○木内四郎君 私は、過去十四年間の長きにわたって懸案でありましたこの
日韓条約その他の
案件が今日妥結を見まして、ここにわれわれの
承認を要求されておる、ここまでの段階になってまいりましたこの間における
総理、閣僚また外務当局の方々の非常な御労苦と御
努力に対しましては、衷心敬意を表し、かつ、感謝を申し上げたいと思うのでございます。
この
条約の審議につきましては、いろいろな経過を経てまいりましたが、期間はそう長くありませんでしたけれ
ども、
衆議院におきましても相当審議をされました。また、本院におきましても、本
会議の審議、また、当
委員会の審議におきまして、いろいろ
質疑応答が繰り返されましたし、ことに
衆議院におきましては、わが党の小坂代議士、田口代議士、また、本院におきましては、本
会議におきまして草葉
委員から詳細な
質疑がありまして、これに対しまして
総理はじめ閣僚、
政府委員の方々から懇切丁寧な御答弁がありまして、
条約案件関係の大筋につきましては、大体これを解明することができたと思うのでございます。私は、そういう
意味におきまして、また私が再三
質疑を延ばされましたが、いろいろな議事の都合であまり長い時間もさかれておりませんので、この際数点につきましてのみ、ひとつ
総理はじめ閣僚の方々の御
意見、あるいはまた
政府委員の御説明をお願いいたしたいと思うのでございます。
ところで、それに入ります前に、この本
案件の審議をめぐりまして、
衆議院におきましては相当波乱がありまして、これに対しましては
国民も非常な関心を持ち、かつ、非常な心配をしております。また
社会党の諸君も、きのうからの御
質疑にありましたように、いろいろ御心配になっておりますし、私
どもも非常に心配をいたしております。また、
総理は一そう深く心を悩ましておられるように拝見するのでありますが、この点につきまして、議会
民主主義という見地から
総理に対しましてひとつお伺いをしてみたいと思うのでございます。
実は私は、先日大学の先生方、これは法律、
経済を研究しておるような、政治を研究しておる人々じゃございません。科学の研究をしておる学者の方々と会いまして、そこで議会
民主主義などを話しましたところが、これは私の言うことでありません。この科学者の先生方の私に言われることですけれ
ども、あなたはいろいろこの議会
民主主義のことについて言われたけれ
ども、どうも今度の国会の審議の
状態を見て、初めから、もう召集の当初からどうも議会
民主主義の土俵の外へ出ているのではないか。
自分たちは専門ではないし、政治のことはよくわからぬけれ
ども、科学者としてものごとの自体、本体を把握するということは、
自分たちは常にそれを任務としておるから、今度のこの問題についても、
自分たちの考えをもってすれば、初めからもう
民主主義の土俵の外へ踏み出しておる。自民党のほうは、政府のほうにおいて多数の
国民の支持を得て政治、
外交、行政の責任を持っておるその政府が、責任を持って
韓国と
締結した
条約を国会に提出しておる。そうし
てこれはすでに参議院の選挙の洗礼も受けておる。しかも
国民の多数の
——絶対反対しておるものは、きわめて少ないように、新聞社の世論調査などによるときわめて少ない反対しかない。大多数の者の支持を受けておるこの
案件に対して、絶対反対、しかも、三分の一しか議席を持っていない者が絶対反対、絶対阻止、粉砕、しかも実力をもって阻止しよう、力が足りなければ院外の勢力まで動員し
てこれを粉砕しようということは、すでにもう議会
民主主義の土俵の外へ出ている話だ。国会召集の当初からこの国会はすでに土俵の外へ踏み出しておる。議会
民主主義否定の態度であり、これを極端に言えば、議会
民主主義に対する否定の宣言である。それに対して、
国民の支持を得て政治と
外交と行政を担当している自由民主党は、一方はあくまで阻止する、これが野党ならば拱手傍観できるかもしらぬけれ
ども、政治と
外交と行政の責任を持っている、これは突破しなければならぬ、そういう結論に当然なってくる、われわれはそう
事態を見ておる。われわれは科学者で、人工衛星の軌道などについても、これは測定することができる。この議会
民主主義否定の宣言、これの弾道については、別に計算機を用いなくても結論はわかっておる。どこへ落ちるかわかっておる。
自分たちだけじゃない、
国民もわかっておる。ところで、
衆議院において一たび強行突破があると、それに対して、議会は審議を尽くせというようなことを言う。それならなぜ二十日間も二十数日間も審議を怠っておるときに、これらの人々は審議を尽くせと言わないか。ことに参議院においても、聞くところによれば、このごろ予備審査といって、
