○御手洗参考人 決断を下し、政友会を率いた多数党の首領が踏み切ったということが、
日本を救った理由じゃないでしょうか。今日に当てはめて、私はつくづくそのことを思います。ごく近い例を申しますれば、サンフランシスコの平和
条約またしかり、あのときの批准がもしできなくて、あの講和
条約ができなくて今日の
日本のお互いの生活やお互いの
経済がありましょうか。おそらく、米軍はあの当時の状況からいえば、彼らの計画しておったような軍政をもって臨んだかもしれないと思います。それらのことを考えますれば、半独立とか、いろいろな批評はありますが、われわれが主権を回復して今日の生活を楽しむことのできておるのは、あの
条約の批准に踏み切ったという点にあるだろうと思う。(拍手)これらのことを考えれば、今日のこの
条約に対しての政治家諸君のお考えも、ひとつ一歩高いところにお立ちになって、大局を見ていただきたい、これが私の第一の考えであります。
まず、日支事変におきましてなぜ失敗したか。和平の
機会は三度も四度もありました。これは皆さん御存じのとおりです。九分九厘まで和平の話がつきながら
最後に決裂したのは、軍人たちの思い上がった一〇〇%の要求です。その一〇〇%の要求を一歩退ければ日支の平和はとっくの昔にできておった。今日あの敗戦、あの大東亜戦争というようなばかばかしいことは起こらずに済んでおった。それができなかった理由は何かといえば、一〇〇%を求めた欲ばりの人々の話であります。外交というものはそういうものだと思う。どうぞこの点においてもお考えを願いたい。あまり詳しいことを考えて、木を数えて山を見ないという人間が道を失って命を捨てるという例は、昔からあることなんです。ひとつお考え願いたいと思います。決して私は野党の方々の反対に理由がないなどと申しておるのではない。その理由の中には私も同意のできることがある。これは冒頭に申し上げたとおりです。しかし、そこを考えて、プラス、マイナスの計量を誤らない、大局を見るということが、国家を指導する政治家の責任ではないのか、こう考える次第であります。(拍手)
一つ一つの問題につきましては、あまり詳しくなりますから、まあ目録
程度にとどめますけれども、第一は
請求権の問題でしょう。これは不満があります。けれども、講和
条約で定められて
日本の
義務となっておること、
韓国側にはその
請求権が残っておること、いたし方のないことでありましょう。
韓国の反対理由の第一は、亡国の恨み、第二の恨みは、あまりに取り高が少ないということ、フィリピンに対し、南方諸国に対する
日本の支払いから見たらば、われわれに対する支払いがあまりに少ないじゃないか。李承晩時代には八十億ドルを要求しておったんです。張勉内閣になってこれが十億ドルになり、次第に下がって、ここまで下がってきた。
日本側としてはまず成功と
いってよいかと思いますが、
韓国から見れば、それだけに不満、不平であります。こういうことも考えて、まずこの辺でいたし方がないと私は思い
ます。
李承晩ライン、これも先ほど来いろいろお話がありましたとおりで、私どもも、向こうがかってに宣言して、
日本はかつて
承認したことはない、それを取り消せなんと言ったところでどうにもなるものじゃありません。御自由であるといってよろしかろうと思います。しかし、
日本にとってゆるがせにできないことは、この線があるためにこうむる損害である。これは先ほど申しました
漁業の問題である。これはすでに
解決しておる。批准ができなくとも、
韓国の
政府の、何と申しましょうか、友情によって
取り締まりをやめたために、すでにこのことは
撤廃同様にいまはなっておるのであります。これまで
日本の
漁船で
拿捕されたもの五百隻以上、捕えられた者が四千人以上、ずいぶん乱暴なことをされておりますが、これが永遠に続くのではどうなりましょうか。この
条約ができなければ、この
韓国の朝鮮海峡における乱暴な
国際法違反はますます激しくなると思わねばなりません。私どもとして、これはがまんのできないことである。どうしてもこの問題だけは
解決しなければならない。
