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1965-11-04 第50回国会 衆議院 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月四日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 木村 武雄君 理事 園田  直君    理事 長谷川四郎君 理事 福永 一臣君    理事 小林  進君 理事 辻原 弘市君    理事 松本 七郎君 理事 永末 英一君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井原 岸高君    宇野 宗佑君       江崎 真澄君    大平 正芳君       金子 岩三君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    田口長治郎君       田澤 吉郎君    田中 龍夫君       田中 六助君    田村 良平君       中川 俊思君    永田 亮一君       濱野 清吾君    早川  崇君       藤枝 泉介君    本名  武君       増田甲子七君    三原 朝雄君       毛利 松平君    山村新治郎君       赤路 友藏君    石野 久男君       石橋 政嗣君    戸叶 里子君       中村 重光君    楢崎弥之助君       野原  覺君    穗積 七郎君       松井  誠君    山中 吾郎君       横路 節雄君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         農 林 大 臣 坂田 英一君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正已君         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙二郎君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (国際金融局長         事務代理)   村井 七郎君         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         海上保安庁長官 栃内 一彦君  委員外出席者         参  考  人         (評論家)   内海 丁三君         参  考  人         (国士館大学教         授)      田村 幸策君         参  考  人         (評論家)   御手洗辰雄君     ――――――――――――― 十一月二日  日韓条約批准等反対に関する請願松井政吉君  紹介)(第二五二号)日韓条約批准促進に関す  る請願毛利松平紹介)(第四一七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(条約第   一号)  日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出第一号)  財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出第二号)  日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出第三  号)      ――――◇―――――
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を行ないます。田口長治郎君。
  3. 田口長治郎

    田口(長)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、今回締結になりました日本国大韓民国との間の漁業協定及びこれに附帯する附属書交換文書あるいは声明等につきまして、政府に対して質問を行ないたいと思うのであります。  まず、この漁業問題につきましては内容が非常に複雑でございます。一般国民としてなれていないことばかりでございますから、私自身も平たい質問をいたしますから、政府でも平易に明快にひとつお答えを願いたいと思うのでございます。  この漁業協約締結に非常に骨を折られた。やっかいな問題であった。この問題の背景には、この水域の非常に重要な漁業意味がある。あるいは、日本といたしましても韓国としても、国の実態から申しまして、この水域に大きく依存をしておる。たとえて申しますというと、日本で一年の漁獲高は六百七十万トン、あるいは六百八十万トンでございますが、この狭い水域で約八十万トンの魚をあげておる。言いかえますというと、日本人の保健食糧に必要であるたん白の一二%程度がこの海であげられておる。また、韓国ではこの海で百三十万人の漁民の生活をさせなければならぬ。こういうような漁場の価値から申しましても、韓国日本との間の非常に複雑な状態から申しましても、また、一面日本漁業韓国漁業との格差が非常に大きい。こういう背景のもとにこの漁業協約締結されたのでございますが、私は、その締結にあたりまして、理念としては、この漁業協定前文に掲げてある、これが理念になると思うのでございますが、政府として具体的にどういう基本的の態度締結をされたか、その点をまず第一にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 坂田英一

    坂田国務大臣 今度の韓国日本との漁業協定締結についての基本的な態度はどういうことであるかという御質問であると存じまするわけであります。これにつきましては、もちろん私どもとしましては、李ラインの実質的な撤廃を目途とするということ、それにまた、現在の水域においてでき縛る限り日本漁業実態をそこなわないようにしてまいりたいという問題、なお、根本的には、先ほどお話のように、漁業資源の確保という問題を念頭に置きながら、こういう点について十分検討を加えまして、でき上がったようなわけでございます。
  5. 田口長治郎

    田口(長)委員 ただいまの政府答弁で、基本的には、李ラインの実質的の撤廃、第二に、日本漁業操業実績を確保する、第三に、この共同漁場資源を保存する、こういうような御答弁がありましたのでございますが、その第一点の李承晩ライン撤廃問題につきましては、去る二十六日小坂委員及びその後春日委員から政府答弁を求められたのでございます。  その御両所の質問の要旨は、韓国政府協定成立後も李ラインが存続するものと主張しており、協定にはどこにも李ライン撤廃が明記されていないので、李ラインは残るのでないか、また、協定が終了すれば李ラインは直ちに復活するのではないかという主張をするものがあるがどうか、こういうような御両人の質問のように私は記憶するのでございます。  この質問に対して、政府答弁は、私のメモと記録とでは、第一に、漁業協定を一読すれば、この協定によって李ラインが実質的に撤擁されることはだれが見ても明白である、すなわち、協定前文では、この協定成立の大前提として、公海自由の原則がうたわれており、これによって、この協定に特別の規定がある場合を除くのほかは、一切韓国によってわが国漁業が一方的に規制されることがないことが確認されておる、続いて協定第四条では、協定第一条によって設定される十二海里までの漁業水域外側取り締まりの権利及び裁判管轄権漁船の属する国のみが行うといういわゆる旗国主義規定が設けられておる、この結果は、共同規制区域内はもちろん、韓国が設けておる底びき網漁業禁止区域をも含めた一般公海において、わが国漁船韓国官憲による不法な停船、臨検、拿捕連行等取り締まりは一切受けないことになる、この点協定上何らの疑いもない、第二に、韓国政府李ラインはなお健在である旨言明しておると言われるが、それは正確でない、韓国側の言っておることは、李ラインの実質が漁業協定によって確保されたということ、また、国防上の理由による李ラインは健在であるということである、国防上の李ラインについては、このような李ラインが友好国であるわが国との間に存在することは考えられない、要は関係水域におけるわが国漁船安全操業の確立ということであって、協定によってこれが確保されておる以上、韓国李ラインということばを国内的に使おうと、わが国には無関係である、第三に、従来の李ラインを合法化しておる韓国国内法、すなわち魚族資源保護法を改廃するかどうかということについては、これは韓国自身がきめる韓国の国内問題として、わが国の関知しないところである、もし韓国がこの関係法をそのままにしておいたとしても、それは、協定に矛盾する限り、国際法国内法に優先するという原則からしても、協定相手国であるわが国に対しては効力を持たないものとなる、第四に、協定失効李ラインが直ちに復活するかという問題については、日韓両国漁業協定を誠実に実施し、円満に実施していけば、韓国側でもこの協定を維持することにおいて利益を見出すようになるであろうから、協定を破棄することが可能となる時期が来ても、実際問題としてはみだりに破棄するようなことは考えられない、いわんや、漁業協定の最も重要な意義の一つは、韓国側が公海自由の原則を明文をもって確認をしたことである、季ラインはもともと国際法上の原則に違反する不法不当なるものであるから、協定が失効したからといって李ラインが合法的に存在し穫るようになるなどということはあり得ないことである、こういう答弁をしておられるのでございますが、この私のメモ及び記憶が間違っておるところがあれば指摘していただきたいのでございます。
  6. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまお話しのとおりでございます。
  7. 田口長治郎

    田口(長)委員 政府のただいまの答弁によりまして、私のメモ、先日からの質問に対する政府答弁メモにつきましては、そのとおりである、こういうような答弁でございます。  この李ラインがどうなるかということは、これは日本漁業者にとって最大の関心事であるのでございます。こういうような関係からいたしまして、私は、政府答弁が、この漁業協定書、あるいは附属書、あるいは合意議事録、あるいは大臣声明書、あるいは交換文書、こういうところで矛盾するところがないかと、すみからすみまで調べてみたのでございますが、何にも疑問点を発見することができなかったのでございます。したがいまして、私は、いろいろな議論はありましょうが、この漁業協定その他によりまして日本漁船のあの海域における安全操業というものは完全に保障されておると、かような結論に到達をいたしましたのでございます。現に、漁業協定締結されましてから今日まで、あの水城においては一そうの拿捕船も出ていないのでございます。この事実から考えまして、この李ライン撤廃し、拿捕漁船、ああいう不幸なことをなくする道は、やっぱりこの漁業協定締結する、このことであったということを、この事実によりまして私ははっきり認識をいたしたのでございます。  私、この機会日本漁業者に対しまして一言お願いをしておきたいと思うのでございます。それは、この協定ができました以上、日本漁業者は、魚を追っていったとか、あるいは潮流関係だとか、あるいは風の向きによってとか、いろいろな事情、そういうような事情があるにいたしましても、いかなることがあっても今回の協定に違反しないように、こういうことを考えるのでございまして、日本政府誠心誠意協定を順守して円満に実施していく、このことが非常に重大であろうと思うのでございますから、全国の漁業者に、この機会を借りまして一言お願いを申し上げておく次第でございます。  八月の十五日と思いますけれども、韓国国会におきまして、この協定日本が結んだが、一体日本はどの程度に真剣にこの協定を守っていくだろうか、どう信じられるだろうか、こういう議員の質問に対しまして、車農林部長官は、日本は世界のたくさんの国と漁業協約を結んでおる、今日まで日本が意識的にこれらの協約に違反した、そういうような事実は全くない、かような観点から、今回協定を結んだ以上は、日本としてはこの協定を順守する義務が生じたんだ、したがって、今日まで以上に日本政府はこのことについて注意をするだろう、こういうことを申しております。さらに、その後段には、もし日本政府誠意をもってこの協定を順守しない、しかもそれが継続的である、協定に明らかに違反をする、そういうような事態になったら、そのときは両国はおのおのの立場において他国の漁船を取り締まることもできるし、それがたび重なれば協定をいつでも破棄することができる、こういうことを答弁をしておるのでございます。この農林部長官期待をしておる、日本漁船協定を順守する、この期待に対しまして、日本政府の施策も、また日本漁民心がまえも、ひとつぜひ沿うていただきたい、かように考える次第でございますが、これに対する政府答弁をお願い申し上げます。
  8. 坂田英一

    坂田国務大臣 ごもっとものことでございまして、政府におきましても、この協定完全履行ということについては、十分の注意を払い、また、着々準備を進めております。なお、漁業者関係に対しましても、いろいろとその間の状況をよく説明も申し上げ、また、間違いのないように十分説明もいたしておりまするし、漁業者といたしましても十分それを了解いたしておるような次第でございます。  なお、取り締まりについては、巡視船の問題とかいろいろございまするので、それらについての予算措置等についても、でき得る限りのことを考えておる次第であります。  なお、民間におきましても、この漁業操業秩序等につきましては、向こうの団体側との間の民間協定という意味で、着々いまそれらが行なわれる手はずに相なっておる次第でございます。
  9. 田口長治郎

    田口(長)委員 ただいま私のお伺いいたしましたことは韓国政府当局気持ちでございますが、韓国漁業者気持ち、この問題につきましては、韓国漁民非常対策委員会というものがあるのでございますが、この委員会委員長である李さんが、漁業協定ができたら直接の利害関係者である両国漁民代表資源保護技術協力など将来の問題について話し合うことが急務である、日本漁船韓国漁民のことを考えないで優秀なる技術と装備によりをかけて魚をとり尽くすようなことがあれば必ず衝突が起こるだろう、これからが大切だ、こういうことを言っておるのでございます。このことばの裏には、韓国民は資金や技術協力以上に、日本漁民がおくれておる韓国漁業をあたたかく導いて、かつてあった李ラインの海上で仲よく操業できる日を待っておる、こういうような意味が含まっておると思うのでございます。この韓国民気持ち、感情、この点を害しないように、政府としても漁民としても、特に注意をしなければならぬ、かように考える次第でございまして、私は、以上の質問で、この漁業協定李ラインに対してどういう処置をしたか、この処置の実行について日本政府心がまえ甘木漁民心がまえ、こういうことをお伺いした次第でございまして、この問題はこの程度にとどめておきたいと思うのでございます。  第二の問題といたしまして、政府は、この操業実績をある程度確保した、こういうような答弁であるのでございますから、操業実績がはたして確保されておるかどうかということにつきまして、いまからお尋ねをいたしたいと思うのでございます。   この実績を確保するという問題につきましては、附属書の第一項の最高出漁隻数又は統数、この問題でございますが、これで、五十トン未満漁船による底びき網漁業については百十五隻、五十トン以上の漁船による底びき網漁業については二百七十隻、まき網漁業については最高百二十統、六十トン以上の漁船によるさば釣り漁業については十五隻、こういう協定になっておるのでございますが、これらの海域中で共同規制区域、この中で従来操業しておりましたこれらの漁船実態を明らかにしていただきたいのでございます。
  10. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  今回の共同規制の対象になりましたものは、まき網漁業沖合い底びき漁業以西底びき漁業でございます。操業実態に今回の交渉におきまして影響を与えないというのが基本的な交渉の姿勢でございました。  まき網漁業につきましては、最高隻数が百二十隻でございますが、現在許可をいたしております。この海域におきますものが百五十七隻でございます。ただ、百五十七隻の中には、現在休業をいたしておりますもの、あるいは他の、この共同規制水域関係水域でございますが、その外側操業いたしておりますもの、それから、遠洋まき網の組合におきまして、資源保護のために現在十隻程度自主的に規制をいたしております。そういうものを除きますと百五隻という数字に相なりまして、ほぼ漁業実態にマッチいたしておるわけでございます。それから、六十トン未満のものにつきましても、同様に十四、五隻と判断をいたしまして、現在操業いたしておるものが一〇〇%操業できる、こういう形に相なります。  以西底びきにつきましては、許可船は御承知のとおり七百八十と非常に多いのでございますが、これは、台湾海峡の近くまで、いわゆる東シナ海を含めまして全部の地域操業をいたしておるものでございます。今回の共同規制水域はそのごく一部でございまして、過去数カ年におきまして共同規制水域で、これは正午位置がわかっておりますので、正午位置におきまして操業いたしました実態数を抑えておるわけでございます。  沖合い底びき漁業につきましては、この地域におきますものは二百三十隻ほどの許可がございますが、これは先生御承知のとおり操業区域制限をされておりまして、今回の共同規制水域操業し得る許可を持っておりますものをほぼ拾い上げた数字が今回の最高隻数でございます。  なお、最後に、沿岸漁業につきましては、ここ数カ年出漁の態様が抑えられておりましたが、全体で千八百隻ほどの実績を持っておりますが、この中には対馬の東海岸のイカが入っておりまして、千七百隻で操業実態に支障はない、かような実態でございます。
  11. 田口長治郎

    田口(長)委員 出漁隻数の問題をただいま御質問申し上げた次第でございますが、第二項の漁船規模、底びき網漁業のうち、トロール漁業以外のものについては三十トン以上百七十トン以下、トロール漁業については百トン以上五百五十トン以下、そして東経百二十八度以東の水域においては云々、まき網漁業、これは網船四十トン以上百トン以下、かような制限になっておるのでございますが、いま操業しております日本のこれらの漁業漁船、そのトン数はどの程度で、この制限で押りえられる、こういうようなことがあるかないか、その点を明確にお願い申し上げます。
  12. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  まき網漁業の現在操業いたしておりますものは四十トンから九十一トンでございます。ただ、一ぱいだけ二百三十四トンの網船のものがございます。今回共同規制で抑えました数は四十トンから百トン、なお、百トン以上のもの一ぱいを特別の例外に扱うということでございますから、現状との間では、現状のほうが共同規制トン数制限より小さいという形でございます。  それから、底びきにつきましては、三十トンから百七十トンと押えておりますが、現在は二十トンから五十トンということで、二十トンはごくわずかでございますので、むしろ共同規制制限実態より高い。なお、トロールにつきましては、現在五百四十五トンが最高でございますが、共同規制は、五百五十トンということに相なっておりますので、暫定規制によりますところの船の船型制限現状影響を与える点はないと、かように存じます。
  13. 田口長治郎

    田口(長)委員 ついでにこの網目制限集魚燈光力制限、これをここにずっと書いてありますが、この大いさ、この光力、これは現在日本漁船が使用しておるものと大体その内輪である、あるいは一致するものであるかどうか、その点を簡単にひとつ御説明願います。
  14. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。光力制限現状と全く同じでございます。網目制限につきましては五十四ミリ、現状五十四・五ミリ、以西沖合い制限が三十三でございますが、現状は二十七ミリないし三十ミリ、かような状態になっております。
  15. 田口長治郎

    田口(長)委員 附属書によるいろいろな制限日本漁業現状、こういうことについて御説明を願いましたが、その次に私は、大韓民国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録の第二項に年間漁獲基準量、こういうものが規定されておりまして、共同区域内の規制を受ける漁業では、年間漁獲基準量が十五万トン、ただし上下一〇%の変動があり得る、そうして日本国内におきましては、この十五万トンの内訳を、五十トン未満漁船による底びき網漁業については一万トン、五十トン以上の漁船による底びき網漁業については三万トン、及びまき網漁業と六十トン以上の漁船によるサバ釣り漁業については、十一万トン、こういうことを規定をしておるのでございます。この年間の総漁獲量の問題は、私は、これは行政指導の目標である、この数字が多少動きましても、動かぬでも、これは協約に違反したものではない、こういうふうに解釈をするわけでございますが、それで間違いありませんかどうか、御答弁願います。
  16. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。今回の日韓漁業交渉におきまして、直接数量制限をしたいというのが韓国側の当初の希望でございました。直接数量によります規制ということは技術的にも非常にむずかしい問題を含みますので、協定最後の結果では、先ほど来御説明いたしておりますとおり、隻数でお互いにコントロールしよう、したがって、協定条約上の義務隻数による義務でございます。ただ、隻数だけではその漁獲資源保護立場において不十分な点があるのではないかという議論も残りまして、その隻数をコントロールする一つメルクマールとして、条約上の義務ではございませんが、メルクマールとして数量というものを取り込みました。ただその数量は、いま御指摘のとおり、きちっとやるというわけにはまいりませんので、一定の、一割ないし二割のアローアンスをつけまして、その数量に達しそうな段階において隻数を調整する、かような結論でございます。なお、そこに使いました漁獲量、これは最近の実績にほぼ見合うものでございます。
  17. 田口長治郎

    田口(長)委員 ただいま申し上げました基準量は、大体最近における日本漁船漁獲の実数に見合うものである、決して切り込んではいない、こういうような答弁のようでございました。この十五万トンの漁獲を船一そう一そうに割り当てるということはこれは不可能と思うのでございますが、私は、指定をされました水揚げ港、ここに調査員を置かれて、そうして水揚げした魚の集計を絶えず一そう一そうごとにとっていく、その集計で計算するよりほかに方法がない、かように考える次第でございますが、その点はどうでございますか。また、この(b)項に示しております水揚げ指定港、この港について、現時点において予定された港がきまっておれば御答弁を願いたい。まだ研究中であればそのままでけっこうと思います。
  18. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。この数量を船ごとに割りつけるということは、御指摘のとおり、実行上適当でないということで、水揚げ港を指定いたしまして、集計をいたして船の出方をコントロールする、かような考え方でございます。それから水揚げ港等につきましては、御承知のように以西まき網のようなすでに実体がきまっておりますものは大体それを指定する予定でございますが、沿岸漁業等はいま検討中でございます。
  19. 田口長治郎

    田口(長)委員 大体漁獲数量の問題につきましては、政府答弁されたことに近いものと考えるのでございます。  その次に、日本国農林大臣の声明書、この第一項の問題につきましては、先ほど東海岸における北部の底びき網漁業、この問題につきまして御答弁があった次第でございますから、それを了承いたしまして、第二の、千七百そうを上回ることがないように指導する、こういうことになりまして、これにつきましても一応答弁があったのでございますが、各県に対する割り当ての作業はどの程度まで進んでおりますか、重ねてお尋ねいたします。
  20. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。沿岸漁業規制は、いわば大臣声明による自主規制でございますが、千七百の範囲内にとめたいということでございますので、考え方としては、その資格の標識を各県に振り分けることによって、その標識を使って、県がその規制水域に出す船を調整するという形で処理するつもりでございます。現在のところ、事務的な内部作業は着々進行いたしておりますが、条約そのものが国会の御審議中でございますので、役所の内部の段階にとめてある次第でございます。
  21. 田口長治郎

    田口(長)委員 いままでの質疑応答によりまして、政府が第二の柱としてお考えになっておる操業実績の確保と、この内容につきまして大体はっきりしたわけでございますが、日本漁業者立場から申しますと、政府のとった実績は、これは李ライン設定後の状態からとったのではないか、李ライン設定されるまでは、日本漁船はまだまだたくさんの隻数出漁しておった、こういうような気持ちがあるようでございますけれども、私は、いろいろな事情から、この李ライン設定以来今日まで、困りながらも日本漁業が継続をしてきたいわゆる最小限度の実績、これが今日政府がとっておられる実績でないかと思うのでございます。いろいろあとで述べます韓国漁業との関係で、これは最小操業実績、この線をとるのもやむを得ないことである、かように考えておるのでございますが、その点につきまして政府答弁をお願いしたいと思います。
  22. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。操業実績の確保という問題でございますが、李ラインの前にマ・ラインがございましたし、マ・ラインの前に戦争という事態がございました。したがいまして、私ども、単純に実績をとるという考え方でなく、先ほど御説明いたしましたとおり、まき網等におきましては、あるいは底びき等におきましては、現在ある船を稼動せしめるという立場から数字を考えておるわけで、単純に李ライン下における数字をとるというわけではございません。最近の実態、船の能力を加味して、日本漁業としてその資源を考えつつ必要な漁獲隻数を確保する、こういう基本線で進んでまいった次第であります。
  23. 田口長治郎

