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1965-08-06 第49回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月六日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 古川 丈吉君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       愛知 揆一君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       今松 治郎君    江崎 真澄君       奥野 誠亮君    小坂善太郎君       小山 省二君    櫻内 義雄君       登坂重次郎君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    服部 安司君       古井 喜實君    水田三喜男君       伊藤よし子君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    川崎 寛治君       小松  幹君    高田 富之君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       野原  覺君    山花 秀雄君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 竹下  登君         公正取引委員会         委員      佐久間虎雄君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  井原 敏之君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  莊君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         食糧庁長官   武田 誠三君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         通商産業事務官         (繊維局長)  乙竹 虔三君         中小企業庁長官 山本 重信君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         郵政事務官         (大臣官房長) 鶴岡  寛君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建 設 技 官         (河川局長)  古賀雷四郎君         建 設 技 官         (住宅局長)  尚   明君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  田中 弘一君         文部事務官         (体育局長)  西田  剛君         文部事務官         (体育局学校給         食課長)    吉田 寿雄君         国民金融公庫総         裁       石田  正君         中小企業金融公         庫総裁     舟山 正吉君         参  考  人         (全国銀行協会         会長)     岩佐 凱實君         参  考  人         (全国相互銀行         協会会長)   尾川 武夫君         参  考  人         (全国信用金庫         協会会長)   小野 孝行君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 八月六日  委員大平正芳君、奥野誠亮君、小山省二君、永  井勝次郎君及び横路節雄辞任につき、その補  欠として服部安司君、川崎秀二君、稻葉修君、  伊藤よし子君及び川崎寛治君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員稻葉修君、川崎秀二君、服部安司君、伊藤  よし子君及び川崎寛治辞任につき、その補欠  として小山省二君、奥野誠亮君、大平正芳君、  永井勝次郎君及び横路節雄君が議長指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を議題とし、一般質疑に入ります。  なお、念のため申し上げますが、理事会の協議により、一般質疑の持ち時間は、一人当たり一時間三十分となっておりますから御了承願います。  この際、申し上げます。本日、参考人として商工組合中央金庫理事長北野重雄君、全国銀行協会会長岩佐凱實君全国相互銀行協会会長尾川武夫君及び全国信用金庫協会会長小野孝行君の諸君が出席されております。  参考人各位には、御多忙中のところ御出席をいただきましてありがとう存じます。  なお、参考人の御意見は、委員質疑に対する答弁の形で承ることといたしておりますので、さよう御了承願います。  それでは加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長のお許しを得、同時に与野党委員の皆さまの御協力を得まして私は質問をいたしたいと存じます。  本日は、ちょうど二十年前に、広島に原爆の落ちた記念すべきいわれのある日でございます。今日、内におきましては経済回復、外におきましてはベトナムの平和回復、これは日本人のみならず、地球上の皆さんがひとしくこいねがっているところと存ずるわけでございます。それを基礎にいたしまして、この国民的な念願が一日も早く達成できまするようにと祈念しつつ質問を続けたいと思います。一般質問でございますから、具体的に明細に質問をしますので、御答弁のほうにおかれましてもぜひ簡明直蔵にお願いしたいと思います。  まず第一番に承りたいことは、この高度成長に取ってかわったところの安定成長、あるいは均衡成長ともいわれ、健全財政ともいわれておりますが、これがいままで質問によって得られましたところでございますと、きわめて答弁が不統一のようでございます。したがいまして、ひとつ大蔵大臣におかれまして、この安定成長回復のめどは一体いつであるか、はっきりと統一的見解をお示し願いたいと存じます。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま当面の停滞を打開するために全力をあげておるわけでございますが、その集中的な効果秋口から出てくるであろう、こういうふうに見ておるわけであります。経済が異常な今日の状態からいつ安定した状態になるか、こういう時期の問題につきましては、私は、これからだんだんとつま先上がりにそういう方向に向いていくとは存じておりますけれども、これが的確にいつ通常状態に戻るかということにつきましては、なるべくすみやかにそういうふうにしたいという努力をしておる、またそれを期待しつつ施策を進めておる、こういうふうにお答えいたしたいと思います。
  5. 加藤清二

    加藤(清)委員 これを明確にすると不況感を一そう深めるという秘密主義的な考えもあるようでございます。しかし、明確にして、不況感克服を呼びかけて国民協力を求めるという姿こそが不況を早く修正する、あなたの期待に沿う道であると私は思うのでございます。まず国民の不安、景気に対する不安、これをまず安定させることがその第一だと、こう思うのでございます。したがって、なるべく早くなどということばで濁さずに、この際期日を言うていただきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何ぶん流動する景気の問題でございますから、裏が表にひっくり返るというように、あるいは黒が白に変わるというようにはっきりしたものじゃないのです。これはだんだんと調子が変わっていく、そしてまあ大かた見て、この辺が安定点ではなかろうかというのをある時点でとらえて、もう安定だと、こういうほかはないのであります。私ども政策を進めておる気持ちといたしましては、まあとにかく来年度はもう相当安定度の高い調子でいきたいとは存じておりまするけれども、何ぶんにも流動する景気の問題でございまするから、あるいは多少あとが残ると、こういうようなこともありましょうし、その境目というものが、ただいま申し上げましたように、裏をひっくり返して表になるというような明確なものじゃないと、こういうふうに申し上げたいのであります。
  7. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはいままでの質問に対して、ことしの秋口ごろと、きのうもおっしゃってみえましたが、きょうは秋とも冬ともおっしゃらぬようでございますが、もう一度はっきりと……。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま総合的にとっておる景気対策効果秋口には集中的に出てくる。したがいまして、まあ今日を底といたしまして、景気つま先上がりではあるけれども、明るい方向方向へと向かっていくであろうということを考えておる、かように申し上げておるわけであります。急に秋になったからすぐ全部の現象が通常状態に戻った、そういうわけじゃないのです。
  9. 加藤清二

    加藤(清)委員 藤山さんにお尋ねいたします。藤山さんは先日の質問に答えて、ことしの暮れごろとおっしゃっていらしたのでございますが、秋口も暮れも一緒の意味でございまするか、それとも別な意味がございますか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いま大蔵大臣の言われましたように、諸般の実施いたしました政策効果をぼつぼつ秋口からあげてくるだろうと思います。したがって、われわれとしては暮れぐらいまでに相当効果があがるんじゃないか、こう考えておりますけれども、これはもうそういうふうに努力してまいるよりほかしようがないので、私どもとしては、秋、秋といって、それが十一月の末であるか、暮れといって十二月の一日かというようなふうに、厳密に解釈するわけにもこれはいかぬものですから、思想的には大体同じ解釈と御了承いただいてけっこうです。
  11. 加藤清二

    加藤(清)委員 三十九年度実質成長を見まするというと、一一・二%に相なっておるようでございます。経企庁の本年度の当初見込みは七・五%と見込んでおります。現状のままでございまするというと、何と二・六%しか成長率は考えられないと、こういう発表を藤山さんのほうで、経企庁のほうでしていらっしゃるわけでございます。そこで急遽二千億のてこ入れ、こういうことになったわけでございまするが、その秋口といい、暮れとおっしゃる、その時期、このてこ入れ刺激景気にあらわれてまいりまして、なお四・一%の上昇率というふうに見込んでいらっしゃるようでございます。こうなってまいりまするというと、これは、何と現状のままであれば八・六%も去年よりは落ちるわけでございます。かりにてこ入れ効果があって、四・一%に相なったとしましても、これはまだまだ目標ではないと思います。一体本年度目標はどの程度に押えるか、安定成長数字に置きかえてみると、それは何%を目標としていらっしゃいますか、大蔵大臣
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま加藤さんのお話、ちょっと誤解があるのじゃないかと思いますが、去年に比べて七%落ちるという話ですが、そうじゃないのです。それは経済伸びの率が減退をする、こういうことでありまして、依然として昨年に比べますると、伸びておることは伸びておるわけであります。それでいま二・六%とか、四・一%とか、数字をあげてのお話でございますが、まだ政府におきましては、そういう数字をかためておる事実はございませんです。ただ、御承知のとおり、これまでの今年度に入りましてからの経済の動きは、大体横ばいみたいな形でやってきておるわけでありまするが、まあ政府総合対策、そういうようなものの効果を考えますると、これが相当上がってくるというふうに考えるわけであります。その考え方は、まあいずれ十月からは下半期になりますが、その下半期伸びが集中するわけでございまするから、これを月別に見ますると相当高いところにいかないと、あなたのおっしゃるような年平均の数値が幾つになるかということにはならないのであります。まだ、しかし、企画庁におきましても、ことし総合してどういうふうな結論になるか、七・五%というのをどういう見通しにするのが適正であるかというようなことにつきましては、結論を得ておりません。
  13. 加藤清二

    加藤(清)委員 現状のままであると二・六%の伸びしかない。これはたいへんなことだ。そこで景気刺激策てこ入れということになり、その結果があらわれたとしても四・一%であると経企庁は報告しているのでございます。  そこでお尋ねしているのは、本年度当初見込みを実現すべく理想として努力されるのか、それとも成長率現状にかんがみて別な数字を置きかえられるのかと、こう聞いておるのでございます。今度は経企庁のほうから……。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経企庁は、本年度の通算した成長率が幾らだという公式的なものをまだきめておりません。むろん今日、御承知のような景気刺激策をやったばかりでございますから、これで正確な予測をするということはむずかしいのでございます。したがいまして、今後そういうことをやってまいらなければならぬのでございますが、むろん事務当局としてはいろいろな試算をいたしておると思いますけれども経企庁自身としてそういうものをきめておりません。ただあれだけの景気刺激策をやりましたから、下半期成長率というものは相当高く見られるのじゃないかということはいえるわけでございます。そこで、本年度の七・五%の予想というものに達するか達しないかということは、私は必ずしも問題でないのじゃないか。ある程度景気が浮揚して、そうして成長過程に今日の最大の不況から脱していくということができますれば、それは必ずしも七・五%でなくともいいんじゃないか。むろん日本経済というものは非常な成長の意欲を持っておりますから、そういうような道がついてまいりますれば、むしろ場合によると、安定成長に乗せるためには大企業設備投資をある程度押えなければならぬというような場合も出てくると思うのでございまして、その辺の関係からいって、必ず七・五%にならなければ、予測したようなものにならなければならぬというようなことではない、私はこう考えておるのでございます。
  15. 加藤清二

    加藤(清)委員 大蔵大臣にお尋ねしても、今年度の当初目標を実現するんだ、こういう確たる信念は承ることができません。現状は、御存じのとおり、たいへんな落ち込みようなんです。落ち込みようだから、それを回復するために、いまだかつてない公債まで発行しようとしていらっしゃるわけなんです。たいへんな落ち込みだけは自覚していらっしゃるはずなんです。  そこで、本年度の当初目標をそのまま実現されようとしているのか、それはこの際改めて、別な目標を立てられているのかということを聞いているわけなんです。それがお二人とも答えができない。そうすると、大蔵省もあるいは経企庁も、まあまあ当初予定はいいかげんに立てたのだ、それが実行されそうもない、しかし、どうなるかこうなるかわからぬけれども刺激策を一ぺんやったのだから模様ながめ、こういうところでございますか。それとも七・五%の目標を達成するために、もう一度てこ入れをし直して、つまり第二次的なてこ入れでもして、そうしてこの景気を挽回しようとなさるのか、そこらはどうです。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昨年予算編成時に立てました七・五%は、いいかげんなものをつくったということには私は思っておりません。当時の事情からいって、そういう予想がされたと思います。しかし、その後の事情お話しのように非常に悪くなってきた。これは現実に精神的な刺激作用もございましょうし、経済的ないろいろなゆがみ、ひずみから来たいろいろな影響も思ったよりひどかったという点から、七・五%というものが、今日から見れば必ずしも適当な予測でなかった、こうは言えますけれども、あのときにでたらめを立てたものとは私は思いません。  そこで、今日てこ入れをやるということになって、われわれとしてはてこ入れをやる。したがって、それは昨年つくりました七・五%でなければならぬという目標でなくて、てこ入れの結果として八%になるか、あるいは六%になるか、そういうところは今後のてこ入れの経過から見て、そうして民間が政府のやりました景気浮揚力に対応して大いに活力を持って、みずからも浮揚力をつけてこられるという段階になってまいりますれば、その辺でもってわれわれが正確な検討をすることが加藤委員のさらに御批判を仰ぐところになろうか、こう思うのでございます。
  17. 加藤清二

    加藤(清)委員 実際に産業部面を担当していらっしゃいまする通産大臣としては、しからばどこを目標産業面を指導なさろうとしていらっしゃるのでございましょうか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 成長率をどの程度に置くかということは、いま大蔵大臣経企長官お話しのとおりでありますが、とにかく現在の状態需給のアンバランスがあるわけです。したがって、設備過剰の状態におちいっておるわけでありますから、これをやむを得ないものに対しては減産体制をとり、需給のバランスを現在においてはとる。そしてこの不況状態を脱却する。しかし、そればかりでは非常に縮小的な均衡になりますから、一方においては輸出を振興し、あるいは国内の有効需要を喚起するし、また一方においては企業の内部における構造、企業体質改善を行ないながら、国際競争力をつけて次の経済の発展の基盤をつくる、こういうことに重点を置いておる次第でございます。
  19. 加藤清二

    加藤(清)委員 何%が妥当であるかというお答えがないようでございます。しかりとすれば、三人の経済関係の重要な佐藤内閣の柱である経済閣僚、これが当初予定の七・五%はおぼつかない、わからない、しかし達成したい、そこでてこ入れした。てこ入れの結果は、しかしまだわからない。そこで、本年度どこへいきつくのやら、何%へいきつくのやらわからない。こういうことでその経済のほんとうの指導ができるでございましょうか。目標のない佐藤丸である。それがあらしにあって、いつどこへ着くかわからない。いつ天気がよくなって、場所はどこへいきつくかわからない。それが佐藤丸ですか。そうでなかったら、もう一つ答えてください。いつの時期に、しかもことしの目標は何%であるか。それはあなた、経済を指導する行政庁としての当然な任務じゃございませんか。それが、国民に対して、産業界に対して指標を示すことができないような内閣がいまだかつてございましたでしょうか。それでもって池田内閣高度成長だけを批判をするというなら、何も野党と変わりないじゃございませんか。(笑声)むしろ野党のほうがはっきりした目標を持っておる。もう一度経済閣僚どなたでもよろしいですから、はっきりと目標と時期をお示し願いたい。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、その成長率七・五%という数字だけにこだわりますことは、現在必ずしも適当でない。(加藤(清)委員「いけなかったら、別な目標でもよろしいですよ。」と呼ぶ)私はそういう意味において、この間も申し上げましたように、安定成長というのは、均衡ある各種産業の発達が遂げられるということが一番望ましいことである。経済ですから、むろんマイナスになってしまってはならぬこともこれは当然で、必ず前年よりも伸びていかなければならぬ。しかし、それは均衡ある伸び方をしませんと、均衡のない伸び方でもって成長率だけが高くても、これは、私は安定成長とは言えないと思うのです。ですから、そういう伸び方をすれば、今日のようないろいろな欠陥が出てくる。ですから、われわれの庶幾することは、むろん成長率が高いことは望ましいことではございますけれども、しかし、その高さというものは、やはり均衡ある成長を続けたうちにおいて進んでいく、こういうことであることが必要だと思います。  そこで、それじゃ本年度はどうなるか。目標が、いまお前たちが言っているようだとちっともわからぬじゃないか、こういうお話なんですが、いまわれわれとしては、成長という問題よりも、むしろこの不況から脱却するということが一番大事なんでございまして、その不況から脱却してはじめて成長ということが十分に……(加藤(清)委員「脱却する時期を聞いておる」と呼ぶ)脱却する時期は、先ほど申したように、秋から年末にかけて脱却できるだろう。政府がこの間とりました施策に対して、民間も政府は大いにやるんだ、自分たちも不況感だけに沈でんしていてはいかぬのだという気持ちが精神的にも私はわいてきておると思います。したがいまして、その精神力が実際に財政支出と相まって私は相当な活力をあげてくるだろうと思います。したがって、そういう時期は、先ほど来申しておるように、秋から年末にかけて現実に諸施策がきいてくる、そこでわれわれとしては、はっきりした本年度の見通しを立てていかなければならぬのでございまして、いまここで成長率だけを摘出いたしまして何%にするかということは、いま申し上げたような事情からして困難である。それが高ければ高いほどいい、最初に予想した七・五%でなければ不況は脱却されないのだというふうには考えておりません。
  21. 加藤清二

    加藤(清)委員 七・五%にこだわっているのはあなたのほうなんだ。こっちはこだわっているんじゃない。それがだめだと言うなら、別な目標が立っていますかと聞いている。それは何%かと聞いている。抜け出そうとしているのは国民の声なんだ。国民の念願なんだ。ところが、その指導者は安定成長と言うておる。そういうことばを使っている。じゃ、安定成長数字に置きかえると何%であるかと聞いているんだ。抜け出せるときは何%を目標としているかと聞いている。それが言えないというならば、佐藤内閣安定成長は、ことばはあるけれども計算がない、ことばはあるけれども数字がない。こう断定せざるを得ませんが、それでよろしゅうございますか。私はあくまで数字を聞いているのです。あるかないかということを聞いているのです。当初はあった。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安定成長になりまして、最低どのくらいな線がいいかということになれば、今日の日本の経済の実情から見まして、やはり諸外国と違って相当成長率を持っております。それですから、外国が三%前後あるいは四%ぐらいまでが安定成長だ、こういいますけれども、日本からすればもう少し高いと思います。ですから、そういう意味からいって、やはり七%前後でもって各種産業格差なしに同じような成長を続けていくことができれば、それが一番理想的だと現状においては考えております。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからば当初見込みの七・五%、それに近いものが佐藤丸の理想である、こう解釈してよろしゅうございますか。蔵相。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 安定成長下における成長率は、一昨日ですか申し上げたのですが、大体七%から八%というのが固められておったわけでございますが、今後の安定経済成長下における成長率をどうするか、こういうことになりますと、この経済の収拾がどうなるかということにも関連しますが、以前の考え方とそう開きはないのじゃないか、さように見通しております。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 当初見込みとさほどの開きはないと蔵相はお答えです。したがって、佐藤丸目標は七%前後、余裕を持ちましょう、あんまりぎりぎりにやると気の毒ですからね。それは当然です。それでけっこう。社会党もそんなぎりぎりのことを聞いているわけじゃございません。七%前後と、そうなってまいりました場合に、ついこの前のてこ入れだけでそこへ到達することができるのか、ないしは第二次てこ入れをしなければその目標に到達できないのか。この点の計画はいかがでございますか。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げましたのは、安定成長下の成長率について申し上げておったわけです。いまお話しの問題は、その以前の事態についての問題のようでございますが、ただいま当面しておる本年度の問題としますと、ともかくもう数ヵ月横ばいで過ぎちゃったのです。過ぎちゃった今年度における成長率が幾らになるかという問題は、横ばいの経過した部分も含めて平均しての話になるわけです。七・五%という当初の見通しは十二カ月を平均しての話です。いままで数カ月こう横ばいで来ておる、今後残った数カ月の高さというものは年間平均率で七・五%だというふうに申し上げましたならば、これは非常に高いものになるわけですね。かりに九月までが横ばいでいって……(加藤(清)委員「第二次てこ入れがあるかないか聞いておる」と呼ぶ)そうですか。しかし、前提としてそういうことを申し上げておるわけですが、ただいま私どもが金融上、財政上、あるいは通商上とっておる政策を総合しますと、これは相当効果が出てくる、こういうふうに考えておりまして、ただいまのところ景気対策としての手段というものは考えておりませんけれども、しかし、総理がきのう申し上げましたように、経済は動きがなかなか複雑で予測もできない状態でありまするから、これから変化する状況がありますれば、それに対応いたしまして弾力的な手を打つということは、これはもちろんそういうふうに考えておる次第であります。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長にお願いいたします。私は数字を聞いておるのです。閣僚の講義や言いのがれを聞いておるのではない。これは時間のロスでございます。経済を考える者は、時は金でございます。経済のロスのないようにぴしゃぴしゃとこう答えていただきたい。委員長、これを閣僚に注意をしてください。
  28. 青木正

    青木委員長 閣僚にも御注意願います。
  29. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこでお尋ねするのは、いま七%前後が理想であるとおっしゃった。ところで、第一次てこ入れから試算していくと四・二%程度には相なるであろうがと……。そうなりますと、まだ三・四%程度足りないわけなんです。それをことし足りないままでいくのか、それともそれじゃいけないからというので、第二次てこ入れをして、あなたの理想の七%前後に追いつくようなことを、すなわち第二次てこ入れをするのかと聞いている。するかせぬか。あるいは、理想は七%であるけれども、ことしは四%前後でもうあきらめる、それならそれでもいい。いずれでもいいのですよ。何も七・五%にこだわっているわけじゃない。ことしの目標を聞いている。その目標は、きょうのあなたのお答えがやがて産業界に及ぼす影響が大きいからなのです。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 四・何%に非常にこだわっておられますけれども、まだこれは正確な試算じゃありませんから、その点だけはひとつ御了承おき願いたいと思いますが、御承知のとおり、上期の成長率が非常に悪い、しかし下期が相当伸びていく、それが六%伸びるか七%の成長率になるか、あるいは五%半になるかということは、これからの、いまやりました施策のきき方なのです。ですから、一年を通算してみて正確な数字を出してみたときに、それが七%になる場合があると思います。(加藤(清)委員「第二次てこ入れがあるかないか聞いている」と呼ぶ)そういう意味で、現状では第二次てこ入れをわれわれ考えておりません。
  31. 加藤清二

    加藤(清)委員 ことしの目標を何%にするかがまだはっきりしてない、具体的対策もまだはっきりしていない、ただ一服薬をもったそれの状況ながめ、模様ながめ、そんな状況で今日すでに来年度予算を編成しなければならぬ時期に差しかかっているわけです。積算が始まっているはずなのです。一体来年度予算編成の基本方針たるべき経済成長率は何%を目標にいま編成しておられますか。いまのようなあやふやなことでどうして来年度の編成ができますか。確たる信念を承りたい、来年度予算編成にあたっては何%になっているか。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ予算編成の過程に大蔵省としては入っておりません。来年度成長率をどう見るか、これは予算を編成する上に非常に重大な問題でありますが、今後十分に検討しなければならぬ問題であります。
  33. 加藤清二

    加藤(清)委員 一割削減を命令したり、またこれを戻したり、行き当たりばったりで、実際各省の本省もお困りでございましょうが、地方行政もこれで一体どうしたらいいのだろうか、何べんでも試算をやり直ししなければならぬというので、及ぼす影響は地方行政にまで及んでおるわけです。したがって、来年度予算編成目標経済成長率は一体どれだけにするのか、このくらいの基礎観念はあってしかるべきなんです。それがないというならば、もはや予算編成の資格なしと言わなければならぬ。一体いかがでございますか。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろん成長率ということは非常に大事な問題で、予算編成の主軸になる問題でありますが、ただいまはまだ四十一年度予算編成の過程に入っておりませんです。
  35. 加藤清二

    加藤(清)委員 今日的理想はどこにございますか。数字で答えてもらいたい。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま非常に経済が異常な状態にあります。この異常な状態をどういう形で切り抜けるか、その切り抜けたあとがどういう落ちつきになるか、そういうものを見まして、また先ほどからお話のあります。%ないし八%という、われわれの議論をしておる成長率なんかも勘案いたしまして適正にきめていく、かように考えております。
  37. 加藤清二

    加藤(清)委員 皆さん、よく聞いておってくださいよ。予算編成は行なうとおっしゃる。景気てこ入れの結果を見なければわからぬとおっしゃる。景気てこ入れの時期はといったら、秋口から暮れだとおっしゃる。そのころにはすでに予算が編成されて、ここへ提出されなければならぬ時期ですよ。それまでわからぬとおっしゃる。さすれば来年度予算の編成にあたっては、目標なしできめるのですか。安定成長ということばはあるけれども、来年度安定成長にかわる数字はない、ないままに予算が編成される、こういうことになりますか。それでよろしゅうございますか。冗談じゃないですよ。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いままだ四十一年度予算編成に入っていないのですよ。いまは四十年度の予算を執行する過程であります。予算の編成の時期までには、その時点をとらえまして、来年度経済はどうなるだろうかという経済見通しは当然  つけて編成に臨む、こういうことで、ただいまはまだその段階でないということです。
  39. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたもご存じのとおり、法律によれば、少なくとも十二月にはここに提出しなければならぬ。そうでしょう。さすれば十月、十  一月には大体大綱ができ上がらなければならぬ。いまそれがないとおっしゃるならば、しからば目標を与えずに積算をさせてみえると言わなければならぬ。一体その目標を与えられる時期はいつであるか。十月から十一月には完成しなければならぬものであるから、目標の指示は、八月でなければ少なくとも九月くらいにしなければならぬはずでございます。それでは九月、臨時国会ごろには来年の安定成長——こっちの議論じゃない、あなたの言う安定成長成長率というものははっきりするのでございましょうか。来年度のですよ。全体は七%前後とさっきおっしゃった。これは長期の問題、来年度はどうかと聞いておる。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算編成をするにあたりましては、もちろんその該当年度経済情勢を判断して、そして全体の構想を固めるということはもとよりです。また、租税収入の見積もりにあたりましても、経済伸びというような見方が中心になってくるのです。そういう意味から申しまして、お話のようなことは十分検討いたしますが、その時期は、いま八月なんですから。
  41. 加藤清二

    加藤(清)委員 九月にはできますか。臨時国会にはできますかと聞いておる。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 九月にはなかなかむずかしいと思います。しかし、予算編成を終わります十二月までには、そういう見通しを全部総合いたしまして、その基礎とする、かように考えております。
  43. 加藤清二

    加藤(清)委員 かくのごとしです。十月、十一月には予算を完成しなければならぬというのに、八月でもできぬ、九月の臨時国会になってもまだ言えぬ、こういうことになると、いささか福田さんに抱いていた信頼感を変えなければならぬことになってくる。私は、あなたが池田さんの批判勢力として、同じ与党内にありながら、批判勢力として堂々の論陣を張られていたことについて敬意を払っていた。ところがおっとどっこい、その地位についてみると、目標数字もここで発表ができぬということになると、非常にさみしい思いをいたします。  そこで、通産大臣にお尋ねいたしますが、数字で答えていただきたい。今日の過剰生産設備は何ほどございますか。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 なかなかむずかしい御質問であります。それは需要もなかなか流動的なものであるし、しかし、われわれが大体の見当としては二、三割の過剰設備を持っておるのではないか、こういうふうに考えております。
  45. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたのほうの佐藤内閣の発表統計によれば、金額にしますと大体二・五兆円から三兆円くらい、パーセンテージにすればいまあなたのおっしゃるとおりでございます。まあ三兆円程度の過剰設備がある。ところで三十八年、三十九年度の両年度にわたるところの設備投資、これは何ほどでございましたか。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 数字のことでございますから、事務当局から答えさせます。
  47. 田中弘一

