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1965-08-11 第49回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月十一日(水曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 倉成  正君 理事 田口長治郎君    理事 舘林三喜男君 理事 長谷川四郎君    理事 赤路 友藏君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       綱島 正興君    丹羽 兵助君       森田重次郎君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    千葉 七郎君       松浦 定義君    森  義視君       山田 長司君    湯山  勇君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         食糧庁長官   武田 誠三君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   丹羽雅次郎君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   鈴木 喜治君         農林事務官         (農政局農業協         同組合課長)  小山 義夫君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  道正 邦彦君         日本専売公社理         事         (販売部長)  牧野 誠一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 八月十一日  委員松井誠辞任につき、その補欠として栗原  俊夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗原俊夫辞任につき、その補欠として松  井誠君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件  農林水産業団体に関する件(農業協同組合の事  業に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 濱地文平

    濱地委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。森義視君。
  3. 森義視

    ○森(義)委員 去る四十六国会林業基本法が制定されまして、わが国林政基本方針が明らかにされたわけですが、林野庁の監修による「林業基本法の解説」の冒頭でも、長官が、この基本法は明治以来のわが国林政に一紀元を画するものである、こういうふうに高く評価しておられます。ところが、この法律はいわば宣言法的なもので、この法律精神を生かして具体的にわが国林政を推進するためには、多くの関連立法が必要だと思うわけです。と同時に、政令あるいはその他の行政指導の面で、この精神を生かすための具体的な措置が講ぜられなければ、せっかくりっぱな基本法ができましても、いわば仏つくって魂を入れない、こういう結果になろうかと思います。そこで、この前の四十八国会でも、森林開発公団法の一部改正附帯決議の中で、関連立法のすみやかな整備の要望を出しておいたわけですが、この基本法に基づくところの関連立法として、どういう種類のものを林野庁としては、農林省としてはお考えになっておるのか。同時に、その成立の順位をどういうふうにお考えになっておられるか。特に昭和四十一年度の予算編成期を迎えまして、予算要求との関連で、当面どういうものを考えておられるか、あるいは行政指導の面で具体的にこの立法精神を生かした行政指導について、どういうものをお考えになっておるか、まずその点についてお伺いしたいと思います。
  4. 田中重五

    田中(重)政府委員 林業基本法につきましては、これが林業産業と見て、その政策目標を定めるという意味において、画期的な法律であるということを言ってきたわけでございますが、そこで、この法律趣旨を生かしていくためには、関連法案あるいは予算措置その他必要な事項を法律で規定する必要があります。  それで、現在の段階検討はいろいろいたしておりますが、法案の問題といたしましては、かねてから検討を進めてまいりました入り会い林野近代化についての法案を提案すべく準備を進めておるというのが一点でございます。  それから予算の面におきましては、やはり林業生産基盤整備から始めるということで、林道拡充、それから造林計画的かつ急速な推進をはかるための下部組織等考えておりますし、それから、さらには林業経営近代化をはかる意味で、林業構造改善事業の積極的な実施、これを考えているわけでございます。さらに、この林業経営のためにきわめて重大な問題であるところの林業労働力対策についての予算措置考えているわけでございます。  この法律趣旨を達成するために、そのような当面の問題を考えながら、なお、政府全般としては林業基本法趣旨を生かしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  5. 森義視

    ○森(義)委員 ただいま長官から、当面考えている基本法関連する立法的措置あるいは予算的措置についてお伺いしたわけですが、私は非常に物足らないところがある。実は四十八国会森林開発公団法の一部改正だけしか出てこなかったということについても、せっかく鳴りもの入りで高く評価された林業基本法が、全く絵にかいたもちになってしまうという不安を感じたわけですが、あの基本法ができましたときに、私どもは現地へ参りまして、いままで日本行政面から谷間に追いやられておった林業に対して、今度こそ日の目を見る、日本産業界の中におどり出たのだ、山村から離村をしていく労働者に対して、これから希望を持って生きようということを実は訴えてきたわけです。林業はどうなるのでしょうという山村労働者の不安に対して、私たちは、あの基本法が将来の山村に対して大きな希望と光明を与えるのだ、こういうふうに訴えてきたわけです。林業基本法が制定されました当時においても、大体そういう産業立法としてとらまえて、いわば日の当たらない農村あるいは山村に対して、明るい、都市の労働者と大体同じような生活環境に持っていくことを目的としているように承っておったわけです。ところが、四十八国会では、もちろん、非常に重要な当面の施策として林道開発ができたことは、これはわれわれも大賛成でございますけれども、もっと抜本的な、早急なあの精神を生かすような立法措置を実は期待しておったわけですが、そういうものは一向出てこなかった。今度またいまのお話では、非常にありきたり的な、何かあの法律を大きな希望を持って迎えられるような立法措置考えておられないように、私はいまの長官答弁から承ったわけなんです。  実は御承知のように、わが国林業が当面している最大課題は、これは拡大していく木材需要に対してどう対処するかということが、私は、やはりわが国林業に課せられた産業的、経済的視点に立った最大課題だと思うわけです。基本法が制定されました背景というものも、拡大していくわが国経済発展に伴って急に拡大していく木材需要に対して、どう対処するかという観点から、従来のいわゆる資源偏重的な林政あり方を改めて、産業的見地から、新しい抜本的な立法がつくられた、こういうふうに実は理解をしているわけです。しかしながら、長官も御承知のように、林業というのは、ほかの鉱工業製品と違いまして、生産に三十年も四十年もかかるということから、どういう政策を具体的に実施いたしましても、直ちに即効的な政策というのは見つからないと思います。きょうこういう政策を実施したから、来年度からこういうふうになるのだ、そういう性格のものではないということは、私もよく承知しておるわけです。しかし、少なくとも現在の激増していく需要に対応するためには、どの点から重点的に取り上げていかなければいかぬかということの――やはり立法措置を講ずるにいたしましても、そういう課題に適応するような立法措置あり方でなければならない、私はそういうふうに思うわけです。政府がやろうという気にさえなれば、これはかなり短期間に、あの法の精神を生かす上において効果をあげ得ると私は思うわけです。たとえば林道の問題一つ取り上げましても、これはわが国林業基盤が未熟であるということが、わが国生産需要に見合わない最大原因であるということで、生産基盤整備林道開発が必要である。ところが、いま考えておられる林道開発では、一体激増する需要に対応する生産基盤拡充に実際見合うだけのことを考えておるのかどうか。私はこの点についてはたいへん不十分だと思うわけです。  まず、林道の問題について、この前の委員会でも私はお尋ねしたわけでございますが、わが国林道が一ヘクタール当たりについて三・五メートル、四十年もかかって大体一三・七メートルくらいにしたい、こういう希望を聞いたわけですが、これはもっと生産基盤整備、特に奥地未開林開発、こういう点に抜本的な施策を講じなければ、ただ林道をつくるという観点だけのとらまえ方では、この需要の激増に対応する体制を思い切って整備するという形にはならないと思います。そういう点について、まず、日本の現在の森林資源の中で、生産基盤整備されて、それが経済的稼働状態にある、これが大体どのくらいあるのか。私は、大体四割くらいが、森林があっても林道やその他の関係木材を搬出することが困難である、こういうふうに聞いておるわけですが、そういう状態はどのくらいあるのか。そういう生産基盤整備されておらない奥地開発林、老齢過熟林と申しましょうか、そういうものを引き出すための施策をこの際もっと積極的に重点的にやる必要があるのではないか、こういうふうに思うわけですが、その点について、今度の予算編成にあたって、林道問題についてどれほどの熱意を持ち、どれほどの規模拡大考えておられるのか、もう一度具体的な内容についてお聞かせ願いたい。
  6. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまのお話のうち、林道に関する限り先生のお説のとおりである、こう考えます。そういうふうに考えたからこそ、まず林業基本法成立後の国会におきまして、林業生産基盤整備意味で、森林開発公団法改正することによってこの林道整備に入ったわけでございます。林道につきましては、先国会におきましてもいろいろ論議がかわされましたが、現在の未開発林開発が少なくとも十分に行なわれ得る程度林道拡充、これを考えながら、急速にこの目標に接近したいという考え方が一点、それからそういう林道の開設される地帯は貧困な地帯であるだけに、地元負担に相当無理があるという面で、この林道開発についても、負担軽減ということもあわせ考えながら、林道から入ったわけでございます。  そこで、四十一年度の予算といたしましては、やはり地元負担軽減意味において、補助率をでき得る限り引き上げてまいりたいということがまず一点、それからその目標に到達するために、できるだけ早期を要するという意味で、事業量拡大、これに重点を置いて考えてまいりたい。予算要求の面におきましては、主としてその二点でございます。
  7. 森義視

    ○森(義)委員 先ほど私が質問しました点で答弁漏れがあるわけですが、生産基盤の未整備のために、経済的な活動が発揮できない地域は、国有林民有林を含めて全森林面積の中で何割くらいを占めておりますか。
  8. 田中重五

    田中(重)政府委員 大体現在林道がついているというふうに考えられ、そうして開発をされていると考えられる地域は、その林道から大体千五百メートル程度範囲地帯考えているわけでございますが、そこで、その程度以上を集材範囲外地帯といたしまして、大体現在の森林面積のうちで、民有林におきましては四百万ヘクタール程度のものが考えられます。それから国有林におきましては、やはり大体半分近いものがこれから開発される必要がある、こういうふうに考えております。
  9. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、民有林国有林合わせてざっと七百五十万ヘクタールほどが、これから経済的機能を発揮するために開発を必要とする面積である。そうなりますと、やはり二千五百万ヘクタールとして約四割ですね。この眠っている資源を――生産基盤整備して経済的活動身発揮さすために林道を新設する場合に、何年間でこの眠っている資源を実際に経済的ベースに乗せ得るところの生産基盤整備ができるか、こういうことをはっきり計画を立てて林道計画をやっているのかどうか。先ほど長官林道問題についての説明では、補助率を引き上げるとか、何か場当たり的な答弁のように思うのですが、少なくともいまの日本の国土の六八%を占めておる森林資源といいながら、その中で、四割が林道も何もなくて出せない、動かせない、そういうままに放置されておる。これを少し経済的に稼働し得る体制に持っていくというのが、私は日本林業に課せられた当面の最大課題だと思うわけです。それを経済的に稼働し得る体制に持っていくために、当面林道が必要である。その林道は、大体何年間でいまの放置されておる体制整備することができるか、こういうことについて、その計画性を持った林道開発について、もう一回お伺いしたいと思います。
  10. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、すでに森林法に基づく全国森林計画によりまして、民有林並びに国有林別計画をしているわけでございまして、そうして現段階といたしましては、その森林計画の十カ年計画に基づいて進めているわけでございます。ただ、今回の林業基本法に基づきました森林資源基本計画等を現在策定を急いでいるわけでございますけれども、その基本計画によりまして、さらに新しい観点に立って将来の計画を持ちたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、先ほど長官がおっしゃいました林道の問題は、いわゆる全国森林計画に基づく林道整備であって、この基本法ができた後におけるいわゆる産業的な見地に立った角度からの林道整備計画ではないわけなんですね。いまのお話ですと、全国森林計画に基づいて林道整備考えておられるわけでしょう。それだったら従来から考えていることです。少なくとも基本法産業立法としてできた以上、しかもその至上課題である需要拡大に対応させるための、いわゆる経済的な稼働を容易にするための林道という問題は、新しい見地から打ち立てられなければならないと思うわけです。いまの長官お話ですと、新しく資源基本計画ですか、そういう中で、日本のいまの放置されておる資源を実際に活用するために、どういうふうにすればいいかという計画を新しく策定して、それに基づいて林道計画考えていきたい、こういう答弁であったわけです。それはいつごろできるわけですか。
  12. 田中重五

    田中(重)政府委員 林業基本法に基づきます森林資源に関する基本計画につきましては、目下検討の過程でございますが、一応本年の末を目標に、目下のところ検討を進めているわけでございます。
  13. 森義視

    ○森(義)委員 その検討の基礎になるのは、先ほど申しました、いわゆる林業生産基盤整備されておらない、経済的稼働が不可能である、そういう四割に近い林野、それを何年間くらいで経済的ベース稼働し得る条件をつくろうとしておられるのですか、今度の新しい計画では。
  14. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、ただいまも申し上げましたように、林道整備をできる限り急ぎたい。できる限り未開発地帯開発をいたしまして生産化いたしたい、こういう考え方で、林道網拡充目標年次というものをできる限り繰り上げて考えてみたい、こういう考え方でいるわけであります。ただ、予算の見通しその他もございますので、やはり実効性のあるもので結局は考えざるを得ないと思いますけれども、その目標に到達するための年次はできるだけ繰り上げたい、こういう考え方検討いたしております。
  15. 森義視

    ○森(義)委員 林道の問題についてまだまだお聞きしたいことがあるわけですけれども、長官にこの際一つ要望しておきたいわけです。  わが国森林資源需要拡大に対応できない最大原因は、基盤の不整備である。それを達成するのは林道だ。これはコースがはっきりしておるわけですね。こういうコースがはっきりした以上、重点施策として、その問題についてはやるという根性を持って考えていただかないと、あれもやらなければならぬ、これもやらなければならぬと、こういうことで、結局四割近くも眠ったままで資源が放置されておる。それをいつかは経済的ベースに乗せるんだ、こういうなまっちょろい考えでは、なかなか達成できないと私は思うのです。だから、そういう問題については、いまも長官がおっしゃっておられるように、森林基本計画の中で、年次を短縮した形で林道整備を達成したい、こういうようにおっしゃっておられるわけですけれども、できるだけ早急に、内容は差しおいても、重点施策として林道整備計画についてはお考え願いたいと思う。  次に、生産基盤整備されるということは、わが国林業発展の一番大きな重点であるわけですが、いかに生産基盤整備されましても、現在のように外材がどんどん入ってきて、木材価格が低迷して、林業家生産経営意欲が非常に減退しておる状態では、私は、生産基盤整備されただけでは木材が出てこないと思う。このような状態の中で、やはり一番問題になるのは価格の問題だと思う。わが国林業が現在のような木材価格横ばい低迷の中で沈滞しておる、そういう状態を何とかして脱却しない限り、林業家自身経営意欲というものはわいてこない。その問題について、価格政策に対してどういうふうにお考えになっておるか。これは林業家経営意欲を振起さす一番大きなモメントだと思う。その点についてお聞かせを願いたい。
  16. 田中重五

    田中(重)政府委員 木材価格につきましては、これは他の商品と同様、やはり生産者としては高い水準がいいでしょうし、消費者としては安いほうがいいことは言うまでもないことだと思います。さらにその価格安定性を持っているということは、これは経済政策の面から申しましても、ぜひとも必要なことであろう、こう考えるわけでございます。そこで、生産者の立場に立った場合に、木材価格はいかにあるべきか。やはり現在の労賃あるいは諸資材、そういうもので造林を進めてまいりまして、そして少なくとも通常の納得し得べき利回り、そういうもので収穫ができるということが必要でありましょうし、そういう点をまず重視しなければならないと思いますけれども、現在の木材価格は、先生も御承知のとおりに、まずもっぱら市場における需要供給関係からきまってきているというのが現状でございます。そこで一方また、その価格生産者の側で規定するというほどの力もないし、また、林業経営自体が長期を要するものでございますから、いまのコストの問題をとらえて考えましても、必ずしも明確な面が出るわけではない。現在、いずれにいたしましても、木材価格は、他の商品に比べて、戦前あるいは戦後の昭和三十二年前後、あのころに比べても、相当の値上がりをしておるということは事実でございます。それが昭和三十六年をピークといたしまして、横ばいに転じたという実態がございますが、当面の価格考え方といたしましては、その価格をできるだけ安定するように、変動が激しくないような形で推移していくというのが妥当であろう、そういう考え方でございます。そういう意味では、そのような状態を維持する意味において、外材も補完的に入ってくることが望ましい、こういう考え方でございます。
  17. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、長官の御答弁ですと、現在のこの低迷した価格をこのまま安定価格として維持していく、こういう見解の上に立った価格政策考えておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  18. 田中重五

    田中(重)政府委員 現在の価格の見方についてでありますが、この現在の価格は、昭和三十六年のピーク時までは、先生も御承知のとおりに、きわめて活発な設備投資が行なわれてきた時代でございまして、それと並行して木材価格も非常な高値を呼んだ。それがその後、特に自由化との関連もございますが、外材の大量の輸入、それから景気の停滞、それぞれ要因がございますが、横ばいに転じておりますけれども、あのときのピークに比べまして、内地材価格は下がってはいないわけでございます。大体その当時からほとんど横ばいというふうに言うことができるのではないか、こういうふうに考えております。現在の林野庁考え方といたしましては、そのような価格がはなはだしく変動することを避けるように、安定した形で持ってまいりたいというのが現在の考え方でございます。
  19. 森義視

    ○森(義)委員 三十六年のピーク時から木材価格変動はおっしゃるようにほとんどないわけです。そうすると、横ばい状態にある。しかし、労務賃金は上がってきておる、資材は上がってきておる、そういう状態の中で、三十六年当時の価格がそのまま横ばいでは、これはとうてい林業家生産意欲をふるい起こすことにはならないと思うのです。これはもちろん価格が暴騰するということについては、いろいろと他の物価の関係で問題があろうかと思いますけれども、三十六年以来の横ばい価格をそのまま一つの安定価格として維持していこうという状態の中で、労務賃金が上がり、資材が上がっていく中では、林業経営者生産意欲がわいてこないと私は思う。現在そのような状態になっているのじゃないですか。それをそのまま据え置いて、それで安定価格を維持していくという方針では、これは林業家生産意欲というものは出てきませんよ。それはそのままその形で続けろ、こういうことなんですか。
  20. 田中重五

    田中(重)政府委員 木材価格は、先ほども申し上げましたように、やはり需要供給関係できまってくる。そういうものとして現在の価格が取引の価格となっておる。そこで、これに対して、生産者はいかにすべきか、そこにもやはり林業基本法の基本的な考え方があるわけでございまして、林業産業として経営していくためには、やはりその生産性を上げなければならない。生産性を上げることによって、労賃あるいは諸資材値上がりもこれを吸収していくというような施策が必要であるから、まず政府として、先ほどお話の出ましたように、生産基盤整備ということで、林道を取り上げる。そして、一方また、造林についてのそれが活発に行なわれるような情勢を考えてまいりたい。さらに、一番産業としてもおくれております林業に対して、機械化を促進してまいりたい。また、その経営者の技能の向上をはかっていく。それから林業構造改善事業考えておりますところの小規模林業経営規模拡大ということで、能率のあがる生産の場をそこに造成していくように進めてまいる。いろいろな諸施策林業基本法趣旨に基づいて必要になってくるゆえんである、こう考えるわけでございます。
  21. 森義視

    ○森(義)委員 おっしゃるように、木材価格というものは、需要供給関係できまっていくわけですが、需要拡大していきますと、供給がそれに見合わなかったら、木材価格は高騰するわけですね。現在は需要がどんどん拡大していっておる。それを価格を押えておるのは、外材輸入によって押えているわけです。だから、外材が無制限にふえてきている。外材の問題についてはあとで御質問しますけれども、これは決して正常な需要供給の中できめられている現在の価格ではない。外材輸入によってこれを押えているだけです。したがって、生産が停滞し、造林意欲も停滞しているわけですね。こういう状態価格政策をほうっておいて、三十六年から据え置きをしておいて、上がるのを外材輸入して押えておく、こういう形でどうして生産意欲が上がっていくのですか。もちろん、先ほどおっしゃいましたような林道整備する、あるいはもっと科学的ないろいろの資材を入れて生産性を高めるとか、いろいろな方法があるでしょうが、基法的な価格政策について、いまのような低迷した価格外材によって押えた価格安定価格である、こういうような考え方を直してもらわない限り、これは林業家生産意欲の上昇に私は結びつかないと思う。その点くどいようですが、木材だけをなぜ三十六年から押えておかなければならないか、この点について、もう一回長官の見解をお伺いしたい。
  22. 田中重五

    田中(重)政府委員 木材価格につきましては、先ほども申し上げましたように、三十六年以降、若干の上げ下げはありますけれども、まず横ばいというふうに見ていいかと思います。これは卸売り価格をつかまえての話でございますが、それは木材だけではなくて、他の商品につきましても、卸売り価格が、それほど木材と比べて上がっているとは考えられない、こういうことでございます。  それから、外材が入っている二とが、内地材価格に影響を与えていることは確かでございますけれども、現在需要がどんどんあるのに、それが外材の消費でまかなわれているとは考えていないわけでございます。現在の需要は、御承知のとおりの景気の停滞というところから、決して活発ではございません。それが証拠に、製材工場の製品の売れ行きというものはきわめて不活発であるという面からいいましても、そのことが言えるわけでございます。外材の問題は、またあとでお話が出るかと思いますけれども、外材の四十年度における輸入量は、いまのような経済界の状態を背景といたしまして、昨年までに伸びてきたような伸びでは本年は決して入ってこないという見通しを持っております。
  23. 森義視

    ○森(義)委員 他の卸売り物価はやはりそう上がっておらない、これは単に林産物だけじゃない、木材だけじゃない、こういうことなんですけれども、他の卸売り物価の生産性林業生産性はどのくらい違うのですか。他の卸売り物価の生産性というのは、ここ数年間ものすごく上がっておるわけです。したがって、卸売り物価は上がらなくても、生産性が高まっていますから、企業利潤というものは大きくあるわけです。木材の場合においてはそんなに生産性が高まっておらないわけです。したがって、労務賃金や資料の値上がりから考えますと、企業利潤というのは、他の生産性の高い卸売り物価と比較されると、問題は別だと思うのです。その点、いま長官は、たまたま他の卸売り物価も上がっていないじゃないか、木材だけと違う、こういう言い方なんですけれども、私は、その生産性の問題はずいぶん違うと思うのですが、この点どうですか。
  24. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、卸売り価格の面をとらえて申し上げたわけでございます。生産性の向上ということで申し上げたわけではございません。生産性の比較というようなことになりますと、それは他の商品とはまた違っているであろうということは申し上げなければならない、こう思っております。
  25. 森義視

    ○森(義)委員 その点はそれ以上追及するのはやめますけれども、やはり木材価格安定に関する特別措置法というようなものをつくって、団体交渉方式でその年の価格を決定していくべきではないかと私は思う。たとえば森林組合、林産組合、林野庁、こういう生産者と購買する側との団体交渉で、その年の価格を決定していく、それの変動に対しては国有林でいろいろ操作していく、こういう形で価格安定に対する特別措置考えなければ、これはどんどんいまの状態では私は生産意欲が停滞してくると思うのです。米価のようにはいかぬかもしれません。米価のようにはいかぬかもしれませんけれども、しかし、やはり同じ一次産業としての価格維持に対しては、考え方の基本としては、同じようなことを考えていいのではないか、こういうふうに思うのですが、そういう点についてひとつ御考慮をいただきたいと思うわけです。  それから次に、先ほどからの生産基盤整備林業家経営意欲、そういうものがうまく軌道に乗ったとしましょう。しかし、それを実際に稼働させるのは労働力なんです。生産基盤整備され、林業家がよしやろうという気持ちになっても、実際に林業稼働させるのは労働力だと私は思います。ところが、現状は、労働者が非常に激しく流出しているわけです。これは三十五年の五十六万人が三十八年には三十八万人に減っておる。こういう極端な減り方なんです。こういう状態の対策が打たれなければ、生産基盤整備され、木材価格の安定について対策が打たれ、林業家経営意欲を持っても、実際に私は稼働しないと思う。その点、労働力の確保について、特別にこの基本法に基づく考え方をひとつ明らかにしてほしい。
  26. 田中重五

    田中(重)政府委員 山村から労働力が流出する、そして山村の重要な産業考えなければならない林業に必要な労働者がだんだん足りなくなっておる、これは全くお説のとおりでございます。  そこで、具体的に申し上げますと、まず、林業経営のための林業労働確保の対策といたしまして、昭和四十年度予算から取り上げた問題といたしまして、大体全国で一県平均、林業が主要な産業考えられる地帯の市町村十町村を選びまして、その十町村の中では、それぞれ林業雇用経験のある方々、そういう方々の台帳をつくる、そしてそれを基礎にいたしまして、林業経営者、それから森林組合、もちろん営林署も入りまして、その地帯における林業経営に必要とする労働者の頭数、それから事業の当面の見通し等をいろいろ相談し合いまして、そして事業と、その台帳によって明らかになった労務の状態、それをもとにして仕事に結びつけてまいるというようなことを四十年度から始めたわけでございますが、四十一年度におきましてはさらにその市町村の数をふやしまして、同じような雇用の実態というものをつかまえながら、雇用主とそれを結びつけていくというようなほうに持ってまいるのが一点。  その次は、やはり協業化の促進でございます。そして森林組合を中心といたしまして作業班をつくって、それが造林である場合、あるいは伐木である場合、そういう班が両方の仕事に、しかも機械化された装備をもって従事できるように助成をしてまいる、そしてそういう作業班の育成を助長してまいる。  それからその次は、林業基本法の制定の過程において活発な論議を呼んだ問題でありますが、林業労働の環境の整備といいますか、さらには社会保障の充実という問題そういう面についても十分に啓蒙指導のできるような考慮を払ってまいる。それはいまも申し上げました林業生産が主たる産業考えられるような地帯で行なわれる林業労働力対策事業、その中で、そういう問題を進めてまいることによって少しでも解決の糸口を開いてまいりたい、こういう考え方でございます。このことは、林業が季節に支配される仕事であるだけに、通年的な仕事でないだけに、流出の面においても、他のものに比べて活発なものがあるだろう、こう考えられますから、仕事をでき得る限り通年的に持っていくように、そして労務者が落ちつくようにいたしたい、こういう考え方でございます。
  27. 森義視

    ○森(義)委員 いろいろと御配慮をいただいておることは非常にけっこうだと思います。私は、奈良県で十八年間、吉野の山の中でじかに民有林労働者と接してきた立場から申し上げますと、少なくとも今度の基本法の十八条、十九条を受けて、林業労働者の雇用に関する立法措置をぜひ講じてほしいと思うのです。いまあれを受けて具体的な政策をやられるとおっしゃいますけれども、これは言いかけたら切りがないほどたくさん私は申し上げたいことがあるわけなんです。  具体的に一例を申し上げますと、毎年私どもの地方における山林労働者の平均年齢は一歳ずつ上がっていくわけです。ということは、新しい労働者が一人も入ってこない。毎年一歳ずつ上がっておる。かなり林業収入のいい林業専従労働者が多い吉野郡の川上におきましても、いま二十歳台の労働者は一人です。平均年齢四十五歳です。この状態では、いかに通年雇用の問題だとか、あるいは雇用の安定に対する対策だとか、いろいろな環境整備だとか、いろいろお考えになりましても、私は、いまの流出を食いとめることはできないと思うのです。だから、法律的にこうするんだという、林業労働者に持っていって、おまえらこうなるんだ、ちょっとしんぼうせい、若い者を集めて、希望を持って山村に住みつけというようなことをわれわれが言えるような具体的な立法措置を私はしてほしいと思う。そうでないと、十八条、十九条を受けたあの説明だけでは、従来もそういうことを言ってきたということで、ほとんど関心がないわけなんです。で、私どものほうの、一番紀州と近い十津川の例の森林関発公団の林道をつくられたあの地区ですね、あの地区に高等学校が一つあるわけです。その高等学校の卒業生を何とかして村役場に一人でも採用したいと思ったが、結局女の子一人が残って、全部村を出た。男の子は一人も残りません。女の子が一人残った。それを村長さんが頼み込んでやっと村役場へ採用した。こういう状態で、青年は全部山へ住みつかないわけです。そういう青年に山に住みつける希望を与えるような対策をひとつ具体的に出してほしいと思う。そうでないと、これは行政指導だとかそういう面だけでいかに林賢庁のほうで努力をされましても、実際に末端において労働者が納得するように説明できる資料はないわけなんです。私はいま林野庁長官から聞いたから、こういうことも考えている、こういうことも考えていると言えますよ。しかし、実際に全国の山林で働いておる労働者に、しかも青年に、希望を持ってそこに住みつけるような、そういうあれを与えようとすれば、もっとやはりはっきりしたものを立法措置として出してほしい、こういうように思うわけなんですが、その点について、そういうお考え方があるかないか、私はこれはたいへん重要な問題だと思うのです。もう一回長官の見解を承りたい。
  28. 田中重五

    田中(重)政府委員 山村を青年の魅力ある環境に置きたいという先生お話は、全く同感でございます。そのことは、ひとり林業のみにとどまらず、山村社会という面からいいまして、ぜひとも必要なことだろうと、こう考えるわけでございます。先般の国会成立をいたしました山村振興法も、まさに山村を魅力ある社会にする、そうして都会へ流出する青年を山村で食いとめて、そうしてまた、そういう青年こそが山村の今後の発展のにない手であるというところへ持っていく必要があることは、よくわかるわけでございまして、これは林業労働者の問題を解決することだけでこの問題の解明にはならないように思うわけでございます。やはり山村社会全般に対しての国の助成、これがあって、初めてそれは可能だと考えるわけでございます。そこで、林業林業なりに、いま私が申し上げましたような諸施策を講じてまいりたいと思いますけれども、一方また、山村振興対策が強力に進められることを私も希望している次第でございます。
  29. 森義視

    ○森(義)委員 確かに仰せのように、山村社会全体の環境整備ですね、そういうものが国の施策として行なわれていかなくてはならない。山村振興法ができたことですから、少なくともあの精神にのっとって、ひとつ具体化政策を進めていただきたい、こういうふうに思うわけなんです。  そこで、次に林業というのは、これは持続的な木材供給、それに労働者が確保できた、基盤整備できた、林業家生産意欲を持った、こういう体制で、次に必要なのは、やはり私は造林の問題だと思うのです。現在の資源をやたらに需要拡大に対応して切り尽くしても、これはどうにもならないわけなんです。だから、次に必要なのは造林の問題だと思うのですが、最近造林民有林関係で非常に停滞をしつつあるわけです、私のほうの手元の資料によりますと。造林に対して先ほどちょっと触れられましたけれども、さらに積極的な政策があればお聞かせ願いたい。
  30. 田中重五

