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1965-08-04 第49回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月四日(水曜日)    午前十時十分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 古川 丈吉君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 川俣 清音君    理事 辻原 弘市君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       奥野 誠亮君    上林山榮吉君       櫻内 義雄君    小山 省二君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       水田三喜男君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       片島  港君    小松  幹君       高田 富之君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       野原  覺君    山花 秀雄君       横路 節雄君    佐々木良作君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  山野 幸吉君         警察庁長官   新井  裕君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         検     事         (刑事局長)  津田  貫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 八月四日  委員稻葉修君、川崎秀二君及び中野四郎辞任  につき、その補欠として小山省二君、奥野誠一  君及び橋本龍太郎君が議長の指名で委員選任  された。 同日  理事稻葉修君八月四日委員辞任につき、その補  欠として八木徹雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)      ――――◇―――――
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第1号)を議題とし、審査を進めます。  これより総括質疑に入ります。  なお、念のため申し上げますが、理事会協議によりまして、総括質疑の持ち時間は一人当たり二時間となっておりますので、御了承を願います。  辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 私は、ただいまから内政、外交の重要な点につきまして、主として総理の御見解をただしてまいりたいと考えております。  最初に、先般来から非常に重要な問題として国民危惧と関心を集めておりますB52の沖縄及び板付に対する飛来の問題に関係をいたしまして、本日の新聞によりますと、またまたC130輸送機が約三十五機板付及び立川に飛来をしたという記事が報道せられておるのであります。この件に関しましてお尋ねをいたしたいと思いますが、まずC130が昨日飛来をするということは、事前通告がありましたかどうか、この点を承りたいと思います。
  4. 安川壯

    安川政府委員 C130が台風避難板付に来るということは、前日の夜おそく連絡を受けております。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 これは重要な問題でありますし、政治上の課題として私はお尋ねをいたしておるのでありますから、総理ないしは所管大臣から明確にお答えをいただきたい。  そこで、通告はあったということであるが、その通告は、先方の言い分によると、どういう内容のもとに飛来をするということを言われたのか、どういう目的飛来をするということを言ってきたのか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 台風の来襲が予想されるので、それを避難するために移動する、こういう予告でございました。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 台風避難目的ということでありますれば、当然その飛行機は、攻撃のための武器、弾薬、そういったものは搭載をしていないということが確認されなければならぬと思うが、それは日本側において確認をいたしておりますか。
  8. 安川壯

    安川政府委員 C130は輸送機でございますから、武装はしておりません。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 輸送機だから武装していない、この見解につきましても、私は疑問を持っている。だが、そのことはあとでお尋ねをすることにして、武装を持っていないということを確認をした。すなわち、武装していない輸送機だから、日本国内基地であるが、当然それに飛来をすることを日本側了承をした。新聞発表によりますと、政府は、その場合事前協議に要らないんだ、こう申しておりますが、その事前協議は要らないとした政府見解というものは、一体どういう根拠に基づかれたものか、その点を外務大臣から承りたい。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事前協議の場合は、配置変更ということが要点になっております。配置変更というのは、一時的な緊急避難と違いまして、移動したところに常時配置されて、そしてそこを根拠地とする、こういう意味でございますから、一時的な緊急避難はいわゆる配置ではない、こういうことになる。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 少し現実の問題をとらまえてお答えを願いたいと思いますが、先般のB52の飛来の問題に関して、すでに、それらの点につきましては、外務委員会で私ども見解を述べ、政府見解をただした。それによると、沖縄条約外であるから、これはいかよう米軍が行動しようともかってであるというのが政府見解であります。しかしながら、日本基地を使用して出撃する場合は当然事前協議対象になるんだ、こう答えられておるのであります。間違いありませんね、外務大臣
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 沖縄でなくて、日本基地配置されるという場合には、それは事前協議対象になる。しかし、日本基地といえども、一時的な緊急避難の場合には、それは事前協議対象にならないということをお答えしたはずでございます。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 私がお尋ねをしておるのは、一時的な緊急避難ではなくて、日本基地を利用して、伊丹からたとえばベトナム出撃をした場合、これは事前協議対象になる――ならないのですか。その点はひとつ総理からお答えを願いたい。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう一時的緊急避難でなくて、相当の兵力が日本基地に新たに配置されるという場合には、これは事前協議対象になります。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 外務大臣お答えで明瞭になりました。日本基地を使用して出撃する場合には事前協議対象になる、これははっきりしたのであります。  そこで、今回のC130は事前協議対象にならない、こうおっしゃったのは、一時的な緊急避難であり、それには出撃のための武装をしておらない、こういう意味事前協議対象にならないと、政府のほうではそういう見解をとっておるのでありますかどうか。その事前協議対象にならぬとあなた方が言われる根拠をひとつ示していただきたい、C130について事前協議対象にならぬと新聞に堂々と書いておりますから。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは一時的な緊急避難であるから事前協議対象にならない。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、かりに武装をして出撃をするという場合は当然対象になりますね。台風避難ではなくて、爆弾を積んで、あるいは兵員を積んで出撃態勢を整えて飛来をして日本基地から出撃をしようという場合には、明らかに対象になりますね。先ほど私が申し上げたB52の場合と同じなんだから、そうでしょう。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは軍事的な特別の知識を要する問題だと私は思います。普通の輸送機が一体そういう資格、能力を備えることになり得るのかどうかということにつきましては、私は専門家ではありませんから、そこまでは正確にただいまお答えするわけにいかぬ。もう少し調べてからお答えいたします。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 そんなことは専門的に調べる必要もない私は常識の範囲内の問題だと思う。そうすると、外務大臣常識においては、輸送機軍用にあらずという前提を持っておるのですか。輸送機軍用機じゃないのですか。その点をお尋ねいたします。これは常識の問題です。外務大臣、どうなんですか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北米局長をしてお答えいたさせます。
  21. 安川壯

    安川政府委員 台風避難でありますならば、その入ってくる飛行機B52であろうと、C130であろうと、これは変わりはないわけでございまして、事前協議対象にならないわけでございます。これは仮定の問題でございますけれども、かりにB52が一たん台風避難日本に来まして、その上で爆弾を積んでベトナム出撃するというような場合には、当然事前協議対象になるわけでございます。しかし、C130の場合は、実際問題としてこれは輸送機でございますから、戦闘作戦行動に出るというようなことは実際にはあり得ない、こういうことでございます。
  22. 辻原弘市

    辻原委員 やや政府見解が明瞭になりました。台風避難という名目がつけば、輸送機であろうが、爆撃機であろうが、戦闘機であろうが、それは事前協議対象にはなりません。しかし、一たん武装して爆弾を積み戦闘の準備を整えてやってきたものについては、これは明らかに事前協議対象になる。そうですね。そのとおりいま私はオウム返しに言ったのですよ。
  23. 安川壯

    安川政府委員 爆弾を積んで来るときと出るときを区別していただきたいと思いますが、交換公文にございます事前協議は、これは読んでおわかりのとおり、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」こうなっておりますから、これはあくまでも日本から出撃する前の事前協議をいうわけでございます。単に爆弾を積んで入ってきたというだけで、直ちに日本から戦闘作戦行動が行われるということにはなりませんので、あくまでも日本基地に一たん参りまして、そうして出撃をする前に事前協議が行なわれるわけでございます。
  24. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、私は、先日のB52の飛来については重大な疑問を持つのです。それはどういうことかというと、先般の外務委員会で詳細にその経過が明らかにせられておりまするように、当初B52については板付飛来をするという通告があった。自後板付に立ち寄らないで、数刻おくれたまま沖縄から出撃をしていったのです。  そこで問題として考えられるのは、この飛行機は、グアム島を発して、飛来はしなかったけれどもたん板付に立ち寄ろうとした、板付飛来をしようとした飛行機である。それがどういうような戦術上の変化かわからないけれども沖縄に着陸をし、沖縄から出撃をしていったという経過がある。そこで、将来心配となることは、かりに沖縄から出撃をしていった場合であっても、グアム島を出発する際に、当然出撃態勢を整えてこれは進発をしているものである。一時的にもせよ、日本基地にそれが飛来をするということは、当然事前協議対象とならなければいけないが、先ほどからの私と北米局長、あるいは外務大臣との応答によって政府見解で明らかになったことは、いわゆる名目でなくて実際上の避難であるなら問題はないけれども武装をし、爆弾を積んで出撃態勢を整えておる飛行機については、しかも現実にそれが出撃をされていったという事実の確認があれば、また事前にそのことが見通しされれば、当然これは事前協議対象になるということ、そうなれば、いま私が申し上げたように、先般のB52は、明らかにこれは当初目的日本基地武装のまま着陸しようとしておる。それがたまたま沖縄から出撃をしていった。当然これは事前協議対象になるじゃありませんか。外務大臣の御見解を明確にひとつ承っておきたい。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、ただ一時的の避難の場合には、依然として事前協議対象になりません。それだけ申し上げておきます。
  26. 辻原弘市

    辻原委員 時間がありませんから、私は事実の一つ一つを示してお尋ねするわけにいきませんけれども、しかし、ただいまの外務大臣答弁で、きょうはおそらくテレビで国民が聞いていると思いますが、そういうことは納得しませんよ。現に日本に来ると言ったグアム島の爆撃機が、沖縄から爆弾をかかえて攻撃をしている。そういう戦闘態勢を整えた飛行機日本に現に来るぞと言ってきたのに対して、あなた方は、台風緊急避難だと称して、けっこうでございますと答えておる。これは事実の問題と非常に懸隔があるということを私は指摘をしている。あなた方の従来からの答弁によれば、当然これこそ事前協議対象にしなければいかぬ問題です。総理にそれらの問題についの見解を私は一ぺんお伺いをしておきたい。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 たとえそれが装備をしておろうとおるまいと、一時的な緊急避難であれば、それは事前協議対象にはなりません。それが今度は日本基地を進発して直接進撃行動に出るという場合には、事前協議対象になりますけれども、来る場合に、それが一時的な避難行為であるという限りにおいては事前協議対象にならないと明確に申し上げておきます。
  28. 辻原弘市

    辻原委員 先日の事態について、また昨日飛来をいたしましたC130について、台風のための一時避離だとあなた方は言っておりまするが、私は、この問題に関する米国のスポークスマンの発表を詳細に読みました。参考になると思うからよく聞いておいてもらいたい。B5爆撃機沖縄から初出撃をしたことについて、同爆撃機通常グアム島に駐留しているが、今回の攻撃沖縄から行なわれたのは、グアム地域気象が悪かったためであると言っている。これは何げなく読むと問題ではない。しかし、全文を慎重に読むと、どういうことを言っているかというと、これは通常の場合における一時的避難を言っているのではない。すなわち、通常グアム島に爆撃機その他の飛行機がたくさんおる、たまたま台風の危険が迫りました、そこで避難をいたしましょうというのではないと言っているのです。そうでしょう。今回の攻撃沖縄から行なわれたのは、グアム地域気象が悪かったためである。すなわちグアム島から攻撃をしようとしたのであるけれども、しかしながら、気象が悪くてグアム島からの攻撃ができなかった、出撃ができなかったので、沖縄から攻撃基地を求めて出撃をしていったということを言っている。ここにあなた方が言う一時的な緊急避難などということは、単なるあなた方の悪く言えば従属的外交のあらわれで、相手が発表する一方的なそのことをそのまま受け取って言っておる。しかし、現地の米軍当局はそう言っている。  私は、これ以上これにかける時間はありませんが、あなた方の認識は違うのです。B52の飛来といい、C130の飛来といい、いずれもアメリカの戦略、戦術ベトナムに対する出撃、こういう緊急事態に即した戦闘状態の中に巻き起こってきている現実の問題であります。もしそうでないとするならば、ひとつ常識的に考えてください。グアム島の基地というのは、大東亜戦争以来の基地なんです。そうでしょう。台風は毎年年々歳々襲ってくる。もし台風による一時避難が必要であるならば、いままでおそらく毎年毎年政府に対して通告があったはずなんです。あったかなかったかを私は尋ねません。常識の問題です。しかし、現にベトナムの戦火が今日のように拡大するまではそういう事態が起きていないでしょう。そこに私は本問題があなた方の言う単なる緊急避難とか、単なる台風によるとかいうことでは、今日、日本国民危惧を払拭することはできないということを申し上げておる。さらに私は、先ほどからの御答弁を基礎にいたしまして、この問題につきましては徹底的に今後解明をいたしてまいりたいと思います。  時間がございませんので、私は次の問題に移りたいと思いますが、総理にお伺いをいたします。  過ぐる参議院選挙、また東京における都議会選挙、特に東京においては、この二つの選挙がいずれもあなた方自由民主党惨敗、完敗に終わっているのであります。私ども社会党といたしましては、東京において参議院都議会選挙を通じて勝利を占めたからといって、われわれはそれにうちょうてんになっているのではない。しかし、日本顔東京において政権を持っている自民党がかかる惨敗を喫したということは、これは保守党にとって事態きわめて私は重大であろうと思う。同時に、一方私たち社会党も、都議会において第一党を占め、参議院において新たな国民の信任の増強を得た。このことを考えましたときに、われわれは、従来にも増して新たな責任を私ども自身今日痛感をいたしております。ましてや、敗れた側の自由民主党の総裁であり総理である佐藤さんとされては、これに深刻な反省所見がなければならぬと思いまするが、せんだってからの本会議における御答弁を聞きましても、切実な佐藤さんの心境というものがいまだ吐露せられておりません。あらためて総理反省の御所見を私は承りたいと思います。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは衆議院本会議におきましても、また参議院の本会議におきましても、私はしばしば私の心境を吐露したつもりであります。あるいはことばが不十分で、表現のしかたがまずくて、皆さん方のお考えになっておることと合わないというようなことがあるのかもわかりませんが、しかし、私自身、この東京において参議院における議席を持たなくなった。さらにまた、都会議員選挙において惨敗したこと、そうして第一党を社会党に譲ったこと、これは東京が首都であるだけにたいへんな問題だ、かように思っております。しかしながら、大衆のその英知によるただいまのような審判、まことに厳粛なものだ、これに対しましては、えりを正して謙虚にこの審判を受ける。同時に、みずからも反省をする。しかし、ただいまは私自身が政局を担当いたしておるのでありますから、この意味におきましての責任の重大なることを、社会党と同様とは申しませんが、別な違った観点におきましてその責任の重大なることを痛感しておるのであります。国民の負託にこたえ、また期待に沿うよう最善を尽くしてまいりたい。国政におきましても、また在来からの都政においても、これは私自身が、また自由民主党自身がみずから、反省をして、そうして期待に沿うようにいたしたい、かように考えております。
  30. 辻原弘市

    辻原委員 こういうむざんな結果を保守党が招来したということについて、その原因が、どこにあったと総理はお考えになっておりますか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろの批判があると思います。参議院選挙においては、あるいは作戦がまずかったのではないか、かようなことも指摘されるようであります。しかし、いずれにいたしましても、とにかく負けたことは事実であります。われわれがその候補の選定が誤ったとか、あるいは選挙のしかたが間違ったとか、かように申しましても、これは現実の問題についての深い反省だとはなかなか言い得ないのではないか、かように思いますので、多くを私は申し上げません。また、都会議員選挙におきましても、これもいろいろの問題があるように思いますけれども、敗れたその結果 そのこと自身を冷厳なる事実として、また、この結果が国民審判だ、さように思いまして、その意味反省もしていき、また、今後自由民主党のあり方につきましても、みずからが姿勢を正してまいる、かようにいたすつもりでございます。私が清潔な政治を公約いたしましたのもその一端にすぎない、かように御理解をいただきたいと思います。
  32. 辻原弘市

    辻原委員 私は、結果について追い打ちをかけようというような考えで申し上げておるのではない。少なくともこういう機会に、日本政治が本質的に国民の信頼が回復せられ、将来の国民に向かって、少なくてもその施策によって国民生活が守られるという新たな観点を、これを契機としてつくっていくためにあえて私は申し上げておるのでありますが、都議会選挙の開票の当日、たまたまNHKで行なわれておりました街頭録音による町の声を私は聞いた。そのそれぞれの声は、異口同音にこういうことを申しておりました。今回、都議会選挙においてこういう結果が起きてきたのは、もうあたりまえだ、これは単に汚職の問題だけではありません。自由民主党という政党の体質そのものにあるのだ、こういうふうに指摘をしておりましたことが私の耳には非常に印象的でありました。もし今回のこれらの選挙の結果が単に汚職に基づくものだ、あるいは選挙戦術に基づくものだなどと考えておったならば、私は、保守党にとってとんでもない再度にわたる国民の厳粛な審判が将来下されると思います。ただ単にそれだけではない。今日この委員会でも、また本会議でも論じられようとしておる政策そのものの問題、不況から受ける国民生活の不安、あるいはベトナム戦争に対してとっておる政府の向米一辺倒のあいまいな態度、あるいは選挙のどさくさに調印を強行してしまった日韓批准の不明朗さ、こういうことが私は今日国民批判の的になっていると思うのであります。世論というものは、もはや単に総理が口の先で、あるいは閣僚の皆さんが口の先で適当なことを言われる、それをそのまま信じてしまうほど愚かなものではないのであります。世論は、今日非常に私は成長しておると思います。賢明になっておると思います。そうした世論の動向にもっと切実に総理が耳を傾けるべきだと思う。言うなれば、東京における選挙の結果というものは、いまの日本における世論の趨勢を示すものである。佐藤内閣はこれによって下信任を食ったのも同然である。少なくともそれに対しては、総理はみずからその責任をとらなければならない。いま一度総理の御見解を承りたいと思います。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまいろいろ例をあげてお話しですが、私自身政治の姿勢を正す、これは清潔な政治というだけではございません。これはただその一端にすぎないということを申しましたが、問題は、要は責任ある政治ということに帰するんではないかと思います。そういう意味におきまして、政治全般について私どもがその責任を果たしていく、これが最も大事なことではないだろうか、かように思います。  ただいまいろんな問題をあげてお話しでございましたが、確かにその一つ一つについてそれぞれの意見もありましょうけれども、とにかく政治自身が信頼を失っているとか、あるいは都民の信を得ておらない。これは抽象的な言い方でございますが、その信頼をどうして得ておらないのか、こういうことをだんだん詰めてまいりますと、結局は責任ある政治をしてない、かような意味ではないか。また、国民が、都民がほんとに希望しておるその言いたいところに直してほしいという、そういうことにぴんときてないんだ、かような点が批判になるんではないかと思います。  私は、今回の所信表明で申しましたように、問題はやっぱり当面する大きな三つの問題、これを真剣にひとつ責任のある方法で処理していく、これは、一つは政治の姿勢であり、第二は不況の克服であり、第三はアジアの平和の問題である。かように私は思っておりますので、当面するいろんな問題はあるだろうと思いますが、最も重点を置くものは、また、最も国民が切実に考えておるものは、この三点ではないだろうか、かように思いますので、その点を所信表明で特に皆さんに申し上げた次第であります。そういう意味で、あらゆる機会にみずからも反省してまいり、また、あらゆる機会にみずからもくふうしてまいりますが、問題は、政治家としてどうすればいいか、これはほんとうに日夜心胆を砕くべき筋のことのように思います。かような意味で、この上とも最善を尽くしてまいる、このことをお約束する次第でございます。
  34. 辻原弘市

