対する危険の問題ということを調査した上で結論を出すべきでなかろうか。今日まだ要請があっておりませんので、予想でございますが、私はそういう判断が一つの重要な判断じゃなかろうか。今日まで要請はございません。
  201. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 以上、まだたくさん事例があるわけですけれども、時間の関係もございますから、幾つかの具体的な事例を申し上げてきたわけですが、このように、いま特に朝鮮に近い北九州ではいろいろな動きが見受けられるわけです。そのことと関連して、ベトナム戦線視察のためにサイゴンに向かう途中、三月二十八日羽田空港に到着した韓国の金国防相は、こう、言われておるわけです。日韓会談が妥結すれば、韓国軍と日本自衛隊の協力関係も自然に生まれてくるだろう、こういう意味の発言をなさっておるわけですが、この発言に対して総理としてはどのようにお考えになりますか、お伺いしておきたいと思う。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、たびたび軍事同盟、あるいは軍事協力、そういう事柄関係がないと、こういうことをはっきり申し上げました。また重ねてお尋ねでございますから、前言どおりのお答えをいたしておきます。
  203. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、韓国の丁国務総理は、韓国国会日韓特別委員会の席上で、野党議員の質問に対して次のようにお答えになっておるわけです。日本は国連加盟国である、したがって、共産主義の侵略が再開されたならば、これに直ちに対応する在韓国連軍の指揮のもとで日本が発動するはずだと信じている、まあこういうふうに韓国の国務総理は言われておるわけです。それに対して日本佐藤総理はどのようにお考えになりますか、一応お伺いしておきたい。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの国連協力のお話でございますが、私は憲法を守り抜くと、かような考え方でおりますし、また、その決意でおりますから、誤解のないように願いたい。
  205. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 それではお伺いいたしますが、昭和二十九年六月二日の参議院本会議で次のような決議があげられておるわけです。「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、  本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、ここに更めて確認する。」こういう厳粛なる決議があげられておるわけです。総理はこの決議に対してどういう心がまえでおられるか。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この決議もはっきり申しておりますように、一番最後のくくり、「更めて確認する。」、「確認」ということばを使っております。これを受けましてわが国の自衛隊もでき上がっておる、かように思いますし、私は、先ほど来しばしば繰り返して申し上げておりますように、憲法を守り抜きます、かように申しております。この決議のあることも、その意味ではよく承知しております。
  207. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお続いてお伺いいたしますが、絶対に海外派兵はしないといっていた政府は、最近になって、この論議で出ておりますように、国連の責任において出した場合は違憲でないとか、武力行使でなければ、たとえば国連協力の名において警察軍とか、そのような形で出すものは違憲でない、こういうことをしばしば繰り返してきているわけですが、こういうものは憲法拡大解釈になると私は考えておるわけです。この点はいかがですか。
  208. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) この問題につきましてもいままで何べんかお答えしたことがございますが、ただいま総理の仰せられましたように、日本の憲法九条の問題といたしましては、日本が国権の発動として武力を行使する場合、この場合には自国が単独にやるものであろうと、国連の協力としてそれに介在するものであろうと、そのどちらであっても憲法九条はそれを許していないという考え方でございます。さらに、朝鮮の場合について申せば、朝鮮の国連活動というものは、国連を背景にしてはおりますけれども、それぞれの国がその勧告に応じて、それぞれの立場において武力を行使する立場にございますので、そういう場面には日本の憲法の抵触なしに日本の武力をそこで行使するということはできない、すなわち、憲法九条に違反する、こういう考えでおるわけでございます。
  209. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 こういう拡大解釈が現実に行なわれておることは事実なんです。で、これを核兵器持ち込みの場合に当てはめて考えてみても同じことが言える。すなわち、拡大解釈が現実に行なわれておる。岸内閣の当時には、最初は核兵器持ち込みは違憲であるという態度を明らかにしておったわけですが、いつの間にか小型核兵器を自衛のために使うならば憲法違反ではない、ただし、政策上持たない、こういう統一見解を出してきておるわけです。そこでお伺いいたしますが、この岸総理の統一見解のそれと、現在の佐藤総理の見解とは全く違わないものかどうか、その点を一応お伺いしておきたいと思います。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法上の論議、これはもういつもいろいろあるものです。多数意見、また、少数意見ございますが、その憲法の議論がいかようにあろうとも、私は核兵器を持たない。政府はそういう核兵器を持たないということをしばしば声明しておりますので、この憲法論議ではなしに、実際問題としてさようなものは持たない、かように御了承をいただきたいと思います。また、わが国の科学技術の関係でも、原子力は平和利用、それのみに許される、こういう法律のあることも御承知のとおりでございます。
  211. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 ここで私がお伺いしたいのは、核兵器は憲法違反だから持たないということになれば国民は安心しておられるわけです。ところが、小型の場合なら自衛のために使っても違憲でない、「しかし」がついている。しかし、政策上持たない。憲法は不変のものと考えられますが、政策は内外の情勢の変移によって変えられるものです。現に政策はものによっては変えられておる。そういう面から、いつ変えられるかわからない政策だけで保障されておっては国民は不安だ、そういう不安感があろうと思うのです。この点はいかがですか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申しましたが、憲法問題というような論議もさることながら、政府が持たない、かように申したのであります。ただいま憲法論議ならば国民が安心するけれども政府が持たないというだけでは不安心だと、こういうことをおっしゃる。これはただいま申したように、いろいろ憲法には議論があります。しかし、多数議論、少数意見と、こういうもののあることも、これも御承知だと思います。私どもは多数派の意見を尊重しておる、こういうことでございます。なお、詳しくは法制局長官にお答えさせます。
  213. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  核兵器保有問題につきましては、これまた御承知のとおりに、いままでに何べんか議論がありまして、御指摘のとおりに、岸内閣時代のお答えがございます。その憲法解釈の問題でございますから、勢い、筋の議論にならざるを得ないわけでございますので、一応私ども考えてまいりました見解、それはまた岸内閣の当時に申し上げたことと実は変わりがないのでございますけれども、現行憲法の解釈としては、わが国が国権を発動する武力の行使は、他国から武力攻撃が加えられた場合における自国防衛の正当な目的と限度にとどまらない限りは、とうてい九条一項が許すとは言えないというところから実は発してまいるわけでございまして、わが国が保有する兵器につきましても、それが核兵器であろうとなかろうと、それはいま申した基準に照らして判断されなければいけなというのが基本の考え方でございます。一国防衛の正当な目的と限度をこえるものは、わが憲法がその保持を禁止するものと考えるべきである。一国防衛の正当な目的と限度をこえることがないものであれば、わが憲法がその保持を禁止しているとは言えない、筋としてはそうなる。ところで、原子爆弾のような核兵器、こういうものになりますと、私も専門家ではございませんけれども、その一般的な政情から申しまして、わが憲法がその保持を許さない部類に属するものであろうことは明らかであろうと思います。しかし、同時に、また、いままで申し上げた理論上の筋から言いまして、もしかりに核兵器にいま申したような目的と限度をこえることのないものが、まあ科学技術の発達か何かによりまして出てくる、これは仮定の論で恐縮でございますが、理屈の問題としてはそういうことがあれば、それは純粋に理論的な問題としては、その保有が違憲とされることはないと思うということになるわけでございます。しかし、先ほど総理が御付言になりましたように、わが国には原子力基本法というものがありまして、原子力の利用は平和の目的に限って行なうものとする旨の規定があることは御承知のとおりでございます。これはわが国家における政策の表明が法律に固まっておるわけでございまして、先ほど総理が仰せになりましたような理論は理論として、一国の政策の問題としては、それを保持することはしないということに相なっておるわけでございます。
  214. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連。  いまの問題、非常に重要だと思うのですが、あなたの言われたのは佐藤内閣の統一見解、確定見解だというふうに承ってよろしいかどうかということが一つですね、まず最初に一つ。  ただ、それをお聞きをしておりますと、日本が核兵器を持つということは、いかにも絶対的にできないのだということではなくて、相対的にできないのだと、いろいろな目的だとか限度をこえない範囲のものがあればできるということですから、絶対にできないということではない、相対的にできないというふうに考えられるのだ、これが政府の憲法解釈である、こういうふうに端的に承ってよろしいかどうかということが一つ。これは二つ目の質問ですね。  三つ目は、アメリカなり何なりからの核兵器の持ち込みというものを認めるということと日本の憲法との関係ですね、外国の核兵器を認めるか認めないかということは、日本の憲法との関係は起きてこないのだ、こういうふうに言われるのか、認めることは憲法違反ではないと、こう言われるのか、端的にひとつお答え願いたいと、こう思うわけです。相談をされて、統一見解、確定見解をひとつ出してください。
  215. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま私が申し上げた考え方というものは、実は佐藤内閣として閣議の了承を得たとかというような問題ではございません。これはいままで私どもが内閣における法制局の見解として維持してまいったものが時の内閣において表明されたことがあるわけでございますが、何しろ現実、具体的な問題として、そこに具体的な課題が発生したわけでございませんので、それを政府としていかに判断するかということを切り詰めて、さしあたってどうするかというような問題が出ておりませんために、いままでは私どもの見解は、同時に、また、政府を法制上の関連における責任者として申してまいりましたし、また、まいっておる、現にお話をしておるわけでございます。  それから、第二の問題でございますが、相対的と申されますが、これは自衛の目的なり限度なりというものが、何といいますか、具体的に確定し得ないものである。これもほんとうに私がここで一体その量はこれだけであるということが言えないと同じような意味において、中身をはっきりと申し上げられませんが、その目的と限度との関連においては相対的であるということが言えると思います。  それから、最後にもう一つお尋ねがありました、米軍がかりに持つ――米軍とは限りませんにしても、日本国にある特定の外国の部隊が核兵器を持つことについてはどうであるかという御質問でございますが、これもいまお答えするにつきまして、むろん閣議の了承なんか得ておりませんけれども、これは御承知のように、たしかあれは砂川判決であったかと思いますが、それと同じような線でございます。つまり日本の憲法の九条一項というのは、「日本国民」とそこには書いてございますが、日本国が管理支配する戦力について言っているのであって、したがって、外国のもの――日本国でないものが管理支配する戦力については憲法九条がものを言う筋合いではない。しかし、同時に、外国の部隊を日本国に入れる以上は、日本国の国権の作用としてそれを制限することはむろん可能であるということも、御承知のような、たとえば安保条約の例をとっていえば、米軍が日本へ核兵器を持ってくるについては事前協議が要るというようなチェックがしてある、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  216. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 もう一点。今度は総理にお伺いするんですけれども、いま言ったのをお聞きをしておりますと、日本の憲法で核兵器を持つということは、自衛の目的なり限度をこえないという範囲では持てるんだ、それは科学の発達なり、あるいは自衛という概念の変化といいますか、そういうようなものとのかね合いですから、絶対に持てない――憲法でですよ、絶対に持てないというのではないというふうに聞こえるわけです。そういうふうにお聞きをしてよろしいのかどうか。私はそういうふうに聞こえるんですが、それが一つと、もう一つは、外国の核兵器の持ち込みというのは、これは日本の憲法ではできるんだ、できるというのは、拒否できないと、だけれども、政策の問題として別個にこれは考えるべきなんだ、こういうふうに言われるのか、これをはっきりとした御見解を総理から承りたい、こう思います。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのような御議論が出てくるだろうと思うので、私は法律論は別として、私が核兵器を保有しようなどとは考えておらぬ、保持しようなどとは少しも考えておらぬという、まあ非常にこれは政治的な発言とおっしゃれば、私は政治家ですから、政治的にこうするのだということを実は申し上げた。ところが、どうもそれだけではお気に召さないで、いまの法律論に入ってきて、憲法論に入ってこられたわけです。ただいま法制局長官が申しましたが、これはいわゆる統一見解かと、こういうように言われますと、これはまだ閣議を開いたわけではございませんから、いま答えたとおり、統一見解ではございません。憲法自身でいま禁止しているものは、攻撃的なものはもちろん、とにかく国際紛争を武力によって解決しないと、こういうことでございますし、攻撃的な武器はこれは許せない、こういうところから、ただいまのこまかな議論になると、そこらにいろいろの議論が出てくる。攻撃的でないものならいいのではないか、こういうことも言えるようであります。しかしながら、憲法の問題とはまた別に、お互いが国会におきまして国民とともに誓ったものもある。核兵器、核武装はしないことにしよう、これはもうどんな理由があろうとも持たないことにしよう。これは非常にはっきりした考え方でございますから、それらのいろいろな問題もありますので、私は、理論の問題よりも、一番安心なのは、政治家として公約しておる、また、政府自身が、この際、ただいま核兵器を持とうなどというようなことは少しも考えておらない、これが非常にはっきりした答えではないか、かように私は考えております。
  218. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連ですから、これで終わりますけれども総理のお話を聞いておりますと、憲法に対するしっかりした解釈といいますか、そういうようなものを意識的にずらそうずらそうとしているとしか私は考え得られないわけです。それは日本のいまの憲法を改正をしようとする動きが現実に起きていて、そういう動きがあるわけですから、自由民主党の中に。それがしかも党是ですから、それは平和主義を変えないのだ、九条の文章は変えるのだ、平和主義の精神は変えないのだといろいろ言っておりますけれども、憲法を変えようということなんですから、非常に疑義があるわけですね。だから、それを憲法の解釈をしっかりさせないであやふやにしている。どっちにでもとれるように言っていくところに私は問題があると思うのです。ですから、それはあとで――いまここで論議すべきことではないでしょうから、十分な時間をとって別の機会に論議をしますけれども、最終的にお聞きをするのは、法制局長官がいまここで答弁をされたことは、佐藤総理の、佐藤内閣の御見解として承ってよろしいかどうか、これを私は承っておきます。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法制局長官がここで発言いたしましたことは、いわゆる佐藤内閣の統一見解と、こういう意味の閣議決定はいたしておりませんから、そういう形は困るかわかりませんが、総理大臣の私自身が聞き取りまして、これを訂正する、あるいはこれにつけ加える、そういうようなことは何にもございません。
  220. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そこで、歴代の保守党内閣が、いままでいわゆる憲法の拡大解釈によって憲法の空洞化をねらってきた、現実の問題として。そこで関連があるから一言申し上げることは、憲法調査会のその結果を見ると、大体結論は三つに分けられると思うのです。その一つは、一つだけ申し上げれば、ここで関係があるわけですが、一つは憲法改正する必要はない、改正不要論です。しかしながら、うっかりそれが改正不要論かと思うと、そうではなくて、多少のニュアンスの違いはございますけれども、最終的には憲法のいわゆる拡大解釈論なんです。この最も徹底して意見を述べられたのは高柳会長さんです。高柳会長の意見によると、核兵器の持ち込みも、そうして例の海外派兵も、拡大解釈すればできる。だから、この際、憲法はここで何にも変える必要はない、そういう意味の改正不要論です。ちょっと考えると改正論者じゃないようですが、実質的にはこれは一つの憲法改正論者、いや、改正ではない、改悪論者ということが言えるわけであります。このように、過去の保守党内閣は、過去から現在、そして将来にわたって、この憲法の拡大解釈を続けていく限りにおいては、根本的にここに危険性が含まれるわけです。憲法改正しないでも、現実に拡大解釈することによって、改悪と同じ事態が積み重ねてきたわけです。こういう事態に対して、総理としてはどのようにお考えになるか。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この憲法九条の問題になりますと、過日、私が大きい声をいたしましたので、もうその、重ねてそれがしたくないのですが、私がしばしば申しますように、九条では、私は平和主義、九条の規定する平和主義、これを守り抜く、こういうことを実は申し上げ、それで、一時議場が混乱して、たいへん御迷惑をかけたのであります。この観点に立ちまして、ただいまの問題につきましても、これははっきりした考え方を持っておるのでございます。その際にも、第九条の文言どおり、これを守り抜くのか、こういうことでお尋ねになりましたが、私はそれのお約束はいたしません。ことに自由民主党の党の綱領というものがちゃんとございますから、その点も十分お話をしたはずでございます。どうか、それらの点につきまして、まだ、そういうような具体的に改正するという動きを持っているわけではありません。またそういうものも提案しているわけでもございません、また提案した際には、どうか十分御審議をいただきたいと、かように思いますが、ただいまの段階でいろいろこの話を深入りいたしますことは、私は無用の議論とは申しませんが、やや、またこの前と同じように大きい声をするようになりますから、この辺でひとつやめさせていただきたいと思います。
  222. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に防衛庁長官にお伺いいたしますが、防衛庁としては、従来、こういう見解であったわけです。核弾頭のつけられない誘導弾だからいいではないか、こういう意味の見解が続いたわけです。ところがいつの間にか核弾頭をつけられるものでも、つけなければいいではないか、こういうふうに変わってきたわけです。これをこの調子で進んでいくと、今度は核弾頭をつけても使わなければいいではないか、こういうふうに飛躍することが憂慮されるわけです。さらにこれを最終的に考えると、核弾頭をつけて使ってもいいではないか、こういうふうに最終的には飛躍するのではないか。いままでの過去の推移から、一応も二応もそういうことが憂慮されるわけです。これに対する防衛庁長官のお考えはどうか。
  223. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛庁ではその意見が動揺したことはありません。質問が、常にいろいろな質問を受けておりますから、その質問に答えて基本には狂っておりません。われわれは核弾頭を持ち込むとか装備するとか、また攻撃的なものというものは一切持つ気もなければ、計画もいたしておりません。
  224. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そこでお伺いいたしますが、先ほどちょっと触れました地対空ミサイルのナイキアジャックス、これは弾頭が非核用であるから一応問題ないとしても、第二次防ではこの非核の弾頭のナイキアジャックスを採用しておるわけです。現在これを整備しつつあるわけです。それのいい悪いは別問題として、第三次防の計画の中にはこの核、非核両用のいわゆるナイキハーキュリーズを考えておるのではないか、こういうことが考えられるわけです。またそういう意味のことを計画している気配も感ぜられるわけです。このことについてどう防衛庁としてはお考えになっておるか。
  225. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 国防を全うするために、常にわれわれは防衛力を日進月歩研究いたしております。したがって今日の場合はナイキアジャックスというのが、防衛としては最高であると思いますけれども、今後はこれだけでは間に合いません。したがって、より性能のいいものを防衛としては、われわれは装備すべきだということを今日研究されております。
  226. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 ことしの三月二十六日の参議院の予算委員会の分科会で、当時の海原防衛局長は、私の質問に対して、第三次防とナイキハーキュリースの採用、この問題についてお答えがあったわけです。これによりますと、もう長いから省略いたしますが、「実は簡単ではございません。これは航空幕僚監部の担当部局におきましては、ナイキ・ハーキュリースをある程度持ちたいという考えはございます。」云々と、そこでナイキハーキュリースは持ちたいと、そういう願望の、また計画のあることは感ぜられるわけです、こういうことからも。そこで、もちろん、第三次防は現在検討中、もちろん、まだ実施には年度的に考えてならぬわけですけれども、そのことをどの程度考えておるかということを、もう一度はっきりさしていただきたい。
  227. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいまのナイキアジャックス以上に性能のいいものを持ちたいというのが本心でございます。その中の一例として、ナイキハーキュリースは今日アメリカにあるが、あれはどうなんだという議論が出たのも事実でございます。いろいろ今日研究しております。
  228. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この二十五日の当委員会で、わが党の羽生委員佐藤総理に対して、核持ち込みは絶対にせぬというのであるならば、世界に向かって、社会党の言う非核武装宣言をやってはどうか、そういう意味のお尋ねがあったのに際して、総理は、これを繰り返そうとは思いませんが、非常にはっきりしない御答弁であったわけです。そこで、一点だけお伺いをしておきますが、将来この核武装をする考えが全くないならば、日本国内に言えると同じことが世界に向かって言えないということは考えられない。そこで、逆に考えると、将来核武装をする魂胆があれば、いまここで世界に向かって宣言するのはまずい、支障となる、こういうふうに考えてそこはあいまいもことなっておるのではなかろうかと一応考えられるわけです。この点を重ねてお伺いをしておきたいと思います。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、羽生君からもいろいろ聞かれましたが、人類が不幸になるような兵器はこの地上からなくしたい、そういう意味であらゆる努力をいたしたいと思っております。モスコーの部分的核爆発実験禁止の協定に入りましたのもそういう意味でございます。そういう意味で、理由のいかんを問わず核兵器を持たないこと、こういうことを実は心に誓っておるのでございます。しかし、一面におきまして、ただいま国際的にもその動きが非常に実を結ぶ方向において各国が努力いたしております。しかし、いわゆる核武装をしない国はどこかの核のかさに入ってその国の安全を確保されるのではないか、こういうような議論も展開されております。いずれにいたしましても、私どもの最も大事なことは、わが国の安全を確保することである、わが国民に幸福をもたらすようなそういう最善の道を歩まなければならない。同時に、ただいま申し上げます核兵器というものはこれは人類の敵だ、こういう意味でこれを持たない、またその考え方に各国とも徹するようにさらに最善の努力をいたしたい、かように考えます。
  230. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、防衛庁長官にお伺いをいたしますが、長官は本年のたしか十月四日であったと思いますが、私の所属している内閣委員会で、私の質問に答えて、国防省の設置については、四カ年の懸案になっておるんだから、ぜひこの際特に次の通常国会では提案して成立させたい、こういう御意思であったと思いますが、このことについてお伺いするわけです。四年間も懸案になっておって、未解決であったということは、これは非常にいいことで合法的なことならすぐ、四年もたたないで解決するはずであるのを、四年間もなかなか解決しなかったということは、不適当であるということを意味すると思う。たとえば日韓条約が十四年間も長い間かかってなかなか結論を得なかったということは、ことほどさようにこの日韓条約はきわめて不適当であったということを意味する。それと全く同じ解釈になるわけです。こういう意味で、この国防省設置についての松野長官のお考えを、この際いま一度はっきりさしておきたいと思います。
  231. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 国防省問題は、これは一億同じ同胞の中の話でございますから、日韓会談とはおのずから相手が違うのじゃないか。同時にわれわれ四年間自重しましたのも、やはり防衛というもの、自衛隊というものの国民の認識を一日一日固めて、信頼を得た上で、そういうものはやるべきだという、四年間という期限をかけたわけでございます。もうぼつぼつ国民も、その期待に沿い得る自衛隊に成長したから、早く国防省をつくれという声も非常に強く出てまいりました。したがって私は、適当な時期はいつかというならば、私の在任中にやりたいな、じゃいつかとおっしゃいますから、まあ次の通常国会が適当な時期、こういう順序でお答えいたしました。いまもその気持は変わっておりません。
  232. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 昨年臨時行政調査会の佐藤会長が、この問題に関連して、国民のなまの声の中には昇格を望む声は全くないということをはっきり言って一おられるわけです。したがって、こういう臨調の意見を一体尊重されるのか、無視されようとなさるのか、これはやはり大事な問題だと思うのです。その点いかがですか。
  233. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 私のほうには非常に要望の声が響いておりますが、一方的ではいけませんので、その決定する時期には佐藤会長にお会いして、その臨調の意見というものを十分そんたくした上で最後の決定をいたしたい。それは十分もちろんそんたくいたした上で私はきめたい。ただ、今日私のほうにはそういう声が強いという意味で、私はやりたいということを先般お答えいたしました。
  234. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なお昨年の四月の中ごろであったと記憶しておりますが、政府からの要請で臨時行政調査会は政府に対して回答を出しておるわけです。その結論はですね、防衛庁の省昇格については緊急性を認めがたい。こういう回答をしておるわけです。これは臨調はですね、政府自体がつくられたきわめて尊重すべき筋合いのものであろうと思うのです。その回答はこれは尊重しないが無視すべきではないと思うのです。緊急性を認めがたいと断定しておるわけです。この点はいかがですか。
  235. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) そういう御意見があることは、もちろん尊重いたします。したがって、緊急に私はやらなければいけないという意味ではございません。時間をかけて、その円満な国民の信頼というものを得られたその時期にやりたいという意味のことを申し上げたわけで、私としても、もちろん各種の意見というものは十分尊重した上でこれは提案をすべきである。また国会皆さん方の御意見も十分そんたくした上でこれはやるべきである。それはもちろんそういうことを含んで、なるべく私は早い時期にできればやりたいというのを申し上げたわけです。
  236. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 こういうことから、そこで総理にお伺いいたしますが、いま軍縮とか軍事費の削減、こういうことが世界の趨勢であるわけです。現に十八カ国軍縮委員会が非常に熱心に検討を進めておる。こういう情勢の中でですね、防衛庁を国防省に昇格することは、いわゆる世界の情勢に逆行するのではないか。こういうふうに当然考えられるわけです。この点はいかがですか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はただいま世界の情勢に逆行すると、こうおっしゃるが、さようには私は思いません。ただいま防衛省――何という名前になるのかしれないが、防衛庁長官の申しておりますのは、これは行政機構の問題なんで、どこまでも行政機構の問題で、庁がいいのか、省がいいのか、こういうふうな問題だと思います。ただいま言われるのは、軍備拡張、そういう意味で膨大な装備あるいは兵力を持つと、こういうこととはいまの行政機構の問題は関係がないのでありますから、それは必ずしも世界の趨勢に逆行する、こうきめつけることは私は賛成いたしません。ただもう一つ申し上げておきたいのは、ただいままで片一方で軍縮問題が非常に熱心に要望されると思うと、片一方ではやはり軍備の拡張もしておる。これが国際的なただいまの情勢である、こういうことも判断されることがいいんじゃないか。私どもはどちらかと言えばいまの軍縮のほうの議論でございます。したがって先ほど来お話のありました、核兵器なぞはもう人類の敵だ、これはなくしたらいいだろう、理由のいかんを問わず、そういうものは持たない、こういうことを申し上げておるのでございますが、ただいまのいま議論されておるものは、私はこれは行政機構の問題である。だからそう直ちに内容の問題として議論することは私は賛成しない。
  238. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これは行政上の問題だから云々というお答えではございますけれども、これをいろいろ検討すると、アメリカからは日本の防衛力の増強、自主防衛ということを強く要請されておるわけです。これはお認めになろうと思う。そういう前提に立つと、結局日本アメリカの要請にこたえて防衛力の増強にはこんなに努力しておる。たとえば防衛庁についても国防省に昇格したと、そういう考え方も確かにあろうと思うのです。いろいろ都合の悪い点を避けて御答弁なさっておるから、そういうふうには聞き取れませんけれども、正直言うとそういうことになろうかと思うのです。この点いかがですか。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ先ほども申しましたように、私がこの国の安全確保、また国民の幸福、こういうことに全責任を持って日夜苦心しておるわけでございます。ただいままでのところ、わが国は国力、国情に相応した防衛的な軍備を持つといいますか、あるいは防衛力を持つと、こういうことを実は考えておるのでございます。こういう点で見まして、国民の中からは、もっと積極的にみずからの力でみずからを守ると、こういうことにどうしてならないのか、日米安保条約にたよっておるのは情けないじゃないか、こういう声もあることを私ども忘れるわけにいかない。しかし私はどう見ましても、総理として見ました場合に、国力、国情に相応する防衛力を持つと、これがただいま国民としてもしんぼうしていただく限度だと、かように私は思っておるのでございます。  まあ先ほど来、省のお話が出ておりますけれども、それは別にアメリカに対しての云々ではございません。またアメリカがどういう気持ちでおりますか、ただいままでの安保条約だけにたよっておるのは情けないじゃないかと、こういう事柄は、アメリカばかりじゃない、日本国民の中からもそういう批判のあることに、私どもは耳をかさなければならない、傾けなければならないと、これがいまの実情でございます。
  240. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 いまの御答弁に満足しておるわけではございませんけれども、時間の制約がございますので、遺憾ながら次の問題に入りたいと思いますが、そこでお伺いしておきたいのは、朝鮮には南北両政府が現在存立しておる、こういう情勢の中ではやはり両国政府に対して公平に接触することが基本的にきわめて大事であろうと思います。これはいつどなたにお伺いしても、これは間違いだとはおっしゃらぬと思う。公平に接触する、そういう前提に立って経済、文化、人事を交流することがきわめて適当だとはお考えになりませんか、総理は。この点を……。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 朝鮮における二つの権威に対して公平に扱え、こういうことをいま言われたのでありますが、この点もいままでたいへんたびたびお答えしたと思います。占領当時、GHQ時代から私どもがいつも相手になったというのが大韓民国だ、こういうことで、この国際的な関係がその方向で発展してきた。大韓民国が独立して以来、またサンフランシスコ条約が発効して以来、これが正式な関係に黙示の承認というような形にまで発展してきた。かような状況でございますので、いわゆるその、どうも大韓民国に厚くして北に薄いじゃないか、あるいは大韓民国だけを承認して北を承認していないじゃないか、これは不都合だ、こういう御議論も社会党としてはおありかもしれませんが、私どもは国際信義の立場からまたこれを貫いてまいることがこれは当然のことだ、かように思いますので、大韓民国承認している日本は、いわゆる分裂国家の場合に片一方を同等の形においてつき合っていくと、こういうことはしない。これは、今回の条約のできるできないにかかわらず、もうその大韓民国承認したときからその基本的な態度がきまっておるわけで、今回の条約が締結されて、さらにそれが一そうはっきりしたと、こういう状況でございますから、ただいまの問題は全部同一にと、かように言われましても、そのとおりにはできない。たとえば在日朝鮮人の場合は、いわゆる韓国人と朝鮮人との扱い方に差等がありますし、また、北の部分に対しましては、実際的な問題についてそのときどきに処理していこうと、こういうことを実は申しておるのであります。がしかし、北の部分と一切交渉を持たない、かような考え方も毛頭ない。十分北のほうもわが国の独立を尊重し、内政に干渉しない、こういうよなう立場であってほしいし、またそういう意味の実際的な交渉はできるだけするつもりでおること、それも御承知のとおりでございます。いろいろ立ち入って議論いたしますと、そこらにもなかなか理屈だけで割り切れないものがあるようでありまして、いつも政治的問題にこれが発展いたしますので、よほどむつかしい状態も生ずるようでありますけれども、ただいまの関係はいま申し上げたとおり、今回は南と条約を結び諸協定を結んでおる。しかし、北の関係については、これによってプラスもまたマイナスもないのだということをしばしば申しておりますが、さように御了承をいただきたいと思います。
  242. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 まあ平時においてもいま私のお伺いしたようなことが言えるわけで、原則としては総理もそれを認めておられるわけですが、特に朝鮮の場合は、不幸にも休戦協定によって停戦しておるとはいえ、現実には交戦状態にあると言わなければならぬわけです。そういう国の一方の国とだけこのような条約を結ぶことは、先ほど来私が追及し続けてまいりました、やがて軍事的なつながりも出て非常に危険なことが憂慮される。そのことに関連して、先日の中央のこの公聴会でこの条約に賛否両論の公述人にこの点もお伺いしてみたわけです。そのお答えは、はっきりは申しませんでしたけれども、賛否両論の両者から、この危険性はないとは言えないということは言われておるわけであります。ないとは言えないということは、ある場合もあるし、ない場合もあろう、それはまあ断定していませんから、その危険がないとは言えない。こういう論調であったわけです。こういうことをもあわせ考えて、今後のこの動きについては、われわれは非常に憂慮しておるわけです。この点について要点だけお答えをいただきたい。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたびたび御注意も受けましたし、ただいまのように真正面からどうこうでなしに、日本の国の安全確保のために、また国民の不安を一掃する意味において、この上とも注意しろと、こういうように聞き取れた私はただいまの発言だと思います。政府はしばしば申しますように憲法を守り抜きます。またその他の法令、法律はもちろん守るのでございますし、またいわゆる平和に徹する私の考え方、その線で憲法を守り抜くと、こういうことでその不安を一掃したい、かように私は思っておりますが、ただいままで一部においてなおその不安を持っておる人があり、それらの点で完全に解消したと、こういう状況でないことはまことに遺憾に思いますが、この上とも一そう努力して国民に不安を与えないようにいたしたいと、かように思います。
  244. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 そこで、いままでいろいろな具体的な問題をお伺いしてきたわけですけれども、結論的にお伺いしたいことは、先ほど来申し上げてもまいりましたが、総理の言われる一番大事な点は、との条約は軍事的な同盟を背景にしたものでない。そういうことに対して私どもはこれは軍事同盟そのものだとは言っていないわけです。ただ先ほど来繰り返して申し上げましたいわゆる安保条約とか米韓のいわゆる相互防衛条約、この条約体制によって軍事的のつながりが米を対象としてできるであろう、こういうことの憂慮からいろいろと具体的な事例を出して、そういう憂慮な点を申し上げてきたわけです。  そこで最後にお伺いしたいのは、こういうような考え方をわれわれは一貫して持っておるわけです。こういうことを政府にも心していただいて、そうして個々の問題については、先ほどいろいろ都合のいい御答弁で、答弁にならない御答弁だと私は思うわけです。こういう点についても、ひとつ率直にその問題を解明する態度でお答えいただきたいということ、そこで私ども社会党の言うことは何でも反対ということでなく、先日のいわゆる国会討論会でわが党の羽生さんも言われておりました、政府自民党は社会党の言うことなら何でも反対ということでなく、たまには一つぐらい社会党の言うことも取り入れて、そうして社会党の意見を取り入れるべきだ、そういう意味のことを国会討論会でわが党の羽生委員は強調なさっておるわけです。そういうこともよく心していただいて、最後に私は要望として申し上げたいのは、こういうような十四年間もかかったというこの条約には、とにかく問題が多過ぎた、問題が非常にあったということを意味するわけです。そういう意味からいまからでもおそくないので、この条約についてはわれわれの、そうしてわれわれを含む多くの国民の心を十分かみしめて、この条約批准については、この際取り下げてしかるべきだ、こういうことを最後に強く要望申し上げて、私の本日の質問を終わっておきたいと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  245. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 黒柳明君。
  246. 黒柳明