李承晩ラインが残ったところで、そんなことは私どもの知ったことではない。平和ラインだと向こうは申しております。これは、もう
一つ韓国のためにここに弁じておく必要がありますが、平和ラインは
韓国としてはやむを得ない必要なこともあるのであります。今日までは
日本に対してもこれが向けられておりましたけれども、これは
韓国日報というソウルの新聞の十月三十日の新聞でありますが、冒頭にあります。朝鮮語は私に読めませんが、きのう
韓国の新聞記者に読んでもらいましたところが、北傀の
漁船がわがほうの船を多数拉致していって、九十余名の漁夫をつかまえていった。こういうことなんです。
韓国側から警備艇が出て追跡したけれども これはみな、別の新聞でありますが、同じ記事であります。
漁船が三十余隻、九十何名、北傀の警備兵二十名が来襲して、そして
漁船の帰還したものがなく、一隻は沈没させられた。警察の推定では百十二名がつかまえていかれた。三十八度線付近であります。越してきたのでありましょう。こういうことがある。この新聞にはありませんけれども、中共の船もしばしば朝鮮沿津を侵してくるのである。これらが、単に船が来るというのならばよろしいけれども、共産主義行動のために自分の国を侵してくる。平和ラインとして沖合いはるかなところに警備線を敷くのは当然だというのが
韓国の主張なんであります。これは、私どもそんなことは
承知できるとは思いませんけれども、やむを得ないことも
韓国の事態としてはあるんだ。これをひとつ考えてあげなければならぬのではないか。決して私はこれを
承認するというのではありません。もともと
わが国はこんなものを
承認したことはない。
わが国として必要なことは
漁業が安全にできるかできないかという一点に帰していいのであろうと思いますが、この点から申しまして、
李承晩ライン問題は、
日本においてはまあ大体すでに
解決した、これはもう言って差しつかえないのではないのか、公海の自由の
原則をはっきり向こうは認めておるのでありますから、これ以上のことを求めたところで、これは無理であろう、こういうことが私の見解でございます。もし、それでもこの
条約の
承認はいけないとおっしゃるならば、朝鮮海峡、東朝鮮あるいは公海上の朝鮮近海における
漁場において
わが国の
漁業はどうすればよいのか、その具体的な対策をお示しになられねばならぬ、これがなくてただ反対では、西
日本数十万の
漁民を苦しめるだけであり、これではとうてい
漁業関係者は
承知できないでありましょうし、同時に、西
日本一帯における
わが国の人々の食糧問題にとってもこれは重大事件であると申さなければなりません。お考えを願いたい点であります。(拍手)
在日
韓国人の地位、これは少し譲り過ぎたのではないかと思いますけれども、これも先ほど来申しますことから申していたし方がない。
竹島問題でありますが、この問題については、この席では実は申し上げたくないことがいろいろあるのであります。それは向こうが何と申しておっても、
日本がやはり領土権を主張しておるから紛争に相違ないという
日本政府の見解は、私もそれでよろしいと思いますけれども、はたしてほんとうはどちらのものなんだ。これは私は野人でありますから何も私の
ことばには責任がないから申すのですが、
日本側はいろいろ証拠物件、証拠古地図などを出しておられますが、
韓国にもたくさんあるのです。したがってこれは非常にむずかしい問題である。だから、あとに残るのはいたし方一がない。ここに二、三の資料を持ってまいりましたが、これはソウル新聞という新聞の十月二十八日の新聞であります。これを見ますと、竹島というのは
韓国では古名を干山島というのです。私も初めて知ったわけです。四百年前の古図が出てきた、二百五十年前の古い地図が出てきた、こういうものが出てきたのに何を
日本が言うかと
韓国では言っておるのであります。これは外務大臣にははなはだ御迷惑なことがだんだん出てきたと思いますけれども……。それからこういうものもあります。これは東亜日報ですか、これを見ますと、独島は
韓国領、世祖――
