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1965-11-01 第50回国会 衆議院 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十一月一日(月曜日)    午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 木村 武雄君 理事 園田  直君    理事 長谷川四郎君 理事 福永 一臣君    理事 小林  進君 理事 辻原 弘市君    理事 松本 七郎君 理事 永末 英一君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井原 崇高君    宇野 宗佑君       浦野 幸男君    江崎 真澄君       大平 正芳君    金子 岩三君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       澁谷 直藏君    田口長治郎君       田中 龍夫君    田中 六助君       田村 良平君    中川 俊思君       永田 亮一君    濱野 清吾君       早川  崇君    藤枝 泉介君       本名  武君    増田甲子七君       三原 朝雄君    毛利 松平君       赤路 友藏君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       戸叶 里子君    中村 重光君       楢崎弥之助君    野原  覺君       穗積 七郎君    松井  誠君       山中 吾郎君    横路 節雄君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         農 林 大 臣 坂田 英一君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         国 務 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      秦野  章君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (国際金融局長         事務代理)   村井 七郎君         農林政務次官  仮谷 忠男君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         運輸政務次官  福井  勇君         海上保安庁長官 栃内 一彦君         郵 政 技 官         (大臣官房電気         通信監理官)  野口 謙也君         郵政事務官         (貯金局長)  稲増 久義君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      武田  功君     ————————————— 十一月一日  委員田澤吉郎君及び山村治郎辞任につき、  その補欠として澁谷直藏君及び浦野幸男君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員浦野幸男君及び澁谷直藏辞任につき、そ  の補欠として山村治郎君及び田澤吉郎君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出第一号)  財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出第二号)  日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出第三  号)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に附する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題とし、質疑を行ないます。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋委員 いろいろとお尋ねをいたしたいわけでございますが、従来の質疑を通じましてお聞きいたしておりますと、政府としては、今回の日韓条約案件に対してわれわれが反対するのは全く理由のないことだという、そういうことをおっしゃっておられるわけです。しかし、実際に検討してみますと、明らかにこの条約条文解釈において、日本側韓国側とが異なっておるというよりは、百八十度違う、もう全く違った解釈をしておる、このことだけはもう明らかだと思うのです。それを、相手がどう言おうと、条約成立によってでき上がった条文解釈というものはおのずからきまってくるのだから、何を言おうとかまわぬのだというようなことで切り抜けようとしておられるようでございますが、そういう立場をとられるところに非常に無理があると思う。できてからしばらくたって解釈が違ってきたというならばとにかく、最初から違う。そこに今度の条約が非常に無理をして、何とかまとめなくちゃならぬという、そういう気持ちから、当面お互いがそれぞれの国々でごまかしてでもやっていこうという、そういう考え方で交渉を進めてきたことがはっきりしておると思う。なぜそんなにほんとうに意見が一致してないのにまとめなければならぬのか、そこにいろいろな作用が働いてきているのじゃないか、それが軍事的な要請ではないのか、こういうふうな疑問が実は出てきておるわけです。  私はそこで、なぜわれわれが反対するのか、決して理由のないことではないということを一つ一つ明らかにしていきたい、そういう立場に立ってお尋ねをしたいと実は考えております。  本論に入ります前にまずお伺いしておきたいことは、韓国のほうはみずからの自国の憲法に基づいて国会承認を得るわけでございますが、韓国では憲法五十六条に規定されておるようですけれども、この規定に基づいて韓国議会承認を求めるために提案された案件は何件であり、日本で、日本国会承認を求めておるものと同じかどうかということを最初に確認しておきたいと思います。
  4. 後宮虎郎

    後宮政府委員 お答え申し上げます。  韓国におきまして正式に国会承認対象といたしました文書は次のとおりでございます。  一つ基本関係に関する条約。  二つ、法的地位に関する協定。  三つ、漁業に関する協定。これにつきましては、附属書合意議事録直線基線使用の協議に関する交換公文、それから済州島両側の漁業に関する水域に関する交換公文、これを一緒に審議に提出いたしております。  それから四番目といたしまして、財産請求権に関する協定。これには同時に、第一議定書、第二議定書、それから第一議定書実施細目に関する交換公文、それから協定第一条1(b)の規定実施に関する交換公文。それからその次に借款契約。それからその次に商業上の民間信用提供に関する交換公文。それから合意議録の一と二と、これだけがこの財産請求権関係について一緒に提出されております。  その次に大きな項目の五といたしまして、文化財に関する協定及び附属書。  それから最後に紛争の解決に関する交換公文。これだけをこの批准同意案対象とする文書として提出しております。
  5. 石橋政嗣

    石橋委員 次にお尋ねしておきたいことは、この基本関係に関する条約というのはあまり聞きなれないものなんです。日本側は、最初共同宣言方式をとりたいということを考えておったようにわれわれとしては聞いておるわけであります。事実今度の場合も、領土条項は最終的に解決を見ておりません。そういう面からいっても、これは共同宣言という形をとるのが筋ではなかろうか。多少条件が違うとはいいながら、日本ソ連の間で国交回復する際にあたりましても共同宣言方式をとった。主たる理由は、領土条項の最終的な処理を見なかったということが理由であったとわれわれは承知いたしております。今度の場合、この基本関係に関する条約というような形をとったのは一体どういうわけなのか、外務大臣お尋ねをいたします。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 共同宣言でも条約でも別に差しつかえないのでありまして、われわれは合意によって基本関係条約というものを選んだ次第であります。
  7. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、日ソ交渉の場合に共同宣言方式をとられた理由最初お尋ねいたしておきます。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長からお答えいたさせます。
  9. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 日ソ間の場合には、御指摘のとおり、平和条約という名称を用いなかったのは、領土問題について最終的な決着がついてないからでございます。平和条約という名称を用いるかどうかという点は、そういう点が非常に関係があるわけでございますが、ある国際約束共同宣言という名称を用いるか、条約という名称を用いるかということは、条約というか協定というかと同じように、特に実体的な影響のないことでございまして、主として形式的な観点から、いずれに決してもよろしい問題だと思います。
  10. 石橋政嗣

    石橋委員 質問にまともに答えてもらいたいのです。ソビエトの場合にはなぜ共同宣言という形をとったか。
  11. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 ソ連との場合には平和条約という名称を用いなかったことが要点なのでございまして、共同宣言という名称をとったか、条約協定という名称をとったかは別の問題でございます。
  12. 石橋政嗣

    石橋委員 領土条項処理するということが、やはり戦後処理の問題としては中心問題だと私は思うんですね。今度の場合は領土問題は片づいたと判断されますか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国交正常化に際して、領土条項を入れる必要は認められなかった。
  14. 石橋政嗣

    石橋委員 そうすると、ここで首尾一貫しないんですよ。ソ連との交渉の場合には、領土条項が片づかないから平和条約というものを結ばなかった。共同宣言方式というものをとった。今後の交渉で領土問題が片づいたら、その時点で正式に平和条約を結ぶ、こういう立場をとっておられる。今度韓国との交渉においては、領土問題は片づかない。にもかかわらず、正式に韓国がこれは平和条約講和条約に準ずるものだという立場をとっておる基本条約という形をとった。もう最初から、この形そのものにおいて日本は一〇〇%譲歩してしまっておる。従来言っておることと矛盾したことを、韓国側主張に押されて、のまされておる、こう理解せざるを得ないじゃありませんか。現に韓国無任所長官である元という人はこのことを言っております。これは明らかに一つの単純な国交正常化に対する条約というよりは、平和条約講和条約に準ずることができる、このような性格の条約であると申し上げる次第です。このように韓国国会答弁しておるんですよ。だから日本はここで、はしなくも首尾一貫しない外交姿勢というものを冒頭から露呈している。あなたの説明では納得できません。領土条項解決しておりません。にもかかわらず、共同宣言方式を放棄して、韓国要求に屈して条約という形をとった。おかしいじゃないか。もしおかしくないというならば、全部の国民がわかるような説明をしていただきたいと思います。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ソ連日本関係は、いわゆる戦争の両当事者なんです。その関係と、それから戦争をやった両当事者ではない日本韓国との関係は、これはまたおのずから別なのでありまして、そこにいろいろな違いが出てくるわけであります。
  16. 石橋政嗣

