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1965-10-28 第50回国会 衆議院 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十月二十八日(木曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 木村 武雄君 理事 園田  直君    理事 長谷川四郎君 理事 福永 一臣君    理事 小林  進君 理事 辻原 弘市君    理事 松本 七郎君 理事 永末 英一君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒舩清十郎君    井原 岸高君       宇野 宗佑君    江崎 真澄君       大平 正芳君    金子 岩三君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       田口長治郎君    田澤 吉郎君       田中 龍夫君    田中 六助君       田村 良平君    中川 俊思君       永田 亮一君    濱野 清吾君       早川  崇君    藤枝 泉介君       本名  武君    増田甲子七君       三原 朝雄君    毛利 松平君       山村治郎君    赤路 友蔵君       石野 久男君    石橋 政嗣君       板川 正吾君    岡田 春夫君       戸叶 里子君    中村 重光君       楢崎弥之助君    野原  覺君       穗積 七郎君    松井  誠君       山中 吾郎君    横路 節雄君       横山 利秋君    春日 一幸君       玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         国 務 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      秦野  章君         防衛政務次官  井村 重雄君         防衛庁参事官  鈴木  昇君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (衛生局長)  高部 益男君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  覺君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (国際金融局長         事務代理)   村井 七郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 村山 松雄君         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         水産庁次長   石田  朗君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川原 英之君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         特許庁長官   倉八  正君         郵政政務次官  亀岡 高夫君         郵 政 技 官         (大臣官房電気         通信監理官)  野口 謙也君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      武田  功君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君     ――――――――――――― 十月二十八日  委員田中榮一君及び山中吾郎辞任につき、そ  の補欠として山村治郎君及び板川正吾君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員板川正吾辞任につき、その補欠として山  中吾郎君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との問の基本関係に関する条  約等の締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国大韓民国との間の漁業に関する協定の  実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域  の設定に関する法律案内閣提出第一号)  財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済  協力に関する日本国大韓民国との間の協定第  二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する  措置に関する法律案内閣提出第二号)  日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び  待遇に関する日本国大韓民国との間の協定の  実施に伴う出入国管理特別法案内閣提出第三  号)      ――――◇―――――
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約等締結について承認を求めるの件、日本国大韓民国との間の漁業に関する協定実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域設定に関する法律案財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等財産権に対する措置に関する法律案日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を行ないます。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 私は、きょうは主として日本国大韓民国との間の基本関係に関する条約日本国に居住する大韓民国国民法的地位及び待遇に関する日本国大韓民国との間の協定財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定中心にしながら、基本的な問題を、まず最初に主として佐藤総理お尋ねをしたいと思っております。  総理は、去る十月十五日、わが党の山本幸一君の質問に答えて、この際「韓国平和状態を招来することによりまして、アジアにおける日本のこれからの第一歩というものが始まるのであります。」と言われている。日韓条約アジアにおける日本のこれからの第一歩が始まるというのは何を意味しているのか、私は総理の真意がよく理解できませんので、この点、ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日韓関係については、申すまでもなく、これによりまして日韓間の親善友好関係善隣友好関係を樹立する、これがおわかりになるだろう、いままであるべき姿のものがきまらないでいた。戦後二十年、隣国との間においても友好関係を樹立することができなかった。しかしながら、この条約の批准を終えれば、初めてただいま申し上げたように隣国友好関係が樹立される。そうして私考えますのに、アジアにおきましていままで関係を持っておりますのは国府、この国民政府とは条約サンフランシスコ条約締結いたしまして友好関係を結んでおる。それ以外にはないのでありまして、日ソ関係鳩山内閣時分に一応共同宣言はいたしておりますが、それ以外にはない。事実上の関係はそれぞれ中共あるいは北朝鮮ともございますけれども、いわゆる外交関係というものは、戦後たいへんアジアにいる日本としては不十分、また、これという外交関係を樹立しておらない、これが私が申し上げた点であります。過去におけるこれらの状態は御承知のとおりであります。このままでほうっておいていいということはだれも考えてない。これからどういうように進めていくかというと、もちろん事柄は簡単ではございませんから、いますぐ、日韓間が始まったから、この次はこれがこうなる、あれがこうなるというように、次々に申し上げるところまではいっておりませんけれども、しかし、少なくともこれからが、これで初めてスタートラインに立ったのだということがいえると思います。またそうなくてはなならい。もっと、アジアにある日本としてアジア外交を具体的に進めていく、そのことが要望されておる。これをひとつ真剣に考えていこう、これが私の気持ちであります。そういう意味合いを、本会議の席におきましてもきわめて簡単な表現をいたしましたので、横路君のただいまのようなお尋ねを受けたのだと、かように思いますが、今日までの状態では、国民皆さまもたいへん御不満だと、かように私は思います。
  5. 横路節雄

    横路委員 佐藤総理、いま第一歩というのは、まさに第一歩であって、これからどっちの方向に向いて歩くのかわからぬというような意味に私は受け取ったわけです。しかし、これは総理みずから経験されているように、青森行きの汽車鹿児島行きの汽車は違うのですから、初め第一歩を踏み出したときに、青森行きに乗れば青森に行ってしまうし、鹿児島行きに乗れば鹿児島に行くのです。そういう意味で、私はもっと具体的に、第一歩を踏み出したというのだから、当然アジアに対する外交というのは一体どういうお考えなのかということを、私はあなたからここでお話ができるかと期待をしていたのです。  そこで私のほうからお尋ねをします。あなたは十月十三日の所信表明において、こう言っています。「最も近い隣国たる韓国との間でさえ平和を達成できなくて、世界の平和を語る資格はありません。」と、言っている。朝鮮は、三十六年間の植民地支配をしたわけです。一体お隣中華人民共和国はどうなんです。二十年にわたって日本侵略を続けてきた国ではありませんか。韓国との間でさえ平和を達成できなくて世界の平和を語る資格がないというならば・お隣中国との間でさえ平和を達成できなくて何で世界の平和を語る資格がありますか。その点、総理は全然そのことを省いていらっしゃるではありませんか。あなたはお忘れになったのでないですか。去年池田さんが病気でおやめになって、あなたが総理大臣になられて、去年の十一月の十日に、あなたは総理大臣として初めての記者会見をした。そのときに、あなたは何と言われたのです。日韓交渉中共問題は、日本の当面する外交基本問題であり、佐藤内閣に課せられた重要問題でもある、こう言っている。三十六年間の植民地支配朝鮮に対して――私は韓国と言っていない、朝鮮に対して平和の回復をするというならば、二十年間侵略をしてきたお隣中国との間に平和の回復をするのは当然でありませんか。去年、あなたはそれだけの意気込みを持って総理大臣になられたではありませんか。今度の衆議院の本会議でも、参議院の本会議でも、何一つとの問題については触れていない。この問題の解決なくして何でアジア平和外交について語ることができますか。その点について総理所信お尋ねします。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず第一にお尋ねになっていらっしゃる、日本がどこへ行くのかわからない、上りの切符を買っているのか、下りの切符を買っているのかわからない、こういうお尋ねであります。しかし私は、ほとんど口をすっぱくするように、私の行き方は平和外交だ、いずれの国とも仲よくするということをほんとうにたびたび申し上げてまいりました。そのいずれの国とも仲よくするという基本には、お互いに相互に独立を尊重し、内政に干渉しないこと、このことは、おそらく皆さま方も、もう耳にたこがよっているから同じことは聞きたくないと言われる、かように私は思っていたのですが、どっちの切符を買うかわからないとおっしゃるから、重ねて申し上げるのです。これはもう間違いのない方向なんです。そこで、ただいま言われますように、とにかくアジアではまだまだ日本国交が始まらない、正常化してない国は幾つもあるということを冒頭に申し上げました。私は、ただいま申し上げるように、平和に徹した外交を進めていく、同時にまた、いずれの国とも仲よくしていく、これが私どもの行き方であります。またそれについては、私どもにも私ども言い分があるから、それは十分聞いていただいて尊重してもらいたい。これが願いであります。  ただいま御指摘になりました中共問題について、これがわが国に重大な関係を持つもの、これは私も百も承知しております。しかしながら、ただいま今日、国際的な問題としてこの問題は簡単には片づき得ない状況にあることも、これは今日までの論議で十分横路君も御承知のはずなんです。われわれがいま努力する方向、それはただいま申し上げるような点にあるのだ、この点を御承知願いたいのであります。私はたいへんはっきりしておる、かように思っておりましたが、意外にもはっきりしてないということでありますので、重ねて同じことを申し上げます。
  7. 横路節雄

    横路委員 いま佐藤総理から、いずれの国とも仲よくする。これはきょう私があなたにお尋ねをしたい一番中心の眼目ですから、いずれゆっくり聞きます。あなたがはたしていずれの国とも仲よくしようという外交方針なのかどうか。しかしあなたは、中華人民共和国との国交回復については努力する方向にある、こう言っている。何もわからない、努力する方向というのは。ことばではだめです。やはりきょう私たちは、この論議を通じて国民の前に私たち考え方も述べ、佐藤内閣責任者である総理考えも述べていただく。それならば、中華人民共和国との国交回復はどういう努力方向にあるのか、どういう努力をするのか、どういう方向に向いて努力をするのか、具体的にひとつお話をしていただきたい。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この中共問題につきましては、私ども国府との間に条約を結んでいて、そうしていわゆる条約上の権利義務のあること、これはもうすでに御承知のことだと思います。また中共とは、事実関係においていわゆる政経分離の形において貿易その他の交流をはかっていく、こういうことで今日まで努力しておることも御承知のとおりであります。しかし、本来の筋の外交関係を樹立しろということが各方面でもいわれておる。しかしながら、今日まで私ども交渉したところでは、中共そのもの中国一つだと言っているし、また国府自身中国一つだ、かように申しております。したがって、ただいま条約締結しており、そして権利義務を有する国府との関係、この関係がある限りにおきましては、今日この中国問題が具体的に政経分離以外の道で道が開けるということはまことに困難な状況だ。そこで、ただいままでのわれわれの努力していることは、この状態はひとり日本重大関心があるばかりでなく、これは国際的な重大問題だ、そして国連加盟の問題をめぐり、また同時に、この国との交渉を持つその観点から、いわゆる国際世論動向をも十分考えていく、そして国連においては、この加盟問題はいわゆる重要問題、重要問題としてこれを取り扱っていくのだ、こういう方向努力しておることは、これは御承知のとおりなんです。私はこれを、いままでのことを申し上げる、それはただいま言われるように、けしからぬことだとか、それは不都合だと言われる、これはまた批判はそれぞれの御自由でありますけれども、ただいま申し上げる私ども努力しておることは、ただいま私が説明するとおりであります。
  9. 横路節雄

    横路委員 あなたはいま、中華人民共和国中国一つだ、台湾国民政府中国一つだ。まことにけっこうです。中国一つです。しかし、あなたはいま何とおっしゃられたかというと、国民政府との間に条約締結している以上は政経分離以外にないのだということは、国交回復について全然考えていないではありませんか。この間、中国国連における代表権問題は、国連総会でフランスの外務大臣が説明をしている、演説をしている。十月十九日アジア調査会においては、イギリス外相スチュアートも、いわゆる中華人民共和国国連代表権を与えるべきだと言っている。ウ・タント事務総長も同様に、中華人民共和国国連代表権を与えるべきだと言っている。あなたは、こういうことに耳をかさないのですか。あなたのおっしゃるいわゆる重要問題としての提案というものは、中華人民共和国国連代表権をあくまでも阻止するということにほかならないではありませんか。何が一体アジア平和外交です。一つも前進してないではありませんか。あなたは何でこういうように世界のこれらの国々に耳を傾けないのです。あなたはせせら笑っているようだけれども、そういう態度ではよくないですよ。もっとやはりわれわれの話をまじめに聞いてもらわなければ困るです。重要問題の提案というのは、これは中華人民共和国国連代表権を阻止する以外の何ものでもないではありませんか。その点についてはどうなんです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 イギリス外務大臣スチュアートさんがアジア調査会で話をしたことを引用されました。私はスチュアートさんにも東京でお目にかかりました。その会談の内容を私は全部は申し上げませんが、また申し上げる自由も持ちませんけれども、私も非常な関心を持っておりますから、英国の外務大臣と直接話をして、そして十分意見の交換をいたしております。
  11. 横路節雄

    横路委員 私が聞いているのは、重要事項の指定というのは、国連に対する中華人民共和国代表権を阻止する以外の何ものでもないではないかと聞いているのですよ。そのことについて答えてもらいたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、これを阻止というようにお考えになるのは、これはいかがかと思いますが、これは重要議題であることはもう間違いのないことなんで、これは国連自身にとりましても、また日本にとりましても、お隣の国が国連に入る、また代表権の問題がこれによってきまるということ、これが重要問題でなくして何が重要問題であるか、かように私は思うのです。
  13. 横路節雄

    横路委員 いや、総理、あなたはことばで言いますよ。あとで言います平和に徹するとか、重要問題だとか、すぐことばで言うが、ことばでは国民は納得しないですよ。それで、私はあなたにお尋ねをしておきますが、総理、いつ中華人民共和国国交回復をなさるのか、外交関係をいつ樹立なさるのか、その点をひとつお聞きしておきます。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国際世論動向を十分見きわめて、しかる後にその問題がきまるわけであります。
  15. 横路節雄

    横路委員 私は、総理、きょうは総理からこの問題についてもう少し、よく総理が言う前向きの姿勢でお話が聞けると期待をしましたが、依然として同じです。非常にわれわれは期待はずれです。そうすると、総理のお考えは、いずれの国とも仲よくするというが、結局は、韓国であるとか台湾国民政府であるとかいう国々との間に、反共体制をつくるということに結果的になるではありませんか。どうですか、その点は。そういうことになるではありませんか、いろいろなことを言うけれども
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、結果的に反共の同盟をつくることになるのではないかと言われたが、少なくとも結果的――これはたいへん議論がむずかしい議論のようですが、私どもは、日韓台三国で共同的にさような話し合いをしてはおりませんし、また、さような一緒の問題は、これはございません。ただいま言われましたのも、おそらくそういう直接な問題はないのだというその点は御了承していらっしゃるから、結果的になるのだと、こういうような意味じゃないかと思いますが、その結果的というのは私に理解できないのです。御承知のように、日米安保条約はございます。また米韓の問題もございます。また米台の問題もある、かように思いますが、日本韓国とこの条約締結しましても、これは平和的なものであって、軍事的な申し合わせはございません。また、台湾との間に、国民政府との間に条約締結しておりますが、これまた平和的のものであります。米国軍事的なものをやったからといって、米国中心にして無理やりに日韓台を結びつけるという、この考え方はやや論理の飛躍があるのじゃないか。これは私が申し上げるまでもなく、この日本は、憲法がございます。また日本自衛隊法もございます。それらの法律に縛られるのであります。したがって、何だか関係がありそうに見えるが、それはそれぞれの国が独自の立場で独自の行き方をきめておるのでありまして、ただいまのように御心配になるようなことはないと、私はかように考えております。
  17. 横路節雄

    横路委員 総理がどういうように強弁されようと、二十三日夜のソウル放送によると、韓国朴大統領は、二十四日の国連デーを迎えるにあたって特別談話を発表し、韓国日韓条約締結とベトナムヘの戦闘部隊の支援でアジアにおける反共体制は強化された、こう言っておる。はっきりしている。だからこのことは、あなたが先ほどいずれの国とも仲よくすると言うのが、現実に中華人民共和国とも国交回復をしている、あるいは朝鮮民主主義人民共和国とも国交回復をしている、そして韓国とも何ともと、こう言うならば、あなたのお話は一応聞けるかもしれないが、それらの国との国交関係は閉ざしておいて、韓国だ、台湾国民政府だ、日本だと、こうなってくるから、いま朴大統領が言っているように、反共体制確立をした――この言い分は前段にございますが、反共軍事体制確立をしたという意味を明確にしているのです。この点をあなたはどう思いますか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が共産主義がきらいだということは、これはもう御承知のとおりだと思います。いわゆる、そこで反共政策をとっているかどうか、これは一つの問題だと思いますが、私はきらいなんです。だから、私は日本の国が共産化されることには絶対に反対する、これだけは銘記していただきたい。しかし、共産主義の国が共産主義の政体、形態を選ぶということ、これはその国の自由だと思いますので、私は、外国についてのそういう点については触れておらないはずなのです。これも私ははっきり申し上げ得るのであります。   いま朴大統領の話を御引用になりましたが、これはどんな話をされたか、それは新聞で伝えておるだけであります。そうして彼が言っておることは、最初反共体制だと言われた。反共体制が、いつの間にか横路君には反共軍事体制だ、かように言われる。この軍事の二字が入るか入らないでたいへん違うと思う。この点は、私、よく気をつけていただきたい。
  19. 横路節雄

    横路委員 総理、いまに反共体制反共軍事体制になるということは、私が一つずつ質問をして積み上げて、あなたにいやおうなしにうんと言わせますから、聞いておいてください。  三木通産大臣おりますね。あなたに一つお聞きをしておきたいのですが、去る八月の二日、商工委員会でわが党の板川委員質問に答えて、吉田書簡に政府は拘束されない、こう答弁されましたね。その点間違いないかどうか、ちょっと答弁してもらいたい。
  20. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田書簡は個人の書簡であって、これは、条約上の取りきめのような拘束力はないと私は考えます。
  21. 横路節雄

    横路委員 いや、ちょっと三木さん、政府は拘束されるかどうかと聞いているのですけれども条約でないことは知っていますよ。
  22. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田書簡に拘束を政府はされません。
  23. 横路節雄

    横路委員 では総理、あなたは二月八日、石橋君の質問にこの場所で、予算委員会の総括質問で答えて、吉田書簡は政府を拘束する、こう言ったのです。あなたは言ったのです。石橋君がおるから、何だったら石橋君に関連してもらっていい。あなたはここで、いま通産大臣から拘束されないと言ったのだから、はっきりしてもらいたい。三木通産大臣のお答えに同意なら同意だと言ってもらいたい。これは非常に大事なことなのだから。あなたははっきりしてもらいたい。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま三木君が言ったように、これは個人の書簡でございます。また私が石橋君に申したのは、道義的に拘束されるということを言った、かように思います。この点は、あるいは速記をもう一度確かめて、その上でお答えしたほうがいいかと思います。
  25. 横路節雄

    横路委員 何ですか、その道義的に拘束されるというのは何ですか。やはり結果は拘束じゃないですか。何ですか、道義的にというのは。拘束されるかされないかということを私は聞いているのです。これは大事なことなのですよ。大事なことだから聞いているのです。だから拘束するのですね。通産大臣はいま拘束されないと言った。あなたは拘束すると言った。(「条約でない」と呼ぶ者あり)知っていますよ、そんなことは。条約でないことも知っていますよ。拘束するかしないかを聞いている。答弁してください。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三木君がただいまお答えしたとおり、私がただいま申し上げたとおり、これは別に間違いはございません。
  27. 横路節雄

    横路委員 それで、あなたは拘束するですね。いまあなたは拘束する、それは間違いないと言っている。通産大臣は拘束しないと言っている。一体こんなことであなた質問が続けられますか。(「じゃよせ」と呼ぶ者あり)何だ、よせとは一体。(「速記録を見ている」と呼び、その他発言する者あり)見られたらいいでしょう。あなたはそう言っている。(「いいよ」と呼ぶ者あり)よくないですよ、あなた。だめです、こういうことを。これは大事な問題なんですから。あなたのほうの党内だって、半分以上心配していますよ。――委員長、ちょっと待ってください。いま私がお待ちをしているのは、この問題は、先ほど総理から、中華人民共和国中国一つだ、台湾国民政府中国一つだ、しかし、台湾国民政府との間に日華平和条約を結んでいる限り、中華人民共和国との間には国交関係、いわゆる外交関係の樹立はできない。しかし政経分離でやっています。こう言っている。そこで八月二日、板川君の質問に答えて三木通産大臣は、吉田書簡は拘束されないと答弁している。それで私は、ここで石橋君が二月の八日――私はちゃんと記録もあるし、その速記だけが省かれているからいま持ってきますが、二月の八日、石橋君の質問に答えて、佐藤総理は拘束されると言った。しかも、いま重ねて道義的に拘束されると言った。それではつじつまが合わない。政経分離だ。通産大臣は拘束されない。だれだって条約でないことは知っている。協定でないことも知っている。私はそういう意味で、この点はここではっきりしなければ――私が言っているのは、やはり日韓条約ということは、総理に言わせれば、最も近い隣の国との間の平和状態ができなければアジアの、平和ができないというならば、二十年間にわたって中国侵略したのだから、まずその間に一歩ずつ積み上げていくという立場からいっても、与党の立場からいっても、保守党内閣の立場からいっても、私は、この吉田書簡については拘束されないということをここで明らかにすべきだし、通産大臣と総理大臣が違っている、こんなことで何でここでやれますか。(「違っちゃいないのだよ」と呼ぶ者あり)違っていますよ。そういうことをここではっきりしなければだめですよ。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この二月八日のところだと思います。その一八ページから一九ページにかけての議論でありまして、ことにそのときは、橋本官房長官が前日しゃべったことについて、私がそれと反対のことを言ったということでいろいろ言われたと思います。ただいま私が申したようなことばは、この速記には出ておりません。やっぱり速記を確かめて返事をすると言ったほうが間違いがなかったように思います。そこで、この中の一九ページの初めに書いてある、その「拘束するというか、これはたいへん片一方のほうのこれに期待をかける、こういう事情であることだけを申しておるのであります。いわゆる自由的な判断でわが国の貿易は遂行するつもりでございますから、これは、しばしば申し上げたとおり、自主的な判断でするということであります。しかし、ただいま御指摘になりました吉田書簡というもの、これにつきまして、国民政府側においてこれに期待をかけておる、こういう事実は、私どもも認めざるを得ない、かように申すわけです。」(「その前のところだ」と呼び、その他発言する者あり)一八ページ「石橋委員 佐藤内閣として拘束されるかと聞いているのです。」「内閣総理大臣 直接ではございませんが、私はやはり拘束されるものだ、かように考えております。」
  29. 横路節雄

    横路委員 そこですよ。そこを聞きたい。いまの総理の御答弁で、総理は長々と、さきの二月八日の予算委員会の会議録の、石橋君の質問の一九ページの上段のところを読んだわけです。しかし、総理が一番大事におっしゃっているのは、一八ページの後段の一番末尾のところに、「私はやはり拘束されるものだ、かように考えております。」、こう言っている。道義的も何もないですよ。そんなこと書いてない。通産大臣は、拘束されない。総理大臣は、拘束される。これは一体どういうのですか。これは一体総理大臣どうなんですか。通産大臣は、いま、あなたのあとですよ、半年たった八月二日に、商工委員会でおやりになり、いまあらためてここで私の質問に答えて、拘束されないと言った。あなたはまた重ねて……。だから、あなたがここで、拘束されないならされないと明確に御答弁になれば、私その次に続きますよ。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま速記を取り上げて読んだわけであります。しかし、私が申し上げることは、いわゆる法律的な拘束、かようなことはございません。先ほど来申し上げるとおりでございます。(発言する者あり)これはあたりまえだと言われますが、あたりまえのことならお聞きにならなくてもいい……。
  31. 横路節雄

    横路委員 あたりまえのことならとは何ですか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください。
  33. 横路節雄

    横路委員 私が質問しているのに、あたりまえのことなら聞かなくてもいいとは何ですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私いま答弁している。答弁しているのだから、ちょっとお待ちなさい。  だから、その点は、これはもう誤解はないだろうと思います、いわゆる法律的な問題でないということはただ、これはいまの一八ページのところだけをお読みになりますと、これは納得がいかない、いかにも三木君と話が食い違っておる、かように御指摘になりますが、十八ページから十九ページ、これはやっぱり全体を通じてそうして結論を出していただく、これが一番大事なことであります。私は、いま横路君が非常に簡単にお尋ねになりますが、こういう事柄はデリケートな問題ですから、やっぱりよく読んでいただいて、全体について御理解をいただくということでないと、誤解を受ける、かように思います。
  35. 横路節雄

    横路委員 総理、私はきょうは総理とじっくりひとつこの日韓条約についての基本的な考え方を時間をかけてお話をしたいと思って、だから、私は日中問題についてもお尋ねをしている。いまあなたは何とおっしゃったのです。あたりまえのことなら聞かなくてもいいと言う。一体何です、そういうことは。あたりまえのことなら聞かなくてもいいなんという失礼なことは、一体何ですか。それはあなたがやじに応答なさるならば、それは別だけれども、いまあなたは私に答えている、そのことだけは慎んでもらいたい。  そこで、私はあなたにお尋ねするのだが、結局この全文は何をおっしゃっているのですか。あなたはこの全文は何をおっしゃりたいのですか。拘束されるということを言うのですか。拘束されないということを言うのですか。結局回りくどいことを言ったってわからないのだから、結論を言ってもらいたい。結論を言ってもらいたいのです。どういうことを言うのですか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この一九ページに言っておることが趣旨でございます。これは御承知のように、吉田書簡は一体有効かどうかというお尋ねに対して、吉田書簡というものは個人の書簡であります。しかし、この手紙にたいへん国府期待をかけておることは事実でありますということを実は申し上げておる。だから、私ども法律的には拘束されない。しかしながら、こういう実情にあることだけは十分了承しておらないと間違いますということを実は申し上げておる。
  37. 安藤覺

