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1965-08-10 第49回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月十日(火曜日)    午後一時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 植木 光教君                 西川甚五郎君                 日高 広為君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君     委 員                 青木 一男君                 青柳 秀夫君                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 大谷 贇雄君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 西郷吉之助君                 林屋亀次郎君                 藤田 正明君                 木村禧八郎君                 柴谷  要君                 戸田 菊雄君                 瓜生  清君                 野坂 参三君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   竹中 恒夫君        大蔵省主計局次        長        鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長       鈴木 秀雄君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  大蔵大臣より発言を求められておりますので、この際これを許します。
  3. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 現下の経済情勢並びに今後の財政金融政策に関する基本的な考え方につきましては、先般の財政演説において明らかにしたところでありますが、本委員会において、重ねて所信一端を申し述べたいと存じます。  今日における政策の最大の焦点は、当面の不況をすみやかに克服し、経済を一日も早く安定的な成長路線に乗せることであります。  最近までのわが国経済動向を見ますと、輸出は順調な伸びを示しておりますが、国内経済活動はおおむね停滞的に推移しており、産業界には収益の低下、企業倒産等、種々の困難が見られるのであります。  このような経済の状況を打開していくためには、需給バランス改善企業体質強化等、正しい方向に即し、着実かつ真剣な努力を傾注することが、基本的に肝要であると思うのであります。幸い、今日、経済界にも合理的な経営態度に徹しようとする機運が高まりつつあり、現に、一部では自主的な生産設備調整等も進められているのでありまして、政府としても、できる限りこれを円滑化し、助長してまいりたいと考えております。  現在、政府が実施しております一連の景気対策も、この際、経済沈滞感をすみやかに一掃し、民間自体の立ち上がりの努力と相まって、経済を一日も早く正常な軌道に乗せようとするものであります。  すなわち、さきに、萎縮ぎみ需要にはずみをつけ、景気回復の足どりを促進するため、公共事業費支出の繰り上げ、財政投融資早期実施、あるいは輸出振興策充実等措置を決定したのでありますが、このたび、さらにこれらに加えて、住宅、運輸、通信、輸出上下水道等中心として、二千百億円にのぼる財政投融資対象機関事業大幅拡充を決定いたしました。この措置により、直接の政府需要拡大はもちろん、関連する民間部門需要の喚起を通じて、国内需要全体のすみやかな増大がもたらされるものと期待しているのであります。  また、金融面においても、六月末、公定歩合の再引き下げに踏み切り、目下、市中貸し出し金利引き下げが進みつつあるのでありますが、このたび、さらに、政府関係中小金融機関金利引き下げを決定いたしました。政府としては、今後とも、資金需給関係緩和ぎみに保ちながら、市中貸し出し金利の一そうの引き下げにつとめる所存であります。  こうした不況克服に対する政府決意施策に呼応して、産業界内部にも、設備投資を繰り上げる等の動きがあらわれておりますし、また、久しく低迷を続けた株式市場にも、安定的な機運が生じつつあるように思われます。  わが国経済の本来の活力は、きわめて若々しくかつ力強いのであります。われわれ国民が、現在の局面を打開しようとする意思を持ち、力を合わせて努力するならば、わが国経済は、遠からずして不況から脱却し、再び堅実な発展の道をたどるものと確信いたします。  さらに、政府は、以上のような当面の景気対策と併行して、国民が将来に希望と自信を持って経済活動を行ない得るよう、その指針となるべき長期的な財政金融政策について、鋭意検討を重ねておりますが、これについての私の基本的な考え方を簡単に申し述べたいと存じます。  当面の不況を克服した後におけるわが国経済の課題は、申すまでもなく、均衡のとれた経済拡大を通じて、国民福祉の高い水準を実現していくことであります。すなわち、国際収支均衡物価の安定、この二つ条件確保しながら、その中で着実かつ安定的な経済成長をはかり、経済部門近代化合理化を促進する一方、経済発展と調和のとれた社会開発を推進することであります。  明るい豊かな社会を建設するためには、社会開発の推進、社会資本充実等財政の果たすべき役割りは今後ますます重要になるものと考えられます。反面、所得が低くかつ蓄積の乏しいわが国家庭企業にとって、画期的な減税もまた緊急な要請であります。  このように、一方で増大する財政需要を充足しつつ、他方で大幅な減税を実施していき、しかも、経済全体として各部門間のバランスのとれた成長を実現していくためには、まず、財政が健全であるとともに、その働きがより一そう弾力的であることが肝要であります。この意味におきまして、私は、歳出のすべてを租税等の経常的な歳入でまかなうというこれまでの財政のあり方について、再検討すべき段階にあると考えます。すなわち、健全な公債政策の導入により、国民蓄積政府施策活用しつつ、経済運営にあたって財政の弾力的な機能を高めていくことを考えるべき時期に来ていると思うのであります。  この民間貯蓄公共部門への活用こそ、大幅な減税を可能にし、豊かな社会の建設を可能にするものであります。減税貯蓄は、互いに因となり果となって、家庭にはゆとりを、企業には蓄積をもたらし、底の浅い日本経済は質的に改善強化されていくのであります。このような観点から、私は、目下、個人と企業の負担を軽減するため、数年間を通ずる計画的かつ大幅な減税構想を練っているのであります。  もとより、以上のような財政の新しい進め方が、その健全性の保持と通貨価値安定確保という財政運営根本原則に反するものであってはなりません。このような意味におきまして、私は、今後の財政運営にあたりまして、冗費を節し、資金の効率的かつ重点的配分につとめ、あくまでも国民経済バランスのとれた運営を行なっていく決意であることを、ここに重ねて明らかにしておきたいと思うのであります。  なお、本年度の予算につきましては、最近の経済動向から、歳入面で予定の税収を確保することが困難と見られる反面、歳出面ではかなりの補正要因が見込まれております。目下、その財源調達方法について検討中でありますが、できる限り、将来の健全な公債発行の素地をつくるという方向で考えてまいりたい所存であります。  今後の安定成長路線におきましては、さきに述べました新しい財政進め方に即応しつつ、財政金融が、真に一体となって有機的に協力し、均衡のとれた役割りを分担していくことが期待されるのであります。  これがためには、金融政策が有効かつ適切に作用する環境と条件を整えることが重要でありまして、政府としても、今後、金利機能活用長短資本市場整備等につとめる所存でありますが、これと並行して、中小企業農林漁業金融円滑化等の諸施策も、総合的に推進していきたいと考えております。特に、公社債市場及び株式市場育成強化は、今日最も重点を置くべき問題であります。政府としては、証券業界体質改善をはじめとして、必要な施策を積極的に推進してまいりたい所存であります。  国際収支均衡確保は、物価の安定と並ぶ安定成長の重要な条件であります。輸出の一そうの増進こそ、わが国経済の着実な発展を約束するものであります。しかしながら、わが国輸出を伸ばすには、世界貿易が着実に拡大し、世界経済が繁栄を続けていくことが何よりも重要であります。  政府としては、このような見地から、今後とも、国際流動性強化国際通貨安定性確保について、関係各国と緊密に協力していきたいと考えております。また、ガットにおける関税一括引き下げ交渉についても、できる限り積極的に参加するとともに、低開発国に対する経済協力についても、アジア諸国中心に、国力の許す範囲内で推進してまいりたい所存であります。  以上、わが国経済の現状と今後の財政金融政策について、私の所信一端を申し述べました。  政府は、当面の不況打開に全力を尽くし、これを克服することにより、安定成長への道が開けていくものと確信しております。皆さまの御協力をお願いする次第であります。
  4. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまの所信表明に対しまして、何か御質疑がございますか。若干時間がございます。
  5. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大蔵大臣に恐縮なときに来ていただいて何ですが、しかし、どうしてもただしておきたい点はたださなければならぬ。  まず第一にお伺いしたい点は、何といっても、専売公社の未曽有選挙違反であります。大臣はその総裁任命権者であって、当然その責任を痛感されておることと思うのです。あまりくどくど申し上げませんが、本院の議院運営委員会において総裁辞意表明されております。しかし、そのことを大蔵大臣口頭で申し出たと新聞は報じておりますが、そのことの真相は、どういうような話があなたのところで口頭でなされたか、まずお聞きしたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 専売公社事件につきましては、私は、世間をお騒がせいたしましたことにつきまして、深くこれを遺憾に存じております。また、その善後策を円満にしなければならぬ、かような考え方でおります。  私がこの問題につきまして考えておりますのは、いま刑事事件として世の中をお騒がせしておるわけでありますが、刑事事件行政責任とは別に考えたい、そういう基本的な考え方をとっております。刑事問題のほうは、これは目下司直の手にあるわけでございまして、その結果を待たなければわからないわけでありまするが、ともかくこういう事態が出てきましたその行政上の責任につきましては、私もこれを痛感しております。  また、専売公社当局においても同様であろうと思います。去るいつでありましたか、数日前、専売公社総裁から私に対しまして、ともかく事務監督ですね。監督上遺憾な点がありましたことにつきまして責任をとります、こういう話が私にあったわけであります。私は、そういういきさつ等も考えながら、どういうふうにこの事態を収拾するかを考えております、こういう段階であります。
  7. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 事務監督不行き届きがあった、政治上、道徳上責任はある。だから、あなたのところに対して辞意表明があったわけですね。それに対して大臣はどうするおつもりなのですか。すぐこれを受け取って私はしかるべきだと思うのです。そのことが、国民も非常にあなたのことを、佐藤内閣姿勢を正すのだということを絶えず言っておいでになることに対して、間髪を入れずにおやりになるほうが非常にタイミングがいいと思う。何をちゅうちょされておるか。どういうわけなんです。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御承知のとおり、専売公社は膨大な機構であります。その機能が一日も停止するようなことがあってはならぬわけであります。ただいま検挙されたという人も百数十名にのぼっておるわけでありまして、そういうような状態で、私は、専売公社機能をとにかく維持し、国家の損失にならぬようにということを心がけ丸ければならぬ立場にまずあるわけであります。そういうことの考慮もしなければならぬ。それから、もう一つは、私自体がこの問題を行政上の問題としてどういうふうに考えるべきかという、私自体が大体の観察をなし得る資料も持たなければならぬわけであります。そういうことを考えながら、ただいま専売公社総裁責任をとると、こう言っておる、その責任をどうするかということにつきましては、私、考慮中であります。
