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1965-08-07 第49回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月七日(土曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 古川 丈吉君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    加藤 高藏君       鍛冶 良作君    上林山榮吉君       小山 省二君    櫻内 義雄君       田中 六助君    田村 良平君       登坂重次郎君    中川 一郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    三原 朝雄君       水田三喜男君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       片島  港君    川崎 寛治君       小松  幹君    田口 誠治君       高田 富之君    滝井 義高君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       野原  覺君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         警察庁長官   新井  裕君         防衛政務次官  井村 重雄君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      半田  剛君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君         林野庁長官   田中 重五君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         検     事         (訟務局長)  青木 義人君         外務事務官         (国際連合局参         事官)     滝川 正久君         造 幣 局 長 有吉  正君         印 刷 局 長 遠藤  胖君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         通商産業事務官         (軽工業局アル         コール事業部         長)      宮城 恭一君         郵政事務官         (人事局長)  曾山 克巳君         専売公社総裁  阪田 泰二君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本電信電話公         社総裁     米沢  滋君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 八月七日  委員奥野誠亮君、小坂善太郎君、小山省二君、  重政誠之君、中曽根康弘君、野田卯一君、松浦  周太郎君、中井徳次郎君、永井勝次郎君、横路  節雄君及び佐々木良作辞任につき、その補欠  として三原朝雄君、鍛冶良作君、中川一郎君、  田村良平君、田中六助君、加藤高藏君、大坪保  雄君、田口誠治君、川崎寛治君、楢崎弥之助君  及び竹本孫一君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  滝井義高君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大坪保雄君、加藤高藏君、鍛冶良作君、田  中六助君、田村良平君、中川一郎君、橋本龍太  郎君、三原朝雄君、川崎寛治君、田口誠治君、  滝井義高君及び竹本孫一辞任につき、その補  欠として松浦周太郎君、野田卯一君、小坂善太  郎君、中曽根康弘君、重政誠之君、稻葉修君、  前尾繁三郎君、川崎秀二君、永井勝次郎君、中  井徳次郎君、横路節雄君及び佐々木良作君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を議題とし、質疑を続行いたします。  大原君の質疑に入る前に、理事の協議に基づき、LST乗員死亡事件に関する山花秀雄君の質疑を許します。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花委員 一昨日、わが党小松委員からのただいま委員長からお話がございましたLSTの乗り組み員の死亡事件に対する質疑に対して、運輸大臣から答弁がございましたが、全然ふに落ちない点がございますので、緊急に質問に立ったわけなんでありますが、何か外務大臣のほうが詳しく知っておられるというふうに承りましたので、この問題に関して、まず外務大臣からひとつ明細な答弁を願いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 政府委員をしてお答えいたさせます。
  5. 安川壯

    安川政府委員 外務省が現地の大使館から受けた報告によりますと、この船員遊泳中溺死したという報告でございます。それ以上詳細については、まだ事情をよく承知しておりません。
  6. 山花秀雄

    山花委員 現地からの報告では、遊泳中に死亡したという報告だ、こういうお話でありましたが、運輸大臣答弁もさような答弁のように伺いましたが、運輸大臣監督責任者立場でありますから、死因についてはっきりした点を調査になったと思いますので、もう一度御答弁願いたいと思います。
  7. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  私は、この間LST乗組員遊泳中に死亡して、その遺体が立川基地に向かって送られておるというようにお答えいたしたのでございますが、その途中で立川基地に着くのが横田基地に着くことになって、横田基地に着いたということでございます。それ以上詳細な報告をまだ獲取しておりませんので、わかりましてからお答えいたしたいと思います。
  8. 山花秀雄

    山花委員 立川基地に着くという答弁横田基地という御答弁でございますが、横田基地には十二時十分にその飛行機が着いております。立川基地のほうから収容のために引き取りに行っております。それから三時にまた立川基地に死体を運んでおります。立川基地病院にこれを収容して、警察医立川警察のほうから行って検視をしておるということを承っておりますが、これらの詳細につきましてはおわかりにならないですか。これは防衛庁関係でもよろしいし、運輸省関係でもよろしい。とにかく立川基地病院に収容されて、腹部貫通左肩下貫通で、二人というように承っておりますが、その間の事情、おわかりになっておると思います。私ですら報告を聞いておるのですから、政府当局がわからないわけはないと思いますが、ひとつ詳細な報告を願いたいと思います。
  9. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 まだ詳細な報告を受けておりません。船員局長が調べておるかどうかということは、まだ私と連絡がついておりません。いま船員局長が来ますので、船員局長が来ましてからお答えいたしたいと思います。
  10. 山花秀雄

    山花委員 小松委員質問いたしましたときには、水泳中に死んだのであろうと思うが、詳細はよく調べるという御答弁でありましたが、いまだにこの問題がはっきりせぬというのは、ずいぶん怠慢もひどいと思うのです。これは熊本県の在籍で、親元でもう引き取って帰ったというふうに報告されておりますが、その間の事情はわかりませんか。
  11. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 わかりませんから、いま山花委員の仰せられるように警察が立ち会ったといたしますならば、さっそくそのほうと直ちに連絡をさせまして、調査いたしまして御報告いたしたいと思います。
  12. 山花秀雄

    山花委員 わからない、知らないということで、これより以上議論を進めても進展いたしません。  そこで、私ただいま申し上げましたように、十二時十分横田飛行場に到着し、立川から来て引き取っております。それから立川にまた十五時に飛行機が到着いたしまして、いずれも立川基地病院に収容しております。そして水泳で死んだのではありません。報告によりますと、腹部貫通左肩下貫通ということになっております。人員は二人というぐあいに報告を受けております。そして、そのうちの一人は熊本県人で、遺族が引き取ってしまったというふうに承っております。とにかく遺族が引き取るくらいに、もうそこまでいっておるのに、上層部が知らぬ存ぜぬというのは、非常にこれは怠慢だと思います。それもきょう質問したわけではございません。御案内のように、小松委員質問から相当時間がたっておるのに、全然それがわからぬ、知らぬというのは、ずいぶん怠慢な話であります。しかし、これ以上追及してもしかたがございませんので、委員長におはかりしていただきたいと思いますが、この予算委員会終了までにひとつ詳細な報告のできるように委員、長から取り計らいを願いたいと思います。
  13. 青木正

    青木委員長 わかりました。運輸大臣、ただいまの山花君の質問のとおりでありますが、本委員会終了までに調査の上、御報告願います。
  14. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 直ちに連絡させて調査いたします。
  15. 山花秀雄

    山花委員 防衛庁関係でどなたかいらっしゃっておりますか。
  16. 青木正

    青木委員長 小幡施設庁長官を呼んでおりますが、まだ見えていないようであります。
  17. 山花秀雄

    山花委員 それでは、立川基地病院へ二人が収容されて、立川警察から検視に来たというような事柄に関しまして、これは防衛庁関係だと思いますが、何か報告でもございましたか、あるいは報告がなかったかという点、もし知っておられましたら、その間のいきさつをひとつお答え願いたいと思います。——すぐ来るというような答弁でございましたから、私は来ておると思ってお尋ねしたのですが、まだ来ていないそうでありますから、それではひとつ国家公安委員長ですか、警察庁ですか、おいでになっておるそうですので、立川警察検視に立ち会っておるそうでありますがその報告があったかなかったか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  18. 永山忠則

    永山国務大臣 事務当局に聞きましたら、まだ報告が来ていないそうでございますから、至急に取り調べます。
  19. 山花秀雄

    山花委員 それでは、私あと質問者もございますので、次の点だけはひとつ委員長取り計らい願いたいと思うのです。  立川基地病院立川警察から検視に行っておるそうでありますが、その検視の結果は問い合わせればすぐわかると思います。この点を一点。もう一つは、きのうは御案内のように水泳中死亡したという報告でございましたが、事実はただいま申し上げましたように、腹部貫通左肩下貫通というように、鉄砲で撃たれて死んだ。それから一人は、熊本県の親元に引き渡したという報告が私のもとに入っておりますが、これらの件に関しまして、監督官庁運輸省のほうにおいて十分調べて報告を願いたい。これは長々引っぱるわけにはまいりませんので、本予算委員会中にひとつ報告のできるように取り計らい委員長のほうにおまかせしたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  20. 青木正

    青木委員長 承知いたしました。至急取り計らいます。
  21. 山花秀雄

    山花委員 それでは私の質問は終わります。
  22. 青木正

    青木委員長 次に大原亨君。
  23. 大原亨

    大原委員 きょうは、私は二人分ほど質問いたします。これは、質問者が二人のところを一人になりまして、二人分やりますから、要領よくひとつ簡潔にお答えいただきたい。  第一番目は、公務員公共企業体労使関係について、労使関係を正常化する、ルールへ乗せる、こういう基本的な観点に立ちまして、逐次質問をいたしたいと思います。  最初に、人事院勧告についてでありますが、人事院勧告につきまして、これは人事院総裁勧告いつお出しになりますか。いままでの例を調べてみますと、勧告の時期は八月の七日から十日前後、こういうふうなのが慣例になっておるのでありますが、少なくとも人事院勧告は、公務員に対する労働基本権制限をいたしました代償機能でございますし、この問題はきわめて重要な問題でありまして、国会政府に対する勧告でございますから、国会開会中に少なくともなさるべきである。やむを得ない場合は別にいたしまして、国会が現在開会されておるのですから、国会開会中になさるべきであるというふうに考えるのでありますが、お答えをいただきたい。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまお尋ねの勧告の時期は、おことばにありましたように、例年多少違っております。たとえば昨年はたしか十二日に勧告を申し上げたはずであります。いずれにいたしましても、四月現在の調査基本にしての作業でございますから、そう早いおそいはあるはずもなさそうに見られるかと存じますけれども、これは御承知のように、集計の早いおそい、それからその作業の複雑さという事情がそのつどからまりますものですから、急ぎながらもやはり数日のズレは出てきたということでございます。今回の場合はたまたま国会開会中で、これもおことばにありましたように、できれば国会開会中に間に合わせればそれにこしたことはないという意気込みで鋭意目下やっております。しかし、今日確かに国会会期中に間に合うというところまでのお約束をするまだ自信はございません。できるだけ急いでやっておりますということだけを御報告申し上げておきます。
  25. 大原亨

    大原委員 できるだけすみやかにやるというお話ですが、国会会期は八月十一日であります。したがって、そのことは相当前からわかっておるはずでありますから、八月十一日以前に国会に対しましても勧告を行なう、こういうふうに承知をいたしてよろしいか。もはや資料は全部そろっておる、集計できておるはずですから、今日見当がつくはずであります。その点はひとつお答えをいただきたい。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ことしは、少なくとも昨年よりも少しデータのまとまりがおくれました。これはもう正直にそのとおりでございます。したがって、全体に作業がおくれておりますのですが、しかしあと四、五日はあるわけでございますから、目下昼夜兼行で一生懸命作業を続けておるという状態でございます。
  27. 大原亨

    大原委員 あなたはもっともらしいことを言われるのですが、この前の五月の二十四日の新聞でありましたが、佐藤人事院総裁記者会見の談話といたしまして、昨年の勧告の七・九%、この水準を上回ることはないだろうとか、それから今回は物価上昇は勘案しないとかいうことを、早々とあなたは御発言になっておるのであります。少なくとも労働基本権代償機能としての人事院総裁といたしましては、データの作成中にきわめて不謹慎な、軽率なことばではないか。この発言の真意はどういうところにあるのですか。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういう方面において一番手がたいことは、私自身今日まですでに世間の定評があることではないかとみずから思っておるわけであります。その手がたい私がああいうような発言をしたという形で新聞に出まして、本人自身非常に驚いたわけであります。どこかにそういう種になるような私の表情なり何なりがあったのではないかという意味では、深く反省をしておるわけであります。私のほうからしゃべった覚えは全然ございません。しこうしてこの給与勧告作業は、これは、御承知のとおりに、四月調査民間給与水準公務員給与水準とを突き合わせまして、それから出ました数字基礎にして積み上げていくものでございますから、そのふたをあけてみない前に、ことしはどのくらいになるだろうという予測は、予測自体全然これは性格上つきかねることでございますから、私どもはあくまでもその出ました格差基礎にして作業を続けていく、そういう心づもりで今日もおるわけでございます。
  29. 大原亨

    大原委員 勧告実施内容につきましては、民間賃金との格差の点をお話しになったわけですが、それ以外の条件については、公務員生活を保障する、インフレ的な物価上昇の中で保障するという観点からお考えになっていないのですか。
  30. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま申しましたように、基本のたてまえは格差基本に立てまして、なお申すまでもありません、生計費上昇でありますとか、あるいは物価上昇でありますとか、そういうデータもあわせてもちろん勘案いたします。これは、毎年私ども勧告申し上げておりますその末尾に、参考資料として公表しておるわけであります。これは、見ないものを公表するはずはないわけでありまして、その意味では十分見ております。
  31. 大原亨

    大原委員 物価上昇勧告内容には反映するというふうに理解してよろしいか。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それがいわゆる格差のような数字の形で一律に反映するかどうか、そこまでのことはもちろん申し上げかねます。しかし、これを全然無視してはおりませんということだけは、十分申し上げ得るわけです。
  33. 大原亨

    大原委員 人事院勧告に使用される統計ですが、総理府統計局消費者物価調査基礎となります本年、昭和四十年四月現在の物価は、昨年の四月現在と比較をいたしてみますと九・九%の物価上昇であります。約一割の物価上昇であります。この約一割の物価上昇につきましては、当然勧告内容に反映されなければ、一年間を通じましてこれ以下であったならば実質的賃金が切り下がる。実質的賃金が時間がたつに従って低下をする。物価の問題が大切であるというのは、国全体の予算から見ても大切だが、生活費から見ましても、公務員生活から見ましても、きわめて大切であります。こういう九・九%の物価上昇を私は当然考慮さるべきであると考えまするし、これ以下であってはならぬと私は考えますが、その点はいかがですか。
  34. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 物価上昇の結果、ことに小所得の公務員層の人々の間には相当な影響があると思います。とにかく食えない人が出てくるということがあってはたいへんなことでございますから、そういう意味十分考慮して、従来も、対処しておりますし、今回も対処してまいるつもりでございます。
  35. 大原亨