    辻原委員 総理は、本会議においても清潔な政治を強調され、また、ただいまも、えりを正してこれからの姿勢については心胆を砕いてやっていきたいし、保守党自体の体質を改善して信を取り戻したい、こうおっしゃっているのであります。そこで、私はその総理の言を待ちたいと思う。待ちたいと思いますが、とりあえずこの際総理にぜひ実行をしていただきたい問題があります。それは、すでに世論批判の的になっておる参議院における常識を逸脱した全国区の選挙違反の問題であります。もうその事実、内容については、私が詳しく申し上げなくとも十分おわかりだと思いますが、小林派あるいは岡村派の選挙に至りましては、これは全く従来の選挙違反の範疇を上回る史上最大の悪質犯であります。一体、これらの選挙について、本人はすでに離党をしておるようでありますが、私は、単に本人の責任だけではなく、これを公認した自民党にもその責任があります。あるいはこれらの選挙を組織をあげて応援したそれぞれの団体にも責任があります。しかしながら、まず自由民主党の党員であり、それを公認をした自民党、またその総裁が、この選挙違反についてどういう厳粛な措置をあなたはおとりになって国民に対してえりを正さんとされておるのか、これを明確に承っておきたいと思います。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の参議院選挙で最も批判を受けておるような大きな選挙違反を出したことについて、ほんとに心を痛めております。ただいまお話しがありましたように、この両君は、党籍を離脱したといいますか、離党した。これはその責任をとったという意味だと思います。それによりまして自由民主党がその責任が解除された、こういう問題ではないだろうと思います。  私、考えますのに、ただいま民主政治あるいは議会政治、これをより強化する、かように考えていかなければならないと思いますが、それには、何といってもその母体である党自身選挙に対して厳正だ、また公正だ、そうして清く正しい選挙が行なえるような状態をつくらなければならないんだ、かように思います。この意味におきまして、まず、今後われわれが正していかなければならない点、こういう点について今回の苦しい経験から多く教えられたものがあるのであります。今後とも厳正に正してまいるつもりでおります。ただいま、今日これから最善の努力を払うことによりましてこの汚点をぬぐっていく、こういうことをするのが私どものつとめではないだろうか、かように私は思います。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 これからの問題はわかりました。しかし、いま現に小林さんは、離党されましたけれども、そのまま議員という職にとどまっておられます。それでもってこれほど反社会的な選挙違反を犯した当事者に対して、何ら公認をした自民党としてそれ以上の措置は必要がない、こういうふうにおっしゃるのですか、その点を私は承っておるのであります。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これより以上自由民主党は何もすることはないのか、こういうお尋ねですが、私は、こういうような不始末を起こしました者に対して、ただいまのような簡単な気持ちでは実はいないのでございます。したがいまして、当人が離党したというだけだが、これは結局当人のきめることだと思いますけれども、今後司直の裁断を待って、そうしてみずからがきめていくんだろうと思います。私ども自身が、それにつきまして公正であるべき、また今後のこういう問題についての対策に対しましても、真剣にまた慎重であるべき、そういうことを学びとったのでございますから、わが自由民主党のあり方等については、この事態についての御批判はしばらく時間をかしていただきたい、かように思いますが、当人自身は、ただいま申し上げますように、司直の裁断を待っておる、こういうことだと、かように思います。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 私も議員である立場から、同じ議員という立場に立つ人に対して、あえてその個人の名前を指摘をして問題を俎上にのせるということは、情においては忍びません。私は初めてであります。しかし、今回の小林派の違反の内容を現段階において警察庁その他の資料によって拝見をいたしますと、全くただ驚くという以外に何ものもございません。特に私は、先ほど反社会的ということばを申し上げましたが、これは単なる選挙違反ではないということであります。  その内容を私が参考に申し上げてみますならば、今日までこの違反に関して約二百名になんなんとする逮捕者を出しており、しかもそのうちの、八月二日現在においては百二十五人というのが、これが専売公社の管理職の重要な職責にある人たちである。追及せられておる違反の内容は、いまだその過程にあってさだかではありませんけれども、それを大別いたしますならば、まず専売公社は塩、たばこに対して許可を与える権限を持っておる。この許可を与える権限、すなわち地位利用にからんで、言うなれば利益誘導、地位利用の尤たるいわゆる選挙違反であります。あるいはだれが出したかわかりませんけれども、業務命令による出張にこと寄せて、弱い業者を集めての組織的選挙、しかもその間に相当額の資金が使われておる。その資金は専売公社の予算から出されている疑いがあると指摘をしている。これらを総合いたしますと、単に個人が買収犯をやった、供応犯をやったというのとは本質的に私は性格が違うと言うのであります。だから、あえてそういうことを基盤にして出られた議員が、はたして国民の信託を受け、国政に参画する議員として適格であろうかという、そこに素朴な国民の疑問が差しはさまれると私は思いまするし、またもう一つ重要な点は、選挙違反を犯したからということではなくて、専売公社は国の機関である、その国の機関が百二十五名に及ぶ管理者を逮捕者として出すほどの大がかりな、公社をあげての、公社の権力機構をあげての選挙違反を犯すという行政機関、公社としてのあり方に、私は国政として重要な問題があると思うのであります。したがって、個人に対してどう措置をするかということは、ただいま総理が、司直の結果を待って、捜査の結果を待って本人の判断に待っているとおっしゃられましたから、私はそれ以上申し上げない。しかしもう一つ残る問題は、それじゃ一体公的機関であり国の機関であるこの公社それ自体についての行政上の責任を、総理としてどのようにお考えになっているかという問題であります。この点について御見解を明らかにしていただきたい。これは、同時に私は大蔵大臣にも所管大臣として関係する問題だと思いまするので、お二方から承りたいと思います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの問題につきましては、事重大だ、かように考えまして、私は大蔵大臣と特に相談をいたしております。したがいまして、この問題は大蔵大臣からお答えさせますが、私自身が大蔵大臣と直接相談したということを念のためにつけ加えておきます。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま御指摘の問題は、お話のように、ひとり刑事上の問題というふうに考えておりませんが、同時に行政としての問題として私も真剣に考えておるわけであります。この事件が公になりましてから、私はしばしば専売公社当局、特に総裁から経過の報告を聞いておるのであります。総裁も非常に遺憾の意を表明いたしておるわけであります。私も行政の監督の立場にある者といたしまして、なおこの事件の全貌を見守っておりまするが、刑事事件とは別な角度で考えておるということだけを申し上げさせていただきます。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 いま大蔵大臣が、所管大臣として責任を痛感いたしておる、詳細な経過を総裁から聞いたが、総裁も遺憾の意を表明しておる。それだけですか。――それだけですか、これだけの重大問題を起こしながら。私はふしぎに思っているんです。これは、専売公社の総裁に私は数日前から当委員会に来ていただくことをお願いしておりますから、総裁からも承りたいと思うが、少なくとも全国四十八ですか、局は。その他百数十の出張所を合わして百三十名近い逮捕者を出しておる。数からいうと管理者の一割以上でしょう。これだけの逮捕者を出しておるならば、当然専売公社の行政運営に重大な支障が今日なければならぬと思う。これだけの重大な支障を来たしても、その事態について、ただ責任を感じておる、遺憾であるということだけで事が済むなら世の中は簡単です。それでは私は政治のえりを正すとか、深刻な反省をしておるなどという総理のおことばは、単なる口頭禅としてしかお聞きができません。少なくとも行政ののりを立てるためには、その事態に対するきっぱりした明確な態度、処置がなければならぬと思う。その意味において、私は大蔵大臣並びに総理大臣からもう少し突っ込んだお答えを承りたい。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見は、ほんとうに私も真剣に伺っておきます。
  43. 辻原弘市

    辻原委員 責任を痛感をしておる、私が申し上げたことを真剣に考えておられるという意味は、少なくともこれだけの事態を引き起こした総裁に対しては、責任をとらせる、こう了解をしてよろしいですか。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 総裁も遺憾の意を表明し、私も監督にある立場の者といたしまして、行政上ゆゆしい問題である、かように考えておるわけであります。ただいま総裁をやめさせるかどうかというお話でございますが、この問題につきましては、なお事件の全貌をつかんだ上、私は善処するつもりであります。かように申し上げます。
  45. 辻原弘市

    辻原委員 通例の選挙違反でありますならば、いまあなたがおっしゃった捜査の段階を待ってとか、事件の終結を待ってとかいうことは了解できるかもしれません。これはいつのときにでも使われることばでありますけれども、しかし私は、現段階における事実に徴してものを申しておる。いまの段階において起きてきておること、わかってきておることだけでも、これはきわめて行政上重要な問題なんだ。だから結果を待たずとも、いまの事態においてすら当然判断ができ、当然責任のある問題だ。その意味において、私は最後にならなければ問題の所在がわからないなんていう、そういう問題とは性質が違うということを冒頭に言っておる。それをしも結果を待たなければ何にも手をくだすことができないのですか。何にも国民に対して厳正なえりを正す処置がとれないのですか。いま一度私は総理にお伺いをいたしたい。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから総理大臣として、また大蔵大臣としてお答えをいたしております。事柄まことに重大でございますし、ただいまのような強い社会党の諸君の――おそらく社会党を代表しての辻原さんの御意見だと思いますが、御意見が出ておる。これは私が真剣に伺って、私が今後処置する、それを十分に考えてまいります、かように申しておるのでございまして、ただいま、あるいは時期がおそいとか、あるいはその処置が明確を欠くとか、かようにお話でございますけれども、この点はやはり政府当局にまかせていただきたい、私はかように思いますので、先ほど来非常に真剣に、また慎重に、謙虚に皆さま方の御意見を伺っておる。これをひとつ十分御了承いただきまして、そしてこれが処置につきましては、政府自身責任をとってまいるということをただいま申し上げておきます。
  47. 辻原弘市

    辻原委員 阪田さん個人に対してはお気の毒かもしれません。しかし、るる申し上げるように、これこそ国政におきましても、また行政の上においても厳粛に国民に対してえりを正さなければならぬ問題であるから、あえて申し上げておるのであります。ただいま総理お答えになったことばは、私が党を代表して本問題について申し上げることを、十分慎重に、真剣かつ謙虚に承って将来に資したいという含みのある御発言がありましたので、これ以上具体的には申し上げませんけれども、私は保守党のためにも、政府のためにも、われわれが申し上げていることのかくあらんことを祈っておる。というのは、先刻私が申し上げました都議会選挙の結末の一体一つの原因はどこにあったかということを、あなた方は真剣に考えなければならぬと思います。あれだけの議長選挙にからまる汚職、疑獄があったのに対しても、何ら自民党という政党がそれに対しての処置ができなかった、何らそれに対して明確な、政党としての統制を行なうことができなかった、ここに私は一つの政党に対する信頼感が都民に対して大きく影響した事実を現に知っておる。そういうことを考え合わせました場合に、今回の問題も、単に口先のこの場限りの答弁では済まされないということを十分御銘記をお願いいたしたいと思います。  総理に対しては、いま申し上げたようなことで一応本日は了承をいたしたいと思いますが、幸い阪田さんがお見えになっておると思いますので、御本人の心境を承りたいと思いますが、委員長、出席されておりますか。
  48. 青木正

    青木委員長 参議院の議運の委員会のほうに出  ておりますので、連絡はしておりますが……。
  49. 辻原弘市

    辻原委員 後刻来られるそうでありますから、阪田さんに対するあれは、おいでになりましたときに私はお尋ねをいたしたいと思う。  そこで、この機会にいま一つ選挙に関係して伺っておきたい問題がございます。それは、かつて東京都の都知事選挙の際にも、すでにこれは起訴をせられて問題になって、これまた世間のひんしゅくを買っておる、例のにせ証紙の事件がありました。あるいははがきの横流しの事件がございました。選挙のたびにいろいろな怪文書が横行いたします。場合によりますと、それは公党の名でもって行なわれておる場合もある。私はたまたま今度の都議会選挙に際しまして、自由民主党都政刷新本部長田中角榮氏の名前で出されておる文書を拝見いたしたのであります。その中に、われわれとしては見過ごしができない重要な内容がありますので、この機会に総理の御所見を承っておきたい。これは単なる所在不明の怪文書ではない。ちゃんと署名を入れて、しかも都内の各一流会社等の社長に対して名ざしで出された文章であります。簡単でありますから、私は読んでみたいと思います。「陳者、参議院選挙も終りましたが首都東京における自由民主党議席の喪失は真に遺憾に堪えません。其の間種々の経緯の在ったことは御案内の通りでありますが今回の都議会において自民党が敗北を致し万一にでも過半数を割るが如き場合においては都の行政の運営は不能に陥り、さらに都知事不信任等の発議も起り、延いては必然的に警視庁の治安機能の麻痺を来し不測の情勢を招く懼れ無しとせず、」云々とあるのであります。私は、これが単に怪文書として流布されたものであるならば、ここでこういう形で取り上げる必要はありますまい。しかし、少なくともその記名者は自由民主党である現幹事長の田中さんのお名前でこれが発せられており、しかも相手もれっきとした方々である。その中に、過半数を割れば都の行政の運営は不能におちいるということが言われておる。現に都の議席数は過半数はおろか、三分の一以下に自民党はなっておるのであります。そうなれば、これは都の行政運営は不能におちいる――不能におちいるのでありますか。私はお伺いしたいのであります。言うなれば、自民党でなければ都の行政は不能なんだということをこれは強調している思い上がった態度だ。いま一つは、必然的に警視庁の治安機能の麻痺を来たすおそれがある。現に三分の一以下しかない。治安機能の麻痺を来たしますか。そういう御見解総理はお持ちになっておられますか。私はたいへんなことだと思う。総理、いかがでありますか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話ですが、私は今回の都会議員選挙につきましては、総裁といたしまして、また幹事長と十分連絡をとったつもりでございます。しかし、その間におきまして、ただいまのような私文書と申しますか、あるいはどういうものですか、幹事長の名前入りの文書についての相談は全然話が出ておりません。また、幹事長自身も、その文章がいかにも未熟でありますので、私は、はたしてそういうものを幹事長が書いただろうかと、たいへんな疑問を持つものですが、どうもこれは、おそらく幹事長もそういうものを考えていないのではないか、関与しておらないのではないか、かように私は思います。いずれにいたしましても、言い切ることはできませんが、私もとくとよく幹事長とも話し合ってみまして、そうして事実そういうことがあるかどうか、これはよく検討してみたいと思いますが、どうもただいまお読みになりまして、辻原さんも非常に疑問に思われるように、自民党が負けたら都政ができない、それは非常な極端な言い方ですし、また、そういうことで支持を得るということは非常にむずかしいことだと思いますが、この未熟さ等から見ましても、どうも幹事長の手になっているものではないだろう、かように思いますので、その点を、私自身がただいま読み聞かされた、そのとっさに私が感じたところを率直に申し上げましてお答えといたします。
  51. 辻原弘市

    辻原委員 総理、これは、私だけが知っているということばがありますが、私だけが知っているのではなくて、選挙中にずいぶんこの内容について流布をせられて憤激をしている人、自民党の不見識をなじる人、あるいは一種のこれはどうかつ的な内容ではないかと受け取る人、また警視庁のあり方について疑問を感ずる人等々、いろいろなことのこれに対する判断を私は耳にしたのであります。それゆえにあえて申し上げるのでありまするが、まことに私は、天下の公党としての自民党が出された文書でありとするならば、これは不届きであります。受け取れない文章であります。しかし、幸い総理はその事実を知らない、おそらく幹事長も知らないであろうとおっしゃっておりまするから、私はそれ以上申し上げませんけれども、しかし十分事実をこれは調査をせられて、少なくとも今後こういうことは、かりにも公党の名前において出すというようなことは断じておやりなさらないように私はしていただかなければ、先ほど総理がおっしゃった、自民党の体質改善などというものはまさにこれは夢物語です。こういう前提、こういう考え方でもって政治あるいは行政、都政というものをお考えになっておられるとするならば、あるいは警察というものをそういうふうに壟断的にお考えになっておられるとするならば、これはたいへんであります。私は世上心配をしている向きもありまするから、この際警察庁の長官に対しても、後段に申し上げた警視庁の行政麻痺云々ということに対する見解を承っておきたいと思います。
  52. 新井裕

    ○新井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のことにつきましては、われわれ仕事にあたりましては、警察法の定めるところに従いまして厳正公平、不偏不党にやってまいったわけでございまして、民主的な手続を経まして選挙が行なわれ、その選挙の結果第一党に社会党がなられても、われわれのいままでの態度に何ら変更を加うるべきものはないと思っております。
  53. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんから、私は次の問題に移りたいと思います。  経済の政策について総理お尋ねをいたしたいと思いますが、まず私は経済の施策を立てられまする場合、最も必要なことは正しく現状を踏まえることであろうと思います。これは常識であって、あえて私が申し上げなくともよくおわかりだと思う。ところが総理の当面をしておる経済の不況に対する認識が、どうも私どもには受け取れない点があります。先般来からの本会議における総理の経済の認識についてのお考えをだんだん承ってまいりますと、集約すればこういうふうに言われておる。不況は一時的なものであり、しかも今日の不況を来たしたのは金融の引き締めによるものだと、こう述べられておるのであります。この点に対する認識は、私の認識とも異なりまするし、いま一般的に言われておる認識とも違っておると思います。もし総理のおっしゃるように、不況が一時的なものであり、金融の引き締めによって起きたものであるならば、すでに三次にわたる公定歩合の引き下げがあった、あるいは準備率の引き下げないしは窓口規制をとっぱらう等の量的拡大もやっておる段階において、何らか不況から景気好転へのきざしが見えなくてはならぬと思いまするけれども、しかしいろいろな指標を見ましても、不況の色は濃くなるばかりであります。中小企業の倒産、破産もさらに増加をいたしております。そういう現状から考えてみると、政府の現状認識には非常な甘さがあるんじゃないかということを、私は強く感ずるのであります。いま一度総理の経済の現状に対する御認識をはっきりと承りたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは、辻原さんの言われるとおり、対策を立てます場合に、現状を正確に把握し、そうしてそれに対する対策を立てる、これは当然のことでございます。ただいままで申し上げました、その部分的な問題について御批判をいただいておりますが、それは、一つは一時的なものだという、あるいは金融引き締めからきたものだ、こういうことを言ったという点であります。この一時的ということば自身が非常に短期間なものであるといいますか、あるいはいわゆる経済が変調を来たした、こういう見方が一つあるんじゃないか。これは時期的な表現は適当じゃなくて、経済そのものは安定成長に順次返ってくる。高度経済成長をやったものが順次安定成長へいく。その間にかもし出すところの不況、これがまあひずみの是正その他不調和からきておる。これが一つの問題であります。こういう事態を長く置くことは、これは困ることでございますので、政治家といたしましては、当然こういう異常事態を、これは非常に短期的なものだ、かようにも見たい、また、そういうようにもしたい、こういうような表現から一時的ということを申したと思います。しかしながら、一時的と申しましても、もうすでに一昨年来の問題でございますから、この一時的は非常に長いじゃないか、こういうことは一時的とは言わない、かようにきめつけられれば、それはまたさようでございますかと言わざるを得ないのですが、とにかく非常に長い状態が続いてきておる。  もう一つは、直接の原因は引き締め、これは、もう過去の経済不況等におきまして私どもが経験した直接の原因は金融引き締めだ。だれに言わしてもそういうことを言うだろうと思いますが、今回の経済情勢が違っておりまするのは、この金融引き締めをせざるを得ないような非常な過熱状態があった。したがって金融引き締めをやったんで、金融引き締めが悪いわけじゃないんだ。しかし、経済自身が不調和であり、それぞれの業界の間にいわゆるひずみというようなものを起こしておる。そういう際に金融引き締めをいたしました結果が不況を招来している。だからこそ、しばしば言われますように、金融引き締めが直接の問題だが、これは高度経済成長、その活動のもとにおけるいろいろな要因とこれが結びついて一そう事態を複雑にしている、かような説明をいたしておるのでありまして、これをそのうちの一、二をとって批判されますと、御批判のように、いかにも甘さがあるように考えられるかわかりません。しかし、経済自体は非常に長い苦しい状態でありますし、またこの状態は非常に複雑多岐につながるものでございますから、いわゆる簡単なものではない。こういう点を辻原さんが御指摘になるなら、私もさような認識をとっておるわけであります。ただ問題は、どういう点が非常にきめ手になるのか、こういうお尋ねをしばしば聞きますが、きめ手はなかなかないんだということをいままで言っております。しかし、しいて申すならば、その原動力が金融にあるのだから、金融だけは少なくともわれわれが手を打ち得る。現実にはっきりそういう状態をつくり得るから、これだけは先に進めてやってみる、こういう意味で今日の対策を立てたのでございます。その他の総合的な対策、これが必要なことは申すまでもないのでありまして、そういう意味で今日不況対策を進めておる、かように御了承をいただきたいと思います。
  55. 辻原弘市

