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1965-12-02 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二日(木曜日)    午前十時三十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二日     辞任         補欠選任      八田 一朗君     山本茂一郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 梶原 茂嘉君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 近藤英一郎君                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 中村喜四郎君                 日高 広為君                 廣瀬 久忠君                 柳田桃太郎君                 山本茂一郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 曾祢  益君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  中村 梅吉君        厚 生 大 臣  鈴木 善幸君        農 林 大 臣  坂田 英一君        通商産業大臣   三木 武夫君        労 働 大 臣  小平 久雄君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  宍戸 基男君        法務政務次官   山本 利壽君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省北米局長  安川  壯君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君        常任委員会専門        員        結城司郎次君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     ―――――――――――――
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。昨日、高橋雄之助君、本日、八田一朗君が委員を辞任され、その補欠として八田一朗君、山本茂一郎君が選任されました。
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案  以上四案件を一括して議題とし、質疑を行ないます。稲葉誠一君。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 総理に端的にお伺いするわけですが、日韓会談アジア外交の第一歩である、これは総理がたびたび言われていることですが、それに関連をすることをちょっと最初にお聞きするわけですが、本日、伝えるととろによりますと、例のアジア開発銀行本店日本でなくてマニラにきまったと、こういうふうなことが伝えられておるわけですが、これは私どもは当然日本本店が来ると、こう考えておったわけですが、どこに原因があってさようなことになったのかというようなことを含めて、一つの全体の感想なり、あるいはこのことに関連をしてアジア外交一つの欠陥があったのではないか。その反省なり、あるいは将来の対策、展望、これらのことについて最初にお伺いしたいと思います。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは新聞報道だけではなく、私もわれわれの期待に反した事態が起こったと、かように思っております。ただいままで私どもが考えておるのは、経済的協力あるいは技術的協力、それはいわゆる工業先進国として日本が果たすべき役割りではないか、そういう意味開発途上にある東南アジア諸国も必ず日本立場を理解してくれることだと、かように実は思っていたのでございます。ただいま御指摘になりまするように、各方面日本に必ず来るだろう、かような期待はみんなされた、またそういう意味で私ども努力をしてまいりました。しかし、ただいま申すように、率直に認めまして、意外な結果を招来した。これについていろいろの事柄が考えられます。ということは、一つはエカフェの事務局がバンコクにある。やはりこれらの開発途上にある国としては、この種の機関をやはり自分のところ、開発途上にある国に置くというこれは非常に強いものがある、熾烈なものがある。ただ、運営その他については、先進国協力を得なければならない。御承知のように、日本は二億ドルという多額の出資をする、こういう立場でございますけれども、そういうことはぜひお願いしたい。また、開発銀行のマネージメント・サイドの人事、経営上の人事等についてはこれは先進国期待する、しかし、そういう事務所はどうもわれわれ開発途上にある国に残してくれたらいいのじゃないか、こういう気持ちが強く働いたと思います。そういう点で、今回のことは非常に意に介する筋でもないと思いますが、しかし、いずれにしても、われわれとしても期待していたそのとおりにならない、また、各方面開発銀行本店日本に来るだろう、日本もまたそういう意味で努力しますと、財界方面、各方面にも申していましただけに、たいへんな事態が起きた、かように思っております。その後、大蔵あるいは外務等におきまして申しておりますように、本店が東京に来ないからこれについて冷却あるいはこの問題に冷淡な扱い方をする、さようなことはもちろんするつもりはございません。したがって、この開発途上国国にはそれぞれの民族的ないろいろの意見が出ているから、そういう点をさらにわれわれが十分理解して、そうしてともども協力態勢をつくるということでなければならない、かように私も反省しておるような次第でございます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その問題は、いずれ予算委員会その他で十分論議されることだと思いますので、日韓会談の問題、日韓条約の問題に入ってまいりたいと思います。  そこで、私がお聞きいたしておりまして非常に疑問に思いますのは、日本韓国の間で完全に合意が成立したと、こういうのかどうか。完全に合意が成立したのだ、こう承ってよろしいわけでございますか。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは何度も申し上げておりますように、完全に意見が一致したから調印を終えた、かように私ども思っております。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは聞くのもやぼな質問なわけですがね。そうすると、完全に合意が成立したなら、解釈食い違いがあるはずはないわけですね。解釈食い違いというものはあるのですか、ないのですか。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 解釈食い違い、これはやはりそれぞれの人によりまして説明のしかたが違ったり、あるいは技術上の問題があったり、あるいは重点を置いての説明をしたり――国内重点を置くとやはりポイントがそうなる。必ずしも答弁のピントがそれぞれが合っているとは思いませんから、そういうところからただ単に表現上の相違だけでなしにピントが狂っているのじゃないか、こういうふうな疑問が出てくると、私はかように思います。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、完全な合意をしておれば、解釈相違なんてあり得ようはずがないわけですね。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)そんなことはないと言ったって、それはあたりまえじゃないですか。そういう問題を論議しておると、そういう問題だけで論議して蒸し返しになりますから、話を先に進めますけれども、そうすると、国内向けの発言というものはあり得るのだと、しかし、それは完全な合意とは離れたものだ、越えたものだと、そういうことは当然認められるわけでしょう。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 李東元外務大臣がワシントンで記者会見をして、そして話をしまして、その中に条約の――これは新聞報道そのものですから、会見したのはこのとおりであるかどうか、やや私はそのほうの確実性についてまで責任を持ちませんが、新聞の報ずるところは、こう言っておるのですね。「条約解釈の上で食い違いがあるのも事実だが、それはこまかい点で、原則的には問題はない。このような食い違いは通常の外交ルート解決できると思う。」、これが李東元外務大臣の言っておることです。ちょうどいま伝えられたばかりであります。私ども椎名あたり外務当局も全然食い違いがないとは申しておりませんです。また、それらの食い違いについて一体解決方法はあるのかと言われれば、外務当局十分解決方法はありますとしばしば答えております。具体的に問題が起これば外交ルート交渉しますと、かように申しておりますし、原則的には両者において食い違いがない。これは新聞報道でありますから、私が取り上げるのはいかがかという御批判は別といたしまして、ただいま申し上げるように、率直にそういうように思います。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま総理があの李東元氏の新聞発表ですか、取り上げられましたのですが、そうすると、それを私も引用しますが、解釈食い違いの問題じゃなくて、その中でラスク長官と会って、アジア自由陣営結束のため、韓国アメリカ日本の三カ国閣僚レベル会談を持つことが望ましい旨ラスク長官に提案した。これから帰国途中、日本に寄る際にもその問題を話したい、こういうようなことが提案されたと、こう出ておるわけですね。そうするとですね、これは「必要によって」でしょう。必要によっては日本アメリカ韓国が三国で集まって会談をすること。総理に聞いておるのですよ。いま総理が引用されたからぼくは聞いておるので、「必要によっては」ですよ、いいですか、ちゃんとこう前提があるわけですから、必要によっては日本アメリカ韓国のいわゆる閣僚レベルなんかは別として、会談ということもあり得る、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。「必要によっては」ですよ。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはまあ李東元がそういう話をしたというのが報道されております。また、これに対してラスク長官がいかに答えたか、これは別です。また、日本政府がそういう申し出があったらどうするか、こういうこともこれはまた別でございます。ただいままでそういう問題はございません。しかし、ただいま私が非常に心配をしておりますのは、三国で集まりますと、純然たる経済上の問題にいたしましても、いろいろ誤解を受けるだろう。とにかく誤解を受けるようなことは慎まなければならない、かように私は思っております。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その「誤解を受ける」というのは、何を誤解するのでしょうか。別に日本アメリカ韓国が集まって話をしたって悪いことはないのじゃないですか。だれも誤解しないのじゃないですか。何を誤解するのでしょうか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま稲葉さんが言われるように、これは日本アメリカ韓国が一緒になったからといってちっとも差しつかえない。純然たる経済上の問題を話し合うことは、それはまた目的がはっきりできてくる。しかし、いま言われておりますのは、何もないその問題にしても、日韓条約自身軍事的背景があるのだ、かような誤解を与えておる、不安を与えておる、そういうことを避けなければならない、かように私は申し上げておるのであります。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの問題はあとで入りたいと思うのです。  そこでぼくは、だから「必要によっては」という前提があるわけですよね。ですけれども、いまの段階でそういうことをするということもなかなか言い得ないということならば、これはあとの話として出てくると思いますが、そこでもう一つ問題といいますか、日本韓国との間でまだ国会に提出されてない追加合意議事録があるという話が出ているわけですね。これは御存じじゃないですか。あのね、参議院承認直後に追加議事録を発表すると金東炸というのですか、これがソウルで話しているのですね。こういうような国会に出てない追加議事録があるのじゃないですか。私はあると聞いているのですよ。ただね、あると聞いているけれども、それをいま発表することが日本のいろんな問題について差しさわりがあるので、だからそれを発表するのは待ってほしいというようなことになっているのだということも聞いているわけですね。そういうような事情ならば私は了承しないわけではない。経済上の問題で何かあるのじゃないですか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 稲葉君のいまのお尋ねにつきまして、私実情をつまびらかにしておりませんので、事務当局からお答えさせます。
  18. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。私もその情報新聞のあれを見まして、どういうことかわかりませんので、実は先方のほうに何を意味しているのかいま照会している段階でございまして、私の承知する限りといいますか、あるいは了解する限りでは、おそらくたとえば経済協力に関する実施細目の問題、それから安全操業に関する民間協定の問題、それから例の海底電線の分割及び料金の支払い問題等協定の中でいろいろ予想されている今後合意しなくちゃいけないことがあるわけでございまして、そのことを言及しているのじゃないかと思うのでございますが、詳細はまだ先方に問い合わせているところでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あることはあるでしょう。
  20. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) これからつくる段階でございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、批准のときに基本条約英文がありますけれども、それ以外のものも英文がもうすでにできていて、それを韓国に行くときに持っていくのだというような説が自民党の中の党内情報というものに出ていますね。これは英文のものはほかのものもできているわけでしょう。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほかのものについては英文はできていません。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、基本条約はまあ別ですが、それ以外のものは英文のものはつくらないのですか。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) つくる必要は必ずしもなかったもんですから、つくりませんでした。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまはつくってないというあなたのお話ですからわかりましたがね、そうすると、批准のときに基本条約以外のものは英文は持っていきませんか。それは断言できますか。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 持っていく英文ができていませんから、ですから持ってまいりません。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、できてないことを聞いているのじゃないですよ。まだ日にちがあるでしょう。それまでにつくって持っていくのかということを聞いているのですけれども、それは重要な問題でもありませんから、別のことに進みますが、そうすると問題は、基本条約がありますね、これは総理でも外務大臣でも、この中で法律的にどうしても必要なもの、法律的にどうしてもなければならないというものは、この基本条約の中でどれなんですか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法律的に必要であるかどうかというお話でありますが、とにかく法律的にしても、あるいは法律的なものでないにしても、とにかく必要なものを基本条約にまとめたと、こういうわけでありますが、どうも御質問の要旨がよくわかりません。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは条約局長答えているではないですか。基本条約法律的には必ずしも必要でないものが含まれているんじゃないですか、これは答えていたじゃないですか、この前。私はそういう意味に聞いているんですよ。だから、法律的な問題と政治的な問題と別個の問題だと思う。私は分けて考えなければいけないと思いますが、書いてあるから必要だという意味じゃなくて、法律的には特になきゃならないというものではないわけですよ、これは。その点をぼくは明確にしたいと、こう思って聞いているわけですよ。この前条約局長ははっきり答えているのですよ。法律的には必ずしも必要なものではないのだと、こう言っているわけですよ。答えてください、その点。
  30. 椎名悦三郎

  31. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 基本関係条約の各条項がすべて絶対的になくちゃならないものかということに対しては、そうは法律上、純法律的には申せませんとお答えしたことがございます。つまり、外交関係の開設というようなことも、条約の形で合意しないで実際やっても差しつかえのないことである。それから、いろいろな協定締結のための交渉を開始するというようなことも中にあるわけでございますが、これを、そういう合意をわざわざしないですぐ交渉を開始してもよろしい、それから、ほかの確認条項というのは、これは確認でございますから、当然なくちゃならないというものではない、そういう意味でお答えしたわけでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは条約局長の言うのは正しいわけですよ。基本条約というのは法律的にはなくてもいいようなものです。  そこで別の問題に入りますが、これは総理ね、ちょっと恐縮ですけれども、大学の試験みたいで恐縮なんですけれども国家というのは何と何と何で構成はできているものでしょうか。(笑声)いや、それは大事なんですよ。大事なんで聞いているわけで、そこから入らないと話にならないわけだ。大事なんですよ。法律的な国家構成要件、どちらでもいいですよ。(「そんなのは法制局長官答えるんだよ」と呼ぶ者あり)
  33. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 国家というものを最も簡単に……
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 要点だけでいいですよ。
  35. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 定義をいたしますと、要点だけを申しますと、社会統治組織ができたもの、それがすなわち国家であると思います。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことを聞いているんじゃなくて、それはきっているじゃないですか。構成要件は何と何かと聞いているのですよ。主権と領土国民でしょう。これがなければ国家は成立しないわけでしょう。そんなのをぼくの口から言わせようというのがおかしいですよ、これは。一つ一つ押えていかないとだめなんですよ。
  37. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) そこで私は念を押しまして、最も簡単に申し上げれば、と申し上げましたが、社会統治組織ができたものと申し上げました。その社会というのをさらに分析すれば、お話のようなことになると思います。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それなら初めからそう言ってください。時間がかかってしようがないよ。  それじゃお聞きしますけれども、ぼくは根本問題で明確になっていないところがたくさんあるんですよ、この日韓には。一九四八年八月十五日に大韓民国ができた。いいですか、その領土は一体どこだったのですか。それから始めないと、あらゆる問題、管轄権でも法的地位でもわからないですよ、この問題は。領土はどこだったのかと聞いている。
  39. 藤崎萬里

  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 基本条約関係ないですよ。
  41. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第三条に書いてございますように、われわれとしては、大韓民国というものは国連決議に書いてあるとおりのものだというふうに考えております心と申しますことは、大韓民国政府の有効な支配及び統治権の、管轄権の及ぶ範囲南鮮の部分である、そういうことでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなこと聞いてないですよ。一九四八年八月十五日に大韓民国ができたというのだから、そのときの領土はどうだったかと、こう聞いているのです。何も国連決議のことを聞いているのじゃないですよ。質問意味答えと違いますよ。意識的に答えをはぐらかしているわけですよ。だめですよ、それでは。一番大事なところですよ、これ。これが基本じゃないですか、日韓基本条約の。(「必要ないよ」と呼ぶ者あり)必要ないじゃないですよ。一番大事なところですよ、これ。あなたも答えにくいのですよ。繰り返しているが、全然この問題が出てないですよ。ぼくがいままでと同じ質問をしたら答えなくてもいいですよ。そうじゃないですよ。違う質問をしているのですから答えてくださいよ。
  43. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 大韓民国ができた当時の管轄権の及ぶ範囲は三十八度線以南であったわけでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは日本領土だったのじゃないのですか。平和条約が効力を発生するまで日本領土だったのでしょう。日本領土じゃないですか、それは、あなた。
  45. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 日本としては、平和条約が発効するまでは日本領土であるというたてまえをとっておりました。しかし、平和条約が発効したときに朝鮮の独立を承認し、この承認した時期は平和条約発効時でございますが、しかし、朝鮮の独立という事実は一九四八年八月十五日に起こったものであるということは、前々から申し上げておりますように、併合条約もそのときに失効して、したがって、一九四八年八月十五日以後は朝鮮は日本領土ではなくなったわけであります。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも問題に対して意識的にはぐらかしておりますね。なぜはぐらかしているかといえば、ぼくはわかるのです、その気持ちはわかるのですよ。それじゃ、大韓民国が八月十五日にできたということは、国際法違反だということを日本は主張していたのじゃないですか。そうでしょう。久保田代表がそういう主張をしていましたね。だから、それに引っかけられるといけないからというので、あなたは用心をして百九十五の(III)へみな持っていっちゃうのです。そんなことをぼくは聞いているのじゃないですよ。だから、日本領土大韓民国ができたということになるのですよ。変な話なんですよ。国民はどうなったのですか、それじゃ、国民はどこにいたのですか。
  47. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 平和条約で最終的な処分がきまったわけでございますが、その時期のとり方については、平和条約の発効時に独立したのだとかいうようなことにする必要はないわけでございまして、いつかもその例をほかにもとって御説明申し上げましたが、委任統治が信託統治に切りかわったのも、やはり、日本としては占領期間が長かったために、占領期間中に連合国側でとられた措置を追認せしめられたわけでございまして、その間に何もあいまいな点はないと存じます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことを聞いているのじゃないですよ。平和条約の発効までは、朝鮮――いまの韓国管轄権というのは日本だったのでしょう。それから在日朝鮮人も日本人だったのでしょう。そういうところに大韓民国ができるというはずがないわけですよ。国際法違反だってはっきり主張しているじゃないですか、日本でいままで。しかし、その話をやるとほかの話ができなくなりますから。韓国ができたこと自身が国際法違反の事実の積み重ねみたいなものですよ。物的基礎はどこかといえば、御案内のとおり、アメリカ軍が軍令三十三号で日本人の財産をベストして、それを九月十一日ですかに、李承晩政府にトランスファーしているわけでしょう。移譲しているわけでしょう。そこで大韓民国政府の物的基礎というのは出てきているわけなんですよ。そういうような一つのものができ上がってきているわけですから、国際法違反だと言って日本が主張したことは私は間違いでないと思う。それじゃ、久保田代表が、大韓民国が一九四八年八月十五日にできたことは国際法違反だと主張したことがありますか。これは後宮さんのほうがよく知っているのじゃないかな。
  49. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  そういう主張を会談中にいたしましたことはないと承知しております。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことないですよ。久保田発言にちゃんとそれが入っていますよ。それで韓国、おこったのじゃないですか。それじゃそこにこだわるというと、話があれになりますから、じゃ韓国日本承認をしたのは、いつどのような形でやったわけですか。これは総理でも外務大臣でも、なにですが。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和条約締結の際に承認をした。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 え。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和条約発効の際に……
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どっちです。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国承認した。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ国家承認は、外務大臣、あなた非常に詳しいのですけれども国家承認はどういう承認のしかたがあるわけですが。それは事務局でもいいですよ。一般論としてね。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 正式に書面をもって承認するという場合もあれば、あるいは簡単におめでとうと、(笑声)おめでとう、これでも承認になる、いろいろあります。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おめでとうの話を聞いているのじゃなくて、(笑声)おめでとうたって、まだ一月一日にならないのだから、まだ早いですよ、おめでとうは。そうじゃなくて、法律上の承認と事実上の承認とがあるわけでしょう。法律上の承認の中に明示の承認もあり、黙示の承認もある、あるいは事実上の承認の中に、どういうふうに分けるか、これを私、聞いておるわけです。これは法制局長官でも政府当局でもいいですわ。それを明確にしてもらいたいのですよ。それが非常に不明確なんですね、出発点から。それは政府委員でもいいですよ。
  59. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 日本政府としましては、占領――まだ平和条約発効前に、日韓正式交渉を始めたときに、もう事実上承認の意思の決定をいたしておったわけでございます。これを国際法の先生方が言われるいわゆる事実上の承認に相当すると見るかどうかは、これは学者に私まかせていいことじゃないかと思いますが、正式に法律上の承認にそれが切りかわったのは、日本が外交権を持つようになった平和条約発効の際である、かように考えております。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法律上の承認だと、それは政府当局の統一見解だと、こう承ってよろしいですか。これは外務大臣、どうですか。いま条約局長が言ったのはいいですか。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府の統一見解でございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうするとあれですね、法務大臣、寝てないで、(笑声)外務大臣、法務省では韓国承認をどういうふうにいままで見ていましたか。
  63. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えします。いま外務大臣がお答えしたように、平和条約発効のときからこれを……。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、法律上の承認ですよ。
  65. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは同じことだと思います。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省は従来そういう解釈はとっておらないですね。これは民事局長、民事局から通達が出ていますね。事実上承認だという通達が出ていますね。間違いないでしょう。それから法務省の民事局長は、答弁の中で、これははっきり言っているのは、承認ではない、事実上の承認の準備段階だと、こう言っていますよ。だから、政府の見解は統一してないのじゃないですか、そこはどうですか、法務省のほうは。
  67. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 過去いろいろお答えしたことがあるかと思いますが、ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、政府の統一的な見解といたしましては、平和条約の発効いたしましたときに韓国承認したと、こういうふうに考えております。(「いままで言うたこと、でたらめだよ」と呼ぶ者あり)
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで言ったのは、法務省がそう言ってないのですよ。たとえば昭和三十五年六月五日の民事(五)発第一五三号――法務省民事局第五課長の回答、これは事実上承認しているというふうに言っていますね。それから民事局長、前の平賀さんは、「日本政府韓国政府というものを正式の政府として正式に承認したことにはまだならぬかと思いますけれども、とにかくその準備段階にあるということが言えるのではないかと思います。」、昭和三十八年二月五日参議院法務委員会、こう言っているわけですよ。これはぼくの質問を読んでくれと話してありますから、このとおり間違いないと思うのですが、違うのじゃないですか、ね。だから、こういうふうに日本韓国をいつ、どのような形で承認したかということ自身が根本的に政府の中では違っているわけですよ。(「違ってない」と呼ぶ者あり)違っているじゃないですか。条約局長はこの前何て言いました。平和条約発効のときというより、むしろ同じ日付ではあるけれども、駐日代表部の口上書があったときに承認があったのだという意味のことを答えているじゃないですか。全く違うのですよ、その点がね。だから、根本的に日韓の問題は基本的にもあいまいもこたる形でいっているわけです。外務大臣、いま法律上の承認だと言われましたね。法律上の承認なら平和条約韓国当事者でないわけですよ。そうでしょう。条約局長なんかは当事国から当事国に対する一方的意思の通知だと、こう言っているわけです。平和条約韓国当事者じゃありませんから、そんな通知なんかあり得ないわけですよ。そこで法律上の承認が行なわれるのはおかしいですよ。そう思いませんか。
  69. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど申し上げたように、政府の統一見解としては平和条約発効の際であると、こうきまっております。(笑声)
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、承認というのは、ある国からある国に対する意思表示でしょう。それが平和条約のときに当事者でない韓国に与えられっこないじゃないですか、こう言っているのですよ。(「事実上の承認だ」と呼ぶ者あり)いや法律上の承認だと言っているのだから……。
  71. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) お前の国を承認するという、いわゆる明示の承認と、それからいろいろな事実上の行為によって行なうところの黙示の承認、こういった二色あるわけです、すなわち、黙示の承認というものがあった、こう解釈しております。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 当事者じゃないのですよ、韓国は。だから、それに対して意思行為がありっこないじゃないですかと言っているのですよ。まあしかし、いいでしょう、その問題は。ここで押し問答していてもほかのことができなくなっちゃいますから、あれですが、それが基本的に考えられてくるわけですね。  じゃ、もう一つお聞きしますけれども、大韓帝国と、今度できたというか、いま条約結ぼうとしている大韓民国、これとはどういう関係になるのですか。
  73. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは関係はございません。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで政府がそういう答弁をしていましたか。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 関係はございませんが、そういう答弁をかつてやっておったかどうかということは、私いま記憶しておりませんので、調べて申し上げます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あのね、逆なことをいままで言っていたんじゃないですか。それを私聞いているわけですよ。大韓帝国と大韓民国関係がないなら、前の法律が、平和条約で、無効だとかなんとかということは問題にならないのじゃないですか。おかしいでしょう。そんなことを言うこと自身がおかしいんですよ。基本条約二条ですか、そんなことを言うこと自身がおかしいんですよ。理論的にそうじやないですか。(「そうじやないでしょう」と呼ぶ者あり)うるさいな外野席で。(笑声)そうですよ。  ぼくはさらに、時間の関係で進めますが、平和条約の発効のときに政府は一体何と答弁しているのですか。西村条約局長は、昭和二十六年十月二十日ですが、こういうように答弁していますよ。「日本政府としては、第二条(a)の規定によって朝鮮の独立を承認する。」と、「すなわちかつて存在した独立国であった朝鮮が、独立を回復した事実を承認するという趣旨である。」、こうはっきり言っているんですよ。この答弁と、いま全然関係がないという答弁と違うのじゃないですか。これは重要な問題ですよ。
  77. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) ただいま外務大臣が答弁されたのは、大韓帝国という国家大韓民国とは、直接法的に継承する関係にないという趣旨で言われたものと思います。朝鮮という地域が、かつて独立国であり、朝鮮人が国家を形成しておったという歴史的な、社会的な事実で、同じところに大韓民国ができた。これはそれを関連があるといえば関連があるわけでございますが、法的な連関はないわけであります。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 重要なところですよ、よく考えてください、いいかげんなことを言わないで。これは法的地位の問題、請求権全部関係してくることじゃないですか。いいですか、そのあとで西村条約局長また言っています。いま言ったように、「かつて存在した独立国であった朝鮮」、これは何ですか、朝鮮という地名じゃないでしょう、大韓帝国じゃありませんか。大韓帝国の独立を回復した事実を承認するのだと、はっきり言っているわけですよ、平和条約のときに。したがってその後の答弁でこう言っています。「第二条(a)の結果、在日朝鮮人諸君は、当然大韓民国政府によって代表されておる韓国の国籍を取得、回復するものと考えておる次第であります。もしかりに在日朝鮮人諸君の一部に、大韓民国政府を正統政府として認めないという立場をとる人があるとするならば、それはいわゆる朝鮮内部における国内問題でありまして、」云々と、とう言っているわけです。在日朝鮮人全部大韓民国政府によって代表される韓国の国籍を取得するのだと、こう言っているんでしょう、はっきり。前のものを回復するのだからそういう論議になってくるのですよ。そういうふうにちゃんと答弁しているのじゃないですか。これがその当時の日本の政府の態度だったのじゃないですか。そのことと、あなた法的に関係ないということとは違うのですよ。それを明らかにしなければいかぬでしょう。この外務省の見解をまず確かめなければならない、大事なところです。なぜこういう見解が出てきたということは、ぼくはわかります。それはあとであれしますが、いまのところをもっとはっきりしてくださいよ。
  79. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 西村条約局長も朝鮮という字を使っておられるのは、それだけの意味があるのでございまして、その趣旨は、私が先ほど申し上げたことと変わりないと思います。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、在日朝鮮人は当然大韓民国政府によって代表されておる韓国の国籍を取得するのだ、回復するのだと、こういう西村条約局長が言っていることをあなた認めるのですか、それならまた話は別ですよ。この答弁よく研究してくださいよ、大事な問題ですよ。
  81. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 私がいま申し上げましたのは、その大韓帝国とかいうものと、大韓民国というその国家との継承関係のことでございます。国籍の問題については、私直接の担当でございませんので、答弁を差し控えたいと思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ法務大臣、あなたのところですね、国籍の管轄は。平和条約に、なぜ在日朝鮮人の国籍の問題に入らなかったのですか。これは大事なところなんですよ。これ、石井さん、あなた非常によく勉強されておられるのでお尋ねするわけですがね。大事なところなんです。石井さんから答えてください。
  83. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ちょっともう一ぺん……。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 成立したですね、平和条約のときに、日本から朝鮮が分裂したというか、独立したでしょう。当然朝鮮人の国籍問題というものが入るはずなんですがね。入らなかったのはどういうわけなのですか、こう言っているのです。
  85. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それは、その当時において北と南の、朝鮮人の中にもいまのような状態に分かれておる形があったものでございますから、そこへはっきりとしたものを出すことができなかったわけであると思っております。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなってくると外務省ですね。条約局長平和条約のときに言っていることと違うのじゃないですか。平和条約のときにもうそういう形で前のものが存在して独立を回復したのだ。したがって、「在日朝鮮人諸君は、当然大韓民国政府によって代表されておる韓国の国籍を取得、回復するものと考えておる次第であります。」と、こうはっきり言っているのですよ。全然違うでしょう。そうなれば、在日朝鮮人は全部韓国民なんだから、そういう意味で国籍のことを規定しなくてもよかったのだということなら、これはまた筋が通るのですよ。そうじゃないですか、どうもはっきりしませんですな。そういう考え方だったのですか。回復するのだと、だから全部大韓民国国民だったという考え方だったのですか、政府はその当時……。
  87. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま私の申しましたような考え方もあったために、非常に不安定でございましたから、はっきりしたことが言えない情勢があったということで、そこへ何も書かなかった状態だったと思うのでございます。また、それを書いたものには書いただけの何かの理由があったと思います。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると法務大臣の言われることは、西村条約局長が答弁したことと違うのですか、同じなんですか。
  89. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 見方の相違だけだと思います。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 見方の相違ではないですね。日韓の第一次友好条約の草案は、日本から出したものは、在日朝鮮人は全部大韓民国政府国民であるという草案を第一次友好条約と言っていましたね。日本から出しているのじゃないのですか。その事実はどうですか。これは外務省、知っているでしょう。後宮さん初めからタッチしているのだから、わかっているのじゃないですか。
  91. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 交渉の経緯から申しますと、むしろそういう考え方は韓国側にこそあり得るはずなんでございまして、すなわち、ここにいる在日朝鮮人は全部韓国人であるという考え方は、これは先方はそういう立場をとりたいという希望は、韓国側にこそあったわけでございますが、日本側では、この今度の基本条約三条でもごらんになりますように、そういう立場をとっておらないものでございますから、日本側から出す提案にそれが入っていたということはあり得ないわけであります。向こうから出したのがあったかどうかは、ちょっと記憶がないわけであります。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点は、理論的に言えば後宮さんの言うとおりなんですよ。だけれども、そうではないということが言われておるから、ぼくは確めて聞いておるわけなんですが、そうすると、どうもはっきりしないのですな。平和条約のときに国籍条項規定しなかったと、それは西村条約局長の言を借りれば、国籍を回復して、あらゆる者が大韓民国国民だということなんで書かなかったというふうにとれるわけですね。そうではないというと、そうすると、西村条約局長平和条約のときに言っているこの基本的な問題を、そのまま踏襲するわけですか。(「局長の答弁というのはでたらめなのか、質問者がるる言っているように、この西村条約局長の答弁というものについてまず答えてみろ、進まぬじゃないか、前に」と呼ぶ者あり)
  93. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 西村条約局長の当時の答弁については、なお詳細に検討して、どういう趣旨でそういうことを申したか、お答えいたしたいと思いますが、しかし、筋は、先ほど来申し上げておりますように、大韓民国が大韓帝国を法的に継承するという関係のものではない。これははっきりいたしておるわけでございます。国籍の問題についての考え方は、これは法務省の当局からお答えするのが筋だろうと思います。
  94. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 国籍の問題でございますが、御承知のように、人がいかなる国籍を取得するかということは、その人の属する国との関係の問題でございます。したがいまして、平和条約が発効いたしました際に、在日朝鮮人がいかなる国籍を取得するかということを、日本政府として断定はできなかったわけでございます。(「西村局長は断定しているじゃないか」と呼ぶ者あり)ただ、西村条約局長がそうおっしゃいましたのは、おそらく、大韓民国承認することになりましたし、大韓民国国民になるであろう、また朝鮮が一つ国家に統一されることが望ましいという考えがあったので、そこで大韓民国国民になるであろうという趣旨で言われたのじゃないかと思いますが、私どもとしましては、日本政府として、在日朝鮮人がすべて韓国人であるという断定はできません。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よく内容を検討してくれませんか。いま民事局長が言うのと違うと思うんです。しかし、時間の関係がありますから、ほかに進みます。  この基本条約第三条によりますと、「朝鮮にある」云々と、こうあるわけですね。三条ですか、というんだが、北鮮も含めてということであれば、この条約の適用地域は朝鮮全域であるというふうに言えるんじゃないですか、その点はどうですか。第三条ですね。
  96. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 基本条約第三条は、朝鮮の一部に朝鮮人の大部分が居住しておる、これに対して有効な支配、管轄権を及ぼし得る政府ができたと、こういうその政府をそのまま第三条で引用いたしまして、そして条約の相手方である大韓民国政府とはこういうものであるということをそこに確認をしておる、こういう性質のものでございます。したがって、その当時は三十八度線以南ということになっておると考えております。その後、朝鮮事変を経て、休戦ライン以南ということになっておるわけであります。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あのね、変なことを言うんですけどね。ぼくの手元に、政府で出した想定問答集があるんですよね。こんなものを用意しちゃおかしいかもわからないけれどもね。その基本条約の部分の29問というのがある。「29問「朝鮮にある……」とあるが、北鮮も含めてということであれば、この条約の適用地域は朝鮮全域であるといえるのではないか。」、これは問題だ、問いね。これの答えが、「第三条は、韓国政府が国連決議の内容どおりのものであることを確認しているにすぎない。基本条約はもともと属地的に適用される条約ではないのであって、その適用範囲が問題となることはない。」、答えね。そこで注があるのですよね。注と書いてある。注がおもしろいのですがね、これは。「第四八国会において第三条は適用範囲を定めたものであるとの趣旨の答弁――例四〇・二・二四衆外委の外相答弁――」、外相って椎名さんですね、あなた、「が行なわれたことがあるが、これは避けることとしたい。」、こう書いてある。書いてあるのですね。それで、あなたはいままでずっと、これは第三条は条約の適用範囲だ、こういう答弁をしてまいりましたね。一ぺんじゃないですよ。四十年の三月二十六日――じゃない。いまのが二月二十四日ですね。その後、三月十九日に衆議院の戸叶さん、三月二十九日に参議院で羽生さん、三月二十六日では藤田氏も同じようなことを言っていますが、ちょっと法制局、こっちの聞いていることをね――そうすると、その適用範囲だということ、じゃこれは誤りだったのですか。あなたは最初のときは、穂積さんから聞かれたときは、二回も三回も念を押して、それは違うのだろうと言われても、いや、違いません、そうですと、こう言っているのですよ。まあ読んでみましょうか。読むのも時間がかかるからあれですがね。まあ時間があれなもんで、もったいないのですがね。三回も四回も答えているのですね。むしろ、違うのじゃないかと言われても、そうです、こう答えているのですね。条約の適用範囲を規定する目的をもって書かれたものでありますと、あなたが言っているのですね。そして穂積さんが、そうではなしに云々というのじゃないかと言ったら、条約の適用範囲、すなわち云々の範囲であります、こう言っているのですよ。それからあとも全部そうですね。第三条が条約の適用範囲だという規定のしかたは、あなたが答弁したのは、これは間違いだったのですか。間違いだから訂正するというのですか。あるいは、間違いではないというのですか。どうもはっきりしないのですね。なぜ避けることとするのですかな、これは。ここがよくわからないのですよ。間違いなら間違い――。あなたは、基本的性格をきめたのだと、こうあとから変わってきたのでしょう。なぜそういうふうに変わったのかね。前が間違いだったのかどうか。
  98. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 第三条の目的ですね。第三条をそこへ書きおろした目的、それは明らかに百九十五号の決議にあらわれておるとおりの、これは政府であるということを言おうとしている。だから、大韓民国の政府の性格を確認するという目的のもとに書かれた第三条である。しかし、その第三条の中に、それから明らかなごとく、実際支配力を及ぼす範囲管轄権の及ぶ範囲というものは、その当時においては三十八度以南、それから朝鮮事変後は休戦ライン以南ということになるわけであります。でありますから、三条が管轄権範囲を定めたその条項であるというふうに言ったのは、これは私は訂正しておるはずです。第三条はあくまで百九十五号に言われておるとおりの政権である、政府であるという、政府の性格を確認したにすぎない。ただ、その内容から、管轄権の及ぶ範囲はどこであるかということは自然に出てくる。だから、必要な場合には第三条のその内容に戻って、そして請求権の問題でもきまってくるわけなんです。でありますから、三条そのものの目的は、確認をしたものだ、政府の性格を。しかし、その内容からは、実際に及ぶ管轄権というものはどこからどこまでの範囲であるかということは出てくる。必要に応じてはその管轄権範囲をこれによってきめるということができる、こういうことでございます、正確に言うと。そこで第三条の目的は、管轄権をきめたものだというのはちょっと言い過ぎでございますから、これは訂正する。私は訂正しております。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、管轄権というのは、その国の管轄権でしょう。適用範囲というのは、条約の適用範囲なんですよ。条約の適用範囲ということと、その大韓民国管轄権ということとは、観念的には違うわけですよ。その適用範囲というようなことを訂正しているというけれども、あなたは三回も、四回も同じ答弁をしているんですよ。なぜ訂正するようになったか、その経過があるんじゃないですか。適用範囲という説明をすると、何か特別にぐあいが悪いことがあるんですか。その適用範囲が変わるとか、適用範囲が延長されるんじゃないかということで、ぐあいが悪いことでもあるんですか。どういうわけで、じゃ、あなた間違った答弁したんですか。
  100. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓条約にうたう内容としては、必ずしも大韓民国領土はどこからどこまでであるということを言う必要はない。ないですから、それとまぎれるとちょっと困る、こういうことであります。そこで、その管轄権の及ぶ範囲、こういうようにはっきりとそれが第三条から出てくる。それで第三条そのものの目的は、韓国政府というのはこういうものであるということを言おうとしたにすぎない。しかしその中から、内容から、現実に管轄権の及ぶ範囲はこことここであるということで、こういうようにはっきりと了解を与えないとまぎれていかぬ、こういう考えで訂正をいたした次第でございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは総理、北との関係で、大韓民国と国交回復すれば北を承認するわけにいかないとか、分離国家、二つをやることはいけないとか言われましたね。ですけれども、この条約から考えると、政治論は別ですよ。法律的には北のほうは関係していないですから、法律的には北を承認しても、たとえ外交関係を持ってもかまわないんじゃないですか。政治論じゃないですよ、法律的な問題ですよ。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま政治論、法律的にはそういうことじゃないかと言われますが……。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 政治論は別です。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法律的にといっても、これは私はあまり法律詳しくないんですが、しかし、何にも結んでいないから、そういう意味ではできるんじゃないか、非常な通俗的にそういうことは言えるかと思いますが、これはしかし、ただいま同一民族、この朝鮮半島の一国家だ、こういう考え方でスタートしていると、この法律論というのは、実際に合わない議論である、こういうことになる、かように私は思います。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでいろいろ議論してきましたけれども、本論に入りたいと思うわけですが、朝鮮戦争ですね。これは戦争になるのかならぬのか、ちょっとはっきりしないんですけれども、あの朝鮮戦争、俗にいう戦争、あれを日本の政府としては、国連の関係あるいは日本の憲法との関係で、どういう性格のものである、こういうふうに考えられておりますか。戦争ですか、あれ、どういうふうに考えられるのですか。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 朝鮮動乱ということばを使ったり、朝鮮事変ということばを使ったり、また南北戦争ということばを使ったりしておりますね。なかなか国際法的に見まして、これがいわゆる法律的な戦争になるかどうか、これは私なかなか疑問があるんじゃないかと、かように思います。いずれにしても、ここになまぐさい事態が起きたことは、これははっきりしている。戦争だから日本が介入しない、動乱だから介入する、そんなものじゃない。これだけは誤解のないように願っておきます。なかなか定義するのはむずかしいんじゃないでしょうか。私にもよくわからないんですが……。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはアメリカでは、国際警察力の行動だ、こういうふうにトルーマンなんかは宣言していたのですね。元来、国連が出ていく場合には、戦争ということはあり得ないという考え方をとっているんじゃないですか。侵略行動に対する排撃なんだから、国連が出動する場合には戦争じゃないんだ、こういう考え方をとっているんじゃないですか。
  108. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 国連憲章の基本的な精神としては、国連が出動する場合は、お説のように国際社会におけるその秩序の維持といいますか、平和の維持、安全の擁護といいますか、そういうもののために武力を使うということがあるわけでございますが、これは国連憲章上、戦争であるとかないとかいうようなことは別に出てないと思いますけれども基本的な理念としては、やはり一国対少なくも一国の抗争である、戦争ではないと思っておるように私は思います。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、朝鮮戦争か、動乱か事変かは別として、それは日本国の憲法九条の関係でいうと、どれに当たるのですか、当たらないのですか。
  110. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げますが、憲法の九条は、御存じのように、日本国が武力を行使する……。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 文字ですよ、文字の解釈として、日本国が武力を行使しておるわけじゃないのですから、朝鮮戦争が日本関係ないということはわかっておる。日本の憲法でいうと、どれに当たるのですか。
  112. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) したがって、いまそこまで申し上げるわけですが、そういうわけでございますので、日本国が武力の行使をするということになりますと、いかなる活動に介在をして、そういうことがなりますにしても、あるいは一国対一国の関係において生ずる場合にしましても、同じように憲法九条のやはり問題が出てくる。そこには日本国が国権の意思といいますか、国の意思作用として国力の行使をするということになれば、やはり憲法九条の問題を不問に付するわけにいかないというのが私どもの考えでございます。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、文字の解釈としては、憲法九条というところの「武力による威嚇又は武力の行使」、こういうことに該当すると、こういうことになるのですか。
  114. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 場合を限定して申し上げないと、大事な問題でございますので、念のために私の了解が正しいかどうかを伺わしていただきたいのですが、いまおっしゃっておる趣旨は、朝鮮における国連の活動に対して日本国が参加する場合ということを前提としてのお話でございますか。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まだそこまでいっていない、抽象論。
  116. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 抽象論として申し上げれば、実は先ほど申し上げたことに尽きますが、日本国が武力の行使をするということに該当するかどうか、それは日本国が一方に立ち、他方が単なる他方の国であるという場合であろうと、あるいは国連の活動の場面においてそれが実現する場合であろうと、同じように、日本国憲法の九条というのは、日本が武力を行使する場合に当たるか当たらないかというのが、いずれにしましても問題にならざるを得ない、こう考えます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 基本条約に入りますが、基本条約の四条であげておる国連憲章の原則ですか、これは何をさすわけですか。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連憲章の原則といいますと、第二条であります。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 第二条を――一項から七項までありますね。これをひとつ恐縮ですけれども、あなたでなくてけっこうです、政府委員でいいのですが、読んで説明してくれませんか。それを一応説明聞きましょう。そのあとでまた質問しましょう。全部読んでください。いままで全部読んでないから……。
  120. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第二条、「この機構及びその加盟国は、第一条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。1 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。2 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。5 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。6 この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。7 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第七章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。」、  これが全文でございますが、これで……。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いいです、あと聞きましょう。  そうすると、七項のただし書きでいう「強制措置の適用を妨げるものではない」と、こういうことに日韓両国が同意しているわけですね。その強制措置というのは何ですか、国連憲章でいう強制措置というのは何に該当しているのですか。四十一条、四十二条、いろいろありますね、それは何と何ですか。
  122. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 四十一条、四十二条のどれも強制的に行なわれる場合には、強制措置というふうに観念してよろしいかと思います。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、内容ですよ。
  124. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 四十一条、四十二条を読み上げましょうか。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 読み上げないで、内容を説明してくださいよ。四十一条は非軍事的措置でしょう。
  126. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 四十一条は軍事的な手段に至らないいろいろな手段を列挙いたしております。四十二条は軍事的な手段でございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、四十一条、四十二条の、四十一条は非軍事的強制措置、四十二条は軍事的措置、これに対して日韓両国は協力をするということに、協力するということが論理の飛躍ならば、それを、その原則を守るということになるのじゃないですか、理論的には。論理の発展はそういうふうになるのじゃないですか。守り方は別ですよ。守り方の内容は別として、国連憲章二条というものの原則を守るということですから、二条の中には強制措置の適用を妨げないのですから、強制措置というものは非軍事的もあり、軍事的もあると、こうなってくれば、それを日韓両国が指針とすると、こういうことになってきて、軍事的措置日韓両国が原則として指針とすることになってくるのじゃないですか、これは総理いかがですか。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 条約局長説明いたさせます。
  129. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第二条は原則に関する規定でございまして、ここからすぐ実体的な義務が出てくるというふうには一般に理解されておりません。したがって、この間もちょっと話が出ましたけれども、たとえば朝鮮動乱に対して国連がああいう決定をいたしましても、すべての国が軍隊を派遣して協力しなければ憲章違反になるかというと、そうは思われておらないわけでございます。また、オーストリアという中立国も現に国連の加盟国でございます。したがってこの憲章自体、規定の中にも明らかでございますように、筋といたしましては、加盟国としては特別協定を結んだ場合には、その特別協定に従って協力すればよろしいわけでございます。それぞれのできることをすればよろしいというのが、この現在の憲章の規定の義務としては、それでよろしいということになると思います。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのは、前は三十九条の話をしているので、三十九条は朝鮮動乱かもわからぬけれども、これは勧告ですから、拘束力ないのですよ。四十一条、四十二条は拘束力が出てくるんじゃないですか。そこで問題となってくるのは、それじゃ強制措置、非軍事的な強制措置は、日本の憲法との関係で、それはあれですか、全面的に日本としてはやれるんですか、非軍事的措置……。
  131. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 憲法九条は、御承知のとおりの武力中心の規定でございますので、憲法九条が直ちにその問題に関連があるようには考えません。しかし、憲法の精神というものは、平和というものが基本になっておりますから、その辺からくる政治的な判断というものは、やはりいろいろ考えなければならぬものがあるかと思いますが、法律上の問題としては、憲法九条を中心とする憲法の条章からは、直接には出てまいらないと思います。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、非軍事的措置は、憲法とは直接関係がない。朝鮮動乱のときに、これは占領中だったことにもよりますけれどもね、日本がいわゆる労役の提供というか、鉄道、船舶、非常に朝鮮へ参加しましたね。これはこの前、後宮さん認めたわけですが、そのおかげで朝鮮動乱が、それはあすこで食いとめることができたのだということを、これは当時の駐日大使のロバート・マーフィでありますが、はっきり言っていますね。ですから、朝鮮動乱のときに具体的に、どういうような労役の提供を日本で国連軍に対してやったわけですか、これははっきりしているわけですよ、前にわかっているわけですから。同時にそのことは、占領中でないいまでも、できるのかできないのかということを聞いているのです。いまの法制局長官の答弁だと、占領中ではないいまでも、政治的判断は別として、憲法的にはできるのだと、こういうことですな。
  133. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) まず朝鮮動乱中の事実の問題についてお答え申し上げますと、さきの国会でたしか先生から、マーフィの著書を引いて、この問題御指摘がございましたので、その後、当時の関係官庁等を通じて、そのときの事実を確かめておりましたのですが、現在までのところはっきりいたしておりますのは、船員につきましては、当時の司令部からこちらの政府の正式のルートへ御要求がございまして、約二千名ばかしが乗っておったという事実はわかりました。鉄道等につきましては、当時の朝鮮鉄道関係者等にも広く当たったのでございますが、個人的に司令部に呼ばれて、いろいろ向こうの情報を聞いたというようなケースはございましたが、当時たてまえとしては日本人は外へ、外国へ出られないことになっておりましたので、船員以外の者につきましては、この国外に、当時の朝鮮半島に出まして、この鉄道その他の米軍協力事務に当たったというケースはわからなかった次第でございます。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この安保条約の地位協定によって、在日米軍に労務の提供があるんですか、これ。そういう形でベトナムなり、あるいは今後起きるかもわからないどっかのあれに、在日米軍に労務を提供するという形で参加することはあり得るわけですか、これはどういうふうになるのですか、憲法上。憲法上じゃなくてもいいですけれども、どっちでもいいですがね。
  135. 安川壯