    安藤委員長 石橋政嗣君より関連質問が出ております。これを許します。石橋政嗣君
  38. 石橋政嗣

    ○石橋委員 当時の私と総理との質疑応答が問題になっておりますので、若干解明をしておきたいと思うわけです。  私が、本年二月八日に総理お尋ねいたしましたのは、まず最初に官房長官との食い違いをお尋ねしたわけです。というのは、前日七日に橋本官房長官が吉田書簡は全然関知しないという談話を発炎されました。このことについて、総理に、官房長官のこの談話についてどう思うか、こういう賛同をまず最初にしたわけです。それに対して佐藤総理は、関知しないというのはおかしい、関知しないというのは、当時のいろいろな事情をよく知らなかったという意味だったのだと思う、いまではどういう事情でこういう書簡が出てきたかもよくわかっておるから、これを関知しないというのはおかしい、こうおっしゃいました。そこで、総理大臣のおっしゃることと、内閣の番頭である官房長官のおっしゃることとが、一日のうちに食い違って、その間に意見の相違が出てくるというようなことは、たいへんなことじゃないか、一体どちらの言うことがほんとうなのだと言いましたら、官房長官も、私はもうそれこそ総理に忠誠を誓っているのだから、総理のおっしゃるとおりなんだから、私のほうが間違いなんで、ごかんべん願いたいという話だった。そうだったですね。何でしたらもう一度ここで言ってもらってもけっこうです。そこで私は、佐藤総理に、それじゃ一体吉田書簡というものには佐藤内閣として拘束されるのですかどうですかという質問に入ったわけだ。あなたはこれに対して「直接ではございませんが、私はやはり拘束されるものだ、かように考えております。」と断言されました。私は、もう少しここで、総理大臣と内閣のスポークスマンとしての官房長官との意見の不一致、しかも国際的に非常に重要な問題になっておるこういったことについての意見の不一致を徹底的に追及したかったのです。しかし、当時は、ニチボープラントの輸出の問題も、目立造船の輸出の問題も、まだ最終的には中国の態度――非常に強硬ではごさいましたけれども、ケリがついておりませんでした。キャンセルになっておりませんでした。ここで私が問い詰めて、追い詰めて、あなたがもうはっきりと、あらゆる意味でも拘束される、輸銀も使わぬ、キャンセルになってもかまわぬというようなことを言われたのじゃ、日本の利益にもならないし、日中間の今後のことを考えてもプラスにならないと考えて、私は当時は控えたのです。いまはもうキャンセルになりましたから、私は徹底的な論議が必要だと思います。この時点においては、もう失うものはないのです。だから、横路委員からも私は徹底的にやっていただきたいと思うのです。しかも、今後の日韓関係が、日本と北朝鮮との間に同じような問題を提起してくる危険性も出てきているわけです。だから、ぜひ私ははっきりさせていただきたいのですが、拘束されると言ったのは法律的なことではない、これは当然であります。なぜならば、これは条約でも協定でもないから、だから法律的なと言えば、それは拘束されないかもしれません。しかし、一国の総理大臣が拘束されると言っておいて、法律的ではないのだからかまわぬというような逃げ目上はできませんよ。なぜならば、その前をもう一つ読んでください。あなたは、当時におきまして、これは全然政府のやっていることと違う方向ではなかった、とおっしゃっておるのです。吉田さんがふらっと行って、吉田個人でかってにやったのではないと言っているじゃありませんか。いいですか。池田内閣と十分な密接な連携をとって、その承認の上でおやりになったことだ、政府の何ら関知しないことではなかったとおっしゃっておりますよ。あなたもそれを認めておりますよ。政府の裏づけのある行為なんです、吉田さんの行為は。それを単に法律的に根拠がないなどと言うならば、いままでのあなた方の立論は全部くずれます。たとえば共同コミュニケなんかそうです。事前協議の問題などでも、岸・アイゼンハワー共同声明によって確認されておりますからだいじょうぶでございます。そんなことをしょっちゅう言っているじゃありませんか。あれは法律でも条約でも何でもありませんよ。明らかに、しかし両国はこれによって拘束を受けるという言明を再三されております。今度の場合でも、吉田さんが政府と打ち合わせをし――政府と何ら関係なしにやったのならとにかく、ちゃんとあなたもお認めになっているように、政府のやっていることと違う方向ではなかった、打ち合わせの上やっている。それを拘束力があるかないかということは、これは重大な問題です。逃げ口上はやめて、私はここで、やはりきちっとされたほうがいいんじゃないかと思います、今後のためにあらゆる点で。もう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいま速記をいろいろ熟読したのでございますが、その速記で読んだところ、この前申し上げたところ、これをただいま変えるような考え方はございません。それだけはっきり申し上げておきます。
  40. 横路節雄

    横路委員 それでは、三月八日、予算委員会で、また、いま私の質問に関連をして立たれた石橋君の質問に重ねて答弁をして、吉田書簡には拘束される。ところが、その後、六月の四日ですか五日に内閣改造をした。当時は、あなたが答弁したときは、三木通産大臣はあなたの総裁のもとに幹事長であった。それが今度は内閣改造で通産大臣になり、あなたの閣僚になり、八月二日の衆議院の商工委員会において板川委員質問に答えて、吉田書簡には拘束されない。そればかりではない。いまここで言ったばかりだ。一体私たちは、もちろん総理にもお尋ねをします。しかし、担当の国務大臣もいるのだから、担当の国務大臣にもものを聞いているのだ。その担当の国務大臣は吉田書簡には拘束されないと言っている。あなたは拘束すると言っている。何ですか。こういうことでは、これは佐藤内閣の閣内の不統一じゃありませんか。こんなことをどうしてやれますか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん簡単な聞き方をされると、いろいろ誤解を受けるようであります。ただいま三木君も発言を求められておるようでございますから、通産大臣の話もよく聞いていただきたいと思います。
  42. 安藤覺

    安藤委員長 三木通産大臣から発言を求められております。これを許します。三木通産大臣。
  43. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ヨコミツ委員はたいへん食い違いなようにとられておるけれども、私はそうは思わない。この問題は、結局中共貿易に輸銀を使うか使わないかというところに焦点があるわけです。これに対しては、政府が自主的に判断をすると言っている。自主的の判断の中には、いろいろな外交関係には経緯がありますから、そういう経緯なども、自主的の判断の中にこれは当然に入れて判断をするものであります。国会において吉田書簡というものは拘束力があるかないかという、拘束力ということは、きわめて法律的な用語であります。そういう意味で、法的に条約でもなければあるいはまた取りきめでもないのですから、拘束力という形において政府を拘束されるとは私は思っていない。佐藤総理大臣もお考えそのとおりでございます。ただしかし、自主的な判断の場合に、外交関係には道義性も入りましょう、あるいは外交交渉の経緯も入るわけなんです。そういういろいろな経緯というものが自主的な判断のときに要素になることは、これは当然であります。ただ法律的にこれを条約のように考えて、これが永久に拘束力があるというふうには私は考えていない。そういう意味において、この法律的な拘束力という、そういう法的なものはないということを申し上げたので、横路氏の質問がノーかイエスかという、こういう複雑な背景を持ったものに対してノーかイエスか言えと、ことばを省略すると、非常に誤解を生じますが、そういう意味において、総理大臣と私の考え方というものが食い違いがあるとは思わないのであります。(拍手)食い違いはない。
  44. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、私はヨコミツでなしに、ヨコミチですから……。(笑声)三木さん、あなたはいま回りくどいことを言ったけれども、最終的には拘束力がないということを言ったのですよ。あなたは、私が複雑なことを言っていると言うが、イエスかノーかが何が複雑なんです。こんな簡単なことありますか。拘束力があるかないかと聞いているのです。あなたはいまないと言ったじゃないですか。その点だけ言ってもらいたい。その点だけもう一ぺん、私はそう聞いている。拘束力があるかないかということを聞いている。よけいなことを聞いているんじゃないのです。
  45. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは非常に複雑な関係であります。だから、日中関係ども国交回復してないし、だから輸銀を使うか使わぬかということに対して自主的な判断の機会を持ちたいと、こう言っているわけです。そんなに簡単に割り切れるものならば、そういうふうなこともしなくて機械的にやればいいのであります。そういうことでありますから、いまノーかイエスかと、何かこんな複雑な問題を簡単にノーかイエスかと言うことは、これは誤解を生じます。だから私の考え方も、総理大臣ともお話をしましたが、食い違ってはいない。これはやはり条約の取りきめのような拘束力は持っていない。自主的な判断の場合に、いろいろな外交の経緯というものは、自主的判断の要素の中に入ることは当然であって、これを法律的なあるいは条約の取りきめのような拘束力は待たないという考え方は、食い違いは持っていない、
  46. 横路節雄

    横路委員 三木さん、あなたは回りくどいことを言っているが、私は単純に聞いているのです。単純に聞いているのですよ。あなたは拘束力はいまないと言っている。拘束力はない。いま石橋君も言ったように、われわれも言ったように、条約でも協定でもないのだから、これは拘束力はないんですよ。ないんですよ。その点だけははっきりしてもらいたい。拘束力ないといえばないでいいんだ。あとのことは聞いていないんだ。あなたに聞いているのは、そのことを聞いている。
  47. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろとそのことを基礎にして質問を展開されるという意図でしょうから、(笑声)それはそういう意味でありましょうから、その拘束力はないということは、条約上の取りきめのような法的なものに重点を置いた考え方であります。
  48. 横路節雄

    横路委員 三木さん、それじゃ法的な拘束力はない、何があるんだ、何があるんですか、何があるんだね。
  49. 三木武夫

    ○三木国務大臣 輸銀を使う場合の自主的な判断には、いろいろな要素が入ることは当然である。それを拘束力――拘束力ということばが、あまりにも何か法律的な用語に過ぎる。しかし、日本は自主的に判断――輸銀を使うか使わぬかという場合の自主的な判断には、外交交渉にはいろいろな経緯があるのですから、いろいろな経緯なども頭に入れて、あるいは道義性というものも一般的な外交の基盤の中にあるでしょう。そういういろいろな要素を入れて、自主的な判断をする場合にそれが要素に入ることは、これは当然でありますが、そういう法的なあるいは条約上の取りきめのような拘束力は持たないというのがわれわれの考えでございます。
  50. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問を許します。石橋君。
  51. 石橋政嗣

    ○石橋委員 拘束力があるかないかという問題になっているわけですが、三木さんも、佐藤総理の苦境を助けようと思って盛んに苦労しておられるようです。しかし、やはりこれはごまかして通り抜けられる問題ではないと思うのです。法律的には拘束力がない、こうはっきりおっしゃっておられる。そうすると、何かほかの意味で拘束力があるということになるわけですね。そうしますと、それは何だ、ということになるのですよ。何か。吉田さんがプライベートに出された手紙ならば、それこそ何もない。そこに何らかの拘束力のようなものがあるというのは、やはり政府というものと密接な連携を持ってなされた行為である。結局何らかの政府の全権とかなんとかいうような肩書きは持たなかったにしても、とにかく政府と打ち合わせをし、政府の了解を得て出された書簡であるがゆえに、法律的にはないかもしれぬが、道義的にも政治的にも拘束力がある、こういうことになるんじゃないですか、その点いかがです、大臣。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 拘束力と、こう言いますからものものしくなるが、やはり総理の言われるような道義的なものというものは外交の基礎に常になければならぬものでしょう。そういう意味において自主的な判断を加える場合に、いろいろなそういう要素なども判断の基礎になることは当然でしょう。ただ、これが言えることは、吉田書簡というものが何か条約上のような拘束力を持ってはいないんだということであって、これを何か単純な一言か二言かで言ってしまえということは、そのことがかえっていろいろな点で、いろいろ質問をされたりするような場合に誤解を生じますから、それを一口で言えということに無理があるので、われわれが法律的な拘束力がないという意味のその考え方は、こういうものであるということを正直に申し上げておるわけでございます。
  53. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それではお尋ねします。  当時吉田さんは、日本の政府とこの問題について、書簡を出すことについて、あるいはその以前の話し合いをすることについて、密接な連携をとっておられましたか、おられませんでしたか。これは外務大臣でも通産大臣でも……。
  54. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは外務省の純然たる事務の問題ではございませんので、そういう問題について引き継ぎを受けておりません。どういう事情があったかよく存じません。
  55. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この問題を単なる事務というような取り扱い方をされるその感覚がすでに問題です。しかしこの点は、私何で確認しているかというと、総理が認めておられるのです。なぜ総理が認めたかというと、先ほどもちょっと触れましたように、前日に官房長官が吉田書簡は関知しないと、こうやっちゃったわけですね、全然関知しないと。だからわれわれは、当然吉田書簡というようなものは関知しないし、一切の拘束力もないと、こういうふうに理解したわけですよ。そこで総理大臣に確認をいたしたわけです。官房長官そうおっしゃっているが、これは間違いございませんかと言って総理大臣お尋ねしましたら、いや、あの関知しないというのは、当時の事情をよく知らなかったという意味に私はとっております。しかし、それは橋本さんが知らなかったのであって、総理大臣は当時の事情をよく知っております。いまの時点では。よく知っておる以上、これは関知しないとは言えません。そして先ほど申し上げたように、やはり私は拘束されるものだ、かように考えておりますとおっしゃったわけなんですね。拘束されるということがある以上、これは当時吉田さんと政府のしかるべき機関――あるいは内閣総理大臣、池田総理大臣かもしれません。外務大臣、通産大臣、そういうものとの間に十分な連絡があったと考えないことには拘束されるはずはないですよ。拘束されるはずはない。そこでお尋ねしているわけです。  それじゃ、総理大臣に直接お尋ねいたしましょう。当時、吉田さんは台湾に行って、この対中国貿易に輸銀を使うかどうかという問題を中心に話し合いをされることについて日本政府と密接な連携をとっておられたか、特にこの書簡を出すについて連絡をとっておられたかどうか、この点まず確認をしていただきたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねになりますのは、この吉田書簡を出す前に政府と十分の打ち合わせがあったかどうか、こういうお尋ねだと思います。さように聞いておるのですが、それに間違いないでしょうね。――そのお尋ねに対しまして、私はもちろん当時の事情はよく知りません。知りませんけれども、この前お答えいたしましたように、これだけの書簡を出すのでございますから、これは全然関係なしに出しているとは、私はさようには想像しないということでございます。ことに、当時御承知のように、倉敷レイヨンの問題が解決をし、そしてその後のニチボーの問題が議論になっていたといいますか、ニチボーをどういうようにするかという問題になっていた、かように記憶しておりますし、倉敷レイヨンの輸銀を使ってのプラント輸出がすでにできた後、それから後に今度はニチボーの問題が議論になったという当時の状況でございますから、それで古田さんが向こうへ出かけられたというのが当時の吉田書簡の経過であります。これは政府が特にお願いをしたとかあるいは吉田さんの自由意思で行かれたか、そういうところは私は存じませんけれども、いずれにいたしましても吉田さんが出かけられて、国府との関係に一段買われたことだけは、これは事実のように思います。これは吉川さんの個人の立場でおやりになったかどうか、これは当時の事情をもう少し調べなければお答えはできないことだと思います。しかし、私が思いますのに、この前私が石橋君にお答えをしたとおり、このことをただいま私が取り消す、あるいは変える、こういう考え方はございませんので、それだけははっきり申し上げておきます。ただいまのような事実等についてのお尋ねは、これはまた別でございますが……。
  57. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、あなたは事情はわからぬと言う。わかる人がここにいる。――いなくなった。いまここに、まん中に一人いたんだが、これが始まったらいなくなったんだ。だから、この人に聞いてみなければわからぬが、総理外務大臣に聞けば、私は事務の引き継ぎはされていないからわからぬと言う。総理大臣に聞けば、私も当時のいきさつは知らないと言う。あなたはいまそう言った。当時のいきさつは知らない、私は何にも知らない、いまあなたはそう言ったばかりだ。何か訂正なさいますか。当時の事情は知らぬと言っているじゃないか。当時の事情を知らない者が、何で拘束されるということを言っておるのですか。知っているのですか。知っているなら知っていると言えばいい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の事情を知らない、かようにもし言ったとしたら、これは間違いです。詳細を私は知らない。もし、これを言っておらなかったら、これをこの際につけ加えて、詳細を知らないと申し上げておきます。
  59. 横路節雄

    横路委員 それでは、総理大臣お尋ねします。  詳細を知らないけれども概要を知っているというのだから、概要を明らかにしてもらいたい。どういうことになっておるのです。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時は中共へ帰るという事件がありましたね。あれは周鴻慶事件、そういう問題がありまして、国府との関係は非常なむずかしい状況になっておった。これは、お尋ねになりました石橋君はよく御承知だろうと思います。そういうところで、吉田さんが特派大使でお出かけになったことは承知しておる。特派大使であります。だから、そういう意味におきまして、ただいまのようなことが想像されるということを私は言っておるのです。詳細は私は知らないけれども、ただいま申し上げるように概要は知っておる。これは特派大使で出かけられた、そして、その方が書簡を出される、それが、いわゆる政府と全然打ち合わせなしでというようにはどうも考えませんというような想像を私がしておる。この点は御了承いただけるだろうと思います。
  61. 横路節雄

    横路委員 いまの総理大臣ことばは何ですか。想像される。先ほどは詳細は知らない。私はあなたが知らないと言うから聞いたら、私は詳細は知らない。それなら概要は知っているかと聞いたら、私は概要を知っているからお答えすると言った。いまあなたが言ったのは、概要ではなくて想像だと言う。想像と知っていることとは違いますよ、総理大臣。そんなことで国民がわかりますか。それはほんとうに困ったものですよ。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも横路君とは話がしにくいのですが、あなたは弁護士ですから、さすがにことばを一々つかまえて文句を言われるようですが、私が大体知っておるというのは、特派大使で行かれたということを知っておる。これは特派大使であったことは間違いないのです。特派大使が出かける場合においては、政府といろいろ交渉を持つことは当然でございますから、そこで、ただいまのようなことが想像されると言った。ただ、どうもいまのように、最初から全部が想像のように言われては困りますから、この点は訂正さしていただきたいと思います。全部ではありません。
  63. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、私は重ねてあなたに聞いておきますよ。委員会の質問なり答弁というのは、われわれ国会議員としてはお互いに責任があり、大臣としても責任があるのです。あなたは、八月二日、商工委員会で板川君の質問に答えて、こう言っているんですよ。「吉田書簡、吉田書簡と、こう言い、中国側も言いますけれども、しかし、個人の書簡がずっと政府の政策を拘束するということは考えられないことで、吉田書簡をいまごろ持ち出して、これはどうのこうのとあまり言わないほうがいい。われわれもそれに拘束を受けないで考える。」はっきり言っておるんだ、あなたは。当時の商工委員板川君がおる。あなたはこういう大事なことを言っている。だから、あなたのそのときの商工委員会での答弁は新聞の第一面のトップを飾っておるじゃないですか。
  64. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま横路君が読み上げられたように私は考えておるわけでございます。いつまでも個人の書簡が永久に拘束するものではない。やはり自主的に判断をするということが適当だと考えておるわけでございます。
  65. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問の要求が出ております。これを許します。板川正吾君。
  66. 板川正吾

    板川委員 私の八月二日の商工委員会における通産大臣に対する質問で、当面解釈が問題になっておりますから、その間の事情を一言説明をして、通産大臣にひとつはっきりとした答弁を願いたいと思うのであります。  私が質問したのは、通産大臣の新任のあいさつの中に、イデオロギーは別として、共産圏との貿易を拡大するということを言明しておったのであります。そこで、私が過去の吉田書簡の経過をるる説明いたしております。その説明の前提になりましたのは、官房長官がかつて言った、吉田書簡は関知せずという説明があり、その後総理が予算委員会において、これは関知せずというのはいかぬという否定がありました。しかし、七月の参議院選挙が終わりまして佐藤内閣は改造し、新内閣が発足したわけであります。そして三木通産大臣は、幹事長として過去の事情をよく承知しておるはずでであります。その幹事長として過去の実態をよく知っておる三木さんが通産大臣になられて、イデオロギーは別として共産圏との貿易を拡大すると言うのだから、そうであるならば、一体吉田書簡はどういうふうに扱うのか、こういう質問をしたのであります。ところがこれに対して三木通産大臣は、吉田書簡には拘束されないという、ただいま横路委員が言ったとおりの発言をしたのであります。また、吉田書簡は、外務大臣は知らぬというようなお話であります。しかし吉田書簡の内容は外務省の金庫の中にあるはずじゃありませんか。この内容は、三十九年五月二日、中国向けプラント輸出については民間べースでやるように検討すると申しております。とにかく吉田書簡の内容は外務省の金庫の中にある。その控えがあるのに外務大臣が知らぬという理屈はない、こう思うのであります。その後、政府の統一見解に従って、あなたは法律的には拘束されないがと言う。私が質問したのは、法律的に拘束されるかどうかという質問じゃないんです。実際にこの吉田書簡に拘束されて、ニチボーのプラント輸出を停止し、日立造船の輸出を停止したじゃないか、だから、このイデオロギーに拘束されないで、今後共産圏貿易を拡大するというならば、当然これは新内閣の新しい通産大臣として吉田書簡に拘束をされないんじゃないか、されるのか、されないのかということを聞いたときに、されないということを言明したんじゃないですか。どうなんです。
  67. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま横路君が私の板川君に対する答弁をお読みになったが、私が言っておることは、一個人の手紙が将来にわたって政府の政策を拘来するものとは考えておりません。輸銀を使うか使おぬかということは、自主的な判断をするんだという趣旨の答弁をしているわけなんです。私はいまでもそう考えておる。もしそんなに拘束するならば、これは条約協定にしなければならぬわけです。そういう意味において、政府の政策を拘束するものとは思わない、こう答えたわけでございます。また、予算委員会においてもこの問題に対して質問がありましたので、さらに私の考え方を詳細に社会党の質問に答えた場面もございます。したがって、今日においてもその考え方は、私は変わっておりません。
  68. 辻原弘市

    ○辻原委員 議事の取り扱いについて発言をいたしたいと思います。  先ほどからの横路委員から出されました吉田書簡の取り扱いをめぐっての政府の答弁については、だんだん質疑応答がかわされましたが、質疑応答がかわされるにつれてますます総理、通産大臣、また外務大臣のお答えが、いまここにはありませんけれども、明瞭に食い違っていることが明らかになってきております。この事態でことばの端々のやりとりをいたしましても、これだけ重要な問題についての政府の基本的態度というものを明確にすることは、私は不可能だと思う。したがってこの際、去る二月八日総理が答弁せられておる、拘束をいたします、通産大臣が商工委員会において拘束はされません一いずれが政府の真意であるのか、単なるそのつどそのつどの答弁ではなくて、政府の統一見解として、文書によって当委員会に提示されんことを私は要求いたしたいと思います。したがって、この取り扱いは、ここで脚時休憩をいたしまして、政府の答弁が文書によって提示された後、われわれは議事を進行いたしたいと思いますので、委員長においてそのように取り扱われんことを、要求いたします。   〔発言する者あり〕
  69. 安藤覺

    安藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分体悪      ――――◇―――――    午後一時十六分開議
  70. 安藤覺

    安藤委員長 休憩前に引き続き会議を開き、質疑を続行いたします。  この際、通商産業大臣から発言を求めておりますので、これを許します。三木通産大臣。
  71. 三木武夫

    ○三木国務大臣 先般の横路君の御質問に対してお答えをします。  吉田書簡は両国間の取りきめのようなものではないが、吉田書簡が出たという当時の経緯を無視するわけにはいかない。自主的な判断をする場合には、こういういきさつ等も判断の材料になることは当然であると考えております。
  72. 横路節雄

    横路委員 いまの問題について私から一言だけ申し上げておきます。いまの通産大臣の御答弁、政府の統一見解は、吉田書簡は両国間の取りきめのようなものではないが、吉田書簡が出たという当時の経緯を無視するわけにはいかない。だから拘束されているということになる。自主的判断する場合には、このいきさつ等も判断の材料になることは当然であると考えている。この文章からすれば、当然私はこの問題は拘束されるということになって、これは通産大臣が去る八月二日商工委員会で答弁されているのとは、全く違います。これは総理が答弁されている趣旨です。これは二月の八日に石橋君に答弁されている趣旨と大同小異のものです。この点だけ私は申し上げておきますが、いずれこの問題については、さらに石橋委員戸叶委員からも御指摘があろうと思いますから次に移りたいと思います。ただ私はこの点は疑問に思うので、きょうは疑問として投げかけておきますが、三十九年二月二十三日、朝日新聞は朝刊の第一面のトップに、「吉田氏きょう訪台」「池田首相の親書携え」「元首相吉田茂氏は二十三日午前十時二十分羽田発の日航機で台湾訪問に出塔する。吉田氏には自民党前代議士北沢直吉氏、麻生和子夫人、御巫外務省賠償部調整課長らが随行する。吉田氏は政府派遣の特使としてではなく、個人の資格で訪台、池田首相から蒋介石総統にあてた親書を携行する。」こういうように新聞記事は報じているのでありまして、したがって、先ほど総理から私に対するいろんな経緯の中の答弁で、吉田茂氏は特派大使である、こういうお話ございましたが、この点については当時の新聞の記録はこういうようになっているわけであります。この点については、私は先ほど申し上げましたように、戸叶委員や石橋委員から重ねてそれぞれ御本人が、この日韓条約について質問に立たれました場合にさらに追及すると思いますので、私は他に多くの問題を予定をしておりますので、次に移りたいと思います。ただ通産大臣には私からはなはだ遺憾であるということだけは申し上げておきます。この文章は、通産大臣が八月三日に御答弁になったいわゆる拘束されないというものとは全く性質が違うように私は解釈をいたします。この点は二月八日の佐藤総理の石橋委員に対する答弁がそのままこの中に生きている。通産大臣は八月二日、さらに八月の第四十九臨時国会における予算委員会で加藤委員その他に同様の趣旨の答弁をしていますが、そういう点は私ははなはだ遺憾であるという点だけを申し上げて、次に移ります。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘がありましたが、先ほど私が吉田茂、政府の特派大使だと、かように申しました。私もやや疑問を持ってその後外務省で調べました。ただいま新聞に書いてあるとおりこれは特派大使ではない、そのとおりでございますので、ただいま御指摘がありましたのを待つまでもなく、私が申し上げるべきだった、かように思って発言をしたわけであります。
  74. 横路節雄