    田中(重)政府委員 造林につきましては、お説のとおりに、これを計画的かつ強力に推進をする必要がございます。それ、昭和四十一年度といたしましては、この造林の単価のさらに一そうの積極的な引き上げ、それによる助成を手厚くしてまいりますと同時に、一方造林融資のワクの拡大、その面にもできる限り力を注ぎたいと思います。そこで、補助による造林の推進と、それから融資による造林の推進、さらには最近、先生も御承知であろうかと考えますけれども、各県に分収造林によるところの公社の制度がぽつぽつ見られます。この公社による分収造林、これの造林の推進上のにない手としての役割りをある程度高く評価をしたい、こういう考え方で、この公社造林についてもできる限りの応援をいたしたい。大体こういう形の公社造林が行なわれる地帯は、低質材の、特に人工造林化を急がなければならないような地帯に多いわけでございますので、それだけに意義も深い、こう考えるわけでございます。いずれにしましても、造林意欲をできるだけかき立てていくということ、これが国のとるべき施策として一番重要だと考えております。
  31. 森義視

    ○森(義)委員 私の手元の資料によりますと、三十六年をピークとして、造林が非常に下がってきておるわけですが、この原因はどういうところにあるとお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  32. 田中重五

    田中(重)政府委員 造林が停滞をしておるということがいわれるわけでございますが、全国森林計画に基づきまして、一定の造林の全国的な計画がございます。この計画によりますと、年間の造林面積は、その拡大造林におきまして、ピーク時を過ぎまして、若干ながら計画としても下降状態にございます。そういう点が造林面積の減少の一つの原因としてあげられなければならないということが言えますが、その次の停滞といいますことは、これはまず拡大造林にありましては、この低質材、特に薪炭用材あるいはパルプ材、そういうものの需要の動向が停滞的である。特に薪炭材については、他の近代化燃料との関連におきまして、将来は薪炭材の需要はきわめて心細いという状態にございますが、そういう薪炭材類似の低質材の場所があかないから、そこで、そのあとの造林が進まないという点が大きな原因の一つでございます。それからその次は、人工造林化されたところの再造林につきましては、やはり前から申し上げてもおりましたように、山林所有者がなお作業が計画的でないということでございます。そのときそのときの家庭の事情によって、切ったり切らなかったりするというような、山林所有のビヘービアといいますか、そういうが、たまたまいまの造林費が相当かさむとか、売ろうと思ってもそれほどうまみのある価格で売れるものでもないとすれば、まず切らないでおくというようなことも、造林の停滞といわれることの原因でしょうけれども、やはり一番の停滞の原因は、低質材の販路不振というところにあると思います。そこで、そういうところに、低質材の販路について、十分に今後開拓路を考えなければならぬ、こういうことでございます。
  33. 森義視

    ○森(義)委員 いまのような状態で、長官、この数字から見てみますと、全国森林計画目標達成が可能ですか。私は、この前からも、造林問題については、補助単価の問題とか、あるいは補助率の問題等について、変えなければいかぬということを言ってきたわけですが、いま奥地造林の場合もあるいは里山の場合も、補助単価、補助率もみんな一つですね。国営造林と一般造林は違いますけれども、いずれにしましても、地域によって、場所によって差がないのですね。これが私は一つのネックになっているのじゃないかと思います。里山の再造林の場合は、これは経済ベースに十分乗るのだから、ほうっておいても、補助を出さぬでもやるわけですね。それが奥地のほうは、補助をもらったって、いまの補助単価と補助率では、とうてい採算がとれないということで造林が進まない、こういう傾向があると思うのですが、その点はどうですか。
  34. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は、確かに先生のお説ごもっともだというふうに考えられる面がございまして、要するに、造林の単価が低過ぎる、そういうふうに私どもも考えておりますので、先ほど申し上げましたように、できる限り造林単価の引き上げということを予算考えてまいりたいということが一点。  その次は、再造林拡大造林については、もう現在その差をつけておりまして、再造林は、主としてもう融資のほうへ回しておる。それから拡大造林については、補助率について別に従来と差はございませんけれども、点数制で、拡大造林についてはできる限り有利なようにその措置をしていくという道をいま講じております。その点数が多いか少ないか、十分であるか不十分であるかの問題はございますが、しかしながら、拡大造林が身ごしらえ、その他で金は相当にかかるのだという意識で、できる限り手厚く助成をいたしたいという考え方を持っております。
  35. 森義視

    ○森(義)委員 時間の関係もありますので、以上、私、大体基本法に基づく施策の根本的な問題点についてお尋ねしたわけですが、これから当面起きている林業を取り巻くいろいろなきびしい諸情勢の問題点についてお尋ねしていきたい。  先ほど申しましたように、基本法に基づくいろいろな重点施策がございます。そういうもので一方で解決しながら、さらに現在起きている諸情勢に対応していかなければいかぬ、こういうことが非常に重要な課題だと思うのです。  そこで、一番最初に問題になりますのは、外材の問題です。先ほどちょっと触れられましたけれども、昭和四十年度の外材輸入の見通し、特にその内訳をお聞きしたいのです。たとえばラワン材、米材、ソ連材その他という形でどういうふうにふえていっているか。外材輸入がどんどんふえていく、三十六年当時に比べて、大体二・六倍ぐらいふえていると思うのです。こういうふうに外材輸入がどんどんふえていく原因、しかもこれがわが国林業にどういう影響を及ぼしているのか、これに対してどういう対策をお考えになっておるのか、これもあわせて承りたい。
  36. 田中重五

    田中(重)政府委員 外材の四十年の輸入の状況を見通してみますと、その参考になりますのが、三十九年一月ないし六月、それに比べてことしの一月ないし六月と、どういうふうな関係になっておるか、それを申し上げますと、いま詳しくということでございましたので、繁雑を顧みず申し上げますと、昨年の一月ないし六月の輸入量が、米材で二百四万六千立米、それからソ連材が八十七万四千立米、それからラワン材が三百八十八万四千立米、その他四十二万立米、合わせて七百二十二万四千立米ということになっております。それで、これをことしの一月ないし六月に比べますと、米材は減っておりまして百八十八万四千、それからソ連材がふえておりまして百二十三万四千、ラワン材が大体似たようなもので三百九十四万六千、そのほかが五十六万八千、合計しますと七百六十三万二千、いま申し上げました昨年の上半期に比べますと、約五・六%の増、こういうかっこうでございます。ところで、昨年はどれだけ入ったかといいますと、千五百五十八万立方メートル入っております。そこで、四十年も若干これを上回る程度にとどまるであろう、こういう考え方でございます。  それから、外材輸入の本年の見通しはそういうことでございますが、一方この外材内地材にどのように影響をしているのか、これは申すまでもなく、外材が入らなければさらに内地材が高値を呼んだであろうという状態が回避されているということは、十分に言うことができる、こう思います。それから、なぜ外材が歓迎されるのか、それは加工者の側からいいますと、一番外材の便利な点は、そろった材種のものが大量にまとまって手に入る。近年ビル建築が非常に活発になりまして、相当量の木材を消費したわけでございます。そういう場合には、長大材であって長径材のものを相当まとまった数量で消費をしていくという傾向が強い。ところが、その場合、内地材ではそういうものをそろえるにしても、なかなかたいへんな手間と時日が、金は別にしてもかかるということもございます。ところが、外材の場合には、そういう点についてきわめて便利であるということのほか、外材は、これを加工者の側で取引するのにすべて手形でいける、内地材を仕入れていく場合には、ことに立木を買う場合の即金というような取引関係に比べますと、きわめて外材は有利かつ便利だというような面も、非常に内地材の販売に影響を及ぼしている面だろう、こういうふうに考えるわけでございます。  ところで、最後に、その対策でございます。現在のところ、自由化でもございますし、ことに外材は戦後供給の絶対的不足というような面から、何ら規制されずに入ってまいったのでございまして、その規制があったとすれば、これは外貨不足による外貨割り当て時代にそういう規制があった。しかし、現在はすべてそれも解かれているということで、素材についてはすべて無税、製材についても一部若干の関税がかかっているというようなことで、自由に入ってきておる。この状態をいま内地材生産者の立場で何らか規制していくということについては、一般の共感を呼ぶかどうか、そういう面も非常に問題があろうかと思います。しかしながら、林業生産の立場において、これをそのまま見送っていくということは、これにも問題がある。ことに林業基本法内地材の総生産の増大、それから生産性の向上、林業従事者の所得の増大という面からいいましても、外材の処置については十分配慮をする必要がある。現在のところでは、先ほども申し上げました、補完的に外材が入ってくるという程度にとどめるのにはどのような対策があるのかということについて、検討を進めておるというような程度で御答弁を申し上げたい、こう思っているわけでございます。
  37. 森義視

    ○森(義)委員 外材輸入わが国林業に及ぼす影響という問題は、もう少し掘り下げてお聞きしたいと思うのです。それはあとでお聞きしますけれども、いま長官おっしゃいましたように、日本外材が入ってきておる状態、これは林業白書の中でも、経済ベースの点、需給面の点、それから消費構造の変化、この三つの観点から、外材の入ってきた理由を説明しています。三十六年のピーク時に、内地材木材価格が暴騰した。あの価格で大体外材経済ベースで入り得る条件ができた。従来外材はかなり輸送費が――大体外材の六割までが輸送費で、輸送費がなかなか高くて、内地に入りにくかった条件があったわけですが、三十六年のピーク時を頂点に、経済ベースで外材が入る条件ができてきた。それから需給面で、需要拡大内地材が対応できない。そういうところから、自然に外材に依存していく、こういう形の需給面の問題。それから長官がおっしゃいましたように、消費構造の変化ですね。いわゆる一施行主体による木材の消費量が増大して、同一規格の木材の大量需要を喚起し、結果として同一規格の大量需要を容易ならしむるところの外材が入ってきた。これは白書の中でも明らかにしておる。こういうような外材が入ってくる経済ベースの点、需給の面、あるいは消費構造の変化、こういう問題から外材が入ってきておる状態というのは、一応理解できるわけです。ところが、そのことがわが国林業に与えている影響というのは、長官、これは逃げられたわけですけれども、重要な影響を及ぼしているわけです。わが国木材価格の高騰を押える役割を果している、こう冒頭におっしゃいましたように、外材わが国木材価格の高騰を押えている。先ほどの御答弁では、木材価格というのは需要供給の面できまるのだ、需要拡大してくれば、木材価格は高騰する、それを外材が押えている。それが林業の経営を阻害している、こういうことを先ほど申したのですが、いみじくも長官もおっしゃるように、いま外材わが国内地材の高騰を押えている。内地材の高騰を押えるというのは、結局内地の林業、いわゆる日本林業に対して大きな影響を与えていると思うのです。そういう観点からいわゆる経営意欲を非常に減退さす、こういう形の影響力があらわれておる。私は先ほど造林の問題について触れましたけれども、造林が低下しているというのは、そういう経営意欲の減退がやはり造林意欲を阻害する一要素になっている。そうすると、現在の林業振興に必要な経営意欲を減退させ、将来のわが国森林資源の確保に必要な造林意欲を減退さす、こういう形にいま外材が影響しつつある。現在の外材輸入量はわが国木材の消費の二割五分くらい、三割近くになっていますね。このくらいにふえてきておる。そのことが、こういう林業基本法に基づくわが国産業的見地に立った林業振興にとって、非常に重要な影響をまず第一に与えておるのではないか。これは極端に言うならば、このまま外材輸入を放任しておくということは、わが国林業を根本的に破壊するおそれすらあるのではないか、こういう不安を持つわけなんです。  そこで、私は、わが国木材の需給に対して自給率というものをはっきり確立して、これから入れる外材の規制、どのくらい毎年外材を入れて、何年後には内地材外材輸入を食いとめて、カバーができるか、こういう見通しをはっきり確立していかなければならぬのではないか、こういうふうに思います。そういう点について、長官先ほど答弁の中では明らかにされていないわけです。これから研究するとか、何かこういう御答弁ですが、少なくともいまの日本林業の根本的な問題に与えておる影響力、こういう問題を排除するという見地に立って、外材輸入というものは考えていただきたいと思うのですが、その点の見解いかがでしょう。
  38. 田中重五

    田中(重)政府委員 外材の影響が内地材価格に影響しておるということは、先生のお説のとおりでございますし、私もそのように申し上げているわけでございます。それに生産者として対応する態度としては、先ほども申し上げました生産性の向上によって、やはりそういう面に対処する必要があるということを申し上げておったわけでございますが、ところで、将来どれくらいの外材を入れたらよいのか、自給率はどの程度かという点につきましては、やはり林業基本法の第十条で、重要な林産物の需要供給に関する長期の見通しというものを立てまして、政府はこれを公表しなければならない、こういうことになっております。これは先ほど申し上げました森林資源基本計画とともに、また森林資源に関する基本計画を立てる上からも必要でございますので、そういう考え方に立っての長期見通し、これを作業中でございます。それで、外材の現在のシェアはお説のとおり二五%でございますが、まあまあ将来の見通しといたしましては、大体二割程度というような考え方を持ってはおりますが、しかし、その結論的なものにつきましては、いま申し上げました重要な林産物の需給についての長期の見通し、これによって御答弁を申し上げたい、こう考えております。
  39. 森義視

    ○森(義)委員 これは去る四十八国会の本会議場における私の質問に対する佐藤総理の答弁の中にも、こういうことを言っておられるわけですね。外材に依存するような考え方は毛頭持っておらない。私が自給率を明確にはっきり出せと言ったのに対して、それについては国内の自給度を高める、そういう方向で進めていきたいと考えておる、こういう御答弁をしておられる。いま長官はその自給率の問題について作業中、こういうことなんですが、これはやはり至急に出してほしいと思う。  それからもう一つ、外材が入ってきておることによって、わが国林業に及ぼしておるところの影響を申し上げたいわけですが、白書でも書いておるわけですが、外材が入ってまいりますと、製材工場ですね、これが大型化される。山元型のいままでの製材工場が臨海型の製材工場に移動しておる。少なくとも奈良県あたりですと、名古屋、舞鶴、堺、ここにどんどん資本は移動しておるわけです。これはいま内地材をひいておる製材工場というのがどんどん苦しくなってきておるわけです。そこで、臨海に進出した製材工場から逆に外材をもらって、そうして賃びきをやる、こういう状態なんです。わが国林業が発達するためには、関連産業発展させなくちゃ林業発展はあり得ないと思うのです。関連産業外材輸入によって非常な移り変わりをしておるわけですね。すでに資本がどんどんそういう臨海型の工場に移動しつつある。それがどんどん投資されますと、どうしてもそれを運転するためには、やはり外材を入れぬと運転がとまってしまう。こういうことで、内地材の市場がどんどん外材の市場に奪われていく、こういう形になりつつあるわけですね。したがって、内地材を中心とした零細製材工場というのは、どんどん倒産をしていく。こういう影響は、外材輸入に伴って起きた関連産業に対する影響だと思うのです。そういう影響もぜひ考慮に入れて、外材の規制というものを考えてもらわなくてはいかぬと思うのですが、その点に対する長官の見解はいかがですか。
  40. 田中重五

    田中(重)政府委員 外材につきましては、確かにいまお話しのような理由で、私も申し上げましたような理由でふえてまいっておりますが、それに対して国内の林業経営者といたしましては、やはり経営の近代化をはかって、そうしてこれに対応していく以外には道がない、こう考えるのでございまして、そのための諸施策林業基本法に掲げられてあるわけでございますが、一番基本的なことは、やはり林業経営者計画的に経営する。それは、毎年切るというほどの面積もございませんが、しかしながら、少なくとも期間をきめて植伐を推し進める、そういう計画生産、これがあって、初めてまた国内材を当てにするところの製材工場も、安定した工場操業ができる、こういうことでございます。現在のように立てておいても、農産物のように腐らないから、気に入らなければ切らないし、家計の必要がなければ切らないということでは、製材工場のほうでも内地材を当てにするわけにはいかないわけであります。そこで、計画生産をやるための指導も、林業基本法の重要な趣旨でございまして、林業構造改善事業の中身も、やはりそういう点に力点が置かれておるということを御理解いただきたいと思うのでございます。  それから一方また、この製材工場の側におきましては、先生も御承知のとおりに、非常な設備過剰というものがございまして、そうしてその過当競争の結果、販路の当てのない製材を、工場を回さんがために原木を入手しなければならない。そこに原木高の製品安というような実情も出てまいっておりますので、この過当競争の是正をはかる必要があるということでございます。そういうような製材工場の適正な規模、それから国内森林所有者の合理的な林業の経営のしかた、つまり、計画生産、そういうようなビヘービアといいますか、態度が改まってまいりますれば、外材に対応する力は相当に出てくるであろう、こういうふうに考えている次第でございます。  一方、外材につきましては、先ほども申し上げましたように、あくまでも補完的なものとして、国内の木材価格を安定させるという機能を果たすものとして、外材輸入考えていきたい。それについては、先ほども申し上げましたように、やはり外材関係するそれぞれの業者の自主的な判断の資料となるものを、指針を与えて規制をしていくことでできないのかどうか、そういう点も検討をしておる段階でございます。
  41. 森義視

    ○森(義)委員 いま製材業の関連産業をとらまえた場合、もちろん、いま長官がおっしゃったように、林業家計画生産ということが製材価格を安定さす一つのモメントだと私は思うのです。ところが、最近の日本の製材産業の利益率というか、製品に占める原木の比重価格、これはどういうところにあるか、これは長官、資料を持っておられますか。私どものほうでは、大体奈良では八五%が製品に占める原木の価格、そうすると、一五%で労務費から機械設備の償却から金利からいろいろな課税など、こういうものを処理していかなければいかぬ、こういう状態にあるわけです。木材産業が、いま日本行政指導の面で、いわば中小企業対策として通産省管轄で取り上げられておる一方、林業サイドのほうから林業関連産業としてやられておる。こういうように主管官庁がどちらにも二またにかかっておる。いわば行政施策の中で言うならば、谷間にあるような形になり、どちらも徹底した製材工場に対する施策のあれがない。こういうことも、いまの日本の製材工場が非常に低迷し、特に零細製材工場が倒産に落ちていくような状態に放置されておる原因だと思います。  そこで、私ども奈良県では、かなり中小零細企業の製材工場が多いわけであります。私は奈良県の製材労働者の組合の委員長もしておるわけでありますが、春闘の賃上げで一番安いのが製材労働者であり、夏期、年末手当も一番低い。それでなおかつ回らない状態にある。そうすると、関連産業である製材工場が運転できないような状態では、林業それ自体の振興の大きな障害になる。こういう観点から考えるならば、林業サイドから製材関連産業の問題について何かもう少し対策を考える必要があるのではないか。いま林業家計画生産に従って安定持続的な木材供給をやるということは、一つの安定策の方法だと思いますが、それと同時に、やはり価格面の問題、価格政策というものを出していかないと、外材価格を押えるというだけではどうしても成り立っていかない状態にあると思います。こういう問題について、関連産業としての製材産業をどういうふうに育成していくか、こういう点を林業サイドからぜひお考えを願いたいと思いますが、それに対する長官の見解を承りたい。
  42. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの製材製品に占める原木のコストを八五%というふうにお話しになりましたが、あるいはそういう地帯もございましょうし、大体全国平均的な面でも七五%ということで、確かに原木代の占める部分が非常に多い。これは逆に言いますと、やはり製材製品というものは、加工度が低い、付加価値が低いということもございましょう。したがって、これだけの原木高ということになってまいりますと、その加工度なり付加価値なりをもっと高めるような、そういう加工の工程が考えられなければならないということになりますし、したがって、製材よりも加工度の高い合板、さらには紙パルプというようなことになっていくかと思います。  そこで、その問題はその問題といたしまして、この製材工場の育成という面につきましては、先ほどお話が出ましたけれども、やはり通産省の通産行政としての立場、それから林野庁林業行政としての立場が一体となって、中小企業であるところの製材工業というものに手厚い助成が必要である、こう考えるわけでございます。  それで、現在そういう趣旨でとりつつある方法といたしましては、たとえば中小企業近代化資金助成法というものがございまして、この中へ主務大臣としての農林大臣が製材工場を指定いたしました。なお、ついでに申し上げますと、合板なりフローリングあるいはチップ工業、そういうものが入っておりますけれども、この法律によって、事業の共同化、工場の集団化、それからこの企業に必要なもろもろの資金、要するに設備の近代化に必要な資金、そういうものを無利子で、そうして一定の償還期間を設けて融資する、この中へ製材工場を指定しております。  それからさらに申し上げますと、中小企業近代化促進法がございます。これにも農林大臣が主務大臣として製材工場を指定いたしまして、それによって減価償却の特例なりあるいは設備資金の確保、それから合同、合併等の場合の課税の特例、そういう助成をはかっているわけでございます。  例として取り上げたわけでございますが、そういうように通産省と林野庁が共管としてこれを積極的に助成していく態度が望ましい、こう考えるわけであります。
  43. 森義視

    ○森(義)委員 中小企業近代化資金助成法で、製材工場がいま一件当たり三百万が頭打ちなんですが、あれの適用を受けて借りているところありますか。いま木材界の停滞で、とてもそんなところへ手を伸ばしている状態でないのです。確かにそういう措置も、あれば無利子で十五年間三百万まで貸してくれるわけですが、半額自分で準備しなければいかぬ。それで、実際製材工場の機械化、設備の近代化、そういうものを考えていただいても、それに対応できるだけの余力がないのですよ、零細中小企業には。問題は、やはり木材価格の問題です。価格がいまの状態で押えられていったら、これは利ざやが非常に薄いわけです。したがって、経営を近代化していっても、それはほとんど不可能なんです。そういう意味で、これは時間がありませんので打ち切りますけれども、考慮を願いたいと思います。  次に、国有林問題についてお伺いしたいと思います。  わが国林業考える場合において、林野面積で三分の一、森林蓄積で二分の一を占めておる国有林問題を離れては考えられないと思うのです。むしろ、わが国林業を左右するのは国有林だと言っても、私は言い過ぎじゃない、こういうように思うわけです。国有林問題につきましては、白書では、中央森林審議会の答申が近く出るので、それを尊重して抜本的な対策を講ずる、こういうふうに書かれているわけです。三月三十一日に中央森林審議会の答申が出されたわけです。そこで、それを一読したらすぐわかるように、かなり思い切った組織を含んだ重要な答申が出されているわけです。御承知のように、あれは約一年十カ月かかって出された答申だし、白書の中でも、農林省としてもその答申を尊重する、こういう基本的な態度を明らかにしておるわけですが、中央森林審議会の答申の内容についてお伺いしたいわけです。  一つは、あの答申は大体いつごろまでに検討して、具体化施策はいつごろ出そうという目標を持っておられるのか。それからさらに、あの答申を検討する機関をどういうふうに考えておられるか。特に構成ですね。あの中央森林審議会の答申を検討する機関の構成についてどうお考えになっておるか。それからあの答申を完全に具体化するためには、私は国有林野事業に関連する諸法規の改正が必要だと思うわけです。その点についてかなり大幅な改正が必要になってくると思うのですが、どうお考えになっておるか。それからこの答申は、内容に非常にはっきりしておりますように、行政と経営を完全に分離しまして、いわゆる非収益的な行政の部面については一般の財政でまかなう。経営部面については徹底した企業経済ベースで利潤を上げる。そうしてできるだけもうけて、俗なことばで言えば、国家財政に寄与せい、こういう言い方をしているわけですけれども、現在の国有林野事業の行なっておる公共的な事業をあのような形で行政と経営を分離して、片方は企業営利主義の形で徹底して公社制度でやっていく。行政面については国の一般の財政でまかなっていく。こういう形でいままでの国有林野事業のやってきた公共的な使命が完全に果たされるとお考えになっておるか。  それから次に、国有林の問題に関連しまして、全国国有林野解放対策協議会、これは三十八年の十月に結成された組織ですが、これがこの間の第三十八国会までの間に、私の手元の資料では七十三回会合を開いております。そうして国有林野の開放の問題について、最後に国有林野の活用に対する要綱という形に整理をして、四十八国会でこれをどうしても法律として出すという運動が猛烈に行なわれたわけですが、それが四十八国会では御承知のように例の農地報償法であれがもめて、毒食わばさらまででこれをやってしまえという意見もあったのですが、それが押えられて、今度の国会に出していく、これがはっきりきまったということが、第七回の全国国有林野解放対策協議会の総会の資料に載っておるわけです。これはひとつ政務次官から御答弁願いたい。中央森林審議会の答申と、この全国国有林野解放対策協議会の従来までやってきた方針とは、ずいぶん違うわけです。国有林の開放問題については、国会における答弁においても、また前の池田総理、佐藤総理、それから赤城農林大臣の答弁も、国有林をいわゆる開放という形にはしない、けれども、活用を考えておる。とこころが、この全国国有林野解放対策協議会の内容は、これは明らかな売り渡し式――払い下げ式でない、売り渡し式の開放運動なんですね。これは次官も御存じだと思うのですが、これとの関連でどういうふうにお考えになっておられるのか。私は、中央森林審議会の答申を忠実に具体化するという政府方針と、これとは、いれないものだと思うのです。その辺がどのようになっておるのか、これは次官のほうから御答弁願いたい、こう思います。
  44. 田中重五

    田中(重)政府委員 この中央森林審議会の国有林事業の役割りと経営のあり方についての答申につきましては、この答申に対応していつまでにその方針をきめるのかという御質問に対しましては、目下のところ、まだそのめどをつけておりません。  それから組織といたしましては、林野庁の中に国有林野事業対策本部というものを設けまして、それぞれ担当者をきめて検討をいたしておるという段階でございます。  それから行政と経営の分離ということについても、検討はしているけれども、結論は出ていないという状態でございます。この答申がいっておりますのは、国有林野事業というものは、特別会計制度でまかなわれているのであるから、その趣旨に基づいて、あくまでも企業的に運営されなければならない、ところが、それがたまたま行政意思の介入によって企業的経営が乱されているではないか、そこで、この特別会計の趣旨に即して経営するためには、行政と分離すべきであるという理屈でございまして、その点について、いろいろ林野庁といたしましても考えなければならない問題がございますけれども、だからといって、現在これを分離するということに踏み切ってはおりません。また、分離した場合に、どのような形で分離するのか、そういうことをお答えする準備がまだできておりません。
  45. 森義視

    ○森(義)委員 次官の答弁はあとで承るとしまして、長官、白書では、国有林問題についてはほとんど触れておらないわけです。そして、中央森林審議会の答申を尊重して抜本的対策を講ずると書いてあるわけです。ところが、いまの答弁によりますと、中審の答申を尊重するような態度は一つも出ていないわけですね。あれは出てきたけれども、あんな思い切ったことはとうていやれないというふうにお考えになっておられるのですか、どうなんですか。
  46. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、答申の内容を十分に吟味をいたしまして結論を出したい、こう考えております。
  47. 森義視

    ○森(義)委員 十分に吟味されましても、中審の答申の作業には長官も入っておられるのじゃないですか。あれには関係各省のあれが入って、長官もあの経過は全部御存じのはずです。それだったら、あの白書の中に、中央森林審議会の答申を尊重して抜本的対策を講ずるというようなことを書かないでいいわけです。国有林の問題については、これは非常に重要な問題なんです。長官も入ってつくった答申案なんですよ。それを尊重すると書きながら、実際出てきたのは、どうもいまのところでは、あのままやってもらっては困ることがたくさんあるわけですけれども、とにかくあいまいもことしているわけです。これは当然ちょっとたな上げだ、こういうように理解してよろしいですか。
  48. 田中重五

    田中(重)政府委員 目下検討中でございますので、たな上げではございません。これは政府、農林省、林野庁といたしまして、十分に検討をしたい、こういう態度でございます。
  49. 森義視

    ○森(義)委員 実は赤城農林大臣は、本会議場の答弁でこういうふうに言っておられるのです。組織、機構等の具体的事項に関しては、近く成案を得る、その成案を得次第、学識経験者の意見を聞くことにしている、こういう答弁をしているわけです。だから、林野庁のほうで、すでにあの答申に基づいて具体的な準備をしておられると思うのですが、長官のいまのことばでは、検討中というのは、まだまだその段階にきていないというように信じてよろしいのですか。
  50. 田中重五

    田中(重)政府委員 実態をそのまま申し上げますと、検討中ということでございます。
  51. 森義視

    ○森(義)委員 それでは仮谷政務次官、先ほどの全国国有林野解放対策協議会と中林審の答申との関連についてお答え願いたい。
  52. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 中央森林審議会の答申の問題ですが、実はまことに申しわけありませんが、私も十分に内容の説明を受けておりません。ただ、その内容は相当に重大な問題でありまして、いま長官も申されましたように、これは慎重に検討をしなければならぬ問題である、そういうふうに考えております。ただ、従来の国有林開放の問題とこの問題とがどう関連するかということについては、それはどういうふうに関連づけて考えられるかという問題ですけれども、そもそも国有林開放というのは、開放ということばで非常に運動はされてきたわけですが、実質的に党もいろいろ検討するし、われわれも実は検討もいたしたのでありますが、われわれとしては、開放ということ上り、むしろ活用という面で問題を考えるべきじゃないかと思っておるわけです。たとえば農業構造改善や林業構造改善等が積極的にやられておりますが、そうした場合における国有林の持つ使命と申しますか、意義というものは、非常に大きい。そういう面から積極的な国有林の活用という問題を考えるべきじゃないか、こういう観点からいろいろ検討されておるようでございまして、そういう面で進めてまいりたいと考えておるわけです。
  53. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、現在の国有林は、林野庁では活用は不十分だ、そういう観点から考えておられるのだったら、脊梁山脈にずっとある未開発林を払い下げてもらってやるというような、そういうことですか。非常に皮肉な質問でありますけれども……。
  54. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 運動を展開している中には、そういうふうな強い思想を持った人があると思いますが、しかし、そういうふうなことが簡単にできる問題ではなくして、あくまでもこれを活用して、いわゆる林業構造改善あるいは農業構造改善に十分に資するということがほんとうの趣旨ではないか、そういう考え方のもとに進めるべきじゃないか、こういうふうに私どもは思っております。
  55. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、政務次官は御存じないということでございますけれども、次期国会政府提案として提出することがきめられた、こういうことが大会議案の中ではっきりしているわけですが、そういうこともお聞きになっておりませんか。
  56. 田中重五