    大原委員 私がお尋ねいたしておりますのは、四月の現在で勧告データをつくられて、民間賃金との格差を御調査になっておる、あるいは物価生計費も考えるというのですが、肝心の物価について九・九%上がっておるわけであります。とにかく物価政策のない政治というものはないのであります。物価の値上がりというものは正直者ばかを見るのです。預金者もだれもばかを見るのです。賃金生活者ばかを見るのです。ですから、これは政治基本の問題ですよ。そのことについては、人事院は、労働者基本権制限をされました当然の結果といたしまして、当然厳正に公務員生活を守るべきである。その意味におきましては九・九%の物価上昇率を下回るような賃金改定勧告はあり得ない、こういうふうに私は考えますが、いかがですか。
  36. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいま仰せになりましたようなデータを十分ににらみまして、りっぱな筋の通った勧告を申し上げたい、そういうことで目下作業を続けております。ただいまのおことばは、またさらに十分肝に銘じまして、これからの作業に臨みたいと存じます。
  37. 大原亨

    大原委員 つまり、公務員は家族をかかえて生活をしておるわけですが、子供が成長をし、年がたつに従いまして生活費上昇いたします。それで、高度成長政策をうたわれました池田さんは、月給二倍論から大体出発いたしたのであります。これは金額を二倍に上げるというのではなしに、実質賃金を上げていく、つまり労働者生活あるいは国民の生活を向上さしていくというのがねらいであったはずであります。したがって、物価に全部食われたのではこれは全く意味がないわけであります。  その点で、私は具体的に御質問いたしておりまするが、御答弁は、私の質問の趣旨に従って勧告をする、こういうお話ですが、もう一回質問いたしますよ。九・九%の物価上昇率を下回らない、こういう決意で勧告をするんだ、よろしゅうございますか。
  38. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういう意味で申し上げたのではございませんので、四月調査における官民格差というものを基本の率にいたしまして、それを基本に立てながらただいまお話しのような物価生計費——たとえは生計費の場合は、御承知のように八等級二号俸の、すなわち高校卒初任給をきめます際の標準生計費を算出いたしまして、これをささえにしておる。これも例年どおりやっておるわけであります。そういうような意味において、その他の関係において十分考慮をしてりっぱな勧告をつくり上げたい、こういうことで申し上げておるわけです。
  39. 大原亨

    大原委員 あなたはだんだんと答弁が怪しくなってくる。ごまかしだ。私ははっきり出しておるのですよ。昨年の四月現在と本年四月現在は、総理府統計によりますと九・九%の物価上昇があるわけです。これをそれ以下に賃金実施改定勧告がなるということになりますると、実質賃金は低下するでしょう。低下するのですよ。ですから、それ以下であり得ることはない。物価政策と一緒に、当然総合的な政策の中で考えるのですが、物価が上がっておる以上は、物価に追いつかないような、そういう賃金につきましては、これはあるべき姿ではない。政府政策である人間尊重からいってもそうですよ。そういう点につきましては、十分労働基本権制限をされておる公務員立場を考えなければ、憲法上の問題が出てまいりますよ。当然労働基本権の問題が出てまいりますよ。労使慣行を正常化することはできませんよ。これは政治のある姿ではないのであります。その点につきましては厳重に私どもは指摘をいたしておきます。  それから第二の問題は、勧告に関しまして、昨年の四月現在によりまする勧告というものは、民間賃金、昨年の春闘、五月以降に妥結をいたしまして四月一日実施をいたしておりまするそういう問題を含めまして、本年の春闘における五月以降の妥結は、民間賃金改定が全般的におくれたわけでありますが、それらの、つまり積み残しといわれておる問題につきましては、どのような配慮をいたされますか。
  40. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私ども基本立場は、四月中に現実に支払われた民間の給与というものを比較の対象としてとらえてまいっております。したがいまして、そういうたてまえを貫きます以上は、ただいまも仰せになりましたようないわゆる積み残し、すなわち四月中に現に支払われなかった給与はわがほうの格差の問題には入ってこない。これが基礎的な立場でございますが、非常に積み残しが多いということになってまいりますと、われわれのやっております四月調査というその調査時期が間違っているんじゃないか、あるいは春闘の時期が間違っておるか、これはよけいなことでございますから申しませんけれども、(笑声)まず謙虚な立場で申しますと、春闘に追随する立場で申しますと、わがほうの調査時期をずらして追随申し上げなければならぬ。あるいは五月、六月の調査にすべきではないか。そういう問題はたてまえの問題としては当然に出てくることで、これは御了解願えると思います。しかしながら、現実にいかにも積み残しが多いという場合に、これを無視して来年回しということでいけるかどうかということがおそらくいまお示しの問題であろうと思うわけであります。  そういう意味で、私どもはただいま申しました調査時期の適否を判定する資料その他のねらいから、ことに昨年からは備考調査というような意味で、六千ばかりの事業所に参って四月中に支払われた給与を一々わがほうで調べます際に、ついでにと申しますと恐縮でございますが、あわせて五月に入って妥結をして、四月にさかのぼって支払うことがすでにきまったというものがあれば、それは備考として調査をして、これはもちろん別欄でございますけれども、別欄に調査して持って帰る。それが非常に多いかどうかという結果が要するに調査時期が適当であるかいなかという判定にもなりますし、ことしは非常に積み残しが多過ぎるじゃないかという判定の資料にもなります。これらの調査の結果を見まして、私どもとしては、大きな正義公平の原則から、場合によってはそういうものは全然無視し去るということも公平の原則に反するという判断に達する場合もあり得るわけであります。その意味で考慮には加えてくというたてまえで臨んでおるわけでございます。
  41. 大原亨

    大原委員 民間賃金との格差をなくしていくのが勧告基本であって、物価生計費を考慮する、これは当然考えていくというお話ですが、それでは勧告の中には実施の時期は入りますね。実施の時期は少なくとも四月一日であるべきであると思うのですが、いかがですか。
  42. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 過去数年来は五月一日から実施をお願いするという勧告のていさいになっております。これは四月調査の結果を受けて格差を埋めるのでありますから、五月にさかのぼって埋めていただきたいという趣旨でございます。これは当然だと思います。  ただ、いまおことばにありましたように、なぜそれじゃ四月一日から実施してくれという形にならないかという御疑問であろうと思います。これも数年来そういう向きの議論を、あるいは主張をされる方々も相当ございまして、私どもは謙虚に検討はしておりますけれども、しかし、これは両論立つことでございまして、ここで一々詳しいことは申し上げませんけれども、両論立つことで、私どもとしてはなお検討は続けてまいりますけれども、今日のところ五月一日実施というたてまえを四月に持っていくというようなことは、まだちょっと踏み切りがつきかねる。
  43. 大原亨

    大原委員 実施の時期は。
  44. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 実施の時期と申しますのはそれじゃないですか。実施時期は五月一日から実施していただきたいということを勧告文に従来載せております。ことしも載るせつもりでおります。
  45. 大原亨

    大原委員 民間賃金との格差を縮小する意味におきまして、非常に重要な関心となっておりますのは住宅手当であります。最近の家賃や部屋代の値上がり率は非常にばく大なものがあります。これが非常に生活を圧迫いたしております。これは、私も詳細な資料を持っておりますし、質疑応答をすればよろしいのですが、時間の関係ではしょってまいりますが、住宅手当をやらないと、これは公務員生活安定にならぬわけです。特に建設大臣の所管でありまする公営住宅、政府施策住宅は低所得者階層を対象といたしておるのですが、公務員住宅は政府施策住宅といいながら、上のほうから入っていっているわけであります。上のほうの局長、部長、課長のほうから入っていっておるわけです。一般公務員の住宅の入居率については最近やかましくなって若干上がっておるのですけれども、住宅は転勤その他を控えておる公務員は非常に重圧になっておるのであります。したがって、そういう住宅手当の問題は当然公務員生活保障をやる考え方から重視すべきである、こう考えますけれども、住宅手当につきましては、どのような考え方で勧告されますか。
  46. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 住宅手当の問題につきましては、ただいまお示しのように、私は重大な問題だと思います。したがいまして、御承知のように、過去の民間調査の際に、民間における住宅関係の施設及び手当関係調査をしてまいっておりますが、今年もそれをやっております。しかしながら、さてその結果をみますと、昨年あたりの調査の結果によりますと、民間において住宅手当を出しておる会社というものは率がまだ非常に低うございます。三〇%台そこそこでございまして、これが、私どもとして公務員の場合に踏み切らせるだけのデータとしてはいかにも弱いということが言えるわけです。ことしもさらに執拗にそういう調査を続けて、さらにこまかい精密な形で調査をしてまいりましたけれども、これもまた今日のところはっきり確認はしておりませんけれども、いま言った率が飛躍的にふえて五〇%をこすとか、あるいは五〇%近くになるというようなことはどうも申し上げかねる前提でございます。  そういう面と、それから住宅手当をかりに出すといたしました場合において、先ほど申しましたように、四月現在における官民格差のワク内でのこれは配分の問題になるものでございますから、住宅手当らしいものを差し上げる段になりますと、本俸のほうのベースアップは全部御遠慮していただかなければならぬというかね合いの問題がございまして、どこにどういうふうに配分するかという問題にすでに当面するわけでございます。非常にむずかしい問題をはらんでおりまして、私どもとしては重大問題であるという意識は常に持ち続けております。今後もそのつもりでさらに将来に臨みますけれども、今日の段階では、なかなかそういう悪条件をこえてまで断行できるかどうか。むしろそれよりも、ただいまおことばにありましたように、現実の住宅施設のほうをふやしていただく、その努力を続けていただいて、一方わがほうも手当のほうの検討を続けていく、こういう態勢が望ましくはないかと思いまして、昨年は池田総理に対して公務員宿舎の施設の増強についての要望書を提出いたしました。予算を見ますと、私どもの要望にこたえたという意味では申し上げませんけれども、とにかく三〇%上がってきている。だんだんと予算上の措置も充実されておりますので、そのほうもひとつよろしくお願いしたい、そういう気持ちであります。
  47. 大原亨

    大原委員 問題であることは理解するがというのですが、これは民間と比較すべきでというだけの問題ではないのです。勤務場所と住宅事情は違うわけですから、これは十分特殊性を考えて勧告の中に入れる、あるいは入居率をふやす、あるいは入居に対する方針等をきめまして、きめこまかい勧告をしてもらいたい。  それから、扶養手当と通勤手当、特に扶養手当は非常に長く据え置かれておるのであります。それは、児童手当や家族手当の問題がILO百二号条約その他の問題と関連をいたしまして、これが問題となっている点もあるのですが、これは民間とは違いまして、扶養手当が非常に据え置きになっているのであります。これが家族構成その他におきまして重圧になっておるわけであります。扶養手当と通勤手当の頭打ちにつきまして、私は是正すべきであると考えますが、この点につきましての総裁の考え方を明らかにしてもらいたい。
  48. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 扶養手当、これもただいま住宅手当について申し上げましたように、配分の問題等に相当大きく響くものでございますから、格差が大きく出まして、格差の処置をもてあますようなことでもあればこれは別でございますが、本俸のほうへ直ちに響きます関係上、それらの勘案において、むしろ本俸を増したほうがということで今日まできておるのであります。その点については、やはりよほど慎重に臨まざるを得ないと思っております。  通勤手当のほうは、これは熾烈な要望もございますし、現実に私ども調査をことしやりましたけれども調査の結果については相当のデータが出ることと私は思います。したがいまして、そのほうは少なくとも何とかせねばというような気持ちでいま臨んでおるわけであります。
  49. 大原亨

    大原委員 通勤手当は住宅問題と深い関係にあるわけですから、この点は十分考慮するというふうなお考えですか、この点を明確にしてもらいたいと私は思います。  それから、科学技術者が日本の国外へ出て行くという問題があるわけであります。たとえば保健所等におきましても、お医者さんがほとんど充足できない。これは全般の医療政策と関連がありますが、そういう問題があるわけであります。ですから、科学技術者の待遇を改善するというふうなことは、これはどういう立場に立ちましても重大なことであります。これらの立場を尊重するような配慮が勧告の中になされておるかどうか。その点はいかがですか。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この点は、従来も極力配慮を重ねてまいりましたし、今後もできるだけの配慮をしたいという態度でおります。
  51. 大原亨

    大原委員 昨年の勧告によりますと、教職員の超過勤務手当の問題が相当大きく議論をされまして、それにつきまして一歩前進の形で教職員の超過勤務につきましての報告がなされておるのであります。私は、これは勤務の態様その他指摘になっているような問題があると思いますけれども、しかし、そのことは、研究費の問題その他と一緒にこれはきわめて重要な問題であります。この点につきましては、英断をもって一歩前進をすべきであると考えますけれども総裁のお考えはいかがでありますか。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これまたきわめて重大な問題であることを意識いたしまして、昨年の報告書には、例を破ってそのことに触れたわけでございます。したがって、その覚悟のほどはここでお認めいただけると思います。  なお事柄は、いまおことばにありましたように非常に重大な、根本的な大きな問題にからまっての問題でありますが、超勤を命じた以上は手当を払うべきであって、これも一つうたっております。これはこれといたしまして、さらに基本的に超勤手当に相当する給与上の問題となりますと、これは非常に底の深い広い問題でございますから、その点については、今日なお昨年来の検討を続けているという段階でございます。
  53. 大原亨