    横路委員 いま総理からお話がございましたから、この質問はやめておこうと思ったのですが、一つだけお話をしておきます。先ほど外務大臣は、私は事務引き継ぎは何もしてないから知りません、こういうあいそうつけない話をされました。総理もお聞きのとおりであります。しかし二月十六日の衆議院の予算委員会、この場所で、戸叶委員質問に答えて椎名外務大臣は、「行政上の政策に合致いたしますので、その内容を政府が是認いたしましたので、それだけの効果が出てくるわけでございます。」――そうすると、先ほど、私は内容は知りません、何も引き継ぎをしておりません、何も知りません、だからお答えできません、こう言った。ところが二月十六日の衆議院予算委員会の記録を調べてみると、「その内容が行政上の政策に合致いたしますので、その内容を政府が是認いたしましたので、」となっている。これもほんとうからいえば、先ほど椎名大臣のああいう答弁も私たちは非常に遺憾だと思っておったやさきに、さらに速記録によるとこういう点が出てきたのだから、本来からいえば重ねて質問したいところですけれども、次に移りたいと思います。この点は外務大臣、あとであなた、私は引き継ぎはしてない、何にも知らない、だからお答えはできないなどというああいうことは、他の委員によってさらに究明されることだけははっきりしておきます。  次に私は総理お尋ねをいたしたいのでございますが、それは総理が外人記者クラブでお話をしている点等がございまして、その点について私はひとつそれとの関連でお話をしたい。たいへんけっこうなことをおっしゃっているわけです。佐藤総理は二十五日夜東京丸の内の外人記者クラブで開かれた同クラブ設立二十周年記念夕食会に出て、日韓条約中心外交問題について演説をした。その中で――総理のおっしゃったことばを引用いたします。「一部には日韓条約朝鮮の統一を阻害するという論議をする向きもあるが、私は、日韓国交正常化こそ将来の朝鮮民族の平和的統一の基盤になると確信している。」こうおっしゃっていますから、そこでこの問題を中心に聞きたいと思っています。  カイロ宣言を受けましてポツダム宣言を降伏文書によって受諾して、そのことによって日本朝鮮を独立国として承認することを約束した。さらに平和条約第四条、第二条で朝鮮の独立を承認する、したがって日本の義務をしょっている相手は朝鮮であって、大韓民国ではない。おわかりでしょうが……。カイロ宣言を受けてポツダム宣言を受諾する、それを降伏文書で受諾した、それは朝鮮の独立だ、平和条約第二条で朝鮮の独立をわれわれは承認した、だからわれわれは、いわゆる朝鮮の独立を承認するのであって、大韓民国という問題ではない、朝鮮全体の問題なんだ、私はそう思うのです。この点はいかがでございますか。カイロ宣言からポツダム宣言、降伏文書、平和条約というその関連からいけば、この精神はどうなんでし、占うか、総理大臣お尋ねします。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 朝鮮全体の独立だ、かように私も理解しております。
  76. 横路節雄

    横路委員 朝鮮全体の独立をポツダム宣言で受諾し、降伏文書でさらにそれを調印し、平和条約第二条でそれをわれわれが承認をしている。なぜ朝鮮が南北に分断されたという不幸な状態になったと総理はお考えになられますか。その点ひとつあらためて総理の見解をお尋ねしたい。なぜ朝鮮が南北に分断されているのか、その原因はどこにあるのか、それをひとつ総理の見解をお尋ねしたいと思うのです。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点は、アメリカとソ連の考え方が違っていたと思う。そのためにそれが国連に持ち込まれたという経過になっていると思います。御承知のようにGHQ、その中に朝鮮の代表というものがいたわけなんで、それが一つでなかった、一つにまとまることができなかった、それが二つの国が意見が対立していた、こういうことでございます。
  78. 横路節雄

    横路委員 総理、いまのお答えでは、なぜ南北朝鮮が分断されたのかという点については、どうも私は総理の見解というものは明らかでないと思うのです。もう一度お尋ねをしたいのです。このことは総理が、先ほど申し上げました外人記者クラブでの南北朝鮮の平和的統一の問題とからんできますから、そこで私は、総理は南北朝鮮というものはなぜ分断されているというように考えていられるのか、その原因が究明されてこなければ方針が立たないわけでしょう、だからその原因を聞いているわけです。総理ですよ。総理でなければ答えられないです。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 原因はいま申したとおりだと思います。
  80. 横路節雄

    横路委員 何ですか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのソ連とアメリカと意見が違った、これはそれぞれが支持しているものがあったということでございます。これがいまのように二つのものが出てきたその原因だと思う。しかしそれを私がまとめようとする――その考え方で私ども国連中心主義でものごとをきめたいと思っておりますから、国連の決議、またそれを毎年確認しているその決議を尊重して、その関係で処理していきたい、しかもただいまの南北統一の問題になれば、国連が支持している方法、これを大韓民国は引き受けている、承認している、しかし北は不幸にしてこれを引き受けておらない、ここに問題がある、かように私は思っております。
  82. 横路節雄

    横路委員 これはもう私が申し上げるまでもなく、総理、当初はアメリカとソ連の中で意見が一致をいたしまして、一九四五年十二月二十七日モスクワにおいてアメリカ、イギリス、ソ連の三国の署名によるモスクワ宣言というものがあったわけです。このときは明らかに朝鮮の統一政府ができるようになっていた。それがこわれたのはどこに原因があるかというと、どちらに原因があるかといえば、それはアメリカ側にあるわけですね。当時の国際情勢のいろいろな推移もございましょうが、アメリカ側に大きな責任がある。この問題を将来とも考えておいていただかなければならないというように私は思うわけです。私はほんとうは総理ともっとこの問題について、なぜ南北朝鮮が分断をしたのかということについて議論をいたしたいと思いますが、これらの問題については、なお石野委員からもさらに詳細に御質問があろうかと思うのですが、私は、総理お尋ねしたいのは、先ほども総理もおっしゃっているように、ポツダム宣言を受諾した。われわれはサンフランシスコ条約を批准している。そうすると、それは朝鮮の独立である。したがって私たちがやるべきことは、南北朝鮮の統一に寄与すべきであって、いやしくも、わが国のやることが南北朝鮮の統一を阻害するものであってはならないと思うのです。この点は、総理はいかがに思いますか。われわれがやることは、ポツダム宣言、それを受諾したサンフランシスコ平和条約、それは朝鮮の独立だ、それは朝鮮という一つの国だ、だから総理が言っているように、南北朝鮮の統一、それにわれわれが寄与する方向に向かっていかなければならぬ。いやしくも南北朝鮮の統一を阻害するようなものであってはならないと思うのですが、この点私は総理所信を聞いておきたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横路君の御指摘のとおり、これは朝鮮の独立、これに寄与する、こういうことでなければならぬ、その原則は私も同じでございます。そこで私ども国連方式を採用した、かように申しておるのでございます。
  84. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、今日朝鮮の統一を阻害しているものは何であると総理はお考えになりますか。この点どうも私この間小坂さんの質問を聞いておったのですが、総理の答弁がはっきりいたしませんし、本会議で同様の問題に触れたのですが、総理の見解もどうもはっきりしていないように思いますので、きょうはぜひ、ひとつ朝鮮の統一を阻害しているものは何なのか、何が朝鮮の統一を阻害しているのかということについてお聞かせをいただきたい。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直接には、いわゆる国連方式を韓国承認した。北はこれを承認しない。いわゆる国連方式による南北統一云々でございますが、これを承認した国と承認しないところとがある。これが直接の原因だと思います。さらにまた、これをもっと別な見方をするならば、国連の権威を認めた国と、また国連の権威を認めない国とその違いがある、かように私は思います。同時に、これはもっと別な表現をすれば、今日の国際情勢そのものが東西の冷戦、そのもとに平和が保たれておるというか秩序が保たれておる、そういうところにも原因するだろう、かように私は思います。
  86. 横路節雄

    横路委員 私はいまの総理の御答弁は、一応総理の見解としてお聞きをしておきたいと思います。この間小坂さんの質問に答えて総理は何と言っておるかというと、北朝鮮からの共産主義国家による統一、こういうことの提唱があって、それが障害になっておるのだとあなたはお答えになった。さすが小坂さんもあわてて、それは小坂さんはそう思わなかったのだろうと思うのです。それで、さすが総理のその答弁にはちょっと閉口したようでございまして、きょうはそうおっしゃるかと思っておったらそうではない。総理、そう言っておりますよ。本会議でも言っておりますよ。小坂さんにも言っておりますよ。北鮮から北鮮の共産主義社会国家による統一を提唱されておる、それが障害なんだ、それが大きな原因だと言っておるが、きょうはあなたは国連というワクの中に入って、韓国国連方式による統一、北鮮は国連の権威を認めないという、あなたはそう言っておるのです。――いや違うならば、やはり誤解がありますから、違うとはっきりここで言っていただきたい。その点はみんな聞いておる。私ばかりではない。全部聞いておりますから、非常に重要な点です。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 発言の機会を与えられたから、ただいま私の考え方を申し上げます。  本会議並びにこの席で過般来問題になっておりますのは武力北進ということばでございます。武力北進、南から武力で北進するということで、それを皆さん方が盛んに言っておられる。しかし私は武力北進ということばは最近聞きません。あまり私が聞かないことばでございますということを申し、それよりも私どもが耳にするのは、共産主義による南北統一、そういうことばでございます。だからそういう意味では、共産勢力の南への浸透というか、そういうことのほうが心配ではないか、かようなことを私は申したように思っております。
  88. 横路節雄

    横路委員 総理はいま非常に大事なことをおっしゃったわけです。自分は武力北進ということは聞かない、しかし私の耳にするのは共産主義による統一だという。そんなことをだれが言っておるのでしょうか。だれも言っていないではありませんか。(佐藤内閣総理大臣「皆さんが言っておる」と呼ぶ)いや、皆さんと言うが、だれも言っていない。私は、それはぜひひとつ総理に聞いてもらわなければならぬ。総理が平和的統一を推進すると言うから、総理に聞いてもらわなければならぬ。  一九六〇年八月十五日解放十五周年慶祝大会における金日成首相の報告演説抜粋、南北朝鮮連邦制に関する提案というのがございまして、ここには南北朝鮮の連邦制の実現、当分の間は南北朝鮮の現在の政治制度をそのままに据え置き、朝鮮民主主義人民共和国政府と大韓民国政府の独自の活動、同町に二つの代表からなる最高民族委員会を組織し、おもに南北朝鮮経済、文化の発展を統一的に調整する方法でこれを実施しようというものである。どこに言っているでしょうか。さらに一九六二年十月二十三日、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第二期第一回会議における金日成報告、朝鮮民主主義人民共和国政府の当面の課題において再び連邦制の提案、一、外国軍隊の撤退、二、南北平和協定締結、軍縮、三、経済、文化の交流、自立経済の建設、四、連邦制度の実施、しかもここで言っておることは、南北双方の社会、政治制度の相互承認、相互内政不干渉、朝鮮民主主義人民共和国政府と大韓民国政府の代表からなる最高民族委員会を設置して、民族共同の関心事である文化発展、産業開発、外交などの共通問題を一共同で処理をする、そして、やがては民主主義原則に基づく全朝鮮自由選挙による統一的中央政府の樹立と、こう言っておる。一体、私の耳にというのは、総理、それは何の正式の報告なんでしょうか。何の報告ですか、私の耳にというのは。それは、総理が平和的に統一をするとおっしゃるから私は聞いておるのですよ。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん重大な問題でございますから、ただいまのようなお話が出てお尋ねがあったと思いますが、私は、プレスクラブでは、こういう事柄が実際の問題と違っておることを心から希望するというようなことをつけ加えて申しましたけれども、ことしの四月十四日、インドネシアにおける金日成の講演でございます。また十月十日朝鮮労働党創立二十周年慶祝大会における金日成の報告においては、南北統一について、ただいまお話になりました連邦制には触れておりません。北朝鮮の革命基地を強固にし、南朝鮮の革命闘争を支援し、国際革命勢力との連帯強化によって南北統一がなさるべきであると論じておる、かように報じております。
  90. 横路節雄

    横路委員 一九六〇年八月十五日の金日成の提案説明、これは提案なんです。これは実際に提案なんです。一九六二年のこれも提案なんです。さらに停戦協定以降におけるジュネーブ会議提案だってこのワクから出ていないのであります。だから私はそういう点で、総理が私の耳にするのは共産主義による統一だという点については、これから総理が平和的統一をするという場合に、私は大きな誤解、障害が生ずると思うから、その点をお尋ねをしたわけです。  そこで、それならば総理お尋ねしたいのですが、どうしたら平和的統一ができるのか。あなたはここで平和的統一とこう言っている、平和的統一の基礎になると確信しているから、じゃ、どういうようにしたら平和的統一ができるのか、その点についてお尋ねします。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国連というものがただいま国際的な、各国が承認しておるいわゆる平一和機構だ、かように考えております。したがいまして、私ども外交中心にも国連中心主義というものをとっておる。社会党の方もこれには賛成であったと、かように私は記憶いたしております。との国連中心主義から申しますと、国連でいろいろな提案もし、いろいろな決議などもいたしておりますが、その提案を、国連の権威を認め、そしてその権態を尊重する、そういう立場に立って韓国その他について十分考慮していく、こういうことが最も望ましい方法ではないかと思う。平和的な方法として、南北朝鮮の統一問題についても、国連は具体的な提案をいたしております。これを先ほど来申しておりますように、南は承認した、北はこれを拒絶した、こういうところに問題があるように思いますので、国連という機能を尊重し、そしてまたその職能によるように、その職能を十分尊重していただくということが平和への道ではないか、かように私は考えるのであります。
  92. 横路節雄

    横路委員 いまの問題は、もうちょっとあとでまた重ねてお尋ねをしますが、まずお尋ねしたい点は、隣の国と仲よくすることが平和への道だと総理は述べられておる。当然同じ隣の国である北朝鮮朝鮮人民民主主義共和国とも外交関係を樹立するのが私は当然だと思うのですが、この点はどうなさるのですか。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この朝鮮の問題になりますと、これが民族が二つに分かれておる、たいへん民族の不幸でもありますが、私どもといたしましても、たいへんな不幸な状況だと、かように考えております。今日まで日本は、御承知のように、南いわゆる大韓民国といろいろ交渉もし、また、それと折衝し、その交渉を続けております。今回の条約もそういう意味でこれはできておるのでございます。で、こういう関係にあると、北と同町に関係を持つわけにいかない。これは外交の慣例上の問題でございますが、そういう状態に置かれておる。  しかし、ただいま北にあるものを私どもは無視するつもりは全然ございませんから、夜来同様の考え方、つき合い方をしていく、これはケース・バイ・ケースで実際の問題として処理していくということでございます。今回の日韓条約にいたしましても、北の問題には触れておらないというのが実情でございます。
  94. 横路節雄

    横路委員 まず総理お尋ねしますが、北に政権があるということはお認めになるのですね。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一つの北を支配しておる、そういう事実のあることは私どもも否定するものではございません。
  96. 横路節雄

    横路委員 そういう政権のある事実は認めるというわけですね。その点どうもはっきりしないのですが……。そういうことは、北を支配している政権のあるという事実は認める、こういうわけですね。その点はっきりしてください。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 北を支配しておるという事実は認めるということでございます。
  98. 横路節雄

    横路委員 何かあるのですか。北を支配している何かあるでしょう。北を支配している政権があるという事実を認めておる、総理はそこをお抜きになるから、私から聞かれるのですよ。話というのは一貫しないと、途中抜くとうまくないですよ。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 北を支配しておるという、これはたいへんむずかしい表現になりますが、横路君が政権だと言いたければ政権とおっしゃっていい。これはいわゆる正式の政権とは私ども認めてないから、そこでそのことばを抜いたのでございますが、そういう権威のあることは認めておる、こういうことでございます。
  100. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、これは未来永劫、北朝鮮の政府、朝鮮人民民主主義共和国とは外交関係を樹立しないのか、それともするのか。そこを、一体将来絶対しないというのか、それとも何か状態が起きればするというのか、その点はどうなさるのですか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは横路君と私と結論があるいは違うかわかりませんが、未来永劫南北統一できない、かようには私は考えておらないのでございます。
  102. 横路節雄

    横路委員 私その前に一つお尋ねしていることは、その北にある朝鮮人民民主主義共和国という政権を将来絶対承認しないのか、それとも承認することがあり得るのかということを聞いている。そこを聞いているのです。統一問題じゃない。統一問題は、国連方式によるという総理のお考え、聞きました。だけれども、いま現実に北にあるというのだから、北にあるというならば、未来永劫にしないのか、それともどういう段階かにくればするのか、その点を聞いているのです。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 朝鮮、これを一つの国という考え方か……。私どもはその考え方に徹してものごとを考えております。ただいま横路君がお尋ねになりますのは、ただいまは一つの国ではないというようにお考えか、そしてこれは未来永劫一つの国にならないのだ、そういう場合にどうするのだ、こういうようなお話のように聞くのですが、先ほど来私申しますように、これは一つの国だ、同一民族で一つの国だ、そうして未来永劫、二つが一緒に――これは必ず一緒になるのだ、私かように考えておりますので、ただいまのお尋ねのような事態は私考えられないのです。だからちょっとお答えができない、こういう状況でございます。
  104. 横路節雄

    横路委員 いや総理、実はあなたのほうの広報委員長の山手君という人がある雑誌に書いていて、朝鮮には二つの国家があるのだ、二つの国家なのだ、こう言っているのです。広報委員長ですから、まあ相当あなたのほうで地位のある人が堂々と外部に向かって、相当の雑誌に書いているから聞いたのです。私はあなたにもう一ぺんお尋ねします。統一をすれば、統一ですからそれは統一された形ですから、それはポツダム宣言、降伏文書それからサンフランシスコ条約で、当然ですがね。しかし現実の問題としては、北に政権がある。この政権とは外交関係は絶対結ばないのかどうかということを言っているのです。何か事情が変化してくれば結ぶのか、それはいつのことか、それは私もあなたに聞きません。三年か五年か十年かなんて聞かない。ただ、絶対結ばないのか、それとも結ぶことがあり得るのか、こう聞いておるのです。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来申すように、これは必ず一つになるものだ、かように確信しております。だから、ただいまのようなお話は、これは私どもの意思できまるのでなくて、外部の事情できまることでございますから、私どもの意思としては、ただいまのように一つであることを希望し、また必ずそれが実現する、そういう意味協力をするということにこれは終始するのでございます。それには間違いないのでございますから、その点を御了承いただきます。
  106. 横路節雄

    横路委員 それでは総理の御答弁は、北とは、統一されるまで、二つに分かれている限りにおいては外交関係を結ばないということですね。結論としては、そうですね。統一をされるまでは、北との外交関係は結ばないということですね。その点はっきりしてください。――これは総理ですよ。条約局長になどきょうは聞いていないのだ。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、いまの韓国朝鮮の問題としては、冒頭から申しますように、韓国を相手にしてずっと交渉もし、すべての話し合いを続けてまいっております。したがいまして、いま北とは交渉しない、いまもしておりませんが、今後もこの状態が続くものが、かように私ども考えております。先ほど来いろいろお尋ねがありますが、しかし、この状態は必ず統一されるものだ、かように私は信じており、またそういう意味協力をしておるということでございます。しかし、皆さんがいま問題にしておられるように、この日韓条約締結いたしましたが、北についての、あるいは請求権の問題だとか、これらのことは、これは別になっておりますから、こういう点には北には触れておらないこと、これだけは御承知願いたい。いわゆる北を含めてどうこうした全部の協定でないことだけは、これは御承知のとおりだ、かように思ってください。
  108. 横路節雄

    横路委員 総理、いまあなたは北との関係には触れてないとおっしゃっていますが、しかし、いまあなたの御答弁からすれば、北との関係には触れているわけです。統一されるまでは絶対しないというのだから、統一されるまで、統一朝鮮とでなければやらぬということは、北とはやらないということなんです。この点は、私は、外務大臣にひとつお聞きをいただきたいのです。韓国国会の日韓特別委員会の会議録第三次会議、一九六五年八月三日、委員質問に答えて、李東元外務部長官は「日本が将来以北といかなる外交関係も結ぶことはできないという予防措置を考究するためにわれわれがこれを要求したものであり、」これがいわゆる第三条です。「これを日本が確認したものが第三条の精神であり、目的です。また、交渉経過から見ても、すべて明らかです。」「将来国交が正常化すれば、われわれはこの問題に対して最後まではばむ」「日本は少なくとも国際間に公約した基本協定韓国を唯一の合法政府として確認をした。このような日本基本条約の精神は、日本が将来いかなる外交関係その他の関係も以北と結ばないことを公約したのである。」こう言っている。これは約束したんですね、この基本関係条約第三条で。いまの総理お話からすれば、まさにそのとおりになる。まさに李東元外務部長官が韓国の国会で答弁しているような総理の答弁だ。それで間違いないのですね。
  109. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 違います。基本条約第三条は、韓国の国家の性格を、国連決議一九五号が述べておる、そのとおりの国であるということを規定したものであって、この条約締結によって北との関係が断たれたという解釈をとるべきではない。むしろ韓国を平和条約の際に承認したときに、他の七十幾つかの国と一緒にこれは承認したのでありますが、その七十数カ国の国は、朝鮮においては韓国だけと国交を結んで、北との関係設定しておりません。それと同じように、日本はその承認以来さような政策をとっておる。今度の条約によってさような関係を生み出したものではない。
  110. 横路節雄

    横路委員 そうすると、あなたのお話は、この基本関係条約第三条では北の政府との間のいわゆる交渉を断ったものではない、断ったものではないが、絶対にしない、こういう意味ですか。いま総理大臣は絶対にしないと言うのだから。待ってください。外務大臣、私の話を聞いてください。あなたも聞いておったでしょう。総理大臣は、北との関係は絶対しないと言うのだから。北との外交関係はしないと言っておる。李東元外務部長官は、この第三条で、いま読み上げた向こうの韓国の議事録で、これで日本承認したのだ、北との外交関係その他の一切の関係は封鎖したのだ、そのことを承認したのだ、あなたはしないと言うが、総理は北との関係は絶対しないと言うのだから、だから承認したことになるじゃありませんか。これはどうなんです。
  111. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 第三条があるがゆえに、日本は北との国交は将来とも絶対にできないようにこれを封じ込めたのだという、そういう解釈は違っておる、こういうことを申し上げておるのです。第三条は、われわれの相手国である韓国というものがどういう国家であるかというその性格を、国連の決議というものに従って、そのとおりだ、そういう性格のものであるということをただ記述しておるにすぎない。それよりもさかのぼって、平和条約において日本韓国承認したときから、朝鮮においては韓国を唯一の相手方として、北の問題は問題にしない、こういう方針を他の七十数カ国とともにとっておる、こういうことを申し上げたのです。
  112. 横路節雄

    横路委員 それでは、外務大臣、この基本関係条約第三条からは北との外交関係の樹立は封鎖されてない、やろうと思えばやれる、しかし日本は絶対しない、こういうことですか。外務大臣、そういうことですか、その点はっきりしてくださいよ。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 やろうと思えばやれるというようなことは言っていません。そんなことは言ってない。
  114. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、何を言いますか。外務大臣、あなたに聞きますが、この基本関係条約第三条は、韓国政府が韓国の国会で説明し、答弁しているように、北と日本との外交関係その他の関係は封鎖したものだ、それについては日本承認している、こういうことを言っているが、そういう事実はない、そういう事実がなければ、日本の意思でやろうとすればやることができる、こういうことになるじゃありませんか。そういうことになりませんか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういうことは言ってないのです。
  116. 横路節雄

    横路委員 だれが言ってない。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただ、それよりもさかのぼって、平和条約において日本韓国承認したとき以来、他の七十数カ国と同じように、朝鮮半島においては唯一の国交を正常化すべき国家であるという方針をきめておる、こういうことなんです。だから、やろうと思えばやれるというようなことはどこにもうたっておらない、こういうことを御了承願いたい。
  118. 横路節雄

    横路委員 それでは、外務大臣、私は聞きますが、この李東元外務部長官が向こうで言っておる、いわゆる日本が将来以北といかなる外交関係も結ぶことはできないという予防措置を研究するにあたってこれを要求したので、日本がこれを承認したのだ、あるいは日本は少なくとも国際間に公約した基本協定その他によって、したがって将来いかなる外交関係も北と結ぶことができないことを約束したのだという、この韓国の国会における政府の答弁は間違いですか、どうですかと聞いておる。それはどうなんですか。それを聞いておる。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ですから、第三条によってそういうことをきめたものではないと、こういうことを言っておる。でありますから、その点は韓国のその答弁とはちょっと食い違う。ただ、しかし、基本的には、とにかく対立した国家は、一方を認めて、また他方も認めるということは、これはできないのですから、そういうことはしないという方針をすでに確立しておる。
  120. 横路節雄

    横路委員 そうすると、もう一つお尋ねしますよ。  第三条で、韓国政府との間には、北の政府との間に、日本は将来にわたって外交関係を結び、その他の関係を結ぶということはしないということを承認したということはない、そのことだけはあるのかないのか。なければないと言ってもらいたいし、あるならある、そこだけ聞いている。
  121. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 承認するとか、しないとかいう問題ではないのでありまして、書きおろされた条約はもう客観性を帯びておるので、それを正当に解釈すれば、そういうよけいなことはしておりません。
  122. 横路節雄

    横路委員 それでは椎名さん、李東元外務部長官の答弁は間違いですね。いやいや間違いでしょう。ちゃんとはっきり言っておるでしょう。何を言っておるんだ。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は第三条のわれわれの解釈を申し上げております。
  124. 横路節雄

    横路委員 いや待ってください。椎名さん、韓国側のそういう、これは提案説明をしているわけですから、提案説明その他の解釈は、日本政府としてはとらないところである、間違いである、そういうふうにはっきり、するならしてくださいよ。(「そんなことを言う必要はない。」と呼ぶ者あり)言う必要なくはないでしょう。向こうで言っておる。はっきり言ったらいい。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あくまで、何ですね、この条約の正文をどう解釈するかということについての御質問だと思いますので、私はそのことだけをお答え申し上げておるのであります。
  126. 横路節雄