    田中(重)政府委員 それは国有林開放の協議会でございますか、何かそういう名前でまず会が持たれて、その開放の申し入れを要請されたやに聞いておりますけれども、林賢庁といたしましては、ただいま政務次官からお答えを申し上げましたとおりに、国有林の活用は、どこまでも農業あるいは林業の構造の近代化のために大いに使っていただく、積極的に活用していただくという考え方でございまして、それが林業基本法の第四条の考え方でもある、こういうふうに考えている次第でございます。
  57. 森義視

    ○森(義)委員 自民党議員の百五十名が署名しているのですよ。あなたは農林水産の次官をしておられて、国有林の一番担当の委員会の次官をしておられて、百五十名の中に入っておられませんか。
  58. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 従来いろいろの問題を運動していくためには、それぞれ関係の議員さんに署名してもらって運動を展開する例は、この問題に限らず、ほかにもたくさんあるわけであります。しかし、そういうふうに署名して出された問題が全部そのままの姿で実現するかというと、そうなっていないことは、過去のいろいろの政治のなにを見ましても、おわかりいただける問題じゃないかと思います。これはそういった面では真剣な問題があるわけでありまして、そういうふうな署名がなされて運動が展開されていることも、十分に承知いたしております。しかも、それをどういう形において法律にあらわしていくかという問題は、やはり政府のこれに対する考え方によってきまる問題でありまして、法案内容がどの程度煮詰まっておるかということについても、実は率直に申し上げまして、私ども承知をいたしておらぬわけであります。どうぞひとつそういう面で御了解をいただきたいと思います。
  59. 森義視

    ○森(義)委員 まあめくら署名だということだと思うのですが、そこで、先ほどの中央森林審議会の国有林に関する運営に対する答申がいま検討中ということで濁しておるのは、この運動に関連して、林野庁のほうで検討が停滞しておるというようなことがあるのではないですか。
  60. 田中重五

    田中(重)政府委員 そういうことは全然ございません。
  61. 森義視

    ○森(義)委員 それでは、この点についてはあとでまた、本名委員がこの中ではかなり活躍しておられますので、この全国国有林野解放対策協議会のほうから実情をお聞きするということにいたします。仮谷次官はめくら署名をされたようでありますから、それ以上追及いたしません。しかし、言っておきたいことは、これは前総理大臣も、国有林の開放については慎重を期したい、こういうことを言っておられました。その点だけではひとつ確認をしておいていただきたい、こう思うわけです。  次に、労働力の雇用の安定の問題で、きょうは労働省の職業安定局の課長も来ていただいておりますので、お伺いしたいわけですが、林業基本法の第十九条では、労働者に対するいろいろな社会保障の問題について施策を講ずるような規定がございます。ところが、具体的には、むしろ現在適用されておる社会保障のいろいろな面で後退をしておる状態があらわれておるわけです。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕  具体的にその実例を申し上げますと、去る六月二十五日付で、こういう文書が全国の職業安定所長を通じまして、森林組合の事業主団体に流されておるわけです。それを簡単ですからちょっと読んでみますと、「このたび失業保険任意加入の申請にあたって、この認可は昭和四十年度かぎりの暫定的なものであることを承知し、かつ失業保険制度の改善のため、昭和四十一年度以降認可条件に変更が行われても、従前の実績等を理由として異議を申立てないことを承諾します。」失業保険の任意加入の問題について、そういうふうな承諾書を事業主団体が提出する。これが一点。それからもう一つは、誓約書をとらされておるわけですね。「このたび失業保険任意加入の申請にあたって、できる限り年間を通じて継続的に雇用するよう努力するとともに、やむを得ず離職者があった場合にも、離職者に対して、公共職業安定所の紹介する職業に積極的に応ずるよう充分指導することを誓約します。」両方とも六月二十五日付で全国各地の職業安定所から事業主団体に出ておるわけです。  これによってまず考えられることは、いまの林業労働者の失業保険の適用はことし限りだぞ、来年度からどうなっても文句を言わぬということをまず約束せよ、それから通年雇用を考えよ、こういうことを誓約せよ、こういう条件をつけて失業保険の加入の申請をした者は認める、こういう行き方なんですね。これは、私は基本法の十九条の林業労働者に対する施策精神とは全く逆行するものだと思うのです。この点について林野庁長官からもお聞きしたいし、それからこの文書を出されました職業安定局――局長はきょうはお見えになっておらぬが、課長からその考え方について承りたいと思います。
  62. 道正邦彦

    ○道正説明員 農林水産業等、一般に季節的、循環的にいわば予定された失業を繰り返す産業に対しまして保険を適用する問題は、先生承知のとおり、偶発性の事項を対象とするという保険の原理から、基本的に問題があるわけでございます。現行失業保険法におきましては、国有林につきましては、強制適用と申しますか、当然適用になっておりまして、民有林につきまして任意加入になっております。ただいま御指摘の問題は、その任意加入になっております民有林につきましての認可基準の問題であると思います。現在そういうことで、日本林業の現状から申しますと、季節的に失業を繰り返すということのほかに、雇用形態であるとか、なかんずく賃金形態等にいろいろ問題がございまして、非常にむずかしい問題で、われわれその点は検討いたしておるのでございますが、基本的には、何と申しましても通年雇用、年間を通じて雇用を確保するということによって、林業労働者の雇用の安定をはかることが望ましいことは申すまでもないわけでございまして、その点につきましては、かねがね林野庁そのほか関係団体等にもお願いをいたしまして、労働省といたしましても、今後ともその線で努力をいたします。  ただいま当面御質問の問題につきましては、従来から任意加入を認めます場合に、これは三十七年以来過去三年実施いたしておりますが、毎年認可基準を更新いたしておりまして、いろいろ書類等をいただいておるわけでございまして、その点につきましては、今回特に新しく関係者の負担になるようなものを課したつもりはないのでございます。ただいま御指摘の点につきましては、たとえば認可の申請者は事業主でございますが、認可の受益者は労働者でございます。したがいまして、一般の許認可の場合と違いまして、非常に申請者と受益者とが違っておる点が、失業保険の任意適用の場合の特殊性でございまして、そういうこともございますので、認可にあたりましては慎重を期してまいりたいということ、それから就職の促進について努力をするようにお願いをしている点につきましては、かねてより法律どおりに、失業保険の趣旨から申しまして、まず雇用のあっせんができ、そのことによって失業保険の支給の必要がなくなれば、それは一番好ましいことでございまして、そういう意味で、一般的に早期再就職ということを呼びかけておるわけでございまして、林業労働者につきましても同じことをお願いしたいという趣旨でございます。
  63. 森義視

    ○森(義)委員 長官、いま御説明のとおりですが、基本法の十九条では社会保障の拡充をうたっておるわけです。現実に既得権利を剥奪するようなこういう通牒が出されているわけです。それについて林野庁長官としての見解を承りたい。
  64. 田中重五

    田中(重)政府委員 失業保険の制度につきましては、労働省の御見解のとおりに、就業する意思と能力がありながら失業の状態にある、不時のそういう状態に備えるということで、よく御趣旨はわかるわけでございますが、たまたま林業の場合には、その産業の性質上季節性もある、季節に支配される、こういうことがございまして、そこで、その一定の季節が過ぎれば失業をするという実態がございます。その場合には、やはりこれは社会保障として労働者を保護するという意味において、この失業保険の対象にすることが望ましいし、ことに山村僻地で仕事が行なわれるわけでございますから、道路も十分でない、雇用の機会にも恵まれないというような人たちが、一定の林業の労働が季節的に経過した後、失業保険によって保護されるということは、やはりやむを得ないことではなかろうか、こういうふうに考えている次第一でございます。現在離職率が五〇%であるものについてすでに許認可を受けているものは従来どおり、新しいものは二五%以下ということにつきましても、労働省に対しましては、林野庁のほうは、できるだけ林業の実態を考慮して適用されたいということを申し入れてもおります。ただ、林業経営の立場からまた言いまして、できる限りそういう失業の状態のないように、通年雇用の状態に仕事をくふうして組み合わせていく努力ももちろん必要である。そういう失業の状態のないような雇用の形態、これが必要であることは言うまでもございません。しかしながら、一方においてそういう季節に支配される仕事であるから、その季節のはずれているときの労働者に対して、雇用の機会に恵まれない不便な地帯の人たちを国が保護する必要があることは、林野庁としてはぜひとも主張をしたい、こういう考えでございます。
  65. 森義視

    ○森(義)委員 この問題については、農林省と労働省との間でずいぶんやりとりがあったと聞いております。そして、とうとう農林省のほうは理論負けした、そこで、労働省のほうは確信を持ってこの通達を出した、こういうふうに実は聞いているわけなんです。林野庁長官お話を聞きますと、ああいう山村で季節的に失業しても直ちに他の職業にその間つけないような状態の山林労働者に対しては、失業保険の適用が妥当であると考えている、おそらくそういう意見を主張されたと思うのです。ところが、それを取り扱う官庁である労働省がそれを認めておらない。そしていまのような通達を出して、来年から変わったって文句言うな、こういう形ですね。現実に労働省の保険課長がそれを出されたことによって、業者は認可申請をしていないのですよ、いままでやったものが。あなたは関係者にそういう不利益にならないように考えていると言うけれども、現実にこんなものを出さなきゃいかぬということだけで、もう認可の申請をしない。そうしたら、不利益をこうむるのは、いままで適用を受けていた労働者じゃないですか。こういう状態が現実にあらわれておる。私は、この山林労働者だけじゃなくて、農業労働者、農民ですね、これを含んで、労働省と農林省の間にもっと話を煮詰めてもらって、少なくとも現在の日本の山林あるいは農村労働者の失業保険の問題について、もし保険制度そのものから言うならば、これは季節的、周期的にくる失業者を救済できないというならば、これは国の方法で、たとえば休業補償なりあるいは帰休制度なり、何らかの方法によってこれらの人々を救済する方法を考えてもらわなければならない。その点について林野庁長官、ぜひ労働省との間にいま言っておられる趣旨を生かすような話し合いを進めてもらって、少なくとも現在の既得権利の社会保障の問題について、剥奪されるということのないように格段の御配慮を願いたい、こう思います。
  66. 田中重五

    田中(重)政府委員 この問題は、ひとり林業だけの問題でもございませんので、農林業全般にわたる問題として、農林省として、労働省とも折衝をいたしておりますから、またその問題については本省としてお答えをすることになる、こう思います。
  67. 森義視

    ○森(義)委員 時間の関係もございますので、次に進みたいと思います。  次に、白ろう病の問題についてお伺いいたします。四月二十三日の社労委員会で、わが党の淡谷委員が詳しく質問され、長官がそれに対して御答弁しておられますので、私は会議録をここに持っておるわけですけれども、これを一応読みまして、これに重複しない問題点についてお尋ねしたいと思うわけです。  労働省は、去る五月二十九日に、全国の都道府県労働基準局長に対して、白ろう病患者はさく岩機、リベット打ち機による職業と同じように労災補償を適用されたい、こういう通達を出しておるわけです。民有林労働者の場合には、白ろう病を職業病として指定しておるわけです。ところが、林業労働者民有林労働者だけでなしに、国有林労働者がいる。同じ林業労働者でありながら、国有林労働者には、人事院規則との関係において職業病と指定されておらない。ところが、民有林労働者の場合には職業病として指定しておるわけです。ここらあたり、労働省でそういうことをやっていただく前に、労働者を直接雇用しておられる林野庁として、この白ろう病の問題は、きのうきょう起きた問題とは違うわけです。それについて、むしろ林野庁のほうから、これは職業病として指定してほしいというあれを人事院に申し入れをして、少なくとも歩調を合わして、これが職業病として指定されるような態度をぜひとっていただきたいと思うわけです。きょうも実は人事院の関係者を呼んだわけですけれども、林野庁関係者と一緒に現地調査に行っておる。いまごろ現地調査に行かなければならぬような状態にある。すでに労働省は職業病として認定しておる。林野庁はいま現地に調査に行かなければならぬ。どういうことかわかりませんが、これに取り組む姿勢が、林野庁の場合にずいぶん官僚的であるというか、冷たいというか、そういう感じがするわけです。国が雇用しておる労働者について、佐藤総理の言う人間尊重の政治からいうならば、チェーンソーによる白ろう病というのは、数年来資料もありますし、問題が出ておるわけです。これは全林野の労働組合から二種類の資料が出ております一これを見ましても、これはこのままで放任できない問題なんです。それを何とかかんとか言って引き延ばして、そしていまごろ調査に行っておる。この点、林野庁の取り組む姿勢についてひとつ反省してもらいたい、こう思うのですが、その点について、長官、何か見解があればお聞かせ願いたい。
  68. 田中重五

    田中(重)政府委員 レイノー氏病については、労働基準法に基づいた扱いとしては、いまお話のとおりに、「さく岩機、鋲打機等」という中で読むことにして、そして公務災害としての取り扱いを認める形で扱っておりますが、国有林労働者の場合には、国家公務員災害補償法によって、人事院規則に基づいて、公務の疾病である場合にそれを国家補償をする、こういう制度になっております。そこで、人事院規則には、そのさく岩機、びょう打ち機と並んでいまして、「等」がない。つまり、「等」の中で、レイノー氏病を公務災害というふうに認めていないというのが現在の段階でございます。それで、林野庁としては、すでに一昨年の三十八年十一月に労働者に対してアンケートをとりまして、そしてそれぞれ症状の訴えを聞いて、さらにそれを本年すでに公務災害として人事院規則によって認めて国が補償するように要請し、協議をしておるという段階でございます。要するに、いまの問題点は、そういうチェーンソー、つまり振動と、それから多くの場合寒さが伴うわけですが、そういうものとレイノー氏現象との間の生理的なメカニズムが必ずしも明らかでない。そこでまた、それの治療の方法についても必ずしも医学上明らかでないというような点もございまして、人事院ではなお検討しているという段階でございます。そこで、現地へ行ったのは人事院が行ったのであって、林野庁が行ったのではございません。
  69. 森義視

    ○森(義)委員 チェーンソーと白ろう病との因果関係が明らかでない、こういうことで、人事院がまた規則の改正を渋っておる。現実に労働省のほうでは、これははっきりと職業病としての認定をして、全国基準局長に通達を出しておるわけです。同じ政府の取り扱いで、人事院と労働省が同じ労働者の場合違う。国有林で働いているのと民有林で働いているのと違うだけで、取り扱っている機械は同じなのです。そういう片手落ちな取り扱いはおかしいと思うのです。これは労働者のほうからいろいろ調査をして資料を出してくる前に、少くとも林野庁として、自分が雇用している労働者のそういう職業病の問題については、進んで人間尊重の立場からこれを適用する、こういう姿勢の問題を私は追求しておるわけです。だから、人事院規則の第一六の中には、「さく岩機又はびょう打機」と「等」が入っていない。「等」が入っているとか入っていないとか、そういう字句の解釈で適用されるかされないかの問題じゃなくて、林野庁として、自分が雇用している労働者に対する人間尊重の立場に立った姿勢の問題なんです。そういう点において私は反省をしてもらいたい。いまのお話ですと、人事院に職業病として指定するように規則の一部改正を要請し、協議している、こういうことなんですが、いつごろになったら結論が出るのですか。
  70. 田中重五

    田中(重)政府委員 人事院もこれを公務災害による疾病として指定することを渋っているということでは決してございません。それで、十分に検討をして、そうして人事院の考え方としては、近く職業病として人事院規則の上で指定をしたい、こういう人事院の意向のようでございます。  それからなお、こういう労働者の疾病その他衛生なりそういう問題については、林野庁としては積極的にそういう問題点を取り上げて、その改善をはかるという姿勢をとるべきだというお話は、ごもっともでございます。私はそうあるべきだと考えております。今後さらにそういうつもりで進んでいきたい、こう思っております。
  71. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、人事院でも協議しているということでございますから、近く職業病としての指定をいただけると思うのですが、ただ、職業病として労災の適用を受けるということだけじゃなくして、人間尊重の立場から、こういう機械の導入によって生じてくるいろいろな災害を防ぐために、具体的に予防あるいは治療対策、そういうものについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  72. 田中重五

    田中(重)政府委員 これにつきましては、先ほども申し上げましたように、症状と機械との因果関係のメカニズムが明らかでない。したがって、それについての予防も必ずしも具体的に確立しがたいという現状でございますけれども、たとえばその振動が直接手に伝わらないような手袋、そういうもののくふう改善であるとか、あるいはまた工具使用の時間外の労働を規制するとか、一日の使用の時間に間断を置くとか、いろいろ考えられる方法があると思いますが、できる限りくふう改善をいたしたい、こう考えております。
  73. 森義視

    ○森(義)委員 全林野の組合からもらった資料によりますと、林野庁のほうでは、この白ろう病に対するいわば指定医師の診断を受けたものでないと、認定しない。何か最初からそういう非常に冷たい態度に出ておられるように書いてあるわけですが、いまもチェーンソーとの因果関係が明らかでないから、予防についてはなかなかはっきりしたものが出ない、こういうふうに逃げておられるわけです。先ほどの職業病の指定の問題から見ても、一貫してうかがえることは、直接自分の雇用している労働者に対する人間的あたたか味というか、人間尊重というものが非常に欠けているように思われるわけです。これは淡谷議員が社労で質問された中にも、そういう点は非常に追及しておられましたが、いまの答弁を聞いておりましても、私はそういうふうに感ずるわけです。  この問題については、林野庁は、現地で調査をし、そういう立場というものを非常に尊重してもらわぬと、役所の上のほうから調査していきますと、いろいろ言いたいことも言えない弊害が出てくると思う。そういう問題について、現地で労働者が労働組合を通じて調査した資料というものを尊重する考えがあるかどうか。そんな資料は一方的な資料だから尊重できぬ、こちらのいわゆる使用者側の立場で調査をして、確固たる自信を持たないと、それに対する対策は講ぜられない、そういうお考えなのか、どっちなのか、ひとつ伺いたい。
  74. 田中重五

    田中(重)政府委員 これはそういう生理現象の解明を進めるところに問題のポイントがあるわけですから、いろいろな資料、たとえばそれが労働組合から出たものでありましても、十分に検討の材料にしたいという考え方に変わりはございません。  それから管理医につきましては、これは、林野庁側でそれぞれ権威ありと考えた医者、そういう医者を管理医といたしておりますので、この管理医を活用しておりますけれども、なお、ほかにそういう病状について権威ある治療方法あるいは意見等を持っている場合には、そのような意見も言うまでもなく取り入れる用意がございます。国有林野事業の労働者でございますから、言うまでもなく、それの福利福祉につきまして積極的に考えてまいりたい態度には変わりございません。
  75. 森義視

    ○森(義)委員 長官、実際にチェーンソーを使っている現場をごらんになりましたか。アメリカ製のホームライトやマッカラーは排気口がまっすぐに出ているので、使っている人に直接木粉等が吹き出しています。西ドイツのものは横に出ているので、直接には木粉はかからない。アメリカから入っているホームライト、マツカラーというのは、ああいうことで視力とか胃腸障害とかいろいろな面で障害が出てくると思う。それは現地を見て対策を考えてもらわないと、資料を尊重するというものの、やはり現地をしっかり見た上で、そういう対策を立ててもらいたい。時間がありませんので、次に移ります。  マツクイムシの問題についてですが、いまのマツクイムシの発生状態は、全国的にどういう状態ですか。
  76. 田中重五

    田中(重)政府委員 マツクイムシの発生状況はこういうことになっております。戦後を申し上げますと、昭和二十四年に百三十万立方メートル、これが戦後のピークでございましたが、その後漸次減少いたしまして、昭和三十四年には三十万立方メートルと激減をいたしました。ところが、その後、千葉県以西の太平洋沿岸の黒潮の影響、こういうことでもあるかと考えられるのでございますが、昭和三十九年度には六十万立方メートルということで、最高の半分ではあるけれども、最低の倍といったような発生を見るに至っております。さらに、特に最近の被害の特徴として、成長の旺盛な幼齢木に及んでおるという点が憂慮すべき実情でございます。
  77. 森義視

    ○森(義)委員 ことしの春の豪雪で近畿一円に多くの倒木があったわけなんですが、実は奈良、大阪、岡山、兵庫、あの地区におけるマツクイムシの発生状態はどうですか。実は赤松が倒れて、まだそのまま放置されて、アツクイムシが発生する危険性が非常に大きいということで、先般林野庁のほうにもそのことについて申し入れがあったはずです。あの雪害による倒木から発生するマツクイムシの状態はいかがですか。
  78. 田中重五

    田中(重)政府委員 奈良県等を中心にする雪雲によるマツクイムシの発生防除については、ここに金額の資料は用意いたしておりませんけれども、それぞれ国の防除についての助成が進められているはずでございます。
  79. 森義視

    ○森(義)委員 特に六甲山系ですね。あそこは搬出が非常に困難なところが多いわけですが、あそこの雪害による倒木からマツクイムシが大量に発生する危険性があると聞いておるのですが、その点について何かお聞きになっておられますか。
  80. 田中重五

    田中(重)政府委員 マツクイムシの発生に対しては、早急にやるべき方策として、伐倒、剥皮、焼却というようなものがございます。それで、伐倒して剥皮、集積焼却ということで、その必要な経費をそれぞれ国と県がその所有者に補助をしておる。それから、もうすでにこの被害のために材木に利用価値のないもの、つまり、所有者にとって無価値になった、そういうものについては、国と県がその駆除費の全額を補助するということで進めているわけであります。そのほか、予防としては、あとで申し上げてもいいのですが、いろいろ効果のある薬剤が開発されておりますので、そういう薬剤駆除についても、その薬剤費の補助をいたしておりますし、さらに薬剤の空中散布についても補助しておるという実態でございます。
  81. 森義視

    ○森(義)委員 マツクイムシの発生地区における補助の査定単価は、立米あたり千二百六十円ですが、これは現状に合っておると思われますか。これの中で、国が六分の二、県が六分の一、公費負担六分の三、所有者負担六分の三、こういう一立米当たり千二百六十円の補助単価というものは、現状に合わないと思いますが、その点いかがお考えですか。
  82. 田中重五

    田中(重)政府委員 決して十分ではないと思っておりますので、予算上それぞれ実態に合うように努力をいたしたい、こう考えております。
  83. 森義視

    ○森(義)委員 だいぶ長時間にわたっていろいろとお尋ねをしたわけでございますが、十分御答弁をいただいた点もありますし、また必ずしも十分でなかった点も多々あるわけなんです。問題は、きょうの質問の中の中心になる林業基本法に基づく具体的な施策、これは長官、重ねてくどいようでございますけれども、重点的に強引に進めていただきたい。これは中央森林審議会の答申の中にもありますように、どうも林野庁という役所は、どんどん人事の交流があるので、長期の見通しを必要とする産業の性格からいって、このように責任者が交代すると、企業的なあれがなかなか発揮できない、こういうふうに書かれてあるとおり、とにかく自分の在任期間中に何か事故がなければこれでいいわ、そういう考え方に立ってもらうのじゃなくして、進んで困難な道を打開していく、特に長官も冒頭に申されましたように、林業基本法日本林政に対する革命的と言っていいほどの大きな重要な要素を含んでおるわけでございますから、その要素を実際に実らす、そういうことについて、在任中に格段の努力をしていただくことを要望申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  84. 倉成正

    ○倉成委員長代理 暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十三分開議
  85. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件及び農林水産業団体に関する件について質疑を行ないます。赤路委員
  86. 赤路友藏

    赤路委員 私は、この機会に、最近中漁審のほうで答申を得て決定したといわれておりますところの遠洋トロールのあり方について、当局のほうの所見をただしておきたいと思うわけなんです。  この前、遠トロについての資料を水産庁のほうからいただいたわけでありますが、その資料によりますと、中漁審に諮問されて新しく許可をする二十二隻、これを別にいたしまして、許可、済みのものがアフリカ沖関係で五十一隻、トン数にいたしますと九万一千九百八・九五トンになる。それから南西太平洋、オーストラリア関係が六隻、これは七千八十二・四七トンになる。現にこれが認許可されたものなんですね。三十九年度のアフリカ関係の操業の実績を見てみますと、四十六隻、トン数にいたしまして六万七千五百四十六・一〇トンになる。それから南西太平洋関係は三隻で二千九百八十五・五九トンになる。だから、この新しい二十二隻分を別にしても、三十九年度の操業実績からいきますと、アフリカ関係だけで二万四千三百六十二・八五トン、増トンになる。これを漁獲高で見てみますと、大体三十八年、三十九年は、船のトン当たりに対して一・八二トン漁獲がある。この計算でそのまま伸ばしていきますと、漁獲高は、三十九年度よりも四万四千三百四十トン増大するという計算になる。それに二十二隻新しく許可を出すということは――これは五百トン以上ということであって、トン数はわかっておりません。しかしながら、従来のものから大体推算していきますと、まずまず二万トンから二万二千トン程度になるのではないかと思われる。そうしますと、これを入れますと、漁獲量の三十九年よりの増大分はざっと八万四千三百八十トン増加することになる。そうしますと、三十九年度分を一〇〇にしますと、一七〇に増量するわけですね。そういう計算になる。これは必ずしもそういうふうにいくということじゃない。しかしながら、三十八年、三十九年の実績等から推算していって、これをそのまま引き伸ばして計算をすると、そういう計算になる。それだけ漁獲高が増大するわけなんですが、それに対して自信をお持ちになるのかどうか。私が特にきょうこの点触れたいのは、資源的に将来に対する見通し、そういうものを十分お立てになっておやりになったものかどうか、この点どうなんです。この点に対する説明を願いたい。
  87. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 アフリカの南方地域におきます遠洋底びき漁業の新規許可に対しまして、二十二隻程度をふやしたいという考えを水産庁は抱きまして、六月の二十六日だったと記憶いたしますが、中央審議会におはかりをしようかと考えたわけでございますが、おはかりする前に懇談会をいたしまして、いま先生御指摘の資源の問題等につきまして、いろいろと委員の方々と御懇談をしたわけでございます。そこで、その点に関しまして、いろいろと御質疑なり御懸念等がございましたので、私ども一カ月この諮問をずらしまして、この一カ月の間におきまして、私どもの資源に対する考え方、各漁場の実態及び外国漁船の実態等につきまして、詳細に資料を整備いたしまして、御審議を得て一応中央審議会としては御承諾をいただいた。この際、一言申し上げておきたい問題といたしましては、実は今回の二十二隻というのは、在来はアフリカ沖で五十一隻とか、それから南西大西洋で何ばいとか、ごく大西洋上並びに太平洋上の地域を限りまして、船の数をきめておったわけでございますが、今回におきましては、そういうのをはずしまして、そして北緯十度以北の太平洋、それから北緯四十度以北の大西洋、西径五度三十分、大体南太平洋全部のトロールの底びき漁業の許可隻数として考えた次第であります。したがって、範囲は非常に広範囲にわたる事業を行ないます際の許可隻数でございます。  そこで、資源の問題につきましては、一言で申し上げにくいのでございますが、あらゆる角度から検討して、この程度のものは十分収容し得るという確信のもとに御説明をし、御理解をいただいた次第でございます。
  88. 赤路友藏

    赤路委員 この漁場の実態、それから外国船の実態等を考慮し、特に今回の場合には、以前にアフリカ、ニュージーランド等と地域別に許可しておったものを一本にした、そして広範囲にすることによって十分やっていけるのだという御見解のようなんですが、これは逆でないかと思う。おそらくニュージーランドのほうへはあまり行かないで、従来ニュージーランドでやっておったものも、アフリカのほうへ行く可能性がある。それはあなたのほうから出しておる資料を見てごらんなさい。ニュージーランド沖の漁場ですよ。これはあらためて言うまでもありませんが、海が広範であったからといって、必ずしもそれは漁場ではないのですね。海があるから魚が無尽蔵にあるというものではない。やはり漁場というものは見きわめなければいけない。このあなたのほうから出された資料のニュージーランド沖の漁場ですが、三十四年は操業船が三隻、三十五年が四隻、三十六年三隻、三十七年三隻、三十八、三十九年が二隻になっておる。これはおわかりですね。減ってきておるわけです。もう一つ、オーストラリア沖の漁場、これは三十四年が三隻、三十五年六隻、三十六年が四隻、三十七年は四隻、三十八年は一隻なんです。三十九年はどうなったのか、これにはないのですが、減ってきておるわけです。操業をやっておる人たちは、営利を目的にやっておるわけです。私は現場へ行ったわけでもない。しかしながら、常識的に考えて、魚があり、漁場がいいとするなれば、船の隻数を減らしていく、操業数を減らすなんということはあり得ない。そんなばかなことはないと私は思います。減ってきておるということは、それだけ漁場価値が減退しておるということなんです。このことを一体どういうふうにお考えになるのですか。
  89. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先生御指摘のとおり、 ニュージーランドにおきましては現在三隻が許可されておって、オーストラリアはいま御指摘のとおり逐次減らしまして、現在操業をいたしております。  そこで、ものの考え方なのでございますが、トロールというものは、先生承知のとおり、日本では非常におくれて三十四年ころからだと思いますが、手を伸ばし出しておる。ところが、世界的には、イギリス、西ドイツその他、現在の情勢下におきまして、非常にトロールが歴史的に発達しており、相当大きなトロールの漁業を営んでおる。御承知のとおり、日本の漁業が非常に行き詰まりつつありますので、トロールの問題に対して、やはり日本も消極的な姿勢をとらずに、広い地域の中で新漁場を極力開発して、基本的には日本トロールの漁業の割合並びに実勢力を広げていくべきである。しかし、先生おっしゃいましたとおり、それが過去のニュージーランドの実績、オーストラリアの実績等から見て、漁場が悪いから減っておるのじゃないかという点が確かに一点ございます。ただ、私どもの考え方といたしましては、ことしニュージーランド沖の試験を、水産庁としても調査船をもって漁場の開拓調査をやろう、それからアフリカにおきましても、現在一定の水深のところで一定にとっておりますが、これもさらに進んでは四十一年にアフリカ沖に調査船を派遣いたしまして、資源漁場の開発をやりたい、こういう立場で、未利用の漁場というものを積極的に開発していく姿勢はどうしてもとってまいりたい。それらと両々相まちまして、結局この漁場の、いま利用しない、あるいは十分に利用していない漁場を開発していく。業界におきましても、そういう考え方を積極的に持つ空気も出ておりますので、それらと相まちまして、広い南太平洋、大西洋を通じまして積極的に漁場を開発する。そのためには、それを意識して船の数もいまから若干ふやす。しかし、あまりに一時にたくさんふやすということは問題があるので、この程度にとどめて進めてまいりたいという意味でございまして、各地域におきます資源の問題につきましても、私ども利用し得る限りの資料で、利用価値がまだ残っておるという立場でものを考えた次第でございます。
  90. 赤路友藏

