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佐藤説明員 技術的な点は
給与局長から御
説明いたさせますが、総論的なことを私からお答え申し上げます。
第一点の
春闘の積み残しの問題でございます。この積み残しの問題は、昨年
あたりから特に表面に出てまいりまして、当
委員会等においてもいろいろ御
指摘があったと思いますが、私
どもが基本的な
立場としてとっておりますところは、御
承知のように、一年一回の
調査で一年一回の
勧告というたてまえでまいっております
関係上、若干の
調査時期をはずれた
事態の
変化というものは、どうしてもこれは残ってしまう。それは来年回しになる。これは宿命としてある程度はやむを得ないことだ。したがいまして、すべて積み残しを洗いざらいお調べをしてそれを取り入れましょうということは、われわれのたてまえから申しますと、そういうわけにはいかないということでございます。ただし、あまりに顕著な
情勢の
変化があった、これをみすみすそのまま無視してしまうということは、大きな
意味でのいわば正義公平の原則からいってどうだろうというような考え方で臨んでまいりました。したがいまして、積み残しが出たからといって、直ちにそれは見るという
立場には立っておらないということを申し上げてきたわけです。ところが、ことしの場合は、この
勧告の
報告書にも述べましたように、
相当積み残しが顕著であります。
基礎の四月中に
現実に支払われた
給与をとらえての
格差が五・六%
——これは非常に正直に何もかにも申しますけれ
ども、五・六%というのはちょっと
予想外に低い、私
どもはそう思った。ということは、一方においてわれわれが付帯的な
調査として、いわゆる積み残しに
相当するようなものを調べておるわけです。これは便宜調べておる。すなわちわれわれが
調査に行きましたときに、もうすでに団交が成立して四月にさかのぼって払うことがはっきりしているものというものをとらえまして、これを参考資料的にとってきておるわけですが、それを見ると、これは
報告書にも述べておりますように、去年に比べてそういう積み残しを持ち込んだ、われわれのとらえた限りにおける
事業所は約倍になっているというようなことで、これは
相当顕著な
事態だ、無視し得ない
事態だろうというふうに考えまして、したがって、それをも勘案した結果、七・二という数字を出しました。したがいまして、これはいま申しましたような顕著な事象がとらえられたこと、あるいは
最初に申しましたように、あらゆる
経済情勢が
生計上に非常に大きな圧力を加えているというような
事情も総合勘案しました結果、ことしはそれを取り入れたということでございます。それの
パーセンテージの根拠の出し方などは、
給与局長から御
説明いたさせます。これも年々
春闘がおくれる、これが常態になってまいりますと、むしろわれわれとして
調査時期のほうがずれているのではないか、そっちのほうの
反省になるわけです。したがって、今後いかなる場合においても積み残しを入れますということは、われわれとしてはむしろ
自己矛盾になるわけです。何度も
春闘の積み残しが出るようならば、
春闘のほうを繰り上げていただかない限りにおいては、われわれのほうは
調査時期をずらさなければならぬ、
調査時期のきめ方が悪いという
反省のほうにつながるわけです。したがっで、手放しで
春闘は今後全部積み込みますというお約束は、できない性質のものであるということを申し上げておきたいと思います。
それから次に、
物価、
生計費、これも全く御
指摘のとおり、去年の場合の上がり方よりもことしの場合はまた
相当上がっているということで、われわれとして特にこの据え置かれたようなグループの
人たち、上げ方の
パーセンテージの少ない
人たちをながめてみますと、これは
現実のところ、いままでよりも
相当がまんしていただかなければならぬということは申し上げざるを得ないと思います。しかし、それもわれわれとしては、とにかく
民間の
給与をとらえての
基礎になっております。
民間の
給与がこうなっている、
民間もそれで何とかがまんしておられるということで、理屈としてはそういうことになると思います。もちろん御
承知のように、
標準生計費は別に算出いたします。それを
ささえにしてはおりますけれ
ども、
標準生計費が一二%上がったからこっちも一二%上がったということは、これは申し上げる筋ではないわけです。基本的にはそういう
情勢のもとにおける七二であるということを、御理解いただかなければならないと思います。
それから第三点として、これは非常に大きな問題、すなわち