    横路委員 先ほどから総理は、北との国交外交関係は樹立しない、統一朝鮮ができるまではしない。韓国側では、第三条では、北との外交関係は封鎖した。結果的には同じだ。やはり第三条は、そういう意味で、政府はそういう約束をした、そういうようにいわざるを得なくなってしまう。  そこで、椎名外務大臣お尋ねをしたいんですが、あなたはケース・バイ・ケースとよく言うが、外務省の下田次官は、十八日午後、国際電気標準会議総会の行なわれている東京芝の東京プリンスホテルにラドレー総会議長をたずね、「日韓国交正常化の十字路に当たる現段階では、この重要な国家的利益を守るために、国際的摩擦の発生を防止することが必要なので、北鮮代表の入国許可を与えることはできないと言った」国際電気標準会議、こういうものに一体何で入国が許可できないんですか。さっき総理は何とおっしゃった。政経分離だと言った。椎名さん、台湾国民政府は、あれは何となっているんです。国連代表権を持っているんでしょう。国連代表権を持っているということは、いま一応国連側は何と言っているんです。台湾のいわゆる中華民国政府は、いまのところ中国における唯一の正統な政府だと国連側は思っているのかもしれない。それでも総理は先ほど何とおっしゃったんです。政経分離だと言った。LT貿易でどんどん人が来ているじゃありませんか。その他、労働組合の代表その他が来ているじゃありませんか。何で一体北朝鮮の、朝鮮人民民主主義共和国のこの人に対して、こういう会議に参加する人に対して、入国を許可したら国家的な摩擦が生ずるんですか。これは先ほど総理が私にお話をしたのと全く違うじゃありませんか。  総理、違いますよ、あなたは。違うんじゃないですか。あなたは政経分離だと言った。そうしたら、北朝鮮に対してはどうやるんですか。政経分離もしないんですか。総理お尋ねします。北朝鮮については政経分離もしないんですか。それはどうなんです。人物をやる、人の行き来、学会に対して、そういう問題に対してはどうなさるんですか。今度は総理だ。やはり総理でなければだめだ。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、ただいま日韓条約批准を国会にも承認を求めておる、たいへん時期的に考慮すべきときなんでございます。こういう際に、政府は、まことに残念ながら、全体を見まして、やはりこの際は入国を断わるほうが、この全体を進めていく上にいいことだ、かように実は判断をして、ただいまのような処置をとったのでございます。私は、こういう問題が将来ともしばしば問題を引き起こさないよう、またほんとうにこういう事柄が政治問題に巻き込まれないように、この上とも努力したいものだ、かように思っております。
  128. 横路節雄

    横路委員 総理、いまのお話は、あれですか、ただいま条約批准を求める国会が開かれて、これを許可すれば、韓国側からごたごた言ってきて、そこで支障になるから、したがってこれは許可をしない、もしもこの国会で承認を与えられて批准が終わればすると言うんですか。その点はどうなんですか。その点はとういうふうに――いまごたごたするから、しないと言うのか。その点、はっきりしなかったんですよ。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、こういう問題はケース・バイ・ケースできめるということを申しまして、ただいまお尋ねがございますから、これは絶対に拒否するとか絶対に許すとか、実はこういうような問題ではないのでございまして、これは行政的な処置として考えたい、かように申しておるのでございます。
  130. 横路節雄

    横路委員 それでは総理、なぜこの国際電気標準会議に出席するこの代表をお認めにならなかったのですか。これこそケース・バイ・ケースで何か支障があるんですか、ないじゃありませんか。具体的な理由は何ですか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、これは適当でないと私ども考えたから一お断わりしたのです。
  132. 横路節雄

    横路委員 なぜ適当でないんですか。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、その行政的な処置を一々ここが説明することはかえってまずい結果だ、かように思います。で、私はこういう点がただいま政府の判断で、そうしてこれはまずい、かように考えたということを申しておるのでございます。
  134. 横路節雄

    横路委員 私は法務大臣にお尋ねします。  あなたは八月の六日、法務委員会で、わが党の横山委員質問に答えて何と言われているか。この問題については、北のほうの朝鮮からという問題であなたはお答えになっています。「これにはこういう技術者とこういう技術者と、こういう関係者が日本に来てもらいたいんだということが、日本側と向こう側の話し合いの当事者から申し出があれば、それは私は許すつもりです。」と、石井さん、あなた言っていますね。しかも横山君は、北のほうの朝鮮からと、こうなっておるんですよ。あなたは、こういう技術者とこういう技術者と、こういう関係者とが日本に来てもらいたいんだということが、日本側と向こう側の話し合いの当事者側から話があれば、それは許すつもりですと言っておる。これはどうなんです。
  135. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これは北のほうの朝鮮貿易関係に関連しての話でございます。この貿易関係はだんだんとこのごろ変わってまいりまして、だいぶ北朝鮮日本との間の貿易が行なわれておるわけでございます。それには人の往復が伴いたいのでございまするが、なかなか思うにまかせぬというのが業者の不満でございます。それに関連しての賛同でございます。いままでは北朝鮮から日本に入ることは、一切どの方面でも許されてないのでございます。そうしてスポーツ関係において特別な場合だけ許すというので、昨年のオリンピックの場合に特例をもって許されたという以外はないのでございまするが、情勢の変化によって、だんだん許されてもいいものもあり得ると私は思うのであります。それで、この貿易状態も進んでまいりまするにつれましては、ただ貿易をやるからといって、たれでもかれでも行ったり来たりはできない、しかし特別な技術関係の者等が日本に来てその技術の実際の状況を見て、そうして最後の商談がきまるというような場合には、特にケース・バイ・ケースで考えようというような心持ちで言うたのでございまして、それはさっき椎名君も申しましたが、ケース・バイ・ケースでこれから考えるつもりでおります。
  136. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの法務大臣のお話は、北朝鮮との貿易でどうしてもその当事者が来なければ商談がまとまらないという場合には許すんだ、一つですね。  それからもう一つお尋ねをしておきたいのは、あなたはスポーツ関係に許した。それであれば、ここにいう国際電気標準会議ですが、これからいろいろな学会がありますね、医学会もありましょうし、いろいろな学会もある、こういうものについてはどうなさるのですか。法務大臣にお聞きします。
  137. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 入国関係は私でありますから申し上げます。  ただいまのような文化関係等については、いまスポーツの例を申し上げましたので、そういうふうな方面もあるいはどの程度か考えるべきじゃないかという声もあるのでございます。これらのものもあわせて研究を進めていくつもりでおります。
  138. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、それはただいまでもいいんでしょう。北朝鮮との間に、その貿易の商談をまとめるのにどうしてもその人でなければならぬときには、いまでもいいんですね、そういう場合には。――法務大臣に聞いているのす。あまり法務大臣を拘束しないように。
  139. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ケース・バイ・ケースと申しましたから、実際の問題についてそれを取り扱います。
  140. 横路節雄

    横路委員 いや、法務大臣、私が聞いているのは、そういう場合は、いまあってもお許しになるのですね。そのことを聞いている。どうしてもその人でなければ商談がまとまらないという場合には……。
  141. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ケース・バイ・ケースというものは、いまからずっと先に及ぶものでございます。
  142. 安藤覺

    安藤委員長 関連質問で横山君に発言を許します。横山君。
  143. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問中心になっておりますから、法務大臣にもう一度お伺いしたいのでありますが、私はその質問をいたしました際に念を押しているわけです。いままで北鮮との貿易についてはいろいろ事情がある。そのたびに政府は日韓条約その他ということを言っておった。だが、あなたはいま勇敢なことをおっしゃった、いいんだなと言ってだめを押したら、あなたはこうおっしゃった。「いまあなたもおっしゃったとおり、ケース・バイ・ケースで審査いたしまして、現に一つ話が私の耳に入っているのがあります。書類で出ておるかどうか知りませんが、それは、話を聞きまして、それはよかろうじゃないかということで、口頭で私は賛意を表しております。そういうものが話が進んでくるようになれば許すつもりであります。」と、あなたは断言をされた。その前の私の質問に対しましても、具体的な話をされている。「資金の手当はこういうふうにできておる、もう話がほとんどコンクリートのものにだんだんなっておるというような場合に」、こういう前提で、一つ私のところへ話がきておって、私はそれに賛成して、よかろうじゃないかと言ったとあなたはおっしゃった。
  144. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 一つの話がきているとは確かに申しました。よかろうと申したかどうかははっきりいたしませんが、大体そういうふうな心持ちを持っております。そしてその考えを進めておるのでございます。しかし、ものには順序がございますので、いまあなたのおっしゃった、あなたと私と話したときから時がたっておりますけれども、その方向に向かって話を進めたいと思っておるのであります。
  145. 横山利秋

    ○横山委員 関連でありますから多くは言いませんが、法務委員会における大臣のお話、ここで私が速記録を読み上げて同僚諸君に聞いてもらったお話ですよ。いいですか。もう一ぺん読みますが、現に一つ話が私の耳に入っておる、話を聞いて、それはよかろうじゃないか、私は賛意を表しましたと言っておる。それにもかかわりませず、あなたがいまそれを逃げようとなさるということは、法務大臣としてまことに心外千万である。失礼な話ですが、あなたは食言をなさったと私は思います。
  146. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は、いつ、何月何日までに許すとは申していないのであります。ケース・バイ・ケースで許すということを申している。それにはいろいろな事情がございます。その方向をもって研究中でございます。私は食言はいたしません。
  147. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねをしたいのですが、実はこの基本関係条約についてもっと聞きたいのですが、今度の日韓関係条約で、経済協力経済協定をなさる、これから経済協定についていろいろ聞いていくわけですが、その前に一つお尋ねしておきたいことは、一月八日に韓国の陸軍部隊二千名を南ベトナムに派遣することを決定して、韓国軍はすでに派遣をしたわけです。それからさらに、八月十四日韓国の国会でああいう強行採決が行なわれたその前日の八月十三日には、いわゆる戦闘師団一万五千名を南ベトナムに送ることを決定し、それはすでに南ベトナムに到着して戦闘に参加をしている。私がこれからあなたに質問する経済協力というのは、韓国軍事的力を増大させ、三十八度線のいわゆる国際緊張を増大させるようなことであってはならない。かえって緊張を緩和し、平和のための統一でなければならぬ。あなたもそう言っている。それを日本が、三億ドル、二億ドルのいわゆる無償、有償の援助をしている。それが、一月には二千名、八月十三日には一万五千、こういう状態は、かえってこの問題については国際緊張を増大させることになると私は思う。したがって、あのときに総理大臣としては、朴大統領に、ああいうことはやめてもらいたい、一万五千の戦闘部隊を南ベトナムにやることはやめてもらいたい、三億、二億の無償、有償によって、国民の血税を払うことによって軍事能力を増強させてやるということは誤解を生ずる、ああいうことはかえって日本国民に重大な影響を与えるから、もしもあれを強行するならば、われわれとしては国会の承認を求めるわけにはいかぬということを言うのが、私は、この承認を求めるあなたとしては当然の態度であったと思う。それをあなたはなさっていないのだが、私は、当然すべきであったと思う。そうでないでしょうか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは横路君は、すべきだったと言われる。私はさように考えなかったから、しなかった、こういうことでございます。
  149. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、お聞きしておきますが、韓国の部隊というのは、あれは全部国連軍の指揮下にありますね。南ベトナムに行ったのは、国連軍司令官の指令のもとに行ったわけですね。あれはそうなんでしょうね。そのことだけ聞いておきたい。
  150. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、国連軍の指令のもとに行ったとは思いません。しかし、ただ了解は得て行ったのだろうと思います。
  151. 横路節雄

    横路委員 私は、いまの椎名大臣のお話のとおり、韓国の軍隊は国連軍の了解のもとに南ベトナムに行っておるということは、これは重大な問題ですが、この問題等についてはあとで石橋委員等から御質問があろうと思います。  そこで私は、次に請求権問題を聞きますが、人智局長おりますね。――私はあなたにお尋ねをしておきたいのですが、私はあなたを非常にお気の毒だと思って、きのうから同情しているのです。同情しているというのはどういうことかと言うと、いいですか、あなたは人間的に非常にりっぱな方だし、官僚としても良心がある。ところが八木さん、あなたは何ですか、「国際問題」の一九六五年のN。62の五月号にあなたは書いているじゃないですか。あなたは何と書いている。(発言する者あり)読んでみたらわかるですよ。読んでからびっくりなさらないように……。ずっと読んでみます。  「この際一言するならば、昭和二二年に外国人登録令が施行された際に、登録証明書の国籍欄に、「朝鮮」と記入するよう指示されていたところ、翌二二年八月に大韓民国政府が樹立されたが、その後、同二五年初めの登録切替の際に、韓国側から総司令部に対し、この国籍欄に「朝鮮」と記入することをやめ、「大韓民国」とするようにとの強い要望があり、司令部から日本政府に対して二回にわたって覚書が発出された。そこで同年二月、政府は国籍欄に「韓国」の用語を記入することを認めることになったが、その際法務総裁談話を」――殖田さんです。「発表して、「一部の人々からの強い要望もあり、登録促進のためにも適当と思われるので、本人の希望によって『韓国』の用語を使用しても差支えないこととするが、これはたんなる用語の問題であって、実質的な国籍や国家の承認問題とは関係がない。『朝鮮人』あるいは『韓国人』のいずれを用いるかによって、その人の法律上の取り扱いを異にすることはない」旨を明らかにしている。」  あなた、こういうことを書いて、法務大臣や佐藤さんがああいうことを言ったからといって、何で従わなければならない。あなたも入管局長として責任を持って書いたじゃないですか。あなたも官僚の良心に従って、やはり無理なことは無理と言ってお断わりしたほうがいいのです。  さらに、これは八木さんはなお知っているでしょう。法務大臣知っているでしょう。昭和三十四年十一月九日、法務省入管通達、法務省管登第七九四九号、在日朝鮮人の取り扱いについて、朝鮮人の外国人登録法に基づいての国籍証明書に記載される韓国人、朝鮮人という呼称は国籍の表示ではない、こういう通達を出しているじゃないですか。三十四年十一月にこういう通達を出している。出していてはっきりしているじゃありませんか。八木さん、あなたは人間的に非常にまじめな力だし、ぼくは官僚としてのあなたの良心に期待しておった。(発言する者あり)いじめないですよ。いや、いじめない。しかし、法務大臣や総理大臣があまりわけのわからぬことを言ってだんだん八木さんをいじめて――あなたがこういう「国際問題」の一九六五年N。62の五月号にも書いている。こればかりではない。この通達を出している。何でそれが昭和二十六年にさかのぼってやれるんですか。一体こういうことをやれるのですか。八木さん、これでもなお何か強弁できるのですか。この通達、こういうものを三十四年十一月九日にやったのに、それからなお二十六年にさかのぼることができるのですか、法律の専門家として。あなた知らないのですか。三十四年十、月九日の法務省入管通達、法務省管登第七九四九号というのは知っておるでしょう。
  152. 八木正男

    ○八木政府委員 お答えをいたします。  「国際問題」ですか、私のそれに解説記事を書いた内容を最初に申し上げますと、これは韓国という、当時いわゆる用語でございますが、その用語で外国人登録証に、昭和二十五年の二月でございますか、有名な法務総裁の談話の出たとき以来書きかえが始まったわけでございます。いま先生がお読みになりましたのは、その経緯でございます。そこには確かにそのとおり、これは単なる用語であって、実質的な国籍を意味するものではない、あるいは国籍を証明するものではないということをはっきり法務総裁談に書いてある、そのとおりでございます。なぜそういう表現が使われたかということ、これも、私その当時入管におったわけでございませんし、存じませんが、聞くところによりますと、当時はまだ昭和二十五年でございますから、平和条約の発効する二年ほど前でございます。したがいまして、日本は占領中でございまして、みずから国家を承認するとか、そういう権能がなかったと申しますか、そういう資格がなかった。したがいまして、私のいま申しましたところは、日本韓国承認するなどという資格がなかったわけでございます。もう一方、平和条約が昭和二十七年に発効いたしまして、その日から在日朝鮮人、台湾人は外国人となった。これは平和条約第二条にございます。逆に申しますと、昭和二十五年この通達の出たときには、在日朝鮮人というのは、法律上は日本の国籍である、日本人である、まだ法律的にはそういう事情でございます。そういうような点から、この法務総裁談の出た昭和二十五年の時点で考えますと、外国人の登録証の国籍欄というところに、本来ならば外国人の国籍を書くわけですが、まだ日本は国籍を認定したりする地位にない。それから在日朝鮮人はまだ日本人であった、そういうようなことを考えると矛盾しておる。その矛盾を解明することばが、単なる用語であると言ったわけでございます。したがいまして、国籍欄に書かれた朝鮮という用語を、その後変更を許しまして、韓国もしくは大韓民国というものが入りましたが、こういうようなことばは、全部平和条約発効までは用語としか解せなかったわけでございます。その後昭和二十七年に平和条約が発効しまして、それで私、きのう横山先生の御質問のときにちょっと触れたのでございますが、昭和二十七年の平和条約が発効したときに日本は独立国になった。したがって、ただいま申しましたような、外国の国籍を認定する権利というのはそのときから出たわけです。ですから、本来そのときに、おとといですか、…されました例の国籍に関する統一見解、ああいう感じをそのときに決定すべきであったのを、入管の手落ちと申しますか、われわれがやらずにおった。そこで、前に説明に使いました用語というようなことがそのまま使われた。これがいわゆる用語説でございます。そしてそれが結局数日前の統一見解に、用語であるという説をとったことが、事実にそぐわなかった、今後はこれは実質的な国籍であるという見解を統一したわけでございます。したがいまして、昭和三十四年というのは、もちろん、まだ用語であるという説明が行なわれた時期でございますし、三十四年と申さず、現にこの春も、私、きのう御指摘がありましたように、国会で御答弁申し上げたときも、やはり用語説に立って御説明しております。そこで非常にその間に食い違いがある。問題である。確かに責任を感じておりますが、ただ一つ御了承いただきたいと申しますのは、今後この申し合わせ、決定に従って、国籍欄というものは実質的に国籍を意味するのだという立場を今後はとるわけでございますが、もちろん、そういう見地から従来の国籍欄の記載をそのように見るわけであります。きのう横山先生の御質問の際に、これは重大なぺてんであるということばだったか、あるいはだましたとおっしゃったか、その辺の用語は忘れましたが、とにかくうそを言った、それは重大な問題だとおっしゃいました。確かに説を変えたことは重大だと思いますが、実は端的に申しますと、一たん国籍欄に記載された事項は、原則として韓国から朝鮮には認めないというのは、しばしば通達で繰り返されております。したがいまして、用語説であるからといって、韓国と書いた国籍欄を従来ほとんど朝鮮と再書きかえはしておりません。今後は国籍と見るもので同じ立場が貫かれる。したがって、用語説といい、国籍論と申しますか、そういう名称に表示されるようなわれわれの解釈の立場は変わりましたけれども、その対象になる韓国籍の朝鮮の人、ことに国籍の書きかえを希望している韓国の方々にとっては、全然変化はないわけでございます。
  153. 横路節雄

    横路委員 三十四年十一月九日の通達を出して、そしてそれがいまになって、間違ったから、だから二十六年にさかのぼってやるなんということが、それが一体法務省の仕事ですか。そんなことが法務省でやる仕事ですか。八木さん、正直なところ、だんだんあなたの良心に従って、いかにこれがでたらめなことであるかということは、あなた御自身よくお考えのとおりです。そうでしょう。三十四年十一月九日の通達が生きているものが、何で一体二十六年にさかのぼりますか。そんなむちゃなことはありませんよ。  そこで、外務大臣一つ聞いておきますが、この基本関係条約の第一条は、これは領事条約を排除するものではない。これは領事条約締結してもいいんですね。この点だけ一つ聞いておきます。
  154. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 領事条約締結してもよし、それから普通の条約に領事条約を含めてやる場合もありますので、それはどちらでもけっこうだと思います。
  155. 横路節雄

    横路委員 いまのお話でだいぶはっきりしてきましたが、それは領事条約締結することを排除するものではないというのが第一条ですが、そうなると、これは日韓の領事条約ができれば、去年の国会でやりました日米の領事条約のように、日本国内にいるいわゆる永住権を持つ韓国国籍の者は、いわゆる日本国内で徴兵検査を受けることになるわけです。これは日米の領事条約でその点が指摘をされていますから、その点だけを私は申し上げておきたいと思う。いまの点だけ指摘をしておきます。  そこで、次に私は経済協力についてお尋ねをします。  外務大臣、この経済協力の三億ドル、二億ドルと、請求権問題が消えたということの関連は、政府は何にも説明していないわけですね。第一条で、三億、それから一億をやります。そして第二条で「完全かつ最終的に解決された」、こういうことになっているのですが、どうして三億ドル、三億ドルやったらここで請求権解決したのですか。この説明をしてください。何にもこの条約からは説明がないのです。
  156. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは法律的な関連性はございません。
  157. 横路節雄

    横路委員 法律的な関連はない。そうすると、ここにいらっしゃる大平さんは、その席にすわっているときには何と言ったかというと、三億ドル、一億ドルを、いわゆる経済協力をやることによって、随伴的に請求権解決するのだ、こう言った。しかし、あなたは、何にも関係ないと言った。私は、そこで、何にも関係ないというあなたの御答弁に基づいてこれからお尋ねをしていきたいと思うのです。  三億、ドル、二億ドルの性質は何ですか。
  158. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 経済協力ということになっております。
  159. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、これは請求権の処理のためですか。それとも、低開発国援助ですか。それとも、三十六年間韓国植民地支配をしていたという、そういう意味で払うお金ですか。これは何なんですか。
  160. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは、読んで字のごとく、経済協力です。
  161. 横路節雄

    横路委員 それでは、あなたにお尋ねをします。あなたは、二月の二十日、ソウルに行ってこう言ったでしょう。かつての不幸な関係は遺憾であり、反省する。言いかえたら、あなたは向こうへ行って、ごめんなさいといっておわびをしたのだ。おわびをしたということは、どういう意味をいうかというと、三十六年間の植民地支配はたいへん申しわけがない、何とあなたたちに損害と苦痛を与えたことだろう、そういう意味で私たちはあなたたちに金を払うのですよ、そういう意味ですね。あなたは二月の二十日に行って、あの仮調印するときにあなたは行って、そう言ったのだから。かつての上不幸な関係は遺憾であり、反省すると言ったのだから。そのことは、ごめんなさいといっておわびをしてきたのだから。――いやいや、そう言ったんだ。
  162. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 反省するということばに、あなたがいまるると述べられたような意味が含まれるはずはないのです、正当な日本語の解釈上。
  163. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、あなたのその態度が、韓国においてこの経済協力に反対である一十六年間の植民地支配はまことに申しわけがない、もしもそういう気持ちがあなたたちの心の中にあったならば、向こうの民衆がこの受け取り方はもっと別な考え方で受け取ったであろうと思う。あなたは、かつての不幸な関係は遺憾であり、反省すると言ったが、一体これはそれでは何を言ったのです。
  164. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 反省ということは、深く反省するということばを用いました。つまり、過去の事実は遺憾である、そして深くこの際に反省する、この事実をしんみりと反省する……(発言する者あり)
  165. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、あなたのそういう態度は、私は非常に不見識だと思うですよ。あなたのそういう態度は不見識です。やはり韓国の民衆の経済協力に対する反対の論拠には、三十六年間の植民地文配に対して、損害と苦痛を与えたことは申しわけがないという気持ちがいまの佐藤内閣にあるならば、これはまた別だという、そういう気持ちがあるのです。あなたがそういう、何といいますか、いいかげんな、向こうに行っては、不幸な関係であったことは遺憾であり――遺憾であるというのは、何ということですか。おわびをするということですよ。遺憾であるというのは、申しわけないというのですよ。あなた書いてごらんなさい。まことに遺憾にたえませんというのは、まことに申しわけございませんと書くのだから。あなたは、その「遺憾」というのはどういうつもりで使ったのです。「遺憾」は「申しわけない」ですよ。そういう気持ちがあれば、向こうの反対している諸君だって幾ぶんかあなたたちのそういう気持ちが受け取れるかもしれないが、そういう点があなたにないのです。遺憾だというのは何です。
  166. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私はあの戦争時代に役人をしておりまして、それで九州の炭鉱地方をずっと回って歩いたことがある。その当時、たくさんの韓国の青年が、強制労働ですね、それに狩り出されて、そして炭鉱に配置された、いたいけなその状況をまだ私は胸に刻み込んでおるような状況であります。そういったような問題を私は考えながら、深く反省するということばを使ったので、しんみりといってなぜ悪いか、私はわからない。私にはいろいろな思い出があるものですから、深く反省するということばが出たのであります。どうぞそういう点は、決してあなたの言うようなふざけたてとばでない、そういうことを御了解願いたいと思います。
  167. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、一九五七年十二月三十一日、平和条約第四条の解釈に関するアメリカ合衆国政府の見解を伝えた在日アメリカ合衆国大使の口上書、その前文は読みませんが、「もっとも、日本国が平和条約第四条(b)において効力を承認したこれらの資産の処理は、合衆国の見解によれば、平和条約第四条(a)に定められているとりきめを考慮するにあたって関連があるものである。」、今度どの程度関連されたのですか。
  168. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約の解釈でありますから、条約局長から申し上げます。
  169. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 あの米国解釈が出た当時は、H韓双方ともまだ、四条(a)項のような、あのとおりの財産請求権の積み上げ方式と申しますか、そういう処理が行なわれるという立場でおったわけでございますが、その後、御存じのとおり、この財産請求権の問題は幾らやっておってもけりがつかない、そういうことでこれを切りかえて、経済協力を行ない、これに並行して財産請求権の問題は解決したこととする、そういうような了解になってまいりましたので、あの当時考えられておったようには、関連があるものだとして取り扱うという場がなくなったということでございます。
  170. 横路節雄

    横路委員 条約局長、それじゃ日本は放棄したのですね。せっかく、この一九五七年十二月三十一日の、平和条約第四条の解釈に関するアメリカ合衆国政府の見解を伝えた在日アメリカ合衆国大使の口上書の三平和条約第四条定められているとりきめを考慮するにあたって関連があるものである。」、これは日本は放棄したのですね。そのことだけはっきりしてください。
  171. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 放棄したとおっしゃいますと、何かこちらに実体的権利なり利益なりがあって、それを放棄したように聞こえますが、そういうことじゃないのでございます。ただ、ああいう解釈も行なわれておって、その中には、関連があるものとして考慮されるべきものである、ああいうことは念頭に置いて最後まで交渉したことは事実でございます。
  172. 横路節雄

