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1965-08-05 第49回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月五日(木曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 植木庚子郎君 理事 八木 徹雄君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       奥野 誠亮君    小坂善太郎君       小山 省二君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    丹羽 兵助君       西岡 武夫君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       水田三喜男君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    片島  港君       小松  幹君    高田 富之君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       野原  覺君    藤田 高敏君       武藤 山治君    山花 秀雄君       佐々木良作君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房副長官 竹下  登君         内閣審議官         (内閣官房内閣         審議室長)   高柳 忠夫君         内閣法制局長官 高辻 正己君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  井原 敏之君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         厚生政務次官  佐々木義武君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         食糧庁長官   武田 誠三君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         中小企業庁長官 山本 重信君         郵政政務次官  亀岡 高夫君         労働政務次官  天野 光晴君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設政務次官  谷垣 專一君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         建設技官         (住宅局長)  尚   明君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      佐々木 直君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 八月五日  委員古井喜實君、永井勝次郎君及び横路節雄君  辞任につき、その補欠として西岡武夫君、藤田  高敏君及び武藤山治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員西岡武夫君、藤田高敏君及び武藤山治君辞  任につき、その補欠として古井喜實君、永井勝  次郎君及び横路節雄君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した件  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を議題とし、質疑を行ないます。佐々木良作君。
  3. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は佐藤改造内閣に対しまして、特にいま一番問題でありますところの経済不況克服対策中心とする経済問題を中心に質問をしてみたいと存じますが、その前に、ただ一点だけ外交問題について、佐藤内閣の姿勢をお伺いいたしたいと思います。  時間がございませんので、外交問題のほとんどすべては同僚永末君に譲りますけれども、いま御承知のように、わが党は、外交問題につきましては超党派態度をとりまして、是は是とし非は非として、国民常識に向かって処理する方針をとっております。しかしながら、ベトナムにおける最近の事情はまさに国民の非常に大きな心配事であろうかと存じます。特に沖縄基地を発して日本からともかくベトナム爆撃したという問題は、国民に大きな衝撃を与えて、これに対して佐藤総理が的確なる処理をされんことを心から望んでおると思います。したがいまして、私は佐藤総理に対しまして、ベトナム戦争の現段階にかんがみ、あくまでも日本はこの戦争行為に対する非協力的な態度を明確に打ち出すべきだと存じます。それが佐藤総理の言われるいわゆる平和解決への道の第一歩であり、準備行為であると考えるからであります。東西戦争の、特に代理戦争としての性格がいろいろありますから、考え方、見方、いろいろなものがありましょうけれども自主外交基本に立ったときに、私は日本防衛、安全の立場からも、アジア世界の平和問題の立場からも、日本としてはあくまでもこの戦争行為というものに対して非協力的な態度を明確に打ち出していくことが最も肝要であると考えます。格別日本領土を軍事基地的なかっこうに使用されることに対して、確たる総理の言明を私はお願いいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐々木君のいまのお尋ねですが、平和に徹する以上、戦争行為に対する非協力態度を明らかにしろ、たいへんよくわかったようなお話ですが、しかし、私考えますのに、わが国の安全はどういうことで保たれているのか、その基本をやはり考えてみないと、そのときどきの行為をこま切れみたように批判されてもいかないのだ、かように私は思うのです。ただいまベトナム問題が国民関心中心であることは御説のとおりなんであります。したがって、ベトナム問題が一日も早くこれが平静に帰するように、拡大しないように、私どもこれを心から念願をいたしておりますが、しかし、それかといって、アメリカのやっておることに全面的に非協力になれという、いわば安保条約のその基本的態度をも否定するようなわけにはいかない。この点は十分御考慮願って、私どもは、日本戦争に巻き込まれる、あるいは戦争をみずからがする、こういうような危険があるかどうか、こういう問題について基本的な考え方を持ってやっていただきたいと思うのです。  私は、日本の安全はただいま日米安保条約によってこれが確保されておる、かように実は考えております。お互い経済発展もこのことにおいてできたと思います。そこで私は、この日米安保条約なるものは、また憲法の規定から申しましても、これはやはり条約に違反しないということが必要なんであります。だから日本憲法も、ぜひ条約はそれを守ることが必要だと、かように規定しておりますが、この条約について守る、日本国際信義を重んずる国だ、このことはぜひとも進めていきたい。しかし、ただいま御指摘になりましたように、日本の命運に関する、あるいは戦争に巻き込まれる、あるいは戦争にみずからが突入する、こういう危険な事柄は、憲法のたてまえからは断固われわれは排撃していかなければならない。したがって、ただいまベトナム紛争に非協力と言われるのが一体どういうことなのか、これが行き過ぎるといいますか、私はそういうものに積極的に協力するつもりはございません。積極的に協力するつもりはございませんが、非協力を宣言しろということは、これは一体どういうことを意味するのか。  私は、かねてから申しますように、自主外交ということを言っておる。自主外交独立国家のこれは当然の権利であります。そうして、それは何を一体考えておるかといえば、自国の民族の利益のため、民族の繁栄のために国際社会においてわれわれの外交的主張を堂々と述べるということ、本来外交というものはそういうものだと思いますが、ときどきその外交をあるいは追随外交だとかいろいろな批判がありますので、それに誤解を受けないような意味自主外交ということばを使ったのだと思います。したがって、私ことばじりをとるわけではございませんが、ただいま申し上げるように、簡単にベトナム紛争に私どもは介入するつもりはございませんし、またベトナム問題について協力するつもりもございません。だからその点はいいのですが、積極的に非協力を宣言しろ、こう言われますと、何だか考え方が、少しいま起きておる事象についてあまりにも神経過敏であるのではないか。私どもと全然関係のない事柄、そういうものをそのまま見て、そうして日本本来の姿で外交を進めていくということが望ましいのではないか、かように私思います。  どうもあえて私が議論をふっかけるようでまことに恐縮でありますが、ただいま外交基本の問題は、超党派と申しますか、国民全体が納得のいくような線で外交を進めるべし、かように仰せられましたが、私もそのとおりに思います。したがいまして、ただいまのような点について私も納得のいかないことはそのまま率直に申し上げたい、かように思うのであります。ことに、ただいまのお話わが国の安全、わが国の平和、こういうことを主体にしてお考えになった結論だ、かように思いますので、この点を私は率直に申し上げる次第でございます。
  5. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 非協力という意味は、戦争行為に非協力態度をとれということです。ベトナム問題の解決に非協力ではございません。戦争行為に非協力態度を宣言しろ、いずれの側に立っても、戦争行為を手伝うようなことはやめなさい、こういうことです。おわかりでございましょうかな。  それから、具体的な内容はすべて私はあと同僚に譲りたいと思いますが、総理考え方は私わからぬでもない。しかし、国民感情基本になっておるものは、先日来のあの沖縄を出発した爆撃行為以来、非常に神経過敏になっていることは事実です。早い話が、わが党自身、私自身やっぱりそうすると日韓問題の扱い方もおかしいんじゃあるまいかな、すべての考え方がどうもおかしいんじゃあるまいかなという感じを、疑うまいとしてもだんだん、だんだんと深められる私は危険を自分感じておるわけです。したがって、ここではっきりと戦争行為自身に非協力態度を明確にされたい。条約がどうのこうのという話は私は聞こうとは思いません。日本領土であることは沖縄も同じです。したがいまして、条約に書いてあれば、条約の中でもそこから出るとは書いてないので、したがって、事前協議の対象になるとかならぬとかと書いてあるに違いないのです。板付基地を使わせないのはもちろんでありますけれども沖縄についてもはっきりとアメリカに話をして、国民感情がこうこうだ、誤解を招くといけないから絶対にこの行為はやめてくれ、したがって、そのような努力をすべてして、今後そのような不安を国民には与えないという態度を明確にしていただきたいということであります。  それから重ねて、いま超党派の話がございましたが、私は外交問題の処理のしかたにつきまして、ほんとうは心ひそかにじくじたるものがあるわけです。たいへん妙な感じを持ちますけれども総理自身日本の政権を担当した責任者自身ほんとうは一番強力なる日本国内反対政党の党首なりあるいは首脳部よりも、何だかアメリカとか、そういうむしろ理屈の近いほうの外国の勢力に親近感を覚えられのではあるまいか。逆にそのことは、私は日本野党のほうにもあり得ると思います。もしそういう感じであるとするならば、もしそういう感じがもとに横たわっておるとするならば、日本外交国民的な基盤で立ち得ないということの一番根本的な出発点がここにあるような気がするわけです。ほんとう胸襟を聞かれるならば、御承知のように議会主議政治というのは相手の政党を承認して、それを認めてお互いに足らざるを補い合う形でないと、議会政治というものはできない。唯我独尊の政党間ではできないわけであります。その辺に対してもう少しはっきりと胸襟を聞いた態度をとられる必要があるのではあるまいか、御所見を承りたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 B52の沖縄からの発進、これはことに私どもが混迷、また非常に一部不信の感を抱きましたのは、これは台風退避だ、こういうことであって、それが板付に来るかどうか、まあ沖縄に行くのはそれは向こうの自由ですから、私のほうであえてそのことは言わないが、板付に来るという、それが台風退避だ、この理由だ、非常に問題をもっともに考えた。ところが板付には来なくて沖縄に行った。ところがその台風にも退避したか知らないが、同時にこれが発進した。国民から見ますと、アメリカはそういうような台風退避、そういう理由ベトナムに発進するんじゃないか、だから理屈はどうあろうと、あるいは施政権があるとかないとかいうような議論とは別に、言っている事柄がいかにも納得がいかない。台風退避なら台風退避で、そのままで済んでおれば、おそらく問題は起こっていないだろう。しかし、それが沖縄から発進した、そしてそのまま爆撃をした、こういう意味は一体何なんだ。特に台風退避と言わなければならなかったのか。おそらくベトナム爆撃すると言ったら、板付に来ること、これは事前協議日本は拒否するだろう、こういうようないろいろな理屈を生んで、そこに国民感情の割り切れないものがある。これは国民感情ばかりじゃありません。私自身が非常に困惑している。こういうことを申しましたのも、私自身アメリカのとった態度はなかなか納得がいかない、これはこのまま率直に言えることであります。しかし、ただいまのベトナムに出かける、あるいはただいま日本国民が非常に心配しておるのは、これは戦争に巻き込まれるか、また戦争の渦中に日本自身が入るのかという、そうなると本会議で申しましたように、一体どういうようなことを考えておられるのか、ベトナムだけでおさまらないで、米中戦争でもお考えになっているのか、世界大戦でもお考えになっているのか、日本自身はいまの憲法があり、日本防備状況等から申しましても、そんな積極的なものを持たないことはよく御承知のはずなんです。また日本国民である佐々木君も私も、日本自身戦争する考え方はもちろんないし、また戦争に巻き込ますようなばかな政治はしない。これは極端に申しておりますが、それでもなおかつこういうものがいまなお続いておる。まさかベトナム戦争日本が加担する、韓国のようにこれに出兵する、こんなことを日本政府考えている、こういうことはないことはもう百も御承知だと思います。だけれど、いま御心配になっているのはベトナム戦争に介入するんじゃなくて、ベトナム戦争が発展して米中戦争になるとか、あるいは世界戦争になるとか、そうなったら日本はたいへんだ、また、そのことをそういうような言い方をしておられる方もあるので、国民の一部においてはそういうことを心配しておられる。それで私は本会議において、一体どういうことを考えていらっしゃるのか、米中戦争などは絶対にないというのが私の信念であり、確信であります。アメリカにしても中共にしても、ひとしく平和国家だ、戦争はみんなきらいだと言っていて、それで米中戦争が始まるという、そんな論理に合わない話はないじゃないか、このことを実は申しておるのであります。でありますから、ただいま戦争に巻き込まれる、あるいは戦争に入るんだ、こういうようなことを言っていること自身が一体何を想定していらっしゃるか。この点は私は特に国民大衆に向かいましても迷うなと言いたいのです。いずれの国が侵略国家なのか、日本自身侵略国家でないことははっきりしている。また中共自身もしばしばそのことを言っている。アメリカ自身が私どもを引っぱろうとしたって、日本はそれについていくわけじゃございませんから、ただいまの戦争の危険というものをそう口軽く言うことはどうかと実は思っておるのであります。  そうして、ただいま超党派外交お話が出ておりました。私どもは、日本国内は、野党といえどももちろんこれは日本人であるというその同じ使命、同じ運命にさらされておる。その立場だということを考えておりますから、日本反対党よりも外国を信頼している、こういう話はちょっと私は……。(佐々木委員近親感感じておられやしませんかと言うのです」と呼ぶ)近親感と言われますが、そういうことは私どもはとらない。とにかく私はずいぶん議論もします。社会党諸君とも議論もする。ときには共産党の諸君とも議論をする。しかしながら、これを同じ日本人であるということにおいて、私どもは同じ使命、同じ運命にあるということをお互い考えていけば、もっといまの近親感というような問題とは別に、国政を論ずる場合に別な立場があるんじゃないか、私はそういうことで皆さまともつき合ってきておるのであります。ただいま言われるように、社会党が特別にソ連に私どもよりも親近感を持っているとは思いませんし、そういうような言い方は合わない、かように思うのでございます。
  7. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は国民の杞憂、国民心配を前提として、総理大臣に明確な答弁をいただこうと思ったのでありますけれども、なかなかそこのところは明確な態度をとり得ない状態に対して、私はたいへん不満を感じます。しかし、この議論をふっかけておりますと総理のペースに巻き込まれて、時間ばかり食われてしまう危険性がありますから、したがって、問題はあとに残したままで私は前進をさせていただきたいと思います。  経済問題につきましては、じっくりとその内容を吟味させていただきたいと思いますから、的確な、要領のよい、端的な御答弁をいただきたいと思います。  不況問題に入る前に、私は日本経済自主体制という問題についてちょっと触れて、総理の見解を承りたいと思います。  いま総理から、自主外交をたてまえとすることはもちろんの話だ、こういう御説明がありました。しかしながら、自主外交というものは、実際には国に自主性があり、国の自主性の裏づけは、ほんとう自分の力で飯を食っているという自主経済体制の確立が私は基本でなければならぬと思う。ところが、御存じのように、わが国経済貿易量の三割をアメリカに依存しています。導入外資四十一億ドルのうちの七割の二十六億ドルアメリカに依存しております。外貨準備高十九億ドル程度のうち、私はたびたび指摘するんだけれども、なかなかふやしていただけませんが、金の保有量はわずかに三億三、四百万ドルであります。このような対米依存経済体制でありますがために、アメリカドル防衛政策や対日輸入制限というような動きがありますと、それに一喜一憂をして、実際はアメリカに対して懇願的な態度をとらざるを得ないのが私は現状だと思います。この状態の中で自主外交とか自主独立とかといっても、これはなかなかほんとうの話はできがたい。佐藤総理が切歯扼腕されましても、このようなアメリカ依存経済体制の中では、歯切れのよいナショナル・インタレストに立脚した自主外交というようなものの展開はとても不可能だと私は考える。したがって、この体制の打破こそは、佐藤内閣にとっても最大使命でなければならぬと考えます。同時にまた、御存じのように、いま国際通貨に対する危機感相当に国際的に蔓延しておりますことは事実でありまして、ポンド不安は、最悪の場合には、ことしの秋にでも切り下げに踏み切らなければならぬような状態に追い込まれるのではないかという感さえ私ははっきりと持っております。大蔵大臣あたり相当心配されておるだろうと思いますけれども、口に言えないだけだろうと思います。このポンドの切り下げ不安があれば、当然にドルに影響を受けることは言うまでもないことでありまして、その場合に、いまのような外貨準備状況でありますと、わが国アメリカと完全に一蓮托生の運命におちいらざるを得ません。こんな状態の是正こそは、私は自主外交を唱えられ、ほんとう自主独立を回復されようとされる佐藤内閣最大の任務だと私は考えるわけであります。格別にいま不況対策中心としての国内経済の大転換に際会しておる際でありますから、目標をこのアメリカ依存経済から自主経済体制へと、はっきりとここに掲げて、漸進的でも措置をとられんことを望みたいと思うのでありますが、総理の御所見を承りたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話しのように、米国日本との親善友好関係、あるいは貿易におきましても、輸出・輸入とも米国との貿易わが国にとりまして非常に大きなパーセンテージを占めておる、これは御指摘のとおりであります。ただ、これをいま言われるように対米依存経済だとこう言ってしまうことがどうか。私ども依存というこのことばじり自身をとるわけじゃありませんし、また確かにこういう実態から申せば、アメリカに依存しているという経済もある、かように私は思いますが、わが国経済自身は、アメリカだけにたよる、こういうことで運営されておるわけではありません。いずれの国とも貿易を拡大していこう、そういう意味で各方面にわれわれの経済陣も活動しておる。ただ今日までアメリカ自身が大きなマーケットであること、これは御指摘のとおりでありますから、わが国の輸出が外米貿易に多いとか、あるいはまた輸入が、原材料の国アメリカであるからわが国に入ってくるのが多い、こういう状況であります。これを断ち切って、そうして米国と一蓮托生の経済をひとつ清算しろ、かように言われること、これも理屈はあろうかと思いますが、わが国自身経済を発展さしていく上には、アメリカだろうが欧州だろうがあるいはアジアだろうが、そこらをより好みしないで、商売のできるところ、貿易の拡大のできるところ、これにみずから積極的に進んでいくべきじゃないか、かように思います。ただいまそういう意味で、私は特に依存ということばに強く、ことばじり、ことばの持つ感じから、何だか卑屈感を持ったような気がするとこれはたいへんなことだと思うので、経済の実態はもっと伸び伸びと貿易のできるところとやっていく、支払いのうまくいくところとやっていく、これは当然のことじゃないだろうか。また外資の導入等も、ただいまのようなお話がある、しかしこのために首根っこを押えられて、アメリカの言うことをきかなければならない、こういうところまでの卑屈さを持つようになれば、いわゆる自主外交というものの展開はできないのだ。しかし、貿易アメリカとうんと拡大しようが、アメリカから資本を導入しようが、何らの卑屈感は考えていない、堂々とわれわれはわれわれのナショナル・インタレストを主張するのだ、こういうことであれば、ただいま佐々木さんの言われるような御心配はないのじゃないのか、かように私は思うのであります。ただいまの友好親善関係、これがあり、また向こうから申せば、日本にうんと金を貸したのだ、それで日本にそっぽを向かれちゃこれは困るというので、これもまた向こうの弱みでもあるのではないか、かように私は思います。大事なことは、こういうことで卑屈感を感じないことだ、これが国民に対して望ましいことである。ただいまのように私は思います。
  9. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 卑屈感を感じるなというのは、総理国民や私どもに言うことじゃなくて、私どもがむしろ総理に対して申し上げることなのです。いまのような経済実態、このようなものは、どう言われたところで、事実上依存経済になっておることは間違いないじゃありませんか。そうしてまた、この間の日米経済委員会におきましても、日本の主張がどれだけ通りましたか、何も通っておりゃせぬじゃないですか。そして事実上は、アメリカのいまの状態、ほかになかなかいい市場がないからいまの状態を保っておらなければなかなか困難だというので、むしろアメリカに対して日本のその屈辱的な——ことばは過ぎましょうけれども、懇願的な態度を続けざるを得ない状態になっておるのではあるまいか。金は借りておるし、貿易はさしてもらっておるけれども、おれは知ったこっちゃない、そういう態度というものはなかなかとれるものではないことは、私は現実の動きに示されておると思うのです。  総理に重ねて伺いますけれども総理はこのような経済状態を、これは健全なものだとお考えになっておるのですか。そうして、これをもっと自主的なものに変えようという努力はされないつもりですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお話ですが、私自身は卑屈感は持っておりません。アメリカに対して私は堂々と対等なパートナーとして話をしていくつもりであります。だが政府を御鞭撻いただくことは、これはまことにありがたく、そのまま受けます。今後とも一そう努力してまいりますが、私は、ただいま申し上げるようなお尋ねに対しまして、全体として一部にでもそういうような卑屈感があるならば、これは払拭すべきだ、こういう意味で実は申し上げておるのであります。また、現状の経済については私は満足はしておりません。したがいまして、ただいま各面において、国内・国際両面においてこれが対策を講じておること、これは御承知のことだと思います。
  11. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 福田大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。  理屈のやりとりはどうでもいいと思います。現実に福田大臣はポンド危機並びに国際通貨に対する危機感——ことばは強いかもしれませんが、不安感を私は相当持っておられると思います。その際に、普通の一般の国に比べて日本外貨準備の中に占める金の保有量は満足すべきものでしょうか、改善すべき必要はないと考えられるか、お考えを承りたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまの金保有の状態は満足すべき状態ではない、私はかように考えております。ただ、これは国際間における金の散布の状況等いろいろの事情がありますので、急激に改善するということはなかなかむずかしいかと思いますが、逐次その方向で努力をしていきたい、かように考えております。
  13. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私はこれは年来の主張でありますから、もう本日は繰り返しませんけれども、ともかく国際通貨危機というのは解消せずに、日一日とむしろ強度を増しつつあると思います。ポンドが実際に切り下げられてごらんなさい。一〇%程度の切り下げなら効果がないからこれは意味をなさぬ。四、五〇%切り下げられてごらんなさい。そうするとヨーロッパでは必ず切り下げ競争が起きますよ。ドルには必ず影響するものが起きますよ。その場合に基準になるのはもう金しかない。したがって、各国とも金保有の問題については相当敏感に神経を使っておると私は思うのです。したがいまして、そういう卑屈感を持つとか持たないとか、ドルだけ持っておったってアメリカに依存しておらないのだとかという、そういうことはどうでもよろしい。経済間の中にはそういうことばは通りません。現実に切り下げがあった場合の打撃は端的に受ける。その場合にはアメリカと一蓮托生だ。したがいまして、そのような状態から脱却するための独立性を保持するための努力は、独立国としてやられるのは当然であると考えます。福田大臣の御答弁のように、これは一挙にならぬことは私はよく存じておりますけれども、あらゆる機会を利用して金の保有量の増加のために努力されんことを望みます。  同じ立場から貿易問題について三木通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  これは必ずしもいま貿易の対米依存から脱却という意味ばかりではありませんで、現在の不況対策意味を含めましても、貿易の拡大というのは目下の急務だと存じます。この貿易拡大の要請にこたえる端的な方法は、私はやはり対共産圏貿易のような気がいたします。東南アジアの問題は、これはこれから資金を投下して、そしてそこに購買力を付与しなければ、なかなかいまの間には合いそうにもありませんから、その方向は行なわざるを得ないのは当然でありますけれども、端的な方向として、同時にまたいまの貿易の国際的アンバランスな状態を是正するためにも、共産圏貿易に対する問題は目下最大の問題の一つのような気がいたします。三木通産大臣は、先日日中貿易の拡大につきまして積極的な姿勢をお示しになりましたが、同様に、対ソ貿易、東ヨーロッパ諸国、東欧貿易についてもこの際積極的に取り組まれるべきではないかと存じます。特に対ソ貿易は、具体的にシベリア開発に関連いたしまして、イルクーツクーナホトカ間のパイプライン設置のための例の大口径パイプライン六十万トンと原油一千万トンとのバーター問題というのを私ども聞いておりまするし、同じような感じで林業開発協力の問題や、沿海州ガリンスコエの鉄鉱山の開発協力の問題が現実の日程にのぼっておるように聞くわけであります。さらにまたプラント輸出の条件緩和の問題は、これまた数年来の懸案でもあったと存じます。聞くところによりますと、これらのソ連貿易の具体的な問題の接触を深めるために、近く植村氏らが初めての政治ミッションとして訪ソされるとも聞いておりますが、この辺の事情も含めて、三木通産大臣の共産圏貿易、特にソ連貿易に対する積極的な方針を承りたいと思いますが、ひとつ御意見を拝聴いたさしておいていただきたいと思います。
  14. 三木武夫