    大原委員 その問題に関連いたしまして、文部大臣にお尋ねいたします。  教員の超過勤務の問題は、日宿直の問題と関連をいたしまして大きな議論になっておるのであります。特に女子職員の日直という問題は、まあ場所によっても違いますが、たとえば日直の女教師に対しまして暴行問題が起きたとかいうふうな問題も起きておるわけであります。あるいは女子の教員の率が高くなりまして、男子の教職員が二日や三日に一回ぐらい宿直をするという例があって、これが精神的な負担となって教職活動に大きな障害になっておる、こういう問題があるわけであります。つまり超過勤務の問題と関連をいたしまして、日宿直を超過勤務とみなすかどうかは別といたしまして、教職員の宿日直の問題につきまして、抜本的に改正すべきである。学校警備員その他の問題で今日まで議論され、衆議院の文教委員会におきましても議論されておる問題ですが、この問題につきまして、私は、文部大臣は人事院に対しまして意見を積極的に言うべきであると思うのですが、文部大臣の見解をひとつお聞きいたします。
  54. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 御指摘の宿日直の問題は確かに重要な事柄で、現在若干の手当は出しておりますが、だんだんと女子職員がふえておる現段階におきましては、何とか前向きに検討する必要があるということで、私も就任以来事務当局に命じて検討をいたしておる次第でございます。  なお、御承知のように、学校警備との関係等もありまして、この点につきましては、文教委員会におきましても昨日小委員会を継続して設置することにいたしまして、文教委員会の小委員会で御検討をいただきつつ善処いたしたい、かように考えておる段階でございます。
  55. 大原亨

    大原委員 次は、人事院勧告の実施の時期の問題でございますが、人事院総裁は五月一日に大体勧告をするつもりだ。この善悪は別にいたしまして、そこでこれを受けて立ちます政府側の立場ですが、給与担当大庭は労働大臣から安井国務大臣のほうへかわったわけであります。そこで安井さんにお尋ねするわけですが、実施の時期は非常に昨年議論になりまして、十月一日の実施が九月一日にちょっぴり一カ月上がったわけであります。そういう経過を踏まえまして、私どもは特に公務員制度審議会の問題が問題となり、あるいはドライヤー報告が問題となり、ILOその他の関係で、国際的な非常に注視の中にあるわけですが、労使関係の正常化の意味におきまして、これは非常に重要な問題であります。実施の時期の問題を含めまして、人事院勧告の完全実施の問題につきまして、給与担当大臣の安井さんの御所見をお伺いをいたしたい。
  56. 安井謙

    ○安井国務大臣 政府といたしましては、従来同様勧告の趣旨を尊重いたしたいという気持ちは強く持っております。国の財政その他につきましては、関連いたしまして勧告が出ました上で確認をいたしたいと思っておる次第でございます。
  57. 大原亨

    大原委員 人事院勧告は仲裁裁定とも関連をし、あるいは憲法の二十八条とも関連をし、いろいろと議論をしてきたところであります。この人事院勧告は、言うなれば、労使関係でいえば、法律的な位置づけというものは団体交渉で妥結した協約とか、あるいは法律上の決定と同じことであります。ですから、これを国会がどのように変更したり、あるいは否決をする、賛成するかは別といたしまして、政府当局といたしましては当然これは完全実施をすべきである。そういう点におきまして、五月一日に総裁勧告をすると言われるのですけれども、これは直ちに実施の時期が問題となりますが、実施の時期は、私は勧告の時期と一致をさすべきだ、そうしないと非常に大きな問題が起きるのではないか、その点につきまして、もう少し具体的に御答弁をいただきたい。
  58. 安井謙

    ○安井国務大臣 勧告の時間につきましては、まだ出ませんので、確定的なことをとやかく申し上げるわけにもいくまいと思いますが、ただ勧告は、その精神を尊重しなければならぬと私どもは心得ております。必ずしも法律的に制約をされるというふうには考えておりません。
  59. 大原亨

    大原委員 私が言っているのは、精神を尊重するということでなしに、中身を尊重してもらいたいことであります。総裁からは、五月一日実施の勧告をする。民間賃金やあるいは生計費物価等を参酌して、相当の議論の後に出される勧告ですが、その結論は精神を尊重するというだけでなしに、中身を尊重する、こういうことにならないと人事院代償機能としての立場や、あるいは当局の責任、義務、そういうものの問題が発生をいたします。そのことにつきましては、五月一日というふうにもうはっきり言っているのですから、これをくだらない、こういうように言われているのですから、その点に対しまして、事前にこの際私はもう一回安井長官の見解を聞きまして、そして官房長官やあるいは大蔵大臣の意見を聞きたい。
  60. 安井謙

    ○安井国務大臣 御説のとおり、中身も精神も尊重いたしたいという気持ちに変わりはございません。正式に勧告がまだ出ておりません現状でございますし、また国の財政といった問題もあわせて考えるべき問題であろうと思います。御趣旨におきましては私ども同様に相つとめるべく考えております。
  61. 大原亨

    大原委員 国の財政をも考えるということは、これはまことしやかな話ですけれども、しかしながらいまのような物価上昇率や、あるいはそれに伴うて賃金上昇いたします現状においては、かくかくのごとき人事院勧告が出るであろうということは予算編成期において明らかなのであります。ですから、予算編成のときに際しましてその心組みでおらなければ、公労協を含めまして労使の慣行の正常化はない。当事者能力の解決の問題はないわけであります。ですから、その心組みはできておらなければならないし、そうして勧告が出ました以上は、万難を排してこれを実行すべきであると思いますが、その点をもう一回、はっきりお答えをいただきたい。  もう一つは、昨年は九月一日実施というふうに一カ月繰り上げを、政府はいろいろと検討されましてやられたわけであります。そのことを含めましてひとつ御答弁をいただきたい。
  62. 安井謙

    ○安井国務大臣 あらかじめ勧告は出るにきまっておるのだから、予算上何らかの措置をすべきものであろうという御趣旨の御議論に対しても、たいへんごもっともだと思います。いろいろ従来ともそういう方法はなかろうかということで検討をいたし、あるいは勧告の時期等についても、人事院自体に御検討願っておるわけですが、なかなか今日までいい知恵が浮んでなくて具体化しない。こういう問題につきましては、今後できます公務員制度審議会等におきましても、ひとつ根本的な御審議、御検討を願うというようなことをいたしたいと考えておる次第でございます。  また、時期の問題につきましては、現在出ておりませんので、いつごろ出るであろうというふうなお話もただいまございましたが、私ども、出ました上で、諸般の事情を考えまして決定をいたしたいと思っておる次第でございます。
  63. 大原亨

    大原委員 地方公務員の給与は、国家公務員の例によるというのもあるわけですが、それはともかくといたしまして、地方人事委員会は、政府も教職員の中央交渉その他でしばしば言っておるのですが、とにかく地方自治体の自主性をある場合においては尊重するというたてまえでやっておるわけであります。したがって、地方人事委員会の勧告の中におきまして、実施の時期や財源措置——いつも問題になりますが、財政措置その他をめぐりまして、実施の時期等において不公平のないように、ある場合においては自主性を尊重いたしまして、政府がたとえ九月一日に実施をいたしましても、地方においては五月一日に実施をするというふうな、そういう自主性の問題を含めまして、地方人事委員会のあり方、それから財政措置の問題、公務員に対する配慮の問題、そういう点につきまして、自治大臣の御答弁をいただきたい。
  64. 永山忠則

    永山国務大臣 地方公務員関係は、国家公務員に準じてやることになっておるのであります。したがいまして、人事委員会もやはりこれに準じてやってきておるのが旧来の慣例であり、またさようになるものであると考えておるものでございます。
  65. 大原亨

    大原委員 自治大臣は、あなたの性格上、もう少し積極的な答弁をされるかと思ったら、あまり引っ込み思案な答弁でありまして、これはきわめて私は不満足であります。地方人事委員会の自主性について私は質問をいたしたのですが、地方人事委員会は、佐藤さんが総裁をやっておる人事院のへっぴり腰その他と関係なく、はっきり、いたしました措置をとりましたらそれを尊重する、こういうたてまえに立つのかどうかということがあるのですが、これは時間の関係あと回しにいたします。  そこで、公労協関係労使関係ですが、国鉄総裁おられますか。——昨年の春、太田・池田会談がございまして、公労協の労使関係を正常化するために努力をする、そのためには当事者能力が必要である、こういう点について意見が一致をいたしたわけですけれども、ことしの春闘におきまして、公労協の問題は非常にたくさんの問題が出てまいりました。石田総裁は、わりあいものをずばりずばり言われる人ですからお尋ねするんですが、当事者能力ということにおいて、ことしの春を振り返ってみて、当局に当事者能力がありと考えられたかどうか。この点につきまして御質問いたします。
  66. 石田礼助

    石田説明員 御承知のとおり、国鉄の人件費というものは、毎年の予算できちんともうきめられておるんでありまして、その途中にどういうことが起きましても、そのワクを越えることはできない、こういう鉄則があるんであります。池田・太田会談によってどういうことがありましても、国鉄としては必ずしもその線に沿うていくことが、ときにできないという場合もあり得るんであります。
  67. 大原亨

    大原委員 国鉄総裁は、わりあいはっきりものを言われたわけですが、池田・太田会談におけるあの覚え書きというものはいいかげんなものであった。実際上はあの効果も何もないと、こういう御答弁であります。  そこで、電電公社の総裁にお尋ねいたします。電電公社の総裁、あなたはどういうふうにお考えになりましたか。  それからもう一つは、こまかいことは言いませんが、御承知のとおり五百円回答を出したのですが、民間の賃金物価上昇率を考えてみまして、よくも出したものと思いましたけれども、五百円回答を出しましたが、五百円回答と妥結の間に行なわれましたところの実力行使の問題がございました。その間におきまして、当局側はいろいろないまだかつてない処分をいたしました。五百円回答とそういう労使関係のあり方について、処分を含めまして、あなたは矛盾を感じなかったかどうか。当局の立場といたしまして矛盾を感じなかったかどうか、この二点につきまして質問いたします。
  68. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。  最初の当事者の能力の問題でございますが、私は前から現在の公社制度におきまして、もう少し当事者能力を拡大することが必要であるという考えを持っておりました。行政調査会その他にもそういう意見を申し述べておりました。したがって、本年におきましても、過去三年間いつもベースアップに対しましては検討中、検討中であるということでまいりました。最後にゼロ回答する、こういう行き方は労使関係によくないという考えを持ちまして、それで昨年来の経緯もございましたので、政府にお願いいたしまして、二月八日、この時点はまだ実際民間でも要求が出そろってない時期でありますが、その時期に五百円の有額回答をいたした次第でございます。五百円というときわめて少ない額だとお考えになりますけれども、民間と比較する場合には、定期昇給が入っておるわけでありますから、一応二千円ということになるわけでありまして、鉄鋼の二千五百円等に比べて全然形がない額ではないというふうに考えております。  それから、もう一つの処分の問題でありますが、私たちは何も好んで処分をしたんではないんでありまして、結局この違法行為に対しましてこれを処分した次第でございます。
  69. 大原亨

    大原委員 三公社のもう一つの残りは専売公社です。専売公社の総裁にお尋ねいたしますが、あなたはこの労使関係において当事者能力の問題が非常な大きな議論となり、これからも大きな議論となるはずでありまするけれども、当事者能力の問題についてどの点を改善をすれば当事者能力の問題が解決できるか。(「選挙違反能力はあるんだ」と呼ぶ者あり)選挙違反の、つまりそういう破廉恥的なる犯罪を犯しておる者が処分をする能力なんかないと思うんです。いまの委員発言を逆に言えば、そういうことであります。私は専売公社の総裁にお尋ねするのですが、どの点を——これは経理能力はあるんですよ。経済能力はあるんです。専売公社は。その点では、どの点を解決すれば当事者能力を与えることができて、労使関係を平和的に処理する正常化の道があるか、この点につきまして専売公社の見解をお聞きいたします。
  70. 阪田泰二

    ○阪田説明員 専売公社の当事者能力の問題でございますが、この点につきましては、専売公社と専売公社の労働組合が団体交渉を常時やっておりまして、それによりまして、団体交渉で解決できておる問題もたくさんあるわけでありますが、ただ先ほど来御指摘になっております給与のベースアップ、この問題になりますと、これは非常に大きな問題でありまして、当事者能力と申しますか、私どもだけで解決できない、こういう場合が出てくるわけであります。その具体的な点になりますと、先ほど国鉄総裁からもお話がありましたが、給与の予算というものは限定されておりますし、さらに予算の総則におきまして給与総額というものが限定されております。したがいまして、その範囲内でまかない得るという場合は、ベースアップもできますが、それを越える場合には、結局従来の例によりますと、公労委の仲裁裁定をいただきまして、それによりまして給与総額を越えて支出できる、こういう形になるわけでありまして、団体交渉あるいは調停という過程だけではできない、こういうことになっておるわけでありまして、非常に具体的に申しますと、その給与総額という関係が、自主的に団体交渉をやりまして給与の問題につきましても解決していく、この点の障害になっておるわけであります。なお専売公社は、毎年収益をあげて国庫納付金をいたしておるようなこともございまして、予算的には十分余裕があるのじゃないかという御指摘がいつもあるわけでございますが、そういう意味におきまして、給与総額の関係で、ここが御指摘の問題については一番の難点になっておると思います。
  71. 大原亨

    大原委員 予算総額においてですが、予算総額といいましても、中身の使いようはいろいろあるんだと思うのです。これは選挙違反のために、買収のために使ってもいいし、何に使ってもいい、こういうことでしょう。それはそういう余地もあるのですが、根本的な問題は、給与総額がきまっておるから当事者能力を発揮することができない、正当な要求について、労使の団体交渉を進めるわけにいかない、こういう御答弁であります。これは問題の焦点をずばりと指摘をしておる。給与総額の問題は、これは予算上の決定といいましても——これは労働大臣も頼みますよ。政府部内におきましては、当然に正当なる主張に対しましてはこれに回答を与え、労使関係で決定をいたしましたことは政府部内で十分責任を持って、給与総額についても操作をいたしまして、そうして国会関係あるものは予算の補正やその他の手続において出す。このルールが確立されないと、これは処分と実力行使の悪循環であります。そういうことではルールは確立できないと私は思うのであります。そういう点で、私はその点についての根本的な欠陥があるという見解に対しまして、公労法の主管大臣である労働大臣はどのような見解を持っておられますか。
  72. 小平久雄

