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1965-11-05 第50回国会 衆議院 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月五日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 木村 武雄君 理事 園田  直君    理事 長谷川四郎君 理事 福永 一臣君    理事 小林  進君 理事 辻原 弘市君    理事 松本 七郎君 理事 永末 英一君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井原 岸高君    宇野 宗佑君       江崎 真澄君    大平 正芳君       金子 岩三君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    田口長治郎君       田澤 吉郎君    田中 龍夫君       田中 六助君    田村 良平君       中川 俊思君    永田 亮一君       濱野 清吾君    早川  崇君       藤枝 泉介君    本名  武君       増田甲子七君    三原 朝雄君       毛利 松平君    山村新治郎君       赤路 友藏君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       戸叶 里子君    中村 重光君       楢崎弥之助君    野原  覺君       穗積 七郎君    松井  誠君       森本  靖君    山中 吾郎君       横路 節雄君    横山 利秋君       春日 一幸君    玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         農 林 大 臣 坂田 英一君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         国 務 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警視監         (警察庁警備局         長)      秦野  章君         行政管理政務次         官       中山 榮一君         防衛政務次官  井村 重雄君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         運輸政務次官  福井  勇君         海上保安庁長官 栃内 一彦君         郵政政務次官  亀岡 高夫君         郵 政 技 官         (大臣官房電気         通信監理官)  野口 謙也君         郵政事務官         (貯金局長)  稲増 久義君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      武田  功君  委員外出席者         日本電信電話公         社総裁     米沢  滋君         日本電信電話公         社営業局長   千代  健君         日本電信電話公         社経理局長   中山 公平君     ――――――――――――― 十一月五日  委員中村重光辞任につき、その補欠として森  本靖君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森本靖辞任につき、その補欠として中村  重光君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出第一号)  財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出第二号)  日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出第三  号)      ――――◇―――――
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題といたします。質疑を行ないます。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋委員 前回三点ばかりについて質問をいたしたあと、不当な中断を受けたわけでございますが、引き続いていろいろとお尋ねをいたしたいと思います。  問題は、まず無効となる条約協定議定書といったようなものが何件あるか、そのおもなものとともにお答えを願いたいわけです。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この前申し上げたのは、併合条約、それから併合以前の諸条約でそれぞれの規定に従って目的を達成して効力を失ったもの、こう述べたのでありますが、その具体的な条約の名前をあげろというお話でございますから、これは政府当局からお答えいたします。(「待て待て」と呼び、その他発言する者あり)政府委員から申し上げます。
  5. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 一九四八年八月十五日に失効するのは、併合条約一件だけでございます。それ以前の、併合以前の条約は、それぞれ併合の際に失効してしまっておるわけでございます。
  6. 石橋政嗣

    石橋委員 私たちの理解では、そういうふうには思えないわけです。かりにそういう理屈があるかもしれませんけれども、少なくとも無効となるのは一件だけだというようなことはないと思います。その以前の分も全部含めて、それでは何件あるか、お答えを願いたい。
  7. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 日韓併合の際に失効いたしましたのは五十二件、この独立のときに失効いたしましたのは、併合条約一件のみでございます。
  8. 石橋政嗣

    石橋委員 この問題は、ほかの点に関連をいたします意味においてお尋ねをしたわけですから、非常にあいまいでございますけれども、質問を次に移したいのでございますが、総理お尋ねしたいのですが、いまの代表的な一九四八年八月十五日に効力を失うと指摘されております併合に関する条約、これは対等立場で自主的に締結されたものであるというふうにお考えになっておられるかどうか、この点についてお答えを願います。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 対等立場で、また自由意思でこの条約締結された、かように思っております。
  10. 石橋政嗣

    石橋委員 そこに問題があるのです。総理は、今回のこの審議を通じまして、盛んに隣国との友好関係の確立、善隣友好ということを説かれております。しかし、いまお尋ねをいたしましたこの併合条約対等立場で自主的に結ばれておるというような意識の中から、真の善隣友好などというものは私は確立できないと思うのです。いつから条約が無効になるのかというようなことは、非常に事務的なもののような印象を受けます。しかし、韓国側があれほど非常にきびしく、最初からなかったものだという主張をするその裏にある国民感情というものを理解できないで、どうして善隣友好を説くことができるかと私は言いたいのです。あなたはいま対等立場で結ばれた条約だとおっしゃいましたが、当時のいきさつがいろいろなものに出てきておりますから、私、その中で、特に伊藤博文特派大使が当時の韓国皇帝と会いましたときの会談日本の天皇陛下に報告するという形で残しておりますものをちょっと読んでみたいと思います。これは外務省編さん日本外交文書第三十八巻に載っておるものです。最初のほうは省略いたします、文書でお配りいたしますから。  以上のごとく陛下哀訴的情実談はほとんど幾回となく繰り返され、底止するところを知らず。大使はついにそのあまりに冗長にわたることを避け次のように言っております。  大使 本案は帝国政府が種々考慮を重ねもはや寸毫も変通の余地なき確定案にして……今日の要は、ただ陛下の御決心いかんに存す。これを御承諾あるとも、またあるいはお拒みあるともごかってたりといえども、もしお拒み相ならんか、帝国政府はすでに決心するところあり。その結果は那辺に達すべきか。けだし貴国地位はこの条約締結するより以上の困難なる境遇に座し、一そう不利益なる結果を覚悟せられざるべからず。  陛下 朕といえどもあにその理を知らざらんや。しかりといえども事重大に属す。朕いまみずからこれを裁決することを得ず。朕が政府臣僚に諮詢し、また一般人民意向をも察する要あり。  大使 一般人民意向を察する云々のごさたに至っては奇怪千万と存ず。……人民意向云々とあるは、これ人民を扇動し、日本の提案に反抗を試みんとのおぼしめしと推せらる。これ容易ならざる責任陛下みずからとらせらるるに至らんことをおそる。何となれば貴国人民の幼稚なる、もとより外交のことに暗く、世界の大勢を知る道理なし。はたしてしからば、ただこれをしていたずらに日本に反対せしめんとするにすぎず。昨今儒生のやからを扇動して秘密に反対運動をなさしめつつありとのことは、つとにわが軍隊の探知したるところなり。 これはほんの一部分であります。全文ここに持っておりますけれども……。  こういうような態度で韓国皇帝に迫って、そうして締結した条約、そういう条約を、対等立場で自主的に結んだんだというような意識では、これはどうしたって善隣友好などというものを確立することはできないということを言いたいのです。  聞くところによりますと、昨日自民党の方が呼ばれた参考人の方は、今度の日韓会談を、こういうたとえで評したそうであります。すなわち、押し売りの暴力団が玄関先にすわり込んだ、そのときに対処する方法は三つしかない、一つは、一一〇番に電話をするか、警官に引き渡す、もう一つは、こちらも暴力を用いて力でやっつける、第三は、金一封を包んでお引き取り願う、この三つしかない、今度の日韓会談の妥結は、第三の金一封の道を選んだんだ、これで李ラインのほうはお引き取り願ったけれども、竹島はいまだに居残っておる、こういう表現を用いたということを私聞きました。このような考え方を持っておる賛成論韓国のほうで聞いたら何と思いますか。私は、自民党の中からこのような考え方に対して一言たしなめることばがあってしかるべきだと思います。それもないということは、いまあなたの意識の中に、併合条約対等であり、自主的に結ばれたものであるというような、そういうものと一脈通ずるものがあるのです。私は非常に危険だと思います。もう一度御再考をお願いいたしたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま石橋君は御意見を交えてお尋ねでございますが、私は、ただいま、善隣友好関係を樹立したい、これは前向きでものごとを解決したい、こういう気持ちでございます。ただいまの、過去を十分これも検討する、そのことが必要なことだ、これを私も全然必要でないとは申しませんけれども、この過去をせんさくすることも、あまり過ぎますと、これから樹立していこうという将来に、私は、必ずしもあっさりした気持ちになかなかなりにくい、こういう点を十分考えていただきたいと、かように思います。
  12. 石橋政嗣

    石橋委員 先ほども申し上げましたように、このいつから無効になるかといったような問題が争われておる。向こうは、なかったものと盛んに主張する。そのことばの裏には、いま私がるる申し上げたような心情がひそんでおるのです。これを理解することなくして、形だけ、いわば支配階級だけが御都合主義で握手をしても、善隣友好などというものは絶対に確立できないということを申し上げたいわけなんです。少なくとも、日本国民韓国国民、全朝鮮国民とが仲よくするということが、これがほんとうの善隣友好だと思うのです。そういう思想で今度の会談は進められておらないし、条約もそういうふうになっていないと私たちは思う。そのほんの一つの例として、いま私は明示したわけであります。しかし、このことは、これから先の質問の中でまた順次お尋ねをしたいと思うわけです。  そこで、質問に入るわけでございますが、その前に外務大臣に確認をしておきたいことがございます。  それは、新聞の報道によりますと、李外務部長官が十日ごろ、グエン・カオ・キ南ベトナム首相が十一日ごろ日本を訪問するということでございますが、事実でございますか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李外務部長官は、公務のために渡米する途次、飛行機の都合で日本に一時立ち寄るということになっております。それから、南ベトナムカオ・キ首相は、所用のために韓国を訪れるその途次に日本に立ち寄る、こういうことになっております。
  14. 石橋政嗣

    石橋委員 グエン・カオ・キ南ベトナム首相訪日については、後刻お尋ねをしたいと思います。  私がここでちょっと総理お尋ねしておきたいと思いますことは、実は、十日に韓国李外務部長官日本に来る、それまでにぜひこの条約案件を衆議院で通過させるのだ、参議院においていわゆる自然成立を期するためにも、この李外相訪日までに間に合わせるためにも、きょうあすじゅうにでもどうしても委員会を採決し、そして来週早々本会議を通す、こういうような意向を持っておるということを自民党の有力な人が言ったといううわさがございますが、総裁はそういうことを報告を受けておるか、あるいは指示をなさったことがあるか、このことだけ確認しておきたいと思います。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、特に総裁というような名ざしでございましたが、私はかような点の相談も受けておりません。また、さような点についての指示もいたしておりません。誤解のないようにお願いしておきます。
  16. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、質問に入ります。  前回お尋ねいたしました点とつながりを持つわけでございますが、政府は、日本韓国承認したのは平和条約発効の日だと、こう申しました。この点について私は承服しておらないわけであります。しかし、一応政府のその見解立場に立ってお尋ねをしてみたいと思うわけですが、そうしますと、昭和二十年八月十五日の日本降伏以前から日本に在住いたしておりました朝鮮人は、いつまで日本国籍を持っておったことになるわけですか。法務大臣お尋ねいたします。
  17. 石井光次郎

    石井国務大臣 二十七年の平和条約発効のころに失ったと思っております。
  18. 石橋政嗣

    石橋委員 非常に重要な問題でございますから、ころになんということをおっしゃらずに、私が指摘いたしました在日朝鮮人の方はいつまで日本国籍を持っておったか、明確に年月日をひとつお示し願いたいと思います。
  19. 石井光次郎

    石井国務大臣 平和条約発効の日が三十七年の四月二十八日でございますから、その日から日本国籍を失ったわけでございます。
  20. 石橋政嗣

    石橋委員 韓国独立した日は一九四八年八月十五日、韓国承認した日は一九五二年四月二十八日、しかもこの一九五二年四月二十八日の平和条約発効の日まで日本国籍を持っておったということになりますと、あなた方のいわゆる韓国というのは国籍だという立場をとりますならば、この間は二重国籍ということになりますが、お認めになりますか。
  21. 石井光次郎

    石井国務大臣 日本から見ますれば日本国籍だけでございます。
  22. 石橋政嗣

    石橋委員 法務大臣、あなたはこの間ここで答弁されたことをよもやお忘れになっておられないと思います。従来、朝鮮登録証に書いてある分も韓国と書いてある分も、これは単なる符号であり、用語であるという見解をとってきたが、この誤りに気がついて、韓国という部分については昭和二十六年から国籍とみなすとおっしゃったじゃありませんか。そうすると、二十六年から二十七年の間は韓国国籍日本国籍と両方あなたはお認めになっておることになるじゃありませんか。
  23. 石井光次郎

    石井国務大臣 政府委員お答えいたさせます。
  24. 八木正男

    八木政府委員 法律日本から見ますれば日本人でございますが、事実上韓国国籍があったとすれば、二重国籍になります。
  25. 石橋政嗣

    石橋委員 これは、本会議におきまして総理大臣答弁石井法務大臣答弁との食い違いが出てまいりまして、わがほうの横山委員から指摘があって、統一見解として出されたものです。石井法務大臣政府を代表して統一見解を述べられたのだ。それから発する疑義を私はただしているのです。政府責任を持って統一見解を出しておるのに、いまさら、事務当局に聞かなければわからぬ、そんな無責任なことがございますか。やはりこれは総理法務大臣から責任を持ってお答え願っておきたいと思います。
  26. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま私が答えましたように、当時から日本国籍であったわけでございます。それから、いまから振り返ってみますると、客観的に見ますると三つのものがあったように見えるということでようございます。
  27. 石橋政嗣

    石橋委員 これは私は日本政府が見た場合と韓国から見た場合の違いを言っておるのじゃありませんよ。登録証に書いてある韓国というのは、日本側が、あなたのほうが国籍とみなすとおっしゃっておるのですよ。そして、いま今度お尋ねしたら、一九五二年の平和条約発効の日までは日本国籍もあったと言う。これも日本政府見解日本政府見解二つに分かれているじゃありませんか。韓国言い分日本政府言い分とが違うならば、これはまだ問題を争うところがありますけれども、あなた方の言っておることが矛盾しておるじゃありませんか。
  28. 石井光次郎

    石井国務大臣 それは分かれておりません。いま詳しく政府委員から説明します。
  29. 石橋政嗣

    石橋委員 分かれていないというからには、法務大臣自身がひとつ責任ある回答をしていただきたいと思います。
  30. 新谷正夫

    新谷政府委員 お答えいたします。  平和条約発効までは、朝鮮人日本国籍を持っておったわけでございます。(発言する者あり)ただ、いま過去を振り返って考えてみますと、すでに韓国独立ということがございますし、韓国側におきましてはそれを韓国人と扱っておったという事実はわれわれとしては理解できるという趣旨法務大臣お答えになったわけでございます。
  31. 石橋政嗣

    石橋委員 ただいま政府委員が何か不規則発言しておりましたが、聞き取れませんでした。その発言の上に立ってでもけっこうでございますから、法務大臣が明確に政府を代表して統一見解の続きでやってください。
  32. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお答えしたとおりでございます。日本側日本側として認め韓国側韓国側として認めたものを、そういう状態をわれわれはいま認めておるということを申し上げたのでございます。
  33. 石橋政嗣

    石橋委員 日本韓国独立承認し、韓国というものを承認したのは平和条約発効の日だ、それまでは日本国籍を持っておった、はっきりこれは間違いないのですね。これが第一点。それじゃ確認します。間違いないのですね。それから、この間の統一見解によりますと、従来韓国と書いてあろうと朝鮮と書いてあろうと、登録証に書かれておるものは単なる用語であり符号であったにすぎなかったが、今度は政府統一見解としてこれは韓国国籍とみなすと、こうこの間答弁されたことも、統一見解を示されたことも間違いないのですね。そうしますと、日本政府は二十六年から二十七年の間二つ国籍認めたものが出てくる。筋が通らぬじゃないですか。おかしいと思われませんか。ここまで議論すれば総理も納得いくと思います。政府統一見解ですから、それでは政府からお答え願います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの国籍についてのいろいろの解釈のしかた、どうも石橋君と私どもの考え方と食い違っておるようですが、この点は法制局長官から説明をいたさせます。
  35. 石橋政嗣

    石橋委員 法律的なことはいまからお聞きしますよ。この間政府統一見解として法務大臣から明示されましたことについての矛盾を私は聞いておるのです。法律的なことは、私はいまから法務省の局長に聞きます。従来の答弁も全部引用してお伺いします。どうしてもこれ以上総理大臣法務大臣も答えられないというなら、私事務当局質問します、あなたでなくて担当者に。あなたは責任外だよ。出番じゃないよ。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申しましたように、法制局長官から説明させますから、お聞き取りをいただきます。
  37. 石橋政嗣

    石橋委員 私はもう一ぺん外務省事務当局に聞きますよ、条約局長に。   〔発言する者あり〕
  38. 高辻正巳

    高辻政府委員 私から一応お答え申し上げます。  今回のいわゆる統一見解要旨について若干誤解があるといけませんので、その要旨を繰り返して申し上げます。  この統一見解要旨は、将来大韓民国に書きかえられるものは言うまでもありませんが、そればかりでなく、過去において韓国または大韓民国に書きかえられた記載につきましても、それが大韓民国国籍を示すものと考えざるを得ないので、いわゆる書きかえ問題については、今後将来このような見地に立って処理していこうというのがその趣旨でございます。このような見地をとったからといいましても、そのもの所属国の間で持つその国籍そのものの効果に、別にその将来の取り扱いをきめたそのことによって消長を及ぼすものではございませんし、また、このような見地に立って事を処理することにするからと申しまして、過去における事務的取り扱いを当然に左右するものでもございませんし、また、このことによって過去における事務的取り扱いがさかのぼって変更されることになるものでもございません。こういう意味で、実は、この統一見解の内容には、御指摘のありますようなこれが遡及するというような関係を生じない。いままで表示されておりましたものの取り扱いを将来どういうふうにするか、その取り扱いをどうするかということについての考え方認識をどういう認識でもってやっていくかということでございまして、その者が過去における国籍がどうであったかということは、それぞれの実質的な関係においてきまるものでございます。つまり、統一見解要旨によってこれがさかのぼってどうこうなるというものではもともとないのでございます。
  39. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、この国籍問題というものも、もう少し真剣に考えてやってもらいたいと思う。在日朝鮮人の諸君が大きな関心を持っておるということをまず念頭に置いていただきたいのです。あまりにも事務的に、これはつじつまを合わせさえすればいいというような考え方を捨ててください。  そこで、それでは法務省の事務当局お尋ねします。  国籍法のような国際公法については、未承認国のものを受け付けるわけにはいかぬ、認めるわけにはいかぬ、この見解には変化はないでしょうね。
  40. 新谷正夫

    新谷政府委員 従来、法務省としましては、いまお話しのような見解に立って国籍事務の取り扱いをいたしております。国家を承認しておらないのでございますから、したがって、そういうものの国籍というものも私どもとしては考えるわけにはいかない、こういう見地に立って従来やってまいっております。
  41. 石橋政嗣

    石橋委員 その点からだけでもおかしいじゃないですか。私はこれは国際通念だと思いますよ。法律のイロハだと思う。私のようなしろうとでもわかる。国際公法たる国籍法は、未承認国のものを認めるわけにはいかぬ、いまも再確認いたしました。日本韓国承認したのは、先ほどから御返事がございましたように、昭和二十七年四月二十八日、それ以前は、韓国独立し、現にその国があったにいたしましても、日本との関係においては未承認国です。その未承認国の戸籍の国内法に基づいて代表部がどのような証明をしようと、国際法からいって、それをもって国籍認めることはできないじゃありませんか。どうなんです。
  42. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かに、国家を承認いたしますれば、その時点からその国家が承認国との関係におきまして存立することになりますし、また、その国を構成しておる国民というものも考えられるわけでございます。従来、事務の面で取り扱っておりましたのも、そういう国籍があるという取り扱いではございません。先ほど法務大臣法制局長官お答えになりましたように、過去を振り返っていま考えれば、韓国というものの独立があって、在外国民登録証制度というものが実施されてきておる。そういたしますと、私どものほうで認め認めないという問題とは別に、そういう客観的な事実があったではないかということがいま理解されるわけでございます。そこで、これから先の問題としては、韓国と書いてあるものについては、実質の国籍に合致するのであるから、これを国籍と見て、これからの措置はそういう扱いにしていこうというだけでございまして、過去にさかのぼっていままでの扱いを全部国籍認めてやるという趣旨では毛頭ございません。
  43. 石橋政嗣

