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1965-08-04 第49回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年七月三十一日(土曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員      伊東 正義君     岩動 道行君      金子 一平君     砂田 重民君      谷川 和穗君     西岡 武夫君      藤枝 泉介君     渡辺美智雄君      只松 祐治君     平林  剛君      武藤 山治君     横山 利秋君      竹本 孫一君  税制及び税の執行に関する小委員長                 藤枝 泉介君  金融及び証券に関する小委員       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    田澤 吉郎君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       有馬 輝武君    佐藤觀次郎君       平岡忠次郎君    堀  昌雄君       春日 一幸君  金融及び証券に関する小委員長                 毛利 松平君  農林漁業用揮発油税に関する小委員       伊東 正義君    岩動 道行君       大泉 寛三君    奥野 誠亮君       金子 一平君    福田 繁芳君       坊  秀男君    毛利 松平君       山中 貞則君    有馬 輝武君       石田 宥全君    川俣 清音君       東海林 稔君    日野 吉夫君       竹本 孫一君  農林漁業用揮発油税に関する小委員長                 金子 一平————————————————————— 昭和四十年八月四日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 天野 公義君 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    毛利 松平君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       只松 祐治君    野口 忠夫君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    藤田 高敏君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉國 二郎君         専  門  員 拔井 光三君     ————————————— 八月四日  委員奥野誠亮君及び小山省二君辞任につき、そ  の補欠として川崎秀二君及び稻葉修君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 八月三日  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 吉田重延

    吉田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。藤井大蔵政務次官
  4. 藤井勝志

    藤井政府委員 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  昭和二十七年八月、わが国国際通貨基金及び国際復興開発銀行加盟して以来、この二つ国際機関は、わが国経済発展に多大の寄与をしてまいりましたが、ひとりわが国に対してのみならず、世界経済復興及び発展のために果たしてきた役割りは、まことに大きなものがあります。  この間、これら両機関は、資金需要拡大等に伴い、昭和三十四年に増資を行ない、わが国追加出資に応じましたが、その結果、現在では、国際通貨基金割り当て額は約百六十一億ドル、国際復興開発銀行払い込み資本額は約二百十六億ドルとなっており、うち、わが国割り当て額及び出資額は、それぞれ五億ドル及び六億六千六百万ドルとなっております。  さらに今回、世界経済及び国際貿易発展と、これに伴う国際流動性に対する需要の増大とに対処するため、昨秋東京で開催されました第十九次総会において、全加盟国の総意によって、増資方針が打ち出され、その後両機関はそれぞれの理事会において、割り当て額または出資額増額に関する決議草案を作成いたしました。この草案に対し、加盟国総務の投票が行なわれ、その結果、国際通貨基金については本年三月三十一日に割り当て額増額決議が、また国際復興開発銀行については本年四月三十日に出資額増額決議が成立したのであります。この決議によりますと、国際通貨基金においては、全加盟国について、一律二五パーセントの割り当て額増額を行なうほか、日本ドイツ連邦共和国カナダ等十六カ国については、特別の増額を認めることとなり、国際復興開発銀行においては、これら十六カ国について特別の増資を認めることとなったのであります。  この結果、わが国といたしましては、国際通貨基金については二億二千五百万ドル、邦貨換算八百十億円、国際復興開発銀行については一億六百六十万ドル、邦貨換算三百八十三億七千六百万円の追加出資を認められることとなりました。これらの追加出資を行ないました場合、わが国国際通貨基金割り当て額は七億二千五百万ドル、国際復興開発銀行への出資額は、七億七千二百六十万ドルとなるのであります。この追加出資に応ずることは、国際流動性強化等わが国として積極的に協力することになるとともに、わが国自身外貨準備をも補強できることになりますので、これに応ずることといたしたいと存じます。  したがいまして、今回の追加出資に応ずるため、この法律案により、追加出資についての規定を設けますとともに、これに伴い、両機関の定めるところにより、金及び現金で払い込みを必要とされる分についての財源に充てるため、日本銀行所有金地金等のうち、大蔵大臣の指定するものについて、日本銀行に再評価させ、これによって生ずる再評価差益約五十三億七千九百万円を全額国庫に納付させるとともに、外国為替資金の一部百六十一億五千六百万円を限り、一般会計に繰り入れることができることといたしました。  以上が、本法律案についての提案理由及びその概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたす次第であります。
  5. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 吉田重延

    吉田委員長 これより質疑に入ります。通告がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はただいま提案されました議案につきまして、特に今年度通常国会における政府財政方針あと質問をいたします今日段階における四十年度歳入見通し財政事情、あるいは昨日の本会議におきまして大蔵大臣が言明いたしております公債発行についての政府の具体的な方針、こういう一連の政府財政及び国際金融政策関連に おいて私自身非常に理解しがたい多くの問題点を持っておりますので、IMF出資に至るまでの関連において以下質問をいたしたいと思うわけです。  そこで、まず第一にお尋ねをいたしたいと思うのは、過ぐる通常国会において私ども社会党は、財政硬直性、四十年度予算既定経費の当然増あるいは自然増、こういうものによって非常に財政硬直化傾向が強くなってきておる、第二には、財政投融資が前年度対比においても非常に膨張をして、いわば一般財源によってまかなわれるべきものが財政投融資肩がわりをされておるような傾向が助長されておる点、第三点としては、問題になりました財政法の第六条の改正の問題、さらには税の自然増それ自体が非常に減少するのではないか。こういう幾つかの点を指摘して、四十年度予算審議にあたっては、政府が強調いたしました健全均衡財政が、四十年度予算を契機として、四十年度国家財政を転機として破綻するのではなかろうか、こういう点を私ども指摘をしてきたところでございます。ところが、田中財政と称する田中大蔵大臣は、いわゆる高度成長下財政方針は超均衡健全財政であって、四十年度はその超という字はのくけれども均衡健全財政というその立場は堅持するのだということを強調されたと思うのです。ところが、四十年度年度半ばにおける今日段階においてすでに各方面から指摘をされ、あるいは大蔵当局自身もお認めになっておりますように、四十年度歳入欠陥ないしは財源難が必至の状態にきておると思うのです。こういう点で、私はまず第一にお尋ねをいたしたいことは、そういう政府方針と違った財政状態というものが今日段階においてすでに姿をあらわしてきた。その具体的な条件として、まず第一に、三十九年度決算における実質的な赤字というものはどの程度になっておるのかどうか。第二点は、四十一年度における税収歳入不足を中心とする歳入欠陥はどの程度になり、年度末までの見通しを含めてどの程度赤字予見をされると見ておられるのか。この二点をまず第一にお尋ねをいたしたいと思うわけです。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 それでは、ただいま御質問の点の三十九年度決算状況につきまして、数字にわたりますことを私から申し上げさせていただきます。  三十九年度決算につきましては、七月末日で主計簿を締め切ったわけでございますが、その際に問題は、一つ税収の減がどういうふうなぐあいであるか、そういった点からまず申し上げますと、税収は、総体で、税収とその他印紙収入を含めまして百九十六億三千五百万円という金額予算より少ないわけであります。それに対しまして税外収入のほうで百六十億一千五百万円、これは予算より増収になっております。その関係ではまだ赤字ではございますが、歳出不用額が二百七十五億八千七百万円でございます。その結果、一般会計の二百三十九億六千七百万円というのが純剰余金となっておるわけでございます。ただし、これは主税局のほうからも御説明があるかと思いますが、この税収減の百九十六億につきましては、御承知のように、従来は翌年度歳入になっておりました分を当年度に繰り上げたものがございます。これは延納になっております法人税あるいは納付を延長いたしております間接税、これのうち四月に収納になる分は前年度収入とするように改めまして、その金額が五百七十九億弱でございます。そういった関係がございますので、そういったものも実質的に赤字ではないかというふうにおっしゃられればそういう見方もできるわけでありますが、そこは当然前年度資産収入にあげてしかるべきであるといたしまして、こういった剰余金の発生を見たわけでございます。  二番目の四十年度見込みでございますが、これは税収予算に対してどういう減少をしておるか。これは相当な減少を来たしそうであるということは、経済界の三月期の決算状況、また今日までの景況から見まして相当な落ち込みを生ずるであろうということは私どもも覚悟いたしておりますが、はたしてその金額幾らになるかということは主税局、国税庁のほうでいろいろな推定はいたしておりますが、いまの段階ではこの金額幾らになるかということは、まだ確たる自信がないわけでございます。また、もう一つ要素は、今後発生いたします災害であるとか、その他の補正要因がございますが、これがはたして幾らになるかということは、これはまた未知数でございまして、したがいまして、四十年度見込みというものはもう少し時間がたちませんと数字が固まってこないんじゃないか。これにつきましては、大体来年度予算編成期ごろになりまして、本年度の確たる見込みを立てなければならないというふうに私ども考えておりますが、ただいまのところ具体的にどのくらいになるかと言われましても、非常に当てずっぽうの数字になりまして自信がありません。そういう状況でございます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの説明によりますと、三十九年度決算からすれば、税外収入歳出面における不用額等を考慮に入れれば二百三十九億程度の黒だ、しかし、これはまた私あと指摘をしてみたいと思うわけですが、この政令改正による国税収納金整理資金ですね、そういう要素を入れたものを含めれば、いわゆる税収による赤字というものは百九十六億、そしてこの国税収納金整理資金政令改正によるものが五百七十九億とすれば、この二つを合わせれば約七百七十九億というものが三十九年度赤字として、いわゆる従来の方法によって決算をやったとすれば七百七十九億赤字が出た、このように理解してよろしいかどうか、この点が一つ。それと、時間を節約する意味においてもう一つは、四十年度赤字は、財政状態はどういう状態になるだろうかという点について、今日段階ではまだ言明の限りでないということを言われておるわけですが、私どもの手元にありますあれこれの資料から判断をいたしましても、これは相当な赤字予見されるのではないか。さればこそ、これまたあと指摘をしたいと思います公債発行の問題も提起されてきておるのであって、いわゆるわずか程度赤字であれば公債論まで提起されないとわれわれは判断をするわけです。  そこで、重ねてお尋ねをいたしますが、四十年度赤字というものはあらかたどの程度になりそうなのか、その内訳として、大ざっぱでございますが、災害資金とか公務員のベースアップとか、あるいは補正予算で組まなければいけないあれこれの所要の財源が必要だと思いますが、この財源が、われわれの判断からすれば、少なくとも一千三、四百億の金が必要ではないか。そして一面、私どもは私どもなりに一つ推定をいたしておるわけでありますが、税収不足というものもそれ以上に及ぶのではないか、こういうふうに判断をいたしますと、おのずから今日段階において四十年度赤字推定額というものはほぼ見当がつくように考えるわけです。そういう私ども資料、考え方を提示したことを参考にして——参考というか、要素に入れて四十年度赤字見通しというものについて重ねてお尋ねをいたしたい。
  10. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 第一の、三十九年度政令改正によります繰り上げを含めれば、税の減収が七百七十九億になるのではないか、こういうお尋ねでございますが、私ども計算でも大体そういう——端数関係がありまして、これは主税局のほうの数字で申しますと、一応七百七十四億というような数字を私どもは持っております。大差のない数字でありますから、おっしゃることはまさにそういう結果になっておると思います。  それから第二の、ごく大ざっぱな数字ということになりますと、ただいまお尋ねのように、補正規模というものは最近は千億を上回っておることが多いのでございますから、例年によるそういった金額というものは出るわけでありますが、本年度補正幾らになるかということは、いまの段階では非常に大きな要素が動きますので、ただいま御質問のような数字というようなことも、これは例年補正規模を見ておればそう非常に大きく狂っておる数字ではなく、例年のことでございますからこの辺のことは覚悟しなければならぬじゃないかというふうに感じております。ただ、税収につきましては、これはまだ年度も経過の月数が少ないものでございますから、したがって、どれだけになるかというのは、見込みによっては非常に大きく差がございます。そういうようなことで、いま藤田委員がおっしゃいましたような税収財源不足が相当の規模になるだろうという意味におきましては、私どももそういった感じを持ちましていろいろな対策を考えなければいけないというふうに考えておりますが、金額としては現在のところ非常に確たる数字を申し上げる段階でないと思います。
  11. 吉國二郎

    吉國説明員 四十年度税収見通しにつきまして、ただいま鳩山次長から申し上げましたとおり、何分にもまだ七月でございまして、六月の実績がようやくわかりました。これはすでにごらんいただきましたと思いますが、六月末の実績で申しますと、先ほど御指摘のございました、従来の計算でいけば四十年度四月の収入に属すべきものが三十九年度に入りましたために、実際上出ております数字が少なくなっておりますので、それを調整いたしまして計算いたしますと、予算に対しまして六月末で二一・二%の収入がございます。これは昨年同期の決算に対する収入額に比べまして約〇・四%低くなっております。昨年に比べてやや低いというのが実勢でございます。もちろんこの〇・四%を三兆二千億の収入見込みに掛けましても百二十億程度で、いまの段階では幾らにこれがふくれてまいるかということはちょっと推測しかねるところでございます。おそらく御指摘の点は、先ほど御指摘のございましたように、昨年七百億近くの違いが出てきているではないか、それをもとに見積もった収入は当然減るじゃないかという点、それからことしの四月の収入を繰り上げているからそれだけ減るのじゃないか、それから第三点といたしましては、経済見通しが狂ってきているのじゃないか、こういう点からいえば相当収入が減るのじゃなかろうかという御指摘だと思います。  最初の第一点の七百億の点でございます。これは三十九年度補正予算を組みます当時には、私どももこのような赤字になるとは思っておりませんでしたが、最終的に予算を組みます際の見通しでは実績見込みがほぼ確定いたしました。それにいたしましても、その実績見込みに対して約二百億程度減差が出ました。その二百億程度のものがことしにはね返りますと三百億程度になると思います。しかし七百億違ったからことしになったら千億違うだろうということは、見積もりの上ではございません。それから、ことしの四月分を繰り上げて使っておるという点は、制度としてこれを改変いたしましたので、来年の四月分もことしの分に入ります。そこで押せ押せになって、この点は減少要因にはならないわけでございます。結局問題は、ことしの経済見通しがはたしてそのとおり経済の上から裏づけられるかどうかということになると思います。この点は、経済企画庁の見通しで、予算計算の際には国民総生産が名目一一一%、実質で一〇七・五%ということ、それから鉱工業生産が一一〇%という伸びを前提にいたしまして、それで見込まれております。現在の経済の情勢から申しますと、どうもそこまでまいらないということが予測されます。その点から相当な狂いが出るんじゃないかという点は御指摘のとおりだと思いますが、その状況がどうなるかというのは、やはり九月の決算なりがはっきりしてこない、またこれからの景気動き方、あるいは景気刺激策が功を奏すれば、また決算状況も違ってまいります。それらもございまして、いまの段階幾らであるかということは、ちょっと申し上げかねます。
  12. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は説明を聞きまして、ますます疑問を深めるわけですが、まずひとつ事務的にお尋ねしておきたいことは、その国税収納整理資金の取り扱いが、先ほど来から説明がありましたように、従来と違った形で、四月に入ったものは、四十年度計算をされるべきものを前年度の三十九年度に繰り入れて、繰り上げ計算をするような措置を講じたわけですが、この措置は、ことしからずっと、来年もあるいは再来年もいまのところ続いてやる方針なのかどうか。これはひとつ事務的にといいますか、半ば事務的な質問としてお尋ねをしておきます。  第二点は、こういう措置をなぜ政府はとらざるを得なかったのか、この点が第二点。  第三点は、私は非常に奇々怪々に感じますことは、この政令改正というものがことしの四月一日付でなされておるわけですね。これは三月三十一日に四十年度国家予算が衆議院を通過する、こういう段階で、そのあくる日にこの種の重大な政令改正というものがなされるということは、こういう措置を講じない限り、三十九年度赤字決算というものは免れないということは、私はその段階において十分予見をされておったと思う。さすれば、こういう重大な政令改正をやるぐらいであれば、あれだけ本委員会においても均衡財政の問題あるいは四十年度財政事情について検討がなされたわけですから、そういう審議過程で、大蔵当局なり政府は、こういう措置を講じなければことしはこの程度赤字が出ます。したがって、政府事務当局としては、そういう従来にはなかったような一種の苦肉の策を講ずる用意さえ考えておりますと、こういう率直な事情説明というものがなされて、国会審議というものが真に国民のためのものになるんじゃないか、しかるに、こういう審議過程においてはそういう説明もなされないまま、予算が通ったあくる日に政令改正するということは、あまりにも計画的な、一種国会軽視のそしりを免れない措置だと思うが、この点についての見解を聞かしてもらいたい。  第四点としては、結果的に、結論としてこういうものが出た——私はそう思わないわけですが、結論としてそういうことにならざるを得なかったというのであれば、これは明らかに政府経済見通しというものに非常に安易さがあったのではないか、経済見通しに対する誤りというものがあったのではないか。いままたうしろのほうから声が出ておりますように、やはり参議院選挙対策としてそういう措置をとらざるを得ないにもかかわらず隠蔽されておったというそしりも免れないのではないか。このように考えるわけですが、見解を聞かしてもらいたいと思う。
  13. 吉國二郎