    ○田中説明員 昭和三十八年度は四兆一千億円でございます。三十九年度は、見込みも入っておりますが、四兆八千五百億でございます。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 約九兆円とわが党も押えているわけでございます。現在すでに過剰設備が三兆円ございます。これにこの九兆円を加えますと十二兆円に相なるということでございます。この三十八年、九年の設備投資が稼働期に入ってまいります。そうしますと、現在でさえも三兆円、二割、三割の過剰設備がある。プラス九兆円といいますと、現在余っておる設備ですね、これの三倍程度のものが余ってくる。こういう勘定になる。しかし、全体の三倍じゃないから、全体の率からいけばそう大したことじゃないですが、それにしてからが、割り数でいって、あなたの言うところの三割前後の設備過剰は、やがて四割前後と相なることはもう小学校の算数でございます。そうなりますと、先ほど通産大臣のおっしゃいました生産過剰と需要の減少、すなわち、生産と需要のアンバランスは多くなるか少なくなるか、必然の結果は多くなる。この生産と需要のアンバランスがすなわち不況をかもし出してきておる。不況は一そう谷底へ落ち込んでいく、蔵相の言う底はますます深くなる、こういう材料、ファクターがございますが、これについて一体通産大臣はどのようにしようとお考えでございますか。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 設備投資がそのまま生産に結びつくとは考えられない。それはいろいろ老朽施設というものも新鋭の設備に取りかえられていかなければならぬわけであります。また、事実国際競争力を持つためには、できるだけ古い設備が新しい設備にかえられなければならぬ。だから、設備投資の金額がそんなに生産的の効果を持つとは思わない。しかし、いずれにしても、現在の需給と申しますか、この状態においてはアンバランスが出ておることは御承知のとおりであります。したがって、今後政府もいろいろな有効需要を喚起することは——やはりこれに対して国内における有効需要を喚起する、一方においては、輸出というものに対して、たとえば後進国に対しては、延べ払いの輸出などによって、正常な貿易ばかりでなしに、多少の経済援助を含んだような貿易まで拡大していこう、こういうことで、この設備過剰というものが、数年非常に多額な設備投資が行なわれたということで、国内の健全な需要の喚起、ことに立ちおくれておる社会資本などに対しては、これは何としても、日本の経済構造の上からいっても、この立ちおくれは取り戻さなければならぬ。日本には潜在的な需要というものがたくさんあるわけです。社会資本の充実の面などにおいては、住宅もそうであります。こういうふうな日本の国内の需要も、インフレに持ち込まなければ、大いに喚起すべき潜在的需要というものはあるわけであります。これに加えて輸出の増進をはかるならば、しかも一方において、老朽施設を新鋭の設備に取りかえる、こういうことも行なわれるならば、経済のバランスは保たれる、こういう考えでございます。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 生産と需要のアンバランスが不況をかもし出してきている。決して不況佐藤総理の言うように金融引き締めだけではない。この論はもはや三歳の童児でも知っている問題です、事経済関係している者ならば。その論をあなたがいみじくもここでおっしゃいましたから、私はその論を反駁しようとは思いません。そのとおりです。しかし、問題は、どう考えても十二兆円にもなんなんとするところの過剰設備、特にまた三十八年、三十九年度の九兆円の設備です。これが生産過剰に拍車をかけることは火を見るより明らかだ。それを何%と見込んでいらっしゃるか。それが生産にどれだけ働いていくかを実は藤山さんに聞きたいのですけれども、いずれあとでお答え願うとして、そんなことで突っ込んで困らせようとは思っていませんから先へ急ぎます。  どう考えたって、これは設備過剰に必ず大きな拍車をかけ、大きな設備過剰のファクターとなる、これは明らかだ。それに相マッチするところの、それを消化し切るところの輸出増強、いまあなたは輸出増強で逃げるとおっしゃったが、それが数字が合えばよろしい。いままでも何度もここでそういうことを聞いた。それはあまりにも設備投資が多過ぎるではないかと言ったら、いや輸出で逃げます、内地の需要を喚起します、こういうことで逃げられてきて、今日この実態なんです。  そこで、私は、この三十八年、三十九年の設備投資分、これの始末をすみやかにつけられることをここで勧告しておきます。それなしにどんなにてこ入れをなさったって、二千億とおやりになったって、片や不況の原因を除去せずにそのまま稼働させる、そういう行政をやられたら、この不況はますます谷底へ落ち込んで、むしろ不況は、総理は、上向いている、こうおっしゃるが、あにはからんや、不況の入り口であるといわなければならぬ。ますます不況の底へ落ち込んでいくといわなければならない。そこで、私はそういうことを勘案して、第二次てこ入れはあるかなきか。ないとおっしゃるならば、いまこの過剰設備をどのように処理なさるのか。そのいずれかです。第二次てこ入れをするか、ないしはこの不況の原因を除去するか、そのいずれかだ。そのいずれをとらんとなさいますか、大蔵大臣
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 不況のための政策につきましては、ただいまのところはあれでいいというふうに考えておりますが、何せ経済は動くものでありますから、その動きを見まして、その動きによりましては流動的に対処しなければならぬ、こう考えております。  それから、過剰設備をどうするかという問題は、これは御指摘のとおり、いま経済界が当面しておる非常に重要な問題だというふうに思っております。これをどういうふうにするかということは、また根本的な問題であるというふうに考えますが、これは、私財政当局としては、企業につきましても相当大幅な減税等も行なって、陳腐化された施設が近代化施設に置きかわる、こういう方向で、またことばをかえて言いますれば、こういう際こそまた一つの機会である、災いを転じて幸いとなすというような気持ちで、少し長い目で対処していきたい、かように考えております。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 スクラップ・アンド・ビルドをするとおっしゃいますが、これはいままで何回か何回か繰り返したけれども、できないことなんですよ。スクラップダウンをさせるなんということが簡単にできるなどと思っておったら、とんでもない大間違いです。あなたの御存じのとおり、何度繰り返してもそれはできておりません。どんなに設備を切ろうというので立法措置をつくって、罰則までつくったって、これはできません。なぜできないのか。それは、過剰設備を買い上げるところの裏づけ予算がないからです。イギリスはこの問題でランカシアの繊維設備をきれいさっぱりとさせました。それは、政府が思い切った予算の裏づけ、買い上げ資金を導入したからでございます。世界各国みなそうなんです。日本はただ一片の法律によってちゃちゃ切れ、こういうことなんです。だれがちゃちゃ切られますか。自分の設備ですよ。自分の手や足と同じように思っておるものです。これをだれがスクラップダウンするものですか。そんなことを考えていらっしゃったら、あなたは池田さんと同じことになります。スクラップダウンさせるための予算の裏づけをなさいますか、大蔵大臣
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは政府というよりは、どうしても財界がその気持ちにならなければいかぬと思います。財界は今回の事態に対して相当反省し、今後どうするかということについて適正な態度をとる方向に傾いておる、私はこう考えております。こういう考え方に即応しまして、政府は財政金融上できる限りのことはしなければならぬ、すべきだ、そういうふうに考えていますが、要は財界がどういうふうな態度をとるか、それに対しましては、通産大臣なんかにもお願いしまして、そういう方向を固めていくための努力をすべきだ、かように考えております。
  54. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたのおっしゃるとおり、今日の不況は財界に責任感がないからなんです。もしそれ、労働者が設備を半日、いや一時間とめたらどういうことになりましょう。その組合の責任者は首でございます。にもかかわりませず、その三割、四割を半年も一年も、いや長きものは、すでにいままで三割操短をやらされているものは、五年も六年も操短でございます。休業でございます。そのものについては、政府は何ら首切りも行なわなければ、責任もとらしていない。しかも、そのしわは国民に、中小企業に、農民に、みんな弱いところへ寄せられているのが現状でございます。政府も、企業家も、ほんとうによく反省をして、この設備過剰から来たしたところの社会に対する悪影響、不安、不景気によるところの国民の困窮、これをよく反省して、この際、ほんとうに責任をとるべきであると思う。にもかかわらず、のうのうと通産省に向かって、設備が余り過ぎたから操短してくれ、勧告してくれ。ついでに操短するときの資金をくれ。よくいけずうずうしゅう言えたものだ。労働者がもしストをやって、その間の賃金をくれと言ったらどういうことになる。その間もうからなかったからくれと言ったら、政府は渡すでございましょうか。一体、この間の責任問題について総理に聞きたい。官房長官に聞きたい。総理がいなければ官房長官来ましたか。
  55. 青木正

    青木委員長 官房長官は広島に出張いたしておりまして、ただいま不在であります。帰る予定でありましたが、悪天候のため飛行機が通じませんので、夕刻帰ることになっておりますので、御了承願います。
  56. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長、しからばこの答弁は、後刻委員長においてできまするようにお取り計らいのほどをお願いします。  その不況のしわ、この罪と罰が逆に相なっております。罪づくりをしたものにはほうびが与えられて、そうして罪の原因をつくらなかったものに不況、物価高、金融引き締め、こういう罰が加えられている。これが現状なんです。資本主義社会ではやむを得ざる問題ではございましょうけれども、これは不況克服が——国民のしあわせを念願としているんだ、こういう総理のことばである。国民とともに歩む政治をするという、その佐藤総理のことばが真実であるとするならば、当然これは対策を考えてしかるべきだと思います。その対策を今日聞けないのを非常に遺憾に思います。  この際、私は中小企業に与えられているところの金融のしわ、これについてお尋ねしたいと存じます。政府は、これほど設備増強を大企業にはやらせておきながら、なお中小企業に対するところの設備は不十分でございます。なぜかならば、ほんとうの引き締め策は、これはあなたがやったのじゃないけれども、中小企業にのみ与えられた。それが証拠に、銀行はオーバーローンなんです。どこへ向けてそんなになったか、これはみんな大企業向けなんです。そこで、今日あなたがほんとうに国民とともに歩む政治、しわを弱きところに寄せない政治、これを行なおうとすれば、当然のことながら中小企業に対して融資のワクを広げるか、ないしは金利も引き下げるか等々のことをしなければならぬはずなのである。すでにお気づきで少々おやりになった。しかし、これは焼け石に水なんだ。今後おやりになる気持ちがあるかないか。まだまだあなたの施策は足りません。これだけで中小企業の倒産が直ちに直るなどとは、だれしも考えておりません。中小企業の窮状、中小企業の倒産、世界一多いところの中小企業の倒産、毎日連続起こっておるところの倒産、これを救うためにどのような措置をとられますか。まず金融から聞きます。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小企業がこういう経済変動の中で特に打撃を受ける度合いが大きいということも考慮し、政府関係金融機関において、これは注意しなければならないというふうに存じまして、ただいまこの下半期において融資すべき額を上半期に繰り上げて融資するという措置を講じておるのであります。  それから、御承知のとおり、三機関につきましては、この間発表申し上げましたように、利下げを行なうという措置もあわせとっている次第でございます。
  58. 加藤清二

    加藤(清)委員 ことしの予定額を繰り上げるぐらいのことではどうにもならないのだ、足りないからというんで、公債まで発行して金をつくっていらっしゃる。ほんとうはその公債の金を全部犠牲者であるところの中小企業に渡すぐらいの、あの公債による資金源を全部中小企業の救済策に充てるぐらいの親心があってしかるべきだと思う。それをやる勇気はございませんか。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あの財政投融資を全部中小企業というわけにはまいりませんが、しかし、あの金は回り回って中小企業にいくのですから、これはかりに直接の対象が大企業向けであるといたしましても、これは同時に中小企業対策でもある。こういうふうに私どもは考えておるわけであります。今後の金融情勢によりましては、また金融対策も考える場合があり得る、こういうふうに御了承願います。
  60. 加藤清二

    加藤(清)委員 回り回ったおこぼれちょうだいでは中小企業は救われません。しかし、今後救う策を考えるとおっしゃるから、九月予算、来年度予算を楽しみに論を進めます。  せっかくりっぱな参考人に来ていただいておりますので、お尋ねいたします。  相互銀行協会、商工中金の関係のお方、どなたでもよろしいですが、あなたたちの金融機関は日銀から金を借りることができますか、できませんか。  それから、全国銀行協会の方には、日銀から金を借りるときの条件はいかがでございますか。どうぞどなたでも。順番はどうでもけっこうでございます。
  61. 尾川武夫

    尾川参考人 全国相互銀行協会の会長尾川でございます。  ただいまの御質問でございますが、相互銀行におきましては、日本銀行から金を借りる道は全体に開かれておりません。しかしながら、日本相互銀行だけ信用取引を一行だけしてもらっておりますが、これも、金を借りるということはなかなか容易でないと考えております。
  62. 岩佐凱實

    岩佐参考人 お答えいたします。  日銀から借りる形式は、御承知のようにいろいろございまして、商業手形の適格商手というものもございますし、それから輸出関係のものもございますし、それから輸入関係もございますし、その他のものにつきましても、並み手を担保にして借りるというようなものもございます。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 無利子、無期限、無担保では借りられないのでございますね。借りられるか借りられないかと聞いている。
  64. 岩佐凱實

    岩佐参考人 銀行といたしましては、日銀からそういうことでは借りられません。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 ごもっともでございます。けっこうでございます。  日本政府は、法人でございますが、山一さんには無利子、無担保、無制限、取れるか取れぬかわからぬところへ数百億のお金をお貸しあそばされます。しかし、あれほど信用が厚いといわれている銀行協会さん、預金が一兆億以上もある銀行さんがたくさんございます。それに対しても貸し出しはきわめて厳重でございます。いわんや中小企業の相銀関係、信用金庫関係は、いまだかつてないほど倒産が激しくても、借りることすらできないのでございます。一体これはどうしたことでございましょう。上に厚く下に薄い、いかに今度の山一問題について国民が感情的におこっているか、中小企業が倒れていく寸前に、ああ、おれも山一になればよかったと言って死んでいった人がある。これこそ今日の政府に対するうらみの声でございます。  次にお尋ねいたしまするが、資金があっても貸し出しの適格者がない。今度銀行さんが中小企業にお貸しになる場合の話でございます。資金があっても貸し出しの適格者がない、資金はいま相当あるはずでございます。そこで、かつてはこれをコール市場へコール市場へと持っていかれました。相銀、信金に対しては強制的にコール市場へ吸い上げが行なわれておりました。資金があっても貸し出しの適格者がないということは、いかなる資格、いかなる担保が必要かと尋ねたいのでございますけれども、そうでなくして、やはり銀行が貸し出しなさいまする場合も、厳重な資格審査、資産審査を行なわなければ貸すことができない、こういうことでございますか。そうであるかないかの答弁でけっこうでございます。
  66. 岩佐凱實

    岩佐参考人 そのとおりでございます。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、今日の貸し出し金利は、先進国と比べて高いか低いか、あなたのほうの貸し出し金利。同時に、公定歩合は先進国と比べて高いか低いか、これだけでけっこうでございます。
  68. 岩佐凱實

    岩佐参考人 御承知のように、銀行の貸し出しにはいろいろな種類がございます。長期的なもの、あるいは短期的なもの、いろいろございます関係上、金利は必ずしも一本で一律ではございません。それで、たとえばアメリカと比べますと、短期金利は日本のほうが確かにかなり高うございます。しかし、西欧諸国と比べますと、いまやもうそう高い水準ではなかろうと思います。(加藤(清)委員「イギリスと比べればね」と呼ぶ)西欧諸国ですね。それから長期金利のほうにつきましても、西欧諸国と比べて必ずしも高いという姿ではないと思います。  それから、公定歩合の点は、これも、御承知のように、日本のほうがやや高うございますけれども、いまやあまりそこに差はないというふうに私は承知いたしております。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたの立場としてはそのようにお答えにならなければならぬでございましょうが、日本企業の底が浅いとか、あるいは弱いとかいう原因の一つに、他人資本にたよっているという問題と、その金利が割り高である、諸外国と比べてですよ、という問題があるわけでございます。これはお認めになっていらっしゃいまするから、あなたと討論をしようとは思っておりませんので、公定歩合も、これはイギリスのような、この間の不況対策のときと比べれば別でございまするが、アメリカ、フランス、イタリア、特にドイツ、カナダ等々と比較いたしますると、日本の公定歩合六分前後は、三分から四分というかの国のあれと比べて高いはずでございます。そこで、いわんや相銀以下の零細金融を扱うところでは、金利コストが高くなりまするので、これは高くなる。当然でございます。  最後にお尋ねすることは、去年わずらわしておりましたあの歩積み、両建てを、ことしの五月末日をもって一応のピリオドを打とうということにあなたのほうは相なっているはずでございます。あの状況はいかがでございましょうか。
  70. 岩佐凱實

    岩佐参考人 五月末の数字の詳細については、私まだ存じておりませんのでございますが、大体におきまして、五月末において自粛対象預金はほぼなくなるというようなところへ来ているのではないかというふうに存じております。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。  銀行局長の名をもってさきの田中大蔵大臣が全国の銀行協会に指示を出しておられます。その期日は五月末日でございます。内容は歩積み、両建ての制限でございます。いわゆる金融の正常化でございます。この成績をお尋ねいたします。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 都市銀行につきましては、金額にしますと一億円を残しまして、つまりもう大かた自粛対象預金に対する措置は完了いたしたという報告を受けております。  それから相互銀行その他の金融機関につきましては、大蔵委員会の決議が来年の五月末までに自粛対象預金についての措置をすべしということになっておりますが、これはただいま半分道中、正確に言いますと、それよりちょっと進んでおる、こういう状態でございます。
  73. 加藤清二

    加藤(清)委員 申し上げますまでもなく、この歩積み、両建ては、さなきだに難渋している中小企業の金融関係を一そう困難におとしいれている。そこで、再三にわたって本委員会、大蔵委員会、商工委員会で論議が繰り返されている問題、古くて新しい問題でございます。あなたのその斬新な池田批判思想でもって、これをひとつぜひ正常化していただきたいと存じまするが、正常化するための方途はまだないとしても、正常化するところの覚悟はございますか。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはできる限り合理化いたしてまいりたいと存じます。
  75. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこで申し上げまするが、いまの報告によれば、大体所期の目的を達したと言うておられます。効果は確かにございました。しかし、これで十分とは言えません。言えない証拠を申し上げます。何々銀行の何々支店長がかくかくのことをやったとは申しません。が、いかにこの苦情が多いかは、皆さんのほうの党の各県連でもさようでございましょう。それから議員さんもそうでしょう。選挙民の訴えの二割や三割はみんなこの問題なんです。中小企業の訴えといったら五〇%以上がこの問題なんです。そこで、今日、町でこの苦情承りを専門に営んでいる人が各県にございます。政党と結びついた存在もございます、あえて名前は申し上げませんけれども。言えばこの苦情処理機関のために商売が成り立っている。こういうことは御存じでございますか。銀行協会に尋ねれば、おそらく処理機関はわが方にある、だから必要ないとおっしゃるでしょう。しかし、行政と司法がくっついているところの、江戸の仇を長崎でとられるかもしれぬようなところへ、おおそれながらとだれが訴え出るものですか。何とかしてもらいたいということは別な機関に訴えてまいる。そのために各県でこれで商売が成り立っておる。それが政治に結びついておる。それは決して正しい姿、正常な姿とは言えません。もしそれほど必要でありとするならば、再三、商工、大蔵で繰り返されております苦情処理機関を別につくったらいかがでございましょう。つくる勇気はございませんか。それとも、公取のおっしゃるように、これを特殊指定にして、もっとはっきりしたスタイルにおいてこれを行政指導するということのほうがいいじゃございませんか。税金に対しては、あなたも御存じの協議団という処理機関がございます。税金問題よりは金融問題のほうがはるかに数が多い。それが怠られているというところに問題があるわけだ。大蔵大臣の本件に関する所信を承りたい。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま地方でそういう苦情処理の機関があるというようなお話ですが、私はまだそれは承知しておりません。おりませんが、歩積み、両建てという問題は、お話のように非常に重大な問題であり、また、その苦情を受ける機関が銀行協会の機関であるというようなことで、はたしてその機能がうまく動くかということにつきましては、お話のような点、私もよくわかるような気がいたします。つきましては、これはひとつ前向きで考えてみる、こういうふうにお答え申し上げます。
  77. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、貿易問題について二、三点だけ。  第一問は、対米貿易の不平等性についてこれを是正するの勇気ありやいなや、外務大臣にお尋ねいたします。
  78. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一般的に貿易障害の問題は、外務省としても取り上げて、いろいろな国際機関の場において問題の是正をはかっております。対米貿易に関しましては主として繊維製品にあると思います。これに関しまして、綿製品については協定が本年一ぱいで切れるので、これを改善すべくただいませっかく準備中でございます。
  79. 加藤清二

    加藤(清)委員 百八十数品目にわたっての不平等性がございますが、それをここで一々やるわけにはまいりません。  そこで、通産大臣にお尋ねいたします。この十月に切れようといたしております綿製品協定については、私はこれは破棄すべきであると思います。なぜかならば、すでにこれはジュネーブにおきましての綿製品協定はある、ガットもあるのです。屋上屋を重ねてあれをした結果は、レーパーダンピソクという悪名のもとに日本の繊維製品——綿製品はだんだんと削られたのでございます。貿易額が減ったのでございます。ところが、レーパーダンピングのもっとひどい朝鮮、香港、ポルトガル等々の繊維製品はアメリカに渡ってふえておるのでございます。あの条約がいかに不平等であるか。それはちょうど航空協定にも漁業協定にも適合する問題でございます。一連の問題でございます。これについて通産大臣、十月に切れるのですか。もうあとはさよならにすべきだと思いますが、いかがですか。
  80. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、日本はあの綿製品取りきめの内容を不満として、そして内容にわたって日本はこれをこのように改正してもらいたいという要望を出して、それが満足な返事が得らなくて、その会談は今日まで成果をあげないでおるわけでありますが、日米綿製品の安定的な拡大のためには、日本の要求をアメリカが入れて、そして取りきめができることが好ましいと思っております。
  81. 青木正

    青木委員長 参考人に対する質疑は終わりましたか。  この際、参考人の方々に申し上げます。御多忙中のところ、長時間にわたりまして御出席をいただき、まことにありがとう存じました。厚くお礼申し上げます。どうぞ御退席をお願いいたします。
  82. 加藤清二

    加藤(清)委員 破棄する勇気がございますか、ございませんかと聞いている。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、これが日本側の要求がある程度入れられて、そして取りきめができるほうが綿製品の貿易の安定のためにはいいのではないかと思っております。しかし、これは話がつかないということになれば、そういうことにもなると思いますが、現在のところは、何か話がまとまるものならまとめたほうがいいのではないか、これは私の考え方です。
  84. 加藤清二

    加藤(清)委員 日米貿易については友好通商航海条約がございます。綿製品協定についてはジュネーブの関係国の条約がございます。その上なお日米、とこう来ておる。なぜか。それは、日米友好条約あるいはジュネーブ協定の精神とはうらはらな、別な制限をしようとする意図からこれが生まれてきておる。日米貿易の帳じりが常に赤字が慢性的である。それにかんがみても当然これは破棄すべきである。それは漁業協定もしかりでございます。航空協定もしかり。航空協定、漁業協定のほうははなやかに交渉が進んでいる。こちらは鞭声粛々だ。効果はいずれがいいかは知らぬけれども、ねらいは破棄、これで臨んでいただきたいと存じます。  次に、綿製品協定は破棄するというのがたてまえである以上は、毛製品協定に至ってはもはや語る必要はない。外務大臣、これについてはどうお考えです。
  85. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカのほうに毛製品に関する国際協定の締結の要請等がありますが、わが国としては、既定方針のとおりこれを拒絶する態度を固めております。
  86. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣……。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 先般の日米貿易経済合同委員会でもアメリカ側から持ち出したのであります。しかし、日本側の態度は、これは国際会議といっても、綿製品のような制限と関連を持つと思われる国際会議には、日本は出席する意思がないということを明らかにいたしておいた次第でございます。
  88. 加藤清二

    加藤(清)委員 引き続いて自動車の自由化、アメリカ国は日本に対して貿易の自由化を訴えながら、買うことの自由は与えてくれたけれども、売ることの自由は制限、制限でございます。このたび自動車の自由化について、九月とか十月とか声が出ておるようでございまするが、私はこれはまだ早過ぎると思います。九月、十月ごろにこれをするということは早過ぎる。現に自由化、自由化といいながら、アメリカは日本に対しては百数十品目制限しておるではございませんか。イタリアのごときは三百品目も制限しておる。EEC諸国はガット三十五条第二項の援用をしておる。みんなそれぞれが管理制度をしいて日本製品を制限している。何ゆえに日本だけが全部ノーズロースで自由化にしなければならないのか。特に中小企業、下請企業が設備まだ不完備、輸入自由化に対する準備はまだできていない。そういう時期において、何がゆえに自由化をしなければならないのか。通産大臣の所信を承りたい。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、今日の日本の乗用車は国際競争力を持っておる。ノックダウンであるとか、あるいは自動車工業に対して外国資本が入ってくることに対しては、これをむろん制限をしなければならぬ。しかし、完成された乗用車は、今日日本の国産車が十分の競争力を持っておる。したがって、貿易自由化というのが大きな方向であります。世界的な方向である。そのために日本の産業が非常な打撃を受けるということなら、当然に自由化は考えなければならぬが、まあ乗用車に対しては国際競争力を持っておるから、外国の乗用車が自由に入ってきても、そのことによって打撃を受けると私は思っていない。どうせ自由化という大きな世界の流れに沿うて、将来は自動車というものは輸出貿易の中の柱になると思う。国際競争力を持って、そして世界の市場で太刀打ちのできるように、自動車工業も経営の合理化、近代化を行なってもらいたい。できるだけやはり自由化——乗用車の自由化はいつとはまだきめておりませんよ。自動車業界からもいろいろな事情を聴取しておりますから、慎重に時期は決定をいたしたいと思いますが、やはり乗用車の自由化はやって、そして日本の自動車工業界に大きな打撃を与えるとは私は思っていない、このことだけは申し上げておきます。
  90. 加藤清二

    加藤(清)委員 自由主義経済である以上は、貿易は自由化されることが万人の理想でございます。理想を聞いておるんではございません。現実を聞いておる。九月、十月をめどに自由化が行なわれると聞き及んでいるし、新聞にも経済誌にもぼちぼち出ておるが、それは実行されるかされないかと聞いている。あなたは、実行してもだいじょうぶとおっしゃるが、それは五年先、十年先ならばだいじょうぶかもしれませんけれども、今日ならば必ずやられます。やられる証拠は、イギリス、フランス、イタリアのみならず、ドイツのようなあれほど自動車の発達した国でさえも、なおアメリカのGMにある国は三割、ある国は五割、いくはるか豪州メルボルンのごときは一〇〇%とられているじゃございませんか。とられないという証拠、歯どめがどこにございますか。もしするというならその歯どめを示してもらいたい。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 欧州におけるアメリカの自動車工業の進出というものは、やはり完成車が輸入されたというのでなしに、アメリカ資本が欧州に入ってきた。そのために自動車工業界が支配を受けた。それで私は、日本の自動車工業に外国資本というものを入れる考えはない。これはやはり日本で相当自動車工業が育ってこなければ、外資の輸入は認めようとは思っていないわけであります。ただ、今回やるのは、完成車に限るわけでありますから、いつかということは、いま時期をできるだけ早く、大体九月、十月ごろというような方針でおるわけでありますが、業界の事情等も勘案をして最終的には時期をきめたい、こういうことでございます。
  92. 青木正

    青木委員長 加藤清二君、時間が参りましたから、結論をお願いいたします。
  93. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。時間がないのでこれの論争はこの程度でやめますが、どこの国だって最初は完成車です。それからノックダウンです。それからが資本です。いわんや日本のように、日米友好通商航海条約によって円交換の自由から投資の自由、株の取得の自由までちゃんと合意に達して内国人と同等の待遇を与えるということになっている以上は、いかに外国為替法ががんばってみたって、内国法は国際法にまさりません。これを一体どうするかの問題については、別な時期に論議するといたしまして、そういう安易な考え方では、日本の基幹産業であり、中心産業であるところの自動車業界を危うくするものである、私は警告を発して結論に至りたいと思います。  そこで、吉田書簡に対して意見統一がされていないようでございます。チンコム、ココムをまともに受けて行なっている国は、もはや先進国といえども、あるいは自由主義国家群といえども一国もございません。これは回ってこられた三木さんが一番よく御存じのはずでございます。さて、その吉田書簡につきまして、吉田書簡はチンコム、ココムの亡霊であるか、いや、ないという返事でございます。ないとするならば、一体政府がこれに拘束される理由はどこにあるのか。閣議、首脳会談で法律的には拘束されない、こう言うておられるようですが、法律的に拘束されないものを、国際法に従わざるものを、なお別なもので外国の言い分によって日本の自主性がそこなわれるというようなことは、これは日本の権威にかかわると思う。したがって、この際、統一的見解を承ると同時に、いわんや輸銀使用ということは、これは吉田書簡とは別問題であるという逃げ答弁を外務省がしておられるようでございますけれども、こんなことはますます噴飯ものなんです。そんなへ理屈がどこにございます。かつて吉田書簡があるからいけないとここの席で何回か何回か言われた。そうしておいて、いまになったら、それは別ものである。どうも台湾政府の出張員がここの外務省の中にいるような気がしてかなわね。月給はどっちからもらっておられるか。はっきりしてもらいたい。統一見解をはっきりまず三木さんから……。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 先般の商工委員会で私が申しましたのは、この吉田書簡というものをいま引っ張り出していろいろ言わないほうがいいと思うけれども、しいてお聞きになるならば、これは両国間の取りきめのような拘束力があるとは思っていないという意味のことを申したのでございます。ただ、しかし、問題は輸銀の問題であります。書簡ということが意味があるのでなしに、中共貿易に一体輸銀を使うか使わないかということなんで、この吉田書簡というものにいつまでもこだわって、そして国会の論議を呼ぶことが私は有益だとは思わない。これはもう卒業して、やはり中共貿易の輸銀という問題について取り組むべきであると思う。私は、いまおっしゃられるけれども、この輸銀をどうするかということは、これはやはり日本の政府が自主的に判断すべきものであって、中共からも国民政府からも干渉を受ける性質のものでない。自主的に判断をすべきものである。ただ、その自主的な判断の中に、中共貿易に対しては全部輸銀を使うというようなことはできませんよ、それは輸銀のワクだってあるのですから。それから、いろんな国際的な制約なんかは無視してしまえというお話でありますが、それは各国の立場で、日本は国際的な義務というものは厳重に履行しようというのが日本の立場でありますから、よその国のことはともかく、いろんな国際的制約があるし、そういうことで輸銀のワクもあるし、いろいろ政治的な判断も加えるべきでありましょう。いろんなものを総合して自主的に判断する自由を政府は持たなければならぬ。だから、中共貿易に対して輸銀を一切使わないのだという態度は、これはやはり合理的でない。しかし、いつでも中共貿易にはプラント輸出に輸銀を使わなければならぬという主張に対しても承服はできない。それはそのつど政府が、やはり具体的に問題が起こったごとに、そのときの事情を勘案して自主的にきめる、こういうことで、吉田書簡が国会の論議をいろいろ呼ぶということは、もうこれは卒業したらいい。輸銀問題というものに真剣に取り組むことが、日中貿易のために重要な課題であると考えております。
  95. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後に。吉田書簡はもはや卒業したいとの御意見でございます。吉田学校の卒業生も、ぜひこのことばをようく聞いていただきたいと思います。これは統一的見解をお願いしたのでございまするから、統一的見解として受け取りまするが、卒業すると同時に、輸銀使用については、中国といえどもどこといえども例外措置をとらない、使わないということは誤りである。さりとて、全部またそれを適用するということも間違いである。これは私はあなたの、通産大臣のことばを額面どおり受け取りたいと存じます。同時に、貿易は自由である。貿易は祖国日本の経済を繁栄させ、不況を打開するところの大きな柱である、これが先駆である。しかりとするならば、アメリカ国といえども無理な干渉には応じない。いわんや中国の内政干渉ははねつける。と同時に、台湾からの内政干渉に対しても、いつまでもじめじめとせずに、国会論議は、特に吉田書簡に関する国会論議はこれで卒業、その実をあげていただきさえすれば野党もこれで卒業いたします。  以上をもって終わります。(拍手)
  96. 青木正

    青木委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  だいぶ時間を経過しておりますが、引き続き質疑を継続いたしたいと存じますので、御協力をお願い申し上げます。  次に、石橋政嗣君
  97. 石橋政嗣