    石橋委員 少なくともあなたは法務省の民事局長政府の中におきますいわば法律の番人です。そういう立場におる人がへ理屈を言ったのじゃ、韓国側と交渉したときに太刀打ちできないんですよ。この法的地位の交渉の祭に韓国側から矛盾をつかれておるじゃありませんか。そのときに日本の役人はぺしゃんこになったということを国会で言っていますよ。侮辱した発言をしておりますよ。もう少し権威を持って対外的な折衝もやっていただきたい。国籍法というものは承認国のものでなければ認めるわけにいかぬ。未承認国でもいいというならば、それでは、在日朝鮮人の中で、おれは国籍の欄に朝鮮民主主義人民共和国と書いてくれ、こういう要求をしてきたらどうします。受け付けますか。受け付けられないじゃないですか。未承認国だから受け付けられないでしょう。どうです。
  44. 新谷正夫

    新谷政府委員 朝鮮人朝鮮民主主義人民共和国の国民であるからそのように書きかえてくれと言ってまいりましても、これは受け付けるわけにはまいりません。その理由は、それが国籍であるからとか、国籍でないからという理由ではございません。繰り返して申し上げてきましたように、従来の取り扱いは、単なるこれは用語として、一つの記号のような観念で朝鮮ということを書いてきたわけでございます。外国人登録法上その記号ということを書くということも実はないわけでございますけれども、朝鮮人の特殊な地位に基づきまして、国籍を書くわけにいかなかった時代に登録制度というものが実施されたわけでございます。そこで、国籍を書くかわりに朝鮮という用語を用いて、一応日本に在住しておる特殊な地位にある朝鮮人であるということを示す意味において、そういう用語を用いたわけでございます。したがって、その用語をいかようにするかということは日本政府がきめるべきことでございまして、朝鮮人に、その用語をいかように変えてくれ、朝鮮民主主義人民共和国と変えてくれというふうな権利があるわけじゃございません。もっぱら日本の行政措置として、朝鮮という符号を用いて、国籍ではない、そういう特殊な朝鮮人であるということを示したものでございます。
  45. 石橋政嗣

    石橋委員 まともに私の質問に答えていただきたいのです。法律的にいま議論をやっているんです。あなたとやっているのは法律論でやっているんです。あなた方が、平和条約発効時までは在日朝鮮人日本国籍を持っておった、こういうことを言うから、従来の政府統一見解と食い違ってきた。これははっきりしております。そこで、もう一つ、従来の外人登録証韓国と書いてあるのは国籍として取り扱う、こういうことをまた言っておる。そうしますと、二十六年から二十七年までの間は日本韓国承認しておりません。未承認国です。そのときに韓国の在日代表部が証明したものを持ってきたのだから、しかも本人の意思も加わっているのだから、だから国籍とみなすと、こうおっしゃる。そうすると、未承認国の間でも、それだけの手続をしさえすれば国籍としてみなせるというならば、本人の意思があり、何らかの方法によって北の側の国の証明書を持ってくれば認めざるを得ないじゃないですか。つじつまが合わないと言っているんですよ。  この点に関連して関連質問があるそうですから、ちょっと譲ります。
  46. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、この際これを許します。横山利秋君。
  47. 横山利秋

    横山委員 きわめて簡単に一点だけ整理を政府側にしてもらいたいと思うのです。  石橋委員からも出ましたが、私の質問に対して政府は二通りの答弁をしている。その一つは、石井法務大臣によって代表される、二十六年のときから、こういう答弁である。もう一つは、いまも民事局長並びに先般の八木入管局長から答弁された、二十七年平和条約のときからという答弁である。この二つは、明らかに政府内部において答弁が食い違っておる。ここをいつからなんだというはっきりした統一答弁をいただきたい。
  48. 新谷正夫

    新谷政府委員 平和条約発効いたしますまでは、朝鮮人日本国籍をもっておったわけでございます。平和条約発効いたしました昭和二十七年の四月二十八日に日本国籍を失った、こういうことになります。これは日本国籍についての変動でございます。一方、いま考えますと、韓国独立というものはそれ以前にあったわけでございます。その韓国独立に伴って朝鮮人韓国国籍を取得するかどうかということは、これは韓国の国内法の問題でございまして、日本政府がこれをとやかく言う筋ではございません。しかし、いま韓国承認し、れっきとした国家として日本政府がおつき合いをするという段階になっておるのでございますから、この際考えますならば、過去においてそのような事実があったということをわれわれは理解して、その理解の上に立ってこれからの外国人登録事務を処理するのが適当である、これが統一見解趣旨でございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 もう一点だけ。あなたの意図はわかったが、私の言っている統一見解がどこにさかのぼるかということについての答弁がなかった。統一見解国籍がいつにさかのぼるかという点について政府の二通りの答弁がある、こういう意味だ。
  50. 新谷正夫

    新谷政府委員 統一見解につきまして、国籍がさかのぼるということは申しておりません。いま申し上げるように、過去の事実は事実としてすなおにわれわれは理解しなければならないという前提に立ちまして、これから先の外国人登録事務の取り扱い上、韓国と書いてあるものは国籍をあらわしておるものと見て処理していくべきである、こういうことを申しておるのでありまして、過去にさかのぼって外国人登録上韓国と書いてあるものを国籍認めるという趣旨ではございません。
  51. 横山利秋

    横山委員 私関連ですから、大臣に誠意のある答弁だけを伺って終わりたいと思うのでありますが、石井法務大臣は「二十六年でございますか、そのころ初めて日本で、韓国というものを朝鮮というところに入れて、それから韓国というものの登録をしたところにさかのぼると私は思っております。」、つまり、二十六年に国籍見解がさかのぼるとあなた自身が言っているから、私はだめを押している。
  52. 石井光次郎

    石井国務大臣 私の言うたのは一つ民事局長の言うたのと違わないのであります。私の申したのは、韓国国籍がその時分から韓国側にあるということを申しただけでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 関連質問ですし、石橋君の非常にたくさんの質問がありますから、私これで終わりたいと思うのでありますが、法務大臣のおっしゃっていることがよくわからないのであります。私のずっとどこまでさかのぼってあれは国籍であったというつもりか、どこまでさかのぼるか、これはいつからだという質問に対して、あなたは、二十六年までさかのぼる、つまり二十六年から、韓国独立のところから国籍だとわれわれはみなす、こういう答弁であった。ところが、入管局長民事局長答弁は、平和条約発効のときにはっきりすべきであった、しなかったことについては責任を感ずるけれども、しかし、あれが相手国を承認したときであるから、したがって、そのときからなすべきであったと思うから、そこへさかのぼる、こう言っておる。この二つの食い違いはきわめて明瞭ですよ。したがって、あなたが何かごろ合わせのようにおっしゃるということは、私は遺憾だと思う。もう一ぺん過去は過去としてはっきりお答えになることが大臣の責任上必要だと私は思う。
  54. 石井光次郎

    石井国務大臣 それをよくごらんくださるとわかると思うのでありますが、はっきりその年号が、立ち上がったときわからなかった。そのころだと申し上げましたが、それは韓国籍に朝鮮籍から移り始めたころにさかのぼるのでありまするから、実際申しますると、それは二十六年ではなしに、二十五年から始まっておるのでございます。その点は、私のほうが――二十六年はもう一つ前にさかのぼります。それは別問題です。それは誤っておりますから。そこで、それは韓国側の人たちはどういうものであるかという韓国国籍の問題で、それはその時分から韓国国籍韓国国籍であるという心持ちを言うたのでございまして、それを私どものほうがどう扱うとかこう扱うとかいう問題は別問題のことでございます。
  55. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。楢崎弥之助君。
  56. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 農林大臣にお伺いをいたします。  いまの問題に関連いたしまして、請求権問題の中で、合意議事録で、2の(h)の中で、「大韓民国による日本漁船のだ捕から生じたすべての請求権」を放棄しておるわけですが、ここにいう大韓民国による拿捕というその時期を明示してもらいます。(「関連がない」と呼ぶ者あり)いまの大韓民国の成立と関係があります。
  57. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 拿捕の時期でございますか。
  58. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお伺いをいたしておりますのは、ここに大韓民国による日本漁船の拿捕に対する請求権のことが触れてあるのです。この大韓民国による拿捕、それが始まったのはいつからかと言っているのです。つまり、「大韓民国による」と書いてありますから、いつからの拿捕かと言っておるのです。「大韓民国」とここに書いてあります。大韓民国の拿捕がいつからかということを聞いておる。
  59. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 それは李ラインの問題からです。それから始まっておるわけであります。
  60. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、李ライン設定されたのは一九五二年一月十八日ですが、そうですか。それ以降の拿捕漁船に関して請求権を放棄したわけですか。
  61. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 水産庁長官から答弁いたさせます。
  62. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 韓国独立宣言の二十三年以来を対象に考えております。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 聞こえませんでした。もう一ぺん。
  64. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 韓国ができましてからの、二十三年からを考えております。(「何月何日だ」と呼ぶ者あり)韓国独立の日は別といたしまして、二十三年の独立からを対象にいたしております。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 明確ではありません。一九四八年何月何日からですか。はっきり言ってください。
  66. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 独立宣言を八月十五日と理解いたしております。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連ですから、これだけでやめます。いずれ私は漁業協定のときにこの問題は質問いたしますけれども、確認をいたしますが、それでは、一九四八年八月十五日以降の請求権をこれで放棄したと、あなたはいま答弁をされました。拿捕漁船は一九四七年から起こっております。その問題は留保をいたしておきます。
  68. 石橋政嗣

    石橋委員 いろいろと質疑応答を重ねたわけでございますけれども、この問題に関する限り、日本政府側の理論は全く首尾一貫してないのです。その点をみごとにまた韓国につかれておるのですね。先ほどもちょっと申しましたから、韓国の国会におきます議事録をちょっと一部分だけ読んでみたいと思います。これは向こうの法務局長が言っておるのです。「それは自己矛盾であり、明白な理論的矛盾です。これを指摘しました。事実、日本代表の二人は一言も言えず、ただ黙って答えなかったが、そのような態度では、専門委員の言うことは、事実はいま李代表が指摘した点に自分たちの理論的欠陥があることを自認します。」とまでに言っておるのです。この虚をつかれて、結局永住権がだんだん広がっていったと、その成果のほどを得々と述べていますよ。全く日本の交渉団の理論的矛盾がつかれて、その間隙に乗じて永住権をどんどん獲得できるものをふやしていった、こういうような説明を向こうでしておるのです。真偽のほどは別です。しかし、いままでのやりとりを聞いておりますと、こんな大きなことを向こうに言われてもしようがないんじゃなかろうかという疑問を私たちとしては持たざるを得ないのです。これは少なくとも日本の利益というものにも十分なつながりをある意味においては持っておる問題なんです。こういうふらふらした態度で外交交渉は私はできないと思います。もちろんただそれだけではないようです。聞くところによりますと、せっかく事務段階で合意に達しても、どこか妙なところから圧力がかかって、あれはもう少し何とかしてやれという話があったというようなことも伝わっております。また、事実、表に出ている部分としては、イニシアルまで終わったものをさらに拡大している。こういうあまり例もないようなことまでやっておる。これも知っております。とにかく、情けないといわざるを得ないのです。これが一国を代表して対外折衝をする日本代表の態度か、理論か、こういわざるを得ないのです。私はこのことを申し上げたいためにるる申し上げたのでございますが、そのほかに、さしあたって在日朝鮮人の中にこれで利害関係を生じてくる者が出てくるわけです。たとえば、これを単なる用語であると従来一貫して日本政府が言ってきたそのことばを信じてほうっておいた、いまになったら身動きもできなくなったというような人たちはどうなりますか。気の毒だとは思いませんか。とにかく実害をこうむっておることは間違いありません。この間横山君がいろいろと具体的な例をあげて、実害を与えている、こういうようなことを申しましたら、これに対して自民党委員がインチキ質問だというふうな誹謗をいたしました。私も速記を調べてみましたが、何がインチキ質問かと言いたいのです。横山君は断定はしておりません。「この事案については却下されておると思われる。」こう言っております。こういうふうに思われるというものまで、断定したかのごとくかってにとって、こういう席で誹謗をし、議員を侮辱するというようなことは、私は許されないと思います。  しかし、そのことはさておいて、もう一つだけこの法的地位の問題についてお尋ねをしておきますが、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律というのがございます。これは御承知だと思います。この第二条六項は、このいまわれわれが審議しております条約発効した後も残るのでございますか。そして韓国籍を取得せざる在日朝鮮人には引き続き適用されるものでございますか。この点だけ法務大臣に確認しておきたいと思います。
  69. 石井光次郎

    石井国務大臣 法律第百二十六号はこのまま残していくつもりでございまして、これによりまして、この今度の協定によりまして法的地位を持つことのできない、またそれによりまして永住権を獲得することのできない人たち日本にずっとおる韓国人あるいはその他の朝鮮人という人たちをいままでどおりに扱っていこうというつもりでございます。
  70. 石橋政嗣

    石橋委員 もう一つお尋ねいたします。永住権を持つことのできた韓国人に養子縁組みをして養子になったという場合が出てくると思います。その場合は、その養子は永住権を持ちますか。
  71. 新谷正夫

    新谷政府委員 永住権を取得しました韓国人の養子が永住の申請をいたしました場合でございますが、この場合には永住資格はございません。はっきり協定にも書いてございますが、直系卑属あるいは子として出生した者とございますので、出生の時点においてそういう血縁関係がある者という趣旨でございます。もちろんこれは申請者がそういう場合のことでございますが、過去にさかのぼりましてその父あるいは祖父が養子であったという場合は、これは全部含めてよろしい、このように考えております。
  72. 石橋政嗣

    石橋委員 どうも首尾一貫しませんね。それじゃ、あなた方、従来お答えしておられるのを聞いておりますと、先ほどもちょっと一部引用しましたが、国籍に関する部分、こういった戸籍法のようなものは、これは国際公法だ、この部分については承認国のものしか扱わぬ、しかし、国際私法に属するものについては、これは未承認国のものも扱う、こういうこと言っておられましたですね。そうすると、少なくとも国籍問題などよりは非常にやわらかなはずです。親子の問題とか、婚姻の問題とか、そういうものを、国際法の通念があるにもかかわらず、今度に限っては非常にきびしくしたというわけですか。
  73. 新谷正夫

    新谷政府委員 この永住権を与えます者の範囲は、韓国国民の直系卑属あるいは子ということでございます。したがいまして、直系卑属なり子を考えます場合には、韓国民法上の子であるか、直系卑属であるかということを考えればよろしいわけでございまして、これは国際私法の問題とは全く関係ございません。
  74. 石橋政嗣

    石橋委員 少なくとも、まず最初にそれでは確認しておきたいのは、この国籍を確認する場合に、韓国国籍というものが基礎になるわけでしょう。この点は間違いないですね。そうすると、この養子縁組みというのも韓国の国内法の問題ですね。したがって、日本に出てくるときは、養子縁組みのことまでがそのままなまで出てくるわけではないわけでしょう。向こうの国籍の中に一々そんな詳しいことまで書かれてくるわけですか。
  75. 新谷正夫

    新谷政府委員 この養子であるかどうかということは、これはむろん韓国の国内法の問題でございます。特に国籍法の問題ではございませんで、韓国の民法の問題でございます。過去のものが養子であったという場合に、それがどういうふうな形であらわれるかということは、韓国の戸籍の上に載っているかどうかということによってきまると思います。
  76. 石橋政嗣

    石橋委員 これも争いのあるところでございますから、私もこれ以上申し上げません。時間をとるばかりですから。質問を次に移します。  次は、今回提出されました諸条約協定、おもなものは基本関係条約、それから請求権に関する協定漁業協定というようなものになるわけですが、こういう一連の条約協定に適用範囲というものがないのですね。これはまことにふかしぎだと思うのです。なぜ適用範囲を明示しなかったのか、外務大臣
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本条約韓国の有効な管轄範囲というのが明記されておりますので、それ以上書く必要はないと、こういうことであります。
  78. 石橋政嗣

    石橋委員 あなた、おかしいですね。管轄権の明示と適用の範囲とは違うとこの間答えているじゃありませんか。同じですか。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本条約の第三条が適用範囲をきめたものではない、ただ、しかし、有効な管轄権の及ぶ範囲というのが、そのまま国連の決議を引用しておるということによってはっきりすると、こういうわけであります。
  80. 石橋政嗣

    石橋委員 これから私が議論を展開していくのに非常にポイントですから、念を押します。あなたは、十月十六日参議院の本会議におきまして、杉原荒太議員がこの問題について質問をしたのに対して、この第三条というのは基本関係条約の適用範囲を定めたものではない、韓国政府の基本的性格を明らかにしたにすぎない、こう答えております。いまの答弁と食い違っているじゃありませんか。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりであります。韓国の国家的性格を定めたものである。
  82. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、さっき適用範囲を聞いたら、第三条に書いてある、明示してあると言ったじゃありませんか。どっちかはっきりしてくださいよ。取り消すなり何なり。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その引用した百九十五号の決議をよく読んでみると、その中に有効な管轄範囲というのが定まっておりますが、それらを含めて、韓国の国柄、性格がこのようなものであるということを、三条がこれを認めて確認しておるにすぎないのであります。
  84. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、適用範囲はどこですか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 有効な管轄、支配を及ぼしているのは、結局今日においては休戦ライン以南であります。それで、これに関する一連の協約の内容について、結局この基本的な三条の条約がこれに適用されるということになると思います。
  86. 石橋政嗣

    石橋委員 これは聞いている人みんなわからないですよ。条約協定の適用範囲はどこですか。最初は、第三条に明示しております。第三条に明示しておる管轄権が適用範囲だというふうにおっしゃった。それならばこの間の参議院の本会議における答弁と違うじゃないですかと言ったら、今度はそれを取り消した。さらに、それじゃ適用範囲はどこだと聞いたら、またもとに戻ってくる。第三条の管轄権、これは韓国の性格を規定したものだということは、もうわかりました。それと同時に、条約協定の適用範囲にもなるのでございますか。イエスかノーかで答えてください。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほかのこの諸協定の管轄範囲が問題になる場合には、この三条に引用した百九十五号の内容によってその範囲がきまる、こういうのであります。
  88. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、参議院におきます杉原質問に対する椎名外務大臣答弁は誤りである。ここにおいて訂正をしていただきたいと思います。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本関係において適用範囲をきめる必要はない、これに引用された百九十五号の内容が、他の諸協定の場合にどの範囲に適用されるかという場合には、これがものをいう、こういうわけでありまして、基本条約そのものは、適用範囲をきめる必要がないから、これをきめたものじゃない、こういうことを言っておるのです。
  90. 石橋政嗣

    石橋委員 基本条約においては適用範囲の必要がないという説をいま初めてお聞きしたわけですが、なぜ必要がないのですか。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本関係条約は、そういう性質のものじゃない。でありますから、三条に引用した百九十五号というものの内容から韓国がどういう範囲に有効な管轄権を持っておるかということが出てくるわけでありますが、三条そのものは適用範囲をきめたわけじゃない、基本条約はそういう性格のものじゃない、そういうことを申し上げておるのです。
  92. 石橋政嗣

    石橋委員 適用範囲のない条約なんというのを私は寡聞にしてあまり知らないのです。苦心のほどはわかります。この第三条の解釈というものが日本韓国においてまるで違うという実情下において、そういわざるを得ないような立場はわかりますけれども、必要がないというのは、これは理屈になりませんですよ。やはりこの第二条そのものが適用範囲ですよ。そう考えざるを得ないです。これからの日本韓国とのいろいろな取りきめをするという基本になるのじゃないですか。国交回復の基本になるのじゃないですか。それなのに、一体条約協定が適用される範囲というものはどこかわからぬ、そんなばかなことはしろうとにだっておかしいとわかりますよ。それをあなたがおっしゃるならば、私は具体的な例をあげながら今後ひとつお尋ねをしてみたいと思うのです。  漁業協定第一条第一項、これは農林大臣にお尋ねします。「両締約国は、それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国が漁業に関して排他的管轄権を行使する水域(以下「漁業に関する水域」という。)として設定する権利を有することを相互に認める。」、こうあります。この場合、それでは韓国のいう自国の沿岸というその自国は、範囲はどこですか。
  93. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 協定第一条には、いまお述べになったように、「両締約国は、それぞれの締約国が自国の沿岸の基線から測定して十二海里までの水域を自国の漁業に関して排他的管轄権を行使する水域として設定する権利を有することを相互に認める。」と規定してありまするが、ここにいう自国の沿岸とは、かかる漁業水域設定して有効に管轄権を及ぼし得るような沿岸でなければならないわけでありまするので、その国が管轄権を及ぼしている沿岸に限られるべきものであると考えられるわけでございます。
  94. 石橋政嗣