  9. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 どうも大臣、お聞きしておりますとね、これだけ世間を騒がして、自分から責任を、刑事上のことは別として、政治上、徳義上責任をとると、こう総裁判断をし、あなたに対して辞意表明されております。あなたはやめぬでもいいじゃないかといって、慰めるとか、慰留するようなそういう気持ちが少しでもあるのですか。あなたの気持ちがわからないのですよ。あなた、率直に、これを受理するなら受理するんだ、ぼくは早いほうがいいと思う。疑問ないのだ、結論は出ているのだ、責任をとって明らかにするのがいい、その時期の問題だ、こういうことなら、あなたがおっしゃるような趣旨もわからぬわけではないのですよ。ところが、いまお聞きしておると、どうもその辺のところがぼやんとしておる。責任とってあたりまえじゃないですか。とるほうが正しいんじゃないですか。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、その責任をとると、こういう総裁の申し入れにつきまして、まだ、慰留をするとか、あるいはやめたらどうだという意思表示をしないのです。それは、先ほど申し上げましたように、二つの理由から、つまり一つは、事務執行支障があってはならぬということ、それからもう一つは、行政責任の問題でありますが、行政責任の内容を判断すべき材料を私持たなければいかぬ、こういうふうに考えて、ただいま考慮中であると、こういうことであります。
  11. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ臨時国会の時間もあまりないのですけれども、こういうふうに判断してお聞きしておいていいわけですか。とにかく、臨時国会が終わったら、国会開会中はいろいろなこともあるからやめだ、終わったら早々これに対して結論をお出しになる。それは、阪田総裁の辞任をあなたは受け取られる、こういうふうに了承してよろしゅうございますか。  事務執行支障を来たしちゃたいへんなんだといって、たとえば、御案内のとおり、起訴された者に対する扱いは休職になるというようなことになれば、何十人になるか見当がつかないわけですけれども、相当広範囲な人事異動をやらなくちゃならぬ。それを全部総裁がやってしまって、そうして軌道に乗るまで待っておるというようなことなら、おかしいと思う。行政責任がある人が何かあとのことまでやらなくちゃならぬということは、私はおかしいと思う。責任をとっておやめになる、そうして新しい総裁のもとにいろいろなことが、人事異動その他、反省の上に立った人事異動が行なわれて再出発される。姿勢を正したのだということが一番大切なことだと思う。タイミングが非常に必要だと思う。ちゅうちょするときじゃないじゃないですか。ことばだけで姿勢を正す、正すと。それが佐藤内閣一つの大きな政治の柱になる。何かことばだけで中身がないのに、いつおやりになるのか。何をちゅうちょされておるのか。ですから、私もあまりあなたにいろいろなことを言いたくない。ですから、やるならやるのだ。それは国会終わったら早急にやるとはっきりおっしゃるなら、もうこれでやめます。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事人事の問題でありますので、私もこの扱いは非常に慎重にしておるわけです。で、総裁は、監督不行き届きの点について責任をとると、こういうふうに言っておりますので、私は、専売公社監督する立場の者といたしまして、この事件を私なりに総合的に判断し、そうしてそのとるべき責任はどういうものだということをきめていきたいと思うのでありますが、ひとつこの問題は、私も慎重に、しかも誠意をもって取り組むつもりでおりますので、しばらく推移を、ひとつ私におまかせ願いたいと、こういうふうに存ずる次第であります。
  13. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたは一番最初に、非常に世間を騒がして申しわけない、非常に遺憾なんだと、こういうことをおっしゃいましたね。この気持ちは変わりはないわけですね。
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 変わりはございませんです。
  15. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それでは、もう私もこれ以上この問題について、総裁が居すわるというようなことは万々一ないものと確信をし、大臣の腹もそこにあるというふうに了承をいたしまして、この問題については御質問することをやめようと思います。  次に伺いたい点、これは本会議等であなたのお話を承りましたし、これに対して質問もございましたし、また大蔵委員会等でもいろいろ議論をされておるところですから、そういう点いろいろ重複してしまってかえって恐縮でございますから、そこでですね、せっかくの機会でございますから、基本的な問題でお尋ねしておきたいと思います。  これは私はあなたのいろいろな話を直接聞いただけじゃございません。ただ新聞を通して、あなたが池田高度成長政策、いわゆる所得倍増政策に対しては批判的な立場にあった。これは間違いないと思います。そこで、批判的な立場とするなら、よってきた、あなたのここにおっしゃるように不況打開方式、この不況をすみやかに回復するためにはどうするか、そのよってきた不況根本原因はどこにあったのかという点を掘り下げてみて、どこが間違っておるか、そこで私はこういうふうにするんだという基本的なものがなくちゃならぬ。ですから、まず基本的にどういうふうにお考えになっておるのか。もう少し話にすぱっと、野党のときと言っちゃおかしいですが、党内野党のときにはすぱっとものを言って、与党というのですかね、政府をあずかっている大臣になられたら、少しものを遠慮しておいでになるようですが、あなたのいいところを、すぱっと割り切ったお話を承りたいと思って、それを期待しておるのです、私たちは。私たち高度成長政策に対しては批判している、あなたとは立場は違いますけれども。しかし、基本的なものが若干違う点はありますけれども、そういう点は私はもっとすぱっとお話し願って、そうして長期的なものはこうなんだという基本的なものを、まずお示し願いたいと思います。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいままでのこの数年間のやり方を見ておりますと、どうも国際収支物価に対する配慮が少な過ぎたのじゃないか、そういう感じを持っておるのです。つまり、国際収支物価への影響ということを軽く見ますれば、これは相当高度の経済成長ということができるわけであります。その手段としては、設備投資拡大をする。私は、設備投資経済成長主軸としてやる行き方ですね、これが行き過ぎまするといろいろな問題が起こるということを憂慮するものでありますが、つまり、設備投資をやりますと、その設備自体に物が要るわけです。需要を喚起するわけですね。したがってまた、需要を喚起するもんですから、それに対する設備投資が刺激されると、こういうことになって、循環的に設備投資高度成長というものが行なわれるようになる。ところが、この設備投資は、これを始めて二年、三年、四年たちますと、これが生産能力化するわけですね。ですから、三、四年たって、ある時点に立って振り返ってみると、膨大な生産力がある、そういうことになって、ここに需給のアンバランスというものが出てきて、反動的に経済は非常な落ち込み状態になる、こういう過程をたどるということが考えられるわけであります。  今日現在の問題といたしまして、不況根源というものは、国際収支物価というようなことに対する配慮が薄く、設備投資が過当に行なわれまして、いま設備が非常に過剰な状態になっておる。その過剰な状態がどうして出てくるか、出てきたかというその手段の問題が問題なんですが、これが自己資金によって行なわれたということでなくて、おおむね銀行などからの借り入れ金によってまかなわれた。それで今日設備が進んでおる。それに対する金利は払わなければならぬ、人件費も払わなければならぬ。したがって、この企業全体といたしまして、収益力が低下すると。そういうことから株価が不振になるとか、あるいは企業倒産が起こりますとか、あるいは財政にまでその影響が波及してまいりまして、租税収入が減少するとか、もろもろの不況現象というものが出てきて、その根源設備投資の過剰であったというふうに見ておるわけです。もっとも、設備投資が旺盛であった反面におきまして、日本の国の生産力としてはずいぶん進みまして、いま世界水準で第五の生産をあげる国であるという地位にまで来たわけでありますが、しかし、その反面におきまして、今日のような不況現象というものがかもし出されるに至ったと、こういうふうに見ておるわけであります。
  17. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 設備投資、いわゆる金融独走の形と申しましょうか、そういうようなものがしわ寄せられてこういうような形になった。そこで、あなたが今後考えられておることは、ここに少しお述べになっておりますが、そうしますと、今回は安定成長というか、そういうことばに置きかえられておりますけれども、しかし、当面おやりになろうとすることは、やはりそうは言いつつも、全部金融対策じゃないですか、いま出てきておることは。やはりそうは言いつつも、おやりになろうとしていることは、公定歩合引き下げであるとか、あるいは何か金融のほうのことだけしかやっておみえにならないわけです。ですから、当面はそうなんだと、当面だけだよこれは、とおっしゃるけれども、どうもあなたはそう言いつつも、やはり金融主軸になっているのじゃないかというふうにしか受け取れないと思うのですが、これは私の受け取り方が間違っておるのか、それとも、いやいや、そうではないのだと、こうおっしゃるなら、もう少しその金融主軸であってこうなんだ、だから今後はそうではないのだと、こうおっしゃるなら、私はそのことが具体的に当面対策にも出てこなくちゃならぬと思います。それが当面には少しも出てこない。どういうことです。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金融対策中心があるというわけじゃないのです。実は、この経済対策としては、まず昨年の暮れから金融引き締め緩和措置がとられたことは御承知のとおりであります。第一次、第二次、第三次と公定歩合引き下げを行ない、預金準備率引き下げを行ないますとか、最後には日銀の窓口規制までもこれを撤廃するということまでやってみた。やってみましたが、どうも景気落ち込み金融だけでは片づかない、こういうふうな判断をせざるを得ないような事態になりまして、それとこれと相並んで財政対策をとるに至ったわけであります。  御承知のように、一般会計予算におきましては、千億円の繰り上げ支出を行なう。また、財政投融資におきましては、千三百億円の繰り上げ支出を行なう。それでもなお効果が十分でないと判断をいたしまして、改造前にきめられました一割留保というものを撤回するということもすると同時に、財政投融資におきましては二千百億円にのぼる追加支出、つまりワクの拡大を行なうということまでいたしておるわけでありまして、決して金融だけにたよっておるわけではなくて、また金融で片づき得るような簡単な様相じゃない。これは金融上、財政上、産業政策上、あらゆる手段を尽くして初めて不況は克服し得るのだという認識のもとで行動しているわけであります。
  19. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 何か四十分までという話ですから、どうもおかしな話になってしまったのですが、元来ならば予算委員会のことなんで、あまりやってもいけないと思いますけれども、それじゃ不況がいつごろ回復するかというと、あなたは、いやもう底に入ってしまったとか、これからまたつま先で上がるのだ、相当長くかかるのだ、いろいろなことを言われておるのですが、認識としてはこの不況をどの辺だというふうに認識しておみえになるかということです。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日の経済状態は、需給のアンバランス、つまり設備過剰です、この過剰の程度が相当激しい状態だというふうに判断しています。ですから、これを乗り越えて需給均衡を回復するということには相当時間がかかるのだろうと思うのです。  問題は、私は、そういう根本的問題もありますが、しかし、当面一体どう景気を上向き基調にするか、上半期と申しますか、今年になりまして、今日まで、景気は諸指標において大体横ばいでございます。ところが、今度金融上、財政上、また輸出というような通商政策上、いろいろな手を打っております。そういう効果が私はこの秋口には実施過程に完全に入ってくる、こういうふうに見ておるわけであります。そういう情勢から判断をいたしまして、まず今日が底であろう、これから先だんだんと明るい方向へ向かっていくだろう、こういうふうに判断をしておるわけであります。長期的にほんとうに需給バランスをとる、これはなかなか時間のかかる問題と思いますが、ともかく景気が色がつく、明るい方向に転換するというのはそう遠くないと、こういうふうに判断をしております。
