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1965-09-11 第49回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年九月十一日(土曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 纐纈 彌三君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 田中 武夫君       大泉 寛三君    押谷 富三君      小宮山重四郎君    藤尾 正行君       渡辺美智雄君    三木 喜夫君       山内  広君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 上原 正吉君  委員外出席者         科学技術政務次         官       田川 誠一君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    梅沢 邦臣君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    谷敷  寛君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    橘  恭一君         外務事務官         (国際連合局参         事官)     松井佐七郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(科学技術振興の  基本施策及び国際原子力機関第九回総会に関す  る問題)      ————◇—————
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず最初に、昭和四十一年度科学技術庁重要施策について小林官房長より説明を聴取することといたします。小林官房長
  3. 小林貞雄

    小林説明員 私から昭和四十一年の科学技術庁予算について御説明を申し上げたいと思います。  これは、御存じのように、八月の末で各省予算要求をまとめまして大蔵省に概算要求することになっておるわけでございますが、それに出しましたものでございます。  お手元二つ資料がございます。縦書きの「昭和四十一年度科学技術庁重要施策」というものと、それから横書き数字の入りました「概算要求額総表」という二つ資料でございますが、縦書きのほうは、いわば予算要求いたしますために当庁の政策を取りまとめましたものでございまして、予算要求いたします筋になるものでございます。その大筋に基づきまして、金額的にどういうふうになるかというのが横書きのほうの表でございます。  そこで、便宜、この構書きの数字の表を中心にいたしまして御説明させていただきたいと思います。なお、この横書き項目は、それぞれ縦書きのほうの項目に合致いたしております。たとえば「科学技術基本法制定及び科学技術振興基盤強化」というのが、それぞれ第一の項目になっております。そういう形で逐次整理されておりますので、御了承願います。  そこで、まず第一に、予算の大きな柱になっております。先ほど申し上げました科学技術基本法制定と、それに基づきます科学技術振興基盤強化でございますが、これに必要な経費といたしまして七億四千百万円を要求しておるわけでございます。その中で、基本法につきましては、かねて懸案になっておったところでございますが、現在、学術会議等とつき合わせを急いでおります。来たる通常国会には提出したいということで、目下着々準備を進めておるわけでございます。  それに伴いまして、長期計画等も現在の体制以上に強化するというようなことから、(1)に書いております基本法制定長期計画策定ということで二千八百万円の金額要求しております。こういうふうにいたしておるわけであります。法律そのもの施行費あるいは長期計画そのものの直接の経費をここに計上しただけでございます。したがって、さような意味で、金額的には非常に少のうございますけれども、内容的には非常に大きな意味を持っておる、かように考えておるわけでございます。なお、特にここで申し上げたいことは、備考のところに科学技術会議千七百万というふうに内訳が書いてございますけれども、これは基本法制定に伴いまして科学技術会議強化してまいりたい、かような意図によるものでございます。それから二番目の試験研究機関人づくり、これは従来、やっております海外留学国内留学あるいは各棟研修、処遇の改善等々のものでございます。  三番目の科学技術普及啓発項目につきましては、映画製作二千万円を含めまして、従来やっております施策をさらに強力に進め、同時に、地方における科学技術振興を進めてまいりたいという考えでございます。  