    政府委員(安川壯君) お答え申し上げます。地位協定にございます労務の提供につきましては、一般論でございますけれども、これは日本国の援助を得て充足するということになっております。これは、日本政府の機関が労務者の雇用主になる。いわゆる間接雇用の形式をとるということがこの立法の趣旨でございまして、それが直ちに日本政府が、米軍から労務の提供の要請があった場合に、あらゆる場合に提供の義務に、日本政府としてその義務に応じなければならないという趣旨ではございません。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 話が何かはぐらかされているようですけれども、それじゃ軍事的でなく強制措置、強制措置は兵力と便益と援助があるわけでしょう。三つありますですね。総理、大事なところですがね。そうするとこの便益と援助、これは当然あれでしょう、国連軍に対して日本は与えることになっているわけでしょう。強制措置の中の軍事的措置の便益と援助、これは日本としても国連軍に対して与えるわけでしょう。
  137. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私からお答え申し上げます。  米軍以外の国連軍に対して、吉田・アチソン交換公文によって規定されておりますが、結局いろいろな関係規定がございまして、補給だけというふうに限定されておるわけでございます。それから米軍のほうは、日米安保条約における米軍と同じような立場で律せられる、こういうことになります。
  138. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 便益と援助は別として、兵力の提供ですね、これは強制措置で、いまの日韓のあれで引用しておる国連憲章二条の中の、強制措置の中の軍事的措置のまた兵力の提供、これはあれですか、国連に対して日本が兵力を提供することは、憲法との関係でどういうふうになるのですか。憲法違反ではないという説がありますね。その説のほうが相当強いのですか。
  139. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいまの問題は、現実の政治面に、具体的な問題として実はあらわれたことがかつてないわけでございます。したがって政府当局として、そういうものを決定し、場合によって閣議の了解等によって、それをどうするかというふうなことに当面したことがないことをまず最初に申し上げますが、したがって、純粋の学理的な問題あるいはアカデミックな議論としてどうかということになろうかと思いますが、そういう面では、いままで国会で申しておりましたことは、国際社会というものが現在発展の段階にあると思いますが、これがやはり理想的な、究極の理想社会ができて、全世界の国家が国際社会というものをつくる。そうしてその国際社会において内部の秩序の維持あるいは安全の維持等のために、兵力をその国際社会が行使をするという場合に、兵力を各国が出す、その場合に日本の憲法との関係はどうかというような、純粋の学理的な問題として申し上げた点は、そういう理想社会の場合には、兵力をそこに供与することは、必ずしも憲法に違反するとは言えないだろうということを申し上げたことがございます。
  140. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 強制措置というのは公の警察行動なんだと、だからそれに参加するのは当然だと、しかも憲法違反にならないという説が相当ありますですね、日本の中に。これは名前をいえば、横田喜三郎さんはそういう意見ですね。いまの最高裁判所の長官が、最高裁判所長官になってからの意見ではないけれども、横田さんは、兵力を提供しても、国際警察行動だから、憲法違反でも何でもないと、こう言っておりますね。だからぼくは特にお聞きしたのだけれども、話が抽象論になってきたので、もとに戻しまして日韓の問題に戻ります。  総理日韓の共同防衛、韓国と共同防衛になるということ、こういうことは全然考えられないのですか。日韓が共同防衛するということは全然考えられませんか。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今回の日韓条約は、(稲葉誠一君「離れて離れて」と呼ぶ)これは離れて、日韓で防衛条約を結ぶかどうか、そういう問題になると、これはただいまここで簡単にお答えするようなものではない、かように思います。理論的には日韓とは違うのだ、日韓条約とは違うのだ、それ以外にいまのような防衛条約を結べば、これはまた別ですよ。けれども、それを結ぶか結ばないかということは、これは議論がある。日米安保条約みたいなものじゃないのですから、だからこれは内容にもよるでしょう。これはたいへんな問題だと、かように思います。ちょっとここでお尋ねをいただきましても、すぐお答えするというわけにいかない。これが憲法違反でないような形のものなら、これは考えられぬことはないでしょうと、抽象的にお答えする以外にございませんけれども、私は、憲法というものがはっきりしておりますから、それの憲法を守る、こういう立場でございますので、憲法違反のようなことはしないということに御了承いただきたい。
  142. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法違反しないのは、これはあたりまえなんで、そんなことをするなんと言ったらたいへんなことになるのですよ。ぼくはなぜお聞きするかというと、ことしの三月二十七日、衆議院の外務委員会で小泉防衛庁長官がこう答えているのですよ。これは大出氏の質問ですが、「相互に韓国と共同防衛に立つ、そういうことは、日本に攻撃が加えられればそれはまたその当時の情勢によっておのずから考えなければならぬ問題でもありましょうが、」、共同防衛というのはこの基本条約では考えてない、こう言っているのですね。いいですか、相互に韓国と共同防衛に立つと、こういうことは、日本に攻撃が加えられれば、その当時の情勢によっておのずから考えなければならない問題だと、こう言っているのですよ。言っているのですよ、これ。ぼくの貸してあげてもいいのですけれども、ごらんください。これははっきりあなた、日韓の共同防衛条約というものを場台によっては結ぶことがあり得るのだと、こういうことを認めているのじゃないですか。いや、これはごらんになって検討していただいてけっこうですよ。ただぱっと言われたので、私のほうが取り違えているかもわかりませんから、これをお読みくださって、あるいは検討してくださってけっこうです。これは大事なところですから。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えしたように私は考えておりますが、多くの場合にこの憲法、この条章は、私は非常に厳格なものだ、かように思っておりますので、これを厳格に解釈して、その私の考え方からすれば、いまの小泉君の答弁なるものは、意見発表なるものは、多分に疑問を持ちます。私自身はそういう条約も考えておらないということをこの機会に申し上げておきます。
  144. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから私は念を押して、これは防衛大臣が答えていることですから、私が引用したのは間違っているといけませんから、この議事録を検討願って、そして答弁を願いたいということを言っているわけです。それでないと、かえってぼくはいけないと、こう思うわけです。これはぼくは議事引き延ばしではないと思うのですよ。非常に重要なところなんですよね。そういうふうにこれは相互に韓国と共同防衛に立つと、こういうことは、日本に攻撃が加えられれば考えられるのだと言っているのですから、そうとれるのですから、だれが見ても。これは小泉さんという人は非常に正直な人で、ぼくは非常に正直な人だと思うのだ。だからつい本音が出たのかもわからないですよ。いや、ちょっと待ってください。法制局長官に聞いているのじゃないのだから。あなたに言うと、あちこちぐるぐる回っちゃって、話がもとに戻らなくなる。時間ばかりかかっちゃってしようがない。これは根本問題ですからぼくは総理にお尋ねしているのですよ。だから、日韓の共同防衛はあり得るということも言っているのですから。(「総理は考えてない」と呼ぶ者あり)いやいや、考えてないと言ったって、あなたのところの防衛大臣がはっきり言っていることですからね。どこからこういう考え方が出てきたのですか。あらゆる場合のことに対処して、防衛庁としては当然いろんな対策を立てて、方針を立てておる。こうなってくれば日韓は共同防衛することもあるんだと、その場合どうするんだということをぼくは考えておるんだと、こう思うのですよ。だからこそこういう答弁が出てきた、こう思うわけですよ。(「防衛庁長官、防衛庁長官」と呼ぶ者あり)やかましいな、ほんとに。そういうふうに思うわけですよ。ですから、これを取り消すなら取り消す、あなたの責任において取り消すなら取り消すと、それならぼくはまた話は別だと思う。それにはあなた内容をよく検討していただきたいと、内容を検討しないで取り消すと言ったら、いや読んでみたら違うんだというんではいけませんからね。あなたはこれを総理としての責任において、日韓の共同防衛があるという意味にとれるような答弁をしている、これは取り消すんだと、こう言うなら、それでいいですよ。また話が別になると思うけれども
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えしておるのは、私が最高責任者としての総理としてお答えしておるのでございますが、ただいまその速記を十分目を通しておりませんから、稲葉君が速記を十分目を通して、と、こう何度も言われますが、ただいまのことばだけでも日韓相互防衛、「相互」ということばがあるのはたいへん私は気がかりなことで、ただいまのものは読むまでもなく誤解されているんじゃないだろうか、かように私は思います。憲法の条章から申して、韓国日本を保護してくれる、あるいは守ってくれる、それだけの問題だと別に憲法にどうこうという問題はないと思いますけれども、「相互」というそのことばが二字入っておれば、あえてそれを詳細に読む必要もないんじゃないか、かように私は思います。
  146. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、韓国日本を守るということは、これはあれですか、総理はあり得ると言うのですか。あり得るの。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いや、そこまで飛躍してもらうと困りますが、そういう議論はあるでしょうと、議論ですよ。だけど、それならば憲法上の問題はないでしょうと、こう言ったのでございまして、政治上のそういう問題があると、かように私答えているわけじゃありませんから、ひとつ飛躍しないで……。
  148. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 議論が飛躍しているのか、答弁が飛躍しているのか、これは議論はあると思うんですが、私はこの答弁見たときに、日本に攻撃が加えられたときには、いろんな場合のことを考えているはずですね、防衛庁としては。だから、そういう韓国との間で共同防衛ができるんだということを研究しておって、前提としてこういう答弁が出てきたとしか考えられないわけですよ。だから私はお尋ねしておるんですが、これは私はもしそれが違うと言うんなら、これははっきり取り消すなら取り消していただきたい。違わないんならば、そのままということになるでしょう。そのままなら、ぼくらのほうは追及するし、取り消しになったとしても、また追及することはします。ことばじりをとらえるつもりはございません、これは。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は先ほど来私が最高の責任者としてはっきりした私の所信を申し上げておりますが、ただいまこれと矛盾するような考え方は許されないのだと、かように御了承いただきたいと思います。
  150. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、理論的には日本韓国が守ってくれるということは考えられる、そういう議論はある、議論はあるというのでしょう。そういうふうに断定しておるというのじゃないですよ。議論はある。だけど、日本韓国を守るということはあり得ない、こういうことですね。わかりました。  じゃ、話別にしますが、自衛隊の海外派兵ができないと、こう総理いつも言われますね。そのときに憲法と自衛隊法の規定に従ってできないんだと、こう言われるわけですね。ぼくはそれがふに落ちないのですよ。なぜ二つの法律をあげるのか。憲法でできないことなら――法制局長もっとうしろに行ってください……そこで心配なら、まあそれはいいでしょうね。それはあなた方の内部の問題だから、内政干渉だからぼくはやめますけれども、憲法でできないことなら自衛隊法でできるわけないのだから、それから自衛隊法を引っぱってくることはおかしいのですよ。なぜ二つの法律を引っぱってくるのか。憲法ではできるのだけれども、自衛隊法は日本の国土を守ることになっておるから自衛隊法があるからできないのだと、こういうようにとれるのですよ、とり方によっては。なぜ二つの法律をあなたはあげられるのか。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法の説明だけしておればこれでよい、それはそのとおりです。が同時に、日本の自衛隊の行動を規律している自衛隊法でも、それははっきりできないということにしております、ということを申し上げる。これなら具体的なものになって、憲法は一般的な国民との約束であり、また政治の姿勢である。しかし、具体的な自衛隊法というものがある、この自衛隊の具体的な法律でも、そういうことはやらないとはっきりきまっております。これで御安心でしょう、こういうことです。
  152. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこじゃ問題がはっきりしないのですがね。ということは海外派兵というのは一体何かということが、これが明確になっておらないと議論を幾らしたって同じなんですよ。これはそうですね。だから総理のお考えになっておる海外派兵は何かと、こういうふうにお尋ねしたいのです。あなたがお考えになっておる海外派兵というのは一体何か。これが海外派兵だと、これが海外派兵に入らないということになってくれば議論が変わってきますから、あなたのお考えの海外派兵とは一体何か。まず海外とは何か、派兵とは何か、そこから始まってくるわけです。それでなくちゃ明確にならない。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 海外は日本以外ということですから、その自衛隊の所属の職員その他が一切外国に行けないのかというと、そういうことはない。だから問題は、やはり組織部隊、それに武力行使の場合だ、こういうことはできない、これははっきりしておる、かように私は思っております。
  154. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 海外は日本の地外だということで、海外というのは海の外だというのですけれども、沖繩はどうかということがなかなか問題があるのです。ことに防衛、安保の関係や何かで……。しかし、それはいまここで論議いたしません、話があれになりますから。ぼくが問題になりますのは、それじゃ自衛権の行使の場合に、一体それが海外派兵とどういう関係になるかということが問題になってくると思うのです。そこで、いままでの政府の解釈では、日本がやられた場合に座して死を待つよりも、その根元をたたくという形で外国をたたくのだ、これも自衛権だと、こう言うのでしょう。そうすると、そういう場合に出ていくのは、これは海外派兵になるのですか、ならないのですか――いやそういうふうに言っていますよ。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろお尋ねになっておりますのは純法律論のようでございます。政治論的に私どもがいまやらないことは、もう稲葉君も百も承知だと思います。かように思いますので、純法律論、そういうことでいろいろ議論あるいは質問を展開されていらっしゃいますから、法制局長官答えさせます。
  156. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 当参議院でたしか鳩山内閣のときに議論が出まして、稲葉議員が仰せのような質疑が行なわれたと私は記憶しますが、そのときの相手の攻撃する基地を抑制する、たたくというときのお話であります。そのときには海外派兵とか、どうやってたたくかという議論は行なっておりません。そこまでは自衛権だという話で、それが、兵隊をそこへ常駐してたたくとか、どうしてたたくとか、たたく方法までは議論されたことはございません。
  157. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどうやってたたくまでは議論されていないとしても、そういう点も自衛権の範囲だということになれば、当然それは海外派兵ということにならないということになるのじゃないですか――まあいいでしょう。海外派兵ではあるけれども、自衛権だから違法性がない、そういう形になるわけですから、それは論理がはっきりしています。  そこで、問題となってまいりますのは、自衛権というものによって保護されるものは一体何かということですね。保護法益は一体何かということになると思うのですね。これはどうなんですか。
  158. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) きわめて抽象的なお問いでございますが、せんじ詰めれば、一国の国民の生存と安全を保持しようということだと思います。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いわゆる経済的な権益、こういうふうなものも自衛権の保護される客体になることはあるわけですか。経済的な権益というか、日本人の持っている所有権だとか、いろいろありますね、財産権だとか。そういうふうなものが、自衛権によって保護されるべき法益になることはあり得るのですか。
  160. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 日本国民の経済に対する関係はどうかということでございますが、一体に、先ほども申し上げたように、一国の国民の生存と安全ということを申しましたが、安全というのは、むろん広い概念でございますが、しかし、それに対して自衛権の行使というのは、御承知のとおり――詳しく言うことをはばかりますが、きわめて厳密なる要件と申しますか、そういうものがございます。他に手段がないときというような、差し迫った必要があるときというようなことがございますので、その行使の面からいって、単純なる経済面だけのことであれば、これはおそらくは自衛権が発動されるということはないと思います。ただし、一国の内部で、一国の国民財産権の収奪が、敵の、といいますか、外国の部隊の行為によって起こるというようなときは、これはもう、おのずから別でございますが、単純なる経済的な場面において、武力の行使としての自衛権が発動されるということは、私はないといっていいのではないかと思います。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、韓国にある日本人の経済権益が侵奪される危険におかされる、こういうふうな場合に、自衛権として、出るということはあり得ないというのですか、憲法上。そういう場合は自衛権ではないというのですか。それをはっきりさしておいてもらいたいと思うのですよ、これは、政治論は別として。一応、法律論はもうこの程度にして、あとはほかの問題に入りますけれども韓国にある日本経済権益が侵奪されるなりなんなりをされた場合に、自衛権の発動として、それを守るために行くことができるかどうかということですね。
  162. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 外国における日本国民の財産が危殆に瀕するということで、一国の部隊が、その外国におもむいて自衛権の名において武力を行使するということはおそらくは、自衛権の――おそらくはと言うと、またあれですが、自衛権の行使の条件からしましても、自衛権が発動する余地はそこにはないということを申し上げます。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 では、いままで日本がやってきた戦争というのは、全部自衛だ、自衛だと言ってきて、自衛ではないということになりますね。まあ、しかし、それをここで議論しても始まりませんから、そこで問題を、法律論ばかりやっていましたから、返るわけですけれども総理は、日韓会談――少なくとも予備会談が、GHQのあっせんによって始まったということは認められるわけですか。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの経過等について、これは国民の皆さんからも誤解を受けては困りますから、正確に事務当局から御説明をいたします。
  165. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  最初の予備会談が、御承知のとおり、まだ占領期間中に行なわれまして、そのときは、たしかこちらは井口前駐米大使が当時次官でございました、井口次官がこちらの首席代表、向こうが梁当時の駐米大使でございまして、そのときは、会談自身も司令部の中の外交部の中で行なわれまして、外交部のオブザーバーが参列しておったという状況でございます。したがって、占領中に行なわれました交渉については、アメリカのあっせんによって行なわれたということは事実であります。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それすらいままであまり認めておらなかったのだと、こう思うのですが、これは覚え書きが出て、それで始めたのですから、これは占領中ですから当然ですがね。そこで、その後においてもアメリカが中に入って、そうして何といいますか、仲介の労というか、決裂したものを引き合わせよう、再開させようと努力をしたことはあるのじゃないですか、具体的に。たとえばクラーク国連軍司令官が李大統領を招いて、吉田首相と会ったときがありますね。それはそうじゃないのですか。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、李承晩大統領と吉田総理とが会われた、それには多分にGHQ、占領軍が努力したといいますか、あっせんしたというような事実はある。当時のことなら、私もやや記憶しているような次第でございます。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはGHQですか。日本が独立してからじゃないですか。
  169. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 私の記憶が正しければ、正確な年度は覚えておりませんけれども、これは日本が独立回復後に、たしかマーフィ大使とクラーク司令官が李承晩を日本に呼びまして、当時の吉田総理会談させようとしたことは事実であったと思います。しかし、私の記憶では、そのときに李承晩が参りまして、アメリカ大使館で、吉田総理を招いて、そこで会談しようと計画したのでございますけれども、たしかその瞬間になって、吉田総理は、おれはいやだと言って行かれなかったと記憶しております。
  170. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いやそれは、吉田さんは初めいやだと言って行かなかったのでしょう。総理が言ったのは違うのだ。あなたはGHQのあっせんと言われたけれども、そのときはGHQはないわけです。独立回復してから後ですよ、これはいま言ったとおり間違いないでしょう。独立回復した後でしょう。
  171. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 私がいま申し上げたように、占領後にそういうケースがあったことは事実だと思います。ただ、総理がおっしゃいましたのは、あるいは別のケースで占領中にお会いになったことがあるかどうか、私は記憶しておりませんが、その点はさらに調べてみたいと思います。
  172. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、だめだ、いいかげんなことを言っちゃ。吉田首相が断わって、会われなかったのですか。会っているのじゃないですか。一たん断わったけれどもあとで会ったのじゃないで了か。占領中じゃないです、独立してから後ですよ。
  173. 安川壯

    政府委員(安川壯君) それでありますから、私最初に、私の記憶が正しければということを申し上げたわけです。記憶の範囲で言っておりますが、私が記憶しておりますのは、アメリカ大使館の昼食に呼ばれたのを、吉田総理がお断わりになったという事実はあると記憶しております。その後にお会いになったかどうかということについては、私の記憶にはございませんので、その点は、さらに調べてお答えいたします。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの安川君の言っているのと私のうろ覚えとは、ちょっと違っておりますので、ただいまそういう点をもっと正確に取り調べてお話をしましょう。これは、吉田さんと李承晩大統領との、何といいますか、座談的なものもあとに残っておりますので、そういうことを記憶しておりますから、そのときがいつであったか、もっとよく詳しく必要があれば取り調べることにします。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは昭和二十八年の一月の五日か、六日ですね。六日でしたかね。写真まであるんですよ。クラーク大将のところで会っているわけです。そこでそれが――だから第一次会談が決裂して、李ラインを設けて、そうして決裂してだめになったのでしょう。それでクラーク・ラインを設けた。クラーク国連軍司令官が東京にいて、そして李大統領を呼んで吉田さんを呼んだ。吉田さんは断わった。いま言った、最初はいやだと言ってあとでクラーク国連軍司令官に会って話がまとまって、会わしたというわけでしょう。そのときにロバート・マーフィー大使が立ち会っているわけです、アメリカの。そのロバート・マーフィーが一体何と言っているかということ、これはぼくは一番大事だと思う。これは日韓会談というものの本質というものをよくあらわしていると思う。ロバート・マーフィー駐日大使が言っているのは、これは軍人あがりの外交官といっていますが、「私が李に対して彼自身の国の態度をやわらげさせることに失敗したあと、マーク・クラークと私は、この韓国の大統領と日本の首相とを東京で会同するよう取り計らうことにきめた。」、いいですか、ここからですね、というのは、「彼ら両国」――日本韓国――「間の秩序正しい関係こそ戦争の遂行にとって緊急に必要だったからである」、こう言っている。その立ち会ったロバート・マーフィー大使が言っていることは、日韓が秩序正しい関係に入ることは戦争の遂行にとって緊急に必要だったからこそその労をとったんだとはっきり言っている。これが日韓会談の出発点じゃないですか。予備会談は、これはあっせんはGHQのあっせんはいいです、占領政策だから。独立したあとにおいてもなおかつアメリカのあっせんはこういうふうに日本韓国が正しい関係に入ることが朝鮮戦争の遂行に必要だと、緊急に必要だったからだと、こういうふうに見ているわけでしょう。これがほんとうの見方じゃないですか。アメリカの見方かもしれませんわね。いや、それはアメリカの見方であって日本はそうじゃないと言うかもしれませんけれども、少なくともアメリカ日本韓国が国交を正常化することが朝鮮戦争にとって緊急に必要だったとはっきり認めているわけです。これは事実です。これはもうそこから日韓会談は出発しているわけですからね。この事実はぼくはやはり認めなくちゃいけないと思う。そうでなければクラーク国連軍司令官が両方を呼んでこんなことをやらせるわけがない。ですから、これはもうはっきりしているのだ。アメリカの戦略的要請に従って日韓会談が進行してきたこと、これはぼくはずっと筋をたどれば出てくるのですよ。アチソンがどうとかかんとか出てまいります。これはここではっきり言いません。この事実だけでも私ははっきりと日韓会談というものがそういうことから始まったんだと、こういうことの一つの努力の中で進行していったということがはっきり言えると、こう思うのですね。はっきり言っていますよ、これはロバート・マーフィーは、(「それは自主的判断だ」と呼ぶ者あり)自主的判断は別として、アメリカは少なくともこういうふうに言っておる。アメリカのねらいはそこにあったということがはっきりしている。それに日韓両国が従っていったということは、それは言えると思う。「従う」と言ったかどうかはこれは判断の違いだとしても、アメリカの判断はここにあったことは間違いない。(「一昔前だ」と呼ぶ者あり)一昔前か、二昔前かは別として、その後の問題としてもあるのですよ、いろいろな。だから、朝鮮戦争が終わったあとにおいても、なおかつアメリカはそのねらいのもとに日本韓国の正常化をはかってきたわけじゃないですか。そのことを私はお聞きしているわけです。総理は、違うなら違うと、あるいはまた、意見があるなら意見があるとおっしゃっていただければ、私はそれは意見としてお聞きいたしますがね。それははっきりしているのですよ、その点は。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまマーフィーの著書を引用していろいろお話しで、マーフィーがどう考えたかということはそれに書いてあると思います。当時の日本の政府がどう考えたということはどこにも出てないと、かように私は思います。当時の模様が、あるいは日本協力したかどうか、これはまた別なことだ。ただいまできておる日韓条約というものは、それとは全然別に両国の善隣友好、これを樹立する、そうしてその平和的な関係条約協定を結んでいるということであります。過去においてのいろいろないきさつは、ただいま稲葉君がお読みになったことは、これはそのとおりかもしれません。私はそれをしいてどうこうとは言いません。(「明快」と呼ぶ者あり、笑声)
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、それはその当時だけの問題ではないわけですね。ぼくは、じゃあ、日本アメリカの圧力に屈したかどうかということは、これは日本としての判断の問題としても、韓国アメリカに泣きついて、そして日韓会談の推進をやってきたということは事実ですね。これは後宮さんが四十年十月二十九日にはっきり言っておりますよ。議事録はあれですが、読んでみましょうか。これは後宮さんが非常にリアルに、正直に言われておると思うのですがね。あまりほめてはいけないですか。こう言っておるのです。これは請求権の問題に関連して、対日請求権の問題、これはまた大きな問題なんですがね、ぼくは、これは一番大きな問題ですよ。これだけやれば根本的な問題が出てくるのですがね。これは後宮さんはこう言っておりますよ。いろいろあったと、相互放棄の問題があった中で、「韓国側がアメリカ側に泣きつきまして、結局あのアメリカ解釈というものが出たわけであります。」、こう言っておる。これは実にリアルなんですね。韓国アメリカに泣きついたというんです。実にリアルにそのときの状況をあらわしておると思うのです。だから、対韓請求権の放棄の問題のときも韓国アメリカに泣きついたと言っておるわけですからね。それだけではないのですよ。ほかに一ぱいそういう事実が出てくるんじゃないですか。(「日本のことじゃない」と呼ぶ者あり)日本のたとえば大平さんが国連総会の帰りにたまたまラスクのところに行って会って、ラスクから日韓会談の早期妥結を要望されておりますね。そのとき、それは答えていますけれども、早期妥結を要望されただけでなくて、なおかつ、そのときに日本のあの請求権解釈は積み上げ方式でやってきたけれども、だめだから、経済協力に切りかえるんだということをわざわざラスクにまあ御報告か御申告か知らないけれども、あるいは聞かれたから答えたのか知らぬけれども、言っておるわけですね。こんなことはアメリカ関係のないことですよ。全く関係のないことをわざわざ国連総会の帰りにラスクのところに寄ってそんなことを報告する必要はないわけだと思うけれども、そんなことまでやっておるわけです。それでは、アメリカ韓国との間の協定がありますね、あるいは米韓の共同声明というものがたくさん出ております。その中ではっきり日韓会談の妥結を要望するとうたっておりますね、米韓の間では。日本アメリカとの間のいろいろな声明の中では、日韓の妥結は言っていないけれども、米韓の共同声明はいつも言っておりますよ。これは事実ですね。もちろんそんなことは関係ないことじゃないですか、日本韓国のできごとなんだから。アメリカがなぜそんな日韓を共同声明に出してくる必要があるかということですね。そんなことはないわけですけれども、米韓のこういう声明というような形を通じて日本に対していろいろ力を加えてくる、実際にプレスしてきた、実際の演出者はアメリカだったということがその中からもはっきり言えるんじゃないか。それはぼくは言えると思いますがね。そこでお聞きするのは、いま後宮さんが言った、韓国アメリカに泣きついたと、こう言いましたね。どういうふうに泣きついたか、ちょっとそこのところを説明してください。
  178. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 私も、どういうふうに訴えたかその内容までは……
  179. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 訴えたんじゃない、泣きついたということをあなたは言っているんだ。
  180. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) ただサンフランシスコ条約の草案ができます前の事前の打ち合わせの際には、いわゆる軍令三十三号に関する規定というものは全然入っていなかったんでございまして、むしろ相互放棄になるのかどうかというような話し合いがアメリカ側とあったと記憶しております。そのときにアメリカ側としましては、もう財産問題は全部相互の、日韓双方の話し合いにフリーにまかしてしまうのだということを言っておりましたので、あと日韓間で全然、お互い平等、フリーの立場交渉できるものだと思っておりましたところが、サンフランシスコ条約調印の直前になってあの軍令三十三号に関する項目が入ったというような経緯でございまして、これは当時駐米大使でありました梁大使がそういうふうに動いたということは公知の事実になっていたわけでございます。
  181. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、それはどこに泣きついたって、泣くのは自由ですよ。そこまでとめるわけにはいきませんけれどもね。だけれども、あなたがリアルに泣きついたということを言っておることは、言ってしまって、しまったと思ったのかもわからぬけれども、とにかくそういうことを言っておることは具体的にやはり実によくあらわしていると思うのですね。(「文学的表現だ」と呼ぶ者あり)文学的表現かもしれませんがね。  それではもう一つ聞くのは、三十九年一月二十九日のラスク・朴の共同声明、三十九年十月三日のバンディ・李の共同声明、四十年五月十八日の米韓共同声明、三つありますね。この三つを資料として出していただいて、それで、アメリカ韓国日本に対して日韓会談の早期妥結を要望しておるところをね、資料は資料として出していただいて、そのところをひとつ説明してくれませんか。全部それに入っておるでしょう。
  182. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御指摘のとおり、そういう各声明には、たしか日韓会談の早期妥結を希望する旨の言及があったように記憶しておりますが、資料はさっそく印刷いたしまして配付いたします。
  183. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 総理ね、韓国日本に対して日韓会談の妥結を要望するなら、これはぼくはもうあたりまえのことだと思うのですよ。いいのですよ――いいというか、韓国立場としてはね。だけれどもアメリカ韓国が共同声明を何回も出して、日韓の妥結を要望するというのはおかしいですよ、筋が。アメリカとしてですね、内政干渉だ、日本に対する。あなたはおかしくないと思うのですか。おかしいと思うのですか。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) おかしくない。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おかしくない。じゃ、おかしくない理由をひとつ説明してくれませんか。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう、日韓間十四年長い交渉をしておると、それはずいぶん気をもんでいると思います、国際的にですね。これは、ひとりアメリカだけではない。今回の交渉が妥結したといって祝辞を述べておる国々は、全部、どうして隣の国同士が仲よくできないのか、こういうことであったろうと思います。ましてアメリカは、日米安保条約を結んでおるし、また韓国とも特別の関係を持っておる。こういう点から見て、これは仲よくしてくれたらいい、こういうことを思うのはこれは自然だ。これはもう今回の条約締結されて、みんな喜んでいる。まだ全部がまだ済まないのだといいましても、私どものところへ来る人は、たいへんけっこうでした、こういうことを言っておりますが、しばしば言いますように、共産主義の国はこれにちっとも喜んでおらない。いままでそのとおりなんです。で、私は、その日韓の善隣友好関係を樹立する、これは、この自由主義陣営では、国が近かろうが遠かろうが、たとえばドイツなども非常なこれに関心を示しておる。アメリカ自身私は関心を示すのは当然だと、かように私は思っております。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日韓会談が妥結して協定へ署名でもしてね、それからね、それからそういう意向を表明するなら、これは私はまた別だとこう思うのです。その途中の中で、何回も何回も出てくるわけですね。アメリカがなぜ韓国と一緒になって、日韓会談妥結を要望するのか。それなら、日本アメリカのいろいろな声明の中でもね、日韓会談の妥結を要望すると言ってもよさそうなものですね、論理としては。それは絶対にないでしょう。絶対にないですね、日本アメリカの共同声明では。アメリカ韓国の間だけあるのですよね。これはどういうわけなんですか、これは。どういうわけなんですかね、それ。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米韓の共同声明は――米韓は、まあどういう事情にあるか、この米韓の共同声明に載っている。日米では、ただいま稲葉君が言われるとおり、これには触れておらない。この一番問題は、ただいま片言隻句のうちに、アメリカの内政干渉だと言われた。その内政干渉というのは、あるいは私どもが威力を感じたとか、あるいは韓国もそういうことでそれに従ったとか、こういう事実が、この日韓条約なりあるいはその他の協定に出てくれば、それは御批判されて、また攻撃されて当然だと思います。私ども別に内政干渉を受けたような気持ちございませんし、米国自身が関心を持ったからといって、お前のほう関心持つのはよけいだと、こう言っていることこそが、あるいは内政干渉になるかもわからないから、そのアメリカにも私どもは内政干渉いたしませんけれどもアメリカが干渉……関心を持ったからといって、これまた御自由だと、かように私思いますが、この条約自身が、アメリカが特別な指示をしたとか、そういうことででき上がったんじゃないか、こう言って、これが内政干渉だと御批判になるのは、それも、事実そんなことはありませんと、私はきっぱりお答えいたしますが、この条約、あるいは協定等を御審議願って、いまのような内政干渉の事実があるとか、こういうような点を指摘されれば、そういうことでないということを申し上げます。また、アメリカ自身が私どもに、この日韓の問題に、関心を寄せているということは、これは私は当然のことで、関心を寄せられたって、それがけしからぬと言う筋じゃない。これは米韓間での共同声明にそれが載っていると、こう言われた場合に、それはどういう事情でどういうことが載っているか、これは私はつまびらかにいたさないわけであります。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれど、総理はね、日韓会談の始まりは予備会談ですね、予備会談がGHQのあっせんで覚書が出ているわけです。これは十月九日付ですかね、覚書が出ていますね。あとでその覚書を出してもらいたいと思うのですが。だから日韓の出発点がアメリカのあっせんというか、覚書だから、むしろ指示ですね。指令とは違うかもわからぬけれども、事実上の指令ですね。指令と覚書の性格は別として、占領中ですから、占領中にアメリカのメモランダムによって日韓会談が始まったということは事実なんです。これは総理も認められるわけです。それで、日本が独立を回復した後においても、決裂をすればアメリカの国連軍司令官は、韓国日本総理を両方呼んで、そこで会わせて、そして話をさせて、しかもその話のしかたは、両国が緊密にすることが、親密度を増すことが、朝鮮戦争の遂行に緊要な課題なんだと言ってやっているわけなんですからね。これは出発点自身がアメリカの仲介……干渉以外の何ものでもないじゃないですか。そう考えざるを得ないじゃないですか。ぼくはそういうふうに思いますね。だれでも日本人はそういうふうにぼくは思うと思うな。すなおに解釈すればそういうように思いますよ、それは。そのことがいいとか悪いとか言っているのではない。判断を言っているのじゃなくて、事実はそうだとぼくは思いますね。
  190. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われるように、そのことがいいとか悪いとか言っているのじゃないと、こういうことで、最初の始まりは占領当時だと、こう言われた。そのとおり私どもはそれは否定しておりません。だから、そのとおりでございます。また、占領後におきましても、とにかく両国間の関係が、過去の不幸な歴史を思い出したり、あるいはまたいろいろな問題がありますから、なかなか両国国民がほんとうに解け合うという平穏裏ないわゆる分離国家という問題ではないのですね。そこらにいろいろな問題がある。これはやっぱり自由結婚というわけにいかなくて、だれかあっせんしないとなかなかうまくいかないのじゃないか。とにかくこれは分離国家であるという、そういうところから見ましても、これは両国の関係をいつまでもほうっておいてはこれはいかぬということは、だれが見ても考えることですね。ただ、それがいま御指摘になり、材料として提供される、軍事的な意図でやられたかどうか。当時軍事的な意図をアメリカが持ったとしても、今日私どもが結んだ条約並びに協定が軍事的な意図ありやいなや、これが実は問題なんです。過去の十四年前は、それはどんなことがあったか知らない。しかしながら、今日はもう平和的な条約であり、それはまた諸協定も両国間で解決をしなければならぬことばかりだ、こういうふうに御理解いただければ、いま言われるような軍事的なものではない。起こったその当初は特別な意図があったかもしらない。しかし、それとはもう関係なしに条約ができている。かように私は御理解いただきたいと思う。
  191. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、総理の言われることを整理すると、まあ占領中だからGHQのあっせんで始まったことは認める、占領後においても、アメリカのあっせんがあって進展したことは認める、しかもそれはいわゆる戦争遂行ということに関連をして、アメリカとしてはそういう意図を持ったかもしれない、だけれども、いまになってはそれはまた別問題なんだと、そういう意味ですね。「飛躍している」と呼ぶ者あり)飛躍している……。飛躍していないですよ。それは。ぼくはそう思うのですよ。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま引き合いに出されている、マーフィーさんが書いておられるこれは、マーフィーさんはそういうふうに考えただろうけれどもアメリカ政府自身はどういうふうに考えているか、これは別だと思いますが、マーフィーがアメリカを代表している著書、これを御引用になりますから、これがいいとか悪いとか私は申しませんし、また、どういう意図があったとかないとかこうは言わないんだ、どういうような意図があろうと、今日そういうこととは別に、日韓条約ができ、また諸協定を結んでおるんだと、諸協定並びに日韓条約等を十分御審議をいただいて、ただいまのような軍事的なつながりがいまなおある、あるいはいまなおアメリカのあっせんというものが尾を引いているかどうか、そうしていただきたいと、かように私は申しておるのです。私どもは、どこまでも平和的な善隣友好の樹立をしておる。本来からいうなら、分離国家なんだから、もともと平穏裏に話し合いで分離されれば、これはもう最初から話し合いがついて、両国間の関係を規律しても非常にはっきりするだろうと。まあ最近イギリスあたりの旧植民地といわれるものが独立しておりますが、それらのものが平穏のうちにやられておる。したがって、旧宗主国と新興独立国との間にすべて話し合いでうまくできております。今回の問題も、いわゆる戦争したわけじゃないんですから分離国家だ、そういう意味から見れば話し合いがつくべきものだし、ことに隣同士だ、こういうようなことを考えますと、当然話し合いで片づけるべきであったと。しかし、過去においてそれができておらなかった。その当時の事柄をいろいろせんさくしてみると、お説のように、GHQであっせんしたり、また、その後米国もいろいろ関心を寄せて出てきておると、これはもう事実なんです。問題はただいま結んだものが、いまなおそれらの事柄が尾を引いているかどうか、その辺を十分御審議いただきたい。
  193. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 議論はいろいろあると思うんですが、見解が違ってくると思いますがね。そうするとアメリカはあれですか、日本韓国が緊密に国交を回復することがアメリカにとって何かこうプラスになるのですか。そうなるですかな。どういうふうなアメリカにとってプラスがあるんでしょうか。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあどこの国にしてもあまりけんかしていることはいいことじゃございませんから、仲よくすることはみんな希望しておるんじゃないかと思います。
  195. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どこの国の話をしているんじゃないですね、私の話は。アメリカがそういうふうに異常に熱心になっているのは、日韓で国交が回復することで一体どういう利益がアメリカにあるのかとあなたはお考えになるのか。あなたはもう一生懸命アメリカ日韓の問題で熱を示すのはあたりまえだと、こう言われるから、何も関係ないことには熱を示すわけがありませんからね。何かなければならぬわけですね。どういうようなアメリカにとって利益があるのだろうか、こう聞いておるわけです。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどから抽象的に私がお答えしたとおりでございます。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは別のことをお聞きをいたしましょう。あなたが答弁をしておる中で、これは小坂善太郎さんに対する答弁ですね。昭和四十年十月二十七日。こういう答弁が出ているわけですよね。「私どもはむしろいまのように大韓民国が北鮮を爆撃するということよりも、」――いいですか、「大韓民国が北鮮を爆撃するということよりも、北鮮で最近声明いたしましたように、南北統一は共産主義によってこれを統一するのだという、このほうが私はむしろこわいので、」と、こうあなた答弁されていますね、あなたが。いや、あなたですよ。佐藤総理大臣だからあなたです。大韓民国が北を爆撃することよりもむしろ――いいですか、それよりも南北統一は共産主義によってこれを統一するのだというほうがこわいんだと、こういうのですね、こういうあなた答弁をされておるんですね。そうすると、共産主義によって南北が統一されるよりもむしろ大韓民国が北爆をするほうが何といいますか、低いというか、そういうような意味にとれるんですね、この答弁は。そういうふうにはっきり答弁してるんですよ。(「どういう質問をしたのだ」と呼ぶ者あり)、いや、それは問題ないですよ、質問はぼくが聞いたんじゃない、あなたが聞いたんだから、それは。小坂さんが質問したときに答弁しているわけですよ。そういうふうにとれるんじゃないですか、これはあなた。むしろ大韓民国が北鮮を爆撃するほうがそのことよりもいいのだという答弁になるじゃないですか。(「そういうわけじゃないだろう」と呼ぶ者あり)いや、そういうふうにとれてくるよ、とれますよ、それは。よく読んでごらんなさいよ。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまちょっと……。これは誤解を受けるんでしょうが、その前に私がお答えいたしましたもので、こういうことを言っておるんですね。「井手君の本会議の質問の中に、武力北進ということばがありました。私はあまり聞かないことばで、最近はこういうことばを聞かない、あまり聞かないことばですということでお答えいたしたのでありますが、その武力北進について何か特別にお聞き取りのものがあれば私は教えていただきたいと思います。私どもはむしろいまのように大韓民国が北鮮を爆撃するということよりも、北鮮で最近声明いたしましたように、南北統一は共産主義によってこれを統一するのだという、このほうが私はむしろこわいので、」、云々と、こう言っておる。問題はこの「武力北進」ということがないんだ、こういうことばで、この表現は、事は当たらないと思うのです、私は。だから、ただいま大韓民国が北鮮を爆撃するということを言われるけれども、私自身が武力北進ということを聞いておらないのだ、したがって、それにはあまり現実性がないのだ、したがって、私はあまり心配しないのだ、しかしながら、北のほうでですよ、これは共産主義によってこれを統一するんだと、こう言われる。これが私は心配なんです。北のほうではっきりそのことを言っておるから、それで私が心配する、かように申しておる。
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのはもちろん前の質問に対するあれが入っておるわけですね、それはもちろん答弁ですから、そこだけぽつんと切り離しているわけではありませんがね、ありませんけれども、あなたの言われている本意は、共産主義によって統一をするのだということは非常にこわいことなんだ、いいですか、それはあなたは認めておられる、こわいわけでしょう、あなたとしては。自民党の政府としてはこわい。だから、それよりもむしろそのほかのことはそれよりも低い次元でそういうこわいことよりも、むしろほかのほうのことならばいいのだと、やむを得ないのだと、そういうふうにとれるんじゃないですか。この文章を見ればとれますね、そういうふうに、だからぼくは聞いているわけです。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それでいまこれは全部読まないといかないのですが、お話しになりましたから読みますが、「私はむしろこわいので、」とこういうことを、いまそこまで読みましたね。その次に、「ただいま言われるような武力北進ということは私はあまり耳にしておらない、かように思いますので、この機会に、ただいまお尋ねになりました事柄、これは条約局長でいいかと思いますが、一言私の感じました点を申し上げ、南から北を攻めていくようなことはただいまの状態では考えられないということ、そのことを一言お答えいたしておきます。あと条約局長からお答えいたします。」だから私が申しましたのは、大韓民国が北爆するというそういうようなことは考えられないことだと、したがって、そういうようなことを言われましても、それには実現性がないから私はあまり心配しておらない、北から南を攻撃するという、これには私は実現性があるように思うから心配だと、こういうことであります。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、北から南を進撃することは実現性があるというのですか。あるというならば、そのある根拠をお示し願いたいですね。これはもう重大な問題ですよ。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北鮮では最近声明いたしましたように、南北統一は共産主義によってこれを統一するのだというこのほうが私は心配だということであります。北のほうではっきり言っておるのです。そのことは、言っておることは御承知だと思います。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、北のほうでそういうふうに言っておると、まあ言っておることは事実かもしれませんが、ぼくは何も知りませんけれども、かりにそういうことを言っておると、それをあなたはそのまま真に受けられるわけですか。声明を真に受けて北から南へ攻めてくることがあるのだと、こういうふうにあなたはお考えになっておられるわけですか。そしてそれがこわいとこう言われるんですね。北から南へ攻めてくることがあり得ると、声明どおり。だからこわいんだと、こういうことですか。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういう声明あるいは発言をしておる、それが実現すればたいへん心配だから私はそれがこわい、かように申したのであります。これはもう声明は、全然やるのとは違うのですとこう言うならば何をか申しません。しかし、声明する以上それはやっぱりどこかでやろうとしているのだと、かように思いますから、私はその声明がこわい、それが実現すればこわい、そのことを申しておるのです。
  205. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連稲葉君も何べんも同じことを質問されていて、たいへん質問者としても困ると思うのですが、ただいまも総理は、こういう声明がある以上、北から何かをやろうとしておるというふうな感じを受けるのでこわい、やはりそうおっしゃるわけだ、声明の背後に別な行動というものをさらに考えておる、だからこれはたいへんな重要なことであって、隣国の総理が隣の国に対してそういう考え方を持っておれば、いろんな面でわれわれの政策というものがやはり変わる可能性が出てくるわけです。そういう立場から総理にお聞きするわけですが、何かをやろうとしておるというのは、それは武力侵略の意味でおっしゃっているんですか。北のほうが何かをやろうとしておるというふうに思われるというのは、武力によって進攻してくるという意味のことなんでしょうか、はっきりおっしゃってください。いやそういうことじゃないのだということであれば、それじゃあ一体どういう意味のことなのか、その辺のことをもう少しはっきりしてほしい。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいま言うように、南北統一を共産主義ではかるというそれが、武力侵略か、あるいは思想侵略か、そういうことは私は知りません。知りませんが、とにかくこういう声明をしている。そしてそれがもし武力侵略という形に出てくればこれはたいへんなことだ、かように私は申し上げる。声明したけれども、それは全然別なんだ、そういうことは、そういう意図はないとおっしゃるなら、これは何をか申しません、たいへんけっこうだと、心から声明を歓迎しますけれども、しかし、ただいままで公式声明として話されたことが、ただいまのような南北統一をこれでやるのだ、こういう事柄が私は非常に心配なんだ、率直に申し上げまして。
  207. 亀田得治