  21. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 飛び飛びのことで恐縮ですが、ここでもあなた御指摘しておみえになりますが、とにかく三十九年度あるいは四十年度の経済が非常に財源不足になるということは、四千億ともいわれております、あるいは三千五、六百億、いろいろいわれておりますが、とにかく一般会計で穴があいてくるということに対して、公債はあまり好きじゃなかった。ところが、最近はいよいよ公債をお出しになろうというふうに踏み切ったと私たち判断しておる。踏み切られたということなんですが、公債は普通にいう赤字公債じゃないですか。そういうことをことばの上じゃ政府は非常にいやがって、いやなもんだから、いやそうじゃない、公共投資というものに使うのだから赤字公債じゃないと、こうおっしゃるかもしれませんが、普通一般会計が不足すれば、なるほどそれは公共投資等の面になろうと思いますけれども、世にいう赤字公債じゃありませんか。赤字公債という定義ですがね。どうもそれに対して、赤字公債と、こういうことをいわれるのは非常にいやだということで、非常に遠慮しておみえになるようですが、これは赤字公債とは違うと。赤字公債じゃないのですか、どうですか、それは。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことし出そうとしておる公債なり借り入れ金が、赤字公債あるいは赤字借り入れ金かどうかということですね。ずいぶんいろいろな人から聞かれるのです。きのうも木村議員から再三再四にわたって聞かれたのでありますが、私はこういうふうに思うのです。赤字公債というのはこれは俗語であります。この俗語につきましては、まあ使う人によりましていろいろな意味を持つわけでありますね。つまり、日本銀行がその公債を引き受ける形のものが赤字公債でありますとか、あるいは一般的な歳入不足を補てんするというようなまあ追い詰められた形の出し方、これが赤字公債でありますとか、あるいは経常支出にまで食い込んで、それをまかなおうとする性格の公債、これが赤字公債であるとか、あるいはいろいろなこの公債の発行全体を総合して、不健全なにおいがすると、こういう意味合いにおいてこれは赤字公債だというような使い方をするとか、いろいろ人によって違うのです。  まあそのときの状態でありますが、ことし私どもが考えておりますのは、御指摘のように、歳入もだいぶ不足になりそうな形勢でありまするし、また歳出要因も相当ある。したがって、そこに生まれる不足をどういうふうにまあ処置していくかと、こういう性格のものでありまして、そういうものであるというふうに御理解を願い、あとそれが赤字公債であるか何であるかということは、これは成瀬さんの御判断にまつほかないと、こういうお答えをするほかないのであります。
  23. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ政府は、それじゃ、俗語だとおっしゃるのですがね。俗語でもいいですがね。事実、私、最終的な認識にいくと思うのです。そうしてあなたが俗語だと指摘された一般歳入の補てんになるわけです。なぜ赤字公債だということを公にお使いにならないのか。世間一般に使っておったら、お使いになったらいいじゃないですか。何か、どう見たって、公債をお出しになることはあなたたちもいやだと。政府も出したくない気持ちはある。多分にある。しかし、どうにもならないところに来てしまったと。だから、踏み切ったんだと。しかし、これ出すのはまあ好ましいことじゃないと。しかし、まあ政府はこういうやりくりのたいへんなときだから出すのだと、こういうことを明らかにされたほうがかえっていいのじゃないですか。私は、そうやって、たとえば財界とかあるいはその他の一般の国民に、政府のやりくりのえらいところを示されて協力を求められるというほうが、かえって政治姿勢として率直でいいと思うのです。それを何かこう、赤字公債というものを不健全なものだと。確かに公債を出されることは私は健全化より見れば不健全化のほうに寄るわけです。しかし、そういうことをやらなければならなくなったんだという点を率直に示されたほうが、私は適当じゃないかと思うのです。何かその、俗語なんだと、どう判断されようと国民のかってなんだというようなことを言わずに、率直にお認めになったらいかがですか。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 赤字公債という意味がたくさんあるものですから、それでまぎらわしいものですから、私は、こういう席において私どもが出す公債が赤字財政、赤字公債なりやと、こう聞かれると、これは赤字財政意味によりますと、こういうふうに言わざるを得ないのです。しかし、ことし出そうという公債は、これはまあ借り入れ金になるかもしれませんが、かりに公債出すというふうになりますれば、これは歳入補てん公債である、こういう意味合いにまあなるわけであります。その御解釈はいろいろあるんですから、これは解釈する人によって区別をしてもらうほかはない、こういうふうに存じております。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ことばのあれこれは別としまして、あなたは、「考えるべき時期に来ていると思うのであります」と、こうおっしゃっておる。「健全な公債政策の導入により、国民蓄積政府施策活用しつつ、経済運営にあたって財政の弾力的な基礎を高めていくことを考えるべき時期に来ていると思うのであります」、これ出すということでしょう。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりであります。
  27. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体いつごろを予定しておるのですか。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体、ただいまのところは、四十一年からこれを考慮してみようかと、こういうふうに考えております。まあこれは四十一年度予算編成の問題もありまするから、今後財政制度審議会やその他のいろいろな方面の意見等も徴し、慎重にきめていきたいと、こういうように考えております。
  29. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、四十年度の歳入欠陥は大体借り入れ金としてまかなっていくと、こういう考え方ですか。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十年度は借り入れ金にいたしますか、公債、つまり証券を使う、証券形式を使うというふうにいたしますか、この点はまだ結論を得ていないのです。私は、今後長期政策として出す場合の公債、これは相当私とすれば積極的な意味を持っておるわけなんです。つまり、これから国の財政の任務はだんだんと強くなってくるのじゃないか。つまり、社会開発投資だとかあるいは社会保障だとか、国の分担すべき事業がふえてくる、そのふえてくる国費の財源を一体どこに求めていくか。そういうことになると、これはもうとても今日でも重い税金をさらに徴収していくというわけにはなかなかいかないのじゃないか。むしろ逆に、いま不況がこういうふうな落ち込み状態にある。なぜなってきたかというと、先ほども申し上げましたが、企業設備投資借り入れ金でまかなわれておる、蓄積がない、こういうことなんです。やはり企業でも個人でも、わが国においてもう少し蓄積を持つための政策というものを強力に推し進めなければならぬ状態になっているのじゃないか。それが安定成長政策財政金融面の大きな課題である、こういうふうに考えるわけであります。そういうことを考えますときに、ドッジ以来普通歳入による均衡方式というものを、長年の間とってきたのでありまするが、国民減税による余裕を与える、その結果生ずる貯蓄というものを国家財政活用していいのではないか、そういうことを考えておるわけでございます。つまり、長期的な意味において公債によって財源の一部をまかなう、こういうことなんであります。その積極的な意味における公債と、ことしとにかく臨時緊急のこういう日本経済史でも珍しいくらいな不況状態に対処するための財源対策、それとこれとは区別して考えたいのであります。そういう区別して考えたいという点からいうと、来年は公債だと、ことしは借り入れ金でというふうにいたしますと、まことにはっきりする。ところが、また私は二面において、ことしといえども借り入れ金をする、あるいは公債を出すといっても、これが日銀にしりがいかないように全力を尽くしてみたい、こういうふうに考えておるわけです。そういう見地からしますと、やはり証券形式をとってこれを流通させるという考え方をとったほうが、そういう私の第二のねらいを満たす上におきましては適切ではないかというふうにも考えられるのでありまして、そういう点を彼此勘案、総合観察しまして、借り入れ金がいいかあるいは公債によるがいいか、そういうことはもう少しひとつ時間をかけて考えてみたい、こういうふうな段階でございます。
  31. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 当面のことは別として、将来の展望として、あなたは公債を、いわゆる公債を活用する場合、国民貯蓄活用すると。そのためには減税ということがうらはらにあるわけです。そうなると、減税ですね、いわゆる国民所得を伸ばすための相当大幅な減税措置というものが、長期的には立てられるというようなこともおっしゃっておるわけですが、それは四十一年度から相当長期的な大幅な減税というものを、公債を踏み切られたときには一応お出しになるというふうに受け取ってよろしいですか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 長期構想の初年度を四十一年度にいたしますか、あるいは四十二年度からにいたしますか、これはもう少し——四十一年度予算の編成という問題もあります、そういう問題もありまするし、またおそらくことしの経済状況が秋ごろから回復基調になりましても、その影響、ことしの影響というものが来年度に財政的には大きく出てくるのです。そういう点などを考慮いたしまして、四十一年度予算編成とからませて結論を出していきたい、こういう考えであります。
  33. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 時間ですから、これ以上のことは……。どうもここのところは、私どものほうは納得しかねるところがございます。あなたは先ほど、当面する問題で、借り入れ金にするかあるいは公債にするか、これは日銀にしわがいかないと言っているが、私は最終的には日銀にしわがいくのじゃないか、けつは日銀じゃないか。たとえば政府債でも鉄道建設債の縁故債ですね、あれはオペレーションの対象になりませんといって、出せばオペレーションの対象になる、日銀にしりがいくということになるので、ということに結果としてなるのじゃないか。そういうようなときにしりがいかないようにする方途というものは、何かそういうような別途なことをお考えになっておるのか、いやいや、そうじゃないのだ、普通のいまの金融状態を見れば、日銀にしりがいかないのだということを期待しておるものなのか、しりがいかない措置を講ぜられるのか、その辺のところがはっきりしておりませんが、どうなんですか。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま経済が御承知のような状況でございますので、民間に設備投資の意欲というものが非常に停滞しておるわけであります。そういうことから考えまして、民間資金はかなりゆるむ、こういうふうに見ておるわけであります。したがいまして、政府で仕事をいたしましても、よって生ずる余裕がよほど民間から政府のほうに流れてくる、こういう基調になっておるというふうに考えるわけであります。ですから、まあかりに公債を出すというふうにいたしましても、その証券が民間でかなりの程度消化できる、こういう見通し、また借り入れ金をいたしますにいたしましても、そういうふうな同じ傾向が出てくるだろう。しかし、情勢によって、回り回って資金の流れのしりが日銀にいかないとは限らない、いく場合もあるかもしらぬ。あるかもしらぬが、民間資金がこれまで不振というか、落ち込んでおる状態におきましては、これがインフレという方面に作用するということはない、こういうふうに判断をいたしております。
  35. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これ以上は……。私どももう少しいろいろな点で聞きたいのですが、これ以上のことはやめまして、とにかくIMFのほうを少しやってくれと委員長から言われるので、IMFのことについてやらなければならぬから……。     —————————————
  36. 西田信一

    委員長西田信一君) それでは、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審議を進めます。  質疑のおありの方は順次御発言願います。