    田口(長)委員 以上の答弁で、漁業資源の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存処置を目的とする以上、操業実績の確保という点では、わが漁業者も大体納得をするんじゃないか、さように考えるのでございますから、次の問題に進みたいと思うのでございます。  政府は、この日韓漁業条約で、李ライン撤廃操業実績の確保と、それに資源の保存ということも加えられましたが、大体いまの二本の柱を強く考えておられるように考えるのでございます。私は、この政府の二本の柱に、もう一本柱を立てなければいかないのじゃないか、こういうことを常に考えておるのでございます。それはどういう柱であるかと申しますと、この地図を開いて韓国の地形を見てみますと、その周辺の黄海漁場あるいはシナ東海漁場、朝鮮海峡周辺の漁場、この漁場は世界で有数なる漁場でございますが、この漁場の中に韓国が突き出ておる。表現を変えますと、優秀なる漁場の中に割り込んでおる、こういうような地形を私どもは考えなければならないと考えるのでございます。第二の問題といたしまして、韓国の人口問題を考えてみなければならぬ。御承知のとおりに、南鮮よりも北鮮は面積が広いのでございますが、人口の分布は、その広い北鮮に千五十万人、狭い南鮮に二千四百万人程度が住まっておるのでございます。この南鮮の二千四百万人がどういうことで生活をするか。かようなことを考えました場合におきまして、韓国の山は御承知のはげ山である。農業は、これに依存していいかと申しますと、これは土地改良が一つもできていない。かつて李承晩大統領が、これではいかないということで、土地改良に着手いたしましたところが、農民の猛烈な反対にあいまして、次の大統領選挙に関係をするということをおそれまして、直ちに土地整理事業というものを中止をしてしまいまして、今日に至っておるものでございます。  そういたしますと、この二千四百万人の国民は、農業にもたいして依存ができない、こういうようなことでございまして、私どもはかって見たことはないのでございますが、ソウルに行きましても、釜山に行きましても、山の中腹まで小さい家が密集をしておる、こういうような状態になっております。この二千四百万人の国民がどこに生活の道を求めるか、こういうことを考えてみますと、これはどうしても海に向かっていくよりほかに方法がない。韓国の人口経済統計によりますと、三十六年に韓国漁民は八十六万人であったものが、最近では百三十万人になっておる。これは農業あるいは山、あるいは工業がない。こういうことで、二千四百万人が当然出ていくのは海であると思うのでございます。かような観点で、たくさんの人が従事しておるのでございますから、この漁業者というものは非常に生活レベルが低い。私も正確なる数字を押えておりませんが、普通韓国漁業者年間の所得は三十九ドル、こういうことを言っておられます。日本円に換算いたしますと、一万四千円である。かようなことで、しかも一家族が四人といたしますと、五百二十万人の人が海でめしを食わなきゃならぬ、こういうような運命にあるように考えるのでございます。  こういうたくさんの漁業者が従事しておる。そうして一年間の所得は非常に低い。これはどういうことであるかと申しますと、結局漁業技術、装備、これが非常におくれておる。こういう関係でございまして、この点から、この付近の主要漁業でありますところの底びき網漁業あるいはまき網漁業あるいは五十トン以下の小さい底びき網、こういう漁業実態と、日本のこれらの漁業実態とをひとつ明らかにしていただきたいのでございます。
  24. 坂田英一

    坂田国務大臣 韓国漁業の問題は、いまおっしゃったとおり、漁民は百三十万で、日本の六十二万の倍以上でございます。それにもかかわりませず、漁船等は非常に少ない。特にその中で動力漁船のごときはほとんど一割にも達していないような程度でございまして、その所得のごときも、日本漁民のまだ二十分の一くらいの程度にあるように思われます。いまお話しのとおりでございまして、そういう関係から、韓国漁民がいま海のほうに出てまいるということは、これはいろいろの産業ももちろん発展すべきでありましょうけれども、非常に大きな発展の場所であることは言うまでもございません。さような関係でございまするので、われわれといたしましては、この実情に即応して、韓国漁業協力という問題に努力を払わなければならぬ、かように存じておる次第であります。
  25. 田口長治郎

    田口(長)委員 農林大臣から一応の答弁がございましたが、私の手元には、あのかいわいにおける主要漁業でありますところの底びき網のうちで、五十トン以下のものは韓国が百二十五そう、日本が大体二百三十三そう、五十トン以上のものが韓国が二百八十、日本が七百六十、トロール船は韓国が百トン以上のものがわずかに三隻、六十トン未満が二十五隻、合計二十八そう、日本は二百トン以上のものが二十隻である。まき網が四十トン以上のものが韓国が二十統で、日本は三百五十七、あの近傍で操業するものが百五十七と、こういうような数字になっておりますが、この数字自体は非常に接近をしておるようでございますけれども、御承知のとおりに、韓国漁船日本の古い船を買って仕事をしておるものが非常に多い。日本では、いままで御承知のとおりに、五年以上の古い木造船でなければ韓国に輸出されない。こういうようなことで、非常に装備が悪いことがこの数字以上に韓国漁業をおくらかしておる。かように考えるのでございまして、これらの漁業に従事しておるほかの人は――この百三十万人のほかの人は、ほとんど全部が沿岸漁業に従事しておる。こういうような実態でございますから、さっき申し上げましたような、そういうような数字が出てくると思うのでございます。  大体海における資源問題につきましては、私は平素こういうことを考えております。遠洋における魚族の資源、これは沿岸国もほとんど目立って近いところがないのでございますから、この遠洋の資源というものは、公海の自由の原則によりまして、この資源を利用する必要のある国が当然利用をする資源である。かかる意味から考えまして、日米加であの太平洋で、百七十丘度以東では日本の一部の漁業規制をするというあの条約や、ソ連がオホーツク海から日本のサケ・マス漁業を締め出してしまっておる。ああいうことは、この原則から、私どもは、適当なときにあの条約は改定してもらわなければ困る、かように考えておるのでございます。同時に、この沿海あるいは沖合の資源はどうか、こういう問題になるわけでございますが、世界の実情をずっと見てみますと、沿海国がその国の産業構造から、あるいは国民生活、嗜好の関係から、海に対しましてあまり関心を持たない、そういうような資源があるところは世界に方々にあるのでございます。御承知のとおり、魚には比較的短い寿命があるのでございますから、こういう資源につきましては、これは夫利用資源である。この未利用資源につきましては、世界でこの資源を必要とする国が利用するのが当然である、かように考えるのでございます。これらのことに対しまして、この韓国が取り巻かれておる漁場、この漁場資源ということにつきましては、以上の二つと非常に趣を異にしておる。これは日本におきましても、ぜひ必要な漁場であり、韓国におきましても、必要なる漁場である。こういう非常に両国ともに重大視する漁場でございますが、いままでのいろいろな事情から日本漁業がうんと伸び切っておりまして、韓国漁業は非常におくれておる。これが実態であろうと思うのでございます。言いかえてみますと、両国の共有の資源が、どうも今日でははなはだしくびっこに利用されておる。こういうような実情であるのでございますが、かかる実情におきまして、いままでどおりの日本漁業のやり方でいいか悪いかということを私どもは真剣に考えてみなければならないと思うのでございます。この問題につきましては、いま国際的に重大問題なる南北問題と同じようなことで、非常におくれておる国の漁業をそのままほうっておく、われ関せずえんでおる、こういうような実情、これは私は決していいことではないと思います。幸いにして日本漁民も、隣国の漁業者がいかに困っても、自分らは自分らだけできるだけとればいいんだ、こういうようなことを考えておる漁民は一人もない、これだけは確実であると思うのでございますから、この状態におきまして漁業条約締結するのには、まず李ライン撤廃、これは非常に必要である。その次に、最小限度の日本操業実績を確保することが必要であるが、もう一本柱を立てて、このおくれておる韓国漁業を、あらゆる点から協力をして一日も早くある程度の発達をしてもらって、格差をできるだけ少なくする。このこと自体が将来両国における漁業紛争を防止をいたしますし、日韓の友好を増進することになり、両国漁業を安定して発達させる。そういうことであろうと私は考えるのでございます。この点につきまして、どういうわけでございますか、政府は、実際に漁業協定の内容を見ましても、附属書の内容を見ても、あるいは交換文書を見ましても、あるいは商業上の民間信用供与に関する交換公文を見ましても、実際にはこの精神を織り込んでこの条約を結んでおられる。にもかかわらず、日韓漁業条約締結というものは、李ライン撤廃操業実績の確保、この二つの柱だけを出しておられる。私は、この二つの柱に、私どもがあらゆる力をもって協力をして、おくれておる韓国漁業を伸ばし、これによって韓国漁業者の収入をふやして生活レベルを高くする、幸福になるように協力をする、こういう精神も第三に一本入れておるのである。こういうことをはっきり日本漁民にも説明されれば、この条約を納得するのに、日本漁民も非常に早いと思いますし、また将来、この海域における漁業侵犯その他を侵してはいかないという心がまえに対しましても非常に重大問題である。また、韓国漁業者に対しましても、日本政府日本漁民がそういう気持ちであるということをよく徹底さしますれば、さっき申し上げました李さんの話のような、そういうことをもうすでに日本は着手しているんだ、こういうことになると思うのでございますが、この点につきまして、今日まで政府は、どうも重要なる柱ということを考えませんし、説明もされなかったのでございますが、この点は一体どう考えておられるか、御説明を願いたいと思うのでございます。
  26. 坂田英一

    坂田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。私どもといたしましても、韓国漁業協力のために、たとえば技術の交換とか、あるいは専門技術者を派遣するといったようなことに対する交換公文をいたしておりまするし、そのほか、民間供与によるところの漁業協力といった方向にも進んでおるようなわけでございまして、いまおっしゃったとおりの考え方を持っておることをつけ加えて申し上げます。
  27. 田口長治郎

    田口(長)委員 以上によりまして、この漁業協定締結に対する政府の基本的態度と、その中にぜひ一本の柱を立ててもらいたいという問題、それからもう一つ重要な、操業実績を最小限度確保している、こういうことを大体はっきりしたと思うのでございます。  その次に、私は、この漁業協定その他の各条文につきまして、国民にはっきり説明されたほうがいい、あるいは不明な分がある、こういうような問題について質問をし、最後に、この締結日本政府というものはしっかりした決心を持ってもらわなければいかぬ、この問題について質問をいたしたいと思うのでございますが、時間が十二時十分までに終わってくれというようなことでございますから、少しかけ足になるようでございますけれども、簡単にひとつ御答弁を願いたいと思うのでございます。  漁業協定の第一条で韓国日本漁業水域が重なるところはどこで、どの長さ、どの距離くらいに重なるか、その点を明確にしてもらいたい。
  28. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  それぞれの沿岸国が十二マイルの専管水域を引くことを異議を申し立てないときめております。日本国としては、その水域が接続いたす可能性がございます対馬沖にこの線を引きたい、かように考えております。そういたしますと、対馬と向こうの直線基線との間では一番狭いところで二十一・六マイルでございますので、両方の線が交錯しますのが二・四海里でございます。二・四海里だけ交錯いたし、その半分ずつに中点をとりますから、一・二海里だけそれぞれの専管水域が一番重複した地域では下がる、こういうかっこうに相なります。それから、ぶつかった点の弧と弧の交わりは十七・八海里になると測定されます。
  29. 田口長治郎

    田口(長)委員 この第一条の問題につきましては、今度低潮線あるいは直線基線で十二海里の漁業水域をつくった、これが第三国にこの制度が波及するという問題が起こると思いますが、これはさしあたりニュージーランドから漁業専管水域設定という問題が出てくると思いますが、ニュージーランドのあの沿岸と韓国の沿岸とでは、沿岸漁業者の密集度が非常に違うのでございますから、その点をひとつよく御説明されてしかるべきじゃないか、こう考えるのでございまして、何と考えましても、沿岸漁業者が密集しているその区域に、ことに他国の網漁業が侵入するということは、これは人道上からも認められぬ、かように私ども考えておる次第でございます。   それから第二条の前文で、「両締約国は、次の各線により囲まれる水域(領海及び大韓民国漁業に関する水域を除く。)」、ここの「領海」ということばを使われたのはどういうわけでございますか、それを御説明願いたいことと、それから先日社会党で、(xi)の北鮮の牛岩嶺高頂、こういうところを使うのはけしからぬ、こういうような意味にとれるようなことばもありましたが、私は、この問題につきましては何にも差しつかえない。御承知のとおりに、各商船、各漁船が、正午の自分の船の位置を出すのに、太陽を基点にして天測によって自分の船の位置を出しておる、この太陽のようなものである。また、長崎から上海まで何海里あるか、こういうことを地図を広げて定木を当てる場合に、すっと線を引きまして四百八十海里だ、こういうような意味におきまして、その線の方向をきめる点にとっただけでございますから、この問題を問題にされることははなはだおかしいと思うのでございますが、前文の「領海」という問題と、いまの問題につきまして、政府の御答弁を願いたい。
  30. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  第二条の本文は、共同規制水域外側の点を規定いたしておりますので、幅としての共同規制水域をあらわすためには、その外側の線と内側の線を除いた間ということになるわけでございます。そこで、大韓民国漁業に関する水域を引きました場合には、その引いた水城と、ここに書かれております外側の線との間が共同規制水城になる。しかし、大韓民国がどのように専管水域を引くかは目下まだ未定でございますが、もし引かない場合は、領海からということに相なります。なお、朝鮮半島におき度して大韓民国の管轄権の及ばない地域におきましては、その地域におきます領海から、その外側の線との間を共同規制水域にするという趣旨でございます。  なお、牛岩嶺の問題でございますが、海図に、いろいろのみさきの突端、山の上ということを作図上の点にすることは、常にあることでございます。
  31. 田口長治郎

    田口(長)委員 小さい問題はずんずん飛ばしまして、第五条の、共同資源調査水域設定される。この水域は、六条に定める漁業共同委員会が行なう勧告に基づいて、両締約国間の協議の上決定する、こういうことになっておるのでございますが、この共同資源調査水域が、どうかいたしますと、どうも李ラインの変形じゃないか、こういうような疑いを持っておる向きもあるのでございます。これは韓国が最初出しましたときに、ちょうど李ラインの線をこの区域にしておりました、さような関係もあると思いますが、さような変形のものではないということを政府ではっきり答弁を願いたいと思うのであります。
  32. 坂田英一

    坂田国務大臣 第五条の共同資源調査水城は、李ラインのそういうものとは全然関係ございません。この問題はなお日韓漁業共同委員会において協議をして、そして勧告を受けて、両国がまたその勧告に従って協議をする、こういうことに相なっております。
  33. 田口長治郎

    田口(長)委員 次に、第八条で「漁船間の事故の円滑かつ迅速な解決を図るために適切と認める措置を執る」、こういう文字を使ってあるのでございますが、この「適切と認める措置」と、アジア局長安全操業に対して往復書簡を出しておりますあの適切の措置と、この関連はどうなるのでございますか。この八条からあの往復書簡が出ておるかどうか。また、適切な措置両国民間関係団体を使われる、こういうことであれば、日本民間団体はどの団体をお使いになるつもりであるか。その点を御答弁願いたい。
  34. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  第一点の、適切な措置をとるということの具体的なあらわれが、安全操業に関する往復書簡でございまして、民間団体を結成せしめまして、両国民間団体で相談をする、その必要なおぜん立てを政府がするということでございます。そこで日本側におきましては、日韓漁業民間協定特別委員会というものを大日本水産会につくりまして、底びき及びまき網、沿岸それぞれの各分野からの推薦を受けました代表団の構成を考えまして、一昨日一応発足をいたした次第でございます。
  35. 田口長治郎

    田口(長)委員 第十条の第二項につきまして、外務大臣に御所見をお伺いいたしたいと思うのでございますが、一この協定は、五年間効力を存続し、その後は、いずれか一方の締約国が他方の締約国にこの協定を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。」、こういうことになっておりますが、この意思表示がない場合は画然に継続すると思うのでございますが、その点はいかがでございますか。また、その場合におきましては、効力期間は一応五年と考えていいかどうか。この二点をお伺いいたしたい。
  36. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 意思表示がなければ自然に続くのであります。
  37. 田口長治郎

    田口(長)委員 そのときの効力期間……。
  38. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その効力が続くのであります。
  39. 田口長治郎

    田口(長)委員 継続した場合の効力期間、一応五年と見ていいのですか。
  40. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 意思表示がなければ継続する。
  41. 田口長治郎

    田口(長)委員 その継続の効力は、五年間は意思表示ができないことになるのですか。その途中でも意思表示ができることになるのですか。
  42. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 継続後いつでも意思表示ができますから、差しつかえないと思います。
  43. 田口長治郎

    田口(長)委員 いつでもできる。  次に、この日本国大韓民国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録、この議事録の三項の、暫定的漁業規制措置に関する取締り及び違反について、この問題につきまして、四月の三日仮調印されて、六月の二十二日に本調印をされた、その間に非常に時間がかかった。その時間がかかったのは、済州島とここの条文の問題であると思うのでございますが、ここの条文について、この追加された部分で、(b)だとか、あるいは(d)だとか、いわゆる巡視船の連携巡視の問題だとか、他国の公務員の乗船の問題とか、こういうことで著しく日本が後退したのではないか、また旗国主義の一種の修正ではないかと、こういうような疑問があるようでございますから、この点をよくひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。
  44. 坂田英一

    坂田国務大臣 漁船の問題は決して旗国主義を譲ったものではないのでありまして、必要な場合において特にそういうことを申し出た場合に、わが国においてもそれを許してもよかろうというときには乗船を認めて、そうして参考に供するということなのでありまして、旗国主義を譲ったものではありません。それからもう一つの、連携巡視の面でございますが、これも同様でございまして、いつもこれをやるわけではございません。どうしてもその必要があるという場合に、、両方が協議をして、そうして協議がととのったときにやるわけでございまして、これも決して旗国主義原則をこわしたものでは絶対ございませんから、さように御了承願います。
  45. 田口長治郎

    田口(長)委員 旗国主義を修正したものではない、その点と、この問題に関しましては、私は、非常にけっこうな項目を挿入された、こう考えておるのでございますが、この協約は日韓両方で責任を持って万違反のないようにしなければならぬ、その観点から、こういう条項は非常にけっこうであると、私自身はさように考えておるのでございます。  第九項の無害通航の問題につきまして特に注意をしておきたいと思うのでございますが、「領海及び漁業に関する水域における無害通航(漁船は漁具を格納した場合に限る。)は、国際法規によるものであることが確認される。」、こういうことでございますが、直接の問題は、韓国の半島と済州島の間のあの水域々完全に通過ができるかどうかという問題に帰すると思うのでございますが、あの済州島を回るということになりますと非常な時間と燃料その他を使う、どうしてもあの水域を通過しなければならぬ、こういう事情にあるのでございますが、ここにカッコしていっております「(漁船は漁具を格納した場合に限る。)」この格納ということばがいろいろに解釈されるのでございまして、今日までの国際通念としては、格納とは、封印をすることである、かようなことになりますと、トロール漁業にしても、底びきにしても、まき網にしても、これはあの水路を通過することができないということになる。したがいまして、実情からいって、この網あるいは漁具にカンバスをかけてそうしてロープで縛る、その程度が、ここにいう格納という意味に該当する、この点を韓国とよく打ち合わせておかれなければ、将来非常にやっかいな問題になると思うのでございますが、そういうふうに打ち合わせておられますれば、それでよし、打ち合わせておられない場合は、あらためてよくここの合意をとっておかれる、こういうことをぜひお願いをいたしたいと思うのであります。
  46. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  国際通念といたしましては、領海、接続水域等におきまして、漁業をやってはならぬというところに漁業をやるような形におきます航海は、無害通航とほ認めないという慣例がございます。したがって、それを確認的意味におきましてここに明らかにいたしたわけでございます。その一番代表的な例が格納でございます。しかし、いま御指摘のまき網その他等につきましては、カンバスをかけて、漁業に従事する態様にないというものは無害通航であるという確認は、民間協定を通じ、政府協定を通じさらに明確にいたす所存でございます。
  47. 田口長治郎

