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1965-11-24 第50回国会 参議院 日韓条約等特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月二十四日(水曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  十一月二十四日     辞任         補欠選任      廣瀬 久忠君     土屋 義彦君      和田 鶴一君     高橋文五郎君      山本茂一郎君     任田 新治君      杉原 荒太君     岡本  悟君      宮崎 正義君     多田 省吾君      片山 武夫君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 松野 孝一君                 亀田 得治君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 二宮 文造君     委 員                 井川 伊平君                 植木 光教君                 内田 俊朗君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 木内 四郎君                 黒木 利克君                 近藤英一郎君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 高橋文五郎君                 土屋 義彦君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 日高 広為君                 柳田桃太郎君                 山内 一郎君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 岡田 宗司君                 小林  武君                 佐多 忠隆君                 中村 英男君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 渡辺 勘吉君                 黒柳  明君                 多田 省吾君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  石井光次郎君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        農 林 大 臣  坂田 英一君        運 輸 大 臣  中村 寅太君        郵 政 大 臣  郡  祐一君        国 務 大 臣  松野 頼三君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務政務次官   正示啓次郎君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林大臣官房長  大口 駿一君        水産庁長官    丹羽雅次郎君        水産庁次長    石田  朗君        通商産業省貿易        振興局長     高島 節男君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君        常任委員会専門        員        結城司郎次君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから日韓条約等特別委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、廣瀬久忠君、和田鶴一君、宮崎正義君が委員を辞任され、その補欠として、土屋義彦君、高橋文五郎君、多田省吾君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会に付託中の日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件外三案について、十二月一日午前十時から公聴会を開きたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。  公述人の数及び選定、その他の手続等委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  6. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件外三案の審査に資するため、大阪府及び福岡県に十一月二十八日、二十九日の両日、委員派遣を行なうことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。 なお、派遣委員の人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  9. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案  以上四件を一括して議題といたします。これより質疑に入ります。藤田進君。
  10. 藤田進

    藤田進君 私は、日韓基本条約外協定あるいは交換公文その他の審議に入ります前に、いまわが国国内で、ほうはいとして問題になっている国会のあり方について、佐藤総理総裁にお伺いいたしたいと思います。  衆議院段階におきましては、十一月一日、さらに六日、十二日の衆議院会議が御承知のような事態になりましたことは、まことに遺憾であります。これらに対する佐藤総理の見解、所信、あるいはその他のことについて、総理はいまだに公式に発言をされたということを聞いておりません。ここに、参議院日韓関係特別委員会の場を通じて率直に、またその腹から出るいわゆる所信というものを私はお伺いをいたしたいと思うのであります。  御承知のように、かつて岸内閣における安保条約締結に関連する事態というものの反省があり、池田総理はこのあとを受けて、「寛容と忍耐話し合い政治」を主唱されましたが、その間、議会運営については若干の問題はあったとしても、確かにその信念を大きな意味では貫いてこられたと私は思っております。このあとを受けた佐藤総理は、就任早々昭和三十九年十一月の二十一日、土曜日における参議院会議でも、またその前の衆議院会議においても、この政治姿勢に触れた所信表明がなされているのであります。今日顧みますと、いささかも、施政方針なり所信表明という形で国内外に表明せられたことがそのまま実行に移されていない。いな、逆にかかる事態を引き起こしているように思われてなりません。  そこでまず最初に一問お伺いいたしますが、佐藤総理としては、国会その他公式の場におけるその意思の表明所信表明というものは、いささかも変更なくこのことを忠実に実行するという、いわば公党間における約束を含めて、言っていることと実際にやっていることが食い違うということでは、これはつかみどころがない。まず最初にこの点について、前回の参議院予算委員会でも、約束したことが全然食い逃げとか、ほごになっているのはどうかという論争もいたしましたが、この段階において以上の一点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。過般の参議院会議質疑に際しましてもお答えをいたしましたように、私は、今日最も大事なことは、私どもの手によって民主政治を守る、その意味において議会政治、これを守り育てていくことだ、かように私は考えております。今日最も大事なこと、また最も国民の関心のあることはこの点にあるだろう、かように思っております。この点から見まして衆議院における特別委員会審議あるいは決定、さらにまた本会議における採決、こういう点は私もまことに残念に思っております。ただいま申し上げるような民主政治、また議会政治、制度に徹する、こういう観点から見まして、かような異常な処置をとらざるを得なかった事情につきまして、これはたいへん私は残念に思っておる次第であります。ただいま私の施政演説その他を引用になりました。私は今日ももちろん「寛容と調和」の大事なことは心から痛感しております。ただいまの衆議院審議等についてのお尋ねでございますが、これは参議院として他院の審議についていろいろな批評がましいことを申し上げるのはどうかと、かようにも私は思いますが、私自身、お尋ね総理総裁と、こういうようにことばをつかい分けしておられますので、私は政府としてお答えするというよりも、自民党総裁としてただいまのような所信であることをこの機会にはっきりしておきたい、かように思います。
  12. 藤田進

    藤田進君 私ども参議院存在意義はいろいろございます。ことに衆議院における行き過ぎをためる、足らざるは補う、ここでもって衆参両院をもって構成する国会意義が生まれてくると思います。衆議院における事態だからといって、これに目をおおって一切これに関知しないという態度参議院はとるべきではないと信じて疑いません。衆議院のかかる強硬な自由民主党による法規典例を無視したやり方というものは逐次明らかにしてまいりますが、この結果として日韓条約については賛成だというそういう立場の人も、いかにもあの衆議院やり方は、そのような賛否を超越して許しがたい、民主政治の破壊である、独裁政治であると極論する人が多い。そして新聞等の報ずるところによりましても、憲応大学の先生が、このような国会に対して私は死をもって抗議すると言って出ていき、十六日付でその遺書も送られてきているようなことは、これは総理としても御承知かと思うのであります。参議院のみならず、衆議院も含めて国会はいまこそ国民の前にえりを正して憲法にのっとり、国会法国会規則、多年積み上げてきたところの先例、慣例、そうして話し合いの上に実ののった審議を重ね、結論を出すということを期待している時期であろうかと思うのであります。  そこで、総理答弁をただいま伺いますと、どうもおやりになっていることと、いま答弁なさることとのしっくりしたつながりが出てこない。総理は先ほど指摘いたしました三十九年、昨年の十一月の二十一日の衆参両院における所信表明の中で、これは相当長いからその部分だけ、議会政治姿勢に対する部分だけここに読み上げて思い起こしていただきたい。総理は、「私は、政治基本的な姿勢を、寛容と調和に置き、あらゆる分野において、民主主義が正しく実現されるよう努力し、国民とともに進む政治を行なうことを信条といたします。国民の一人一人が新しい内閣に何を求めているか、時代が要求するものは何か、これを正しく把握し、それを愛情と理解をもって実践に移してゆくことこそ、政府の課題であり、政治の根幹であると思います。」、ところが、一片のこの所信表明では、はたしてその内容はということで、たまたま参議院の本会議において、まず最初に私が立ちまして総理にただしております。これを見ますと、私はその本会議で、「次に、佐藤総理基本的政治姿勢についてであります。今度は寛容と調和に置く、こう言われております。忍耐忘れている、いや、それは寛容の中に入るということが、昨日明らかになりました。そこで、調和ということについてであります。今日きわめて重大な意義を持つであろう一国の総理が唱えるこの「調和」は、昨日の御答弁では、たとえば議会において、与野党対立の中においてはその前進進歩はないんだ、これをお互い調和永めていくんだという引例をされております。しかりとすれば、調和にはお互い話し合いもあり、歩み寄りもあり得ると思うのであります。やがて十二月一日、自民党総裁にも指名せられるのであろうかと思うのでありますが、この国会における運営の場において、従来問題になった、一方的に中央突破強行採決あるいは単独審議というようなことは、よもや、この調和基本とする佐藤内閣態度の中からは出てこないと思うのでありますが、いかがでございましょうか。」、これに対して、佐藤総理はもうお忘れになっておると思うので、読んでみます。佐藤総理は、「寛容、これこそは民主主義の当然の姿勢だと思います。もちろん、寛容と忍耐と、かようなことを申しますが、その忍耐は、寛容のうちに忍耐が入っておると思います。私は、さらにこれにつけ加えて、「調和」が必要ではないか。民主政治実現、その目標に向かいましてこの調和をしていく。これは個々の対立、あるいは個と総体との対立、これをなくしていくところに真の自由があり、お互いが民主的に運営し、生活を向上さすゆえんだと思います。したがいまして、この調和これは、明るく、楽しい国民生活を実現していく上に、最も大事なことだと思います。私は、特に、調和と申しますか、あるいは積極的に調和をはかる、こう申しますよりも、不調和をなくしていくということに特に力を入れてまいりたいと思います。  この意味で、まず国会正常運営、これは当然なことであります。在来からしばしば、話し合いの場ではお互いに話し合って、そうして結論を出していく。話し合っても結論が出ないと、こういうことでは、民主主義が育たないのであります。」、話し合っても結論が出ないというようなことでは民主主義が育たないのでありますと、こうあなたは言っておる。  さらに私の申し上げたいのは、「過去におきまして、あるいは単独審議だとか、あるいは強行採決だとか、かようなことがしばしば行なわれましたが、私は、民主政治のもとにおいて、かようなことはまことに忌まわしいことだと思います。私のとるところではございません。」と、その他省略いたしますが、このことを議会をはじめ天下に公約されたことはこれは間違いございませんか。 まず念を押しておきます。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず、その答弁を確かめられますが、私の考えには変わりはございません。私はその中で申しますように、話し合いをするということ、これは大事なことだと、かように指摘しております。話し合いがつかない場合、一体単独採決などは、これは私のとるところではない、これが私の考え方でもございます。  私は、過般衆議院特別委員会採決が行なわれました後に、社会党の諸君が官邸にお見えになりました。そうして五十人ばかりお見えになりましたから、どうかひとつ代表を出してください、こういうことで、その中の約七、八名の方と会談をいたしました。そのときも、ただいま言っておるような、強行採決けしからぬじゃないかというお話がございました。しかし、こういう事柄はとにかく経過をよくお考え願って、お互いが鶏が先か卵が先かよく考えようではないですかと、こういうことを申し上げましたが、これは私が公式の席で申したことではありませんが、官邸にお見えになりました方々に私が答えたところであります。そうしてしばらくいろいろ懇談をしたのであります。私は、こういうことは大事じゃないか。  御承知でもあると思いますが、絶対に成立ささないのだと、かような話し合いの余地のないような場合一体どうするのか、これこそは民主主義のたてまえから、やはり多数決の原理によってきめるのが筋ではないか、かように私は思います。そういう点は十分やられておらない。そういう点におきまして、私も非常に遺憾である、不満だ、かように私はいまなお変わらないのであります。  今日大事なのは民主主義民主政治を守ること、議会政治を貫くこと、かように思います。国民の非常に素朴な考え方から申せば、どうして会議の進め方がもっと事務的にできないのか、こういう事柄ほんとうに簡単じゃないか、どうして事務的にできないのか、あるいはまた、審議を始めたらどうして実質的な審議に入らないのか、これが国民大多数の気持ちだと思います。  私は、率直にその二点を御披露いたしまして、ただいまのお尋ねに対するお答えともいたしたいと思います。
  14. 藤田進

    藤田進君 その寛容、調和にふさわしくない、いたけだかな相を変えての御発言は、まことによろいがちらちら下に見えておることを証明いたします。  さて、佐藤さん、実質的な審議に入ると言っているところを強行に打ち切った、これは一体だれなんです。十一月の一日まで衆議院段階においては、社会党は次々に質問者を通告し、質問を継続してきた。これはお認めになりますか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に私いたけだかにはなっておりません。平静に、また笑いを含みながら申し上げております。  私が申し上げたいのは、ただいま衆議院において審議が非常に短かったと言われる。それでわずか八日しかやられないというのが……。
  16. 藤田進

    藤田進君 そういうことを言っておりませんよ。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまはお話しになりませんが、いままでの話し合いはそうなっておる。  そこで、衆議院におきましては、二十日間空費したことは、私はお忘れじゃないだろうと思います。また、一昨日もこの席でいろいろ議論され、参議院でももう十日過ぎたということを言われました。私は、こういう点が、ただいまの、やはり国民大多数から見た、ほんとうに一日も、また一時間もむだにしては惜しいじゃないか、どうして実質審議に早く入らないのか、こういう気持ちだろうと思います。私は、参議院においては、衆議院の非、また非難を受けておる、こういう点を、参議院では、これはもう良識の府だといわれておりますから、そういうことのないように、これはりっぱに審議を尽くしていただきたい、かように私は思うのであります。  ただ、そういう点、十分国民皆さまも御理解されておられますから、また、社会党皆さま方も、参議院衆議院とは違う、こういうお話でもありますので、私は十分話し合いもできるし、また、審議の足らなかった点を参議院では尽くしてやろう、こういう御気持ちだろうと思いますので、私ども気持ちを新たにして、この席におきましては十分審議を尽くすようにお答えをしたい、かように思っておるのであります。どうか、ひとつよろしくお願いいたします。
  18. 藤田進

    藤田進君 簡単に言われますが、不良少年でも真人間になったようなことを言うが、また累犯ということになるわけで、佐藤総理はそうじゃないかと思うのですが、私がいまお尋ねしていることにお答えなさいよ。二十日間空費した、参議院で十日云々と言われますが、これはあげて自由民主党政府責任じゃないですか。そのことを伏せておいて——ども、この特別委員会を受けたのは土曜日ですよ。土曜日からずっと手はずをきめてやっているじゃありませんか。私がお尋ねしたのは、十一月の一日までは軌道に乗って質問をやっていたんです。そのことを認めますか、と言って聞いているんです。衆議院特別委員会が開かれ、さらに言うならば十一月の一日になって、自由民主党抜き打ち緊急動議公聴会を否定して参考人を呼ぶというやつをやってのけたんでしょう。公聴会を開くという方向で理事会話し合いがついて、そこへ突如として、一方的に抜き打ち可決がやってきたんですよ。ところが、これは社会党の襟度でもって話し合いをし、そうして、参考人は一応呼ぶこととし、四日に呼ぶことにしよう。しかし、公聴会公述人ということも考えよう、それはやることにしよう。文書にまで書いて、自民党社会党の間にはこのことがきめられていたんでしょう。その事実は御承知ないでしょうか。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭に、総理総裁と言われたのは、総裁としての、たぶんお尋ねだと思います。私は、特別委員会の詳細な運営については一々関係しておりません。これは理事諸公でどういう話し合いをしたか、とにかく、軌道に乗っていたということだけは、私も了承しておりますし、そういう意味では、たいへん都合よく進んでいるな、こういうふうに感じておった次第でございます。
  20. 藤田進

    藤田進君 何か答えにくいところは、いや、総理としてはどうだ、総裁だからどうだと、あいまいにされますが、わが国憲法の明定するところにより、国会は成立しているんです。これは御承知でしょう。そうして、議院内閣制であることも御承知のとおりです。政党内閣であることも御承知のとおり。ですから、内閣総理大臣は即党首である。今度の池田さんとあなたのバトンタッチは、総裁が少し一足おくれましたが、党大会都合で。それは特殊な事情であって、議院内閣制であり、政党政治であり、与党と野党の対立の中に審議が進められていく。これはあなたは否定しないでしょう、どうですか。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは否定いたしませんが、ただいま申しますのは、詳細な点にまで一々存じ上げておらない、こういうことを申し上げているつもりであります。
  22. 藤田進

    藤田進君 詳細に、きょうはだれが何を言い、総理が何を答弁した——速記録を読むようなことは、それは無理だと思うから、議会が正常に行なわれているかどうかという大きなポイントだけは、十一月の一日、さらに六日、十二日の本会議、この三つぐらいのあらましは、総理総裁が知っていなければならぬでしょう。この場において、議会に対して、あるいは国民に対して、あれはそこらのわが党のだれがやったのだ、おれは知っておらない、そういう無責任態度はない。党のだれが、機関のだれがやろうと、最終責任党首になければならぬでしょう。どうでありますか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま仰せのごとく、論理的には総裁が全責任を持たなければならない、これはお説のとおりでございます。ただ、ただいまお尋ねの点がどういうことかと思いますが、先ほど答えましたように、十一月の一日の状況、これは私はたいへん都合よくいっているな、かようにお答えいたしたのであります。その詳細については私は詳しくは知らない。かような状態でございます。しかし、私が知らないからといって、総裁である責任を免れる、こういうような立場ではございません。その点は御指摘のとおりでございます。
  24. 藤田進

    藤田進君 一日の状況は、まあ非常に都合よくいっているな、その考え方が実は根本——自由民主党という横暴な政党の総裁としては、都合よくいっているなということにしか受け取れないのです、そうでしょうが。質問は継続されていて、話し合い理事会でされて、経過をあらまし申し上げると、話し合いはついている。そうして公聴会も開こうというときに、自由民主党の機関のほうからきたものとみえて、いきなり四日に参考人を呼ぶという強行可決を、どやどやの中にやっている。それが都合よくいったと、あなたおっしゃるのですか。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこが、先ほど来から議論されていると思います。私は、どこまでも話し合いをつけたい。しかし、話し合いがいつまでもつかない。そういう状況ではいけないのです。とにかく話し合いをつける。そのためにやはり理事会なりあるいは委員会が多数決原理というものを尊重して、最後はそこへいく。これは民主主義のルールだと、かように私は考えております。いつまでも話し合いだけだというわけにもいかない。だからやはり理事会などが正式に開かれて、そうして委員会採決される、こういうことはやむを得ないのじゃないか。なるべくそういうことをやらないように、委員長さんもできるだけ各理事の意向を聞いて、そうしてまるくおさめたいといっておられるのです。どうしてもその点がつかない、こういうことになると、やはりあるときには多数決によらざるを得ない、かように私は思います。
  26. 藤田進

    藤田進君 事実を正当に正しく認識しないで御答弁をされているから、そんなような答弁になってしまうんです。話はついているのです。話がつかないから、もう何日たってもどうしようもない、やった——しかし、それであってもあのようなやり方は許さるべきではないと、世は言うのであります。われわれもそう思う。十一月の一日は、理事間に話し合いをするといえば、委員会では委員長理事懇談会あるいは打ち合わせ会、委員長理事会、こういう形で話が進められて、そうして参考人を四日に呼ぶと、突如と出てきた。これはもう許さるべきじゃないです。そうしてしかも、そうではあるけれども社会党は、公聴会を開いて、これだけ重要な案件だから、賛成にしろ反対にしろ、国民に周知していただき、意見を求めるという意味で、参考人強行採決ではあり遺憾であるけれども、さらに前進をはかる意味公聴会公述人も呼ぼうということで、与野党間に話し合いがついて、文書で、それをやるのだということがきまったのです。ところが、依然として話し合いであり文書で取りきめたことまでほごにしていったというところに問題が、まず十一月一日からこれはこじれてきているのです。これはいかがです。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま藤田委員お話では、話し合いはついたというようにお話しですが、私が聞いておりましたのは、どうしても公述人を呼ぶことについての賛成は得られない、したがって、自民党だけでそういう者を呼びたい、こういうことだったように私は思っております。したがって、ただいまその線を、どの辺から自民党だけの考えになったのか、どの辺まではお話し合いができていたのか、そこのところは私はつまびらかにしておりません。
  28. 藤田進

    藤田進君 それは事情が違います。ちゃんと記録がものをいっているのです。文書に書いてまで話し合いがついているということで、全然あなた触れてないですね。話し合いがつかなきゃもう、民主的なルールとおっしゃるけれども話し合いがついていたものまでぶちこわす、それはどうなのかと言えば、事実をよく知らぬがとおっしゃる。それではこの辺でひとつ、官房長官はその間の事情を知っているはずなんで、事情を、事実だけをひとつここで開陳していただきたい。
  29. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 当時の特別委員会理事会には官房長官も出席は許されませんので、その間の詳しい事情承知いたしておりません。ただ御承知のように、その後もいわゆる質疑は続けられたのでありますからして、おっしゃるような不信行為が行なわれておったとは考えておりませんが、私自身も理事会に出席を認められませんから、その間の事情は私も承知いたしておりません。
  30. 藤田進

    藤田進君 いやしくも議会に提案をし、政党内閣で、官房長官、総理は、刻々重要な案件、議会運営については協議をしてやっていく、これもわれわれも当然だと思うから、本日韓特別委員会理事会参議院のこの委員会でもしばしば与党に、与党理事から官房長官あるいは総理に出席、あるいはその他のことについては緊密な連絡をとると言うし、とってくれと言っている。全然それではあれですか、衆議院段階ではそういう運営については連絡もないし、したがって知らないで、来いといわれれば来ただけのものだと、そうしか受け取れないのです。それは事実と違いはしませんか。
  31. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいまお話しでありまするが、もちろん、政府理事会に呼ばれる場合は、その提出した案件についての説明、あるいは政府関係の問題については、招致されて説明することがあります。しかし、委員会運営に関しては、当然これは委員長を中心にして理事会で行なわれるべきものでありますから、一々われわれのほうと話し合いをつけてからこれを行なうというやり方をいたしておらないのが通例であります。もちろん、それは反聞することはあり得ます。その点はしたがって私どものほうが、当時の具体的な事情承知の上、政府がこれを了承した上でやっておるという事実は従来ともにあるわけでありますので、その点を御了承願います。
  32. 藤田進

    藤田進君 非常にあいまいな答弁ですが、これは答えにくい点であろうかと思うのです。そこで十一月の一日に参考人ということで、四日これを開くという強行採決をやってのけて、あと約束があったから質疑は継続した。公聴会を開く、公述人も呼ぶということについては、これは政府の日程とも関連することなんでお聞きになっていると思う。文書にまで書いて約束をしたのに、これをほごにしてしまったというのはどういうわけです。総理
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは先ほど来お答えしておりますように、私はよくその間の事情を知らないのです。それで、私がお答えできない事柄であります。
  34. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。最初総理藤田理事にお答えになった中に、他院のことであるけれどもということを少し言われました。しかし、私はこの点はひとつ根本的に総理としては考えを改めてもらいたいと思う。現在の衆議院のあの事態、これはひとり衆議院だけではなしに、全国民が注視をしておるわけであります。いわんや参議院は同じ国会であります。これを他院のことだからというふうな考えがいささかでもあったら、現在の事態に対する根本的な国民の苦しみというものが総理にはわかっておらない証拠じゃないかというふうに私は思うわけです。本日はそういう立場でわれわれも、これは他院のことだということは、形式的にはそんなことは十分わかっております。しかし、他院であっても、しからばこれを公式に論議できるのはどこなのか、これは参議院だけしかないじゃないですか、現在。こういう問題は裁判所に持ち出したって、これは過去若干の例がある。(笑声)何がおかしいのだ、静かに聞け。裁判所が取り上げないのです、御承知のとおり、院の中のこととして。それでは公式的に取り上げられるのはこの場だけじゃありませんか。そういうつもりで私も、これは午後藤田君と少し違った角度からあなたにお聞きしたいことが多々あるわけですが、そういう立場でひとつ真剣に考えてほしい。そこで、議論の進め方というものは、まず事実関係がはっきりしませんと、これはいいか悪いか、そういう価値判断というものはお互いできないわけであります。そういう立場から藤田君のほうで、私は、執拗に、問題になった時点だけを特に明らかにしたいということで尋ねておることと思います。何もだらだら審議するとか、そんなことではない。衆議院の経過を全部ここで一応やろう、そんなばかげたことを考えておるのではない。世間が問題にし、マスコミも注視をしたその時点だけは少なくとも明らかにしなければいかぬのじゃないか、こういう立場で追及されておるのです。  そこで総理は、どうも都合の悪いことになりますと、知らないような意味のことを言われますけれどもほんとうに知らないのであれば、総裁として、その当時の事情をよく知っておる自民党の理事なり、そういう方をここに呼んでもらって、そうして知らないところは聞いて事情を明らかにするようにしてほしいと思うのです。その上に立って私はこの国民の批判を仰ぐべきだと考えます。事実があいまいなんじゃね、先が進まないわけです。そういうふうにひとつ、これは委員長としても大いに審議を深め、するためには、そういうふうな計らいをやってもらいたい。ただ両方のやりとりをちょこんと聞いておるのが委員長の役目ではございません。考えてもらいたい。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかく知らないことは知らないので、これは知らないものをどうこうとお責めになりましても、それは無理だということは先ほどお答えしたとおりであります。ただ、私はいま亀田さんからお説をいろいろ拝聴いたしたのでございますが、ただいまの立法府、それはもちろん行政あるいは司法とこれは分かれておる。同時に、また立法府におきましても両院制度がある。そしてそれぞれが独立の立場で独立な考え方運営をしておられる、かように私は思っております。ただいま衆議院においての遺憾な事態を究明することがこれは必要なんだ、こういうふうに仰せられておりますが、これは大体参議院皆さま方のそういうお考えは、私がとやかく、間違っておるとか間違ってないとか、正しいとか、そういうことを、よけいなことを私は申しません。これは、内閣がそういうことを言うべき筋のものじゃないと思う。これは議員の皆さん方がおきめになればいいと思いますが、ただ私自身が自民党総裁をしておる立場から考えてみますると、これもやはり、その適当な処置というものがないと、たいへんな議論になるのではないだろうかと、私は思うのであります。で、ただいま、衆議院の、普通の考え方は、衆議院の行き方は、どうも国民の期待に沿っておらない、かように思うから、おれは参議院の議員として国民の期待に沿うような運営をやりたい、審議を尽くしたい、こういうのが私は参議院の良識ある皆さま方のお考えじゃないだろうか、かように私は思うのであります。ただいま、理事を、その間の事情をよく知っておる理事を呼ぶとか、こういうようなことは、私がお呼びなさいとか、あるいは呼ぶことに私も協力しますとか、こういうような筋のものではなく、これは、この委員会で十分御審議をいただけばいいことだと、かように思います。私が冒頭に亀田さんの御高説を拝聴したというのは、ただいま申し上げるような、私自身の個人的な考えはあるのでございます。ただいま申し上げるのは、どこまでも個人的な考え方総裁としての私の考え方というものを申し上げたのでございます。これが何らかの参考になれば、たいへんしあわせに思います。
  36. 藤田進

    藤田進君 それは実質的審議をあらゆる面で深めていくということに御賛成ならば、あらかじめ政府の事務官から、あなたはどういう質問をしますかという問い合わせがあり、総理における心がまえ、勉強ということもあって、本日私は何をどのように質問しますということはすでに通告、連絡済みなんです。亀田委員が指摘するのは、いまここですぐ委員会として、だれを参考人に呼ぶというところまで——これはまたある段階でいかなければならぬかと思うがですね、しかし、総理が知らない、知らないでこれを切り抜けようということでは、国民から見てさっぱり何のことかわからないから、せめて総裁として、つまびらかに勉強してきていないとすれば、これはけしからぬことだけれども、適当なそういう人を総理総裁としてお呼びになって、どうだったんかい、藤田質問ではこう言っているがどうかということを、あなたが聞けないわけがないです。ここの委員会で決議する必要がなしにですね。それぐらいな誠意と誠実さがなければ、前進を見ることはむずかしい、この質問は。あなたは、それはとくと聞いた上で知らないとおっしゃるのか、その上に立っての事情を聞いた上で答弁をしようという熱意があるのか、その辺が私にはのみ込めないのです。それだけのあなたはポイントだけはちゃんと勉強して臨まれると、私は信じていたのです。だから、聞いていた亀田委員から、事情をお聞きになったらどうですかと言うのは、これはきわめて当然じゃありませんか。いかがです。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 前もって質疑応答、どういうことをお尋ねになるというようなことは実際伺っております。私は、たいへん失礼なことですが、ただいまの特別委員会運営の問題というよりも、これは大局に立って、国会のあり方あるいは特別委員会のあり方、また審議のあり方、あるいはその決議のあり方等々についてのお話ではないか、かように考えて、一応勉強してまいりました。しかし一日のその日の議事はどういうように進んだのか、ここまでの実は私検討しなかったことは、たいへん申しわけございませんが、しかし、一々その点まで詳細に突っ込むよりも、もっと大局的なお話にひとつ話をしていただけないものか。これをお願い申しておきます。
  38. 藤田進

    藤田進君 まあそのすねの傷にはなるべくさわらないようにということかもしれないが、事実認識を、これをまずお互いが一致させていかなければ、議論は空転するのです。根拠のない議論、質疑応答になるのです。十一月一日の事情は、まだ参議院は継続して審議をするわけですから、引き続きいまでも、すぐでも、ひとつそういう適当な人を呼んで、総理自身が確かめられる必要があろうと思う。私の申し上げることがそのままのみ込めないとすれば、自由民主党のあなたの傘下の人を呼んで、総理みずからが聞かれたらよろしい。  で、次の十一月、本月六日の、日韓のすべての案件を特別委員会で、衆議院は、全くもう一、二分あるかないかで、何が何かわからないうちに可決したと称している点であります。これは国会法規、先例、慣例に従っておやりになったと言えますか。質疑の通告はあり、質疑が継続し、次はだれがやるという話し合いがまとまり、横路君なり、岡田春夫君なり、予定されてやるのだと言っておきながら、突如として案件に対する討論の通告がない、よって討論は省略する、採決だというようなふうにあとで言われているのです。そのようなことが言われたかどうかも、全然証拠もないし、当時の模様から見れば、議決の体はなしていない。これは非常に、委員会通過という事情であり、総理もその席にはいたはずですから、これは知らないとは言わないはずです。しからば、六日の特別委員会における衆議院事態について、これを議決したと称するが、話し合いをし、まとまっていたその質疑者を排除して、一気に、賛否討論もさせないで可決したと称するこの点についての所見はどうです。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、いろいろの質疑が続けられていた。しかし、適当なところで質疑打ち切りという動議が出た。かように私は当時の特別委員会を見ております。したがって、この質疑の打ち切りの動議が出る、あるいはその他の動議——いろいろ委員会の運用、運営にはつきものでございますから、そういうことはあり得ることであります。その動議がこれが多数決によって採決される。そうして同時に、この質疑の打ち切りの動議、次に続いて採決の動議等々が出て、当日はそれぞれの所定の手続を終えた、かようになっています。この点は、その動議提出者の何は、話は、あの混乱状態でございますから、なかなか聞き取れなくて、しかしながら、委員長はちゃんとこれらについてそれぞれ適当な処置をとり、そのほうは速記に非常に明確に載っております。このようなことを考えて、ただいま申し上げるように、当日の特別委員会は議事を終了した、議決を見た、かように私は思っておるのでございます。
  40. 藤田進

    藤田進君 そうすると、冒頭確認をいたしました総理所信表明は、今日、現在いささかも変わっていない。つまり総理は、「過去におきまして、あるいは単独審議だとか、あるいは強行採決だとか、かようなことがしばしば行なわれましたが、私は、民主政治のもとにおいて、かようなことはまことに忌まわしいことだと思います。私のとるところではございません。」、与党を引きつれてのあなたのとるところではないということと、質疑者の時間なり、その順位もきめて質疑をやっている。つまり話し合いのもとに行なわれているときに、突如として何の連絡、話し合いもないままに委員長採決した。これはあなたのとるところではないのじゃありませんか。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のとるところではございません。まことにそういう意味では残念なできごとだ、かように私感じておる次第であります。
  42. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、総理総裁としては、天下に所信表明をなされた、いま読み上げたその気持ちは変わりはない、したがって、私の問いに対しては、あのようなことはとるべきではなかった、まことにあのやり方は遺憾であると、こうおっしゃるわけですね。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えしたとおりでございますが、しかし、そういうことになったというそれについては、お互いに十分考えなきゃならない。これがいわゆる私が鶏が先か卵が先か、そういう議論じゃないのか。だからこういうことを二度と繰り返さないようにひとつやろうじゃありませんかということを、ただいま野党の諸君にも私は呼びかけておる次第でございます。もともと一方だけが悪い、一方だけが不都合だ、こういうことできめてかかるところに無理があるのではないだろうか、私はさように思います。
  44. 藤田進

