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1965-08-05 第49回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月五日(木曜日)    午後二時四十分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       小坂善太郎君    竹内 黎一君       登坂重次郎君    野見山清造君       増田甲子七君    三原 朝雄君       湊  徹郎君    森下 國雄君       石野 久男君    黒田 寿男君       河野  密君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君     —————————————  八月三日  委員佐伯宗義君辞任につき、その補欠として鯨  岡兵輔君が議長指名委員選任された。 同月五日  委員愛知揆一君濱野清吾君及び西村関一君辞  任につき、その補欠として登坂重次郎君、湊徹  郎君及び石野久男君が議長指名委員選任  された。 同日  委員登坂重次郎君、湊徹郎君及び石野久男君辞  任につき、その補欠として愛知揆一君濱野清  吾君及び西村関一君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の領事条約締結について  承認を求めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件(日韓問題)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 私は日韓問題で、昨日の予算委員会の席上、椎名外務大臣がわが党の野原委員に対する御答弁を聞いておりまして、たいへんどうもこの日韓問題というのはほんとうのことはどこにあるのかわからないような気がする。特にさきの国会で私が外務省に要請して翻訳をしてもらった韓国政府の出した韓日会談白書、これを私たちは手にして、今度の日韓条約ができる経緯、そういうものを韓国の側が韓国国民説明をしておるが、その説明は非常に権威あるものだというふうにわれわれは思っておりました。ところが外務大臣の発言を聞いておると、白書条約の前では何らの価値のないものだと思う、こういうようなことをきのう言っておられた。私は条約締結するにあたって、両国合意ができた上で条約ができるものだ、こういうように思っておるのですが、その合意というのは一つのことについて両国国民が同じよう理解のしかたをするということを合意だというふうに私ども理解をしておりますけれども外務大臣は、条約締結にあたっての合意というものは、両国国民にどういうふうに理解されているものだと理解しておりますか。その点をひとつ外務大臣から最初に聞いておきたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約成文に関する限りは、両国のそれぞれ責任のある当局者の間において十分に、研究、討議された結果、合意に到達したものを書き上げて、そしてこれに署名をする、こういう経過をたどっておりますので、少なくとも両国を代表する当事者間においては、条約成文は正確に合意されたものである、こう私は解釈しております。
  5. 石野久男

    石野委員 両国一つの問題を話し合うにあたっての合意に達した場合には、その解釈は完全に両国の間で一致しておるべきものだ、こういうふうに私は理解しますが、合意に達したものを両国が違った理解のしかた、解釈のしかたをしていても、それでも日本政府はそういう条約締結をいたしますか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ違った解釈をしっぱなしで済むよう条約内容はほとんどないはずでありますが、中にはいろいろあると思います。しかし、たとえば賠償であるとか、あるいは請求権の問題であるとか、幾ら幾らの金額といったようなもの、それのやりとりというふうなことになると、これは解釈の違いがそこに寸分もあったのでは、条約実行はできませんから、そういう点については、いやおうなしに、とにかく解釈というものが一致しておらないと条約実行はできない、こういうことになるわけであります。なおかつそういう場合に解釈上の違いがどうしても出てくるという場合には、その解釈一致させるための合法的な方法がとられなければならぬということになると思います。
  7. 石野久男

    石野委員 条約締結する前に、両者の間の意見一致合意が見られないような場合でも、将来それを一致させようという意図によって調印をする、そういうかまえを特に今度の日韓会談の場合外務省はとっておりますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の場合には、さようないま一致せぬでも将来一致するだろうというよう考え方で署名調印したものはありません。
  9. 石野久男

    石野委員 したがって、条約を正式調印したものについては、両国の間では意見一致点が出ておるものだというふうに理解してよろしいですね。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうです。
  11. 石野久男

    石野委員 韓国のほうでは条約締結したことについて国民理解をさせるためのPRをします。日本でもそれはやっておると思うのです。その場合に、いま相手国になっておる韓国政府は、あなた方と話し合いをしたことをゆがめて国民に宣伝をしたり、あるい説明をしたりというふうなことがあるということは、わが国に対して非常に不遜な態度だと思うのです。そういうことがもしあった場合に、政府はそれをとがめませんか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御承知のとおり、まだ両国の間で批准国会を完了しておりませんから、条約は有効に成立をしておらないのが今日の段階であります。その場合に、違った解釈国民の前に展開しておるというふうなことは、どういう関係か知りません。事、内政の問題でございますので、これは深くこの問題に介入するということは差し控えたいと思います。
  13. 石野久男

    石野委員 私も他国の内政に干渉するということはつとめて避けたほうがいいと思います。ですから、その点では外務大臣と同じよう意見を持っておりますが、しかし、内政に干渉することは避けましても、条約は双方の意思お互いに合致させるために折衝し、その結果としてつくられるものだと思います。しかもその条約は今後日本が、その条約がある限りにおいては、その条約制約を受けて、国交正常化外交交渉をしていかなければなりません。ですから、われわれとしてはそういう折衝の過程においてもし著しく、見解相違があるということがはっきりした場合には、それを内政干渉ではなくて、交渉内容としてやはり問題にすべきだと私は思うのです。そういう場合が明らかに出ているときにでも、外務大臣は、それは内政干渉だからというようなことで問題にしない、こういう立場をおとりになるのですか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま申し上げたように、まだ両国批准が完了しておらない。したがって、有効な条約関係が成立しておりませんいまの段階では、解釈の問題を中心にして両国交渉するという機会はあり得ないわけであります。
  15. 石野久男

    石野委員 条約は、調印はされたけれども批准はしておりませんから、まだ完全に成立していないことはよくわかります。しかし、条約締結ようとしている日本政府は、韓国政府に対しては、昨日も野原委員に対して外務大臣は言っておりましたが、信頼をしなければいかぬ、こう言っておりました。不信感を持っておったのでは話にならぬ、こういうことを言っておられたのです。したがって、韓国政府意思表示をしたものに対しては、一応信頼をするたてまえで条約交渉をしているものだ、こう思います。したがって韓国政府責任を持って意思表示をしたものは、それをやはり信頼するというたてまえを日本政府あるいは外務省はとっておるものだ、こう思いますが、そういう立場はとっておりませんか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓間の紛争処理に関しては、外交ルートによって解決をはかる。それがどうしてもできない場合には調停による。こういう文句の取りかわしをいたしまして、特に竹島という文字を使わなかった。ところが、竹島という文句を使わない限りにおいては、竹島の問題をどういう方向に処理するかということはどうしてわかるか、どこにも書いてないじゃないか、これに対する合意議事録でもあるのか、こういうお話だったから、交換公文にさらに合意議事録をつけるというようなことは必要はないというので、そういうものはつくってない。じゃ、何を根拠にしてそういうことが出てくるのか、これはまあ両者の間で話し合ってそういうことになっておるし、それから他に日韓間の紛争というものはこのほかにない。のみならず、もう何十回もこの竹島問題では折衝し、あるいは抗議をし、明らかに日韓間の重大なる紛争であるということはもう事実の上においてはっきりしている。それをこの交換公文から、竹島を除く他の日韓間の紛争というふうに書いてない以上は、もう竹島にきまっておるようなものです。それでも納得しないとおっしゃるから、これは、その両国の間で、国交正常化はいわば親戚の誓いをするようなものだ、最後はやはり相互間の信頼というもので、こういうものができ上がっておるのだから、それはもう間違いございません、こういうことを言ったのでありますから、信頼云々というものについての御質問ようでございますが、そういう場合に信頼関係ということを私は昨日の委員会において話したのでございますから御了解を願います。
  17. 石野久男