韓国の世祖というのは約百四十年前の李王朝の王様でありますが、蔚山の東に鬱陵島があり、そのまた南に干山島がある、こう書いてございます。それからまた、これにありますが、これを見ますと、七月二十八日の
日本の新潟日報という新聞に出ておったが、
日本の昔の地理学者で林子平という人の書いた古地図に――寛政
年間ですからおよそ二百年余り前になると思いますが、この地図の中にはこれは明らかに
韓国領と善いてある。これを
韓国では見つけ出してきておるのであります。こういうようなことがありますから、竹島問題を
解決せよ
解決せよ、
日本領だと主張しましても、――これはまだたくさんありますが、時間がないから略します。なかなか簡単に
日本側というわけにはいかないのであります。決して私は
韓国のために弁じておるのではない。公平に見て、こういう資料があるのだからそう簡単には片づきません、こういうことを申すのです。しかし、永久に片づかぬかといえば、交換公文は
韓国側から椎名さんあてに出されておるので、これから紛争問題についてはお互い外交ルートを通じてやろうじゃないか、けっこうなことで、したがって、これらの資料をよく調べて、外交ルートで
解決に向かえばよろしいのであろう。したがいまして、この問題が残ったことは残念でありますけれども、いたし方がないのではないか、私はかように考えております。ここにずいぶんいろんなことがありますから、お尋ねがあれば、幾らでも私が調べておりますものだけは申し上げることができると思います。
先ほど千島のお話がありましたけれども、このことが
解決しないで平和
条約、友好
条約はけしからぬというお話ですけれども、ソ連は千島についてあとで
交渉するということも
承知しないのである。先年社会党の鈴木
委員長――たしか河野さんも御一緒ではなかったかと思いますが、フルシチョフ首相と会われたときにこの問題に触れられた。何と申しますか、鎧袖一触です。そんなことは、まあ手はどんな手をしたか知りませんけれども、社会党で御発行になりました報告書を私も一部いただいて持っておりますが、てんで木で鼻をくくったというか、問題にされない。こういような
状態では、千島問題をあとに残そうといったって残らないのである。竹島はあとに残っておることは確かなのですからして、まあいたし方ない、あとでゆっくり平和に話し合いをしよう、この辺が手ごろではないか、これがつまり外交ではないか、かように考えるわけであります。
南北の統一の問題でありますけれども、日韓
条約がじゃまをするなどということが話にならぬことは、すでにこの
委員会で皆さん御研究済みと思います。多くは申しません。先ほど来
田村博士のお話のとおりでありますが、ただ
一つつけ加えておきたいことは、私どもの考えでは、どうしてこれができないのか、北鮮側がもしほんとうの自由選挙によってこれが統一ができるということに踏み切ったならば、簡単にできるのではないのかと思います。しかるに、一九四七年十一月の百十二号決議を受けた翌年の百九十五号決議によって国連の
委員会ができましても、これを入国を拒んだのは北鮮である。そしてその後も拒み続けております。この人々が一九五二年に提案したものは、南北同数の
委員をもって、その
委員会は全会一致で決定しよう、こういう提案をしておる。これが北鮮のまず唯一といってもいいくらいの平和提案であり、統一提案であります。一体できましょうか。南北同数の
委員というのが、一千万人の北鮮と二千七、八百万人の南鮮を同数にすることがナンセンスである。その上に、今度は全会一致でいけなんて、これはできるわけがない。できないことを提案しておいて、一方の国連の提案を拒否し続けるということでは、これは統一のできるわけはないのです。
日本がどんな
条約をつくろうとも、そういうわけはありますまい。いわんや、この
条約のほかに、すでに北鮮も
韓国も双方ともにいろいろな国と
条約を結んでおることは皆さん御
承知のとおりであります。最近の北鮮では、もはや統一などということは考えない、南を併合することに全力をあげておるという事実を