    横路委員 事実だけれども、結果はどうなったの。
  173. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 事実は、先ほども申し上げましたように、あの当時予想されておったような形で財産請求権を処理するということはやめになったわけでございます。
  174. 横路節雄

    横路委員 やめになったから、どうなったの。やめになったから、考慮することはどうなったんですか。その点を聞いているのです。あなた、ことばで逃げられる。
  175. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 考慮するということは、あの当時に考えたように考慮するという場はなくなったわけだけれども、考慮するということが、そういう解釈が行なわれたことは念頭に置いて交渉した、こういうことでございます。
  176. 横路節雄

    横路委員 一体何だ、あなたの答弁は。条約局長、あなた、速記をあとで読んでごらんなさい。終始一貫していませんよ。あなたは最初、考慮をしないと言ったじゃないか。考慮する場がないと言ったじゃないか。場がないと言ったでしょう。そうだろう。場がないと言ったあとに何をつけたのです。考慮したと言ったじゃないか。どっちなんだ。考慮する場がなくなったんでしょう。はっきりしなさいよ。何だ、一体。ほんとに男らしくない。
  177. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 アメリカ解釈で示されているような意味においては考慮する場がなくなったということを申し上げました。しかし、そういう解釈が行なわれておって、その中には、考慮すべきものということも含まれておったということは念頭に置いて交渉したということでございます。
  178. 横路節雄

    横路委員 何を言っているんだ。  それじゃ、私これから聞きますよ。三十六年の十一月に池田・朴会談で、法的根拠のあるものに限るということが一応合意されたですね。これは一体その交渉過程で幾らになったんですか。法的根拠のあるものは日本側から相手に幾らと出したんですか、外務大臣
  179. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 八項目の問題について積み上げ方式をとることに一応きまりまして、そして向こうの申し入れについてこれを検討したのでありますが、ものによってはやや明瞭なものもある、しかしながら、ものによっては、法律関係なりあるいは事実関係なりというものが双方の考え方に非常な懸隔が出てまいりまして、ほとんどこれはもういかにこれを追及しても決着がつかないという見通しが立ったので、それでこれを放棄したのであります。それを追及することをやめたのです。
  180. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたは交渉過程で日本から金額を示したことはありませんか。日本から金額を示したことがあるでしょう。日本から交渉の過程で金額を示したでしょう。金額は幾らになっておるのですか。(発言する者あり)そんなことはないですよ、言いなさい、言いなさい。
  181. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 非公式会談の場で試算を示し合ったことはあります。
  182. 横路節雄

    横路委員 それは幾らでした。外務大臣、それは幾らだったですか。
  183. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは他の政府委員からお答えいたします。
  184. 中尾博之

    ○中尾政府委員 請求権交渉と申しますか、向こうとの話し合いにおいて、金額を出し合って議論するというような事態はございませんでした。いまお話がございます。向こう側からは金額をもって示したものはあったと思います。それらについていろいろ質問したりしたというようなことはあったと存じます。ものによるのであろうかと思いまするが、それは個々のこまかいものについてあったか存じませんが、しかし、いずれにしましても、交渉めいた形でそういうものが行なわれたという記録はございません。
  185. 横路節雄

    横路委員 いまの理財局長ですね、数字を日本側から出したことはあるんでしょう。とにかくあるんでしょう。金額の内容は聞かぬから、あるのかないのかだけ聞いておきます。
  186. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま申し上げましたとおり、請求権委員会ではそういう事実はございません。
  187. 横路節雄

    横路委員 いま外務大臣は、あると言った。  そこで私は、ここにいらっしゃる方々とも関係するから、相手方の議事録から申し上げてみたい。  韓国国会の特別委員会第十次会議録、一九六五年八月十一日、無任所長官の元という人がこういう説明をしている。民主党政権の鄭一永請求権代表の報告書を読み上げて、まず第一番目に日本は千五百万ドルの数字を示した、第二番目二千万ドルの数字を示した、第三番目に三千万ドルの数字を示した、第四番目に五千万ドルの数字を示した、革命が起こって後、崔徳新外務部長官が日本に来て初めて小坂外務大臣に会って、最後に七千万、ドルの線までいきましたと、ちゃんと言っておるじゃないか。これはどうなんだ。向こうが出したということは、日本が出したということを言っているのです。私が聞いているのは、日本が……したということを聞いている。外務大臣、私は、これは日本が出したということを言っているのですよ。向こうが出したのでないですよ。日本が出したということを言っている。外務大臣、答弁してください。日本は言ったことがないのかどうか。小坂さんが外務大臣のとき、七千万ドルまで出している。相手、言っているじゃないですか。
  188. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま御指摘の点は、私は聞いたことはございません。
  189. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、なぜ辻原委員や松木委員が、向こうの特別委員会の会議議事録を出してもらいたいと言うかといえば、こういう問題がるる出ているわけです。私たちには全部交渉の経過を秘密にしておいて、向こうでは交渉の経過を明らかにしている。韓国の国会で交渉の経過を明らかにして、日本政府では第一回は千五百万ドル、二回は二千万ドル、三千万ドル、五千万ドル、お見えにならないが、小坂さんが外務大臣になってから最終的に七千万ドルまで出した。こういうように向こうが言っているのに、一体なぜ日本政府はここで経緯を明らかにしないのです。ここで私たち会議議事録を出してもらいたいというのは、そういう意味もあって言っているのです。あまりにも佐藤内閣外交というのは秘密外交じゃありませんか。どうなんです、一体。総理はどうお思いになりますか。もっとこういう経過をすなおにお話しになったらどうですか。総理はどうお思いになりますか。私が数字をきちっとあげたのです。これは総理どうですか。もっとこういう会議録を出して、オープンで、もっと国民の前に明らかにしておやりになったらどうですか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ交渉の経過のお尋ねがございます。また、そういうことについて、いわゆる請求権経済協力に変わったということで、いわゆるもう積み上げ方式でなくなっているのですから、ただいま申し上げるように、どういうわけで経済協力に今度変わったかというようなお尋ねだと、私、たいへん意義があるだろうと思いますけれども、いまどこでどう言ったとか、一千万ドルが今度二千万ドルになり、三千万ドルになったとか、こういう話は私はどうもどうだろうかと思います。これは皆さま方の御審議に関することですから、私はとやかくは申しませんけれども、どうもそういうような感じがいたしますし、椎名君にいたしましても、十四年の長きにわたる交渉でございますから、全部その経過を知って、それでここでお答えしているわけにはいかない、かように私は思います。もうずいぶん人もかわっておりますから。そういう意味で、ただいま一番問題になりますのは、在来の積み上げ方式ではなくて、経済協力という形に変わってきている。その経済協力で、これはもう最終的に、完全にいわゆる請求権問題が終止符が打たれた、こういうことでございますから、その点について私どもが説明が不十分なら、これは私どもが委曲を尽くして申し上げますが、ただいま申し上げますように、いつどうなったかというその経過は、一々私どもがお答えすることができないということをはっきり申し上げておきます。
  191. 横路節雄

    横路委員 いやいや、総理大臣、私は先ほど三億ドル、二億ドルについての根拠はどうだと聞いたってお答えにならないじゃないですか。いま総理は私に何とおっしゃったのです。横路君は三億ドル、三億ドルの経済協力になった、そういうことについて聞いてくれればよくお答えをするのにと言うが、私は一番最初何を聞いたのです。三億ドル、二億ドルの根拠は何かと聞いたら、全然答えないではありませんか。だから私は経過を追ってお話をしているのです。こういう経過を国民の前に明らかにすることがなぜ悪いのです。なぜ悪いのですか。あなたたちが自信があったら、こういう経過はあったけれども、隣の韓国の今日の経済状態は見るにたえないから、したがって、韓国民経済能力を上げるためにやるのだ、経過はこうでしたとなぜ言わないのです。向こうの国会では、日本政府から一々こういうことが出ているのにかかわらず、日本国会でこのことを全部秘密にするとは一体どういうことなんです。それは佐藤さん、あなた、秘密外交と言われたってしょうがないですよ。(「秘密じゃない」と呼ぶ者あり)いや、どうして。佐藤さんが知らなかったら外務大臣外務大臣が知らなかったらあそこにいる理財局長外務大臣が知らなければ、書類がこんなにあるだろうから、あなたやったらいい。委員長、だめですよ。向こうでこんなのを発表しておるのに、だれかに経過を明らかにさせなさい。(「かってにやった」と呼ぶ者あり)いや、かってにでないですよ。日本がこう言ったということを書いてあるじゃないですか。
  192. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三億、二億の問題につきましては、韓国が新しく発足するにあたって、その経済的な建設をやる上においてぜひとも必要であろうということも考え、なおまた、日本の財政能力も勘案いたしまして、そして無償三億、有償二億、この経済協力をすることにいたしたのであります。
  193. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、私が聞いているのは、その経過を話しなさいと言っているのですよ。経過を聞いているのですよ。その経過をお話しできないのですかと聞いている。それは秘密だからできないのですかと聞いている。そこは一体どうなんですか。いや、われわれは秘密外交だからできないのか、韓国で言っているのに、なぜこれができないのですか。
  194. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国でいま言っておると称せられた、そういう簡単な数字をあげただけで経過の説明にはならない。それで向こうの八項目にわたる数字につきまして、これを事実上から証明し、あるいは法律上からこれをせんさくしていこうとしても、両者の見解が非常に離れておるということは、その間に時日もたち朝鮮動乱というものもありまして、とうてい積み上げ方式ではらちがあかない。そうかといって、日韓正常化をこのまま放置するということは、両国のためにとるべきでない。そこで、一方においては、新しい国家の発足をいたしたのでございますから、日本の財力をも勘案して経済協力をするという話が進められて、これと並行して、従来の請求権は、完全かつ最終的にこれを消滅する、主張しない。こういうことに話がきまったのでございまして、いまさらせんさくしてもなかなかせんさくし尽くせるものではございませんし、そのために非常な時間を経過いたしたのでありますが、どうしてもらちがあかぬというので、これはあきらめた。その問題は、私はこの程度で御了解を願ったらいかがかと思うのであります。
  195. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたは一体――この経過を向こう側で出しているのです。あなたのほうで、私の述べたこの経過が間違いだというならば、あなたが会議議事録を出したらいい。出して反駁したらいい。横路君の言う、いわゆる韓国国会における特別委員会第十次会議録、一九六五年八月十一日の元という無任所長官、そういうことを言ってないなら言ってないと言ったらいい。しかし、あなたたち国民をやはり説得する立場にあれば、千五百万ドル、二千万ドル、三千万ドル、五千万ドル、それから七千万ドル、それから三億、三億、合計五億になったのならなったのだという経過をるるお話しなさるのが、政府の当然の責任ではありませんか。それをどうして隠すのです。  じゃその次、私はお尋ねをしますが、椎名さん、だんだん関係者の方皆いなくなって――昭和三十八年の二月の七日に、ここにおられた大平さんが外務大臣のときに私の質問に答えて、この問題が調印の段階になれば、いわゆる対日請求権八項目については出します。それから、ことしの三月一日、予算委員会で、これは当事者の椎名さんが同じ私の要求に応じて出すということになっている。そこでたいへん恐縮ですが、当然用意されていると思う。私はきのう、経済協力についてお話をします、請求権について質問をします。こう言っているのですから、当然このことについては十分用意されていると思う。したがって、対日請求権八項目、それについて日本政府が試算をした金額はどこが何々になっているのか、できないところはできない、できるところはできる、何がどうなっているのか、これは前からの約束ですからここでやってください。これは三十八年二月七日、四十年三月一日、それ以来の案件ですから、きょうは請求権問題並びに経済協力を聞くとなっているのだから、当然私にそれだけの用意があってしかるべきだ。総理も御存じなんだ。だから向こうの対日請求八項目をいまここでずっと並べていただいて、この問題は解決をしておる、この問題は解決をしてない、この問題は数字がこう出ている、この問題はこう違っているなら違っている、こういうように全部述べてもらいたい。
  196. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お約束でございますから、そのつもりで用意しようと思ったのでありますが、いずれにしましても、これは韓国側の出した書類でありまして、それをかような席において論議の的にするということにつきましては、(発言する者多し)あらためて韓国側の了解を得る必要がある、こう思いまして、いまその了解を取りつけ中です。(発言する者、離席する者多し)私の申し上げたことがよく徹底しなかったようでありますが、あれはかような公開の席で論議の的にするということにつきましては、あらためて韓国政府の了解を得る必要がございますので、その了解をいま取りつけ中です。   〔発言する者、離席する者多し〕
  197. 横路節雄

    横路委員 この経済協力の三億ドル、三億ドルの問題のもとになっているのは、いわゆる対日請求権八項目に関連する問題です。そこで私は、先ほど申し上げたように、いまここにお見えにならないが、三十八年二月七日の予算委員会で、大平外務大臣にこのことを要求した。ところが大平さんは、その資料はそろっています、しかしいま交渉の過程だから、だがしかし、そのときは金・大平メモで三億、二億、民間借款一億ドル以上はきまった。私はここにそのときの配付された資料を持っている。そのときに何と言っているか。そのときにちゃんと大平さんは私に答えて、必ず出しますから、いま交渉の過程だから待ってくれと言っている。二月七日、「大平外務大臣 政府としては、日韓会談のすみやかなる妥結に鋭意努力中である現段階において、いわゆる請求権等に関する資料を今直ちに公表することは差し控えさしてもらいたいが、調印のめどがつきそうになった場合はもちろん、なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。」これは理事会で協議をして、私に答弁したから、そこで私は了解をして下がったのです。こういうように外務省は、そのときの資料も私に出してやる、そうして椎名さん、あなたは何と言ったのですか。あなたは、いま国対委員長の中野君が第二分科会か第三分科会の主査のときに、私とあなたとこの問題でやりとりして、そこでわざわざ本委員会で、いろいろ主査報告に関連して私が質問をして、総理大臣もお出になって、この対日請求権八項目をやったのです。あなたはそのときまた答えたじゃないか。あなたは何と言ったのです。いま三月一日は、仮調印を終えたけれども、いま仮調印を終えた段階で出せないが、必ず出します、こう言ったのです。いまこの日韓条約の、経済協力協定その他あらゆる案件について論議をしているさなかに、何でこれが出せないのです。何で一体韓国政府の了解を得なければ出せないのです。そんなばかなことがありますか。こんなことがありますか。   〔発言する者、離席する者多し〕
  198. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 すでにこの問題については十分に事前に手を打っておくべきでありましたが、その点は怠慢でありましたので、ここに……(発言する者あり)ただ、ただいま向こうに交渉して、そして大使館から木国政府に請訓中であります。いずれ返事がくると思います。どうぞさように御了承願います。   〔発言する者、離席する者あり〕
  199. 安藤覺

    安藤委員長 横路君の質問中、請求権及び経済協力に関する部分については、政府より明後日の資料提出後に、あらためて質問を許すことにいたします。
  200. 横路節雄

    横路委員 いま委員長の御発言で、対日請求権の八項目についてはあさってお出しになるということでございますが、ただ、私非常に遺憾にたえませんことは、総理も御存じのとおり、三月の一日、この場所で、この予算委員会で、私が主査報告に関連をして外務大臣質問をして、外務大臣も、仮調印を終わった段階ではまだ出せない、しかし必ず出しますということでございましたので、当然、きょうの私の質問請求権並びに経済協力の問題ですから、御用意が十分してあると思いましたのに、出せないということは、はなはだ遺憾ですが、しかし、あさってお出しになるということですから、いま委員長からお話ございましたように、この問題は、八項目が出なければ自後の経済協力全般についても質問ができませんから、委員長のとりなしのようにいたしたいと思います。  それでは、私は最後に一つ問題を提示をいたしたいと思います。  松野防衛庁長官にお尋ねをしたいのであります。松野さんに最初お尋ねをしたいのですが、これはいまでもやっているんでしょうか。陸上自衛隊の富士学校で「指揮官への道」というのがございまして、毎朝斉唱しているわけです。昔でいえば教育勅語のように読んでいるわけですね。「指揮官への道、私は神に誓って自衛隊における立派な指揮官たることを深く期するものである。日本の地位と国力並びに私の力量とその欠点とを自覚し、世論に惑わず、政治にかかわらず、常に徳操の涵養と自己の研鑽に邁進し、」、その次です。「又確固たる反共精神を持しつつ模範を衆に示し、課せられたる仕事はこれを熟知し、命令は直ちにこれを実行に移し、もってその目的精神の貫徹を期したい。」、まだずっとございます。この自衛隊というのは反共の軍隊なんでしょうか。ちょっとその点、私は非常に意外に思いますので伺いたいのです。この「指揮官への道」というのは、毎朝富士の幹部学校でお読みになっている。これには、反共の精神を堅持しつつとございますので、その点、長官、一体日本の自衛隊というのは反共の軍隊なのか。先ほど私は総理に、反共体制ということで、ほんとうはこのことを関連して聞きたかったけれども、いまあらためて松野長官に聞いておきます。
  201. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまお読みになったのは、私もよく存じませんが、ただ、第一項目、第二項目、指揮官になるについては宣誓を求めております。幹部になるときの。その宣誓は自衛隊法にきまっております。その文句も。したがって、自衛隊法の宣誓の第一、第二は、私は記憶しております。第三項目がこの自衛隊法にあるかどうか、私は覚えておりませんが、第一、第三は、たしか自衛隊法で規定された幹部になる宣誓の文句だと私は記憶します。
  202. 横路節雄

    横路委員 いや、長官、そこで、この「反共精神を持しつつ」というのは、この日本自衛隊というのは反共の軍隊なんですかと聞いている。「反共精神を持しつつ」と書いてある。毎朝「指揮官への道」というのを声高らかに読んでいるから、それで聞いているのです。
  203. 松野頼三

    ○松野国務大臣 法律に書いてあることを完全に実施しているわけで、その反共ということばがあるかどうか、私それを実は見ておりません。また、自衛隊法に書いてあるとも思いません。要するに、政治的中立というのが自衛隊法基本でありますので、反共と書いてあるそれは、横路委員のその本は、私きょう初めて拝見しました。ただ、第一項目、第二項目に該当するような文句は自衛隊法にあることを私は記憶しております。
  204. 横路節雄

    横路委員 いやいや、防衛庁長官、持っているんですよ。ここに「指揮官への道」というのがあるんだ。反共軍隊ですかと聞いている。
  205. 松野頼三

    ○松野国務大臣 なお、補足してただいまの文句についてお答えいたしますが、それは自衛隊で使っているものではないそうであります。
  206. 横路節雄

    横路委員 ほう、そうですか。松野さん、陸上自衛隊富士学校修親会編で、「富士学校では学校創設以来新しい指揮官の道として次のことが強調されている。我々はこれを実行しているであろうか」と書いて、「指揮官への道」なんですよ。毎朝これを読んでいるんです。だから、反共の軍隊ですかと聞いているんだから、あなた、反共の軍隊でなかったら反共の軍隊でないと言えばいいんです。なければないと言えばいいんですよ。そのことを聞いているんです。
  207. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまお読みになった本についてのお尋ねで、三カ条お読みになりましたから、その本についての事実からお答えして、そうして回答を御理解いただきたい。  その本は自衛隊の本ではございません。個人の資格で書いております。したがって、それを毎日読んでおるという事実も私はないと思います。したがって、反共の軍隊ということは、私は自衛隊法の中で見つけたことはありません。政治的中立ということが自衛隊の任務でありますから、そういうものは公文書としてはないと私は言明しておきます。
  208. 横路節雄

    横路委員 それでは、次に、「幹部訓育資料」、いいですか。「幹部訓育資料、思想選択の基準」、海上自衛隊第二術科学校学生隊長、名前を書いてありまして、いいですか、ここに幹部の訓育資料として、「思想選択の基準」というのがあるんですよ。これを私読んで、総理びっくりしたです。「民主主義の思想にしても本来は圧迫されるようなところに起るものであります。自由主義ということもやはり圧迫に対して起るのであります。」、「デモクラシーや自由主義を最高とするような考えは末をもって本を棄てるの愚を侵しているのであります。」、これが「幹部訓育資料、思想選択の基準」、海上自衛隊第二術科学校学生隊長何のたれがしとなっておる。私はこれを読んで驚きましたね。これはまるで、まさにこれならば、いまに社会党どころでない、自民党も吹っ飛んでしまう。松野さん、こういうことを一体  これは「幹部訓育資料」なんですよ。これを読んで驚いたですね。総理だって驚くだろうと思う。「デモクラシーや自由主義を最高とするような考えは末をもって本を棄てるの愚を侵しているのであります。」、これはたいへんなことですね。これはどうなんでしょうかね。
  209. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまの書類、ただいまの人名、私は現実にあるかどうかわかりません。また、その書類がもしあったとするならば、その書類の出どころも私は知りません。したがって、おそらく個人の文書というか、個人の問題であって、自衛隊には組織としては何ら関係のないということだけは私は言明できます。なお、せっかく言われましたから、その氏名、官職に応じてよく調査をいたします。
  210. 横路節雄

    横路委員 「幹部訓育資料、思想選択の基準」、海上自衛隊第二術科学校学生隊長二等海佐、これは宮内通行と書いてある。  その次、私はあなたにお尋ねをしますが、これはあなたのほうで、大衆デモに対して陸上自衛隊は警察と共同行動をして、このデモ鎮圧のために、いろいろな計画だとか、立案だとか、そういうことをなさっているのですか。
  211. 松野頼三

    ○松野国務大臣 デモを対象に自衛隊の行動は規定してございません。
  212. 横路節雄

    横路委員 国家公安委員長、永山さん、別にそういうことは、あなたは国家公安委員長としては防衛庁長官とそんなような協定やそんなことをやってはいないでしょうね、まさか。
  213. 永山忠則

    ○永山国務大臣 絶対にやっておりません。
  214. 横路節雄

    横路委員 そうですかね。永山さん、松野さん、あなたは御存じなくてお答えになっているのか、ほんとうにそれを知らないのですか。いいですか。ないんですか。
  215. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊のことは、重要な自衛隊の行動については全部私が知っておりますから、私の知らない重要な行動はありません。
  216. 横路節雄

    横路委員 それでは、昭和二十九年九月三十日、防衛庁長官木村篤太郎、国家公安委員委員長小坂善太郎、「治安出動の際における治安の維持に関する協定、防衛庁と国家公安委員会とは、自衛隊の治安出動の際における治安の維持に関して次のように協定する。1指揮関係、自衛隊及び警察は、相互に指揮命令しないが、緊密に協力するものとする。2任務分担、(1)暴動の直接鎮圧及び防護対象の警備に関する任務分担は、」……(「時効だ」と呼ぶ者あり)何を言いますか、あとに言いますよ。「下記に準拠して、警察力の不足の程度及び事態の状況に応じ、自衛隊及び警察相互において具体的に協議するものとする。」と書いて、そして、これには現地協定、さらにこの中には何があるかというと、細部協定がございまして、細部協定はどういうように細部協定をしているかというと、それは、昭和三十二年十二月二十五日、防衛庁事務次官今井久、警察庁長官石井栄三、「治安出動の際における治安の維持に関する細部協定、防衛庁と警察庁とは、治安出動の際における治安の維持に関する協定第八項の規定に基き、次のように協定する。」となっている。そうして、さらに、これに基づいて、昭和三十三年十月二十七日、防衛庁事務次官今井久、警察庁長官柏村信雄、「治安出動の際における自衛隊と警察との通信の協力に関する細部協定」。昭和三十五年三月二十九日、防衛庁装備局長塚本敏夫、警察庁通信局長小菅菊夫、「防衛庁装備局長と警察庁通信局長とは、治安出動の際における自衛隊と警察との通信の協力に関する細部協定第九条の規定に基づき、次のように協定する。」、そうして、この木村さんと小坂さんの協定に基づいて現地協定がございまして、現地協定は、北海道は北部方面総監並びに北海道警察本部長以下、陸上関係、海上関係全体にわたっている。そうして、先ほどお話がございましたが、この問題についてどうなつているかというと、この国会で、三十六年二月の予算委員会で一部私が触れましたが、当時は治安行動草案となっているが、いまはたしか治安行動になっている。おそらく教範になっているでしょう。この問題のときに、先ほどお話がございました、「スクラム等を組み、又は坐り込み・横臥等により部隊の前進を妨害する暴徒」、これは何でも暴徒と書いてあるが、「に対しては、催涙ガスを使用してその妨害を排除する。状況により催涙ガス等を使用できない場合においては、やむを得ず引抜きを行なうことがある。この際においても煙を使用する等により暴徒を混乱におとし入れ、」云々となっている。そして、さらに、三十五年、あの安保の大衆行動のあとに、三十五年五月四日、当時防衛庁長官の赤城さんから、「自衛隊の治安出動に関する訓令」があって、その際に、武器の使用その他に関して詳細に出ている。ここに出ている。  そこで、私はあなたに聞きたい。この間私はあなたのほうに正式に、治安行動についての教範並びにこの関連法規その他について出してもらいたい、この協定についても出してもらいたい、これを全部私のほうはあなたに要求したのに、あなたのほうは要求に応じない。いま永山さんに聞けば、そういうものはないと言う。ところが、現にこの問題については、九月の四日にあなたのほうでは、すでに日韓のデモに備えて大衆行動を直接制約することについて計画を立てているではないか。その計画は、まず陸上幕僚監部の「二部が日韓国会反対を叫んで集まるデモの人数や暴徒化の程度などを見積もる。三部はその資料にもとずいて出動部隊の選定および出動前の部隊の移動、集結を計画。また四部はデモ鎮圧に使用する催涙弾数の算出とその確保、催涙弾を操作する化学部隊の編成、出動部隊に対する補給」、こうなって、あなたのほうは十月の三日から九日まで演習をやったではないか。  そこで、まず永山さんに一つ聞いておく。あなたはさっき協定はないと言ったけれども協定はあるのですよ。協定があって、そして、しかも御丁寧に、ここに別表がございますが、これは一部だけですが、出さないというから私は神田の古本屋から探してきた。現地協定があって、全部やれるようになっている。これでもあなたのほうの国家公安委員長と防衛庁長官との間にはそういう協定はないのですか。大衆行動ですよ。これはないのでしょうか。
  217. 永山忠則

