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1965-11-26 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月二十六日(金曜日)    午前十時三十二分開会     —————————————    委員異動  十一月二十六日     辞任         補欠選任      任田 新治君     西村 尚治君      土屋 義彦君     廣瀬 久忠君      船田  譲君     平泉  渉君      内田 俊朗君     楠  正俊君      岡本  悟君     内藤誉三郎君      近藤英一郎君     大森 久司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 大森 久司君                 木内 四郎君                 楠  正俊君                 黒木 利克君                 笹森 順造君                 田村 賢作君                 内藤誉三郎君                 西村 尚治君                 八田 一朗君                 日高 広為君                 平泉  渉君                 廣瀬 久忠君                 柳田桃太郎君                 和田 鶴一君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        農 林 大 臣  坂田 英一君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省経済協力        局長      西山  昭君        外務省条約局長 藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長      星  文七君        農林大臣官房長 大口 駿一君        水産庁長官   丹羽雅次郎君        水産庁次長   石田  朗君        通商産業省貿易        振興局長    高島 節男君    事務局側        常任委員会専門        員       増本 甲吉君        常任委員会専門        員       結城司郎次君        常任委員会専門        員       坂入長太郎君        常任委員会専門        員       渡辺  猛君        常任委員会専門        員       宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、任田新治君、土屋義彦君、船田譲君、内田俊朗君、岡本悟君、近藤英一郎君が委員を辞任され、その補欠として、西村尚治君、廣瀬久忠君、平泉渉君、楠正俊君、内藤誉三郎君、大森久司君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、  以上四案件を一括して議題とし、質疑を行ないます。二宮文造君。
  4. 二宮文造

    二宮文造君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま上程になっております日韓案件について若干質問を進めてまいりたいと思います。  その前に、本案件をめぐりまして、衆議院におきましては強行採決という暴挙がなされましたし、それに伴いまして、国会混乱という状態で、国民がいま注視しておりますのは、明らかに政治不信につながるようなことではないかと思うのです。国会の一院として、私どももこういう状態は非常に残念であります。そのことにつきましては、本委員会におきましても、たびたび論議をされましたし、政府あるいは与党のほうにも若干反省の色もあるかと思いますが、なお、重大な問題でございますので、この取り扱いについて、今後も十分に世論を反映するような考え方のもとに進んでいただきたい。与党あるいは政府におきましては、この日韓案件について、衆議院段階では十分に審議された、こういうような言い回しをしている向きもありますけれども、本委員会におきましては、寺尾委員長は、冒頭に、衆議院ではまだ十分に審議されてないと思う。したがって、参議院においては慎重審議を進めたい、なお、十分に審議を進めていきたい、こういうふうな意向を漏らされたことは、私は了としたいと思うのです。振り返ってみまして、衆議院段階における混乱、あるいは十分に質疑が進まなかったという理由の一つに、政府資料提出を拒んだという事態が影響しているということはいなめないと思うのです。権威のある資料提出されませんと、やはりその論点が鮮明になってまいりません。私もその点、この参議院におきましても、野党のほうから相当量資料提出を要求いたしました。ところが、私がいま質疑を始めますと、これで二十六日ですから、もうすでに実質審議が始まっているわけですが、出ておりません。非常に審議がやりにくくてしかたがない。今後こういうふうなことがないように、政府としても資料提出については、国会権威、あるいは十分に審議をするということに協力をすべきである、このように私は思うわけですが、まず、資料の問題について政府の御意見を承っておきたいと思います。
  5. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 理事会で御決定になりまして政府に要求のございましたものにつきましては、差しつかえのない程度において、限りにおいて、政府においてこれを調整して提出している次第であります。中には、韓国側了承を得なければこれを提出できないものもございますので、韓国側と折衝いたしまして、その了承を得たものにつきましては、すみやかに提出するようにいま取り運んでいるような次第でございます。
  6. 二宮文造

    二宮文造君 差しつかえのあるとかないとかいうことを私伺ってないのであります。もうすでに事務局のほうを通して、あるいはまた、政府の窓口を通しまして、本委員会としましても相当量資料を要求しております。ただいま私の手元に届いてまいりましたのはこれだけです。政府のほうから提出しにくいというふうな話し合いのあったものもありますけれども、それにつきましても、私どもはすでに、たとえば韓国国会議事録等のものは、政府のほうで公になさらなくても、すでに相当量どもの手に入っております。したがいまして、どうしてそういうふうな取り扱いをなさるのか、私どもはふしぎでしかたがない。やはり政府の手を通じて入ってまいりませんと、それは承知しませんということになりますと、先ほど言いましたように論点が解明になってまいりません。そこで、政府のそういうふうな態度を改めてもらうこととして本論に入ってまいりたいと思います。  その前に、いま国民が非常に注目しておりますこの日韓案件につきまして、国民が理解しているところは、一体、日韓案件のどこが問題になっているのか、そういう程度に理解を進めている方は非常に少ない。で、私はきょうはそういう立場から法律論に入ることを避けまして、国民立場から素朴にこの問題を取り扱う、そして懸案となっております日韓案件はこういうものであるというふうな態度から論議を進めてまいりたいと思います。  まず考えられますことは、なぜ政府がこの日韓条約締結を急ぎ、かつ批准を急いでいるか、そういう政府立場考えてみますと、佐藤総理所信表明やその他から取りまとめてみますと、まず第一番には、わが国の平和と安全にどうしても必要なものである、第二番目には、それが朝鮮問題の解決につながるものである、第三番目には、不幸な関係にあった日韓両国民の友好を進めるものである、こういうふうな見解であろうかと思います。まだその他いろいろ論点はあろうかと思いますが、大別いたしますとそういうことになると思う。私はその三つの問題をそれぞれの立場から考えてまいりたいと思うわけですが、まず第一点としまして、わが国の安全と平和、こういう問題を考えてみましたときに、韓国ベトナム派兵に際しまして朴大統領はこういうことを言っております。ベトナム危機はすなわち韓国危機であり、派兵自由アジア安全保障道義的責任である。さらにそれを受けて北朝鮮の側では、南ベトナム解放戦線の要請にこたえて全力をあげてこれを支持する。南北対立がこのベトナム紛争というものを契機にしてこのように対立しております。すなわち、これはベトナムの戦乱に対する南北反応とうかがえますが、このように紛争が国際化する、あるいは国際緊張連鎖反応を示している、そういう段階においてこの日韓案件を進めることがわが国の平和と安全につながるか、はなはだ疑問としなきゃならないわけですが、その点について総理見解を伺っておきたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。日韓間の交渉を始めまして十四年もかかっております。たいへん長い交渉でございます。また、この経過から申しましても、佐藤内閣が非常に急いでおる、こういう問題でないことはおわかりでございます。日本政府日本国それ自身が韓国条約その他を結びまして、そうして正常な関係を樹立しようということはもう十四年の前から計画され、そうしてそのことが進んでおるということであります。私はそれを今回の締結のその終局的な処置につきまして、佐藤内閣があせっている、あせっている、こう言われるのは、よほど問題を継続的に見ない考え方ではないか、かように思います。したがいまして、今回、国民全体からみましても、これを正常化するのはあたりまえだということで、世論は非常な支持を与えておるのであります。問題は、それではこの正常化は一体なぜ必要なのか。御承知のように、漁業関係ではしばしば問題を起こしておる、日本の漁師がどんどんつかまっている、あるいは漁獲をする船舶が拿捕された、こういうような関係もございます。いわゆる李承晩ラインで問題が起きている、たいへん国民は迷惑している、これはもう御承知のとおりであります。あるいはまた、竹島の問題は私どもが長く主張しておりますが、これはまた明らかに韓国と正面衝突した問題であります。また、法的地位の問題が今回きまろうとしております。在日韓国人法的地位がきまろうとしております。これあたりも、かつては日本人だった。しかし、これが大韓民国ができると同時に、その韓国籍といいますか、これらの方々国籍日本国籍を失ったということは非常にはっきりしておる。それから先はどこに置くかわからない、こういうようなことを積み重ねてみますと、日韓間には早急にきめなければならない問題があるわけであります。そういう事柄がきまらないで、そして約十四年間もいろいろ交渉を続けてきた。そしてそこには非常にむずかしいものがある。それは後に触れられるだろうと思いますが、いわゆる不幸な過去というものが、こういうものを一そうむずかしくしている。そしてこれがいわゆる戦争による平和条約というような関係ではない、いわゆる分離国家の形において独立している、こういうようなことでありますだけに非常にむずかしさがある。それがようやく両国の了解に達した。それで、いま条約その他を結ぼうとするのであります。私はこういう点について皆は十分理解してくれていると思いますし、ましてや、形式的にも隣の国同士じゃないか。隣の国と修好関係善隣友好関係を樹立しないで、そしてわが国の安全、平和だ、かようなことを言うことはほど遠い。これは抽象的な議論でございますが、そういうような問題もあるのであります。私はそういうような意味から申しまして今回調印をいたしたわけでありますが、いわゆる急いだ急いだと言われるけれども、急いでいるわけじゃないのだ、国の意思決定といたしましては非常におくれている、かように私は思う次第であります。
  8. 二宮文造

    二宮文造君 総理の御答弁論点がはずれてきているのです。私がお伺いいたしておりますのは、南北対立というものと、それから現在のベトナム紛争というものが、いまは具体的には韓国派兵となり、あるいは北鮮側のいわゆる全力をあげてこれを支持する、応援するというふうな意思の発表になり、いわゆるベトナム紛争がすでにもうあの半島一帯にわたって連鎖反応を起こすような機運が出ているときに、われわれがこの日韓案件を検討するということは、その国際緊張に巻き込まれるのではないか、そういう不安が国民にあるということなんです。で、さらに論点を進めてまいりたいと思いますが、韓国政府が発表いたしました韓日会談白書、この中には、日韓両国国交正常化韓日米三国の提携を強化し、国際的な経済協力のための自立経済体制の確立と経済的繁栄をなしとげる基礎となろう。あるいは韓日間の正常化は単に韓国民だけに関係することではなく、激動する国際情勢、特に極東における反共のとりでを強化するために必ず達成すべき命題である。総理先ほどお話しになりましたのは、主として国内向け政府立場であります。ところが、それを受け取る相手方、あるいは日本国民もそうですが、アジア地域人たち考え方、あるいは世界各国考え方というものは、この韓日会談白書に述べられました二つの項目に要約されると思うんです。その点について私ども非常に心配をするわけです。この点についてもう一度答弁をいただきたいと思います。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど二宮君がベトナム問題を引き合いに出され、韓国派兵引き合いに出されました。また、そのときの朴大統領の発言なるものも御紹介でございました。私は、これらの事柄はこれは韓国政府の問題だと、かように思いますので、実は触れなかったのであります。特に御発言はありましたが、韓国の問題をここで触れる必要はない、かように思ったのであります。しかし、こういう事柄日本が巻き込まれるんだと、あるいは韓国南北に分かれておると、こういうのはいかにもむずかしい、いまにもお互いに、またかつての朝鮮事変みたいなものも起こるんじゃないか、こういうような一抹の不安があるんだと、そういう際にそういうものに巻き込まれる、今日、日韓条約締結すれば巻き込まれるおそれがある、これが素朴なる国民の不安だと、かような御指摘のように、重ねてのお尋ねでございます。しかし、私はかような問題はいままでもたびたび申し上げ、いわゆる背景になるもの、アジアにはいろいろ紛争があるが、それらの問題に巻き込まれるおそれがあるんじゃないかということをお尋ねがありましたから、いままでもそんなものではございません、これはもう日韓だけの修好善隣友好関係を樹立しようとする、そういう平和的なものでございます。軍事的な意図はもちろんございません。一切さようなことはないと、はっきり実は申し上げたのでございまして、私はそれらの点については誤解はないと思いますが、ただいまのさらにことばを継がれて、朴大統領なり、あるいは韓国政府のこの条約期待するところのもの、こういうのがあると日米韓関係が一そう緊密になるんだと、あるいは防共のとりでが強固になるんだと、かようなお話をいま出しておられましたが、これなぞは韓国側がどういう期待を持っておろうと、私どもは自主的に平和の道を歩んでおる。そのために憲法というものがあるんだということをはっきり申し上げました。また、私ども自衛隊法を持っておるんだ、その法律は守っていくんだと、このことを重ねて申し上げたいのでございます。先ほどのような外国側からのいろいろの期待というもの、これは外国側にもそういうものはあるかもわかりません。私はしかしそういうことをせんさくする前に、わが国の主張は一体何なのか、わが国はどういう態度でこの問題を処理していくのか、このことこそが国民も聞きたいことだ、かように私は思いますので、この点は社会党の諸君のお尋ねに対しましてもはっきりお答えいたしたのであります。この点は公明党に対しましても同じことでございます。私ども考えが、どこまでも日韓問題は平和善隣友好関係である、そうして軍事的な同盟なりその他のものは一切ない、このことを重ねて申し上げ、私ども憲法法律を忠実にこれを守ると、このことも同時に申し上げておきたいと思います。
  10. 二宮文造

    二宮文造君 そういう総理の重ねての答弁でありますけれども日本ことばに、火のないところに煙は立たぬというふうなことがございます。国民もまたそういう点で非常に心配をし、この日韓案件を進めていくことと、それからわが国の平和はどうなるんだと、安全はどうなるんだという心配は、重ねての答弁でございますけれども、ぬぐい去っておらないと思います。それをぬぐい去らせることが政府のとるべき施策であり、またこの委員会審議を通してさらに具体的に、政府が、そうではないのだと、国民の側からもなるほどそうであったかと理解させるだけの説得力がなければならないと思います。非常に残念ではありますけれども、現在のところそういう意見方々にあるということは、これはまだ政府説得がなされてない、こう断定せざるを得ないと思うのです。で、平和と安全という問題にそういうその一つ心配がありますと同時に、今度は第二番目の朝鮮問題の解決という論点から考えてみたいと思いますが、私、今国会代表質問にも、日韓国交正常化するためには幾多の前提条件があると、こういうふうな立場から政府所信をただしました。また、昨日は羽生委員から、日韓条約を進めていく場合のバックグラウンドについて具体的な御質疑がございましたので、重複することは避けたいと思いますが、要するに、いま国民の側での心配は、この日韓案件批准を強行していくということについて、まず一番に心配になるのは、北鮮との関係はどうなるのだ、さらに中国関係はどうなるのだ、むしろ中国問題の解決うしろのほうに押しやられてしまうのじゃないか、さらに三番目には、こういう路線がはっきりしてまいりますと、いわゆるその冷戦、平和共存という形から、どこかが一角がくずれて、先ほど述べました日本の安全と平和というものが脅かされるのではないか、こういうのが私ども心配でありますし、あるいはアジアの民衆の心配であると思います。この北鮮との関係、さらに中国問題を後方に押しやるのではないかという意見に対しては総理はどうお考えですか。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まずその冒頭に、火のないところに煙は立たない、こういう仰せでございます。そのとおりが私どもにも言われておる。一体だれが煙を立てているのか、このことをよくお考えをいただきたい。だから、私は本来何度も何度も申し上げて、(「火があるからだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)これはこの条約は平和的なものであるということでございますということをはっきり申しておる。ただいまもいろいろやじが飛んでおりますが、やじの出たところが大体煙の出したその元だ、かようにお考えをいただきたいと思います。  次に、この韓国問題につきまして北鮮との関係はどうなるか。ただいま北鮮並びに大韓民国のあることは、これはもう御承知のとおりであります。このことがたいへん不幸な状態だといって、これは何度も繰り返しております。また、これは詳細に昨日もお答えをいたしたつもりでありますが、ただいま北鮮との関係は、今回の条約では全然触れておらない、いわゆる白紙の状態だということであります。したがいまして、これまでも北鮮に対してとりました態度日本態度に変わりはない、変更はしておらないという状況でございます。問題は、この北鮮大韓民国とある、その場合に、どうして大韓民国と話をするのだと、こういうことであろうと思いますが、それはたびたび国連の決議を御紹介いたしましたり、あるいはまた七十二カ国が大韓民国承認しておる。また、二十三カ国が北鮮承認しておる等々について詳しく説明をいたしましたので、お答えをいたしましたので、重複いたしますからこの点は前答弁で御了承をいただきたいと思います。また、中共に対しましても同様のことが言えるのでありまして、今回のこの交渉によりまして中共問題は別に何らきめておるわけではありません。したがいまして、中共に対する在来の日本国態度、これには変更がないのだ、むしろ、この中国問題等を含めて私どもは今日態度が変わっておらないが、絶えず動きつつあるのだと、こういうことも説明しておりますので、今後のその動きつつあるアジア情勢に対しましては、十分間違わないようにこれから善処していくつもりでございます。  以上で、お尋ねになりました点かと思いますが、お答えいたします。
  12. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと前に返りますけれども、昨日付の新聞報道によりますと、政府がまた今度南ベトナム医療援助を復活する、こういうふうな新聞報道がございます。これは前回にも政府は、もう純然たるこれは民生安定、人道的見地から医療援助をするのだというふうなことでその態度を表明されておりましたけれども、これを再び復活なさろうとされる。私ども考えますのに、ベトナム紛争というものを単に局地的に見るということは、それはもう視野が狭い。われわれとしては早くこれが解決する方向に、日本アジアでそういうふうな立場がとれるのであれば、またとれるとれないは別問題として、当然とるべきである、そういう立場にある日本がさらに国際間において疑念をかもし出すようなそういう施策はとらないほうがいい、こういう考え方で私ども進んでおります。これが再開されるという報道でございますが、この点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 新聞に出ているということですが、実はまだ私は相談を受けておりません。ただいまの問題は、あるいは予算編成上で要求しておるような問題ではないかと思います。しかし、そういう記事があるとないとにかかわらず、わが国が東南アジア諸地域に対しまして——これは諸地域であります、南ベトナムに限らず、諸地域に対しまして経済的な援助、あるいは技術的な援助等々をするという事柄については、私ども在来からの方針を堅持してまいるつもりであります。ただいまの、人道的見地から、民生の安定と申しますか、あるいは医療施設を整備するというようなことにつきまして、私ども協力する。これは人道的な立場から当然やることでございます。かように御了承いただきたいと思います。
  14. 二宮文造

    二宮文造君 総理のお耳には入っておらないかと思いますが、新聞では非常に具体的です。もう第二陣として出発する人の内定もしております。さらに民間からも初の医療奉仕団が今月末サイゴンに向かうことになっておる。こういう政府とそれから民間からと二本立てで南ベトナム医療援助が復活するような報道になっております。私これを見ておりまして、この中に、民間から出てまいりますお医者さんが、戦乱に苦しんでいる南ベトナム人たちを医者として見捨ててはおけない、もし北ベトナムから要請があれば同じように行く、こういうふうな考え方を率直に述べております。私は、こういう見解で事が進められるならば、確かに政府の言われる人道的見地ということがより浮き彫りにされて、国際間に誤解を招かないと思うのです。そこで、もしも民間で、北ベトナムへこういうわけで要請があったので医療援助に行きたい、こういう申し出があった場合、政府としてはどう取り扱いますか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府といたしましては、もちろん、そういう場合があれば、もう許可するといいますか、援助するつもりでございます。ただいま私はよく知らなかったのですが、アジア局長はもっと詳細に知っておるようですから、必要があればアジア局長に説明をさせます。
  16. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。  まず、ベトナムに対します医療援助につきましては、いま総理からお答えがございましたとおり、一般的な方針としては前向きの考え方をとっておるのでございますが、今年度はもう予算が全然ございませんので、現在いま問題になっておりますのは、関西にアジア善隣医学協会という団体がございまして、この団体からベトナムに医療協力をするために一人いいお医者さんがいるからということで推薦をしてまいったわけでございます。東京におられます渡辺さんというお医者さまを、外科医の方ですが、推薦してこられましたので、現在、政府の予算としてこれに使えますのはコロンボ・プランでお医者さんをせいぜい一人派遣し得る余地が残っておるだけでございますので、今年度はこのコロンボ・プランの予算にのせましてこの渡辺医師を派遣する、外科医としてサイゴンに派遣するということで、厚生省と事務的に連絡を遂げておるという段階でございます。  なお、純然たる民間の企画といたしまして私のほうで承認しておりますのは、墨田区におられます一人の開業医の方がやはりベトナムで、サイゴンの周辺で難民の巡回施療に当たりたいという希望を持っておられまして、これは全然プライベートに、政府関係なしに諸般の準備を進めておられるということを承知しております。  この二件でございます。
  17. 二宮文造

    二宮文造君 北ベトナムは、日本側はまだ承認をしていない国であろうと思います。その国に対してもしも医療援助に行きたいと民間側で申し出があれば、それは許可するにやぶさかでないという答弁でございましたが、ならば、それをもっと拡張解釈して、北朝鮮の場合にもそういうことを申し出る者があれば政府は許可しますか。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北朝鮮なり中共、こういうような場合に、在来の考え方を私ども変えておらない、変更しておらないということを申しております。そうしてその具体的な問題が起きました際にそのつど相談に応じて、そうして適切な処置をとる、かように申しております。昨日も適切な処置でなかったとかいう批判を受けましたが、適切な処置をとると、こういうことでございますから、ただいまそういう希望があれば十分ひとつお申し出を願いたいと思います。
  19. 二宮文造

    二宮文造君 反論するようですけれども、北ベトナムの場合はやぶさかでないと篤単明瞭にお答えがありました。北朝鮮の場合はその場合に考慮すると、こういうようなお話で、ニュアンスが違うようですが、どうしてニュアンスが違うのですか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これ、ニュアンスというか、ことばの使い方がそうなったわけなんで、私の考え方は同じでございます。したがいまして、これ純然たる人道的な処置であるなら、喜んで私どもも北朝鮮だろうが許すつもりでございます。
  21. 二宮文造

    二宮文造君 総理が確言をされたと了解いたします。  朝鮮問題の解決という第二番目の論点に入ってまいりたいと思いますが、現に三十八度線休戦ラインでは、まだいざこざが続いているようであります。韓国におきましては、統一問題を論ずるというのは、そのままもう容共に通ずるんだ。だから、韓国の合いことばは戦勝後統というのですか、私読み方がよくわかりませんが、まず勝つんだ、その勝った後に統一問題を考えるのだというふうに、非常に対立的な考え方で進めているようであります。昨日来、あるいは今国会始まって以来の総理答弁を伺っておりますと、一民族一国家、これはもう理想だ、ぜひそうでなきゃならない、こういうふうな理想論を述べられておりますけれども、こういう、まず勝つんだ、そのあとで統一問題を考えるんだという韓国を相手にして日韓条約を進めていくということが、はたして総理の言われるような朝鮮問題の解決につながることになるのかどうか。それは条件としてそういうふうに国民は感ずると思うんですがね。これはどうでしょう。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、韓国の中にはいろいろな意見があるだろうと思います。私はその意見を取り上げまして一々ここで議論するだけの時間を持たないように思いますが、私がしばしば申し上げましたように、国際連合、私どもが信頼する、また権威を持たす国際連合、しかもこれが平和機構であると、こういう立場でその国際連合の勧告というものをやはり私は尊重すべきだと、かように思っておるのでありまして、北鮮がどう言ったとか、大韓民国がどういう発言をしたとか、こういうようなことを一々私は申し上げません。ことに朝鮮事変というものは両国が分離するようにたいへんな深刻な問題を巻き起こしておりますから、これを私どもがとやかく言うことは不適当だと、かように思います。
  23. 二宮文造

    二宮文造君 非常に言いにくいことのようでございますが、これは、あとでまた管轄権の問題で北鮮の問題が出てまいりますから、そのときにお伺いしたいと思います。  第三点の、日韓条約ははたして日韓両国民の友好を進めることができるかと、こういう問題でございます。いま韓国国民感情の中に貫いております考え方というものは、なぐったほうはその痛さをすぐ忘れる、だけども、なぐられたほうはいつまでもその痛さを覚えていると、こういうふうな表現がそのままぴったりするような国民感情にあると思います。過去の日本の統治に対する韓国人の憎しみというものが、ぬぐい去っておらない、記憶がまだなまなましい、そういう事態の中で、ましてこの日韓条約審議の過程を見てみましても、韓国では衛戌令をしいて、そうして与党が単独強行採決をする、そうして成立をさした、あるいは衆議院段階におきましても、非常に問題になっておりますように、これまた強行採決をやったと、手続はどんどんどんどん進んでいきますけれども、このぬぐってもぬぐい去れないような国民感情、それを全然無視して、はたして総理の言われるように、日韓国交正常化が実質的に進んでいくかどうか、非常に疑問になると思うんです。こういう韓国民国民感情に対しまして、政府としてはどのように日本立場というものを述べ、かつまた日本国民に対してもどう説得し  ていくかということを伺いたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指摘のように、日韓間におきましては、過去に不幸な歴史があります。こういう点についての十分の理解をいただかないと、なかなか前進ができないと、こういうような御心配でございますが、これもいわれなきにあらずと、かように私は思います。椎名外務大臣が韓国に参りまして、この深い反省の意を表し、そのことが非常に好感をもって迎えられたといわれております。私も、善隣友好関係を樹立しようと、こういう場合におきまして、過去についての十分な反省の必要なことは申すまでもないことであり、私も同様に感じております。また、日本国民全体も、必ずや深い反省のもとに今後の友好善隣関係をいかにして樹立するかということに思いをいたすだろうと思います。私ども・あるいは過去の問題、これについて、これを明確にすることも必要でありますが、希望を持ち期待をかけて、そうしてただいま申し上げるように、将来の善隣友好、これをりっぱになし遂げるひとつ努力をいたしたいと、かように思います。それがためには、過去についての十分の反省、これが必要だと、かように思います。
  25. 二宮文造

