運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-08-10 第49回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月十日(火曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 濱田 幸雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       唐澤 俊樹君    小金 義照君       四宮 久吉君    馬場 元治君       濱野 清吾君    早川  崇君       森下 元晴君    赤松  勇君       井伊 誠一君    神近 市子君       長谷川正三君    志賀 義雄君       田中織之進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君  委員外出席者         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  稲木  進君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         厚生事務官         (国立公園局管         理課長)    上村  一君         農林事務官         (農地局管理部         長)      木戸 四夫君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 八月九日  委員高橋等君及び森下元晴辞任につき、その  補欠として前尾繁三郎君及び岸信介君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岸信介辞任につき、その補欠として森下  元晴君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 八月六日  東京法務局文京出張所における商業登記事務取  扱いに関する請願四宮久吉紹介)(第一九  四号) 同月七日  木古内簡易裁判所等存置に関する請願山内広  君紹介)(第二六八号)  同(佐藤孝行紹介)(第三六八号)  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (佐々木秀世紹介)(第三六七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件  請 願   一 木古内簡易裁判所等存置に関する請願     (田中正巳紹介)(第二号)   二 東京法務局文京出張所における商業登記     事務取扱いに関する請願四宮久吉君紹     介)(第一九四号)   三 木古内簡易裁判所等存置に関する請願     (山内広紹介)(第二六八号)   四 同(佐藤孝行紹介)(第三六八号)   五 改正刑法準備草案第三百六十七条に関す     る請願佐々木秀世紹介)(第三六七     号)      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告申し上げます。  当委員会委員でありました高橋等君は、本日急逝せられました。ここにつつしんで哀悼の意を表し、御報告申し上げます。      ————◇—————
  3. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより請願審査に入ります。  今国会において本委員会に付託せられました請願は五件であります。  請願日程第一より第五までを一括して議題といたします。  まず、審査方法についておはかりいたします。  各請願内容については文書表御存じのことでもありますし、また先ほどの理事会で御検討願ったところでありまするので、この際、各請願について紹介議員よりの説明聴取等は省略し、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  これより採決いたします。  本日の請願日程全部はいずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  7. 濱田幸雄

    濱田委員長 次に、閉会審査に関する件について、おはかりいたします。  まず、閉会審査申し出の件についておはかりいたします。  すなわち、春日一幸君外一名提出会社更生法の一部を改正する法律案田中武夫君外二十二名提出会社更生法の一部を改正する法律案並びに裁判所司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件、国内治安及び人権擁護に関する件、以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行ないたいと存じますので、この旨議長に対し申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     —————————————
  9. 濱田幸雄

    濱田委員長 次に、おはかりいたします。  閉会審査に関し、最高裁判所長官またはその指定する代理者から出席説明要求がありました場合には、そのつど委員会にはかることなく、その取り扱いを委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     —————————————
  11. 濱田幸雄

    濱田委員長 閉会中の委員派遣に関する件についておはかりいたします。  閉会審査のため、実地調査の必要がある場合には、委員派遣を行なうこととし、派遣委員派遣地及び期間等、その他議長に対する承認申請手続等、すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  13. 濱田幸雄

    濱田委員長 法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  14. 横山利秋

    横山委員 本日、私は人権問題一般について、政府側の御意向をただしたいと思うのであります。  申すまでもなく、この人権問題は一九四八年の国際連合の総会において世界宣言ができ、さらに憲法によって、第十一条、基本的人権の享有、第十二条、自由、権利の保持の責任と、その乱用の禁止、第十三条、個人の尊重と公共の福祉等、新憲法基本的な権利である人権問題をきわめて重要な柱として、新しい日本の行く手を示したものだと考えています。まさにその点は画期的なものが新憲法には存在をしておるのであります。  しかるところ、最近の状況を見ますと、必ずしも国民各階層の中で、人権尊重の新憲法の精神というものが十分に徹底をしていないうらみを痛感せざるを得ないのであります。特にまた、その推進力となる法務省、また民間団体としての人権擁護委員活動動き等を見ますと、このまま放置をしたのでは新憲法のこの基本的な国民権利及び義務、人権の問題が空文化するおそれありと私は考えます。きょうはしなくも全国人権擁護委員の各位が、全国からお集まりだそうでありますが、多忙なところ局長に出てもらって、それらの人々に対しては恐縮をしておるのでありますから、簡潔に私の意のあるところをひとつただしまして、政府の所信を伺いたいと思います。  第一は、私は法制的な問題があるのではないかと思われるのであります。憲法で大本を示されておりながら、法令におきましては法務省設置法並びに人権擁護委員法二つ規定されておるにすぎません。したがいまして、私の感ずるところによりますと、法務省内に存する人権擁護局、それから民間人権擁護委員の組織、それらは一体どうあるべきか、どう関連を持たすべきかについて、画然たる取りきめがない。憲法規定されておるだけで、法務省設置法を見ましても、憲法の柱である人権問題についての基本的な基本法がない。国と民間団体との調整はいかにあるべきかという定めがない。そういう法制的な問題がまず第一にこの人権問題運営の欠陥ではないか、こう痛感をさせられるのであります。たとえば、そのために一例をもって言いますと、人権擁護委員はいかなる権限があるか。また人権擁護局長法律に基づいて、つまり法務省設置法に基づいて、この膨大な告発、勧告通告説諭等々のことをし得る基礎法がないではないか。なるほど内部規定においてこれらの権限を持っておる向きもありますが、法律人権擁護局長なり、あるいは法務局長が行なう権限の取りきめの基礎法がないではないか。端的に言えば、かってにやっているのじゃないか。そういう感じがいたすことが第一であります。  第二番目には、民間団体である人権擁護委員はいかなる権限を持っておるのであるか。擁護委員は、この人権擁護委員法によって若干の規定があるけれども、これらを最終的に行使をしておるかということを私は調べてみました。委員職務、それから十七条の協議会任務、十八条の連合会任務、これらを読んでみますと、個々の人権侵犯事件について委員がなすべき最終的な権限及び任務が不十分である。単に所管のところへ報告をするだけであって、自分で措置をし得るという状況になっていない。法律上及び現状ともにそうなっていない。こういうことが痛感をされるわけであります。それから現状としては法務局長がこれらの措置をするのでありますが、処理決定にあたって、人権擁護委員が取り扱った問題について擁護委員処理決定に参画していない実情であります。そうだとすれば、ますますもって人権擁護委員の独立した職務として法に規定した職務と、国の機関との関係というものが、不明確である。それは運用によってやれないことはないという話が出るとは思いますけれども基本的にそれは法務省設置法人権擁護委員法だけであって、その連絡関係を一本の法律によって規定すべき必要があるのではないか。いろいろと例を申し上げましたが、そういうのが私の意見であります。まずその意見について御見解を承りたい。
  15. 鈴木信次郎

    鈴木説明員 ただいま人権擁護のあり方、特に新憲法下におきましては基本的人権尊重ということが非常に重要であるにもかかわらず、現在の人権擁護局あるいは人権擁護委員につきまして、その法制的な面におきまして、また実際の任務について、不十分な点が多々あるではないかという御指摘でございますが、これはまさにそのとおりでありまして、私どもも決して現在の状況が十分であるというふうに考えておるわけではございません。御指摘のように、法制的には法務省設置法、それから人権擁護委員法、この二つ法律基本になっておるのであります。法務省設置法は、これまた御指摘のように内部権限を定めた法律であるというふうに一応は言えるかと思いますが、やはりそれでも法律法律でありますから、これに基づいて私どもが定められた権限を行使し得ることは当然であろうと考えます。  それから人権擁護局あるいは委員、その両者の間の関連が不十分ではないかという御指摘でございますが、これは人権擁護委員執務規程によりまして常時連絡をとるように定められております。  それから第二番目に御指摘の、民間団体である人権擁護委員あるいは委員協議会等任務、これまた不明確ではないかという御指摘がございますが、これまた一部すでに御指摘のとおり、人権擁護委員法の中に人権擁護委員任務あるいは協議会任務協議会連合会任務、それぞれ一応規定してあるのであります。そうして人権擁護委員はその職務に関しては法務大臣の指揮、監督を受ける、こうなっておりますので、一応その任務について法律規定はあるというふうに私どもは考えておるわけであります。  それから、実際に見ると人権擁護委員ほんとう侵犯事件調査処理をしてないじゃないか、最後には法務局のほうでやっておるのではないかという御指摘でございまして、一部にそのような事例はまさにあるのでございますが、まず法的に申しまして、人権擁護委員法の十一条の第三号、人権擁護委員職務といたしまして、「人権侵犯事件につき、その救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告関係機関への勧告等適切な処置を講ずること。」というのを職務一つといたしまして、一応人権侵犯事件についての処置委員独自でできるように規定してあるのであります。ただ実際問題になりますと、そうは申すものの、やはり予算等関係もございますので、先ほど御説明いたしましたとおり、法務局のほうと常時連絡していただきましてやっていただくというふうになっております。  なお、全般として人権擁護委員が直接侵犯事件処理をするというのが少ないではないかという点はまさにそのとおりでありまして、現在の実情は、委員のお仕事といたしまして、実際の運用面では侵犯事件処理というよりも、やはり人権思想普及啓発、それからいわゆる人権相談事件と私どもは申しておりますが、まず一般の民衆から、これが人権侵犯になるかならないかわかりませんが、とにかく一応不服を聞きまして、そのうち人権侵犯事件と思われるものにつきましては調査の上、措置をとるというふうにいたしますその第一段階の点を、委員にお願いしておるわけであります。しかし、これも決してこれだけで十分と申すわけではないのでありまして、委員の方がこのお仕事におなれになるに従がいまして、逐次事件処理最後段階までやっていただくようにいたしたいと思いまして、委員研修会等を各地で現在盛んにやっておるような状況でございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 あなたのお話、ことごとくと言っていいほど私は不満であります。一番最後の実際問題よりも人権擁護思想啓蒙及び宣伝をしておるのだとおっしゃるけれども人権擁護思想に関する啓蒙及び宣伝予算というのは皆無にひとしい、あなた御存じのはずであります。私はきのう現地で、人権擁護委員の数名の方と懇談会をして、むしろあなたよりも今日なま身の学問をしてきたつもりであります。その意味では、いまの人権擁護委員の皆さんの御努力はさることながら、人権擁護機能というものが十分に動いていない。憲法並びに二つ人権擁護委員法並び法務省設置法による人権擁護活動というものが、十分に機能を発揮していないということを痛感をしたわけであります。  それで具体的には、私がいま申しましたように、法制上の問題及びそれに伴う運用上の問題として整理してもう一ぺん申し上げますが、たとえば人権擁護法というようなものをつくって、それによって民間団体擁護委員法務省との機能、その調節をはかって、法制上の全き運用をはからなければならぬというのが一つ。それから処置決定にあたって、調査をした委員を参加させるべきであると考えるのが二つ。それから三つ目には、勧告通告それから説諭等にあたっては、本来委員はそのようなことをやる機能法制上持っておるのであるから、十一条を改正をして、委員として勧告通告説諭をやらしめるような、そういう独得な機能を持たせなければ、結局は使い走りであって、調査だけしてくれ、そして重要なことになったらわしのほうに言ってくれ、こういう使い方、運用のしかたになっているのではないか、こういうことを私は考えるわけであります。もっとも、あなたの言うように、人権擁護委員法ができて十六年になるけれども人権擁護委員に独得な、独自な権能を与えることが適切であるかどうか、それの教育が十分できておるかどうかについては議論がある。けれども、そういう知識なり、教育をしていないのは、むしろあなたのほうではないか。それに要する予算というものは、全く皆無にひとしいではないか、こういうことを私は言うのです。したがって、百年河清を待つような今日の現状ではだめだと私は申し上げたいのであります。あらためてそれらの点について御意見を伺います。
  17. 鈴木信次郎

