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政府委員(鈴木秀雄君) それは撤廃されまして、通貨の二五%だけになったわけでございます。
そういった状況で、もし世界じゅうの各国がこぞってアメリカに金を兌換しにいく——いまのアメリカの体制は、世界の
政府なり中央
銀行が貨幣用に必要とする金はドルといつでも兌換に応じますというコミットメントをしております。したがいまして、これでは足りないわけであります。ですから、もしフランスのような態度をすべての国がとるとすれば、アメリカは実際問題として、金をいままで一オンス三十五ドルで買い取ったものを、それを倍にするかなんかしなければ、それは決済がつかなくなってしまう。そういうことになれば、まさしく世界の現在の
国際通貨制度というのは崩壊するわけで、フランスが自分の国だけでやる分にはそう
影響もないと思います。また、よその国には必ずしもフランスに同調してフランスの動きをそのままやっているわけでは私はないと思います。
それと、もう
一つは、金を一体再評価する
意味というのは、だれが一番得かといえば、私はリュエフの属するフランスじゃなくて、アメリカではないかという感じがするのです。アメリカはいままで負っていたドル債務というものを、もし二倍に引き上げるとすれば、半分の金で決済することができるわけですから、それだけの金の余裕ができれば、アメリカの
国際収支節度というものがそれだけの余裕ができてしまって、当分守らなくてもいいということになるかもしれない。
この
二つからいっても、私は金の引き上げ論はおかしいと思います。
それから、もう
一つは、ヨーロッパのほかの、フランス以外のリアクションといたしましては、金の引き上げをすれば、そこで当然再評価益というものが出てくるわけでございます。現在の各国いろいろの中央
銀行と
政府の間の制度関係もございますけれども、やはり金を再評価した場合には、それだけの自国通貨というものが生み出されるわけでございますので、それによって、金の再評価によるインフレというものが非常にこわい、こういう問題もあろうかと思います。したがいまして、金の再評価というものについては、私はリュエフのような人、古典的な方はいざ知らず、現在の普通の実務に携わっている国際
金融の担当者は反対である、こういうふうに理解しております。
それで、もう
一つは、御参考までに申しますと、ジスカールデスタンがドゴールの演説のあとにいたしました演説でも、金の再評価というものは否定しております。これは
大蔵大臣として言ったのか、
政府として言ったのかという質問に対して、
大蔵大臣の言ったことは
政府の言ったことだという答えを
新聞記者にしております。したがって、フランス自身も、金の再評価というものはそう主張しているとは思いません。
それから、ちょっと先ほど触れましたドイツの構想、これはドイツの国としてそういう構想が出ているわけではございませんが、例のブレッシング構想というものが、これはブンデスバンクの
総裁でございますが、これはどういうことかと申しますと、現在各国が金と外貨の比率がいろいろ違う。しかし、これをある程度地ならしして、たとえば金を七五%、外貨を二五%というようなことでやれば、そこでいろいろな、金に対する兌換要求も押えられるだろうし、またアメリカの
国際収支の節度も、どうしてもある程度の金を出さなければならないということになるわけでございますから、そこで、ある程度の
国際収支節度が
確保されるというような意見を出したこともございます。しかし、これは準備
手段ではございませんで、現在の金なり外貨なりというものの比率をある一定にきめれば、そこでフランスだけが金を買ってしまって自分のほうは買えないということもございませんし、また、各国が競ってドルを金にかえるということも防げる。そこで、その比率というものを一定の国で合意したらどうか、こういう意見であるわけでございます。御参考までに申し上げます。
それから、
日本のいろいろな、アメリカの
国際収支対策等に対する
影響、あるいは今後の
国際収支として望ましいパターンというものをどういうふうに描くかということでございますが、私は、確かに従来は、
日本というのは少なくとも経常収支ではなかなか黒字が出せなかった。したがいまして、どうしても一定量の外貨準備を保ち、あるいは必要な輸入をまかなうという
意味においては、長期資本なり短期資本の導入ということも含めて、資本収支で相当の黒字を出さない限りやっていけなかった、こういうふうに考えておりますが、御
承知のように、ことしに入りましてから
輸出が非常に好調でございます。したがいまして、まだ正確にはわかりませんが、ことしのおそらく
国際収支のパターンというものは、
輸出が相当の黒字になって、貿易外はもちろん赤字でございますけれども、貿易の黒字が貿易外の赤字を十分にカバーして、相当の余剰が出る。一方、資本のほうは、過去のいろいろな
銀行の
借り入れ金とか、そういったようなものの返済もございますし、また、アメリカのドル防衛
対策、それの直接、間接でございますね、直接には、アメリカからの
銀行借り入れがいままでほどはくれないとか、そういったこともあろうかと思います。間接的には、ヨーロッパがそれだけ
金融が締まって、ヨーロッパの外債が十分に出ない、こういうようなことから、いまの資本の流入ということが相当減ってくるという可能性が私は十分あると思います。したがって、ことしのかっこうというものは大体、まず経常収支で黒字で、資本収支は長短期を含めていわばある程度の赤字になるというかっこうに私はなると思います。
もう
一つ申し忘れましたが、貿易が非常に黒字になります場合には、短期資本収支は当然赤字になるということ、これはひとつの裏返しの問題でございます。
輸出がふえますときには
輸出信用がある程度与えられ、輸入が落ちついている場合にはそれだけ輸入ユーザンスというかっこうの借金はふえないわけでございますから、そういった面からいっても赤字の要因があるということを申し上げておきます。