    ○三木国務大臣 共産圏貿易、これは拡大をしたいというのが政府基本的な方針であるわけであります。御指摘のように、ソ連との間には国交も回復しておりますので、中共のような障害がない。そういう点で、最近ソ連の貿易は、御承知のように、一九六四年、昨年で輸出が一億八千百八十万ドル、輸入が二億二千六百七十万ドルということで、数字は多くはないけれども、将来拡大の方向にあることは事実であります。ことに、最近ソ連に私は見本市で参りまして、貿易拡大の非常な熱意を持っておる、この十月に東京で日ソの貿易協定締結の交渉が行なわれて、これは五カ年間の長期な貿易協定を結ぼう、しかもワクを拡大しようということで、これの話し合いが行なわれることになっております。また、その場合には、シベリア開発のお話がございましたが、詳細にシベリア開発についてのソ連の考え方というものは聞いていないのでありますが、そういう機会にソ連の真意等も確かめてみたい。そして、これは貿易量を一挙にというわけにはまいりませんけれども、長期的な一つのこの計画のもとに、ソ連貿易というものは今後拡大をしていきたいという積極的な考えを持っておるものでございます。  ことに、いま御指摘のような植村甲午郎氏が、これは政府が派遣する経済ミッションとしては最初でございます。さきに民間人との間に、日ソ経済共同委員会のような機関が設置されることになっておりますので、こういう民間の側における日ソの経済交流を通じて貿易拡大への措置ができるものと期待をいたすものでございます。
  15. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 特に共産圏貿易というのは、やはり特殊な政治的配慮が必要であることは当然だと思います。しかしながら、先ほど申し上げましたような意味からも、私はここにはっきりと踏み切る方針を腹にきめながら、相手と折衝をされたいと思うわけであります。格別、いま申し上げましたようにシベリア開発の問題は、わが国経済の目下の不況対策上の観点からしても、それから長期計画的な観点からしてもきわめて重要な問、題であろうと思いますが、ただいま通産大臣のほうから積極的な見通し、積極的な態度を持ちながらひとつ交渉、あるいはミッションを派遣してみようという態度のようでありますから、それ以上目下掘り下げることはどうかと思いますので遠慮を申し上げたいと思いますが、これはひとつ総理にも重ねて、いま経済はタイムリーにやらなければなりませんから、具体的なひとつ努力を続けられんことを要望をいたします。  不況問題を中心にしてお伺いをいたしたいと思いますが、総理はたびたび本会議場におきましても、この委員会におきましても、現在の不況は金融の引き締めから起こったものだと、いやに簡単に言われるわけでありますけれども、きのうもお話が出ておりましたが、単に金融の引き締めから起こったような、それほどの一時的なものでありまするならば、いまとられておる金融緩和の措置でほんとうは景気が回復しなければならぬはずであります。ところが、相当な金融の緩和状態にもかかわらず、景気回復の徴候はあらわれておりません。したがって、そこにこそ今回の不況の深刻さがあると思うのでありますけれども、ひとつ重ねて総理から今回の不況についての原因と現状認識について端的に——あまりよく説明してもらってもどうにもなりませんから、端的にひとつお伺いしたいと思います。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは論理的にいって金融引き締めだ、こういうことでございますが、それじゃ答弁にならないというおしかりです。過去においての設備過剰、それによる需給のアンバランス、いろいろの条件、その他いろいろのものが重なり合いまして不況を引き起こした、したがって、この不況はなかなか深刻なものである、かように私どもも思っております。そういう意味で、最近の対策なども各面にわたって、ただ金融だけじゃなしに、財政、予算等あらゆる面でこれが克服をしよう、かようにいたしておるわけであります。
  17. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 理屈の応酬はむだかと思いますが、私はやはり出発点になりますので、私の考え方を的確に申し上げてみたいと思います。  量的な拡大を重要視して質的な向上を軽視したいわゆる高度成長政策というのが、大企業本位となり、借金経営となり、産業間、企業間、地域間の格差を生み、労働力の逼迫、消費者物価の上昇、国際収支の悪化、銀行のオーバーローンなどの経済の危機状況を招くに至ったのでありますが、それが単にそれにとどまらず、景気の過熱から景気変動を大幅にして、その累積的な結果が、言うならばマクロ的には需要と供給のギャップを激化させ、ミクロ的には損益分岐点の上昇から企業の収益を悪化させ、これが企業の倒産、株価の暴落、信用の不安等の原因となりまして、ついには経済の自壊作用を起こすに至るもの、私はこれが普通の常識的経済理論だと思います。きょうの不況は、私どもがずいぶんとかねがねから強く警告したのにもかかわらず、このいま申し上げた経済論理を池田内閣が無視して、そして突っ走ったがために起こったものである、そこに深い私は深刻さがあると、こう考えるわけであります。  言うまでもないことでありますが、私は、ほんとうは私どもと大体同じ考え方に立って池田政策の批判者であった総理をはじめとして福田蔵相も、それから藤山長官も、そういう立場で私はこの問題をとらえておられると、こう思っておるのです。ところが、総理の問題の処理のしかたはいかにも簡単でありますので、私はその真情、ほんとうの気持ちを疑わざるを得ない感じになっておるわけであります。現に総理が昨年七月の自民党総裁公選に立たれたときの池田内閣政策批判は、私がいま申し上げたような立場からのきびしいものであった。格別福田さんもそうであったと思います。藤山さんも、ほんとうは三十六年でしたか、経済企画庁長官をやめられたときは、同じ立場の主張をして、いれられずに去られた、こう私は記憶しておるわけであります。この辺の考え方に対して、私ははっきりとした池田内閣の責任は責任ですけれども、私はそれは追及しようとは思いませんから、それはそれとして、その切りかえる態勢に対する根本的な立場を私は明確にしてほしいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日の不況を引き起こしたその原因について、非常な検討がいろいろされております。私は政治家といたしまして、ただいま引き起こしておる問題それ自体にいかに対処していくかということに実は全力を注いでまいっておるのでありまして、ただいま言われることが私はむだだとは申しません。その議論をすることによりまして、いろいろ対策も立つのである。そういうことでございますから、その議論は大いに尊重しなければなりませんが、ただいま政治家としてやることは、これよりも前向きで、今日の不況を一体いかにして克服するか、こういうことに最善を尽くしてまいりたい、かように思っております。
  19. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 福田大蔵大臣にお伺いいたしましょうか。私はいまのような観点に立ちますがゆえに、今度の不況に対する対策は、出発点が非常に根本的でなければならぬし、対策は非常にまた長期計画的な見通しを持って当たらなければならぬ、こういうふうに思うわけです。したがって、対策というのは、根本的にはデフレ的な方向をとるか、インフレ的な方向をとるか、その一番根本を定めてから取り組まなければならぬ。それを政府はインフレ的な方向をとられたわけですが、そのインフレ的な方向をとってやられようとするところの具体的な方針はいまのようなところから私は出たと思います。しかし、必ずしもインフレ的な方法だけが私は唯一のものではなかった、いろいろな社会情勢からこの方針をとられたと思いますが、インフレ的な方向を選ばれた理由を端的に伺いたいと思います。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、ここ数年間に日本経済が非常に発展した、そのメリットというものは、これは高く評価しなければならぬと思うのです。しかし、今日、現在の不況がこのような状態にあるというその分析については、大体佐々木さんと同じような考えを持つわけであります。したがいまして、いまこれから、またこれまでとっております政策もそのような観点から出発しているわけであります。  政策がインフレ基調なのかデフレ基調なのかというお話でございますが、私は事を二つに考えておるわけであります。つまり当面は何としてもこれまでの経済状態の引き続きの問題である。つまり善後措置の問題である。それは、ここまで停滞してまいりました経済に活力を与えることである。つまり購買力を注入することであります。非常にデフレ的な傾向になっておる今日の日本経済に、需給のバランスを回復させる方向への施策を進めることである、そういうことでありまして、これはインフレ的であるとそれを御解釈くださると、これはちょっと語弊があるのじゃあるまいか。インフレじゃない、デフレのこの落ち込みを是正する考え方に立っておる。この考え方に基づく当面の不況対策が終わりましたあとにおきましては、インフレでもない、デフレでもない、健全な安定成長政策を進めていく、さように考えておる次第であります。
  21. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 観念的な議論を私はもてあそぼうとしないのでありますが、出発点でありますから、もうちょっとお願いいたしたいと思います。  デフレ、インフレというのは、的ということばを私は使っているわけです。要するに需給バランスか破れておるときに、その供給力のほうをともかく締めるほうを中心として、そして緊縮的な方向で浸透さしていく、これは当然にデフレ的な方向だと思うのです。その場合には不健全なものはつぶれていくわけでありますし、当然に首切り、賃下げというような方向が出てくるわけであります。そのようなかっこうで、要するに切開手術してうみを出すようなかっこうでぎゅっとこらえていくのがデフレ的な方向で、私は最初はその方向をとられようとしたと思うのです。ところがそれにしても物価は下がらないし、それではからだ自身がもたなくなってくる危険性があるので、むしろそこで今度は逆に需要を喚起するというインフレ的な方向をとろう、こういうことだと思うのです。私はそのことは当然だと思うのです。しかしながらデフレ的方向の場合の一番問題は、そのデフレ的治療に対して体力がこたえ得るかどうかということが問題であると同時に、今度はインフレ的な方向をとろうとした場合には、言うならばこれは麻薬治療みたいなもので、うみをからだの中で散らしてしまおうというようなものだと思うのです。ところがその麻薬治療の麻薬が重なり過ぎるとだんだんと麻薬常習犯の麻薬患者のような状態を呈してくるわけです。したがって、もしいまの方針で需要喚起、インフレ的な方向をとろうという根本的な立場に立たれるならば、その方針をとられたときに、麻薬患者にならないための歯どめの方針と具体的な決意をはっきりと持たれることが出発点にならなければならぬと私は思うのです。その歯どめのための具体的な方針をどこに持っておられるか、ひとつ大蔵大臣、お答えいただきたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御説ごもっともでありまして、私もさような観点から、当面われわれが取り組んでいる問題は一つじゃないので、二つあるのだ。一つは、停滞の経済を打開していくことである。同時に、その打開とともに考えなければならぬのは、打開後における日本経済を、健全に安定した発展状態に持っていかなければならぬ、この二つである。でありまするから、この両者は関連をしている問題なんです。そのあとの安定経済、つまり日本経済を麻薬によって麻痺さしちゃいかぬということも常に頭に置きながら、第一の当面の施策を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  23. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 安定成長への方向を途中からはっきりとさらされよう、こういう意味だと理解いたしますので、今度は具体的にだんだんと中をお伺いいたしたいと思います。  先ほどとられた政府不況対策は、要するに財政投資をもって有効需要の喚起を行なおうということでありまして、数字は御承知のとおりでありますから省略いたしますが、三、四千億の需要喚起の財政投資を行なって、そしてこれを民間に均てんをさせて、大体一兆円程度の需要造成をはかろう、こういうことだろうと思います。しかし、御承知のように一般にいわれておりまするところは、有効需要の不足は一兆五千億とかあるいは三兆円とか、かたく見積もっても二兆円は下るまいというのが大体一般の見方のようでありますが、いまの対策は大体一兆円秘匿の需要造成を目途としておられるようでありますけれども、これで大蔵大臣が言われるがごとく、秋口に景気回復のきざしを見ることができるだろうか。藤山長官は、きのうの辻原君の答弁にはだいぶ慎重でありまして、まあまあ年末ごろをめどにという御答弁であったようであります。私は、ただこの有効需要の不足が、少なくとも二兆円程度だろうということに対して、一兆円程度の需要喚起策で期待が持てる効果があり得るか、率直なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま日本経済全体として見ました場合に、有効需要が一体どのくらい不足しているのだろうか、こういうことが問題になるわけなんであります。それには、基本的には設備の稼働率という問題なんでありまするが、わが国におきまして、残念ながらこれを的確に捕捉するところの資料というものがないわけであります。しかし、資料はありませんけれども、非常に多額の設備がいま過剰状態にあるということは、これは考えられるわけでありまして、その設備に対しまして、一体需要をどういうふうにあてがわなければならぬかということで、この有効需要を幾らにするか、幾らと見るかという議論が起こってくるわけですが、民間の人が一兆五千億説、二兆円説、三兆円説といろいろあります。ありますが、その立論が、これらの設備の何%までを稼働せしむるかという見地に立って言っておるのか、あるいはただ感覚的に言っておるのか明らかでありません。しかし相当多額の需要を喚起しなければならぬと考える。そこで政府におきましては、御承知のように、財政投融資を拡大する、その財政投融資の配分また使用にあたりましては、土地のような経済活動にそう結びつかないものにはこれを使用しないということを方針としておるわけであります。すべてものに密着をする使い方というものを考えておるわけであります。そういうことを考えますと、公共事業費の回転効率からいいますと、これは二・八倍とか二五倍とかいろいろ説がありまするが、私はいろいろな説よりも、今回の財政投融資の回転効率は非常に高い、こういうふうに見ておるわけであります。佐々木さんは、いまこれを一兆円というふうに評価しておりますが、それが一兆円になるかどうかわかりません。しかし、今年度における日本経済の総生産、これは二十七兆円前後になるのじゃないかと思う。それが半年では十三兆五千億ということになりまするが、この下半期の、半年の十三兆五千億ベースの国民経済に、それだけの幅のものが付加されるわけであります。その付加される時期というものを考えてみる。私は毎日毎日計画の実行を督励をいたしておりまするが、これはほんとうに集中的に実施される時期というのは、私はこの秋口というふうに見ているけわでありまして、十三兆五千億円に対して相当多額の追加需要喚起が行なわれるわけでございまするから、これは秋口には経済はちょつと趣が変わってくる、かように見てお答えをしておったわけであります。
  25. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 七月三十一日付の新聞の伝えるところによりますと、経済企画庁発表の経済見通しというのが出ております、オーソライズされたものであるかどうかは知りませんけれども……。それによりますと、今回のてこ入れによりまして本年の実質の経済成長率は大体四・一%程度ではあるまいか、そうして、これでは明らかにまだ不況感をぬぐい切れないという感じを持って、少なくとも五、六%の成長路線に乗せなければならないのではあるまいか、そういう結論めいた感じを持ってこの数字を取り上げておりますが、この見方と、大蔵省のいまの福田さんの見方とはだいぶ感じが違うようでありますが、これはひとつ総理大臣にお伺いいたしましょうか。現実にいま経済政策委員会でもあるいは閣僚会議でもけっこうですが、それに第二次てこ入れの計画ありやなしや。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま第二次てこ入れの計画なしという状態であります。
  27. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、これは藤山経済企画庁長官にお伺いいたしましょうか。新聞の伝えるところによりますと、さらに二千億程度の追加財政支出によるところのてこ入れが必要ではあるまいか、先ほどの四・一%程度の成長率を五、六%に上げる必要があるのではなかろうか、こういう観点でいまの不況対策の需要喚起方策を見ておられるようでありますが、いかがでございましょうか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま計画があるかと言われたから、ただいま持っていないと申しましたが、経済でございますから、経済が流動的なものであること、これは佐々木さんも御承知のとおりでございます。私ども絶えず経済状況を見まして、そしてそれに対策をす立てていく、これはもっぱら怠らないつもりでございますから……。先ほどの答弁が非常にぶっきらぼうでしたから、補足しておきます。
  29. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先般行ないました景気対策というもの、それをさらにてこ入れする必要があるかというと、私は現在それを考えておらぬのでございまして、一つの新聞が何かそういうことを考えているように言われましたのは誤りでございます。むろん企画庁としては、いろいろの試算をしておりますけれども、私の考え方からいたしますと、景気刺激というもの、経済界の実態というものは単に数字的な問題だけでなしに、経済の動きというのは、人心の帰趨というものが非常に大きく経済運営の上に反映してくると私は思う。したがいまして、ちびりちびり、少しずつ金を出してまいりますと、かりに最後の総額が先般出しましたような二千百億ぐらいなものになりましても、それの影響というものは非常に少ない。しかし一気に思い切って二千百億円を出す、そうして中小企業の金庫の金利を下げるとか、あわせてそういう金融面の操作をいたしますと、これが経済界の人に及ぼします精神的な影響というものは非常に大きいのでございまして、私はそういう意味で、あの二千億を出しましたということは、景気刺激の上においては非常に大きな力になっているのじゃないか。したがって、現状においてあれ以上に今日刺激しなくとも、大体経済自身も自力的にこの難局を打開するだけの考え方を持たなければならぬのでございますから、それをあれで刺激していきまして、経済自身がそういう考え方を持ってくれば、影響するところは数字的影響よりも非常に大きくなる。したがって私は、今日さらに第二次というようなことを現在においては考えておらぬことは、大蔵大臣その他と同じでございます。
  30. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いま藤山長官がお話しになりましたように、経済というのは非常に心理的な影響が大きいと思います。したがって、ほんとうはのどから手が出るほど、これでは不足だからやりたいなあと思っても、やるわと言うたら、もはやいまの効果が消えてしまうというその関係を私は十分承知いたしております。しかしながら、その試算の関係において、いまの三、四千億の需要喚起では、まだまだ不況感を払拭し切れない数字が出ておることは事実なのです。問題は、そのための今度は需要喚起、もうさらに二千億といいましても、その財源措置というのがどうにも出てこないというところに問題があるのではあるまいか。したがいまして、私はこれの論争も控えたいと思いますが、問題はいまの第一次てこ入れ、ということばはいいか悪いか知りませんが、これだけでは、われわれが算術やその他で見たところでは、需要喚起の分量として少な過ぎる、それに対して将来、いま総理の言われたように弾力的な感覚を持って見なければならないのではなかろうかというふうに理解をして先に進ましていただきたいと思います。  同じ関係で、国際収支の見通しについてお伺いをいたしたいと思います。これまたもとがおかしいということになれば話が全然違ってくるわけですが、同じ経済見通しの、修正見通しの中で、輸出に対しましては当初見通しの七十六億五千万ドルを、今度はいまのてこ入れによって八十四億ドルにはね上げてごらんになり、それから輸入に対しては、これはまだ減るのでありまして、当初見通しの七十三億ドルを六十九億ドルになお減らすように見ておられて、したがって結局十四億ドル程度の大幅の貿易黒字が出る、こういう見方のようであります。  これはむしろ福田大臣にお伺いしてみましょうか。いまの経済てこ入れの効果で需要喚起が行なわれるということが成功するとするならば、これは国内経済が活発になることを意味するのでありまして、当然に輸入がふえることを意味する。したがって、秋口にでも効果をあげるような活動が行なわれるということであるならば、私は、見通しとしてどうしてもここで修正するならば、輸入のほうをふやして輸出のほうを少し控え目に見るというのが当然ではあるまいかと思いますけれども、これは、この数字をはじかれたところはよそでしょうけれども、大蔵大臣自身感覚としてどう思っておられますか。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 輸出につきましては、いままでの実績から見まして八十億を相当上回る、こういうふうに確信をしております。それから輸入につきましては、経済見通しよりは、実際経済の落ち込み状態を反映いたしまして、ほっといたら下がる、場合によったら六十億台になるのじゃないかというくらいな感じを持っておったわけであります。しかし、今度一連の景気対策をとる、そういうようなものに伴いまして、輸入は当然幾らかふえてきます。先ほど一兆円の需要喚起効率が上がるであろうという佐々木さんのお話がありましたが、いま国内で事業が行なわれるそういう際に、大体一〇%内外の輸入依存というふうになるということが言われておりますがそう見ますと一兆円といえば一千億円でありますから、三億ドル近くということになります。そういうようなことで、ほっておきましたならば六十億ドル台にも落ち込もうという輸入に対しまして若干これを高目に見るということは私は妥当な考えじゃないか、こういうふうに思います。  ただいまお示しの数字につきましては、私はまだ聞いておりませんけれども、まあその数字、十四億ドルの黒字という数字がはたしていいのかどうか私まだそこまで詰めておりませんけれども、十億を相当上回る黒字が出るということにつきましては、私は何らの不安を持っておりません。
  32. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 福田大蔵大臣、資本収支についてはいかがお考えでありますか。これほど金利が下がってくる。長期資本はなかなかこない。ユーロダラーも逃げるという状態におきまして、当初の見通しはたぶん二億五千万ドル程度の黒字を見ておったと思いますが、その状態が見込めるかどうか、私は非常に危険な感じがいたします。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ資本収支の部面になりますと、長期資本の調達がまず非常に苦しくなっておるわけであります。日本は昨年あたりは欧州市場からだいぶ調達したのですが、それが壊滅状態である。アメリカ市場だけだ。ところがアメリカ市場自体が非常に窮屈な状態で、なかなか思うような調達ができません。  短期資本につきましても同じような状態があり、日本から短資が流出するという傾向もあったわけであります。そういうようなことを総合いたしまして、まあ黒字じゃなくて逆に赤字が見込まれる。またこれを覚悟しておかなければならぬ、かように考えております。
  34. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、資本収支は当然にもう赤字になっていくだろうと思いますし、それから繰り返して言うようですけれども、需要喚起方策が大蔵大臣の言われるような効果をもたらすならば、これは、当然に貿易収支関係もいま言われたような形の甘さではない。いまの見通しのような国際収支の状況であれば、それならば、まだ需要喚起方策が効果を上げない証拠に逆になるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  次々飛んで恐縮でありますけれども、三木通産大臣、この貿易収支については直接の関係を持っておられますが、ほんとうにどういう見通しを立っておられましょうか。貿易収支の見通しと、それからいまの需要喚起方策の、つまり国内経済の活況とのその成功、不成功、効果の上げ方との関係、こっちが効果が上がるとすれば、国際収支関係はどうしたって貿易じりは悪くなっていかざるを得ぬ。両方いいというほおかぶりみたいなそろばんが出ておるということは、どういうことだろうと思うのですが、実務に当たっておられる通産大臣、ほんとうにどういう感じでごらんになっておられるでしょうか。
  35. 三木武夫