    ○石橋委員 引き続いて、関係閣僚に御質問をいたしたいと思います。  現在日本の国民が一番関心を持っておりますものは何かといえば、やはり国内問題としては不況下における物価高、国外的な問題においてはベトナムの戦争とその将来、これではなかろうかと思うわけです。特にベトナムの戦争がさらに拡大をいたしまして、日本がこれに巻き込まれるような事態がくるのではなかろうかという不安感は非常に強いと思います。そういう国民の不安感というものを佐藤内閣も見てとっておればこそ、去る八月二日の本会議においてわが党の佐々木委員長質問に答えて、私自身は、アジアにおいて米中戦争あるいは拡大される世界戦争などは起こり得ないという考えを持っております、こういうふうに述べたのではなかろうかと思うわけです。  そこで、総理の、米中戦争やあるいは拡大された世界戦争というものは起きないというこの見通しについて若干お尋ねをしておきたいと思うわけでございますが、当然閣僚としてこの見通しには賛成をしておられるものと思いますけれども、あとの質問を進めていきます必要性もございますので、防衛の直接責任の衝にあります防衛庁長官、あるいは外務大臣、この見通しについてどういう考えを持っておられるか、お伺いしておきたいと思います。
  98. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まず私からお答えいたします。  米中戦争は、ベトナム戦争がどういう経過をたどろうとも、これはいわゆる米中戦争には発展しないということにつきましては、全くわれわれは同様に考えておる次第であります。すなわち米国の目的は、ただ南越における政治的独立、自由というものを南越政府から要請されて、それにこたえて南越の政治的独立と自由を守るために、いわゆる防衛の立場においていまいろいろ軍事行動を起こしておる。北越の浸透あるいは南越国内におけるベトコンの破壊活動、こういうものを、その脅威を南越から除外する、そういうことに目的を置いて軍事行動を起こしておるのでありまして、それ以外には何ものもないということをしばしば言明をしておる。また、われわれはその言明どおりであるということを一〇〇%にこれを受け取っておるのでございますから、中共が好んでアメリカに戦争をしかけないという限りにおいては米中戦争はあり得ない。中共の真意は直接われわれは聞いたわけではないけれども、中共のベトナム戦争に対する実際の態度等から見ましても、あるいはいろいろの情報によりましても、ことさら中共がアメリカを敵に回して戦争をしかけるというような形勢は少しも見当たらないのでありますから、そういうことによって米中戦争は起こり得ない、かように判断をしておる次第であります。
  99. 石橋政嗣

    ○石橋委員 米中戦争あるいは拡大された世界戦争になるようなことはないと断言されておられるわけです。これに対する理由といたしまして、いま外務大臣がお答えになりましたが、本会議におきます総理の述べました理由からいきますと、やや後退の感を感じます。特にアメリカのほうの行為というものには非常に好意的な発言をしておられますけれども、一方の中国の側につきましては、何か奥歯にもののはさまったようなことをおっしゃっておるわけです。だからこそ、私は総理の発言だからといって、皆さん方の全面的な賛成、支持を得ているものというふうに断定できないので、あらためてお尋ねをしておるわけですが、総理は、なぜこのような見通しを自分が持っているか、その理由として、中共もアメリカも、いずれもが平和を愛好する国だからであります、こういうふうに言っておられるのです。これは、従来の総理自身の言動からいきましても、やや矛盾があります。矛盾がありますけれども、前進という意味において一応了解したいと思うのです。アメリカに対しては精一ぱいいままでも好意的な態度をとってきたわけですが、中国も平和愛好国である、どちらも平和愛好国だから、米中戦争なんというのは起こり得ない、これはたいへん意義のある発言なんですが、いまの椎名さんの発言を聞きますと、どうも総理ほど割り切っているような印象を受けないのですけれども、中国が平和愛好国であるというこの総理の発言について、外務大臣は賛意を表されますか。  それから、先ほどの質問に対して、防衛庁長官は答えておりませんから、いまの理由をも含めて、ひとつ平和愛好国であるという総理の見方につきましても、あわせて防衛庁長官からもお答えをいただいておきたいと思います。
  100. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一応平和愛好国と、こう言っていいんだろうと思うのであります。自分のところは平和は欲しないというような国は世界じゅうどこにもないと思うのです。
  101. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は、総理大臣は、中国も平和愛好国であると、本会議におきまして国民に向かって説明しておられるのですよ、これを全面的にあなたはお認めになりますかと聞いておるのです。
  102. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 認めております。ですから、いまのお答えを申し上げた。
  103. 松野頼三

    ○松野国務大臣 外務大臣が政府の窓口で、私の意見も同じです。私の立場から特に答えろと言われるならば、アメリカの今日のベトナムにおける戦争の状況というのは局地戦に限定しようという姿が各所に見られることは、石橋さんも御承知のとおりです。その姿から見るならば、これが拡大するという今日の戦闘態勢ではないと私は思います。その意味において局地戦である。したがって、これ以上の拡大はしないであろう。同時に国柄については、ただいまの外務大臣の御答弁を私はそのまま同じ答弁といたしておきます。
  104. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は、戦争が拡大するおそれがあるのではないかという国民の心配にこたえる、そういう態度は必要であるし、意義があると思うのです。ところが、それにはそれなりの見通し、根拠というものを述べなくちゃならぬ。つじつまを合わすためにことばだけアメリカも平和愛好国です、中共も平和愛好国です、だから戦争にはなりません。こんなことで不安の解消はできないのです。ほんとうにあなた方が中国を平和受好国と認めているのか。認めるというならば、あなた方が今後進めていく外交政策の中で、平和愛好国に対する態度で処していかなければならないという問題が出てくるのですよ。その裏づけがはたしてあるのかどうかという疑問を持っております、率直に言って。だからこそ、単なることばのあやなのか、そういう見通しを述べた以上、やむを得ぬから、つじつまを合わせておこうというような方便的なものなのか、本物なのか、このことを何度もお聞きしているわけです。だからこそ、ことしの一月、総理大臣がアメリカに行きましたときに、日米協会主催晩さん会において、中共の侵略的傾向などということを言っておったときに比べれば、総理自身ほんとうにこう思っておるならば、私は大進歩だ、そういう前提でお尋ねしているのですけれども、実際に外交の衝に当たっておるあなたの態度と言動というものが、これとびしゃっと合っていないような感じを受けますよ。ほんとうに平和愛好国だとあなたがお認めになるならば、従来懸案になっておりました日中間の問題というものも、ずいぶん私は、解決のめどがついてまいりますし、それこそ名実ともに前向きにいけるのではないかと思う。ところが、いろいろな問題はそういう形ではなさそうな印象をどうしても受けます。単なることばのあやではなかろうか、だからいよいよ疑いを持たざるを得ないのです。  それじゃ具体的にお尋ねいたしましょう。中共を平和愛好国とあなたはお認めになるとするならば、少なくとも台湾問題というようなものを除いた限り、中国の国連加盟の条件は備わった、こういう判断をお持ちですか。国連憲章の第四条には、国際連合はすべての平和愛好国に開放されているのです。あなたが中国を平和愛好国とお認めになった以上、台湾問題をはずれて考えた場合には、もう完全に中国の国連加盟の条件は具備されている、こういうふうにお考えになりますか。
  105. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連加盟の問題は、これはあくまで具体的に判断をすべきものでありまして、中共の国連加盟問題に当然この台湾問題というものはからんできている。それを一応除外して考えろということは、これはもうただ抽象的に考えろということであって、抽象論では何にもならない。やはり具体的に台湾問題というものはからみついている問題でありますから、これを切り離して判断することはできないと私は考えます。
  106. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そんなことはないでしょう。いままであなた方が中国の国連加盟というものに対していろいろな手を使って反対をし、抵抗をしてきているその理由というものは、台湾問題だけでしたか、それじゃ。あなた方が言われたことばの中には、中国というものが特に朝鮮戦争において侵略行為をやった、そういうことを絶えず取り上げておったじゃないですか。ほんとうに平和愛好国でないから、だから国連に加盟させることはできないのだという理由もあげておったはずじゃありませんか。だから、私は台湾問題というものがあることは認めておるのです。これと全然切り離すことはできないという答弁は逃げ答弁だと思います。わざわざ私は、台湾問題をはずして考えれば、少なくとも国連加盟の条件というものは具備するようになったと日本政府は判断されるか、なぜならば国連憲章において、国連はすべての平和愛好国に開放されていると規定されているのですから、この四条においては、中国は何らの欠格条件を持たないというふうに判断されておるかどうかとお聞きしているわけです。
  107. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 平和愛好国ということばは、きわめてばく然たる意味を持つのではないかと私は思うのであります。それで、これを具体的に、たとえば平和共存という政策をソ連はとっておる。しかし中共は、平和共存はけしからぬ、それはもう、何と申しますか、本来の主義というものから非常にはずれた修正主義であるというようなことでするどく非難して、まだその対立は解消されておらない、こういったようなことを考えますと、平和愛好国の中にもいろいろな種類があるということになるわけであります。絶対論として、観念論として平和を愛好しない国はないと私は思います。でありますから、そういう意味の平和愛好国ということに私は聞いておりましたのでございますが、そういうふうに、自分の国は平和を愛好しないという国はないと私は思う。そしてまた、平和を愛好するということは、これはほんとうの本音だと思う。ただ、いろいろな国際環境に処して一体どういう具体的な姿勢をとるかということが問題になってくるのでありまして、いま平和共存主義を一つとらえてみても、そういうふうに違ってくる。どっちも他と何らの関係なしに、あなたは平和を愛好いたしますかそれはいたします、こう言うにきまっておる、そういう程度の平和愛好ということばであろうと私は——それだけでは、すべての問題を具体的に判断する場合に、すべての政策がもう解消した、こういうふうに考えられないではありませんか。現に私が持ち出しておる平和共存主義というものに対しては、ソ連と中国は非常な対立をいましておるのでありますから、そういう意味の平和愛好国、こう私は観念いたすのであります。
  108. 石橋政嗣

    ○石橋委員 総理は、国民が、アメリカと中国の戦争に発展するのではなかろうか、ベトナム戦争が拡大されるのではなかろうかという国民の不安、疑問というものにこたえる形でこう言っているのですよ。アメリカも平和愛好国です、中国も平和愛好国です、だからこの両国が戦争するなどということはあり得ません、こういう説明を国民に向かってしているのですよ。ほんとうにそう思い、そう信じておるならば、そして日本も中国を平和愛好国として遇し、そういう所信のもとに外交を進めていくならば、これは米中対決というような事態を避ける大きな役割りを果たすことは私はできると思う、だから信ずるに足るという説明になると思う。しかし、あなたのいまの説明のようなことだったら、これは逃げ口上だ、国民をただ一時的にだまかすだけだ、だますだけだということになりますよ。そういう気持ちで総理はこんなことを言っているとは私は思いませんが、そんならあなたは国民に向かって、米中戦争にならないという理由を、もっと事こまかに説明しなくちゃいけません。どうなんですか、総理に出てもらわにゃいかぬと思いますがね。そんないいかげんな、閣内の不統一を早々からここで露呈するようでは、私は質問を進められませんですよ。
  109. 青木正

    青木委員長 もう少し外務大臣の説明をお聞き取りください。
  110. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、両方とも平和愛好国であって、それで戦争が起こらないというのは正解だと思う。私がさっき申し上げたのは、つまり中共は、いろいろな情報からいっても、アメリカに無用な戦争をしかけることはなかろうといわれておるし、そしてまた条理からいっても、中共が何もアメリカに戦争をしかけるというはずもない、こういう判断で、先ほど私は米中戦争はあり得ないという結論に全く同感であるということを申し上げたのであります。でありますから、どちらも平和愛好国、無理な、よけいな戦争をしかけるはずはない、こういうふうに私も信じております。そういう意味において米中戦争はあり得ない、私は、そういう結論を尊重したいと思うのであります。
  111. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そこで、ほんとうに平和愛好国と思っているならば、中国を平和愛好国として遇しなさい。さらに私は一歩進めた質問をしているわけなんです。ベトナムの紛争というものが国連中心に解決できない大きな理由は何ですか。国連から中国を疎外しているということも大きな原因でございましょう。そうしますと、この中国を国連に迎え入れるということも、今後の世界の平和なりアジアの平和なりに非常に重大な関連を持ってくるわけなんです。そうしますと、国連憲章第四条でいうところの平和愛好国として中国をあなたは認める、この点に関する限り支障はないと日本政府は判断するか。これについて率直にお答え願いたいと思います。
  112. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は先ほど申し上げたように、中共の国連加盟の問題は、同時にこれは、裏返しにすれば台湾問題、台北政府の問題をどうするかということにこれは必然につながっている問題であって、切り離すことはできない。でありますから、かりに台湾の問題を切り離して考えろといっても、それは無理ではないか、こう申し上げたわけであります。
  113. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ端的にお聞きします。国連憲章第四条でいう平和愛好国として中国を認めますか。
  114. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 加盟、加盟ということばをお互いに使っておりますが、これは代表権問題と言ったほうが適切かと思うのであります。でありますから、その代表権問題という問題を解決するためには、どうしても台湾の中華民国政府というものとの関連においてぜひとも考えなきゃならぬ問題である。でありますから、いまの加盟の資格要件というものは、この際あまり意味をなさないのではないか、こう考えられます。
  115. 石橋政嗣

    ○石橋委員 意味をなすかなさぬか、そんなことを私は聞いておりません。国際連合憲章第四条にいう平和愛好国というものに中国は該当すると日本政府は判断するかと、これだけ聞いておるのです。あなた答えられないなら総理に来てもらいますよ。
  116. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共は国連の認める国としてまだ承認しておらない、こういうことでありますから、この際は法律上の問題でありますから、条約局長に説明させます。
  117. 石橋政嗣

    ○石橋委員 法律の問題を私は聞いておるのじゃないのです。総理大臣が本会議におきまして、また昨日の予算委員会でも述べておられるのですよ。中国は平和愛好国である、これを戦争への発展というものは絶対にあり得ないという唯一の根拠にしておられるのです。非常に重大な問題なんです。日本の今後の外交姿勢というもの、これをいろいろわれわれが議論をする場合にも基本になる問題なんです。だから、平和愛好国とは一体どういうことなんだ、さしあたり国連憲章の第四条に平和愛好国という明文がちゃんとあるというのですよ。だから、この平和愛好国というものに中国はぴたり当てはまる、こういう判断のもとでお述べになっておる、こうこなければ、総理の答弁が、国民に向かっての説明が空疎なものになりますよ。それとは別の平和愛好国なんてあるものですか。少なくとも国連というものが世界の平和をつかさどる中心機関なんだ。そこで、平和愛好国という一つの基準を持っている。それと別の平和愛好国というものがありようはずはないじゃないですか。だから、この平和愛好国という第四条のことばと同じ意味において使っておられるのかと、こう聞いておるのです。あなた、何か日本が中国をまだ承認しておらぬからというようなことをおっしゃいましたが、それじゃ中国を日本が先に承認しない限り、国連加盟は絶対支持しないと、こういうことなんですか。
  118. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連憲章の法律解釈の問題になりまするので、条約局長から詳しく申し上げます。
  119. 石橋政嗣

    ○石橋委員 総理が使っていることばなんですよ。法律用語として使っているのじゃない。平和愛好国であるかどうかというようなことが法律の問題ですか、これは。
  120. 青木正

    青木委員長 一応お聞き取りください。藤崎条約局長
  121. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 中共を一つの国家として認めているような用語をお使いになったのは、これは常識的な意味でお使いになったわけだろうと思いますが、憲章の第四条の適用問題として平和愛好国ということばを使いますときは、中国はすでに国連の加盟国でございますので、この四条の資格要件はすでに満たしているものとしてそこに加盟しておるわけでございます。中国代表権問題は、その中国を代表する政府がどちらが資格があるかという問題であって、四条の適用問題じゃないわけであります。
  122. 石橋政嗣

    ○石橋委員 何を言っているのですか、あなた。まるで二つの中国論みたいなことを展開していますけれども、私が言っているのは、いま国連に加盟しておる中華民国のほうを言っているのじゃないのです。中華人民共和国のほうをこの国連憲章四条で使っておる平和愛好国として日本政府はお認めになるか。認めた上で総理大臣はこういうことばを使われたのかと、こう聞いているのですよ。だから、これはあなたの分野ではないのです。政治家の分野ですよ。どうしても外務大臣がそれ以上わからぬというなら、総理大臣に来てもらって説明してもらわなければならぬ。ひとつ委員長の取り扱いを願います。
  123. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 おことばを返すようでございますが、中華民国の問題じゃなくて、中共の問題であるというようなふうにものごとを考えるのが、いわば二つの中国論に通ずるわけでございまして、中国は一つでございますから、加盟の問題でなくて、代表権の問題であるということを申し上げておるわけでございます。
  124. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういう手続のことを聞いておるのじゃない。中華人民共和国は平和愛好国だ、こう言っておる。だから、中華人民共和国を国連に入れるべきか、それとも中華民国をそのまま継続して入れるべきかということは、これは手続の問題でしょう。あなた方重要事項指定方式とかなんとかいって、手続の問題とすりかえているじゃないですか。そんなこと聞いてないのです。少なくとも国連でいう平和愛好国というものにぴたり中華人民共和国は適合するのか、こう聞いておるのです。
  125. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 中華民国と中華人民共和国という二つの国がございまして、そのいずれの国の加盟を認めるかという問題じゃございませんで、そういうぐあいに二つ別の国名を使っておることは事実でございますけれども、そういう国名を称しておる二つの政府が一つの中国にあるというのがいままでの実態でございます。それが国連で問題になっておる中国代表権という問題でございます。
  126. 石橋政嗣

    ○石橋委員 佐藤総理はどういう意味で使っているのかということなんです。だから、あなたが答えられるはずないじゃないですか。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 常識的に言っておるのであると私は思います。そこで、あなたの、いわゆる国連憲章四条の平和愛好国ということになると、これは、法律上の用語を厳格に解釈しなければならぬ問題になるので、それで条約局長から申し上げた次第であります。
  128. 石橋政嗣

    ○石橋委員 総理が出席できるかどうか検討していただいておるそうですから、私はこれでいたずらに時間をとりたくありません。しかし、少なくともいまの外務大臣の答弁を聞く限り、どうもこの総理大臣の、中国は平和愛好国だということばの真意がわかりかねます。あなたが言っておるようなあいまいなものならば、これは米中戦争には絶対なり得ないというような論拠にはなり得ませんよ。それこそこんな説明では……。国連の正式の代表権をどちらがとるべきかというようなことを聞いておるのじゃない。そういう問題とは別個に、中華人民共和国は国連に入る平和愛好国としての資格を持っておるかどうかと聞いておるのです。それに対して答えもできないということでは問題です。  ついでにもう一つお聞きしておきますが、平和愛好国であるならば、中国に対する輸出品目の制限なんというものはやめるべきだと思いますが、この点はいかがです。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 平和愛好国というこれは一つの非常に大まかにとらえた観念でございまして、それだから、この適用はどうだとか、平和愛好国であるならば、すべて平和愛好国らしく取り扱うべきだというような具体的問題にまで入ることはちょっと私は無理だと思うのであります。どうぞさように御了承願います。
  130. 石橋政嗣

    ○石橋委員 肝心の質問には答えないじゃないですか。肝心の質問に答えてくださいよ。それでは何のために輸出の制限をしなくちゃならないのですか、品目の制限を……。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 本来のこの輸出品目制限の規定にさかのぼって撤廃するということには、私は実際問題としてなり得ないと思うのです。そこまでは無理だと思うのです。
  132. 石橋政嗣

    ○石橋委員 平和愛好国に対してなぜ輸出品目の制限を撤廃できないのかと聞いているのですよ、説明してくださいよ。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 輸出品目を制限した状況は、ただこういう名目、文句を用いたことによって、すべてその実際上の障害は撤廃すべきであるというような状況にはなっていない、こう思います。
  134. 石橋政嗣

    ○石橋委員 結局、もうこれ以上具体的にお尋ねしても同じことだと思います。あなたの中国観というものと総理大臣の中国観というものとの間に食い違いがあるか、あるいは食い違いはないのだけれども国民に対する説明の必要上、方便的に総理大臣が平和愛好国なんということばを軽々に使ったか、どちらかですよ。これはもう総理大臣に来ていただかなければ解決のつかない問題ですから、後ほど総理の出席を要求いたしておきたいと思います。  そこで、外務大臣の言っているようなことならば、米中の対決などという心配はありませんなんというのは、これは口頭禅です。説明になりません。確かに中国のほうは、みずからが攻撃されなければ、好んで介入するというようなことはないでしょう。しかし、アメリカのほうは、エスカレーション作戦の遂行という形の中からでもわかりますように、今後どこまでいくかわからぬじゃありませんか。片一方のほうだけが幾ら平和愛好国であっても問題にならない。しかも、その片一方も、どうもあなたは平和愛好国だとは思っていないようです。そんなことでなぜ米中戦争になりませんなんという説明になりますか。いま、ようやく米中の直接対決というものを食いとめているのは、私は朝鮮戦争の経験というこれだけしかないような感じがするのです。歯どめになるものがほかにあるか、私はないんじゃないかという不安を持っております。これは国民一般の不安でもあろうと思うのです。だから、もっとまっとうに不安を解消しようと思えば、説明をし、そして行動を起こす、こういうことをやらなければだめだと思うのです。  そこで、ちょっと私立場をかえてお尋ねをしてみたいのですが、現在のあなた方政府は、大規模な戦争への発展、まあ普通全面戦争、こういうようなことばで言われておるわけですが、そういうものを阻止している条件というのは核を主体とする東西の軍事力の均衡である。こういうことを常におっしゃっております。われわれはこれを恐怖の均衡とも言っております。核手詰まりとも言っております。この考え方には依然として変化はないのでしょうね。いかがですか。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核を含めた勢力の均衡、こう考えております。
  136. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この点については、二月の本予算委員会において私お尋ねをしたわけです。「現代の平和は核を主体とする軍事力の均衡の上に確保されている、こういう考えをとっておるようでございますが、間違いございませんね。」総理大臣も「そのとおりです。」こういうふうに答えております。そうしますと、問題があるような気がするのですよ。東西の力の均衡、こういうことをあなた方がお使いになる場合に、主力は、東という場合にはこれはソ連、西という場合にはアメリカ、これであることは間違いないと思います。したがって、いわゆる東も西も一体という形で結ばれておるときには、この理論はあるいはあなたたちの立場からいえば通用するかもしれない。しかし現代はそうじゃないですね。外務大臣、あなたは通常国会におきます所信表明の演説の中でも述べておられます。東西ともに多元化の傾向を示しておるということをはっきり言っております。いわゆる西といわれる側もこのごろがたがたですよ。NATOもがたがた、フランスの態度を見ればおわかりのとおりです。SEATOやCENTOもがたがたです。パキスタン一つ取り上げてもおわかりのとおりです。いわゆる東という側も、先ほどの答弁も聞いておりましたが、ソ連と中国との対立というものを、あなたは私の質問に答えて、余分なことでしたが述べておられる。こういう状態の中で、そのまま全面戦争を阻止しておる要因として、いわゆる均衡論というものをあげることができるのですか。少なくとも米中の対立というものが、直接対決というものがあるかないかということを考える場合には、この均衡論というものを持ち出すことはできないというように思いますが、その点はどうです。
  137. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 確かに東西の二大勢力が内部においていろいろ分極化しておりますが、分極化してはおるけれども、結局それでは従来の東西の勢力というものをもう御破算にして、そしていま新しい組み立てを考える段階であるかといったら、そうでもない、まあこう思われます。それでそういう東西の力の均衡というものは、やはりまだ考えていかなければならぬ、こういうふうにわれわれは了解しておるのでありますが、米中の戦争は、そういう意味においての戦争はあり得ないということになるのかならぬのかというようなお話でございましたが、しかし私は、大まかに言って、東西の力の均衡が世界大戦というものに対する阻止要因になっておるというこの理論が米中の戦争にぴったり当てはまるかどうかということになりますと、私はこれはいろいろ考え方はあると思うのでありますが、しかし現実問題として米中戦争は起こり得ない、こういうふうな判断をいたしておるのであります。先ほど申し上げましたように、アメリカはあくまで北の浸透及び南の国内における破壊活動というものを防止して、そうして南越の政治の独立と自由を守る、こういうたてまえでやっておる。それ以上のことは何ら企図しておらないということを言っておりますし、また、従来の行動からいってこれを信じてよろしい。こう考えておるし、中国は中国で、そんな無用な戦争をやろうというような気がまえも何もないというふうに私どもは信じておりますので、それであり得ない、こういう結論に私は同意しておるのでございまして、これをいわゆる東西均衡論という一つのカテゴリーに当てはめて考えてどうかということでありますが、それはまたいろいろな考え方があるだろうと思います。その問題を離れても、米中の戦争はあり得ない、こういう判断をしておるのであります。
  138. 石橋政嗣

    ○石橋委員 米中の戦争並びに世界戦争ということも言われているのですよ、総理大臣は。世界戦争に発展することもあり得ない、こう言っているのです。この世界戦争に発展しない一番大きな根本原因は何か。これは、いままであなた方が再三口にしているのは、いわゆる恐怖の均衡論だ、核手詰まりだ、こういうことをおっしゃっているわけなんです。私たちは簡単に、いまのようなアメリカの無暴なやり方を見ておれば、もうすでにハノイ三十八キロの近くまで北爆をやっているんですよ。こういう暴挙を続けていったならば、中国といえども黙視できない。北ベトナムあたりの援助要請ということが出てくるかもしれない。そうなれば米中の戦争になるじゃないか、さらに発展するじゃないかと心配しているんですよ。それに対して、そんな心配はないないと言いながらも、いまのようなお答えでは理論的な説明にならないじゃないですか。  それじゃ、ちょっと角度を変えてお尋ねしましょう。あなた、先ほども中ソの対立というようなことをわざわざおっしゃっておりました。しかし、少なくとも中ソの間には友好同盟相互援助条約というのがあるんです。この条約は名実ともに有効であるというふうな判断に立っておられますか。この点はいかがですか。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、情勢の推移によっていろいろ変わり得る点もあるかと思うのでありますが、結局においては、同じ社会主義陣営の国家としてやっぱり大きく最後にはまとまる可能性が多分に存しておるということがいわれております。でありますから、ただいまの中ソの反目というものは、これはまあその大きなカッコ内の一つの現象であるかもしらぬ、しかし相当深刻な対立抗争である、こういうようにも見られております。これらにつきましては、私はここでこの問題を解明するだけの自信を持っておりませんが、とにかくそういわれております。
  140. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういわれているといって両方言ったんじゃ、話になりませんよ。これは答えにならないじゃないですか。少なくともまだ名実ともに有効であるという判断をとっておるならば、あなた方のいう恐怖の均衡という理論が成り立つのです。しかし、これはもう実効は及ばない、およそ実効はもうないんだ、形骸化しているんだという判断に立てば、アメリカと中国との間には、均衡もないし核手詰まりもないとあなた方見ているわけでしょう。どっちつかずのような、有効であるといわれている、片一方ではないといわれている、そういう判断では見通しが立たないじゃないですか。  それじゃ、これは専門家のほうに聞いてみましょうか。防衛庁長官、あなたはこの点についてはどういう見通しを持っておりますか。
  141. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私が専門家かどうかしりませんが、私の見解としては、ソ連、中共というのはまだ条約が現存しておるならば、一時的な変化は起こりつつある、いわゆる流動しつつあっても、基本的には東西が入れかわるという段階ではないんじゃなかろうかというのが私の見解であります。
  142. 石橋政嗣

    ○石橋委員 外務大臣、防衛庁長官はまだ名実ともにこの同盟条約は有効だというふうな見解を持っておられますが、あなたは依然としてわかりませんか。どうです。
  143. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まあ、きょうだいもけんかすることがある。しかし、いよいよとなると、またきょうだいが一本になって外部に対抗するというようなことがあるのですが、そういったようなものかもしらぬと、こう考えております。
  144. 石橋政嗣

    ○石橋委員 まあいいですよ、それならば。  ところで、中国が平和愛好国だということを、まだ最終的に本物かどうか確認はしておりませんけれども、総理大臣はおっしゃった。片一方のアメリカのほうですけれども、これを一応ベトナムの戦争というものに限定して考えてみた場合にも、平和愛好国といえるのかどうか。ベトナムの内乱に介入し、まるでみずからが正義であり、国連であるかのごとくふるまっている。毒ガスは使う、ナパーム弾は使う、大量の爆撃はする、北爆はやる、こういう国を平和愛好国といえるのか、私は非常に疑問を持っております。  そこで、まずあなた方がしょっちゅう言われる国連中心主義、ここに視点を置いてお尋ねをしてみたいと思うのです。  国連の精神というものが、あらゆる紛争は平和的に、武力の行使は厳に慎む、こういうことで貫かれていることはお認めになると思います。しかし、特例として武力の行使を認めている場合があることも私は知っております。しかし、それは条件がきびしく付せられているわけです。大体国連憲章からいきますと、三つばかりあると思うのです。第一は、憲章第四十二条で規定されておりますところの国連軍編成による武力行使の場合、これが一つですね。第二は、五十三条第一項前段の規定でございますけれども、これは五十二条で規定された地域的取りきめを受けてできておるものと私は考えておりますが、これが安全保障理事会の許可のもとに行動する場合、これが第二。第三は、憲章第五十三条第一項後段の旧敵国に対する例外措置としての行動をとる場合、この三つしか私はないと思います。もう一つ例外があると、五十一条を援用されるかもしれませんが、少なくともまず最初にこの三つの武力行使の条付、特例として国連憲章が武力行使を認めておるこの三つの条件には、いずれもアメリカのベトナムにおける軍事行動は該当しないと判断しておりますが、この点から確かめます。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のとおり、三カ条の規定には該当いたしません。
  146. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、基本的に国連憲章が認めておりますところの武力行使の条件は具備していないのです。特例として憲章第五十一条というものがあります。これを援用しているのかと思いますが、この点はどうなんですか。
  147. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 五十一条には該当いたします。
  148. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、国連憲章第五十一条を問題にしてみましょう。条文をあなたは見ておられるけれども、ほかの方もおられますから、ちょっと肝心のところだけ読んでみますが、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の国有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。」前段にこういう規定があります。それでは、アメリカがこの五十一条を援用しているというならば、どこの勢力がどこの国に対して武力攻撃を行なったのですか。
  149. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 停戦協定によって十七度線を画して事実上二つの政権が成立した。その北の直接または間接の侵略によって南が脅かされた、こういう事実に基づいておる。
  150. 石橋政嗣

    ○石橋委員 おかしいじゃないですか。南ベトナムは国連加盟国ですか。
  151. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 手続上、加盟はしておりませんが、あの条文を準用しておる、こういうわけであります。
  152. 石橋政嗣

    ○石橋委員 国連中心主義をとられる日本政府の解釈としては、およそでたらめですよ。国連憲章の五十一条のどこに準用規定がありますか。いまも私読み上げましたように、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、」とあるのですよ。どこに準用規定がありますか。
  153. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 法律用語としての準用ということを申したのではありませんが、とにかくあの精神に照らして行動をされておる、こう解釈しております。
  154. 石橋政嗣