    ○小平国務大臣 三公社五現業等のいわゆる公共企業体の当事者能力につきましては、先ほど来御論議のように、労使関係という点から見ますならば、なお検討すべき点があると私どもも考えております。そこで政府といたしましても、すでに御承知と存じますが、本年の一月二十八日に次官会議の結果、この当事者能力の問題は、やはり公共企業体の制度全般の問題でもございますので、そういう点から抜本的に、また広い立場から検討してもらうことが適当であろう。そこで近く発足を予定されております公務員制度審議会において、この点につきましても御検討いただくことが適当であろう。ただ、それまでの間は、それぞれの機関におきましてできる限り善処をされて、平和的に、かつ自主的に相互の話し合いによってこの問題を善処してもらいたい、こういう趣旨の決定をいたしておるところでございます。
  73. 大原亨

    大原委員 労働大臣は、いまの公労協のあり方については検討すべき余地あり、問題がある、こういうことを指摘をされたのであります。石田総裁は、いまの制度においては当事者能力が発揮できない。労働大臣は、労使関係正常化の観点で自主的、平和的に問題を解決するために検討の余地あり、こういうことであります。専売公社の総裁予算の範囲内ということが非常な大きな制約になっておるということであります。これは少しおかしいのでありますけれども、この問題は別の機会に譲ることにいたしたいと思います。  そこで電電公社の総裁質問を継続いたしますが、電電公社と全林野は、春の処分におきましては非常な根こそぎ処分をやったわけであります。いまだかってないのであります。電電公社の関係は十四万人をこえる処分者があった。全林野は二万名以上の処分者があったということであります。これは非常に今後の労使関係に重要な問題であるだけでなしに、現在ドライヤーの報告を受けまして、いろいろと政府は制度審議会その他の施策をやっているわけであります。そこで、私は総裁にお尋ねをいたしたいのでございますが、この組合の統制権に従いまして組合の行動に参加をいたしました職員に対しまして、指令を受けたほうの側に対しまして戒告の処分をいたしまして、昇給停止をいたしておるわけであります。この昇給停止の処分は、全電通の労使関係やあるいは電電公社の事業法によりますると、三回以上の無断欠勤があった場合に昇給延伸が取りきめられておるのであります。しかしながら今回の春闘では、公労法による処分でもないし、事業法による処分におきまして、それらの具体的な法文やあるいは法律と同じような労使間の協定に反しまして大量処分を出しましたが、どのような法的な根拠によりましてそういう処分をされたのですか。
  74. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、電電公社といたしまして、ことしの春には五百円の有額回答を他公社に先がけましてした次第でありますが、組合並びに職員が四月の二十日並びに四月の二十三日に始業時から正午まで約四時間にわたりまして公労法に反する違法ストが行なわれたわけであります。こういった違法ストは正常なる組合活動ではありませんので、したがって、これは公社法の懲戒規程に同時に該当いたします。したがって公社法の懲戒規程によりまして処分した次第であります。
  75. 大原亨

    大原委員 あなたの前の御答弁の中に、五百円回答についての見解が若干あったわけですが、定期昇給を含めて二千円というのですが、定期昇給は、子供が成長し、年齢が成長いたすに従って当然加わってくるところの費用を見ておるわけであります。その議論はともかくといたしまして、いまだかつてない処分は、今日までのILOの審議の過程の中で、問題の公労法の十七条違反ということですが、公労法の十七条の二項といたしまして、違法な指令は労働者を拘束しない、違法指令の不拘束という条文が提起をされておったのであります。しかしながら、これは私は詳細な経過は省きますが、国際的な論議を通じまして結社の自由、団結権の侵害のおそれがあるということで削除されたのであります。それらの問題を受けまして、公務員制度審議会におきまして、労使と学識経験者を入れまして今日審議をする緒につこうかという段階にきておるわけです。これらの国際注視の中に行なわれておる日本のILO八十七号条約後のあと始末、あるいは今日までの諸報告、それらに違反をいたしまして大量処分をするというふうなことは、これはいま事業法の話がございましたけれども労使間の従来の協定やあるいは事業法自体の中にも、その程度を越えた処分であるというふうにだれが見ましても見えるし、職員を納得させることはできない。この点につきまして、あなたはその処分というものは妥当であるというふうに今日なお考えておるのかどうかという点をお答えいただきたい。
  76. 米沢滋

    ○米沢説明員 お答え申し上げます。  電電公社といたしまして、先ほど申し上げましたように、何も好きこのんで処分をしたわけではございません。違法行為に対しまして処分をした次第でございます。なお、この戒告の問題につきましては、昭和三十六年並びに昭和三十八年におきまして、やはりこういった実力行使並びにストが行なわれましたときに全員戒告ということはやっておりますし、また今回も、時期は二、三度ござますが、最終的には四月の十七日に、ちょうどこれは大橋前総裁のときでございますが、総裁名で、参加者全員には戒告以上の処分をするということを各職場等に徹底させますし、また組合にも警告をいたしておる次第でありますし、また当日前には、何といいますか、管理者から職員に十分この点は注意してあるわけでありまして、私といたしまして、この違法行為に対する処分は変える意思はございません。
  77. 大原亨

    大原委員 つまり、いままで議論をいたしましたように、労働大臣を含めまして、安井国務大臣を含めまして、安井国務大臣答弁があったかどうかわからないが、国鉄総裁その他の答弁を含めまして、いまの労使関係を正常化する上にはたくさんの欠陥がある。こういうことは認められておるのであります。労使関係というものは相対的なものでありまして、絶対的なものといたしましては、憲法二十八条の労働三権の不可侵権といたしましての保障があるわけであります。その上に立って諸制度があるわけですけれども、そういう相対的な関係のあるところの労使関係を一方的に処分をするというふうなことは、能力、資格のないものが一方的に片方を弾圧するというふうな結果になるのであります。このことは、労使関係を今後正常化する上におきましては非常に大きな障害であって、これはドライヤーの勧告を受諾いたしました佐藤内閣がとるべき方針ではないと思うのであります。あなたはそんな処分をするような資格はないですよ。当事者能力に欠けておるようなものが、責任を果たせないようなものがそういう資格はありませんよ。私はその点は前後矛盾をすると思うのです。労働大臣、いかがですか。
  78. 小平久雄

    ○小平国務大臣 私は、先ほど、現在の制度のもとにおける公共企業体の当事者能力についてどう考えるかということでございますから、その点については検討の余地がある、こういうことを申したのであります。しかし、このことは現行の法律に違反した行為に対して、これを処罰することを免れるという意味で決して申したのではございません。現行の法律に違反した行為があります以上は、法治国家として、法の命ずるところに従って適切な処罰をすることは当然であろうと考えます。
  79. 大原亨

    大原委員 私が言っていることを理解しないで答弁してはいかぬですよ。労使関係というものは、あなたは中立的な立場答弁するのです。公労法を公正に適用する、憲法を適用する立場ですよ。あなたは九十九条の国務大臣ですよ。ですから、何も労使関係にこだわる必要はないわけです。だから、そういう点で考えてみるならば、たくさん検討の余地がある。しかも、全電通や全林野の処分というもはいまだかつてない処分である。他の国鉄その他においても不当な処分が行なわれているし、問題があるけれども、それを上回った処分である。そういうことが労働者側を納得さしていないのであります。  そこで、私は引き続いて、いままでの国会における論議を踏まえまして、ILO百五号条約の問題につきまして労働大臣の見解を聞きますが、ILO百五号条約は、いままでの歴代労働大臣あるいは総理大臣の答弁は、これは批准はするということであります。強制労働の禁止であります。この批准をするという方針においては変わりありませんか。いつ批准をされますか。その二つの点につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  80. 小平久雄

    ○小平国務大臣 ILO百五号条約につきましては、ただいま御指摘のとおり、政府としてもこれを批准いたしたい、なるべく早くいたしたい、こういう方針は前労相が御答弁申し上げておるとおりでございます。ただし、ILO百五号条約につきましては、御承知のとおり、わが国の国家公務員法等と抵触するのではないかという疑問もございます。その点につきましては、ILO当局が、この百五号条約自体の解釈についてまだ明確を欠いておる点もございます。そういう点で、わが政府といたしましてはILO当局の解釈が明確化いたし、現行のわが国の法制とかりに矛盾する点がどうしてもあるということならば、これを調整する必要もございますので、ILO当局の解釈が明確化することを待っておるわけであります。その間、政府も明確化してもらうように努力いたしておるところでございます。
  81. 大原亨

    大原委員 つまり、ILO百五号条約は、ILO八十七号条約、九十八号条約の不当労働行為、その問題と三つを合わせまして、結社の自由、団結権の擁護、労使関係の国際的な水準基本的な条約であります。強制労働禁止の強制労働とは何かということにつきまして疑義があるというのが政府側の答弁でありました。これは批准いたします。批准いたしますが、この疑義が解明されましたならばこれは批准をいたしますというのが答弁でありました。そのことを一応繰り返して言われたわけですが、最近はILO百五号条約どころではないというのが、私は皆さん方の本音ではないかと思っております。そこで、強制労働禁止に関する強制労働とは何かという問題につきましては、今日まですでにILOは解釈の結論を出しておる。三年前でしたか、二年前でしたか、これは出しておるのであります。日本の政府からも疑義の解明のあれがありましたから、これは出しておるのです。強制労働とはどういう意味ですか。労働大臣は公労協その他の労使関係にこだわらないでひとつ答弁してもらいたい。
  82. 小平久雄

    ○小平国務大臣 御指摘の強制労働の点でございますが、この点につきましては、お話にもございますとおり、ILOは昭和三十七年の第四十六回の総会におきまして、条約にいう強制労働というのは懲役を含むのだ、こういう解釈をいたしたようでございますが、しかし、この点につきましては、まだこれが最終的な決定をされたのではなくして、要するに予備的な段階として一応そういう決定があったということなのでございます。しこうして、この最終的な決定を一体しからばいつするのかという点につきましても、まだはっきりいたしておらぬようでございます。
  83. 大原亨

    大原委員 これは最終決定を待つというふうな、そういういわゆる労使の問題について見識のないことでは困るわけです。これは笑われるわけですよ、実際上は。これは労働運動に関する刑事免責、民事免責の歴史的な経過の中でできておるわけであります。お話のように懲役その他は労働運動について科してはならぬということであります。組合の統制権、団結権を保障するというたてまえで、一般の治安問題とは別にこれを扱うという問題ですが、この問題はさらに突き進んでまいりますと、民事上の責任であります。民事上の責任にも関連いたしまして、つまり本人の意思に反して労働さしてはならぬという、これは労働者の団結権、それに基づく統制権を当然にこれはふえん的にきめておるわけであります。刑事免責、民事免責のことをきめておるわけであります。そういうことでございまして、ILO憲章を受諾をいたしまして、八十七号と九十八号を批准いたしまして、当然百五号条約を先進国といたしまして日本は取り上げるような、そういう段階にあるわけでありますし、国会でも答弁いたしておるわけでありますが、そういう本人の意思に反して労働さしてはならぬということは、労働組合の統制権との関連におきまして、たとえば今日全電通の処分に関しまして、全電通や全林野でやりましたことはきわめて遺憾なことでありまして、今後国際的に大問題となるのであります。つまり同盟罷業に参加したことに対する制裁というものをしてはならぬというふうに書いてある。同盟罷業をストライキというように解釈するかどうかは別にいたしまして、組合の統制権、団結権に従って同盟罷業に参加したことに対して制裁を加えちゃならぬと書いてある。職員をこんなに普遍的に、いまだかつてないくらいたくさんの厳重な処分をいたしましたけれども、このことは当然に労働者側の、憲法や国際条約の常識に基づく議論となるのであります。これは労使関係を正常化する道ではないのであります。この点はきわめて不見識な措置であるというふうに私は思うのであります。  そこで、私は、逐次法務大臣がお見えになりましたから法務大臣にお尋ねするのですが、これは手続上の問題ですから、この点については法務大臣でできなければ政府委員お答えになってもよろしいと思うのですが、組合側は、電通は被処分者全員による本人訴訟を考えておるようであります。パルチザン戦法ということが新聞に出ておりましたが、これはこの内容は別でありましょう。別でありましょうが、それとは別に被処分者全員の本人訴訟を考えておるようであります。そういたしますと、これは法務大臣の管轄のことですが、東京地方裁判所関係では、該当組合員が約二万名ほどおるわけであります。該当組合員が二万名おりました際に、これが一斉に訴訟を起こしました際に、私は東京地方裁判所の機能が麻痺するのじゃないかと思うのです。法務大臣はこの点につきまして、そういうことが起きました際における事務処理の問題等を含めましてどのような所見を持っておられるか、それをお聞きいたしたいと思います。
  84. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お答え申し上げます。  事、詳細にわたってお答えしたほうがいいと思いますから、当該局長お答えさせます。
  85. 青木義人

    青木説明員 お答えいたします。  そういう事態になりましたら、その際またよく検討して、われわれとして考えていかなければならぬと思います。ただ事件としては多数でありましても、おそらく共通の問題が多いのじゃないかと、かように考えております。さほど裁判所の処理能力に非常な影響があるというふうには考えておりません。
  86. 大原亨

    大原委員 たとえばこういうことがあるのです。二万名の人が一斉に訴訟を起こしました際には、まあ五十人とか百人とかを一束にいたしまして、一緒にいたしまして裁判をやるという場合でも、二万名もが入れるような法廷がありますか。被告全部を入れることができますか。実際上の物理的な関係だけを見ましても、どうです。これはいろいろな個人個人の立場があるわけです。個人個人が自宅で待機いたしましたことについて事情を書いてやりますならば、これを一括いたしまして裁判するにいたしましても、問題はたくさんあるし、同じようなものを合わせるにいたしましても、二万名が東京地裁の関係の裁判所におきまして、これをスムーズに処理できるような方法はありますか。
  87. 青木義人