    ○三木国務大臣 輸出は、これは有効需要喚起策をとっても、これが急に日本の景気上昇とは考えられません。しかも、一方においては相当設備投資の結果、日本の産業が国際競争力を持ってきておる。それと、国内におけるこういう景気調整期における国内からの輸出をプッシュする力もやはりありましょう、国際競争力が。だから、輸出の前途というものに対しては、かなり十億ドルをこすだろうという見通しでございます。また事実そうなんです。  輸入の点については、いま大蔵大臣も、景気に対する有効需要の喚起策がどれくらいのはね返りになるかということはもっと検討を要しますが、やはりそう大きな輸入の増加にはならないのではないかというふうに見ておりますから、今年度の貿易収支については、やはり相当な黒字であるというふうに見ておるわけでございます。
  36. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 ここに一つの問題が明確にあることだけを指摘して、私は先を急ぎたいと思います。言われるように両方ほうかぶりみたいないいことはあり得ない。だから、はっきりとその辺の見通しを立てられながら、弾力的な運用をしていただきたいと思います。  次に、同じ意味不況対策との関連において、物価問題について端的に伺いたいと思います。経済企画庁の先ほどの見通しの中でも、はっきりとまだ物価安定のきざしを見せずに、消費者物価の上昇を当然のように織り込んだ下期の見方をしておるわけであります。私はその見方は一応は正しいと思うのです。政治的にはけしからぬと思うけれども、正しいと思うのです。そうして一月に十項目にわたる物価安定の総合対策を立てられ、さらに八月二日に第五回の経済政策会議で、六重点政策なるものを佐藤内閣で掲げられましたが、これは藤山長官からたびたび新聞を通じても言っておられるように、別に新しいものがあるわけではない。ただ実行だけだろうという感じでありまして、しかし、いずれにいたしましても、第五回の経済政策会議の六重点政策なるものを掲げて、これは実行あるのみと強調されて、そうしてこれを実行することによって少なくとも一年ないし一年半のうちに消費者物価の上昇率を年三%程度の安定基調に持っていく方針だ、その間はともかくしようがないから、所得減税と低所得者に対する社会保障の充実に充てるという考え方でありますが、総理大臣ほんとうに自信を持ってこの作文をごらんになりましたか、一年か一年半のうちに三%程度の上昇率にするような、そういう安定基調に持っていく。それまでは困っておるほう、今度われわれの月給から税金を引くのをやめてやろう、もっと貧乏なものには金をやろう、それでまかなっていくこと、これは間違いありませんか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題はまことにむずかしい問題であります。一月に総合的対策を立てましたが、なかなか効果が上がらない。また今回の不況対策に取り組む際におきましても、この物価対策を特にわれわれが考えなければ国民生活に非常な悪影響あり、こういうことで、ただいまの重点政策を実は考えたのであります。この中には直ちに実行できるものもありますし、またしばらく時間をかさなければならないものもあります。そこで、いろいろ皆さん方のほうからも御議論があって、何もかもみなストップしろ、こういうふうなお話も聞きますが、しかし、そういうことをしないで、こういうような事柄によって円滑な推移をはかっていく、これが実は政治ではないだろうか、かように思ったものであります。十分自信があるか、かように開き直られますと、なかなか複雑な問題でございますから、また各面の御協力を得ない限り、こういう事柄政府の作文だけで実現するとは私は思いません。ただいまの物価問題、これは国民生活から見てもたいへんな問題だ、かように思いますので、どうか御協力、また名案も授けていただきたい、かように思います。
  38. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、一年か一年半の間待ってくれ、その間は所得減税と低所得階層への社会保障、こういうことらしいのですが、その間所得税の減税や低所得階層への社会保障が必要なのは、そうするといまということになりますね。この方針をいつからどの程度に行なわれるつもりでありますか。
  39. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ、来年度におきまして、そういう今日のような状態が続くという際におきましては、来年度予算の問題として考える。
  40. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 なぜ補正の中で直ちに実施に取りかかられないのですか。
  41. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今年度におきましては、すでに減税法案の御審議を願ったわけでございます。また社会保障諸施設につきましても、かようなものに関連いたしまして、相当する予算を見込んでおるわけでございまして、今年度はとにかくこれでやっていく、来年度以降において考える、かように考えたのであります。
  42. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今年度に効果が出ておらないからこれだけの物価上昇がきておる。これから一年か一年半かかって物価の上昇をとめるようにする、それまでの間減税とこれとでやってくれというのですから、どうしてもいまからやらぬと話が合わぬということになるのではないか。なぜ直ちに着手されることをちゅうちょされるのですか。
  43. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今年度につきましては、若干物価がもう上がるということをすでに考えておったわけでありまして、そういう経済見通しとも関連をとりながら、税制、また歳出のほうの施策が立てられたわけであります。現に実施中でございますので、今年度はもうこの程度で、まあ来年度において考えてみたい、かように考えておるわけでございます。
  44. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 実施中であっても、効果があがっておらないから、したがっていま経済手直しもやろうとされているのでしょう。経済を上げるため、私ども一番悪いことばで言えば、大企業の手直しをして、経済を上向きにするための手段はいま即刻でもとられる。しかし、われわれがいま物価高で悩んでおるところのそのための対策は、もう済んでしまったからやらぬ。もう済んでしまったことは——それならば、いま三千億でも四千億でも需要を喚起することは、これも当初予算で済んでしまったことじゃありませんか。私は、物価問題に対しての基本的な問題は、いい知恵があるかないかということではなくて、ほんとう政府が物価問題に取り組む腹があるか、やるつもりがあるかどうかということだと思うのです。やるつもりがあるなら、ぼくは、少しでもいいから、先ほどの精神的な問題もありましょうから、なぜいますぐに手を染められないのか。私は、この逃げられる態度に対してはなはだ不満な感じを抱かざるを得ません。  もう一つ申し上げますが、公共料金等の値上げのストップの問題は、たびたび出ておりますから省略してもよろしい。私は、もう一ついまの不況対策の一環としても、特定な品物の値下げが必要になってくると思うが、その値下げは税金で、物品税の値下げ、砂糖、たばこ、酒などのそういう一般消費物資の消費税の値下げ、事実上の減税、私は、これはいま不況対策と並行してやられるべき方策ではあるまいかと思いますが、大蔵大臣、これに対する検討はされておるのでありましょうか。あるいはお考えがすでにあるのでしょうか。方針を聞かせていただきたい。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 減税が不況対策と若干の関係があるということは、私はそのとおりだと思うのです。しかし、これは国家財政の運営全体の面からも慎重に考えなければならぬ問題である。私も考えてはいましたけれども、ただいまこの景気問題と関連して減税を行なうという考えはとっておりません。
  46. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、物価対策に対しては全然手をつけておられないということですか。不況対策はすべての問題に関連いたします。税金問題は、減税案が出てくるまでどこかにたのんでおいてというものではありません。減税は、所得減税にしましても、それからその他の物品税、消費税等の問題にしても、これは物価対策であり、不況克服対策を成功さるかさせないかの一つのかぎでもあります。同時並行的にこれは考えられなければならぬ。したがって、作文としては同時並行的に考えるたてまえになっておりながら、税金の問題はどこかに相談して、結論が税金の立場から出るのを待つ。物価の問題は、どこかによって物価のその答申が作文に出てくるのを待つというのでは、私は総合施策にはならぬと思う。少なくとも不況対策を実施されるというならば、最小限先ほどの所得減税を中心とした個人所得の減りを正すこと減らぬようにすること。それから、ともかく公共料金等の値上げをストップすること。積極的に物品税、消費税等の引き下げによってその物価自身を現実に引き下げること。そうすればたくさん売れるようになることは事実ですよ。安くなればたくさん売れる。酒も安くなればたくさん飲みますよ。そのこと自身が私は景気回復の一つの契機になるし、またある意味では収入のプラスにもなり、税収のプラスにさえ、少ないものでありましょうけれども、私は考えてもいいくらいの考え方が成り立つと思うのです。それを、取り立てるほうの側の一方的な見方ばかりするものだから、話がぐるぐる回っちゃって、一つも結論がないような気がいたします。総理大臣のこの問題に対する御所見を承りたいと思います。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実は、ただいまのお話で非常に民主社会党の主張を私も理解いたしたのであります。過日、本会議の席上において、予算的措置をなぜしないか、こういうお尋ねがありましたが、ただいまのような点まで実は私は考え及んでいなかった。したがいまして、あのお答えは非常に御不満だったろうと思いますが、ただいまのお話で非常にわかります。しかし、ただいま大蔵大臣が説明いたしましたように、本年の物価のあり方、あるいは国民生活の実態等は一応想定して考えたものでございます。そうしていわゆる物価等が高騰はしたとはいっても、非常に格段なインフレを起こした、特別な措置を講じなければこれが乗り越えられない、かようなものでは実はないと私どもは見ております。ただ総体的な認識の面におきまして、この際に積極的にただいまのような救済の手を差し伸べればもっとスムーズにいくのじゃないか。ただいま言われたような点で、最近自民党が負けたのもそこなんだ、かようなお話がありますので、私どもも十分反省はいたすつもりでございますが、しかし、ただいま不況対策を立てる、この不況対策は、有効需要を喚起するというたてまえで、いわゆる過度に萎縮したものを直していくという程度の不況対策であります。これによりまして物価が高くなるとか、あるいはインフレ的傾向にまでなるとか、かようには実は私は考えておらないのであります。先ほどインフレ的処置をとったのだという御批判もいただきましたが、私はさような意味のことを考えておるのであります。しかし、私どもは、もっと底辺に住む人々の実情に即して、そうしてただいま御指摘になりましたように、積極的な意図で政策を遂行しないと、あるいは底辺に住む方々の十分の味方になっていない、かような非難も受けるのじゃないか、かように思いますので、その点は十分反省もし、今後も特別な留意をいたしまして、そうしてこの物価問題と取り組むその姿勢も、ただいま申し上げるような弱い者、あるいは底辺に住む者、こういう方の負担を増さないように努力してまいりたい、かように私は思います。
  48. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 不況対策の需要を喚起するということも私は肯定するのです。需要の最終は個人の消費です。したがって、需要喚起策と、物価をおろす策と、それから個人の所得を確保する策と、この三つが一緒にならなければ効果が出ないのです。私は、企業活動にだけ、まあ悪いものの言い方だけれども、財界にだけ焦点を向けておられるのではあるまいかと思う。だんだん私どもがこの不況対策を見ましても、財界の面にだけ焦点を向けておられる感を禁じ得ない。だから、この方策をとられるならば、いまの物価問題に対して、個人消費に対して、個人所得に対して目をはっきりと向けられて、私は同時並行的な政策を望みたい。これからでもおそくない。補正でも考えていただきたい。私は注文をしながら先に進みたいと思います。  中小企業の対策についてお伺いをいたします。三木通産大臣にお伺いいたしますが、中小企業対策としては、すでに三機関の金利の引き下げでありますとか、あるいはその他一般的な方針は打ち出されておるように私ども承っております。しかし、いまわれわれが中小企業に対して最も必要だと考えるのは、先ほど来の需要喚起を中心とするところの不況対策が行なわれても、現実にその効果が中小企業に回ってくるのは早くても年末から来年になる。したがって、その前にくる九月決算を目の前にいたしまして、中小企業の苦脳な状態ははっきりと通産大臣はごらんになっておると考えます。したがって、いま不況対策を需要喚起方策として打つと同時に、必要なことは、中小企業を中心とするところのこのいまの危険な状態防衛対策であろうと考えます。もし需要喚起の一般方針だけをとられましても、ばたばたといまの中小企業が九月決算前後においてつぶれていく傾向になるならば、これは当然社会不安を巻き起こすことでありますし、したがって、不況対策自身が成功しない。したがって、これと並行的に、目下の中小企業の苦境を救済するための緊急防衛の措置が私は必要だと思うのでありますが、これに対して通産大臣は何らかの方針を考えておいでになりますか、伺いたいと思います。
  49. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お説のとおり、中小企業は相当経済活動の沈滞によって打撃を受けておるわけであります。したがって、現在とっておりますことは、通産省の通産局——地方の通産局が中心になって、市中金融機関、財務局あるいは地方の地方行政官庁、これが一体になって、中小企業の実情を把握するために金融懇談会を随時開いておるわけであります。そして、もし倒産などの起こるような場合には、これに対して倒産を防止するために、地方銀行あるいは政府の金融機関、これを通じて倒産の防止をはかっていく、それからまた、地方の通産局などがいろいろな仕事のあっせんもやる。仕事の量が非常に減っておりますから、そういうことで——中小企業は地元地元によって特殊な事情がありますから、その事情に応じて適切な処置をとりながら、一番苦しい時期に、一方において需要喚起をやっておりますから、景気はいずれ回復をするという期待を持っており、その間に中小企業に対する連鎖倒産のような事態のないように、地元の金融機関とも協力をしながら、これを極力防止していきたいという政策をとっておるわけでございます。
  50. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 三月決算前後に起きた状態御存じのとおりであります。私は、九月決算を前にして、その深刻な状態がはっきりといまのいろいろな統計から出ておると思います。不渡り手形の現状でありますとか、あるいは倒産の現状でありますとか、いろいろその辺の具体的な状況も出ておると思います。したがって、いまのような緊急対策がまさに必要だが、御承知のように、政府は証券対策のためには、信用不安ということを理由にして、七千億に近い日銀の資金を投入されたわけであります。私は、中小企業に対しましても、これと似たような政府の資金の使い方が必要ではありますまいか。したがいまして、たとえば中小企業救済基金というようなものを設けて、中小企業の不渡り手形の肩がわりだとか、連鎖倒産の防止だとか、高利債の整理だとか、それらに必要な資金をここから供給したらどうか。これは非常に端的な提案のように聞こえますけれども、私は、いま特にかつての不況時を切り抜けようとしたとき、たとえば昭和二年、昭和五年、あの時分の動きから見て、特に信用に対しまして特別な手を打った当時の状況考えると、中小企業のいまの窮状に対して、これくらいの手は当然に考えてしかるべきだと思いますが、重ねて御所見を承りたいと思います。
  51. 三木武夫