    吉國説明員 事務的な点だけ御答弁申し上げます。  収納資金政令措置が今後続けられるかどうかという御質問でございますが、これは政令自体改正いたしておりますので、制度として四月における歳入のうち、三月三十一日までに納期の到来いたしたものは今後とも前年度収入になるということになるわけでございます。従来は四月に具体的に収入になりましたもののうち、同じように制度としては三月三十一日までに納期の到来しているものは前年度収入になっておりましたが、これが解釈上、納期の到来と申しますのは、具体的な納期、つまり法定納期限ではなくして、納期の延期があれば、たとえば間接税でございますと、納期を一カ月延長できます。その延長した納期も含むという解釈でございましたので、たとえば三月三十一日に法定納期限が到来する酒の税が一カ月延納を受けまして、四月三十日が納期になりまして、四月三十日に納めたという場合には、従来の解釈では、四月に後年度収入になるということになっていたわけであります。この点はいろいろ議論もございましたし、四月の歳入収納区分つけ方というものは、原則としてはどちらの場合もとり得るわけでございますが、従来は、御承知のとおり、自然増収があったり、いろいろなこともございまして、さような解釈をしていたわけであります。その解釈解釈だけで左右してしまうのは、これまた非常に大きな金額でもございますし、結果はほとんど同じような結果になるのでございますが、あえて政令改正をいたしたわけでございます。この政令改正は三月三十一日付でやっているわけであります。  それからなぜこんなことを最後のぎりぎりまでやっておったかということでございますが、先ほど申し上げましたように、私ども予算の最終の見積もりをいたしたときには、二百億程度実績見込みから見て、歳入が減るかもしれぬというおそれは持っておりました。いま鳩山次長説明申し上げましたように、歳出のほうの不用額というものも二百数十億出るということもございまして、ぎりぎりのところまで私どもとしてはかような措置をとらずに済むのではなかろうかということで進んでまいっておりました。そういう意味では、衆議院で予算審議されております際にこのような措置を最終的にとらざるを得ないという決断までいたしていなかったということは事実でございます。歳出その他で何とか防げるのではなかろうかと思っておりましたが、法人税収入が急激に非常に悪くなってまいりましたので、三月三十一日に至りまして最終的な措置をとらざるを得なかったわけでございます。  それから、これはずっとやるのかやらないのかということでございますが、先ほど申し上げましたように、制度として政令を変えておりますから、今度の新しい制度は毎年適用になってまいりますので、今後は四月収入で、三月三十一日に法定の期限がきているものは必ず前年度収入に入るという制度的変更をいたしたわけでございます。臨時的措置ではございません。
  14. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この政令改正は、この前事務当局の権限で半ば事務的にやれるような説明でありましたけれども、私は質的には非常に重要な要素を持っていると思う。これは本委員会においても、例の所得税法の改正を中心として、通達行政ないしは政令改正によるそういう行政のあり方については、重要な政令改正なり通達というものは本委員会資料を提示するなり、あるいは特別の説明を要請するというような意見がしばしば出されたわけですね。いわんや、この国家財源に大きな歳入欠陥状態が発生するかいなかということは、われわれ委員会にとっても、また国会にとっても重要な問題だと私は思う。そういう点からいけば、この種のことが予算通過の時点においてなされるということは、どのように弁解されましょうとも、計画的な一つの政策的措置としか私は判断ができないわけであります。そういう点では、私は、当初からこの程度歳入欠陥というものを予見しながら、計画的に事務当局を含めて政府はおやりになったのではないかと思う。私がなぜあえてこのことをしつこく言うかといえば、一言にしていえば、こういう措置を講じられると、四十年度予算というものは、それは全体のファクターから見れば少ないかもわかりませんが、いわゆるこの政令改正による五百七十九億ですか、この五百七十九億という金は、架空な数字を前提にして当初から発足しておったということにもなるのじゃないか。こういう点について、私は単に政令改正、事務的な問題としては理解ができないわけですが、その点についての見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  15. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま申し上げましたように、毎年の対当月と申しますか、三月なら三月の収入というものはほぼ一定いたしております。したがいまして、四十年度予算に影響を与えるといいますものは、先ほど申し上げましたように、来年の三月分の納期が到来したものであって四月に収納するものが来年の歳入に入りますので、来年と申しますか、四十年度に入りますので、実質的に歳入の見積もりが狂うということは、この面からはないということは申せるわけでございます。
  16. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の一番最後の質問、四十年度予算の中にいわゆる一種の架空な数字が計上されておったというふうにわれわれは理解せざるを得ないわけですが、その点についての見解はどうですか。これは場合によったら、ある意味における政治責任を伴うことですから、次官のほうから答弁をいただきたいと思います。
  17. 藤井勝志

    藤井政府委員 ただいま吉國調査官からお答えをしたことで大体御了解はいただけたのではないかと思うのでありまして、四十年度予算を組みますとき制度が変わりましたから、今度は従来の考え方からいえば四十一年度分がある程度その中へ入るわけですから、実質的に何ら擬制されたものではない、こういうふうに私は解釈していただいてけっこうではないかと思う。ただ、先ほどお話がございましたように、やはり国の歳入歳出審議するお互い大蔵委員会関係委員会、そういうようなところにおいて実態をつかまないままに政令改正されておるということの性質、これは十二分に御説を今後の施策の運営に反映しなければならない、こういうように思います。
  18. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、この問題は、私はこのことだけに限らないで、あと質問をすることにも関連をいたしますので、次に進みたいと思いますが、いま次官のほうから言われたように、少なくともこういう操作をやらざるを得ないという条件の発生というものは四十年度予算審議過程でもうわかっておったと思うのです。そういう点から、事務当局に対しても、政府に対しても将来にわたる警告でありますが、そういう適切な事実認識においては、やはりお互いが事情把握について、そごのない材料提供といいますか、審議材料の提供というものは十分に行なうべきである。その点については強く要請をいたしておきたいと思うわけです。  次に、IMFに関連する前段の問題として、これまた過ぐる通常国会における政府の主たる政策というものが幾つかありましたけれども、ひずみ是正と社会開発というものが二つの柱として主張をされたと私は思うわけです。ところが、予算提案をされ、今日に至るまでのいろいろ経過を見てまいりますと、企業間信用の膨張にしましても、中小企業の倒産状態を見ましても、あるいは製品の在庫指数の傾向を取り上げてみましても、あるいは国民生活に一番関係の深い物価上昇の問題を見ましても、あるいは証券業界、山一証券に代表されるような証券業界の一種証券恐慌ではないかと目されるような状態、さらには労働力の絶対不足、あるいは農村における離農者の増大、こういう一連の具体的な経済現象というものを見てまいりますと、私は、政府が主張をし、公約をし、あるいは四十年度予算審議にあたって主張をされたひずみ是正というものは何ら解消されておらない、むしろひずみは拡大をした、こういうふうに指摘をせざるを得ないのです。このことをなぜ尋ねるかといえば、あとのいわゆる財源難との関連において公債発行というものが提起をされてくる。こういう一連の中で、先ほどの政府財政把握の問題ではございませんけれども、実態把握の点において私は共通の認識の上に立ちたいと思うわけです。そういう観点からいきますなれば、ひずみ是正は解消されるどころか、拡大をされた、少なくともそういう状態が遺憾ながら固定化されておる、われわれはこういうふうに判断をするわけですが、このひずみ是正の問題に対する見解、見方というものをお尋ねいたしたいと思います。
  19. 藤井勝志

    藤井政府委員 ただいまの御質問はたいへん重要な問題であり、見よう見方によっていろいろその把握のしかたが変わると思うのでございまして、確かに、現在不況ムードでございますから、ともかくある程度豊かな方向に経済が進んでおる場合にはあらがあまり目につかない、ところが世の中が非常に窮屈になってまいりますと、おっしゃるように、その格差と申しますか、ひずみが一そう拡大して、現実にいろいろな波及効果を及ぼしておる、こういう点においては、おっしゃるとおりひずみ是正は口先だけであって何ら効果をおさめておらないというおしかりもごもっともだと思うのであります。ところが、現在の日本経済、御承知のごとく貿易を中心とした経済というものが今後の日本経済をささえる大きな突っかい棒でありますけれども、貿易は御案内のごとく健全な伸びを示しておる。その天井のもと、その屋根のもとで日本の今後の流動する経済に対処して景気対策一つ一つ打ってきておりますので、現時点に立たれればいろいろ御批判もあろうかと思いますけれども福田大臣のことばではございませんけれども、ある程度つま先上がり秋ごろまでひとつお待ちを願いたい、このように考えるわけでございます。
  20. 藤田高敏

    藤田(高)委員 政務次官の答弁によりますと、見方によれば不況ムード下にあるので、ひずみと称するものが特にクローズアップされて目に映るという言い方でありますが、私は政治的な一つの表現としてはそういう言い方もできようかと思うのですが、やはりわれわれがこの委員会審議をする場合の御答弁としては、いま少し的確性ないしは、失礼な言い方ですが、まじめさをお欠きになっておるんじゃなかろうか。少なくとも私が指摘をしたように、その事実認識においてはできるだけ共通の基盤に立ち、そうして今後何をなすべきかという点については、それぞれの立場においてその方策に違いが出てくることもやむを得ない、しかし、私が指摘したようなことがすべてではないかもわからないけれども、やはり政府が重要な方針として打ち出したひずみ是正というものは、少なくとも今日段階まではその成果をおさめていない、ひずみというものはむしろ拡大、固定化こそすれひずみ是正の効果はあがっていない、こういうふうに私は今日段階では理解をし、把握することが大切ではないか、そういう認識の上に立って次に何をなすべきかということを考えるべきだと思うのですが、その点についての認識の問題ですね。これをもう一度重ねて聞いておきたいと思います。
  21. 藤井勝志

    藤井政府委員 いま再度のお尋ねでございますが、確かに、現在の国内の経済の情勢を見ますと、皆さん方常々お聞き及びのように、あまりにも経済の成長を急ぎ過ぎた。ここで俗に言いますと、足の早い産業と足のおそい産業、生産性のなかなか向上しにくい中小企業、農林漁業、こういったものとの間、あるいはまた幾ら拠点開発をやろうと思っても、立地的にいろいろな条件の整わない地域の開発というものはなかなか進まない。私は、政治はあくまで理想を掲げ、ビジョンを掲げて努力する、ひずみ是正というのがいまできないからこれはだめだというふうに、こういうきめつけ方でなくして、ビジョンを掲げて努力している、ところが、あまりにも高度経済成長をし過ぎた現在こういう結果が出ておる、その現在の日本経済を立て直す大きな突っかい柱は、幸いなるかな、昭和初年の恐慌とは違って、輸出の現状、貿易収支の現状がきわめてよろしい、このささえを前提として今後大いに推進していく。特にまた、これは私の素朴な考えで恐縮でございますけれども、民間投資と公共投資とのアンバランスということに大きな問題がかかっておることも一つの点でありましょう。その問題に対しては、私はやはり税金だけで、お互いだけでささえないで、息子にも孫にも片棒をかつがす、その施設ができることによって息子も孫も助かるのですから、そういう政治的配慮がされていいではないか。いままでその配慮が十分されておらなかった、こういうところに問題があると思うのであります。私はそういう段取りをして、ひとつ調和のとれた社会開発の方向に前進をする過渡期にいまあるというふうに考えるわけでございまして、もうそれ以上私も知識はございませんので、いろいろ数字をあげての説明ということは、手元に資料がございませんから、ただ私の考えておる現在の日本経済に対する考え方の一端を申し述べてお答えにいたします。
  22. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この種の質問は、私は政務次官としては、御答弁の力量なり能力というものは大臣にまさるとも劣らないだけのものをお持ちであろうと思いますが、やはり次官という職責ないしは立場からは、この種のことについての答弁の限界というものもあろうと思うので、そういう意味で、これ以上突っ込んだ質問は御遠慮を申し上げ、機会があれば、この種の事柄についていま指摘をいたしました問題は、私はある意味では国政上非常に重要な問題だと思うので、これは大臣出席の際にその質問を留保さしてもらいたいと思うわけです。いまの御答弁では、そういう意味において私は納得しかねるということで留保いたしておきたいと思います。私から率直に言わしてもらえば、ひずみ是正というそういう次元で判断するのではなくて、やはり高度経済成長政策の失敗ないしは破綻としてわれわれは理解をすべきではないかとさえ私は思っておるわけでありますが、これはひとつ私の意見を主張しただけにとどめて、そうして、先ほど言ったように、質問のなには留保をいたしておきたい。私はこういった経済政策の誤り、ないしは今日段階におけるひずみ是正というようなものとも関連をし、先ほど来から指摘をしてきました財源難というようなものも関連をして、今日急にこの臨時国会でも非常に論議をされておる公債発行というものが、これは一つの側面でありますが、一つの側面としては公債発行論の根拠にもなっておるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけです。  そこで、この公債発行関連をする事柄でありますが、政府は当初、第二次佐藤内閣と言ったほうが適切でありましょうか、その組閣後の方針としては、公債発行というものを提起する前にやはり既定予算の一割見当の削減ということを一つ方針として出されたと思うわけです。この方針が急に公債発行という方向に転換をしたわけですが、なぜそういう方向に方針が変わったのか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 ただいまは既定予算の一割留保を取りやめて公債という問題が出てきたが、こういうお尋ねかと思います。これは当初私ども年度税収に対する見通しというものがこのような——ただいまどの程度ということは、これは確定的なことは申し上げられませんけれども、そういった相当な減収が出るということは想定できなかったわけでございます。ただ、予算財源一ぱいに組まれておりますので、例年どうしても補正予算を組まなければならないという状況でございまして、こういった財源を何とか確保いたしませんと補正が組めないのではないか、こういう考え方のもとに予算の一割を留保しておきたい、自然増が出るようであればこの留保は解除していけばよろしい、こういうふうな考えを持ったわけでございます。ところが、御承知のような経済状況になりまして、税収の減が相当出るのではないかという事情が起こりました。また他方でこういった経済情勢になりまして、財政支出が削減をされるということは、かえって経済の沈滞に拍車をかけることになる、したがって、こういうときこそ財政は当初の計画どおり歳出をむしろ積極的に早目に行なうべきであるというような考え方が出たのであります。そこで公共事業費等を極力繰り上げて事業の施行をはかろうということがきめられたわけでございますが、他方で留保をしておきまして、それで片方で繰り上げるというのは、これは政策としては矛盾をした面があるわけであります。いろいろその後の情勢の推移を見まして、先般の経済政策会議におきまして、こういった、特に民間経済に相当な波及効果を持つところの公共事業費等につきましては、留保を取りやめようということがきめられたわけでございます。これが時を追った経過でございます。したがいまして、当初の見込みと現在の見込みでは、いろいろ経済に対する見方が変わってきたというところにあるのでございます。そういった点で、財政としては、現下の経済情勢では、やるべき仕事は計画どおりやるというふうな方針になったわけでございます。そういうことになりますと、やはり年間を通じまして財源不足を生ずるということがほぼ確実になってきたわけでございます。  そこで、その財源不足をどうするかということにつきましては、ただいま来年度予算編成期までにはっきりした対策を講じよう——財政制度審議会が相当拡大編成がえをされまして、第一回の会議を持ちまして、今後また回数を重ねてまいりますが、そういった各界の御意見等もよく承りまして、早急に検討を進めまして、予算編成期までに対策をはっきり固めたい、こういうのが現状でございます。
  24. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は来年度予算編成に関連しては、いまのあなたの説明で一部理解できる面もあるわけですけれども、非常に基本的な問題として理解できない。それはなぜかというと、私どもは既定予算の画一的な留保ないしは削減方式をとれと言っているわけではないので、これは時間があればあとで幾つか指摘をしていきたいと思いますが、少なくとも政府が当初打ち出した財源難、三十九年度から四十年度にかけて財政事情が苦しくなる、こういう情勢から判断すれば、これはもう専門的なことはともかくとして、ごく常識論としては、入るをはかっていずるを制すという原則からいっても、節約できるものは節約すべきじゃなかろうか、これは私は常識だと思う。そういう方向で大蔵当局も、第二次佐藤内閣も組閣後方針を出しながら、一カ月そこそこでその方針が急に逆の方針に転換するというのはどういう理由なんだろうか。いまの答弁を聞いておりますと、情勢が違ってきた、こうおっしゃるのだけれども、半月や一カ月で方針が転換せなければいけないほど情勢は変わらなかったと思うのです。そのあたりが私としては理解できないのですが、具体的にどういうふうに情勢が変わったのでしょう。そういうふうに留保し、既定予算の不要不急のものを削減していくという方針が、逆に繰り上げ使用をする、あるいは財政投融資のワクを拡大する、そうして景気刺激策に転換をしたわけですね。決定的な要因は何ですか。
  25. 藤井勝志