    石橋委員 しかし日本側は、私がいま言っているような立論に立って共同宣言方式主張しておったことは事実なんです。このことも韓国議会において李外務部長官説明しております。日本最初、単純な将来の関係だけを規定する共同宣言主張しました。しかしわれわれの要求に屈してわれわれの立場を貫徹することができて、こういう形におさまったのであります。胸を張って向こうでは言っていますよ。この点からいっても、すでにあなたは筋の通らぬことをやっておるということを示しておるわけです。このことを明らかにして質問の第二に移ります。  基本条約第二条に「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。」こういうふうに規定されておりますが、この「もはや無効である」というのがまた争いのあるところであります。そこでお伺いしたいのでございますけれども、日本政府としては、法律的にいつの時点から無効という立場をおとりになっておるのか。道義的には別でございます。ああいう条約がよかったか悪かったかというようなことは別にいたしまして、法律的に昭和何年何月何日、どういう時点から無効と、こういうふうにお考えになっておられるのか。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 併合条約韓国独立宣言のときから無効である、それから、それ以前の条約は、それぞれのその条約規定してある条件の完了とともに、あるいはまた併合条約成立発効したときにそれぞれ効力を失っておる、こう解釈しております。
  18. 石橋政嗣

    石橋委員 確認いたしますけれども、韓国独立宣言の日というのは、一九四八年八月十五日のことでございますか。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  20. 石橋政嗣

    石橋委員 そうすると、ここで問題が出てくるわけですね。これらの条約は、現に韓国が管轄しております休戦ライン以南に関する部分条約ではないのです。日本と当時の韓国側政府との間にいろいろな形の条約が結ばれた。そういうものは全朝鮮相手にして結ばれたものです。それを無効とするのに、休戦ライン以南を管理しておるにすぎない、行政的に管轄権を持っておるにすぎない韓国独立の日をもって無効とするというのは、これはどういうことですか。そんな理屈がありますか。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは一部でも差しつかえない解釈をとっておりますが、なおこの点に関する法律論として条約局長から申し上げます。
  22. 石橋政嗣

    石橋委員 これは条約上の問題じゃないんですよ。結局この無効と確認される「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定」これは日本と全朝鮮との間に結ばれた条約です。それを無効にするということは、これは問題ありません。私たちも当然だと思います。しかし、その無効の時点をいつにするかというのに争いがあるのです。向こうは、全然最初からなかったのだ、こう言っております。それに対抗する日本側主張というものが韓国独立の日だなんというのじゃ、これは対抗できませんよ。それじゃ北半分についてはどうなるのですか。いつから無効になるのですか。
  23. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 大韓民国管轄権の及ぶ範囲朝鮮南半分であることは御指摘のとおりでございますが、しかし、大韓民国の存在というものは併合条約と完全に相いれない状態であるということは、これは明白でございます。したがって、そういう完全に矛盾した状態が生じたときからこの併合条約は失効したものと認めるのが相当であるというわけでございます。併合条約自身は、地域的に南半分とか北半分で有効、無効とかいう種類の条約ではございませんので、そのときをもって併合条約が全体として失効したと認めるのが一番適当であろう、かように考えるわけでございます。
  24. 石橋政嗣

    石橋委員 相手の国の独立政府樹立の日をもって無効とするというならば、朝鮮民主主義人民共和国は一九四八年の九月八日に独立しているのです。政府成立しているのです。そうすると、北の分についてはその日から無効だというのですか。北と南と無効になる日が違うじゃないですか。だから、この点で主張されるならば、日本ポツダム宣言を受諾した日とか、降伏文書に署名をした日とか、あるいは講和発効の日とか、そういうふうな時点をとらえてそれから無効という主張をしていけば国際的にも通りますよ。しかし、南半分しか現に支配していない韓国独立した日から旧条約は無効であるなんと言ったって、対抗できないじゃないですか。説明にならぬじゃないですか。ここでも韓国迎合姿勢があらわれていますよ。筋なんかどうでもいい。さっきの共同宣言方式の場合もそうですか、ここでもまたもや韓国主張に押されて、北というものを全然無視した形で第二条を規定している。これは、条約局長説明はもうわかりました。外務大臣、おかしいとお思いになりませんか。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちっともおかしくない。とにかく併合条約というものはもはや両立しないという状況になったのでありますから、この日から無効になった、こう解釈している。
  26. 石橋政嗣

    石橋委員 韓国独立の日をもって無効とする、大韓民国政府成立宣言のあった日をもって無効とする。そうすると、北鮮のほうは九月八日に憲法を採択して、九月九日に政府成立宣言をしております。この間に食い違いがあるのです。何ヵ月間かの食い違いがあるのですよ。一つ条約を対韓国の場合には一九四八年の八月十五日から無効、北の部分についてはそれでは一九四八年の九月九日から無効、こういうふうな妙ちきりんな解釈になるじゃありませんか。条約が無効になる時点が二つできるじゃありませんか。常識のある者にこんなばかなことが通りますか。総理、この点についていまの質疑応答を聞いておられて矛盾をお感じになられませんか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから静かに聞いておりましたが、外務大臣説明でちっとも差しつかえない、かように思います。
  28. 石橋政嗣

    石橋委員 差しつかえないなら差しつかえないように、だれでもわかるような説明をしてください。そんなことを言うから韓国の言うほうが正しいということになるのです。これでは争いにならないですよ。韓国はなかったと言っておるんでしょう、こんな条約は。もはや無効であるということは、全然なかったということだ。向こうで非常に理論的な説明をしております。必要とあれば私はここで紹介してもけっこうです。  韓国側においては、八月八日の特別委員会におきまして李東元外務部長官がこんなことを言っております。ヌル・アンド・ボイドという語句は、当初まで遡及して無効であることを最も強く表示した法律的な用語であります。これに対して、終始一貫韓国はこの主張を貫いた。日本側は、最初無効化規定は置かぬという立場をとった。それを譲って、将来に対してのみ無効という表現を主張しだした。さらに譲って、ハブ・ノー・エフェクトということばならばいいと言いだした。それからまたさらに譲って、ハブ・ビカム・ヌル・アンド・ボイドという、日本と台湾との間で結ばれたあの方式でいこうということを言いだした。全部韓国は拒否したのだ。最後にあまり日本外務大臣が泣きつくから——向こうはそういうことばを使っておるのですよ。オールレディということばを置くことにした。そこであらゆる学者や専門家を集めて、オールレディというのを入れればヌル・アンド・ボイドというのが死ぬか、検討してみたが、死なぬという結論になった。意味があいまいになるか、ならぬという見当が結論として出てきた。そこでオール・レディヌル・アンド・ボイドということに最終的になった。向こうはもう一貫して最初からなかったのだという主張を貫き通した。日本は一歩一歩譲って、そしてわれわれの主張についに屈服をした、こう言っております。私は、この説明のしかたは非常に説得的だと思うのです。向こうは、日本国会大臣答弁のような不誠意な答弁をしておりません。いままでの経過も述べ、非常に慎重に、みんなにわかるように一生懸命説明しておる。私は何度も韓国議会会議録を読んでみましたが、そういう姿勢だけは読み取れました。それに比べて日本外務大臣、特に外務大臣答弁は、何とかしていままでの経緯も話し、説得し、理解してもらおうという立場などはないじゃないですか。おかしくございません、——何がおかしくないですか。それではもっと理論的に説明してください。無効になったのは韓国独立宣言をした日だ、一九四八年の八月十五日だというならば、北の部分を支配しておる朝鮮民主主義人民共和国は九月九日に政府をつくっておる。その日から無効だということに今度はするつもりですか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたのいま引用されたヌル・アンド・ボイドということばは、用語例からいってただそれだけでは当初から無効であった、初めからなかったものだ、そういうふうには使っておらないようであります。それからオールレディ解釈でございますが、これはもう客観的な事実を述べて、そしてもはや無効であるということを言っておるのでございます。ことばの使い方はどうであろうと、とにかく日本韓国併合条約を結んで、そしてこれが一体となったという歴史的事実というものはこれはもう明らかなところでありまして、いかに向こうのほうでそういうことを主張いたしましても、われわれとしては成文の解釈上、どうしてもそうならないということを確信しておる次第でございます。
  30. 石橋政嗣