    ○三木国務大臣 非常に根本的な施策を中小企業にとったらどうかという点でございますが、私どもとしては、現在の政府関係の金融機関、これは資金量もふやし、あるいはまた、ものによったならば、貸し出しの期限のきておるのもこれを償還の延期、あるいはまた、新規の貸し出しの場合はその基準を暖和する等、現在持っておる金融機関の全力をあげて、そうして中小企業の倒産するような事態を防止していきたい、こういう政策を現在はとっておるわけでございます。これが不徹底な場合には、さらにこれを強化するようなことは考えますけれども、いま佐々木委員の御提案のような、そういう基金制度をいま直ちに設けようということについては、これは非常に重大な問題であって、現在のところはさようには考えていない。現在の機構を最大限度に活用して倒産の防止をはかりたいと考えておる次第でございます。
  52. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 山陽特殊鋼の倒産に際しまして、私ども現地にいち早くかけつけて、そして役所の出店、大蔵省の出店も、通産省の出店も、銀行の出店も片っ端からあの姫路の一堂に会させて、むしろ私どもが介入して債権者とともにそこに一堂に会させて、そして、いまやれる手段で全部やってみい、それから政府で、あるいは法律上の必要がある場合には中央においてわれわれがやったろうということで、あの中に私ども自身が介入して連鎖倒産を防ぐための最大の努力をいたしました。政府自身も、政府の出先も現実に非常に協力をされました。おかげをもってまあまあ連鎖倒産は私はあの程度で済んだ、こう思うのです。山陽特殊鋼の姫路の状態は、いま私は、言うならば全国版であのような少なくとも非常事態の方針がとられてしかるべし。救済基金制度がまだ一ぺんに飛び離れているようでぐあいが悪いならば、私はこれを強制しようとは思いませんが、考え方の基礎に持っていただきたいと思いますが、姫路の一角で、いまの出店だけを使ってやってもやれたのだから、そのことを通産省の中小企業庁が中心になって、大蔵省と組んで、そして各地方の財務局長でも全部呼び集めて、通産局長も全部呼び集めて、ちょうどあの倒産のときにやった対策と同じような全国版をやることは、法律上も、措置としても何も私はいま関係なしにすぐやれることだと思います。九月決算を前にして、そのような態度をもって中小企業に対して基本的な救済の手をひとつ早急にとられんことを強く望みたいと思います。  今年度の財源調達問題から、公債発行の問題を中心とする明年度の財政問題に触れたいと思います。  大蔵大臣に端的にお伺いをいたしますが、不況対策の財源としての二千百億に対する措置はまあまああんなことだ、財源措置というのはまあまああんなことだろうと思うのですけれども、歳入欠陥対策としての今後のことし分の問題について、きのう辻原委員からも出ておりましたようでありますが、端的に、税収不足見込み額をどの程度にごらんになっておられるか、第二次補正要因の額を幾らぐらいにごらんになっておられますか、その額を端的にひとつお聞かせいただきたいと思います。
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず税収の面でございますが、これはいままでの実績からいいますと、相当不足になる見通しでございます。どの程度かということになりますと、今後の経済の推移もあります。まだ年度が始まりまして数カ月のことでありますので、これをいまからどのくらいだということは申し上げにくいのでありますが、ともかく相当不足する。(佐々木(良)委員「見当は」と呼ぶ)ちょっと見当も申し上げにくいのですが、歳出の面におきましては、追加要因がいろいろあるわけであります。たとえば、国民健康保険というような懸案の問題もあります。あるいは災害等のこともあろうかと思います。あれやこれやいろいろと今後出てくると思います。そういうことを全部ひっくるめますと、これもなかなか軽少のものではない。それらの歳入の不足、また歳出の追加というものを全部合わせて総合した場合におきまして、年度末には相当の額の不足が出るだろう。とてもこれを経常の財源であれやこれやとくめんしきれないぐらいの額が不足してくるのではあるまいか、そういうふうに考えまして、いまいろいろと構想を固めておる次第であります。
  54. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大蔵大臣、新聞にはわりにはっきりとものを言われますけれども委員会ではなかなかものが言いにくいとみえて、えらい抽象的なような感じがいたします。  われわれが常識的に見ましても、税収不足というのは二千億をこすのではありますまいか。それから補正要因のほうも、これは公務員のベースアップ、災害対策、それから生産者米価、これには消費者米価を引き上げるかどうかという問題がありましょうが、それから医療費、社会保障関係、やはりこれも二千億程度にはなるのではありますまいか。そうすると、ここに四千億程度の大きな補正財源が必要になってくると思う。いろいろ苦慮されておるようでありますが、昨日の新聞でしたか、新聞紙上でははっきりと、これは建設公債か何かの名目かもしれませんが、もう日銀引き受けではっきりとした、言うならば赤字公債を実施していこう、こういうふうに新聞紙上では出されておりますけれども、どんなものでございますか。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 新聞にあれこれと書いてあるようでありますが、これは新聞のいろいろ主観も入れて書いておることかと思います。私は、まだ本年度の財源不足がどのくらいになるかということは、申し上げたことはないのであります。しかし相当出る。それに対しましては、まああれやこれや非常なやりくりをすれば、ある程度のことはできますが、しかし、そういう持って回ったやり方もなかなかこれは度が過ぎるように思います。私は、端的に、ことしはこういう非常の際でありますから、その非常の際に臨む臨時特別の措置をもってするほかはあるまい。それには膨大な不足額に対しまして、政府において借り入れ金をいたしますか、あるいは公債をいたしますか、いずれにいたしましても借入政策を使うほかはあるまい、こういう、ふうにいま考えておるわけでございます。
  56. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 最初申し上げましたように、本来高度成長政策に対する批判者の立場をとられた福田さんですが、それがちょうどそのしりぬぐいをせねばならぬということは、まことに皮肉なことだと思います。しかし、そうであればあるほど、一そうしりぬぐいは健全な形が必要だと私は存じます。いずれにいたしましても、やりくり算段はむずかしいにいたしましても、少なくとも私は、はっきりと将来に禍根を残さないような償還計画、償還方法等を明確にした態度をとらなければならぬと思います。いま安易に、いまはデフレ的な状態であるから、これを日銀に引き受けさせてもすぐにインフレにつながらないとか、そういう論ではなしに、しりぬぐいがきちっとできて、将来に禍根を残さぬ方法をはっきりと準備されんことを私は望みます。  時間がございませんから、公債発行の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  総理並びに大蔵大臣は、今国会におけるいろんな答弁におきましても、外での発言でも、公債問題に触れられる場合にはいつでも、本格的な公債発行は、だんだん早まってきておりますけれども、少なくとも明年以降として、そしてその発行の目的というのは、社会開発の経費と減税財源、言うならば減税引き当て、こういう積極的な意味を持つものである。同時に、その公債の財源の引き当ては国民の蓄積を使うという立場をとる。つまり信用膨張の立場をとらない。この社会開発経費と減税財源という積極的な目的と、それから国民蓄積をこれに充てるという健全方針、この二つを原則として立てておられるように私は聞いておるのでありますが、その方針はお変わりございませんか。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 変わりはありませんです。
  58. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 本年度の歳入欠陥対策として先ほどお伺いをいたしましたが、もしそれが実質上赤字公債の状態になるようになってもそれは別だ、来年度からがほんとうだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのとおりでございます。
  60. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今年度の問題は、また近く補正予算として出てくるでしょうからそのときに譲りまして、来年度の財政見通しといまの公債発行の問題にしぼっていきたいと思います。  そうすると、いまの方針でありますならば、来年度に公債を発行するとしても、先ほどの特定な積極的な意味を持つ新して減税の財源と、それから社会開発のものと、これ以外のものは均衡した健全財政をもっていかれるという方針は変わりありません。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 すべてにわたりまして健全財政方針を貫き通す、こういうふうに考えておるわけでありますが、公債を導入する、こういうことは、その公債の名目は、財政法の規定にのっとりまして、あくまでも建設公債になろうかと思っております。その建設公債をいままで通常財源でまかなっておった。よって、公債発行によって生ずる余裕が減税に回っていく、こういう関係になる意味におきまして、建設事業、社会開発事業を進めると同時に減税をも行なう、そういうねらいを持った公債である、かように御了承願います。
  62. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 建設公債の話は、ことしの話か来年の話かはっきりしませんでしたが、ことしの問題はあとに残しましょう。来年度の本格的な公債発行という問題にいたしたいと思います。  来年度の財政見通し、私はざっとあげてみましても、四十年度の減税の平年度化に伴う必要財源が来年度には少なくとも三百八十億程度あろう。それから三十九年度の剰余金受け入れの対前年度比減少分が、これもやはり三百六十億ぐらいは見込まなければならぬじゃあるまいか。三番目に、一般会計歳出の道路整備計画など、使途特定増というのがこれもやはり六百億はある。同じく自然増の経費が千八百億くらいはあろう。合計いたしますと、これらの必然増というのが三千百十億円くらいになろうかと私は思います。少なくともこれは、ほっといてもこれくらいにならざるを得ないものだと思うのですが、これは本来のいまの公債発行論の原則からいきますと、公債発行の対象にはならないものでありますから、税金の自然増で原則としてまかなわれなければならぬものだと私は考えるのですが、これに見合う来年度の税収増が見込み得ますかどうか、見通しをお聞かせいただきたい。
  63. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま政府といたしましては、不況対策に全力を集中しておるわけです。その不況対策の終末が一体どうなるか。つまり不況克服後の経済情勢が一体どういうふうな姿になるか。それによって国民総生産を中心とする経済の見通しというものが初めて私どもとしては立て得るような状態であります。したがいまして、そういうものがまだはっきりしないいま、ことしの財源の状態につきましても、先ほど申し上げましたような状態でありまして、まして来年どうであろうかというようなことにつきましては、ほんとうにこれはまだ検討いたしかねる問題である、かように御了承願います。
  64. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 具体的な数字ではなくて、それなら方針を重ねて伺いたいと思います。いまのような財源には公債は充てられませんですね。公債はそのようなものには充てない方針を堅持されるわけですね。
  65. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年の経済状態が一体どういうふうになるかということが先決問題でございますが、もう不況状態は平常に戻ったということであれば、平常の考え方をとって建設公債というようなことでいきます。いきますが、私どもの期待と違いまして来年度におきましてもまだ経済が落ち込みの状態であるといたしますと、また公債問題につきましても、ことしと同じような考え方を一部使わなければならぬか、こういうふうにも考えますが、まだその辺のことは、これから形勢の推移を見てよくきめていきたい、かように存じます。
  66. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いまはしなくも、ことしの歳入補てん策のような便法を来年度においても一部はとらざるを得ないかもしれないと言われたいまの福田大臣のことばに、非常に大きな問題を含んでおると私は思うのです。その方向が行き出すと、先ほどの公債発行の根本的な原則がくずれてくる危険性を持つわけです。あくまでも今年度の三、四千億の財源措置が一時的な便法であるとして許されるとしても、たびたび総理大臣福田大臣が言われておる本格的な公債発行は、そのような信用膨張を前提とするものでは断じてないことが前提になっておる。私は、ここに総理大臣、あげ足をとるわけじゃないけれども、きのう辻原君が詰めておりましたが、四十三年以降でなければ公債発行はやらぬと現実に言われた。それが四十二年になり、四十一年になり、四十年の下期にまで似たような状態が起きようと、その措置がとられようとしつつあることは、基本的なそのような公債発行の原則がそろそろくずれかけておって、むしろ普通の意味の財源補てん策、赤字公債としての必要性が現実に迫っておるところからそのように転化しつつある、変わりつつあるのだと考えるわけです。それがあるならば事は全然重大問題です。あなたの言われているような、福田大臣の云われているような公債発行論とは全然違う。総理大臣、ここのところをひとつはっきりと御答弁いただきたいと思います。
  67. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私ははっきりしておるのです。つまり不況期間中の臨時非常の事態に対しては、特別の措置としての借り入れ金または公債をとる、これを克服した後におきましては、積極的な意味におきます公債を発行する。この積極的な意味における公債発行につきましては、これを民間で消化し、そしてこれを信用の膨張には持っていかない、こういう考え方を堅持してやっていくつもりであります。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん財政上の基本の問題ですから、十分御審議をいただきたいと思いますし、また、佐々木君が先ほど来言われておることもよく私どもも理解もいたしておりますが、ただいまはしなくも本年の処置、また本格的な処置というものに分けての説明でやや誤解を招いた点があるのではないかと思います。ただいまの大蔵大臣の説明でこれはもうおわかりになったことだ、かように私は思いますが、ことしのことは、とにかく一応別な問題として御批判をいただく。本格的に公債財源によって国のいろいろな仕事をしていきたい、こういう点でございますが、その場合に、条件あるいは規模、時期、対象とするもの、あるいは金利等々いろいろ考えていかなければならないものがある、かように私思いますので、そういう点が十分検討されて、政府はこれでいくのだ、かように決定したものがまだございません。しかし、先ほど来のお話もございますし、どこまでも健全な方針は貫いていく、これによってインフレを起こしたり、あるいは物価高騰を招くようなことはしたくない、それは絶対避けなければならない、こういう点だけは同一基盤に立っておるようでありますが、こまかな点につきましては、さらに私どもがただいまの御意見等も十分参酌いたしまして、そして最終的に決定してまいるつもりでございます。
  69. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 総理大臣の精神的な方針はわかるのです。公債発行はするけれども、インフレにはさせたくないし、させぬように断固としてやりたい。やりたいと言われても、具体的な赤字公債が出れば——赤字公債は信用膨張です。よろしいか。そして、総理の言われておるのはそういう公債ではないのです。その意味で四十三年以降くらいを前提としておられるわけだ。ところが、ことしの暮れにおいても、来年度においても、そういう前向きの健全な公債だけではなしに事実上の赤字公債の必要が財政補てんの必要性から出てきておる。ほんとうは、福田大臣が一番もたもたしておられるけれども、そこのところはインフレにならぬから赤字公債でいきます、こう言いたくてしょうがないのだと思うのです。そのことが一番危険だ。少なくとも公債発行論の出発点はそうではなかった。私は、その点については、これは水かけ論になりますからここでほうっておきましょう。しかしながら、私の言うことは十分おわかりだと思いますので、ことしの後半に出ておる事実上の赤字公債的なものは、来年の歳入欠陥にも同じように一部はそうならざるを得ない感じがする。そしてその来年のときには、その赤字公債的なものと、従来から唱えられておるところの本格的な社会開発や減税の積極面を持つ公債分とが重なってくる危険性を持つ。そうすると、公債自身が非常に複雑な形態を持ってくるから、これは非常に危険な状態になってくるので、しゃんとそこのところを締めてかかっていただきたい。明確な態度をとっていただきたいということであります。いま総理がちょっとお話しになりましたが、そのような二重の公債が出るような段階になっても、なおかつ原則は信用膨張を回避して国民の蓄積をこれに充てるということだろうと思うのです。そのための前提条件は環境整備ということだと思います。環境整備についての具体的な計画、見通しを、ひとつ福田大臣お聞かせいただきたい。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一番大事なことは、何といっても物価が安定基調にいくことが大事だと思う。それからもう一つ私が大事なことだと考えておりますのは、国民が今日より以上に蓄積を持つということだろうと思うのです。余裕を持つということだろうと思うのです。つまり、そういう意味におきまして、私はこれから計画的な長期にわたる大減税を進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけでありますが、それが基本的な問題です。と同時に、公債市場の整備、また金利政策、また公債を発行するための技術的な諸準備、そういうものを周到に整えていきたい、かような考えであります。
  71. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 具体的にお伺いをいたしますが、いま言われました公社債市場の確立の問題についてでありますが、三次にわたる公定歩合の引き下げで金融は緩和して、コールレートは大幅に下がってまいりました。グレーマーケットの債券相場も下がってまいりまして、グレーマーケットレートと発行価格との差が狭まっております。そして、コールの出し手金融機関が有価証券投資を促進させるような機運すら出てきておるような感じがあります。このような環境をとらえて、証券界では三十七年四月以来注視されておったところの公社債の値つけ市場の再開を企図しておるようでありますけれども、この問題はそろそろ機が熟しておるとお考えになりますか。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 すでにグレーマーケットもできたような状態でありまして、これをさらに一歩進めて、制度化といいますか、いわゆるマーケット整備というところまで持っていきたい、早急にこれの施策を進めたいと考えております。
  73. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いまの金利低下の状態、コールレートの状態、その辺がちょっと機が熟したというふうに業界では見ておるようでありますけれども、大体似た感じを持たれますか。
  74. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体そのような感じを持っております。
  75. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでは、重ねて金利の体系化について、これがいまの状態で望むような方向へ、同じようなテンポで進められるとお考えになりますか。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 当面金利体系をどういうふうにするかということが、公社債問題と関連いたしまして議題になってくるわけでありまするが、やはり公社債発行だ、また、その前提としての公社債市場の整備だということになりますると、金利体系というものにつきましても、ここで直すかどうかこれは別として、慎重に再検討をしておかなければならぬ、かように考えております。
  77. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 国民の蓄積がそのまま公債に吸い上げられる状態のためには、金利体系がはっきり整備されて、そして国民の蓄積がこれを持つことに魅力を与える状態ができなければできぬはずであります。したがいまして、そのような金利体系の整備が当然に前提条件として私は必要になってくると思うのです。それらの問題についてはぼうっとした計画でほったらかしておいて、赤字公債の問題や、それから建設公債の問題や、いまの積極公債の問題だけが私は論議されているような気がしてしょうがないわけでありますが、その辺の環境整備に対してもう少し具体的な見通しと計画を立てられたいと思いますが、御所見いかがでございましょうか。
  78. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは御説のとおりであります。私どもも、すでに金利体系をどうするかということにつきましては検討をいたしておるわけであります。特に預金金利をどうするかという問題があるわけでありまするが、この問題は、利害得失、またその波及影響するところがきわめて広範なことは御承知のとおりであります。そういうこともありますので、これは慎重にやらなければならぬが、しかしこれは、公社債市場整備を前にしてどうしても検討はいたしておく必要があるというので、ただいま鋭意検討いたしておる、こういうふうに御了承願います。
  79. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 公債発行の問題が現実の日程にのぼってきておることは事実であります。私ども自身現実の日程として考えておかざるを得ない。その場合に、検討だけでは済まされないのでありまして、公債発行の問題が現実の日程にのぼると、並行的にこの問題は日程にのせられなければならないと思います。ひとつ一段の御努力をお願いいたしたいと思います。  最後に、不況対策の問題としての一番基本的な問題は、これが安定成長の具体策に結びついてくるということだと思いますが、この問題について最後にお伺いをいたしたいと思います。  正直な話、佐藤さん、失礼ではありますけれども、最近の政府態度は、当面の不況対策に狂奔するあまり、言うならば財界の言いなりほうだい。公債発行論も、その出発点を忘れられつつあるような気がするし、佐藤内閣の一枚看板である安定成長政策自身もどこかに置き忘れてしまったような感を抱かざるを得ないわけであります。佐藤内閣使命は、あくまでも池田内閣の高度成長政策を是正して、これを安定成長政策路線に乗せることにあります。公債市場の確立も、公債発行のために必要なのではなしに、金融を正常化して資本市場の機能を回復するためにこれが必要なんである。本末を転倒してはならないと私は思います。同じ意味で、有効需要の喚起策も、景気を上向けて安定成長に持っていくための手段であります。したがって、有効需要喚起政策を断行せんとするならば、同時に、これがかつての高度成長の状態にならないがための、過熱化を防止し、設備投資の過当競争に発展をせずに、ちゃんと安定路線に乗せるための方策がはっきりと準備されておらなければならぬと思う。目下のところは、その辺はその辺になったならば、つまり暮れごろになったら適当に考えたらよかろうぐらいの話で、まさに需要喚起方策だけに狂奔されている姿は、私は当を得た姿勢ではないと考えるわけであります。安定路線に乗せる具体的な方針があれば承りたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話はまことに同感の至りでございます。私ども今日とっている政策が、これが平常な姿であるというふうには断じて考えておらないのであります。早くこの不況を切り抜けて安定成長への路線を開拓していきたい、同時に、そういう目標を持ちながら今日の施策も誤りのないようにということを心してやっております。
  81. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 前に通産省におきましては特振法というものをお考えになりました。私は、特振法自身は必ずしも賛成ではありませんけれども、ある意味においては、これからちょうど安定成長に持っていくための大企業に対する規制措置を行なう手段として似た考え方がひょっとしたら必要ではあるまいか、少なくともこのような安定路線に持っていくための大企業の規制は、これは行政指導みたいなことではあかぬ、現実に私は法律をもって行なわるべきだ、こういうふうに思うわけであります。通産大臣、御所見をいただきましょうか。
  82. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大企業を法制的に規制せよという、そういう広範にわたって大企業の規制ということは考えていないわけであります。やはり自由経済というものを基礎にする以上は、企業ごとに、たとえば設備投資にしても、設備投資をするということについては、これは会社の最高責任者の最高責任ですよ。市場の見通しも持たずに設備の投資をやるというようなことはやはり無責任である。そういうことで、とにかく各企業が安定成長の方向に持っていかなければ企業は安定しないのでありますから、各自の自覚を通じてやるということがわれわれの考えておる経済政策の基調でございます。必要なものについては特振法のようなことも考えなければならぬでしょうが、全般的な考え方としてはいま申したとおりでございます。
  83. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大企業の社会的な責任が失われて、銀行の社会的な責任が失われて、そして自分の採算だけが中心になって競争した結果が高度成長の結果であります。したがって、これを繰り返さないようにしようとするならば、大企業に社会的責任を持たせる意味で、これに対する少なくとも法律によるところの投資規制の方針を立てられなければならぬと私は思う。同時に、また銀行法の改正等を行ないまして、大口貸し出しの規制や預貸率の制限等の銀行業務の社会性の強化に対する干渉ということばは悪いかもしれませんけれども、方針をはっきりと打ち出されなければ、私は本格的な安定成長路線には乗りがたいと思いますが、御所見を承りたいと思います。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま安定成長の基本というものが問題になっておるようであります。昨日もお答えしたようでありますが、この安定成長は経済だけの問題ではなくて、結局、これは国民生活の安定、こういうことを実はねらっておるわけなんです。各企業間、各産業間においてバランスのとれた、つまり不均衡のない経済発展をする。そうして、その範囲におけるいわゆる成長を遂げていくということでありますし、その際に、各企業もその所を得、また完全雇用も実現していく。そうして国民生活自身を安定さすというのが実はねらいであります。いわゆる高度経済成長、これはそれなりの成績をあげてまいりましたけれど、結局ひずみを生じた。ひずみがあるような成長ではこれは安定成長とはいえないのですから、ただいまねらっておることはそれでおわかりだと思います。最終目的がお互い国民生活を豊かにする、かような意味のことを考えますから、企業自身に対する、あるいは投資その他の資金のことも考えてまいりますが、同時に、公債分などもこれで考え方がそこに集中してきておる。さらにまた、片一方でいわゆる減税論も実は出てくるわけであります。いわゆる国民を富まし、国民の生活を豊かにする、そういう意味の安定成長、これをねらわなければならない、かように思っておりますので、当然減税論も出てくるわけであります。また、仕事もしなければならない、社会保障もしなければならない、そういう意味で建設——道路や住宅、港湾の整備等々いろいろな仕事がありますから、これもおろそかにしてはならない、こういう意味でございます。  この安定成長を考えました際に、ただいま佐々木さんと私どもの間に非常に大きな相違があるというのは、一体この安定成長がいいといたしましても、正しい民主社会党のいき方ならば、おれたちは統制を強化する、こういうことになるのであります。私は、これを自主統制のもとにおいて、いわゆる民間の意欲のもとにおいて、創意とくふうで達成していきたい。政治の担当する部分と民間の方々の協力する部分、あるいは協力というか、自主的にみずからが奮起する部分というものとがおのずからあると思うのであります。ただいま言われます特振法などは、ただいままでのような無軌道な金融なり、あるいは大企業のあり方について非常な批判の結果、これはこれ以外にはないのだ、こういう意味の統制を考えられたかと思いますけれども、ただいまの安定成長の考え方からいたしますれば、もちろん大企業はその社会的責任を果たしていく、これが経済の安定の方向でもあるのだ、大企業と中小企業ともそれぞれの分野は守っていく、いわゆるこれが弱肉強食、これがいわゆる放任された姿ですが、これが社会的責任を果たしていくということになると、かような事態は起こらないのであります。また、金融機関自身も、そういう意味においての十分の社会的責任を果たしていく、これを法律でやらないで、みずからの創意とくふうでやっていく、国民自身の創意とくふうで達成していく、これが実は私どものねらいなのです。もちろん、そういう点で寛厳よろしきを得る方向は、もちろん流動的に考えていかなければならぬと思いますけれども、ただ、ただいま申しますように、統制的方向は避けていくということにいたしたいものだと思います。
  85. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 財界の自主的なやり方に待ってもできなかったからおかしくなったのでしょう。私はいま社会主義だとか資本主義だとかいう観念論を、総理、言っているのではないのです。自民党の方式でよろしいから、こうすれば安定成長路線に乗れるという方法論を示して下さいと言っている。その方法論がまだないことに対する不安をいま申し上げておるわけです。決して私は、私どものほうの民主社会主義の方法論を押しつけようとするものではないが、同じことを繰り返したら同じことになる。その方法論を明示願いたい、こう言っているわけであります。繰り返して申し上げますが、今度の、いまの経済不況対策は、そのまま、それを成功させなければなりませんが、とすれば、そのときの最大の問題は、大企業に対する投資規制、その次の問題は、中小企業と農業に対する近代化の底上げ、この二つが並行しなければ日本経済の構造の基本的な欠陥は是正されない。ところが、いまあるのは、需要を喚起するという、銭を出してここが動く、それから先はどうにかなるだろうということだけだから、しかも、それには公債論の裏づけさえあるから、私どもは、危険だ。早急にいま申し上げた具体的な方針を出されて、われわれに納得のいくような提示を願いたい。  私は最後に、福田大蔵大臣に、くどいようですけれども、重ねて申し上げておきたいと思います。  昭和六年の十二月に、濱口内閣にかわって犬養内閣が成立して、当時の高橋蔵相が.前任者の井上蔵相の緊縮政策によって深刻化した不況を救うために、御存じの金輸出を再禁止をする政策とともに積極政策をとって、公債発行によるインフレ政策を断行されたことは御存じのとおりであります。当時、高橋蔵相は、窮余の一策として公債発行に踏み切ったのであって、これはあくまでも低金利政策と日銀の公開市場操作を推進をいたしますと同時に、非常措置であって、おれ自身の責任でやがて正常に復すべきものであると考え、その方針を自分でとる、こういう方針で、臨時措置として出発をされた。いま福田大蔵大臣は、同様に建設的な意味で公債発行に踏み切られようとしておって、それは間違いなく総理も信用膨張でない方向でやるという確信を持っておられると思います。しかしながら、人の身はどうなるかわからぬ、二・二六事件で高橋蔵相は消えてなくなった。そのあとを受けられた馬場蔵相は、そのまままっしぐらに戦時公債への転落の道を歩まれた。私は決してその説教をしようとは思いませんけれども、この公債発行という行為は、それほど私は日本財政にとって根本的な大転換を意味すると思いますから、そんなことばの言いのがれや何かでなしに、はっきりと見定めて、先ほど申し上げましたような赤字公債、本格的公債、環境の整備、その辺をきちっと、ともかく整えられんことを特に私は希望いたしまして、たいへん悪いけれども、高橋蔵相当時の、軍の圧力にかわって危険な方向を推し進ませる強大な力となり得るものに政党というものがあるという識者の心配事が、総裁、あるそうです。幸いに、私は、自民党の有力なる実力者が佐藤内閣経済閣僚になっておられるわけでありますけれども、まさに、私自身も、政党が当時の軍と同じような形で——それは国を思い、よかれと思っているんですよ。公債発行をぐんぐんと雪だるま式に、歯どめのない膨張に持ってくる危険性は、決して一部の心配者のみの感じではなしに、現実にいまある政治状態からの最大の不安事だと思います。したがいまして、この問題に対して総裁自身、内閣をあげて確固たる決意を表明され、確固たる方針を強力にとられんことを党内におきましても特に要望いたしまして、質問を終わります。
  86. 青木正