    藤田進君 鶏が先か卵が先か、そんなことを聞いているわけじゃないし、その当時の事情はそういう実態じゃないでしょう。あなたもその特別委員会におられたわけですから……。次の質問者の予定も、また現在質問もやっている。じゃ、そうしようということで委員長理事会でもきまって質疑をやっているんです。それを突如として採決するというのは、鶏も卵も、そんな議論に入ってこないのです。あなたは話し合いを続けるべきだ、話し合いでまとめていくべきだと、これがあなたの信念、本旨だとおっしゃるわけです。そうして前段の答弁では、したがってああいうことは、私のとるところではないと言ったわけです。社会党は、それではあの段階で、十一月六日の特別委員会事情で、どうしても動議を出して質疑を打ち切らなきゃならなかったと、そういう事情があったとすれば、それでは説明してください。鶏が卵か知らぬけれども。そうじゃなしに、あなたのほうは、特別委員会はどうしても六日前後に何はともあれ押し切って、そうして本会議は少なくとも十一日にはこれを押し切っていかなければ、十二月十三日の会期末まで、参議院を含めて自然成立というこの至上命令というか、佐藤さんの、そういうものにスケジュールを合わすために、もうすべてを排除してやったと、こう世間は見ている。われわれも見ているのです。ちゃんと話し合いもあり、質疑も継続している最中に、これを押し切って、何が何だかわからないというのが実態じゃありませんか。とすれば、あなたの所信とは違うのです。事実問題についてお触れになりませんが、どう認識しておられますか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、率直に私感じるのは、当日その日にこういう事態が起きたわけじゃございますまい。おそらくこれは特別委員会ができる、あるいは提案以来の一貫した状態ではないか。そういう意味では、自由民主党もたいへん寛容に徹したのではないか、私はかように思います。ただいまいろいろのスケジュールのお話がありますが、私は必ずしも六日でなきゃならないとは思わない。いまの参議院一カ月にいたしましても、まだまだ日数はあった、あるように思います。したがって、そういうのが、特別委員の諸君が動議を出すに至ったこの気持ちなり、あるいは委員長採決をしたという、こういうところは、それは十分与野党の攻防の全体を把握しないと結論が出ないことではないか。だから私は、そういう事柄は、これは委員会がきめることでございますから、委員会で私はそういうことが審議され、そうして決定を見るのではないか。政府はどちらかというと説明の場合にあるものでございます。私は、なるほど党の総裁ではございますが、そういう点は幹事長に大体まかしてございますから、この国会運営は幹事長、国会の場におきましては幹事長、また私どもが説明……、政府としての責任を持つ、こういうことで、国会が開かれますと、それぞれの立場で、それぞれの分担を行なっておるのがいまの実情でございます。ただ、先ほど来言われるように、私は総理あるいは同時に総裁だ、したがって総裁としての責任はどうかと言われれば、私は全体として責任を持ちますと、こういうことを申し上げておるのであります。何をかその責任を回避しておる、こういう立場でないことだけは御了承いただきたいと思います。
  46. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。総理に具体的に、当日のことにつきまして端的に聞きたいのです、鶏とか卵とか、そういう、問題を複雑にしないで。といいますのは、当日は社会党の横路委員が韓国の対日請求八項目、これを中心にして質問をする。このことは自民党の理事も了解を与えていたわけです。与えていた。それが六日の朝、突如変えられておるわけです。破られておるわけです。私は、与野党お互い政治的な立場が違うと、いろいろお互い戦術を尽くすということは、これはあります。しかし、どんなに戦術を尽くしましても、約束というものが信頼できない、こういうことになったら、これは私は一つのまとまった国ではないと思う。一つの会議体じゃ私はないと思うのです。これは戦術以前の問題である。法規にどう書いてあるかないかとか、そういう問題じゃないんです。それが法規に合っておればいいとかどうかとか、そういう問題じゃない。そこを私たち言っておる。それをどう思うか、約束という点。これは一日の問題以上に明確な約束なんです。われわれもはっきりその報告は国対委から聞いておる。いや、そういう約束がなかったというようなことになりますと、これは事きわめて重大。われわれの国対委員長が、われわれに間違ったことを報告したことになる。そんなことはないと思います。その点を総理は一体どういうふうに認識していたのか、これをひとつ、まずその約束があったと見ておるのか、ないと見ておるのか、その点をまずはっきりしてほしい。  関連だからもう一点言います。二つ一緒に言うと、よくごちゃごちゃにしてあなた答えるから、ほんとうは一つ一つやりたいのですが、一緒にしないではっきりしてほしい、知っていたかどうか。  もう一つは、当日総理は、午前十時過ぎ委員会に入ってこられました。一体、委員会に入ってくるときに、横路君の質問を受けて、これに堂々と答えるということ、そういう気持ちをもって入ってこられていたのかどうか、この二つを区別していただきたい。その答弁によってまた聞きます。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは一と二を分けていらっしゃるが、私は一緒だろうと思うのですが、当日、私どもは横路君が聞く、質問する、こういうことで、横路君の質疑通告は受けておりました。準備をして出ていきました。その事実を申し上げておきます。だから……。
  48. 亀田得治

    ○亀田得治君 約束があったことは知っていますね。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げるように、私どもは約束があったかないか、それは知りませんよ。知りませんが、とにかく横路君が聞くものだ、また、聞くということで通告を受けて準備をして出ていった。だから、それは約束があったのだと私は思いますが。約束がないものに私のほうから準備をしてまいりませんから、そのとおりでございます。その一事だけ申し上げておきます。
  50. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう、ほんとうにあなたが質疑打ち切りが出るなんということは知らないで、そういう気持ちで行ったとするのであれば、なぜあなたは自民党総裁として、ちょっと待て、この一言がその場で出ないのです、さっきから藤田君が盛んに言っておる所信表明と違うじゃありませんか。そういう際にこそ、総裁としての指導力を発揮すべきじゃありませんか。何でそれが出ないのです。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこになるとおしかりを受けるのですが、私は国会運営あるいは委員会運営委員長のやることだと、かように考えておりますので、そういう議事外から総裁だ、あるいは総理だと、こういう立場で発言することはいかがかと思います。そういうことは私はしません。
  52. 藤田進

    藤田進君 それではあなたが実際に行動の上であらわすための所信表明——強行採決、いわんや抜き打ち採決、そういうことはいたしませんということは、党のあらゆる機関に徹底をし、具体的問題についての成り行きもよく注目し指導をする、そういうことがなきゃならぬはずです。本会議において天下に所信表明したことは、ただそれだけで終わったということなんですか。私は、あなたのことばじりをとらえるわけではない。実態的に見て、あなたは答弁をしなきゃならぬ質問が継続するものであると認識してその委員会に入る、ところが突如として自由民主党の側から出てきたので、動議が、委員長が出したんじゃないのです。ですから亀田君の所論というものは成り立つわけです。具体的にあなたは、その所信表明をどう生かしていこうとされてきたのか、今後もされようとするのか。そうでなければ、本会議委員会を通じて内閣総理大臣政党内閣のもとにおける総裁でもあるという人を相手に取りかわしてみても、何の意味もないことになるのであります。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは何度申しましても変わりございません。私の所信表明に申し上げたとおり、ただいま一番大事なことは民主政治を守るということだ、議会政治を貫くということだ、かように思いますので、私の党員諸公はよく私の気持ち、私の考え方を丁承しておると思います。しかしながら、これはもちろん各党の協力を得ない限り、自民党だけでこのことはできるものではございません。多数党は多数党として何でもできるようなお考えあるかもしれませんが、しかしながら少数党も、少数党のやり方でも、これはやはり一緒になって民主主義を守ろうということでない限り、これはできないように思います。そういう意味では、ただいま私の所信、また御賛成がいただけるならその所信を貫くように、社会党の方も御協力を得たいと思います。
  54. 藤田進

    藤田進君 あなたは前段で、私は、参議院の自然成立というものを大前提としてものを考えたのではないかという問いに対して、いや、六日の段階で何もそんな事情はないとあなたは言明された、そうでしょう。だとすれば、話し合いのもとに質疑が続けられ、総理もそれを認識して委員会に入ったと、これもあなたは言明された。とすれば、少数党のほうの協力がどうかというもう余地はないのです。審議を深めるためにその議事進行をはかり、その意味においては協力をしている段階じゃありませんか。それが突如として打ち切りだ、わずか二分間、開会採決というような、それ全部含めてね。(「四十五秒」と呼ぶ者あり)四十五秒という説もある。そのときに、民主主義の本義に徹してあなたが実際にそれを行なわんとするならば、あなたとしては、全く取らざるところがここに出てきたという直感的なものがなければならぬはずです。その反省がなくてどうしますか。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、これは反省は大事だと思います。しかし、その場において、その席において、そういう反省が出るとか、あるいはそういうひらめきで動くとか、これは実は私はできなかったと、そのとおりでございまして、これは委員長がちゃんと議事を進行して、そして決定を見たのでありますから、ただいまいろいろ批判されて、けしからぬと言われる、これはもうおしかりを受ける。それより以上にはいかようなしかたもないように私は思います。
  56. 藤田進

    藤田進君 しかたがありますよ。安藤委員長は、自由民主党、あなたの党の一員じゃございませんか、どうなんです。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりです。
  58. 藤田進

    藤田進君 その場で、ああしまった、そうあるべきではないということが、あなたが思いつかなかったかのような御答弁ですが、かりにそうだとしても、委員長自由民主党のれっきとした党員であり、党の統制に服する、総裁所信を体してやるべき人である。これは党員として認められた以上そうあるべきでしょう、どうなんです。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 形式的にはそのとおりでしょう。
  60. 藤田進

    藤田進君 実質的には、それは何やってもいいんですか。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 実質的にはなかなか私の思うとおりに及ばない点もあるわけであります。
  62. 藤田進

    藤田進君 安藤委員長は、総理総裁が言えども、おれはそうは聞かない、与党から動議が出れば、議事のさばきその他は、委員長、議長に権限があると、十二日の段階ではおっしゃるわけです。事実問題として、安藤委員長が形式的にはそうであっても、実質的にはどうにも力が及ばないというのが、一体どこに原因があるのですか。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる現実的な問題では、一々私が指図ができない、こういうことであります。
  64. 藤田進

    藤田進君 それでは、六日のかような四十秒というか、二分間というか、その時間さえ明確にわからないような、瞬間的抜き打ちなんですね。そこで、これが遺憾だと、あなたの所信に照らしてみて、これは遺憾であるということであるとするならば、自後の処置について、当然与党が委員長を出し、動議を出しているこの実態から見て、あなた自身が党内において、まずこれは事態収拾としてこうすべきだ、かつてもかようなことがあったけれども、曲がりなりにもその事態は、その後の話し合い、与党の提案等があって、さらに前に進んだ例はたくさんあるのです。なぜ、あなたが遺憾だとするならば、自後の事態について、あなたの所信に照らして行動しなかったのです。  問題を単純化しなければお答えにくいようですが、しからば、六日に安藤委員長がとったああいう抜き打ち自民党採決というものをどう思っているんですか。あれはやはりやり方として適当でなかったくらいのことはあなたは思っておるんじゃないですか、あなたの所信があるのですから、いま確定したように。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、私この事態に対して、たいへん遺憾に思った、残念だというのは、ただいま申し上げるようなことでございますが、私は、本来、この国会運営が冷静のうちに審議を尽くしていく、こういうことが最も望ましいし、またそうありたい、そうなければならないと思いますが、しかし、あのときの動議の提出等から見まして、たいへん混乱している、そういうことも私が遺憾に、残念に思っておるその内容でもございますが、私はああいう採決をしなければならなくなったか、それについてはやはり委員長として、よほど苦心されたのじゃないか、ほんとうに機械的にやっただけじゃないだろうと私は思います。全体の委員会の空気、あるいは社会党協力、こういうようなものが、やっぱりにじみ出ておる、かように私は思うのです。こういう点をいまいろいろお尋ねでございますが、ぜひ、衆議院野党はともかくとして、参議院としては、そういう事態を重ねないように、われわれが最善の努力をするということであってほしいと思います。ただいまお尋ねになりましたのは、あるいは私は先に結論を急いでいるかわかりませんが、どうもただいま申し上げるように、当時の事態についてはまことに残念だったと、かように私は思います。
  66. 藤田進

    藤田進君 さて、その残念であるということであれば、議会史上に大きな汚点を残すことになる。したがって、総理総裁としては所信表明というそのあなたの基本的理念、内閣を組織した冒頭の理念というものが、今日、この二十四日の段階でも微動だにもしていないということが確認された以上、また当時ももちろんである、だとすれば、その事態の上に立って、なぜあなたとしては、党員に対する、あるいは議会委員会全体の収拾について手を入れなかったのですか。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん収拾等につきましては私は手を入れたと思いますし、党の国会対策その他もいろいろ話し合いを持つということで社会党に次々に呼びかけた、かような事実はございます。
  68. 藤田進

    藤田進君 どういう方向でどうすべきだというふうに手をお入れになりましたか。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、国会対策の委員長もおりますので、国会対策がまず第一に取り上げて、そして社会党にたびたび呼びかけた。会議を持ちたい、さらに党首会談も持ちたい、こういうようなことで次々に話しかけた。しかしながら、社会党の諸君からはそれに乗ってくださらなかった。こういうのが事実であります。
  70. 藤田進

    藤田進君 それは重大なあなたの認識の間違いじゃありませんか。当時は、船田議長が各党に申し入れがあり、社会党はこれに応じて、書記長・幹事長会談あるいは党首会談等については献策を社会党としてもしている。議長としてもその意向で取り運んだ。ところが、自由民主党田中幹事長に議長が話を持ち込んだところ、議事はうまく進行している、議長がいま出る幕ではないと言ってしかりつけているじゃありませんか。そこでぷっつりと話し合い自由民主党幹事長が断わってしまって、議長のいま出る幕じゃないというようなもとで話し合いがととのっていないのでしょう。これはどうなんです。
  71. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいまの御質問の前に、先ほど、藤田さんから、事情を聞いてこいというお話がありましたから、一日の日の事情を聞いてまいりました点を御報告申し上げます。  十月二十七、二十八、二十九、三十日、この日は審議を行なってまいったが、この間公聴会の扱いについて長谷川四郎その他理事より理事会にはかり検討してまいったが、話し合いがつかず、十一月一日午前十時、石橋社会党委員質問に入り、一たん休憩し、午後理事会において参考人招致の件を再三にわたり検討したが、ついに話し合いがつかなかった。そして、委員会は再開された。再開と同時に、やむなく荒船委員より参考人招致の動議を提出され、賛成多数で可決をしたものであると、こういうことに……。
  72. 藤田進

    藤田進君 そのあとは……。公聴会を開き公述人を呼ぶという……。
  73. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 公聴会を開くことについての話し合いはついていないように言うております。なお足らぬところはあらためて調査をいたしますが。  なお、先ほどの田中幹事長と議長との話し合いのことですが、もちろん政府としてその関係の報告は受けておりません。ただ、この問題はいろいろ御審議を願っておりまするが、私、政府の一応役員でありますから、役員の立場からものを申すわけではありませんが、従来の慣例から言えば、政府が今回の日韓条約関係等の案件並びに法律案を七十日以上ぜひ——これはもちろん国会できめるわけでありますけれども、七十日を要望したゆえんのものは、この間においてこの条約案件並びに法律案を可決してもらいたいという意図があるわけであります。したがって、従来の法案を審議される場合におきましても、私関係している国会運営の場合においては、当然大体においてこの案件についてはいつごろこういう討議が行なわれ、いつごろこれがいわゆる委員会採決、本会議採決まで行こうという話し合いがついて法案の審議が行なわれることが私はその方面におった場合においての経験であります。したがって、この特別案件におきましても、もちろんこれはいろいろ重要な案件でありますから、そこまでのお互い話し合いはつかぬにいたしましても、衆議院の場合をわれわれ政府側から見ておりましても、その日のことがその日にきまらない。したがって、三日、四日先までこれが検討を加えられない。これは異常なる運営と言わざるを得ないのであります。従来の国会運営の立場から言いましても、いわゆる大体のスケジュールというものは、与党側から、これは何日ごろにこれを上げたいと。野党はこれに対していろいろの意見を述べて、大体の方向が定まって論議をせられる。政府が七十日間の期間を置いたというものは、そういうスケジュールをつくってもらう上においてもお役に立つであろう。国際的な慣例をもってすれば、おそらく七十日、八十日というような長時間をいわゆる条約審議する例はないのであります。したがって、そういうことができなかったのは、先ほど来総理がおっしゃっておりまするように、その間に与野党との話し合いがつかなかった。これはまあわれわれ新聞で承るところでありますから、はっきりしたことを言うわけにはまいりませんけれども社会党は、いわゆるこの条約案を紛砕するのである、こういうたてまえをとってまいったところに与党と野党との間のスケジュールの話し合いがつきにくかったのではなかろうかと、かように考える点もあります。したがって、われわれといたしましては、何としても国際信義上の上から考えましても、なお十四年間の長い間審議審議を重ねた条約案でありまするからして、この臨時国会で通してもらいたいという念願でお願いをいたしておる点を十分に御了承願って、ひとつ参議院においても慎重審議の上可決あらんことを切望する次第であります。
  74. 藤田進

    藤田進君 御答弁にもあるように、とにかく、通すことが大きな目的である、そのためには手段を選ばないということが答弁されたと要約すれば受けるのであります。そうあってもなりません。連絡をしたところというのは一部であって、話し合いがつかないからそれじゃしかたない採決だろうという話はまとまっちゃいないんですよ、そんなことは。  そこで、総理は、いろいろ事態収拾については手を入れたと。どういう方向で手を入れたか。いや党首会談その他とおっしゃるが、あなたの真意というものが、党の切り回しの大番頭であると言われている幹事長にも伝わっていない。議長が何とかといって話を持ち込んだときに断わったという事実はどうしたものですか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま記憶をよみがえらしておるんですが、特別委員会採決をした。その後、佐々木委員長はじめ約五十名の方が私の私宅へおいでになりました。そうして、ぜひ会見しろと、こういうことでございました。はち巻きをし、たすきがけでございましたが、私は、これはどうも穏当でない、かように思って、それをお断わりいたしました。しかしながら、私は、国会においてはこれは当然こういう事態について十分相談するのが適当だと、かように思って、私はそれぞれの筋に対しまして至急そういうことを考えろという話をしたような次第でございます。当時のことは、新聞にも出ておりますから、藤田さんも御承知のことだと思います。
  76. 藤田進

    藤田進君 いや、問題をはずさないで、ひとつ進行に協力してもらいたい。そういう表面的なことを言われながら、本体である幹事長のほうは、議長のいま出る幕じゃない、議事はうまく進んでいるということではねつけているじゃありませんか。総裁総理としてその所信を曲げないで、実際にこれを地で行なうとするならば、幹事長とはもう常々連携を持っておられる総理なんだから、議長のそういう公式な連絡があり、その労があるとすれば、それに乗ったらどうなんです。あなたの言われることと、実際に党の機関を通じてやっておられることには、大きな食い違いがあるじゃありませんか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、幹事長が当時一つの考え方を申し上げた。これは、まあどちらかと言えば、ゼスチュアだということも言えるんじゃないかと思います。しばしばあることですが、国会運営におきましては、端的に進んで非常に効果のある場合もあります。場合によっては曲がり道する場合もあるのでございますから、その辺は老練な藤田さんが十分御了承のいくことじゃないかと思います。     —————————————
  78. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 委員異動について御報告いたします。  本日、片山武夫君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     —————————————
  79. 藤田進

    藤田進君 前段の、おれは党首会談まで持って何とか事態収拾したいと言いながら、その機関の幹事長としては衆議院の船田議長のあっせんについてはこれをけとばしてしまう。当時、社会党、民主社会党は、そのルートでもいい、何とか国民のためにもこういう忌まわしいことはまかりならぬというかたい信念で事態収拾に当たろうとしたが、議長出る幕でないというようなことは、これは大きな問題ですよ。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げるように、あれは最終的にはそれができたと思いますが、ただいま申し上げるように、これはやっぱり幹事長が中へ入ってその相談をした。そのときに、一番最初に断わることがそういう話をうまく早くまとめ上げるのに役立つという場合もあるわけです。そういう点は、かけ引き等、十分御了承の藤田さんがここで私にお尋ねになるというよりも、十分御了承がいくのではないか、私はかような答弁をしたのでございます。こういう点は、やっぱり折衝の問題ですから、強いばかりがこれは能でもないでしょうし、また、率直なばかりが問題を早く解決するゆえんでもない、かように私は思います。
  81. 藤田進

    藤田進君 いや、そういうことは聞かんでくれと言わんばかりのことですが、これは大事なところなんです。私にわからないし、国民にわからないから聞いておる。まあ一日並びに六日の事情については、お聞きいたしますと、全く支離滅裂——うなずかれましたが、そのとおりでしょう。(笑声)さらに、具体的法理論その他については、亀田委員のほうで用意があるようでありますから……。  さて、そういう経過を経て、いよいよ事態収拾もないままに船田議長のあっせんもけとばされたままで本会議だ。もう八日にはこれはぜがひでも中一日置いていよいよ本会議だ。ここで、社会党は、私どもその本会議を傍聴し、いろいろ党内部の状況を聞き、会議にも出て事情をお聞きいたしますと、法規典礼に照らして合法的にこれらの自民党並びに内閣のやってきたことについて反省を求めつつ、あの事態に対して本会議の対処をしたいということになり、そうして直接関係の深い椎名外務大臣の不信任案が出た。椎名外務大臣は、もう本会議もその辺のことは全く軽視しているかのように、慣例上その席に着いてひたすらその提案なり質疑なり討論なり聞くべきはずのものが、本会議を捨てて外に出てしまうというようなことがあり、やがて石井法務大臣——法的地位その他の所管大臣である石井法務大臣の不信任案が継続審議をされている。ところが、突如として自由民主党の党籍を持つ船田中衆議院議長は、これまたどうですか、一分ですか、四十秒か、何ものも排除して、審議の議題に供せられているそれを排除してしまって、息も続かないかと思われるように、そうして自由民主党の諸君が間髪を入れず議長を包囲して採決をやってのける。(「ええとこや」と呼ぶ者あり)自由民主党の傍聴者である大谷君は、それがいいところだと言っている。これはあなたの意を体していることだろうと思う。(笑声)あなたの、強行採決はしない、審議は尽くす、話し合いを徹してやるというこのことは、十一月一日、十二日に続く第三番目の本会議の席上で、強行抜き打ち採決を改められるべきである。ところが、その前段に、幹事長あるいは久野忠治君とか総理と緊密な連繋を保ち、総理裁断によってこれが行なわれたと一説には伝えられている。衆議院議長としては、かかることはやりたくない。いわんや、質疑、討論あるいは答弁その他は五分間の時間制限をやる。これが審議を尽くしたり民主主義のルールにのっとったものと思いますか。趣旨説明はわずかに十分。議長としてもこれは無理だと言っていたという話であります。幹事長は、早くからその時間制限のことは記者会見でも漏らしております。きわめて計画的です。あの事態をあなたは指導されて、あなたの所信と照らしてどう思いますか。掘り下げて私はこれは聞きたい。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどからお答えしたように、私の悲願でもあります。政治的なこの姿勢をとってきているのは悲願でもあります。ぜひ民主政治議会政治を守り抜きたい、かように思います。そういう意味で、多数党である自由民主党はもちろんのこと、私が総裁でございますから、また、社会党も公明党も、どうかただいま申し上げるような民主政治議会制度を守り抜く、こういうことでひとつ御協力を願いたいと思います。
  83. 藤田進

    藤田進君 いや、私がお尋ねしているのは、まのあたりあの状態を見て、今後かようなことが何党内閣、何党において行なわれてもゆゆしい問題じゃないですか。与党の議員が間髪を入れず乗り込んでいって、そうして議長は棒読みに読む。何人会議場にいたか、確認もしない。イエスかノーか、賛成反対は何ら確認もできない。ああいうやり方で不信任案審議中に——かりにそういう不信任案の審議とかいうものがないとしても、最後の果てには棒読みに紙一枚読めばすべてがきまる、会派勢力は一名の差で議長をとっていてもそういうことができるということをここで将来に残すということは、問題であるとあなたは思いませんか。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどからお答えしているように、私は、民主政治を守る、議会制度を守り抜くと、その意味において御協力を心からお願いしておるわけであります。こういう事態が重ねて起こるというようなことは、まことに私のたえ得ないところであります。同時に、皆さま方も同様の感じだろうと、かように思いますので、ぜひ御協力を願います。
  85. 藤田進

    藤田進君 再び起こることはいかぬが、この間の分はあれでいいとおっしゃるんですか、それでは。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかく、今後はこういう事柄を重ねてやらないように最善の努力を尽くすということであります。
  87. 藤田進

    藤田進君 それは答弁になっておりません。今後はかかることがあってはならぬということだけをおっしゃる。この点については、今日以後どうするかについては、総理にただしながらわれわれとしても参議院審議に対処いたしたいと思う。それには、あの事態に対するあなたの所信に照らして、いいのか悪いのか、悪いとすればどうするのか。いま、衆議院も空白の状態になっている。追加補正予算の提案もきょうなされると聞く。もうされたかもしれない。その他の重要な案件もある。それが一々最後には委員長が、本会議においては議長が、問答無用という形で法規も先例も慣行も無視してやっていくというようなあの事実を認めて今日以後の事態をどうやってみても、これはもう本質的に今後に対処することにはなりません。あの事態に対して今日どうするか。やってしまったらそれは何とかなる、二度と再び繰り返しませんと言っておけば何とかなる。もう一回起きれば、またそのときの話だと。一国の総理、絶対多数を持つ与党の総裁として、当然この段階では初めて公式の場において所信を伺うわけですから、あなたの偽らざる所信をここではっきりと、あの事態に対してまず認識をここに国民に問うべきです。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、衆議院のあの事態がいいとは、かように私は申しておりません。私もまことに残念だと、遺憾なことだ、かように思います。民主政治を守る、その基本には、やはり多数決というものがどこかではっきりするのじゃないかと思います。これを無視しているところにどうしてもああいうような事態が起こる。これは私はそういう意味の弁解をするわけじゃございません。どうしても早くほんとの民主主義民主政治、この状態に進んでいきたい、そういう意味の各党の協力を願う、こういうことでなければこのことはできるものじゃない、かように私は思います。一方だけがけしからぬ、多数が横暴だと、かように言われておりますが、私はもちろん少数党の意見も尊重しなきゃならないと思います。しかしながら、少数党は、やはり国民の支持を得る面から見ましても、正しい主張をしてはじめて国民の支持を得るんだ、かように私は思いますので、その多数の意見、それによって政治を進めることが民主政治の基幹でもある、このことはよく御了承をいただきたいと思います。いずれにいたしましても、国会運営その他についてよく話し合って、そうしてただいまのルールが打ち立てられる、これが最も大事なことだと、かように思います。
  89. 藤田進

    藤田進君 どうも、簡単に要約して申し上げているのに、その答弁は本質に触れない答弁で遺憾です。あなたのいまの御答弁にもあるように、遺憾であることを表明しながら、その遺憾なというのは、もう一億総ざんげのような、そういう意味に問題をすりかえて答弁をしておられるように印象づけられるのであります。  ことばをかえて確認をしたい。いやしくも国会の成立のゆえん、憲法にさかのぼって申し上げるまでもなく、憲法九十九条は、内閣総理大臣、そうして各大臣をはじめ公務員はこの憲法を守らなきゃならぬということが明定されているのも、そこにあると思う、国民はもとより。これから発するところの国会法衆議院規則、参議院規則、さらに当然である議会運営、そうして多年の積み重ねた先例や慣行、こういう一連のものをルールとして守っていく、これは絶対不可侵な問題じゃありませんか。いかがです。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法令を守ることは、絶対不可侵の原則であります。
  91. 藤田進

    藤田進君 その原則に照らして、十二日におけるあの衆議院の実態というものは、法規やあるいは慣例——ある特定の大臣の不信任案が出て、その審議中である。審議の途中であるというその途中に、与党議員が大挙なだれ込んで、そうして議長が棒読みにする、そういう法規や慣例があれば示していただきたい。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお話がございましたが、私は一貫した本会議の議事の進行、その状態でものごとを判断しないと、ただいまのように、自由民主党だけけしからぬと、こういうような判断を下されるんだと思います。あの前に行なわれている、次々に出される閣僚不信任、あるいはその投票におけるいわゆる牛歩戦術に名をかりての通路の占拠、あるいは演壇の占拠等は、お互いに慎むべきことじゃないか。私はあまり言いたくないんです。社会党のこういう点についてもなるべく言いたくないんですが、ただいまのようなお尋ねをまた聞かれれば、私が民主政治を守るということはこういうことなんだ、ルールを守るんだ、法規、規則を順守するんだ、これは絶対なんだ。それは与党だけではないと思います。野党にもその責任があるのです。それではじめてりっぱな国会ができるんだ。とれこそ国民の期待するところなんだ。希望するものだ。私が言っているのは、国民の一億総ざんげではございません。主権者であられる国民に対して、私どもが議員としての責務を果たしていく、そのことを私も申し上げておるのであります。この点では藤田君と私とそう意見が食い違っておるはずはないと思う。ぜひ御協力を願いたい。私どももそういう意味で反省もする。これはもうたびたび申し上げておる。したがって、皆さま方の御協力を心からお願いする次第であります。
  93. 藤田進

    藤田進君 あなたは、質問答弁に窮すれば、全然もうほかのことを言ってしまう。これじゃいけません。いや、牛歩戦術でああいうことをやったから——まあ、かりにそれが暴だとあなたがおっしゃるなら、暴には暴で報いると、あなたはそうおっしゃった。これは民主主義じゃないですよ。いわんや、牛歩戦術なるものは自由民主党わが国では最初にやってのけた。自由民主党が創始者じゃありませんか。否定しますか、これを。自由民主党が創始者ですよ、牛歩戦術は。あるいは演壇において長時間の演説をもって少数派が対抗する、これは日本だけではない。各国議会政治主義のもとではささやかな抵抗としてはもう許されているのですね。創始者である自由民主党の牛歩戦術けしからぬと。あまりにも得手勝手ではありませんか。と同時に、法規典礼に照らしてこれは不可侵であるという認識に立つあなたが、その法規典礼に照らして不可侵のものであるがゆえにその典礼法規に照らしておれはやらせたのだ、やったのだとあなたが評価する以上、そういう慣例、先例があったら示してくださいと私は尋ねているのです。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの牛歩戦術は、自由民主党がこれは創始者だということですが、お互いにこれはだれがやったからいいというわけのものじゃない。創始者が自由党であるかわからぬが、こういう事柄はよくないというので、とにかく自由民主党はただいまそういうことはやらないと思います。したがって、過去の事柄で、これはやはり進歩の一助にしたい。これをやはり見まして、過去のことはもう間違っていた、今度はよくやろう、これではじめてりっぱな民主政治議会政治ができる、かように思います。したがって、私は、自由民主党が過去において牛歩戦術をやったということは、それはそのとおりだろうと思います。また、ただいまの法規典礼に合っているかどうかということですが、議長、副議長等、十分これは検討されて、そうして採決を見たのでありまして、その後におきましても、議長もこれはりっぱに有効な採決だということを申しておりますから、それを私が総理として、いやどうもどういうような実情なんだとか、こういうことを申し上げるのは私の答えるところではないように思うのでございます。
  95. 横川正市