    二宮文造君 総理は、この日韓条約批准することあるいはそれが発効することが、日韓国交正常化していく第一歩だと、しかも、これからいまの答弁のように希望を持って進んでいきたい、こういう見解のようでありますけれども、つい八月ですか、この日韓条約締結され、そうして韓国国会でそれが批准されようというそのやさきに、韓国においては日本色浸透防止法案というものを提出しております。これはたしか可決成立したと思いますが、かつて漁業交渉を進めながらあの李ラインというものが設定されまして、その李ラインに基づいて漁船の拿捕が——一方で何かぶっつけられながら交渉を進めていったというのが、われわれの記憶に新しいところです。今度は、手を握ろうというやさきに、いかにこれが韓国国内の事情であるとはいえ、これから手を握ろうという日本に対して、しかも法律案の件名が、案件の名前が、日本色浸透防止法案、こういうものを上程しなければならないような国内の事情、これは私は総理の言われるような、希望を持てるような段階ではない、もっともっとお互いによく理解し合う時間というものが必要ではないか、こう考えるわけですが、特にいま申し述べました日本色浸透防止法案、これについてあらましを伺っておきたいと思います。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 詳細の事情につきましては、アジア局長から……。
  27. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、新聞に伝えられております俗称、まあ日本色払拭に関するいろいろの政策を考えているということが、当時、八月十一日ごろの先方の新聞でも伝えられております。で、こちらのほうでも注目していたのでございますが、当時こういう目的のために二十七ぐらいの関係法令をつくるということがいわれておったのでございますが、目下の段階ではまだ要綱の程度でございまして、まだ法案まではいっておらないようでございます。したがって、国会上程も大体来年になるんじゃないかというふうにいわれておるわけでございます。  そこで、その公約の段階、要綱の段階で言っていることを概略御説明申し上げますと、大体このときに、五十項目にわたります行政公約というものを七月十三日付で発表しているのでございますが、そのうちの公約第一項と申しますのと公約第三項と申しますのが、大体いま御指摘のいわゆる日本色払拭政策を表現しているものかと思うのでございますが、当時新聞等で伝えられておりますところを見ましても、先方の閣内でも、特に日本ということを表に出してメンションすることは、これは将来の通商条約等との関係でも差しさわりがあるというので、そこのところは一般的な言い方を使っております。  で、公約第一項といいますのは、退廃的外来風潮と事大思想の封鎖、こういう名目がついておりまして、その中で、この新しい韓国の自主的な生産的な人間像を設立するという最高目的のために、たとえば、あまりたくさんありますから、例示的に二、三申し上げますと、不法な外国作品の剽窃模倣を禁ずるとか、あるいは民族の主体性を侵害する宗教団体ないしその資金流入を防止するとか、あるいは外国語の私設講習所の設置の基準を再整備する、あるいは外国のレコードを——音楽のレコードでございます、これを取り締まるとか、そういうふうな社会的ないわゆる退廃的風潮と申しますか、外来風潮を監督する項目が並べられております。それから、公約の第三項というのは、大体いわゆる経済侵略という点からとらえておりまして、経済侵略要素の除去、こういう表題がついております。その中で、多国資本の不法浸透を防止する、そのために外資導入法を強化する、あるいは外国人の擬装した財産取得等を管理する、あるいは外国人の脱税を防止する、こういうふうな項目がうたわれておるわけでございます。  で、昨日も申し上げましたとおり、現在、日韓条約日本国会——衆議院審議等のあとで、先方の与党なんかが言っておりますことを見ましても、今後韓国で必要なことは、国民の主体性を維持したもとに、主体性を確保して、そのもとに国内の団結を維持していくことが必要だということを非常に言っておりまして、このいわゆる主体性の確保ということから、過去の、いわゆる三十六年の問題にはっきりとしたけじめをこの機会につける、そういう考え方になっておるように思われます。
  28. 二宮文造

    二宮文造君 総理、どうですか、これから両国民が手を握ろうと、そしてまた日本も過去の問題を清算して、そうして経済協力もしていこうというふうな段階において、こういう日本色浸透防止法というものが韓国政府の中で考えられている。これを逆な立場に置きますと、非常に日本と緊密にあるアメリカのことを日本政府で米国色浸透防止法をつくろうというふうな提案、考え方をした場合に、両国関係はどうなる。政府としては当然、いま日韓関係がこれから改善されようという案件審議する立場においては、たとえそれが韓国の内政であろうとも、関係はこちらにしてくるわけですから、何かと意思表示をされなければならぬと思いますが、この点はいかがですか。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま後宮局長が読み上げたところを私は聞いておりまして、いわゆるそんなむきになる筋のものじゃないような気がいたします。自主的な独立をするために、経済的にも、また文化的にも誇りを持ち、みずからが独立していく、あるいは退廃的なものは外国から入ってこないようにしようと、これはどうもあたりまえじゃないかと、かように私は思います。私は、別な言い方から、あるいは教科書等におきまして排日的な言辞のものをとにかく直していく、かようなことも伺っております。私は、こういう事柄がたいへんいいのじゃないだろうかと、かように思います。ただいま御指摘になりましたように、両国間におきましては、過去はたいへん不幸な、またずいぶんこんがらかった状況のものがあったように思いますので、これは一朝一夕に全部が払拭されるとは思いません。しかし、指導者である朴大統領にいたしましても、丁総理にいたしましても、さような考え方はしていない。両国親善友好のためにこの条約締結しようと、その他の協定も結ぼうと、こういうことで調印をしたばかりでありますから、私はその方向でお互いがさらに努力をしていくということが望ましいのだ、かように思います。
  30. 二宮文造

    二宮文造君 総理の持論であった寛容と忍耐がこういうところにあらわれようとは私は思わなかったのです。やはりわれわれが考えますのに、名は体をあらわす、あるいはまた一つ法律案の内容というものは、たとえば名前をどのように変えてでも、その考え方というものをもって私どもはその法律案というものを審議しなければならない、こういうふうに教えられてもおりますし、また私どもそう思っております。いま政府委員の説明を受けて、それを聞いた総理の聞き方と私の聞き方とは違うわけです。確かにいまの政府委員のお話は、日本色浸透防止法、そういう考え方のもとに進んだけれども、あまりにもそれでは露骨過ぎるではないか、内容を貫いていくものは日本経済侵略を防ぐとかあるいは云々というるる説明がありましたけれども、要するにそれは日本に対する反感、それをやわらげる意味のといいますか、それを表面を糊塗する意味の、政府としては日本に対して弱腰ではないのだ。あなた方の考えているとおりこれから日韓条約締結されたあとも進んでいくのだと。国民の中にある反日感情に迎合するような考え方ではないか。それはひっくり返してみますと、日本にとってみれば、非常に不可解な法律の内容になってくるのじゃないか。そのためにせっかくの経済提携であっても、今後の活動が非常にチェックされたり、あるいは漁業協定の推進にあたりましてもそれが何らかの形で影響してきたりするのではないか。禍根は一掃するにしくはない、こう私は思うわけです。したがって、権威のある日本政府ですから、こういう内容の法律考え出すことも、あるいはそれを国会提出することも、あるいは施行することも、将来の日韓関係において非常に不適当である、こういうふうな申し入れをなさってもいいんじゃないか、また当然すべきではないかと、こう私は思いますが、見解を伺っておきたいと思います。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治家の寛容と調和をほめられまして、たいへんくすぐったいような気がいたしたのでございますが、私は、公明党であるから特に申し上げるわけではありませんが、もっと政治家よりも宗教的に申せば、これは大慈悲の問題だと、かように思いますので、さように考えますと、ただいまの成り行きにつきましても十分経過を見たい。先ほど後宮君が申しますように、これはまだ制定しておるわけではないということでありますし、また、いずれ来年になるんだろうと、こういうようなこともつけ加えられたように記憶しております。それらのことをも全体を勘案いたしまして、どういうことが適切であるか。これは必ず韓国政府におきましても考えられるだろうと思います。私どもはこれから仲よくしていくのだと、こういう立場でございますから、十分注意をしてまいりたいと思います。ただいま、率直に韓国政府に申し入れをしたらどうか、こういうようなお話でございますが、そういう点をも含めて十分外務省の外務当局におきまして検討してまいるつもりでございますから、問題の要は、これから親善友好関係を樹立していくのだ、お互いに大局的見地に立ってすべての問題をやっていこうじゃないか、こういう申し合わせをするといういわゆるスタートラインに立ったばかりでありますから、そういう意味でこの問題の成り行きも見たい、また見ていただきたいと、かように思います。
  32. 二宮文造

    二宮文造君 スタートラインに立ったということを強調されるわけですが、スタートラインに立っても、相手がファウルばかりしているのじゃどうもゲームが進まない。友好関係が進まない。進むような段階に私はいまないと、こう考えるわけです。  で、話を進めまして、条約案件のほうに入ってまいりたいと思いますが、一番私ども気になりますことは、新聞の報道を通じて、あるいはまたいろいろな機関で発表されておりますもの、さらには韓国国会の議事録等々を参照にしてまいりました場合に、この条約案件について、あるいは協定、あるいは交換公文等々について、両国政府の解釈が食い違いがある。で、いままで衆議院段階でも、あるいは本委員会でもその食い違いが断片的に取り上げられまして、ほぼ食い違いの論点というものは明らかになったと思います。この食い違いの点を政府はこの機会に整理をして、こういう条項については両国政府の間にこういう解釈の食い違いがあると、政府みずからの手で伝えられた食い違いというものについて発表をする責任があると思うのです。でなければ、この問題を提示された日本国民は、一体この日韓の諸協定について賛成していいものか反対していいものか、ごくフランクに考えてみてもそういう疑問が出てくると思うのです。すでに委員長の手元にも外務省のほうから韓国国会議事録は届いているわけですし、今までに論議をされた点も含めまして、各案件についてこういう解釈の食い違いが今日まで明らかになったというところを整理していただきたいと思うのですが……。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約両国の間で十分に慎重審議を重ねて、そうして成文ができ上がって正式に調印されたのでございます。これの解釈について、あるいは国会承認の過程において韓国側においてもいろいろな説明をしておるようであります。しかし、その説明のしぶりいかんによって簡単に条約の成文があるいは横になったり縦になったりするようなものではない。すでに決定した成文を基礎にして、あくまで厳格に解釈して、そこから正当な解釈というものは生まれてくるのであります。われわれは韓国当局がどういう場合にどういう説明をしようと、あくまで条約の成文に従って解釈するものである。でありますから、そういうことにあまり心を労する必要はないものであるという基本的な立場をとっております。そうしていよいよこれが条約が有効に成立した場合に、具体的な問題としてこの条約を正常に条項に従って、あるいは細目協定がありますが、そういったようなものがだんだん実行に近づいてまいって、そうして解釈上の疑義があって具体的な問題がどうしても解決しない。両国の主張がぶつかり合うというような場合にはどうすればいいかということは、要するに条約の成文を正当に解釈する、そういう問題に帰るわけでございます。この個々の場合の説明いかんというものにとらわれる必要は私はないと、かように考えておる次第であります。たとえば管轄権の問題にいたしましても、条約ではいわゆる国連決議の百九十五号を援用して、今度日本の相手方である韓国政府というものはこういう性格のものであるということを定めておりまして、その基本をなす百九十五号をしさいに読めば、韓国の現実の管轄権というものはただいまでは休戦ライン以南に限定されておるということがはっきりするわけでございます。ところが今度の憲法では済州島、北は鴨緑江まで、こういうふうになっておるようでありますが、ただ韓国政府自身も領土はそうなっておりますけれども、しかし、実際の支配権というものは休戦ライン以北には及ばないということを承知している。そこで、向こうは今度の日韓条約によって韓国憲法に書いてある趣旨を日本承認して、そうして条約ができたのだというような立場をとっておるようでございますが、これはどんな、いかに解釈しても日本韓国憲法まで承認した覚えはないので、それでやはり条約の解釈からいって休戦ライン以南である、現実に支配力は、管轄権の及んでいるのは休戦ライン以南であるということを、そういうことを基本にして請求権の問題なりその他いろいろな一連の事項が、両国の間でこの管轄権というものを基準にしてきめておるようでありますから、韓国のそういう説明は矛盾し、そうして正当でないということがこれははっきりするわけでございます。一々どこで何を言ったかということに気を奪われて、一々それを論議の種にするという必要はないものである、かような解釈をしております。
  34. 二宮文造

    二宮文造君 奇妙な発言をされると私は思うのです。協定ができましても、条約ができましても文字が動くわけではございませんで、その成文に基づく解釈で両国政府の判断というものが出てきて問題は具体的に動くわけです。相手がどんなに解釈しようとも、それは知ったことではないのだというふうなお話のようでありますけれども、大体このいま例にとられた基本関係条約につきましては、その署名は椎名外務大臣が署名されております。署名者です。また相手も李外務部長官が署名しております。いま外務大臣が言われたことは署名した本人の見解の相違です。それがそのまま相手がどのように考えようとも知ったことではないのだ、そんなばかなはずはないのだ、こういうふうな考え方答弁されてもそれは私ども了解できません。ならば今日までこういう食い違いがあるのだということをここで浮き彫りにする必要があるんじゃありませんか、こう私は申し上げるわけです。この点はどうですか。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それではこの管轄権の問題だけにつきまして詳細に申し上げることにいたします。  ここで、第三条で援用されている百九十五号、それは朝鮮半島の一部にそうして朝鮮民族、人民の大部分が居住している、その部分に有効な支配力、管轄権というものを及ぼし得る政府が樹立した、この政府はその在住民の自由な意思の表明による選挙に基づいてできた政府であって、韓半島におけるこういったような自由な意思の表明による選挙に基づくこういったような政府、これはもうこれしかない。唯一のこれはいわば合法政権である。こういうことを言っているのでありますが、それをそのまま援用して相手方である政権の性格を示している、その内容の一つに韓半島の一部に朝鮮人民の大部分が居住する、その一部分に有効な支配と管轄権を及ぼし得るところの政府が樹立したということでございますが、現実に支配力と管轄権を有する政府、こういう点を実際にこれを当てはめてみると、現在においては休戦ライン以南が韓国の管轄権である、その管轄権に基づいて、たとえば請求権ですな、請求権の問題もきめておるのであります。そして、両国の間で十分に審議した結果、合意をみておる。でありますから、日本の在韓財産あるいはその他の権利、そういうものは、つまり韓国の支配権の及ぶ範囲外には、この今回の協約では何ら触れていない。それからまた、向こうからみて韓国及び韓国民の在日財産等は、これも韓国と書いてあるから、休戦ライン以北には何ら触れていない、こういうことでございまして、請求権の処理の問題一つ取り上げてみてもちゃんと現実には休戦ライン以南だけを対象にして取りきめがかわされておる、こういうことでございますから、韓国が今度の問題で日本が全半島に及ぶということを承認したというようなことはどこからも出てこない。また、韓国自身も今度の日韓条約というものの、韓国諸般の取りきめは、あくまでも現実の韓国の支配権の及ぶ具体的範囲だけに限定をして、そうして日本との取りきめをしたのだ、こういう立場を明確にとっておるのであります。でありますから領土の問題等、現実の管轄権の及ぶ範囲というものを混同して、そうして国民に説明しておられるということを聞きますけれども、これは厳格に申し上げますと、向こうさんのほうに間違いがあるのではないか、明瞭に間違いである、そういうことが言えるのでございます。でありますから、こういったような問題につきましては、いずれ向こうが、いやそうでない、日本韓国憲法の趣旨というものを承認してこれをやったんだというようなことを言って、請求権なら請求権の問題について、もしも向こうが何か主張してくれば、これはもう条文に基づいてきわめて明瞭に、明快に解決のつく問題であるということを私は確信をしております。その他、いろいろの面において向こうの説明ぶりと称せられるものを私は伝聞しておりますけれども、決して、基本的にこの両国の将来の国交正常化をかき乱すような、そういう行き違いはない、こういうことを確信しておる次第でございます。
  36. 二宮文造

    二宮文造君 いまの外務大臣の答弁は、十月二十九日の衆議院の特別委員会における外務大臣の答弁を再生されたものだと思うのですが、非常に表現をあいまいにされておりますので、私が調べた資料に基づいて韓国側考え方というものをここで抜粋してみたいと思います。  まず、韓国の白書、韓日関係に関する白書には、「第三条は、日本側が韓国政府の管轄権を南朝鮮に限定させるという表現を入れようとする企図を封ずると同時に、国連総会決議で明示されているように、大韓民国政府が韓半島における唯一の合法政府であることを明白に規定し、日本としてこのほかに逸脱する余地なからしめるようにした。」こう書いてあります。また同じくPR用の「協定の解説」というのには、「大韓民国の領土は、憲法第三条に明示されているように、韓半島全域と付属島嶼である。ただ現在北をかいらい集団が不法に占拠している事実は、一つの物理的現象にすぎず、これは別の問題である。」また署名の相手方である外務部長官は、八月八日の特別委員会でこのように言っております。「基本条約第三条に基づき、韓半島においては、合法政府として大韓民国以外いかなる政府も認められない。基本条約の前文で国連決議を想起するとし、同第三条で、この決議を援用したことでわが国の管轄権が何ら制約を受けない。かいらい集団が現在以北を不法に占拠しているが、これはあくまでも物理的な事実現象にすぎず、国際的にも合法性が否認されている。このたびの条約により、日本は、今後北韓と外交領事関係の樹立とか、または外交代表を交換するなど、条約を廃棄しない限り、いかなる法的根拠も結び得ない。」あるいは韓国総理は、八月十四日の本会議で、「韓日国交正常化することにより、われわれは日本が北韓かいらいと外交関係を結ぼうとするのを積極的に防ぐことができ、またわれわれは優先権を獲得して、両者間の通商の増加や文化の交流を妨げることができ、さらには在日韓国人の地位を一そう強化することができる。」まだほかにもありますけれども、おもなるものを抜粋してみますと、韓国側考え方、解釈というものは、管轄権は韓半島全部に及ぶ、これに整理をされております。したがって、われわれとしては、一体協定の署名したその本人がこういうふうな解釈の食い違いをするというのはどういうことか。このまま条約案件批准し、その効力が発効した上において、解釈の相違からくるもろもろな隘路というものはつくりたくない。これが条約を結ぶ場合のお互いの考え方でなければならぬと思うんです。重要なポイントにこういう食い違いがあるんですが、向こうは向こうとして考えることはもうかってだと、これでは話が進まないと思うんです。したがって、いま外務大臣が答弁をされました管轄権の問題について解釈の食い違いがあることは非常に残念なことだ、調整しようじゃないかと、公式にも非公式にもいままで話し合ったことはあるんですか、ないんですか。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもう相当に時間をかけて審議して、この成文ができたのでございまして、いまの段階において、かりにこれがどうも非常な誤りであったと、そうすると条文をつくり直して、あらためて調印をし直さなければならぬということになりますが、その心配一つもない、明瞭に今回の調印によってごうまつの疑点も残しておらない、こういうふうにわれわれは見ております。そうしてこれを裏づけるものとしては、請求権の、ただいま申し上げたように、処理の問題がある。もしも全半島ということを韓国の領域としてわれわれが認めたということになるならば、請求権の処理の問題につきましても、これはもうその趣旨に沿うて処理されなければならない。ところが、請求権の問題は、先ほど申し上げたように、実際問題としては休戦ライン以南に限定して、そうして向こう側からの請求権も、また、日本の在韓財産というものも、全半島ではなくて、休戦ライン以南のものについてお互いに処理されたわけであります。でありますから、もし全半島にまたがってこの請求権の問題が処理されたということになりますれば、それはわれわれのその解釈は少しおかしくなるということでありますけれども、そうではない。でありますから、われわれとしては、これをつくりかえる必要もなければ、いま論争に入る必要もない。条約を成立さして、そうして何かこれを適用する上において、向こうの主張とこっちの主張とが食い違って、これを調整しなければならぬという場合が起これば、そのときは成文に従って処理する、われわれはわれわれの解釈が正しいものであるということを考えて、確信しております。それから、向こうは、今度韓国の領域が、管轄範囲が本来のその姿、すなわち、全半島に及ぶんだということを今度の条約承認した結果云々と、こう言っておりますけれども、そうではなくて、これは平和条約の際に日本韓国承認したそのときから、すでに北朝鮮に関しては、いわゆる分裂国家の一方を認めた立場を忘れて、そうしてもう一つの国家を承認するというようなことは国際的にもどこにもそういう事例はない。日本韓国を認めて北鮮を認めるというような立場をとらないということは、すでに韓国承認の際にそういう立場をとっておるのでありまして、今度の条約締結によってそういうふうに日本を縛ったのだというようなものの言い方は、これは全然間違いである、こう考えております。
  38. 二宮文造

    二宮文造君 私はどうも理解できないのですがね。条約締結して署名したその本人同士の間に解釈の食い違いがある。向こうは向こうでそのままほっておいていいのだ——あやまちを認めればそれを改めるにしくはないというのは昔からのことばであって、早く改めるほうが、災いをあとに持ち越すよりも解決はより早いと思う。ですから、そういうふうな外務大臣の国内向けの放送ばかりではなくして、この条約というものは相手国がある、その肝心の相手国の政府に解釈の食い違いがあるのですから、公式にか、あるいは非公式にか、どうも困るじゃないか、こういうことではあとが進まぬじゃないかというふうに話し合いをして私はいいんじゃないか、また、すべきではないか、こう思うのです。それから、また、外務大臣が三十八度線以南に限るという一つの例証として、請求権解決のしかた、取り扱いのしかたというものを出されますけれども、これは向こうに言わせれば部分だと思うのです。出発点があって、そうしてそれから影響して部分が出てくる。その一部の傍証をとらえて全体の考え方というものをこういうふうにわれわれは判断するのだと、しかも、それをこっち側だけでそんなこと考えてたって、全体の基本的な考え方というものを調整することはできないと思う。ですから、問題が起こってから話し合うというふうな態度ではなくて、問題が起こる前に話し合っておこうという考え方にはならぬのですか。この点どうですか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 何べんも申し上げるとおり、一点の疑義がないのでありまして、その点はひとつわれわれを信頼していただきたいと思います。これ以上は論議を重ねても、あくまで向こうがこう言っているじゃないかということをおっしゃるなら、どうも向こうの口に戸を立てるかなんかしないといかぬのです。とにかく向こうが言うことがこうだと、こうおっしゃるなら、どうもそう言う以外にはないのです。あくまでわれわれは条約の成文に従って解釈する、そしてこれによって進んで一向間違いはないと、こういう立場をとっております。これだけは、これだけは明瞭にはっきりさしておかなければなりませんから、申し上げておきます。これはこれで間違いないのですから。
  40. 藤田進

    ○藤田進君 関連。多くの疑義があります中に、いやしくも韓国においては、韓国憲法によって設けられた権威ある国会において関係責任者がそれぞれ答弁をしているということは、日本国会における佐藤さん、佐藤さんの答弁も同様にそれぞれ権威があり、国民に対してこれを了解せしめる作用も持つわけですね。そこで、私は、この疑点については、韓国との協定条約締結等については詳しく質疑をする用意をいたしておりますが、関連してこの際お伺いいたしたいのは、一体韓国国会というものに対する認識を、私は、政府の外務大臣を含めて、疑うのであります。韓国国会というのは、こっち向きで約束したことと、まああれは適当なことを言っていりゃ、国民向けにですね、そんな国会なんだと、まあ独裁政治というのはそんなものだというふうにもう割り切って、あまり気にしていないというようなことなのか、これが第一点。  それから、次の問題は、これは国民も、るる二宮委員から言われているように、私ども実際にこまかく調べているもののみならず、素朴な国民の層においても、これどういうことなんだろうかという疑問がありますが、さて、その食い違いというものについてはいろいろな経過もあろうと思うので、おおむね三つに分けてお伺いしてみたいのです。  まあ十四年間という長い間の交渉をやってきて、ようやくここで歩み寄りができ、まあ疑点なくまとまってきたという言い回しですけれどもね、しかし、十四年間も、池田内閣においても、私どもずいぶん日韓については触れてきました。急転直下、ここにこのような問題を残し、多くの今後に不安を残して妥結されたという、まあこういうふうに私は認識をしておりますが、そこで、第一の点は、韓国の国内事情、はたまたわがほうの国内事情等から見て、こういう文書でしかじかかくかく、解釈もお互いに何らの隔たりもないけれども、しかし、それぞれお互いは国内向け説明もあるのだから、これはお互いにひとつまあまかし合おうじゃないか、お互いのこの文書をもとにした管轄権にしても竹島にしても李ラインにしてもそうですが、これはもうみじんも何らの解釈についても差異はない。が、しかし、まあお互いにひとつ国会を乗り切るためには、ここらはお互いまあ適当に言い合おうじゃないかと、そうしようというようなことが一つ考えられます。  それから、第二の点は——メモしておいてください。第二の点は、実は急転直下、このような、まあ経過は長くても、肝心かなめのところは非常に短期でした。急ぐともあせらずというのは池田内閣のときでした。そこで、まあ唐突の間にこのような文書をつくって、で、いざ調印をしてみるというと、意外にもわがほうと韓国との単なる端々の解釈の相違ではないのですね、これは。竹島は、椎名さんが、もうあれはよろしいと言って了解したんだと韓国国会では言っているのですよ。佐藤さんと会ったときも、竹島言われるなら全体の日韓交渉をもうやめてぼくは帰るつもりだったんだが、佐藤さんはそう言わなかったので、完全に了解ついていると、こういうことなんでしょう。端々の問題じゃないのです。そこで意外にもこういう問題が実は韓国国会でまず嚆矢として出てきた。よって、わが政府としては、あくまでも文書にのっとって、今後そのようなことが現実の行動の上にあらわれれば、これは今後に問題を処理する以外にないというふうに、これはひとつ第二としては考えられるわけであります。  第三の点は、いま第二の点と似通ったことですが、実は長い交渉、そうして最終段階においても、それぞれいま問題になっていることについては、十分その解釈を含めて、日本語、英文、あるいは韓国語等で文書をつくり、事務当局間においても、全く解釈その他何らの食い違いは実はなかったんだと、そこで何らの含みもないままにこういうことになっているというのか。素朴に、その実情だけはすなおにひとつ答えてもらいたい。御答弁次第でまた関連続けさしてもらいたいと思うのですが、まああと二宮さんがさらに追及されるでしょう。
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三つの場合が考えられる、こういうお話でございますが、われわれはもう第三点に尽きるのであります。万全を尽くしていやしくも書きおろした成文に対して、はっと思うようなことは一つもない。これをこの成文に従って解釈することによって今後前向きの国交正常化ができる。これを直さなければならない、あるいは抹殺しなければならない、そういったようなものは一つもない、こう考えております。そして、条約によっては一つ考え方の相違というようなものを残すにとどまるものもあるいはある。しかし、大部分のものは、やはり具体的な問題をいよいよ処理するという場合に、両方の意見が食い違うと非常な支障になるものと、こうあるのでありますが、いやしくも具体的にこの条約の成文に従って処理してまいる上において、われわれとしてはあくまでこれは正当な解釈であって、改めてもらうなら向こうのほうを改めてもらう。これはいかなる審議にかけてもだいじょうぶ、問題にならぬというものばかりでございます。ただいまの管轄権の問題にいたしましても、実際問題としてはその趣旨に沿うて処理されたのであります。それから、また、条約に縛られて、初めて北との折衝をあらゆるものを用いないということに日本が縛られたのだ、今度韓国日本を縛ってきたのだ、そういう解釈ではない。これは承認の当時からそういう方針のもとに日本としては歩み来たったものでございまして、条約によってどうのということはない。条約はあくまでやはり実際の管轄権というものを対象にして条約は結ばれた。それ以外に眠っておる領土というものがあろうがなかろうが、この条約には関係がない、こういう立場をとっておる次第であります。
  42. 藤田進

