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瀬戸山国務大臣 岡本さんからたいへんおほめのおことばをいただいて、実は恐縮いたしております。仰せのとおり、
建設行政と申しますか、
国土開発はきわめて重要だという私なりの
考えから、
相当長い間この問題と取っ組んでまいっております。その間、当
委員会等におきまして、
お互いにいろいろ
わが国の
開発、
建設のために知恵を出し合ってまいっております。もちろん、頭で
考えるように理想的にそう簡単にまいらないことはたくさんありますけれ
ども、それにしても、
建設行政も
相当にテンポを早めつつ進んでまいりつつあると思います。けれ
ども、この
時点においてはさらに
国民の期待というものは非常に大きい。いろいろ解決すべき問題が、しかもむずかしい問題がたくさんあるわけであります。
最初に就任いたしましたときにごあいさついたしましたように、真剣にやりますから、どうか
皆さんのほうでも忌憚なき御叱声、御
協力を願いたいと思います。
そこだ、いま、
地価対策と申しますか、
地価問題をどう
考えるのかということでありますが、これは率直に言っていろいろな
建設行政がありますが、いまその
前提をなす
土地と申しますか、
地価問題これが一番重要な問題であると
考えるのであって、非常に困難でありますけれ
ども、これをやはり、十全、万全とはいかないと思いますが、
相当程度に
地価抑制策というものを前進させなければならない。そうしなければ、
建設行政のみならず、
わが国の
国民的気持ちと申しますか、また一面、
わが国の
社会、
経済の進歩にほんとうに大きな障害を来たしつつあるし、また将来はもっと来たすであろう、こういう
考えを平素から持っております。今度その責任の衝に当たりましたので、これを完全に解決できるとはうぬぼれておりませんけれ
ども、しかし、これは私一個の問題ではなくて、また
政府だけの問題ではなくて、やはり率直に言って
国民全部がひとつこれを解決するという
気持ちになってもらいたい。これがひいては
わが国の
社会、
経済に非常なプラスをもたらすものであろう、実はこういうふうに
考えておるわけであります。そこで何とかひとつこの前進をはかりたいという
気持ちでいろいろみずからも
考え、もちろん
建設省のそれぞれの部局の
皆さんにも
検討を願っておりますが、正直なところ、かくかくという具体的な
構想はまだ
最終結論になっておりません。したがって、きょうはそれを申し上げることはできませんけれ
ども、いまおっしゃったとおり、
考え方はどうだと言われますからそれを申し上げておきたいと思います。
御
承知のとおり、
土地ないし
地価対策ということで現行でやっておりまする直接間接の
措置と申しますか、あるいは
法律的あるいは
行政的措置といいますか、これを
前提に一応洗ってみたいと思いますが、一体どこに問題があるのか、こういう掘り下げたところからこの問題は
検討しなければ、とうてい思いつきでは解決できない、こういう
立場で
検討いたしております。
法制的にはどうかといいますと、ほとんど見るべきものはございません。まあ
地価対策あるいは
土地対策に関連のある
法制といいますと、
皆さんご
承知の、まず
土地収用法それから新
住宅市街地開発法あるいは
都市計画法あるいは
土地区画整理法、そういう
部類が
土地ないし
地価に対する
一つの
法制的な方策の
部類に入ると思います。そのほかに、
法律的と申しますと、やはり
税制の問題がある。あるいは
不動産取得税とか、あるいは
不動産譲渡に対する
所得税課税とか、こういうものも、直接ではありませんけれ
ども、間接的な
一つの
地価対策の用をなしておる、私はこういう見方をいたしております。
さらに
行政的にはどうか。問題はこういう
法制上の
運用のいわゆる
行政的面があります。一番端的な直接的な
法制としてできております
土地収用法に至っては、率直に言ってほとんど無用の長物になっており
運用されておらない。御
承知のとおりに、いわゆる
土地収用法、これは
特例法までつくって、しかも
国会で大いに
議論をして、
土地対策に有効ならしめるために、あれほど数次の改正をいたしましたあの
法律も、ほとんど
運用の面において実効を伴っておらないというのが
現状であります。これが私は率直に言って、一体政治は何をしておるのだということをみずから
考えておるわけであります。その他いわゆる
行政上の
運用としては、御
承知のとおりに、あるいは
地価が高いから
土地を高度に利用するということで、いわゆる
高層住宅の
建設あるいは
高層ビルの
建設というのが、いわゆる
運用面における
一つの
地価対策あるいは
土地対策で、あるいは
高架道路、
高架鉄道の敷設、
東京都の
高速道路の
高架道路などは、やはりこれも
一つの
土地対策であり、
地価対策であろうと思うのです。まあ並べればいろいろありますけれ
ども、
皆さん十分御
承知のことばかりであります。
ただ、私がこういうことを申しますのは、
土地及び
地価に対して根本的に一ぺん
考えてみるためにいろいろ
考えてみておるということを申し上げておるわけであります。そういうふうに今日でいろいろ
考え、
土地ないし
地価の問題は、長い間これではいけないという
議論が
国会でも世間でも行なわれておる。そこで御
承知のとおり、
政府はこの問題をきわめて重要だとして取り上げて、
宅地審議会等、その他いわゆるその方面の有能なる