    鈴木説明員 まず第一に啓発活動はほとんど実際にはやっていないじゃないかという御指摘でありますが、予算面から申しますと、これはまことに少ないのでありまして、啓発活動費百十七万八千円ということになっております。しかし実際におきまして、統計表を持っておりますので、これを調べればわかりますが、年間全国を通じておそらく数千回、あるいはそれ以上講演会座談会研究会等啓発活動をしているのであります。  それから法制的に不十分だ、人権擁護法というふうなものをつくるべきじゃないかという御指摘であります。この点につきまして、なるほど憲法基本的人権に関する規定は非常に広範な規定でありまして、これを直ちに具体的事件に適用するという点にはいささか問題があろうかと思います。したがいまして、これをもとにして具体的な人権擁護法というのをつくるべきではないかという御意見、これはまことに貴重な御意見であろうかと存じます。ただ私どもといたしましては、将来はともかく、現在といたしましては、一応その前に、これまた御指摘の、人権擁護委員法制定以来すでに十数年を経過いたしておりまして、現状に合わない点も多々ございますし、また人権擁護委員あるいは人権擁護委員団体であります協議会、各府県段階連合会、さらに全国連合会等から改正の御要望もありますので、この人権擁護委員法改正からまず手をつけたいと思っておりまして、現在その改正作業準備に着手いたしております。その方法として、まず各方面のこれに対する御意見を現在一応まとめた段階になっております。  次の人権侵犯事件調査について、委員を参加させるべきではないかという点でありますが、これも実際には実情に応じて、すなわち具体的事件の性質、それから委員の方の御都合等によりまして、実際に委員単独、あるいは委員法務局職員の共同で侵犯事件調査をお願いしております。  それから最後勧告等の、つまり人権侵犯事件に対する結論段階におきましても、実際には調査に参加された委員の方の御意見、また場合によっては委員団体であるところの委員協議会、あるいは連合会の御意見も伺いまして結論を出すようにしておるのであります。  現在のような情勢では、百年河清を待つにひとしいではないかというおしかりでありまして、私ども現状が十分であるというようなことは決して申しません。また現状のままでこれがよくなるというふうには考えておりませんが、百年たたないでも、もう少し早く、あるいは三年後になりますか、五年後になりますか、これは私どもでは何とも判断いたしかねますけれども、全力をあげてその内容の整備、特に予算、あるいは人員増加については、各方面の御協力、御支援を得まして、実現に努力しておるところでございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 統計表をもって私の意見を整理しますと、たとえば三十九年度における人権侵犯事件統計表を見ますと、全総合計受理件数が八千五百三十八件、前年から受けたのが千五百六十一件でありますが、未済に終わったのが千九百三十五件、八千五百三十八件を受理して、処理未済が約二千件もあるということを第一に指摘しなければなりません。  それから第二番目に指摘をしたいと思いますのは、累年比較であります。十八ページの累年比較を見ますと、受理件数は二十八、九、三十年ごろに一番ふえて、昨年度あたりはわりあいに減っておる。激減ではありませんが横ばい状態である。ところが未済件数は年々歳々ふえる傾向にある。一番受理件数が多かった二十八、九、三十年でも未済件数は千件ないし千百件ぐらいである。ところが三十九年になると約二千件近いのが未済に終わっているということは、問題はある、けれども処理ができていかない、どんどん未処理がふえていくばかりである。そうして相談件数に至っては年々歳々非常にふえていく、こういう状態なのであります。ですから私は、国民の中に潜在をしておる憲法による人権問題という意識が定着しておるかどうかについては多少不安があるけれども人間固有権利としての憲法以前の主張というものは、こういう人権問題で相談がふえていっておるということは事実だと思う。どこかでそれがそしゃくし切れない機能か、あるいはそしゃくし切れない人たちかであって、この未済件数がふえ、相談件数がふえていくということについてあなたはどういう責任を感じていらっしゃるか。
  19. 鈴木信次郎

    鈴木説明員 まず最近数年間の人権侵犯事件の総数でございますが、大体御指摘のとおりここ数年間減少しております。昭和三十四年が一番多くて九千九十、三十五年になりまして八千七百四十一件、三十六年が七千八十七件、三十七年が六千百三十一件、三十八年が五千五百七十八件というふうに、大体千件近くずつ減少しておるのであります。これがほんとう人権思想国民の間に普及徹底いたしまして侵犯事件が減ったのであれば、これはまことにけっこうなことであると思うのでありますが、私どもといたしましても、そう簡単に結論を出すわけにはいかないのじゃないか。これまた御指摘のとおり、反対にいわゆる人権相談事件のほうは毎年激増いたしておりまして、一々数字を読むことは省略させていただきますが、大体毎年一万五千ないし二万件ふえておるのであります。相談事件がふえておるのに侵犯事件が減るというのは、これはおかしいじゃないかということは、私も御指摘のとおり考えまして、昨年人権擁護局長を拝命いたしましてさっそく、これはどうも相談事件という中に、実は侵犯事件が入っているのじゃないか、侵犯事件として取り上げるべきものがそのまま眠っているのじゃないかということを心配いたしまして、全国全部調査するだけの人手もありませんから、一部の局について各具体的な相談事件のカードによってその内容抜き取り検査をしたのであります。その結果は大体におきまして、相談事件のうち約四%は侵犯事件があるという結論が出たので——ただいまその日時は覚えておりませんが、昨年の初め、私が拝命いたしましてから間もなくでありますけれども全国法務局地方法務局に対しましてその点を特に注意して、相談事件の中にある侵犯事件、これを取り上げて、積極的に処理するようにという指示をいたしたのであります。その結果かどうか、数字の上では、三十八年度の人権侵犯事件五千五百七十八件に対しまして三十九年度は六千九百七十七件、約七千件というふうにふえているのであります。若干の効果があったかと思われるのであります。  次に、年々未済事件がふえておるではないかという御指摘の点でありますけれども人権侵犯事件は、やはり事件として申告のありあるいは情報その他によりまして認定した場合には、これはできるだけ早く調査処理すべきことは申すまでもないことであります。そこで、計画といたしましては、私どもは一応事件を、相当複雑な事件とそうでない事件に分けまして、複雑な事件特別事件と称しておりますが、特別事件でも六カ月以内にこれを処理するという一応の目標を立てまして、これに必要な予算人員要求を昨年来いたしておりますが、遺憾ながらこれは実現しなかったという実情であります。今後も引き続き予算要求人員増加要求をいたしますとともに、現在の手持ちの職員でもできるだけ能率をあげてその線に近づけるべく努力をいたすつもりでございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 ちょうど大臣が見えましたが、局長では予算のことはだめだと思うので、大臣にひとつ聞いてもらいたいのです。きょうは大臣がいらっしゃるまで人権問題の一般論について、実情説明して、お伺いしておるわけでありますが、憲法並びに人権擁護委員法並び法務省設置法規定してある、基本的な人間権利である人権問題が、最近非常に能率があがらない。局長のいろいろ御説明を聞いているけれども相談件数は激増する、未済件数はふえる、こういう状況ではかなわぬ。  きのう私は愛知県で数字を調べてまいりましたが、愛知県では人権擁護委員がたしか三百四十五名おるのです。それに対する予算は、県下全般で、法務省から委員の実費弁償として七十六万九千円です。それからその旅費が三十三万五千円です。謝金その他が四万三千円です。そうすると、三百四十五人に対して法務省から出ております金は百十四万円にすぎません。それに市町村、県にお願いして百九十万円もらっているわけです。その百九十万円も、市町村の赤字財政でというわけで二割削限されまして、百九十万円になりました。委員の諸君の言うには、県や市町村にみんながかわり合って陳情にいくというのです。陳情にいくと、何かお祭りの寄付金でももらいにきたと同じように遇せられて、そうして、頼むからひとつ予算をふやしてくれ、こう言う。何で私どもがそんなことを言わなければならぬ。何で私どもが祭礼の寄付金集めのような形でやらぬならぬか、自分がいやになる、こう言う。二割削減、そんなことは、人権問題について市町村の考え方がおかしい。だから、当然のことのように自分は主張するのにかかわらず、恩着せがましく話をされるということは心外にたえない。いま未済件数が非常にふえている。一方相談件数がふえておる。私の言うのは、どこかの機能が動いていない。人権擁護委員教育予算が全然ないのです。予算がないのですから、これはもう機能も十分に充実をしてないと思うので、大臣にこういうことを言ってまことに恐縮でありますが、先般賀屋法務大臣が貧乏な人の法律補助、弁護士にかかれないというわけで、昨年でありましたか、一昨年でありましたか、私はわずかな金だと思うのですが、五千万の金を賀屋さんが法律扶助協会へ予算としてお出しになりました。それは非常にかっさいを浴びた。ほんとにかっさいを浴びたのです。私は、そんな五千万が全国でどのくらいの機能を発揮したか。当時でも私はたったそれだけかと言ったのですが、それでも、この法務省予算というのは非常にきびしい予算、つまらぬ予算なものですから、それだけのことでもたいへんなかっさいを浴びた。いま人権擁護委員が、私は愛知県の例をとって言うのですが、三百四十五人、市町村もあわせて年間三百五万円です。それでこの機能を充実しろというのはむちゃな話だと思うのです。調停委員は一日八百円です。ところが人権擁護委員は日額四百円です。この四百円も事件活動日に出てきたら四百円でありますから、結局擁護委員の皆さんがバスに乗ったりタクシーに乗ったり、ちょっと帰りにお茶でも飲んだら、これは全く犠牲奉仕です。何とかひとっここに大臣の手で、法律扶助協会に前大臣がおやりになったようなお気持ちを、今度は人権擁護委員の活動に、憲法の大きな柱である人権擁護の活動に、予算をひとつめんどうをみてもらいたい。もうすでに予算要求段階でございますから、特にお願いしたいのでございますが……。
  21. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 人権擁護仕事がどんなに重大であるかということは、私同感でございます。仕事の量がだんだんふえておることは、この人権擁護仕事国民全般にわかって、そうしてその申し出があった数がふえておるということが、一つの大きな原因だと思うのでございます。それに対応するいき方は、いかにもいま御説のとおりでございます。この間からいろいろな話を聞いておりまして、まことに寒々とした思いをいたしておるわけでございます。これは何とかしなくちゃならない。たくさん問題を法務省は持っておるわけでございますが、その最も大きな問題の一つだと思うております。心してやっていきたいと思うております。
  22. 横山利秋