    辻原委員 総理は池田内閣の当時、池田さんのおやりなすっておられたいわゆる高度成長という、この生産中心主義の政策には反対をしてこられた、批判をしてこられた。また大蔵大臣も、藤山さんもそうであったと私は記憶をいたしますが、そうしてそれらの政策に対して批判をし、新たに佐藤内閣が発足をして今後の経済政策をとるについては、高度成長ではなくて安定成長だ、こう言われておる。そこで私がわからないのは、高度成長を批判されるならば、高度成長をとらないという限り、先ほど総理がるる述べられましたけれども、単に金融の操作によって起きているいろいろな問題を取り上げられるとか、あるいは景気、不景気の一時的な問題を取り上げられるとかということは、どうもその政策に徴して考えてみた場合に、本質をつかんでいないということを指摘している。高度成長を批判する限り、その中に生まれた構造的なものがその遠因であり、また原因であることは、これは疑うべきもない事実なのである。そのことをはっきり踏まえて今後の政策、対策を立てなければ、総理が本会議等で言われたことは非常に誤解を招くと私は言っているのです。  そこで伺いたいのは、とするならば、一体その安定成長というのは、この間そのことについて断片的な総理答弁がありましたが、たとえば、それを拾い上げてみると、安定成長というのは、低成長の意味ではございません。安定的な成長を言っておりますと総理はおっしゃった。それでもわからないのです。そこで私はこの機会に、総理が、また佐藤内閣がおっしゃっておる安定成長というのは、一体どの程度の成長率を中心とし、経済がどういう状態になることを意味しておるのか、その具体的イメージ、具体的構想というものをはっきり、ことばではなくて、示していただきたいと思うのであります。  総理からひとつお願いをいたします。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま辻原さんがお尋ねのごとく、経済はやはりイメージを与えなければいけません。私は、そういう意味で長期経済計画、経済のあり方というものについて、これが私が申しておりますような安定成長という考え方でございます。しかし当面する問題、これも私どもがほうっておいてはいけない。大事なことは、現在の事態をちゃんと克服していくことであります。これがただいま申す不況対策であり、そうしてこの不況を克服した暁におきまして、私どもはまじめにそれに取り組んでいく、この安定成長への道を歩んでいく、こういうことであろうと思います。だから、問題を二つ分けてごらん願いたい。しばしばこのことを申し上げておりますけれども、いままでは時間等も不十分でありますし、なかなか意を尽くさない点があったように思います。ただいま申し上げるように、当面する問題を克服して、そうして経済のあるべき姿の方向へこれを持っていくのだ、かようなことを考えておるわけであります。  この成長率等の問題になってくれば、これは大蔵大臣にひとつ伺っていただいて、大蔵大臣の説明をお聞き取りいただきたいと思います。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私どもが申し上げております安定成長、これは毎年の経済の成長が均衡的に発展をする、つまり経済の谷と山、これがなるべくないようにする成長、そういうことを考えながら経済政策を進める、こういう点であります。申すまでもありませんが、あまり経済が走り過ぎますと、国際収支、物価に摩擦現象がすぐあらわれてくるわけであります。さらに谷と山が高い、つまり成長のあとには引き締めがあり、引き締めのあとには刺激政策あり、その循環過程におきましては、国民経済上のロスが非常に多いのであります。またそういう過程を通じまして、いろいろな意味における不均衡というものが出てくるわけであります。さような不均衡というものをなくすということも考えなければならぬ。根本的に安定成長といえば、まず基本的には国際収支と物価の安定を軸とし、さらに経済的、社会的に生ずることのあるべき不均衡を極力最小限に食いとめるということを中心として施策を運営するということであります。その際における成長率は、したがいまして非常な行き過ぎでもなく、また非常な落ち込みでもないのであります。いままで、そういう路線におきましての適正なる成長率は幾らであるというような議論がありましたが、大体においてまあ七%ないし八%だ。これも諸外国に比べますると非常に高い成長ではありまするが、しかしわが国がこの数年来とってきた成長率に比べますと、若干低目になるわけであります。それらの具体的な問題につきましては、いま総理が申されましたように、当面の不況を克服した後の落ちつき状態を見まして、中期経済計画の再検討ともからめてきめらるべき問題である、かように御了承願いたいのであります。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、あとでお尋ねをいたしますが、当面のいわゆる景気刺激対策というものは、これは安定成長の、あなた方の基本とされている政策とは別のものである、こういうふうに理解をしなくちゃならぬと思いますが、そのように理解をしてよろしいか。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のとおり、安定成長へ行く前に、前の経済の引き続きの問題があるわけであります。この問題を処理した後でないと、安定成長への道が開かれない。安定成長と当面しておる問題とは、つながりはもちろんありまするけれども、別の問題であるというふうに理解してもよろしゅうございます。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 この点は今後の経済を考える場合重要なポイントでありますから、違うという意味において理解をしておきたいと思います。  いま大蔵大臣から述べられました安定成長、いわゆる将来の本格的な安定成長の施策というものについて、成長率等の一端をお話しになったのでありますが、そこで疑問になるのは、それじゃ一体、本年の通常国会において私どもが真剣に議論をいたしました中期経済計画というものは、これはいま言いました本格的な安定成長の路線であるのかないのかということであります。もともとこれは池田内閣当時検討され、企画されたものであって、その間の経緯を仄聞すると、どうも佐藤総理はお気に召さぬようでありますが、この中期経済計画というものによると、成長率はたしか八、一%になっておったと思います。とするならば、どうもニュアンスが、佐藤内閣、あなた方がお考えになっておる今後の安定成長政策というものは、中期経済計画とはほとんど結びつきがないように思うのでありますが、ざっくばらんに言ってこれはどうなんでしょう。これは一ぺん総理から御所見を聞きたいと思います、あなたがこの前の通常国会でだいぶやっているのですから。藤山さんじゃスターが違うのです。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いま御質問のございました安定成長という問題につきましては、御承知のように、安定成長に今日の事態ではすぐ乗せていくわけには私はいかない。やはり今日の不況対策をやりまして、そうして大蔵大臣の言われましたように、ある程度民間事業の浮揚力、事業力を上げまして、そうして、その線の上で安定成長の路線に乗せていかなければならぬと思います。安定成長は、むろん今日までの所得倍増計画において起こりました種々のゆがみ、ひずみというようなものがないような成長が望ましいことであって、それが安定成長だ。したがって、パーセンテージだけで私は議論をすることは間違う場合が非常に多いんじゃないか。国際経済の中にあります日本経済でございます。日本の今後の発展の過程において、何%がいいかということを今日申し上げることは非常に困難だと思います。しかし、御承知のとおり、高度成長によるひずみやゆがみ、あるいはその陰に隠れてその恩恵に浴さないというようなことのないような、並行した成長をできるだけ遂げるようにしていくこと自体が私は安定成長だと思います。それによって初めて安定成長の道に入っていけるのでございまして、したがって今回の応急対策につきましても、浮揚力を上げるという場合にわれわれがとりましたものは、住宅であるとか、道路であるとか、あるいは輸送設備であるとか、そういうような今日、日本の産業、経済の大きさに比べて、何と申しますか、非常に割合の低いものに対して十分な力を入れて、そうして景気浮揚力の一端にしようということを考えておるわけであります。したがって、そういう面から申しまして、今日とっております政策自体が、将来の安定成長に害をなすということはない。ただ問題は、ある程度景気が浮揚いたしましたときに、そのままの勢いでもって、何か景気を浮揚する勢いに乗って再び高度成長のような形で一部の産業だけが伸びていくというような点については、われわれそのときに十分考えまして、そうしてそれを押えながら低生産性部門の中小企業を伸ばしていく、そのほうに政府としては力を入れていく、こういうような問題に進んでまいらなければ、安定成長の路線には乗らぬと思います。また道路とか港湾とか、日本産業の規模に対する輸送力のバランスのとれた問題にも持っていかなければならぬと思う。そういう意味におきましてわれわれは今日努力をいたしております。中期経済計画は、御承知のとおり、高度成長がある程度変更を要するというような立場に立ちまして中期経済計画が策定されたものだと私は思います。したがって、中期経済計画自身をつくったときの考え方というのは、高度成長政策よりも、これからはできるだけ安定成長の路線に乗せていこうじゃないかという気持ちが働いておりますけれども、しかし、それではあのままの形で、現状をすぐに中期経済計画を指針にしていけるかどうかということには問題があると思います。したがって、これらの問題につきましては、民間に浮揚力ができて、一応今日の状況を脱却いたしましたときにわれわれはさらに再検討をいたして、そうして今後の真の安定成長の路線に乗せていきますような計画策定をいたしたい、こういうふうに私ども考えておるのでございます。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 安定成長というものの概論は、いままで新聞紙上等を通じ、私どもは概論的には承知をしておる。しかし問題は、それを経済的にとらえてみた場合に一体どういう姿になるのか、またそのプロセスはどうなんだ。特に素朴な国民が聞きたいのは、佐藤さんは、佐藤内閣はそうおっしゃってくれておるが、はたしてその状態がいつくるのかということが聞きたいところであります。いまだんだんの藤山さんのお話を承っておると、別に目新しいことではない。それ自体が経済の正常の本来の姿である。本来の姿をやろうということだけであって、何ら特別な政策ではない。ただ私がここで言いたいのは、たしかにお説のごとく、中期経済計画は今日においてもはや現状にそぐいません。どの角度からそれぞれの問題点をつかまえてみましても、現状にそぐわない。しかし、これをおきめになったのは本年の一月である。ようやくまだ半年たつかたたぬかであります。その時期に、これは単なる短期計画ではない、長期計画、国の基本となる経済政策の長期計画が半年やそこいらで、もっと極端にいうならば出発当時から現状と食い違っておるのをそのままにして、これを長期計画などというその神経が私は問題だと思うのです。そういうことならば、何も麗々しく長期計画なんというものを立てる必要はないですよ。しかし変えるならば、はっきり現状に合うように、まただれが見ても納得ができるように改むべきであります。改めて、そして、少なくともあなた方がおっしゃっておる安定成長のめどはここに置くのだということを、国民に明示すべきだと思うのです。むずかしい問題ですが、私は総理なり大蔵大臣なり藤山さんなりに、一体いまお述べになった安定成長はめどをどこに置かれておるのか。私はいま短期的な対策を伺っておるのではない。高度成長という過剰生産がもたらしたひん曲がった政策から、長い間国民は、端的にいうと、悪いことばだけれどもだまされてきた。前前回の総選挙に私自身も経験がある。池田さんが所得倍増をやった。おかげでたいへんにわれわれ自身苦戦をいたしました。国民は所得が倍になるのかと思った。ところが実際はそうじゃなくて、生産過剰、生産倍増だ。そのことを私ども指摘をしたけれども、当時の国民はなかなかそれを理解できなかった。今日になって驚いておるのだけれども、あとの祭り。そういうはめに国民を追い込んではいけないということでありまするから、したがって、いまあなた方が示しておるものについて、はっきりとしためどを国民に与える必要がある。一体そのめどをいつに置かれておるか、ひとつはっきり承りたいと思います。これは政治論ですね、藤山さん。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いま御説明申し上げましたように、景気が回復した、浮揚力がついてきたという時期には、安定成長に乗せませんと、いまのような景気が回復したのに刺激的なことだけをやってまいるわけにはまいらないと思います。それは、むろん先ほど申したように、いまの刺激的政策というものは、必ずしも安定成長に乗らないような問題ばかりをやっておるわけではなくて、住宅問題その他やっておりますからそうでございますけれども、しかしそのままで伸びていってはいかぬ。しかも、そういうような勢いでいきましたときに、たとえば、今日非常に大きな企業におきましては設備拡張をして、そして操業率が非常に悪い。これは、これ以上設備拡張をしないでも、操業率を一〇〇%にあげることによってできる。しかし中小企業のほうは、そういう際に手をかしてもっと近代化、合理化をやって、そして内容を充実していくということに持っていかなければならぬと思います。  資本構成の問題においても私は同じことが言えるので、今日のように他人資本を非常に多く借りて、そうして自己資本が減少しているという状態は、これはある程度直してまいらなければならぬのじゃないかと思います。また先ほども申しましたように、今日の産業活動が非常に活発でございまして、国民総生産がこれだけ多くなっているにかかわらず、輸送手段というものはこれに伴っておりません。したがってその輸送コスト高というようなことがいろいろな意味で影響を与えて隘路となっております。それが物価問題にも、あらゆる問題にも影響を与えてきておるのでございまま。したがって、そういう面に、ことに公共投資の面等については、政府が力を入れていかなければならぬ。また、労働力の移動問題を考えてみましても、住宅問題というのが非常に大きなネックになっていることは、御承知のとおりだと思います。したがって、住宅を十分につくって、そういう意味での――むろん職業訓練その他も並行してやらなければなりませんけれども、中小企業がかりに過去のように求人難の場合に、もし中小企業自身が、大企業と同じように、自分たちの雇用しておる者の住宅を共同で、あるいは単独ということもむずかしいでしょうが、共同でつくるようなことが政府の助成によってできておりますれば、そういう労働力移動というものも解消していくと思います。したがって、そういうような面をやって、バランスのとれた経済のあり方の上に乗って成長をしていく。それで、その場合の成長というものは、国際経済の関係もございますし、何%が低い、何%が高いということでなくて、その状況が並行してまいりますれば、高い場合でも私は影響はない、むしろ低い場合よりは高い場合のほうが好ましい、そういうふうに考えております。
  64. 辻原弘市

    辻原委員 方法論を承っておるのじゃなくて、時期を聞いておるのであります。総理お答えを願いたいと思います。言うだけのことならばだれだって言えるのです。私だって、いま藤山さんのおっしゃったようなことなら言えますよ。しかし問題は、政府が行政の責任を持っている以上、少なくとも政治の姿勢として、少なくともこの時期には安定成長のめどをつけたい。これが政治なんですよ。佐藤さん、それを承っているのです。エコノミストを承っておるのじゃない。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは理論じゃない、政治だというお尋ねですが、ここではっきり言えることは、私がどうしたい、政治をどこへ持っていきたいということは言えるのです。私はこういうような状態を早く克服したい、だから、できるだけただいまあらゆる手を尽くしておりますが、来年にもなれば、これは安定成長への道が開けるのじゃないか、かように思いますけれども、これは私のいまの気持ちなんです。こういうように持っていきたい。ただいまの不況、あるいは萎縮、こういうものがあまりにもひどいですから、その効果がただいまあがるということをここではっきり申し上げることは非常に困難です。しかし、これをこれより以上続けるということは、国民としても非常にたいへんだ、かように思いますし、政治家としても、それこそ政治不在だという御批判を受けるだろう、かように思います。来年になればただいま申すようなめどをつけたい。これは私のただいまの政治家としての気持ち、これを率直に申しまして、あるいはお尋ねに対する答えとしては不適当かもわかりませんが、私は政治家として何を考えているかといえば、ただいま申し上げたように、来年度になればその目鼻をつけたい、こういう気持ちでおります。
  66. 辻原弘市

    辻原委員 総理なり藤山さんの御所見を承っておりますると、これはいわゆる計画的な一つのめどを持っておられるのではなくて、政府としての一つの希望を、そういう方向に持っておる。それともう一つは、さっきの藤山さんの御意見を承ってまいりますれば、どの一つだって容易ならざる問題であります。そうすれば、これはちょっとやそっとで見通し、解決のつく問題ではなくて、この佐藤内閣がお考えになっておる安定成長というのは、実際に実を結ぶというのは相当長期間を要する。まかり間違えば、こう申しちゃ失礼でありますが、佐藤さんがはたしてそれまでおられるかどうか、ちょっと私も疑問に思ってまいりました。それほどいまのお話では、かなりはるかかなたの話のように聞いたのであります。しかし、それ以上めどをつけようということは無理かもしれません。  そこで、それじゃもう少し短い話をお聞きいたしますが、政府がいまとられようとしておる当面の景気刺激対策のめどは、これこそいつに置かれておるのでありますか。いつごろそのいわゆる景気回復のきざしが見えると判断されておるのか。これは相当慎重にお答えを願いたい。本会議でも指摘されましたが、いままで私は、総理なり、あるいは前の田中大蔵大臣なり、いろいろな方々の発言をずっと拾ってみたのです。おそらく百鬼夜行ということばは当たりませんけれども、全く八幡のやぶですよ。実際どちらにめどを置いておるのか。ある場合には夏ごろだ、ある場合においては秋だ、まあいろいろの説が行なわれておって当たったためしがない。天気予報よりまだ当たりません。それだからひとつ、せっかくかなり思い切って景気対策ということを出しているのでありますから、そこで、一体この景気刺激対策はいつをめどにおやりになるのか。そして、さっきからあなた方がお述べになるように、それが終わって本格的安定成長にさしかかるのは少なくともいつごろのめどか、これくらいは明らかにできるでしょう。大蔵大臣その点をひとつ……。
  67. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん今日の不況を一日も早く安定成長の線に乗せなきゃならぬ。したがって、先般来政府が種々の施策を行ないました。その目標としては、むろんその一つ一つの問題については、その効果は若干遅速がございます。すぐ出てくるものもあれば、二、三カ月たたなければ出てこないものもある。しかし、私どもとしては、ことしの暮れをめどにして、そうして今日のような状況を脱却したい、こういうめどでもってやっております。したがって、それを脱却すれば、安定成長の線に乗せていく道が開かれていく、こういうことになろうと思います。安定成長に乗りましてから、いま申し上げましたようないろいろな安定成長の道をつけていくのには若干時間がかかることは、いろいろな問題が複雑にございますから、それらのものをひとつ解決していかなければならぬ、若干なんですけれども、筋道は、そこで乗せていきたい、こういうのがいまの目標であります。
  68. 辻原弘市

    辻原委員 いま藤山さんがお話しになりました説によると、当面の景気刺激対策のめどはこの暮れである、こうおっしゃったわけであります。もちろん算術じゃありませんから、暮れじゃ、来年の春じゃというような議論はいたしませんが、しかし、発表せられております当面の景気刺激対策を見ますると、どうもいまの説にも疑問があります。しかし、こまかい議論が時間的関係でできませんから、これは後刻に譲るといたしまして、ともかく政府の景気刺激対策のめどはこの秋につける。したがって、その観点から考えると、明年は、先ほどおっしゃった経済安定の本格的な基調に乗せた対策をやりたい、こういうふうに理解ができる。大蔵大臣、いまの藤山説に間違いありませんな。
  69. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 企画庁長官のおっしゃったとおりであります。
  70. 辻原弘市

    辻原委員 そこで私は、一応当面の景気刺激対策は次の問題として、その基本的な安定成長を考える場合、もちろんこれは当面の景気刺激対策の中でも重要な問題でありますが、経済の安定とは何ぞやということについて、これは大蔵大臣でありましたか、先ほど、国際収支と物価の安定であると述べられましたが、私は最近の経済の実態から考えまして、もう一つある。それは雇用の安定。経済の安定を考える場合に、これは経済学的にしようとしても重要なファクターであろうと思うし、現実政治上においてもこの問題はないがしろにできない。ところが、いみじくも大蔵大臣は、私はことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、経済の安定は国際収支と物価にウエートを置いておられる。これも否定はいたしません。しかしどうもニュアンスは、この雇用の安定、また実際には物価の安定を軽視されておるのじゃなかろうかという疑問を持つのであります。それは何ゆえかというと、高度成長下において、池田さんも、口では物価の安定は政府の重要な施策だということをしばしば強調されてきたが、何十項目の物価対策を出しても何ら効果があがらなかったし、ある場合には、高度成長下だから物価が上がってもいいんだという議論までもされた。ところが現実には、そのことによって今日日本の経済は、直接に国民がたいへんなインフレ下で迷惑をしておるということ以外に、この物価の高騰、いわゆるCPIの高騰というものが現実に経済を混乱させておるでしょう。そのことを考えました場合に、私はもっと重視すべきだと思う。もっと真剣に取り組むべきだと思う。特に雇用の安定の問題については、これはこの際政府からはっきり承っておかなければならぬと思いますが、ことしの就職状況を見ましても、いわゆる大学浪人の名がすでに出かかってきている。企業では採用を差し控えてきておる。漸次雇用の不安定の傾向が広まりつつあるのであります。また経済界では、この間私は何かで見たのでありますが、たしか経団連だったと思うが、すでに三十万人の首切りを豪語しておる。言うなれば不況ということをにしきの御旗にして、また不況のラッパを吹き鳴らすことにより、景気対策が必要だということを強調することによって、いわゆる企業の体質の改善に名をかりて、しわを雇用の問題や賃金に向けようとしている傾向が漸次深まっているというこの事実は見のがしにできないと思います。この点について、一体経済の安定には、私たちの観念によれば何としても雇用の安定が必要である。何としても物価の安定が必要である。しかし、いまあなた方が、長期短期取りまぜておやりになろうとしているこの経済政策の中で、そういった、いま私が述べたような現実をとらまえられて対策をおやりになっておられるかどうか。一体企業の体質改善がそういうところにしわを寄せてよいものかどうか。日経連では前田専務理事が、この秋は賃金はくぎづけだと言っておる。そういうことをそのまま是認されてよいものか、これは決してそうではないと思います。現にそうでしょう。あなたがいまお立てになっておる当面の景気刺激対策の柱というものを見れば、有効需要の喚起だといっておる。有効需要を喚起する必要に迫られているときに、一方においては首切りじゃ、賃金ストップじゃ、これでどうして有効需要が喚起できたり、健全な大衆の消費ができるのですか。そこに私は非常に問題の矛盾した点が今日あらわれてきていると思います。その点について、政府ははっきりしたお考えと対策をお持ちになっておられるかどうか、これを承っておきたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど安定成長ということにつきまして、企画庁長官からも大蔵大臣からもお答えしたと思います。これはいろいろな問題がございます。ただいま辻原君の言われる物価の問題も、あるいは雇用の問題ももちろんこの安定成長の中には入っていくわけであります。問題は、経済自身の調和をとること、そして経済自身が谷部門とも調和がとれて安定していく、そしてこれが成長していく、同時にそれで国民生活も安定する、こういうところにつながるのがいわゆる安定成長のねらいであります。したがいまして、ただいま申すような物価の問題、あるいは雇用の問題、これを十分考えないわけではありません。ただ問題は、その安定成長そのものはよくわかる、またそういう方向であらゆる努力をしている、これもわかりますが、ただいまの不況を克服する段階におきまして、しばしばいろいろな議論が出てきている。ここに政治が当面するむずかしい問題があるのではないかと思います。私は、今日この当面する不況克服、そのために安定成長とときにはぶつかるような問題があるだろう。これは、たとえば金利自身も、安定成長のもとにおいては金利が平準化すると申しますか、あるいは金利自身の安定というか、これが大事なことだと思いますが、特に金利を安くしなければならないというような人為的に対策を立てていく。これは安定成長から見て金利がゆがめられた状況ではないか、こういうような非難を受けるだろうと思いますが、しかし、これも一時的な現象としては、ある程度やむを得ないかしらないけれども、しかし安定成長をそこなわないように、そういう範囲においてのある程度のぶっつかりはやむを得ないんだ、かようなことを実は申しておるわけであります。  ただいま有効需要を喚起する、こういう意味で、それではどんどん給料を上げて、そうして労働者の有効需要をふやすことができるのか、こう言うと、これはそう簡単な議論にはまいらない。しかし片一方で整理をして、そうして国民生活を破壊するようなことで経済の不況克服ということは、どこをさがしたってないわけです。だから、これは一部で間違ったことだと思います。しかし、こういうような時期になったときに、賃金自身が、いわゆる賃金平準化だというような議論がどこにも通用するのかどうか、これはやはり組合側においても考えていただきたいと私は思います。と申しますのは、いわゆる平準化は、それこそは一つのわれわれが考えていく方向ではありますけれども現実にもうからない会社まで賃金を上げなければならぬということは、これは許されることではない。こういうところでは、やっぱりしんぼうしてもらいたい。だから、これをもうかるようにしようじゃないか、そうして給料も上げ得るようにしようじゃないかというのが、ただいまの不況克服の、われわれが取り組んでおる問題なんです。私どもが、最初から賃金を上げないことによって、これで景気が直るんだ、かようなことを考えておるわけじゃありません。経営の合理化を皆さん方にもお願いしておる。そういう意味においては、組合側においても十分協力していただきたい、こういう点を申し上げておる。だから、現状のいわゆる不況対策、それにとっていろいろ考えていきたいことと、それから安定成長の問題とはやっぱり二つに分けていただく。そうして不況克服、そのために払う努力が将来の安定成長への道をふさぐようなことがあっては、これは幾ら不況克服の道だといっても、この方法は私どもが賛成しない。こういうことがあってはならない。だから、安定成長の道をふさがないように、安定成長への道をたどる際にじゃまにならないような方法で経済の今日の不況を克服していこう、こういことでございますから、どうかただいまの問題について、あるいは行政整理、あるいは機構改革、あるいは首切り、あるいは賃金ストップ等々のいろいろな話があるだろうが、政府はそういうものに簡単に同調はしないという、そういう意味でまた社会党の方もわれわれを監視していただきたい、かように私は思います。お願いします。
  72. 辻原弘市