    石野委員 竹島の問題についても一問題がありますが、私は、そういう問題の前に、交渉に当たる政府態度の問題で聞いているわけです。明らかに調印はしましたが批准が行なわれていませんから、今後まだ批准までの間には、両国の間でいろいろな折衝はありませんでしょうが、国内対策なんかが行なわれると思います。そういう国内交渉の問、日本政府日本国民に対して説明することと、韓国政府韓国国民に対して説明することとに著しい相違がある場合には、お互い政府国民をだましながらそういう条約をつくることになってしまう。これは非常に両国にとって不幸なことになるので、私たちはそういうことがあってはならぬ、こう思っておる。そこであなたが、きのうやはり信頼感ということを言われた。だから韓国政府に対する信頼感を持っておるならば、韓国政府がいろいろな公式に行なった行為に対しては、やはり信頼感を持ってそれを見なければいけないだろう、私はこう思っておるわけです。ところが、昨日の野原委員に対する外務大臣の御答弁によりますと、韓国政府が正式に国民に対して出しておる韓国政府韓日会談白書というものは、条約が成立したらこれは無価値なものだ、こういうふうにあなたが御答弁なさった。だから、そういう無価値なものだというふうに韓国政府が公的にしかも国民に対して出した白書をあなたが見ておるのかどうかということを、もう一ぺん私はここで聞いておきたいから、いま尋ねておるわけです。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私の手元にありますけれども、まだ見ておりませんし、またいろいろ読むものがたくさんあるので、そう急いで読もうとも考えておりません。
  19. 石野久男

    石野委員 そういう不見識、不まじめなことでは困るのです。私は外務大臣に、きょうはその条約内容よりも、とにかくこの国会に対してもう少しまじめになってもらいたいということをお願いしたい。六月一日に本委員会で、私はこの白書の原文とそれから「世界週報」が訳してあるところの内容であなたにお尋ねしました。あなたはまだそのときには読んでいないとおっしゃった。後宮さんは読んでおった。そうして大体後宮さんのお話では、「韓国側国民説明するときにはこの程度のことを言わなくてはいけないのかというような印象を受けたところが正直なところです。」こういうようなことまでその当時言っておるのです。そこで私は白書を、「世界週報」なんかの翻訳ではよくないと思いましたから、外務省に正式に訳してくれということをお願いして、それでこの白書が出てきた。あなたのところで翻訳して、あなたが読んでおるかおらないかはわからないが、忙しいから読んでいないにしても、しかしあなたが信頼するところの韓国政府韓国国民に出しておる交渉内容はかくのごとくでございますよといって出したものに対して、あなたは読んでいないからといって、それは無価値なものだと言うことは、あまりにも不見識、あまりにも韓国政府のやり方を冒涜しておるではありませんか、それでいいのですか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は条約成文と違うという場合に、どっちが価値があって、どっちがより価値がないものであるかということの比較で、たしか無価値ということばを用いたと思いますが、われわれがとにかく一字一句討議をしてそうしてきめたもの、それが条約成文でございますから、それと違う趣旨の白書が出たからといって、それでは成文を訂正しなければならぬというふうに考えるのが大体おかしいので、成文から見たらそれは価値のないものであるということは言える。私は白書全体を無価値だと言ったわけではございません。
  21. 石野久男

    石野委員 昨日の野原委員質問も一そうですし、私どもの問題にする点は、ただ単に字句の末端についての、てにをはの問題であれこれ言っておるのとは違うのです。問題の考え方、特に条約に出ております二条、三条の問題については、もう基本的に考え方が違うわけだ。そういうことがあるから昨日野原委員も尋ねたし、私も六月一日の委員会で聞いたわけです。これは条約の問題と基本的に問題が違っておることを説明しておるわけですよ。日本政府国会説明しておることと、いままでしばしばあなた方が説明してきたことと違うわけです。そういう違ったことをわれわれは一つ条約として取り上げるということになると、どちらが正しいのかわかりませんが、 いずれにしても片方はぺてんにかけられたことになる。それではよくない。だからきのうは、あなたは野原氏に対して、一部の問題が価値がないということは言ってない、白書は何ら価値のないものと思う、こういうふうに言っておる。これは正式に議事録をとってしてもいいわけなんだが、もし、こういうよう考え方折衝し、あるいは国会に対する答弁をなさるとすると、それはまさにあなたは日本国民に対してはこう言う、それから韓国政府はまた韓国国民に全く違ったことを話すということになったら、条約信憑性というものはどこに出てくるのです。一つ文字解釈がまちまちだ、こういうことになる。それはあなた方が、韓国朴正煕とあなたとアメリカとが一つになって、日本国民韓国国民とをだまし続けていくということならば、それでいいですよ。そうじゃない。日本国民韓国が将来にわたって一つのものとしてそれを理解していこうとする場合には、こういうことではよくないと思う。白書を無価値だということの真意はどういうところにあるのですか。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 白書全体を問題にしておったわけじゃありませんので、もしもそういうふうにとられるよう文句であるとすれば、それは私のことば足らずだろうと思う。少なくとも私はあくまで条約成文に基づいて正当に解釈をしておるのでありますから、それがあなたから見てその解釈が間違っておる、白書のほうがどうも成文解釈としては正当だと、そうい御判断に到達するのなら、これはどうも見解相違ということになりますが、結局日韓間の紛争処理については通常の外交ルートによってこれの解決をはかるが、もしそれができない場合には調停方法による、こう書いてあるのです。この解釈については、日韓間の現在までの紛争は非常にたくさんあった。請求権の問題あるいは漁業の問題と、まあいろんな問題がありました。それはもう今度この会談の妥結によってほとんど全部解決をいたしまして、残っておる日韓間の紛争というものは一体何だということになりますと——もっともこれは竹島を占領して、そしてあそこに警官が十人とか二十人とか常時がんばっておるとかといったようなことに対して、われわれはあらゆる抗議を三十数回にわたって出しておる。それに対して何ら満足すべき回答もない、こういうことでありまして、これはもうだれが見ても、日韓間に残っておる重大な紛争問題であるということは一見明瞭です。これはもう歴史的な事実でありますから、ことばや文章で粉飾するというようなことはできない。その問題は残っておるはずだ。残っておる問題を日韓間の紛争の中から一応除外して、他の紛争問題だということは書いてない。書いてないとすれば、それはいわゆる竹島の問題であるということがもう明瞭なんです。ですから、これは正当な解釈だと私は思うのであります。そういう意味において、一体、私ども解釈が正当なのか、それとも白書に書いてあるのがそれよりも非常に信憑性のあるものであるか、そこはひとつ十分に御判断を願いたいと思います。
  23. 石野久男

