○
纐纈委員 私
ども欧米班は八月の八日に
羽田を出発いたしまして、九月六日ちょうど三十日間の
旅行をさしていただきました。
一行は
小宮山君、
渡辺君、私の三人でございます。
まず、私
どもが参りましたところは、
最初カナダでございます。そこから
ニューヨークに参りまして、次いで
ロンドン、
ハンブルク、パリ、
ジュネーブ、
ローマ、ウィーン、プラーグ、ワルソーに参りまして、八月二十八日モスクワにおいて第二班の
菅野、岡、
三木三君と一緒になりまして、それから北欧のほうへ渡りまして、
ヘルシンキ、
ストックホルム、コペンハーゲン、それから
羽田へ帰ってまいったわけでございます。
まず、
カナダに参りまして、
予定のとおり、
チョークリバーの
原子力総合研究所を
見学いたしたわけでございますが、そこの
技術最高顧問でありますドクター・キー氏から非常に熱心に
説明をしていただきました。大体われわれ三人はいずれも
技術者でございませんので、むずかしい
技術の問題は十分わかりませんでしたが、なかなかりっぱな
施設だということを拝見してまいったわけでございます。ことに
原子力の
発電につきましては、御
承知のように、
カナダは水が豊富であり、ことに非常に湖水が多いので、
水力発電が非常に盛んでございまして、したがいまして
電灯料はほかに比して比較的安いといわれておりますが、
原子力発電に対しては非常に熱心でございます。ということは、水ももちろん限度があるわけでございますが、ことに
ウラン鉱を多量に生産しておりますので、
重水型の炉を専心に進めていくという強い
研究をされておったわけでございます。ただ、
電灯料につきましては、そういうふうに
電灯料が安いのでございますから、いまの
状態ではまだなかなか
水力あるいは
火力の
電灯料には対抗できないけれ
ども、少なくとも数年後にはこれに対抗できる
程度にまでは進めていきたいというようなことで、非常に熱心に
研究を続けております。ことに、ここには二千四百人ばかりの職員がおるわけですが、そのうちの四百人というものは国内の最も優秀な
科学技術者を集めて、ほんとうにエリートをもって組織されておるということを、特に私
どもうらやましく
感じたわけでございまして、やはり若い
方々が盛んにこういう問題に取り組んでもらうということ、特にすぐれた
科学技術者をその職に充てるということは、
日本といたしましても、見習わなければならない問題ではないかというふうに
感じたわけでございます。
次いで
ニューヨークに参りまして、実はアルバニーに参る
予定でございましたが、
連絡が非常に悪うございまして、全然向こうのほうとの
連絡がとれないということでございましたので、急に方針を変えまして、
インディアンポイントの民営の
原子力発電所を
見学いたしたのでございます。これはオーグレジー氏が全部の
説明に当たられまして、そこでは
原子炉の
映画等も見せていただいたわけでございます。ここでも実は
電灯料の問題が非常に論議されましたが、結局電力が非常に要るのだから、今後
原子力発電をもっともっと安くして普及するように一段と
研究を続けなければならぬというようなことを申しておったのでございます。
次に、
ニューヨークでいま開かれております
世界博覧会を見まして、
ゼネラル・
エレクトリック会社の
出品にかかっております館を見ましたし、同時に、
日本館も見たわけでございますが、この
ゼネラル・
エレクトリックのショーの中で、
太陽の
エネルギーと同様の
熱力を発する
実験というものができておりまして、私
どもよくわかりませんけれ
ども、感銘深く見たようなわけでございます。
日本館におきましては、
参観者が非常に多くございまして、御
承知のようにトランジスタのラジオであるとか時計であるとか
写真機であるとかというようなものは非常な人気を得て、なかなか
参観人が多いようでございました。ことに三菱重工の
出品にかかっております九人乗りの小型の飛行機が
出品されておったのでありますが、これに対してすでに十数台
注文を受けたというようなうれしいたよりも聞かされたのであります。
八月十三日には、
ロンドンから七十マイルばかり離れておりますウェールズのブラッドウェルの
原子力発電所を
見学いたしたのでございます。この所長は今度の
IAEAにも出席されたと思うのですが、三十九才の若手でなかなかやり手のようでございましたが、現在イギリスでは九カ所の
発電所が
計画されておって、そのうち六カ所が稼働しておる、そしてもう
相当の年月を経たけれ
ども、一切故障というものは起こらないというようなことを言っております。現在二百八十万キロワットの
発電をしておりまするが、七五年にはそれを千百万キロワットにまで伸ばしたいという
計画で進んでおるようでございます。ただ、あそこでは、御
承知のように
石炭が
相当出るわけでございますから、この
石炭政策との
関係で、
電気料金はなかなか安くしてもらえないというようなことを言っておりましたが、とにかくこの
水力あるいは
火力の
発電に
料金等におきましても拮抗するだけの自信があるような口ぶりでありました。
次いで八月十八日には、
ハンブルク郊外の
原子力船研究所を見たのでございますが、すでに御
承知のように、ここでは
研究は一応済みまして、そうして現在キールの
造船所において
建造中でございます。そこで
研究所では、模型とかあるいは
設計図を見せられていろいろ
説明を受けたのでございますが、いま
建造中の
原子力船にもし欠点があるというようなことだったならば、あくまでわれわれは
研究を続けてそれを改良していきたい。もっぱら
研究に従事しておるわけでございますが、そういうことで、実際の
建造と
研究とがうまく
連絡がついて、悪いところは改良するというようなことがいわれておったようでございます。特に
原子炉の周辺の