  37. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣に一言だけお聞きしておきます。これは御案内のように、ドゴール等が非常に反対しております。いろんな点で問題になっているのですが、いわゆる国際通貨というものをドルに置いておるわけです。そういうようなことについて、大臣は、もうこれドルでなければしょうがないのだという、事の是非は別として、しょうがないのだというお考えなのか、こういういまのような世界通貨のあり方がいいというふうにお考えになっておるのか、それとも、将来の問題としてこうあるべきだということについて、どんなふうにお考えになっておるのか、まずその点伺いたい
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまアメリカで国際収支均衡政策をとり始めておるわけでありまして、またこれが実現できそうな形勢であることは御承知のとおりであります。そうしますと、アメリカからドルが流出をしない、こういう結果になるわけです。しかるに世界の経済情勢、これはどの国でも成長があるわけであります。成長する世界経済に対して国際決済のための通貨が不足する、つまり流動性不足という問題が起こってくるわけであります。そういうことからこの流動性問題をどういうふうに今後改善していくかということが、世界的ないま話題になってきたわけでありますが、私は、いま国際流動性一つの大きな柱として、一方においてIMFという機関がある。それから、もう一つはアメリカのドルというものがある。これが柱になって動いておるわけでありまするが、生きた経済でありまするから、この現実の動き、またいままでのいきさつというものから大きくかけ離れた結論というものもむずかしいのではないか、そういうふうに考えるわけでありますが、まあアメリカなんかの意向でも、これから踏み切ってこの問題の討議を国際的にしていこう、こういうことでありまして、たいへん私はそういう方向が出てきたことは世界経済発展上好ましいことである、こういうふうに考えております。
  39. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣、私はそのIMF総会があるかないかということは全然知らないのですけれども、通常国会までに臨時国会があるから、こういうような問題に関して、ヨーロッパ等へ出かけられることを考えておみえになるのか。ずっと大体通常国会まで外へお出になりませんですか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 九月の二十七日から十月の二日にわたりましてIMFの総会がワシントンで開催されるわけであります。それで、まあ事情が許せば私もこれに参加することが適当であるというふうに考えております。
  41. 西田信一

    委員長西田信一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  42. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記を起こして。
  43. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いま大臣が答弁された九月のIMF総会がワシントンである、それはどういうものが議題になり、どういう点が論議されようとしておるか。
  44. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 九月のIMF総会と申しますのは、IMF及び国際復興開発銀行及びIFCというインターナショナル・ファイナンス・コーポレーション(国際金融公社)及びIDA(国際開発協会)のこの四つの機関の年次総会であります。したがいまして、一応形式的にはIMF、世界銀行等の出します年次報告を、アニュアルリポートと申しますが、年次報告を各総務が批判する、あるいは意見を述べる、こういうかっこうで議事が進められるわけでございます。したがいまして、まだ年次報告自身も出ておりませんものですから、どういった内容が盛られるかわかりませんが、まあ想像される点は、やはり昨年と同様に国際流動性の問題も一つの議論であろうかと思いますし、後進国援助その他の問題が議論されることになるだろうと思います。しかしながら、正式にはまだその年次報告は参っておりません。
  45. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いまぼくは流動性問題についてどういう態度ですかと、議論されるとするならば日本の態度はどういう態度ですかということを実は大臣から聞きたかったのですが、大臣検討されることは非常にいいことだということで逃げられておりますが、日本も黙って行くか、あるいは何もなしで行くのか、あるいは現状維持でよろしいということになるのか、いや、強化したほうがいいというようなことになるのか、そういうような国際流動性の問題について事務当局としてどんなふうにお考えになっているか。
  46. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 国際流動性問題は、近年相当長く議論されておるわけでございますが、昨年の八月主要国が十カ国——十カ国という例のパリクラブでございますが、これの蔵相会議の声明において、基本的には三つのことが合意されておるわけです。一つは、その当時の状態でございますが、現在のところ金及び準備通貨の供給は十分であって、近い将来においても十分である。これが一つの点でござます。それから、第二点は、国際通貨制度をささえるものとして最近強まりつつある各国通貨当局間の国際金融協力が不可欠である。この点が第二点。例の信用供与によって国際金融協力をしていくということが非常に重要であるということを認識したということが二点でございます。それから、第三点として、将来世界貿易拡大に伴い、より大きな国際流動性が必要となるかもしれないので、研究グループを設けて、将来準備資産を創設することについての諸提案を研究する。この三つの点が合意されたわけであります。  その結果、蔵相は、蔵相代理、私も五月から蔵相代理の一員になっておりますが、に対しまして、第三の新準備資産の創設に対する研究を命じたわけでございます。それを、蔵相代理自身もなかなか始終集まれない、こういうことで、またその下にサブグループを設けまして、例のオッソラ、イタリア銀行の調査局長であり、同時にパリの駐在、これは蔵相代理の一員でございます。これを議長といたしまして、日本も、日本銀行と大蔵省から専門家の資格におきまして参加いたしまして、それ以来ずっと検討を続けていたわけでござます。そのオッソラ報告書というものも最近できまして、実は本日のパリ時間の午後五時でござますが、それに発表されることになっております。各国一斉に発表されるわけでございます。日本の時間で申しますと、十一日の午前一時でございますから、あすの朝刊には出るかと思いますが、そういうことでやっておりましたが、本質的な意見の相違といいますか、大体の合意されたことは、現在の固定為替制度でございますね、それと金価格は動かさない、これがすでに一昨年の蔵相会議のときにそういうことが合意されているわけでございまして、そのワク内においてやっていこう。しかも、IMFの機能というものも大体拡充すべきだという一般的な合意が、十カ国蔵相にはあったわけでございます。先ほどドゴールが反対しているというお話でございましたが、十カ国蔵相会議の声明をお読みになりますと、十カ国の合意として、IMFのモデレート・インクリーズ・オフ・クオータ——要するに、モデレートというのは、何と訳しますか、あまり多くないという意味でございますが、結果的には二五%になったわけでございますが、そのくらいの増資は必要であるということは、フランスも同意していたわけでございます。  したがって、今後の問題といたしましては、もちろん、オッソラ・グループの報告書をあしたお読みになるとおわかりになると思いますが、大ざっぱにいって二つの違った考え方があるわけでございます。一つは、国際流動性をどんどんふやすということは、世界的なインフレにつながるのだから、非常に慎重にしなければならない、こういう考え方一つ。もう一つは、やはり世界の貿易なり経済発展していく上には、金の生産だけで恒常的な国際流動性の増加をまかなうということは不可能である。したがって、何らかの意味において国際流動性を弾力的に供給するという必要がある。こういう二つ考え方が、大ざっぱにいってあろうかと思います。  で、日本立場は、昨年の大臣声明の際に大蔵省としてもわが国立場というものを発表いたしまして、新聞にもお配りしたわけでございますが、日本立場というのは、その経済発展段階、あるいは国際収支のパターンとか、対外支払い準備の規模といったような点で、やはり流動性は増強さるべきものであるという考え方を一貫してとってきているわけであります。流動性の増強の方法としては、一つは、信用供与というものを活発にするというやり方があろうかと思います。もう一つは、オッソラ・グループで論じられました新準備資産というものをどういうふうにしていくか、こういう二つの問題があろうかと思いますが、日本としては、いずれにせよ、こういった諸提案の中で、積極的に世界の流動性をある程度ふやしていくという方向で考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、IMF総会の大臣の演説、あるいはIMFの総会の間には、十カ国の蔵相会議も行なわれます。そういった場合においては、当処、日本立場も反映した表現その他のことが行なわれると、私ども事務当局としては考えております。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それに関連しまして、いまの十カ国のパリグループですかの大体の声明の内容をお話がありましたが、その後、御承知のように、IMFの東京総会で、やはり国際流動性の論議がかなりされたわけです。その東京総会における論議の焦点はどうだったのですか。それが一つと、その後、非常に東京総会の後いろいろ事情の変化が生じてきていると思うのです。たとえば、ドゴールのあの金本位制の主張、それから、その後ドルを金にかえたりなんかしておる。そういうことから、今度はアメリカ側の態度が非常に変わってきて、やはりドル防衛の強化政策を非常にとり出してきているわけです、アメリカが。そのための影響もかなり出てきていると思うのですよ。それともう一つは、最近のポンド危機、そういうものとの関連について。  ですから、東京総会の論議の焦点と、その後のまた変化ですね、流動性問題。それから、国際通貨制度に対する論議も、大まかな線ではあまり変わらないかもしれませんですけれども、そうした論議を通じて、また国際的な金の移動とか、そういうものに対していろいろな変化が生じているわけですよ。そういう点について、なかなか伺う機会がないので、この機会になるべくわかるように説明していただきたい。それから、現時点に至るまでのいろいろな変化ですね。
  48. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) まず第一点の、昨年の東京総会におきましてどういう議論がなされたかということでございますが、これはフランスの大蔵大臣のジスカールデスタンが申しましたように、十カ国の蔵相会議というものは、一応おそらく合意で出されたわけでございますが、しかし、あらゆるこういった合意は人によって解釈が違う、こういうことから、本来ならば、合意されたものはもう一回、おれの解釈はこうだというようなことを言わなくてもいいのかもしれませんが、各国とも、その合意の中の文章でどういった点が自分の国に有利だというようなところにハイライトを当てまして議論をしたわけでございます。したがって、一応十カ国蔵相会議においては一つの合意がなされたわけです。しかしながら、ジスカールデスタンの演説にみられますように、やはりそこで、合意といっても、非常にいろいろな見方があるということが、正直に申しまして露呈されたわけでございます。したがいまして、フランスの立場というものは、十カ国蔵相代理会議の間でまあ一回やった議論でございますが、それを世界に全部広めた、こういうことかと思います。  基本的な考え方というのは、フランスは、現在の流動性というものは、むしろ非常に余っているのだ、こういう考え方だろうと思います。それはなぜかというと、現在の国際通貨制度というものがドルを中心とした金為替本位制に立脚しておる。ほかの国であれば、国際収支の赤字を出した場合には、どうしてもそれだけ外貨準備が減るか、あるいは外国から金を借りる、あるいは国際機関から金を借りるということで、国際収支の逆境をタイドオーバーしなければならぬわけでございますが、アメリカの場合には、単にドルを支払うということによって、もしドルをよその政府なり中央銀行が金にかえるということがなければ、何らの痛みを感じない。そこに現在の国際通貨制度は、彼のことばを使いますれば、エクィタブルでない、公平でないということを言っておるわけでございます。したがいまして、フランスの立場というのは、アメリカの国際収支節度を、いかにしてほかの国と同じ角度でもって一つ金融節度を得せしめるか、こういう点に力点があったかと思います。  それには、さしあたりはもちろんドルは赤字を出さないことであるし、二番目の問題としてジスカールデスタンが出しました点は、金を同心円とした何らかの国際通貨制度をつくったらどうかというのが、一つの提案であったかと思います。