    ○永山国務大臣 デモに関しては話し合ったことは絶対ございません。いまおっしゃるのは自衛隊法八十五条の治安出動の関係ではないかと思います。これは一般の自衛隊法に関しての問題でございますから、松野君のほうで答弁願います。
  218. 横路節雄

    横路委員 永山さん、デモが多人数になってくる、あるいはすわり込みを行なうという場合もあるでしょう、それは大衆行動ですから。(発言する者あり)そういう場合に応じてあなたのほうは――どなたか古いと言うんだが、昭和二十九年九月三十日からずっとその協定がもとになって細部協定を行なっている。しかも、御丁寧に、各警察本部は全部やっている。この対象は、教範というか、かつては草案と言っていたが、これを見ても、何であるかというと、一般的な大衆行動もその対象になっている。だから、永山さんにここでひとつお答えを願いたいのだが、そうすると、この国会周辺のデモは、その人数がどうあれ、それは国家公安委員長と防衛庁長官とのこの協定の対象ではないという意味ですか。その点はっきりしてください。
  219. 永山忠則

    ○永山国務大臣 デモの関係では、防衛庁長官とお話をすることはございません。また、警察はいま防衛庁へ援助を頼むという考えは持っておりません。
  220. 横路節雄

    横路委員 私は、松野さん、これはあなたのほうから正式にもらった書類だからね。今年はですよ。昭和三十九年に警察庁から防衛庁に出向した人です。まず三十九年ですが、三輪さんという事務次官は、これは三十九年ではないが、警察庁の警備局長からたしか官房長かに来られて、いま事務次官。三十九年に来られた方で、島田さんという防衛局長は、警察庁の警務局付、前宮城県の警察本部長だ。三井さんという人は、防衛局第二課長で、情報担当だ。これは警察庁警務局付だ。勘田さんも警察庁警務局付だ。前の三井さんは、山梨県の警察本部長だ。宍戸さんという人は教育局長で、警察庁長官官房総務課長から来ている。それから、酒井甲子郎さんという長官官房広報課の方は、警察庁の警務局の人事課付である。西川さんという人事局の厚生課の人は、これは警察庁警務局の人事課から来ている。星野さんという教育局の教育課の人も警察庁の警務局人事課の人である。清水さんという人は、人事局の人事第一課だが、これも警察庁の警務局の人事課付である。秋山さんという人は、長官官房総務課長だが、これも警察庁の警務局付である。その次、金谷さんという人は調達実施本部の副本部長だが、これも警察庁警務局付から来た。山田さんという人は長官官房総務課だが、警察庁警務局人事課付である。小川さんという人は警察庁警務局。樗木さんというのも警察庁警務局。  これを見たら、いまの防衛庁というのは警務局の出先なんでしょうか。ここに私は、先ほど私が取り上げましたこの国家公安委員長と防衛庁長官との昭和二十九年の協定、それ以後の細目協定、昭和三十五年のこの訓令、それから現地におけるいろいろな協定を見ると、いまあなたのほうはほとんどこの警察庁の警務局で占められている。一体いまの防衛庁というのは警察庁の警務局でおやりになるのですか。そうして、あげてこのことは、したがって自衛隊本来の仕事ではなくて――だから、この間、町を通る人は私らに何と言っているのです。いま自衛隊の諸君は、相手に学生服を着せて、そしてこちらから突破して、向こうをデモ隊になぞらえて、わっしょわっしょやって、これから突破する、そういうけいこしかやっていない。だから、治安行動の問題がこういうようにすっぱ抜かれて、十月三日からやっていると言われている。  私はあなたにぜひひとつこの点について資料を要求しておきたいことは、まず治安行動、昭和三十六年の国会に提出のときは参議院に提出をしたが、これは治安行動草案となっているが、今日はおそらく治安行動教範でしょうが、これはぜひ出してもらいたい。それが第一点。それから、いま私が申し上げた協定は一部でございまして、その中にはその治安出動のときに関連してのいわゆる尋問その他いろいろな人権に関する問題が関連法規として載っているから、それをぜひわれわれに示してもらいたい。出してもらいたい。そのことをまず資料要求をひとつしておきたい。その点についてまず答弁をお願いをしてから、それからあとでまた二、三お尋ねをします。
  221. 松野頼三

    ○松野国務大臣 だいぶ前提が私の考えとは違っているところがあります。  その人事の第一は、昭和二十何年ですか、保安隊ができてから、十五年目です。したがって、防衛庁採用人事というのがまだ成長していないために、各省からの出仕ということで成長しております。しかし、今後これが永続するものではありません。だんだん自衛隊本来の人事にこれは入れかわっております。しかし、最初の保安隊、警察予備隊という成長過程から見ると、人事の過去がそうなっておった。その残物が今日残っておるだけで、これが今後とも成長するわけではありません。だんだん減ってまいります。  第二番目に、ただいまの草案、参議院に出したことはありません。参議院で、こういうものじゃないかというお示しを共産党の方がされました。しかし、それは現物で私のほうが出したわけじゃない。参議院の共産党が、こういうものを草案としておるんじゃないかというのがありまして、もちろんその事実をわれわれのほうが出したことはありません。また、御要求でございますが、今日成案は得ておりませんので、提出いたすことはできません。できておりませんから提出いたすことはできません。草案あるいは操典と言われましたけれども、どちらもできておりませんので、これは提出する段階では今日ございません。
  222. 横路節雄

    横路委員 長官、協定は。協定、訓令、細部協定、現地協定、関連法規その他は全部あなたのほうでちゃんとできておる。
  223. 松野頼三

    ○松野国務大臣 治安出動の際における治安の維持に関する協定、これは提出いたすことができます。その他細目については、これは現地のものでありますので、あまり小さなものですから、この国会で審議されるにはあまり小さな問題。したがって、昭和三十何年ですか、横路委員御要求になりまして、基準というものを要綱として提出いたしております。そのときにも相当御審議をいただいておりますので、とうぞひとつわれわれの――今日、秘密を言う意味じゃありませんけれども、警察官の、あるいは自衛隊の隊nが一々言うことまで細目という協定はございません。したがって、警察との重要な基準及び協定については、もちろん提出いたす準備を御要求どおりいたします。
  224. 横路節雄

    横路委員 それでは、いまあなたのお話はあれですね。陸幕発3の第九〇号別冊、治安行動の参考、関係主要治規、陸上幕僚監部で昭和三十五年五月に出してございますいわゆる法規の解釈、その中に――法規の解釈を出していただけますね。それは、いわゆる犯人の逮捕、引き渡しに関する件、いわゆる武器の使用に関する件、その他いろいろ人権に関する問題がありますから、ぜひひとつ出してもらいたい。それから、いまあなたが出すと言った訓令、それから協定、細目協定、その他出していただけますね。ただ、あなたがいま言われたのは、現地協定というのは北海道から全部で何ぼになりますか、現地協定は二十七ある。だけれども、これはあまりこまかいから出せないというわけですね。現地協定を除いて全部出していただけますね。
  225. 松野頼三

    ○松野国務大臣 非常に書類が零細なものでありますから、全部出すことはいたしません。要綱及び基準、基本の法令については提出いたします。
  226. 横路節雄

    横路委員 あなたのほうで九月の初めに、この日韓のデモに備えて、大衆行動に対して――なるほどあなたのほうのことばで言えば暴徒かもしれません。大衆行動のデモに対して陸上幕僚監部の二部、三部、四部が計画をし、それを十月の三日から七日まで演習を実際にやった、そういう事実はどうですか。計画をしたことはあるんですか。計画をしたことはあるが、演習したことはないとか、計画もないし演習もないとか、その点明らかにしてもらいたい。
  227. 松野頼三

    ○松野国務大臣 計画もありません。演習もございません。
  228. 横路節雄

    横路委員 私は総理に最後にお尋ねをして終わりたいと思うのですが、総理、今度は、この日韓条約については、まだ私は経済協定の問題についてだいぶ残っていますから、この問題について詳細にお尋ねをいたしますが、われわれはこの問題を調べれば調べるほど国民はいろんな疑惑を招くから、おそらく国会に請願、陳情のデモがある、そういう場合に、よもや総理としては、その大衆行動の規模が非常に大きくなったからといって、よもや自衛隊の出動を求めるというような、治安行動の出動といいますか、そういうことはなさらないと思うのですが、この点だけはひとつはっきりしておいていただきたいと思います。
  229. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話のように、陳情あるいは請願等のデモはおそらく良識によって行動することだ、かように思いますので、さような状態のもとにおいて、自衛隊云々の問題は絶対にないと、かように思います。
  230. 横路節雄

    横路委員 それでは私、対日請求権八項目ができました際に経済協力全般についてお尋ねをしたいと思っています。この問題につきましては、ひとつ委員長のほうで取り計らっていただくことになりましたから、経済協力全般について、協定、合意議事録、交換公文、その他全文について私は詳細にお尋ねをしたい、たくさんの問題点がございますのでお尋ねをしたいと思います。きょうのところは一応経済協力の問題を留保いたしまして、一応きょうの質問はこの程度で終わります。(拍手)
  231. 安藤覺

    安藤委員長 石野久男君。
  232. 石野久男

    ○石野委員 総理お尋ねしますが、日韓条約は、日本の現在の事情のもとで、条約としても、他の諸国との条約と比較すると、非常に重要な、また、違った歴史的意義を持っておると思います。総理は、この条約は「戦後十四年の長きにわたり両国政府が努力を重ねて到達した成果であり、日韓両国間に新しい正常な関係をもたらし、平和と友好を実現するためのものであります。」と、こういうふうに言っております。先ほど横路委員にもお話がありましたが、私は、なお総理に、日本韓国との条約を結ぶにあたっての、日本の国の総理大臣としてのかまえ、心がまえというものを、どういうお考えを持っておられたか、特に歴史的な経緯等にかんがみて、この際ひとつとっくり話を聞かしてもらいたいと思います。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日韓条約の背景をなします、両国の関係、これはもうしばしば申し上げ、また、石野君も熱心にお聞き取りいただいたと思います。ただいまお尋ねになりますように、これは隣同士の国であります。一衣帯水ということを言われておりますが、一衣帯水の間にある。しかも、歴史的にたいへん深い関係を持っております。   〔委員長退席、木村(武雄)委員長代理着席〕  その間は、それは不幸な事柄もあった。また、人的交流あるいは文化的交流におきましても、非常に双方に恵まれたという関係もある。こういう古い間柄にあるこの両国でございます。したがいまして、これは政権そのものとのいろいろの交渉もございますが、それよりも、もっと人的な交渉がたいへん密接であります。その国が終戦後日本から独立した。それが二十年たちましても善隣友好関係を樹立することができない、この点は各方面でまことに残念だといわれておりました。また、交渉が始まりましてからも、これは十四年の長きにわたっております。しかも、これは、国際的に見まして、こんなむずかしい交渉はないといわれておる。ただいま申しますように、歴史的に深い関係がありますだけに、考え方によっては、うまくいけばたいへん親交を樹立することが容易でございますが、しかしながら、間違ったというか、あるいは一たんその路線を誤りますと、たいへんむずかしい問題になるのであります。十四年の長きにわたりましたということは、過去の歴史に基づいてのいろいろの主張が双方にあったということでありましょうし、また、双方のしんからの理解、それを十分できなかったということもあるだろうと思います。これが、ただいま申し上げるように、長い間の懸案として交渉を妥結することを容易ならしめなかった、かように私は思います。しかし、両国政府当局が、長い交渉にもかかわらず非常な熱意を持って、そうして、隣同士だ、歴史的にも地理的にも非常な密接な関係があるんだ、人的交流もこの両国くらい複雑なものはないんだ、どうしても善隣友好の関係を樹立しようという、この熱意がようやく妥結に至らしめたと思います。しかし、さような状態でございますから、今日この条約についての批判が両国におきましてもきびしくあるだろう。これは、おそらく、両国の政府当局、これを折衝いたしました私を含めまして全部が、自分たちの主張が一〇〇%通った、満点だ、こういうような感じはおそらくみんな持っていないだろう。しかし、これはベターなものだ、ベストなものだという自信だけは持っておる、かように思います。そういうように、この背景が、ただいまお尋ねになりましたごとく、歴史的な関係あるいは経済的な関係、地理的な関係、人的交流の関係、文化的交流の関係等々、密接であればあるだけに、非常にむずかしい問題だった、この点を御了承いただきたいと思います。
  234. 石野久男

    ○石野委員 総理は、この交渉が非常にむずかしい交渉世界的にいわれていると言っておりますが、なぜむずかしいのでしょう。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、双方で複雑な関係がありますだけに、それを解決していく上において、双方の主張、これを話し合いで近づけていくこと、これはなかなかたいへんだった、かように思います。先ほど来お話のありました一つの問題、たとえば請求権の問題、これが経済協力に変わったという、そのいきさつにいたしましても、これはたいへんな問題だった、かように思いますし、また、必ずお尋ねがあるだろうと思います在日韓国人の法的地位の問題、これあたりも、全部が日本人であった、そうして一緒に生活していた、こういう関係がありますだけに、これは普通の外国人との関係とは事が変わっている、そういうことで、たいへんむずかしい状態だった、かように私は思います。
  236. 石野久男

    ○石野委員 私は、この条約が非常にむずかしい交渉になっておるということについての総理の答弁は、おそらくこういうことになるのだろうと思っておったのです。それは、いま日韓条約では、三十八度線の南との交渉をしている。しかし、過去三十六年の日本と軌鮮との関係からすれば、当然これは全朝鮮についての問題を考えなければならなかったはずだ、こう思うのです。総理はそういう点は全然考えていなかったのですか。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうこともございます。
  238. 石野久男

    ○石野委員 そこで総理は、全朝鮮の問題はこの際は全然考えないということですね。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、いままでたびたび申し上げましたように、ただいま朝鮮半島におい七、韓国でなくて、あるいは北に別な権威があるというようなことで、同一民族が二つの権威に分かれておる、これを心から気の毒な状態だ、民族の悲劇だ、かように私も思っております。そういう意味で、南北の統一の日が一日も早く実現することを心から願っておるものでありまして、これらの点については横路君からもいろいろお尋ねがございまして、私どもは、国連中心、その国連決議のもとにおいて、また、国連勧告のもとにおいて、これが実現できることを心から願っておるのでありまして、そういう意味で南北統一、単一国家の実現に協力したい、かように思っております。
  240. 石野久男

    ○石野委員 総理は、この問題については国連中心主義だということを非常に強調される。しかし、日本の立場からすると、戦争が終わったあとにポツダム宣言を受けた。その中からやはりいろいろな戦後の歩みというものが出てきていると思うのです。いま総理は、このポツダム宣言あるいはカイロ宣言、朝鮮に関しては特にモスクワ三国外相会議の宣言があります。こういう問題は、この際、朝鮮に関する問題として全然考慮する必要はないという考え方でしょうか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 申すまでもなく、日本は無条件でポツダム宣言を受諾した、そういう立場にございますので、日本がこういうものは考える余地はないとか、こういうようなものではございません。私がただいま申し上げておりますのは、横路君にも申しましたが、石野君も同様ではないかと思うのは、社会党の諸君もやはり国連尊重という、かような立場でおありではないかと思います。この点、私が誤解しておれば別ですが、さように考えますと、国連が幸いにもこの南北統一の具体的案を提示しておりますし、また、朝鮮半島においての権威をちゃんと決議で確認をいたしております。そういう点を、私どもは、国連中心という立場から尊重するのは当然だと思います。また、私は、社会党の方も国連中心であられるのではないか、かように思っておりましたので、別な議論が出てくるなら、この点はとくと私どもにも聞かしていただきたい、かように思います。
  242. 石野久男

    ○石野委員 別な議論じゃない、いま総理に聞いていることは、特に朝鮮の問題については、このカイロ宣言あるいはモスクワ宣言あるいはポツダム宣言というようなものを全然配慮しないままで、いろいろ外交施策をやっていっていいかどうかということについて、総理考え方を聞いている。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのカイロ宣言あるいはポツダム宣言等々を考えて、これを、無条件に降伏したそのときの条件といたしまして、これに従って朝鮮における統治権、これを放棄したわけでごいざます。だから、この点では、日本はもちろんポツダム宣言を忠実に守っておる、こういうことでありますし、また、その後サンフランシスコ講和条約というものがあり、そうしてそれによりましても、ただいまお尋ねのありますような点は明白になっておるわけでありますし、さらに国連がいろいろ決議しておる、それを今度は私どもは守っていく、かように、日本の態度としては、ポツダム宣言以来、これは一貫して筋の通ったことをいたしておるつもりでございます。
  244. 石野久男

    ○石野委員 朝鮮に関する日本外交的な態度というのは、やはりカイロ宣言に導かれて、そうしてそれをポツダム宣言を受諾したということによって行なわれる、こういうような立場で政府はいろいろな交渉をなさっておる、こういうように承ってよろしいですね。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来申しましたように、ポツダム宣言を無条件に受諾した、そうして降伏してまいったのですから、それから、サンフランシスコ条約、これによりましてこれらの関係を規律しておるということは御承知のとおりだと思います。(「カイロ宣言は」と呼ぶ者あり)カイロ宣言とポツダム宣言との間の関係は、御承知のように、カイロで宣言して、ポツダムでこれを承認した、そうして確認し、それで宣言している、こういうような状況でございますから、その点は誤解のないように願っておきます。
  246. 石野久男

    ○石野委員 誤解しているのじゃない。総理にもう一度聞きます。とにかくカイロ宣言の「朝鮮ノ人民ノ奴隷状態二留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス」という、この三国の考え方というものを、無条件にポツダム宣言で受けているわけです。だから、そういう考え方朝鮮問題というものは外交的に対処する、こういうふうに政府は立場をとっておるのと違うのですか。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、日本が降伏したときには、ポツダム宣言、これを無条件で受諾する、こういうことでございます。カイロ宣言は戦争中に出した宣言でございます。だから、そのときのカイロ宣言を直接どうこうという――それは戦争中の問題だった、かように思います。なお、こういう法律関係につきましては、条約局長から正確に説明させたほうがいいかと思いますが、私は先ほど申すように、カイロ宣言は戦争中の宣言だ、これは相手の国がそういう宣言をしただけなんですが、その宣言をポツダム宣言で引き継いでおる。そのポツダム宣言を日本は無条件で受諾した、かように考えております。だから、その関係は、ポツダム宣言を主体にお考えをいただいて、そのポツダム宣言が認めておるカイロ宣言という範囲においては、これは問題のないことでございます。そういう意味法律関係で、もしはっきりしないなら、条約局長に説明させたい、かように思います。
  248. 石野久男

    ○石野委員 条約局長にまで聞かなくても、総理に聞いたほうが一番よくわかりやすい。それはポツダム宣言の第八項には、「「カイロ」宣言条項ハ履行セラルベク」ということ、これを無条件に日本が受けているのだから、カイロ宣言がどうだこうだというようなことを考えなくてもはっきりしているわけです。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはカイロ宣言の字句の問題がいろいろあるようでございますから、ただいま申し上げますように、条約局長から説明させたほうが誤解がないかと思います。
  250. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ポツダム宣言には、御指摘のように「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」ということがございまして、このポツダム宣言を日本は受諾したわけでございますが、そのことは何もそのカイロ宣言に書いてある一字一句まで全部日本が賛成した、つまり台湾とか満州とか膨湖島が中華民国に返還されるとか、朝鮮の独立を認めるとかいうことは、これは履行せられなくちゃなりませんけれども台湾を盗取したことを日本が認めるとか、あるいは朝鮮でこういうことを――食慾をやったとか、そういうことまで全部日本が賛成しなければならぬという意味が含まれているものとは考えておりません。
  251. 石野久男

    ○石野委員 条約局長に聞くけれども、ポツダム宣言は、受諾したときには、どういうような条件をつけて受諾したのですか。
  252. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ポツダム宣言にいろいろ条件をつけて受諾するということではございませんで、ポツダム宣言第八項の「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」という趣旨は、カイロ宣言のそういう、いろいろ敵国が形容詞的に使った動詞まで全部日本が賛成するという意味は含まれておらないということを申し上げておるわけでございます。
  253. 石野久男

    ○石野委員 ポツダム宣言の受諾にあたっては無条件にこれを受けているわけです。これはもうだれがどう言おうとも無条件に受けたわけです。私はむずかしいことを聞いておるわけじゃないのです。朝鮮に対する日本外交政策というものを、今日どういうところに基因して行なうべきかという基本的な態度について、日本の国の総理大臣の意見を聞いているわけだ。カイロ宣言は、「朝鮮ノ人民ノ奴隷状態二留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ右ス」という、この宣言をやはり履行すべくわれわれはこれを受けたわけだ。だから、そういう立場でわれわれが敗戦という形の中から新しい道を歩んでくるにあたって、朝鮮に対する外交政策というものは、総理が先ほど言ているように南と北と現実はこうだけれども、いまそれでもうよろしいとか、あるいはまた必ず一つになるものだと確信していますなどというようなことでこれは許されない内容だというふうに私は思っているわけです。これは総理に私は聞くのだが。日本朝鮮との外交関係は、ただ今日の問題だけじゃないと思います。これから長きにわたるところの国是を決定する、そういう立場から私は真剣に考えなければいけないと思うのです。先ほどから私はいろいろ論議を聞いておりますと、やじもあるし、また答弁にしたって、その場のがれの答弁をしようという態度が非常に強い。しかし、私は、こういうようなことは許されてはいかぬと思うのです。国の審議の中で、もう少しまじめにやらなければいけない。特にまじめにやらなくちゃいけないということについては、このポツダム宣言の中に、われわれが敗戦のときにこのポツダム宣言を受けたときに、連合国は日本にどういうことを言ったか。「吾等ハ無責任ナル軍国主義ガ世界ヨリ駆逐セラルル二至ル迄ハ平和安全及、正義ノ新秩序が生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙二出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久二除去セラレザルベカラズ」ということを、このポツダム宣言ははっきり言っておるわけです。そうしてわれわれはこれを受けてきておる。その当時、わが国はあの大戦に至るにあたっては、東條内閣のもとにすべての者が一億一心で詰め込み式に全部追い込まれて、あの戦争にたたき込まれた。いま私たちがここで考えなければならぬことは、日本国民を欺瞞してはいけない。そういう立場から、いま政府が、この日韓問題を論議するにあたって、まじめな態度で――行き違いがあるからといって、ただ、ことばの言いがかりだけだとか、あるいは言いわけだけでこの条約の審議をしていくならば、今後の日本の将来に対して非常に大きなあやまちをおかす。   〔発言する者あり〕
  254. 木村武雄

    ○木村(武雄)委員長代理 静粛に願います。
  255. 石野久男

    ○石野委員 そういう意味で、私は論議はまじめにやってもらいたいということが一つと、それから朝鮮に対する態度については、やはりこのカイロ宣言に導かれて、そうして過去の歴史的な反省の上に立ったところの朝鮮に対する外交対策というものが出てこなければいけないのじゃないか、こういうように私は考えるのです。政府はそういうように考えていないのかどうか。総理はそういうように考えているかどうか、このことをはっきり聞かしていただきたい。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話しになりますことは、私も全然同感でございます。私が善隣友好、また、平和に徹した外交を述べておりますのも、ただいま石野君の御指摘のとおりでございます。私は、本会議、この特別委員会で、たいへんまじめな、真剣な論議をかわしておると思いますが、その点では各大臣も同様でございますけれども、こういう点で、なお私どもの真剣さが皆さま方に伝わらないということはまことに残念に思います。一そう注意をいたします。  また、ただいまお話しになりますごとく、今日、親善友好関係を立て、そうして韓国がりっぱに経済的にも成長し、また、政治的にも安定し、その国民生活も向上するということを願えばこそ、経済協力、この協定もでき上がったのでございます。また、韓国との基本条約どもこういう立場ですべてが考えられておる、この点は十分御了承いただきたいと思います。
  257. 石野久男

    ○石野委員 いま総理の答弁がそういうことだから、私はもう一度聞きたい。総理がいま言うのは、韓国がということを言う。朝鮮という三十八度線の北にある、こちらのほうにはどうなんだということ、三十六年間の支配の反省というもの、これが出てくるのはやはり北の民主主義人民共和国というものに対してどういうような考え方を持っておるかということが出てこなければ、それでなければ日本総理大臣としての過去の歴史に対する反省は出てこないから、私はそれを聞いておるわけですよ。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねになりますことはよくわかりました。実は、私は、韓国との条約をいま御審議願っているので、この問題だと、かように思っておりましたが、ただいま北の部分についての問題は、この韓国条約では全然触れておりません。その点はしばしば申し上げたとおりでございます。また、私どもは、触れてないからといって、いままでの扱い方を変える考え方はございません。これははっきり申し上げておきます。
  259. 石野久男

    ○石野委員 いままでの考え方を変えないということは、当分の間は北のほうのことは全然もう考えないでいくんだ、こういうことですか。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点は先ほど来何度も申し上げておるのでございますが、私どもは、国連を国際の唯一の平和機構だと、かように考えておりますし、また、その国連中心として外交を進めていくということがわが国の基本でもございます。また、この点では社会党の方の御賛成も得ておると私は思っております。何事によらず、国連ではこう言っておる、国連の決議はこうだ、こういうことをいつも引用されますので、かように私は考えております。今回の処置は、国連の決議のとおりを私どもが行ない、また、国連の決議はその後も確認されておりますので、この点でただいま国連中心にものごとを考えておるということを申し上げておるのでございます。
  261. 石野久男