    横山委員 全国人権擁護委員連合会から、すでは大会決議でいろいろな問題が出ておる。私はこれを通読をしてみまして、一体これらの人権擁護連合会の決議というものを、どの程度政府尊重しておるのかということについて、一まつの疑念なきを得ないと思われます。試みにその決議の一部をここで読んでみますと、三十九年二月には長期欠席学童に対する対策について、すでに要望がされました。これは三十八年の十月に決定した問題であり、今度の参議院選挙の直前に、佐藤さんが長期欠席児童の給食についてはじめてお取り上げになりましたけれども、これはもう二年前に決議をしておる問題であります。佐藤さんが何かの拍子にちょっとほかで聞かれたことを思いつかれてやられた。やられたことはけっこうだけれども、オーソドックスな人権擁護委員連合会が二年も前に、文部大臣をはじめ各省大臣に決議をして提出をせられておるのでありますから、ちょっとした投書よりも、このオーソドックスな人権擁護委員連合会の決議がなぜ尊重されなかったかと私は痛感いたします。  それから三十九年二月に公害を規制する法律の統一的制定についての要望がありました。人権問題で最近非常にふえておりますのが公害の問題であります。大臣は、この間も夢の島の問題について閣議で発言されたと聞きました。大臣の発言の要旨は、こういうことを地方自治体だけにやらしてはもうだめではないか、国がひとつ乗り出して、こういうことは措置しなければならないのではないか、こういう発言で、まことに私はごもっともだと思うのです。しかしこれとても、二年前に人権擁護委員連合会がすでに決議しておる問題であります。同じく三十九年二月の河川の汚濁を浄化する措置についての要望も同様であります。同じくその年に心身障害児童の収容施設増強拡充強化についての決議がなされております。それから原動機付自転車による交通事故被害者に対する保護救済措置についての決議が三十九年十一月にされております。この問題は、運輸省はのんだのです。ところが大蔵省が再保険をするのはいやだというためにうまくいっておりません。これも人権問題から議論をし、人権問題から提議をいたしましたならば、もっと早く解決するものだと思います。三十九年十一月には、血液行政の改善施策について要望がされています。これは最近の血液行政が、不良血液が社会的な問題になっています。それから三十九年十一月に、暴力行為取り締まり施策の強化についての要望がありました。これは単に人権問題でなくて、本委員会が取り上げて、すでに政府としても新暴力法で実施をされておる問題でありますからともかくといたしますが、しかし、これらの決議を全国の会合を開いて決定をして要望書を提出したものが、ほかの圧力団体と違ってどうもなおざりにされておる。ほかの圧力団体がそれぞれ金を出し合って自分たちの利害に結びつく問題として決議をし、政府にプレッシャーをかけておりますことは、言い方は悪いけれども、わりあいにうまくいっておるわけであります。ところが、社会奉仕並びにそれぞれ職務を持っておりながら、人権擁護の立場から一生懸命活動をしておるこれらの人々の決議というものがなおざりになっている。なおざりになっているについては、私は何と言おうと法務大臣責任だと思います。法務大臣として、自分の御所管である人権擁護問題についてもっとあたたかい目をもって、もっと大きなスペースをもって御活躍されることを私は新大臣に衷心期待をいたしたいのであります。御意見を伺いたい。
  23. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 まことにお説のとおりだと思います。決議されました問題は、無理な点は私はないと思うのでございます。ごもっともな方向を示されておると思うのであります。長野連合会長等、この間この会の代表の方々と会合をする機会をつくっていただきまして、親しく私もまたいろいろと拝聴をいたしました。個々の問題については申し上げませんが、お仕事を私どもお願いをしておる側でございますので、お仕事ができやすいように力を一緒に合わせていく。それには予算の増の問題、あるいは仕事をする職員の問題等々いろいろあるのでございまするが、いままでいろんな関係上満たすことができなかった点もあったと思うのであります。ほおっておったわけではないのでございまするが、ついあと回しになっておるというような点もあったと思うのであります。できるだけひとつ歩調を早めてもらうように関係の省とも打ち合わせをいたしまして、そうしてこの仕事がいまよりはよりよく動くような方向に努力をいたしたいと思うのであります。
  24. 横山利秋

    横山委員 最後に一、二点ございますが、この人権擁護局機能であります。愛知県下で調べましたところ、局に部長を含めて十二名、地方の部、出張所等に課長を含めて三名、こういう人数であります。仕事量を見ますと、純然たる人権侵害事犯で年間六百件あるというのであります。私は何も全部が全部この人権問題を役所の人たちがやるとはきまりませんから、できるならば、人権擁護委員に独自の機能を与えてやればもう少しものが処理されると思うのでありますが、先ほどあなたがいらっしゃる前に指摘いたしましたように、人権擁護委員が自分で最終的にやるという仕組みになっておりませんので、結局法務局長報告し、法務局長仕事をする。そうなりますと、局で十二名、地方の出張所、部で課長以下三名、年間六百件の仕事処理するならばおくれることは当然のことであります。しかも、人権問題といえば、簡単にああそうですか、おまえ、けしからぬというわけにはいきません。事案を調査研究しなければなりませんから、こういう体制では仕事がおくれることは当然であります。  それから二つ目に指摘をしなければなりませんのは、公害が非常に多い。公害関係では、役所の公害と大企業の公害がある。役所はまだものを言えばわりあいにそのつもりでやるけれども、大企業を移転させるとか——四日市のあの公害を片づけるということは並みたいていのものではないのであります。そうすると、勢い仕事のやりやすい中小企業の公害のにおい、汚水それから廃液等に問題が集中するわけであります。中小企業といえどもこの公害で付近住民に迷惑をかけてよいものではありませんが、それをやりやすい中小企業のほうに早くどけ、早く処置しろという圧力がかかっていくのであります。それはそれで中小企業も考えなければなりますまいが、しかし一方においては、中小企業といえどもつぶされてはかなわないのでありますから、政府として、いまあります公害対策融資の問題を含めて、もっとこの問題がやりやすいように中小企業が応じ得られるような体制、呼び水をつくらなければならないと私は痛感しておるわけであります。  それから三つ目は、人権擁護委員の人選の方式であります。人権擁護委員は、市町村長が議会の同意を得て法務大臣に推薦することになっております。形の上では非常に民主的であります。ところが、こういう例を取っては悪いのでありますが、たとえば東京都の汚職に見られますように、ポスト争いが地方議会ではよくあることなのであります。つまり、ある人が落選したから、あの人はあの人の関係の人だからというわけで、何か人権擁護委員のポストをたらい回しに名誉職として贈る傾向がきわめて強いのであります。しかも現在おる人が全部が全部よいとは思いませんが、一定の任期がきたら、あなた御苦労さまでした、今度はあの人にやらせてくれと言って、有能な人が全部かわってしまう。そのためにせっかく法務省が——たいした教育もなさっておりませんけれども努力なさっていらっしゃる教育機能というものが、新しく白紙から有能な人でもやり直さなければいけない、こういうことで地方の首長が議会の同意を得て法務大臣に推薦することは、形の上ではなかなか民主的でありますが、運営上はきわめてぐあいが悪いと私は痛感をするわけであります。どういうふうにこれを改善したらよいのかということについては、私は必ずしもよい策があるとは思いませんけれども、しかし、少なくとも法務省として、この人選についての要望を、常に地方首長にまとめておかれることが適当ではないかと思います。  それから、地方首長が自分のところの人権擁護委員を選任するにあたって、どうもその範囲が一方に偏しておるような気がいたします。私はかつて保護司の問題を取り上げました。町や村のボスが保護司になって、激増しつつあるところの青少年の不良化に即応する保護司が選出されていないと強く指摘したほどであります。しかし人権擁護委員は、保護司とは少し角度が違いますから、法律的知識、それから常識等も必要でありますから保護司とは必ずしも同断には言いませんが、しかし何か人権擁護委員の人選のあり方、選出の方法また運営について改善をされるべき点があるのではないか、こう痛感するのであります。少し技術的になりましたから局長でもけっこうでございますが、御意見を伺いたいと思います。
  25. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 局長に答弁いたさせます。
  26. 鈴木信次郎

    鈴木説明員 まず第一の御指摘の点でございますが、名古屋の法務局人権擁護の専従職員十二名、それから地方法務局になると課長以下三名で、六百件にわたる事件処理しているのでは無理ではないかという御指摘でございますが、現在全国人権擁護専従職員が合計わずか百六十二名でございます。平均いたしますと、法務局、すなわちブロック長である法務局で平均約八名、それから地方法務局で平均わずか二・六名ということになっております。したがいまして、法務局のほうではまあ一応仕事ができると思うのでありますが、地方法務局の二・六名、これでは私どもが見ましても相当無理があるのではないか。さらに地方法務局の下に支局というのが全国に二百四十カ所ございます。ここには専従の職員は一人もいないのであります。したがいまして、私どもといたしましては、相当大幅な人員増加——まあ私の多少の行政の経験から申しまして、全国でまず千名くらいは要るのじゃないかと一応思うわけでありますけれども予算関係等でそういう急激な増加ということは、非常に困難というよりもむしろ不可能だと思われますので、実情に即しまして、来年度予算におきましては、とりあえず七十名の増加をお願いしようということで、ただいま計数を整理しているところでございます。  それから第二番目の公害事件につきまして、中小企業から生ずる公害についてはどうやらやっておるようだけれども、大企業については力がないじゃないかという御指摘、これも一面まさにそのとおりであります。が、大企業になりますと、何しろその影響も大きいし、かりに工場を移転する、あるいは公害発生の原因となるものの防止の設備をするといたしましても、これまた膨大な資金を要することでありまして、これにつきましては、法務省、あるいは法務省の一部局である人権擁護局のみでは何ともいたしかねる場合も出てくるので、これは御承知かと思いますが、公害対策推進連絡会議というのが総理府に設けられまして、関係庁の人々が委員あるいは幹事となりまして、抜本的な解決方法を現在研究中でございまして、おそらく近い将来に結論が出るだろうと思っております。その一部として、私ども人権擁護局としてなすべきことはなしたいと思います。来年の予算要求にもその点一部入れておるような状況でございます。  それから第三番目の人権擁護委員の人選につきまして、現在の人権擁護委員法によりますと、市町村長がそれぞれの議会の同意を得て法務大臣に推薦する、法務大臣がそれぞれの県知事、それから当該府県の弁護士会、それから当該府県の人権擁護委員連合会意見を聞いた上で委嘱するというふうに、お説のとおり非常に民主的にできておる一わけであります。ところがごく一部にはやはり、どうも、私どもが見ましても、人権擁護委員としてはたしていかがなものだろうかというふうな方が皆無ではないのでありまして、これまた人権擁護委員法改正一つの問題として、ただいま研究中でございます。あるいは従来人権擁護委員として非常に功績のあった方につきましては、ただいまのような手続を省略して、直接法務大臣が委嘱するというのも一つ方法かと考えますが、これまた現在の民主政治下におきまして、民主的にすべてやらなければいけないという点から、若干問題もあるのでありまして、なお慎重に考慮いたしまして、御指摘のような弊害、これはぜひ絶滅いたしたいと考えております。
  27. 横山利秋

    横山委員 あとの問題がございますので、人権擁護に閲する質問はこれで終わりたいと思うのでありますが、くれぐれも申し上げたいのは、新憲法制定の一つの大きな柱である人権擁護仕事が、どうも法務省の片すみに追いやられて、そして予算もつかないで、活動が日に日に停滞をしていく、それでおって人権擁護に関する問題は、新しい産業の発展なりあるいは官庁役人の権限が強化されるに従って増加をする趨勢にある。これでは困る。私どもが本委員会で、ときおりこの人権問題を提起いたします。私どもの提起いたします人権問題は、わりとショッキングな問題が多いのであります。そういう言い方を自分からしてはなんでありまするけれども、われわれは今までここで特異な問題を提起をしてまいりました。しかしそういう特異な問題は氷山の一角でありまして、先ほど局長がおっしゃったように、年間数万件という、のぼってこない多くの日常生活の人権問題が増加をしておるということであります。この統計表を見ましても家族間の人権問題が一ぱいある、あるいはまた住宅を出ていけという強制退去にからむ人権問題が一ぱいある、そういう問題をここで取り上げたいと思うのでありますが、時間がないものですから結局ショッキングな問題をわれわれは取り上げてしまう、しかしその氷山の一番根底にわだかまる人権問題を、憲法の趣旨に従って解決をいたしますためには、今日の法務省があらためて人権問題について大きな視野を持って、予算なり、人員なり、あるいは全国人権擁護委員の皆さんが活動できますように格段の御努力を願いませんでは、これは法律は、憲法は空文に終わるおそれなしとしないのであります。重ねて大臣の御所見を承って人権問題の質問を終わりたいと思うのですが、どうですか。
  28. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さっきも申し上げましたように、人権擁護の問題は、御承知のようにこれはわれわれの基本的な問題を取り扱う問題であります。それにはまた御承知のごとく、非常に人並びに予算の点において貧弱な情勢でございます。仕事はだんだんふえてまいるのでございまするし、そうしてその人権擁護の実をあげるためには、この二つの面においてまずできるだけこれを充実、とまでいかなくても、いまよりはだんだんよくなっていく、そして次々に、年ごとにこれを充実さしていく方向に進んでいくということでなければこの目的は達し得ないと思うのでございます。これは不断の努力を要することだと思うのでございまするが、それを念頭に置いてこれから先もやっていきたいと思うのであります。
  29. 横山利秋