    ○藤田進君 私の設問の第三のそれであるとおっしゃるということは、その食い違い個々については、事前にそのような食い違いということもあろうかということをおもんばかり、両国間には綿密な意見の交換もやった結果、椎名外務大臣その他の所管大臣が答えるように、もうみじんの食い違いも実はないんだということであれば、それぞれの合意議事録なり、お出しになっているもの以外にもということにならなければなりません。とすれば、韓国のそれぞれの所管大臣、あるいは総理が、丁一権さん等が向こうの国会でおっしゃっていることは、あれほど意思の疏通をはかり、解釈の統一をはかっていたにもかかわらず、まるきりあの国会ではうそを言っているんだ、あれはうそなんだ、こういうことに当然帰結すると思うんです。そうなのですかという点を念のために聞き、そして前段お伺いしましたそういうことがまかり通るような実は韓国国会であると認識されているかどうかですね。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 説明を直接聞いたわけじゃない、私どもは伝え聞いておるわけでありまして、どうもその説明のしかたがあまりじょうずじゃないのではないか、こういうふうに考えます。これは条約いずれ発効後に、重要な食い違い等がもしある場合には、十分に意を尽くして調整をしたい、こう考えております。
  44. 二宮文造

    二宮文造君 私は、先ほど外務大臣が私を信じていただきたいというところで話がぶち切れたんですが、私も、権威ある日本の外務大臣ですから、信じたいと思います。信ずるなら信ずるだけの要件を備えていただきたいと思う。たとえば、いま私なり、あるいは藤田委員から韓国側の発言、政府の発言、しかも、それが総理の発言というふうなことを例にあげて質問をいたしましても、外務大臣はそれをそらすかのように、私は見てない、伝え聞いただけである、しゃべり方がへたなんじゃないかというふうな、いやしくもこの国会の場所でそういうふうな答弁をあいまいにされることでは、そのこと一つでも私は信じられない、信ずるだけの要件が具備されていない、これは議場におられる方皆さん同然だろうと思うのです。あえて私一人の意見ではないと思うんです。ならば、いま私どもが例にあげた件につきまして、すでに外務省には国会議事録があると思いますから、該当する部分をここで読んでいただきたい、その上で私がさらに次に話を進めてまいりたいと思います。いかがでしょうか。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国国会の議事録につきましては、もうすでに、つとに資料としての提供をするようにというお申し入れがございまして、それに基づいて韓国政府了承をいま取りつけ中でございますが、なかなかオーケーと言ってまいりません。たといその一部分であっても、ここで、この公の席上で私が読み上げることはできないことをまことに遺憾に存じます。
  46. 藤田進

    ○藤田進君 もう委員長の手元までは出すことになり、出しているんです。委員長がわれわれに出してこないんですね、まだ。そこで、私は、まず前段の韓国国会の認識についても御答弁がないので、これはまあお伺いしたい。外務大臣はその責任の衝にありながら、そうして書記官をはじめ、国会中もあなたの使臣が行っているんですな、ちゃんと使いが向こうに行っている。そうして議事録はあなたの手元にあるんでしょう、向こうの。あるんです。あるんでしょう。重要な段階で伝え聞いた、どこでどう伝え聞いたのか知らないが、確実な速記録をあなたは読めるはずなんです。提供されることはもちろんですが、その前にも読めるはずです。伝え聞くのじゃなくて、二宮君や私どもが申し上げている食い違いについては、れっきとした韓国の議事録を翻訳したもので、これに基づいての御答弁をいただかなければなりません。何か答弁がどうもあまりうまくなかったぐらいな、そんなことで、しかも、食い違いがあれば、協定あるいは条約の発効したあと、おい、こんなのどうだいと話してみようか、これこそ国会軽視じゃありませんか。そういうものがはっきりして、さて日本国国会としてはどうすべきかということを、これを考えなければなりません。ちょうど十二時を過ぎましたので、ここで昼食を兼ねての休憩をいたしますから、その間に速記録をその部分だけ読んで、伝え聞いたのじゃない、なるほどそうなっているということで、明確な答弁をしてもらいたい。そうでなければ進めませんよ。そんなあいまいとしたことで進もう思ったら大間違いです。
  47. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 二宮文造君の質疑の途中でございますが、午前の質疑はこの程度とし、一時より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後一時十七分開会
  48. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を開会いたします。  日韓基本関係条約等承認を求めるの案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題とし、午前に引き続き質疑を行ないます。二宮文造
  49. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどペンディングになりました外務大臣の答弁にかかりますところの「伝え聞く」というふうなあいまいなお答えでございましたので、それに対して、私のほうからそういうことではこの場合承知できないということでペンディングになりましたが、その後会議録を読んだかどうかお伺いしたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あらためて会議録は読みませんでしたが、その内容はいろいろの機会に私の頭に入っております。
  51. 二宮文造

    二宮文造君 では、先ほど「伝え聞いた」というふうな外務大臣の答弁は誤りであって、内容はよく承知をしていると、こう理解してよろしいですか。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大体勘どころは承知しておるつもりでございます。
  53. 二宮文造

    二宮文造君 勘どころではなくて、先ほど問題になったのは、その言い方が、韓国総理の言い方がまずかったのであろうというふうなあいまいなところで、ぼけたわけです。実は勘どころがそれではずれているわけです。私あるいは各委員からいま指摘をしておりますことは、非常に重要な問題、重要な食い違いである、これを鮮明にしなければならぬじゃないかというのが、先ほどからの経緯でございます。ならば、それは相手がそういうのであってかまわないのだ、問題が起これば、そのとき処理をするのだという政府の姿勢に対して、私が申しましたのは、そうではいけない、問題があると承知をされたのであれば、早い機会にこれを調整すべきではないか、ここで分かれたわけです。何もこだわるわけでないと思うのです。こういう重要な食い違いについては、これから両国国交正常化していくためにも、こういう食い違いは、早い機会に改めなければならぬ、私は一歩譲っております。公式にでも、あるいは非公式にでも調整をする努力をすべきではないか、こういう問題を先ほど提起したのですが、その間のことを含めてもう一度答弁願いたい。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国側のいろいろな機会において外部に説明しておる点との調整のお話でございましたが、あくまでわれわれは全責任をもって調印された条約に対する御審議に対して、誠心誠意をもってお答えしているのでありまして、韓国側との調整は、私はこの際この法案の審議については必要はない、あくまで客観的な書きおろされた成文というものに対して、政府は責任をもってお答え申し上げておるのでございますから、これについて一再ならずいろいろの当局者が韓国内において説明をいろいろにしておろうとも、そういう問題にかかわらず、われわれは全責任をもって成文の解釈について御質問に応じておるような次第でございます。さよう御了承願います。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、関連。
  56. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岩間君、簡単に願います。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は関連ですから簡単に要点だけを述べたいと思う。  先ほどの質疑応答を聞いておりまして、非常に私は椎名外務大臣の態度が不謹慎だと思います。 第一にあなたの発言の中で、改めるなら向こうが改めてほしい、こういうようなことを言っています。それから論議を重ねても、あくまで向こうがこう言っているじゃないかということをおっしゃるなら、どうも向こうの口に戸を立てるよりしかたがない、こういうように独断的な言い方、これはあなたたちは国際親善友好を促進するための条約だ、こういうことを言っている、その態度とは非常に食い違いがある。さらに議員からの質問に対しまして、あなたは韓国国会の議事録との食い違いについて具体的にただされているわけです。ところが、あなたはそういうことは聞いている、しかしその国会の議事録を読んでいないということを言っておる、これはおかしいじゃないですか。委員長の手元にはすでに提出されているのです。政府がこれを検討しないで、無責任に委員長の手元にこれを提出するということはあり得ないことだと思うのです。したがって、当然私はこの速記録は公開されるべきものだ、資料要求が出されておるのですから、当然これは出すべきだと思います。現に安保国会審議のときに、アメリカの国会では日本国の議事録を全面的に使った例があるじゃないですか。このとき日本政府はこれを了承したのかもしれませんけれども、向こうの議事録というものは条約、相手のある条約問題を決定する上には非常に重要なものです。したがって、この点からいって、当然この要求を、理事会決定によって委員会全体の意思としてなされておるのですから、当然出すべきだと思います。  さらに、政府は食い違いが、この議事録と日本政府の間にどういう点があるのか、少なくともその食い違い点について検討する、この委員会を通じて政府態度を明確にするということは、絶対にこの日韓条約を取り扱う場合に必要な条件であるという、このことは多くの論議をする必要がないと思う。ところが、あくまでもあなたたちは、これを読んでいないとか、あるいは聞いただけだと、人ごとのように、しかもその資料委員長提出をするという、まことに矛盾したやり方をやっております。これは国会審議のために断じてとらない。慎重審議を口にしながら、このようなことは許されない問題です。  第三の問題ですが、内容の問題ですが、あなたは先ほどこういうことを言った。丁一権総理の発言に対して具体的に二宮委員がただされた。丁一権総理は、朝鮮における唯一の合法政府であることを日本政府が認めた、したがって北との国交あるいは経済、文化交流、こういうものについては全部これを拒絶するんだ、こういうようなことをはっきり言っておるがどうか。この質問に対しまして、あなたは次のような答弁をしております。それは今度の条約によってそのようなことがきまったのじゃないのだ、すでに前からきまっているんだ、国連によってきまっておる、こういうような趣旨のことをあなたは言っておるんです。そうしますと、国連によってきまっておるこのような問題を、韓国政府はこの国連の方針に従って北にも管轄権は及ぶという、そのような基本的な韓国態度に立っている。ところが日本政府は、そうすれば、国連の決定には反して停戦ライン以南だというかってな解釈をやっておるという結論にならざるを得ないのです。これはたいへんな重大な発言であると思います。管轄権の問題を審議する上には、一つのまさにポイントだと私は思うのです。この三点について私はぜひお答えいただきたい。はっきり答弁をしていただきたい。しかもあなたは先ほどの論議の中では、韓国の議事録を見ていないと言いながら、すでにもう管轄権の問題につきましては、韓国の議事録との食い違いについて発言の中でしばしば出していられる。資料は見ていないなどと言いながら、実際はその中身について論議をしておる。これは全く国会を、議員を私は瞞着するやり方だと思うのであります。一歩踏み込んでおりながら、しかもその議事録は出せない。あなたたちがそういう態度では、国会論議というものは、ほんとうにその内容を深め、国民の前に明らかにするという当然のわれわれの責務を遂行することはできない。したがいまして、以上の三点についてはっきりした答弁を求める次第です。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほどから、条約審議韓国側日本側の主張を議題として、これに関する矛盾の調整というようなことが審議の目的ではないのでございまして、両国の間で慎重審議の結果調印された、その条約の成文を基礎として皆さまの御質問にわれわれは誠心誠意をもって答えておる、こういう次第でございます。したがって、相手国のいろいろな当局者が、いろいろな場所において発言しておることを、これはどうだ、あれはどうだと、こう言われることは、これは条約審議の上からはずれたやり方でございまして、あくまでこの成文に基づいて御審議を願う、これに対してわれわれは誠心誠意をもってお答え申し上げる、こういうつもりでございます。さよう御了承願います。  それから議事録の問題は、先ほど申し上げたように、韓国では了承を得られないのでございまして、まことに遺憾でございますが、これは提出はできません。  それから丁一権総理の発言に対して云々と、つまり今回の条約によって北側との政治、経済、文化、あらゆる面においてもう日本は二重の交渉ができない、そういう道を今度の条約締結によってふさぐのであるという趣旨の丁一権総理の発言に対する御質問に対しましては、われわれはすでに平和条約の際に韓国承認しております。その承認に伴って、われわれはこの分裂国家の他の一方とは一切の正式の交渉は持たないという方針がすでにそのときに日本としては確立しておるので、今回の条約締結によってそういう拘束を受けるものではないということをお答えしたはずでありますが、それに私の発言は間違いない、かように確信しております。
  59. 二宮文造

    二宮文造君 だいぶ関連質問もあるようでございますけれども、同じ問題でさらに議論を進めたいと思います。  私、いまここでこういう両国政府の食い違いによって、椎名外務大臣は具体的に問題が出てこないから心配はないと、こういうふうな答弁を終始貫いているわけです。私、ここで総理にお伺いしたいと思うのですが、総理北鮮との関係につきまして白紙の状態である、こう言い切っておられます。ところが一方では、またこれは十月二十八日の衆議院における発言だと思いますが、基本的には対立国家の一方を認めて他方を認めるということはできない、このように封鎖するようなニュアンスのある発言をされております。白紙というのと、それから封鎖をしたようなニュアンスを持った発言とではだいぶまた影響が違ってくると思いますが、総理見解を尋ねておきます。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北鮮に対する考え方は白紙だと、こう申しましたのは、この条約では日韓間の問題を協議し、またそれで合意ができたのであって、北鮮の問題については全然触れておらない、そういう意味の白紙でございます。また、私どもが分裂国家に対してどういうような外交処置をとるか、このこともこの条約からは出ておりません。これはかねてのわが国の外交の態度でありまして、これはただいま椎名外務大臣からお答えしたとおりです。講和条約発効の際、大韓民国承認しておる。もうこれだけで分裂国家との交渉はこれでやるのだと、こういうことを申したのでございます。これもいずれも今回の日韓条約できまったわけではありません。先ほども椎名外務大臣が申し上げましたが、日韓条約の御審議をいただいておる、この日韓条約の基本条約によってきまった問題はあそこに書いてあるだけの問題でございまして、ただいま言うように、北鮮について白紙であるということも書いてなければ、また北鮮とは外交交渉を持たないのだと、こういうことも書いてございません。そういうことは別の事柄だと、こういうことをはっきり申し上げるのでございます。  たいへん、二宮君のお尋ねではございませんが、私先ほど来関連質問等を伺っておりまして、藤田君からの質問、これがやはり基本をなしておるのではないか。急転直下こういう問題が解決した。この急転直下という印象が国民全体に与える影響、同時にまた皆さま方が次々に質問される事柄に関連しているのではないか。いわゆる急転直下やったがためにいろいろ十分でないような状態にあるのではないか、あるいはたとえば国会ではお互いに急転直下解決するのだから、それぞれかってな説明をしてもいい、こういうような約束があったのではないか、そういうわけではございません。これは国会に対しまして、両国政府はまじめにお答えをしておると、かように思いますし、また、その点で急転直下これが解決したというのにはだいぶ問題があります。私は急転直下解決したとは実は思わないのです。十四年間の積み重ねで初めて解決したと、かように私は思います。池田内閣時分に大平・金メモができ上がって、そうして請求権問題が経済協力の形で話が進んだ。これあたりも大きな積み重ねの一つであります。こういうものがあって初めて私の内閣になりまして妥決を見たのであります。急転直下というそのことばの中には、たいへん国民に与える間違った印象があるのじゃないだろうか。とにかく積み重ねでここまできた。私はそういうものをまとめて、そうして調印をしたと、かように私は思っております。だからただいまの問題にいたしましても、国会答弁までは、もちろんこれは打ち合わせをすることではございませんが、それぞれの政府が責任をもってやることでありますが、それがどんなしゃべり方をしてもいいのだ、こういうような包括的な承認を与えたものではございません。  第二の竹島の問題にいたしましても、これはたびたび説明いたしておりますように、私どもは竹島を放棄した覚えはございませんし、また韓国の主張を承認した覚えもございません。でありますから、このこともたびたび国会での審議を通じて明らかにいたしたのでありますが、韓国のほうで、あるいはこの竹島問題を韓国の主張どおりやらないならば、この日韓条約には調印しないのだ、こう言ってあるのだ、自分たちが調印をしたのだから、もう日本政府も百も承知なんだ、こういうような強弁は、どうしてもこの問題では成り立たないのであります。私が申し上げておりますように、私どもは竹島の問題を、領土権を放棄した覚えもないし、これについて言質を与えた覚えもない、また韓国側の主張を全面的に承認した覚えもない、こういうことをたびたび申し上げておりますが、明らかにこういうような事態がいわゆる紛争ではないのか。紛争の処理の方法は外交ルートでやる。さらにそれできまらなければその次の処置をとる。こうまで実は約束をしたのでありまして、これらの片言隻句、あるいは口約束されたものが私どもを縛るというようなものではない、私はかように思います。  先ほど来の問題で、私は静かに聞いておりまして、どういうところからこういう間違いが起きるかということをつぶさに考えますと、ただいまの急転直下、そこらにあるのじゃないだろうか。長い間の問題であっただけに、解決を見たということがどうも急転直下、したがって用意が不十分じゃないのか、だからこういうような解釈のそごその他があるのじゃないか、こういうように結びつけられておるように思います。しかし、ただいま申し上げるように、解決を見るとそれは急転直下だ、こういうようにお考えなんだが、われわれ解決するために十四年間の努力をしてきたのであります。その十四年間の努力の成果が、ようやく今日調印という形で最後の仕上げをするということになっておるでありまして、どうかこの辺も御了承いただきまして、両者の間にいろいろの議論あるいは説明のしかた等々、食い違いもあるように見受けますけれども、しかしながら、最後のところへまいりまして、これが実質的に支障を来たす、こういうような場合には、この解釈の相違その他による紛争の処理、解釈を統一する方法もきめてありますから、そういう点を重ねて申し上げまして、これが急転直下解決したものでないということを、特に私も申し上げたいような気がいたします。
  61. 二宮文造

    二宮文造君 総理が何か議事進行の役をつとめていただいたようなのですが、私、まだ質問をしておりませんが、竹島の問題に触れられました。やはりこれも重要な食い違いです。私ども、先ほどから申し上げているのは、政府がそのように食い違いを了解しているのだから——了解ということばはちょっと意味が違いますが、承知しているのだから、これを調整しなければならぬじゃないか。それを先ほどから私は申し上げているわけです。その必要がない、こう椎名大臣は言い切られてきたのですが、事、竹島となると必要がないとは言えなくなるわけです。現にいま総理が言われたように、領土権を放棄したものではない。しかし、韓国の議事録を見てみますと、ここにもまた、その非常に食い違いが出ております。私、これを読むつもりはありませんが、先ほど申した管轄権の問題といい、それからまた、すべての食い違いの面について、韓国の複雑な政治情勢というものがあるせいではありましょうけれども、非常に説得力を持っているわけです。読んだらそのままああそうか、交渉はこうであったのか、こういうことを韓国は主張したのか、日本はこう言ったのか、というふうに、それが事実であるかどうか、これはまた別としまして、説得力を持っている。一方、日本国民であるわれわれが、そして、国会議員である私が、先ほどから政府答弁を聞いておりますと、説得力がない。疑問点に対して懇切な答弁がない。いわば韓国の、韓国政府が言っていることは、あれはかってに言っているのだ、私の主張が正しいのだというふうに一方的にお話しになるように、この国会審議に対しても、一方的な、あるいはひとつの型どおりの答弁しかなさらない。そこに大いに疑問があると思うのです。ですから、政府のそういう姿勢を改めて、私どもも納得ができない。気になるから質問するのであって、それに対する答弁は、それだけの説得力を持ったものが私はほしいと思うのです。現に竹島の問題をいま取り上げようと思うのですが、つい昨日の理事懇談会の場合に、藤田委員から、竹島を視察しようじゃないかというふうな提案がありました。じゃ、具体的にこれを進めるとすれば、一体どうなるのか。日本の領土であり、領土権を主張される総理が、われわれ国会議員が視察をする、その場合に、日本の国としては、あるいは政府としては、視察をするわれわれの生命、そういうものを保障できますか。具体的に事実として、すでに解決しなければならない問題が、食い違いの中から起こっていると思いますが、この点はどうでしょう。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 竹島問題は、わが国の主張はもうはっきりしているので、これは御了承がいただけると思いますが、いま言う、説得しなくても多分御了承はいただける、かように思いますが、同時に、それならば、その土地を視察したい、あるいは日本の領土だからこれを視察したい、こういう御要望が出ております。しかし、いま不幸にして、私どもの領土を主張しているこの竹島を韓国では力により占領をしております。したがいまして、皆さん方がお出かけになる、私どもは、いわゆる紛争を武力による、力による解決をしない、かようなことを誓っております。こういう意味で、これをどうしても見ようとする、視察しようとするならば、実力でこれを排除するという方法をとらなければならないと思います。そうでないと、ただいまの状態は、私どもの自由にならない、ここに問題があるのであります。私はたいへん不幸な状態だと思います。これを外務当局も心配して、どういうようにしてこれを解決しようか、そういう意味ではぜひ御協力を願いたい、かように考えておるのであります。ちょうど私どもが北方の領土について、やはり領土を主張しておりますけれども、ただいまソ連がこれを占拠しておる。その場合に、ソ連の兵隊を除去する、これは幾ら交渉いたしましても、そんなところを見に来ることはごめんこうむると——韓国は自分の領土だといっているのだから、これは必ず言うだろう。また、ソ連は必ずおれのほうの領土なんだから、君たちがかってに視察するということは、これはとんでもないことだと、こう言うに違いない。それが、いわゆる平和的解決により、そうしてこれを処理していくという問題であります。で、私は、竹島問題についてたいへん皆さま方、国会に対して申しわけなく思うのは、日韓交渉は全面的に一括処理をいたしますと、こういう方法をしばしば申し上げてまいりました。したがって、竹島も解決を見なければならないのだと、見たのだと、こういうような意味でおしかりを受けるならば、私は公約事項を忠実に履行したとは申し上げかねるとしか言えないのでありまして、そういう意味の非難は、十分当たると思います。しかしながら、竹島問題の処理の方法がきまったということで、せめて国民に対しましても、御理解、御了承をいただけるのじゃないだろうか。この問題をいわゆる一括解決、こういう立場で処理するために、全体を、いまなおやらない、解決を見ない、親善友好の樹立がおくれる、こういうようなことはいかにも残念だと、かように私は思いまして、あえて私どもの決意で、この解決の方法、その処理の方途は、これで見つかったのだから、この辺でひとつ政府意思決定をしよう、国会にその承認を求めよう、こういうことでただいま出しておるわけであります。これらのことも十分御勘案いただいておることだと思いますし、ただいま言われるように、相手方が占拠しておる、そうして、それが近づけば発砲されておる例がある、こういうような状態の場合に、国会議員の皆さま方が、日本の土地だから、領土だからぜひ見たい、かように言われるということでありますけれども、私はやはりおとなとなって処理するというならば、そこまでは言われないほうがいいのじゃないか。やはり時期を見て、そうして処理することが望ましいのじゃないか、かように私は思うのであります。
  63. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連。ただいまの竹島の国会議員の視察の問題について関連質問いたします。  衆議院の外務委員会が、さきに竹島の視察につきまして、外務委員会を通じて海上保安庁に申し入れました。ところが、これは、やれ近づくと銃撃をされて身辺の安全を保障できないからというようなことでそのままになっておる。参議院の外務委員会が、本年の八月に、福岡、長崎、対馬を視察いたしまして、それが済みましてからあとで、外務委員会として出かけるわけではございませんが、私が海上保安庁に、直接竹島を視察するというのは、別に上陸をしてという意味ではなくて、竹島周辺に海上保安庁の船で行って、そうして望見する、ながめる。これも一つの視察の方法でありますので、それを申し入れたのであります。ところが、海上保安庁の政務課長から、直接私に断わりが来ましたが、その際に、どうもこの問題については、外務省の了解がなければ船に乗せるわけにいかない、こういうことだった。私ども国会議員は、国政調査権を持っておる。そして、私どもは、いま総理が言われたように、何も竹島自身に上陸して、韓国の守備兵か何かを排除して視察をしようというのではない。竹島を望見し得る範囲、韓国がもし竹島を自分の領土としてその周辺三海里を領海としておりますような場合には、その三海里の外においてでも私どもはそれを見たい。そういう申し出に対しても、外務省は何ゆえか、海上保安庁に対してそれを許さなかった。こういうことで、私どもの竹島を見ようということはおじゃんになってしまったんでありますが、さらに、藤田理事から理事懇談会でその問題を持ち出されたときに、いま二宮議員から言われたような経過で、これもだめになりました。いま総理お答えですと、それは望ましくない、こう言われるわけでありますが、私どもは、やはり現在竹島の周辺がどうなっておるか、このことは竹島に上陸しないでも、また、われわれとして実地調査できることです。その点について、総理並びに外務大臣はどう考えるか。外務大臣はこの問題で海上保安庁に対して、それは許してはならない、こういうことを言われておるのかどうか、その辺についてお答え願いたい。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別に外務省から海上保安庁に対して、視察をとめろというようには言っておりません。ただ、あそこに警備兵が——警官ですか、おって、近づくと発砲する、されるおそれがあるから、なるべくそういう危険に近寄らないように指導する必要があろうということを、事務ベースの間でそういうことを話し合っておったそうでございます。その程度でございます。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま外務大臣がお答えいたしましたから、実情はよくおわかりだろうと思います。私は、皆さま方に御協力願うというのは、こういう事柄であります。とにかくいま紛争になり、そうして先鋭化している、そういう場所について、やはりお出かけになることはしばらく見合わされたらどうだろうか。そういう事柄が、これから私どもの主張をする上におきましてもたいへん強力になるのだ、かように思うのであります。ただいま事を荒立てないような方法ということで私どもは、われわれの主張を実はしておるのであります。もしも万一のことがあれば、必ず事態は悪化するのみでございますから、そういう意味でしばらく事態を私ども交渉にまかしていただきたい。なるべくそういう危険のあるところにはお近づきにならないように実は申し上げておるのであります。
  66. 二宮文造