    石野委員 大臣は非常にやぶにらみをしておられる。私はもちろん竹島の問題を重要だと思っておりますけれども、私がもう少し聞きたいのは、条約第三条にあるところのいわゆる領土権の問題なんです。まだほかにもたくさんある。竹島の問題だけで私はそう言っているのじゃないのですよ。私の個人的な判断でものを言うのだったら、私は控えますけれども白書にはこう書いてある。「管轄権南鮮に局限されるという表現が入らなければならないという日本側の主張は、到底受け入れることのできないもので、国交正常化が計れないことがあっても受け入れることができないことを明らかにした。」と、韓国国民韓国政府説明しているのですよ。そして韓国政府は、第三条の規定のところではこういうふうにいっている。「規定されている文字どおり、大韓民国政府韓半島における唯一合法政府であることを確認する条項であり、韓国政府に対するある種の制約になるとの疑問が提示されたこともあるが、明白にそうではない。大韓民国領土は、憲法第三条に明示されているよう韓半島全域附属島嶼であり、これが日本との関係において、日韓国基本関係条約によって制約されないものであり、され得るものでもないことは自明のことである。」と、こういうふうにいっているのです。しかもこういうことができなければ、国交正常化がはかられなくてもいいのだという態度で臨んで、そしてわがほうの意見が入ったと、こういうのだ。だが、あなたはきのう、また従来もそうですか、今度の条約規定にあたっては、北のほうに政権のあることを念頭に置いて、休戦ライン以南においての取りきめをしたものだと、こう言っておる。そうすると、日本政府日本国民説明していることと、韓国政府韓国国民説明していることとは全く違うでしょう。外務大臣は、膨大な書類だからというので、韓国憲法は読んでいないのかもしれませんけれども韓国憲法の第三条は、やはり朝鮮全域韓国領土だと、こういっているわけですよ。ですから、これは私のかってな判断ではなくて、韓国政府説明は、あなたがこの国会国民に対して説明していることと全然違うのですよ。これでもいいですかということを私はきょう聞いているし、そしてきのうも野原君がこの問題について聞いたら、あなたはこの問題について白書は何ら価値のないものだと、こういう答弁をしておるわけです。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本条約の第三条に引用しておる国連決議、結局それの解釈の問題になるわけでございます。韓国憲法がどう書いてあるか、それとは関係なしに、国連第三総会決議一九五(III)、それを引用して基本条約第三条ができておるのでございます。でありますから、この引用された国連総会決議内容がはたして韓国のいっているところに合致するのか、あるいは換言すれば韓国憲法第三条とかに規定しているものとこれとが同一のものであるかどうかということに問題はかかると思うのであります。われわれが引用した国連総会決議内容は、「朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府大韓民国政府)が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分選挙民自由意思の有効な表明であったし、また、臨時委員会が観察した選挙に基くものであることと、この政府朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言し、」こう書いてある。でありますから、この政府管轄権の及ぶ範囲が、すなわちわれわれが相手にした韓国政府である、こういうことになるのでございますから、したがって、ことばをかえていえば、休戦ライン以南ということになるのでございます。でありますから、われわれはあくまでもこの引用したものによって解釈をしておるのでありますから、もしそれと違った解釈をするということになると、ここに食い違いが生ずるわけであります。しかし向こうがいかにそう言ったからといって、いまさら条約成文が変わるはずはございませんから、われわれはあくまでこれが正当な解釈である、こういうふうに主張しております。
  25. 石野久男

    石野委員 大臣説明は私ども理解するところなんです。ところが韓国政府はこの白書の中で、憲法第三条の領域であるということもいっておるし、そしてこれが通らなければ国交正常化もできなくてもよろしいんだということで、「計れないことがあっても受け入れることができない」という態度で臨んでおる、そしてこの条約は成立した、こういっておるわけです。そうすると、こういう食い違い条約のどこから出てきているのでしょう。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうもどこから出てきているのか、出ようがないと思うのでございますが、それで、また向こうがその論法でこちらに向かってきた場合にはこれを説破するだけの自信を持っておりますので、国内でそういうことを言っておられるということについては、これは国内問題でありますから、外部から何とも申し上げようがないと思うのでございます。
  27. 石野久男

    石野委員 国内問題だから何とも申し上げられないということが問題なんですよ。韓国でこういう解釈をしておったら、これは間違っているから、これが議論になったときには論破することができるとあなたはいまおっしゃった。それじゃ、その論破するという根拠あるいはそれの政府見解、そういうようなものを明確に示してもらいたい。私は、韓国のこういう白書が出ておって、しかもこれはこれだけじゃないのです。あとの第三条の規定にもあるし、それから領土問題なり竹島の問題なんかも出てくるし、いろんな問題が出てきますが、韓国ではいち早くこういうことを国民に宣伝しておるし、日本にはそれは出ていない。しかも韓国説明のしかたは、外務大臣政府説明しているのとは全然違うということになると、われわれはなるほど日本政府を信じたい、信じたいけれども一つ条約をつくるのに、両国政府がこういう解釈の違いをしておってやるということになると、キツネとタヌキのだまし合いみたいなものだ。こういうようなことをもともと想定しながら条約をつくっておるのですか。  それで、一番最初に戻りますが、条約をつくるときにこういう解釈の違いがあっても、なおかつこれを批准調印するということを政府は推し進めていかれるのですか。これはどこかに一致させなければいけないのと違いますか。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ向こう解釈上の問題でまた日本に対して議論してきた場合には、私は取りかわした成文解釈日本側としては正しいものである、こう思っておりますが、条約の中には現実の利害関係というものがそう接触しない、まあかってにお言いなさいというよう部分もなくはないと思うのであります。日本利害あるいは国の威信というものにさして差しさわりのない問題については、まだ条約が有効に成立しておるわけでもないし、この際それに一々向こう国内問題として介入するということは差し控えたい、こう考えております。
  29. 石野久男

    石野委員 これは国内の問題だからかってにおやりなさいというような問題とは違うのですよ。日本の国の利害と威信にかかわってくる問題なんです。外務大臣は、どういうふうに考えているか知りませんが、南朝鮮国民の諸君にこういう説明で通っていっているとすれば、日本政府日本人に説明したよう考え方でわれわれが韓国といろいろ話をしていきますと、南朝鮮の諸君の考え方とまっこうから違ってきます。そこでけんかができてくるのですよ。そういう間違った解釈のしかたで条約調印なんてとてもできるものじゃないですよ。向こう国内の問題だからかってにおやりなさい、そういう無責任態度でこの条約の正式調印が行なわれたのですか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ことばが足りなかったから訂正しておきますが、まあかってに解釈をしなさいというようなものもある、こう言っただけの話であって、現実にこの日韓会談において取りかわされたものに即して韓国がかってにそういうことを言うがよいというような現実問題として取り上げたわけじゃない。そういう国家の実際の利害関係あるいは国家の威信というものに関係のないよう部分もなくはない、そういうものも条約の中にはある、そういうことを一般的にただ申しただけであります。  それで、今日条約が有効に成立して、そしてさて両国解釈が重大な点において違うというような場合には、いろいろまた問題も起こってくるかと思いますが、それはそのときとして、その当時の、その時点における両国当局者がこの問題の正当な解釈についてまた協議をするということもあるいは起こり得るかもしれません。とにかくいまのところは、いまの段階においては、そういう問題に介入すべきでない、かように考えております。
  31. 石野久男

    石野委員 大臣はそういうふうに言うけれども、今日南朝鮮ではこの条約批准が行なわれておる、批准国会が持たれておる。それでおそらく政府は南朝鮮国会ではこういう説明のしかたをしていると思う。そうすると、南朝鮮政府説明していることは、日本政府では受け入れられぬことを説明しているわけです。そういうふうに理解してよろしいですね。そしてそのことは他日論議が出てきたときに論議をすればいいので、韓国政府韓国の議会に日本政府とは全く違う理解のしかたで説明をし、そして今度の条約は全朝鮮に及んでおるのだとか、あるいはその他のいろいろな問題が出てきますが、この白書で書かれておるものをそういうふうに説明していることは、それじゃ、日本政府としてはこれは全々考え方が違うけれども、問題が起きてこないからそれはかってにおやりなさい、こういうふうに言っていることだと理解してよろしいんですね。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国憲法ではどういうふうに書いてあるか、北のほうにもいわゆる潜在的な主権があるというようなことを書いてあるのかもしれませんが、私も不勉強でございまして、韓国憲法まではまだ勉強しておりませんが、日韓会談の取り扱ったものは、大韓民国政府の現実の施政権の及ぶ範囲というものを問題にしている。でありますから、そのほかに潜在主権がこっちのほうにもある、あっちのほうにもあるというようなことがもし憲法に書いてあるかもしれぬが、それとは日韓会談の場合に対象となるべきものは違ってもよろしい、こういうふうに解釈しております。
  33. 石野久男