    ○石野委員 日韓条約の第三条の考え方でいった場合に、朝鮮の統一の問題は、おそらく当分はほとんど可能でなかろう、こういうようにわれわれは見るわけです。総理は統一は阻害しない、こういうように言っておる。どういうふうなお考えでその統一は阻害しないと言っておるのですか。
  262. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、国際的にただいま大韓民国承認しておる、これが七十一カ国ある。また、北を承認しておる国が二十三カ国ですか、そういう状態でございます。それがそれぞれ南を承認したものは北と交渉を持たない、北を承認したもの、は南と交渉を持たない、これが国際的ないまの外交のたてまえでございます。そこで私どもは、今回の日韓条約を妥結することによって日本は南北統一を阻害する、はばむものだ、実はこういう非難を社会党の方はしていらっしゃいます。しかしながら、いま国際的に見まして、七十一カ国はそれじゃ南北の統一を阻害しておる、かように言われるのか、また、二十三カ国も南北の統一を阻害しているんだ、かように言われるのか、ここらのところは、ややおくれてただいま日韓間で交渉を持とうという日本よりも世界には先輩の国があるんだということをひとつお考え願って、ただいまの阻害するということは、これはいまの承認あるいは条約締結とは事が違うんだ、むしろ国連自身が勧奨しております南北統一方式、これによって常北が統一されることが一番望ましいのでありますから、これが実現するように私ども努力すべきだ、また、南北双方がこの国連の勧奨を受けるということが最も望ましいことではないか、平和への解決の道ではないか、かように私は思うのであります。ただいままでのところ、南は、大韓民国はこの国連の方式を承諾している、北はこれを拒否しておるというのが実情でございますから、その点は変わりのないようによく御了承いただきたいと思います。
  263. 石野久男

    ○石野委員 北は拒否しているということは、なぜ ――国連方式というのは、それではいつ、どういう形で出たものをいうのですか。
  264. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 戦争終結直後から、国連は、朝鮮の、平和的統一という問題を掲げまして、これに対する決議等を行なっております。一方、英、米、ソ連三カ国があのモスクワ宣言をいたしまして、その宣言に基づいて米ソが共同委員会をつくって、そして国連の趣旨に従って南北の平和的統一をはかるために臨時朝鮮委員会というものをつくることをも提議いたしましたが、   〔木村(武雄)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、これに対して、ソ連が信託統治の問題を提唱し、李承晩その他の人の協議参加を拒否したために、ソウルにおける会合が決裂したのであります。そういうわけで、その後、国連の決議に基づきまして臨時朝鮮委員会というものがつくられて、この朝鮮委員会が国連の決議を背景にして朝鮮に渡って、そうして南北の、国連監視のもとに自由選挙を施行して、その選挙に基づいて、統一政府をつくるということに努力したのでありますけれども、、北鮮はこれを拒否して、朝鮮委員会の北鮮への入国を峻拒した。こういうことのために、やむを得ず南の部分だけについて自由選挙を行ない、そうして、これに基づいて韓国政府が成立した。こういう状況でありまして、この統一問題を終始国連が推進してまいりましたけれども、これをあくまで拒否したというのは、むしろ北鮮でございまして、この関係をわれわれは考慮に入れて、この問題を論議しなければならぬと考えております。
  265. 石野久男

    ○石野委員 外務大臣は北鮮が拒否したと言うけれども、そこへ行くまでの間、どういうふうに共同委員会というものが運ばれていたのですか。一九四六年の一月十六日に始まってから五月二十一日再開、そしてそれが歩み寄りが出て、七月五日にはもう臨時政府樹立の話合いができた。ところがそこまで行って、委員会と民主的な団体あるいは政党との関係などで話し合いが持たなくなったときに、だれがどういうふうにしてこの委員会をこわしたのですか。
  266. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国内の各代表者によって円満な会議をもくろんだのでありますけれども、ソ連の一部の人士に対する参加拒否ということから始まって、とうとう米ソの間の意見が対立してこのソウルの会合がお流れになった、こういうふうに私は記憶しております。
  267. 石野久男

    ○石野委員 この問題は、政府が今度の日韓条約第三条は国連方式で云々といっておりますが、この国連方式のよって来たるところはここにあるのだから、ここが一番重要だと思うのです。第一次の共同委員会が持たれて、それが話し合いがつく段階にいったときに、協議対象団体の選定の基準をめぐってモスクワ三相協定によって取りきめられている信託統治による独立の方式の問題、あるいはソ連軍駐とん下の北朝鮮は一致してこれを支持したのにもかかわらず、南朝鮮は信託反対の保守勢力と賛成の革新勢力とに両分された。こういうような事実が反映されたために、ソ連は協議対象団体選定の基準を信託統治の支持に置くべきだと、アメリカ側はこれに反対して臨時政府樹立に協力する意思のある限りすべて協議に参加させるべきであることを主張し決裂した。こういうのが実情です。この段階で米ソ共同委員会が第二次会談をその後約一年ぶりに持った。一年ぶりに持って、七月五日から協議に入っておる。その後暗礁に乗り上げてしまって、あげくの果てに十月十人目に米国から休戦の提案をしてきた。そういう事情なんでしょう。その当時の事情をもう少し政府のほうでちゃんと説明してみてください。
  268. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカは信託統治賛成、反対にかかわらず、とにかく代表的な人々を集めて民主的にこの統一問題を運んでいこうとしたのに対して、ソ連は、信託統治に初めから賛成するものだけの会合にしようというような意図をもって、まず両国の意見の対立が起こった、こういったようなことでとうとうこの合同委員会は流産に終った、こういうのでありまして、それではどうも事態が収拾されないので、国連としては新たに決議をして、そして臨時朝鮮委員会というものをつくって、そしてその朝鮮委員会は国連の決議の方式をもって現地に出かけた。その場合に、もう入国もさせないということで、ことごとくこの国連の運び方に対してこれを阻害した、やむを得ずこの南半分の韓国政府ができた、こういうことになっておるのであります。それで、その朝鮮委員会の現地の報告に基づいてできたのが、いわゆる一九五号の国連の決議である。今度の日韓条約でそれを引用しまして、韓国はかくかくの政権である、こういうことをうたって、そうして今度の基本条約にそれを入れた。こういういきさつでありますので、むしろ統一を阻害したほうは北にあるということがはっきりしておるのです。
  269. 石野久男

    ○石野委員 それは違うんだ。当的の事情からいうと、共同委員会の方式のときに、ソ連は、この問題を、朝鮮問題は平和条約締結と関連した連合国の戦後処理問題だ、だからこれは国連憲章百七条に違反している、こういう立場でこれに反対したわけですよ。そういうことをけってアメリカは国連のほうへ入れたんでしょう。国連へ入れて、その中で国連の持ち込みという形を一方的にきめてしまったのじゃないですか。
  270. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 百七条の問題を非常に社会党のほうで持ち出して、そして百九十正号の決議は違反であるというふうに主張されますが、これは何をもってそういうことを言われるのか、私はふしぎでしょうがない。百七条はいわゆる敵国条項でありまして、これは一口に言うと、旧敵国に対しては少し手荒なことをやってもよろしいというような趣旨の規定なんです。でまりますから、それと百九十五号の決議とは関係がない。それが違反であるなんというのは、どういうところからそういうことを言われるのか、非常にふしぎであると私は考えております。
  271. 石野久男

    ○石野委員 外務大臣お尋ねしますが、朝鮮の独立問題は、これは戦後処理問題とは違うのですか。
  272. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本から独立させるということは、なるほど戦後処理かもしれませんが、そうじゃなく、その独立した朝鮮というものにどういう統一政権をつくるか、どういう政権ができたかということの処理に、その現地報告をやったのがこの百九十五号でございますから、百七条にはこれは抵触しないのです。
  273. 石野久男

    ○石野委員 いま外務大臣はちゃんと戦後処理問題だと言ったでしょう。そうしたら国連憲章百七条の問題に抵触するじゃないですか。
  274. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本から朝鮮を引き離すということならば、これは敵国に対する戦後処理になりますけれども、そうじゃない。引き離されたものの処理に関する問題でありますから、百七条には抵触しないのです。
  275. 石野久男

    ○石野委員 朝鮮問題は、この国連方式でやるということは、もう明らかに国連憲章百七条の違反なんですよ。そういうような立場と、それからまた、これはモスクワ宣言にも、反しておるものなんだ。その上になおかつ、このいわゆる臨時朝鮮委員会なるものには朝鮮の人民自身が全然入っていないでしょう。民族自決の問題が全然入らない中でこういうことをやっておるでしょう。だから、この臨時朝鮮委員会なるものは、それ自体、国連憲章第百七条、あるいはまたモスクワ宣言、あるいはまた民族自決の国連憲章の精神にも反しておる。そういうようなものをなぜわれわれが守っていかなければいかぬのですか。外務大臣、どうなんです。
  276. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 憲章百七条につきましては、先ほど来再三繰り返して申し述べたとおり、百九十五号の決議はこれに違反しておらないという解釈は、正当な解釈でございます。
  277. 石野久男

    ○石野委員 この臨時朝鮮委員会がそういうような違反の内容を含めて進められていったが、この臨時委員会は何カ国からできておるのですか。
  278. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 政府委員から……。
  279. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 委員会は、オーストラリア、カナダ、中国、 エルサルバドル、フランス、インド・フィリピン・シリア・ウクライナ。ソビエトと九カ国でございましたが、あとでウクライナはこれに加入いたしませんでした。
  280. 石野久男

    ○石野委員 そういう状態の中でこの臨時委員会がソウルに着いたときに、外務大臣がいま言ったように、確かにソ連はこれを拒否した。それから南朝鮮のほうでも民主団体は拒否して、ほとんどこれは李承晩一派だけの支持で、これと協力して話し合いしたわけですよ。ですから、当時の実情をいうと、臨時委員会は仕事をしようとしても仕ができなかったわけだ。できなかったので、臨時委員会は中間委員会に協議するということになった。その協議の中で、中間委員会は、立ち入り得る朝鮮の地域で総会の決議を実施することは、臨時朝鮮委員会の責任であるという旨の決定をしたわけです。この決定をしたときに、この委員会ではどういうような賛否の票が出ておりますか。
  281. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大綱はいま申し上げるとおりでありますが、その賛否の票数等につきましては記憶しておりませんので、後刻よく調べて申し上げます。
  282. 石野久男

    ○石野委員 これは後刻じゃない、いま国連方式を中心にするということを政府はたびたび言うから、私はこれを聞かなくちゃいけない。その当時の事情を明確にしなければ、その方式によっていいかどうかということがわからないから、それで聞いておるのです。
  283. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体ソ連圏、共産圏は全部反対で、あとはみな賛成だったと思います。
  284. 石野久男

    ○石野委員 後宮局長はわからないのか。はっきりしろよ。
  285. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いまちょっと票数を持ち合わせておりません。
  286. 石野久男

    ○石野委員 これはただわからないじゃいけないのですよ。一九四八年二月六日の臨時委員会で、臨時朝鮮委員会が中間委員会と話し合いをして、二月二十六日にその決議をしたときのその当時の事情というものは非常に重要です。だから、この朝鮮委員会の中での賛否の票というものは、これははっきり聞いておかないと、私のほうで言ったって、また違うと言われると困るから、一応そちらで調べてみてください。   〔発言する者あり〕
  287. 安藤覺

    安藤委員長 いま資料を取り寄せておりますから、ちょっと御静粛に願います。――いま資料を取り寄せておりますから、しばらくお待ちいただきとうございます。御静粛に願います。   〔発言する者あり〕
  288. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっとお待ちください。もう資料も到着したようです。いま写しておりますから……。
  289. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 おくれまして恐縮でございます。  この問題につきましては、最初、ニューヨークの国連委員会で、北鮮に国連委員会が入れなかったけれども韓国、南半分のみで選挙をするかどうかということを、まず国連の小委員会で二月の二十六日に表決に付しまして、そのときの結果は、賛成三十一、反対二票、それから十一票が棄権でございます。これに基づきまして、この小委員会、インドのメノンが委員長でございますが、これが現地に帰ってまいりまして、この委員会の中でさらに表決に付したところが、賛成が四、これはインド、フィリピン、サルバドル、中国、それから反対が二、カナダ、豪州、それから棄権が二票、フランス、シリア、こういう結果でございます。
  290. 石野久男

    ○石野委員 これがその当時の実情なんです。九票のうちの四票が賛成で、二票が反対、二乗が棄権、こういう状態なんです。こういう状態の中でこのいわゆる国連監視下の選挙なるものに入っていったわけなんです。こういうような実情を総理はどういうように考えますか。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは適法に行なわれたと、私はかように考えております。
  292. 石野久男

    ○石野委員 大きい声で答弁がしにくいほど、非常にこれはみみっちい賛成なんです。しかもこれは、先ほど言うように、アメリカが強引に、この中間委員会というものが、立ち入り得る朝鮮の地域において総会の決議を実施する、こういう形で国連監視下の選挙というものを持ち込んだわけです。この百九十五(III)というものが、もともと、国連憲章の百七条、あるいは民族自決の問題、あるいはまた内政不干渉という問題を全部抹殺するような形で行なわれた。そういう実情のものを、いま国連方式によるんだということで政府はとっているわけですよ。米ソ共同委員会というのが朝鮮の独立問題について責任を持っているということになっておる中で、アメリカが強引にこのような形をしてきた事実を私たちはやはりはっきり知っておかなければいかぬと思う。こういうことを見てみると、われわれは、今度の条約第三条によるような形で朝鮮問題を処理していくということについては、非常にこれは根拠が薄い、しかもまた、われわれの朝鮮問題については三十六年の長い間の支配の反省というものを含めて処理していかなければならぬという立場からすると、これは非常にその条件を十分満たしていないし、また、日本の民族が朝鮮の民族に対する立場からしても、それは十二分なものだとは言えないと思うんですよ。総理はそういう点をどういうふうに考えますか。特に私は、また元へ戻りますけれども総理が、朝鮮問題について三十六年間の支配の反省、こういう問題はやはり頭の中に入れるべきだということを私は強調しているのですが、こういうような実情と兼ね合わせてもう一度総理大臣朝鮮問題に対する考え方というものをはっきりひとつこの際伺わしてもらいたい。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、椎名君がソウルに参りまして申しましたこと、これはたいへん日本国民の気持ちを率直に表現しておると、かように思います。また、総理である私自身の気持ちも、椎名君のあの反省しておるということばのうちにあらわれておると、かように私は感じております。したがいまして、今日ただいま三十六年の過去についての反省がどうとかこうとか、こういうことも言われますが、これも大事なことでありますので、これを不問に付せとは私は申しません。しかし、もっと大事なことは、これから新しい関係をつくり、そうしてスタートしていき、どういうように両国が親交を結びつけるか、そういう成果、それこそ、今後の問題であるが、両国民が心から願っておるものじゃないか、かように私は思うのでございまして、そういう意味で今回の条約も、また各種協定もつくり上げたのでございます。先ほど来いろいろ国連中心の政治についての御批判がございますが、私は、ただいまの状況のもとにおいて、平和で南北が統一が実現できる、これはやはり国連がサゼストしているその考え方が最も望ましい方法ではないかと思います。この点でやはり具体的な案を一つ国連が示しておるのでありますから、これが反対なら反対だと、石野君は、具体的に、こうしたらいいじゃないか、こういう話が出てきて、初めて建設的な意見ということにも実はなるのじゃないかと私は思うのでございます。ただいま日韓間の問題について私はこういうような考え方で建設的にこの問題を処理していくという考え方でございますから、どうか誤解のないように願っておきます。
  294. 石野久男

    ○石野委員 社会党に建設的な意見がないからというような――社会党は建設的な意見をちゃんと持っておる。私自身もちゃんと持っておる。私は、今度の日韓問題については、朝鮮との関係においていまのようなやり方をしてはいけないという意見を持っておる。少なくとも三十六年間の支配の反省の上に立って朝鮮日本との関係を今後長く平和的友好的にするには、どうしても朝鮮の平和的統一をさせるべきである。それまでの間は、いま三十八度線というもので現実に分かれているんだから、その三十八度線で分かれておる北と南の朝鮮については、日本とお互いに人的交流をしようじゃないか、人的交流をお互いにして、そうしてその交流あるいは経済交流、そういうことをやる形の中で朝鮮の中に平和的な統一の情勢をつくる、その平和的な統一をつくった中でその統一国家ができたときに日本朝鮮とは平和条約を結ぶという形をするのが一番いい、こういう考え方をわれわれは持っておるのですよ。ところが、政府のいまやっておるやり方は、国連方式国連方式ということで、こういうやり方をしております。先ほど話があったように、中間委員会から今度はやはり国連総会へ入ってくる順序があります。その順序について、ここではどういう形で、百九十五の(III)に来るまでの間どういうふうに委員会に当たってきたのか、これは外務大臣、ひとつ説明をしてもらいましょう。
  295. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それはさっき、この臨時委員会の現地における行動の結果、報告を聞いて、そうしてでき上がったのが百九十五号でございますが、詳細は事務当局から申し上げます。
  296. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 お答え申し上げます。先ほど御指示ございましたように、米ソの共同委員会が、米ソ間の意見の不一致によって流産になりましたので、局面の打開をはかりますために米国が要請いたしまして、一九四七年の二月、初めて国連の第二総会にこの朝鮮問題がかかったわけでございます。その後、この年の十一月十四日に決議ができまして、国民議会の選挙施行を監視する。そうして国民政府の形成を援助する任務を有する国連臨時朝鮮委員会、メンバーは先ほど申し上げました八ヵ国でございますが、これの設置が決定されたわけであります。ただし、北朝鮮のほうでこの臨時委員会の立ち入りを拒否いたしましたために、委員会は、南朝鮮で行なわれました選挙、これは一九四八年五月に行なわれたのでございますが、これのみを監視することができました。この選挙に基づきまして、同年八月十五日に南鮮のほうで大韓民国政府が樹立されました。他方、北朝鮮のほうでは、やはり四八年の八月に、最高人民会議代議員の総選挙が実施されました。これに基づきまして、北鮮のほうでは九月九日に朝鮮民主主義人民共和政府の樹立が宣言されたわけでございまして、そうしてこの十二月に国連総会におきまして、いま問題になっております国連決議第百九十五号というものが採択された。そういうふうな経過になっておりまして、このあと一九五〇年の朝鮮動乱に続くわけでございます。
  297. 石野久男

    ○石野委員 第二回の国連総会決議十一月十四日の百十二号の(Ⅱ)というのはどういうような内容を持っているのですか。
  298. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 朝鮮の独立問題に関する一九四七年十一月十四日第二総会決議百十二号でございますが、非常に長い決議でございますが、要点を申し上げますと、まずA項におきまして、朝鮮問題というのか、やはり第一義的には朝鮮人民自身がきめる問題であるということをメンションしております。それから同じく二一項で、しかし、朝鮮人民の代表者が参加して、そうして、用のいわゆるかいらい政権ではない政府が任命されたものであることを観察するために、全朝鮮を旅行して観察する権限を持っている国連臨時朝鮮委員会を直ちに設置することを決議したわけでございます。  それからB項におきまして、やはり朝鮮の民族的独立が再び確立されるべきであることを再確認いたしまして、そうして、その後すべての占領軍ができるだけ早く撤退すべきであるということを確信しております。そうして、先ほどメンバーを申し上げました臨時委員会のメンバーの国八カ国、ウクライナを入れまして九カ国をここで指定したわけでございます。そうして、ここで選挙に関する原則を述べておるのでございますが、ここだけちょっと重要でございますから、そのとおり読み上げますが、Bの第二項でございます。「朝鮮人民の自由と独立の迅速な達成について、委員会が協議することができ、且つ、国民議会を構成し朝鮮国民政府を設立することができる代表者を成年選挙制無記名投票によって選ぶ選挙が一九四八年三月三十一日以前に施行されることを勧告する。各々の選挙区又は選挙地帯からの代表者の数は、その住民に比例し、また、選挙は、委員会の観察の下に行われるものとする。」ということを、選挙の基本原則としてきめたわけでございます。  そうしてその次に、選挙の後できるだけすみやかに国民議会がまず会合する。そうしてその国民政府を樹立するということになっております。  それから、その次には、こういうふうにして政府が設立いたしましたら、正規の国家保安隊を組織いたしまして、占領国の軍隊はできるだけ早く、できれば九十日以内くらいに朝鮮から撤退するように、占領国と新しい政府がお互いに打ち合わせるべきだということを勧告しております。  大体おもな要点はこのくらいのところであります。
  299. 石野久男

    ○石野委員 この決議が示しているように、こういう選挙の中で、特に「原住民の代表者の参加なくしては、正確且つ公正に解決し得ない」ということが言われているわけです。それを強引に三月三一十一日以前にやれということだったんだが、この選挙をやる現実の朝鮮の実情は、その当時どういう状態だったでしょうか。
  300. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いまの決議に予想されておりますように、南には米軍を主とする占領軍がおり、北にはソ連軍がまだ進駐しておりまして、両方とも事実上の軍事占領下にあったという状況でございます。
  301. 石野久男

    ○石野委員 軍事占領下の選挙であった。その当時の実情は、四八年の五月十日に南朝鮮の単独選挙が施行された。しかしその当時は、この単独選挙に対しては、北はもちろんこれは反対しておりましたが、南のほうでも全面的に反対したわけです。全面的に反対して、たとえば最も右翼だといわれる金九あるいは金事植、この諸君までみな反対して、ただ李承晩だけがこれに一緒になったわけであります。そういう状態の中で、韓国民主党だけが参加してやられた選挙なんです。それに対して、先ほど後宮局長から言われたように、九月の九日に北朝鮮だけの単独政府というものがしかし、向こうでは、この北朝鮮は、これはその当時行なわれた全朝鮮に対するところの選挙を通じての形で、金日成氏が選ばれていった。こういう形になっている。そういう実情は外務大臣承知でしょうね。
  302. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体そのとおりだと思います。
  303. 石野久男

    ○石野委員 このような事情だとすると、この国連監視下におけるところの選挙というものは、その当時の韓国の実情の中でもほとんど拒否されておったし、これは先ほども私が申し上げたように、米ソ共同委員会の中で、強引にアメリカがその共同委員会というものを打ち切りにして、それを国連にこの議案を入れる、朝鮮問題を入れるという形をしていって、そういう中で、しかも小委員会は単独選挙ということを、また非常に少数のすれすれの、九名のうち実質的には四名しか賛成がない、そういう中でこの選挙を強行しているわけです。こういうような実情は、どちらかというとわれわれにとって、こういう決議の、これから出てきた選挙というものをどういうふうに見るべきかという一つの問題点を残していると思います。日本は、こういうような状態の選挙というものを受けて立つにあたって、それじゃ国連決議というものによってどういうような拘束をわれわれは受けるのだろうか、こういう問題が一つ出てくると思います。外務大臣国連決議は日本をどういうように拘束しておるのですか。
  304. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その当時は、もちろん国連に加盟しておりませんけれども、その後、この百九十五号の決議は、毎年総会において繰り返し確認をされておる、こういう状況でございます。
  305. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いているのは、毎年繰り返しているということを聞いているのじゃないのです。国連決議というものは日本をどういうふうに拘束するかということなんです。
  306. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 百九十五号は、いわゆる厳格な意味において拘束力とか何とかということじゃなしに、それは加盟国に対する勧告としてこれを決定しておる。勧告案でございます。
  307. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、この国連決議百九十五号(III)というものについて、先ほどから私が、占っているのには、対朝鮮との関係の中で、対朝鮮問題を戦後処理として処理していくにあたって、こういう国連決議というものを日本がそれじゃどういうふうに受けて立つかという問題が一つ出てくるわけです。これは別に義務としても何で毛ないわけですね。どういうふうに総理はしますか。
  308. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはもちろん国連の重大な決議でございまして、日本は加盟国としてこれを尊重して方針を立てておるのであります。
  309. 石野久男

    ○石野委員 この国連決議は、その後何回か繰り返しされておる。だけども、この国連決議百九十五号(Ⅲ)は、いまも、先ほどから言っておるように国連の憲章にも反しておる。そうしてまた民族自決権、内政干渉の問題にまでも触れておるということで、われわれはこれを認めることはできない、そういうものをやるということはよくない、こういう見方をしておるわけです。しかもこの条項は、その後われわれがなにしておるように、三十八度線を越えて、アメリカ軍が国連軍の旗を持って出て行くというようなことまでも認めるような内容を持っておるものですね。そういうことについてのなには、しばしばわれわれは、質問をしておるが、そういう問題について、政府はどういうふうに考えておるか。
  310. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほどお話したように百九十五号は、国連憲章一〇七条には絶対に抵触しておらない。一〇七条は旧敵国にすなわち日本に対して国連憲章の原則に必ずしも適合しないような、少し手っとり早い表現で言うと、手荒なことをやっても、まあ、それは見のがすというような条項であります。もしも日本が百九十五号の当時に朝鮮をまだ領有しておったという場合ならば、これはあるいはそういう問題に直接触れなくても間接に触れてくるようなことになるかもしれませんが、しかし、もうすでに朝鮮日本の領土ではないということになっておる。その領土から離れた朝鮮の政権に対して、状況報告をしたというこの百九十五号の決議というものは、決して一〇七条に抵触するものではない。  それからもう一つ、三十八度線を越えて北に向かうというようなことは、これはもう何ら百九十五号に関係のないことでありまして、そういう問題は、もちろん国連の決議としては、さようなことはあり得ないわけであります。
  311. 石野久男

    ○石野委員 総理大臣お尋ねしますが、総理朝鮮の統一については、やがて一つになるのだというふうに考えておるということを言われたのですが、しかし、実際には、この朝鮮の統一問題については、いつも日本の政府が国連などで発言しておるところを見ますと、できる限り北の朝鮮ということを認めないという立場で発言をしておるようです。なるべく統一ということについては考えないような、そういう立場をとっておると見ていいと思います。そういうような立場で、たとえば第十八回の国連総会で松井代表は、「在韓国連軍は朝鮮における国連の目的が完遂されではじめて撤退しうるものであり……」いや、ちょっと待ってください。   〔発言する者あり〕
  312. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。いま資料を調べております。
  313. 石野久男