    ○黒柳明君 質問さしていただきたいと思います。  まず冒頭に、総理におしかりを受けるかもわかりませんが、一、二問、日韓案件関係しておりませんが、本審議を進めるにあたって、総理に対して一、二質問をしたいと思います。  もういまさら衆議院の本会議あるいは特別委員会の強行採決について云々する必要はないと思いますが、非常に国民の不信を買っていることは、これはもう万人承知の事実でございます。きのうあるいはきょうの新聞なんかを見ますと、いまにでも強行採決がされるのではないか、こういうような記事が出ております。新聞記者諸氏の鋭い感覚から見ますと、そのような判断ができる。私のごとき鈍感な神経を持った者でも、そういうような感じがいたします。私も、先日、大阪の公聴会に参りました。自民党の推薦として出てきました公述人――家庭の、地域団体の主婦でございました――一貫して述べたことは、強行採決は不当である、非常にうまくない、こういうようなことを終始述べております。議員が全部総白痴化したんではないか。あるいは子供が、プロレスごっこじゃなくて、議員ごっこで押しくらまんじゅうして困る、こういうようなことを政府与党の依頼の公述人が述べるほどでございます。また、きのうは、電車の中に乗りまして、朝新聞を見ているつとめ人の人が、「自民党強行採決――また強行か」と、このようなことを電車の中で耳にいたしました。このような事実から見まして、私は、絶対に二度とこういうような声が国民の間に上がるようなことがあってはならない、こういうことを考えておりますし、また総理もこのような考えであることは、これは間違いないと思います。ところが、先ほども申しましたように、きのうあるいはきょう、そうしてあした、もう強行採決がされるんじゃないか、このような雰囲気が非常に強いわけでございます。あくまでも、韓国国会におきましては、あの朴政権はわずか三分の一の国民の支持しかございません内閣でございます。それに反して、わが国の佐藤内閣は国民の過半数の支持を得た大内閣であると確信するわけでございます。何も韓国の内閣のまねをする必要はないじゃないか。こういう意味から見ましても、重ねて総理にお伺いしてまことに申しわけございません。いままでも何回もありましたですが、もう一回いまの段階におきまして、慎重審議、そういうことに関しての総理の所見をもう一度お伺いしたいと思います。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 黒柳君から国会審議のあり方について御注文が出ました。これは私は政府の者でございますから、ただいま当委員会が皆さま方のお力によって運営されておる、それをとやかくは申しません。どうか民主主義のルール、そのもとにおいて国会が運営されるように、いわゆる参議院は良識の府だとしばしば言われておりますので、そういう意味でりっぱに運営されるように、私は今日まで当委員会の審議等に見まして、たいへん熱心に皆さま方も聞いてくださるし、また政府もいいかげんな答弁はしない、こういうことで、ほんとうに真剣に取り組んでおります。したがって、それらの点は、私は、国民からもとにかく努力のあとは買っていただけておるのではないか、かように思います。ただしかしながら、御承知のように、衆議院ではただいままでほとんど審議がされていない。ただいま大事な補正予算が出ておりますが、その審議はたな上げされておる。こういうような状態で十数日そのまま経過しておる。こういうようなことは、まことに国民から見ましても残念なことであります。ことにこの予算には、給与の問題や、その他重要問題がございます。災害復興等がございますけれども、さらに大事なものは、この年末を控えて経済対策の中小企業対策とか、その他の問題が含まれております。これらの事柄について何ら審議しない。私はまことに残念に思っております。こういうこともよく御勘案願って、ただいまの今日大事なことは、私どもの力によって民主政治を守り抜く、議会制度を中心に民主政治を守り抜く、これにはどうしたらいいか、どういう努力を払うかということで国民の期待にこたえたい、これが私の考え方でもあります。おそらく皆さま方も同様のお考えだと思います。
  248. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も総理のいまのおことばが現実問題として実現されることを心から強く願うものでございますが、ところが、例の韓国国会で強行採決されましたときには、金、元の情報部長が、どうせ野党は条約に反対する、納得するわけはないのなら、一度激突するなら早いところ激突してしまえと、こういうような暴言を吐いて例の強行採決になったわけでございます。また、総理はこういうこまかいものについてあるいは御存じないと思いますが、自民党広報委員会から出しております「日韓に新時代」、その中にこういうことが書いてございます。「われわれは、韓国国会の批准案採決を祝福するとともに、韓国政府のこうした真の祖国愛に深く敬意を表したいと思います。」、こういうわけでございます。私も日韓の国交が正常化されるそのことに対して決して反対するものではございませんが、何かこういう「日韓に新時代」、その中の文面を見ますと、何か強行採決そのもの自体を祝福し、それを真の祖国愛と、こう言っているような気がしてならないのでございます。そのことがまた、(「異議あり」と呼ぶ者あり)うるさい。文句あるのか、真剣になってやっているじゃないか。文句あるのか、(「それが公明か」と呼ぶ者あり)真剣にやってんじゃないか、ぼくは。(「それが公明か」と呼ぶ者あり)
  249. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御静粛に願います。
  250. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういう人がいるから、私は自民党・政府自体が国民から不信を買う一つの原因をつくるのじゃないかと思いますが、私は若い、政治のことなんか知りやしません。ですけれども、私のほんとうに国を思い、佐藤内閣をまた何とかして思う一念から質問にも立っている。何も反対のための反対なんかしていません。  いま書いてありました文面を見ますと、私ならずとも、「韓国国会の批准案採決を祝福する」、「祖国愛」云々とございまして、何かそのもの自体を、その強行採決自体を祝福もし、あるいは祖国愛と言っているのじゃないかと、こういう誤解を招き、それがまた平行移動しまして、この次の日本においても強行採決をするのがあたりまえであると、こういう邪推をされがちじゃないかと、こういうふうに思うのでございますが、総理は、この「日韓に新時代」、このもの自体御存じじゃないかと思いますが、このようなことに対してどのようにお考えになるのでございましょうか。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、韓国でどういうように扱ったか、これはしばらくあずからしていただきたいと私思いますが、ただ私は、ただいまの民主主義議会制度を守る、こういう意味から御注意がございました。どうも過去のわが国の国会審議等を見まして、いわゆる重要法案、こういうことになりますと、しばしばこういう事態が起こる。国内の問題にいたしましても、まして外交上の問題になりますと、しばしばこういうことが繰り返される。これは私たいへん遺憾な事柄だと思います。それぞれの立場においてそれぞれ主張され国民の支持を得て国会に議席を持つ以上、その自分の主張に私は徹するという、これは当然のことだと、かように思います。しかし、自己の信念に徹する、これも民主主義のもとにおいては最後にはやはり多数決の原理だと、かように私は思います。この原理を尊重しなくて、最後まで自己の信念を通すんだと、貫き通すんだと、かような状態だと、民主政治はなかなか成果をあげることが困難である、かように思うのでございます。過去におきまして、重要課題、重要問題、これがしばしば同じような審議の経過をたどっております。このことは、私まことにわが国の置かれた一つの宿命かとも思いますが、たいへん政治家として、民主政治を守るという、その立場の政治家として、残念に思っておるような次第でございます。
  252. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も、政治は力でございますから、決して少数野党がその線を越えてはならないと、こういう線があることも十分承知しております。  そして、また本論に戻したいと思いますですが、十月二十六日の衆議院の特別委員会におきまして、小坂さんの発言、総理大臣に対する質問に、こういう質問がございました。この条約を締結した基本的考え方は戦争のつめあとをいやすという考え方である、終戦処理であるということが基本理念であると。このあと総理のお答えが、場内の雑音でお答えが議事録に出ておりません。これに対してまた、過去の清算であると、こういうこともつけ加わえられておりますが、総理の御答弁をお願いしたいと思います。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小坂委員から質問を受けましたのは、前戦争のあと始末の一つだと、こういう問いであったと思います。しかし、私ども韓国と戦争したことはございません。これは御承知のように、かつて一緒であったものが今度は分離する、分離国家の形で国が独立したわけであります。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕 その承認の時期等についてはもうすでに論議が尽くされておりますので、重ねて申しませんが、そういう意味日本の国から分離して、そして独立したと、そういう立場でものごとをきめていくわけであります。これが戦後二十年たってもきまっておらない、このことがいかにも残念だから、戦後の問題として早くこれを親善友好の関係を樹立する、そういう形で国交の正常化をはかる、こういうことのお尋ねであったと、かように思います。誤解を受けてならないのは、戦争したわけではない、この一事であります。
  254. 黒柳明