    二宮文造君 総理答弁をされたわけですが、やはりここで、じゃ、紛争解決に対する交換公文の食い違いというものが、やはりここで問題になってくると思うのです。たとえば李外務部長官は、八月九日の特別委員会でこのことを言っております。「紛争解決のためのノート交換があるのは事実である。これは国際会議の慣例上の常識である。幾ら親善国家間の条約であっても、時がたてば誤解が生じたり、必ず摩擦が起きたりするのは、歴史の立証するところである。今後特に漁業問題や請求権問題などでもし紛争が生ずれば、これをどう解決するか。この解決策に関するノート交換をした。しかし、これには独島問題が含まれていないことを、椎名外相及び日本佐藤首相が了解した。」、さらに八月十日には、同じく李外務部長官は、「佐藤政権がもしかわり、他の政権が独島周辺に言いがかりをつけ、問題化すれば、この交換公文によってどんな結果になるかという心配は、国民の皆さんがひとしく感ずるところと思う。この交換公文を見れば、こうなっている。両国政府が合意しなければすべての問題は解決されない。すべての手続がなされねばならず、また、これは順従ではなく調停となっておる。解決するとは、法的に規定せず、はかるとしている。」。したがって、こういう韓国政府の了解、考え方からいきますと、これは紛争解決に対する交換公文はあったとしても、この交換公文の中に竹島という字が一個もない。そういうことが相手側がこういう解釈をする理由になっていると思うのですが、総理が言う、いま熱いうちだから相手を刺激しないほうがいい、こう言われてみても、少なくともこういう観点からは解決のめどがない、こう私どもは見なければならない。重要な食い違いだと思う。ですから、先ほどの管轄権の問題にしても、また、あと出てきます、そういう問題にしても、この批准国会に要求される——まだいま現にされているわけですが、その間においてでも調整さるべきではないか、こう思うわけですが、どうでしょう。
  67. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この両国間の紛争問題として、客観的にこれを観察いたしましても、竹島は最も最大なる紛争問題であるということが言えるのであります。歴史を顧みると、何でも徳川時代からの紛争だといわれておりますが、そういうことはしばらくおくとして、この大戦終局後におきましても、この問題を中心にして数十回抗議書が交換されておるような状況でございますから、これが両国の最大の紛争であることは、だれしも否定できない問題だ。そうしてこの紛争の問題の処理に関して竹島問題を除くということが、どこにも御承知のとおり書いてない。当然これは竹島が紛争問題であるということが明瞭であるのであります。でありますから、竹島と書いてある、あるいは独島と書いてある、そういったようなことは問題ではない。結局両国のきわめて重要な紛争である。で、この問題の解決については、通常の外交ルートによって折衝して解決をはかる。もしそれができない場合には、両国の合意による調停で解決をはかる、こういうことになっておりまして、なぜ一体この重要な交換公文が合意されたかということを考えてみると、これはもう竹島という問題を意識しながら、両国の当事者がこの交換公文を書きおろしたのであるということは、これはもう明瞭でなければならぬのであります。これをあくまでその合意というものがなければ調停という方法は発見できない。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕 成り立たない。あくまで合意しないのだというようなことなれば、これはもういかなる調停にも応じないということでありまして、明らかにこれは協定違反、両国条約違反ということにもなるのであります。まさかそういうことは向こう側としても言われてないと私は思いますが、いずれにいたしましても、この問題は領土問題であり、将来といえども領土問題、両国国民の非常な関心の的でございますので、この際はしばらく、条約発効後に両国の間に友好的な空気が醸成してまいったのをしおにして、そしてこの問題の解決に入る。そうすることによって合理的に平和裏にこの問題の解決をはかりたい、こう考えております。
  68. 二宮文造

    二宮文造君 また外務大臣、重大な発言をされるわけです。もしそんなことを言うんであれば、協定違反、条約違反だ、まさかそんなことは言ってない。ならば、私がいま申し上げたことを言ってないのですか。
  69. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ条約が発効しないのでありますから、条約違反ということにはならない。条約発効後に、いかなる合意にも応じないという、具体的にそういう態度を示した場合には、これは明らかに条約違反である、こういう考えであります。
  70. 二宮文造

    二宮文造君 ことばじりの合戦になるわけですが、いま現に政府は、この批准のために国会提出をしております、案件を。また韓国側批准を終わっております。国会のあれを取りつけております。もうすでに事態は寸前と言わなきゃならぬ。しかも、国会答弁として、当面の外務部長官が、解決には応じない、必要がないのだ、合意がなければこれは交換公文は役に立たぬのだ、こういう言い方をしておる事態をとらえて私は質問するわけです。ならば、それに対して、効力が発生しなければ条約違反にならぬ。なったらどうするのですか。もっと具体的に政府の対策というものを、基本的な方針というものを明らかにしていただきたい。
  71. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういう事態を想定して、いわゆる険悪な事態を想定して、それに対するやはり相当きつい対策ということになりますが、そういうことをこの段階において私は発言することを控えたいと思います。
  72. 二宮文造

    二宮文造君 ならば、私がいまここで読み上げました韓国国会議事録における李外務部長官の八月九日の特別委員会での発言、さらに、いま申し上げました八月十日の特別委員会における同じく李外務部長官の発言は、そういうことがあったと、こう言われますか。なかった——まさかそんなことは言うまい、そんなことはするまいというふうな先ほどの外務大臣の答弁でございますが、ないと言われますか、どちらですか。
  73. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約その他協定、交換公文、これを一括して条約といっておきますが、それらの審議は、その書きおろされた条約協定、交換公文というものの正当な解釈によって御審議をお願いしたい。そういうことでございまして、これに関する相手国の当局者のいろいろな場合において、それぞれその場所に適合した説明ぶりに対して、私は責任をもってお答えするわけにはまいらぬ。あくまでわれわれとしては、全責任をもって、明らかに記せられた条文、協定、交換公文、そういうものの解釈、正当な解釈というものを中心にして、そして皆さまの御質問に対して、誠心誠意、責任をもってお答えしたいという基本的な態度でございますから、どうぞさよう御了承願いたい。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの問題で、関連して質問させていただきますが、この両者で、交換公文にあるような協議がかりに行なわれたとします。拒否されればもうそのときは、外務大臣のお話のように、これは何もないことになる。ところが、合意ができて調停に応じたとする、ところが、調停者が、それは韓国のものだということになると、これはどういうことになるかという問題が一つありますね。たとえば、ある問題があって、お互いに話し合いの結果、この五分五分のものが四分になるか六分になるか、七分になるか三分になるか、そういうことはございます。ところが、このような島の問題は、半分にわけるというわけにいかないでしょう、これは。オール・オア・ナッシング。それだから場合によると、調停に応じなければこれは返らないし、調停に応じてくれても、第三者にまかせて調停をしても、その場合でも第三者の調停が下った場合に、日本に不利ならばこれは返らないということになるのか、そういう理解でよろしいですか。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 それじゃ、放棄することもあり得るわけですね。放棄といいますか、日本のものでなくなることもあり得るわけですね。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは理論的にはそういうことになります。(「実際的にはどうなの」と呼ぶ者あり)いや、調停の判断がこちらに不利であるという場合もあり得るということについていま申し上げました。しかし、調停はその拘束力がない。だから相手方がそれに承服しなければ、また元に戻る、こういうようなことになっております。ただ調停の趣旨がですな、かれに不利かわれに不利か、いずれかになる、こういうことであります。
  78. 二宮文造

    二宮文造君 そうしますと、これは一体何のための交換公文ですか。紛争解決のための交換公文を取りかわした、そのいわれをもう一度説明してください。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国際間の紛争処理として、しばしばこの調停という方法が用いられておるのであります。そういう場合には、その調停に対しては、両国いずれでもそれに服するという覚悟をもってこの調停というものを合意するわけであります。(「前に言ったのと違うじゃないか」と呼ぶ者あり〉
  80. 二宮文造

    二宮文造君 いま議席のほうからお話がありますが、先ほどとちょっと変わってきました。
  81. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、その調停があった場合には、その調停に服するということが、国際間のこれは当然のこの調停というものを合意したときから、そういうお互いに道義的な義務を持ってこれに臨むわけであります。しかし、法律的にはその調停というものは直ちにそれを縛るというわけのものではない。でありますから、あくまで紳士国の間においてこの調停というのがものを言うということになるだろうと私は思います。
  82. 二宮文造

    二宮文造君 もう少しうがった答弁をしていただかなければ、審議が先に進みません。まず私が先ほど質問したことに対するお答えがないわけですが、先ほど指摘した李外務部長官の韓国国会における発言ですね、発言の内容がそうであったということは、外務大臣は了解していますか。
  83. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう意味か知りませんが、とにかく了解はいたしません。しかし問題は、紛争処理の交換公文というものをいかに解釈するかということについてあくまで論議を重ねておる、こう私は承知しておるのでありまして、相手国の当局者がいろいろな機会にいろいろな発言をするだろうと思う。それを一々問題にしてこの交換公文の論議を進めるという、そういうわれわれは考え方を持っておらない。あくまでこれをひとつ、書かれた成文というものを基礎にして、そしてその解釈あるいはこれの運用というものにつきまして、御質問に応じて誠心誠意責任を持ってお答えしたい、こう考えております。
  84. 二宮文造

    二宮文造君 じゃ、もっと具体的に伺いますが、それじゃ竹島は調停ができるまでは現状のままですか。
  85. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 紛争問題として残るわけであります。
  86. 二宮文造

    二宮文造君 先ほど総理がお話しになったんでは、現在韓国が占拠している。その占拠している状態解決まで続きますか、こういうことです。どうですか。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) こちらが実力をもってこれを排除しない限りは、向こうはこの状態を続けておるだろうと思う。あるいはまた、途中で意をひるがえしてあるいはのくかもしらぬ。どちらになるか、それはわかりません。いずれにしても、こっちが実力行使によってこれを排除しない限りは、向こうがあくまでも占拠しようという、その今日の状態を積極的に打ち破らない限りは、向こうが自発的にのくか、あるいはこの状態を続けるか、その二つのうち一つだろうと思います。
  88. 二宮文造

    二宮文造君 そうしますと、そこに日本政府の存在はどこにあるんですか。あくまでも向こうまかせ、風次第、それで日本の外交が進んでいるとすれば、重大問題になってくると思うのですが、向こう次第と了解してよろしゅうございますか。こちらは何もしないのですか。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 再三抗議を繰り返してまいるのみであります。いわゆるまあ兵力ということになるかしらぬが、とにかく国際紛争を武力をもって解決することはできない、しないという憲法上のたてまえでございます。国後、択捉と同じような状況であります。
  90. 二宮文造

    二宮文造君 どうもここにおいて、今度の日韓案件政府がどのように国民に納得させようとしても、あいまいもことした性格が残ったままになる、こうなると思うのです。時間がありませんから次に進みますが……。
  91. 藤田進

    ○藤田進君 関連。(「もういいじゃないか」と呼ぶ者あり)時間も進んだし、もういいじゃないかという声もございますので、私はこのような条約の欺瞞性等については、社会党としては、二宮委員質疑に不都合を与えてもいけませんから、徹底的に掘り下げていくつもりでおります。  そこで、午前中二度重ねてお伺いしたにかかわらず、御答弁が保留のままになっておりますから、これだけはこの際お答えをいただきたい。それは、先ほど二宮委員に対しての答弁の中で、両国国会ではまじめに答えているんだと総理は指摘されるわけですが、私は、いまるる事実をあげて二宮委員からの韓国国会答弁総理はまじめに答弁しているという認識のようですが、この韓国国会においてかように明白な答弁がなされ、いたしておりますが、私は私なりに、韓国でいやしくも日韓間における交渉の経過を踏まえての協定についてそうでたらめを言うものではないだろう、このように思っております。がしかし、そうだとすれば、非常にこの食い違いというものは重要になってまいります。  そこで、再三お伺いするように、韓国国会佐藤内閣総理大臣の見られた所見というものをぜひ伺っておきたい。どう評価されているのだろうか。韓国国会というものについて国民に対する同様の所信を表明し、応答しておるわけです。いやまじめにやっておると先ほど言われておりましたわけでございますが、これはぜひお伺いしておきたい。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お尋ねの点がどういうことにあるのかちょっとつかみかねておりますが、韓国国会が民主主義な国会であるか、あるいは独裁的な国会なのか、いわゆる政治形態としてどういうものをとっておるのかと、こういうようなお尋ねかと思うのですが、もしそういう意味だと、私は民主主義のりっぱな国会だと、かように考えております。あるいは何かまた別なことであれば、お尋ねをいただきたいと思います。  で、先ほど来、韓国国会を批判するよりも、皆さん方こうして韓国国会においていろいろ答弁された政府側の答弁をいろいろせんさくしておられる。これは、私申すまでもなく、この日韓条約その他の協定がまことに重大なものでありますから、これが私は悪いとは言わない。おそらく多大の関心を持たれることは当然だと思います。さような意味で、これを掘り下げることはけっこうだと思いますが、こういう事柄につきましても、またその他の事柄につきましても、政府自身の所信というものは詳しく国会を通じて発表しておるわけであります。所信を表明しておるわけであります。そこで、この政府所信、これがまあ一番大事なことだと、かように私は思うのであります。この政府所信を信ずるにしても、はっきり韓国の説明も確めたいのだと、この気持ちを私はむげに、それは間違っておると、かように申すわけではありません、たいへんけっこうなことだと私は思いますが、とにかく政府所信というものが出ておりますので、その政府所信をやはり、韓国側答弁もさることだが、この所信を中心にして御審議をいただいたならたいへんぐあいがいいのだ、かように私は思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  93. 藤田進

    ○藤田進君 関連ですから詳しく時間をかけませんでしたが、さらに再三の質問ですから要約いたしたわけですけれども、私は端的に申し上げれば、韓国国会議事録というものは政府の手元にそのままある。今日の段階では、参議院委員会委員長の手元にまでは出すということで来ている。その中を見ればおわかりのように、あなたがぐあいがいいがとおっしゃる答弁と全然食い違っているということも御承知だと思うのです。ところが、いやあれは違うのだと、われわれのほうがほんとうなんだというふうに聞こえるので、それじゃ韓国国会という、あの答弁というものはもう文字どおりあれはうそなんだ。うらはらになるわけですね、問題が一つなんですから。紙にも裏表があるということを世によく言いますがね。そういうのと性質が違うですね。竹島も問題だが、もらったのだ——もらったというか、もとより自分のもので、それは了解したのだ、そう言っておるのですね。総理の名も出ておるのです。いやそうじゃない、紛争で残っておるのだ——これはまるきり向こうが言っておるのが違いますよね。あなたのほうを日本国民としてわれわれ信用するとしてみれば、向こうの国会での答弁は、まるきりあれはでたらめで、うそだ、そういうものなんだろうかどうだろうか。総理は一体、韓国国会はいろいろまだ独立日も浅いことだし、あんなことでとりあえず国民向けの話をしているので、実際には腹はわかっているのだ、そんなことを言う人もありますよね。総理はどう考えているのだろうか。これは、どうもあれはうそを言っておるわい、簡単に言えばね。いや、うそじゃない、まじめにあれはほんとうのことを言っておるのだ。どっちなのでしょうかと、こういうことです。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来お答えしておりますように、韓国政府韓国国会もこの問題については真剣に審議をしておると、かように思います。したがいまして、ただいまの食い違いの問題ですが、そういうものも明らかにしたい、政府所信もはっきりしておるということでいろいろ御検討願っておると思います。しこうして、ただいま言われる竹島の問題について私がいろいろ想像いたしておりますのは、先ほど来から申しましたように、韓国政府に対しては私どもは言質を与えてはおらない、これはもうはっきりいたしておりますし、またこの国会でさようなことを申すのでありますから、これは皆さま方も安心して、政府総理はうそを言っていない、かように御信頼いただいていいことだと、またいただかなければならないことだと、かように思います。
  95. 藤田進

    ○藤田進君 とすれば、向こうがうそを言っておる……。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこで、向こうといたしましては、向こうも領土を主張しておる、領土権を主張しておる、日本も領土権を主張しておる、ここが大事な問題なのであります。そうして、これを自分の領土だと言って、警備のために人まで派遣して、そうしてそれをちゃんと占拠しておる。そういう状態韓国政府が、これは紛争問題なのだ、これは場合によったら日本の領土になるかもわからないのだ、このことは理論的に言えないことであります。私は、それを韓国政府国民に対して言っておるのじゃないか。しかし、こういう国際紛争の問題は一国だけの考え方できまる問題ではないので、いわゆる国際紛争というものは国際的に話し合う、そういうものだと私は思います。
  97. 藤田進

    ○藤田進君 論点をぼかさないで。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、したがって、ただいまの理論的に見た場合に、韓国政府がいままでとってきた処置を一貫して見れば、これは紛争じゃないと言わざるを得ないような状況なんです。日本はこれに難くせをつけておるが、おれのほうでは紛争と思わないと言わざるを得ないような理論の一貫ではないか。これは自分のもの、自分のほうでちゃんと人まで行っておる、警備兵までおるのだ、だからこれはもうおれのほうのものなんだ、こういうことだと思います。ところが、私どもが国後、択捉はわが国古来の領土だ、かように主張いたしましても、ソ連は一体何と言っておるか。そんなことはない、ソ連の憲法にもはっきり書いてあるのです、これはソ連の領土だ、こういうことを言っている。これがいわゆる国際紛争なんですね、こういう事柄が。だから、そういう問題の解決のし方がどこにあるのか。これは先ほど来言うような調停方式でそれを取りきめた、こういうところです。今日もうこの問題は、双方でこれは紛争の問題だ、こういうように一部領有について疑念を残すようなことは、韓国政府としては言えないことである。また、言う考え方は全然ないと思いますね。もしも日本が逆にあそこを占拠していて、ちゃんと警備兵がいたとする。だれから何と言おうがこれは古来の領土だ、かねてから言っているのだ、ちゃんと人までそれについているじゃないか、これは必ず言うだろうと、かように私は思いますので、そういう食い違いがあったからといって、これは国際紛争でないという、こういう言い方は成り立たない。ただいま私が——それだけならばそれでよろしいのですが、私が了承したとか、あるいは椎名君が了承したとか、こういうようなことは、これはこの国会で私どもがはっきり申し上げておりますとおり、この私どもの言を信用していただきたい、かように思います。
  99. 藤田進

    ○藤田進君 答弁になっていないでしょう、聞かれても。それは国後、択捉島にしても、日韓と同じような、解決する腹があるのですか。これは、将来に調停でもしてそのかわりほかの問題を解決しよう——そういう問題は、これはまた別の機会にやるとして、あなたの御発言を聞けば、外務大臣と食い違いがあるのです。外務大臣は、事務当局においても、長年の間に紛争としての問題はもうはっきり両国間にしておりますと、ですから書いてはなくても、竹島——独島と書いてはないけれども、これは当然だと、こう言うし、総理は、リンゴの気持ちはわかる論ですよ、向こうの気持ちとしてみれば多年の歴史もありこれは紛争だということは言えない。とすれば、日間両国間の交渉場裏においてそんなことは一言も向こうも言ってなかったのだ。お互いに同床異夢というか、そういう形で結んだ。したがって、向こうは向こうのあれのままで、完全な意見の一致というものがないままだ、こういうことに帰結しますよ。完全に一致しているものは、紛争問題だと、確かにお互いが主張しているものだということであれば、向こうの国会でもってああいうことは言わない。これはもう約束済みだ、解決しているのだ、全然もう紛争の余地はないのだと言い切っているじゃありませんか。そうでしょう。だとすれば、向こうが言っているのは、これはあやまち——簡単に日本語で言えば、あれはうそだというのも言いにくいし、いやあれはほんとうだということも言いにくいしというところで、つい国後、択捉からずっとこう回ってきますね。そんなことを言ったってだめですよ。私は二つとも、耳よく聞こえるのですからね。はっきりしなさいよ。そんなあいまいなことで、そうして今度、あと何日しかない……
  100. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 藤田君、簡単に。
  101. 藤田進

    ○藤田進君 どうもこの辺に、だんだん深くうしろに下がっていきますよ、いやでも。国民の前に明らかですよ。そうなると、これはどうも、あとだれそれが立つ、これが問題になると、この辺で強行採決だというのが衆議院の実は実態なんですね。そういうことはいけません。ですから、その刻々をまじめに思ったとおりを答弁されればいいのです。いまの点にしぼって、あれはうそだと、いやうそではないあれはほんとう、二つしかないのですよ。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私がかねてから申すように、これは日本古来の領土である、私はそれをどこまでも主張します。相手方がどう言おうが、私どもの主張ははっきりしている、明白である。そして、両国間の主張が対立して、いわゆるこれが紛争だと、かように思います。
  103. 藤田進

    ○藤田進君 そこを聞いているのじゃないですよ。
  104. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 藤田君、関連だから……。
  105. 藤田進

    ○藤田進君 ですから、あなたが言われるのは——向こうは紛争でも何でもないと議会答弁しているのでしょう。これは御承知のとおり。あなたのほうは、紛争として当然残っているのだ。全然意思の統一を見ないままに結んだのかというと、そうじゃないと外務大臣言うのでしょう、意思の統一があった。それならば、韓国国会で言っているのは、あれはうそなのですか。うそですか、ほんとうですか、それだけ。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げるように、私の主張は非常にはっきりしておる、また日韓交渉の最後の調印いたすまで、また諸協定を結ぶまでこの主張を当方で放棄したことはない、はっきりしているということを申し上げて、その上で皆さん方の御判断をいただきます。
  107. 藤田進

    ○藤田進君 まあ、われわれのほうでやりますよ、今度。
  108. 二宮文造

    二宮文造君 午前も、それからいまの段階も、食い違いの核心に入ってきますと、答弁がそらされてしまう。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そらしたというのは、何をそらした……。
  110. 二宮文造

    二宮文造君 そして、政府の方針を認めてもらいたい、政府所信について審議をしてもらいたい。私もまじめにそういうように取っ組んでまいりました。総理所信表明も、あるいは衆議院における各段階における答弁も、読んでまいりました。なおかつ、それを信じようとする段階において、ひよんなものが飛び出してきた。やはり外交ですから、国益ということ、総理の主張される国益ということを考えるのは当然です。そこで、この韓国国会における議事録というもの、発言というものが非常に重要になってくる。それに対する政府の姿勢を私はきょうは通して伺っているわけです。それがどうも、交換公文にしましても、先ほどの管轄権にしましても、議事録の問題だけはノータッチでいこうとする。それでは相手方の考え方が全然浮き彫りにされません。総理は憤然とされたようですけれども、私どもほんとうにこの問題を考えていけばいくほど、政府立場を理解しようとすればするほど、韓国国会における発言、韓国政府の発言というもの、考え方というものが気になってしかたがない。それに対する政府説得力——私ないしあるいは国民に対する説得がもっと十二分になされていいんじゃないか。私も日本国民ですから、日本政府の発言というものを重要視します。これは当然です。しかし、それにはやはり傍証があるでしょう。食い違ったものがあれば、これはどうなのかと追及するのが当然の姿勢ではありませんか。この点どうでしょうか。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が憤然としたと言われるが、私は憤然ではない。ほんとに国会をまじめに真剣に考えて説明をいたしておるつもりであります。その立場に立って私が憤然としていると、かようにおとりになるのは、それは皆さんの御自由ですけれども、私は真剣に討議している。このことだけは十分御理解をいただきたい。  ただいま私に対しまして、議事録を出せというお話に最後に落ちたと思います。このお話は、衆議院におきましてもしばしば議論された。外交文書等につきまして、なかなか手続その他もあり、衆議院におきましても、これは出さなかったんです。だから、参議院におきましても、どうかそれはごしんぼういただきたいと、かように私は過日、二、三日前に答弁したと思います。その点をいまだに御理解いただかない、どうしても出せという、これは少し無理じゃないか。私は衆議院におきましての政府側の主張からも、衆議院に対してもこれは出せない。ずいぶん強い要望がありましたが、どうか御了承いただきたい、かように申したのでございます。参議院においても同じことを申し上げます。
  112. 二宮文造

    二宮文造君 私は出せとは言っておりません。政府立場は了解しております。審議を進める上においてどうしても必要ではあるけれども政府は出さない。しかし、断片的に食い違った考え方が出ているから、その点について個々に明らかにしております。  したがって、次に、同じような立場から、今度は漁業協定の問題に入りたいと思いますけれども……。
  113. 羽生三七

    羽生三七君 二宮さん、ちょっといまのことで、関連じゃないのですが。
  114. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) 羽生君。
  115. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと事実を御説明したいことが一つあるんですが、実は本年八月九日、臨時国会の際で、いま問題になっている三つの問題について、私及び同僚議員が質問したわけです。そこで佐藤総理が統一見解を出されました。休憩をいたしまして統一見解を出された。翌日の外電は、韓国政府は頭をかかえると出まして、その直後、野党の総辞職があって、野党のほうから質問が何もなしに無事に通ったわけであります。でありますから、向こうだって非常に困っているわけです。だから、そういう事実だけを指摘しておきます。
  116. 二宮文造