    ○亀田得治君 非常に重要な、国際関係に影響を持つ問題ですが、総理、そのようにあるならばいうことで、たいへん心配だということが、南北朝鮮の関係においての心配というよりも、日本国総理が、国会の答弁でありますから、それがわが日本に対してのたいへん脅威であり心配だということであろうかと思います。その場合、日本にはどういう心配を総理はされ、これに対するどういう対策をお考えなのでしょうか。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はしばしば申し上げましたが、私自身は共産主義を排撃しております。わが国が共産化することは絶対に防ぐ、かようなことをしばしば申し上げております。だからいまのは、南北の問題、南北の問題はさらに発展してくればどうなるか、そこらに心配があるのだ、これは杞憂だとおっしゃればそれはたいへんけっこうです。杞憂として、杞人の憂いだとして私も済ますことができますが、そういうことであってほしい、かように私は申しております。
  209. 亀田得治

    ○亀田得治君 杞憂であるとは私は思っていないので、総理が杞憂であればけっこうだがという前置きをされますが、総理としては、南北朝鮮の関係が即日本に非常に心配な影響を持つ――とのような心配の影響を持つのですか、共産主義が。きらいという共産主義の浸透が即日本にくるというような暗示でもあるし、したがって、どういう心配かというその認識をお伺いしたいし、それに対しては、認識がある以上、一国の総理としては対策はあるはずです。それをお伺いしておきたい。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 遠い欧州のことならいざ知らず、これはアジアのできごとであります。私がしばしば申し上げまするように、私は共産主義がきらいだ、これは排撃します、日本国が共産化することは絶対防ぎます、かように申し上げております。私は、同時に皆さん方に申し上げているのは、しかし、どういう国とも、いずれの国とも仲よくいたします。その考え方でございます。したがって、これには一つの条件があります。十分独立を尊重し、内政に不干渉――干渉しないという、そうしてお互いに平和共存していく、こういう考え方であってほしい。このことを私は最小限度に要望しております。これは誤解がない、この点は非常にはっきりしておる、国民もよく私の考え方を了承してくれておる、かように私は信じております。
  211. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 午前の質疑はこの程度とし、午後は一時三十分再開いたし、稲葉誠一君の質疑を続行いたします。これにて休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十五分開会
  212. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約承認を求める案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。稲葉誠一君。
  213. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これから一時間の与えられた時間ですから、要点だけ質問してまいります。  午前中のことで言われた、北鮮で最近声明した南北統一云々ということを総理は言われましたけれども、その声明はいつのどの声明で、どの部分があなたの言われるようになっているのか、これをちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  214. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  御質問の発言に関しましては、最近では二回ございまして、一回目は、今年の四月十四日に、金日成首相が、インドネシアの例のバンドン十周年記念の会に呼ばれましたときに、アリアルハム社会科学院で講演をいたしました。「朝鮮民主主義人民共和国における社会主義建設と南朝鮮革命について」と、こういう題で講演を行なっております。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、その部分のどこがそれに当たるのですか。
  216. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) それからもう一つは、今年十月十日に同じく金日成首相の報告がございますが、一部読み上げてみますと、「現時期われわれの当面の最大の課題は、共和国北半部における社会主義建設を促進し、われわれの革命基地を一層しっかりうち固め、南朝鮮人民の革命闘争をあらゆる面から支援し、国際的革命勢力との連帯を引き続き強化することによって、南朝鮮をアメリカ帝国主義の従属から解放し、国の統一を実現することである。」とこういうふうに言っております。  さらに、四月十四日の講演の場合には、「わが党の任務は、全力を尽して南朝鮮での革命勢力の成長を促し、南朝鮮人民の革命闘争を支援することである。わが祖国の統一、朝鮮革命の全国的勝利は、結局三大勢力の準備にかかっているといえる。第一に、共和国北半部で社会主義建設をよくやり、われわれの革命基地を政治的、経済的、軍事的に一層強化することであり、第二に、南朝鮮人民を政治的に目覚めさせ、固く結束させて、南朝鮮の革命勢力を強化することであり、第三に、朝鮮人民と国際革命勢力との団結を強化することである。わが党は、この三つの革命勢力を強化するために、不断に闘っている。」と、こういうふうに述べております。
  217. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの点が総理の言うようなところに該当するかどうかは非常に議論があるところだと思いますが、これは議論はここではやめます、時間の関係もありますから。そこで、総理の言うように、南北統一は共産主義によって統一するということじゃ非常にこわいということを言われた。そうすると、それを防ぐというためには、日本韓国の国交が正常化しておる場合と、それから国交が正常化しておらない場合とによって、防ぐための力のぐあいといいますか、それは変化があるでしょうか。日韓の国交が正常化しているほうがあなたの言われる共産主義による統一を防ぐほうにプラスになるでしょうか。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、それぞれの立場でそれぞれの議論をなさるだろうと、かように思います。私のほうは、ただいま長く国交を正常化しないでおくことは困ると。もう長くなっておる。そこで、国連等でも、国際常識というか、国際通念というか、そういう方向で解決することが望ましいと、こういういわゆる七十二カ国が承認している。こういうところでこれをすなおに日韓の国交を正常化すると、こういう処置をとったわけであります。また、もう一つは、かねてから申しておりますように、同一民族単一国家、これは一つの理想だと。その行き方として、まあイデオロギー論争等もあるが、結局これについては国連方式による統一というのが望ましいのだと、かように考えるものですから、いわゆる国連方式というものもこれを取り入れた。そこで、南北が統一されるべきだと、かように私は思っております。
  219. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問はお答えに――正面から答えていないのかもわかりませんけれども、じゃ、あなたの言われるようなことならば、日韓の国交が正常化している場合と正常化していない場合とを比べてみて、国交を正常化しているほうがあなたの言われる共産主義による統一ということを排除するために役立つかどうかということですよね、二つ比べてみて。その点はどうなのか、こういうわけです。そのことを目的として日韓が結ばれたのだと、こう言っているのじゃないんですよ。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは、それぞれの立場でそれぞれの御意見をなさいます。私どもは、ただいまの状況のもとにおいて国際的な常識的なものになっておると、こういう意味大韓民国と国交を正常化した、こういうことを申しております。
  221. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問に対する答えにはなっておらないと私は思います、私はそれを目的としてやったということを言っておるのじゃないんですからね。それが直接間接どっちがどういうプラスになりマイナスになる影響面を持つかということを聞いているんですけれども、あなたはそれに正面から答えないわけですけれども、それは答えない立場もあると思います。それはいま議論しておっても時間があれですけれども、だから、日韓の国交正常化がそうしたいわば軍事的なものに直接間接に役立つんだと。結果としてですよ、結果として役立つんだということをどうしても認めるわけにはいかないと。かりにそういう点を目的としたのではないけれども、結果として直接間接にそうなるのだということを認めれば、そこからいままでのあなた方の立論というものはこわれてくるということを懸念されて一生懸命がんばっておられるのだと、こうぼくは思うんですがね。しかし、まあそれはここで議論しても始まりませんから――いや、手を振っていても、ぼくはそう考えるんです。そこで、議論していても始まりませんから、別のことに移ります。  これは法務大臣にお聞きするわけですが、法的地位の問題に入ります。朝鮮人の国籍の問題で統一見解というものを、これはまたよくわからないんですが、出したのか出さないのか、はっきりしないのですがね。出したとすれば、それを文書で資料としてお配り願いたいんです。これがどうもはっきりしないんですよ。
  222. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 統一見解というのは、新聞がそういう名前をつけたんでございまして、ちょうどそういう時分に、あれを出した新聞が書いたころに、国会において私と総理大臣と答弁が食い違っておるというような声がございまして、そういうものじゃないんだということの意味で、この際にひとつはっきりしておこうというつもりでいろいろ話し合いをいたしまして、談話の形式で私どもの係の者から発表をいたしましたが、特別に書類として出しておりません。
  223. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 統一見解というものがあるようなないような、はっきりしないんですけれども、談話として発表したというなら、その談話として発表したものを資料として正式に出してほしいと思うんです。それがどうもはっきりしないものですから、議論が進まないんですよ。これは出していただけますね。
  224. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま法務大臣がお答えになりましたように、政府部内の意見を統一したものでございまして、資料は差し上げてよろしゅうございます。
  225. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 総司令部から何か覚え書きが出たと。これは昭和二十五年ですか、たしか二月二十日と私は記憶しておりますが、違うかもわかりませんが、総司令部からどういう覚え書きが出たのか、その覚え書きも資料としていただきたいと、こう思います。  それからその前に、韓国の代表部から、在日朝鮮人の国籍の問題で、これは当時外務省ですかに申し入れがあったんだけれども日本が拒絶したと。占領中ですよ。拒絶して、その結果としてGHQから覚え書きが出たんだと、こういうふうにいま聞いているわけですが、二十五年ですか、聞いているんですが、どんな覚え書きですか。その間の経過をちょっとお話し願いたい。これは要点だけでけっこうです。
  226. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) おそらく、御質問の趣旨は、外国人登録法上の記載につきましての覚え書きという御趣旨じゃないかと思います。それでございますと、昭和二十五年に……
  227. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いつごろですか、日にちは。
  228. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 二十五年の一月の十一日のようでございます。韓国に書きかえたらどうかという勧告と申しますか……
  229. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと内容を……。
  230. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは内容がちょっと出ておりませんですけれども、外国人登録法上、韓国または大韓民国ということばを使ったらどうかと。従来、朝鮮と書いておりました。それを、韓国または大韓民国という表現にしたらどうかという指示が来たわけでございます。それを一応日本政府は断わっております。その後、さらに、二十五年の二月の二十日に同じような趣旨の覚え書きが参りまして、それに基づきまして朝鮮という記載を韓国に書きかえるという措置を講ずるようになったわけでございます。
  231. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その前に断わったのは、覚え書きですか。覚え書きを断わるのはちょっとおかしいと思うのですが、韓国の駐日代表部から外務省に対して申し入れがあったのじゃないですか。
  232. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これは、韓国代表部から司令部に対しましてそういう希望が出たようでございます。それを司令部から取り次いできたと。ですから、正式の覚え書きではないかもしれません。
  233. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その後、そうすると、あれですね、朝鮮というふうに書いてあったものを韓国と直すようにしてきましたね。その手続のときに、どういうふうにやったんですか。外国人登録法の第九条第一項の何々「を証する文書」を出したわけですね。そういうわけですね。法務大臣ね、法務大臣はそこまで知らないかな、それはどういう文書を出したわけですか。どういう文書をくっつけて朝鮮から韓国への切りかえを認めたんですか。
  234. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま申し上げましたような経緯によりまして、在日朝鮮人につきましては、外国人登録法上国籍欄に従来朝鮮と書いてございました。これを韓国または大韓民国と書きかえてほしいと、こういう申し出があれば、申し出だけでそれを韓国あるいは大韓民国と書きかえたと、こういうことに一応なったわけでございます。その後、さらに、韓国の政府で施行いたしました在外国民登録法というのがございまして、こちらで在日韓国人が登録をやったわけでございます。そういう登録をやりました韓国人につきましては、その登録証を示して韓国に書きかえるという手続に変えたわけでございます。
  235. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前に、富田入管次長は、この九条の規定でかえるのはおかしいということを言っているんですね。三十八年の二月五日ですが、外国人登録法九条の「証する文書」というのを、大韓民国国民登録証をくっつけてかえることについての私の質問に対して、「本来この九条の規定をそのまま持ってきたことについては、われわれとしてもいささかどうかと考えている次第でございますが、」と、こう言っているんですね。元来、大韓民国国民登録証を国籍を証する書面として朝鮮から韓国に切りかえるというのはおかしいんじゃないですか。おかしいという意味のことをちゃんと入管局の次長は国会で私に答弁しているんですがね。おかしいのじゃないですか、これは。
  236. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 外国人登録法上の証明文書として出すということは、確かにおかしいわけでございます。これは、この書きかえという問題は、もともと外国人登録法上の問題ではございません。御承知のように、在日朝鮮人は、平和条約発効までは日本人であったわけでございます。したがいまして、これにつきまして外国人登録法上の登録をいたしますのも、外国人とみなして登録するというふうに法律上なっておったわけでございます。そこで、日本人でございますので、登録法上外国の国籍を登録するということはできません。その関係で、朝鮮の出身者であるということを示す意味において朝鮮ということばを使って、ほかの外国人と区別したわけでございます。本来、外国人登録法上は、国籍とか氏名とか住所とか、いろいろの事項を登録いたすわけでございます。登録法上の登録でございますれば、国籍を登録するわけでございます。この国籍は、その国民と自国との間できまった国籍がございます。その国籍を登録するのが外国人登録法上の登録でございます。ところが、いま申し上げますように、戦後の朝鮮人につきましては、外国人登録法上の国籍を書くわけにはいきませんでしたので、便宜朝鮮という文字を使って、ほかの外国人との区別をしてまいったわけでございます。そこで、平和条約の発効以前の昭和二十五年に、ただいま申しましたような司令部からの指示がございましたために、朝鮮という記載を韓国という記載に書き改めると。これを書きかえと申しておりますが、書きかえを認めろということになりまして、その書きかえを始めたわけでございます。これは単に朝鮮と書いてある記載を書き直すだけでございまして、国籍の変動というものはございません。本来、登録法上は、国籍の変動があってはじめて記載を変更登録するわけでございますが、ただいまの問題は変更登録ではございませんで、ただ登録法上記載されている朝鮮という文字を韓国という文字に書きかえるというだけのことでございます。したがいまして、これについては登録法上正面の根拠はないわけでございます。便宜そのような扱いをしたというわけでございます。
  237. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣、あなたが衆議院でお答えになっておるように、外国人登録証の国籍欄の記載は符号だったと、こうずっときたけれども、それはまあよくわからぬけれども十四年前から符号でなくて国籍だったんだと、こういうふうにお聞きしたわけですがね、まあ大ざっぱに言いますとね。国籍として取り扱ってきたと、こういうんですか。どうもそこら辺のところはっきりしないんですがね。そうすると、符号説というものをやめて国籍説に変わったんだと、こういうことなんですか、十四年前から。実際に変わっていたんだけれども符号説をとっていたんだと、こういうんですか。どうもはっきりしないんです、これが。
  238. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 本日の時点から振り返ってみますると、韓国の名前を用いた十四、五年前からすでに韓国の証明書を持っておる人だけは登録した。われわれのほうは日本としてどうすることもできないという状態であったけれども、向こうとしては韓国の国籍を持っておると証明しておるという心持ちであったのである。それからその書きかえの場合も、そのまま無事でずっと続いてやってまいりましたし、その後はそういう一年か二年後におきまして、二十六年でございますかからは、国籍の証明書も示してそれによって書きかえをやらしておると、こういうようなことになっておりますので、いまから振り返ってみるとそれは国籍であった。それで、韓国の名前を使っておるものはいまから振り返ってみると国籍であった、朝鮮のはそうじゃなかったというふうに解して、今後の事務の取り扱い上の考え方としてそういうふうに、振り返ってみるとそうであったということを言っておるわけでございます。
  239. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、韓国というものから朝鮮に切りかえるのを部分的ですけれども認めていますね。いままでずっとやってきましたね。韓国が国籍なら、それはどういうわけで韓国から今度は朝鮮へ切りかえるのを認めたんですか。本人の意思だけで切りかえを認めていたんですね、これは。相当あるでしょう数が。おわかりですか、言っていることが。外国人登録の韓国人と書いてあったものを、特別の事情のある場合には朝鮮に切りかえていたわけですよ。それを法務省当局は認めていたわけですよ、法務省まで吸い上げてきて。相当あるでしょう、これは。韓国が国籍だとなると、それを本人がいやおれは韓国民じゃないと言ったら、韓国から朝鮮への切りかえを日本で認めていたんですか。
  240. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それは原則的にはできないわけでございますが、特殊なケースがあると思います。それは局長から……。
  241. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 局長のあれは別として、あなたの言うのは、十四年前から国籍として扱われてきたと、こういうのでしょう、韓国のは。そうなら、それが韓国の国籍を離脱してというか、朝鮮ということになること自身を日本の政府まで吸い上げてきてそこで一々許可をしたり何かするのはおかしいじゃないかと、こういうんですよ。これはおかしいわけですよね、そんなことやるのは。単なる符号ならいいですよ。単なる符号ならいいけれども韓国は国籍だとあなたが言っておりながら、それを切りかえるのを日本の政府が認めるのはおかしい。だれが見たってそれはおかしいですよ。
  242. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それは、ただいま申しましたように非常に特殊な場合でありまして、たとえば間違っておったとかというような場合等であると思うのであります。その当の場合がどういうふうでありまするか、当該局長からひとつ申します。
  243. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 間違っておったというのじゃないですよ。何を間違うんでしょうかね、間違うというのは。そうではなくてですね――いや、局長、答弁はいいですけれどもね、あなたが非常によく御勉強になっておりますからお聞きするわけですけれども、違うんですよね。それはまあよくわかります。たとえば、夫が朝鮮と書いてあって、そこへ稼にきた。そうしたら、みなその家が朝鮮だから、一人がお稼に行ったのが韓国の国籍じゃどうも気の毒だからというので、これを朝鮮にかえることを日本の政府が認めておるわけですよ。国籍だというんなら、それを日本の政府が認めるとかなんということは変だと思うんですよ。そこのところを聞いておるわけですよ。間違っていたのならいいですよ。間違っているだけじゃないんですよ。
  244. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) ただいま法務大臣がお答えしました過去の経緯にかんがみて国籍と見ると、こういうふうにおっしゃいましたのは、先だっての十月二十六日の政府の正式見解以後そのようにしていこうという趣旨でございます。少し詳しく申し上げませんと御理解いただけないかもしれませんが、従来、朝鮮と書いてございましても、韓国と書いてございましても、これは国籍をあらわす意味ではございませんでした。これは先ほど申し上げたとおりでございます。そこで、その後、昭和二十六年ごろから朝鮮人についての在外国民登録証を提示して登録の書きかえをやってきたという事実、あるいはまた、韓国と書いてあるものにつきましては国籍として事実上扱われてきておるという実績が積み上がってきたわけでございます。そこで、いずれにいたしましても、韓国承認しました以上は、韓国国民については従来のような単なる用語としての記載ではなくて、実質的に国籍に即応した国籍を国籍欄に記載しなければならなくするわけですから、本来ならば、これは平和条約が発効いたしましたときにそのような措置を講じて、従来の用語を真実の国籍をあらわす本来の外国人登録法上の国籍の登録に切りかえるべきであったと思います。ところが、その手続をしないままに、従来どおり、朝鮮も韓国もこれは用語だと言ってきたわけでございます。そこに間違いがあったといえばあったわけでございますけれども、この際、韓国と書いてあるものにつきまして、一々そういった変更登録をさせる手数を省いて、いま韓国と書いてあるものにつきましては、今後の取り扱いとしてはこれを国籍をあらわすものとして考えていこうと、こういうことでございます。さかのぼってといいますのも、従来の取り扱いを全部ひっくり返して過去にさかのぼって国籍と見るという趣旨ではございません。したがいまして、いまおっしゃいますように、韓国と書いてあるものを朝鮮と書きかえるのは、韓国が国籍である以上はおかしいではないかという御意見でございます。これはもうごもっともでございます。しかし、それは国籍というふうに当時見ていない時代におきましては、韓国の記載を朝鮮に書き直す、これは書きかえでございます。変更登録ではございません。書きかえるということは、その記載に誤りがあった場合等においてはこれは当然やらなければならぬわけでございますので、そういう措置をとったというわけでございます。  今後の問題としましては、これは登録法に乗ってまいりますので、誤謬がある場合の登録法上の訂正の措置はとりますけれども、そうでなければ変更はできないと、このようになるわけでございます。
  245. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままで国籍欄の記載が用語だ用語だと言ってきたから、符号だと言ってきたから、じゃ、用語ならまあ韓国のあれにかえても、ことに韓国へ帰る場合なんかに、韓国の国籍を取得するというか、外国人登録に韓国と書かないと帰れないわけですね、一時帰りする場合でも。そういうために、一時的な便法その他で、家族のうちの一人が帰るために家族の者全員が韓国と書きかえないと帰れないわけですよ。五人家族がいる、一人が帰るという場合にも、あとの四人も韓国としないと、韓国に行ってまた帰ってくることをしないわけですね、代表部も。そういう形で、自分の真意でなくて国籍を韓国にかえた、国籍欄というか韓国にかえた人がいるわけですね、たくさん。こういう人を一体どういうふうに扱うのですか。それは、単に、あれですか、日本関係しないんだというだけで済ましちゃうわけですか。おかしいんじゃないですか。日本の政府が用語説だ何だかんだ言っているから、いやたいしたことはないのだというように考えてそういうような措置をとった人がたくさんいるわけですよね。そういう人がいまになってまた朝鮮に帰りたいと、こう言っておるわけですからね。日本の政府は関係あるわけですよ、行政的に。そのときに、一体どういう責任というか、どういう形をとるわけですかね。どうするんですか、一体。そんなことは知らない、それは韓国民と韓国政府のことなんだ、日本政府は知らないと言っているんではあまりにひどすぎるのじゃないかと、こう思うんですがね。
  246. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 韓国と書いてありますものは、現在では国籍をあらわすものと私どもは見ていくわけでございます。したがいまして、もしも韓国と書いてありますものにつきまして、国籍が韓国でないということの証明がございますれば、これは登録法の規定によって訂正いたします。
  247. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 韓国の国籍がないという証明があなたとれっこないじゃないですか、具体的な問題として。日本の政府が用語説で、韓国であろうと朝鮮であろうと、そんなものは用語なんだ、そんなものは国籍をあらわすものでも何でもないんだと言うから、それを信じて国籍欄というものの記載を韓国にした人がいるわけですね。そんなものを信じた人が悪いといえば悪いかもわからぬ。それじゃあまりひど過ぎるのじゃないか。日本政府が初めからそれは国籍なんだということをはっきり指示しておけば、そういうふうな悲劇というものは生まれないで済んだわけですよ。そこに行政的な責任というものは当然私は出てくるのじゃないかと、こういうふうに思うんですがね。これは大臣なりあるいは入管局長が私の質問に対して書きかえを認めていいというようなことを言ったわけですから、大臣なりあるいは入管局長から答えてもらいたいと思うんですがね。
  248. 八木正男

    政府委員(八木正男君) お答えいたします。  ただいまのポイントですけれども、単なる用語だから安心して書きかえておったという論も立ちますけれども、同時に、自分がどこの国の国民である、韓国の国籍を持っているか持っていないかというようなことは、決して簡単な問題ではございません。そこで、ある韓国人が市町村の窓口へ出頭して、私は韓国国民ですとみずから自由意思で言明し、その裏づけになる韓国民登録証というものを提示して、このとおり私は書類の上でもちゃんと国民の登録は受けているんだと、だから韓国と書きかえてくれと言われたときには、日本の政府としてはそれをそのまますなおに受け取ることは当然でございまして、私どもがいまになって解釈を変えて、過去にさかのぼって非常にむずかしくしたというふうに一部言われておるようでありますけれども、しかし、国籍というのはそろ簡単に用語だからとかなんとかいうものではないと思うのです。そこで、問題は、その書きかえた後にも、何回も登録がございました。現在まで八回登録の切りかえがございました。ですから、たとえば、韓国にちょっと旅行しに行ってきたい。ほんとうはおれは北鮮系だと。しかし、ちょっと韓国へ旅行に行きたいんで、便宜上国籍を一時韓国にしておこうというような気持ちでやったとして、そうしたら、用が済んで韓国である必要がなくなった場合には、その次の登録の切りかえのときに戻しておけばいいわけです。それをほったらかしにしておったというのは、やはり自分は韓国民であるという意識を持っておったに違いないと私は思います。  そこで、結論といたしまして、この解釈に基づいて今後われわれが処理していきます段階に、過去においてその国籍欄の記載について本人がどういう状態のもとにどういうような形式で申請をしたかについて十分な説明を聞いて、私どもが納得できる場合には朝鮮と書きかえますし、納得できないときは、いやしくも一国の国籍を明確にとったという場合には、その国籍を持っていないという証拠がない限りは書きかえられることは非常にむずかしいのじゃないかと思います。
  249. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なぜ国籍の問題をやかましく言うかというと、いろんな問題に関係してくるわけですね。たとえば、強制退去の問題に関係してくるわけですね。韓国の国籍を持っておれば、今度の日韓協定によって、入管令の二十四条なり、あるいは永住権のある場合でも強制退去できるわけですね。韓国は引き取る義務を負うわけでしょう。ところが、朝鮮と書いてある場合には、北へ帰せといっても、国交がありませんから、北は引き取る義務はないわけです。こういう点において事情が非常に違うわけですね。それから兵役法の問題でもそうですね。韓国の兵役法のいま四十七条ですか、在外にある場合には徴集の延期なり免除をすることを得と。これは閣令の定むる手続をとればできるということになっていますけれども、これがいつ兵役法が改正になるかわからないわけです。改正になってきて、そうして日本にいる韓国人も徴兵検査の対象になるというふうに韓国国内法で改正になれば、当然徴兵検査の対象になり、軍人にならなきやならない義務ができてくるわけです。こういうような点が非常に大きく違うし、その他たくさんの違いがあるわけですから、非常に重要な問題に私はなってくると思うわけです。いま局長の言われたように、確かに本人が自分の意思で十分承知の上でこの国籍を取得したと言いますけれども、国籍を取得するという観念がはたしてあったかなかったかが問題なのが非常に多いわけですよ。ということは、日本が国籍欄の記載というのは符号だ符号だと言っているから、だからたいしたことはないんだというふうに考えたのが私は相当あると思う。考えたのはけしからんといえばあれかもしれませんがね。あれははっきり国籍なんだといって前からずっと指導しておれば、そんなことは起きないわけです。それがはっきりしていないから、符号だ符号だと言っているから、そういう非常に悲劇というものが生まれてくるわけですね。いま入管局長が言われたように、自分の本意ではなくしてそしてそれをやった者もあるだろうし、いろいろな具体的なものが違いますから、そういうようなものをよく調べてもらって、そしてあなたは衆議院でも血の通った行政をやりたいと言っているわけですから、気の毒ないろいろな状態その他によって韓国にかわったけれども、当然朝鮮にかえてもいいというようなものが出てくれば、その書きかえというものは認めてもよろしいじゃないかと、こう思うのですが、この点についての、大臣でも局長でもいいですけれども、これはあらためてしっかりとした形で答弁を願いたいと思います。
  250. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) その場合によりまして一つ一つよく慎重に考えまして、法規の範囲内においてできるだけのことを考えていきたいと考えております。
  251. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 入管局長、いま最後に言われたのは、衆議院でも血の通った行政をやりたいということをあなた言われていましたね。それはどういう意味ですか、具体的にですね。
  252. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 私の申しておりますのは、たとえば、まあ例はいろいろな例があると思いますが、たとえば出生届のときに、人に頼んで届け出をしたというような場合がございます。その場合に、頼まれた人がよく考えないで、本来一家みんな朝鮮と書いてあるようなうちに生まれた赤ん坊に、出生届の際に韓国というふうに書いてしまったというような例もあるようであります。それから、先ほどお話しのように、小さい子供のころに、親が一家全部韓国の登録をした。自分が大きくなってお嫁に行ったところが、婚家先が全部朝鮮となっておる。ああいう集団的に住んでいるところですから、そういうことはいろいろ問題になるので、何とか書きかえてもらいたいという陳情がたびたびあって、そういうような場合にいろいろな事情をあわせ考えまして、その人が一番、何といいますか、生活していく上に幸福にやれるようなことについて、しかもわれわれが法律規則に違反しないでそれを適宜直すことができるならば、なるべく好意的にやってやろうというつもりでございます。いま大臣の言われたできるだけのことをしたいとおっしゃいましたその真意というのはそういう点でございまして、たとえば、これは本来が誤りであったと明瞭に資料の裏づけのある国籍でありますれば、これはもちろん個人の一方的な意思だけで国籍が取り消されるわけじゃありませんけれども、そこに記載されるに至った当時の個々の事情を調べまして、同情すべき点、あるいは書類や何かの上で不備な点があったりしたような場合には、そういう点に主眼を置いて、本人に一番都合のいいような方法をできるならばやっていってやりたいというのが私どもの方針でございます。で、これは御承知のとおりにいろいろなケースがございますし、一がいにここですぐに思いつきませんけれども、いろいろな場合があると思いますので、その場合に応じて十分にお互いに納得のいくような方法でやろうじゃないかということを部内でも申しております。
  253. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 総理ね、この法的地位の問題はたくさん問題があるので、まだうんと質問したいわけですけれども、私の与えられた時間が、同僚のあれでしますから、ありませんけれども韓国人になった人とならない人との間の、日本の政府がいろいろな面で、直接とは私言いませんけれども、間接的に差別をすることが出てくるわけですね、現実問題として。例はたくさんあるんです。たとえば、相続の場合なんかも出てくるんですね。戸籍謄本を北のほうはとれませんから、南でないととれないものですからということで、南の国籍をとらないというと戸籍謄本がとれない、結局相続登記もできないというようなこともできてきたり、それから細君の関係日本人が北朝鮮の人と結婚した場合と韓国の人と結婚した場合とが違いが出てくるとか、あるいは国有地の何かの払い下げとか賃借りだとか、こういうふうな問題でも違いが出てくるとか、それからいろいろな政府金融機関の金融の場合でも、「韓国」とある者には貸すけれども、「韓国」とない者、「朝鮮」とあれば貸さないとか、こういうような具体的な差別が現実に起きているわけですね。一々こまかく申し上げませんけれども、これは、基本的にやはり同じ在日朝鮮人なわけですから、そういうような差別はしないということを、私は総理から、まあ約束というか、はっきりさしていただきたいと、こう思うのです。約束というかどうかは別として、差別はしないということですね。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 詳細には、また事務当局から説明さしたいと思いますが、かつては日本人であった、そうして私どもとは雑居もしていた、こういう関係である。これが、分離国家ができて日本国籍を失った。国籍取得は、それは希望する国と本人との問題ですから、日本政府がその国籍を、どちらを選びなさいとか、これが望ましいとかなんとか言えた筋のものじゃない。これは本人とその国との問題できまる。ただ、私どもが考えたいのは、韓国との間に今回の条約ができて、そうして在日韓国人の法的地位というものがきまる。しかし、北を選んだ諸君、もっと正確に言えば、韓国籍を選ばなかった諸君というものが、この取りきめどおりにならないことは、これはわかるだろうと思いますが、在来から日本で受けていた、雑居していた、その状態に非常な変更を与えるということでは、これは気の毒だ、かように私ども思います。韓国人の法的地位と同様なものというわけではなくて、在来日本にいて、そうして享受していた日本においての権益、それに非常な変化がないようにと、こういうような扱い方を、ただいま、しようとしているということでありますので、これは、もっと正確に言えば、二通りのものがやはりできるということになるだろうと思いますが、しかし、その人にとってみれば、在来から日本で受けていたその待遇は、今回の条約ができた、できないにかかわらず、変わりはない、こういうものでありたいと、かように指導しております。
  255. 藤田進