    ○黒柳明君 重ねてお伺いしたいと思いますが、戦争のつめあとをいやす、過去の清算であると、このことに関しては、総理もそのとおりであると、こういうふうにお認めでございましょうか。
  255. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この韓国がどういうわけで分離することになったかと、これは過去の不幸な歴史を清算すると、そこに私どもの反省もあると、そうしてりっぱな国を、両国の関係を樹立しよう、今後の問題に――過去を清算し今後の問題に期待をかけると、こういう状況でございます。
  256. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、政府は、先ほどの「日韓に新時代」と、こういうパンフレットをはじめとして、いろいろなパンフレットを出しております。それは日韓友好条約と、友好友好という文字を非常に多く見かけるわけです。当然友好条約であってほしいし、また友好条約でなければならない、こう思うわけでございますけれども、何かその条約の中を見ますと、食い違い、解釈の違いが多く目立つ。友好的なものじゃないから友好と、国民にはまずことばによって友好なんだと、こういう概念を与えようと、これは私の邪推かもしれませんが、こういうような気がしてならないのでございますが、はたしてほんとうに日韓友好のために結んだ条約であるならば、基本的なこの友好というのはどういうことを友好というのか。また総理は、本条約は国際信義の上に批准しなければならない、また片腕の田中幹事長も外交道義上云々とおっしゃっておりますが、国際信義上早期批准をして、それであるならば日本国民の信義は無視されてもいいのかと、こういうふうに私は言いたいと思うのでございますが、この点総理の見解はどうでしょうか。事実、自民党与党として資料として使っております中央調査会の統計資料、そこにも、国民の四七%は本条約に関して不可解である、こう答えが出ております。こういう国民の大体半分が条約を知らない、そういうことも頭に入れていまの答弁をお願いしたいと思います。
  257. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この日韓間の問題につきまして、過去不幸なる歴史がある。その点からいろいろ思い起こしまして、また誤解を生じやすかったり、疑惑を持ちやすかったりする両国の関係だと、かように私は思います。友好親善だと口で言ったからって、十分の理解が相互にできない限り、真の友好親善関係は樹立されないと思います。そのためには、やはり、基本的に平等の立場だという、これが貫かれなければならない。その意味では、端的に、またフランクに、もうあっさり、きっぱりと自分たち意見を遠慮なしに言えるような仲にまでならなければならない、かように思います。しかし、どうも日本が過去においてとった態度等については、よほど説明も必要とします。あるいは、弁解といいますか、疎明する必要もあるんじゃないか。こういうような意味で、まだまだそういう関係に直ちに強いきずなができると、かように私は思いません。これを私どもが努力をしていく、あすに希望を持つ、そういう形で韓国といろいろ折衝してまいるわけであります。したがいまして、たとえば政治的な面においてこれが干渉がましいことであってはならないことはもちろんのことであります。経済的にも、いわゆる経済侵略的なにおいがすることは、どんなことがありましても私どもは避けなければならないし、またこれが疑惑を受けるようなことがあってもならない。こういうことで、各方面で努力する点が非常に多いのです。それらの点が、文化の面におきましても、経済の交流の面におきましても、一つ漁業協定をいたしましても、これを完全に理解の上に円満に遂行していくと、こういう立場に立ってものごとを非常なこまかな注意を払わないと、たいへん私はむずかしい状況ではないか、かように思います。ともすると、こわれやすいこの関係でありますのを、われわれの努力によって、いっそう親善、友好、密接な関係を樹立したい、かように念願しておるのであります。これは政府がそういう考え方ばかりでも十分でございません。これは国民全体がやっぱり、これひとつ協力してやろう、そういう意味でお互いの親善友好関係を樹立していく。これはその見方によっては、過去雑居していた、日本人だと、こういう意味からも、過去のいい意味の友人もたくさんあるわけですから、その友人同士でやはり政府間の交渉をまるくまとめるように、お互いにひとつ協力しようではないか、こういうことになりますと、たいへんりっぱになると思います。しかし、戦後独立して二十年、その間に、いろいろそれぞれが独自の道を歩んできております。したがって、生活その他もどこかに共通点もありますが、同時に違っている点もありますから、そういうことから、ものの見方あるいは感じ方等も変わっておりますので、よほど注意を必要とするのじゃないか、私はかように思います。
  258. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、その友好のことばが、文字どおりうそでなくして友好にあってほしい、このように望むわけでございますが、ところが過去十四年間の日韓交渉の過程を見てまいりますと、これはすでに多数の人が御存じのように、久保田発言だ、あるいは沢田発言だ、高杉発言だ、非常に友好が非友好的な発言をしております。一、二、すでに知っていることでございますが、聞いていただきます。三十六年間日本が朝鮮を統治したことは朝鮮人にとって有益であった――久保田発言でございます。われわれは三たび立って三十八度線を鴨緑江の外に押し返さねば先祖に申しわけない、これは日本外交の任務である、沢田さんの言ったことでございます。また、日本がもう二十年朝鮮を持っていたらよかった、植民地にしたというが、日本はいいことをやった、よくするために努力したが、戦争に負けたので努力がむだになった――高杉発言、このような発言が非常に問題になっております。総理が、善隣友好――隣り同士が仲よくなることにどうして反対なのか。決して反対はしませんが、過去の政府の過程、これは総理の責任ではないと、過去のことであったと、こう言えるとは思いますが、決して責任をのがれるわけにもいかないと思います。どうしてこういうような友好条約に反するようなことを平気で言うような人が、首席全権としていままで交渉に当たってきたのか、過去のことと言ってしまえばそれまでのものでございますが、非常に私は疑問に思うわけです。そういう事実がありながら、いまこの場になって、あすにもあさってにも批准される、強行採決されるというときになって、友好だ、友好だと、こういう二つは非常に矛盾と考えるわけでございますが、この点について総理の見解をお願いしたいと思います。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一口に十四年の交渉だといいます、この十四年は長い交渉だ、この間におきましていろいろなできごとがあった、これは御指摘のとおりであります。しかし、これはただ日韓間だけで長い交渉を持ったということではなく、国際的にもこんなむずかしい交渉はない、各国もしばしばそういうことを指摘しておるのであります。しかし、この十四年の長い交渉を持った結果、それぞれだんだんとお互いが理解することもできた、こういうことも言えるのではないかと思います。たとえば韓国とすれば、韓国は独立した、そういう意味日本に対しまして非常な要求をしていると、これが最初の日本側考え方であったろうと思います。また韓国側から見れば、日本は相変わらず昔と同じような考え方でおれたちにのしかかってきている、これはどうしてもあれを納得させなければいけない、こういうような問題があったと思います。今日ようやく日本が平和に徹しておる、この日本の姿というものが理解された、そのことが今回の交渉妥結に必ず役立っておると思います。しかし、何と申しましても、過去十四年間かかって一つ一つ問題を解決して、積み重ねができて、それでようやく椎名君によって最終的な調印が行なわれた、こう見ることが最も正しいのではないかと思います。  私は、しばしばこれらのことにつきまして、韓国の大統領やその他の方ともお目にかかって話をいたしました。それらの方々が、とにかく両者を、この国交の正常化、これは私ども責任のある立場からはぜひ早くと、かようには考えるが、国民相互はなかなかその理解にまで達しないのだという観点がまことに残念だということをしばしば伺ってきました。こういう大きな問題でありますだけに、国民の支持、そのもとにおいて初めてでき上がることであります。これを納得さすと、これがお互いに民主主義のもとにおいてのことでありますだけに、なかなかそれの説得にも骨が折れたと思います。しかし、私は今日この日韓交渉妥結をすべしという世論調査が日本におきまして約四五%、それは支持だ、反対は一二、三%だ、まあどちらかといってわからないというのが先ほど言われましたように四十数%……。
  260. 黒柳明

    ○黒柳明君 七%。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 七%、こういう状況でありますが、今日までの世論調査でかような圧倒的な支持を得たことはわりに珍しいのじゃないか、かように私は思います。韓国におきましても、このことは世論調査でははっきり出ておるようであります。したがいまして、これらの事柄を背景に考えると、国民大多数は、この日韓交渉の妥結、これを心から喜んでおるのだ、その喜びがぬか喜びにならないように、実を十分成果をあげるようにするためには、今後私どもがさらにさらに努力をしていかなければならぬ、かように私は思うのでございます。
  262. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理は、ただいま数字をあげまして、一〇%台、三〇%台、圧倒的に支持が多い――私は残されましたその四七%のほうの数字を非常に関心を持たざるを得ない、こういう私の意見でございます。そうして、先ほど総理がおっしゃいましたような、椎名君が調印に当たった。私は個人的なことになりまして非常に申しわけないと思いますが、その椎名外務大臣が、これはもうすでに、またすべての人が御存じだと思いますですが、「童話と政治」という本の中で、非常に韓国国民感情を害するようなことを言っております。別に私ここで読む必要ないと思いますが、読ましていただくと、「アジアを守り、日本の独立を維持するために、台湾を経営し、朝鮮を合併し、満州に五族協和の夢を託したことは、日本帝国主義というのなら、それは永劫の帝国主義である。」云云。私はそう確信すると、こういうことをおっしゃっておるわけであります。これに対して、椎名外務大臣も反省しているという、こういう発言がございましたが、いまもその気持ちは変わらないと思いますが、いかがでございますか。
  263. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 変わりはございません。
  264. 黒柳明

    ○黒柳明君 ありがとうございました。ということをもう一歩立ち入ってお伺いしたいと思いますが、また「戦時経済と物資調整」、こういうような本が厚生次官椎名悦三郎の名前によって執筆されておりますが、そこにこういうことが書いてございます。「昭和十六年十月二十日初版発行」、「これ等を以てしても尚ほ不足する場合は朝鮮よりの移住労務者を以て充てることとした。昭和十五年度に於て石炭、金属、鉱山方面は相当多数の朝鮮人労務者を移住せしむる計画をたてて居り、これが指導訓練、労務管理等に付ては格段の注意が払われている。」云々、二百五十ページから二百五十一ページでございます。これが要するに朝鮮人の強制連行の一つの大きな原因をつくった、このように言われておりますし、そう私も信じております。このことに対して、また椎名外務大臣は深く反省しているかどうか、その点をお伺いします。
  265. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は別に責任を回避するわけではないけれども、その本は部下の連中が私の名前を使って書いたのでありまして、それはその当時の物資調達の精神あるいは手続、そういうものが国民に徹底しないと、やはり戦時経済を遂行する上において不便である、国民皆さんにとっても便利な本にしたい、こういう意味で書かれたのでありますが、内容等はもう一切私は知りません。ただ、私の名前で発行してよろしい、こういう許可を与える。でありますから、書いてあることについては、私は責任を持たざるを得ない、まことに申しわけない、こう思っております。なお、私は衆議院の委員会においても申したことでありますが、深く反省するというのは、私は決してから念仏ではない。戦争当時、たしか軍需省の役人として九州の炭鉱等を視察したときに、まったく若い身空で、いわゆる青雲の志を抱いて都にのぼるというような、そういう年ごろの朝鮮の青年連中が炭鉱に配属されていた。そうして、夜の番で昼間は寝ておったのだろうと思いますが、私に来てくれというので、ずっと寄宿舎を回ったところが、みんな起こされて、そうしてみんな四角四面なかっこうですわって、一々点呼に応じておったというような情景を見て、どうもまことに気の毒だ、こういう印象を受けまして、それがいまだになかなか私の印象から消えない。一ちょうど、よけいなことを言うようでありますが、この間、ことしの二月に参りましたときに、「椎名帰れ」というプラカードを持って、飛行場からソウルに行く途中でそういう人があらわれた。それから卵をぶっつけられた。私はからだにはぶつけられなかったけれども、乗っておった車の窓にぶつけられた。一、二度、そういうこれに類したものがございまして、四、五回ございました。それがみんな、どうも年かっこうから見ると、あのころちょうど炭鉱に配属された連中の年が、いまごろになると四十がらみになるということをちょっと気がついて、非常に何というか、いやな気持ちを持ったのであります。そういうようなことでございまして、私もよけいな所感を申し上げて、まことに申しわけないが、私の名前で出した本のことをおあげになりましたので、私がどういう心境でこの問題を振り返っておるかということを申し上げまして、いささか御参考に供したいと思います。
  266. 黒柳明