それに対しましていろいろな意見はあったかと思いますが、そこまでは金の問題とひっかけた議論はないとしても、ヨーロッパの一般的な議論というのは、やはり国際収支節度というものを非常に重要視した議論が多かったと思います。一例をあげれば、オランダのホルトロップ・オランダ銀行総裁とか、ドイツのブンデスバンクのプレッシング総裁とか、そういった人々の議論は、みんなそういうかっこうになっております。  一方、アメリカの立場を申しますと、アメリカも確かに、過去におきましては、ケネディ政権の初期の段階におきましては、アメリカのドルは世界通貨なんだから、よそが持っているのはあたりまえだという態度をとっておりましたが、昨年以来相当そこらの感覚が違ってきた。少なくとも自分の国際収支を直すということについては、ヨーロッパ側の意見に一致したと思います。したがいまして、ただ、その問題についての自信がどの程度あったかということだろうと思いますが、すぐ直せないとすれば、国際通貨問題というものをあまり早く議論するのは困難であるという若干のちゅうちょがあったわけであります。しかし、ことしの二月に、先ほど木村委員からもお話がありましたが、再びアメリカが国際収支対策についての強力な行政指導ということをいたしまして、それ以来急激にアメリカの国際収支は変わってきたわけでございます。したがいまして、一方におきまして、またフランスが、先ほど御指摘のございましたように、ドルを金にかえるというような動きもございます。こういうようなことで若干の動きはあったわけでございますが、最近に至りましてアメリカのファウラー財務長官が演説をいたしまして、国際流動性の問題は相当緊急の問題だから、新しいたとえば国際通貨会議というようなことも開いて、真剣に研究すべきだという発言をいたしております。  したがいまして、最近の動きとしては、確かに十カ国蔵相会議段階におきましては、現在国際流動性の供給はむしろ過剰だという感じが若干なくなってきたということと、したがいまして、そういったいろいろな新しい国際通貨制度、あるいは現行の国際通貨制度のインプルーブメントということになるかもしれませんが、そういったことについて各国の機運は盛り上がってきつつあるというふうに私は理解しております。  しかしながら、問題は非常にむずかしい問題でございまして、たとえば新準備資産をつくるというようなことになりましても、実はいかなる形の新準備資産をつくるかということだけではなくて、そのメカニズムとして、たとえば限られた国の間でそういったものをつくるのか、あるいは世界の全体にそれを及ぼすのか、あるいはその新準備資産をつくる場合にIMFを中心としてやるべきなのか、そうでないのか、あるいは金との関係をどうするか、あるいはその新準備資産を創設するには何らかの合意が要するわけですが、そろいったときの新準備資産の供給の方法を決定するのは全会一致でするのかあるいは多数決でするのか、こういったところにおきまして、まだ事務段階の少なくとも専門家の議論というものは相当分かれております。したがいまして、今後十カ国なりIMFなりでこういったものを研究するにいたしましても、そう簡単にすぐ合意が得られるかどうかということについては私は若干疑問に思っておりますが、これは一つは世界の流動性の効きというものが非常な重要な問題になろうかと思います。  アメリカがこのまま黒字を続けていくというような状態であれば、それだけ流動性の不足というものが、ことに後進国あるいは経済発展をしつつある国、そういったものに対する影響という点から大きく出てまいりましょうし、そういう場合には何らかの解決を急がなければならないことになろうかと思います。依然としてアメリカが赤字を出すというようなことになれば、またそこでいろいろ変わったような議論が出てくる、こういうふうに考えております。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまのいろいろお話伺いましても、国際流動性の問題、あるいは国際通貨制度の問題は、これまでは大体専門家の間の論議、また学者間の論議程度に一般は理解しておったと思うんですよ。しかし、最近では、単に専門家間あるいは学者間の論議だけではなく、非常に現実的な問題になってきておりますし、ことに日本にとってもすぐに、いまのお話のように、たとえばドゴールの金本位復帰論とか、フランスの蔵相のジスカールデスタンですかの考え方とか、その後いろいろ最近では、ぼくもよく強勉していないんですけれども、西ドイツの考えも多少英米とは違っております、フランスとは同じじゃありませんけれども。東京総会で、やはりいまの英米のいわゆるドルというものが、さっきお話ししたように、一方的にドルにファシリティーが与えられておって、信用の基本になっている。何も金準備していなくてもドルを準備していればいいという、世界通貨の中でドルだけが他の通貨と違った、何というんですか、決済手段としての機能を持っている。そういうことに対する非常な不満もあるし、それがまた全体的のインフレ傾向を助長するということから、いろいろな批判が出てきたわけでしょう。それから、最近では逆に、リュエフ教授の金価格の引き上げ論なんかも出てきた。これはすぐに実現できるかどうか知りませんが、これはかなり実際の影響を与えて、それがロンドンの金相場の騰貴というものにも間接にいろいろな影響を与えているやに聞いておりますが、そういうことから、アメリカとしては、ここでやはりいままでのようなドルの優越性ということばかりにこだわっているわけにいかなくて、マーチン連銀理事長の見解のようなことも出てきて、それから国際収支改善対策、ドル防衛政策が非常に強行されてきた。その結果、これは私は今後日本に対して相当の影響が出てくるんじゃないかと思うわけですよ。  たとえばアメリカのドル防衛政策が、アメリカは国際収支を、やはりフランスの金本位理論等を契機にして、かなりアメリカ自身が国際収支均衡をとらなければならぬという態度で出てきたわけでしょう。そのためにいわゆる資本に対しての利子課税論ですかとか、ああいうものが手段として出てきたわけです。これは一般に伝えられているように、非常に強い制限であるように聞いているわけですよ。アメリカの市中銀行の貸し出しについてもかなりいろいろな制約が出てきておる。ゴア条項というんですか、そういうものの適用もあって、相当今後——日本国際収支バランスをとるために資本収支にかなりウエートを置いておったんですよ、ことに長期資本というところに。それが非常に困難になってきたわけですね。そういうような影響も現実に出てきておるわけです。  そういうことから、こうした流動性の問題とか、国際通貨制度に対する問題は、単に学者間とか専門家間だけの問題ではなくて、やっぱり一般国民としても十分これは関心持たなければならぬ。そういうことで、いまの情勢から、今後日本政府のとるべき態度というものははっきりしておかなければならぬと思っておるんです。  特に私は、今度の予算との関係におきまして、日銀の十六トンか十三トンかの金の再評価益、あの再評価益で財源措置をとっておるんです。ところが、あれは今度IMFに出資する場合に金で出資するんでしょう。金で出資するときは、あれはロンドン市場で買って、現送するわけじゃないんですよ、買って出資するんでしょう。金相場がこのように上がってくるということになると、これはどういうふうになるんですか。この予算措置で足りるのかどうかという問題も疑問起こってくるですよ。それからまた、もしポンドが切り下げられた場合、これはまた非常に大きな問題が出てくると思うのですが、ポンドの切り下げの場合にいろいろ、私もはっきりわからないのですが、前に東京銀行の堀江さんあたりは、フィフティー・フィフティーだと言っておった。半分切り下げられる可能性もあるかもしらぬけれども、また半分は切り下げられない可能性もあると言われているわけです。そういうことについてやはり伺っておきたいと思うのです。
  50. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) いまいろいろなお話がありましたが、もし私全部覚えていないでお答えを忘れておりましたら、あとで御注意を願いたいと思いますが……。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、これに、直接質問に関連ないことでも、予備知識的にこういう機会に、あなたのお考えなんかありましたら、一番あなたが専門家なんですから、十分にここでお話し願いたいと思います。いままで、たとえば為替局長なんかに前に聞きましても、よく十分に説明していないですよ。たとえばパリの蔵相会議の内容なんか聞いても、何か国際的な影響があるとか、あるいは遠慮しているのか知らないけれども、ちっとも十分な答弁をしていない。ですから、こういう点、いままでと違って学者間の議論の段階でなくなってきているのですから、そういう点については十分にあなたはこういう機会に、こうこうこういうふうになっているのだということをひとつ説明願いたいのです。
  52. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) まずリュエフの金引き上げ論というものに対する私の理解しております一般的な世界的反響というものは、私は、蔵相会議におきましても、金の引き上げということはもうやらないのだという問題がございますし、金の引き上げということについて論ずるということ自身が、現在の国際通貨制度の不安定を確かになることを刺激するという意味で、非常にまずいことである、こういうふうに考えております。何と申しましても、現在金だけでは世界の流動性を需要をまかなうだけの量はございません。現在の世界の金準備というのは四百億ドルぐらいだと思いますが、それだけでは足りない。したがいまして、そういった議論が非常に国際間の通貨制度をゆるがすような議論になるということ自身が、各国の貿易なり資本取引というものを阻害して、世界経済の安定的発展というものを阻害するというふうに考えております。  それ以外に、金を一体引き上げることという意味はどういうことであるかということを私なりに解釈すれば、まず第一に、アメリカが現在金の準備は百四十億ドルぐらいしかない。それに対して、アメリカの国内法で通貨の発行量の二五%は金を持っていなければならないという規定がございますが、これが約九十億ドル弱だと思います。したがいまして、アメリカが自由に相手国に要求されてかえ得る金というのは、五十億か六十億しかないわけであります。一方それに反しまして、アメリカが……。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと、通貨の二五%ですか、預金準備も含めてですか。
  54. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) それは撤廃されまして、通貨の二五%だけになったわけでございます。  そういった状況で、もし世界じゅうの各国がこぞってアメリカに金を兌換しにいく——いまのアメリカの体制は、世界の政府なり中央銀行が貨幣用に必要とする金はドルといつでも兌換に応じますというコミットメントをしております。したがいまして、これでは足りないわけであります。ですから、もしフランスのような態度をすべての国がとるとすれば、アメリカは実際問題として、金をいままで一オンス三十五ドルで買い取ったものを、それを倍にするかなんかしなければ、それは決済がつかなくなってしまう。そういうことになれば、まさしく世界の現在の国際通貨制度というのは崩壊するわけで、フランスが自分の国だけでやる分にはそう影響もないと思います。また、よその国には必ずしもフランスに同調してフランスの動きをそのままやっているわけでは私はないと思います。  それと、もう一つは、金を一体再評価する意味というのは、だれが一番得かといえば、私はリュエフの属するフランスじゃなくて、アメリカではないかという感じがするのです。アメリカはいままで負っていたドル債務というものを、もし二倍に引き上げるとすれば、半分の金で決済することができるわけですから、それだけの金の余裕ができれば、アメリカの国際収支節度というものがそれだけの余裕ができてしまって、当分守らなくてもいいということになるかもしれない。  この二つからいっても、私は金の引き上げ論はおかしいと思います。  それから、もう一つは、ヨーロッパのほかの、フランス以外のリアクションといたしましては、金の引き上げをすれば、そこで当然再評価益というものが出てくるわけでございます。現在の各国いろいろの中央銀行政府の間の制度関係もございますけれども、やはり金を再評価した場合には、それだけの自国通貨というものが生み出されるわけでございますので、それによって、金の再評価によるインフレというものが非常にこわい、こういう問題もあろうかと思います。したがいまして、金の再評価というものについては、私はリュエフのような人、古典的な方はいざ知らず、現在の普通の実務に携わっている国際金融の担当者は反対である、こういうふうに理解しております。  それで、もう一つは、御参考までに申しますと、ジスカールデスタンがドゴールの演説のあとにいたしました演説でも、金の再評価というものは否定しております。