    横山委員 それでは法的問題について若干お伺いします。  この日韓会談における結果の中で、日本政府が非常な譲歩というか、あっという譲歩といいますか、国民がほうと驚いたのがこの法的地位の問題である。その法的地位の問題の中で、子々孫々に至るまで、在住しておった韓国人の諸君の人たちに永住権を認めるということがあります。この点につきましては、たびたび本委員会でも前大臣にお伺いしたのでありますが、ずいぶん強い政府の御意思のようであった、それが未来永却子々孫々に至るまで、当時在住しておりました韓国人に永住権を認めるということに至った趣旨は一体どういうことであったか、一ぺんその事情を伺いたい。
  30. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 長い間問題でありました日韓交渉が、いよいよ調印になりましたのでございますが、その中の韓国人で日本におります者の法的地位をどうするかという問題が、一つの折衝点であったことは御承知のとおりでございます。長い間日本におって、ほとんど日本人であった者が、どうして自分の意思でなくて日本人でなくされたという人がたくさんあるわけでございます。その中で、今度韓国と日本との間に条約が結ばれて、その国の人で日本におる者を、どういうふうに扱うかという立場をこの際はっきりする必要が起こってきたわけでございます。そこで、いろいろ折衝いたしました結果、彼らには永住権を与える。それは戦争が終わったときからずっと、その前から引き続いて日本におった者には、本人の希望によって永住権を与えるということにいたしたということでございまして、韓国と協定を結んだということによりまして、韓国人であった者が、そういうことを希望すれば永住権を与えるということに、はっきりときめられたというのがいままでのいきさつであります。
  31. 横山利秋

    横山委員 私どもも、当時、八月十六日現在におられた人たちについて永住権を与える、ないしはそれからしばらくの間に生まれた子供についても了解というふうに聞いておったわけでありますが、その孫さらに曾孫というように、当時おった人の子々孫々に至るまですべて永住権を与えるということは、一体どういうことであろうか。本来永住権の定義については、なかなかむずかしいことではありますけれども、一種の治外法権、外交特権にも類するようなものであります。そういうことは、端的にいえばどういうことなんですか。そこまで譲歩をするということは、何かほかの問題と、ことばは悪いのですが、取引をするためにやむを得なかったものか。それとも理論上与えるべきものであったかどうか。私はどうもその後者のほうではないような気がいたしますが、理論上与えるべきものとしてあなた方は了承なさったものでありましょうか。
  32. 八木正男

    ○八木政府委員 私交渉にあたっておりました関係で、私からお答えさしていただきます。  最初の点、いま先生のおっしゃいました終戦当時、あるいはせめてその直後に生まれた者はまあやむを得ないだろうけれども、それが子々孫々に延びたという点が不可解であるとおっしゃっておられますが、最初の点を申しますと、この法的地位の協定というものは、本来平和条約が発効したときに、平和条約によってこの人たちが日本の国籍を失うということになりますので、その平和条約発効直後の事態に対処するために、日韓協定全体が当時交渉の対象となりまして、法的地位の交渉もその当時から始まっております。したがいまして、その点でもしその当時協定ができておったとするならば、いま御質問のような子々孫々といった問題は起こらなくて済んだわけでございますが、その後実際には日韓間のいろいろなこじれがありまして、現在までに延びてしまった。そしてその間十数年たったものですから、終戦直後に生まれた子供ですら、もうそろそろ自分が結婚し、子供を生むというような事態になってきております。そこで、この朝鮮の人たちの日本における定着の度合いといったようなものもますます強まりまして、したがって、永住に対する要望というものは、ますます範囲が拡大されまして、いまおっしゃいましたような子々孫々といったことを向こうははっきり要求し続けておりました。私どもの立場は、この人たちが日本に定着の度を増して、したがって、安定した日本における生活をなるべく保障するように、われわれとしても考慮したいという点は変わりませんけれども、ただ、根本的な立場として、私どもは、在日朝鮮人に永住権を認めるということは、この人たちが、いま大臣がおっしゃいましたように、かつて日本人であった。自己の意思によらず日本の国籍を失ったという点、そういう点に考慮の原因があったわけであります。その意味においては、たとえばこの人たちが日本にやってくるに至った過去の経緯、その環境などを考えますと、非常に同情すべき点がたくさんあったわけでございまして、われわれとして一種の何と申しますか、負い目と申しますか、俗なことばで申せば借りがあったような感じがいたしまして、なるべく地位を安定的なものにしなければならないという気持ちを持っておったわけであります。ただ、その際に、子々孫々ということになると、たとえばその後日本で生まれたということになりますと、その人は日本で生まれ、日本語しか知らず、あるいは日本語で教育を受け、見たところほとんど日本人と変わらないような状態でありますけれども、彼らは外国人として日本で生まれたわけであります。彼らのお父さんなりおじいさんなり、かつて日本にやむを得ずやってきたような人たち、これはその後日本で生まれた人たちとは環境が全然違っておるわけでございまして、私どもとしては、その子々孫々に対して永住を保障することは理に合わないという点から、日韓会談におけるわれわれの態度というものは、終戦当時日本におり、もしくはその直後に生まれた人たち、こういう人には永住を認める。しかし、その後に生まれた者については、普通の外国人と違わない待遇を与えるという立場は一貫しておりました。  ところが、その後この子々孫々という要望がますます強まりまして、いろいろ向こうの方たちがこれを反映する。そうして、最後段階で、この三月でございますか、仮調印のころになってもその主張はほとんど妥協ができなかったわけでございます。そして、最後の折衝の場面で向こうが、子々孫々は取り下げる、しかし、せめて終戦当時いた人の孫くらいに当たる人というのは——これは先方の言っているのは自分の家族を考えているのです。家長に当たる人は終戦前から日本におり、そうして、子供が結婚して、同じ家の中に孫もすでに大きくなっている。そうすると、その一家を頭に置いて考える場合に、おじいさんは永住権がある。いま自分のところにいる子供は永住のことが保障されていない。しかし、実際には本人は日本で生まれ、朝鮮語もろくに解さない。おそらく成長してもそのまま日本で働いて暮らしていくに違いないと思われるような同じ家族の構成員が、法律上の保障と申しますか、永住の保障が全然ないというのでは心配でたまらないというような点から、せめて同一家族を構成している範囲内の場合は、その地位を同じにしてもらう必要があるということを非常に強く要望しておりました。私どもも、現実に目の前に見ておる事態でございますので、交渉の最後段階でいろいろ対立がございましたけれども、向こうの子々孫々ということは取り下げさせます。そのかわり、協定発効後五年たって後に生まれた子供まで永住を保障するということでまあ妥協したわけでございます。妥協でございますので、過去十何年の間法的地位の問題で一貫して主張しておった永住を認める範囲は、終戦当時日本におった者、せいぜいその直後に生まれた者に限るといった立場から、若干、一世代ぐらい後退したわけでございまして、その点はわれわれとしても非常に釈然としない点がございますけれども、同時に、この人たちの立場は、逆に考えますと、現にこの瞬間に一家をなしてともに生活しておる家族ぐらいは、永住の保障を得て生活が安定しているほうが人道的であろうという考慮から妥結に至ったわけであります。これを代償に何か譲歩を求めたというような点はございません。少なくとも私の受け持った交渉の範囲では、それはあくまで最後まで突っぱり合いまして、一番最後の調印の段階でその孫までとれるということで妥協をはかったようなわけでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 あなた自身がどうも釈然としないと言っていらっしゃるが、外交交渉は妥協だからそれで了解してくれと言われますけれども、私はあなた以上にどうもこの問題については釈然としないのであります。きょうはしかしただすべき点だけをただしておきたいと思います。  次の問題としては、この永住権を保障された在日韓国人の皆さんが、それによって受けるべき及び供与されるべきものに関して、日本政府がとるべき措置はどういうものであるかということが聞きたいのです。たとえば国民健康保険に必要な措置をとるということは、予算上、在日六十万のうち、何万人が永住権を確保されるか知りませんけれども、それによって事務費を国家補助することになっている、そういう予算を来年度に計上をすることになるのか。あるいは義務教育と上級学校へ行く資格、民間も含まれるわけですね。それらによって教科書の無償供与やあるいは給食の補助費、それらが日本政府として措置をしなければならぬのか。あるいは生活保護は従前のとおり当分の間やるというのでありますが、それはきわめて膨大な数になると思います。現にいまなっているわけですね。それがさらにふえると思うが、それをやるのであるか。あるいはまたこの永住権に関連をして、外国人登録法や出入国管理令の改正が必要となるのかどうか。この協定が発効することによって、法律上及び予算上はどういう措置をとらなければならぬことに義務づけられるのか、この点を伺いたい。
  34. 八木正男

    ○八木政府委員 協定によって、日本側はいろいろ義務を負っております。御指摘のような、ことに処遇の問題についていろいろ措置をとることが義務づけられておりますので、それに関連する法令の改正とか、担当官庁の市町村に対する指示とか示達とかいった改正もございましょうし、またそれに伴う当然の予算上の措置もあると思います。私ども関係官庁とそういった連絡はとっておりますが、まだいろいろ技術的な整理とか何かの研究をみんなやっている段階のようでございまして、いままでのところ各省がどういう予算上の措置をとり、どういう法令の改正をやるかということを、具体的にはまだ承知いたしておりません。しかし、大ざっぱに申しますと、義務教育に関しては、もちろん相当の予算上の措置は必要でございましょうけれども法律上の措置は、たしか特に法律を制定することはしないように聞いております。  それから、生活保護も初めから国籍を問題にしておりませんので、法律上の手当ては要らないわけでありますけれども、実際問題としては従来どおりの程度の生活保護の支出が続くということになろうと思います。  それから国民健康保険でございますが、これは非常に技術的なことで、私いろいろ設問を受けてのみ込めないでおるのですが、非常に技術的な法令でございまして、結局法令の改正を厚生省でする、それから市町村の条例でいろいろまた行なわれるといった点、それから厚生省が市町村に対する行政指導をやっているというような法的な手直しというような点もございますし、それからまた当然予算の上でかなり措置が必要だろうと思います。これはただいま先生お尋ねの中にもございましたように、一体何人の人間が永住を申請してくるかというその数にもよりますし、どのくらい申請するだろうという予想は、これはちょっとつきかねますので、その点で予算技術上も非常に苦労があるようでございますが、当然それに対応する予算の手当てが行なわれるものと考えます。これも御承知のとおり協定によって協定が発効した年の次の会計年度が終わった翌年、たとえばことし批准が成立したとしましても、再来年の四月から実施になりますので、その間に厚生省としても慎重に措置するものと考えます。  私どもの入国管理の面でございますが、これはこの法的地位の協定ができましたので、この条約を国内法にするための特別立法が必要でございます。現在私どものところで鋭意起草委員をつくりまして、どういった規定を現実に書くかといった作業を目下続けております。予算の面にしましても、たとえば登録をどこで受けるかとか、どんな手続をとるか、どんな書類が必要であるか、それを扱う人間の数であるとかいう点で、これも臨時に予算を出していただかなければなりませんので、そのほうの計算の整理と言いますか、そういう段階を続けております。  次に、日韓条約の審議せられる国会には、この条約の実施のための特別立法と、それに対する予算措置というものを提出することにしております。ただ、入管令の改正とか外国人登録法の改正は、このたびはやらないことにしております。というのは、特別立法で、この条約をそのまま国内法にするだけの簡単な法律を考えておりますので、その問題は今般は改正をいたさないという考えでおります。
  35. 横山利秋