    ○石野委員 第十八回の国連総会で、「北鮮側の主張する韓国からの「外国軍隊」の撤退要求は不当である。在韓国連軍は朝鮮における国連の目的が完遂されてはじめて撤退しうるものであり、そのためには北鮮当局が朝鮮問題を取り扱う国連の権限を認めるとと本に国連協力し、累次の総会議で規定されている恒久的解決のための諸条件が満たされることを強張」して、そうして北鮮側の、外国軍隊を撤退するという要求が不当だということを日本側が主張しているわけです。これはどういうわけでこういうことを、外国軍隊が朝鮮から撤退することについて北のほうが主張することを、甘木の政府は不当だ、こういうふうに言われたのか、そういうことをひとつ、政府の所信を聞きたいのです。
  314. 星文七

    ○星政府委員 私の記憶によりますと、そのときの議題は、朝鮮からあらゆる外国の軍隊を引き揚げるというソ連の要請された議題がかかりまして、そのときに問題になったと思います。ですから、その場合に松井大使の発言は、いまおっしゃったとおり、朝鮮の統一、独立した民主的な朝鮮というものが、その政府ができるまで国連軍がおるという、そういう目的から、いま直ちに全部引くことはできない、そういう意味の発言をしたというふうに記憶しております。
  315. 石野久男

    ○石野委員 総理お尋ねしますが、北朝鮮に対する、朝鮮民主主義人民共和国に対するわが国の態度でございますが、特にこの南朝鮮の立場というものを日本考える場合、日本は南朝鮮の防衛にとって不可欠の基地である、こういう考え方を政府はとっておりますか。日本は南朝鮮の防衛にとって不可欠な基地である、こういう考え方を政府はとっておられるか。そしてそれがまた北に対しても一つの態度だということ、日本外交政策の第一の目的であるという、こういうふうにあなたのところの内閣の調査室が言っているわけです。だから政府が、北の問題について総理が幾ら何と言っても、政府の考え方はこういう考え方で今度の日韓問題なんかやっているのと違うのですか。
  316. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま資料として出されたものは私にはわかりませんが、日本の安全は日本自身が守っております。また、韓国がどういうような状態をとっているか、それは韓国の問題でございますので、私どもの関与しておらないことでございます。
  317. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いているのは、総理が南のほうの朝鮮だけをいま真剣に考えて、北のことを考えないのは、実は北のほうに対する日本の態度、立場が、南朝鮮の防衛にとって日本が不可欠な飛地だと、こういう考え方を政府が考えておるか。違うのですか。
  318. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようなことはございません。
  319. 石野久男

    ○石野委員 それだったら、この内閣官房内閣調査室というのは、これは総理の下にあるのと違うのですか。
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 内閣官房調査室というのは確かに私の下にございますが、ただいま引用されておるものがどういうものでございますか、私に全然関係のないことでございます。
  321. 石野久男

    ○石野委員 内閣官房内閣調査室から出ている調査月報の一〇五号、一九六四年の九月です。それによると、こういうことがいわれておる。「日本は南朝鮮の防衛にとって不可欠の基地であり、逆に南朝鮮日本海への入口を制圧しているので、日本の安全保障にとって極めて重要である。歴史的にみても、南朝鮮を敵対する勢力に渡さないことが、日本の対外政策の第一の目的となってきた。」こういうように書かれておる。政府はこの態度できておるわけでしょう。
  322. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その調査月報、それにはしばしば個人の意見を載せるようでございます。たしか、それが政府の意見だ、政府の権威のある意見発表だ、かように断ぜられることは、やや結論を急いでおられるのじゃないかと思いますけれども、それは全部をよく読んでいただくとおそらくわかるのではないかと思います。それは政府のものでないことだけ、はっきり申し上げておきます。
  323. 石野久男

    ○石野委員 なぜこれを言うかというと、ここではいまからあと、おそらくまた同僚からも質問が出てくると思いますが、日韓問題、日韓条約のその本質が軍事的なものだ、特にNEATO体制に連なるものだということを、われわれは常にいままで指摘してきております。内閣官房調査室から出ておるこの書類によりますと、「東北アジアに平和保障体制を作る案も、朝鮮問題に真剣に取り組まない以上は、無責任な提案、もしくは為にする提案というほかはない。」こういうように書いてあります。――読めというなら読みますよ。「南北朝鮮における軍隊の対峙という現状をそのままにして日本が中立主義政策をとった場合、日本、特に沖繩という中継基地は失われる。その結果、朝鮮半島における勢力均衡は破れ、軍事力の上では北朝鮮が圧倒的に優勢となろう。同様に、東北アジアに平和保障体制を作る案も、朝鮮問題に真剣に取り組まない以上は、無責任な提案、もしくは為にする提案というほかはない。」こういうようにいっているわけです。また、このあとにはこういうように書いてある。「憲法第九条によって軍事的に他国を援助することを辞めた日本も、経済的には他国を援助することができる。経済援助を通じて南朝鮮を安定させることは、朝鮮半島の情勢を安定させるに役立ち、従って極東の平和にも役立つのである。」こういうように言っておる。そして「三八度線に沿って作られている要塞はマジノ線に数倍する強さを持つといわれ、突破は到底不可能である。従って、海路を利用して」云々と、こう善いてある。そうしてそのあとでこう書いてある。「長期的には朝鮮の統一中立化が必要であっても、今直ちにそれを実現することが可能でもなく、望ましくもないことは注意すべきである。南北朝鮮の国内情勢が貧困と混乱に悩まされている限り、話合いによる統一中立化などはあり得ない。」、こういうふうに言っているわけです。こういうことは、話し合いによる統一、中立化なんか考えられない、こういうことを言っておるわけです。政府はこういう考え方。その考え方は、北の朝鮮に対して南を、日本を守るためには日本は基地化する、また、日本を守るために朝鮮はその門口だ、こういうふうに言われておるわけですね。日韓会談の中心、特に日韓条約の一番基底をなす問題はこういうところにあると私は思っている。総理はどういうふうにお考えですか。
  324. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは政府の所見あるいは意見では全然ございません。ただいままでいろいろ伺っておりまするのは、その調査月報にそういうものが出ている、しかし、その末尾にその執筆者が、これは政府の意見ではない、また政府の方針でもないということをはっきり書いているそうですか、そうい、ものを読んでいただいたらおわかりになるんじゃないか。個人のこれは寄稿のようなもののようでございます。ちょうど材料を取りそろえておりますので一これにちゃんと断わってございますが、「本誌集録の論文は、当室員の作業過程における一応の取りまとめであって、その内容は必ずしも内閣調査室としての公式な見解ではありません。」、はっきり書いてあるのでございます。その点をまず読んでいただくと、皆さんも誤解がないだろうと思う。この大事なことを読まないで、私どもたいへん残念に思います。
  325. 石野久男

    ○石野委員 内閣調査室がこういうような形で逃げるということは、私は卑怯だと思うのですよ。もしそれならば、こういうような内閣の調査室で出さないで、ほかの一般の市販で出したらどうですか。これは内閣が出しているんですよ。内閣がこういう趣旨を認めるからこれは書かしているんでしょう。総理はこれを認めるから書かしたんじゃないですか。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま石野君のようなお話があるから、調査月報は大事をとりましてはっきり断わっておるわけでございます。ただいまのことを十分御了承いただきたいと思います。
  327. 石野久男

    ○石野委員 総理大臣はいま、これは断わり書きがしてあるからそれでいいんだというような言い方ですが、それならば、こういうようなものを内閣の発行するようなものに書かしちやいけないと思うのですよ。それじゃ、この趣旨に対しては、責任は持たないけれども総理はこういうことに対してどういうような所見を持っておるか。総理の所見はどういうことなのか、伺いたい。
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の思想はしばしば申し上げておりますから、この問題について、これを論駁するというようなことはただいまいたしませんけれども、十分お聞き取りをいただいた、かように思っております。
  329. 石野久男

    ○石野委員 一九六一年の四月十一日には、杉田陸幕長が、朝鮮の南北統一は対日侵略の脅威だというふうに言っております。こういうようなものの考え方については、総理はこれを認めますか。
  330. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、各人は自由に自分の考え方を持っておるだろうと思いますので、一々統制はいたしません。
  331. 石野久男

    ○石野委員 幕僚長がそういうような発言をしても、政府はこれを自由だからよろしいというわけですね。
  332. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、私どもがどういうような行動をとるか、いわゆる憲法違反でもしたらたいへんなことでございますから、また、自衛隊法に反するようなことをしたらたいへんでございます。そういう際に皆さま方からの御批判をいただきたいと思います。
  333. 石野久男

    ○石野委員 朝鮮問題についての政府の考え方、特に私は総理に聞きたいのは、北の朝鮮の問題は、やがて一つになるだろうからということだけで、これは私どもは納得できないのです。特に、日韓問題を通じて、この条約第三条の管轄権問題等についても、すでに、北は白紙だ、こういうように総理は言っておる。総理は白紙と言っておるけれども、しかし、この白紙と言っているあとは、それではどうするんだという問題は全然出てこないのです。そういう問題は、それじゃいつ出すつもりですか。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまその時期でございません。
  335. 石野久男

    ○石野委員 総理に聞きますが、日韓条約をここへまとめてくる過程で、第七回の会談が始まるにあたって、従来一括妥結ということを言っておったのが、今度そういう方式をとらなかった。仮調印を重ねてきた。そういうのは、外務省にどういうような指示を与えて、この従来の国会に対する公約を変えて交渉のやり方をしたのか。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一括方式ということをしばしば申しまして、そして解決をしたい、かように念願をいたしましたが、竹島問題におきましては、これの最終的決定を見ることができなかった。これは、申し上げましたとおり、たいへん遺憾に思って、皆さま方に特に御了承願っておるわけでございます。ただし、竹島問題も、平和的な解決のめどがついたということでございますから、この点で御了承いただきたい、かように思います。
  337. 石野久男

    ○石野委員 いや、竹島問題なんかでなくて、従来一括方式でやってきたものを、なぜ分割でイニシアルを個々の問題で取りかわすようなやり方に変えたのかということについて……。
  338. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 便宜私から申し上げますが、あれは一応の締めくくりをつけるだけの話であって、別に、一つの案件ごとにイニシアルをするということは、一括方式に対する例外でも、あるいはこれを破棄したという性質のものでもないのであります。
  339. 石野久男

    ○石野委員 昨年の六月三日に、金・大平の話し合いで会談が妥結しようとしておった段階で、南朝鮮における韓国学生の強い反対を受けて、第六次会談は中断した。その後、第七次会談が行なわれるまでの間、アメリカのバンディ国務次官補、エマーソン公使が、この間をとって第七次会談の開催に非常に力をいたした。本年二月、国会が持たれて、椎名外務大臣朝鮮に行こうとしたときに、われわれは、外務委員会で、椎名外務大臣基本条約の仮調印をしてくるんじゃないかということを強く詰問しました。そのとき外務大臣は、そんなことをしないと言った。しかし、その当時、このハンディあるいはエマーソン在日公使は、やはり強く日本の外務省と韓国代表部との間を行き来して仮調印というものを要請したということをわれわれは知っておる。そういうような要請を受けてこういうことをやったのと違うのですか。
  340. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはだいぶ事実と相違しておりますから、一応私から説明をいたします。  国会中でございましたけれども韓国を訪問するということにつきましては、いろいろ社会党からも質問がございましたが、とにかく、長年の間かかってなかなかできないということは、条約の条文等の問題よりも、その以前の両国国民の感情と申しますか、国民感情というものを相当耕さないと、これはなかなかむずかしいのではないか、であるからして、これは儀礼訪問ではあるけれども、重大な意味の儀礼訪問であって、ただ、その機会に基本条約を仮調印をしてくるんじゃないかというようなお話がありましたが、それは主目的ではない、しかしながら、短時日の間にそういったようなムードが盛り上がって、そしてして無理なくやれるという段階になれば、あるいは仮調印の取りかわしをするかもしれませんということを、私はたしかお話をしたはずであります、それは速記録についてよくごらんくださるとわかると思いますが、そういうことで参りましたが、しかし、その間において、アメリカの国務竹の官吏あるいは大使館、そういう方面から何ら寸亳もそういう問題について話があったことはありません。この点を御了解願います。
  341. 石野久男

    ○石野委員 アメリカのバンディ氏あたりから非常に強い要請を受けたという事実は、韓国のほうではむしろ外新部長官李東元のほうでそれをはっきり言っております。これは、八月の十四日の五十二回国会議事録によると、こういう、ように言っておる。昨年九月の末ごろ、アメリカの国務次官補であるバンディ氏が韓国に来たことがある。これは内輪の話でありますが、その当時バンディ氏に、圧力というよりも、友好国家として、友好的な立場から韓国会談の再開を促されました。私の公館に来て数回私と会い、日本に行って外相会談を再開し韓日会談を妥結してくれることを哀願すると、米国を代表して要請したことがあります。私もその当時彼に言いました。韓日会談を妥結することは米国の希望であるばかりでなく自由アジアにとっても有益であるということを知っており、わが国にとっても有益なので、われわれは韓日会談を妥結しようとしている。ところが、日本の人たちが会談妥結の前に国家的な姿勢がなっていないために、現在韓日会談妥結に対する私の立場が消極的である。そこで、私はまずバンディ氏に、あなたが帰り、日本が正しい姿勢をとり、わが国民を納得するようにしてくれるならば、私も韓日会談に積極的に応ずる用意があると述べた。そしてその後椎名外務大臣と会った。」、こういうように言っておる。だから、椎名外務大臣は、そういうような要望を受けてこの仮調印ということを強引にやっていったというのと違うのですか。
  342. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 バンディ氏とは私は東京でも会いましたし、それからワシントンでも会いましたが、日韓会談のにの字も聞いたことがない。
  343. 石野久男

    ○石野委員 日韓会談のにの字も聞いたことがない、そう言うのだが、エマーソン公使が二月の三日の日に外務省と代表部との間を一日に三回も行ったり来たりしているじゃないですか。そして基本条約の仮調印の問題を強くあなたに要請しているでしょう。
  344. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私には、日韓会談の問題についてはやはりもう何らの話し合いもしたことはございません。
  345. 石野久男

    ○石野委員 アメリカの強い要請を受けてこの日韓条約というものがいままで押しまくられてきたということ、この点については、私は日韓会談が最初にできた当時の事情から振り返ってみなくちゃいけないと思うのです。日韓会談が、総理や政府の言い分では、両国の友好関係だ、こういうふうに言いますけれども、実質的には、一九五一年十月の二十日という日は、朝鮮がまだ戦争のさなかで、そして日本はまだその当時はGHQのもとで占領下にあったはずです。そういう中でこの日韓会談というものが始まったのだが、その当時はそれではどういうような目的でこれがアメリカから要請を受けたのでありますか。総理は、その当時シーボルトからどういう意図でこの日韓会談を持つように要請を受けたのですか。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もシーボルトさんはよく知っておりますが、そういう話は持ちかけられたことはございません。ただいま、私はその時分に何をしていたか、あるいは官房長官をしていたか、かように考えますけれども、そういう事柄は全然記憶がございません。また、シーボルトさんもさようなことを言うはずはない、かように思っております。いままでお話しておりますように、韓国の独立すること、これは日本から分かれて独立すること、これを日本も義務づけられた。これは戦争に負けてそういうことはあると思います。それから先は、今度は朝鮮半島でどういう国ができるかという問題に当面した。また、その後国連が、いろいろ現地を見たり、あるいは決議をして勧告をしたりして、そして北鮮、南鮮、こう二つのものをいろいろにくふうし、また、国々がそれぞれの立場からそれぞれのものを承認してまいりましたが、七十一カ国という大多数の承認を得ておる大韓民国、これが国連の決議の趣旨でもある、かように私ども考えておりまして、ただいまのような、どこからどうしたのじゃないかとか、あるいはアメリカがあっせんしたのじゃないかとか、いろいろな話がございますけれども、これは、自主的な立場で、そして、このことを進めるのが最も適当だ、また、両国関係が親善関係を深めていく、そしてそれぞれが繁栄していく、そうして国民生活も向上していく、こういうことになれば、それこそお互いの安全へつながる道だ、かように考えておるのでございまして、ただいまいろいろの疑念を持っていらっしゃるようでございますが、そういう疑念も払拭していただいて、そして正常化に御協力願いたいものだ、かように私は思います。
  347. 石野久男

    ○石野委員 日韓会談は、その最初が、朝鮮の戦争のさなかにシーボルトからの要請がなかったと総理は言うけれども、事実上GHQのシーボルトの要求を受けてこの予備交渉に入った。われわれはこういうようないま平和憲法を持っておって、戦争はしない、軍隊は持たない、海外派兵はしない、そういうような国柄であって、戦争している国との間にどういうような国交の正常化というものを行なう意図でこの会談を始めたのか。これはわれわれにとって疑問なんです。政府はどういうような意味でその会談を始めたか。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日韓間の問題はやはりさかのぼって研究したいとおっしゃる。これはたいへんまじめな態度だと私は思いますけれども、私は、何よりも、戦後二十年たった今日この問題を妥結するのでございまして、やはり、過去の検討も大事だと思いますけれども、その後事情も非常に変わっておりますので、今日の状態、そのもとにおけるこの日韓条約その他の協定、これをひとつ十分御審議いただくことが最も大事なことじゃないか、かように私は思います。
  349. 石野久男

    ○石野委員 いま韓国のほうでは、すでにわかっているように、ベトナム戦争への軍隊の派遣などをやっておる。そして、戦争の中へどんどんどんどん入り込んでいる。こういう状態の中で、日本はこの韓国との間の条約を結ぶことによって、そういう韓国の動きというものと全然没交渉ではおれないと思うのです。ベトナム戦争と韓国との関係が軍隊を送るというような関係を持っておるということ。やはり交戦国だ。交戦的な立場に立っておるし、それから朝鮮戦争でもまだ休戦協定の中におる。こういう国と日本とが国交正常化をする場合の戦争の恐怖、あるいはまた戦争へ巻き込まれるということについてのその危険、そういうものは総理は何も感じていませんか。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、ただいまお答えしたのが、石野君のお尋ねを少し誤解していたようです。戦争当時という、ちょうど十四、五年昔のこと、いわゆる南北で争っていたそのときに、どうして日韓交渉を始めたのだ、こういうような話だったと思いますから、それも大事なことだが、いまどういうことが一番大事だろうということをただいま申し上げたのでございます。  そこで、現在の問題として、ベトナムに派兵しているじゃないか、出兵しているじゃないか、また、南北必ずしも平静じゃないじゃないか、こういうようなお話でございますが、朝鮮半島の問題は、これはただいま休戦状態にあるという、このことは御承知のとおりだと思います。そうして、これを基礎にいたしまして、国連の決議その他で、七十一カ国が韓国承認しておるわけなんです。だから、これはかんで含めるように申しますが、七十一カ国が韓国承認しておる、そして北のほうは二十三カ国がこれまた承認しておる、こういうような状態である。日本がただいま条約締結して友好親善関係を結ぼうというのは、その韓国である。七十一カ国が承認しておるその国でございます。これは誤解のないように。そうして、ベトナムへ派兵しておる、かような事態で、これは交戦状態ではないかと言われますが、そのことこそ、私どもが長く十四年の昔から、日韓交渉を早く妥結したい、こういうことで関係してまいりまして、ベトナムには実はこれは全然関係がございません。しかして、ちょうど長い長い問題でございますから、いろいろな状態も起こるだろう。韓国自身が韓国の独自の立場でベトナムに出兵しておる、派兵しておるということ、これは私どもの関与することではございませんし、また、日本自身は憲法を持ち自衛隊法を持っておる。その立場でわが国を律してまいりますから、戦争に巻き込まれるとか、戦争の危険にさらされるとか、さようなことは、これは全然ないのでございます。その辺の誤解は、これまた賢明な国民も知っていらっしゃいます。だから、皆さま方も十分この間の実情をひとつ御了承いただきたい、かように思います。
  351. 石野久男

    ○石野委員 ベトナム戦争へ韓国がああいうふうにして一個師団の軍隊を出している。そういう問題はまさに戦争の状態なんだ。その戦争の状態を裏づけるように、韓国では来年度の予算の中で軍事費が膨大に伸びている。来年度の軍事費はどのくらい韓国では伸びますか。
  352. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは韓国の問題でございます。私は存じません。
  353. 石野久男

    ○石野委員 私が聞くのは、これから軍事的な問題について聞きたいのだ。韓国におけるところの軍事体制というものはどういうものであるかということを聞きたいわけです。だから、来年度の予算でどのように軍事的な予算体制というものが出てくるかということを私は聞いておる。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 韓国の予算は私は知らないと、かようにお答えしているのです。
  355. 石野久男

    ○石野委員 うしろでわかっているじゃないか。
  356. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国軍事費はわかりません。
  357. 石野久男

    ○石野委員 わかりませんでは、これは済まないんだ。日韓条約の中で経済援助をしていくのですよ、これからね。総理友好関係だとかなんとか言うけれども、われわれの立場では、この条約を通じて非常に軍事的な体制が強まってくる、そしてまた、われわれの経済協力というものもむしろそういう体制へのてこ入れになっていくだろうという心配をしているからなんです。だから、そういう意味から、韓国の予算体制というものはどういうようになっているのかということを明確にしてかからなければ、国民は納得して経済協力なんてできないじゃないですか。
  358. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国がいま非常に経済的に困っておる。これをとにかく繁栄させて、失業状態もこれを改善していく、そして繁栄の基礎を築くということがわれわれのねらいでございまして、軍事協力などというようなことは、もう何も考えていない。したがって、われわれは、この問題を進める上において、韓国軍事予算がどういうものであるかということを知る必要はないのであります。
  359. 石野久男

    ○石野委員 経済協力で、因っている韓国協力をしてやるんだ。その韓国におけるところの予算がどういうふうになっているかということを聞くわけです。なぜ聞くか。その予算の中で軍事費がどれだけ占めているかということを聞きたいのですよ。しかも、去年より減っていくならいいですよ。どんどんどんどんふえてくるんじゃないですか。そういう実情がはっきりしているのに、何で政府はわからないのですか。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、先ほど来申しましたが、韓国の予算でございますから、それを私のほうへお尋ねになりましても、それはやや無理な注文じゃないかと思います。何か資料があるだろうと、こういうお尋ねでございますが、ただいま皆さま承認を求めておるこの案件の承認を経たら、今度は、経済協力でことしは幾ら出す、こういうような話に実はなるわけなんです。そうなったときに、これはどうも軍事的な支出が多いとか、あるいは民需がどうなっているとか、こういうような話になるわけなんです。ただいままだ承認も受けていないその際に、よほど先走った話のような気がいたしますが、それとも、承認はもう必ずできるんだ、こういうことで、おまえのほうは何かそんな予定をつくっているだろう、こういうようなお尋ねなら、これまた何か私が申し上げるべきかと思いますけれども、事実まだそこまではいっておりません。だから、その点も御了承いただきまして、ただいま皆さん方の承認を求めておる案件でございますから、それから後の問題です。
  361. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いているのは、われわれが、韓国との間で、政府の提案している条約をもしも通すとすれば、経済協力をしなくちゃならなくなる。そういう経済協力をするにあたって、われわれの立場からこの経済協力にいろいろな疑義があり、しかも、政府の考えているようなふうには、なかなかいくまいというふうな見方をしているわけです。たとえば、われわれが金を貸してやるにしても、相手が非常に建設的にそれを使ってくれるのだったら、これはありがたい。だけれども、それを湯水のようにどこかへ使ってしまうのだったら、そういうことはすべきじゃないわけです。しかも、われわれが望んでいるのは平和的な友好を望んでいるのであって、戦争の方向とか軍事方向とかいうことに対する協力はあまり望ましくない。ことに、日本の憲法の立場からすれば、そういうことはしたくないはずなんです。そういう意味で、われわれは来年の韓国におけるところの予算がどういう性格の動きをしていくものかということをここで見る必要がある。なぜなら、私たちが心配しているのは、そういう韓国の趨勢というものが、われわれの心配している方向へ動いているからなんです。政府はわからないはずはない。十月十六日のこの朝鮮日報にちゃんと出ておりますから、持ってきてなにしてごらんなさい。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はまだ朝鮮日報を読んでおりませんので……。
  363. 石野久男

    ○石野委員 いや、これは朝鮮日報だけじゃないんだ。ほかにもいろいろ発表になっているから、ぼくは言うのですよ。だから、そういうことを政府が明確にわからないというと――それがわかった上でわれわれは論を展開するわけなんだから、やはり韓国におけるところの軍事費はどういうふうに動いているか示してください。
  364. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま申し上げたとおり、われわれがこの日韓条約の問題を進める上において、特に経済協力をやる上において、韓国軍事費がどういうふうになっているかということをいま的確に調べる必要は毛頭なかったのでございますから、それでその資料を持っておりません。
  365. 石野久男

    ○石野委員 政府は必要がないかもしれないけれども、われわれのほうは必要だから、聞いておる。
  366. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 審議にぜひ必要な資料だと言われるようでありますから、できるだけ整えて提出することにいたします。
  367. 石野久男

    ○石野委員 韓国における軍事的な体制というのは、われわれにとって、いまから条約を結び、これからの国交を広げていこうというにあたっては非常に重要なんです。ことに、平和的に国交を広げていこうとする政府の意図だということをわれわれは聞いておりますから、それならそれのように、相手国がそういうような国柄であってほしいとわれわれは思っているわけだ。しかし、情勢は違うんです。政府が考えておるようではない。われわれの見るところでは、むしろ非常に軍事的に体制が固まっていくし、それでますます軍事化が進んでいくわけです。そういう状態だから、この経済協力というものについても、われわれはやはり、政府の言うようには、そうはなかなか受け取れない。そういう意味から、私は、この韓国におけるところの予算の実情というものを知り、軍事予算というものはどういうような比率を占めているかということを聞いているわけですから、これはひとつ……。  じゃ、それはあとでその資料がきてから私はあらためてまた質問いたします。保留をいたしまして、これで一応打ち切ります。
  368. 安藤覺

    安藤委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後六時十九分散会