これは大蔵大臣として言ったのか、政府として言ったのかという質問に対して、大蔵大臣の言ったことは政府の言ったことだという答えを新聞記者にしております。したがって、フランス自身も、金の再評価というものはそう主張しているとは思いません。  それから、ちょっと先ほど触れましたドイツの構想、これはドイツの国としてそういう構想が出ているわけではございませんが、例のブレッシング構想というものが、これはブンデスバンクの総裁でございますが、これはどういうことかと申しますと、現在各国が金と外貨の比率がいろいろ違う。しかし、これをある程度地ならしして、たとえば金を七五%、外貨を二五%というようなことでやれば、そこでいろいろな、金に対する兌換要求も押えられるだろうし、またアメリカの国際収支の節度も、どうしてもある程度の金を出さなければならないということになるわけでございますから、そこで、ある程度の国際収支節度が確保されるというような意見を出したこともございます。しかし、これは準備手段ではございませんで、現在の金なり外貨なりというものの比率をある一定にきめれば、そこでフランスだけが金を買ってしまって自分のほうは買えないということもございませんし、また、各国が競ってドルを金にかえるということも防げる。そこで、その比率というものを一定の国で合意したらどうか、こういう意見であるわけでございます。御参考までに申し上げます。  それから、日本のいろいろな、アメリカの国際収支対策等に対する影響、あるいは今後の国際収支として望ましいパターンというものをどういうふうに描くかということでございますが、私は、確かに従来は、日本というのは少なくとも経常収支ではなかなか黒字が出せなかった。したがいまして、どうしても一定量の外貨準備を保ち、あるいは必要な輸入をまかなうという意味においては、長期資本なり短期資本の導入ということも含めて、資本収支で相当の黒字を出さない限りやっていけなかった、こういうふうに考えておりますが、御承知のように、ことしに入りましてから輸出が非常に好調でございます。したがいまして、まだ正確にはわかりませんが、ことしのおそらく国際収支のパターンというものは、輸出が相当の黒字になって、貿易外はもちろん赤字でございますけれども、貿易の黒字が貿易外の赤字を十分にカバーして、相当の余剰が出る。一方、資本のほうは、過去のいろいろな銀行借り入れ金とか、そういったようなものの返済もございますし、また、アメリカのドル防衛対策、それの直接、間接でございますね、直接には、アメリカからの銀行借り入れがいままでほどはくれないとか、そういったこともあろうかと思います。間接的には、ヨーロッパがそれだけ金融が締まって、ヨーロッパの外債が十分に出ない、こういうようなことから、いまの資本の流入ということが相当減ってくるという可能性が私は十分あると思います。したがって、ことしのかっこうというものは大体、まず経常収支で黒字で、資本収支は長短期を含めていわばある程度の赤字になるというかっこうに私はなると思います。  もう一つ申し忘れましたが、貿易が非常に黒字になります場合には、短期資本収支は当然赤字になるということ、これはひとつの裏返しの問題でございます。輸出がふえますときには輸出信用がある程度与えられ、輸入が落ちついている場合にはそれだけ輸入ユーザンスというかっこうの借金はふえないわけでございますから、そういった面からいっても赤字の要因があるということを申し上げておきます。  したがいまして、今後の状態としては、私はやはり経常収支の均衡、少なくとも若干の黒字を生み出していって、資本というものは、今後の後進国援助とかあるいは外債の元利償還ということを考えますと、いままでのような黒字は期待すべきでないし、またできないというふうに考えております。  ただ、現在の状況が日本の望ましいパターンからいってどうかということになりますと、御承知のように、中期経済計画、この計画をどう評価されるかは別でございますが、あの中期経済計画における目標年次におきまして、経常収支は均衡するという計画をとっているわけでございます。したがいまして、現在の、ことしの状態というものは四十三年の状態よりももっと先にいったかっこうになっております。これは先ほど大蔵大臣から御説明がありましたように、国内の不況の問題もあろうかと思いますし、過去におきました日本設備投資によって国際競争力というものがふえたというようなこと、あるいは世界の貿易環境がよかった、こういうようないろいろな問題があろうかと思いますが、若干そういった意味では現在のかっこうというのは異常によ過ぎるという点は七ろうかと思います。  したがいまして、もちろんわれわれとしては、今後の国際収支を考えます場合には、国際流動性二つのソースがあるわけでございますが、一つは、現在の金または外貨のように、自分が自由に処分し得るもの、こういうものが一つあります。これを所有準備と普通いっております。それともう一つは、クレジット・ファシリティー、信用便宜による国際流動性の増強でございます。この二つがあると思いますが、所有準備というものについても相当の関心はございますが、さしあたり、たとえば今回御提案しておりますIMFの増資というようなことによって信用準備による日本の外貨準備というものがかなり強加されるわけで、この二つのことを考えてやっていくべきだというふうに考えておる次第でございます。  それから、第二の点で、現在のIMFの予算では金を買うことが十分でないではないかというお話でございますが、私どもの考えておりますことは、先ほど申しましたように、金の再評価益と外為資金のインベントリーをもちまして円を調達いたしまして、アメリカに参りましてその金を買う、アメリカは一オンス三十五ドルの公定相場の四分の一%の手数料で売るわけでございます。これはロンドン相場と関係なく売るわけでございます。それを買いまして納めるということを考えておりますから、アメリカが金を売ることを停止しない限り、そういうことはとうてい考えられないと思いますが、私は今回の予算で十分にいける、こういうふうに考えております、現送の必要もございません。IMFの金はアメリカに寄託されるという制度になっておりますものですから、そこにただ帳簿上IMFのほうの倉庫に振り込めばいいわけでございます。  それから、ポンドの切り下げの可能性というようなことは、こういうような席でよその政府の通貨について弱いとか強いとか言うことは、私は非常に、政府の役人としては言うべきことではないというふうに考えておりますので、その点木村先生の御満足いけるような御答弁ができるかどうかわかりませんが、もうポンドにつきましては、確かに相当問題があるということは御承知のとおりでございます。まず第一に、イギリスの国際競争力の低下という構造的な問題もございますし、それから第二には、現在イギリスの赤字というものが何で出ているかと申しますと、一つは国際競争力の低下による輸出の伸びがとまっているということがございますが、もう一つは国内の需要が相当強いということがございます。これについては労働党が政権をとりまして、労働党はストップ・アンド・ゴーをやらないんだということでとったわけでございますが、やはり国内の最終需要が強いということをある程度認めてまいりまして、だんだんにいろいろな措置をとって抑制措置をしておるわけでございます。まず第一に公定歩合を引き上げたとか、あるいは予算について、増税をしたり、それから最近は増税分以外の歳出は切っていくというようなこともやっております。それから、銀行の貸し出しについての窓口規制、こういったものもやっております。それから、海外投資に対する資本の抑制等もやっております。こういうようなことで非常に努力をしておるわけですが、もう一つの問題としては、イギリスが御存じのように現在はドルと並んで世界の基軸通貨の一端をになっているわけでございますが、対外債務に比して外貨準備が非常に貧弱である、こういう問題があろうかと思うわけでございます。したがいまして、ポンドの問題は、そういった構造上の問題と、それから現在が相当過熱状態にある、それについて相当抑制措置をしてもなかなかまだ最終需要が沈下しないという問題、それからもう一つは、そういった対外ポジションの関係でイギリスの通貨に対するコンフィデンス、信頼の問題があろうかと思います。したがいまして、この三つの問題がどういうふうになっていくかということでございまして、これについてはイギリスの政府としてもおそらく私は政治生命をかけてポンドを守り抜くという努力をしていると思うわけで、私のほうといたしましても、ポンドがもし切り下げがあるようなことになりますれば、日本経済に対する影響というものも相当大きいというふうに考えておりますので、これは私は各国の国際金融担当者の一致した見解でございますと思いますが、従来たとえば緊急的に中央銀行が三十億ドルのスタンド・バイ・クレジットを与えて、それを返すためにIMFから第一回には十億ドル、第二回には十四億ドル、そういうものを引き出した際に、日本もそれに参加して、IMFを通じてイギリスに援助したわけでございますが、こういった問題につきましては、もちろん注意しなければなりませんが、さればといって、ポンドが非常にあぶないというようなことを公言するということは、私はいかがかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう二つばかり伺わしていただきたいと思いますが、先ほどの日本の総合的な国際収支のことなんですが、中期計画では昭和四十三年に大体とんとんになる。それが最近非常に輸出が伸びて、それで経常収支のほうで非常に黒になってきた、資本収支が赤であるけれども。予想外に早く昭和四十三年ごろに予想した状態が訪れてきている。これがかなり長期的な趨勢的な傾向である。これは日本国際収支の構造的なパターンがそういうふうになったと断定するには早いんじゃないかという気もするんですよ。というのは、最近輸出が非常にふえておる原因に、いろいろあるでしょうけれども、不況のために、設備過剰の圧力ですね、そういうものがあってかなり伸びているという面があると思うんです。ですから、そのことを考えると、また、今後の世界経済、これはアメリカのマーチンですか、非常に恐慌が来るようなことを言いましたが、それほど深刻な不況が来ないまでも、今後やっぱりあまり楽観できないと思うんですがね。その点は、これはかなり一時的な現象ではないかというふうに見られるんです。もちろん、これが恒久的なそういうパターンになれば望ましいんですけれども、どうも私は一時的に思うのですよ。  それから、もう一つの質問は、外為の運用なんですよ。インベントリーを取りくずして今度の出資の財源にいたしましたが、大体インベントリーは、ドッジ・ライン以後インベントリー・ファイナンスをやりまして、それはどれくらいその分が残っているのか。  それともう一つは、外為の資産内容です。あれは非常に金が少なくて、そしてドル預金とかドル証券、そういうものが非常に多いわけでして、それで外為証券、かりに日銀が引き受けて発行した場合の金利よりもはるかに低いドル預金とかドル証券の運用をしている。そこが逆ざやになっているわけですね。そういう状態ですから、アメリカが国際収支改善対策として、日本に対して非常に資本輸出なんかについてもいろいろな強い制限を設けてきていますね、そういうことに対して日本はもっと、何というのですか、外為の運用のしかたを変える必要があるんじゃないか、こう思うのですけれども、できたら、最近の外為の資産の内容——前に一度伺ったことがあるのですが、あまり大蔵省はそれを発表するのをいやがりますけれども、それはそう世間に公表はしないけれども、一応最近における資産内容、運用の内容をここで報告してもらい、そしてできたらあとで資料として出してもらいたいのですが。