    横山委員 協定を読んでわからない点が一つ二つありますが、一つは、永住許可は、申請があれば自動的に許可されるものであるか。つまり日本政府に裁量権はないのであるかどうか。その点がわかりません。  それから引き続き何年間おったらという、引き続きという意味が、一体どういうことなのか。一ぺん韓国へ旅行に帰る、あるいは休暇に帰る、あるいはしばらく向こうにおるというようなことがあり得るが、引き続きというのは一体どういう意味なのか。  それから直系卑族が出生するというのは、お嫁さんをもらったら、お嫁さんは永住許可はされない、そのお嫁さんの生んだ子供は永住許可ができる、こういうふうなことになるのかどうか。
  36. 八木正男

    ○八木政府委員 最初の、永住許可は、自動的なものかどうかという点でございます。これはその永住を申請する人が、まさしく申請する資格を具備しております場合には、日本政府はそれを自動的に許可しなければならない義務がございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 法的裁量は。
  38. 八木正男

    ○八木政府委員 裁量の余地はございません。  それから引き続きの意味でございますが、これは実はわれわれ一番痛いところでございますけれども、終戦直後の混乱時期に非常に人の出入りがルーズでございまして、これは御承知のとおりの日本の警察の状態、無能力であるとか一般の混乱状態、そこに占領軍というものがあって、占領法規というものがあって、当時は日本政府は占領軍に従属しておりましたので、取り締まりの実態というものが非常に徹底しておらなかったようでございます。そこで常識的にも言われておりますのは、当時たくさんの朝鮮人が一ぺん帰る。またそれが日本へ舞い戻ってくるといったようなことが非常にたくさんあったようでございます。たまたまそれがだれの目にもつかないで無事に、日本政府の知らない間に行ってまた帰ってきたというような場合、それを立証することができれば別でありますが、ちょっとこれは事実上不可能であろうと思います。運が悪くてと言いますか、向こうの現場でつかまった者は、日本に引き続きいなかったことになる。それで、その点の問題は、非常に個々のケースについて慎重に検討しなければならないということでございます。ただ、一応申せますことは、昭和二十二年に第一回の外国人登録というのがございまして、その後大体二年か三年ごとに登録の切りかえをやっております。現在まで八回の登録が実施されまして、各登録のたびごとに、本人の登録原票というものが市町村の窓口から集まって、私のところの登録課で全部保管しておりますので、永住申請のあった場合に、その人間が現実にこの最初の登録から現在まで、各年次の登録が全部連続してそこに載っているか載ってないかということはすぐわかりますので、その点で続いて登録を受けているような人は、引き続いていたものとみなすほかないと考えております。ただ、人によっては、非常に山奥に住んでおったとか、あるいは、あまりそういった意味の何といいますか教育がないといいますか、ものをよく知らないので、ついうっかり登録しなかったとかというような、善意に基づいて登録が、ある何回目かの登録だけが抜けているという人もあり得ると思いますので、そういう人を一々この際難くせをつけてみんな拒否するというのは、われわれとして行き過ぎだろうと思います。結局、われわれが申し上げられることは、われわれがあらゆる利用し得る材料を利用し、あらゆる手段で調査をして、大体終戦当時からずっと日本におったということが納得できるような人には、当然永住を許可しなくちゃならないだろうと考えております。ただ、一時韓国に帰って、また日本へ戻ってきた人、これは確かに引き続きということを中断されますが、その場合の一時帰ったというのは、あくまで合法的に帰ったという場合には、われわれとしてはそれは引き続きいたということに考えております。たとえば現在の段階でありますと、普通行って帰ってくるためには、再入国の許可というのを事前に入国管理事務所から取りつけてまいりますが、その再入国許可を取りつけて、その許可の期間内に日本に戻ってきたという場合は、これは引き続きいたということと同じでございます。ただ終戦直後、司令部が一時外国人の日本への入国を一切禁止という時代がございまして、その時期に行ったり来たりしたというのは、全部これは合法的でないものですから、それがはっきり行ったということが記録上残っておりますと、この人は引き続いてはいなかったことになると思います。  それから、最後の直系卑属の範囲の問題でありますが、これはたとえば両親といいますか、家長は戦前からおる。それから、その子供が日本で生まれて、これも永住の対象である。奥さんが、最近韓国からお嫁にきたとか、あるいは、その他日本におるお嫁さんがそこへ来た。そして子供が生まれる。そうすると、祖父、それから父、子供、これはみんな永住の資格を持っております。お嫁にきた人は、たとえばそれがもし不法入国者だったというような場合は、ただ永住を申請して許可をされた永住権者といいますか、それと結婚したという理由だけで、永住権を与えることはございません。ただ、そういう人たちは普通の永住も簡単に認められますでしょうし、また、現実の問題として、子供のある奥さんを特別な理由がない限り日本から退去させるというのは普通考えられませんので、法的には永住の資格はなくても、事実上永住が可能である。それは法律上の裏づけというよりも、むしろ実際上の行政上の措置というような形で永住できるようにしようと考えております。
  39. 横山利秋

    横山委員 同僚委員の質問もありますから、最後大臣にお伺いしたいのですが、この法的地位の問題の一番の困ったことは、歴代の大臣にもただしておったわけでありますが、要するに、北朝鮮に籍を持ち、かつまた、その籍を希望しておる数十万の人たちとの均衡の問題であります。この法的地位は、韓国籍を希望する人たちに対する措置でありますが、事実上の問題として、数十万の北朝鮮を希望する人が現に日本に住み、そうして事実上生活保護の恩恵を受けており、この取りきめによっていろいろな紛争が起こると思うのです。私どもがまず考えますことは、韓国の居留民団及び北朝鮮の組織との間に協定をめぐって組織争いが起こる。そうして韓国政府並びに居留民団の人たちが、この協定を理由にして、自分たちのほうに勧誘する。韓国籍になることを希望するように勧誘する。その勧誘のための相当の措置をとる。それに対して北朝鮮側の人たちは、それを認めないという争いが始まる。それがひいては教育問題について、一方は入れる、一方は入れないという可能性が生じ、各都道府県、市町村の教育関係者がそれによって非常に困る。生活保護においても、法的に取りきめられておるものと法的に取りきめられていないものとの間に差別待遇があるといたしますれば、これまた民生委員その他について非常な困惑した問題が起こる。それから、  強制退去の条件が、取りきめがされております。これは出入国管理令の国内措置よりもやや緩和したものだとわれわれは考えておる。そうすると、一つの罪を犯しても、片一方は強制退去の条件に該当し、片一方は強制退去の条件に該当しない。一つの罪をもって、その該当する者と該当しない者との違いが生ずる。で、北朝鮮のほうへ強制退去を命じた者は、北朝鮮の国がこれを受け取らないという問題が事実問題として想定される。そういうふうになると、この日韓協定が日本の国内において、向こうの側の人たちの問題でなくてむしろ、日本の国の末端機構、それから民間団体に対してまで大きな争い、摩擦が生ずることを私は非常に不安に思い、危惧をするわけであります。前の法務大臣も、元の法務大臣も、本委員会でおっしゃったのでありますが、人道的な立場において、事実上差別待遇をすることはない趣旨のお話を承ったことがございますが、いまや日韓の取りきめは次の国会に上程されるという話でありますが、最もそれが一つの中心課題になると思いますので、法務大臣のこの北朝鮮の国を希望し、また籍のある人たちの処遇は、この取りきめとの関係においてどういうふうになさるおつもりであるか、御意見を伺いたいと思います。
  40. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今度条約がいよいよ批准されました後におきまして、永住権を持った者と持たない者との間には差ができてくるのは、私はその結果として当然だと思うのであります。そのために今度協定には第三条、第四条のいろいろな規定ができてきたわけでございますが、その間の差はできてくるわけであります。しかし歴代の大臣も申しておりましたとおり、それから私もそう思うのでございますが、さっきも申しましたように、この永住権をとる、またとらない人、その両面に属する人たちの中で、同じく日本人であって、そうして自分たちの意思に反して日本人でなくなった人があるわけなんであります。だから、その問題は私ども、ずっと考慮していかなくちゃならぬと思うのであります。したがいまして、ただいままでそういう心持ちを持って待遇されてきた人たち——永住権をとらない人には、北のほうの人もあるし、あるいは南のほうの人だと思う人でとらない人もあるかもしれませんが、そういう人たちは、一様にいままでと同じような立場においてやられる、いままでよりは悪くならないわけであります。というよりは、私はだんだんよくなると思うのです。というのは、今度の条約が調印されまして、民生面において、教育あるいは厚生の面で、こうしょう、ああしようという問題が出てまいりますと、少なくもそれに近い扱いを結局ほかの人たちにもだんだん均霑するようになっていくように扱わざるを得ぬじゃないか、こういうふうに思うておるのであります。形はこういうふうにはっきりと、永住権を得た人たちにこういう特権を与えるということを書いてあります。しかし片一方の面から見まして、いままでの歴史的関係がありますし、人道的立場から考えまして、民生面においてできるだけの好遇をするというようなことは、関係の各大臣も頭に置いて考えておるようでございます。ただいまお話のありました教育の面、あるいはその他の生活保護の面等におきまして、いままでよりは悪くない、いままでよりはだんだんよくなっていく、だんだん均霑していくようなことになるんだろうと私は思うております。したがいまして、いままでの人たちは、いままでより悪くなることはないということだけは申し上げられるものと思うのであります。
  41. 横山利秋

    横山委員 最後に、確かにいままでよりは悪くなるとは私は思いません。しかし韓国民人たちがいままでよりは、見方でありますが、よくなるというふうに考えたほうがいいんじゃないかとは思うのですが、いままでよりも一方がよくなる、他方は悪くはならないけれども、よくなる度合いがおくれるという意味にもし大臣のお話を理解をするならば、よくなる度合いがおくれたんでは、そこに摩擦が起こる。私どもとあなた方とは、この日韓協定に関する基本的な立場が違うのですから、少し問題提起が違うかもしれませんけれども、少なくとも自由民主党の皆さんや、いまの佐藤内閣が、日韓協定というものは北朝鮮の国を敵視するものではないというお考えをもしお持ちになるとするならば、人道的な立場においてということと、もう一つは、国内において行政機構なり国民の中に、他国民の争いを持ち込ませないという二つの理由のためには、だんだん同じようにするのでなくして、事実上同じにするということをのっけからおやりになることが必要ではないか、こう思うのでありますが、重ねて大臣の御意見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいま申し上げた以上に進んで申し上げる点はないのでございますが、実際の運営をごらん願うよりほかはないと思うております。
  43. 濱田幸雄