    田口(長)委員 まだこの条文についていろいろ問うことがありますけれども、時間がありませんからこの程度にとどめまして、これからこの漁業協約締結した後におきまして日本政府が具体的に相当な施策をやってもらわなければならぬ、そういう問題があるのでございますが、その問題について順を追うて質問をいたしたいと思うのでございます。  韓国漁業をできるだけ伸ばす、こういうことについて、さしあたりの問題といたしましては、無償三億ドルの中で、おそらく韓国は、漁業基盤の整備、こういうことをやると思うのでございます。また、民間供与の九千万ドルで漁船建造をやる、こういうことになりまして、急速に韓国漁業が伸展をしてくる。その場合に、日本漁業との関係をどうするかということにつきましては、韓国漁船建造計画を、これは日本政府とよく打ち合わせられまして、できるだけ日本漁業と競合をしないような漁業の方向に――これは全く競合しないということはできないのでございますけれども、できるだけ競合のないような方向に話し合う、それが韓国のためでもあるし、日本漁業のためでもある、かように第一点は考えるのでございます。   それから第二の問題といたしましては、この段階で日本許可漁業というものをあまりかたく見ないで、国内的にも弾力的に余裕のあるところに余裕のないところの漁船を持っていく、こういうようなことを考えられると同時に、日本の非常に詰まった漁業をできるだけ国際漁場にひとつ出していただきたい。いまカツオ・マグロだけは大体他国と太刀打ちができるような状態にありますけれども、大型トロール、大型底びきというような世界の状態は、五百トン以上の世界の漁船は千三百十七そう程度ありますが、日本ではわずかに五十三そうか四そうくらいじゃないか。こういうふうに日本も非常におくれておる。資源関係もありましょうが、この国内漁業の調整に、国際漁場にどうしても出す、こういうような積極的の方針をやってもらいたい。国際漁場日本漁業を競争さした場合におきまして、他国の漁船があまり多くなかったときは、日本の優秀なる技術ですべて経営は順調であったのでございますけれども、今日では共産圏の国営問題でありますし、あの国でなくとも、ほかの国では遠洋漁業というものを非常に保護しておる、こういうようなことでございますが、日本の遠洋漁業政府からは何にも保護されていない、資金をつくるのも自分でつくる、高い金利の金を使って船をつくる、こういうような状態でございますから、このままでは日本の遠洋漁業というものは非常に窮地におちいる次第でございますから、国の保護ということについて特別にひとつ考えていただきたい。  さらに、あの海域では、韓国日本も、非常に重大漁場であるにかかわらず、この資源調査というものがひとつもできていない。いままであんな重大な海で資源調査がひとつもできていない。私どもは、資源調査のこの基礎によって、この資源をいかに保存し、いかに分配をするかということを考えなければならぬのに、それができていない。幸いにこの協定関係にも資源調査があるのでございますから、あの東海あるいは黄海、朝鮮海峡のあそこの魚族資源について日本政府としては真剣にひとつ研究をしてもらう、充実したその内容をどうしても日本政府として決心してもらう、こういうふうに考える次第でございますが、以上についてひとつ総理大臣の御答弁を求めたいと思うのであります。
  48. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 漁業自身は、他の経済部門の成長とともに同時に私どもも考えなければならないのでございます。また一面、御承知のように、私どもの生活向上のためにも、あるいは食糧の面等でもこれは確保しなければならない、こういう立場でございますが、御承知のように、いままでの漁業の沿革等を見ますと、沿岸から沿海になり、さらにそれが遠洋、だんだん他に出かけていく、いわゆる略奪漁業と、こういうような表現がされております。しかし、こういう意味立場ではなかなか漁業資源を確保するということは困難でありますから、それぞれの漁場等の積極的開拓もいたしますが、同時に、魚族保存、こういう意味で、人工ふ化その他もよほど科学的に進んでまいったと思います。しかし、何よりも大事なことは漁場の開拓だ、かように私は思いますが、これは国際的な問題にもなりますから、国際的にも各国の協力のもとに新しい漁場を開拓していく、そして相互緊密な関係を持っていく、かようになっておると思います。同時に、このことをするためには、漁港の整備をするとか、あるいは流通機構を改善していくとか、いわゆる漁業そのものがりっぱな近代経済機構のもとにおいて十分生産性を上げるように、近代化等も積極的にはかっていく、こういうことに気をつけなければならぬと思います。国が十分の保護をしていないということですが、しかし、私は、ただいまのような観点に立って見ると、いわゆる漁港等の基礎的条件を整備するのには積極的にずいぶん金も投じておると思いますし、また、漁場の開拓等につき、あるいは漁業家の安全確保等の観点に立ちましても、国は積極的にこれに協力しておる、かように私は思いますが、なお不十分だということでございますが、それらの点について、もっと積極的にこれらのものが十分関係の方々の満足を得るように努力いたしたいものだ、かように思います。  次に、最後にお尋ねになりました、この日韓漁業協定ができて、そして近くの漁場、これが確保される、このことは、ただいま漁獲量が減るとかなんとかいう非難があるようですが、しかし、この漁場を長く存置し、しかもまた漁業資源を維持強化していく、こういう意味から申しますと、現状程度で私どもしんぼうしなければならないのじゃないだろうか。それにつきましても、ただいま御指摘になりましたように、この地域資源調査、これが十分できていない、このことはいかぬじゃないか、かような御指摘でございますが、御承知のように、今日まで日韓間に漁業協定一つでき上がらなかった、そういうことも、この資源調査を今日まで行ない得なかった、こういうことにも関連がある、かように思いますが、今後、日韓の漁業協定ができたこういう機会に、両国共同いたしましてこの資源調査を徹底し、同時にまた、それに対する対策なども考えていく、これは最も望ましいことだ、かように私は思う次第でございます。
  49. 田口長治郎

    田口(長)委員 時間がありませんから次にいきますが、第二の問題といたしまして、韓国の水産物が日本に入ってくる、そうすると、日本の市場を撹乱して漁業者が非常に困るのじゃないか、この点を漁業者は非常に心配しております。私どもはこの日本の市場を撹乱する、そのことは困りますが、また、韓国の水産物は入れたくないが、ここで日韓が手を握りました以上、これは好むと好まざるとにかかわらず、ある程度の水産物を輸入せざるを得ないことになってくる。さような情勢のときに、日本の水産業者が困らないようにするのには、これは日本の受け入れ態勢を確立するよりほかに道がない、かように考えるのでございます。その受け入れ態勢といたしましては、どうせ損害をこうむるのは漁業者である、また、自分らのとった魚その他を持っておるのも漁業者である、こういうことでございますから、漁業者の団体に品物を握らせて、そうして漁業者自体が、自己の責任において、自分らのものと一緒に、販売する時期あるいは出荷する時期を調整して、そうしてさばく。輸入業者あるいは問屋は、仕事を排除するのでなしに、これらの業者の使命、その仕事だけはやってもらって適正なるマージンで働いてもらう、こういう体制をとることが、この漁業者が一番おそれておる韓国水産物の輸入に対する恐怖を除去するゆえんじゃないか、かように考える次第でございますが、この点について総理大臣かあるいは農林大臣からの御答弁をお聞きしたい。
  50. 坂田英一

    坂田国務大臣 水産物の韓国からの輸入問題は、これは韓国漁業協力をやりますることと関連いたしまして、やはりある程度入ってまいりますることは言うまでもないと思います。しかし、日本の国内の漁業者もなかなか零細漁業者でございまするから、それらの問題をあわせて考えていかなければならぬことは、いまお説のとおりでございます。さような関係からいたしまして、私どもといたしましても、どうしても国内の体制が整うて、そうして著しく悪い影響を受けない体制のもとに輸入をしてまいるという方向にいくということは、これは言うまでもないわけでございます。それにつきまして、ただいま田口委員からお話の点でございますが、理想としては、そういう方向に進むのが確かに一つのいい方法であろうと思うのでございますが、しかし、直ちにそこへいきかねるいろいろの事情もありますので、これらの問題については十分検討を加えてまいりたい。  なおまた、さらに、この輸入につきましては、輸入割り当て制度を弾力的に行なうということを並行していかなければならぬかと思うのでございます。さようなことででき得る限りの調整をはかっていくということでございます。
  51. 田口長治郎

    田口(長)委員 いまの農林大臣の答弁では、どうもこの重大なる問題に政府の方針がはっきりしないようでございますが、これは政府自体におきまして、しっかりした案をつくっておられるのですか。あるいは審議会なんかをつくって早急にやられるか、その点をひとつ明確にしてもらいたい。
  52. 坂田英一

    坂田国務大臣 田口委員のおっしゃった点については、私も本質的には賛成でございます。しかし、いますぐそれを実行するという面になりますと、いろいろの問題がございますので、各方面の意見を十分調査してまいりたい、かように考えております。  なお、沿岸漁業等振興審議会等もありますので、至急にそういう方面の意見を徴して、そうして成案を得たいというふうに考えて覚悟しておる次第でございます。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま農林大臣からお答えしたことでもうおわかりだと思いますが、ことに、日韓間の漁業協定で最も真剣に問題を扱わねばならない、かように申しまするのは、九州や山口あるいは中国地方におけるいわゆる零細漁民との関係、特にこの問題が一つあると思います。(「水産業全体の問題だ」と呼ぶ者あり)ただいまお説のように、水産業全体についてのお話がありますが、私は、やはり、それぞれの地域的な問題がありますが、二つにこれを分けて考えたらいいだろう。ただいま出ておりますように、わが国全体としての問題、それがいままで韓国生産ノリによって表現されておる。との問題につきましては、生産者あるいはいわゆる漁業組合等が受け入れ態勢を整備すること、これによりましてこれに対応すべきだ、これはただいま田口君のお説のとおりだ、かように思います。その意味において十分農林省におきましても水産庁を督励してその整備をはかっておる。これも影響を及ぼすのが全国的な問題でありますだけに、つくる場所は韓国だけにいたしましても、全国のノリ業者といたしましては非常な利害得失があるということで、業界の全体をまとめるということはなかなか至難のようでございますが、ただいままでその方向で水産庁は努力しておるということでございます。  私がもう一つあとの問題として指摘したいのは、いわゆるサバであるとか、あるいはイカであるとか、あるいはレンコダイであるとか、こういうものが下関あるいは長崎の市場に殺到してくる、いわゆる韓国漁業家によってとられたものが殺到してくる。そういう場合に国内の市価に非常に影響を及ぼす。そして、それが同時に日本漁業者の利害と衝突する、こういうことを一部で懸念しておるようでございます。私は、これらの点については、いわゆる受け入れ体制が整備されるということは、一つの組合ばかりではございません、市場自身を整備するということも大きな問題だと思いますし、そういう意味の倉庫その他、あるいは運搬方法等が十分考えられるならば、一局部を刺激するというような、たいへんな摩擦を起こすというようなことは避け得るのではないか、こういう意味におきまして、業界の方あるいはその方面に格段の知識を持たれる方々がこれらについての対策を詳細に立てられるよう、これは心から希望するものでございます。私は、そういう意味で、この日韓漁業協定ができて、この海域資源が確保され、そして両国の零細漁民をはじめ、同時に、また、それぞれの漁業家が、すべてが繁栄への道をたどる、これには大いにくふうしなければならない問題が多い、かように思いますので、特に関係の深い方々に対しまして、これらの点を御協力願うように私は御注意申し上げておる次第でございます。
  54. 田口長治郎

    田口(長)委員 第三に重要な問題は、この海域において、いかなることがあっても、日本漁船協定違反、漁業違反をさせてはいかない、このことであると思うのでございます。日韓両国間におきましてこの正常化がうまくいかない、こういうことが万ありとすれば、おそらく私は悪徳商人のばっこと漁業における違反の問題が続出する、この二つが最も重大なことでないか、かように考えるのでございまして、この違反防止の問題につきましては、政府はひとつ万全の処置を講じていただきたい、それにはかけ声だけではいかないのでございますから、まず漁業取り締まり船の充実、指導船の充実という問題と、それから漁船と陸上との連絡のためにトーキングビーコンを陸上に設置する、またあるいは海岸局を設置する、漁船のほうにはレシーバーを全部設置させて、いま自分の船はどこにおるか、こういうことがはっきりするようなそういう装置をしてもらいたい問題がひとつ。  もう一つは、あの対馬海域は、非常に海岸線の屈折が多くて複雑でございます。したがいまして、灯台の問題が常に問題になるわけでございますが、この沿岸灯台の設置ということにつきましても、政府としては御配慮を願わなければならないのじゃないか。  もう一つは、あのかいわいが、いずれ対馬が前進根拠地になると思うのでございますが、いまあすこにある漁港は、李ラインがあります際におきましてようやく漁船を停泊さしておる、その隻数をかろうじて入れておる、こういうことで、この李ライン撤廃になって、割り当てられた漁船があの海域出漁するということになりますと、いまの対馬の漁港あるいは避難港ではどうしてもおさまりがつかない。これは、台風その他のときにあすこに行ってみますと、もう舷々相摩して、よそ舟がいっぱい入ったために土地の漁船が入れない、こういうような実情をいままででも繰り返しておるのでございますから、対馬における避難港及び漁港の修築、改築につきましては、特段の御配慮を政府でも持たれまして、これらの漁船をすみやかに収容ができる、それが違反問題につながるのだ、かようなことを私はこの機会政府に強く要望をいたしたいと思うのでございます。ことに、大蔵大臣がおいでになっておりますが、おそらくこれらの問題につきましては、各省ともにどうしたらいいかということを真剣に研究して、そうして大蔵省に予算をお願いすると思うのでございますが、非常に重要な問題でありますから、特段の御配慮をいただきたい、かように考える次第でございまして、この点につきまして、総理と大蔵大臣、農林大臣の御答弁をお願いします。
  55. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 予算編成に際しまして十分考慮いたしたいと思います。
  56. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  57. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 関係省と相談をいたしまして善処いたします。
  58. 田口長治郎

    田口(長)委員 最後に、漁業補償の問題につきまして触れてみたいと思うわけであります。  この補償問題につきましては、私どもは、政府内部におきまして大体内定をしておられる数字がある、こういうことを聞いておるのであります。その内容は、四十億の特別交付金と低利長期の十億の融資、こういうことを聞いております。漁業者が出しました書類を審査いたしますと、九十億三千万円ということでございますが、そのうちには、休業補償その他において、私どもが見ましても、どうも少し無理な要求でないか、こういうような点もありまして、あれを厳格に査定をいたしますと――私と泉籍すると、まあ八十億くらいのものじゃないか。この補償金額につきましては、非公式ではありますけれども、日本の係官から韓国の係官に、との拿捕漁船の補償は大体どのくらいだろう、よくわからぬが二千万ドル程度ではないだろうか、すなわち七十二億程度じゃないだろうか、こういうことを言っておられる。こういうような関係におきまして、政府は交付金が四十億、低利長期の資金が十億、こういう金額をきめられたのでございますが、この問題について大蔵大臣が漁業者実態をお考えになって、これは見舞い金の意味もあるから税金はかけない、こういう腹がきまり、また、この十億の融資はほんとうに低利長期の金である、こういうことになりますと、おそらく、五十億に対しまして、すでに政府は十五億を出しておりますから六十五億になり、さらに、その上に税金がかかるのを免除されるのでありますから、韓国に示した七十二億以上の、漁業者の要求する八十億あるいは八十億以上の金額に相当するものでないか、かように私は考えるのでございますが、この点につきまして、この税金の問題と、ほんとうに低利長期の資金十億、こうぜひ大蔵大臣にお考えを願いたい、それでなければ説明もつかない、こう思う次第でございますから、ひとつ大蔵大臣のこの二点に対する御答弁をお願いします。
  59. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まず、長期低利でありますが、これは農林漁業金融公庫から、できる限り、その性質に見合いまして、長期であり、かつ、低利であるものを供給したい、かように考えます。  なお税金につきましては、これは児舞い金的な意味を持ちました交付金でございますから、これは所得税なんかの面においてはほとんど問題が起こらないんじゃないか、かように考えます。ただ、休業中の営業に対しまする交付金的な部分につきまして法人税が一体どうなるかという問題がありまするが、私どもはこれも補償金であるというような性格をできる限り採用して、そうして個々の事案をなるべく税金がかからないというように行政上措置してまいりたい、かような考えでございます。
  60. 田口長治郎

    田口(長)委員 時間が非常に過ぎましたから、私は最後にこの問題の締めくくりをいたしたいと思うのでございます。  いままで質問したところによりまして、李ライン撤廃問題、あるいは操業実績の問題、あるいは私の主張するもう一本の理念の問題、それから条文に対する疑義の問題、これは非常に荒っぽく聞きましたけれども、この問題、また、締結後における日本政府にどうしてもお願いをしなければならぬ、また、決心をしてもらわなければならぬ問題、こういうことについて御質問を申し上げたのでございますが、最後に私は、この条約締結李ラインが実質的に撤廃をされるのでございますが、過去十四年の間、この李ラインが存在しておりましたために、日本漁業者がいかにひどい目にあったかということにつきましては、皆さん御承知のとおりでございまして、拿捕漁船三百二十三、拿捕した人間が四千人近く、こういうことで、これらの拿捕船員は、向こうの裁判にかけられて、そうして八カ月から十カ月ぐらいの獄舎生活をして、それですぐ帰すかと思いますというと、外国人収容所で、またいつまでも引っぱっておる、こういうようなことで非常に困っておる。また、拿捕された家族の関係、これも非常に悲惨でございまして、一家ばらばらになるようなところもたくさんございますし、また、近所近辺、親戚から金を借りて、もうそこにおられない、こういうようなところもあるのでございまして、非常に悲惨な状態を十四年間繰り返してきた、こういう実情であるのでございまして、かようなところにどうしても魚をとりに行くという漁船が出発をするときの状態を見てみますというと、ほんとうに水杯で船が出ていく、そうして帰るか帰らないかということについて、家族は、船が実際帰ってくるまで毎日毎夜不安な状態にある、こういうような実態でございますから、わが衆議院におきましても、農林水産委員会、元の水産委員会あるいは外務委員会、こういうところでたびたび政府に対して申し入れをし、決議をしておる。また、衆議院本会議におきましても、二回も私どもはこの問題について決議をしておる、こういうような実態であるのでございます。その悲惨なことがこの条約によってなくなってしまう、こういうようなことでございますし、また、締結以来一そうの傘捕船もないし、いまの西日本漁業者がこの海域出漁するのに非常に朗らかな顔つきでみんなが出漁している、あの状態を見ますときに、私は、社会党にいたしましても、民社党にいたしましても、共産党にいたしましても、おのおのその立場はよくわかるのでございますけれども、西日本漁業者があの苦痛からいま朗らかになっておる、この実態をよくごらんくださいまして、この条約が一日も早く成立するように、これは私個人の野党に対するお願いでございますが、同時に、政府といたしましても、一段の努力をしていただきまして、この批准が早くできますように御努力あらんことを切に要望いたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
  61. 安藤覺

    安藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時二十分より再開し、参考人から意見の聴取を行ないます。  これにて休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十四分開議
  62. 安藤覺

    安藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより、議題となっております各案件について、参考人として御出席をいただきました評論家内海丁三君、国士館大学教田村幸策君、評論家御手洗辰雄君、以上の三名の諸君から意見を聴取することといたしますので、さよう御了承願います。  この際、委員長から参考人の各位に申し上げます。  参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  それでは、日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法案、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案についてそれぞれ御意見を承ることとなりますが、参考人各位におかれましては、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  なお、議事の順序につきましては、内海参考人、田村参考人、御手洗参考人の順序でそれぞれおおむね二十分程度の範囲で御意見の開陳を願い、次に参考人に対する委員の質疑を行なうことといたします。  それでは、まず最初に内海参考人にお願いをいたします。内海参考人。
  63. 内海丁三