  56. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) まず、現在のパターンが恒常的であるかどうかということは、私は国際収支の実態というのは、確かに一つは、もちろん輸出というものは国際競争力もございますが、国内に非常に最終需要が強い場合には、非常に輸出というものは、当然それだけのリソースを外国に出すことになるわけでございますから、できないという問題であろうかと思います。したがいまして、ことしの成長がどうなるかというようなことは、まだ、私どもも検討しておりますが、確かに現段階状態は、工業の生産もずっと横ばいであるというような意味で、非常にいいということは言えぬのではないかと思います。しかし、私たちの国際金融を担当する者といたしましては、先ほど申しましたように、もちろん急激にすべての国際収支の構造を直すということは、いろいろなショックもあることでございますから、その点は十分考慮すべきだと思いますが、やはり日本が先進国の過程に進んでいくに従いまして、経常収支で黒字を出して資本の輸出国になる、これが最終的なゴールであろうかと思います。ただ、年次的にどういうふうになっていくかということは、今後の国内政策なり、そういったものとも関係がございますので、ここでは申し上げられませんが、一つは現在のパターンというのは経常について異常によくて資本について異常に悪いということが言えるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。したがいまして、今後につきましては、木村委員のおっしゃいますように、世界の経済動向というものは十分注意しなければならないと思いますが、私はその際に、やはり世界がデフレになるというようなことは、国際協調によって極力避けるべく、すべての国は努力すべきであると、こういうふうに考えております。ただ傍観するだけではなく、これは人間の努力と国際協調によっては十分やれることであると、こういうふうに考えておりますので、そういった方向日本も当然参加していきたい、こういうふうに考えております。  それから、外為インベントリーの問題でございますが、外為インベントリーというのを何と定義するかということでございますが、かりに一般会計から外為資金に繰り入れられたものというふうに考えますと、外為会計発足前に百億入れておりまして、あと二十六年度に八百億、二十七年度に三百五十億入れております。合計千二百五十億円となっておりますが、その後三十三年度におきまして、御承知のとおりインドネシアに対する債権を六百三十七億放棄いたしまして、これをかりに差し引きますと、現在の外為インベントリーは六百十三億ということになるわけでございます。  それで、先ほどの御質問の趣旨で、まず外為がどんなものを持っているかということでございますが、御指摘のように、現在金は持っておりません。もちろん若干の金は日本銀行に買い戻す条件で渡しているものもございます。しかし、それは現在外為の所有ではございません。日本の外貨準備として金は三億三千万ドル程度あるわけでございますが、そのうち政府の持っております金というのは貴金属特別会計が持っておりまして、これは約三千万ドルございます。あとの三億ドルは日本銀行が持っております。したがいまして、外為としては金を持っていないわけでございますが、これは必要があれば買い戻しができるという意味日本銀行に売り渡しているということになっております。現在の資産内容は、先ほど御質問がありましたように、外為証券というのは年利五・八%くらいの金利になるかと思いますが、これを発行すると同時に、余裕があれば国庫余裕金というものを使わせていただいておりますが、それ以外に、先ほど千二百五十億円から六百三十七億を差し引きました六百十三億以外に、司令部その他から引き継ぎました資金というものがございまして、これが総計で千六百三十七億円ございます。これは資金コストの要らない金でございます。そういったものを使いまして外貨を買っているということになります。外貨の平均利回りは、四十年度の外為会計で予想しておりますものは、平均三・七四%でございます。したがいまして、こういったことで無利子の金と外為証券というものを使いまして、そこでコストが下がってきて、そして外貨を保有できる、こういう状態になっているわけでございます。  したがいまして、今回百六十一億円でございますか、外為インベントリーをくずすといたしましても、ことしの外為の貸借対照表上の利益は十三億円を見込んでおりますので、もし外為インベントリー、コストのかからない金を百六十一億ばかりくずすとしましても、実際問題としてどういうことが起こりますかと申しますと、外為資金を取りくずしまして一般会計に繰り入れますと、一般会計はその円でもって外為資金からドルを買い入れるわけでございます。したがって、外為会計の資産といたしましては、資金がそれだけ落ちると同時に、ドルの資産がそれだけ落ちる、それが一般会計の出資というかっこうになるわけでございますが、そういたしますと、大体、先ほど申しました外貨の運用のトレジャリー・ビルを売ったといたしまして、これが三・六%くらいございますが、約三億円程度の採算が悪くなる、こういうことになるわけで、十三億から三億——もちろん外為特別会計の状態というのが、その年の国際収支の状況とかいろいろな状況で、必ずしも予定貸借表どおりなるかどうかわかりませんが、その面だけとらえて申しますれば、何とかこの程度のインベントリーをくずしてもやっていける、こういうことになる次第でございます。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで三分七厘四毛ですか、現在の運用利回り……。
  58. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 三分七厘四毛です。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはドル預金はどのくらいになっているのですか。これはいつ現在です。
  60. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) そのつど変わりますものですから、全部で、外貨預金と外貨証券と足しまして、円にいたしまして四千億円くらいのものになるわけでございます。その中身は絶えず変わっております。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外貨預金、外貨証券等になっている、それと金。外貨預金がどうなのか。
  62. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 総額でございますか。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外貨預金はドルでどのくらいで、ポンドでどのくらい、外貨証券は、ドル証券、あるいはポンド証券あるかどうか知りませんが。
  64. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 大部分ドル預金とドル証券でございます。非常にわずかなポンドがございますが……。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ドル預金はどのくらいです、現在。
  66. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 先ほど申しましたように、ほとんど全部がドル預金であり、ドル証券でございます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、ドル預金はどのくらい、別に公表しないですから、だいじょうぶです。前にも伺っておりまして、大体見当がつくのです。ドル預金の利率がどれだけで、ドル証券の利回りがどれだけですか。
  68. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ドル預金が約七億ドルでございます。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体いつ現在です。
  70. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 七月末です。利率はいろいろの銀行によって違いますが、約四%でございます。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ドル証券は。
  72. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ただいま申しましたのは、ドル証券とドル預金を足した数字でございます。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ドル預金を聞いておるのです。この委員会じゃそういうことを聞くよりほかないじゃないですか。
  74. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 約四億ドルでございます。その他は政府証券でございます。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四億ドルで、金利は幾らですか。
  76. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) いろいろ預金の長さによって違いますが、四%程度でございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 平均ね。それからドル証券は。
  78. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) ドル証券が二億一千万ドル。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま政府の外貨保有額は幾らですか。
  80. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 日本銀行を含めまして十九億五千万ドルでございます。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、今度は、十九億五千万ドルで政府はどのくらいですか、その中で。
  82. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 政府が約八億ドルでございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのうちドル預金は四億ドルですか。はっきりわからないね。
  84. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) いろいろ区分がありまして、申しわけありませんが。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、こういうふうにはっきりしてください。十九億五千万ドルの外貨保有のうち日銀保有分が幾ら、政府保有分が幾ら、それがドル預金として幾ら、ドル証券として幾ら、金として幾ら、そのドル預金の利回りは幾ら、ドル証券の利回りは幾らと、こういうふうに整理して説明してください。資料はあとで要求いたします。
  86. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 全体の外貨準備が、先ほど申しましたように十九億五千万ドルでございます。このうち二億三千三百万ドルがIMFに対するゴールドトランシュ・ポジションでございます。したがいまして、金及び外貨は十七億一千七百万ドルでございます。そのうち政府の保有しておりますのは約八億ドル、それから日本銀行が九億ドルでございます。それから、先ほど申しましたように、金は全部で約三億三千万ドルでございます。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは日銀が三億持っているわけですね。
  88. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) そういうことでございます。あとが外貨で十三億五千万ドル持っている。これは大部分が米ドルの形態で持たれているということでございます。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十三億五千万ドルのうちアメリカ預金が幾らか。
  90. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) この点につきましては、実は、さっきから私がもたもた申し上げていのるは、一つは、ほとんどこういう区分をどこの通貨当局も出しておりませんし、よそに対する影響、たとえばポンドについて一カ月前と二カ月前とどの程度減っているか多いかということは、実は外国にも知らせたくないということもございますので、お答えしたくないということでございます。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前にもこういう例があるのです。これがわからなければ、運用の利回りもわからないじゃないですか。運用のしかたが、幾らの金利にして……。だから、それを今度は、さっき質問いたしましたように、無利息分を今度は補正予算にこれを出すわけでしょう。インベントリーから出すと。そうすると、外為のほうの無利息分が減って運用利益が減ってくるわけなんです。それだから、その内容を聞いておかなければならない。減ってくるに対しては、今後どういうふうにしたらいいか、いまの資産の運用のしかたがどういうふうになっているか聞かなければわからないでしょう。アメリカにドルとしてどのくらい預金し、どのくらいの利率で、証券はどのくらいで利回りやっているのですか。そうしてアメリカにドルをたくさん預金して、そうしてアメリカの銀行から高い金利日本の為替銀行が借りている。そういうことをはっきりしなければ、委員会意味をなしませんよ。そういうことを言ってもしょうがないから……。
  92. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと木村さんに関連して……。資料としてしっかりしたものを出していただきたい。
  93. 西田信一