    辻原委員 総理現実に起きておる、起きかけようとしている問題について、私とほぼ同意見であるという見解を示されましたので、それ以上この問題については申しませんけれども、私が特に心配をしておるのは、政府が出した当面の景気刺激対策というものを、いち早く経済界、産業界は大いにこれを歓迎しております。どうもその歓迎しておる考え方をみると、経済界が要請しておる方向に政府の経済策、当面の景気刺激対策を引っぱっていこう、そういう考え方があるんじゃなかろうか。これは、いままでしばしば行なわれた経済政策を考えてみると、どうも保守党がおやりになる経済政策というものは、常に経済界のラッパによって動かされているような、そういう傾向がありました。また国民は物価が上がるということに一番苦しんでおる。今回の景気刺激、ある面においては大いにけっこうだが、また物価が上がるのじゃなかろうか、せっかく景気刺激でたくさんのお金を出そうと政府がするやつを、国民が、はたして自分のところにそれが返ってくるだろうか、企業の体質改善のために、経済界でいっておる不急不用の設備を買い上げるために公債や資金が出されるのではなかろうか、こういう危倶を国民は持っておると思います。したがって私は、経済政策がそういう形に断じてひん曲げられてはならないということを強調いたしておきたいと思いまするし、しかも、いま総理が賃金の問題についてお述べになりましたが、私は今日の事態においても、不況だから賃金を上げないという理屈を経済界がもしおとりになるとするならば、それは大きな誤りである。それこそあなた方の経済政策に逆行するものだということを申し上げておきたいし、しかもいままで企業は、資本費その他の比率が悪い、あるいは利益率が非常に少ない等々泣き言を並べてきましたけれども、実際に結果を振り返ってみると、数字上はそうあらわれていない。諸外国、先進諸国に比しまして、付加価値の分配率なんというものは、私は時間がありませんから逐一申し上げるわけにはいかぬけれども、しかしアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、こういう先進諸国に比べて、これは全部数字がありますけれども、従来の労働者の賃金というものは、産業界が得た利潤に比較して非常に少ない。しかも、日本の消費水準は高まったというけれども、数字から見れば、日本の消費水準は、全生産の中においてはその比率は下がっておる、こういうことをあなた方は十分にお考えをいただきたいと思うのであります。したがって、今日不況だからといって賃金をくぎづけにしたり、あるいは引き下げたりする理由は何らないのであります。この点を十分ひとつお考えをいただいておきたいと思います。  そこで、私は次の問題について伺いますが、先ほどの御意見によると、高度成長に対して安定成長で、それは諸般にひずみのない政策だ、こういうようにおっしゃった。ところが当面の景気刺激対策及び今後の長期対策の中でいまおとりになろうとしておるあなた方の政策を総論すると、これは従来の健全均衡財政というわが国の財政法に基づく方針とは大きな懸隔があり、方向転換である、今後おとりになろうという政策は、健全財政の方針をくずす、こういうふうに理解をしてよろしいか。時間がないので簡単に願いたいと思います。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 通常の財源をもちまして歳出をまかなうという意味の均衡方針は、これを再検討しなければならぬ、こう考えています。しかし、だからといって健全財政方針は、これはあくまでも堅持する、かような考えであります。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 世の中には、いろんなものの言い方がありますが、私どもの健全財政というものの理解のしかたは、それは財政法に示すように、歳入というものは健全なものによってまかなう、すなわち税収を中心としてやるのであって、赤字についてそれをカバーするがごとき借り入れ金、公債等は、これに財源として用いないというのが健全財政の通論ではなかったかと思うのであります。その意味において考えてみた場合に、いまあなたが言われた健全財政というものに、どうも今日までのわが国において通用しておった健全財政論には受け取られない議論である、私はこう思います。しかし、あなたが言われた新たなる健全財政論というものは、承っておきましょう。ここでは議論はいたしません。  そこで、当面の景気刺激対策でありますが、時間がこういうふうになくなってまいりましたので、細部の点はいずれまたこれはそれぞれの委員会なりで議論をすることにいたします。一つお聞きしておきたい。それは当面でありまするから、主として本年度の問題である。まあいろいろな、繰り上げ使用であるとか、財政投融資の投下であるとか出されておりますが、問題の大きな点は、本年度の財源不足は明らかである。補正に要する新たな要因というものも、いま政府の予定されている以上のものが私はあると思う。まあ金額的に大ざっぱに言うならば、財源不足及び補正要因を加えると四千億になんなんとするのじゃないかと思いますが、そうすると、本年度の財政運用はどうするかということであります。新聞の情報、あるいはこの間からのいろいろの御答弁等によりますると、いろんな説が言われておりまするが、はっきりしない。そこで、私は明確にお尋ねをいたしたい。一体、本年度の歳入欠陥及び補正要因についての財源を何に求められるのか。一つは借り入れ金があるでしょう。その際、イソベントリーを取りくずされるのかどうか。それと、きょうの新聞に出ておるように、はっきり赤字公債を出してまかなわれるのか、そのいずれによるのかを明らかにしていただきたい。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本年度相当多額の歳入欠陥、財源の不足が出ることが予想されるのはお話のとおりであります。それに対しまして、まあ通常財源についてあれやこれやといろいろ検討はしておりますが、なかなかそれで追っつきそうな状況でもないのであります。私は、これはこういう経済が異常な落ち込みの際に起きたまあきわめてまれな臨時的な現象である、さような臨時的な現象に対処するためには、いずれ政府では借金をしなければならぬか、こういうふうに考えるのです。その形が公債というような形になりますか、あるいは短期借り入れ金というような形になりますか、これは今後慎重に検討してみたい、こういうふうに考えておりす。いずれにいたしましても、しかしこういう経済の非常な落ち込みの際でありますので、そういう臨時措置的な措置をとりましても、これはまあインフレというようなものには重大な影響はない、かように確信をいたしております。
  76. 辻原弘市

    辻原委員 どうもはっきりいたしませんが、いずれ近いうちにということでありますが、これは本年度の問題でありますから、いずれ近いうちにといってもおのずから時期が限定される。いつ政府は態度をきめられますか。  それともう一つ、いまのあなたが言われた、いずれ借りなければならぬ、あるいはそれを公債という形において借り入れをするか、どちらかの方法だ、こう言っておるのだが、いずれにもせよ、私は現行の財政法の趣旨からいって、それは競合するものだと思います。ぶつかるものだと思います。当然財政法の改正を行なわなければなりませんが、財政法の改正も行なうのですか。めどはいつにするのか。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 借り入れ金にいたしますか、公債にいたしますか、それらはもう少し検討した上結論を出す、こういうふうな考えであります。  それから、財政法とぶつかるか、こういうお話でありますが、技術的に財政法の規定を避けようというふうに考えますれば、そういうこともできないことはございません。しかし、精神、趣旨からいいますと、今回私どもがとろうという措置は、ただいまの現行法のたてまえとはやや違う趣旨になる、かように御承知願います。
  78. 辻原弘市

    辻原委員 いまのお話から考えますと、それは単なる財政法の範囲で許されている公共事業等の公債あるいは借り入れ、そういうものを意味するのじゃなくて、当然赤字を補てんするためのものであるから、財政法の趣旨とは相反してくる、したがって、その改正も考えなければならない、こういうことになりますね。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういうような御趣旨で考えなければならぬかなあと、ただいま考えておる次第でございます。
  80. 辻原弘市

    辻原委員 比較的歯切れのいい福田さんにしてはいささか歯切れが悪い。しかし、まあ現実の問題としてあなた方の考え方は大体わかりました。しかし、私がお尋ねをしないことまで福田さんはおっしゃっておるのであります。インフレにならない。私はまだインフレになりますかと尋ねておりません。しかし、あなたがおっしゃったので、ならないというのじゃなくて、こうだからならないということを示していただきたい。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま経済が非常に沈んでおるわけであります。経済の状況を見ますと、大体今日まで、本年度に入りましてから横ばいのような情勢であります。そういうような情勢でありますので、ただいま財政投融資あるいは財政の繰り上げ、そういうようなものをいたしまして、景気をつけるために腐心をいたしておるという状態であります。そういうような状態下におきまして、私は借り入れ金、または公債の発行をする、そういう際に、何がしかが日銀にしりがいくという場合があり得ると思うのであります。しかし、経済がそういうふうな非常に低迷しておる状態におきましては、追加信用が若干出ましても、これはインフレにつながるおそれはない、かように存じておる次第であります。
  82. 辻原弘市

    辻原委員 その議論を私どもはにわかに肯定するわけにはいきません。なぜならば、経済は長期にわたって続くものである。したがって、いまの現実をとらまえて、公債発行の方針に切りかえたからインフレにならないという議論は、いささか近視眼過ぎると思う。そういう議論を展開するならば、おそらく、戦時中にいわゆる臨時軍事費として発行した当初の公債の政策をとった財政政策も、私は初めからあんなインフレになると思って出したものではないと思う。しかし、結局歯どめを失った経済は、それがころがりころがって、ああいうインフレを招来した、こう見るのが正しいと思う。したがって、いまの現実で、こういう不況で、日銀券の増発もそうはない、インフレ要因はないから、いま公債発行に踏み切ってもそれはインフレになりませんぞという議論は、きわめて危険であると思います。だから、そこであなた方は公債発行をされようとするのだが、一体そういう点について歯どめをどういうふうに考えておられるのか。一つの歯どめは、日銀引き受けを絶対やりません、これは歯どめですね。だから、公債を発行する場合に、日銀引き受けによる赤字公債に主体を置かれるのか、ないしは歯どめを考えて、市中消化を中心にした従来の政保債と性格的に相似たような長期公債を発行されようとするのか、その構想をひとつ示していただきたい。特に歯どめを何にするのかということは、国民の聞きたいところであります。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまのお話を伺っておりますと、私どもは、この当面の不況対策、不況状態下におきまする異常な措置として発行なりあるいは借り入れなりいたします公債、それと、それからこの不況状態を乗り切った後におきまする財政のあり方といたしまして、やや恒久的に考えております公債発行の問題、これを区別してお考え願いたいのでありまして、私どもは日銀引き受けで長期にわたって公債を出すというようなことは毛頭考えておりません。先ほど私が申し上げましたのは、こういう異常の際だから、異常臨時の措置として今年度こういう考え方なんだということを申し上げておるわけであります。将来におきまする安定成長下におきまして政府考えております公債問題、これは、先ほどお話もありましたが、政府保証債的な考え方で、これは市中においてこれを消化するというたてまえのものであることを御了承願いたいと思います
  84. 辻原弘市

    辻原委員 いまのお話では、これは市中消化を中心にするのか、また日銀引き受けを重点に置いて発行するのか、どうもはっきりいたしません。しかし、公債発行については総理もしばしば所論を述べておられる。そこで、私はこの際総理から承っておきたいと思うのでありますが、ここに本年一月の速記録がある。この間本会議で、公債発行は何といっても経済政策の変転を来たす重要な柱なんだから、わが党佐々木委員長からもこれについての質問が行なわれました。それに対する総理答弁を私は自身当時耳に聞いたのですが、どうお答えになるかなと思って聞いておった。そうすると、あれは、中期経済計画ではそういっておりますというふうに答えたんだと言っております。(「違う」と呼ぶ者あり)違いますよ、それは。あなたが当時、二月五日に横路委員に答えられたのは――読み上げません、総理もそこに持っておられるようでありますから。二回にわたって明確に、あなたは四十三年まではやりませんと断言をされておる。それが半年たつやたたぬ間に、こういうふうに公債発行が既定の事実のように論議され、佐藤内閣の基本政策となったのは一体何事か、もう一度私は総理の御意見を承りたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、二月二日と二月五日に山花君と横路君と二人に答えたのでございます。本会議で私説明いたしましたように、このときの経過は私自身が非常によく知っておりますが、正直に答えますから、そのとおりひとつお聞き取りをいただきたいと思います。  私の隣に田中大蔵大臣が当時いたと思います。公債の質問を受けました際に私に耳打ちをいたしまして、中期経済計画ではこれは四十三年まではやらないとなっていますよ、こういうことを実は耳打ちされたのでありまして、当時の議論は、確かに中期経済計画が主体であった、かように思います。もともとこの公債の問題は、いずれにいたしましても重要な問題でありますので、経済界に及ぼす影響が非常に甚大だ。そこで私は慎重な答弁をしたい。しかし野党の方々も、これは重大であるからそんなものも見のがしにならない、こういうことで実は非常にことば足らずの説明をした。それがただいま問題になっております。やはり私考えますのに、経済の問題は、当時これは実情に応じて私どもが処置するという私ども考え方をもっと率直に申し上げることがよかったんじゃないだろうか、かように思っておりまして、きょうはもう三回おわびばかりしているような事態でございますが、どうもまことに残念でありますけれども、私は、この公債問題は、そういう意味でお二方に対しての答弁が逃げた答弁だったということだけ御了承いただきたいと思います。そうして事実はいかにするのかというと、最近の情勢等から私どもが判断をしていくべきだ、かように考えます。
  86. 青木正

    青木委員長 辻原君に申し上げますが、時間がまいっておりますので、結論をお願いいたします。
  87. 辻原弘市

    辻原委員 総理のいまの御答弁は、一面正直ではありまするけれども、私は総理大臣としてはまことに不見識なことをおっしゃっておると思います。まことに経済についても定見のなさを物語っていると思います。しかし、その当時は逃げ答弁をやったんだとこう正直におっしゃった点にめでて、私はそれ以上申し上げません。申し上げませんが、これは冗談ではなくて、われわれは、私のみならず国民全般は、総理大臣の発言というものについては金科玉条とは言いませんよ、金科玉条とは言いませんけれども、少なくとも国政の上では最高の権威あるものと受け取っておるのです。しかも、経済について重要な柱である問題についてはっきり時期を明示してやらぬと言った限り、それが半年やそこいらの間にまるっきり反対の、やる。そして尋ねられたならば、いやあれは逃げ答弁であったということはいかにも軽々過ぎるということだけを申し上げておきます。このことだけは、ひとつ総理は、少なくとも国政運用の上においてそういう軽率なことはおやりなさらないようにしていただきたいと思います。  時間を請求されておりますから、私は先を急ぎますが、景気刺激対策の中で一つ、これは大蔵大臣に、私は質問を詰めておりますから、あなたも答弁は簡明にしていただきたいと思うのだが、貿易が大事だということをおっしゃったが、その中で心配になる問題が一つある。それは、いま外貨保有はたしか十七億八千万ドルであったと思いますが、その中には、出資金等を除けば実質には十七億四千万ドルしかない。十七億ドル台です。かつてこれは池田さんのときに私どもずいぶん議論をしましたが、たしか当時の貿易規模は五十億ドル台ないし六十億ドルに満たなかった。その当時ですら、貿易に必要な外貨準備というものは二十億ないし二十一億ドルくらいが適当であろうと言われておった。ところが、現在八十億、九十億の規模になろうとしているときに、外貨保有は実質十七億ドルしかない。景気刺激対策は、これは当然長期的には輸入増を招く。その場合に外貨の流出が心配だ。そこに、貿易が比較的順調だというあなた方の見解が、やがてたいした遠くない事態に私は重要な赤信号を出すのじゃないかということをおそれておる。外貨保有について心配がないかどうか、そのことだけをひとつ明らかにしてもらいたい。
  88. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま外貨は二十億をちょっと切るような状態でありますが、ことしの貿易収支の見通しは非常に好調でありまして、貿易外収支の赤字をまかないましてなお相当の余りを生ずるという状態です。ただ、短期資本にせい、長期資本にせい、ただいま外国の市場が非常に梗塞しておりますので、資本収支がこれは赤字になるのじゃないか、こういうふうに見ておりますが、それにいたしましても、なお全体として国際収支は黒字基調である、かように考えておりますので、今後もその外資の点につきましては大いに努力をしなければならぬとは存じておりますが、いまの貿易の状態から見まして、この二十億足らずの外貨保有でいささかも心配はない、かような考えを持っております。
  89. 青木正

    青木委員長 辻原君、時間がまいっておりますので、簡単にお願いいたします。
  90. 辻原弘市

    辻原委員 総理伺いたいと思うのでありますが、数日前に通産大臣が、これからの有効需要を、あるいは生産過剰を解消する一つの方策として中国貿易の問題について触れられていると思いますが、その中で問題になっている吉田書簡については拘束されない、外務大臣もそれを肯定されたようであります。私は吉田書簡を云々するんじゃない。問題は、それによって停とんを来たしておる中国貿易を伸展させなければならぬと考えておる。その際に、それによってつぶれた輸銀の資金の活用ということについて、これは政府としては必要だとは認めつつも明確な態度を示しておらない。総理は、吉田書簡に拘束されないで自主的に政府がきめるとおっしゃるのでありますから、私は中国貿易の展望を考えてみれば、本年度はそのチャンスである、向こうも積極的に臨んできておる。資料はありまするけれども、時間の関係で省きますが、いまがチャンスである。そのときに私はプラントについての問題は解決すべきだと思うが、総理はそういう決断をお持ちになっておられるかどうか、これを承っておきたい。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は長くいろいろ議論された問題でございますが、事は外交に関する重大な問題でございます。政府は慎重にこの問題は検討しなければならない、かように私考えております。
  92. 青木正

    青木委員長 辻原君、時間がまいっております。
  93. 辻原弘市

    辻原委員 最後に私は外交の問題で一、二問だけ総理に、重要な問題でありますから、お尋ねをいたしたいと思います。  それはベトナム紛争の解決に対する政府の態度でありますが、話し合いによる平和解決ということを提唱されておるが、具体的に何らその方策というものを示しておられない。この点について、一体総理の言っておるのは、ただアメリカがそう言っているから言っているにすぎないのじゃないか、こういう受け取られ方が国民の間にあります。  そこで、私は具体的に伺いたいのでありまするが、先般三十一日であったか、外務委員会で椎名外務大臣が、一月にジョンソンと総理が会われた際に、総理はジョンソン大統領に対して、ジュネーブ協定の精神に基づいて話し合いをするのが筋だということを強調したのだとあなたはおっしゃっておられる。総理はそういうことを強調されたのですか。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣お答えしたというジョンソン大統領と私との話は、この二人だけの実は話でありまして、あまり外へ出していないはずでございます。外務大臣がただいま言われたというのはどういう感じだったのか、当時は、御承知のようにまだ爆撃が始まっていない、そのときに、どうも問題が爆発しそうな状況のもとにおきまして、私は二人だけで話した、かように思っております。この話を外務大臣は少し漏らしたかどうかと思っております。ちょっとその話は預からしていただきたいと思います。
  95. 青木正

    青木委員長 時間がまいっておりますので…。
  96. 辻原弘市

    辻原委員 それでは、言ったか言わぬかの議論じゃなくて、総理が平和解決を呼びかけられたその根本の精神というものはどこに置かれておるか、いわゆるジュネーブ協定による精神、これを私はなぜあえていま持ち出すかというと、数日前にインドの、それからユーゴの共同声明を見ましたが、これらの国もいずれもやはりジュネーブ協定のワク内でということを強調しておる。また一方ベトコンあるいは北ベトナムの側も、やはりそのことを強調しておる。かつてアメリカもそのことを言われた。しかし、総理大臣からじかじかにいわゆるジュネーブ協定についての考えというものを承ったことはございません。しかし、いま平和解決をしろと呼びかけられた以上、それは何を軸にしておやりになるかということを聞いておかなければ、これは私どもの判断にはならぬと思うから、ジュネーブ協定の精神に基づいて呼びかけられておるものかどうかということを明らかにしていただきたい。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくジョンソン大統領との話は、これは別にしていただきたいと思いますが、私自身こういうことを考えております。  どうもこういう問題は、アジア人の考え方と欧米人のいわゆる合理主義と非常なかけ隔てがあるんじゃないのか、そういう事柄が問題の解決を、やはり方法を異にしておる、そういう結果になってはおらないか、かように私自身考えておるのであります。どうかそういう立場に立って、アジアの問題はアジア人の考え方、感覚においてとにかく話を進めていくことが必要だ。私どもはいままであらゆる機会にいろいろなお話を伺っておりますが、とにかく話し合いでと言う。これは話せばわかるという事柄が大体本筋じゃないのか。それを合理的な考え方で、あるいは力で、合理的にそれを解決するとか、こういうような考え方には私はどうも納得ができない。ことに日本が平和国家として誕生しておる今日の状況から見ますると、一そうその力というものがどういうものであるか、非常な疑問を持つ、こういう考え方から私自身は話し合いということをまず第一に取り上げておるのであります。したがって、この話し合いによって、あるいは双方の停戦を引き起こしたり、あるいは一方的に行動をやめるとか、あるいは本来の精神がどこにあるのだとか、こういうようないろいろな議論がされるだろうと思いますが、そういう事柄が話し合いのうちに自然に出てくるのじゃないのか。そうして大勢というものがきまってくるのじゃないのか。これがいままでもあらゆる機会に私どもが話し合いを進めていこうという気持ちだと思います。そうして、一つの前提をきめてかかっていると、非常に拘束されて、アジア人とすれば、そういうような拘束された事柄には納得がいきかねる、こういうような気持ちでおる、かように私思いますので、無条件でひとつ話し合ってみようじゃないか、これが私が提案しておる言い方でございます。ただいまアメリカもそういうことを言っておる。アメリカ自身が私の考えと同じような意味で話し合いに応ずる、こういうことであればたいへんけっこうだと思います。私は、アメリカが言ったからアメリカに追随したというのではなくて、これがこういう紛争を解決する一つの方法じゃないか。片一方ではなぐり合いをしているが、片一方ではやはり問題をより拡大しないように、早くとめるように、そういう意味でお互いに話し合ってみる、そういう外交ルートというものは依然として残されておるのじゃないのか。このことを強く願うがゆえに、またこういうこともやり得るのだ、かように考えますがゆえに、私はただいま話し合いということを実は申しておるのでございます。
  98. 辻原弘市