    ○横川正市君 関連。藤田君の質問総理の答えている点で、相手側が納得をしないのにどんどん理論だけ飛躍をさせていくということは、私は焦点をぼかす結果になるのじゃないかと思うのです。  その第一は、いま、あなたの自由民主党というのは、ここに二十二人議員がおるわけです。あなたの言い分については、大体御無理ごもっともで賛成のようです。しかし、野党の側に立っている者は、その答弁では納得しないという、そういう認識を持っているのです。これは論議の時点が私は違っておるとは思わないのですけれども、なぜあなたの言うようなぼけた答弁に、あなたの支持者、あなたの党の出席者は賛成をし、それから野党側は反対するのか、この点をもう少ししっかりとつかんでもらいたいと思うのです。そのつかんだ第一点で申し上げたいのは、たとえば院の中での論議をされる場合に、先ほど官房長官は、七十日あるから審議ができると思った、こう言いますけれども、十四年間かかった審議の結果でも、なおかつ竹島の問題は紛争として残って、何年たったら解決するかわからぬというほどにその問題は困難をきわめております。それを多数の人たちが納得をして、この条約はなるほどあなたの言うようにきわめて友好、しかも平和関係のいい条約だと、こう言うのなら、その点をなぜもっと明快にしないのか。一昨日私どもが幾つかの資料を要求いたしましたが、その資料であっても、提出されないもの、また十分国民に納得できるような答弁のできないもの、これはもう山積しているわけです。私たちは、この条約をとって、一体国民がこれをあなたの言うように平和条約だと納得して受け取るかどうかという点については、まだまだ多くの疑点があるということを、これは最近二、三カ月の新聞を全部見てみますと、その指摘するところ枚挙にいとまのないものがあるわけです。それだけのものを、これをもし納得をさせてくれるなら、私どもはこの審議というものについて十分な協力というものはあり得たと思うんです。その点を、都合の悪い点についてはそれを出さない。また、資料については明快にこれをやってこない。そういうことで、衆議院段階審議というのは、たとえば秘密会議にするとか、これは外交上の問題だから出さないとか、いろいろ言っておりますけれども、私は、国内で問題を処理する場合に、たとえば公の機関で出されないならば、公党と公党間で出すとか、いろいろなかっこうをして本質的な問題の究明というのがあっていいのではないかと思う。それがなされておらない。だから、与党と野党との間で論議がし尽くされないという点が、いわゆる議場の混乱ともなり、あるいは議事が延びていくということにもなるわけなんです。こうした点を私は考えて、そしてもっとこれらについて政府当局の態度そのものが明確になってきて、はじめてあなたの言うようないわゆる審議協力というものが出てくると思う。(「阻止、粉砕をやめたらいい」と呼ぶ者あり)いま粉砕ということばがありますけれども、粉砕ということばがあっても、これはあなたのほうでは絶対に通すということとの相対的なものです。審議の結果においてその粉砕が少数派によってなされたという前例はありません。だから、ことばじりをとらえて問題をすりかえないで、粉砕しなければならないと考えている野党側に対して、なぜもっと明快な解明をするように努力をしないのか、(「簡単簡単」と呼ぶ者あり)この点を私どもは疑問とするのです。その点をひとつお答えいただきたいと思う。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 横川君のお尋ねですが、私たいへんけっこうなことだと思う。いまやりたいのはそれなんです。国民が納得できるような説明がしたい、政府が。そういう意味質疑をやってください。先ほど来冒頭に申しましたが、とにかく実質的な審議が望ましいのです。私はやっぱり実質的な審議をやる。いろいろ段取りについて議論をやる、その段取りも大事なことですが、しかし、これは事務的に段取りをきめることもできるんじゃないか。国民が期待するのはそういうものなんです。段取りだけで日が暮れる、これは困るんです。どうして実質的な審議をやってくれないのか、それが非常に素朴な国民の要望です。私は、いま横川君の発言ほんとうにその発言を待っていたという感じでございます。どうかよろしくお願いします。  なお、ただいまいろいろ資料等が必要だというお話がございましたが、そういうことは当委員会におきまして十分審議されることだ、かように思います。
  97. 横川正市

    ○横川正市君 何かことばじりをとらえて言うわけじゃありませんが、私の質疑に対して、与党である自民党のしかも理事の中で、長いぞ長いぞというやじが飛びました。総理はそうは考えておらないということですが、私どもはその点が実際審議その他に大きなじゃまになっているんだと思うんです。いま藤田委員質問をしておる内容で第一に私どもとして疑点なのは、私ども国会を通じて聞かされておる中では、理事会での話し合いとか、それから議事進行についてのいろいろな取りきめとか、そういったものが全部無視をされてああいう強行採決になった。こういう点で、これからの審議について非常な疑義を持ちますのでただしておるわけなんです。総理の言うのは、実は審議をしてもらいたいのだ、こういうふうに言いますけれども審議に入る前にその点を明確にしてもらいたい。われわれは会期延長とかなんとかいうことを別にどうこう言わないのは、たとえば土俵を大きくして、そのことで問題がそらされて議決をされるということに危惧を感ずるから、会期延長に反対するわけなんです。そうではなしに、会期内でもあるいは本質的にその問題が解明されれば、われわれはそのことについて最終的に多数決の採決に従うのはいままでもそういう方針できたわけなんですから、これからもそういったことについてはいささかも私どもは疑点を持っておらない。前段で明快にされない段階にくると、多数でものをきめてしまう。これが民主主義だといわれるところに私どもは問題がある、こう思っておるわけですから、その点を解明してもらいたい。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは参議院の状態ではございません。参議院におきましては、十分、特別委員会のもとに各理事会を開かれて、そうしていろいろ相談しておられる、こういうことでございますから、これならばいわゆる民主的にものごとがきまっていくのだ、かように思います。それにいたしましても、参議院に案件が送付されまして今日まで十日ばかりたっておる、かように思います。ただいまの審議が非常に大事だ、かように思えばこそ私どもも最善を尽くしてまいるという決意でございますので、各委員の方々も特別委員会に御協力願って、そうしてそこで審議を進めていくということであってほしいのであります。衆議院のいろいろな問題が先ほど来いろいろ究明されておりますけれども、これはやはり私も議席を持つ者として、また総裁というその立場におきまして、どうしたらよりいい議会政治ができるか、よりいい民主主義が守れるか、こういうことにやはり苦心しておるのであります。そういう意味で、衆議院のあり方ということを批判するよりも、衆議院のやったことについて、私どもが、これはよくなかったとか、今度は参議院ではこういうようにするとか、こういうものがあってほしいのじゃないか。私は、そういう意味で、ぜひ各人が知恵を持ち寄って、そうして過去の悪い例を前例にしないでそうして前進していく、いい方向で建設的に研究していくということが望ましいと思うのであります。私は、そういう意味で、ぜひともこの実質的な審議に入っていきたい、かように思うのであります。
  99. 横川正市

    ○横川正市君 私は、総理の言う実質審議に入れというその実質審議ということは、実は、いままでの例からいきますと、審議をやらせれば、あるいは時間をただせれば、そうすれば、かりに問題が残っておっても、その問題の解明がされない段階であっても最終的な態度がきめられる、それが民主的だというふうに考えられておるところに問題があると思うのです。なるほど私どもはいままでも幾つかの案件を賛成反対で議決してまいりました。参議院の場合におきましても、政府から提出される二百数十件の案件の中でも、ほとんど九割から九割七、八分まで賛成反対でものごとというものは議会の正常な運営の中できまっていくわけなんです。しかし、その年のその最終段階にくると、必ず一件とか二件とかは紛争を起こし、議会政治国民から批判をされるような結果になってくる。この運営についてもっと与野党間のいわゆる慣行とかあるいは法規典礼とかそういったものが十分に論議をされて、それが守られて進められていくという、そういうことを議会運営について国民は期待するだろうと思うのです。そういう運営を期待するだろうと思うんです。そういう運営を期待しているのに、われわれが一体どうしたらこたえられるかということに論議の焦点を合わせていくと、いままでのように、多数をとっておるから、いってみますと、衆議院はあなたのほうは二百九十何名、社会党は百四十何名。三百名近い池の中に少数党を泳がしておいて、言わせるだけは言わせるけれども、最終的には自分の意思というものは通せばいいんだと、あるいは参議院の場合には、百三十何名かの自民党のおりの中に、参議院の七十四名から八十名泳がしておけばいい。言わせるだけ言わせれば、あとはおれの意思でものごとをきめてしまえばいいんだじゃあ、私はこれは議事というものは円滑に進まない、こう思うんですよ。たとえば、いままでの前例から見ると、河井議長のときには、これは与野党間で、衆議院で議決されたものに対して、先輩の言をかりますと七割から七割五分修正意見を出して衆議院に回付した、こういう例があるという。ところが最近議会運営が多数党である自民党の一党によって、しかも党籍も離脱しないで運営されたということになると、これはもうそういった先例が全く小さく、少なくなっていく。そういう議会運営の積み重ねが、実は与野党間の不信となって、今日多くの問題点を生んでいるんだと私どもは思うんです。しかも、今回とられた衆議院のああいう暴挙というのは、もし総理があれを前例としないと言うのなら、私は幹事長とか副議長とかの言の中に、あれは正しいんだという一方的な言い方じゃなしに、国会法であれができたと認識するならば、そういうことができないための国会法の改正を行なうというように、あなたのほうが姿勢を正して、初めて私は話し合いとか何とかという土俵は出てくる。ところが、やったことは全部正しい。これからは——正しいけれども野党側の無理があってやったんだから、これからひとつ無理ないようにやってくれということだけでは、私は議会の民主的な話し合いの場というものは前進しない、こう思うんです。いま藤田さんの言っているいろいろな問題というのは、議会を民主的に運営するために、あなたたちのとった一つ一つの行動というものに、これは国民を含めて批判があるわけですから、どう答えるかという点を答えてもらいたいと、こう私は思うんです。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一に、国会の問題は、お互いに与野党とも一つの協定、ルールがあって、この協定に従っていろいろやっていらっしゃると思う。衆議院の場合には、最初協定をやっておりましたが、無協定の状態に入ったということを宣言されたと、こういうところが問題が起こったもとだったと思います。で、この協定はぜひとも続けてやっていただきたい。その場合に、横川君が言われるように、大きい自由民主党のほうがもっとその気持を持ってくれないと困る、これは確かにお話のとおりだと思います。私は自由民主党が多数党であるだけに、それは謙虚でなければならない、かように思いますので、そういう意味では十分今後とも謙虚な努力を続けていくつもりであります。ただ、しかしながら、多数党も謙虚になるが、少数党もやはりその辺はほどほどにひとつ願いたいと、かように思います。  それからもう一つ、ただいま言われました河井議長のときは云々と言われましたが、法案は非常に原案を修正しておるものが多い。これは与野党とものいわゆる協定といいますか、話し合いによる修正だと思います。しかしながら、どうも見受けますのに、外交問題についてはさような点が見ることができない。もう一つは治安問題。こういうような問題になりますと、どうしても与野党の対立が激しい。ことに外交問題につきましては、ただいまの状況ではどうしても与野党が相いれない状況である。このことはわが国の私は不幸でもあると、かように思いますので、ただいまの与野党が話し合って修正するというそれはいい慣例だと私は思いますが、外交問題等につきましても、重要法案においてです、今日のような対立を見ないように、とにかく政争もまあ水際でとまるとか、外交の問題についてですね、これをとことんまで争うというようなことが改善されることを心から望むような次第でございます。
  101. 藤田進

    藤田進君 いや、横川委員の指摘されるのは、その実例、過去の、累積から見ても、もう問答無用、多数横暴というあらわれを指摘したわけであります。  さて、議会運営というものは非常に大切なものであることは、総理も認識されているはずです。これがくずれたならば、議会民主主義がくずれるわけであります。しからば、その基準は何か。まず、憲法であり国会法規である。先例であり慣例である。よって総理はこれは不可侵だと、これは運営の基準です。これを犯してはならない。各会派にその襟度がなければならないということを指摘するのであります。  そこで、総理総裁に対して十二日、あるいはそれ以前、六日、一日、あるけれども、これらを含めて、特に問題をシンプルにするために、十二日の衆議院会議におけるあれは、法規、慣例、典例に照して不可侵であるその所信に全く抵触しないというものであるのかどうか。私どもの見解では、法規に従って提案をし、これによって審議が進められる。その審議の途中で、これを一方的に議長が排除して、棒読みに、しかも大切な本会議で、討論もないままに、討論の通告がないからといって、あるはずがないんです、あの時点では。これはかつて慣例にはない。法規にもそういうことはないと思うが、総理としては、その不可侵であるものは犯していないと言われるならば、いつ、何国会でこのようなことがあり、慣例化しているかおっしゃっていただきたい。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたいへん異例な決定を見たのでございますから、そういう意味で、いろいろな批判があると、かように思います。しかし、直後におきまして、議長、副議長がこれは有効に、りっぱに採決が終わったんだということを申しておりますから、合法的に終わったんだということを申しておりますから、これは私としては、その議長のその言を信ずる、かような立場でございます。
  103. 藤田進

    藤田進君 船田中氏も党員である自由民主党が支持し、議長に、あるいは田中副議長にしたのである。議長が宣言をすれば主観的にこれが合法であり、妥当であり、その後のその機能が発揮できるというその考え方にも、これは問題があります。議長の宣言で、ものがきまるのではない。これには客観性がなきゃならぬ。法規、慣例に照して妥当性がなきやなりません。それはいかがです。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はただいま申し上げるように、国会運営そのものについてベテランではございません。いわゆる専門家でもございませんが、ただいま議長がこれは有効だと、これは違法ではないのだと、こう——合法だと、かように宣言しておりますので、私はその意見を尊重すると、かように申しておるのであります。
  105. 藤田進

    藤田進君 総理発言は、自由民主党を背景に持つ政党内閣の首班である。あれと同じことが、わずかに一名、あるいは衆議院において、あるいは参議院においてです。参議院ではあと三年足らずの選挙でどうなるか。わずかに七、八名の移動によって特定政党の絶対多数がくずれるかもしれない。また過去の選挙の趨向から見てです、わずかに七、八名の移動によって、衆議院では自由民主党が多数第一党であるとかりにしてもです、参議院ではそういう場はないかもしれない。これは容易に予想し得るところです。その際に、あれと同じようなことが行なわれ、かつ議長は合法なり、正当なりと宣言すれば、これにあなたは服するのかどうか聞いてみたい。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 議長は私どもが選任した権威のある存在であります。私はそういう権威を尊重することが民主政治の上から望ましいことだと、かように思っております。
  107. 藤田進

    藤田進君 同様なことが自由民主党の議長ではないという場合に起きても、あなたは同じ論理でもって議長宣言をこれを認めるということが言えますか。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、権威は十分尊重するという考え方に徹しております。
  109. 藤田進

    藤田進君 その権威を尊重するということは、たとえ船田中自由民主党出身議長ではない場合でもあのようなことは、これは認めていくという態度ですか。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま権威を尊重すると申しましたが、そのとおりでございまして、それは自由民主党の人だからとか、あるいは社会党だからそれは認めないとか、こういうようなことはいたしません。権威はどこまでも権威としてこれを認め、尊重していく考えでございます。
  111. 藤田進

    藤田進君 何党であろうと、出身がどうであろうと、衆議院参議院を問わず、議長があのような同様なことをやって、これは有効なり、合法なりと宣言すれば、そのままあなたはそれをもう何のちゅうちょもなく受け入れる、こう解してよろしゅうございますかと言っておる。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどから何度もお答えしておりますが、さしつかえございません。
  113. 藤田進

    藤田進君 では、何らちゅうちょなしに、あのやり方であの結果というものを、佐藤内閣が続いている場合であろうと、自由民主党を背景に持つ自由民主党内閣首班としては、また総裁としては、これは認めると言われるのですか。はっきり言ってください。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 権威を尊重し、権威のやることについてはこれは認めていくという考え方でございます。それが自由民主党であろうが、あるいは社会党であろうが……。ただ私が先ほど来申し上げておりますように、こういう事柄は望ましいことではないと申しております。望ましいことではないものは、これはたびたびそういうことをやってもらっては困る。これだけははっきりいたしておりますから、私は権威ある議長としてどういう処置をとられますか、それをそのときに私どもは考えていけばいい。とられる以上、それはやはり権威はどこまでも尊重していくということでございます。
  115. 藤田進

    藤田進君 奥歯にもののはさまったようなことでなしに、どうもああいうことは望ましいことではないからたびたびやってくれては因る、わが党の内閣のときはまああれはやむを得なかった、そうおっしゃるのですか。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) わが党内閣ということに限りません。
  117. 藤田進

    藤田進君 何が限らないのですか。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会党内閣だったら反対するというわけじゃございませんということです。
  119. 藤田進

    藤田進君 意味がわからないから答弁ができないのかどうか。船田衆議院議長自由民主党出身が棒読みに読んで、いよいよ最後に息が続かないような調子、しかも法務大臣の不信任審議の経過だ。手が込んでいる。そうして未明にあっという間に与党議員がなだれ込んでいって、そこで読んでいく。その結果については、これは議長が合法なりと宣言したからこれは合法であり、妥当である、こうなっていることをあなたはお認めになっているわけですね。そのことが他の政党出身で行なった場合でも、そのままそうだとあなたは納得して、ちゅうちょなしにそれをお認めになるのですかと言っている。権威とかなんとかややこしい包括語でなしに、あのとおりをやってもあなたは認めるのですか。たびたびやることは困るが、たびたびでなかったら認めるわけですか。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申し上げたことでおわかりだと思いますが、私は、議長がわが党の議長でやったのだ、だから承認したのだ、こういうのではございません。議長というものが社会党であろうが、民主社会党であろうが、これは私さしつかえない。そういうものはその権威は尊重しますから、その決定には私どもはそれに従いますということをはっきり申し上げたわけであります。で問題は、いろいろな議論が出ておりますが、国会というところは、ただいまのように非常に単純なお尋ねでございますけれども、暴力はどこまでもこれは排撃しなければいけない。これはもうはっきりしておる。このことはほんとう国民も心から希望しておるのだから、期待しておるのだから、国会においては衆参両院におきましてそのことには徹することが必要だ、私はかように思います。それで私は議長のとった態度はそういう意味では非難を受けるような筋はない、かように思っております。
  121. 藤田進

    藤田進君 これはゆゆしい総理発言ですよ。あなたは所信表明を今日も微動だもせず認め、そうして一方あのやり方は望ましくない、好ましくない、遺憾であると言いながら、一方いまの発言では、議長のとった態度は正しいと思う、こういうことは。そうして、さらに何党がやろうと、あのようなことを——私が指摘しながら質問したに対して、何党であろうとその区別はない、あれを認めていくと、それで議会民主主義が守れますか。何党であってもこういうことは許されないのじゃないですか。あなたは暴力と言われるが、何をさして暴力と言われるのですか、この二点について。私は重大なあなたの御答弁だと思う。何党であろうとあれを認めるということでいいんですか、それで。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来申し上げておりますように、権威は認める。権威の決定だということを先ほどから申し上げた。ただいまの船田議長がとられたことは、これはその行為だけ抽出して、そうして是非を論ずることはこれは望ましくない。このことを、全体の経緯全般をやっぱり申し上げておる。そうしてこれが異例なことだということも申し上げました。望ましいことでないということも言っておる。しかしながら、これをやらなければならなくなったのは一体どこにあるか。どういうことなのか。私どもが必要なのは正しい民主主義を守ることである。それを育て上げることである。議会制度を守ることである。このことに徹したい。これが私の考え方であります。したがいまして、ただいまのように、一つを引き抜いて、それについての批判、こういうようなことは、これは子供じゃないのだし、もっとおとなになられて、こういうものを十分見ていただきたい、私はかように思います。
  123. 藤田進

    藤田進君 非常に重要な段階に入りましたから私はさらに質疑を続けますが、法規典例はこれは不可侵であると、そうなんでしょう、答弁されて、速記にも載っておる。これは異例なことだ——不可侵であるのに異例なことをあなたは許すつもりですね。そうして、経過については私はるる説明している。自分こそがその経過をよく知らないと——十一月一日以降について、るる説明しながら質疑を重ねたけれども、肝心なところはあなたこそが知らないと言っておる。その知らない経過を踏まえて、経過を言わなきゃ、あれが正しいかどうかというようなこと、これは遁辞ですよ。私は何党であろうと、棒読みにしてああいう状態で重大な案件が可決されたということは、これはきわめて民主主義議会政治のこれは危機であるし、独裁であると心得ております。このことをあなたがこの特別委員会で初めて公的な発言をされる場においてあいまいにされることは、まことに遺憾です。さらに私は、あなたの認識を深める意味でその実情を申し上げますが、官房長官、あなたは先ほど、私はもう役人で、議会運営その他についてはと、こうおっしゃるわけですが、官房長官あるいは副長官等を含めて、議会の場において直接とやかくはしないという意味にも聞こえる、どうなんですか。
  124. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 官房長官または副長官は、国会の場においては直接にそれにタッチすることはありません。  それから先ほど来お尋ねがあったうちで一つ調査漏れがありましたが、その後調査ができましたが、それによりますと、公聴会に関する申し合わせは文書ではやっておらない、こういうことであります。それが報告であります。
  125. 藤田進

    藤田進君 それは事実と違う。官房長官、副長官等は国会運営なりその他行動については直接タッチしないという意味だろうと思うのです。そのとおりですか。
  126. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) いまおっしゃったように、法規慣例上、いわゆる官房長官及び副長官は国会運営に直接タッチいたしません。
  127. 藤田進

    藤田進君 しからば聞きますが、これはどの新聞を見てもそうでありますけれども、十一月十二日朝日新聞を提示します。演壇の占拠とかあるいは暴力だとおっしゃるが、まさしく船田中衆議院議長の真横の演壇を占拠しているのは官房副長官の竹下君じゃないですか。見てください。ちょっと面とおししてくれ。これは余人かね、違うかね。
  128. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) お示しの写真は竹下副長官の顔であります。(笑声)これは、御承知のように、竹下副長官は、長官席という席におったんじゃなくして、当日は、いわゆる議員席にすわっております。議員の一員として国会にいたと……(「演壇を占拠しているんだよ」と呼ぶ者あり)占拠するしないの問題は別にして、先ほど来の藤田さんのお話では、官房長官及び副長官は国会運営に関与をしていないかと、こういうお話でしたが、職責上それには直接には関与しておられない、こういう御説明を申し上げたんであって、竹下副長官が議員であることも間違いない。もう一人の副長官は役人でありますから議席についておりませんが、竹下君は衆議院議員でありますから、議員としての席にすわっておる。この場合は、どういうことでここに立たれたのかは、本人に聞いてみないとわかりませんが、必ずしも議長の演壇占領ということじゃなくだろうと思いますけれども、その点は、私、本人の行動でありますから、承知をいたしませんが、もちろんこれは官房副長官としての行動ではない。議員であることも、御承知のように間違いないのでありますからして、そういう議員の一員であったと御了解を願いたいのであります。
  129. 藤田進

    藤田進君 ちょっと総理、それを見て、——あれでいいんですか。副長官の役目ですか、それが。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは確かに竹下君の写真ですが、ただいま、こういう仕事は副長官の職務かというお話ですが、こういうことは職務ではないと思いますけれども、議員としてはいろんなことがあるんだろうと思います。当時の状況は、むしろ、自民党あるいは社会党の諸君も、いろんな動きがあったやに見受けますので、あるいは予防的な措置をとったとか、かように考えております。
  131. 藤田進

    藤田進君 これは週刊誌の表にも出、いろいろあるわけですが、そうすると、官房長官・副長官という役目と議員という役目、これは、賛否の表明とか、そういうことは、私は当然のことだと思うんです。国会運営には直接タッチしないというが、まさしく国会運営の最たるもんじゃないですか。これは、よほど早く飛び込んでいかなきゃ、ここに来れませんよ、物理的に。演壇を占拠したのはおろか、衆議院議長のこの神聖な領域を侵しているのは、これはどうなんです。この中に社会党議員がいたら、ひとつ引っぱり出してもらいたい。これは予防措置であって、官房長官、副長官としての業務ではないから自由にやってよろしいんですか、こういうことは。これを称して、あなた方は暴力と言うんでしょうが、これは暴力じゃないですか、しからば。どう思いますか、これは。
  132. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 先ほど申し上げましたように、竹下副長官がそこに立ったのはどういう理由か、これは本人の行動で、聞いてみなきゃわかりませんが、あるいは議長に、あるいは事務総長に何かの打ち合わせがあって行ったのかもしれません。(笑声)いわゆる演壇を占領するために行ったものとは考えておりません。もちろん、私が副長官に対して指示を与えたこともありません。したがって、いわゆる官房長官なり副長官としての国会運営の問題ではないように私は考えております。
  133. 藤田進

    藤田進君 総理伺いますが、いかにも社会党が牛歩戦術をやった、なんだと言われますが、絶対多数党であり、官房副長官であり、これがこのような事態でしょう。これはその他大ぜい。これはあなた、どう思います。政府の一員として席に列し、みずからの姿勢も正さないで他を言うのは、われわれとしては納得いかないです。どうします、これは。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申すように、議長の権威は、これをはっきり尊重しなければいけない。こういう意味で、私は、演壇なり議長席の付近に代議士諸公が出かけることは、あまりいいことではない、かように思います。これは与党も野党も同様に言えることだと思います。私、こういう事柄が先例だということではいけないんだ、議会制を守るという意味からも、こういう事柄がないようにしなけりゃならない。そういう意味で、与野党とも、今後ともこういうことは一切しない、これは悪い例だ、こういうように自粛すべき問題だ、また、反省すべき問題だと、かように思います。
  135. 藤田進

    藤田進君 重大な発言になってまいりました。悪いことである。これはよくないのだから、今後かかることがあってはならない、と言うかと思うと、議長が宣言したんだからこれは適法である、妥当である、こういうふうに言われることとは大きな矛盾です。二つ出されては、どちらにわれわれは解すべきか、国民も判断に困る。また、それにつけ加えて、あなたは、社会党の牛歩だなんだと指摘されて、自民党は、議長がそうなったのは、また、そうせしめたのは、いかにも社会党らしいようなことを言われるが、十一月十二日には、官房副長官に至るまでが先頭に立っているじゃありませんか。何と言われようとも、この事実は消すことはできない。あなたの内閣官房において重要な人物である竹下副長官が、いの一番に乗り込んでいることは、もうれっきとしている。この事実について、まず切り離して答弁をしてください。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど官房長官がお答えいたしましたから、それでけっこうです。それで尽きておると思います。
  137. 藤田進

    藤田進君 総理、官房長官は何と言いましたかね。そのことに触れてないんですよ、官房長官は。
  138. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 副長官がそこに立つことを、官房長官からは指示はいたしておりませんので、竹下副長官が何の理由でそこに参ったかは承知いたしませんが、あるいは事務総長に何らかの連絡があって行ったかもしれませんけれども、しかし、その場合において、さような皆さんから誤解を受けるような行動は、今後注意させる方針であります。
  139. 藤田進

    藤田進君 いや、事務総長に……。何とかこの場を合理化しようと言われても、事務総長とは反対の側に、これはまたいるんですからね。(笑声)事務総長とは関係がないでしょう。議会運営には直接タッチしないことをお認めになっているのですから。これはどうなんです。率直に言いなさいよ。まず政府が先頭に立って、こういうことをやらかしたんでしょうから。
  140. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただ、御承知のように、官房は、法案あるいは条約等藤田さんは議運のベテランでもありますから、そういう問題で、もちろんこの意味では国会との連絡はあります。その議案がどうなるか、あるいはその議場において審議されるか、されないか、かような意味での仕事はあるわけでありまして、したがって、国会運営それ自体には直接関係はありませんけれども、間接的には、かような仕事を持っているわけであります。竹下副長官がかような目的で行ったのか、あるいは他の目的で行ったのかは、私ども承知をいたしませんけれども、ただ、藤田さんから御注意があったように、そういうような行動ではないかというようなおしかりを受ければ、今後そういうような誤解を受けるようなところには立たぬように注意いたします。
  141. 藤田進

    藤田進君 いま私が申し上げて知ったようなことを言われますが、あなた方は新聞は読んでおられましょう。岸さんは読まないと言ったんだが、弟さんのあなたなり官房長官は、これは読んでおるのでしょう。いま指摘されて初めて気がついたんですか、これは。
  142. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 新聞は、商売柄、よくこれは読まざるを得ませんので、できるだけ読んでおります。写真のほうは、ちらっとこう見ただけで(笑声)注意が十分でなかったかもしれませんが、しかしながら、いま指摘されましたように、そこにちゃんと顔が載っておりますので、今後誤解を受けるような行動はとらないように、強くこれは注意をいたす所存でございます。
  143. 藤田進

    藤田進君 笑い話で済ますわけにいきません。ああいう暴挙をあえて行ない、そうして、こういう事態を引き起こし、そうして今後そういうところに立たないようにと……。与党全員を含めてです。こういう背景のもとに行なわれたわけです。この事態そのものについての事態収拾をどう考えますか、総理は。竹下君も含むだろう。またその他も、肝心かなめの議長が宣言している。そうして衆議院は空白の状態。追加予算その他、衆議院先議案件は山ほどある。やがて通常国会を迎えようとする。国民は不景気と寒さにひしひしと追われてくる。国際情勢は、あなた方は、これは流動的だというが、大激変期にある。国連の状態を見ても、何か新たな——私は、あなたとしては決意がなきゃならぬと思う。そういうときに、あの事態というものを、あれは例にしないで、今後ないようにして、というほおかぶりであなたは押し通せると思うのですか。けじめをつけなければなりませんよ、これは、そのけじめの方策いかん。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、いろいろ問題がある、また具体的に進めなければならない問題でございます。そういう意味で、国会を一日も早く正常化する、こういう方向で努力してまいる所存でございます。
  145. 藤田進

    藤田進君 その具体的な、総理総裁としての対策をお伺いいたしたいと思う。ただ抽象的に、早く事態を収拾し、空白をなくし正常化するということは、これはもう、これだけならみな一致すると思います。それはそれなりに、過去の経過をふまえて、本件、いまかかっている日韓問題を含めて、どうするかということは、議会運営責任を重大に持つところの多数党、その政府総裁というものは、国民の前に納得のいく具体方策を示される必要があろう、もうすでに段階です。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、しばしば言われておりますが、申すまでもなく、国会話し合いの場だと言われております。十分話し合いを尽くして行かなきゃならない。そういうところで、これをいかに収拾するか、その正常化、具体化の道を見つけていく、こういうことが望ましいのではないでしょうか。これを一方的に、自由民主党はかく考える、こういうだけでは、なかなか納得がいかれないと思う。各会派とも十分相談をして、そうして正常化の方向へ努力していきたい。これが何よりも大事なことだ、かように私は思います。
  147. 藤田進

    藤田進君 その具体策が、現時点においてはあるのですか、ないのですか、総理
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 現時点におきまして、先ほど来言われるように、なかなか見つからない、こういうところがいまの状態でございます。そこで、議長もいろいろあっせんしておられる。また、各党におきましても、それぞれの動き方をしている。議長が……。
  149. 藤田進

    藤田進君 議長は病院だよ。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もう帰ってきておりますから、いわゆる党首会談を提案するというような記事が新聞に出ております。そういう意味で、とにかく話し合いをすること、これが一番必要なことです。諸君も、話し合いをするところだ、その場が国会だと、話し合いしなかったから過去においてああいう間違いができたのだ、かような指摘をしておられるが、私は、とにかく話し合いの場、話し合いをすることが望ましいことだと、そうして、その解決策を見つけるということにならなければならないと、かように思います。
  151. 藤田進