    ○石橋委員 精神に照らしたって、憲章五十一条を援用しているとあなたはおしゃったじゃありませんか。五十一条のどこに末加盟国に対する武力行使にのこのこ出ていって戦闘行為をやってよろしいという規定がありますか。そんなかってな拡大解釈が許されますか。あなた方の日本国憲法の解釈のようにはいきませんよ。
  155. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事柄の性質上、これはただ条文にこだわって問題を判断すべきではないのでありまして、この精神に従って、そして、あくまで力によってある国の独立と自由を阻害するという場合に、その国の要請があれば、これはもう情理の上からいっても、その要請を受けて立つということであれば、これは許さるべきことでありまして、国連憲章の大精神に従って行動しておる、こう判断しております。
  156. 石橋政嗣

    ○石橋委員 でたらめもいいかげんにしてもらいたいと思う。ジュネーブ協定を想起してくださいよ。南ベトナム政府なんというものが出てくる条件がどこにありますか。少なくとも国連加盟国を主力としてこのインドシナ半島における平和の問題を真剣に論議して、ジュネーブ協定ができたときに規定されたものは、南北統一のベトナムですよ。それをかってに軍事境界線を国境であるかのごとくしてしまったのはだれですか。アメリカであり、南ベトナムじゃないですか。自分たちがかってに本来軍事境界線であるべきものを国境のようにしておいてしまって、そして北が直接、間接に侵略したなんてかってな解釈をしておいて、国連憲章の精神もへったくれもありませんよ。少なくともこの明確な規定のある限り、憲章五十一条の援用なんていうのはインチキじゃないですか。援用できませんよ。だから、現在のベトナムにおきますアメリカの軍事行動というものは、明らかに国連憲章の許してないかってなふるまいです。五十一条のどこから判断したってそんなことは許されない。  しかも、問題はそれにとどまらない。自衛権の行使をかりに許されたとしても、これは直ちに安全保障理事会に報告しなければならないし、また自衛権の行使というものには厳重なる限界があるはずです。自衛権の行使はどんなことでもやっていいのですか。自衛権の行使の限界をもう一度外務大臣、ここで言ってください。
  157. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 厳密な五十一条の適用はできないことになりますから、したがって、理事会に報告して云々というような規定も全面的に適用することはできないということは、これはやむを得ないと思います。  それから、自衛権の行使でありますが、やはり南ベトナムがその政治的な自由、独立を絶えず脅かされ、国内において破壊活動が行なわれ、これによって無辜の良民が非常な損害を受けておる。その背後にある勢力がすなわち北ベトナムであるということは否定し得ない事実でありますから、そういうことが行なわれておる間は、やっぱりこれをあくまで防止するということは、当然自衛権の精神に入ってしかるべきものである、こう考えております。
  158. 石橋政嗣

    ○石橋委員 五十一条の正式な援用もできない。したがって、安全保障理事会に報告もできない。明らかに国連憲章の精神も規定もじゅうりんした侵略行為ですよ。しかもあなたは、この自衛権の行使の限界について明確なお答えがない。これは重大な問題ですから、自衛権の行使にあたっての見解をひとつ示してください。
  159. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 自衛権の行使の法律的な解釈につきましては、条約局長からお答えいたします。
  160. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 憲章第五十一条は、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではないと書いてあるわけでございます。国際連合加盟国は、御存じのように第二条で武力行使を制限されておりますから、その制限にもかかわらず、武力攻撃を受けた場合は必要な限度で武力を行使してもいいというのがこの第五十一条の規定の趣旨でございます。これは、何も国際連合加盟国でないもの、あるいは国でないものに対しては武力攻撃は自由だという趣旨でないことは申すまでもないことでございまして、また休戦ラインとかいうようなものは、武力を行使してはいけないという関連におきましては、国境の場合と同一視すべきものであるというのは、これは国際的な常識でございます。もしこれを武力によって侵犯してもいいものであるとすれば、休戦ラインというものは意味をなさないわけでございます。休戦ラインでなくても、たとえば占領区域の境界であった朝鮮の三十八度線を一方が突破すると、これはやはり侵略であるというふうに認定されたわけでございます。  自衛権の行使の限界でございますが、これは要するに武力攻撃に対処して防衛するために必要な限度というぐあいに申し上げるよりほかないわけでございます。アメリカは憲章の規定に基づいてトンキン湾事件直後に安保理事会に報告いたしております。
  161. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは、あなた方が日本国憲法第九条で認められておると言う自衛権と、国連憲章で認められておる自衛権と同じものですか、どうですか。
  162. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本も、国際法上は国連憲章が認めている自衛権、つまり個別的または集団的自衛権を持っておるというわけでございます、国連加盟国でございますから。ただ日本国憲法では、日本自身が攻撃された場合でなければ武力を行使しないという自制をしておる。国際法上の権利としては国連憲章の権利をそのまま持っておるということでございます。
  163. 青木正

    青木委員長 石橋君に申し上げますが、御要望によりまして、総理大臣が御都合され、特に出席いたしました。  なお、理事間の協議によりまして、総理の出席は十分間でございますので、さよう御了承の上御質問願います。
  164. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは、いま提起しております問題は、引き続き後ほどお尋ねすることにいたしたいと思います。  総理が出席されておられますのでお尋ねをしたいわけですが、私、実は冒頭に質問をしたわけであります。それは、いま日本の国民が一番関心を持っておるものは、国内問題としては不況下における物価高である。国際的な問題では、ベトナムの戦争とその将来である。このことを総理もよく知っておられるからこそ、ベトナムの戦争が米中戦争に発展するとか、あるいは拡大されて世界戦争などになるようなことはないと言って国民に説得をした、このように考えるわけなんです。なぜそれでは米中戦争や世界戦争になるおそれがないか、そういうように見るかという理由として、アメリカも平和愛好国である、中国も平和愛好国である。こういう理由を述べておられるわけです。この点で従来の総理の発言、たとえば、ことしの一月アメリカに行きました場合に、日米協会の晩さん会で、侵略的傾向を持っているなどとおっしゃった。そういうような発言から比べると格段の進歩だ。この点は私は認める。ところで、この中国が平和愛好国だとおっしゃったことは非常に大きな意義を持っているけれども、単なることばに終ったのでは、米中戦争に発展する危険はありませんという説明としては非常に弱い。だから、ほんとうにそう思っているのか、思っているとするならば、今後中国を平和愛好国として遇していかかなくちゃならぬと思う。こういう立場で実は外務大臣にお尋ねをしたわけなんです。ところが、外務大臣の答弁を聞いておりますと、どうも全面的に中国を平和愛好国だというふうには認めておらないようなんですよ。そうなると、総理の考え方と外務大臣の考え方に食い違いがあるのではなかろうか。こういう疑問が出ましたので、ほんとうに中国を平和愛好国とお考えになっておられるか、なっておるとすれば、今後そういう見方をして、中国は平和愛好国であるという見方の上に立った対中政策を進めていかれる気持ちであるのか、この点をひとつお尋ねをしておきたいと思うわけです。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねの点は、ここに速記録を持ってまいりました。「なぜこの考え方を持っておるのか。中共におきましても、アメリカにおきましても、いずれもが平和を愛好する国であります。したがいまして、アメリカ自身も、この戦争を拡大しないと言っておる。そういう意味においてのあらゆる努力を続けております。」多分この点だろうと思います。そうでしょうね。この言い方は、積極的に平和を愛好する国でありますと、かように言っておりますが、アメリカも中共も戦争を欲しないということを公式にも発表しております。私は、この戦争を欲しないというこういう事柄が、やはり平和を愛好する国、平和を好んでおる、こういうような意味ではないか、かように思うわけです。したがいまして、これは、どこまでもいわゆる常識的にすらりとお考えをいただきたい。先ほど来、私ここへ参ります前に、いろいろ事務当局からも話を聞いておりますが、これがどうして国連加盟をじゃまするのか、妨げるのか、こういうようなお話が出たり、あるいは貿易の制限を一体どうしてやるのだ、愛好国ならもうそれでいいんじゃないか、こういうような御議論がいままで出ておるそうですが、ただいま私が答えましたのは、すらりと申したことなのです。戦争を欲しないと両国とも公式にこれは言っておることです。そういう事柄が裏を返せば平和を愛好しておるのだ、こういう判断、これが望ましいのではないでしょうか。どうかそういう意味で御理解をいただきたい。
  166. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは、一般に国民が受けております印象から言いますと非常に弱いと思うのです。米中戦争が絶対に避けられるという唯一の理由としては薄弱だと思うのですよ。だからこそ私は、わざわざ国連憲章でいう平和愛好国として中国は資格を持っておるのかどうかという念を押しておるわけです。少なくとも平和愛好国であるかどうかを判断をする一つの国際的基準というものは、国連という場、国連憲章という条約、規定、ここに求めざるを得ないと思うのです。だから、そういうように総理のおっしゃっておる平和愛好国というのがどの程度のものかということは、ここに尺度を求めなければならない、こう考えるわけです。  そこで、国連憲章の第四条には、すべての平和愛好国に国連は開放されておる、こういうことばがあります。だから台湾、すなわち中華民国に正式の代表権、議席を与えるべきか、いわゆる中華人民共和国に議席を与えるべきか、そういうことは一応抜きにして、これはいろんな問題がからんできますから抜きにして、そういう面で問題が残ることはこの際一応私は認めた上で、国連が受け入れることのできる平和愛好国とお考えになるかどうか。これに対して明確にお答えがないのです。だから総理の明快なお答えをひとつ願いたいと思います。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま国連憲章の条文を引き出して、そうして尺度云々でこの問題をきめようとしておられます。私が申すように、米中戦争など起こり得ない、かように申しますのは、別に国連憲章のその尺度に合っておるとかなんとかいうわけではありません。その証明をしろとおっしゃるのだが、当事国自身が戦争を欲しないという、それより以上の大きな明確なことはないのではないでしょうか。これがどうも国民を納得さすゆえんでない、こういうように言われますけれども、私は、当事国自身が戦争を欲しないと言っておる。それを信用しなければ、これはどうもしかたがない、かように思います。そういう意味で、それぞれの方がどういうような受け取り方をされるかわかりませんが、戦争を欲しないと当事国自身が言っておる。そういう場合には、その本人の言っておることをそのまま信用するのが筋ではないでしょうか。それでも信用できない、こう言われるのなら、一体それはどういうところに疑問を持たれるのか。本人が言ったのでは納得できませんかと私も聞きたくなります。このことは、石橋さんはどういうふうにお考えですか、私はそういうふうに思っております。
  168. 石橋政嗣

    ○石橋委員 国連で使っております平和愛好国というものに該当するのかどうかということには、総理も依然としてお答えにならないようです。  それじゃ私が疑問としております点を申し上げましょう。中国は、みずからが攻撃されない場合には絶対に介入しないと言っております。しかし、みずからが攻撃された場合、あるいは北ベトナム人民共和国あるいは南ベトナムの民族解放戦線、こういうところから直接援助の要請があった場合にも介入しませんとは言っておりませんですよ。これが問題の一つです。  それからもう一つは、アメリカが平和愛好国だとあなたはおっしゃいますけれども、国連憲章の精神、規定を踏みにじった行為をやっておる。いまその議論に発展しておるのです。少なくとも国連が認めた武力行使というものには該当しない、条約、規定には該当しないと認めますか、外務大臣も条約局長も。三つの方法についてはですね。例外規定としての憲章第五十一条を援用しているのだと言いますけれども、この五十一条だって厳密な援用じゃない、準用だと言っているのです。だから、厳格にいえば、アメリカのベトナムにおける行動は国連憲章の精神を踏みにじり、規定をじゅうりんしているのですよ。みずからが正義であり、みずからが国連であるかのごとくふるまっているのですよ。しかも、自衛権の行使の限界を越えて北爆をやっているのです。ハノイ三十八キロの近くまでもう進んでいるのです。こういうことをどんどんやっておれば、これは中国としても受けて立たざるを得ないという立場に追い込まれる可能性は絶えず残るじゃないですか。それでもだいじょうぶだ、だいじょうぶだとどうして言えますか。現にアメリカは、私がいま申し上げたように、国連憲章の精神も規定も踏みにじっている。ということは、安保条約の第一条も踏みにじっているということですよ。こういう行為を現実にやっているのですから、決して米中戦争になりません、これ以上戦争は拡大することはありませんと言ったって、これはことばのあやにすぎない、ほんとうに国民が納得するような説明にならない、こう申し上げているのです。私の申し上げるのはそういうことです。いかがですか。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋君の感じを率直にお話しになったのだと思います。私は私の感じを率直に申しておるのでありまして、国民はどういうように受け取るか。本人自身がなぐらない、こう言っているのに、いやなぐるのだ、こういうように考える必要はないだろう。アメリカ自身、エスカレーション爆撃をそう拡大しない、こう言っている。それからまた中共自身が、自分たちが攻撃されなければやらないと言っている。それならそれでいいんじゃないでしょうか。それでなおかつ戦争がある、戦争があるというのはどこでしょう。これはしかし石橋君と私との考え方の相違ですから、私は議論はあまりいたしません。いたしませんが、国民の皆さん方には私がかように申しておること、そうしてほんとうに心から平和に徹する、こういう考え方でいることについて必ず支持してくださる、かように私は確信を持っております。
  170. 青木正

    青木委員長 石橋君、総理のお約束の時間がまいりましたので……。
  171. 石橋政嗣

    ○石橋委員 約束ですから、一応しょうがないと思います。また出てこなければならぬときにはひとつ出ていただくことにしたいと思いますが、先ほどの質問に移りたいと思います。  少なくとも国連憲章五十一条できめられております自衛権の行使というものには限界があるはずです。従来保守党政府が述べております自衛権の解釈からいきますと、現実に急迫不正な侵害があった場合、それを排除するために他に適当な手段がない場合、しこうしてそれを防御するために必要最小限度の措置を講ずる、こういう大原則があるはずです。これは当てはまらないのですか。やられたと判断すれば何をやってもいいのですか、いかがです。
  172. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、原則的には当てはまると考えております。
  173. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、どんどんエスカレーションで北爆をやっていくというようなことが必要最小限度の措置なんですか、この点いかがですか。
  174. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 結局問題の中心は南越の独立、自由を守る、こういうことでありますから、それが外部からの力による脅威、侵害がある限りにおいては、これを排除するために必要な行動は許さるべきものである、かように考えております。
  175. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは防衛庁長官にお伺いします。  いま自衛権の行使にあたっての三原則というものは国連憲章五十一条の場合においても適用されるとおっしゃいました。日本の自衛隊が自衛権の発動に基づいて行動する場合に、いまアメリカがベトナムでやっておるように、攻撃されたからといってどこまでもどんどんやっていけますか、いかがですか。
  176. 松野頼三

    ○松野国務大臣 アメリカの軍事行動は私はつぶさに存じませんが、わが自衛隊は、自衛隊法によってすでに解明されておるとおり、自衛に対する最低限の力を武力によって行使する以外は、私たちはやる気持ちはございません。
  177. 石橋政嗣

    ○石橋委員 どうなんですか、外務大臣。日本の自衛隊が自衛権の行使として出動する場合には、少なくとも日本の領域から出ていけないですよ。これが自衛権行使の鉄則ですよ。アメリカがベトナムでやっておるのは、報復のためならばもう無条件にどこまでどんなことをやってもいい、そういうやり方じゃないですか。これでも不法じゃないとあなたはお考えですか。
  178. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本の場合は、いま答えられましたように、おのずから憲法の制約があるから、これはまた別だと思います。
  179. 石橋政嗣

    ○石橋委員 全く答弁になりません。なりませんけれども、時間のほうで私制約をされておりますから、あなたとナマズ問答をやっておってもしようがない。また別の機会にこの問題は譲りたいと思います。  とにかくあなた方は国民の不安というものを受けて、一応それを説明する、心配は要りませんというその必要性のために平和愛好国などということばを持ち出しておりますけれども、こんなことでは国民は納得しない。また戦争の拡大というものに対する不安の解消にはならぬということだけ申し上げておきたいと思います。  ところで、今度防衛庁に質問を移したいと思うのですが、先ほどもお話が出ました核を主体とする軍事力の均衡が世界的な規模の戦争への発展を防いでおる、こういうことをおっしゃっておるわけですが、それではアメリカの核戦力の主体は何か、私の知る限りでは戦略空軍、これはB47、B52、B58、それからICBM、アトラス、タイタン、ミニットマン、それにIRBMもあるでしょう。ジュピターとかソアとか、それとポラリス潜水艦、これが主体をなしておる。こういうふうに理解をいたしておりますが、その点について御異議ございませんですね。
  180. 松野頼三

    ○松野国務大臣 核の主体についてはただいま石橋さんが言われたものが大部分であろうと私は思います。
  181. 石橋政嗣

    ○石橋委員 しかも、この核の主体をなしております中において、戦略空軍の占める地位というものはまだ非常に高いのです。その戦略空軍の主体がB52であるということもお認めになりましょうね。
  182. 松野頼三

    ○松野国務大臣 B52が全部その主体であるというわけでもありません。御承知のように日進月歩で、52の中にもだいぶ変わったのがありますから、全部とは言いませんが、それが主体勢力の一部ではあるということが正しい意見ではないかと私は思います。
  183. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それではもっとあなたより専門家の防衛局長に聞きましょう。私の知る限りでは、戦略爆撃機はいわゆる自由主義陣営と称しておるもの、この側の核火力の八〇%を占めておる。そのうちの中心機はB52——もうB47はこれは旧式ですよ。B58はまだ生産がそんなに進んでいない。B52が中心だというふうに考えております。その辺とB52のもっと詳しい性能について防衛局長から御説明願いたいと思います。
  184. 松野頼三

    ○松野国務大臣 B52のそれを私は否定したわけじゃありません。B52も日進月歩であると同時に、B52の中に各種類があるということを私は申し上げたわけで、52全部が主力勢力だという時代じゃないと、私はかく申し上げたわけです。その中には各種の改造が行なわれる、改装が行なわれる、変化しているということを私は申し上げたわけで、そう石橋さんの意見を否定したわけじゃありません。
  185. 石橋政嗣

    ○石橋委員 実質性能について……。
  186. 島田豊

    島田(豊)政府委員 戦略爆撃空軍の保有しております飛行機につきましては、ただいま先生からお話がありましたような種類がございます。長官がお答え申しましたのは、要するにB52の中におきましても各種の型がございまして、最新のものにつきましては、御承知のとおりに、核のミサイルを積んでおりますけれども、現在それを積んでない、要するに通常爆弾を積んで戦闘をやるというものもございまして、全体を含めまして、やはり戦略空軍の主体はこのB52であるということは間違いないと思います。
  187. 石橋政嗣

    ○石橋委員 実質性能です。
  188. 島田豊

    島田(豊)政府委員 私、B47につきましての資料を持ち合わしておりませんが、B52につきまして性能を申し上げますと、52の中のBでございますけれども、スピードは、高度約六千メートルにおきまして約千キロ、航続距離が約一万二千キロ、それから主要兵器といたしましては、二十ミリの機関砲四門のほかに爆弾を搭載するというのが52Bでございます。  最近の一番新しいといわれております52Hにつきましては、スピードはちょっと上がりまして、二十キロほど早くなっておりますし、航続距離が約二万キロでございます。これにつきましての主要兵器は、二十ミリの機関砲のほかに、先ほど申しましたようなハウンドドッグという核ミサイルを搭載する装置を持っておるわけでございます。
  189. 石橋政嗣

    ○石橋委員 今回日本に来る予定であったB52はどの型ですか。
  190. 島田豊

    島田(豊)政府委員 現在グアムに配置されております第三航空師団に配属されておりますB52の型は、B52Bでもございます。
  191. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この点について少し詳しくお尋ねをしたいと思うのですが、台風避難という名目で板付に入ってこようとした。これは途中で変更されて沖縄に行ったわけですが、沖縄からベトナムに対して爆撃を加えた。非常に重要な問題であります。これに対する日本政府、特に外務省の態度というものは、私は平和的な解決を願っているなどという政府のことばとはうらはらのものだといわざるを得ないと思うのです。  そこでお尋ねをしたいのですけれども、台風避難という名目をつけさえすれば、いつでも事前協議の対象にならない、こういうふうなお考えなのかどうか。
  192. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約の実行にあたってうそをつくというようなことをやれば、これはもう条約自体に亀裂を生ずることになりまして、さようなことは考えられません。でありますから、あくまで台風避難であるという場合には、われわれとしてはそのことばを信じて処理したいと考えております。しかし、ただそういう口実を設けて、そうして実際はそうでないという事実は、これは絶対に許さるべきことではございません。事前においても、事後においてもこれは許さるべきことではない、さようなことがもし起これば、この重要な両国の条約上の関係に非常な亀裂を生ずるということになるのでありますから、相手方もそういうことをやるはずはないとわれわれは考えております。
  193. 石橋政嗣

    ○石橋委員 ここで整理をしておきたいと思うのですが、台風避難という名目で来そうになったから、——まあ来たとしてもいいです。だから事前協議の対象にならぬのですか、それとも配置されるのでなくて、ほんの一時使用だから事前協議にならぬのか、どっちなんですか。
  194. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 配置の重要なる変更に該当いたしません。でありますから、その点が要点になるわけであります。
  195. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、台風避難という名目をつけようとつけまいと、一時使用ならば何でもかまわぬ、こういうことになるわけですね。
  196. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お説のとおりでありますが、ただ一時使用が問題であって、一時使用でも戦闘爆撃行為にそれを使うということであれば、これは黙って許さるべきことではございません。
  197. 青木正

    青木委員長 石橋政嗣君、時間がまいっておりますので、結論をお願いいたします。
  198. 石橋政嗣

    ○石橋委員 さっき時間が若干ずれておりますから、その点の御考慮を願います。  そうしますと、グアム島から直接ベトナム爆撃をやる、帰りに日本の基地にちょっと寄って、そうしてグアム島に戻る、こういうことを繰り返して、ちょっと使用、ちょっと使用ということは、幾らやってもかまわぬのですか。
  199. 安川莊

    ○安川政府委員 問題は、事前協議の対象になります場合は、日本国から行なわれる戦闘作戦行動でございます。でございますから、事前協議の対象になるかどうかはあくまで日本国から行なわれる戦闘作戦行動であるかどうかというところにポイントがあるわけでございます。したがいまして、よその基地から戦闘作戦行動を行ないまして、それが終了したものが日本に飛来するという場合には、事前協議の対象にはならないわけでございます。
  200. 石橋政嗣

    ○石橋委員 重大な問題じゃないですか。爆撃機の航続距離その他の関係から、グアムから発進してベトナムを攻撃してグアムに戻るよりも、日本に来たほうが地理的にも都合がいい。これをローテーションで、しょっちゅうこうやったってかまわぬ、これほどベトナム戦争に直接的な援助行為をやっても放置するというのですか。外務大臣、条約上の問題を離れて、政治的に私は聞きます。
  201. 安川莊

    ○安川政府委員 あくまで問題は日本から——仮定の問題でございますけれども、たとえばB52が日本から出るときの態様が何であるかということによってきまるわけでございます。したがいまして、日本から出るときの態様が戦闘作戦行動のための行動でない場合には、条約上は事前協議の対象にならないわけでございます。
  202. 石橋政嗣

    ○石橋委員 平和的な解決を願う、そういうことを盛んにおっしゃっておりながら、そういうふうに全面的にベトナム作戦に協力をする、そういう姿勢をとってかまわないと思うのですか。私は事前協議の対象になるかどうかという条約上の問題を聞いているのじゃないのです。あなた方の外交上の姿勢をお聞きしているのですから、これは外務大臣から聞きたいのです。
  203. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 文理解釈上はあくまで戦闘行動を基地から起こすか起こさぬかということになるのでありますが、さらに精神解釈をいたしまして、それと同様の価値を持つというような事態にどういう場合がそうなるか、私もちょっとわかりませんけれども、そういうような事態になれば、あるいは問題になるのではないか、これはどうも具体的に考えてみないとわからぬ。
  204. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は具体的に例示しているんですよ。いま申し上げたように、グアム島からベトナムの爆撃をするために発進する、爆撃が完了した、日本の基地に寄る、そしてグアムに帰る、こういうことを繰り返しても、これは一時使用だからかまわぬ、条約上問題がないからかまわぬ、こういう姿勢でいいのですかと聞いているのです。
  205. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ガソリンの積載量等から見て、まっすぐグアム島に帰るよりも、まず日本に寄って帰るだけのガソリンを積んでグアム島に帰るというようなことも、いま御指摘のような場合は考えられます。はたしてそれが基地から直接作戦行動を起こしたというような重要なことに一体なるのか、それを反復して繰り返してやるというような場合にそういうことになるかどうか、これは仮定の問題でございまして、具体的にとにかくこれはやはり作戦行動の重要な部分であるというような実際上の解釈が成り立てば、これはただ看過するわけにはまいらぬかとも思いますが、いずれにいたしましても仮定の問題でありますから、はっきりしたことは申し上げられない。
  206. 青木正

    青木委員長 石橋君、時間がだいぶ超過しております。
  207. 石橋政嗣

    ○石橋委員 非常に重要な問題なんです。これは直接日本の基地から出撃したということでなくても、もしかりにそういうようなことになりますと、もう全面的にベトナム作戦に協力することになるんですよ。そういう立場でひとつ判断をして、あなた方の言う平和的な解決を願うということが真実そのものだということを行動でお示しを願いたいと思います。  ところで、この間外務委員会で問題が提起されて、あなたが検討すると言ったのが残っているのです。というのは、日本の基地を飛び立つときには、沖縄に行きます、グアムに帰ります、こういう気持ちであった。ところが飛び立ってから気持ちが変わって、あるいは指令が来てベトナムの方向にかじをとって爆撃をやったというような場合には、事前協議の対象にしようといったってできないじゃないか、こういう場合が起きてきたらどうなるのか、これについての御検討はもうすでに願っておると思いますから、ひとつお答えを願いたいと思います。
  208. 安川莊

    ○安川政府委員 そういう場合が現実に起こり得るかどうかということに対して、私は自信を持ってお答えする用意がございませんが、純然たる台風避難で来たものが、台風がおさまったからもとの基地に帰るというときに、途中で作戦命令が出た、かりにそういうことがありとすれば、それは先生の御指摘のように、事実上事前協議はできないわけでございますけれども、私はそういう場合がはたして起こり得るのかどうか、台風避難に来て帰るものが戦闘作戦行動の命令を受けましても、戦闘作戦行動を実際にやるためにはいろいろな準備も要りましょうし、私はそういうことが起こる可能性というのはきわめて少ないというふうに考えます。しかし、かりに仮定の問題としてそういうことが起こり、またそれが可能であるならば、御指摘のように、それは事実上事前協議ができないわけでございます。しかし、そういうことを初めから意図してごまかしてやるというようなことは考えられない事態であると考えております。
  209. 石橋政嗣

    ○石橋委員 時間がありませんから、次に移ります。  要するにこのB52は原水爆の搭載機なんです。先ほどもお認めになりましたように、戦略的報復戦力部隊の主力なんです。こういうものが日本に入ってくるというようなことになりますと、これは非常に重要な意味を持ってくると思います。  いま一つ、装備の面から考えてみたいと思うのですが、ベトナム作戦に従事している間はあるいは原水爆を搭載するということはないかもしれません。この点は私も常識的にないだろうというほうに加担してもかまいません。しかし問題はミサイルですよ。ハウンドドッグというものは、先ほどB52のHだけに積んでいるようなことを言っておりますが、新しい型のものについているのは、同じくこれはミサイルの改良型なのです。ことしの年頭に行なわれましたジョンソン大統領の国防白書の中にもはっきり出ているのです。従来のB52には大体射程八百マイル程度のハウンドドッグが装備されておった、新しい型のB52には射程千マイルほどのもっと優秀なミサイル改良型が装備されている、こういう説明がジョンソン大統領から漏らされているのです。何もHだけに積まれているのじゃないです。そうすると、これは装備の面から言っても問題ですよ、単に一時使用であろうと何であろうと。すなわち原水爆は積んでおらないかもしれぬけれども、核弾頭のミサイルの装置というものは、B52である以上ついているはずです。これがついている限り、装備の面で事前協議の対象になるわけですが、これはいかがですか。
  210. 安川莊

    ○安川政府委員 御指摘のように、もし一時的な使用でございましても、核装備をしておるときには当然事前協議の対象になるわけでございます。しかし、何回も政府が申し上げておりますとおり、核弾頭というものと核弾頭の運搬兵器というものとは区別して考えておりますから、運搬兵器だけが入ったからといって直ちに核兵器の持ち込みとは見ておらないわけでございます。でございますから、B52の場合にもその原則によって判断するわけでございます。
  211. 青木正

    青木委員長 石橋君、時間がだいぶ超過しておりますので……。
  212. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなたは運搬兵器はならぬとおっしゃいましたが、核専用の運搬兵器はなるんですよ、ランチャーは、発射機は。だから、原水爆は積んでないかもしれない、あるいは核弾頭は積んでないかもしれない。しかし原爆の発射機というものはついているんですよ。核専用のミサイルの発射機がついている限り、事前協議の対象になるというのが従来の説明じゃないですか。おかしいじゃないですか。
  213. 安川莊

    ○安川政府委員 その運搬兵器というものがもっぱら本来的に核弾頭しか使えないものであれば、そのもの自体が核兵器になるわけでございますけれども、B52全体として考えてみた場合に、私専門家じゃございませんけれども、かりに核専用のミサイルというものを搭載しておりましても、B52全体としてこれがもっぱら核攻撃のためにのみ使われるものでない限りは、そのもの自体を核兵器と断ずるわけにはいかないわけでございます。
  214. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ防衛庁長官にお尋ねしますが、ハウンドドッグは核専用です。この点はお認めになりますか。
  215. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ちょっとハウンドドッグというのを私知りませんから、政府委員から答弁させます。
  216. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほどの私の答弁の中でHだけかハウンドドッグを装備しているというふうに申し上げましたが、これは先生御指摘のとおりにGからございます。私Hだけを申し上げたわけでございます。この種の飛行機はハウンドドッグを搭載可能でございまして、それ以外には二十ミリのバルカン砲を持っておるだけでございますから、通常の使用方法としては核ミサイルの発射飛行機ではないかというふうに考えております。
  217. 青木正

