○亀田得治君 一応、事実関係はその程度にいたしまして、最終的な
責任関係を私やはり明らかにしていかなければならぬと思いますので、若干その前に、この十二日未明の
事態に対するわれわれの法的な見解というものを若干明らかにして、そうしてそれに対する
佐藤総理からの
お答えも願いたいと思うんです。これは
衆議院規則百十二条、
総理にちょっと条文をあげてもらいたいわけですが、こういう問題になるといつも法制
局長官が出てくる。きょうはあなたらが出るような場じゃない、大事な問題なんですから。たとえ一規則の問題でありましても、その条文にしては
——小さな一規則の運用のいかんというものが日本の
議会政治にかかっておる問題なんだ。そういう
意味でこの百十二条の運用というものにつきまして、
総理自体が考えて、そうしてこの
お答えを願いたいわけです。そういう条文、平素見たことがない、しばらく考えさせてくれというのならけっこうであります。あなた自身の
考え方をここで明確にしてほしいと思うのであります。法制
局長官、あなたはともかく平素、
政府がやったことを、この何でもかんでもいい、法律的に合法化していけばいいという立場でやっているわけですから、きょうはそういう場じゃない、あなたはだから黙っていなさい、これは
国会議員としてのこの最高の問題、そういう立場であなたは遠慮してなさい。念のために、私、百十二条を一度朗読さしてもらいますが、
衆議院規則の百十二条、これは
衆議院議長がお使いになったと称する条文、「議長が必要と認めたとき、又は議員の動議があつたときは、議長は、討論を用いないで議院に諮り、議事日程の順序を変更し、又は他の案件を議事日程に追加することができる。」こう書いてあるわけです。船田議長は、いま読み上げた規則を使って、まず、この議題の第一にきている法務大臣不信任案、その前に日韓関係の案件を持ってきたのだ、だから、この議事日程の変更は合法的なんだ、こういうことを盛んに副議長とともに主張されておるわけであります。しかし、われわれの理解としては、まず第一に重要なことは、この百十二条にいう議事日程とは一体何か。これは原則として、同じクラスの議案、こういう理解をすべきだと思うのであります。同じクラスの議案、たとえば
法律案が何件も出ている、あるいはその日になって、同じクラスの
法律案が
委員会を上がってきて、それを追加する。場合によって順序を変更する。こういう理解がまずなされなければならぬと思うのであります。もう少し具体的に言いますと、
国会には
会議体の本質からくるところの各種の優先議案がございます。この優先議案と、その普通の議案との間に、この百十二条というものを無制限に適用するということは、結局、優先議案というものをなきにひとしい状態に置いてしまうわけであります。私はこのことは
会議体の本質に反する、こういうふうに理解していかなきゃならぬと思うのであります。どんな議案でも、この百十二条によって順序変更ができるのだということになれば、これは多数独裁のための条文に変化するわけであります。百十二条は決してそんなことを考えてつくられたものではない、いかなる場合においても、少数党に確保されている優先議案というものは認められなければならない。そういうものを廃棄する
意味の条項ではないということが正しい私は理解のしかただと思います。ところで当日、議長がおやりになったことは、法務大臣の不信任案、これが前日来続いている第一の議事日程であります。これをこの百十二条によって
あと回しにして、ほかの案件を持ってきたことは御
承知のとおりであります。ここにこの条項の乱用があるわけです、まず第一に。それから第二には、なかんづくその日は、法務大臣不信任案は前日から引き続いて
審議を継続しておる案件だという、これをひとつ頭に置いてもらいたいわけであります。普通の
法律案と優先議案と二つ出てきた。さあ議長がいまからどっちを先にしようか、こういう選択の問題ではない。当時の時点においては、法務大臣不信任案は優先議案として院議によってすでに爼上にのぼっておるわけであります。爼上にのぼっておる。そういう案件が出ればこれはいたしかたがないということで、
自民党の日韓案件を促進する立場の諸君も、
社会党はもちろん、全会一致でもって不信任案を
審議する立場をとって動いておるということであります。こういうことになりますと、そこには私は議長の選択権というものはますますあり得ない。議長の職権がいかに強大だといいましても、
会議体の全員が本
会議できめたこと、その上に出るものでは断じてない、こういうふうに申し上げますと、いや、しかし、そう言うけれ
ども、議長が単独でそういうことをしたのではないのだ、この変更をするについては議長は議院にはかってやったのだ、まあうしろの法制
局長官あたり、何かそういうようなことを言いたそうな顔をしておりますが、そこに問題がある。もしそういうへ理屈を言われるとすれば、
会議体にはどこでも一事不再議の原則というものがございます。一事不再議。一たんきめたことをその後においてまた同じようなことをやらない、この原則は主として同じような
法律案等が出た場合に、法案の内容等についてよく
国会でも問題になることでございますが、しかし、このことは議事手続についても私は同様でなければならぬと思います。そうしなければ、一たん決定されたルールというものが絶えず変更される、少数党は何回でもそれに対峙するところの案件を出していける、多数党はうっかりこうきめたルールだとして、自分のつごうが悪いような状態になると、きまったルールまでこわしてくる。これではもう、一方は動議の乱発、一方はいつどういうふうにするかわからぬ、全く不安定な
会議になるわけでありまして、こういう点から冷静に判断をいたしまするならば、たとえ議事日程の変更につきまして議長が本
会議にはかること自身、これは権限がないこと、全然ない、これは。もしそれを認めるとしたら、日本の
国会のルールというものは、すべてこれはめちゃめちゃになることを認めることであります。そういう
意味で、議長、副議長は百十二条を使ってやったのだから、まあ多少気のひけるところもあるが、合法か違法かということになれば、合法的なんだと、こういうことを盛んに
新聞等でも述べておられまするが、私は、このような考えは十二日未明の行動を合法化するためにことさらにつけておる理屈でありまして、そういうことになれば、もう先ほどから指摘しておりまするように、冷静な
国会の
審議なんというものはもうなくなるわけであります。そういう点について、まず
佐藤総理のお考えを聞きたい。一方は合法だと言う。私がいま申し上げましたのは、議長の
やり方は百十二条の乱用、したがってそれは違法であります。はっきり私はそう考える。
総理、どうですか。長官、だめだよ。そんな三百代言式な理屈をいま
お答えを求めているのじゃない。どういうふうにお考えですか。私の主張に不明確なところがございますれば、お聞きいただければ、さらに御説明申し上げて、
お答えを求めたいと思います。あなたがこういうことを合法か非合法か、いずれに
お答えになるかということは、これはもう非常に大きな影響のある問題でございます。どうなんでしょうか。