    藤井政府委員 私はごもっともな御質問だと思うのであります。実は一割留保の問題は、福田大蔵大臣就任直前にきまったことは御承知だと思うのであります。たとえ大臣がかわっても、政党政治でありますから、政策の一貫性をわれわれは忘れてはならぬと思うのでありますが、ただ、いまお話しの点は、中心は、現在の日本経済の実態をどういうふうに把握するか、不況の現状をどう認識するか、いわゆる供給過剰という点にアクセントを置くか、あるいはまた需要不足という面に重点を置くかということによって分かれ道ができるのではないかと私は思う。  そこで、一つの大きな分かれ道として、そういう点から、やはり現在の日本は、大きなささえである輸出入の貿易収支というものが、経常収支は六億五千万ドルですが、こういった黒字を予想しておるというような状態であり、しかも国内は施設が相当高度成長政策に乗ってできておって、余っておる、むしろ直接需要を喚起するという方向によって、経済の健全な、バランスのとれた発展をしていくという方向に考え方が切りかえられた、しかもそれが過去の高度経済成長政策ということでなくて、安定した成長政策への路線へ乗せていく、こういう方向に考え方が変わったというふうに理解していいのではないかというふうに思うわけでございます。まことに不十分な答弁でありますから、もちろん御納得はいかぬと思いますけれども、一応、これはきょう出席しております関係機関では立場上十分な答弁ができないと思いますので、私がかわりまして御答弁をいたします。
  26. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、全く政府方針にそういう意味では政策的にも一貫性がない、これはわれわれ国民を代表する立場からだけでなく、全国民はやはり新聞なり報道機関を通じて政府のそういう方針というものを見たり聞いたりしておるわけですから、そういう観点からも、そういうふうに、重要な方針が朝令暮改式に改変をされるということは、やはり政治に対する不信感というものを増大するのじゃないか、そういう点について非常に憂慮するものです。したがって私としては、これまた次官に対してはたいへん失礼な言い方かもわかりませんが、また後日大臣出席のもとにこの種の問題について質問をいたしたいと思いますが、先ほどの質問関連してやはりお尋ねをしておかなければならないのは、いまの次官の御答弁では、景気刺激策というところに重点を置かれて答弁があったように思うのです。しかし私は、今日公債発行問題が具体的に日程にのぼってきておる情勢の中で考えますことは、やはり国の財政状態というものが非常に赤字要因を持ってきた、財源難だ、ここに一つの重要な問題点があると思うのですね。この財源難をどう解消するかということと、景気の刺激策をとるという点については矛盾を来たさないのかどうか、この点についての見解をひとつお聞かせを願いたい。そのことと関連をさして、公債発行の問題についてはどういうふうに結びつけて理解をしたらよろしいのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  27. 藤井勝志

    藤井政府委員 先ほどの私の答弁に対して、まだ依然政府経済政策が一貫しておらないというおしかりでございますが、これはひとつ長く目盛りを置いていただいて観測していただきたいと思うのであります。なるほど、私も実は一割留保のあのあとを受けて政務次官になったわけでございいますけれども、まっこうからこれは私自身反対をいたしました。これはやはりあくまで安定成長の路線に乗せるための過渡的な現在措置である、いかにも表面部分的にとらえれば、まるで高度成長政策と同じようなかまえではないかという認識があるかと思うのでありますが、そうでなくして、現在の国内の不況の現状というものが、需要を喚起するという迎え水を送ることによってバランスがとれるという診断を現在下していいのではないか、そういう診断のもとにこれから進んでいく、そこで、やはり究極するところは蓄積のある家計であり、蓄積のある企業、そのためには大幅減税をしなければならぬ、ところが財政支出は拡大をしていく、このつじつまを合わせていく妙手としては、ここに公債発行という問題を考えざるを得ない、公債発行は、先ほどちょっと触れましたように、われわれだけの税金でなくて、むすこの時代にも、孫の時代にも、子々孫々、ある程度の長期的な視野に立ってのバランスある経済開発、社会開発をやっていくというところにねらいがあるわけでございますから、そういう長期的な財政政策という観点から、経済政策という観点からお考えいただければ、私は矛盾は解消するのではないかというふうに思うわけでございまして、答弁になりませんけれども、一応お答えをいたします。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、次官の力点を置かれておる長期経済経済構想のもとに、この一つの施策として景気の刺激策をとっていく、需要を喚起する、この点については、需要喚起の方法にも、上からのやり方と下からのやり方と、方法はいろいろあると思いますが、その方法論はきょうは私は論議の対象にしまいと思いますけれども一つの焦点としては理解できる面があるわけです。しかし私は、今日やはり一つ問題点は、先ほど来から指摘をいたしておりまするように、財政事情が一面非常に窮迫を告げてきている、さすれば、片や需要の喚起を行ないながらも、一面今回の既定予算なり今日の既存の財政構造に対して合理化をはかる、改善策を講じていくということは、当然私はこの需要喚起の方策と並行して行なうべきではなかろうかと思うわけです。そういう点から、画一的な一割とかあるいは一割見当というものにはこだわらないわけでありますけれども、たとえば、たいへん率直な言い方でありますが、旅費、物件費、庁費の節約、これは私はやり方によってはできると思う。非常にこれはストレートな言い方でありますが、専売公社の小林参議院議員の選挙違反、ないしはそれに関連をする高級官吏の選挙資金というものは、これは後々問題になると思いますけれども、私はやはりこの公金ないしはこの種の中から一見合法的なような名目をつけて出しておると思うわけですから、そういう高級官吏の選挙資金には金を何百万も出すことはできるけれども、旅費、物件費、庁費の節約はできぬというようなことは、これは国民の立場から見たら理解ができないわけですね。そういう点からいって、私は、既定予算の合理的な節約ないしは削減ということは可能である、この点が一つ、あるいは、全部洗ったわけではありませんけれども、今日の財政構造の中では、経済効果のあまりあがらない、散発的な、野放し的な補助金予算というものがたくさんあり過ぎると思うのです。こういうものに対する整理統合ないしは節約という問題点、さらには、不要不急と目される諸経費の節約——私は、財政事情が公債を出さなければいかぬというところまで追い詰められてきているというのであれば、率直にいって、前国会でああいう強引なやり方をした農地報償、こういうものは不要不急の支出だと思うのです。こういうものに対しての合理化、あるいは一括した言い方をいたしますが、軍事費の削減、こういう点については、この合理化ないしは節約——既定予算の節約ないしは今日段階のいわゆる財政構造の合理化をはかって、歳出面から財源難を克服する対策というのは、当然私は景気を刺激するという方策と並行してとっても、景気刺激策そのものには影響はない、こういうように思うわけです。そういうことまで全部、何というか、半ば放棄した形で転換をされたという点については、理解ができないわけですが、そういう点については、政府としては当然のこととして、公債発行以前の問題として十分な努力をされる用意があるのかどうか。
  29. 藤井勝志

    藤井政府委員 最初の、一割留保したあとそれをほどいたということに関連する御質問でございますが、一割ほどきますとき、百五十億という物件費、旅費、事務費、これは留保のまま、これは節減してもらう、こういう腹をきめて、百五十億という金は一千億の中から節約をしてもらったことになっておりますので、御了承いただきたいと思うのであります。  それから、経済効果のあがらないいろいろな補助金、そういったものの整理をすべきだ、これはごもっともな議論でございまして、予算編成のたびごとにその問題は議題にのぼります。毎年ある程度整理されておるようでございますけれども、四十一年度予算編成にあたっては、おっしゃるとおりの財政事情でございますから、ひとつ一そうふんどしを締め直してこの問題に対処しなければならないと、かたく決意をいたしておるわけでございます。そのほか、御指摘の軍事費の問題あるいはまた農地報償の問題、これは議論すればいろいろ立場、立場で議論がございますので、御趣旨の点はお立場上の御意見として承っておきます。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、そういった一割削減の方向と逆の方向をとったという点については、先ほど申し上げたように、なお機会があれば質問を深めるということで、留保したまま次に進みたいと思うわけです。  この公債発行をするかしないかの前提として、一つには、先ほど指摘いたしましたような合理化ないしは改善策が当然とらるべきである、第二には、歳入面でこれまた幾つかの問題点がありますが、時間の制約上一つ問題点にしぼって申しますなれば、これまたいままで私どもがしばしば指摘をしておるところでありますが、いわゆる租税特別措置については、昨年の税調の答申にももうすでに盛られておるように、当然私は公債発行問題が政府において具体的な日程にのぼってきておる、こういう段階からいけば、歳入面における合理化をはかって、そうして新規の財源というものを調達すべきものであると思うわけですが、この租税特別措置に対する改廃の意思があるかどうか、この点をひとつお尋ねをいたしたいと思う。  私はここでなお追加をいたしておきたいと思いまするが、一昨日でございましたか、わが党の佐々木委員長の代表質問に対して、この問題について佐藤総理の御答弁がありました。それを聞いておると、この租税特別措置というもののほとんどが中小企業向けにやっておるので、大企業向けにはやっていないのだ、したがって、この租税特別措置の改廃ということは考えていないというような、非常に高姿勢な、的の当たらない御答弁があったと思うのです。したがって、これは大蔵当局としてはひとつぜひあと資料を出してもらいたいと私は思うわけですが、そこまで佐藤総理が高姿勢でこの特別措置というものが中小企業向けになされておるというのであれば、大企業と中小企業向けの区分、その内容、内訳というものを具体的に私は出してもらいたいと思う。そうして、実際の問題としてこの特別措置というものが中小企業向けになされておるのか、それとも大企業中心になされておるのか、そういうことについては、これまた私は共通の認識に立ちたいと思うわけであります。時間がありませんから一々は申し上げませんが、いわゆる租税特別措置による減収額の一覧表というものが、貯蓄の奨励、第二には内部留保の充実、第三は技術の振興及び設備の近代化というふうに、五項目程度に分かれて資料もあるわけでありますが、こういうものに沿って、いわゆる中小企業とはという、そういう国の法律に基づいた一つの区分に沿って、中小企業向けと大企業向けのこの特別措置の内訳というものを出してもらいたい。これは別に資料要求として要求をしておきたいと思います。  そこで、もとに返りますが、歳入面についての合理化措置として、租税特別措置についての改廃を行なう意思があるかどうか、お尋ねをいたしたい。
  31. 藤井勝志