    青木委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十七分開議
  87. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際申し上げます。参考人として日本銀行副総裁佐々木直君が出席されております。  佐々木参考人には、御多忙中のところ御出席をいただきましてまことにありがとう存じます。  なお、参考人の御意見は委員の質疑に対する答弁の形で承ることといたしますので、さよう御了承願います。  昭和四十年度一般会計補正予算案に対する質疑を続行いたします。小松幹君。
  88. 小松幹

    ○小松委員 私は社会党を代表して、主として経済問題について質問したいと思いますが、まず最初に経済の問題外のことでございますが、一応お伺いして大臣の答弁を求めたいと思います。  ただいまのニュースによりますと、米軍のLST上陸用舟艇において日本の乗り組み員がベトナム地域で戦争協力をしておるということは、先般来問題化しておりましたが、きょう突然でありますけれども、片橋吉明という者が死亡して、米軍の飛行機によって立川基地へ送り返されたという事実を聞いたわけでございますが、この点について実態はどうなのか、お伺いいたしたいと思います。所管はどこか知りません、運輸省かもしりませんけれども、その点、総理のお考えをただしたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、そういうことを私全然知りませんから内容が詳しくわかりました上で、お答えいたしたいと思います。
  90. 小松幹

    ○小松委員 運輸大臣、おられましたら……。
  91. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 いまお尋ねになりました問題は、ベトナムのナトラで、十九歳のLSTの乗り組み員が一名遊泳中に死亡した。きょう立川に帰るという程度の情報でございまして、詳細がわかりません。その程度しかわかりませんから、詳細に調べまして、なるべく早くお知らせします。
  92. 小松幹

    ○小松委員 事実はそういうふうに申し上げましたが、その点、いま大臣が報告されたのは、泳いでおるときに死んだというように大臣は言われておりますが、それははたして事実かどうかという問題は、多分に疑問があるところでございますので、詳細は後刻に報告を求めることにしまして、次に進みたいと思います。  そこで私は、総理大臣政治責任という面からお伺いしたいと思いますが、常に総理大臣は、責任ある政治、こういうふうに言われて、まことにそのとおりだと思っておりますけれども、どうも経済の問題に関する限り、いまの現実の不況なり問題になっておる点については、何だか前総理大臣池田さんのやり方が悪かったからこうなったのだ、自分はそのしりぬぐいをしているんだという感に聞こえるわけでございます。佐藤さんが現実に政権を担当してからもはや八カ月になるわけでございますが、昭和四十年度の予算、もう通過して、佐藤態勢が着々と進んでおるときに、経済のことは、前のしりぬぐいだというような態度では、私は政治責任というものをずらしておるとしか考えられないわけであります。事実佐藤さんが政権を担当してからことしの正月になって、消費者物価はとたんに二・六%上がりました。いままでは三十五年を一〇〇とするならば一二七・八の台でありましたのが、ことしの一月になって突然一三〇をこしたのであります。ところが、一月は消費者米価を引き上げたからそうかと思いましたら、二月も三月も四月もだんだん上がって、今日では池田さんと佐藤さんが総理をかわられてから、大体消費者物価は七・七%すでに上がっているわけであります。そうして現実のその間の実態を見ましたならば、中小企業の倒産がずいぶん数限りなく出てまいりました。あるいは中小企業でなくても、大きい山陽特殊鋼の倒産あり、あるいは山一の問題あり、吹原産業事件等もございまして、乱調子になってまいりましたけれども、それよりも大きく、不況の事実というものはその八カ月の間に深刻に進んでまいりました。これは事実だろうと思うのです。正月のころ総理は、景気は半年たったら必ずよくなるから安心してくれ、半年待ってくれ、こういうようなことを国民向けに自信ありげに放送もいたしております。現実に半年たった今日、八カ月たった今日、それだけの広言のしただけの実績があがっておるのかどうか。いまや佐藤内閣は、不況乗り切りのためにあっぷあっぷ言っておるというのが実態であると思うのであります。それであるのにもかかわらず、どうも経済の不況の責任は前総理時代のしわ寄せだというようなことをちょくちょくは言わないけれども、そういうようにわれわれには聞こえるわけです。国民にもおそらくそういうふうに聞こえておるのじゃないか。  実は総理、非常に申しわけないのですけれども、私、ゆうべ八時ごろ食事をとろうとして宿舎におりましたら、電話がかかってまいりました。東京のある方から、声から六十ぐらいの年配の方だと思うのですが、電話がございました。実は朝日新聞に電話したところが、あす小松が質問をするからそっちのほうに回せと言うたので、あんたのほうに電話をかけるのだが、実は私は自民党ではないけれども、自民党びいきのほうだというようなことを言っておりました。が、最近は物価がたいへん上がって、不況もわれわれのところまで押し寄せて、とてもやっていかれぬ。けれども佐藤総理は、実はあの東京都の選挙のさなかに箱根でゴルフをしているというようなことがテレビやあるいはラジオで伝わってきたときに、実は腹が立ってしょうがなかったのだ、私は、自民党とは言わなかったけれども、一生懸命に自民党の候補者の選挙に飛び回っておったが、肝心な総理大臣はゴルフをして遊んでおる。これで選挙に勝てようはずがありません。大体無責任な総理大臣だ。われわれがこれほど物価高で苦しんでいるということを総理は知らぬのじゃないだろうか。それで、あすの委員会でぜひ言うてくれというのが私への注文でございます。それは素朴な国民の怒りでありまして、単にいやがらせを言ったんだとは思わぬ。私は話半分に聞いておりましたけれども、そういうなまの声というものは、総理に伝えたほうがいいのじゃないか、こういうふうに思って、ここで御披露したわけでございますが、物価の値上がり、あるいは不況の実態について、総理はどのように責任を感じておられるのか、その点をひとつ率直に所信を表明していただきたい。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在の経済の実情は、小松さんがただいま御指摘になりましたように、なかなか深刻なものがございます。いままで本会議、あるいはその他委員会等を通じて私の考え方もしばしば述べたところであります。ただいまのお尋ねも、御意見に関する部分も多いのでありますけれども、私自身が引き継いだ以後においてただいまの不況を克服する、こういうことで真剣に戦っておる。それは別に前内閣のしりぬぐいをしているとか、あるいはそのしわ寄せの結果こうなったんだ、かようなめめしい話をするつもりは毛頭ございません。私は今日の不況を克服することが、現下の国民の皆さま方の心からの希望であり、熱願である、かように考えております。ことに所信表明でもさような意味でこれを取り上げたのであります。その後これと真剣に取り組んでおることは、国民の方々にはだんだん御理解をいただけるようになったのではないかと思います。  物価問題そのものにつきましても、たいへん真剣に取り組み、これがわが党内閣の重大課題である、かように思っておりますが、御承知のように、指標そのものを見ますと、卸売り物価は横ばいあるいは弱含み、そういう状況にありながら、依然としてその末端における小売り価格、そういうものが高くなっておる。全体の価格の趨勢というものは、卸売り物価が下がれば小売り価格もそれに相応して順次——もちろん同額だとは申しませんが、小売り価格も下がる、あるいは弱含みというのが筋だろうと思うのです。ところがなかなか消費者物価はそうなっておらない。で、一部におきまして今日なお高物価を訴えられておる。しかしこの卸売り物価の趨勢を見れば、なぜ小売りの物価が高くなっておるのか。これはまた特別な小売りの事情だということに私どもも気がつかなければならないのでございます。そういうことを勘案してまいりますと、今日特別な処置をとった。これも必ず結果が出てくるのではなかろうか。  御承知のように、私がこの正月あるいは昨年の暮れ等において感じましたことは、経済自身が非常に過熱している。この過熱をさまさなければならないというような意味で、これは一昨年以来いわゆる金融引き締め方策をとってきた。しかし、その過熱はおさまったが、今度いま当面しておりますのは過度の萎縮気分であります。過度の萎縮気分、これが実はたいへんなことで、この過度の萎縮気分が不況ムードというものをつくっておる、かように私は見ておりますので、何とかして元気をつけなければならないのじゃないか。これが午前中からお話しておるような方向でございます。いま物価そのものを御指摘になりましてお話しでございますが、ただいまのような不況の状況下において物価自身が上がるということ、そういうことはなかなか経済的な問題としては理解がしにくいのであります。ことにただいま申すように、卸売り物価は横ばい、あるいは弱含みだ。小売りの点においてそれが高騰するといえば、これは特殊な事情だ。小松さんがただいま御指摘になりましたように、消費者物価を上げた、こういうことが影響しておることも、これは事実でございます。総体といたしまして物価の動向を見る。これは十分気をつけていかなければならないのでありますが、政府自身があるいは金融引き締め、あるいは刺激策をとるとか、こういうような事柄も、流動的な経済情勢に対応してそれぞれその時期を得た施策をとっていくということでありたいと思います。  一般的に責任云々という問題を言われておりますが、私は最高責任者でございますし、こういう事態につきましてはほんとう心配もし、またこれを抜け出るためにあらゆる努力を尽くしておるような次第でございます。
  94. 小松幹

    ○小松委員 卸売り物価が横ばいだというけれども、それもそうでしょう。しかし、卸売り物価は当然下がらねばならないのを下がらせないように勧告操短をしたり、あるいはカルテルを結成したり、そういうことによって卸売り物価は管理価格として下がらないようにしむけておるから下がらないのでございますが、われわれ国民の側から立てば、卸売りがどうであろうと、われわれが現実に生活する家計費に及ぼすところの消費者物価が問題になるわけでございます。私どもは、先般ずっと通常国会から通じて、日本経済の実情というものは構造的にたいへんなところに来ているのだ、単なる景気の循環の波の上に立っていないのだ、こういう考え方から政府に対して施策を要望してまいりました。企業間信用が二十二兆も現実にふえてまいりますし、倒産、過剰生産というような状態の中に、このまま単なる景気循環の道を追うただけではしかたがない。農村は不況であり、炭鉱離職者はどんどんふえていく、あるいは農村の者は出かせぎに出てくるという、こういう状態をつかまえて、もう少し不況対策というものを積極的に立てるべきであるということを申し上げてきたわけでございます。ところが、これは政府としては必ずそれを受けて立って施策の上に移していくべきはずだったものです。ところが、実際政府は、あなたもこの前から反省しておるように、引き締めが長引いたのだ、あなた自身がそういうふうに言っておりますが、確かに政府はこういうものの不況という事実に対する見方が甘かったといいますか、企画庁あたりの計数をはじく人たち、エコノミストの考え方がマクロ的な好況を追い続けておったために、非常に総理としても手がおくれたのじゃないか。数字の上では非常に成長の度を持っているから、あまり調整過程をゆるめる必要はないという意見で、二月、三月、四月と、こうだんだんおくれてきた事実もあるのじゃないか。そうしてもう目がさめてみたときにはたいへんな、底が抜けておった、こういうふうに見ざるを得ないと思うのです。だから総理自身経済の見通しを、あるいは総理の責任において勘の上で、見落としたのではないけれども、そういうことで注意はしておったのだけれども、まあいいわ、まあいいわということで、だんだんせっぱ詰まってここまで持ち越されたのだというようにも総理はお考えかもしれませんが、それはそれとして、佐藤内閣の全体は、福田大蔵大臣は最近かわったんでしょうけれども総理は最初からずっとやっておるのだから、大蔵大臣がどのようにかわろうが、企画庁長官がどのようにかわろうが、とにかく責任はあなた自身にあるということをしっかり感じておらないと、どうも企画庁の役人の人が資料を出してくると、まあ調子がいいからそのままほうっておいたのだ、こういうような形で、不況に対するてこ入れというものが、あなた自身が言ったようにおそかったのじゃないか、私はこういうように見るわけであります。不況の全責任をあなたにとれというのも過酷でございましょう。ところが、四十年度予算を編成して、その編成した予算の中から歳入欠陥を二千億もつくって、水漏れがするのじゃない、大きな穴がぼあっとあいたというのがいまの予算操作の上の歳入欠陥だと思うのです。それが百億か五十億の歳入欠陥ならば、それはそういう見落としも、あるいは計算違いがあるということも一応いわれますが、四十年度予算をつくった、そのつくった翌月からすでに見通しとして千五百億、あるいは二千億の膨大な歳入欠陥を生ずるということは、私は予算編成者として大責任だと思う。これは普通の会社や普通の者だったら、予算編成をするときにそのくらいが気がつかぬのか、あきめくらじゃないかとだれだって言いますよ。普通の会社だっても、三カ月本たたぬうちに二千億の穴をあけるような歳入を見積もった予算を平気で出して、それでまかり通ろうとする考え方はたいへんな誤りだ。いままで歴代の総理大臣、あるいは大蔵大臣で二千億の赤字、歳入欠陥をぼおんと打ち出した大臣はありませんよ。今度初めてです。実際の話が。これだけで、この歳入の大欠陥を生じたということだけで総理大臣は責任をとってもいいわけなんです。五十億か百億の金じゃない。たいへんですよ。これは会社だったら、すぐもうその予算編成者なり主計のほうは入れかわらねば、こんなあきめくらみたような者に予算をつくらしたのじゃどうにもならぬということになるわけです。これは、国家だからそれでまかり通っていくかもしれませんが、こういうことは実際は許されることではない。この点について、歳入欠陥をこれだけ生じて、なおかつのうのうとしていこうと考えておるのか、その辺のところを御反省を賜わりたい。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの経済不況、なかなか深刻でございます。どのくらいの歳入欠陥になるか、また支出がどういうような増加を必要とするか、普通であれば、歳入欠陥ならばいわゆる支出を減らすという考え方もありましょうが、それができないのがいまの経済の実情でありまして、こういう際にやはり刺激も与えなければならないというわけでありまして、仕事の量を減らすわけにはいかない。また災害その他によりまして、特に歳入が欠陥を生じておる際でも、むしろ歳出は増加していかなければならない、かような状況でございます。したがいまして、今日その数字がどういうことになりますか、けさほども大蔵大臣から説明をいたしましたが、最終的にはこれは決定されておりません。したがって、こういう意味の責任をとれ、かようなお話でございますが、私はただいまこの事態がどういうように経過していくか、これを十分考えて、また、ただいまの不況を克服することが何よりも私どもの大責任だ、かように考えますので、一そう反省もし、同時に現状に対しましても真剣に取り組んでまいるつもりであります。
  96. 小松幹

    ○小松委員 責任をとれというのは、私は、総理ほんとうに重大な段階にきておるのだという反省と同時に、経済というものを一たび見そこなってそろばんを一つ入れそこなったら、これほどの大欠陥がくるのだということはしみじみおわかりだと思うのであります。実は私は、こういうことは言うていいかどうかと思っておりましたけれども総理、あなたが総理なりあるいは世上のトツプのまないたに上がると、非常に重大事件が起こりがちだ。あなたがかつて幹事長のときでも、造船汚職であなたは法務大臣の犬養さんから指揮権の発動によって救われた事実もある。ところが、今度また山一証券が倒れるときに、日銀は、三十何年来一回も発動したこともない日銀法二十五条の適用を発動して、国民の前にたいへんな答えを出さなければならぬような羽目にもなったし、いままで歳入欠陥を千億も二千億も出したということは、私は寡聞にして聞いたことがない。こういう非常な重要な問題があなたのときに幸か不幸か偶然か出てまいります。このことは最近世の中で、佐藤総理も最初はたいへん希望を持たせられて、国民佐藤さんなら何とかやるだろうと、こう思ったけれども、何だかこの経済などでもあきめくらにひとしいのじゃないか、見えぬのじゃないか、こういうようなことをいわれてまいりましたのですが、それは言い過ぎだとしましても、やはり私は、総理たるの、施政を担当し、絶対権力を持った、日本一億の人口をかかえていく船頭役の中心の人が政治責任を感じなければならぬ。そのくらいに思うたときにこの経済の不況なり、あるいは財政の大蔵入欠陥に対しても深刻な反省をすべきときがきておるのじゃないか、かようにも考えるわけであります。この点について、総理は口先だけでなくして、ほんとう考えておるのかと私はいささか疑問に思う点があるのです。ということは、そういうことは抜きにして、公債発行、公債発行ということばをしきりに出してまいります。公債というものは借金でございます。何といったっても借金です。実際が。ちょうどこれをたとえるならば、中小企業で倒産しかけて借金をこしらえた会社のどらむすこが、自分がたの会社は倒れるように大きな穴をあけておっても、ああ心配するな、来年おれが金を借ってきておまえたち旅行させてやるから、従業員も心配するな、こう言っているのと同じで、いま穴があいていることにそっぽを向いて、来年は借金をこしらえてきてでもおまえたちも旅行にやってやるから、これと同じ言い方じゃないですか。いまあるこの穴、歳入欠陥というものに目をおおて、来年からは公債を発行するのだ、来年からはどうするのだ、再来年はどうするのだ、そんなことで国民はごまかされません、そういう言い方には。公債というものは、一応財政上は借金をしていくということなんです。そういうことで、福田大蔵大臣はこれを分離して、借金のいわゆる赤字公債と積極的な公債とを分けようと苦しい断判をして、何かわからぬことをたびたび言っておる。言っておるけれども、言いかえるならば、現実の問題よりも来年、再来年——来年のことを言えば鬼が笑う。再来年のことまで借金のことを言っている。実際来年のことを言うならもっと明るいことを言ってください。公債は来年から、再来年からという、そんなことを言ったって、借金は来年からします。再来年からしますなんて言ったってしょうがないでしょう、実際の話が。現実をどうするかという問題、いまの不況をどうするかというのが現実の政治家のとるべきことです。それを現実はおおい隠して、全く公債というものは甘い夢みたようなもの、何かアイスクリームのようなソフトなものに、国民を、公債公債というと何かソフトな甘いもののように印象づけてしまっている。だから、新聞社ももう公債公債、だれもかれも公債、公債、何かたいへんいいものを下さるように言っている。しかし、結局は予算編成上において、これは穴を埋めていくのだ。まあたいへんな問題にきておる。そうしておそらくこの調子でいくならば、もはや来年も赤字公債の発行はもう目に見えている。だから、ことし短期ものの借入金をして、あるいは大蔵証券などの借入金をしても、ことしものにしても二年ものにしても、来年返すめどというものは出てきません。来年は大幅減税もします。そうして公債も発行します。ことし出した借金のしりぬぐいもします。そんな芸当は来年にはできません。それならば来年も赤字公債の年でございます。再来年から先を言う必要はないと思う。こういうことを考えたならば、もう少し現実のそろばんをはじいた予算編成、あるいは経済の問題について責任ある確固たる経済的な見通しとしっかりした信念を持って臨まねばならぬと私は思うわけでございますが、その点について総理の御所見を承りたいのであります。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小松君のお話、最初は、私に非常に御同情を賜わったかと思って、私も、小松君から激励を受けている、さぞつらいだろう、いろんな問題が起こる、かような意味で、ほんとうに心から御同情いただいて恐縮しておりましたが、しまいのほうになりますと、だんだんむずかしい話のようですが、私がただいまお話のうちから受け取りました点で、政治自身が姿勢を正しくして、そうしてほんとうに責任ある政治を遂行しなければならないというこのおしかりは、私も実はさように思います。だからこそ、所信表明でも責任ある政治、しかも清潔なる責任ある政治ということを特に申し上げたのであります。これが政治家である私、また、最高責任者である私がその身を正すばかりじゃなく、経済人もそういう意味で、経済、経営についての責任を果たしていただきたいし、また、それぞれの立場においてそれぞれの方々が全部その責任を果たしていく、こういうことになれば必ず見違えるようになるだろう。また、それに、他を言う必要はない、まずみずからが責任を果たすことだ、かように私は思っておるような次第であります。その意味で、さらに今後とも御叱声を受けることを私は小松さんにお願いしておきます。  ただいま、その点から公債論についての御議論でございました。しかして、この公債論につきましては、しばしば大蔵大臣も説明をいたしております。また、私自身もこの公債論について、いわゆる借金についていろいろ考えております。私は、政治、あるいは国が富むという、この国が富むということは一体どういうことなのか、政府自身が借金をしないことなのか、国民自身が蓄積を持つことなのか、実はそういう点で非常にいままでもこの構成について考えさせられたのであります。戦後のわが国経済は、確かに政府自身は借金もしないで、最小限度にこれをとどめて、過去の借金はどんどん返していくということになったと思います。また、国民も、どんどん経済が膨張し、そのもとにおいて国民所得もどんどんふえてきた、かように実は思います。たいへんけっこうな世の中だと思いますが、しかし小松さんも御指摘になりますように、国民は税負担の重いことをいまだに言っております。しかもその税負担は、個人の所得なりその他の点におきまして、もっと負担は軽くならないか、これによって蓄積ができるような豊かな生活にはならないかということをしばしば言われるのであります。また、わが国の実社会、国民生活の実情等を見ますと、生活環境の整備あるいは働く場所等々、いろいろ国家的な公共投資を必要とする面もあります。国の予算、国の仕事、これは申すまでもなく国民の負担においてなされるのであります。したがいまして、こういう点を考え国民を富ます、そうして国自身がりっぱになっていくというような方法を考えたときに、必ずしも全部を国民の直接の負担、いわゆる租税によってまかなっていくということだけが政治のあり方として望ましい姿でもないのじゃないか。ときに政府自身が借金はしたが、しかし国民自身は蓄積をふやし、そうして豊かになった、こういうことになるのじゃないだろうか。言いかえますならば、国自身は税収というような考え方だけでものごとを考えないで、国民の蓄積そのものを念頭に置いて、そしていかにして国の施策を遂行していくかということを考うべきその時期にきているんじゃないだろうか、かような点も実はあるのであります。私は、そういう点から公債論が一応考えられる。そうして、むしろ負担を軽減することが望ましいんじゃないだろうか、かように実は思っておるのであります。もちろんこれには非常な危険がございますから、健全財政というたてまえにおいて、その規模がいたずらに膨大にならないように、ことに借金をいたしましても、究極においては国民の負担でございます。したがって、一銭一厘たりともむだづかいはしないように、乱にみだれないように注意はしなきゃなりませんが、私はものの考え方として、そのときどきに応じた処置をとっていくのが国の財政担当者としての当然の責任じゃないだろうか。いまはただいま申すような公債論にもまた耳をかすべきそのときじゃないか、実はかように思っておるような次第でございます。
  98. 小松幹