    青木説明員 従来でも、いろいろな事柄につきまして非常に多数の原告が訴えを提起してきたこともあるわけでございます。さような事案におきまして、裁判所のほうでどういうふうな審理のやり方をなさるか、それぞれまた裁判所のほうで十分お考えになって対処されておるようであります。たとえば多数の中のティピカルなケースを中心に審理していく、こういうような方式をとられた場合もあると思いますが、事柄は、裁判所のほうの審理の問題でありますから、私どものほうでこうあるべきだということを申し上げかねるわけであります。御了承願いたいと思います。
  88. 大原亨

    大原委員 それでは、この問題は非常に重要な問題であって、しかもこういう職員の側、組合員の側に立ちましても非常に問題の大きい問題を、しかも当局の責任、当事者能力という点から考えましても非常に問題の大きい問題をこのような処置でやるというふうなことは、これはきわめて問題であります。したがって、私はこの問題につきましては、いままでの行きがかりにとらわれないで、労使関係を正常化するという意味におきましてこの問題を善処すべきである。これは総理大臣に所見を伺いたいところでありますが、総理大臣がおられませんから、ひとつ官房長官からその点につきまして所見をお伺いさしていただきまして、次に進みたいと思います。
  89. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 お答えいたします。  御承知のように今回の春闘の処分でありますが、先ほど来から大原委員から関係者に御質問がありましたが、政府は、公社にいわゆる当事者能力はあるという見解に立っております。ただし、その当事者能力というものは完全なものではない。完全なものではないということは、そのいかんによっては予算措置を行なわなければならぬというところについて完全なものではないが、当事者能力はあるという見解を従来どおり持ってまいっております。今回の場合でも、御承知のように春闘に関して団交が進められた際に、政府は、従来なかった有額回答を行なっております。これは、政府としましても、あるいは三公社関係にいたしましても、一歩前進であり数歩前進である。すなわち、労働政策に対して佐藤内閣は十分なる理解を持っておるとわれわれは考えてまいったのであります。そのまだ仲裁裁定終わらざるときに、御承知のようなストライキが行なわれた。これはもう法律から見ましても、法を犯した場合に対していわゆる三公社五現業の関係者が、これを不法行為として処分したことはやむを得ざるものであって、私たちはさようなことがないことを、そういうような事態が起こらざることを将来に期待して、今後もいわゆる定期会談の道を進めて、お互いの不信の間においてかようなことが起こらざることを希望しているわけであります。しかしながら、そうした不法な行為が行なわれた以上は、関係者としては、使用者側としては涙をのんで処分せざるを得なかったということが言えると思うのでありまするが、ただ、今後の問題につきましては、かような事態が起こらざるように、今回の総評並びに同盟との予備会談におきましても、私たちはできるだけかような事態が起こらざるためには、使用者並びに組合側とも不信な感情、不信な意識を払拭しなければならぬ、そうした状態において初めて正常なる労使関係が結ばれるものであろうと考えておりますので、さような意味でわれわれ政府といたしましても、ドライヤー調査団の報告書を受諾いたしましたのでありますから、その方式に従って円満なる処置を将来ともとってまいりたい、かように考えておるので、その点御了承願いたいと思います。
  90. 大原亨

    大原委員 次に、文部大臣に質問いたします。  ことしの四月十五日付でILOとユネスコ、これはともに国連の専門機構でありますが、ILOとユネスコの両事務総長から日本政府あてに、教師の地位に関する勧告が出されておるわけであります。これは今日まで数年にかけまして、数次にわたりまして論議を重ねた専門家会議の結論であって、その勧告は、日本の政府代表は参加しなかった。しかしながら、先進諸国の政府代表は参加をいたしておるわけであります。政府代表の若干の参加を得まして、そして教員団体の地域代表が参加をいたしまして、教師の地位に対する勧告がなされておるのであります。教師の地位に関する勧告は、社会的あるいは経済的あるいは政治的な地位の向上なくして教育の発展はないし、あるいは国際的に教員不足、そういう現状において、教育の発展の一つの中心的な課題として、教師の地位の向上の問題を取り上げておるのであります。  この問題を受けまして、日本の政府、文部省は、その取り扱い方というものがきわめて民主的でなかったのではないか。これを公表いたしましたのはたしか六月九日ごろであると存じますけれども、そういう経過につきまして、文部省といたしましては、きわめて遺憾の点があったのではないか。その間の事情につきまして、文部大臣から簡潔に御答弁をいただきたい。
  91. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 ただいま御指摘の点は、専門家会議で作成をされましたいわゆる勧告の草案、あるいは草案の素案になるかもしれませんが、そういうものが参考に送付されまして、意見があれば申し出るようにという付記がございました。この専門家会議には、日本側では教職員団体の代表だけが出ておるようです。その際には政府機関のほうは何ら呼びかけを受けておりませんしいたしますので、私ども日本政府の考え方を申し送るに際して、教育長協議会に御相談をし、意見をまとめまして、一応の、とりあえずの考え方を申し送ったような次第でございます。すなわち、教職員側の意見は、おそらく草案ができる際に織り込まれておると思うのでありますが、その教職員の使用者側である教育委員会、あるいは教育長のほうの立場というものは、何らその際には反映していないものと見るのが妥当であると考えましたので、教育長協議会の意見を聞いて、そして政府側の意見を取りまとめた、こういうような次第でございます。
  92. 大原亨

    大原委員 文部大臣は就任されましてだいぶ日にちがたったわけですが、いまの御答弁はILOやユネスコの勧告草案、勧告を取り入れましてまとめました精神からいいますと、非常に離れておるのであります。その勧告草案の中には、教員とは何か、あるいは地位とは何か、生徒とは何かということば意味も入っておるわけであります。事は教員の地位の向上であります。そのことに関係をいたしました国際的な会議で、日本は参加していなかったかもしれないけれども、その経過は知らないが、他の国では、政府代表が参加しておるところがあるのであります。なぜ参加しないかという問題を含めまして、私は教員の地位の向上に対しまして、国際水準、国際常識から考えましてきわめて遺憾な点があるのではないか。特に両事務総長の書簡の中には、政府はそれぞれ自国の教育機関及び全国的な教員団体と協議をして——教員団体というのは、ナショナル・ティーチャーズ・オーガニゼーションですから教員団体、教員団体と協議をして、その勧告案に対する意見、批評を七月十五日までに提出してほしい、こういう書簡が着いておるわけであります。教育長会議は行政機関でございまして、教員の地位を論議する教員の団体ではないわけでございます。私は、このようなことをいたしましたならば、ILOの二の舞いでありまして、国際舞台におきまして、政府の代表と教員組合の代表、教員団体の代表とがまた醜い論戦をしなければならぬ。そのことは意見書が二つ出ておる。日教組側は勧告草案に対しまして賛成、文部省側はまるで反対のような意見書を付しておるのでありますが、これは、私はきわめて遺憾なことではないか。文部大臣は新任早々直後のことでございましたが、今日の段階においてどのような所見を持っておられるか、お聞きをいたしたいと思います。
  93. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 教員の地位の向上については、私どもの最も関心の深いところで、つとめて教員の地位を向上し、教職員の立場にはできるだけ国民の中の優秀な人が志望されるような情勢をつくり出す必要がある。これに向かって努力を今後も続けたいと思っておりますが、そういう基本的な考えについては、いま申し上げたような次第でございます。  ただ、あの草案を見ますと、私どもはこう解釈しておるのであります。日本からは、どういう事情でありましたか、私どもの就任よりしばらく前のことでございますが、日教組の代表だけが参加をしておる会議でございまして、政府側は参加いたしておらないのであります。おそらく他の国を見ますと、いまも御指摘がありましたように、政府側の参加した国もあるじゃないか、こういう御指摘でございましたが、確かにそういう国もあると思うのです。したがって、そういう国で政府側が専門家会議に代表を出して、職員側が出していないというところは、当然これは職員側の意見も聞いて、さらに全体としてまとめた草案に対する意見を述べろという趣旨であって、日本側は、教職員団体の代表は一応出ておるという立場をとっておりますので、そこで、それに参加し、発言権を与えられていなかった立場のものの意見を今度はつけ加えて出そうというようなものの考え方でございまして、この草案を見ましても、全面的に反対なわけではありませんが、ただ教育制度というのは、各国とも相当長い間のいろいろな慣習や、制度上の相違があってきておりますから、一律に各国に同じようなことを求める勧告はおかしいじゃないだろうかというような、やはり各国の国情というものを尊重しつつやって進めるべきじゃないだろうかというのが、われわれのほうの意見を申し出た骨子でございます。  さような次第で、私どもとしましては、ちょうど私が着任して直後のことでございましたし、期限も七月十五日ということでございましたので、さしあたり教育長協議会の意見だけを聞いて、とりあえずの意見を申し出ておいた、こういうような次第でございます。
  94. 大原亨

    大原委員 両事務総長の勧告草案送付にあたっての書簡の中に、私が指摘いたしましたように、全国的なる教員団体の意見を付して、協議をして、そうして意見書をつくれというふうにあるわけです。つまり国内問題を自主的に処理して、そうして国際水準において教員の地位を上げることを論議しようというたてまえであります。私は政府から資料を要求いたしまして、この勧告草案の原文を——文と翻訳文を私は入手いたしましたが、しかし、この中には、末尾のほうに、教員の団体と協議をしてと、書簡についてはあるのですが、しかし、六月八日前私はもう一つの資料を入手いたしましたが、その中には、ことさらに全国的な教員団体と協議をしてという文章を翻訳をしないで、関係方面に頒布をしているようであります。そのようなことは、これは民主主義ですから、異なった立場があるわけです。異なった立場で議論をいたしまして、共通の広場をつくり上げていくのが民主主義であります。そういうことを否定するのが独裁政治であります。官僚政治、秘密主義であります。そういうことは、私は、民主的なあり方ではないし、国民に対しましても正しい意見を求めるという態度ではないと思います。七月十五日までも握りつぶしておった。これも問題でありますが、そのような重要な個所を削除いたしまして関係方面に頒布をするということは、これはいかがなものであるか。私は、これは事実といたしますと、きわめて遺憾なことであります。その点の事実の有無につきまして文部大臣はどのように理解をされておりますか。これをひとつお聞きいたします。
  95. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 別途いまお話しのような申し送りがあったことは、私は実は承知いたしておりません。勧告草案の送付されてきたものについては、私が着任後、こういう事態があるので、これに対してどうするかという事務当局からの協議も受け、大体全文私も精読をしたつもりでございますが、その精神からいえば、国によって教職員の代表が専門家会議に出ていたところもあるし、それから政府側なりあるいは教育機関側の代表が出ていた国もあるでしょうししますから、それらに全般に同一文書を送るものでありますから、いままで意見を聞いていないものの意見を聞くという趣旨のように、私はそれを読みまして感じておったわけで、事務当局も同様な感覚であったと思います。さような次第でございますから、まだこれは最終的なものでなく、今後二回、三回と、来年の一月ですか、さらに明年の十一月ごろというふうなぐあいに会議があるようでございますから、それらを通じて、私どもとしては、日本の国情も反映させ、できるだけ国内の意見を取りまとめてまいりたい、かように存じております。
  96. 大原亨

    大原委員 二つの点を質問いたしますが、なぜ六月の八日以前に——これは突然公表された事情はいろいろ言われておりますが、これはWCOTPという国際教員組織あるいは国際職能組織、教員団体と職能団体と全部一緒に入っておる国際組織ですが、その組織を通じまして教員組合や総評のほうに資料が流れたと私は思うのです。その翻訳文が出るというその一日前かその同じ日にあわてて——大臣はよく知られぬかもしれませんが、勧告草案を発表いたしておるわけであります。当時までに流布されました文書の中には、全国的な教員団体と協議をしてという、そういう個所を削除して関係方面に頒布をしておるのであります。そのことは事実ですかどうですか、そのことについて私は質問いたします。
  97. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 いまのお話の点はよく存じませんが、ただこれらのユネスコ及びILOの事務当局から日本に送ってまいりましたのは、すべて外務省を通してから文部省にくるものですから、相当に期間がかかった結果、時期がずれておったんじゃないか、かように思います。
  98. 大原亨

    大原委員 これは外務大臣質問いたします。いまの文部大臣の答弁によりますと、外務省を通じましてだいぶ長い時間かかってきた。その間に全国的な教員組織と協議をするというふうな条項が削られたような印象の答弁であります。それはほんとうですか。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事務当局をして答弁させます。
  100. 滝川正久

    ○滝川説明員 外務省の事務当局として申し上げます。  ILO、ユネスコの両事務総長の名前で出ましたのが、日付は四月十五日でございまして、参りましたのは五月初旬だったのです。五月七日付で、次官名をもちまして関係省、特に文部省にこの全文をお渡ししまして、同時に意見を求めるということにしたのでございます。
  101. 大原亨

    大原委員 外務省が文部省に手渡しました際には、全国的な教員組織と協議をしてという条項は入っていましたね。
  102. 滝川正久

    ○滝川説明員 私たちは内容については何ら削除、そういったことはしておりません。
  103. 大原亨

    大原委員 文部大臣、その点はあなたは大臣ですから御承知ないかもしれませんけれども、外務省はその原文に対しては作為を加えたり、削除したりしないで文部省に送った、こういうのであります。私の質問に対しまして、あなたの御答弁によると、長いいろいろな経過をたどっているうちに、外務省を通じているうちに、いつの間にかなくなったような印象の答弁であります。この点は明らかに違うのであります。その点で、そういう作為的な削除が行なわれたというふうな事実があるとすれば、知らなかったのであれば、あなたは事実を調査されればいいと思うのです。その点につきましては、私はいまや事態ははっきりいたしたと思いますが、文部大臣、どうお考えになりますか。
  104. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 ただいま事務当局の意見を聞きましたところが、両事務総長から日本の文部大臣あてに送ってまいりましたいわゆる送り状ですか、外務大臣あての書簡は公表しなかったけれども勧告草案は全体を公表したので、その中から取捨選択するとか削除をするとかは、全然しておりません。全文を世間に公表した、こういうことだそうでございます。
  105. 大原亨