    石橋委員 ここにも北鮮側というものを全然無視した思想があらわれているのですよ、結論的に言えば。あなた方は、つじつまを合わせるためにいろいろなことをおっしゃいますけれども、韓国が現に支配しておる範囲というものは休戦ライン以南だ、こう言っておるにもかかわらず、無効宣言一つ見ても、北というもののオーソリティーというものははなから無視して、韓国だけを相手にして、そうしてやっているじゃないですか。全朝鮮日本との間で結ばれた条約の無効を、南半分を支配しているだけの国の独立の日から無効にする、こんな首尾一貫しない主張をするから韓国に押しまくられるのです。向こう議事録によりますと、ずいぶんひどいことを言っています。法律のホの字も知らぬのじゃなかろうか、日本の役人や代表は。こういうことすら言っている部分があるのですよ。あとで必要とあれば御紹介いたしますけれども。いまのこの一つの問題をとってみても、客観的にだれもが日本側主張を正しと思えないような主張をしておる。だから負けるのです。韓国側が、こんなものはもう最初からなかったんだ、無効だ、と口をそろえて言っているのに対して、日本側が、韓国独立政府樹立宣言の日から無効だなんていうことを言ったんじゃ、これは対抗できませんよ。ここでも、今度の日韓交渉がいかにだらしない形で進められておるかということを露呈しておるといわざるを得ません。これが第二です。(「いまの答弁ではだめだ」と呼び、その他発言する者あり)  それじゃ、もう一度確認いたしますが、朝鮮民主主義人民共和国が現にあるということはお認めになっておられる。この国と日本とが無効規定を何らかの形で規定しよう、表現しようとする場合には、どういう形をとられるつもりですか。韓国独立したその日をもって無効とするなんていうのは、一〇〇%向こうは承知しませんよ。どうなさるおつもりですか。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事実上北に政権の存在することは承知しております。しかし、今回の日韓条約は、全然北に対しては触れておらない、全然白紙でございます。
  32. 石橋政嗣

    石橋委員 北については触れておらないと言うけれども、北も関係があるじゃないですか。関係があるじゃないですか。幾ら北を無視してやられようと、北と関係のある問題を処理するのに、無視しようがないじゃないですか。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう北に政権のあることは念頭に置きながら、今回の日韓条約の諸取りきめを行なった次第であります。それで、これとの関係はどうだ。全然関係——いま国交正常化してもおりませんし、また、そういう気持ちもないし、われわれは白紙の状態であるということを申し上げるよりほかにないのであります。
  34. 石橋政嗣

    石橋委員 白紙と無視とは違うのです。白紙というのは、北に全然関係がないものなら白紙ということばは通るでしょう。しかし、北のほうにも関係のある問題を、そのことを全然考慮を払わずにやられることは、白紙じゃないですよ。これは無視ですよ。どう考えても無視ですよ。だから、先ほど私申し上げたように、なぜポツダム宣言受諾の日をもって無効とすとか、あるいは降伏文書調印のときをもって無効とすとか、講和発効の日をもって、平和条約の発効の日をもって無効とすとか、両方にちゃんとかかるような形でおやりにならないのですか。それならば法律的にもぴしゃっとどこにでも対抗できるじゃないですか。対抗できないようなことをやられたんじゃ、最初からなかったんだという韓国の言い方に無理があるにしても、少なくとも日本主張よりはまだまともだ。一貫している。これは対抗できないです。対抗できませんよ。こっちもちゃんと筋が通っている、向こうも筋が通っているという場合には争いがあるのですが、向こうの言うことは、最初からなかったんだ、その意味では、その主張が正しいかどうかということは別として、筋が通っています。日本側は筋が通らぬじゃないですか。南半分の国の独立した日から無効、それじゃ、北半分を支配していつ国がある。それが独立した日は、南半分を支配している国の独立した日とは違う。対抗できない。こんなお粗末な条約を結んでおいて、そうして反対するのが間違うておるなんて、よう言えるものだと思うのです。まだ何ぼでもあるのですよ。(一事が万事だ「それはこういうときに言うのだ」と呼び、その他発言する者あり)こういうときに一事が万事と言うんだそうですか、それじゃ、お答えができないようですから……。   〔「それじゃだめだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  35. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  36. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、国民の相当部分を納得させるに足る理論をひとつ展開してくれませんか。どなたでもいいです。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓の関係が歴史的な事実として、併合され、そして三十六年間続いたということは、これはもう隠れもない事実であります。これをただ、ヌル・アンド・ボイドということばで、初めからなかったんだと主張することが、大体これはおかしい。いかに広弁長辞を使っても、ただ三つや四つのことばでそういう事実を否定するということは、これは大体おかしい。私は、多くを語らぬでも、それはもう、こんなことばの問題ではない。しかもこのヌル・アンド・ボイドというのは、用語例からいって、初めからなかったんだというふうにはっきり使われておるのではないのでありますから、いかにどういう説明をしようと、この問題についてはわれわれの解釈が正しいと、かように考えております。
  38. 石橋政嗣

    石橋委員 私も最初から申し上げております。韓国が、現実にあった条約を、最初からなかったんだなんということ自体、これはおかしいですよ。おかしいけれども、向こうはとにかく首尾一貫それを主張しております。一貫した主張をしております。とにかくなかったんだ、最初から無効なんだと主張しています。こちらはそれに対して、それはおかしい、いつの時点から無効にするのが正当だ、こう反論をしなくちゃ、相手がおかしいんだから、こっちもおかしくたってかまわぬなんてことはないでしょう。あなたのいまの説明でいくと、どだい相手がおかしいことを言っているんだから、こっちもおかしいことを言ってつじつまを合わしているんだ、こういうことになるじゃないですか。   〔発言する者あり〕
  39. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  40. 石橋政嗣

    石橋委員 少なくともそのおかしさに抵抗できるだけのぴしゃっとした理論体系をこっちは整えてやっていかなければ、だれが聞いても納得できないような時点をつかまえて、韓国政府樹立の日をもって無効とすなんて、それは国際的にも通用しませんよ。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓併合条約というものが、たとえ一部分であっても、朝鮮半島の一角に独立国ができたということは、これは日韓併合条約というものともはや両立しなくなった、でありますから、この日から効力が失われた、こう解釈するのは当然だと思うのであります。
  42. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃお尋ねしますが、北の部分については、条約上、法律的にまだ有効という形になるわけですか。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはそういうふうにこま切れ的に解釈すべきものじゃなくて、これは日本と韓半島全体の条約でございますから、それに両立しない状況ができたならば、これはもう根本から崩壊するわけであります。全部無効になる、こういう解釈をとっております。
  44. 石橋政嗣

    石橋委員 私が聞いている質問にまともに答えてください。結局韓国日本との間においては——その韓国というのは休戦ラインから以南を現に管理しておる国、その韓国日本の間においては、韓国という政府が樹立した日、それから旧条約は無効、北のほうは法律的に残る。(「残らないよ」と呼ぶ者あり)残らないなら、こんな規定をつくる必要はない。北のほうには残る。その北のほうに残っているのか、残ってないというならば、いつから無効になるのか。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 なお法理論的な説明を法制局長官からいたします。
  46. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御承知のとおりに、平和条約で、二条の(a)でございますが、朝鮮独立承認しておるわけでございます。したがって、この朝鮮独立という事実が発生しましたとき、それがすなわち、また朝鮮の分離したというときでございますが、併合条約というものがそのときから効力を失うというのは、これは事理の当然であろうと思います。  ところで、先生がおっしゃいますのは、北の部分について、あるいは南の部分についてということをおっしゃるわけでございますが、この併合条約というのは、分離というものと相いれないわけでございますが、そのものについて、ある部分についてどうか、他の部分についてどうかというようなことは、事柄の性質上あり得ないことだと思います。  なお御疑問があればお答え申し上げます。   〔発言する者あり〕
  47. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  48. 石橋政嗣