    ○内海参考人 きょうは先輩の参考人の方がお二人も見えておりますので、私はちょっと急ぐ事情で先にやらしていただきますが、ごく簡単に、そして国民の一員としてこの条約の成立を希望する立場から、感じたこと二、三を申し上げます。  第一に、この問題について、条約の解釈が両国で食い違っている、だから問題だという反対派の意見がずいぶん出ておりまして、中には、条約の体をなさぬというまでの酷評も出ておるようでありますが、この食い違いに関しまして、私のしろうとなりに意見を申し上げます。食い違いといっても、条文そのものの意味に関する解釈ではなくて、これを自分の国で受け取り、自分の国の国民に説明する点の食い違いであります。そもそもこういうことは条約には非常に多いのであります。というのは、そもそも条約などというものは、ことに今回のごとく多年の国民的利害と感情の対立を整理する、調整する条約におきましては、最後は、すったもんだのあげくに一つの微妙なことばの上の妥協になる。これが条約というものの常識であります。でありますから、この条約には双方一応満足している、満足しているから調印するのでありますが、と同時に、半分あるいは三分の一くらいは不満足な点がある、こういうことが非常に多いのでありまして、条約は大体そういうものであります。このことばの上の微妙な妥協ということにつきましては、私は一つ、これは条約ではありませんけれども、あることを連想するのであります。それは、いまから何年か前でしたが、社会党の右と左が合同して今日の社会党になったときに、その綱領をどうするかという話し合いにあたりまして、国民政党か大衆政党かというイデオロギーの問題がもめたらしいのであります。その結論としまして、階級的大衆政党ということばを持ち出して、これで双方が満足して綱領ができ上がったと聞きました。この場合、これはことばの微妙な妥協でありまして、そうしてその場合、合派の人は大衆政党というところに重きを置いた、左派の人は階級的というところに重きを置いた、こう理解するのでありまして、おそらくこの右派と左派の両派に、くにに帰って国会に答弁するような事情がもしありますならば、いや階級政党であるといい、あるいはいや大衆政党である、こう説明しただろうと思う。つまりそこに食い違いが出たであろうと思うのであります。こういう微妙なことは世の中には非常に多い。ことに政治的対立というものがある限りにおいては、非常に多いのであります。それが妥協であり、調整であります。でありますから、条約のこういう点をとらえてそれが否決すべきものである、反対すべきものであるという議論は、そもそも条約を審議する態度としては間違っておる、こう私は思うのでありまして、これは体をなさぬどころか、条約とは一体そういうものであります。この点については社会党の皆さんにもぜひ御了解をお願いしたいと思うのでありますが、しかし同時に、反対党の人たちのこういう指摘に対して、ジャーナリズムの中に、たる大新聞の論説の中にも、これを取り上げてたいへん大問題であるがごとく言う議論がありますので、ジャーナリズムの人たちにもこの席から申し上げたいと思うのです。  それから、同じことでありますが、条約の管轄範囲あるいは国の管轄範囲という適用範囲の問題があります。これは前回、昭和二十七年四月にできました日華平和条約一つの前例があります。このときも適用範囲が非常にもめたのでありますが、最後は、台湾、膨湖島という文字で表現すると同時に、この条約の適用範囲は、現に中華民国政府の支配下にあり、また今後支配下に入る領域に適用する。今後入る領域というのは、中国大陸であることは言うまでもありません。そういう交換公文をもって双方の合意が成り立ったのでありますが、このときも中華民国のほうでは、自分のほうは中国大陸を全部代表する唯一の合法的政権として本条約に調印したということを国民に報告しております。こういう例はあるのであります。  それから竹島の問題、これは重大であります。私は、これを、うやむやになったというがごとき形ははなはだ気に入らないのでありますが、これも非常によく似た例が日ソ共同宣言であります。昭和三十一年にできた共同宣言、この第九項目には、この宣言で両国の国交正常化した後も、平和条約締結に関する交渉を継続することということが合意の対象になっております。この場合に日本政府は、平和条約交渉とは国後、択捉の両島の帰属に関する問題を含んでおる、こう説明して押し通しました。それは、その問題以外には平和条約の問題はもう残っていないのでありますから、そういう説明でございます。ところが、これは皆さんも御承知のとおり、ソ連のほうでは、すでにこの二つの島はソ連の領土だと言い張っております。これなどは、竹島のような小さな岩の島じゃなくて、大きい島に関してこれと同じような協定ができております。  さらに注目すべきは、当時、今日の社会党はこの日ソ共同宣言に対してさような点をもって反対をしなかった。非常に公式に賛成の意を表して、国会は、ほんのわずかな反対はありましたが、満場一致できまっております。そういうことも、佐藤総理ではありませんが、間々あるのであります。  さらに、この竹島の問題に関して私は気に入らないと申しました。それを残すぐらいならば反対してもいいぐらいに政府側にお話ししたこともあるのでありますが、私がよくよく考えてみまするのに、竹島にしろ択捉、国後にしろ、相手方が武力をもってこれを占領して動かないというときに、それならば日本はどうすればいいか。その瞬間に兵隊でも出して戦うということは別としまして、そのまま何十年もたっている今日どうすればいいか。国際紛争は武力によって解決しないと憲法九条にございます。そうなる以上はどうしたらいいか。これを卑近な例にたとえますと、玄関に暴力団がすわっておる。これを排除する方法が三つあるのであります。一つは、自分でげんこつでたたき出す。これは憲法九条の問題であります。それができなければ警察へ電話をかける。つまり公の権力に訴える。それが今度の場合には、相手が承知しなくてできない。そうすると、もう一つ残ったたった一つの手がある。金一封を包んでお引き取りを願う。私は、今度の八億ドルの請求権の問題について、こういう意味において――ほかの意味も大いにありましょうが、金一封をもって李ラインと竹島からお引き下がりを願いたい、こういう意味のものだとかねて理解しておったのであります。李ラインのほうはお引き取りを願ったようでありますが、竹島のほうはお帰りにならない。しかし、さらにあと三億ドルも出して竹島を戻してもらうかということになると、これは自分の領土権を認めないことになるし、向こうで売らぬと言えばこれもだめでありますから、結局は今度のような、国際紛争は平和的に解決するという憲法九条の精神をそのまま条約に織り込んだ今度の交換公文で将来を待つという以外に手がないのだ、こういうことがわかりましたので、いまの最初に申し上げました気に入らないというのは撤回することにした次第であります。  最後に、李ラインでありますが、政府当局は、どういうわけか李ライン撤廃されていないと返事しない。私が外務大臣でありますならば、李ライン撤廃されておりませんと、こう答えたい。なぜならば、これは相手が不法にも一方的に宣言しただけでありまして、日本側はこれを一ぺんも承認したことはない。一方的に宣言したものが一方的に取り消されない限り、まだ撤廃されていないのでありましょう。でありますから、漁業条約によってこれは有名無実になった。有名のほうは韓国側でその名のあることを認めればいいし、無実のほうは日本側で条約の効果を維持すればいい、こういう意味において李ライン撤廃されていないで差しつかえないではないかと思う次第であります。  これが六年後の条約の満期のようなときに、今後いわゆる李ライン拿捕問題が復活するかどうか、こういうことが疑問になっておりますが、これはおよそ条約というものの意味を理解しない一種の愚問だと思います。というのは、期限が切れたらそのままひっくり返ってしまうというならば、どんな条約でも期限を無期限にする以外に手がない。期限がある限りはその約束はあとはふいになるのだ、こういうような考え方のようでありますが、そうではありません。その後の両国の間で、この漁業条約を履行する上に両国ともこれで便利だ、これではなはだけっこうだと思う状態が五年続けばそれでいいのであって、それ以外に手はない、私はこう考えております。でありますから、自民党の皆さんや政府にもぜひお願いしたいことは、今後漁業条約の履行において韓国側政府漁民も裏切ることのないように、ほんとうにこれが有効であったと相手方に思わせるようにやっていただきたい、それだけが同国の間を親密にするゆえんであると、こう思うのであります。  もう一つ言い添えたいと思いますが、これは自民党の方々もそうでありますし、それから佐藤総理以下の方々もどうもそういうことは公然と認めようとされないようでありまして、私がここでそれを言っても何か問題があるかとも思いますけれども、そもそも韓国は、戦後の共産侵略の膨張の防波堤として存在している。かつて朝鮮戦争がその防波堤であったことは間違いない。今日はその危険が薄らいだから忘れておるようでありますが、韓国民はそのためにたいへんな犠牲を払っておるし、今日でも物心両面で負担を過重されております。これに対して日本が何か尽くすということは、これはあたりまえのことではないか。これを佐藤総理以下あまり大きい声でおっしゃらないようです。おっしゃりたくない事情がどこにあるのかよくわかりませんが、私は、そういう意味において、日本国民の一人として、これに賛成の意を失したいわけであります。  大体これで終わりにいたします。(拍手)
  64. 安藤覺

  65. 田村幸策

    田村参考人 委員長から、ここに出て今回成立いたしました条約協定に対する何か意見を述べろという召喚状を受けましたのでありますが、御審議の参考になるようなこと、お役に立つようなことはないと信じますが、一応私どもが日韓関係正常化の正当性というものと、これに対する反対の議論を二つ三つ取り上げて、何か申し上げてみたいと考えるのであります。  第二次世界大戦が終わりましてから、主としてアジア・アフリカでありますが、植民地の地位を脱却いたしまして新たに独立をかち得た国が、全世界で弧十九あります。そのほとんど全部はアジア・アフリカでありますが、その五十九のうちで、昔のその土地を持っておった領主と新たに独立をかち得た国との間で、まだ国交の回復もないという異常な関係にある、世界の進運に取り残されておる関係にありますのは、日本韓国のみであります。それは両国民にとって利益でもありませんければ、名誉なことでもありません。しかし、終戦以来二十年の歳月は、日韓両国民ともに、両国の平和と安全と繁栄は、いたずらに過去にとらわれずに、輝かしい将来を開拓するにあるということを気がついたのであります。それで、今回多年の懸案でありましたものを全部解決いたしました。ただ一つ領土の問題を残して全部を解決いたしました。ちょうど九年以前に領土問題を残して日ソ間に国交の再開をやったことと軌を一にするのであります。韓国におきましては、日本に対してなお憤慨の念を持っておるやに考えられますのでありますが、今日の日本は、科学技術の驚異的な進歩に伴いまして、世界のしんしんたる進運におくれないように、落後しないように、産業の開発、民生の向上に全力を傾倒しておりますので、それによっていささかでもこの激動しておりまする極東の政局の安定に寄与することを念願としておる以外に、昔のようにアジア大陸に領土を持つというような野心は全然持っておりません。韓国との経済協力というものが行なわれますが、それは、シベリアの開発に日本経済協力をするというのがソビエトに対する日本経済侵略でないと同様に、韓国に対しても侵略ではありません。日本の島々が太平洋に陥没するか、朝鮮半島が日本海に沈まない限り、われわれ日韓両国民は将来永遠に、千年も万年も、これは善隣として共存せざるを得ない運命に置かれております。過去におけるがごとく、将来もまたいろいろな問題が起こると思いますが、そのスタートを切ったのが今回の条約でありまして、その労を多としなければならぬと思うのであります。  条約の内容に関しましては、いろいろなことが専門のことでたくさんございますが、一切それはあとに譲らしていただきまして、一番重要性を帯びておりますものは、この条約が調印されましてから四日目に、六月の二十六日に中共政府が特別声明を出しまして、この日韓条約に反対の声明をされたのであります。およそ五つのことが書いてあるのでありますが、これをなぜ私が重視するかと申しますと、これが日本の国内に非常な大きな影響を与えております。おそらく日本の国内にわき立っておりまする反対論の全部は、この六月二十六日の中共声明に含まれておるのであります。どちらが元祖かわかりませんが、これがその教科書になっておると見てもよろしいのであります。  そのうちで、一つ、二つを拾い上げて時間がちょうどいいかと思いますが、その一つは、この日韓条約が、日韓の国交回復は南北の分裂を永久化するというのであります。分裂というのは、これは共産主義者のお家芸でありまして、ベルリン、ドイツ、北ベトナム、朝鮮、みないずれも共産主義者のしわざでないものは一つもありません。いわんや、ベルリンのごときは、大きな堅牢な壁までつくってこれをかたく分裂させておるのであります。さらにこれをいま強化しつつあるという話であります、最近の情報によりますと。朝鮮の場合も、モスクワ協定によりまして、朝鮮は、初めの二年間は、アメリカとソ連と両方だけで、朝鮮の独立と統一を二国限りで話をしておりました。けれども、モロトフがどうしてもソビエトの条件でなければ統一を許してくれませんので、一九四七年の十一月にこれを国連に持ち込んだのであります。米ソが自分らの意見の対立のために朝鮮にいつまでも独立を与えないのは気の毒だというので、これをアメリカは国連に持ち込みました。そのときに、モロトフは、国連憲章第百七条というものを引用いたしまして、これは旧敵国に関する問題であるから、国連に管轄権がないという主張をしたのであります。これは非常に大事なことでありまして、今日でも問題に-日本の共産党でも、いつかのテレビで拝見しますと、宮本君がこの問題を提起されております。それにもかかわらず、これを国連の総会は取り上げまして、今日まで十八年間、ずっとほとんど毎年といってもいいくらいでありますが、国連は決議をしております。そうしてその決議のどの決議にも必ずある文句は、朝鮮に関しまする国連の目的は、代議政体のもとに統一した独立の民主主義的朝鮮をつくるにあるということが繰り返してあるのでありまして、その十幾つかの決議がありますが、そのいずれにもそれが載っておるのであります。でありまして、この朝鮮の統一を妨げている罪人がだれであるかということは、きわめて明らかなんであります。国連の記録を読めば、だれにもわかることであります。  その次の問題は、中共の声施のうちで問題は、今度のこれは日韓の友好条約でございますが、一つの仲直りする条約であります。これをあたかも軍事同盟であるかのごとく取り扱っております。曲解しております。そして、戦争であるとか侵略だということを言っておるのでありますが、しかし、だれとだれと戦争するのか、一向わからない。一体、戦争は、自由世界から申しますれば、彼らが民族解放戦争という名のもとに侵略をしない限り、すべての弱小国は彼らの好む政体のもとに生活をし得るのであります。たとえば最近も、陳毅外務大臣は、アメリカとイギリスとインドと日本とソ連が束になってこい、いくさの相手になってやるから、こういう演説をされております。これはその後訂正されたのでありますが、その訂正されたものにもこの部分だけは残っておりまして、これは実に大国の責任ある外務大臣の発言といたしましては驚くべきことでありまして、私は、これはジョークであると考えておったのであります。ある評論家がこれを、あれは憶病者が夜墓場を通るとき大きな声で詩吟をやるのと同じだと言ったことがありますが、これは強い者の言うことではないのであります。決して強い者はそういうことは言わないはずでありますので、そのジョークもまた一理ある、こういうことでありましよう。  それから第三の問題でございますが、これが一番大事なんで、こういうことを言うのであります。今度の条約、これは奇妙でありますが、中共の声明書を見ますと、すべてこれはアメリカの帝国主義者がやったことであって、日本韓国も全然ロボットになっております。全く当事者にされていないのであります。主体はアメリカなんであります。アメリカになっております。そしてこれは、アメリカがやがてこれでいわゆるNEATOと申しますか、北東アジア軍事同盟というものをつくって、これをSEATOに結びつけて、そうして三日月形の――これは彼らは三日月計画と号しておりますが、ずっと中共を三日月形に海から包囲する形、そういうものをアメリカがたくらんでおるために、それのスタートに今度やるのだ、こういうことを言っておるわけであります。これはなるほど彼らはすでにいまから四年前に、ちゃんとソ連も中共も北朝鮮と完全な軍事同盟を結んでおりますし、そうしてしかも、そういう無限な共産主義の膨脹に対して、われわれ自由世界が防衛する指貫といたしましては、だれびとも一応考えつく考え方なんであります。そういうことをやってよろしいわけなんであります。向こうさまがすっかりそういう体制をきめておるのでありますから、こちらもやることは一向差しつかえない。すなわち、いまはそれがアメリカを中心にして、アメリカと日本、アメリカと朝鮮、アメリカと中国と、こういうふうに縦に三つになっている、これを横につなぐのであります。日本と朝鮮と台湾、これをアメリカと一緒に置いてずっとしたものが、いわゆる彼らのいうNEATOでありますが、これはいかにも多少知能の発達した者であればだれでも考えつくのです。しかも、その中共の声明を見ますと、日本を中心にしてと書いてあるのです。日本を中心にしてアメリカは結ばせようとするのだ。ところがあいにくさんと、日本は名ざしで非常に光栄でありますけれども、日本がおるためにこれはできないのです。日本がおるためにできない。何となれば、日本は、安保条約でも、日本が侵略されたときにアメリカからは援助を受けますが、こっちからは援助することができないことになっています。する義務はありません。したがって、われわれが、いま中共が言うごとく、朝鮮や台湾と日本が軍事同盟を結びましても、これは向こうさまから日本が侵略されるときに助けてもらうという条約なら結べますが、日本が朝鮮や台湾が侵略されたときに助けるという条約は結べないのであります。憲法はこれを許さない。そうすると、もうNEATOというものは、せっかく中共は日本を中心にしと、こう言いますけれども、これは日本がおるためにこういうものはできない。またいまそういう必要もないのであります。縦でもう十分であって、横をつなぐ必要はない、こういうのが私どもこのNEATOに対する考え方でございます。  なお、この点につきましては、この間小坂先生から、ここで何か私新聞で読んだだけでありますが、今度の条約前文の中に、平和と安全を維持するために日韓両国は緊密な協力をすると書いてあるのであります。もとより、それは国連憲章の原則に従いと書いてありますけれども、これを見ると、いかにも平和と安全を維持するために緊密に協力するというと、これは何か同盟でも結びそうなんでありますね。原則に従い、これは私は、そういう深い意味ではなくて、あっさり国連中心主義というので、国連の原則にさえ従っておけば、これくらい無事なことはないのでありまして、ワルソー条約なんかは、ああいう共産主義の同盟条約ですらも国連憲章など引用しておるのでありますから、一番これは無難でありますから、おそらくそういうことでできたもので、ちょっと読むと、そういう疑念も起こるようなことにならざるを得ないとも考えられるのでありますが、それはそうではなくて、ただ国連の原則に従う――国連の原則というのは、これはちょっとことばがたいへんむずかしいのでありますが、あの憲章の中に、目的と原則というものがちゃんときまっておりまして、それだけをいうのか、それとも国連全体のことをいうのか。今度のこの基本条約によりますると、ひとり平和と安全のみではありません。福祉のことも書いてありますので、おそらく全体の国連の規定ということではないか、こういうふうに解釈をしておる次第でございます。  簡単でございましたが、一応こんなことを申し上げました。(拍手)
  66. 安藤覺