四番目の研究学園都市建設推進でございますが、ごらんのように百四十六万一千円と非常に金額が少なく、ことしの横ばいでありますのは、研究学園都市建設そのものにつきましては、私どもとしては、従来以上に積極的に将来の大きな方向として推進してまいりたいのでございますけれども土地購入等の問題が一年間ほどずれております。したがって、本来ならば、四十一年度から当然多額要求が出るところ、一年ずれている関係で本年度横ばい、かようなことにいたしておるわけでございます。  それから五番目の情報活動強化は、情報センターその他の経費がこの中に入っておるわけでございますが、従来やっております機能をさらに強化し、あるいはクリアリング機能整備充実に必要な調査も進めてまいりたい、かような意味金額でございます。  そこで、予算には書いてないのでございますが、縦書きのほうの(5)に税制上の優遇措置強化拡充という欄がございます。試験研究促進してまいりますためには、民間の側におけるその促進をはかる必要があるわけでございますが、それをやりやすくするために、税制面でこれをはかっていこうというのが一つの大きな柱になるわけでございます。さような意味で、来年度は特に大幅減税というかけ声も実はあるわけでございますので、試験研究準備金あるいは試験研究費所得控除制度あるいは技術輸出についての減税等の問題を強力に進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  次に、二は原子力開発推進でございます。総額百五十億七千五百万円という金額をここへ掲げておるわけでございますが、まず第一に、動力炉等開発につきましては、動力炉懇談会の結論に従いまして、本年からの必要な計画を引き続いて推進してまいるわけでございます。開発のための実施計画の立案、研究開発体制あるいは材料試験炉建設というようなものをここでさらに強力に進めてまいりたいということでございます。  新型の転換炉につきましては、従来の成果を生かして設計調査をやり、高速増殖炉につきましては、高速臨界実験装置建設を引き続いてやる。あるいは大型ナトリウム・ループの建設に着手する。それから在来型の導入炉につきましては、動力試験炉の改造、あるいは試験研究委託費及び補助金交付等によりまして、安全性なり燃料に関する研究推進して開発促進する、かような考え方で、動力炉開発につきましては多額金額を投入いたしましてこれを推進してまいりたいと考えております。  原子力第一船の建造につきましては、御承知のようなことで若干期間が延期になっておりますけれども、四十一年度におきましては、必要な試験研究を実施するための経費を計上いたしたわけでございます。  (3)の使用済み燃料処理施設建設につきましては、四十六年度完成目標といたしまして、再処理施設の主工程の詳細設計を実施するということで、昨年の予算に引き続きまして詳細設計完成してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  四番目は新規の事項でございますが、東海地区原子力施設地帯整備、いわゆる地帯整備予算として、来年は、地元の強い要望もございますし、あるいは原子力施設に隣接した地域について、住民の安全確保なり当該地帯の健全な発展をはかるというような必要性からいいまして、道路あるいは公園あるいは有線放送等々の公共施設整備をはかるための予算二億七千百万円を計上しておるわけでございます。  五番目の放射線利用促進につきましては、従来やっております施策をさらに強力に進めていくというような観点から、所要の経費をここに計上しておるわけでございます。  六番目の民間研究助成につきましては、先ほども申し上げましたように、在来型の燃料問題あるいは安全性問題等につきまして委託費を計上し、あるいは補助金を出す、こういうような体制で進んでまいりたい。  それから安全対策強化につきましては、従来からやっております問題をさらに強力に進めるわけでございますが、さらにその縦書きの最後のほうに書いておりますように、原子力商船の入港に備えまして、主要港周辺の気象なり海象について必要な調査を進めてまいり、安全対策の万全を期してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そのほか、(8)といたしまして、以上申し上げましたほかの原子力研究所原子燃料公社、その他国立試験研究機関等々の経費合計六十七億円を取りまとめまして、計上いたしておるわけでございますが、以上百五十億円の金額原子力開発推進につぎ込みたいという考えであるわけでございます。  第三番目の柱の宇宙開発推進でございますが、かねがね申し上げておりますように、昭和四十五年度には実用人工衛星を打ち上げるということを目途にいたしまして、各省十分連絡をとりながら、計画的に宇宙開発総合的推進をやってまいりたい、かような考えでおるわけでございます。