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国務大臣(
瀬戸山三男君) 一般物価と地価との
関係は、簡単でございましたが、いま申し上げたような実情でございます。そこで、地価の高騰は、これはもう
議論の余地なく異常な高騰を続けております。これがまた一般物価にはね返るものも相当あると思います。たとえば緊急の住宅建設にどうしても
宅地の地価が高騰いたします。したがって、建設コストが上がり、家賃がどうしても上がってくる。あるいは公共用地にいたしましても、だんだん公共投資が増大をすれば、正比例とまではいきませんけれども、相当上がってくる。いわゆる産業経済のコスト高になる。これはまあいなめない大きな、いま日本の物価問題の一番の課題である、こういう認識を持っております。
地価の抑制と申しますか。安定といいますか、その問題については、午前に
伊藤委員からもお尋ねがありまして、いま
考えている程度のことを申し上げました。予算
委員会等においても
総理その他から地価の安定、抑制については決意をもって当たるという抽象的なことを申し上げております。私も残念ながら、いま直ちに具体的な案を申し上げる
段階にはなっておりません。なっておりませんが、しかし、いまや私どもの認識としては、いまもお話しあったように、これは全く大きな社会問題とも言われる状態になっております。住宅建設はますます進めなければならぬ、公共投資、
公共事業等はますます拡大しなければならない、こういう事態に直面して、このままの状態で置くということは、国民経済あるいは社会生活からいって全く適当でない、こういう事態でありまするから、もちろん今日までといえども、この地価問題は全く悩みでありまして、全然放任しておったわけじゃなかったことは御
承知のとおり。いろいろ今日までも、
政府部内においてもまた
宅地審議会等、いわゆる専門家の皆さんにお願いをしておる。この異常な現象というものを何とか措置する方法はないか。措置すべきであるという前提で
検討を進めてまいっておる。先ほど申し上げたわけでありますが、もうすでにいろんな
意見というものは出尽くしておるという観測をいたしております。
これは
議論の
段階じゃなくて、抑制策といいますか、地価安定に勇断をもって実行する
段階に来ておる、こういう判断のもとに、ただいまその手段、方法
——これは
法律ばかりじゃ解決しない、
宅地部を設けるということも前提でありますが、やはり特に都市川辺の住
宅地等については、国なり
地方公共団体が大量にそういう土地を取得して供給するという
行政措置も伴わなければならない。いろんな総合施策を講ずるということはこれは前提でありますが、端的に言って、地価抑制の問題をどうしても
法律的にこれを措置をする必要がある、こういう
考え方でありますが、
一体どういう
観点からやっておるか。先ほども申し上げたわけでありますが、こういう
考え方であります。たとえば道路を改修するあるいは住宅団地を指定をして
開発をする。そういたしますと、直ちにそのこと
自体によって地価の高騰を来たしておるというのが
現状でありますから、そういうことが
一体、理論的にもわが国の社会生活上にも適正であるのかどうか、こういう
検討をいたしまして、私どもいま判断、
結論といたしましては、それは適正でない。御
承知のとおり、土地所有権というのはわが国憲法においては私有財産権を認めておりますから、もちろん憲法の範囲内で措置をしなきゃなりませんけれども、憲法といえども財産権の問題で、公共用地等によって取得する場合には、いわゆる正当な対価をこれはもちろん払わなければなりません。そのためにその所有権者の努力といいますか、当然に受くべき対価でない。ことばがやや不適当かもしれませんけれども、不当な対価を受けるということは当然に抑制すべきだ。これは憲法も当然に予定しておることである、こういう判断にいま立っております。と同時に、やはり私は、国の
行政に従って社会生活に応ずる措置をとるというのが、やっぱりその国々の政治のあるべき姿であると思いますから、諸外国のことは申し上げませんが、わが国は御
承知のとおり土地が非常に狭い、領土が狭い。これは人口に比例しての話でありますが、しかも人口が非常に多いと、これが大きな原因でありますが、したがって、その原因に応じた土地対策を講じなければならぬ。土地は、これを生産して幾らでもふやすというわけにはいきませんから、その中に、必ずその上に立って国民全体が諸活動をしなきゃならない、そういう諸般の情勢を
考えまして、先ほどに戻りますけれども、憲法でやはり土地所有権の行使については、人間がつくり出す一般財貨と土地所有権の範囲というものと別個の観念で扱わなければならない、そういうことから、先ほど申しましたが所有者の努力によってでなくて、公共投資あるいは社会変革によって、その土地の従来
考えられておりましたような、土地の高騰による対価というものを与えるということは、これは憲法の上からいっても適当でない。そういう