    藤田進君 きわめて抽象的であり、現在のところ何の対案もないということは、これこそまた、さらに汚点を残すものであります。船田衆議院議長が病気と称して病院に行ったあと、議長の代理をつとめている田中副議長は、社会党に対して、たまたま抗議をかねて参りました際に、また、院外における有力な学者、文化人等とのその席上においても、衆議院議員、与野党含めて全員の辞表を出して、そういうもとにおいて解散をすべきだ、これはどうか、という具体案が出ております。これは、もとより佐藤総裁のもとにおける自由民主党員であり、その出身議長代理である議長の権威を尊重するというあなたの先ほどの言からすれば、このことを、あなたは、いかに受けてどうしようという態度であるのか、具体案の一つとして聞きたい。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 解散権は、御承知のように政府が持っておりますが、私は、ただいま解散するような考え方を持っておりません。ただいまのような具体的な提案があれば、十分相談もしてみますが、私自身さような提案を受けておりませんし、私自身、先ほども申し上げたように、解散する考え方は持っておりません。
  153. 藤田進

    藤田進君 佐藤内閣発足以来、いまだ衆議院総選挙という洗礼を受けていないというのが、世論の一つの大きなポイントになっております。いまこの場で解散ということはできないとしても、当然、でき得べくんば、日韓問題が上程される前に、固有の問題として解散によって世論に問うのも一方法であったと思う。しかし、事ここに至って、かような民主主義議会制を破壊するような、破壊しているような、こういう状態にあっては、解散という、これ以外に方法はない。民意に問うべきです。いま解散を考えていないとは言いながら、しからば任期いっぱいいこうということでもなかろうと思う。解散というその手段については、いまという時点は一応おくとしても、総理として、すみやかな時期に解散に問うて、国民の意のあるところを受けて、再び信任されるかどうかという、このこと自体、民主政治——選挙はその出発点であろうと思う。そういう、今という窮屈なことではなくて、この事態収拾の一つの方法論も含めて、政局全体の動向も見きわめた上でやると、かりにしても、しかし解散というものは絶対回避するというようなことであっては、この事態そのものは前進しないと思う。そういう幅をもって考えたときに、いかがです。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お尋ねが、ただいまという、そういうお考えじゃないというお話でございますが、まあ、もちろん今後の情勢がどんなになりますか、そういう事柄から判断しなきゃならないことだろうと思いますが、とにかく、解散というものは、これはもう伝家の宝刀という表現でしばしば言われておりますが、そういうものを、あまりちらつかすことは、私としては、あまり賛成しないのです。したがいまして、これについては、よほど慎重な態度で取り組んでおるというのが、ただいまの心境でもあるし、今後もまたそういうことで、解散については慎重に扱う。かように御了承をいただきまして間違いはないように思います。私は、この問題を慎重に、重要な問題として慎重に考えておるということでございます。
  155. 藤田進

    藤田進君 ちらつかせないで、抜き打ち解散ともとれるわけであります。かつても抜き打ち解散というのがあったのです。話し合い解散というのもあった。事態収拾を含めて、経済情勢、外交あるいは軍事……。重大な段階に差し迫っている日本の置かれている状態から見て、この際、社会党はすでに具体案を出しているんです。この事態国民の信に問う以外にはない。これをさばくものは国民以外にはない。よって解散を内閣に迫っている。あなたは、あくまでも話し合いでいくべきだと言う、ことばでは。とするならば、これを実に示す意味で、解散について野党と話し合ったらどうですか。党首会談も用意しているようだし、解散ということについての話し合いをやったらどうですか。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見は御意見として先ほど来拝聴いたしておりますが、ただいま解散について話し合う考えは持っておりません。
  157. 藤田進

    藤田進君 議員が与野党含めて総辞職ということについての田中議長代理のことは、まだ聞いていないと言われますが、新聞その他では御承知かと思うのです。しからば、解散について話し合わないと、そんなかたくななことで、野党との調整がとれると思うのですか。しからば、いまの副議長ないし議長代理の提案する与野党——内閣が解散しなければ、みんな総辞職の形で解散というものを実現するという意見が、与党出身の田中副議長から出ていることは事実でしょう。じゃ、この方法について与野党が相談したらいかがです。それもなりませんか。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 田中副議長は非常に具体的に提案していると言われるが、実は総裁である私は、党員である田中君の、副議長のそういう意見はまだ聞いておりません。それは当然私に相談されるだろうと思います。そういうものは聞いておりませんから、それは新聞で報道されたと言われておりますが、私が聞いていないことだけは事実でございますから、その点は御了承おき願いたい。そうして、ただいま申し上げることは、私は謙虚に話し合ってみたいと、かように思っております。いま、具体的にどういうような事柄で話をするかというようなことまで進んでおりません。私は、話し合う場合に先入感を持つことこそ、これは間違いを引き起こすものと、かように思いますので、私は、そういう意味でも、ただいまのような総辞職などはやや不穏当な考え方じゃないかと思いますので、話し合うにしても、もっと別な方向が出てくるのじゃないだろうか、かようなことを期待いたしております。
  159. 藤田進

    藤田進君 手順からすれば、内閣の総辞職、これに値する事態です。これはどうです。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、さような考え方をしておりません。
  161. 藤田進

    藤田進君 事態収拾の方策は何ら与党としてもない、総裁に集まってきている具体策は何らない、事態収拾を早くしなければならない——これで多数党として政権を持っている政党としての責任が果たせますか。具体的に指摘しても、それはとらない、これもとらない——それで話し合いになりますか。議会解散ということについても話し合ってみようと……。過去に例もある。話し合いの内容については、ここで規制も私はむずかしいと思うが、その話し合いさえしないという、これこそ問答無用じゃないか。  さて、これから参議院は、あの事態の上に立って、日韓の一連の案件が適法に議決されているかどうかということは一応別として、いかに、日韓のこの基本条約ほか、それぞれについて、日本にとっても、あるいは世界の平和にとっても、ゆゆしい問題であるかの実体は、これからみっちり審議をすることにいたしております。  ところで、日韓に関する限り、特に異例な措置で、参議院においても、自由民主党のそれぞれの機関を督励して、再び、衆議院の十一月一日、六日、十二日の事態という、あるいはこれに似通ったような強行採決といったようなゴリ押しを、あなたは党を指揮しておやりになろうとするのかどうか。参議院委員会寺尾委員長は、冒頭、委員質疑に答えて、強行採決その他毛頭いたしませんと、まあ言ってきた。ところが、与党や政府の圧力の前には、総理も、前回、第二回の委員会ではここに出席されていたけれども委員長職権というところに追い込められざるを得なかったのです。こんなに突然、四時だといって開いても、総理ほか、激務の職責上出てこれないだろうとおもんぱかったが、待っていたとばかり、みな出てきた。いかに緊密な連係のもとにこのようなことが行なわれているかは、事実が証明する。そうしてさらに、さきには、本来温厚であり、公平らしき重宗議長が、これまた党籍離脱の問題等、いろいろあったけれども、おれは公平にと言われたけれども、議長職権で本会議を開くという事態になった。こう考えてまいりますと、あるいは自由民主党政府が言うように、適法に成立したとし、さらに憲法の明定するところの自然成立、十二月の十一日とか聞いております。これをめどにゴリ押しに——会期は十三日まである。あるいは予算その他に名をかって会期延長もするというようなことが、与党幹事長その他からしばしば漏れている。こういう状態で、どうも本会議議長、当委員会委員長と、だんだんと差し上げられ、突き上げられてきて、そうして職権、職権を続けてきた。参議院としても今後が思いやられる。  そこで、私ども社会党あるいは公明党は理事懇談会にも出て、何とか審議を実際に尽くしたいし、尽くすためには何月何日まで、会期は十三日までであるから、全体の日程というものを、何月何日は何時から何時まで、総理都合はどうなる、外交上の外の会見はどうなってどうか、たまたま十二時ならばそのときは休憩かとか、それでは各党にどの程度の時間が割り当てができる——承知の、参議院は当委員会委員が一名しか出ていない会派が三つもある。こういう人たちにも十分発言ができるように、まず大まかに会派の時間割り当てをし、各会派ではその質問者の持ち時間と順位をきめて、そうしてほんとう国民の期待する方向で実質的な内容を深めて世論に問うてみたいということに対して、昨日までは、いやそれはいかぬ、与党としてはそういうわけにいかぬ、まあきめたところで公聴会ぐらいまでだということで、前進をしていないのです。きょう、あす二十五日に質問をすることに、私どもはまげて折れてここに臨んでおりますが、それじゃ藤田進が何分、何時間やるか、その次は何時間やるか、そういう時間の割り当てを従来慣例としてやってきた、これこそ慣例で。それも全然できない状態なんです。こういうことでは、最後の果てに、いやいやおれのほうは、公聴会も済んだのだ、自然成立を待っていたのじゃ国内三法があぶないからそうはいかぬと、まあ理由はどういうことを言ってくるか知れませんがね。衆議院がどうも聞かないのだ、政府もなかなか強いのだと言うかもしれません。理由は何であれ、十二月一日の公聴会が終わって、いや五日だ、六日だ、あるいは七日になる、あるいは八日になるかもしれない。かりに自然成立があるものとしても、それを待たずに、衆議院と同様なことがここで繰り返されるということは、私どもは全くこの道はとりたくない。本日私と亀田委員質疑をする予定でありますが、今後の参議院運営を見るときに、どうも衆議院と同じようなやり方でこられるのではないかという危惧が、国民にもわれわれにもあるから、貴重な時間を費やして、総裁総理にその信念を伺って、そういうことなきを期したいというのが本意であります。あなたの本会議以来の所信表明質疑応答を通じて、どうもつかみどころがなかったけれども、しかし、そのせつなせつなには重要な発言もされている。あとで私は静かに振り返り、速記録も再三読み返していきたいと思うが、今日以後の参議院事態において、再び衆議院のような状態は繰り返さない。あくまでも話し合い話し合いがまとまらなければ多数決で、いや委員長職権で、本会議は議長職権で——そういうようなことであってはならないと思う。これらについて、総理自由民主党を率いる立場からも、ただしておきたい。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の考え方は、いままでのところでおわかりいただいたと思います。ただいま藤田委員からもお話しございますように、衆議院のような例はやりたくない、そのとおりだと思います。私も、自由民主党総裁といたしまして、衆議院のような形でこれが決定を見るというようなことは好ましいことではない、かように思います。どこまでも、お話し合い、また相談ずくで、すべてのものを進めていきたいと思います。先ほどもお尋ねがございましたが、やはり各党で協定事項として話し合っていく、そうしてそれをきめていくということでありたいと思います。また、重要な議案でありますだけに、どうしても審議を尽くして国民に納得のいくように政府も努力するつもりでおります。また、皆さま方も、そういう意味で御協力を得たいと思います。同時にまた、どこまでも事務的に処理できるものは事務的に処理する、こういう考え方であってほしいと、かように思いますので、どうかひとつ、私どもの反省すべき点、これはもちろん反省するつもりでございますから、謙虚な立場で皆さんとも相談をしていきたいと、かように思います。どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。
  163. 藤田進

    藤田進君 参議院の今日までの理事懇談会等での実情は、その一端だけを申し上げたわけです。参議院が、そういう会派の複雑な事情にある、最後には質問もしないで引き下がっていかなければならない、引き下げられる、排除されてしまうというようなことがあってはならない、こういう実態は十分つかんで、与党について適当な指導をしていただきたい。  それから先ほど資料については当委員会で十分論議されるであろうということですが、ですからそれはそれでいいとしても、いやしくも、理事会なり理事懇談会、さらには当委員会が議決した資料については、政府としても、ここできめたものについては当然出していただきたい。この点はいかがですか。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 資料の提出等で、政府国会とで問題を起こした例が幾つもありますが、政府は、この問題については、法案や議案がたいへん重要な案件でありますだけに、資料の提出については皆さまが必要とされるものはできるだけ御要望に沿うように努力いたします。
  165. 藤田進

    藤田進君 いや、委員会できめて要求しても、できるだけというのではなしに、委員会がきめたものは出すということであってほしいのです。できるだけとかなんとかということで、選択権があるというようなことではなしに、その点を聞いているのです。資料のことでごたごたともめたんでは、内容を審議させまいとする手段に使われますから。あなたのほうで。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいま委員会で決定——これはおそらく理事会その他の手続を経てやられるので、問題はないだろうと思いますが、私が一応逆艪をつけた答弁をしておりますのは、事柄が外交上の問題でございますから、資料等につきましても、ここで全部引き受けましたと、こう言い切れない。その辺のところはどうか御了承いただきたいと思います。
  167. 藤田進

    藤田進君 場内の交渉の結果、総理あるいは委員長も、そろそろ食事も必要であろうというおもんぱかりもあり、休憩にしたいという申し出もありますから、私は、さらに総理に対しまして、現時点以後における、あるいはあの事態についての速記等を十分見た上で引き続きただしたいと思います。一応そういう理事間の申し合わせができた以上、私は率直にこれを尊重して、休憩に入ることにいたします。
  168. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後は二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時十六分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  169. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) これより特別委員会を再開いたします。  日韓基本関係条約等承認を求める案件及び関係国内法案の四案件を一括して議題といたします。 午前に引き続き質疑を行ないます。亀田得治君。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 午前中、藤田君から衆議院事態に対しまして、総理に対し、主として政治的な立場からその所信を伺ったわけであります。いろいろ事実関係等も相当明らかになっておるわけでありますが、私はもう少しこれらの点について審議を深めて、そうして今後再びこのようなことが起こらないようにしていかなければならぬと考えております。そういう立場から、まず最初に、私は本来ならば十一月の一日、六日、こういう時点等についても触れたいわけですが、それはひとつ省略をします。端的に、国民が一番驚きの目を持って見ておる十二日の未明の問題にひとつしぼりまして討議を深めてみたいと思うわけであります。法律的な見解等を申し上げる前に、その時点における総理の行動、これをお伺いしたいわけです。といいますのは、あの未明の強行採決が行なわれたときに、総理は本会議場におられていたのかどうか、これからまず明らかにしてもらいたいと思います。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時、議席におりました。
  172. 亀田得治

    ○亀田得治君 いたんですね。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 議席におりました。総理大臣席といいますか、別にあのひな壇にはおりませんでした。
  174. 亀田得治

    ○亀田得治君 前日の十一日は総理はどこにおいでになりましたでしょうか。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十一日は国会あるいは総理官邸におりました。
  176. 亀田得治

    ○亀田得治君 国会総理官邸、まあこまかいことは覚えておられないでしょうが、大体国会内におられたのじゃないでしょうか。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中たしか登院をしたのが九時過ぎであったかと思いますが、あるいは十時近かったかもわかりませんが、十二時半くらいまでは国会におりました。それから総理官邸のほうへ移ったように思います。また夕方は国会におりました。
  178. 亀田得治

    ○亀田得治君 いずれにしても前日国会内、またはすぐ近くの総理官邸におられたわけでありますが、その間に衆議院議長なりあるいは衆議院副議長とお会いになる機会というものはなかったわけでしょうか。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま記憶をたどりつつ思い起こすのですが、大体十一日の未明に本会議が開かれて、そうしてその後すぐ休憩に入った、そうしてそれが午前中も続いていた、かように私記憶しておりますが、私が登院して、その間の事情を幹事長と打ち合わせをした。私が十二時過ぎに総理官邸に移ります際に急に思い出しまして、エレベーターの付近から議長室へたずねていった。議長の顔だけ見て、たいへんな問題のようだなと言って、それだけですぐ引っ返して総理官邸のほうに移った。御承知のように、当日は十一日の夜おそく国会は開かれたが、直ちに延会になったという状態でありますので、それらの間、いわゆる国会休憩している間、別にこれという相談があるわけでもありませんので、私自身は総理官邸にいた、こういう状況でございます。ただ、十二時過ぎに議長室に参りましたが、そのときはほんとうに顔を見た程度で、すぐその部屋を出ております。そういう状況であります。
  180. 亀田得治

    ○亀田得治君 十一日の十二時過ぎに議長室に行かれたようでございますが、何分ぐらいそこにおられたわけでしょうか。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもわかりませんが、三十秒ぐらいじゃないでしょうか、一分以上ではなかったと思います。やあやあという程度ですぐ帰りました。
  182. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほどのお話を承わりますと、総理のほうからたずねていかれたようでありますのに、一体、三十秒程度で部屋を出るというのは普通は少し考えられないことなんですが、どういう考えで一体、議長室に行かれたのでしょうか。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はたしか十日の夜、この投票等もなかなかできにくいと、こういう状況でありますので、私は投票しないで、十日の夜おそくうちへ帰ったように思います。そういうことがありましただけに、これが休憩しておるということでありますので、私自身も心配しましたが、議長もさぞ心配しておるだろう、そういう意味で議長の見舞いというか、どういうようにしておるかということで、これはたいへん元気であったから、私はそれだけでもう安心して、そうして官邸のほうへ行ったのであります。それは十日の夜から十一日の未明にかけて、私の行動というか——私は議長と会っておりませんので、ただいま申し上げますように、やや混乱しておる、そういうところで議長室へ出かけて船田君を見舞ったと、ただこれだけであります。
  184. 亀田得治

    ○亀田得治君 十一日は午後ずっと官邸におられたようでございますが、その間、議長なり副議長と電話等のお話はされておりませんか。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん議長に私は会っておりませんが、副議長とは一度会っております。国会内であります。という状況でありますので……。
  186. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと、いま副議長のところ。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 副議長とは国会の中で会いました。総理大臣室へ副議長がたずねてきて、そうして会った。
  188. 亀田得治

    ○亀田得治君 副議長に総理大臣室でお会いになったのは十一日の何時ごろでしたか。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも検事的な取り調べを受けているような気がいたしますが、そういうことはひとつやめていただいて——私いま言うように副議長に会っております。これは十時半ごろであったと思います。
  190. 亀田得治

    ○亀田得治君 午前ですか。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前です。というのは、私が議長室へ議長を見舞いに行く前に会ったということであります。
  192. 亀田得治

    ○亀田得治君 私のお聞きしたのは、十一日は正午ごろ議長に会って、それから官邸に行かれた、こうお聞きしたので、その官邸に行ってからのことを実はお聞きしたわけです。電話等でも話をされておらない、これは間違いありませんか。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 電話等で話をしたか、しないか、これは私はしないというように、いま答えたわけじゃありません。副議長に十時過ぎに国会の中で会ったということ、それから十二時過ぎにそこを出まして、官邸へ行くその際に、急に廊下で思い出したので、船田君を見舞ったという状況でありますし、その後、午後になりまして、直接、副議長と相談はいたしませんけれども国会対策委員長等は私のところをたずねてきている、こういう状況であります。一々ただいま覚えておりませんけれども、ただいま申し上げるような状況であります。
  194. 亀田得治

    ○亀田得治君 国会対策委員長官邸にたずねてこられたのはいつごろでしょうか。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ出入りをしておりますから、記憶ははっきりいたしませんが、官邸にきたというように言い得るかどうか、私は幹事長等とも会っているし、国会対策委員長とも会っているし、議運の委員長とも会っているということを申し上げている。それがどういうふうな状況であったか、正確にただいま申し上げるわけにまいりません。
  196. 亀田得治

    ○亀田得治君 田中幹事長とは相当ひんぱんに当日はお会いになっているわけでしょうか。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当日はそうひんぱんに会っておりません。それだけははっきり申しておきます。
  198. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうひんぱんと言いますと、これはとりようがいろいろあるわけでございますが、たとえば三回だとか、四回だとか、どの程度幹事長とは接触があったわけでしょうか。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いつもなら相当会う、会ってもまた不思議でない幹事長と総裁ですが、当日は午前中一回ぐらい会っております。あるいは午後どうだったか、どうもはっきりしないのですが、あるいは一回ぐらい会っているかもしれない、こう思いますが、いずれにしても一回か二回、それより以上は会っていない。
  200. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後に、その点についてさらにだめを押したいわけですが、十二日未明のあの異例な措置、これは総理総裁として田中幹事長からの連絡なり、いずれかの方法で御承知になっていたのじゃございませんでしょうか。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは当時の状態ですが、私は全貌を明らかにいたしておりません。ただいま申し上げますように、十一日の日は、午前零時に再開をして直ちに休憩した、その後開くことができなかった。たいへん心配しておりますので、これは国会の当局も、また与党の私どもも、どうして会議が開けないのか、こういう意味で非常に心配をした、それを中心のいろいろ協議であったと、かように思っておりますが、十二日早朝のあの措置については、これをつまびらかにいたしておりません。
  202. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし、先ほどのお答えによりますと、十二日本会議場のこの自民党の後方の席ですね、そこにおられたようですね。十二日未明の本会議場の、大臣席じゃなしに自席におられたようですね。それは議長が入ってきて開会を宣する若干前に総理は入られたようですね、どうなんです。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十二日、これは私はいました、議席にいた。これは先ほど答えたとおりであります。それが議長より早目にいた——確かに議長が入って議席につくのをこの目で見ておりますから、議長よりは早かったと、そのとおりだと思います。
  204. 亀田得治

    ○亀田得治君 議長がああいう異例な議事進行をやったわけですが、総理総裁として何もなす手はなかったのでしょうか、どうなんです。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時、議長が本会議席上へ入っていくのは——廊下では写真をとられているようだったし、そして議席につくときも落ちついた形でありますし、私はかような非常処置がとられると、かようには思わなかった、たいへん冷静な議長の態度であった、しかし、かような処置がとられたのでありますから、それじゃそのときに何らかの行動に出るかというと、もう私が当時は行動に出るような余裕がなかった、かように私は思います。
  206. 亀田得治

    ○亀田得治君 いま言われたのがそのとおりだとすれば、これはあげて衆議院議長が自分の一存でやった、こういう理解になるわけですが、しかし、そういうことで世間は納得するでしょうか。あれほど異例なことにつきまして、最高の責任者が少しも知らないと、私はこの点は非常な問題があろうと思います。田中幹事長は張本人かもしれぬが、これはよく知っていたようですが、それはどうですか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままでの新聞その他に出たところでは、幹事長は知っていたというようなことも言われておりますが——言っておるのです。また、議長自身は自分の職権でこれはやったのだ、かようにも申しております。そこらのところは私は取り調べたわけでもありませんから、いままで新聞に出ているところで、その事実はさようであったなと、かように理解する以外に方法はございません。
  208. 亀田得治

    ○亀田得治君 普通の常識からいいますと、総裁と幹事長というものは、これはもう同心一体、あれほどの異例なことが幹事長だけが知っていて、最高の責任者が全然ノータッチということは、はなはだもってこれは筋が通らぬと思うのですね。もし幹事長がそういうことを佐藤総裁に知らしめないでやったということであれば、田中幹事長をそのままにしておくということ自体がこれは問題になる。ああいう異例な事態について、賛成の方はそういう責任の追及はされないでしょうが、これは当然常識的にそういうことに問題が発展しなければならない。ところがずっと様子を見ておりますると、幹事長、出しゃばったことをするなといったような追及も、総裁から自民党の中からもないようでございます。そういたしますと、われわれの判断としては、これは佐藤総裁も了承の上でやっておる、どうしてもこう感ぜざるを得ないわけですが、私の感じ方というものが、おまえそれは少し飛躍しておるということが言えるでしょうか、どうでしょうか、お聞きしたい、大事なことですから。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういう事柄は、幾ら説明しても、おれはそうは信じないんだということで片づけられる筋のことだろうと思いますので、それは亀田君の御意見、これだと、こういうふうに私もきめません。これは御自由だと、かように思います。
  210. 亀田得治

    ○亀田得治君 私が非常に、非常識な想像をたくましゅうして何か言うということなら、それは亀田君個人の御推測はごかってというふうにお答え願っても、これは私も引き下がります。そうではない。だれでもその点についてやはり疑点を持っておるわけであります、疑点を。最高の総裁が知らないでやられた場合と、暗々裏に認めてやった場合と、これは非常な違いが出てくるわけであります。総裁お答えでございますから、一回でその点は私も信じたいわけでありますが、しかし、あまりにも事が大きいので重ねて実は聞いておるわけでありまして、それは亀田君の御推測はごかってと、そういうことじゃなしに、もう少し納得のいく、君はそういうことを言うが、その推測自身はこういう点で間違っていやせぬかとか、何か私に対する説得的なお答えがお願いしたいと思うんです。
  211. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はまあ先ほど来申しますように、私自身が詳細知っていないということを申しました。これは信用されないという、その立場からいろいろお尋ねになるので、これを説得するということはなかなかむずかしいことだと、かように思ったんです。したがって、これは亀田君の御自由じゃないですかと申したのはそういう意味です。しかしながら、私はきょうの午前中もいろいろお尋ねを受けました。私自身が民主主義議会政治を守る、これにはほんとうに徹したいという、そういう考え方でございます。そういう意味の各界の協力を得ようと、そういう立場でものごとを考えておりますので、こういう非常の処置というものについては私は賛成しない、その立場でございます。私もとらない。だから、ただいま申し上げるような点につきまして御了承いただきたいのであります。
  212. 亀田得治

    ○亀田得治君 一応、事実関係はその程度にいたしまして、最終的な責任関係を私やはり明らかにしていかなければならぬと思いますので、若干その前に、この十二日未明の事態に対するわれわれの法的な見解というものを若干明らかにして、そうしてそれに対する佐藤総理からのお答えも願いたいと思うんです。これは衆議院規則百十二条、総理にちょっと条文をあげてもらいたいわけですが、こういう問題になるといつも法制局長官が出てくる。きょうはあなたらが出るような場じゃない、大事な問題なんですから。たとえ一規則の問題でありましても、その条文にしては——小さな一規則の運用のいかんというものが日本の議会政治にかかっておる問題なんだ。そういう意味でこの百十二条の運用というものにつきまして、総理自体が考えて、そうしてこのお答えを願いたいわけです。そういう条文、平素見たことがない、しばらく考えさせてくれというのならけっこうであります。あなた自身の考え方をここで明確にしてほしいと思うのであります。法制局長官、あなたはともかく平素、政府がやったことを、この何でもかんでもいい、法律的に合法化していけばいいという立場でやっているわけですから、きょうはそういう場じゃない、あなたはだから黙っていなさい、これは国会議員としてのこの最高の問題、そういう立場であなたは遠慮してなさい。念のために、私、百十二条を一度朗読さしてもらいますが、衆議院規則の百十二条、これは衆議院議長がお使いになったと称する条文、「議長が必要と認めたとき、又は議員の動議があつたときは、議長は、討論を用いないで議院に諮り、議事日程の順序を変更し、又は他の案件を議事日程に追加することができる。」こう書いてあるわけです。船田議長は、いま読み上げた規則を使って、まず、この議題の第一にきている法務大臣不信任案、その前に日韓関係の案件を持ってきたのだ、だから、この議事日程の変更は合法的なんだ、こういうことを盛んに副議長とともに主張されておるわけであります。しかし、われわれの理解としては、まず第一に重要なことは、この百十二条にいう議事日程とは一体何か。これは原則として、同じクラスの議案、こういう理解をすべきだと思うのであります。同じクラスの議案、たとえば法律案が何件も出ている、あるいはその日になって、同じクラスの法律案委員会を上がってきて、それを追加する。場合によって順序を変更する。こういう理解がまずなされなければならぬと思うのであります。もう少し具体的に言いますと、国会には会議体の本質からくるところの各種の優先議案がございます。この優先議案と、その普通の議案との間に、この百十二条というものを無制限に適用するということは、結局、優先議案というものをなきにひとしい状態に置いてしまうわけであります。私はこのことは会議体の本質に反する、こういうふうに理解していかなきゃならぬと思うのであります。どんな議案でも、この百十二条によって順序変更ができるのだということになれば、これは多数独裁のための条文に変化するわけであります。百十二条は決してそんなことを考えてつくられたものではない、いかなる場合においても、少数党に確保されている優先議案というものは認められなければならない。そういうものを廃棄する意味の条項ではないということが正しい私は理解のしかただと思います。ところで当日、議長がおやりになったことは、法務大臣の不信任案、これが前日来続いている第一の議事日程であります。これをこの百十二条によってあと回しにして、ほかの案件を持ってきたことは御承知のとおりであります。ここにこの条項の乱用があるわけです、まず第一に。それから第二には、なかんづくその日は、法務大臣不信任案は前日から引き続いて審議を継続しておる案件だという、これをひとつ頭に置いてもらいたいわけであります。普通の法律案と優先議案と二つ出てきた。さあ議長がいまからどっちを先にしようか、こういう選択の問題ではない。当時の時点においては、法務大臣不信任案は優先議案として院議によってすでに爼上にのぼっておるわけであります。爼上にのぼっておる。そういう案件が出ればこれはいたしかたがないということで、自民党の日韓案件を促進する立場の諸君も、社会党はもちろん、全会一致でもって不信任案を審議する立場をとって動いておるということであります。こういうことになりますと、そこには私は議長の選択権というものはますますあり得ない。議長の職権がいかに強大だといいましても、会議体の全員が本会議できめたこと、その上に出るものでは断じてない、こういうふうに申し上げますと、いや、しかし、そう言うけれども、議長が単独でそういうことをしたのではないのだ、この変更をするについては議長は議院にはかってやったのだ、まあうしろの法制局長官あたり、何かそういうようなことを言いたそうな顔をしておりますが、そこに問題がある。もしそういうへ理屈を言われるとすれば、会議体にはどこでも一事不再議の原則というものがございます。一事不再議。一たんきめたことをその後においてまた同じようなことをやらない、この原則は主として同じような法律案等が出た場合に、法案の内容等についてよく国会でも問題になることでございますが、しかし、このことは議事手続についても私は同様でなければならぬと思います。そうしなければ、一たん決定されたルールというものが絶えず変更される、少数党は何回でもそれに対峙するところの案件を出していける、多数党はうっかりこうきめたルールだとして、自分のつごうが悪いような状態になると、きまったルールまでこわしてくる。これではもう、一方は動議の乱発、一方はいつどういうふうにするかわからぬ、全く不安定な会議になるわけでありまして、こういう点から冷静に判断をいたしまするならば、たとえ議事日程の変更につきまして議長が本会議にはかること自身、これは権限がないこと、全然ない、これは。もしそれを認めるとしたら、日本の国会のルールというものは、すべてこれはめちゃめちゃになることを認めることであります。そういう意味で、議長、副議長は百十二条を使ってやったのだから、まあ多少気のひけるところもあるが、合法か違法かということになれば、合法的なんだと、こういうことを盛んに新聞等でも述べておられまするが、私は、このような考えは十二日未明の行動を合法化するためにことさらにつけておる理屈でありまして、そういうことになれば、もう先ほどから指摘しておりまするように、冷静な国会審議なんというものはもうなくなるわけであります。そういう点について、まず佐藤総理のお考えを聞きたい。一方は合法だと言う。私がいま申し上げましたのは、議長のやり方は百十二条の乱用、したがってそれは違法であります。はっきり私はそう考える。総理、どうですか。長官、だめだよ。そんな三百代言式な理屈をいまお答えを求めているのじゃない。どういうふうにお考えですか。私の主張に不明確なところがございますれば、お聞きいただければ、さらに御説明申し上げて、お答えを求めたいと思います。あなたがこういうことを合法か非合法か、いずれにお答えになるかということは、これはもう非常に大きな影響のある問題でございます。どうなんでしょうか。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘になりましたので、私、百十二条を初めて読みました。これは重ねて読まなくてもおわかりのように、「議長が必要と認めたとき又は議員の動議があったときは、議長は、討論を用いないで議院に諮り、議事日程の順序を変更し、又は他の案件を議事日程に追加することができる。」、こういう規定でございますが、これは衆議院参議院と同じように、議事日程のところに同様の条文があるのでございます。私はこういうことを議員として知らなかったことを恥ずかしく思いますが、こういう今回の問題は、これはどこまでも議院の問題だと、かように思いますので、政府がとやかく言う筋のものではないように思います。
  214. 亀田得治