給与の
あり方の問題であります。ことに
官民比較というようなこそくな方法についての御
批判があったと思います。私
ども——私
どもと申しますか、私個人の経験でございますけれ
ども、
明治憲法時代、戦前から
公務員給与の
勅令などを見まして、非常に伸び伸びとした形で
給与の額を盛りつけておった、
公務員としてまあこれくらいあれば体面が保てるだろう、仕事も忙しいからというようなこと、そしてそれが何年も据え置かれて
改正というようなこともない、その
時代を、非常に
復古調でございますけれ
ども、いまから思いますと、なつかしく思うのでありますけれ
ども、しかし、やはり
時代を考えてみますと、大げさな、えらそうなことを申し上げて恐縮でございますけれ
ども、やはり今日における
国家全体、
国民全体の
賃金情勢、
経済情勢というようなものからまいりまして、
役人だけの特権的というようなひが目で見られるような形の
行き方をとるのはどうだろうかというおそらく
反省があって、今日の
制度ができているのだと思います。すなわち、
民間の大多数の
水準をとらえて、せめて
民間並みには
役人も
給与上の待遇をしなければならぬということで、
官民比較の
方式というものが生まれてきたのだろうと思うのであります。私は、過去に対するそういう夢はいまだに抱いております。いつかはそういう時期がきてほしいものだと思いますけれ
ども、今日の
情勢のもとにおいては、遺憾ながら現在の
方式というものが、やはり
公務員の側にも、全
国民の側にも、一応納得していただける
方式ではないかということで、従来の
方式を踏襲しているわけです。たまたま
ヨーロッパあたりの
給与決定の
情勢を見ますと、最近
民間給与追随主義というものが、
相当露骨になってまいりました。
西ドイツあたりの
憲法裁判所でも、
公務員の
給与については特に
民間の
給与水準に劣らない形でやれというようなことを、
裁判所は打ち出しております。
イギリスあたりでも、
民間給与を調べて、それを
基礎にしているというような
行き方もぼちぼち出てまいっております。その
行き方がいいか悪いかは別といたしまして、少なくともわが国におきましては、現在のところ、従来の
方式を踏襲するのが一番無難な形ではないかということで考えておるわけであります。
それから
最後に、
勧告と
仲裁裁定の
関係でございます。これは私が最も声を大にして申し上げたいと思っておるところを、
村山委員が大体は非常に筋の通った形でお述べいただきまして、その
前提としているお考えの
方向は、私
どもと全く同じでございます。したがって、さきのお
ことばにもございましたように、公労委の
仲裁裁定のもとにある三公社五
現業の
職員というものは、大体われわれのおあずかりしております
一般職の
職員のきょう
だい分であります。ことに
現業関係の
方々は、まさに
一般職の
職員そのものなんであります。それらの
方々の
給与は、
仲裁裁定によってきまりました場合には、はっきりとここ十年近く、四月にさかのぼって完全に
実施されてきておる。私
ども一般職の
公務員をおあずかりしておる、そしてその
給与を
勧告しております責任を持っております
立場の者から申しますと、実はその辺のアンバランスについては、いても立ってもおられない気持ちを持っておるわけであります。したがいまして、くどくどしたことは申し上げませんけれ
ども、そういう点をもお考えいただいて、やはりどうしても
勧告どおりに
実施していただかないと筋が通らないのではなかろうかという気持ちを持って、これまで
方々の
関係の
方々に強く主張してきておるわけであります。また、幸いにして昨年の本
委員会におきまして、
給与法案の決定の際でありましたか、附帯決議をいただきまして、予算上の
措置を十分考慮するようにという強い
委員会の御決議をいただきまして、私
どもこれを有力なうしろだてとしてまいっておるわけであります。ことしも、ただいまのお
ことばにありましたように、これはもう
あたりまえのことでありまして、
勧告はぜひ完全に
実施していただきたいということを、もちろん総理にも
——ことしはわりあいにゆっくりと総理とお話しする機会があって非常に幸いだったと思いますが、十分お願いをしてまいりました。その他の
関係大臣シラミつぶしに回って御
説明申し上げ、要望申し上げております。なお、今後ともそれを続けてまいるつもりでございます。国会におかれましても、ぜひひとつ私
どもの
立場あるいは筋とするところをお考えいただきまして、ぜひこの
勧告は
勧告どおりに成立するようにお力をいただきたいと、この席から深く頭を下げてお願いを申し上げる次第であります。