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勝澤芳雄君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
マリアナ諸島アグリガン島沖における
漁船遭難について、
総理並びに
関係各
大臣に
質問をいたします。(
拍手)
質問に先立ち、今回の
遭難に対しまして
関係各方面の必死の
捜索にかかわらず、いまだ多数の乗務員の
方々が行くえ不明になっており、その御
家族の心労に対しましては心からなる御同情を申し上げる次第であります。(
拍手)
災害は忘れたころにやってくるといわれてきましたが、
台風は例年のように
日本の国土を襲って、
国民のとうとい生命、財産を奪い、多くの被害を与えております。
政府も国会もこの
対策に
努力をいたしてまいりましたが、
政府の施策は必ずしも万全とはいえず、依然として被害は絶えません。これは天災というよりも、ある程度人災と申すべきものであり、為政者としての政治責任を感ずべきであります。特に、今回の
遭難事故は、
わが国海難史上まれに見る大
惨事であり、その
原因の究明と、責任を明確にすべきであります。
遭難の
原因を
台風の異常発達という現象から観測の誤報とだけ断言するわけにはいかないとしても、
台風予報と実際の
台風進路に大きな誤りがあり、そのために各
漁船が
台風進路のまっただ中に避難していったということは事実であります。
遠洋漁業に生きる漁師は、めしを忘れても
気象通報は忘れない。
気象通報こそ命綱であることをはだで知っています。水揚げをあせって
台風に巻き込まれたとか、若い船長だから云々などということは、実情無視の
意見であります。
遭難漁船が十数時間前より避難していたということ、第八国生丸の増井船長らベテラン乗務員や、第三永盛丸のような新鋭船まで
遭難したということは、
台風予報の誤りで中心進路に避難していたためであることは明らかでありまして、その責任はまことに重大であるといわざるを得ません。(
拍手)
また、七日の朝六時二分、第八海竜丸からSOSが発せられ、その日の夜七時二十七分までには七隻の
漁船の消息不明が伝えられたにもかかわらず、何らの緊急
対策がとられず、海上保安庁の
巡視船は、ようやく翌日の八日午後出港して、十二日の午後
遭難現場に到着、自衛艦や自衛隊機の出動は十日でありました。
救助の最も必要な七日、八日、九日は、仲間を救えと決死的に集まった
漁船と
米軍機のみの
捜索であります。これでは助かるものも助かりません。たった一つ見つかった死体もまだやわらかかった、もう少し
救助が早かったらという
遺族の
悲しみに、何と答えることができるでしょう。まさに
救助活動の怠慢であります。高度
経済成長政策の陰に忘れられてきた
日本漁業に対し、貧困な政策しか行なってこなかった今日までの自民党
政府の責任であります。私は、この際、今次
遭難に対する
総理の
所見と、今後の
海難防止についての決意をお伺いしたいと存じます。次に、
関係各
大臣に
お尋ねいたします。
質問の第一は、当面する緊急
対策であります。
その一つは、
遭難乗務
員家族についての援護であります。
遭難者二百九名、そのうち、
静岡県の百八名をはじめ、宮崎県二十三名、その他三県にわたり、一名の遺体が発見されただけで、二百八名はいまも行くえ不明で、留守
家族は絶望に追い込まれています。そのうち
静岡県下の
遭難乗務
員家族は百七十一
世帯で、七割が一家をささえていた働き手をなくし、母子
家族八十
世帯、妻だけ五
世帯、老母だけ一
世帯という不幸な事態を生じました。生活保護を必要とするもの八十八
世帯、しかも、同一
家族や縁故
関係者、地縁、血縁的な
集団事故で、まことに従来例のないことであります。したがいまして、
船員保険金の早期
給付はもちろんのこと、
家族の職業補導、就職のあっせん、授産、子弟の養教育費の助成などを含め、特別な手厚い援護を差し伸べるべきであると思いますが、
政府の
措置を、厚生、労働各
大臣から伺います。
その二は、
遭難船主に対しては、
漁船保険金の早期交付とともに、再建のための
融資については特別の
措置を考慮すべきであると思いますが、これらの