一つ申し上げておきます。これは私も相当な関心を持っておりますから、いろいろなことを申し上げますけれども、今日は武力によって南を征服するということは国際情勢上なかなかむずかしくなってきた。したがいまして、謀略により、思想攻略により南鮮を苦しめて、撹乱して、北へ併合していこうという政策に変わってきておることは明らかであります。その証拠を二、三申し上げますが、たとえば、本年四月、ジャカルタにおける金日成の演説を見ましても、わが党の任務は、全力を尽くして南鮮の革命勢力を成長させ、人民革命を支援することにある、これがジャカルタにおける金日成の演説です。本年十月、つい先月ですが、朝鮮労働党の二十周年記念大会における彼の演説を見ますと、われわれの主たる任務は、われわれの国をアジアの革命の基地とし、南鮮にまず革命を起こし、そしてそれを他に及ぼすことにある、こういうことが労働党の大会における金日成の演説であります。これらのことを考えてみましても、ほんとうに統一をはばんでおるものがだれかということは明らかで、
日本との
条約がこれをはばむなどということは大きな間違いではないか。中共・北鮮、ソ連・北鮮の間に結ばれております軍事同盟をごらんになったと思いますが、その冒頭には、われわれはマルクス・レーニン主義を堅持して、その
原則に従って緊密に
協力し、互いに全力をあげて支援すると書いてあります。そうして、軍事的な攻撃を受けた場合には、そして戦争
状態になったらば、全力をあげて援助する、こう約束し合っております。さらに進んで、第六条には、統一の方法について、われわれはこの
原則に従って平和的・民主的な統一を成就しよう、こう約束しております。一国が他の国と同盟を結んだときに、自分の国の統一の方法まで約束するなどということは、私はあまり学問がないせいかもしれませんが、よく存じません。けれども、こういう約束をしておる国が一方にあって、平和友好
条約が統一を妨げるなどということは、これはよほどどうかしておりはしないか、かように考えるわけであります。
では、なぜ
日本は北鮮を相手にして
韓国と同じようにやらないのか。これはもう
説明するまでもないと思います。ごらんのとおりです。
韓国は、李承晩時代にずいぶんひどいことを
わが国にし向けましたけれども、今日では早く友好を結ぼうとしておりますが、北鮮のほうにおいてはごらんのとおりだ。スパイを放ち、破壊工作員を潜入させ、盛んな
わが国の秩序の撹乱破壊をやっております。
わが国を敵視しておる。この国に対してどうして手が出せるのでしょうか。それはそれとして、まあとにかく
経済的にも何とかお互いに接近していこうという努力はいたしておるようでありますけれども、進んで政治的な話し合いができる相手ではございません。もし北鮮がこの
態度を改めて、
わが国に対しても、今日の
日本の秩序を破壊するとか、あるいは秘密を盗むむスパイを放つとかいったようなことをやめ、たとえば都下にあります朝鮮大学というような不法なものを廃止するというような
処置をとったならば、これは北鮮とも進んで友好を結んでよろしいと私は思う。そういうことはしない国に対して、どうして
わが国だけができるでしょう。これはできようがないことをやれということにほかならぬと思います。
軍事同盟でありますが、これもむしろふしぎな話であります。東北アジア軍事同盟につながる、いろいろなことを伺います。けれども、それは要するにこの
条約が軍事同盟というのではないようで、将来そうなるおそれがある、アメリカのだれはこう言った、朴正煕はこう言った、だれはこう言った、そこでそういうおそれがあるという、将来に対する仮想の問題、予定の問題でしょう。現在あるとは、この
条約そのものが軍事同盟だとは、おそらくどんな反対の方もおっしゃるわけにはいかないだろうと思うのです。われわれが軍事同盟にするか、友好
条約にするかということは、これからのわれわれの努力です。
日本人が軍事同盟などを結ぶことに
承知するかどうか。そんなことは私はないと思います。断じてないであろう。
韓国の人々もそのとおりです。李承晩時代に、これは今日と時代が違っておりますけれども、李承晩
自身がはっきり公衆の前で演説をしております。何と言ったか。もし国連軍に
日本が参加するならば、われわれはほこをさかさまにして北鮮と結んで