    安藤委員長 ありがとうございました。  次いで御手洗辰雄君にお願いいたします。
  67. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 どういうわけで私がここに呼び出されたかわかりませんが、考えてみますと、老いたるジャーナリストで、比較的韓国事情をよく承知しており、北鮮にも友人がたくさんおります。そういったようなことで、おまえ向こうの事情がわかっておるから少し話せということだろうと思いますので、その立場で若干申し上げます。  第一に、この日韓友好条約は、先ほどからの方方もお話しのとおりに、いろいろ欠陥はあります。私も韓国事情をよく知っておる者として、日本人としても不満であります。その点は確かにあるのです。まあ竹島問題とか、あるいは在日韓国人の処遇の問題とか、欠陥はあります。しかし、こういう条約承認するかしないかということをきめる重点はどこに置くのか。百点満点でなければいけないのかというと、私はそうじゃないだろうと思うのです。まあ五十五点では困りますけれども、七十点ぐらいなら大体いいのではないか。八十点ならなおさらよかろう。いわんや、この条約は、全体として見ましたときに、まず九十点ぐらいのできばえではないかと思います。(拍手)ことに十四年間の長い間の両国当事者の苦労を考えますと、これはやはりこの辺がまず手の打ちどころと言ってよいのではないか、こういうことが前提であります。要するに、この条約によって、プラスが多いかマイナスが多いか、こういうことになりますれば、プラスの面がはるかに多いのであります。  ごく簡単な手近な例を一つ――二、三日前からの例を申し上げますが、李承晩ラインが消えたか消えぬかという話がありますけれども、この条約が調印され、まだ承認がされておらぬにかかわらず、朝鮮海峡における漁業の安全は確保されまして、日本漁船隊は公海自由の原則に従って自由に漁業を営んでおります。そのために、下関、小倉、若松、博多、長崎等の魚市場においてはアジやサバがとれ過ぎて、もう置き場がない状態であります。(拍手)そして、値段は暴落をいたして、アジ一匹が一円、二円、一山三十円、一さら五円、六円という値段になり、漁業者が実は豊漁貧乏に困るというので、今後当分操業を停止しなければならぬという事実が起きております。これはどういうことでありましょう。マイナスでしょうか。私は大きなプラスであろう。のみならず、この漁業者たちはこれまで毎朝出漁するたびに家族と水杯をして出漁しておった。それがなくなって、天下晴れて公海に漁業に出かけて、しかも、いままで制限されておった反動として、ここに大漁大漁でお祝いができるようになった。これは大きなプラスじゃないでしょうか。松木さんは御自分の御選挙区のことですからこの事情はよく御承知と思います。(拍手)まずこれらのことを考えてみましても一これはごく手近な一例でありますが、ここに一つ申し上げたわけです。  外交は戦争ではありません。勝った負けたというようなことではない。一方の意思をもって一方を押しつけるということは、それはできるものではありません。よくいわれるとおり、これはギブ・アンド・テーク、これは当然のことであります。こちらも譲るべし、向こうも譲ってもらうべし、いわんや日韓の間のような複雑な長い関係解決するためには、双方にいろいろな無理が重なり、不満不平がある、これは当然のことで、ここに互譲妥協の必要がありますが、われわれの不満に比べて、皆さんに私は韓国人の友人としてお考え願いたいのは、亡国の恨みということであります。国を失った恨みというものがいかに深刻なものであるか。私どもは、歴史上にも、また現にわれわれ自身の経験の上においても、わずかな間でありますけれども経験もいたしましたが、この悲哀を考え、五十年にわたる異民族、他の国の支配のもとに置かれた韓国の人々の不満、ふんまんというものはわれわれ考えなければいけないと思うのです。これが韓国におけるあらゆる反対運動のほんとうの根にあるということを考えましたならば、向こうが一分譲るならば、こちらは八分も九分も譲る、このくらいの度量がなければ、この問題はなかなか解決がむずかしい、このことをよくお考え願いたいと思うのであります。(拍手)双方にこれだけの不満があるのに、そんな条約が親善の役に立つか、こういうお話がありますが、双方にこんな不満があるということこそ、すなわちこの条約がすこぶる公正なものであるという証拠だ、かように申してよいだろうと私は考えます。皆さん、もしこの条約をここで批准ができない場合にはどうなりましょうか。私は、事はすこぶる重大だと思います。政治家としてお考え願いたい。  過去において、日露戦争の終わったときに、われわれの先輩たちは焼き討ちをもって政府に対するふんまんをぶつけました。あのときの焼き討ちの背後にある国民感情は、今日どころではありません。九分九厘の反対でありましたが、それに対して、政府はそれを押し切り、しかも多数党を率いた政友会の総裁西園寺公は、敢然としてこの条約承認すべしとされた結果が、今日の日本のもとになったことをわれわれは考えたいのであります。皆さん、あのときもしあの講和条約の批准を拒んだならば、奉天の北まで行っておった日本軍の運命はどうなったでありましょう。東郷艦隊の勝利はありましたけれども、陸上における日本軍の力、国民の力はもう限界を越えておった。その危機一髪のときに、それを知らない国民が騒ぎ立てた。しかし、それに対して、政府がこれだけのことを……   〔「古い話だ」と呼ぶ者あり〕
  68. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  69. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 決断を下し、政友会を率いた多数党の首領が踏み切ったということが、日本を救った理由じゃないでしょうか。今日に当てはめて、私はつくづくそのことを思います。ごく近い例を申しますれば、サンフランシスコの平和条約またしかり、あのときの批准がもしできなくて、あの講和条約ができなくて今日の日本のお互いの生活やお互いの経済がありましょうか。おそらく、米軍はあの当時の状況からいえば、彼らの計画しておったような軍政をもって臨んだかもしれないと思います。それらのことを考えますれば、半独立とか、いろいろな批評はありますが、われわれが主権を回復して今日の生活を楽しむことのできておるのは、あの条約の批准に踏み切ったという点にあるだろうと思う。(拍手)これらのことを考えれば、今日のこの条約に対しての政治家諸君のお考えも、ひとつ一歩高いところにお立ちになって、大局を見ていただきたい、これが私の第一の考えであります。  まず、日支事変におきましてなぜ失敗したか。和平の機会は三度も四度もありました。これは皆さん御存じのとおりです。九分九厘まで和平の話がつきながら最後に決裂したのは、軍人たちの思い上がった一〇〇%の要求です。その一〇〇%の要求を一歩退ければ日支の平和はとっくの昔にできておった。今日あの敗戦、あの大東亜戦争というようなばかばかしいことは起こらずに済んでおった。それができなかった理由は何かといえば、一〇〇%を求めた欲ばりの人々の話であります。外交というものはそういうものだと思う。どうぞこの点においてもお考えを願いたい。あまり詳しいことを考えて、木を数えて山を見ないという人間が道を失って命を捨てるという例は、昔からあることなんです。ひとつお考え願いたいと思います。決して私は野党の方々の反対に理由がないなどと申しておるのではない。その理由の中には私も同意のできることがある。これは冒頭に申し上げたとおりです。しかし、そこを考えて、プラス、マイナスの計量を誤らない、大局を見るということが、国家を指導する政治家の責任ではないのか、こう考える次第であります。(拍手)  一つ一つの問題につきましては、あまり詳しくなりますから、まあ目録程度にとどめますけれども、第一は請求権の問題でしょう。これは不満があります。けれども、講和条約で定められて日本義務となっておること、韓国側にはその請求権が残っておること、いたし方のないことでありましょう。韓国の反対理由の第一は、亡国の恨み、第二の恨みは、あまりに取り高が少ないということ、フィリピンに対し、南方諸国に対する日本の支払いから見たらば、われわれに対する支払いがあまりに少ないじゃないか。李承晩時代には八十億ドルを要求しておったんです。張勉内閣になってこれが十億ドルになり、次第に下がって、ここまで下がってきた。日本側としてはまず成功と  いってよいかと思いますが、韓国から見れば、それだけに不満、不平であります。こういうことも考えて、まずこの辺でいたし方がないと私は思い  ます。  李承晩ライン、これも先ほど来いろいろお話がありましたとおりで、私どもも、向こうがかってに宣言して、日本はかつて承認したことはない、それを取り消せなんと言ったところでどうにもなるものじゃありません。御自由であるといってよろしかろうと思います。しかし、日本にとってゆるがせにできないことは、この線があるためにこうむる損害である。これは先ほど申しました漁業の問題である。これはすでに解決しておる。批准ができなくとも、韓国政府の、何と申しましょうか、友情によって取り締まりをやめたために、すでにこのことは撤廃同様にいまはなっておるのであります。これまで日本漁船拿捕されたもの五百隻以上、捕えられた者が四千人以上、ずいぶん乱暴なことをされておりますが、これが永遠に続くのではどうなりましょうか。この条約ができなければ、この韓国の朝鮮海峡における乱暴な国際法違反はますます激しくなると思わねばなりません。私どもとして、これはがまんのできないことである。どうしてもこの問題だけは解決しなければならない。李承晩ラインが残ったところで、そんなことは私どもの知ったことではない。平和ラインだと向こうは申しております。これは、もう一つ韓国のためにここに弁じておく必要がありますが、平和ラインは韓国としてはやむを得ない必要なこともあるのであります。今日までは日本に対してもこれが向けられておりましたけれども、これは韓国日報というソウルの新聞の十月三十日の新聞でありますが、冒頭にあります。朝鮮語は私に読めませんが、きのう韓国の新聞記者に読んでもらいましたところが、北傀の漁船がわがほうの船を多数拉致していって、九十余名の漁夫をつかまえていった。こういうことなんです。韓国側から警備艇が出て追跡したけれども  これはみな、別の新聞でありますが、同じ記事であります。漁船が三十余隻、九十何名、北傀の警備兵二十名が来襲して、そして漁船の帰還したものがなく、一隻は沈没させられた。警察の推定では百十二名がつかまえていかれた。三十八度線付近であります。越してきたのでありましょう。こういうことがある。この新聞にはありませんけれども、中共の船もしばしば朝鮮沿津を侵してくるのである。これらが、単に船が来るというのならばよろしいけれども、共産主義行動のために自分の国を侵してくる。平和ラインとして沖合いはるかなところに警備線を敷くのは当然だというのが韓国の主張なんであります。これは、私どもそんなことは承知できるとは思いませんけれども、やむを得ないことも韓国の事態としてはあるんだ。これをひとつ考えてあげなければならぬのではないか。決して私はこれを承認するというのではありません。もともとわが国はこんなものを承認したことはない。わが国として必要なことは漁業が安全にできるかできないかという一点に帰していいのであろうと思いますが、この点から申しまして、李承晩ライン問題は、日本においてはまあ大体すでに解決した、これはもう言って差しつかえないのではないのか、公海の自由の原則をはっきり向こうは認めておるのでありますから、これ以上のことを求めたところで、これは無理であろう、こういうことが私の見解でございます。もし、それでもこの条約承認はいけないとおっしゃるならば、朝鮮海峡、東朝鮮あるいは公海上の朝鮮近海における漁場においてわが国漁業はどうすればよいのか、その具体的な対策をお示しになられねばならぬ、これがなくてただ反対では、西日本数十万の漁民を苦しめるだけであり、これではとうてい漁業関係者は承知できないでありましょうし、同時に、西日本一帯におけるわが国の人々の食糧問題にとってもこれは重大事件であると申さなければなりません。お考えを願いたい点であります。(拍手)  在日韓国人の地位、これは少し譲り過ぎたのではないかと思いますけれども、これも先ほど来申しますことから申していたし方がない。  竹島問題でありますが、この問題については、この席では実は申し上げたくないことがいろいろあるのであります。それは向こうが何と申しておっても、日本がやはり領土権を主張しておるから紛争に相違ないという日本政府の見解は、私もそれでよろしいと思いますけれども、はたしてほんとうはどちらのものなんだ。これは私は野人でありますから何も私のことばには責任がないから申すのですが、日本側はいろいろ証拠物件、証拠古地図などを出しておられますが、韓国にもたくさんあるのです。したがってこれは非常にむずかしい問題である。だから、あとに残るのはいたし方一がない。ここに二、三の資料を持ってまいりましたが、これはソウル新聞という新聞の十月二十八日の新聞であります。これを見ますと、竹島というのは韓国では古名を干山島というのです。私も初めて知ったわけです。四百年前の古図が出てきた、二百五十年前の古い地図が出てきた、こういうものが出てきたのに何を日本が言うかと韓国では言っておるのであります。これは外務大臣にははなはだ御迷惑なことがだんだん出てきたと思いますけれども……。それからこういうものもあります。これは東亜日報ですか、これを見ますと、独島は韓国領、世祖――韓国の世祖というのは約百四十年前の李王朝の王様でありますが、蔚山の東に鬱陵島があり、そのまた南に干山島がある、こう書いてございます。それからまた、これにありますが、これを見ますと、七月二十八日の日本の新潟日報という新聞に出ておったが、日本の昔の地理学者で林子平という人の書いた古地図に――寛政年間ですからおよそ二百年余り前になると思いますが、この地図の中にはこれは明らかに韓国領と善いてある。これを韓国では見つけ出してきておるのであります。こういうようなことがありますから、竹島問題を解決せよ解決せよ、日本領だと主張しましても、――これはまだたくさんありますが、時間がないから略します。なかなか簡単に日本側というわけにはいかないのであります。決して私は韓国のために弁じておるのではない。公平に見て、こういう資料があるのだからそう簡単には片づきません、こういうことを申すのです。しかし、永久に片づかぬかといえば、交換公文は韓国側から椎名さんあてに出されておるので、これから紛争問題についてはお互い外交ルートを通じてやろうじゃないか、けっこうなことで、したがって、これらの資料をよく調べて、外交ルートで解決に向かえばよろしいのであろう。したがいまして、この問題が残ったことは残念でありますけれども、いたし方がないのではないか、私はかように考えております。ここにずいぶんいろんなことがありますから、お尋ねがあれば、幾らでも私が調べておりますものだけは申し上げることができると思います。  先ほど千島のお話がありましたけれども、このことが解決しないで平和条約、友好条約はけしからぬというお話ですけれども、ソ連は千島についてあとで交渉するということも承知しないのである。先年社会党の鈴木委員長――たしか河野さんも御一緒ではなかったかと思いますが、フルシチョフ首相と会われたときにこの問題に触れられた。何と申しますか、鎧袖一触です。そんなことは、まあ手はどんな手をしたか知りませんけれども、社会党で御発行になりました報告書を私も一部いただいて持っておりますが、てんで木で鼻をくくったというか、問題にされない。こういような状態では、千島問題をあとに残そうといったって残らないのである。竹島はあとに残っておることは確かなのですからして、まあいたし方ない、あとでゆっくり平和に話し合いをしよう、この辺が手ごろではないか、これがつまり外交ではないか、かように考えるわけであります。  南北の統一の問題でありますけれども、日韓条約がじゃまをするなどということが話にならぬことは、すでにこの委員会で皆さん御研究済みと思います。多くは申しません。先ほど来田村博士のお話のとおりでありますが、ただ一つつけ加えておきたいことは、私どもの考えでは、どうしてこれができないのか、北鮮側がもしほんとうの自由選挙によってこれが統一ができるということに踏み切ったならば、簡単にできるのではないのかと思います。しかるに、一九四七年十一月の百十二号決議を受けた翌年の百九十五号決議によって国連の委員会ができましても、これを入国を拒んだのは北鮮である。そしてその後も拒み続けております。この人々が一九五二年に提案したものは、南北同数の委員をもって、その委員会は全会一致で決定しよう、こういう提案をしておる。これが北鮮のまず唯一といってもいいくらいの平和提案であり、統一提案であります。一体できましょうか。南北同数の委員というのが、一千万人の北鮮と二千七、八百万人の南鮮を同数にすることがナンセンスである。その上に、今度は全会一致でいけなんて、これはできるわけがない。できないことを提案しておいて、一方の国連の提案を拒否し続けるということでは、これは統一のできるわけはないのです。日本がどんな条約をつくろうとも、そういうわけはありますまい。いわんや、この条約のほかに、すでに北鮮も韓国も双方ともにいろいろな国と条約を結んでおることは皆さん御承知のとおりであります。最近の北鮮では、もはや統一などということは考えない、南を併合することに全力をあげておるという事実を一つ申し上げておきます。これは私も相当な関心を持っておりますから、いろいろなことを申し上げますけれども、今日は武力によって南を征服するということは国際情勢上なかなかむずかしくなってきた。したがいまして、謀略により、思想攻略により南鮮を苦しめて、撹乱して、北へ併合していこうという政策に変わってきておることは明らかであります。その証拠を二、三申し上げますが、たとえば、本年四月、ジャカルタにおける金日成の演説を見ましても、わが党の任務は、全力を尽くして南鮮の革命勢力を成長させ、人民革命を支援することにある、これがジャカルタにおける金日成の演説です。本年十月、つい先月ですが、朝鮮労働党の二十周年記念大会における彼の演説を見ますと、われわれの主たる任務は、われわれの国をアジアの革命の基地とし、南鮮にまず革命を起こし、そしてそれを他に及ぼすことにある、こういうことが労働党の大会における金日成の演説であります。これらのことを考えてみましても、ほんとうに統一をはばんでおるものがだれかということは明らかで、日本との条約がこれをはばむなどということは大きな間違いではないか。中共・北鮮、ソ連・北鮮の間に結ばれております軍事同盟をごらんになったと思いますが、その冒頭には、われわれはマルクス・レーニン主義を堅持して、その原則に従って緊密に協力し、互いに全力をあげて支援すると書いてあります。そうして、軍事的な攻撃を受けた場合には、そして戦争状態になったらば、全力をあげて援助する、こう約束し合っております。さらに進んで、第六条には、統一の方法について、われわれはこの原則に従って平和的・民主的な統一を成就しよう、こう約束しております。一国が他の国と同盟を結んだときに、自分の国の統一の方法まで約束するなどということは、私はあまり学問がないせいかもしれませんが、よく存じません。けれども、こういう約束をしておる国が一方にあって、平和友好条約が統一を妨げるなどということは、これはよほどどうかしておりはしないか、かように考えるわけであります。  では、なぜ日本は北鮮を相手にして韓国と同じようにやらないのか。これはもう説明するまでもないと思います。ごらんのとおりです。韓国は、李承晩時代にずいぶんひどいことをわが国にし向けましたけれども、今日では早く友好を結ぼうとしておりますが、北鮮のほうにおいてはごらんのとおりだ。スパイを放ち、破壊工作員を潜入させ、盛んなわが国の秩序の撹乱破壊をやっております。わが国を敵視しておる。この国に対してどうして手が出せるのでしょうか。それはそれとして、まあとにかく経済的にも何とかお互いに接近していこうという努力はいたしておるようでありますけれども、進んで政治的な話し合いができる相手ではございません。もし北鮮がこの態度を改めて、わが国に対しても、今日の日本の秩序を破壊するとか、あるいは秘密を盗むむスパイを放つとかいったようなことをやめ、たとえば都下にあります朝鮮大学というような不法なものを廃止するというような処置をとったならば、これは北鮮とも進んで友好を結んでよろしいと私は思う。そういうことはしない国に対して、どうしてわが国だけができるでしょう。これはできようがないことをやれということにほかならぬと思います。  軍事同盟でありますが、これもむしろふしぎな話であります。東北アジア軍事同盟につながる、いろいろなことを伺います。けれども、それは要するにこの条約が軍事同盟というのではないようで、将来そうなるおそれがある、アメリカのだれはこう言った、朴正煕はこう言った、だれはこう言った、そこでそういうおそれがあるという、将来に対する仮想の問題、予定の問題でしょう。現在あるとは、この条約そのものが軍事同盟だとは、おそらくどんな反対の方もおっしゃるわけにはいかないだろうと思うのです。われわれが軍事同盟にするか、友好条約にするかということは、これからのわれわれの努力です。日本人が軍事同盟などを結ぶことに承知するかどうか。そんなことは私はないと思います。断じてないであろう。韓国の人々もそのとおりです。李承晩時代に、これは今日と時代が違っておりますけれども、李承晩自身がはっきり公衆の前で演説をしております。何と言ったか。もし国連軍に日本が参加するならば、われわれはほこをさかさまにして北鮮と結んで日本と戦うであろう、こういうことを申しております。そのくらい一部の韓国には反日気分が強いのです。とても軍事同盟などの結べる相手ではありません。  また、もう一つ申したいことは、東北アジア軍事同盟、われわれのは仮想でありますけれども、現にある。どこにあるか。北鮮を中心にして、中共との軍事同盟、ソ連との軍事同盟、中共・ソ連の軍事同盟、明らかに日本を名ざしにした軍事同盟があるじゃありませんか。このあることを捨ておいて、これから何とかなるおそれがあるということを非難をされるというようなことはどうかしてやしないか。こういうようなことから考えまして、私はどうもこれはむずかしいと思います。もしもこの条約が軍事的に転化するようなことが起こったならば、そのときこそは社会党にとって政権獲得の絶好のチャンスじゃないでしょうか。私は、これは冗談を申すのでは、反語を申すのではありません。日本人の大多数はそんなものに反対しております。反対しておりますがゆえに、そんなことがもしあったらば、社会党にとってはチャンスである、こう申し上げたい。そのくらいこのことははっきりしておると思います。  その他申し上げたいこともありますが、時間がないようです。そこで、最後に申し上げたいことは、このことについて韓国では非常な反対がある、それに対して、こんなものが役に立つか、友好ができるかという意見が日本でも広く行なわれておりますが、これは間違いです。韓国状態はそんなものではありません。反日感情の主たるものは、亡国の恨み、これに対する償いの少ないということ、これです。そして、今度の条約においてもそれが十分に償われていないということに対する不満なんです。これならばわれわれとしては考えることを別にしなければならないのでありますが、しからば、この条約にはどうなんだ。先般の学生デモなんぞは、まあ問題にはされておりません。去年の学生デモは、残念ながらあれは戒厳令まで出るようになりましたが、その原因は、あれは何かといえば、あれは、金鍾泌・大平外相のメモが先方に誤解されたかどうか、そういうことが主たる原因。あの裏に金の取引があったということは韓国では全然ほんとうとして信じられ、これがあの大きなデモの原因になったのです。私はそんなことはないと信じますけれども、そういうことがあったのであります。ことしはそんなことは全然ない。裏も表もないのだ。学生が幾らあばれてみたところで、一万人かそこらの学生が少しどうかするだけで、たいしたことはありません。衛戌令が出て静まったじゃないかとおっしゃるが、韓国の衛戌令というのは、われわれの考えるものとは全然違います。多少のことは軍人だから手荒なことをしたでしょう。一つの例をあげます。ことしの春、あの衛戌令の出たすぐあとのことなんですが、ことしは韓国は数十年来の干ばつでした。そのために田植えができなかったのです。非常に困って、日本からも多くのポンプなどを輸入して、たいへんな騒動をやりましたが、さて七月の初めごろになりますと、急に大雨が降り続いて、もうポンプも要らぬ、そら田植えだ。ところが、とっさのことで手が足りない。そこで、衛戌令第十七条、あの問題の学生を弾圧したというあれです。十七条を発動して、全軍出動せよ。全軍農村に展開し、三十八度線の守備兵だけを残して、みんな田植えに行ったのです。そうして、一週間の間に田植えを済まして、またたく間に済まして、ことしは近年にない豊作をいま喜んでおる。これが韓国の衛戌令の実態なんです。ひとつお考え願いたいと思います。ただそういうことをすればすぐ軍人による弾圧だなどといって即断されるということはどうかと思います。韓国の新聞にしましてもそのとおり、反対運動をやったものはどうとかこうとか言いますが。実は賛成の決議や声明をしたもののほうが多いのです。そんなことはもう時間がないから略しますが、ここにたくさん書いてありますから、幾らでも申し上げられます。  最後に、わが国の世論について申し上げますが、わが国において国民はどう考えておるか、これがおそらく皆さん政治家の方々としては大事な点であろうと思うのです。  これについては、まず第一にあげたいことは、各新聞社の社説でございますが、この社説をずっと通読いたしますと、この条約の調印されました六月の二十二日ごろから後、これに対する正面切った反対論の社説というものを見たことはございません。日本国じゆうに一社もありません。代表的新聞としてはどうかと思いますけれども、まず朝日新聞六月二十三日の社説を見ますと、これで日韓の不自然が解消されたのである、これを親善に役立てることが大切である、われわれにも不満もあるにせよ、現時点に立って、あくまで反対するということは、これはよろしくない、妥結した以上は、国際信義を重んじ、協定を尊重して、親善に役立たせることがわれわれの当然の道である、これは朝日新聞の社説の要約であります。同じ二十三日の読売新聞の社説を見ますと、十四年目の解決にほっとしたというのが国民の偽らない心情であろう、不満はあるが、この古い隣国との正常化の一歩を踏み出したことを喜びたい、これは読売新聞の六月二十三日、調印翌日の社説であります。だいぶこれがいろいろ問題になりました後の社説を見ますと、たとえば、毎日新聞九月二十七日、あくまで議会政治の本領にに基づき、院外運動に主力を求めるような行き過ぎはやめるべきである、大衆運動で議会主義を否定するような空気をつくることがわれわれとしては最もおそろしい、これは毎日新聞九月二十七日の社説でございます。たくさんありますが、略します。  こういったような世論の動きを見ておりますと、大体日本国民の大部分は、私はこの条約を支持しておると思います。その証拠を数字をもって申し上げますと、ことしになって世論調査を行ないましたのは、新聞社では読売新聞一社だけ、その他に時事通信社の傍系であります中央調査社、これはいまから六年前から毎月世論調査を行なっております。これを見てみますと、中央調査社においては、これは十月の調査であります。日韓条約批准に賛成四一に対して反対一一%であります。読売新聞を見ますと、賛成四五に対して反対が一二であります。大体双方とも似通った数字が出ておる。四対一というのが今日の大勢であります。これがまあまあ国民の大勢ではないか。  もう一つ、ついでにつけ加えておきますけれども、この読売新聞の調査の内容に注自すべきことがあることをひとつお聞き取り願いたいのであります。何か。自民党を支持する国民は全部が賛成かというと、そうではないのであります。これはお考えを願わねばならない。賛成四一%に対し、やむを得ないという人が一四%であります。合計五五%の賛成に対し、反対だという人が六%あります。自民党支持者の国民にそれだけの反対があるのです。逆に、社会党支持者を見ますと、賛成二六、やむを得ぬという人が一四、合計ちょうど四〇%に対し、反対二〇%、すなわち社会党を支持する人もその倍が賛成の側である。反対は半分しかない。このことは社会党の方々もひとつよくお考えを願いたいと思うのであります。共産党の支持者は、さすがに反対三八%でありますけれども、それでも賛成者が八%、やむを得ないという人が一七%、合計二五%の賛成者があるのです。これもまことに奇妙な現象。民社党の支持者を調べますと、賛成四〇、やむを得ずが一五、合計五五に対して、反対一七%。この大勢を見ましても、やはり国民の大多数は、社会党支持者、党の支持者までもが、この条約はまあまあしかたがなかろと賛成して、早く日韓の親善に進めと、こういうことになるのではないか。何もこの世論調査を私は絶対の権威だと申すのではありません。けれども、大体常識で見ても、世論の大勢はこの辺ではないのか、こう考えております。  ひとつこれらのことからお考えをよく願いたいと思いますことは、双方とも、これはお互い政府と国民の信義の問題だと思うのです。まあまあ、私も何度も申しますように、この条約に欠陥がないというのではない。社会党の方々、共産党の人々の言うことにも、なるほどとうなずける点はあることは確かにあるのです。ただ、プラス・マイナスはかりにかけた場合に、いずれであるかといえば、これはもう問題にならない、やはり今日はこれは批准承認を与うべきものである、かように私は考えます。  少し時間が長くなりました。(拍手)
  70. 安藤覺