    大原委員 つまり、これはだれがやったかは別にいたしまして、事実といたしましては、勧告草案の前文についておりましたILO事務総長——これはILO八十七号条約その他で教員組合問題等が議論されている並行的な問題ですが、その事務総長とユネスコの事務総長、両事務総長からの書簡の一部については、私は一部意図的に削除いたしまして関係方面に領布をした、私の手元にあるが、その頒布をしたという事実をお認めになったと思うのであります。私は、そのようなことは非常に秘密的な独善的なことではないか。この教員の地位に関する専門家会議というものは、三十数カ国の先進諸国が、政府の代表、教員団体の代表や地域の代表等を含めまして、数年にわたりまして数回にわたって議論をしたのであります。ですから、この専門家会議に対しまして、政府は知らなかったというふうなことは、文部省といたしましては非常な大きな怠慢ではないか。であるだけでなしに、勧告草案が参りました際に、日本については、特に特殊の例外を設けてないにもかかわらず、そういう措置をしたことはきわめて遺憾である。私は、この問題につきましては十分民主的に公開をいたしまして、論議をすべき問題であって、教員の地位の向上に関する問題、社会的な、政治的な、あるいは経済的な地位に関する問題を、教員自身の問題について教員自体の団体やその他の諸機関に提示をしないで、政府が教育長会議等にはかって一方的におやりになるということはきわめて遺憾である。そういうことは許すことができない、私はそのように思います。その点につきましては、賢明な文部大臣は、この点について将来とも運営において善処されるようにはっきりここで明らかにしてもらいたい。
  106. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 先ほど申し上げたように、勧告草案は全体を公表いたしましたので、削除しているとは私は思っておりません。  それから、この会議がずうっと前にパリ及びジュネーブでありました当時、この会議に日本の国は、一体、政府側は通知を受けて出席方を求められたかどうかということを、私はこの報告を就任直後に聞きましたときに確かめましたところが、そういう勧告政府側は受けていないと言っておりました。ですから、そこで日本の立場とすれば、前の会議には教職員の代表者が、全部の代表者といえるかどうか知りませんが、とにかく一応の代表者が出て会議に参画している。政府側は参画の機会がなかったんだから、意見を求められて、これに意見を述ぶべきものである、かような見地に私は考えておったわけで、この点を明らかにいたしておきたいと思います。
  107. 大原亨

    大原委員 外務大臣にお尋ねいたします。  いま文部大臣が御答弁になりましたが、外務大臣あての書簡の中には——これは国連の専門機構の公文書ですよ、この書簡の中には——勧告草案については御答弁になりましたが、この書簡の中には——この翻訳文は若干違う点があるので、外務省から入手いたしました原文の中には、「貴国の政府関係政府機関や国内諸教員団体」こういうふうに書いてあるが、「諸教員団体」と訳すのはおかしいと思う。全国的な教員団体というふうに私は訳すべきであると思う。「ナショナル・ティーチャーズ・オーガニゼーションズ」でありますから、その「意見を聞いて必要と思う所見を作成することができるようにするためであります。」という点を明確にして、起草してある。だから、そういうことをしなかったために、WCOTPその他国際的な教育団体、そういうものを通じましていろいろと議論が発展をすると思います。将来の専門家会議におきましても、オブザーバーで日教組が出席するという問題もあるでしょう。そういう問題を含めまして、正式代表を含めて議論になるのですが、そういうときに、日本の政府のとった行為に対する不信行為というか、外交的な国際文書に対する取り扱い方についての不信感というか、そういうものが私は問題となってくるのではないか。この点は日本はそういう遺憾な問題が国連外交上からも、ILO同様な関係で出てくる可能性があるのではないか。その点を私は指摘をいたしたいと思うのであります。外務大臣といたしましては、この点に対しまして、遺憾であるならば遺憾である、そういう点についてはっきりした所見をここで明らかにしてもらいたい。
  108. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外務省としては、接受した文書をそのまま伝えたのでありまして、その後の問題についての判断等については、おのずから所管を異にいたしますので控えたいと思います。
  109. 大原亨

    大原委員 私が言った質問によそっぱちの答弁をして何ですか。  それでは次の問題に移ります。  これは医療保険の問題であります。中央医療協や社会保険審議会を無視いたしました前厚生大臣のときにおける諸措置は、いろいろな問題を提起いたしました。中央医療協や社会保険審議会は第三者機関でありまして、国民的な利害関係のある諸団体を代表いたすそういう機関であります。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕  したがって、この議論を通じまして、官房長官や佐藤総理大臣は、これらの諸機関の審議を尊重して、そして言うなれば、いままでの医療費値上げ、あるいはこれに伴う総報酬制や薬価負担の問題につきまして再検討をして、その意見を尊重するというふうに、この国会を通じましても答弁をされたのであります。しかしながら、時日がたつに従いまして、保険財政上もこれは取り返しのつかないような大きな問題を起こしつつありまするが、中央医療協を再編成されまして、中央医療協に対します厚生大臣の考え方、基本的な態度につきまして、この際明確にしていただきたいと思います。
  110. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 中央医療協につきましては、先般国会の御承認を得まして、公益委員の選任もなされる段階になってまいりました。私は、この国会が終わり次第、できるだけ早く、中央医療協を再開いたしたいと考えております。中央医療協の御意見につきましては、十分これを尊重いたしまして、今後の医療行政の円満な遂行に当たっていきたい、このように考えておるわけであります。
  111. 大原亨

    大原委員 中央医療協に諮問をされる諮問事項は、いかような問題につきまして、どういう態度で御諮問になりますか。
  112. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 再開されます中央医療協に対しましては、薬価基準の引き下げに伴いますところの診療報酬の余裕分を、これを技術料に振りかえるという案を御審議をわずらわしたい、かように考えております。
  113. 大原亨

    大原委員 それでは、悪名高い職権告示ですが、これは裁判中であります。本訴中であります。東京地裁で高裁の抗告についての結論は出ましたが、東京地裁におきまして本訴中であります。これらの問題をめぐりましていろいろと議論が出たわけですが、この職権告示の九・五%の問題につきましては、追認、是正その他を含めましての措置をとられますか、いかがですか。
  114. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この職権告示の問題につきましては、当時いろいろいきさつがあり、やむを得ない事情があったと思うのでございまして、私は、それにいたしましても、あのような異例の措置がなされましたことにつきましては、まことに遺憾に考えておるわけであります。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 今後はさようなことのないように私も最善を尽くしますし、また関係者に対しましても、極力御協力をお願いいたしたい、このように考えておるわけであります。今後は円満なる中央医療協の運営を通じまして、正常な形で答申がなされるように、答申に対しましては十分尊重してやってまいる所存でございます。
  115. 大原亨

    大原委員 中央医療協における支払い側の諸団体は、九・五%はいまだに認めていないのであります。この問題は、結果はどうあるにいたしましても、医療費の値上げの問題などのような国民的な諸問題、そういう問題につきまして、一方的に職権告示を神田厚生大臣がやったということが、法律問題とひっからみまして問題となったのであります。その経過を踏まえてみまするならば、特にその問題を取り上げまして、東京地裁の仮決定というものは、違法性について、判決文の決定文の内容においてそのことを支払い側の主張を支持いたしておるのであります。本訴は現在行なわれておる最中であります。ですから、中央医療協を、医療費の値上げその他の問題をめぐりまする共通の土俵とするためには、これは十分支払い側との間において意思統一をしなければならぬ。その点におきまして、九・五%の問題というものは、これはしかく一方的に簡単に処理できない問題ではないか。この点については、いままで論議をしたことですから、国会を通じまして、もう一度厚生大臣は明確な所見を発表していただきたい。
  116. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私は、先般公益委員国会御承認が得られました直後、支払い七団体の代表の方にお集まりを願いまして、そうして中央医療協への復帰——ただいままで全員辞表を出しておられたわけでありますが、辞表の撤回、中央医療協への復帰につきまして、御協力をお願いをいたしたわけであります。その際におきましても、ただいま私が大原さんに申し上げましたようなことを十分お話をいたしまして、今後の私の中央医療協に対する考え方、姿勢というものを十分お話をいたしまして、御了解を得まして、そうして辞表の撤回、また任期の切れました方に対する後任の御推薦も受けておるわけであります。国会の終わり次第、中央医療協の再開されることにつきましても、御了解を得て、御協力をいただけるように進んでおる次第でございます。
  117. 大原亨

    大原委員 私は、総理大臣にも官房長官にもしばしばここで申し上げましたように、九・五%の医療費の値上げ分については、あっさりと中央医療協を再開をして、ここで論議をして確認をすべきである。これほど議論をいたしまして、相当問題はせんじ詰まっておるのでありますから、ある意味におきましては、機会は熟しておるわけであります。そういうことを指摘をいたしまして、中央医療協を尊重するというように総理大臣も言明をいたしておるのであります。私はその点を指摘しておきます。  その次の問題は、医療費の値上げ、あるいは医療費の増加その他と並行いたしまして、これをだれが負担をするか、どのように負担をするかという問題は、社会保険審議会の諮問事項であります。その中で総報酬制の問題があったわけであります。総報酬制につきましては、議論が相当出尽くしておりまして、厚生大臣も社会保険審議会におきましては、総報酬制は標準報酬制を是正することによって変えていきたいという議論を出しておられます。これは十分議論をされると思うのであります。  もう一つの問題は、薬代の本人半額負担ということであります。これは十割給付の医療保障を八割三分、八割保険に後退をさせるという問題で、社会開発や人間尊重を主張いたします佐藤内閣といたしまして何事だ、こういう議論になっておったわけであります。薬代の本人半額負担の問題は、これは社会保険審議会におきまして、諮問事項といたしまして意見を聞いて、これは反対であったならば撤回するにやぶさかでない、こういうふうに厚生大臣はお話しになっておるやに聞くのでありますが、これは国会で議論になったことでありまするから、薬代の半額負担の問題につきまして、あらためて見解を明らかにしてもらいたい。
  118. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、政府から社会保険審議会、社会保障制度審議会に諮問をいたしておりまする総報酬制、また薬価の半額負担、この問題につきましては、いろいろ御意見のありますことを私十分承知をいたしております。しかし、政府が諮問をいたし、また四十年度の予算国会の御審議を願った当時の経緯等もございまして、私は、この問題についてはいろいろの意見のありますことを承知はいたしておりますが、この諮問案を撤回するということは考えておりません。この諮問案に対する御意見も拝聴したいし、またよりベターな案がありますれば、それをお聞かせを願い、私は十分審議会の意見を尊重して、今後の保険三法の改正に当たりたい、このように申し上げておるわけであります。
  119. 大原亨

    大原委員 それではさらに質問を続けますが、私は、この問題は薬価基準の問題と深い関係があると思うのです。つまり、医療保障の後退、被保険者の負担の増大をいたしまして、そして健康保険関係三法案を改悪するというようなことはこれは時代錯誤であります。したがって、私は薬価基準の問題、これは全部が全部ではありませんが、深い関係があると思うのですが、私は、薬価基準の問題は、第一にお尋ねしたい点は、薬価基準はこれは中央医療協における技術料の改善の問題とは別の問題ではないか、これを混同しておるところに、私は、医者や薬剤師の技術の尊重ということ、それから国民の側でいえば適正なる医療を受けるという、そういう問題の意見の一致点、利害の一致点をうやむやにしている一つの大きな原因があるのではないか、そういうたてまえは別ではないか、こういう点につきまして見解をひとつ明らかにしてもらいたい。
  120. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 薬価基準の改定につきましては、私も薬価の実勢に応じまして、できるだけ早い機会にこの改定を実施したい、このように考えておるわけであります。その取り扱いにつきましては、私といたしましては、先ほど申し上げましたように技術料への余裕分の振りかえ案というものを審議会に諮問いたしておりますので、その答申を待って、同時に薬価基準を、薬価の実勢に即応して引き下げをいたしますように同時解決をしたい、このように考えております。
  121. 大原亨

    大原委員 薬価基準を三%下げるということになりますと三百三十億円であります。いままで、神田前厚生大臣もしばしば発言をしておりましたが、薬価基準をさらに一・五%引き下げるということになりますと百六、七十億円くらいであります。したがって、この三%、一・五%の問題は、これは前厚生大臣の方針のとおりにあなたは諮問し、そしてそのデータを提供されますか。あなたの一部の見解表明によりますると一・五%の問題は七月末までに実態調査ができ上がる。それに基づいて方針をきめたい、数字を確定したいということでありますが、七月末は過ぎております。その点につきましてひとつお答えをいただきたい。
  122. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 大原さんのおっしゃるとおりでございまして、三%のほかの一・五%につきましては、これは十月以降の薬価の値下がり分、これを五月の時点で調査をいたしましたものを、私が就任いたしましてその報告を受けたのでございますが、どうも十分納得のいかない点が多々ございました。そこで再調査を命じまして、六月の末を目途に早急に調査結果を出すようにということを事務当局に命じておるわけでありますが、だいぶ作業も進んでおるようであります。両三日中にその結果が出ると思っておりますが、大体一・五%に近い数字が出るのではなかろうか、こう考えております。
  123. 大原亨