    石野委員 憲法の勉強が足りないからどうとかというようなことじゃなしに、条約解釈のしかたが両方でずいぶん違いがあるのですよ。だからその問題はあまりほおかぶりしていると——大臣はこれを何とか通しさえすればいいということで、非常に不誠意な答弁のしかたをしている。韓国政府ではちゃんと文書をもって国民にこういうふうに理解をしますということを書いてあるわけですよ。そのことは日本外務大臣国会説明していることと違うのですよ。そういう違う問題があるのに、政府がこれをほうっておくという手はない。韓国政府韓国国民に言うことは、われわれと話をしたことは話をしたことで、国民に言うことはかってなんだから、それはかってですよ、こういうやり方をするならば、それは韓国はそういうふうに考えているのかもしれませんが、日本ではそういうふうに考えられない。韓国政府はこういうふうに韓日会談白書というものを出しているわけですよ。それだったら政府は、これに対応する外務省白書なるものを次の国会までに出してください。そうすればわれわれは、そういう中で韓国政府国民に対して言っていることと日本政府が言っていることとの違いもわかるし、また今後どういうようにしなくちゃならないか、あるいはまたわれわれが違っていると思っていることが、実は韓国政府の言っていることが正しいので、日本政府国民に言っていることはでたらめだということがわかるかもしれないのですよ。そういうことをしてくれるならば、われわれはそれまで待ちます。しかし、これは現実に韓国政府国民に出しているものなんだから、憶測じゃないのです。  あなたは韓国白書なるものは無価値なものだ、こう言った。そういう無価値なものを国民に出しているような、そういう不信きわまるところの政府相手にして条約をつくっておったら、国家百年の計を誤りますよ。国民をだますよう白書を書くような、外国の政府との話し合いとは全然違ったようなことを自分の国民に出すよう政府、実に不信きわまるものなんだ。そういう政府をあなた方は何とも思わないのですか。もしほんとうにこの白書が無価値なものだったら、価値のある白書政府は出してください。出す用意がございますか。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓会談白書は、実はつくる計画はありませんし、またその必要を感じておりません。とにかく日韓会談はりっぱな向こう責任のある当局と十分に討議をしてつくり上げた条約でございまして、いやしくも条約と違うような点がもしありまして、どっちかといったような比較の問題になりますと、やはり日韓会談において討議して正式に署名調印されたもののほうが権威を持つということを申し述べたのにすぎないのであります。
  35. 石野久男

    石野委員 正式調印されたものが権威を持つということは、われわれもよくわかっておる。その国の政府国民に対して理解させる説明書というものが、日本政府が、いまあなたがわれわれに対して説明していることと、韓国政府韓国国民説明していることと違う場合に、それはそういうものはあってもいいのだという考え方でこれから条約批准案を国会に提出する、やはりこういう政府態度なんですか。いま一度はっきりとこの点だけはお聞きしておきたいのです。  条約をもうすでに調印しました。その調印して批准するまでの間、政府態度としては、両国の間の本条約に対する意見の合致が行なわれて、その理解のしかたが一つのものであるというふうになっていなければ、条約にはなれないものだとわれわれは思う。合意というものはそういうものだと思う。ところが韓国政府では韓国政府なりに説明するし、日本日本国民にはかってな説明をする。こういう形でこの日韓会談というものはそれじゃ批准を要請されている、こういうふうに理解してよろしいのですね。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今後第二、第三の白書があるいは出るかもしれないし、これは他国の問題でございますから、どうもわれわれはいかんともしがたい。ただわれわれが来たる批准国会に提出しようとするものは、ただただ日韓会談において討議、審議をして合意に達し、正式に署名調印されたものを提出いたしまして、それに対する疑義等はその正式な条文に基づいてお答えをし、そして批准の御承認を得たい、こう考えておるだけでございます。
  37. 石野久男

    石野委員 それではこういうふうに理解いたします。条約の正式調印されたものをわれわれはもとにしていくから、韓国政府がここに出した白書というものは、きのうあなたが野原委員答弁されたように、これは無価値なものである、だから韓国政府日本政府が無価値なものだと認定するところの白書国民に説得の資料として出しておるのだ、こういうふうに理解してこの白書の問題は政府が見ておる、こういうふうに私は理解してよろしいですね。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これと違う趣旨の白書が出ておるというから、その点ではそれは価値はない、あくまで権威のあるものはこっちのものである、そしてその白書をどう考えるかということでございますが、私は読んでない、読んでないのですから、白書に対して私は批判するだけの資格がないのですから、どうぞその点を十分に御了解願いたい、私はこの白書は無価値なものであるというほど、第一、読んでいない、一ページも読んでいないのですから、そういうことをよく御了解願いたい。
  39. 石野久男

    石野委員 私はいまの外務大臣答弁は実に国会を侮辱していると思うのです。一ページを読んでいないとは何ですか。これは私が六月一日に本院において原書をもってあなたにお聞きしたいのです。その当時あなたは読んでいないと言われた。読みますと言った。そして翻訳してくれということを私は要求した。その翻訳がいま出てきておるのですよ。しかもこれだけの大問題になっているものを、一ページも読んでいないから答弁する資格はないという、そんなばかげたことでは私は引き下がることはできない。政治に対する責任がない。それはまさに韓国政府国民に対してでたらめなことを言って、あなた方と話をしたこととは全く違うことを説明書に書いて、国民の要望にこたえるような方向で説明書を書く、そしてあなた方と話をするときはそれとはまた全然違うことで話をまとめていく、そういうインチキきわまるところの外交交渉をしてきておるのだ、こういうような無責任きわまるようなやり方でこの日韓会談条約というものが進んでいくことは承知できないのですよ。私はいまの大臣のそういう無責任ことばに対してはこのまま質問を打ち切るわけにいかぬ。もし読んでいないなら、きょう一日徹夜でもいいから読んでください。そしてほんとうにわれわれがこれに疑義を持ち、非常に心配しておる内容が、日本人として心配していることが的はずれであるのかどうかということを、あなたに一応読んでもらいたい。椎名外務大臣は非常におとぼけの答弁をするということで、自分自身もそれを非常に重視しておられるようだ。しかし、この重要な日韓条約に対してそういう態度は許されないです。そういうことで過去三十六年間日本朝鮮との間には非常に不幸な関係があり、それをようやく清算して、今度新しい道に立とうとする中で、私たちはいろいろな反対があるけれども政府はそれをいま新しい道に乗せようというこの条約に対していろいろ問題が出て、しかも、これは韓国政府がみずからの責任において国民に訴えておる書類だ。一個人が書いている書類とは違います。それだけ権威のあるものに対して目を通さないとは何事ですか。いま外務大臣が一ページも読んでいないから答弁する資格はないということなら、後宮局長とひとつ相談してください。  そして、いま私の質問しているこの問題が的はずれであるのかどうか、ごく末梢的なものを聞いているのかどうか。そうじゃない。私のいま聞いている問題は条約の第二条、第三条というきわめて重要な問題です。これはあとには請求権問題にも関係してくるし、そしてまた、あなたがきのう野原委員説明した休戦ライン以南についての話し合いをしたということとも関連をしてくる。私はこのことを中心にして今後いろいろな問題を提起していかなければいけないから、だから、この問題についてあなたの意見を聞いておるわけです。一ページも読んでいないから答弁をする資格がないというならば、いまから二時間でも三時間でもいいですから、読んでからあとで答弁してください。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が、韓日会談白書全体を無価値であると誹謗したような断定をされようとするから、それで私は、きのう以来引用された問題については、成文に対するわれわれの解釈と違うし、また権威はこちらにあって、その問題に関する限りこれ以外にはないのだ。そういう意味において、引用された問題は、それがどこに書いてあろうと価値はない、こういうことを言ったので、白書全体を私が誹謗し、これを批判し、否定したというふうにもしもおとりになられると、これはまことに心外である、そういう意味の私の心配から、実は読みたい、読みたいと思っておったけれども、まだ一ページも読んでおりません。それで一ページも読んでおらぬものが全体を批判するなんということはできっこないのですから、ひとつそういう誤解をされないようにしていただきたいということを申し上げておきます。私も、せっかくどこからか送ってきましたから、読みたいと思っておりますが、うまく読めるかどうかそれはわかりませんけれども、とにかく批准国会に御承認を仰ぐにあたっては、必ずしも必要な参考資料だとは私は考えておりませんので、あくまで御承認を仰ぐ手続を十分に整えて国会に臨みたい、こう考えております。
  41. 石野久男