    藤井政府委員 公債発行の前提条件として、歳入歳出にわたって合理化、適正化をやらなければならぬというそのお考え、かまえは私も全く同感でございます。いま具体的に租税特別措置の問題についていろいろお触れになりましたが、これはもう御承知のように、従来から整理統合につとめてまいっておりますが、その目的とするところの政策の緊要性、そういった点から効果のあるものは機動的に、これを場合によっては一そう特別措置の恩典に浴せしめる、こういったことも考えなければならぬわけであります。現在の特別措置は、先ほども指摘のように、貯蓄の奨励であるとかあるいは設備の近代化、中小企業の対策、こういう観点から、経済政策の総合的な施策の一環として考えられておるわけでございまして、今後も福田財政は、企業には蓄積をという考え方、家計にはゆとりをという考えでありますから、こういう企業に蓄積をさすためには、やはり内部留保を考えなければならぬ、あるいはまた資金調達には貯金の奨励もしなければならぬ、こういうことがございますから、やはりそういった面をにらみながら、機動的にこれが改廃の措置を考える、ただ、基本的なかまえとしては、おっしゃるとおり歳入歳出について合理化をする、合理主義を貫く、こういうことについては全く同感でございます。  資料要求につきましては、後ほどまた手配をいたします。  ただ一つここでつけ加えて御了解いただきたいと思いますことは、私は、大企業と中小企業というものの区別を二つに分けるという考え方が一体経済の実態に合っているか、こういう疑問を持っておる。したがって、これは一応資本金や従業員で分けておりますけれども経済の実情からいえば、そういう分け方がはたして日本の健全な経済発展の仕分けであるかどうか、同時にまた、大企業がよくなることによって中小企業は滅びるかというと、相関連し、相互繁栄の面もありますから、そういう点をあわせて考えていかなければならぬ。決して私は大企業偏重の政治がいいとは思っておりません。そういった点について、ひとつ共通の場で、大いにいい方向へ施策が進むように御協力をいただきたい、このように考えるわけでございます。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これはあと委員長から資料要求については善処方をお願いいたしたいと思うわけです。それと、特別措置については、その区分のしかたについては論議があるでしょうけれども、中小企業基本法にいわれるように、一つの、中小企業とは何かというものを対称にして政府もその金融についても政府三公庫の諸施策をとっておるように、やはり一つの一応の区画があるわけですから、そういうものによってそれをどうかみ合わしていくか、それをどう資料活用するかは、これは別でございまして、その点はひとつそういう線に沿って資料を出してもらいたいと思います。  特別措置については、これはいろいろ政府政府としての議論もあろうかと思いますが、私どもは、この特別措置そのものによって、それぞれの企業が借り入れ金を増大し、あるいは資本構成を悪化さす、あるいは投資的刺激要因を誘発したというような、いわばマイナスの要因もこれによって相当誘発されたと思う。そういう点からいっても、これはこういうものをなくすることがかえって企業の自立的な意欲というものを旺盛にして、今日重要な課題になっておるひずみ是正に大きな役割りを果たすのじゃないか、また税制の面からいっても公平の原則に沿うものではないか、また一面財源難という今日の重要課題から見て新規財源の調達になり得るのではないか、こういう点からいって、私は租税特別措置については、おそくともこの段階で改廃すべきだと考えるわけです。そういう私どもの主張をいれて、なお御答弁をいただければ幸いだと思うのです。  それと時間の節約の意味において次の質問を続けたいと思いますが、以上私の基本線は、やはり公債発行に及ぶ以前になすべきことがまだ十分になされていない。この点は、やはり政府の責任において歳入歳出面あるいは税制の面にわたって行なうべきではないかということを私は強く指摘をしておきたいと思う。  それとあわせて、先ほどの次官の御答弁ではございませんが、景気刺激策というものに対して需要を拡大していくのだ、私は、この点については、一昨日でございましたか、商工委員会で問題になった中共貿易、こういう東西間の貿易を拡大していく、こういう方面からする景気の刺激、いわゆる需要の拡大、これがやはり本筋にならなければならぬと思うわけです。  そこで私は、この公債発行問題にも関連するわけでありますが、以上の歳入歳出の合理化をはかると同時に、本来的な東西貿易の拡大、それによる有効需要の拡大、この点について通産大臣は吉田書簡にはこだわらないという発言をするところまで政府も前向きになってきたようでありますが、吉田書簡にこだわらないということは、即輸出入銀行の融資をつけることと当然理解すべきだと思うわけですが、これは次官の個人的な見解としてどうだこうだということではなくて、この問題は通常国会以来政治的な問題として相当論議をされたわけですから、私は、今日段階では、少なくとも第二次佐藤内閣の統一見解としてこの輸出入銀行の融資をつけるということに結びついているのだ、こういうふうにこの統一見解を聞きたいところであります。この点についての政府見解をひとつお尋ねいたしておきたい。
  33. 藤井勝志

    藤井政府委員 租税特別措置の今後の取り扱いにつきまして再度お尋ねがございましたが、先ほどもお答えを申し上げましたように、あくまで生きた経済を追うて実態的に処理していく、あくまで機動的に、もう特別措置を置いたからいつまでも固定する、こういう考え方は断じて持つべきではない。ただ、今度企業にも蓄積を与え、そして公債と結びつける今後の施策を考えた場合は、内容はいろいろ変わってきましょうけれども、租税特別措置のような精神をくんだ制度が今後一応検討されなければならぬ、このように思っております。  それから、共産圏貿易の推進について、具体的には輸銀の問題を御指摘になりましたが、あくまで平和共存の政治路線、平和に徹する佐藤内閣の路線からいって、当然洋の東西を問わず、イデオロギーにこだわらず、貿易はできるだけ促進する、そのために吉田書簡というものがある程度制約を与えたという事実は御指摘のとおり、これにはとらわれないというはっきりした意見が発表されました。ただ問題は、これは逃げるわけではございませんけれども、たてまえとしては輸銀のこれが融資を仰ぐかどうかということは、輸銀自体の自主的な判断で決定すべきものである、このように考えるわけで、ただそれを輸銀をしてそうなさしめるような環境をつくる、こういう配慮はやはり前向きに善処しなければならぬ、このように思うわけでございます。ただこの問題は、いままであまりにも政治的な問題でございますので、なりたての政務次官ごとき者が軽々に答弁すべきものではない、このように思うわけでございます。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この点は、私としては、重要な政治問題として論議をされてきたことでありますし、国民もまたそういう視点に立って関心を持っておる事柄でございますので、一大蔵大臣、一政務次官あるいは一通産大臣という立場ではなくて、この種のことは吉田書簡に拘束されないという、そういう重大な答弁がなされる以上、統一見解として、輸銀に対する態度も、これは政府として当然態度決定をしておくべき問題である、こういう立場からお尋ねをしたわけですが、いまのように、依然として昨日までの新聞に載っておる程度の、輸銀の自主性にまかさざるを得ない——これも私の持ち時間からいって無理であろうと思いますので、大臣出席の際あらためてひとつ統一見解を聞かしてもらいたいと思います。したがって、どうかこの点は、次官から、政府の統一見解をただしたいという質問があったということを十分お伝えをいただきたい、そういうことで留保をいたしておきたいと思うわけです。  次に、もう時間がありませんから結論に入りますが、いわゆる公債を発行するにしましても、先ほど来から触れたような施策というものが当然とらるべきでありますけれども、今日非常にそういう努力というものがなされないまま、あるいは十分な論議も、これは相対的な言い方でありまするが、されないまま、半ばストレートの形で公債発行論というものが提起されてきておるように私は考えるわけです。ここで公債発行それ自体のやり方、内容については、時間がありませんので省略をいたしますが、ただ、昨日の答弁に、ことし短期公債を発行するという大蔵大臣の答弁があったようですが、いつごろ、どの程度のワクで、そうしてどういう性格を持たした短期公債を発行なさる御意思であるかどうか、これをひとつ承っておきたいと思うのです。
  35. 藤井勝志

    藤井政府委員 まだ具体的にどういう形式、どういう方法で公債を発行するかということの内部のまとまった結論は出ておらぬのではないかと思います。まだ私自身も関係局の話を聞いておりませず、大臣にはいろいろ御試案があると思うのでありますけれども、いずれにしてもこの公債発行問題は、国民の協力を得ずしてこれが健全な消化はできるはずはございません。十二分にいまお話しになった前提条件を考え、インフレにならないような歯どめを十分にして乗り出すということが絶対必要であり、御趣旨の点はよく大臣にお伝えをいたしたいと思います。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 その点も後日になお論議を深める問題点として譲らなければいけませんが、ここでひとつ私の要望を申し上げておきたいと思うのです。  なるほど、公債発行についてはいろいろ歯どめ論の問題もあり、発行するとすれば、どういうものを前提にして発行するかというあれこれの試案も、まさに公債発行花盛りではないけれども、ずいぶん出ておると思いますが、少なくとも私どもは、企業減税の公債論ないしは湊構想ではございませんが、老朽設備の買い上げ論のごとき、特定な企業の利潤率の低下といいますか、過剰設備の保有、資本構成の悪化等、これらのことは基本的に企業の責任においてなさなければならないものを、政府の責任において解決するような公債発行というものは断じて行なうべきでない。この点はひとつあと見解も聞かしていただければ幸いでありますが、特に強い要望として申し上げておきたいと思う。  最後に、委員長のほうからも時間の制約についての御連絡がありましたので、結論に入りたいと思いますが、私は、以上三十九年度財政事情から四十年度財政事情見通し、ないしは政府の重点施策の公約が依然として実現されてないということをあえて質問をいたしましたのも、IMFの問題に十分な関連を持つわけであります。それはなぜかといいますと、私の質問した一つの趣旨からいえば、公債発行をやらなければならないほど国の財政事情が非常に窮屈になってきておる、いわゆる財源難におちいってきておる、こういう情勢の中で、先ほど説明をされたことから見ましても、特別出資国十六カ国でございますか、そのうち今回特別出資をやるのが主として日本と西ドイツに中心が置かれて、アメリカ、イギリス、フランスというようなものは除外をされておるわけなんですね。私は、なぜこういったアメリカ、イギリス、フランスが除外をされておるのか、この点をお尋ねいたしたいのと、極端に言えば、日本と西ドイツのみが中心になってこの種の特別出資を行なわなければならない理由がどこにあるのか、この点をひとつお尋ねをしたいと思う。  それと、今日、日本の金の保有量は三億四百万ドルと理解をしておるわけでありますが、金の手持ち量は、私は総体的に見て、IMFの加盟国状態から見ても非常に少ないと思うわけですが、その日本が今度の払い込みにあたって二五%金で払い込まなければならぬという提案でございますけれども、この金で二五%払い込まなければならぬということは、私は絶対的な条件でないというふうに思うわけです。そういう点からいけば、今日、日本の金の保有量という実情、非常にワクの少ない現状から見ても、金による払い込み量をさらに減少さすことが必要ではないか、いわゆる円によって払い込みをやることが今日の日本財政事情にマッチしたあり方ではないかと思うわけです。この点は昨年の秋の総会以来、財政事情というものが、約一年間の間に相当情勢の変化もあったわけですから、そういう情勢変化を考慮して、やはり私は適切な対策を打つことがいわゆる生きた政治の姿ではないかと思うのですが、それに対する見解を聞かしてもらいたいと思うわけです。
  37. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 ただいま御質問のございました、特別増資についてなぜ西ドイツと日本とが主力であるか、こういうことでございますが、IMFの割り当て額と申しますのは、発足の当時ブレトン・ウッズというところで国際金融会議が開かれまして、そのときに外貨準備とか、輸出、輸入あるいは国民所得、いろいろな比率があるわけでございますが、そういうものを基準にいたしまして定められたわけでございます。そして、その後もしそういったものについての大きな変化がある場合にはそれの調整をしようということになっておりまして、今回三十四年からちょうど五年目で、割り当て額の調整時期になっておりました関係で、その後の経済発展状態、そういったものを勘案いたしまして、いまおっしゃいましたように西ドイツ、カナダ、日本、大きな国ではそういうところでございますが、特別の増資を受けたということでございます。はっきり申しまして——こういうことを申し上げていいのかどうかわかりませんが、西ドイツの特別増資の意義と日本の意義というのは、私はある意味では、ナショナルインタレストとしては若干違っておるという感じを持っております。西ドイツは、御在じのとおり、IMF発足以来一回もIMFから借りたことがないわけであります。西ドイツが割り当て額をふやすということば、まさしく世界に対して西ドイツがそれだけの国際金融協力をする、こういう意味であろうと思います。それだけ彼らの実力が上がってきた、こういうことだと思います。それから日本の場合には、もちろん日本としても国際金融協力の立場から、もし外貨事情が許す場合には相手方に金を貸してやる。すでに現在ゴールドトランシュとしてすでに払った金額以上にわれわれのほうからIMFを通じて貸しておるわけでございますが、そういったときには国を相携えまして国際金融協力をするということが、世界経済発展の立場からいってもいい、こういう観点もございますと同時に、日本は、何と申しましても、まだ貿易量その他に比べて外貨準備が少ない。そういう意味で、もしクォータを特別にふやしてもらう場合には国際収支の変動期において借り得る余力というものもふえる。国際流動性につきまして、いわゆる所有準備と信用準備ということばがございますが、日本の現状からいって所有準備を急激にふやし得ないとするならば、信用準備を厚くするということが、日本のいろいろな国内経済政策をやっていく上においてもいい、こういう判断で、私どもは特別増資について、むしろ割り当てられたということでなくて、みずから名乗り出てやってほしいということを申し上げたわけでございます。したがいまして私どもは、特別増資をやったということが、終局的には日本の信用準備を厚くし、第二線外貨準備を厚くするという、日本のナショナルインタレストに、自分だけのための意味においても非常にいいというふうに感じて、昨年の大蔵大臣の演説におきましてそういう趣旨のことを発言したわけでございます。  それから二五%の金を払う、これは日本は金が少ないから金でなくてほかのもので払うべきではないか、こういう御質問かと思います。まさしく現在の日本の金の保有量は諸外国に比べて少ない、少ないことについてはそれ相応のいろいろな理由があるわけでございますが、それはいま申し上げないといたしまして、二五%の金、これは先ほどの政務次官の提案理由説明では詳しく申し上げなかったのでございますが、私どもはこれをアメリカから買いまして、そうしてIMFに納める、こういうふうに考えておりますので、先ほど三億四百万とかおっしゃったと思いますが、現在は金は三億三千万ドル程度ございます。それには手をつけることなしにアメリカから買いまして納めるということを考えております。現在は円も交換可能通貨でございます。円はコンバーティブル、交換可能通貨でございまして、したがいまして、円で納めようが金で納めようが、その点、国家財政なり国際収支に対する負担というものは同一だ、こういうふうに私どもは考えております。  それから、なぜこういうような財政の窮屈なときにこういうことをするのかという御疑問かと思いますが、私ども国際金融を担当しております立場から申しますと、やはり五年に一回の増資というものは、あまり短期的な財政事情とかなんとかいうことを考えるべきではなくして、むしろそのチャンスには乗って、そうして日本の信用準備というのを補強しておいたほうが、いろいろな国内の福祉政策というものをとる上においてもいいのではないか、こういう信念を持っておるわけでございます。したがいまして、今回の財源措置といたしましても、国民の皆さまに直接御関係のあるような税金というものを当てにしないで、外為資金の繰り戻し、金の再評価といったようなことで、実はそういうようなかっこうで調達したということが実態でございます。
  38. 武藤山治

    武藤委員 関連して。絶対に金でなければならぬという論拠を明らかにしないじゃないか、条約できまっているのじゃないでしょう。金で出さなければならぬという理由が明らかでない。
  39. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 条約できまっているかどうかという点でございますが、これは参考質料でお配りしたかと思いますが、IMFの規約がございます。国際通貨基金協定の「割当額及び出資」というところで第四項に「自国の割当額の増加に同意した各加盟国は、その同意の日の後三十日以内に、増加額の二十五パーセントを金で、残額を自国通貨で基金に払い込む」こういうことがあるわけでございます。実はいま金で払い込むべきか金で払い込むべからざるかという問題は、国際流動性の議論の一環として確かに重要な点であろうかと思います。実はこの議論の過程におきまして、十カ国蔵相会議、それの下部機構でございます十カ国蔵相代理会議というのがございまして、金で払わない場合は、実はそれだけ流動性がふえるわけでございます。金が二五%移転するということは、その国の金の二五%がIMFに移ったということで、何らその限りでは流動性がふえない。したがって、その金をもっと減らすか、金を払い込まないようにすべきではないかという非常に進歩的な議論があったわけでございますが、ヨーロッパ大陸はそれについては非常に反対をいたしました。そういったことで、この規定を変えることなく現在はその方法でやっていこうということになっております。もちろん金が全く——金といいますか、外貨が非常に足りない国、これについての措置というのは別途ございますが、日本の場合には現在IMFに関する限りは債権国のようなかっこうになっておりますので、それには該当しない、こういうことになっております。
  40. 武藤山治