    二宮文造君 李ラインの問題についても、やはり同じような問題が出ております。だいぶ議席がやかましいようですから、少し荒くやってまいりたいと思いますが、結局、李ラインはどうなったんです。事実上撤廃されたという意見があります。事実上撤廃されたというのは、形式的には残っている、こういう反論が出てきますが、この点はどうですか。
  117. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李ラインというのは、もともとわれわれがこれを認めてない。それから李ラインという、そのラインが海のまん中に引かれているわけでもない。したがって、今度の条約において、なぜ李ライン撤廃というものを、これは俗称でありますが、それを日本の漁民が非常に望んだのであるかと言いますと、結局、向こうが李ラインというものを想定して、それを越える漁船をもう強制的にこれを拿捕して、そして船員を拉致すると、こういうことを繰り返し繰り返し何べんも行なわれたことは事実であります。でありますから、われわれの問題にしたいのは、そんな、どこに書いてあるのか、どこに引いたのかわからぬ李ラインを撤廃するということよりも、そういう無法な、公海上の漁業を妨げる、これを阻止すると、そういう行為をやめてもらいたいと、そういうことを排除するということが、われわれの目的であった。  そこで、今度の条約においてどうなったかと申しますと、御承知のとおり、両国の合意によって直線基線ができて、それから十二海里——十二海里は専管水域として、これを韓国の一方的な強制権で、これに立ち入る漁船を取り締まるということは認める。その専管水域外は、これは公海である、そうして自由に両国の漁民はここで操業することをお互いに認める。ただ、そこの魚族資源というものを保持する上において、お互いにひとつ規制しようじゃないかということで、隻数、それから参考——補足的に漁獲量というようなものを一応きめまして、そうして、それをお互いに侵さないということにいたしました。もし侵すものがあれば、だれが取り締まるか。その場合には、その漁船の属する国の取り締まり官憲が取り締まる。紛争が起こって、裁判にかかった場合には、旗国主義、やはり自分の属する国の裁判管轄権に服する、こういうことでありますから、いわゆる李ラインというものを想定して、そうして、それを越えたものを向こうが一方的にこれを拿捕し、取り締まり拉致するというようなことが、この漁業協定によってあとかたもなく消滅して、再び発生する余地がないということになったのでありますから、これをわかりやすく言って、李ラインの撤廃、こう言っているわけであります。これが、どうなったかという御質問に対する答えであります。
  118. 二宮文造

    二宮文造君 最初は、李ラインは知らないという言い方だったのですが、やっぱり、しまいには撤廃ということばを使ったのですが、事実は、水の上に線を引いてとか引いてないということじゃなくて、実際問題として、日本漁業関係のある重大な問題として懸案事項になってきたわけです。ところが、今度の漁業協定でもって、政府のほうでは、そういう心配はなくなった、こう言われますけれども、なおこの問題を取り扱ってみますと、幾多のまだわれわれの疑問が出てくるわけです。たとえば、これはしばしば論議されたわけですが、国内法として、李承晩宣言だとか、あるいは魚族資源保護法という国内法は、そのまま頑強に残っております。これは、いままで言われた論法からすれば、韓国の国内の問題でタッチしないということになりましょうから、それは別として、そもそも、この漁業協定の中で公海自由の原則、こういうものがうたわれておりますけれども、私、調べてみたのでは、一九五八年の第一回国際海洋法会議で採択された公海に関する条約というものには、日本韓国も加入しておりませんね。これはどうでしょうか。
  119. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 加入しておりません。
  120. 二宮文造

    二宮文造君 加入しておりません日韓両国が、公海に関する条約を引用して公海自由の原則というものを冒頭にうたっているのですが、これは拘束力がありましょうか。
  121. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) あの条約を引用しておるわけじゃないのでございまして、公海の自由の原則と申しますのは、約十七世紀以来確立しております慣習国際法上の原則でございます。公海に関する条約と申しますのは、御承知のとおり、国際連合憲章に基づまして、国際法を法典化するという使命をもって国際法委員会ができたわけでありますが、この委員会で研究した結果を取りまとめた条約でございまして、法典化ということは、それは既存の国際法が慣習国際法であるために明文がない。それを、明文でないものを明文化したというわけでございまして、かりに、その条約両国とも入っておりませんでも、公海の自由ということは、これはもうだれも疑わない国際法上の大原則なわけであります。
  122. 二宮文造

    二宮文造君 日本が、一九五八年に採択されましたこの公海に関する条約に加入しなかったいきさつというものはどうですか。
  123. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この会議では、公海条約のほかに三本の条約が採択されたわけでございますが、日本政府としましては、その全体について若干疑問の点がありましたので、いずれにも署名いたさなかったわけでございます。あとでゆっくり検討して参加するかどうかをきめよう——と申しますのは、先ほどは公海に関する条約についてのみ申しましたので、この条約に関する限りは、大体従前からの国際法を法典化したと見てよろしいかと思いますが、そのほかの条約では、わりに新しい規則をこの機会に設けたりしておるものがあるわけでございまして、そういうものには、にわかに政府としての態度をコミットするわけにはいかないということで、署名いたさなかったわけでございます。その後も引き続き研究しておりまして、大体私ども考え方といたしましては、この公海に関する条約については、近い将来に加入すべく国会の御承認をいただきたいと、かように考えております。
  124. 二宮文造

    二宮文造君 ここでもう一つ食い違いという問題は、専管水域の問題ですが、これもしばしば問題になっております、いわゆる北鮮沿岸です。北鮮沿岸ですね。これは、専管水域北鮮沿岸にはない。要するに三十八度以南、これが政府考え方であるようでございますが、韓国がそれを設定した場合、日本としては、それを取り消させる意思がありますかどうか。
  125. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) それは日本としては認めないつもりです。合意に達しておりません。
  126. 二宮文造

    二宮文造君 具体的に今度の協定、あるいは諸種の協定に基づいて政府が作成した地図の中に、以北は低潮線より十二海里とした。これは、そういう意味では、非常にこの論点がはっきりしないと思うのですが、ここの字句の解釈は、以北は韓国の管轄権の及ぶ範囲まで低潮線より十二海里と、こういうふうにすべきじゃなかったでしょうか。
  127. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  先般、参考資料としてお配りいたしました地図のいまの御指摘の部分につきまして、表現が不十分と思われましたので、御配付の際に、備考としてそれを添えてございます。以北は低潮線より十二海里と書いてあるのは、大韓民国の沿岸については、これより北に、なおその低潮線から測定して十二海里までの水域を領海に属する区域として設定し得るという意味である、ということを備考に添えてある点を申し上げた次第でございます。
  128. 二宮文造

    二宮文造君 そうしますと、話が、論点が変わるのですが、では、日本の漁船は北鮮の沿岸では何海里まで操業できるのですか。
  129. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) お答えしますが、北鮮の場合は、この十二海里のいわゆる協定はいたしておりませんわけでありますから、領海——領海と申しますか、日本は三海里をもって考えておる次第であります。
  130. 二宮文造

    二宮文造君 そうしますと、拿捕の危険はありませんか。事実、十月の二十九日に江華島というのですか、あの付近で操業中の韓国の漁民百四人が北鮮軍に連れ去られて同日釈放された、というふうな記事が新聞に報道されておりますけれども、また、過去に、日本漁船が北鮮の警備艇に発砲されて、乗り組み員が負傷されたという事件もあるやに聞いておりますが、その農林大臣が言われる北鮮沿岸三海里、わがほうはそこまでしか領海として認めていないということであれば、拿捕の危険がありませんか、どうですか。
  131. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  今回の協定で、大韓民国との間には専管水域設定を認め合いました。したがって、設定されました十二海里以内は向こうが排他的管轄権を持ちますから、ここに入りますと、向こうの裁判管轄権及び取り締まり権がある。北鮮との間では、日本国は何ものもきめておりません。したがいまして、領海を侵しますれば、領海侵犯という拿捕の危険はございます。しかし、いかなる公海におきましても、領海に入って操業してはならぬということは、漁業者の常識でもございますし、私どもが常に指示しているところでございますので、領海侵犯が起こらなければ、法律的な立場からいって拿捕の問題はあり得ないわけでございます。
  132. 二宮文造

    二宮文造君 次に、直線基線ですが……。
  133. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。北鮮の領海三海里の点でありますが、この領海は、日本政府としては北鮮の領海として理解しておるのか、韓国の領海として理解しておるのか、どっちなんです、農林大臣。
  134. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 領海とは主権の範囲の及ぶ海の部分でございますので、休戦ラインの北におきましては、韓国の主権が及ばないという立場におきまして、休戦ライン以北につきまして領海ということばを私どもが使っておりますのは、休戦ライン以北におきます管轄権を持つオーソリティーに対して使っておることばでございます。
  135. 亀田得治

    ○亀田得治君 ただいまの説明ですと、北の政権を認めておる。単に権威を認めるというのじゃなしに、やはり朝鮮民主主義人民共和国というものを認めなければ、そのような意味での領海というものは出てこないように思うのですが、それはどういうふうに理解したらいいでしょう。   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕 農林大臣どうです、基本問題なんだから。どういう理解のしかたをするのか。事務的なことじゃないでしょう。農林大臣、坂田さん、あなたお答えなさい。大臣答えなさい。
  136. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 条約局長から。
  137. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういうことは条約局長とよく相談してもらってもけっこうですよ。農林大臣が答えなさい。基本的なことをわれわれが疑問に思っているのだから、農林大臣、そこでよく相談して、それから答えなさい。——だめですよ、質問者の要求によって出なさい。農林大臣と相談しなさい。
  138. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これはいま条約局長に詳しく説明いたさせますが、結局この専管水域は十二海里、これは韓国日本とが合意でこういう協定を結んでおるわけであります。その協定を結んでいない沿岸においてはどうするかという問題は、そういう協定がない以上は、領海の範囲内ということにせざるを得ないわけです。そういうふうな観点に立って私は三海里までと、こういうことを申し上げたわけであります。その三海里というのは、それではどういうことかというと、先ほど申しましたように、韓国に管轄権はないのでありますから、したがって自然韓国以外の国であっても結局——そういう問題については、いま条約局長に詳しく御説明をいたさせます。
  139. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国家の承認とか政府承認とかいうことと領域、領空、領海との関連の問題でございますので、私から一般論としてお答えさせていただきますが、この領海というのは三海里であるということは、日本はそれが国際法の原則であるという立場をとっておるわけでございます。ある国を承認しているとか、そこの政府承認しているとかいうこととかかわりなしに、すべての領域には領海というものが沿岸に沿ってあるという立場をとっているわけであります。ある国を承認していないとか、ある政府承認していないからといって、低潮線に近づいて操業していい、あるいは領空を尊重しなくてもよろしいと、そういうことには相ならないのでございます。
  140. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ、これは非常に重要な問題がさらにあるわけですが、私、関連質問でありますから簡単に指摘いたしておきますが、農林大臣からぜひもう一度はっきり明確にしてもらいたい。あなたは、韓国との関係においては、この共同規制水域を北のほうまで引いておるわけであります。共同規制水域は、これは自国の近所で関係国の了解の上においてつくっていく、これが基本的な考え方なんです。これは国際海洋法等を見てもそういう理解のしかたですね。一番それに近い関係国が共同規制の措置をとっていく。で、そういう考え方に基づいて共同規制をやっているわけですね。その際には、北のほうまでずっとつくった場合には、韓国という立場でつくっておるわけなんです。ところが領海という点になりますと、さすがに気がひけて、それは韓国の領海ではないという意味のいまお答えがあったように思います。事実上北にあるものの——ものというのははっきり言いませんが、ものの領海だと、そういう言い方をされるわけですが、この共同規制をつくった日韓間の考え方とそこに大きな矛盾があるわけなんです。領海につきましてそれは韓国の領海だと言えないのであれば、共同規制水域を北までつくるのは間違いなんです。もし共同規制水域を北のほうまで延ばしてつくるということであれば、専管水域はもちろん、領海も韓国立場で理解をするということにならなければうそなんです。この二つが、はなはだこれは矛盾しておるわけなんです。矛盾しないような共同規制は、必ずしもそんなにくっついていない国でもいいのだ、というような説明を水産庁長官はあるいはするのだろうと思いますが、これは非常識なんです。朝鮮半島の実態を見れば、これは非常識なんです。常識的に考えれば、明らかにそこに矛盾があるわけなんです。そういう矛盾はどこから出てくるのか、これは北の政権に対する日本政府の全くこれを無視する態度から、そういう矛盾が出てくるのです。これはしかし、無視しておる態度をいま追及する場面じゃありませんから、これはいずれかの機会で私また申し上げたいと思いますが、少なくともこの共同規制水域を北まで延ばしたことと、北のほうの領海三海里は、これは韓国立場考えているのじゃないということとは、大きなこれは矛盾がある。農林大臣、矛盾を感じませんか。どう考えているか、わかるようにもう一度御説明を願います。
  141. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 漁業水域のほうは、やはり排他的管轄権を持っておりますから、したがってその沿岸において排他的管轄権を持つものでないと合意をしてそういうものをつくり上げても、何にもならぬわけです。ところが共同規制水域の場合は、これは合意の上で公海の上でそれをやろう、そのときにはもちろん韓国日本との間の合意でやろう、そうしてその合意でやった事柄は自由な、いわゆる公海のところでやるわけなんでございます。しかもそれは資源を擁護するという意味が多分に入っておるのであって、そこでむやみに漁獲をしないという規制を加えて、その両国で合意の上でやったものでありますから、それはこの漁業水域、いわゆる排他的管轄権を持つ漁業水域とは全く趣を異にすると言ってよろしいと思う。したがって二つ、そういうことの場合においても矛盾を感じないわけであります。
  142. 亀田得治

    ○亀田得治君 農林大臣は専管水域ということをいま言われますが、私は領海のことを言っているわけです。
  143. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) 共同規制水域の幅をきめますのに、共同規制水域の線の内側の中から漁業水域または領海を除いた部分のベルトが、共同規制水域であります。したがいまして、漁業水域がないところは、領海から共同規制の外線との間が共同規制水城に相なるわけでございます。
  144. 森元治郎

    ○森元治郎君 農林大臣ちょっと一言だけ。たいへんおもしろいお話で、休戦ラインの北は、よその国とか何とかの国とかおっしゃっていましたが、何という国か国名をおっしゃっていただきます、国名を。それが一つ。  もう一つは、領海、領海といいますが、領海というのは領土があり、陸地があり、その領土につながって領土と同じような国家の権力が作用するのが領海。海のほうから見りゃ領海を通って領土に入るわけですね、領土。領土といえば、これは何国かの領土でなければならない。韓国ではないはずのように考えられます。ひとつ何国か、領土は一体どこの領土か、単なる地域の外に領海というのはないわけですね。何となくおかがある、その向こうに領海があるということはないわけだ。海から入って行きましょう、海のほうから。まず領海を越して岸へ上がって足踏んだところは一体何かということを伺います。
  145. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いわゆる北鮮といわれておるところを了解しておるわけです。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 でたらめ言っちゃだめだよ。北鮮というような国はどこにありますか。それはもっと事実をはっきりと述べていくぐらいの態度がなきゃだめですよ。
  147. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 農林大臣にえらいいろんなむずかしい問題をお聞きになりますが、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国です。
  148. 二宮文造

    二宮文造君 直線基線の問題に入っていきたいと思いますが、だいぶ時間を気にしておられるようなんですが、まだ経済協力の問題についてもお伺いしたいと、こう思っておりますから、若干の時間を拝借したいと思います。直線基線の問題でまとめてお伺いしますけれども、これは一体何を根拠にして妥結をしたか。さらにおそらくそれは領海及び接続水域に関する条約第四条というもので回答されると思いますが、ならば一番遠い島を至近の水域内にあるとみなすのはおかしいと、こういう意見がありますので、そうなった事情、それからこういうふうに本土から遠く長い基線を引いた例が外国にあれば、その例をまず例示していただきたい。以上三点。
  149. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 水産庁長官お答えさせます。
  150. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。先生いま御指摘の直線基線の概念は、領海及び接続水域に関する条約によってようやく新しく出てまいった概念であります。で、海岸線が非常に入り組んだり、出っぱったり、島嶼がたくさんある場合にどこから、領海を測定する場合に引くかというのが、技術的に非常に問題がございますので、その著しく離れた島以外で本土の外線に沿うておる場合には、それに沿って直線基線を便宜引くことができるというのが、領海及び接続水域に関します条約で取り上げられた考え方です。で、この考え方を今度の日韓漁業協定におきまして一部取り上げました。それは御承知のとおり朝鮮半島の南海岸及び東海岸に島が非常にございまして、その考え方を取り入れて最小限度直線基線を合意をいたしました。ただやたらに引く、かってに引くということは適当ではないので、これは、それを引く場合には両国で協議し、合意して引くという形に相なっております。そこで、御指摘の著しく離れた島までを含めて直線基線を引くということは適当でないという立場におきまして漁業交渉の過程におきまして朝鮮本土、南朝鮮半島の島と済州島を結びたいというのが、韓国考え方であったわけでございますが、これは本土の海岸線と著しく方向を異にするので認めるわけにはまいらない。これが非常に交渉が難航いたしました点でございます。そこでは便宜暫定措置として直線基線を引かないで漁業専管水域を定めるという形をとったわけであります。  それから第二の御質問の外国の直線基線に関する長さの実例はあるかということでございますが、この問題につきましても、五二年の条約の際に十海里程度にとめるべきである、二十海里程度にとどむべきである、あるいはもっと大きくてもいいんだという各国の意見対立いたしまして、長さをきめることは決定をいたしませんでした。具体的に一番長い例はどこかという点につきましては、ちょっといま資料を持ち合わせませんので御了承をいただきたいと思います。
  151. 二宮文造

    二宮文造君 大臣にお伺いしますがね、いま一番遠い島を含んで直線基線を引いたのはおかしいと、そういう意見あるいはそういう反論を救済する意味において、暫定的な禁漁線というものを設けたと、これはまあ妥協の産物であるかのような、またそれを救済するかのような政府委員答弁なんですが、暫定的禁漁線、あえて暫定的とこう言っているのは、その暫定的というのはどういう、何年、あるいは将来、この暫定的禁漁線をどう取り扱っていくかという点についての了解はとったんですか。
  152. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) この直線基線ということとまた関連することでありますけれども、つまり済州島の問題でこれは非常に問題が多かったことは何でありますが、その朝鮮の、いわゆる韓国の本土のほうから低潮線ではかったものと、それから済州島のほうから低潮線ではかった十二海里ですね、それを日本は主張しておったわけなんです、この経過を申しますと。ところが、もともと韓国のほうは、済州島を含んで非常に広大な地域を主張しておったのでございます、いろいろの何がありますので。そこでそういたしますと、国際先例にも合わないということになりまするので、そこでだいぶこの問題はいろいろと相互に主張したのでありまするが、最後に日本の主張をいれ、そうしてやはり十二海里のいわゆる低潮線による外郭線によってひとつきめるということに、その点は合意したわけでございます。ところがそうやりますというと、両方の、本土からはかった外郭線と済州島からはかった外郭線とが重なり合うんですね。そうしてその東と西の間に非常に深い入り込みがこうできてくると、いま一応説明したと思うんですが。そういうことになりますと、入り込みのところに紛争のもとを残しやせぬかということが気づかわれたことと、それから一つはそういう両方の間の主張のやっぱり一つの妥協ですね、最後に。そういう関係もあって、これは長い間ずっと本則的にはこれは認めるわけにはいかぬが、暫定的にはそういうことにしようと、こういうことでいった、その暫定的というのは、一応この協定が成立してそうしてこれから始まるわけですな。始まるということはおかしいが、とにかくそういうことで操業をいろいろやりまして、双方の間が納得されてそうして紛争もこの程度では起こらない、平和に進むということがはっきりした場合において原則に戻ろう、それまでの間暫定的と、こういうことで、この暫定的ということにいたしたわけであります。
  153. 二宮文造

    二宮文造君 答弁が非常に親切ていねい過ぎるということになるのかと思いますが、では、撤廃するということは、どこでやるのですか。どういう機関で扱うのですか。
  154. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これは、いついっか、どうというわけではありませんで、その事態でいくわけでございます。問題としては、結局、漁業協定第九条の紛争に関する問題、紛争が起こった場合ですね、そうでなしに話し合いでいけばそれでいけますし、その問題が紛争になった場合には、第九条の紛争解決する条項がございますから、それによっていこう、こういう考え方であります。
  155. 二宮文造

    二宮文造君 もっと重要な問題は、共同規制水域での紛争といいますか、いま紛争ということが出ましたから、続けて紛争の問題を伺いたいと思うのですが、韓国側は、専管水域から共同規制水域が続いているわけです。共同規制水域で操業許可を持たない漁船が共同規制水域に入り込んでくるという心配が出てくるわけですが、政府としては、どうそれに対処するような考えでこの協定を結びましたか。
  156. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  附属書にもございますように、共同規制水域内における操業については証明書を所持させるとともに標識を付するということをきめておるわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、出漁資格船につきましては、船体に合意されました大きな標識を付する、それから同時に、その船は証明書を持つ、そこでそれ以外の船が入らないようにチェックすると同時に、監視船の増強を、補正予算でまた御審議願うわけでございますが、いたしまして、それから団体の間の民間協定をささえにいたしまして、そのコントロールに遺憾のないようにいたしたい、かように存じております。
  157. 二宮文造

    二宮文造君 今度は日本側の問題ですが、共同規制水域に入っていく各種の漁船の調整ですね。これも、おそらく答弁とすれば、民間の自主的な調整と、こうなってくるだろうと思いますが、これらの水域日本の漁船が出漁していた隻数ですね、それは一体どのくらいにいままでつかんでおられますか。
  158. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えいたします。  この水域は初めて設けられましたものでございますので、いま御指摘の共同規制水域にどのように入っておったかという点につきましては、非常に詳細に調査をいたしたわけでございまして、どのような数であるかという御質問でございますが、まず、大きなものを申しますと、五十トン以上の底びき船、これは東支那海から黄海を全部操業して回る船でございますが、全体で七百八十隻あるわけでございます。その中で、過去におきましてとった正午の位置を集計いたしまして、その共同規制水域に入り得る船を二百七十、こういうふうにきめたわけでございまして、簡単に申しますれば、正午位置報告、それから操業実績報告等を基礎にいたしまして、その数をきめた次第でございます。
  159. 二宮文造

    二宮文造君 この沿岸漁船ですが、質問のしかたがちょっと言い回しが足りなかったかと思いますけれども、沿岸漁船で総計千七百隻、これが今度のいわゆる日本側のこの水域関係する隻数、こういうふうに私ども了解をしておるのですが、実際は、これまで三千隻にわたる沿岸漁船が、これらの水域関係をしていた。それが協定の発効に伴って千七百隻に削減されるということでは、これは実際問題として、沿岸漁民の生活権の問題が協定発効と同時に起こってくるのじゃないか。こういう意味で、少な過ぎるという非難が相当あるわけですが、この点はどうです。
  160. 丹羽雅次郎

    政府委員丹羽雅次郎君) お答えします。  韓国との間で規制の対象にいたしましたのは、大きな底びき網——沖合い底びき及びまき網及び六十トン以上のさば船でございます。いま先生御指摘の沿岸の船は、日本の自主的な立場で千七百隻程度に操業を押えて、資源の保護も考え、操業の秩序を考えたいという日本の自主的規制でございます。ここに出ております船につきまして、先ほど申したと同様に、過去におきます実績を精査いたしまして、大体千八百ないし千九百という数字を得ておるわけであります。先生のおっしゃいました三千隻というのは、たとえば在籍船を調べますとそういう数字もございます。ただ、この三千隻の中には、無動力船、二トン、三トンの船で、あの規制水域に入り得ない船を含めての在籍数でございます。
  161. 二宮文造

    二宮文造君 若干問題をはしょっていきたいと思いますが、漁業協力資金の問題で伺いたいと思うのですが、確かに今度、九千万ドルあるいは三千万ドルという漁業協力資金が明らかにされております。ところが、これは一昨日ですか、問題になったと思いますが、韓国の漁民は非常に零細である。あるいは技術的にも日本より劣っておる。したがって、それらの韓国の漁民をひとつここで救済するような考え方で、同時にそれが漁業協定を円満に、あるいは妥協のうちに協定締結していくための一つの妥協策であった、こういうふうな説明のようでございました。半面、これを日本の側から見てみますと、国内の漁業の従事者というものは、三十七年の漁家負債調査というものを調べてみますと、日歩三銭以上で借り入れておる者が全体の実に二三%を占めておる計算になります。これは、日歩三銭以上ですから、年利に換算しますと一割一分以上の高金利、また三十九年度の漁業白書を調べてみますと、漁業に対する総融資金額に占める政府機関の割合は三十四年の一四%から三十八年はわずか一〇%に激減をしております。国内の漁業従事者、これは、御承知のとおり、非常に零細な沿岸漁民を含んでおります。そういうものに対する政府の厚い手当てというものがここで論議されないで、かりに日韓協定を取り結ぶための一つの妥協策であったとはいいながら、他国の漁民に低利あるいは長期の資金協力を保障する、これは、形を変えていえば、国内業者に対する圧迫になる、こういう議論があります。われわれを何とかしてくれ、こういう議論に対しまして、大臣は、これからその予算がいよいよ本予算が組まれるわけでございますが、韓国への漁業協力資金、そのあり方と勘案して、国内業者に対してどういうふうな考え方を持っておられるか、伺っておきたいと思う。
  162. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 漁業協力資金のいわゆる民間信用供与の問題は、昨日いろいろお話し申し上げたとおりでございまするが、これは、政府としては、気持ちにおいて好意を持っていこうということであることは御了承のとおりであります。そういうのでありますが、われわれとしては、やはりこの朝鮮の漁業に対しましては、技術的な、技術者の交流とか、あるいは情報といったような、いわゆる漁業協力の問題を進めていきたいと思う。そのほかに、いま言った民間信用供与の問題があるわけであります。ところが、国内の問題ということになりますと、いま朝鮮の漁業日本との関係は非常な格差のあることは昨日申し上げたとおりでありまするが、国内の漁業としても、これはなかなか零細漁民が多いので、日本でも多いのでございまするから、これはいろいろの問題として、われわれとしては施策を大いにやって——いままでもやっておりまするが、将来もこれを進めていきたい、こう考えております。  そこで、国内の問題といたしましては、単に資金の融通だけでなしに、たとえば沿岸漁業の振興のための構造改善事業とか、あるいは漁港の整備の問題とか、いったようなものに対しても、これは相当多額の助成金、補助金を出しておるわけであります。そのほかに、農林漁業金融公庫等から、構造改善については三分五厘の金で融資いたしております。なお詳細は、必要がございますれば、後ほど長官から御答弁申し上げまするけれど、そういうわけで、その資金の融通のほかに、国自身が補助金を相当とって、そして使って、そういう方面の助成をやっておるということを付け加えて申し上げるわけでございまして、将来は、なおこれらの問題について十分考えていかなければならぬことは言うまでもございません。特に、朝鮮からの輸入が非常に最近ふえてきております。近年は、うんとそれがふえておりまするので、これらの問題に対しても、国内の処置を十分とりつつ、輸入も考えていこうということで進めていきたいと思います。  簡単でございますが、さようなことでございます。
  163. 二宮文造