    石野委員 韓国政府は、日本外務大臣がこの条約調印するにあたって、必ずしも必要な参考資料でないと思われるようなものを国民に説得の資料として出しておる。それを日本外務大臣は全く参考資料として必要がないし、無価値なものである。こういうような必要のないような資料を韓国では国民にこの条約調印させるために重大な——これはいち早く三月の二十日に出しているのですよ。韓国政府は、この条約をつくるについては非常に重要な資料として提起している。日本政府がこれは無価値なものだ、参考にする必要のないものだといっていることを、いま韓国国会あるいは国民にわかったらどうなるのですか。あなたはどういうつもりで韓国政府が——これはそれこそ膨大な本ですよ。これだけのものを書いているものを参考資料としては何の必要もないものだ、そうなんですか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ読んでいませんから、参考資料として価値のあるものかないものかもまだわからない。しかし、ぜひ拝見したいと思っております。
  43. 石野久男

    石野委員 読んでないと言われるから、私が読んで心配しているから聞いているのです。そうだったら、なぜ読んでいる後宮局長やなんかに聞かないのですか。しかも後宮さんは何と言っているか。後宮さんはこう言っている。先ほども言ったように、韓国側国民説明するときにはこの程度のことを言わなくてはいけないかというような印象を受けたことが正直なところですと、こう言っている。私どもが疑義を持つことを後宮さんでも肯定するよう内容がここにあるのですよ。内容どころではない。われわれからすれば、こういう解釈のしかたをしておって、日本批准したらとんでもないことになるということ、そういう心配があるから言っている。ところが、この白書が無価値なものであるということを言うと非常に誤解されるから、だから、心外だからと先ほど言われた。心外なら心外でないように、白書に対してこたえるだけの日本の資料を出しなさい。心外でないように、この白書に対応すべき日本白書を出すべきである。これは外務大臣外務大臣はこの白書に対応するようなもの出すという、そういう気持ちはないと言ったけれども、しかしあなたは、こういうことから誤解を受ける、心外だといま言われた。日本政府が心外になるような資料が韓国から出ているのだから、だから、心外にならないように、資料に対して十分説明力のあるような、日本のやはり日韓会談に対する白書を、これに対応すべきものを出すべきです。そうしないとわれわれは納得できない。これはあなたは一ページも読んでいないのだそうだから、しかも、一ページも読んでいないで、私たちはこういう疑義を持っている。しかも、私たちだけでない。後宮さんでも頭をひねるよう内容がある、みんながそう思っている。だから、これは外務大臣外務省翻訳した白書を読むと同時に、これに対応する白書外務省で出すべきです。本国会はもうあとわずかしかないからここでは間に合わなくてもよいが、批准国会までに出したらよい。外務大臣、それを出しますか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく、批准国会において御承認を求めるために必要な資料は極力つくるつもりでおります。
  45. 石野久男

    石野委員 その意味は、この韓日会談に対する白書韓国政府は出した。それはわれわれにとって非常に誤解といいますか、疑義を持つ、政府はそう言っていろいろ説明はありますが、韓国政府説明では、日本政府説明とは全然違うから、そういうものをあなた方がわれわれに答弁をする裏では、こういう話し合いをしているのかなあというようにわれわれは感ずるのです。しかも、韓国政府態度は、もしこの主張が通らなければ、国交正常化ができなくてもいたし方がないということを書いておるのです。そういう意味で、交渉した結果われわれの意図が十分通ったと書いているのだから、あなた方はどこかでそれではそれをごまかしているわけです。だから、政府もやはりこれに対応する日本白書なるものを出すべきです。これは資料は出すつもりだだけでは困るので、やはりこういう問題が今後いろいろ出てくるから、政府はこれに対する白書を出すということをひとつ答弁してください。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これに対応するといっても、この白書は、何か私が聞きますと、三月の二十日に出版したものらしいのです。三月の二十日というと、もう正式調印のずっと前でございまして、書いたのは一体去年あたり、あるいは正月くらいに書いたものをとりまとめたのかもしれませんし、それに対応するようなものを書こうとは思っておりません。とにかく、いずれにしても、御承認を得るために必要な資料をもう十分整えて議会に臨むつもりでおります。よろしくどうぞお願い申し上げます。
  47. 石野久男

    石野委員 では、三月二十日にこれは書いたから、いまはもうこれは通らないというわけですね。韓国でこの白書はもうそういう意味で無価値なんですか。
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたは私に無価値、無価値ということで押し売りするようですが、そういうふうに白書を軽べつするような意図は一つも持っておりません。急いで私も勉強したいと思っております。しかし、それに相応する白書をつくろうとは思っておりません。とにかく御承認を得るために必要な資料は何でもつくりたい、こう思っておりますから、よろしくお願いします。
  49. 石野久男

    石野委員 外務大臣白書を読むというんだから、読んでもらう。そしてこれは軽べつしてない、無価値なものでもないんだということだから、われわれはこれを価値のあるものとして、今後やはり国会の議題に取り上げていく。そうすると、先ほど来言っているように、日本政府説明していることと韓国政府国民説明していることは違う。これは韓国では韓国国民を頭をなでるような形で、韓国国民の納得するような形で、日本政府と話していることとは違う形で、もっと端的に言うならば、日本政府はいわゆる休戦ライン以南の地域におけることを念頭に置いてこれは書いたけれども向こうは全土に及ぶんだ、こう言っているわけです。だからこういう食い違いお互いにだましながらやっているという条約だ、こういうふうになってくるわけです。だからわれわれは価値あるものであると見るだけに、この内容については白書に対応するとかなんとかじゃなしに、これにこたえるだけの資料は出してもらいたい。その点については資料を出しますね。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その資料は韓国白書本位の資料じゃなくて、やはり条約本位の資料を出します。
  51. 石野久男