    青木委員長 石橋君、時間がだいぶ超過いたしておりますので……。
  218. 石橋政嗣

    ○石橋委員 しかしはっきりいたしましたでしょう。Gも積んでいる、Hも積んでいる。B52にハウンドドッグが積まれていることは軍事的な常識なのです。従来は二発しか積めなかったものが四発積めるようになった、射程も伸びた、これもはっきりしているのです。B52からハウンドドッグを除くことはできません。しかも核専用だということもいま認めました。そうしますと、B52が来る限り、かりに原水爆が積まれておるまいと、核ミサイルが積まれておるまいと、弾頭が積まれておるまいと、核専用の発射機そのものが積まれているのです。この面からいって事前協議の対象になるでしょう、もし来るという場合には。
  219. 安川莊

    ○安川政府委員 私は、B52の種類、それからそれにそれぞれどういう兵器をつけておるかということは専門家でございませんので存じませんが、現在、現に先ほど石橋先生も御指摘になりましたように、ベトナムに対するB52は通常爆弾を使っておるのでございますから、常識的に考えまして、B52が必ず核爆撃にしか使用されないとは、私は必ずしも考えないのであります。ランチャーを積んでおりまして、それのみにしかB52が使えないということであるならば問題でございますけれども、私はそうではないと了解しております。
  220. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ、ランチャーを積んできたらどうですか。原水爆や核弾頭は積んでこないかもしれない、ベトナムの作戦に現在核兵器を使っていませんからね。しかし、一々B52が発射機まではずしてきますか。あなた、ジョンソン大統領の国防教書もも読んでください。ことしの国防教書で何といっていますか、「われわれの戦略的報復戦力部隊の威力は、米国またはわが同盟諸国に対する核攻撃を阻止できるものでなければならない。われわれが現在保有する戦力は、その能力を持っている。」として、具体的に「八百五十基以上の地上に基地を置く大陸弾道ミサイル。三百基以上のポラリス潜水艦装備核弾道ミサイル。その半数が十五分以内に飛び立てる九百機以上の戦略爆撃機を保有している。」この中にはB52が主力として入っているのですよ。しかもそのあとに、必要な場合、B52型その他の爆撃機を使って戦術的に配置することのできる新型ミサイルというものができているということをことしの初頭に誇らしげに述べているのです。B52と核というものとは本来切り離すことができないのです。しかし、それを一時的にベトナム作戦に転用しているわけです。転用している限りにおいては、先ほどから申し上げているように、原水爆や核弾頭は持ってこないかもしれません。しかし、その場合だからといって、発射機そのものをはずして行動するなんということは、この飛行機の性格からいってあり得ないのです。しかも、その装備されている、ミサイルはハウンドドッグといって、旧型といえ、改良型といえ、すべて核専用なんです。いま専門家は認めているのです。そうしますと、核専用の発射機が装備されてくるということになれば、当然事前協議の対象になると思いますが、この点だけはっきり答えてください。
  221. 安川莊

    ○安川政府委員 そのランチャーが核専用でありましても、B52が核専用であるとは必ずしも言えないのでありまして、それは、現在通常爆弾による爆撃をB52が実際に行なっているということから見ても明らかであると思います。
  222. 青木正

    青木委員長 約束の時間ですから、もう一問だけに願います。
  223. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それで逃げられるというのじゃいけないですよ。解明の義務がある。ほかの問題には触れません。ハウンドドッグというものは核専用、いいですね。そうしますと、核弾頭は持ってこないでしょう。持ってこないかもしれません。しかし、核専用のハウンドドッグのランチャーが装備されている限り、事前協議の対象になるとなぜ言えないのですか。
  224. 安川莊

    ○安川政府委員 問題は、そのランチャーが核専用であるかどうかということではなくて、B52が核専用であるかどうかということでございます。B52が核専用でない限りは、通常爆弾にも使用し得る以上は、B52が直ちに核兵器とは言えないということでございます。
  225. 石橋政嗣

    ○石橋委員 もう一つ。それじゃ、防衛局長に答えさせてください。B52に装備されているハウンドドッグというものは、旧型、新型を問わず核専用ミサイルである。この点間違いありませんか。
  226. 島田豊

    島田(豊)政府委員 本来の使用目的からすると、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  227. 石橋政嗣

    ○石橋委員 認めているのですよ、防衛局長は。軍事専門家が認めているのです。そうしますと、これは安保特別委員会のとき以来論議されている問題なんだ。安保特別委員会のときの速記録をもう一回読んでみなさい。当時引用されましたのはレギュラスなんですよ。第七艦隊の旗艦ヘレナに積まれておるレギュラスの問題についてここで大論議をしたのです。そのときに当時の加藤防衛局長は何と言っているか。「核兵器専用のものは、運搬用具といえども事前協議の対象になる、こう申し上げております。」はっきり答えている。だから、ならぬと言えば食い違いが出てくるのですよ。
  228. 松野頼三

    ○松野国務大臣 石橋さんも御承知のように、アメリカの戦略空軍の内容は、全部が全部核弾頭ばかり装備しておるわけではありません。核も積めるけれども、その他の任務にもついております。それは御承知のとおりだと私は思います。したがって、そのランチャーの一部分だけをおっしゃれば別だが、B52が、それをはずせば性能がゼロだというわけではない。したがって、それが有効であるかどうかは別としてゼロではありません。その他新型のHでもそれ以外に使っております。したがって、専門のものだというわけではありません。そのランチャー一つをとって言うならば、これは核を積む、これは爆弾を積む、これは普通通常兵器を積む、各種のものがあるのであります。したがって、今日私たちはその解釈をここで石橋さんの言われたとおりに了解するわけにはまいりません。おそらく石橋さんも御了解の上で御質問だったと思います。
  229. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は要らぬことは言いませんから、明確に答えてください。結局、ハウンドドッグという空対地のミサイルは核専用である。B52とハウンドドッグとは切り離すことができない。これは軍事的常識です。そこで、ハウンドドッグの核弾頭は持ってこない場合があるでしょうが、しかしランチャーをそのままつけてくるということは考えられる。その場合は事前協議の対象になるというのが従前の政府の解釈で、それを否定するとすれば食い違いが出てくる。昭和三十五年四月二十七日の安保特別委員会の会議録をそこであけなさい。ページ五。いいですか。当時の加藤防衛局長、今度参議院に出て落選した人、この人がはっきり答えておりますよ。「核兵器専用のものは、運搬用具といえども事前協議の対象になる、」これは当時、第七艦隊の旗艦ヘレナがレギュラスを積んでおるという議論をしたときに、レギュラスの1型か2型かという議論になった。レギュラスの2型は核専用だ、そうだとするならば2型のランチャーを積んできても事前協議の対象になる、こういう答弁をしておりますよ。これと同じです。軍艦が核専用のランチャーを積んできたときに事前協議の対象になるならば、爆撃機が核専用のランチャーを積んできたら事前協議の対象になるのは当然じゃありませんか。
  230. 安川莊

    ○安川政府委員 何回も同じことを申し上げますが、問題は、B52が日本に入るときにB52自体が核兵器かどうかということでございます。それで、ランチャーを積んだだけでB52が核兵器ということにはならないのでございまして、私は結論だけ申し上げておるわけでございます。
  231. 青木正

    青木委員長 石橋君、だいぶ超過しておりますので……。
  232. 石橋政嗣

    ○石橋委員 わかってますよ、委員長。それでは、私の質問に答えておりますか。核専用のハウンドドッグの核弾頭は積まなくとも、ランチャーを積んできたときに事前協議の対象になるか、なぜ答えられないのですか。外務大臣、答えなさい、局長が逃げるならば。答えてないまま時間が来たでは、委員長、済まないじゃないですか。
  233. 安川莊

    ○安川政府委員 それでは結論を申し上げますと、先ほどから私が申し上げました理由によりまして、その場合にも事前協議の対象にはならないのでございます。弾頭をつけてくる場合は別でございます。
  234. 石橋政嗣

    ○石橋委員 おかしいじゃないですか、それでは安保特別委員会のときに説明したのはうそを言ったのですか。レギュラスの問題を論議したときにうそを言ったのですか。事前協議の問題があれほど論議の対象になった段階で、うそを言ったのですか。レギュラス2型のランチャーを積んでくれば事前協議の対象になると言ったのは、うそだったのですか、当時は。国民を欺瞞するために方便として言ったのですか。
  235. 海原治

    ○海原政府委員 話が少しこんがらがってまいっておりますが、石橋先生がいまお使いになっておりますランチャーということばにこれは関係がございます。それで、レギュラスという、ミサイルにつきましては、言うなれば、大砲のようなものにすぐそのまま砲がつけられるわけであります。このときの議論はそういうことでございましたが、B52につきましては、B52全部がいわばランチャーのようなものでございます。B52の爆撃機は常にハウンドドッグをつけて出るんだ、こういう前提でものをおっしゃっておりますが、それはそういうものではございません。B52の翼の下についておりますところのパイロン、これからミサイルが発射されますけれども、ランチャーということばと関連してお考えの場合には、先ほど来安川北米局長が言っておりますように、B52全部がハウンドドッグというもののランチャーと、こういうようにお考えいただきたい。さらにはB52が出動しますときには、常にハウンドドッグをつけておるのだ、したがって、ハウンドドッグが翼の下にぶら下がりますが、ぶら下がるところの機具があれば、すなわちこれはランチャーがあるのだ、こういうことにはならないわけでございます。かねがね事前協議の対象になるものにつきましては、先生も御存じのように、地対地のIRBM、MRBM、こういうものは当然に核弾頭ということになっておりますけれども、両方のものがつきますときには、核弾頭を装着した場合において初めて核兵器である、これは従来から政府が一貫してお答えしておるところでございます。したがいまして、いままでのところを総合いたしますと、まず第一に、B52とハウンドドッグとは切り離せないものであるという前提に私は問題があると思います。B52が飛んでくる場合には核弾頭を常に発射できる、いわゆるランチャーをつけておるのだということではございませんで、これはB52の爆撃機の翼の下に、空対空のミサイル、空対地のミサイルを発射できるものがついておるだけでございますから、言うなればB52全部が核弾頭を発射できるランチャーである。と同時に、普通爆弾をも投下できるランチャーである。したがって、核弾頭をつけてない場合のB52は、別に事前協議の対象となるものではございません。
  236. 青木正

    青木委員長 石橋君、それではこれでおしまいに願います。
  237. 石橋政嗣

    ○石橋委員 わかりました。そういう解釈でいくと、今度スレッシャー型のSSNの問題にも出てきますよ。サブロックの問題について、従来政府答弁したものとの矛盾が出てまいります。しかし、時間がありませんから私はここで締めくくりをしますけれども、B52そのものはハウンドドッグのランチャーだ。それほどB52というものは核兵器というものと切り離すことのできない性格のものなんだ。一時的に転用はしておっても、常識として、B52そのものが核そのものだと言ってもいいほど密接不可分の関係にある。そういうものを軽々に日本の国内に入れるということは絶対に許されぬということだけを申し上げて、私は一応質問を終わります。
  238. 青木正

    青木委員長 これにて石橋君の質疑は終了いたしました。  午後は二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十三分開議
  239. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)に対する質疑を続行いたします。石田宥全君。
  240. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣にお伺いいたしますが、昨今の食糧事情についての実情を承りたいと思うのです。  まず最初に、最近東京都内におきましては、準内地米二五%の混入をせられたようであります。新潟へ参りますと、主産地である県でさえも外米を混入しておるような状況でありますが、外米の輸入状況について、今日まで輸入せられました数量と、今後の計画の数字を承って、今後の見通しを承りたいと思います。
  241. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申します。  昨年の、三十九年の北海道の冷害のために相当数量の不足もあり、また四十年度は御存じのとおりに、異常気象等の関係で冷害のおそれがありますので、輸入については特別の増加をはかってまいりまして、いままで準内地米で六十二万トン、それからそうでない普通の外米として合計二十万トン入っております。そこで、需給関係はそれで心配はないところへいっておりますが、数字的には食糧庁長官から答弁いたさせます。
  242. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体の数字でけっこうですから……。  そういたしますと、次に問題になるのは、春の予算編成期におきましては、準内地米は三十二万トン程度の輸入が予定せられておったのであります。予算が決定いたしましてからわずか二カ月くらいの間に、大幅な輸入計画が進められてまいりまして、すでにただいま御答弁のように六十二万トンの準内地米の輸入をしておるということであります。米不足については昨年の秋から事態は明瞭であったのでありますが、大蔵大臣にお伺いいたしますが、国の予算というものは、そのようにいいかげんに行き当たりばったりで、三十二万トンの輸入をすれば配給はまかなえるという予算を組んでおきながら、その予算の成立間もなくから輸入の手配を始め、今日まさにその倍の六十二万トンの輸入をしなければならないというようなことは、まことにこれはゆゆしい問題だと思うのです。きのうから財政法の問題も出ておりますが、予算編成当時に三十二万トンしか予定していないのに、六十二万トンも輸入しなければ配給ができないというような事態であります。こういう事態に対する大蔵省の予算編成に対する態度は、端的に言うならば、国会の審議の場において国会議員を欺瞞し、国民を愚弄するものと言わなければならないと思うのでありますが、大蔵省の予算というものはそのようないいかげんなものであるかどうかということをひとつ御答弁を願いたい。
  243. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算は、大体その前の年の年末に最終決定をいたすわけでありますが、予算を決定するにあたりましては、この時点におきまするあらゆる資料、あらゆる見通し等を立てまして、それに基づいて編成するものでございます。しかし、食糧のようなものは、天候というようなことで見込みの違う場合があるわけであります。現にことしのごときは、あたたかくなるのがだいぶおくれております。そういうような関係で、どうもことしは不作じゃないかというようなことで、端境期のことが心配になるわけであります。そういうようなことから輸入量がふえてきたような次第でございますが、決してこれは、国会を通過するために数字を変えているというようなことはない。総合的に検討いたしまして、その時点におきましてはこれが最も権威のある見通しであるというものに基づいてきめられている次第でございます。
  244. 石田宥全

    石田(宥)委員 少なくとも昨年の暮れの段階において、すでに米不足は明らかであったのです。予算の審議というものは、それでは何のために行なわれているか。昨年の暮れの予算編成の時点において正しく評価して編成するということであるが、何のために審議が行なわれるのです。私は、不幸にして春の予算審議の過程でこの問題を取り上げることができなかったのでありますけれども、すでに三十九米穀年度中に四十年度の米を五十万トンも食い込んでいるのです。だから、もうすでに昨年の秋の段階でことしの米不足は明らかであったはずです。それをのうのうと三十二万トンで予算を出し、その予算を成立させるということは、私は不見識もはなはだしいもんだと言わなければならないと思うのであります。まずその点はその程度で指摘をいたしておきます。  今後このようなことのないように要望申し上げて次に移りますが、次に農林大臣にお伺いしますが、ことしの生産者米価は、いわゆる指数化方式という方式をとられ、それに若干の加算をされたのでありますが、指数化方式というものは、御承知のように、一定のこれはパリティ価格といってもいいところの算術計算で価格を決定することのできる方式でありまするから、これは役人の諸君は好ましい算定方式だと言うでございましょうが、私は、この指数化方式に対して農林大臣がはたして賛成であるかどうか、疑いを持っておるのであります。なぜかというと、坂田さんは米の問題について、農業の問題について、よく事情に精通された方であるからであります。いかがですか、農林大臣。
  245. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 四十年産米価の決定につきましては、審議会においても十分御審議を願ったわけでありますが、この際指数化方式によるのである、しかし、この本質は、御存じのとおりに、やはり生産費及び所得補償方式を最もよく具現するものであるということ、しこうしてまた、その基準米価、基準年の米価といたしましては、いわゆる五百五十円という、農家の労働時間等のいろいろな点を大づかみにいろいろと考えまして加算されましたる臨時特別加算なんかを加えましたものを基準米価にして、そして都市の労働賃金とのスライドを十分考えていきまするわけであります。特に今年はいろいろと冷害等の関係もありますので、それに二百五十五円加算したわけでございますので、私としてはこれは大賛成と申してもよかろうかと思います。
  246. 石田宥全

    石田(宥)委員 はなはだ了解に苦しむわけでありますが、次に、経済企画庁長官は、これは新聞談話でありますが、消費者米価の値上げについては、生産者米価と消費者米価の逆ざやというようなものをなくしなければならないので、消費者米価は上げないというようなことは言えないのではないかという意味の発言をされておるのですね。そうしますと、この間も本会議でどなたかが指摘されましたように、いまの食管法というものは、生産者米価と消費者米価とは、法律のたてまえが別になっておるわけです。それを指数化方式をとってスライド制をとるということになると、食管法を破壊することになると思う。ですから、もしそういうふうに指数化方式をとり、スライド方式をとって、生産費プラス諸経費イコール消費者米価ということにしたいのであるならば、私は、食管法を改正して、しかる後にこれをやらなければならないのであって、食管法が厳存する限りにおいて、そうした消費者米価の決定のしかたというものは許されないのではないか、こう考えるのでありますが、経済企画庁長官の御意見を承りたいと思います。
  247. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の言いましたことに若干のあれがあると思いますが、米価が上がった場合にいま通念としては、ある程度消費者米価を上げてもいいのじゃないか。しかし、食管法は、御承知のとおり数量を確保し、あるいは国民の主食糧を低廉に供給するという立場と、両方の機能を持っておりますので、これは十分尊重していかなければならぬわけで、しかし、著しく上がりました場合に、ある程度逆ざやのことも起こってまいりますし、あるいは当時の財政事情もございますので、そういう場合には若干上げてもいいのじゃないかということを申したのであって、それは食管法第四条二項によりまして、家計費及び物価、あるいはその他の経済情勢等を考慮して消費者米価をきめるということになっておりますので、この程度では食管法を破壊するというようなことではないのじゃないか。完全なスライド制をとると言ったわけではございません。
  248. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣にちょっと伺いますが、農林大臣は先ほどスライド方式に対しては賛成であった、こういう御答弁でありますが、農林大臣は、最近麦を中心とする裏作の作付放棄が二百万ヘクタール程度になっておるといわれておるのでありますが、なぜ一体この作付放棄が全耕地の三分の一にも及ぶものになったとお考えになっておりますか。
  249. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えします。  この裏作の放棄のなにはそう大きくはありませんので、大体五十万町歩——いろいろ変わったものやら減じたものが、そういうところへいっております。これはもともと全部の農地が作付されておるわけでありませんので、おもに麦作の転換ということであろうと思います。
  250. 石田宥全

    石田(宥)委員 要領を得ない答弁ですけれども、農林大臣、不勉強ですね。ことしの農業白書では、一昨年の秋作の作付放棄は百五十八万ヘクタールに及ぶ、農業白書に書いてあるのですよ。それから東大の神豆教授は、昨年、三十九年度の秋の作付放棄は二百数十万ヘクタールになると数字をあげておるのです。もう少し勉強しなさい。  そこで、なぜ私はそういうことを言うかというと、指数化方式というものをとれば、自家労賃というものが適正に評価されない計算が行なわれやすいおそれがある。現に麦は指数化方式になっておるから、だから麦作の作付放棄が大きくなっておるのじゃないですか。もし米に指数化方式をとるということになれば、これは米の作付放棄がさらに拠大するのではないかということを私はおそれるからです。大臣は一体そういう点をお考えになっておりませんか。
  251. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 指数化方式は、麦には指数化方式がないのでございまするから、この指数化方式は米価審議会においても十分御審議を願ったのでありますが、生産費及び所得補償方式による、このことを一番的確によくあらわす方法がないかという問題でこれが採用されたのでありまして、決してこの問題はそういうところへきておりませんのであります。したがって、去年の米価のときに五百五十円を加算した、そのものを基準にいたしまして、それに対して都市の五人以上の労働賃金の上がり方を見、スライドさせ、また物価の上がり等もスライドさせておるのであります。なお、いろいろの点で冷害の関係もありますので、二百五十五円の予約奨励金をも加えておるのでありまして、総計において全体で千三百七十五円上がっており、終戦後において、昨年よりもやや少ないけれども、九・二%の上昇を見ておるわけであります。これによって、再生産が困難だということは絶対ないと確信いたしております。
  252. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣、麦がパリティ方式だぐらいのことは、私はよく知っておるのですよ。同工異曲で、ほとんど相違がないのです。一番大きな問題は、自家労賃が適正に評価されるかされないかというところに問題があるのです。その点においては、パリティ方式も指数化方式も同様だということです。これはひとつもう少し勉強してください。  次に、農林大臣に伺いたいと思うのでありますが、政府、自民党は農業基本法を制定するにあたって、十年後には米は一〇%程度の生産過剰になるであろうという主張に基づいて、一部の御用学者は、米は自給度五〇%でいいのではないか、こういう考えを持っておった。そうしてさっき農林大臣も触れられたように、大麦、裸麦の作付転換に関する法律というものを出して——これはあとの飼料とも関連いたしますが、政府は飼料作物への作付を転換させる法律を出してきた。われわれはこれをつぶしたけれども、しかし、行政指導はとってこられたから、さっき私が指摘したように、二百万ヘクタールもの作付放棄が出ておるのです。またその考え方は、いまはなくなった人をかれこれ言うのはどうかと思いますけれども、河野さんが農林大臣のときに、米は十年後には一〇%ぐらい余るであろうから、作付制限をしなければならないということを述べておるのです。ところが、先ほど御答弁になりましたように、非常な米不足で、いま東京都民をはじめ新潟のような生産地においてすら、外米の混入をしなければならないような状態になっておる。また、国際的にも非常な問題がございまして、一昨年はアメリカで大論争が行なわれましたが、昨年の十月五日、ローマでFAOの総会が開かれたのでありますが、このときに発表されましたところによると、世界では一日に一万人ずつ餓死者が出ておる。そうして過去五年間の統計では、人口の増加率と食糧の増加率では、食糧の増産率は人口の増加率に及ばなかったという文書を発表しております。今後の食糧問題に対する農林大臣の所見を伺いたいと思います。
  253. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 まず、以前の米の収穫が余るじゃないかという問題でありますが、実は二年か三年前でしたか、そういうのを長期見通しとして持ってまいりましたことがありまするが、そのときには、計数的にそうなっておっても、実際災害も起こり冷害も起こることであるからそういう結果にはならないということを述べて、そして、それを訂正させたことを自分は覚えておるのであります。実際そのとおりでありまして、いま石田委員お話しのとおり、世界的にも確かに食糧というものが不足のきみであります。FAOの問題からのお話お話のとおりだと私も思います。それからまたボイドオア、事務局長をやっておりまして五年ほど前に日本へ参りましたが、やはりその点を強く要請しておりました。警告も発しております。東南アジアの低開発国における貿易問題、昨年の三月以後の会議においても、東南アジア全体としても、数年後には七十六億ドルの輸入をしなければならぬであろうということが事務局長の資料に出ておることも、石田君もよく御存じであろうと思う。そういう実態でありまするので、私どもとしては、これは一度手をゆるめまするとおそらくたいへんな問題が起こると思います。その点は同感でございまして、やはり国内の米の自給率をでき得る限り上げていくということに努力すべきものである、こう確信いたしておるわけであります。
  254. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、本年の生産者米価は、農業団体、農民団体の要求価格ようも著しく低く決定を見たのでありまして、各種諸加算をはずしますと、六十キロ当たり一俵六千二、三百円ぐらいになると思いますが、最近では愛知県下あるいは関東地方では、一俵、六十キロ七千円ぐらいで売買が行なわれる、青田売りが始まっておる、こういう状況の中で、いまのような価格ではたして予定どおり米を集めることができるかどうか、この点をひとつ伺いたいと思います。  次に、農林大臣と大蔵大臣に伺いたいと思うのでありますが、ことしの生産者米価は、いま申し上げるように、農民の非常な不満な米価ではありまするけれども、一応決定を見たのでありまするが、先ほども予算の話がございましたけれども、すでに生産者米価は決定を見たわけです。その決定を見て、食管赤字というものがおおよそどのくらいになるかということも、計算ができるはずです。なぜ一体今度の国会にその補正予算をお組みにならなかったのか、これはひとつ大蔵大臣に伺いたい。  それから農林大臣に、いま私が申し上げるように非常に低米価でありまするから、青田売買などが盛んに行なわれますと、なかなか予定数量が確保困難である。そこで私は、早急に追加払いまたは不足払いというような形で、農民が納得のできるような何らかの追い払い方式について御検討になっておられるかおられないかという点をお伺いをしたいと思います。
  255. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしの生産者米価はきまったわけですが、これに関連いたしまして、消費者米価をどうするかという問題があるわけです。消費者米価につきましては、ただいま上げるというふうにきめてはおりません。しかしながら、これは最終には財政の状況、また経済の動き、そういうものを見て総合的にこれをきめる必要がある、こういうふうに考えておるのでありまして、そういうことで、この消費者米価をどうするかという最終的結論はまだ得ておらない状態であります。したがいまして、生産者米価の引き上げに伴う赤字は、これははっきりしておりますが、これを消す要因である消費者米価というほうがまだ不確定な状態であります。そういう状態でありまするから、まだ補正という構想が固まりませんし、また同時に、補正を組む場合におきまして財源をどうするか、ほかにもいろいろ補正要因があります。そういうようなむずかしい問題がありますので、今国会にはこれを提案いたす運びにならなかったわけであります。
  256. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたしますが、今度の米価が決定いたしましてから、予約の数量でありますが、昨年を一〇〇としますと、今年は同時期に一〇三・五というふうにのぼっておるわけでございまして、その心配は絶対ないと存じます。これは、もちろんよほどの冷害でも起こった場合ということならば別として、現在のところでは心配はない、こう存じております。
  257. 石田宥全

    石田(宥)委員 いま大蔵大臣は消費者米価の問題に触れられましたが、どうも消費者米価の値上げについては、大蔵大臣は大臣就任当時記者会見で、十月からある一定のパーセンテージの値上げをするということを言明された。ところが、この間大蔵委員会では、いまのところ値上げは考えておらないと、こうおっしゃる。経済企画庁長官は、消費者米価を上げないわけにはいかないであろうという言明をしていらっしゃる。農林大臣は、米価審議会では今年中は上げないと、こういう言明をしていらっしゃる。三人三様の答弁をしていらっしゃるんだが、これを新聞を通じて見ておる国民は、これでは来年の一月から消費者米価を上げられるのではないかというふうに受け取っておるわけです。大体そういうふうに受け取ってよろしいでしょうか。どうですか。
  258. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだ消費者米価の問題については、経済政策会議におきましても話をいたしておりません。いずれ今後財政状況を勘案し、あるいは物価問題を勘案し、そうしてわれわれとしてはどうするかということを決定していく、こういうことでございます。
  259. 石田宥全

    石田(宥)委員 経済企画庁長官にお伺いしますが、過去において消費者米価がしばしば上げられております。ことしの春も一四・八%ほど上がったわけでありますが、過去の消費者米価値上がりと諸物価の値上がりとの関連は、どういう状況でありましたか。また、今後の消費者米価値上げに伴う諸物価に対する影響というか、はね返りはどう御判断になっておりますか。
  260. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 消費者米価を上げました場合に、他の諸物価にすぐどういう割合で影響するかということは非常に判定が困難でございまして、一々の物価の中で米価が上がったためにこれだけ上がったんだというようなことを判定することはむずかしいのでございます。過去に上がりました場合に総括的に考えますと、三十七年、四十年、ことしの一月に上げておりますが、その場合に、大体三十七年のときは十二月に上げましたが、前月の総合物価に対しまして一・二一%、そうして四十年のときには一・二五%と、大体こういうような割合で総合物価に影響いたしております。そのときの他の物価要因を含めては、ほぼ同じ二%上がっております、前月に比べて。大体そういうことでございます。
  261. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、食管赤字の問題でありますが、米価の問題を論議されますと、必ず食管赤字の問題が問題にされるのであります。新聞などを見ておりますと、食管の赤字というものはことごとく米の逆ざやから起こる数字のように誤解をされておる向きが多いのでありますが、この点は、たとえば農安法の関係であるとか、あるいは畜産物価格安定法の関係であるとか、あるいは飼料価格安定法の関係であるとか、たくさんの要素があることは明らかでありますが、問題は、私ここで農林大臣及び大蔵大臣にはっきりひとつ強く要請をいたしたいことは、食管会計の赤字、本年予算は一千九十二億でありますが、その中には事務人件費及び金利、倉敷料という中間的な、当然これは行政費の負担とすべき性質のものが含まれておるわけです。こういうふうに事務人件費、金利、倉敷料などは、これは行政費に組み入れるべきものであって、食糧庁の職員だけが米の会計の中から支払いをするなどということがいかに不合理であるかということは、もはや議論の余地はないのです。来年度のこの食管会計をお組みになる場合においては、以上申し上げた諸点について、ほぼ六百億程度のものになるはずでありますが、これは行政費に組み入れて予算を編成さるべきであると私は考える。いまちようどこれから予算編成に取りかかられる時期でございますので、特に私はこれを強く要請をしたいと思うのでありますが、大蔵大臣並びに農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  262. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 食管の会計の支出の中に行政管理的な経費が相当入っておるということは、お話のとおりであります。しかし、政府におきましては、これはできる限り分離したほうがよかろうというので、せつ然と区分できるものについては、これを一般会計の負担にいたしております。しかし、なかなかこれが行政費なりやあるいは営業的な経費なりやということは、区分が困難な状態がありますので、よく考えてみますけれども、あなたのおっしゃるように、この六百億が全部一般会計だというふうにはお答えはできませんです。
  263. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 石田委員の要請については、私も同感であります。しかし、いろいろ問題がございまして、直ちに実現をはかることがなかなかむずかしいいろいろの事情があるということを申し上げておきます。
  264. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣、ひとつ勇気を持って大蔵大臣に折衝をして、来年度予算から実現をするように努力をしていただきたい。そこで、私は生産者米価をただ上げさえすればいいという意見ではないのです。実は政府の施策によって生産者米価の生産費が引き下げられるような施策が講ぜられるならば、これは生産者米価を必ずしもわれわれは高いものを要求いたしません。ところが、政府は一体何をやっておるのですか。たとえば固定資産税のようなものを実売買価格によって評価をして、そうして農地だけは去年から上げなかったけれども、少なくとも農家の宅地、山林などは大幅に固定資産税を上げた。再来年からは、今度は農地もその他の固定資産税も評価どおりに上げるんじゃないですか。あるいはまた農業用のガソリン税、これはどうですか。これは、大蔵大臣、ひとつはっきり伺いたいのでありますが、ガソリン税というものは、これは目的税だと前の大蔵大臣ははっきり言っておる。これは道路のための——国道並びに地方道が若干入っておりますけれども、ここで詳しい数字を私は聞こうとはいたしませんけれども、いま予算委員会と大蔵委員会で大蔵委員会側に設置された小委員会がありますけれども、なかなかこれは審議が進んでおりません。一体大蔵大臣はたんぼの中を動かす自動耕うん機であるとか、農舎の中に据えつけておる機械などに対して使うガソリンに、道路だけを走らせるところの自動車と同じようなガソリン税をかけるということが、いかに不合理であり、不適当であるかということは、おわかりになっておると思うのでありますが、こういうふうな農機具、あるいは漁船などで、主として道路を動かさないところの機械に対するガソリン税は、来年度予算ではひとつ免税にするという言明ができるかどうか。こんな不合理な、適正を欠くような課税のしかたについては、ぜひこれは改めてもらわなければならないと思いますが、どうですか。
  265. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話の点は、ごもっともなところがあるのですが、その手続といたしまして、それを免税にするということはなかなかむずかしいのです。これは、私どもは絶対できないというものじゃありませんけれども、その手続が非常に煩瑣でありまして、そうするためにまた金が要る、こういうことになりますので、むしろそういう税収入は、農家が非常に待望しておる農道の改善にこれを充てるがよろしい、こういうふうに考えておりますので、ことしもそういう措置をとりましたが、来年度もそれをさらに進めてまいりたい、かようにお答え申し上げます。
  266. 石田宥全