    武藤委員 それじゃ二五%金で出さなかった場合、IMFは除名するのか、それとも何か罰則があるのか。金で二五%出せないという国の場合、私のところはどうしても自国通貨で出したいのだ、そう言ってエゴで拒否した場合に、じゃ法的に何か制裁があるのですか、国際的に。それとも資格がなくなるのですか、それはどうですか。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  41. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 法的には、結局その増資がIMFの同意を得ないでそういうことをやったら増資として成立しないことだ、こういうふうに思います。
  42. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、どうしても金保有がなく、あるいは外国からも買えないという場合を想定した場合に、その二五%を、うちは自国通貨で出したい、そういう場合には、じゃお前のところはその分だけは増資ができぬからよろしい、IMFとしては受け入れない、こうあっさり向こうは引き下がりますか。それとも自国通貨でもよろしい、引き受けよう、それでよろしい、払い込め、こういうことになりますか。そういう想定の場合どうですか。
  43. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 国によって、国のポジションによって私は違うと思います。たとえば現在のイギリスの場合でございますね。これはすでにIMFから二十四億ドル借りておる、しかも外貨準備がほとんどない、ほとんどないと言っちゃ悪いですが、二十五億ドルくらいしかない、こういった場合には、実はIMFは特別にその国に金を貸してやりまして、そうして金を納めさせるというような、いわゆる金の緩和策、そういうようなことも考えております。それから非常に外貨もなくて金もないというような国については、これは後進国の一部にあるかと思いますが、そういったものについては分割払いの規定もございます。ただ私の申し上げましたのは、日本はいずれにせよそういったような標準に該当する国でないから、そういうことを無理に言ってみても受け入れられない。したがいまして、そういう場合には増資を放棄しなければならないわけでございますが、それは私どもの考えから申せば、国際流動性増強のいい機会を失する、こういうことになろうかということで二五%をぜひ払わさせていただきたい、こう思っているわけです。
  44. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が先ほど質問したアメリカ、イギリス、フランスが特別出資から除外されておるということはなぜかということですね。これは答弁がなかったと思いますが、この点についてのお答えと、これは私も十分資料を的確に把握することが時間的にできなかったわけですが、一部聞くところによると、今度の出資国の中心になっておる西ドイツにおいても、この特別出資に日本と西ドイツだけが中心になることについては、何か非常に反対の意見がいま出てきておるやに聞いておるわけですが、そういう事情について国際金融当局が情報を把握しておればお聞かせをいただきたい。これが第二点です。  それと、私は時間の節約上、最後に集約をして申し上げたいと思うのですが、これはいろいろ提案者側としては言い分はあると思うのですけれども、私は政治的、基本的にはやはりアメリカ、イギリスのドル及びポンドの救済策として、今度の特別出資の役割りというものを日本と西ドイツが中心になって行なうというところに一番大きなねらいがあるのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。なぜかといいますと、いま金一オンスが三十五ドル程度の公定のドル価格が、実質的には七十ドル程度に実勢ドルの価値が下がっておる。こういう現状から見て、また例の一九六〇年十月のドル危機ないしは一九六一年春のポンド危機以来、やはりアメリカ、イギリスを中心とするドル、ポンド経済の救済策のねらいといいますか、そういう政治的意図のもとに日本がこういった大きな負担をしなければいけないというふうにも理解をされるわけでありますが、その点についての見解、見方というようなものについてお聞かせを願いたい。
  45. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 先ほどの御質問のうち、アメリカ、イギリス、フランスがなぜ特別増資がなかったのかということでございますが、私の理解している限りにおきましては、アメリカとイギリスについては、先ほど申しましたいろいろな計算をいたしますと、その後の状況というものが決して特別増資をするに値しない、こういう実態だと思います。フランスにつきましては、これはいろいろいきさつがあるわけでございますが、実はフランスは一般増資案には反対、特別増資案には棄権という態度で、自分のほうは初めから特別増資をする意思がないということを表明しておったわけでございまして、これはそういう計算方式によっての割り当て額については、私は若干ふえるのではないかと思いますが、正確に存じませんが、フランスとしてはかねてから特別増資を受ける意思がないということを申しておった、こういうことでございます。  それから西ドイツが特別増資について反対であるということにつきましては、あるいはそういうことがあるのかもしれませんが、私の知っております限りにおいてはそういうことはございません。あるいは国内の予算措置か何かで——実は西ドイツは選挙前でいろいろごたごたしていることもございまして、国会とか何かの審議がうまくいかないということがあるのかもしれませんが、そういったこと以外に、想像する状況というのは私はないと考えております。  それから今回の特別増資が、西ドイツと日本との負担において、アメリカ、イギリスの通貨の援助に当たるのではないか、こういうふうな御趣旨かと思いますが、現在のIMF体制というものは、もちろんアメリカのドル、それからイギリスのスターリングという通貨を基礎にしてできておるということもいなめません。したがいまして、そういう意味で、増資というものが国際通貨制度のアメリカ、イギリスについて若干の援助をするということがあり得るということは私も否定いたしませんが、しかし日本のナショナルインタレストという点から申しますと、やはり新しい通貨制度がまだかいもく予想されない現在におきまして、米ドルがしっかりして、あるいはスターリングがしっかりしているということが、われわれのいろいろな貿易とか長期の資本取引をする上においては必要なことだ、こういうふうに考えておりまして、すでに御承知と思いますが、イギリスについては過去二回のIMFの引き出しの際に協力をしたわけでございます。アメリカに対してはいまだにそういったことはございません。したがいまして、間接的にはアメリカ、イギリスというもの、これが幸い不幸か知りませんが、現在は世界の基軸通貨であるという現実の認識に立ちますときに、IMFの増資ということは国際金融協力の体制としてある程度それらの国を援助することもあり得るということは否定できませんが、しかし特に二国をあげてそういうことを言うのは、ほかにもたくさん加盟国がございまして、必要があれば、いまIMFからどういうところが借りているかということをお話すればいいわけですが、インドにしろ、アラブ連合にしろ、ブラジルもそうでございますが、そういったいろいろな国が借りているわけでございまして、そういうような国の流動性を増加するという、もっと世界的な広い立場でごらんになっていただいたほうがいいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そのあたりの政治的な判断については、これは見方の相違にもなりましょうし、また見解の相違にもなろうかと思いますが、そういったことは、時間の関係で、いずれ後日またさらに論議を深めたいと思います。  私の質問はきょうはこれで終わります。
  47. 金子一平

    金子(一)委員長代理 平林剛君。
  48. 平林剛

    平林委員 だいぶ時間も経過しておりますし、また引き続いて質問を継続するということをあらかじめ留保させていただきまして、きょうは主として事務的な問題についてお尋ねをしてまいりたいと考えます。  初めに、IMFの増資の問題については、昨年の九月の東京総会において決議をされて、それに基づいて今回予算案の提出とこれに関連する法律案の提出があったと承知をいたしておるわけでありますが、その増資払い込みというのはことしじゅうにやればいいのだというように私は聞いておったのですけれども、今度の国会に補正予算とともにこれが提出された理由というのはどういうところにあるのでしょうか。つまり、私の言わんとするところは、補正を出すならば、今度の国会にはかなりいろいろな面について手当てをしなければならぬ問題があるのにかかわらず、この問題だけを抜き出しに、しかもことしじゅうにやればいいというようなことであったのにかかわらず今国会にこれだけがぬきんでて提出されました理由はどこにありましょうか。
  49. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 今回のIMF並びに世銀に対する増資のための補正がなぜこの国会に提出されたか、こういうことかと思いますが、これは払い込みに先立ちまして、増資の国内措置をとりまして、その同意の通告をしなければならない期日がございます。これがIMFにつきましては九月二十五日になっております。それまでに国内措置を終わらなければならないということでございますが、次の国会までにそういった機会が、必ずあるかどうかということが私どもとしては判然といたしませんので、今回の参議院選挙後の臨時会にお願いいたしたわけでございます。
  50. 平林剛

    平林委員 IMFあるいは世銀の加盟国は百二国ばかりありますけれども、それではほかの国はどういうふうにやっているかという状況をつかんでおられますか。
  51. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 ただいま実は手元に資料を持ってまいりませんでしたが、私の記憶では、すでに二十カ国程度措置を終えている国があるというふうに記憶しておりますが、あるいは間違っておるかもしれません。その日その日に違ってまいりますものですから、ちょっと自信がございませんが、そのくらいの国、それから、たとえばイギリスとかそういうふうな国は、すでに国会に提出されて現在審議中である国もあるわけでございます。
  52. 平林剛

    平林委員 その二十カ国程度、いろいろ国がございますが、主要な国はどういう動きでしょうか。そして、アメリカはどうですか。
  53. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 いまここに七月十五日付のIMFの書記長からの手紙がございます。私、ちょっと間違いまして、二十カ国はございません。順序から申しますと、アイルランド、イスラエル、ケニア、ラオス、リビア、メキシコ、サウジアラビア、タンザニア、タイランド、トリニダード・トバゴ、ユナイテッド・ステーツ、それから現在国内措置は終わったか、あるいは進行中であってまだ通告のないものが、オーストラリア、フィンランド、グアテマラ、フィリピン、英国、こういうふうになっております。
  54. 平林剛

    平林委員 いわゆる十カ国と称せられるパリ会議の人たちの国、私はそれが問題だと思うのですよ。いまの並べられた中には入っておりませんね。
  55. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 十カ国の中では、アメリカ合衆国と現在手続進行中のイギリスが入っております。
  56. 平林剛

    平林委員 主要な十カ国の中でもまだ二カ国、そして世界の中でも先ほどあげられた程度の国しか手続が済んでいないのに今国会に提出をされた理由の中には、私は日本の何か特殊的な事情があるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  57. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 各国とも国会の開催時期とか、いろいろの特殊事情があると思いますが、私どもが今国会に国際金融局の立場からお願いした一つ理由は、われわれとしては世界の流動性を強化するという観点から一日も早くIMFの増資が成立することが望ましいというふうに考えたこと、それからすでに当時の田中大蔵大臣がIMF総会において、日本の特別増資及びIMFの増資についての賛成演説をして非常に積極的な姿勢を示しているという二つ理由かというふうに考えております。
  58. 平林剛

    平林委員 次に、IMFに対して、総会などで公式にその議論をされたことは聞いておらないのですけれども、ソ連、東欧圏が加盟をしたいとか、あるいはさせたらどうかとかいうような議論があったと承知をしておるのであります。私はこれは従来IMFやいわゆる第二世銀などについてのかねてからの批判として持っておったのでありますが、非公式にせよそういう動きがあるということを聞いたのであります。国際的に見ると、東欧の諸国がガットに加盟したいというような動きだとか、あるいはソ連とか東欧経済のいわゆる自由主義経済に対する態度の変化、あるいは中ソの対立などのはね返りとも見られましょうけれども、こういう動きがあるということを聞いておりますが、実情はいかがでございましょうか。
  59. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 私、ソ連及び東欧圏が加入したいとか、させたらいいという話は、非公式にせよ日本に関する限りは聞いておりません。新聞等のニュースで何か出たことがあることは記憶しておりますが、そういったことはございません。もちろん現実の動きとしては、ソ連、東欧圏なりが加盟を申し込まなければ実際の問題にはならないわけでございますが、御存じのとおり、なぜ従来そういうことがなかったのかということでございます。これも私の推測ではございますが、IMFに加入しますといろいろの数字を出さなければならない、そういったものについて、ソ連及び東欧圏は、たとえば外貨準備幾らあるかというような数字はいまだに公表したことがございませんで、そういったようなこともあるいは障害になっているのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。現実に申し込んだときにどういうことになるかということは、もちろん総務の投票によることでございまして、一日本としては何とも申し上げかねます。ただ、ソ連は最初のブレトン・ウッズ協定調印国としては参加しております。そういった歴史的事実はございます。現在東欧圏という中ではユーゴスラビアが加盟しております。
  60. 平林剛

    平林委員 この問題はあらためてお尋ねすることにしまして、IMFの東京総会が昨年ございまして、オリンピックのはなやかな陰にかすんだ形ではございましたけれども、われわれはかなり重要視してこれをながめておったわけであります。そのときの全貌については各種の経済誌その他を通じていろいろ報道されておりましたけれども、そこではいわゆる国際流動性の問題をめぐって、アメリカ、イギリスの側と欧州の大陸諸国、特にフランスとの間において意見の食い違いがあったと聞いておるわけであります。同時に、あまり露骨にはならなかったようでありますけれども、いわゆる南北問題をめぐって低開発諸国においてもIMFに対する批判がのぼるだろうといわれ、また若干そういう空気があったと聞いておるわけであります。そこで、こうした新しい焦点を考えますと、私はIMFの将来というものはアメリカの経済事情に相当左右される点が多いのでないかと思うのでありますけれども、アメリカの経済事情を概括いたしますと、どういうふうに考えたらいいのでしょうか。政府としてはこれについてどういう御見解を持っておるか、ひとつ明かにしてもらいたいと思います。
  61. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 昨年の総会の主要議題として、いま御指摘になりました国際流動性の問題あるいは低開発国に関する南北問題について話し合いがございましたが、確かに流動性について、IMFの総会は言いっぱなしの会議でございますが、英米の考え方とフランスの考え方とは、少なくとも演説をごらんになりますと相当違っておりましたことは事実でございます。ただ、その前に、IMFの始まります前に十カ国蔵相が共同声明を出して、そこで一応の基本的な合意というのができておるわけですが、IMFの会議においてはそれに対する若干同床異夢的な相違点のほうが強調されて出てきたというふうに私どもは理解しております。基本的な認識点といたしましては、金の再評価をしない、為替の変動、何といいますか、浮動システム、フローティング・レート・システムというのはとらない、この二つのもとに、現在は国際流動性不足してないけれども、アメリカが国際収支を改善した暁においては国際流動性不足する可能性もあるので、今後十分に検討しようというのが基本的な共通点であったわけですが、やはりフランスの立場といたしましては、その将来の問題というよりも、現在不足してないという国際流動性についての認識がむしろ過剰であるというような考え方が強いわけでございまして、その一つには、アメリカとイギリスが国際収支の赤字を出している、それによって国際流動性が過剰になっている、そういう認識からすべての議論が出発していたかと思います。したがいまして、IMFの増資というようなことも国際流動性の増強になるわけでございますから、フランス的な立場からいえば国際流動性は現在のところ過剰である、こういう考え方で、相当批判的であった、こういうふうに理解していただいたほうがいいのではないかと思います。  それから南北問題につきましては、もちろんその前に国連の貿易開発会議というのがございまして、相当激しいやりとりがあったわけでございまして、私どもの印象では、その会議よりはずっと穏やかな状況であった、また世界銀行、IDAといったようなものが、発展途上にある低開発国の資本需要というものに、十分ではないにしろこたえつつある、また今後もこたえるという姿勢を出しておりましたものですから、そういった点においては国連貿易開発会議における状態よりもよほど緩和されたかっこうで出ていたということが事実ではないかと思います。  第二の御質問の点で、IMF体制とアメリカの経済の問題ということでございますが、IMF体制に関連する問題というのは、要するに、一つはアメリカのドル、ポンドもそうでございますが、その役割りが若干低いといたしまして、現在の世界の基軸通貨である、その問題に帰着するかと思いますが、私ども見解は、やはりドルが世界の基軸通貨として発展したのはそれだけの歴史的理由があった、こういうふうに考えておるわけでございます。通貨制度というものはもちろん人間の英知によってつくるということも可能でございますけれども、そこには現実的にその国のある基軸通貨なり、そういった準備資産を各国がある程度喜んで保有し、またはそれを使う、そこに実態があるのではないか、こういうふうに考えております。そういう意味で、確かに現在の米ドルを中心とした国際通貨制度に全然欠点がないというふうに申し上げるのは行き過ぎかと思いますけれども、しかしこれを改善し、強化するということによって、あるいは新しい準備資産というものも考えられるかもしれませんが、それと共存したようなかっこうのものをつくるということによってやっていく限り、IMF体制というものは、私は今後も相当長く続くのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。アメリカの経済の短期的な見通しということでございましたならば、これはアメリカの政府の公式の見解といたしましては、現在のところ国際収支も非常にいい、国内の成長も非常にいいというようなことで、また若干の波はあるにしても、基本的には相当強い経済状態を続けていくのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  62. 平林剛