皆さんに、この問題に対する
対策等について
検討してもらっておりますが、ある
程度の微温的と申しますか、局部的な提案がなされて、以来一応実行に移されておるところがあります。けれ
ども、
結論においては、率直に申し上げて
効果がない。なぜ私がさようなことを言うかといえば、御
承知のとおり、
地価はとどまるところを知らない。最近の
経済情勢等の
関係で、ここ一両年その
上昇率がやや鈍っているという
現象はありますけれ
ども、これはいわゆる
土地ないし
地価対策の結果ではないという判断を私はいたしております。御
承知のとおり、
日本の
土地問題に対する
研究はきわめて微力であります。したがって、周密な
研究というのはございません。
地価の
上昇等についていろいろ
統計等がなされておりますが、御
承知のとおりに、いわゆる旧
都市と申しますか、
都市を
中心とした
地価の問題を見てみますると、
昭和三十年を起点として四十年度くらいでは少なくとも七倍あるいは七倍以上
——これは平均であります。したがって、
東京あるいは
大阪等の大
都市はそれより上であるということは当然なことであります。
一般物価の
上昇がありますけれ
ども、これはそれに比べるとたいへんな違いの
地価上昇があります。私があえて今日まで
地価対策というものが何らの
効果はなかったというのはそういう
現象を見て申し上げておるわけでありますが、一体これでいいのかということです。悪いということはしばしば
議論がなされ
いろいろ検討がされておりますけれ
ども、いわゆる
効果のある
対策というものはほとんどできておりません。一体それはどういうわけだ、
国民的にもこの
地価の問題については必ずしも
一般的に言って釈然たらざるものがある、何となく割り切れないものがあるということは事実であります。しかもなおかつ
議論がされ
研究がされておって、これに対する
効果のある
措置がとられないというのは一体どういうわけであろうか、それは当然な
経済現象であって、そういう
地価変動ないし騰貴をするということは当然なことであって、
日本は領土は狭くて人口が多いからそれは当然なことであるということであれば、こういう問題に神経を使って
研究をする必要はないのであります。国際的世界的に見ましても、もちろん
経済の発展あるいは
生活の
程度が高くなるに応じてある
程度上がっておりますけれ
ども、
日本の場合は特別だということは
皆さんも御
承知のとおりであります。当然であるということの
結論でありますと、これは
議論するほうがばかばかしいですから、
研究を要しないやむを得ざる事態であるということになりますが、当然であるかどうかということについて
検討しなければならないが、私は
結論的に言うと、これは当然ではないという
結論を持っております。
一般経済現象に従ってあるのであって、
日本は
土地が狭くて人が多いから
需要供給の
関係でそうなっておるのだ、そういう
考え方の人もある。こういうものは
需要供給であって、
需要者がなければ
地価なんか上がらない、また、大量に供給すると
地価はそう上がらないのだという
考え方の人もあります。従来のおおよその
建設省を
中心とするいわゆる
土地対策、
地価対策というものは、そういう
考え方に基づいておった。それも一面の
効果があることは事実であります。したがって、
大量供給をして、
宅地等については、国あるいは
地方公共団体等において
大量宅地造成をして供給すれば
地価抑制策になるのだということが、御
承知のとおりしばしば言われて、それが実行されておる、これも全然
効果がないとは申し上げません。しかし、それにもかかわらず
地価はとどまるところを知らない。もっとほかに
原因がある。
原因があるならば、その
原因が一体取り除かれるものであるかどうかということを
検討しなければならぬ。しかもそれは当然のことでなければその
原因は取り除かなければならない、こういう
段階にいまきておるわけであります。
そこで、しからば
一体土地とは何だ。
土地の本性からこれは
研究していかなければ、問題の解決にはならないだろう。そこで私は、あまり
理屈ばかり言ってもしようがありませんから、
結論的に申し上げると、御
承知のとおり、
日本憲法は
私有財産権を認めて、
私有権を保護することになっておりますから、
憲法のもとにおいて
法律を制定しまた
行政を
運用しなければならぬことは当然でありますので、
憲法を
前提に頭に
考えての話でありますが、
私有財産権を認めておりますから、そこで、
私有財産というものは一体何だ、こういう
観点から
検討を進めていく。
私有財産の問題をここでいろいろ申し上げるわけじゃないのでありますが、しからば
一体私有財産の中で、
土地とその他の
私有財産とは同じものであるか、同じ観念で扱うべきものであるかどうかという問題にぶつかるわけであります。
そこで私は
結論を申し上げると、これは違うものであるという
考えを持っておるわけであります。一体どう違うのか。私は、
土地については、こういう
考えを持っております。
土地というものは、水及び
空気、その他にもありましょうけれ
ども、これは
人間存在の基本的に除くことのできない
条件である。しかも
土地及び水、
空気、これは
人間がつくることのできないものである。しかも、これをふやしたり減らしたりすることもできない。
土地だけにいたしますと、これは全く増減を許さない、
人間が生産し得るものではない、と同時に