    ○亀田得治君 議院の問題であると言いますが、午前中も藤田君から指摘しましたように、また世間の常識でもありまするように、政党政治なんです。そうしてわれわれの要求にもかかわらず、衆議院議長、参議院議長は離党しない。自民党籍をいまでも持っておられます。何といっても、これは実質的に佐藤総裁が最高の責任者だ。その最高のいま問題が出ておるときに、おれは議長の立場と違う、一内閣総理大臣だ、そういうふうなことを言われましても、これは世間が納得せぬわけだ。佐藤さんは一体どういうふうにこれをお考えなんだろう、これがみんなの求めておる気持ちなんです。だから、そういう意味で、議長、副議長はこの条文を引用して合法、合法と言う。私たちは、この条文がそのようなことを許すものではない、したがって、それは形はなるほどこれに当てはまっておるかもしれませんが、実質的には違法な行為だ、こう考えておるわけなんだ。また、そういうふうに主張しておる法律学者も、この問題が起きて、多々あります。法律学者というよりも、これはもう常識、議会というものに対する常識としてみんながとらえておるわけです。そういう意味で、もっとはっきりこの点はしてもらいたいと思います。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、ただいままあ政局を担当しておりますが、そういう立場において国会政府、その関係をいろいろ国民も見ておると思います。なるほど私は自由民主党総裁でもあります。しかし、この場合においては、国会に対した場合には、私の自由民主党総裁というよりも、総理としてのほうが国民の期待ではないか、かように私は判断しておるのであります。ただいまの衆議院の問題、いわゆる議院の問題としてこのことを論議すべきだと申しておるのは、そういう意味であります。私がただいま、ときに二重人格を持っておるような言い方をされますが、初めてその法、条章を読んだ私でありまするので、その点では議員としての責務という意味において、私の責任を痛感いたしておりますが、それはやはり議長、副議長、事務当局等にまかすべきことではないかと、かように思います。
  216. 亀田得治

    ○亀田得治君 佐藤総理衆議院規則百十二条を本日初めてお読みになったようでありますが、これは議長、副議長がこの条文を使ってやったんだから合法なんだと言うから、世間の人も見るわけであります。実は総理総裁ともあろう人が、こういうものを一々見ぬでもいい。見ぬでもこれはあたりまえのことなんです。私が申し上げておるのはあたりまえのことなんです、これは。だから、何か百十二条をいままで見なかったことについて若干責任があるようにもお答えになっておりますが、そんなことは私は見ぬよりも見たほうがいいというだけでありまして、そんな問題じゃないと思う、今度の問題は。議長、副議長がこの条文にかこつけて言うから、われわれもこれを追及しておるわけなんです。百十二条の問題は一応その程度にいたしておきましょう。  それから、次は、百十二条を乱用して、結局日韓案件等を先に持ってきて審議の場にかけたわけであります。議長はかけた。ところが、このかけ方、全くもうめちゃくちゃと言わなければならない、めちゃくちゃ。これも私が法的な追及をするまでもなく、世間がもう直観的にそのことを理解をしておるわけであります。その点を特に午前中の質疑で問題にされたわけでありますが、若干違った面からさらに、重要問題でありまするので、明確にしておきたいと思うのであります。  議長は、この案件を本会議審議するにあたりまして、まずどういうことをやったかといいますと、御承知のとおり、委員長の報告を省略しておるわけであります。委員長報告を省略しました、ます。衆議院規則の百十五条、これによれば、「委員会の審査した案件が議題となったときは、先ず委員長がその経過及び結果を報告し、」云々と、こうなっております。これも総理は、そういう条文なるほどあるのかと、初めてかもしれませんが、しかし、これは条文を見なくっても、会議体の本質からこれは当然なことをきめておるわけであります。会議の最終の目標というものは、日韓案件なら案件あるいは法律案そのものでございますが、いやしくも委員会にかかれば、その前段階としてその報告を求める、こういうふうに規則もなっておるし、慣例もなっておるわけであります。院議にはかればそういうものをなくしてよろしいと——全会一致等でやる場合は別でございます。そうでない場合に、そういうものをなくしていいというような規定はどこにもありません。日程の変更については、衆議院議長が指摘するように、形式だけを迫っていくと、百十二条に合致するような感じのする面もあるわけですが、この重要案件について委員長報告をなくする、こういうことはどこにもないわけであります。まずこれをやっておる、まずこれを、百十五条を無視して。百十五条もついでにちょっとごらん願いたいと思いますが、総理、私がいま御指摘申し上げた点、どういうふうにお考えでしょうか。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 亀田君のお尋ね、ただいま私もその議事の規定を初めて読むものですから、なかなかいま言われましても結論をちょっと出しかねております。というのは、私が批判できない状態にあるということを申し上げておきます。
  218. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ大いに総理総裁に批判をしてもらいたいと私たち願っているわけです。お答えによりますと、幸い最高責任者とわれわれが考えておるあなたまではあのことが知らなかったと、こうおっしゃるのでありますから、これは大いに批判できる立場ではなかろうかと思う。  それから、もう一つ、次に、その百十五条を無視してやりましたが、さらに議長は百十八条、「議員の質疑が終つたときは、討論に付しその終局の後、案件を表決に付する。」、こう書いてあります。これは当然そういう案件について質疑討論というものを予定しておる条文であります。全会一致で省略することはありましても、そうでない場合には、これは議員の審議権の中で特に重要な基本的な権利とされておるものであります。これを省くことはできないわけであります。中間報告じゃの何じゃのいろんなことをいままでやりましても、全然やらさぬということはできないわけであります。短縮はできても、全然省いてしまう、そういうことは明らかに国会関係法規、慣例、直接的には百十八条というものを全くこれはないがしろにした行動と言わなきゃなりません。ところが、ここでひとつ議長のほうの言い分を聞きますと、そうではない、議長はあの際、質疑討論の通告がなかったのでそのまま採決に持ち込んだんだ、こういう説明を、まあ議長は入院されておりますが、副議長が盛んにやっておるようでございます。どうでしょう、こういうものの言い方は。私は、あやまちを重ねて、さらにこうみっともない説明をするものだなあと、はなはだこれはもう悲しくなるわけであります。  抜き打ちの議事日程の変更であり、抜き打ちの上程であることは間違いありません。それならば、当然、あとの議題がかかった、これだけもめておる案件に質疑討論のないわけがございません。賛成、反対を問わず、民社の場合でも、いかなる場合でも討論に参加する、そういうことは前々から言われていたことも御存じでしょう。社会党はもちろん。そういうときに、一秒か二秒、ちょっとそういうことばをそこへはさんだからといって、質疑討論という議員の基本権を無視したことにはならぬのだと、こういう三百式な議論をこねられるということはもってのほかだと私は考えておる。そういうことばをちょっと挿入することによって、議長、副議長は百十八条を無視しておるものではない、違反しておらない、合法だ、こういうお考えのようでございますが、どうですか、佐藤さん、国会議員として、審議をするものの立場として、そういうへ理屈が通っていいものでしょうか。先ほどは批判を控えたいというふうに言われるわけですが、ああそうですかというわけにいかない。どうしてもあなたの考え方というものをはっきりさしてもらいたいと思う。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 議長のとられた処置を批評しろと、こういうお話でございますが、私は、午前中も申し上げましたように、議長の権威を尊重するということを申しました。したがいまして、議長のきめられたことについては、これはやはり一応間違いをしないのだ、こういう前提で尊重しておるのであります。ただいまのお話にいたしましても、速記もよく調べてみなければならないと思います。あるいはそれが時間的にたいへんな問題だ、動議を出してすぐ採決するという、そのためにどうこうというような批判はあろうかと思います。その点で、いわゆる違法ではない、合法だと言われることも当たらないではない。しかしながら、この種の事柄が異例の処置であることについては、私も皆さんと同じような考え方をしております。したがいまして、こういうことは重ねて起こらないように努力をすべきことだと、かように思いますから、この点をきょうも午前中に詳しくお話をしたと思います。問題は、積極的にこれこれの行為はしてはならない、かように規定はなくとも、異例な処置はとにかく、特殊な場合でない限りとるべきことではないのでありましょうから、そういう点も十分勘案すべきだと、かように私は思います。
  220. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ議長の権威を盛んに言われるわけでございますが、やはり権威というものは筋の通った行動の中から自然にこう生まれ、養われていくものだと思います。われわれが見て、ずいぶんおかしいことをやる、けしからぬと、それをただ押えつけて、議長の権威に従えと、そう言ってもそれはだめなんであります。しからば、そういう議長の権威を高めていくにはどうしたらいいのか。それはやはり現実に起きた事態について、それが間違っておるなら間違っておるということをはっきりしなければ、することによって私はその出発点が見出だされると思う。それがいいのであるか悪いのであるかわからない、それではまた繰り返されるわけであります。そういう意味で私は、つらいかもしれませんが、はっきりこういうことはものを言うたほうがいいのではないかというふうに思って聞いているわけであります。議長の権威を今後つくりあげていくために、もしいままでの事態において思わしくないことがあれば、それをはっきりお互いに言っていく、これでなければ信用できぬじゃないですか。あなたがそういうふうにおっしゃってくれれば、ああなるほど向こう側の立場でああいうことはやったが、これからは気をつけていくという意味にわれわれも理解できるわけなんであります。最後の肝心のところへいくと逃げられてしまうのでは、まあ表向きはああは言うておるが、実際の本心はわかったものではない。われわれも日韓案件を審議しておりまして、そんな不安なことでこの深い審議などはこれはとてもできるものではありません。そういう意味お尋ねしているわけですから、白黒ですね、まあ白黒というと非常にはっきりしたお答えを求めるようでありますが、多少緩和した表現でもいいわけですが、どういう方向か、議長の行動、結論的に。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 亀田君のただいまの、議長の権威をどういうふうにしたら高めることができるか、こういうお話につきましては、これは与野党ともにわれわれお互いに十分考え方をいたしたいと思いますが、その権威を高めるためにも過去のこの議長の行動というものは許せない、かような御批判でございますが、私はこれにつきましても全体として見ていくことが必要ではないか。この議長の行動だけ、この問題だけを抽出して、これはけしからぬと。これがどういうような状態のもとにおいて生まれたか、またただいまの国会審議そのものがいわゆる全部がそのままに法規が守られておるような状態であるかどうか、そこらのことも十分勘案して、総体的に総合的に判断すべきではないだろうか、かように私は思います。そういう意味で、与党の責任ももちろんさることでございますから、与党がまずその範を示す、そういう意味において与党の責任はまことに重大だと、かように思いますが、野党の皆さんのところにおきましても、民主政治議会制度を守り抜く、こういう意味においても御協力を願いたいということを重ねて申し上げまして、お答えといたします。  問題は、何といたしましても、一つだけ、一つの問題だけを抽出してそれの善悪をきめる、こういうことではきまらないようで、国会審議をたどっておる、かように私は思いますから、総体として総合的な判断を下されるようにお願いを申し上げます。
  222. 亀田得治

    ○亀田得治君 相当こう反省の色が見えてくると、最後へいくとまた逆戻りする。これは遺憾です。それは前後の事情、われわれももちろんわかっております。お互い戦術を尽くす、それがからみ合っていく、そういうこともわかっております。 ただ、私の申し上げたいのは、その前後にどんな事情がありましても、本質的に国会会議体そのものを破壊してしまうようなことですね、そういうことを議長はどういう場合でもやるべきじゃない、このことを申し上げておる。したがって、私は、十二日の未明のこの異例なできごと、その点を摘出して申し上げておることは間違いないわけなのです。そんなにその前後のいろいろなからみ合いを一々やっておったら、それこそ問題がわからぬようになってしまうわけです、時間もずいぶんかかるでしょうし。そうじゃない。どんなそれまでの経過があっても、あのようなことは議会である以上はやっちゃならないのだ、この点を申し上げているわけですよ。たとえば、総理は、午前中、社会党が演壇で妨害したとか、だから、議長があんなことをやったのはしかたないじゃないかという意味のことを多少具体的に申されました。そこが問題、それは、なるほどそういう事態があるかもしれません。しかし、それはそれとして対処すべきじゃございませんか。排除の方法というものはあるわけでしょう。あるいはこの会期全体をいかにするかという問題もあるわけでしょう。それはそれとして対処すべきだ。片づける方法はあるじゃないですか、幾らでも。だから、どんなことがあっても、それは事実上はからんでいても、冷静に考えれば、それに対する方法はあるわけですよ。絶対にある。これは従来もやられたことがある。参議院だって経験がある。それはそれとして、どんなにむつかしくとも処理して、いやしくもこの重要案件の結末をつけるのに、そういう会議の本質を無視したようなことは絶対いかぬじゃないか。だから、そういう意味でほかの前後の事情とからまして言われるということは、結局においては議長の行動を容認することになる。それは私はいかぬという、そういうことでは。それくらいの強い決意がなければほんとう議会の秩序というものは生まれてこぬと思います。引き離してやれるじゃありませんか。総理、どうですか、実際にやろうと思えば。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来お答えいたしたのでありますが、衆議院でこういう問題が起きた、この場合に、衆議院の議長の責任を追及することが非常にきびしい、そのお気持ちもわかりますが、議長の責任を追及するばかりじゃないのだ、お互いの共同責任だ、こういうことをやはり考えてみる筋であるのじゃないか、こういうことを申し上げたいのであります。私は、衆議院においてこういう事態が起こり、そして国会の権威を何かそこなわした、せめて参議院はその権威を取り戻す、こういう意味国民の期待にこたえるようにしよう、これがお互い責任じゃないかと、かように痛感するのであります。議長を責めることも、これは皆さまのお気持ちとしてわからないではありませんけれども、その点でわれわれも何か反省するものはないだろうか、これだけのものがどこかに気持ちに一部あってよろしいのじゃないか。このことを私は申し上げたいのであります。
  224. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。佐藤総理のただいまの答弁、そういう一般論にこの問題を解消してならぬのであります。亀田委員質問していることは、議会民主主義をどうするかということが全く焦点になっている。この問題に対する佐藤総理政治的な見解を明確にするということは、今後非常に重大なことだと思います。そういう観点から、二点について質問したいのですが、第一の問題は、あなたは議長の権威、権威ということを言います。都合のいいことは議長の権威を口にする。ところが、都合の悪いときは議長の権威は全くこれは無視しています。あなたは、午前中の審議の中で、何ということを言ったか。第一に、田中副議長が議員の責任を明らかにして総辞職すべき問題だ、こういう見解について先ほど藤田委員から質問がありました。ところが、あなたは、田中君は自民党員だ、したがってこのことを自分にもはからないでこういうことを一方的に決定した、それを了承できないという意味発言をあなたはされておるはずです。そうすると、全く前後撞着しています。こういう形で、私は、都合のいいところだけを議長の権威をかさに着て、そして議長そのものがおかしたこの不当なやり方、違法なやり方、このものを合理化するということは絶対に許されないと思う。  ただいまの第二の問題に移りますが、これと関連して当然、一、二秒の間に討論を省略、これはでき得ませんから、このようなことは一体物理的に可能と考えますか。物理的に可能でないことを単に口先だけで合理化して、そのまま押し通すということが議会民主主義の根本的な破壊にもつながっている。この点が非常に私は重大だと思いますので、一体可能と考えているのですか、可能と考えていないのですか。あなたはこのいろいろな条文について先ほどからただされた、これに対して私はいま初めて読んだ。したがって、これに対して云々することはできない。しかし、そういうものでありません。あなたは一切の最高責任者としてですよ、この事態に対する見解というものを明確にする。これが今後の議会民主主義の確立の上に非常に重要なポイントになっている。そういう点から亀田委員質問されていると思うのです。したがって、先ほどのような一般論に問題を解消して、そうして単に議長が悪かったんじゃない。議員全体が反省しなければならぬ。そういうことのなきよう、こういうやり方で問題をはぐらかすことは絶対に許されないと思います。そういう点で、先ほどの二点について私はあえて質問したい。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 岩間君にお答えいたします。  先ほど来、亀田君とのお話で、お互いに議長の権威を高めようじゃないか。こういう話で私どもはいまようやく結論に達したような気がしております。その際に、ただいま岩間君からはそういうことじゃないんだと、こう言うので、つまみ食いをした意見が実は出ている。都合のいいところは取り上げる、都合の悪いところは取り上げない、それじゃ困ると、こういうことを言われたようでございますが、私もそのつまみ食いをしたくないものですから、お互いがこの民主政治議会制度、これを守りていくという意味からも議長の権威を高めようじゃないか。どうしたらいいか、こういうことで十分論議を尽くしたい、かように私も思っております。  また田中副議長の辞職の問題を例に出されましたが、私自身は田中副議長からも相談を受けておりません。田中副議長の話も、新聞に出たところと必ずしも一致していない。どうもやや違うのじゃないだろうか。これは私の想像ですが、野党の諸君からこういうことでは責任を果たすわけにいかぬ、辞職論が出た、かようにも私は小耳にはさんだのであります。これは与党の諸君がそういうような意見は述べておらない、かように私は思っております。とにかくお互い協力をいたしまして、とにかく議長の権威あるいは特別委員会なれば委員長の権威、こういうものを高めることによってりっぱな成果を上げるんじゃないか、私は思うのであります。  第二の問題といたしまして、一、二秒の間にそんなことが物理的にできるはずはないじゃないか、こういうお話でございますが、これもございますから、私も先ほど申しますように、よく速記等も取り調べて、どういうような決議が行なわれたのか、どういうような採決の方法がとられたか十分検討する必要があるだろう。これはおそらく速記だけを見れば何ら批判すべきものはないようになっているだろう、私も思います。これがここで問題になっているように、いわゆる異例な処置だったんだ、こういうことだと、かように思いますので、この種の事柄は物理的に可能、不可能の問題ではなく、どうも国会審議のあり方として望ましいことでないことは、重ねてこの機会に申し上げて、そうしてこういう事柄がないように、そういうように最善を尽くしていこうではないか。このことが同時に国会国民の期待に沿うような成果をおさめるような活動のできるゆえんじゃないか、私はかように思います。
  226. 藤田進

    藤田進君 関連。どうも聞いておりまして、午前中佐藤総理の答えられたことが、休憩したあとまたどうも逆戻りしていて、議長の権威はこれを尊重したいということをしばしば答弁の中で私は聞きました。また、あのようなことは遺憾である、好ましくない、再び繰り返さないようにということでもありました。いまのお話を聞くと、議長の権威は失墜しているから、これから高めていかなければならないという、そういうお気持ちに立っておられるように聞くのであります。その失墜している議長の権威を尊重するということに午前中の答弁はなるように理屈上なる。一体どうなんでしょうか、これから再びなきようにということの大切な出発点が、かような暴挙が行なわれたことに対する処理というものを完全にやって初めて、さて今後はということにならなければなりません、私はそう思う。  議長の権威論についてと、いままで行なわれた事態に対する処理というものを、これを出発点に議会民主主義を擁護していくということでなければ、これは再び繰り返さざる保障にはならない。総理も議席にいたということで、詳しく当時の模様は御承知でしょうが、るる亀田君から法規に照らして説明しながら、総理総裁所信をただしているのですから、それにまともに率直に答えていただきたいということをつけ加えて、答弁をいただきたい。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は午前中のお話とただいまのと別に食い違っているとは思いません。私も議長の権威を失墜した、かように断定はいたしておらない。私どもいま話し合っておるところのものは、答弁の形で申し上げておりますところのものは、議長の権威をより高くより高める、こういうことをお互いに考うべきではないかということでございます。失墜したのを取り返すという申し方はいたしておらない。しかしながら、私はああいうような事態が起きたことによりまして、少なくとも国会自身が国民の期待したものとは違う方向だ、こういうような感じを与えただろうと思う。やはり国民の素朴な考え方から申せば、午前中申しましたようにどこまでも実質的な審議を早くすることだ、そうして力を尽くすことだ。それにはどんなに時間をさいてもいいのではないかというのが、国民皆さまの素朴的な考え方だろうと思います。また手続的な問題は、できるだけ事務的に処理して、能率よくひとつ働かしたらどうかというのが、これまた素朴な国民の願いだろうと思います。   〔委員長退席、理事草葉隆圓君着席〕  私はそういう観点に立ちまして、国会もぜひともりっぱに国民の負託にこたえる、そのことが民主政治を守る、あるいは議会制度を守る、これをまたより向上さす、こういう意味でたいへん意義がある、建設的な意義がある、かように私は思っております。午前中と午後と別に変わった意見を申し上げているわけじゃございません。
  228. 藤田進

    藤田進君 事後処理の問題について……。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事後処理の問題につきまして、これは十分お互いに話し合っていかなければならない問題であります。お互いが過去のできごとにつきまして反省もする、また自粛もする、そうして前進して民主政治を守り、議会制度を守り抜く、そういう方向で結論を出すべきだと、かように私は思います。いわゆる前向きの姿勢でこの問題に取り組むことが必要だ、かように思います。      —————・—————
  230. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま山本茂一郎君、杉原荒太君が委員を辞任され、その補欠として任田新治君、岡本悟君が選任されました。      —————・—————
  231. 亀田得治

    ○亀田得治君 私はこの際、ひとつ提案を申し上げたいと思います。それは、衆議院の異例なこの事態に対しまして、参議院でもっとひとつ事態を究明をして、そうして国民が願っておるような方向というものを打ち出していくべきだと思います。そういう立場から、衆議院側から四名証人として呼んでもらいたい。  その第一は、衆議院議長。現在退院もされましたし、新聞等によりますと、議長はあの異例な措置をとるまでに七つの案というものを検討されておるようであります。それらの詳細を議長みずから聞きたいと考えるわけであります。  それから第二は、衆議院副議長。田中副議長は、なかなか張り切っておるようでして、社会党の代議士会にまで出てきて、何だったら討論しようなんでいうように張り切っておるようでありますから、どうもあの姿勢を見ておりますると、少しも不当なことをやっておらないという感じがしてなりません。そういうことは、われわれとして、とても同じ国会におる者として耐えられないわけです。正規にこちらに証人としてきてもらって、当時の事実並びに考え方というものを明らかにしてほしいと思うのであります。  それから第三は、衆議院の事務総長。これは当然衆議院議長を補佐する立場にありまして、あのような異例の事柄が事務総長抜きにしてやられるものとは断じて考えられません。そういう意味で、事態を明らかにするために、衆議院事務総長。 それから第四には、自民党幹事長田中角榮。総裁は、本件の陰謀について知られないように言われるのでありますが、しかし、田中幹事長は、みずからも公言しておるわけでありまして、私は以上四名の方に来てもらって、一体どのような事実関係であったのか。そうして、またそれに対する見解ですね。やってはみたもののやむを得なかったので、決してこれは前例としない立場におるのだとか、いろんな見解といっても立場があるでしょう。われわれの立場からするならば、あのようなことは違法、無効、そういうふうに考えるわけですが、しかし、やられた張本人は、なかなかそこまでは言われない。言われないにいたしましても、反省の度合いというものは、これは非常に今後の問題に影響するわけであります。  午前中にもちょっと申し上げましたように、こういうことは、本来は他院のことであって、われわれがそこまで容喙すべきことでないかもしれません、理屈だけを言うならば。しかし、単なる衆議院事態として狭く考えたら、これはもうとんでもない見当違い。国全体の問題。そうすれば、公式の場でほんとうにこう権限を持って論議をできるといえば、ここしかないわけであります。そういう立場で申し上げておるわけでありまして、委員長のほうで、この問題についていかなるひとつ決意を持っておられるか、明らかにしてほしいわけであります。委員長のほうで、それはひとつやりましょうということになれば、もちろん私たちはそれが全部終わらなければあと質問をやらぬとか、そんなばかげたことは申し上げません。日曜日でもよろしい。ほんとうにやろうと思えばいつでもできるわけであります。真剣にこれは申し上げておる。そういう意味で、ちょうどいま委員長……、どこへ行った……。委員長のほうで、真剣にこれは考えてほしいと思う。他院の最高責任者を証人に呼ぶなんということは、私もこんなことは軽々しく申し上げられることではありません。しかし、そこまで掘り下げて、そうして一つの道を見出したいという熱意から申し上げておるわけでありまするから、これはひとつ十分検討していただきたい。その返事を承って次に進みたいと思う。
  232. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) ただいま亀田君の御提案に対しましては、理事会でよく相談をいたしまして、委員長、理事懇談会でよく相談をいたしまして、御返事を申し上げます。
  233. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、いまちょっと私の聞き違いだったかもしれませんが、その喚問するか、しないか自身を理事会で相談するのですか、喚問することはいまそこにお集まりになった理事の皆さんで了承があって、その具体的な実行について理事会で御相談をされると、そういうことでなければいかぬと思うのですが、どうなんでしょう。私もあまりこういうことで時間を取りたくありませんので申し上げているのです。
  234. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) お答えをいたします。その証人として呼ぶか、呼ばないかを含めたことを理事会において御相談をして、御返事を申し上げます。
  235. 亀田得治

    ○亀田得治君 それではだめじゃないですか。それはだれの意見ですね、このような重要な問題をそう軽く扱って、私たち普通は本日のいままでの質疑などはしないで、そうして案件それ自身に入っていくべき立場なんですが、そうせざるを得ぬわけでしょう。こういう重大な問題を踏まえておいて、それを取り上げるか、取り上げぬかもわからぬと、そういうことで一体どうなるのです。この参議院においてもまたそういうことを画策されているのと違いますか。どうなんです。
  236. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) お答えをいたします。重大な問題でありまするから、理事会においてよく御相談をして決定の上、御返事を申し上げたいと思います。
  237. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長はどうしたんだ、委員長は。
  238. 藤田進

    藤田進君 委員長から正規に委員長代理として任命せられたわけでしょう……。
  239. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) はい。
  240. 藤田進

    藤田進君 やみ取引です。ぼくらは何も聞いてないんだから。  そこで、要求している社会党代表の亀田君からの切なる、論理明白な必要性というものを十分理解し、踏まえて、その上で理事会で相談すると、こう理解いたしたいと思います。
  241. 草葉隆圓

    ○理事(草葉隆圓君) ただいま私が申し上げたとおりであります。さよう御了承をいただきます。(「越権だ」「進行、進行」と呼ぶ者あり)
  242. 亀田得治

    ○亀田得治君 じゃ、ただいま藤田理事からも要求がありまして、委員長とは若干意見が食い違っておるようでありますが、ぜひひとつそのことを真剣に検討していただくよう要請しておきまして、次の質問に移っていきたいと思います。  そこで、総理にまずひとつ伺っておきたいのは、従来、こういう大きな政治的な紛争が起きましても、なかなか日本では解散をやろうとしません。これは非常に悪い習慣じゃないかと思う。そうして、問題が強行された後にやむを得ず解散というような問題が出てくる。まあいまでも、野党のほうからそういう問題が出ておる。国民の中にも、そんなににっちもさっちもいかぬのなら、一ぺんそれやってみたらどうかという意見を持っている人も多々ある。そうじゃなしに、私はほんとう議会政治をスムーズに進めていきたいと思うのであれば、相当紛糾の予想される重大案件が出てきた場合には、そのことだけを国民にはかるという、総選挙をなぜやらないのかということを疑問に思うわけです。私だけではこれはございません。諸外国の一部にあるように、そういう場合に解散をしなくとも、国民投票でその案件だけをはかるというふうな制度であれば、これは簡単にはかれるでしょう。わが国にはそれはない。そうとすれば、結局、そういう問題を処理するのは解散以外にはないわけであります。日韓案件なら案件そのことだけを議題にして、そうして国民の意志を問う、なぜこういうことをやらないのかということを非常に私たち平素から遺憾に思っておるわけであります。  総理の見解をこの際お聞きしておきたい。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 解散して国民の世論に問えという御意見はけさほども述べられ、また、ただいまもそういう御意見を……(「こちらは事前にやることを言うている」と呼ぶ者あり)述べられております。事前の問題について考えろということ、また、ただいまは事後の処置として解散を考えろと、こういう御意見もまじえて、総理はどういうように思うかというお尋ねでございますが、私は、事前の解散にしても、事後の解散にいたしましても、慎重に考えるべきことだと、この午前中の答弁と同じことを申し上げてお答えといたします。
  244. 亀田得治

    ○亀田得治君 慎重に考えるべきだということでは、あいまいで、聞いておるほうはよくわかりません。やはり政治の最終の主人公は国民自体なんですから、それほど国会の中でもめるようなことが予想されるなら、われわれにまずはかってくれ、これがもう切なる希望であろうと思う。当然その方向で今後検討したいということならわかりますが、ただ慎重では、従来はそういうやり方をとっておらぬわけですから、結局はやらぬということになるわけでありまして、私はこういう紛糾を国民の手によって解決していくという立場から見るならばそういう態度は間違いであると思う。もっとこれは真剣に検討してみるべき問題であろうと思っておるのです。いまの答弁はなはだ不満です。そういうことで……
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は解散するとも解散しないとも言わないのですから、先ほどの答弁ではおわかりにならないのがあたりまえなんです。私はこういうような解散というような問題は、いつ解散するとか、絶対に解散しないとか、こういうことを申すのはいかがかと思う。ただいま言えることは、今日ただいま解散するというような考え方は持っておりません。これははっきり申し上げられますが、それだけで、あとの問題は慎重にこの問題と取り組む。解散する場合にも解散しない場合にも、十分世論の動向、国民の困るか困らないか、あるいはまた景気動向その他も全部勘案いたしまして、そうして結論を出すべきものだということを申し上げておるのであります。
  246. 横川正市

    ○横川正市君 関連。いまの慎重という総理態度の中に、総理は先ほど衆議院事態解決のために話し合いをする、それが一番いい方法だと、こういうふうにまあ言われておるわけです。野党側と合意に立った場合はかりに話し合いの場が持たれて、それ以外には解決の方法がないと両者でそれぞれ確認のできた段階ではこれは解散ということもあり得ると、こう考えておられるのかどうか、お聞きしたい。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ議会制度そのものから申しまして解散というものはこれは慎重にしなければならないという本来の政治姿勢でありますから、これは一般論としては御理解がいただけるんじゃないか、かように私は思います。参議院の方と衆議院のわれわれとだいぶその感じが違っておりまして、参議院のほうは三年に一ぺんずつの選挙であります。衆議院のほうはそうではなくて、場合によれば争いの面からも解散というようなものが振りかざされる、ときにそれが恐喝であったりするような場合もあり得るわけでありますから、この事柄は平静に行なうべき筋のもので、そういう意味で私は先ほど来慎重に慎重にということを実は申し上げておるのであります。この点はおわかりになっておることを、また私が答えられないことを無理やりに引き出そうとしておられると、私はかように思いますが、とにかくこの種の事柄はこれは当然政治姿勢から申しましても慎重であるのが筋だと思います。私が野党の諸君といろいろ話し合っていくと、そういう場合に野党からこういうような問題が出てくるかもわかりませんが、そういう際に私のほうでこれにどういうふうに答えるか、その話を前もって聞かしてくれとおっしゃっても、これはやや時期として早目であるように思いますので、これは実際に話し合いができた際、その席でどんな話が出てくるか、これはまたそのときにならないとわからないことのように思います。あまり仮定の、先走った考え方はしないほうがいいんじゃないか、かように思います。
  248. 亀田得治