    辻原委員 どうも総理のお考えでは……。
  99. 青木正

    青木委員長 もう一言だけで最後にお願いします。
  100. 辻原弘市

    辻原委員 私はこれで結論にいたしたいと思うのでありますが、話し合いのきっかけがつかめたからといって、現実の平和解決の手段にはならないと思う。なぜならば、これはインドもそう言っておりまするように、話し合いをするにはその前提が要る。テーブルにつかせるためにはその前提が要るのだ。インドとユーゴとの共同声明では、その前提は、まず即時北爆の中止だと言っておる。あなたはアジア人の感覚でとおっしゃるが、アジアにいるインドにしても、あるいはベトナムにしても、化ベトナムにしても、やはりそういう感覚のもとに約束したことは守ってもらいたい。その約束とは何かといえば、ジュネーブ協定において、軍事援助はしたい、撤兵をする、あるいは報復的な政治的弾圧を加えない、あるいは将来統一選挙をやる等々の協定を守ってもらいたい。それを守らずに北爆をやり、武力攻撃をやっているのはアメリカではないか、これが根本なんであります。だから、あなたが話し合いをしろ、話し合いをしろといったところで、その話し合いをさせるための条件というものをつくる手段がなくては、ベトナムに対するこれは平和解決の具体的な手段にはならぬということであります。  私は、時間がありませんから、細部にわたってあなたと本日議論をしたかったのでありますけれども、それは申し上げませんけれども、はっきりジュネーブ協定の精神をも支持できないようなことで、それを強調して、そのことで話し合いというようなことすらおやりなさらぬでは、これはただアメリカの無条件誌し合いということをそのままそっくり取り上げられて呼びかけておるということにすぎない。単なる対米追随外交の一端にしかすぎないということを私は最後に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に答弁は求められてないようでありますけれども、私、一方的に結論を出されて、そうして政府が引っ込むというわけには実はいかないように思います。  ただいまのことはたいへん議論が長くなりますから、きょうは議論はとめたいと思いますが、私は一方的に辻原さんの御意見に私が賛成したというものじゃないことだけ申し上げておきたいと思います。
  102. 青木正

    青木委員長 これにて辻原君の質疑は終了しました。  午後一時半より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十一分開議
  103. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  まず理事補欠選任についておはかりいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。  つきましては、この際理事補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例により、委員長において指名することに御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長八木徹雄君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  105. 青木正

    青木委員長 これより昭和四十年度一般会計補正予算に対する質疑を続行いたします。野原覺君。
  106. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は社会党を代表いたしまして、主として外交問題の全般にわたって総理外務大臣、関係各大臣にお尋ねをしたいと思うのであります。中身を申し上げますと、沖縄の問題、それから日韓、ベトナム、経済外交、こういうことになろうかと思いますが、御承知のように時間の制約がございまするから、要点を明確にしてお尋ねをいたします。したがって、総理をはじめ政府側におかれましても、ひとつ的確な御答弁をお願いをしておきたいと思います。  まず第一にお伺いいたしたいことは、このたび佐藤総理大臣は沖縄に八月の十九日から三日の予定で参られるようであります。歴史的に調べてみますと、総理も御承知かと思いますが、日本総理大臣が沖縄に行かれるのはあなたが三人目だそうであります。一番最初には明治二十年に伊藤博文、昭和十七年か十八年には東条大将、時の総理大臣、そして昭和四十年の八月に、あなたが日本総理大臣として沖縄をたずねて行かれるわけであります。ところが、その沖縄は、御承知のように今日はB52の発進基地として世界の人々が注目をいたしております。同時に、日本が戦争に負けましてから二十年、全くの施政の上においては空白を来たしておるわけであります。したがって、沖縄の人だけではなしに、日本のすべての国民が今回のあなたの沖縄訪問については非常な実は関心を持って注目をされておることは、総理も御承知だろうと思うのであります。そこでお伺いしたいことは、どういう目的、どういうお考えを胸中に秘められて沖縄をおたずねになるのか、率直な御所見を承りたいのであります。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄は、御承知のように、終戦後施政権がアメリカに移っております。しかし、ここは潜在主権があるところでありますし、また住民諸君も日本人としてやっておる、こういう状態であります。それが戦争に負けた結果、非常なこういうような事態におかれておる。さぞ苦労も多いことだと、かように思います。私、総理大臣としてそういうところへ出かけまして、そうして現地で住民諸君の考え方をはだで感じてきたいし、また、私自身がジョンソン大統領と話し合ったこともございますので、そういう点で、いろいろ今日の問題につきましても元気をつけるといいますか、そういう意味においても、日本政府としてなし得る事柄は積極的に尽くしてあげたい、こういうような気持ちでございます。  ただいまB52の発進基地だと、かようにきめていらっしゃいますが、私は必ずしもB52の発進基地だと、かようには思いません。思いませんけれども、そういうことはいずれであろうと、とにかく沖縄の住民が、ただいま申しますように日本人、あるいはまたその潜在主権などと、こういうことを考えますと、これは総理としてやっぱり来てくれろと言われれば、出かけることはこれは当然ではないか、かように思っており、私は暑い最中ではございますが、出かける決意をいたしたわけであります。
  108. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この暑い最中に、歴代の総理が行なわれなかったことをあなたが決然として行なわれて、そうして沖縄の実情をつぶさにあなた自身が、あなた自身の目で、耳で、からだで体得をされて今後の施政の参考にされるということには私は敬意を表します。これは敬意を表したいと思う。  ところで、お尋ねをしたいことは、沖縄の人々がいま問題にしておるのは、経済援助、民生の向上、自治権の拡大、あるいは主席の公選、いろいろございますけれども、これらの問題の根底に横たわるのは施政権だ。施政権を返還してもらわなければ、民生の向上も、経済の問題も一切解決をしないのだと言っておることは総理も御承知であろうと思うのであります。  施政権の返還について、アメリカの出先機関でございます民政府、高等弁務官、そういう方々とお話し合いをされるお考えを持っておられますかどうか、承りたいのです。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えいたしましたように、戦後二十年、こういう意味で、沖縄住民の諸君が祖国復帰、これはほんとうに悲願だと思います。また私どもも、九千万国民といたしまして、これをぜひとも早く受け入れて一緒になりたい、こういうことがわが民族のこれまた熱願でもある、私はさように考えているのでございます。しかし、施政権の返還ということ自身、これは、究極と申しますか、私どもがその目的のためにあらゆる行動をすべきだと思いますが、しかし、この行き方は、特別な、いわゆるサンフランシスコ条約に基づいてただいまのように施政権が移されておるのでございますし、日米間は友好親善この上もないといいますか、ただいまは日米安保条約締結のもとにおいてこの両国が親善友好の関係を続けておるのであります。したがいまして、ただいまの施政権返還の問題にいたしましても、基本的に両国が両国の間において話し合いを遂げるべき事柄だ、かように思っておりますし、またそういう事柄が大統領、そうしてまた私、こういうところにおきまして話し合われるべき筋のものだ、かように考えます。  ただいま言われております高等弁務官とそういう問題について話をするか、こういうことでございますが、もちろん私が高等弁務官に会わせい、こういう気持ちを持っていることは、当然弁務官もよく了承していてくれると思いますけれども、ただ、高等弁務官と交渉するような筋の問題ではない、かように私考えておりますので、ただいま申し上げたとおり、これについてこれをおくらさないようなあらゆる努力をすること、この行き方が間違うと、その返還すべきものも返還がおくれるというような事態が起こると思いますので、そういう意味では慎重に対処してまいりたい、かように思います。
  110. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ただいまの御答弁を拝聴いたしておりますと、アメリカの民政府、出先機関だから話し合いをする必要がない、こういうようにも聞こえるのですが、そこをもう少し明確にしていただきたい。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 出先機関だからというような意味ではございません。もちろんその事柄の性質上もっと高度の問題だということを実は申したのであります。施政権返還という問題が実現するまでにおきましても、今日の実情におきまして、あるいは自治権の拡大であるとか、あるいは主席公選の問題であるとか、あるいは文教であるとか、あるいは厚生のいわゆる福利施設の問題であるとか、いわゆる内地の行政水準、そういうものが沖縄と比べたときに沖縄が劣っておるというような点があれば、これはどうしても私どもが力をいたして、そうして行政水準の均衡をとるような努力をすべきことだ、かように思いますので、こういう意味では、現地の高等弁務官等の協力を得なければならない点が非常に多い、かように思います。これもしかし、ねらいと言ってはなんですが、しゃんと施政権の返還を頭に描きつつこれらの事柄を交渉すべきだ、かように私は考えておる次第でございます。
  112. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、これは私最初にあなたにお願いしておったように、的確に御答弁をいただかないとむやみに時間をとるだけです。出先機関といえども、これは総理がかねて国会においても答弁してまいりましたように、施政権の返還が沖縄の人々の悲願だ。これは日本国民の悲願でもある。特に御承知のように、国会が五回にわたって与党野党を問わず満場一致で施政権の返還決議をあげておるわけです。そこで、あなたはそのときも申されたと思いますが、あらゆる機会を通じてこの問題は話し合っていかなければならぬということを再三おっしゃっておられます。そういたしまするならば、これは最も絶好の機会ではないのか。なるほど沖縄に行かれて高等弁務官とあなたがお話し合いをしたから直ちに施政権が返還できるなどとは、私ども考えていないのです。しかしながら、現実沖縄の施設を行なっておる出先の機関、弁務官とお話し合いをすることによって、そういうことの積み重ねが行なわれることによって施政権の返還というものは実現できるとも考えられます。この点いかがでございますか。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの施政権返還を頭に置いてということは、野原さんのおっしゃったような点ではないかと思います。目的を達成するために率直な表現が役立つ場合もありますし、また、機熟さないときにそういうことを言うことはあまりにも事態を紛糾さすというような場合もあります。しかしながら、沖縄住民の悲願であり、また九千万国民の熱願であるということをとにかく忘れないで、そしていかにすれば最も早くこれが実現するか、そういう意味においてのくふうをしたい、かように思っておるのでありまして、ただいま野原さんの御指摘になりました点を私反対しておるわけではありません。そういう点は十分念頭に置きまして、そして私が現地に参る、こういうことをいたしたいのであります。私しいて反対を唱えておる、かように言われると、これはたいへんな誤解でございますし、私は同じような気持ちだろうと思いますので、御了承いただきたい。
  114. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理は私と考えが同じだと申しますけれども、もう少しそこの点を明確にしていただきたいと思うのです。  私は、施政権の返還を表に出してもう話し合うべき時期が来ておるのではないかという考えに立ってお伺いをしておるのです。ところが総理は、施政権の返還ということを頭に描いて、民生の安定、福祉向上あるいは経済援助の問題等をお話をする、こういうようにも受け取れるのです。私は表に出しなさいと言っておる。表に出しなさいと言うのに、いまあなたがこれを表に出せないというのは、やはり何か理由があるのだろうと思う。たとえば、その時期でないとか、施政権返還の要求をしなければならぬ現実の段階にはまだ到達していないとか、何かやはりそういうお考え総理にあるんだろうと思う。これは国民に明確にしていただきたいと思います。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 施設権返還を申し出るような時期でないというようなことは私申しません。すでに私も承知いたしております。国会におきましても、超党派で決議をいただいておりますし、また、それに対しましても私が答えております。問題は、これをやることにつきましていかなる方法が最も効果的であるかということ、これはひとつ私が現地に出かけるのでございますから、私にまかしていただいたらどうかと思う。野原さんのただいまのお話は十分私も頭に描いて参りますから、これは一方だけでもないんじゃないかと思います。とにかく出かけるのは私でございますから、皆さま方の意見を代表して私は出かけるつもりでございますので、どうかひとつそういう意味で御了承いただきたいと思います。
  116. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は、総理大臣が沖縄にお見えになるというので、沖縄百万の人々は――私、沖縄からいろいろ情報をとりましたが、非常に期待を持って待っておられるようです。そうして、その期待を持っておられるすべての人、これは保守、革新を問わず、沖縄百万の人々が今度こそは解決してもらえるのではないか、われわれの祖国復帰の悲願を今度は日本総理大臣が乗り込んできて話し合いをつけてくれるのではないか、少なくとも何らかのそのめどをつけてくれるのではないかという期待を持っておられるようであります。私は、この期待には、総理はよほどの決意を持っていらっしゃらないというと、これは失望と落胆を与えるだけになる。総理も御承知のように、二十年の空白なんです。二十年間日本に帰りたいと叫んできたのが、今日まで放置されておる。B52の発進基地ではない、総理はこうおっしゃられますけれども現実B52が台風だと称して沖縄に行って、そうして爆撃に行ってしまっておる。そういう事態にいま沖縄が追い込まれておる。こういうことを考えますと、私は、この際日本総理大臣として、国会の決議もあるわけでございますから、高等弁務官と堂々と、いま施政権の返還については、これは沖縄政治をあずかるあなたとしても考えてもらわなければいけない――私ども外交交渉というものは、本国との話し合いによってこの問題は解決されるということは私も知っておる。知っておりますけれども、出先の大使、その国の出先機関というものと話し合いをつけるということが、これまた大事なことになるわけでございますから、この点はどうしてもできませんか。いま表に出すということは、あなたはなさらぬわけですか。これははっきり言っていただきたい。これは待っておるわけですから、あなたが、施政権の返還については、いや話はできない、私は、それは念願をして頭の中に置いて、経済援助その他は話し合いをするけれども、いまこれは表に出すべきではない、表には出さない、こういうことですか。これはやはり方針をはっきり示していただきたいと思う。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、これが悲願だ、そうしてこれを実現するために私が出かける、こういうことは、もちろんその基本的な態度でありますし、私は、非常な苦労をしておる沖縄住民を、私が出かけることによりましてやはり力づけることもできる、かように考えます。それがただいま言われるように、野原君の言われることを私は拒否しておるわけではございません。そういう点をひとつおまかせをいただきたい、かように申しておるのでございますから、重ねて私の気持ちを率直に申し上げておきます。
  118. 野原覺

    ○野原(覺)委員 沖縄を担当しておられるのは総理府の総務長官です。総務長官が過日総理沖縄をおたずねになるその前提としての調査にお出かけになられて、帰ってからの帰来談話を見て私は驚いたのであります。これは、総理大臣のただいまの御答弁とも違うのである。こう言っておる。沖縄の全面祖国復帰については日本政府も要望しているが、私の考えでは現実問題に触れる段階に来ていない、こう言っておる。だから、ただいま総理が、頭の中に入れてはおる、けれども現実問題に触れる段階には来ていない。同じのようにもありますけれども、この総務長官のお考え総理はお認めになりますか。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総務長官の話を少しふえんしておかないと、ただいまのような誤解があるのではないかと思います。今日私が沖縄に出かけるのが、一部で言われておりますように、施政権返還の交渉に出かけるのだ、かように言われると、これはやや事態について違っておりますよ、こういうことを実は申し上げたいのであります。もちろん、そういう事柄は、あらゆる機会をつかまえて話し合うということを申しておりますし、また、そういう機会をつかまえることが私どもの仕事だと思います。しかし、それが沖縄へ行く唯一の交渉の仕事だと、かように考えることはいかにも窮屈じゃないか、かように思うので、おそらくそういうことを率直に総務長官は言ったんではないかと思います。ただいま言うように、それぞれの交渉の問題、幾つもございます。一番念願しておるものがこの問題だ、こう言われることもよくわかっております。しかし、その交渉に出かけたんだ、かようにきめられて、それが実現しなかったじゃないか、こういうように言われることは私はないと思う。野原さんも交渉に行ってこいと、こう言うわけでも実はないのじゃないかと私は理解するのでございますが、その点がやや不明確だと言われれば不明確だ、かように思いますけれども、今回のそういうような私の使命といいますか、任務、それは大へん広範なものだ、かように御了承いただきたいと思います。
  120. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理大臣、端的にお尋ねしますが、いまは表に出せないようです。この点は、あなたの御見解として私もわかりました。わかりましたが、それでは、いつになったら、どういうような条件が満たされてきたらこれを表に出して正式に施政権返還の交渉をされますか。そのときはいつでございましょう。どういうときでしょう。これははっきりしていただきたいと思う。国会が五回決議しておるわけです。その五回決議したことを、国会の決議を履行しなければならぬ行政府の最高長官が、必ずしも今日まで私は誠意を持って実施してきたとは考えられない。私はそう思われない節がたくさんある。五回の決議が決議のしっぱなしになっておるのじゃないかと思う。だから、私はこの施政権の返還についてはお尋ねをしますよ。いつになったら、どういう条件が満たされればあなたはたとえばアメリカの大統領と、あるいは高等弁務官と表に出して話し合いをされるのか、これは明確にしていただきたい。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、大統領と私が話しました際に、大統領との間にもいろいろ意見を交換いたしましたが、その共同コミュニケにその間の事情を明らかにしたものがあります。そのことばをいま正確にとりたいと思いまして聞いたわけでありますが、ちょうどその資料をただいま持ってないそうでありますが、アジアにおける安全保障の必要が沖縄の返還を可能ならしめる時期を期待している、かような意味であったかと思います。私、しばしばお答えしたように思いますが、とにかくアジアの安全ということと沖縄の返還ということがからみ合っている、かように了承しておる次第でございます。
  122. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、これは共同コミュニケでございますから、アメリカの御意見ではなしに、佐藤総理もこれに同調されて発表されたわけでございますね。  そこでお尋ねをいたしますが、アジアの平和と安全が保障されるまではアメリカが沖縄の施政権を持つこともやむを得ない。もう一度申し上げます。アジアの平和と安全が保障されるまではアメリカが沖縄の施政権を持つこともやむを得ない、そういう御見解でございますか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、ただいま日本の安全は日米安保条約のもとにおいて確保されておる、かように考えます。この内地における基地についての使用についてもいろいろの問題がございます。その考え方から、アメリカ自身が主張しておりますのが沖縄の施政権の問題だ、かように思います。したがいまして、アジアの安全、わが国の安全というものにやはりからんでおる、かように私は思います。こういう事態が変わって、そうしてこの必要がなくなる、こういうことが望ましいことであり、また、そういう意味の最善の努力を払っていくが、そのときがくるまで、私はかような理由があると思います。これは、一つには日本自身の国内体制の問題もありましょうし、もう一つは国際情勢の問題がある。この二つがただいまの必要ありやいなやということを決定するのだ、かように思います。
  124. 野原覺

