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国務大臣(
佐藤榮作君)
北鮮に対する
考え方は白紙だと、こう申しましたのは、この
条約では
日韓間の問題を協議し、またそれで合意ができたのであって、
北鮮の問題については全然触れておらない、そういう意味の白紙でございます。また、私
どもが分裂国家に対してどういうような外交処置をとるか、このこともこの
条約からは出ておりません。これはかねての
わが国の外交の
態度でありまして、これはただいま椎名外務大臣から
お答えしたとおりです。講和
条約発効の際、
大韓民国を
承認しておる。もうこれだけで分裂国家との
交渉はこれでやるのだと、こういうことを申したのでございます。これもいずれも今回の
日韓条約できまったわけではありません。先ほ
ども椎名外務大臣が申し上げましたが、
日韓条約の御
審議をいただいておる、この
日韓条約の基本
条約によってきまった問題はあそこに書いてあるだけの問題でございまして、ただいま言うように、
北鮮について白紙であるということも書いてなければ、また
北鮮とは外交
交渉を持たないのだと、こういうことも書いてございません。そういうことは別の
事柄だと、こういうことをはっきり申し上げるのでございます。
たいへん、
二宮君の
お尋ねではございませんが、私先ほど来関連
質問等を伺っておりまして、藤田君からの
質問、これがやはり基本をなしておるのではないか。急転直下こういう問題が
解決した。この急転直下という印象が
国民全体に与える影響、同時にまた皆さま方が次々に
質問される
事柄に関連しているのではないか。いわゆる急転直下やったがためにいろいろ十分でないような
状態にあるのではないか、あるいはたとえば
国会ではお互いに急転直下
解決するのだから、それぞれかってな説明をしてもいい、こういうような約束があったのではないか、そういうわけではございません。これは
国会に対しまして、
両国政府はまじめに
お答えをしておると、かように思いますし、また、その点で急転直下これが
解決したというのにはだいぶ問題があります。私は急転直下
解決したとは実は思わないのです。十四年間の積み重ねで初めて
解決したと、かように私は思います。池田内閣時分に大平・金メモができ上がって、そうして
請求権問題が
経済協力の形で話が進んだ。これあたりも大きな積み重ねの
一つであります。こういうものがあって初めて私の内閣になりまして妥決を見たのであります。急転直下というその
ことばの中には、たいへん
国民に与える間違った印象があるのじゃないだろうか。とにかく積み重ねでここまできた。私はそういうものをまとめて、そうして調印をしたと、かように私は思っております。だからただいまの問題にいたしましても、
国会の
答弁までは、もちろんこれは打ち合わせをすることではございませんが、それぞれの
政府が責任をもってやることでありますが、それがどんなしゃべり方をしてもいいのだ、こういうような包括的な
承認を与えたものではございません。
第二の竹島の問題にいたしましても、これはたびたび説明いたしておりますように、私
どもは竹島を放棄した覚えはございませんし、また
韓国の主張を
承認した覚えもございません。でありますから、このこともたびたび
国会での
審議を通じて明らかにいたしたのでありますが、
韓国のほうで、あるいはこの竹島問題を
韓国の主張どおりやらないならば、この
日韓条約には調印しないのだ、こう言ってあるのだ、自分たちが調印をしたのだから、もう
日本政府も百も
承知なんだ、こういうような強弁は、どうしてもこの問題では成り立たないのであります。私が申し上げておりますように、私
どもは竹島の問題を、領土権を放棄した覚えもないし、これについて言質を与えた覚えもない、また
韓国側の主張を全面的に
承認した覚えもない、こういうことをたびたび申し上げておりますが、明らかにこういうような事態がいわゆる
紛争ではないのか。
紛争の処理の方法は外交ルートでやる。さらにそれできまらなければその次の処置をとる。こうまで実は約束をしたのでありまして、これらの片言隻句、あるいは口約束されたものが私
どもを縛るというようなものではない、私はかように思います。
先ほど来の問題で、私は静かに聞いておりまして、どういうところからこういう間違いが起きるかということをつぶさに
考えますと、ただいまの急転直下、そこらにあるのじゃないだろうか。長い間の問題であっただけに、
解決を見たということがどうも急転直下、したがって用意が不十分じゃないのか、だからこういうような解釈のそごその他があるのじゃないか、こういうように結びつけられておるように思います。しかし、ただいま申し上げるように、
解決を見るとそれは急転直下だ、こういうようにお
考えなんだが、われわれ
解決するために十四年間の努力をしてきたのであります。その十四年間の努力の成果が、ようやく今日調印という形で最後の仕上げをするということになっておるでありまして、どうかこの辺も御
了承いただきまして、両者の間にいろいろの議論あるいは説明のしかた等々、食い違いもあるように見受けますけれ
ども、しかしながら、最後のところへまいりまして、これが実質的に支障を来たす、こういうような場合には、この解釈の相違その他による
紛争の処理、解釈を統一する方法もきめてありますから、そういう点を重ねて申し上げまして、これが急転直下
解決したものでないということを、特に私も申し上げたいような気がいたします。