    赤路委員 これは見解の相違といえばそれまでです。私は何もかも悪いと言っているのじゃない。十分資源調査をやって、その上でなお、これならやれるというならいいわけですよ。私が心配するのは、むちゃくちゃに出してしまって、資源が薄れてくる、経営が成り立たなくなるのですね。そういう事態が起こってくる心配があるというわけです。だから、十分調査しておやりになるならいいですよ。実際上の問題として調査していないのですよ。アンゴラの沖ですね。あれだってよければどんどんやりますよ。よくないからあまりやっていないわけです。南へ寄ってしまっているわけです。だから私は、ふやすことそれ自体を悪いと言うのじゃない。十分な調査もしないで、一体これで経営が成り立たなくなればどうするのですか。どこへ転換さすのですか。またマグロの二の舞いを踏まなければならぬような事態がくるわけです。いまニュージーランドのほうあるいはオーストラリア関係、これから調査をやるということですが、ニュージーランドの西側をやるのか東側をやるのか、あるいはオーストラリアの、台湾の南のほうをやるのか、もう南緯三十八度から四十度へくると、相当波の状態といいますか、海の状態が違っておるわけですね。現状の船で操業するということは困難だと私は聞いておるわけです。そういうところは全然調査していないですよ。調査していないから、資源がある、これから開拓するのだといえば、それは一つの理屈でしょう。私は、少なくとも行政というものはそんなものではないと思うのです。もう少しこういう問題については慎重な態度をとってもらいたい。この前も私は言ったが、鯨だってそうなんです。南鯨は、いま丹羽長官に言うのは無理かもしれぬが、初めからわかっておる。一万五千頭が一万頭になり、八千頭になり四千五百頭になっていく。これをもし水産庁の上層部の諸君がわからなかったといえばおかしいと思う。わかっていながら、指導性が欠除している。これらに対してどうしてもチェックがかけられなかった。私は、今度の外トロだってそうだと思う。まだ十分な漁場調査もしないで、ただここは魚はあるだろうとか、ここをやればいけるだろう、こういうことを言っているのです。あなたのところの資料の中にはアラフラ海の開発ということもある。一体アラフラ海で底引きがやれますか。そんなことをオーストラリアが許すと思うか。そういうことを考えていかなければいけない。私はただその点だけを言いたかった。もっと水産庁は見通しをつけ、しっかりした科学的な基礎の上に立って、責任を持ってやってもらいたい。ただ業界の空気であるとか、政界の二部から何か圧力をかけられたというようなことでぐるぐる変わるようなことでは、日本の水産なんてどこへいくか、わけがわからなくなってしまう。それを私は心配するのです。私はもうこの問題については答弁は求めませんが、言うだけのことは言わしてもらう。現にいまの日本の漁業というものは、特に国際漁業が行き詰まってきているのです。いま長官の話の中に外国の船云々ということがあった。確かにソ連が進出しておるでしょう、あるいはアフリカにおいてはスペイン船が行っておるでしょう。また新興国はどんどんやるようになる。もうこれからの国際漁業というのは、単に国内の調整じゃない、国際的な調整をどうするかという段階にきているわけだ。そういう基本的な面を押えないで、ただ当面何とか糊塗していけばいいというような形では、日本漁業の将来は憂えられる。私はそれを言いたい。少なくとも一つの科学的な基礎を押えて、自信を持ってこういう面に対しては対処していただきたいと思う。これだけです。それからアジ、サバ等従来のような資源でない新しいものがとれ、それが新しい市場を開拓していく一つのものにもなっておる。確かにそういう面があると思う。ただし、一面、たとえばいままでのタコであるとか、あるいはモンゴウイカというものの魚体が小さくなってきている。このことも事実なんです。そういう点を十分ひとつ今後考慮してやっていただきたいと思います。遠トロの問題はこれで打ち切っておきます。  それから次に、私は、日韓問題でちょっと触れておきたい。  この前、松岡長官に私はちょっと質問をしたのだが、この補償金問題です。この補償金問題は、長官答弁によると、大体七十二億程度、こういうことであった。最近、この補償額が九十億程度になっておる、そういうふうに聞いておる。そうすると、これが五月十人目から二ヵ月たたぬ間に二十億ほどふくれ上がってきたのだが、その理由は何ですか。
  91. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先生のおっしゃるのは、拿捕漁船に関する補償の問題だと思いますが、日韓交渉の過程におきまして、拿捕漁船に関しまして、業界から七十数億の数字が当初報告されました。それから精査のいとまもございませんで、その数字を一応もとに韓国等にもいろいろな話をしたことも事実でございます。その後におきまして、長崎県及び関係県におきましてもう一度計算をいたしまして、ごく最近陳情に回っております数字が九十数億。その違いは何かといいますと、結局は物価の見方の問題でございます。昨日も私その数字を来られた方から承ったのですが、要するに、漁船なら漁船の評価をいつの価格でやるか、あとになればなるほど漁船、漁網その他の物価が上がってきまして、前のは、正確ではございませんが、たしか三十五年の物価水準で計算されたもののように承知いたしております。今回はごく最近の時点のもので計算をしたというものでございます。これはいかなる物価で計算すべきか、非常にむずかしい問題がございまして、私どもとしては、現在役所の立場で一つの評価を精査中でございます。
  92. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、七十二億といい、九十億といい、一応の腰だめになりますね。まだ確定的なものでないということでございますね。私はこの前の委員会のときに言っておるのだが、拿捕漁船だけじゃないのです。船員がおるのです。負傷した船員で、そうしてもう重労働につけない、こういうようなものも当然補償の対象になると私は思う。それから拿捕されたことによって倒産した零細な漁家があるわけですね。生活保護を受けておるのがある。そういうようなものを十分調査しておくように、こういうことを五月十八日の委員会では言ってあるのですが、調査できていますか。
  93. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 拿捕の隻数、それから死傷あるいはけがの実態、そういうものにつきましては精査をいたしております。ただ、先生御指摘の倒産の問題、それから経営の影響の問題、これは非常に問題があるところでございまして、全然調査していないわけではございませんが、問題点として私どもは考えておるところでございます。
  94. 赤路友藏

    赤路委員 よくわかりました。率直に私は申し上げるが、おそらく十分できていないだろうと思う。そこで、この点を十分ひとつ御調査を願いたい。同時に、これをやはり対象として取り上げるという前向きの姿勢でこれに対処してもらいたい、そのことをひとつ希望しておきます。  それから韓ノリの輸入問題ですが、これはもう相当長い期間もたついておるわけなんです。いまだにどうも解決点が出ないようなんですね。もうおそらく出さなければならぬだろうと思う。本来ことしのノリの生産状況から見ろと、韓国ノリは入れてもらいたくないわけです。たとえそれが一億であろうと二億であろうと、これは入れてもらいたくないというのがほんとうだと思う。ただ、政府が今日まで進めてきた日韓会談という中で、政治的にこの問題は取り扱わざるを得ない、これが現在の実際の姿だと思うわけです。だとするなれば、政府は、このノリの輸入についてはある程度の責任を持った態度で臨んでもらわなければ困ると私は思う。従来、この韓国ノリの輸入問題については、私はもう七、八年前から当局のほうにもそれぞれ御注意をし、団体のほうに対しても注意をしておるわけです。われわれは、日韓会談というものは、単なる経済問題としてでなしに、大きな政治問題、民族の問題、アジアの平和の問題というようにからみつけてまいっておりますから、反対をしておる。しかしながら、事ここまで進んできておりますから、何億になるかはわかりませんが、おそらく韓国ノリの輸入は避けられないと思う。もし万一輸入することによって、豊作であって今日なおかつ相当量それぞれ漁協では滞貨をしている、これに影響を及ぼすようなことがあってはならぬと私は思う。それだけに、韓国ノリの輸入については慎重にやってもらわなければならない。ところが、今日までもたもたもたついておったのは一体何だ。水産庁には指導性というものはまるでない、こう私は率直に言いたいわけです。これを輸入してどうするかということは、常に考えられることは、生産漁民の立場をどうして守るのかということです。全海苔の役員のメンツであるとか、あるいは全漁連の役員のメンツであるとか、そんなものを問題にするのではない。団体の利益を考えるのではない。考えることは一体何かといえば、それは輸入することによって受ける打撃をどうして少しでも少なくするか、生産漁民の立場をどうして守るのか、このことに集中するのがほんとうでしょう。一体、いままでの何をしておったか、私はそう言いたい。少なくともことしのノリの生産は豊作で、かなり大きな手持ちがある。それだけに、これらの漁民に影響を及ぼさないように、この際十分な配慮をする必要がある。今日まできておるのですから、抜本的な対策というものはおそらくここ二、三日のうちにも出ないだろうと思う。その点を私は一応理解いたします。しかしながら、それによって将来とも決せられては困る。来年になってまた同じようなことを繰り返すようなことでは話にならぬ。私は、この際、水産庁長官が何年長官の席におるか知らぬが、しかし、少なくとも今回の場合はやむを得ないとしても、この次ははっきりとした態度で、ほんとうにノリを生産する漁民の立場に立ち、全海苔や全漁連がごちゃごちゃ言うならば、長官はもっと強い態度でこれらに臨んでいく、それでなければいかぬと思う。そういう面で私はあくまでも一元化を希望する。ほんとうに一体になる。ならぬような団体ならばつぶしてしまえばいい。そのくらいの強い態度で守っていくということでないと、あっちからつつかれては頭をひねくってみる、こっちからつつかれればうろちょろうろちょろやってみる。それで迷惑するのはだれかといえば、これは漁民です。漁民の立場だけはひとつ十分守っていただきたい。この要求を聞いていただけますか。イエスかノーかだけでいい。ごちゃごちゃ言わないでいい。
  95. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 指導力がなくて手間どっておりますことは、まことに遺憾であります。先生おっしゃるとおり、やはり根本的には漁民の利益をいかに守るかということでございます。基本的には、私も身にしみて、来年度以降の体制については機構を確立したい、かように痛感をいたしております。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいまの赤路委員の韓国ノリ輸入の質疑に関連してお尋ねしますが、けさの朝日新聞を見ますと、韓国ノリ輸入の問題についてこういうことが記載されておるわけです。内容は「自民党の川島副総裁と赤城政調会長は十日午後院内で丹羽水産庁長官、石田同次長をまじえ、懸案の韓国ノリの輸入問題について協議した結果本年度は二億五千万枚を輸入するうち一億枚は従来通り問屋扱いとし残り一億五千万枚は生産者保護のためノリ流通協議会を新設してこれに扱わせる――ことで最終的に意見が一致した。このため農林省は近くこれを正式に決定し、韓国側に通告する。」ということが出ておるわけです。この点については、先日、私も、韓国ノリの輸入問題とことしの国産ノリの豊作の状態というものを対照した場合において、昨年度よりも大幅な輸入増加をするということは、国内のノリ生産者に対して重大な影響を与えるのではないかということを指摘したわけでありますが、この内容について、この際、赤路委員の質問よりも相当事態は進展しているように考えられますので、昨日の会合に出席した丹羽長官から明確にしてもらいたい。
  97. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 いま赤路先生もおっしゃいましたとおり、ことしは非常に豊作でございます。一方、日韓貿易会談に関連いたしまして、韓国との間でも貿易上の約束ごとが一つございます。したがいまして、そのノリの問題は、一つには、与党内部でも大きな関心を持ち、かつ御審議をされる筋合いの問題でありましたので、党としていろいろと御審議をされており、政府側としては党との意見調整を続けてまいっておったわけでございます。昨日の段階では、非常に時間がかかりましたが、党の御意見が一応整理されたのであります。政府側といたしましては、その党の御意見を受けて、党の意見は尊重すべき立場にありますが、政府として、関係機関と相談の上、政府の態度を近く決定する、こういう関係にある次第であります。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この朝日新聞の記事の内容はこのとおりなんですね。
  99. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 党の御意見の整理としては、このとおりという部分が――いろいろこまかい点がございますが、基本的にはそういうことでございます。
  100. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここで一言指摘しておきたいわけです。大臣は来ておりませんけれども、仮谷農林政務次官はおられるわけです。そこで、国会においては、水産問題等について重要な問題に対しては、適宜にこれを取り上げて、政府の行政措置等について、どのような努力をもってこれを解決するかというような点は、しばしば取り上げているわけです。たとえば韓国ノリの問題についても、あるいは先般来質疑を続けておるところのソ通産のスケーウタラ輸入の問題についてもそうです。しかし、これらの問題を国会の場において、関係の農林水産委員会において取り上げる場合には、農林省、中でも水産庁はそうでありますが、態度を明確にしたことが一度もないわけです。内容において行政的に処置が進んでおっても、いまだそういうことは大臣としてよく聞いておりませんとか、慎重に検討中でありますというようなことで、その場その場を逃げておるわけです。結局、これは国会に対しては具体的なことを言う必要はない、それよりも、与党自民党の御意向を伺って――これは政府の態度ですよ。政府としては、農林省としては、水産庁長官としては、国会でどのような論議をされても、それにはまじめに取り組む必要はない、そうであるけれども、与党自民党さんに対しては至上命令と考えて、何事をやる場合にも、政府の行政権限の範囲内で解決できる問題についても、まず自民党にお参りして、そうして党の方針を十分聞いてから、その方針に従ってものごとを処理する、こういうことがだんだん露骨な行政の姿勢になっておることは、われわれが指摘するまでもなく、そういうことをやっている水産庁長官あるいは農林省自身が知っておる点であります。したがって、このノリの問題についても、国会においては明確な方針を示すことができない。しかし、毎日のように、国会をさぼってでも自民党の首脳部にお参りをして、鼻息をうかがわなければ方針がきまらぬということになれば、一体、いまの農林省の行政の方針は、国会や国民を度外視して、単に与党自民党の意向に忠実であれば、それで正しい行政というものが進められるというふうな考えでやっておるのかどうか。与党自民党あって、国民や国会は不在であるというような態度は、一体どこにその根源があるか、この際、明らかにしてもらいたいと思うわけです。韓国ノリの問題についても、ソ連産のスケトウダラ輸入の問題についても、一度も当委員会において熱意をもってまじめに答えたことはないじゃないですか。しかも自民党さんにお伺いして、こうしてやれと言われれば忠実にやるのが農林省の役人の態度です。こういうことでは、われわれは信頼して行政府の行政の行為に対して期待を持ったり、あるいはそれを支持するということは絶対できないわけです。このような姿勢を今後も一貫して続ける考えであるかどうか、反省の余地というものが全然ないということでやっていくのかどうか、明らかにしてもらいたい。そのことは、自民党の天下だから、いまは自民党の鼻息をうかがうが、一朝社会党が政権をとった場合においても、やはりいまの役人の態度は、国民や国会を無視しても、時の政権を担当する与党にさえ忠勤を励めばいいということに通ずるわけで、重大な問題だと思うわけです。この点はひとつ、新進気鋭の仮谷政務次官並びに丹羽長官の所信のほどを明らかにしてもらいたいと思います。
  101. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 芳賀先生よりいろいろ御意見があったわけですが、決して、国会や国民にいいかげんなことを言って、あるいはそれを軽視し、ないがしろにして行政をやる、そういうものではないと思います。ただ、いままでのいろいろな問題に対する政府側の答弁は必ずしも明確ではなかったということ、私も議員でおるだけに、そういうことをよく承知しておりますが、やはりはっきり言えない段階であって、そういう面において十分な答弁もできなかったかと思うのでありますけれども、実は今度の、たとえば韓国ノリの問題にいたしましても、決して、政府のほうからこれはどのようにいたしましょうかというふうに与党の鼻息をうかがい、あるいは意見を聞いてものごとをきめるという態度に出たものでもありませんし、そういう考え方も絶対に持っておりません。ただ、与党自体にしましても、先ほどから先生方のおっしゃるように、この問題はきわめて重大な問題である、しかも今年はノリが豊作であるにもかかわらず、相当のものを輸入しなければならぬということになると、漁民に与える影響は非常に大きいじゃないか、だから、これに対して政府はどういう考え方を持っておるのか、あるいはどうしようというのかということで、与党の農林水産部会等に呼ばれまして、いろいろ意見を聞かれることはあります。そのときには、われわれの考えておる考え方を申し述べるわけでありますが、そういう意味で、与党としても、それぞれ団体があるわけでありまして、団体の問題の調整もしなければならぬし、解決をつけるにしても円滑にそれを進めるようにしていくべきものである、こういう面で、与党は与党なりにいろいろと検討され、あるいは案を練られたのではないか、そういうふうに思うわけであります。したがいまして、きのうの新聞のいまの問題でありますが、これにしましても、決して政府が党と一緒になって問題をきめたというわけじゃございません。私どもはそういうことを考えておりませんし、それは、与党は与党としての考え方、決定したことを、一応政府に対して、こういうような案でいきたいということを示されたということであって、それに基づいてわれわれはわれわれとしての案を考えていく、こういう考え方を持っております。決して、国会を無視したり、あるいはいいかげんなことを言ってその場限りのことでのがれよう、こういうふうな考え方で行政を進めておるわけではございませんから、御了承をいただきたいと思います。
  102. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 行政の一つ一つについて党に御相談するという考えは私どもとっておりません。ただ、政党政治でございますから、党の政策にかかわってまいる問題、これについては、党の立場としての御発言も出てまいるわけでございます。そこで、問題が出てまいれば、政府・与党間の問題として、私どもは言うべきことは申し上げ、党のほうのお立場でいろいろの御意見も出てまいることは事実でございます。ただ、私どもとしては、やはり行政の立場で言うべきことは腰を据え申し上げておるつもりでございます。ただ、非常に政治的にむずかしい問題等に相なってまいりまして、党の御意見というものを統一してお示し願うという場合に当面することが、その事柄の性質いかんによってはある、かように存じておる次第でございます。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、行政府と自民党の副総裁とか政調会長というのはどういう関係なんですか。政党政治のもとにおいては、多数をとった政党が議会において多数を制した場合には、これは総理大臣が指名されて、そして自由民主党が内閣を組織する。これはわかっておる。その内閣には、自由民主党の党員であり、議員である農林大臣やそれぞれの大臣が出ておるから、それは自由民主党が政権を担当して、そこに行政府の最高責任者である総理大臣あるいは国務大臣を送り出しておるわけでしょう。ですから、行政府というものは、総理大臣を筆頭にして、担当の国務大臣と官僚との関係というものは、当然組織的にあるわけですが、政府の一役人が一々問題ごとに自民党という政党の副総裁とか政調会長とか何々部長のところに日参しなければ、自分の権限のもとにおいて行なうべき行政が正確に進めることができないというようなことは、いかに政党政治のもとにおいても、これは問題があると思うのですよ。そうであるならば、何のために三権分立のもとにおいてやっていくかということになるじゃないですか。そのくらいのことがわからぬで、いまは政党政治ですからといって、役人が自民党に毎日出入りするのがあたりまえのことであるということを、しかも水産庁の役人の中では一番首脳部の長官がしゃあしゃあと言うようなことでは、いつまでたっても、行政の姿勢そのものを正すことはできないと思うのですよ。スケトウダラの問題だって、あとで関連して聞きますが、そうじゃないですか。
  104. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 たまたま新聞に副総裁とか政調会長とかいうなにが出て、人そのものは間違いないと思うのですが、私どもが自民党の水産部会へ呼ばれまして、これに対する意見をいろいろ聞かれ、われわれの考え方を申し、水産部会は水産部会として一応これに対してどういう方針で進むかということは、これはそれぞれ非常に意見がありまして、なかなかまとまらない。まとまらないとすると、やはり政調の部会でありますから、政調会長というところで最終的な党の方針がきまる、こういうわけじゃないかと思います。そういう意味で、最終的に決定した党の案というものを、たとえば赤城政調会長、あるいはそこに副総裁が出ておったか知りませんけれども、それはどういう意味で出たか私ども知りませんけれども、要するに、党の方針というものをわれわれに伝えたい、こういうふうに私ども解釈いたしております。ただ、もちろん政党政治でありますから、党の意見を十分尊重することは当然でありますが、それかといって、与党だけのことを聞いてすべてやるということではないわけであります。野党の先生方の御意見も十分に拝聴して、私どもはそういったものを行政の上に取り入れるべきである、こういう考え方であります。そういう方針で進んでまいりたい、こういう考え方でございます。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 政府と与党の関係は、担当の農林大臣とかあるいは政務次官が連絡に当たればいいのであって、それ以外の役人が何も政党に日参する必要はないと思うのですよ。連絡というのは、国務大臣やそのための政務次官というのがあるわけだし、決して仮谷さん自身が全部わかってやってくれという期待はだれも持っていないのですから……。特に韓国ノリの問題については、前副総裁の大野伴睦氏が健在の時代、数次にわたって韓国を訪問されておるでしょう。それは親善の意味とかいろいろな関係があっても、そのたびごとに付随した問題は、やはり韓国ノリの輸入問題というものが影の添うごとくついて回った。これは国民が知っておるわけなんです。一体国民経済の立場から韓国ノリというものを与党自民党においても処理されておるか、あるいは何らかの利害関係に基づいた観点からこの問題を取り上げておるかという点については、国民としても常にある程度の疑惑というものを持っておったわけなんです。今回も、国産ノリが大幅な豊作であるということがわかりながら、前年度よりも一億枚さらに輸入をふやすということになると、これはどこに根拠があるかということは明確にしておかなければならぬと思うわけですよ。そういう疑惑に包まれておる問題を処理しなければならぬときに、みだりに担当の役人が与党に出入りするというようなことは慎んでもらわなければならぬと思う。これは関連ですから、これ以上のことは言いません。
  106. 赤路友藏

    赤路委員 次に、私は、先般国勢調査で沿岸漁業の構造改善事業の状況を視察いたしましたが、その中で四日市の公害の実態を見てきたわけなんです。私どもが聞いておった、あるいは想像しておった以上にひどいものなんです。それは煙害にいたしましてもそのとおり、それから海水の汚濁の状況、これも実にひどい。これをこのまま放置するということは――これは行ってみないとわからないのですが、私たちは現地に行ってみて、人道上の問題だ、これをこのまま放置するということは許されない、こういう感じを持つわけです。佐藤さんはよく人間尊重と言っておるが、これは人間尊重どころの騒ぎじゃない。人間が産業発展のもとに犠牲になっておる。言いかえると、踏みにじられておるというようなひどい感じを受けるわけなんです。専門学者が共同で調査をしておる。その報告の一端の中にも書かれておるわけなんだが、石油関係工場から排せつされる炭化水素系油分はきわめて多く、排水を千倍に希釈してもなおかつ特有の異臭を放っておる。それから工場からのカーボンブラック、水酸化物等が流され、海面を広範に汚濁しておる。そしてこういうようなものが海底へ沈降していく。沈んでいって、そうしてどろの中がはなはだしく汚染されておる。こういうことを学者の諸君が共同調査の中ではっきり言われておるわけなんです。しかも、試験の結果を見てみると、範囲が非常に広い、この異臭度は、魚などは二、三時間で完全ににおいが移ってしまう、こういうことを言っておるわけです。それから、四日市港を中心としてその範囲が、沿岸北方へ約六キロ、沖合い北東へ約十一キロ、沖合い南東へ七キロ、沿岸南方へ約十五キロ、相当な距離なのです。それほど汚染されておる。それだけに、漁民は完全なお手あげだと言っていいわけです。これに対してどういうような対策を現在立てておるのか、どうしようとしておるのか、これを企画庁のほうと水産庁のほうからお聞きしたい。
  107. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  ただいま先生お話しのとおりでございまして、企画庁におきましては、昭和三十七年に水質保全法に基づきます水質の調査を数年かかっていたしました。ところが、ただいま御指摘の中にもございましたように、石油コンビナートを中心としました四日市の工場発展に基づく水質の汚濁につきましては、その因果関係と申しますか、技術的に非常にむずかしい点がございますので、さらに三十八年から三十九年にわたりまして、科学技術庁の研究調整費によりまして、これは水産庁も含めまして政府関係のところで調査をいたしたわけでございます。その結果が次第にまとまってまいりまして、実はことしの四月に、企画庁にございます水質審議会の四日市部会の第一回の会合を開きまして、その後現地に参りまして、現地の利害関係者からいろいろ状況を聞き、ただいま、いままでの調査の結果に基づきまして、水質基準を設定するように分析、検討中でございます。ただいまの進行状況で申しますと、大体九月には次の部会が開ける予定でございまして、できれば十月には最終的な部会を開きたい、なるべく早い機会に水質基準を決定していきたい、こう考えております。  一方、だいぶ前からこの問題が出ておりまして、特に魚に油のにおいがついておる。したがって、その市価が下がるとか、あるいは売れないという問題がございましたので、直接利害関係のございます県並びに四日市市、それから関係の工場、これらが金を出し合いまして、三十七年から本年度まで五カ年間でございますが、合計いたしまして一億の金を、関係の魚協で組織いたします北伊勢漁業開発株式会社に出しまして、これによって漁業関係のこの間の振興をはかっていこう、こういうことで現在やっております。  そのほか、先般国会を通りました、これは通産、厚生両省の共管でございますが、公害防止事業団におきましても、これは十月から発足でございますが、それのいわば初年度の候補者といたしまして、石油コンビナートの一部等につきましての共同処理施設をつくることにつきまして、ただいま通産、厚生で検討中でございます。  ただいままでの経緯を簡単に申し上げますと、そんなことでございます。
  108. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 水産庁といたしましては、いま水資源局長のほうからお答えがありましたように、一つは、着臭の原因なり、着臭経路なり、着臭濃度の調査の問題、それから、これは要は水質の問題であるから、水質基準に対する一つの水産庁側からの希望を提示いたしまして、その線にできるだけ近い線で水質基準の設定ができないかという立場で、一つの系列の問題として仕事を進めておるわけでございますが、なかなかむずかしい問題でございますので、やはり別の対策が並行していく必要があるというふうに感じております。今日までのところでは、昭和三十年に市と会社から合わせて五百万円、それから第二回目に三十三年に一千万円、これは市と会社でございます。ここで金を出し合いまして、沖合い操業、なるべく沖合いに出て操業するための漁船装備の拡充資金として、関係漁業に金を交付していくという措置が一つ行なわれております。それから一方、三重県におきまして、伊勢湾沿岸漁業特別対策事業といたしまして、関係漁協で北伊勢漁業開発株式会社というのを設立させまして、そして県と市町村と会社で金を出し合いまして、漁民センター、これは実際には漁民の宿舎のようでございますが、そういうことで、少しでも収益の補てんを考えるという措置が県を通じて行なわれておるわけです。  一般論といたしまして、公害の問題は、なかなか原因者との関係等も非常にむずかしい問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、どこまで基準によって水質の改善がはかられ、被害の範囲が狭められるかという問題と並行いたしまして、県を通じまして漁業者に対しては、いまとりあえず考えられていますのは、沖合いに出るような船の装備ということでございますが、それ以外に、この漁業者に対する援助の問題について県と十分相談していくことも、並行してやっていく必要がある問題、かように考えております。
  109. 赤路友藏

    赤路委員 いま企画庁のほうから大体現在の進めようとしておる構想の基本的な面だけ聞かされたわけなんですが、けっこうだと思う。ただ、この水質基準の決定ということは、口で簡単に言っても、なかなか現実にいろいろと利害関係が錯綜してくるので、非常にむずかしいと思う。しかしながら、やらなければならないことは事実なんです。行ってみますと、単に漁業関係というだけでなしに、ほんとうに人間的な面を考えざるを得ないというような実態なんですね。いまおっしゃったような共同の処理施設、非常にいいことだと思う。ただし、けちな考え方をもってやっておれば何もならぬと思います。  そこで、ちょっとおわかりならお聞かせ願いたいのですが、廃液浄化装置、現在、それぞれ十一工場ほどあそこでは持っておるようなんですが、この廃液の浄化装置はあることはあるのだが、つくった当時からいたしますと、だんだん経済の高度成長といいますか、生産設備が大きくなってきておるが、浄化装置はそれに伴っていない。一体どうなんだと聞いたら、いわゆる浄化装置はございます。当初つくっただけであって、増大分がほとんどないものだから、オーバーしてしまう。こういう実態があるということを聞いているのですが、そういうことお聞きになっていますか。
  110. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 お答えします。  いま先生からの御質問の点でございますが、私、技術者でございませんので、詳しいことは存じませんが、ただいま石油関係の各工場がやっております油を分離する方式、これは地区によって違いますし、業者に聞きますと、いろいろ違った意見を言っておりますが、たとえば油を分離しまして、多少技術的なことばになりますが、十PPMまでは油を分離できる、こういう意見もございます。一方、いや、二PPMまではさらに分離できる、こういう意見もございまして、かたがた実験的には、活性汚泥法と申しますが、別な方法によりますと、さらに一PPMまでは油を除去できる。ただし、これは実験段階でございます。一方、水質基準の設定も急がれておりますので、当面現在の技術なりぎりぎりの経済ベースで、できる限りの処理方法を不十分なところについてはさらにやり直していただく、こういうかっこうでやると同時に、将来そういう活性汚泥法等が実用化した場合には、油の除去についてさらにもっと徹底した方法をとり得るような基準ができないかということで、いわば応急的な方法と長期的な方法と両方併用できるような点を研究を進めております。それ以上詳しいことは存じません。
  111. 赤路友藏