    石橋委員 とっておきの法制局長官を出したようでございますけれども、これはピンチヒッターにならぬようでございます。  いま平和条約を持ち出されました。平和条約によって朝鮮独立日本は認めたわけです。その時点をもって無効とすれば、北も南もないですよ。一番正しい解釈ですよ。なぜそういう立場をとらないかと私は言っているのですよ。それが一番すなおでしょう。そうしてだれにでも対抗できるでしょう。それを、何で今度の場合には、それよりも先に、韓国政府ができたときをもって無効とすというようなむちゃな規定をしたかと言っているのです。
  49. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御指摘のように、平和条約二条(a)で朝鮮独立承認しておりますが、独立という事実が発生したのは四八年の八月十五日でございます。要するに、承認をしたのは平和条約ではございますが、事実が発生しているのは、まさに一九四八年の八月十五日、そのときに、外務大臣が仰せになりますように、なるほど大韓民国政府ではあるけれども、その国の独立ができたという事実、そのときがすなわち併合条約の失効したときである、その併合条約の失効というものは、要するに朝鮮の分離ということでございますが、それが北と南で変わるはずがない、こういうわけでございます。
  50. 石橋政嗣

    石橋委員 それはおかしいですよ。あなたの今度の議論でいくならば、私がさっきから言っているように、ポツダム宣言受諾の日か、講和条約発効の日か、その時点にすればいいですよ。そうすると、これまた問題ないですよ。対抗できますよ、独立宣言の日というから、二つの国が独立宣言した日が違うのです。そうすると、法律的に、一体どちらの国が独立した日から無効になるのか、永久に争いが残りますよ、二つの国の独立した日が違うのだから。だから法律的に問題の起きない。ポツダム宣言受諾の日から無効とか、降伏文書に署名をした日から無効とか、あるいは講和条約発効の日から無効とか、何といったって筋の通るようにしておくべきじゃないですか。
  51. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 日韓条約は、御承知のとおりに、もはや無効となったというのは、いずれの説をとりましても実は同じことでございます。したがって、それを理論的にどこであるかというのは、むろんアカデミックな議論としては成り立つと思いますが、そういう議論としては、韓国が事実として独立をしたときというふうに見ればいいと思いますが、要するに、日韓条約上の問題としては、もはや無効であるかどうかというその論点こそが問題の中心だろうと思います。しかし、おっしゃいますように、むろん議論としてはあり得るわけでございますので、その議論に対しましては、韓国独立をしたという事実が発生したときということになるというのが政府側の御説明でございます。
  52. 石橋政嗣

    石橋委員 アカデミックな議論として成り立つなんという問題じゃないですよ。あなたもどちらかといえば、アカデミックな立場で法解釈すべき人ですよ。少なくとも法律条文について議論をしているときに、あなたまでが政治論を交える必要はないじゃないですか。だからこそ、法制局長官は三百代言だなんていつもやじられるのです。ここにいつの時点からという問題は、実は単なる法律的な問題じゃない。先ほどから私が申し上げているように、北は白紙です、白紙ですと言いながら、無視している形がちゃんとこういう端々に出てきているということを指摘したいのですよ。少なくとも法律的に対抗できない以上は、そう断ぜられてもどうにもならないじゃないですか。これはいいです。次の問題と関連させて聞きます。  それじゃ、法律的に日本朝鮮独立を認めたのはいつなんですか。法律的にですよ。
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 平和条約発効の日であります。すなわち一九五二年ですか、平和条約によって日本韓国承認したわけであります。
  54. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしたら、そのときから無効にしておきさえすれば問題ないじゃないですか。この平和条約において、独立をわれわれは認めたわけです。私たちとしては朝鮮の分離を認めたわけです。いまさら読み上げるまでもありませんけれども、第二条の(a)において、日本国朝鮮独立承認した。この場合の朝鮮は北も南もありません。とにかく全朝鮮独立を認めたのです。法律的にはこの日からなんです。朝鮮独立したのも、法律的にはこの日からです。そうすると、この日をもって無効とすという立場をとらなければ対抗できません。争いが起きたときに、どこにおいても対抗できません。
  55. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 むろん私は法律的な観点から申し上げますが、いまお話しのように、外務大臣が仰せになりましたように、韓国独立承認したのは、法律的には平和条約の発効の日である。しかし、承認をしたのはそのときでありますが、韓国独立したという事実が発生した日はその日であるとは言えないわけです。その事実が発生したとき、それはすなわち、また同時に承認したわが国からいえば、その事実が発生したときに併合条約はなお効力を存していたということは言えないわけでございます。とにかく、承認した韓国が事実として独立をしているとき、そのときに併合条約の効力は失ったというわけで、私はその間の説明は首尾一貫しているのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  56. 石橋政嗣

    石橋委員 これも法律論じゃないんです。法律的に朝鮮独立したのは平和条約の発効の日だと言う。しかし、韓国がすでに独立しておったという事実はあったと言う。それならば、朝鮮民主主義人民共和国というものが現実に誕生しておったという事実も、その時点にはあったのです。間違いないでしょう。この事実は無視するのですか。
  57. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 北の部分に政権ができたというのは、私の記憶では韓国独立したあとだと思いますが、いずれにしましても、韓国独立をしたという事実が発生したとき、これは併合条約というものと相いれない事実でございますが、その事実を平和条約承認をしたことになりますが、その事実が発生したときは併合条約と相いれない事態が生じておる、それはすなわち、併合条約でございますから、朝鮮日本国からの分離と言ってもいいわけでございます。それが実は韓国だけについてあって北の部分についてはないということは、政府側から申しておらないと思います。いずれにしましても、朝鮮というものが日本国から分離しておる、そういう意味合いで、韓国独立をしたその事実が発生したときに併合条約の効力がなくなった、こう言っているわけでございます。
  58. 石橋政嗣

    石橋委員 質問を何十と私用意しておるのです。それを最初からこれじゃ私は何日やったってケリがつきませんよ、入り口でこんなふうじゃ。もう総理大臣はずいぶんいままで議論を聞いておって、おわかりになったと思いますから、総理の見解をお聞きしたいのです。私が言っておるのは、これはいつの時点から無効になったかということは、メンツの問題もあり、いろいろな問題もあって、非常に政治的に韓国側では重視しておる、日本側は軽く考えたいのですね。しかし、とにかく韓国側は重視しております。だから旧条約協定は、一切どだい最初からなかったのだという主張を終始一貫続けております。これに対してわがほうは、そんなことを言ったって事実あったものを否定しようがないじゃないですか、こういう立場をとっておられるのです。この意味では日本側の言い分が私は正しいと思います。道義的には向こうの言い分が正しくても、法律的には私は日本の言い分が正しいと思います。ところが、これほど韓国が重要視し、一生懸命になって、もはやなかったんだ、というのは、最初からなかったんだと言い張っておるときに、こちらの立論が弱ければ対抗できなくなるということなんですよ。対抗できなくなる。だからあとあと条約規定というものは、もうこれが発効すればだれが何と言おうと通らぬと政府はおっしゃっていましょう。そうすると、客観的にどう解釈すべきかということになってしまう。そのときに、日本側は、最初からなかったと言うのは無理なんだ。そんなことはない、韓国政府の誕生した日から、こんなことを言ったら軍配は日本に上がりませんよ。たいして影響もないならば、この辺のところは、それじゃ講和発効の日にするのがほんとうだ。なぜ最後までがんばられなかったのか。それがいやだというならば、日本から分離した、降伏文書に署名した日とか、もっと譲るならばポツダム宣言受諾の日とか、何か筋の通った主張をなぜ最後までなさらなかったのか。韓国主張に対して対抗できないような弱点を何でおつくりになったのか。この点について総理のお考えをお聞きして締めくくりをつけたいと思います。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋君のお話、これは詳細に御意見を聞きました。私は、外務大臣もこれまたたいへん珍しく親切にお答えしたと、かように思いますが、私はただいま議論になっておりますものは、平和条約が発効の日、そのときに日本韓国独立承認した、これはもうよく私どもの主張はそれでおわかりだと思う。しかし、実際に韓国に政権ができたときは一体いつかという、いわゆる併合条約が行なえなくなったのは一体いつか、かように申しますと、これは独立した日、だからそれにさかのぼって無効だ、こういうことでございます。それについてただいまお話を聞いておりますと、北が独立した日はもっと早いのだ(石橋委員「あとです」と呼ぶ)ということを言われる。それはちょっとあとだといま言われますから、北はあとであるということなら、もうはっきり私どもは、平和条約締結の日ではあるが、独立した日に併合条約は行なえなくなったのだ。だからそのことがいわゆる一九四八年の八月十五日だ、そのときのは別にこれは南だけだとか、北だとか、こういうような関係はない。併合条約自身が全域について行なえなくなった、かように私どもは考えておるということであります。
  60. 石橋政嗣