    二宮文造君 もう、質問をした論点というものを全然考慮に置かれないで、全般的な答弁をされるので、受けたほうも、非常に答弁の範囲が広いので、まごつくわけですが、もっと具体的に私はお伺いしたわけです。たとえば、漁業金融について、政府機関の融資額がパーセントがずっと下がっているじゃないか。これは直接漁民に対する融資のことなんです。その面を是正しなければ、やはり零細業者にとっては片手落ちではないかという——国民とすれば、国は親ですから、何とかしてもらいたい、他人の子供ばかりめんどうを見ないで、わが子のほうもめんどうを見てもらいたい、こういう不満があると思います。さらに、今度の協定によりますと、いままでの漁獲高も一応の頭打ちをして、漁獲高の制限もされる。今度自主調整をやっていって、漁家収入が減っていくという心配もされている段階において、政府の国内業者に対する優遇策というものをもっと具体的に話を進めていただきたいと思うのです。どうですか——。ちょっと待ってください、大臣でなければ……。
  164. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 先ほど申しましたことは、金融等をプラスしていろいろの点を申し上げたのでありますが、農林漁業金融公庫からは、一番安いのが三分五厘であります。それからその次は五分、それから五分五厘といったようなもので、相当低利なものを出しております。将来の問題としては、もちろんこれらの問題について、金利については、いま全般的な検討を加えておるわけでありますから、漁業だけというわけにはいきませんが、貸し付け量等については、その点は十分考えてこれらの問題に処していきたい、かような考えでございます。
  165. 二宮文造

    二宮文造君 外務大臣に伺いますが、また、気に入らぬ韓国国会議事録の話になるのですが、向こうの韓国政府考え方は、いわば有効期限五年、さらに通告して一年ですね。六年過ぎれば改定してもいいのだ、無効にするのだというふうなニュアンスが非常に強いのですが、その場合に、また、認めてないとはいいながら、実質的に日本漁業の障害となった李ラインの問題、これも出てくると思いますが、何かそれについて外務大臣は非常に楽観的な見通しをされておりまして、友好的にいけばこのまま続くのじゃないか——だが、一方では、国内の業者に対して説得する意味かどうか、無効にさせるニュアンスの強い発言をしております。例を引くつもりはありませんが、この点に対して外務大臣はどう考えていますか。やはり議事録をごらんになっていると思うのです。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来の両国混乱した漁業がこの際整理整とんされまして、そうしてさらに、日本のほうから漁業協力の資金等を供給するということになりまして、時が進めば、ますます安定した漁業を営むことができる、また韓国も、希望どおり、だんだん漁民の向上がはかられるということになるのは必然でございますから、五年たってこれを再び解消するというようなことは、とうていわれわれは現実問題としては考えられない。また、向こうもおそらくそうであろうと、こう思うのでありますが、現にそれを間接に立証する事例として、漁民の大部分が日韓条約の早期成立を非常に熱望しておるというようなことが、いろいろの調査によって明らかになっておることにかんがみましてもこのことは言えると思うのであります。でありますから、六年たって、また再び無協約状態になる——その場合には基本条約あるいはその他の協定は有効に存続するものと思われます。漁業だけが無協約になるということは、とうてい考えられない。かりに、そうなった場合でありましても、李ラインの復活というようなことはとうてい考えられない。前文においても明らかに従来の韓国態度というものは全く一変しまして、そして公海自由の原則というものを確認しておる。こういう状況でありますから、再び無協約な混乱状態が見られるということは、私はとうてい信じられない、かように考えます。
  167. 二宮文造

    二宮文造君 総理に伺いますが、拿捕漁船の国内補償の問題ですが、今度の補正予算に若干組まれておるようですけれども、気になるのは、補償金の課税にあたって優遇措置を講ずる、こういうような政府考え方が伝えられておるわけですが、考えてみますと、この拿捕漁船、これの賠償請求権というものは、漁民とは全然無関係な、いわゆる対日請求権ですね、それとの妥協あるいは相殺というふうな形がとられたわけです、実質的に。そして、まあそれではというので、政府のほうでも国内補償という考え方をして、やっとここまで、まだ不十分ではありますけれども、ここまで問題が進んできた。そういうものは当然免税でなければならぬと、こう私ども思うのですが、あえて免税という考え方をしないで、完全な額あるいは収入としてそれを見込むだけのゆとりのある金額ですと、まだ優遇措置と呼んでもいいでしょう。ですが、不完全な状態で補償される場合にも優遇措置というふうな政府が発表されているということは、少し過酷じゃないか。免税にすると、こう言い切れないものかと、こう思うのですが、どうでしょう。
  168. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 昨日もこの点について申し上げたわけでありまするが、減税の問題は、これは補償金ということになりますとむずかしいのです。そこで、これは補償でなしに、交付金という名前をもって、いわゆる見舞い金的なものであるが、しかし、相当、非常に困られた乗組員等多いのでございまするから、そういう意味で考えていこうということであります。  それから、しからば減税の点はどういうふうにするかという問題でございますが、でき得る限りそういう乗組員等の困った人々に対する慰謝料として考える場合においては、税を免れらせるようなことになり得るであろうという見当でございまするが、目下そういう点については事務的にいま検討中でございます……。
  169. 二宮文造

    二宮文造君 いや、どうなんですか、免税じゃないのですか。減税を免れる……。
  170. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 免税も含めての話でございます。
  171. 二宮文造

    二宮文造君 免税ということも考慮していると、こう了解してよろしいのですか。
  172. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) その点について考慮をしていま検討中でございます。
  173. 二宮文造

    二宮文造君 次に、経済協力の問題でお伺いしたいと思うのですが、これも私が用意したのは、やはり日本政府国会における説明と、それから韓国国会における韓国政府の説明と食い違いがある、こういう問題で用意をしてまいりました。ですが、時間がありませんから、以後の質疑の中でその点を明らかにしていきたいと思うわけですが、ここで……。
  174. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。漁業問題が終わるようですから、一つだけちょっと関連して伺っておきたいのですが、日韓漁業協定では、大臣の言うとおり李ラインがなくなったと思うのですが、そう了解したとしても、それについて第三国の漁船による操業、こういうものについては一向拘束力がない、こういうふうになってくるわけです。現に北朝鮮の船が日ソ漁業協定日本側の水域に入ってきてとっていることについても、国交が回復されていない、承認されていないということから、手をこまねいて見ていなければならない。同じような事態が第三国の船によって、せっかく魚族資源の保護というような、そういう名目を掲げておるようでありますけれども、そういう目的で立てられた共同規制水域の中へ第三国の船が漁労にきた、こういうようなときにはどうにも手の下しようがない。一体そういうような危険性というものがあると思うのでありますけれども、その点についてはどういうような方針を持っていらっしゃるか。
  175. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) いまのところ、そういう心配はまずなかろうと思うのですが、問題が起こればまた考えていかなければならないと思います。
  176. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 問題が起こればまた考えなければならないということはどういうことなんですか。北朝鮮側にも船はありますし、またソ連にもございますし、そのほかの第三国の船が入ってこないとも限らない。
  177. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) これはいまそう申されてもしようがない。だけれども、そういう心配の事態はないわけですから、ありまする場合においては、その事態に応じて考えていかなければならぬことは当然でございます。
  178. 二宮文造

    二宮文造君 請求権の問題、これはあっさり、もう非常に問題になった点でございますから、総括的にお伺いしたいと思うのですが、韓国では確かにこれは賠償の性格を前面に押し出しております。これを解決するために、経済協力というふうに主張しておりますし、日本のほうでは経済協力に随伴して最終的に請求権がなくなる、こういうふうな説明のしかたをしております。ここで問題になるのは、名目なんです。一体、これは大平前外相は韓国独立の祝い金だ、こういうふうな説明をしたときもあります。いまもって祝い金式なあるいは包み金式な考え方がまだ強いわけです。一体その新しく国家が分離独立したときに、こういうような独立の祝い金というようなものを旧統治国に出した例があるかどうかということで私ども疑問を持っております。無償三億ドル、有償二億ドルというものの性格、これをもっと国民に理解できるように説明していただきたいと思います。
  179. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず各国の例を一、二申し上げますが、イギリスが旧属領が次々と独立をいたしました。いままでこれらの国に対しまして、政治的には独立したが、しかし経済的独立というものはなかなかむずかしい。経済的に独立して初めて真の独立になるのであります。そういう意味において、新しい国の門出の祝いをかねて経済建設の資金を提供して、たしか合計四十億ポンド、イギリスが各旧属領にこれを無償で提供しておる。それからフランスも同じような趣旨におきまして、数はいずれあとから、必要とあれば申し上げますが、たしか二十億ドルと記憶しておりますが、そういうものを合計いたしまして二十億ドルの資金を無償で提供しておる、こういう状況であります。日韓問題につきましては、請求権の問題を積み上げ方式によっていろいろこれを追及したのでありますが、法的根拠の点において非常な両国の主張に食い違いがあり、またこれを立証する事実的な証明方法も非常に困難、むしろ不可能である、こういうことでございまして、これをいかに追及しても、とても目的を達成することはできない。これをあきらめまして、これを主張しないということで、これと併行して、いま申し上げたような各国の例にならいまして、また日本の財政の事情も十分に考慮して、そうして無償三億、有償二億、こういう形で経済援助をするということに相なった次第でございます。したがって、これは請求権の生まれかわりである、であるからして賠償と同じ性質ではないかというような説もございましたが、ただいまではさような説は採用されず、併行して経済協力をやり、そして請求権というものはこれを主張しない、すなわち消滅した、終局的にこれを処理したと、こういう取り扱いをすることに両国の間で合意された次第でございます。
  180. 二宮文造

    二宮文造君 請求権の問題については非常に疑義もありますし、また、あとであらゆる角度から検討されると思いますが、また私どももしていきたいと思いますが、当面私ども非常に将来の、これからこの協定実施する段階において疑問とするところをまずお伺いしておきたいと思います。 経済協力実施する上において、たとえば無償三億ドルの対象事業の選定というものは、韓国の主張によりますと、これは韓国政府日本政府の協議なしに決定して、ただ日本側としては日本側の供給能力を確認するにすぎないんだ、こういうふうな説明のしかたをしておりますが、こういうふうに理解してよろしいか。
  181. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまで経済協力でございまして、日本といたしましても、この供給する資金が、真に韓国経済建設のために最も有効に役立つ方法であるかどうかというような点を十分に審議いたしまして、そしてこの供給に応ずる、こういう仕組みになっておる次第でございまして、それらの実際の事務的な取り扱い等につきましては、担当の局長から申し上げます。
  182. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 三億の無償の実施にあたりましては、協定が発効いたしますると、年次計画を策定するわけでございますが、経済協力の常識から申しまして、どういう計画を最も有効に経済の建設に充当するかということは、協力を受けまする受け取る国が一番わかるわけでございまして、協定にも、年次計画の案は韓国が作成して日本側に提出する、こういうことに相なっております。したがって、その案ができますれば、私ども韓国の代表者と、これがどのような韓国経済に当てはまっていくのか。具体的には、現在の五カ年計画ないしは再来年から始まりまする第二次五カ年計画等を勘案いたしまして、そして日本の実情等も合わせ考えまして、協議して決定することに相なっておりまして、一から十まで韓国政府決定権を持つ、こういうわけではございません。
  183. 二宮文造

    二宮文造君 特に問題にしたいのは、第一議定書の第二条にあります「日本国が供与する生産物は、資本財及び両政府が合意するその他の生産物とする。」と、こういう規定がございますが、これは、「その他の生産物」というものの性格は、供与された資本販を運転するのに必要な国内資金、それを調達するための原材料だ、こう説明しておりますが、このとおりに考えてみますと、協定上、原材料までは合法的であっても、国内資金を調達するために必要な、それを生み出すためといえば、換金しやすい消費物資、それが入っていくようになると思うのですが、この程度日本政府は理解して、こういう第二条の規定を設けられたかどうか。
  184. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 議定書の第二条は、「資本財及び両政府が合意するその他の生産物とする。」、こう相なっております。資本財につきましては、貿易の関係その他から見まして、こういう経済協力に使用しますことにつきましてだれしも問題としないのでございますが、「その他の生産物」というものをなぜ規定上盛って入れたかと申しますと、今日の経済協力におきましては、いろいろの形が考えられるわけでございまして、非常に極端な例から申しますと、非常に貿易収支が悪くて、貿易収支を直接助けるような寄与のしかたもありますれば、言いかえますれば、現金で寄与するというようなしかたもありますれば、あるいは資本財で寄与するようなしかたもありますれば、あるいは消費物資で寄与するようなしかた、あるいはそういうものをいろいろ取り合わしたやり方もあるわけでございますが、韓国の場合におきましては、御承知のように、今日日本の貿易は毎年一億ドル以上ないしはそれに近い出超をやっておりまして、過去五年間におきまして、すでに五億ドルの現金収入が日本に入っているような状況でございます。それに加えまして、韓国におきましてはいろいろの経済発展の計画がございますけれども、非常に国内資金が不足しておりまして、工場を建てるにしましても、それに必要な国内資金の調達がなかなか困難である。これが一つの大きな隘路になっておりまして、こういう事情をも勘案しまして、日本からは、資本財のみならず、資本財以外のものも供給してやろう、そして韓国政府はこの資本財以外のものは、換価されたものを——換価されたと申しますか——輸入交渉によりまして需要者が韓国政府に支払いまする現地通貨を特別勘定に入れまして、その金を、日本から供給します資本財ないしは二億ドルの有償の貸し付けによりまするいろいろの事業計画、そういうようなものの必要な国内資金に充てる、こういう説明でございまして、これらの点は、日本が行ないまする経済協力を最も有効に実施いたします上からいいましても、まことに時宜にかなった処置と言えるのじゃないかと思うのであります。こういう次第で、この消費物資あるいは資本財以外のものを入れることに相なった次第でございます。
  185. 二宮文造

    二宮文造君 議事の進行について相当強力な御意見が出てくるようになりましたので、私もこの程度にとどめておきたいと思います。  で、経済協力の問題につきましては、幾多の問題が残されたままこれから進んでいこうとしているわけですが、特にこの場合に政府に自重をしていただきたいことは、新聞の報道ですが、こういうことを言っております。「韓国での日本経済活動の主力は何といっても数年前から常駐している日本の商社、メーカーの代表たち。その数は商社関係が百人、技術指導のエンジニアが五十人近い。しかし、その激しい競争の実態はつかみにくい。よその国と違って韓国では、まだ正式に商行為は認可されていないし、日本帝国主義の斥候兵といった目で学生や知識層から見られているからである。ソウル市内の大きなキーセン・ハウス……」——注が入っております。「芸者がはべる料亭」となっておりますが——「は日本人のお客でなりたっているというのはかくれもない事実だが、これは氷山の一角。制約が大きいだけに売込み合戦は目にみえないところで一層激しく続けられ、忍者の血闘ばりのセイソウカレツなものがあるといわれる。A商事で扱うことに九九%きまっていたものが一夜にしてB商事の手に渡り、メーカーもまた資本系統の同じB重工に落ち着くといったことが珍しくない。」、「やはり日本商社の主目標は無償三億、有償二億ドルの財政投資をめぐる割込み合戦である。これは結局日本政府が保証する金だから、いわば親方日の丸、韓国内の政治、経済がどうころぼうと絶対取りはぐれのない金である。韓国に売り付けるのではなくて、いわば日本政府に売り込むと同じことである。だから絶対にバスに乗り遅れてはならない。日本政府にわたりをつけるとともに、韓国当局や実際の受け入れにあたる韓国業界に信用を得ておかねばならない。」。私はこの新聞の報道がかもし出してくる状況を目に浮かべましたときに、とんでもないことである。総理も毛頭そういう指導もされておりませんし、またそうないように姿勢を正していかれるとは信じておりますけれども、こういうふうな報道がされるということ、この事態はこれからの日本韓国との経済協力——韓国には経済侵略だという強い声がある、その中で経済協力を推進していくわけですから、先日も問題になりましたけれども、どういう商社がどういうプラント輸出を成約しているか、その進行状態についても資料要求された場合はすみやかに国会提出をされる。あるいは具体的な一つ一つ審議にあたっての総理が常に言われるえりを正した姿勢が進んでいかれる、こういうことをこの際明言をしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) わが国経済協力は、これによりまして韓国の正常なる、また着実な経済の発展に寄与する、こういうことをねらいといたしております。経済の発展に寄与する、同時に、そのことは国が繁栄し国民の生活も向上する、これに役立つということだと思います。ただいまお読み上げになりました新聞の報ずるように、あるいは経済侵略というような誤解を受けたり、あるいはまた一、二の商社によってその利益が壟断される、純利益本位に活動するとか、こういうようなことがあってはならないと思います。もちろん私は両国の親善友好関係を樹立する、この点で最善を尽してまいるつもりでありますし、ただいま申し上げたように、経済協力を目的とするところははっきりいたしておりますので、誤解やまた疑惑を持たれるようなことがないように十分注意をするつもりでおります。
  187. 二宮文造