    赤路委員 私の言いたいのは、これは工場側にしますと、どれだけ膨大な経費をかけても、その生産コストにプラスになるわけじゃない。逆にマイナスになるわけです。だから、工場側としてはできるだけやりたくない、極端なことを言うようですが、こういう考え方になるのは当然だと思う。しかしながら、あえてそれをやらさなければならぬ。だから、できるだけそういう面では監督を厳重にしてやかましく言う。が、他面、そうしたマイナスになるものをやらすのですから、それだけのほかの面からのめんどうを見ることくらいは考えてやらなければ、これはとうていまともには進んでいかぬと私は思う。それに対する思い切った施策がないから、私がいま言ったように、最初に施設をつくってしまえば、ございますと言って、あとまで一つも増大していかないという結果も出てくるかと思うわけです。その点今後十分注意してもらいたい。同時に、私が当初言ったように、共同施設を公害防止事業団でつくってもらえば、それが一番いい。惜しみなく金を突っ込んでやるということ。  それから、いま局長のおっしゃった廃油の浄化なんですが、これは十分研究されておると思いますが、廃油の浄化施設、これのパテントというのは、たった一つしかないそうですね。だから、一つのものが独占するというような形態になりかねないわけです。これに対しては、日本のほうでも技術は相当進んでおることだろうと思います。十分御研究願って、これに対しては善処をしていただきたい。このことを要望いたしておきたいと思います。  それから水産庁のほうへは、長官のほうから御説明がありましたが、もうあの近海でやらすということでなしに、いろいろ問題はあるだろうが、やはり沖合いへ出すということ、そのために、ひとついろいろな施策を講じてやっていただきたい。四日市の件ではその程度にとどめておきます。  最後に、私は、一点だけ水産庁のほうにお尋ねします。真珠養殖ですが、真珠養殖の母貝といいますか、成熟した貝、この貝に病気がついて、これが伝染病的なものであって、相当これに悩まされておったようです。これらのものが最近、しごく簡単なものなんですが、塩水処理によってかなり大きく効果をあげてきておる、こういう報告があったわけなんです。もちろん、それは防疫とか防除とかいうものの根本的な解決にはなっていない。なっていないが、確かにそのことにより、病気の蔓延といいますか、広がりというものがなくなってきた。病気にかかるのが非常に少なくなってきた、こういうことなんですね。たまたまうまく当たったということになるのかもしれません。しかしながら、いずれにしましても、これからなお真珠養殖についての病気の排除といいますか、そうしたことは研究をなされていかなければならぬと思うわけなんです。業者の連中の意見等も聞いてみましたが、簡単な塩水処理でもって相当効果をあげておるので、何か国立真珠研究所ですか、あそこの存在価値を業者が再認識したというようなかっこうになっておるわけです。ところが、一面、制度調査会のほうの答申の中には、国立研究所を地方へ移管せよなんていうことを言っておるらしい。私はそんなことは絶対反対なんです。財源を見てやるならいいですよ。今日ですら研究財源というものは十分ないのです。はなはだしいですよ。地方財源が困っておるときに、これを地方に移管したらまともにやっていけるか。真珠養殖なんて世界じゅうないのです。日本だけやっているのです。日本独自のものなんです。だから、われわれはこれを守っていきたいのです。それで一生懸命になって研究してやっているわけです。これは考えてやらなければいけないと思うのです。最近どんどん生産量が伸びてきている。生産量の伸びはかなり大きいのです。生産が伸びれは、検査料金がずっとネズミ算的にふくれ上がっていっているわけです。ところが、一向研究所の研究費なんていうものは冷遇されておって、どこかへ押し込められているようなかっこうなんです。研究費というものは、表金額は大きいといっても、実際はあっちで頭をはねられ、こっちで頭をはねられて、小さくなっているのです。これなどは、生産が伸びて、検査料を大きく取って、それは大蔵省に持っていっているのでしょう。こういうものを還元して、こういうような研究に金を突っ込んでやらなければ私はだめだと思うのです。長官、どうお考えですか。
  112. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私もなお研究さしていただきたいと思いますが、基本的な考え方として、研究所を移管するようなことに対しては反対の態度で進めたいと思います。
  113. 赤路友藏

    赤路委員 私は終わります。
  114. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 この際、ソ連産スケソウダラの輸入に関する問題につきまして、水産庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。丹羽水産庁長官
  115. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 ソ連産スケソウダラの処理についての経過を御報告申し上げます。  前回御報告申しましたとおり、さきに、この件について、貿易会社及びフィッシュミールの会社から、三船団十八万トンの買魚をいたしたいという計画が七月二十日に出てまいりました。これに対します水産庁の態度を明確にいたすための第一歩といたしまして、北海道知事と意見交換をし、意見の一致をおおむね見たわけでございますが、この見た結論を今後におきまして手続を経まして最終決定にするわけでございますが、この最終決定をいたす段階には現在至っておりません。なおいろいろの角度から検討いたして最終決定をいたしたい、かように考えております。
  116. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 芳賀委員
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題については、去る二日並びに六日の当委員会において質疑を行なって、保留された問題でありますので、きょうは詳しく質問をする考えはありませんが、水産庁あるいは農林省としてのこの問題に対する基本方針というものは、すでにきまっておるのか。たとえばソ連船で漁獲したスケトウタラを五万トン漁場で買い付けして、これを原料にしてフィッシュミールを製造する、それからスケコ、すり身等については製造させないということが基本になると思うわけであります。しからば、フィッシュミールの加工を行なうということの要請は、これは当然家畜の濃厚飼料としてどうしても国内の生産だけでは確保することができない。従来はペルー等を中心とした諸国からフィシッミールについては大体十四万八千トン程度、前年度輸入の実績があるわけです。しかし、これらの諸国からフィッシュミールとして輸入する場合でも、まだ数量が足らない、国内需要を満たすことができないので、新たなる方法として、北洋においてソ連が漁獲したスケトウダラを原料にして、日本側においてこれを洋上で加工して持ち帰って、これを家畜の飼料として供給する必要があるという、畜産政策の立場からの強い要請を実現するために、こういう方法を講ずるということでやるのかどうか。この点がまだ農林省の方針として明らかになっていないわけですから、いかなる態度に基づいてこの問題を処理しようとするか、この点を明確にしてもらいたい。
  118. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 先生御指摘のとおり、基本的には、養鶏の振興によりまして、濃厚飼料の需要が年々百万トン程度ふえております。その中に数パーセントのフィッシュミールの混入をする。したがって、フィッシュミールの需要そのものが毎年十万トン弱近くふえておる。そういう関係がございまして、畜産政策の立場からいえば、できるだけフィッシュミールの生産に協力いたしたいという立場はわかるわけでございますが、漁業の立場からいって、その要請に応ずるわけにはいかない。したがって、漁業の立場としては、まず沿岸漁業との関係で、タラコ、すり身はつくらない。それから船団をふやすということになると、将来また需要が増大する要請が強まる関係もありますので、ふやしたくない。しかし、フィッシュミールについて若干の増加を考えられないか、そういう立場で、私どもといたしましては、第一次原案として、去年の三万五千トンにプラス一万五千トン程度の増強をするという考えについて、北海道知事と打ち合わせをいたした。したがって、基本的にはフィッシュミールの需要の問題に対する判断を最終的にもう一度詰めて、最終的態度をきめる必要がある、かように存じております。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、特に水産庁としては畜産局の要請がない場合は、これは必要がないということになるわけですね、漁業政策的な見地から見れば。その買い入れたスケトウダラというものは、これは国民の食用に供するものではない。供することはできるが、そういうことをあえて行なえば、この国内の沿岸漁業者に対して重大な悪影響を与える、そういう見地から、これはむしろそういう需要の要請がある場合には、国内の関係漁業者が漁獲努力を行なえば、そういう要請にはこたえることができる態勢に日本の沿岸漁業等は置かれておるわけであるからして、食用のために輸入するということは、理由づけもこれはできないわけですね。ですから、フィッシュミールは畜産関係の濃厚飼料であるという場合は、これは沿岸漁業とか漁業の立場からではなくて、特に畜産政策上の強い要請にこたえるためにも、やはり漁業の関係というものを十分考慮しなければ、みだりにそれに同意することはできないということになるわけですから、もし畜産当局からそういう積極的な要請がない場合は、この種の問題は認めるという必要はないわけですね。
  120. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 畜産局のほうからフィッシュミールを飼料対策として全然要らぬという話であれば、考える必要もない問題になってまいろうかと思います。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の承知した範囲では、積極的にソ連産スケトウタラの原魚の買い付けを行なって、それを加工して畜産の飼料にしてもらいたいという要請はなかったと承知しておるわけです。必要があれば、これは貿易品として、たとえばペルーは、日本よりも今度は生産が上回って、世界一の地位を占めて、日本が二位になったわけですね。そういう事情もあって、フィッシュミール等の輸入は、こっちで日本としてある程度積極的に買い付けるということになれば、それは可能なことになるわけです。だから、その点が単に弁解的な発言でなくて、そういう今度のソ連産スケトウダラの問題等によらなくても、フィッシュミールの輸入はできるという見通しがあれば、いろいろ問題を惹起するこの種の問題というものは、農林省あるいは水産庁の立場で、正確に許可しない、認めないということを結論として打ち出したほうがいいじゃないかと思うわけですが、その点いかがですか。
  122. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 国内産の荒カス、身カス、あるいはベーリングに行っておりますわが国の母船式船団によって生産されるミール、それから外国から入るもの全体を合わせまして、ミールというものが、畜産政策の上で日本に不足がないのだということであれば、私も、その興魚による問題について積極的に考える必要はなくなるわけです。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、買魚によらなくても、中南米諸国等ペルーを中心とした諸国か、その国の産業として原魚からフィッシュミールを製造して、それを輸出するという場合に、それを必要量買い付けができるという見通しが立った場合には、何も洋上において原魚の買い付けを行なって、国民の疑惑を受けたり、あるいは関係沿岸漁業者の不安を醸成するような状態の中で、無理をしてこういう様式によるフィッシュミールの確保をやる必要はないとわれわれは考えておるわけですが、その点はいかがですか。
  124. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 その点からは、もう少し議論を詰める必要がある問題かと存じます。と申しますのは、ペルーのミールの最近の極端な値上がり供給力の不足というような問題から、その量の問題のほかに、飼料としての価格関係の問題がもう一度間に入ってまいろうかと存じます。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 価格の点については、これは韓国ノリと同じように、洋上で原料を買い付けて加工したものは、コストとしては、ペルーからフィッシュミールそのものを輸入する価格よりは低廉かもしれないが、しかし、コストが安いから安い価格で畜産農家に供給されるかどうかということは別な問題でしょう。いわゆる韓国ノリが一枚十円ぐらいで買い付けられるのであるが、それが国民の消費に供される場合においては、二倍近い価格になって供給されるのと全く同じことになると思うのですよ。そういうことであれば、何もこれは考慮の余地がないと思うのですね。ただ問題は、畜産政策上の要請からこういう問題が起きて、そうして水産庁が苦慮しているというのではないわけですね。大手水産業者と一部の商社が結託して、こういう方法を考えて許可を求めているのであって、彼らの目的は、この家畜のえさ用のフィッシュミールを生産するということではないのですよ。ですから、できればスケコについても、これは持って帰って高価に販売したいとか、あるいは冷凍スルメについてもそういう考えの上に立っているわけです。しかし、そういうことを認めた場合には、これは国内の関係沿岸漁業者に重大な影響を与えるのでございます。それは許可する場合も、スケコあるいはスルメの許可はしないということは明確にされているのですからして、要請した大手水産業者あるいは商社はおそらく失望落胆しているとわれわれは考えているわけです。ですから、この点のけじめを明確にして、そうして農林省としての最終的な態度をきめて進まれることが、将来に禍根を残さぬことになるのではないかというふうに考えるわけでありまして、この点は、先日、農林大臣は、三日に北海道知事の町村君、それから丹羽水産庁長官を交えて話し合いをしておりながら、六日にも彼はとぼけているわけです。だから、農林大臣に聞いても、これはうそを言うから、全然委員会に来てもらってもだめなんですから、この際、農林大臣よりは正直な仮谷政務次官、これは水産関係の権威者でありまして、それから前政務次官の舘林さんも、前国会で五月の決算委員会にわざわざ呼び出されて、スケトウダラの問題で、自民党の壽原正一君に質問を受けている経緯もあるわけですから、この際、この点については、むしろ仮谷政務次官から、基本的な態度としてはこうする考えであるということを述べていただいて、あとは農林省の適正な方針というものが実行されて問題解決がされるように期待したいと思う。
  126. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 昨年スケトウダラの試験操業というか、それをやったこと自体、一体どういう問題で、何か根拠があってやったかという問題について、残念ながら私はよく承知しておりません。ただ、かりにそれが畜産の飼料対策上必要な問題であるとしても、そのことによって何千か何万かの漁民に非常に不安動揺を与えるということになると、これはよほど慎重に考えなければならない、水産行政としてそういうことを考えなければならないと実は思っているわけです。したがいまして、引き続いて本年の問題に相なったわけでありますが、それを畜産の飼料の問題を根拠にしてだんだん考えていくか、そういう問題については、率直のところ、まだ省内で十分に煮詰まった考え方に相なっておりません。いずれにいたしましても、そういうことによって一般の大衆の漁民に大きな犠牲を与えるという行政というものは、これは慎重を期すべきであるという考え方が私の基本的な考え方であります。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではそういうことで進んでもらいたいと思います。  次に、この際、専売公社に尋ねしたい点があるのです。専売公社といえば、最近は小林章君の選挙違反問題が専売公社の仕事のようなことになっております。しかし、専売公社としては、本来的な業務というものがあるわけですから、違反問題は今回は扱わないことにして、特に専売公社の業務上の問題として明らかにしていただきたい点を、若干質問したいと思うわけです。  その問題点といたしましては、専売公社として製造たばこの販売をやっておるわけでございますが、その場合、公社の直売でなくて、専売法に基づいて、小売り店を指定して、小売り店を通じてたばこの販売を行なっておるわけですが、この小売り店の指定を行なう場合において、われわれの調査によりますと、全国の農業協同組合で、特に購買事業を行なっておる組合であっても、たばこの販売をやっておる組合というものは、まことにこれは微少であります。全国的に見ると、協同組合の数の全体の一割にも及ばない程度しか従来許可されておらないわけでありますから、この点は、何らかの理由があって、農業協同組合に対してはたばこの小売り販売の指定を行なわない、指定ができないような措置を行政的に講じておるから、農協はたばこの小売りができないというふうに判断されるわけであります。特にたばこの問題については、原料の葉たばこは、これは農家が専売公社と契約して、生産しておるわけです。原料は耕作させるが、その原料をもとにして製造されたたばこの販売については、たばこの原料を生産した生産農民が組織員になっておる農業協同組合に対しては、小売り販売はことさらに指定しないようなやり方をとっておるということについては、これは納得のできない点であります。したがって、その理由と、実態というものは全国的にどうなっておるかという点について、この際、公社において明らかにしてもらいたい。
  128. 牧野誠一

    ○牧野説明員 ただいまのたばこの小売り人の指定の問題で、農協は指定しないようにしているんじゃないかという御趣旨お話がございましたけれども、そういうことはないのでございまして、農協だからどうとか、あるいはお菓子屋さんだからどうとか、あるいは文房具屋さんだからどうとか、あるいは個人だからどう、法人だからどうということは、特にないわけでございます。ほかの商売をやっておりまして、たばこににおいが移ると非常に困るような仕事をやっているというようなものは、ぐあいが悪いというような例は幾つかございますけれども、農協だからどうこうということは全然ございませんので、この点は、何か話の行き違いがあるんじゃなかろうかというふうに思っております。  それから、いま全国で大体十七万七千人くらいたばこの小売り人が全国に散らばっておるわけでございます。実は、その中で農協がある程度入っておることは事実でございますが、何人くらいかという数字がいまちょっとつかめておりませんので、また御必要があれば調べてみたいと思っております。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は、先刻農政局長に出席を求めてあるわけで、農政局が農業協同組合を所管しておるわけです。農政局のほうで、この全国の末端農協においてたばこの小売り販売をどのように行なっているかということを、この際できるだけ明らかにしてもらいたい。
  130. 小山義夫

    ○小山説明員 農協でどの程度たばこの販売を扱っているかという数は、まだ調べたことがございませんので、実数は把握しておりません。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは農林省、特に農政局としては、そういうことに関心がないのですね。全国の農業協同組合が行なう購買事業の中にこれは入るわけですね。どういう実態の中に置かれておるかとか、あるいは農協においてたばこの小売りをしたいという希望がどの程度あるものかないものかとか、そういう実態調査も全然していないわけですか。
  132. 小山義夫

    ○小山説明員 いままでは大体仕事の実務は専売公社のほうで扱っておられまして、非常にほかの事業と違って、自由商品でないものですから、そういう特殊な関係がございまして、いままで御質問のような調査をいたしたことはございません。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、専売公社のほうに昨日尋ねたのですが、全国の関係が直ちにわからぬとしても、北海道の地域ですね、北海道には専売公社の札幌地方局ですかがあるわけですから、北海道内における農業協同組合の数に対して、農協の行なっておる小売り人がどのくらいあるかということは、この内容はわかると思うのですが………。
  134. 牧野誠一

    ○牧野説明員 いまの北海道方面のお話は、実は昨日電話をいたしまして、至急に問い合わせた数字でございますが、三百六農協でございまして、うち、四十三がたばこの小売り店を指定されて兼営しておるという形になっておりますが、四十三のうち、四十一が団体名で指定されている。それから二つが個人名で、おそらく代表者の名前だろうと思いますが、指定されておるという形になっております。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、たとえば、北海道の場合に、三百六農協があって、四十三ということになれば、大体一〇%そこそこということになるわけですね。農協としては、特に購買事業をやっている中でも、その組合員の要請にこたえて、たとえば酒類の販売、それから塩の販売ですね。たばこの販売等はぜひ農協の購売事業の一環として指定を受けて扱ってもらいたいという希望は、これは全国的に強いわけです。塩については、大体申請すれば、これは指定を受けやすくて、同じ専売事業の品目であっても、塩については安易に許可をするが、たばこについてはほとんど不許可と同じような態度をとっておる。酒類についても、これは戦後国税庁の認可ということになるわけですが、戦後の登録制時代に、登録によって酒類販売の実績を得た農協が、いまほとんど酒類販売をやっております。最近、酒類販売の申請をしても、なかなか農協に対しては――一般の酒類販売は地方の税務署長の権限で認可をするが、農業協同組合に対しては、地方の国税局長の特認事項としてしか認めるわけにはいかぬということで、やはり大蔵省関係の認可事項になっておる。酒類販売も最近は簡単に認めないのです。一般の申請者に対しては、税務署長の権限で認める。農業協同組合に対しては、国税局長の特認事項としてしか認めるわけにいかぬということになって、税務署に出してもすぐ戻ってくるのです。ですから、おそらくたばこの問題については、専売法等においては差別をつけるということは規定されてないが、これは地方局あるいは支局、出張所等においては、大体本社の指示を受けて、何とか申請が出ても除外されるような、不指定の幾つかの条件というものを用意して、あなたのところはこれこれだから指定ができませんということで、処理しておるのじゃないですか。
  136. 牧野誠一

    ○牧野説明員 国税当局のほうでお酒の小売り関係を現在どうやっておりますか、私詳しく存じませんが、たばこにつきましては、農協だからどうこうということは全然ございません。これはほかの法人、個人、ほかの営業をやっておられる方と全く同じ基準でやっております。若干申し上げますと、たばこは大体あまりもうかる商売でもございませんので、たばこ屋だけ専業という店はやはり少うございまして、七割以上がほかの仕事の兼業になっておるという形でございますが、ただ、たばこを一緒に取り扱うのは非常にぐあいが悪いという商品を扱っている場合は、これは少し別になりますが、そのほかの者は、専売法に違反するとか、あるいはどんな商売にしろ経営内容が非常に薄弱であるとか、一般に考えましてぐあいの悪い者を排除するというだけでございまして、それ以外は、一定の場所の繁閑によりましてある程度の距離にばらつくように、それからまたあまり利の高い商売でもございませんので、兼業ではあってもどうやらできる程度ということで、この場所なら一カ月何万円ぐらい売れるという見通しがつくというような一定の基準がございまして、東京の繁華街と郊外あるいはいなかのほうと、だんだん金額を下げて、この程度は売れるだろうという、その見当のつく人というような基準でやっております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、農協だからどうということは全然考えておりません。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 差別待遇をしなければ、農協にしてもあるいは漁業協同組合にしても、その組合員の構成員である農家あるいは漁家の要請は、自分たちの農業協同組合、漁業協同組合が購買事業を行なって、すべてそこで間に合う、酒も売っておる、どうしてたばこだけはおれたちの農協は扱えないかという声が非常に強いわけです。そういう要請があるから、協同組合は指定の申請書を出すが、すぐ不指定になってくるのです。こういうはがきがちゃんと印刷してあるのですよ。何月何日と書き込めばいいだけで、「先般御提出になりましたたばこ小売店指定申請につきまして慎重に審査いたしました結果、不指定になりましたからあしからず御了承ください。なお、御不審の点は当局または所轄の公社支局、出張所へ問い合わせてください。」こういう何百枚ものはがきを刷っておいて、年月日だけ入れればそれで不指定ということで処分していくわけですが、これは何回出したって、農協には指定になりましたという通知がこないのです。指定しないということで、大量にはがきを刷っておいて、そうしてこれは地方の専売公社地方局長の名前で刷ってあるのですが、出すのはこれは出張所が出すわけですね。だから、地方局の所在地と消し印が違うのです。地方局長が出せば、札幌局長の場合には札幌の郵便局の消し印で出すのがあたりまえであるが、消し印を見ると、たとえばこれは名寄出張所というのですから、名寄郵便局の消し印で来るわけです。こんなものはおそらく地方局までは上がらないで、出張所長が申請書が出ればすぐこのはがきにあて名を書いて、そうして所在郵便局に投函する。だからこれは名前は地方局長の名前で来るが、消し印を見ると、出張所がその所在の郵便局で出している。これは簡単に処理しているのですよ。こういうやり方というものはまことに不当じゃないですか。専売法でも不指定の条項というものが載っておりますが、だれだれに対しては差別をしなければならないとか、こういうものに対しては指定してはならぬというような規定はないので、ないにもかかわらず、これは運用上農協とか漁協には指定をしないようにせよということになっている。これはもう首をひねる余地も何もないですよ。そういう方針でやっていることは間違いないでしょう。とにかく全国の一割以内ぐらいしか指定されていないのですからね。
  138. 牧野誠一

    ○牧野説明員 先ほども申し上げましたけれども、農協、漁協に対しては不指定の方針でいるということは、これは私は誤解だと思います。そういうことは全然ございません。  それから、いまのはがきが刷ってあるという問題ですが、これは実は一年間に、まあ年によって違いますけれども、何万件も小売店をやりたい、二万五千とかあるいは三万とかいう申請の件数に大体なっておりますが、その方たちのうち、結局指定されてふえますのは実はわりあい少ないのでございます。それで、あて名を入れて、日付を入れて出すという用紙を用意しておったということが、そういう誤解を招いたのじゃないかと思いますが、それは別に農協用に刷ったというようなことでは全然ございませんので、一般の方に対してでございます。  それから、消し印が札幌ではなくて、名寄ですかになっておるという点につきましては、これは札幌の地方局に話がいきまして、それで、その申請を受け付けました出張所が知らない間に札幌から返事が出ておるのではぐあいが悪いので、その出張所から出させておるというために、消し印がそうなっているのだろうというふうに思います。  それから、これは御参考のためにですが、小売人の数でございますが、ことしは十七万七千人で、二十四年ぐらいには十二万八千人で、十六年の間に四万九千人ぐらいですか、専売公社ができましたのは二十四年ですか、それから四万九千人ぐらいふえているという段階でございます。一方、申請のほうは年に二万五千から三万あるという状態でございます。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一般の小売人の指定の場合、これはいろいろ認定の基準というものがあることはわかっておりますが、しかし、農業協同組合あるいは漁業協同組合の場合は、たとえばその組合の地域、市町村なら市町村区域内に居住する農業者あるいは漁業者しかも専業の農業者あるいは漁業者が正組合員となって協同組合を形成しておるわけですから、協同組合の事業を利用する組合員は、市街地とか繁華街に居住している者は、これは決して組合員ということではないのです。だから距離的にも、たとえば協同組合の一区域としても、それは半径にすれば、たとえば三里も五里もその半径があるというような地域から、協同組合の事業を利用して出てくるわけです。その場合に、組合においては、購買関係についても、肥料とか生産資材はもちろんであるが、生活用品とか衣料品等についても、すべて事業として整えてあるわけです。それから酒も扱っておるという場合に、強い要請があって、ぜひたばこの小売り販売も指定を受けてやってもらいたいというような場合においては、その農協や漁協の実態から見た場合において、これは十分専売公社においても、それらの協同組合等に対してはどういうような条件を当てはめることによって指定ができるかということを積極的に考究する必要があると思うのですよ。一般の市街地における小売り店の許可基準というようなものだけを援用して、これだからいいとかだめだとかいうのは、これはおかしいじゃないですか。特に事実関係についていえば、たとえば農協の事務所は市街地にあっても、その事務所の所在が、これは市街地ではない、準市街地だから、最も至近距離の隣接の小売り店との距離が準市街地は二百メートル以内だから、これは許可はできないというようなことも、不指定の理由になるわけです。ところが、現地を見れば、これは明らかに市街の中に入っておるのです。ほかのたばこ店は市街地の中の小売り店という地位で指定を受けておる。ところが、農協だけについては、あなたのその位置は市街地ではない、専売公社から見れば、これは準市街ということになっておるから、市街地であれば百五十メートルの距離があればいいが、準市街になれば二百メートル以上距離が離れていなければ指定できないのだということで、これは除外する実例もあるのじゃないですか。そうなれば、何かに理由をつけて、指定できないような理由を発見して、そうして印刷したはがきを送ればいい、こういうことになっているのですよ。事実はそうじゃないですか。
  140. 牧野誠一

    ○牧野説明員 私どものほうでは、市街地とか準市街地というのは、だれから出てきたときは、地図の上に引いたこの図面を使う、ほかの人から出てきた場合には、別の図面を使って市街地、準市街地の使い分けをやるということは、これは私らは全然やっておらないと信じております。いまのようなお話のことがありますとすれば、おそらく郊外に、市街地の少しはずれにあって、そこが準市街地というような判定を私どものほうの公社でして、地図の上でそういうふうに区分してあったために、そんな誤解をされるような結果になったのじゃないかというふうに思います。  それからまた、普通の通路に面した通りがかりの人にたばこを売るという店だけではなく、東京で申しますと、この国会の建物の中だとか、あるいは丸ノ内のビルの中だとか、その他、相当なある程度の人数が入ります事務所の一区画の中で、その事務所の人あるいはそこへ出入りする人を対象にしてたばこを販売するたばこ屋さんも、これもまた通りすがりの人に売るのとは別に必要と存じますので、それはそれでまた別の考え方で、通路に面しないというような位置においてたばこの販売をやるという指定をやる方法も別途とっております。
  141. 栗原俊夫

    栗原委員 関連して。  私も、たばこの小売り人の免許については、数数関連したことがあります。専売公社のほうで言うのには、既設の小売り店がある、したがって、既設の小売り店がいままでやっておったものが縮小されるようでは困る、こういうことを常に言います。一応それはわからないでもありません。しかし、先ほどおっしゃっておるとおり、少なくともいなかのほうへ行くと、農協のあるようなところには、たばこオンリーでやっておるという店はほとんどない、たばこオンリーでやっておるところは農協なんかないところですよ。繁華街でなければ店が成り立たない。そういうところで農協が申請する――農協はその店のある地域の人が集まってくるところではありません。その村全体の組合員が集まってくるところなんだから、これはその近くにある店の販売を圧迫するとは、言い切れない条件にあるわけですよ。私は公社の人にいつも言うのだけれども、専売公社の人はなかなか思いやりがあって、自分の子分だから、既設のものをめんどう見るのはいいけれども、小売り店のめんどうを見るのが第一義的なのか、これを利用する国民大衆の要求に基づいてやっていくのが、第一義的なのか、それは小売り店をめんどう見なければならぬという道義的な責任はわかるけれども、たばこを消費する消費者大衆、これが都合がいいのだという方向になぜ第一義的に持っていかないのかということを言って、私はけんかをやってきた。いまいろいろ話を聞いておると、そういう特別な扱いをしておるわけではない、しかし、具体的にはなかなかそういう数は少ない、こういうことになっているのだが、いま芳賀君が盛んに言っておるのは、あなたのほうからそういう言いわけを聞いておるのではなくて、農協等から申請があれば、特別な除外条件がない限りはお許ししますよという答弁をしてくれ、こういうことを言っておる。ひとつそれを言ったらどうですか。そういうことを言っておる。それが組合員消費者のためだとみんなが言っておる、そういう要求がある。農協に来ていろいろ話をしておるけれども、たばこはないか、たばこは売っていない、こういう形になるから、おれたちの集まるところでなぜ売れないか、こういう議論が出てくる。国会議員が出ていて、なぜぼやぼやしておる、選挙を一生懸命やるのもけっこうだけれども、こういうことからひとつしっかりめんどうを見てやらなければいかぬ。特別な除外条件がない限りは、申請があれば許しますよとはっきり言ったらどうですか。
  142. 牧野誠一

    ○牧野説明員 いまの最初のお話の、消費者大衆に便利なようにというお話は、これは私どももそのとおりだと思います。たばこの小売り店を長年やっておりまして、あまり近所にぼかすかできまして、そしてがたがた経営内容がしてくるということになりましては、専売公社のやっておる事業自体にも響いてまいりますので、その点はかね合いがむずかしいかと思います。消費者一般の便利ということは、これはもう大いに考えなくちゃいけないというふうに考えております。  それから、農協から出てきたらすぐ指定すると言えというお話ですが……(栗原委員「除外条件がなければ、こうちゃんと言っておりますよ」と呼ぶ)その除外条件がなければというお話ですが、これは先ほどお話だと、農協は特に冷たくしているのではないかというお話があったかと思いますが、そういうこともございませんけれども、農協だからいい――除外条件を何をお考えになっておるかわかりませんけれども、農協だからいいというようなそういうことも、ちょっと私どもとしては言いづらい……。
  143. 栗原俊夫