    ○黒柳明君 部下にかつぎ上げられて名前を使われたんだ、こういうことはちょいちょいございます。まして、戦時中であってみれば、そんなことがあることは当然想像されますです。ですから、そのことに対して深く反省していれば、それでいいんじゃないかと思うんですが、ところが、対日請求項目、その中に、御存じのように、強制労働者に対しての請求権、まあ私は事情は知りませんですが、あるいは八億ドルの経済協力にすりかえられた、こういうことでございますが、あの対日賠償八項目の中に出ております。もしも、外務大臣がほんとに申しわけないというのであるならば、そういう人たちに対して補償しなければならないんじゃないか。なぜ、あの対日賠償の八項目がほごにされたか。すなわち、それに対しては裏づけがない、事実が明白でないと。そのほか六点云云とあげられましたですが、この強制労働の問題に関しては、事実がはっきりしてないことじゃなくして、わが国が強制労働をやったわけです。引っぱってきたわけです。それに対しての資料は、必ずやわが政府が保管してあるんじゃないか、事実ははっきりしてんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。反省をするならば、その人たちに対しての補償についてお考えになっているかどうか、この点、お伺いしたいと思います。
  267. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題は、それはもう長い時日を経過しておるし、それから日本にも敗戦という、それからまた本土爆撃という大混乱がありました。朝鮮半島においても、御承知の大動乱があったわけです。これを裏づけるよすがもない、こういうことで、それは合意の上に完全かつ終局的にこれを終了したことにいたしまして、そして経済協力という、その方法によってその問題に置きかえるということに相なった次第で、御了承願います。
  268. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに、終戦のときにその資料はもうなくなった、こういうようなことでございますが、私も今回の質問に対して資料要求しました。そうしましたら、戦争のときに法務省も焼けちゃったからないと言っていた、ない、ないと言っていた資料が、あとから一つ二つどんどん出てきました。これはみんな国会図書館にある資料ばっかりでございます。まあ原本は焼けたか知りませんが、国会図書館にすべてあるわけですが、そういうようなことから、どこかにもぐり込んでいる可能性もあるのじゃないか。そういうようなことがありましたら、ひとつこのことに関して裏づけをつくって、そうして、そういう人たちに、今度は行ったときに二度と、「椎名帰れ」とプラカードを掲げられるようなことをしないで、「よく来たな椎名」、こういうプラカードを掲げて、みなに待ち受けられるような、そういうような態度――秘策を練っていただきたいと、これは希望意見で申しわけございませんが、それを……。  もう一つ関連で質問でございますが、いま言いましたようなことを総理はお聞きだと思います。そういう椎名外務大臣、個人的にも非常に力があり、りっぱな人だと思いますが、何せ、対朝鮮問題に関しては若干うまくないのじゃないか、個人的にも私思うのですが、その人をどうしてこの次には首席全権として大任を帯びて行かせなきゃならないのか。総理大臣としてその辺の御心境をお伺いしたいと思います。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 椎名君がことし二月、ソウルに参りまして、そして外務部長官あるいは丁総理と会って、たいへん好感を持たれたのであります。私はさすがに、ただいまも過去を述懐し、そうして不幸なできごとについて反省をしておるたいへん率直なお話を聞きまして、ほんとうに涙が出るような感じで聞き取ったのであります。このことが韓国国民からも迎えられた。したがいまして、非常にむずかしい問題がばたばたと最終的な調印を見るに至った。基本条約などはなかなかむずかしい問題だったが、それにイニシアルをしてくることになった、こういうことも私は椎名君の人となり、持ち味だと思います。そう簡単に人というものは判断、価値づけるということは非常に困難なことでありまして、やはりつき合ってみまして、その人のほんとうの持ち味が私どもにもわかるのであります。これはひとつ皆さま方の御協力を得まして、りっぱに大任を果たし得るように、ひとつこの上とも御支援のほどをお願いしたいと思います。
  270. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かに感情論から言いますと、ほろりと涙を流すような場面も出てくるんじゃないかと、こう思いますが、ところが、事実はそうじゃございません。「東亜日報」――御存じのように韓国一流新聞でございます。昨年の十二月十五日、一年前の新聞を引用して申しわけございませんが、こういうふうに書いてございます。「さる三日から始まった人権擁護週間は十三日で終った。この期間にさまざまに人権を侵害または剥奪されたという数多くの人々の涙ぐましい訴えが報道された。」、これは現実に涙ぐましい訴えらしいです。「……しかしそれよりも重大で長年の宿題が一つまだそのまま残っている。日本帝国主義統治三十六年間の弾圧政治の下で、わが同胞がうけたあらゆる迫害と被害がそれである。われわれの愛国志士と殉国先烈が日本の警察からうけた拷問・虐殺・掠奪など無数の人権じゅうりんの蛮行は、わが国民が子孫代々いく百年、いく千年へても永遠に忘れることのできない国恥・民辱ではないのか。日本帝国主義侵略者のそのような国際的大量人権抹殺の事実をなぜ韓日会談からさっさと抜きさり闇から闇にほうむりさろうとしているのか、という義憤にもえた陳情書が、殉国先烈遺族会から国際人権擁護連盟韓国委員会に提出された。当然今後とも強く叫ばれなくてはならない民族的抗議である。乙巳保護条約締結の一九〇五年から一九四五年までの満四〇年間、独立運動の隊列に加わった闘士と人民が無惨に殺されたその惨景を回想する時、この地に生をうけた者は誰しも血涙を流さずにはおれない。ここにあの悲惨な被害状況の概略を紹介する。義兵戦死四万名(概算)、三・一運動時の被殺者六六七九名、負傷者一万四六一〇名、投獄された者五万四〇〇〇名、うち受刑者一万八八九五名、焼かれた建物五六七八棟、満州大虐殺時の南満地域被殺者三七八六名、東、北満地域被殺者三万四六八六名、南、北満の家屋被害四八六二棟などである。一方、三二運動後満州国が生れる時まで南満地域で七八六七名、東、北満地域で五九〇三名が各々殺された。そして一九三〇年満州岡成立後から八・一五解放まで南満地域で一万二三八六名、東、北満地域で八七六七名が殺された。そして南、北満の家屋被害は二六八万九八棟等々……政府当局がこの恐るべき殺人鬼日本帝国主義の残した残虐非道な数字を知っているなら当然韓日会談でこれに対する公式謝罪と〈補償〉を正々堂々と要求しなければならないはずである。もし、これを韓日交渉が全的に無視してしまうものであるなら、結局独立運動それ自体を否定するという無意味な結論の他に出てくるものはない。」、こういうふうに、韓国一流の新聞が、全――全と言えないかもわかりませんが、韓国民の声を載せて、こういうふうに書いてあるわけです。すなわち、当然、韓日会談でこれに対する公式謝罪と補償を正々堂々と要求しなければならないのだが、この要求が、どういう過程を通ってか知りませんが、八億ドルの経済協力にすりかえられた、こういう事実でございますが、はたしてこれで道義上、いままで外務大臣がおっしゃったこと、そうして、いまのこの新聞の事実、あるいは、これから大きな使命を帯びて韓国に乗り込んでいくわけでございますが、そういう関連性を持って、道義上、こういう新聞を読んで、はたしてどのようにお考えになるか。政治協力、また李外務部長官も、八億ドルはほとんど民間には使われないだろうと、こういうようなことも述べております。まあ、このことはそのときになってみなければわかりませんが、はたして、こういう一連の事柄に対し外務大臣としてはどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
  271. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 協定にも書いてありますが、とにかく、これが最も有効に韓国経済建設、民生安定向上に役立つように使われなければならない、こういう趣旨のことが書いてありますが、これをあくまでそのとおり十分なる効果をあげるように、われわれは最善の努力をすべきである、かように考えております。
  272. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうこれ以上論議しても平行線をたどると思います。総理もりっぱな方である、一国のその責任者がりっぱな方であるという人ならば、決してりっぱな人でないわけはない、私はこう信じたいと思います。しかし、もしも、そのことばに反したような事実が批准後にあらわれるようなことがあったらば、これは国民総力をあげてそのことばを取り消し、また、敵として戦っていかなければならない場面もあらわれてくるのじゃないか、こういうふうな想定をするわけでございますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  そこで私は言いたいことは、いままでのような観点から、この日韓基本条約で最も重要なことは、第二条の旧条約のことじゃないか、もうこれは、いままでの話をお聞きになってみれば、おわかりのとおりでございます。過去のことを清算し、過去のことが今日につながる、そして過去を反省することが将来の友好にもつながっていくのではないか、こう思うわけでございます。はたして、三十六年間の植民地、そういうものをどのように反省していくか、評価していくか、これが将来に対して、今回の条約に対しての法的地位、あるいは経済援助、あるいは賠償問題、そういうものをすべて決定していくのではないか、こう思うわけでございます。また、韓日会談白書にも、韓国にとって一番重要なのはこの第二条であると、このようにも述べてございます。こういうような観点から、総理は何回も何回も、この旧条約は平等自由な立場で結ばれてきた、こういうことをおっしゃっておりますですが、くどくなって申しわけございませんが、このことはいまもってこのとおりである、こういうふうにお考えでございましょうか。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その点は、この前答えたとおりでございます。いまだに、そのとおり思っております。
  274. 黒柳明

    ○黒柳明君 これもちょっと古い新聞で申しわけございません。お兄さんの岸総理大臣総理の特使として矢次一夫氏を朝鮮に派遣したときの、李承晩大統領に謝罪している文が載っかっておりました。そこで岸総理は、伊藤博文公が日韓関係についておかしたあやまちを償わなければならないと強く感じている、総理もまた、日本の軍部の行為が韓国に重大な損害を与えたことを遺憾としている、こういうふうにお兄さんはおっしゃっておるわけでございますが、申しわけございません。佐藤総理は、このこととまるっきり反対のことを言っているわけです。謝罪する必要ない、自由で平等な立場で結ばれたんじゃないか、こう言っておりますが、そこに百八十度の相遺があるわけです。その点についてどうお考えになっているでございましょうか。
  275. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岸前総理が矢次一夫君をつかわしたこと、これは私も知っておりますし、また、総理がどういう話をしたか、これは私はつまびらかにいたしておりません。私は、ただいま問題になる、名前の出される伊藤さん、これが同郡隣の村の出身であります。吉田元総理からも、君の先輩がこれは間違ったのだ、君はこれをあと始末をする責任があるのだ、かように言われております。今回の処置をとりましたことも、私は、そういう意味でたいへん親善関係、友好関係を樹立することができる、こういうことでたいへん喜んでいるような次第でございます。
  276. 黒柳明