    安藤委員長 以上をもちまして各参考人の意見の開陳は終了いたしました。     ―――――――――――――
  71. 安藤覺

    安藤委員長 これより質疑に入りますが、内海参考人は余儀ない所用のため、先ほど退席されましたので、御了承願います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中六助君。
  72. 田中六助

    田中(六)委員 私は自由民主党の田中六助でございます。本日は両先生まことに御苦労さまでございます。私は、ただいま御三人の参考人の方々に非常に貴重なる御意見を伺いまして、ありがたく思います。これからこれらのお残りのお二人の方に私の意見も交えつつ御意見をさらに深く掘り下げてお伺いしたいと思います。  私どもは、この日韓条約に関連する諸問題につきましては、どうしても善隣友好という大きな使命のもとに何とかりっぱに批准しなければならないという強い決意で臨んでおります。しかるに、一般の、社会党をはじめ、この条約に反対する人々のまず第一の意見といたしましては、なぜこの日韓条約を急ぐのか、内容が非常に食い違っておるのになぜ急ぐのかというような意見がございますし、私どもは、これに対しまして、先ほど御手洗先生の御意見にもありましたように、この十四年間ほんとうに血の出るような折衝を両国でやってきておりますし、この点からも、少しも早過ぎるという意見はわれわれの頭からは出てこないわけでございます。こういう点で、この条約を結びますと韓国の分裂を固定化するものである、そういうような意見から、韓国、朝鮮全体の統一という観点からも強い反対がございますが、先ほど田村先生は、現在第二次世界大戦後五十九カ国の独立国がある、そのうち旧領主と新独立国との間に親善関係ができてないのは日本韓国だけであるということを御指摘になりましたし、また、御手洗先生は、朝鮮の統一問題についてはそうたやすくできる見通しはないという御見解を述べられておりますが、この問題につきまして、日韓条約はなぜ急ぐのかという疑問にさらに深くお答え願いたい、御説明願いたいというふうに思います。田村先生からどうぞ。――御手洗先生でも、どちらでもけっこうでございます。
  73. 田村幸策

    田村参考人 いま一度質問の……。
  74. 田中六助

    田中(六)委員 この日韓条約を急ぐのはなぜか、南北の分裂を固定化するものであるというような意見からあるわけでございます。こういう意見に対しまして、先ほど田村先生は、九十五カ国が第二次世界大戦後独立して、親善関係のないのは日本韓国だけであるという御見解をお述べになりましたが、われわれは一日も早くこの条約を批准し発効させねばならないという気持ちでおりますが、この点についての先生の御意見をさらにお伺いしたいと思います。
  75. 田村幸策

    田村参考人 なるほど領土問題が残っておりますことであります。非常な重大な問題で、私はまた領土に関しましては個人としては非常に関心を持っておる者でありまして、これは、李東元さんがもう交渉の余地はない、わしのものだと言い得ると同様に、日本もそのことは椎名外務大臣はおっしゃって一向差しつかえないのでありまして、これは紛争としてあとへ残しましたけれども、決してそれがために日本韓国もあの領土権を捨てておる意味は少しもないのであります。向こうがおれのものだと、おっしゃれば、こちらも、おれのものだということで、この対立のまま残っておりますのですから。しかし、その他の問題は全部これで解決いたしましたので、この際それではあとのものを――現在日本立場からいたしますれば、何といっても安全操業漁業問題が一番の大切な問題でありますが、それと六十万の朝鮮人の地位というものを何とか明らかにしなければならない。これが一番大きな問題でありまして急を要する。この二つを含むすべての問題が、懸案はほとんど全部解決しておる。ただ一つ残ったのでありますが、それのためにほかのもりを、ほかの九割九分まで成功したものを犠牲にして、いつまでも国交の再開をやらないとすれば、それはちょうど、いつまでも朝鮮をああして、ああいう不安な状態にしておくという共産圏からの策謀に乗ぜられることになるのでありまして、この際は、領土問題だけはしばらく見送って、あとのまとまったものだけでやろう。これはいまの九年前の日ソ国交回復のときと全く同じあります。あのときも鳩山内閣というものは二者択一でありました。これによって領土の問題が解決しなければ、このままモスクワから引き揚げるか、それともそれはあと回しにして、一応戦争状態というものをやめさして国交を回復するかという、こういうのでありまして、日ソ共同宣言ができたわけでありますが、それと同じような、いま政府はそういう立場に置かれたわけでありましょう。でありますから、これを、永久化の問題をいま申し上げまして、また御手洗さんからもおっしゃったようなわけでありまして、実に十八年にわたる長い問題でありまして、これは記録は大きなものがあります。それを見ましても、向こうさまは、共産、いわゆる北のほうから統一するのでなければ、北のほうの条件で統一するにあらずんば統一ということはできないことはわかっておりますのですから、これを幾ら待っておっても、もう果てしのない問題でありますので、今回はそれを思い切られて、しばらく領土問題は見送って、この際やる、こういう決心をやる。あせったという、これも、いま申し上げました中共の声明の中にあります。日本があせってやる、佐藤内閣があせってやったのは、ベトナム問題で窮境におちいったアメリカを救うがためにやったのだと、こう書いてあります。十四年も待っておって、いまあせったということばは、だれが考えてもぴったり来ないのでありますが、そういうことに乗せられておる者もあるのでありまして、これなども、やがて口がさめてくると思います。きわめて近い期間にそういうことも目がさめてくると思う次第であります。
  76. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 なぜ急ぐかというお話でありますけれども、十四年もかかった交渉がいまごろ妥結することが急ぐことになりましょうか。第一、私はこれがおかしいと思うのであります。時間はとにかくとして、内容については、もうありとあらゆることをお互いに言い尽くして、韓国側はたびたびの政変でもって内閣の性格が変わりまして、言いたいことはあらゆる角度で言い尽くしてしまっておる。こちらも内閣がずいぶんだびたび変わりまして、言いたいことは言い尽くしておりますし、世論もそのとおりであります。したがいまして、これ以上話してみたところで、じゃ、まだ何カ月か何年かたてば歩み寄れるのかといえば、そういう見込みはもういまのところありません。とにかく現に紛争がいろいろあるんだ。一番はなはだしい問題は、日本から申せば、朝鮮海峡における安全操業の問題です。これ一つでも解決しなければどうにもならないんだ。一日も早くやるべきであり、そこでとりあえず合意したことでもって条約締結し、そうしてお互いに大使を交換し、領事を交換して親善関係を結び、そうしたら次第によくなってくるのではないか。現にその例はソ連との関係がそうだと思います。十年前の平和宣言の当時などは、とても今日のような状態に十年でなろうとは、まあ思った人はあるかもしれませんが、多くの日本人はなかなかむずかしいと思っただろうと思うのです。それが十年間の国際情勢の変化及び両国の国情の変化、国民の感情の変化というようなことから、こうやってシベリア開発に日本が積極的に参加するようなこともできるようになり、日ソの間の文化交流も別に心配なくお互いにやれるようになった。こういうことになりますれば、おそらくこの次にくるものは千島問題を中心にした平和条約の問題にいくのじゃないか。その時期が私は近いと思うのです。ここいらが国際情勢の微妙な関係だと思うので、早過ぎるということは私はおかしいと思いますが、しかし、しいて早過ぎるとおっしゃるならば、二、三のことを私は申したい。  なぜこの場合、だらだら急にやるのか。たいがい、ものの交渉なんというものはだらだら急というのがほんとうであります。個人の話であろうが、会社の話であろうが、どんな話だって、初めは何かわけのわからぬ抽象的な話をやっておって、次第に核心へ触れて、最後のところにいくとぱっと片づける。この辺がすべての交渉のいき方なんです。したがって、だら急というのは当然なことであろうと思うのであります。  ただ、二、三具体的な問題を申し上げますと、第一には、韓国経済と民生の問題であります。これはもうずいぶん前からひどかったのでありますけれども、李承晩政権時代には、アメリカは軍事援助のほかにばく大な経済援助を与えておった。したがいまして、韓国の人々も困りは困っても、まあまあ相当な生活ができた。それがあの事変以後だんだんひどくなりまして、最近は実に悲惨な状態になっております。その一番大きな原因は何かといえば、韓国に自立経済の計画ができず、それを行なうべき資本もなければ、資材も技術もないということであります。アメリカは、ずいぶん援助したと申しておりますけれども、その援助のほとんど大部分というものは、それは消費資材であります。食糧、衣料その他の消費資材であって、韓国経済建設の必要なものを何ら与えていないのです。何ら与えていないと言ってよろしいでしょう。アメリカが、アジアばかりでなく、世界で帝国主義と非難される理由は、私は、この辺にもあると思うのです。アメリカのやり方は賢明でもなければ、私ははなはだ人類のために幸福とも思いません。こじきにものをやるように人にものをやっておいて、おれがものをやったやったといったってありがたがる者はおりません。やはり自分の力で生活ができるようなめどをつけてくれる、それがすなわちほんとうの援助じゃないのか。ベトナムにおいてもどうですか、非難されておる大きな理由は、消費物資や軍事の援助だけで、建設経済の援助をアメリカは怠っておる。これが大きな原因だと私は思う。韓国はまさにその見本です。日本も初めはそうでした。しかし、日本人の優秀さと日本の民族の底力によってそれをはねのけて、今日のわれわれの繁栄を築いておりますが、気の毒なことには韓国は元来民族資本が少ない。そして民族的に技術水準が非常に低い。そういうところへもってきて、アメリカの誤った政策が二十年も続いている。今日も同じなんです。発電所一つ建設を許さないのです。いわんや韓国の人々が一番先にほしがっている肥料工場なんか、これは電力がなければできるわけがありませんが、肥料工場なんぞ絶対建設させない。ある韓国の財閥がその建設を始めたところがストップを命じております。そういう事実がある。実にけしからぬ話で、これはアメリカを非難してよろしいと思うのです。そういうことがありますために、韓国民の社会不安が起こり、生活に対する希望を失い、だれが出たって同じじゃないか、何が政治だ、前進だ、アメリカは援助援助と言うが、何を援助してくれたのだ、変なやつにわいろをやっただけで、おれたちには何もくれたものはない。もし韓国でたとえ十万トンでも白国産の肥料ができることになれば、韓国の農民は光明を認めることができます。この状態に対して、朴正煕はあのクーデター以後この欠陥を見抜いて、新政権のできた直後に経済五カ年計画を立て、そして乏しい民族資本を根こそぎ動員して発電所をすでに五カ所つくっております。アメリカの反対を押し切ってやった。その中にはドイツの機械もあり、日本の機械もあります。そして、彼がクーデターを起こした五年前には二十五万キロの発電力しかなかったものが、今日は九十七万キロになっております。アメリカとしては、これははなはだ不愉快なんです。けれども彼は敢然としてこれをやっております。肥料工場もすでに三つできております。大体合計年産五万トンぐらいことしはできると思います。そのやっておる工場主が先般東京へ参りまして、私も一晩ゆっくりいろいろな話をいたしましたが、実に悲痛なことを言っております。なぜアメリカはわれわれをこんな目にあわせるのだ。そこで日本と早く結ぶ必要が韓国民にも朴正煕にも起こってきたのだ。それで、日韓友好条約経済の面に特に力を入れるという理由はここにある。それは韓国側の要求なのです。それで日本の資材と技術を導入して、役務によって韓国の発電所、肥料工場、セメント工場といったようなものを開発していけば、どうやら自立経済のめどがつき得るであろう。そこで初めて韓国の人々は民族の前途に光明を認め得るようになるので、なぜ韓国の政情が不安定なのかという最大の原因は、政治に絶望してしまっておる。だれがかわったって何にもできはしないじゃないか、そのうしろにはアメリカがあるのです。そのことをわれわれは考えてあげなければいけない。これが今日の韓国の実情ですが、まあ御参考までに申し上げますけれども、失業者ですね、公称百五十万といっておりますけれども、韓国の統計では、一カ月に一日就業してもこれは失業者じゃないのです。したがいまして、ほんとうの失業者は三百五十万、まずこのくらいと見てよいでありましょう。大学の卒業生は年々二万人ありますが、そのうち就職し得る者が大体二千人程度でありましょう。ソウルの清掃人夫ですな、便所掃除の人夫、この中の十人に三人までは大学卒難生です。いかにひどい生活難に見舞われておるかということがわかるのであります。そういったようなことから、農村においては肥料、都会においてはとにかく就職先、これが韓国にいま求められておることなんです、これは一ぺんに解決はできませんよ。われわれの経験を見ても、まあ二十年やそこいらはかかりましょうが、そのことに着手できれば、民族には一つの光、光明、希望が見える。そこでまあ安定はしないまでも勇気が出てくる。これが日韓友好条約の積極的な――私はいままであまりこの委員会でもお論じになっていないと思いますけれども、ほんとうは大事な点です。韓国をよく知る一人として私はこれを訴えるのです。このことはぜひやらなければならない。この安定ができて初めて北からの侵入を防ぎ得る。先ほど私が申し上げました金日成がいかに力を入れましても、韓国の人心が安定して生活に希望が持てるようになったら、共産主義なんというものは受け付けはしません。これは日本人どころじゃないのです、韓国の共産主義に対する憎しみは。  つい四、五日前に韓国へ帰りましたが、女流作家が二人、それから婦人の新聞記者、韓国日報の文化部長ですが、これがやってきておりまして、一日おきに私の事務所にあらわれていろいろな話をしておりました。そのときにこの人々の話を聞いておりますと、しみじみそれを感じたのです。こんなことをしておってわれわれは一体将来どうなるのですか。なぜ日本がもっと進んでわれわれのところへ来てこの建設を助けてくれないのか。アメリカは何もしてくれはしないのだ。だからわれわれは非常に腹も立つ、不満もあります。まあ作家の一人はこう言っておりましたよ。日本人のげたをはいておる姿とお宮の鳥居を見ると、かっと血が頭にくる、こう言うのですね。なんでそんなことを言う、いやちょいちょいげたでなぐられた。それから鳥居を見ると、あの前でおじぎを無理にさせられた。それですから日本人のげたと鳥居を見るとかっとなる。そのくらいにほんとうは反日感情を持っておるのですよ。けれども、いまはそんなことは言ってはおれないのだ、背に腹はかえられないんでしょうかね。そういうことが、日韓条約をなぜ急ぐか、私は急いだとは思いませんけれども、この際どうしても一日も早くやって、ほんとうの友好親善の基礎を築く、それは韓国の建設、経済にわれわれが手を貸す、こういうことだろうと思います。(拍手)
  77. 田中六助