    石野委員 では、その条約本位の資料を出してくれればいいです。それを出してください。  それから、私は時間もあまりありませんけれども、一、二の問題でこの際ひとつ聞いておきたいと思います。あと次の臨時国会批准案が提出になるでしょうから、そのときにまたしますが、いま一番問題になるのは、この北のほうの政権があるということを念頭に置いて休戦ライン以南における取りきめをした。こういうことになると、北の朝鮮民主主義人民共和国のほうで、日韓条約についてはすでに無効宣言をしておるわけです。こういう問題は今後どういうふうに政府は考えられるかということです。今度の条約の中には請求権の問題があったり、あるいはそれに対して請求権としてじゃなくて、経済協力とかなんとかいうことを言っておりますが、しかし北のほうからは、この条約は一切無効だということを言っているわけです。こういう問題は政府としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  52. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大韓民国政府の支配が北のほうに及んではいないということを念頭に置きつつ交渉しておりますということを申し上げてまいったのでありまして、北のほうに別の政権があるということを念頭に置きつつという言い方はしていないように思います。しているとしたら、それはちっと表現が不十分であったわけでございます。いまそちらのほうのいわゆる北鮮政府が無効と認めるということを言ったということでございますけれども、そういうものを日本政府は認めておらないわけでございますから、したがいまして、その宣言につきましても何らこれを有効な宣言として認める立場にはないわけでございます。
  53. 石野久男

    石野委員 北のほうに政権があると言ったとしたら云々という問題、これはきのうの議事録を見れば、外務大臣予算委員会でそういうことばを使っておるはずです。しかもまた、池田内閣以来そういうことは言われておるわけです。限定政権ということばまで使われているときがありますから、藤崎さんがそういうことを言われたとしても、大臣が使っているから、もう一ぺん調べてください。問題は、南のほうの休戦ライン以南において、それの取りきめが行なわれたということになれば、おのずから休戦ライン以北という問題が残っているということになる。その残っている問題は、この条約の中ではどういうふうに今後それじゃ対処されるか、そのことをひとつ。
  54. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 北のほうの問題は残っておるわけでございまして、この条約ではカバーしておらない。だからこの条約ではいかように対処しようとも、していないわけでございます。
  55. 石野久男

    石野委員 そうしますと、この条約ではカバーしていないから、将来その部分については日本政府としては対処しなければならないということが残るわけですね。
  56. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 将来どういうことになるかということは、この条約では何ら予見しておらないわけでございます。
  57. 石野久男

    石野委員 この条約では予見していないけれども、現実に休戦ライン以南のことは問題になっておるけれども、以北のことは問題になっていないでしょう、この条約では。
  58. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 なっておりません。
  59. 石野久男

    石野委員 したがって日本朝鮮との間に、将来休戦ライン以北の土地が全然なくなって、あの地域の上に人々が住まないということになればこれは問題ないかもしれませんが、あそこに三十八度線から鴨緑江にかけての間に膨大な土地がある。その上に朝鮮の人民は住んでおる。しかもこれは日本朝鮮との関係のうちでは残っておるわけだから、将来、この南との間に休戦ライン以南でいろいろと折衝した条約に相当すべきものが国家間の外交上の問題として出てくることが予想されるはずです。この条約では予想しなくとも、日本政府としては、そういうことが将来残されておることだけは間違いないわけですね。
  60. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どうもお話の筋を伺っておりますと、いかにもその休戦ラインというものが永久に変わらないもので、北のほうには独立の何かの政権といいますかそういうものがあって、これと交渉を持たざるを得なくなるのじゃないかという前提の御質問ように伺うものですから、先ほど来御答弁いたしておるああいう答弁のしかたをいたしておるわけでありますが、将来のことは全然わからないわけでございまして、少なくともいま日本政府立場で言えますことは、日本政府は従来国際連合がとっておりました朝鮮は統一さるべきものである、しかも国連監視下の自由選挙によって統一さるべきものであるということを支持しておりますから、そういうようになることを希望しておるというだけでございまして、将来何か南と別に北と関係を持つというようなことを前提にしてのお話だと、先ほど来申し上げておるよう答弁をせざるを得ないわけでございます。
  61. 石野久男

    石野委員 そうすると、いま藤崎さんの御答弁のその根底にあるものは、休戦ラインの北のほうは将来南と一つになるという前提でものごとを考えていきたい、こういうことなんですか。
  62. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そうは申しませんで、私は朝鮮の統一が行なわれる、その統一のしかたは国連監視下の自由選挙でということで、北が南に吸収されるというそういう形でなくてはならぬというところまでは申し上げておらないわけであります。
  63. 石野久男

    石野委員 北には確かに政権があるわけです。これは日本の国が承認しているとか、していないとにかかわらず、あることだけは事実です。そうすると、その北のほうでは日韓会談の諸協定は無効であるということを宣言しておるわけです。したがって、この宣言しておるという事実に基づいて、日本政府としては、この条約でカバーしていない部分、この部分と無効であるということをどういうふうに将来外交上接点をつくっていくか、こういう問題が出てくると思うのです。この問題を無視して、この条約日本朝鮮とのすべての問題が解決したもあだという理解のしかたはできないだろうと思うのです。そこらのところは、政府はそのカバーのできなかった地域とこの条約との関係はどういうふうにお考えになりますか。
  64. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 全然無関係なわけでございまして、この条約でカバーしようとしておって、にもかかわらず北のほうでこれが無効だと言っているんだとその間の調整をどうするかという問題が起こるわけだろうと思いますけれども、これはそういうことを考えておらないわけでございます。
  65. 石野久男

    石野委員 そうしますると、この条約は完全に休戦ライン以南の問題だけを取り扱っている、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  66. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 さようでございます。
  67. 石野久男

    石野委員 したがって、ここできめられる問題は、いわゆるまあ日本では賠償といわないけれども、経済協力の問題とか、その他の政治的、経済的、外交的、いろいろな問題はすべて休戦ライン以南の問題だ、したがって、本条約においては休戦ライン以北の問題は依然として未解決の問題になっておる、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  68. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大体そのとおりでございまして、大韓民国政府の有効な支配及び管轄権は南の部分だけであるということを念頭において妥結したいものであります。
  69. 石野久男

    石野委員 この点は外務大臣にもあらためて私は念を押しておきたいと思いますが、そのとおりでよろしゅうございますか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  71. 石野久男

    石野委員 そうしますると、われわれは、この問題は将来北のほうとの間にまた話をしていくんだということになりますと、本条約調印過程において、韓国のほうからは賠償権の問題でいろいろな論議がございました。そういう問題を大平前外務大臣から、南の国の独立の祝い金だというような意味、この経済協力——無償、有償の経済協力というものになった。したがって、この経済協力というものは、日本政府説明によると、過去三十六年間の、日本朝鮮を支配してきたそれらの一切のものを含めた賠償を内容とする経済協力、お祝い金、こういうふうに従来説明されてきておりましたが、本件の正式条約調印がされてから、批准を要請される段階における政府態度としては、やはり同じようにそういう考え方で取り扱ってきたものだ、こういうよう理解しておいてよろしゅうございますね。
  72. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど来申し上げておりますように、今度の協定に盛られている内容は、全部つまり大韓民国政府の有効な支配及び管轄権は、休戦ライン以南だけであるということを念頭において規定したものでございます。
  73. 石野久男