一つの評価を求めまして、それ以上は対価として所有権者に与えるべきでないと、非常に抽象的でありますが、この基礎観念に立って、しからばそれを
法律的、
行政的にどう具体的に方策を講ずるか、こういう問題点についてせっかく
検討中であります。これは土地収用法の改正もあることですし、これは最終的決定でありませんけれども、
考え方の一端を申し上げておきますが、従来は御
承知のように、公共用地を取得します場合に、土地収用法における
考え方は、もちろん土地に対する補償といいますか、対価は時価ということになっておる。時価とは何ぞやというと、現在の収用法の
考え方は御
承知のように、たとえばここに道路を建設する、そういう計画が進められて、こまかく何丁目何番地に道路を建設する、それからこまかく、いわゆるその他の細目を公告して、それから相当の時日をかけて収用
委員会で裁決をする。これは長い短いの差はありますけれども、少なくとも六ヵ月ないし二年もかかる。その間において、そういう将来の
開発された状態においてこのくらいの価値になるんだと、こういうことで、相当その間に地価の高騰を来たし、それがまたいわゆる時価ということで周囲にそれが伝播する。これが大体の行き道であろうと思う。そういうことは不当なことであると思う。国家やあるいは国民の力によって道路を開設され、その他の諸施策がなされた、その反作用としてたまたま土地を持っていた人が、個人が特別な利益を得るということは、これはどこから
考えても適当でない。そういう
考え方から先ほどのもとに戻りますと、道路を建設する、ここに建設するという決定をしたときの時価によって補償をすべきだ、それによってその土地の所有権者は何らの不利益を受けておらない、いわゆる損をしておらない、こういう措置をとりたい。もちろん、公共用地についてはそれで一応めどがつきますが、しからば、公共用地にならないところは、道路を開設されたその付近の人たちは非常に便利になった。そうすると、単に土地を売ってももうかるということは、まことにこれは正義に反する、その点はどうするかという問題が当然起こります。そういう点については、これはまだ
結論ではありませんが、税利面等においてこれを厳重に処理する。また一面においては、そういう
一つの評価というのは、午前中にも話を
事務当局がいたしておりましたが、前年、国会で決定されております土地評価
委員会というのができており、これで公式な評価をして表示をさして、それを中心にしてその他の利益を与える諸般の施策を総合的にやらなければ、非常に複雑な問題でありますから、簡単ではないと思います。
それから、残念ながら御
承知のように、日本では、土地の利用区分というものがなされておらないところにいろんな土地に関する混乱があるわけであります。そうかといって、これは全国に土地利用区分を
実施するというと、一年や二年でできる
仕事でありませんから。しかし、これはどうしてもやらなければならないことでありますが、それを待って地価対策を講ずるというわけにはまいりません。そういうゆうちょうなことではありませんから、順次それは並行して実行していく。特に大都市周辺等について地価の高騰が著しいところを、できるだけすみやかに土地利用区分を設定して、それに応じて、それぞれの利用区分に従って土地価額を決定する、こういうことが並行しなければならない、こう思っております。
そこでたとえば、土地計画区域を指定した場合に、その区域内における一番問題になりますのは農耕地であります。農耕地というものが直ちに
宅地に利用されるという
現状にありながら、農地なるがゆえに税金もきわめて安い。これがもし、農耕地一本でいくということになれば、当然にこれは、農業生産力というのは低いのですから、それに対する固定資産税等を高く課くべきものじゃありません。けれども、農地に使う場合は別でありますが、農地以外に使うというときには、当然にその他の措置を講ずべきである。もし将来、農地でどうしてもありたい、農業等は最も必要なことでありますから
——余談になりますけれども、日本においてこれも一面非常に不合理といいますか、手落ちがありますけれども、農業政策においても、いかなるところを農業地として確保すべきかという計画が日本にありません。こういう点は別といたしましても、少なくとも将来、市街地になり、住
宅地になるというところの農地については、
一体、将来農業を営む予定としてやるところであるかどうか、もし農業を営むということであれば、それは農業を営む土地として措置をしなければならない。そのかわりに将来、それを
宅地に転換するということは都会である以上はできない、これくらいの措置をしませんと、公正を保てない、こういういろいろな問題点をとらえて総合的に、しかも急速に措置をとりたい。これは従来の観念からいたしますと、わが国における
考え方等からいたしまして、相当に思い切った措置になると思いますけれども、しかし、そのくらいしなければこの問題は解決しない、こういうことでいま進めておるということであります。