    ○亀田得治君 私のお尋ねしておるのは、現在出ておる解散論、これにとらわれておるわけじゃございません。現在のやつはもうあと始末の問題です。あと始末の。そういう立場から出ておるわけであります。そうじゃなしに、従来の日本の政治を振りかえって見ますると、どうもその辺にひとつ考え直すべき点があるんじゃないと、一般論として。やはり今後は重大な、国論を二分するような問題が出てきたら、そんなにこう重苦しく考えないで、気軽く国民の意見を聞く。そのために解散をして、そうすればそこでずっと主人公の御意見が出てくるわけです。国会が開かれましても、それが基礎になって進められるわけであります。そうでしょう、そのことをとりあげて国民の意見を聞いているわけですから。これはイギリスあたりでは、わりあいそういう事態にぶつかりますと勇気を振るってやっております。日本でも何かそういう慣習ができあがるように、これが私は国会なり議会政治というものを国民に直結させていくという立場から考えて、もっともっと積極的に検討すべき問題じゃなかろうかと思う。前向きに積極的に検討するぐらいのことは出てこなければね、ただ単なる慎重ではね、あなたはそういうふうに積極的に検討するなんというようなことを言うと、現在、社会党から出ておる解散論と取り違えられて、えらいことになりはせぬかというような御疑念があってああいうことをおっしゃるのかとも私は考えておるのですが、しかし、これは私だけが言っているのではない。ぜひそういうふうにありたいということは、各種の政治問題を扱っておる諸君も指摘しておるところです。与野党間のこの国会にきてからの紛糾というものを、その以前の段階でこう押えていこうじゃないか、これが私は民主政治ほんとうの姿であると思うのです。これは一般論として申し上げているのですからね。総理の積極的なもっと見解を私は聞きたい。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど亀田君は自分の御意見をまじえて私に質問されました。その御意見は十分拝聴いたしましたと申しましたのは、ただいまのような点でございます。私は、ただいま出ている問題とは全然別にして、一般論としてこういうことが言えるんじゃないか、この御議論には私も敬意を表しております。しかしながら、敬意を表しただけではなかなかおさまらないので、それならば、一体こういう場合に一般的にはどう処置するんだと、必ずそこに出てくる。そのことをいろいろ考えまして、私は、まだわが国では民主政治はそこまで進んでおらない、したがって、世論を聞くということはたいへんな大事件だということに実はなっております。したがって、ただいまのように私が申す慎重だと、慎重に考うべきだと、こういうことを言うのでございます。これは必ずしも抜き打ち解散ばかりやるという意味ではございません。事と性質によりましては話し合いで解散することもあるだろう。しかしながら、多くの場合、わが国の解散の姿を見ますと、予想しないような事態から解散へものごとが発展していく、これがたいてい多いのでありますから、ただいま申し上げましたように、一つのルールをきめて、あるいは一つの線路を敷いて、その方向で解散問題を処理されるとか、こういうことはなかなか言い得ないのじゃないか、かように思うので、先ほど来慎重に扱いますと言うのは、ただいま申し上げるような気持ちで、これは私の率直な気持ちを披瀝しているので、別に隠しているという意味ではないので、誤解のないようにお願いいたします。
  250. 亀田得治

    ○亀田得治君 多少前向きのかっこうはとっておられますが、まだまだほんとう政治の主人公は国民なんだ、われわれの間で抜き差しならぬ紛糾があれば、国民の皆さんの気持ちでひとつ処理していきましょう、こういう信念といいますか、そういうものが欠けている。だから、ぜひもっと前向きの姿勢でいまの問題は検討していただくよう要請しておきまして、次の質問に移っていきたいと思います。  まず第一に、私は、今回締結された日韓間の条約等をつぶさに拝見いたしておるわけでありまするが、この中で国会にかけられたものと、国会にかけられないで単なる参考資料として出されているものと二つにこれが分かれております。私は、これは従来もあったことでございますが、最近の傾向等を見ておりますると、だんだん外交の問題につきまして、政府国会で論議される場を少なくしていく、国民にあまり知らさないようにしていく、そういう傾向のあらわれでないかと思いまして、特にこの点について若干質問をしていきたいと思っておるわけであります。   〔理事草葉隆圓君退席、委員長着席〕  最初に、まず国会にはかるべき条約、憲法第七十三条の第三号に、条約の国会へはかる問題について規定されておるわけでありまするが、この点を政府はいかように考えておるか、まずそれを明らかにしてほしいと思います。外務大臣。
  251. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長からお答えいたします。
  252. 亀田得治

    ○亀田得治君 いま条約局長の御指名があったようでございますが、条約局長にはまたもう少しこまかいことをいろいろ質問することになっておりますので、私がいま申し上げたのは、憲法七十三条三号の基本的な理解というものをお尋ねしておるわけなんです。こういうことは、事いやしくも条約をあずかっておる最高の責任者である外務大臣、もっと言えば、総理、そういうところがらの基本的な国会へのはかり方というものがちゃんと腹の中へ入っておらなければならない。一事務的な局長やそういう者が出てきて理屈を並べて済む問題ではないのです、これは。御承知のように、条約をどの程度国会にはかるかということは、これは各国みんないろいろなきめ方が種々あります。具体的にどういう条約については国会にはかる、こういうふうにきめておる憲法もあります。ところが、日本のように、そのような限定をしておらぬところもあります。ただ「条約」とだけ書いておる。そういうところの国においては、その条約を扱う責任者の態度というものは、きわめてこれは重要なんです。私は、一つ一つの条約の個々の条文についてこまかいことを聞く、そういう場合には条約局長が出てきて、また大いにその頭のいいところを出してもらってもいいが、きょうはそういうことじゃない、根本を尋ねておる。これは外務大臣、そんなことがわかっておらぬといったらあなた落第ですよ。そんな局長など出さないで、あなたの考え方ほんとうにここではっきりさしてもらいたい。どうなんですか。
  253. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約といい、あるいは協約、場合によっては交換公文、あるいは議定書というようなものが、必ずそれは両国のいわゆる取りかわすところの参考資料、それと別な基本的な条約、国会承認にかける、そういうことを一々の場合に規定しておるのでありますが、これを要するに、国と国との権利関係、権利義務の基本関係を律するものがつまりこの種の条約、協定その他のものでございまして、それを議する上において必要なものはいわゆる参考資料として提出されておる、こういうことが基本的には言えるのであります。なお、これらの問題につきまして、法理上の観点から法制局長官から申し述べることにいたします。
  254. 亀田得治

    ○亀田得治君 こちらが必要あればみんな答弁者を指名しますから、かってに出てきてもらわぬようにしてください。  ただいま外務大臣は、条約の名称にはとわられない、これはよろしい、実質的に両国の権利義務の基本関係を律するものと、こういうふうに内容的に言われました。これは従来の外務省の慣例からいたしますと、はなはだ強いしぼり方であります。権利義務関係の基本関係というものは一体どういう意味です。従来はそういうものはついておりませんよ。
  255. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 権利義務関係の基本的な問題については、申すまでもなく、これは国会承認を経て取りかわすべきものである。なお、しかし、今回の日韓条約にあたりまして、第一議定書、あるいは第二議定書、これは請求権経済協力関係に関連して、不可分的にこれらの協定と一緒に取り扱うべきものと、こういうふうに規定されておるものがございますが、これらの問題は必ずしも私が申し上げた基本的な権利義務関係ではございませんけれども、権利義務の実質を規定する上において重要な規定が含まれておりまするので、これは特に明記して国会承認にかけるということになっておるのであります。
  256. 亀田得治

    ○亀田得治君 権利義務の基本的関係なんというようなことはあなたが初めておっしゃいますよ。いままでの衆参でそういう説明はされておりませんよ。あなたは今回の日韓関係条約、国会にはかっておらぬものはたくさんある。それを頭に置いておるものだから、なるべくこう窮屈な説明をしておかないと、あとから矛盾が出ると思ってそういうことをおっしゃる。一体、外務大臣が、条約の中の権利義務はよろしい、権利義務の関係の発生するものは国会にはかる、これは当然で、これは従来この国会で言われてきておる。基本的関係とは何です、これは。そういうことは外務大臣、あなたの独善ではありませんか。そういうことをいま突如としておっしゃるのは従来の慣例に反するでしょう。そういう答弁をしておる外務大臣はおりませんよ。もちろんそれは一切の条約をはかると答えておる外務大臣は一人もおりませんよ。いろいろなしぼり方をやっておる。委任されておるものはいいとか、あるいは普通の外交文書とか、あるいは単なる実施細目とか、そういう説明はありましても、はかるのは基本関係だけだ、これはあなた重大な従来の態度の変更であり、もちろんそれは日本の憲法としては七十三条に違反する態度だ。どうなんです。
  257. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、基本的な権利義務関係に関連するものというような趣旨において補足していま御説明したように、第一議定書、第二議定書というものが経済関係の協定の不可分の附属としてこれは必ず国会にかけるということになっておりますが、それは内容は基本的な権利義務の関係ではないが、基本的な権利義務というものを具体的に規制する議定書である、こういう意味においてそれをかけるということになっておるのでありますから、基本的な権利義務の関係といいましても相当なふくらみがあるということを補足して説明を申し上げた次第であります。
  258. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはあなた重大な外務大臣の発言ですよ。あなたは、あくまでもこの権利義務の発生する関係の基本的なもの、こういうことを土台に置いて、多少そこに私がいま質問しておるものだからふくらみを持たす、こんなことは許されない行動ですよ。私は、何もいま日韓関係諸案件の一つ一つをお聞きしておるのじゃない。それはいまこの基本的な態度、問題点が明確になった後にさらにお聞きいたします。だから、それは抜きにして答えてもらわないといかんわけであります。外務省は従来そんなことは言っておりませんよ。条約局長、どうです。
  259. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 憲法解釈の問題は法制局長官のほうにお願いしたいと思いますが、今度の日韓条約協定に関しましては、従来の取り扱いと違うようなことは一つもいたしておりません。むしろ従来よりは、これは従来の基準から申せば、あるいは国会承認の対象としてお願いしなくてもよろしいのじゃないかと思われるものまで入れておる次第でございます。  なお、先ほど外務大臣から抽象的に御答弁になりましたことの具体的な取り扱い方といたしましては、法律事項を規定するもの、あるいは、いわゆる財政事項を規定するもの、法律事項も財政事項も含まなくとも、政治的に重要と認められるもの、このいずれかにひっかかるものは必ず国会承認をお願いする、こういう取り扱いにいたしております。
  260. 亀田得治

    ○亀田得治君 条約局長、いま条約の中の法律事項に関するもの、財政事項を含むもの、両者いずれでもないが、政治的に重要と思われるもの、この三つのことを言われましたが、これは外務省におけるこの条約案件の取り扱い方として正規にきまっておることですか。
  261. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 終局的には内閣できめられることでございまして、法制局長官その他の御判断を仰ぎまして、終局的には内閣でおきめになるわけですが、私どもがさっきわざわざ取り扱いと申しましたのは、そういうふうに心得て取り扱っておるということでございます。
  262. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、先ほどの外務大臣のこの権利義務の基本関係、これはうんと狭いじゃありませんか。あれは取り消しますか。あなただけの見解でしょう。
  263. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはもとより省くわけにはまいりません。なお、そういうような基本的な重要事項を具体的にまぎれのないように、基本的な問題はお互いの間で合意はしたけれども、さて実際の条約の実行にあたってまぎらわしい解釈の出るようなことも予想して、これらをもう少しふくらみをつけて、そうしてあるいは議定書であるとか、あるいは場合によっては合意議事録の一部をこれに加えるとか、交換公文、そういったものを加えておる。つまり、何といっても、その基本的な問題は基本的な権利義務の関係、そういうものからはずれたものであって、どうでもいいようなものを入れているわけじゃありません。
  264. 亀田得治

    ○亀田得治君 だって外務大臣は、当初重要な発言をされておる。あれがあのまま通りましたら、法律事項、財政事項、権利義務の対象になるものでありましても、はずれるものは多々あるわけなんです。あなたは、権利義務を発生するものの中の基本的関係——基本関係と、こうおっしゃっている。的がついてない、基本関係です。重大な違いがある。だからああいう発言は、あなた自身が言われておることでありましても、私は訂正してほしいと思う。重大なこういうことは、先例といいますか、残っちゃいかぬ。
  265. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま追加して二度三度説明してありますから、さよう御了承願います。
  266. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう基本関係ということをそのままにしておいて、多少そこにふくらみを持たす、そんなことを言われましても、こういう重大問題について了承できませんよ。委員長、どうする、できますか。国会の権限の問題ではないですか。
  267. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを補足して申し上げたいと思いますが、御指摘のように、憲法には、七十三条に「条約」とあるわけでございまして、先ほど御指摘がありましたように、各国の憲法を打ちながめてみますと、そこにはその条約を形式的に分類して分けているものもございます。日本の憲法は、ただいまおっしゃいましたように、実はそういう規定が、形式的な規定としてもございません。そこで、いままでの取り扱いについて、すでに御承知のとおりだと思いますが、条約というものの定義、これは定義を簡単に申し上げるのもむずかしいことではございますが、一応申し上げますと、先ほど来お話がございましたように、他国との間、または国際間との間でする合意である。そうしてその合意の内容は、国際法上の法律関係を設定したり廃止したりするような内容のものである。よってもってどういう効果が生じますかというと、国権の発現がそれだけ制約を受けるということになります。そこで、そういうものではございますが、同時に、また、先ほど御発言がありましたように、そういう形式的にはそれに当たるけれども、しかし、条約の中身で、その条約が特定の行政機関にさらにその細目を規定することをまかしておるとか、あるいは完全に実施細目にわたるものであるとか、あるいは政府のすでに与えられておる法律上の権限等に基づいて、外交上の処理としてなされるものであるとかというような意味合いのものは、従前の例でも、御承知のとおりに、締結について国会承認を求めておりません。これの典型的な事例、そのうちの一例ではございますが、御承知のように、前の安保条約に基づくいわゆる行政協定、あれは国会承認をかけませんで非常に問題がございましたが、これまた釈迦に説法でございますが、最高裁判所でそれについては違憲ではないというような判決も出ております。それはたった一つの例でございますが、要するに、条約というものについてのいままでの考え方はそういう考え方である。他国との間の合意であっても、それが先ほど申し上げたような権限委任に基づくもの、あるいは実施の細目にすぎないもの、あるいは政府の法律で与えられた権限内においてなされるもの等を、例外的に、締結について承認を経る手続はしておりませんが、しかし、それはあくまでも例外的でありまして、そうでないものについては、従前から一貫して国会承認締結について求めるという措置をとっております。
  268. 亀田得治

    ○亀田得治君 それでは法制局長官、さっきの外務大臣の最初に言われたお答えは間違いですね。
  269. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私そばで聞いておったわけでございますが、とにかく一つの法律上の概念について定義を申し述べることはなかなかむずかしいのでありますが、私は、外務大臣の御答弁について、権利義務の基本に関する事項というふうな言い方をなさいました趣旨は、やはり条約の中で権限を委任しているとか、あるいはその実施の細目にわたるものとか、あるいは行政機関の法律で与えられた権限内のものは別だというようなことをひっくるめて基本であるとおっしゃったのではないかと私は思っております。
  270. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから法制局長官というものは、単なる政府の法律的な裏づけをする機関だと言われるのです、そういうことを言うから。だれがその権利義務関係の基本を取り上げるのだと言っておるのに、いまあなたがおっしゃったようなものに限定されると理解するものでしょうか。だから、違っておるなら違っておると、はっきり間違いはやはり訂正しなけりゃだめです。  それから、たとえば行政協定の問題について、いま最高裁判所も認めているようなことを言いましたが、最高裁判所は、国会政府の最高機関の扱いというものについて、多少問題があるなと思いましてもタッチしないという立場をとっているのです。そこまで裁判権が入り過ぎたのでは、また、今度は裁判所がやっていることに国会が入ってくる、国会にも国政調査権があるわけですから。形式的にはあれも一種の国政です。そういうことをやり出したらきりがないということで遠慮しておるわけなんです。それをいいことにして、何か最高裁判所が行政協定国会にかけなかったことを真正面から肯定しておるのだ、支持しておるのだ、そんな理解をしたらとんでもないことなんです。あなたが行政協定のことを引用されましたから言うのでありますが、行政協定に関しては、政府に直接つながっておる人は別として、ほとんどの法律専門家というものは、これは国会にかけるべきものだ、たとい形式的な委任事項等がありましても、その規定されておる内容があまりにも重大ではないか、きわめて常識的な判断を下しておるのがほとんどなんであります、これは。だから、そういうことをあなたはよく知っておって、あたかも何か行政協定の例というものをこういうところへ、しかも、最高裁の判決を引き出して引用されるということは、はなはだこれはもう当を得ないと思う、私は。  そこで、総理にひとつ条約という問題について基本的に聞きたいのでありますが、まあ終戦当時は条約も数はそれほど多くなかった。しかし、だんだんふえてきておるわけです。そうして今後の国際社会の発展ということを考えに入れてみますると、ますます今後私はふえると思うのであります。そこで一つの傾向が出てくるのは、数がずいぶんふえるものだから、一々それを国会にかけるのはどうも実情に合わない、行政の能率ということも一方では考えなければならない、こういう考え方があることは事実なんです。しかし、そこで問題がある。私たちは、決して外交の行政能率の低下ということを考えているわけじゃありませんが、やはり国民にとって大事なことは、日本の政府が外国とかってに条約を知らぬうちに結んでもらっては因る、このことがより重大だということなんです、このことが。外交に対する民主的なコントロールというものがより重大なんだ、民主社会においては。そのことを私は総理として十分考えてもらいたいと思う。そういう立場に立ちますと、数がふえてくるから、もう適当なところで処理しよう、こういう傾向が見えておる。私は、これははなはだ遺憾だと思っている。総理の根本的なひとつ態度をお聞きしたい。これは何も憲法国会法等に、どういう条約と線を引いて書いてあるわけじゃございません。それだけに、私は、最高責任者のこういう問題に対する態度がきわめて重大だと思うからお聞きするわけなんでございます。総理のお考えどうですか。
  271. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これからだんだん国際的にも、日本が国際社会にありましていろいろ交際を持つ、交渉を持つ、こういうようなことになりますから、当然ただいま指摘されるように、条約その他協約等がだんだん多くなる、これは趨勢からそういうことは考えられます。しかし、多くなったからといって承認を求むべきものを求めないと、かようなことは絶対にありません。この点は国民に対しましても、政府自身、責任というものがはっきりいたしておりますし、また、憲法の条章もそういうことは許さないのでありますから、数が多くなったから承認を求めない、かようなことがあってはならない。現にこういう問題の手続上の問題は十分尽くして、そうして誤解のないようにしたいと思っております。
  272. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ条約の数が多くなるということは、これは世界全体の国際的な交流が激しくなるわけですから、これはもう当然な結果なんです。それだけに、この条約が国民生活に影響してくるという度合いも、国内法よりもだんだんウエートが重くなってくるわけであります。このことを認めてかからなければいかぬと思う。国内法の関係においては全部国会にかけながら、同じように、最終的には国民に影響することを、条約だからと言うて別扱いするというふうな傾向が私は生じておるように思いますからこれは聞くのです。そんなことは絶対ありませんか。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 条約の締結権というものは、これは政府が持っておりますが、しかし、このことは、国会承認を求めるということと、締結権を政府が持っているということと別に矛盾するものではございません。今後ますますこういう点は気をつけまして、そうしていまのような誤解のないようにいたしたいものだと、かように思っております。
  274. 亀田得治

    ○亀田得治君 条約局長にお聞きいたします。韓国憲法四十二条、これは国会にかけるべき条約について個別に、具体的に規定しておる。御存じですね。この四十二条に規定しておることは日本の七十三条三号に全部私は該当すると思いますが、いかがでしょう。
  275. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私はそういう見地から検討いたしたことはございませんが、これはいわば主題を列挙しておるわけでございまして、その主題についてどういう内容を約束するかということはまた別でございますから、一がいに、ここにあげてあるものはすべて日本では国会承認を要すると断言し切ることは差し控えたいと思います。
  276. 亀田得治

    ○亀田得治君 皆さんが、これほどはっきりしたことを、あとから条約の審議に入って困りはせんかと思って、そういう逃げるような答弁をされることは、はなはだ私は不愉快だ。私から、じゃ読んでみましょう。韓国憲法四十二条「国会は、国際組織に関する条約、相互援助に関する条約、講和条約、通商条約、国家又は国民に財政的負担を負わせる条約、立法事項に関する条約の批准及び宣戦布告について同意権を有する。」、この中で立法事項と財政事項につきましては、ことばもあなたが先ほど申されたのと一緒なんです。そのほかのことは、これはいずれも政治的に重要なものばかりがここに載っている。これが一体あなたの先ほどの三項目に当たらぬと——当たらぬとは言わない、当たらぬかもしれぬというようなことを言われるということは、はなはだこれは筋が通らぬ。どうなんですか。どうして当たらぬか、はっきりしなさい、当たらぬというのであれば。
  277. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 新憲法は第五十六条にその規定があるわけでございます。たとえばここに「漁業条約」とございますが、それじゃ、漁業に関してはいかなる国際的約束もできないのか。事、漁業という字が一つ出てくると国会承認になるのかというと、私どもはさように考えないわけでございまして、漁業に関することでも、たとえば今度の日韓の漁業協力にする往復書簡がございますが、こういうような、当然政府が行政権の範囲内でやれるようなことは差しつかえない、こういうふうに考えておりますので、一がいには申せない。しかし、御指摘のように、そういう軽微なものではなくて、漁業条約、漁業協定とかという普通に銘打つようなものでございましたら、いままでも国会におはかりしておるわけでございます。
  278. 亀田得治

    ○亀田得治君 私申し上げた中でちょっと抜けておるのは、それは漁業だけですか。
  279. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 一々私申し上げかねますが、たとえば国際組織に関する条約というのが一つ上がっておりますけれども、ある国際組織に日本が国際協力の面で財政的に寄与するとか、経済協力をやるとか、こういうようなことは、単独の立法をしていただいておりまして、これは特別に一々そのたびに国会におはかりしなくてもよろしいということになっておるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、こういう主題の名前だけで白黒をきめるのは、非常にわれわれとしてはむずかしいわけでございまして、どこまでも先ほど来法制局長官もおっしゃっておりますように、規定の実質に照らしてわれわれは判断いたしておるわけでございます。
  280. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃここで実態をひとつ明らかにしてほしいわけでありますが、この終戦後の各種の条約ですね、これは実質的な条約、国際間の合意事項、これが各年度においてどうなっておるか、ここで明らかにしてほしい。それを見れば大体傾向がわかるわけです。どの年には幾つ締結した、そのうち幾つ国会にかけたか、それを一ぺん明らかにしてください。
  281. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) お手元に資料がございませんので、後刻御報告申し上げます。
  282. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体のことわかりませんか、条約ばっかりあなたはやっておるのでしょう、どうなんです。その資料あるでしょう。
  283. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 不正確なことを申し上げては恐縮でございますから、きちっと調べましてから、お答えいたします。
  284. 亀田得治

    ○亀田得治君 条約局長、それはそんなに時間はかからないことだと思いますが、あと、二、三十分以内に電話か何かでやったらわかるでしょう。統計があるわけでしょう、毎年度の。条約の一々の案件までは私は言いません。数だけをずっと一応並べてみてください、そうしたらわかりますから、傾向が。
  285. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 終戦後各年のとおっしゃいますと、二、三十分では計算いたしかねるかと思いますので、でき次第に……。
  286. 亀田得治

    ○亀田得治君 統計はある……。
  287. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 統計はございません。でき次第に御報告するということで御了承いただきたいと思います。
  288. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ局長に聞きますが、終戦後今日までつくられた実質的な条約総数はどれくらいです。これくらいならわかるでしょう、しょっちゅうやっているから。
  289. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) どうもちゅうちょいたしますけれども、大体四百くらいじゃないかと思いますが、自信ございません。
  290. 亀田得治

    ○亀田得治君 国内法は毎年百幾つかかってくるわけです。それに比べるならばきわめてわずかなものです。そんなものを本省の局長が概数わからぬというようなことはないでしょう。四百なら四百、その四百の中で国会にかけられたのは目の子算で大体どれくらいだと考えておりますか。
  291. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私はいま国会にかけたものが幾つあるかとお聞きになったと思って四百とお答えしたのであります。これは国会承認の条約の件数だけでございます。
  292. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうするとかけないのが幾つということを聞けば全体がわかるわけです。かけないのは一体おおよそどれくらいです。
  293. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) もうこれはほんとうに正直のところ幾つあるかわかりませんので、一つ条約ができますと、それに付属していろいろ文書が作成されて、それを一つと勘定するかしないか、たいへんなものになりますから、これはもう私見当もつきませんので御了承いただきたいと思います。
  294. 亀田得治

    ○亀田得治君 だからいまの答弁から見ましても、ともかく見当もつかぬほど国会に無断でいろいろなものをつくっておる。これは自白しているようなものなんです。だからひとつそれほど無数にあるのであれば、明日までに年度別にきちっと数を整理して資料として出してもらいたい。そうしてどの年度においては幾つ国会にかけた、かけなかった、この点をはっきり出してください。そうすると私が先ほど総理お尋ねした心配ごとも、なるほどこういう数字が出ておるから、これは亀田君が心配するのも当然じゃ、これはいかぬと、こういうことに必ずなりますから、私はその筋の人から、そういう傾向になっておるということを聞いておるから、これはたださんきゃいかぬと思って、実はお聞きしているわけなんです。だからそういう意味で、ひとつ明日資料を出していただいて、その点についてはその上で若干質疑を別ワクとしていたしたいと思います。
  295. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 明日一ぱいには出せるかと思いますが、ただひとつ誤解のないようにお願いしたいのは、私が非常にたくさんあるように申し上げましたけれども、たくさんあるのは事実でございますが、これは国会承認していただいた条約の授権に基づくものだとか、法律上の権限に基づくものだとか、すべてそれぞれの根拠をはっきりしておるものでございまして、かってにこそこそ結んだというようなわけのものではないということが一つと、それからたとえば貿易協定などのように、普通の条約でございますと一ぺん結びますれば何年もそのままでございますが、毎年更新するとかそういうことが一つ一つ、一件一件と勘定されますので、数が多いからといって誤解をしていただかないようにお願いをしたいと思います。
  296. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは条約に書けなかったものは授権に基づくものだと、あなたのほうはそういうふうに言われましても、われわれが見ますると、いやこれは基本的な条約なり協定からはみ出ておるというふうに解釈するかもしらない。あなたはそこに立つ以上はそう言わざるを得ぬから、言うているだけなんです。そこに問題があるわけなんです。そういうふうに判断していいものかどうかということに疑惑があるわけなんです。そういう立場ですから、ひとつ至急その資料を出していただいて、その上でさらに検討さしていただきたいと思います。  そこで次は、若干日韓関係に入ることにいたします。まあ日韓関係に入ると言ったら、佐藤総理にっこりとされるわけですが、われわれがけさからやっているのも、これは全部日韓関係なんですよ。衆議院事態といい、あれは日韓関係を越える大問題なんです。これはわれわれがいたずらに審議を引き延ばしているとか、そんなばかげたことにとらわれた気持ちを持たないで、真剣に考えてもらわなければだめ、そう思っていたらそんなににっことしなくてもよろしい。  まず法務大臣にお聞きいたします。この法的地位に関する協定についての合意議事録、この中には基本協定からはみ出しておる重大な問題が多々書かれておるわけであります。この法的地位に関する協定は、全文が六カ条からなっております。この中で第三条並びに第四条につきまして、先ほど来質疑いたしました国会にはかるべき条約から言いますと、合意議事録がはみ出ておるものが多々ある。これを指摘したいと思う。法務大臣の見解も聞きたいわけです。  合意議事録は六カ条と言いましたが、第六条はこれは批准条項でありまして、実質的なものではございません。あるいは第五条もたいしたものではありません。実質的なことを規定しておるのは第一条、第二条、第三条、第四条なんです。その四つの中で三条と四条、半分につきましてそういうはみ出しが合意議事録にあるわけでございます。この点を私指摘してみたいと思います。  まず第三条の2——法務大臣、合意議事録ちょっとごらんいただきたいと思います。——ありますか。合意議事録の「第三条に関し、」と、こう一枚目の裏に書いてあります。ありましたか。——ありますね。そこに、「第三条に関し、」として、1、2の2——まあ協定に関するこまかい各条審議等は、またいずれいたすわけでありますが、きょうはそういうことじゃなしに、はみ出し、勇み足を指摘していくわけです。2には、「日本国政府は、同条」、同条というのは協定の第三条、「(c)又は(d)に該当する者の日本国からの退去を強制しようとする場合には、人道的見地からその者の家族構成その他の事情について考慮を払う。」、こう書いてある。つまり、協定の第三条によれば明らかに退去強制しなければならぬ人なんです。(c)というのは、三回以上麻薬犯を犯した、(d)というのは、日本国法令に違反して無期または七年をこえる懲役または禁錮に処せられた、非常にこれは社会的にも非難されるべき方々なんです。これについては、在日朝鮮人の立場は尊重するけれども、こういう人については退去強制はするんだと、こう法的地位協定ではなっておるわけなんです。これは絶対的な条文なんです。ところが、合意議事録では逆になっておるわけです、逆に。その家族構成、たとえば本人の子供がこちらにおるとか、そういったような事情がある場合には、人道的見地から考慮を払う。これは退去を強制しないということでしょう、言うてみれば。いいですね、私が申し上げるのは、これはもう第三条の条文を実行するための細目ではない。逆の方向の実行をしようとしておる。それならば、当然この合意事項のつくり方としては、第三条の例外規定として、ここに持ってこなければうそではないかと、これは明らかに勇み足です。どうなんです、法務大臣。
  297. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。(a)、(b)の場合のような、まあこういうふうな国事犯のような問題の場合は、これはどうにもならないのでございますが、麻薬犯でありますとか、普通の犯罪というような場合には、何らかの考慮の余地があれば考慮してやってもいいんじゃないかという心持ちを、ここにあらわしただけでございまして、これをどうするかということには、まだ、具体的にはそのときの問題になるわけでございます。これはほかの問題、元首に対する罪であるとか、あるいは内乱に関する罪とかという問題は、絶対どうすることもできないが、(c)、(d)については、多少の考慮をすることもあるかもわからぬということを意味しただけにすぎないのであります。
  298. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはあなた、合意議事録だから、ことばをやわらかく書きますが、これはこういうものをつくった以上は、日本政府にそれだけの重大な行政上の義務が負わされてくるわけですよ。どうなんです。ただ考慮するだけで、するか、せぬかわからぬのだと、そういうふうに韓国側は受け取っておらぬわけでしょう。事実またこういうものが書かれれば、結局は相当の者が、この協定の三条に反して逆に残ることに実際上なるんじゃないでしょうか。
  299. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 人道的な態度は、また家族への立場というようなことを慎重に考えまして、あるいは適用することもあるということを書いたわけでございまして、どんな場合でも適用するということじゃない。絶対的にこれを必ず罪を犯した者はそのとおり罰してしまうということでなしに、多少のそこに考慮の余地を残したというところの差があるだけでございます。
  300. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、まあ帰す場合と、帰さぬ場合とあると、そういうことですか。
  301. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) そういう、帰さぬ場合もできてくるかもわからないというわけでございます。
  302. 亀田得治

    ○亀田得治君 ところが、この協定ではですね、そうしてまたこの協定は、日本の法律になっておるわけです。日本の法律に、国内法に。国内法まではなかなか通らぬでしょうがね。この協定三条、国内法になっておる。絶対的な規定になっておるのですよ。ただいまのあなた、法務大臣の答弁からいうならば、逆になり得る可能性というものがあるじゃございませんか。必ず逆になるんだと言ったら、これはたいへんなことです。しかしですね、絶対的な規定として置かれているものに対して、その逆な例外を認めるというようなことがあれば、これは当然、その原協定のワク内のものではないじゃありませんか、そこを聞いておる。
  303. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これはたぶんそれに当てはまり得るお答えになるかと思うのでございますが、一般外国人の退去強制の場合、出入国管理令二十四条該当の者の退去強制にあっても、同令五十条によりまして法務大臣に特別在留許可権を与えておるようなわけでございまして、それと同じような意味において扱っていいじゃないかというわけであります。
  304. 亀田得治