    ○黒柳明君 伊藤さんが間違っていたと、こういうようなことはいいと思うのですが、であるならば、条約というものは、間違って結ばれた条約、自由平等で結ばれたんではないのではないか、こういうふうにお伺いしたわけでありますが、あくまでも自由平等の立場で結ばれた、こういう発言に対しては、いまもって、そのとおりであると、こういうようにお考えでしょうか、お伺いいたします。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はそのとおりと思っております。
  278. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと離れますが、おととい、自民党の公述人大平善梧さんがこんなようなことを言っております。国際法の通念から言って、個人的な脅迫によって結ばれた条約は無効だと思う、このように言っておりますが、法務大臣、これに対しての見解はいかがでございましょう。
  279. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) いまの御質問は、そのとおりだと思いますが、条約局長から申し上げます。
  280. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと一言。もう一回読みますよ。国際法の通念から言って、個人的な脅迫によって結ばれた条約は無効だと思う。そのとおりであると、こういう御答弁でございますね。――わかりました。どうぞ。
  281. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国際法の問題でございますので、外務省のほうから答弁したほうがよろしいかと思いまして申し上げますが、いまの大平公述人の意見は、その裏には、国家間の関係で、かりに強国が小国に対して圧力を加えて結ばれた条約であっても、これはその効力に影響なし。ただ、政府を代表する個人に対して脅追なり何なりが加えられて結ばれた場合には、そうではない。そういう意味合いで言われたことだろうと思います。
  282. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま総理が言いました、伊藤博文のとった処置は遺憾である、でありながら自由であり平等である、こんなことはちょっと矛盾じゃないかと思います。矛盾だと思うのですが、しからば、私が、自由であり平等であったか、あるいは、個人的に迫害を加えた場合には無効である、それであるならば、この日韓の条約は無効じゃないか、こういうような感じをせざるを得ない。これはあくまでも旧条約を結ぶ背景におきますいろいろな過程です。これは衆議院におきまして、御存じのように、社会党の委員の方から、伊藤博文は皇帝を脅迫した事実がある、読み上げられました。このことに関しては、これは個人的脅迫であるかないか、どのような見解をおとりでしょうか。
  283. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 答弁はだれに。
  284. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務大臣に、それから法制局。
  285. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 条約局長に答えさせます。
  286. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務大臣にお願いしたいと思うのですが。もうすでにこれは衆議院で発言されていることで……。
  287. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それは私の所管でございません。
  288. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、私の所管じゃないと言いますが、これは法的問題で、ただいま個人的な迫害があった、国際法上これは無効だと、こうおっしゃった、それに関連した質問なんでございます。
  289. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ただいま御引用になりましたのは、伊藤博文が明治天皇に報告した文書というように聞こえましたけれども、実は、あれは韓国の皇帝との間の問答だと思います。これはしかし私も全文を記憶しておりませんが、こういうふうに説得したということで、個人的に何か身に危害を加えるというようなのが、国際法で申しております代表が脅迫によってということでございまして、まあ国力を背景にして強い説得を加えても、それによって条約の効力に影響がある、そういうものではないのでございます。
  290. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまのは身に危害を加えなかった、こういうことでございます。身に危害を加えると、そうすると条約は無効になる、こういう結論でよろしいですか。
  291. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  292. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、あるいは御存じかもわかりませんが、ちょっと時間が長くなって申しわけございませんけれども、いまのことを明確にするために読みあげてみたいと思います。旧条約が結ばれる過程においてどのような事実があったか、あくまでも伊藤博文は悪かった、総理は言っております。悪かった事実はここに出ているのです。身に危害を加えなければ――危害を加えているのです。それに対しての外交文書、正式文書が幾多ございます。それをいまここで読み上げたいと思いますが、ちょっと長くなって申しわけございませんが、まず初めに閣議決定でございます。これは「対韓施設綱領決定の件」、こういうものがございまして、明治三十七年五月三十一日閣議決定になった。これには、この日韓保護条約に関する件、これは日本韓国に対して外政を監督する、財政を監督する、こういう取りきめがございます。これは長くなりますから省略しますが、こう事実が書いてございます。  その次は、「韓国保護権確立の件」、これは明治三十八年四月八日閣議決定、これはちょっと読ましていただきたいと思います。「韓国ニ対スル施設ハ既定ノ方針ト計画ニ基キ保護ノ実権ヲ掌握スルノ見地ヲ以テ漸次其歩ヲ進メ該国国防財政ノ実権ヲ我手ニ収攬シ同時ニ該国ノ外国ヲ我監督ノ下ニ置キ且ツ条約締結権ヲ制スルヲ得タリ思フニ前者ニ関シテハ今後益々既得ノ地位ヲ鞏固ニシテ当初ノ目的ヲ貫徹スベク後者ニ至テモ亦素ヨリ将来保護権ノ確立ニ向テ一大歩武ヲ進メタルモノタルヲ疑ハス然リト雖モ由来韓国ノ外政ハ東洋禍源ノ伏在スル所ナルヲ以テ将来ニ於ケル紛争再発ノ端ヲ絶チ以テ帝国ノ自衛ヲ全フセンカ為メニハ帝国ハ須ラク此際一歩ヲ進メテ韓国ニ対スル保護権ヲ確立シ該国ノ対外関係ヲ挙ケテ我ノ掌裡ニ収メサルヘカラス而シテ之カ為メニハ韓国政府ト左ノ趣旨ノ保護条約ヲ締結スルヲ要ス 第一、韓国ノ対外関係ハ全然帝国ニ於テ之ヲ担任シ在外韓国臣民ハ帝国ノ保護ニ帰スルコト 第二、韓国ハ直接ニ外国ト条約ヲ締結スルヲ得サルコト 第三、韓国ト列国トノ条約ノ実行ハ帝国ニ於テ其責ニ任スルコト」云々と、要するに、これは保護条約を結ぶ前にすでに閣議決定がされていた結果、韓国の自由の意思で保護条約は結ばれたものじゃない、保護条約が結ばれる前に、明治三十八年四月には、閣議において、韓国日本の配下にある、こういうようなことを述べている外交文書でございます。  さらに、それに対して、保護条約調印の経過についてもう一つ確かめてみますと、保護条約調印の経過は、先ほど言いましたそのうちの一つが衆議院で取り上げられました「伊藤特派大使御親翰奉呈始末」、これは韓国の皇帝に対して伊藤博文が脅迫した文書でございます。法律的には脅迫すれば――まあそういう文書がございます。それを裏づけるのがここにもう一つありますから、これは衆議院で取り上げられなかった文書でございます。これをまたお聞きいただきたいと思います。これは西四辻公堯「韓末外交秘話」、こういうような保護条約成案にあたっての文書でございます。「明治三八年一一月九日午後六時南大門駅ニ着イタ伊藤特派大使一行ハ直ニソンタックホテルニ投ジテ一先ヅ旅装ヲ解イタ。スルト半島ノ上下ハ愈々事ノ重大化ヲ悟リ人心弥ガ上ニモ緊張シテ飛耳張目其成行ヲ観望シテ居ルト其翌日韓帝ニ謁見シテ親書ヲ捧呈シタ伊藤侯ハ次ノ日カラ公使館ニ或ハ大観亭ニ大盛宴ヲ張ッテ朝野知名ノ士ヲ招クカト思フト時ニハ旗亭ヲ漁ッテ低酌高吟外交問題ナド何処ニ風ガ吹クカノ態デアル。世人ガハテナト狐ニツママレタ様ニ呆気ニトラレテ居ルト俄然一五日ニナッテ再度ノ謁見ヲ乞ヒ重大ナル使命ヲ闕下ニ披露ニ及ンダ。曰ク東亜将来ノ滋端ヲ杜絶セントスレバ両国ノ結合ヲ一層鞏固ナラシムル要アリ。其為メニハ韓国ノ外交ヲ日本ニ代ハリ行ハシムル事ガ刻下唯一ノ平和策デアル。ツキテハ之ニ関スル新協約ヲ締結シタイト云フノガ共骨子デアッタ。韓国トシテハ予テ思ハザルニハアラザルモ愈々トナルト流石ニ慌テフタメキ例ノ人ヲ以テ人ヲ制スル策ヲ執リ京城駐在各国公使ニ日本ノ提案ヲ阻止スベク哀願シタガスゲナク一蹴サレテ今ハ施ス術ナク一七日ノ御前会議トハナッタノデアル。此日初メテ日本公使館ニ韓国閣員ヲ招イテ商議シタ処争論容易ニ決セズ遂ニ公使ト共二一同参内シテ御前会議ヲ開ク事ニナッタ。時ニ午後三時。林公使ハ会議中別室ニ在リテハ六段目ノ一文字屋ヨロシク其結果ヲ待受ケタ。然ル二一方会議ニ於テハ各大臣トモニ吐息ト繰言ノ連発デシメヤカナル事通夜ノ如ク、ハキハキセゼル事女ノ腐ッタ如クトウトウ会議は夜ニ入ッタ。スルト大観亭ニ吉報ヲ待チアグンデ居タ二人侍ナラヌ伊藤侯ト長谷川大将ハ勘平ト御軽ノロ説ガ余リニヒマドルノニ業ヲ煮ヤシ小山憲兵隊長以下多数ノ憲兵警官ヲ引具シテ午後一一時ト云フニ馬車ヲ飛バシテ王宮ヘドットバカリニ繰込ンダ。而シテ宮内大臣李載克氏ヲ通ジテ拝謁ヲ願フト「朕ハ咽喉ヲ患ヒ謁見スル事ガ出来ヌカラ協約ノ事ハ各大臣ト協商妥弁セヨ」トノ御諚ガ降ッタ。其処デ伊藤侯ハツカツカト議場ニ這入リコミ全権委員ノ林公使ヲソッチノケニシテ鉛筆ヲ舐メナガラ各大臣ノメンタルテストヲ初メタ。「何時マデ愚図愚図考ヘテ居タッテ埒ノアク話デハナシ唯今皇帝カラ余ニ各大臣ト商議セヨトノ勅諚ヲ賜ハッタカラ一人一人ニツキテ反対カ賛成カノ意見ヲ訊クカラ明答セラレタイ。第一二参政大臣意見ハ……」スルト韓圭咼参政大臣ハ泣キ相ニナッテ絶対ニ反対ダト云ッタ「然ウカ ト伊藤侯ニ韓圭咼ト書イタ上ニ×ノ印ヲツケル。「御次ハ 御次ハ朴斉純外務大臣デアル絶対反対デハナイカラ賛成ノ部ニ入レラレテ○印。其後ガ閔泳綺度支部大臣デ反対ノ×印。爾余ハ種々条件ヤ文句ガアッタガ結局全部賛成デ○印デ直ニ此旨ハ闕下ニ執奏セラレタ。各大臣中デハ李完用学部大臣ガ最モシッカリシタ理ノ通ッタ意見ヲ吐イテ並居ル大臣中一際男振リヲ上ゲ伊藤侯ヲシテ感服セシメタ。其レハ兎ニ角コウシテ皇帝ノ聖断暫ク待ッテ居ル間ニ突然韓参政大臣ガ声ヲ揚ゲテ哀号シダシ遂ニ別室ニ連レ出サレタ。此時伊藤侯ハ他ヲ顧ミテ「余リ駄々ヲ捏ネル様ダッタラ殺ッテシマヘ ト大キナ声で囁イタ。然ルニ愈々御裁可ガ出テ調印ノ段トナッテモ参政大臣ハ依然トシテ姿ヲ見セナイ。ソコデ誰カガ之ヲ訝カルト伊藤侯ハ呟ク様ニ「殺ッタダロウ」ト澄シテ居ル。列席ノ閣僚中ニハ日本語ヲ解スル者ガニ、三人居テ之ヲ聞クト忽チ其隣ヘ其隣ヘト此事ヲ囁キ伝ヘテ調印ハ難ナクバタバタト終ッテシマッタ。扨テ調印ガ終ルト一同ハ乾盃ヲ挙ゲテ両国ノ親厚ヲ祝シアヒ真赤ナ眼ヲシテゾロゾロ退出シタガ其時己ニ東ノ空ハホノホノト白ミカカッテ居タ。」、こういう文章であります。長くなって申しわけございません。このことは、あくまでも、これは一西四辻公堯、そういう人が書いた「韓末外交秘話」であるから、これは証拠にならないんじゃないかと、そういうようなことをおっしゃるかもしれませんが、この裏づけとして、先ほどから何回も申しますように、総理がまた遺憾であったとするこの伊藤博文公の「御親翰奉呈始末」、こういう文章が裏づけになって出てくるわけでございます。  さらにここにあげますと、幾多そういう暴徒を殺し、あるいは殺虐し、弾圧した外交資料が、日韓ともども数多く出てございますが、あまり長く読み上げますと、皆さんに御迷惑おかけすると思うんです。こういうような事実があった。とういうような事実を考えて、それでも私はあえてこの条約を無効であるとか、そういうことは言いませんが、こういう事実はすべて認められておるわけです。くどいようですが、総理も伊藤博文はうまくないことをした、こういうわけです。であるならば、道義上からも、隣の国であって親善の間柄を結ばなければならない朝鮮の人たち、そういうような人たちのことをもう一回考え直して、あくまでも経済協力、そういう一片の形にとどまらず、もっともっと検討して、賠償を払う、あるいは、それ相当なめんどうを見てやるというお考えがここからは出てこないものだろうか。総理は非常に感情もろい方のように察します。椎名外務大臣のことばを聞いて、涙を流そう、こういうふうにおっしゃったのです。であるならば、この文章を読んで、ほんとうに腹の中では泣いているのじゃないか、こう思います。であるならば、たとえできないことでも何とかしてやっていこうという意思ぐらいはあるのじゃないか、こう思うわけでございます。その点どのようにお感じでございましょうか。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 黒柳君は、もっと韓国に、条件を満たすように処置したらどうか、こういう御意見のようでございます。るるお話しになりましたが、最終的にはそういう――私は、今回の日韓の条約並びに諸協定にいたしましても、国民の一部から反対を受けておりますのは、譲り過ぎたのじゃないか、政府の軟弱外交がかような情勢を来たしているのじゃないか、こういって実はしかられておるのであります。韓国におきましても、この条約に反対する者、この協定に反対する者の中には、韓国政府が譲り過ぎたのじゃないか、こういうような意見はしばしばあったようであります。私どもは、今日まで、これが相互の互譲の結果まとめ上げた条約だ、したがって、他の表現をするならば、これは妥協の所産だ、こうまで実は申し上げておるのであります。そういう意味で黒柳君は公明党を代表して、もっと譲れ、もっと金を出せ、こういうお話であるかのようにいまも聞いたのでございますが、ただいま私ども国民からもいろいろ激励もされておるところがあるのでありますが、ただいまちょうどいいところで互譲ででき上がったこの条約、双方が最終的に意見の一致を見て調印を見たこの条約でございますので、ただいまは韓国のほうで承認を経た今日でございますから、私どもも、国際信義から見まして、できるだけ早くこのままで承認をいただきたい、かように思って皆さん方にお願いしておるような次第でございます。
  294. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、それに対してまた突っ込んでいこうという気もございませんが、もう一つ、あくまでもこの日韓の旧条約、日韓関係というものは、総理がおっしゃったように平等でも自由でもなかった、こういう事実、これをもう一つ読み上げてみたいと思います。これは非常におもしろい文章でございます。閔妃殺害事件、これも外交文書でございます。この文書はあったかとうしろのほうで話がありましたが――お声がありましたが、あったのです。昔のことだからない……、それは正式な外交文書でございます。ですから、よくお聞きになっていただきたいと思います。(「資料で配ってあるじゃないか」と呼ぶ者あり)読まない人がいると思いますので一応お聞きいただきたい。  「末松法制局長官宛石塚英蔵書簡」、石塚さんというのは、韓国政府顧問であった石塚さんでございます。その人が独立運動の先鋒であった朝鮮の王妃である閔妃という女王を殺した、そういう経過があるわけでございます。  第一、発端、第二、名義、第三、謀議者、第四実行者、こういうふうに出ておりますが、ここでは明らかにこの閔妃を殺害した、こういう過程がこの第四番目の実行者というところに出ております。念のため、読んでない人がいると思いますから。「此荒仕事之実行者ハ訓練隊ノ外守備兵ノ後援アリ尚ホ守備兵ノ外ニ日本人二十名弱アリ熊本人多数ヲ占ム中ニ新聞記者数名又医師商人モアリ随テ洋装和装相混セリ岡本ハ大院君ト同時入城シ実行ノ任ニ当レリ守備隊ノ将校兵卒ハ四門警衛ニ止マラス門内ニ侵入セリ殊ニ弥次馬連ハ深ク内部ニ入込ミ王妃ヲ引キ出シ二三ケ処刃傷ニ及ビ且ツ裸体トシ局部検査ヲ為シ最後ニ油ヲ注キ焼失セル等誠ニ之ヲ筆ニスルニ忍ヒサルナリ其他宮内大臣ハ頗ル惨酷ナル方法ヲ以テ殺害シタリト云フ右ハ士官モ手伝ヘタルトモ主トシテ兵士外日本人の所為ニ係ルモノ、如シ大凡三時間余ヲ費シテ右の荒仕事ヲ了シタル後右日本人ハ短銃又ハ刀剣ヲ手ニシ徐々トシテ光化門ヲ出テ群集ノ中ヲ通リ抜ケタリ時已ニ八時過ニテ王城前ノ広小路ハ人ヲ以テ充塞セリ」、このように、このことはまあこれは日韓保護条約、併合条約の前でございます。あくまでもそういう独立運動の先頭に立った韓国の王妃を殺害していると、こういう事実過程を通して、七十幾つの旧条約が結ばれている。これは幾ら総理が平等で対等でと言ったところで、この事実は決してこれはくつがえされるものじゃない。総理も、伊藤博文の悪いことは認めております。椎名外相も、過去にやってきたことは悪かった、こう認めております。であるならば、この事実も当然認めなければならない事実である。これはあくまでも総理のお考えはどうかわかりません。私はそういうふうな意見を持っておりますが、いままで総合して、いろいろ長時間にわたって読んでまいりましたですが、そのことを全部ひっくるめて、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭にお答えいたしましたように、日韓関係には過去の不幸な歴史がございます。これらにつきまして十分反省もし、そうして過去を清算して私どもは明日に希望を抱く、このことでただいま親善友好の関係を樹立する、そうして最善の努力を払って繁栄への道を、韓国の繁栄への道をひとつたどりたい、かように思います。
  296. 黒柳明

    ○黒柳明君 あと一、二問でございます。  文部大臣にお伺いしたいと思いますが、先日、韓国の独立運動は妥当であったと、このようにおっしゃいましたが、この日韓併合条約後に数多くの暴徒が起こり、それに対して弾圧が行なわれております。こうなりますと、文部大臣が言った、独立連動は妥当であると、これはちょっと矛盾があるのじゃないか、こう思うわけでございます。いかがでございましょうか。
  297. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えいたします。  過去における韓国内における独立運動というものについては、その際も、前提として申し上げましたように、見方によっていろいろな議論は成り立つと思うのであります。ただその後、国連において植民地の独立等に関する宣言がございまして、わが国もこれを賛成いたしておりますから、今日の段階においては、われわれとしては妥当なものと考えますと、こうお答えを申し上げたので、現在もさように考えております。
  298. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと矛盾があると思いますが、時間がございませんので、最後に、国連の問題について一つお伺いします。  昨日佐藤総理は、曾祢委員の質問に答えまして、基本条約の国連憲章の原則による協力は、ソ連の場合と同じだ、このようにおっしゃっております。また、十月二十七日の衆議院でも、同じことをおっしゃっておるように記憶しておりますが、ソ連、ポーランド、チェコの場合と同じである、こういうふうにおっしゃっておると思うのです。ところが、私が本会議において椎名外務大臣に、国連協力の原則とは何であるかと、こう質問しましたとき、外務大臣は、第二条、七項目を取り上げてそれで説明いただいたと思うのです。そうしますと、この総理がおっしゃった基本条約、国連憲章の原則は、ソ連、ポーランド、チェコと同じだ、椎名外相がおっしゃったのとちょっと矛盾があるのじゃないかと、こういうふうに思うわけです。それはソ連、チェコ、ポーランドの対日の、日ソ、日本とポーランド、日本とチェコの条約を見ますと、国連憲章第二条の七項目を引かれておりませんで、第三項と第四項だけしか条文には出ておりません。国連憲章のほうは、日韓のほうは、国連憲章第二条七項目全部引用してあります。その点についてお伺いいたします。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このお話の要点は、国連協力だと思います。軍事協力まであるのではないかという点で、いやそうじゃございません、という、それはティピカルな例として、ソ連ともこういうような条約を結んでおります。したがって、軍事的な問題のないことは、ソ連との条約でもおわかりでしょう、こういう意味の話をいたしたのであります。しかし、昨日さらに、この点では詳細に条約局長からお答えをいたしましたので、この機会にも重ねて条約局長から、詳しく間違いのないところを説明させたいと思います。
  300. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ソ連との日ソ共同宣言の場合には、国連憲章第二条に掲げる、なかんずく次の原則を指針とすべきことを確認するとございまして、ポーランド、チェコの場合には、「なかんずく」のかわりに「特に」となっておりますが、これはその三項と四項を強調するということでございます。そういう意味でございまして、限定するというようなことをだれか公述人が申したようでございますが、そういう意味日本語じゃないわけでございます。したがいまして、この七原則は、全部これに適合して行動しなければならない。これは、これらの共同宣言、協定の解釈、文理解釈としてもそうなりますし、また、国連加盟国であります以上は、国連憲章の原則を、俗なことばで恐縮でございますが、つまみ食いするようなことはできないはずでございまして、その点は法律論、具体的なことを言っておったような人がおるようでございますが、全然見当違いの議論だと思います。
  301. 黒柳明

    ○黒柳明君 以上、ありがとうございました。
  302. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 黒柳君の質疑は終了いたしました。  六時三十分まで休憩いたします。    午後五時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後六時四十四分開会
  303. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求める案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。岩間正男君。
  304. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、若干の質問をします。  質問に入るに先立ってまず明らかにしたいことは、わが党の本案件に対する態度並びに審議にあたっての態度についてであります。  まず第一に、本案件は不当であり無効であります。去る十一月六日の衆議院における日韓特別委員会並びに十一月十二日の本会議における自民党のたび重なる暴挙は、絶対にわれわれの承認できないことであります。これは完全に議会制民主主義をじゅうりんし、一党独裁による自殺行為であると言わざるを得ません。単にわれわれがこれを糾弾しているだけでなく、今日では日韓条約に賛成の人々を含めて、広範な国民がこれを非難してやまないのであります。六日の特別委員会で、自民党は、理事会における事前の合意を完全に無視し、突如として一方的に強行採決を策しました。これは国会史上かつて例を見ない暴挙であります。与党といい、野党といっても、立場の相違はありながら、お互いの協約を重んじてこそ、初めて国会の運営が成り立つのであります。これはそのための最も基本的な原則であります。しかるに、一方的にこれをじゅうりんしてはばからないとすれば、すでに共通の場は失われ、土台は根本から破壊されたのであって、今後何をたよりとして国会を運営しようとするのでしょうか。  さらに、十二日の本会議においては、衆議院船田議長は、わずか四十秒足らずの一方的宣言で、かってに日程を変更して、継続中の先議案件である法相不信任案をあと回しにし、次いで国会法第五十三条に基づく委員長報告を省略し、討論の余地も与えず、一挙に日韓一括案件を採決したと称しているのであります。これは過日の当委員会でも追及されて明らかになったように、法規慣例を無視し、みずからの機能と職責を放棄した、議長としてあるまじき暴挙であります。これは国会の否認であり、民主主義への挑戦であります。われわれは絶対にこれを承認しないのみか、国民とともにその不当、無効を糾弾し続けるでありましょう。  そこで私は、佐藤総理にお伺いいたしたいい総理はこれに対して一体どのような責任を感じていられるのか、総理はこの前の委員会で、十二日の暴挙については、事前に何ら知らなかったということを言われました。現にこの議場で答弁されました。しかし、あなたは与党の総裁です。最大多数を占める自民党の総裁です。自民党は、最高責任者が何らの承認もないうちにこういうことをかってにやる、そういうことが許されているのか、自民党というのは、そういう統制のない放らつな党なのか。この点についてあなたはどういう見解を持つか。それから、あなたは知らないと言っているが、これは知らないでは済まされないです。国民はだれもこのことを承知しません。もし知らないとしても、知らないと言ってこの責任を免れることは絶対にできないのであります。さらにあなたは、あのような暴挙は遺憾であるということを、この前の委員会で申しました。遺憾である、知らないうちに遺憾なことが行なわれた、これに対してどういう責任を感じ、その責任をとろうとされるか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  衆議院特別委員会並びに去る十二日の本会議の議決、これらはいずれも、国会におきまして異例のできごとでございます。そういう意味で私は、私が総理であると同時に自民党の総裁であるという立場から、十分責任を痛感している次第であります。先ほどもお答えをいたしたのでありますが、今日私どもが最も意を用いなければならないことは、これは民主政治の確立並びにその前進、同時に、議会政治、議会制度、これをどういう形で守り抜くかということに尽きると思います。わが国の国会審議におきまして、重要問題が過去におきましても、しばしばかような異例な議決、採決方法をとられた。ことに外交の問題につきましては、しばしばかようなことが繰り返されております。この点は、私、まことにわが国の政治のために惜しむ、いたむ、まことに悲しい事柄だ、かように思います。私どもが民主政治を守り、議会政治を貫く、これには基本的に法規慣例を守る、ただいま言われたようにそのことも必要でございます。しかし、同時にまた多数決の原理をはっきり守り抜くと、こういうことでなければ、いわゆる民主政治の前進はなかなか期せられない、かように私は思うのでありまして、こういう意味におきまして、私が知らなかったからと、かように申しまして、責任を免れようとしておるわけではありません。私が知らないということが、自民党としてはまことに統制のとれないことだ、かような言い方でもありますが、私は政府の首班として、党の運営、国会の運営等につきましては、私の代理で副総裁あるいは幹事長等がそれぞれ担当しておるのでありまして、そういう点で最終的にこういう議案を成立さす、あるいは承認を求める、こういうことについての十分の連携はとれておりますが、しかし、どういう方法によりこれを成立さすということにつきましては、一々私は相談を受けておるわけではありません。自由民主党は、統制のとれない党ではございません。また、私が総理であって総裁の責任を免れる、こういう立場ではもちろんございません。私は総理としてもまた総裁としても、今日は民主政治を貫き、民主政治を前進さすことこそ、私どもに課せられた重大なる責任だと、かよう思いますので、その課題をはたしていきたい。これにはもちろん、私自身の多数党を率いる総裁としての責任もございますが、野党諸君の御協力もぜひ願わなければならない、民主政治を守る、そして前進さす、こういう意味で各党各派とも御協力を得たいと思います。
  306. 岩間正男