    田中(六)委員 いま両先生の御意見、非常に参考になりましたが、ただいま経済的な不安定から結局政局の不安定も韓国では来たしておるというようなことを御手洗先生は特に強調されましたが、やはりこの委員会における質問におきましても、現在の朴政権をかいらい政権である、もっとも南のほうも北のほうをかいらい政権と言っておるようでございますが、こういう点につきまして、朴政権の安定性ということがやはりこの条約にからんで大きな問題になっておるようでございますが、この点につきまして御手洗先生の御意見を伺いたいと思います。
  78. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 おっしゃるとおりに北は南をかいらいと言い、南は北をかいらいと言う。さっき私が新聞をお目にかけましたように、韓国の新聞は北傀、毎日の新聞にこういう見出しを使い、北鮮の新聞は南傀、こう言っておるのですから、これは同じことなんです。ですが、いまお話のことはなかなかむずかしいと思います。それは韓国の人々は非常に激情家であるということが一つ。右から左へ左右の振幅が非常に激しいのです。でありますから、少しよくなるとぱっとそっちへいく、ちょっと悪くなるとわっとまた反対にいく。こういうことから見まして、私が先ほど来申しております。とにかく幾らか世の中が明るくなるという希望を与えればたちまちよくなってくるのである。しかし、やはり同じことだということになれば、これはもうまただめだ、こういうことになります。  いま韓国の新聞を見ておりますと、まあ政府非難攻撃がすこぶる多い。これは日本の新聞のまねをしておると思いますけれども、新聞というものは大体野党であり、韓国の新聞も初めから、これはずっと昔から野党で育ってきたのでそういうことはあります。しかし、どれだけの力があるかと申しますと、それはたいしたことはないのでありまして、先ほど新聞の社説のことを申しましたけれども、韓国のほうの新聞を見ましてもこれは同様であります。たとえだ東亜日報といえば、日本時代から実に手に負えない反日、反政府の新聞でありますが、この新聞も今日では――あの条約に反対しておりましたけれども、もうこれができた以上は、われわれとしては忍耐をもって、政治家は指導力を発揮し、国民は冷静にこの約を建設に役立てるようにしなければならない。これが反政府の急先鋒の新聞の社説であります。朝鮮日報というのも負けない反政府の新聞でありますが、このほうではまたはっきりと、これはもうやむを得ない、今後の最大の問題はわれわれが民族の主体性を堅持することである、こういっております。そういうようなことで、新聞ももう落ちついてきたと見てよいでありましょう。  民間の団体を見ますと、これはずいぶんおもしろいので、どういうわけでありますか、日本の新聞には反対運動ばかりたくさん出ておりましたが、向こうの新聞を見てみますと、そんなことはないのであります。  第一に学生でありますが、大学生は十二万七千人おります。そのうちでデモに常習的に出て行く者が一万人か一万五千人、それも高麗大学の七千人のうちの約千五百人、ソウル法律大学の七百人のうちの半分三百五十人、これが主力、その他の者は、まあそのときどきの都合で騒ぎに出て行くというだけのことで、他の学生たちとはたいした関係はありません。日本の全学連に対して韓国の新聞は、こういう学生のことを政治学生と書いております。政治科の生徒ではないのです。そういうことをやる学生のことを政治学生、国民はもういまでは全然相手にしておらぬのが実情であります。これは私が言うばかりではない。韓国に行ってこられた人はみな言う。東大の林健太郎先生のような篤実な学者までが、あのデモの最中に行って帰られて、日本の新聞を見ておると、たいへんな騒ぎと思って行ったら、どこにデモがあるかわからなかった、それはソウル大学の学術会議に行かれたのですから、一番知っておるはずなのが、そういうことを東京新聞に書いておられる状態であります。学生の運動はそれです。  ところが、おもしろいのは、七月の十二日に六十三大学の総長、学長が全部集まって、教授たちは政治運動に中立でなければいけない、学生は教室に帰って静かに授業を受けよ、こういう決議を満場一致でやったのです。それを日本の新聞には一つもありません。これは韓国の新聞には出ております。騒ぐほうは日本の新聞には相当出ておりますが、こういうことはないのであります。三百人の教授が反対決議をしたということは日本の新聞にも出ておりますが、総長、学長の全会一致のそういう決議は日本には報道されておりません。  軍人が十一人何か反対の声明を出したという記事はありましたが、その二、三日後になりますと、百二十人の前参謀総長、前国防長官、前外務部長官というような、これはみな予備将官です。この人々が百二十人集まって、条約批准促進すべしという決議、声明を出して、――これは各新聞に向こうでは載っております。これは日本の新聞には一行もない。たぶん皆さんだれも御存じないだろうと思うのです。そういうことなんです。  経団連というのは、日本の経団連に当たりますが、傘下団体七十七団体、これも満場一致で賛成の決議をしております。その他全国畜産組合、全国映画会社連盟、十五映画会社全部です。それから全自動車運送業連合会といった実業諸団体が、みんな集まって全会一致で賛成の決議をして、新聞に向こうでは出ておるが、日本の新聞には出ておりません。これも申し上げておきますが、もっと大事なことがあります。それは一番問題の水産業者です。全国漁業組合連合会というのがあります。また、水産業者協同連合というのがあります。これも大会を開いておる。これは七月十五日です。それは五千人集まった。全韓国漁業関係者のおもなものは全部です。満場一致で、この条約は積極的にすみやかに批准すべしと決議しております。御存じですか、皆さん。いかがですか。こんなことは日本には報道されていないのです。  いかに向こうの状況が変わってきたかということはこれでわかるので、あなたは政権が安定しておるかどうかと言われますが、こうやって条約がこれだけの支持を得て、日本が批准をして、この条約が正しく運営され、韓国経済にプラスになりましたならば、おそらくは政権は安定していくのではないか。それだけに、これが逆になったらば何とも言えません。これはいつ何事が起こるかもしれない。これは韓国のことであります。日本のように政党の分野が大体安定状態というわけにいかないのですから何とも言えない。要するに政局の安定度いかんというのは、この条約の成否いかん、そういうことにある、こう申し上げておきます。
  79. 田中六助

    田中(六)委員 ただいま先生の御意見、非常に朴政権の安定度につきましてもわかりましたし、また、私がその次に実は聞かんといたしました世論の問題、つまり日本の世論は、先ほど時事通信と読売新聞が、大体大まかに見てそれぞれ四対一の割合で支持している、しかも社会党も、反対は賛成者の半分しかないということをおっしゃられましたし、韓国の世論も、この日韓条約にからむ諸問題についてどういうライトを浴びせておるかということにつきましても、十分先ほどの御説明で納得できましたが、さらに私は田村幸策先生にお尋ねしたいのでございます。  先ほど先生は、わが国の今回の条約を含む内容の中にあります経済協力が侵略を意味するものではないということをおっしゃいましたが、当委員会におきましても、われわれの協力、この条約に含まれておる無償三億ドル、有償二億、ドル、民間供与の三億ドルを含めまして、これらがすべてむしろ侵略行為につながるものであるという見解を述べた方々もいますが、この点につきまして、私は、韓国経済のこれらを受け入れたときの発展の度合い、つまり韓国経済の現実と、これらを受け入れた将来の度合いという観点から、先生の御意見をお聞きしたいと思います。
  80. 田村幸策

    田村参考人 これは脱帽いたしますが、私は全然門外漢でありましてわかりませんが、侵略ということばは、おそらくもうけがあれば大部分を日本のほうでひっさらって帰ってくるようなやり方を言うのであろうと思いますが、そういうことは相手をあまりにばかにした話でありまして、また、向こうさんをあまり劣等感にし過ぎるのであって、日本人と対決すれば、朴大統領じゃありませんが、日本人にあえばすぐ食われるというような、そんなことになるのでありまして、そうたやすくはお客は許してくれないのでありましょう。ソビエトの要求によって日本の実業家はシベリアの開発にこれから協力しようという、これをもって日本がシベリアに経済侵略をやるなんていうことはだれも考えていないのであります。それに、朝鮮に投資したり、朝鮮に協力するためのみにこれを侵略と言うのは、それは朝鮮人のほうがロシア人よりも劣っておるということを言うのでありまして、そんなことを言うのははなはだ失礼だと私は考えるものであります。
  81. 田中六助

    田中(六)委員 この韓国経済問題の実情というのは、何を申しましても、これから条約が批准され発効された後に発動するわけでございまして、非常に重大な関係でございますが、この点につきまして御手洗先生は、先ほど完全失業者が約三百五十万、私ども、潜在失業者を含めますと約六百万人の失業者がおるというふうに聞いております。われわれのこの協力が必ずや韓国経済の復興に寄与し、また日韓両国の大きな親善のいしずえになると確信しておりますが、この点に対する御手洗先生の御見解をさらにお伺いしたいと思います。
  82. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 それは日本のやり方にもよりますが、韓国の受け入れ方にもよると思います。まず韓国の側から申しますと、いままでのたびたびのおかしな事件で経験を積んでおりますから、今度は与党と野党との合同委員会をつくって、日本から受け入れる資金の使用方法について協議をする。その決定によってこれを使うということを、もうすでにきめております。したがいまして。その与党、野党の委員たちが怪しい行為をすれば別ですけれども、いままでよりはだいぶ明るくなってきたということはいえるだろうと思います。おそらくあまりたびたびいろいろなスキャンダルが起きておりますから、これからはそんなことはないのではないか。しかも三億ドルと二億ドルと三億ドル、これの使用方法についても、大体政府の大ワクの腹案はもうきめております。これを見ますと、大体私どもが予想しておるような韓国の基礎経済を建設していくための経費に充てるようになる、こういうふうに見られる。ことに水産業者が、先ほど申しましたように、全員があれほど反対したものが積極的に賛成したということは、日本からの協力によって自分たちの船とかあるいは陸上設備とかその他のことが改善される。それに非常な希望を持っておることなんです。この希望があの漁民たちを転換させ、大いに光明を与えた。この一つをもちましても、日本協力がほんとうに役立つようになれば、日韓親善ということはもう問題なく解決するであろう、それは向こうの政権の安定にも役立つであろう、こう思います。  日本側から申しますと、私はこれは非常に心配があると思います。今日まで無条約状態でいろいろな商社の人々やメーカーの人々がソウルや釜山に行っておられますが、どこの国でもやっておると同じことで、むちゃくちゃな競争をいたしております。そして韓国の人々、これは何といってもやはり、そう言っては悪いけれども日本人に対して劣等感を持っておるのですね。その人々に対する態度がどうもよくない。日本人がアメリカへ行って、いまのようなことをやっておるのなら刑におかしくはないかもしれませんが、ソウルが同じことをやると、非常に向こうの人のかんにさわってくる、刺激する。そういうことはひとつ慎まなければならぬだろう。それと、むちゃくちゃな無制限競争をやっていきますと、日本のためにも悪いでしょうが、経済協力が妙なことになっていきかねない。すでに日韓人の間でいろいろな協力の話を進めておることを私も具体的に承知しておりますけれども、それらがまじめにやるのならよろしいですけれども、この際一旗というようなことをやられては困る。これは政府と自民党の責任においてひとつ厳重な処置をとられる、どういうことをやられるか知りませんが、処置をとられる必要がある。これは第一点だと思います。  第二点を申しますと、日本の大手水産業者の略奪漁業方式ですね。これはもう世界中で鼻つまみになっていることは御存じのとおりです。どこへ行ってもきらわれている。根こそぎとってしまう。朝鮮海峡だって、いままでにも日本の零細漁民がみなおこっておるのです。あの大手の人々の大きな船が来て底びきやトロールでやられると、海の底までかき上げてとってしまう。ほんとうに狭い海ですから、北太平洋のようなわけにいかないのです。これは魚が根絶やしになります。そういうことをやらないように、何かやはり政府、自民党、この責任の立場にある方々がお考えになって、大手の水産業者を、ひとつきびしい戒めをおやりになる。これをやらないと、せっかくのこの大事な眼目がめちゃくちゃになる。この二つの点が、私は日本側からいって心配であります。これらの点についてお考え願えれば非常にしあわせだと思います。
  83. 田中六助

    田中(六)委員 最後に、御手洗先生も、それから田村先生も、お帰りになった内海先生も、参考意見として申されておったようでございますが、今回の日韓条約の論点の裏側にひそむものといたしまして、この条約は、NEATO、つまり東北アジア機構、そういうものがはっきり裏づけられておるのだということが、反対の大きな論点だったと思うのでございますが、先ほど両先生とも、そういう懸念はないのだということをおっしゃっておりました。しかし、私はこれが直ちに戦争につながるものとは思っておりませんが、野党――と言っては失礼ですが、そういう一部の人の意見は、戦争というものを非常に強調しながら、私に言わせると、むしろ国民に戦争の危機感をあおっておるという罪を犯しておるのではないかと思うのです。こういう点につきまして先生方の御意見をさらに突っ込んでお聞きしたいと思います。
  84. 田村幸策

    田村参考人 御説のとおりでありまして、日本人は、戦争と言えば、にしきの御旗であって、いまそのことばでもうすでにみんな脱帽するのでございますが、戦争なんてそんな簡単なものではありません。これはむろん、戦争というのは、日本が攻め込むという意味ではおそらくないと思います。アメリカが来るということだろうと思います。それの手先に日本が使われるということを意味するのだろうと思いますが、一番いい例は、五四年でありますから、いまから十一年前になりますが、米韓相互防衛条約というものができました。これはアメリカの上院でひどく討議されたものでございますが、そのときに、あのときは李承晩でございまして、ややもすればこっちから飛び出るのです。アメリカのコントロールを受けておりますけれども、飛び出るというおそれがありましたので、これをひどくとめるような条約の文句になっておるのであります。いまの陳毅外相のようなのもありますけれども、中国がいまアメリカと戦争なんかする力があるとは、これは世界のだれ人も考えていないと思いますが、またアメリカがいま中国へ攻めるなんというようなことも、全然アメリカの世論がそんなことは許しませんのです。それでなくても、ベトナムにあれだけの兵隊を送るだけでも、母親や父親はたいへんな文句を言っておるというような状態でございますから、そんなことはもう絶対に考えられないのであります。そうしますと、戦争になるというのは、だれとだれとが戦争するかということなんです。それよりは、中共とソ連が戦争をするのではないか、そのほうが公算が多いのであって、これはひとつ――でございますから、いまのNEATOの考え、これはたなざらしの案でありまして、決してきのうやきょうに始まった案ではありません。これは先ほど申し上げましたように、やや知能の発達した者だったらだれでも一応考えるのです。国際政治をやる若い学者などは、これをしばしば言うのではあります。いろいろなものを寄せ集めまして結論を出す。これは大体公式みたいに考える。縦のものを横にする、一緒にする、こうやったら非常にいいじゃないか。アカデミキャリーには当然考えられる方程式なんであります。けれども、そんなものは実際政治においていまできるわけのものではない。でございますから、これはやはり一場の――中共様がおっしゃるのですけれども、一場の宣伝とお聞きになって一向差しつかえないと思うのでございます。
  85. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 普通の日本人なら、戦争があるなんということを考えておる者はないと思います。そこへむやみやたらに、戦争がある戦争があると言うのは、イソップ物語の、オオカミがくるオオカミがくる、あんな話にちょっと似たような気がするのであります。そんなことは困ると思うのです。この前の平和条約にしましても、安保条約にしましても、あのときに騒いだのは、あんなことをすれば戦争になる戦争になると言ったが、ちっとも戦争になどなっておりません。ますます平和になっておるのです。だから、そういうことを言う人には、何か別な魂胆があるのではないかと疑いたくなる。むやみにそういう危機感をあおるということが、人心を不安にする原因なんですから、指導者としては考えなければいかぬと私は思います。  ここで私はついでに一つ申し上げますけれども、これは私、少し行き過ぎるかもしれませんけれども、平素考えておることですが、この国会の初めのとき、一般質問のとき本会議で共産党の川上さんの御質問の中に、聞き捨てならぬ一句があったのです。それは、川上さんは、近く予想される戦争においてと言われました。はっきりこう言われました。私はテレビで聞いて驚いたのですが、政府のほうで、あるいはあなた方のほうでどなたかこのことばをとらえて、どういう戦争を予期しておるかと質問されるかと思いましたが、何のことはなくその後過ぎておる。私はふしぎにたえない。共産党の人々は、革命を輸出することによって、それは正義の戦争だといって、戦争を肯定しておられます。そういう戦争は、肯定されておるから、あるかもしれませんけれども、そういう戦争を肯定された……(発言する者あり)言っております。速記録をごらんなさい。近く予想される戦争と言っておる。明らかにある。もしなければ、またいつでも対決いたしましょう。近く予想される戦争と言っておられる。そういうことを聞きのがしにされるほうが、戦争の危機感をあおることになりはしないか、そういうようなことをお考えになったらいかがか。(発言する者あり)よけいなことではありません。国民の一人として本日は意見を求められておるから、そのことを申し述べておるのであります。もし御異論があるなら、いつでも対決いたします。速記録を見てください。
  86. 田中六助

    田中(六)委員 両先生とも非常にありがとうございました。私どもも先生たちの御意見を参考にいたします。私どもは、現在推進しておりますこの条約が、日本の自主的外交路線から出発したものであり、わが国のナショナル・インタレストについても十分こたえ得るものであるという確信を持ちまして、これからやはりこの御意見を参考としていきたいと思います。どうもありがとうございました。
  87. 安藤覺

    安藤委員長 次に、田村良平君。
  88. 田村良平

    田村(良)委員 私は自由民主党の田村良平でございます。たまたま今日お見えの田村先生とは同姓でございますが、別段御親戚でもないようであります。どうか、いまから何かと伺いますので、参考の御意見を承りたいと思います。  ただいま田中委員からもお承りになりましたが、私はこの機会にぜひとも明らかにしていただきたい、またその御意見を承りたいと考えます点は、このたびの日韓の条約の審議にあたりまして、軍事同盟だ、軍事同盟のにおいがする、同盟につながるから反対だ、こういうことをしきって言われますが、日韓条約のどこを見ても軍事条約のことは書かれておりません。したがいまして、私は、こういう議論が、あるいはこういう反対論が、日韓の条約その他の協定に対する審議過程に論ぜられますことは、まことに国民にとりまして迷惑千万だと考えます。いかにも軍事同盟のにおいがあるので社会党さんがしきって反対しておるというような印象を与えるのであります。私はこの点について若干私見を交えて承りたいと思います。  一体、日韓条約それ自体に軍事同盟のぐの字もないのに、何をもってこのような論争が行われるか。しからば、私は次のことを申し上げて参考人の御意見を承りたいと思いますが、日ソ不可侵条約が完全に成立をしておりましたにもかかわりませず、昭和二十年八月十五日敗戦直前約十日にして、ソ連は一方的にウスリーの川岸を渡ってこちらに挑戦をいたしてまいりました。このような事実。さらに、われわれは占領治下で全く裸の状態でありますときに、中ソ軍事同盟が締結をされております。これについて日本の社会党は今次の日韓問題等においては何一つ触れようといたしておりません。さらに、ただいま御説明のように、ソ連並びに中共と北鮮とは軍事同盟をこの四年前に結んでおります。こういうことについては日本の社会党さんは何にも触れられない。そうして日韓が十四年間ここまでやっとお互いの努力を傾けてようやく新しい国交正常化を開こうとするときに、いかにも軍事同盟のにおいがするなんと言うごときことは、まことに私は迷惑千万であります。したがいまして、これらについて、あるいはこれらの現実の問題は、日韓条約の審議ないし日韓条約そのものを賛成するか反対するかという論争には私は全く無用の論議だと考えます。したがいまして、私は、この点について参考人の方はどういうような御見解をお持ちか、いま一度ひとつ詳細に御見解を承りたいと思います。
  89. 田村幸策

    田村参考人 この中共の、先ほど申し上げました六月二十六日の声明書によりますと、日韓条約というものは、中共に対しても、アジアの国に対しても挑発であるから、これを承認しないといっておりますし、それから北朝鮮のほうの政府は、これは無効なものだ、無効なものだと書いてあります。しかし、これは理由が書いてないのでありますが、私ども非常に知りたかったのであります。どういうわけで無効ということをおっしゃるか。一方は、無効ということをいい、片一方は、不承認といっておる。不承認ということは、ある甲と乙との条約が丙の国の権利を害するような場合に、丙がおりおり不承認ということを言うことがありますが、今度の条約のどの条文を見ても、別に彼らの権利を害するとか抵触することは何もないのであります。どこにもないのであります。それでありますから、不承認ということは、一体法律上とういう――国際法上の制度でありますけれども、承認、不承認ということはどういう法的効力をこれに与えるのか、この辺はまだはっきりしておりません。  それから、いまおっしゃいました戦争でございますね。これは、私が申し上げるよりも、この中共の声明書なるものがそのテキストブックでありまして、これはこういうことを申しておりますから、日本でもその生徒さんがこれを繰り返すんだろうと思いますが、この条約日本と朴を侵略と戦争政策にかり立てておる、それが一つ。それから、この条約は、侵略的な軍事集団をでっち上げて、アジアで新しい侵略戦争を引き起こさせるものだ、こういうものであります。これはみなアメリカの計画だ、アメリカの陰謀だというのであります。日本韓国はその召使だというのであります。主体性を持っていないのでありまして、今度のこの日韓のすべての条約及び協定は、アメリカの陰謀である、その陰謀の目的は、いま申し上げましたように侵略と戦争にかり立てるのである、それからまた新しい侵略戦争を引き起こさせようとする侵略的な軍事機構をつくろうというのである、こういうのであります。日本ではこれがテキストブックになって、このとおりな議論があらわれておりますので、私どもどちらがほんとうの著者であるかは知らないのであります。しかし、おそらく元祖は北京にあるのじゃないかということを疑わざるを得ないのであります。NEATOの問題は先ほど申し上げましたから申し上げませんが、そういうわけでございますから、戦争熱をあおるということは、ほかの目的があるのであって、まじめにこれを受け取るほどの価値もないのではないか、こういうふうに考えております。
  90. 田村良平

    田村(良)委員 御手洗先生が御事情で早くお帰りになるというようなお話でありますから、恐縮でございますが、それでは先に一問だけ御手洗先生にお願いいたします。  いまのことにも関連をいたしますが、私たちは終戦後いろいろと重大な政治問題に遭遇した。いつも殺し文句のように出てまいりますのが、戦争ということばであります。全面講和でなければ、単独講和は戦争につながると言われました。しかしながら、サンフランシスコの講和会議の後において私たち日本はこのように成長してきたのであります。戦争はやっておりません。   〔発言する者あり〕
  91. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  92. 田村良平