    石田(宥)委員 いまの日本の財政では、いわゆる経済合理主義でものを考えておられるようでありますから、したがって、安ければ外国から輸入をする。ことに貿易自由化で、農産物はずいぶん——あとで畜産の問題に触れますから飼料の問題にも触れますけれども、おやりになっておる。経済合理主義で安ければ外国から入れるということは、やがて今度は高くとも輸入せざるを得ないという状態になると思うのですね。たとえばアメリカ、カナダの小麦を大量に輸入しておった。非常に安かった。ところが、ソ連が非常に不作であった。とたんにはね上がったけれども、輸入量を減らすわけにはいかないのですね。それと同じことがあらゆる面に起こると思うのです。ことに最近、農林省が中心になって進めておられるところの食品コンビナート、あるいは大型サイロ、アメリカのCCCからの借款によるこれらの施設ができている。受け入れ体制がちゃんとできてしまったら、それで国内の生産がうんと減退してしまったら、どんなに高くなっても、国内で生産するよりももっと高くなっても輸入をしなければならないという状態になると思うのです。大蔵大臣は、そういう点で国際収支の関係から見て、いまのような農業政策の姿勢でよろしいとお考えになっているかどうか。私は、これは将来重大な問題に発展すると思うので伺っておきたいと思うんです。
  267. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 貿易は自由化の体制でございますが、私は食糧、特に主食は大方を国内で自給するという経済状態がよろしいというふうに考えております。お話のように国際収支の面から見ますと、食糧の輸入というものは、これはもうたいへんなウエートを持つものであります。しかもこの食糧は、輸入いたしましても、石炭や鉄などと違いまして、再生産というふうには働かないわけでございます。そういうような性格のものでございますから、なるべくこれを自給していく、少少のことはしようがないですが、相当高い自給度を保持していく、そういう見地から農業政策を進めることが好ましい、かような考えであります。
  268. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、農林大臣に伺いますが、政府が農業基本法に基づいて選択的拡大の方針のもとで指導奨励されました養鶏業界の最近の状況は、飼料高の卵価安で、どこの養鶏業界もいまもう破産の危機に瀕しておる。私は政府、与党の責任はきわめて重大だと思うのです。みずから選択的拡大だと称して盛んに指導奨励をしたが、さて飼料はどんどん高くなる、卵価は暴落をする。農業基本法ができるときに坂田さんは農林水産常任委員長であった。総理大臣に私はこういう警告を発してある。畜産を奨励するというと、飼料が暴騰して、日本の農民はえさ屋のえさになり終わりますよと私は指摘をしておった。いままさにそのとおりになったと思うのでありますが、そこで農林大臣、ひとついまの養鶏の危機にかんがみまして、いまの畜産物価格安定法では調整保管の道しか講ずることができないような状態になっておる。根本的には、畜産物価格安定法の中で、鶏卵を指定品目として取り扱って事業団が買い上げをするようにしなければならないと考えるのだが、いまここで法律を出して審議をしていると間に合わない、もうつぶれちゃう。それで、緊急対策として鶏卵の即時買い上げの措置を講ずべきであると考えるのでありますが、農林大臣はいかがにお考えになっておりますか。
  269. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えします。鶏卵の価格のなにを見ますと、普通のものと違って、季節的な変動ではなくて、もっと長いものがあることは御存じのとおりであります。すなわち、生産が需要に比して伸び過ぎている。ところが、その需要のほうはうんと伸びてなくて、また今度安くなっても需要のほうの伸びが非常に鈍化しておる。こういう実態であることは石田さんもよく御存じのとおりであろうと思う。そういう関係がありまするので、この価格政策はもちろん必要なのでありますが、やりまするときに生産をチェック——ある程度調整のとれる組織の上に立って、そして非常に暴落したときにはこれを救済するというような仕組みでないと、かりに事業団で買うということになりますと、さらに生産が増強されて再び需給とのバランスがますますつかなくなってまいるといったようなことでございますので、私どもといたしまして、やはり調整保管の道を強めていくということ、しこうして今度は、一回生産者団体等が場合によると共販もできる、またその生産の調整もできるという組織を通じて、そしていざというときには、非常に価格の暴落などというときには、これを救済していくという意味で基金制度を設ける。現に八月一日から、御存じのとおりに、全販連が中心になっての基金制度の発足を見ているわけでありますが、こういう面についてわれわれは検討を加えていきたい、こう考えておるわけであります。
  270. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、いまの調整保管だけでありますと、かつて蔬菜でその例があったわけでありますが、かえって長期的に価格を抑圧する作用もまた一面に持っておる。そうなりますと、かえってその目的に沿わないということもあり得るので、私は政府が緊急措置で買い上げた鶏卵というものは、これを学校給食用に回す、あるいは身障児や老人ホーム等に特別に配給をする、そういうふうな消費面の拡大、いわゆる市場の拡大について何らかの措置が行なわれなければ、単に基金が発足をし、調整保管をやったからといってこの問題の解決にはならないと思う。この点について農林大臣は、これらの学校給食や、あるいは厚生省所管の施設等に対する配給についての対策も当然考えておかなければならないところであろうと思うのでありますが、いかがでしょうか。また、大蔵大臣は、当然それくらいの——これは政府・自民党の責任なんでありますから、それに対する予算措置が当然行なわるべきであると思うのでありますが、いかがですか。
  271. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいまの論点でありますが、そのとおりで、私どもはやはり生産調整のできる組織を利用していきたい。生産調整をやはりどうしても考えないと、この卵の問題は解決しないというのが一つ。それから、いまお話しのとおり基金制度、それから調整保管、この三つあるわけでありますが、さらにいまお話しのような消費の増加ということです。ところが、実は卵に限って先進国とあまり違わぬくらい伸びておるので、たとえば大量に学校へ出した、あるいはホームへ出したといった場合において、それだけ追加需要がふえるかどうかということについても検討を加えておるようなわけです。そういう点について検討を加えつつあるのでありますが、いずれにしても需要をもってふやすということが加わってこの体系がなされるものであるということについては同感であります。
  272. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、いま農林大臣からお話しのように、需給調整ということが根本でありまして、これが立たない限り、その需要を財政で造出するということを考えたら、これはたいへんなことになりはしないかというふうに考えます。基本政策ができるかどうか、農林大臣とよく相談をいたします。
  273. 石田宥全

    石田(宥)委員 もうきのう、おととい来問題になっていますから、これは触れるのもどうかと思いますけれども、山一証券などに対する融資のことを考えたら、政府が指導し、奨励して、成長作目だといって大いにやらしておいて、今度つぶれそうになったら、これに対して一体どういう措置をとるかぐらいのことは、もっときちっとした責任体制をとらなければならないと思うのです。こういうふうな点について、私は大蔵大臣ははなはだ不親切だと思うのです。それは原案は、農林省が中心となって、文部省や厚生省と相談をされて原案はつくられるでしょうけれども、やはり大蔵大臣にもっと積極的な意欲を示してもらわないと、これはなかなか困難な仕事ですから、ひとつ御検討を願いたいと思うのです。  学校給食課長見えられたようでありますが、この牛乳の学校給食では、殺菌法の手続上の問題などがあって、何年間かなかなか解決しなかったわけでありますが、最近ようやく牛乳の学校給食も相当いけるようになったわけですが、鶏卵のほうは、その殺菌等の点について、あるいは保管の点についても牛乳とは非常に異なって、受け入れ態勢がつくりやすいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  274. 西田剛

    ○西田説明員 お答えいたします。  学校給食では、ミルクのほかに魚介類、獣鳥鶏肉類、あるいは卵類といった動物性たん白質を一定量とるように基準が設けられておりまして、それによって指導をいたしておりまして、卵の生産地に近い学校等におきましては、鶏卵の使用は相当量に及んでおります。私どものサンプル調査によりますと、一食当たり三・三グラム使用されているというような状況で、約九百万近い児童生徒の完全給食数とにらみ合わせて考えますと、五千八百トンぐらいの年間の使用量、年間生産の約〇・六%くらいに当たるかと思いますが、それくらい使用しておりまして、一般の国民一人当たりの使用量から見ますと、むしろ学校給食ではやや多目に使っておるというような状況であります。もとより鶏卵は、栄養的に非常に価値の高いものでございますから、これをすすめていくということはたいへんけっこうなことでございますが、何と申しましても学校給食におきましては、この値段がかさばらないということがまず最前提となっておりまして、いまのところ小学校の一食当たり二十五円八銭という中では、おかず代はまあ十五円程度見込まれておるわけで、いまの卵の値段とのつり合い等ではやや使いにくいような点もございますが、漸次生活水準も向上いたしておりますので、学校給食の内容の改善と相まちまして、今後これが逐次増加を見ていくことかと思います。ただ学校給食におきましては、さような値段の点と、それから計画的に供給していただくというこの二つの面がございます。ただいま先生のお話がありましたように、ミルクよりも扱いやすい面もございますが、いずれにいたしましても、学校が計画的にこれを使用していくということになりますと、そうした、先ほど来お話のありますような需給調整というような面につきましても、農林、大蔵等と十分御相談いたしまして、学校が計画的にこれが処理し得るような体制がととのいますならば、大いにこれをすすめてまいりたい、かように存じます。
  275. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣に伺いますが、飼料業界がさんざんぼろもうけをしたあとの仏心とでもいいますか、飼料業界が調整保管をしたいということを言っておるようでありますが、この問題については、いまの畜安法では、農業団体が行なう場合のように補助金を出すわけにはいかないのではないかということで、まだ態度を決定されておらないと伺っておるのでありますが、私は、この際鶏卵業界の危機を救う意味におきまして、やはり生産団体同様な取り扱いをすべきであると考え、法的にはいささか拡大解釈になるかもしれませんけれども、やはりこの際これを行なうべきであろうと考えるのでありますが、坂田さん、どうでしょうか。
  276. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 飼料関係の方々から、いま石田君の言われたようなことをやったらどうかということの要求があることをお聞きいたしております。しかし、いま申したように、生産者団体のように、的確に需給の調整をする機能を働かしつつやれるという場合とは若干違うように思うのでありますが、全般的には、その点についてはまだ検討いたしたいと思います。
  277. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、飼料の問題について伺いたいのでありますが、先ほど指摘いたしましたように、政府は濃厚飼料の大宗であるところの大麦、裸麦の作付け転換の法律を出した。われわれ社会党が中心になってこの法律はつぶしましたけれども、やはり政府の行政指導のために著しく減産をしております。これはまあ別個の問題といたしまして、外国へのこの依存度が非常に高過ぎるのではないか。昭和三十五年と昭和三十九年では、どの程度に外国の飼料の輸入が多くなったか。この点はひとつ大臣からその情況をお聞かせ願いたいと思います。
  278. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます。  昭和三十五年度における流通飼料の供給量でありますが、八百六十万トンでありまして、そのうち約五百四十万トンが輸入飼料であります。もちろん濃厚飼料でございますが、そういう割合になっております。
  279. 石田宥全

    石田(宥)委員 国内でできるものを作付けを制限せしめるような政治をやっておいて、そうして濃厚飼料の八割も輸入をする。配合飼料の七五%も輸入に依存する、こういう状態では日本の畜産というものは育つはずがございません。ことに飼料は、自民党の一派閥がこれを独占しておる。  それから、もう一つは全購連から分離いたしましたところの営利を目的とする会社と、この二系列の会社が独占をいたしております。政府もなるほど食管法の、食管会計の中から四十億ほどの金を出して、いわゆるこの制度ふすまというものもございまするけれども、この制度ふすまというものは、配合飼料の中へ入ってしまえば飼料会社がもうけるだけであって、ほとんどその作用をなしておらないのです。先般の本会議において、農林大臣は飼料の国家管理については同感であるとおっしゃるけれども、いま私が指摘いたしましたように、自民党の中の一派閥がこれを独占をしておる限り、昨年の砂糖の自由化のときと同じように、党内に大きな問題が起こるであろうということを私は考えるが、しかし、坂田さんは、それだけの決意を持って飼料の、少なくとも輸入飼料の国家管理に踏み切るだけの決意をお持ちであるかどうか。それなしにはこの畜産の問題は解決いたしませんが、御意見を伺っておきたい。
  280. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 輸入飼料を全部これを国家管理にするという点については、種類も非常に多いことでありまするし、またその飼料そのもの自体が複雑でございまするので、それを全部政府で管理するということは技術的に非常に困難だ、こう思います。  それからまた、実際問題といたしましても、そこまでやらなくても、もちろん現在の程度よりもふやしていくことはいいと思いまするけれども、そこまでいかなくても、大体その需給及び価格の問題等は解決できるんじゃないか、こう思っておるわけでございます。石田さんのいろいろ言われた問題については、全然さようなことはなかろうと私は思っております。
  281. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはまあ周知の事実で、新聞記者諸君もよく知っておるし、自民党の諸君もよく知っておるのでありますが、その自民党の一派閥のそれは資金源であることは、もう国民周知の事実なんですが、しかし、そういうことにこだわらないで、日本の畜産というものを考えた場合には、勇気を持ってこれをやらなければならないということを私は言っておるんです。  それからもう一つの、全購連系統のこの会社も問題です。農民から吸い上げた金と、農民を搾取してもうけた金でその全購連がやっておるというならまだ話はわかるんですよ。ところが、全購連から分離して営利会社にして、そうして自由自在に農民から搾取することができるような別な営利会社をつくったということは、これは許しがたい問題である。農民から集めた金で、それを今度は営利会社の資本にして、そうして農民を搾取する、こういうふうな皮肉な状態が起こっておるのでありますが、この機会に私は一言農林大臣に伺っておきたいのでありますが、最近の選挙違反の中で——ちょっと別な問題ですけれども、選挙違反の中で、小林章派の専売関係の問題はかなり国会で取り上げられておるけれども、同じような大きな全国的な違反で取り上げられておる岡村文四郎派の問題というものは、あまり問題として国会の中で取り上げられておらないのです。しかし、問題の性質は、むしろこれは農協という、六百万農家の基礎の上に立って、その農民の組織の上に立ったこの農協のいわゆる生命共済連合会というものが、農民の金で、そうして農業団体の役職員を業務命令などで使って、そうしてあのような大違反を起こしたということに対して、農協法に基づいて監督の責任者である坂田農林大臣としてどうお考えになっておるか。小林章氏と岡村文四郎氏は、自由民主党に対しては責任を負って脱党したけれども、しかし、六百万農家に対して岡村文四郎がどういう責任をとろうとしておるか。また、監督官庁の責任者である坂田農林大臣は、これに対していかに対処しようとしておられるか、決意のほどを伺いたいと思うのであります。
  282. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 岡村議員の問題につきましては、私も非常に憂慮いたしております。いま、現在司直の取り調べを受けておるのであります。本人ではありませんが、そういう段階でありますので、調査の結果を見て対処することにいたしたいと思います。
  283. 石田宥全

    石田(宥)委員 ややもすると、農業団体に対する監査あるいは監督が最近は非常にゆるふんになっておる。農業団体がわがまま過ぎる。目に余るものがある。その一つとして、私は全購連から分離したところのえさ会社、えさ工場の問題をさっき指摘をいたしたのでありまするが、これらの点については、今後はっきりひとつこの点をやってもらわなければならないと思うのでありますが、今日まで新聞その他を通じて伝えられておる実情のもとにおいて、監督官庁である、そうしてその責任者である農林大臣は、いまの段階において一すでに実態は、事態は明らかになったと思うのでありますが、大臣はどう一体善処しようとお考えになっておるのか。
  284. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この問題については、共済会の幹部の人等を呼びまして、いろいろ実情を聞いておるわけでありますが、公金とか、いろいろの関係しているそういうものについては絶対触れていないという話でございましたが、しかし、全体としての問題としては、いま司直の調査で取り調べを受けておるわけでございますから、それを待っていたしたいと思います。
  285. 石田宥全

    石田(宥)委員 司直の手にゆだねられておりますけれども、農業団体についてはあなたは責任者なんだから、そういう立場において、いままでどの程度にその違反事件が捜査されたか、逮捕されておるか、そうして、その事態が明瞭になったならば一体どういう態度をとるかということをお伺いをしておるのです。ただ、司直の手にあるからといってあなたは逃げようとされたって、それはそれ、これはこれで、別個の問題を私はお尋ねをしておるのです。
  286. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お話し申し上げることが、ことばが足りませんのでありますが、要するにこのいろいろの違反の問題については個人的にやっておるのである、こういうことを申しておるような実態でありまするが、しかし、これは現在司直の手にあるのでありますから、そこらの点はよく調べられたその結果によっていくよりほかはなかろうかと思っております。
  287. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題は、全国の農協がこれに運動をしておることはもう周知の事実なんであって、私はむしろその選挙期間中においてでも、農林大臣としては何らかの措置をとらるべきであったと思うのでありますが、監督者として怠慢の責めを免れることはできないと考えるのです。  この点は、いずれまた別の機会で徹底的に追及しなければならないと思うのでありますが、この養鶏問題で最後にひとつお伺いをしたいのでありますが、この生産調整ということを大臣も言っておられるのでありますけれども、最近のアメリカからのひなの輸入の状況というものが非常な量にのぼっておるわけでございます。少なくともこのアメリカひなの輸入に対する規制の問題、それから国内生産についても、もう少しやはり計画性を持たせるのでなければ容易にこの問題は解決できないと思うのです。私はこの数字もいろいろ調べて持っておりますけれども、そういう数字を聞こうとは思いませんけれども、アメリカひなに依存する日本の養鶏というものは、その姿勢を正すべきだ、こう考えておる。私は日本の農林官僚の怠慢がもたらした問題の一つだと実は考えるのです。なぜ一体日本でもっと鶏の品種改良その他に力を注がなかったか、これは一つの問題でありますが、いまさらそれを追及しても始まりませんけれども、少なくともいま全販連が窓口になってアメリカひなの輸入をやっておるが、そういうものに対する規制並びに国内生産に対する計画性を同時に持たせるのでなければ根本的解決となり得ないと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  288. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この輸入ひなの輸入は、種鶏がおもに入っておりまして、非常に数多くなっております。数字については、必要があればまた事務当局から答弁させまするが、実は入ってまいりまするものは非常に種類がいい。つまりひなたになるところの率の高いこと、それからそのひなが成鶏になる率の高いこと、産卵率の高いこと、それからえさをあまり食べないという点、いろいろの点から見て全く優秀なんです。そういう関係でありまするので、いまこれを規制するということもいかがかと思うのでありますが、いま、石田委員のおっしゃったとおりに、種鶏場その他を整備いたしまして、そうしてこれらのものを禍をもって福となす意味で、さらに一そういい種鶏をひとつつくり上げて、その上でのことにいたしたい、かように存じておるわけでございます。
  289. 石田宥全

    石田(宥)委員 この問題は、もっと実は掘り下げて議論をしたいと思いますが、時間の関係がございますので、次に運輸大臣に航空行政の問題についてお伺いをしたいと思います。  きのうも新聞に出ておるのでありますが、前国会の決議もあり、運輸大臣の訪米交渉などで八月十日に東京で日米航空協定改定交渉が行なわれることになっておるわけでありますが、日航のニューヨーク乗り入れ及び以遠権を認める代償として、シアトル線、中南米延長線などの放棄や、東京以遠無制限運航など約十にのぼる日本側の譲歩を要求する点は絶対に変えないと言われておるのであります。これに対して運輸大臣の決意のほどを伺いたいと思うのであります。なぜかというと、いいかげんな通り一ぺんの交渉ではこの問題の解決は困難であろうと伝えられておるからであります。
  290. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  アメリカが日本の要求に対して出してきておりますいろいろ条件について変えないという気持ちを、この間までの事前交渉の過程においては持っておったようであります。私は、八月の十日から、こっちに来て正式交渉を開くということを向こうも了承しましたので、向こうは向こうの主張を一〇〇%通して日本と話をしようというようなことを考えてみたって、これはできないはずでございますから、どこまでその方針を変えておるかということはまだわかりませんけれども、当初のように一〇〇%主張を変えないということを考えておるとは、いま考えておりません。
  291. 石田宥全

    石田(宥)委員 アメリカがこのような態度をとる原因の一つとして、日本側の航空行政の混乱があると伝えられておるのであります。すなわち、今日航空業界の再々編成の問題が起こっておるが、これは長い間の運輸省当局の無知と不見識を暴露するものと言わなければなりません。飛びつく業界も業界なら、免許権者たる当局がでたらめに免許を与えたことは、許されるべきではないのではないか。乗り入れの引き受け手のないような松本空港、あるいは危険なために使用のできないような三宅島空港をつくらせたりしておるではないか。白タク一台の許可にも慎重な運輸省が、なぜこのように乱立をさせたか、多分に政治的利権の疑いなきを得ないのであります。この点、運輸大臣の率直な見解を承りたいと思います。
  292. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  国内路線等の問題についてはいろいろ複雑な事情もあるようでございますが、石田委員の仰せられるような利権等の問題をはらんでおるとは考えておりません。ただ、三宅島とか、あるいはそこここに起こっておりまする飛行場等にいろいろ未解決の問題があることは私も認めるのでありますが、そういう未解決の問題は逐次解決していきたいと思っております。
  293. 石田宥全

    石田(宥)委員 再々編成の問題でありますが、昨年四月、北日本、富士、日東の三社合併で国内航空が発足をいたしました。しかし同社内部からの情報によりますと、資本金五十二億二千万円の会社が実質赤字が百億に近いものであると言われております。決算書は粉飾決算であって、まさに破産の危機に瀕しておると伝えられておるのであります。ところが、その国内航空と国策会社である日本航空の合併が進められておるとのことでありますが、日本航空は、相手日の丸という意識もあり、官僚の古手をかかえて、労務管理一つ満足にできないところの非能率な会社ですが、破産寸前の国内航空と合併したら、その赤字は国民の血税で始末されるおそれもあり、一部には某財閥の救済のためだとすら非難も出ておるのでありますが、その真相と、これに対する大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  294. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  日本航空と日本国内航空との合併というような問題はまだ私は聞いておりません。ただ、航空事業の実態等につきましては、いろいろむずかしい問題等もありまして、早急に解決せなければならぬような点もあるようでございますから、それぞれの機関にはかって、ひとつ新しい方針を打ち立てていって、路線の整理等にもつとめてまいりたいと思っております。
  295. 石田宥全

    石田(宥)委員 国内航空と日航との合併の問題はお聞きになっておらないということでありますけれども、前段私が申し上げたように、非常な赤字を出してもう破産寸前と言われておるような国内航空と日本航空とを合併するというようなことに対してはどういう御見解ですか、承っておきたい。
  296. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私はいま国内航空と日本航空が合併するというようなことを聞いておりませんので、それに対する、現時点においては意見は持っておりません。
  297. 石田宥全

    石田(宥)委員 現時点においてはお持ちにならないそうでありますが、私はあとでひとついろいろとお伺いをしたいと思います。そういうような状態でありますが、一面、多年の努力と犠牲によって堅実な経営をやってまいりました全日空に対して、東京−福岡線の許可にあたっては、東亜航空との合併を条件といたしておるのであります。いやしくも営利会社の合併のごときは、両者の理解と納得の上に行なわるべきものであって、許可権者が強要するがごときは、官僚行政、権力政治の弊害もまたきわまれりと言わなければなりません。この問題については、昭和三十九年十一月六日の運輸省の「国内幹線の運営体制について」というところに「全日空には、全幹線への乗入れを認める。但し、全日空と東亜、中日本両社との速やかな統合を期待し、政府としてもそれが円滑に行われるよう配意するが、その統合が完了するまでは、新規路線の運営については、制限的取扱いをする。」と、こういうふうに書かれておるのでありますが、このただし書きについては、これは当然削除すべきであって、私がいま申し上げたように、権力行政をやってはならない。幸いにして蛮骨大臣と言われるところの中村運輸大臣がこれに当たられるわけでありますが、これに対する御所見を承りたいと思います。
  298. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  三十九年十一月六日付の「国内幹線の運営体制について」の方針は、 これは行政指導方針として、国内幹線の運営を日本航空それから全日本空輸及び日本国内航空の三社に担当させることが適当と考えて、これを宣明したものであります。残る定期路線事業者である東亜航空及び中日本航空についても、この際全日空と統合することによって間接的に幹線運営に参加させることが適当と考えて、この考え、この旨をもあわせて行政指導方針の中に定めたものでありまして、権力で強制するというような趣旨のものではないということをひとつ御了承を願いたいと思います。
  299. 石田宥全

    石田(宥)委員 権力行政をとるようなつもりではないということでありますならば、全日空がもう二回、三回にわたって東京−福岡線の許可申請を出しておるのでありますが、これに対して、はたして権力行政と非難されないような措置をおとりになる考えはおありでしょうか、どうでしょうか。
  300. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  日本航空と国内航空、あるいはその他の航空企業との間に一つの基本的な方針といいますか、日本航空は原則として国際線、国内航空は原則としては国内のローカル線というような大まかな一つの基本線が審議会で打ち出されたことは御承知のとおりだと思いますが、そういう基本線に沿って大体航空行政をやっておるのでございますから、いま仰せられるような点は、これは絶対許可しないというようなことではございませんが、現在の時点におきましては、いろいろの観点とにらみ合わせながら、逐次そういう方向に沿って進めてまいりたいと思っております。国際路線等の実態とにらみ合わせながら国内路線の配分等も考えてまいりたいと思っておりますので、逐次そういう方向に進めてまいろうと考えておる次第でございます。
  301. 石田宥全

    石田(宥)委員 最後にもう一点お伺いいたしますが、再々編成の根本は、戦後再開十五年の民間航空史を再検討されまして、日米航空交渉の新展望の上に立って、日中、日ソ、日韓、日台の諸関係の中で国際、国内の航空分野に新しい秩序を確立することが急務であります。民間会社のみをいかに再編整理しても、とうていその自立経営を達成することは困難なのでありまして、日航の国内線を分離し、これと合わせた国内線全体を対象として強固な経営体制を確立する方策をとるべきであろうと思うのでありますが、いかがでございますか。事業の再編成にあたって、放漫な経営によって行き詰まった特定企業を救済するため、その赤字のしわ寄せを他の民間会社に押しつけ、経営の弱体化したものを道連れにするような措置であるとか、あるいは日航を通じて一部企業に補助を行ない、過当競争を誘発するような方策はとるべきでないと考えるのであります。日航と分離した部分と合わせた国内線全体をして、たとえば東交−台北、福岡−京城、台北−名古屋は、いずれもキャセー航空、大阪−京城、釜山−福岡はいずれも大韓航空というふうに、いずれも一方交通となっているが、当然相互乗り入れをするほか、日本と中国、日本とソ連など国際近距離線をもあわせ開拓するような体制整備が急務であると考えられるのでありますが、これに対する運輸大臣の所見をお伺い申し上げたいと思います。
  302. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  ただいま石田委員の仰せられましたように、日本の航空企業の分野にはいろいろ複雑な情勢がございます。八月十日から開こうとしております日米航空協定等が結ばれました暁には、全体をくるめてひとつそれぞれの機関にはかりまして、整然とした航空政策を進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  303. 石田宥全

    石田(宥)委員 いまの御答弁で大体お考えはわかりましたが、今日まで失敗に失敗を重ねてまいりましたような航空行政を、中村運輸大臣の就任を機会といたしまして、再びこのようなことを繰り返すことのないような基本方針の確立を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  304. 青木正

    青木委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次に永末英一君。
  305. 永末英一

    ○永末委員 佐藤内閣は自主外交というのでありますが、その自主外交の自主の意味は、アメリカのやり方に対して日本が自由な手を持っておる、こういうことを実証するところにあると考えます。そこで、その一つの手がかりとして、私は二つの点についてただしたいと思います。  一つは日米航空交渉について、一つは、過般起こりました。わが日本の明興丸とアメリカの貨物船のアリゾナ丸、この衝突事件に関する問題であります。  第一の日米航空協定の交渉につきましては、過般の日米貿易経済合同会議で閣僚の皆さまが一致団結して御努力になって、やっと八月十日から日本でこの交渉を開くということになりました。そこで運輸大臣に伺いたいのは、この交渉に臨むについて、日本がニューヨーク以遠の新しい航空路をかちとる代償として、アメリカ側は、一括して十項目程度に上る要求を突きつけておると聞いております。その中にいわゆる無制限運航、すなわち日本にもっと新しい企業が入り込んだりあるいはまた新路線をどんどんとろうと、こういうようなことを言っておるということを聞くのでございますが、運輸大臣は、まさかこんなことをお認めにはなりませんでしょうな。
  306. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  日米航空協定の交渉過程におきまして、日本から東京−ニューヨーク、欧州以遠、東京に帰ってくる世界一周路線をよこせということを要求いたしましたのについて、いろいろ向こうも条件を出してきておるようでございますけれども、それはいろいろ具体的にはちょっと申し上げる階段にございませんので、御了承願いたいと思いますが、私は向こうの要求を一〇〇%引き受けるというような意思は持っておりません。
  307. 永末英一