土地を離れて
人間は
生活ができない。こういう意味におきまして、私は
人間が生産し得る
土地以外の
財貨と同じ
立場において
私有財産権を
評価するということは、根本的に誤りであろう、こういう基本的な
考えを持っております。もしこの
立場が肯定されない、この
考え方が肯定されないということになると、率直に申し上げますが、
地価抑制策ということを
議論することは間違いである。
わが国の
憲法のもとにおいてはそういう
考え方でありまして、私はもちろん
土地所有権者に対してその
土地の
評価の基準ということ、いわゆる
基礎条件は何かということはいろいろ
議論がありますが、それは今日申し上げませんけれ
ども、
土地というものの
評価について、問題は
一般の
財貨のように、
人間の
努力によって
価値をふやすとかふやさないとか、こういう
観点に立ちますと、
土地というものについては、
人間の
努力によって
価値をふやすという場合が、全然ないとは申し上げませんけれ
ども、きわめて少ない。今日の
地価問題というのは、およそ
社会と申しますか、あるいは国と申しますか、
地方公共団体といいますか、簡単に申し上げると
社会と言っていいでしょう。そういうものの
努力によって、その結果が
地価の
上昇を来たしておる。私はそう
考えます。たとえば
道路をつくれば、非常に便利になるからそこの
土地が高くなる、あるいは新産
都市を指定して、そこへ
工業都市ができるという
構想が出てくると、とたんにその
土地の値段が上がる、こういう
現象があらわれております。この
現象は、根本的に間違いである。もちろん便利になりますと、その
土地の
利用価値は高まりますから、客観的には、その
土地を高く
評価するということはあえて否定はいたしませんけれ
ども、その
利益というものは、国あるいは
地方公共団体、言いかえると
社会に還元されるべきものである、こういう
考え方であります。そういう、いわゆる基礎的な、妙な
理屈ばかり申し上げましたけれ
ども、そういう
考え方に立った
地価対策というものをやるべきである。その
手段、
方法、これは簡単なものじゃございません。なかなか複雑な問題でありますから、ただ一片の
法律などでこれは解決するとは思っておりません。まあ私は、まずそういう目的を達成するために
土地収用法を改正すべきだ、こういうような
考え方を持っております。たとえば
縦貫自動車道をこの路線につくるのだ、こういう決定をしたときにその
土地の
評価は確定すべきである、それがつくられるということで、将来の
利益をその特定の
所有者が受けるということは、根本的に間違いである。したがって、その
評価は、ここにこういう
公共事業をやるということが決定した
時点における
評価をもって補償するということは当然で、それをいたしましてもその
所有権者には何らの掲害を与えておらない。まあ基本的な
考え方はそういうことであります。したがって、そういうことが実現可能な
制度、
方法に
土地収用法を改正すべきだ。それだけでは足りません。
公共用地だけはそれでおさまるといたしまして、しからばそこへ
道路ができて、その周辺の
土地の
地価の
上昇によってその付近の
所有者が格別の
利益を得るということは、これは
社会通念と申しますか、あるい先ほど私が長いこと申し上げました理由によってこれは正当ではない。したがって、これはどうするかという、また
法律上の
制度もつくらなければならない、その他
税制とか、いろいろあると思います。そういう問題をいま
いろいろ検討いたして、
手段、
方法を
検討いたしておる。したがって、これはなかなかそう簡単なものじゃありません。そういうことで
検討いたしておりますので、先ほど申し上げたように、いまここにこういう
方法をやりますということを申し上げられないのははなはだ残念でありますが、これは、問題は、しからばそういう
考えに立って、この複雑な
社会のもとで、
都市あるいは農村、あるいはその他の地域ですべて間然するところのない
制度ができるかというと、私は必ずしも間然するところのない、十分満足すべき
制度ができるとは期待いたしておりません。またそういうことを期待しておりますと、この重要な問題の
地価対策というものの実現ができない。ある
程度ギャップがあっても、ある
程度指摘すべき点がありましても、少なくと
地価に対する大筋だけは
国会を通じてぜひ定めていただきたい。その間においてもちろんいろいろ弊害と申しますか、不均衡が出てくる。それはそれに応じて訂正すべきところ、改正すべきところは改正していく、こういう
手段をとらないと、多少の欠点があるからだめだということでありますと、この問題は、これがなかなか解決する時期はとうてい想像はできない、こういうふうに
考えているわけであります。
だいぶかってなことを申し上げたようでありますが、これは非常に重要な問題であって、これから
住宅政策は御
承知のとおり大
事業、きわめて緊急な
事業として今後ますます拡充しなければなりません。しかも、御
承知でありましょうが、
国土縦貫自動車道その他をつくって国土の改造をしようとする際に、この問題に手をつけないでそのままにしておくということは、それは全く
国民経済上、国家財政上それこそたいへんな事態を起こすであろうということを私は
考えておりますから、何とかまず第一にこの問題にめどをつけるべきである、また
国会でつけていただきたい、こういうふうに
考えているということを申し上げておきます。