  44. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私が御質問申し上げたいと思ったことの大半は、ただいま横山委員の御質問でかなり明らかになりましたので、あと一、二点つけ加えて御質問申し上げたいと思います。  いま横山委員が、最後大臣に念を押された点でございますが、在日朝鮮人の方の中に、韓国籍を名のりたい者、あるいは北朝鮮のほうの国籍を名のりたい者、あるいはできれば日本に帰化してしまいたいという者、大体この三つに大別できると思うわけでありますが、ただいまの横山委員の御質問にあったように、この協定が成立することによって、韓国籍を名のる者だけが特別の保護を受け、他の方が、これに同趣旨で待遇するとしても若干おくれるというようなことが、反面韓国籍を名のるように強制をするという効果、そういう結果をもたらすおそれが多分にあろうかと思いますので、政府としてこの問題について、韓国との協定ができたので、北朝鮮の朝鮮人民民主主義共和国ですか、そのほうとの関係はいま進んでおるわけでありますから、そのほうを支持したい、あるいはその国籍を名のりたいという者について、間接的に一つの圧迫となって強制をする、こういうようなことを非常におそれるわけですが、そういう御意見は、これは毛頭ないものと思いますけれども、その点を大臣から明確にひとつお答えをいただきたい。
  45. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 先ほど横山さんの御質問にお答えしましたように、韓国と日本との間にこのたび条約ができましたから、条約面において両方の国がお互いに利するような点でいろいろ話し合いができるのは、これは条約を結ぶ利益でございまするから、当然起こり得ることだと思いますので、条約のない国には、条約のある国よりはいろいろな点で多少の差が起こるのはほかの場合でもそうでございまするが、この韓国と北鮮の方々との場合は非常に特別な関係がありますから、私どもも十分注意をしていかなくちゃならぬと思うております。と申しますのは、ただいまお話のありましたような点でございまして、いままでは同じような立場でございましたから、日本籍を持たされておって、それをまた自分たちの意思でも何でもなくて日本に籍を取り上げられたというようなことで、はなはだ申しわけない情勢下において皆さん方を擁していく立場にあるわけでございます。それにはできるだけ日本政府は人道的な立場からこうやるという態度を示しておるということと、同じように扱ってまいりたいと思います。今度は少し差ができてくると思います。けれども、いま申しましたように、北鮮の人と韓国の人とがそこでこんなに違うぞというようなことで、あるいはそこにいろいろな紛争が日本で起こるようなことがあってはならないのでございまして、日本の政府がそれを、どこに行ったほうが得だとかなんとかいうこと等の宣伝がましいようなこと等は一切する心持ちもございませんし、ただ手を握ることができたことを喜ぶということは申します。それ以上のことを言うて、北鮮のほうざまあ見ろというような行動をとるべきものでもない。ただそういうような差ができてくるのでありますから、何とかしてできるだけのことをして上げる。それには民生の面において近づくことができ得るものは近づけて、待遇をすることができるものはよくしていくというようなふうに所管大臣も考えておられるようである、そのことを申し上げまして、その心持ちでございまして、決して紛争を招く、そしていやな思いをしてまで日本におられるようなことはなくしたいというような心づかいは絶えず持っていきたいと思うております。
  46. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 次に、横山委員の質問の中になかったと思いますのでちょっとお伺いいたします。入管局長にお伺いいたしますが、一ぺん永住権を得られた者が、その後帰国をするということになった場合の財産の搬出、あるいは現金の送付、持ち出し、こういった問題についてもいろいろ日本側と対立しておった内容については前に伺っておりますが、結論は韓国側の主張が大体通ったようなかっこうでまとまったように新聞で承知しておるのですが、このことについて具体的にひとつ明瞭にしていただきたいと思います。
  47. 八木正男

    ○八木政府委員 いまお話の持ち帰り財産と、それから現金持ち帰り額の制限ということでありますが、財産についてはこれはたびたび会議へ、通産省、大蔵省なんかの担当官も一緒に出まして議論いたしまして、普通日本に住んでおる外国人が一家をあげて日本から引き揚げていく場合には、その職業に必要なものであるとか、生活に必要な荷物であるとかいったものは、できるだけ好意的に持ち帰りを許すということは確立されたことなんで、その待遇は韓国に対しても同じことだということを話しました。ただ技術的にいろいろ問題はあるかもしれません。たとえばそのときも議論に出ましたが、タクシー会社の社長で、タクシーを百台持っている、それが日本から引き揚げて帰るときは、百台タクシーを持って帰れるかというような、そんな半分笑い話のようなこともございまして、これは常識的に考えて、普通の、好意的にやるということで大体向こうも納得したようでございます。ただ持ち帰るときの現金の問題、送金の問題でございますが、「一世帯当たり一万合衆国ドルまでを帰国時に、及びそれをこえる部分については実情に応じ、携行し又は送金することを認める」というこの了解でございますが、これは従来日本側は五千ドルと言っておりました。向こうはずっと一万ドルということを言っておりました。最後段階で大蔵省は——技術的な点は大蔵省の担当の人から説明してもらうほかないと思いますが、現在日銀では五千ドルまでは自分のはからいで許可が出るそうであります。一万ドルとなると現在のところでは日銀限りではできないそうでありますが、その場合には大蔵省と相談をして、大蔵省の臨時の許可といいますか、そういうものを取りつけて許可をするという話がついたわけでございます。したがって、これは法律改正とかいうことは必要がないのだそうでございまして、行政的な手続だけで実施ができるという説明でございました。
  48. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 最後に、さっき私ちょっと触れましたが、たとえば日本人を妻にしておるようなことで、事業も安定して、もうこの際帰化をしてしまいたい、こういう希望の方も相当あると思いますが、これらの扱いはどのように考えておられますか。
  49. 八木正男

    ○八木政府委員 帰化につきましては、これは政府としては、かつて日本人であったというようなことから、普通の外国人の帰化の申請に比べて、朝鮮の人の帰化の申請に対しては、わりに好意的にやっておるようでございます。奥さんが日本人であるという場合には、なお条件はいいわけでございますが、そういうようなことがたとえなくて、純然たる朝鮮人同士の場合であっても、なるべく簡単にといいますか、帰化については便宜をはかっていくような方針であると聞いております。
  50. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 質問を終わります。
  51. 濱田幸雄

    濱田委員長 田中織之進君。
  52. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は検察行政関連をして、特に農地法あるいは国立公園法というような、刑法その他の、直接的な検察が取り扱っている法律違反以外の事犯についての検察当局の取り扱いの問題に関連して、二つの問題について伺いたいのであります。  御承知のように、検察当局なり警察が、犯罪捜査の端緒として告訴、それから親告罪の場合以外に受ける告訴というようなものが提起されて、それが犯罪捜査の端緒になっていることは、これは既定の事実だと思うのでございます。ところが私がこれから御質問申し上げるような一つの問題は、国立公園法に違反をいたしまして、官有地が公有水面だということで埋め立てをされた。これは御承知のように府県知事の認可にゆだねられておる事項であります。そこへ新しく観光地に土地造成がされまして、現在五階建てのホテルが建ったり、あるいはこれまた国立公園内における温泉の掘さく等の問題についても、国立公園法あるいは自然公園法に基づいてそれぞれの行政官庁の認可がなければならないものが、府県知事のいわゆる認可によってボーリングが行われておる。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 そのために著しく国立公園に指定した地域の景勝を阻害しておる、こういうような問題が起こりました。具体的には和歌山県の東牟婁郡の那智勝浦町、皆さんも御承知のように勝浦温泉で有名であり、同時に那智の滝が日本一の滝だということで知られておるわけでありますが、この那智勝浦の海岸が国立公園の特別地域に指定をされておるわけです。その国立公園に指定される三つの条件の一つに那智川の海に注ぐ面に相当広大な砂丘地があるわけです。その砂丘地が御承知のように、これは一部は未登載の官有地でありますけれども、はっきりと地図の上なりあるいは航空写真等で残っておるわけであります。また田村博士等に伺いますと、それが国立公園の特別地域に指定される一つの条件でもあったということがはっきりいたしておるのでありますが、それがここに図面がございますけれども、六カ所にわたって、一番早いのは昭和三十四年、三十七年に四カ所埋め立て許可がされまして、いま申し上げたようにそこにホテルが建てられておる、温泉のボーリングも行なわれておる。そのためにこの海岸自体が、子供たちの海水浴場であったのが、満足に海水浴ができない、そういうような状況にあるので、現地の人たちはもとの状態に復帰してもらいたいという切実なる要望があるのであります。そういう観点から、この付近に住む住民の一人の山本武男君というのが、和歌山地検にこれを許可いたしました和歌山県知事あるいは埋め立てを申請をいたしました寺本磐彦、中定繁その他の関係者をそれぞれの罪名で本年の三月十九日に告発をしたのだそうでありますが、最近になりまして地検のほうからこれが不起訴処分になされた。ところが、これは告訴状についていたかどうかという点は私もさだかではないのでありますが、たまたまこの土地の航空写真が出てまいりまして、これは縮刷したものでありますけれども、この白くなっている部分が問題の砂丘なのであります。それから公有水面だということで埋め立てを申請をいたした図面には、砂丘地帯というようなことが全然示されていないのでありますけれども、港湾関係の地図等を見ますと、表面にこの写真のように白い砂浜として出ておりませんけれども、若干水没をしておりますけれども、砂丘があるということも図面の中へ出てきておるのであります。はたして和歌山地検がこの件について、不起訴処分をするのについては、そういうような事情をお調べになったのかどうか、私ら疑問とせざるを得ないのであります。よくいわれるのでありますが、たまたま相手が特別法の違反をするという場合には、県であるとか市町村であるとかいったような自治体の地方行政機関が介在をしておる、しかも現場が、すでに埋め立てて相当巨費を投じたホテル等も建っておるから、それにさかのぼって責任を追及することははたしていわゆる公益に合致するかどうか、こういうような判断が検察陣によってなされているのではないか。特別法で罰則のあるものもございますけれども、国立公園法だとかあるいはこれは農民の生産を確保する関係から別の問題として後ほど申し上げますけれども、農地法というものがあるわけでありますが、そういうことで特別法によって保護されておる農民の利益というようなものが守られない点も、あるいは告訴、告発というような形で検察当局に提起された場合には、私はやはり特別法だからということで軽視するわけではないのだろうと思うのでありますけれども、もっと特別な積極さをもって、その事案の調査なり捜査に当たっていただかなければならぬ問題だ、このように考えるのでありますが、この点についての刑事局長の御見解を伺いたいし、事務当局を通じてこの那智勝浦町の関係の埋め立てに関する問題については資料等も法務省にお見せしましたので、和歌山地検で本件の処理についての状況等をお調べになられておりますれば、あわせて、不起訴にした理由を伺うのはいかがかと思いますけれども、その間の事情について、差しつかえない範囲でお答えをいただきたいと思います。
  53. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねになりました件は、本年の三月三十一日、ただいまお話しの山本武男という人から和歌山県知事小野真次、浜本末造、中定繁及び寺本磐彦を被告発人といたしまして、和歌山地方検察庁に対してなされました告発事件だというふうに調査いたしました結果がわかりました。  その告発事実の要旨は、浜本末造、中定繁及び寺本磐彦は、それぞれ昭和三十六年七月ごろから三十七年七月ごろまでの間に和歌山県新宮土木出張所に対しまして同県東牟婁郡那智勝浦町所在の官有地を公有水面と偽ってその埋め立て許可を申請し、その旨同事務所係官を誤信させ、よって同県知事からその埋め立て許可を受けて右土地を埋め立て、これを領得して騙取する(詐欺)とともに、右埋め立てに際しまして官有地内の土砂多量を窃取した。(窃盗)  第二には、被告発人小野真次は、和歌山県知事としての任務にそむき、浜本、中及び寺本の申請にかかる土地がいずれも官有地であるのに、これらが公有水面であるとして埋め立てを許可し、国に対し財産上の損害を加えた。これは背任罪。それとともに右浜本らとそれぞれ共謀して、右埋め立てに使用する際官有地内の土砂多量を窃取した(窃盗)というのであります。  和歌山地検におきまして捜査の結果は、この告発の部分は公有水面であって官有地とは認められず、またその埋め立てについては付近官有地内の土砂の使用も許可されていたものと認められるという理由で、本年五月二十日不起訴にいたしております。  しかしながら、先般この問題について御質疑があることの報告を受けましたので法務省におきまして調査いたしました結果、なおこの問題については検討すべき点が相当あるというふうな結論になりましたので、さっそく最高検察庁に連絡いたしまして和歌山地検において再検討させることといたした次第であります。  以上が経過であります。
  54. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そこで、最高検に法務省のほうから連絡をされて再検討されるということでありますが、ぜひこの問題についての責任の所在を明確にして、地元の希望であり、また観光地の勝浦の景勝を阻害しておるようなこの事態をなくするような形で、地元民が非常に希望しておりますので、その点については特に綿密な調査をお願いしたいと思うのであります。  そこで、厚生省の公園局から担当者がお見えになっておられれば一、二お伺いをいたしたいのでありますが、いま私が御質問申し上げている件については、国立公園法あるいは自然公園法の規定からいたしますれば、埋め立てあるいは海岸砂丘の砂の採取というようなことについてはすべて公園法に基づいて厚生省のほうに府県知事から相談があって、むしろ厚生省のほうで認可の決定権を持っておるのではないか、このように私は理解をするのでありますが、本件についてはそういうような和歌山県からの連絡を受けられたのかどうかという点が第一点。  それから、この問題については関係者から公園局のほうへもいま私がお示ししたような航空写真等を提示いたしまして、原状復帰についての何らかの行政指導なり処置を陳情申し上げてきておると思うのであります。国立公園を所管する部局といたしまして、こういうような事態が発生をした場合には、ただ検察当局なりあるいは裁判の関係責任者を処罰するということではなしに、国立公園法制定の趣旨から見れば原状に復帰するというようなことについて、適切な指導なり処置なりをなされなければ、ますます条件が悪くなってくるのではないかというふうに考えるのであります。この件について四回、五回にわたって埋め立て許可がなされておるのでありますが、そのうちたとえ一つでも厚生省が承諾をして埋め立ての許可が出たものかどうか。それからこの砂丘地の砂が埋め立てに伴い、あるいは五階建てのホテルを建てる建築にも相当使用されている。一つは和歌山県知事から、砂の採取について町議会の具申がある、また交換条件についているというようなことで許可したような面も、私の調査でも出てまいっておるのでありますが、昭和三十六年三月十八日に当該那智勝浦町議会では、北浜及び丹敷浦というのでありますが、この国立公園地域内の官有砂の盗採防止を決議いたしました。県にもそのことを具申をしておるというような記録が町議会関係からも出てきておるのでありますが、それらの点について国立公園局として調査をされ、また指導されたことがございますかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  55. 上村一