    石橋委員 いまのところ、想定問答集にそのまま書いてあったから何とか答えましたけれども、農林大臣、よく聞いておってくださいよ。自国の沿岸ですから、日本日本の領域に専管水域を設けるのです。韓国韓国で自国と称するところに専管水域を設けます。日本が干渉できますか。韓国のほうでは休戦ライン以北にも専管水域があると言明しております。ちょっと紹介しましょうか。これは八月十四日の韓国の国会の本会議におきまして車農林部長官が言っておるのです。「休戦ライン以北にも専管水域があるかという質問でありますが、休戦ライン以北にも専管水域があります。専管水域漁業協定第一条を見れば、締約国のどの国も自分の国から基線――基線には二つの種類がありますが、通常基線と直線基線、この基線で測定して十二マイルまで自国の沿岸から離れた水域を自国の専管水域とする権利が認められています。」間違いありません。「したがって、休戦ライン以北にもわが国の憲法でここがわが国の領土であると規定されています。そのような意味合いで、そこがわが国の領土である以上は、その領土からはかって十二マイルの専管水域があるのであります。」こう答えております。韓国の憲法は第三条において、「大韓民国の領土は、韓半島及びその附属島嶼とする。」こういうふうに明示している。これを日本のほうから、それはおかしいよと言えますか、相手の憲法のことに対して。それはだめだよと言えますか、農林大臣。あなた、言うつもりですか。
  95. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この協定第一条によりまして、そういうことが両国の合憲の上にこの協定ができ上がったのであります。しこうして、この漁業水域というのは、排他的管轄権を有する、その力を持っておる沿岸でないとその意味にはならないのでありまするがゆえに、管轄権を持たないそういう沿岸について漁業水域を定めるというような合意はいたしておらないのでありますから、それは、この以北の点においてのなにはあり得ない、こう考えます。
  96. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、あらためてお伺いします。  通常基線に基づいて専管水域をつくると向こうが言った場合には、日本政府の合意が要りますか。
  97. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 それは要りません。
  98. 石橋政嗣

    石橋委員 だから、初めて今度直線基線方式というものを日本は譲歩して韓国認めました。この部分については日本の合意が要りますから、休戦ラインから北に設けようといったって、チェックできます。しかし、向こうは韓国の憲法をたてにとって、日本政府が合意しないならば、われわれはこれは通常基線方式で専管水域を設けます、こうきたとき、どうしますか。
  99. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたします。  専管水域とは、申すまでもなく、司法、立法、行政の管轄権を行使する権能でございますので、その権能のない地域に引きましても実効がないわけでございます。私どもは、韓国がそれを引いたといたしましても、それは意味のない線と、かように考える次第であります。
  100. 石橋政嗣

    石橋委員 そんな相手の国の憲法のことをとやかく言いなさんなと私は言っているのですよ。韓国は、自分の国の憲法で、全朝鮮半島は韓国の管轄権だと言っている。いいですか。だから、どうでもこうでも、意地でも専管水域を休戦ラインから北にもつくるのだと主張しているのです。そんなことを言ったってできっこないよというならば話は別ですよ。ところが、直線基線方式をとるならば、日本政府承認しなければ、合意しなければできませんけれども、日本政府がどうしても承認しないならば、休戦ラインから北だけはしようがないから通常基線方式でこれは専管水域を設けるわ、こう出てきたらどうします。  私は、これは外務大臣が適用範囲をぼやかすから言うのですよ。適用範囲のないような協定意味がないのです。基本条約の三条でどっちにでも解釈のつくようなことをしてごまかしたつもりかもしれぬが、一つ一つ協定の内容を見ていけば、ごまかしがきかぬところが出てくるのですよ。そうでしょう。私はいま韓国側の主張を紹介しているわけです。絶対に休戦ラインから北にも専管水域をつくる、しかも、それはこの漁業協定第一条で「自国の沿岸」とちゃんと書いてあるのだから、おれのところの、自国の沿岸だと思っているのだから、おれはつくる権利がある、日本政府にごちゃごちゃ言わさぬ。対抗できないじゃないですか、明確にしておかなければ。百九十五号(III)なんか持ち出したってごまかしきかぬじゃありませんか。いかがです。
  101. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 石橋さんともいうべき方がこれだけ言うてもおわかりにならぬというのはなんでございますが、いわゆる漁業水域は、おわかりであろうと思うので繰り返して言う必要もないと思いますが、これは、漁業水域というのは、御存じのとおりに、国際慣行でできておるものでもなければ、それを確認したというものではないので、今度両国がこういうことにしようということで、それに基づいてできた協定でありまするので、しこうして、それはいわゆる排他的専管権を持っていなければならぬ沿岸においてこそ有効なのでありますから、それはいかに韓国がそういうことを声明されましても、それは意味を持たない、こういうふうに考えるのです。石橋さんもそれはよく御存じのはずだと思っております。
  102. 石橋政嗣

    石橋委員 それでお答えができたと思っておられると、今度第二条にも関係が出てくるのですよ。いいですか。第二条では、「両締約国は、次の各線により囲まれる水域(領海及び大韓民国漁業に関する水域を除く。)を共同規制水域として設定する。」とあります。そうしますと、この領海というものは何海里かということが問題になってまいります。あなたに直接お尋ねする場合には、そのことよりも、もう条約なしに、国際法の通念として排他的に漁業権を確保できる範囲というのは、一体それじゃ何海里までですか。
  103. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えしますが、領海は三海里であります。
  104. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、特別に両国の間においてとりきめのない限りは、三海里から外ならばこれは公海ですね。自由に行って魚がとれますね。
  105. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この協定がもしないと仮定すれば、領海三海里ということでいくわけであります。この協定が十二海里ということになりましたので、この十二海里はやはり排他的専管権を持っておりますから、その中へは入ってかってにやるわけにはいかない、こういうことであろうと思います。
  106. 石橋政嗣

    石橋委員 領海三海里ということを、あなたは外務大臣にかわってお答えになりました。だいぶ自信がおありでございます。そうしますと、ここで問題が出てきませんか。韓国は休戦ラインから北にも専管水域をつくるという。それを日本はチェックする方法はない。なぜならば、直線基線方式をとらないで通常基線方式でくる。いいですか。しかも、そのうち、協定があろうとなかろうと日本がいける部分がある、領海外は。そうですね。その点間違いありませんね。一つ一つ確認いたします。
  107. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたしますが、共同規制水域の外側の線は、先般地図でお示しいたしましたとおり、朝鮮半島周辺の全域に及んでおります。したがいまして、韓国大韓民国の支配権の及ばない地域におきましては、その他のオーソリティーに属する領海とその外側の線との間が日韓両国の共同規制水域、かように相なるわけであります。
  108. 石橋政嗣

    石橋委員 私はそんなことを聞いているのではない。農林大臣にもわかるように聞いているつもりです。少なくとも、この第一条によれば、韓国が休戦ラインから北に専管水域を設けることを日本はチェックできないのですよ。基本条約の第三条の解釈が違うのですから。しかも、韓国には憲法があるのですから。自国の沿岸に専管水域を設けるということを日本政府認めているのですから、対抗できません。かってにつくるかもしれぬ。つくると言っている。つくる方法は通常基線方式しかないのです。十二海里というものをつくって、これは韓国の専管水域だとがんばります。しかも、その休戦ラインから北の部分については、三海里から十二海里の間は、日本の解釈でいえば公海です。韓国の解釈でいえば韓国の専管水域です。この問題はどこでどう解決するのですか。最初からわかっている問題じゃありませんか。適用範囲が明確でなければこんな問題が出てくるということを申し上げたいのです。農林大臣、どうしてつくらせるのをやめさせますか、あなたは。
  109. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは、同じことを繰り返すようで恐縮でありますが、それはできない。もしそういうことを強調するようなことがあれば、これはやはり紛争解決でいくよりほかないと思う。しかし、私は、必ずそういうことは韓国もやらないと確信しております。なぜかと申しますと、まだ発効しない現在においても、李ラインの拿捕のような問題にしても、調印後一つもそういうことが行なわれていないということを見ましても、大体それがわかるじゃないかと思う。
  110. 石橋政嗣

    石橋委員 確信の問題じゃないですよ。いままで政府は事あるごとに何と言っておりますか。当事者がどんなかってな解釈をしようとも、一たび条約法律というものが生まれたら客観的に解釈は定まってくるのだ、こう言っているじゃないですか。この条文を読めば、どう読んでみても「自国の沿岸」としか書いてない。韓国の自国の沿岸といえば、向こうさんは、韓国憲法にちゃんと第三条で規定しているから、全朝鮮半島だ、だからつくる。しかも、先ほど御紹介申し上げたように国会で言明している。そこで、専管水域をもしっくる。そうしますと、日本認めぬ。認めぬから入っていく。休戦ラインから北の三海里のところまでは、規制は受けておりますけれども入っていけます、制限内において。最初から紛争が起きることはわかっているじゃないですか。なぜそれを最初から解決しておかないのですか。どうです。それじゃ、そこには必ず入っていけますか、外務大臣。操業できますか。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう非常識なことは日本の漁船もやるまいと思います。でありますから、それを前提においてお答えするということはどうも適当でないと私は思います。さっきも申し上げたように、基本条約においては、おまえの領土はここからここまでである、おれの領土はここからここまでであるというようなことを書く必要がない。でありますから、第三条は、相手も、あるいはわがほうについても、領土の範囲をきめるというような趣旨のものじゃないということをさっきからお話をしておるのであります。ただ、あれは、今度できた韓国というものがこういう性格の政権であるということをいっておるのでありますが、しかし、これは、それぞれの具体的な協定ですな、関係協定において管轄の範囲がはっきりきまらなければならぬものがあります。いまの請求権の問題であるとか、漁業の問題であるとか、そういう場合のよりどころということになる。ただしかし、基本条約そのものは、おまえの領土はここからここまでというようなことは書いてないのでありまして、それを規定する目的の条文ではないということは、さっきから申し上げておるとおりであります。
  112. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、私この問いただいたこの地図に基づいて農林省にお尋ねします。外務大臣は、そんな非常識なことをすることは考えられないと言いました。しかし、先ほども言ったように、韓国の国会で車農林部長官が、つくると、専管水域があると言っておる。しかも、それを日本側認めておるかのごとき疑いを持たれる地図じゃないですか。いいですか。この専管水域をちゃんと示しております。ところが、三十八度線、休戦ラインまでいかぬところで何と書いてあるかというと、「以北は低潮線より十二浬」と書いてありますですね。これはあなたのほうで出したんですよ。しかも説明の文書がついております。これにも、「大韓民国漁業に関する水域の範囲をかりに図示したものであって、」と、ここでもちょいと逃げております。「かりに」と。いいですか。それから(4)には、やはり「以北に低潮線より十二浬」こういうふうに書いてあります。ここで韓国が言っておる主張を表向き認めたような体裁をとっておるといわれても、これ、しようがないじゃないですか。いかがです。
  113. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたしますが、備考にも御説明いたしておりますとおり、韓国が引きますところの専管水域は、韓国の権能でございまして、異議を申し立てない、権利を有することを相互に認めるという協定でございますので、どのように引くかは、この協定成立後の韓国政府の引き方でございます。したがいまして、地図で線を入れましたのは、わが国において想定をいたしました専管水域の線であるという御趣旨のことを念のため入れたのでございます。(4)に、「以北は低潮線より十二浬」ということばが不十分でございましたので、「大韓民国の沿岸については、これより北になおその低潮線から測定して十二浬までの水域を、漁業に関する水域として設定しうる意味である。」という意味は、大韓民国の管轄権の及ぶ範囲までという趣旨でございます。
  114. 石橋政嗣

    石橋委員 裏づけておるじゃないですか。「設定しうる意味である。」と書いてあります。「大韓民国の沿岸については、これより北になおその低潮線から測定して十二浬までの水域を、漁業に関する水域」すなわち専管水域「として設定しうる意味である。」と認めておるじゃありませんか。以北はどこまでいくんです。
  115. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたします。  朝鮮半島の沿岸と書かないで、大韓民国の沿岸についてはここまできておると書いてあります。
  116. 石橋政嗣

    石橋委員 だから、その大韓民国のほうは、憲法三条で、自国は全朝鮮半島だ、こういっておるのですよ。そこに逃げ道をつくってやっておるじゃないですか。だから、休戦ラインまでだと明示しておれば問題ないのですよ。条約あるいは協定の中に適用範囲が明確になっておれば問題ないですよ。争いのあるところだから、向こうの主張が通る可能性がある。しかも、日本の農林省は、それを向こうで説明ができるようにちゃんと調子を合わせてやっておる。韓国の範囲というものに対して日本が制肘を加えることができますか、向こうの憲法を向こうで主張してくるのに。  それじゃ、これは外務大臣にお伺いしましょう。あなたが非常識なことはするまいということでは片づかないんです、条文についてお尋ねしておるのですから。少なくとも「自国の沿岸」と書いてある以上、この自国とは大韓民国憲法で定められた範囲だと向こうが主張してきたときに、対抗できるだけのものがなくちゃならぬ。にもかかわらず、あなたは適用範囲はないと言う。これじゃ勝負にならぬと、こう申し上げているのです。向こうは形だけでもつくるかもしれませんよ。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本条約第三条は、あくまで韓国の政権の性格を規定したものであって、しかし、その内容の一部をなすところの現に有効な支配と管轄権を及ぼしておる朝鮮半島の一部というのは、結局、今日においては休戦ライン以南ということにならざるを得ないのでありまして、第三条の目的は、もともと大韓民国の領土の広さを規定しようという趣旨のものではない。でありますから、ただ韓国の政権の性格を規定したものである。しかし、その内容である管轄権がどこまで及ぶかということは、関係の諸協約の管轄がどの範囲まで及ぶかという場合の、それは一つの基礎になっておる。そういうことは先ほどから申し上げてありますから、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  118. 石橋政嗣

    石橋委員 とにかく、条文をこうやって一つ一つ見ていきますとすきがあるんです。争いがあるように見えますけれども、実際は韓国側の主張が相当通っているのではなかろうか。今後この条約協定が生きてきた場合に、条約の解釈上日本として非常に不利になるのではなかろうかと思われる部分があるわけなんです、現にこれ一つとってみても。向こうが自国の沿岸というのは、自分の国の憲法に定められた範囲における沿岸をさすんだから、休戦ライン以北にも専管水域がある。直線基線方式をどうしても日本がうんと言わないから通常基線方式でもつくる。これに対して対抗する手段を持たない。  しかし、との疑問だけ呈して、問題は別の角度から一つだけお答えを願っておきますが、しからば、休戦ラインから以北につきましては、領海三マイル以遠の部分については、規制の範囲内において日本の漁船は安全に操業できるという保証を、総理大臣外務大臣、なさいますか。
  119. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 法律論としては、領海三海里以遠、外側は、これは専管水域というものを認めないのでありますから、そこまで行けるわけであります。行けるわけでありますけれども、実際危険であるかどうかということは、法律論だけではきまらない問題である。
  120. 石橋政嗣

    石橋委員 今度はもう私は条約を離れたのですよ、水かけ論をやらないために。日本国民の問題ですよ。いいですか、少なくとも休戦ラインから以北にも規制水域は公海上に設定されております。専管水域の問題については争いがあるでしょう。あなた方の立場から言うならば、三マイル以遠、これは公海だから規制の範囲で操業できるという主張をしなくちゃつじつまは合わないでしょう。その点はいかがでしょうか。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは法律上はできるはずでございます。
  122. 石橋政嗣

    石橋委員 できるはずでございますでなくて、できますよ。できるじゃありませんか。はずだとは何ですか。できると確認してようございますか。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、できると申し上げてもいいんですが、あなたは、それで危険はないか、安全であるかと、こうおっしゃるから、その安全であるか、危険があるかないかは、これは保証の限りでないが、とにかくそこまでは行ける。
  124. 石橋政嗣

    石橋委員 日本国民が魚をいまからとりに行くのですよ。条約の解釈上によって、安心して魚をとりに行けるのか行けないのかわからないようなことを国会が承認できますか。なぜ、安心して魚をとりに行けるように、規制の範囲内で、日本政府が保証してやれないんですか。日本国民の生命、財産を守る義務を日本政府は持っているのですよ。それを安心して魚をとりに行けるか行けないかわからないような状態に放置しておく。そんなことで、日本の国会がどうして承認を与えることができますか。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、韓国はそういうことは――これに対して拿捕するとか、あるいはその他の強制力を用いるというようなことはやるまいと確信しております。
  126. 石橋政嗣

    石橋委員 韓国だけの問題ではありませんよ。北鮮の問題もありますよ。朝鮮民主主義人民共和国のほうは、韓国のほうに対して直線基線方式十二マイルというものを認めた、これをたてにとって新しい主張を起こしてくる可能性もあなたは考えているんじゃないかと思う。とにかく、公海だからかまわぬと、かってに以北のほうに規制水域を設けておいて、そうして、北鮮があるから安心して魚をとりに行けるかどうかもわかりません、すみますか、そんなことで。ここにも北を無視しようだってできない問題があるということです。少なくとも日本朝鮮の間で話し合いをするからには、南北共通の問題がたくさんあるということです。  総理大臣、いままでの議論で十分におわかりになったと思いますが、最初から安心して魚をとりに行けるかどうかわからないというようなところをつくる条約というものを、私たちが承知することができないという気持ちは理解できませんか。あなたも日本国民の生命、財産を守る最高の義務を持った方です。いかがですか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋君も、今回の漁業協定あるいは日韓基本条約、これは私どもがたびたび申しておりますから誤解はないだろうと思いますが、北の部分については白紙だ、今回協定を結んでいない、これは政府もちゃんとそのとおり考えております。そうして、同一朝鮮民族が単一国家をつくりたいという、これは民族の悲願であります。また、私どももこれをはばむわけにはいかない。これが、いわゆる国連方式によって平和のうちに統一国家を実現しようというこの韓国考え方と、北の考え方が、遺憾ながらこの点において意見が一致しておらない。この実情も、これまた御承知のことだと思います。ただいまのような関係にございますので、ただいま、北の部分についてこの条約では一体どうだ、こうおっしゃいましても、この北の部分については、私どもはこの条約で何ら規定はしておらないのだということを申し上げるだけであります。
  128. 石橋政嗣

    石橋委員 私は二つお尋ねしておるのです。一つは、韓国の主張からいっても、法律論でいけば、休戦ライン以北には専管水域を設けることはできます。しかし、日本はそれを認めない。三海里以遠は認めない。ここに争いが一つあるのです。だから、安心して魚をとりに行けるかな、どうかなという心配が一つあります。それからもう一つは、朝鮮民主主義人民共和国のほうが、これをはたして許すかどうかという問題があります。二つあるのです。その二つを頭に置いて、とにかくこの条約ができてから、それじゃどこまで日本の漁船が規制の範囲において操業できることを政府責任を持って保証しますか。休戦ラインから以北については、沿岸からどこまで……。
  129. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまたびたびお答えしておるわけですが、つまり、漁業水域のほうは、自国の沿岸ということであると同時に、排他的管轄権を持っておるということでなければならないという意味のものでありますから、それはおのずと限界がきまってまいるわけであります。その点は、石橋さんもよく御存じであろうと思っておりますので、あまり繰り返して私も申し上げることを控えておったわけでございます。  それから北とのいわゆる関係については、漁業協定は白紙で残されておる問題でございますので、これは、いまここで何とも申し上げることは、私の立場としてはできませんわけでございます。
  130. 石橋政嗣

    石橋委員 だから、あなたに聞いていないのです。私は総理大臣に聞いているのです。日本国民が安心して魚をとりに行けるところはどこまでですかと聞いているのですよ。こんなわかりやすいことばはありませんよ。休戦ラインから以北について、規制の範囲内で日本の漁船が魚を安心してとりに行けるところはどこでございますか、こら聞いているのです。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 安心して魚がとれる地域はどこかと、こうお尋ねになりますと、これは実際上の問題であって、私はそこまで言うわけにはまいらぬと思うのであります。ただ、何ら国際法上他の規制を受けないでとり縛る範囲はどうかということになりますと、領海以外、つまり公海においてはこれは自由に操業ができるはずでございます。
  132. 石橋政嗣