    石橋委員 それで法律的には少なくともおかしい、弱点を持ったものであるということははっきりしたのですよ。しかし事実上困らぬからいいじゃないか、いまの総理のお答えは。というのは、韓国政府樹立宣言をしたのは一九四八年の八月十五日、北のほうが政府の樹立宣言をしたのはそのあとの九月九日、だからそのときにはもう無効になっているからいいじゃないか、これは便義主義というやつです。少なくともそういう便宜主義は通用しないということが第一と、特に総理にお聞きしたいのは、北については白紙でございますと終始一貫述べているのです。ところが、こういう一つ規定を見ても、北については白紙と言えない、無視である、こういうことを私申し上ているんですよ。北については無視である。白紙ではない。韓国政府ができた日をもって無効とすというふうな規定主張する、そういう態度に北というものを無視している態度があらわれているということを申し上げているわけです。この点については何か言い分がございますか。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ありますが——言い分ありますが、ただいまお話しのように韓国が先にできたという、また北鮮はあとだったということを石橋さんが言われますので、最初私ども聞いておりまして、北鮮が先だ、だから先に独立したんだから八月十五日というのはめちゃだ、こういうようなお話でしたが、この点はもう誤解がないように、北鮮はあとだと言われるからこれは私どももそのとおりでいい。それを便宜主義だ、かように言われますが、これは便宜主義であろうが、とにかく併合条約、合併条約が、そのときから、韓国独立したときから行なえなくなったというのでございますから、無効になった、かように私ども考えていいと思います。そこで事実問題として——これは事実問題ですよ。事実問題として北に権威のあることは私どもも考えている。したがって、その意味においては、経済協力の問題にしてもまたその他の問題にいたしましても、北に権威のあることを絶えず考えつつ今回の条約締結をしておる。だからこの意味においては私はいわゆる無視したということではなくて、事実関係では十分そのことを考慮してまいっておるということでございます。しかしながら法律的に、あるいは国際法上から見まして、北の権威というものを認めているか、これは無視しているんじゃないかと言われればそのとおりだと思います。無視だということになります。これは御承知のとおり、私がこの席でしばしばお答えいたしましたように、南を承認したものは北を承認しておらないし、北を承認しておる二十三カ国も南を承認しておらない。かようなのがこれは国際上の慣例でございます。だからこの点はいままで説明し、よくおわかりがいっていたと思いますが、まだこの際にただいまのように無視だという話がありますが、事実関係として私どもは北の権威を認めておる。ちゃんと事実関係としてはその点を十分考慮しておる。だからいわゆる無視ではございません。だから法律的な無視だとおっしゃるなら私はあえてそれを抗議は申しません。それは否定はいたしません。しかし、事実上はちゃんと北の権威のあることを認めていろいろのくふうをしておるということを申し上げます。
  62. 石橋政嗣

    石橋委員 私この間から総理答弁を聞いておって気になるのですけれども、北と南と両方承認した国がないと盛んにおっしゃるのですが、ありませんか。——ありませんか。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の聞いているところではございません。
  64. 石橋政嗣

    石橋委員 どなたが専門家ですか。私が調べている範囲ではあるのです。(「外務大臣答えろと呼ぶ君あり)外務大臣、それじゃ……。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 両方承認しているところはございません。
  66. 石橋政嗣

    石橋委員 ウガンダは両方承認していると私は思いますが、その点間違いですか。
  67. 後宮虎郎

    後宮政府委員 お答え申し上げます。  すでに御調査と思いますが、インドにつきましては北と南と両方から領事館を受けておりますが、自分のほうからは派遣しておりません。それからもう一つの例は、カンボジアは北のほうから大使館を受けておりますが、南のほうからは領事館だけということになっております。それから、ビルマは両方から領事館を受けておる。それからアラブ連合のほうは北から大使館を受けて韓国からは領事館だけを受けておる。そういう状況でございまして、こちらの承知する限りウガンダの例は知らないのでございます。
  68. 石橋政嗣

    石橋委員 私はこの資料に基づいてお尋ねをしているわけです。   それじゃ、総理は何度も七十一ヵ国とか七十二一ヵ国とか韓国承認していると言う。これも一ヵ国違うんですね。北のほうは二十三カ国が承認していると一貫しておっしゃっておられる。正確を期するためにその七十一ヵ国か七十二ヵ国かということもはっきりしてもらいたい。その中にウガンダが入っているかどうかを確認してください。それから北のほうの二十三の中にウガンダが入っているかどうか確認してください。私の資料では両方ともウガンダは入っているんですよ。何度も何度も総理はおっしゃるから、私はよっぽど自信があるのかと思ったら、調べてない、わかりません、——いいかげんじゃないですか。
  69. 後宮虎郎

    後宮政府委員 お答え申し上げます。  九月二十日の調査でございますが、それによりますと、われわれの持っております資料では、ウガンダのほうは韓国と一九六三年の三月二十日に承認関係に入っておるのでございますが、北鮮のほうとはまだ何もないことになっております。(「それを何で確認するのだ」と呼ぶ者あり)大使交換に関するある合意をやっておるわけです。
  70. 石橋政嗣

    石橋委員 この承認という問題をまず定義づけていかなければならぬことになりますね、そういうことになると。先ほど韓国承認した国、北鮮承認した国と、両方承認した国はないと総理大臣はおっしゃっているから、そのまま私は承認ということばを使っているのです。ところが、いまのアジア局長答弁でもまだ自信がないのですね。北のほうはどうなっておるのか。
  71. 後宮虎郎

    後宮政府委員 北のほうに関しては、承認とか外交関係開始とかいう資料を全然情報がないわけでございます。
  72. 石橋政嗣

    石橋委員 だからあなたがここで承認してないということは言えないじゃないですか。いまのところ確認できませんと言うならとにかく、承認してないとは言えないでしょう。どうです。
  73. 後宮虎郎

    後宮政府委員 もう一度念を入れて確かめますが、入手しております情報では韓国だけしか承認関係がない、そういうことでございます。
  74. 石橋政嗣

    石橋委員 あなたは国交を持っておらないからわからないといまおっしゃった。わからないのに、総理はもう当然であるかのごとく何度もおっしゃるんです、北と南と一緒承認している国はありませんと。これはまだ立証されてないのですよ。私は紹介しておきます。これは常にあなたたちの味方に立って議論を展開しておられる田中直吉という教授の「南北朝鮮の国際的地位」というこの中に、私調べてみましたら、両方承認している国にウガンダが入っているのです。私は根拠をはっきりしておきます。あなた方はこれに対抗する資料をいまだ持たずして、両方承認した国はないという、これがもう純然たる事実であるかのごとくものを言われるのは慎んでいただきたい。これは国民をごまかすことになりますから慎んでいただきたい。このことだけを申し上げておきたい。
  75. 安藤覺

  76. 石橋政嗣

    石橋委員 ちょっと、委員長。これは総理大臣がいままで私が数えただけで四、五回言われたことばなんですよ。総理大臣に、だからお伺いします。   〔「取り消すなら取り消す」「間違っていやしないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のいろいろの発言についてそれを取り消せとか、あるいは間違っている——まあ取り消せとは言われないようですが、私はいままでもしばしば申し上げたのでございますが、朝鮮半島におけるこの二つの権威、これは民族のたいへん気の毒な悲劇、かように私は考えておる。いつも絶えず同一民族の単一国家という、これが私どもの念願でもあります。これはまた社会党の皆さん方も同じような考え方ではないかと思います。さように私どもは考えておる。またいままでの国際慣例から申しましても、こういうような分裂国家を承認している場合にしばしば問題が起こるのですが、多くの場合、これはやはり単一国家を願っておる、こういう立場交渉を持つのでございます。たとえばフランスが中共を承認した。そのために国府が国交を断絶したと、かようなわけに、いつも二つのものが対立しておる場合には、二つを同時に承認しますと国際紛争は必ず起こる、かようなものでございますので、多くこういう場合は一つになっておるというのが、これがまあしきたりだと思っております。私は、そういう意味で、そういうことはないんだと、かように事務当局からも伺っておりますし、したがって私、かように説明したのですが、ただいま特殊な国が二つ承認しておると、かようなお話でございますから、よくその点は調べることにいたします。しかし問題は、ただいま申し上げるように、単一民族、これは単一国家を願っておる、またそれを進めることが私どもの、隣国のつとめでもある、かように私は考えておりますので、ただいままでのところ南を承認しておるもの、この国が同時に北と法律関係を持たない、これはわが国のもう最初からの考え方でございますから、基本的な態度でございますから、この点はぜひ御了承していただきたい、かように思います。  ただいまの具体的問題につきましては、お話しのようによく取り調べることにいたします。
  78. 石橋政嗣