    上村説明員 お答え申し上げます。  先ほど御質問ございましたように、場所は吉野熊野国立公園の中の特別地域でございます。この特別地域につきまして、先ほど来お話ございますように、三十二年九月に公有水面の埋め立ての許可の申請が和歌山県知事にあり、三十四年六月から当事者が着工いたしました。また県から聞きました話では、三十八年十二月二十一日に竣工の認可があったというふうに聞いております。この問題につきましては、御承知のように国立公園の特別地域でございますから、水面の埋め立てなり、干拓をする場合、あるいは土地の形状を変更する場合に、厚生大臣の許可が必要になってまいるわけでございます。ただ土地の形状の変更につきましては、政令によりまして都道府県知事に権限を委任いたしております。  御質問の第一点の問題につきまして、丹敷浦の埋め立てにつきまして、事前に厚生大臣のほうに協議があったかどうかという点につきましては、私も先週御質問があるというふうに承りましたので、当時の関係者に聞いて回ったわけでございますが、連絡を受けておりません。それが第一点でございます。したがいまして、事実そのとおりであるとすれば自然公園法違反の疑いが濃いわけでありますが、これにつきまして私どものとるべき処置といたしましては、一つは原状回復命令というのを出すことができるわけでございます。ただこの法律規定によりますと、いま申し上げましたのは法律の十七条の三項の厚生大臣の許可ということになるわけでございますが、この十七条第三項の厚生大臣の許可に反して、許可を受けないでこういうことをやった場合には原状回復命令ができる。しかし原状回復が著しく困難な場合には、これにかわる措置を命ずることができる。当時、私ども非常に恐縮でございますが、この問題につきまして正直に申しまして知らなかったような状況でございます。その間埋め立てが行なわれ、それからいまお話ありましたように、相当大規模なホテルが建ってしまったという状況の場合に、はたして原状回復命令が可能かどうか、若干検討を要する点ではなかろうかというふうに思っております。したがいまして、いま和歌山県のほうに事情を調べさせております。  それから第二の問題といたしまして、関係者から国立公園局のほうへこの問題につきまして再々陳情があったではないかというふうなお話でございます。私ども関係者から陳情を受けたことは確かでございますが、陳情の論点が、これから問題になりそうな弁天島の埋め立て問題について強い反対の陳情があったことは記憶しておりますが、その陳情関係の書類の中にこの問題が載っておりました。したがいまして、今後とるべき措置といたしましては、原状回復命令を出すこともなかなか困難な事情もあろうかと思いますけれども、目下和歌山県庁を通じてさらに実情を詳しく調べていきたい。陳情の中で、特に本件と関係ございませんが、いまありました弁天島の問題につきましては相当詳しい調査もいたしております。  大体そういうような状況でございます。
  56. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この点は検察当局のほうでも再調査を進めていただくということで、私現地を見ておりませんけれども、相当な護岸もしておるようでありますが、一つは、夏場になりますと子供たちの海水浴場として自然の海水浴場であったのが、全然できない。途中でプールをつくろう、こういうような話し合いがあったそうでありますけれども、いよいよ埋め立てが完了してしまうと、そういう地元の子供たちの要望には耳をかさないというような状況にあるようでございます。検察当局で罪にすることが、あるいは責任の所在だけを追及することが私が質問申し上げた趣旨でもございませんから、どうかひとつ——弁天島の埋め立てに通ずる関係を埋め立てるというようなことになれば、それらの景勝地がまるっきり死んでしまいます。ここに小さく白く出ているのが那智の滝でございます。この砂浜がいわゆる問題の砂丘であります。ここにあるのが弁天島でございます。田村博士などに伺いますと、この三つがここを国立公園の特別地域に指定した三つの柱だとまでおっしゃられているので、その点を阻害するようなことについては——しかもその点については、砂丘であるということがはっきり、綿密に調べれば地図の上からも出てまいるものを、公有水面だということで偽って知事に認可をさせて進めて問題を起こすというようなことは、今後もこの地域は観光地ですから、地価もだんだん上がっていくと思いますけれども、そういう形で特定の者を利得せしめるわけにはまいらないと思いますので、特に公園局のほうでも特別な強力な指導をお願いしたいと思います。あげてこの件についての和歌山地検での再調査に期待をかけたいと思います。  それからもう一つの問題は、これは七月十日に和歌山地検へ告訴と告発をいたしたのでありますが、告訴の関係者は、その後町当局との話し合いというか、伺えば、何かそういうような問題を検察当局へ持ち出したことで、いわば極端なことばで言えば村八分的なことになりはせぬかということで告訴を下げたということを昨日私のところにも連絡をしてきておるのでございますが、これは農林省関係の担当官にも申し上げましたし、それから法務省のほうでもお調べをいただいておると思うのですが、和歌山県の伊都郡かつらぎ町の妙寺町であります。そこにある——具体的には妙寺駿河ノ段千八百四十三番地の農地一町六反歩、これは現在までは国有農地で、戦前から十七、八名の者が耕作をいたしておったのでありますが、何でも戦時中に食糧増産のために戦時特例法によっていわゆる国有農地になっておるようでございますが、農民は戦前からも引き続き耕作をしておるということであります。ところが、三十八年の十一月の三十日にこの妙寺町の近くに県立の農業センターを建設されるので立ちのいてもらいたい、離作してもらいたいという町長からの通知がありました。いきなりなことなので農民は驚いて、町当局と数回にわたって折衝をいたしましたところが、この国有農地には当時使用料も払っているから離作の意思はないということになった。それならひとつ国から払い下げを受けてもらうが、この土地も一率にはまいりませんので、一反四十万円、三十五万円、三十万円と三段階にわたって評価をして、そのうちの半分はいわゆる耕作権の保障ということにいたしました。そういたしますと、一反歩四十万円の土地は二十万円、三十五万円の土地は十七万五千円、三十万円の土地は十五万円ということで払い下げることに決定をいたしまして、三十八年の十二月、町当局が手続をとって進めてもらう、そういうことだろうと思います。三十八年の十二月に、いま申し上げた二十万円、十七万五千円、十五万円、それぞれ耕作している面積にかけましたものの代金の半額を、残りの半額を三十九年の十二月に町当局へ払い込んだ。ところが、代金を完済しても所有権移転登記をしてくれないので、これまた町へ持っていったところ、たまたま四十年の三月三十一日付で、和歌山県の農林部長より各人あてに払い下げが決定して、その代金を納めろという通知が町当局を通じて出されているということがわかりましたので、調べてみましたところ、払い下げ代金は総額で十八万二千円、十八人の払い下げを受けたいという者が払い込んだ金は全部で三百三十八万円余であるということで、あまりにも差額の大きいことに驚いて、町議会に問題を持ち出したり、あるいはそのうちの関係者が和歌山の行政監察局へいわゆる苦情相談の形でこれを持ち込みまして、行政監察局のほうでは、私の聞いておるところでは、これが農地の正当な払い下げの関係であるということであれば、国へ払い込む十八万何がしかを引いた残りは関係の農民に返還をしてやるか、あるいはこれは多少複雑な事情があるようでありますが、県立農業センターの敷地を県へ提供するために、その敷地の農民にかえ地として提供する金をこの払い下げ代金の中から処理しているというような事情もございます。あるいは地区の農道の補修であるとか、そういう若干公共的なものは農民から町当局が寄付してもらうというようなことの話がつけば、その部分は返さなくてもよいだろうけれども、原則としてはやはり十八万何がしかの国へ納めるものを除いたほかは返すべきだという勧告というか、そういう指導をなされたそうであります。町長はがんとして聞かない。自分のやっていることは間違いないのだということでがんばっておるというのが現状であります。私の調べたところによりますと、ここには国有農地がまだほかにもあって、いま私が申し上げた県立農業センターの現在建設されておる敷地も、登記面で見ればまだ国有農地なんですね。したがって、これは和歌山県が国有地を借り受けておったのではないかというふうに思うのでありますけれども、その町が県立農業センターの建設地を提供するという名目で農業センターのところを耕作していた農民五人が、今度の問題の一町六反の中で八反ばかりの払い下を受けたということになっておるわけですが、町当局が町議会へ出した書類によりますと、この国有農地を払い下げて、農民から受けた三百三十八万八千九百九十円のうち、百八十万七千五百円がいわゆる離作補償費として出された。それから三十五万二千八百五円が道路の改修費。これはどこの道路の改修かはわかりません。それから国へ納める十八万二千四百六円。それから昭和三十九年度の国有農地の賃借料として九千五十円というようなものを支出いたしまして、差し引き百万一千三百十八円はまだ現金が残っておって、これを農協で町が保管をしているというようなことを町議会で発表をしておるようであります。町長の言い分としては、業務横領その他で告発が出たのかもしれませんけれども、別に自分が個人として身につけていない、こういう点からそういう強がりを言っているではないかと思うのでありますが、こういうような形の払い下げをめぐって、農民から町が預かったものの中から離作補償費の百八十万円であるとかあるいは道路改修の三十五万円というような、これは道路改修をやれば町議会にそれぞれ予算を出して行なうのが私はあたりまえのことじゃないかと思うのです。こういう取り扱いをしておるところにやはり町当局の財政的な、あるいは行政運用にも問題がありますし、私の調べたところでは、農林省の関係は適法の書類が出てまいりましたので、法律にきまった価格で払い下げたという点でその点の違法はないようでございますけれども、それを預かった町当局あるいは町の農業委員会、その関係においては若干私は問題があるのではないかと思うのであります。この点については、検察庁のほうは四月十日に告発状が出ましたし、一部告訴者は告訴を取り下げるというような形で、まだ取り調べが進行していないのは無理からぬと私は思うのでありますが、その後農林省の関係では、京都の農政局その他にこれまた関係者が陳情に行って事情を調べたりしておると思うのですが、その点がどうなっておりますか。  また、この点については和歌山の行政監察局が、苦情相談の形で持ち込まれたことに対してきわめて適切な指示、指導をなされたと私は思うのですが、現実にそれが実行されなければ行政監察局の存在ということにかかわると思うのであります。行管の立場からも御見解等を得ておきたいと思います。
  57. 木戸四夫