    ○永末委員 ただいま運輸大臣は、一〇〇%引き受ける意向は持ってない、こう言うのですが、私は一%ものんではならぬ、こういうぐあいに思うわけです。なぜかならば、現行の日米航空協定は、わが国が敗戦をして、その占領中にいわば一方的に押しつけられた協定であります。したがって、いまわれわれが独立をしたというのなら、主権国である資格、独立国であるはっきりとした態度をやはりアメリカに対して示すべきときだ、そこで、一〇〇%は引き受けられないというのじゃなくて、引き受けちゃならぬ問題だ。したがって、いま無制限運航に関する相手方の一つの要求を申し上げましたが、たとえば、不定期便でもやはり日本の土地からこれをどんどんやれ、こういうことも言っておると思いますが、運輸大臣、はっきりとそういうことは認められないのだ、それを一〇〇%は認められないが六〇%は認める、五〇%は認めるなんていうような腹がまえでこれに臨まれますと、日本の国際航空なんていうものはつぶれてしまうと私は思います。お答えを願いたい。
  308. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  私が一〇〇%認めないというのは、実は私のほうで世界一周路線を要求すると同時に、こっちも数々の要求をいたしておるのでございます。そこで、うちの要求を全部通して、向こうは一つも認めないということでは交渉はまとまらない、こういうことを言うたのでございまして、私は腰が弱いというふうにはお考えにならぬようにお願いいたしたいと思います。日本の要求はどこまでも一〇〇%通して、皆さま方の御配慮になっておりますように、不平等な線の是正は是が非でもやりたいという決意を持っております。
  309. 永末英一

    ○永末委員 現行の日米航空協定でも、この二つの国が相手方の航空企業に不当な影響を及ぼさないように、公平の原則により輸送力を規制すべきである、こういう協定があるわけであります。大体そういう協定項目があるにかかわらず、不公平なことになっておる。これをいわば水平化することをわれわれは要求しているのであって、それを新たな日本側の要求と彼らが受け取るところにやはり認識の違いがあると思う。この辺はやはり日本の利益を代表する責任者としては突っぱってもらわなければならぬ。いまそこにおられる藤山さんにしろ、椎名さんにしろ、三木さんにしろ、ともかくがんばってやろうというのでアメリカで取りつけてきたのですから。あなたも行かれたでしょう。それを負けてはいかぬですよ。もう一ぺんお答え願いたいと思います。
  310. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私は弱腰を考えておるものではございません。国会で非常に強い決議をしていただいておりますので、あの国会の決議の精神を尊重しながら、力強く交渉を進めてまいる、こっちの要求を完全に貫徹したいという決意を持っております。
  311. 永末英一

    ○永末委員 そこで問題は、この八月十日から始まる交渉でまとめなくちゃならぬとあなたはお考えなのか。どうしても通らない場合には、国会の決議のとおり破棄してもよいという覚悟でお臨みか、この点を明らかにしていただきたい。
  312. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私は八月十日からの交渉では、日本の要求を完全に通しながら交渉をまとめたい、かように考えております。
  313. 永末英一

    ○永末委員 運輸大臣は過般の本院における決議が、破棄をも辞せずという固い決意をもって不平等を是正すると、こういう意思があることは十分御存じですね。したがってこの言い方は、われわれが理解するところでは、何が何でもまとめなくちゃならぬということではなくて、決議の最後の腹は、それなら一ぺんオープンに開いて、両方がどうなるか、お互いの、アメリカ側のそれぞれの航空会社と日本の航空会社とが路線がどうなるかを無協約状態でやっていこう、こういうことをも、この不平等を是正するためにはやはり一度はくぐらなくちゃならぬ関門だということを国会は決議をしたと思うのです。この気持ちはおわかりでしょうな。
  314. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  私は、国会の決議のあの精神も、交渉過程において日本の要求が通らない場合の処置であって、日本の要求が通る場合には破棄せよという決議ではないと考えております。
  315. 永末英一

    ○永末委員 日本の要求が通らない場合には国会の決議のとおり行なう、がんばってやってください。  次に、アリゾナ号と明興丸との事件を聞きたいのですが、法務大臣来ておりますか。——来ておりませんようですから、これはひとつあとに回します。  現在わが国は不況に見舞われておるのでございますが、この不況対策として——大蔵大臣いないな、大蔵大臣が来たら大蔵大臣に聞きましょう。不況は、ただ単に日本国内の経済の事由だけではなくて、国際経済日本経済に影響を及ぼす、その影響のいろいろなあらわれが日本の経済不況を形づくっておると考えます。たとえば繊維産業におきましても、低開発国面におきますそれぞれの繊維産業の勃興、発展というものが日本のいわば天然繊維の産業面に影響を及ぼす、また日本の国内における化学繊維産業の発展とともに天然繊維産業のほうが非常な不況面に見舞われる、こういうことでございますから、いわば構造的な原因が非常に強いのだ、一時的な問題ではないとわれわれは問題を把握をいたしております。通産大臣はどのように問題を把握しておられるか、伺いたい。
  316. 三木武夫

    三木国務大臣 確かに繊維製品の不況の陰には、産業構造上の変化があるし、また世界の低開発国における繊維産業がいろいろ育成されてくる、その国際経済の影響もあることはお説のとおりでございます。
  317. 永末英一

    ○永末委員 そこで、繊維産業の不況を打開するためには、その対策としては、やはり構造を改善するという長期的な一つの見通しに立った方策が根底になければならぬ。ところが承るところによりますと、通産省当局では一時のがれの方策で何とか切り抜けよう、たとえば独禁法できめてありますような不況カルテルでもつくって切り抜けよう、こういうお考えがあると聞いておりますが、ほんとうですか。
  318. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、綿糸の市況は非常にコストを割るような状態になって、ここで不況カルテルの結成の動きがあるわけで、われわれとしてもこの企業界の動きに対して側面的に支援をいたしておるわけです。それは一時のがれとはいいますけれども、やはり健全な企業の発展のためには、コスト身割るような状態になって健全な産業の発展はできない、この不況カルテルは緊急避難的なものである。したがって、この不況カルテルは結成されても長期にわたってやるべきではない、きわめて短期間の間にこの不況カルテルは終わらなければいかぬ。その次にくるものはおそらく——次というよりも並行して考えなければならぬのは、長期的な、繊維の国際的、国内的いろんな情勢の変化に即応した体制の整備ということでございましょう。これについては業界自身の間にも、この繊維のことに非常に詳しい永末君御承知のとおりでございますが、非常に動きがあるわけです。長期的な安定策というのは業界自身にも動きがある。われわれ通産省としても、この点に対して検討を加えておるわけでございますから、これをなおざりにして、ただその場のがれというわけではない、これは根本的な問題は、むしろ長期の構造、繊維に対する体質改善といいますか、内外の情勢の変化に即応した長期的安定策が根本の問題である、お説のとおりであると考えております。
  319. 永末英一

    ○永末委員 昨年の十月に繊維新法ができましたときに、われわれは、この繊維新法は、いまのような構造的な問題が日本の繊維産業界にある、そこで基本的な方針としてはスクラップ・アンド・ビルド方式、つまり古い機械はやめてしまう、そして新しい、能率のいい機械でやっていこう、これが根本であったと思うのです。そこで、いまそういう長期的なこともやっていくが、とりあえず不況カルテルをやろう、こういうのでありますが、この進め方としては、不況カルテルに重点が置かれるのか、それとも繊維新法が所期したところのあの方式でやっていこうとされるのか、その基本をはっきり立てておいていただかなければならぬ。お答え願いたい。
  320. 三木武夫

    三木国務大臣 基本は、繊維新法のいわれておる自由競争の原理に基づいてこれは国際競争力をつけていこう、この精神が基本である、不況カルテルはこういう異常な市況の悪化に対しての一時的な便法である、基本はやはり繊維新法の考えるところ、これが基本であるということは申し上げるまでもないのでございます。
  321. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、不況カルテルをたとえ業界が望もうとも、やはり繊維新法が方針として立てたところを行なっていくほうが先決だと思います。そこで、このスクラップ・アンド・ビルド方式も、問題となるのは、古い機械を処置する場合に金がない、だれが一体これを処置するか、大蔵大臣に伺いたい。イギリスは同じような問題に苦しんで、その所要資金の四分の三をイギリスの財政資金でまかなってきておる、こういう事例があるわけであります。大蔵大臣は、いまの日本の繊維産業の不況が構造的な点にあるということをお認めになるのなら、イギリスが行なったところを、シカも四つ足、馬も四つ足と申しますが、あなたはおやりになる御意思はございませんか。
  322. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういうようなケースにつきまして、かつて政府が老朽設備の買い上げに参加したこともあります。ありますが、私はまずこの繊維業界自体がそういう非常に固い計画を立てられることが先決問題だと思いますが、そういうことがありますれば、たとえば私は金融上あるいは税制上、できる限りの協力をしていくという方法を考えてみる、その気分でございます。
  323. 永末英一

    ○永末委員 金融、税制以外に、たとえば信用恐慌が来たるということを心配されますと、財政資金の投下が行なわれるわけだ。これは日本の貿易業界において明治以来繊維産業が占めてきた度合いというものは非常に大きなものである。この際、日本の経済から繊維産業の不況を切り抜けるためには財政資金を出しても私は筋が通ると思う。あなたはそう思われませんか。
  324. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国の財政資金を出すということになりますと、これは国民全体の金の運用でありますから、相当慎重にいろいろな角度から考えなければならぬというふうに考えますが、私は、基本的にはもう非常に今日の経済情勢は異常な状態である、この異常な状態を切り抜けるためには相当の手を尽くさなければならぬというふうに診断をいたしておるわけであります。しかし、それには業界、財界の自主的な立ち上がりのかまえ、これが基本である、そういう自主的な立ち上がりの体制が固まれば、それに対して財政上、金融上できる協力の道があれば、これを考えてみるにやぶさかではない、そういう気持でございます。
  325. 永末英一

    ○永末委員 財政上ということばが入りましたことを銘記しておきます。  さて通産大臣、あなたはやはり不況カルテルはしようがない、こういうお話ですが、たとえば、私は反対でありますけれども不況カルテル方式でやられる場合に、いまある機械に封をして、これは使わぬでおこうというような封緘方式をやるんじゃないか、こういううわさがあります。あなたは封緘方式をおやりになるおつもりですか。
  326. 三木武夫

    三木国務大臣 減産の方式については業界にまかしたい。どういう方式がいいか、やはり業界の自主的な判断にまかしたいという考えでございます。
  327. 永末英一

    ○永末委員 その方式は業界の自主的にまかすということでありますが、事非常に重大なときに、大体通産省は行政指導好きでしょう。重大なときに業界の自主的にまかすなんて言わないで、やはり行政指導をやられるべきだ。労働者は休日増加の方式によるべし、賃金を保障してくれ、このほうを望んでいる。封緘方式でやると、労働者は肩をたたかれて、威力による退職勧告を受ける、こういうことになる。この辺はひとつ十分お考えを願いたい。  そこでもう一つ質問申し上げたいのは、第一次メーカーのほうはこういうことで切り抜けられる道が開かれるかもしれない。ところが問題は、その原糸、原綿をもらってこれに加工する染色等の第二次加工産業部面、これが非常に困るわけです。この点については、ただ単に第一次メーカー部面の不況カルテルというのではなくて、まさに中小企業そのものの問題が起こってくるわけである。ここで資金の面あるいはまた金融の面、あるいはそこのところでできる製品は多種多様でございますが、標準価格をつくる面、いろいろな問題があると思いますが、通産大臣はこの点についてどうお考えか、伺いたい。
  328. 三木武夫

    三木国務大臣 ごもっともな御質問であります。われわれとしても染色業者、織布業者、これがやはり第一次のメーカーと同様に立ち直ってもらわなければ困る。しかし、こういう対策というものは分けて——第一次メーカーがよくなれば、多少の時間的ずれはありますけれども、そういう織布業者、染色業者にも、その余裕ができてくればそういう利益はやはり均てんしていく性質のものだと思う。繊維業界が全体がよくなるということがやはり影響があるわけで、いまの状態では仕事が少ないわけですから、そういう点で、ただ第一次のメーカーだけというふうではない。この対策がやはりそういう加工部門にもこれは均てんしていくものであるというのが前提でありますけれども、なかなかやはり打撃を受けておる。私は現地に見て、そういうこともつぶさに知っておるわけでありますから、金融の面であるとか、あるいはまた第一次のメーカー等にもよく話をして、あまりそういうしわ寄せがいかないようにするとか、いろいろな行政指導の面を通じて、いま御指摘のようなことはできる限り加工業者や織布業者に対してもこれの立ち直りが早いような努力をいたす覚悟でございます。
  329. 永末英一

    ○永末委員 この問題で一番重要なのは、価格を適正にどう定めるかということが非常に問題だと思う。繊維業界は、御承知のとおり二次加工産業は大体系列化して、大きなほうのメーカーにいわば死命を制せられておる。そこで、適正価格と申しても大きなほうで押えられる傾向が強いわけです。そこで、私どもは、この適正価格の形成については、原糸、原綿供給業者、また二次加工業者、小売り業者、これに働く労働者、消費者等の各界の代表者で協議機関をつくって、そこで、どのようなところがそれぞれのところに均てんし得る適正な価格であるかを協議せしめる、こういうことが望ましいと考えますが、御意見はいかがですか。
  330. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、そういう一つの懇談会のような形式で、そして原料のメーカー、加工業者、これが話し合って、そして両方が立ち行かなければ両方困るわけですから、これだけ原料のメーカーと加工業者というのは密接不可分の関係がありまして、原料のメーカーも加工業者をつぶしていいというわけではないわけであります。これはお互いに助け、助けられるという関係でありましょうから、この話し合いをできるだけ円滑にするような仕組みを考えて、原料と加工業者の関係をもっと緊密にするような行政指導をしたい、こう考えております。
  331. 永末英一

    ○永末委員 その点はひとつ慎重にやっていただきたいと存じます。  日韓問題についてわれわれの考え方をこの際明らかにして、外務大臣はじめ関係大臣の所見を聞いておきたいと思います。私どもは、日韓問題というのは、日本民族と朝鮮民族とが将来にわたってお互いの理解の上に共存発展していく関係をつくることだと考えております。そういう観点に立った場合、日韓両国の国交正常化というのは、いわばこの大きな目標に対する手続の一つであり、そしていま調印をされております日韓両国間の条約、諸案件というのは、またその一つのプロセスである、このように私どもは考えております。外務大臣の所見を伺いたい。
  332. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体お説に同感でございます。
  333. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は私どもの考えに同感だということでございますが、あなたの本会議における所信の表明の中に、今般調印されたこの日韓両国に関する諸条約が相互に尊重順守されることをあなたは期待しておられる。条約が相互に尊重順守されるためには、その条約の意味が少なくとも日韓両国民に一義的に理解をされていなければならぬと私どもは考えますが、あなたはどうお考えか伺いたい。
  334. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約の正文についてはあらゆる検討、討議を経て、そして合意に達したものでありますから、もちろん相互に順守する前提としての理解が十分にあるものと考えております。
  335. 永末英一

    ○永末委員 ただいま外務大臣は、条約に対する理解が相互にあるものと考える。私申し上げたいのは、その理解のしかたが日本側と韓国側と異なっておったのでは、今後問題が残るということを心配しておる。そこであなたに伺っておるのは、あなたは、過般来の本院における外務委員会等のいろいろな質疑を通して、韓国側の受け取り方と日本側の受け取り方が同一であるという。いまそのお考えに立っておられるかどうか伺いたい。
  336. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 十分に条文の一字一句検討を遂げたのでありますから、相互に十分な理解があるものと、こう考えております。
  337. 永末英一

    ○永末委員 私の見るところ、あなたが理解をしておられるようには、同じ条文でありながら韓国側と日本側との了解が一致しておるとは思えない。たとえば文化財協定を取り上げてみましょう。文化財協定は、韓国側の了解によれば、このリストにあがっている四百六十数点のものは、日本が不当に持ち出したのであるから返還してもらったのだ、こういう認識に立っておる。おそらくあなたのほうはそうではなくて、これからお互いの両国が文化的に協力関係を結ぶんだから差し上げるんだ、こういう気持ちだろうと思う。あなたのお考えをお聞かせ願いたい。
  338. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 文化財の問題につきましては、これは当然向こうに返還の請求権があるとは考えられません。そこで、この問題の処理としては、わがほうが韓国の文化発展のためにこれに協力する、こういう趣旨でこの問題の解決に到達した次第であります。
  339. 永末英一

    ○永末委員 後段の部面はあなたの了解、前段の部面はあちら側の了解、これはどこから出てくるかといえば、基本条約の第二条にいうところの、つまり併合条約以前の諸条約はもはや無効である、いつからかあなたのほうの見解は、大韓民国が独立宣言をしたからだと言い、彼らのほうは、もともと無効だ、こう言っている。こういう見解が違うわけだ。了解のしかたが違うから、そういう文化財につきましても、相手方は返還されたのだと言い、あなた方のほうは差し上げたのだ、こう言う。これは違うでしょう。違うことをお認めになりますか。
  340. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御指摘のとおり、韓国側は、当初はその返還をしてほしい、そういうたてまえをとることを主張いたしました。わがほうは、これは不当に持ち帰り来たものではないから、たとえ向こうに上げるとしても、これは文化協力の立場からする贈呈というたてまえをとるべきだということで、ずっと話し合いが続いておりまして、結局この前文におきまして、「文化における歴史的な関係にかんがみ、」というところで、先方の趣旨も生かしつつ、贈与とも、あるいは返還ということば、両方避けまして、この第二条でごらんのように「引渡す」ということにしまして、そういう感情的と申しますか、そういう点をこの条文の上から落とす、中立的な表現を使うということに落ちつけた次第でございます。
  341. 永末英一

    ○永末委員 お互いの感覚が違うことを、一つの文字で両方で理解する、こういう形にこの条約はなっておるわけです。  ここで一つ伺いたいのは、この文化財の中で、四百三十四点引き渡すことになっておりますが、この中で現在の休戦ライン以北から出土したもの、出所したものはありますか、ないか伺いたい。
  342. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 休戦ラインより以北から出たものは含まれていないと了解します。
  343. 永末英一

    ○永末委員 この四百数十点について出所、出土等は明確に批准国会までにわれわれに示していただくことができますか。
  344. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 可能でございます。
  345. 永末英一

    ○永末委員 当初韓国側がこの点について要求をしておりましたものの中には、明らかに休戦ライン以北に出所を持っているものがあります。そのものについては、一体日本政府はどうしようというお考えか、伺いたい。
  346. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 北南係の問題については、全部今回の協定ではノータッチというたてまえでございますから、法的には何ら措置されてない、従来どおり日本に残っている、そういうたてまえでございます。
  347. 永末英一

    ○永末委員 法律上の措置を聞いているのではない。外務大臣、あなたに伺いたいのだ。最初にも申しましたように、今回行なわれている日韓両国の諸条約の調印ということは、その背景に日本民族と朝鮮民族とが今後将来共存発展をしていくための一つの手続だとあなたはお認めになったでしょう。ところが、この問題についてもたくさんございますが、一例として私は申し上げている。なお、たくさんの朝鮮から出所したものが日本の公的なところにあるわけである。しかし、その中で、いま局長の申したのは、この四百三十四点については出所は南だと、こう言う。ほんとうかうそかわかりませんから、これは見せてもらわないと、われわれにも調べようがない。北側があったらたいへんですよね。とんでもない問題だ。しかし北のものがあることは事実だ。はねられたのでしょう。北のものもあっちが言うてきたが、そいつは北だから困るといってはねたのでしょう。お答え願いたい。
  348. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先方からの要求品目、最初いろいろリストがございましたが、考古学の研究の立場から先方に類似品があるものは日本に置いておいてくれというような標準もございましたし、いろいろな標準を考慮に入れまして、結局両者妥協の結果、今度の引き渡す品目になったわけでございますが、今度引き渡す品目の中に北鮮出土品が含まれていないことは事実でございます。
  349. 永末英一

    ○永末委員 考古学の研究上、やってみたら北鮮出土品はなかった。なかなかうまいこと結果が出ておるわけでございますが、たとえば、朝鮮半島に人が住みついた世紀前、漢国の植民地がございましたいわゆる楽浪郡の出土品などはたくさんあるわけだ。あるいは書籍だって、中国からきたものはたくさんあるわけでありますから、それが一体最終的にどこから出ておるか調べてみるといろいろな問題が出てくると思う。ただ、私は、外務大臣に伺いたいのは、その北のほうから出ておるものが残っておることは事実だ。それを一体どうしようとする御意図があるのかを伺いたい。
  350. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 北のほうから出たものについては、将来どうするかということは何も考えておりません。
  351. 永末英一

    ○永末委員 あなたはさらさらお答えになるが、まさしくこの点は、基本条約第三条の管轄権にかかわっている問題だ。そこであなたのほうは注意をして、北のほうの出土品、出所品は全部はねたわけだ。しかしそれは、この三条の解釈について日本側は国連決議の百九十五号三項を援用しておりますが、まさに韓国側との見解の違うところである。しかし、文化財の点については慎重にやっている。しかし、それは、裏を返せば問題が残っておることをはっきりと示しておるのでしょう。北のほうはもう無関係だ、知らぬと言っておりますが、千七百万人の人間がおることはお認めになったし、あなたのことばからいえば、そこに政権があることも外務委員会でお認めになっておるわけだ。条約局長は違うことを言っておりましたが、速記録に書いてあります。そこで、この問題一つをとっても、将来——もう一ぺん繰り返しますが、朝鮮民族全体と日本民族全体とが共存発展していくためには、やはり処置しなければならぬ問題だと私は思う。そういう用意はないのかどうか伺いたい。
  352. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その問題については、ただいま申し上げるように、何も考えておりません。
  353. 永末英一

    ○永末委員 日本国内における韓国人の法的地位なんかは、百年も百二十年もあとの政府にあなたは問題を残しておいて、この問題はあなたは考えないと言うけれども、いまここでここ五十年あまりの一つのしるしをつけようというときに、方針が、あの当時の一九六〇年のときの政府は、何も考えぬで、問題を解決したような気持ちになっていたというようなことを後世のわれわれの子孫がさがして、ああ椎名外務大臣という人はそんな人であったかと——あなたは日本民族に責任を感じませんか。
  354. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 南からの出土品でも、これは別に権力をもっていわゆる合邦時代に持ち帰ったものではない、略奪したものではない、それぞれの正当な売買といったような形でこれを獲得して日本に持ち帰ったものでございます。それで、これは当然返還すべきものではない。しかし、向こうは返還、こういうことで引き渡しという文字を使って、日本としては向こうの文化事業に対して協力をするという形をとったのであります。  北鮮方面からの出土品についても同じことがいえるのであります。別にこれは権力をもって奪ったものではないのでありまして、将来一体どうするかというようなことについては、いま何も考えていない、白紙の状態であります。
  355. 永末英一

    ○永末委員 私は、文化財を取り上げたのは、それを問題にしているのじゃないのです。要するに、北のほうの問題は、あなたは白紙だ白紙だと言うけれども、最初の前提を御承認になっておるのなら、この際、北のほうを一体どういうぐあいに佐藤政府は考えてこの条約を調印したのか、こういうことをはっきりしてもらわなければ、この条約に対する審議の基本的な立場は、これはできないわけだ。いままで伺っておる限りでは、白紙だ、考えているか考えていないかが白紙だと、全く空虚、無みたいなものですね。そういうことですか。
  356. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 文化財の問題は、初めてこの問題に関連して出たのでありますが、われわれは休戦ライン以北に事実上の政権があるということを念頭に置きながら現在の韓国の管轄権の及ぶ範囲の問題をすべて処理いたしたのであります。請求権についても、その他の諸問題についてもみな同様であります。それ以北の問題については、すべて白紙であるということを申し上げておるわけであります。文化財についても同様であるということを御了承願いたい。
  357. 永末英一

    ○永末委員 この点で重ねてもう一つ伺っておきますが、白紙であるというのは、処理しなければならぬ問題だが白紙であると、こういう意味ですか、お答え願いたい。
  358. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう条件がつかないのです。全部白紙である、こういうことです。
  359. 永末英一

    ○永末委員 私どもは処理すべき問題であると考えております。これは申し上げておきましょう。  もう一つ伺いたいのは、竹島の問題、これは紛争平和処理の交換公文について本委員会で質問がございましたが、竹島の周囲には専管水域がございますか、お答え願いたい。
  360. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 専管水域はございません。
  361. 永末英一

    ○永末委員 専管水域がないということを韓国側は了承いたしておるのですね。
  362. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この問題は、日韓間のまだ未解決の紛争問題としてそのまま残されておるという状況になっております。
  363. 永末英一

    ○永末委員 韓国側の、きのうも李東元外務部長官が韓国国会で言っておることは、竹島——韓国でいえば独島は、わがほうの領土であると、こう言っておる。しかも、日韓交渉においては、自分の領土なら当然専管水域を要求してきたでしょう。しかし、両国間の合意を見た結果専管水域がないというのなら、これは、そう国内に李東元外務部長官は言っておるけれども、自国の領土ではないということをあなたに言うたのではないかと私は思う。あるいはそれを了解したのではないかと思う。もう一度お答えを願いたい。
  364. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 交渉の際は、これは日韓間の未解決の紛争である。これの処理については、日韓間の紛争事件については両国間の外交ルートによって解決のために折衝するが、それがうまくいかない場合には調停によると、こういう文句に落ちついたわけであります。
  365. 永末英一

    ○永末委員 その文句のところで竹島は入っておるか入っておらぬかということは、本委員会で問題になって、入っておる証拠をあなたは示すと、こういう約束になっておるのでありますから、そんなことをいまさら蒸し返した答弁をいただいても、私も了承できない。ただ、伺っておるのは、あっちの領土だというのだったら、専管水域を主張してこなければならぬあっちは立場だ。大体あれは平和ライン、李ライン内にあったわけだ。現在は共同水域外になっておる。しかも、それを専管水域をつくらなかったというのは、やはり何らかの了解点があったのではないか。その点を伺っておる。
  366. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 未解決の懸案でありますから、韓国の領土ときまったわけじゃない。したがって、専管水域というものはない。日本の領土ということについても韓国は不承知でありました。したがって、これは日本の領土であり、日本の専管水域というものはこれに付属しておるということにもならなかった、専管水域という問題は起こらなかった、こういうことに御了承願います。
  367. 永末英一

    ○永末委員 いまの御説明を聞いておりますと、つまり韓国の領土ときまったわけではないと、話し合いの中できまったような印象を受ける。そういうところになぜ韓国はいまでも警備隊を置いておるのですか。あなたはそういう了解点に達したのだったら、すぐその場で警備隊はお帰りなさい、こう言のが当然ですね。
  368. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 こういったような事実に対しまして、すでにもう三十数回にわたって、そのつど抗議を申し込んでおりますが、何らの反応がなかったのであります。
  369. 永末英一

    ○永末委員 反応がなかったから事態をそのまま黙認をする御態度ですか。まだ何かをやられようとする方針ですか。
  370. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 こっちから抗議を申し入れて反応がないままであります。これを黙認したわけでも何でもない。
  371. 永末英一

    ○永末委員 いま文化財や竹島の問題だけを取り上げましても、基本条約等と関連して条約できめてある明文の文章が必ずしも両国間で一義的に理解されているものではないということがわかってきたと思うのです。  そこで、私は外務大臣に伺いたいのは、このままの姿であなたは批准国会に臨まれますか。韓国側は韓国側の解釈を一方的に韓国内で発表し、あなたがいままで日本国会で言われておったようなことを日本国民に言ったままで、このまま批准されていい問題かどうか伺いたい。
  372. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、韓国側でどういま、あるいは韓国の国会においてどういうふうに説明されておるか、新聞等によって承知するだけでありますが、事韓国の内政に関する問題である。あまりにもこれに立ち入ることは好まないのであります。しかしながら、わが国の批准国会に対して私は十分にこれを説明することができると考えております。つまり竹島問題は、これはもう疑う余地もなく日韓間の重大なる紛争問題である。これは今回の日韓会談の妥結によって何ら解決されておらない。そしていわゆる日韓間の紛争ということばには、何らの除外的な文字がございません。竹島問題を除くと、こう書いてあれば、竹島問題以外の日韓間に存在する紛争ということになるのでありますが、これを除くということも書いてない。そして従来の事実から見て、日韓の間に存在する重大なる紛争問題である。その紛争問題のほかにまだ未解決の紛争問題があるかといいますと、このほかにはありません。でありますから、竹島という名前をあげておりませんけれども、日韓間の紛争ということになると、竹島以外にないということに当然これは解釈上なるのであります。そして、この問題の解決には、通常の外交ルートによってこれを行なうと、それができない場合には調停によると、こう書いてあるのでありますから、向こうがどういう根拠、どういう理由をもってそういうことを言っておるのか知りませんけれども、これはもうわがほうの条約の解釈は正当である、これに間違いないという御理解が国会においていただけるはずのものである、かように私は確信をいたしておるのであります。
  373. 永末英一

    ○永末委員 その確信が実現するかしないかは批准国会の話でありますけれども、私はちょうど三月に韓国へ行って、韓国の与党ではないいろいろな各界各層の人に会いました。その感覚から申しますと、いまの韓国の批准国会というものはなかなかスムーズにいかないのではないかと思われる。もし現在の韓国国会でやっている批准が、たとえば野党議員が一斉に議員をやめて単独審議、日本でもときどきありますわね、そういうひずんだ形で批准をされる。しかし、そのひずんだ形で批准をされると、自今韓国内ではいろいろな問題が起こってくる、そういう場合でも、あなたは日本国会に対して批准をお求めになりますか。
  374. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あまり仮定の問題にはお答えしたくないのでありますけれども、とにかく間違いなく両国の責任者の間において結ばれた成文でございますから、確信を持ってこれは批准国会に提出をして説明をしたい、こう考えております。
  375. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、批准をすることは政府の仕事としては非常に重要な仕事である。しかし、われわれ日本人としては、当初申したとおり、朝鮮人全体との和解をどのようにするか、ここのほうに重点を置きながらこの問題を見つめておるのだ、このことを申し上げておきます。  次に、B52の問題についてお伺いをしたいのでありますが、七月二十七日の昼ごろ、防衛庁の官房長が、B52が板付飛行基地にくるというような連絡を米軍から受けたということを発表いたしました。外務省はその日の六時半ごろ、米国大使館から午前中に同様の連絡があったということを発表をいたしました。そうしてその外務省側の発表は、台風のための緊急避難であるから認めた、了承したという発表をいたしました。こういうことを了承する権限はだれにありますか。
  376. 安川莊