    石橋委員 これは全国民が聞いておるわけです。特に漁業関係者は重大な関心を持っております。なかんずく、西日本漁業関係者は重大な関心を持っております。これで協定発効すれば安心して魚をとりに行けるとあなた方は盛んに宣伝をされております。ところが、休戦ラインから北のほらについては、この協定によって規制水域を設けておきながら、その規制水域の中で沿岸からどこまでの部分ならば安心して魚をとりに行けるのかということを説明もできない。これじゃたいへんですよ。私たちはそれを納得するわけにいきませんよ。国民の利益を守るためにも、そんなあいまいな協定条約承認するわけにはまいりません。  関連があるそうですから、譲ります。
  133. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。楢崎弥之助君。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 農林大臣にお伺いをいたします。  いま石橋委員指摘されました以北の部分の共同規制について、あなたは、公海だから朝鮮民主主義人民共和国の関係はないんだということで、かってに共同規制区域をきめられた。しかし、共同規制ということは、沿岸国もしくはいわゆる出漁をしておる国、そういった国の漁獲上の努力を無視してよいのですか。これは資源保護という意味があるんです。あるいは資源維持という意味があるんだから、そうした関係国の了解なしにできるのですか。少なくとも以北の部分については、北には朝鮮民主主義人民共和国があるわけです。その朝鮮民主主義人民共和国のこれは沿帯地帯である。あるいは出漁をしておる地帯である。その北の国の漁獲上の努力というものを無視して、そして単に日本韓国だけで以北の部分の共同規制をするというあなた方の考え方自身が――佐藤総理は、北の国は白紙であると言った。石橋委員は北の国を無視しておると指摘されました。私は、この北のほらに共同規制区域をかってにつくる、沿岸国である朝鮮民主主義人民共和国のことを度外視してかってに共同規制区域をきめたということは、まさに無視どころか、朝鮮民主主義人民共和国を否認した態度であろうと思うのです。  それではお伺いをします。共同規制区域は、共同規制ということは、沿岸国のそういった漁獲の状態を無視してできますか。
  135. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたしますが、共同規制水域のほうは、資源の保護ということを兼ねてやっておりますことは御存じのとおりでございます。これは、今度いわゆる大韓民国日本との間においてこういう協定を結んでおるわけでございます。しかし、これは第三国を何も拘束しておるものではありません。つまり、これによって資源をでき得る限り維持していこう、擁護していきたい、こういうことでありますから、第三国に対して保護になっても障害になることは絶対ございません。そういうわけでございまするので、これは別に、しかもまた第三国を拘束するものでもないのでありまするから、その御心配はないと存じます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 共同規制ということは、その海域について関係のある利害国がそれぞれ話し合わないと、資源の維持という点からはその目的を達せられないではありませんか。私が申し上げたいのは、まさに、共同規制区域をつくるというならば、関係国、あの地域では、北のほうの海域では、あなた方が共同規制区域をつくったあの海域では、少なくとも日本と、あなた方が言う韓国と、それから朝鮮民主主義人民共和国、王国、あるいは中国、こういった国々の関係する海域であります。したがって、それらの沿岸国の話し合いなくては、ほんとうの資源保護という意味の共同規制区域は設けられないはずです。それを、北鮮を無視して、単に日本韓国だけでああいう共同規制区域をつくったということは、私が指摘したいのは、まさに北鮮というものを否認をしておるのではないか。つまり、韓国側が言っておる、あの憲法にいう、全半島を韓国は支配をしておるという、それにあなた方が合わせておるんだということを私は言いたいのです。そういうことなんです。
  137. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 だんだん意見が一致するようでありますが、つまり、北のほうを無視しておるというわけではないということは御了承をいただけたと思うのです。ただ、完全に資源を擁護するのにはどうするかということになれば、世界じゅうの国々が全部一致してきめるのが一番いいと思うが、そこまではなかなか容易ではないことでございます。現在の共同規制区域においても、まだ実は十分じゃございません。これはやはり、ほんとうから言えば、もっと科学的な研究をいたしまして、そして十分漁獲の資源の調査をはっきりさせて、その上でやっていくということが一番大事だ、根本であると思いますが、それがなかなかこれから相当時日も要するものでございますので、この規制区域においては、現実のいわゆる漁業の実態をそこなわないようにしていきながら、しかも漁業の資源を圧迫しないようにということを考えつつ、これができ上がっておるということを御了承願いたい。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点は、これもいずれ漁業協定を本格的に審議するときに私は質問したいと思います。  では、いま一つお伺いしておきます。竹島には、日本の地図では専管水域がない。では、島根、山口等のあの竹島水域漁業権を設定しておる関係漁民は、竹島周辺に出漁できますか。
  139. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 竹島の問題でございますが、つまり、漁業水域の問題にしても、この条約発効してからお互いに設定することになることは御存じのとおりでございます。ですから、発効後の問題ではあると思います。しかし、竹島の問題につきましては、実はいろいろの紛糾の根本問題がまだ解決しておりませんので、私どもとしては、発効いたしましても、これに漁業水域を設けることについては、どういたそうかということについて検討中でございます。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の聞いているのは、竹島に専管水域を設けるかどうかを聞いておるのではないのですよ。実際にこの協定がもし成立するならば、山口、島根の関係漁民が竹島周辺に出漁できますかということを聞いておる。出漁できますかということを聞いておる。できるかできぬか、現実の問題として答えてもらいたい。
  141. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたします。  漁業関係におきましては、北鮮の問題も含めまして、明快に割り切れないで、安全をとって操業の指導をするという例は多々ございます。したがいまして、竹島につきましては、ここが紛争になっている現状でございますので、行政面では、竹島の周辺にはあまり操業しないような行政を当分続けたい、かように思っております。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、いまの答弁は、竹島周辺には操業に行かないように指導するというわけですね。つまり、行けないということですね。
  143. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 韓国が専管水域を引くか引かないか、あるいは引いた場合に、わがほうがこれに対して外交ルートを通じていかにするかという問題もございますが、法律的に行けないということではないのでございまして、行政指導として、行かないような指導をする、こういう趣旨でございます。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これから先は、関連でございますから、石橋さんに続けてもらいます。
  145. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、次にいまの問題をお尋ねしようと実は思っておったわけです。それで一部分がわかったわけです。竹島の周辺にはなるべく漁船は近寄らないようにしろ、そういう行政指導をするという、日本政府としてはまことに弱腰の態度を示しておられますが、韓国のほうでは、独島周辺にも専管水域はある、つくる、これまた日本が合意しなければ通常基線方式によってつくる、こういうことを国会で再三言明いたしております。これは御承知ですか、農林大臣。
  146. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまのことについては十分存じておりませんが、ただ問題は、兄貴分として、いま問題が……(「兄貴分というのは何だ」と呼ぶ者あり)それは、そういう関係がありまするから、この争いのあるところにわざわざ専管水域を設けていくということはおとなしくない、そういう考えであります。しかし、時によっては専管水域を設けるということにいたさなければならぬかもしれませんが、いま現在どうかということになりますと、いま検討中であるということを先ほど申し上げた。
  147. 石橋政嗣

    石橋委員 韓国の議会のことまでは知らぬとおっしゃいましたから、ちょっと簡単に紹介しておきます。八月十一日の韓国の特別委員会におきまして、農林部長官の車という人は、「その直線基線を使用することに関する交換公文にない海岸またはわが国の領土周辺にはこれは当然通常基線によって専管水域が引かれるということを申し上げまして、したがって、そのような原理によって独島周辺にはそのような専管水域が引かれるのでございます。」こう言っているんです。日本のほうは、なるべく近くに行って魚をとらないようにしろと行政指導するという。向こうのほうは、通常基線方式ででも専管水域を設けて、日本の漁船は絶対に近づけないという。いまの竹島問題についての両国の態度を、これは最も象徴的に、示していると私は思う。いかにも竹島は紛争問題であって今後いずれかの機会に平和的に話し合いによって解決するかのごとく国民に言っておりますけれども、ただこの一点を見ただけでも、完全に押されておる、こう考えて私はいいのじゃないかと思う。  事実、向こうのほうの大臣は、国会において非常に微妙なことまで言っております。ということはどういうことかと言うと、速記録を読むのをやめまして、要約しますと、佐藤内閣は大体韓国の意を体している、すなわち、竹島の今後の取り扱いについては、佐藤内閣はとにかくわれわれの交渉の当事者であったんだから経緯を全部知っているからよくわきまえておる、しかし佐藤内閣永遠に続くものじゃない、あしたにでも倒れるかもしれぬ、そういう場合に、新しい内閣が出てきて、そんな過去の経緯は知らぬ、竹島問題は明らかにこの紛争に関する交換公文に該当するんだと言って、がたがた言ってきても、やってこれないような手はちゃんと打っておる、そこまで説明しているんですよ。なぜならば、調停に持ち込もうったって両国政府の合意が要るんだ、われわれ絶対に合意なんかしないんだから、しかも解決するとはいっておらぬ、こういうふうな説明まで加えておるんですよ。こういうふうに見ていきますと、現在の行政措置といい、とにかく竹島については実質的には放棄したのではなかろうかという国民のこの疑惑は、私は解消できないと思います。  大体昼休みにしろという理事さんのほうからの指示でございますから、一応この程度にとどめて、あとは本会議終了後に続行させていただきます。
  148. 安藤覺

    安藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後三時半より再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十六分開議
  149. 安藤覺

    安藤委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  150. 石橋政嗣

    石橋委員 最初総理大臣お尋ねをしておきたいと思うわけですが、今度の日韓会談にあたりましては、両国の間におきます懸案事項はすべて一括解決する、こういうことを再三公約してまいっておるわけでございますが、この公約は果たしたとお考えになっておられるかどうか。すなわち、一括解決というものは公約どおり実現を見たとお考えになっておられるかどうか、お尋ねいたします。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公約どおり一括解決したと思っているかどうかというお尋ねでございますが、いま提案いたしております各項目、ごらんになってもおわかりになるように、全部がいわゆる文字どおり一括解決したと、こういうものではない。しかしながら、それぞれのものが最終的、また完全に片づいたものもありますし、竹島のような、その方向がきまったと、こういうようなものがございます。私は、ただいまお尋ねがありましたが、まずまず、いわゆる公約の線でこれらの条約あるいは協定、それぞれが片づいた、かように私は確信しております。
  152. 石橋政嗣

    石橋委員 厳密にいえば、竹島問題というものが解決を見ておらないという点からいって、一括解決とは言えないわけです。しかし、それだけではないわけで、平和条約の第四条に規定されております問題が一つ何ら解決を見ておらない。これはどういうわけでございますか。四条の(c)ですから、郵政大臣からでもけっこうです。外務大臣からでもけっこうです。
  153. 郡祐一

    ○郡国務大臣 折半をいたしますことは、すでに四条(c)項できまっておりますし、国交回復の基本的な問題でもございませんし、現に断線もいたしておる、技術的な点でもあるということで、交渉を後日に譲っております。
  154. 石橋政嗣

    石橋委員 いままで予算委員会や逓信委員会で、再三政府が言明しておるわけです。この平和条約第四条(c)項についても最終的に解決をするんだ、こういう態度を政府は何回となく明言しておられます。これをたな上げにしてしまって、ほかの問題についてのみ処理してしまうということになると、この問題の処理にあたってまた日本は不利になる、こういうふうに私は思うのです。というのは、第四条(c)項において、日本国朝鮮との間の海底電線を分割するということは規定されておりますが、その分割の方法というものがむずかしいわけでしょう。日本側は対馬から釜山の間を分割しようという。韓国のほうは福岡から釜山までの間を分割しようという。双方に意見の違いがあるのです。この問題だけを切り離してたな上げしておいたときに、筋の通った話ができると思いますか。やはりこういう一連の問題を一緒に処理しておくというのが基本的な政府の態度でなくちゃならぬと思うし、いままでもそうするとおっしゃってきておるわけです。いまのような説明では納得がいかない。一体、それではこの分割についてどの辺まで話し合いがついておるのですか。
  155. 郡祐一

    ○郡国務大臣 四条(c)項によりまして、終点施設と、それを結びつける海底電線を折半いたすのでございます。特に不利になることはございません。この交渉の経過につきましては、外務当局からお答えいたします。
  156. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと終点施設というのは、福岡ではなくて対馬であるという点については合意を見ておる、こういうわけですか。
  157. 郡祐一

    ○郡国務大臣 終点施設が対馬であります以上、当然のことと解釈いたしております。
  158. 石橋政嗣

    石橋委員 日本政府の主張はわかります。しかし向こうの主張はそうじやないのです。その両国の間で合意しておりますかと聞いておるのです。
  159. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ただいま申しましたとおり、今後細目のとりきめはいたすことに相なっておりまするけれども、両者の間でいままで話を運んでおりまする点、これは先ほど申しましたように、外務当局からお答えをいたしまするが、終点施設と、その終点施設間の折半ということは疑いのないことでございます。問題はございません。
  160. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは外務大臣お尋ねしますが、ただいまの点は両国の間で意見の一致を見ておりますか。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 担当局長からいたさせます。
  162. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 お答え申し上げます。二月に大臣が訪韓されまして、基本条約の問題を話し合いましたときに、できれば一緒に海底電線の問題も片づけようという計画はあったのでございますが、ほかの条項の問題で時間が長引きまして、結局これは、基本条約成立の必須の問題でもないから、具体的な交渉をあとに繰り延べようということで当時日韓間で話し合いがつきまして、基本条約の前文に、サンフランシスコ条約を想起するということを入れることによって、その中に例の四条(c)の問題も含んでおるという解釈をとったわけでございます。その後、この十月の二十八日でございましたか、代表部のほうからこちらへ接触がございまして、韓国側でも、この問題を、できればこの全体の条約発効する前に片づけたいという意思を表示してまいりましたので、目下関係当局との間に交渉開始の日時等について協議して研究している段階、そういうところでございます。
  163. 石橋政嗣

    石橋委員 意見が一致しておらないからこそ間に合わなかったのでしょう。おかしいじゃないですか、そうでなければ。それでは、どのようにして分割するか。福岡-釜山間を分割するか、対馬-釜山間を分割するか、この最も大切なところが意見の一致を見ておらない。  次に、日本韓国との間だけでこの分割ができるわけですか。第四条の(c)項でいいますところの「分離される領域」というのは、一体平和条約においてはどこを、示しておるのか、この点は外務大臣お尋ねします。
  164. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 担当局長に答えさせます。
  165. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約二条で日本から分離されます地域としましては、朝鮮全体であるということは前から答弁いたしたとおりでございます。第四条のその地域の当局というものといたしましては、日本政府は北鮮のいわゆる政権を、合法的な当局と認めておりませんので、これと何ら財産請求権の問題等について話し合いをすべき立場にないわけでございます。
  166. 石橋政嗣

    石橋委員 平和条約の話をしているのですよ。平和条約の第四条(c)項について、私は開いているのです。この第四条の(c)項によると――参考のために読みます。「日本国とこの条約に従って日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。」とあるわけです。ここに出てまいりますところの「日本国の支配から除かれる領域」、「分離される領域」、これはどこをさしておるのか。
  167. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 それは朝鮮全体でございます。
  168. 石橋政嗣

    石橋委員 ここにもはっきり出てきておるわけです。戦後処理の問題として、いま朝鮮の問題を取り上げておるわけですが、平和条約で規定された部分についても、韓国とだけで話し合いをしては解決のつかないというりっぱな例じゃないですか。いま条約局長認めたように、全朝鮮日本とで分割しろというのです。これが平和条約の、われわれに対して、日本政府日本国民に対して課した義務です。そうしますと、韓国とだけ話し合ったって、これは片づきませんでしょう。だからこそ今度は間に合わなかったのじゃないですか、外務大臣どうなんです。韓国とだけでこれは処理してしまうつもりですか。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国とだけで片づかない問題はこれだけではありません。請求権だってそのとおり。でありますから、休戦ライン以北の問題は残ったということになるわけであります。
  170. 石橋政嗣

    石橋委員 それではまた従来の政府発電と違います。総理も一括解決とおっしゃった。しかも、その一括解決の中には、この四条(c)項による海底ケーブルの分割というものが入るということもいま郵政大臣も確認した。いままで予算委員会、逓信委員会で再三言っておる。日本韓国との問で話をつけるのだと言っておったことを、今度はまたきょうは訂正するのですか。
  171. 郡祐一

    ○郡国務大臣 支配から除かれる部分につきましては、わがほうの交渉いたすべき部分でございませんで、終点施設とその中間で分割をいたしますから、そういたしますと、事柄は日本韓国の事柄でございます。それから先の支配から除かれました部分については、わがほうの関知するところではございません。
  172. 石橋政嗣

    石橋委員 全然政府内部の意思の統一がなされておりません。これは、どう読んだって藤崎局長が言ったとおりの解釈しか出てきません。日本国の支配から除かれる領域は、第二条で規定されているのです。分離される領域というのも平和条約で規定されているのです。これは全朝鮮です。したがって、この話し合いを進めるには、日本韓国と、北の現にオーソリティーとしての政府と、三者によらなければ話し合いがつかないという結論が出てこなければならないはずです。従来の日韓会談で一挙にこの問題を解決するというのがおかしいのですよ、法理論からいっても。だから、それならそのようにあっさりとお取り消しになって、いままでのは間違いでした、うそを言っておりましたと、こう言えばいいのです。
  173. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私はケーブルの布設状況をよく実態を存じませんで先ほど答弁いたしましたが、実際には日本朝鮮半島との間に結ばれているケーブルというのは、すべて韓国に上がっているそうでございまして、そうしますと、私が先ほど抽象的に申し上げたことが当てはまるようなケーブルはないので、全部日本韓国政府の間で話はつく、そういう実態だそうでございます。訂正いたします。
  174. 石橋政嗣

    石橋委員 あなたに実態なんか聞きませんよ。私はちゃんと分けて聞いていますよ。あなたには法律のことを聞いているのです。平和条約の第四条(c)項でいうこの「日本国の支配から除かれる領域」、分離される領域というのは全朝鮮、だれが考えたってそうじゃないですか。法律のABCを知っている者ならみんなそうしか解釈出てきませんよ。全朝鮮財産日本から独立する。ところが、その相手が二つになっちゃったのです。どっちにやれというようなことを日本政府がかってにきめることはできませんよ、平和条約によって。幾ら施設が南にあるからといって、かってに南にやってよろしいという解釈がどうしてこの平和条約の四条の(c)項から出てまいりますか。  そこで四条(c)項で厳密に解釈していけば、これは日本韓国との間だけでは話し合いのつかない問題である、したがって、今度はほかの問題と切り離したんだと、これなら筋が通るのです。総理、いかがなんですか。
  175. 郡祐一

    ○郡国務大臣 御指摘の点は、日本から韓国を通って、そうして北鮮にケーブルがいっているということをおっしゃるのだと思いますが、終点施設というものは日本韓国の間にあるのでありますから、両国で話がまとまれば、残りの部分はわがほうの支配から除かれておるのでございまして、関与するところじゃございません。
  176. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、この際これを許します。岡田春夫君。
  177. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと関連ですから、一問だけ伺いたいのですか、郡郵政大臣、藤崎条約局長、海底ケーブルは北朝鮮に届いてないのですか、もう一度確認したい。
  178. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ケーブルの北に達しておりますものが千酌、鬱陵島、元山であります。しかし、終点施設は韓国の鬱陵島でございます。
  179. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたはいままではっきりその点言わなかったでしょう。あなたの、電電公社の財灘の中に、昭和四十年の施設として鬱陵島、元山というのがあるじゃないか、終点施設であろうがなかろうが。ここにあるのは、一切の終点施設からどこまで結ぶということが書いてあるのであって、海底ケーブル全体を言っておるのですよ。これは北朝鮮に及んでいるじゃないか。そういういいかげんなことを言っちゃだめですよ、あなた。財産にはっきり書いてあるじゃないか。条約局長、あなた、取り消しなさい。あるじゃないか。そういういいかげんなことを言っちゃだめですよ。われわれ知らないと思って、あなたごまかすのですか。われわれ調べてあるんだよ、あなた。いいかげんなことを言っちゃだめです。取り消しなさい。
  180. 郡祐一