    ○小松委員 私は公債論の是非を論ずる前に、日本のいわゆる現実というものを見た場合には、どうも政治の中に他の圧力団体のプレッシャーがかかってまいります。いままで幾たびかそういう例があるわけです。また中心の国家財政というものが借金をしつけたら、いま地方財政はいかがでございましょうか。町村といわず県といわず、どこも起債起債起債そうしてしまいには縁故債だ何だと、もう借金をするのがあたりまえのようになって、起債額を受け入れても起債額の元利の償還ととんとんになっていっているのがいまの地方財政じゃありませんか。その地方財政の実態を見たときに、この地方財政と同じようなことをまた国がしたら、一体どこで日本経済の歯どめになるか。日本銀行が歯どめになるのかということにもなるわけです。日本銀行が最後の歯どめになるのか、国が歯どめになるのかといったときには、私は経済というものを、単にいまは税金が高いからまけて、その中に公債を入れてという置きかえ公債論というような形で、いかにもいいようには見えますけれども、結局いつかは、五年先か七年先かには払わなければならぬ。払わぬで使いっぱなしならこれはいいです。これは打ち出の小づちです。ただ持ってくればいいでしょうが、何年か先に必ず利子をつけて払わなければならぬ。公債というのは、ただ支払いを何年かに引っぱるだけのことでございます。それだったら、そういうことがなれっこになって、公債はいいものだ。いま地方の町村長が何かというとすぐに起債でいこう、こういうふうに安易に起債を求めようとすることと同じように国全体の政治というものがなったならば、私はとめどもなくどろ沼の中に足を突っ込むから、ここでやはり国が起債を——それは税金を三年で取るところを一年で取るよりも、その二年分の税金を五年で取って、そうして分けたほうがいいということも理屈の上から私はあり得ます。公債発行は悪ではないということもわかりますけれども、実際の現実の政治になって考えたときに、必ずしも公債発行というものが夢物語や甘いムードではいかれないということを私は育っている。最近は何か公債というものが甘いものだ、こういうような印象を与えておるところに私はいささか疑義を感じておるわけでございます。  次に、福田大蔵大臣にお尋ねしますが、あなたは就任早々の六月七日の衆議院大蔵委員会で所信表明をなされました。その所信表明のときに、はっきり所得倍増政策の池田さんの政治の失敗を認めて、容易に景気対策は私はとらない、たやすい景気対策はとらない、経済の構造の改変のために自主的合理的な立て直しをやっていくのだ、いわゆる日本経済の構造的な問題に焦点を置いて、その後六月九日の閣僚会議の後でも、政府は人為的な景気刺激策をとれば経済の安定成長にならない、よって、短期的な対症療法の景気振興策をとるよりも、長期構造的な対策を実施して、産業個個の生産調整を推進することを考えているという発表をしております。確かに私福田さんが大蔵大臣になったときには、日本経済の構造的な問題にメスを入れて、少なくとも個々にわたって生産調整なりあるいは対症療法的なことをやらないで、根本的なものをやろうという心組みであったのだろうと思うのです。ところが、今度の国会に出した所信表明を見ると、経済の構造的な問題云々ということは言わない女そうして需要喚起のための財政積極政策に移ってきたと、こういうような発言でございます。ここに私は福田財政の所信表明と、今日の段階、二ヵ月の後たいへんな変化がきておると思うのです。変化して悪いということを私は言っておりませんよ。どういう意味で変化をしてきたのか。私は是非を言うのではない。そういうふうに変化してきた。だから世間ではどう言っているか。ああ佐藤さんの安定成長というのは、やはり池田さんの高度成長政策のほうが理論的に正しかったのだ、下村理論のほうが正しいじゃないか、こういうように世間では言っておる。そうして、福田さんにはそれを盛り返していく理論はない。もっと突き詰めて言うと、安定成長にはエコノミスト的な一つの理論はないのだ、ムードにしか過ぎないのだというように酷評している人もありますが、大蔵大臣はその辺の考え方の変移というものはどういう点からきたのか御説明願いたい。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は最初から問題が二つあるのだ。つまり当面の景気にいかに対処するかという問題、それからその後に続きまして安定経済政策をどういうふうに進めていくか、この両者は関連していると思うのです。私がおそらく大蔵大臣に就任した当時に比べますと、経済界全体の不況感というものが非常に強まっておる、そういうふうに私は判断いたしておるわけでありますが、私はそういう経済の動きを見ますと、まあ何をおいても私が二つ掲げました問題の第一の問題であるこの不況対策をうまく切り抜けなければならぬ、こういうふうに考えておるわけです。しかし、第二の問題である長期安定成長政策、これは常に堅持していかなければならぬ問題でありまして、当面の施策を考えるにあたりましても、これをにらみながらやっていく、こういうふうに考えておるわけであります。私はそういうような考えのもとに一貫して動いておりますが、経済界の推移に考えまして、多少ニュアンスの変わった言い回しをしておるということもあるいはあったかもしらぬ、そんな感じがしております。
  100. 小松幹

    ○小松委員 二つある、あなたはデフレとインフレと両方あるというようなことを最初から言って、二つの論理をミックスさせながら——ところが二つの論理というものは、主体的にほめたときにはなかなか苦心しているように見えますけれども、すぱっと割って、不況対策をここにやるのだという、そういうときにはジレンマにおちいって、もたもたして、何をしておるのだ、こういうような印象を受けるものなんです。あなたのいまの——これはあとから出てくる予算編成のなんでも、あっちへ言うてみたり、こっちへ言うてみたり、毎日の新聞が変わっていると同じように、心の中で二つのものがはっきり決断できぬで、あっちこっちしておる。こういう印象を受ける。だから、ぴしゃっとした動向なり信念なり、一つの理論なり筋なりというものがぴしっと定まっていないということにもまた通ずるわけです。  そこで私は安定成長の問題になりますが、池田さんは確かにいわゆる日銀のオーバーローンというものを、金融というものを使って民間の設備投資に拍車をかけた、プレッシャーをかけてどんどん高度成長してきました。ところが、今度佐藤政権になりましたら、それとはだいぶん変わって、金融でなく財政を使って公共投資、あるいは社会開発とも言うかもしれません、公共投資のほうに、民間設備投資でなくて公共投資のほうに拍車をかけていくような歩みが出てまいりました。私は、これはもうはっきり池田さんは金融でどんどん流してきた。だから、いま不況だとか言っておりますけれども、企業では減価償却はもはや相当蓄積ができました。だから、企業はいろいろ、どうだこうだと言っていますけれども、社内保留はまだまだでしょうけれども、減価債却費はもはや会社の中にはたっぷりたまってきました。電力会社など、総理と懇意な東京電力あたりはもう飽和状態です。(「どこに投資しようかと思っておる」と呼ぶ者あり)どこに投資をしようかと思って弱っておるといっておるが、そのとうりなんだ。企業として減価償却はある程度までたまってきた。そうなると、今後民間会社はどんどん減価償却というものの蓄積がたまってまいります。そうしたら、池田さんの時代のように、銀行から金を借りて設備投資をするよりも、自分の手持ちの金で、減価償却と社内保留と、それに増資を少し加えて、それで設備投資をする程度に進んでまいります。そうして銀行の金は、オーバーローンは漸次解消していきます。今後の佐藤政権はもう財政が足ればいいのだ、財政に金が集中して流れてくるという時代をつくるのではないかと私は見ておる。これが、民間設備投資も、また銀行に金融をどしどし申し込むようであったならば、佐藤政権もやがては池田政権のように、金融オーバーの時代になるかもしれぬが、いまのところ見るとそうとも限らぬ。これはやはり相当財政に向って大きな負担がかかってくるのじゃないか、特に佐藤政権は社会開発という公共投資的な要素を加えてまいりますと——いや、それでもいいのです。成長するのだからかまいはしません。けれども、私はここに一つの問題がある。安定成長とは財政を使って公共投資に力を入れるのが安定成長で、高度成長の池田さんは、金融を使って民間設備投資で太らかしていったというコースに出るのだから、これは私なりの考え方でございますが、やはりそうした一つの歩みが見られるわけでございます。そうなると、高度成長政策ともいうし、いや、言いかえて安定成長だというけれども、安定成長もこれはどこにいきつくかわからぬですなと、こう思い出した。安定というにことばの中にもさっきも言ったようなムードを持っております。まことに安定というけれども、池田さんだって、最初から超々高度なんて言いやしなかった。池田さんでもやはり安定と思っておったけれども、超々高度になった。だから、安定成長というてほったらかしにしておくと、とんでもないことになるのじゃないか、こういうふうな気もしてならないわけです。ここに私は高度成長政策と安定成長政策の相違を見守っていきたいと思っております。こいねがわくは調和と安定でいくことを期待しますけれども。  そこで、公債発行とは、ぴしゃっと借金をしてでも財政に金を突っ込んで、ちょうど企業家がオーバーボローイングでも何でも、とにかく投資していけといったあのかつて何年か前と同じように、公債発行であろうが何であろうが、借金してでもとにかく公共投資だ公共投資だという形になっていきそうにもあるわけであります。  そこで、福田大臣にお伺いしますが、景気は底入れであるというようなことをたびたび言っておられるのです。景気は底入れだ、はなはだしいのは、日銀と一緒になって、日銀と大蔵省で景気は底入れだと何回も言っておる。こういうことをなぜおっしゃるのでございますか。景気は底入れだと言いながら、底入れじゃないことをやっておるのです。こういう、何というか裏表を使い分けたようなことをなぜおっしゃるのですか。そう見ると、いかにも政治というものは裏があり、いいかけんなことを言う。そのときそのときのその場のがれのことを言っておるのじゃないかという印象を受けるわけなんです。その辺について福田大臣の御答弁をお願いします。
  101. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日の経済は非常な異常な事態だというふうに考えておるわけであります。おそらく日本経済でも経験したことの少ないケースの一つぐらいに思うわけであります。そういう状態でありまするから、この経済状態からどう、やって抜け出るか、これは非常に困難な問題でありまして、これを簡単に一服でなおせというような議論もありますが、そう一服でなおすというようなわけにはまいらない。あの手この手、あらゆる手を尽くし、総合的にこれを解決していくほかはない、こういうふうに見ておるわけでございますが、私は、今日政府においてとっておる一連のそういう総合した施策から見ますると、まあ非常な困難な状態にある日本経済もこの辺がもうおおむね境にきておる、そういうふうに見通しておるわけでございまして、一連の施策の効果はぽつぽつ出てくるであろう、かように考えておることを申し上げておるわけであります。
  102. 小松幹

    ○小松委員 為政者というものは、常に国民に明るい希望を持たせる、そういうことの処置のために、腹の中ではあぶないと思っても、あぶなくない、こういう発言をしておるのならば、それはそれなりに私は了とするけれども、本気で、いまは底、この秋にはどうなるというようなことをおっしゃっておるならば、これは経済の見方というものをもう少し真剣に考え直していかねばならぬと思うわけであります。もう八月でしょう。九月ごろにはようなる、底が上げ底にのぼっていくという観念をほんとうに持っておられるのですか。その辺のところはどうなんですか、もう一回承りたい。
  103. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 最近、金融緩和の政策、また財政並びに財政投融資計画の繰り上げ施行だとか、あるいは財政投融資幅の拡大、そういう一連の施策をとっておるわけなんです。特に財政投融資二千百億円の拡大の効果につきましては相当のものがあるだろう、しかもこれは、その実効をあげ得ますのが秋口ぐらいからになるだろう、もうぼつぽつそれに対する見越しも始まっている、こういうふうに思うわけでありまするが、午前中申し上げたのですが、その二千百億円の景気に及ぼす効率というようなことを考えてみますると、これは相当顕著な影響を持ってくる、こういうふうに確信をいたしておるわけなんです。  そういう政府のとっておる施策、またこの政府の施策に相応ずるがごとく、財界におきましても、あるいは、自主調整だとかいろいろな方策、努力を重ねておるわけであります。あるいは御承知のように、証券界におきましても、すでに活況を呈してきておるというような状況でございます。総合いたしまして、私は、今日がおおむね底でありまして、これからだんだんと明るい経済界になってくる、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  104. 小松幹

    ○小松委員 午前中民社党の佐々木委員が、有効需要は一兆円ぐらいでいいならまあというようなことでありましたが、いまこれからの有効需要のパーセントをいろいろ私は——下村さんあたりはいまから三兆円の金が有効需要として要る。財界のほうとしては二兆円ぐらい要る。まあ一兆五千億でいいと言う人もある。民社党は一兆円でいいとなると、いまあなたは政府保証の二千億か、あるいはことしの民間設備投資でもそんなにたくさん考えられないとすると、有効需要をどのくらい——いろいろ人によって違うと思いますけれども、私は、財政投融資の繰り上げを早めたり、あるいは追加投資で二千億を入れたからというて、簡単に、あなたのおっしゃるように、九月ごろから底が上がってくるのだというような根拠には信じられないわけなんです。そういう甘いものでこの不況というものが乗り切れるならばまことにけっこう、しあわせでございます。それよりももっと深刻なものを持っておるんじゃないか、こういうふうに考えると、財政の二千億の追加投資をしたから底がもう一ヵ月で上がっていくのだというようなことでは、ちょっと私も納得ができません。そのくらいのことなら、きわめて安い不況乗り切りでございます。だから、それだけでは私もどうも納得しませんけれども、何か別ないい御意見でもございますか。
  105. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほどから私は一服でなおすという名薬はない、そこで日本銀行の公定歩合を三回にわたって引き下げますとか、窓口規制を廃止いたしますとか、あるいは市中一般の貸し出し金利のひき下げを行ないますとか、いろいろの金融対策をとっておるわけであります。それに財政投融資の本年度の計画の繰り上げ実行をやる、こういうような措置もとっておるわけであります。あるいは輸出振興につきましても、輸出の需要を拡大しようという見地から、これも馬力をかけている。あらゆる総合的な対策が実りを生ずる、ぽつぽつそういう芽が出てくるであろう、こういうふうに信じておる次第でございます。
  106. 小松幹

    ○小松委員 景気の見通しでございますから、絶対というものがございませんが、へたの考え休むに似たりというようなことが世間にございますが、ずるずる時間をかけて、ああああといって船を沈ましたというようなことでは、これは担当者——現実にそうでしょう、二千億の穴があいているんだ。実際税収見通しがどうもつかぬという現実なんでございます。水漏りくらいじゃない、穴があいているという現実に立って、もう少しピッチを上げて判断をしていかないと、どうも佐藤内閣経済に弱いんじゃないか、どうも見通しが狂うんじゃないかという世間の評判が本物になってしまう。私は決してこういうものが本物になっていいと思いません。こいねがわくば、佐藤さんが大いにやって、安定成長を仕上げていくことをわれわれも期待をしておるわけでありますから、そういう意味で、もう少し深刻なまなざしで経済というものを見て、筋の通った施策をやってもらいたい。  そこで、その筋の通った施策というのは、ことしの予算補正でございます。来年のことはもう言わない、本年度をどうするのか。というのは、あなたは、ああでもないこうでもない、ああでもこうでもないと、何言っているのか毎日変わる。新聞が変わるんじゃ、これはしかたがございませんが、新聞だって、これはしまいには実際は書きようがなくなるんじゃないか。あなたのおっしゃる、ことしの補正予算をどう財源をとるかというわけで、借入金と言うてみたり、公債に似たようなものと言うてみたり、安易な建設公債で——いまある財源を引き上げて、建設公債かなんかで入れると言うてみたり、きょうの新聞じゃ、また特別立法をこしらえて、いまの財政法——最初は財政法を改正すると言いよって、今度は、きょうの新聞では、財政法は当たらぬで、別個な臨時措置法でもって、公債かあるいは公債に似たようなものを発行してやる、こういうような言い方に変わってくるわけであります。もうそろそろいいかげんに結論を出してもらいたい。ほんとうなら、今度の国会にIMFの追加金だけでなくて、消費者米価の問題生産者米価の問題の結論をつけて補正予算を出すべきが当然である。あるいは健康保険の予算補正など、今度の国会で出さねばならぬ。肝心なものを出さないで、遠くのIMFのことばかり出してきて、そうして補正予算に穴があいておるということがわかっておりながら、ああでもないこうでもない。一体何を考えておるのですか。出す気があるのですか、出さぬ気ですか、どうするのですか。それをはっきり……。もう新聞もいたたまれぬで、きのう朝日新聞も、もう少しけじめをつけいといって、カッコに出た。これは新聞も耐えられぬでしょう。毎日記事が変わるん、だからたまらぬでしょう。この辺できょう決をつけてくださいよ。どうするのですか。
  107. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 新聞でそう変わっておるようには私は見ておりません。私が申し上げておることは一貫しておるのでありまして、本年度は財源において相当不足しそうである、また歳出要因も今後あります。したがって、その差額をどうするかということが問題になるが、これに対しては、あの手この手と、いろいろ財源を模索してみましても、なかなかこれを充足するには至らない。そこで、本年度は、いずれ補正予算を提案いたしまして、またお願いをいたしますで、その財源は借金政策をとらざるを得ない。その借金というのはどういう形かといえば、これは借入金をするか、公債を発行するか、この二つである、こういうことを申し上げておるのです。
  108. 小松幹

    ○小松委員 そこまでならわかっているんです。そのくらいならだれでも……。あなた大蔵大臣に聞かぬでも、だれでも周囲の者でもわかる、金がないんじゃ、これは年賦償還の借金をするか、ほかにないでしょう、どこかアメリカからもろうてくれば別ですけれども。それくらいのことを何も大蔵大臣に尋ねぬでもわかりますよ。それから先ですよ、大蔵大臣。見通しはわかるでしょう。借入金なら何年ものにせんならぬ、何年になるか、ことし一年の借入金をするのは三年のものをするのか、五年のものをするのか、七年ものをするのか。それじゃ公債発行で五年のをする。そうしたらこれは、日銀引き受けせなければできぬ、こういうように、将棋の詰めじゃないけれども、詰めていけば三手先がわかるはずだ。どんなへたなヘボ将棋でも、三手先はわかるわけだ。それから先どうするかというのを結論を出しなさいと私は言っておる。いまだに借入金をするか、公債発行をするか、それから先ですというようなことではなくて。それから財政法を改正するのですか、しないのですか、どっちですか。
  109. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債にした場合に、いかなる形の公債にするか。それから借入金をする場合に、いかなる形式のものをするか、これはまだ私は、結論を得ておりません。まあいろいろと検討した上、まず第一にきめなければならぬことは、借り入れにするか公債にするか、こういう問題です。その次に、今度はその形をどうするか、こういうことが出てくるわけでありまするが、大体いま借入金をする、あるいは公債を出すといいましても、その規模自体がきまらない。今後の経済の推移によりまして、歳入の見通しだってずいぶん違ってくるのです。それから歳出要因と申しまして、今後台風が一吹きくるというようなことでありますれば、そこでまた違ってくるわけであります。そういうことを総合いたしまして、これはもう少したってから補正予算を編成いたしたい。その補正予算を御審議願う機会に全貌をお示しいたしまして、ゆっくりひとつ御討議願います。
  110. 小松幹

    ○小松委員 まことに無定見というか、わかるでしょう。これだけ大かた見通しがあったら、それは五十億か百億の計算の相違は出てくるですよ。一応補正予算が千五百億なら千五百億、二千億、これだけはもう当然補正がいる。米価の問題とかいろいろあがってくれば、補正予算の財源だけは千五百億いるでしょう。少々な見通しとかなんとか、台風があってどうだといっても、それはたかだか二百億か百億の計算で済むのですよ。そういうことは言いのがれというものなんですよ。千五百億補正要因があって、もう現実に、この七月までに歳入欠陥が出ている。それを数字で伸ばしていけば千五百億の歳入欠陥か、二千億か、もっとひどくなれば二千五百億といっておるけれども、縮めて千五百億です。そうなったら、少なくとも三千億の財源をどこか見つけてこなければならぬ。あるいは、それが五千五百億になるかもしれない。そうなればいま一般会計から産業投資特別会計あたりに、百とか二百とか回しておるのを全部吸い上げても、全部私計算しましたところが、二千三百億一般会計から分けておる。それを全部吸い上げてしまってしてもまだ足りないのです。そうなれば、あとはこれはもうはっきりしている。いま言うたように、どこからか金を持ってこなければならぬ。それならば問題は、金を借りる場所、どこから借りるのかということが問題なんであります。大蔵大臣、どこから借りたらいいんです。借りるとか、公債とかいっている。借りるのだったらどこから借りる。公債だったらどこに引き当てするつもりか、そこくらいはわかるでしょう。アメリカから借りてくるのかどうか、その辺どうです。
  111. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アメリカからは借りてまいりません。日本の国内において調達をする、こういう考えでございまするが、私の気持ちといたしましては、これは、こういう際ではありまするけれども、なるべくこれを日銀にしりが行かないようなふうにいたしたいと思うのです。しかし、まあ非常に臨時的なことでございまするから、場合によると、回り回ってそのしりが日本銀行に一部行くというようなことがあり得るかもしれない、さように御了承願います。
  112. 小松幹