    平林委員 今日までアメリカがいわゆるドル防衛ということを続けてまいりまして、わが国経済にも相当影響を与えてきたことは御承知のとおりであります。確かに、今日までのアメリカの財政危機あるいは長期にわたる歳出超過という点から、アメリカでは歴年の国家予算を見ましても、巨額な軍事支出で予算赤字が膨大化してまいっております。少なくとも一九六二年六月三十日までに予算赤字は合計して三百四十億ドル、一九六二年、六三年の予算でも八十三億ドル、一九六三年から一九六四年の予算でも百二十億ドル、年年予算上の赤字が累積をしておったわけであります。その資金不足は国債でもって補っておったようでございまして、私がいろいろな資料で確かめたところでは、一九六二年十二月現在で三千四十億ドルからの国債がこの財源不足を補ってきたという実情のようであります。この予算赤字の大部分がアメリカの同盟国あるいはNATO、いわゆるそれらの国に対する軍事的な経済的支出で生じたということが、われわれ通観をして言えるところでないかと思うのであります。そこで、このためにアメリカからのドルの流出が続きまして、結局ケネディさんがドル防衛の政策を打ち出さざるを得なくなった。現在アメリカが新たに国際的にはベトナムの戦火拡大というような挙に出まして、これがドルにどういう影響を与えるかわかりませんけれども、極東における軍事的な支出の膨大化ということから、一たん成功したかに見れるこのドル防衛政策が再びくずれていくのでないかという感じを私は持っておるのです。そういうことになるとすれば、アメリカの経済に影響を受ける日本としては、よほど慎重な配慮、それからこれに対応する考え方というものを持っていかなければならぬと考えるのでありまして、この意味ではアメリカ側の公式的な発表は、確かに米国の国際収支の赤字あるいは流動性の増加は大体ケリがついて、今後はむしろかえってドル不足に悩むというような、新しい段階になるだろうということをいわれてはいるようでありますけれども、私ははたしてアメリカのドル防衛が成功したのかどうか、今後の南ベトナムにおける戦火拡大ということがどういう影響を与えるのかという点については疑問を持っておるわけであります。こうした点については、あなたのほうではどういうふうに認識をされておりますか。  それから、こまかいことですけれども、端的に実情を把握する意味で、現在のアメリカの金準備はどういうふうになっておりますか。
  63. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 アメリカの国際収支の見通しについては、確かに私はそう急激にいまのような状態が続くかどうかということについては明言しかねる点がございます。それは必ずしもベトナム問題との関連ではございませんで、むしろ現在のような資本規制をやったということは、ちょうど日本の場合に金融引き締めをやるぞというと、相当企業が借りて、各企業が持っているその流動性の食いつぶしをやっておるという面も確かにあると思うのであります。したがって、この二・四半期あるいは三・四半期あたりに資本の流出が相当落ちておる、その点は、われわれの感触で言いますと、異常に下がっているのではないかという感じもいたしております。そういう意味で確かに問題はあるというふうに考えております。しかし、彼らといたしましても、やはりドルの価値を維持するという観点から、もしできなければ、第二段、第三段の措置をとらざるを得ないということを考えますと、現在のやり方でそのままいけるかどうかということは、永久に心配ないというふうに私は申せませんが、むしろいまの問題として、われわれなり世界なりの考えます点は、もしうまくいった場合には流動性が不足するという点、ことに現在の世界を見ますと、インフレーションを心配するよりもむしろデフレーションを心配するという立場のほうが正しいアプローチではないか、私はこういうふうに考えておりますので、やはり国際流動性の問題というのは今後も真剣に検討し続けなければならない、しかもその時期というのは、そう遠くない時期ではないかというふうに考えております。ただ、ベトナム問題なりそういったものがどれだけ国際収支に影響をするかということになりますと、私は、ベトナムに相当兵隊を派遣したというようなことでどれだけのドル流出があるかということは、必ずしも国家予算——何か十億ドルを要請するとかなんとか言っておりますのと同じマグニチュードで国除収支が悪くなるというふうには考えられないわけであります。というのは、国内で生産しております飛行機なり爆弾なり、そういったようなものを使っているのが実情ではないかというふうに考えておるわけでございます。むしろ問題は、こういったベトナム問題というものが、アメリカにおきましてインフレ的な動きになる、従来、御存じかと思いますが、アメリカの物価は先進国の中では一番安定していた国でございますが、そういったようなことでアメリカのインフレを促進して、それでアメリカの企業なり輸出競争力というものがそこなわれる、そういった面でもしそういうことが行なわれたとすれば、それは相当大きな国際収支のマイナス要因になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、現在のアメリカの金準備でございますが、七月の二十八日現在で百三十八億六千万ドルということになっておるそうでございます。
  64. 平林剛

    平林委員 アメリカの金準備は一九四九年二百四十六億ドルを最高にして、一九六二年の末では百六十億ドルに減少しておったわけであります。いまのお話によりますと、一九六五年七月百三十八億六千万ドルということになると、たいへん金準備が減少しておる。つまりアメリカの金流出は、ドル紙幣に対する不信頼、国際通貨としての強さの崩壊ということを示しておると思うのでありまして、そういう意味では、今回のIMF総会において、アメリカ、イギリス側とそれに対立するフランスを中心とする東欧との見解において、日本の考えというものはこういう事情も判断に入れてその態度をきめていかなければならぬと考えておったわけでありますけれども、どうも日本の態度はアメリカ一辺倒のようでございますが、こうした実情から考えてみて、最近の国際流動性の問題について独自の日本の考えというものはどこにあるのでしょうか。これは大臣の答弁というのが適当かもしれませんけれども、あなた方その意向を受けて実際の実務をやっておる上において、政府としての考えはどこいら辺にあるのか聞かしておいていただきたいと思います。
  65. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 国際流動性についての日本の立場を申しますと、やはり国際流動性については二つのアプローチがあろうかと思います。要するに、世界の国際流動性という総量の問題と、各国の利用し得る国際流動性と、二つの問題があろうかと思いますが、いずれの観点から申しましても、日本はもちろんこれは急激にインフレーションになるほどふえるということは好ましくないと思いますが、やはりある程度世界の経済が伸びていくにつれまして当然増強さるべきものである、こういうふうに考えております。それからもう一つは、その場合に一番端的な国際流動性の増強というのは、何にもしなければ、金の産出量から貨幣用に回ります金でございますが、これの量ではとうてい足りない。われわれの考え方はそういうことであろうかと思います。したがいまして、金以外の何らかの準備資産、それに加えまして、各国間あるいは多角的な信用機構というものをつくることによって国際流動性を増強せざるを得ない。こういうことを考えますと、極端に金に結びついたかっこうの国際流動性の増強ということは、やはり金選好を強めるという意味で好ましくない、こういうふうに考えざるを得ないと思うわけでございます。こういった考え方が日本としては独自の立場でございまして、日本以外で同じような立場をとっている国は、スウェーデンあたりがそうでございますが、そういう考え方に立って今後の国際流動性というのは考えていかなければならない、こういうふうに考えております。したがいまして、IMFというような多角的な信用機構を拡充するということは、日本及び全世界にとって好ましいことであるという基本的な立場に立っておるわけであります。
  66. 平林剛

    平林委員 まあ議論はありますけれども、別の機会に譲ります。それにしても、最近のドルの信用という点から考えて、私は日本外貨準備に占める金の保有の割合というものはもう少し高めておく必要があるのではないかということを感じておるわけであります。  そこで、いろいろお尋ねをしたいと思うのでありますが、初めに、世界各国、主要な国でようございますけれども外貨準備に対する金保有の割合というものはどんな状況になっておるでしょうか。
  67. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 諸外国の金保有高を外貨準備——外貨準備と申しますと、この場合はIMFのゴールドトランシュを除きました外貨準備でございますが、それに対してパーセンテージで申しますと、アメリカが九七%、イギリスが九〇%、西ドイツが六二%、フランスが七九%、イタリーが五七%、スイスが九二%、カナダが四〇%、オランダが八三%、ベルギーが七四%、スウェーデンが一九%、日本が約一九%でございます。
  68. 平林剛

    平林委員 いまお聞きのとおり、世界各国におきましては相当の金保有をやりまして、ある程度、どういう国際情勢の変化、特にアメリカのドル信用についての変化が来ようとも、その金保有というものが強ければ強いほど抵抗力があるということになるのじゃないかと私は思うのであります。そういう意味では、わが国が、いまの御説明ですと一九%でございましたが、それにしても少な過ぎるのではないか。きょうお話を聞いておりますと、現在金の保有は三億三千万ドルですか、外貨準備がおよそ幾らになりますか、現在の二十億ドルを下回った程度でこの程度だとすれば、これは非常に少な過ぎる。私はそういう意味では、もっと日本は金を持っていいのではないかと思うのであります。これにつきまして、おそらく政府も腹の中ではそう思っておるのでしょうけれども、どういう事情で金保有を増加させるような努力ができないのでしょうか。
  69. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 確かに日本の金保有高がスウェーデンを除きました西欧諸国に比べまして少ないことは事実でございますが、こういったものを考えますときに、まず一つは金の再評価があるかないかという予測というものが一つの考え方であろうかと思います。と申しますのは、金というものは利息を生みませんし、むしろ保管費がかかる、そういった意味では、ドルを持っている場合にはある程度の利息ももらえる、したがって、外貨準備としては、たとえば二十年に一回しか金の再評価がないというような事態であれば、ドルを持っていたほうが有利である、スウェーデンなんかはそういうことを絶えず言っておりますが、そういう観点が一つ、もう一つは、日本外貨準備の水準というものが、いわゆるワーキングバランスと申しますか、現実の貿易の決済あるいは為替の平衡操作をします。これは金でするというわけにもまいりませんので、たとえばドルでするというような場合に、それ以上に十分な余裕があるかという観点が一つ、それからもう一つは、実は対外短期債務のポジション、そういうようなことも考慮に入れてやらなければならない、こういうふうに考えております。したがいまして、私どもとしても、もちろん日本外貨準備がふえ、しかも現在のように貿易収支の大幅な黒字基調をもとにいたしまして、経常収支で黒字が出まして、むしろ短期外資等が減っていく、こういうような事態においてそれだけ余裕ができるならば、また、外貨準備がふえていくというような状態であれば買いたいというわけでございますが、現在のところはこの程度の金を持っているということはいたし方ないのではないかというふうに考えております。それから、もう一つ基本的な立場といたしましては、先ほど申しましたように、世界じゅうの国が全部金にかえるフランスのやり方などにならった場合には、先ほどちょっと触れましたように、アメリカの金というのは百四十億ドル足らずでございまして、現在アメリカの国内法——国内法はこれは改正すればできないことはございませんが、アメリカの国内法では通貨の発行量の二五%を金で保有していなければならない、それが九十億足らず、その分は持っていなければならないわけでございます。したがいまして、フリーなリザーブというのは六十一億程度しかないわけでございまして、もし各国が競って買うということになれば、平林先生の御指摘のように、アメリカは金を再評価して、要するに、いままで二ドルの債務を一ドルにして払わなければならない、こういう事態に追い込まれるわけでございます。そういう事態というのは、私どもは世界の貿易の伸長あるいは資本取引の安定性からいって好ましくない、アメリカに別に協力するという意味でなくて、日本のナショナルインタレストとしても、そういった事態が来れば、日本のように貿易によって輸出をして輸入をまかなわなければならないという国にとっては損である、こういう考え方を私どもは持っているわけでございます。したがいまして、現在のように、ある国によってはそういうドルの危機というようなことをいろいろ議論されているようなときに、日本が積極的に金をどんどん買っていくということは、そういう日本の国際金融界における姿勢からいっても正しくないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  70. 平林剛

    平林委員 私はその点は違うのでありまして、アメリカの金融状態が悪化した結果、国際的にどういう影響があらわれてきたかというと、経済的にはプラスの面もあるしマイナスの面もあるでしょうけれども、国際緊張の緩和という点がプラス面としてあらわれてきておるわけですね。あるいは負担の多い軍拡競争はやめていこうじゃないかという動きが出ているわけです。同時に、最近のソ連とアメリカとの接近で見られますように、社会主義諸国との関係を改善しようとする動きがアメリカの中においてあらわれているわけです。そういう意味から考えますと、あなたのいまの認識とは別に、むしろ今日国際関係の中で最も希求する平和問題から考えてみても、アメリカの金融がぐあいが悪くなったということで、一部ではあるが、そういう動きが出ている。そういう点から考えると、日本政府がただアメリカ一辺倒というだけでやっていくという態度は、国際平和という点でどうか。あまり話が大きくなりましたけれども、やっぱりそういう考えも一つあり得ると私は思うのです。あなたの言うように、日本政府の言うように、ただアメリカの経済に追随し、アメリカに対してどうのこうのという態度だけではいかないものがある。もっと高度な立場で日本経済というものを持っていくかじとりが必要なのではないかということを実は私は感じておるわけなんです。  同時に、この金比率の問題についてもはっきり言いましょうか。私はこう考えている。アメリカのケネディさんが、金を大量に買うなんということはアメリカに対する非友好的な態度だということをいつかドル防衛に先がけて言明したことがあるでしょう。こうしたことに敏感な日本がドルを金にかえていくというようなことの積極的努力をしない姿があらわれているのじゃないかと思うのです。現にいまお話しになりました各国の金の保有割合を点検してみますと、一九六四年一月現在で、ベルギーにおいては金の保有は七〇・九%であったのが、いまのお話でありますと七四%、フランスは六五・二%が七九%と増加しておる。またオランダにおいても当時は七七%であったものが八三%とふえている。イギリスは七八%であったものが、いまのお話ですと九〇%にふえている。つまりここ二、三年のドルに対するいろいろな動揺から考えて、各国は同じ自由諸国と呼ばれる国の中においてさえも金保有をふやしておるわけですね。しかも、ケネディさんから、金に買いかえるということはわが国に対する非友好的態度だという強い言明があったにかかわらず、増加の努力をしておる。日本はしていないのです。私はここに日本のアメリカ経済に追随する姿を見出すわけでありまして、そういう意味からだけじゃありませんけれども、やはりもっと金の保有をする努力が必要でないかと思うのです。これは、時間も参りましたから、いずれまた大蔵大臣にも注文をすることにいたします。ただ、先ほどの質問で、最近日本の金の保有は三億三千万ドルというと、六四年一月現在から見ると、私の調べでは二億八千九百万ドルからおおよそ四千百万ドルばかりふえているわけですけれども、これは何かこの期間に金の保有を若干でも増加させようとする効力のあらわれなんでしょうか。あるいはまた、何か数字のとり方の違いでこの差が出てきたのでしょうか。
  71. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 この金の増加は、もちろん外貨準備の水準が上がったり下がったりしますと違うわけでございますが、昭和三十七年末は一五・七%、それから昭和三十九年末は一六・九%、それから本年六月末は、先ほど一九%と申しましたが、一八・九%でございます。去年及びことしになりまして若干ふえましたのは、実はIMFがイギリスに貸し出す際に、過去においてIMFにそれだけの資金を供出した国、それの比率に応じまして、たとえば金はIMFが日本に売りまして円を調達して、そしてそれをイギリスに貸した、こういうことを例の一般取引の発動と同時にやったわけでございます。その金額が三千万ぐらいじゃなかったかと思いますが、ちょっと私も正確に記憶しておりませんが、そういった程度の金がIMFから日本に入っておる、こういうことになっております。
  72. 平林剛