    ○岩間正男君 多くについて語られたけれども、巧言必ずしも実がありません。この前からの答弁を聞いておりまして、責任をどのように負うかという具体的な方策については、何ら語られない。しかも、何か他を顧みてものを言っておるようなそらぞらしさを感ずる、だから、この事態を私は真剣に反省するなら、やはり佐藤内閣はどのような処置をするのか、それは内閣を辞任するということもあるだろうし、さらに、このような国会について、解散をするという事態もあるだろう、それについてはどう考えるのでございますか。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 皆さん協力を得て、りっぱな民主政治を、また、りっぱな議会運営をここに打ち立てたい、かように思います。
  308. 岩間正男

    ○岩間正男君 大もとを正して、みずからを正して、さらに全体を正すことができるのですね。その点ではなはだ不十分な御答弁だと思います。  次に、私はつくづく思うに、このような不当不法をあえてせざるを得ないところにこそ、実は日韓条約そのものの本質があったのだ、こういうふうにはっきり言えると思います。本委員会の審議によって、すでにその一端が明らかにされているように、日韓条約は反人民的、反民族的な戦争と侵略のための条約であります。その全貌が明らかになればなるほど、絶対に国民の承服することのできない条約であります。その正体があばかれることをおそれればこそ、政府、自民党は、審議半ばにして審議を打ち切り、急拠不法な強行採決を策したのであります。しかも、かかる無謀な行動は、国会のルールを完全にじゅうりんし、国会の運営を中断し、その機能を麻痺させているのであります。現在二十日にわたる空白という、今日の国会の現状が何よりもこれを証明しているではありませんか。これは明らかにファシズムに道を開くことであり、その狂った姿は、そのままいま参議院に持ち込まれております。本院の目下の運営が何よりも雄弁にそれを物語っていると思うのですが、本会議並びに本委員会における数次の議長職権による開会、与党自民党の反対により、審議日程一つさえきめかねているこの現状はどうですか。質疑者の質疑は、社会党六人、公明党が一人、第二院クラブが一人まだ終了していないのに、いちはやく形ばかりの公聴会を終了し、しかも、反対にわれわれ共産党の時間を著しく制限して、舞台裏では一触即発、審議打ち切りがたくらまれているのが現状ではないですか。佐藤さん笑っておられるけれども、どうなんですか。このような、あいくちを擬すにひとしい状態の中での審議が一体許されるだろうか。国民の反対は日増しにつのるばかりであります。われわれは広範な国民に責任をもって日韓条約の本質を余すところなく明らかにし、その徹底的な国民批判を仰ぐことこそがわれわれ議員の当然のつとめであると思います。  私はこのような意味で、最近新聞、ラジオなぎの伝えるところによると、何か早急にこの委員会を打ち切るような、そのような情勢が刻々に報じられております。私はこういう点で、あなたは同時に自民党の総裁でありますから、当然この審議を十二分に尽くすという保証を確認すべきだと思うのでありますが、いかがでございますか。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 委員会の運営等は、皆さまの良識で御相談の上やっていただきたいと、かように思います。ただいまいろいろお話がございましたが、ただいまの御説になりますと、私と実はよほど懸隔のあるお話になるのであります。御承知のように、私どもは情重審議、これをお願いし、そういう意味で御協力申し上げておると思いますが、共産党の方も最終的には、やはり多数決の原理に従っていただく。これが民主政治の最終的な決定方法である。このことだけお忘れのないようにお願いいたしたいと思います。
  310. 岩間正男

    ○岩間正男君 参議院の打ち切りということを伝えられているが、総裁は知っているのかどうか、こういうことをあなたは一党の総裁として、まだ知らなかったなどといってほおかむりすることはできない。この点をはっきりさしておきたいと思います。私は以上の結論をあげて、さらに本論に入りますが、私は時間の制限が非常にされております。そういう中から、かいつまんでこれは質問したいと思う。  佐藤総理は、日韓条約は何ら軍事的目的を持たないということを、事ごとに強弁しておりますが、ただ一方向にそういっているだけです。それには何らそれを裏づける論拠というものは明らかにされていない。これでは国民は絶対に納得できないと思うのであります。そこで私は、その当否を明らかにするためには、まず、現在アメリカのアジア侵略の中に組み込まれている日本韓国の軍事的地位並びに軍事的協力関係、軍事的交流などの実態を究明することが必要であると考えます。  そこで、率直にまずお聞きしますが、第一に、アメリカの第五空軍、つまり日本の板付、横田、さらに沖縄、韓国、フィリピンなどをその指揮下に置いているこの第五空軍の司令部はどこにありますか、現在、総理御存じでしょう。
  311. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 第五空軍は在日米軍にあります。
  312. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一回言って下さい。わからないです。
  313. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 第五空軍は在日米軍の第五空軍でございます。
  314. 岩間正男

    ○岩間正男君 その司令部がどこにあるかと聞いているのです。
  315. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 在日米軍の司令部は府中でございます。
  316. 岩間正男

    ○岩間正男君 そう言えばいい。それでは、府中にあることを確認する。第二は、在韓国連軍の後方司令部、これはどこにありますか。もう一つ続いて、さらに米、英、カナダ、フランス、オーストラリア、トルコ、タイなど七カ国の国連軍代表は現在どこにいますか。
  317. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) それは私の所管ではございません。
  318. 岩間正男

    ○岩間正男君 所管ということはないでしょう。あなたはこれを知らない。
  319. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 国連軍司令官は在韓の米軍司令官が兼ねておるわけでございます。それから日本には座間に小規模の連絡部隊と申しますか、がございまして、約人数は五十人程度だと思いますが、米軍の軍人のほかに――これは米軍の中佐を長とする小部隊でございますが、約半数は米軍の軍人で、あと国連軍に加盟しました国の連絡将校が若干名勤務しております。
  320. 岩間正男

    ○岩間正男君 それからもう一つ答弁漏れがありますよ。国連軍の七カ国の代表はどこにいるか。
  321. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 国連軍の代表は、その日本におります国連軍の連絡将校は、いま申し上げましたように座間にあります小部隊に配属されております。そのほか若干の国は在日大使館の武官がその連絡将校を兼ねておると承知しております。しかし、どこの国がどうなっているか、細部は承知しておりません。
  322. 岩間正男

    ○岩間正男君 在韓国連軍の後方司令部は座間、それから国連軍の七カ国の代表はやはり座間その他東京にいる、これはいまの答弁で明らかであります。  第三にお聞きします。在日米軍の陸上部隊の司令部、これは日本にありますか、それとも韓国にありますか。
  323. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 在日米軍の司令部は日本にございます。
  324. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本のどこですか。
  325. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 日本の座間でございます。
  326. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは先ほども話があったが、実際は韓国の釜山にある。どうなんですか。大部分がもう向こうに行っている。  第四にお聞きします。アジア全域に出動している第七艦隊の司令部はどこにあるか。
  327. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 第七艦隊の司令部は第七艦隊の旗艦にございます。
  328. 岩間正男

    ○岩間正男君 どこにあるか。
  329. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 旗艦。船でございます。
  330. 岩間正男

    ○岩間正男君 どこにあるか、司令部は。
  331. 島田豊

    政府委員(島田豊君) これは動いております。
  332. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうばかな話は――これははっきり横須賀にあるでしょう。こういう点をあなたたちは茶化して答弁しちゃいけませんよ。こういう実態、いまあげたこれらの例だけをみましても、どうですか、日韓両国はアメリカ軍によって一体のものとされているというこの実態がわかるわけです。また韓国の軍用機や艦艇が国連軍用の名目で日本の工場で修理されていることも周知の事実です。これは先ほど防衛庁長官逃げましたな。私は知りません、私の関係でない、通産省の関係だ、しかしそんなことはこれはおかしいと思うのです。あなたは安保協議委員会の同時に構成メンバーになっている。これはあとでお聞きしますけれども、ちゃんと安保協議委員会の決定の中にこのことは明らかにされておる。そんなことはあなた後任の防衛庁長官として当然ですよ。こんなものは引き継ぎを受けなくちゃならない。知らないなどと言って先ほど伊藤委員に答えたけれども、私は関連を取ったのですが取れなかったが、いまはっきりしておきます。そういうことは許されません。このような事実、私があげましたこのような事実、ただこれだけの事実からみても、この日韓条約が軍事的なつなでがりを深めるためのものであるということが言えると思います。そういうものでないということはどうして言えますか。このような環境に立って、いま結ばれようとする日韓条約を検討しなければならぬ。この点どうですか。これは総理にお聞きします。
  333. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 多少岩間委員の御指摘が事実と反しておりますので、総理答弁の前に事実だけを申します。先ほどの飛行機の修繕は、最近ずっとしておりません。岩間委員は、何かもうずっと前に一時小牧で修繕したというのを永続的にお考えのように思いますが、その後ずっとやっておりません。一時、ほんとの一時に……。
  334. 岩間正男

    ○岩間正男君 その資料を出してください。
  335. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 航空機を出したこと、それ以外にはございませんので、資料は出すよりも、資料がないのですから、修繕していないのですから、資料もございません。
  336. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君はいろいろバックグラウンドがどうとかこうとか、背景がどうとか言ってお調べになっていらっしゃるようですが、どうか条約は書いてあるとおりをひとつごらんください。また協定も明文化されておるとおり。その書いてあること以外は、いわゆる頭の非常にいい方にしても、どうしてもみんなが納得いたしません。書いてあることで、その範囲で解釈していただけば、ただいまのような軍事的な意図のないこと、これは非常にはっきりしております。どうかよろしくお願いします。
  337. 岩間正男

    ○岩間正男君 いい答弁をされました。条約は書いてあるとおりだ、これはお忘れなく。あとでやります。  次にお伺いしますが、さらに一九六二年八月の日米安保協議委員会では、日韓協力についての秘密取りきめがなされているはずです。その内容について、これは外務大臣からお聞きしたい。あるいは防衛庁長官でもいい。
  338. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 協議委員会で日韓協力に関する秘密協定というようなものは全然存在しておりません。
  339. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたたちはそんなことを言ってますが、これはもうほとんど周知の事実でしょう。先ほどもこれに類した質問が伊藤委員からなされました。これは五項目からなっている。この五項目というのは、第一に防衛駐在官のソウルヘの常駐と自衛官の韓国軍の交換視察、第二が韓国軍航空機、艦艇の日本での修理、補給、第三が韓国軍人の日本への留学、パイロットの養成、第四がバッジ・システムによる日韓台の航空共同作戦、第五が対馬海峡の共同封鎖、こういうことが取りきめられておるはずです。で、この条項に従っていろいろ実際の具体的な施策がその後なされておると思いますが、この点お伺いしたいと思います。
  340. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どこからそういう根拠をつかんでこられたのか、全くそれは事実に反しておりまして、さようなことはございません。これは特別に私は強調しておきます。捏造です、それは。
  341. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは、その後の施策を見ればはっきりこれはしているですよ。そういうことはないというようなことを言っても。もっとも、あなたは六十二年には外務大臣やっていなかったから。そうでしょう。そういうような体制の中で、私はお聞きしたいのだが、この防衛駐在官のソウル派遣の問題ですが、一体防衛駐在官を、日韓条約が批准される、そういう事態がくれば、これは派遣するんですか、どうなんです。どう考える。
  342. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいままで十カ国に、防衛駐在官はソ連、西ドイツ、イギリス、フランス、トルコ、十カ国派遣しております。それはお互い当然のこれは交換でございます。韓国の場合はまだそこまで考えておりません。
  343. 岩間正男

    ○岩間正男君 今後派遣しないというわけじゃないでしょう。派遣することはあり得る。
  344. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) まだそこまで考えておりません。
  345. 岩間正男

    ○岩間正男君 この防衛駐在官というのは何をやるのです。どうも任務がはなはだ明らかでない。いつでも覆面しているようなものだ。どういうものだ。
  346. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 世界中お互いに、自分の国の独立と平和を守るために各駐在官というのを交換して、そうして世界の平和と世界の軍事情勢というのを交換し合うということは、これは平和の非常な重要なことだと私は思います。その意味では平和的なこれは働きをするものだと思います。
  347. 岩間正男

    ○岩間正男君 平和的だというような話ですけれども、あなたのこれは部下になるのでしょうな。防衛庁統幕会議事務局長吉江陸将は、日韓条約が調印された本年六月二十二日、次のように語っている。「日韓国交が正常化されれば防衛駐在官がおかれることになり、北朝鮮の軍事情勢がよくわかるようになる」、こういうことですね。そうすると、防衛駐在官の任務の一つの中に、これは韓国に派遣されるとすると、北朝鮮側の軍事偵察をやる、それが一つの任務になるということがこの吉江陸将の談話からわかると思うのですが、これはいかがですか。
  348. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 駐在官は一人でございますから、そんなに偵察したりする能力も機能もございません。どこの国でもお互いの軍事力というものをお互いに信じ合って、そうして平和を守ろうというのが駐在官の任務ですから、一人でそんなに出歩くほどの能力もなければ、大使館の中におるだけでありまして、まことにそんなことは現実はあり得ないことでございます。
  349. 岩間正男

    ○岩間正男君 一人はそういう名前のものかもしらぬけれども、それに付属したり、随員団が行くでしょう。そういうことをあなた、まるで子供みたいな答弁をしたってだめですよ。なりたてだからわからない。けしからん、問題にならぬ。  その次に、これは先ほども答弁あったと思いますが、第二に、現在、韓国から日本の防衛大学その他の幹部学校にこれは何人留学生が来ているのですか。
  350. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 政府委員から答弁させます。  なお、駐在官はほんとうにたった一人でございます。
  351. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) お答えいたします。韓国人の留学あるいは受託教育、そういった事実はいままでございません。
  352. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかし、ちゃんと受け入れ態勢はとっているでしょう。韓国軍からはないとしても、受け入れ態勢はとっているでしょう。その証拠は歴然たるものがあるのじゃないですか。
  353. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 受け入れ態勢と、そんなものはほんとうにございません。ほんとうにございません。  なお、その随員も一人も行かないのですから、世界中駐在武官は、日本では一人しか行っておりません。ほとんどそのとおりでございます。したがって、受け入れ態勢をとる必要もなければ、とってもおりません。そんなに多人数を予想することもありませんので。
  354. 岩間正男

    ○岩間正男君 昨年自衛隊法を改正したじゃないですか。その中ではっきり今度は外国人を入れると、そういうなにを、法的措置をやったはずですね。これは事実でしょう。
  355. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) それはタイ国とフィリピンから一名ずつの受託学生を受けましたので、その分だけの態勢でございます。
  356. 岩間正男