    大原委員 私は、この点につきましては、きわめて重大な問題ですから指摘をしておきたいのですが、今日は医者の中におきましても、売薬的な医療とか神風ドクターとかというふうな、そういう指摘があるのであります。三十、四十歳代のお医者さんがかせぎまくるということで、技術が尊重されないではないかという要望がある。一方におきましては、保険財政の問題があるわけであります。薬の乱用の問題もあるわけであります。それらの議論を解明をするためには、緊急是正、緊急是正ということで、こう薬ばりだけでは矛盾が拡大するばかりである。したがって、主体的な基本方針を明確にして、長期的な展望を持ったそういう政策を一つずつ積み上げていかないとこれはいけないのであります。そういう点では医者や薬剤師の技術を尊重し、そして必要な適量の薬を必要に応じて施薬をしていくというふうな、そういう体制をとることが必要であります。それらにつきましては、支払い側との了解事項や、国会におけるいろいろの議論を通じまして政府側は答弁をいたしておりますが、その点を明確にひとつ態度をきめまして、この事態の処理に当たってもらいたい。その点につきまして厚生大臣の簡単な所見を求めます。
  124. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 御指摘のように、当面各種保険財政が急速に悪化をいたしておりまして、私はこの保険財政の悪化に対する当面緊急の対策を中心に御審議を願っておるわけでありますが、しかしながら、これはあくまで御指摘のとおり当面の対策でございます。今後はそれぞれの保険内部におけるところの調整を進め、さらに将来におきましては、各種保険の調整をいたしまして、そうして全体としての社会保険が格差のないように、国民全体が同じような保険制度でやってまいれるように基本的な方向を検討いたしたい、かように考えておるわけであります。
  125. 大原亨

    大原委員 これからのことについてはわかりませんが、いまの段階としてはしかたがないと思うのです。  次に、最後の問題は保険財政の問題であります。保険財政の問題で政府健保の赤字は一昨年からどんどんふえてまいりまして、本年の見通しを加えますと、一部数字の修正がございましたが、七百二十四億円であります。この保険の赤字につきましては、国会で論議をし、与野党間で取りきめがあり、政府間との取りきめがあり、いろいろ論議をされたわけでありますが、この政府管掌健康保険の七百二十四億円の赤字につきましてはどのように措置をされますか。
  126. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいまの大原さんのお述べになりました数字は、今年度中に保険法の改正その他をしない、現状のままでいった場合の推定の累計赤字額でございます。私は、できるだけ早い機会に保険三法の改正をやり、そして同時に、国の負担も増額をいたしまして、保険財政の健全化をはかりたい、このように考えておるわけであります。
  127. 大原亨

    大原委員 健康保険の三法案は秋の臨時国会に提案をされることになっておるというふうに見解の表明がしばしばあったわけであります。そういたしますと、これが実施は少なくとも来年の一月一日であります。そういたしますと、私が申し上げました政府管掌健康保険だけでも七百二十四億円の累積赤字があるのですが、これは前年度分を含んでいるのですが、ほとんどが残るわけであります。私は相当思い切った政府がこれに対する財政措置をしなければ、政府管掌健康保険、そして日雇い健康保険は累積赤字が百三十四億円であります。これらの問題の処理ができないというふうに考えますけれども、厚生大臣はどういうおつもりですか。国庫負担を増加するなどと言われましたけれども、もう少し決意を明確にひとつお答えをいただきたい。
  128. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この保険財政に対する対策につきましては、ただいま社会保険審議会、社会保障制度審議会、これに格間を願い、その答申をお願いをいたしておるわけでありますが、その答申を受けました上で、財政対策につきましても、私はこの際思い切って政府としてもやらなければならない、このように考えておるわけであります。その点につきましては、国民の皆さんが御心配をしておる点でありますので、先般の政府与党と支払い団体等との間の話し合い等の経緯もございます。私は十分そういう点も頭に入れまして対策を講じていきたい、かように考えております。
  129. 大原亨

    大原委員 自治大臣にお尋ねいたしますが、自治大臣、あなたは国民健康保険につきましては、役員もやっておりますし、専門家であります。国民健康保険は、今日地方財政を圧迫いたしまして、崩壊寸前だといわれております。減税減税と政府のいっておるときに、強制徴収できるような国民健康保険税は、昭和四十年度に至りましても三割以上の保険税の増大をやっておると思うのであります。昭和三十九年もそうでありました。これはもう減税はくそくらえであります。ひどいのであります。そういう実情におきまして、地方財政の観点から見まして、国民健康保険の財政に対する抜本的な体制をどうすべきか、こういう点につきまして自治大臣の見解をひとつ明らかにしてもらいたい。
  130. 永山忠則

    永山国務大臣 抜本的方法は、各種医療保険の総合調整以外はないと考えております。とりあえずのところは、国民健康保険はすでに総報酬制をとっておるのであります。健保が最高が一万九千円の保険税でありますが、国保は五万円まで、二倍半以上とっておるのであります。したがいまして、これ以上負担をかけることは困難でございますから、政府のほうの助成措置を十分とる以外ないと考えておるのでございます。
  131. 大原亨

    大原委員 それでは、時間も参りましたから、大蔵大臣にお尋ねするのですが、国民健康保険に対する本年三月二日でありますか、衆議院における予算通過の際におきましても、政府と社会党との間におきましていろいろと取りきめがありましたし、あるいは支払い側その他を通じましても議論になって、了解事項となっておるところであります。で、国民健康保険の問題につきましては、三十九年度の政府負担分も相当増大をいたしまして、百億円の繰り上げ支出を義務負担分については政府はいたしております。それから、調整交付金につきましては、年度を越えましたけれども、異例の措置といたしまして四十億円の予備金支出をいたしておるのであります。調整交付金などというのは、この三、四年来、年度内に補正をすることが当然慣例でありました。財政問題としてなかったのであります。私は、調整交付金を含めまして、政府負担分は年度内に補正をするという方針。それから九・五%の値上げ分につきましては、一月から六月分につきましては、国民健康保険につきましては政府は負担をいたしておるのであります。実施の時期がおくれておりますから、当然に七月以降におきましても、国民健康保険に九・五%分を含めまして政府が負担すべき問題はあると思うのであります。その他、来年度の予算を含めまして、事務費の問題、二百八十八円の事務費が実際上は二百円という問題、それらの問題を含めまして、国民健康保険財政について、抜本的な対策を財政上十分考慮すべきであると考えます。いままでのようなトラブルを繰り返さないために、抜本的な対策を講ずべきであると思いますが、その点につきましては、総理大臣はうなずいておられますが、その点の見解はいかん。  もう一つ、ついでに、共済組合の短期給付につきまして、掛け金を引き上げるというふうな当局側の提案が一斉にあるようであります。しかし、これは健康保険三法に準ずる問題もあることでございますし、これらの健康保険の問題を含む共済組合の短期給付の掛け金の引き上げの問題は、これは、今日の段階におきましては、それらを総合的に判断をいたしまして解決をつけるべき問題でありまして、不足分、赤字分につきましては、当然いままでは政府が財政上の措置をとるということを約束をいたしてきたわけであります。ですから、各種の共済組合の短期給付分に対する掛け金の増大ということをいま一方的にやらないで、政府が責任を持って財政のやりくりをしながら総合的にこれを取り上げて解決をすべきであるというふうに考えます。この二、三点に対する総括的な大蔵大臣の所見を最後にお伺いいたしたいと思います。
  132. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国民健康保険につきましては、お話のように、昨年度の精算不足分につきましては、繰り上げ措置をいたしたわけです。それから四十億円の臨時調整交付金を出すという措置をいたしたのです。その措置をいたしました結果、各種国民健康保険についてこれを配分をいたしたあとの状態を調査してみる。そうしますと、国民健康保険における財政状態は、非常に改善をされてきております。大かたが黒字になるというような結果になるわけであります。一部には赤字が依然として残るものもあるわけでありますが、これは、私は市町村などの国民健康保険当局の努力で解決し得る、こういうふうに考えております。  それから第二の御質問でありますが、ことし六月までしか補助金を出していないじゃないかという問題ですね。これは六月までということで出したのじゃないのです。保険料の料率が急に上がるものですから、急増というものに対する臨時の対策として出した金でございまして、私どもはいまこれをきちっと六月までというふうには考えておりません。したがって、七月以降に対してこれを補足するという考えも持っておらないのであります。  それから第三点の共済組合のことでございますが、これは私よく実情を存じませんので、いま初耳でございますので、なお調査いたしました上、適当な機会にお答えをさしていただきます。
  133. 青木正

    青木委員長 これにて大原君の質疑終了いたしました。  先ほど山花秀雄君から質疑がありましたLST乗り組み員の死亡事件に関し、この際政府からの報告を求めます。新井警察庁長官
  134. 新井裕

    ○新井政府委員 先ほどLST船員の死体の検案について、警察の関与についてお尋ねがございましたので、お答えいたします。  検案をいたしましたのは八月五日の十一時から十二時までの一時間、場所は立川の基地内の霊安所、検分いたしましたのは警視庁の鑑識課の医師、検死官、それから地元の警察官でございます。  結果は、七月二十六日の死亡でございますので、やや腐乱をいたしておりますけれども、特記すべき外傷なし。ただし、鼠蹊部、頸部、胃部上縁に採血防腐剤注入痕跡を認む。これは、こちらに死体を運んで来るために血をとりまして、かわりに防腐剤を注入した痕跡であります。溺死と認められる。  以上でございます。
  135. 青木正

    青木委員長 以上をもって昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)に対する質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  136. 青木正

    青木委員長 引き続き、これより昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  高田富之君。
  137. 高田富之

    ○高田委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま上提されております昭和四十年度補正予算案(第1号)につきまして、反対の討論を行なわんとするものであります。  反対の理由の第一は、本予算案は、政府の財政金融政策の無責任きわまる運営と、その破綻を最も端的に表明しているものであり、みずからの失政を反省することなく、その日暮らしの場当たり的財政・経済の運営を続けることは、これ以上許されないと考えるのであります。  御承知のとおり、日本経済はいま深刻な危機に直面し、不況のあらしは、中小企業、農業、勤労者の生活はもちろん、日本経済の屋台骨をゆるがす構造的な不況に突入していると申すべきであります。株式市場の事実上の崩壊、企業の倒産、売れ行き不振と在庫の増加、財政の歳入欠陥、雇用情勢の悪化などの不況現象は、政府、日銀の金融緩和、救済融資にもかかわらず、ますます悪化しており、加うるに、本年の冷害凶作の不安と食糧危機につながり、また、アメリカのドル防衛の強化による国際収支の行き詰まりの不安とも結びついて、あらゆる面から国民生活を重大な危機におとしいれているのであります。  この年頭には、佐藤総理が、記者会見で、「経済界にも春が来る」などとのんきな放言を行なっていましたが、わずか半年後の今日、経済の実態そのものがそのごまかしをはっきり裏書きしているのであります。これらの実態を反映して、一そう深刻化する財源難の問題にいたしましても、田中前蔵相は、ついこの間の通常国会におきましては、わが党の激しい追及に対して何ら誠意ある真剣な態度を示さなかったのであります。これらは単に総理の放言や、大蔵大臣の見込み違いでは済されない重大な政治責任であります。  しかるに、政府はこうした事態を打開する方策を見失い、何らその能力を持ち合わせないため、今回の補正を単に本年九月二十五日が払い込み期限となっておるIMF及び世銀の増資に要する資金だけに限り、国民の要望しておる他の補正要因、たとえば医療費値上げに伴う国庫負担、国保の赤字対策、水道料金問題など、国会で約束した懸案事項などをはじめ、食管会計への繰り入れ、公務員のベースアップ、災害復旧などはもとより、当面する不況打開のための緊急対策など、他の補正要因はすべて見送り、財源難を理由に一般会計の赤字補てんのための公債発行を行なおうとしておるのであります。低賃金と高物価政策によって、国民生活の犠牲の上に高度成長を推し進めてきた政府は、その矛盾のしわ寄せをさらに国民生活に押しつけることによって居すわりを策そうとしているのであります。こうした態度は、総理が参議院選挙にあたって、国民に公約した政治の責任体制などとはおよそ縁遠いものといわなければなりません。  次に、反対理由の第二の点は、本補正予算案の内容についてであります。  本補正予算案の財源は、四十年度の経常歳入によることなく、日銀の保有している金の再評価による日銀特別納付金、及び外国為替資金特別会計のインベントリー・ファイナンスの取りくずしにより調達され、これに伴って外為会計の資金繰りが窮屈になったときは、外国為替資金証券を発行することによってやり繰りしようとしていることであります。補正財源は当然に経常歳入によって支弁することが、これまで政府の約束してきた健全均衡財政の基本であると思うのであります。ところが、みずからの失政によって招いた財源難を理由に、日銀の金再評価とともに、イベントリー・ファイナンスを取りくずさなければならないところに追い込まれたことは、その財政金融政策運営の姿勢そのものが第一に追及されなければならないとともに、インフレを誘発する危険が十分あることを指摘しなければなりません。  インベントリー取りくずしは、外為会計インベントリー千二百五十億円のうち、インドネシアに対するオープン勘定焦げつき債権の放棄による六百三十七億円を差し引いた六百十三億円の中から百六十一億円を支出することとしておりますが、これは財政法の精神を逸脱するものであり、特別会計の健全均衡原則を突きくずすやり方であり、財源難を糊塗する窮余の策としても最悪の方法であります。  この結果、残される外為会計資金額は千四百七十六億円と減少するのでありますから、今後の外為会計の推移によっては、さらに外為証券を増発しなければならなくなることが当然予想されるのであります。この外為会計運転資金が外為証券の増発によってまかなわれることは、通貨の増発を招き、インフレを引き起こす心配が十分にあります。  このような安易な無計画、無責任な財政運営は、最近の政府の施策に一貫している危険きわまりない方策でありまして、さきの国会で強引に成立させた財政法第六条の改正による減債制度の特例規定、さらに、年度末に行なわれた年度区分に関する政令の改正による四月分税収の前年度分への繰り入れ、大蔵省証券の無原則的発行などにもあらわれているものであります。  政府は、これ以上無原則的な場当たり的な予算編成を続けることは、財政支出の硬直化の現状の中で傷口を拡大するばかりであります。いまこそ、勇断を持って、健全財政を貫く財政政策の根本的改革こそが重要であると考えるものであります。  次に、反対理由の第三点は、IMF体制に対する政府の態度であります。政府は、今回のIMF増資が国際金融協力強化という方向で実現したことを高く評価しているようであります。しかし、今回の増資は、単に五年目ごとに再検討される定期的なものではなく、ますます深刻化するドル危機の中で国際通貨体制の危機を背景としているという点が重大であります。  アメリカの一九五八年以来のドル不安は、現在兌換可能な金六十億ドルに対し、対外債務は外国中央銀行に百五十億ドル、民間に百億ドルと推定されており、そのドルの信用失墜のしりぬぐいを国際協調の名のもとに全世界に押しつけるという、まさにアメリカの利益が先行したものにほかならないのであります。これまで、アメリカは、ドル危機を乗り切るため、軍事支出の増大を日本などへの援助肩がわりによって補おうとしてきたのでありますが、今回の処置も、ベトナム戦争の拡大を契機として、アメリカの戦争政策と無関係であるとはいえないのであります。わが国の新しい出資割り当て額が七億二千五百万ドルにふえたことによって、IMFから無条件で借りられるワクが拡大したなどと手放しでは喜んでおられないのであります。  さきに開かれたIMF東京総会においても見られたように、今回の増資をめぐって、米英とEECの間に鋭い対立があり、特に、金払い込み問題は、国際流動性問題に対する米英とEECの認識の違いを浮き彫りさせたことは御承知のとおりであります。このことは、増資に必要な金十二億五千万ドルのうち五億ドルは、IMF保有の金の二重計算や、たらい回しにたよらなければならなかったことが、ドルを主軸とするIMF体制に対するフランスの批判を裏書きしているのであります。  このように、ドル不安と国際的な金選好の高まりの中で、金準備の少ないわが国が今後IMF体制への依存だけで乗り切れるかどうか、はなはだ疑問といわなければなりません。  当面の輸出の好調にもかかわらず、アメリカのドル防衛政策の強化によってわが国の国際収支の前途は楽観を許さない事情にあります。すでに総合収支は三カ月赤字を続けております。ますます増加する貿易外収支の赤字と長期資本収支の赤字、及び約三十億ドルの短期外資の流出傾向は、脆弱な外貨準備の基礎をゆるがしているのであります。今後さらに凶作によって食糧輸入が増加すれば、農畜産物輸入を低く押えて経済成長の支柱としてきた日本経済が、本年後半に食糧危機と外貨危機に相次いで見舞われるおそれが増大しているのであります。  国際資本の支配を強く受けつつある日本では、輸出の障害も増大し、開放体制下で輸入の制限はいよいよ困難になってまいっております。こうした国際収支危機を前に、しかも国際的な金選好の高まりの中で、今度の出資にあたっても、わが国は、主要十カ国の中で唯一のアメリカから金を買ってIMFへ納めた国であります。ポンド危機に悩む英国が、その救済を求めるためにアメリカの戦争政策に同調せざるを得ないと同様に、外貨危機と経済不況による混乱がわが国の経済自立を弱め、ひいては外交の自主性を制約して、アメリカの戦争政策に巻き込まれる危険を一そう増大させる結果となるのであります。  われわれは、このようなIMF——ドル体制の危機を前にして、ドルを中心とする国際通貨体制そのものを再検討する時期に来ていることを強く指摘するとともに、日本の立場から国際通貨制度のあり方について姿勢を明らかにしなければならないと考えるものであります。  以上、私は三点にわたって反対の理由を申し上げました。  最後に、私は、特に一言強調いたしたいのでありますが、今日の経済の混乱によって最大の被害を受けるのは、申すまでもなく中小企業、農民、勤労者であります。その生活を守るため、経済財政政策の失敗を反省し、その責任をとることが政治家のとるべき道であります。佐藤内閣は、今日の危機を招いた責任を反省し、独占資本中心、対米依存の経済財政政策を抜本的に転換し、本年度予算の全面的な組みかえを含む具体策をすみやかに国会に提出すべきであるということをここに強く要請して、私の討論を終わります。(拍手)
  138. 青木正