    田村(良)委員 あるいは日本の教職員に対してその勤務の状態を調査するという、いわゆる勤評、これは再軍備への一里塚だと申しました。教員の仕事のしぶりを調べてその実績を見ることが、何の戦争につながりますか。こういう愚かしいこともまことしやかに父兄の間に教員組合がこれをしきって伝えてきたのが、いわゆる勤評再軍備論であります。このたびもまた、日韓が十四年、いな、二十年、いな、日鮮三十六年、約半世紀にわたりまするお互いの努力が、あらためて友好条約を推進しようといたしますときに、またまたこの条約が戦争につながるなどと言うこと、あるいはとれは軍事同盟だと言うようなことは、ナンセンスそのものでありますが、この点につきまして、非常な博識をお持ちの御手洗先生からひとつ明快なる御見解を承っておきたいと存じます。
  93. 御手洗辰雄

    ○御手洗参考人 先ほども申し上げたとおりでありますが、どこを見ましても、これが戦争につながるなんということを見出すことはできません。ただ一つ、こういうことが言えるのではないでしょうか。この条約が進められますれば、韓国経済状態は画期的によくなるであろうということであります。韓国の国力が強くなる、民生が安定してくる、政治的な安定がもたらされるであろう、そうなりますと、北鮮が、先ほど私が読み上げましたような、金日成演説のような目的を持っておりますと、非常にじゃまになって、謀略だけで南鮮を併呑することができないから、軍事力を用いなければならないことになる。そうするとこの条約はやはり戦争につながる。まあ早く言えば、風が吹けばおけ屋がもうかるという話、そういう意味ならば戦争につながるかもしれませんが、それ以外には、私どもどこを見ても、これが戦争につながるなんということを見出す余地はありません。これも先ほど申し上げましたとおり、もしこれが戦争につながるというようなことの動きが出ましたならば、おそらく自民党は総選挙において惨敗するでありましょう。社会党にとっては政権のチャンスです。そういうことはあなた方はまさかお考えになっていないであろうと思うので、どこから見ましても、そういうことは私どもには考え得られません。むしろ、軍事同盟というものは、先ほど申すとおり北側にはすでに明らかにあり、しかも日本を名ざしにした軍事同盟がある。しかし、私どもは、関心はありますけれども、それだからといって、それに対抗する軍事同盟をつくろうなどという考えは持っておらぬ。もしあれば、これはえらいことになりましょう。そういうことを、お答えになるかどうか知りませんが、申し上げておきます。
  94. 田村良平

    田村(良)委員 それでは、軍事同盟論につきましてはそれぞれ承りましたので、次に、よくいわれております。南北統一を阻止するものだということにつきまして承りたいと思います。  現在聞くところ、北鮮は二十有余カ国とすでに正式の国交が開かれておる。これについては、南、韓国との統一を妨害する、北朝鮮が二十数カ国と国交を開くことはけしからぬ、こういうことは日本の国会では言われません。ただ、韓国日本が友好条約を結ぼうとすると、どっこい、それは南北の統一を妨害するからけしからぬ、こういうような質疑が連日行なわれておりますが、私はまことにふしぎにたえませんので、 この-点を、残られました山村参考人から承りたいと思います。二十数カ国と北鮮が外交関係を開いておりますが、南北の統一を妨害する、けしからぬ、北朝鮮と国交が開かれた、そういうことは南北の統一を阻害するから反対だというようなことが、一体世界のどこの国の国会で論争されておりましょうか、もしそういう国があるとすれば、参考までに承りたいと思います。
  95. 田村幸策

    田村参考人 統一の問題は、先ほど冒頭に申し上げましたように、十八年間、ずいぶん長い歴史を持っておりますので、統一を妨げている者がだれであるか、その罪人というものはもうはっきりわかっておりますので、(発言する者あり)むしろ両方置いておりますから……。それは北のほうから戦争をしかけるおそれがあるので置いてあるのでありまして、それだから、少なくともとにかく民族解放戦争という名で侵略をやることさえやめてくれさえすれば、小さい国とか弱い国はおのおの思うような生活ができますのに、それをそうさせてくれないのであります。   〔発言する者あり〕
  96. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  97. 田村幸策

    田村参考人 そういうわけでございます。いま全世界の軍事力と政治力の八割五分はアメリカとソ連が持っております。あとの一割五分をあとの百十何カ国が持っておるわけであります。この二人さえ動かなければ、戦争なんというものは決して起こりません。大きなものになりません。小さなぼやは起こります。けれども、これは決して大きなものには、われわれが巻き込まれるようなものにはなりはしない。そういうことを私は日本国民に知ってもらいたいのであります。
  98. 田村良平

    田村(良)委員 ただいまもお話にございましたが、たとえば東西ドイツ、この場合におきまして、西ドイツあるいは東ドイツがそれぞれ他国との国交を開いた場合に、このような論議といいますか、こういった論戦がはたして世界の各国で行なわれておりましょうかどうか、これもひとつ参考に承っておきたいと思います。東西ドイツの場合、たとえば西ドイツが特定の国と外交を開く、それは東西ドイツの統一を妨害するじゃないか、あるいは東ドイツが特定の国と外交を開く、その場合に、これまた東西ドイツの統一を阻止するじゃないか、こういうような――たとえば日韓条約については、南北統一を阻止する、こういうことがわが国会でしょっちゅう論議されておりますので、そういうことがはたして行なわれておるかどうかということを承りたいと思います。
  99. 田村幸策

    田村参考人 これが安保のときから私ども非常に残念に思うのでありますが、ヨーロッパのことでありますと、ソ連といえどもひとつも問題にしないのです。ところが、日本がやったり、東洋のものがやると、朝鮮がやったりすると、問題にするのですね。西洋のような少し文化の発達したところでは、ドイツのような場合には、だれも問題にしません。ただわれわれはばかにされている。そんなばかにされているのは何かというと、そういうばかな、侮辱を招くような態度日本の国内でやっているのです。だからそういうことをやられる。これが私の考え方であります。
  100. 田村良平

    田村(良)委員 欧州各国では全く問題にならぬ、日本の国ではしきってそういことを社会党その他が気にして問題にする、まことに愚かなことが繰り返されているということを承りまして、情けない限りでありますが、しかしながら、この日韓条約の今度の批准承認にあたります審議を通じまして、これはまたそれぞれの立場から明確になると存じますので、この程度におきたいと思いますが、一つ気になることがありますので、参考にお伺いしたいと思いますが、南北の統一を促進する、こういうふうに常識では言われましても、北鮮のほうにおいては、たとえば選挙権の問題等については、選挙権を持てない、これを憲法で明示してある、そういうことを聞いてみますと、次のようなことが憲法に規定されております。朝鮮民主主義人民共和国の憲法十二条では、裁判所の判決により選挙権を剥奪せられたる者、これはまあ当然でしょう。次に、精神病者及び親日分子は選挙権及び被選挙権を有することはできない。一国の憲法に、日本の国と仲よくする人には選挙権も被選挙権もあわせて与えない、こういうような国が一体何をもって南北統一あるいは北鮮とか韓国の統一に対して真摯な態度で民族の統一を望んでいると言えるか。私は、この憲法において、日本の国と親しい交わりをしようとするその人々に対しては、精神病者と同じように選挙権も被選挙権も剥奪しているということをお聞きして驚いたのであります。こういったことにつきまして田村参考人はどういう御見解か、ひとつこれこそ参考に承っておきたいと思います。
  101. 田村幸策

    田村参考人 そういう憲法を響いた者が精神病者でありましょう。
  102. 田村良平

    田村(良)委員 たいへんあっさりと御答弁をいただきました。実に私自身も驚いたのでありますが、このような問題につきまして、私は、将来の全朝鮮の統一の上にも、われわれ日本自身ではこれをいかように始末することもできないといたしましても……   〔発言する者あり〕
  103. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  104. 田村良平

    田村(良)委員 それぞれの国にいろいろな重大な問題が山積いたしておりますことをまことに憂慮するものであります。   次は、経済協力についてでありますが、ただいま三参考人からいろいろな方面からお話がございました。これとても経済侵略につながる、経済侵略をするということでありますが、大体三十八度線を乗り越えてあの三年もの朝鮮動乱で、韓国というものの産業あるいは経済は一体どのように大きな被害を受けておったか。それをりっぱに復興し、そして韓国の産業、経済、民生を建て直すために、いかに多くの努力と、いかに多くの必要な経済的その他の問題をかかえているか。このたびの日本が行なわんとするあらゆる経済協力は、私はその意味でまことに重大な内容を持っていると考えますが、この国民がこれから行なわんとする経済協力についてすら、それは日本から韓国への経済侵略だ、こういうように言われます。この点につきまして、私は、一体現在韓国は最も真剣に何が一番経済協力として必要な問題であろうかということについて、どういうような御見解なりあるいは御意見をお持ちか、参考に承りたいと思います。  私も若干の友人を持っておりますが、その友人の話を聞いて私自身も実は非常に考えさせられたことは、朝鮮動乱三カ年のときに、われわれは韓国の自由を守るために真剣に戦ってきた。ところが、あなたのほうは、口を開けば善隣外交とは言うけれども、包帯の一本、ガーゼの一枚も送ってくれなかった。病院船の援助すらくれなかった。そしてわれわれは三年間ほんとうに懸命の努力を払って韓国の自由、祖国の自由を守ってきた。こういうことにつきましては、韓国の国民感情としては、ただいま御手洗さんの言われましたような大きな日本に対する感情を持っておると思います。そういったような韓国の国民感情を十二分に理解を持って、長く傷ついた韓国に、いまこの一衣帯水のかなたの日本が、韓国の皆さんに対する真摯な、その経済の復興と再建のための真心の協力をするのだというような感覚で、私は接していかなければならぬと考えます。にもかかわりませず、わが国会において、いかにもこれが経済侵略だというようなことで、たびたび政府に迫るような質疑応答が行なわれますことは、まことに遺憾千万であります。あの傷ついた韓国、あの多くの失業者をかかえた韓国、そして不況に悩み、どうすれば国の生命を維持できるかと真剣に立ち上がろうとして十四年、わが日本とこの折衝を重ねまして、六月二十二日に調印を終わりました。この経済協力に対して、これは侵略だなどと申すことは、日本国民としては慎むべきではないかと考えるものでありますが、この点につきまして、…村先生のほうとしては、一体、韓国の現在の経済実情から見て、少なくとも韓国が最も切実に要求する経済協力は何であるのか。今朝のソウル放送では一部発表もされておりますが、この点について何かと参考意見を承りたいと思います。
  105. 田村幸策

    田村参考人 先ほども申し上げましたように、私は、経済問題は全然専門外でございます。全然わかりません門外漢でございますが、経済侵略といってやかましく叫ぶのは、経済協力とか経済援助をしてくれるなという表現でございますから、それを阻止しよう、日本経済協力とか経済援助というようなものを好まない、阻止しよう。それはなぜかといえば、日本経済的な協力をやればそれだけ民生が安定いたします。というと比較的に北のほうがそれだけ下がるわけでありまして、南がよくなればそれと比較的に北が悪くなる、その比較をすれば悪くなる、こういうので、なるべくならば南を貧乏に引きつけておこうという、これはやはり策謀でありまして、侵略と号してなるべくこれをとめたい、こういうように私は解釈をしておるわけであります。だから、この叫びがあればあるほど、その意味は、何とかして南のほうに繁栄と安定をもたらしてくれるな、それをもたらすことは、たびたびいわれるように、北のほうの目的には反することであります。また、北のほうがそれだけ地位が低下することでありますので、これが今度の日韓条約に反対する北の側のほんとうの腹でありましょう。自分らの地位が南に比較しまして今日よりも低下いたします。それはもうきわめて明らかです。その意味でそういうことを言われるのだろうと思います。  それから朝鮮人の気持ちでありますが、これは去年国際法学会がございまして、韓国から多数の同学の者が参りました。そのときのいろいろな話に、やはりいまおっしゃったように国防の第一線、われわれは日本国防は三十八度で押えているのだ、だからおまえさんら少し考えてくれなければいかぬ、共同の国防じゃないかということまで言われた人がありましたが、それはまあ大きく見れば、それはひとり日本韓国ばかりでない。世界の各所にそういう例がたくさんあるのであります。であればこそ、われわれとしても、今度、これから三国を基調にいたしまして、できる限り協力をしようというのであります。ただ、向こうの受け入れ態勢が、いま御手洗さんがおっしゃったように、向こうのほうから協力してくれるのでなければ――先般も、ワシントンポストの新聞記者がいて、彼の帰りがけに私は会ったのですが、彼が言うのには、どうも実に朝鮮人というものは相互に憎しみ合い分裂をしておって、万人が認めて、やらねばならぬと大統領が考えられても、これができないというのであります。そのとき、私はまた、いやそれは日本もそれに近いのだと言ったのでありますが、そういうような状態でございますので、今度はたしてどういうふうに日本からの受け入れ態勢をつくるかということは、これは私は全然門外でありますが、そういうことのないことを切に大統領の手腕にまっておるわけであります。
  106. 田村良平

    田村(良)委員 困っておる人が真剣に立ち上ろうとするときに、十四年間の折衝を経ましてここに経済協力の一応の妥結点を見た。それすら侵略だと称して、これを非難し、あるいは反対するということは、いまお話しのように、できるだけ韓国を貧乏にしておいて困らせてやろうというたくらみ以外の何ものでもない。私は、お隣りの国の人が何とかそうした困難かり、あるいはそうした苦しみから、貧乏から立ち上がろうとすることに対して、日本の国ができる限りの誠意ある協力をする、その一つのあらわれとして経済協力がなされるということについては、大きくこの問題を真剣に取り上げて、また、大きく国民の世論としても御理解を願わなければならぬ、このように考えたので、参考のために御意見を承ったのでありますが、ただいままことに明快な御意見を承りまじたので、この点を終わりたいと思います。  次に、韓国自体の世論について、これは三先生から承りたかったのでありますが、お二人とも帰られましたが、ただいま水産団体や商工団体やあるいは大学の教授陣のお話や幾多の問題が出されましたが、ほとんどすべてが、日韓条約がかくなった以上、すみやかにその妥結を望み、また、すみやかにこれの実施を望んでおる。あるいは学生諸君は政治運動をやめて学園に帰れ、あるいは大学の教授は政治運動をやめてその学問の中正を守れ、こういうような各大学の教授の御意見等があるというようなことを、実はただいま承るのが初めてのようなことでありまして、こうしたことはどういう理由か、いま御手洗さんもお話しになったように、わが国の報道を通じてはほとんど出ておりません。われわれは、こういったことについて、きょう参考人の皆さん方からいろいろな貴重な御意見を承ったわけであります。この国会のきょうのこうした参考人の御意見、質疑を通じまして、私は、国民の皆さんにも、韓国におきまする各界の状態が、今日日本の国会で言われております経済の侵略だとか、軍事同盟につながるものだとか、いろいろな問題とは関係なしに、むしろ韓国自体はすみやかにこれの円満な成立を望んでおられるということについての御意見を承って、大きく意を強くした次第でありますが、さてそれに引きかえまして、私は国内の動向について田村先生の御所見を承っておきたいと思います。  連日の新聞報道では、いわゆる日韓の条約批准を阻止するためにあらゆる院外の実力動員態勢を整える、何日は何万出て来い、何日は何万出て来い、何日を山場として国会周辺に圧力をかけろとか、いろいろなことが出ておりますが、公務員は国家、国民生活への奉仕者であります。したがって、公務員がその職場を放棄し、あるいは教職員がその授業を放棄して、全国から東京に集まる。公務員が公職を放棄して政治運動に参加をし、あるいは民主政治の中核でありますこの議会の審議が、万が一院外の勢力、議会外の勢力によって妨害を受けるということになれば、これは明らかに民主政治の否定であります。こういうことに協調するような問題がもし起こるとするならば、私はゆゆしい問題ではないかと考えます。この点について私は、この議場の中でわれわれは正々として審議をし、そうしてやがて時間の尽きるところ、これを採決によって決すべきであろうと存じますが、このような条約あるいは法律案、重大な国政の審議に対するこういったいわゆる院外の実力動員と称する動きに対しまして、はたして田村参考人におかれましてはどういうような御見解をお持ちか、私はまことに悲しむべき状態であろうと存じます。また、こういうことが、日韓条約の推進に大きく悪影響を受けるということは、まことに私は遺憾に思います。このような動きに対する参考人の御意見を承っておきたいと思います。   〔発言する者あり〕
  107. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  108. 田村幸策

    田村参考人 さきのほうの韓国の世論のことにちょっと関連いたしますが、これはたいへん大事なことで、ベトナム問題をめぐりまして、アメリカの中の情報が日本に、いまの韓国の情報と同じでありまして、ほとんど伝わっていないのであります。アメリカでは、なるほど学校の先生なんかも反対の動きがあります。学校の先生といっても、先生にいろいろ種類がありまして、獣医学者だとかシェークスピアの研究者というのがあっても、そんなのは何人集めても大体普通の路傍の人と同じで、学者といっても、それが特別に権威があるわけでも何でもないわけであります。それと同様でありまして、それですらも、日本では非常に間違って報告されておる。これと同じようなことでありまして、そういうこともひとつ私は御参考に……。  それから、私は政治学者ではありませんが、一体、院内の勝敗の数はきまっておるわけです。   〔発言する者あり〕
  109. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  110. 田村幸策

    田村参考人 これは、選挙の終わった瞬間に院内での勝負はきまっておるわけです。ただ、どれだけこの審議を自由に、遺憾なきまでに尽くすかというだけでありまして、それ以外には何もないだろうと思います。もう院内における勝敗の数は選挙が終わった瞬間にきまっております。それだからやむを得ずこれを街頭にあって――ただ、私どもがこれに対して非常に印象を持っておりますのは、あれだけの人間を繰り出すときにどれだけの金が要るかということだけです、私の頭は。といいますのは、安保のときに、私は中央大学に奉職しておりましたが、このときに、これは御参考に申し上げておきたいのですが、五十人乗りくらいのバスを持ってきまして、学校の前に二台くらいおきまして、そうしてマイクのついた大きなメガホンを持って、ひとつこれから行ってくれというんです。そうして、諸君は決して前線に出さぬから、うしろに置いておくから行ってくれ、それでステップに足をかけますと、そのマネージャーが金を渡すんです。これはその前に明治大学というのがありまして、その明治大学の先生も同じような印象を持っておりました。ですが、これは千円札なんですね。そうして、後にその学生が検挙されました。それで、検事局で彼らが言うところによりますと、四百円と言っておるのです。弁当代二百五十円、日当百五十円、合わせて四百円、どの学生も全部検事の調書を見ますと四百円となっておる。しかし、われわれが目撃したのは千円札です。それは明治大学の先生もそうであります。そうして、この間も何か原子力潜水艦でもって横須賀へ――学校の教員に対して廊下のところで、これから東京駅に十一時に集まってくれ、これは教員組合から来るわけです。教員組合というのは月に百円くらいしか出さないのでありますが、横須賀までの往復、それから日当が出ます。それの費用というものは、一体教員組合から出るわけがないのです。そんな金はだれかが出さなければならない。それで教員が――生徒は別であります。生徒はまた別の筋で行っておりますが、教員がそうやって行く。こういうようなことで、この金は一体どこから出るかという問題であります。今度の日韓問題でも、おそらく大体見当がついておるのです。これは外から相当な援助があるのだということは何人も考えざるを得ないのであります。相当の金であると思います。それが一番の大きな問題であると私は思います。これは安いものでありまして、五億や十億の金で日韓条約の破棄ができるのだったら非常に安いもので、あるいは五十億でも五百億でも安いものでありまして、これは、私は、国民といたしましても、今日の参考人といたしましても、一番憂慮にたえないところでございます。(拍手)
  111. 田村良平

    田村(良)委員 途中からお二人の参考人も所用のために退場されました。最後まで田村参考人にはお残りいただきまして、まことにふつつかな私の質問ないし要望に対しまして、いろいろと御意見の御開陣をいただきまして、まことにありがとうございます。日韓条約承認、審議、重大な問題でありますけれども、反対という大きな声はしょっちゅう耳に聞こえますが、賛成ないしこれを御理解いただくという声はなかなかわれわれの耳には到達しにくい場面もあります。本日はわざわざ三名の御参考人においでをいただきまして、この日韓条約に対します最も問題ないし焦点となっておりました南北の統一やあるいは軍事同盟云々、ないしは経済侵略等の問題について、まことに明快な参考人の御意見を承りましたことは、本日の参考人より聴取するこの審議といたしましては、私はまことに有意義だったと、三人の参考人にあらためてお礼を申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきたいのであります。(拍手)
  112. 安藤覺

    安藤委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人各位には、本委員会の審査に資するため、きわめて長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。この際、委員長より厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会