    ○安川政府委員 了承と申しますのは、異存を、異議を申し立てないという意味でございまして、御承知のように、緊急避難のための飛来は、協定上事前協議の対象でございませんから、本来ならば無通告で来ても文句を言う筋合いではないのでございますが、事実上向こうが誤解を避けるために事前に知らせてきたということでございまして、これに対してイエスとかノーとかいうことを本来的に言う立場にないわけであります。
  377. 永末英一

    ○永末委員 協定上、こちら側から異議を差しはさむものではないと、こう言われる、そこのところをもう一ぺん明確にしていただきたい。
  378. 安川莊

    ○安川政府委員 協定上アメリカ側が日本に事前に相談する義務もなければ通告する義務もないという意味でございます。
  379. 永末英一

    ○永末委員 B52という飛行機の性格は、本委員会でもいろいろ論議がございました。したがって、それがグアムにおけるほとんど全機数と思われる、一飛行師団に該当するほどの機数がくるということは、一体わかっておったのか、あるいはそれが避難には違いないが、何日間ぐらい滞留するということがわかっておったのか。さらにまた、それが板付に来た場合、どこへまた行動するということがわかっておったのか。さらには、どういうものを搭載しているのだということがわかっておったのか。その四点について、どういう状況であったかお答え願いたい。
  380. 安川莊

    ○安川政府委員 誤解のないように前もって申し上げておきますが、板付に来るという通告があったわけではございません。来るかもしれないということでございます。そうして、その目的は台風の避難であるということ、したがって、板付に来ても、その間何らの作戦任務には従事しないということ、台風の危険が去れば直ちにグアムに帰る、こういう内容でございます。機数につきましても、約二十五機程度ということを同時に知らせてまいりました。でありますから、これは必ず来るという通告ではございませんで、こういう理由で来るかもしれない。来た場合には、いま申し上げたようなことであるということでございまして、そしてその夜おそくなりまして来なくなったという通告がございました。
  381. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、通告だからこちら側からの意見を差しはさむ余地がない、こういうことでありましたが、これは、外務省のどこへ電話がかかってきても、何も言わぬ事件ですか、外務大臣の所見を伺いたい。
  382. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、私は電話でその通報を受けましたが、これに対して、本来こっちでイエスとかノーとかと言うべき筋合いのものじゃないのであります。作戦上これを使うとかということじゃない。一時的な緊急避難であるということであれば、これはもうそのとおりでよろしいという私は了解を与えたわけであります。
  383. 永末英一

    ○永末委員 私どもは新聞で知るところでは、二十八日の午前零時四十五分、アメリカ軍がもう板付には来ない、こういう発表をやったと聞いております。ところで、このB52爆撃隊は沖縄へ行った。何日の何時に沖縄へ行ったと外務省は了解をされておるか、伺いたい。
  384. 安川莊

    ○安川政府委員 ただいま永末先生仰せのとおり、十二時過ぎに板付には来なくなったという通告がございましたが、どこに行くかということは何ら連絡がございませんでした。沖縄に行ったといろことは、外務省としましては、その後新聞報道で知ったわけでございます。したがって、沖縄に何時に着いたかということは、特に米軍から連絡は受けておりません。
  385. 永末英一

    ○永末委員 その当時連絡を受けたかどうかを聞いておるのではない。いま外務省は、その飛行機が一体沖縄に何日何時に行ったということを知っておりますか、どうですか、伺いたい。
  386. 安川莊

    ○安川政府委員 これは新聞にも報道されておりますし、行ったということは知っておりますけれども、何時に何機が着いたということは正確に承知しておりません。
  387. 永末英一

    ○永末委員 運輸省のほうにもこういうことはわかりませんか。きてますか、きてませんか。運輸大臣、わかりませんか。
  388. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私のほうの所管でございませんから、わかりません。
  389. 永末英一

    ○永末委員 二十八日という日は、これはサイゴンからの報道でございますが、サイゴン南方五十  六キロにあるベトコン地区に対してアメリカの第  一七三降下旅団が作戦をしておった日であります。そこで、このB52爆撃隊は、二十九日の未明  に沖縄を出撃して、そうして、サイゴン電によれば、七時十五分から八時五分までその辺の地区の爆撃をやって、百トンの爆弾の雨を降らせて正午過ぎ沖縄に帰ってきた、こういう報道がございます。知りたいのは、二十九日の何時に一体この航空隊は沖縄を出たか。それから、したがってそれを知りたいのは、一体二十八日の何時に沖縄へ着いたか、この二つ知りたいわけです。調べてください。
  390. 安川莊

    ○安川政府委員 沖縄から爆撃に出撃したという事実につきましては、二十九日の午前七時半ごろであったと記憶いたしますが、アメリカ大使館から連絡を受けまして、約一時間後に南ベトナムを爆撃したという発表があるはずであるということを事前に連絡してまいりました。その後実際に発表が行なわれませんので、大使館に、発表がないようであるが、実際に爆撃が行なわれたのであるかどうかということを再三にわたって照会いたしましたが、ここの大使館でも事情が不明のままに、その日の夕刻になってサイゴンの現地で発表があって、実際には七時十五分から八時ごろまでにわたって爆撃が行なわれたという事実を知ったわけでございます。  何時に出撃したかということは、もちろんこれは軍事行動の内容でございますから、こちらで知る由もございませんし、またこれをしいてせんさくするということはいかがかと思っております。
  391. 永末英一

    ○永末委員 軍事行動ならせんさくをする必要がないというような考え方をしておるから問題が大きくなるわけです。  私が知りたいのは、もともと板付に来るべき飛行機であったかもしれない、板付に来た場合でも、アメリカの別の部隊が南ベトナムで作戦行動している、いわばその支援作戦としてこのB52爆撃隊が出撃したわけだ。そうすれば、たまたま板付に来なかったけれども、もし沖縄に行って、沖縄から出撃する時間が短いとすれば、グアムを発進するときから当然南ベトナム攻撃の任務を帯びてこの航空隊は動いておると、普通の軍事常識のある者なら判断しますよ。そこで、この時間を聞きたいと私は言っているわけだ。だとするならば、あなたのように軍事的な面は知らぬでもよろしいなんということを言っている間に——事前通告ではございませんよ。いまの場合でも、言ってきたのは七時半でしょう。しかし、七時十五分から八時五分まで南ベトナムで爆撃が行なわれたとしたならば、日本時間の七時半にアメリカ大使館からあなたのところに電話があったときには、すでに飛行機が発進したあとじゃありませんか。なぜこの問題がやかましくなったのに、そういう事実関係を調べないのか。外務大臣、お答え願いたい。われわれの心配していることはわかるでしょう。ぼんやりしている場合じゃないですよ。
  392. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大使館にその後、一体出かけたのか出かけてないのか、その点が非常に知りたかったので、再三電話をかけて聞いたのでありますが、アメリカ大使館としては、直接軍の行動に関してそのつど詳細な報告を受ける立場にないのであります。そういうわけでありますから、こっちはアメリカ大使館を通じてやる以外にない。はなはだ遺憾でございますけれども、こういう場合には、どうもそういう非常に機微な関係はなかなかつかめない、そういう実情を御了解を願います。
  393. 永末英一

    ○永末委員 私はこの点が非常に重大な問題だと思う。安保条約の六条関係の交換公文で、事前協議というものは書きました。しかし、実際の戦闘行動がどんどん白熱化した場合には、事前協議というものを受けて、それを日本政府側が拒否をするという時間的余裕がなしにやられ得る可能性があるのじゃないか。これは安保審議のときに一番問題になった点だと思う。  そこで、もしこの窓口が外務省であるとするなら、いままでのように、アメリカ大使館側から外務省が受けておって、実際の作戦行動は戦略爆撃隊の司令部、SACがやっておるのでありますから、すぐには来ないかもしれませんが、そういう状態が続くなら、いまでもさっとどこか日本の基地に来ておるかもしれません。そういう状態が起こるではありませんか。外務省は、もし事前協議ということを日本人の生命のためにちゃんとやっていこうとするなら、こういう問題が起きてすでに何日もたっているので、こういう点の時間関係をお調べになるのが当然だと思いますが、外務大臣はそうは思われませんか。
  394. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これが日本の国内にあるアメリカの基地を出発せんとする場合には、お説のとおりであります。これは、事前に協議を受けなければならぬ問題であります。かりにそういったようなことを怠った場合としても、もうすぐ追いかけて事実を糾明すべきはずのものでございますが、沖縄でございますから、この際はいささか状況が違うということを御了承願います。
  395. 永末英一

    ○永末委員 沖縄と日本を区別するような考え方で沖縄を見ちゃいけませんよ。総理大臣はおりませんけれども佐藤内閣の閣僚の外務大臣がそういうつもりで、同じような気持ちで総理大臣が沖縄へ行ったのではたいへんなことだと思う。あなたは午後には中止してくれと言われたそうだが、それは発進したと伝えられるそういうものを中止してくれと言ったのか、沖縄から今後一切そういうことはやってくれるなと言われたのか、どちらですか。
  396. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今後一切というようなことは、これはたてまえ上言えないわけであります。とにかく板付に台風のために緊急避難するというのが板付に来なくなった。今度は沖縄に行くようになった。そうしたところが、今度沖縄から南越に爆撃が始まった。こういったような、二転、三転したのでございまして、何だかどうも非常に不安な割り切れない気持ちを持ってこの問題を感じたことは、もう大多数の人の偽わらざる心情であったと思うのであります。そういったようなことを考慮して、もし出かけない前ならば、この際は思いとどまってもらえまいかということを相談的に持ちかけた、将来にわたって沖縄から出撃するということは相ならぬ、こういうことは、遺憾ながら今日施政権を向こうに渡してある状況においては言い得ない問題でございます。
  397. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣が行かれるまでに、そのくらいの沖縄基地使用に対する日本政府の意向のほどを固めてから沖縄へ行かれないと、何のために沖縄へ行ったか、沖縄の住民から非常な失望感を買います。総理大臣がおられませんが、あなたによく申し上、げておきます。  防衛庁長官、あなたは日本の防衛をされる専門家だ。そこで、いま外務省は怠慢にも、このような問題があるにもかかわらず、日数がたっているのに、全然そのあとづけをせずにぼんやりしておるわけだ。しかし、あなたは日本の防衛の責任者として、一体台風避難のために来たやつが二転、三転して動いた、困った、困惑したなんという総理大臣が、日本の防衛の責任者というかまえでアメリカとパートナーでやれると思いますか。
  398. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今度のは、日米間の共同の問題じゃありません。したがって、われわれは戦略戦術上の参考として、常に米軍の動きをできるだけのことはとっております。しかし、今度の問題を直ちにどうこうという判断は、日本に何ら責任と関係のないことであります。しかし、やはり日本の防衛については、常々接触と関係にはわれわれは関心を持つべきだ、こう思います。しかし、作戦そのものに対しては、私が批判する権限も権能もありません。
  399. 永末英一

    ○永末委員 私どもはこのように考えるのです。外務大臣、防衛庁長官にお聞き願いたいのですが、沖縄という基地については、アメリカ側はいわば中継基地、補給基地として使ってきたと思う。ところがこの時期にB52爆撃隊を直接沖縄から発進せしめ、しかも帰投せしめた。このことは一体何を物語るか。片一方南ベトナムに対する補給は非常に多くアメリカから直接に行なわれている事実がある。そうすると、沖縄の基地というものを、いわゆる中継基地、補給基地ではなくて、直接の攻撃基地にするつもりじゃないかと私どもには疑われるのです。しかも嘉手納飛行場は拡張工事をどんどんやっている。そうなりますと、もし沖縄を南ベトナムあるいは北のほうにもにらみをきかせながら、直接の攻撃に使えるのだ、こういうことになりますと、沖縄の問題は一変してくると私どもは思う。なぜかならば、沖縄基地は南ベトナムに対しても、あるいはまた北のほうに対しても、アジア大陸に対してもグアムよりは非常に近い距離にある。そうして、先ほどちょっと説明がございましたが、爆装したB52であっても、その速度と足から計算いたしますと、これを直接攻撃基地として使えば、アメリカとしてはこのB52の有効性を非常によく担保できる、こういうことを考えたに違いないと思う。そうならば、沖縄の基地の問題については、日本政府としてはやはり思い返して、どういうことを一体沖縄の住民のためにアメリカ側に主張すべきかを考えるべき点に来ておると私は思う。外務大臣はそう思いませんか。
  400. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今回米国側のほうで、当分沖縄はベトナムの問題に関連して作戦基地として使わないという声明をたしか出しております。御承知だろうと思います。いろいろ施政権のたてまえからいうと、別にやって差しつかえないことではあるけれども、やはり沖縄住民の気持ちも十分に考慮しての上の話だとわれわれは了承をしておるわけでございます。
  401. 永末英一

    ○永末委員 B52は、今回のみならず、日本の内地の基地にしばしば飛来をしておる。たとえば東京の近所の横田基地に飛来しておる。運輸大臣はこの事実を御承知かどうか伺いたい。
  402. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 私は報告を受けておりませんから知りません。
  403. 永末英一

    ○永末委員 運輸大臣は報告を受けておられないがと言われるのだが、現実に横田基地にはB52の航空機がおることを知っておる者、現実の上で見た者がおるわけだ。ああいう飛行機が飛んでくることを、またいることを日本政府全体として一体わからぬのですか、わかるのですか、お答え願いたい。だれでもいいです。
  404. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いままでにB52が編隊で来たことはありませんが、単機あるいは数機で飛来したことはございます。
  405. 永末英一

    ○永末委員 B52が単機または数機で飛来しておるのです。ところが、B52は単に編隊で通常爆弾の爆撃をするだけではなくて、水爆を積んで常時警戒をする任務もまた与えられていることはすべての人が知っている事実なんです。そこで問題は、先ほど石橋君の質問でいろいろやっておりましたけれども、日本の普通に通告を受けるような問題でなくても、単機または数機でアメリカの航空基地を使っておるその航空機の内容については、現在の安保条約や行政協定上一体どういう行動をし、何を積んでおるか聞くことができない。しかしながら、アメリカ軍が日本のみならずヨーロッパ方面においてB52に与えておる任務の中には、そういうものが明らかにあることはアメリカ側が発表しておるわけであって、こういう点について、外務大臣は、いまの条約上根拠がないから、全然ほっておいていいと思われるかどうか、伺いたい。
  406. 安川莊

    ○安川政府委員 ヨーロッパではB52がどういう行動をして何を積んでおるかということをお互いに連絡するようになっておるという御趣旨かと思いますが、その点は私はよく承知しておりません。日本の場合には、B52が単機あるいは数機で一時的に飛来するということについては、条約上何らの制約はないわけでございます。ただ、あくまで核兵器を積んで日本に来る場合、それから日本の基地から戦闘作戦行動に出る場合には必ず事前協議をする、こういうたてまえでございます。
  407. 永末英一

    ○永末委員 先ほど沖縄の場合に、沖縄を基地として使うB52が直接に南ベトナムに出かけていくことは中止を願いたい、こういうことを外務大臣がアメリカ大使館側に言ったと聞いております。その場合に総理大臣に相談された、こういうことである。事実ですか。
  408. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろんであります。
  409. 永末英一

    ○永末委員 そこで問題になるのは、私は事前協議というのは非常に時間をせくことであって、五年前の安保国会では、事前協議をやるのは日本の内閣総理大臣、それから相手国の総責任者、こういうことになっておるわけですね。ところが、たとえば板付の問題でありましたように、初めからたとえば外務省の中だけで、これはもう協議する必要がない、こういう判断が下される。事前協議の場合にも、何時間か時間をおいて、外務大臣と総理大臣が相談をされて、その結果を外務大臣が相手方へ通報をされる、これは時間がかかると思うのです。一体政府は、これからの忙しくなるいろいろなことに即応するために、事前協議のための機構というものをぴしゃっとおつくりになっておるのかどうか、おれば伺いたい。
  410. 安川莊

    ○安川政府委員 事前協議の場合の連絡系統と申しますか、そういうものは別に取りきめはございません。むしろ政府としましては、あまりきつい取りきめをつくるよりは、その事情に応じて一番すみやかな方法によって連絡をするということのほうが実情に適すると考えておる次第でございます。
  411. 永末英一

    ○永末委員 実情に適するのではなくて、日本のほうの最高の責任者は内閣総理大臣である。その内閣総理大臣が決断をしなければこれに対するいやおうは言えないし、また事前協議にはからなければならぬ問題かどうかの判定も、また内閣総理大臣に私はかかってくると思う。いままでのようにまだはっきりきまっていないということではなくて、この問題こそは、場合によっては日本が戦争に巻き込まれるかどうかを決定してくる重要な一つの時点を画する問題だと私は思う。こういう点について、内閣総理大臣はおりませんが、必要があるとは思われませんか。ぴしゃっと機構をつくっておいて、いつ来ても即刻これに応対ができるような一つの体制をつくっておく必要がある、このようにはお考えにならぬか。これはだれに答えていただいたらいいかわかりませんが、外務大臣はそう思いませんか。
  412. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あまりそういう形を整えるということになると、その形に合致しないとなかなか手間をとる、こういうことになりますので、いま北米局長がお答えしたような方法でいいのではないか、こう考えております。
  413. 永末英一

    ○永末委員 私が従来までの内閣の運営のしかたを見ておりますと、それをルーズにしておるから、どこで何が行なわれるかわからぬというので時間が空費される。むしろその筋道だけは内閣としてぴしゃんとつくっておいていただかなければ、日本が従属的な関係で戦争に巻き込まれる危険があると警告をいたしておきます。  法務大臣がお見えになりましたので、法務大臣に伺いたいのでありますが、八月の二日の未明にアメリカの貨物船のアリゾナ号と日本のタンカーの明興丸とが衝突をいたしました。そうしてアリゾナ号がそのまま目的地であるマニラに出かけている。それを保安庁の船が追っかけて呼び戻していろいろ聞いたところが、自分の船は確かに明興丸を沈沈せしめたかもしれないが、その裁判管轄権は日本にないということを主張して出ていってしまった、こういう事件でありますが、法務大臣は、この裁判管轄の問題について相手方の申し分が正しいとお考えかどうか伺いたい。
  414. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまおっしゃったような事件が発生して、非常に遺憾なことでございました。海上保安庁の要請によりまして、アリゾナ号の日本における、これの業務を担当しております店を通しまして、任意出頭を求めていろいろな事情を聞きたいということを申し出ました。これに対しまして、アリゾナ号がこれに応じまして日本の港に入りまして、参考人としていろいろ日本側で聞きたいことを、できるだけ証拠の収集あるいは前後の事情の聞き取りについて協力をしてくれたのは事実でございます。そうして、そのまま出ていきました。そのときどう言うたか知りませんが、事実上あなたのおっしゃるようにして、管轄権は日本にないということで行ったに違いないと思うのであります。これは、いまの状態におきましては、一九六二年の条約で、公海において衝突等の不祥事件、刑事事件等が起こりました場合において、その問題を起こした人の扱いはどこがやるかという問題は、その条約によりまして、その船に乗っておる人の所属しておる国の政府が裁判職というか、あるいは行政庁というようなところが扱うということになっておるのであります。この条約には日本はまだ入っておりませんが、その条約を締結するジュネーブ会議のときには日本はこれに賛意を表して、これに大体従って今日まできておるわけでございますから、その線に従いますと、向こうの主張するがごとく、この問題はアメリカ側が加害者であるかどうであるか、調べないとまだわからないのでありますが、向こうのアメリカの乗員の問題について調べるものは日本の政府にはないというのがいままでのしきたりのように承知しております。  なお、詳しい問題になりますと、法律上の問題でありますから、関係局長から御説明さしてもよろしゅうございます。
  415. 永末英一

    ○永末委員 われわれの承知しておるところでは、お互いのトン数はほとんど同じである、しかも真横から突き当たった形跡がある、濃霧中であるにかかわらず、相手方の船は十七ノットという高速で走っておる、こういうことは考えられない状態です。一体何のために濃霧中に十七ノットで走るか。何か特殊の目的を持った船ではないかと疑われるほどに奇妙な現象である。しかも新聞の報道によりますと、漁船に当たったかどうかもわからないような状態で、見回したがわからないからボートもおろさずに、救難の作業も何もせずにそのまま目的地に向かって、一時間ほどたって走っていった。それによって日本人が十八名も死んでおるわけなんです。そんなものをブラッセル条約か何か、しかも日本がそれに加盟をしていない条約をたてにとられてアメリカに帰らせる、そんなばかなことがありますか。日本政府は日本人の命のためには外交上の手続を講じても事情がわかるためにやるべきで、いま申し上げたことが事実であるとするならば、普通の常識では考えられない事件なんです。それならば、もっと事情が明らかになるように日本に滞留せしめて、これを調べるべきが当然だと私は思う。お答え願いたい。
  416. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 それは国際慣行上できない問題だと私は思っております。ただし、いま申しましたように、そのときの情勢は、できるだけ聞くだけのものは聞き、そうして参考資料としてとってあるのであります。それならば、日本の側の船が全部正しかったかどうかということもまだわからないのであります。それも相当速力を出しておったということもわかっておるわけでございます。これから先の調べにまたなければならないのでありまして、いま直ちにどちらがいいとか悪いとかいうものをここできめることはできない。私どもは、正しいものを正しいとして裁かれるようなところにおいて裁いてもらいたい。それに間違いのないように、できるだけの証拠を集められる場所において集めておきたいということで努力したいということだけは申し上げておきたいと思います。
  417. 永末英一

    ○永末委員 相手方がブラッセル条約による権利を主張して、管轄権は日本になしと、こういうことで出ていった、こういうお話であります。日本はこれに加盟をしていない。加盟をしない国と加盟をしている国との間の問題がこの条約にのっとってやられるものかどうか。もしこの条約をなしとするならば、すでに常設国際司法裁判所の一九二七年の九月七日の判決によれば、被災国側に裁判管轄権ありという決定が出ておるのであって、それならば、それに従って日本側としても日本側にこれは裁判管轄権があるということが主張できると思う。私は外交交渉をし得る余地があったのではないかと思うが、どうして彼らの言い分だけを一方的にいれて船を出してしまったか。この辺のところを、条約上に問題があるならばそれもひとつお聞かせ願いたい。
  418. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま法務大臣が申し上げました現在の裁判権に関する解釈について御説明を申しあげます。  なるほど公海に関する条約には日本は加盟いたしておりませんが、アメリカは加盟いたしております。現在三十二カ国加盟をしております。そこで、ただいま御指摘の常設国際司法裁判所の判決に基づく事件というのは、フランス汽船のローチュス号事件だと思いますが、その事件におきましては、被害船と目されるトルコにおいて裁判権を行使したということから紛争が起こったわけで、国際司法裁判所の判決によりますれば、両者に管轄権があるというような結論になっております。その考え方をもってその後は一応の国際的なルールというふうに考えておったわけでありますが、一九五二年のブラッセル条約並びに一九五八年に調印されました、いま申し上げました公海に関する条約、これは発効は一九六二年でありますが、その条約あるいは国際連合の国際委員会の海洋法草案というようなものにおきましても、この常設国際司法裁判所の判決と違った規定を設けておるわけであります。この国際常設裁判所の判決そのものには非常な批判がありまして、結局それは、船員あるいは船に対する保護を他国の裁判権にまかせるということは、その船あるいは船員に対する保護に欠くるところがあるじゃないかという批判が強かった、その結果、かような条約に移ってきたわけであります。したがいまして、日本におきましても、この条約には加入はいたしておりませんが、すでに国会におきましても政府委員が加入を予定していることを説明いたしておるような状況であります。したがいまして、今日におきましてはかように多数国において加盟しておる条約であり、その基本において正しいものということが認められます以上、これは確立された国際慣習法が成立しているというふうに見ざるを得ないと思うのであります。したがいまして、国際慣習法は憲法によって尊重しなければなりませんので、日本側のこれに対する刑事裁判権の行使というものは、おのずからその国際慣習法の範囲において制限されることはやむを得ないというふうに考えております。  この事件につきましては、いまだその内容が明確でございません。これは海上保安庁において調査あるいは捜査をいたしておりますので、法務省としては事件そのものは明確ではございませんが、かりに公海において起こった事件といたしますならば、そして、しかも責任が米貨物船アリゾナ号にありとすれば、その裁判権はアリゾナ号の旗国であるアメリカにある、こういうことになるという法理論を法務省としては考えております。この見解は外務省その他とも統一した見解でございます。
  419. 永末英一

    ○永末委員 その場合に、ブラッセル条約にわが国が加盟していないところから、一つにはいま申しました国際常設司法裁判所の判決による手続ができはしないかと考えましたが、たとえば日本刑法の一条二項、これを援用してやれはしないか。こういうことは法務省内で御検討されましたか。
  420. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申しました常設国際司法裁判所の判決によりまして、従来は日本におきましても日本船が被害船である場合、日本側にも刑事裁判権ありという考え方をとっておりました。しかしながら、先ほど申し上げましたように、かように国際慣習法が成立しておるとすれば、その解釈はとうていとることができなくなる。今日におきましては、その国際慣習法が成立していると私どもは解釈せざるを得ないという結論に達しておりますので、その国際慣習法に基づいて処置をするのが相当であるというふうに考えております。
  421. 永末英一

    ○永末委員 この問題はひとつ十分慎重にお取り計らい願いたいと存じます。  防衛庁長官、先ほどあなたが第三次防を一年繰り上げてやれということを部内にお命じになって、あとどうなったかわかりませんが、そんなことはございましたか。
  422. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まだ命令した段階じゃございません。
  423. 永末英一

    ○永末委員 研究をせよということを言われましたか。
  424. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私の構想はこうだが、諸君がこれについて意見があれば申し述べよということだけ出題として出してあります。
  425. 永末英一

    ○永末委員 その場合に、第三次防というものの年限が四十一年から始まるとすれば、どういう内容であなたの意向を示されたのですか、伺います。
  426. 松野頼三

    ○松野国務大臣 第三次防は、いまのままでいきますと四十二年です。したがって、四十二年から三次防が始まる。一次、二次をやってみると、ややもすれば断層ができるから、その断層を埋めるようにすることが長所である。そのためには二次防の最終年度である四十一年を三次防の初年度にすることのほうが円満にいくのじゃないかというのが私の構想です。また短所としては、今日まで作業したものがなかなか急には作業しにくいというのが短所であります。長短合わせて検討を今日させるというところまでいっておりませんので、部内で意見があれば私に申し出ろというだけであります。
  427. 永末英一

    ○永末委員 ちょうどこれと時を同じくして、アメリカ側からベトナムに対する特需を日本にやる、このためにはMSA資金を使う、そのかわりそれをプールしておいて、いままでのあなたのほうの部内で、大体三次防では地対空ミサイル、ホーク程度は国内生産をしようではないかというぐあいに伝えられておったものを、ひとつ売るから買ってくれろ、しかもホークのみならず、ハーキュリーズを買うてくれろ、こういう申し出を受けたと伝えられておりますが、事実ですか。
  428. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私は申し出を聞いておりません。善意に解釈すれば、そういう話を一担当官が防衛庁の担当官に会って雑談をしたという程度の話を聞いているわけで、私が直接権威のある筋でこの話を聞いたわけでもありません。したがって、返事もしておりません。私の構想とは何ら関係はございません。
  429. 永末英一

    ○永末委員 第三次防というのは、安保条約が一応期末になる年限が含まれておるわけであります。そこで、自民党内閣は命旦夕に迫っているかどうか知りませんが、したがって、防衛計画を立てる場合には、わが国の基本的な戦略目標を明らかにする、そして、その目標に対して一体どういう戦力構成が望ましいかを考える、それに対してわが国がいま持っておるところの資源配分をやる、予算を考えていく、こういうことが普通の筋道だと思います。  そこで、いまあなたが第二次防の終期と第三次防の初年度とをオーバーラップさせて考えたらどうかという意見を出されたようでございますが、いまのようなことで考えていくとするならば、一体あなたのいまお考えになっている第三次防は、手続としてどういう段階を踏むべきだとお考えか、伺いたい。
  430. 松野頼三

    ○松野国務大臣 三次防を決定するなら、まず部内の構想を固めて、国防会議にはかって、そして決定をする、これが三次防としての権威を持ち得るであろうと私は思います。手続はそういう手続であります。
  431. 永末英一

    ○永末委員 大体いつごろそういうものができ上がる御予定になっておるか、伺いたい。
  432. 松野頼三

    ○松野国務大臣 先ほど話しましたように、まだ部内の関係局、関係幕から私のところに意見を言ってきませんので、おそらく混乱しているところもあるだろう、研究しているところもあるだろう、長官、いいなと思っているところもあるでしょう。まだ言ってきません。したがって、その返事を見て、作業が間に合うかどうかということを考えなければならない。ことにことしの予算編成は、大蔵大臣が言われたように、八月三十一日までに概算要求を出せといいますと、あと一月しかありません。その辺に少し私のほうはタイム・リミットがむずかしいなという感じも実は持っております。そう御心配なことはありません。
  433. 永末英一

    ○永末委員 これで終わります。  ここには国防会議の構成員である経企庁長官大蔵大臣、外務大臣がおられるわけであります。そこで、これらの問題はもしオーバーラップするとすれば、まさしく四十一年度の予算から始まるわけです。従来までの国防会議の運営を見ておりますと、何か懇談会を何回かやって固まったところで形式的にやってしまっておる。しかも重要な中身ではなくて、むしろ形式的なきめ方を国防会議でやっている。そういうことでは、一体日本の防衛体制に対して国民に責任を持った国防会議の運営ではないのではないかと私どもは心配をいたしておるわけであります。ぜひひとつ構成員の各議員はそういう角度から、防衛庁長官はいまのような御方針をお持ちのようだけれども、これらの問題が具体化する段階では自民党政府としてはっきりとした御方針を出されて、野党批判にこたえ、国民が一体これをどう見るか、こういうことを堂々とひとつやっていただきたい。要望しておきます。
  434. 青木正

    青木委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  次会は明七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会