    ○亀田得治君 出入国管理令五十条の規定があることは私も知っております。ただ、この協定は絶対的な規定、全部帰すと、こうなっておる。それじゃ法務大臣に聞きますがね。この協定において絶対的に帰すことになっておる(a)、(b)、(c)、(d)、協定三条、これについても出入国管理令五十条を適用するつもりなんですか。それじゃこの協定というのはしり抜けじゃありませんか。日本の社会に重大な影響を与えるからということでこれは絶対的に帰すのだと、こういうことを言いながら、一方ではその例外というものはあなたちゃんと考えているわけですな。何にもならぬじゃないですか、それじゃ。どうなんですか。
  305. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 外務省の条約局長から説明します。
  306. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 地位協定の第三条は、この(a)、(b)、(c)、(d)、の「いずれかに該当することとなった場合を除くほか、日本国からの退去を強制されない。」ということでございまして、それじゃこの(a)、(b)、(c)、(d)、に該当したら必ず退去を強制されるのかというとそうじゃありませんで、この(a)、(b)、(c)、(d)の場合だけに日本の法律によって退去を強制することができるという意味でございます。
  307. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、(a)、(b)、(c)、(d)の場合でも出入国管理令五十条を適用するとおっしゃるわけですか。
  308. 八木正男

    政府委員(八木正男君) お答えいたします。退去強制の手続、退去強制を免除をする手続としては五十条を使ってやります。
  309. 亀田得治

    ○亀田得治君 退去強制を実行する手続としては五十条を使う。そうすると、この(a)、(b)、(c)、(d)の場合でも帰さない場合がある、それでいいのだ、そういう意見ですか。
  310. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 退去強制というような強い決定をする、実行に移すという段階では、一般の普通の不法入国者の場合でも、いろいろな慎重な手続を重ねて慎重に考え、その情状によって執行をしないで済む場合には置いてやるというふうにやっております。そのやる形式は五十条にある法務大臣の権限でやるわけでありますが、いわんやこの協定、永住権というような非常に重要なといいますか、非常に手厚い永住を与えられるというような者はごく限られた人たちだけでありまして、したがってこういうような長いこと日本におり、社会的にも家族的にもいろいろ根の深くなっておるような人を退去させるという場合はよくよくのことである。そこで退去の条件は厳重にしぼったわけでございます。しかしながら、いまも条約局長が申しましたように、協定ではこの場合でなければ退去させないといっているだけでありまして、その当たった場合には必ず退去させるということになりますと、場合によっては、たとえば麻薬なんかを例にとりますと、営利を目的とする麻薬なんかは非常に害毒を流すわけでありますけれども、たとえば麻薬中毒者なんかで自分だけが使用しているというような場合もあり得るわけであります。あるいはその他個々の罪状の軽重もあるでありましょう。そういうようなことを考えて、それが回数に当たった、こういう場合は原則としてわれわれはもちろん退去させるつもりでありますけれども、その者の年齢であるとか家族関係であるとか、そういった点を十分に考慮した上で、今後そういうことが起こらないことが十分に保障されるというような場合に、特別にその協定の適用をしないで在留さしてやるということも当然予想できるところでございます。
  311. 亀田得治

    ○亀田得治君 いずれにしましても、その出入国管理令とのこまかい関係は、いずれ法案審議のときにもこれは論議をいたしますが、この協定において退去を強制されると逆の書き方をしておるわけですが、逆の書き方ということは、結局は(a)、(b)、(c)、(d)の人は原則としてこの退去を強制されるのだ、そういう立場であることは間違いない。それに対して例外的な措置を合意議事録においてつけておるということも、これははっきりしておるわけなんです。字句上はっきりしております。だから、こういうことは決して協定の細目ではないと私は考えるわけなんです。  それから第二、それからいま法務大臣に開いていただいた次ですね……。
  312. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっとその点について関連さしてもらいたい。  ただいまの点について法務大臣並びに条約局長にお伺いしたい。この法的地位の問題の第三条、いま亀田君が指摘されましたように逆な書き方をしてあるけれども、この(a)、(b)、(c)、(d)に該当する者は強制的に退去させると、こういうふうになっておるわけです。ところが、合意議事録は参考資料として出されておりまして、その中には例外的に家族構成等を考えて退去をさせないこともあり得るようにしてあるわけであります。これはつまり協定に対して一つの例外をつくるわけです。この中に規定されておることに対しまして別なものを与えることになっております。したがって、本来ならばこの中にそれが書き込まれるか、しかもその協定に対して、この議会に提出された協定に対して一つの例外をつくるならば、この合意議事録を参考資料としてではなくて、当然議会に提出して議会承認を得べきものだと思うのです。私はいま内容のことは申し上げません。なぜこれを参考資料として議会に提出したのか。これは参考資料として出したということは、私は非常な間違いである。これはやはりこの協定と同時に、やはり当然議会承認を受くべきものとして提出さるべきものであったと思うのですが、その点に関して条約局長並びに法務大臣の見解をお伺いしたい。
  313. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 先ほど御説明申し上げましたように、第三条の規定の意味は、いま岡田先生がおっしゃったようじゃなくて、(a)、(b)、(c)、(d)に該当しない場合には退去を強制されないということがその意味でございまして、(a)、(b)、(c)、(d)に該当する場合にはそれではどうなるのかといいますと、この協定の第五条に「この協定で特に定める場合を除くほか、すべての外国人に同様に適用される日本国の法令の適用を受けることが確認される。」とありますが、これが出入国管理令の第二十四条でございますか、それであると退去を強制することができるということになるわけでございます。必ず退去を強制するということにはならないのでございます。退去強制するときの行政当局の取り扱いの心がまえとしまして、こういうことは一般の場合にも行なわれることかと思いますが、ここではそういうことを確認的な意味でうたわれておる、したがって決して原則に対する例外というような法律的な意味合いのものじゃない、かように考えております。
  314. 藤田進

    藤田進君 それじゃ委員長、関連。それならばまた伺いたくなるんだが、合意議事録で参考資料に出すほどのものをなぜ必要としたんですか、法務大臣に聞きたい。あなたの所管ですよ。さっぱりわからないことを言うじゃないか。その場その場でかっこうつけたって、それは一貫性がないぞ。
  315. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 条約局長から説明させます。
  316. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 今度の日韓間の条約、協定におきましては、一般の場合でございましたら、特に文書などを作成しないような非常に軽微な事柄とか、ちょっと会談の席で発言したようなことを、それじゃひとつ書いてくれとかいうようなことがございました。これは過去のいろんないきさつから、不信感というようなこともあるかと思いますが、したがいまして普通の国際的な慣行からいいますと書かないような行政上の取り扱いというようなことまでも含まれておるというのが実情でございます。
  317. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 韓国の国会においては、この合意議事録は参考質料として提出されたのか、あるいは国会承認事項として提出されたのか、条約局長、その点を明らかにしてください。
  318. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国会には承認の対象として出しておりません。
  319. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういう勇み足が今度は非常にたくさんあるわけです。これは一つだけをいま指摘したわけですが、その「第三条に関し、2」のところをいま指摘した。その次ですね、「3大韓民国政府は、同条の規定により日本国からの退去を強制されることとなった者について、日本国政府の要請に従い、その者の引取りについて協力する。」、これは韓国政府の義務でしょう。いままで引き取りを拒絶されてずいぶん困ったことがあるんでしょう、佐藤さん。今度はちゃんと、そういうことはしませんと、これが合意議事録なんです。日本政府から見たら、重大なこれは権利なんだ、国際間の。こういうことは当然その原協定の中に堂々と入れるべき大事なことなんだ。これは一体どうなんです、法務大臣、この三条の3。
  320. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) それはそのとおりでありまして、協力するということは、当然向こうが義務としてやるという約束でございます。
  321. 亀田得治

    ○亀田得治君 いま義務とおっしゃった。それならば、韓国も日本もきちんと国会にかけて——日本側からしたら大きな権利なんだ、国家的な。空な権利じゃない。事前に引き取りを拒絶されて非常に手をやいたことがあるわけでね。それを今度皆さんが交渉して、そういうことをしませんという口頭をとったわけでしょう。こういうことは当然このもとの協定に入れるべきことじゃございませんかと聞いている。もとの協定のどこにあります、こういうことが。何もないじゃないですか。これは全然別個な事項なんです。そんなことばの上だけでごまかしていこうと思ってもだめだよ。
  322. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 協定の本文に退去事由が列挙してございますので、退去強制される者は向こうが引き取るというのがたてまえでございますから、あらためて入れていないというわけでございます。
  323. 亀田得治

    ○亀田得治君 そのたてまえが、前にたてまえでなく手をやいたわけでしょう。そうして、そういうことをきめたわけでしょう。なぜこれを一体原協定の中に入れないんです、原協定の中に。それは韓国とのいろいろ事情があって……、ちょっと、質問を聞いてから、打ち合わせがあったらゆっくりやって答えなさい。原協定の中にこれを入れなさいという——協定の中に入れるほうが日本の立場としても強いわけでしょう。だれが考えたってそうですが、なぜそういうことを原協定からはずして合意議事録というようなまあだれが考えても若干軽い扱いをするのかという——しかし、そのときの交渉の経過からしてやむを得ず合意議事録に入ったとしても、これそのものは重大な日本国の権利、向こうにしたら義務なんです。そのことを明記しておるわけですから、これは正式に国会にはかるべきじゃありませんかということを申し上げておる。
  324. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) ただいま申し上げましたように、協定の中の退去強制問題で、はっきりと向こうが退去を強制された者は引き受けなければならぬはずでございますから、そのたてまえからいたしまして、向こうに、わざわざそういうことを書かぬでも、扱い方の議事録として話し合いをしたと。そうして、これは条約、協定の全般を見て考えなくちゃならぬ問題でございまして、そういうことばがあるとかないとかいうことにこだわらなくしてそういうことが行なわれる性質であったかどうかということで考えますと、これは必ず行なわれるということでその本文の中に入ったのだと私は心得ております。
  325. 八木正男

    政府委員(八木正男君) ただいまの大臣の御説明を補足いたしますと、協定の第三条で退去強制事由を四つ限って書いてございます。ということは、この四つの事項に該当する者は強制退去をするということを両国間の協定で約束したわけでございまして、当然韓国側は引き取る義務がございます。したがいまして、法務大臣が(c)、(d)の該当者に対して人道的考慮をしたかしないかということは問題ではございません。たとえ向こうがしないじゃないかと言っても、法律上といいますか、条約上、何ら違反ではございません。そこで、じゃ何のために合意議事録にわざわざこういうことを書いたのだと。それは、一つの権利義務を新しく決定するものならば、当然本文に記載されるべきものだという点だと思いますが、その点は、私どもとしては、第三条によって韓国側は明瞭に引き取る義務を負っておりますので、本来ならばこの合意議事録にこんなことを書く必要はないわけでございます。しかし、従来、ただいまお話がございましたように、いろいろな経緯がありまして、韓国側は平和条約発効以来、退去強制事由に該当する韓国人をわれわれが送還をしようとしましても、こういうものに関する法的地位協定が成立するまでの間は引き取るわけにいかないと言って引き取りを拒絶してきた経緯は、亀田先生もよく御存じのとおりでございます。そういうようなことがございましたので、われわれとしてはあくまでその点は十分に念を押し、向こうとしても該当者は必ず引き取るということを言っております。ただわれわれとしては、何かのかっこうでそれを確認させようと思いまして、必要ないといえばなかったかもしれませんけれども、一応念のため引き取るということを書きもので表示さしたというわけでございます。
  326. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう言いわけのような説明じゃ納得できない。それは私も知っておりまするようにというふうに言われましたが、知っておるからこれは聞いておる。手をやいたのでしょうが、引き取らぬと言うて。そうでしょう。それで入ってきておる。こういうことは当然原協定に入れなければだめなんです。原協定だけで、そんなあなた当然引き取りの義務があるという、そんなことはどうして出てきます。政府がそういうふうに思うておるだけでしょう。向こうががんばりだしたら、ちょっと困るわけでしょう。  それから次は、よけいあり過ぎて、一々指摘するのに困るんですが、その次の第四ですね、第四を見てごらんなさい。これも強制送還手続の例外ですね。そうでしょう。この間は強制送還をしないということなんです。日本の出入国管理令の例外規定をここで設けておるわけなんです。送還しようにもできないわけですよ、この間は。これは義務じゃないですか、大臣どうなんです。大臣、こういうことはやっぱりね、大まかなところを知っておかなきゃだめだよ。
  327. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お説のとおりでございます。
  328. 八木正男

    政府委員(八木正男君) ちょっと補足いたしますが、退去強制は日本から出ていけばいいんでありまして、相手の国、本国に帰るか帰らぬかは本人のかってでございます。われわれとしては、日本から追い出せばいいわけでございます。そこで、その問題につきまして、ただいまの合意議事録の第一点、「その者が永住許可の申請をしているときには、その許否が決定するまでの間、」——これはたとえば、ある韓国人が永住許可の申請をしておると、そしてその申請のためにわれわれが調査などにかなり時間がかかると思いますが、決定するまでの期間に何か犯罪を犯す、あるいは前に犯した犯罪によって刑を受けると、その刑がこの(a)、(b)、(c)、(d)のいずれにも当たらないような程度の場合、しかし入管令二十四条には当たるといったような場合が間々あると思いますが、その場合には、その者の申請のときにさかのぼって、許可をするかしないかわれわれが調査するわけでございますが、その結果われわれが許可したといたしますと、許可はしたけれどもその前に退去になったということになると、せっかく一定の資格を持っている者に対して協定永住を約束したというわれわれのたてまえがくずされることになる。そこで、そういう場合には、われわれが永住許可をするかどうかがきまるまで退去を実施しないということで、これは私ども当然のことだと思います。  それから第二点、まだ永住を申請してないとき、おまえはするのかしないのかということを念を押してやる。これはもちろん、われわれとしては、ここに単なる方針を宣明しただけでございまして、われわれはそうやってやると好意的に言っているだけでございます。したがいまして、条約上の権利とか義務とかという問題とは関係にならぬと思います。
  329. 亀田得治

    ○亀田得治君 つまり、すぐ強制送還、強制退去をさせなきゃならぬその人たちに対して、一定の期間これは待つわけなんです。日本政府としては、それができないわけなんです。韓国側から見れば、そういうことをされない権利が発生する。日本政府から見たら、その間は待たなきゃならぬ義務が発生しているわけなんです。これはあなた、当然そんなことは協定のどこにもないでしょう。新たな事項じゃありませんか、こういうことは。だから、そういう新たな事項であるということははっきりしているんでしょう。どうです。それも協定にくっつくというのですか。そんなへ理屈言ったってだめだよ。
  330. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 協定永住を与えるという場合には、一定の条件が条約上きめられまして、その条件に当たる者は当然われわれが永住を与えるという約束をしてございます。したがって、そういう約束の対象になるという可能性のある人間が、もし、もっと程度の浅いといいますか、軽い犯罪によって、普通の退去強制事由によって退去されてしまったというのでは、こういう協定を結んだときの精神といいますか、その精神にもとることがあり得る。そこで、そういうことがはっきりするまで、そういう永住許可を申請すれば必ず得られたのだということがはっきりするような場合には、そういうものと考えられる場合には、それをはっきりさせるまで一時控えておくのはわれわれの方針であるということでございます。
  331. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は何も、こういう規定を置いたことがけしからぬとか、そういうことを言ってるんじゃないのです。ないのだが、この原協定の関係から見たら、これは新しい経過規定というものをここに規定していることになるじゃないかと、明らかにその間の扱いというものは、この原則からはずれたところの権利義務というものが韓国、日本国政府の間に発生していることは、これは間違いない。これが置かれた経過なりその中身の評価を申し上げているのじゃない。条約を国会になるべくかけないようにしようという、そういう傾向のあらわれとして、これを指摘している。外務大臣、一ぺん答えてみてくれ。あんたが大体基本的に精神がおかしいのだ。結びついておらぬものを結びついていると言っても、それは無理ですよ。
  332. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 強制退去について、強制退去は法務大臣の権限になっておりますが、この退去を決定する場合には、再審とかなんとか手続を重ねまして、本人の救い得る事情があれば少しでも見つけてやりたいという趣旨でやっているのは、これは強制に限らず、一般の外国人の退去については全部共通した点であります。そこで、ただいまの合意議事録のこういう特殊の場合の送還を差し控える方針であるという点、これはあくまで法務大臣が強制送還の決定をするわけでございますが、その場合の決定の方針をここで言明しただけでございまして、私は新しい義務を負ったとは考えておりません。ただ、いかなる場合でも、われわれは外国人を日本から退去させる場合には、十分にその者の権利と申しますか、そういう者が保護されることを周到な注意を払った上でいつも実施しておりますので、同じラインをただ方針としてここで書いただけのものと了解しております。
  333. 亀田得治

    ○亀田得治君 ともかくね、そういうことばのつじつまを合わすだけのような答弁では納得ができないわけなんです。  次に進んでいきましょう、問題点がよけいありますからね。まだ検討してもらわぬといかぬわけです。  それから、第四条に関しまして、法務大臣に聞きます。協定では、「日本国政府は、次に掲げる事項について、妥当な考慮を払う」と、こうなって、(a)、(b)と書いてあります。協定では「妥当な考慮」と、こういうきわめて義務ともとれないような表現がなされている。ところが、合意議事録にまいりますると、まず第一に、この在日韓国人の子弟につきましての小学校、中学校への入学ですね、これについて必要と認める措置を文部大臣がとる、それから上級学校への入学資格を認めると、ここで初めてこう義務化してきているのですね。義務化している。原協定ではまだそこまでの強い表現ではない。まあ、この四条に関しては、関連のない問題だとは私は申し上げません。協定の四条で規定したことを、合意議事録で扱っている。その点はもちろんこれは認めますが、協定では義務と思われなかったことが、合意議事録においてははっきり初めて義務づけられてきているわけなんだ。質的な変化を遂げているわけなんだ。こういう場合には、当然これは合意議事録自身を国会に出さなきゃいかぬじゃありませんか。——意見わかりますか。
  334. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 第四条の規定を議事録ではっきりとしたような形になっておりますが、第四条の精神といたしましても、教育やら生活保護、国民健康保険等に関しまして、大韓民国から日本に永住権を持った者に適当な考慮をするというならば一体どういう考慮をするかということでございますから、その内容をこういうふうに規定して、書いて、話し合ってみたわけでございます。さっきも話したように、議事録というものは、これはこういうふうにやるというところの希望あるいは方針というような心持ちをあらわしたものでございまして、これによって義務とか権利とかいうものをはっきり示したと必ずしもいうわけじゃないのでございます。そこはひとつ頭に入れておいて見ていただきたい。精神的にそういうふうな方向にわれわれの心持ちは責任を負うておるということは間違いないことでございますが、これは必ずしもいまおっしゃったような意味においての責任を感ずる必要はない、これが議事録を国会にもはからなかったゆえんであるということでこの内容もお考え願いたいと思うのであります。
  335. 亀田得治

    ○亀田得治君 政府は先ほど、第三条に関して、この強制送還の例外的な手続規定についてお答えになったときには、強制送還を差し控える方針である、これは義務というほどのものではないという意味のことをおっしゃった。ところが今度は、この協定のほうで「妥当な考慮を払う」、これも同じような表現じゃありませんか。だから、きちんとしてですね、日本の政府の義務となるのは、合意議事録のこの表現によって初めてこれは義務になっておるんです。どっちでこれは義務化されたんです、法務大臣、まずその点……。協定の「妥当な考慮を払うものとする」と、これで義務化されたのか。あるいは第四条に関する合意議事録1、これによりまして——「必要と認める措置を執り」と、「入学資格を認める」と断言しておりますがね、これが義務化なんでしょうが。
  336. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 議事録において並べられておるような問題は、協定の精神に従いましてわれわれがこういうことをこういうふうにやっていこうという、妥当な処置をとるという心持ちを表現したのでございます。
  337. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ、いま局長がちょっと耳打ちしたものだから、そういうふうに適当に答えておりますが、だれが見ても、協定第四条からはそういう、具体的にそれじゃあ日本国において教育関係についてどうされるのかということは出てこぬわけです、どんなふうに読んだって。ちゃんと義務化されておるのは、この合意議事録の第四条1からです。1によって義務化されたんです。このことは、だから、よほど私が譲歩して申し上げましても、原協定と合意議事録、両方が一つになってこの教育に関する日本国政府の義務、これが確定されておる。よほど譲ったとしても、これが二つ一緒になって義務が確定してるわけでしょう。法務大臣どうです、そう理解しなきゃおかしいでしょう。
  338. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) さっきからいろいろ申し上げておりまするように、この議事録のほうは、協定文の解釈について間違いのないように、両国の間で話し合ったことを形の上にあらわす、また字句の上でもなるべく明瞭にしておきたい、それから希望等もそこにはっきりと表明しておきたいというようなこと等があらわれておるわけでございまして、これで新しい権利義務を生じたというわけではないのでございます。協定の説明といいますか、それをやっていくにはこういうふうにしていきたいのだという説明という意味におとりいただきたいと思うのであります。
  339. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんなことを言ったってあなた、文字そのものから筋が通らぬじゃないですか。第四条では「妥当な考慮を払う」ということしか書いておらぬわけなんです。具体的なことは何も出ておらぬ。それは初めて合意議事録で明確になっているのです。この点について衆議院中村文部大臣がこう答えているのです。従来と違ってまいりましたのは、今度の協定及び合意議事録によりまして、日本は義務的にそういう取り扱いをしなければならないということに変化したと思います。中村文部大臣——この問題を扱う人は、「両方二つが一緒になってこういう義務を日本政府は負うているのであります、従来は必ずしも義務とまではいかなかった」、こうちゃんと、これは与党の人の質問に対してこういうふうに答えているわけなんです。これと矛盾するじゃありませんか、そんな切り離したことをおっしゃるのは。
  340. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 協定に対して議事録はその説明をしているわけでございますから、中村文部大臣が言うように、協定の精神に従って、それから議事録を見て、議事録はそれをよく詳しくまた説明してあるわけでありますから、その方向に従ってやっていこうと思うのだということを言うたわけでございまして、それで義務づけられたわけではない、協定によって義務づけられた心持ちを言うたわけであると思います。
  341. 八木正男

    政府委員(八木正男君) 私、協定の交渉に当たりました経緯もございますので、それを含めて御答弁いたします。この協定本文の第四条というのは、「妥当な考慮を払う」という非常に抽象的な表現をしております。しかし、その内容はどういうことかと申しますと、これも過去十数年の間の交渉で大体内容的には合意議事録にある点にしぼられたわけでございます。ただ、本来、たとえば外国人の子供の教育であるとか、健康保険であるとか、そういった問題は、朝鮮人を除いた普通のといいますか、一般外国人の場合には、こういうことはあまり問題になっておりません。やはり朝鮮人はかつて日本人であった、そして自己の意思にかかわりなく外国人とされたという過去、その過去から生じてくるこの人たちの日本における特別な地位と申しますか、立場と申しますか、そういう点を考慮して、普通の外国人の場合こういうことはしないのに、特に好意的にこういうことを約束したというわけでございます。そこで、本文の中にこういうような点を並べるのはあまりていさいはよくない、さればといって抽象的な規定だけであってしまうと、後になってどういうことが内容であるかということで問題が起こっても困るというので、双方の交渉当事者同士の考えたこと、約束したこと、それを、「妥当な考慮」ということをわれわれが義務として約束したわけでございますが、その内容はこういうことなんだということを合意議事録に書いたわけでございます。
  342. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあそういう説明をされましても納得できぬというのは、ともかく協定だけ見たってわからぬでしょう、結論は、われわれが。もしこの合意議事録がなかったらわからぬじゃないですか、第一。国会にかける以上は、そのものでわかるものでなければいかぬじゃないですか。これだけ見ておったら、いや、この例外があったのだとか、いや、この説明の中身はこうだったとか、理屈は抜きにしてそういう点から考えたら、なるほど、こういうふうにあれもこれもばらばらにしているのはおかしい。しかし、いろいろな事情があってばらばらにしたけれども、全部関連しておるから一緒にこれはやはり国会に正式に出すべきだということなら、また理解もできるわけですが、国会に出しておるものだけじゃ意味がさっぱりわからぬじゃないですか、例外のまた例外、そうでしょう。だから、これはそういう問題を拾い上げると、法的地位だけでもまだ二、三十ある、こまかくやるときりがない。現在いま言っておるのは、これは学校の関係でありますが、それから国民健康保険の関係、あるいは韓国人が帰国する場合の財産の携行あるいは資金の携行、送金、こういうような問題につきましても、この協定では何もわからない。こっちを見て初めてわかる。韓国の諸君にしたがって、たよりにしているのはおそらくこの合意議事録だろうと私は思う。こういうことをしておいて、そういうことばのつじつまだけ合わしておこう、そんなこと幾らされたって、それは了承できません。  さらに聞きましょう。「在日韓国人の法的地位協定に関する討議の記録」というのがございます。これは、形式は合意議事録よりもさらにゆるい形になっております。しかし、私はこれだけのことを法務大臣がこの記録の中で明確に発言されているということは、やはり日本国政府として、それだけの義務を負わされている、これは当然そういうふうに理解いたします。韓国側の国会の議事録を見ても、そういうふうにとっております。そういう立場から見ますると、たとえば法務大臣の発言の中の(f)、「日本国政府は、協定第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている大韓民国国民が出国しようとする場合において再入国許可の申請をしたときは、法令の範囲内で、できる限り好意的に取計らう方針である。」、これは出入国管理令にある再入国の許可よりも、もう少し好意的な立場で取り計らいましょう。法務大臣としてのこれは約束ですよ。条約の形式こそ違いましても、これは協定とは全然関係ないことじゃありませんか。どうなんです、法務大臣。
  343. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 再入国許可の申請をしたときは、法令の範囲内で、できる限り好意的に取り計らう、法令の範囲内でということでありまして、これは協定ができまして、両国関係が正常化してよくなれば、自然交通関係もよくなるので、そうしてあげるということは当然のことでありまして、そういう気持ちをここにあらわしているものであります。
  344. 亀田得治

    ○亀田得治君 この出入国管理令の再入国の条項については、一般的に取り扱っておるわけですね。外国人すべてに対して、それに対してできるだけ好意的に取り計らう。これは、あなた、行政措置の上で具体的なそういう義務を負わされるわけじゃありませんか。法令の範囲外において特別な扱いをするというなら、もちろん、これははっきりした、それこそ協定にはっきり書かなければなりません。法令の範囲内であれば、新しいことではないのだというふうなお考えかもしれませんが、しかし、協定との関係からいうならば、この法的地位協定には、在日韓国人の再入国の問題なんというのは、一つも取り扱っておらぬのですからね。項目からいったら、全くこれははみ出た問題じゃありませんか。
  345. 八木正男

    政府委員(八木正男君) それは実は、討議の記録と申しますのは、お互いに言いっぱなしであります。ただ、もちろん、おっしゃいますように、書いてある以上は、何らかの拘束を受けることは事実でございます。そこで、実は、この再入国の問題でございますが、こういう問題は、普通の場合、初めから問題にならない非常にこまかい問題でございまして、こういうことを向こうはたびたび言っておりました。私どもはそれに対して、われわれの、特に法令の範囲でやるだけなんで、何も書く必要はない、そんなことはあたりまえのことだと言ったのですけれども、やはり韓国側にしてみると、こういうものを書いてもらったほうが、要するに、さっきも条約局長が言いましたように、非常な不信感がある。これは過去の経過でございましょう。私ども、そんなことは常識として当然そう考えるべきだとか、相手の国の役人が公式の席で言ったらそれは拘束するとかいうことを幾ら言いましても、向こうは非常にわれわれの表現に対して、あなたはそう言ったにしても、それが人がかわったら次の者は知らないと言ったらどうするというような、非常にそういう猜疑心といいますか、不信感といいますか、そういうものがたくさんございまして、そして、ぜひ、こういうことも好意的にやるということを書いてくれ。たとえ、日本側にとってみれば、そんなことは意味がないじゃないかと言っても、それでもいいから書いてくれということをたびたび言われたものですから、それで書いただけのものでありまして、特に新たに普通の法令をどうこうして韓国人に対して特別に再入国に関する優遇措置を講ずるということを約束したものではございません。
  346. 亀田得治

    ○亀田得治君 言いのがればかりなんだ。昨日の新聞にも、一部新聞にも出ておりましたが、韓国への集団里帰り、これはもう衆議院を通っただけで一切片づいたようなつもりで、法務省は早々とこういうことをどんどんやっておられるわけでありますが、ともかく、吉田書簡ですら若干の拘束力があるようにおっしゃっているわけでして、討議記録とはなっておりますが、ちゃんと法務大臣、相手方の大臣が出て、そして、こういうものをつくったものが、何も、当然なことで、新たに義務を負うものではない、そんなことを言いましても、それは通りません。一体、日本政府のつくる文書というものは、そんないいかげんなものか、逆になりますよ、逆に。だから、そういうことを言われないで、ああ、なるほどそうであったか、現協定にもない問題であるし、やはり国会にはきちっと全部かけよう。これなら相手方から見ても、これは頼もしい感じがするわけです。日韓だけではありませんよ。どんな問題についても、もっとそういうことは、国会にかけ過ぎて非難されることはありませんよ。何もそんなことさらな理屈をつけて、しぼって国会にかけるというようなやり方は間違い。一通り私はきょう聞きます。一つ一つは納得できませんが、いずれさらにこれは論議を深めたいと思います。  法務大臣にもう一つ聞きます。昭和四十年六月二十二日、この協定に署名したときに法務大臣声明を出しておられます。声明だから、これは一方的なものじゃと、おそらく八木さんはそういうふうに言おうと思っておるんでしょうが、ここに書いてあることはそうじゃない、重大なことが書いてある、重大なことが。日本の出入国管理令にまさに逆行することが書いてある、この声明の中に。そうして相手の韓国では、この問題については協定をするときに法務大臣にこういう声明をさせたんだと向こうでは盛んにこれを振り回しておるわけなんであります。その中身は、戦後の密入国者ですね、戦後の密入国者、この協定で扱っておるのは、戦前から引き続いて日本におられる方、まあ大まかにいってそう理解する、の子孫、こういうことでしょう、協定は、そうでしょう。戦後かってに入ってきた、これは密入国者でしょう、法的には。法的にいえば間違いないでしょう。それに対して出入国管理令では考えられないような手厚い措置をここで法務大臣が声明されておる。しかも、二通りある、中身は。終戦前から日本にいて、そして終戦後向こうへ一時帰った、それはもう法的地位協定からはずれるわけですね、その人は。ところが、それをこの法務大臣声明で救い上げようというわけですわ。そのことがまず第一項に書いて、第二項には、そういう戦前からいたという人じゃなしに、戦前からいて、一時帰ったためにはずれたというのじゃなしに、純然たる戦後の入国者ですね、これに対して、この日本でおることを認めていく措置を考える、これは従来も出入国管理令の運用上そういうのが若干ありますよ。しかし、こういうことを法務大臣声明で、条約、協定と同時に出される場合には、私は日本国政府として大きな負担を負うことになるのではないか。総理大臣、一体こういうことを知っておりますか。あなた、協定だけでしょう、ごらんになっているの。密入国者に対してこういうことを一体する、こういうことが全く協定と離れてなされておる。私は先ほど来るるこう申し上げておるわけですが、どういうふうにあなたお考えですか。一番最後のやつなんか、私はまことにこれは行き過ぎだと思う。こんなことをしたければ、出入国管理令の運用としてじっと考えておったらよろしい、腹の中でおさめて、こういうことを堂々と法務大臣声明として出して、相手方にはこれは約束として受け取られておる。韓国の議事録見てごらんなさい、どうなんです、総理大臣に一ぺん答えてもらいたい。
  347. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの問題は、文字どおり法務大臣の行政の問題だと、かように思いますが——ちょっと聞いてください。ただいまの問題は、これは法務大臣の行政の範囲だと、かように考えますが、韓国、いわゆる朝鮮人の問題について特殊な考慮が払われておる、これは申すまでもなく、在来から日本人であった、また在来日本人であった、そういう期間がありまずし、私どもとまた雑居していた、こういう関係もあります。そこに特殊な地位をどうしても考えざるを得ない、こういうことでございます。したがって、一般の外国人——朝鮮人あるいは韓国人という朝鮮人以外の外国人と比べてみて、これは特殊な考慮が払われておるじゃないかというのは、先ほど来からのお話ではっきりしているのでございます。こういうことをやらざるを得ないような両国の国民関係にあった、このことをぜひ御了承いただきたいのであります。  今回の日韓の問題はこればかりじゃありません。各所に、いわゆる理論だけで割り切れないような問題がずいぶんあると思います。だから、こういう点もいずれ審議で明らかになってくるでしょうが、これはどこまでも日韓間の特殊関係、これがただいまのような状態を生んだのでありまして、できるだけ、これを機会に明確にしたいという私のほうの考えでございます。したがって、妥当な考慮を払う、あるいは適当な措置をとるとか等々、いろいろ在来の法律関係ではなかなかはっきりさせにくい点もあるだろう、かように思いますので、それらのことも両国関係の複雑さ、また緊密さ等につきまして御理解をいただきますならば、これらの処置をとったこともわかっていただけるのではないかと思います。  また、条約等につきまして、各般にわたって御審議をいただく、こういう意味で、政府がその承認を求むる案件等についても、特に小さくするとか、範囲を狭めるというような考えは毛頭ございません。また、その承認を求むる範囲並びにこれを明確化するために説明のできるような、さような意味においての、いわゆる合意議事録であるとか、あるいは、その他の参考資料等も十分出して御審議をいただいておる、かように私思っておりますが、そういう点で、なお不十分なものがあれば、御指摘をいただいて、私どもが今後努力する点を明確にいたしておきたいと、かように思います。
  348. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連。総理大臣に伺いますが、この日韓の条約、協定、すべてを見て、また、交渉の経過を見て感ずることは、日韓関係の特殊関係であるということ、これを非常に強調される、そのとおりであります。しかし同時に、分離独立をした関係、平等な主権国間の話し合いというならば、情は情、過去の経緯は経緯だが、交渉とか、あるいは問題を詰める場合には、やはり佐藤さんの好きな、がっちりした、合法的といいますか、がっちりした話し合いをしなければならぬと思う。その間が、法律と情がどっちも割り切れないでいるところに、すべての問題が混乱しておると思うが、いかがですか。
  349. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま森君が御指摘になりましたように、分離独立したそういう関係に置かれておりますが、過去の歴史的な因縁等はこれをお認めいただけるものだと思います。しかし、私どもが今後の問題として、前向きといいますか、これから先りっぱな日韓間の関係を打ち立てる、そういう意味でこの両国の間を規律してまいりたいと思います。したがいまして、この批判がいろいろあると思いますが、これは韓国の一部にもある、わが国の一部にももちろんあります。今回の交渉において国益を主張するという点において、ややその意に沿わないものがある。少し妥協し過ぎたのじゃないか、譲り過ぎたのじゃないか、こういう意味の批判があるようであります。これは同じようなことが韓国側にもあるのでありまして、私はこういうところで両国間の関係も歩み寄ってこれができたゆえんだと、かように私は思うのでありまして、これらの点は今後友好親善関係によりまして、一そうそれらの関係を明確化していく、かように思っております。
  350. 森元治郎