    平林委員 なお、これから本題に入っていきたいのですけれども、約束の時間があるようですから、あとひとつ質問の時間を与えてもらうことをお願いしておきまして、きょうはこれで一応質問をやめておきたいと思います。
  73. 金子一平

    金子(一)委員長代理 竹本孫一君。
  74. 竹本孫一

    竹本委員 私は、時間もありませんので、簡単に二つ三つの点をお伺いいたしたいと思います。  先ほど来いろいろ議論が出ておりましたので、結論的な点だけでよろしいのですけれども、オッソラ委員会結論でありますけれども、大体これは私の理解しておるところでは、三つの結論といいますか、答案が出ておると思うのです。一つはIMFの機能を強化するという線、それからもう一つはフランスの考え方、それからもう一つは英国のモードリング案、こういうふうに理解しておりますが、今回のこの法案等につきましては、言うまでもなく、IMFの機能拡大強化の路線につながっておると思うのですけれども政府としては他の二つの考え方をどういうふうに批判し、どういうふうな結論の上に立ってこれをやられるのか、その点だけ、結論を伺いたいと思います。
  75. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 オッソラ委員会の報告というのは、実はもうすでにできております。できておりまして、それが蔵相代理会議——私もその一員でございますが——に報告されておりますが、まだ公表になっておりません。八月十日に世界じゅう一斉に公表することになっておりますので、詳しい内容をその前に発表しないという約束で、私も先月フランスに行ってまいりましたものですが、こういう場面でもちょっと申しかねるわけでございますが、いま先生のおっしゃいました三つの問題ももちろん含めておりますし、その若干のバリエーションが入っておるわけでございます。しかし、結論というものは正直言ってございませんので、それについて各国のエキスパートと申しますか、専門家がちょうど詰め碁のようなことをいたしまして、これはこういうことをやればこういうことになるというような、何といいますか、インパクト、現行通貨制度に対する判定とか、そういったものについてのいろいろな意見が対立的に提起されている、こういうことでございます。いまの端的にフランスのCRUについてどういう考えであるかということでございますが、私ども日本の立場としては、フランスの立場とは、率直に申しますと同調しがたいということが言えるかと思います。それは、一つは、先ほども平林先生との応答がございましたように、金の結びつきが非常に強いということ、それから現実の問題としては、フランスの考え方が流動性の増強という点に関心があるのではなくて、むしろ流動性をふやさない、そういうほうに力点が置かれているという、まあこれは制度の問題じゃございませんが、力点の置き方がそういうふうに感ぜられますので、にわかに同調しがたい、こういうふうに考えております。
  76. 竹本孫一

    竹本委員 フランスの考え方に対する御批判についてはあとでちょっと伺いますが、その前に、最近またアメリカの財務長官ファウラー氏が新しい国際通貨会議を提唱しております。結局これは、私の考え方では、やはりフランス的な考え方やイギリス的な考え方というものが相当強く出てきておる、その牽制のためにそういう発言をしたんだろうと思うのですけれども政府はどういうふうに見ておられるか。また、いま申しましたことを繰り返しますが、やはり単なるIMFの機能強化の一本でいっておるということは、先ほど来いろいろ御批判もありましたように、日本の国際金融界における立場をまずくする面もありはしないか。そういう点も心配されますので、アメリカがやはり相当心配をしなければならぬほどにフランス案やイギリス案、少なくともアメリカ案以外の路線が強く出てきているんじゃないかと思います。その点についてのお考えはいかがですか。
  77. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 アメリカのファウラー構想というものは、実は日米合同委員会の始まります前の週にファウラーがバージニアで演説をしたわけでございますが、ただ国際通貨会議の準備会をつくりたいというようなことで、具体的なその内容については何ら触れられておらないわけでございます。その後日米合同委員会等におきまして日米間の話し合いの節も、具体的などういう考え方をアメリカが持っているかということは実はあかされなかったわけでございます。一方アメリカには国内的な諮問委員会のようなものができまして、前の財務長官のジロンが委員長になりまして、前に国際金融を担当しておりました財務次官のローザとか、IMFの調査局長をしておりましたベルンシュタイン等が入りまして、国際通貨制度に関する諮問委員会というのが発足したわけでございます。おそらくこういったところから何らかの意見が出るかと思いますが、問題は、現在までこういったことを討議し続けてきた十カ国蔵相あるいは蔵相代理会議との関係がどうなるかというようなことでございまして、実は昨日パリにおきまして十カ国蔵相代理が集まっております。私は国会がございますものですから代理——代理の代理が行っておりますが、そういったことで、その結果におきましてどういった発展になりますか。フランスのジスカールデスタン蔵相が言っておりますように、フランスは新しい国際通貨会議に参加しないと新聞には伝えられておりますが、私どもの見ますところでは、要するに、アメリカが一体何を考えているのかということをはっきりさせないでそういう国際会議を開いてみてもしょうがないじゃないか、少なくともオッソラグループ、これは政府代表のレベルではございませんが、エキスパートの段階では何らそうした結論が出ていない、そういった段階で国際通貨会議を開いてみてもしょうがない、したがって、まずフランスとして要求することは、米がまず赤字を克服することだ、それと同時に、実際についてどういうことを考えているのかということをまず知らせろというように私どもは受け取っておるわけでございます。したがいまして、今後九月のIMF総会に際しましては、十カ国蔵相代理会議あるいは蔵相会議もあると思いますけれども、そういったところにおいてどういう進展をなすのか、ある程度アメリカも妥協を考えていると私は思うのでございますが、しかし、なかなか本質的な姿勢と申しますか、アプローチのしかたが違うわけでございまして、形式的に似たようなものでも、実態は非常に違うということがあり得るわけなので、それだけこの問題についての対立諸国、ことにフランスとアメリカが合意点に達するということは、そう簡単にできるとは私どもは考えておりません。
  78. 竹本孫一

    竹本委員 政府のお考えを結論的に申しますと、国際通貨会議の動きにつきましても、フランスの動きといったようなものを過小評価しておると同時に、アメリカの力を過大評価しておると私は思うのです。そこで、一つ結論的に伺いますけれども、私は、たとえばアメリカのほうから申しますけれども、アメリカのドルの立場というものを考えた場合に、ドル防衛は確かにいま成功しております。第二・四半期も黒字が出てきたということでありますが、ここで、政府ははたして気がついておられるのかどうかを伺いたいのですけれども、一番私どもが心配をしておる点は、ドル防衛にアメリカが成功するに反比例をして、よその国はドル不足になり、あるいはデフレ的なものになり、あるいは金利が上がるというようなことになりまして、アメリカのドル防衛が成功するということは、すなわちそのまま自由国家群といいますか、そういうところの経済状態を悪くする方向へつながっておる。現にドル防衛のために、たとえばアメリカは五百五十の会社を集めて応援をしておるそうでありますけれども、海外への直接投資を押える。押えられたほうはたまりません。さらにまた、商業銀行の海外融資を抑制する。これも抑制された側から考えると、去年は二十億ドル出したものをことしは五億ドルに押えるというのですから、差し引き十五億ドルが足らなくなる。こういうことで、そういうアメリカ中心の独善的な、自分かってなドル防衛を急いでやっておる。それが成功して、国際収支がよくなったというのでありますけれども、よくなったということは、すなわちそのままアメリカと親善関係にある他の国々の経済をそれだけ端的に悪くしておる。これではアメリカは救いがたい矛盾におちいるのではないか。ドル防衛をゆるめれば自分のほうが参ってしまう、ドル防衛を強めれば、自分の協力を願わなければならない世界の他の国々が参ってしまう。一体アメリカはどうするつもりであるか。また日本はこの点をどう評価しておるか、その点をずばり伺いたいと思います。
  79. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 ドル防衛につきまして、確かにおっしゃるような面があると思います。ケネディの初期の時代においては、むしろケネディの姿勢としては、先ほど平林先生がおっしゃったように、ドルというのは世界の通貨なんだから持っているのはあたりまえなどというような顔をしていた時代があったと思うのであります。ところが、ヨーロッパがその後、インポーテッドインフレーションということばがございますが、輸入されたインフレというようなことで、アメリカが国際収支の赤字を出すからヨーロッパの物価なんかが上がるのだ、こういう議論がヨーロッパあたりで非常に強く出まして、アメリカの国際収支の改善策を迫ったわけでございます。したがいまして、アメリカ国際収支の対策をなぜとらざるを得なかったかという淵源は、実はやはりヨーロッパのほうのプレッシャーが非常に強かったということが一つあろうかと思います。したがいまして、それについてアメリカも同意して、それでは自分のところは国際収支を強力に立て直すという決意をしたわけです。したがいまして、アメリカが国際収支を立て直すという点については、これはドルの信任を厚くするという意味で、日本の立場といたしましても、ドル防衛と申しますか、アメリカの国際収支の改善について、大筋のことについてこれを否定するというわけにはまいらない、こういうふうに考えておるわけです。したがいまして、問題は、そういった大きな前提のもとに、先ほど御発言があったように、各国のインパクトをどういうふうにして弱めるか。ドル防衛が強化されますと、実は一番困るのは後進国でございまして、二月以降ドル防衛の強化をした過程数字を見てまいりますと、フランスとかイタリアとか、要するにヨーロッパのそういった国の外貨準備は決して減っておりません。日本についても短期外資等いろいろな影響がございました。そういった意味で、要するに彼らとしてむしろねらわなければならないところにそういった効果が出ていないという矛盾はございます。したがいまして、われわれとして、大筋においてはドルの強化、あるいはアメリカの国際収支の改善については反対できない。しかし、そのワクの中で日本についてできるだけの考慮をしろ、こういう姿勢でまいっておるわけでございまして、この前ジョンソンの国際収支教書が出ます前に財務次官補のトルードという人が日本に来まして、事前に日本に対するそういった影響をいろいろ打ち合わせまして、平衡税の政府債に対する一億ドルの免税というようなことをやったわけでございます。私はそれで必ずしも十分ではないと思いますけれども、現在の国際金融協調体制からいって、そういったようなことで日本への影響をある程度緩和してくれたということに対して、戦果ということは非常にぐあいが悪いのですが、成功した、こういうふうに考えておるわけでございます。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 竹本孫一

    竹本委員 それでは、ついでにちょっと政務次官に伺いますが、問題は重要なんです。政治や外交の面で対米追従ということはしょっちゅう本会議でも委員会でも言われますので、この問題には触れません。経済や通貨の問題までアメリカに追随するということであってはならぬと思いますが、いまお話しのように、ドルは基軸通貨、国際経済における軸になっておるのだ、こういうこともあるし、事実そういうふうに考えられておるわけです。そうなれば、やはりアメリカのドルの防衛というものは、アメリカのナショナル・インタレストから見れば理解できます。しかし、それはそれ自身すでに世界経済の基軸通貨であるという自分の立場をアメリカが放棄しておることではないか。その点の矛盾については、やはり日本日本の立場で強く主張すべきものがあるのではないか。私は、そういう意味で、アメリカの国内経済の面から見ましても、これは日本があらゆる機会をとらえて、アメリカのドルは確かに世界経済において基軸通貨としての役割を果たしておる、それに反して単なるナショナルインタレストを振り回すということは矛盾しておるということを、もう少し日本政府日本の立場において強く主張すべきではないかと思うのですが、次官のお考えを伺いたい。
  81. 藤井勝志

    藤井政府委員 先ほど来国際金融局長からいろいろ答弁をいたしておるわけでございますが、ただいま御質問の趣旨はごもっともでございまして、たまたま、時あたかも目下この問題についての国際通貨会議の提唱も、いまお話しのファウラー提案というものがあるわけでございまして、これをめぐってもう一度国際的視野に立って検討するということの重要性は御趣旨のとおりであると思うのであります。ただ問題は、先ほども金融局長から答弁があったごとく、やはりよってきたる歴史的なものというもの、そして日本とアメリカとの経済協力関係、こういった現実の上に立ってどういう方向がわが日本経済のためにプラスになるかということを考えなければならぬ。人間の知恵でつくり出す国際流動性という問題に対して、絶えずビジョンを持ちながらも、現実の足の上に立って処理しなければならぬというふうに思うわけでございまして、御趣旨の点はひとつ新たな角度で十二分に検討する、大臣にもよく御趣旨は報告をするということで答弁にかえたいと思います。
  82. 竹本孫一