    ○郡国務大臣 いまの公社の資産の点をお答えいたします。  公社は海底ケーブルについての未処理資産を一括して未処理資産と掲げておりまするが、分割になります分は、先ほど来申し上げておりますように、日本韓国の閥だけに問題が起こっております。
  181. 石橋政嗣

    石橋委員 一応私の提起しました問題点はわかったと思います。私は平和条約の四条のというものを忠実に実行しようと思えば、これは三者の間で、南北朝鮮日本と、三者の間でやらなくちゃならない問題だと思う。決して日本韓国だけの間で話し合いのつく問題ではないということを指摘したかったわけです。そういう問題がほかにもあるということを外務大臣もまたお認めになりました。請求権の問題でも、ある。たくさんあるのです。  ところで、この海底ケーブルは、米軍が故障するまでずっと使ってきたわけです。この点は御承知だと思います。その使用料が払われておるわけでございますが、幾ら払われておるのか。いまその米軍からもらった使用料というものはどういうふうになっているのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  182. 郡祐一

    ○郡国務大臣 米軍と公社の間に協定を結びまして、二十九年八月一日にさかのぼりまして単位当たりの使用料を契約いたしました。受け取りました額が八億一千万円にのぼっております。(「二十九年の前はどうか」と呼ぶ者あり)その前に五億ございます。
  183. 石橋政嗣

    石橋委員 金額を、二十九年八月一日から三十八年八月十五日まで八億とおっしゃいました。その前はおそらく平和条約発効の二十七年四月一十八日から昭和二十九年七月三十一日までの分を言ったと思うのですが、それを五億と言いました。両方ともそのぽっきり聞違いございませんか。
  184. 郡祐一

    ○郡国務大臣 先ほどあるいは数字で取り違えておりましたらいま申し上げるとおりにお聞き取りを願いたいのですが、二十九年八月一日以降五億一千万でございます。
  185. 石橋政嗣

    石橋委員 先ほど八億と言ったのは五億一千万、五億と言ったのは七億七千八百万じゃないのですか。そっちのほうはそのままですか。
  186. 郡祐一

    ○郡国務大臣 二十九年八月一日以降五億一千万でございます。
  187. 石橋政嗣

    石橋委員 その以前の分ですよ、あなたが五億と言った。
  188. 郡祐一

    ○郡国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  189. 野口謙也

    ○野口政府委員 お答えいたします。  二十九年の七月三十一日以前が約八億円でございます。それ以後が五億一千万円でございます。
  190. 石橋政嗣

    石橋委員 この辺の、実際に金をもらったのですか、もらわぬのですか。もらったならば、正確な数字くらい事務当局は知っておらなければいかぬでしょう。どうなんですか、それは。最初に言ってくださいよ。もらったのか、もらわぬのか。もらったなら幾らなのか。
  191. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ただいまの金額はそのとおり受け取っております。必要があれば電電公社のほうからお答えいたします。
  192. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、その使用料は今後どういうことになるのですか。日本政府が預かったという形になっておって、朝鮮に渡す分は保留しておる、こういうことになるのですか。それとも米軍のほうに返すということになるのですか。
  193. 郡祐一

    ○郡国務大臣 先ほど申しましたように、さかのぼりましてわがほうから、公社から米軍に返還をいたすことになっておりまするから、その折半点が決定いたし、先ほど来申しておりますように、終末地点の間の半分の分を米軍に返還いたすことに相なっております。
  194. 石橋政嗣

    石橋委員 問題は二つあるんですよ。先ほどから分けて私聞いているわけですけれども、契約が結ばれますまでの時点と、正式に契約が結ばれたあとの時点と、二つあるわけです。両方とも同じ扱いをなさるつもりですか。
  195. 郡祐一

    ○郡国務大臣 暫定的に話し合いを進めておりまして、正式契約の時期に至っておりません分も正式契約の場合と同じように扱うべきものと考えております。
  196. 石橋政嗣

    石橋委員 それはどういう立論に基づいてですか。
  197. 郡祐一

    ○郡国務大臣 折半の原則がきまっております以上、韓国に帰属すべきものは帰属すべきものと存じます。
  198. 石橋政嗣

    石橋委員 だから聞いているんですよ。韓国に返すのと米軍に返すのと違いますよ。あなた一緒くたに考えておらぬですか。なぜわざわざこう分けて私が聞くのですか。米軍と契約した二十九年の八月一日から以降の分は、これは折半が話し合いがつけば朝鮮に帰属するものは米軍に返して、米軍から朝鮮のほうに持っていってもらう。その前は契約は何にもないんでしょう。そうすると日本政府が直接朝鮮に返さなければいかぬわけでしょう。そうじゃないんですか。どうしてですか。それを聞いているのです。
  199. 郡祐一

    ○郡国務大臣 契約にございますとおり、二十九年八月一日以降の分は米国と韓国との問題であることを明らかにしております。さよういたしまするならば、その以前のものも当然同様に扱わなければ相ならぬものでございます。
  200. 石橋政嗣

    石橋委員 そんな理屈が通りますか。二十九年の八月一日、ここからの分はちゃんと契約がある。その前は契約がない。契約がないけれども、二十九年から実施した形と同じ扱いになる。何の根拠があってそうなりますか。先のほうに契約があって、あと契約なかったら既成事実で、そしてやったという理屈も、ある場合には成り立つかもしれません。逆じゃないですか。どうしてそんな立論が成り立ちますか。自分でもおかしいと思いませんか。
  201. 郡祐一

    ○郡国務大臣 すでに平和条約によって折半がきまっておるのでございます。さよういたしますならば、当然私が申したように扱うのがあたりまえでございます。
  202. 石橋政嗣

    石橋委員 この問題について、先ほども申し上げたように、全然話は進んでないんです。だから使用料のどの部分を何%向こうに返したらいいか、全然見当もつかないんです。あなたはいかにももうすぐ話し合いがつくようなことを言っておりますけれども、かりに日本韓国との間だけで処理しようと思っても、なかなか簡単に片づく問題じゃないんです。こういうときに一括解決しておかなければ、ますます不利になります。日本側立場は弱くなります。この意味はおわかりでしょう。法律論からいけば、私は韓国だけを相手にするのはおかしいということをまず申し上げておきます。一歩譲って、あなた方のような立場からいっても、いま一緒に片づけておかなければ、これでまた押されるじゃないですか。そういう点から一括解決というのも出てきたわけでしょう。とにかく、こういうおかしいことだらけなんですよ。この点についてまた関連があるそうですから譲ります。
  203. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  204. 岡田春夫

    ○岡田委員 郵政大臣、あなたに伺っておきますが、二十九年以前にさかのぼるというのはどういう法的根拠によりますか。
  205. 郡祐一

    ○郡国務大臣 平和条約発効いたしまして、それによって折半がきまっております。そういたしますれば、韓国に属する部分の返還ということは、平和条約から当然さように考えなければ相ならぬことでございます。
  206. 岡田春夫

    ○岡田委員 ではあなたに伺いますが、在日米軍に返すということをきめたのは、どういう協定ですか、それはいつの協定ですか。もっとはっきりしましよう。一九五五年の六月二十三日、日韓間の海底ケーブル料金及び使用条件、公社側吉澤営業局長、アメリカ側ファウツ、これの第七項に基づいてやったのでしょう。違いますか。
  207. 郡祐一

    ○郡国務大臣 吉澤・ダンパーマン間で契約をいたしました。
  208. 岡田春夫

    ○岡田委員 それに間違いないですね。いいんですね。それでは協定の第七項に、「返還されるべき金額は、日本及び韓国間の協定に従って設定される専用回線の専用料のうち、日本及び韓国側で再分されるものと同一の基礎に基づいて決定されるものとし、且つ一九五四年八月一日にさかのぼるものとする。」、二十九年にまでしかさかのぼれないので、それ以前にはさかのぼれないことになっているじゃないか。あなたいいかげんなことを言っちゃだめですよ。協定昭和三十年に結ばれた。料金の支払いは、二十九年の八月一日までの料金は在日米軍に払うということになっているのだ。それ以前の分は何も協定にないですよ。いいかげんなことを言っちゃだめですよ。
  209. 郡祐一

    ○郡国務大臣 それでありまするから、先ほど来たびたび二十九年八月一日にさかのぼり正式協定はいたしましたと、しかしその以前につきましても折半をいたした以上、すでに韓国に帰属した分は返すべきものであるということを申しておるのであります。同じことを絶えず申しております。
  210. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃあなたに伺いますが、権の協定は、あなた御存じのはずだ。今度請求権協定の第二条第一項に基づいて、韓国が持っている日本に対する権利並びにその請求権は一切最終的に解決する。そしてそれに基づいて二条の第三項によって、国内法の手続によって、韓国請求権日本の国内においてこれはゼロになる。払う必要ないじゃないか。払う必要あるのか。あなた払わなければならないと言ったが、払う必要ないじゃないか。どうなんです。
  211. 郡祐一

    ○郡国務大臣 請求権の場合と、この米軍が支払いました使用料の場合と、こうして海底ケーブルについてきちんと平和条約できまっております以上、私が申しました別の考え方をすることは不可能でございます。
  212. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなあなたいいかげんなことを言っちゃいけませんよ。さっきからあなた言っているじゃないの。海底ケーブルの終点間における北の部分は、その所有権は韓国なんでしょう。その所有権に基づく料金、それを日本がもらっておるんでしょう。それは請求権でしょう。違うの。その請求権も一切この中に――あなたよくごらんなさいよ。請求権協定の第二条の一項には、平和条約第四条の(a)項を含めてその他一切の請求権と、こう書いてある。したがって、四条の(c)項もこの中に含むのだ、こう解釈せざるを得ないじゃないか。当然それじゃ払わなくてもいいことになるじゃないか。どういう解釈になるか。
  213. 郡祐一

    ○郡国務大臣 米軍とわがほうの公社とでいたしたことでございます。したがいまして、アメリカと韓国との関係が残っておるのです。わがほうの公社が米軍に対する関係でございますから、いまのお話とは別でございます。
  214. 岡田春夫

    ○岡田委員 いまのケーブル問題について、二、三の点ちょっと関連的に御質問をいたしたいと思います。第一点は、この海底ケーブルは何に使っておりますか。それから日韓間に何本ありますか。この二つの点をまず伺います。
  215. 郡祐一

    ○郡国務大臣 元来一般通信用に使っておりました。しかしながら、終戦後は米軍が公社と契約をいたしまして使っておりました。海底ケーブルの数は十一本と心得ております。
  216. 岡田春夫

    ○岡田委員 現在使用中のものは、朝鮮戦争以来、終戦以来十一本の中で二本でしょう。それからもう一つは、この二本は全部軍用線ですね。ケーブルの二本の中のいろいろな往復回線その他を入れると、五十六本のはずだ、全部軍用線のはずだが、この点をもう一度確認をしておきたいと思います。
  217. 郡祐一

    ○郡国務大臣 十一本のうち二本を使いまして、途中でいたんで修理をして、その後断線いたしましたことは御承知のとおりでございます。いかなる中身に使っておりますかは、もし必要があれば公社のほうからお答えいたします。
  218. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。先ほど申し上げましたように、電話ケーブルとしては二対でございます。そしてこのケーブルは、もう二年前に障害を起こしまして、全然使っておりません。それからどういう用途かといいますと、これは公社と米軍との間の契約によってやっておるのでありまして、それがどういうものであるか存じません。
  219. 岡田春夫

    ○岡田委員 米軍によって取りきめている民間使用というのはありますか。米軍と取りきめたのは、軍用にきまっているじゃないか。そんなことはわかり切っているじゃないか。そんないいかげんなこと言っちゃいかぬ。もう一ぺんそれじゃ軍用であること――これは軍用であるかないかは非常に重要です。はっきりしておいてください。  その次は、あなた二本使っているとお話しになりましたが、その二本のうちの一本、第二ケーブルの部分は、朝鮮戦争の当時において、アメリカがこれを修理した。それによって、この部分に関しては米軍の所有権に関するものでしょう。日韓の問題ではないでしょう。どうなんです。
  220. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。いまの米軍との関係でありますから、まあその範囲において行なわれていると思います。それから修理の問題でありますが、それは所有権はないことになっております。
  221. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたはうそを言っちゃいかぬですよ。あなたはあとから総裁になったかもしらぬが、昭和三十一年の二月二十四日、電電公社を代表して、その当時の特設課長が、修理の個所三十キロは米軍の財産であるとはっきり言っているじゃないの。あなた、それはどうなんです。日韓の間だけで解決できる問題じゃないんじゃないか。郡さん、あなた日韓だけで解決できると言ったのはうそじゃないか。米軍の財産をどうするのですか。米軍の財産はどこの分なんだ。
  222. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。ただいまの部分は、米軍の財産でないと思っております。
  223. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃさっき私の言った、特設課長の言ったのは間違っておるのですか。
  224. 米沢滋

    ○米沢説明員 特設課長が申しましたのは間違いでございます。取り消しいたします。   〔「そんなでたらめな話はない、本人が取り消しなさい」と呼び、その他発言する者あり〕
  225. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  226. 岡田春夫

    ○岡田委員 でたらめなことを言ってはいけませんよ。聞違っているのでしょう。それじゃその点を……。  時間がありませんからまとめて質問をしておきますが、郵政大臣、特設課長の言うのは間違っております。この点を郵政大臣は所管ですからね、明確にしてください。  それからもう一つは、郵政大臣は、終点の地域間における二等分である、こういうように言われましたが、これは間違いありませんか。しかもその終点区間における二等分というのは、日本政府のいつからの態度ですか。
  227. 郡祐一

    ○郡国務大臣 終点施設間の二等分でありますことは、平和条約発効当時から変わらざる政府の意見でございます。公社の総裁が答えましたとおり、保守を公社がいたし、またその間――私その経過は明瞭にいたしませんが、かりに米軍が修理をいたしましても、その所有権は主張いたさないことに公社と話がついております。現在日本韓国とが交渉いたしまして決定するのに、何ら支障のあることはございません。
  228. 岡田春夫

    ○岡田委員 昭和三十五年五月十日、安保条約の特別委員会において、当時の横田副総裁は、福岡-釜山における、いわゆる終点間における二等分とは必ずしも言えない、対馬と釜山間の二等分と、その二つの態度をいま検討中であると答えておる。必要があれば読んでもよろしい。日本からするならば、当然これは日本の布設した海底ケーブルでありますから、日本の領域である対馬から、そしてその対馬と韓国の領域である釜山との間の二等分の説をとるという横田副総裁立場というのは、一つの根拠があると思う。その根拠に基づかずして、ことさら釜山と福岡の間であるとあなたが言っているその根拠というのは、われわれにとってはわからない。あなたは初めから釜山と福岡の間だ、こういうように言っているが、この点については、非常に私はそういう態度は違うと思う。こういう点を明確にしてもらいたい。
  229. 郡祐一

    ○郡国務大臣 聞いていておわかりと思いますが、私は本日も対馬-釜山間ということばかり申しておりまして、おっしゃるように郡が福岡-釜山間などと申したことは一ぺんもございません。
  230. 岡田春夫

    ○岡田委員 あとに関連があるそうですから、私は一括して伺います。  一つは、平和条約締結によって、北の部分の所有権は、当然これは韓国に移ったということになるわけですね。そうするならば、北の分に対してその料金を日本がもらうということは、おかしいではないか。北の分まで含めて使用料の料金を日本がもらうということは、おかしいではないか。それが一つ。  第二の点は、先ほどその料金は二十九年前後と分けて合計十三億円であると、こう答えましたね。その十三億円以外に未払いになっている金紙があるはずだ。昭和三十五年の未払いの金額は、われわれは知っております。約四十億円であるということを横田副総裁は答えております。今日幾らになっているか。その二つの点を伺いたい。
  231. 郡祐一

    ○郡国務大臣 お尋ねにもございました米軍と公社との関係の二本の線は、日本韓国の間の分でございます。したがいまして、日本韓国との間の折半の問題でございます。それ以外に、韓国からさらに北にいっております分については、現在使ってもおりませんし、それからわがほうの支配から省かれております。  それから、いま地位協定等によりましてわがほうと米軍との間の折衝がまとまりませんための料金の点をお話しになったようでございます。この点は日韓のケーブルとは全然関係のないものであることは、御承知のとおりでございます。
  232. 岡田春夫

    ○岡田委員 郵政大臣、あなたは先ほど私は福岡とは言ったことはありませんと言われた。と同じように、私もあなたに言いましょう。私は、北朝鮮の分はどうなったかなどと聞いたことは全然ありません。私の言ったのは、北の部分というのは海底ケーブルの北の部分であって、韓国の分のことを言っているのだ。韓国の分については、平和条約に基づいてこの北の部分の所有権というのは韓国に移ったのだ、その移った部分まで含めて、それを電電公社が全額として使用料をもらうというのは、筋が通らないではないかということを聞いているわけだ。その点はどうなのかということを伺いたいというわけです。  それから第二の点は、未払いの分については、当時の横田副総裁は、未払いとして四十数億円と言っています。これは明らかに関係があるからそう言っているのです。関係のあるなしにかかわらず、その金額を言いなさいよ。
  233. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ケーブルに関係いたしません未払い金の点につきましては、公社の総裁からお答えいたします。
  234. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、前の分の答弁は……。
  235. 郡祐一

    ○郡国務大臣 初めのお尋ねについてお答えいたします。  協定が、区分がはっきりきまりました暁には米軍に公社が返還する約束のもとで米軍から受けておりますので、そのようにして公社が整理いたしておりますから、何ら疑義のあるところではございません。
  236. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは、あなたは疑義があるかないか知らぬ。疑義があるかないか明らかにするためには、その間の協定を全部明らかにしない限りは、国会の審議はできないです。  それで、こういう協定があるはずです。電気通信電波に関する合意、アメリカと日本側との合意がある。電気通信サービス基本契約、日韓海底ケーブル料金及び使用条件に関する合意、いわゆる吉沢・ファウツ協定、それから米軍による日韓海底ケーブル使用についてという協定、覚え書き、これらをわれわれとしては見ない限りは、あなたがどういうように解釈をされようと、われわれとしては正当な判断ができないわけです。国会は審議するわけですからね。あなたは、やはり北の部分は韓国であるならば、われわれの常識から言うなら、その料金をアメリカが日本に払うのではなくて、韓国とアメリカとの合意ができた場合において韓国に払うべきなのであって、日本の電電公社に対して全体の部分を払うというのは、筋が通らないと思う。(「現にアメリカが払っておるじゃないか」と呼ぶ者あり)払っておるから問題なんだよ。大臣をやったくせにそんなことわかならいのか……。
  237. 安藤覺

    安藤委員長 岡田君、やじにとらわれずにやってください。
  238. 岡田春夫

    ○岡田委員 そのように北の部分、日本が所有権を持たない部分の料金の支払いを電電公社が受けるということは、本来不当である。それはアメリカと日本の間の協定を結んでも、そのような協定それ自体がきわめて不当な協定といわざるを得ないということです。そういう点についての見解を伺いながら、同時に、これらのただいま申し上げた協定をここで出していただきたい。そうでなければ、われわれはこれについて明確なあなたの意見を了解するわけにはいかないわけですから、そういう点についても伺っておきます。
  239. 郡祐一

    ○郡国務大臣 協定によりまして折半が――地点等が明瞭になりましたときは合衆国と韓国との間で処理すべきことであるということを、協定ではっきりいたしました。そうして米軍が公社に払っておるのでございますから、何ら疑義はございません。  なお、お話のありました公社と米軍の契約等は、相手方のあることでございます。これを発表すべきものではないと考えております。
  240. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、この際これを許します。森本靖君。
  241. 森本靖

    森本委員 ここで、ちょっと関連ですから、簡単にやります。(「関連はよせ」と呼ぶ者あり)やかましい。要らぬことを言うな。関連でありますから簡単にやっておきますけれども、この問題についてはもう三年くらい前の……(発言する者あり)やかましい。要らぬことを言うな。
  242. 安藤覺