    青木委員長 次に古川丈吉君。
  139. 古川丈吉

    ○古川委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっています昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)に対し、賛成の討論を行ないます。  昨年秋、東京で開かれました国際通貨基金第十九回総会において、最近の世界経済及び国際貿易の発展に伴う国際流動性に対する需要の増大に対処するため、全加盟国の総意として、国際通貨基金の割り当て額を増額することが決議されました。そして本年三月、加盟各国一律に二五%増額するとともに、経済発展の特に著しい日本ほか十六カ国は特別増額をすることに決定いたしました。また、国際復興開発銀行におきましても、本年四月、日本ほか十六カ国は特別増資をすることとなりました。よって、政府は、本国会に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案と本補正予算を提出したのであります。  右法律案は、すでに大蔵委員会を通過し、本日の本会議に上程される予定になっております。  本補正予算は、国際通貨基金及び国際復興開発銀行の日本に対する増資割り当てに対応する予算の措置であります。  歳出の内訳は、国際通貨基金関係二百十一億一千六百六十四万八千円、国際復興開発銀行関係四億一千八百二十九万九千円で、合計二百十五億三千四百九十四万七千円であります。これ以外の残額は通貨代用国庫債券によって払い込むことになっておりますので、今回予算措置をとる必要がないのであります。  歳入の内訳は、別途提案された法律案の規定に基づきまして、日本銀行の所有する金地金及び金貨の再評価差額に相当する金額を国庫に納付せしめることとし、日本銀行からの特別納付金五十三億七千九百十五万二千円と外国為替資金から百六十一億五千五百七十九万五千円を受け入れることになっております。昭和二十七年、日本が国際通貨基金及び国際復興開発銀行に加盟して以来、この二つの国際機関はわが国経済の発展に多大の寄与をしてまいりましたが、わが国のみならず、世界経済の復興発展のために果たした役割りはまことに大なるものがあります。  これら両機関は、資金需要の拡大に伴い、昭和三十四年に増資を行ない、わが国も追加増資に応じましたが、さらに最近における世界経済及び貿易の発展に伴い、一そう資金需要が拡大しましたので、今回の増資となったので、わが国の一般増資及び特別増資も当然のことと思います。反対論の言ういわゆるアメリカのドル防衛とは無関係であります。  歳入の日本銀行の特別納付金は、日本銀行が所有する約十三トンの金地金及び金貨の再評価差額金であります。これは接収貴金属のうち、日本銀行に返還されたもので、現在の帳簿価格は金一グラム当たり三円四十五銭弱となっているのを金管理法第四条に基く金一グラム当たり四百五円として再評価し、約五十三億七千九百万円の評価差額を別途提案されている法律案の規定によりまして、日本銀行から国庫に納付せしめるものでありまして、きわめて妥当な処置と思います。  外国為替資金は、その資金のうちに一般会計から計千二百五十億円の繰り入れがしてありましたが、さきにインドネシアに対する債権放棄に伴い、約六百三十七億円を支出しており、今回はその残余から約百六十一億円を一般会計へ繰り入れることとしたのであります。このいわゆるインベントリーからの繰り入れについて反対の意見もありまするが、国際経済機関への出資という点から考えて、私はしごく妥当なものと考えます。インベントリーから繰り入れることによって、反対論の言うような弊害は私はないものと信じます。  わが国が加盟国としての責務を果たし、世界経済の発展とわが国経済と貿易の伸張に寄与することを期待いたしまして、本案に対する賛成の討論といたします。(拍手)
  140. 青木正

    青木委員長 次に竹本孫一君。
  141. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民主社会党を代表して、政府提出の昭和四十年度補正予算(第1号)案について、反対の態度を表明したいと思います。  私ども民社党は、政府案の歳出補正の唯一の内容であります国際通貨基金及び国際復興開発銀行に対する出資増額約二百十五億円につきましては、もとより異論はありません。しかしながら、その財源となる政府案の歳入補正を見ますと、私どもはりつ然とせざるを得ないのであります。今回政府案が補正財源としておるのは、日銀保有の金の帳簿価格の再評価並びにインベントリーの一部の取りくずしであります。これは財政法上はまことに合法的でありますが、租税の自然増収とは違う、いわば財布の底をはたいても一銭も出ないから、手持ちの家財道具を売り、さらに土地建物の再評価で必要財源をひねり出すといったような無理算段のやりくりでつくり上げたインフレマネー——これは総理が大蔵大臣のころに言われたことばでありますが、そのインフレマネー、臨時的収入への一〇〇%の依存体制であります。  すでに昭和四十年度の予算編成のときに、政府は、財源難から、減債基金の繰り入れを二分の一から五分の一に引き下げました。また農林漁業金融公庫、住宅公団または住宅金融公庫等については利子補給という新しい手を講じまして、十億円の負担で三百八十億円に近い必要財源をひねり出したのであります。さらに今年度の租税収入は、約二千五百億円の減収見込みとされておりますけれども政府は、その必要財源の調達にからむ公債発行方針につきましても、昭和四十三年度までは絶対に発行しないと言っていたのが一転して、昭和四十一年度以降に発行することがあり得ると述べ、再転して四十一年度に発行するということを言明されたかと思うと、さらに三転して、ついには本年度内に全額日銀引き受けの赤字公債四千億円程度を発行することも辞さないというところに発展してきたようであります。これは全く追い詰められた公債そのものであります。四月からわずか四カ月ばかりの間に四回も方針が変わっております。これは、いかに政府の経済見通しがいいかげんなものであるかという証拠であります。  このような確固たる見通しを持たない経済政策、財政政策でありますからこそ、今回の国際通貨基金等の増資払い込みのように、あらかじめ支出すべき時期も金額も大体見通しがついておる案件に対しましても、無理算段の歳入補正をせざるを得ないのであります。私は、このような不安定な財政見通しのあいまいな歳入補正は無責任きわまるものであると断じて、今回の補正予算に賛成をすることができないのであります。  私の反対の第二の理由は、政府は口先で不況の深刻さを述べられておりますが、歳出補正では何一つ不況対策予算が計上されていないという点であります。私ども民社党は、七月国会は不況対策国会でなければならぬと主張し続けてまいりました。今回の不況は単なる循環的な不況ではなく、大企業の過剰投資を最大原因とする企業、産業、金融につながる経済構造全体の欠陥、行き詰まりこそが真の原因であります。政府も、確かに、五月二十一日の経団連総会におけるあいさつにおいて、佐藤総理は、現に、最近の不況はわずかながら明るいきざしが見えてきた、政府は、短期的な対症療法的な景気振興策はかえって不適当で、長期構造対策を強力に実施したいと言われたのであります。しかるに、六月二十七日の閣議の不況対策では、公債発行をしてまでも景気刺激をしていくという短期対策が決定されたのであります。そこには不況認識の甘さがあり、財政経済政策の動揺があり、いたずらに危機に立つ大企業に突き上げられた資本的経済の矛盾があるのであります。いまや九月の会社決算期を前にして、六月も七月も急速に企業倒産が増加しております。しかもその倒産の半分は、金繰りで行き詰まったのであります。  思うに、最近の経済政策を見ておるときに、政府は、一、経済を急速かつ高度に伸ばした責任、二、金融引き締めが行き過ぎた責任、三、金融緩和の手おくれの責任、四、景気対策出し惜しみの責任、その上にさらに今回一を加えて、大企業を思いつきで救済してインフレにつながる責任を加重しつつあるのであります。しかも他面、四月の勤労者家計調査報告を見ますと、消費者物価の七%以上の上昇もこれあり、実質収入は三・四%の減少となっておるのであります。また、一般の勤労者世帯の消費水準のごときは、前年同期に比較して、最近では約五%低下しております。  したがって、われわれは今回の補正予算に際しましては、中小企業向け救済対策及び財政融資の拡大あるいは国民健康保険の赤字補てん、さらには北海道・東北の冷害、全国的な豪雨被害に対する救済等々、私は少なくとも最小限二千億円程度の歳出補正が緊急に必要だと考えたのであります。その財源としては、行政費用の節約とか、あるいは不急事業の実施繰り延べといったことだけでも十分にこれはまかなえるのであります。私は、これが七月国会における最小限度の補正予算であろうと考えるのでありますけれども、それすらも計上していない政府案には賛成することができないのであります。  私は最後に申し上げたい。要するに、政治は哲学であり、見識であります。最近の政府のいろいろのとっておられる態度を見ておりますと、何だかすべてが受身であり過ぎるように思うのであります。物価高はしかたがない、インベントリーの取りくずしもしかたがない、山一の救済もこの際ここまできてはしかたがない、公債発行もしかたがない、あるいは米国輸送機の台風避難もしかたがない、これでは国民の期待しました佐藤内閣とは、与えられた客観条件に押し流されているだけでありまして、「しかたがない内閣」になってしまいはしないかと心配するのであります。どこに政治があり、どこに見識があるのでありましょうか。随所主となるということわざがあります。佐藤内閣は政治も外交も経済もすべて与えられた客観的な条件に押し流されておる。随所従となるというような危険があるのではないでしょうか。もと立ちて道生ずと申します。政治家にはっきりした信念と見識と勇気があるならば、対米外交においても、ベトナム紛争についても、打つ手は必ずあるはずであります。困難なる不況打開のことにつきましても方策は必ず出てくるはずであります。  私は、この際、佐藤内閣にきびしい反省と所信に邁進する一大英断を強く求めて、私の反対討論を終わります。(拍手)
  142. 青木正

    青木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  143. 青木正

    青木委員長 起立多数。よって、昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)は原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、おはかりいたします。  委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  145. 青木正

    青木委員長 なお、この際、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  すなわち、一、予算の実施状況に関する件、二、予算委員会運営の改善に関する件、以上二件につきまして、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  なお、閉会中審査案件が付託された場合、委員を派遣して現地調査する必要もあるかと存じますが、その際の派遣委員の選定、派遣地の決定等につきましては、委員長に御一任を願い、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  今次臨時国会における最重要案件たる補正予算は、ここに慎重審議の結果、円満に委員会の審査を終了いたしました。これひとえに委員各位の御熱心なる審査のたまものでありまして、酷暑のおりにもかかわらず、委員会の審査に御精励くださいました委員各位の御労苦に対し、心から深く敬意を表する次第であります。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時八分散会