    ○藤田進君 総理は、非常に慎重に、入念な考慮を払った御答弁でありますが、しかし、時とともに、法的地位が、条約協定あるいは国内法等、一連の措置によって確立を、韓国国籍についてはする。で、時とともに、その待遇も、旧来よりも変わった状態が明確に起こり得るといった心配があるので、佐藤内閣になっても、予算委員会において、それらの待遇について、稲葉委員の質疑と同様の趣旨の質疑を行なった際の答弁では、簡単に要約いたしますと、韓国国籍を持つ人に準じて不公平のないように扱いたい所存であるという御答弁があったわけであります。いま、それと若干ニュアンスの変わったような答弁でありますが、従来の議会における御答弁と、いまのそれとは――従来のものは私が要約して指摘いたしました。準じて差別を行なわないようにということであります。これとの違いが起きたのか起きないのか、この際明確にしておきたいと思います。
  256. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしたのでございますが、誤解があると困ります。これはたいへん重大な問題ですから。在日朝鮮人として在来から受けていた権益はやはり維持していくと、こういうことです。在日韓国人ということで、たとえば永住権を認めるとか、こういう問題は、これは特殊の地位だと、かように御理解をいただきたい、かように私は思います。なお、詳しく、たとえば社会保障の点はどうなるかとか、これはどうなるかとか、具体的問題等が必要ならば、事務当局から説明いたさせます。
  257. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 先ほどの稲葉委員の御質問は、相続の場合の証明とか、あるいは日本人の女子が朝鮮人と婚姻した場合という問題であったと思います。  相続の場合は、確かに、仰せのように、北の国を日本政府としては承認しておりませんので、北の政府の発給した公の文書を、日本政府として正式に認めるわけにまいらないことは当然でございます。ただしかし、本人がいろいろの資料を持ってまいると思います。たとえば、戸籍謄本を持ってくることもあり得ると思うのでございます。現実には、北鮮の戸籍謄本はございません。現在までのところ、ございませんけれども、万一そういうことがございますれば、北鮮の政府がつくったものだという意味ではなしに、これは事実上一つの資料として、われわれが考えをまとめる材料にすることはできると思うのでございます。  それから、日本人の女子が朝鮮人と婚姻をいたします場合でございますが、これは、韓国人と婚姻いたしますと、日本人の女子は当然に韓国の国籍を取得することになっております。その後の相続関係も、韓国の民法によりまして、戸主相続なり、財産相続が行なわれるわけでございまして、日本人であった妻も当然にそういう相続権を持つわけであります。ただ、北鮮の朝鮮人と婚姻いたしました場合には、これは必ずしも国籍を――国籍といいますか、向こうでは「公民」と言っているようでございますが、公民たる資格を取得しないようでございます。そこで、婚姻関係そのものは、これは国際私法上の問題になります。準拠法といたしまして、韓国の民法が適用になるのか、あるいは北鮮地域に行なわれている法規が適用になるのかという問題が出てくるわけでございまして、私どもとしましては、現実の朝鮮の実態を考えまして、韓国の支配地域以外の、言いかえれば北の地域の人たちと婚姻いたします場合、あるいはその他の財産権的な法律行為も同じでございますけれども、その人たちの属する地域に行なわれている法規とか慣習法、こういうものによって法律行為が行なわれる、こういうふうに見るべきだと思っております。したがいまして、もしも婚姻がそこで成立するといたしますと、それに伴って妻の身分も取得するわけでございます。ただ、残念ながら、北の地域にどのような民法が施行されておるかということは私ども確認できませんので、内容的なことを申し上げることは、ちょっと不可能でございます。  それから、財産の取得の関係の御質問がございました。これは、実は「外国人の財産取得に関する政令」というのがございますが、おそらく、これをおっしゃっているのじゃないかと思いますが……。
  258. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、そうじゃない。国有地の場合。
  259. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 国有地の場合――私ちょっとよく問題がわかりませんですが、その辺の区別をしておるかどうか、所管でございませんので、お答えいたしかねるわけでございます。
  260. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間があれなものですから、これで終わりますが、私は、いままでの法的地位の問題の中で、いま言ったのは、まあ国籍の問題で、日本の政府のやり方が、行政の指導が非常に不徹底であったということから、本人が、ほんとうの真意でなくて、韓国籍を取得するんだという十分な意識がなしで取っておる者が相当あるわけですね。そういうようなところなどの問題があって、そういうようなものに対しては、いま出たような問題に対しては十分血の通った行政をしてもらわなければなりませんし、同時に、韓国人と、そうでない者との間に永住権で差がつくのは、これはもうぼくは、しようがないと思うんですね。しようがないというか、あれだと思うんですが、それ以外のところで、具体的な行政で、直接間接差異をつけるということがあっては絶対ならない、こういう点ははっきりしなくちゃいけない、こういうふうに考えるわけです。法的地位の問題について、たくさんまだ問題んありますが、あとに問題を残しておきます。  それから、前に話した基本条約の問題にいたしましても、あるいは、そこから出てくる四条の国連協力の問題についても、それが日本の憲法との関係で、具体的にどこまでできるのか、どこまでできないのか。これは遠い将来の問題ではなくて、私はこれは聞かなかったのですけれども、たとえば常任理事国になるためには、これは兵力を提供しなければならぬわけでしょう。そこがはっきりとしているかどうかは別として、大体やはり常任理事国になるためには、兵力提供の問題が起きてくるわけです。これは、国連憲章で言う義務かどうか、ちょっと問題としても、そうなってまいりますと、当然、日本の憲法との関連が、将来、日本が常任理事国になることを考えると、起きてくるわけです。こういう非常に大きな問題などもあるわけですし、在日の米軍なり、あるいは国連軍に対する協力が、いわゆる強制措置として、非軍事的措置なり軍事的措置の中で――軍事的措置は、兵力と便益と援助ですか、この三つに分かれるわけですが、それぞれにおいてどこまでが許されるか、どこまでが許されないのか、非常に大きな、むずかしい問題があるわけですけれども、これは十分解明できませんでした。椎名さんは、この前、そういう点について統一見解を近い将来出すと言っていましたけれども、まだ出てないわけです。  いずれにしましても、そういう点について、これは非常に大きな問題でありますから、将来の問題であるかもわかりませんけれども、国連の諸問題と日本の憲法との関係について、政府としても、統一的研究をはっきり近い将来させるということは当然私はお約束願えると、こう思うのですね。そのお答えを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。いろいろな場合を想定して。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの稲葉君のお尋ねは、たいへんむずかしい問題であります。ただ、政府といたしましては、絶えずそういう問題について研究を遂げるというか、研究を続けていくこと、これは当然のことであります。しかし、その研究を一々発表しろと、こういうようなことになりますと、いろいろ誤解を受ける筋だと、かように考えますので、研究がまとまってしまって、そして政府の意思決定ができる、そういうときには、もちろん内密にしておくところのものではございませんが、中間発表等はあまり急がれないで、政府は、御趣旨のように、十分検討しておけと、こういうただいまの御注意として、ありがたく私ども拝聴して、勉強さすつもりでございます。
  262. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最後に。私のは、まあそういうように聞こえたかもしれませんけれども、もう統一見解というものを、国連との関係で、はっきり出す必要がある段階じゃないか。非常任理事国になるわけですからね。そうなれば、もう常任理事国になることも、まあ近いかどうかは別として、国連中心主義ということをしっかり言っている以上、日本の憲法との関係が非常に問題があるわけですよ、各方面にわたって。だから、想定される各部門について、単に研究されるだけでなくて、当然、ある段階において発表していい段階が来るのではないかと、こう私は思いますから、そういう段階は、もう来ていると私は思っているのですがね。あなたのほうは、まあ来ていないと言うかもわかりませんが、私は来ていると思うから、そこで、はっきりさすべきだと。それをさすことによって、かえって逆に、いろんな面であなたのほうが攻撃を受けたりなにかする危険性があるから、させたくないと、こういうふうにとれるわけですね。それはまた逆に、痛くない腹を探られるわけですよ。朝鮮の動乱がさらに再発した場合に一体どういうふうになるかということをここで明らかにすると、まずいから、いまの段階で明らかにしないのだと、こういうふうに勘ぐられる危険性があると、ぼくは思うのです。だから私はこのことを申し上げておるのです。これは、あなたのほうでお答え願えれば願いたいと思います。はっきりしていただけませんか、朝鮮動乱に関連して、国連軍との関係日本の憲法との関係。痛くない腹を探ぐられるだけじゃないですか。だから、ここらあたりで、はっきりさせたほうがいいのじゃないですか。
  263. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私がお答えしたとおりでございますが、ただいまの状況で、軍事的な行動に出るというようなことは、ただいまの憲法から考えられない。外国においてですよ。そういうことは考えられない。これはもう何度も申し上げておるとおりでございます。ただいまのお話で、たとえば、国連というものを、平和機構としてこれはどうも十分でないじゃないか、これからもう少し変わっていく方向があるのじゃないか、あるいは警察的機能というものは、もっと国連の平和的機能として十分発揮すべきだと、こういうような点も、いろいろ希望が出ておるわけです。そういう意味から、たとえば憲法と、ただ単なる警察的な機能の場合にはどうなるのかとか、こういうようなことは、いろいろ研究していると思います。思いますが、基本的には、どこまでも憲法の平和条項、これは守り抜く、この立場でございますので、いろんな意見が出て、議論としてはなかなか関心を持たれるかもしらぬけれども、ただいまの状況では変わりはない。ただ、これから安保理事国になる、これは常任というわけではございませんが、非常任に立候補するとか、そういうようなことで、だんだんわが国の責任も重くなるということ、そういう場合にいろいろ要求されたらどうなるか、それらの事柄については研究しておく必要がありますから、御注意もありましたし、十分に検討しておきたいと思っております。
  264. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  265. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 渡辺勘吉君。   〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕
  266. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 具体的にお尋ねをすることにしますが、漁業協定の第一条に、「両締約国は、それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国が漁業に関して排他的管轄権を行使する水域として設定する権利を有することを相互に認める。ただし、一方の締約国がこの漁業に関する水域設定に際し直線基線を使用する場合には、その直線基線は、他方の締約国と協議の上決定するものとする。」――第一条の第一項にそうあるわけですが、まず、外務大臣に伺いますが、このいわゆる専管水域、この際に直線基線というのがあるわけですね。この直線基線の問題については、一九五八年の海洋法会議にわが国からも出席して、そうしてこの条約にある直線基線の項に触れていかなる意見を出したか、これ々まず伺います。
  267. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長から……。
  268. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 直線基線の制度につきましては、新しい制度でもございますし、乱用されるといけないということで、若干、これを抽象的な形でなくて、具体的に制限したほうがよろしい、そういう意見も述べ、また共同提案国として、ある案文を提示したことがございます。しかし、この案は、四カ国共同提案という形でございましたが、結局採用されなかったいきさつがございます。
  269. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その提案した内容はどうなんですか。その内容を聞いているんです。抽象的なことを聞いているんじゃない。時間がないから、具体的に質問したことには具体的に答弁してください。
  270. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 四国共同提案は、次の内容の規定を加えようというものであったわけでございます。「一般原則として、直線基線のために許される最大限の長さは十海里とする。その基線は、第一項によって正当とされる場合に、海岸線の突端の間、この突端と海岸から五海里以下の鳥の間、またはこのような島の間で引くことができる。もっとも、この直線基線上のどの点も海岸から五海里以上でないならば、より長い直線を引くことができる。」
  271. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ただいま紹介がありましたが、わが国としては、この海洋法会議で、少なくとも長さは十海里、また海岸からの幅については五海里ということを提案し、なお、それらの沿岸国の乱用を厳に戒めた当然なる発言をしておるわけであります。  まず、このことを踏まえて、私は以下、具体的にお尋ねをいたしますが、これも、何べんも要求して、まだ解決がつかない資料の問題でありますが、韓国国会の議事録、この中に、この点に触れて、るる韓国の担当大臣が述べておるんでありますが、この前の資料要求に関しては、椎名外務大臣は、韓国にその交渉中である、これだけの答弁でおったんですが、その交渉がいつなされて、回答がまだ来ないんですか、どうですか。国会の審議に非常に差しつかえるということで、もちろん急いで善処されたと思うのですが、その経過はどうですか。私の質問の上には、これは重要な資料でありますから、あえて、その経緯並びに提出の見通しを伺います。これは、大臣、あなたは総括的にこれを所管しているんでしょう。いつ一体韓国に正式に議事録の提出を、了解をオファーしていますか。
  272. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 衆議院におきましても、参議院においても、この問題については、理事会で与野党の間にまだ話がついておりません。それから、これは韓国の了解を得なければならぬ問題でございます、まず、理事会の間で一致した御意見に基づいて、いずれ政府のほうに来ると思いますから、政府のほうは韓国の了解を取りつけ中でございまして、まだ返事が来ない。
  273. 藤田進

    ○藤田進君 関連外務大臣、それは違うんだ。資料、なかんづく国会議事録については、もう委員長の手元まで出ている。委員長の手元からあと、どういう会議でどうするかということになっておりますから、連絡が事務当局からなければ、そこのところは、そういうふうに答えていただきませんと……。
  274. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いずれにしましても、これを極秘扱いにしてほしいという向こうの注文でございますが、それではどうも役に立たぬというようなお話で、その点も話が十分についていない、こういう段階でございます。
  275. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうすると、市販されている資料を私は利用するよりほかはないんですが、政府がやっぱり確認した資料でないと、どうも話がいつも逃げられるので、それで要求しているわけです。それでもう政府の手元にあって、外務大臣から委員長まで提出しておるものですね、その扱いという事務的なこともまだできないのですか。それはあなたは、この前の本委員会で、その点については韓国交渉中であるという答弁をしたので、その交渉がいつなされ、その結果がどうなっているかを聞いているのです。もう秘密会とか理事会の問題とかということでなくて、ここではっきりしたあなたの答弁があったんじゃないですか。これから私があなたに尋ねるのは、それは知らぬ存ぜぬと、従来の経過からいってそうさせないために、私は権威ある資料としてここに提出を求めるわけです。
  276. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 議事録の問題は、これはもともと天下に公開する目的をもってつくったものではない、いわんや外国の国会においてこれを公に利用するということは、その当該国の了解を得なければならぬのでございますので、それを取りつけておりますけれども、向こうは了解をしない、こういう事情でございます。
  277. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、こういうことで時間を使いたくないのですけれども、一体アメリカで安保条約を審議する際には、わが国の決議録が全部向こうへ出ているでしょう。われわれがここで今後の大きな問題になるところのものを審議する際に、韓国の見解とわれわれの見解が違うのじゃなくて、もう完全に白と黒の相違を来たしておる。そういう点を明らかにしないで、単に両政府間だけで癒着したような一つ方法をとり、国民はその政府間の癒着に対して激しい反抗を持っておる、抵抗を持っておる、そういう一つの大きな外交交渉上の矛盾をいまあえてしているわけでしょう。それをはっきりするためには、政府から責任を持って資料を出してもらわぬと、私の審議には非常に支障を来たすので聞くのです。一体あなたがここで、向こうに交渉すると言った経過はどうですかということを聞いている。交渉しましたか、その後。
  278. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 交渉したのでありますが、これは了解を得られないという事情でございます。その交渉した経過については、事務当局からお答えさせます。
  279. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 資料の問題については衆議院段階から御要請がございます。韓国に駐在しております当方の代表者を通じまして、先方に要求を繰り返してしたのでございますけれども先方といたしましては――これは事実上、町に流れたりしていることは事実でございますが、たてまえとして、向こうの議事録は公開のものではないから、それで、そのまま外国の国会に提出されるということは因るということで、ずっと一貫しておるわけでございます。
  280. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もうこういうことは、これ以上私はただす勇気はありません。それでまあほっと一安心という顔をされては困るのです。実際、あなた方が日本国民に向かって答弁することと、韓国国会韓国国民に言うていることとは、白と黒の違いがある。そこを明らかにしないで、何でこの審議というものが慎重にできますか。そういう基本点をいつまでもあなた方はほおかぶりをして、時間が切れればそれで一丁上がりというようなことでは、こういう脆弱な外交の問題点というものは基本的には解決されない、むしろ矛盾が深まるだけでしょう、そのしわ寄せは国民大衆じゃないですか。もう少しまじめに国民の声というものを聞く必要がある。私は、韓国の本会議なり特別委員会のそういう議事録を、いま長々と読むことはいたしませんが、少なくともこの直線基線の点については、向こうの総理も、あるいは無任所長官も、あるいは車農林部長官も一致して言うていることを要約しますと、韓国はこの直線基線を実施したことによって二つの大きな利益をあげたということを言うていますね。一つは、日本交渉の当初には、通常基線――低潮線から三海里を主張した、それが交渉のまずスタートでしょう。それを押しのけて直線基線をかなりの個所において設置することに成功した。しかも、この直線基線の引き方が非常に有利なために、仁川では沿岸から七十海里の線が直線基線として引かれた。その他たくさんあります。そこで、結局において、日本は三海里を堅持しておる、日本国内において。韓国は今度の直線基線の引き方によって最長は七十海里を取得したんだ。その基線の外に十二海里を設定した。日本は依然として三海里オンリーである。韓国は二つの大きな利点をあげたと言っている。韓国が大きな利点をあげたということは、日本国民が相対的に大きな不当の損失をこうむったということになる。これは韓国の言い分ですよ。決議録にちゃんと出ている。あなた方が認知しないだけだ。そういう大きな不利益をわが国に及ぼしておるという実態を、総理は一体どうお考えですか。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日韓間におきまして、李承晩ラインができて以来、漁業方面では非常な問題がしょっちゅうできている。そうして本来、私どもは、李承晩ラインなるものは、これは国際法上も不法不当だ、これを認めていない、かように申しました。引き続きしばしば抗議を申し込んでおりましたが、しかし現実の問題としては、漁船が拿捕される、あるいは漁民が抑留される、こういうような事態を引き起こしております。この点で、とにかく日韓交渉を妥結したい、そうして平和関係を樹立したい、その一つの眼目でもあったと思います。この関係でいろいろ交渉を持った。それぞれの立場でそれぞれが主張しておりますので、なかなか――わが国の漁民保護に私どもは万全を尽くしたい、かような立場で折衝いたしました。また、韓国側は、韓国漁民の力が弱い、いわゆる零細漁民であるから、特にそれらの点に考慮を払ってくれろ、こういうことで交渉いたしたわけであります。で私は、今回の漁業協定は、あるいは日本が譲り過ぎたのではないか、かような批判を受けておることも承知いたしております。本来三海里の領海説を、これが非常な後退をしている、かような意味で非難もされていることも承知をいたしております。あるいは漁獲量、隻数等についてもいろいろ議論があり、譲り過ぎではないかという非難を受けていることも伺っております。しかし私は、両国の国交正常化のために、また両国漁業の今後の繁栄のためにも、今回のこの協定は、いわゆる互譲――双方とも互譲の精神によってこれができ上がっている、こういう意味で満足すべきことではないだろうか、かように思います。ことばをかえて申しますならば、今回の協定ができ上がるにつきましては、双方が妥協したその所産である。これを率直に私どもは見詰めるものであります。その意味におきまして、あるいは批判が一部から出ておることも承知しておる、こういうような実情でございます。
  282. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私、いずれ具体的に、また農林大臣に伺いますが、その前に、政府から出した資料の中に地図があります。地図がありますが、あれは韓国韓国国会へ出した地図とは違う。韓国韓国国会説明した資料というのは、準備してありますか。当然あると思うのだが、あるならば、それをここへ張ってもらいたい。
  283. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 韓国国会に出しました地図というものは承知いたしておりません。先般、理事懇談会で、韓国側の地図があるはずであるという点が議題になりましたが、韓国で発表いたしました条約の解説書の中に、韓国が書いている地図はございます。国会へどういう地図を出したか、私どもは承知いたしません。そういう趣旨で御説明させていただきます。
  284. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 非常にそらぞらしい答弁で、私は納得ができない。韓国の議事録をしさいに読めば、たとえばトロール禁漁線あるいは機船底びき禁漁線、そういうものが説明の中にある。車農林部長官は「次に、ここにある」というような発言をして――これは決議録に載っておる。それには、いま言ったように、日本政府が示したような資料以外に、いま言ったようなトロール漁船の禁漁線なり、あるいは機船底びきの禁漁線というような線を引いたものを前にして、車長官は国会説明をしておる。なぜそういうものが出てこないのか。  それから、もう一つは、国会提出資料として、「韓国政府の「大韓民国日本国間の条約および協定の解説」」というのが外務省から出ておりますが、これの二十八ページ、二十九ページにはそれぞれ図面が出ておるが、これはこんな非常に小さいものに印刷した関係で、なかなか読みにくい。これはおそらくやはり韓国で出したものを翻訳したのだと思うが、これと、私がいま言ったように、考えられる禁漁線というものを引いた地図、そういうものがなくて、一体どうして、こういう協定の審議ができますか。資料が非常に片手落ちである。それで、この「解説」の図面を見れば、私は先ほどの説明で七十マイルと言いましたが、この「解説」の二十八ページの図面には、仁川から九十マイルまでが一つの専管水域として例示されておる。六十五マイルの場所もある。あるいは七十マイルのところもある。そういうふうに非常に不当な線が引かれておる。これは私が冒頭に伺いましたように、海洋法会議で、少なくとも五海里、その長さというものはもう十海里、沿岸国はこれを乱用してはいかぬというたのが一九五八年です。何年もたたないうちにこういう妥協をあえてするということは、わが国の海洋政策に基本方針ありやということを私は疑わざるを得ない。これはいずれ具体的に、これからの問題の中で問題点を究明するつもりでありますが、一体、こういう図面を水産庁長官は知らないと言うが、私でさえわかっているようなものを、なぜ知らないで済むのか。まあ知らなければやむを得ないが、そういうものが出せるか、出せないか。その図面をここに張って、そうして目で見、やはりそこで、私は具体的にこれから基線の問題、あるいは共同規制水域の問題、あるいは李ラインの問題、あるいは漁業資源共同調査水域の問題、トロール禁漁線の問題、いろいろな問題は、やはりこの正確な韓国が提出した資料と政府が出した資料とを比較してこれはみなければ、審議の資料には不十分なんです。大臣、これはやはり出せないという事務当局説明で、それでいいんですか。
  285. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) このトロールの禁止地域に入らないということは、これは向こうの沿岸にそういうところがあるわけです。これは韓国も入らない。それからそういうところは日本も入らない。それは日本の沿岸にもそれがあります。そういう禁止区域には両方とも入らないということになっておりまするので、そういう点は誤解のないように御了承願います。
  286. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それはいま地図の扱いの問題を質問しているのですが、はからずもその答弁に私は聞き捨てならない答弁がある。大臣、トロール禁漁線の中に韓国は五十トン未満を入ることをちゃんとあなたは確約しているじゃないですか、日本政府は。何です、いまの答弁は。所管大臣としてそういう無責任なことができますか。日本ははいれないが、韓国は五十トン未満のトロール船は今後も永久に入ることを日本政府と約束しているじゃないか。
  287. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) まず資料の点について申し上げますが、先ほど申しましたとおり、韓国国会でどういう地図を張って議論をしたか、これは速記録もございませんのでわかりません。ただ韓国が書いておる地図は、お配りいたしました韓国の刊行物でありますところの条約書の解説の中に入っておるということを、先ほども申し上げました。したがいまして、韓国国会で審議した地図をここで出せとおっしゃられましても、取り寄せようもございません。  それから第二点の地図の問題でございますが、衆議院でも地図の問題が出ましたので、お配りをいたしたわけでございます。で、協定上の必要な部分の地図はそこに入れたわけでございます。いま先生が御指摘の禁漁漁区の問題は、協定とは別に合意議事録で、それぞれの国が自国について禁止しております、自国船について。底びきというように根こそぎ魚をとる漁業については、底びき禁止区域をつくっているわけです。日本も対馬、五島あるいは北九州につくっているわけでありますが、そこには韓国の船は入らない、韓国韓国法律で、水産業法で自国船に禁止している地域は入らないというのが、お互いに入らぬことにする措置をとろうというのを合意議事録できめているわけであります。これは自国船にも押えることでございますから、日本国もそれを尊重しよう、こういうふうにきめたわけでございまして、その範囲は、韓国法律によりまして、政令等で定められておるわけでございまして、御必要ならば別途御提出いたします。
  288. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まず私は、わき道に入らぬで、図面を要求しているのですが、これは議事録にはないというけれども、議事録を読めば、「次にここは」と、こう言うておるじゃないですか、農林長官は。それは図面を言うているじゃないですか。ここでは、こういう解説に、二十八ページに、もう全く印刷不鮮明な資料が、韓国の資料としてしか出ていない。それからうちのほうで出したものを見ると、そういうトロール禁漁線なりあるいは機船底びきの禁止線もなければ、私が必要とする何マイル沿岸から離れているかというものも、正式にはこういうガリ版刷りでは十分はっきりしない。いろいろな附属文書には出ておりますが、なぜ地図にそういうものがはっきり韓国では示されておるものが、わが国では出せないのか。私は、いま言ったように、仁川ではもうこの沿岸線から九十マイルも離れたところが一つの基線になっておる、これが非常に大きな利益を韓国が受けたと言っておる。そもそもが、日本では三海里を主張した、スタートは。妥協に妥協を重ねて、必要以上の屈辱的な結果を経て、ここに極端な例としては、九十マイルというものが沿岸から離れたところに線が引かれた。それを彼らは大きな利益を得たと言っておる。その外にさらに十二海里を引いたところが一つの専管水域である。二つの利益を得たと言っておる。現実に私は、これはわが国の漁業にとっては重大な問題だから伺っている。たとえば済州島の南のほうについても、韓国国会では、大臣は、本来なら沿岸線から引いた十二海里を専管水域とするのが考えられたけれども、幸い韓国の主張が通って、三十二の岩礁等を考慮して実際は十六・五マイル、こういう非常な利益を得た。これは二九ページにあります、済州島。これは申し上げるまでもなく、世界の宝庫といわれる黄金漁場である。ここに四・五マイルも大きな譲歩をしたということが、また問題になる。そういうものを詳細に私は地図により明らかにお尋ねをしたいわけであります。しかし、なかなか、いまからそれを出せと言ったって、事務的にも間に合わぬだろうし、出す意思もないようだから、私は地図の問題は、非常に残念でありますが……。
  289. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。この地図の点で、これはわれわれ漁業関係協定なりをずっと見る場合に、地図と見比べて実はこの資料を拝見しておるわけなんです。したがって、この地図というものは、両政府間で交渉をやる場合に、統一的な地図というものはつくられたのかどうか、それを私は確めたいんです。交渉をやっておるときに、地図を見ないで、ただ東経幾らだとか、北緯何度といったような、そういう抽象的な概念だけでやっていたのか、地図をちゃんとそこへ一枚置いて、そうしていろいろ交渉をやったものか、そこから私まず聞きたい。私は、当然地図をきちんと置いて、そうしてやられたものだと思う。そうしたら、その同じ地図をわれわれが――両方の国会で見ると、こういうことは当然できるわけなんで、それはどういうことになっているんです。地図は交渉の過程においては一体どういうことになっているんです。地図なしでやっているんですか。
  290. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) もちろん地図を見ながらきめるわけであったのでありますが、その経過でございます。しかし、きめるときには、東経何度、それから北緯何度と、こういうことできめるわけでありますが、地図をながめながらもちろんやっております。
  291. 亀田得治

    ○亀田得治君 地図をながめながらきめたと、その地図はどこにいま保存してあるのですか。交渉場裏で使われた地図はどこに保存してあるのですか。
  292. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  協定にもございますとおり、結論的には、北緯何度と何度の線をつなぐ線、そこからあるいは直線基線は小鈴島とどことどこの島をつなぐ線ということできまるわけでございますから、交渉のつどそれぞれ海図をもってやればいいわけでございまして、一枚の海図をもとにしてきめたということではございません。地点を定めるのには海図をそのつど用意してやったということで、地図できめたということではございません。
  293. 亀田得治

    ○亀田得治君 私の聞いているのは、ともかく地図を使ったことは間違いないわけで、その地図はどこにあるかと聞いておる。破って捨てたわけじゃないでしょう。どこにあるのですか。
  294. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  地図は、海図がございますれば、交渉のつどその海図を使えばいいわけでございまして、何か特定の地図でそれをきめて、地図の上で確定し合ったということでないのでございまして、協定でどこからどこに直線基線を引くかというときには、地図を見ながら議論はしなければなりませんが、小鈴島と何島をつなごうということがきまれば、どの地図であっても一向差しつかえないわけでございます。
  295. 亀田得治

    ○亀田得治君 そう簡単にいかぬですよ。文章に書くときには、海図によって数字で書いていけるわけであります。しかし、常識として、こういう複雑な経過をたどっておる交渉でありますから、当然両方のほうでその地図に対してずっと線を入れてみるということはされておると思うのです。そういうことは全然されないで、線は入れないで、そうしてただ地図だけを見てやっていたとおっしゃるわけですか。地図にはやはり線を入れたんでしょう。
  296. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) たとえば協定二条を見ていただきますと、そこに点が明示されて、それを連ねる線ということになるわけであります。したがいまして、それを議論するときに、たとえば二百五十万分の一の日本の海図を使って議論をして、そこで線がきまって、それで両方よかろうということになれば、その地図は要らない。翌日の会議はまたほかの地図を使っても一向かまわないわけであります。地球上の点を定める交渉でございますから、地球上の点を地図に落とすのには海図を使えばいいわけです。
  297. 亀田得治

    ○亀田得治君 たとえば直線基線ですね。直線基線、仁川の西方、こういうところは、この政府が出した資料と、あなたが指摘する韓国の解説ですか――解説の中にある資料、その点だけを見ても、だいぶん地図の書き方が違うわけですね、一目見ただけで。これはどういうことなんですか。仁川から九十マイルの線を韓国側の資料では引いて、そこにこう直線基線が引かれておるわけですね。この日本政府から出した地図ではそういうふうになっておらぬように思うのですが、どうなんです、この一点だけでは。だから直線基線などについてはどうも全部が明確でないようですからね、この文章であらわした点だけでは――ことに北のほうになると。したがって、それはやはり地図でお互いにさらに確認しておくということは私は当然なことじゃないかと思うのですが、どうでしょう。   〔理事大谷藤之助君退席、理事草葉隆圓君着席〕
  298. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御審議資料に提出されております直線基線に関する交換公文というのがございます。西海岸におきましては、小鈴島、西格列飛島、於青島を貫くこういうふうに結ぶ線と書いてある。したがいまして、西海岸におきます直線基線は、小鈴島から始まって南に下がるわけでございます。小鈴島は仁川よりはるかに南の緯度にある地点でございます。したがって、仁川沖に直線基線が引かれてはおらないわけであります。それは地図によって論ぜらるべきではなくて、交換方文によって論ぜらるべきものと、かように考えております。
  299. 藤田進

    ○藤田進君 何で論じられようが、そんなことを解明する必要はないのです。審議するときに一目りょう然わかるという意味もあって、こういう資料を出したのでしょう。この一枚の袋に入っていた資料、これは、日本政府の資料、日韓漁業協定関係水域図、それから韓国のほうが出したということで、これまた日本政府が、南東アジア課長のはしがきがついて、国会提出資料、四十年九月、外務省、「韓国政府の「大韓民国日本国間の条約および協定の解説」」の中の二十八、二十九ページと出ている。この地図が明らかに違うのです。審議するのはこれでやれと言っても、そんなことはルールが国会できまっているわけじゃない。委員としてわかりやすく、渡辺委員が要求するように、この地図なら若い人なら見えるはずだし、掲示板もあるのだから、それを出して掲示して……。これを見ると、休戦ライン、三十八度線以北にラインが及んでいるのだな。そういった点をだな、北緯何度、東経何度、そんなことを言ってここで審議して、速記も困るだろうが、聞く人も、あなた方答弁するのに困るでしょう。実際にこれが規制が行なわれる際には、一々そんなものを出してじゃなくて、ちゃんと海図に載せて、海上保安庁もそうだろうし、一般の漁民もそうだし、やっているじゃないですか。そういうやはり身の入った審議をするために、しかも能率をあげるためには、それに協力しなければいけませんよ。毎日海図を持って行って、きょうはあれ、あしたはこれというふうに変わっていったような答弁だけれども、そんなにひまと備蓄があったかどうかしらぬけれども、最終的にはこういうことになるなあというものは、これは農林大臣も地図を見ながら、条約の文書の上では別紙地図によるというわけにもまいらぬから、これはここに書いてあるように、たとえば三十七度三十分N、百三十一度十分Eとか、それは文書にする場合はそうなります。これをプロットしたところの地図というものがわれわれに提供されているのだから、これによって説明してくれということは、時間的な経済から見て当然なことじゃないですか。やりなさいよ、それを。そうしたら、あなた方がやはり出しておるものと対比して――何でもかでもひねくれて悪くとるような根性は直してもらいたい。
  300. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) このお配りいたしました地図を拡大いたしました地図は用意いたしております。理事並びに委員長のお許しを得れば掲示いたしたいと思います。   それからついでに申し上げますが、お配りいたしました地図で直線基線の小鈴島というところに、私のほうで使いました地図も直線基線が入っておるわけでございます。条約本文を地図に落としたものはこの前御配付いたしましたし、かつこれから掲示いたします地図と同様でございます。
  301. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうも地図でだいぶ貴重な時間をとったんですが、それじゃ委員長、いまの丹羽君の言うたのをすぐ出さしてください。  そこで私は、その地図が出ない間、抽象的にまたことばの上で伺いますが、この直線基線については、申し上げるまでもなく、この海洋法の中で、領海及び接続水域に関する条約の第四条にうたっておるわけですね。この四条には、直線基線の採用をうたっておるのが第一項で、第二項は、その直線基線を引くにあたっては、沿岸の一般方向から著しく離れて引いてはならず、またその線の内側にある水域は内水制度に服させるため領土と十分密接に結びついていなければならない。その他まあうたっておるわけであります。そこで、わが国も、一九五八年の会議では、乱用してはいかぬ、少なくともその長さは十海里を限度とする、その幅というものは五海里ということを四カ国共同で提案をしておる。これは海洋国日本の主張であります。その主張からいって、これは大きい拡大した地図を見なければ物理的にどうもぴったりきませんが、韓国が言うているように、本来あるべき姿を逸脱して、韓国としては国際法を超越して有利な線を確保したと言うておる。これはあなた方が出しかねる一つ国会議事録にある。そういうことを言わしていいんですか。そこで、その線の引き方が非常にこれは問題だ。わが国の漁民が集中的に出漁しておったこの地域に、これだけの不当な大きな規制を、なぜ一九五八年の主張どおり堅持をしなかったのか。あまりにこれは漁業協定の内容をまとめるのにあせり過ぎた一つ一つの所産であると言わざるを得ない。慎重審議というのは、十四年間かかったからいいということじゃない。国家百年の大計をここに確立するにあたって、これは単に日本国だけではない。このことを認めたことによって、ニュージーランドは、アメリカは、その他の関係国はですね、続々として専管水域十二海里を宣言し実行する傾向にあるでしょう。これはいずれあとで私は具体的にお尋ねをいたしますが、すでにニュージーランドにおいては、ことしの九月十日にこの水域十二海里については国内法を成立しておる。アメリカではバートレットが上院の商業委員会にこれを提案をして、やがてこれも成立するだろうといわれおる。こういう世界の大勢の中に置かれておる日本の海洋政策というものは、これはまあ話は飛躍して十二海里に入りましたけれども、その前のこの直線基線というものについては、なぜ従来の主張を堅持しなかったかということは、きわめてこれは国民立場から言って看過し得ざる重大な問題であると思うわけであります。ことにこの半島南部の済州島のこの線の引き方に至っては、屈辱外交以外の何ものでもない。これは関係者がひとしく指弾している点からいって、明らかであります。禁漁区を引いたり、いろいろ当分の間の妥協線を引いておるけれども、そこがわが国漁民の何百年来のこれは黄金漁場である。これを不当に狭めた線を引いて、それで協定を結んで批准をするとは、これは一体何たることだと私は言わざるを得ない。それで私は、このニュージーランドの国会国内法の成立といい、あるいはアメリカのこの十二海里の専管水域国内法の上程といい、そういう方向にあるときに、わが国が依然として三海里を主張しておるという点に、いささかこれはまたお尋ねをしなければならぬ基本的な問題があるわけであります。  これは外務大臣にお尋ねをいたしますが、たしか衆議院の特別委員会でも、大臣は日本は領海三海里をとっておるという意味の答弁があったのでありますが、韓国については領海は何海里と理解をしておられるのですか。
  302. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり三海里と了解しております。
  303. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 韓国の領海が三海里であるとすれば、同じく一九五八年の海洋法会議で米加共同提案が出された、あの六海里のアウター・シックスの問題、それに対しては、五カ年間の漁業実績があるものに対しては十年間の入漁を認めるという立場に立っておる。そういう場合に、今度の十二海里という線を引く場合に、アウター・ナインというもの、アウター・ゾーンの具体的な表現としては、韓国の領海が三海里だと外務大臣は明確に答弁をされましたから、その答弁に基づいてさらにお尋ねをするのでありますが、その十二海里のうちの三海里は領海であるとして、その外側のアウター・ゾーンの九海里というものは、海洋法会議における、あるいはその後における各国の動向等から見て、特に欧州の漁業条約の傾向から見て、当然外側の九海里に対しては入漁権をこれは行使すべきものである。なぜそれを完全に入漁権を放棄して、十二海里に対しては専管水域としてこれを認めたのかという点は、一体従来の――繰り返しますが、わが国の国際会議における主張と首尾が合わないじゃないか、場当たりじゃないですか、そのつど外交じゃないですか。
  304. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 後ほど地図で説明をいたしますが、これは先ほど総理からもお話しのとおり、漁業協定についてはいろいろの点において話し合いをしたところがあることは、これは常に申し上げておるとおりでございます。  それから済州島の問題についても、常にお話を申し上げておりまするとおり、一時非常な大きな直線基線を持ってまいったわけです。それに対しては、それはいかぬと、やはり原則として低潮線によっていこう、こういうことで線を引いていく。そういうことでやりますというと、そこに韓国のほうも、その原則には了承しておこうと、ただし、そういう問題になりまして、両方がそこに長らくその問題を論議をしておったのでありまするが、結局その外郭線との間に重なるところが出て、両方に食い込みができたと、いまそれを説明をいたさせますが、そうすると、そこに紛争の原因も起こることでもあるから、暫定的にその間はその一部をこの韓国のほうの漁業水域の中に入れていこうと、こういうことにこれは大局的に見たわけであります。と申しますのは、李ラインの問題も実質的に解決いたしておりまするし、また漁業実績の面においても実態を大体において了承されておるのでありまするから、この程度は大局的にそういうことに見たらよかろうといったようなことで、この済州島の問題も、この線の引き方についても、日本としては大局的にその点を了承したという経過にあるわけであります。  なお、図によってひとつ御説明を申し上げます。
  305. 藤田進