    ○小松委員 そこで、こればかりに時間をとりますけれども、はっきりしてもらわなければならぬ。日銀にしりが行かないようにしたいというならば、公債発行じゃありませんか。そうでしょう。借り入れ金だったら、しりは、民間会社に借りるということはあり得ないでしょう。日銀にしりが行かないようにしたいというならば、公債のほうをとらざるを得ないのじゃないんですか。ところが公債にしても、引き受け手があるかないかという問題になると、結局トンネルでまた日銀にしりが行かなければならぬから、形式的にはこれは公債を発行して、民間にどこか引き当てをせにゃならぬかもしれない。その辺はどうなんですか。そういうあいまな、日銀にしりが行かないようにしたいと思いますけれども、しまいには行くかもしれませんというようなことでは——もう行くか行かぬかというのはわかっておるじゃないですか。いまの段階で日銀にしりが行かないような何千億の金をあなたがずっと出し切ったらたいしたものだ。これは一躍有名な大蔵大臣です。それは、形式であなたはそういうことを言っているけれども、もう少し深刻に一つ一つだめを詰めていって、日銀にしりが行かないような何千億のしりぬぐいが今度の今年度予算でできたらたいへんなものであります。けっこうであります。それをやれる自信がありますか。あったらあると言ってください。私は別にそれを問題にしません。
  113. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 別に日銀にしりが行かないと言っておるのじゃないのであまいして、私は大蔵大臣といたしまして、日銀にしりが行かないように努力はしますけれども、これはしりが一部行きそうな形勢である、こういうことを申し上げておるわけなんです。私は非常にはっきり申し上げておる次第であります。
  114. 小松幹

    ○小松委員 これは経済企画庁長官にお伺いしますが、あなたは経済のベテランだそうでございますが、いまの日本の財政から考えて、日銀にしりが行かないような赤字補てん策の妙案、打ち出の小づちがあったら、ひとつ藤山企画庁長官、お伺いします。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別段打ち出の小づちのようなものの考え方はございませんので、非常に大きな借り入れ金をする。あるいは借金をするというような場合には、今日の現状では、それは日銀に行かざるを得ない場合がございます。これは金額の問題にもよりますので、その辺が大蔵大臣がいましきりと考えておられるところだと思います。
  116. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣ともなれば、慎重に石橋をたたいて行くかもしれません。そのことはよくわかりますけれども、石橋をたたいて渡るならば渡るらしく、もう少し新聞発表なり世間に言うことを慎んでもらいたいですね。ああも言い、こうも言い、一体どうするのかわからぬようなことを言わないように、もう少し信念のあることを言ってもらいたい。全く無定見な感じしか受け取れない。  どうするかということでございますが、ことし日銀にしりが行かないということ、来年のことじゃない、ことしの補正の財源については全部日銀にしりが行くというようなことを私は言っているのじゃない。そのうちの半分か三つ一か、とにかく日本銀行にしりぬぐいが行かないようにするという考え方に徹していった際に、なおかつ日銀の引き受けの可能性があるのかないのか、そういう努力をしながらも日銀にめんどうをかけなければならぬと思っているのかどうか、その辺はどうか。
  117. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 技術的、形式的な問題としまして日銀引き受けという問題じゃなくて、実質的に——これは実質的な問題の議論としてでないとあまり意味がないと思いますから申し上げるのですが、実質論といたしまして、私はあらゆる努力をして民間でこれを消化することを考えますが、回り回って日本銀行にしりが回っていくということは私は避けられないのではないか、こういうふうに見通しております。
  118. 小松幹

    ○小松委員 補正財源がないために日銀にめんどうを見てもらうことは避け得られないということを表明した、これは間違いありませんね。  藤山さんにお伺いしますが、あなたはアメリカから帰った後に、これを救済するのにはいまの財改法を生かして建設公債を発行していくのだ、あなたはいまの財政法に沿って行こうとする意見でしたが、いまはどうなんですか。とにかくことしの四十年の財政はぽかっと穴があいたわけです。底が抜けたわけです。それを建設公債でやっていくのだという考え方はいまでもそうなんですか。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私が建設公債的な考え方を持ちましたのは、当面の財政事情ということでなしに、安定成長等のことを考えまして、そうして廃業の規模に対して道路その他が非常におくれておる、したがって、そういうものを急速にやらなければならぬ、そういう場合に、何らかの形でもって土地買収その他を交付公債みたいな方式をもってやったらどうだろうか、そういうことによって、その公債をもらった人がある程度それを売りに出た場合には、市中消化の方法として公社債市場というものも育成されるのではないだろうか、この一、二年そういう考え方を持っておったわけであります。したがいまして、こういう考え方は今日即時の、たとえば本年度の財政赤字をどうするかという問題とは若干違った角度で考えなければならぬので、安定成長に来年以後乗せます場合に、こういうことも一つの案ではないかということで大蔵大臣等にもお話はしておりますが、私の申したのはそういう意味でございます。
  120. 小松幹

    ○小松委員 総理、これは内閣の運営の問題でございますけれでも、どうも公債論が出ますと、財界のほうでもえてかってな公債論を方々で振りまいておりますが、それに呼応したように、内閣の閣僚が、片一方は建設公債を言う、建設大臣は住宅の政保債を言うてみたり、こっちは借り入れと言ってみたり、こっちは公債を言ったり、しかもその公債を、赤字公債と赤字公債でない別なムードのある甘い公債とに分けてみたり一その公債論も全くばらばら、閣僚もばらばら、だから、特にアメリカから帰ってみたらぱんと建設公債論が出る。すると建設大臣からは、次の日にはまたそれとばかりに住宅の債券が出てくる。これはばらばらです。これはまさに公債論花盛りですけれども、世間が公債論花盛りならいいが。閣僚の中から、経済閣僚が片っぱしから公債論のぼんぼん花火を上げる、それは予算ぶんどりの一つのアドバルーンかもしれませんけれども、それでは、よそから見ておったら、何をしているのだ、どこが中心で公債論を考えているのかと、かなえの軽重を問われますよ。これはだれだってそう見ます。今後簡単に、気休めに公債、公債というようなことを言わないほうがいいのではないか。もうわかった。もうたいてい借金をするということはわかりましたから、借金にいい借金があるはずはないので、以後は各閣僚も慎んで、かってな公債論を、ぶちまくらぬようにしてもらいたい。総理、その辺はいかがでございましょうか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま小松君からおしかりを受けました。ただいま公債論について財界でかってな議論をするのはいい、また評論家がされるのもいい、しかし閣僚自身がするのはどうかと思う、こういう御注意でございました。これは、申すまでもなく公債論はただいま星雲状態であって、まだきまっておらないのであります。別にこれで閣議不統一とか閣内不統一とか、こういうような問題ではないのであります、しかし、いろいろ御心配をかけ、御叱正をいただきました点はありがたくお礼を申し上げます。
  122. 小松幹

    ○小松委員 日銀総裁においでを願ったわけですが、本日は総裁はお悪いそうで、副総裁がお見えになっているわけでございますから、せっかくおいでいただきましたからお伺いをいたしたいと思います。  山一証券の倒産寸前、取りつけが起ころうというような騒ぎ、ちょうど選挙のさ中でございましたが、日本銀行は日銀法第二十五条を発動して、無制限に無担保で日銀の金を融資するということをきめられました。このことは選挙中であり、休会中でございましたわけで、国会議員として正式に本会議で、あるいは委員会で、こういうところで国民に向かって、どういう観点で山一証券に三十八年ぶりに伝家の宝刀たるこの日銀法第二十五条の発動をしたのか、その事由についてお伺いします。  国民はこういうように受け取っているわけです。私は、意見としていろいろございますけれども国民は日銀といっても政府といっても同じようにとって、政府はと、こういうように言っているのですけれども政府はとんでもないことをする、山一証券のような一民間会社に無利子、無担保で、しかも金利はたな上げで無制限に金を貸して救ってやるということは言語道断だということを言っている。実は私は、選挙のさ中で、方々に走り回っておったところが、別府の町のある大きな開業医をしている老人が私のところに朝電話を四日間かけてきて、四日目に私が出た。朝六時過ぎです。年寄りだから早う目がさめるのでしょう。そして何と言ったかというと、小松先生、毎日電話をかけたが、先生は忙しくて出れぬけれども、とにかく日銀が、政府がやった山一証券のこの取り扱いは何ということですか、われわれ国民考えたら、あまりにもむちゃだ、金利はたな上げにして、無利子、無担保、無制限に何百億という金をただで貸すようなことをしていかれますが、私は年寄りで夜が眠れぬのですけれども、このことを考えて毎日先生に電話をかけたのだと言ってきたのでございます。これは事実でございます。これは、誤解しているかもしれませんよ、誤解しておるでしょう。しかし、国民の素朴な感情でございましょう。私は、選挙途中でございますから、それは、一般の債券を持っておる人のために政府はそういうことをしたのだろうから、今度国会に行ったらよく聞いてみるからと言ってその場はのがれておりましたけれども、きょうはひとつ日本銀行の総裁代理として、総裁として責任ある立場国民の前にその始末をはっきり言っていただきたい、かように思うわけであります。
  123. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの山一証券に対します日本銀行法第二十五条に基づく特別融資の件でございますが、この融資を発動いたすようになりました背景をまず申し上げたいと思います。去る五月二十一日に、山一が金融的に非常に苦しい立場にあるということが表へ出まして以来、山一証券の投資信託並びに運用預かり等の預かり有価証券の引き出しが非常にふえてまいりました。それと同時に、ほかの証券会社に対するそういう同種類の要求もふえてまいりました。ことに地方ではいろいろ不安のうわさが強く出ておりまして、東京、大阪よりも特に地方で不安な感じが強かったような状況でございます。五月二十八日に至りまして、山一自身が運用預かりの返済のための資金繰りに窮してまいりまして、明日からどうするかというような問題も起こってまいりました。また、たまたまその日の午後でございますが、東京証券取引所では地方筋からの投げと思われます相当まとまった投げものが出てまいりまして、取引所といたしましても信用不安が非常に今後進みそうだというような意味心配も出てまいりました。運用預かりの有価証券だけで各社のものを総計いたしますと約二千四百億円ばかりございます。一口当たりが、大体伺ってみますと二十万円足らずというところでございますので、口数にいたしますと百三十万を越すというような、非常に大きなものでございます。これに非常に不安が起こって取りつけのような状態が起こりますと、全体の信用機構に及ぼす影響もいかがかというような心配が非常に強くなってまいりましたものでございますので、二十八日の夕方から関係者が集まりまして、いまの第二十五条の発動によって特別融資をすることにきめて、二十九日の朝の新聞に間に合うように発表いたしたのでございます。これがそのときの状況でございます。  なぜ第二十五条によることにいたしたかという点でございますが、信用制度の保持育成ということは、ただいまの日本銀行法の第一条において日本銀行の目的として掲げられておりまして、したがいまして、日本銀行がその普通業務として信用制度の保持育成の仕事をいたします場合には別に大蔵大臣に特に認可をいただく必要はないのでございますが、通常業務でない方法で信用制度の保持をいたさなければならないというようになりますと、この第二十五条というものによって、認可を得て実行しなければならないことになります。  なぜ山一に対するこのいわゆる特別融資が普通業務でないかと申しますと、それは、山一の出します手形を日本銀行が担保として取りますが、この手形は、御承知のように十分な担保適格性を持っておりません。したがいまして、担保適格性に欠けるものを担保としてとらなければならない。日本銀行法では担保として適格なものを取ることにつきましては普通業務として認められておりますが、担保適格性に欠けるものを取ることは認められておりませんので、この第二十五条によって申請することにいたしたわけでございます。  しかし、この金は山一に出ましたけれども、山一としましては運用預かりの有価証券をほかの借金の担保に入れてございますので、それをこの日本銀行から行きました金で受け出しまして、それを運用預かりを委託したお客さんに返す、そういう目的のみに使われておりまして、山一自身の営業資金をこれによって直接的に見るということは全然いたしておりません。  それから、ただいま御指摘がございましたけれども日本銀行のこの貸し出しは、利子はちゃんと公定歩合の分を取っております。  それから、無担保というお話でございますが、無担保は、結果として担保に相当の部分が欠けておる、きわめて一部分の担保しかないということでございまして、方針として担保を取らないということではございません。取りたくても担保が十分ないという点でございます。
  124. 小松幹

    ○小松委員 意見を申し上げませんで、もう一つだけお伺いをいたします。山一は救済できて、償還の見通しがあるのか。あるならば、時限的にどのくらいの見通しがあるのか、それだけお伺いをいたします。
  125. 佐々木直

    佐々木参考人 山一の将来の問題につきましてでございますが、何ぶんさっきからもお話が出ておりますように、日本経済の実態の変わり方が非常にこのところ目まぐるしい状態でございます。証券市場のいまの状況も、先週ぐらいから非常に変わってきておりまして、一日の出来高が、東京証券取引所だけで二億株をこえるというような状態になってきておるわけでございます。したがいまして、ただいまの時点でどういう計算で山一の再建に要する時期その他具体的な内容を検討すべきか、ちょっとものさしも非常にとりかねておるというようなことが実情でございます。
  126. 小松幹

    ○小松委員 担保をとられておるといいますから、担保をどんなものをとられておるのかというのを内容的にお聞きして、それで山一のことについては終わりたいと思います。
  127. 佐々木直

    佐々木参考人 担保の問題でございますが、担保はいま不動産を担保にとることにいたしておりまして、その手続中でございます。それは手続中でございまして、まだ現実に完全に担保権の設定が済んでおりません。しかし、担保をとらないつもりではございません。
  128. 小松幹

    ○小松委員 不動産に、土地でございますか、家屋でございますか、どういうような評価価額にしておりますか、お伺いいたしたい。
  129. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま私から不動産と申しましたが、土地と家屋がどういうふうな内訳になっておりますか、まだ手続中でありまして、私としては申し上げられません。
  130. 小松幹

    ○小松委員 評価はどういうような評価で、具体的にいま手続を申請して、それは件数にして一件でございますか。何件担保に、どういうようにして、評価はどういうかっこうにしてあるのか、それをお伺いいたします。
  131. 佐々木直

    佐々木参考人 その問題はただいま手続中でございまして、私まだここで責任を持ってお答え申し上げかねます。
  132. 小松幹

    ○小松委員 先ほどから担保はとっておる、こうおっしゃったから、まあ担保をとっておるんだろうと思ったら、担保はとっておらないで、近く申請をするんだ。その内容を聞いてみると、どうも日銀の副総裁としてはちょっと常識的にあまりいいかげんじゃないかと思うわけであります。それは知らないって、そういうことではちょっと国民に相すまぬのじゃないかと思うのです。二十五条を発動しておって、担保を申請しておるが、どういうような申請のしかたをして、評価はどういうようにしているのか、これを言わないで、それはまだわからぬということでは、これはだれがわかって——日銀総裁はわかっていないのか。あとは事務まかせ、こういうようなことでは、これは無責任のそしりを免れないと思うのですが、副総裁、どういうようにお考えでございますか。
  133. 佐々木直

    佐々木参考人 私の申し上げ方が悪かった点を御了承いただきたいと思いますが、私の申し上げましたのは、初めから担保を全然とらないつもりで貸したのではなかったのでございます。ですから、その後において、とれるものがあれば少しでもとっていきたいという努力をいまやっております。そういう点の申し上げ方が非常にことばが足りませんものでしたから、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  134. 小松幹

    ○小松委員 私は、日本銀行でございますから、政府と違った立場だから、あまり無理な押しつけや文句も言いにくいと思って、遠慮しながら聞いておるのでございますけれども、それにもかかわらず、どうもお答えがちょっとしまいのほう、後半は——発動するまではなかなかうまい論理で説明をしましたが、あと始末の点についてはどうもはっきりしない。それじゃ国民納得できないのじゃないかと思うのです。  この点は、ひとつ委員長、資料を後日出してもらって、われわれの納得するようにしていただきたいと思うわけでございます。よろしくお願いしておきます。
  135. 青木正

    青木委員長 理事会においておはかりいたします。
  136. 小松幹

    ○小松委員 それでは、山一の問題はそれで終わります。  ただいまもあなたもお聞きのとおり、いま政府のほうとしましては、公債発行あるいは借り入れ金、こういうような形で——いま公債を発行しても、民間の公募公債というようなものは、いまの段階では、これは公社債市場というものがきわめてできておりません。そこで、日銀引き受けという形に、すべて日銀に持ち込まれると思うのですが、日銀としては、そういうものをどうお考えになっているのか。はいはいと、政府がきめて持ち込んでくればどんなことでもイエス、イエスと受け入れるのかどうか。その辺、山一の信用ぐらいではございませんよ。日本の全体の財政がかかる信用の問題をかかえておるその日本銀行として、  けじめのある答弁をしていただきたい。
  137. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま私ども承知いたしておりますことは、先ほどからもここでお話がありますように、歳入欠陥が出る、それを政府としては何とか借り入れ金または国債、そういうようなことで調達をしなければならないというお話は承っておりますが、実はまだ金額の総体、あるいは必要になります時期、そういうようなものについても私どもにも見当がついておりませんし、政府からもまだそういうふうな具体的なお話も承っておりません。しかしながら、私どもといたしましては、もちろん金融調整上便宜な方法でそういう借り入れ金または国債が行なわれることが非常に望ましいわけでございます。先ほど大蔵大臣が、日本銀行へ最後にしりが回るかもしれないというようなお話がございましたが、いますでに証券界の  一部では、公債を証券業界で売りさばきたいというような話も出ております。したがいまして、公債が出ました場合におきましても、その消化の方法は、金額にもより、時期にもよりますが、いろいろな方法が考えられるのではないか、こういうふうに考えております。日本銀行がそういう場合に最後の資金のしりを見る、結局はぐるぐる回ってしりを見るということは、これはあり得ることでございますし、またそれは、いまの民間に対する貸し出しの状況その他から考えますと、それで金融調整は十分やっていける見通しを立てておるつもりでございます。
  138. 小松幹

    ○小松委員 そこで、いまの市場操作機能というものはない。おそらくどういう公債でも、利子が高ければ、それはどんな方法でも買い手あまたということになりますが、金利が、これもはっきりしませんが、新聞に出たところ、六分程度でございますならば、おそらく飛びついて買うということは、操作上の——この買い手はそんなにつくわけじゃないと思うが、その辺、実勢の金利と操作されていく関係で、どうなんですか、実際問題として、市場でほんとうにそれが動き得るものがあるか。無理に買わせることは買わせても、少し調子が出ますと、投げ売りが出てくるのじゃないか、こんな金利の安いものを七年も持っておったってしようがないから、投げてくる。そうなれば、一ぺんに日銀はそれを引き受けねばならぬということにもなるが、こういうことについて、警戒すべき点はないのかどうか、その辺お伺いします。
  139. 佐々木直

    佐々木参考人 どういう条件で国債が発行されますか、その問題については私どもまだ具体的には全然承っておりません。しかし、ただいまお話がございますように、いまの市場における有価証券の利回りというものを十分考えて決定されなければならないし、それからまた、これから今後におきましてだんだん金融が緩和してまいりましたときの金利の実態というものがどうなってまいりますか、そういう点を十分考えた上で条件をきめなければならない。われわれとしては、ぜひその条件は市場性を持ち得る条件であることを希望いたしたいと存じております。
  140. 小松幹

    ○小松委員 公債発行が日銀引き受けでやられるということに対して、インフレの傾向はないと判断するのか、あり得ると判断するのか、その辺を承りたい。
  141. 佐々木直

    佐々木参考人 財政法でも、日本銀行の国債の引き受けについては特別に国会の審議を必要とすることになっております。そういうような精神から考えまして、日本銀行が直接国債の引き受けをいたすことは、なるべくやらないほうがよろしいと私ども思っております。ただ、金融の状況によりましては、たとえば二、三カ月後には金融が非常にゆるむことがわかっておる。そういうような見通しがあるときに一時引き受けをする、そうして金融の情勢に合わせて売っていくというようなことは、いままででもやったことがございますし、そういうような歴史から考えましても、引き受け自身を全く否定するという必要はないかと思います。現在大蔵省証券ばかりではございません、食糧証券、それから外国為替証券、こういうような政府短期証券は、一応公募の形式をとっておりまして、その公募で売れなかった分を日本銀行が引き受ける、こういう形式でやっております。
  142. 小松幹

    ○小松委員 私が聞いたのは、大蔵省証券とか食糧証券のような単年度の、短期にいく、そういう二カ月ものとか、そういうものの引き受けを言っているわけじゃないのです。本式の公債の場合に五年、七年、こういうものの場合にインフレ傾向というものを感じないのかどうかということをお伺いしたのですが、その短期の大蔵省証券のことを聞いたわけじゃないのです。どうですか。
  143. 佐々木直

    佐々木参考人 私があとのほうで短期証券の例をちょっと引きましたのが御理解のじゃまをいたしたかと思うのですが、前段で申し上げました点は、長期国債の場合でも、そのときの金融情勢によりましては日本銀行が一度引き受けまして、それを金融機関その他へ売却していくということをいたしました昔の例もございますし、そういうことは今後も可能であろうか、こういうふうに考えております。
  144. 小松幹

    ○小松委員 日銀副総裁に対する質問はこれ終わりますが、先ほど山一のあと始末のことについてまだ不明瞭な点がございますから、もう少しはっきりしていただきたい。そのために資料を出していただいて、後日もう一回宇佐美総裁にでも来ていただいて始末をしていただきたい、かように思うわけであります。  その次に福田大蔵大臣にお伺いしますが発行をするような現象の場合に、政府の金利というものはきわめて高くはないと思うのです。そういうことから見ると、金利問題から考えて市場操作というものが非常にむずかしいのではないかと思う。そこで、いまは公社債の市場というものがございませんが、そういうものから考えて、投げ売りとか、あるいはもうやったらすぐに日銀に持ち込まれるというような現象が起こるのじゃないかと思いますが、その辺の市場に対する配慮、こういうものはまだお考えではないのですか、それともう一つは、償還は一体どういう形でやるのか、年数とか、あるいは技術的に償還はどういうかっこうでするのか、それをひとつ、決定版じゃないとしても、あなたのいまの配慮でお答え願いたい。
  145. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債を出しました場合におきまして、これを市場で消化するということには極力つとめていきたいと思います。そういう意味から、公社債市場、これをつくっていかなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、これは、お話のとおり金利全般に関する問題の検討も含めてのことでございます。極力そういうものを整備いたしまして、公債が市場で消化されるように万全の備えをしていくつもです。またこれが発行された場合に、日銀にいくようなことはないかというお話でございまするが、そういうことがなるべくないように、市中に滞留するようにこれもくふうをしていかなければならぬ。ただ、日銀の金融操作、オペレーション一として公債を売り買いする、こういうことは当然あり得ることです。  それからもう一つ、公債の償還についてどう考えるか。これは厳重に償還計画を立てて、その償還に狂いがこないようにという歯どめの措置の一環としての処置をとるつもりでございます。
  146. 小松幹

