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説明員(
尾中悟君) 本年度の稲作につきましては、実はことしの春から本年の気象条件は必ずしも順調ではないだろう、こういう
気象庁の予報もございまして、四月の初めから技術
対策を
中心にいたしまして、品種の問題等については、できるだけわせ、なかてを徹底的につくる、あるいは肥料等の施肥につきましては慎重にやるべき問題である、また病害虫の発生等も異常気象によって予想されますので、そういった点については、農薬あるいは防除器具整備あるいは事前の確保について十分やっておく必要があるというようなことで、森以降、実は各県とも協力いたしまして、改良普及員あるいはその他の農業
関係技術者が総力をあげまして、現在減収をできるだけ最小限に食いとめるように努力をしておる最中でございます。
八月までの気象
状況をごく簡単に申しますと、四月から五月の上旬にかけまして、北海道、東北等は非常に低温でございます。また四月に入っても雪がなおときどき降るというような非常に異常な
状況にあったわけでございます。したがいまして、北海道、東北等におきましては、苗しろづくりが相当遅延したというようなこともあったわけでございます。したがって、田植え等もできるだけこれは早くしないと、東北は秋が早いということでございますので、実は、
自衛隊その他学童等にも協力を得まして、できるだけ田植えを早く済ますということで、やってまいったわけでございます。その後幸いに、五月の中旬から六月の下旬までは気温も上がり、日照も平年以上であるというようなことでございまして、六月末現在では大体北海道、東北等、一部の地帯を除きましては平年作にだんだん近づいてくるということで、やや愁眉を開くと申しますか、そういうふうに思っておったわけでございますが、七月に入りまして、また北海道、東北等では曇天あるいは雨が多い、したがって日照時間も少ないという
状況でございます。また三十日過ぎから北海道等を
中心にいたしまして、相当な低温がきたわけでございます。北見、網走地区等では、最低気温が十度前後にまでなるというような、七月の
状況といたしましては、相当異例な低温もあったわけでございます。ただその後、まあ若干最近持ち直してきておるのが別状でございます。そこで正式な稲作の概況につきましては、実は七月一日現在で
農林省が
統計調査部の
調査を発表いたしたわけでございますが、そのときは北海道なり東北のごく一部はやや不良である、しかしおおむね平年作に近づいたというような
状況に相なっておったわけでございます。ところがその後、いま申しましたような低温等もございまして、まだその低温による影響がどういうふうに現われるかということにつきましては、やはり八月の中旬ごろになりませんと、なかなか的確なことがわからないというのが現状でございます。と申しますのは、低温による生理障害、幼穂形成期なり減数分裂期におきます影響がどの程度きておるかということは、やはり八月中旬ごろになりませんと、はっきりしないわけでございます。したがいまして、八月十五日現在で例年
統計調査部の
調査をとって、八月下旬にその発表をやるが、正確にはその時期まで待ちませんと、なかなか詳細な的確なることは申し上げられないわけでございますが、現在中間的に、八月一日現在で、府県を通じて大体のことを調べておる最中でございます。それによって申しますると、やはり北海道、青森等はやや不良ではなかろうか。それから東北は並みかまたはやや不良、それから関東は並みかやや不良というようなことでございますが、これも最近の気象条件がよくなっておりますので、現在のところは相当好転するのではないかというふうに思っております。それから北陸の四県は大体平年並みではなかろうかというふうに見ております。それから東海地方も大体平年並みでそれから近畿から西日本につきましては、これはまだ東北よりもずっと田植えがおそくなっておりますので、今後の気象条件が、特に
台風等の影響が問題になるわけでございますけれ
ども、まあ大体並みかやや不良というようなことになっております。いいのは高知がやや良であろうというふうに見ております。
以上のような
状況でございますが、さらに草たけなり、基数でございますが、これは北海道、東北あるいは北陸につきましては、いわゆる低温の年にあらわれてまいります現象といたしまして、短稈多けつと申しますか、草たけはやや低い、あるいは茎数のほうはやや多いというようなことになっております。ところが、東海以西の西日本におきましては、草たけも非常によく伸びておりますし、茎数につきましては大体並みか、地帯によってはやや少ないというような
状況でございます。
それからいもちの発生
状況でございますが、これは北海道、東北を非常に心配しておるわけでございますが、現在のところは、先ほど来の
お話もございましたように、わりあいに低温ぎみに推移しておりますので、平年に比べまして少な目になっております。それから北陸、関東以西でございますが、
九州はやや少な目でございますけれ
ども、西日本はやや多目の発生を見ているような次第でございます。
以上、概略的に申しますと、北日本の北海道、東北の一部はやや不良、北陸は並みそれから関東東山はやや不良程度ではなかろうか。西日本は、今後の問題もございますけれ
ども、並みかやや不良というような
状況でございます。そこで、実は今後の
対策といたしましては、やはり病虫害の問題が非常に大きな問題でございます。特にことしのような異常気象になってまいりますと、いもち病の発生が懸念されておるわけであります。そこでまず農薬の確保については、できるだけいまやっておりまして、現在われわれのほうでつかんでおります
状況を申し上げますと、例年ですと大体二百万ヘクタールから三百万ヘクタールくらいのいもちの防除をやっておるわけでございますけれ
ども、ことしは非常に天候が異常だということで、現在四百七十万ヘクタール分の農薬は各県において大体確保されておるという
見通しでございます。最近一番多く発生いたしましたのは、三十八年でございますが、このときは、全国で防除実績四百二十万ヘクタールということでございますので、その年よりも相当多くもうすでに薬剤の
準備等はやっておるという現状でございます。それから防除器具の問題につきましては、これも当初予算で二百五十台高性能防除器具を北日本を
中心にしまして、これはすでに割り当てをし、現物も整備されておるわけでございます。それではやや不安があるということで、ついせんだって
予備費の支出を願いまして、さらに二百五十台高性能防除器具を追加するということで、
合計いたしまして五百台の防除器具を現在割り当ていたしまして、できるだけ早く現物の入手を急ぐようにということで手配しておるような次第でございます。
それから秋の早冷の問題は、九月以降の稲作にとっては非常に重要な問題になってこようかと思います。これについても、先ほど
気象庁からの御
説明がございましたように、警戒をしなければならぬというようなことでやっておりますけれ
ども、これは今後できるだけこの程度が軽いように、われわれとしても期待をしておるわけでございます。何といたしましても、全体として気象条件が異常であるということから、農業技術の試練の年であるというふうにも考えておりますので、県、市町村、農業団体協力いたしまして最善の努力をやってまいりたいというふうに思っております。
以上ごく簡単でございますが……。