    ○藤田進君 渡辺委員の持ち時間もあまりないので、ポイントだけ説明について指摘しておきたい。  それは、まず第一に、赤城農林大臣時代におけるいま説明になった、こっちが譲ったというのが、済州島の東北並びに西北、この辺の事情、それからいわゆる済州海峡の内水化の事情、それから休戦ラインないし三十八度線以北に及ぶ規制、これらについて経過とそのポイントと、それから結果がこういうふうになったということをまず事実関係を明確にしてもらう。
  306. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その前に、結果だけを私は聞いては意味がないので、特に済州島の線の引き方については五回も会談を重ねておる。五回譲歩したということです。――いいですか、その経過を詳細に説明するのは当事者でしょう。大臣がやってください。一番大事なことじゃないですか。事務じゃないですよ、これは。外交折衝でしょう。大臣が説明してください。
  307. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) まず地図の説明を申し上げて、それからまた説明申し上げます。
  308. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 御説明いたします。  まず、直線基線が先ほど来非常に問題に相なっておりますが、直線基線は、ここからここの部分と、それから巨文島から蔚山湾の南のこの部分と、迎日湾の四点だけにきめてございまして、全部について直線基線をきめたわけではございません。それから、なぜその部分に直線基線をきめたかといいますと、お手元にもございますように、島嶼が非常に多い、島が非常に多い。したがって、この島の低潮線から十二海里ずつ線を引いていきますと、シャボン玉がふくらんだような形に、たくさんのシャボン玉がふくらんだような形になりまして非常に複雑でございますので、そういう場合は直線基線を引いている。これが一九六〇年の条約の際の着想でございます。したがってこれはやたらに引くべきものでない。したがって今回はこれにきめて、今後引くときはあくまで両国の合意事項であるということに相なっております。  そこで、問題は、いま御質問の済州島の問題でございます。で、直線基線は先ほど渡辺先生もおっしゃったとおり、至近距離で本土に沿うものでなければならぬという主張があるわけであります。したがってこのように直線基線を引いたのは、本土に――ごらんになっておわかりのとおり、ほぼ沿っておるわけでございます。ところが済州島がもめましたのは本土、この島と済州島を結んで直線基線を引きたいというのが韓国の考え方でございます。このように本土のこの線、本土のこの線と著しく方向を異にして直線基線を引くわけにはまいらないというのが、わがほうの主張でございます。したがって、原則的には済州島の低潮線から十二マイルのこの円と、それからこちらから別の立場で引いた直線基線を引くならば引いてそれからの十二マイルの線で得らるべきである、それがわが方の主張である。一番根本論は、島をつなぐのにはあまりにも離れておる島であって、直線基線に引くのは合わない、こういう引き方ならば合うけれども、こういう引き方は合わないということで、このまま議論を詰めますとこういう部分と、低潮線でつくりましたこの部分との間にこういうくぼみができるわけであります。このくぼみはあってもいいのじゃないかというのが、当初のわが方の主張でございます。向こうは直線で一挙に引きたい。したがいましてそれはのめないということで、ここには直線基線は引かないことに最終的に相なりました。したがって、この点は別の交換公文で暫定線ということで、直線基線問題には取り上げられておらないのでございます。そこで、この切り込みを譲ったのは先ほど大臣が申しましたとおり、一つ技術的な立場で図面の上ではこのように食い込むことを引くことは可能でございますが、実際に船が入りまして、その鳥帽子のような海域の中で操業をして、そこから出たの入ったのということでトラブルになるということは適当でない。この今回の日韓漁業協定、取り締まりというものは新しい事態でございますので、その関係になれるということがどうしても必要でございまして、暫定的にここはわかりやすい線にしたと、こういう経過でございます。  それからもう一つだけ申し添えさせていただきますが、一九五八年のジュネーブ会議で領海の幅が議論されました。で、結局話がつきませんで、一九六〇年のジュネーブ会議では領海をきめる方法として領海六マイル、外側に漁業水域六マイルという十二マイル案が英国とカナダから提案されました。これは否決になりました。したがって先ほどの御質問の中での領海の問題は、現在国際的にきまっておりませんで、領海六マイル、外側に漁業水域六マイルの思想を合わせて十二マイルの漁業水域という立場からだけを取り上げてみたらどうかというのが欧州漁業協定あるいはイギリス、ノールウェー協定等の問題でございまして、漁業に問題を限定し領海と話を別にいたしまして取り上げておる傾向でございます。で、日韓におきましては、したがって漁業水域の問題として領海とは別の問題として今回十二マイル引くということにいたしました。
  309. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 北鮮もやってください。
  310. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) それから休戦ラインは、御承知のとおりに臨津江の川の中心とする線とこちらの高城を貫くところが休戦協定による地点に相なっております。そこで、専管水域というのは、技術上他人が入ってきたときに排除できて初めて裏づけのある専管水域でございますので、これは解釈論でございますが、実質的に排除できる排他的管轄権を行使でき得る地域にしか専管水域は引けないはずであります。地図の上で幾ら書くことは御随意ですが、実効を伴わないという立場におきまして休戦ライン以南において初めて韓国は専管水域を引けるという見解を私どもはとっているわけでございます。  それから共同規制水域は、これは旧李ラインでございますが、共同規制水域は、ここから牛岩嶺高頂から始まりまして、こう来て朝鮮半島を全部くくっておるわけでありまして、この線の内側が共同規制水域であるということが、協定本文二条に書いてある。ただし専管水域を除く、及び領海を除くと書いてございますから、専管水域を設けられた場合には、ここからここが共同規制水域になります。設けなければ、領海からが共同規制水域になります。  北鮮に関しましては、先ほど申しましたとおり、排他的管轄権は及ばないはずでありますので、北鮮の領海からの外側が共同規制水域となる、かように了解をいたします。
  311. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもこの地図を見ると大体ここをこの線で引いて、ここに当然出てくるものを暫定的に近距離にしたということが非常に問題であって、御承知のようにここが黄金漁場をなしています。ここで紛争があるかというと、特別なじゃない、全体に紛争が予想される。そういうときになぞここを譲歩したかということは、日本の漁民にとっては重大な問題になっている。それから韓国でも言うておるように、ここからもかりに一つの線を引くとすれば、十二海里で引けるものをここら辺の岩礁にさらにとらわれて、これに四・五マイルを有利にここを引くことができたと、こう言うておるわけです。それから、こういう線を引く前提として、ここの巨文島からここに至る間の直線基線というのは、最後の段階で直線基線に譲歩した線であって、こここそが私は通常基線によって処理さるべきものであったのが、この点はまた非常に問題になり、ここら辺のさらにより以上妥協した線を構成している、こういうことが言えるわけでございます。  いずれ、私はこのことについてもっと納得のいくような質疑をいたしたいのでありますが、先を急ぎますので、いま外務大臣なり、あるいは、その他から御答弁がありましたように、韓国が三海里である。私は、もとより、この海域に関する条約のその領海幅については、ひとつのまとまった方向づけがなされていないことも承知をいたしております。しかしながら、日本が三海里を主張した、そういうたてまえから韓国も三海里であるということについて、これは統一見解があったとするならば、直線垂線とは離れた次の問題をお尋ねするわけでありますが、なぜ、その領海から三海里を外にしたひとつの十二海里に至る九海里を入会権として、当然、これは海洋法会議においても列国もそういうひとつの国際慣習になっておるものを、なぜ、わが国はそういう入会権を放棄したのか。この点についての明確なお答えを願いたいのであります。
  312. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 地図はよろしゅうございますか。
  313. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ええ。
  314. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いまの問題でありますが、これは先ほど水産庁長官からも説明させましたのでありますが、この領海の問題を離れまして、今度の漁業水域の問題なり漁業協定については、領海には触れておりません。そこで、漁業水域に関しましては、いまお説のとおり、六海里と六海里、つまり、全体で十二海里というものを認めていこうということが、先ほどジュネーブの海洋法会議でありましたわけであります。それは委員会のときに通っておりまするけれども、総会のときにはわずかの差でこれは承認されなかったことは、御存じのとおりでございますが、そういうことで、そのときには、その提案されたものは六海里――十二海里のところへ外から六海里、いわゆる、アウターシックスといって、その入漁権を認めようとする、そういう提案であったわけでございます。そういう関係でありまするから、今度の漁業協定の際においても、やはりこれを日本側としては強く当初、主張いたしておったわけでございます。しかし、韓国側といたしましては、非常に小さな島嶼がたくさんありまするし、また、韓国の沿岸漁業の実態からいきますと、ほんとうに島と島とがつながっておるところであるから、せめてその関係だけはシックスを、いわゆる、入漁権を認めないでいただきたいという非常に強い要求がございました。そのためにこれらの問題はかなり長らく論議されたのでございまするが、結局、韓国側の漁業関係というもの、また実際、韓国の非常なる貧弱な漁業状態というものを見、またあまり遠くに出て行けないところの韓国の零細――日本も零細ですけれど、日本に比較して非常に零細的な関係がございまするそういうところで、島の間からしょっちゅう日本の漁船が見えるということではたいへん――せめてその間においてぜひ行けるようにしてもらいたいというような要求もあり、かたがた日本側といたしましては李ラインの実体的撤廃という問題、それからまた共同規制内その他におけるいわゆる漁業の実態を主張いたしてまいったのでありまするが、大体そういう点についてほぼ目的を達したという関係もありまするので、大体それらのことを、その点を大局的にこれは入漁権を主張しないということにいたしたわけであります。
  315. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまの農林大臣の答弁は了解に苦しむ。大局的の大はこれは退く退でしょう。退却的に認めた、何ら退却したことに対する納得する説明にはなっていない。私はこういうことはそういう答弁でその責任をごまかすというわけにはまいらぬと思う。島嶼がたくさんあるから漁場じゃないですか。その世界の宝庫というものを、当然主張し得る権利を放棄して――韓国の漁民はかわいそうであるということは私も同感であります。しかし日本の零細漁船、漁家も韓国の漁民と同じくかわいそうであります。これらが当然入漁し得る権利を、政府の一方的な措置によって放棄されたというその損害は、私はこれはいまのような納得のいかない答弁では、これは理解できない。  まあこれは枝葉にわたりますからこれ以上お尋ねはしませんが、外務大臣の御答弁になったわが国の領海三海里というのはこれはいつからそういう宣言をし、一体この領海三海里はどういう態度で今後臨まれるのか、これをひとつお伺いしておきます。
  316. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三海里をさらに拡張しておる事例はないのでありまするので、従来の領海三海里という原則はいまなお国際慣行として認められておるという了解のもとにわが国は領海三海里、韓国についても同様三海里と、こう了解しておるわけであります。
  317. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 今後はどうですか。
  318. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今後も同様であります。
  319. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これはまたたいへんなことを伺うものであります。それから質問に対してお答えがないから、私がこう理解しておるということで、間違っておったら訂正を願いたいのですが、わが国の三海里を宣言したのは一八七〇年、明治三年であります。明治三年旧暦の七月二十八日付太政官布告第四百九十二号、この内容は普佛戦争に関する中立宣言の第二条であります。「港内及内海ハ勿論ニ候へ共外海之儀ハ距離三里以内両国交戦ニ及ヒ候儀ハ不相成尤軍艦商船共通行ハ是迄通差許候事」云々とあって、同じ八月の二十九日に太政官布告五百四十六号で、三里とは着弾距離ということばが見られるので上の三里は三マイルの意味と思われる、こういう解釈があるわけであります。したがって、明治三年に宣言したものは、大砲の着弾距離を想定して三海里というものを宣言して今日に至っておる。古色蒼然たるものである。韓国も三海里である。日韓双方とも今後も三海里を堅持するという意味の御答弁でありますが、それでは政府にまたお尋ねをしますが、一体三海里を宣言しておる国と、六海里を宣言しておる国と、十二海里を宣言しておる国及び多少領海とは相違いたしますが、十二海里のこの専管漁業水域を採用しておる国とのその動向から見て、今後もわが国並びに韓国は、特に韓国は私は問題だと思うのは、この日韓漁業協定が成立した暁には、やがてこの漁業専管水域十二海里は領海として宣言するような意味国会における丁総理の答弁がある。これは単に決議録だけではなしに、いろいろなまた資料にそういう点が見える。そういう点から見ますと、いま外務大臣が、将来も韓国も三海里、日本も三海里、国際の海洋動向からいって、そういう方向はいかがかと思われる。それで、私は将来の動向をお尋ねいたしたのでありますが、その点は間違いなく今後ともわが国は韓国ともども領海三海里を堅持するということで間違いがありませんか、念のため再度お尋ねをします。
  320. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国のことはしばらくおくとして、わが国としては、目下の三海里というのは国際慣行として広く認められておるところでございまして、それに従ってまいりたいと、こう考えております。
  321. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 領海の点については、だんだんこの経過年数によってどうも三海里を主張した国が減ってきております。たとえば一九三〇年の法典編集会議では、三マイルを主張した国が十八国であります。十二マイルを主張した国が一カ国であります。ところが、その後国際法委員会で、現在のジュネーブ条約の草案をつくる際の資料として、一九五二年に国際法委員会の発表した資料によりますと、三マイルを主張している国は十六カ国と二カ国減っておる。十二マイルを主張している国は五カ国と十二マイル主張国がふえてきておる。そうして、これがさらに十二マイルという国がその後ふえる動向にあるというふうにいわれておるわけであります。でありますから、私は日本のこの立場から三海里を今後も主張することは、今後の国際漁業あるいは海洋法を採用する動向からいって、かなりここで再検討をする段階に来ておるのじゃないかというふうに考えるわけであります。私がお尋ねしないのに、総理もあるいは関係大臣も李ラインが実質的に撤廃になったということをおっしゃっておる。私は時間の都合でこの点も十分触れなければならぬ予定でありますが、これは時間があったら触れる問題でありますけれども、せっかく総理以下がそれに触れられましたので、私はここでお尋ねをしたいのは、季ラインが実質的になくなっていると言われますけれども韓国では、このことばは平和ライン、断じてこれは撤回しない、こういうことを国会で言明しておる。これもおそろしくその解釈が不統一である。おのおの国内向け国家間とは話が全然違う、こういう問題がある。それだけではなしに、このいわゆる李ライン宣言の中には明らかに大陸だなに対しての主権宣言があるわけであります。日本は一体この大陸だなに対しては、大陸だな条約の際には、ベルギー、ドイツとともに反対した三カ国の一つになっておる。しかるにドイツはその後、国際動向から見て、やはり大陸だな条約にはこれは賛成するという態度をとっておる。現在反対をしておるのは、日本とベルギーと、もう一カ国だけですね。しかしそのほかにも反対している国があるが、その反対している国は、むしろ専管水域を二百マイルを主張したほうが有利だという事情で大陸だな条約に反対をしておる。そこに持ってきて李承晩ラインでは、平和ラインと国防ラインと、この大陸だな問題と二つが残っておるわけでありまして、これはもう厳然として残しておると言うておる、韓国では国会で。大陸だな条約に対しては一体どういうわが国は方向をとるのか。韓国は大陸だなをはっきり主権宣言の中にまだ生きておるという、これすらないと言うのですか。その李承晩ラインが事実上なくなったということについて、これは総理からひとつ。
  322. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ただいまの、いろいろの問題がありますが、領海の問題については、先ほど外務大臣からお答えを申し上げておるとおりでございます。いまの問題は、私、渡辺委員お話しになった気持がわかる点は、漁業政策として一体こういう問題をどうするかという点が含まれておったんじゃないかと推測するのですが、そういう点からいきますと、今度の問題はやはり漁業水域の問題で、領海の問題に触れておらぬということを申しましたが、確かに日本は遠洋漁業の非常に発達しておる国で、御存じのとおりでございます。そういう関係がありまするので、公海の自由、いわゆる漁業及び公海の関係の自由を尊重いたしまして、でき得る限り遠洋漁業の利益を獲得したいという気持が一つあるわけです。それと同時に、日本としてもやはり資源の保護をしていきたい、こう二つの考え方を持っておるわけです。ところが先ほどお話のように、沿岸国としてはやはり十二海里というやつが非常にふえてきております。お話のとおりでございます。そういうことでありまするけれども日本の遠洋漁業の発展もその観点から見まして、そうですか、それは非常に発達しておるなら十二海里、というわけにはいかない実情にありまするので、その間においていかに調和をとっていこうかということが、この日本のいま現在の政策の一番大きな問題でございまするので、その点を考慮しながら、もちろん領海としては三海里を主張しておるのでございまして――そのために領海として主張しておるというのじゃなしに、日本漁業の実態からそれを主張しておるということを、先ほどそういうお気持ちであったと思いまするので申し上げたわけであります。  それから、いまの大陸だなの問題でございまするが、これは日本も同じようないまの思想からいきまして、大陸だなの条約は一九六四年のあれは六月十一日でしたか、大陸だなの条約が結ばれておるのでありますが、これはお説のとおり日本も入っておりません。しかしこの問題も同じようなことでご、さいまして、大陸だなの問題についても、日本は従来どおり、これを認めていないというのでございます。それからこの韓国のこの問題につきましては、非常にその点が内容がまた違う点が若干あるかと思うのでございますが、これはこまかい問題になかろうかと思うが、しかし、実質的においては魚の面までも大陸だなによっていこうというような規定になっておるようでございますが、こういうことでありますと、非常に、ますますこのわれわれの主張と遠い、離れておるわけでございます。したがって、大陸だなの点については、そういう点から見まして、現在の漁業協定に即応しない、合わないそういう部分については、日本側はもちろん認めないのでございまするし、また韓国としてもこれを主張し得ないというふうに考えておるわけでございます。もっともこの大陸だな以外のいろいろの問題もございまするけれども、やはり全体として、この漁業協定に合わない面、いわゆる反する面については韓国側もこれによっておる、すなわち漁業資源の保護法の点からいいますと、これははっきりと漁業協定に反するものは主張しないということに、もちろんなっておることは御了承のとおりでございます。
  323. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大陸だな条約に一体反対していると言いますが、最初これが成立した以後、たとえばフランスが入っておる。フランスが入った態度というものは、私は日本も学ぶべきものがあると思う。日本がなぜ大陸だな条約に対して抵抗しているかといえば、もとよりこの大階だなにおけるタラバガニ、これの規制が大きくまあ問題になっておる。したがって、これは日本とソ連、アメリカ三国のこれは共通の課題であります。しかしながら、フランスが従来大陸だな条約に加盟を逡巡しておったが、ことし加盟したというときに、この問題になっておるところの定着性種族については立場を留保した上で加入しておる。そしてやはり世界の大勢の中で主権をできるだけ有効に行使しようという一つの趨勢の中にある。そういうやはりフランスのような態度というものも、私はわが国の今後の海洋政策の中にはかなり学ぶべきものがあるのではないか、そういうことを当然大臣としては十分所見の中にお伺いできるものと期待してお伺いしたのであって、単にかたくなに大陸条約は反対である、三海里は依然として今後も堅持するとかということでは、私は海洋国日本の今後の方向としてはいかがかと思われる一つの大きな段階に来ておるのではらいかということからお尋ねをいたしたつもりであります。  なお、公海条約なり四つの条約のうち漁業資源の条約はまだ発効していないようでありますが、これに対して、政府はそれではどういう今後この条約に対する態度をおとりになるのでしょうか。四つの条約のうち成立をし発効しておる三つの条約、この条約に対して日本はどういう態度をおとりになるのか、領海条約、公海条約、大陸だな条約、この三つに対して、日本はいつまでも従来のようなあいまいもことした態度でいくのかあるいは条約締結する方向に進むのか、それらの一つの考え方というものをこの際明らかにしていただきたい。
  324. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) まだ事務当局レベルの話でございまするので、さよう御了承いただきたいと思いますが、現在、大体領海及び接続水域に関する条約と、公海に関する条約につきましては、これに加入するという方向で検討いたしております。順調にいけば、近く国会に御承認をお願いしたいと、かように考えております。  大陸だなに関する条約につきましては、御意見もよくわかるのでございますが、まだそういう結論を事務的にもいたす段階に至っておりません。
  325. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 少し問題の角度を変えて伺うわけでありますが、この協定には共同資源調査水域というのがあります。この共同資源調査水域というのは、わが国としては、どういう区域を考えておるのか。もとより、これは日韓共同漁業委員会等でいろいろ議を経て政府に勧告するわけでありますが、一体政府としては、この協定を結んだ当事者として、この共同資源調査水域というものは、  いかなる区域をお考えになっているか。
  326. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この水域の件については、御存じのとおり、範囲及びどういうことを協定するかという問題については、まだきめておらないのでありますが、共同委員会においてよくこれは協議をいたして、そうして、それを両国に勧告する。その勧告を受けて両国が協議すると、こういうことで、ずいぶんいろいろ手続を要することになっておりまするが、これは日本側といたしましても、やはり資源保護の見地に立って、科学的な調査をやっていこうという問題であると思いますが、それらのいろいろの問題について、もっと具体的に検討を加えて、そうしてきわめていきたい、かように考えておるわけであります。
  327. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 要するに、何もまだないと、白紙だというふうにまあ承るのでありますが、私はどうもいろいろな点をこれから伺うんですが、いま伺った範囲でも、どうも政府の考え方というものは非常に、ありていに言えば、たよりがないような感じがする。というのは、韓国国会における政府の考え方というものを比較して私は言うんであります。韓国における国会説明を見ますとですね、これはたいへんなことを考えておるわけです。これも政府があえて出さない資料でありますから、知らぬ存ぜぬと言えばそれまででありますけれども、権威ある韓国国会で大臣がるる述べておるのでありますから、私はやはりそれはそれなりに信用してしかるべきものだと思う。それによりますとですね、たとえば韓国水産物の大宗を占めるところのグチ――イシモチ魚、これが甕津半島で産卵して東シナ海で冬眠して、再び回遊してとの共同規制水域あるいは専管水域に回ってくるんだと、したがって、このイシモチ魚を保存するためには、少なくとも、この東シナ海、黄海というものをこの調査水域に指定して、そのデータがまとまった上においては、資源保護の立場から大きく規制を加える必要がある。したがって、日韓漁業協定は、日本政府は十年という期限を要求してきたが、わがほうはこれを五年に打ち切った。五年の歳月の中に、たとえば、いまのような共同資源調査のデータによって大きくこれを規制するという一つ協定の内容の改定につながる意味もあって、これは五年に契約期限を短縮したんだということは、国会の議事録に載っておる。そうなってくるとですね、これは単にいま引かれておる共同規制水域を越えて、従来国際法を無視してやってきたところの李承晩ラインを越えて、より広区域の一つ水域というものが考えられる問題があるわけであります。また、韓国でも、李承晩ライン以上の大きな有利な線が予想されるということも言うておる。一方、この李承晩ラインが実質的には解消したと放送する反面に、韓国では李承晩ラインは厳として存在しておる。その三つの宣言のうちの魚族資源は、一応漁業協定でその中に解消されたけれども、国防ラインと大陸だなの問題は厳存しているという中から、さらに、その区域としては、この調査水域が具体化することによって、資源保護のための強力な規制をする必要があるという展望をうたっておる。あるいはアジ、サバの魚族資源については、南九州で産卵し、黄海で産卵し、東シナ海で冬眠をする。これも韓国の水産物の立場から言っては、調査水域にこれを指定しなければならないということを国会で言うておるわけであります。顧みて、わが国は、その点については一切がっさい民間というか、何というか、一つの共同委員会にまかせ切り。私は政府の責任いずこにありゃと言わざるを得ない。なぜ、政府自体が、これらの委員会が担当する仕事も、政府が政府間でやらぬのですか。そうして、そういう大きな問題が提起されておる、魚種の問題、区域の問題、韓国ではこれだけのことを明らかに、韓国国民に向かって決意のほどまで明らかにしておる。わが国の農林大臣は、その点については、とにかく委員会が持たれて、そうして、勧告を受けて両国間が協議するというようなことで済まされる段階でありましょうか。このことは、特別委員会で三回も、日を異にして、その委員質問に対して、かわるがわる大臣が答弁をしておる。統一された見解の中に、そういう韓国の今後の共同資源調査水域の方向づけというものが明らかにされておる。もう少し具体的にひとつ御答弁を願いたい。
  328. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) もちろん、この韓国日本関係においては、漁業協力の上において、日本としてもでき得るだけ技術者を送り、また、いろいろの研究材料も提供していこうということを進めておるのでございまして、韓国日本との漁業の問題については、それは非常な径庭があり格差があることは、これはしばしば申し上げたとおりでございます。で、私も、日本としては、もちろん、この資源の調査というものが非常に必要であるので、先ほども申しましたように、これらの問題について、具体的にいろいろのこの調査の問題等について十分検討を加えて進めていきたいと思うのでありますが、いままで、李ラインがあった昨年までは調査も、調査どころの騒ぎでないといったような関係でございまするので、日本側としても十分この資源の保護という問題に力を入れていかなければならないと、こう考えております。  なお、これらの問題に関連いたしまして、漁業の問題は、養殖の問題その他に大きく打ち出していく考えを持っておるようなわけであります。
  329. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 共同資源調査水域について、何かもう少し確たる方針がおありかということを伺っているわけです。全然答弁はすれ違いです。何もなければないとおっしゃってください。あるなら具体的に御説明を願いたい。それだけです。
  330. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  東海、黄海におきます底魚資源、グチ、ハモその他と、それから浮き魚資源、これにつきまして、いま大臣が申しましたように、李ライン内の調査は全く困難でございましたが、以西底びき漁業、それから、それ以外のまき網漁業につきまして、西海区水研を中心に調査をいたしておりますが、それがこの朝鮮周辺のほうにどのように回遊してくるか、いま御指摘の産卵の問題はどうなるかというような問題が多々ございますので、私どもといたしましては、明年度、西海区水研の充実をいたしまして、この関係の調査を充実させる予定にして、予算の準備をいたしております。そして、この調査と並行いたしまして、共同委員会の中の資源部会、同じメンバーが入ることに相なると思いますが、それらのメンバーを通じて、回遊標識調査を通じまして資源の系統を明らかにいたしまして、その上に、どこまでを共同調査水域にするかということについて、日本国日本国の自主的な判断を確立する、こういう立場で、目下、西海区水研の調査の充実ということを取り進めておる次第でございます。
  331. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは伺いますが、韓国側でイシモチの産卵個所、冬眠個所、アジ、サバの産卵個所、冬眠個所というものを具体的に提案してくることは、これは間違いありません。その場合に、日本は南九州方面からシナ海に至るその地域を共同資源調査水域として認めるにやぶさかでないのですか、どうですか。
  332. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  韓国側の見方、あるいは資料等によりまして、グチその他のものにつきまして、ここら辺で冬眠するのではないかという見解があるように私ども承知いたしておりますが、日本の専門家間においては、まだそれをオーソライズいたしておりません。したがいまして、標識調査、回遊経路その他を通じて、そこから問題を取り込むというのが私どもの姿勢でございます。そこで、東シナ海まで及ぶか及ばないかという問題は、標識放流その他の調査の結果から判断いたしたい、かように思うのであります。
  333. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 少しこの点についても、まだお尋ねしたい点がありますが、河岸を変えて、民間信用供与の漁業関係についてお尋ねをしたいのです。これはどうもだんだん審議の経過を伺っておりますと、最初外務大臣は、これは青天井である、民間相互でやるのだから、政府は何らこれはタッチしないという答弁があったのでありますが、しかしながら、だんだんこの内容をお尋ねしてまいりますと、口上書というものが取りかわされておる。決して政府は関係のないものではない、また、韓国側の受け取り方から見ましても、無償三億ドル、有償二億ドル、民間供与三億ドル以上と分けてはおりますけれども、向こうでは全部合わせて八億一千九百七十万ドルというふうに受け取っておる。政府のこれは大きな責任のあるやはり信用供与の課題である。そこで、私はこの九千万ドルの漁業関係の信用供与についてお尋ねをいたしたいのでありますが、農林大臣の間でこの点が最終的に相談されたのはいつで、その相談した結果の内容は、九千万ドルの内容はどういうものであったのか、これをまず農林大臣からお尋ねいたします。
  334. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは、九千万ドルのなには民間供与の問題でありますが、三、四月ごろ、赤城農林大臣当時でありますが、両農相、元の韓国の農林部長官との間に、漁業に関するいろいろの問題、特に漁業協定に関する話し合いがありましたときに、この民間供与についてまた話が出ました。そのときの話によりますと、大体九千万ドルというものを期待する、もちろん民間供与でございますから、政府でどうということは、もちろんこれはなんでありますが、好意をもって九千万ドルの供与ができるように期待するという話になりまして、詳細なことはありませんが、大体零細漁民については四千万ドル、その他について五千万ドルというような話し合いがあったように承っております。
  335. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 当然、これは九千万ドルのうち四千万ドルと五千万ドルという内訳をいま話されましたが、もっと具体的な話し合いが政府間でなされて口上書が取りかわされておるはずであります。これはこの前の亀田委員の問題にも関連して、その口上書を資料として提出要求をしておる。最初は青天井だという答弁だったが、だんだんやはり質疑を通じて、これが政府間の外交上の約束になっておる。外務大臣は、すぐ出すという歯切れのいい答弁ではなかったが、検討した上でという答弁になっております。検討されたでしょうか。委員会はその後ずっと続いておる。あの要求した九項目のプラント輸出その他の口上書は、検討した結果、きょう出してもらいたいと思う。まず、それから順序で伺います。
  336. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私ども約束したのは、漁業の問題じゃなく、一般のプラントの問題、それで口上書と称するものであるかどうか、私はそれに該当するかどうかわかりませんが、たしか八、九件のうちの最終のものを見本として出せば、大体御判断の資料になるだろうというので、具体的な商社の名前等は消してすでに出してあります。
  337. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それは一件だけしか出ていないので、もっと具体的に、もうすでに具体的な資料は、ある雑誌等にも出ておるような経過があるので、もっとそういう審議のために必要な資料は、なまのものを出していいじゃないですか。たった一件を、しかも、具体的な固有名詞を伏せたり何かする必要はない。これは政府が介入して、はっきりと約束を取りかわしている内容でありますから、それがなしに、この民間信用供与のやはり審議も、これはなかなか抽象論で、上すべりだけして進まない。これは出してもらえますか。
  338. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御指摘のございました口上書は、こちらの外務省から代表部にあてた口上書でございまして、配付資料にございますように、みな大体同文のものになっております。要点は要するに、この具体的な延べ払い契約が、いわゆる民間借款のカテゴリーの中に否まれるものであるということ、それから、たしか向こうの産業開発計画等の一つのプロジェクトに含まれている、そういうことを先方が約束する趣旨のもので、大体みな同文になっております。
  339. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。前回要求した資料が、一番最近のものだけをひとつ参考までにと、あとは全部同趣旨だという前提で出されておるわけでありますが、その資料につきまして、一点お伺いしておきたいと思います。  それは、この資料は三つからなっておるわけですが、最初の四十年七月十三日の韓国代表部からの口上書、これによりまして、「日本国政府による早期承認方についてあっせんされるならば誠に幸です。」、こういう結論をつけて日本政府協力をここで求めてきておるわけであります。それに対して外務省から韓国代表部に出した十月九日付の口上書によりますると、大韓民国政府がそれぞれ下に並べてある諸点を確認する場合には、前記プラントの輸出を認める、こういう日本政府の回答になっております。その、これこれの点を認めるならばという中に、その一つは、「一九六五年六月二十二日付の商業上の民間信用供与に関する交換公文1」と、つまり、参考資料として出されておるこの民間信用供与に関する公文ですね、そこにいう「商業上の基礎による通常の民間信用供与の範ちゅうに属するものであること。」、こういうことを一つの条件としてこの認可をする、こう言っておるわけなんです。だから、逆に言うならば、もし韓国政府がこのプラントにつきまして、そのいま条約の審議の参考資料として出ておる商業上の民間信用に含めないと、別なんだという態度をおとりになるのであるならば、このプラントは承認しない、こういう結論もあり得ることが想像されるわけであります。だから、そういうふうに考えてみますると、やはりこの債権債務の主体は民間のもの同士でありまするが、日本政府としては、三億ドル以上の民間信用供与ができるように努力をしていく国際的な私は義務を負わされておる、負わされておるからこそ、このプラントを承認するにあたって約束をしておるところの三億ドル以上にこれは含まれるんですよと、含まれるということを韓国承認してくれるんなら許可しましょうと、こういうふうにこの公文自身からわれわれ判断できるわけであります。全然、政府が言うように、これは民間同士のことで政府には責任がないんだということなら、このような口上書を取りかわす必要なんか私はなかろうと思う。そういう点をこの前ははっきりお答えになっておりません。もう一度この口上書のことば自体から、前回の政府の答弁は矛盾しているじゃないかという点について、納得のいく説明をお願いしたいと思うんです。私は、この前はそのことが質問の主体じゃありませんでしたから、一応その程度で質問を終えておるわけですが、なかんずく、この三億ドル以上の中で、ただいま御質疑になっておる九千万ドルの漁業協力並びに三千万ドルの船舶輸出のための信用供与、この二つについては、私は特に政府としては責任を負わされているはずだと、こういうふうに考えるわけなんです。私は、これは一々また韓国側のものを引き出すのもなんでございますが、具体的にこの交換公文の中に、特に漁業関係のやつは抜き出して書いておるのですね。抜き出さぬやつにつきましても、先ほどのような、このプラントを出すについての両政府で交換されたものを見ますると、やはり政府がこの三億ドルというものを責任を果たさなきゃならぬのだという立場から書かれておる。いわんやということをこの漁業関係協力について言いたいわけです。この口上書についての説明と、それから、なかんずく、この九千万ドルと三千万ドルについて、ひとつ性格をもっとはっきりしてもらいたいと思う。
  340. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 無償三億ドル、有償二億ドルというのとはだいぶ性質を異にするものでありまして、もともとこれは民間の信用供与の問題でありまして、このほかに民間信用供与として大体われわれが容易に想定することができるものは、三億ドル以上を期待できるのじゃないかということを書き添えた。しかし、御説のとおり、これらの問題、プラント輸出等につきましては、許可を要する問題であります。その際に、できるだけその時期を早めてやるとかというような、つまり、政府が責任を持っていないけれど、もなるべく好意的にひとつ指導して、好意をもって取り扱っていこう、こういう程度のものであります。そういうことが、いまお読みになった書類等から十分に感じ取られるわけであります。
  341. 亀田得治

    ○亀田得治君 書類からはもっと強く感ずる。
  342. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それから漁業協力資金という問題、これも韓国漁業の現状から見て、できるだけこれを早く育成をすることに協力してほしいという気持ちが韓国のほうにある。でありますから、民間資金の期待額の中では、どうしても九千万ぐらいは必要だ、そういったようなことを念頭に置きながら、民間同士の資金供与ではあるけれども、信用供与ではあるけれども、そういうことを念頭に置いて、好意的に取り扱ってもらいたいという趣旨のものであると、こう了解しておるのでありまして、特に、政府が特別の具体的な義務、責任を持つというのではないということは、お断わり申し上げるまでもないことではないかと思います。同様に、船舶の問題につきましても、三千万ドル程度は、どうしても期待したい、こういうのでありまして、その問題を取り上げて、好意を持ってこの問題の取り扱いに当たりたい、こういう程度の問題であります。
  343. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは非常に重要な、やはり国際信義にも関する問題だと思うわけです。この条文の読み方につきましては、非常に拘束を受けているように読もうと思えば読めるし、あるいは軽く読もうと思えば読めぬこともない。多少読み方によってニュアンスの違うことは事実だと思う。しかし、実際はどうなんですか。なかんずく、漁業協力につきましてのものは、これは数字まできちんとこう出して、そうしてつくられた文書につきまして、結果において九千万ドルできなかった場合に、日本政府としては、それで責任を感ずることはないのでしょうか。逆の面から聞きましょう。できなくてもいいのだ、はっきりいえば。どうでもいいのだ、もっと強くいえばそういうことになりますね。それでいいのですか、日韓関係は。どうなんです。
  344. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あまりこう突き詰めると、非常に固苦しくなるのでお答えがしにくくなるのでありますが、とにかく、九千万ドル程度はどうも必要であるようだ。ぜひこれは期待したいというのが、向こうの意思であります。そうして向こうとしては、さっき農林大臣がお話ししたように、うち少なくとも四千万ドル程度は、零細漁民のためにできるだけ金利を安くするように期待する、こういう、あくまで期待なんですよ、これは。それで、期待に沿うことができなければこれはやむを得ない。政府は責任を持っているわけじゃないですから、具体的に。ただ、そういう問題が政府の関与する範囲のところに来た場合には、好意的にその問題を促進する、こういう程度のものでございまして、必ずしも九千万ドル、そのうち四千万ドルはこれこれ、五千万ドルはこれこれ、こういうことは責任を持って協力しよう、こういうのではないのであります。その点はひとつ御了解を願いたいと思います。
  345. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ確かめておくが、それでは一ドルもできなくても差しつかえないのだ、そう理解していいですね。
  346. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうような、全く当てにならぬようなものを、九千万ドルも書くというわけはありません。まあありそうなことでございますから、それを前提にして、できるだけ好意をもってこれを処理する、こういうのでありまして、一ドルも出ないとかなんとか、そういう性質のものではない。必ずこれは現実的には、具体的には問題になる。(亀田得治君「ゼロでも責任がないでしょう。」と述ぶ)まあ、しかたがないでしょう、極端にいえば。しかし、そういうことはわれわれは考えてない。(「しかし、そういう場合もあり得る」と呼ぶ者あり)その、夢のようなことを書いたのではないのですから、これは必ずあるのです。
  347. 横川正市

    ○横川正市君 関連。いまの問題、もっと具体的に性格をはっきりしていただきたいと思いますが、日本から、韓国との今度の信用供与と同じような形でですね、借款ないしは信用供与という、そういう方法でやった性格の金と、今回のこの信用供与の韓国向けのこの金とは性格的に違うのかどうか。  それからもう一つは、最近の新聞報道によりますと、佐藤内閣の日韓後の外交路線は対ソ交渉だと、こういわれているけれども、事実は、その前に何か一つ近々の問題が出てくるんではないか。それはインドネシアに対する四千三百万ドル程度の供与を一つの土台にして、インドネシアの国情その他とにらみあわせながら関係を持ちたいという意思表示があるのではないかと報道されておりますけれども、これらの、このインドネシアに対する信用供与というような性格のものと違うのかどうか、これをその供与としてはもっと明確にしていただきたいと思う。  それからもう一つは、この協力資金は、零細漁業に対するところの資金については五%、その他のものについては五・七五%と、金利の内容がきめられておりますけれども、これは一般に信用供与ということで市中銀行を利用するとすれば、こういう金利では市中銀行は金を出すわけにはいかないわけです。輸銀その他の四%の資金を使うとしても、これは国がこれに対して何らかの保証なしには出せない、こういうことにもなるわけで、一件ごとに、口上書取りかわしの問題等々とも関係があって、これらの資金を出すことについて全く政府は拘束をされない、こういうことなのか。吉田書簡という私的な文書でも拘束をされるという判断を統一見解として出されているわけですから、この金額の必要度合い、あるいは日韓の親善関係の政府の答弁等からいいますと、単にこれは信用供与、民間間のいわゆるコマーシャル・べースできめられるものというふうには判断がつかないわけで、その点の説明をしていただきたいと思います。
  348. 西山昭

    政府委員(西山昭君) お答えいたします。  民間信用供与の漁業関係及び船舶関係につきましては、先ほど九千万ドル及び三千万ドルのお話が出まして、これは純粋な民間信用供与、つまり日本の業者が韓国の政府ないしは韓国の業者と契約を締結いたしまして、そうしてほかの条件、たとえば大蔵省ないしは通産省が承認をいたします場合に、いろいろ考慮を払うわけでございますが、いろいろの条件――契約は正当に締結されておるかどうか、また、条件等が日本の政府が通常許可いたします同種の案件について均衡がとれておるかどうか、あるいは韓国側で支払い能力があると判断されるかどうか、いろいろほかの条件もございますが、そういうものをあわせ検討いたしまして、そういう条件がかなっておれば好意的に考慮しようと、こういうことでございまして、資金の手当は、通常輸出入銀行が介入いたしまする長期延べ払いの案件となるわけでございます。したがいまして、協定に基づきます有償の二億ドルのほうは、協定にもございますように、予算上も政府に資金の供与義務を規定しております。しかるところ、この無償のほうは、年間の毎年の予算によります輸出入銀行の資金手当、そういうもののワクの中で処理すると、こういうことでございまして、特別の義務はないわけでございます。したがいまして、契約は、そういう条件で成立いたします場合は、政府は好意的に考える、こういうことでございまして、万一両当事者の間で契約が成立しなかった場合は、政府としては何ら責任はないわけでございます。
  349. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 対ソ及び対インドネシアの問題についてお答え申し上げます。  インドネシアの問題は、先般、副総裁川島氏がインドネシアへ参りましたとき以来、同氏を通じて打診をしてきておるという程度のものでございますが、これに関しましては、いま政府において、どう対処するかということを研究しておる次第でございます。  それから対ソ問題についてお尋ねがございましたが、別にそのスケジュールを立てて、今度はこれ、今度はこれという、別にスケジュールに従っておるものではございませんけれども、対ソ問題としての懸案は、ただいま、領事条約、それから従来よりもより長期の貿易協定の取り結びの問題及び日ソ航空協定の問題等が懸案になっておる次第であります。
  350. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林大臣、あのさっきの漁業関係のですね、民間信用供与について、四月に話がまとまったと言ったが、六月じゃないですか。まあ月は別として――そのときに約束した口上書は、これは資料として出していただけますか。
  351. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この漁業関係についての経過をお話ししたいのですが、ちょうど三、四月ごろに、この漁業協定について非常な熱を入れて、農林大臣と農務長官との間の話し合いがありましたときに、この問題も出まして、そのときに向こうのほうから、九千万ドルぐらい云々ということであり、それから先ほど申しました、零細漁業に対して四千万ドル、その他五千万ドルというのは、きまったんじゃないので、向こうとしては、そういうようなことで進みたいがということです。そういうことで、零細農民に対して、先ほど外務大臣も言われたとおりに、零細農に対しては、金利の安いものをというような話し合いがあって、非常に熱心に朝鮮側として要求されたわけです。そういうことを、たいへんその当時の熱心さがありまして、そしてきまったのは、おそらくみんな全体の民間供与がきまりましたときに、同時にきまっておるわけでございます。だから別に、特別にこれはどうというのでございませんので、そういう関係において、両者間に非常な熱を入れて話があったということでございます。
  352. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私が伺っているのは、そのまとまった結論についての両国の農相間の口上書ができているはずだから、それを資料として提出してほしいということです。提出できるとか、できないとか。
  353. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 資料要求として、先ほど来お話しのプラント輸出の口上書につきまして御要求ございまして、外務省が出す用意をいたしたわけでございますが、いま渡辺先生おっしゃいました漁業交渉中の信用供与に関しまして、口上書が出ておるかという点でございますが、口上書は出ておりません。ただ書簡が出ております。非公式な書簡が出ております。これを提出せよということでございますれば、後刻提出をいたします。
  354. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 では、その書簡の提出を求めます。  委員長、それをひとつ提出させてください。  この書簡には、いま大臣が言いましたように、沿岸零細漁民用として四千万ドル、その他用として五千万ドル。その四千万ドルに対しては、金利五%、その他用としては五・七五%ということになっているはずです。で、そういうことになると、これは当然輸銀等にかなりの融資をさせなければならない。これは四%融資になるだろうと思うんですが、あとそれに一つの一般の商業銀行からの融資というものが出て、そうして総体的にはこの五%の四千万ドルと五・七五%の五千万ドルというものが構成されるわけであります。そういう点については、農林大臣もその輸銀融資なり一般融資なりというものを、十分閣僚としてもこれは御確認をなさっていると思いますが、念のため、その点をお伺いしておきます。大蔵大臣。
  355. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 話はよく承知しております。
  356. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 よく承知しているということは、このことを政府も財政担当の部面からも、十分融資のルート、融資条件、そういうものを具備するように大蔵省としても確認をしておる、こういう意味に理解していいのですね。
  357. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) もともと、ただいまお話がありましたように、この三億ドルの経済民間資金供与は、これは義務を負うものじゃないのです。でありまするから、義務を負わないが、大蔵省としてはその実現に努力をするという気持ちでおります。  で、実現に努力した結果、一体それがどうなるかということをついでに申し上げておきますと、船など、それから船の付帯物資ですね、それを輸出する場合には、業者は輸銀と民間銀行から協調借款を得ることができます。輸銀のほうで八〇%、それから民間のほうで二〇%の資金を供与する、その場合の金利は、民間が八・七%ぐらいに当たります。それから輸銀のほうが四・〇%、これを加重平均しますと四・九五%ぐらいになるのであります。いま問題になっておる交換書簡で、韓国側は一般の船舶については五・七五%、それから零細漁民につきましては五%程度にしてもらいたい、こういうことを言ってきておる。そうして農林大臣は、これが実現できることを期待する、こういうふうに答えておると思うのです。それはただいま申し上げました業者の資金コストが四・九五であるということから見まして、大型の一般のものはこれはもう当然できる、しかし五%のものも努力すればできる、こういうふうに考えます。
  358. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 外務大臣にもちょっと聞きたいのだが……。総理に伺いますがね、実際どれもこれも大事な問題であるから。いま亀田委員質問に対して、口上書にうたっているものすら、極端にいえば、責任も持てないような内容のものだという答弁があり、一方また具体的に、この九千万ドルのうちの四千万ドルは、これは零細漁民用の民間借款、あるいはその他用五千万ドルということについては、輸銀にその全体融資の八割をかぶせて、その金利は四%、それから一般の市銀には八・七%融資で、これを大体交換書簡に沿うように財政的にも裏づけをしておるという具体的な答弁と、先ほどの椎名外相のプラント輸出の答弁とは、はなはだしく考え方が白と黒とのほど違う、腹はそうじゃないかもしらぬが。かりに、これは政府の責任ではないから一ドルも成立しなくても政府はやむを得ないという木で鼻をくくったような答弁があったが、一体総理として、こういう非常にアンバランスな答弁というものが許されていいかどうか、ひとつ総理から統一見解を願います。
  359. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外務大臣が先ほどお答えいたしましたのでよく御理解をいただけたと思ってたんですが、ただいま重ねてその点をお尋ねでございます。大蔵大臣からもお答えいたしたように、この民間の信用供与ではあるが、その取引に便ずるように金利その他等、また資金の心組みなど、一応予定をつくったわけです。そこで民間の信用供与とは言うが、やりやすいように政府もこれに協力しておるわけであります。その点で先ほど外務大臣が申しますように、向こうからも期待をかけておるし、当方も善意をもって、好意をもってこれを処理すると、こういうことだった。これを理屈を申しまして、そうして責任があるとかないとか、かように申しますと、先ほどのような議論になって、これは政府に責任はありませんと、こう答えざるを得ないのでしょうが、しかし、民間とは申しても純民間だけで、民間のやることですから私は知りません、こういうものではないのです。ただいま申し上げるように、政府も道を開いて、そして金利なり資金なり等もめんどうを見ておる。また、おそらくこの民間の漁船などについては、その規格なども当方で指導するだろう、かように私は思います。まあ、ひとつ善意をもってこれを処理するのだ、かように御了承をいただきたいと思います。
  360. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 お聞き及びのとおりの総理の答弁ですから、外務大臣は、もう少し血の通ったようなひとつの考え方で、これはやはり前向きに答弁をしてもらいたい。  それで、漁船建造の話が、なお質問に触れなくとも、大蔵大臣から出ましたから、それでこれは主管大臣にまず伺うのですが、漁船はもとより新造船を、これは当然として理解するわけです。これは韓国側もそうでしょう。韓国国会でも、そういうことをまあるる大臣が述べております。わが国でも当然そういうものだろうと思うのでありますが、最初伝えられるところによりますと、このひとつの民間借款に便乗して中古船をひとつこれに抱き込もう、がら船をひとつこの際これに便乗させようという動きが国内に見受けられる。これは非常に国際信義の上からいっても、断じて許されないまあひとつの問題なわけであります。完全に償却したものを、またこれをこの信用供与に便乗して韓国に売り渡すということになれば、これは国際信義にもとる大問題でありますが、この点は、通産大臣としても、全然、そういう動きはかりにあっても全然問題にしないということだろうと思うのですが、その最近の動きにかんがみて、この際、この中古船便乗問題というものに対する御所見を承っておきたい。
  361. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まだ具体には話は起こっておりませんが、新造船であるべきであると思います。
  362. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと前に戻って関連させていただきます、恐縮ですが。いまの民間協力の場合、三億ドルの場合、実は本年三月の当参議院予算委員会の分科会の際に、韓国経済の実情から見て、この返還が困難になった場合、日本政府がもしこれを補償するようなことになれば、実際上は民間ではなしに、政府がその負担を国民に負わせるということになる、こう質問したところが、当時の田中大蔵大臣、ここにおられる椎名外務大臣は、さような場合においても絶対に補償はいたしません、こういうお答えがありましたが、ところが、輸銀等を使う場合には、それはどういうことになるのか。もし、韓国経済の実情について、昨日も公聴会の際に若干の質疑がありましたが、これは見通しなかなか暗いものであります。まあ他国の経済情勢を批判することは別として、万一返還が不可能なような事情が起こった場合に、日本の政府がこれを民間に補償すれば、実費上三億ドル民間協力であっても政府負担になるわけです。しかも、いわんや輸銀の金を使う場合においては、なおさらでありますが、本年三月、田中大蔵大臣、椎名外務大臣がお答えになったとおり、いかなる場合においても政府は補償しないという、それはもういかなる場合においてもと明白に言っておられますが、お変わりないのか、どういう趣旨でお考えであるか伺いたい。これは両大臣から伺いたい。
  363. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) さようなことは、ただいま想像もいたしておりませんが、もしかりにそういうことがありました場合において、補償の義務は政府にはないわけであります。
  364. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 所管の大蔵大臣が自分でいまお答えになりましたが、私も同様に考えます。
  365. 羽生三七