衆議院に出せば、参議院も
委員会に付託をして審査をしなければならないと聞いておるが、一カ月余りもその付託もしないで、審議もしないでおる。それじゃいかぬ。ことに強行突破をして
衆議院から参議院に送っ
てこられる段階になると、新聞でもラジオでもテレビでも、どうしたら議会
民主主義を守ることができるかということで座談会をやったり、いろいろなことをして、記事に出たり放送されたりしておる。これはとんでもない間違いだ。初めからないものを守るといっても、守りようがない。むしろ、これから議会
民主主義をどうしたら築いていくことができるか、こういうことならわかる。ないものを守ろう。これは非常な間違いだと思う。政治家の諸君もひとつしっかりしてくれなければ困るということを、私は科学者
たちの集まりで聞きました。ところで、最近また、ある私は
ことばはよくわからない人ですけれ
ども、野党の
委員長の方が私の郷里に来て、駅の前で議会
民主主義を守るという演説をされました。おひざ元の善光寺さんの仏さんにまで訴えたという話、御本人は非常にまあ気持ちよく話をしておられたらしいけれ
ども、聞いた人は何と言ったか。野党第一党の
委員長が、
自分たちが議会
民主主義破壊の種をまいておきながら、反省することなしに他人の非だけ責めておるようじゃ、まあ
日本の議会政治もどうにもよくならないだろうということを言ったという報告を受けています。私は民の声は神の声だということを聞いておりますけれ
ども、仏さんの声でもあると思う。そこで、私自身もこの問題に対しては、
社会党の諸君などと同様、あるいはそれ以上に心配しておりまして、いろいろな人に
意見を聞いてみました。自由民主党が強行突破したことに対しては非難する人もありますが、相当多くの人は、あれはやむを得なかったのだという人が相当ある。がしかし、長い問、二十日間余りも審議に入らないというこの国会の態度に対しては、ほとんどすべての人は、口をそろえて強く非難しています。そこで私は、こういう
状態であるならば、
国民の国会に対する信頼というものは地を払う。私は非常にこれは残念なことだと思う。そこで私は、二十日間も審議に入らなかったということは、これはやはりまあ野党の責任だと思うのですが、しかし同時に、長きにわたって審議に入らせなかった、そのままにしておいたという点においては、やはり与党においても責任はないとは私は言えないと思う。と同時に、自民党が強行突破をした。これも好ましいことではない。これに対しましても、やはり野党の諸君の責任がないとは私は言えない。そこで、与党においても野党においても、この際は深く反省をして、そうして何とかし
てこの議会
民主主義を守るということでなければ、どうしてひとつ築き上げていくかということに心を砕かなければならない、こういうように私は考えております。ところで、それは双方とも深く反省をしなければならぬと私は思っております。そこで私は前から、これは笑い話みたいなものですが、政治物理学ということを言っております。物事は極端に行けば極端に返る、機械になるだろうということを考えておるのですが、この機械は私はぜひ悪いほうからいいほうへひとつ転換するように
努力しなければならぬじゃないかと思う。
お互いに
努力しなければならぬじゃないかと思っております。そこで、
総理もいろいろこの点については本
会議などでも御答弁になりましたし、心持ちはよくわかっておるのですが、私は何としても、先例はどうあろうとも、法規はどうあろうとも、少数の人が賛成しなければ議運もまたほかの
委員会の理事会も開けないとか、本
会議も
委員会も開けないとか、あるいは日程もきめられないとか、あるいは議案もきめられないというような
状態では私はうまくいかないのじゃないか。もちろんこの少数会派の
意見は十分に聞く。これは必要ですけれ
ども、これには時間的にも制限がある。そこで、まとまらない際にはひとつ議運においても理事会においても決をとってそれできめる。ひとたびきまったら反対した人もこれに従うということでなければ、私は国会の運営、議運理事会、また本
会議、
委員会、この運営はうまくいかないだろうと思う。三人アウトになってもチェンジにならない、あくまで
自分が打つのだというようなことを言っておったんじゃ私は始まらない。やはり三振したらアウト、やはりルールを守るということでなければ私はいかぬと思う。そこで、そういう
意味におきまして私は深く
お互いに反省し、そして
国民の信をつなぐことができるようにしなければならないということを考えておるのですが、もちろん
総理も御異議があるはずはないと思いますが、こういう点に対しまして、今回の
日韓案件の審議に
関連しまして
総理のお考えをひとつ承っておきたいと思います。