    石橋委員 非常に大切な問題なんですよね。結局南北統一ということを悲願にしている、これは私たちはほんとうにそうあってもらいたいと思います。総理もそうおっしゃっております。少なくとも口の上ではそうおっしゃっておられる。しかし腹の中はわからない。一つの例として、私は先ほど、ほんの規定のしかた一つとってみても、北鮮を無視していると思われてもやむを得ないような例がありますということを申し上げました。それから南と北とを一緒承認できないんだ、そんなことはもう土台できないんだ、例もないんだというようなことをよく調べてもおらないでおっしゃると、日本国民は一国の総理大臣のおっしゃることですから、ああそういうことなのかと、こう思うのですよ。ところがよく聞いてみると、まだ調べが行き届いておらぬ、あまり自信がない、そういうまだ確実でもないことを反論の根拠になさるということは今後慎んでいただきたいと思うのです。  そこで、ここでお尋ねしておきたいのは、この承認するということですが、法律的に日本朝鮮独立承認したのは平和条約です。これは間違いありませんね。ところがこの朝鮮という場合には南、北を含めておられるわけです。われわれはそれを含めて朝鮮独立承認したわけです。そうすると、日本大韓民国承認する日はいつということになるわけですか。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大韓民国承認した日は、平和条約発効の日であります。
  80. 石橋政嗣

    石橋委員 いかなる根拠によってですか。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま申し上げたように、日本政府講和条約路効の日に大韓民国承認したのです。
  82. 石橋政嗣

    石橋委員 どういう手続を経てですか。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 黙示の承認でございます。特にそれを明示したわけじゃない、黙示の承認
  84. 石橋政嗣

    石橋委員 そんなばかなことがありますか。国家の承認なんというのが黙示の承認——恋人同士ならばものを言わぬでも目と目でわかる。(笑声)そういう手はあるかもしれませんけれども、一国が一国を承認するというのに黙示の承認とは何ですか。ちょっとウインクしたというのですか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国と国との間の承認の行為は必ずしも要式行為ではございませんで、文書でやる場合もあるし、あるいはまた別の形式でやる場合もある。いろいろある。それで結局平和条約を批准して、そうしてこれが発効するときに日本大韓民国を黙示の承認をしたと、こう解釈しております。
  86. 石橋政嗣

    石橋委員 黙示の承認なんというのは初めて聞きました。具体的にどういうことをするのですか、黙示の承認って。暗黙のうちに認めるということですか。そんなばかなことが許されますか、一国の外務大臣答弁として……。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約発効の日から在日代表部の設置を認めております。これは外交の慣例として、こういう方法がとられておることはよくあるのであります。
  88. 石橋政嗣

    石橋委員 在日代表部は、あれは居すわったのじゃないですか。しかも相互平等の原則を無視して、日本の代表部を韓国に置くことすら認めなかったじゃないですか。占領下においてGHQの中にある代表部が、そのまま講和発効後も居すわった。それを黙って見のがしておったからこれは承認になる、——ばかなことがありますか。独立国の外務大臣のそれが答弁ですか。そんなことでは絶対承知できません。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういうことは慣例上認められておるのでありますから、これをもって承認行為とみなすことができるわけであります。
  90. 石橋政嗣

    石橋委員 これは承知できません。向こうがかってに居すわって、そうして日本としては困る、どうしても残るならば、相互主義の原則に基づいて日本の代表部も韓国に置いてくれと何回言ったって通らなかったじゃないですか。こんなものをあなたは承認というふうな重大な問題に結びつけるのですか。一国の国を承認するかしないかということがどんなに大切か、先ほどからの総理答弁でもはっきりしているじゃないですか。既成事実の押し売りを承認だなどということは不見識です。許せません。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その際に日上書を取りかわしております。「日本外務省は、在日韓国代表部に敬意を表するとともにその地位に関する同代表部の本日付口上書について左記回答するの光栄を有する。」云々と書いてありまして、これがすなわち暗黙の意思表示によって大韓民国承認したわけになるのであります。
  92. 石橋政嗣

    石橋委員 まず第一に、いまあなたが例示されました資料を委員会に出していただくこと。第二は、この韓国の在日代表部というのは、先ほども申し上げましたように、占領下に占領政策の一環として置かれたものです。設置されたのは一九四九年一月二十九日、それを講和条約が発効されて当然に国交のない日韓の間においては撤去しなくちゃならない筋合いのものであるにもかかわらず、韓国は居すわったのです。これは占領というその背景の中でやられたことを、既成事実として日本に押しつけてきたのです。そのことをどうして国家の承認と結びつけることができるのですか。かりに百歩譲っても、帰れという代表部が帰らぬから、しょうがない、まあやむを得ぬから置いてやろうということがかりにあったとしても、それがなぜ一国の承認と結びつくのですか。こんなばかな議論がどこにあります。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはもうりっぱな外交慣例で認められておることでございまして、もはや平和条約発効ということになりますと、連合第の一部として日本に滞在することはできなくなるので、それでこれを在日韓国代表部というものに切りかえた。それを日本の承諾なくして、それはいわゆる強引に居すわったのではなくて、日本がこれを承認しておる。すなわち大韓民国というものを承認したということがここにあらわれておるのであります。
  94. 石橋政嗣

    石橋委員 代表部を置いたことが何で国を承認したことになりますか、既成事実を認めたことが。占領中の代表部が居すわった。それはしょうがないから認めた。代表部の設置を認めたということが——しかもそれは既成事実の押し売りです。そのことが何で韓国承認に結びつくのですか、もしそれが承認に結びつくというならば、講和発効のときから日本韓国の間には正式に国交があったということになるのですか。そんなばかなことはないじゃないですか。  委員長、いまの資料、非常にこの点で重要ですから、出していただいてから質問を続けたいと思いますので、お取り計らいを願いたいと思います。
  95. 安藤覺

    安藤委員長 ただいまの石橋君の資料提出を求められましたにつきましては、理事会において協議を行なうことにいたします。   〔発言する者多し〕
  96. 安藤覺

    安藤委員長 委員長より申し上げます。ただいまの資料の件につきましては、政府側より朗読いたすそうでありますから、それを朗読いたさせまして、それを資料にして出すか出さぬかは、後刻の理事会において御相談を願います。
  97. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほどの口上書につきまして、前にどこかの委員会に出たことがあるかということでございます。いま調べさせたのでございますが、私の前任者の伊関局長が要旨を御説明申し上げたことはございますが、資料そのものは出てなかったことが判明いたしました。現在、この口上書全文一枚くらいのものでございますから、朗読させていただきます。     口上書   日本外務省は、在日韓国代表部に敬意を表するとともにその地位に関する同代表部の本日付口上書について左記回答するの光栄を有する。   「日本政府は、在日韓国代表部が一九五一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された平和条約の効力の発生する本日から、連合国最高司令官に対して派遣された代表部としての地位を喪失するので、両国間に正常の外交領半開係が設定されるまで臨時に同代表部に対し政府機関としての地位を認め、且つ同代表部およびその構成員に対し領事館およびその構成員に通例許与されると同じ特権を許与するものである。   日本政府は、大韓民国政府が在韓日本政府代表部に対し相互主義により、前記同代表部に与えられると同じ地位および特権を認めるものと諒解する。」   一九五二年四月二十八日 これがこちらから出した手紙でございまして、これは形式上韓国代表部から参りました手紙に対する返簡になっておりますので、順序がちょっと狂いましたが、先に先方から参りました同日付の口上書を読ましていただきます。     口上書   在日韓国代表部は、日本外務省に敬意を表するとともに同代表部の地位に関して日本外務省が配慮されるよう左記を伝達するの光栄を有する。   「在日韓国代表部は、一九五一年九月八日にサン・フランシスコ市で著名された平和条約の効力の発生する本日から、連合国最高司令官に対し派遣された代表部としての地位を喪失するので、両国間に正常の外交領事関係設定されるまで臨時に、日本政府に同代表部に対し政府機関としての地位を認め、且つ同代表部およびその構成員に対し領事館およびその構成員に通例許与されると同じ特権を許与されるならば幸甚と存ずる。   大韓民国政府は、在韓日本政府代表部に対し相互主義により前記代表部に与えられると同じ地位及び特権を認めることを諒解する。」   一九五二年四月二十八日 以上でございます。
  98. 石橋政嗣