    安藤委員長 不規則発言は御遠慮願います。
  243. 森本靖

    森本委員 三年前の予算委員会あるいはまた逓信委員会においてしばしば私が賛同をいたしまして、この問題については日韓交渉が完全に妥結する暁と同時に解決をつける、こういう約束になっておるわけであります。ところが、その問題がいまだにただいまの郵政大臣の説明では解決がついていない。そういう点については、私はやはり政府の怠慢であろうと思う。何回も何回も繰り返し私が質問をしたのであります。必ずこれは解決をつける。しかもこれは平和条約によっておるわけでありますから、対日請求権の問題とはおのずから別個になっていくわけであります。どうしてもそこに残ってきまするのは、先ほど来郵政大臣が言っておりますように、二十九年の八月から三十八年の八月の十五日までは一応政府言い分をわれわれは認めるといたしまして、それについてはアメリカ軍と日本の公社との間において、これは協定がはっきりあるわけであります。海底ケーブル全長に対して料金を課しているので、韓国財産と決定される区間に対しては昭和二十九年八月一日にさかのぼって米軍に対してこれを返還する、こういうことがはっきりあるわけでありますから、この問題については、そういうふうなかっこうにおいて政府が支払いをするということについては、まああなた方の主張からいくとするならばある程度妥当だろう、こう思うわけでありますけれども、二十七年の四月二十八日から二十九年の七月三十一日までの分については、そういう契約がないわけであります。そういう契約がありませんから、本来ならば郵政大臣が言っておるようなことからいくとしますならば、この二十七年の四月二十八日から二十九年七月三十一日までの間に米軍からもらっております総経費のうちの対馬と釜山間の半分は、韓国に返さなければならぬという結論になるわけであります。もっとも、それを返さなければならぬけれども、実際問題としては電車公社が修理その他をやっておるので、その修理代その他を差し引けば収支とんとんになって払う必要はない、こういうことになるとするならば、その間の経費を今回は明らかにしておかなければならぬ。  それから三十八年にこのケーブルが切れてもはや使用にたえないという状態であるとするならば、この平和条約にありますところの海底電線の問題については、もうこれで終わりなら終わりということを今回の協定の際にはっきりと置かなければ、問題があとに残るわけであります。そういう点は国家的利益であります。そういう点を一つもこれは明らかにしておらぬわけであります。そういう点では明らかに政府としては、いわゆるこの海底ケーブルの平和条約にある項については職務怠慢ではないか。この際に、いま申し上げましたような問題については、一切解決をつけておくのが至当ではないか、こういうことであります。
  244. 郡祐一

    ○郡国務大臣 仰せのとおり、累次早く解決をいたそうというようなことをそのときどきの当局がお答えをいたしております。ただこのたび日韓の基本的な問題だけに限っていたします場合には、折半がすでにきまっている以上、これをなるべく近い機会に解決はいたすけれども、このたび特に協定をいたさないでも問題は残らぬであろう。それからただいま御指摘のとおり、確かに前の分は保守費と差し引けば取り上げるような金額もございませんし、すべて問題はむしろ御指摘のように限られておりまするから、このたびの協定の中に入れませんでも、近い時期に必ず解決できることと思っております。
  245. 森本靖

    森本委員 近い時期に解決をつけると言いますけれども、これはもう四年ぐらい前から言っておる問題でありますし、いまからまた、この条約が結ばれて、おそらく二十七年から二十九年の間の問題においても、やれ保守費がどうの、実際におれのところはこれだけもらわなければならぬというような意見がいろいろ出てくると思うのです。そういう点については、今後海底ケーブルをやめて新しいマイクロウェーブならマイクロウェーブにするという交渉を行なう際において、この問題をまず解決をつけておかなければ、日本側としてはある程度不利益になる。現実に、すでに電電公社並びに国際電電が、こういう問題についての国内においても意見が違う。そうなってまいりますると、これは韓国日本とが折衝するという段階になりましても、かなり私はむずかしい問題になると思う。だから、大臣がしばしば解決を、解決をということを言っておりますけれども、こういう問題については、私はこの協約、協定を審議する際に、こういうふうに解決がついておりますということを言ってもらいたかった。それは、しばしば外務大臣も郵政大臣もそういうことを言っておるわけであります。そういう点では、どういうわけか知らぬけれども、今回の韓国の基本条約について、非常にあわてて今回は合意に達した。だからこういうことをやる間がなかったのではないか、あるいは忘れておったのではないか。たまたま私がいろいろなことを言うから、あわてていまごろになって想定問答をつくって、そして答弁の資料をつくっておるというのが今日の郵政省並びに電電公社の実態であります。こういう点については、ひとつ十分に国家的な利益を考えながら、しかも平和条約にわざわざこの「海底電線」ということを入れた。この条項はなぜこういうものを入れたか、こういう通信というものに対する非常に大事な観点というものをひとつお忘れのないように、今後の問題については相当問題が残されておるわけでありますから、総理から最後にこの問題についての考え方を承っておきたいと思うわけであります。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの森本君の御意見は私も敬意を表します。これはまじめに、真剣にに、わが国の利益を擁護する、守る、こういう立場で、またこういう問題を長く置いては、たいへんむずかしい事態になりますから、できるだけ早くこれを解決するように、電電公社、郵政省を督励したい、かように思います。
  247. 石橋政嗣

    石橋委員 次に、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する協定についてお尋ねをしたいと思います。  最初に事務的なことでございますけれども、第二条の第二項の(a)に、「千九百四十七年八月十五日」というのが出てまいるわけですが、これはどういう時点を意味するのか、ちょっと御説明を願っておきたいと思います。
  248. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 これは終戦後日本におりました朝鮮人がだいぶ引き揚げたりいたしました。それが大体終了するのにこの年の前半くらいまでかかった。それから、このときに日韓間に民間貿易関係が開かれた、そういうことでこの時点をとらえたわけでございます。
  249. 石橋政嗣

    石橋委員 この第二条の第一項におきまして「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに問締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」とございますが、第四条の(b)項が全然出てきていないというのはどういうわけでございますか。これは外務大臣お尋ねいたします。
  250. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長に答えさせます。
  251. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約四条(b)項でございますが、これは問題を提起しているのではなくて、あそこでの軍令三十三号は処理の効力承認するということで、それは四条(a)項で全部カバーされておるものの一部について記述しておるわけでございます。
  252. 石橋政嗣

    石橋委員 (a)項で(b)項までカバーされておるというのが私には理解できません。平和条約を読んでみた場合に、どうしてそういう解釈が出てまいりますか。
  253. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 (a)項で、日本韓国それぞれの国民の間の財産請求権問題全般について特別取りきめの主題としているわけでございます。(b)項では、韓国のほうにあった日本財産、権利、利益について在韓米軍当局がとった処理の効力承認するということでございまして、(b)項に書いてあることも(a)項の内容の一部をなしておるわけでございます。
  254. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、今度の日本韓国との間で懸案事項をすべて解決するという際に、この(b)の問題については一切関係がないとでもおっしゃるわけですか。
  255. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約四条(b)項のものはすべて平和条約で処理済みであった。したがって今回新たに処理する必要がなかったということでございましたら、お説のとおりでございます。
  256. 石橋政嗣

    石橋委員 (b)項の解決のためにいろいろといままで交渉が行なわれておるわけですね。この間にはアメリカまで介在していることはもう御承知のとおりです。最終的に処理されたというものが今度出てこなければならないはずじゃありませんか。どこに出てきておりますか。
  257. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 四条(b)項の問題はサンフランシスコ条約で処理されてしまったわけでございますので、日韓間で新たに処理する問題じゃないわけでございます。
  258. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、この間から問題になっております一九五七年十二月三十一日の口上書、それから昭和三十二年十二月三十一日付、日本国外務大臣大韓民国代表部代表との間に合意された議事録のうち、請求権に関する部分、こういったものは何のためにあるのですか。
  259. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 韓国にある日本財産、権利、利益といたしましては、前にも御説明申し上げましたが、かりにあるとすれば、東のほうの大韓民国の管轄区域が三十八度線以北に出た部分にあり得たわけだろうと思います。ところが、これも前に申し上げましたように、北鮮当局が没収処分をしておりまして、それを大韓民国側が休戦協定でその管轄のもとに貫いたときには、また反逆分子のものとして没収したそうでございます。したがいまして、日本の取り分に関する限りは、韓国には実体的な財産、権利、利益というものは残っていなかった、こういうことは事実でございます。ただそのほか、そういう部分に関する請求権と申しますか、文句をつける国際法上の権利とか、あるいはしばしば問題になっております拿捕漁船の関係とか、そういうような軍令三十三号で処理されなかったものが残っておるわけでございます。
  260. 石橋政嗣

    石橋委員 そういう理屈でいきますと、私はいままでの政府国民に対する説明というものとの間に矛盾があると思うのです。もうすでにこの第四条の(b)項は平和条約発効の時点で解決済み、こういう解釈をおとりになっておられる。それじゃ一体いままで何をしておったのかという問題がひとつ残りますが、それは別として、それではこの(b)項の解釈について、従来の政府考え方というものが変わったのかどうか、確認したいと思います。というのは、この第四条(b)項において、われわれはすべての日本国民の在韓財産というものを放棄したものではない。すなわち、在韓米陸軍政庁法令第三十三号というのは国際法違反である。これはへーグの陸戦法規違反である。また世界人権宣言からいってもおかしい。こういう立場を終始とってこられておったはずです。われわれが放棄したのは、少なくとも外交保護権だけだ、こういう解釈をとってこられたはずでございますが、この見解は変わりましたかどうですか、外務大臣お尋ねします。
  261. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 四条(b)項についての日本政府の解釈が、当初から、日韓交渉に入るときに若干変わって、それが三十二年末にまたもとの立場に戻ったということは、この前御説明申し上げましたが、そのことは三十六年に全部発表もいたしておりますし、皆さま御存じのとおりでございます。なお、この四条(b)項で財産、権利、利益というものは全部処理されてしまったということは、これは平和条約の処理でございます。これについて文句をつけない、もう国際法違反のことをやっても日本政府としては文句をつけないということは、平和条約の十九条に規定してございます。そういうことをこの問も御説明申し上げたわけでございます。
  262. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、長くなりますから、いままで政府が国会を通じて国民に説明しておりましたものを一々ここにあげません。簡単にお尋ねしますから、簡単に答えていただきたいのです。  この平和条約第四条の(b)項においてわれわれは――われわれはというのは日本政府はです。――国民財産権の所属変更、移転まで承認したのではない、外交保護権を放棄した、それだけだ、こういう解釈をとってきた。これは間違いないでしょう。間違いないとすれば、いま、その外交保護権は放棄したという従来の説をそのまま維持しておられるのか、それとも変更して、外交保護権まで放棄したというふうに変わったのか、これは外務大臣責任を持ってお答え願いたいと思います。
  263. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交保護権の放棄であります。
  264. 石橋政嗣

    石橋委員 これはもうたいへんなことですね。従来の解釈、従来の政府国民に対する説明というものを百八十度変えております。そんなことが一体許されますか。
  265. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 変えておりません。
  266. 石橋政嗣

    石橋委員 外交保護権を放棄したものではないということをいままで言ったことはないというのですか。
  267. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交保護権の放棄である。
  268. 石橋政嗣

    石橋委員 ちょっと待ってください。聞き方が間違えました。  外交保護権を放棄しただけであって、個人の請求権を放棄したのではないという解釈をとっておられたわけです。――もう一度お尋ねします。国の財産権のみならず、個人の財産権の所属変更、移転まで承認したというのであるならば、外交保護権のみならず、個人のそれぞれ持っているところの国際法上の請求権すら、個人の承諾なしに、不当にも国が放棄したことになるのではないか、こういう意味です。正確を期して私もお聞きします。
  269. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交保護権だけを放棄したのであります。
  270. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、各個人は韓国に対して請求権を持っておる、このように考えられるわけですか。
  271. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長から答えます。
  272. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 韓国で、昔だったら米軍、いまだったら韓国政府当局が、それぞれの法令によってとった措置効力承認したわけでございます。したがいまして、当該の日本人が自己の権利を向こうへ主張しようとしても、これは向こうの国内法上の権利であるわけでございますが、それは実際問題としては取り上げられないだろうということになるわけでございます。
  273. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと外交保護権も放棄した。日本国民の個人のいわゆる所有権というものも、これも全部、その当人の承諾なしに、日本政府がかってに放棄した、こういうふうに認めていいですか。
  274. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 前段におっしゃった外交保護権のことはそのとおりでございます。個人の請求権というものは向こうさんが認めないであろうということを申しているわけでございまして、この条約協定で、そういうものを日本政府が放棄したということじゃないわけでございます。
  275. 石橋政嗣

    石橋委員 日本政府国民の生命、財産を保護する責任があるわけですよ。それをかってに放棄したと同じ形になるじゃないですか。それに対して責任を持たないのですか。
  276. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 それが外交保護権の放棄ということでございます。
  277. 石橋政嗣

    石橋委員 いままでは分けて説明しておったはずです。外交保護権は放棄する。しかし個人の請求権は残る、こう言ってきたはずじゃないですか。では個人の請求権は残るというから、残ったつもりで韓国政府を相手に訴訟を起こそうとしても、それは実際は無理でしょう、受け付けないでしょう。名目だけの請求権になるじゃないですか。権利はないのとひとしいじゃありませんか。今度のこの協定の中で何らかの措置がとられておれば別です。何にもとられておらないということは、実質的に個人の請求権まで日本政府が抹殺したと同じじゃないですか。これはすでに法律的な問題を離れます。外務大臣、その点について責任をお感じになりませんか。
  278. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先方のこれに対する措置として、国内法の問題につきましては、これは外交上の関係でございませんからしばらくこれに触れませんが、とにかく外交上としてはあなたのおっしゃるような結論になるわけです。
  279. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、政府外交保護権も放棄した、個人の請求権も実質的に放棄した、しかもその請求権者、所有権者というものの承諾は得ておりません。そうなれば、これは必然的に日本の憲法に基づいて補償の義務を生ずる、このように考えますが、いかがです。   〔発言する者あり〕
  280. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  281. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいま条約局長からお話がございました趣旨は、この外交保護権の放棄ではある、しかしその在外財産自身は向こうの処理の問題であるということをお話しになりましたが、要するにそれをもう少しかみ砕いて申し上げますと、日本国民が持っておる在外財産、その在外財産の運命と申しますか、その法的地位と申しますか、そういうものはその所在する外国の法令のもとにあるわけです。したがって、外国の法令においてその財産権の基礎が失われた場合に、日本国民がそれを争うことができるかどうかということになりますと、それはその国の国内法の問題になります。で、いま現在問題になっておりますのは、そういう措置があったとして、そういうものについて外交上の保護をする地位を放棄してということであって、財産権自身を日本が、たとえば収用をしてそれを放棄したというのとは違うわけでございます。ところで、憲法の二十九条の三項によりますと、二十九条三項は、日本国がその公権力によって収用した場合の規定であることは御承知のとおりでございます。したがって、政策上の問題は別でございますが、憲法二十九条三項ということを御引用になりましたその点については、私どもは憲法上の補償、法律上の補償ということにはならないのではないかというふうに解しております。
  282. 石橋政嗣

    石橋委員 外務大臣は明確に言っているわけです。外交保護権は放棄した、個人の請求権も実質的に放棄した、こう認めておられるのですよ。だから、あなたに聞いているのではないのです。もう法律解釈はわかっておる。だから内閣、政府責任を私は追及しているんです。法律的なことを聞いているんじゃない。とにかく所有権者の、請求権者の承認も何もなく、かってに政府が放棄するというような行為が許されるか。実質的に救済の道はないのです。回復しようとしてもその道はふさがれておるという説明までなされておるのです。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕 そうしますと、これは当然国家の利益のために国民財産が充当されたという、こういう解釈をとらざるを得ません。賠償か賠償でないかということは争いのあるところでございましょうけれども、とにかくその中に在韓財産日本国民の財産というものが加味されておるということは、これはもう否定できないと思う、何と言おうとも。国の利益のために個人の財産が犠牲になっているのです。当然これは補償の問題が出てくると思います。いかがですか、外務大臣総理大臣がおいでなら総理大臣に聞きたいのですけれども。
  283. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 個人の請求権を放棄したという表現は私は適切でないと思います。南辻法制局長官が言ったように、政府がこれを一たん握って、そしてそれを放棄した、こういうのではないのでありまして、あくまで政府が在韓請求権というものに対して外交保護権を放棄した、その結果、個人の請求権というものを主張しても向こうが取り上げない、その取り上げないという状態をいかんともできない、結論において救済することができない、こういうことになるのでありまして、私がもしそれを放棄したというような表現を使ったならば、この際訂正をいたします。  それで、これに対する何か補償権というのが一体どうなるかということにつきましては、私は法制局長官の解釈に従いたいと思う。
  284. 石橋政嗣

    石橋委員 これは総理にお伺いしたいところなんです。あなたは先ほど、実質的に放棄したと言っていいのかと言ったら、そういうことになるとはっきりおっしゃいました。それはもう正直な答弁ですよ。外交保護権は放棄したけれども、個人の請求権は残っておると言ってみたところで、それでは韓国に対して訴訟を起こして回復しよう、その道は閉ざされている。実質的に放棄したことになる。間違いないじゃありませんか。それなのに補償の義務はないという、そういう議論は成り立たないと思います。これは総理が来てから私それでは確認をすることにいたしまして、関連の申し入れがありますから譲ります。
  285. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  286. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの法制局長官お答えの中で、私、どうしても納得のいかない点がございますので、はっきりさしていただきたい。それはまず第一に、韓国にあった日本人の財産は、アメリカの軍令三十三号でこれを取得されたわけです。没収はされておりません。取得をされました。しかし、その後この軍令三十三号は国際法違反であるといろことはこの場でお認めになったわけです。その後におきまして、今度はその財産というものが米韓の間の協定、一九四八年に結ばれた協定によって韓国に移譲されたわけです。五条で移譲されております。しかし、その六条においてはっきり言っていることは、法的にはっきりしている財産というものは、その人の申し出があるまでは韓国がこれを管理すると言い、さらにまた、もしも韓国日本の間に特別の処理をきめない限りは、所有者がいれば必ずその所有者に返るということがはっきり言われているわけです。もしも特別の取りきめがあれば所有者にはいかないで済むけれども、特別の取りきめがない限りはその所有者に返るということがはっきり六条で示されてあるのです。だとするならば、先ほど法制局長官がおっしゃいましたところの在外財産は向こうの措置である、しかもこの在外財産法的地位というものは外国の法令のもとにある、こういうことをおっしゃったわけです。そうすると、外国の法令では、はっきり米韓の問で日本人の財産というものは守られているんだ、申し出があれば正当なものは返さなければいけないのだということがきめられてあるわけです。そういうことを無視して財産権がないとおっしゃるのは私はおかしいと思うわけです。その点はっきりさしていただきたい。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  287. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、日本の在外財産、これはどこにあっても同じでございますが、その日本国財産の運命と申しますか、その法的地位が当該財産の所在する外国の法制によって運命が決するということは、これは一般理論として言うまでもないところだと思います。ところで、軍令三十三号の処理の効力承認する、この解釈問題にかかるかもしれませんが、これにつきましては、外務当局から先ほどお話がありましたような経緯を経まして、その効力承認するということによって、日本国民財産については、その処理の効力承認するということで運命がきまっておるというようなことになる、それが外交保護権の放棄そのものではあるけれども、それ自体の運命は実はそういう協定によって決せられておる、こういう解釈になるわけでございますので、結果は同じことになるんではないかと思います。
  288. 戸叶里子

    戸叶委員 私が申し上げた質問に対してのお答えになっておりません。私がお伺いいたしましたのは、一九四八年の九月の十一日だったかと思いますが、米韓の間で協定を結んでおります。その協定の五条によって、アメリカが取得したところの財産というものを韓国に移譲したわけです。トランスファーしたわけです。没収していない。それを没収してやったんじゃないということの証明には、六条にはっきり示されてある。法的にきちんとした財産というものはしばらく預かっておいて、そして申し出があればこれを返すのだ、しばらくの間管理しておくのだということが六条にある。しかもその次にあることは、別途の特別の取りきめがない間は日本のものであるということがはっきり示されてあるのです。いいですか。そういうふうに国内の法律できまるというのですかも、向こうの国内の法律できまるというのですから、韓国はこれを知っているはずなんです。知っていたら、このとおり守ってもらったらいいじゃないですか。それとも、日本人個人とそれから韓国政府との間に特別の取りきめをしたのですか。してないはずです。個人個人がしてないはずです。
  289. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 軍令三十三号の解釈につきましては、米国政府からも明瞭な発表があるわけでございますので、疑問の余地はないと思います。この米韓協定の第六条は、この文言にもございますように、韓国にありました戦勝国、つまり連合国の国民財産について日本側が戦争中に何か措置をとっておって、それを日本財産だと思って韓一国に渡しますと、連合国の国民が不利益をこうむることになりますので、その点についての注意を喚起したものでございます。
  290. 戸叶里子