    ○羽生三七君 そんなこと予想するのはあまり賢明な質問ではないかもしれませんが、しかし、輸銀の部分はどうなるのですか。そうすると、民間銀行から借款を受けた場合、あるいは業者なり、その業者が、輸銀部分、これは八〇%というのでしょう。それを損失で補う、それで間違いないと断言されますか。まあ仮定の質問でお気の毒ですけれども、しかし、そういうこともあり得るのですよ、いまの韓国の実情からいって。一応お尋ねしておきます。
  366. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一般の取引と同じ処理になると思います。韓国だからといって別に特別の取り扱いをすることに相なりません。
  367. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いま沿岸零細漁民用の融資が五%で信用供与がされるということであります。国内にひとつ焦点をしぼって比較して伺いたいのは、過般のマリアナ群島における遭難による漁家に、建造漁船に対してはどういう条件の融資をして漁船を建造させましたか。農林大臣。
  368. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  マリアナの遭難漁船に対します融資は、公庫から災害用の特別金利六分五厘で貸し出しをいたすことをきめました。
  369. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 確かに公庫融資には、災害用としては六分五厘、十五年以内、という融資条件があります。しかし、これをひとつ私は比較しただけでも、一体政府のわが国における漁業政策というものは、まだまだ十分力を尽くさなければならない点が、たとえば、こういうマリアナ群島で遭難して、二百名以上もとうとい人命をなくしておる。そういうものが再建するために漁船を建造するときには六分五厘もの高率をもって十五年以内には償還しなきゃならない。御承知のようにあれはサバの一本釣り漁業であります。そういう零細な漁民には六分五厘しか出せないのに、対外的には五分という信用供与に政府は介入しておる。私はそれはけしからぬということを言うんじゃないんですよ、韓国に五分資金を融資するということは。その前にもっと国内の零細な漁船、漁家に対して徹底的なそういう融資なり一般的な漁業政策についての措置があってしかるべきものだ。それは単に六分五厘で十五年というようなことで従来の制度融資の中にあぐらをかいて、向こうからかなりの圧力をかけられれば五分資金は四千億ドルでも出すという、そういう軟弱なことでは、内には厳しくて外にはそういう軟弱だということではこれは済まされぬ問題である。私は一つの具体的な例だけをあげているにすぎない。以下全部そうであります。ことに沿岸漁業者の生計というものは農家よりもさらに低い。政府みずからの調査した漁家の負債調べでも、その負債農地の一二・五%は返済不可能の割合を占めておる。返す意思があっても返せないというのが政府の調べた調査の中でも総体の負債の一二・五%を占めておる。そういう実態の中にある国内漁業に対して、いま一つの比較をいたしましたが、韓国に対しては五分資金を出す、国内には六分五厘。国内こそ私は三分五厘資金で、これは災害融資ですよ、出さなきゃならぬじゃないかと思うのです。こういう片手落ちで、一体今後の日本漁業というものがどうかという私は非常に憂慮する展望に立たざるを得ないわけであります。韓国の大臣の言うていることを見ましょう。三年半たったら日本漁業に追いつくと言っておる。いろいろな無償、有償の供与を受ける、賠償金のかわりに取ってくる。新造船をどんどん入れる。あるいはアメリカ、フランス等から借款をして大鉄鋼船をどんどん建造する。毎日、新聞にそういう記事が出ない日はない。それだけの積極的な政策をとって、韓国は三年半には日本漁業に追いつく、五年たてば日本漁業を追い越すと言っておる。農林大臣は、この前の委員会で韓国漁業はたいへん気の毒だ、現状はたいへん気の毒である。しかし、三年半には日本漁業に追いつくと言っている、それだけのスケジュールがある。そういう状態の中で、私はこういう金利一つを取り上げてみても、いかに国内漁業に対して冷酷無残であるかということを指摘せざるを得ない。  それからいろいろ今度の漁業協定には、共同規制水域における隻数の規制、あるいはそれをさらに補完するものとして、漁獲トン数の規制というものをうたっておる。それ以外のこれらの規制隻数、まき網あるいは底引きその他の隻数以外の漏れたもの、これを自主規制と称して、これは白書にも沿岸漁業という表現を使っておると韓国では言うております。これが千七百隻ということで日本は妥協しておる。これは非常に大きな問題です。関係者はこのことで頭を痛めておる。千七百隻という問題、これは一体どこから出てきた数字でありますか、千七百隻というものは。零細沿岸漁業の唯一の生命とする千七百隻というものをなぜこういう数字で規制したかということを、まず大局的に農林大臣からお伺いをします。
  370. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この規制隻数の問題について、対象業種についてのお話は別といたしまして、沿岸漁業の面につきましては、大体共同規制の中に入っていくという数量は、隻数は三十七年度の調査によりますと、千九百ぐらいに相なっております。それからその他のいろいろの面において調査いたしましたのでありまするが、この沿岸漁業は、御存じのとおり業種はいろいろ違いまするし、また、したがってその時期も違う。いろいろ時期その他業種が違いまするので、そのある一定期間において共同規制内に入るという数量になりますると、いろいろの調査の結果、千七百隻というもので大体間に合うという計算をいたしたわけであります、その当時にであります。なお李ラインが撤廃するということになりますというと、やはり安全になりますから、できるだけそこへ入っていきたいという希望もあろうと思いまするから、それはいろいろの意味においてやはり問題は、競争等は若干あるかと思うのでありますが、そういうわけでありまして、実績をそうそこなうものではない、こういうふうに見ております。
  371. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それではこれは資料をすぐ出してもらってから、この場でその資料に基づいてお伺いしますから、千九百隻という三十七年の実績、これを業種別、府県別にすぐひとつ、印刷が間に合わなかったら、とりあえず原本だけでも私拝見したいのですが、それを出せますか。
  372. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。三十七年度の府県別は持っておりますが、業種別はいますぐというわけにちょっとまいりかねる次第であります。
  373. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、その三十七年の千九百隻の中から千七百隻にしぼって割り当てをする、こういうことだろうと思いますから、そういう古い数字ではなく、今度千七百隻を各県別に、業種別に割り当てする案があるはずであります。それを見なければ私の具体的な質問が進みませんから、それだけはすぐ出してほしい。これは読むのでなく、刷りものにして出してもらいたい。
  374. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 国会の御承認を終わりまして、批准が始まりますれば、行政事務としていろいろの準備をする必要があるということで、部内作業としていろいろ検討をいたしておりますが、目下まだ国会の審議中でございますので、決定いたしておりませんので、この千七百隻の府県別の提出は暫時御猶予をいただきたい。
  375. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 検討中の案をひとつ出してもらいたい。
  376. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 検討いたしまして、行政内部におきまして、成規の手続をとりまして決定をいたすものでございます。事務段階の内部作業でございますので、しばらく提出は御猶予願います。
  377. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは出すと混乱をするから出せないのです。なぜ千七百隻にしぼったかということは、これは大問題であります。たとえば韓国が出しておる協定の解説の中で見ましても、「日本側は、規制水域内において沿岸漁業に従事する日本漁船の隻数を、千七百隻以下に維持すると約束したが、この隻数は、平和線近海に出漁する日本沿岸漁船約三千四百隻に比べ半減されており、」云々と言うておる。すでにこれは交渉の経過の中に、日本側は三千四百隻を主張したということを物語っておる。これは三千四百隻にとどまらないのであります、私の資料によりますと。それから大体この押え方というものは、あの不法不当な李承晩ラインが設定された以後の実績というものは実績ではない。それ以前からこの海区において漁獲をしておったその実績がやはり実績にならなければならない。こういう点から見ますと、この千七百隻というものは、いろいろ手続上とか事務当局とかいうことがありますが、事務当局であろうが何であろうが、私がここで具体的に審議するのに差しつかえがあるから要求したのですが、政府としては、これを出せばとんでもない混乱を業界に招くから出せない。私は、審議の促進上それを出せ、出せないということで、これ以上時間を空費したくないからまあ資料の提出は見合わせますが、政府が調査をした登録漁船による統計というものを三十八年度末に出しておる。そういうものによりますと、佐賀、福岡、長崎、熊本、大分、鹿児島、山口、鳥取、島根、兵庫、この一番韓国の共同規制水域に出漁しておった関係の深い県だけを抜きまして、政府が発表した三十八年十二月三十一日現在の統計を見ますと、総体で、韓国水域に行った以外の全体のまず登録隻数を見ますと、これが五万二百四十七隻あります。この十県のうち、特に玄海灘あるいは壱岐、対馬等を考慮しまして、佐賀、福岡、長崎については、三トン以上四十九トン未満の登録漁船、それ以外の熊本、大分、鹿児島、山口、鳥取、島根、兵庫については十トン以上四十九トン未満というものを整理をしまして、これは当然韓国共同規制水域へ出かける対象漁船であります。その中で朝鮮に出かけるのと近海で漁労するものとの割合が、それぞれの県によって従来の実績から割合があるわけであります。佐賀県は大体三トン以上四十九トン未満の漁船が四百四十一隻ありますが、このうち韓国に出漁するのが三百九隻であります。近海操業が百三十二隻、福岡県におきましては韓国出漁は五百五十九隻、近海には二百四十隻、長崎県の漁船については韓国出漁が二千三百九十三隻、近海が一千二十五隻、これが三トン以上四十九トン未満の韓国の共同規制水域へ出漁する大体の実績であります。これは農林省の統計を私がさらに出向き先別に整理したものであります。熊本県は、これはさらに地域的に韓国から離れておりますから、これらは十トン以上四十九トン未満に整理をいたしますと、百八十五隻のうち、韓国へ出かけるのが百十一隻、近海が七十四隻、大分県についてはこれは八十三隻、近海が百二十五隻、鹿児島県は百六十四隻が韓国向きになり、百六十三隻が近海漁労用、山口県は百九十三隻が韓国へ出向きまして、近海には二百八十九隻、鳥取県は八十三隻が韓国出漁で、三十五隻が近海、島根県は二百七十隻が韓国出漁で、百十六隻が近海、兵庫県は二百八十九隻が韓国、百二十四隻が近海操業ということになるわけであります。そこでこれらをトータルをとりますと、どうしても四千四百五十四隻というものがなければ、この零細漁家、漁民の韓国に対する隻数というものが、従来の実績がそれだけ維持されなければならないということになるわけであります。その四千四百五十四隻という農林省の発表する統計の中から、私が過去の実績をもとにして出したこの数字に対して千七百隻で事足りるというようなごときは、業界の関係者がこれに対する異常なる関心とその注目の中に政府の割り当てを見守り、各県がそれぞれ割り当てに狂奔しておる昨今の状況から見ても、一体これをどうする気かということ、安易な妥協によって国内のこういう四千四百五十四隻の既得権を一体政府はどうしようとするのか。三十七年が千九百隻であるというようなことき、そういう数字を魔術的に使って、たった二百隻ぐらいのオーバーなら、こんなに関係者が神経をとがらかしておるはずはないでしょう。政府は発表する勇気を持たない。県別の割り当てがいまあるはずです。各県から熾烈な要求がある。お願いじゃなくて要求があるはずです、既得権の上に立って。政府はこれを割り当てを発表できない。しかし、いずれは発表せざるを得ない。こういう大きな食い違いが近々国民の前に明らかにされる。これに対して千七百隻に妥協した政府は、一体これからどうしようとされるのか。農林大臣どうですか。
  378. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 沿岸漁業の漁船の数なり登録数というのは、いまお話しのとおり相当多いものでございます。なおそれは長官からお話しさせますが、しかしそれは近海で多くやっておりまするので、先ほど申しましたのは、三十七年に千九百余隻がいまの共同規制区域の中に入っておる。共同規制区域以外のほうへいくやつは、これはまた別でございますが、そういうことに相なっており、それから先ほど申しましたように、またこの沿岸漁業はご存じのとおりに業種が違い、時期も違いますからして、これはいろいろある一定時におけるいわゆる出漁数というものは相当緩和できることになるわけでございます。非常に業種によって違うですから、時期が違いますから、そういう関係で実質的にこれはいけるということに考えております。ただ先ほども申しましたように、李ラインがなくなったときでございますので、われもわれもと、それはできるだけ出ていきたいということは実情上そういうことになる問題がありましょうから、これはやはり相当いろいろな問題でそれぞれの要求があろうかと、こう思いまするけれども、いまのような状態でございます。
  379. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 資料も出さないで補足答弁は要らぬ。要らぬというのに出る必要ない。
  380. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。なかなかわれわれ質問の時間がないものですから、そのつどお聞きしておかなきゃならぬわけですが、千七百隻をきめたのは、この六月二十二日協定と同時に出しました農林大臣の声明、ここに入れておるわけですね。これは日本政府の義務ですか。はっきり答えてください。
  381. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは法的にはもちろん義務を負うていないわけでございまするが、しかし、これは行政的にはやはり、でき得る限りその線に沿うていかなきゃならぬと、こう考えております。
  382. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、これもはっきりしてもらいたいですな。向こうは千七百隻に押えた、こう言っておる。しかし、いまの答弁によりますると、法的には義務ではないと、こう言われる。したがって、この国内の各県に対する割り当ての関係上どうしてもつじつまが合わないという場合には、それが千八百になり千九百になり、二千になっても差しつかえないわけですね。はっきり言ってください。
  383. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 行政的にはやはり千七百隻でいきたいと……。
  384. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、どうしても割り当てができぬ場合――まあ関連ですから、この程度にしておきます。ともかく、これ一つでもこういうあいまいなことを、この正規の協定等に入れないで、そうして合意議事録だとか、いや声明だとか、いろんなところへ今度の日韓交渉というものは追いやっているわけなんです。肝心かなめの協定国会にだけかかっているものを見たって、実態はわからないようになっている。これはもう今後の紛争のもとです、これは。向こうはもうきちっとそれで押えたと、こう盛んに言っているわけなんです。まあ以上農林大臣に忠告を申し上げておきます。
  385. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この沿岸漁業の千七百隻は、私はまあ心配してお尋ねをしているのです。専管水域でもう漁を禁じられ、共同規制水域では御承知のようにまき網やあるいは以西、以東底びきでとられ、その残ったところをわずか千七百隻で右往左往せざるを得ない。しかも日本としては、韓国側から見れば、三千四百隻という要求があったのを千七百隻に押えたと、こういうふうにまあ言うておる。そうするとですね、かりに私の数字四千四百五十四隻が相違があったとしても、倍以上のこの出漁希望者の沿岸零細漁業に対して、これは大きな責任を政府は持たなければならない。割り当ては権力によって割り当てるでしょう。それ以外にこれをスムーズに解決することはできないでしょう。そういう混乱が予想される。その場合に一体これらが自主規制と称するのでありますから、自主規制をするためには、出漁者協議会というものを結成させるべく政府は慫慂しておる。なぜいまだにその結成ができないか、理由はどこにありますか。自主規制をするための出漁者協議会というものを政府は勧奨しておる。まだできていない。どこに原因があるのですか。
  386. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  まず第一点でございますが、千七百隻というのは、共同規制水域のある時点において現在それ以上あってはならないというふうにするという数字でございます。したがって私どもは旗の数を千七百本用意するつもりでございます。御承知のとおり在籍船はいろいろございまして、五島、対馬に行き、また帰り、運航するということでございますから、在籍船なり近海の数字と千七百隻を直ちに比較するというと差が大きく出るように私ども実務的に考えます。ただ、おっしゃいますとおり、関係の方がみんななるべく多く出すという立場からいえば、確かに千七百隻は私は窮屈だと率直に思います。しかし事柄の起こりは、あの地域におきましてやはり資源を維持するという立場で、一定の沿岸のみならず、まき網から底びきまでもお互いに資源を維持するという態勢で進めようということでございますので、関係者の御協力を得てこれをやりたい。したがって、旗でございますから、交代をしてやっていただくということも考えております。それから同じ対馬でございましても、イカ等は西側ということでございますれば、規制ラインとは関係ないわけでございますから、そこで取るのは自由ということでございますので、関係者の御納得の上にこの仕事をできるだけ円満に進めたいと思っております。  そこで御質問の一点は、なぜ出漁者協議会ができないかということでございますが、これは私どもといたしましては、当初これを府県別におろしまして協議会をつくることを考えたわけでございます。いろいろ国会の審議中にどこまで行政事務を進めるかということについて検討すべき点がございまして、この際府県までおろしてどんどん進めるということは適当でないという判断で、府県別に数字をおろすことは差し控えておるところでございます。
  387. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そういう一つ解釈もあるでしょうが、少なくともこれは自主的に事前に十分お互いに協議をして政府が承知したそれをどう円滑に運用するかということにかかっておるので、そんなのんきなことを言うている段階じゃないはずです。非常にそういう問題については、国会の審議を通じ関係法律が成立してからやるとかいうことを言いますが、それならば、すべて一切の政府の行動は、本参議院でこの基本条約なり協定なりすべての関係国内法が成立したあとにスタートをしておるんですか。そうじゃないでしょう。都合のいいのはどんどん先行しておるじゃないですか。そうして政府には最も都合の悪いことはいまのようなぬけぬけとした答弁でこれをごまかそうとしておる。私は関係者の意見を聞くと、これはやはりそういう実際の割り当てというものに困難を感じているからこういうものもスタートを切れない、それが発表されればまた自主規制の中でお互いの問題が出てくる、こういうことが心配されておるわけであります。そこで、この入漁隻数の大幅削減によって生じるところの対象漁業者の救済措置というものは、千七百隻を確定した政府としては当然その措置を考えておるはずであります。その具体的な構想をお示しを願いたい。これは大臣に……。
  388. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 千七百隻でありますが、先ほど申しましたように、時期も違い業種も違うのでありますから、一定地帯における漁というものはずっと多くできるわけなんですね。ですから、いま申しましたように、たとえば旗を持たす、そしてグループを置く、各県ごとにグループを置く、あるいは県のうちでもまたさらにグループを置くようなことにいたしまして、そして千七百についての旗を持たす、ある業種はもう仕事が終わって出てくる、その次にその旗によってまた次の業種のものが出かけるというようなことでまいりますので、さようにいたしまするので、現在できるだけそういう趣旨に沿って自主的にこれらの問題を処理していこう、ただ、自主的にやるといってもやはりワクがそういうぐあいにありまするから、やはり県別ぐらいはワクを与えて、そしてその範囲内において自主的にやっていくということでいかざるを得ぬだろう、こういうふうに考えておるのであります。
  389. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それはもう承知の上で聞いているのです。結局、そのグループによって旗の持ち回わりをして、異なった船主でリレーをするという場合に、それでは千七百隻が延べ何隻になるという計算をしていますか。
  390. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 段取りといたしましては、まず業種ごとに違いますが、府県別におろしまして、この業種は交代でやったほうがいい、この業種は固定したほうがいいという形で、府県で研究した上でその方法を採用したいと思っておりますので、現在中央において何回転するから何倍になると、そういう計算はいたしておりません。
  391. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣の答弁ならそれでもいいかもわかりませんが、事務的に私が伺っているのに、いまのような抽象的な答弁じゃこれは質問に対する答えにならぬじゃないですか。千七百隻という具体的な隻数を規制した政府は、そういう業種の相互運用によって何%まで隻数の伸び率があるのか。いいですか、その結果なおはずれるところの漁家に対してはどういう補償の措置を考えているのかという、そういう前提で私は大臣にこの出漁不可能におちいった場合の補償は当然考えておるはずだから、その点は大臣として大局的にどうお考えですかということを伺うのです。だからもうその伸び率は伺いません。だから大臣に伺いたいのは、そういういろいろな操業の効率化を当然これはやることになっておるわけですから、たてまえは。それでもなおかっこの従来の実績からはずれた漁家に対する補償は政府としてはどういうふうにお考えになっておりますかというのです。これなら大臣の答弁でしょう、水産庁長官じゃない。
  392. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) さようなことで大体それにはまるつもりでおるんです。もちろんそれははまるつもりでおりますから、その点はこれからもはめていくつもりでおります。   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕
  393. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 水産物だから、水かけ論のようなことになることもこれは本質上やむを得ないと私も思いますが、まあしかし大臣、はまるとかはまらぬとか、そういうようなナマズみたいな問答じゃこれは済まされぬですよ。それで結局私は出てくるそういう問題は、いまからでもおそくないから、即刻にそのやはり措置を講ずる責任が政府にあるということを強く警告をしておきます。ただ資源の点で水産庁長官も触れましたが、その場合は転換漁業をどう考えているかということです。それによってはみ出した漁船、漁家に対して転換漁業をどういうふうに指導するのか、善後措置一つの一端として伺いますが、それも考えているはずです。
  394. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは沿岸漁業ばかりではないのでありますが、全体としてやはりいまのところ韓国漁業の発達の程度は非常に格差が大きいのでありますが、先ほどいろいろお話のとおりに相当伸びてまいるということもございますので、どうしても日本としては、やはり漁業の近代化、合理化というものを十分これは進めてまいらなければならないのじゃないか、そういう関係からいきますというと、従来のとおりにやはり構造改善事業、あるいは漁港の整備、あるいは漁船の問題ということに非常に力を入れていかなければなりませんことは言うまでもありませんし、さらに新しい漁場の開拓に日本はうんと力を入れていかなければならぬと思います。そのために調査船を設置するとかいうような点についても力を注いでいく、今度の予算等についても、そういう面について十分の力を発揮できるように努力を進めていきたい、かように考えます。
  395. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは総理、いまの農林大臣の切切たる方針を総理もよく胸に入れて、今度の予算でも十分財政的な措置を講じて、後顧の憂いなきを期したいと言うていますから、答弁で。それは総理も大蔵大臣もえりを正して聞いておいてください。それで、大蔵大臣のこの所見はいかがですか。
  396. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林大臣とよく相談いたして措置いたします。
  397. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 次に伺いたいのは韓国水産物の輸入の問題であります。何と言いましても韓国経済が発展していくということになれば、当然、日本から大きな資本が進出し、また、大企業の資本が合弁その他の形で韓国へ進出する。その貿易面からみても、韓国としてはどうしても外貨獲得の上から言っても水産物の輸出というものがきわめてこれは重要な課題になってくるわけであります。ここ一、二年の周に急増した韓国水産物の流入は日本の沿岸漁民をすでにして窮地におとしいれしめているものがあります。たとえば沿岸漁業構造改善事業によって、せっかく養殖したハマチの値段が韓国からのブリの輸入によって暴落し、年間の苦心も水のあわになっておるという事例、あるいは韓国から輸入するノリの流入によって沿岸漁民の、またノリ生産者の大きな心理的、物的な影響をこうむっておるということは、私がいまさら申し上げるまでもなく、先般御承知のこれは実態であります。そこで私はお尋ねをいたしたいのでありますが、ことしの三月ですね。日韓貿易会談でこれからの韓国からのノリの輸入なり、スルメその他を初め魚介類の輸入について申し合わせがあったはずでありますが、その具体的な内容は一体どういうものであったんですか。農林大臣。
  398. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 本年の三月の日韓貿易会談におきまして、韓国側の要望は、まずノリにつきましては自由化、それができない場合は五億の輸入割り当てをしていくとともに関税は引き下げてもらいたいというのが韓国側の主張であります。日本側が申しましたのは、直ちに自由化は困難であるが、輸入増大については生産者に悪影響を与えないような措置を講じて、二億ないし五億の間で割り当てするように述べ、関税については引き下げる方向で検討をするという趣旨のことを申しました。それからスルメ、なまイカ、アジ、サバ、サンマ、ブリの自由化、これは現在IQ物資でございますが、これを自由化してくれというのがございましたが、それは直ちには困難である。それならば輸入の割り当て量を増してくれというのが韓国側の言い分でございます。それからかんてんにつきまして関税の引き下げの問題の要請がございます。貿易会談におきます経過は……。
  399. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 スルメはどうですか。
  400. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) スルメにつきましては、韓国側はスルメは先ほど申しましたとおり、自由化するか、しからずんば十万ピクル割り当てをほしい、わがほうは自由化はもちろんできない。で、スルメの分を除いてほかのものは前年度を上回る割り当てを考えたい、スルメについては若干の割り当ての増加をやる、こういうことを申し合わせたわけでございます。
  401. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣にお伺いしますが、韓国国会で八月十日の質疑委員会で経済企画院長官は次のように言うておりますよ。以下はこれは張経済企画院長官の内容です。「次のような方法で韓日間の貿易不均衡状態を是正する方針です。第一に政府は今年中に貿易会談を再開して」――ですから、この内容は三月にやった、いま答弁した以降の時点です。「今年中に貿易会談を再開して、日本側が現在、韓国の第一次商品の輸入禁止又は、外貨割当制、高率関税、賦課していることを撤廃するようにさせます、これは日本が国韓に対して、不当な差別待遇をしているのではありません。」云々ということを述べておるわけです。で、結局撤廃するようにさせるということ、関税を撤廃させる、あるいは輸入禁止または外貨割り当て制を撤廃させる、こういうことを特別委員会で政府の態度として発表しておる。いま一、二の例をあげましたように、こういうことがもしもまかり通るということになれば、これは日本の特に零細漁業にとっては重大問題であります。ですから、これは農林大臣にお尋ねをするのでありますが、関税率は一体どうするのか、近くノリに対しては、従来の一枚二円というものを自由化率に直すということも仄聞するところ出ておる。これは一体どうなのか。たとえばノリについて、もっと具体的に、商社筋の政府に対する五カ条の意思表示もある。それらもいずれ逐次伺いますが、まず全体的に見て、こういう日本の零細漁民から見たならば、聞き捨てならざることを韓国の担当大臣が国会で声明をしておる。また、韓国が発表しておるところの白書によって見ましても、その輸出目標という展望、「対日水産物輸出現況と展望対比」というものを出しております。一九六四年を一〇〇とすると、一九六七年には一九一、約二倍にするということを日本に対して見ておる。その内容を見ますと、これはまあたいへんなものであります。品目別に全部うたっておりますが、金額であらわすと、ノリが、六四年度の実績が五百三十九万ドル、六五年が七百八十万ドル、六六年が一千四十万ドル、六七年が一千三百万ドル、そうして五億四千万枚を一九六七年には見込んでおる、こういうことが出ておる。しかも問題なのは、この輸出価格がCIF価格で二ドル五十セントを見ておる。いま二億五千万枚が何で保税倉庫に眠って問題を起こしておるか。向こうの商社とこちらの商社の折り合わないのは、二ドル五十セントどころじゃない、もっと低いところでお互いに話し合いがつかないために、三月まで倉庫に眠らせなきゃならないという事態なんです。CIF価格で二ドル五十セントというものを当然のこととして、これを計画の中に立てておる。あるいはスルメにしても同様、あらゆる点において、韓国としては、これは韓国立場から言えば、水産物以外に外貨を獲得する大きな品目がないわけでありますから、しかも、その消費市場は日本でありますから、これがもうまともに、日本の零細漁業家が受ける大きな問題になっている。そこで繰り返しますが、先ほどの韓国経済企画院長官が言っているところの、関税率を撤廃する、あるいは非自由化品目を自由化させる、そういう発言に対して日本政府はどう対応されようとするのか、その点を明確にひとつお聞かせ願いたい。
  402. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 渡辺さんの御質問でありますが、韓国政府がこうするということのとおりに日本政府がやるということは絶対あり得ないことでありますから、その御質問だけはどうかと思う。それで、大体韓国は、御承知のとおり非常に格差が大きい。そうしてまた育つべき産業もあまりありませんから、私どもとしてはでき得る限りこれらの韓国漁業の発展というものを進めていくことについては、ちゅうちょしないのであります。これは大いにやっていきたいと、こう考えております。かりに韓国が非常に意欲的な振興政策が達成したとしても、漁船にしても四割、あるいは生産量にしても倍増にするということをいたしましたとしても、やはり日本の漁民の一人当たりの所得の二十分の一か、十分の一くらいになる程度という計算になるわけです。そういう点でありますから、でき得る限り援助をしていきたいということは、われわれとしてはそういう点についてはうんと力を入れたいとは思うのでございまするが、先ほども、昨日来も申し上げているとおり、日本もやはり零細漁業が非常に多いのでございまするから、それらに大きな影響を与えるということは、特に私どもとしては十分これは注意をしてまいりたい、こう考えております。したがって、輸入の数量の問題にしても、それからして、またいろいろその間における方法、方策にいたしましても十分その点を考えてまいりたい。したがって、自由化ということにいたしましてもですね、いままで相当やっておりまするが、今後それを自由化をやりまするときにはよほどその実態をよくしんしゃくし、同時に考えました上でないとこれはやれない。それから関税の問題にいたしましても、たとえばノリの問題でございますが、これは今年の三月の貿易会議のときに、ノリの関税については下げるという、そういう一般法則については意見が一致しておったわけでございます。しかし、国内のノリのいろいろの関係をよくみなければなりませんし、全体を見て、そしてどの程度であるかということについては十分悪影響のないように考えた上で進めていきたいと、かように考えております。それで、渡辺さんが先ほど言われたように、韓国のほうでこうだからどうだという御質問だけはやめていただきたい。
  403. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 一体、両国間の漁業協定に関することを質問するときに、韓国側がどう考えているかということを中心として、また、わが国のそれに対応する考え方を聞くのが何が悪い。われわれのそういう当然の審議に対して制約するような発言はこれは不謹慎。韓国が言うておるんじゃないですか。だからぼくがそういう資料を出せと言っている。出しもしないで、それを引用して、韓国ではこう言うているが日本はどうかと聞くのがなぜ悪い。相手とこっちと相対で貿易というものは成り立つのだろう。相手が非自由化品目は全部自由化すると言っている。関税障壁は撤廃させると言うておる。それじゃけしからぬけりゃけしからぬと言えばいいじゃないか。何だ、それが、韓国が言うたこともここに引用することがけしからぬということは聞き捨てならぬ発言じゃないか。何もそういうことは言うべきじゃないと言うんですか、大臣。
  404. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 私は口べたなほうですから。とにかく韓国がこう言うから農林大臣はこうしなくちゃいかぬなんということは、それは私はやりません。やりません。でありますから、それはやらないということをよく御了承の上でそういうことはお聞きにならぬほうがいいじゃないかなあと、こう思っただけなんであります。
  405. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 相手の考え方と対応してやはり問題というものが整理されるんじゃないですか。聞く耳は持たぬと、それだけで一体貿易というものが成り立ちますか。それは最もわが国の漁業政策の上からは痛い問題なんだ。私もこれは非常に痛憤にたえない立場で言うておるんですよ。この韓国の主張は、こう言うておるが、私は賛成だということならともかく、そう言うておることに対して、き然たる態度は一体那辺にあるかということを聞いておる。これによって政府が奨励しておる零細な沿岸漁民の漁業構造改善のノリの将来というものがどうなるか、そういう点に大きな問題があるから、私は韓国がこう言うておるが、わが国はそういうことは全然意に介しない、き然としてわが道を歩む、それでいいじゃないですか、よけいなことを言わぬで。非自由化水産物はかなり多きにのぼっております。しかし、この非自由化水産物のうちでも韓国に対しては特に輸入を認めておる品目がある。一つの外貨の割り当ての制度でやっているという点もある。ノリについては、これはいま言ったように、二億ないし五億という話し合いをしたと言われておる。このノリについても私は非常に大きないま黒いうわさが出ておる。この点をやはり明らかにしていかなければならぬと思うのであります。(「終了終了」と呼ぶ者あり)
  406. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 渡辺勘吉君の質疑は終了いたしました。(「まだ質問中じゃないか」「いま相談しているのだ」「休憩休憩」と呼ぶ者あり)  お話し中だそうですから、取り消します。(「なかなかいいぞ委員長」「あまり圧力を加えるから、気の小さい渡辺さんはきょうのところはやめるから、本日のところ、この程度だ」と呼ぶ者あり)
  407. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 渡辺勘吉君の質疑は終了いたしました。六時三十分まで休憩いたします。    午後六時八分休憩      ―――――・―――――    午後六時四十五分開会
  408. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約承認を求める案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。曾祢益君、
  409. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は、先般、本会議におきまして政府の施政方針に対して質問いたしましたが、同様の見地に立ちまして、わが党といたしまして、基本的に日韓の国交正常化に賛成であります。その理由は、言うまでもなく、日本に最も近い隣国との間に友好関係を樹立することは、わが国の平和外交として当然やるべきことである。これが第一であります。第二には、不幸なる南北の分裂がやまることは、なかなか早期に期待できないので、南北の統一を待たずに、国連が唯一の合法政府と認めている韓国と懸案の解決に努力し、国交を樹立することは、これまた国連中心の平和外交の日本としては当然であると考えるのであります。さらに第三として、今度そういう意味で南朝鮮に民主主義の政府と政治的経済的安定をはかり、将来、南北統一に備えることは、わが日本の平和と安全のためにとるべき当然の施策だと考えるのであります。  以上の基本的観点から、かねて来、国交調整に賛成してまいりました。ただいま議案になっておりまする条約協定等並びに関係法律を見ますると、内容には多くの不満があります。また、まだ審議の段階でありまするから、さらに明確にすることがわが国のため、両国のために必要である点がございます。しかし、わが党は大局的見地から、この条約協定批准成立に賛成という態度をすでに決定いたしました。しかし、われわれのこの日韓賛成の態度というものは、当然わが党の主張でありまするわが国は民主主義陣営に立ちつつ、しかも、すべての国と平和共存をするという、いわゆる自主共存の外交路線に基づくものであります。この意味で、まず私は日韓に直接入る前に、政府の外交姿勢について若干の点をただしたいと存じます。  その第一は、対中ソ政策についてであります。首相並びにこれは官房長官を含めての側近は、どうも日韓あとには日ソであるというような観測気球を先般来上げておられるようであります。われわれもソ連の最近の現実的な戦争回避の政策、平和共存の路線をそれなりに評価し、特にわが国との間に貿易、航空問題等の積極的解決には賛成であります。加えて、これはあとでも言及したいのでありまするが、ベトナム戦争を終止する問題、あるいは核兵器の禁止並びに拡散防止等についても、日ソ間の接近を考えることは私は確かに時宜に適しておると思うのであります。そこで伺いまするが、政府も、最近いよいよ日ソ航空協定について最終的に腹をくくって、いわゆる二年間の共同経営といいますか、期間を経て、そしてソ連側が誠意を示すならば航空協定の調印に踏み切ってもいいという方向に進んでおるやに聞いておるのであります。また、そういうことになれば、当然に、伝えられておる外務大臣の一月ソ連訪問等も行なわれるかと思うのでありますが、まず、この問題についての基本的な姿勢でありまするから、総理大臣から、この日ソ、何といいますか、接近といいますか、それから航空協定の問題についての所見を伺いたいと思うのであります。
  410. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日ソ間の外交交渉の問題ですが、御承知のように、日ソ間では鳩山内閣以来、その際に共同宣言をいたしましてから、貿易等におきましてはある程度進んでおるものもありまするが、ほとんどその後の進展を見ておらない、こういう状況であります。私、昨年政権を担当して以来、ソ連側から私に訪ソをすすめられたり、またその他の面で一、二の点の交歓等があった。そして日ソ間で長い間の懸案事項でありました領事協定、領事条約を結ぶ、あるいは日ソ航空協定を妥結しようじゃないか、あるいは貿易協定にいたしましても、長期なものにしようではないか、あるいはシベリアの開発に対する援助等々、向こうから提案提示しておるもの、また当方から要望しておるもの、大体においてその問題が一致しているといいますか、そういう方向で今日それぞれ交渉を重ねておるわけであります。別に日韓交渉が片づいたからその次はソ連だと、こういってきめておるわけではない。外交の問題は、曾祢君もその道のべテランだから御承知のように、力の面から見れば、各方面に手を伸ばしても、それがそれぞれ実を結ぶものでもない。それかといって順序をきめて、そして外交を進めていくと、こういうわけのものでもないだろう。まあチャンスがあればそれぞれのチャンスをのがさないで、そうして私どもの平和外交を進めていくと、こういうことでありたいと思います。ただ、ただいま申すような領事協定あるいは航空協定、貿易等々の問題はさることですが、いつも両国間で基本的な問題として、両国民、ことにわが国民の念願を去らないものが領土の問題であります。で、そういう点については、すべてあらゆる場合に、日本の国後、択捉等の固有の領土についても、当方の主張は機会あるごとにこれを要望しておるわけですが、しかし、こういう事柄についての解決はなかなかまだ機が熟してないと、かように私ども見ておるのでございまして、ただいま申し上げるような関係から、それぞれのまず可能な面から話を進めたい。ただいまお尋ねになりましたように、最近、日ソ航空協定につきましては、やや両国の主張が近づいてきたのじゃないか、かように私ども見受けておる次第でございます。ただいまその詳細、また内容等についても両国で最終的な話し合いをする、こういう段階でございまするので、ただいまその詳細を申し上げるわけにもまいりませんが、できるものから進めていくと、こういう態度でございます。
  411. 曾禰益

    ○曾祢益君 外交交渉中のことですから詳細を承りたいとは思まいせんが、ただ、まあ大体伝えられるところを常識的に、航空協定のガンは、二年間の――共同運航というものを二年間だけの確約をしてその後やめる、切りかえて日本の乗り入れを認めるということにかかっているやに聞いております。しかし、そこら辺のことについて若干のゆとりをもって交渉して妥結をしても私たちはいいのではないか。ただ問題は、やはりああいう国ですから、事、領土問題については、平和条約は結んだけれども領土はたな上げということは、これは国民感情も許さないし、そういうととはやはりきちんとした態度で臨んでもらいたい、かように考えます。その二点についていま少し明確な御答弁を私は期待したいと思います。いかがですか。
  412. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この日ソ航空協定で一番問題になりますものは、それぞれの問題が軍事的な機密の問題、シベリアはいずれのときも開放しない。ことに前、戦争当時シベリアが、共同の戦争を遂行していた際でも、アメリカにも開放しなかった。これは私がソ連の要人から直接そういう話もこの前聞いたのでございます。そういうことがありますので、シベリアを外国にこれを開くといいますか、その道をあけるということはたいへん難色があるようです。このことはしかしソ連ばかりではない、わがほうにだって、やはりただいま安保条約締結をしてわが国の安全を確保しておるのでありますから、そういう意味の国としての秘密条項というものはどこにもあるだろう。だが、そういうこともだんだん解けてまいりまして、ひとつ試みに暫定的にやってみたらどうだろうか、その話し合いがついてきた、それがいまのモスクワ-東京間、こういうことで、したがいまして、向こうがシベリア領空については特別なその経過地等も指定するかもしれません。また、こちらのほうも日本の領空についてのその航路はこちらが指定する、こういうことになるだろうと思います。問題は二年たった後に、これがはっきり各国が航路設定ができるようになるかどうか、こういう問題だと思います。ただいままで確約はまだ取りつけておりませんけれども、わがほうの主張等についても非常な理解を示してくれている、かような状態でありますので、まず、ただいままで全然外国のものが、世界一周の捷径路といわれていながら、この航空路を利用することができなかった今日までの状況を見ますと、これがやっぱり一歩前進するのではないだろうか、そうして両国がそれぞれ利益を受ける、こういうことを考えて、同時にまた、この利用者の立場になってみますと、時間的にもまた運賃負担の面からも非常に軽くなり、たいへんいい航空路だと、かように思いますので、最約的にその結論を出すべき段階ではないだろうか、かように思っているわけでございます。  もう一つの歯舞、色丹、国後、択捉等につきましては、全然まだ私ともの主張と――歯舞、色丹は別ですが、国後、択捉等については全然主張が相対しておりますので、これをどういうふうに話をつけるか、まだ接触されていないというのがいまの実情でございます。しかし、これはいずれにいたしましても両国の長期的な平和という観点に立ちまして、また、国民的な理解を深めるという意味で、いずれにいたしましてもこれは解決すべき問題だと、かように思うのでございます。
  413. 曾禰益