    ○木戸説明員 お答えいたします。  それじゃ、まず先生から質問がありました点につきまして、私のほうといたしまして承知した事実関係を御説明いたしたいと思います。  この土地は、かつらぎ町の駿河段及び亀伏山のところにございまして、一町六反六畝二十歩の土地でございます。その経過につきましては大体先生のおっしゃったとおりでございますけれども昭和二十三年の十二月二日付をもちまして、旧自作農創設特別措置法というのがございまして、その規定の第三条第一項第一号に該当するので買収したわけです。これは不在地主分として買収した土地でございます。その買収面積は八町八反二畝二十五歩でございまして、その旧所有者は三名が共有しておりまして、松房義雄、松本禎夫、吉川正美の三名でございます。買収対価は四万五千七百八十六円で買収したということであります。この土地につきましては、先生から先ほど御説明がございましたように、戦時中に食糧増産の関係で皇農少年義勇隊が借り受けましてそこを耕していたようでございます。終戦後になりまして同隊が解散いたしまして、付近の農民がそこを耕していた、こういうことになっておるわけでございます。  昭和二十六年の七月十日に県立伊都高校妙寺分校の実習農場用地として、和歌山県から農耕貸し付けを行なったわけでございます。その貸し付け面積は買収面積と同様に八町八反二畝二十五歩でございます。その後、伊都高校の貸し付けとして貸し付けた後も、その八町八反のうち一町六反につきましては、従来の耕作者二十三名が引き続き耕作していたようでございます。それで昭和三十八年に県立農業センターを近くに設立したい、こういう話がございまして、その用地を提供したうち、五名のものについては代替地を必要とする、こういうことになりまして、その代替地として前に御説明申し上げました二十三名が耕しておる土地、これを充てたらどうかということになって、関係者がいろいろ協議をしたようでございます。二十三名のうち十名は離作してもいい、こういうことを申したようでありまして、これに相当する面積が八反九畝十二歩でございます。あとの十三名はやはり耕作を継続したい、こういうことになったようでございます。それでそういう話し合いの結果に基づきまして、その十三名につきましては、従来耕した一町六反のうち、従来十三名が耕した分は、そのままその耕作を継続する人に売り渡す。それから離作した十名の八反九畝十二歩は、代替地として要求しております。農業センターに土地を提供した者に売り渡す、こういうことになりまして、農業委員会を通じまして、県に申請書が申達されたわけでございます。そこで昭和三十九年の十月十六日に、県に貸し付けておりました八町八反のうち、一町六反につきましては解約をいたしまして、それでそれぞれ十八名の人に売り渡したわけでございます。これは農地法の規定によりますと、小作地につきましては、その土地を耕しておる小作人で、農業に精進する見込みのある者に売り渡す。それから自作地につきましては、一般に農業に精進する見込みがある者に売り渡す、こういう規定になっておりますので、その売り方は農地法上からいえば適法であったと考えられるわけでございます。  それから先生おっしゃいましたように、四十年の三月三十一日付で、県の農林部長が歳入徴収官になっておりますので、それから町長に対しまして、売り渡しの対価徴収についての納額通知書が送付されておるわけでございます。その対価といたしましては、農地法上、農地法三十九条によりまして、農地法十二条に基づく政令で定める額ということに法律的にきめられておるわけでございます。したがいましてそのきめ方は、法定小作料の十一倍ということになっておりますので、農耕用に売り渡すわけでございますので、十八万二千四百六円、こういうことになるわけでございます。  それから貸付料が九千五十円になっておりますけれども、この件につきましては、その徴収委任を市町村長にやらしておりますので、その分の対価は農地法上から取るべきである、こういうことになるわけでございます。そのほかの点につきましては、先生おっしゃったように、三百三十八万八千九百九十円を農民のほうからいただいておるということになっておるようでございます。したがいまして、その徴収金の使途は、先生おっしゃったようなことになっておるわけでございますが、私どもの考え方といたしましては、農地法上の問題としては、売り渡しの対価、それから三十九年度の貸し付け料だけは取るべきである、あとの問題につきましては、農地法上の問題ではございませんで、両当事者間の問題でありますので、両当事者間で話がつかなければそれを返すべきである。こういうように考えておりますし、和歌山県のほうでもそういうぐあいに指導をしておる、こういうように聞いておるわけでございます。
  58. 稲木進

    ○稲木説明員 ただいまのお話の件につきまして、関係者の方から、町に行政相談員というものがありまして、その人を通じて、和歌山地方行政監察局のほうに、苦情相談という形であがってきたわけであります。あがってまいりましたのは、六月十五日に相談員の方がその相談を受け、そしてそれが翌日和歌山行政監察局のほうに報告されております。それを受け付けましたのが六月十八日でございます。その翌日に関係者の方が監察局のほうにお見えになりまして、いろいろと話があって、それを局のほうで事情を聴取したといういきさつになっております。いろいろ事情を聴取し、また局のほうで若干の調査をしました結果は、先ほど先生からお話しのあったのと、またただいまの農林省のほうからの御説明とほとんど内容的には変わりございません。  それで、ただ、いまお話に出ていない問題としまして一つありましたのは、従前耕作しておりました二十四人の方々から土地の使用料として、小作料ということでございますが、町のほうに土地の小作料を払っている。もともとその土地は学校が一応借りて使っておる。高等学校ですが、県立だったと思いますが、県が国有農地を借りています。したがって県が使用料といいますか、借地料を国のほうに払う。これは学校から出るわけでございます。そのほうの金に充てるということで、実際に耕作している人たちから集めた小作料が学校のほうに出される。学校はそれと合わせて成規の小作料を国に納める、こういうようなことでやっておったようですが、それらの集まった金を町の役場のほうで保管しておった。そういう金が約十二万三千円ぐらい現在残っておる。こういうことはいまのお話で出なかったので、ちょっと申し上げておきますが、その他の点につきましては大体先ほど来のお話と同じようなことでございます。  和歌山の行政監察局としましては、以上の状況にかんがみまして、先ほど先生もちょっとお触れになりましたように、国有農地の払い下げについては、県が納額通知書ですか、出した十八万何がし、この金額を実際払い下げを受ける農民から集めてそれを県に払う。その他の問題は別個の問題であるから、これは町なりあるいは地元の関係者が話し合って、しかるべく本人に戻すなり、あるいは本人の自発的な意思があればこれをまた別の寄付金なりしかるべき方法でもって処理する、こういうことに扱うべきではないか。  それから町が保管している十二万何がしのいままでの借地使用料、これは県のほうに納めて、残りの分が出れば、それぞれもとの人々に払う、大体こういうようなことで町の収入役と、それから行政相談員の人に局のほうに来てもらって、そうしてそういうような監察局としての考えを述べて、善処をしてくれ、こういうようなあっせんをしておる次第でございます。同時に、この問題は農地の払い下げに関連する問題でありますので、県が同じそういうような趣旨で地元を指導されるようにということを県のほうに申し入れをしております。その後どういうふうに進展しておるか、まだ地元の報告を聞いておりませんけれども、大体私どもとしましては和歌山の行政監察局があっせんしたような方向で処理されるのが適当じゃないかというふうに考えております。
  59. 田中織之進

    ○田中(織)委員 行政監察の立場、あるいは農林省の立場から事態の推移はわかりましたけれども、町当局の関係、耕作者との間はまだ未解決です。一つには、町長は、自分は私をしてないから、町のためにというか、国から安く払い下げを受けるというのは一般農民との間の権衡を失するじゃないか、ちょっと見当違いのような議論をいたしたり、いささか混乱しておると思うのでございますけれども、問題は、末端の農業委員会の農地の払い下げその他に関する取り扱いについて、若干私問題があるのじゃないか。また農業センターの関係も町が提供したのではなくて、国有地をいわば転用しておるような形で別の問題が残っておると思う。そうしますと、先ほど言われたように三名の、松房さんほか旧地主の人たちが、農地法の八十条の関係から見れば——現在伊都高校の農業部の校舎が一部建ったり、あるいは二億円ばかりの金をかけて農業技術センターが建設されておる。たとえそういう行政機関であろうとも、八十条の解釈から見れば農地以外の目的に転用することはできないということで、もちろん、これらの点についても行政管理庁の関係でも見えられて、関係の旧地主の人たちとの間に話し合いをつければ——片一方は県立高校の農業部の建物が建っておるし、県立の農業センターが建っておるのでありますから、八十条をたてに旧地主に返してやれということまでは私は申しませんけれども、こういうような点については県と国との間だから、あるいは県と町との間だからいいだろうというようなわけには法治国家ですから私はいかないと思います。そういうような点については、積極的に指導してもらわなければならぬと思います。引き続きこの問題が残っておるし、そういうことで実際の解決をすれば支障がないと思うのでありますが、刑事局長、この点も七月十日の告発のみは生きておるわけでございますので、いまいろいろ選挙違反やその他で検察庁もなかなか忙しいのだろうと思いますけれども、こういう特別法に関連した、あるいは町の行政に関連した問題ではありますが、かえって権力機構の内部における不明朗な問題こそ、検察庁がき然とした立場で取り上げて、はっきりした結論を出さなければ、検察の威信も維持されないことになると私は思いますので、この点についてはひとつ和歌山地検を督励していただくように要望しておきたいと思います。また現地は私の選挙区の問題でございますので、できるだけ地元民との納得の上で解決するように私も協力したいと思いますけれども、それぞれ法的な手続の残っておる分については、農林省なり行政管理庁のほうからもしかるべきはっきりとした指示をしていただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。
  60. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 次会は来たる十二日閉会審査を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会