    栗原委員 それは普通言うときは、その店を設定するところへ半径のコンパスを立ててくるくるっとやって、それで何メートル以内と、こういうことを言いますが、農協の場合は、そこへ居住しておる人が相手じゃない。集まってくる人が相手のほうのカテゴリーに入るのですよ。駅の中には、人が流動する、人が寄ってくるということで、五十メートル離れておっても許しておる。人が寄ってくるということが大きな条件なんで、流動する人以外のときには、コンパスを立てて回すのも一つのものさしであることは、私も理解できる。ところが、そうではなくて、本来的にそこは人の集まる場所だ。しかも、人の集まるところでたばこを売ってくれることが、われわれに便利なんだ。こういうことがあると、いわゆる地域のコンパスを立ててくるっと回すものさしだけでやる条件とは、ちょっと違った条件があるはずです。人の集まる場所ということの条件があるはずです。こういう条件が判定するときに今日まで除外されているのですよ。そういう条件を取り上げてないのだ。ただ地域的にコンパスを回すと、コンパスの中にこの農協は入りますよというような判断で、大体お断わりをしておるのが大部分なんです。こういう点をはっきりとひとつ取り上げて、そうして新しいものさしを――もちろん、既設の店も守るという立場には立つが、消費者の利益というものを守っていく、利便というものを守る、こういう一つのそちらのカテゴリーも、折半的にというか、両々相まった中から、新しい観点に立った一つの免許方式というものが生まれていいのじゃないか、こういう私の考え方なんです。
  144. 牧野誠一

    ○牧野説明員 いまのお話のような考え方を何年か前から実は取り入れております。私どものほうでは、それを特定小売り店という名前をつけております。これは私どもの中だけでございます。それで、大きな事務所の中とか、あるいはそこへ人が周囲からよけい寄ってくる場所の中とかいうようなところは、そういう考え方で、いまのコンパスを立ててぐるりと回すという基準と別にやっております。それで、これが、いま全体の小売り店が十七万何がしと申し上げました中で、現在数にして一割弱あるわけでございまして、いまの農協あるいは漁協というお話も、そういうような基準の中に入れまして検討いたしたいというふうに思います。
  145. 栗原俊夫

    栗原委員 非常にけっこうな御答弁です。
  146. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、その農協を現在意識的に除外しているという点ですね。実例を申し上げると、北海道の旭川支局の中にまた名寄出張所というのがあって、これは行政区域からいうと、二市八ヵ町村入っているのです。市が二つと町村が八つ、この中に農業協同組合の数が十六あるのです。ことしの春、ちょうど農協の集まりのときに、たまたまたばこの販売の話が出て、そういうものは、農協であっても一定の条件が具備されれば、当然指定を受けるはずだということを私はたまたま話したわけです。ところが、集まったその十六人の組合長諸君は、いや先生、そんなこと言ったって、農協が申請して指定になったためしがないと言うのですよ。何回出したって、印刷したはがきが戻ってくるだけであって、もうむだだからあきらめて、だれもやらないと言うのですよ。しかし、そういうのはおかしいじゃないかと言うと、おかしいと言ったって、出せば、すぐだめだといって戻ってくるのだから、これはどんな条件が具備されても、農協には指定にならぬ。それで、この十六の農協のうち、二つだけは他の小売り人の委託販売という形で、小売り店のたばこをわざわざ農協に持ってきて売って、そして小売り店のマージンのうちから若干のマージンをもらっているのだと思いますが、そういうことをやっているのが二組合あるのです。だから、何回出しても、少なくとも名寄出張所管内の農業協同組合は、一組合もいままで正式な指定を受けていないのです。それはおかしい、じゃひとつどういうことを専売公社がやるか、うちの農協でやってみようじゃないかということになって、私はたまたま剣渕農協の組合長だからして、専売公社から指定しないだろうが、一応書類だけは出してみるということで出した結果は、案の定、七月二日付の印刷の不指定のはがきが戻ってきたわけです。みんなの言うとおりなんです。(「小林に入れぬからだろう」と呼ぶ者あり)いまそういう不規則発言が出たが、農協なんかに指定したら、更新時期に小林章君に入れろと言っても、農協なんかだれもうんと言うものはない。それではさっぱりためにならぬから、やはり号令の聞く者を小売り人に指定して、一朝事があれば圧力をかけれは――三年ごとに許可の更新をやるわけですから、忠勤を励む、そういう条件の者を優先的に指定して、言うことを聞かない団体に対しては許可しないというのが、大体専売公社の基本方針である。その方針がそうであったということは、今回の小林君の空前の違反の事実によって明らかになっておるわけです。だからこの際、やはり姿勢を直して、農業協同組合や漁業協同組合であっても、その組合員はやはり国民の一人なんだからして、協同組合の本来の趣旨に基づいて行なう事業の中に、国の機関である専売公社が販売するたばこの小売り等についても、むしろ公社が農協に協力を求めて販売させるという態度のほうが、これは専売法から見ても、正しいと思うのです。そういう運営はできないことはないんじゃないですか。今回の私の農協に対する不指定の理由としても、とにかく農協の所在地は剣渕町の市街ではあるけれども、農協の建物のある場所は、専売公社から見れば、市街とは認めがたい。市街に認めない場合には、市街であっても、準市街としての扱いしかできない。市街として認めれば、一番近い小売り店が百五十メートル離れておれば、これは資格があるが、準市街に回してしまえば、二百メートル以上離れていなければ許可の基準に合致しないのです。これはだれが見ても、村を町に昇格させる場合には、地方自治法に基づいて、市街の連檐戸数というものが何戸ある、その連檐戸数の対象区域はどこからどこまでということを地方自治法に基づいて認定して、その区域に入っている地域は市街地ということになっておるわけです。自治法から見れば、これは市街地になっておるにもかかわらず、専売公社のほうから見れば、これは市街地ではない。農協だけは準市街地だということは、これは明らかな差別待遇だと思う。そういうへんぱな措置を出先の公社の職員がかってにきめて、農協は市街地だとか市街地でないとかいうような判断を下して、指定から除外するというやり方は、これは明らかに違法行為でしょう。不法行為じゃないですか。そういうことをやっておいて、異議があれば申し立てろとか、不服があれば審査請求を六十日以内に出せなんという、通り一ぺんのやり方というものは、われわれとしては承認できない。どうしてそういうことをやるのですか。市街地の中に位置しておる農協をわざわざ準市街にはずさなければならぬという理由はないじゃないですか。もし出先がそういうことをやった場合には、本社としてはこれはどういう判断をするわけですか。
  147. 牧野誠一

    ○牧野説明員 市街地、準市街地は、市とか町とか村とかいう行政区画と必ずしも一致しておりませんので、専売公社で自分のほうで独自につくっております分け方で、当てはめて分けたと存じます。それから選挙に便利なように指定するということは、これはやってないと存じますし、これからもそういうようなことはないつもりでございます。
  148. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは販売部長はやってないと言うが、私の農協へ不指定の通知を出した日付は七月二日なんです。その前の日の七月一日はちょうど指定の更新期でしょう。従来の連中には、小林に君たちは投票をしろ、するというのであれば更新さしてやる、しないのであれば、三年でもう期限が切れるから、対象にしないということでやったと思うのですね。でなければああいう違反が出るはずはないですよ。そうしてその更新をやった次の日の二日に、剣渕農協に対して不指定だ。異議があれば審査請求しろというような、そういう通知が出ておるのだからして、いまから考えてみれば、そういうことを日付においても効果的にやっているわけなんですよ。そこで、町や村であっても市街地としての認定というものは、これは地方自治法の基準による自治体の市街地の形成とは、全然角度が違うということになれば、これは専売公社の職員のかってな判断で、何々町はここからここまでが市街で、あとは違うとか、剣淵町の場合はここまでが市街で、農協だけははずれるのだというような判断を一機関の職員がやれるという、何か法律上の根拠があるわけですか。あればその規定を出してもらいたい。個人判断にまかせてあるなんというわけにはいかぬと思うのです。
  149. 牧野誠一

    ○牧野説明員 ただいま小売り人の指定と選挙との関係があるかのような御発言がございましたが、これは私どもはないと信じております。  それから剣淵農協の場合は、申請が五月十四日に出ておりまして、調査に行きましたのは五月二十八日で、それでちょうど七月二日に書類が出たという形になっておるわけでございまして、これも参議院の選挙云々ということとは、私ども関係ないと信じております。(「あったらたいへんだ」と呼ぶ者あり)いや、いまあるというようなお話がありましたので、ないということを………。  それから根拠いかんというお話ですが、それはたばこ専売法であります。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 専売法の何条にそういう規定があるのですか。市街地、準市街地、それ以外の認定は、専売法の何によってきめるわけですか。われわれの社会通念から見れば、市街地として町とか市とか村というものの本体、これはやはり地方自治法に基づいて、たとえば村が町に昇格する場合には、町になる場合の中心部の市街地の連檐戸数が大体何戸以上であって、その地域はどこからどこまでの地域ということで、それで初めて町に昇格してもいいということになるのですよ。それが社会通念的に見てその市町村内における市街地ということになるわけです。それ以外の根拠がこの専売法の中にどこかにあれば明らかにしてもらいたいと思います。立法上の根拠があれば、それを基本にしてどういう権限に基づいてやるかですね。
  151. 牧野誠一

    ○牧野説明員 たはこ専売法の第三十一条にまず根拠があります。それを受けまして――法律ではあまりこまかいことは書いてございませんが、製造たばこ販売事務取扱手続、これは日本専売公社総裁の定めましたものですが、この製造たばこ販売事務取扱手続というものによりまして、細部をきめまして、それで実行しておるようなわけでございます。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、市街地、準市街地の区分というものはどこできめるのです。自治法から見て認定された市街地を、今度は専売公社がかってに、これは市街地でない、ここは市街地だというようなことの認定とか判断、これが指定か不指定かの一番最大の根拠基準になるという場合においては、このさじかげんいかんで、これを指定することもできる、不指定にもできるということになるわけです。専売法三十一条の規定は、指定されない場合の規定でしょう。特に第一項三号、四号に、営業所の位置が不適当である、取り扱い予定高が一定の標準に達せず、その他著しく不適当であるというように、指定されない条件がここに根拠づけられておるわけです。だからこれによると、むしろ四号の、農協は著しく不適当である、そういう抽象的な判断でこれを指定しないということで、今度はその根拠をわざわざ市街からはずして、これは準市街だから距離が近過ぎるということになるのじゃないですか。だから、市街、準市街の区分がどこにあるという規定の根拠というのを明らかにしてもらいたい。総裁通達なんかにそんなものは載ってないじゃないですか。出先の職員がかってにきめるなんということがどこかにありますか。
  153. 牧野誠一

    ○牧野説明員 これは出先の職員がかってにきめるということではございませんで、日本全国なるたけ判断の基準に狂いがないように、ものさしがなるべく同じになるようにということで、この仕事をやります職員を集めまして、いろいろ研修などを行ないまして、いま申しましたような、できるだけ同じような基準で定められるようにということで、いろいろ検討いたしました上でやっておるわけでございます。ただ、何ぶん、だれか生きている人間がやる仕事になりますので、そのきめ方についていろいろ議論があるということはあり得るかと存じますが、ただ、先ほど来申し上げておりますように、農協だからはずすとかいうようなことは、全く考えておりません。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 公社の役員あるいは職員の機関の職員としての権限というのは、これは専売公社の職員の職務権限規程というのがあるでしょう。この規程も、やはり専売公社法とかたばこ専売法の法律に基づいて、そういう政省令とか通達が出ておるわけです。ですから、職務権限規程の中にも、総裁の行なう権限とかあるいは地方局長の行なう権限とか、その下の支局長の行なう権限というものがあるが、一番末端の出張所長の権限というものはないじゃないですか。取り扱い上、一体その権限規程のどの段階で、市町村における市街地、準市街地の区分の認定をやるのか。総裁の権限はどれまでとか、理事の権限はどれだけとか、本社の部長はどうとか、権限規程に全部細目の規定があるわけですね。ですから、一番大事な自治体行政区域における市街あるいは準市街その他の認定を行なう職務権限というものは、一体総裁にあるのか、地方局長にあるのか、支局長にあるのかですね。どの段階でその認定を行なって基準をつくるわけですか。
  155. 牧野誠一

    ○牧野説明員 その決定の権限は地方局長でございます。それから出張所長は、その実情を調査して地方局長に報告をするということになっております。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、各全国に散在する地方局においては、その地方局管内の各市町村の市街地あるいは準市街地の区分というものは、地方局長が所持しておるわけですね。そのときどきに違った尺度で、これは市街地だ、これは準市街地だということにするわけにはいかぬと思うのです。それはあるわけですか。北海道の札幌地方局に各市町村の市街地、準市街地の区分図表というものはあるわけですね。
  157. 牧野誠一

    ○牧野説明員 これは地方局長のところに区分をしたものがございます。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは間違いなくあるのですか。札幌地方局の場合、北海道全道の市町村ごとの市街、準市街、それ以外の区分図表があるわけですね。
  159. 牧野誠一

    ○牧野説明員 基準書が地方局長のところにございまして、それで、地図は出張所長のところにございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、名寄出張所に行けば、二市八ヵ町村の区分図表があるわけですね。
  161. 牧野誠一

    ○牧野説明員 これはあると存じております。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 存ずるじゃなくて、具備すべき重要な書類として、そういうものは専売公社のどの段階において保管しておるのか。
  163. 牧野誠一

    ○牧野説明員 出張所長のところにあります。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 必要な場合にはこれは国民に対して縦覧を許すわけですね。
  165. 牧野誠一

    ○牧野説明員 出張所長のところに備えて、御必要とあればお見せするということになっております。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは一般国民の要請にこたえるのですね。
  167. 牧野誠一

    ○牧野説明員 一般国民の要請にこたえると申し上げていいかと思います。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこのはがきに、この処分について不服があるときは、処分のあったことを知った翌日から六十日以内に専売公社総裁に対して審査請求をすることができるとありますが、この審査請求は、これは専売法の規定に基づいてやるのか、あるいは行政不服審査法の規定に基づいてやれというのか、この根拠を明らかにしてもらいたい。
  169. 牧野誠一

    ○牧野説明員 行政不服審査法に基づいてやります。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば専売法の中にも、耕作に関する不認可とか取り消しに対して不服がある場合は、異議の申し立てをしなさい、それからまた、耕作関係の問題については、行政不服審査法の規定を準用して申し立てができる、ただし、これこれの場合には審査法に対しての申し立てばできないということが、耕作関係の規定には載っておるが、販売関係のほうには載っていないわけです。そうすると、販売における指定、不指定に対する不服の申し立ては、全面的に行政不服審査法に基づいた所定の手続をとるということになりますか。
  171. 牧野誠一

    ○牧野説明員 そのとおりでございます。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなれば、行政不服審査法の申し立ての順序は、まず異議の申し立てをする、の申し立てが却下された場合に、初めて審査請求を行なう、審査請求が却下された場合に、再審査請求の訴えを起こすことができる、こういう順序になっているわけですね。このはがきによると、その異議申し立てをしないで直ちに審査請求をしなさいというのはどういうわけなんですか。こういうことを書いて、いきなり異議の申し立てでなくて審査請求の申請書を出しても、行政不服審査法によると、そういう間違った教示を処分庁が行なった場合は、たとえその書面の内容というものが審査請求の内容であっても、これは行政庁が間違った教示をやったのだからして、それは審査法に基づいて異議の申し立てが行なわれたと認めて、そのように処分庁も取り扱わなければならぬし、申請人に対しても、これはこちらの間違いでした、この審査請求は異議申し立てとして取り扱いますということを本人にも通知しなさいということが書いてあるわけですからして、このはがきの印刷は、これは間違いということになるわけです。
  173. 牧野誠一

    ○牧野説明員 処分庁に上級行政庁があるときは審査請求することができるということで、処分庁に上級行政庁がないときに異議の申し立てをするという形になっているかと存じますが、地方局長の処分に対して上級行政庁の専売公社総裁のところに審査請求をしていただくというのが、行政不服審査法の筋だろうというふうに存じます。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうじゃないでしょう。行政不服審査法では、四十五条から四十八条の規定は、これが処分の通知を受けてから不服がある場合には異議の異し立てを行なえる。それから十四条から四十四条までの規定は、異議申し立てが却下された場合には、ここで審査請求を上級庁に行なうということになるわけですね。だから、その間違った教示をした場合は、たとえば地方局長が不指定の処分をした場合、不服の申し立てを上級の総裁にやった場合ですね。そういう場合には、総裁は、処分庁に対して、地方局長に対して、異議の申し立てをしなさいということの指示を、処分庁並びに申請人についてそういう処理の扱いをしますぞということを通知しなければならぬということになっておるのです。ですから、地方局長の権限は、小売り指定の申請が出た場合に、局長権限で不指定にしているわけですね。総裁が不指定にしたわけではないからして、指定しない処分をしたのは、これは北海道の場合には札幌の地方局長が不指定の処分をしたわけだから、これがいわゆる処分庁ということになるわけでしょう。
  175. 牧野誠一

    ○牧野説明員 指定、不指定の処分庁は、ただいまのお話の場合は札幌の地方局長ということになるかと思います。それで、行政不服審査法の五条と六条の関係で、処分庁に上級行政庁があるときは審査請求の手続による、また、処分庁に上級行政庁がないときは異議の申し立てによるということになっていると存じます。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは四十五条から四十八条までの規定と十四条から四十四条までの規定に対してはどう解釈しておるのですか。そういうような異議申し立てをさせなければならぬものを、処分庁が誤って、審査請求を出しなさい、そういう教示をした場合の取り扱いは、四十六条に規定があるのですが、こういうものは専売公社としてどういうふうに理解しておりますか。
  177. 牧野誠一

    ○牧野説明員 私ども誤っておらないと存じておるのですが、もし誤っているということになれば、この四十何条かの規定が生きてくるだろうと存じております。私どもは、審査請求にしていただきたいということで合っていると存じます。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、法律上に疑点があるが、きょうの間に合わぬので、いずれ法制局長官等を呼んでこれを明確にしてもらえばいいと思うのです。  以上で、問題点について一応一通り触れたわけですが、実態はこういうことになっておる。  それで、資料要求として、北海道の実態については、三百六の農協のうち、四十三だけが法人、個人を入れて取り扱いを行なっておるということが明らかになったわけですが、全国の都道府県単位における農協の数に対して、実際にたばこの小売り販売をやらしておる農協は幾らあるか、北海道はたばこの耕作は比較的少ないが、特にたばこの主産県等において、原料はつくらせるけれども、たばこは売らせぬというようなところがあれば、これはなおさら問題になるわけですからして、そういう府県の実態等については一そう明らかにしてもらいたい。これは特に農林省においても、こういう問題をあげて専売公社の事業であるから知らぬというようなことでは、農林省もうかつ千万だと思うわけです。われわれが指摘しなくても、農林省がこういう矛盾を指摘して、関係機関相互においてこれを十分指摘をすれば、こんなものは朝めし前で解決ができておると思うわけですからして、これは専売公社並びに農政局においても資料を速急に作成して、委員長の手元を経て出してもらいたい。  最後に、一点お伺いしたいのは、農協等に対しては特定販売の道が講ぜられるということを販売部長は言われたわけですが、たとえばこれは剣淵農協の場合を例にとると、一番近い小売り店が百三十六メートル離れておるわけでして、これは市街地であれば問題はないわけです。ところが、その小売り店と駅の構内のたばこの売店との距離はわずか四十メートルしかないのです。しかし、駅の構内のだばこの販売は、おそらく鉄道弘済会がたばこ販売の指定を受けておって、弘済会の出発というような形で全国の各駅の売店でたばこを売っておると思うのです。こういうのは特定販売を認めておるというふうにわれわれは考えるわけですが、一個の鉄道弘済会が販売権を得た場合には、全国に散在する弘済会の売店において直ちに販売ができるということになれば、たとえば農協においても、これは全国の農協の連合会の組織とか都道府県単位における連合会の組織があるわけですから、この組織に農協としてたばこの小売販売を認めれば、今度その連合会が主体となって、全国の各農業協同組合や漁業協同組合に出張販売とかいう形で全部売らせることができるのじゃないですか。鉄道弘済会にだけはやらして、農協、漁協にはそういう形でやらせられぬということにもならぬと思うのですが、どういうわけですか、  それから、特定販売の措置が農協等の建物の中でできるとすれば、そういう指導はいままで全然やっておらなかったし、だれも知らないわけですから、そういう道があるとすれば、今後指導的に、地方局あるいは支局とか、一番大事な出先の出張所等からPR等をやらして、その道に適応するような指定とか許可をするのが妥当であるというふうに考えるが、この二点についてどう考えておりますか。
  179. 牧野誠一

    ○牧野説明員 鉄道弘済会の場合は、これは特定という取り扱いにいたしております。それで、四十メートルの距離で弘済会の売店があるということになるかと存じます。  それから、いまのそういうような考え方をいれて、地方の出先に周知さして積極的に指導するようにという意味お話がございましたが、これは大体承知しておるわけでございますけれども、ただ、特定と申しましても、私どものほうでいまやっておりますのは、ある程度の場所の面積だとか、あるいは出入りの人数だとか、やはり若干は売り上げが確保される見通しがないと困りますので、その点が問題になる場合もあろうかと考えます。  いろいろ御意見もございましたし、それからまた、昨年の暮れに私どもの中でつくりましたたばこ販売調査会というものの答申も出ておりまして、販売のやり方についていろいろ御意見も出ておりますので、従来やっておりましたやり方をどういうふうに変えたらいいか、いまいろいろ勉強して検討しているところであります。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど同僚の栗原委員も言ったとおり、農協あるいは漁協の事務所の所在、これはほとんどが市街地にはあるが、利用する者は組合員が主体ですから、市街地の区域に在住する者とか、あるいはその小売り店を中心にした半径二百メートルとか百五十メートル以内における居住者の利便に供するためという条件とは、これは違うわけです。千人の組合員があれば、その千人の組合員が、常時自分たちの協同組合を購買事業とか金融事業あるいは利用事業等で常に利用しておるし、あるいは農業関係についても正組合員の利用以外に、たとえば村の公共団体とか関係機関との交流とか、事務所内への出入というものはあるわけです。あるいはまた職員にしても七十名あるいは百名の職員を擁しておる。ですから、これは一般の規定による指定もあるが、特定というような道があれば、むしろそういう点で十分検討を加えて、そして妥当な取り扱いをされるべきだとわれわれは考えるわけですが、現地の出張所等においては、そういうPRとか指導というものは、ことさらに意識的にやらないのか、全然やってないのです。こういう点はやはり本社からいま販売部長の言われたような点については徹底させておけば、指定の申請を出した場合にも、あなたのところは一般規定からいうとなかなかむずかしいが、しかし、農協なら農協の性質から見た場合においては、特定というような道があるのだから、むしろ特定による販売の申請を出したほうがいいのではないかとか、そういう指導をやったほうがいいと思うのですよ。これはどうなんですか。一般の申請を出して、異議の申し立てをしてだめだという場合は、もう一回別の書類で特定の申請をしなければならぬのですか。
  181. 牧野誠一

    ○牧野説明員 これは一般の申請でも、その条件に該当しないと思われる場合、特定の、これまた別途条件がございますが、これに該当するかどうかも審査するというようにいたしておるわけでございます。ただ、そういう条件に当てはめてみた結果、そっちでもだめだから、おたくのほうはだめですよという文章になっていないというふうに思うのです。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では、きょうはこの程度にとどめて、また次の機会に、今度は総裁が近くやめると思うから、いまよたよたした総裁に来てもらっても、販売部長のほうが責任があると思うからして、そこは適当な機会に、全国的な実情をよく公社あるいは農林省においても調査をして、次回の委員会等にはもう少し明快な方針等が説明ができるように用意をして出席してもらいたい。
  183. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 この際、でん粉の政府買い入れについて、食糧庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。武田食糧庁長官
  184. 武田誠三

    ○武田政府委員 先般来芳賀先生から御要求がございましたバレイショでん粉の政府買い上げの問題でございますが、財政当局その他と打ち合わせをいたしまして、一万三千トン買い上げをすることに決定をいたしましたの女この際、御報告申し上げておきます。(「カンショでん粉は」と呼ぶ者あり)カンショでん粉につきましては、むしろ市価が非常に高騰しておりまして、現在、政府の手持ちのものを先般も一部売却をするというような状況にございます。
  185. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 栗原委員
  186. 栗原俊夫

    栗原委員 時間もだいぶんおそくなっておりますから、きわめて簡明な答弁を求めながら、短時間に質問を終わりたいと存じます。私は、コンニャク問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最近、産地のコンニャク生産者から、外産コンニャクの輸入自由化絶対反対、藤井通商の策謀を粉砕せよ、こういうはがきがこんなにも舞い込んでおるわけなんです。その実態が私にはよくわかっておらぬので、なぜ生産者からこういう陳情書が舞い込んでくるのか、その辺当局としてわかっておったら、それはこういうことでそういう陳情書になるんだろうというようなことを、ひとつ歯に衣をかけずに、率直簡明に真相を述べていただきたい、こう思います。
  187. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 先生のおっしゃいますその陳情書の件は、私つまびらかにしていないのでございますが、大体推測いたしまするのに、まず第一点の自由化の問題は、現在外産コンニャクを主としてインドネシア並びに中共から輸入をいたしておるのでございまして、それでこれが割り当て制になっておるわけでございます。それを自由化するおそれがあるのじゃないかということだろうと思います。  それから第二番の藤井通商の問題は、外産コンニャクを輸入しておる商社は六社あるわけでございます。その輸入しましたコンニャクは、日本こんにゃく協会というのがありまして、日本こんにゃく協会へ売っておるわけでございます。その場合に、藤井通商の分につきましては、基本契約というのがあって、基本契約は、価格その他の契約が他の五社についてはきまって輸入をされたのでありますが、藤井通商の分については、それがきまらずに輸入されまして、その後、その販売価格をめぐりまして少し問題が生じておるということでございまして、そういう点かと存ずるのであります。
  188. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連して。  ちょっとお尋ねするが、藤井通商というのは、私が間違ったらごめんなさい。少なくともこの前、レモンの輸入のときには、そういう自由化には絶対反対をしておって、農林省に詰めかけたはずです。ところが、このコンニャクに関しては、今度は自由化のような方向をとって、ただ自分がもうけたい意思によって、そういうような価格変動までしていくというのは、これは一体どういうことなんですか。あなた方そういうような実態をしっかり把握してやっているのですか。今度のバナナの件においてもそうです。いま紛争している最も大きな原因は藤井通商でしょう。しかも実績がないにかかわらず、自分が理事長になろうとし、あるいは自分が議長になって、そして実績がないにかかわらず、自由化という名目を立てて、自分たちがその許可を得ようとする、許可を得れば、その傘下にある百数十名の者を従えて、それらの実績がなくても、その許可を与えられただけで、その許可権の売買だけでやっていけるのじゃないかというような、べらぼうな話まで出ておる。そういうような姿の中の商社によって農林省が引っかきまわされているといううわさを聞く。通産省も同様だ。筋を通して、ほんとうに真剣に取り組んでもらいたい。ただ一業者がそういうような、よかった、悪かった、あるいはもとは河野についておった、あるいはそれがひっくり返って佐藤についたとか、そういううわさではなくて、ほんとうに実際の上からあなた方は行政をやってもらいたい。そういうことが実績の上に出てきたのでし上うか、一体どういうふうにあなた方は考えておるのか。
  189. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 コンニャクの自由化の問題ですけれども、御承知のように、外産コンニャクは天然産でありまして、自然に生えているというものを持ってくるわけであります。日本の国内におきましては、これを栽培をしておる。したがって、コンニャクそのものについて大いに違うわけであります。それで、もし外産コンニャクを自由化するということになりましたら、非常に安いものが入ってまいりまして、日本で栽培しおるコンニャクがほとんど崩壊するというようなことも考えられる。そういうことで、目下のところ、自由化するということは考えていない次第でございます。
  190. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいま関連質問の答えの中で、私の聞こうとすることもある程度答えられておるわけですが、外産コンニャクを輸入するときには、どういう方法で輸入することがきまっているのか、農林省で輸入しようと思えば輸入できるのか、あるいは農林省とは関係なしに、通産省が輸入しようと思えば輸入できるのか、そうではなくて、こんにゃく協会というようなものに、一応輸入するとかしないとかいうような方向づけをきめてもらうというたてまえになっておるのか、この辺はどうなっているのですか。輸入というものが自由に、恣意にまかせて適当にどこででもできるというのか、そうではなくて、関連業者と十分関連を持った上で輸入を取りきめるのか、その辺のあり方ですね。どうもこの辺が少し一般に、特に農村あたりではぼやっとぼやけておるわけですよ。自由にしようと思えばすぐ自由にできるのではないかということがいろいろささやかれておるので、この辺をひとつ明確にしておきたい、こういう意味でひとつお答えを願いたい。
  191. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 貿易の問題は、通産省が取り扱っております。したがって、輸入業務は通産省がやっておるということでございます。ただ、コンニャクイモにつきましては、これは自由化しておらずに、割り当て制になっておりまして、目下のところは、需割り五割、それから商割り五割、半分半分になっておるわけであります。したがって、政府がどうしても輸入が必要であろう、コンニャクの価格が非常に高くなってまいりまして、それを冷やすためには、この辺である程度輸入しなければいかぬということを考えまして、割り当てをいたすということで、そうして需割り半分、商割り半分ということで割り当てが行なわれるということでございます。
  192. 栗原俊夫

    栗原委員 非常に需給が逼迫してきて、コンニャクの値が上がり、この辺で輸入をせねばならないということは、政府考えるのだという表現でお答えになっておるのですが、政府と言われても、実際にはそれでは政府の最高の総理大臣がきめるのかということになりますけれども、実際にはどこできまるのですか。
  193. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 実際は、農林省と通産者と両方で協議してきめるということになるわけでございます。
  194. 栗原俊夫

    栗原委員 農林省と通産省で協議してきめる、これは関係業者とは関係なしに、行政庁としての農林省と通産省が、コンニャクの需給のあり方を見て協議してきめるわけですか、あるいは関係業者とも相談をした中でどうじゃというようなことで諮問をするとか、あるいは関係業者に意思をまとめてこいとか、いろいろ何か方法もあるかもしれませんが、この辺はどうなんですか。
  195. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 もちろん、農林省、通産省がきめます場合には、その決定までの過程といたしまして、コンニャク業界、特に日本こんにゃく協会というものに相談をいたしまして、十分その間の実情を把握した上できめる、そういうことでございます。
  196. 栗原俊夫