    ○岩間正男君 なぜ外国人とやったのですか。タイと韓国――いや、台湾言ったらいいじゃないですか。外国人だからそれはいつでも受け入れることができる、そういう態勢をすでにとっているということは歴然としていますよ。昨年のこれは暮でしょう。これに対して自衛隊法の改正でずいぶん騒いだ問題だ、記憶にいまだ新たな問題があるのです。  その次、それから日本のバッジ・システムについてだいぶ伊藤委員からこれは質問がございました。これが完了すれば、当然これは共同防衛体制を強化される。これは明白だと思います。そしてまたそのことは、はっきり先ほどのこれは秘密取りきめの中でもいわれておる。ずいぶんあなた、さっきいろいろこれについて弁解をつとめられましたな。私わきにおって聞いておりました。九州に、それから日本海にも、そして網の目のように張る。しかし、これは韓国との共同体制はとらないと、そのこと一言だけを盛んに言っておりました。そういう点ではなかなか納得できない現実の進行状態になっておると思う。  さらにもう一つお聞きしたいのは、対馬海峡の日韓両国による共同封鎖作戦、これはもうすでに日本の戦略が変わったはずです。四年前に変わったはずです。北方中心から南方のほうに、西のほうに移動したはずです。そうして十三カ師団にあれを改編する。それは何かといったら、まさにこれは韓国釜山に赤旗が立つ、こういう事態から日本を守らなければならぬ。一方で盛んにそのことが宣伝された。そういう態勢の中で、御承知のように西辺を重視する、そのような戦略にこれは変わってきたわけです。それと前後して対馬海峡におけるところのあの封鎖作戦が行なわれたはずでしょう。どうなんですか。
  357. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 岩間委員の作戦のお話は、私が承知している作戦の話とは非常に違いまして、封鎖するという、封鎖作戦などというものはまだ私のほうは、訓練はいたしますが、封鎖作戦などというものはやっておりません。あるいは岩間委員の言われる封鎖作戦というものは現実にどういうものか存じませんが、何もあそこを封鎖しておるとか封鎖したとかいうことはございませんし、そんなものを私たちはやっておりません。  なお、バッジ・システムというものはそういう制度のものではないということを明確に申し上げます。バッジ・システムというそのものは、日本の防空、対空飛行機でなければつけられないものなんです。機械がそれ以外には流用ができないです。これは私は明らかに、いずれそのときなお明らかにいたしますけれども、バッジというものはそういうものなんです。これをよそにつけるとか、よそに移動するということはできません。飛行機と日本の地上と同じ機械と同じ電波でなければ防空というものはできないです。したがって、よその国にこの制度が流用されるなんということはできない。それがバッジ・システムの特徴なんです。方々混乱しないようにするのがバッジ・システムの特徴なんです。それには日本の防空網、日本の防空というものにしかつけられないところにバッジの特徴がある。どこにもこれが流用されるなら、国の防衛というものはかえって不安なものなんです。それがバッジ・システムなんだ。これは明確に私はお答えしておきます。
  358. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここであなたとそういう論議をやれば時間がかかるわけですから、各国にそういうものをつくっておいてそれを統一する、それを米軍がやっているのではありませんか。そういう論議をして、いかにもそこだけに限定してやっているようなそんな作戦じゃないでしょう。いまアジアの情勢を見たって、それからあとでもっと質問をしますけれども、全体の一体アメリカの戦略構想はそんなものじゃないでしょう。そういうような、まるで子供だましみたいな答弁でこういうところをごまかしてはだめだと思います。  私は以上のような問題、これは簡単に――たくさんありますけれども、時間の関係から四点を指摘したわけです。まさにこれは日韓共同の防衛構想じゃないか。これは完全にまだできておるとは言えません。これらの秘密取りきめがなされた一九六二年という年を私たちは振り返ってみますと、これはケネディの中国封じ込め作戦が決定されたその翌年に当たります。そうして自民党池田内閣はその協力を約束させられた。アメリカからはギルパトリック国防次官補が、しばしば日韓の両国を訪れ、当時それらの示唆指導により三矢作戦がそのあとでつくられました。いわゆる第二次朝鮮戦争を想定しての戦略構想が持たれ、そのための日韓の緊密な提携が緊急不可欠の要件となったのです。もちろん、これらの機構はその一部は実行に移されたが、その機構は完成されていない。その障害は何よりも日韓の国交の未解決にあった。いま日韓条約の批准によって一挙にこれらの障壁を取り払い、日韓の軍事提携を推進強化する、それが日韓条約の大きなねらいであり、それをアメリカが陰で推進している。私はこういう点からもう一つ申し落としているから申し上げたい点があります。それはほかでもない、三矢作戦なんです。この三矢作戦について、政府はいまだに国会資料提出していない。提出していないということは、提出することのできない重大性を持っているところの文書であるということを何よりも明らかに物語っております。その中のしばしば国会でも問題になった韓国情勢の推移に伴う国策要綱という一項がございます。これはまさに、この三矢作戦の一つの眼目ともいうべきものです。そうしてその中に、韓国で緊迫した状態が起こり、日本がこういう態勢に備えるために非常事態体制、緊急な作戦体制をとらなければならぬ。そうしてそのために、六項目の取りきめがなされているはず、――国策要綱の六つです。日米安全保障条約の適切な運営、それから自衛隊の態勢を強化する、侵略に備えるためにその能力を強化する。それから警察等治安関係機関の能力を強化するとともに、民防態勢を整備する。国内の防衛意識を高揚し、国内革命勢力を排除し、前王、四項目と相まって官民一体の防衛態勢を確立する。心理活動を強化する――六がそうなっている。そうしてしかも、それらの五項目の一番男頭、つまり国策要綱の一番冒頭の第一項目に書いているのは、韓国との国交を回復するという条項なんだ。何よりもこのことは、私は今度の日韓条約の締結というものが、まさに軍事的な、とのようなものと肩を並べ、しかも最も重要なポイントとしてこの三矢作戦の中に書かれておるということは、重大な性格を持っておると思うのであります。私はそういう点から、先ほどの日米安保協議委員会の取りきめの問題、この三矢作戦、こういうような軍事的な側面というものを、なぜ一体、政府は明らかにしないのか。この点について、総理はどのような一体見解を持たれるか。私は具体的な事実をあげているのでありますから、このような具体的な事実に即して御答弁を願いたいと思います。
  359. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三矢問題については、すでに衆議院で十数回審議をいたしました。もちろん研究過程でございますので、資料を出すようなものでもございません。また、おっしゃるように、私も安保委員でございますから、現実にそういうふうな動きをしたことは、一ぺんもございません。ただ岩間委員のおっしゃることは、私も「アカハタ」紙上において拝見したことがございますので、そのことについては十分注意はしておりますが、現実にはそんなものは一つもございません。
  360. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも松野防衛庁長官のことばを信頼したいのでありますが、信頼できない有力な一つの証拠がある。それはほかでもございません。あなたは衆議院でうその答弁をされておる。横路君の質問に対しまして、治安出動訓練を相馬ヶ原でやっているこの事実を、あなたはそういう事実はございません。治安出動訓練をいたしたことはございません。こういうことを言っている。だから、十一月六日の衆議院のあの日韓特別委員会が再開されれば、おそらく横路君は、この問題を追及するはずだったわけです。これは私も知らせてやりました。こういう問題について、全くあなたはうそをついているでしょう。だから、そういう事態だから信用できないといわれたって――一事が万事とは言いませんよ、しかし、そういう事態は、これはどうするんだ、一体。
  361. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 参議院の決算委員会での質問と横路委員の質問とは違うんです。横路委員の質問は、デモ対策について訓練をしておるか。――いたしておりません。参議院のほうでは、治安行動について訓練をしておるか。――これは自衛隊の職務規程にございますから、いたしております。質問が違うんです、それは。質問が違いますから、答えも違うのはあたりまえです。それをこの際、私を信用していただく意味で明確に私は話しておきます。
  362. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、ちゃんと速記録を読んできているんですから、そういう何を言ってはいけませんよ。それからあの問題も、島田防衛局長と宍戸教育局長が決算委員会で答えたんだ。あなたたちは――国会の議事録に書いてある――そんなことはございません、ございません。まあなわ張りをやったか何か、そういうようなことをやったわけですけれども、そういう事実はひた隠しに隠しておるわけだ。そうして、ございません、ございませんで通っておるから、知らない人はそれで済むかもしれませんが、これは知っている人から見れば、はなはだこっけいなんですから、そういうことはだめですよ。  私は、先に進めますが、総理にお聞きしたいのです。総理はまあ軍事同盟的な性格はない、そこにはないということをことばをきわめて言われた。それならどんな種類のこれは同盟なんです。これは単に条約というにはあまりにいろいろなんです。これはどういう条約なんです、条約上。これはどうです、反共条約ですか、これはどうです。
  363. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国交正常化の条約です。
  364. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理に聞いているんです。あんたからも言ってもいいけれども総理です。
  365. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣が答えたとおりでございます。
  366. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかしどうですか、あなたはいままでの答弁を総合するというと、反共同盟ということになるんじゃないですか。単なる国交回復の条約ではない。広範な協力を誓った同盟、そうしてしかも、反共を目的とした同盟であると思います。それはもうはっきりしておると思う。いままでの答弁を私はここであげませんけれども、そう言っていいですか、どうですか。
  367. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約をひとつよく読んでいただきたい。どこにもそういうことは書いてございません。基本条約、漁業条約、請求権経済協力、在日韓国人法的地位の問題、それから文化協定、どこにもないです。
  368. 岩間正男

    ○岩間正男君 反共同盟でございますとうたった条約の種類をいまだ私は聞いたことはない。われわれは内容を検討して、そういうことを言っておるのです。反共同盟でございますと言ってるでしょう。佐藤総理、あなたどうです。あなたは事あるごとに共産主義はきらいだ、きのうは排撃すると言っていましたね。排撃する、そうでしょう。それはまああなたの好ききらいだから、われわれはそれに介入するわけじゃない。あなたの政策としてはいわゆる自由主義国家、反共諸国との提携協力を強化している。私は日韓条約はまさにこのような佐藤内閣の外交基調のこれは具体的なあらわれだと、こう考えますが、そう考えてよろしいかどうか。
  369. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とんでもない話です。先ほど外務大臣がお答えいたしたように、日韓間の国交の正常化をはかっていく、これは平和の条約であります。先ほども申しましたように、条約は、書いてある文字から判断をしていただきたい、そのことを先ほど申したのでございます。ただいま言われるように、岩間君は特別な頭をしていらっしゃるか、頭が非常によろしいか、いわゆる紙背に徹したと、こういうような考え方でお説を述べられましても、私はそれに賛成をいたしません。私が共産党ぎらいであることは、これはしばしば申しました。わが国が共産化されることは、私は絶対にこれを防ぎます、守り抜きます、さようなことはさせません、こういうことは私申し上げております。
  370. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはまあ、あなたがそういうふうに考えるのはいいが、しかしあなた自身の立場というものをよく考えて、それは言ったほうがいいですよ。あなたは就任したとき、何と言った――中国との国交を回復するのだとか何とか――今日ではまるでしりを向けているでしょう。それは北朝鮮に対しても――朝鮮民主主義人民共和国に対しても、きのうなんかは南から爆撃するよりも、共産主義による統一がこわいとまで、これは言っておるのですね。そういうことで、反共のガリガリ亡者だということは、はっきりしていますよ、そうでしょう。反共同盟ですよ。そうしてしかも、この反共同盟の中で軍事的性格を持たないなどということはないのです。日米安保を見なさい、日台条約を見なさい。しかも、これらは全く侵略的な性格を持っておるのですよ。表面はいかにも包括的な協力をうたっておって、条文だけ見ると、いかにもきれいな装いをしておる。しかしその陰には、はっきりこのような軍事条項が含まれておると思います。私はそれなら、条文の問題が先ほどから出ていますから、条文についてこの中の問題を明らかにしたいと思うのです。これは一昨日の公聴会、昨日の稲葉委員の質問、こういう中からもたくさん出た問題です。これは端的に聞きますが、この日韓条約には軍事条項が全然含まれていないということをしばしばあなたは言われる。そうして同じことを聞いても、また繰り返すでしょう。ところが基本条約の第四条(b)項には、国連憲章の原則に適合して協力するということがはっきり明記されている。そこで、国連憲章の原則による協力というのは憲章第二条であるということは、これは明らかだと思う。ところが、この憲章第二条については、全文をきのう藤崎条約局長が読んだ。その第二条第五項を念のためにもう一ぺん読んでもらいたい。
  371. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「すべての加盟国は、国際連合が、この憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。」
  372. 岩間正男

    ○岩間正男君 いま明らかに読まれたように、いかなる行動についてもあらゆる援助を与えるというこの第二条第五項、その中には明らかに軍事協力も含まれていると解釈するのが妥当じゃないですか。もしそうでないというならば、軍事協力を含まないという、そういう法的根拠は――どういうふうにあなた方は、これを言いのがれることができますか。
  373. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) これは昨日もお答えいたしましたが、原則規定でございまして、確かに原則にはそう書いてございますが、個々の国が国連に軍隊を提供いたしますときには、この憲章のたてまえから申せば、第四十三条の特別協定取りきめでやるということが明文にうたわれております。ただ、特別協定ができておりませんので、朝鮮動乱の場合にも安全保障理事会は、個々の加盟国の発意にたよって、ああいう措置をとったわけでございます。
  374. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言われるけれども、私の質問に答えていませんよ。私は、二条五項は軍事協力というものを含まないのだという、そういう根拠をこの条文の中から発見することができるかどうか聞いている。できますか。
  375. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 御質問にお答えしたつもりでございますが、原則規定でございますから全部、観念としては含まれておるけれども、軍事協力の義務が第二条の第五項から直接来るのじゃないということを申し上げておるわけでございます。
  376. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう解釈をされておりますけれども、そういう根拠は何です。直接来るものではないという根拠を、どこかに明示したところがありますか。
  377. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ただいま申し上げましたように、国連憲章のたてまえどおりにものごとが運べば、第四十三条の「特別協定に従って、……必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。」と、この約束に従って加盟国がやれば、それでよろしいわけでございます。
  378. 岩間正男

    ○岩間正男君 その原則規定の中に包括的にあらゆるものを含めている。それがこの日韓条約の中で、しかもこの四条の中に、非常にこれが抽象的に書かれているというのが特徴じゃないですか。現に、現実を見たらいいです。自民党政府は、この国連憲章二条五項による協力として吉田・アチソン交換公文を結んだのであります。朝鮮戦争では国連軍に武器、弾薬の補給、基地、役務の提供を行ない、国連の名による侵略戦争に協力したではないですか。これは明らかに軍事協力の一端でしょう。これをさらに公然化し、あらゆる援助をするための日韓条約ではないですか、そう言われてもこれはしかたないですよ。
  379. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 第二条五項の義務は、国連加盟国はすべて負っておるのでございまして、もしいまお示しのようにこの五項を解釈するとすれば、国連加盟国は全部国連という軍事同盟の一員であるということになるわけでございます。
  380. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなばかなことを言っている。決議に――あげて朝鮮の決議なんかに反対した国がたくさんあるでしょう、現に。これは侵略規定だ。だから、そういうような一般的な、いまの解釈では、これは話になりません。私は、この二条五項の中の「あらゆる援助」、ここのところをやはりもっと明快にしておく必要がありますよ。何ぼでも拡張解釈ができる。原則規定だから、ほかの条項があるから、その条項でまかなうのだ、こう言ったって、現にこのように、いままで日本も軍事協力をしいられてきたじゃないですか、こういう事実があります。しかも日韓の国交が回復されれば、これがますます推進される。条約によって明らかにされれば義務づけられる。そういう点が出てくるのですから、この点について厳重な規定を一体なぜしなかったかと私は聞いたい。
  381. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私は決議のことを申しておるのじゃなくて、この憲章のことを申しておるのでございまして、この憲章の義務はすべての加盟国が現在負っておるわけでございます。これは、第五項にはこう書いてございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、現実に軍事的に国際連合の行動に協力する場合には、第四十三条の規定に従ってやればよろしいのだということが、憲章に明文で書いてあるわけでございます。ただ、その第四十三条の特別協定ができておりませんので、朝鮮動乱のときにはああいうようなやり方をしたと、こういうことでございます。
  382. 岩間正男

    ○岩間正男君 あらゆる協力をすると書いているでしょう。その原則をここでそこだけうたっているでしょう。それで軍事的な問題じゃないと、こういうふうに言っている。そのように、あくまで軍事的なものを含まないと言うなら、やはり、ソビエト、ポーランド、チェコスロバキアとの条約のように、なぜそのことを明記しなかったか。明記したらもっといいじゃないですか。日韓条約そのものは非常に軍事的性格があると、言って騒がれている、そういうときに、あなたたちは事志と反する、そういう立場だったら、そのことを明記して、日本国民の疑惑を払うのが当然の政治的任務じゃないですか。なぜそういうことをしなかったのですか。そういうことをしないでおいて、そうして逆に、あなたたち国会答弁では、この三つの条約は国連憲章の二条の原則をうたっている。だから日韓条約と同じというような答弁をいままでしてきたじゃないですか。きょうはまた、それをやったでしょう。一昨日公述人からやられたものですから、それをまた、公述人のいないところでこっそりやったってだめです。あれは「特に」ということがあるのだから、全体の七項目は全部かぶさるのだとあなたが答弁した。「特に」とうたっている、その精神をなぜ日本では条約でやらなかったか。そういうようなことは国民は信用しませんよ。そんなら、なぜそこのところを特にうたわなかったか、平和的条項をうたわなかったか。
  383. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 二条七項につきましては、そこから直ちに軍事的協力という義務が出てくるのではないということは、先ほど来申し上げているわけでございまして、これは軍備を持たない国も加盟国に入っておるし、条約上中立を守らなければならない国も加盟国に入っているわけであります。  それから、先ほど申し上げましたように、ソ連、ポーランド、チェコの場合には、「なかんずく」とか「特に」とかということで三項の紛争の平和的解決の項、それから四項の武力行使でございましたか、この二項だけが特記してある。しかし、だからこの間の公述人の意見は、日本・チェコ、日本・ポーランドの協定は軍事的なものを排除されていい協定だけれども、これをほかの項を含んでいると軍事協力が含まれて悪い協定になるというような趣旨のお話でございましたけれども、きょう先ほど申し上げましたのは――三項、四項を特に強調していることは、これは事実でございます。「特に」とか「なかんずく」とか言っておるのでございます。しかし、七項ある原則のうち、三項、四項をつまみ食いするようなことは、加盟国として許されないわけです。「主権平等」という第一項の原則を排除するとか、そういうようなことはできないので、この第五項というものを、いかにも軍事同盟みたいにお読みになっているのは読み違いであろう、ということを先ほど来御説明申し上げておる次第でございます。
  384. 岩間正男