    ○野原(覺)委員 アメリカは、アジアの平和と安全を確保するということで日米安保条約が結ばれ、沖縄に施政権を持って沖縄が軍事基地になっておる。これは総理も御承知のとおりでございます。そういたしますと、今日ベトナム戦争が激しくなってきて、沖縄日本の本土も戦争に巻き込まれるかもわからない、こういう事態に直面してきたわけですね。沖縄にアメリカの施政権があるということが根拠で、アメリカは沖縄を単なる補給基地だけじゃない、これは前線基地戦闘基地に使うことも今日これは法的には可能だという見解、アジアの平和と安全という名前は、これは美しいことでございますけれども沖縄の平和と安全をどうしていただけましょうか。総理沖縄へいらっしゃったら、沖縄の人々はこれをお尋ねしますよ。アジアの平和と安全が確保されるまでは、われわれにはアメリカの施政権が適用される。われわれはアメリカの基地になる。そのことを日本総理大臣が承認されるならば、われわれの命をどうしてくれるのです、沖縄の平和と安全はどうなってもよろしいのでございますか、アジアの平和と安全の犠牲になってもかまわぬのですかと、沖縄の人があなたをお訪ねして――あなたは各種団体といろいろ会われるそうでございますが、私は必ずその声が出てくると思う。どう御答弁なさるのですか。これは御見解を承りたい。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま書類が手元に参りまして、正確な表現ができるようでございますから、先ほど申しましたことをもう一度ダブるようですが、正確に表現をしたいと思います。時間をごらんになるようですが、この時間はもちろん除いてもけっこうだと思います。  「大統領は施政権返還に対する日本政府及び国民の願望に対して理解を示し、極東における自由世界の安全保障上の利益が、この願望の実現を許す日を待望していると述べた。」この点が大事なことだと思います。「極東における自由世界の安全保障上の利益が、この願望の実現を許す日を待望していると述べた。」そうして、ただいまお尋ねになりました点ですが、「両者は沖縄住民の福祉と安寧の向上のため、今後とも同諸島に対する相当規模の経済援助を続けるべきことを確認した。両者は沖縄援助に関する日米間の協力体制が円滑に運営されていることに満足し、現存する日米協議委員会が今後は沖縄に対する経済援助の問題にとどまらず引き続き沖縄住民の安寧の向上をはかるために両国が協力し得る他の問題についても協議し得るように、同委員会の機能を拡大することについて、原則的に意見の一致を見た。」かようになっておりますので、この点を重ねて申し上げておきますが、私は、沖縄の住民諸君が、この一月に大統領と私が話し合ったことについて十分の理解を示してくれることだと、かように期待をいたしております。
  126. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理大臣、私がお尋ねしておるのは、いま総理がお読みになられましたね、極東における自由世界の安全保障、そのためには沖縄はどうなってもよいのか、こういう考え沖縄の人々が持たれておるとすれば、これは、やはり総理としては明確に御指導されなければならぬと思うのです。それをお尋ねしておるのです。  沖縄は、アメリカの施政権が軍事基地の法的根拠になっております、御承知のように。だから、極東における自由世界の安全保障のためには、われわれ沖縄は、アメリカの原水爆の基地になっている、これは池田総理も認めてこられた。どうなってもよいのか。ここなんです。いま沖縄の人人が一番問題にするのはここなんです。われわれは十万の人をこの太平洋戦争で戦死させたのだ。それに対する報酬は何かといえば、アメリカの基地じゃないか、そして二十年間ほってきたじゃないか、これはたいへんな怒りですよ。私はこれはわかる。親をなくし、妻をなくし、子をなくし、学生だけでも七千五百から死んで、おそらく総理沖縄に行ったらごらんになると思う。ひめゆりの塔、健児の塔、これは涙なしには沖縄には行けないのです。そして沖縄の人々を二十年間ほったらかしにして、それに対する祖国日本の報いは何かといえば、アメリカの基地なのか、こう言って彼らが憤激するこの気持ちに対して、日本総理大臣として沖縄にいらっしゃり、どういうお話ができますか、お聞かせ願いたい。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来その目的を申しましたが、その目的は、ただいま野原さんが言われるように、沖縄日本の犠牲になっておるとか、沖縄の住民が犠牲になっておる、こういうような感じが一部にあるのではないかと実は懸念をいたします。しかしながら、日本民族としての一体性、これはどこまでもやっぱり考えていかなければならないと思います。二十年もほってある、総理大臣が一度も現地に行かない、こういうような事柄が、まずその解消すべき事柄だと思います。ただいまのように、占領後におけるサンフランシスコ条約、それによって気の毒にも沖縄の施政権はアメリカに移っておる、しかしこれはどうすることもできない、こういうものもございますけれども、しかし、私どもは、同一民族としてのその気持ちだけでも、これには触れるものがなければならない、かように思って実は出かけるのであります。それは私が別に沖縄に行かなくてもいいというお話もあるだろうと思います。また、出かけるものなら、国費を使って行くのだから、もっとはっきりして施政権回復交渉もしてこいと、こういうお話もあるだろうと思いますが、ともかく私は、今日の状況につきまして、これに触れて、そして住民諸君に元気を与える、祖国復帰の日は今日すぐ実現しなくとも、そこに何らの疑念を持たないように元気づけることも私の仕事ではないか、かように思うのであります。そういう意味で出かけるのであります。
  128. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは元気づけると仰せられますけれども、方針を明確に示してやらない限り元気づけられませんよ。私は、いつになったら、どういう条件が満たされたら沖縄の返還を要求するのだ、こう言ってやらない限り、沖縄の人々は元気づきやしませんよ。二十年ほってきたじゃないか、何が元気づきますか。あなたがどういうお話をするかわかりませんけれども、元気づきやしないですよ。一体どういう方針をお示しになるのか。その考えは、沖縄に行かれてお話をされてもよろしいし、この国会を通じて、私の質疑応答を通じて国民の前に示されることも、私はこれは一つの手だてではなかろうかと思ってお尋ねをしておるわけです。ところが、どうしてもあなたはその核心にお触れにならない。沖縄は極東の安全保障の犠牲になってよいのか、こういう私の質問には、どういうものか直接タッチされない。触れられない。  そこで、私はあなたに次にお尋ねをいたしますが、極東の平和と安全と申しますけれども、極東の平和を侵害しておるのは、アメリカは、極東における共産主義勢力だと、こういう判断をしてきておるわけであります。共産主義勢力とは北ベトナムあるいは北朝鮮、それから中共と、はっきりアメリカはそう言ってきておるわけでございます。そういたしますと、この極東の共産主義勢力がアメリカの勢力に押えられてしまわない限りは、これは平和と安全の保障はできないということにもなる。極東における共産主義が窒息死しない限りは、アメリカからやっつけられない限りは、アメリカに言わせれば、極東の平和と安全はでき上がっていないのだ、保障されていないのだ、こうなってまいりますと、ただいまあなたがお読みになられました共同コミュニケ、そのコミュニケによれば、沖縄の施政権返還は半永久的にできないということになるじゃありませんか。これは、アメリカがその判断をしない限り半永久的にできない。アメリカが、極東の平和と安全は保障された、共産主義の勢力はおれの力によって屈服した、そういう判断をしない限り、沖縄の返還要求はできない、こうなるじゃございませんか。そうなれば、これは半永久的だ、この問題はどうお考えになりますか。いかがですか。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話でございますが、そこにわが国の基本的な態度があるわけであります。私は、しばしば申し上げたように、自由を守り平和に徹する国だ、そして、それぞれの国の立場を尊重するということを申しておる、相手の国を尊重し、他の国の内政には干渉しない、こういう原則が立つならば、いかなる国とも仲よくできるのではないか。これは、仲よくできるということがちゃんと約束できるならば、もうただいまのようなアジアの安全保障のためにその利益があるとかないとか、そんな議論はもうなくなる、解消されるのである。こういう事柄は、私どもが努力することによりまして、また、相手の国をして理解さすことによりまして、それは必ずしもアメリカだけの言いなりになる必要はないのだと思います。  ただいま野原君は、アメリカが共産主義国を屈服させなければだめなのだ、こういうように言っておられますが、しかしアメリカ自身も必ずしもそうは言っておらないのであります。私は、共産主義国自身が、いわゆる国際共産主義という在来から言われておるような考え方が今日ないならば、これはそこに相互の理解ができ、相互にお互いの立場を尊重していくということにもなるのじゃないかと思います。私は、各国がお互いに、日本だけが繁栄するのじゃなくて、お互いに繁栄していくのだということを申しておる、そうしてどことも仲よくしていくのだ、特殊な敵対行為をするような考え方はないのだというのがいわゆる平和に徹した考え方であります。そういう方向にぜひアジアは持っていきたいものだ、別に国情を変える必要はない、私はかように思います。
  130. 野原覺

    ○野原(覺)委員 極東の平和と安全の保障について、日米双方が合意に達しない限り――もう一度申し上げます、総理大臣。極東の平和と安全の保障について日米双方の合意ができない限り、中縄返還の問題は議題にものぼらない、これは議題にのぼせても困難だ、こういう理解を持ってよろしゅうございましょうか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 極東の問題で日米が意見が一致することは、これは望ましいことであります。しかし、これが一致しないという原因がどこにあるのか、これもよく考えなければなりませんので、ただいまの表現だけでは私は不十分だと思います。日本自身が自主的に考えまして、もうその必要はない、こういうことが判断できるなら、アメリカをやっぱり説得すること、また、アメリカと意見が違いましても、そういう必要がなくなる、こういうことも考えるべきじゃないか、これは理論的の問題であります。理論的にはそういうことが言えるということを申すのであります。だから、ただいま野原さんが非常に明確にこういうことかと言われたことについては、私は必ずしも賛成をいたしません。
  132. 野原覺

    ○野原(覺)委員 何回も申しておりますがね、総理大臣。いまこそ私は施政権の返還要求を持ち出すべきときが来たのではないか。私はそういう自分の意見を出しているわけです。ところが、総理大臣はこれに対して、今日ただいまの時点で施政権返還の要求を出すべき時期が必ずしも来たということを明確におっしゃらないわけです。だから私は、それはいつの時点なのだと聞いておるわけです。総理大臣が施政権返還の要求をアメリカに出される、正式になされる、そのときは佐藤総理としてはどういう条件が満たされたときだ、これは率直にお聞かせください、国民はこれを聞きたいのですよ、沖縄の人々は特にこれを聞きたい。どういう条件なんですか。あなたが表に出されるその時点、その情勢というものはどういう情勢なのか、これは私は示してやるべきだと思う。政治をあずかっておる総理としては、国民に示してやるべきです。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほどからお答えしておるのですが、きょうのこの時点において私が一月にジョンソン大統領と会ったときと変化があるかというと、遺憾ながら変化はない、かように申し上げますので、一月の共同声明、これは両国の考え方が一致したものでありますし、この考え方は今日も同様だ、かように御返事をいたしておきます。
  134. 野原覺

    ○野原(覺)委員 どういう条件が満たされれば変化があるということになるのですか。あなたは沖縄返還をしなければならぬ責任と義務があるのです。他のだれにもないのです、日本総理大臣にあるのです。だから私はお尋ねしておるのです。一億の国民はあなたにたよる以外にないのですよ。そうしたら、あなたは、それはどういう情勢が満たされたときだと明確におっしゃってください。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御承知のように、アジアの周辺におきまして問題が起きておる、こういうときにはそういう事態考えられないということであります。
  136. 野原覺

    ○野原(覺)委員 まことに残念ながら、私の質疑に対する御答弁にこれはなっていない。少しも核心に触れてお答えにならない。困難な問題ではございましょうけれども、せっかく総理沖縄に参られるのでございますから、施政権返還という基本的な沖縄の人々の非願、国民の願い、国会が過去五回決議したこの点については、少なくともいま出先機関にその要求は出さなくても、総理大臣としてはこういう見解を持っておるんだということくらいは明確に示すべきです。私はそれを示せと言っているけれども、一つも明確でない。このことで時間をとっては大事な他の外交問題について触れることができませんから、私は不満の意を表明しておきます。私の不満は、必ずや現地沖縄の百万の人々が、遺憾なことではございますけれども、あなたに保守、革新を問わず不満を表明するであろうということを、私は申し上げざるを得ません。  私は、先般拝見したのですが、学生諸君は、これは関西学院大学の学生でございますが、沖縄に行かれて、その報告書の一節であります。「真昼間、無気味にもヘッドライトを照らした米軍の装甲車が列を連ねて、一号線を基地の町コザから那覇軍港へ向かって行進する。車の上には武装した兵隊が銃をかまえている。戦争なのだ。日本の一部が戦時下にある。このことは我々を震撼させずにはおかない」、この文章は、関西学院大学社会学部田中国夫教授ゼミナールに所属する社会心理学専攻の学生たちが、このほど沖縄に研究旅行をしてまとめた報告書の中の一節であります。この一文は奥田和子さんという女性が書かれておりますが、最後にこう言っておる。「沖縄は一体何なのだ。」、沖縄を回ってこの学生が「日本なのか、日本でないのか。沖縄問題を我々はどう処理すればよいのだ」と大きな疑問をぶちまけておるのです。奥田和子さんだけじゃない、沖縄をたずねた国民のすべてがその疑問にぶつかるのです。沖縄では、最近子供たちはプロレスを見ていても、日本人レスラーがアメリカ人レスラーに負けると手をたたいて喜ぶのです。また若者は「国籍を何と書いたらよいのかわからない。私たちは一体どこの国に住んでいるのだろう」とこぼすそうだ。こうした実情を見たり聞いたりして関西学院大学の松尾幹夫君は「子供たちが大人になった時に、沖縄米軍基地があり、米国の施政下におかれていることに何の感情も持たず、自分たちの祖国がどこであるのかさえも見失ってしまうのではないのでしょうか」と心配して帰ってきておる。学生たちは、さらにことばを継いで、沖縄がアメリカの基地としてベトナム戦争につながっていることをはだに感じた。「基地のいたるところに完全武装の兵隊を見かけたり、軍の大型トラックが急にふえだした。基地には戦闘爆撃機がずらっと並べてある」と、柴田正文君は書いております。ほとんどの学生が戦争の恐怖を再確認し、太平洋戦争であれだけ多くの犠牲を払った報酬が基地であるという沖縄の悲劇を痛感したというのであります。これはすべての学生がそう感じて帰ってきて、これが一つの文集になって出されておる。私は、総理日本総理大臣として潜在主権のある沖縄に行かれて、沖縄の実情をつぶさに拝見されて今後の施政の参考にされるということは、先ほど申し上げたように敬意を表します。敬意を表しますが、ここで遺憾ながら総理に苦言を呈しなければならないことは、実は主席の公選や経済の援助じゃないのです。沖縄の問題の民生の安定にしても、経済援助にしても、主席の公選にしても、施政権が日本に返還されればたちどころにこれは解消する問題なんです。沖縄百万は佐賀の人口と同じだ。私は沖縄の予算を見たら、日本とアメリカがどんなに援助をしても、特にアメリカのごときはけしからぬじゃありませんか。軍事基地でさんざんこれを利用しておきながら、日本にだけ援助を要求する、日本は潜在主権を持っているから、私もその援助はしなければならぬと思いますけれども、プライス法で一千二百万ドル、これ以上の金は出さぬと法律できめて、そして沖縄を極東の平和と安全保障の犠牲に供しておる。こういうことに対しては、これはあなたがアメリカに抗議をし、あなたがアメリカにその意見を言わなければ、だれも言う者はないのですよ、日本を代表して。だから、この腹がまえを持って総理沖縄に行かれて、どうかひとつ今後の沖縄の人々の祖国復帰、施政権の返還要求に対して、一日も早く実現できるような施策をとられることを私は心から切望しておきたいと思うのです。  そこで日韓の問題に入ります。  まず総理お尋ねいたしますが、過日六月二十二日に日韓条約が調印されたのであります。参議院選挙のまっ最中であります。私は何も取り急いでとはあえて申し上げません。十四年の課題が解決したのでございますから、喜ぶ者もあれば、これに対して批判する者もある。ところで、新聞によりますと、九月になれば批准国会を召集される、こういうことを私どもは非公式にも承っておるのでございますが、その時期はいつでございますか。批准国会の審議期間は何日ぐらいあれば総理大臣としては妥当だとお考えになっておられるのか、これをお示し願いたい。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この批准国会は、できるだく早くとは思っておりますが、まだはっきりしました最終的決定をしておりません。ことに、いろいろ事情もあるようで、議長もソ連に行かれるとか、あるいは議員諸君もどうも引き続いてというのも困るというようなお話もありますし、私はこういう事柄も、やはり批准国会は多数の方々の協力を得て済ましたい、かような観点考えますと、政府自身にも何かと都合もありますし、そういうことで、その時期が、最初言われたように、九月の初めというのがどうもむずかしいのではないか、かように思っております。九月の半ば以後等になるとすれば、その次の通常国会等の関係もありますので、それらともにらみ合わせていかなければならないということでありますから、非常に簡単なような批准国会ではありますが、やはり事柄の性質上、慎重に十分関係方面と連絡をとり、相談をして、そして最終的にきめたい、かように思っております。
  138. 野原覺

    ○野原(覺)委員 調印をされました条約、協定の詳細な内容については、政府が予定しておる批准国会において私どもお尋ねをしてまいろうと思います。したがって、ただいまから私が質問をしますことは、批准国会に臨む社会党の態度をきめる上についても大事な事柄であります。したがって、その基本的な若干の問題を私はお尋ねをしておきたいと思う。こまかな内容は批准国会に譲りたいと思うのであります。  そこで、第一にお尋ねをしたいことは、公表された条約、協定、交換公文、合意議事録あるいは往復書簡、その他すべての文書を私は拝見さしていただきました。棒を引っぱりながらずっと何回も読み返してみたのでございますが、どうしたものか、条約、協定のどこにも竹島の字が出ていないのであります。これは、どういうことでございますか、承りたいと思います。
  139. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 竹島という名称は、これは日本語である。それから向こうのことでいうと独島と、こう言っておる。それで、その竹島というものを必ずしも表示する必要はこの際ございませんから、日韓間の未解決の懸案という中に含めて問題の処理方法を妥結いたしました。
  140. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務省から出ております「世界の動き」ナンバー一六一、八月号、これは情報文化局から出しておる。これによりますと、こう書いてある。「わが国民が大きな関心をもつ竹島問題その他の両国間の紛争は、外交経路を通じて解決するものとし、それができなければ両国合意の手続きにしたがい調停で解決することとした。」このとおりですか。
  141. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  142. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、いま外務大臣の御答弁は、これはおそらく紛争の解決に関する交換公文で処理されるということをいま申されたと思う。このことは韓国側も了解をしておるのですか。
  143. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この交換公文の一字一句について、両方において完全に合意しておる次第であります。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 もう一度お尋ねしますが、竹島問題は、――独島でもよろしい、これはいずれにしても竹島の問題、この紛争は紛争の解決に関する交換公文で処理されることを了解すると韓国側がどういう形で意思表示をしました、どういう形で。お述べ願いたい。
  145. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく書いてあるその文句については、完全に両者の間で一致しております。
  146. 野原覺

    ○野原(覺)委員 椎名外務大臣答弁は、いつの場合もいまのような態度です。私が真剣に尋ねておる国の条約に関するものを、何ですか、あなたのその態度は。竹島問題はこの交換公文で処理される、こう外務大臣答弁されるから、韓国側も了解しておるかと聞いておるのだ。了解しているかしていないか、はっきりしたらいい。何ですか、あなたその態度は。
  147. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私どもといたしましては、韓国は十分に了解しておると了解しております。
  148. 野原覺

    ○野原(覺)委員 と思うとは何事です。総理大臣にお尋ねします。竹島問題は重要な日本の領土問題です。日韓両国の紛争、たとえこれが岩礁の島であろうとも領土問題で、この問題が解決しなければ日韓会談の妥結はしないと政府は一貫して答弁してきておるのだ、国民にその方針を明らかにしてきておるのだ。ところが、紛争の解決に関する交換公文だと了解したかと言ったら、と思うと、こう言うのです。了解しておると思う、了解しておるのですか、してないのですか。
  149. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 了解しておるとわれわれは了解しております。
  150. 野原覺

    ○野原(覺)委員 じゃ、了解しておると了解した、韓国側は了解しておるとあなたは了解した、その根拠になるものを出してください。どこで李東元が了解したと言ったのか。それとも、あなたが、韓国側はこの交換公文でいくんだと了解された根拠になるものをお示し願いたい。
  151. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交交渉はきわめて複雑に多岐に及んでおります。結局両者の合意がこの文言に凝縮された、かように御了承を願います。
  152. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ただいまのは御答弁にならないのです。了解をした根拠になるものは、外交交渉の衝に当たった韓国の外務大臣李東元が了解したと断言をしたのか。それとも、あなたが了解したと思うとこう言うんだから、了解したと思うという何かの根拠を私どもに示してくれなければ、われわれは了解できないじゃないか。どうなんです。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 つまり両者の了解のその一致点があの文句になってあらわれておるのであります。今度は、それを証拠立てるまた何か文書でも取りかわしたかというようなことになると、またその文書の証拠書類は何だ、そういうようなことはいたしません。とにかく両者の間で十分に話し合って、そしてあの結論に到達いたしたのでございます。
  154. 野原覺

    ○野原(覺)委員 六月二十二日に条約の正式調印がございまして、六月二十四日に李東元外務部長官はこう言っておるのです。すべての新聞が報道しておる。竹島問題については折衝する意向はない、竹島は紛争処理の交換公文では処理されないことを意味する、処理されない、紛争の解決に関する交換公文では処理されないと、あなたも新聞で読んだに違いない。これは言っておる。あなたの言うことと李東元外務大臣の言うことは違うじゃありませんか。どうなっているんだ、これは。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外国の大臣の言うことよりも、日本の大臣の言うことを信用していただきたいと思います。
  156. 野原覺

    ○野原(覺)委員 日本の大臣の言うことを、私も日本の国会議員であるから信用したいと思います。しかし、われわれが信用するには、信用するだけの根拠を出してもらわなければならないのです。だからして李東元は、この交換公文で竹島問題は処理しますと、こう言ったのですか。言ったか言わないか言ってください。言ったんですね。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろん両方でいろいろなことばを使いました。そうしてこの文言に到達したのでございます。
  158. 野原覺

    ○野原(覺)委員 何を言っているか。言ったのか言ってないのかと私は聞いている。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それに類したことはいろいろな表現でもちろん両方からこの問題を盛んに言い合って、そしてこの文言に到達いたしたのであります。
  160. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、李東元が韓国に帰って出された談話とあなたに表明された意思表示は違う、あなたにははっきり――これは大事なことですよ。紛争の解決に関する交換公文で処理されるかどうかということは大事なことですよ。あなたにはっきりこの交換公文で処理されるということを言った、こう受け取ってよろしいんですね。あいまいにしちゃいかぬですよ、あなた。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いよいよ、言った言わぬの争いでなしに、両方が一致した文句をあくまで冷静に文理解釈いたしますと、結局竹島の問題の処理ということになるのであります。われわれはさように解釈し、さような自信を持ってこの文言を取りきめたわがほうとしては、これを採択いたしました。でありますから、いよいよ両国の間でこれを冷静に爼上にのせて、そしてこの問題を討議するという場合には、われわれの主張は間違いなく通る、こういう自信を持ってあの文言に到達した、こういう次第であります。ただわれわれの知らない場所で、そして国内においてあるいは右と言い、あるいは左と言った。一々それを追っかけて、そして本来の文書から離れてこの問題を争う考えは私はないし、またそれは無用だと思っております。
  162. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理によくお聞き願いたいのですが、これは大事な問題です。条約、協定のどこにも竹島の文字が出ていない。そしてお尋ねすると、それは紛争の解決に関する交換公文で処理される、こう日本外務大臣答弁するんだが、李外務部長官は、そういうことはないと談話を出しておる。いま私がいろいろ聞いてみると、日本外務大臣答弁を信用しなさい。私は信用はしたい、信用したいと思うけれども、しかし大事な条約、協定でございまするから、私はここでやはり真実を確かめておかなければならない。椎名外務大臣が言うように、紛争の解決に関する交換公文で竹島の問題が処理されると日本が主張をして、そうして外交交渉なり両国の合意による調停なりを始めようと主張しても、韓国が応じなかったらどうするのか。韓国を応じさせる、どこに何の保障があるのか。韓国は、条約、協定のどこにも竹島はないと、こう言っておる。それから解決の交換公文は竹島を指すとはどこにもいっていない。いろいろあなたにお尋ねをしてみると、李長官が必ずしもあなたに断言したということすらあなたは言わぬじゃないか。あなたは日本国民をばかにしようというのか。失敬なことをやっちゃいけませんよ。私はまじめに聞いておるのだ。だからして、ほんとうにこの交換公文で竹島の問題は処理されるという保障がどこにあるのかね。韓国が聞かなかったらどうするのか。聞かせるところの保障はどこにあるのか、それをお示し願いたい。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いやしくも両国が国交正常化に関して条約を取り結ぶという場合には、もし聞かなかったらどうするかとか、その罰はこうだというような、そういう初めから不信頼感を持って二国間の条約なんというのはできるものじゃないと私は思う。
  164. 野原覺

    ○野原(覺)委員 聞かなかったらどうするかということを聞いておるんですよ。あなたは私の質問に答えなさいよ。聞かなかったら何をもって聞かせるのかということを聞いているんです。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 竹島の問題のみならず、すべての問題を、もし誠意を持って日本に同調して、これを実行しなかったらどうするかというようなことが同時に問題になるわけであります。これはいわゆる信頼関係というものであろうかと思います。
  166. 野原覺