    委員長西田信一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  94. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記を起こして。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままでここまで答弁したのですよ。とにかく外貨として十三億五千万ドル持っていると、ここまではわかったのです。この中でドル預金が幾らで、ドル証券には幾ら、あるいはポンドの証券に幾ら、そうしてその運用の金利なりあるいは利回りは幾らと、それをいま質問しているわけですよ。答弁を求めているわけです。
  96. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 先ほど申しましたように、各通貨別の保有を申し上げるということは、いろいろ国際的な関係もあるかと思いまして、公開の席ではちょっと御遠慮したいと、こういうふうに考えております。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなこと言ったら、われわれ、予算審議できないじゃありませんか。外為の経理の内容は、われわれはこの委員会で審議できないことになりますよ。そんなばかな話ないですよ。ですから、前にもそういうお話ありましたよ。ありましたけれども、この取り扱いはわれわれもそういう国際的関連もあるから十分頭に置きますけれども、大体それがわからなければ、前に外為が赤字になったとき、この赤字の問題をいわゆる究明するとき、どうしても必要であって、ちゃんと報告されたのですよ。そういう前例があるのです。ですから、そういうことによって何も、ドル預金が非常にたくさんあるのでみっともないとかいうことで、それを説明しないというなら、これはおかしいことであって、委員会として、委員長、どうですか、委員長におはかりしますが、前例があるのです、前に。
  98. 西田信一

    委員長西田信一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  99. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記を起こして。
  100. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 私がなぜお答えできないかと言った問題は、一つは、預金といってもいろいろの形態があるわけでございます。定期預金もございますれば当座預金もある。それの、まあたとえば当座預金というのは当然利子のつかないものでございますが、そういったもの、あるいは通貨別の数字というのを正確に申し上げるのは、これはいろいろ変動することでもございますし、また変動したときにいろいろ思わぬ思惑を生むこともあろうかと思います。したがいまして、そういったことは申し上げられないと申し上げたわけでございまして、先ほども申し上げていますように、外貨資産の全部の平均利回りは三・七四でございます。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前に、普通預金はどのくらいで、定期預金はどのくらいで、利回りは幾らと発表したことがあるのですよ、資料として。
  102. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) それでは、もし御了解が得るならば、日本銀行の保有分というのは私の所管でもございませんし、日本銀行としても営業上の問題でございますから、外為会計だけの数字で御了解を得れば、その分だけは申し上げたいと、こういうふうに……。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 とにかく外為の経理を明らかにすることは、これはよくないのですか。もうわれわれの責任じゃないですか。何か思惑によってとか、何でそれが悪いのか。何月現在でこうでございますと、こうあれすれば、それでいいじゃありませんか。
  104. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 外為会計の点をまず出しなさい。
  105. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 外為会計は、先ほどちょっと私間違えて読みましたものですから、総額で米ドルが七億七千万ドル程度でございます。それから、英ポンドが九百万ドル、スイスフランが四十七万ドル、それだけございます。そのうち米ドルの預金は当座と定期預金、通知預金、これの区分はここでございませんが、足しまして五億五千万ドル、残りの二億一千万ドルがアメリカの財務省証券でございます。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、その利回りは。
  107. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 当座は無利子でございます。それから、定期預金はいろいろ期限によって違いますが、平均四%でございまして、それから財務省証券は三・六%でございます。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、当座はどのくらいですか、五億五千万ドルのうち。
  109. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 当座は最小限を持っておりまして、その日その日で違いますが、七月三十日現在で五千万ドル。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、ポンドとスイス、これは預金じゃないですか。証券ですか。
  111. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 預金でございます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはどのくらいです、利息は。
  113. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 六%でございます。ポンドは六%。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 スイスは。
  115. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 期限によって違うかと思いますが、私いま正確に記憶しておりませんが、二%ないし三%。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、外為証券はこれはどのくらいですか、日銀から……。
  117. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 現在三千億程度でございます。七月末現在が二千九百五十八億円でございます。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは七月末ですね。
  119. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) はい。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはどのくらいですか、今利は。
  121. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 五・八%、年にいたしまして。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これは単純には言えませんけれども、外為から五・八%金利払っているでしょう。それで、その運用は米ドルで四%ですよね、当座、定期平均して。それから証券は三・六%ですよね。ですから、そこに非常に金利について差があるわけですよね。ですから、こういう運用でいいかどうか。それと、今度は、アメリカの銀行日本の為替銀行に金を貸すとき、それはどのくらいで貸しているんですかね。
  123. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) まず、先ほどの第一の問題点であります円金利と外貨金利の差ということは、お説のとおりでございます。したがいまして、資金というものが入りまして、そこで現在のところは採算がとれてということになろうかと思います。もちろん、今後日本の国内金利が引き続き下がる、あるいは外国の金利が上がるというような場合におきましては、そこでどれだけの逆ざやが起こるかということは別の問題でございまして、今後の問題としてはそういったことがあろうかと思います。過去におきましても、たとえば国外の金利状況が若干上がってまいりましたものですから、運用利回りは一昨年等に比べては私は上がっていると、こういうふうに考えております。  それから、もう一つの第二の御質問ですが、アメリカの銀行から日本の為替銀行が借りております大宗を占めます輸入ユーザンスの金利は五・八七五%でございます。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、このドル預金ですね、これはアメリカのシティーバンクに預けているのですか、どういう銀行ですか。
  125. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) アメリカの市中銀行に預けております。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、アメリカの市中銀行は、日本のドル預金をもって日本の為替銀行にこれを貸すと、こういう操作が行なわれるわけでしょう。そうしますと、平均四%で日本政府からドル預金を預かって、それで日本の為替銀行に、これはユーザンスですがね、五・八%、そういう金利金融すると。そうすれば日本のドル預金をもって非常に利ざやかせぎをさしていること、こういう論理にはなりませんかね。
  127. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) まず第一に、日本の外為がアメリカに預けておりますのは、外貨の運用として預けておりますので、日本の為替銀行が借ります担保とか見返りとかいうものになっておるわけではございません。したがいまして、預金の金利というのは、これは御存じかもしれませんが、アメリカのレグレーション九というフェデラル・リザーブの規則によってきめられております。この最高限を日本としてはもらっておるということでございます。それから、借りるほうの金利が預金に比べて高いではないかということは、いずれの銀行も預金よりは高い貸し出し金利でやっているのが普通の状態でございます。それと、もう一つ申し上げたい点は、現在アメリカの銀行から借りておりますユーザンスのクレジット・ラインは、およそ二十億ドルぐらいあるわけでございまして、こちらの預金しているよりははるかに多い金額をクレジット・ラインとしてくれていると、こういうことになっております。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、もう一つ伺っておきたいのは、外為のインベトリーのファイナンスしたやつですね、前に一般会計から税金で繰り入れておったその残りが、さっき伺ったように六百十三億ばかりあるわけですね。今後これをかりに全部取りくずすことになりますと、まあそのほかに前に外為資金から受け継いだものがありますね。千六百三十七億あります。これは無利子のものですからね。それから、インベトリー・ファイナンスの六百十三億も無利子ですよね。しかし、これを全部一般会計に繰り入れた場合、そうなると外為の運用で支障を生じないかどうか。
  129. 鈴木秀雄

    政府委員(鈴木秀雄君) 仮定の問題でございますが、いま木村先生のおっしゃいました六百十三億というのは、今回百六十一億を使いますものですから、もし今回の法案が御承認を得れば四百五十二億になるわけでございます。今後の問題として、じゃどういうふうになるのかということにつきましては、もちろんこれは財政当局である主計局もおりますが、私ども外為会計を所管しております者の立場から申し上げますと、一つは、内外の金利差がどうなるかという問題があろうかと思います。もしこれが非常にくっつくという問題ならば、短期証券を出して外貨を保有する。すでにポンドのようなものにおいてはそういったことが可能なわけでございますね。円のほうがポンドの金利よりも低いということになっておるわけでございます。その問題が一つとそれから問題は、もしくずすといたしますと、私は、くずすかくずさないかはそのときの状況、財源の使用目的とも関係があるわけでございますが、それのテンポ等にもよるかと思います。したがいまして、現在のままこれを全部くずしたらどうかということになりますれば、現在のままでまいりますれば、なかなか苦しい。運用を従来どおりやっている限りにおいては苦しいということになると思います。
  130. 西田信一

    委員長西田信一君) 他に御発言もなければ、本日の審査はこの程度といたします。  明日は午前十時より委員会開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会      —————・—————