    石野委員 北の朝鮮民主主義人民共和国政府の声明ではこういうふうに言っているんです。「朝鮮民主主義人民共和国政府は、このたび「韓日会談」において朴正煕一味と日本政府間に締結された諸「条約」と「協定」が無効であることをおごそかに宣言する。」こういうふうに言っております。そうして、このいわゆる賠償に相当する分についてはこういうふうに言っているんです。「朝鮮人民は、日本帝国主義者が朝鮮人民にあたえたすべての人的、物的被害にたいして賠償を要求すべき当然の権利をももっており、日本政府にはこれを履行すべき法的義務がある。したがって「対日請求権解決および経済協力に関する協定」を通じて、日本当局と朴正煕一味がやりとりするのは知的な金銭取引きにすぎず、決して賠償金の支払いではない。朝鮮民主主義人民共和国政府は、対日賠償請求権を保有するということを日本政府に重ねて警告する。」こういうふうに言っているわけです。  いま政府答弁では、北のほうについてはいま政権を認めていないから、いま確固としたことは話はできぬが、しかしカバーできない地域においては、将来問題を残しておるという答弁がありました。そうするとこの北の民主主義人民共和国側の出しておる問題提起、そして日本政府に対して警告しておる問題については、将来日本政府としては当然考えなくてはならぬ問題として残っていくわけです。そういう点について政府はどういうふうにお考えになりますか。
  74. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまの、北鮮のいわゆる政権の宣言とか声明とかいうことを問題にするわけにいきませんので、それは離れまして、北の部分についての財産請求権の問題は、向こうの取り分、こっちの取り分も両方とも未解決のままに残る、そういう状態がいままでのとおり存続するということでございます。
  75. 石野久男

    石野委員 そうすると、いままでのとおり存続するということは、本条約調印は行なわれておりますが、今後それがかりに正式に批准をされたときにでも、やはり残るという意味ですね。
  76. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 さようでございます。
  77. 石野久男

    石野委員 そうしますと、日韓条約というものは、明らかに朝鮮問題全体についての解決にはならないので、あくまでも休戦ライン以南におけるところの解決である。しかもそれも全体の解決じゃないし、まだ未解決の問題を残しておる、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  78. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまのとおりでいいんでございますが、南についての部分については、全部解決したということでございます。
  79. 石野久男

    石野委員 私は次の臨時国会批准の要請が政府から行なわれるときに、またいろいろこまかいことをお聞きしたいと思いますが、いま一つ聞いておきたいことは、この条約がもし成立するという形になりましたときの在日朝鮮人の問題でございます。在日朝鮮人は約六十万人おりますが、その六十万人おる人々の中には、いわゆる休戦ラインの南と北とにある二つの政権について、支持する二つの層がございます。そこでこの北の共和国を支持する人々についての条約の及ぼす影響というものはどういうふうになるのか。この点についてひとつ政府のお考えを聞かせていただきたい。
  80. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういう人に対しては、何らの影響を及ぼさないというようになるはずでございます。
  81. 石野久男

    石野委員 韓国の側では、最近新聞で見ますと、日本に領事館を九つほど置くようにもうすでに、方針がきまっておるというようなことも聞いておりますが、それはもう大体政府との間に折衝もできているのですか。
  82. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御承知のとおり、基本条約の中にも規定しておるのでございますが、領事館は基本条約が発効いたしてからのことでございますから、まだ正式の話し合いにまでなっておりません。ただ先方は居留民が方々にたくさんおるので、いよいよ国交が回復するときには、領事館がある程度、何と申しますか、厳密に——日本ですとせいぜい先方の釜山とか仁川とか、一、二に限られるのでありましょうが、それと厳密に相互主義というふうに言われると困るというふうな一般的の御希望の表明はございますが、まだ具体的にどこへ幾つという話にはなっておりません。
  83. 石野久男

    石野委員 もう一つだけ聞いておきたいのです。先ほどから基本条約は、休戦ライン以南の問題を取り扱ってきて、北のほうにはまだカバーできない多くの問題を残してきたのですが、そのことと、この条約が、私たちの心配するところでは、朝鮮の南北に分かれている問題の解決、特に民族の統一という問題に対して非常に大きな障害になっていくというふうにわれわれは考えておるわけです。しかも私たちは過去において朝鮮との間に不幸な関係がある。そういう不幸な関係を三十有余年続けてきた。そして第二次世界戦争のあと、敗戦というようなことが契機となって朝鮮が独立するという形になったわけです。その独立する過程の中で南と北とに分かれてしまって、いま悲劇が続いておるわけです。過去の日本朝鮮との関係からすると、日本としては何とかしてこういう南北に分立しているという不幸な関係を解消するようにしむけていく。またそういうようにできるだけわれわれが努力し、それの障害にならないようにしていくようなことが過去におけて歴史的な日本の罪滅ぼしになるのじゃないだろうか、こういうように私どもは思っております。したがって、本条約が南北の統一という問題を著しく阻害するというような結果が出るとするならば、それは日本朝鮮との国交正常化ということを口にはしておるけれども、実質的には正常化どころじゃない、不幸な関係を残していくことになることは言うまでもないわけです。  そこで、政府はこの条約締結することによって、そしてまたこれがかりに批准をされるというようなことがあった場合に、そういう問題に対する障害を排除する自信があるかどうか、われわれはその点を非常に心配するわけです。政府はよく、これは決して民族の統一を阻害するものじゃないということを国会答弁しておりまするし、またその他の場所でもよく言っておりますけれども、そういう方途をどういうふうなところで見出そうとしておるか、その点ひとつ外務大臣から御所見を聞いておきたいと思います。
  84. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく現在のこの韓国の窮状を打開するために、隣同士とにかく仲よくするということも一つの大きな要素である。こう考え、われわれは日韓会談の妥結に努力したわけでありますが、これが南北の統一にいささかも阻害原因となってはいかぬ、こう考えることは全く御同様でございますが、具体的にどういう手を用いるかということについては、これはいろいろな複雑な関係に置かれておるのでありますから、一様には言えないと思うのです。やはりこれは一種の東西の調整という一つの背景のもとに初めて可能な問題である。こういうふうに考えるのでありまして、大きな東西勢力というものの調整が一体どういう形で、どういうふうに今後進展するかというようなことは、なかなかこれは、正直に言って、いまのところは予測がつかぬのじゃないか。そういったような背景のもとに、南北の統一問題というものがスムーズに行なわれるということは、これをそのままにしておいていかに南北統一を呼んでみたところが、なかなかこれはむずかしいんじゃないか。私は基本的にはそういう考え方を持っております。
  85. 石野久男

    石野委員 統一問題は朝鮮国内問題ですから、われわれはあれこれなにすることはできませんが、しかし、よく朴政権は勝共統一ということを言っております。これは都張瑛氏がクーデターで政権をつくったときも、その六項目の一つにあるわけです。この勝共統一ということを日本政府はどういうふうに理解しておられますか。
  86. 後宮虎郎

    後宮政府委員 いわゆる共産主義に勝って、そういうベースの上に統一するという意味で、韓国のほうは朝野、両党をあげて、統一問題を論ずるときには、勝共ということを一つの基本の標準としているわけであります。ただ、この勝共の意味が、武力によるいわゆる武力北進という、一時李承晩大統領時代にとっておりました方針を変えて、軍事政権になりましてから捨てております。朴大統領自身も、一、二度武力北進の意向はないということを言っておりますので、これは政治、経済的な意味においての勝共統一、そういうふうに了解しております。
  87. 石野久男