    二宮文造君 最後に、まだ論点が明らかになったわけではございませんが、両国政府の解釈の食い違い、あるいはこれからこの批准が行なわれて効力を発生した場合に予想される問題、そういう問題を含めて私どもは時期尚早である、もっともっとなすべきことがある、それが総理の言われる日韓の真の両国民友好につながる、こういうふうな考えを強く持っておるわけですが、これは政府立場と逆の論点になりますのであえて答弁は求めませんが、必ずや、この条約あるいは協定のもとには両国に大いなる紛争が起こる、こういう心配があることを保留して、本日の私の質問は終わりにしたいと思います。
  188. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 二宮君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  189. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岡田宗司君。(拍手)
  190. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、まず昨日、本委員会におきまして羽生三七君の質問に対して総理お答えになられました二点についての答弁について、さらに質問をしたいと思うのであります。  第一点は、総理は、中国について非常に脅威を感じられておる、こういう点でございます。その答えを見ますというと、羽生君の質問に答えて、平和共存路線をとるソ連は別だが、平和共存否定、強硬路線をとる中国はそれだけで日本心配の種であり、まして核武装した中国に脅威を感じなければどうかしておる、こういうような御意見を述べておられるわけであります。この点はアジアにおける情勢、そうしてまた、それに対処する日本の方針として非常に重大な認識でございます。したがいまして、総理は、まず中国の強硬路線及び中国の核武装ということが、どういう点で具体的に今日日本の脅威になっておるかということを総理考え方を詳しく御説明を願いたいのであります。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中共政府の最近公式に声明したところのもの、これは私が直接受けたものではございません、新聞等で報道しておる、これがそのままであるならばたいへん私は心配だと、かようなことを申したのであります。この点は岡田委員も十分御承知のことだと思うが、いままで報道されたものは、いわゆる革命路線の遂行、あるいは民族解放への熱意、こういうようなことばがしばしば出ております。こういう点は、私どものように、ぜひわれわれの独立を尊重し、そうして内政不干渉の態度であってほしい、こういうほうから申しますと、どうもたいへん心配なのであります。ただいまいわゆる革命路線とかあるいは民族解放に熱意を示すというようなことが、一般にいわれておるようなことでないならば、これはたいへんしあわせでありますが、そういう意味で、あるいは私はいま申す新聞で報道されるところで心配だ、かように申すのであります。  もう一つは、そういう政策自身がとられる、その結果がいわゆる平和共存ではないのだ、こういうことであります。この点もたいへんまた心配なのであります。そこに力による支配、力による自己の、自分の主張を浸透させていくというか、透徹していく、こういうような考え方がうかがわれるのであります。この点がまず私は心配だ。それがさらに核武装した、核実験をした。私ども日本国民とともどもに、これは社会党の方もそうだったと思いますが、どんな理由があろうと核武装はしたくない、しないのだ、こういうことを実は申してきたように思います。それがただいま、まあどんな理由があるにいたしましても、核武装する、こういうようなことで、この点は私は脅威を感ずる、これは率直に申したのであります。こういうような事態はどういうようにお考えになりますか。おそらく国民もこういう事態、この私がお答えするところのものは必ずテレビその他で国民も聞いていらっしゃる、かように私は思いますが、ただいま申すような意味において私は心配しておる、こういうことであります。
  192. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 中国がいわゆるマルクス・レーニン主義の原理に基づいて組織された国家で、同時に、その政策はマルクス・レーニン主義に基づいておるわけであります。したがいまして、原理として彼らがこの革命路線、世界革命の理論を言うということは、これはソ連におきましても同じであります。問題は、そのドクトリンを述べておることだけで私は脅威だと言うわけにはまいらぬと思うのであります。問題は、それが一つの政策としてあらわれてくること、また報道としてあらわれてくること、そして日本がそれを脅威と感ずるということは、日本自身にやはり直接に脅威を感ずるような行動が行なわれる、あるいは政策がとられるというときに、総理として、日本が脅威を感ずるということでなければならないと思うのであります。その点において私は、中国が今日日本にとっていかなる具体的な脅威を与えておるか、こういうことからまず御質問を申し上げたい。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいまのお尋ねでございますが、私はどこまでも平和に徹したい、かように思います。ただいま申し上げるようなあまり批判がましい、あるいは攻撃的な言辞は弄さないがいい、かように思います。ただいま申し上げますように、ソ連もかつては世界革命路線を推進していた。しかしただいまは平和共存ということを申しております。ソ連の国が共産主義であろうが、民主主義であろうが、それは私どもの関与するところじゃない、それに国民がこれはきめることだ。中共におきましても同じことが私は言えると思います。いわゆる平和共存はごめんだと、われわれの主義、主張によって世界革命を遂行していくというこの考え方自身が、日本に直接どんな働きかけをしておるか、働きかけがあれば心配だけれども、そうでない限りいいじむ、ないか、こう言われることは私はやや不満なんです。とにかく、政治形態としてはっきりした存在そのものが、平和共存だということを申すなら、これは私どもも、それはどういうような考え方を持っておろうが、私が申し上げるように、共産主義の国だろうが、仲よくしていくんですということを申しておりますから、これは別に問題はないはずなんです。しかし世界革命の路線を遂行していくんだ、これはよし看板だけにしろ、その看板をおろされてないと、これはちょっと私は心配だ、かように思いますが、岡田さんは別に心配にはお考えになりませんか。どうも私は、これはちょっと心配なんです。
  194. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は総理にお伺いしておりますことは、いまの中国が具体的にどういう脅威を与えておるかということについての総理の認識をお伺いしたわけであります。総理はさきの国会におきまして、中国は平和愛好国家である、こういうことを言われたことを私は記憶しておるのであります。そうしてまた、これは脅威とならぬということを言われたように記憶しておるのであります。今回は非常に大いな脅威を感ぜられる、これは非常に矛盾しておることであると思うのでありますが、この間にどういうような変化があって総理は脅威を感ぜられるようになったのか、その経過についてお伺いしたい。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、共産主義国といえども平和を愛好しておるのだ、かように思っております。だからこそ、平和共存ということばを言ってくれれば、たいへん私は賛成し、また敬意を表しておるのであります。この点は、私はあまり中共政府を批判することは好まない。もちろんそれは皆さま方も言われるように、共産主義国は平和愛好国だ、平和に徹するんだ、しばしば言われるそのままのことばを実は取り次いだつもりであります。そういう意味で、ただいまの平和共存ということには非常に重大な意義がある、革命路線による、世界革命路線の遂行だということには、これまた非常に重大な意義がある、かように私は思うのであります。こういうことばじりをとってのとやかくの議論よりも、実態について十分認識を深めていきたい、かように私は思います。
  196. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ことばじりでなく実態と、こう言われますというと、その実態というのは何か、こういうことをお伺いしなければならぬ。この脅威というのは、単に思想的な脅威とか、あるいはまた軍事的な脅威とか、あるいはまた政治的な脅威とか、脅威はいろいろな形であらわれるでありましょう。私は、それらの脅威をどういうふうに感じておられるのか。たとえば軍事的脅威ということについてまずお伺いしたいのでありますが、この軍事的脅威という問題については、防衛庁長官がおられるから、まず防衛庁長官から、その軍事的脅威というものについてのお伺いをしたい。
  197. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 防衛庁は、どこの国をどうということじゃありません。すべて日本の国に隣接する国に対応する防衛力というものを主眼に置いております。その対応する、隣接するという中には、ソ連ももちろんその一カ国であることは、これは否定いたしません。今日アジアにおける軍事力を詳細に——軍事力というのは、とこの国でも軍事機密ですから、詳細にこれを知ることはできませんが、一応今日権威のある発表を私たちが詳細に調べてみますると、ソ連におきましては二百二十万という陸上兵力がわれわれは想定できます。ついでに比較でございますから、その次の話もしますと、二百二十万が膨大であるかどうか知りません。北鮮が四十二万かと思います。韓国が五十六、七万、台湾国府が四十万、それから極東ソ連軍が三十万くらい、その比較にかんがみますと、相当膨大な軍事力である。なお核爆発をして、そうして核装備に進まれるというならば、相当な脅威だということだけは言えるんじゃないかと思います。
  198. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 陸軍をかなり多く持っておる、これは事実でありまして、しかし日本中国との間は境を接しておるわけではありません。そしてまた広大な中国も、周辺に多くの国を持っております。したがって、中国が今日日本に対して軍事的脅威を与えておるということは、単に二百数十万の軍隊を持っておるということから、中国が多くの軍隊を持っておるということからだけではくる問題ではないと思うのであります。たとえば中国は核装備をした。しかしながら、この中国の核装備は現在まだ実験の段階である、二度実験しただけであります。さらにそれがあるいはロケット兵器でもって運搬されるというような事態には立ち至っておらないわけであります。また海軍の問題にいたしましても、これは微力であることはよく御存じでございましょう。そういたしますと、これは将来はともかくといたしまして、現在脅威を感ずるということになるかどうか。戦争の脅威というものは、必ずしも隣国が膨大な軍隊を持っているからということだけで脅威とはいえないと思う。その政策にあります。つまり中国日本を軍事的に脅かす意思、政策、そういうものを持ち、さらに中国がそれを実際に使う姿勢をとって、初めて脅威になるわけであります。それらの点についての脅威ということをお感じになっておるのかどうか、それらを詳細にひとつ御答弁を願いたい。(「さっきソ連はソ連はと言っているが、あれは中共の間違いじゃないの、訂正しなさい」と呼ぶ者あり)
  199. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 間違っておりません。  それから、いまのお話のように、政策とその実力というものが、この二つが脅威の対象だと私も思います。政策のことは、私の所管とするならば、まずその第二の実力のほうだけをお答えすれば、私の責任を果たせるかと思います。お説のように、今日直ちにどういうものを持っているかということは軍事機密、どこの国でもそうです。想定はできません。しかし軍事というのは、開発途上にあるもの——一朝一夕にできるものではございません。したがって相当長期間に、先を見込んで、この開発をどこの国が始めたというならば、それに対応するものが日本においても防衛上必要である。この意味においては、ソ連の核爆発実験というのは、私たち非常に脅威である。この政策が平和的であるならば、これは私は問題はございません。したがって、やはり相当なものを、お互い防衛力というものは相対的に持たなければならない。開発が進められるということは、事実今日進行中であるという予想は、これは私、疑う余地はございません。目の前に見たか見ないかというのは、軍事機密ですから、これは見られませんが、その方向に進んでいるということは、やはり防衛上にとっては重要なことである、私はかように考えます。
  200. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私はソ連のことを質問しているのではないのでして、先ほどから防衛庁長官は、ソ連の兵力、あるいはソ連の核爆発のことについて言われていましたけれども、私は中国についての脅威ということをまずお伺いしているわけなんです。
  201. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 核爆発以来、兵力の問題につきましては——ソ連というのは、実は中共の私の申し違いでございまして、中共における今日の核実験及びその進行というのは、私は防衛上においては重大な一つの問題点である。これは私たちは、やはり日本の、アジアにおける日本の国の位置づけとしては、当然中共の問題は考えなければならないと思います。
  202. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 中国の核爆発実験が、これが世界に及ぼした影響の大きいことは、これは私どもも十分承知をしております。しかしながら、中共がそれによって、はたして日本に対して脅威を与える政策をこれからとりだすか、とりだしておるかということは、一つの問題があるでしょう。それから、さらにまた、中国日本政府の政策に対して攻撃をしておることもあります。しかしながら、中国が今日、日本に対して接近する政策をとりつつあるように私どもは思うのであります。批判はしながらも、接近しつつある政策をとっておる。また日本政府におきましても、中国承認はしておらない。しかしながら、貿易の問題等について、あるいは人的交流、文化的交流の問題等については、これは比較的前向きの姿勢をとっております。もちろんニチボープラント等の問題についてはトラブルがありましたけれども、まだこれからも続くでありましょうけれども、大体そういう方向に進んがおることは間違いない。そういたしますならば、直ちにこの国会において脅威があるというふうな断定をされて、それに対処されるような方向を示唆されるということは、これはやはりアジアにおける緊張の度合いを増すことになるのじゃないか。そういう私は感じを受けるのでありますが、総理の御見解を承りたい。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確かに岡田君の言われることも理屈があると、私はかように聞きます。私がみずから進んで、中国が核兵器持ったことは脅威だ、かように私は申しておるわけじゃない。一体これは脅威に感ずるか感じないか、こういうことでずいぶん問い詰められました。私は一体いかに答えたらいいかと思ったが、私はこの国の安全を確保する全責任を持っている、そういう立場からそのまじめな答弁をするということで、私はほんとうに率直に私の感じているままを申し上げたのであります。ただいま言われるごとく、こういう事柄が幸いにしてそういうものが出てこない、実現しない、そしてわが国の安全は従前どおり変わらない、これは依然としてわれわれが平和に徹することができている、こういう状態であることが望ましいのであります。またそういうものが、私の脅威に感ずると言ったから、直ちにこれに対する対策を立てるわけでもございません。どうかその辺誤解がないように願いたい。一体こういうものを脅威に感ずるのか感じないのか、かような御質問を受けたのは、社会党の方だったと思います。私はこういう事柄について率直に申し上げることが必要だと、かように思ってお答えいたしたのであります。
  204. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすれば脅威に感じたと総理が言われましたことは、直ちにこの脅威に対処する方針を立て、そしてその政策を遂行する、そういうことではない、こういうふうに了解していいわけですか。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおり御理解いただいてけっこうです。ただ私自身が、わが国の安全確保に全責任を持っているのだと、こういう立場でものごとを見ておるということだけ御了承いただきます。
  206. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの総理の言葉によりますれば、直ちに脅威に対処するための手段はとらない、こういうことでございますが、しかしながら、こういうような考え方が漸次積み重ねられてまいりますというと、やはり対処する方向というものをとる危険性も出てくる。それからもう一つ、これと関連をいたしますことは、単に日本だけがこれを脅威と、まあ総理は、脅威と感ぜられても直ちに実際的な脅威ではないから、したがってこの脅威に対処する特別に方策を立てるわけではない、こういうことになりましても、私は、もし他の国が、たとえばアメリカが、たとえば韓国が、あるいはたとえば南ベトナムが、さらに台湾が、こういうような日本関係の深い国々がこれを脅威と感じ、さらにまた日本がそれらの国々と友好関係を持ち、同じような自由主義陣営の一員として進むという場合に、これらの問題について他国との間に、他のそれらの国々との間に、また共同歩調をとらなければならぬという問題が起きてくるのではないか。これが私はまた総理が、いま直ちに危険を感じないとしても、直ちにそういう問題にぶつかってくるおそれがあるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は日本態度というものをただいま申し上げました。しかし最近国際的にこの核保有国を集めて軍縮会議を開こう、こういうことが論議されている。新聞等で報道されている。これあたりは、各国ともに核兵器というものについてやはり脅威を感じ、やはり不安を感じている、こういうことのあらわれじゃないかと私は思います。これは国際的なただいまの問題だ。そしてしかもそれには、それを承認するとしないにかかわらず、また国連に加盟するといなとにかかわらず、中共をこの核の会議に入れなければ意味がないのだ、こういうことが言われておる。この事実、この事柄自身で、中共の持つ核武装というか、核実験というか、これはどういうような意義を持っているかということは、これはもう国際問題について特別の関心のある岡田さんはよく御承知だと、私はかように思います。昨日羽生君から質問がありましたのも、こういう意味なんです。ただいま申す核を中国が保有した、一体ただいまの状況では、なるほど輸送手段にまだこと欠くかもわからない、あるいはこれを兵器化するのにはまだかかるかもわからない、しかしながら、すでにその道を開いて、そして開発に向かっている、これは確かに不安を与え、脅威を与えている、アジアの諸国に対しては、これはほんとうに身近に感ずるのじゃないか、私はかように思いますが、そういう意味からやはり国際会議が開催されるという、そういう必要になってきた、こういう問題を真剣に考える、これはあたりまえのことだろうと思います。ただ力に対する力の均衡、これによって平和が保たれている、こういう意味で私が力の増強にのみ邁進する、こういうようなことはございませんけれども、ただいま申し上げるように、あるいは国際的な世論の喚起あるいは核拡散について特殊なくふうをするとか、あるいはその使用についての特別な申し合わせができるように協力するとか、これはいろいろの私の協力する方法、日本の進むべき道はある、かように思います。私が申し上げておきたいのは、日本は唯一の被爆国である、こういう立場から核を非常に憎んでいる、ほんとうに人類のこれは敵だ、もう人類を破滅にまで導くものだ、おそるべきもんだ、こういうことであらゆる面からこれについての強い主張が出ておる。そこで、私ども国民とともに一切核武装しないんだ、核兵器の持ち込みは許さないのだ、こういうことまで考えてきている。だから、どんな理由があろうとも、核を持つということについてはどうも私どもは賛成ができかねる、またそれを弁護するような気持ちにどうしてもならない、この点で私が弁護するような気持ちにならない、そういうふうな点を、あるいは私自身が脅威を感じます、こう言って私は端的に申しておるのでありますが、それかといって、私が武装する、核武装する、こういうことを意味するものではない。ただいま申し上げるような国際的な軍縮会議なり、あるいは核拡散防止協定なり等々については積極的に私は日本の役割りを果たす、こういう考え方であります。
  208. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 中国の核武装の問題について、それに対処する方法としては世界軍縮会議、中国を含む世界軍縮会議を進めていくことが最も適当な方法である、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。——ところで、いま一つ、これは対処する方法としては、総理の言うように、日本自身が持たないとして、他国の核のかさのもとに入って、そうして対抗するという考え方も生まれてくるわけであります。そして日本国内におきましても、そういうような考え方がまたあるわけでありますが、総理はその点についても、やはり他国の核のかさのもとに入って、そうして中国のこの脅威に対処する、こういうお考えではないのですね。その点をお伺いしたい。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はあらゆる国とも仲よくするということをほんとうに耳にたこになるほど申し上げております。私はどんな国とも仲よくしていく。しかして、わが国の安全を確保する意味において私どもが日米安保条約を結んでおる、これも御承知のとおりであります。ただいま申し上げるように、ある国のかさの下で云々という、そういうものではない、私どもが安全でありたい、安全を確保する意味で最善を尽くしておる、また、いずれの国をも仮想敵国にしてない、いずれの国とも仲よくしていく、それにはお互いに独立を尊重し、内政に干渉しないという、それだけはひとつやってもらいたいということを願いとしてたびたび表明しておりますので、誤解のないようにお願いいたします。
  210. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすれば、やはり総理は他国の核のかさのもとに入る、こういうお考えはないと、そうしてむしろ逆に、世界の軍縮会議を促進する、そうしてその世界の軍縮会議によってもしそれが成功して、核爆発実験も全面的に禁止され、核兵器の製造、所有、運搬、貯蔵等もなくなり、そうしてそれによって核戦争の脅威がなくなることを念願されておる、そう解してよろしゅうございますか。
  211. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体同じことじゃないかと思いますが、私は核兵器というものをほんとうに心から憎みますし、またかような意味で、ただいままでのところ不十分だとはいえ、部分的核実験禁止の条約にも私どもは参加した、こういう状況でございますし、あらゆる努力をして、あらゆる機会にこの核兵器というものが人類に不幸をもたらさないように、そういう方向で進みたいものだと、かように思っております。
  212. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、この中国が今日とっております政策について、ひとり直接日本に対する脅威ばかりでなく、たとえばベトナムあるいは韓国あるいは台湾海峡等々についても、中国の脅威があるというふうな考え方を持っておられるようなことをしばしば私は聞いております。たとえばこれは椎名外務大臣も、しばしば国会で言われておるわけでございますが、そういうような脅威がある。現実に朝鮮において、あるいはまた台湾海峡において緊張があり、さらにベトナムにおいては戦争があるわけでございますが、これらを脅威と感じられるか、あるいは向こう側がアメリカを、その与国を脅始と感ずるか、これは別問題といたしまして、そういう脅威が双方にあるということを双方がそれを感じているということが、やはりアジアにおける平和が確立できない一つの大きな事態だと思うのですが、この脅威を、両側の脅威を去る、そうしてアジアにおける平和が確立される、そういうふうにする場合における日本の役割り、日本考え方、これは総理としてはどうお考えになるか、お伺いしたい。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、もう絶えず平和に徹するということを申してまいりました。そうしてこの平和に徹するのにはどうしたらいいかということが、抽象的にしろ、方向としてはすでに示し、皆さま方からの御協力も得ておる、私かように考えております。  ただいまいろいろの例をおあげになりました。いまのベトナムの問題について、これは米国は表面に出ているが、いま北爆をやっておる北ベトナムという関係だとか、私は中共政府がこれに対してもちろんモラルサポートとでも申しますか、自分たちが同じ考え方だという意味でこれに協力して支援しておるということは、そのとおりだろうと思いますけれども、直ちに中共がこの戦争に参加している、かように判断することは、私はできない。さらにまた、国民政府との関係を云々されました。しかし、これは中国の内部の問題だ、中共国民政府とこういう二つの分離国家関係にありますので、これもまたしばしば申し上げましたように、私どもの外交方針からただいま国府と外交的交渉を持ち、そうして権利、義務がある。また、中共政府に対しましては、実際的問題としてこれを処理していくということでございまするので、今回の日韓交渉でとやかく急に態度が変わった、こういうものではない、それはもう在来からの方針でありますから、これは御理解いただいておると思います。  今回の問題で、日韓条約締結してその他の協定を結んだ、そうして衆議院においてこれが可決された、その経緯に対して中共がどういうような考え方を持っておるか。これはきょうの午前中も後宮君から御報告いたしましたように、こういうような特別な見解を述べておる、こういうこともすでに御承知のことなんだ。でありますから、私は中共自身が、ただいま日本のやっていることに直接、問題を引き起こすといいますか、直接関係のあるというものは、ただいま言う、日韓条約並びに諸協定承認を求める案件について、特別な批判を下している。このことが、中共政府の今回の問題についての感じ取り方、考え方がこれで明白になった、かように私は思っておる次第であります。
  214. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私がお伺いしたのは、たとえば、いまアジアにおいて、いわゆる中共を主軸とする陣営、そしてアメリカを主軸とするいわゆる自由主義陣営との間の紛争、衝突が起こっておる。それに対処して、日本は平和を実現する、アジアにおける平和を確立するために、総理としていかなる抱負と見解をお持ちになっているか。これをお伺いしたんです。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの韓国の問題についての中共政府の声明は、別に聞いたわけじゃないというお話でございますから、これは私がよけいなことをお答えしたのでございます。が、ただいまのベトナムにおける紛争、この状態についてどういうふうに考えているかということでございます。これは、私どもは、アジアに平和があることが心からの願いでありますし、一日も早く戦乱が終息することを、拡大しないで終息することを心から願っておる。そういう意味で、私どもはしばしば、無条件話し合いということを主張しております。提案しております。しかし、なかなか今日まで、それが受け入れられないというのが、いまの実情でございますので、日本政府がどういう態度をとったか、これは御承知だと思います。多くを申し上げることもできませんが、ただいま申し上げるように、今日までその時間が来ていない、かように私は思っております。
  216. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、ベトナムの問題につきましては、いまのところなかなか解決の方法はむずかしいかもしれない。しかしながら、一九五〇年に朝鮮戦争が始まりました。そして、これはアメリカ軍、また、北鮮のほうには中共義勇軍が入りまして、実際上、アメリカ軍と中国軍との激しい戦いになったわけでございます。しかし、この戦いは、とにかく四年たちまして、いわゆる休戦が行なわれた。アジアにおきまして、こういう激しい戦争が起こりまして、これが、まあ世界戦争の破局にまで、第三次世界戦争にまで発展しなかったということは、これはアジアにおいて、当時みんな胸をなでおろしたことだと思うのでございますが、今回のベトナムにおける戦乱も、いま激しく戦われております。そして、両方とも非常な損害を出しておるようでございますが、この戦いの原因等について、私はいまとやかく申しません。それよりも、一日も早くこの状態がなくなること、そして回復されることが望ましいわけであります。その際における、やはり日本の役割りというものを私は考えてみなければならぬと思う。日本は、この問題から遠ざかっておるわけにはまいりません。どうしても、近隣にある問題でございますし、私どもは、日本としての役割りというものも何かある。おそらく、総理もそう考えておられると思うのであります。単にアメリカの政策を支持するだけではない。私は、そう考えておるのであります。すでに、ウ・タント事務総長によっても、ある種の調停のための行動がとられましたし、あるいは他の国においても、それがなされるための打診も行なわれておるわけであります。おそらく、今後そういうような機会がまた多くなるでありましょうし、また、同時に私は、それが何年かかるか、あるいは四年かかるか、三年かかるか、二年かかるかわからないけれども、しかし、そういうような動きが起こり、それが大きな力になり、世界の世論を背景にしていくならば、われわれは朝鮮戦争のときと同じように、あるいは戦乱を一時終息するというところまで持っていけるのじゃないかと思うのであります。たとえばジュネーヴ会議の再開というようなことが、一つの具体案として出されているわけでありますが、この調停の動きに対して、日本政府としてはどういうふうにお考えになっているか。また、そういうような動きに対して、日本政府としては協力する用意があるかどうか。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これ、なかなかむずかしい問題ですが、いままで私ども考えたことは、とにかくジュネーヴ会議というものが一応持たれた。そこで一応の原則というものが立っているじゃないか。その原則へ復帰することが望ましいだろう。そのためにも、とにかく一応お互いに無条件で会合を持つことが必要だ。そういう一応の話し合いで会合の場が持たれる。で、それぞれの意見が述べられ、おそらくジュネーヴの原則というものが承認される、こういうようなことになるなら、よほどわかりいい話だ。かように実は思っているのでございます。しかし、とにかくいずれにいたしましても、そのジュネーヴ会議の原則云々よりも、まず第一は、無条件で話し合うべきだ、そのことが何よりも必要だ、かように私は思います。もちろん、話し合いの間は、いまのような戦いをしながらというのは無理なことで、戦いもやめる。そうして無条件で話し合うということが望ましいのではないか、かように私は思います。
  218. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それは望ましいことでありますが、いま具体的に、まだ成功はしておらないけれども、調停の動きは各方面に起こっている。この調停の動きに対して、日本政府はどうお考えになっているか。あるいはこの調停の動きに対して、日本政府としては参加するつもりがあるかどうか。そのことをお伺いしている。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、この問題が起こりまして以来、といいますか、ことしの一月に、まだ紛争が表面化しないときに、ジョンソン大統領と会って、この事態についての意見の交換をいたしました。そうして、これが紛争が始まって、北爆が始まって、それ以来、どういうような形で解決するか。これが、いままで大体国連中心というような形で進むことが望ましい。それが、国連中心というような形と同時に、ジュネーヴ会議というものとがちゃがちゃになって、しばしばそういう形で行きつ戻りつで議論をしてまいってきている。  当初におきましては、あるいはソ連、あるいはイギリス、その他の国、フランス等々の話がございましたが、最近は、ややそういう問題についてもあまり国際的な動きを感じないといいますか、ただいま国際的な新たな動きがあるといわれておりますけれども、私どもややそういう点では遠ざかっているような気がいたします。いずれにいたしましても、こういう事態が早くおさまることが望ましいのでありますから、あらゆる機会をつかまえまして、一日も早く平静に帰するように、そういうような道を見つけるべきだ、かように私は思います。
  220. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いま、調停等の動きがやや遠ざかっている、こう言われておりますが、たとえばルーマニア等においても打診が行なわれている問題もございましょう。さらにまた、フランスは、ドゴール大統領の特使が中国からハノイに入るという計画もすでに出されております。これらはやはりそれに関係する問題でございますが、もちろん、直ちにこれが効を奏するとも私は考えませんが、しかし、そういうことが、ことしから来年にかけて行なわれ、さらにまた、情勢が進んでまいりまして、国連自身は——北ベトナムも国連に入っておりませんし、中国も国連に入っておりませんから、国連自身が乗り出すということでは、これはなかなか片方が応じないかもしれないけれども、しかし、国連の場においても取り上げられ、さらに国連に加盟しておる国々が多く動くというような場合において、私はまた進展を見る可能性がなきにしもあらずと思っておるのであります。そういう際に日本政府としてですね、これはただ念願するだけなのか、それともそういう調停の動きに対して、日本政府としても積極的に参加をするのかどうか、こういう問題です。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この一月に私が渡米いたしました際もウ・タント事務総長といろいろ話し合ったことがございます。私どもはやはり国連中心主義の外交を進めていくと、こういう考え方でございまするので、国連の考え方も十分把握してまいりたいと思います。ただジュネーヴへ、この国連に加入しない北越あるいは中共等が招かれるだろうということを予想すると、国連自身も直接ではないだろう、こういうことがただいま岡田君が言われるように指摘されることであります。ジュネーヴ会議、こういうものがそういう際に考えられるだろう、こう言われるのであります。私もそのとおりだと思うのですが、しかし、私どもは、いままでいわゆるジュネーヴ会議のメンバーではなかった。そういうことで比較的この関係の意向をつかむことは国連の場合よりもジュネーヴ会議のほうがむずかしい状況になっている。国連のほうが、私どもが近寄りやすく、また、国連の意向というものも聞きやすい、かように私は考えておるのであります。いずれにいたしましても、国連等も国連だけではないだろう、在来からのいきさつ等も考えて行動されるだろうと、かように思いますので、連係を緊密にして、そうして事態の推移を十分把握できるように、そういうことで協力する、こういう態度で臨みたいと、かように思います。
  222. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは次の点に移りたいと思います。  これは羽生君の憲法の問題についての質問に対し、それに稲葉誠一君が関連の質問をした際に、総理からの御答弁があったんでありますが、この御答弁によりますと、第九条の改正は絶対にしないのかという稲葉君の質問に対して、結局は国民のきめる問題だが、私は第九条の平和主義の精神はあくまでも守る。しかし、第九条をそのまま残すとは言っていないと、こういう答弁をされておるのであります。そこで、第九条の平和主義の精神を守る、まあ憲法の前文の精神を守る、これはよろしいのでありますが、この九条をそのままにしておくという考え方ではないように受け取れるわけであります。つまり九条改正の意図を示唆されたものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 九条改正の意図を示唆したと、こういいますとやや突き込み過ぎるように思うのです。私の気持ちを率直に申しますと、私はとにかく九条のきめている平和主義のその精神は貫く。そこで、それなら九条のことばどおりか、こういうお尋ねがありますので、こういうことは国民のきめることだろうが、私は必ずしもことばどおりでなければならないと、かようには私は思わないということであります。まだその改正するということを示唆したわけでもなければ、意図したわけでもない。そのことばどおりを守るというようにまたくぎづけにもされたくない。そこはもう少しゆとりのある考え方でありますから、誤解のないようにお願いします。
  224. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まことにあいまいもことしておって、私もどうもよくわからないのでございますが、この問題はきわめて重大な問題でありますので、さらに重ねてお伺いをしたい。国民意思でもってきめるということは、これはおそらく国民投票をさすわけでございましょう。そうでしょうか。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法という、まあ法律と申しますか、これは特殊なものなんだと、普通の法律ならば私ども簡単に国会でさっさときめていただきますが、ただいま申し上げるように、事憲法に関する限りは、これは国民の意向を十分反映するというか、それによってきまるということでないと、国の憲法としては十分の裏づけがないような気がいたしますので、私は国民意思によってきまるものだと、かように今日も考えております。その方法自身が一体どういうことになっておるのかということになりますと、これは憲法の条章に照らしてそういうそれぞれの手続があるんだと、かように私は理解しておりますので、どの方法だとか、こういうことはただいまお尋ねになりましても、私がきめかねるといいますか、ただいまお答えができないのです。もう少しその点では法制的な答弁を申し上げないと不十分かと思います。
  226. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私が伺っておるのは、単にその法律的なことをお伺いしておるのではない。総理がこう言われたことについてお伺いしているので、まず私どもは、憲法の条章に定められている憲法改正の手続等については十分承知しておるので、したがって、それをお伺いしておるのではない。そこで、国民投票できめられるについては、国民投票に付される憲法改正案の発案がなされなければならない。それがつまり国会がこれを、両院が定員の三分の二で通したものをかけることになるわけでありますが、この憲法改正案というものについては、憲法調査会においてすでに十分な検討がなされて、そしてこれは憲法調査会の満場一致の案ではないけれども、多数案、少数案で各条項についての見解が出ておるわけです。そしてこれは憲法調査会はすでに廃止されましたけれども、これは内閣に移されておる。そして内閣の所管事項になっておるわけでありますが、この憲法調査会から移された案を総理としてはいかように取り扱うか、その際にこの第九条は憲法調査会におけるいろいろな意見をまとめてできた多数案、それによられるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、憲法調査会の調査は政府にもちろん出ておりますが、同時に国会にもちろん調査報告がされておると思います。まだこれをそれではどういうように取り扱うかということは、皆さまのところもおきめになっていらっしゃらないと思いますが、私ども政府ももちろんきめておりません。したがいまして、ただいま先ばしった方向でお尋ねございますけれども、ただいままだそんなところまでいっていない、かようにお答えするよりほかに方法はございません。
  228. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私別に先ばしって申し上げておるのではないので、現に憲法調査会の調査の結果は内閣の所管のほうに移されておる、そうすればこれはどう取り扱うかということをお伺いしても不都合ではないと思う。というのは、別にあれは倉へしまってあるわけでも、たな上げしてあるわけでもないだろうと思うので、その点でお伺いするわけです。そうすると、その中にある多数案というものがどういうふうにあなたは考えられるかということも問題として出てくるでしょうし、さらにもう一つは、自民党は、きのうも総理から言われましたように、憲法改正についての見解を主張されておるわけであります。特に、憲法調査会において、自民党から出ております委員は、ことごとく憲法改正論、そして特に九条の改正論者が非常に多いわけであります。そういうような観点からいたしまして、私どもは、この総理が昨日言われましたことは、やはり憲法改正、特に九条の改正を示唆されておると、こういうふうに考えざるを得ないのであります。ただあなたが、ここでもって突如として言われたなら、これは私としても、まああなたのいまの弁明について了承もいたしますけれども、しかしながら、そうではなくて、いま言われたように、すでにこの憲法調査会の案というものが内閣に移されておる。しかもあなたのほうの党は、憲法改正をきめ、あなたのほうの党の人が憲法調査会で、いわゆる多数案をつくり、そうして九条についても改正案を出し、それが多数案としてちゃんと記載されておる。そういうことからお伺いしているわけでして、したがって、総理としても、その点についてはもう少し具体的に明確にされていただきたいと思うのです。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん先ばしった話だということを申しましたのは、何だか条文を説明しろというような言い分のように聞けたものですから、そこまで考えてないのだと、いまその調査の結果を政府自身がもらって、政府に、法制局におきまして、ただいま整理している段階だと、このことを申し上げたのでございますので、第九条をどう書くかというような質問のように私とりましたので、そこまではいっていないのだ、まだ改正するとも改正しないとも実はきめておらないということであります。ただいま、さらに中身についていろいろお話がございましたが、多数意見を尊重するか。——もちろん多数意見の正しいものについてはこれは尊重すべきことだと思います。私は、ただいま議論されておる第九条の平和主義というもの、これは多数の意見でも、これはぜひ守れということのようにあると、かように私は理解いたしておりますので、これを守ると申しましても、あえて国民世論と反対の方向ではない。専門的な調査員の方もそういうような御意見だったやに伺っておるのであります。問題は、これが、あれだけの年数をかけ、長年月を費やして、そうしてそれぞれの専門家から意見を徴して、外国にまでも行ってこれを調べてきた、こういう状況でありますので、政府におきましても、これは必ず将来役立つだろうと、こういう意味で、ただ報告をいただいたと、これが報告でございますというだけでは不十分だと、かように思いますので、十分ひとつ整理をするようにということを申しております。しかして、これが改正をしないならこれは非常に簡単でありますが、もしも改正するということになれば、手続その他にたいへんまだ研究すべきものがあるのじゃないだろうかと、かように思いますし、ましてその条文をつくるというようなことになれば、これはたいへんな問題であろうと。いままでのあれは憲法の調査だけでございまして、いわゆる編さん委員の役割りをしているわけじゃないと、私はかように思いますので、それらの点はまだ政府が全然きめておらないところでございます。  申すまでもなく、昨日の答弁でもお答えいたしましたように、わが自由民主党は、立党以来、政綱として自主憲法ということを主張してまいっております。そういう意味で、自由民主党は必ずその政綱をいつのときか実現するだろうと、かように予想されることはこれは当然だと思いますが、それにいたしましても、ただいま、手続その他非常にむずかしい問題がありますので、政府自身がいま取り上げる、こういう段階でない、こういう意味で、誤解のないようにお願いしておきます。
  230. 羽生三七