    石橋委員 あとで資料を出していただいて私は詳しく検討したいと思いますが、いまお聞きする中でも非常におかしな問題が出てきていると思うのです。というのは、正規に外交関係、領事関係成立するまでの間、臨時にこれを代行することを認めるというのが一つの柱ですね。もう一つの柱は、相互主義の原則に基づいて、同様の働きを持つものを韓国においても日本の機関として認めろというのが、もう一つの柱になっていると思います。あとのほうが守られてないということはお認めになるでしょうね、外務大臣
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これが実行に移されていなかった事情につきましては、後宮アジア局長から申し上げます。
  100. 石橋政嗣

    石橋委員 私は事実を聞いているのです。この口上書で確認されました後段の部分について、韓国側は実行しておらない、このことはお認めになりますねと聞いているのです。
  101. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御指摘のごとく、当時すぐに向こうが相互主義に基づいて当方の在外事務所を認めるに至らなかったわけであります。朝鮮事変等の問題もございまして延び延びになっておりましたが、今般六月二十二日の条約調印を機会に、この市外事務所が開設されるに至ったわけであります。
  102. 石橋政嗣

    石橋委員 平和条約発効の日にこの口上書が交換されているのです。ことしの六月二十二日に調印されてから認められました。何年たっているのですか。それが実行されたというのですか。私はアメリカに対してのみ追随しているのかと思ったら、韓国にまで追随しているじゃないですか。日本当然主張しなくちゃならない面、国際法、慣例から言っても、いまの口上書から言っても、当然やらなくてはならないことを韓国はやってない。そんな口上書が何の値打ちがありますか。一片の紙きれになっているじゃないですか。こんなだらしない外交をやっているから、だからこそ今度の日韓条約でも全く日本側の自主性が失われるのですよ。  それからいま一つの、正規に外交関係、領事関係が確立するまでの間臨時にやることを認めるということが、何でその国を承認したことになりますか。こんな悪例を残していいものですか。こういうばかなことをやっておったのでは、これは話になりませんですよ。いま、いろいろな点で、管轄権の問題その他で日本韓国の間に争いがある。解釈の相違がある。いままでのあなた方の姿勢から見ても、今後どんどんどんどん韓国側の言い分が通っていく可能性が十分に出てまいりますよ。いままでにおいてすらそんな姿勢ですから。こういうことは単なる手続上の問題でも何でもございません。少なくとも国を承認するかしないか、法律的にいつからその国を承認したことになるのか、これは外交の基本です。それを一片の紙きれで一国を承認したことになるなどとよくも私は言えたものだと思う。しかもその紙きれが、相手側によって守られてもおらぬ。それなのに、日本側は守られてないことを追及するどころか、この相手によって無視された口上書によって、相手の国を承認したことになる、黙示の承認である、こんなばかなことがどうして許されますか。私がこれは承認できないだけではありません。ほんとうに血の通った日本国民は、みんな承認できませんよ、こんな態度では。しかもこのことは、私がこれから質問することに重大な関連を持ってまいります。しかし関連質問の申し出がありますから、しばらくの間譲りたいと思います。
  103. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。岡田春夫君。簡単に願います。
  104. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連質問からです、一つだけ伺ってまいりますが、いまの口上書の問題です。  口上書の問題をいま朗読を聞いておっただけですから、正確に検討する機会はございませんけれども、およそ外交問題というのは、外交関係設定するということは、言うまでもなく、相互主義の原則に基づいて外交関係設定されなければならないのは言うまでもないことです。そこでその文面の中においても、相互主義の原則に基づいて、日本は同時にいわゆる韓国の中に、在日韓国代表部と相応する代表部を設置しなければならないという、そのような文面が口上書にあったわけですが、この事実関係を見ました場合、先ほどからお話のありましたように、相互主義の原則に基づいて在韓日本代表部というものは設置されなかった、この事実はお認めになると思うのですが、外交関係の基本原則であるその法的関係設定する基本的な点が実行されない口上書というものが、はたして法的に有効であるものかどうか、この点についてひとつ問題が出てくると思います。第二の点は、この口上書がそれでは外交上法的な関係設定したものであるのかどうか、この点が第二の問題として出てくるわけであります。  まず、この二つの点にお答えいただきまして、その答弁の結果においては新たな問題が出てまいりますので、その二つの点についての御答弁を願いたいと思います。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交関係の正常化と国家の承認とは、これは区別して取り扱われております。でありますから、正常な外交関係設定される以前におきましても、国家と国家の承認行為というのはあり得る、さような解釈であります。  それから口上書でございますが、もちろんこれは、向こうに約束を守る義務があるわけでありますが、実際問題として、その間に朝鮮事変その他両国の関係がなかなかややこしいものがございましたので、今日までその約束が守られておらなかったことはまことに遺憾でございます。かような意味からいっても、早く正規の関係設定しなければならぬ、かように考えるわけであります。
  106. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではこれは法律関係として重要でございますから、もう一点だけ伺って関連質問を終えたいと思いますが、ただいまの答弁を伺っておりますと、国家の承認というものは国交の問題とは別である。したがって、その答弁から考えた場合、口上書に基づくところの外交関係の問題は、国家の承認とは無関係の問題である。そして先ほどから答弁としては、国家の承認はサンフランシスコ条約の発効によって黙示的に承認をされる、この答弁になってまいるわけでございますから、その黙示的承認の根拠として口上書を出すということは、何ら有効なる法的根拠をなすものではない、この点は明確である。あくまでも政府の見解は黙示承認であるということが明らかに立証されただけであって、口上書の提出によってはその国家の承認を認めたことにはならないのだということになるのだと思いますが、この点はどうですか。これが第一点。  第二の点は、私の質問にあなた答えておらないのです。口上書の中に規定する相互主義の原則が貫徹されておらない場合、その口上書それ自体が無効ではないかということを言っておる。あなたはその点について答えておらぬじゃないですか。口上書の内容において相互主義の原則は貫徹されておらない。それならば、その口上書それ自体が無効であるからしたがって、在日韓国代表部を設置するということ自体は、口上書に基づいてあらわれるものではない。これは先ほどから石橋君の言われるとおりに、そのまま居すわりの状態が続けられているということ以外にはないということです。それ以外に法的な解釈はできないわけです。こういう点について、関連ですからこれ以上は私質問しませんけれども、明確に御答弁願いたい。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 口上書が承認行為にどういうつながりを持つかということにつきましての法律上の解釈は、条約局長から申し上げますが、相互主義が実行されないということは、要するに、その口上書が無効の口上書であるということになるかというお話でございますが、これはいろいろな関係から、その約束が実行されない状況のままに推移したということでありまして、口上書そのものがなかったと同様になるというようなことは考えておりません。
  108. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 政府承認と外交関係設定は別のことだということは、先ほど外務大臣からお答えしたとおりでございますが、この口上書には、外交関係設定されるまでこうこうする、外交関係を開設したいという意思が明示されておるわけでございまして、これが承認の意思を表明するものとして十分であることは明らかであると思います。ただあなたの国を承認するという表現を端的にとった場合だけを、従来国際法上明示の承認と申しておりまして、いまみたような間接的な表現をとっております場合は、従来用語上黙示の承認と呼ぶことになっているわけでございます。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 いま藤崎条約局長答弁を伺うと、非常にあいまいです。あなたもただいま言われたように、慣例上と言ってごまかされておる。国交の正常化が行なわれるまでという文面があったところで、あなたの論理をもってするならば、その口上書の交換というものが行なわれるということは、同時にこれは明示の承認を与えたということにならなければ、その内容がどうあろうとあなたの論理、法的な関係としては、それはそのような結論が出てこないはずです。そうすれば先ほど外務大臣の言っている黙示の承認と相反する結果があらわれる。しかもその口上書は、サンフランシスコ条約の効力の発生した同日にそれが交換されているということになれば、なおさらこれは明示上の承認といわざるを得ないのではないか。法的な関係としてはその点は当然そのようになってくると思いますが、これは法解釈の問題です。  それから第二の点は、依然として答弁が明確でありません。果たすべき両国間の相互主義の原則に基づく権利義務の関係設定をされることが、口上書として両国間に交換された。ところが、その相手国においてこれを実行しないという場合においては、その口上書は形式的に提出いたしましても、これは法的な効果を持たないといわざるを得ないのです。その点が法的な効果があるということならば、その根拠を法的に明らかにしてもらいたい。たとえば、あなたと私との間に、百万円を渡しますそのかわりあなたが百万円に相当する品物をこちらによこしますという約束をしたとする。ところが、私は百万円を渡したが、あなたは百万円に相当する品物をよこさなかった。よこさなかった場合においても、その契約というものは成立しますか。成立しないじゃないか。成立しないということがこれで明らかじゃありませんか。口上書においても当然じゃありませんか。それはその口上書が有効であるということにはならないのです。法的関係について、私、関連ですから、これ以上言いません。この二つの点を明確にしておいてください。
  110. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 黙示の承認、明示の承認といいましても、効果は同じことでありまして、それほどやかましく言う必要はないかと思いますが、従来の国際法の教科書でございますと、どうもそういうのは黙示の承認ということになっておる。私も実は岡田先生と同じように、そういうのは明示と言ってもいいのではないかと思いますけれども、従来の国際法の学者の用語例に従って申しておるにすぎません。  なお、承認は、これはまた国際法の講釈をするようで申しわけありませんが、一方行為でございまして、あの口上書を発出したときに、日本政府は明らかに承認の意思を表明したわけでございます。その後外交関係がどういうふうに進んだかということとその意思の表明とは別個の問題でございます。
  111. 石橋政嗣