    ○曾祢益君 その対ソ積極外交はいいと思うのですけれども、どうもいささか皮肉にとられるかもしれないけれども、政府は近ごろは中国政策は全然さっぱり進展がない、中国政策は一向進まない、隠れみのに対ソ積極外交を使っておるような感じがしないでもありません。中国政策については、かねがね私どもが言っておりますように、まあ言わば露骨に言えばアメリカ及び国民政府に気がねをして、中共に対してはあくまで政経分離でいく、また国連における中国代表権の問題については、これはあくまで手続問題として何とかたな上げを策する、この政策は遠からず崩壊するということを言ってきたのですが、これは最近、国連総会における議決の内容からみても、もうすでに議論の余地はないと思うんです。むろん私どもは中国代表権問題、こういう大きな問題を日本だけで気負って片づけるということはなかなか困難だと思います。したがってこそ、国連の場を通じ、国連に現われた世界の世論に従いつつ、あるいはその世界の世論を有利に形成しつつ、そうして前向きでその解決をはかるということが特に必要だと思うのであります。その意味から、先般の国連総会の議決にすでに現われているように、重要事項指定方式がやっと賛成五十六票、反対四十九票、かろうじて通った、中国に代表権を与えて国府を追い出せというこの案に至っては賛否相半ばする、ただし棄権二十という非常に多くの棄権が出ておるということ、これらから考えまして、私どもはやはり中共が強いからこれに迎合するというのではなくして、現実的であり、かつ平和へのプラスだ、こういう意味から、すでに中共を国連に迎えるということは多数意見になりつつある。同時に、単純に国府を追い出すという議決に対しては、かなり多くの棄権票が出ている。ここにやはり国連の中に国府を追い出すということに対するためらいの票というものは非常に多い、それからもう一つ、AA諸国の中には、やはり台湾も住民なんだ、台湾住民の自由意思を尊重すべきだ、そういうものの見方も一つあるやに聞いている。私は当然そうだと思う。したがって、これを方式化してみると、一つの中国即中共プラス台湾という、そういうフォーミュラはなかなか両方の中国の政府に嫌われまするから、日本政府からそういうフォーミュラとして出すことは、これはあるいはやぼな言い方かもしれません。しかし、内容的に中共を国連に迎える、台湾問題はしばらく別扱い、単純に追い出すでもなく、住民の意思をいれて解決するところのゆとりを残すような一つの方向というもので、わが国がやはり世界の世論、特にいわゆる自由諸国の中にそういう意見が相当多いんですから、これとAAグループ等の意見を固めていくならば、前向きの姿で、その多数の意見を形成することができるのではないか。どうしてもこれはそういうふうに政策を切りかえていく時期が来ている。国連総会は来年だから一年先だという考えではなく、政府は一年間やったけれども、票の獲得運動に失敗している。これは事実なんです。一年間ぐらい選挙運動をやらなければだめでありますから、次の国連総会の票集めはやはり一年前から基本方針を立ててやるということが必要ではないか。こういう意味においてぜひその方向において努力をすべきだと思いますが、総理意見を伺います。
  414. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一、ソ連といろいろの問題を解決しよう、こう言っていることは、皮肉な見方をすれば、中共のほうはたな上げにしてソ連へと、こういうふうじゃないかという見方もある、こういう御指摘ですが、先ほど説明いたしましたように、ソ連と日本との間ではそれぞれの問題がただいま解決の機運の方向に向かってきた、そういう意味で航空協定あるいは領事協定等がそれぞれ交渉されておるのだ、こういうことでございますから、この皮肉な見方をされないようにお願いしておきます。  しかして、中共問題は、民主社会党の主張は非常にはっきりしておる。また、ただいまのようなお話が出ておる。また、社会党の諸君のお話、お尋ね等にも、これも民主社会党とはやや違う形ではないかと私は聞き取ったのでありますが、ただいま申し上げますように、わが国の国論にいたしましても、よほどこれが中共に対する問題は分かれておるというのが実情でございます。政府は責任のある立場から、もちろん中共問題もこれは真剣に取り組んで、そうしてこれが落ちつくその先を見つけることが望ましい、これは申すまでもないのであります。しかし、政府の感触から申しますと、ただいまなかなか結論が出てこない。在来どおり、いわゆる国府に対しましては条約上の権利義務を持ち、また中共に対しましては政経分離の形で実際的な処理をしていくと、この状態を出ておりません、ただいままで。しかし、いま御指摘になりましたように、たいへんな流動的な状態でございます。したがいまして、こういう流動する事態に対しまして、これと時期を失しないで取り組んでいく、その用意がなければならない、かように私は思いますが、一面から申しまして、かように国際的なたいへんな重要問題として各国とも関心を示しておる、隣である日本としてはこれが重要問題であるということにおいては、これは変わらない、こういう状況でございますから、私、ただいま直ちに結論を出すことはしごく困難な状況じゃないかと。  ことに、ただいまお話のうちにもありましたように、中共と台湾を一緒にして中国は一つだ、こういう考え方が北京政府にも、また国民政府にもある今日の状況のもとにおいて、これはなかなか困難な事柄ではないか。したがいまして、カンボジアの提案等にいたしましても、多数の棄権国が出たり、あるいはカナダ等の意見等も必ずしも多数を制するわけにいかないというのがいまの実情ではないだろうかと、かように思っております。  いずれにいたしましても、これはもう隣の国日本という立場にこれを考えます際に、たいへん困難な問題だが、できるだけ早く問題が片づいていくといいますか、説得することが望ましいのだと。これは皆さんと同しだろうと。ただ、それをどういう方向でと言われますと、いましばらくこの流動する状況、これを十分注視していって、そうして間違いのないようにいたさなければならぬ、かように私は思います。私自身が全然かたい考え方でこれと取り組んでいると、こういうわけのものではありません。ことにきょうの夕刊などを見ますと、ベトナム問題等についてもアメリカ自身も共産側と毎週一回は話し合っているのだというような記事まで出ているような状況でございますから、最も大事なことは、流動する情勢に対処していくその用意がなければならぬと、かように私は思います。
  415. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはまあへたなバッターみたいに、ただ待球ばかりしていると見送り三振になりますから、いまも話があったように、アメリカだって、国連の場で中共が迎えられた場合に、アメリカが国連から脱退するなんという孤立主義は絶対とれない。ただ、ウエイト・アンド・シーだけでは済まない。そういうような意味で、ぜひひとつこれは――慎重であることもわかります。それから、いわゆるフォーミュラとして、方式として簡単に言うことがなかなか反発だけ多いというような考慮もわかります。しかし、無為無策ではいけないので、やはりこの点については一つの方針を立てて、ひとつその方向にまとめるように、せめて自由陣営をまとめるような努力が必要ではないかと思うのであります。これは意見の違いがありまするので、次に移ります。  いま総理も言われたように、直ちにベトナム戦争の問題にも触れるわけであります。ベトナム戦争の問題について、われわれ自身は、少なくともベトナム戦争の本質というものはアメリカ帝国主義の一方的侵略であるとか、したがって解決の方向というのはただアメリカ軍の一方的撤退とベトコンによる南ベトナム支配の実現が解決だという、こういう見方は全く一方的であり、決してそれは平和にプラスでないと考えております。しかし、政府のアメリカの強硬な軍事政策に対する追随、無批判、こういう態度がやはり国民の不安と焦燥をかって、それでいま申し上げましたような半面の真理にすぎないような誤れる平和運動に国民を追いやっている傾向があるのではないか。これは非常に重大なことだと思います。総理は、たとえば蝋山政道さんなんかのやっておりまするアジア平和問題懇談会等が、ベトナム戦争あるいはベトナム問題に対する訴え、アピールを出しました。その要領は申し上げるまでもないと思いますが、交戦当事者、すなわちアメリカ、北ベトナム及びベトコン双方に対してあらゆる形の軍事行動をやめなさい、そうして国際会議、おおむねジュネーブ会議方式に沿うた平和的解決に努力すべきではないか、そのためにまた日本の外交を積極化しろ、そういう趣旨の提案をしたのでありまするが、これに対しては趣旨として賛成である、さらに研究を命ぜられたということを聞いております。いまも総理みずから言われたように、きょうのニュースの一つとして、これはアメリカが北ベトナムからの接触を断わったということに対するあれもあるかもしれませんが、若干のそうではないんだ、平和への意思があるんだということを示す意図があったにせよ、アメリカ側でも、これがルーマニアであるかどこであるか別にして、共産諸国との定期的な接触でとにかくベトナムの平和的解決に努力をしておるんだ、その態度を変えていない。また、イギリスのウィルソン首相が、むろんほかのいろいろな問題もあって、モスクワに乗り込んで行っておる。一番大きな問題の一つは、やはりソ連との間にベトナム戦争の平和的解決へのきっかけをつかみたい、こういう努力をしておるわけです。私が本会議であえて総理に、ひとつ国連総会にでも乗り込んでおやりなさいということを申し上げたんですが、いろいろやり方ありましょう。先ほど言いました日ソ接近の一つの課題も私はそこにあっていいと思う。とにもかくにも、われわれは直接北ベトナムに呼びかけるあれはございませんから、日本としてはしたがって北ベトナム、ベトコンに影響のありそうな特に共産国、あるいはAA諸国、アラブ連合等のそういう国々と特に接触を強化し、また一方においてはアメリカに対してずばずばと、アメリカのほうがむしろ爆撃停止を相当長期間やって、そしてその話し合いのきっかけをつくれというようなことは、直接アメリカに言ったらよろしい。そういうような多角的な、もっと真剣な平和外交をぜひ展開していくべきだと思うのですが、ひとつ総理の決意のほどをお伺いしたいのであります。
  416. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ベトナム問題について多大な私どもも皆さんと同様に関心を持っておりますが、ただいままでのところ、われわれが関心を持ったその表現は、いわゆる無条件話し合いということでございますが、双方でなかなか、ことにまあ北側ではこれについてナンセンスだという意味で賛成してくれない。しかし、いままでソ連との話し合いの場合も、またフランスとも、さらに英国ともこういう問題について積極的に話し合うべきだ、またそういう意味でわずかでもそれぞれのすべを求めるべきだ、こういうような話をしてまいりました。しかしながら、今日までこれがあまり成功していない。そしてこの様相は長期化する様相をきたしている。しかも、アメリカ自身も戦力を増強している。これは北爆という意味ではございませんが、とにかく兵隊も多くなっている。そこらでいよいよ長期化する様相をきたしている。こういう際で、非常に私ども心配していたやさき、きょうの夕刊は、まだ具体的にははっきりいたしませんけれども、そういう意味ではたいへん期待を寄せることができる。少なくともこういうことが一つのきっかけになって、そうして動き出すことができればたいへんいいことだと思います。  ただいま曾祢君が御指摘になります、あるいは欧州方面にこういうことをあっせんしようというのがあるのかどうか、それはまだ明らかでございませんけれども、いずれにいたしましても、話し合っていくのだ、こういう方向で、またそうすれば当然ジューネーブ会議の精神なども出てくるのではないかと思いますが、とにかく話し合いをしない限りにおいてはこういうものは解決しない、かように思いますので、こういうチャンスにさらに私どもの意思をはっきりさすこと、ただいま国会の審議を通じて、日本の国はこういう事柄についてぜひ話し合いをされることだ、こういうことを提案するというのでも、これはぜひアメリカも、また北越も、十分考慮を払ってもらいたい、かように私は思います。
  417. 曾禰益

    ○曾祢益君 たとえばルーマニアあたりにおける動きというものは、外務省における情報網、出先からの報告等にないんですか。その他そういうような各国の和平の動き、これらについて何か――これは非常に動いていることは事実だと思うんですね。ルーマニアの動き等についても何かありましたら、この際お聞きしたい。外務大臣でけっこうです。
  418. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 多少情報はございますが、事務当局から御説明申し上げます。
  419. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) ルーマニアないしハンガリーが調停に動いているというようなウィーン筋の情報につきましては、その関係国に在外公館を通じて当たったのでございますが、どうもこれはルーマニアの調停説は、目下のところは新聞筋のスペキュレーションのようである。どうしてそういう想像記事が出たかという根拠につきましては、二週間くらい前に北越の代表団がルーマニアを訪問しております。それからしばらくしまして、アメリカのマンスフィールド議員が二十四時間ばかしルーマニアに滞在した。そういうような事柄がありましたので、そういう説、新聞筋の観測が流れたんであろうけれども、そういう事実がないということは、ルーマニア側もアメリカ側も双方とも打ち消している段階でございます。
  420. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がございませんから……。とにかくこういう問題についてはそう受け身でなく、ほんとうに積極的に共産諸国、AA諸国等に、日本の意思として、平和解決に何とか道がないのかということを働きかけて、ニュースがあったから、必ずしもそうではないかもしれないけれども、命令を受けて、それで確かめに行って、何もなかったというような、もしそれだけだとすれば、非常に私は失望です。そういうことでなく、総理みずからそういうような平和外交に陣頭指揮をやるような気がまえでやっていただきたいと思います。  さっそく、日韓問題について話を進めていきたいと思います。  まず、基本条約関係についてでありまするが、本日もこの委員会で議論がございました基本条約における「国際連合憲章の原則に適合して」云々と、この問題が非常に軍事協力につながるのではないか、この議論はずいぶんされているのですけれども、私はまだ必ずしもすっきりした解釈国民としてはわっていないのではないかと思うのです。この基本条約の前文には、「両国の相互の福祉及び共通の利益の増進のため並びに国際の平和及び安全の維持のために、国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力することが重要であることを認め」云々と、こう書いてある。私はこのほうが、第四条にいう、要するに「両締約国は、双互の関係において、国際連合憲章の原則を指針する」とか、あるいは「両締約国は」、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たって、国際連合憲章の原則に適合して協力する」云々と、四条よりもむしろ前文のほうが意味が大きいのではないかと思います。私は、必ずしもこれが、国際の平和及び安全の維持のために緊密に協力する、これが直ちに軍事協力になるという議論をしているのではありません。多くの議論は、これよりも、日本が置かれた――日韓条約から来る議論よりも、日本が置かれているアメリカとの関係、日米安全保障条約、あるいは国連軍との協力の問題、これがもし朝鮮において再び戦争が起こるというような不幸な事態は、めったにない、たいへんなことだと思うのですけれども、そういう場合にどうかという議論であって、私は必ずしも基本条約の条文から来る議論ではないように思うのですけれども、しかし、これに対してまだ国民の中に疑いがあるのでは、私は非常に重大なことだと思う。  そこで、私は、この特に前文に引いている「国際の平和及び安全の維持のために、両国が国際連合憲章の原則に適合して緊密に協力する」ということが、これは一体国連のいわゆる強制措置とか、そういった軍事的なことでないのだと、また、そういう例はほかの条約にもあるんだということを、もっと明確に国民の前に示していただきたいと思うわけです。総理はどうですか、この問題、だいぶもう手がけてこられたから。
  421. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この今回の日韓基本条約、あるいは諸協定等は、軍事的な意図がないということは、実はこの席からたびたびはっきり大きい声で申し上げております。しかし、次々に尋ねられ、質問を受けますのは、ただいまの曾祢君ばかりじゃなく、社会党の諸君もあらゆる場合を想定しての質問で、非常に突き込んだ質問をされました。それに答えてまいりましたので、国民とすればこの問題はよほど解明されて理解を深めていただいたと、かように思います。しかし、ただいまなお曾祢君の御指摘になりますように、国民の一部にはまだ、軍事的意図があるんではないか、こういうことを心配する向きがある、こういうことであります。私は、今日まで説明いたしましたのは、わが国の憲法、これはもう非常にはっきりしておる。また、私どもが幾ら国連中心主義ということを申しましても、これも私どもが国連に協力し得るその範囲には、憲法から申しまして限度がある。また、日米安保条約は、私どもがわが国の安全を確保する意味で防衛的な協定はしておりますが、これは外地には出ていかないんだ。したがいまして、ただいまのような、戦争へ巻き込まれる危険は毛頭ないんだということを申してまいりました。ただいまはさらにつけ加えて、もっと、説明が足らないんじゃないか、同様な文句が他の国との平和条約なりその他の条約にみんな入っておるはずだ、そういう点もよく説明したらどうだということですが、これも、日ソ共同宣言等もこういうふうなうたい文句があったと、かように思いますので、私は、いわゆる共産主義の国に対する場合にははっきりこれが軍事的な同盟の意図がないという、それははっきりするんじゃないか、かように思います。それらの点について、詳細を事務当局からもう一つ説明さしたいと思います。
  422. 曾禰益

    ○曾祢益君 事務当局より外務大臣から……。外務大臣が答弁されて事務当局が補足でもけっこうですけれども、こういう点を、私は、本委員会のきのうの公聴会等においても、これらの議論がかわされているのです。総理が日ソ共同宣言を引かれる、私は日ソ共同宣言は違うと、これはもう両国間の関係を、要するに武力のおどかしだとか、そういうことをやらないとか、そういったようなことを、内政不干渉、紛争は平和的解決する、両国間の関係を、いま言ったように、紛争の平和的処理、武力の威嚇、武力の行使をしない、それから内政不干渉、いわばこの三つの原則を、国連憲章の中から引っぱって、これでやりましょうと、これならだれも異存がないわけです。したがって、それが日本とポーランド、あるいはチェコスロバキアとの条約にも出てくる。それではなくて、いま問題にされているのは、それが直接すぐ軍事協力に結ぶのじゃないと思うけれども、国際平和と安全の維持に向かって両国が緊密に協力する、この点のほうが、これは日ソのあれとは条約のパターンが違うと思う。だから、そういう意味でこの種のパターンが共産国のほうでなくてどっかにあるはずではないか。これを私は伺いたいと思う。これは外務大臣からお答え願いたい。
  423. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま総理から申し上げたように、今回の日韓条約が軍事的性格を持っておるものでないということは、いま総理が言われたとおりでありまして、基本条約の前文の第二節及び第四条におきまして、両国が国際連合憲章の原則に適合して協力することをうたっておるのであります。平和条約等におきまして、国連憲章の原則尊重あるいはそれに適合した協力をうたった例は多数あるのであります。この場合に単に国連憲章の原則という場合もあれば、憲章第二条の原則という場合もあるわけでありますが、いずれも憲章第二条に定めておる原則を指針として相手国との関係を律する、あるいは同条に適合して協力するということを確認したものでありますということは明瞭であると思うのであります。これは国連憲章原則というときに、憲章第五十一条の個別的または集団的自衛権に関する規定を決して含んでいるものではないということは明瞭であると思うのであります。  そこで、国連憲章原則の尊重をうたった例といたしましては、サンフランシスコ平和条約前文、及び米英仏とドイツ連邦共和国との間の関係に関する条約第三条があり、国連憲章の原則に適合しての協力を規定している例としては、日華平和条約第六条の(b)、それからインドとの平和条約前文、ビルマとの平和条約前文、及びインドネシアとの平和条約前文等があります。国家関係において憲章の原則を指針とすべきことを規定している例といたしましては、先ほど言われた日ソ共同宣言第三項、ポーランドとの国交回復に関する協定、チェコスロバキアとの国交回復に関する協定というのがございます。日ソ共同宣言第三項やサンフランシスコ平和条約第五条は、国連憲章の原則、特に第二条の諸原則の一部を尊重することを約し、これと並んで第五十一条の個別的または集団的自衛権を確認しております。この第五十一条の確認は主権国としての権利を確認することが目的であって、軍事的協力のごときものを予想したものでないことは、日ソの場合について考えてみればきわめて明白であると考えるわけであります。  いわんや、日韓条約におきましては、憲章の原則に適合しての協力ということを掲げ、憲章五十一条の規定には何ら触れていないわけでございますから、これをもって軍事同盟につながるものであるということは、これは全く的はずれの議論であると言わざるを得ないと思うのであります。
  424. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあせっかくですけれども、声も小さいし、あまり長いものですから、よくわからない。私はこういうふうに解釈しておる。この先例はほかにもある。両国間の関係を規律する云々ということでなくて、国連の原則に基づいて国際平和と安全の維持のために協力するというようなことは、第一、日華平和条約国民政府との条約の前文にはっきり書いてある。「共通の福祉の増進並びに国際の平和及び安全の維持のための緊密な協力が重要であることを思い」、これはこういうことを書いたからといって、まさか日本国民政府が軍事同盟をつくったと言う人はないと思う。しかし、これは日本と台湾が近いのがいいかどうかという議論もありまするから、それじゃ、日本とインド、日本とビルマ、日本とインドネシアとの条約の前文を見れば何と書いてあるか。「国際連合憲章の原則に適合して……国際の平和及び安全の維持のため友好的な連携の下に協力することを希望する」。私は、この文章に関する限りは、日本韓国との基本条約の前文の文章だけが特別に軍事的に危険だとか、けしからぬという議論にはならない、これは。だから、そういうことをもう少し言えばいいのに、やれ国連憲章五十一条だ、五十二条だとか、何か反対論というものをこわがって、先回りして弁解ばかりしている。それではかえってこの議論は混乱する。ですから、問題は、この基本条約の国連原則を引いていること、国際平和と安全のために協力するということ自身が悪いという議論は成り立たない。問題は、安保条約、特に基地があるとか、こういうことが、これがむしろ原動力であって、やはり朝鮮戦争に、万一事あらば、日本に飛び火するのじゃないかと心配するのは、これはあたりまえです。しかし、これは基本的にしからば韓国をほおっておいていいかどうかという政治論になるのであって、この基本条約から来る軍事協力云々というのは、私はちょっと心配が過ぎているか法律論としては筋違いではないかと思うわけであります。  次に、第三条の問題に関連して、これも多くの同僚委員の方が言われたことで、いささか私もためらいもあるのですけれども、一体韓国承認はいつ行なわれたのか、またどういう形式で行なわれたのか、これをひとつ外務大臣から伺いたい。
  425. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは平和条約発効の際に黙示の承認として行なわれたものでございまして、その黙示の承認の事実行為はしからば何であるかということでございますが、それは占領当時韓国の代表部が東京に設置されておった、その際にこれを代表部を切りかえまして、そうして在日事務所ということにいたしまして、実際上これは大使館というような実質を備えたものではございませんけれども、それに近い、在日鮮人の問題その他平和条約発効後においていろいろな処理すべき諸問題がある、そういうことを処理すべき機能に切りかえた。これをもって黙示の承認と、こう見ておるわけです。
  426. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもよくわからないのですがね。サンフランシスコ平和条約が効力を発生したことによって、日本は朝鮮といういわば民族国家の独立を承認した、その法律的効果ができたと思う。しかし、それは朝鮮の独立を認めたので、いま外務大臣の言っておられるのは、つまり私は最後はそこを聞きたいわけですが、朝鮮の独立の承認というものの正式の法律効果というものは、サンフランシスコ条約の効力発生だと思います。ところが、韓国という、まあ国であるか政府であるか、両方の実体を持っているように思うのですが、韓国承認というのは、それはどういう行為でやったかというと、まさか、占領中には日本が外交権を与えられていなかったのですから、これはまだ承認の意思表示にはならぬと思いますね。だから、平和条約が効力発生したときに、そこにおる在京韓国のあれを新たなステータスで韓国の正式の外交代表部と認めるという、そういう黙示的意思表示をしたと、そういうような意味ですか。ちょっとその辺がよくわからないのです。つまり朝鮮の独立の承認韓国承認というものとの若干ズレがあると思うのですね、そこの点をちょっと説明してほしい。
  427. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮半島というものがもはや日本の領有ではない、日本から独立するということになったわけでありますが、その一部に大韓民国というものができておって、それの在日事務所というものを認めた、こういうことがすなわち黙示の承認に該当する、こういう解釈をしておるわけであります。
  428. 曾禰益

    ○曾祢益君 わかりました。そうすると、今度の基本条約ができて、特に第一条でこの外交関係等を設定するとか、第三条でこれこれしかじかの政府としてこの確認をするというようなことは、いわば念のために、あらためて正式承認といえば承認であるが、それをまたずに朝鮮の独立の承認法律的には効果が発生している、韓国承認はもうそれ以来黙示的にやっているのだ。したがって、日本韓国だけを承認し、北鮮はまた事実上の関係はあるけれども承認しないという態度できたことは、何も今度の基本条約によって、特に第三条の解釈だけできまるのでなくて、いままでの外交の経緯と日本の外交姿勢そのものがそうだったということになるのですか、その点を明らかにしてください。
  429. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりでございます。
  430. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういう説明はいままで一向にしていないのですね。だから、基本条約解釈の問題だとか三条の解釈の問題だけから来ると思うので、解釈食い違いがある、たいへんだと、どうなんですか、これは。
  431. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は繰り返して質問がございまして、私は、平和条約発効の際に黙示的に承認をして、そのとき以来の日本の方針であって、今度初めて基本条約の第三条によって認めたものではないということを、何べんか私は国会において答えておるわけであります。
  432. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは確かにお答えはあったかもしれませんが、断片的で、政府のほうから進んで、こういうわけなんで韓国はこれこれしかじかで従来から唯一の政府として承認してきたんだ、北鮮はこれこれしかじかで事実上の政権として取り扱ってきたんだと、こういうふうに言えばずいぶん話は違ってくる。賛成の人も反対の人も、この条約を見て実は初めてこの関係ができたかと思うのとずいぶん違うと思う。  そこで、もしそうだとするならば、その関係がこの基本条約の三項によってひっ繰り返されたんでは困るんですね、今度の三条で。私は、韓国側がいかに憲法上のたてまえから自分の領域は当然に北鮮を含むんだと、こういう主張は主張として持っておるだろうけれども、三条そのものの解釈はどう考えてみても、そこまで韓国側の主張を認めたものではない、従来の日本の主張が通っている案文であるならば、私は、韓国側の国民に対するメンツといっては悪いですけれども、主張というか、たてまえは別として、条約解釈は、日本の外交の姿勢としては、従来から、また今回も同様に国連主義によって、国連が唯一の合法政府と認めておる南の政府、それだけを正式に外交的に承認し、これと正式国交をする、しかし北のほうは依然として北鮮のオーソリティー、事実上の政権としてつき合っていくんだ、こういうことが言えるんじゃないですか、この点はどうなんですか。
  433. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三条の解釈につきましても、いろいろ質問が従来あったのでありますが、これは国連の決議百九十五号というものを引用して、そしてこのとおりの政権であるということを確認をした、こういう三条の性格であるということを私は繰り返し答弁してまいったわけであります。それで、三条によって韓国の憲法を承認した覚えもないし、したがって韓国のまた領土、領域というものをこの三条が規定した意味でもない。ただ、管轄権が、あるいは実際の有効な支配力というものは朝鮮の半島の一部に行なわれておるということを明確にうたっておるのであって、この当時においては三十八度線以南、朝鮮事変の結果ただいまは休戦ライン以南になっておるわけであります。ということを、まあ何べんか繰り返して私は明確に答弁しておるはずであります。
  434. 曾禰益

    ○曾祢益君 当院の本会議における杉原委員質問に対して、私も正確なことばはここに引っぱってきておりませんが、解釈するところでは、この基本条約第三条は決して条約の適用区域をきめたものではない。私はそれはそうだと思います。しかし、同時に、まああなたの何回の答弁を聞いても、結局は百九十五号の(III)によってそういう性格の政府であることを確認する。その性格の政府という中には、事実上南にだけ有効な支配を及ぼしておる政府だ。そこで、条約の適用範囲の問題には直接来ないでしょうけれども、実際上の管轄地域が間接的に出てくると、こういうのが政府の解釈だと思うのです。しかし、そんなまだるっこいことをしないで、条約の適用範囲をずばりとなぜ日本と台湾との条約のように、これだって台湾の国民政府の諸君のほうが韓国の政府よりもメンツを重んずる国かもしれない。しかし、どういう関係にせよ、交換公文のことはあまり触れてもらいたくないのが国民政府のほんとうの気持ちだと思います。しかし、条約に附属した交換公文によってはっきりこの条約の適用区域は国民政府が現に支配しあるいは将来支配するであろう区域に限るということをぴしっときめておるのですね。そういうことをしておけば、今回のいろいろな解釈相違等がなかったのだろうと思いますけれども、それはやろうとしてもできなかったのですか。そこら辺の事情はどういうわけですか。
  435. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実際のその折衝に当たった条約局長から……。
  436. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 中華民国との平和条約の場合には、中華民国という戦前からあった国との条約といたしまして、そういう国の政府でなければならないような規定が、戦争状態の終了だとか北京議定書に基づく権益の放棄だとか、いろいろうたわれておるわけでございます。しかし、また同時に、いろいろ貿易関係だとか、適用範囲が限定される――現在の支配下にある地域にだけに限定されなければならない条項が含まれている。そういうことでああいうような条文の形になったわけでございます。  しかし、大韓民国との条約におきましては、初めから国連決議に明らかに示されているとおりの大韓民国政府と今度の条約関係が結ばれるということでございまして、中華民国との場合とは場合が違うということでございます。
  437. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは条約局長としてはそんな苦しい答弁をしなければならないでしょうけれども、それは理屈の上にへのついたへ理屈であって、政治的にはやはり、この点は吉田さんもえらかったと思うのですけれども、台湾との条約をつくらなければ平和条約がぽいになるというときに、ほんとうはいやだったかもしれないけれども、台湾との平和条約をつくった。しかし、その中で、テクニックの説明はどうでもできるけれども、やはり一種の限定承認をやったと思うのですね、大陸のあれは別だという。私はそこに意味があったと思う。それとは違いますけれども、違うけれども、しかし、似た問題があるわけです。やはり分裂国家といったら違うかもしれない。分裂政府ですか、一つの民族国家に。そこで、台湾式にやればよかったと思う。しかし、それはもうやってしまったのだから、しようがない。  そこで、もう一つ伺うのは、政府はとにかく国連主義を標榜しているのですから、それならば、北鮮との関係においても、やはり国連が北鮮をどう取り扱っているかということを参考にしていいのじゃないか。これは外務省から、それこそ事務当局から伺えばけっこうですけれども、国連では百九十五号の(III)の決議があるけれども、それに即応しながらやはり北鮮を事実上の政権と認めていると私は思う。したがって、この国連の権威を認めるならば、北鮮の代表を国連総会に呼んでいいという、呼ぶべしという意見が、たしか二回ばかり総会で多数決で勝った。実際上は北鮮側が、国連即国連軍だからけしからぬというので、国連の権威を認めると言わなかったから、来る段階にはならなかったけれども、百九十五号の(III)の言い出しべえ自身が、北鮮というものをちゃんと事実上の政権として取り扱っているのですね。政府といい、片方は政権。私はそういう例はあると思う。ちょっと、その点は事務当局から説明していただきたい。
  438. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) お説のとおりでございます。
  439. 曾禰益

    ○曾祢益君 あまりにも明快過ぎて二の句が継げないのですが、だとするならば、なぜ政府は、ことに総理、いいですか、北鮮の関係はやれ白紙だとか、やれケース・バイ・ケースだの、英語の乱用もあまりよくないでしょうけれども、そんな場当たりの問題じゃないのじゃないですか。やはり一貫した背骨と主義があるのじゃないですか。それは私は、私の議論が正しいかどうか御検討願いたいのですが、平和条約以来、やはり韓国だけを、よきにつけあしきにつけ、いわば国連主義に基づいて韓国だけを合法的な政府と認めてきた。三条もその点を貫いている。管轄権範囲は南に限っている、韓国がどうおっしゃろうが。そこで、北鮮の関係はケース・バイ・ケースでやるということだけ言うからおかしいので、そうじゃないのだ。プリンシプルから来て、片方は政府であって、片方は事実上の政権、事実上の政権として、ちょうどあなたが政経分離だといって認めようとしない中共と貿易なんかやっているでしょう。ひとつも遠慮することないじゃないですか、韓国に対して、ケース・バイ・ケースで。もう少しそういう点をはっきりした態度で説明しないから、私は国民が納得しないのじゃなかろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  440. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま曾祢君が非常に明快な話のようにお話しですが、私はこういう見方をしております。今回の日韓交渉をした、この日韓交渉で話し合った、約束した基本条約なり諸協定、これはいまの大韓民国と話をした。したがって、北鮮の問題がこの協定なり条約で何ら変更するものじゃない。これは私は白紙ということを申した。これは北鮮のことには全然触れておらない。したがいまして、先ほど来お話しになりますように、この条約締結することによって北鮮の地位が変わったというようなことはありません。これはプラスでもマイナスでもない。こういう状態で、在来からも北鮮とのつき合いは日本としてあるはずなんで、なぜその二つの権威があるにかかわらずその二つを同様に扱わないのか、こういう話になれば、これはただいまあなたが御指摘になりましたように、国連の言っておるような性格の大韓民国と、朝鮮半島における合法政権を大韓民国としておると、こういう意味でこれと交渉をずっと続けてまいってきておるから、そこでいわゆる分裂国家と申しますか、そういう国柄であるから、北鮮とは法律的な交渉を持たないのだ、こういうことで、この点ではただいまのお説のとおりだと思います。  ただ、私はこの際に申し上げたいのは、この分裂の状況、一民族が二つの権威に分かれておるというこの状況をいつまでも固めてしまうと、こういうことは私どもの気持としては賛成しかねるのだ。やはり一民族は同一国家を形成すべきだと、かように思っております。だから、そういう立場から考えますと、ただいま二つの権威をそのまま承認すれば、これは二つの国が未来永劫に別々にあるということになるだろう、かように思いますので、私はこれはしない。また、在来からのつき合いから見て、大韓民国でやっておるのだから、これはもう北鮮と交渉を持たないのが当然国際慣例だと、かようなことも申して、七十二カ国が北鮮を承認せず、二十三カ国北鮮を承認したものが、この七十二カ国のように南のほうと交渉を持たない、こういう状態だということをたびたび申し上げたのでございます。私、この実際上の問題として、貿易をすることだとか、あるいは人の交流の問題だとか、こういうことが現実に必要に迫られて出てくる。しかしながら、ただいまの状況のもとにおきましては、純然たる貿易の問題と、あるいは純然たる文化的な交流だと、こういうことだとこれは非常にわかりいいことで、それを防ぐというか、それをじゃまするような考え方もないのでありますけれども、多くの場合に政治的な背景を持っておる、こういうことがありますために、いわゆるその場その場というか、具体的問題として処理していかないと、私どもが政治的に引き込まれる心配がある。これを避けるということでございます。ただいままで、表現はやや違っておるが、曾祢君の言われたことと私の主張していることは違いはないんだろうと、かように私は思っております。
  441. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ外交的には韓国とだけ外交関係を持つ、北鮮とは、そう韓国のあれをびくびくしないで、そんなにびくびくしないで、外交関係を持たない限りにおいて、文化的にも、経済的にもどんどんとつき合っていく。しかし、向こうの言ってることを一々言いなりほうだいになるんじゃないんだから、そういう場合、向こうの申し出等についてはケース・バイ・ケースの日本の自主的判断はあるかもしれないけれども、態度としてはやはり事実上の政権としてつき合っていくんだという程度のことはずばり言ったほうがいいと思いますな。  次に、請求権経済協力について伺います。申し上げるまでもないんでありまするが、大平・金鍾泌了解に基づく三十七年十二月二十六日の両国の首席代表間に合意を見た方式には、無償、有償の経済協力の供与の随伴的な結果として、平和条約第四条に基づく請求権の問題も最終的解決し、もはや存在しなくなることが両国間で確認されることになっております。ところが、今回の協定では、第一条の経済協力の供与と、第二条の請求権の放棄、しかもそれは完全かつ最終的な解決との間の関係については何らの記載がない。それではなぜそういうふうになったのだろうか。これの説明がないのですね。なぜそういうふうに随伴的結果として協力するといっても、別にそう国辱的じゃないと私は思ったのですが、それはまあ関連を一応切って、請求権の問題は最終的に解決した、経済協力は並行してやるといいますか、そういう書き方を一がいに悪いと言うのじゃないのですが、大平・金会談のときには随伴的結果ということで、なぜ今度は完全に切り離されるか、そこら辺の経緯の説明が全然ない。
  442. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局この問題は、実際問題としては関連して処理されたことは、これはどうも事実の問題でありまするが、おおうことのできない問題だと思うのであります。ただ、これは請求権の化体である。請求権というものは経済協力に変わったのだ、だから、経済協力というものは、どっちかというと純然たる経済協力でなしに、むしろ賠償の性格を持っておるものであって、その取り扱いについても、あるいはその精神においてもそういうふうに取り扱わるべきものであるというような、あいまいな性格をこれにかぶせることになることをきらったわけであります。ただそれだけのものであります。  それからまた、もう一つ請求権をいかに追求しても、事実問題も、法律問題についても、両者の間に非常な懸隔がある。あるのはまあもっともな話でありまして、朝鮮事変という大きな大動乱がその間にはさまっている、年限もたっておる、ほとんど事実関係を立証するような材料というものはもうみななくなっておる、こういうような関係から、いかにこれを追求しても追求することはできない、不可能である。そこでこれを全部ギブアップして、そうして経済協力一本ということになったのでありますが、これは他の英国あるいはフランスあたりの例に徴しましても、植民地が次々と独立した、その場合には請求権問題というものはあったかないかよくわかりませんけれども経済協力を多分にやって、そうして政治的独立はできておるけれども経済的独立というものは実際問題なかなか困難である。それを助け、かつ新国家誕生の祝いという意味におきまして、多分に経済協力をやっておる例があるのであります。そういうことを含めて、そしてその経済協力一本で、私どものほうは不可能な問題はいつまでも拘泥することはやめる、こういうことにしたわけであります。実際問題としての関連性は、これは事実問題として確かにあったことはあった。これは決してそうかといってそういう問題にとらわれて、そして経済協力の性格というものをあいまいにするということはいかぬ。そういう意味において並行してということばにしたわけであります。
  443. 曾禰益

    ○曾祢益君 その御説明必ずしも十分だとは思いませんが、そこで、こういう案文をつくったことが北鮮関係にどういう影響を与えるかということをひとつ考えてみたいんですが、従来、政府のほうは北鮮との相互の請求権の問題は未解決だ、しかし、北鮮からいま交渉をされても、いま応ずるつもりはない、まあ、こういうふうに言っておられますね。したがって、逆にいうならば、将来完全な平和的統一ができる場合、それからもう一つは、幸か不幸か、両国が相談の上で完全に二つの国が分裂してしまった場合、そういう場合には――あるいはそうして北をそういう性格において日本がが承認するという場合があれば、それは交渉するかもしれぬということだと思うのです。そこで、そういう場合に、今度のように請求権とそれから経済協力を分けると、一体どういう前例になるのでしょうか。つまり請求権だけは両方とも無条件におき、経済協力はやってもやらなくてもいい。別に前例にならないということになるのでしょうか。両者を関連さしておけば、やはり経済協力をやるから、その随伴的結果として請求権を放棄するというフォーミュラにしておけば、北鮮関係においてもやはり請求権を放棄するためには経済協力をやらなければならぬということになる。今度は完全に分離してしまうと、経済協力をやるかやらないかは全然前例にならぬということになるのでしょうか。どういうことになるのだか、そこら辺をひとつ外務大臣から聞かしてください。
  444. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ問題は、南をこういうふうな形式でやったから、北もこれにならうとかいうようなことは、はたして採用できる方法であるかどうか。また、一体、北との折衝はどういう形においてこれが将来行なえるような状態になるのか。ほとんどわれわれは現状から推して予測がつかぬのでございまして、これは一がいにどうもそういうことを予想して意見を言えといわれましても、非常に言いにくいし、かつ、いろいろ誤解を生ずる点等もありますので、この際は控えたいと思います。
  445. 曾禰益

    ○曾祢益君 それじゃ、それはお答えなかったことにして、次にいきます。  在韓国日本人の私有財産国内補償については、従来、政府は一般的に在外日本財産の放棄に伴う国内補償については、これは平和条約に基づく連合国の処分を容認することは、これは外交の保護権を放棄したという意味であって、日本政府がみずから収用したわけでもないのだから、憲法第二十九条第三項に基づく補償の義務がないという説明のほうが、むしろ大体政府の見解だったと思うのです。しかし、最近ではその問題が政治問題化いたしまして、いま審議会で研究中だと、しかし、私はそれだけでは、日韓に限らないのですけれども、ちょうど日韓の問題が出てきたのをいい機会ですから、やはり政治的方向としては政府がもっとお考えになる必要があるのではないか、すでにカナダからの引き揚げ者の補償請求の訴えに対する第二審、東京高裁の判決なんかは、私はなかなか情理ともによくできていると思うのです。つまり在外邦人の資産が一方的に処分されることによって日本がそれだけ賠償の支払いを免れたわけなんだから、このことは国が在外邦人の財産を賠償という公共の目的に用いたことにほかならないのだ、したがって、直接に公共の用に供したとか、使用したとかいうことでなくても、やはり補償の義務が原則としてあるのだ、しかし、こういうものについてはそういう実定法がなきゃいかぬし、また戦争犠牲の振り合いということを考えてやるべきだ、これはそういっちゃ悪いけれども、裁判所の判決なんかというのは、ずいぶんしろうとから見るとすっとんきょうと思えるような判決がありますけれども、これはなかなか情理ともによくできていると思うのです。私は、今度の日韓についてもいろいろの経緯があって、日本人の財産は、これは本来ならば分離した国なんですから、放棄する理由はないのです。しかし、サンフランシスコ条約、事実上の連合国に対する敗戦国として、結局請求権を放棄させられてしまった、そして今度は請求権日韓の双方で放棄をした、これらの経緯からいって、韓国だけを言うわけじゃありません。韓国の在外邦人資産については、やはり振り合いを見て、地主に対するよけいな補償と称する金を出すくらいなら、当然にこっちに妥当な額の補償をすべきではないか。いま政府が委員会をつくらしておるのに先走ったこと言えないというのは、これは形式論としてはそうかもしれませんが、十分にその線に沿って補償の問題を考える、日韓関係はできても双方の国民の中に、しかも過去において自分らの故郷であった朝鮮のことを一番考える人に一番恨みを買うような措置をした、こんなばかなことは私はないと思う、政治的に。日韓関係をよくする意味からいっても、これは政治的に積極的に前向きに取り組んで、振り合いを考えて適当な措置をとるんだくらいのことを、この国会を通じて言明できないですか、総理大臣。
  446. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 邦人の、日本人の在外資産の問題、これはただいまお話がありましたように、いわゆる法律論という問題ではなしに、政治的問題として積極的に考うべきじゃないか、こういう御指摘、これは私もそのとおりだと思います。御承知のように在外資産につきましては、いわゆる涙金的なものは出た、しかし、これをもってもう事終われり、かように考えるつもりは毛頭ございません。ただいま審議会を設けて、この審議会においていろいろ審議を願っておるのもそういう意味合いでございます。しかもこの審議会では、ただいまお話になりました法律的な問題をも含めていろいろ審議を続けておるはずであります。そうしてこの答申が出てくれば私どもこれを尊重し、またその線に沿って善処する、これはもう当然のことであります。ただいまちょうど審議会を開いておるから政府は何にも言えないというような無責任なことを言わないで、十分誠意のある答弁をしろと、こういうお話でございますが、私はさように考えております。  カナダの引き揚げ者の例についても、いま裁判されて、おりますが、これは上告しておるということだと思いますが、この法律問題がどうなろうと、それとまた別個に私どもが政策的に考える問題ではないだろうか、かように思っておりますので、その審議会の結論を待ってというのが現状でございます。その上で私どもが十分善処していく、かように私どもの考え方をはっきりさせておきます。
  447. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、漁業問題に移ります。こまかい問題は農林大臣からお答えいただいてけっこうですけれども、重要な点については総理からお答えを願います。  きょう非常にいい、同僚委員の、渡辺勘吉委員の御質問がありましたけれども、それに関係のあることもあるかもしれませんけれども、私なりに質問したいと思います。  まずこの領海問題について、私は政府が、確かに渡辺委員の言われるのは正しいと思うのです。いまだに何か日韓で突っついておこられやせんかというようなことで三海里、三海里、ほんとうは政府は三海里でいかなくなっていることを承知の助でいるだろうと思うのです。これはジュネーブの国際海洋会議のときの政府の大体の動き方から、代表の動き方から見ても、事実上三海里説でいかなくなっている。しかも、とにかく日本と一番関係の深いお隣の国に十二海里の、しかもアウターシックスの入り会い権まで事実上捨ててしまった先例をつくっておいて、ほかの国に対して三海里、三海里だと、そんなものは通用しませんよ。そういう何か突っつかれるとぐあいが悪いものだから、依然として三海里と言っておこうというような考えは、私はそういう態度はいかぬと思うのです。やはり時代の進展に伴い、新興国が多いですから、むしろ十二海里なら十二海里を基準としてやはりいくんだと、少なくとも漁業専管区域、あるいは領海以外の排他的な最高限は十二海里までとするというぐらいで、日本の外国に対する漁業も、それ以上の東経百七十五度以東は行ってはいかぬとか、中共との民間貿易においても実際上の李ラインというものはできておりますですね。そういうことはよくない。しかし、十二海里くらいは世界の大勢だから、今後これでいきます、それくらいのことは農林大臣の施政方針として言ったっていいんじゃないですか。なぜ三海里、三海里と言うのか、実際にそれを守れると思っていないくせに言うのですか。
  448. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えいたしますが、だんだんそういう方向に行っていることは私もしろうとながら十分了承しておるのでございますが、先ほども申しましたように、日本はやっぱり遠洋漁業のずっといろいろな方面へ出ておりますので、いまそれでいいということを言った場合に、あらゆる場合に支障があるのです。そういう関係がございまするので、先ほども申しましたように、やはり沿岸国の主張というものもよくわかりますが、そういう関係において調和を取りつつ進んでまいりたいというので、先ほども申したようなわけで、そういう意味からケース・バイ・ケースでいきたい。こう考えておるわけです。
  449. 曾禰益

    ○曾祢益君 こういうことはケース・バイ・ケースじゃないですよ。こういうことはやはりプリンシプルを立ててやるべきですよ。しかし、それはまあ平行線だからやめまして、もう少し実体的な問題に入りたいと思います。それは合意議事録にある無害通航権、私は非常に心配なのは、なるほどりっぱに無害通航権が確立されたように書いてあります。しかも漁船について漁具を格納した場合に限る。これも理屈はそのとおり。漁具の格納とは一体何なのか。実際ハッチの中に入れなきゃ格納にならないのかというと、やっかいでしょうがない。そうすると大体漁業家は、これは民間漁業の話し合いで、すでに話は出していると思いますけれども、まあキャンバスでおおってロープでくくっておけば格納に認めてくれ、こっちはそういうつもりで、ところが、向こうさんは漁船であったら何とか理屈をつけて、無害通航権とは言っているけれども、現実には何とかしてとっつかまえて、とっつかまえたらついでにハッチを見て、ハッチの中にお魚があったら、お前どこでやった、おいてけというような話になって、実際上無害通航権をつくったのはかえってトラブルのもとになりはせぬか。これは私は非常に漁業家も心配されるし、船員も心配されると思います。しかも例の韓国側の政府の解説等を見ても、外務省からもらったやつの三〇ページも韓国側がこんなことを言っているのですね。このような無害通航権は領海及び接続水域に関するジュネーブ条約等の要件を備え、沿岸国の利益に合致するときのみに認められる、これは韓国が例の調子の、国民に対しては大いに勝った勝ったという宣伝もありましょうけれども、ほんとうにそんなことでやられたんだら、沿岸国の利益にならないと思ったら、実際臨検捜査、拿捕でもやられたんだら、無害通航権とったつもりでやったことがかえってトラブルのもとになりはせぬか、心配が非常に多いのです。そこで、私はだから全部いけないというのじゃない。そういう心配があるので、現実にそういうことのないようにするにはどうしたらいいか、これについて農林大臣のお考えを明確に伺いたいのであります。
  450. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 格納した場合に、無害通航ということで国際慣行上そういうふうに進んでおりますが、実はいろいろ話し合いがありまして、たとえば、これは漁業ができないという保証のできることが問題でございまするので、たとえばまき網の場合は大きな網でございまして、これは格納というわけにいきませんので、これは甲板上においてカバーかけておけばいい、こういうようなふうでいっております。だんだんとそういうことで具体的に、いまいろいろ民間の関係もありますし、いろいろそういう方向に進んでいかなければならぬかと思っております。
  451. 曾禰益