    竹本委員 十分検討され、十分主張されて、アメリカのドルが国際経済において基軸通貨であるという立場と責任を忘れないようにひとつ主張していただきたいと思います。  時間がありませんので、あともう一つだけポンドの問題を伺いたいと思います。イギリスの議会も、きのうでしたか、二日の日ですか、三百三票と二百九十票のわずか十三票の差でウィルソン内閣不信任を否決したようでありますが、問題はやはりポンドの危機にかかっております。  そこで私は二つのことを伺いたいのですが、一つは、イギリスのポンドの動きというものを日本政府として今後どういうふうに見ておられるかという問題が一つ。それからもう一つは、イギリスはこのポンド危機に際しまして、ウィルソン内閣ができると直ちにバーゼル協定に従って三十億ドルのドルを借りてきた、こう思うのです。そうしてみると、いま日本は一生懸命IMF体制強化ということに協力して、独立の法案をつくり補正予算を通そうということでありますが、一体そういう方法で三十億ドルも借りて危機は切り抜けるという体制があるときに、このIMF体制強化ということに一生懸命になられるのはどういう意味か。このポンドの見通しの問題とバーゼル協定との問題、両方伺いたい。
  83. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 ポンドの問題は確かにいろいろな問題があるということは私も否定いたしませんが、私どもの出ております十カ国蔵相会議なり、OECDの第三作業部会の少なくとも政府、中央銀行の間におきます一致した見解は、ポンドというものは、現在の国際通貨制度を安定的にやっていくという意味では、どうしてもある程度助けて、それをガタガタさせないようにするということが基本的に必要だという考え方に立っていると私は思っております。IMFが二十四億ドル出しました際にもいろいろ議論がありまして、フランスあたりは何か言うのではないかというふうに考えておりましたが、フランスも参加しております。したがいまして、ポンドの問題については問題がないというのにはあまりにもむずかしい問題でございますが、ただ一言申し上げておきたいのは、もちろんイギリスには構造的な問題もございますが、確かに国内の最終需要が非常に強い、そういうサイコロジカルな問題とぶつかってきて貿易収支が悪い。それに加えまして、スターリングのバランスが過去において非常に外貨準備よりも多いというようなことで、いわゆる例の信任の問題がゆらいできている。この三つの問題を抱えてきているゆえに、なかなか処理がしにくい問題になっておるわけでございます。しかし、われわれとして日本政府のナショナルインタレストの立場から申しましても、ポンドが安定しているということが望ましいというふうに考えまして、私どもも国際金融協力の見地から、最初の三十億ドルの場合にも日本銀行が参加いたしましたし、それをIMFの引き出しに置きかえる際にも参加したわけであります。  それから、バーゼル協定で三十億ドル取れるのに、なぜIMFなんかを強化するか、端的に言えばそういう御質問かと思いますが、バーゼル協定そのものではございませんし、バーゼル協定以外に日本ども入ったわけでございますが、あれは中央銀行が三カ月という約束で貸した非常に短期の金でございまして、中央銀行の立場でいえば、国会の予算の承認もない金をそう長く貸しておくわけにいかないということで、ロード・クローマーあたりが各国の中央銀行総裁に電話をかけまして短期的にそうやったわけでありますが、それはすべてIMFが引き出されて返されておるわけであります。というのは、要するにIMFのメリットというのは三カ月とかなんとかいう短い金でなくて、三年ないし五年程度の長い金が借りられる、そういう間に国内のいろいろな経済政策も調和しつつ国際収支を改善していくという意味で、いわば中期のファイナンスができるというところにIMFのメリットがあるのではないか。もちろん各国のバイラテラル、二国間のスワップ協定というようなものも短期の処理には非常に役に立つと思います。そういう見地から、日本もアメリカと最初は一億五千万ドルでありましたスワップ協定も現在は二億五千万ドルにふやしておる。そういうことをやっておりまして、私は、国際流動性の強化というのは、一つの方法だけではなくて、いろいろなものの組み合わせによって解決されるべきものではないか、こういうふうに思う次第でございますが、IMFはIMFとしての役割りがやはり当然あるのではないか、こう考えております。
  84. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから最後の問題を一つ伺いますが、いまのポンドの問題と関連があるのでございますけれども、きのうの新聞で見ると、アメリカのマーチン議長も、それからジョンソン大統領自身も、ポンドの問題については若干疑問を投げかけて、問題を起こしておるようでありますが、これはきょうここで十分論議もできませんので、この程度にいたしたいと思います。  そこで、最後に、ポンドが下がる、あるいはいまお話しのように各国の努力でこれをうまく安定させ、どう維持するかという問題と関連して一つ伺いたいのですが、設備等輸出為替損失補償法の問題であります。これを私が伺います理由は、今日輸出を大いに盛んにしなければならぬというその輸出の中心に船があることは御承知のとおりであります。ところが、船は大体去年三百万トン、ことし二百四十万トンの輸出が考えられておるようでございますけれども、詳しくわかりませんが、大体二割から三割はポンド建てであるということになっておるようであります。そうしますと、輸出を盛んにしなければならぬということをいま佐藤内閣も一生懸命お叫びになっておるわけだし、またその輸出の中心である船が大事なことは申し上げるまでもございませんが、その輸出の二割もしくは三割というものはポンドでやるということが問題になるわけです。政府のお考えで、いまお話しのようにポンドが下がらないというならば、この補償法でそういう契約をして、安心して船を出せということでやってやっても別に政府は損にならない。もしまたポンドが下がるということになるとすれば、かりに三百万トンの二割として六十万トンの船を輸出するとして——いろいろ違うようでありますから大ざっぱな議論になりますが、一億ドル、三百六十億円の船を輸出する、ポンドが一割下がったとなれば三十億円からの損害であります。したがって、船会社の輸出ということについては、ポンドの先行き不安ということになればちゅうちょしなければならない、こういうことでありますから、下がらないものであるならばもちろん問題はない。それから下がるものであるならば、むしろその下がるものを補償してやるということで為替損失補償法というのはできておるんじゃないか。この法律を読んでみますと、「本邦から輸出する者が外国為替相場の変更に伴って受ける損失を補償する制度を確立する」ということが第一条に書いてあるし、さらにその第二条の第一項四号には「設備(船舶及び車両を含む。)」ということになっておるようです。したがって、ちゃんともうこの法律はそのためにつくられておるようでありますけれども、聞くところによると、船の問題については、これは一向に発動もしないし、適用もしないというようなお考えであるようでありますが、第一に、法は何のためにこれを適用しないのであるか。第二に、ポンドが変わらないならば、安定しておるものならば、これで補償してやって、安心して輸出を盛んにさしても何ら政府は損にならないではないか。第三に、もし下がるというならば、そのためにこそこの法律はあるではないか。その点についてお伺いをいたします。
  85. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、法律があるのになぜやらないのかということが第一点かと思いますが、これは御存じのとおり相当長い間政府としてもやっておらなかった措置でございます。  それからもう一つは、ポンドでなければ輸出できないものが相当あるではないかという問題でございますが、これはポンドの契約というものが実際には相当あって、あるいは流れておるのかもしれませんが、私どもが毎日事務を処理しておりますときに見ますと、ドル契約というものがほとんどでございます。ポンドの将来について政府の立場であぶないとかあぶなくないとかいうことは、私は言うべきものではないと思います。すべて為替リスクというものは、通常は商業上の危険負担と申しますか、カバーによってやるべきものだというふうに考えておりますが、それに加えまして、現在のような段階にそういった措置を再発動させるということになりますと、安易にポンド建ての契約がふえる可能性もなきにしもあらずということと、それからもう一つは、ドルでもけっこうやれるではないかということ、それからもう一つは、商業上のそういった損失について、そこまでやる必要があるのかどうかという点で、私どもは従来ポンドといいますか、その為替リスクにつきましてその措置をするという法律を停止していたという事態できておるわけでございます。いまこういったものを再開しますということは、ある意味では、政府がポンドがあぶないというような印象を中外に声明するというようなことにもなりますので、このことは非常に慎重に考えなければならないというふうに考えておるわけです。
  86. 竹本孫一

    竹本委員 非常に問題が重要なので大臣にも伺いたいと思うのですけれども、もう一度問題を整理して、特に次官にお伺いいたしたいと思います。  その第一は、ポンドが下がるというようなことは言うべきではないというお話でございました。そのお考えもよくわかりますが、しかしポンドが下がるかもしれないとかいうことについて言うべきものではないかもしれぬけれども、考えるべきではあると思うんですね。それについていろいろの手を打たなければならないのに、その点はどうか、これが第一点であります。  それから第二番目は、ポンドの為替リスクというものは業者が民間でみずからになっていくべきものであるというお話でございました。確かにそれは原則でしょう。それならば何のために設備等輸出為替損失補償法をつくったか。この第一条にちゃんと詳しく書いてある。私は詳しく読んでみて、こんなにりっぱにできておる法律はないくらいによくできておる。そんな法律をつくって、長い間運用してないからいまも運用してはいけないという御答弁では納得できない。このときにこそ、ここに為替相場の変更に伴う損失を補償する制度を確立するためにつくると書いてあるのですから、わが国の貿易発展あるいは船の輸出に大きな支障を与えるならば、この法律の適用についてまじめに考えるべきであると思うが、何のためにこの法律をつくったかということと関連いたしまして、どうしてもリスクは民間で背負うものということならば、この法律は一切要らなくなります。そういう意味で、この法律は民間のリスク負担だけでは解決ができないという大規模な問題、大規模な損失というものを考えて、そのためにこの法律ができておるのじゃないか。いま申しましたように、かりに六十万トンといたしましても、お値段ははっきりいたしませんけれども、一億ドル近いものがある。三百億円といたしましても、一割とすれば三十億円の負担になりますから、それだけの損失を民間の企業の当然のリスクとして負担しろということは言えないという前提に立ってこの法律はできておる。それを一体どういうふうに解釈したらよろしいか。  第三番目は、ポンド建てに安易になるではないかということを言われるけれども、ヨーロッパの貿易は、御承知のように、ポンド建てが多いんだから、日本がポンド建てでいかないと言ってみても、ちゃんとイギリスにしてもスウェーデンにしても、西ドイツにしても、そういう形で出てきておるといった場合に、日本がおれのほうはあまりポンド建てば歓迎していないんだということを言ってみても、貿易振興にならないではないか。  最後に、第四点としまして、ドル建てでいけるのではないかということがあります。確かにドル建てでやった場合がありますが、そのためにどれだけの犠牲を払っておるか。ポンドでいくべきものをドルに切りかえるために条件が悪くなるというのが常識であります。一体政府はポンド建てをドル建てに切りかえても条件が悪くならないということをお考えになっておるかどうか。以上、四点についてお伺いをいたします。
  87. 藤井勝志

    藤井政府委員 輸出振興ということが当面の日本の大きな経済政策の柱であります。したがって、その前提に立っていろいろ貴重な御意見を拝聴したわけでございますが、ポンドの価値の問題について今後の帰趨を考えることは、お説のとおり私は非常に大切な問題だと思うのでありまして、これが取り扱い方、これに対する処置のしかた、これはお話のとおり慎重でなければならぬ。  それから為替取引のリスクを補償する法律があるにかかわらず、全然適用していない、これは一体どういうわけか。実は私不敏にしてこの法律の制定当時のいきさつを十二分に承知いたしておりません。御趣旨の点をよく持ち帰りまして検討させていただきたいと思います。  それからポンド建てにすべきところをしいてドル建てにして、かえって取引上の損になるではないか、こういう御疑問でありますが、現実の経済はあくまで現実の問題でありまして、私が聞き及ぶ範囲においてはほとんどがドル建てになっておる。ドルの建て値で取引が行なわれているということから、自然このドル建てを中心に運ばれておるわけでございますので、今後ポンド建てに対してどういうふうな方向にいくか、これはやはり経済活動はあくまでその自主性ということが前提でございますので、ドルを中心にした日本の貿易の状況を考えてこれが処理にあたるという現状はやむを得ないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  88. 竹本孫一

    竹本委員 最後にいたしますが、いまのポンド建て、ドル建ての問題は、これは政府の認識が非常に甘いと思います。いずれまた機会をあらためて、どのくらいポンド建てが欧州では中心になっておるか、また日本がそれを回避するような動きがあるためにどれだけ損をしておるかということは論議いたしたいと思いますが、大蔵省においてもその点はもう少し業界の実情、貿易の実情を調べていただきたいということを要望申し上げておきます。  さらにもう一つは、いまの検討するというきわめて抽象的な御答弁でございましたが、私は設備等輸出為替損失補償法の問題については、ただわけのわからないような検討のお約束でなくて、もう少し前向きに——これは局長にちょっと伺いますが、これを適用してはならないという根拠は一体あるのですか。それからそれがないならば、これを適用することについてどういう前向きの検討をこれからされることになりますか、その点を伺いたいと思います。
  89. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 適用してはならないという規定はございません。ただ適用できるということで、適用するかしないかは、私どもは行政権にまかせられておるというふうに解しておるわけでございます。
  90. 竹本孫一

    竹本委員 前向きの検討は……。
  91. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 前向きの検討と申しましても、いろいろ予算措置その他の問題もございますし、慎重に私どもは検討したいということのみで、結局はもっと大臣レベルの問題でないかと私は考えております。私どもは事務的には適用すべきでないというふうに考えておるわけでございます。
  92. 竹本孫一

    竹本委員 それではもう一回伺いますが、適用すべきでないという御意見は、私がいま詳しく申し上げたように、適用してもポンドが全然安定して下がらないという場合には何の損失もないのだから、政府において何ら負担はない。それから下がって適用して、政府がめんどう見てやらなければならないという場合には、それこそがこの法律を制定した理由ではないかという立場に立って考えてみれば、いまの局長の答弁では全く要領を得ないと思いますが、もう少し政治的な立場で真剣に、それこそいま政府でも輸出の増強ということを一番言われているわけなのだから、何のためにこの法律を二十七年につくったかということを反省した上で、前向きな御答弁を次会に伺いたいと思います。
  93. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 事務的に二、三つけ加えさせていただきますと、法制定の背景でございますが、これは二十七年にできた法律でございます。当時は世界的なドル不足の時代であったわけでございます。そうして、わが国としてもこれが解決策として重要資源の輸入先転換が非常に急務とされまして、重要物資の輸入市場を国際収支上有利な地域に開拓してというような観点から、これに適用する設備の輸出だけに限って為替損失補償をするという方針がきめられたわけでございます。当時は、御存じかと思いますが、非常にわが国の輸出も不振でございましたし、また短期のものについては為替損失を外為が予約をしておったりしておった時代でございまして、そういった意味からいうと、現在とは非常に、状態が違っておるということが一つでございます。それからもう一つは、先ほど現在ヨーロッパで非常にポンド建ての契約が多いというお話でございましたが、私どもが調べましたところでは、現在ヨーロッパ各国におきまして、アメリカはもちろんでございますが、こういった制度、保険を含めて為替損失に関するリスクを国が補償しておる制度を活用しておる国はない、こういうことが私のほうの考えの背景にございます。
  94. 藤井勝志

    藤井政府委員 再度のお尋ねでございますから、一応答弁をさせていただきますが、補償法の制定された当時のバックについてはいま国際金融局長から一応の答弁があったとおりでありまして、私は、経済立法というものは、あくまで生きた経済の現実に即して制定されるものだと思うのであります。一応できた当時の経済の背景と環境が変わってくれば、これが運営にあたってはやはりそれ相応の考慮をしなければならない。特にいま輸出の状況は御案内のような好調でございますが、私は損失は政府がいつでも補償してくれるのだ、おやじ日の丸、こういう背景だと、また経済人のモラルといいますか、こういった点から放漫になり、安易におちいる、この辺のかね合いがむずかしいわけでございまして、ある以上はその法律は生かされなければならないということもごもっともでございますが、これはあくまでケース・バイ・ケースで考慮すべきものではないかというふうに思うわけでございます。一律にこうあるべきだということについては、大臣がここに出られても私は答弁ができないというふうに思うのであります。
  95. 竹本孫一

    竹本委員 いまの答弁は納得ができません。経済の現状に即してということで考えるならば、いま一番問題になっておるのが流動性の問題であり、あるいはドルやポンドの安定の問題なんですから、そのためにこそわれわれはいま論議しておるのですから、その重大なポンドやドルの問題が問題になっておるときに、この為替の損失の問題がほとんど考えられなかったということは、極端に言えば、大蔵省はこの法律の存在を忘れておったのではないか。では、はっきり聞きますけれども、この法律関係予算幾ら取っておりますか。この重大なときに、一番ポンドの問題やドルの問題が問題になっておるときに、そうして輸出というものは、御承知のように為替の相場というものが一番大きく影響するのですから、その問題について存在をほとんど忘れておったような予算しか取っておらないであろうと思いますが、そういうことでいいかどうかということなんです。
  96. 鈴木秀雄

    ○鈴木政府委員 予算は百万円取っております。
  97. 竹本孫一

    竹本委員 これはあらためて検討を続けることにして、きょうはこのくらいで終わります。
  98. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、明後六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十八分散会