船主などについての
対策を
農林大臣からお伺いします。
その三は、今回のような遠洋における多数の
漁船の
遭難については巨額の
救難活動費を必要といたします。国としてもこれらの
費用については新たな助成
措置を考慮すべきであると思いますが、
大蔵大臣の
所見をお伺いします。
質問の第二は、
恒久対策であります。
その一つは、最近の海上における災害の多くは、
人命、財産の喪失など、特に
集団的
犠牲が多い現状であります。したがって、
救難活動の円滑かつ迅速な
体制が必要でありますので、
陸上災害に対する災害
救助法にかわる
海難救助法ともいうべきものを制定すべきであると思いますが、
運輸大臣の
所見をお伺いします。
その二は、
漁業協同組合等の
遭難救助準備金に対する
非課税や、
遭難乗務
員家族や、
船主に対する一時所得についての税の
減免措置を考慮すべきであると思いますが、
大蔵大臣の
所見をお伺いします。
その三は、
漁船乗務員
育成強化のためには、当面、漁民収入の歩合
制度の問題、一
船主一隻の現状、あるいは研修
活動などについての
漁業制度近代化への積極的
指導が必要であると思いますが、
農林大臣の
所見をお伺いします。
その四は、
海難防止についての
政府の諸施策であります。
第一は、気象観測の強化についてであります。南方における
台風観測は
米軍の提供するものが唯一のたよりでありますが、これは本来
米軍の軍事目的のために行なわれているもので、
日本の
漁船のためのものではありません。あなたまかせの観測から、
日本みずからの手による観測を行なうべきであります。したがって、気象観測船の派遣あるいは
航空機による観測、
漁船による観測通報など、早急に実施すべきであります。また、小笠原諸島及び付近の島についての観測レーダー基地の設置については、
米軍との
関係もあると思いますが、
運輸大臣の
所見をお伺いいたします。
第二は、外国港の避難についての手続はまことに複雑で、半日もの長時間かかるといわれていますが、特に
台風常襲地帯ともいわれている南方においては、あらかじめ特別な取りきめを行なって、簡便迅速な方法をとるべきであると思いますが、
運輸大臣の
所見をお伺いします。
第三は、本年五月発行の海上保安白書によると、三十九年の
海難船舶は二千八百余隻で、うち沈没、行くえ不明七百十三隻、百二十二億円、失われた
人命千三百十一人であります。
海難救助の第一線で働く
巡視船八十八隻、うち半分以上は老朽船で、十二、三ノットで、商船よりもおそく、
航空機は、ヘリコプター九機、ビーチクラフト六機の十五機、これでは、遠洋はもちろんのこと、近海の
救助も不十分であります。早急に
大型巡視船や
救難航空機を
増強すべきであると思いますが、これが
対策について
運輸大臣の
所見をお伺いします。
なお、当面の緊急
対策として、自衛艦や自衛隊機をペンキを塗りかえて海上保安庁で使ったらどうかという
意見もあるようですが、いかがでしょうか。
最後に、
大蔵大臣にお伺いします。
海難による被害はまことに悲惨なものであります。しかし、運輸省がとってきた今日までの
海難防止
対策は、まことにお粗末なもので、無責任のきわみであります。明年度の予算要求四億一千万円であったのを、今次
遭難によって、ようやくおそるおそる気象観測船一隻、
大型巡視船一隻、YS11型飛行機一機の九億七千万円を追加要求しているのであります。これで気象観測は十分か、
海難救助は万全かと聞けば、まことに心細い
答弁で、何ぶん大蔵省が予算をくれないのでと、責任の転嫁であります。大蔵省あって
国民なし、まさに無責任行政のあらわれであります。(
拍手)
軍艦や大砲、戦闘機をふやす前に、まず
台風から
国民の生命、財産を守るために、マリアナの人災を再び繰り返さないためにも、気象観測の整備、
巡視船、飛行機等の
増強など、
海難防止には画期的な予算
措置をとるべきであると思いますが、
大蔵大臣の決断をお伺いいたします。
以上、私は、今次
遭難乗務
員家族に対し重ねてお見舞い申し上げるとともに、
政府は緊急並びに
恒久対策をすみやかに講ぜられるよう強く要望して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