    ○小松委員 日銀引き受けによる、いわゆる日銀の信用に依頼するということはあり得ることかもしれませんが、私は、日銀信用で通貨の膨張を来たした場合には、それは物価にどうはね返ってくるかという現実問題で、ただ公債を発行して日銀に持ち込むとインフレになるという公理を定理的に申し上げるのではなくして、ここにIMFの国際金融統計月報五月号のあるところの資料からとってみると、これはIMFの統計資料で五月のでございますが、各国の通貨の膨張と物価へのはね返りというのを調べてみておりますと、五年間をずっと平均してみまして、通貨の増が、アメリカが三、英国が二・八、フランスが三・六、それから西ドイツが一一・四、イタリアが一四・〇、スイスが一〇・〇、日本が二二・六でございます。これは通貨の膨張です。ところが、同時に生計費がどのように五年間に膨張しているかというのを見ますと、アメリカが一・五四、英国が二・八〇フランスが三・〇八、西ドイツが二・三八、イタリアが四・八四、スイスが二・八七、日本の場合には五・四が生計費にはね上がってきた分でございます。こういうことを統計的にIMFの統計を見ますと、通貨の膨張しておるのは日本が一番です。それはそうでしょう。池田内閣時代から通貨をどんどん信用で膨張さしてきましたから、これは飛躍的に二二・六まで——アメリカなどは三程度しかふえていないけれども日本は二二まで通貨が膨張している。ところが、アメリカは物価が上がらぬで、生計費は押えておって、日本ばかりが五・四に生計費が上がっておるということは、結局通貨を膨張させると、いつの間にか物価が上がつて生計費がずっと上がってくるということを、これはIMFの統計でも示しているわけです。だから、こういうことから見ると、日銀信用にたよって通貨を膨張さしていけば、やがては物価へのはね返りになってくるということは、統計でもはっきりしている。だから、いわゆる日本銀行の通貨膨張をやればインフレになる、こういうことは、この統計だけを見ても推測がつくわけです。あながちこれはインフレにならないということにはいわれない。ことしのIMFの資料からとってみても、そういう現象が出るわけでございます。そうして、五・四の日本の生計費の膨張でございますが、これはインフレでないと、今度はこういうならば、そのぐらいはインフレじゃない、池田さんのときには二二も一五ものぼったじゃないか、あれがインフレで、五か六のときにはインフレでないというならば、これはまた論拠が違うわけでございまして、アメリカあたりでは、生計費が三・〇くらいをこせばインフレだという学者もハーバードあたりにはあるわけであります。もっと言えば、五をこせば、これはもうりっぱな忍び寄るインフレだ、クーリーピングインフレーションだ、ここまで言っておるのでございますが、日本の場合には、佐藤政権が安定成長をやって、そして物価のはね上がりが五か、あるいは六か七の辺までのところでも、たいへんがくっとくるようなインフレーションではないとしても、だんだん家計費に忍び寄ってくるインフレーションの形をとっておる、私はこういうことを考えるわけでございますが、安定成長の中にはインフレというものを含んでいるとお考えかどうか、お伺いします。
  147. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 安定成長という考え方は、しばしば申し上げましたとおり、国際収支と物価の安定ということを最高に重要視していこうという考え方なんです。通貨を増発したらインフレになるか。私は、通貨の増発が経済成長の規模を越えて行なわれるということになれば、これはそういうことになるかもしれませんけれども、適正な成長規模の範囲内において通貨がこれに追随するという限りにおきましては、これがインフレ要因になる、そういうふうには思っておりません。それから、小松さんは公債のことからそういうふうにお話が発展しておるように思いますが、公債を発行、これは私は明年以降のことを言っておるのですが、公債を発行したら通貨が増発されるのだ、そういうふうに私ども考えておらないのです。通貨増発にならないように、その範囲内において公債を発行していく政策をとる、こういうことを申し上げているわけです。
  148. 小松幹

    ○小松委員 私も、公債を発行したから全部とは言わない。ところが、公債を発行しても、全部公社債市場をもってすれば、民間が持っておる資金と交換しただけですから通貨の膨張にならないが、それが漸次日銀に流れ込んできて——これは、百入っててくれば百全部通貨が膨張するわけではないが、現実にそのうちの三分の一か五分の一通貨の膨張があるのだ。これは、民間からオーバーローンでくれば、しまいには通貨の膨張になってきて、それが繰り返されるということがあるわけでございます。だから、公債が全部通貨の膨張になるということを言っておるわけではない。しかし、そういう可能性もある、こういうことを言っておるわけでございます。  そこで、もう一つ先に進んでまいります。最近大蔵大臣もアメリカへ行ったときに財務長官から言われたと思いますが、国際通貨問題、これに対して日本はどう考え政府としては対処しようとしておるのか、国際通貨の問題というのは、金が要するのだとか。金の問題だとか——さっきの民社党の佐々木君は、何年も前から金、金と言ってしょっちゅう金のことを国会で言っておりますが、これはドル防衛が起こり——その前に、EECの活発な時代からヨーロッパが金を買い始めて、フランス、ドイツ等も金を貯蔵してきたときに、国際収支の悪化とともにアメリカの金がどんどん流れてくる。そして、ケネディのときについにドル防御の形をとってまいりました。ところが、ドル範囲である日本は、ドルをどんどん締められる、アメリカドルを吸収してくると、バイ・アメリカン、シップ・アメリカン、あるいは利子平衡税というような形で、とにかくアメリカドルを出さぬでくると日本ドル不足に悩む。同時にまた、アメリカヘいってもなかなか日本は借金もできない。それじゃアメリカン・ドルをヨーロッパで起債をしようとしても、ドル防衛と、今度はポンドの価格維持もからまってそれもできない。そうなればドル防衛され、ポンドが防衛されると、勢いドルを使っているところはどうしてもドル不足に悩む、低開発国ほどドルがなくなる。ドルがなくなれば商売もできない。日本ドル圏でございまして、商売ができぬとはいわないけれどもドル不足に困る。それかというてどんどんアメリカの金が出てきて、赤字をどんどんつくっていくと、これはドルを持っておってもいいのだろうか、最後に紙切れのドルになるのじゃないか、それならば早く金を持たなければという、金を保有せよという佐々木君の論理になってくる。日本は三億ドルしか金を持っておらぬじゃないか、金をなぜ持たぬか、ドイツもイタリアもフランスも金を持っておるじゃないか、日本ドルばかり持っておってどうなるのかということにもなるわけです。ここにいわゆる国際通貨の流通性の問題と、ドル防衛、ポンドの危機とにひっからまった国際通貨の問題が大きく浮かび上がってくると思うのです。これに対して政府としては、これは長年の問題でございますが、何かの判断と、国際通貨制度の問題についてはっきりした意見統一なり考えなりがあるのか。この前大蔵大臣が財務長官から言われたら、まだ日本は一つも考えていないのじゃがということで、国際舞台に出てまことに不見識のきわみじゃないだろうか。西ドイツあたりは、ちゃんと国際通貨に対するアイデアをぱっと出しておる。フランスも出しておる。日本だけはいつまでもドルをかかえておるもんで、何にも知恵が出ないで、向こうから言われても、まだ考えておりませんと言うようなことでは、何ぼ背伸びしても対等には見られませんよ。この点、大蔵大臣どうなんですか。あなたも恥をかいたのじゃないかと思うのです。それはどうでもいいが、この国際通貨制度の問題について何らかの妙案があるのかどうか。これは、IMFの資金を今度は出す。金だけは出すけれども、どうなんですか。この辺、判断を承りたい。
  149. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 はっきり申し上げますが、恥をかいておりませんです。アメリカの財務長官から私に対して話がありまして、アメリカドル防衛政策は成功しておる、アメリカの国際収支の均衡は、これは本年は達成せられそうであるし、また国会内外の世論も、均衡政策をあくまでも堅持していけ、こういう意見であるし、そうなると、国際社会においていま基軸になっておるドルが勢い不足せざるを得ない、そういう傾向もあって、国際社会におきましては、ドルの流動性、国際通貨の流動性について再検討すべきじゃないかという意見も盛り上がってきておる、こういう際であるから、私はこの際、九月のIMF総会の機会にその話を持ち出してみたいと思うのだが、どんなものだろうか、こういう話でございます。具体案は持っておりません、ただそういう構想を持っておるのだがどんなものだろうか、こういう話なんです。それに対しまして私は、そういうことはたいへんけっこうじゃないか、いまアメリカが、ドル防衛政策、国際収支均衡政策をとる、勢い世界的に、ドル不足になる、わが日本でもそういう状況になってくる、そういう際であるから、新しい流動性、そういうものを広く国際間において討議してみる、これは非常にけっこうなことで、ぜひやりましょうや、こういうことを申し上げたわけであります。日本といたしましては、やっぱりそういう方向でいいと思うのです。新しい国際決済制度、こういうものをみんなと話し合って、どこにこれを落ちつけるかという方向を基本的な方針といたしまして、いろいろと今後の国際通貨、また経済会議その他の場面で対処していく、これで私はいいのであろうと思っております。
  150. 小松幹

    ○小松委員 新しい国際決済通貨をつくるという方針でございますか。
  151. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 新しい国際流動性体制をつくる、こういうことであります。
  152. 小松幹

    ○小松委員 流動性体制をつくるというのは、具体論としてはどういう方法で体制をつくるとおっしゃるのですか。
  153. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、金を基本にする考え方もあるいはありましょうし、あるいはIMFという国際通貨機関がありますから、これを中心にして考えるという方法もありましょうし、要は、私は私ども日本立場、この立場に立って考えるがよろしい、わが日本としては日本の国益に都合のいい施策、こういうことがいいなにじゃないか、さように考えております。
  154. 小松幹

    ○小松委員 それは日本だから、国のためになるような施策がいい、そういう抽象論でなくして、具体的にもうこの国際会議の招集があって、相談もかけられているのでしょう。それならどういうかっこうの体制をつくるか、A案、B案、C案とあるでしょう。どういうので体制をつくるか、それを承りたいのです。抽象論じゃないのです。
  155. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いろいろな考え方があるわけでありますが、いずれは日本代表が九月の国際通貨基金の会議には出席をするわけであります。そういう際には公式、非公式を問わず、何かそういう話が出るわけでありますから、それまでにはどの方法を日本は腹に持って行くか、これはきめて行きたい、こういうふうに考えて、ただいまのところはまだ固まった考えを持っておりません。
  156. 小松幹

    ○小松委員 フランス案あり、西ドイツ案あり、あるいはアメリカ案あり、あるいはIMFの理事の案があるわけでございますが、日本の案というのはない。そのうちのどれをとるのかということの体制日本に都合のいいように、それはだれだってそうだと思うのだが、ぴしゃっとしたけじめがやはりついていないと思うのです。あなた自身が今度行くのじゃないのですか。まだ腹がきまらぬのか、どうなんですか。その案は持ち合わせて行かぬで、そのときの出たとこ勝負でいいところにひっつこう、こういう考えですか。どうなんですか。
  157. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、ただいまこの席で申し上げるだけの段階には至っておらない、こういうふうに申し上げておるのでありますが、いずれこれは九月に、国際会議にはだれかが臨まなければならぬ。その際にはある程度の腹は固めて行かなければならぬ、かように考えています。
  158. 小松幹

    ○小松委員 国際通貨の流動性の問題であるし、特に日本ドル圏でドルを持って、金は少ないのでございますから、国際通貨をはっきりした立場で守っていく、あるいは金の保有を深めていくならいくと、はっきりしたものを持って臨まねばいかぬ。そのとき場当たりで行ってはならぬと私は思うわけであります。  まだ七、八分ございますから次に進みまして、石炭問題について通産大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  山野炭鉱災害は、その後石炭合理化、産業運営等について根本的な対策を考慮してもおるし、また積極的にしなければならない段階にきたと思うわけでありますが、特に調査団の答申が出ておりますが、その答申でどのような具体案というものを、答申に従ってこの危機を乗り越えていくのか、その辺の具体策をひとつ通産大臣にお伺いします。
  159. 三木武夫

    ○三木国務大臣 山野に限らず、石炭全般が非常に苦境にあることは御承知のとおりであります。これは、やはり根本的に石炭対策を考えなければいかぬということで、現在皆さんの御賛成を得て総合エネルギー調査会も近く発足いたします。これでやはりエネルギーの中における石炭の地位というものをはっきりしたい、そして長期に生産が安定できるような施策をとりたい。そうでなければ雇用も安定しない。また石炭鉱業の審議会等も、そういうただその日暮らしでなしに、根本的な石炭対策を検討するということで非常に努力をしておるのでございます。そういう点で、とにかく生産の面、雇用の面、あるいは炭鉱の保安の面、これに対して惰性にとらわれない対策を立てたい。いますぐというわけにはいかないけれども、しかし、少なくともそういう方向で石炭というものを考えたい。昨年調査団の答申が出まして、いますぐに根本対策といっても時間がかかるわけですが、当面の政策といたしましては、何としても一方においてはスクラップ・アンド・ビルドということであり、近代化をしていかなければならぬし、あるいは炭鉱の災害が頻発いたしますので、保安というものに対しては政府は補助金を出す。いままでは融資だけであった。これを補助金を出すということで、十分ではありませんけれども、保安というものに対しても一段と今後保安上の施設、訓練、そういうものに対してもこれを強化していきたい。それから利子補給、経営の非常に悪いものに対して利子補給をいたしております。これはいまのコマーシャルベースではなかなかペイしない、どうしてもやはり利子補給のようなことで経営をある程度めんどうを見ていくよりほかはない。調査団の報告に従って当面の施策はいたしますが、根本的には、やはり石炭政策というものをエネルギーの位置づけから始めて考えてみたいというのが私の考えでございます。
  160. 小松幹

    ○小松委員 石炭産業のエネルギーの配分における位置づけの問題でございますが、私はこういうように考えておるわけでございます。石油大資本に対して、石炭といえばきわめて斜陽化したものである。考え方によれば、これはだんだん傾斜していくかもしれません。しかし、事石炭という地下資源という問題から考えてみますと、国の一つの宝である。炭の山は炭の山でも国の宝であるとするならば、いま五千二百万トン生産があるならば、その五千二百万トンというものを限界線に確保していくという絶対の政治姿勢というか、あるいは地下資源を守るという形がはっきりとられなければいけないのではないか。そこを踏み台にして、それから成長産業になるとは言わないけれども、ここだけはぎりぎりの線で守って生産をしていくという体制に進むべきではないか。それを考えがないと、これはあとで尋ねようとしましたが、時間がありませんから例に出しますけれども、いま酪農や養鶏農民たちが一番困っておるのは何かといえば、えさなんでございます。鶏のえさや牛のえさが日本にできないはずはないわけだ。農林省は、最初自給飼料があったのにもかかわらず、外国から輸入のえさをどんどん入れてしまった。ところがとうとう日本のえさは壊滅してしまって、日本の酪農も養鶏もすべてオール外国のえさによって飼われることになってしまった。そうなれば、値上げをしてまいりますと鶏は全滅するという運命に陥ってしまう。卵価が下がるだけではなくて、非常に問題がある。やはりある程度日本の産業の基盤だけはきちっと守っておかないと、とんでもないことになる。特に石油カルテルというものが大資本できた場合に、石炭というものをここで守るんだ、最小限五千二百万トンで守るのだという一つのベースがはっきり行政的にも出てこなければ、私は石炭産業は守っていけないと思うのです。こういう点から、いま通産大臣は、エネルギーの配分において、位置づけはとにかく石炭を守っていくのだと、こうおっしゃられましたけれども、なお承りますが、はっきり五千二百万トンのベースで、これをぎりぎりの線で国の宝を守っていくのだという、ペイするとか、あるいは採算に乗るとか乗らぬとかじゃなくして、とにかくこれだけは国内の資源として確保していくのだという考えがおありかどうか。この考えがなくては、私はもう石炭は守れないと思うわけでありますが、この点をお伺いします。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石炭は、これを重油に置きかえるとすれば、国際収支の問題が起ってくる。また雇用問題が起ってくる。ある程度の石炭は国内資源として絶対に確保すべきものだというのが政府考えです。それを、いま小松さんの言われるように五千五百万トンが適当か、これはモットーとしてということになって、実際は五千百六十万トソということが目標になっておる。このことも、エネルギーの位置づけをすると同時に、どの程度の出炭が適当であるかということも検討したい。これだけは絶対に守っていくのだ。そうして、ペイしなければ国がこれに対して助成を行なって、これだけの生産、あるいは生産に伴う雇用を長期的に安定していくのだ、そういうことに持っていきたいのであります。そのためには、そういう五千五百万トンという出炭目標なども加えて検討して、そうしてこれだけは確保する。このためにはあらゆる国の助成も行なうのだ、こういう石炭政策を樹立したいというのが私の考えでございます。
  162. 青木正

    青木委員長 小松君、時間がまいっておりますので、結論をお願いします。
  163. 小松幹

    ○小松委員 総理にお尋ねしますが、ただいま通産大臣は五千百六十万トンという数字を日本の基礎産業として絶対確保して、補助金等あるいは国家助成等を加えながら最終的なもりとしてこれを守って、国内資源を確保していくのだという意見に承りましたが、これは重大なところでございまして、そろばんに合うから合わぬからといえば、これはもう石炭と石油とは太刀打ちがならぬ。しかし、その太刀打ちがならないでも、石炭という一つの地下資源とその産業をかっちり守っていくという体制を持たなければならぬ。通産大臣もそういうようなお考えを披瀝されましたけれども総理としてはどうお考えなのか。いま通産大臣の言われたことをそのまま自分もそのとおりとお考えになっているのか。いやそうじゃないのだとか、どういうようにお考えになっているか。石炭産業をどのように将来考えて位置づけしていくかということに対するあなたの考え、御決意を承りたい、かように考えます。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石炭産業について私の考え方をお尋ねでございます。過日この席でお答えしたかと思いますが、私、ただいま三木通産大臣の答弁を聞いておりまして、三木君の言うとおりだ、かように思いますが、小松委員は、その間にやや誤解があるのじゃないか。別に五千百六十万トン、五千二百万トンを確保するとまでは三木君は言わなかったように私は聞いております。ただいまちょうど第二次調査団も出、その報告がまとまりつつある際、またその他の関係者等からも意見を聴取して、そうしてエネルギーにおける石炭の位置づけをしよう、せっかく通産省がそういう考え方に立っておるのでありまして、その際にその基礎的な数量等、それを五千万トン一にするのか、五千二百万トンにするのか、そういう点もはっきりきめてかかるのだ、こういうことをお答えしたかと、かように思いますので、ただいまの数量の点だけは、いましばらく保留させていただいて、そうして国内産業である石炭産業を私どもはないがしろにしないのだ。ことに現状におきましては、これは社会問題であり、労働問題であり、たいへんな問題を含んでおりますから、そういう点も十分考慮して、一足飛びな、ドラスティックな案はなかなか考えられないのだ。いずれにいたしましても、もっと調査して、そうしてその報告がまとまって、しかる上で御審議をいただきたい、かように思います。
  165. 青木正

    青木委員長 小松君、時間がまいっております。
  166. 小松幹

    ○小松委員 最後に一つだけ。労働大臣に組夫の問題についての今後の扱い方についてお伺いします。  それから厚生大臣に特別年金、退職金制度について具体策をお伺いして終わりたいと思います。
  167. 小平久雄

    ○小平国務大臣 組夫の問題でございますが、現在全国では約二万一千程度おられるようであります。この組夫の労働条件等は、常用のものに比べますと若干下回っておるようであります。大体所定内の賃金でありますと、常用に対しまして約九割程度になっております。これは、もっとも就業時間が短いという関係もあると思いますが、しかし、そういう関係で所定外の賃金を含めますと、常用に対して組夫の場合は、約七割五分程度になっておる。さらにまた就業の年限等も、大体非常に短い者が多いのでありまして、大半は一年以内、こんなぐあいになっておりますので、労働省としましては、これらの雇用条件を逐次改善しまして、安定した雇用になるようにつとめてまいりたい。  そのほか組夫の使い方でありますが、これも臨時的な新鉱の開発だとか、立て坑の工事だとか、そういうものに使うことはやむを得ないと思いますが、常時的な仕事にはできるだけ常用の者をもって充てるように指呼してまいりたい。  さらに保安の面でも、組夫の者につきましては、どうも訓練が徹底しかねがちな面もあるようでありますので、こういう面でも十分注意をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  168. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 石炭鉱業労務者のために特別年金制度を創設する問題につきましては、昨年十二月の石炭鉱業調査団の答申にもございまして、政府といたしましては、石炭鉱業労働者の老後の生活の保障、また安定的な雇用の確保、こういうような観点から、労働省、通産省と連絡をとりながら検討を進めておるわけであります。これを社会保障の一環として取り扱うかどうか、また実施主体をどうするか、また財源の調達方式をどうするか、いろいろ重要な問題がございますので、慎重に検討を進めておる段階でございます。
  169. 青木正

    青木委員長 これにて小松君の質疑は終了いたしました。(拍手)  以上をもちまして昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)に対する総括質疑は終了いたしました。  次回は明六日午前十時より開会し、昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)に対する一般質疑に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会