    栗原委員 おそらくコンニャクの外産の問題については、コンニャク玉をつくっておる生産農民が、いままでずっと外産輸入絶対反対、こういう立場をとってきました。しかし、そうはいっても、実際に逼迫してどうにもならぬ、その逼迫の状況は値が示すというようなことで、値段関係からこれ以上逼迫してはということで、輸入という具体的な問題も起こってきたわけですが、この決定にあたって、もちろん貿易を扱っておるのは通産省、こういうことで、通産省とも十分話してやるわけですけれども、その主導権は当然農林省にある、こう考えるわけですけれども、この辺はどうなんですか。
  197. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 国内におきます需給の数字を把握するということが、主として主導権になるわけでございますが、それは農林省がやるということでございます。
  198. 栗原俊夫

    栗原委員 通産省のほうから、どうも逼迫していて消費者が困っているではないか、入れたらどうかというような主導的な立場に立ち得る、立つ場合というものが考えられますか。これはどうでしょう。
  199. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 そういうことはございません。
  200. 栗原俊夫

    栗原委員 そうすると、農林省が需給関係考え、そして主として生産者を中心に守っていく立場の農林省が、そういう立場ではあるけれども、需給関係からいって、この辺で入れなくてはならないなというような立場に立って、具体的な貿易を扱っておる通産省と協議する、こういう形になると理解してよろしゅうございますか。
  201. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 そのとおりでございます。
  202. 栗原俊夫

    栗原委員 いま問題になっておるのは自由化、こういうことなんですが、日本が国際的に経済的な地位も高まって、日本の貿易を自由化するという波に乗っておるわけですが、そういう中で、コンニャクの自由化ということが盛んにささやかれるわけです。しかし、コンニャクは、これを肥培管理してつくっておるのは日本だけだ、そうして食うのも日本人だけだ、こういうコンニャク、たまたま海外にもあるけれども、それは肥培管理しておるものではなくて、日本で買ってくれるならとって売ろう、言うならば、ワラビ、ゼンマイのたぐい、こういうものであって、これは国際商品ではない。したがって、いわゆる貿易自由化の対象にはならないのだ、私はこう理解しているのですけれども、当局の考え方はいかがでしょう。
  203. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 そういうことであると思っております。ただ、今後後進国の問題がやかましいという場合におきましては、いろいろまだ問題も出てくると思いますけれども、いまのところは、コンニャクを食べておるのは日本だけでございますし、その生産は全然日本とは違う様式でやっているというようなことでございますので、自由化はしないという方針に変わりはございません。
  204. 栗原俊夫

    栗原委員 この点は大臣に出てもらってぎっちりと答えてもらおうと思っておったが、先ほど来同僚は、大臣よりも政務次官のほうが信頼できる、こういうお話でございます。むしろ政務次官に答えてもらったほうが力があると思いますが、政務次官、ただいま園芸局長の答えですが、コンニャクに関する限り、いわゆる貿易自由化の対象にはならない、そうしてまた当面自由化する考え方はないのだ、こうおっしゃっておりますけれども、大臣にかわって政務次官が農林省全体の決意表明をしていただきたい、こう思います。
  205. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 ただいま園芸局長答弁したとおり、そういう考え方で進めてまいります。
  206. 栗原俊夫

    栗原委員 たいへんけっこうな答弁をいただきまして、おそらく産地の農民は泣いて喜ぶだろうと思います。ただ問題は、このコンニャク問題は、外産コンニャクと内地コンニャクとの値ざやが非常に広いために、外産コンニャク輸入をめぐっていろいろな黒いうわさが流れておるわけですけれども、こういう問題には全然影響を受けることなしに、正しい方向をしっかりと歩んでいただきたい、そういう意味から申しまして、ただいま需割りが五つで、商割りが五つ、五割五割、こういうことになっておるようですが、いまから三年ばかり前ですか、三十七年の九月までですか、特殊物資指定をしておりましたね。外産の安いものを買い付けて、内地が高い、その内地のレベルとの差額を国庫納金せしめるということで、当時入れたものはあまり味がないというようなことで、許可になったものを少し手残しをするというような事態もあったわけですが、これらのあり方についても、万が一にも今後入れるような事態がある場合には、再びやはり特殊物資の指定というようなものを考えて、特定の人たちが利益を得るためにその陰に狂奔するというようなことのないような行き方も、やはり一つの方法じゃないかと思うのです。何といっても値ざやがあり過ぎるので、狂奔する、こういうことでありますので、これらに対する考え方――いまはその値さやをコンニャクに関連する四社の構成によってなるこんにゃく協会に与えるという構成になっておるのですが、初めそうして出発たしのが、商割りが五割出るということでくずれかかっておる。くずれぬはずだったのだろうと思いますけれども、いま出てきた藤井通商の問題からくずれかかっておる。こういうことでは、やはり関係した人たちが痛くない腹を探られる場面も出てきましょう。こういう点はいかがですか、政務次官、何とかそういう痛くもない腹を探られるのは、その席にすわった者は全くかなわぬだろうと思う。現実に値ざやがあり過ぎるのですから、一方ではかなりこれをねらって蠢動ずるものを何とか防いで、しかも関係業者もこれならというようなあり方を何とか考えてもらいたいのですが、この辺はどうですか。
  207. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 私も実は政務次官になりまして、こういった問題をいろいろ聞いてきたのです。たとえばバナナの問題にいたしましても、あるいは先ほど議論のありました韓国ノリの問題にいたしましても、やはりその内容を見ますと、いろいろそこに問題があるようでありまして、やはり私どもは、いかなる場合があっても、生産者の立場を保護するという観点に立ってものごとを進めていかなければいかぬと思っております。そういう観点に立つと、もう少し――非常にむずかしい問題だと思うのですけれども、これに対しては筋を入れた何らかの対策を立てなければならぬのじゃないかということを、私は実は入ってきて真剣にそういうことを感じております。だから、そういった面については、今後十分に検討したい、こういうのが私の考え方であります。
  208. 栗原俊夫

    栗原委員 これは少しく園芸局長に皮肉になるわけですが、率直に申しまして、七月二十七日付で申し入れ書を出しました。いわゆる手持ち外産の放出についての申し入れをしたわけですが、実際には、あのときにはすでに三百トンの放出がきまっておったように聞いておるのですが、これはどうなんですか。
  209. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 放出につきましては、御承知のように、安定帯価格を設けておりまして、六万円以上になった場合に、放出して安くしていこうというような考え方を持っておるわけでございます。それで、大体七月の中旬ごろから六万円をこえるというようになってまいりまして、七月の二十日ごろでございましたか、こんにゃく協会で理事会を開きまして、放出をやろうというようなことになってきたわけでございます。それで、その時分から放出のことを考えておりまして、できるだけ早く放出をしたいという考え方で、目下準備をいたしております。
  210. 栗原俊夫

    栗原委員 私が聞いたところによると、荒粉三百トン分の精粉をトン六万二千円の価格でとりあえず三百トン放出するんだというような話を聞いておるわけなんですが、私たちは生産農民といろいろ話して、上限六万五千円、下限五万円と、こういうことになって、そしてもちろんその中間に安定することが好ましいだろうけれども、しかし、だからといって、外国から入れたものを上限で放出せずに、その中間で放出するということはいかがかと思う。生産農民としては納得がいかない。六万五千円が上限なんだから、六万五千円なら売り応ずるぞという形で、六万五千円の上限の上へは一歩もやらさぬぞ、これならわれわれは納得するけれども、六万五千円へいくかもしれない趨勢の中で、六万二千円で早くも売り放つ。現実にはいま農民はそれに関連して損をするような荒粉もほとんど実際は持っておりません。実際は持ってはおりませんけれども、何としても理屈が合わぬではないか。上限は六万五千円だ、こう言っておいて、外産はそれ以上やらぬために入れたはずだ。それを六万二千円で売り放つのはおかしいじゃないか。そしてそういうことがやがてくるであろう秋の出来秋のなま玉にも響くのだ、こういうことで、非常に不平不満を持っておるのですけれども、これらに関して、これは園芸局長園芸局長なりの考え方もあるかもしれませんけれども、政務次官いかがです。
  211. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 どうもコンニャクの問題は、私は十分に把握しておりませんが、いま聞きますと、現在価格が六万円程度ですか、そうすると、上限六万五千円でも、その中間程度のところで放出してはどうか、こういうのがいまのところ考えられておる案と聞いております。
  212. 栗原俊夫

    栗原委員 それは農民をだますというものなんですよ。六万五千円の最高限でこれは売り放つのだというぐあいに農民はみんな理解しているのですから、そういう理解の上に立ってこんにゃく協会なるものにしぶしぶ協力したわけですよ。実際は協力しなかったわけです。協力しなかったけれども、じゃあ六万五千以下では売らないぞ、六万五千円までは値段はあり得るのだ、こういうことでこれは協力しているわけなんです。それが、実際に入れられたものが、それは換金を急ぐということもありましょう、借金をして買った外産でありますから。しかし、それはそれでほかの方法があると思うのですよ。もう六万二千円になったから早く金にかえたい、それは六万五千円にほうっておけばきますよ。六万五千円で売れるのですからね。その六万五千円を六万二千円で売り渡す、こういうことではどうもまことに納得がいかない。このことは、今回六万二千円とすでにきめたそうですけれども、それは六万二千円で希望に応じて幾らでも三百トンの範囲内で売り応ずる、こういうことなんですか。希望者が多いときは希望によって案分してそれでやる、こういう方法なんですか。その辺はどうなんですか。売り渡しの具体的な方法ですね。
  213. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 実はまだ確定的にきめておるわけではありません。それで、いま考えておりますのは、六万五千円は上限価格でありますので、それより安く安定させようという考え方を持っておるわけです。それで、時価が六万円ということでございますから、六万五千円よりは少し安くしたいけれども、六万と六万五千の間の六万二千五百円くらいが適当なんじゃないだろうかという考え方でございます。   〔舘林委員長代理退席、田口(長)委員長代理着席〕 それから三百トンくらい第一回に放出するといたしましたならば、それをだれでもというのではなくて、ある地区を限りましたり、時期を限りまして、最も適正に公平に業者のところへ行くような方法、しかも価格の安定されるような方法でやりたいという考え方を持っておるわけであります。
  214. 栗原俊夫

    栗原委員 どうも上限が六万五千で、いまの値段が六万だから、その中間で安定させたいという気持ちはわかるのだけれども、外産を輸入するときのあり方から見ると、これは生産農民としては、どうも納得がいかぬのですね。それならば、下限が五万円とこういっておるのだから、五万と五万五千円の間あたりでひとつ安定さしてくれ、五万三千円くらいで。協会がどんどん買い手を振って農民から買い集めた実績があるならば、それはそういうことも考えられるかもしれませんけれども、実際は下のほうはある意味においてノーズロになって、四万二、三千円で相当かなり横ばいした時代もあったわけです。そして経済連等が価格維持のために、群馬の経済連がやったわけですけれども、一万二千俵ですか、たな上げすることによって、これはもちろん協会から利子補給等があったやに聞いておりますけれども、協力をした。しかし、下のほうはそういうことで、上のほうは筒一ぱいとれぬ。こういうことではこれはやはり農民はかなり憤激します。近ごろでは、かなりいろいろと外産コンニャクをめぐっての黒いうわさ、そうしてまた、払い下げをめぐってのいろいろな問題を通じて、輸入協会から脱退しようという動きがかなり出かかっております。私は協会はあっていいと思うのですよ。問題は運営の問題です。組織というものはなくちゃならぬ。しかし、運営がそういう形になると、これはつぶれていく危険があります。現在の場面はどうかというと、これは端的に私の感じを言わせれば、藤井問題を取り上げて、協会のあり方はかすみのかなた追いやろうというようなあり方があるように思えてなりません。私は、藤井商会のあり方も徹底的に批判します。しかし、それだからといって、いまの協会のあり方はそれでいいのだと私はちっとも思っておりません。こんにゃく協会も十分反省して、ほんとうに農民等が喜々としてついてくるような運営をしてもらわなければならぬと思うのです。特に昨年のA規格、B規格の分け方の問題等は、ほんとうに農民の不信を買っておりますよ。今回私たちが一俵ごとということを言ったけれども、一俵ごとはなかなかそれは検査して表示がしにくい、こういいますから、それならばある程度グループ的に一つの粉をつくる、そのグループの表示なら表示、こういうことをやって、その粘度表示によって粘度価によるところの評価をする、こういういき方なら農民は承知します。しかし、そうではなくて、大幅に切って――どうも大幅に切るところを見ると、下限よりも上のほうのものがあるのではないか。そうすると、その間の具体的な値幅というものはだれがもうけるのだ、こういうことを考えるわけですよ。われわれも言って聞かせるけれども、こういうこともあり得るやり方なんだ。こういう点なんかは、まだ具体的にきまらぬというならば、ぜひこんにゃく協会をまとめた指導力となった園芸局あたりが、せっかくできた協会をほんとうにしっかりとまとめてやっていくためには、やはり思い切った指導力を発揮してもらいたい。そして協会というものをしっかり守りながら、そのことは、ひいては、ほかの物も作れない、全く立地条件の悪いコンニャク生産農民が救われる道でもあるわけですから、ぜひやっていただきたい、こう思うのですが、この時点における園芸局長考え方はどうですか。
  215. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 外産コンャニクを最も公正な方法で売却すべきだということにつきましては、先生と全く同意見でございます。それで、その線に沿いまして、昨年は実は三段階に分けて大幅な範囲内に持っていったということで、農家の不信をかった次第でございますので、本年は最も公正に売るには入札なんかの方法もいいのじゃないかということも考えておるような次第でございます。しかし、これは価格の状況に応じまして、また時期も考えなければいかぬというような点もございまして、その売り方につきましては、いろいろ考慮をしておる次第でございますが、要するに、最も適正な方法で売るようにということを考えておる次第でございます。したがって、工場は十二工場でついておるわけですが、十二のグループに分けまして、そしてその粘度価を算出しまして、そういう粘度価に応じまして出していくというような方法もいいのじゃないかという考え方を持っておるわけでございます。
  216. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまちょっと入札ということばも出たわけですが、この入札が藤井の品物とかなり関係があるなどと産地ではささやかれておりますけれども、藤井と関係があろうとあるまいと、やはり入札については農民は賛成しません。ということは、最も公正に入札が行なわれれば悪い方法ではないということは知っておりますけれども、入札には談合というものがつきものだということもよく知っておるわけなんです。したがって、入札という方法でやることは、最も公正な価格形成であるように見えて、一番危険な方法である、こういうことも農民は知っておるわけです。したがって、そういう方法は極力避けていただいて、やはり粘度価というものは――これにも一議論すれば議論もできましょうけれども、一番信頼し得る検査によるところの粘度価、こういうものと見合って上限の値段と相乗価でもって売り値をきめてくる、これならおれたちも納得する、こう言っている。それがどうしてできぬかというところに、実は霧が立ち、もやが立つ問題があるのではないかと思うわけです。なぜそういうことができぬのだろうか。検査をして、一俵一俵が無理だというならば、それは一うすというか、一回の製粉の総量を粘度価幾らと規定する、その粘度価と最高限と掛け合わせた値段で売ってくれ、これなら文句はない、こう言っているのですから、一番これはすっぱりした、どこからでもいらっしゃいというやり方だと思うのです。ひとつそういう点も、政務次官、いまいろいろ問題の起こっておることも十分御承知だと思うので、農民の納得するような方法をぜひ打ち出していただきたいと思いますが、どうぞ所信をお聞かせ願いたい。
  217. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 その問題は、ただいま園芸局長お話しになりましたけれども、必ずしも先生のおっしゃったことを否定いたしておりません。御趣旨に沿ってやるということであります。入札の問題についても、これも一利一害あると思いますから、必ずしもそれにしなければならぬというわけでもないと思います。最も適正公正な方法を選んで行なう、こういうことが一番いいのじゃないかと思いますので、留意してやってまいりたいと思います。
  218. 栗原俊夫

    栗原委員 時間もおそくなりました。コンニャク問題については、まだいろいろ議論したいことがあるわけですが、きょう特にこんなにおそく質問さしてもらったゆえんのものは、やはりいま問題になっておる自由化というものについて、生産農民が非常に心配しておる。このときに、局長を初めとし、大臣にかわって政務次官から、そういうことじゃないのだということをはっきりと言明してもらいましたので、これで満足して、本日の質問を終わります。
  219. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 林百郎君。
  220. 林百郎

    ○林委員 坂田農相が新任されてから、七月の末に、御承知のとおり、日米貿易経済合同委員会に出席されたわけですが、実は直接大臣にお聞きしたいのですけれども、大臣いろいろ都合があって御出席願えないので、御同伴された官房長にお尋ねしたいと思いますけれども、これは合同委員会にどのような意思表示をされるつもりで、またどのような要求を持たれて出席されたのでしょうか。
  221. 大口駿一

    ○大口政府委員 日米経済合同委員会は七月の十二、十三、十四日の三日間開かれたわけでございまして、これは過去すでに三回開かれまして、今年が四回目の会議でございまして、大体会議のやり方等につきましても、すでにルールがきまっておりまして、この会議は、日米両国が、特に懸案となっておる問題を折衝をして解決をするという性格の会議ではございませんで、一般的な討議を通じまして、経済並びに貿易の問題を討議をするということになっておりましたので、私どものほうと申しますか、日本政府として、出かける前に特定の問題をその会議の場を通じて折衝をするという項目は持っておらなかったわけでございますが、ただ、農林大臣といたしましては、一般の貿易の討議に際しまして、農産物の輸入に対するわがほうの基本的な考え方を述べる問題と、それから日米両国間の問題ということで、漁業の問題について、条約改正問題について基本的な考え方を述べるということだけを頭に置いて、大臣としては会議に臨まれた次第でございます。
  222. 林百郎

    ○林委員 農産物の貿易の問題について基本的な考え方を述べるつもり、それから日米加漁業協定について日本政府の基本的な考え方を述べるつもり、従来のいろいろの慣例、ルールがあるので、特にこのたびの委員会でどういう問題を提案し、どういう問題をディスカッションしょうというあらかじめのテーマはなかったけれども、農産物の輸入と漁業協定の問題については、日本側の基本的な考え方を述べるという考えは持って行ったというようにお聞きしました。そうすると、それはどういう考え方をどのように述べるつもりだったのでしょうか。
  223. 大口駿一

    ○大口政府委員 あらかじめどういうことを述べるつもりであったかということと、実際述べたことと一致しておりますので、述べたという経過の御報告をしたほうが一ぺんで済むと思いますので、そうさせていただきたいと思いますが、(林委員「それでけっこうです」と呼ぶ)ただ、いま林先生が私の答弁に対しておっしゃいました、議題を別にきめないで会議をしたというふうにおとりになっておるとすれば、その点は、若干私の舌足らずでありましたので、ちょっと補正さしていただきたいと思いますが、私が申し上げましたのは、特定の折衝をしなければならぬ懸案事項をもって、それをこの会議でもって完全に解決をする目的で会議が開かれたのではないということは申し上げましたが、ただ、会議としては、事前に双方が相談をいたしまして、村議をすべき項目はきめております。  そこで、念のために、項目を申し上げますと、まず第一には、日本とアメリカの両方の経済情勢一般について双方述べ合うということ、第二番目には、日米両国の二国間の経済問題について討議をするということ、第三番目には、日本とアメリカを含む多数国間の経済問題を討議をするということ、その次は、その他という雑件でございます。そういうふうな議題に基づいて会議が進められたのでございます。  そこで、農林大臣が担当いたしております問題として、いまあげました二つの問題、すなわち、農産物貿易についての基本的な考え方についてまず申し上げますと、御案内のように、最近の世界全体を通じましての貿易の自由化に対するいろいろなスケジュールがきまっておりますが、これに対しまして特に農産物の自由化ということを、日本政府が、なかんずく農林省として基本的に考えております問題は、もちろん、わが国が不足する農産物を輸入するということは、従来どおりやっておるわけでありますが、これを自由化をいたします場合には、やはり国内の生産者に不測な悪影響を与えないという方向でやっていかなければならぬ。ところが、わが国の農業は他の国と比較をいたしまして、いろいろな独特な事情がございまして、一般の議論がなかなかあてはまらない部面もございますので、この会議を通じまして、わが国の農業の特殊な事情、つまり、歴史的な特殊な事情並びに現在当面しておりますいろいろな問題点等を指摘いたしまして、一般的に農産物の自由化については協力はするけれども、しかし、なかなか困難な事情があるということを一般的な形で述べて、向こうの理解を求めたということをいたしたのであります。  それから漁業の問題でありますが、御承知のように、日本、カナダ、アメリカの三国の北太平洋漁業条約は、三十八年以来条約改定についての政府間交渉もすでに三回開かれまして、遺憾ながらまだ意見の一致を見ておらないわけでございますが、今回の会議におきましては、この前の第三回の会議においても同様なことを述べたわけでございますが、この条約改定にあたっての日本の塗木的な考え方、すなわち、漁業条約というのは、公海自由の原則に立脚し、かつ科学的な基礎に基づいた資源保存というものをたてまえとし、平等の原則に基づいた漁業資源の利用というものをたてまえとした条約であるべきであるという、従来三回の会議に繰り返しわがほうが述べました基本的な態度を繰り返しますとともに、本年実はアメリカのブリストル湾におきまするベニザケの回遊が戦後最高の記録にならんとしておったわけでございます。ブリストル湾の漁業というのは、七月の初めから十日ぐらいまでの漁業でございまして、ちょうどわれわれが向こうに行っておりまして、会議に臨むころに、その豊漁であるというニュースが入ってきておったわけでありますが、従来、アメリカ側の一部の漁民感情として、日本の漁業が沖でもってサケをとるために資源に悪影響があるという議論が、しばしば行なわれておったわけでありますが、本年のような豊漁ということは、そのような議論が科学的にあまり根拠がないゆえんではないかということも付言をいたしまして、わがほうの基本的な態度を述べられた次第でございます。
  224. 林百郎

    ○林委員 時間の関係もありますし、問題をあまり広範に広げるわけにもいきませんので、漁業協定の問題についてはきょうは省きまして、最初に言われました農産物の貿易の基本的な考え方についての両国間の話し合いということにしぼって、私はお聞きしたいと思うのですけれども、そこで日本の農業の特殊な事情も説明され、そして貿易の自由化、農産物の貿易の自由化も要請されているが、日本の農業に悪影響を及ぼさない方法を考えなければならないという立場も、そういう限界もあるのだということも述べられたと聞いたわけですけれども、そういう日本側の基本的な考え方について、アメリカ側ではどういう反響があったのですか。あるいはどういう意見の開陳があったわけでしょうか。
  225. 大口駿一

    ○大口政府委員 この会議は、先ほど申しましたように、特定の問題を討論するという形をとっておりませんでしたので、先方の担当大臣の発言も、必ずしもわがほうの発言を受けて、それに対する反駁なり質問という形ではなかったのでございますが、一般的な言い方といたしまして、世界の各国における貿易の拡大の必要性というような、基本的かつ抽象的な考え方を述べられたあとで、向こうのフリーマン農業大臣が、やはり日米両国間の農産物貿易が最近非常に拡大をしておるということに言及したあとで、やはり日本の農産物の自由化についても今後いろいろ考慮してもらいたいというような、きわめて一般的な調子で発言があっただけでございまして、特にわがほうの大臣が述べました、わが国の農業の特殊事情なり、また自由化が非常に困難であるという理由に対して、一つ一つポイントをあげて質問をするとか、あるいは反駁をするとかいう形での発言はございませんでした。
  226. 林百郎

    ○林委員 日本との農産物の貿易が拡大しているということは、要するに、アメリカの農産物の日本への輸出が非常に拡大してきている、そして自由化についてさらに考慮してもらいたいということは、それをさらに拡大する方向へ日本政府も一そうの考慮をされたい、こういう意味にとっていいですか。農産物の貿易の拡大といっても、日本からアメリカへ輸出しているものはちょっと考えられないわけです。
  227. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま日本とアメリカの貿易が拡大をしておるというふうに向こうが言及したゆえんとしては、やはり日本に対する小麦、大麦等の農産物の輸入並びに日本の水産物その他のアメリカに対する輸出量が増大をしておるということの一般的な傾向があるわけでありますから、その点を述べたのでございまして、また将来の問題について考慮してもらいたいという言い方をいたしましたのは、やはりいまの世界全体の国際貿易量の拡大を目ざして各国が努力しておるという一般的な風潮を受けて、日本もやはり農産物についてもそのような機運に同調して考慮してもらいたいという一般的な発言というふうに、わがほうは受け取ったのでございます。
  228. 林百郎

    ○林委員 新聞の報ずるところによると、アメリカ側から関税の一括引き下げの提案があった。これは農産物に限らないわけですけれども、一般的に日米間の貿易についての日本側の関税の一括引き下げをさらに促進するようにという提案があった、こういうように新聞は報道しておりますが、そういう提案があったかどうか。そして、その関税の一括引き下げの中には、当然農産物についての関税も含まれておると考えらるべきであるかどうか、その点をお尋ねしたい。
  229. 大口駿一

    ○大口政府委員 私がいま御報告を申し上げておりますのは、農産物の貿易の問題に限って申し上げておるわけでございまして、したがって、わがほうから発言をいたしましたということを申し上げておりますのも、農林大臣が発言をした内容について申し上げ、また先方の発言として御紹介をいたしておりますことも、先方の農業大臣並びに漁業担当の内務長官が発言した内容を御紹介いたしておるわけであります。ただいま林先生が御引用になりました関税一括引き下げについていろいろの注文があったということは、私があの席で聞いておりますときの記憶では、主として工業製品に対する発言の項目で、そういう趣旨の発言があったことは記憶いたしておりますが、農産物についていまのような御趣旨での発言があったことはございません。
  230. 林百郎

    ○林委員 そうすると、農産物については、アメリカ側からは非自由化品目の自由化の要請とか、あるいは関税の一そうの引き下げ、そういうような提案はなかった、そしてそういうことは経済合同委員会では討議はされなかった、そう聞いておいていいのですか。
  231. 大口駿一

    ○大口政府委員 先ほど申し上げましたように、一般的な形でそういう討議と申しますか、向こうの発言の中に、将来の貿易の拡大についての考慮をしてもらいたいという発言があったわけでございますから、その意味では、農産物全体について抽象的に適用があるような発言ではあったわけでありますが、特定の品目をあげて要請があったということはございません。
  232. 林百郎

    ○林委員 一般的な提案として、農産物を含めて関税の引き下げ、自由化拡大ということが提案された。それに対して日本政府側は何か答弁したのかどうか、あるいは日本政府側は、事農産物に関してはどう考えたのでしょうか。一般的なそういう提案があったとして、当然一般的には農産物も含まれると考えるべきだとして、それに対して日本政府側は何か答えたのか、答えないのか。答えないとしても、それに対して日本政府側はどう考えて処しようとしたのか。もし官房長で問題が答弁できなければ、次官でもけっこうです。
  233. 大口駿一

    ○大口政府委員 どうも会議のやり方について何べんも申し上げて恐縮でございますが、一つの議題に移りますと、たとえば奇数番目の議題は、日本の大臣が全部一ぺん発言をして、あとでアメリカの大臣が発言をする、偶数番目の議題については、アメリカ側が全部発言をして、こちらが発言をする、それで終わってしまっておるわけであります。したがって、一つの議題について、向こうの言ったこととこっちの言ったことが、必ずしも問い答えの形でもって討議をするというかっこうではございません。しかし、いま御指摘になっておる問題につきましては、日本側が最初に日本の農業の特殊事情を述べ、日本の農産物の自由化についての困難なる事情を述べたというのが先でございまして、それからそれを受けてということじゃございませんので、あらかじめ予定された順番に従って、向こうのフリーマン農務大臣が、全般的な農産物の輸入拡大希望というものを申し述べたというのが実際の順序でございます。
  234. 林百郎

    ○林委員 次官でもどなたでもけっこうですけれども、御承知のとおり、アメリカの農産物の輸入の非常な拡大が、目に見えた拡大が、日本生産農業に大きな圧迫を加えているのは御承知だろうと思うのです。そこで、そのことは一応日本の農林大臣から述べられたというのですが、アメリカ側から、一般的な問題して、一そうの自由化拡大、関税の一括引き下げが、農業問題も含めて一般的な提案としてはあった。  そこで、それでは会議会議で一応締めくくりをつけて、そういうことに対して、ことにアメリカの農産物の輸入拡大が、日本生産農業に非常に大きな重圧を加えてきている。こまかいことは今後順次各品日について聞いていきたいと思いますけれども、そういう状態のもとで、一体坂田農政としては、アメリカ並びにドル圏からの農産物の輸入について、現行関税比率、それから現行非自由化品目について、何か手を加えるとか千直しをするとか、そういう考えがあるかどうか、あるいは今後それについては手直しをしたりする考えはないと言えるか、その点をひとつ責任ある答弁を、大臣がおりませんので、農林省側のどなたでもけっこうですけれども、答弁していただきたい。
  235. 森本修

    ○森本政府委員 今回の日米合同委員会を受けてということだけではございませんけれども、知のように、日本の現在の立場といたしましては、すでにIMFのほうで、一昨年ですか、国際収支上の理由で輸入制限を適当としない国というふうな判定を受けましてから、加入しておりますいわゆるガットの規定によりましても、国際収支上の理由で輸入制限をすることができないというたてまえ、そういうポジションに立たされておるわけでございます。したがいまして、別にアメリカだけという関係ではございませんで、それぞれ関係のある国から、農産物を含めまして自由化について要請があり、また話し合いをしたいというふうなことになりますれば、当然これを受けて、日本の現在の輸入制限品目について、輸入制限の緩和等の話し合いに応じていかなければならない、こういう立場になっているわけであります。そういう関係でございますから、今後は、何をどうこうするということはいま申し上げられませんけれども、一般論としては、そういう日本のポジションに応じて、今後の自由化問題については検討し、対処していかなければならない、こういう情勢になっているわけでございます。
  236. 林百郎

    ○林委員 日本生産農民にとっては、現行関税だけでもどのような引き下げがあるかどうかということは、決定的な影響を与えるわけなんです。それから非自由化品目が自由化されるということについても、決定的な影響を与えるわけなんですけれども、そうすると、いま政府側が答えたように、IMF、それからOECDへ加盟した以上は、アメリカ側からそういう提案あれば、その話に応ぜざるを得ないのだ、したがって、これ以上関税の引き下げや非自由化品目の自由化があれば、決定的な影響を日本生産農民に与えるのだけれども、しかし、そういう機構に加盟した以上、話に応ぜざるを得ない立場にあるのだ、こういうように聞いておいていいですか。
  237. 森本修

