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大橋和孝君 それでは逐次
質問させていただきたいと思うのでありますが、第一番目に、先ほど
大臣からも
局長からも御
説明のありましたように、
わが国は
胃ガンでは
世界で第一位を占め、特に男子でありますが、ことに
女子ではチリーに次ぎまして第二位を占めております。しかも、先ほどおっしゃったように、
日本では
胃ガンが多く、
外国では特に
腸ガンなんかが多いといわれておりますし、また
順位は
胃ガンとか
子宮ガンとか
肝臓ガンというような形での
順位になっておる。その次に
肺ガンがきているようになっているわけでありますが、そういうような形で、非常に
日本ではこの
ガンの問題も大きく
心配をされつつあるわけであります。もちろん
先ほどお話になりましたように、
食生活が、白米あるいは、また、
みそ汁とか、あるいは、また、つけものというようなぐあいで、非常にこの
食生活から
胃ガンの多いことも事実でありますが、最近では、やはり
食生活の改良のために、先ほど御
報告のように、
横ばい状態であるように聞いております。また、
肺ガンにつきましても、いろいろ
たばこが
原因のようにいわれておりますが、学会でも
報告にありましたように、やはり公害とか、あるいはちり、あるいはまた排ガス、こういうようなものが非常に多くて、
厚生省で発表されております
統計を見ましても、やはり大都会、
東京、大阪、神奈川あるいは
京都、あるいはまた
北海道あたりは非常にそうした
肺ガンの多い地区になっておるようであります。こういうのは、やはり
じんあいとか、あるいはまた石炭とか重油を使ったその
有毒ガスとか、こういうものが非常に多くなって、実験的にも、やはりそうしたものを長く持続したら
肺ガンができたというようなことが
報告されているようでございますが、こういう中で、やはりこの
死亡率も、先ほどおっしゃいましたように、非常にふえておりまして第二位であり、同時に、また、先ほど
大臣のおっしゃいましたように、三十五歳から五十四歳という一番大事なときに
死亡率が第一位になっておる。こういう形で、非常にいまその
死亡率の多いために特に問題になっております。先ほどおっしゃいましたように、有名な方がなくなった。しかも、トラが死んだら皮を残すというのだが、
池田総理がなくなったら
ガン対策を残すなどというさがない声も聞こえておるわけであります。私はそういう点から考えましても、この
ガン対策がむしろおそきに失しておるのではなかろうか。十年前、この
統計を調べましても、三十一年からもう第二位を占めているわけであります。もう十年間この
ガンの
死亡率は第二位を占めてきたわけでありまして、急に最近ふえたというわけでもない、徐々にはふえておりますけれ
ども、もう十年前から第二位を占めている。こういう
観点からも、
ガン対策というものはもっと早く行なわれなければならない。先ほど
木村先生も
お話になりましたが、この
ガンの問題に対しましてはまだ不明な点がたくさんありますので、
対策の樹立も非常に困難であったかもしれないが、非常にいまの
状態では、むしろ私は
ガンという
診断は
死刑を宣告されたというように
国民にとられているのではなかろうかというふうに考えるのであります。私
どもはその実例を持っておる。非常に話が長くなるかもしれませんが、
京都のある大学の
教授、しかも、
解剖学の
教授がこの
ガンと
診断をされた。そこで、学者的な
立場からこれを隠しておったのでありますが、やはり学者の
先生方の集まりでありますので、お前は
ガンだということをおっしゃった、あるいは、また、仲のいい同クラスの
教授からは、君は九月まで生きておれよ、そうしたら少しはまだ手当がふえるんだぞという冗談を聞いたということで、それが非常なショックになって、それ以後その
先生は絶対面会を謝絶して、しかも、厭世の辞を
日本醫事新報に発表されたという事実を直接われわれ見ているのであります。また、
京都のある
結核療養所の所長さん、これもりっぱな
医学者でありますが、この方も
胃ガンで、
手術ができない
状態になってこれを
手術した、
試験的開腹手術をやったあとなんでありますが、別なところでちょうどそのときとってあった胃かいようの胃を見せて、あなたの胃はこれですよと見せて
安心をさせた、これはいまの
医学者としましても非常に苦しい
立場であります。しかし、
診断を正直に言えばその人を殺すことになるのでこういうふうなことが取り行なわれておるということがいまたくさんあることなんであります。こういう点から考えましても、私は、いまこの
集団検診、あるいはここで
重点政策でもっておやりになったことは非常にけっこうなことだと思いますけれ
ども、特にここで注意しなければならないことは、
集団検診で拾いあげてくる
患者はもう手おくれになっておる
患者であると同時に、だからしてこのためにほとんどの者が死亡してしまう。ことに
治癒率が一五%とか、あるいはまた三〇%以下であるということであるので、非常にここに
国民全体としては、
ガンの
診断は
イコール死刑であるというような
感じを持っておるわけであります。しかし、
がんセンターの発表で、
木村先生の
お話にも出ておりますように、いまうまく
早期に発見すれば
治癒率六〇%という
報告もわれわれ見せてもらっておるわけでありますが、そういうことから考えますと、非常に私は、いまの
検診の取り組み方、あるいは、また、この
ガン対策に対しての取り組み方がよほど十分に考慮されない限り、こうした問題に対しての
ガンノイローゼと申しますか、非常に
心配をして、
国民は
ガンでないのに非常に神経を痛めているというのが現
段階ではなかろうかと思うわけであります。
こういう点で、まず第一番目に
厚生省としては、いま大体の
お話を承りましたけれ
ども、そういう
観点に立っていかなる
集団的検診とか、あるいは、また、
予防対策とか
早期治療ということに対しては、この
施策の中でいかに打ち出されるかということをもう少し具体的に示していただかないと、一般の
国民の
受け取り方は、いまの
心配に対して解消される
方向にあるという
受け取り方にはならないのではないかと思うわけであります。ただ、いまも聞きますと、非常に
機関も九カ所、あるいは百カ所という形で行なわれますが、こうしたことに対しては、もっともっとその内容を充実したりっぱなものをこしらえて、ことにそうした方面では注意をしなければならないのではなかろうか。特に私は、各
臨床部門でこのものを早くとらえなければ、もう
がんセンターに送られるころではおそいという
感じも持つわけでありますが、たとえば
喉頭ガンのような問題でありましても、
耳鼻科の診察においてほとんど
自覚症状がないうちにやはり
喉頭あたりを調べて、そしてそこに変化があることを見つけなければいけないわけでありまして、私も最近実際見た問題でありますが、大きな会社の社長が何かアリナミンがのどにひっかかっているから見てくれというので見てもらったら、もうそのころは大きな
喉頭ガンができておった、さっそく
手術したけれ
ども、もう手おくれで死んでしまったというようなことで、もうこうした前
ガン症状が出てきたというときは、リンパ腺にも非常に進んだ
ガン症状になっているのが多いわけであります。
こういうようなことを考えてみますと、いまのような問題に対しては、相当初めから意気込みと申しますか、かまえを明確にしていただくことが、こうした
ノイローゼ、あるいは、また、
ガンに対する将来
国民の
安心感と申しますか、そういうものが出てくるのではないか。特にそういう点をひとつ具体的に示していただいたほうが
国民のためであり、
ガン対策の将来としても明るい見通しができるのではないかと思いますので、
大臣からその点についてひとつお答えいただきたいと思います。