    石橋委員 とても私たちが納得のできるような答弁ではないわけです。何度も申し上げておりますように、一国の承認というものは非常に重大な問題です。たとえば、いま国際連合の中で最大の関心事は何かということがあげられるならば、中国の代表権の回復の問題だということになる。日本の外交上で何が一番重要かといえば、やはり中国をどうするか、国として認めるか認めないか、非常に重要な要素を持っております。とにかく、一国の承認というものは、簡単に片づけられるような行為ではないのです。それを、一片の口上書で国を承認したことになります、こんな慣例をつくったら、私はたいへんなことになると思います。しかもその口上書は守られておらない。相手の側から無視されておる口上書、これにどれほどの価値がありましょうか。いま岡田委員からも指摘されたように、当然日本としては破棄するに価する紙きれにすぎません。それを一国承認の根拠にするなどというのはもってのほかだと私は思います。あなた方が黙示の承認ということばを先ほど使われたのは、この平和条約第二条の(a)項で独立を認めた、ここからもう自然に承認行為が出てきたというふうな、そういう見解をとっておられるのではなかろうかという疑いすら出てまいります。その点はいかがですか。
  112. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約の第二条の朝鮮独立、その際には、当然その前提として国家がなくてはならないから、そっちのほうから説明をするということも可能かと思います。私どもは、しかし日本の意思ということが重要なのであって、その意思という点においては、前々から御説明申し上げておりますが、事実上は、日韓交渉を始めてから日本韓国政府承認する意思決定をいたしておったわけでございますが、しかしこの間は外交権がございませんので、事実上の関係にすぎなかった。それが平和条約の発効によって外交権を持つと同時に法律上の関係になった、かように考えるのが一番合理的であろうと考えておるわけでございます。先ほど申し上げました口上書云々の点は、それを示すものは何かという御質問に対して申し上げておるわけでございます。
  113. 石橋政嗣

    石橋委員 非常に大切な点ですから、もう一度確認します。  黙示の承認ということばを使われたので、私は平和条約第二条(a)項において「日本国は、朝鮮独立承認して、済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対するすベての権利、権原及び請求権を放棄する。」こういうふうに確定した、これが効力を持った、もうその時点で自然に承認行為が発生しているのだ、こういう解釈をおとりになっておるからこそ黙示の承認ということばを使われたのではないか、こう聞いておるわけです。
  114. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約第二条を含む平和条約全体の発効によって、そういうように日本大韓民国と従来持っていた関係法律上のものになった、それが承認だということも言えるかと先ほど申したとおりでございます。それを黙示の承認といってもよろしいわけでございますが、もう一つの口上書のほうも、また内容からいって黙示の承認と言うほかないものでございます。ほんとうにおまえの国を承認すると言わなければ、明示の承認とは従来の用語例で言わないから、そう申しておるわけでございます。
  115. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、これは非常に重要な問題が出てまいりました。この第二条の(a)項によって黙示の承認がなされたのだ、口上書のほうは明示の承認というのが、どちらかと言えば正しい表現だ、こういう解釈です。そういう解釈になりますと、第二条の(a)項によって、朝鮮民主主義人民共和国に対しても黙示の承認が与えられたという解釈が成り立ちます。これは間違いないでしょう。
  116. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 承認というのは、その当事国の意思がポイントでございまして、日本の意思は大韓民国承認にあったことは、先ほど来申し上げているように、日韓交渉開始以来はっきりしておるわけでございます。事実関係はそうだが、法律上の関係平和条約の発効によって初めて明らかになった、こういうことを申し上げておるわけでございまして、日本政府は、平和条約以前にも以後にも、朝鮮——何でございますか、民主主義人民共和国なるものを承認する意思を明らかにしたことはございません。
  117. 石橋政嗣

    石橋委員 あなたは、黙示の承認というのは第二条(a)項、これを日本が認め、署名をし、効力の発生したことによって当然大韓民国を黙示的に承認したことになるのだということを認めたのですよ。そうすれば、この時点においてもう一つの、この第二条(a)項の中の「朝鮮」の中には朝鮮民主主義人民共和国というのがある。現実にあったのだ。このほうも黙示の承認を与えたことになるじゃないですか。北のほうも南のほうも平和条約の署名国じゃないですよ。しかも、この第二条(a)項の「朝鮮」の中には両方入るのですよ。片方にだけ黙示の承認を与えたなんということは成り立たぬじゃないですか。それはおかしいですよ。
  118. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 平和条約第二条が朝鮮全体を意味するということは仰せのとおりであります。しかし、それだけで日本の意思を推定するのが間違いなんでございまして、先ほど来申し上げておりますように、日本政府の意思を推定する材料としては、日韓交渉をそれ以前から始めておったこと、それからサンフランシスコ平和条約当事国が、大部分大韓民国承認し、また国連も、国連尊重の趣旨を平和条約に盛られていること、いろいろございましょう。それからその一つとしてまた口上書ということもございましょう。そういうものからいって、日本大韓民国承認の意思はきわめて明らか、特に口上書では明らかでございますが、朝鮮民主主義人民共和国の、政府としての承認を推定せしめる材料は何もないのでございます。先ほども、昨日か一昨日も申し上げましたように、第二条(a)項の朝鮮というのは、第一義的には朝鮮の地域としての独立、分離独立承認するという意味があるわけでございます。
  119. 石橋政嗣

    石橋委員 とても納得のいく答弁ではございません。しかし、昼休みにしてくれというお話でございますから、昼食後に引き続いて質問を継続いたします。
  120. 安藤覺

    安藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時十分再開いたします。なお、休憩中、一時五十分理事会を開きます。   この際、暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  121. 安藤覺

    安藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
  122. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 議事進行について発言をいたします。(発言する者多し)すなわち、この付託……(発言する者多く、聴取不能)来たる四日……(発言する者多く、聴取不能)意見を聞くこととし、その人選は……(発言する者多し)自民党三名、社会党二名、民社党一名……(発言する者多く、聴取不能)
  123. 安藤覺

    安藤委員長 ただいまの動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  124. 安藤覺

    安藤委員長 起立多数。動議は成立いたしました。(拍手)   〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕   〔「委員長、休憩になったのか、休憩したのか」と呼ぶ者あり〕
  125. 安藤覺

    安藤委員長 休憩いたしておりません。   〔「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者あり〕   〔委員長退席、木村(武雄)委員長代理着席〕   〔木村(武雄)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 安藤覺

    安藤委員長 暫時休憩いたします。    午後四時三十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