日本と戦うであろう、こういうことを申しております。そのくらい一部の
韓国には反日気分が強いのです。とても軍事同盟などの結べる相手ではありません。
また、もう
一つ申したいことは、東北アジア軍事同盟、われわれのは仮想でありますけれども、現にある。どこにあるか。北鮮を中心にして、中共との軍事同盟、ソ連との軍事同盟、中共・ソ連の軍事同盟、明らかに
日本を名ざしにした軍事同盟があるじゃありませんか。このあることを捨ておいて、これから何とかなるおそれがあるということを非難をされるというようなことはどうかしてやしないか。こういうようなことから考えまして、私はどうもこれはむずかしいと思います。もしもこの
条約が軍事的に転化するようなことが起こったならば、そのときこそは社会党にとって政権獲得の絶好のチャンスじゃないでしょうか。私は、これは冗談を申すのでは、反語を申すのではありません。
日本人の大多数はそんなものに反対しております。反対しておりますがゆえに、そんなことがもしあったらば、社会党にとってはチャンスである、こう申し上げたい。そのくらいこのことははっきりしておると思います。
その他申し上げたいこともありますが、時間がないようです。そこで、
最後に申し上げたいことは、このことについて
韓国では非常な反対がある、それに対して、こんなものが役に立つか、友好ができるかという意見が
日本でも広く行なわれておりますが、これは間違いです。
韓国の
状態はそんなものではありません。反日感情の主たるものは、亡国の恨み、これに対する償いの少ないということ、これです。そして、今度の
条約においてもそれが十分に償われていないということに対する不満なんです。これならばわれわれとしては考えることを別にしなければならないのでありますが、しからば、この
条約にはどうなんだ。先般の学生デモなんぞは、まあ問題にはされておりません。去年の学生デモは、残念ながらあれは戒厳令まで出るようになりましたが、その原因は、あれは何かといえば、あれは、金鍾泌・大平外相の
メモが先方に誤解されたかどうか、そういうことが主たる原因。あの裏に金の取引があったということは
韓国では全然ほんとうとして信じられ、これがあの大きなデモの原因になったのです。私はそんなことはないと信じますけれども、そういうことがあったのであります。ことしはそんなことは全然ない。裏も表もないのだ。学生が幾らあばれてみたところで、一万人かそこらの学生が少しどうかするだけで、たいしたことはありません。衛戌令が出て静まったじゃないかとおっしゃるが、
韓国の衛戌令というのは、われわれの考えるものとは全然違います。多少のことは軍人だから手荒なことをしたでしょう。
一つの例をあげます。ことしの春、あの衛戌令の出たすぐあとのことなんですが、ことしは
韓国は数十年来の干ばつでした。そのために田植えができなかったのです。非常に困って、
日本からも多くのポンプなどを輸入して、たいへんな騒動をやりましたが、さて七月の初めごろになりますと、急に大雨が降り続いて、もうポンプも要らぬ、そら田植えだ。ところが、とっさのことで手が足りない。そこで、衛戌令第十七条、あの問題の学生を弾圧したというあれです。十七条を発動して、全軍出動せよ。全軍農村に展開し、三十八度線の守備兵だけを残して、みんな田植えに行ったのです。そうして、一週間の間に田植えを済まして、またたく間に済まして、ことしは近年にない豊作をいま喜んでおる。これが
韓国の衛戌令の
実態なんです。ひとつお考え願いたいと思います。ただそういうことをすればすぐ軍人による弾圧だなどといって即断されるということはどうかと思います。
韓国の新聞にしましてもそのとおり、反対運動をやったものはどうとかこうとか言いますが。実は賛成の決議や声明をしたもののほうが多いのです。そんなことはもう時間がないから略しますが、ここにたくさん書いてありますから、幾らでも申し上げられます。
最後に、
わが国の世論について申し上げますが、
わが国において国民はどう考えておるか、これがおそらく皆さん政治家の方々としては大事な点であろうと思うのです。