    羽生三七君 関連。二つお尋ねいたします。  一つは、国民世論を聞くと言われますが、あの世論を聞く場合には、政府が発案しなければ国民投票の機会はないわけですね。ですから、政府が発案するまでの期間、ばく然とこうではないかという意味を言っておられるのか。そうでない、国民世論という場合は、これは発案したあとの国民投票のことですから、……。それが第一点、これをどういうふうに理解されているか、これが第一点。  それから第二点は、第九条を——ここにありますが、読む必要ありませんけれども、非常に簡単なものですね。だから、武力を国際紛争解決の手段として行使しないということと、戦力放棄ですね。それをこのまま守るわけではない。あるいは文章のあやというように言われておりますけれども、これは文章のあやなんかだけなら、これはこのまま置いといてもちょっとも差しつかえない。ですから問題はその文章のあやが、平和ということばをたとえ第九条に書こうとも、本質的には第九条の精神を骨抜きにするようなことになるんではないですか。それを残すなら、そんなことはないとおっしゃるなら、全然手をつけないで、表現をね、たとえばわが国は、日本は、というように、そんなようなことはあえていま急いで手をつける必要何もないわけで、これは、むしろ、第九条はそのまま残すべきであるということを言われるべきではないですか、どうですか。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、私ずいぶん注意をしてお答えしたつもりでございます。ただいまの国民投票等についても、直ちにそういうお尋ねのようなお話が出るだろう、かようなことも予想してお答えしたつもりで、私の申し上げるのは、もっと広い意味で、国民意思の動向を察知するとか、こういうような気持ちを申し上げたのでございまして、ただいま言われるように、この国民投票の方法と、こういうようなところまではまだ考えておらないのであります。だから、まあいろいろ手続上の問題がありましょうと申したのは、そういうふうな問題で、これまたいろいろお知恵も拝借いたしまして、遺憾なきを期してまいりたい、かように思います。しかし、誤解はないように、ただいままだ改正すると、かようにきめておるわけじゃございませんから、その点を何度も申し上げておきます。  それから、その次の問題で私が申し上げているのは、第九条の平和の精神を貫くということを申しておりますので、ただいま第九条に書いてある——非常に簡単な表現だと。文字どおり、この一言一句変えてはならないとか、まあまた変えるんだとか、変えてはならないのだとか、こういうような実はこまかなところまでの検討いたしておるわけではありません。大多数の御意見も、この平和主義の精神は貫け、こういうことを申しております。それをまた書き方によっては、これは真の精神を貫くことにならない、置きかえでたいへん心配だと、こういうふうな御疑問も、不安が、あるようでございますが、いずれもしも改正するというようなことになりまして、そして具体的な案文が出ました際には、十分ただいま不安が持たれるそういうような観点から、御審議をいただいたらいいものと、かように私は思います。
  232. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。私、まあ二点だけ確かめておきたいと思います。  昨日は、総理は、憲法第九条はこのままではどうもいけない。その点だけは少なくともはっきりおっしゃったように思うのです。席上におりませんでしたので、速記録を取って私いま拝見しておるわけですが、明らかにそういうふうにおっしゃっております。平和主義は貫くと。しかし、このままではいけぬだろう。その点は少なくともどうもはっきりおっしゃったように思う。しかし、きょうはどうもその点が少しあいまいにされたように思いますが、しかし、まあそれはよろしい。きょうはその点は、いまお尋ねの対象にはいたしません。少なくとも昨日から本日にかけてのお話を聞いておりまして感ずることは、憲法第九条では不満な点がある、実質的に。実質的にどこかに不満な点がある。おそらく、もっと具体的に言えば、憲法第九条ではやりにくいということだろうと思うんです。われわれの立場から見るならば、憲法第九条があるにもかかわらず、実際上は自衛隊を置いて再軍備がされておる。これに対して、はなはだ不満なんです。しかし、総理立場から言うと、相当無理して再軍備政策は進めておるが、しかし憲法第九条の制約のためにやりにくいことがあると、そこが私は根本ではないかと思うんです、根本ではないかと。だから、総理に聞くのは、実質的に一体どのようなことに不便を感じておるのか、不満があるのか、そこを端的におっしゃってもらいたい、中身を。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 結論から先に申しますと、これはとにかくいろいろの議論はあります。しかし、私どもが別に不便を感じてはおりません。不便を感じておらないということをはっきり申し上げます。ただ、私が申し上げたいのは、昨日いろいろ議論いたしました際に申し上げたのは、わが党の綱領、この綱領と、佐藤は一体憲法改正をどういうように考えておるか、こういうお尋ね一つあります。それに対して私が申しましたのは、この憲法が占領早々の間においてつくられたということはだれしも認める。こういう意味で、完全自由な立場憲法をつくりたい。これはもう国民の大多数の意見なんです。かように私は思う。しかしながら、いつその改正をする、こういう問題には全然触れておりません。だから、そういう意味の政綱は、これは自由民主党は掲げておるのでありますが、その具体的な内容はまだ持っておりません。今日、私がいま政局を担当しておりますが、私は一体どう考えるかと言われれば、ただいまさような改正の考え方を持っておりませんということをはっきり申し上げたのが一つ。もう一つは、ただいまわが党の政綱から申して、第九条は一体どうなるのか、こういうことを言われるから、第九条の平和主義の精神を貫きますと、これは変えませんと、こういうことをきっぱり申し上げたのであります。したがって、ただいま、何か陰謀でも企てているように思われると、これはたいへん誤解でございますので、私は別に陰謀は企てておりません。これは率直にそのまま私の言うことを信じていただきたい。だから、いま問題になりまするのは、その時期が一体いつになるのか、あるいはその内容が一体どうなのか、こういうことでございますが、そういう点は全然ただいま考慮しておりません。その点を重ねて申し上げまして、御不安のないようにお願いいたしたいと思います。
  234. 亀田得治

    ○亀田得治君 総理は、ただいま、私は一点にしぼってお尋ねをしたのですが、憲法第九条によって不便を感じておらないと、こうおっしゃるわけなんです。憲法第九条によって不便を感じておらないと、こういまおっしゃった。これは非常に大事な点です。それは、何といっても、普通の法律でもそうですが、いわんや憲法においては、非常に重要な必要性がなければ手をつける必要がない。しかも、国論を沸騰させてまでやる必要は全然ない。不便を感じておらないという認識を持っておられるのであれば——いや、その点はいまおっしゃった、あなたはっきり。だから、それならば、もう引き続いて、こういう問題についての国論をおさめるために、憲法第九条は変えませんと、不便を感じておらぬのですからね、当然私はそこまで明言してほしいと思うんです。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、亀田君も、第九条に限りと、こういうように言われますので、私が心配したこととは違うようですから……。この憲法の各条章でいろいろなことをきめられております。全部が不便を感じないのかと、こういうと、いろいろの議論があるように思います。したがって、他の場所についての議論はしばらくあずかっておると、かように御理解をいただきまして、私が不便を感じないと言ったのは、第九条に関して、いわゆる自衛力云々の問題について私は別に不便を感じておりませんと、こういうことを申し上げたのでございますから、大体誤解のないように願いたいと思います。しかし、私はこの貫いておる平和主義は守り抜く、このことは実は申し上げておるのでございまして、ただいま言われるように、第九条は一切改正しないと、こういうことをぜひ答えろと言われても、私は答えません。十分検討していただきたいと思います。
  236. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっとおかしい。私の質問と合っていません。もう一ぺん……。総理は、憲法第九条について不便を感じておらないと、ただいまもさらに再確認された。私はもうそれが非常に大事なことだと思う。もしそれがほんとうであれば、引き続いて憲法九条には手をつけませんと私は断言してもいいくらいに思う。しかし、その断言をされないのは、実際は腹の中では何か不便を感じておられるんじゃないですか、不便を。だから、私何回も——ちょっと佐藤さん待ってください。私は何回も立つのはちょっとぐあいが悪いようですから、続いて質問します。皆さんが実際は腹の中では不便を感じておるはずなんです。だから、その皆さんが感じておる不便をひとつ私のほうから指摘してみますから、その点についてひとつお答えを願います。  これは、私がこういう心配をしておるだろうと言いましても、それは社会党さんのかってな推測だと言われてもいけませんので、この権威のある憲法調査会におきまして、第九条というものは非常な——権威があると言いましたが、政府立場に立てばです。われわれの立場から見ると、代弁者がおらぬわけですから、はなはだこれはもう片手落ちなものなんですが、その憲法調査会で、十七人の委員によりまして憲法改正の方向というものが最終段階において出されたわけであります。私はなぜこれをとるかといいますと、憲法調査会はなるほど社会党なり平和を愛する学者の諸君は入っておりませんが、それでもなおかつ若干の多数派に対する抵抗の意見がありました。したがいまして、最終的にまとめられた報告書自身は若干薄められておる。結論の書き方が薄められております。ところが、この十七人の委員の諸君で出しましたところの意見書、これはまさしく自民党の委員の方が中心になってまとめ、はっきりと、委員会じゃありませんもんですから、自分たちの意見を思う存分出しておるわけですね。この中に、はっきりこの憲法第九条に対する評価が出ておる。自民党の皆さんは、過去いろんな機会に憲法改正あるいは九条の改正について触れますが、なかなか具体案を示そうとしないんですね、主張されながら。具体案を示すと攻撃の対象になると思っておられるのかどうか、ほんとうに腹の中がきまっておらぬのかどうかわかりませんが、こういうふうに改正しようという中身を示されません。ところが、中身というものは必要性から出てくるわけですね。その必要性をこの十七人の憲法改正の方向の中にあらわしておるのがこの文献なんです。その一部をちょっと読んでみます。「九条の解釈の争いや疑義の存在の心理的におよぼす悪影響ともいうべきもので、それによって国防体制の確立に重大な障害が生じていることである。たとえば」、——これからあとです。これはおそらく自民党の皆さんの心理状態をあらわしているものだと思う。「たとえば、海外派兵が事実上できないこと、いっさいの核兵器がもてそうにないこと、」——「そうに」となっております。これは少しぼやかして「そうにないこと、」それから「アメリカとの協力も万全ではないこと(原子力潜水艦問題など)、自衛隊の増強も思うにまかせないこと。これらはほとんどまったく、第九条に原因していることはあきらかであろう。」と、こういうところがら出発しているわけです。この不便は感じておられるんじゃないですか。どうなんです。こういう実質的な関係においてお答えいただきませんと、私は自民党関係でいろいろなものを見るけれども、なかなか本心を出そうとしません。ところが、たまたまこの十七人委員の共同意見書を見ますると、はっきりと九条に対する不満の原因というものを指摘しているわけです。その点との関係はどうなんでしょう。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事憲法ともなると、いいろいろの議論があります。したがいまして、その議論を一々とやかく言ってもしかたのないことだと思います。私が皆さまに言い得る、また国民に対しても言い得ることは、私ども憲法をほんとうに守り抜くということ、その気持ちで徹しております。憲法違反をすると、こういう場合には、ただいま言うようにどうも不便だとか何とかいうような考えが出てくるかもしれません。憲法を守っている限りにおいてただいま申し上げるような不便はございませんと、そのことを重ねて申し上げましてお答えといたします。
  238. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの亀田君に対するお答えを伺っておりますというと、改正を必要としないように思われる。自民党の多数の方々が入ってできた十七人の方々意見、これはもう明らかに改正論、それに対して改正の必要はないということは、現行憲法をそのまま続けてよろしいということになるんじゃないでしょうか。その点について、改正の必要があるのかないのか、ないならばないとはっきり言われるかどうか、お伺いしたい。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、先ほどもお答えしたとおりでございますが、私ども自由民主党が結党以来綱領としてちゃんと掲げております。その理由は、やっぱり敗戦後早々の間においてこれをつくったと、こういうところに問題が一つあります。また、各条章につきましてよほど進んだ憲法であったと、かように考えますが、今日になってみますると、第九条は別でありますが、その他の点におきましても何かと問題があるのであります。したがいまして、そういう点について十分考えなきゃならない。おそらく、皆さん方も憲法改正ということについては真剣に考えていらっしゃるだろう。ただいまは御議論として第九条だけにしぼっていらっしゃいますが、しかし、その他の条項については改正の要ありというようなもし結論でもあるならば、これはたいへんけっこうなことですから、どんどん活発にやっていただきたいと思います。しかし、その九条の問題にいたしましても、これは、私は先ほど来申しておりますように、この平和主義の精神は貫くということを申しております。また、衆知を集めていいものができれば、それにこしたことはございません。どうしても第九条にいま書いてあることが最善だと、これはもう最高のものだと、かようにきめてかかることは、これは私よけいだろうと。私どもの後輩あるいはその他の同僚がどういうような結論を出しますか、また、国民の中からどういうような意見が出ますか、そういうことは、ただいま無理やりに第九条は一切一言半句も変えない、こういうまでにその言質をとろうと言われても、これは私は無理な話なんです。私自身がただいま改正するということですでにかかっているんなら、その九条をどうするかということもきめることができます。しかし、これもまだそこまでいっておらないのでありますから、どうか、それらの点を勘案されて、事情に置かれておること、私自身の考え方をあまり無理な答弁を要求されないようにお願いいたします。
  240. 藤田進

    ○藤田進君 関連。
  241. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 簡単に……藤田君。
  242. 藤田進

    ○藤田進君 非常に重要な問題でありますから、羽生委員質疑について尽きない点、さらに重要なポイントの残っている点を党としてはいろいろ協議いたしまして、岡田委員にその点を総理に再び重ねての質疑をかわして明らかにしている。改憲についてはかなり論争が広まり、国民の中にも、憲法について改正する、あるいはこれを擁護するということは、もう御承知のとおりだと思います。御近親であられる岸さんの改憲論も載っていることも、御承知のことだと思います。要するに、聞いてみますと、不便は感じていない、憲法九条にこういう例をとって。不便を感じていなければこれを改正する必要はないのではないか。これについては、自由民主党綱領なり等を引用されて、より便利ないいものがあればそれはまたということで、あいまいもことしているんですね。一国の総理とされて、こうして論争になっている問題について、やはり明確な回答を与えられることが、これが国会に対しても、あるいは国民のそのような論争の中における態度としても、私は望ましいと思います。どうも、ここに質疑を続けてきますと、あなたは、非常に答弁に窮するときには、まあいわゆるすれ違いとか——これは答弁の戦術にあるんだそうですね、あるいは的はずしですね、といったようなことで、最後の果てには答えられませんと、吉田さんがよく使ったあれですが、そういうことは国民から批判されて、逐次内閣総理大臣答弁も前進をみてきたのですね。そこで、私は、的確に御答弁いただきたいことを第一点に進行上申し上げると同時に、私はさらに次の疑問を持ちますので、お答えをいただきたい、憲法について。特に第九条について最たるものがある。それは、今日の日本の政治情勢から見て、特に国会の内部、さらに参議院の会派その他の事情からして、改憲手続について所定のいわゆる三分の二以上の議決、端的に言えばですね、そういうものには達していないし、それどころか遠ざかりつつある。あるいは、衆議院においてもやがて改憲勢力を割る。ここに選挙法の改正——小選挙区とか、そういうものが出てきていると断じている人も多いのであります。したがって、第二のポイントとしては、いわゆる法文改憲はしないけれども、不便ではないとかなんとかいったような形で、いわば解釈改憲をどしどし行なっているのが実態です。憲法第九条はまさにそのとおり。だれが読んでみても、あれが現在逐次発展というか変形してきたところの政府の解釈というものは、全く法文ではなくて、解釈改憲のそのものです。したがって、いま申されるあいまいもことしている中ではあるけれども、法文の改憲はしないけれども、解釈改憲でいこうということがあなたの気持ちであるのではないか。法制局あたりが曲げたものを持ってくれば、それをまことしやかに受けて——鳩山さんはかなりはっきりしておりましたね、九条については。よって改正を必要とするという所論でしたね。その後りこうになってきて、解釈改憲でやってきたんですよ。それではいけないんで、憲法は時代とともに解釈が変わるとか変わらないとか、それは学者の議論はありますけれども総理としてはどうなんです。まあ変えようもない、変えたいけれども。そこで、不便でないと言ったけれども、そこらは問わないから言わないけれども、解釈でいくんだわいというように私は見受けられるのですね。解釈改憲です。どうです。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も先ほど来、事柄の性質上、実際の政治の問題としてじゅんじゅんとお話をいたしたつもりであります。ただいま調査会から調査の結果を報告を受けておる、またわが党は改憲の政綱を掲げている、しかしながら、ただいまこの憲法の問題について改正するとも改正しないとも、かように申すような段階ではございませんので、私自身がただいまその問題に取り組んでおりませんということを申し上げております。また、わが党の政綱から見て、またその制定された当時の模様等から見、またその内容等を見ると、だんだん時勢も変わってきているからこれは必要なんでしょうということも実は申し上げました。しかし、私自身がただいま改正に乗り出してはおらないのであるということを申し上げたわけであります。しかし、ただいまの第九条の定むる平和主義、この精神こそは新憲法一つの大きな柱なんである、かようにも考えますので、これについての意見は私は言い得る。そして、これを、第九条の精神は守り抜きます、こういうことを実は申し上げたのです。条文について、第九条の条文、これはこのままを守れ、こう言われましても、多分に御意見として拝聴することにはやぶさかではございませんけれども、これを守るかどうか、こういうことでひざ詰め談判でお問いになりましても、それに答えるわけにいきません、かように申し上げたわけであります。だから、皆さん方の御意見は御意見として十分拝聴いたしておりますが、私自身がこれについては明答しておらないということも事実でございます。御了承いただきたい。
  244. 藤田進

    ○藤田進君 議事進行について。いま質問者である岡田議員に尋ねてみますと、どうも総理のああいう御答弁で、答えられません、条理を尽くして申し上げているのに、いまこの段階で申し上げられないというようなことは、非常に不満なようであります。ことに資料その他、本日より出していただくものもまだ出ておりません。さらに、私どもは申し合わせ事項は守っていこうという立場で、大体朝十時から夕方五時ごろまで——五時は過ぎておりまして五時半になろうとしておりますが、五時ごろまでということで、与党の提案もあり、申し合わせが済んでおりますし、まあかれこれかねて、この辺で本日のところ散会をし、明日申し合わせどおり十時から理事会、懇談会を開きすみやかに開会するようにおとりなしをいただきたいと思います。ちょっと相談しよう。——(「おかしいぞ、おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
  245. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 岡田宗司君。(「委員長」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)岡田君を指名しました。岡田君続いて。
  246. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 何か関連だと言うから……。慣例上そうなっているんじゃないですか。(「関連のほうが先だ」「憲法問題と問題がちょっと違う」「委員長おかしいぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  247. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) もう一回相談してください。(「いまできまったでしょう」と呼ぶ者あり)岡田宗司君。
  248. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長議事進行。憲法問題というのは何といっても最大の重要な問題でありまして、昨日羽生委員の重要な質問から総理答弁がきっかけになっていまもめておるわけであります。われわれも若干関連の意味もありまして遠慮しながら質問をしたわけですが、先ほど、ことに先ほどの答弁を聞いておりますと、佐藤さんもなかなかタフな総理でございますが、さすがにやはり御心労のほどがありありと見えるわけでして、こういう重要な問題は、尋ねるほうもお答えいただくほうもほんとうにこうすっきりした気持ちでやっていきたい。これが私どもの本心であります。そのことを先ほど委員長に申し上げたわけでありますが、どうも委員長、御老体のくせになかなか長くやるのが好きでございまして、もう二、三十分やってくれいと、こういうことでございますので、、若干ひとつさらに佐藤さんにお尋ねしておきたいと思うのであります。  先ほど総理は、私が自民党の皆さんが不便を感じておるだろう、何を感じておるかということは、外ではわれわれちょいちょい聞かされるのですが、正式な場になると、なかなかおっしゃらないわけであります。佐藤さんのごときは、正式のこの国会でありますると、逆に今度は、不便を感じてはおらないと、こういうふうに先ほども断言されたわけであります。しかし、これはわれわれ聞いておるものとして、そういうふうに不便を感じておらないのであれば、当然引き続いて、だから憲法九条については手をつけませんよと、ほかの部分はどうなるかわかりませんが、皆さんが心配しておる憲法九条については手をつけませんよと、はっきりこれは出てくるであろうと、こうわれわれは論理的に推測をしていたところが、その点が出てこない。そうしてまた、昨日お答えになったことと同じようなところに戻った感じがするわけです。それを、同じことを何べんも聞いていてもいけませんので、それで、総理大臣にお尋ねしたいわけですが、さっき私が正確な資料に基づいて、自民党の有力な人たち心配しておることですね、不便だとして心配しておること、この点について佐藤さんは意見が違うのかどうか。これをひとつお聞きしたいわけであります。  この点、正確を期しますために、先ほど申し上げた点をもう一度申し上げます。四、五項目あるわけです。海外派兵が事実上できないと、これに対して憲法九条があるためだということで、非常に自民党の一部の方は不便を感じ、文句を言っておられるわけです、この点。  それから第二は、一切の核兵器が持てそうにないこと。まあ、この意味からいいますと、現在の憲法のもとでも持ってもいいんだ、どうしても憲法改正反対というようなことで改正がうまくいかなければ、ちょっとぐらいは持っても差しつかえないだろうというような意味が、内部にどうも含まれているようです、この書き方でありますと。いずれにしても、こういう不満を九条に対して言っているということは、堂々と核兵器も持てるようにしてもらわぬと困る、こういう意味であることは、これは間違いない。  それから第三は、アメリカとの協力も万全でないこと。それから自衛隊の増強も思うにまかせな、こと  この四つのことが具体的に書いてあるわけです、現在の九条に対する不満として。この四つのことについては、佐藤さんはそういうふうに、この委員人たちと同じようにお考えなんでしょうか。あるいは、これは自民党員としてけしからぬというお考えなんでしょうか、その点をはっきりしてもらいたい。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お尋ねになったことと違いますが、私、はっきり申しますが、ただいま憲法の問題はここで議題として提案しているわけではありません。皆さん方は、ただいまの韓国との条約をひとつ御審議願いたい。それに関する問題として、憲法がどうなっているかということをお尋ねになるのはけっこうです。しかし、ただいまのような、その内容について一々聞かれましても、私がただいま答えないのは当然だ。私が先ほど来申し上げておるように、第九条の問題については、これを守れとか守るなとか、かようなことを申しておるのではない。いずれ改正の問題が出れば、提案すれば、当然国会において御審議いただくのは、私はそれを拒むものではございません。そのことを十分あなた方もお考えいただいたらどうでしょう。私は、これはたいへんな問題であって、いずれその、重大な問題だからといって提案もしていない問題についてどんどん話が進んでいけば、これ一々答えなければならないというなら私はたいへんな問題だと思う。そういうことはできるだけ限ってもらいたい、私はさように思います。国民が一番心配しているのは第九条の平和主義の精神、これを守られるかどうかということなんです。これは守りますとさっきから申し上げております。それより以上お尋ねになりましても、具体化していないのだから、それは無理なんじゃないかと私は申し上げたのです。われわれ自由民主党でもいろいろの議論があります。だから、そういう事柄について私は一々批判はいたしません。政府がただいま一番関心を持っているのは、いかにして憲法を守るか、そのことなんです。与えられた憲法のもとにおいて行政をしておる、これが私どもの最大の関心事であります。はっきり申し上げます。
  250. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、議事進行。そんなばかな答えあるか。総理大臣に国会が命令されるということあるか。そんな態度があるものか。議院の審議に対してそういう干渉があるものですか。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、私は答えられないと言っているのです。
  252. 亀田得治

    ○亀田得治君 重要な問題について、関連して出てきたことを質問をするのはあたりまえじゃないですか。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そんな無制限な質問を……。
  254. 亀田得治

    ○亀田得治君 無制限なことは言っておりません。憲法第九条は国民の大事な問題じゃないですか。そういう総理大臣が国会に対して命令するような態度というものはどうなんですか。それは委員長から注意してください。君ら、そういうことでは行政府になめられるじゃないか。あんな態度があるものですか。議員に対してそういうべらぼうなものの言い方があるものですか。こちらは日韓の問題だからというので遠慮して聞いておる。いまの発言どうするんだ。委員長、いまの発言取り消しなさい。何です、そんな乱暴なこと……。
  255. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 暫時休憩いたします。    午後五時四十二分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