    ○野原(覺)委員 信頼関係というなら条約は要らない。二国間の条約、協定、交換公文、合意議事録、これをわれわれが問題にするのは、個人の関係にしたって、お金を貸したり借りたりするときには契約書が要るんだ、法律というものが要るんだ。だからして、その点は明確にしていなければ、あなたは日本の国を代表して条約を協定されて、あなたはいつまでも外務大臣をしないのだ、何年かたって竹島の問題がまた表に出てきた場合に、韓国が竹島はどこにあるか、紛争の解決に関する交換公文で処理するとだれが言ったか、そんなことは言っていない、こういってつっぱねられたらそれきりじゃありません、総理大臣。  私は議論を発展させるために、これから重要な文書を読み上げます。「韓日会談白書」三月十九日に発表しておる。これは朴正煕の責任で韓国の政府の公式の国民に対する発表です。「日本側は独島」日本では竹島と呼ぶとカッコをして、「独島の帰属問題もなんらかの解決をみなければならないために、会談の懸案の一つとして入れねばならないことを主張したが、韓国側は、明らかにわが領土であるから、会談の懸案として取り上げることはできないことを明白にした。」会談の懸案といって取り上げることはできないということを明白にした。これに対する日本側の反論はない。その次、これは白書の基本関係の「G、結論」というところに、また竹島を持ち出しておる。「独島問題においては日本側はこれを基本関係条約に規定して解決するとの態度をとったが、韓国側はこの島が韓国固有の領土であるためこれが韓日会談懸案の一つとしては取り扱えない立場から除外することにした。」「除外することにした。」ですよ。この白書は韓国政府の公式文書だ。あなたはこの白書をも否認しますか。単なる談話じゃないのだ、韓国側は除外することにしたと言っておるじゃないか。そうして、竹島の問題は条約、協定のどこにもないじゃないか。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国内の内政の問題でありますから、私は批判するのは避けたいと思いますが、少なくとも先ほどの日韓間の懸案の解決云々の文言は、これはもうあらゆる論議を尽くしてこの文言に到達した結論でございます。これは天に誓って間違いございませんから、どうぞそれを御了承願います。
  168. 野原覺

    ○野原(覺)委員 天に誓って間違いはないといっても、向こうは白書を出して、これは除外だと言い、韓国の外務部長官は、そういうことは絶対にない、こう言っておる。そう言われてみれば何も保障はない。だからして、あなたが、これは外交交渉でやろうじゃないかと日本から持ち出されても、相手は応じないのですよ。それを応じさせる何からの根拠というものを持たなければならぬじゃないか。日本は不利になるじゃないか。日本の領土というものは放棄じゃないか、これならば。どうしてうんと言わせますか、これはいかがですか。相手をうんと言わせるところの根拠になるものは何だね。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうような不信頼感を持って片っぱしから条約の成文を疑い始めたら、これはきりがありません。われわれは誠意を持って、この問題は必ず解決し得るものと確信しております。
  170. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理お尋ねします。私と外務大臣の質疑応答を総理はお聞きになられて、どういうお感じを持っておられるか知りませんが、私はこの交換公文で竹島問題が処理されるとは思われないのです。日本はそう主張するかも知れないけれども、相手を屈服させるだけの根拠になるものは何もないのです。あらゆる紛争とも書いていないのだ。ただ紛争の解決に関する交換公文、ぽつりと出ておって、相手は竹島以外の紛争だ、こう主張しておるのだ。すでに三月十九日に白書が出て、これがあなたが二月にイニシアルに行ったときからの問題なんです。そうして、いまやあなたはこの問題をごまかすために必死になっておるのです。私の言うことが偽わりならば偽わりと言ってもらいたい。あなたはいまや日本国民をごまかすことに必死になっておるのだ。向こうは、竹島はこの交換公文では処理されないと言っておるのだ。あなたは信用しなさい、こう言いますけれども、私は信用したい。私は信用したいから聞いておるのだ、日本人だから。それでは、これが処理されるという根拠を示せというけれども、あなたはないじゃないか。根拠を示せといえば、それは信頼の問題だ、外交の問題が信頼の問題で解決できますか、総理大臣。これはどうなんです。あなたは総理大臣として、この日韓間の調印を御承認になったのですけれども、これは根拠はないのですよ。どうんですか、これは一体。交渉はできないですよ。私はいいかげんなごまかしは許さぬ。  委員長、どうせこれは椎名外務大臣、ごまかしのいいかげんな答弁をなさるかと思う。私は委員長にこれは要求する。私ども先ほど申し上げましたように、日韓条約についての重要な態度をきめるためにも、基本的な問題を私はここで党を代表して究明しておる。私はこれは満足できない。ほんとうに竹島問題が、交換公文で紛争が解決されることになっておるのか、なってないのか、これは韓国の代表部に問い合わせてもらいたい。そこに電話がある。そうして明確にすれば私は次に発展できる。ほんとうに、信頼感というけれども、代表部はそう確認しておるか。韓国は、竹島問題はそう確認しておるか。委員長、それをひとつやらせてください。これは発展しないですよ。電話で聞きなさい、電話で。
  171. 青木正

    青木委員長 外務大臣から答弁いたします。外務大臣。――外務大臣
  172. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この答弁がなければ私は審議できない。
  173. 青木正

  174. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 責任ある韓国の外務部長官との間に私が取りかわした結論でありますから、いまさら出先の大使館あたりに電話で問い合わせるなんていう不見識なことはいたしません。
  175. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、この交換公文で竹島の問題は処理されることになったという何かなければいけませんね。あなたは取りかわした、こう言うけれども、向こうは取りかわしてないと言う。そうすることになったと言う。今後あなたが外務大臣をおやめになられて、あなたのあとの外務大臣――日本政府はそのものを持たなければたいへんな問題になるのだ。その根拠はありますね、何か合意議事録かに。この発表された合意議事録にはない。その根拠になるものを示してもらいたい。それを示さなければ承服できないですよ。これは明らかに竹島放棄ですよ。竹島の放棄になりますよ。これは出してもらいたい。それを出さなければ審議できない。
  176. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 合意議事録は特にとらないと思います。ただ、この交換公文に対しましては両方とも署名をしておるのであります。しかし、その文言に対して何か疑念があるとおっしゃるなら、その疑念に対しては十分お答えいたします。(「文言がないじゃないか」と呼ぶ者あり)一々その一字一句について合意議事録をとるということはしないのでありますから、それでもう十分に口頭で討議をいたしまして、そうしてあの文言に到達いたしたのでございまして、責任ある者がこれに署名をしておる。そうして日韓間の懸案というものはほかにございません。竹島以外にない。
  177. 野原覺

    ○野原(覺)委員 何を答弁しておるのか、あなたは。あなたの答弁は何を言っているのかわからない。すわって聞きなさい。あなたは一体何を言っているのですか。日本が竹島問題を交換公文の中身に従って――外交交渉なり両国の合意に基づく調停、交換公文の中身はそうなっておる。これでやろうと主張しても相手方が応じないだろう。韓国白書にも除外することにしたといっておるし、応じないだろう。その場合に相手方を応じさせる何かの根拠があるかと聞いておる。たいていこの種のものは合意議事録だ。あなたは一字一句と言うけれども、何が一字一句ですか。竹島は懸案の一つだ。日本の領土問題、その根拠になるものをお示し願わなければわれわれは信頼できませんよ、あなたを信用したいけれども。いかがですか。
  178. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあこれは将来の問題で、まだ十分に条約が実質的な効果を発生したわけじゃなし、そしてまた、この竹島の問題についての折衝をもちろんまだ始める段階ではない。いわばあなたは将来の問題を言っておる。それは向こうが新聞その他で伝えておるように、向こうはおそらく応じないだろうという推測で議論をしておられるのであります。私はそうではなしに、向こうの外務部長官と十分に討議をしてこの結論に到達いたしたのでありますから、私は、その場になれば十分に向こうを同調させるだけの確信を持っておる、こういうことを申し上げているのであります。(「議事録を出せ」と呼ぶ者あり)それは信用していただきたい。
  179. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、外務大臣を信用したいために、あなたを信用したいために同じことを何回も繰り返して質問してきたのです。  議論が発展するためにまたお尋ねをいたしますが、あなたのいまの御答弁は非常に重大なことを言われておる。あなたはこれから先、竹島の問題については明確にする。なるほどいまはあいまいだ。あなたは合意議事録を出すにも出しようがない、何も議事録はないのだから。しかしながら、私の言う議論ももっともなことだ、だから竹島の問題はこれから明確にする、こういうことですね。間違いありませんか。あなたのいまの答弁はそういうことであった。
  180. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょっと誤解があるようであります。これから明確にするとは申し上げません。いよいよ条約が発効いたしましたならば、竹島の問題について、両者の間でこの問題の解決のために協議をする……(「発効してからではおそい、いま審議しなければならない」と呼ぶ者あり)発効する前には審議はできない。
  181. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理大臣、条約が発効してから私のいまの竹島問題に対する疑義は明確にするそうです。これは政府の方針ですか。重要ですからあなたに聞きますよ。それは政府の方針ですか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日韓間で取りきめをいたした事柄、これがまあ正式に申せば、ただいまは調印しただけだ、こういう意味で正式に発効しない、こういうことを言っておるのだと思いますが、いずれにいたしましても、この取りきめをしたことについてお尋ねがあるのでありますから、当然これは発効する、こう考えなければならないことであります。そこで、いまの紛争の処理の規定というもの、これは両国間においてほんとうに合意に達した事項であります。そうして、その際にこの竹島問題というものについて韓国側の言い分が非常に明白になっておる。わがほうの言い分はただいま申しておらない。そうして椎名君は盛んに、わが国の外務大臣の言い分を信頼してくれ、そうして紛争解決の方法はこれによるのだ、こういうことを実は言っておる。それで、ただいま私からお尋ねするのもおかしなことですが、こういうように意見が違うということ自身、あるいは違っておるのじゃないか、かように思われることがやはり紛争と言える事柄になるのじゃないか。これがはたして紛争でないのだ、こういうことが言えるのか、いやそれは紛争なんだと言えるのか、そこらに問題があるように思うのでありまして、ただいまの話を聞いておりまして、紛争解決はこういう方法によるのだ、かように言っておる。これは椎名君も非常にはっきりしておるのでございます。そうして、いままでの片一方の国の主張、それはあらゆる機会にその主張を述べること、これは当然のことであります。その主張をそのまま承認したら、そこに紛争はないということになる、こういうふうに私は考えるのですが、そういう点ではないでしょうか。だから、したがいまして、ただいまちょうどお尋ねがございますが、この両国間の紛争処理の方法はこれでやるのだ、そういうことは、その御審議は皆さまからいただくわけであります。ただいまお尋ねになっておるのはその点だ。椎名外務大臣が言っておりますのも、その点についてはこれは理解がいくように思います。ただいま申し上げるように、紛争処理の方法はこれだ、この取りきめでやっていくんだ、そして、紛争処理の方法については一見一句といえども両国が完全に了解に達したのだ、かように実は申しております。だから、それから御判断をいただくと、おのずからただいまの問題も解明することができるのじゃないか、かように思います。
  183. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そこで、総理の申されておることも私にはわからないのだ。何を言っているのかわからない。  外務大臣、これは重要なことです。そこへすわってください。私は、あなたに大事な点だから確認しておきましょう。合意議事録はございませんか、この交換公文に関する合意議事録は。
  184. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ございません。ありません。
  185. 野原覺

    ○野原(覺)委員 合意議事録がなければ根拠になるものは何一つないのです。往復書簡もないのです。何にもない。公文書は何にもない。公文書が何にもなければ根拠はない。いま総理大臣が紛争紛争といわれますけれども日本は紛争だと称してこの交換公文を持ち出す。ところが、向こうは紛争でないというのだ。竹島は除外だ、こう言っておるのです、白書で、三月十九日の韓国の正式文書で。それに対して何にも明確にしていない。これは、私どもにこういった竹島という重要な懸案事項を審議をせよといっても、私は、日韓条約の審議はできません。  そこで、総理大臣にお尋ねいたしますが、批准国会までに、この私の疑問は、議事録か何か根拠になる書類を添えて出されるかどうか。審議のしようがないから聞いておるのだ。出されるかどうか。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは外務大臣お答えしたがいいかと思いますが、ただいまお尋ねでございますから、なお外務大臣からあと補足させますが、私は、いまの紛争処理の規定はまことに簡単な規定ですから、そういう意味で御審議をいただけばいい、かように思いますが、なお、ただいまのお尋ねはいかがですか。
  187. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 紛争問題であることは事実でございます。ただ、どういう国内の事情か知りませんけれども、韓国側でさような説明をただいまのところはしておるように私も聞いております。しかし、これがいよいよ正式に条約が発効した場合には、向こうははっきりと交渉の経過を思い出すに違いないと私は考えております。
  188. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これはとても私は審議はできない。私どもは、条約を審議する前提として尋ねておる。発効してから何が一体出てきますか。これは審議はできない。だから、批准国会の前にこの問題について出すのか出さないのか、閣議を開いて相談をしてもらいたい。
  189. 青木正

    青木委員長 ちょっとこのままお待ちください。――このまましばらくお待ちください。  この際、十分間休憩いたします。    午後三時十三分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十一分開議
  190. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、先ほどの野原君の質疑に関し、外務大臣より発言を求められております。これを許します。外務大臣椎名悦三郎君。
  191. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 竹島問題についての先ほどからの問題点につきましては、批准国会までに納得のいく説明資料を提出いたします。
  192. 青木正

    青木委員長 野原君、続いて質疑を続行願います。
  193. 野原覺

    ○野原(覺)委員 竹島の問題は、日韓会談の重要な懸案事項でございますから、私どもは、竹島問題も当然日韓条約協定の審議にあたってはその対象になる、そういう観点で、やはりこれが紛争になるのかならないのか、明確な資料を出していただかなければ、次の批准国会には応ずるわけにはいかない。そのようなあいまいなことで条約の審議ができないからであります。いま外務大臣から明確な資料を提出するということでございますから、この問題は一応おいて、先に進みたいと思いますが、さらにもう一言だけ竹島のことでつけ加えますならば、実は韓国の警備隊が撤去をしていないのであります。私は、竹島が紛争の対象になる、それならば無人島の状態にしておくべきではないかと思う。韓国の警備隊の撤去を要求した痕跡すらない、どこにもない。依然として警備隊は、占拠を認め、条約協定のどこにも竹島の文字が一つもないし、紛争の対象になる根拠になるものもない、こうなってまいりますと、これは完全なる放棄じゃないか。放棄したのじゃないか。領土を、外務大臣と外務省の数名の者が謀議して放棄したのか、それとも佐藤内閣が閣議を開いて放棄したのか、日本国民の重大な領土を。私どもは、このことは実はそのような疑念を持つのであります。だからして、出されるところの説明資料というものは、そうでないという的確な資料でなければならぬことをここで申し上げておきたいと思います。  次にお伺いいたしたいことは、韓国の領域の問題です。これも今日まで外務委員会、予算委員会等で何回となく論議をされてまいりましたが、いよいよ政府は正式に条約の調印をされたわけでございますから、やはり私は、ここで条約を締結した相手方の管轄権の範囲をどうするかということが、どのように規定するかということが今後の日本の全朝鮮に対する話し合いをつけていく上にも非常に関係が深い、そういう観点からお尋ねをいたします。  韓国の領域につきましては、従来日本政府は三十八度線から南半分、もっと正確に言えば、休戦ラインから南半分ということを主張してきておるのであります。この主張は、韓国側としてはこの主張に反対をいたしまして、いや、そうではない、韓国の領域は全朝鮮だ、こう主張してきた経緯がございます。最終的にどうなったのか。
  194. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の日韓間の諸協定は、北のほうに事実上の政権があるということを念頭に置きまして、そしてこの条約の及ぶ範囲は、いま御指摘の休戦ライン以南、そういう範囲においてこの取りきめを行なった次第であります。
  195. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その休戦ライン以南という範囲に取りきめがなされたその根拠は何ですか。
  196. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連総会の決議――基本条約の第三条ですが、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第一九五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」こう書いてありまして、その範囲は、朝鮮半島におきまして朝鮮人民の大多数が居住しておる朝鮮の部分と指定して、そこに有効な支配と管轄権を有する合法的な政府が樹立されたことを認めております。この政府の管轄範囲というものに限定するというので、この国連総会の決議を根拠としておる次第であります。
  197. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なるほど基本条約の第三条で、韓国の領域は規定されておる、これはそのとおりであります。ところが、この第三条の解釈が問題であります。あなたの解釈と李外務部長官の解釈が私は必ずしも一致しておるとは思われないのです。日本政府の解釈と韓国政府の解釈が一致しておるとは思われない。条文は基本条約第三条で、いま外務大臣のお読み上げになられたとおり「大韓民国政府は、国際連合総会決議第一九五号(Ⅲ)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」これが第三条の文章。国際連合決議の一九五号(Ⅲ)の解釈は、これは私も椎名外務大臣見解を支持いたします。一九五号(Ⅲ)の出てきたところの経緯をずっと調べてみますと、これは椎名さんが言われるとおり、確かに韓国の領域は三十八度線から南半分、こういうことです。この点に関する限り、日本政府の主張は正しいのです。ところが、この正しい日本政府の主張を韓国側が了解したかということが問題です。最終的にどうなったのか、この解釈は。これは、あなたが李さんとの間に相当議論をされたはずだ。最終的にどうなったのか。  私がこれを問題にする理由を申し上げます。同じく三月十九日、韓日会談の白書、政府の正式文書にこう書いてある。「大韓民国の領土は憲法第三条に明示されているごとく、韓半島全域と付属島嶼で、これが日本との関係において韓日間の基本関係条約のために制約されることもないことは明白である。」韓半島と付属島嶼だ。日本との関係において絶対に制約を受けることはないと、はっきりこうしている。「ただ現在、以北にかいらい集団が不法に占拠しているのは、一つの事実上の状態にすぎぬもので、これは別途の問題である。」その次「日本側は国連決議が認定する限度内において大韓民国政府の唯一の合法性を認定するが、現実的に管轄権が南半にとどまる事実を考慮されねばならないと主張した。」日本側が三十八度線以南であると主張した。「日本側としては大韓民国政府の唯一なる合法性になんらかの制約、とくに国連の決議内容の範囲内に置く意図であったが、韓国は管轄権が南半にだけ局限されるとの表現を入れようとする日本側の主張は到底受け入れることができず、」その先が重大ですよ。「国交正常化が見られなくともこれを受け入れることはできないということを明白にした。」だから、韓国側は最後までそれは承知できない。これを承知できない。日韓国交がこのために破れてもやむを得ないという態度で来ております。これは承認しておりません。解釈は一致していない。私の見解のとおりであるかどうか、外務大臣の御所見を承りたい。
  198. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまお読みになりました白書は、私も実は初めて承るわけでありまして、白書は手元にありますけれども、つい見たことはない。われわれの日韓の間の交渉はあくまで国連決議の範囲内にとどまると、こういうことで正式調印まで行なわれたのでございます。
  199. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、南半分ということは、韓国側は了解したというあなたは見解を持たれますか。私は白書を出して、了解していないじゃないかと聞いたのですが、これははっきりしてください。
  200. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓間の合意された条約は、あくまで南半分、こういうことでございます。ただそれを国内的にどういうふうに披露しておるかというようなことにつきましては、いま御指摘があったようでございますが、これは国内問題でありますから、私はとやかく申したくない。とにかく韓国の責任ある当局者と数々の折衝を重ねて結論に到達したのは南半分であります。
  201. 野原覺

    ○野原(覺)委員 南半分だということを了解した。ところが白書は了解をしていない。なぜ私がこれに固執するかというと、先ほど申したように、請求権の処理と法的地位その他の懸案にこれが非常に関係を持ってくる。外務大臣も御承知のように、請求権の処理は平和条約第四条の(b)項によって三十八度線から北には適用されないことになっておる。(b)項というのは、日本の韓国に対する請求権です。対韓請求権、これは三十八度線から南でアメリカ軍が日本のものを押えましたから、それを日本が放棄をしたので、三十八度線から北には適用されないことになる。ところが韓国の主張でいきますと、韓国の領域が朝鮮半島全体だということになれば、そうでなくなるのですね。北に対する日本の請求権の問題が一体どうなるかということがこれからの争点になるのです。佐藤内閣にしても、今日の時点では北との国交回復をなさっておりませんけれども、国際情勢のいかんによっては北鮮を相手にして話し合いを進めざるを得ない、そういう情勢が来ないとは言えない。そういう場合に非常にこれが障害になってくる。だからして、私どもはその解釈というものを明確にしたかどうか、一致さしたかどうか。外務大臣は基本条約第三条、そのとおりだというけれども、韓国はあくまでもそうじゃないといっておるから、この点はどうかということを私は尋ねております。これは解釈も一致しましたね。韓国の領域は、休戦ラインから南半、これは一致しましたね。
  202. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓会談では一致いたしました。
  203. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、この白書についてはどういうお考えですか。韓国は公式文書をもってそうでないといっておるのです、国民に対する文書でもって。この文書が出た以上は、あなたは読んでいないということだけれども、これはやはり私は問題にしてもらわなければならぬと思いますよ。これは当然問題にしてもらわなければなりませんよ。いかがですか。
  204. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 われわれはあくまで権威ある条約がこの問題の決定の唯一の根拠である、かように考えております。もしもこの条約の実行にあたって韓国がこれをひるがえして、その白書に書いてあるようなことを主張してきたような場合には、これは絶対に受け付けるわけにはいかない。それの解釈は、結局この基本条約に関しましては日韓、それから英文と、三国の国語で書かれております。両方の国語上の疑義は英文によるということにもなっておりますので、おのずからその紛争処理のたてまえははっきりといたしておるのでございますから、その白書は、その前には何ら価値のないものになる、かように考えております。
  205. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は、そのように申されても、白書にはっきり書いている以上、私は疑問が残る。しかしながら、これはいずれ適当な機会になお質問をしていきたいと思う。  その次にお聞きしたいことは李ラインです。これは撤廃になりましたね。いかがですか。
  206. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 撤廃というと、これはいろいろなことばの使い方で疑問が起こりますが、もはや李ラインはなくなった、こういうことになると思うのであります。すなわち基本条約の前文には、明記する以外に、公海自由の原則というものは絶対そこなわれないということがまず書いてあって、そして日韓の両国の間にお互い基線から十二海里を専管水域とする。専管水域以外はこれは公海でありまして、ただ、その一定範囲を漁業規制区域ということにして、主として日韓の漁民がここで漁業をやる事実上の場所でございますから、他の国を排除するわけにはいかぬのでありますけれども、主として日韓の漁船がここで漁業をする。その場合に、無制限な漁業をやって資源を枯渇するということは、将来にわたって非常な禍根を残すことになるのでありますから、お互いに漁業に従事する船舶あるいは漁獲量というようなものに一つの規制を加えて、そして魚族資源を保護していこう、その取り締まりについては、一方的にこれを取り締まることでなしに、いわゆる旗国主義、韓国の漁船は韓国の監視船によって、日本の漁船は日本の監視船によって、その両国の協定に従って臨検あるいはその他の取り締まりを受ける、こういうことにいたしました結果、あとの海域は何らの規制を加えない、公海自由の原則が適用されるということになりましたので、李ラインというものは全くあとかたもなく消滅した、こういうことになるのであります。
  207. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたの御答弁でいささか気になるところがございます。それは、李ラインは撤廃したのかと聞いたら、さあ撤廃と言ってはちょっと問題があると、こう言っておるのです。それはどういうことですか。これはひとつ要点を的確に言ってくださいよ、長々とやらないで。
  208. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 向こうは李ラインがあるとこう言っているし、こっちは李ラインはないとこう言っている。だから、こっちから見たら、ないものを撤廃するというような協定は適当でないのであります。だから、結局そんなものはもう問題にならぬように、ほかのほうからきめてかかるということにしたのであります、こっちは初めから認めていないのですから。そういう意味でございます。
  209. 野原覺