    ○森本政府委員 ただいま申し上げましたのは、日本が世界の中で立たされているポジションについて御説明をしたわけでございますけれども、そういった各国からの要望に対して、われわれがどういうふうな態度で協議に応ずるかということは、また別個といいますか、こちら側である程度自主的に対処すべき方針ということになろうかと思います。もちろん、われわれとしましては、そういうポジションに立たされておりまして、話し合いの申し込みがあれば応じなければならないということでございますけれども、日本の農業に深刻な影響を与えるような形で向こうの話し合いに応じていこうというつもりはございません。もちろん、個々の点につきましては、やや弾力的に対処するといったような必要性も生ずるかと思いますけれども、基本的な態度としては、農業に深刻な影響を与えるような形で向こうと話し合いをするというつもりはございません。
  238. 林百郎

    ○林委員 そうすると、御承知のとおり、一九五九年の十月に農林水産物の自由化率が四三%であったのから、一九六三年の十月には約九二%になって、八%が非自由化品目になっているわけですけれども、この非自由化品目のうちのおもなる品目について、そこであげることができましたらあげてもらいたいと思います。
  239. 森本修

    ○森本政府委員 ただいまお話がありましたように、残っております品目は、全体として八十五ございます。それを一々あげますのも非常にたいへんでございますから……。
  240. 林百郎

    ○林委員 あとで資料としてもらってもけっこうです。
  241. 森本修

    ○森本政府委員 大体の大振りにして申し上げますと、畜産物の関係あるいは沿岸水産物の関係、それから主要な穀物の関係、それから生鮮食料品では果実、野菜等の主として加工品、そういったようなことが大まかに言えるかと思います。その他若干の菓子類といったようなものがその中に含まれております。
  242. 林百郎

    ○林委員 非自由化品目という範疇も、いろいろな解釈のしかたがあると思います。あるいは自由化品目だけれども、一部関税でチェックしているという品目も入れるのか、あるいは完全に輸入制限をしているという意味の非自由化品目かという、いろいろの範疇があると思いますので、そのことも聞いておきますけれども、少なくとも農畜産物に対する現行の関税率については、手直しをするようなことが考えられるのか、あるいは当分は、現行の関税率については、大体見通しとしては手直しはないのだということが責任を持ってここで答弁できるでしょうか。その点はどうですか。
  243. 森本修

    ○森本政府委員 先ほどちょっと残存輸入制限の品目を八十五と申し上げたわけですが、訂正をいたします。七十五でございます。   〔田口(長)委員長代理退席、舘林委員長代理着席〕  関税についてのお尋ねでございますが、関税につきましては、先ほど申し上げました品目はちょっとあれですが、輸入制限を課しておるものということでございます。関税につきましては、御承知のように、現在ガットの場におきまして、いわゆる関税一括引き下げ交渉というのが進行をいたしておるわけでございます。もちろん、農産物につきましては、まだどういうやり方をするか、必ずしも明確ではございませんけれども、一応農産物も含めてそういう交渉をやるのだということに、たてまえ上はなっておるわけでございます。そちらのほうの関係でいきますと、関税ももちろん交渉の対象になるものであるということになっておりますので、これについての交渉の申し入れといいますか、交渉上、将来日本の農産物についても対外的な交渉の対象になるということはあり得るわけでございます。
  244. 林百郎

    ○林委員 そこで、具体的な品目についてお尋ねしていきたいのです。  第一に、バナナの輸入なんですけれども、これは一九六三年のバナナの自由化とともに六百万かごの輸入になり、これは戦前最高の一九四〇年ですか、三百十二万かごの約倍にふえているわけですね。このことが、リンゴあるいはナシ等の果樹の価格に非常に大きな影響を与えているわけなんですけれども、ことにわが国のくだものの小売り販売総額二千三百億のうち、六百八十億円近くのバナナの小売り消費が加わってきた。輸入価格は百三十四億くらいですけれども、これが国内市場に小売りされると約六百八十億で、わが国のくだものの小売り総額二千三百億の約三割くらいになる。これは御承知のとおり、一定の関税があるわけですけれども、もしこのバナナの関税がかりに引き下げられるとすると、これは日本のリンゴ、ナシの果樹生産に決定的な影響を与えるわけなんですけれども、このバナナの自由化の見通しについては、政府はどういうような見通しを持ち、何らかの施策考えているかどうか、まずお聞きしたいと思うのです。
  245. 森本修

    ○森本政府委員 バナナの自由化お話でございますが、すでにバナナは三十八年四月に輸入制限を解除いたしまして、いわゆる自由化品目になっておるわけであります。関税のほうは、現在暫定の関税で七〇%ということになっております。
  246. 林百郎

    ○林委員 それが戦前の約倍にもなり、日本の果樹の小売り販売総額の約三割にも達しておる。こういう状態になっておるときに、政府はこれをそのまま放置せざるを得ないのか、あるいは関税については、これをいま暫定的と言いましたけれども、少なくとも関税はここしばらくはこのままにとどめておくのか、その措置について聞いておるわけです。現にこれが青森、長野のリンゴやナシの生産地に大きな影響を与えておりますから、これについて何らか政府は手だてを講ずる考えがあるかどうか、少なくとも関税については、ここしばらくはそのまま据え置くのかどうかということです。
  247. 森本修

    ○森本政府委員 バナナの輸入については、先ほど御指摘がありましたように、自由化をいたしましてから直後、一時的といいますか、そういうことも多少影響があると思うのですが、かなりの数量が輸入されております。自由化直後にはある程度こういう傾向が一般的に見られるところでありまして、いわゆる輸入業者の過当競争といいますか、そういう関係もございまして、極端に輸入数量がふえるという例がございます。そこで、現在やっておりますことは、自由化そのものは直ちに変更するわけには対外的の関係もあっていかないと思いますが、現在の輸入体制がはたしてそのままでよいのかどうかという、先ほどの過当競争に関連した問題がございますので、現在、通産省、農林省のほうで、バナナの輸入組合をつくって輸入秩序を確立していく、国内の産品に悪影響を及ぼさないような、ある程度秩序ある輸入が行なえないものかということで、せっかく検討をし、業界を指導しておる段階であります。
  248. 林百郎

    ○林委員 次に、干しブドウの輸入ですが、これも一九六一年に自由化されておるようです。これもカリフォルニアをはじめとする輸入干しブドウが年に二万トン前後で、なまに換算しますと、国内生産十五万トンの約七割に相当し、しかも価格は三分の一程度でありますので、特に原料用ブドウに対して決定的な影響を与える。長野県の松本周辺の生産の実情を見ますと、四千トンのうち、約千トンが畑で立ち腐れておるという状況になっておりますが、この干ブドウの自由化による輸入の見通し、ことになまに換算して国内生産の七割にも相当するような量、価格はその三分の一、こういう干ブドウについては、政府はどういう考えをお持ちですか。
  249. 森本修

    ○森本政府委員 干しブドウにつきましても、先ほどちょっと一般的な傾向として申し上げましたような傾向が出ておりまして、自由化直後の二、三年は急激に輸入数量が増大いたしております。しかし、その後の情勢を見ますと、ややそういう増勢が鈍っておるというように私は承知いたしております。それで、ただ干しブドウについて問題が起こりましたのは、御承知のように、干しブドウを使ってブドウ酒をつくるといったようなことが、一時、一、二年前に問題になりまして、国内の酒造用の干しブドウと競合関係になるということが、主として山梨あるいは長野のほうから問題を提起されました。私どもとしましては、そういう関係がございますので、酒造業者にも、大蔵省とよく打ち合わせまして指導しまして、輸入の干しブドウの酒造用としての使用について、規制というとちょっと言い過ぎなんですが、適正な指導を加えるということで今日に至っておるわけでございます。
  250. 林百郎

    ○林委員 次に、レモンの問題についてお尋ねするのですけれども、一九六四年の四月のレモンの自由化で、アメリカのサンキストその他四千トンが入ってきておる。それで、これは国内生産の千二百トンの約三倍に上っておる。価格は、国産のキロ二百円に対して、輸入ものは百三十円。これはもう昨年、広島、和歌山のレモン生産地からわれわれのところへも非常にたくさん陳情が来まして、ことにこれがミカンの分野にも大きく影響してきて、広島、福岡のミカンの苗木が一本百五十円が五、六十円と、約三分の一に暴落した。こういう状態になっておるのですけれども、レモンについてはどのような処置をする考えなんですか。
  251. 森本修

    ○森本政府委員 レモンにつきましては、ただいま御指摘がございましたような事態が一町あったわけでございますが、直後は確かにそういう若干の混乱がございまして、国産のレモンの栽培農家にも影響を及ぼすのではないかということを憂慮いたしたわけでございますが、昨年の十二月以降は米国からの輸入量も相当減りまして、一時心配された国産のレモンが販売の見込みがつかないといったような事態はなくなりまして、ある程度国産のものも販売が可能になるといったようなことで、一時のような最悪の事態は免れることができたというふうに承知をいたしておりまして、米国におきましても、おそらく販売者としての立場からも、ある程度自主的に対日の輸出について規制をすることが望ましいといったような考え方も出てきておるようでございますので、いましばらくそういった情勢の推移を見まして、もし処置をすべき事態に立ち至りますれば、適当な対処策を考えてまいりたい、かように考えます。
  252. 林百郎

    ○林委員 適当な処置というのは、具体的にはどういうことをお考えになっているのですか。
  253. 森本修

    ○森本政府委員 その事態になりませんと、端的にどういうふうな処置をとることが適当かということは、いま直ちには申し上げられないわけでございますけれども、先ほどバナナの際に申し上げましたように、自主的にこちらのほうで輸入組合をつくって、輸入秩序を確立していく、そういうふうなことが抽象的には考え得ると思います。
  254. 林百郎

    ○林委員 貿易の自由化、ことにバナナ、レモン、あとコンニャクの問題等もありますけれども、こういうのが日本生産農業に大きな圧迫を与えているということばかりでなくて、日本の国内産の価格輸入価格との値ざやによって、膨大な利益が輸入組合あるいは輸入業者に与えられるということから、とかくの風評がバナナ、レモン、それからノリ等にあることは、あなた方も御承知だと思うのです。そういう二重の問題がこれにはからんできていると思うわけなんです。  次に、先ほどのコンニャクの問題ですが、コンニャクの割り当ての問題については、農林省もタッチしているわけでしょう。これはどうなんですか。
  255. 大口駿一

    ○大口政府委員 園芸局長が主管の局長でございまして、そういう問題についての御質問と承りましたので、いま呼んでおりますから、ちょっとお待ちください。
  256. 林百郎

    ○林委員 それでは鶏の問題です。種鶏の輸入やいろいろの問題があるわけですけれども、これはついこの七月六日、群馬県の養鶏農民が、卵の生産では赤字が蓄積されてどうにもならないということで、約五万二千個の卵を持ち出して、街頭でただで配る、そして要求を結集する会場では、約三百幾つの卵を街頭にたたきつけて割って、いまの養鶏農民の切実な要求について非常な怒りの意思表示をしたということがあるわけなんですけれども、現在の養鶏業について、政府はどのような救済措置、どのようなこれに対しての施策考えておりますか。
  257. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 わが国の養鶏は、三十五年ごろから急速に生産の量を拡大してまいりまして、現在では当時の約二倍の鶏卵の生産量に相なっておるわけでございます。特に三十八年、総体的に鶏卵価格が高水準でございましのに、三十八年の秋びなからのえつけ羽数が急激に増大したというそのあおりを受けまして、三十九年の晩春から卵価が低迷の段階に入ったわけでございます。現在の日本の養鶏の状態を見ますと、生産の増大というのは、ただいま申し上げたとおり、非常に急速でございますが、鶏卵の消費量は国際的にもかなり高い水準まで到達をいたしまして、消費量の増大のテンポが鈍っておるということから、生産の諸条件、それからただいま申し上げましたような消費の水準等の関係で、需給の構造が根本的に従来と変わった形になっておるわけでございます。  そこで、こういう卵価の低迷状態を短期的に打開をいたしますためには、一時的に過剰な供給が行なわれました場合の鶏卵を市場から隔離する方法が一つございます。この点につきましては、現行の畜産物価格安定法に基づきます農協系統による自主調整保管制度があるわけでございまして、昨年度も七月及び十一月について自主調整保管のための基準価格の告示を行ないまして、その道を開いたのでございますが、これは卵価の低落が一時的でございましたために、実行しなかったわけでございます。本年に入りましても、やはり卵価の低迷が続き、かつ、それが長期化の様相を感じましたので、本年の五月に自主調整保管のための措置をとったわけでございます。現在まで全販連によって自主調整の方途がとられておる段階でございます。短期的にはそのような方策によってある程度の卵価の暴落防止という措置が可能でございますが、根本的には鶏卵の生産及び消費の構造、つまり、需給構造の変化というものに着目をしました措置をとる必要があるわけでございまして、私のほうとしては、過大なえつけ羽数、消費の増大をこえたえつけ羽数、つまり、過大生産の増大ということを避けていく合理的な生産調整をはかるということが基本であるというふうに考えておるわけでございます。そのためには、私どもとしましては、鶏卵に関する需給の短期及び長期の見通しを明らかにする、また、その基礎となるひなのえつけ羽数の調査に関する公表措置をやっていく一方、そういうデータに基づきました生産の調整は、政府が直接介入することによっては、とうてい三百数十万戸の鶏卵農家に対して徹底することは不可能でございますので、系統農業団体の機能に待って、政府の指導のもとにそういう生産調整を行なう、また、そういう生産調整をきめるための方式を裏づけるものとして、卵価の安定基金制度というものを育成をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。なお、ひなの供給はふ卵業者から出るといわれますので、現在未組織の状態にありますふ卵業者の組織化ということをはかりまして、鶏卵の需給、えつけ羽数の動向に応じて、需給の調整指導を地域的あるいは全国的に加えるというようなことによって、恒久的には需給の均衡を保つ方式を進めてまいるというふうにしてまいりたいというように考えておるのでございます。
  258. 林百郎

    ○林委員 畜産局長の回答の中で、非常に大きな要因が無視されているんじゃないかと思うわけです。それはやはりアメリカからの種鶏のひなどりの輸入の問題、それから日本市場に対するアメリカのえさの支配の状態、それとその値上げの問題、この二つの要因に対して農林省が何らの手も打たなくて、いまあなたの言われたような、非常に枝葉末節的なことで、ほんとうに直接的にも力を入れた根本的な対策を講じなくて、いまの養鶏業者の苦況が救われるはずはないと思うわけです。たとえばひなどりを見ましても、すでに一九六三年に主としてアメリカからの輸入の種鶏が百十二万羽ですから、日本の国の鶏の約三割を占めておる。その後一九六四年一月から五月には、アメリカからの種鶏の輸入の実績は二・三倍になっておる。おそらくすでに一九六〇年中に、わが国の鶏の約半分がアメリカからの種鶏からふ化された鶏じゃないか。これは無制限にどんどん輸入されてきている。しかもバイライン種は、雌が一羽かえるたびに権利金として二十円ずつこれを取られておる。それから輸入商社の種鶏の輸入価格が一羽平均四百円から五百円であるのに、それをふ卵業者に売るときには七百円から九百円で売っている。従来農民が日本の種鶏のひなを買う場合は九十円から百円で買えたものが、外国鶏のひなは百八十円から二百円で買わざるを得ない、こういう、まあ鶏小作みたいな状態になって、日本の鶏の約半分くらいが、アメリカの種鶏からふ化されたものになっているのじゃないかという数字、これは私のほうの調査ですけれども、こういうことから、非常に卵の総体的な増産が進できている。一方、それに見合うように消費力は伸びないということで、これは農林省の群馬統計事務所の計算でも、鶏卵の一キロ当たりの生産費が百七十三円六十二銭、このほか、東京へ出荷するときは、キロ当たり包装代、運賃、市場手数料が約十二円から十四円かかる、こういう農林省の統計、これはおそらく一九六四年の十二月のえさの値が上がる前の統計じゃないか。その後約三回ほどえさが上がっていますが、その前の農林省の統計ですら、一キロ百七十三円六十二銭でなければ採算が合わないというのに、今日は約百六十六円から百五十円ですから、一キロ当たり生産費を約十円から二十円割っているという状態です。一方、えさのほうは、一九六三年の十二月から今日まで約三回ほど上がっているんじゃないでしょうか。ことしの二月にも約二割ぐらい上がったんじゃないでしょうか。これはほとんどふすまはアメリカの小麦からできておる。アメリカのえさが日本のえさ市場を支配すると同時に、マイロにしても、小麦にしても、ふすまにしても上がっている。一方、飼料安定法の専管ふすまだとか増産ふすまについては、いまこそ十分の力を発揮しなければならないのに、非常に消極的だ。こういうことで、日本の養鶏業者は種鶏をアメリカからどんどん買わざるを得ない、えさはアメリカのえさを食わさざるを得ない、えさのほうはどんどん上がっていく、これではやっていけないんじゃないですか。そこへ何らかの手を日本の農林省としては打たなければ、養鶏業者が苦しむのは当然じゃないでしょうか。それをどう考えられますか。
  259. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 外国ひなは、昭和三十八年ごろから急激に輸入が増大したことは御指摘のとおりでございまして、私どもの把握いたしますところでは、昭和三十九年に約百十七万羽のひなの輸入がございますが、そのうち、これは動物検疫所の区分によりますと、約五〇%が種鶏用であるということでございまして、それに基づきますと、大体三十九年度に二一%程度のひなが外国ひなどりから供給されたというような計算になるのでございますが、その傾向は、四十年度に入りましてもなお増大の傾向を持っておるということは、御指摘のとおりでございます。そういう状態が好ましくないということは、一面において私どもも考えております。しかしながら、遺憾ながら、在来の国産びなに比べますと、少なくとも多頭羽の飼養に適するという点については、アメリカといいますか、外国ひなの素質の優秀性が考えられますので、一種の農業経営資材でもございますので、この傾向を一がいに私は否定をするわけにもまいるまいというふうに考えるのでございます。しかしながら、その価格は、御指摘のように、やはり国産のものに対して高いということでございますので、これの輸入の防遏をはかりますためには、国内で匹敵するよいひなを造成する以外にはないというふうに考えまして、三十九年度から明年度まで三カ年の計画で、国立の二つの種鶏場を拡充いたしまして、国際的なひなに対抗し得る系統の種鶏及び実用鶏を造出するつもりで、目下努力をいたしておるのでございます。国産のひなにもすぐれた点がございますので、私どもはその成果に期待もし、自信も持っておるわけでございます。  それからえさの点につきましては、これも御指摘のように、濃厚飼料の国内供給力が非常に乏しいということで、輸入の飼料が非常に増大しておることも事実でございます。また、そのうち、おおむね五〇%がアメリカからの輸入によっておるということも事実でございます。これはアメリカが濃厚飼料等に充てるべき穀物の生産量あるいは輸出量として世界最大の国であり、かつ、その生産、輸出のシェアも五割をこえるというようなものが多いわけでございまして、自然日本としてもアメリカからの輸入が相対的に大きくなるということは、少なくとも現状までは避け得ない状態であったわけであります。このえさの価格が、三十八年の夏以来、ソ連の大量穀物買いつけを動機といたしまして、世界市況の高騰のあおりを受けて、若干ずつ上昇をいたしておることもいなめないところでございますが、私は、国際相場の変動等外的要因による値上がりは、どうもお気に沿わないかもしれませんが、やむを得ないものと考えております。ただ、その際、一時的な需給の関係で飼料の価格変動する、あるいは需給事情以上の価格変動を示すということは適当でございませんので、政府としても、総飼料の姿としては百七十七万トン程度輸入飼料を操作して、価格並びに需給の安定につとめておる次第でございます。この輸入ひなというものの増大が、鶏卵の生産増大に寄与したといいますか、影響したことはいなめないと思います。そのことは、産卵率等が高いという意味で、やはり生産増大に加わっておることは間違いがないわけでございます。また、そうい性能に基づいた大規模市場というものを可能にしてきているということからも、やはり生産増大に関係をいたしておると思います。しかしながら、アメリカの外国ひなの供給量がふえるから生産の適正な調整が不可能になるのだとは私は考えておらないのでございまして、与えられた条件のもとで需要に見合うような生産の増大を安定的にしていくということは、今後私どもの努力、関係団体の協力によって必ずしも不可能ではないというふうに私は思っております。えさの価格上昇はもとより好ましいことではございませんが、えさの価格上昇が生産の増大をはばむとは、思いません。ただ、卵価がただいままでのように低迷をいたしております中で、えさ代が上がることは、経営の負担になることは申すまでもないところでございますが、今後養鶏経営というものの安定を考えまして、生産の調整、価格の安定等については、先ほど申し上げましたような方法によって努力をしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  260. 林百郎

    ○林委員 これは農林省の関係の人によく考えていただきたいと思うのですけれども、たとえばマイロの輸入にしましても、一九五九年が五・七万トンであったのが、一九六三年は四十二十二万トン、約八倍にもふえておる。一方日本のトウモロコシ、これは長野県にも県の農林試験所がありまして、非常にまじめな研究員がたくさんいるわけです。そしてもう非常な誇りを持って研究をしているのですけれども、しかし、その研究の結果を生産農民に植えつけようと思うころは、アメリカのこういうものが野方図に入ってきてたたかれてしまう。ブドウについても、品種改良なんかずっとやっているわけなんですね。しかし、改良された品種のブドウをつくってくれと自信を持って農業関係の技術員が勧めることができないというのです。これは政府がアメリカの農産物の輸入というような大きな波をどかんどかんと遠慮なくぶっかけますから、生産農民に対して技術家がいかに良心的な技術を植えつけようと思っても、植えつけることができない。したがって、研究心を萎縮するというような状態になっているわけですね。たとえばひな鶏の問題についてもそうだと思うのです。アメリカのひな鶏のほうが遺憾ながら優秀だというようなお話もありましたけれども、これは日本の国の養鶏業を見ますと、戦前は一時中国からの安い卵が入ってきたのに対して、日本の養鶏業者と技術家が献身的に研究をして、その危機を切り抜けた経験があるわけですね。だから、日本の農業技術家や日本生産農民を信頼して、そうして政府は本腰になってこれを保護すれば、日本の農業は私は世界に誇ることができると思うのですよ。たとえば私もソ連に行って農業を見てきましたけれども、反当たりの収穫のあがり方なんて、ソビエトだって日本の農業を非常に研究したがっているのです。そういう日本農業の誇りをちっとも育てるのではなくて、実はアメリカのほうが優秀だからしかたがない、アメリカのほうが安いのだからしようがない、農林省の首脳部がそんなことを言っていたら、末端の農民やまじめな技術家なんて意欲がなくなってしまいますよ。私はどうしてもそこを変えてもらわなければいかぬと思うわけなんです。政務次官、それどうでしょうか。どこの国だってやっているわけでしょう。EEC国だって、農業問題の利害が対立しているのですからね。そういう点で農林省はもっと真剣に日本の農業を保護するという点に力を入れてくれませんか。私も聞いているうちに、だんだんこれ以上聞くこともあまり積極的にできないような状態なんですよ。そうしてアメリカの農産物を入れるということを前提として、残り得る農業だけは何とか育てていこう、要するに三割農業というのですか、農業構造改善で規模の大きい農業だけ残して、この農産物の自由化のあらしの中で幾らか残していこうという政策ではないでしょうか。これではほんとうに長い間日本の農業を守ってきた中から中以下の農業、そうして日本の農業の技術の改善のために一身を顧みず努力してきた人たちの意欲というものが消えていくのではないでしょうか。何とかもう少し腰を据えてこの際考えていただきたいと思うのですけれども、仮谷さん、どうでしょう。
  261. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 日本の農民が誇りを持って大いに努力ができるように、われわれも配慮をいたしてまいりたいと存じます。
  262. 林百郎

    ○林委員 時間が参りますので、あと一、二問で終わりたいと思うのですが、コンニャクの問題について一、二お聞きしたいのです。  このコンニャクの業界の割り当てについて、非常にいろいろのうわさが立っていますし、日本のコンニャク生産農民は、これが貿易が拡大されてくれば非常に大きな打撃を受けるわけなんです。そういう中で、日本のコンニャクの生産価格輸入価格との大きなさやにたかって不正な利益をはかろうとするような業者が出てきており、じかも、それの輸入の割り当て、あるいは割り当ての資格をとるとらないというような問題にからんで、一部農林省の特産課まで名前が出されているような状態なんですけれども、そういう問題について、割り当ての基準、それから割り当てをどういう業者に与えるかということについては、どういう方針で臨んでいるのですか。  それからもう一つ、そのことが日本のコンニャクの生産に対してどのような影響を与え、それに対してはどういう配慮をしているかということを、あわせて聞きたいと思うのです。
  263. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 割り当てにつきましては、需割り、商割り半分半分の割り当てにいたしておりまして、これはこんにゃく協会にすべて入ってきたものを売るということで割り当てをいたしておるわけであります。それで輸入商社としましては、三十八年からこの輸入が行なわれておるわけなんですが、輸入の経験を持っております六社を選びまして、そしてこれが輸入をいたすというやり方でございます。それで、差益があるということになるのでございますが、この差益は、生産者とかあるいはコンニャク業者というような四つの団体が日本こんにゃく協会という財団法人をつくりまして、そしてその差益はその日本こんにゃく協会が吸収するという方法をとっておりますので、輸入業者のところでそんなに利益が出るということはないわけでございます。そして日本こんにゃく協会は、その差益を積み立てまして積み立て金として持つほかに、たとえばコンニャクの生産農家が生産を行ないます場合に、もっと合理的な生産が行なえるというような、そういう試験研究を各県の試験場に委託しましてやるような仕事とか、あるいはコンニャクの消費を伸ばすための費用とか、そういういろいろな費用に使うということにいたしておりまして、その経理はガラス張りの経理を指導をしておるというように考えておるのでございます。したがいまして、その差益はガラス張りに使っている。もしコンニャクが下がりましたならば、将来、その実益が積み立てられているといくことになりましたならば、そこで買い上げの措置もとり得る、あるいは買い上げができなければ利子補給が行なえる、そういうこともやりたいというような考え方で、積み立てられておるということでございます。
  264. 林百郎

    ○林委員 この問題について一つだけ聞いておきますが、藤井通商で昨年単独で二百三十六・五トン輸入をした。ところが、これが協会の副会長の神宮氏と特産課で、これはどうも粗悪品だ、藤井通商の輸入したものは不合格品だということで、一たんそういう認定をした。ところが、これに対して藤井通商では、それじゃ公聴会を開くということで、農林省で公聴会を開いて、そして実はそれは不適格ではなかったのだ、こういう結論を得たという事実がありますか。
  265. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 藤井通商の入れましたのは、商割の一部の二百三十六トンを先生おっしゃられましたように入れたわけでございます。そしてその品物につきまして、実はこんにゃく協会との間で契約を取りかわしまして、その契約の内容としまして、その品物の粘度価を調査するということになっておったわけでございます。それで広島の農業試験場でその粘度価を調べた結果、品位が、粘度価がわりあい低かったという結果が出ておるわけでございます。
  266. 林百郎

    ○林委員 それで、それは不適格だということで、そういう認定をしたのに対して、練業組合と一緒になって藤井通商が公聴会を開いて、そして品質をもう一度調査して、それは適格品だという結論にしたことはないのですか、あるのですか。
  267. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 そのおっしゃいますことは、ちょっといろいろないきさつがございまして、公聴会というものじゃなくて、要するに、それだけの品位が悪かった、それを規格外とかなんとかそういうことを認定した、そういうことはございません。それはそういう粘度価のものであるということが、この試験場の調査によって判明したということでございます。それからその後、価格をめぐりまして、こんにゃく協会と藤井通商との間でまだ最終的の結論を得てないというような問題がございますので、公聴会ではなくて、藤井通商のほうが、その品物を粘度価によらずにもっと高く買うものがおるというようなことで、そういう人を連れてきまして、聞いてくれというようなことがあったのは事実でございます。
  268. 林百郎

    ○林委員 この問題の質問は、後刻また十分やるつもりですけれども、たとえばどういう輸入業者を適格な業者として指定し、そしてその業者にどの程度の割り当てをするかという問題について、とかくの風評が出ているわけなんですね。たとえば藤井通商に一たん輸入させるということをきめたのを取り上げて、三菱、東洋、兼松、大綿というような西社を入れるとか、それに対してまたあとから藤井を入れて五社にするとかというような、これは私のほうも事実を正確に調査してからあらためて質問しますけれども、世間ではとかくの風評が出ておるし、この業者の指名と、それから業者への割り当ての問題と、それについてのいきさつにいろいろの黒いうわさが立っているので、これについては、ひとつ後刻私のほうも質問をするつもりですけれども、そういううわさの立っていることだけは私は警告をして、この質問を終わりたいと思うのです。  もう時間がありませんので、最後に、もう一度次官にお尋ねしますけれども、きょうの私の質問の主要なのは、貿易の自由化、アメリカの農産物の膨大な輸入、これに対して日本の農業の保護政策を何とかして至急打たなければ、これはたいへんなことになるんじゃないか、ことに選択的拡大として農林省がみずから奨励した畜産部門だとか、あるいは養鶏部門だとか、果樹部門ですね、こういうところにいま大きな経営の危機が見舞っているわけなんですけれども、こういうことに対して、われわれとしては、やはり保護政策をとり、二重価格制もとり、十分日本の農業の生産面の拡大考えていかなければならないと思いますけれども、そういうことに対して、もう一度、次官としてはどういう考えを持つか、それをお聞きして、あらためてこの問題についてはまた質問をすることにして、私のきょうの質問はこの程度で終わります。最後の答弁を求めます。
  269. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 貿易の自由化によって日本の農民が非常な打撃を受けるということについては、私どもも重大な関心を持たなければなりません。そのことはアメリカという特定の国だけの問題にかかわらず、とにかく日本の農業を保護するという立場に立ってわれわれが努力しなければならぬことは当然でありまして、そういう考え方のもとに向かって努力をいたしてまいります。
  270. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十九分散会