    ○森元治郎君 私が申し上げたのは、譲歩し過ぎておると、こういうことを言っておるのじゃないのであって、情と理がはっきり近代的に割り切ってない。つらくても理において言うことははっきり言って、合わないことは突っぱねるというのが、私の質問の趣旨なんです。
  351. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの森君の御指摘でありますが、情にほだされておるのじゃないか、もっと理論でこれを割り切るべきじゃないか……
  352. 森元治郎

    ○森元治郎君 いや、情は情、理は理で……。
  353. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、そういう点を、情は情、理は理と、かような意味協定をしたつもりであります。おりますが、どうもそれらの点で、お感じになる方が、やや情にほだされたんじゃないか、理屈をもっと主張してもいいんじゃないか、こういうような御批判があろう、かように思います。
  354. 亀田得治

    ○亀田得治君 総理大臣の、ただいまお答えがあったわけですが、法的地位に関しまして日本政府がいろいろな取りきめをいたしておる。その取りきめをした事情について了解をしてくれという趣旨の結びだったと思いますが、私が本日お尋ねしておるのは、協定の中身の批判ということよりも、当初申し上げましたように、国会にかけるのにこういうかけ方はいかぬのじゃないか。当初、総理大臣が条約につきまして考え方を披瀝されたのと私はやはり反しておると思う。そういう点を実はお聞きしたわけでありまして、ともかく、この協定をずっとやろうとすると、五つか六ついろいろなものを積み合わしてこぬと、これがしゃんとせぬわけです。これだけ見ておったらえらいことになるわけです。だから、そういう意味で間違いであるということを申し上げておるわけです。時間がだんだんたちますので、法的地位の関係はその程度に一応いたしておきます。  漁業関係、それから請求権経済協力関係、いずれにもこういう勇み足という問題が、これは多々あるわけなんです。そのうちのおもなるものを若干拾いたいわけですが、まず商業上の民間信用供与に関する交換公文、これを国会には正式にかけておらぬわけですね、三億ドル以上というやつを。なぜそういう手続をされぬのか、外務大臣どうなんですか。
  355. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは金・大平了解が取りきめられる際に、このほかに普通の民間における信用供与の問題がある。これは政府が義務を負うのでもなし、自然の成り行きにまかして、両国の民間人の間にさような借款信用供与の取りきめが行なわれるのであって、いわば青天井である。しかし、このほかにそういうものがあるということをただ念のために記録するというような趣旨において取り扱われたのであります。今回の日韓条約の一括取りきめに際しまして、この青天井式のものが一億ドル以上期待されるという従来の書き方であった、考え方であったのでありますけれども、その後、実際問題として、両国の間に民間信用供与のすでに行なわれつつあるものもある、それからそういう見込みのものも相当にある。で、これらを考えますというと、優に三億ドル以上のものがここ十年足らずの間に考え得ると、こういうような状況になってまいりましたので、この問題を交換公文において、このほかに民間の信用供与が三億ドル以上も期待されるということを書き添えたのでありますが、これは政府間の協定というたぐいのものではない、性質上、そういうことで参考資料並みに添えてありますが、取りきめの実体に入るものではありませんので、御指摘のような取り扱いをしたわけであります。
  356. 亀田得治

    ○亀田得治君 三億ドル以上に関する交換公文を拝見いたしますると、韓国側に対して行なわれる三億ドル以上の民間借款につきまして、「関係法令の範囲内で容易にされ、かつ、促進されるものとする。」と、こういうふうに明記されておるわけなんです。これは当然日本政府が信用供与に関するこの問題を扱う際に、関係法令の運用上、促進されるように努力するんだと、こういう意味ですわね。日本政府の義務じゃないですか。日本政府のこの民間信用供与に対する態度いかんによって、促進されたりされなかったり、実際問題としても結果が違ってくるわけでしょう。日本政府は、直接貸す金ではありませんから、そういう意味では直接の権利、義務の当事者ではない。しかし、行政上の立場からは、韓国に対してそういう義務を負っておるわけじゃありませんか、どうなんです。
  357. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいわゆる義務というものではないのであります。ほんの行政上の手心で、そういう指導ができたならば指導もする、しかし、その指導を必ずやらなければならぬというのではないのであります。あくまでこれは行政上に課せられた義務ではない。いわば普通われわれがいう、手心とでも申しますか、そういうものでありまして、その本体はあくまで民間経済人の総意にかかっておる問題である、こう考えます。
  358. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いま外務大臣から御答弁になりましたことをちょっと補足させていただきますが、関係法令の範囲内において容易にし、促進すると、これはいろんないままで賠償に伴って行ないました経済協力交換公文のきまり文句でございます。関係法令の範囲内において、とございますので、絶対的な国際法上の義務ではなく、日本の法令の範囲内でやりさえすればいいことだ、そういう意味でいま大臣は、義務でないとおっしゃったわけでありますが、関係法令の範囲内で容易にし、促進するということは、それじゃ、義務じゃないかと言われると、これはそういう意味の義務ではあると言ったほうが正しいかと思います。しかし、そういうしぼりのかかってない絶対的な国際法上の権利義務じゃない、こういうふうに御説明いたしたいと思います。
  359. 亀田得治

    ○亀田得治君 しぼりのかかった義務であっても、義務じゃありませんか。おおよそ、関係法令に反した義務なんというようなことは考えられますか。そういう説明自身が矛盾してますよ。そうでしょう。それだったら、法令の改正までちゃんとそろえて出さなければならぬ。「関係法令の範囲内で」、これは非常に幅があるわけですから、法の運用というものは。大きなここで義務を負っておる。条約局長なかば認めたような言い方ですが、どうも外務大臣はおかしいですね。債権債務の当事者でないと、これは当然です、民間供与ですから。そんなことを私は言っているわけではない。これはやはり政府がこれを促進してやるのだと、こういうことで日韓交渉がまとまっているのじゃありませんか。韓国の国会の議事録を開いたって、これはみな三億ドル、二億ドル、三億ドル、合計八億ドルと、これだけのものを獲得したのだと、こういう説明ですよ。私は、交渉の経過から見てそういうふうに受け取られるのがむしろやはり当然だろうと思うわけなんです。そういうものをかけてこないというのは、これは一体どうなんです。こんなことを前例にされちゃ困るですよ。
  360. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いまも申し上げましたように、これは厳格な意味の国際間の義務でも何でもない、いわゆる国内の行政法規の上において、その範囲内において、好意を持ってこれを見守る、場合によっては軽い指導というようなことにもなるかもしれません。そういったようなことは、何もこれに限らず、もう平生の外交上の行政事務において、いろいろ手かげんはしておるのでありまして、当然行政官庁にまかせられた範囲の仕事でありますから、これを国会承認にかける必要はない、かように判断をしております。
  361. 亀田得治

    ○亀田得治君 しかし外務大臣は、衆議院でもずっとそういうふうな言い方をされてきておりますが、それじゃ、この交換公文の字句を改めなきゃいかぬじゃないですか。「容易にされ」、「促進される」、だれが容易にし、促進するのです、日本政府でしょうが。せんだってから例の吉田書簡というものが、日中貿易に関連して問題になったわけですね。あの程度の書簡でも、当時の経緯を無視するわけにいかぬ。統一見解ではそうおっしゃっておる。無視するわけにはいかぬということは、多少負担を感じておるという意味でしょう、だれがとったって。それは一方的な、吉田さんが持っていった書簡じゃありませんか。ところが、これはちゃんと二億ドル、三億ドルの有償、無償の経済協力と同時に、これが両政府の間で公式に調印をされて交換をされているものなんです。吉田書簡ですら、あのような統一見解を出されながら、この外交上の正規のルートで両方から交換しているものが、そう義務がないようなことをおっしゃるというのは、はなはだこれはふに落ちない。どうです総理、これは。あなたの考え方ですよ。そんなことで日本が対外的に信用をつないでいけますか。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、先ほど来外務大臣がお答えしたとおりでございますが、私、いわゆる法律的な義務、かようなことばはないと思います。しかしながら、今回のこの日韓の条約によりますと、親善友好関係を樹立しよう、こういう考え方ですべてのものを取りまとめておりますので、そういう意味におきましては、われわれは善意の協力をするということであります。この点は、いわゆる法律的な権利だとか義務だとか、こういうものとは違うことを御承了いただきたいと思います。
  363. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ、この「関係法令の範囲内で容易にされ、促進されるものとする。」、これは具体的には外務大臣はどういうことをされるのか。あるいは通産大臣——直接は通産大臣かもしれません。具体的にそれをおっしゃってください。そうしたらもっとはっきりします。
  364. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは概括的に申し上げますが、とにかく、関係法令の範囲内において差しつかえない程度において善意の指導をして、民間相互の間の経済協力を容易にするようにいま仕向けましょう、こういったようなごく軽い意味交換公文でございまして、しからば、どういう場合にどういうことになるかということにつきましては、事務当局から御説明申し上げます。
  365. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この場合の関係法令とは、外国為替及び外国貿易管理法、外国為替管理令、輸出貿易管理令、輸入貿易管理令、輸出入取引法、日本輸出入銀行法その他の法令でございます。また、「容易にされ、」……
  366. 亀田得治

    ○亀田得治君 その他と言わずに、全部言うてください。
  367. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 全部はここでは列挙できませんが、それがおもなものでございます。「容易にされ、かつ、促進される」というのは、政府が商業ベースの通常の民間信用供与に対し、法令の範囲内で便宜を与えるという意味でございます。たとえば、延べ払い輸出信用供与については、政府承認を要するわけでございますが、その承認申請があったときは、できる限りすみやかにその審査を行なうことなどが、これに該当するわけでございます。
  368. 亀田得治

    ○亀田得治君 すみやかに審査するだけじゃないでしょう。審査をして認可をすると、大事なところをじょうずにはずしていくからいかぬ。すみやかな審査、それはきわめて事務的ですよ。認可をするかしないかと、日中貿易でもそれが問題でしょう、吉田書簡に関連して。それはやはりできるだけ認可をしていくと、それでなかったらこの交換公文に合わぬのでしょう、どうです。
  369. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 必ず認可しなくちゃならないという義務は負っておりません。関係法令の範囲内で、その法令に照らして審査すればよろしいのでございます。
  370. 亀田得治

    ○亀田得治君 私の言わぬことを言ったらだめだよ。私は必ず認可するとは言いませんよ。できるだけと、こう言ったでしょう。できるだけのことはしなければいかぬのでしょう、この交換公文がある以上は。必ずと私はさっき言いませんよ。どうなんですか。
  371. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 私は、法令に照らしては、そのとおりやるべきものであると思います。「容易にされ、かつ、促進される」というのは、法令に照らしてやるについて、できるだけすみやかに審査する、許可し得るものならばすみやかに許可する、そういう趣旨だと思います。
  372. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあそういう言いのがれをして、これを国会に正式にかけなかったことについて、盛んに言いわけをしておるわけですが、そういうみみっちい態度はよくない。堂々と、ちゃんとこれを国会にかけなさい、こういうものは。ことに今回は、三億、二億、三億と、もうこれは一体のものとして韓国側では受け取って、交渉の過程においても、それがからんでやられてきておることは明確なんです。そういうものをこれだけ切り離して、これは参考だ、国会に了承を求めているんじゃない、こういう態度は全くけしからぬと私は思う。佐藤さん、どうですか、なぜこれを国会にかけて悪いのです。一緒に結びついてやってきたものを、なぜこれだけ引き離すのです。
  373. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いままでも、この種の協定は、国会承認の対象にいたしておらないわけでございます。国会承認いたしております条約の規定で、法令の範囲内でというようなしぼりをかけた例は、私はまだ記憶にございません。これは、国会にかけて国会の御承認をいただきますというと、これは絶対的な権利義務が負えるわけでございまして、そういうしぼりは要らないわけでございます。ここに法令の範囲内でといたしましたのは、行政権の範囲内でできることだけを約束する、こういう趣旨でございます。
  374. 亀田得治

    ○亀田得治君 この三億ドル以上の民間供与につきまして、現在すでに若干先食いされておりますね。その関係はどうなっておりますか。具体的に明確にしてほしい。
  375. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この三億ドル以上を期待するという交換公文は、この基本的な、というと語弊がありますが、一括した日韓条約の発効と同時に効力をあらわすものとして取り扱ってはおりますけれども、いつからいつまでと、こういう期限の制約を与えておりません。いわば日韓間における現在すでにスタートされつつあるところの信用供与というものも、これを含めて、そして将来に向かって三億ドル以上、こういうふうに了解さるべきものでございまして、その場合に、さかのぼって三億ドル以上の信用供与の中に包含せられるべき部分はすでに発生しておる、こう申し上げることができるのであります。どういうものでございますか、その具体的な事例をあげよと言われるならば、事務当局から申し上げたいと思います。
  376. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、私がいま展開しておる主張に関連がありますので、具体的に示してください、先食いをされておるその案件につきまして。
  377. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。  このいわゆる三億ドル以上の民間信用供与に該当すると見られますもの、この十月末現在までで政府が輸出承認を与えましたものは九件ございまして、契約金額の合計がざっと七千百万ドルくらいになっております。詳細に契約別に……。
  378. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは九件全部ちょっとおっしゃってください。
  379. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 第一番目が、日綿実業の輸出にかかります塩化ビニール樹脂プラントの輸出でございます。その次が伊藤忠の輸出にかかりますセメント・プラントでございます。次が豊田通商の輸出にかかります冷間圧延設備、次が安宅産業の担当いたしましたポリアクリル・プラント、次が三井のやりました尿素肥料プラント、次が日商のやりましたブルドーザー、三菱のやりましたブルドーザー、それから三井のやりました苛性ソーダPVCプラントでございます。その次が伊藤忠のやりましたポリアクリル繊維プラント、それだけでございます。
  380. 亀田得治

    ○亀田得治君 それらにつきまして、両政府間に口上書きができているはずですね。
  381. 西山昭

    政府委員(西山昭君) お答えします。    それらの民間信用供与にあたりましては、韓国政府から輸出承認の要請がございますたびに、日本政府で許可します場合には、これが民間信用供与に入るものであるという趣旨の了解でつくりました書類がございます。
  382. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは幾つあるの。
  383. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 各案件の民間信用供与に際しまして、それらを許可いたします場合に、そういう取り扱いをいたしております。
  384. 亀田得治

    ○亀田得治君 九つあるの。
  385. 西山昭

    政府委員(西山昭君) いままで供与しました九件についてございます。
  386. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、その九件につきまして、両政府間で三億ドル以上に含ませるための合意書というものが口上書の形でできているわけですね。そう理解していいわけだな。
  387. 西山昭

    政府委員(西山昭君) これを確認をいたしまする趣旨は……
  388. 亀田得治

    ○亀田得治君 趣旨はどうでもいい。そういうものができているんだなということ。
  389. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 趣旨を申さないとわからないと思います。これからの民間信用供与を与えます場合に、大体将来どれくらいの金額になるか、日本側におきましても韓国側におきましても、この数字を知っておくことが好ましいわけでございまして、そういう意味でそういう了解をいたしておるわけでございます。
  390. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうことを聞いたわけじゃないんで、口上書きが両政府間で一つ一つの信用供与についてできておる。九つあるわけですか、口上書き。
  391. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 先ほど申し上げましたような趣旨の書類が、韓国側から日本側に対しまして、輸出承認の要請がございまして、日本側からはそういう趣旨の回答をいたしまして、そういうものが案件ごとにございますので、九件についてございます。
  392. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうしたら、いま局長から明確にされました、両政府間の口上書きを九件ともここへ資料として出してもらいたい。これは単なるそういう民間のものというものじゃない。そういう公式文書等を見れば、ますます政府がちゃんと保証をしておるというかっこう等も明らかになると思う。だから、それを資料としてここへ出してもらいたいと要請しておきます。いいですな。
  393. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうから申し入れがありまして、申し入れと申しますが、断わり書きというか、それからそれに対してこちらから意思表示をして、それに基づいてこれは三億ドル以上の分に勘定するという取り扱いをしております。それで御指摘の口上書というようなものに該当するかどうかわかりません。いずれにしても、これは外交文書でございます。よく検討して御返事いたします。
  394. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは取引上の文書でしょう。そんなものを出せる、出せぬというふうな秘密性を持ったものじゃないでしょう。どういうことなんです。
  395. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 別に出せないと申し上げているわけじゃない。出せるか出せないか検討して申し上げたいと思います。
  396. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういうものはちゃんと本式にかけて、そういうものを参考資料に出したらいい。大事なものが参考だというようなばかげたことはないですよ。だから、それはぜひひとつ出してもらわないと困ります。民間の三億ドル以上、これを実際に適用しているわけですから、その具体的な適用の仕方によって、私はもっとひとつ性格を究明する以外にこれはない。そういうものがない以上は、ただことばの先のやりとりに終わるから、それで要求しているわけです。だから、ぜひそれは出してもらいたい、要求しておきます。委員長、約束さしてください。
  397. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外交文書でございますから、十分に検討して、ひとつなるべく御趣旨に沿うようには考えてみたいと思います。
  398. 亀田得治

    ○亀田得治君 大体この佐藤内閣になってから、秘密主義が強くなってきておる。特にこの外交と防衛関係——防衛庁長官もう帰りましたけれども、そういう点が非常に強くなってきておる。ただいまの外務大臣のああいうお答え、あるいは当初、条約という問題についてお答えになった考え方、私は一貫しておると思う。もっとひとつ国会議員の諸君に、大っぴらに見てください、疑問があればどうぞということで出す態度をとるべきだと私は思う。そんなあんた、取引上の文書が、何でそんな重大なことになるんでしょうか。しかも、外務大臣のほうからいうならば、何かもう政府としてあんまり関係のないようなことをおっしゃる。そんな簡単なものなら、何もそんなちゅうちょする必要がない。そういう書類を出すと、ああ、これは政府もだいぶん関係があるということがどうも出てくるんじゃありませんか。それで出し渋るんじゃないですか。そういうことじゃなしに、ともかく問題になってるんだから、そういうものがあるということが明らかになった以上、ともかくどんどん出しなさいよ、それ。非常に不明朗な感じを与える。どうです。これは、私だけじゃなしに、他の質問の方が請求権等の問題に入っていけば、当然これはまた出てくる問題だ、そのたびに資料を出すとか出さぬとか、そんなことでわれわれは時間を費やしたくないと思っている、どうなんです。
  399. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、外交文書は、簡単にそうぽんぽんと出すべきものじゃないということが原則だと思います。でありますから、ここで出すとか出さぬとかということは申し上げませんが、研究さしてもらいたい。
  400. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうも答弁がまずいものですから、質問がなかなかはかどらぬわけで、私も困っておるわけですが、この憲法七十三条三号の立場から見て、今回の条約のかけ方ははなはだ私は遺憾であると、こう考えておるわけです。で、法的関係は、先ほど多少こまかく問題点を指摘しました。しかし、経済協力の関係につきましても、経済協力に関する合意議事録にも問題があります。あるいは漁案関係に関する合意議事録その他についても、たくさんこれは、同じような性質の問題があるわけです。で、本日のところは、時間がございませんので、そういう点はいずれあらためてこれは指摘するかもしれぬし、あるいは実質的な審議にお入りになる、それに関連して指摘することもあろうかと思いますが、そういう点で、この点は、私としては、ひとつ重大な、内閣国会との権限の問題として、質問を留保いたしておきます。  それから最後に、資料の問題が懸案になっておるわけです。これもですね、審議に入るたびに、一体その資料をどうするのか、せぬのかというふうなことが、われわれから出るのでは、はなはだもって質問もやりにくいわけであります。もっと具体的に言うならば、いままで問題になっておる一番大きなやつは、韓国の国会の議事録ですね、議事録、これはすでに委員長の手元まで来ておるはずです。来ておるはずです。あるいは韓国の対日請求八項目、この資料も、委員長のところへ来ておるわけですね。来ておるわけだ。二つとも委員長の手元に資料が来ておる。これを委員長としては、一体どうされるのか。われわれがそれを公に活用できるようにしてもらわないと困るわけです。われわれにもその二つの重要な資料については若干のものは手に持っております。しかし、それでは公の論議にならないわけです、どうしても。われわれが自分の手元の資料でやれば、それが必ずしも確定しておるようなものでないように言われればほんとう質疑にならぬわけですね。たとえて言うならば、この韓国の国会議事録は、本件の審議にこれはどうしても無視することのできない実は重大な資料なんです。普通はこういうことはありません、いままで。しかし、なぜこの日韓問題について韓国国会議事録が問題になるのか、これはもう御承知のとおり日本政府の言うことと向こうの言うことがあまりにも違う。そういうところから発して、これはもうきちんとした審議をしようとすれば、どうしてもこれは審議するものとしては触れざるを得ぬわけなんです。そうでしょう。ところが、それを指摘いたしますと、指摘されたほうは、そういうものを見ておるのかおらんのか、第一はっきりしない。だから審議というものはそういうものじゃいけないので、ともかく自分の都合が悪いことでありましても、資料は資料としてちゃんとこう確定さしておいて、そうして、この資料のここにこういうことが書いてあるが、一体どういうことなのか、いやそれは社会党のほうでそういうふうにおっしゃるが、それはこういう意味じゃとか、こういうことになってきませんと決着がつかない。そういう意味で、私たちはこの韓国資料というものを、こういう条約審議の特殊なこれは例です、条約自体が異例なものだから、こういう審議も異例になるわけなんだ。両政府の言い分が違う。そういうことからきておる。われわれが何も好きこのんでほかの国の議事録をいろいろあげつらいたいと、そんなことをやっているわけじゃ毛頭ないわけなんだ。そういう意味で、この対日八項目、国会議事録、この資料の扱いを、委員長、ここでちゃんと質問者のわれわれが利用できるようにしてもらわんと、これは毎日同じことが出ますよ。それじゃ困る。国会の議事録には、たとえば佐藤さんが向こうの代表と会ってどう言うた、私のほうは参議院選挙でこういうことを言うたので、ちょっと顔を立ててくれと、これは森君がこの間本会議で指摘しました。そういうことが載っておる。椎名外務大臣の言われたこともここに載っておる。だから、そういうものを資料とするのならばして、そうして、ここは佐藤さんどうですか、椎名さんどうですかと、こうわれわれとしてはきちんとけじめをつけた審議をしたい。いまのような委員長だけ持っていて、もし亀田君見たかったらちょっと来てくれ、しかし口外はできない。そういうことではどうにもならぬわけなんだ。対日請求にしたって同じこと、われわれがなぜあれをやかましく言うかというと、対日請求の八項目を、われわれの試算をやれば、やはり合計八億ドル程度の数字が、あの対日請求の要求の中自身から出てくるわけですね。そうすると結果からみると、どうも韓国側の言い分が全部結局は通っておる。名称だけを変えているにすぎない。こういうふうな見方を十分できるわけなんです。そういう意味で私たちは審議との関連で申し上げておる。このほかにも軍事関係では、たとえばフライング・ドラゴンとか、あるいは自衛隊の治安行動教範、こういったような問題もなかなか防衛庁のほうでは出そうとおっしゃいません。本件の条約の軍事的な測面というものを具体的にわれわれとしては追及したいと思っておるが、そういうこれは資料に基づいてやらなければほんとう審議にならない。総理は、いや、軍事的測面はない、社会党はそういうことを、ないことを言いふらすというようなことをおっしゃるのですが、それほど自信があれば、要求した資料はさっぱり出してもらって、なるほどその資料を見たけれども、そういう指摘をするのは無理だということになれば、それで納得できる。資料も出さぬでいて、そして社会党の言うようなことは違う、そういうことを言ってもこれは了承ができないわけです。で、ほかにいろいろな資料の要求等もたくさんあるわけですが、いま私が指摘した四つ、なかんずく最初の二つ、最初の二つは委員長の手元にある。それをどうするのか、この際きめてほしい。そういうことをきめてもらわぬということは、これは審議の妨害ですよ、実際。委員長、どういうふうにされるのか、ひとつお答え願いたい。
  401. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) お答えします。  この韓国国会会議録につきましては、一昨日ですか、理事会において関係当局と種々相談をして、その結果が一応きまっておると私は了承いたしております。したがいまして、これ以上の問題については、たとえばこの際御要求等があれば別でありますけれども理事会としての取り扱いとしては、全理事の了承において決定をいたしておりますから、私としてはそれはどうするということの扱いは困難でありまするし、なお後刻理事会においてなお理事の各位とも相談をするということはできると思いますが、政府との関係においては、この際ひとつ亀田君のほうから御要望があれば、申し出られて、政府の返事をおとりになっていただくと……。
  402. 亀田得治

    ○亀田得治君 理事の理事会というものはないので、まず理事懇談会。
  403. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) いや、失礼しました。理事懇談会。
  404. 亀田得治

    ○亀田得治君 公式の速記録にそういう間違うたことを委員長が載せてもらっちゃ困る。理事懇談会では、結局政府からその説明を聞いたが、きまらぬわけであります、扱いが。結局それは政府のほうが了承をしないということになっておるわけです。きまっておらぬわけなんです、結局は。そういうことでは、もうすでに審議に入っておるのに、委員長もごらんのとおり困るわけです。だから、委員長から政府に対して強い要求をこの際出してもらう、できたら委員会で決議をして出してもらう。それでも政府が出さぬという場合には、そのときはまたそのときのこと。どうも外務大臣にどうですかというようなことを聞いておったって、さっきのこの九件の信用供与に関する取引上に関する口上書きですら出ししぶるくらいですから、これはとても話にならぬわけなんです。話にならぬ。こういうものを出したところで、何ら韓国側に対して不利益を与えるものではございません。過去の済んでしまったことなんです、韓国側からすれば。韓国側が了承せぬ、せぬというようなことを政府側が言うが、実際はそうではない、政府が出したくない、そこに私は根本原因があると思う。そんなとっくの昔の対日請求八項目、そんなものを出したところで何で韓国が被害を受けますか。何もないじゃないですか。国会は済んでしまっておる。むしろそういうものが出ると、質問者に有力な足がかりを与えても困る、そういう立場から政府が出ししぶっているだけなんです。どうですか。そういうみみっちいことをやめて、佐藤さんもそういう外交秘密的な方針はとらないとさっきもおっしゃったわけですから、これほど強い要求のあるものを堂々と出したらどうですか。これはもう総理にお伺いします。あなたの腹ひとつです。
  405. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん御審議していただかなければならない、かように考えておりますので、政府はできるだけ御協力申し上げるという立場に変わりはございません。この問題は衆議院におきましてもいろいろ議論があったことで、衆議院で扱った政府態度も今日まで変わっておりませんので、それらの点も御了承いただきまして、なかなかむずかしいものなんだ、かようにひとつ御了解いただきたいと思います。私は、政府自身何によらずとにかく秘密主義だというようなことではないのでありまして、できるだけ御協力申し上げる、こういう態度を持っておるのであります。また、両院審議をいただきます場合に、これも公平に、どちらがどうということのないようにいたすつもりでおります。衆議院におきましてもたいへん強く要望されましたが、ただいままでその点はお断わりいたしてまいりましたので、参議院におきましても、衆議院政府がとりました態度、別に今日変わりがないと、かように御了承いただきたいと思います。
  406. 亀田得治

    ○亀田得治君 ただいまの総理答弁でございますが、これは全く了解ができない、了解できない。そのつもりでひとつ政府としても考えておいてもらいたい。そのためにひっかかって審議が紛糾するということがあっても、これはもうわれわれの責任ではない。そのことだけを申し上げまして、この点だけは一応この程度にとどめておきます。
  407. 森元治郎

    ○森元治郎君 ちょっとひとつ、これは小さいことでありますが、きょう午後、私の秘書からの話であって、直接ではないからわかりませんが、秘書のことばによれば、盛んにごろつきらしい者が国会の会館の私の部屋に電話をかけて、日韓条約反対などしていると、いいことはない、これから亀田、藤田、この三理事ですな、こういう者はおどかしあげるんだといったようなことを盛んに言ってくるようであります。国会審議抜き打ちでもって、こんなに短くなって審議はできない。外にはちんぴらがうろうろ電話をかける。実に不愉快な暗い状況だと思うんですが、これからいよいよ審議が最高潮に達して御答弁に窮することもしばしばあって、そうするとますます私たちが悪党になる。三人ならいいが、十二人、そのうち全員と、暴力で外のほうからおどかす。これはだれが裏でやっているのか知りませんが、こういうものは、ひとつ政府でもってどんなふうに考えておられるか、総理大臣から御所信を、対策を伺います。
  408. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたいへんまじめな問題でございますので、政府は申すまでもなく、皆さま方の安全ということについては、万全の処置をとるのは当然の政府責任だと、かように思っております。また、治安につきましても政府責任を持つ、こういう立場でございます。ただいまのような問題があるというお話が出ましたので、よく実情を取り調べることもちろんですけれども、同時に、御要望があれば、身辺を十分守る、護衛をつけるということはいたしたいと思います。
  409. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 本日の亀田君の質疑はこの程度とし、明日は午前十時から委員会開会いたします。  これにて散会いたします。    午後六時四十六分散会