    ○野原(覺)委員 初めから認めていないけれども、これは国際法違反だ。外務大臣が言うように、初めから認めていないけれども現実には漁業資源保護法その他によってつかまって牢屋にぶち込まれる。そういうひどい目を長い間日本側が受けてきたわけです。だから李ラインの撤廃が問題なんです。これは不法だということで簡単に片づくなら、だれも問題にしないのです。ところが、いまあなたの御答弁を聞いておると、韓国側は李ラインは残っておるといまでも言うのですか、この条約が調印される段階がきてでも。これは大問題ですよ。大問題ですよ、これは。あなたは韓国側がいまでも李ラインは残っておるということを、そう主張しておると言われたんだが、その主張がありながら一体この調印をしたんですか、国際法違反のその主張を認めながらを調印したんですか、いかがですか。このところは明確にしましょう。
  210. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまでも李ラインは向こうは残っていると言っておるわけではございません。この条約正式調印以前におきましては、李ラインというものを主張しておった。こっちは認めない。認めないけれども、事実上李ラインを侵すと漁船が拿捕される。われわれは漁船の拿捕ということを問題にした。そういう不当な一線を画して、そうしてそれを侵したこういうことを言って不法に漁船を拿捕するというのはけしからぬ、こういうことを言ってきたわけであります。それで、いま申し上げるとおり、十二海里の専管水域は認めます。しかし共同規制水域、これにおきましてもいわゆる旗国主義で、一定の規制を侵すか侵さぬかということについての取り締まり等は、これは従来であれば当然李ラインの中、内側でございますから、向こう側はわが領域なりとばかりに日本の漁船をどんどん拿捕していったのでありますが、今後においては、そういうことは絶対なくなる、そういう原則を向こうが認めました。これすなわち、向こうも李ラインの撤廃に踏み切ったということでございます。
  211. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いまでも残っておるとは言っていないということですが、間違いございませんか。撤廃されたと今日の時点で韓国は言っておりますか。存続しておるとは言っていないとあなたは言われたんだが、それは間違いありませんか。
  212. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今日においては、少なくとも韓国の責任ある当局は、そんなばかなことは言ってないと思います。ただ、うそでも十数年間、李ラインというのはあるぞ、あるぞというようなことを言って、漁民に説き聞かしておったわけでありますから、漁民の心情を考えて、あるいはどんなことを国内的に言っているかわかりませんけれども、実際問題としては、それはもう空虚なものである。われわれはもしこの条約が施行されることになりますれば、もう李ラインというものは影も形もなくなるということを確信しております。
  213. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務省の政府委員がおるでしょう。いまのような外務大臣答弁でいいのかね。外務省の政府委員に聞くが、今日の時点で、韓国は李ラインは残っておるとは言っていない、こう大臣は言われるが、あれでいいのかね。これは尋ねておきたい。政府委員の意見を聞く。
  214. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま外務大臣から御説明のありましたとおりでありますが、先ほど外務大臣がおあげになりましたように、日韓の漁業協定には、前文に、御承知のことと思いますが、両国の関係で「公海自由の原則がこの協定に特別の規定がある場合を除くほかは尊重されるべきことを確認し、」とございまして、特別の場合としては、専管水域等の規定があるわけでございます。したがって、少なくも日本国と韓国との間に関してはそれ以外の部分については公海自由の原則が支配をする。つまり李ラインという問題は、これはそれ自身指摘いたしまして、条約上撤廃するというようなことがありませんので、外務大臣のさっきのおっしゃったような表現になったと思いますが、少なくも実態的に、実質的にそれが存在する余地は全然ない。これだけは安心して申し上げられると思います。
  215. 野原覺

    ○野原(覺)委員 法律の専門家がそういう御見解ではいささか困りますよ。これは公海自由の原則が前文にうたわれておると申しますけれども、李承晩ライン宣言の末尾に何と書いてあるかというと、「公海における航行自由の原則を否定するものではない。」李ラインそのものに公海自由の原則はうたっておったんです。そうして今度は、なるほど漁業協定の前文には公海自由の原則をうたっておる。この漁業協定の前文の公海自由の原則たるやきわめてあやふやなものなんです。李ラインでもうたっておる。公海自由の原則を否定するものではない。これは李承晩ラインを見てごらんなさい、末尾にあるから。そこで、いま法制局長ですか、それから外務大臣も、お二人とも李ラインは実質的な撤廃だとこう言う。ところがこれまた同じく私は韓国白書を読み上げます。ずっと前文がありまして、「漁業協定により、日本は平和ライン内の一定の規制水域で、一定の隻数の漁船による一定量の漁獲が許されることになるのであるから、平和ラインはその本来の目的趣旨が合意された協定の形で厳然と残ることになる。」これは韓国側の見解です。平和ラインは残ると言っている。平和ラインは残るけれども、共同規制水域、つまり韓国の漁業専管水域以外の平和ラインの内には六年の期限を限って日本の漁船は入ることができる。それは十五万トンか十六万五千トンかの魚を自由にとることができる。これは漁業協定の有効期限は五年で、通告期限が一年あるから六年です。ところがこの六年の期限が満了すれば、漁業協定の改定ができない。これは一方の側がどうしても応じなければできない、こういうことになると問題が起こってくるのです。これは自動的にこの李ラインがまたもとに返る。向こうは李ラインは撤廃してないといっておる。いま外務大臣答弁を聞いても法制局長官答弁を聞いても、李ラインが完全に撤廃されたとは言わない。実質的撤廃と、こう言っている。完全になくなったということと実質的撤廃ということは私は違うと思うのです。違います。実質的撤廃とは、李ラインはある、形式的にある、これは認めざるを得ない。これを認めないことには韓国は調印に応じない。だからこれは認めよう、形式的の李ラインは認めよう、けれども中には日本の船が入っていくのだから、事実上李ラインの法的な裏づけをしている漁業資源法というものはあってなきがごとき状態になる。ところが漁業協定の期限は六年ですから、六年たって再改定ができなければまたもとのもくあみ、李ラインは返る。無償三億ドル、有償二億ドル、民間経済援助三億ドル、八億ドル日本から金をもらうことでもあるし、アメリカもやんやとやかましくいうことでもあるから、まあしようがない。六年だけは入れてやれ、六年たったらもとに戻るのだ、その証拠を残すために、平和ラインとして厳然として残ると、この主張を一貫してきておるのじゃありませんか。一貫してこの主張をしてきたがゆえに、日本外務大臣は完全に撤廃されたかという私の質問にしり込みをするのです。私はこれは重大だと思う。国際法違反の李ラインを形式的にも承認して調印をしたということは重大だと思う。なぜ李ラインの問題にしても竹島の問題にしても、こういう懸案事項の重大な問題をあいまいにして調印をしなければならぬのか。十四年かかってきたことであるから、まあこの辺でやろうという気持ちはわかる。しかしながら、日本の国内にも反対勢力は強い。韓国の国内にも強い。しかもいま言った李ラインにしても実にあいまいだ。一体どうしてそういう大事なことを、形式的にも撤廃されたかどうかということも明確にしないで調印をしたかということが私はわからないのです。竹島については今後資料を出すということでございますが、どのような資料が出てきますか、私は大いに注目いたしましょう。李ラインについてはついに形式的撤廃で、形式的に残ることを承認しておる。ほんとうのこういうことをあいまいにして調印をしたということは、佐藤内閣が何か長い間の懸案を解決して、ここで点数をかせごうじゃないか、ILOもやったんだから、まあ日韓もやれば、佐藤榮作という総理大臣は長い間の懸案を解決した総理として歴史にも残ると、鳩山さんが日ソ交渉をやったし、何か一つ歴史的な懸案事項を解決しようという功名心からなさったのでございますか。総理大臣、いかがですか。これは、私はそうでないならそうでないという理由をお聞かせ願いたい。どうも私はわからないのです。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 功名心から日韓交渉を最終的に調印したと、そんなことはございません。
  217. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは竹島の問題をあいまいにし、李ラインの形式的な撤廃で、李ラインの完全撤廃をあいまいにして、どうして調印をしたのです。こういうことは根本的に解決して調印さるべきじゃありませんか。国際法違反ですよ、李ラインは。完全撤廃になっておりませんよ。どうして調印をしたのです。――総理に聞いておる。あなたは――委員長総理に聞いておるから、総理答弁してから答弁させてください。
  218. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御指名がありましたので、私の先ほどお答えについて誤解の種があったようでございますので、一言申し上げます。  先ほどお答えについて、特に私指摘したつもりでございますが、この協定に特別の規定がある場合を除きますと――この協定には専管水域とかいろいろな規定はございます。そういう規定は別でありますが、そういう規定外の部分については公海自由の原則が尊重される。これは問題なしに、限定的に規定したもの以外には公海の自由が及ぶ。これはもうれっきとして両国の間に規定したことでございます。一方、なぜそれでは李ラインの撤廃を明言しなかったか。これは一応御疑問だと思いますが、李ラインというのは、われわれが再三申し上げておりますとおりに、これは国際法上不法不当なものとして実はもとから認めてないものでございます。したがって、それを明文をもって規定して廃するというようなしろものではない。とにかく実態的に李ラインというものはこの協定上相いれないことになる。したがって、それは実質的にと申し上げましたのがたいへんお気一にさわったようでございますが、とにかくそういうものとしては日韓両国の間では存在し得ない、  これは条文からきわめて明白であろうと思います。
  219. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ちっとも明白でない。それでは私は――これは委員長に要求いたしますが、質問をする私が総理大臣と指名をした場合には、委員長はやはり指名された方に答弁をしていただいて、その上で総理の要請があれば政府委員が出るということにすべきであります。委員長のただいまの運営、これはただいまだけではない。いつも法制局長官というのは、前の林長官のときからそうなのです。何とかしてきょう法制局長官のその法的な知識を告さなければならぬという功名心があるのかどうか知らぬが、これは私が指名もしないのにいつもそのマイクの前に飛び出してくる。これは越権もはなはだしいと思う。われわれは国務大臣を相手に審議するんだ。法制局長官というのは国政審議のあり方を知っておるはずだ。議員が国務大臣に質問をし、国務大臣はわれわれに答弁をしなければならぬ。君らは国務大臣の相談役じゃないか。その相談役であるものがかってに出てくるとは何ごとだ。陳謝をせよ。そういうことは、自体、私はいまの場合だけでなしに、今後これは運営の問題として、委員長、特に御注意願いたい。委員長の御所見を求めます。
  220. 青木正

    青木委員長 お答え申し上げます。  条文上の解釈でありますので法制局長官が御説明申し上げたことであります。御了承願います。
  221. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その場合には、これは国務大臣の要請があって答弁に立つ、こういうことにしてもらいたい。  そこで、私はあえて法制局長官お尋ねいたします。今度は私が指名をする。あなたが、漁業の専管水域以外に公海自由の原則が認められることになったという、これは私も承認できる。これは永久にですか。これは何か期限はございませんか。公海自由の原則がなるほど前文にうたわれておりますが、これは時間的な制約を受けておりませんか。法制局長官、あなたは法律の専門家だ、いかがですか。
  222. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほども御言及になりましたが、この漁業協定については一応協定の期限というものがございます。「五年間効力を存続し、その後は、いずれか一方の締約国が他方の締約国にこの協定を終了させる意思を通告する日から一年間効力を存続する。」というのがございます。したがって、この協定は、その文言からいえばその説明を要しませんとおりに、その効力の存続期間だけあるわけでございますが、しかし、ともかくも日韓両国の間にこういう協定が締結されて、そして本来国際法の原理原則といたしましての確立された国際法規というものが現在支配しているわけでございますから、全然ない場合と違いまして、こういう協定ができた後の話、それはまた別個にこの期間が経過した後には協定が遂げられなければならぬと思いますが、それについて現在の協定そのものが非常に大きな意味を持つということも、これは疑いをいれないことだと思います。
  223. 青木正

    青木委員長 野原君、持ち時間がまいっておりますので、結論をお願いいたします。
  224. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは法制局長官、私はあなたにもう一度聞きましょう。私があなたに尋ねたいことは、この存続期間は六年だ、六年の制約があるということです。六年を経過して協定の効力が存続しないということになると、日韓の間には漁業については無条約状態になるわけです。これはお認めになると思う。そうなってまいりますと、韓国は直ちに李ラインは自動的に復活したと主張するでありましょう。何となれば、李ラインの撤廃は韓国は約束しなかったのです。形式的にはおれはうんとは言えない、こう言ったのです。しかもその李ラインの法的な裏づけをしておる漁業資源保護法は、韓国は国内法として現存させるわけです。私が李ラインは残ったと主張することはともかくとして、日本の漁船を拿捕したところの法律、悪法の漁業資源保護法くらいは撤廃させなければ、漁業協定の調印はできないというくらいの交渉がしてもらいたかったんだ、政府に。ところがこれも認めてしまったんだ。こうなれば、六年の期限がたつというと、李ラインは自動的に復活するわ、直ちに生き残っておるところの漁業資源保護法によって日本の漁船は拿捕されることになるじゃありませんか。私は、これは日韓条約の調印が軽率であったという一つの証拠として申し上げておる。この点、あなたはどう考えますか。漁業資源保護法というものは撤廃さすべきであったという私の主張をあなたはお認めになりませんか。
  225. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 一国の法律は、その国の主権の作用として実はできるものでございまして、その国の法律を撤廃しろということを直接に要求するというのはいかがかと思いますが、とにかく条約ができまして、その条約と相いれない事態が事実としてはあるかもしれませんが、そういう事実がもしありとすれば、それは条約に違反する事実であって、それに対しては国際法上認められているいろいろな交渉関係というのが出てまいります。しかし、条約というものを結んだ以上は、相互にそれが善意を持って確保されていく、履行されていく、守られていくという前提に立ってでないと、条約の意味はございませんが、そういう意味からいたしまして、もしそれが韓国の漁業資源保護法と相いれないものがあれば、漁業資源保護法はおのずからその結果として改定をされるものだと私は思います。  少なくもとにかく一国の法律そのものを撤廃しろというようなことを要求するということは、これはいかがかと思いますが、いま申したように、条約というものがあることになりますと、その条約に違反するような国内法は、その存立を結果として許されなくなる。したがって、適当なる国内措置がとられるものというふうに私は思います。
  226. 青木正

    青木委員長 野原君、結論をお願い申し上げます。
  227. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、漁業資源保護法は生き残っておるし、それから六年の期限が経過いたしますと、李ラインは自動的に復活をする。これは法制局長官も認めざるを得ないと思う。無条約状態になれば復活するかもしれないという懸念がある。私はこの懸念はあると思う。だから、あなた方が公海自由の原則によってとか、李ラインはなくなったのだと言うならば、少なくとも日韓条約の調印をするにあたっては、日本と韓国との間の水域にこのような国際法違反の不法不当なラインは設けてはいかぬぞということくらいの確約を一本とるべきなんです。自主的撤廃とは六年間の自主的撤廃だ、六年間だけ何隻かの船が入って、十何万トンかの魚がとれる、その制限を付けられた限りの撤廃だ。時間的な制約の自主的撤廃だ。その時間が経過すればもとに戻るかもわからないという状態に置かれていることを知りながら、そのことの破棄を求めないままに調印したということは、これは総理大臣、軽率のそしりを免れませんよ、この問題は。これは、私どもはやがて日韓条約の批准国会において追及をしなければならぬと考えます。  そこで、先ほどの真のねらいというものは、そういう中身をあいまいにしながら、参議院選挙社会党の代議士は一人も東京にいないし、国民選挙に焦点を向けている六月二十二日の選挙のまっ最中、徹夜でやった。竹島の問題だって問題がある。李ラインだって、領域だって問題がある。あるいは法的地位だって、待遇だって問題がある。きょうは時間がありませんから触れておりませんが、韓国籍の者と韓国籍でない朝鮮人との処遇が、持ち帰り金にしたって、その持ち帰り財産にしたって、あるいは教育と生活保護はともかくとして、国民健康保険にしても、いまだに方針が出ていないようだが、これに差別待遇があるということになると、今後の朝鮮対策として、日本政府はいわゆる国際的な大きな問題点を残すことになると私は思うのです。そういうふうにたくさんの問題点を残しながらこのような調印をした真の理由というものはどこにあるのか。これはなかなか日本政府はほんとうのことを言わないのですが、韓国の朴正煕はこの点はりっぱだと思う。ほんとうのことを言っております。読み上げます。韓国の朴正煕がこう言っている、ほんとうのねらいを。「最近のアジアの情勢と、ベトナム地帯の流動的国際情勢の激変を語らずとも、自由陣営の結束は、そのいかなる時よりも最も緊急に要請されているのが実情である。もっとも、中共は核実験成功を契機として国際政治上の地位が急速にクローズ・アップされ、世界政治の舞台である国連への加入をめざし一歩一歩その基盤を固めつつあるこの時、ともに自由陣営の一員であり、地理的にも隣接する韓日両国の国交正常化は緊急に解決されねばならない問題である。」中共を目標にしたということをここに書いているのです。長くなりますから、大事なことは抜いておきます。これは朴正煕の発表です。今度はその次、ずっと省いて前文省略。「これは結局、日本も変遷する国際情勢と中共の急速な膨張に対処するため、自由陣営が結束して、とくに極東における共産勢力の脅威を最も身近に受けている韓日両国が、国交正常化を通じて結束しなければならない緊要性ないし不可避性を認識していることを語っているものだと思う。」この締結は、これはつまり反共の立場をとるということです。中共を目標、これは反共の一つの同盟だということ。私は時間が、ございませんから、これはずっと申し上げませんが、「韓日両国が国交を正常化することは、単に韓日両国だけでなく全自由世界の利益をもたらすものである。これがすなわちアメリカをはじめとする友邦国家がみなともに韓日交渉の早期妥結を強く望んでいる理由である」云々。ここで、韓日会談の白書の「自由陣営の結束」というところに韓国政府が正式に発表したもの、これを見てみますと、日韓会談とは、これは因数分解をすれば日米韓会談である。日韓会談は、日韓会談プラス米韓会談プラス米日会談、こういうふうに因数分解されて、答えは日米韓会談だ。私は、時間がないからその証拠はいまここではあえて出しません。これはアメリカの日本に対する要請、アメリカの韓国に対する要請、問題は、アメリカの中国封じ込め、そういうところからの要請がきびしいために、ベトナムの戦争も激しく展開されておるために、どうしても日本がここで立ち上がってもらわなければならない。日韓の正常化という形で自由陣営の結束を誇示しなければならぬというところに原因がきておることは、朴正煕は率直に国民に訴えておる。ところが、このことを私どもが本会議その他で質問いたしましても、そういうことは断じてない、何言っているんだ、韓国とは隣国だからやったんだ、とこう言う。隣国なら、なぜ中国とやらぬかと言えば、御答弁ができない。こういうように、平和に徹すると総理は言われますけれども、この問題はいまここでは時間的に議論はできませんが、私はあなたの平和観というものをもう少し掘り下げて承らなければならぬ時期がやがてきたならば、平和に徹するというその平和とは、具体的にどういうことか。平和とは、私は戦争をしないということだと思うのです。仲よくするということだと思う。仲よくするということであれば、何も共産主義とか資本主義のイデオロギーにこだわらないで日本は手を差し伸べるべきだ。ところが、今度の日韓会談の中身は、法的地位の待遇においても、おまえは北鮮であれば差別する、こういうような考え方に立っておることをきわめて遺憾に思うのです。時間がございませんために、まことに残念でございますが、真のねらいは中国を封じ込め、それから反共の同盟。日韓会談とは、アメリカの極東戦略によって要請されたために、竹島もあいまいにし、それから李ラインもあいまいにし、韓国の領域もあいまいにしてこの条約が調印をされておるものと私どもは断定せざるを得ないのであります。  以上を申し上げて質問を終わります。(拍手)
  228. 青木正

    青木委員長 これにて野原君の質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  229. 青木正

    青木委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十年度一般会計補正予算審査のため、明五日午後一時より日本銀行副総裁佐々木直君を、また、明後六日午前十時より商工組合中央金庫理事長北野重雄君、全国銀行協会会長岩佐凱實君、全国相互銀行協会会長尾川武夫君及び全国信用金庫協会会長小野孝行君をそれぞれ参考人として出頭を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次会は明五日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会