これについては、まず第一にあげたいことは、各新聞社の社説でございますが、この社説をずっと通読いたしますと、この
条約の調印されました六月の二十二日ごろから後、これに対する正面切った反対論の社説というものを見たことはございません。
日本国じゆうに一社もありません。代表的新聞としてはどうかと思いますけれども、まず朝日新聞六月二十三日の社説を見ますと、これで日韓の不自然が解消されたのである、これを親善に役立てることが大切である、われわれにも不満もあるにせよ、現時点に立って、あくまで反対するということは、これはよろしくない、妥結した以上は、国際信義を重んじ、
協定を尊重して、親善に役立たせることがわれわれの当然の道である、これは朝日新聞の社説の要約であります。同じ二十三日の読売新聞の社説を見ますと、十四年目の
解決にほっとしたというのが国民の偽らない心情であろう、不満はあるが、この古い隣国との正常化の一歩を踏み出したことを喜びたい、これは読売新聞の六月二十三日、調印翌日の社説であります。だいぶこれがいろいろ問題になりました後の社説を見ますと、たとえば、毎日新聞九月二十七日、あくまで議会政治の本領にに基づき、院外運動に主力を求めるような行き過ぎはやめるべきである、大衆運動で議会主義を否定するような空気をつくることがわれわれとしては最もおそろしい、これは毎日新聞九月二十七日の社説でございます。たくさんありますが、略します。
こういったような世論の動きを見ておりますと、大体
日本国民の大部分は、私はこの
条約を支持しておると思います。その証拠を
数字をもって申し上げますと、ことしになって世論調査を行ないましたのは、新聞社では読売新聞一社だけ、その他に時事通信社の傍系であります中央調査社、これはいまから六年前から毎月世論調査を行なっております。これを見てみますと、中央調査社においては、これは十月の調査であります。日韓
条約批准に賛成四一に対して反対一一%であります。読売新聞を見ますと、賛成四五に対して反対が一二であります。大体双方とも似通った
数字が出ておる。四対一というのが今日の大勢であります。これがまあまあ国民の大勢ではないか。
もう
一つ、ついでにつけ加えておきますけれども、この読売新聞の調査の内容に注自すべきことがあることをひとつお聞き取り願いたいのであります。何か。自民党を支持する国民は全部が賛成かというと、そうではないのであります。これはお考えを願わねばならない。賛成四一%に対し、やむを得ないという人が一四%であります。合計五五%の賛成に対し、反対だという人が六%あります。自民党支持者の国民にそれだけの反対があるのです。逆に、社会党支持者を見ますと、賛成二六、やむを得ぬという人が一四、合計ちょうど四〇%に対し、反対二〇%、すなわち社会党を支持する人もその倍が賛成の側である。反対は半分しかない。このことは社会党の方々もひとつよくお考えを願いたいと思うのであります。共産党の支持者は、さすがに反対三八%でありますけれども、それでも賛成者が八%、やむを得ないという人が一七%、合計二五%の賛成者があるのです。これもまことに奇妙な現象。民社党の支持者を調べますと、賛成四〇、やむを得ずが一五、合計五五に対して、反対一七%。この大勢を見ましても、やはり国民の大多数は、社会党支持者、党の支持者までもが、この
条約はまあまあしかたがなかろと賛成して、早く日韓の親善に進めと、こういうことになるのではないか。何もこの世論調査を私は絶対の権威だと申すのではありません。けれども、大体常識で見ても、世論の大勢はこの辺ではないのか、こう考えております。
ひとつこれらのことからお考えをよく願いたいと思いますことは、双方とも、これはお互い
政府と国民の信義の問題だと思うのです。まあまあ、私も何度も申しますように、この
条約に欠陥がないというのではない。社会党の方々、共産党の人々の言うことにも、なるほどとうなずける点はあることは確かにあるのです。ただ、プラス・マイナスはかりにかけた場合に、いずれであるかといえば、これはもう問題にならない、やはり今日はこれは批准
承認を与うべきものである、かように私は考えます。
少し時間が長くなりました。(拍手)