状態は特別に注意を払って強力なものをつくっておるが、ほかの船体につきましては、普通の
商船とほとんど変わらない
設計をしておるということを言っておりました。
次いで
ジュネーブに参りましたが、御
承知のように、ちょうど
休暇中でございまして、その
関係の幹部が全部
休暇だということで、そのほうの
見学はやめまして、八月の二十一日には、御
承知のように最近完成いたしましたモンブランの下を通る、
自動車道といたしましては
世界でも一番長いという
トンネルをくぐってまいったわけでございます。なかなかすばらしいできでございまして、私
ども通ったのでございますが、これも
科学技術の非常な進歩の結果であろうと
感心をしてまいったわけでございます。特に
トンネル内の照明であるとか、ベンチレーションの問題でございますが、
自動車と
自動車との
間隔等につきましても、もしそれが縮まった時分にはオートマチックに警笛が鳴って警告をするというような
設備もできておりまして、
日本の
関門トンネル等を見たときには、そういう
施設がなかったのでございますが、これも
相当参考になることと見てまいったのでございます。
ローマをおとずれましたけれ
ども、御
承知のように、イタリアではミラノを
中心とした
ロンバルジア平原のほうにすべて
原子力の
施設あるいは
原子力発電所の
設備ができておるわけでございまして、そのほうにつきましては
見学は行なわなかったのでございます。
八月二十四日にウイーンをたずねたのでございますが、御
承知のように、今度の第九回の
IAEAの大会が
日本で行なわれておるわけでございまして、そういう
関係がございましたので、そのほうの
見学は取りやめたのでございます。
かくて八月の三十日には、いま
三木先生からも御
報告のように、われわれ三人も第二班に加わりまして、
ドウブナ合同核研究所、また、その後においては、
原子力利用国家委員会議長ペトロシャンツ氏を訪問いたしまして、いろいろと
お話を承り、また
質問等もいたしたようなわけでございます。
次いで、私
どもは第一班の
方々と別れまして、九月一日には
ヘルシンキに参りましたが、ここでは、御
承知のように、国会で賛否をきめます
ベル方式の議場も見てまいりました。ことにここでは
公園アパート、いわゆる新
都市の
計画でございますが、
公園アパートと称しましてりっぱな
都市計画における
住宅の
計画が着々と進められておりまして、ここも
ストックホルムと同じように、
住宅の問題については一切不自由を
感じないというようなことをいっておったのであります。
それから、ここでもう
一つ私
どもが愉快に
感じたのは、
日本の
自動車、ことにダットサンでございますが、先方で非常に評判がよくて、現在七千台を突破するほどの
注文を受けておるというような
状態でございました。
九月二日には
ストックホルムに参りましたが、ここのファルスターという
郊外衛星都市を見たのでございますが、ここでは、実はあそこは御
承知のように下が岩盤でございまして、丘の下の岩を堀さくいたしまして、そこへ
原子炉をつくって
発電をやっておるのでございますが、その
重水の熱を冷やすための水の温度が
相当高くなるので、それを利用して冬季の
暖房用に使っておるというようなことも聞きました。いずれにいたしましても、ここの新
都市の
建築等につきましても、それぞれ
技術者が別々な独自のたてまえで
設計をいたして、着々その新
都市が発展してまいっております。しかも、ここにはさっそく新
都市の
中心の近くまで地下鉄が設けられておるわけでありますし、
百貨店等も非常にりっぱなものができておりまして、新
都市に住む住民のためには非常な便宜が与えられておるということでございます。ことに、ここはまた御
承知のように、
福祉国家として非常に有名なところでございますが、実はここでも
老人ホーム等も見させていただいたわけでございます。
きわめて簡単でございますが、これを要しまするに、私
どもしろうとばかり参りましたが、
各国におきましては、
原子力に対しまする
研究は非常に熱心でございまして、私
どもそういう意味から大いに
参考になり、意を強くしたようなわけでございます。ことに、
原子力によります
発電が、先ほ
どもちょっと触れましたが、
料金が現在におきましてはなかなか
火力あるいは
水力に及ばないが、いずれも数年後には必ずこれに対抗するだけに原価を安くして、そういうところまで必ずいけるのだということで、
原子力船とか
商船等はともかくといたしまして、
原子力発電に対しましては、
各国とも非常に熱心でございます。
なお、先ほど
三木さんから
お話がなかったのでございますが、
ソ連の
レーニン号は、
砕氷船として
原子力船をつくってやっておるのですが、実はこれが非常な
成果をあげておるので、今後はさらにもっと大きな
原子力船をつくって、そうして北海の
砕氷に当たって、あそこをいつでも航行ができるようにやりたいというような非常に強い
意欲を示されておったことでございます。
なお、
原子力の
平和利用に対しましては、いずれもほとんど
——もちろん放射能が
人体に影響することはわかっておりますけれ
ども、
平和利用の
程度では決して
人体に及ぼすような危険がないというようなことをいっておりました。先ほど申しました
ロンドンのウィーク氏も、案内しながら、
最初は実は
更衣室を設けておったのだけれ
ども、その後全然危険がないので、それを改造して通路にしたというような
説明もされたようなわけでございます。
私、非常に不勉強でございまして、実は
報告書をつくるまでに至っておりませんので、意を尽くしませんが、簡単に
しろうとが見てまいりました
感じを御披露申し上げてごめんをこうむり、あらためてひとつもっと詳しい
報告書を作成して、
皆さんの
手元に配付したいと思っております。
これで失礼させていただきます。