    ○岩間正男君 書いてあるとおりだ。条文そのものが非常に客観的な一つの価値を持つ。そこに問題がある。  それから、そういうことで言いのがれをするけれども、前例は山ほどある。事前協議の例を一つ見てください。私たち心配しているのは、そのことだ。五年前の安保委員会の審議において、「事前協議」というのをどういうふうにあなたたちは解釈した。あの事前協議は、絶対に日本の軍事基地を使わない、それだけじゃない。沖縄を中継基地にして戦地に行くことも、これを事前協議の対象にする、あるいは補給のための、そのような援助も、これが作戦のためにつながるなら、これは事前協議の対象になる。ですから、どうぞあの新安保を通してくれと、手を合わさんばかりに、佐藤さん、あなたの兄さんの岸さんがそういう答弁をしたのです。私も質問をやっているんだ。いいですか。今日ではどうだ。事前協議はどうなっている。全く、このようなことは全然無視されている。事前協議を発動したことはありますか。私は、あんな事前協議なんというものは条約を通すためのごまかしである、ということを当時力説した者です。藤崎条約局長は、商売柄非常に忠義心を発揮されているのかしらぬけれども、そういうような解釈だけではだめですよ。公述人の話を聞いたでしょう。二条七項の問題もあったでしょう。二条五項、二条七項、その問題をいまのような解釈だけで、くぐり抜けようとしても、国民は納得しないと思うのです。まあ、時間の関係から次に進む。  私は次の問題でお聞きします。第三条にも関連する問題。基本条約第三条。総理並びに外相は、この条約の適用範囲を停戦ライン以南の南朝鮮に限定すると言っているが、南北朝鮮が将来統一された場合、この条約は一体どうなるんですか。新しく結び直すのですか。それまでの暫定条約として、この条約はあるんですか。この条約には、破棄条項も修正条項もない。そうすれば、将来これでいくとしか考えられないのですが、この点はいかがですか。
  385. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あの第三条は、国連決議を引用しておるのであります。国連決議のあの趣旨に適合しないという状態は、もうほとんど予見すべからざるような大変化が来なければならないはずでありますが、そういうような場合は、われわれは容易に実現するものとは考えないのであります。でありますから、ほとんど予見すべからざるような状況を想定して、その上に立っての話でありますから、さようなことは、今日においては言うことを控えたほうがよろしい、こう考えます。
  386. 岩間正男

    ○岩間正男君 お聞きします。あなた方は、南北の統一を望んでいるのですか、望んでいないのですか。
  387. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは非常に望ましく考えるのでありますが、さような事態は容易に来そうもないということを、私は客観的事実に基づいて、さような考え方を持っておるので、そう申し上げたわけであります。
  388. 岩間正男

    ○岩間正男君 望んでいると口では言っているが、それを妨害しているものが、あなたの頭の中にもある。この考え方が妨害している。日本国民の意識が変わり、アジアの人たちの意識が変わったら、南北の統一、この平和的な統一をやることができる。それを妨害してるんでしょう。そういうかっこうで、一方ではそういうことを口では言っているけれども、口とはまるで反対のような行動をとっている。  私は、その点で藤崎条約局長にお聞きしたい。あなたは、こういうことを言っているでしょう。この前の特別委員会。十月二十九日の衆議院です。「大韓民国というのは、統一朝鮮がなかなかできないので、国連の委員会が観察し得る範囲内で、ああいう政府をつくった。その管轄権は、したがって南の部分にしか及んでいない。しかし、これはいわば仮の姿であって、理想は統一朝鮮である。統一朝鮮になったら、その領域は当然に朝鮮半島全域に及ぶべきものであるということは、これはまたこの国連決議の趣旨からも明らかなところである」と言い、また、高辻さん、あなたも、「大韓民国が国連の方針のもとに、やはり統一朝鮮国家の実現を期している国家であるという事情も、これは御承知のとおりである」――そうすると、現在の適用範囲と、それから将来の適用範囲についてのあなたたちの言明というものは、この政府答弁と非常に食い違ってきております。どうなんですか、適用範囲について。そういうふうになるというと、どっちを一体とればいいんです。明らかに食い違いがあります。どっちがほんとうなんです、椎名さん。
  389. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 適用範囲の問題じゃございませんで、大韓民国政府の管轄区域の問題と領域の問題について申し上げておるわけでございます。国連決議では、大韓民国政府の管轄区域の問題について、これが南半分だけにしか及んでいないということがはっきり認められておる。しかし、領域と言いますというと、すぐ、それじゃ三十八度線が国境かということになるわけでありますが、そう断定しておるわけではございませんで、国連決議でも「領域」とか「領土」とかいうような表現はとっておらないわけでございます。したがいまして、領域、領土の問題を論ずるときには、大韓民国も国是としておる統一朝鮮ができた場合の国の姿について申し上げたほうがよろしいだろうと思って、いまお読み上げになったような答弁のいたし方をしておるわけであります。
  390. 岩間正男

    ○岩間正男君 管轄権といい、それから適用範囲といって、これはどう違うのです。これは、あなたはどう区別しているか。現実的に言ってください。いま停戦ライン以南に適用される。管轄権はどうなんです。管轄権は違うの。適用範囲と。
  391. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 範囲が違う、違わないの問題ではございませんで、観念が違うのでございます。管轄権と申しますのは、国家あるいは政府について、その支配の及ぶ範囲の問題としてとらえておるわけでございます。適用範囲と申しますのは、国際間に結ばれる条約、協定の適用の範囲という問題を論じておるわけでございます。
  392. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたのこういう答弁の中で、管轄権と適用範囲ということばで、そこのところを観念の相違だと言っているが、具体的にどうなんです。具体に言って、将来三十八度線を越えて、停戦ラインを越えて、そして統一された朝鮮が望ましいと言っているわけでしょう。それがあなたの気持ちでしょう。説明でしょう。高辻長官もそう言っているのですね。政府はどうなんです、その点は。政府もそう考えるのですか。これは政府の正式見解と考えていいのですか。
  393. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理もしばしば答えておりますが、一民族がかつて一つの国家を形成しておった。それが二つになっておることは、まことに不幸な状態である、隣国日本にとっても、一つの民族がもとのさやにおさまって、仲よく一つの国家を形成するということは非常に望ましいと、こういうことを言っておるのでありまして、政府としては、方針としてはきわめて明瞭であります。
  394. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理に伺います。総理は、南北朝鮮の統一を望んでおられるかどうか。
  395. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 何度もお答えをいたしましたし、ただいま外務大臣からもお答えいたしましたように、一民族が二つの国家になるという、これはたいへん民族の悲劇だ、かように私は考えております。同一民族一国家、これが原則だ、これが民族の念願でもあろう、かように私は思います。
  396. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理の言う、統一を念願していると言うけれども、これは、あなたのこの前の中国問題、昨年ですね、昨年のいまごろ盛んにやっていた問題ですが、中国の統一は望ましい、一つの中国だ――必ず言っておる。しかし、はっきり突き詰めてみれば、台湾政府を中心とする統一だったでしょう。これと同じことだ。この間のあなたの「南北統一は望ましい」。政府もみな言っている。椎名外務大臣も言った。それを突き詰めて考えてみるというと、国連統一方式じゃない。つまり、一つの朝鮮と言っていますけれども、これは、韓国政府を中心としたところの北の統一を目ざす、そういう意図は明らかじゃないですか。これはいかがです。
  397. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いきさつを見ましても、あの当時、ソ連とアメリカが、何とか統一朝鮮を形成しよう、つくりたいというので、ソウルで、いろいろ南北両方面から人が集まってこの問題を議したのでありますが、どうしても意見が相違して、お流れになった。こういうことで、国連としてはこれを放置できないので、新しく委員会を組織して、そうして国連の観察のもとに南北朝鮮にわたって自由な統一選挙を行なって、そうして統一のとれた政府をつくろうとしたのでありますけれども、そのときに北鮮は、がんとして国連の委員会の連中を北鮮に入れない。やむを得ず、南の部分だけで選挙が行なわれて、そうして三十八度線以南に大韓民国ができた。こういういきさつがございます。国連のあの方式が、どこが気に入らないのかわからぬけれども――とにかく、公平な統一選挙を行なって、そうして南北の統一をはかるという、この趣旨はきわめてけっこうな主張でございまして、日本としては、これに賛同しておるのであります。今日、むしろ北鮮のほうの理由で統一ができないというような状況ではないかと……。  なお、あなた御存じだろうと思いますが、北鮮の憲法を見るというと、選挙権、被選挙権を与える資格が定めてあります。重罪犯人、これはやむを得ない。その次は精神病者、その次に「親日分子」と、こう書いてある。親日分子は、選挙権も与えられなければ、被選挙権も与えられない。こういうようなきわめて排他的な、ほとんど理解に苦しむようなことが、しかも憲法に書いてある。こういうような状況でございまして、まあ総理は、どの国とも仲よくしたいと、こう言うのでありますが、相手方がどうもそういう調子では仲よくできないではないか。まあ、こういうようなこともございまして、今日では南北の朝鮮の統一ということは非常にむずかしい問題じゃないか。何か、やさしい方法があるなら、ひとつ教えていただきたいと思います。
  398. 岩間正男

    ○岩間正男君 「親日分子」とかなんとかいうようなことばで言っているけれども、それは、あなたたち日本の反動勢力につながっておる、朝鮮の統一を妨害する、そういう者をさしている。このことについては、これははっきりしている。そういうようなことで茶化すのは、これはよろしくないと思う。  それで、あなたたちの言う統一方式、つまり韓国政府を中心とするところの統一、これは、一九五四年の第九回国連総会の決議をさすことは明白だと思う。これは、あなたたちの正式文書でも、ちゃんと自民党は出しているのですからね。ところで、この第九回総会の国連決議というのは、五四年のジュネーブにおける朝鮮戦争派兵十六カ国共同宣言を取り入れたものであるということも、これは明白だと思う。この宣言によれば、二つの原則をうたっておる。その一つは、「国連は、その憲章に従い、朝鮮における侵略を撃退し、平和と安全を回復し、そのための集団行動をとること」、つまり、国連は南を助け、北に侵略する、こういう表現をこのようなかっこうでやっておる。二つには、「国連監視下に朝鮮の選挙を行ない、統一政府をつくること」、このような十六カ国の共同宣言を取り入れて、第九回国連総会の決議はできているということは明白だと思う。そうすると、一体どうなんです。これは明らかに国連憲章第二条七項の違反じゃないですか。内政干渉なんです。朝鮮の統一というのは、朝鮮人民が自主の立場で平和的民主的な統一をやればいい。それに対して国連が武力による介入までしてこれを妨害しておるというのが現実じゃないか。それに対して、今度の日韓条約、ことに第三条の「朝鮮にある唯一の合法的な政府」というようなこの規定は、明らかに、このような、いま韓国政府考えておるところのいわゆる武力による北鮮侵略、こういう態度、あるいは勝共統一、こういうような方針を支持して、国連の方式だということでやっていくという、そういう意図を持っているのじゃないか。私は、この問題は、単に管轄権、適用範囲、こういう問題だけじゃなくて、実はその陰に、このような国連軍という名前を僣称するアメリカ軍の意図、これがはっきり隠されたところの、侵略に対してそれを合法化するところの条約であると言わざるを得ないのです、これは。きわめて明白じゃないですか。国連憲章二条七項の違反だ。内政不干渉という、このような原則というものを打ち破ったところの、まことにあるまじきところから出発しているのだという、この根源をはっきりしなければならぬ。日韓条約の三条問題(「簡単簡単」と呼ぶ者あり)この問題について、もっともっとこの軍事的な性格というもの、その背景にひそんでおる性格というものを、われわれは、この議場を通じて明らかにしなければならぬと考えます。(「わかったわかった」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そっちのほうで、「わかった」、それから「時間時間だ」と言っておるけれども、あまり変な、うるさいことを言わないほうがいいと思う。ゆうべ、ちゃんとわれわれは時間を計算しておる。民社党の曾祢君には二時間五十分与えておる。そういうような態勢の中で、しかもわずかに何分も過ぎていない。  最後に私はお聞きしたいと思います。こういうかっこうですから、どうです、朴政府はいま何をやっているか。この朴政府は、軍事政権をつくり上げた瞬間から、祖国の統一を主張した人々を盛んに弾圧している。南朝鮮の前国会議員で統一社会党の指導者であった李勲求、社会党の委員長であった崔槿愚は、平和統一を主張したとの理由だけで、裁判もなく、むざんに虐殺されているではないですか。同じ理由で、民族日報の社長であった趙鏞寿、社会党の組織部長であった崔百根の二人は、軍事裁判で死刑に処せられている。また、南北学生会議を、会談を主張したソウル大学の若い学生までにも……。
  399. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君、時間ですから簡単にやってください。
  400. 岩間正男

    ○岩間正男君 彼らには最高無期懲役までの過酷な刑罰を加えた。最近では、朴正煕一派は、平和統一を主張したという理由で、文化放送社長黄竜珠を不法にも逮捕監禁し、無数の出版物を停刊させているではありませんか。このような事態、このような現実を考えるときに、私たちは、このような政府と友好を結ぶという佐藤内閣の性格というものを、国民は鋭く批判せざるを得ないだろうと考える。  次に、最後に……。
  401. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君、相当超過していますから、簡単にやってください。岩間君、いいですね、それで。
  402. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、このような反民族的、反人民的な、侵略と戦争の条約の発効を契機として、その背後にいかなる段取りが準備されているのか、この点について最後にただしたいと思う。すなわち、羽生委員がもうすでに触れられたように、アメリカのラスク国務長官は、核問題の話し合いに日本を参加させることはアメリカ政府の方針であると述べています。また、韓国の朴大統領は、反共集団安全保障体制を強化すると述べています。さらに、南ベトナムのグェン・カオ・キは、韓国を訪問して反共同盟の結成を提案しているのです。佐藤総理も、去る十一月二十五日、当委員会で、私も招かれたら、こちらから出かけて意見を述べたいということを、あなたは現に言っているわけです。この一連の言明、これを総合すると、いまやすでに日韓のめどもついた、そのあとに来るこの体制について、しきりにこれらの関係諸国が動いておる。その中であなたも出かけて行くと言っておられるのでありますが、どういうことを一体向こうに行って話をされるつもりなのか。どういう目的をもってお出かけになるのですか。この点をお伺いします。
  403. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、しばしばお答えいたしましたが、平和に徹する政治を遂行し、または外交を展開していくつもりであります。また、憲法の精神を守る、これを貫いてまいります。したがいまして、ただいま御心配になるような点は絶対にございません。この点は、私は、どうお話しになりましても、軍事同盟その他の軍事的なことを考えるものではございませんから、それだけ明確にお答えしておきます。
  404. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 本日の質疑はこの程度とし……。
  405. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長委員長、もう少し……(発言する者多し)
  406. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君、これが最後だと言ったじゃないですか。
  407. 岩間正男

    ○岩間正男君 これこそ、いまアメリカが企てているアジアの新しい核戦争ではないかと思う。私は、この核によるところの……。
  408. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君、岩間君、これで終わりですね。終わりですね。
  409. 岩間正男

    ○岩間正男君 これで……。
  410. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 終わりですね。
  411. 岩間正男

    ○岩間正男君 二問。
  412. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただ延ばしてもだめ。いかん。一問。
  413. 岩間正男

    ○岩間正男君 二問。何で共産党だけにきつくするんだ。
  414. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 早くやりなさい。(発言する者多し。)
  415. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなことを言っているより、質問を許したほうがいいんですよ。
  416. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 一問。一問。
  417. 岩間正男

    ○岩間正男君 二問。  私は、こういうことは、いまアメリカが企てているところの、アジアにおける新しい核戦略体制だと思います。そんなら一体、核による安全保障体制というのはどうなんです。いわゆる核安保といわれている、この核安保の正体というのは、どういうものでしょう。こうじゃないのですか。核拡散防止ということを盛んに口実にする。そうして核を持たない国を守ってやるという名目のもとに、傘下の国々に核兵器を配備し、核による支配を体制的に強化すること、アメリカの核の傘のもとでの、侵略的、従属的な新しい軍事同盟をつくり上げること以外にはないと思うので、アメリカの強い要請があったら、一体政府は、これに参加するのかどうか。  私は、これと関連して、現に、もう政府は、松井国連大使をして次のようなことを言わせておる。国連大使は、こう言っています。八月の国連総会。「核拡散防止条約に参加するからには、非核保有国が核保有国の脅威と攻撃から安全を守るため、二国間または集団的な防衛条約を結ぶことを妨げないということを明らかにすべきだと思う」、こう言っている。そうして具体的な提案まで行なっている。これは、政府の公式見解と考えていいのか。どうですか、この点を私は佐藤総理から……。あなたは行ってやるということをおっしゃったから、あなたがお答えください。どうなんだ。(「局長でもいいよ」と呼ぶ者あり)局長なんかだめだ。外務大臣だ。外務大臣に聞かなければだめだ。政府の正式見解かどうかというのに、それではだめだ。
  418. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 核拡散防止がかりに守られても、核を持たない国の、核からの脅威というものを、これを防ぐような機構が設けられる必要があるということを言っているわけで、これはあたりまえのことです。松井大使の言うことは。別に。
  419. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう体制をつくる、集団防衛体制、核安保体制ができる、それはどうなんだ。参加するのかしないのか。
  420. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかく、核拡散防止をする以上は、能力があって、なお核を持たないという国が多数あるのでありまして、そういう国に対する安全というものは、何らかの方式によって守られなければならぬという主張でありまして、これはきわめて穏当な、きわめて妥当な主張であると私は考えております。
  421. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこで、あなた、そう言ったけれども、私はさっき指摘したでしょう。核拡散防止という名前は口実だ、そうして核を持たない国に、実際は核をずっと配置する、支配する、そしてどんどん持ち込む、そうしてアメリカの核の傘のもとに入れたところの集団安全保障体制をとり、アメリカがこれを支配する。核によるところのそのような膨大な支配を確立しようとする。これがこのねらいです。
  422. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 松井大使の言うことは……。
  423. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと待ってください。そこで、現にアメリカはどうです……。
  424. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 松井大使の言うことは私の言ったことであります。それを、どうこう、非常に誇大にあなたは広げて、そしていろんなことを言っているけれども、それはあなたのごかってですけれども、私の申し上げたのは、そういう意味じゃない。
  425. 岩間正男

    ○岩間正男君 松井大使はこう言っているのです、現にね。現にアメリカは……。
  426. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 本日の質疑はこの程度とし、明日午前十時から委員会を開いて質疑を行ないます。(「委員長、何だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  散会いたします。    午後八時九分散会      ―――――・―――――