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国務大臣(
佐藤榮作君) 第一は、ただいま言われるように、
政府自身が
経済に
一つの
計画、
中期計画、こういうものを持たなきゃならぬのだが、現状でいわゆる
中期経済計画、この前つくったものを一体どう考えておるのか、こういう
お尋ねでありますが、この点はしばしば申し
上げましたが、私、ただいま一番当面して
政府が力を尽くさなきゃならないのは、当面の
不況克服です、こういうことを実は申し
上げました。ただいま真剣に取り組んでおるのがこの
不況克服、そうして
不況を克服して、その上で
中期経済計画というものと今度は見合っていく、かように御了承いただきたいと思います。先ほど
藤山企画庁長官が、しばらくたな
上げしておくのだ、こういう話をした。たな
上げというような
ことばになりますか、私のいま申すのも
藤山君の言うのも同じ
考え方だと思います。
政府は当面する問題、これとひとつ真剣に取り組んでいく、そういう
考え方であります。
第二は、いわゆる
安定成長ということを言っておる、これは高度成長政策に対応するものだと思うが、この
安定成長の態度というものは一体どこにあるのか、この
お尋ねだと思います。これがただいまの
中期経済計画にも
関連してくることでございますが、いわゆる私
どもは
経済の性格をどこまでも安定基調に乗せるということが大事なことだ。
安定成長、これはすべてが
バランスのとれた、いわゆる不均衡のない
状況においてできるだけの成長をするということでありますから、別に成長をとめるというものではございません。
高度経済成長はその点がやや不明確だ、いずれにいたしましても成長さえすればいいのだという感じがあったというように一部ではとられておる。しかし、
高度経済成長にもりっぱな理論がありますから、そんな乱暴なものではなかった。しかしながら、今日
指摘されるようなあるいは不均衡、あるいは不安定な
状態が各
産業間相互の
関係において見受けられるようになった。だから、この点があるいはひずみの是正だ、こういうような表現をされておりますが、
高度経済成長の持ったひずみの是正、こういうひずみ、こういうものをなくしていくというのが実は私
どもの
安定成長のねらいであります。この
安定成長はただいまの
不況対策と同時に並行して推進していかなければならない、これが当面する二つの課題であります。したがいまして、この
安定成長というものがいわゆる現在の
不況を克服して、その上でまた、克服の大体見当がついた、そういうところで
安定成長というものを考えていく。そのときにいわゆる
中期経済計画、こういうものとこれをあわせて考えてみよう。
中期経済計画はもちろんことしだけの一年こっきりの問題ではございませんので、これは五カ年
計画のものだ、こういうことでございますから、そういう
意味でいわゆる
安定経済成長ともあわしてみる、こういうことをいたしたい、かように考えております。
第三の問題でありますが、ただいまの
設備投資、これについては片一方で
過剰設備ということがいわれておりますし、そういう
意味から
自主調整をしておる。しかしながら、
設備といいましても、ものによりましては、
設備の工事期間、あるいはその竣工に二年、あるいはものによっては三年等を要するものもあります。したがいまして、今日この
設備を全部オールストップだ、こういう単純なことにはいかない。将来の
経済の成長ということを考えますと、やっぱりかき乱さない
状況のもとにおいての
設備投資は
計画していかなければならない。だから、ただいまやられておりますいわゆる
自主調整相互の間におきましても、いわゆる
シェア競争におちいらないように、そういう
意味においても
お互いの話し合いは率直にしておるようであります。これは必要なことだと私は思います。しかして今日現状において
設備がすでに過剰の
状況であります。したがって、それをフルに使ったらその
生産品がはけないという
状況になります。昨日も
お話がありましたが、そういうものが滞貨
金融の形でただ貯蔵されるだけだ、こういうようなことになれば、これは事業の収益性も非常に下がってくる、こういうことがありますので、ここでいわゆる
生産を
お互いに自粛する、こういう問題があると思います。したがいまして、ただいまの
操業率というものが下がっておる、こういう場合におきましても、これがいわゆる自分のところの
生産をして、そういう
生産が必ず
消費につながっておる、売れる、こういうふうな
状況のもとにおいての
生産をたどっておる。しかし、私
どもの
考え方では、こういう場合にもちろん
自由競争、こういうたてまえをとっておりますので、これがもしも不当にただいまのような事柄が行なわれ、そうして価格がそのためにつり
上げられる、あるいは定着する、こういうようなことがあって、
消費者の保護が万全を期し得ない、そういうことがあってはならない、かように思いますので、この場合におきましても、各種の弊害に対して
政府はやはり目を光らせていかなければならない、かような
状況でございます。
ただいま
お尋ねの第三点は、片一方で
自主調整とはいいながら、しかし、これがいわゆる独禁法そのものにぶつかるようなことでは、これは許されない。また、そういう
意味で監督も十分しておる。しかして、これはただ単に
設備だけの問題ではないし、それが同時に、
生産の過程におきましても、やはりだんだん
生産が落ちる、こういうことになる。昨日
お話のありました滞貨
金融をやって収益率を下げるようなことは避けるということになってくるのであります。そうなりますと、いわゆる会社の収益率も下がってきますが、また働く
労働者自身としてもこれは特別な給料等の引き
上げにも支障を来たすでしょうし、あるいはその他の出来高払い等におきましての収入も、特別な
生産はない、こういうようなことになり、非常に困難な
状況になる。これが最近の勤労者の
所得がやや減退しておる、そういうような形において出てくるのじゃないかと思います。しかし、ただいまのところ、まだ積極的に雇用の面まで大きな
状況が出てくるとは思いませんけれ
ども、いわゆる
安定成長というものも、
安定成長のもとで完全雇用を意図しておる。結局
経済であるが、同時に
お互いの
生活の安定、これをねらって初めて
安定成長ができるのでありますから、そういう
意味の
努力をするということであります。