したがいまして、今後の
状態としては、私はやはり経常収支の
均衡、少なくとも若干の黒字を生み出していって、資本というものは、今後の後進国援助とかあるいは外債の元利償還ということを考えますと、いままでのような黒字は期待すべきでないし、またできないというふうに考えております。
ただ、現在の状況が
日本の望ましいパターンからいってどうかということになりますと、御
承知のように、中期
経済計画、この計画をどう評価されるかは別でございますが、あの中期
経済計画における目標年次におきまして、経常収支は
均衡するという計画をとっているわけでございます。したがいまして、現在の、ことしの
状態というものは四十三年の
状態よりももっと先にいったかっこうになっております。これは先ほど
大蔵大臣から御説明がありましたように、国内の
不況の問題もあろうかと思いますし、過去におきました
日本の
設備投資によって国際競争力というものがふえたというようなこと、あるいは世界の貿易環境がよかった、こういうようないろいろな問題があろうかと思いますが、若干そういった
意味では現在のかっこうというのは異常によ過ぎるという点は七ろうかと思います。
したがいまして、もちろんわれわれとしては、今後の
国際収支を考えます場合には、
国際流動性に
二つのソースがあるわけでございますが、
一つは、現在の金または外貨のように、自分が自由に処分し得るもの、こういうものが
一つあります。これを所有準備と普通いっております。それともう
一つは、クレジット・ファシリティー、信用便宜による
国際流動性の増強でございます。この
二つがあると思いますが、所有準備というものについても相当の関心はございますが、さしあたり、たとえば今回御提案しておりますIMFの増資というようなことによって信用準備による
日本の外貨準備というものがかなり強加されるわけで、この
二つのことを考えてやっていくべきだというふうに考えておる次第でございます。
それから、第二の点で、現在のIMFの
予算では金を買うことが十分でないではないかという
お話でございますが、私どもの考えておりますことは、先ほど申しましたように、金の再評価益と外為
資金のインベントリーをもちまして円を調達いたしまして、アメリカに参りましてその金を買う、アメリカは一オンス三十五ドルの公定相場の四分の一%の手数料で売るわけでございます。これはロンドン相場と関係なく売るわけでございます。それを買いまして納めるということを考えておりますから、アメリカが金を売ることを停止しない限り、そういうことはとうてい考えられないと思いますが、私は今回の
予算で十分にいける、こういうふうに考えております、現送の必要もございません。IMFの金はアメリカに寄託されるという制度になっておりますものですから、そこにただ帳簿上IMFのほうの倉庫に振り込めばいいわけでございます。
それから、ポンドの切り下げの可能性というようなことは、こういうような席でよその
政府の通貨について弱いとか強いとか言うことは、私は非常に、
政府の役人としては言うべきことではないというふうに考えておりますので、その点木村先生の御満足いけるような御答弁ができるかどうかわかりませんが、もうポンドにつきましては、確かに相当問題があるということは御
承知のとおりでございます。まず第一に、イギリスの国際競争力の低下という構造的な問題もございますし、それから第二には、現在イギリスの赤字というものが何で出ているかと申しますと、
一つは国際競争力の低下による
輸出の伸びがとまっているということがございますが、もう
一つは国内の
需要が相当強いということがございます。これについては労働党が政権をとりまして、労働党はストップ・アンド・ゴーをやらないんだということでとったわけでございますが、やはり国内の最終
需要が強いということをある程度認めてまいりまして、だんだんにいろいろな
措置をとって抑制
措置をしておるわけでございます。まず第一に
公定歩合を引き上げたとか、あるいは
予算について、増税をしたり、それから最近は増税分以外の
歳出は切っていくというようなこともやっております。それから、
銀行の貸し出しについての
窓口規制、こういったものもやっております。それから、海外投資に対する資本の抑制等もやっております。こういうようなことで非常に
努力をしておるわけですが、もう
一つの問題としては、イギリスが御存じのように現在はドルと並んで世界の基軸通貨の
一端をになっているわけでございますが、対外債務に比して外貨準備が非常に貧弱である、こういう問題があろうかと思うわけでございます。したがいまして、ポンドの問題は、そういった構造上の問題と、それから現在が相当過熱
状態にある、それについて相当抑制
措置をしてもなかなかまだ最終
需要が沈下しないという問題、それからもう
一つは、そういった対外ポジションの関係でイギリスの通貨に対するコンフィデンス、信頼の問題があろうかと思います。したがいまして、この三つの問題がどういうふうになっていくかということでございまして、これについてはイギリスの
政府としてもおそらく私は
政治生命をかけてポンドを守り抜くという
努力をしていると思うわけで、私のほうといたしましても、ポンドがもし切り下げがあるようなことになりますれば、
日本の
経済に対する
影響というものも相当大きいというふうに考えておりますので、これは私は各国の国際
金融担当者の一致した見解でございますと思いますが、従来たとえば緊急的に中央
銀行が三十億ドルのスタンド・バイ・クレジットを与えて、それを返すためにIMFから第一回には十億ドル、第二回には十四億ドル、そういうものを引き出した際に、
日本もそれに参加して、IMFを通じてイギリスに援助したわけでございますが、こういった問題につきましては、もちろん注意しなければなりませんが、さればといって、ポンドが非常にあぶないというようなことを公言するということは、私はいかがかと、こういうふうに考えておるわけでございます。