    戸叶委員 そんなことを言つちやいけませんよ。六条には何と書いてありますか。大韓民国政府へ移譲された財産は、正当な所有者が適当な時日内に返還を請求し、同所有者に返還されるまで大韓民国政府はこれを管理するとあるじゃありませんか。大韓民国政府に移譲された財産はですよ。アメリカはこのときに軍令三十三号を出したけれども、自分は間違ったことをしているということを知っているから、意識してこういうものを出しているのですよ。それで全部韓国へなすりつけているのですよ。それが一つ。  もう一つは、私は関連ですから全部まとめて言いますが、この前私がここで指摘をいたしましたように、日本の国会におきましては、この平和条約のあとにおいてさえも岡崎さん、あるいは中川さん、あるいは高橋条約局長日本の個人の韓国へ置いてきた財産権はあるということをはっきり言っております。私は速記を持っておりますけれども、そういうことを言っていられるはずなんです。だからそれはなぜかといえば、韓国財産があったのだという解釈できて、そして一九六一年、池田さんと朴氏と両方でもって、こうやっていたのでは解決できないから、何とか法的地位の根拠のあるものだけにしようという話になって、その翌年、金・大平メモで政治的に解決しようというふうになったわけだと思います、歴史を見ますと。ですけれども、その間において一体いつ日本人の韓国に置いてきた財産がなくなったかということは、みなふしぎでしかたがない。うやむやのうちに消えちゃってるんですよ。いやしくも日本人の個人の財産までこういう形でうやむやにされる。しかも国会においてはあると言っておりながら、そういう形をとられるということは、これは許すべからざることであると私は考えます。
  291. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 最初アメリカと同様の解釈をとっておりながら、日韓交渉のある段階においてこれと違った解釈をとったということは、この間戸叶委員に申し上げたとおりでございます。しかし、アメリカ解釈と同じ解釈をまたとるようになって以後において、日本政府当局の者が日本国民の財産、権利、利益がそのまま残っているとお答えしたはずはないはずであると、かように考えます。
  292. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、やはりいままでの外務省国民に対する説明というものをここで少し取り上げなければ結論が出ないと思いますから、読み上げてみたいと思います。これは外務省情報文化局が出しております「世界の動き」特集号の六であります。そのまま読みます。「わが国が韓国に請求しているのは、そのうち私有財産の返還である。それは私有財産尊重の原則が、歴史的にいつの時代にも認められてきた原則であるし、また朝鮮からの引揚者の利害がこの問題と密接に結びついているからである。しかも、日本人が朝鮮に残してきた財産は、はるばるわが国から渡鮮して三十余年の長きにわたり粒々辛苦働いた汗の結晶にほかならない。」、いいですか。これは外務省文書ですよ。途中省略します。「或る人の計算によると、終戦当時朝鮮には日本人の私有財産(すなわち国有財産や公有財産は別として、個人財産と私企業財産だけの合計)は約七百三十億円あったということである(当時は一弗は約十五円であった)。今かりに、その中の六〇パーセントがいわゆる「三十八度線」の北鮮にあり、四〇。パーセントだけが南鮮にあったと仮定して、しかもさらにその六五パーセントが戦災で滅失したと推定すると、現在韓国内には約百億円の日本人私有財産が残っている計算になる。その他にも、帳簿尻の清算などを勘定に入れると日韓相互の請求権は次のようになる。日本韓国から受け取るべき額約一四〇億円、日本韓国に支払うべき額約一三〇億円、差引受取額約二〇億円、そこで、かりに韓国の主張のように、日本韓国に対し請求すべきものは一銭も無く、請求権の問題というものはもっぱら韓国日本から受取る額の問題にすぎないということであれば、この人の計算に従えば、終戦当時の金で一二〇億円を日本韓国に支払わなくてはならないことになる。在韓財産の一切合切をフイにした上に、さらにこのような巨額を支払うということは、わが国民の決して納得しないところであろう。」、この外務省見解こそ現在の日本国民気持ちじゃないですか。これはそれじゃ、うそだというんですか。
  293. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ただいまお読み上げになりましたのは、昭和二十八年十月二十二日の情報文化局長の談話でございまして、これは先ほど来申し上げておりますように、日韓交渉のある段階において米国解釈とも、平和条約締結の際の国会で御説明申し上げました政府見解とも違った、一番日本に腹一ぱいの主張を韓国との交渉の上でやっておった段階の発表でございます。いまの見解とは違います。
  294. 石橋政嗣

    石橋委員 これは外務省の当時の正式見解であるということはお認めになったから、それでいいです。  そこで、外務大臣にお聞きするのです。この当時の外務省のこの主張、これこそはまさに日本国民感情にぴったりだということです。特に、いま熱心に運動しておられますところの引き揚げ者の諸君の気持ちにぴったりしたものがこれだということなんです。この見解がいつの時点にどのような経過を経て変化を見たのか、これがいま問題になっているのですよ。少なくともこれが筋なんです。本論なんです。しかし、それを変更せざるを得ない条件があったというならば、いつの時点、どのようなものによって解決したのか、変更があったのか。これは外務大臣が答える責務がございますよ。
  295. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 相当日本も悲惨な敗戦を喫して立ち上がったばかりでございまして、この韓国に対するいろいろな考えというものはかなり複雑多岐なるものがあるのであって、それは一面の発露であるということは私も了解し得るのでありますが、それだけをもって今日の結末に達することはできないのであります。いろいろな角度から、この両国の長い問の歴史的関係等を考慮いたしました結果、今回の条約の調印を見たような次第であります。
  296. 石橋政嗣

    石橋委員 私、そのままこれを読み上げたわけですけれども、これが当時の外務省の態度、ここから平和条約第四条の(b)が平和条約発効の時点で解決したなんという結論がどうして出てきますか。妙な法律論にすりかえないでください。少なくとも第四条の(b)項から出てくる見解というものは、当時述べられておったこれであるはずです。それが何らかの事情で変更を見ているのです。そのことによってたくさんの引き揚げ者がたいへんな損害をこうむっておるのです。その人たちに対して親切な説明をするのは政府責任じゃないですか。こういう理由で考えを変えたのだからしんぼうしてくれ、そのかわりほうってはおかぬ、こういう態度があってこそ政治と言えるんじゃないですか。総理が来なければ答えられないのでしたら、ここで待っていてもいいですよ。外務大臣答えられないのですか。総理大臣が来なければ。
  297. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま申し上げたような状況下において、全くもう廃墟の中から立ち上がって、そうして一時は食うや食わずの状況でありましたが、だんだん立ち上がりを示してまいったのでありますが、韓国との折衝過程においていろいろな複雑な国論というものが生起したという、一つのそれはまあ断面を物語るものだと私は考えております。そういう事情もあったということを十分に考慮に入れて今回のような結論に到着したわけであります。
  298. 石橋政嗣

    石橋委員 実際の利害関係者がそれで納得いきますか。外務省が、先ほど読み上げたような態度でがんばってくれておるときこそ、ああやはり政府だ、われわれ国民のことをよく考えてくれてがんばってくれていると、感謝しております。それを、何の相談もなしにいつの間にか消えちゃった、あれは交渉のかけ引きにちょいと言うただけです、そんなことで済みますか。少なくとも、それではどの時点でどのような取りきめによってこういう考えが放棄されたのか。そこからひとつ説明してください、外務大臣
  299. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 米国解釈をとって、そうして一切の請求権はこれを主張しないということになったのは三十二年になってからであります。そのいきさつにつきましては条約局長から申し上げます。
  300. 石橋政嗣

    石橋委員 いいです。いいです。もう法律的にごちゃごちゃ言うとわからなくなるから、お互いにみんながわかるようにひとつやりましょう。三十二年というのは、この平和条約第四条の解釈に関する米国政府見解を伝えた在日米国大使の口上書及び昭和三十二年十二月三十一日付日本国外務大臣大韓民国代表部代表との間に合意された議事録のうち請求権関係する部分、これですね。
  301. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようであります。
  302. 石橋政嗣

    石橋委員 この時点で個人の財産権まで日本政府は放棄を認めた、一つはこういうことですね。そして、後段において、ただし「平和条約第四条(a)に定められているとりきめを考慮するにあたって関連があるものである。」、すなわち韓国日本に請求しておるものと関連があるものである、こういう二つの柱にささえられた口上書であるということもお認めになりますね。
  303. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体さようでございます。
  304. 石橋政嗣

    石橋委員 何で大体なんて言うんですか。そうしますと、この前段において、個人の請求権財産権まで日本政府は放棄した、昭和三十二年の十二月三十一日のこの時点で。しかし、韓国の対日請求権との関連の上で考慮する、こういうことになった。これは明らかに日本政府はこの時点で韓国の対日請求権との相殺のために日本国民の在韓財産を振り当てたということになるじゃありませんか。それを認めたということになるじゃありませんか。その点、外務大臣いかがですか。
  305. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 しかし、その後韓国の対日請求権というものを両国の間で突き合わせてみたのでありますが、何しろ、法律上の根拠あるいは事実関係、非常に不明確である。時間もたっており、その間に朝鮮事変というものがありまして、これをいかに追求しても結論に到着することはむずかしいというので、これはあきらめて、そうして、別に経済協力、無償・有償合わせて五億ドル、その経済協力を行なうこととともに、それと並行して対日請求権はこれを終局的に完全に消滅させるということになったのでございますから、その関連の問題はもはやなくなった。しかし、法律上の関係はありませんけれども、経済協力をするという問題にいたします際に、やはりその問題を念頭に置いて問題の処理をしたということは、これは言えるだろうと思います。
  306. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、やはり関連があるわけですね。有償・無償五億ドルという額をきめるにあたって、日本国民が朝鮮に置いてきた財産というものを十分に念頭に置いてその金額をきめた、そういう意味で関連があるわけですね。
  307. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 関連と言うと語弊がありますが、それを念頭に置いてかような処理をした。あくまで経済協力経済協力であります。さように解釈しております。
  308. 石橋政嗣

    石橋委員 念頭に置いてという表現を使われるわけですけれども、関連があるじゃありませんか。有償・無償合わせて五億ドルの援助をしましょうと、その金額をきめるにあたりまして、日本国民朝鮮に置いてきた財産というものを念頭に置いて金額をきめた、関係があるじゃありませんか。それだけの財産があそこにあったからこそ五億ドルで済んだということになるじゃありませんか。そうしますと、引き揚げ者の人たち財産韓国に置いてきた人たちは、自分たち財産というものを国益に供したことになるのです。これは間違いありません、いままでの一つ一つお答えの中からも。  総理大臣はいま来られたので、経過を簡単に説明しますけれども、とにかく、日本外務省としては、個人のいわゆる私有財産朝鮮に置いてきた私有財産というものは、これはあくまで返してもらわなければいかぬという立場を主張しておられた。これは、私が外務省文書を読んだら、そのとおり承認いたしました。この私有財産を返してくれ、こういう政府の姿勢は、すべての日本国民の共感を受ける正しい姿勢であった。それがいつの間にか変わってしまった。いつ変わったのですかと聞いたら、昭和三十二年のアメリカの大使の口上書と日本外務大臣韓国代表部代表との間に合意された議事録のうち請求権関係する部分、すなわち昭和三十二年十二月三十一日のこの取りきめの時点において考えが変わった。もう請求しないということにした。個人の財産も請求しないということにした。ただし、平和条約第四条においていろいろと処理をしなくちゃならぬ。取りきめをしなくちゃならぬ。その場合に、考慮するにあたって関連があるものだ。すなわち、在韓日本国民の財産というものを頭に置いて、そうしてやりなさいということを、日本、アメリカ、韓国の三国の間で合意に達した。そうすると、少なくとも有償・無償五億ドルという金を日本が援助として、名前はどうあろうと、援助として韓国にやるという場合に、五億ドルで済んだのは、たくさんの日本人の私有財産朝鮮にあったからだ、こういうことになる。これは間違いないかと言ったら、外務大臣は間違いないと言う。それを念頭に置いてやったと、こうおつしゃる。そうすると、在韓財産を持っておられる日本国民としてみれば、国の利益のためにおれたち財産をみんな出したのだから、その分だけめんどうを見てください、こう言ってくるのは筋です。そのほかに方法がないのです。もう一つの方法は、韓国に対して、韓国の裁判所に訴えて返してくれという方法があるのですが、これは実質的に不可能だという答弁政府はしておられる。この放棄したことによって、口上書と合意議事録によって不可能になっておる。それから、向こうの国内法で不可能になっておる。断然日本政府に補償の義務が私は生ずると思います。これはいま在外財産問題審議会で審議しておることは、私百も承知です。しかし、少なくとも政府としては、何とかしなくちゃならぬという気持ちに立たなければ、これは国民は納得しない。特に引き揚げ者は納得しないということを申し上げたいのです。この点、総理大臣の決意のほどを表明していただきたいと思います。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 韓国にあった邦人の個人の財産の問題、これは、私がちょうど不在中にいろいろ議論があったそうですか、ただいま石橋君が御理解していらっしゃるように、また外務大臣が申し上げたように、三億、二億、これは結局こういうものを念頭に置いてきまった、かように申しておる。その念頭に縫いたことが法律的な義務を生じておるかどうか、これについては、法制局長官から、憲法上の問題はないと、かように答えたと思います。私は、いわゆる法律論としての法律上の問題ではこれはないのだ、その点は明確にいままでの経緯から説明されたろうと思います。しかし、こういう問題、あるいは平和条約から見ましても在外資産につきましてはいろいろの問題が残っておるわけであります。いわゆる法律的な問題としては一応片がついておる、かように政府は考えておりますが、一般的にいわゆる在外資産をいかに処理すべきか、またどういうような実情にあるか等々につきまして、いわゆる在外財産問題審議会というものができておる、そうして、ただいまそちらのほうでいろいろ研究しておる、かような状態にあることも石橋君御承知のことだと思います。政府自身は、ただいまの法律論、法律的な問題、いわゆる憲法上の問題として処理するのではなくて、一般的な問題として、こういうものをいかにするかというその調査をまずして、そうして、その結論を出すという態度でございます。
  310. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 補足して申し上げますが、請求権をこれに振りかえたというような趣旨に私は申し上げたのではありません。念頭に置いて請求権問題を処理した。やはり、もと一国をなしておった韓国独立をしたのであります。日本の財政事情も考慮しながら、新しく発足する韓国というものに対して、お祝いと言っては語弊があるが、りっぱに育つようにということで、主としてこの経済協力の問題は考えられておる。  私が申し上げたいのは、第二次大戦後に旧植民地がずいぶん分離いたしました。そうして新しい独立国となったその際に旧宗主国がどういうことをやっておるかということを、私はこの際御参考までに申し上げてみたいと思います。  イギリスでありますが、旧英領諸国の独立に際して行なった援助がまずあげられると思うのであります。すなわち、イギリスは、これら諸国の独立の際に、経済開発援助その他の資金供与などによりまして、これまで十二ヵ国に対して合計約十四億ポンド、三十九億ドル、約四十億ドルの援助を行なったのでありますが、このうち大きなものとしては、インドに対する十億四千万ポンド、パキスタンに対する一億二千万ポンド、セイロンに対する一億ポンド、ケニアに対する五千万ポンド等がおもなるものでございます。  それから、このほか、フランスの旧仏領諸国の独立にあたって、それらの国との長期的経済友好関係の維持継続をはかるために経済協力協定締結いたしたのでありますが、これらの協定には資金協力を約束したものが多い。フランスが独立した旧仏領諸国に対して一九六〇年から一九六三年までに供与した援助額は二十一億ドルに達しておる、こういう状況であります。この点を御参考までに申し上げておきます。
  311. 石橋政嗣

    石橋委員 私はもう資料を持っています。聞きもせぬことを長々とおやりになる。肝心なことはあんまり言わぬ。あなたのほうでお出しになっております「日韓予備交渉において両首席代表間に大綱につき意見一致を見ている請求権問題の解決方式、昭和三十九年十二月十日」、これを見ても、はっきり書いてあるじゃないですか。三億ドル、二億ドルというものをきめたときに、「上記無償、有償の経済協力の供与の随伴的な結果として、平和条約第四条に基づく請求権の問題も同時に最終的に解決し、もはや存在しなくなることが日韓間で確認される。」、もう相殺していることははっきりしているのですよ。  そこで、総理大臣に最後にこの問題についてお尋ねしておきたいことは、この問題は、本来ならば直接政府が判断をして対処すべき問題であったと私は思います。しかし、いまはもう審議会にかけておる。その審議会が補償すべしという結論を出した場合には、必ずこれを実行される、このことを声明なさらないと、関連を持っておる方々はこの条約協定に非常に不安を持っておりますから、ぜひひとつ言明しておいていただきたいと思います。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、審議会の答申といいますか、あるいはその調査の結果につきましては、これは尊重したいと思います。尊重しなければならない、かように思います。そういう場合に、政府政府責任においてこれを処理していくという態度でございます。
  313. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、問題を移します。  いままでいろいろと質疑をいたしました。その中でも何度も総理はおっしゃっておられるわけですが、日本政府としては南北朝鮮の統一を妨害するとか阻害するとかいうようなことは毛頭考えておらぬ、こういうことをしきりに力説しておられます。しかし、そういうことばの裏で、朝鮮民主主義人民共和国を法律的に無視すると言われるならば、それはもうそのとおりだということも言っておられます。それから、質疑の中でも、実際には北の国というものを交えなければ完全に処理できないような問題がありながら、韓国との間だけで何とかしてしまおうというような問題のあることもはっきりしてまいりました。とにかく、この条約発効すれば、日本と北のほうの部分の国とうまくいく条件というものは、どう見てもないわけです。悪化する条件があっても、これが今後はよくなるだろうというような、そういう見通しを持つことは全然できないと思います。現に、韓国のほうでは、韓国総理大臣はどんなことを言っているかというと、ずいぶんひどいことを言っているのですよ。「韓日国交が正常化されたことによって、わが政府や国家全体が力を合わせ、北韓の外交関係を結ぶのを積極的に防ぐべきであり、また、通商が増加するのを、われわれが優先権を握ってこれを妨害するのに最善を尽くすべきであり、また、文化的に交流するのを、われわれが最善を尽くして防ぐべきである。」、これは丁一権総理が八月十四日の韓国の本会議で述べたことばであります。ほかの部分も、私、たくさんここに控えてきております。向こうのほうでは、とにかく、この日韓条約発効したら、日本と北鮮の間というものを何が何でも妨害するのだ、こういうことを言っている事実というものは御承知でございますか。総理が、南北統一ということをじゃましようとか妨害しようとかいう気持ちは毛頭ないということを何度もおっしゃっておるので、それでは、向こう側はこう言っておりますが、御承知ですかと、こう総理お尋ねしておるわけです。
  314. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま丁一権総理がどうしゃべったというようなお話でございます。また、金日成がどういうようにしゃべったというようなことも新聞で伝えておりますが、これはまあ外国の問題ですから、あまりとやかく詮議しないほうがいいのだと私は思います。私は、ただいまお尋ねになりました韓国朝鮮の単一国家、この実現を――まあ石橋君もそういうものが出現することをこれは希望しておられることだと思います。私もそれを希望しておるのですが、今回の条約自身は、御承知のように、北の部分についてはこの条約では何も取りきめてない。これは先ほど来のお話で非常に明らかになったと思う。私はしばしば申し上げるのだが、北鮮の部分はこれは白紙でございます。今回そういうことについては何ら取りきめをいたしておりませんということを申し上げておりますが、ただいまのお話から、もしも北と、それから韓国と、両方を承認しろというような御議論でありますならば、それこそこの単一国家の実現をはばむものじゃないか、私はそれを非常に心配する。だから、ただいま単一国家の実現を心から願っておるというその立場におきまして、どういう処置をとるのがいいのか、これが、ただいま言われるように、韓国承認するのか、あるいは北を承認するのか、こういうことで石橋君の話も変わった結論になるのじゃないか、私はかように思います。私どもが韓国承認するという、これはもう最初から平和条約以来ずっと交渉相手にしておる。ところが、北を承認した二十三ヵ国ですか、これらの国々は、北を相手にして交渉して、そして韓国を相手にしておらない。だから、この点をはっきり明確にしておかないと、ただいまるる御説明になりましたが、私どもが南北の統一をはばむものでない、このこととも関連のあるものでございますし、また、どういう立場において日本がただいまの韓国と交渉を持つか、また、北の部分についてどういう考え方を持っておるか、これの理解がなかなかいきにくいだろうと、かように思いますので、よけいなことだったと思いますが、お答えしておきます。
  315. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、総理が南北の統一をほんとうに願うというならば、この際、統一の方式などというものはあまり条件となさらないほうがいいのじゃないかと思うのです。必ず国連方式ということをおっしゃるのですけれども、朝鮮の問題に関しては、国連は戦争の当事者なんです。こういう条件のあることを念頭に置かれないと、国連方式で統一ということをしいることは、これは実現不可能ということにもなりかねぬわけです。だから、ほんとうに統一がいいのだ、希望しているのだというならば、国連方式などということを言わないで、話し合いによる平和的な方法でやるならばいかなる方法でもいい、統一してもらいたいという気持ちを持っている、こうお考えになりませんか。それならば一致します。
  316. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 残念ながら石橋君の御意見に同意するわけにまいりません。私は国連を引き合いに出したと、かように申されるが、国連こそはこの世界における唯一の平和機構でございます。だから、やはり国連方式。また、国連自身が権威を持っておる。その立場から見ますと、この国連方式というものは、ただ単に参考にすべきようなものでなしに、これはやはり、これを採用するかしないかということは重大な問題だ、かように私は思っております。
  317. 石橋政嗣