    石野委員 クーデターが行なわれたときに滅共統一ということを言いました。その滅共統一ということばはいまも使われておると思うのですが、訳文ではよく勝共統一ということでなにします。この意味はいま後宮局長が言われたよう内容であったとしても、これは中身は非常に複雑です。しかも北の共和国と南の朝鮮との政治、経済の事情や、国内の社会的な安定、不安定の度合いというものは格段の相違がございます。そういう中で客観的に私たちが第三者として南と北の朝鮮を見ていきます場合には、これはことばの上で言う滅共とか勝共ということばは、そのままうのみにすることはできない。むしろ北のほうは社会的な諸制度も非常に高度に進んでおります。南のほうは非常におくれた、非常に混乱した、腐敗した不安定な状態にあるわけです。これが北に勝ち抜いていくということになりますと、容易なことではないわけです。朝鮮の内部におけるところの人民の統一への要望というものは非常に強い。そういうふうに北と南との国内情勢の違いがあるにもかかわらず、生きるためには統一が必要なんだということを言って、その運動が盛んに行なわれている。  すでに政府も御承知のように、去る七月の十八日に日本韓国民族自主統一同盟日本本部というものができたはずです。これは在日約六十万の朝鮮人の中で、これは南も北も熱望している問題だと思いますが、南朝鮮におけるところの「民族日報」、いわゆる朴政権のもとで虐殺されました「民族日報」の趙社長時代に、この人たちが、南朝鮮六十万の人々とともに朝鮮の統一問題を説いておる。ところが南朝鮮では、朴政権のもとでは統一ということはタブーになってしまっておる。そのことだけも言えないというような事情に、ほとんど戒厳会と同じような形で統一ということは言えないという事態にありまするので、そこでこの在日韓国民団——これは北朝鮮のほうではない、総連の諸君ではなく、民団の側の諸君百二名が去る七月の十八日に新宿の日本青年館に集まって、いわゆる日本本部なるものをつくった。南におけるというよりも、朝鮮の統一に対する偽らざる真の姿だというふうに私たちは思います。こういう運動がこの条約の中で助けられて育っていくのか、あるいはむしろこの条約のためにこういう運動が押えつけられて、圧殺されて、そしてこういう運動を独自にやることはできなくなるのかということは、日本にとってきわめて重要です。この日本本部の結成されたときの宣言の中にはっきりこういうように書いてある。「祖国の統一は、ひとえにわが民族が自主的に成し遂げねばならないからであり、国内の統一運動が表面化できない現在、日本で火ぶたを切らねばならないからである。」これが民族自主統一同盟が結成された理由だ、こういうふうにうたっているわけです。しかもこういう内容を含めて、この人たちは「「韓日協定」と「ベトナム派兵」問題は、民族的感情を激発させ、“統一のみが生きる道”という国民大衆の非願をより強く内燃化させている。」こういうふうに言っておるわけです。だから私たちは、日本政府説明を聞いておると、国交正常化などと言いまするけれども、統一を要求している人たちから言いますると、韓日協定とベトナム派兵の問題は、まさに統一を阻害する。統一のみが生きる道だという国民大衆の非願を圧殺していくものだ、こういう見方をしておるわけです。だから私は、日本政府がこういう問題に思いをいたして、そうして統一の問題を阻害しないようにしなければいけないんじゃないか、こう思います。政府はこういう問題について、やはり何らかの対策なり考え方を持っておるかどうか、これは大臣にひとつ聞いておきたい。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 無理のない、そしてイデオロギーにこだわらない、真の民族の統一は歓迎すべきことだと私は考えます。
  89. 石野久男

    石野委員 もう時間がないようでありますけれども、この問題はまたあとでお尋ねしたいと思います。  私は、きょうはこれで終わります。
  90. 安藤覺

    安藤委員長 関連して、戸叶委員より発言を求められておりますので、これを許します。戸叶君。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 日韓基本条約は次の機会にしたいと思いますが、ただ、いま石野委員とそれから外務大臣の質疑応答を聞いておりますと、外務大臣は、日韓条約というものは、その条約にあらわれた面だけ、成文、そうしてそれがもう権威あるものだというふうなことをおっしゃっていらっしゃるのに反して、やはり韓国の中にはいろいろな複雑な空気なり感情なりがあって、それが今日日韓条約というものの批准国会だと韓国でいわれていても問題があるような状態でございますので、この次に、やはりこの問題を取り上げるよう国会になりましたら、そういう問題もよくお調べになって、読んでないから知らないとか、あるいは韓国のことは知りません、やはりこれは日本だけでいいのです、この成文だけでいいんですというようなことがないようにしておいていただきたいということを私はいまの質疑を伺っていて感じましたので、要望しておきます。  そこで、関連してひとつ伺いたいことは、先ほど石野委員からも出ましたが、あとの領事条約の中で質問してもいいと思うのですが、簡単ですからお伺いします。  この前たしか外務大臣はこの四十八国会の五月十二日に、韓国との間の領事条約というものは結ばない、結ぶ考えは毛頭ありませんということをお答えになっていらっしゃるのですか、いまでもその気持ちに変わりはございませんか。
  92. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、いま韓国のほうから、領事館をあちこちに置くように言われておりますが、領事館を置いても領事条約というものはお結びにならないのですか、それとも全然領事館は置かないお気持ちでいらっしゃいますか。
  94. 後宮虎郎

    後宮政府委員 基本条約で、領事関係を開くことが規定されることになりますので、領事館の設置については原則としてはそれで合意はできておる。  それから各地域のどこに置くかということにつきましては、ケース・バイ・ケースに合意をすることになっております。  領事館の権限等につきましては、御承知のとおり、むしろ領事条約のある国のほうが例外なんでございまして、これは一般の国際慣行に従っていくことを考えておるし、いまのところ領事条約を別に結ぶという計画はございません。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 もしも領事館を置くとすれば同数主義でいらっしゃいますか、それとも韓国は幾つ、日本は幾つというような形をおとりになるのですか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  96. 後宮虎郎

    後宮政府委員 私の承知いたします限り、厳密に同数主義をとっておりますのは、目下のところはソ連との間だと思っております。ほかの国とは必要に応じまして数をきめますので、特に韓国日本との場合は、先ほども答弁いたしましたとおり、向こうの意留民の数、所在地等が非常に散在しておる関係もございまして、日本側といたしましても、領事館がそういうところにあるほうが便利と申しますか、事務連絡上便利な点もございますので、厳密に同数主義に固執する意図はございません。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 領事館を韓国が望むとおりに日本国内にあちこちに置いて、そうして向こう日本も領事館を置くということになりました場合に、同数主義をとらないにいたしましても、相手韓国でありますので、領事条約というものを結ばなかった場合に、やはりその待遇等の問題で不公平になるようなことがあるのではないかということを私はたいへん心配いたします。と申しますのは、韓国日本に終戦直後ずっと事実上の大使館みたいな形で在外公館を置いていて、日本向こうでの在外事務所というようなものの設置に対しては強く反対をしていたという、こういういきさつから見ましても、もしもそういう条約もなしに同数主義もとらないでいた場合に、日本のほうの領事の待遇というか、そういうようなものが、韓国から見て非常に不公平になるようなことがあるのではないかということを私は心配いたしますけれども、そういうことはないということがはっきり証明されますでしょうか。
  98. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御指摘のような事態が全然起こらないとは、もちろん断言できないのでございますが、いまのところといたしましては領事館を開館いたしまして、そのときの運営の状況によりまして、いま御指摘のようなことが起こりましたならば、もちろん方針を変えることはあるわけでございますが、目下のところは、一応領事協定なしでスタートする、そういう計画でございます。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 これ以上質問をいたしませんけれども、そういうふうな問題が起きてから方針を変えるというのではおそいと思うのです。やはり起こらないようにしなければならないと思うのですが、そういう点もよく研究しておいていただかないと、私は必ずこの問題が起こるのではないかと思いますので、その点よく考えていただきたいと思います。      ————◇—————
  100. 安藤覺

    安藤委員長 次に、日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  別に質疑、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔替成者起立〕
  101. 安藤覺

    安藤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  103. 安藤覺

    安藤委員長 閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、閉会中もなお国際情勢に関する件について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、閉会中審査のための委員派遣等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十九分散会