    ○曾祢益君 あなたそういうふうに安易なことを言われますけれども、これはだれが考えてもあそこの専管区域を、済州島の付近通って行かなきゃ、これは最短距離ですから絶対通りたいわけですね。通るたんびにトラブルが起こっちゃいけないので、民間のいまの漁業の話し合いもありましようけれども、これはもう少し政府も腰を入れて、さらに韓国側とトラブルを起こさぬように見届ける責任はありますよ。こっちのだけの期待だけでは済まない。これは非常に向こうの領海侵犯、専海区域の侵犯ということと関連しますから、よほどこの点は十分にお考えを願いたいと思うのです。それに関連いたしますが、似たような問題ですが、私は今度の共同規制区域で、あるいは公海で旗国主義を貫いたことはこれは事実で、韓国側が、あとで言うように、李ラインが残っている残っていないといいましても、これは漁業協定のほうが優先しますから、だから日本漁船に対しては、いわゆる旗国主義が原則として貫かれていることは認めます。ところが現実には、領海または専管区域からそれを侵したものを追跡してきた場合にはどういうふうになりますか、これは日本の漁船が向こうの専管区域に不幸にして入った、それでその侵犯があったというので追っかけてきた、それが共同規制区域あるいは公海に来たときには、これはだれが考えても追跡権があるでしょう。その限りにおいては旗国主義というものはそのときに例外的に破られるということは認めなければならない、その点どうなります、外務大臣どうですか。
  452. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 追跡権につきましては、領土、領海内において法令を侵したものに対する処罰取り締まりのために公海にまで追跡することができるわけでございますが、漁業水域につきましては、そういう規定は設けられておりませんので、領海を侵さない限りは追跡権が公海にまで及ぶということはないわけでございます。
  453. 曾禰益

    ○曾祢益君 それはだいじょうぶですか、そんなことを断言して。  第一に、領海と専管区域と分けて、だから専管区域でやった場合に絶対に追跡権はないということは断言できますか。  第二に、これは協定では、なるほど原則ですから、領海なり専管区域を侵したやつを韓国側が追っかけてきた場合には、これは国際法の原則が生きて追跡権があるという主張を向こうがしませんか。絶対に断言できますか。日本がそれを断わる議事録か何かつくっておりますか。私はそんなことを言えないと思うのです。
  454. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 法律論としては、私が申し上げていることは確かに言えると思うのでございまして、領海内の取り締まりのために、追跡権というものは公海に及ぶことが認められておるのでございます。その原則、今度の協定で公海自由の原則に対する例外的な制限を設けておらない限りは、公海自由という国際法の原則に立ち返るはずでございまして、漁業専管水域内の取り締まりのために追跡権を設けるという規定がない以上は、私が申し上げたように、法律論としてはならざるを得ないはずである、かように考えております。
  455. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは、漁業専管区域の違反は別として、トラブルが起こらないとは断言できませんよ。あなたの法律論だけでは。じゃ、かりに、領海で侵犯をやった場合には、これは公海であろうが、共同規制区域であろうが、向こうの追跡権があるわけでしょう。これは議論の余地はないでしょう。そこで両大臣、特に農林さん、ちょっと頼みますよ。声ばかり大きてもしようがない。大切なことですから。ほんとうにぼくは、いま――外務大臣もよく聞いてください。藤崎君の法律論はそうかもしれないけれども韓国側がそんなものを認めると考えたら甘いと思います。ですから、領海であろうが専管――かなり広い専管区域であろうが、そこにほんとうに侵した者があって、それで追跡されてくるなら、これは共同規制区域に向こうの船が臨検捜査、拿捕をやるというのは、これはやむを得ないかもしれない。しかし、そういう理由で、なにも海上に白いテープを張っているわけじゃないのですから、そこを侵したという理由で実際上に旗国主義が貫かれないトラブルが起こる危険というものが非常にある。それを、どういうようにしてそういうことのないようにするか。それは危険な地域に、なるべく専管区域のどこか離れたところにおればいいというが、しかし、漁業するほうからいうと、そうはいかないでしょう。ですから、そういうときの領海なり、あるいは専管区域を侵したかどうかというすれすれのところで、そこで旗国主義に反する韓国の警備艇が出てきて、せっかく漁業協定ができてうまくいったと思ったところが、また韓国船が出てきて日本船がつかまったという事態は、断じて避けなければならぬ。日本側の自制も必要だろうし、韓国側にそういうトラブルを起こさせないような、また両者の民間の漁業協力の取りきめも、そういう点に非常に私は重点があると思う。それをどういうふうにして、そういう不祥な事態を起こさないように、つまりさっきの無害通航権といわゆる追跡権の問題というところから、せっかくの旗国主義が貫かれないようなトラブルを起こさないように、どういうように運用をしていくのか。これは私非常に重要だと思う。協定そのものの欠陥もありますよ。しかし、運用上の心配をわれわれは考えなければならんと思う。どうですか。
  456. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) もちろん、これはよくやらなければならないので、いろいろ問題を、これは別の点もありますけれども、いま民間同士で操業の問題、操業の安全等について、協定をもう始めるべく出発しているのです。この点を、漁場においていろいろ接触する漁民間の気持でよく協定したほうが、政府で直接やるよりもいろいろな点においてよくその間の実情に通ずるだろうし、また気持が通ずるであろうということで、そういうふうに出発してやっているのでございます。その点においてももちろん考えられるのでございますし、また、重要な問題でありますから。  それからなお、私、政府といたしましても、いろいろの解釈上の問題は、もちろんそれのみならずいろいろ起ころうかと思います。したがって、御存じのとおり第九条において、紛争に関する条項を特にこの九条におきまして十分その点を外交、もちろん外交ルートもありましょうし、そういうことで一ぺんにいいルートが、慣行ができていくことを希望するわけでございまするが、そういうことがありまする際においては、それらの紛争解決の道を通じて完成させていきたい。またその必要もなかろうとは思いますけれども、そういう道も立てていきたいと、こういうふうに考えております。
  457. 曾禰益

    ○曾祢益君 まず、民間の業者間の話し合いをさせてそういう問題を取り上げて、事前にわかるととなんですから、なるべくトラブルが起こらぬようにしていくと、もし不幸にして起こったような場合に、両国間の協議でやるのもけっこうですけれども、そういう点はもう少し慎重にかつ真剣にお考えになって対処していただきたいと思います。  次に、これは皆さんが言われた点で恐縮ですけれども、私は、やはり政府もこれを言っておられますが、いわゆる李ライン問題ですね、大統領宣言と、それから資源保護法というこの国内法を全部やめちまえというのは多少無理かもしれない。自分の国の漁民を取り締まる、あるいはたとえば漁業資源法を一定の海域のものには許可制をしくというのは、これは自分の国民についてはいけないとは言えないわけですね、これは、これらの法律なり宣言が明確に今度の漁業協定に抵触する分はあるわけですね。そういう点については、これは外務大臣もどこかの機会で言われたと思うけれども、適当な機会にですね改定あるいは廃棄、廃棄ができなければ悪いとこだけ改定でもいいけれども、これはさせるというのがやはりほんとうだと思う。この点はどうお考えですか。外務大臣でけっこうです。
  458. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国内問題でありますからあまり立ち入った追及はできないと思いますが、しかし、そういう問題を適当な機会に提起して向こうの善処を促したい、こう考えております。
  459. 曾禰益

    ○曾祢益君 私のほうの議員団から政府に対して、いわゆる五年後の漁業協定の期限到来後、一年間の予告で廃棄通告して、その無協定事態がかりにできたとした場合にどうするんだと、この質問に対して政府の答弁書の中では、期限がきても軽々にそのような行動に出ようとは予想されない――韓国側が。さらに韓国政府首脳部も同様の趣旨を述べていると、こう言っておられます。さらに日本政府は将来いかなる事態においても安全操業を確保するために万全を尽す心がまえを有しておる、いかにもそのことばだけはけっこうのようですけれども、しからば万一の場合に万全な措置とは、万全を尽す心がまえといいますか、万全な措置とは言っておられぬが、どういうことをお考えなのか。たとえば、われわれはそういう事態はあまり希望しないし、期待したくないけれども、万一、せっかく五年やってみたのに、不合理にもそういうものを、無協約で再び紛争が起こるというときには、政府としても腹をくくってやはり経済的なこれに対する対抗手段ぐらいは私は考えてもいいと思うのです。そういうことを予想していまから、政府からそういうことを言うのはいやかもしれないけれども、万全の心がなえを有しておるというのは、もう少し説明ができるものなら説明をしてもらいたいと、こう思います。
  460. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、この前、韓国の李外務長官が、おそらくあれはちょっと記憶は、日は間違うかもしれませんが、十月の十三日ごろだったと思いますが、記者会見において、重大な侵犯がない、違反がない以上は、この漁業協定に永続的に持続していきたいということを、またそうであろうということを述べておるわけでございまして、その重大なとはどうかという問題は、いろいろございましょう。これは、何です、私どもとしては、でき得る限り、したがって、日本側といたしましても、また韓国も同様でございましょうが、この協定が十分順守できることに努力をいたしたい。で、したがって、私どもといたしまして、いわゆる政府としては、この点について極力努力をいたしておりまするわけでございます。取り締まりの問題についても、予算を請求し、いろいろやっておりまするし、また民間に対しては十分、いろいろ、了解をするいろいろな会合をいたしております。それからまた、民間としても、非常にまあそれを了解しておる多数が――中には例外がありましょうが、多数了解して努力を払うことになっておりまする。先ほど申しましたように、民間の協定もまあやろう、こういうことで進んでおりまするし、それらの点はいろいろ進んでおります。なお、これに関して必要な法令ですね、法令なんかも、それぞれの法令はどうするかといったようなことで、いませっかく検討中であり、まあすぐそれらが実行できるようにいたしてまいりたい。なお、いまお話しのとおりに、民間供与の問題は、これはもう先ほど来いろいろ申しておりましたとおりに、その特別のものというわけにはいきませんけれども、でき得る限りの好意をもってこれやっていこうというようなことで進めておるようなわけでございまするので、まず、そういう意味、そういうようなことで、でき得る限りの努力をいま進めつつありまするわけであります。そういたしますることは、結局において、やはり条約は、相互の信頼がやっぱり基礎であろうと思いますることは言うまでもございませんので、そういうことであれば、部分的に、また場合によって、若干の違反があることを、期待するわけじゃありませんが、そのときにはこれは話し合いで進むだろうと、こう私はよく思うのでございますが、でき得る限りさようなことのないようにつとめておる、こういうわけでございます。
  461. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちょっと話がずれて、私は無協約状態のときに対する対策はどうかということを伺ったのですが、まあ平和ムードだからそれ以上追及しません。われわれはそういう最悪のときには、経済協力がストップするくらいな決意を持っておるべきだと思いますけれども、政府からあえて答弁を求めません。  それから、一体、日本漁業者に対する実績がどうかということについて、渡辺委員から非常にりっぱな御質問があったので、私はそれに触れませんが、ほんとうにこの漁業協力がうまくいけば、三年半か五年ぐらいすれば、ほんとうはもう乱獲状態がくるのではないかと、こう思うわけです。私はそれが、日韓協力の点からいえば望ましいが、しかし、日本としては、それはなかなか大きな頭痛だろうと思う。したがって、円満にいけば、あの狭いところで韓国がどんどん有効適切な漁業をやって能率がよくなれば、これはもう完全に乱獲で、一人当たりの漁獲量が減って困る。ことに零細な沿岸のいわゆる千七百隻に押えれたら漁民とか、あるいはまき網以下の小さいものは困るのじゃないか。それらに対して、いまは確かに李ライン――これは実質的撤廃ですよ。何と言おうと実質的撤廃で、けっこうだ、けっこうだ。しかし、三年、五年で日韓関係がうまくいき、向こうが漁業協力があがったというときに、こっちが今度は首を締められるということになる。これはまあ皮肉であるけれどもしようがない。それを乗り越えて日本漁業はさらに発展しなければならない。そういうことに対する少し長い見通しを持っておられるかとうか。むろんこの日韓の――韓国を援助することよりも、日本の零細な漁民を助けろという御議論もあると思います。それはそれとしてうまくいっても、なかなかこれは問題だと思う。その場合の対処方針は、たとえば五カ年計画というものを立てておられるかどうか、これを農林大臣から伺いたいと思います。
  462. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ごもっともな御質問でございます。先ほど渡辺委員からも同様の御質問がありましたわけでございます。この現在日韓の問題がなくても、たとえばまき網のごときは、まあ大体において――いろいろ年によって相違はありますけれど、やっぱり十二万トン以上まき網による収穫が出た場合には、豊漁貧乏とよく言われるのでございまして、韓国の問題が加わらぬときにおいてもやっぱりまき網については漁業生産調整事業というものをお互いにやっておるようなわけでございます。これはまあ韓国の問題が進展しないときでもさようなことがあるわけでございます。ほかのいろいろな業種につきましても、やはりどうせ同じような地域において発展がどんどん伸びたということ、現在の情勢からいうと、申すまでもなく韓国日本との漁業の生産力は非常な格差がございます。これはもう問題にならぬ小さいものでありますから、いまのところそう大きな問題は考えられないのでございますけれども、それが発展しますと、当然そういう問題がなくてもいま申しましたようなことでございまするので、そういう問題は考えなけりゃならぬと、こう思います。したがいまして、さればといって、やっぱり韓国との友好を進める上において、いまのところやはり漁業、農業というものに進めざるを得ないという韓国の実態でもございまするので……。しこうして、また非常な格差がございまするから、日本側として十分これは援助していきたい、こういうふうに思うのでございまするが、将来の問題を考えますと、確かにその心配がございます。したがいまして、先ほど申したのでございまするが、わが日本といたしましては、どうしても漁業場の近代化、合理化をどんどん進めていく、構造改善事業もどんどんやる。また、先ほども申しましたんでありますが、新漁場をどうしても開拓していく必要が絶対にございます。最近でございますが、アフリカのほうに、中央漁業審議会の調査の結果、今度は二十二隻大きなやつを出すことになっておるわけでございまするが、さようにしてこの新漁業をやっていく。また、いま現に水産界といたしましては、内海の、あれは浅海における養殖だけでなしに、海中におけるサケ・マスの養殖事業といったようなことも、もう松島で現にやっておる。そういう意味でもっと高いところへ向かって、日本は徹底的にその方向へ向かっての努力を払っていきたい、こう考えておるわけでございます。
  463. 曾禰益

    ○曾祢益君 たいへん遠大な計画でけっこうですけれども、それは予算化するのは本気でやってくれないと何にもなりませんよ。しっかり頼みます。  それから、そういう点で、韓国も非常に遠洋漁業にもすでに相当進出しております。何しろ日本の全日本海員組合なんかと違ってずいぶん安い賃金ですから、外国船なんかにもどんどん乗り組み員を出しております。それから日本の輸出船をマグロ漁船等に使っております。私はこういうものを一がいに警戒するわけにいかないと思うのです。しかし、日本のおもなる援助は、やはり先ほど渡辺委員との間にありましたような、沿岸の漁民を助けてやる、そのために低利の融資をする、ここにやっぱり重点を置かれるべきだと思うのですが、この点についてはそれで差しつかえないかどうか。日本漁業協力重点はやはり沿岸漁業、このために特別の低利融資の四千万ドルを主として沿岸漁業を助ける協力が、これが主だと、こういうふうに考えてよろしいかどうかを伺います。
  464. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) ちょっと聞き落としましたが、沿岸漁業――韓国の沿岸漁業ですか。
  465. 曾禰益

    ○曾祢益君 むろん韓国です。
  466. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 韓国のほうはやはり沿岸漁業が、この前、両国の農相会談のときにもやはり沿岸漁業重点を置いてもらいたいという話もあって、したがって、先ほど申しましたように、九千万ドルのうちの四千万ドルは沿岸漁業と零細漁業のほうに向けるように、しこうして、それが利子が安いようにといったようなことの非常な熱烈な要望があったのに対して、でき得る限りかようなことについては好意を持ってそういう方向に期待していきたい、こういうことを申しておるようでございますから、大体そんな方向だろうと思います。
  467. 曾禰益

    ○曾祢益君 漁業関係で最後の質問は、これはもう補正予算に計上されていることではございまするが、いわゆる漁船それから船員等に対する補償、弔慰金等の問題、特に、これはむろん補正予算が通らなきゃいかぬのですけれども、特に死亡及び傷害のお見舞い金と言いますか、補償と言いますか、これはひとつなるべくすみやかに出せるように特に配慮してもらいたいと思います。
  468. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この問題は、しばしばお答えしておるのでございますが、四十億の特別給付金を出すことにいたしました。乗り組み員の、いわゆる抑留期間をおもにみてやる。それから死亡者もそうです、八名以上でしたかありまするので、それらについても、いろいろ事例をよく見比べまして、早くこれをやっていこう。予算としては、もう今度の予算の中に組んであるわけでございます。
  469. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、法的地位の問題について伺います。  これもきょうの非常に突っ込んだ御質問があったことに関連するのですけれども、一体、今度の協定によって、韓国籍と言われる人たちと、それ以外の朝鮮人との間のおもな待遇上の相違、一体どことどこなんだ。私の見るところでは、ほかにもあるかもしれませんが、まず第一に、永住権があるかないか。それから持ち帰り財産の取り扱いを緩和する。それから再入国の希望を好意的に取り計らう。むろん強制退去についての特別な取り扱い。大体そんなことがおもな違いかと思いますが、これは法務大臣から。
  470. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま御指摘になりましたところが大体のところでございます。永住権を今度持つ人は、一番大きな差のできるのは退去強制の点だと思います。そうでない人たちは、出入国管理令のいままでの適用を受ける。ところが今度の協定によりまして、協定第三条等によりまして、ずっとしぼられておるということが非常に大きな点でございます。それから、いろいろの待遇は、いまおっしゃったような社会保障とか、教育とか、持ち帰り財産であるとかいうような問題でございますが、これもいままでの人たちとはどういうことになるかと申しますと、生活保護はほとんど変わらないのであります。それから教育の点も、公の小学校、中学校に入学させるということ、それから中学校を出まして上の学校にいく者にはその入学資格を認めていくというようなことも、これは永住権者もそうでない人たちも同じように扱われる。ただ、国民健康保険が扱い方が多少違うのじゃないかと思いますことは、これは市町村条例できめれば非永住者にも適用することができるというようなことでございまして、永住者にやるということになっておりまするが、非永住者に必ずしもやるかどうかということはさまってない。これはここに厚生大臣がおりますから、必要であれば御説明をお願いいたします。そのほかでは、持ち帰り財産が一万米ドルと五千米ドルと違うということ、そのほか小さい問題いろいろあるかと思うのでございますが、たとえば外国人の財産取得に関する政令が永住権者には適用から除外される。よろしゅうございますか、外国人の財産取得に関する政令、ところが、そうでない者には適用されるというようなことがあるようでございます。そのほかの問題は、いろいろ永住することができるようになりますれば、何かと永住者としての便宜は非常に多いかと思うのでございますが、さればといって、永住権を得なかった者がどうなるかと申しますと、いままでより悪くなることはない、よくなることはあっても、悪くなることはないということは言えるだろうと思います。
  471. 曾禰益

    ○曾祢益君 法務大臣が私の次々に伺うことを一括もう予定して答弁いただいたので、それでいいようなんですが、私は、初めはどこが違うのだ、それから、結局社会保障がどこが具体的にどこまで違うのか同じかということを一つ一つ伺いたかったのですけれども、大体わかりましたが、教育のほうは事実上――権利義務は別ですよ、事実上の取り扱いで、まあ小中学には入れてやる、上のやつも考えてやる、入れるようにしてやるということは、永住権者と非永住権者と変わりませんか。中村さん、それだけの質問でたいへん恐縮ですけれども、済んだらお帰りになってけっこうですけれども
  472. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 永住権を持った者も持たない者も、現実には差異がないと、かように考えております。
  473. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、次が生活保護と、いまの一番やっかいな、やっかいといいますか、やや、やっかいな国民健康保険、で、生活保護については、いまも法務大臣言われましたが、今度は厚生大臣からお答えいただきたい。これは変わらぬですね。  そこで、国民健康保険のほうは、ある市町村はやっておって、やっておったところは従来どおりですか。今度あなたのほうの厚生省令かなんかで新たに均一にやらせるわけでしょう。そのときに、今度新たなやつのときに差をつけるのですかつかないのですか。つけるのはまずいと思いますが、どうなんですか。
  474. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回の取りきめによりまして、生活保護につきましては、永住権を取得いたしました者につきましては、当分の間、従前のとおりとする、こういうことに相なっておるのでありますが、北鮮系の朝鮮人その他の外国人におきましても、現実にやむを得ない生活の困窮者につきましては、これまでと同じように生活保護をやってまいる方針でございますが、国民健康保険につきましては、御承知のように、外国人につきましては、各市町村におきまして条例によってこれを適用するということに相なっておったわけでございます。しかし、今回の永住権取得者につきましては、省令によりまして当然加入できるように措置する、こういう取りきめに相なった次第でございます。したがって、永住権を取得した者と取得せざる者との間に差別が生ずるようでございますけれども、これは国民健康保険は地域社会の相互扶助、連帯性ということを基調にしてできております関係から、その市町村において適当と認めた者を条例でもって加入をさせる、こういう道が従前どおり行なわれるわけでございますから、私はトラブルはないものと考えております。
  475. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは総理に伺いますが、大体これは今度は永住権者と、そうでない、つまり韓国以外の法律上の違いはできますけれども、これはやむを得ないのですね、永住権を与えろといってもできない。また、こういうことを契機といたしまして、日本におるいわば少数民族といいますか、特別の外国人である朝鮮系、これは韓国人も含めて、その社会に、韓国からいえば、今度は韓国人になったほうが得だからいらっしゃいいらっしゃいと奨励するでしょうし、また、北鮮系は、韓国側が徴兵やるぞてなことをいって、一ぺん外国に行った者を北鮮系に帰するというように盛んに運動をやる。そういうふうな取り合いみたいな状態が起こっておる。これはやむを得ないかもしれないけれども日本側としては、実をいえば迷惑になるのではなかろうか。したがって、永住権者韓国人と法律上の間違いはあるし、それはそれとして、いま大体各大臣からいわれたような実際上の社会保障的な方面等については、人道的といってもいいですけれども日本側はまあきわ立ってそういう紛争に巻き込まれないというか、なるべく差別待遇をしない、そういうことによってよけいなトラブルを起こしてもらいたくないというのがほんとうの日本側の気持ちじゃないかと思うのです。そういう意味法律上の差はある、これはもう何もあれすることはない。しかし、極力待遇が実質的に同じように、まあ仲よく暮らしてくれと、こういう方針でいくべきだと思いますが、総理のお考えをお示し願いたい。
  476. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども答えいたしたのでございますが、この国籍取得は、自分の欲する国とその人との問題でございまして、日本政府自身がこれに関与するようなものではない。これはもう曾祢君はその道の方だから十分御承知のことだと思います。で、したがいまして、ただいまの永住権を認める、そうでない者、こういうことで処遇等において相当差ができている。それをもう北鮮、あるいは大韓民国がどういうように扱われるかは、これは別で、日本政府としてそういう中に巻き込まれることは、これは迷惑な立場である。それから、同時に、日本はそういう点については法務省あたりの取り扱いにおきましてもはっきりしている。いわゆる国籍取得問題に政府自身がタッチしないようにというまあ態度ははっきりさしておきます。しかし、在日朝鮮人と申しましても、これは長く日本におり、しかも、われわれと雑居し、かつては日本人であった、こういう関係もありますし、今回の協定ができることによって在来の処遇に非常な変更を与える、こういうことはおもしろくないと思います。韓国人としからざる者と、この区別はこれはやむを得ない。しかし、一般外国人よりも、かつて日本人であったと、また、雑居しておると、こういう意味で、私どもどうしてもこれらの諸君に対しても非常なきつい思いをさせないようにしたいと、かように思います。そういう意味でしばしば申しますのは、今回のことができましても、在来の待遇、それに変化を来たさないように注意はいたしますと、かように申したような次第でございます。
  477. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは法的地位の直接関係じゃございませんから、入国の管理と日本の労働との関係について、これは労働大臣にも伺いたいんですが、実は、この間、私の同僚の議員の方で、ある関西の大学におけるいわゆる各党立ち会い演説会で質問を受けた。それは、日本のある会社が韓国人の安い労働を入れて、それでやっていると、具体的の会社の名前までも言ったので、さっそくその方が東京に帰って来られてから、会社を調べたところが、そんな韓国人なんか使っておりませんと、それから、法務省のほうにも、入管のほうにも聞きまして、そんな簡単に外国人労働をどんどん入れられちゃ困るんで、韓国側のほうには実は人手が余っているんでしょうし、教育の程度も高い、優秀な労働力であるごとは認めますけれども日本の労働市場からいえば、来られちゃ困るというほうが、私は、少なくとも労働組合の立場としちゃ正しいと思うのです。特にへんてこりんな資本家がそんなことを悪だくみしてやられちゃ困るというんで調べてみたら、どうもそういうことはなくて、よほど見習いとか技術を見習うとかいうので、それもインチキで来るんじゃなくて、ほんとうに修練のために来るとかいう、何かよほどのはっきりした証拠でもなければ、そんなものは非常にケースも少ない。年に一件か二件ぐらいだというお話でありましたが、そうであろうし、これは韓国側の期待にはそむくかもしれないけれども、やはり日本の労働市場を守るという意味からいえば、そういうチープ・レーバーがむやみに来られちゃ困る、まことに迷惑千万なんです。日本国内にいる朝鮮系の人は別ですよ、新たなるいわゆるレーバーとして。そういうことはむろん労働対策としても考えておられないだろうし、法務省のほうでも、日韓の国交が調整ができたから、どんどこどんどこそういうレーバーを入れるというようなことは毛頭考えておられないだろうと思いますけれども、これは非常に重大なことですから、明らかに両大臣からお示し願いたい。
  478. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま外国から労働者が入ってくる道はないのでございまして、それは入国管理令に規定があるわけでございます。それで相当厳重にやっておるわけでございます。いまお話のような、技術を見習うために短期間にやってくるというような者等は私もちょくちょく聞くのでございます。それから、一つ規定としては、労働者が入ってくるのはこういう条項がある、「本邦でもっぱら熟練労働に従事しようとする者」――熟練労働者を特に入れるというような場合にはこういう条項によって特にやる、そのほか一般の者は入れないということになっております。なお気をつけることにいたします。
  479. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 労働省の立場からいたしましても、現在のわが国の雇用情勢からいたしまして、韓国人労働者を一般の労働者としてわが国に入れるというようなことは、目下全然考えておりません。ただいま法務大臣から御説明がありましたとおり、きわめて特殊な場合にだけ、これは法務大臣の認可のもとに若干入ってまいっている、これだけでございます。
  480. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣にお伺いいたします。私はお許しを得て、竹島の問題と、もう一つ、主として経済協力の問題について質問さしていただいて終わりたいと思います。  まず、竹島問題ですが、私は、この紛争解決に関する交換公文の中を読んで見ると、「別段の合意がある場合を除くほか」、要するにこの交換公文によって紛争を解決するのだと、こういうことになっていると思うのです。私は、したがって、韓国側が、竹島の自分の権利は絶対正しいのだと、そういう意味では紛争にすらなっていないのだと言ってみたり、日本側がその主張を認めてないという意味で、紛争が客観的になっているということは認めると言ってみたり、多少この言い方は時によって違っているようでありますが、少なくとも日本側は、別段の合意によって、この竹島問題はこの交換公文から除くという合意をしているはずはないと思うのです。ただ、問題は、この交換公文は、ほんとうは竹島のためにつくられたに違いないとぼくらは推定するんだけれども、証拠としての竹島ということは明書していないと、そこにつけ込まれたと言っては語弊があるかもしれませんですが、だから、この交換公文で竹島の問題を処理するということを、どうしても韓国側は国民の手前、メンツででも承認しない、あるいはしたくないものではっきり言わない。紛争であることは認めるにしても、この交換公文でやるのだということを言うと、何か自分の主権の主張に、何かこう傷ができるというような非常に感じが強い。こういうことに私は問題があるのではないかと思います。まずその点、別の合意をしたことはないと思うのですけれども、「別段の合意の場合を除くほか」というところ、この交換公文に竹島を入れたかったのだろうけれども、入れられなかったことの経緯等について外務大臣からお答え願いたい。
  481. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず、別段の合意はないのであります。竹島に関して別段の合意というのは、たとえば漁業紛争等については、これは別段の合意がございまして、漁業紛争はそっちのほうの方法によって解決する。竹島については紛争問題ではあるということを、御指摘のとおり、認めないような認めるような、結局は認めておるのでありますが、とにかくわれわれの間では、竹島問題は紛争問題であって、この交換公文によって解決されるということについては、明瞭な合意をみてこういうものができ上がったのでございます。
  482. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、私は、一政府は率直に、とにかく懸案の一括解決と言ってきたのに、この一括解決にならなかったことはきわめて残念である。これは国民におわびしなきゃいかぬと思うのです。同時に、解決に若干時間はかかる。まあ国交調整ができて友好的な雰囲気がさらに醸成されてからでないと、事実上向こうは占拠しているのだから、それだけ強いわけですから、なかなか話し合いに出てこない。だから解決はいささか時間がかかります。国民の前に、しかし、絶対たな上げにするつもりはございませんと、こういうことを明確に、かつ、その点を韓国側に何らかの形でやはり私は認めさせるのが必要ではないか、こう思うのです。いまさら合意議事録つくれというのもやぼかもしれませんが、何らかの機会に、条約がもういやおうなしに――いやおうなしにということばはいいか知りませんが、十一日には自然成立することになるのですから、だから、その前にと言っても、それは事実上無理かもしれない。しかし、だからといって、これだけの問題をほうっておいていいことはない。まあ調印の儀式にも行かれるようですし、何らかの方法で、双方がこの問題については、両方の主張は主張だと、しかし、平和的に解決するんだ。要するに交換公文が動くのだということを何とかして両方の合意で明らかにすることはできないものでしょうか。私は、それはやはり努力するのがほんとうだと思いますがね、これこそすぐに解決できないですよ、これは。だから一括解決できなかった、申しわけございません、それからやっぱり時期がこないとなかなか空気がよくならないから、すぐに解決はできない。しかし、これはそのことはたな上げじゃないんだと、それにはやっぱり韓国側も同意だと、これだけのやはり形式はいまからでも決しておそくない、整えるほうが、国民を満足させるだけでなくて、両国のためにいいんじゃないかと思うのです。向こうのメンツがあってのことはよくわかりますけれども、そういうような両国の何か合意をして、適当な機会になるべくすみやかにこれを発表するということを真剣に考えるべきではないかと思いますが、総理のお考えを伺わしていただきたいと思います。
  483. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまたいへんいい御注意がございました。私は率直に申しまして、たびたび国民に一括解決ということを約束してきた。しかしながら、その大事な領土問題について解決を見なかったことはまことに残念に思いますが、しかし、この解決の方向と申しますか、めどがついている、そこで国民の皆さまにもお許しが得られるんじゃないかと、かような説明をしばしばしてまいりました。さらにただいまの御意見もございますし、お尋ねもありますし、この一括解決ということをはっきり申してまいりましただけに、与野党の諸君はじめ、国民の皆さまの御了解を得なければならないことだと、かように私は思います。同時に、また、この領土問題につきましてしばしばお尋ねをこうむっておりますが、私どもが竹島の問題について領土権を放棄したこともなければ、また、韓国側の主張を了解したこともない。したがって、これはわれわれの領土であるということをしばしば申し上げてまいりましたので、一括解決のできなかったことは残念だが、このわが政府の考え方が国民期待に反するようなものでないことも、これはおわかりだと、かように私は思います。ただ、この解決をすることについて今後とも最善の努力を払うのでございますから、いままでのところ、適当な機会に交渉を持つということを外務大臣にも申しております。なかなかこれだけの大問題で、両国国民の関心事でありますだけに、そう簡単な事態――その話し合いがつくとも思いませんが、とにかくこの問題は国民期待に沿うように最善を尽くしてまいりたいと、かように思います。したがいまして、ただいま言われることが、これは適当な時期か、あるいは適当な方法か等は、なお考慮を要することでございますが、椎名外務大臣批准交換にも出かけると、こういう機会があれば接触する機会があるのでございますから、十分こういう点についても忌憚のない話し合いをしていく、こういうことにいたしたいと思います。
  484. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは日ソ共同宣言のときも、御承知のように、参議院では領土問題について附帯決議までしているということがあるのですね。こういうこともありまするから、まあ議院のあれは別ですけれども、政府のほうでも、ぜひ両国の合意を何らかのすみやかな機会にあらわす方法を講じていただきたい。少なくとも真剣に考究していただきたいと思います。  最後に、国交調整の正常化に伴う、特に経済協力、貿易等に関連してお尋ねいたすのでありますが、すでに御承知のように、過去においては四十億ドル近い援助がアメリカから注入されましたけれども、それがむだづかいに終わったり、あまつさえ、汚職や疑獄の種をまいた、こういう苦い経験もあるわけであります。したがって、今回の日本経済協力と民間経済提携が、一方では韓国側が危惧するような経済侵略とならないように、また、他方では、いま申し上げましたような浪費や腐敗の原因とならないように、厳重に措置すべきことは両国の当局として当然だと思います。また、韓国側もこの点については留意をしているようでありまして、対日請求権資金管理委員会には特に野党側も加え、そうして公正な運営を期すると言っているようでございます。これらの、大体どういうことを考えているかということについて、十一月二十七日に公表されたいわゆる基金の使用計画等を見ますると、総額で外貨は五億三千八百二十万ドル、内資のほうが七百三十八億五千万ウォンといたしまして、大体その内容は、社会間接資本拡充部門、まあ主として鉄道車両、船舶等の製造、港湾、多目的ダム、通信施設等、それから肥料、農薬等の原材料の輸入、それから、主として農業、水産業、中小企業、機械工業等の改善に向けられるようであります。比較的われわれ感ずるところでは、何か重工業のモデルプラントだけをやるという方向でなくて、この計画にあらわれたところを見ると比較的じみちだが、まじめな方向ではないかというふうに考えるのでございまするが、そこで、韓国はああいう国柄ですから、日本側から内政干渉だというようなことを、極度に神経質な国でありますから、その点は十分にわれわれは考慮しなければいけませんけれども、真に正しい経済協力と有効な協力をするためには、むしろアジア平和問題懇談会等が提唱しておりまするように、日韓あくまで平等な立場から、両国間の経済技術の交流と協力を円滑に調整するために、官民の合同委員会というようなものを設置してやっていくほうがいいのじゃないか。むろんそこで相談したものを――これは任意に向こうが相談してくれることを期待するわけですけれども韓国韓国の主権のもとに実際運用されると思いますけれども、そういうことが必要ではないか。民間の中には、これは当然のことでありまするけれども、両国の労働代表を加えていく、こういうような考慮があってしかるべきではないかと思うのであります。この点は若干デリケートでありますし、まあ民間的な意見だというおしかりはあるかもしれませんが、この点に関する総理大臣のお考えをお示し願いたいと思うのであります。
  485. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このたびの経済協力、これは韓国経済の成長にこれが役立つということ、そういうことに使われることを心から望んでおります。しかし、この種の事柄は、しばしば御指摘になりましたように、誤解を招きやすいし、また、いろいろな弊害にもおちいりやすい、こういうことが指摘されるのであります。双方が、韓国日本いずれもが平等な立場でこの問題と取り組むことは、これは当然のことでありますし、また、韓国国内におきましても、ただいま御指摘のように、野党も含めての資産管理委員会を設けるとか、あるいは入札の方法で公正を期するとか、等々のことが計画されているようでございますが、これは韓国側で特に留意しておられることだと思います。私どものこの日本側におきましても、この韓国の意図に十分沿うように、当方もむだな競争などはこれは排撃いたしまして、そうして政府がこれらの問題についても、真に韓国経済の発展に寄与するように積極的に協力すべきだと思います。特にそういう場合に注意すべきことは、いま言われましたように、経済侵略というようなことの誤解を受けてもこれはたいへんでございますから、一切の誤解を受けないように、また、同時に、これが利権化されないように、そういうことも考えていかなければなりませんし、汚職というような問題もとかく起こりやすい問題でありますから、十分注意してまいりたいと思います。私どもは多額の賠償事務を処理してまいりましたが、これらの問題も、一部においてもいろいろな批判がございましたけれども、十分注意した結果が、ただいま申し上げるような弊害をかもし出さないで済んできたように思いますので、これらの経験も生かして、今回のはもちろん賠償ではございませんが、経済協力、そういう意味で多額の資金が使われるのでありますから、そういうような誤解を招かないように最善を尽くしてまいりたいと、かように思います。
  486. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで、日本側といたしましては、特に韓国側が豊富で知識水準も高い労働力をたくさん持っているわけですから、これを活用して国際市場で日本と公正な競争をすることをおそれるのではございません。しかし、同時に、韓国がいわゆるソシアル・ダンピングの基地となるということにやっぱりわれわれは注意を払っていく、なし得る限りそういうことがないようにしていくのは当然きわまるほど当然のことだと思うわけでございます。このことは、私どもは、だから日韓関係はほうっておいていいというのではなくて、私は、やはり国交は正常化し、経済協力を妥当な線で進め、さらには、現に芽ばえつつある民主的な労働運動などを、いわゆる育成といってはことばが過ぎるかもしれませんが、これにまた側面から協力する等の方法によって、また、韓国がほんとうに土地改革なんかをやって、ほんとうの基盤からの民主主義を育てることを期待しながら、やはり国交調整と協力をあえてするととによって積極的に取り組んでいくのが正しいと思うのです。しかし、同時に、日本側に不心得の資本家がおります。韓国のチープ・レーバーばかりに目を向けて、先ほど直接に日本にその労働力を入れるということ、これはもうちゃんと押えることはできまするが、ただ、チープ・レーバーを利用して、韓国をほんとうに助ける経済協力というよりも、日本の競争産業を韓国に安いから導入するということに狂奔したり、日本の原料を輸出して、韓国で保税確保の上再輸入いたしまする、いわゆる逆委託加工というそうでありますが、これは通産省から教わったんですが、こういう制度を悪用して、そうしてわが国の中小企業、あるいは労働市場を撹乱する、あるいは因らせる、こういうことをやはり防止していくのが私は当然だと思うのであります。そこで、私、先般通産当局から資料をもらって、大体逆委託加工貿易というのはどれくらいあるかということを調べてもらったんですが、最近の一九六二年以来の統計から見れば、たとえば一九六四年で件数が二十三件で、原材料の輸出価格が二十二万三千ドル、まあたいした金額と数量ではない。これは通産大臣にあとで伺うんですが、それから、この内容を見ますると、主として繊維製品ですね、しかも、中には韓国人が関与していて、自分の関係しているところの韓国の織り屋さんにやるというようなこともあるらしい。だから、現状においてはまだこういうことが非常に大きく行なわれているんじゃないか。韓国側の希望からいえば、やはりこういうものを利用して何とか輸出をしたい、あるいは委託加工を、保税輸出をしたいと、むしろ大きな、過大の希望を持っているんではないか。そういうことが私がさっき言う両国間のズレである。日本側としては、当然にこれは内需を押えて、保護するために、現行制度においても、輸出申請の際に、審査基準の中に国内産業を圧迫しないことは、はっきり基準を書いておる。そこに向こうの大きな期待とこっちの国内産業保護と完全にズレがある。そういうことをやはり埋めていかないと、せっかく経済協力だ貿易振興だと言ってみても、なあんだということになる。これでもいけない。向こう側にもわからせなければならぬし、日本側の正当な利益は、これはプロテクトしていかなければならぬ。現在の法令だけでいいのか。現状においてはまだこれは非常にケースは小さいし、数は少ないけれども、将来の問題としてこれは非常に大きな問題になるのじゃないか。これらについてやはり通産大臣の三木さんの御見解を伺っておきたいと思うわけです。
  487. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはり各国産業発展の過程があるものですから、どうしても日本は産業を高度化して、産業発展のおくれておる国が軽工業が発達していくことをやはり助けるのでなければ、後進国の問題という経済の向上ははかられない。ですから、大きく見れば、日本の産業は、そういう新しい工業国が相当いろいろなものをつくってもやっていけるだけのやはり産業の構造を持たなければいかぬ、これが大きな方針だと、ただ、しかし、それまでの間に、中小企業として、あるいは中小企業ばかりではないかもしらぬが、いろいろな打撃を受けるわけですから、その場合には外国為替管理法の規定によって、日本の企業の進出、向こうでいろいろなものをつくろうということに対しては許可を与えない場合があるし、また、保税加工の問題にしても、委託加工貿易に対して許可を与えないと、まあ法的な措置は現在の措置で、これ以上新しい措置を加えなくてもいけると思います。要は、そういう点で、方針としてはなるべくやはりそういうおくれておる国の産業の発達育成、これを考えながら、その間、弊害があった場合には、現行の法規の範囲内において日本の産業を保護していきたい、法規は現在の法規で十分だと考えます。
  488. 曾禰益

    ○曾祢益君 確かに日本は公正な競争をおそるべきでない。ほうっておいたって、韓国日本よりかおくれた市場で、しかも、優秀な労働力は豊富にあり余るほど持っているのですから、どんどん工業国として日本の現在やっているもののあるものと競争関係にあるのは、これは当然のことだ。それをおそれるのでなくて、いま通産大臣の言われたような、しかし、そのやはり過程において日本の中小企業が体質がまだ改善できていない、それに対する保護ということは、これはやはりおろそかにしてはいかぬ、こういう意味で言っているのですから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。(拍手)
  489. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これにて曾祢益君の質疑は終了いたしました。  本日の質疑はこの程度にいたし、明日午前十時から委員会を開き、質疑を行ないます。  散会いたします。    午後九時二十二分散会