    石橋委員 これは、幾ら言っても、意見の違うということを総理おっしゃっているのですから、これ以上申しません。  そうしますと、今度の日韓会談、日韓条約、諸協定の成立というものは、決して軍事的な要素を持っておらぬという、そういう御説明に対して、私はお尋ねをいろいろしてみたいと思うのです。  まず第一に、これまた、韓国のほうではことごとに、反共体制の確立、これができるのだということを言っております。これも私たくさんここに控えてきておりますが、長くなりますから、韓日会談白書の一番最後の結論のところだけ読みましょう。「韓日間の国交正常化は、単にわれわれにだけ関係のあることではなく、激動する国際情勢、とくに極東における反共堡塁を強化するために是が非でも実現すべき命題であることにかんがみ、当事国である日本を初め、アメリカ、ひいてはドイツ等の自由友邦諸国のこれに対する要請も高まっている。同時に韓日間の国交正常化によって、韓、米、日の三角関係の連帯を強化して、国際的な経済協力体制を促進させ、国家的には勝共統一のための自立経済体制の確立と経済的繁栄を成就する基礎が築かれるということは、誰も否認出来ない事実である。」、こういうふうに明確に言っております。国会におきます丁一権総理、李東元外務大臣、一貫してこういう立場をとって説明をしておられます。反共堡塁、あるいは日本経済援助によって韓国の力が強くなって、勝共統一ができる、こういう考え方韓国のほうでは終始主張し続けておるわけです。日本側では否定しておりますけれども、向こうでは堂々と述べておりす。  とにかく、ここで言いたいことは、いま世界の焦点はアジアです、私に言わせれば、ことしはアジアの年です。残念ながら、いい意味じゃないんです。世界じゅうの紛争がアジアであっちこっちで火をふいている。まことに情けない状態ではございますが、そういう意味でのアジアの年です。その危機は一体何が原因か。たどっていけば、結局アメリカと中国というものが出てまいります。そして、このアメリカにつながる軍事同盟を持った国として韓国が浮かび上がってきます。台湾が浮かび上がってまいります。日本が浮かび上がってまいります。東の共産の側もそういうことになります。この中でも特に、本来ならば一つの国であるべきところが大国の恣意によって不自然に分割されておるという部分が最も危機的要素を多く持っております。朝鮮であり、ベトナムであり、台湾です。非常に対立が激しい。その対立の激しいところで日本はどちらを支持していますか。どちらと結んでおりますか。これはもう明々白々です。対立する大きな二つの力の中にあって、日本は片一方の陣営のアメリカと安保条約を結んでいるのです。韓国もアメリカと軍事条約を結んでいるのです。台湾も結んでいるのです。この白書にもいわれておるように、ここで三つの国が軍事的にも結束を囲めることができた、こう言うのも決してゆえなきことではないかと私は思います。時間が急がれておりますから、私は、その点では意見を述べるにとどめて、質問に入ります。  八月十日の韓国の特別委員会におきまして、丁一権総理は、「韓国に駐とんしている国連軍は国連決議によって派遣されており、また再び南侵があるときには即時自動的に報復をしなければならない義務を持っている」こう述べておりますが、これは間違いない、こう判断されますか。
  318. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねになりましたことは、これは、国連軍の韓国に駐留している目的が、南侵があればこれを守るということ、こういうことだと思います。  ただ、先ほどの問題で、少し誤解を受けると困りますから、一言私は、お尋ねではございませんが、お答えしておきたい。それは、いわゆる反共体制ということばです。反共体制――なるほど私は共産党はきらいなんだから、そういう意味で、いつも申し上げるように、日本の国は民主主義で、そして自由主義で、この国をりっぱにするんだということをいつも言っておる。だから、私は、そういう意味で反共だといわれることはたいへん光栄に思う。ただ、問題になりますのは、反共体制ということでなしに、反共軍事体制というのが問題なんです。軍事という二字があるかないかでたいへん違ってくるのです。だから、国民自身は、先ほど来言われる反共体制というそのことばの中に、軍事という、反共軍事体制、こういうことに誤解をされないことを私は希望するのです。しばしば社会党の方は、いわゆる軍事的に入るんだ、かように言われますが、それならば、諸君がしばしば主張するところの日本の憲法はどうなさるのですか。日本の憲法は、はっきり、紛争を武力解決しないのだ、戦争を放棄したんだ、こういうことをいっているじゃないですか。また、自衛隊法は、はっきり自衛隊の目的というものを明確にしておる。こういう法律があるにかかわらず、特に軍事体制、かようなことばを使われることは――軍事体制は使われないが、それと開き間違うような、いわゆる反共体制ということばで、そうしてこれを軍事体制に結びつけられることは、私はごめんこうむりたいのです。国民は十分この点を明確にして理解してもらいたい。だから、同じように石橋君が習われるけれども、私はそこは違っておる。私は共産党はきらいだけれども、いわゆる反共軍事体制、そういうものはつくっておらない。はっきり申し上げます。
  319. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、いま私が丁一権総理ことばをそのまま用いまして、このとおりかと言ったら、このとおりだとおっしゃったわけですが、問題は、またそのあとにこういうのがあるのです。「日本が国連における自由陣営国家の一員であるならば、国連軍のワクの中で、継続してこのような事態が到来するならば貢献するものと予想されます。」こういうことを言っております。すなわち、再び南侵があったら、韓国におる国連軍は直ちに自動的に義務を果たす、その場合に日本は、国連支持であり、自由主義陣営の一国であるから、この国連軍のワクの中で、継続してこのような事態が到来するならば貢献するものと予想されると言っておりますが、この点についてはいかがお考えですか。
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの国連軍に協力するということが、軍事的にのみ、あるいは派兵するとか、こういうように考えていらっしゃったら、日本は憲法並びに自衛隊法でさようなことはございませんから、派兵はいたさないということがわかるわけです。ただいま、国連に協力というような意味では一体どうなのかということですが、いわゆる吉田・アチソン協定、覚え書きですか、交換公文、さらにまた、それを受けた岸・ハーター交換公文というようなものがある。こういうことで、いわゆる軍事的な積極的な派兵というような問題ではございませんが、その他の事柄におきまして、私どもが国連の目的遂行に容易なように協力することはあり得る、かように理解していただきたいと思います。
  321. 石橋政嗣

    石橋委員 憲法があるから海外派兵なんかあり得ないとおっしゃいましたが、従来の政府の説明を思い出していただきたいと思います。自衛隊の海外派兵は憲法上できないけれども、国連軍として活動する場合は別である、このように林法制局長官答弁しておりますよ。また変わったんですか。
  322. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げます。  この国連軍の協力の問題でございますが、国連軍という場合にはいろいろな形のものがあることは御承知のとおりでありますが、武力の行使にわたる面であれば、これはむろん憲法九条の容認するところでないことは確かでございます。同時にまた、武力の行使の面に全くわたらないという場合には、理論の問題としてはあり得ると思いますけれども、やはり、南侵の場合にどうするというようなことになれば、これは武力の行使を切り離しては考えられないと思いますので、先ほど総理が仰せになりましたように、憲法九条はこれを許さないということになると思います。
  323. 石橋政嗣

    石橋委員 この点については、椎名外務大臣が、九月の二十三日、ニューヨークの記者会見において、「平和維持のための国連活動に自衛隊を海外に出すことをただいま検討中である」、こういうことを言ったというのが日本の新聞には載ったんです。しかも、昭和三十五年の四月二十八日の安保特別委員会におきまして、先ほど申し上げたように、林法制局長官は、全然国連軍として自衛隊が出ていく場合は別問題だと言っているんですよ。何だったら読んでみましょうか。当時の会議録の三二ぺ-ジを開いてください。「かつて石橋委員にも私お答えしたことがございますが、いわゆる国連の決議あるいは国連軍あるいは国連警察軍という問題と海外派兵という問題は、これはおのずから私は別問題だ、これは私は可能だとは必ずしも申しませんけれども、いわゆる海外派兵の問題とは別問題として考えるべき問題である、かように考えております。」、はっきり言っていますよ。だから、全然封じられていないんです、国連軍としての活動は。純然たる海外派兵というものと区分けして、国連軍として自衛隊が動くという場合には何か幅があるんです。このことだけは間違いないわけですね。これは私、総理大臣にお伺いしておきます。
  324. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げておるように、いわゆる法律論が――あなた、法律的な議論をお聞きになりましても、これじゃなかなか満足されぬのか知りませんが、それよりも、私ども、実際問題としていかにこういう場合に処理するかということが政治家として一番大事なことなんです。私が先ほど来申し上げておるのは、法律論がどうあろうと、また、先ほど来法制局長官も申しておりますように、いわゆる軍事行動、戦闘行為はやらない、そういう場合はちょっと違うというような議論で、私はだいぶん話が違うと思っておりますがね。
  325. 石橋政嗣

    石橋委員 瞬間を非常に急いでいるようですから、それじゃ、もう一つお伺いします。  先ほど、南侵が始まったら自動的に在韓国連軍は報復行動を起こすとおっしゃいましたが、その場合には戦場は朝鮮に限らぬということが国連軍によって声明されておることを御承知でしょうね、総理大臣
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はちょっとそれを記憶しておりませんので、事務当局から説明させます。
  327. 石橋政嗣

    石橋委員 先ほど簡単にお認めになりましたけれども、非常に重要な意味を持っているんです。私は北鮮のほうが南に侵入してくるかどうか知りません。しかし、とにかく、そういう名目であろうと何であろうと、北が南に侵入してきた、その場合は在韓国連軍は直ちに発動できるように、行動できるように、毎年、毎回国連決議をやっております。そのことはお認めになりました。しかも、その場合は戦場は朝鮮半島に限らぬぞということを国連軍は言明しているのですよ。外務大臣、知っていますか。防衛庁長官、知っておりますか。これほどの重要なことをだれも知らないとは言えないはずです。知っている方はひとつお答えください。
  328. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どこでどういうふうにきまっているのか、私は知りません。
  329. 石橋政嗣

    石橋委員 かくも重要なことを知らないでは、朝鮮問題に対処できないんです。それでは紹介いたします。これは、朝鮮戦争が、休戦協定が結ばれて停戦になりました。そのときに、当時朝鮮に派兵をいたしました十六ヵ国がワシントンにおきまして共同政策宣言を発表しているわけです。一九五三年七月二十七日のことであります。朝鮮休戦に関する十六ヵ国の共同政策宣言、私はここに持っていますけれども、時間をとりますから主要な部分についてのみ読み上げますと「われわれは、国際連合の原則に挑戦する武力攻撃が再発する場合には、世界平和のために再び団結し、急速にこれに対抗することを確認する。このような休戦協定の違反は重大な結果を招くものであるゆえに、戦闘行為を朝鮮国境内に同根することは不可能となろう。」こういう声明をしているんですよ。しかも、だれも知らないんです。すなわち、今度朝鮮で戦争が起きるようなことになったならば、朝鮮から越えて中国の中に入っていく。休戦のそのときに共同宣言をやっているんです。これほど重要な問題だということを、これこそ念頭に置いておいてください。こんなことも知らないで、簡単に、南侵があれば在韓国連軍が動くのは当然です、日本もある程度の協力をするのは当然です、そんなことを言うから国民が心配するんですよ。
  330. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただ、具体的にどこでどういうふうにきまったかということは知りませんでしたが、いまお読みになったことはここにありますが、これは当然のことだろうと思う。世界の、この極東の平和というものが脅かされる場合には、これに有効に対処するということは当然のことだと思います。
  331. 石橋政嗣

    石橋委員 今度あなた方の言う北鮮が南侵してきたら、国連軍が直ちにこれに対抗する、そのときは朝鮮国境を越えて中国に行くのが当然だという。ほんとうですか。
  332. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、そういう場合には、戦局が発展して、この地域だけの軍事行動では済まされなくなるかもしらぬという政治的な見解をここに示しておるのである。でありますから、相手の出方がおとなしければ適当にやる。それから、なお平和と安全が脅威されるならば、それに対して有効な方法をとるということになるのであります。ただ、この場合は、あくまで防衛的な態度でこの問題を論じておる。
  333. 石橋政嗣

    石橋委員 この点について、鹿島守之助さんが訳した「アメリカと極東」という書籍の中に、シャノン・マキューンが解説をした文があります。そこにもはっきりと、戦争は朝鮮半島から中国本土にまで拡大することになる、そういう意味だという解説が加わっておるということを申し添えておきます。  それでは、次に最後の質問をいたします。韓国では、軍隊を出動してデモを鎮圧し、言論を封殺し、そして国会においては憲法違反の単独採決をやって、この条約、諸協定の批准を強行いたしました。日本におきましても、十月十二日のデモに対する警察官の態度などというものは、はるかに警備の限界を越えておるということが問題になりました。私は、ここで重大な警告をしておきたいと思います。   〔発言する者多し〕
  334. 安藤覺

    安藤委員長 御静粛に願います。
  335. 石橋政嗣

    石橋委員 警察は、中立公正、不偏不党、こういう立場を貫いていかなくちゃならない、これはもう厳然たることだと思うのです。警察法の第二条第二項を引き合いに出すまでもなく、第三条を引き合いに出すまでもなく、不偏不党、公平中正ということは、これは警察の生命だと私は思います。この警察が、生命ともいうべき中立性を放棄して、特定の政党に奉仕して走狗となり下がるようなことがあったら、たいへんだと私は思います。そういう意味合いにおきまして、これからもデモなどが盛んに行なわれるわけですけれども、厳正中正な立場で警察は行動をしておるし、今後もするということを、国家公安委員長は言明できますか。
  336. 永山忠則

    ○永山国務大臣 厳正公平に、中正に、不偏不党でやる考えでございます。
  337. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、警察官が警察の組織を利用いたしまして特定の政党のために働いたという事実があった場合には、所定の手続をとって厳重に措置をすると確約できますか。
  338. 永山忠則

    ○永山国務大臣 警察官の行為に不当なることがありましたときには、厳重に処断をいたします。
  339. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、私は具体的な例をここで申し上げます。  長崎県警察本部です。これは毎日佐世保警察署その他の署に逓送車を出して公文書などを発送いたしております。聞くところによりますと、それはまことに厳重なものだそうです。カバンにはかぎもかかっているそうです。これを毎日県警本部から佐世保の署に運んでおるそうであります。そして、長崎県には松浦署というのがございます。この松浦署からは、月水金、一週間に三回、松浦署あての分を佐世保署まで取りに行くことになっておるそうです。ところが、十月二十九日の金曜日、松浦署が受け取った逓送物の中に、自由新聞第二号十五部、第三号十五部が入っておったのであります。いいですか。警察の組織を通じて警察官が自由新聞を扱っているのです。しかも、この二号と三号というのは、社会党に対する誹謗の限りを尽くしております。いいですか。「社会党の反対理由はウソだ」、「大衆は国交回復強く期待」、「判明した社会党の脚本」、とにかく、自由民主党の機関紙が警察の組織を通じて警察官の手によって運ばれて、しかも署内においてこれを配付しておる、こういう事実があります。これに対してどういう御意見を持っておられますか。必要があれば名前もみんな発表します。
  340. 永山忠則

    ○永山国務大臣 内容については私もよく承っておりませんが、まあ、アカハタでも、その他いろいろの新聞を警察官も見ることはあるように考えております。内容については、またよく調べてみます。
  341. 石橋政嗣

    石橋委員 私は前提を申し上げているのです。警察官が警察の組織を通じて特定の政党の新聞を配達し、配付しておる、そういうことが許されるのですか。それじゃ、社会新報やアカハタを県警本部に持って行ったらやってくれますか。
  342. 永山忠則

    ○永山国務大臣 執務資料としていろいろなものを読んでおるようなことはあると存じます。
  343. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、警察官が自由新聞を読まれることはかってですよ。自民党の方が警察官に渡すこともかってですよ。そんなことを何も言っていません。県警本部が逓送車をもって運搬をして、そうして末端の警察署まで運んで、そこで警察の幹部が配付をするというようなことが許されますかと聞いているのです。
  344. 永山忠則

    ○永山国務大臣 その具体的事実については聞き及んでおりません。
  345. 石橋政嗣

    石橋委員 総理大臣もいまの一問一答を聞いておられたと思います。私は、必要があれば名前も全部出そうと思います。とにかく、県警本部が警察の機能を利用いたしまして、そして自由新聞を――これは発行所は自民党の本部です。自由新聞を運搬し、配付していることが確認されているのです。こういうことが許されますか。いかがお考えです。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来永山公安委員長が、執務資料としてとっている、そういうものがある、こういうようなお話ですが、これはまあ公安委員長にまかしておけばいいように私は思っておりますので、私は直接これにタッチしません。
  347. 石橋政嗣

    石橋委員 少なくとも、この問題は私は非常に重要だと思います。重要だと思います。というのは、いま出ておりますのは一警察署の問題ですけれども、しかし、少なくとも県警本部から来ておると、こう言っているのです。そうすると、長崎県警に限らず、全国的に各県の県警を通じてやったのではなかろうかという疑いすら出てくるのですよ。もしそういうことをやるとするならば、これは自由民主党が、広報責任者かだれかがそういうことを依頼したということも考えられるのです。長崎県だけならば、自民党の長崎県連が、あるいは特定の自民党党員なり支持者なりが県警に頼んだ、そういうことも考えられます。とにかく、一つの政党の利益のために、公正なるべき警察官が動くということは、これは許されない。この許されないということだけでも表明できませんか。名前を言わなければ言えませんか。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  だいぶん事実を独断していらっしゃるようですが、私も、この事実はよく調べないとわからないだろう、先ほど来公安委員長も、全然これは扱わないと言っているわけじゃないので、公安委員長にまかしてある、私はかように申し上げているのです。
  349. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、この問題は、警察の中立、警察官の中立性の維持という面で非常に重要な意味を持っていると思います。(「それなら名前を言え」と呼ぶ者あり)よし、それじゃ言う。佐世保署から松浦署まで運搬した者は、事務吏員の寺尾四十重という人であります。松浦署内において配付の任に当たった人は、松浦署次長の藤田茂美という警部の人です。私は、これらの人と県警本部長とを証人として喚問していただくことを要求いたします。
  350. 安藤覺

    安藤委員長 石橋君に申し上げます。  ただいまの証人喚問の件につきましては、後刻理事会において御協議申し上げることにいたします。
  351. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、私は質問を終わります。
  352. 安藤覺

    安藤委員長 本日の会議はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることといたします。  理事の方はお残りを願います。  これにて散会いたします。    午後六時十四分散会