特に来年は、この四十五年打ち上げの構想の中で、一段、二段につきましては東京大学成果を利用して両者一体でいくという観点から、大学開発いたしましたミューの改良型を使うという観点に立っておりますので、その辺の問題はさておきまして、三段と四段の分については硝酸ヒドラジンロケットその他当庁独自の開発を進めてまいりたいということでございますので、その辺の研究及び人工衛星そのもの研究等々を進めてまいるというようなことで、宇宙開発推進本部航空宇宙技術研究所両者が緊密な連絡をとってこれを進めてまいろう、かような考えに立っておるわけでございます。金額的には今年の七億六千二百万円に対して、十億七千六百万円の金額をつぎ込んで、相当重点的にやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。かねがね、いつも問題になります大学側との一元化の問題でございますが、いま直ちに一元化の実をあげることはたいへん困難な問題も山積しておりますので、宇宙開発審議会の場を利用いたしまして、逐次両者一元化をはかっていくということでまいりたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、大学開発しました成果を当方で活用するなり、あるいは、御存じのように、研究者段階でも両方を兼任し合うというような体制で逐次一元化方向に進んでまいるというようなことで、来年の方策等考えておるわけでございます。  四番目の柱は重要総合研究推進でございまして、いわゆる特調費がその中心になるわけでございますが、(1)の防災科学技術センターにつきましては、一億九千八百万円から二億八千三百万円と相当大幅な増額をいたしておりますのは、主としてこれは大型耐震実験装置整備いたしまして、かねがね大方から御要望の強い耐震対策につきましての研究推進してまいりたいというのが、従来との大きな違いでございます。そのほか、波浪観測塔あるいは雪害実験所等につきましては既定の線をさらに伸ばしていく、こういう考えに立っております。  二番目の特別研究促進調整費、いわゆる特調費でございますが、本年五億円に対して来年は六億二千万円ということでございます。内訳を申し上げますと、本年五億円の中で二億円は緊急対策というもので、臨時に研究しなければならない繰越が出ましたときに、その金を使ってやっていく。たとえば新潟地震が一番典型的な例でございましたけれども、そういう金額への引き当てがことし二億円でございます。来年も実はその緊急分につきましては二億円でございます。したがって本年の五億円から二億円の差額の三億円が重要総合研究促進ということになるわけでございますが、その三億円を来年は四億二千万円にふやして相当大幅に力を入れてやってまいりたい、かように考えております。その内容といたしましては、いわゆる自然災害に対する防災科学技術、あるいは大気汚染その他の公害防止技術、あるいは海洋総合的利用に資する海洋科学技術、あるいはコールドチェーンということばでわれわれ言っておりますけれども食料流通合理化に資するための食品保管輸送技術問題等々を中心にいたしました重要総合研究につきまして四億二千万円の金額をつぎ込んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから(3)の多数部門の関連研究助成につきましては、備考欄にございますように、人工降雨水質汚濁等につきましては、従来やっておりましたものをさらに仕上げをするために、引き続いて完成をいたします。高温減圧研究につきましても、新しくこれをはかってまいりたい、かような考えに立っております。  次に四番目の潜水調査船建造でございますが、これはかねがね特調費その他で深度七百メートルで海底の研究を進め、海洋科学技術振興の有力な柱にしたいということでやってまいっておりましたものでございますが、一応これの技術的な解明がほぼ解決いたしましたので、来年は、お手元マル債三億六百万円という金額を計上いたしておりますが、具体的に船をつくるべく踏み切ってまいる所存でございます。二千四百万円の金額はその中の現金化分でございます。海上保安庁等の非常に強い要望もございますので、それとにらみ合って来年はひとつ踏み切っていくという所存でおるわけでございます。  五番目の国産技術開発につきましては、従来ございました新技術開発事業団あるいは発明実施化試験助成技術輸出あるいは技術導入実態調査等々の費用でございます。特に新技術を、導入技術から脱却いたしまして国産技術、自前の技術開発したいということで、重点的に力をつぎ込んでいきたいという考え方を持っておるわけでございます。  六番目が資源総合的利用方策推進ということでございますけれども資源総合的利用方策調査がその第一でございまして、東南アジアの一次産品の資源評価、それから水利用構造近代化等々水の問題につながる問題、あるいは食品添加物衣料処理剤の問題、都市緑地問題等々について、資源総合的利用という観点から調査をいたしてまいりたい。  それから総合的利用方策調査助成ということで、キノコ類冷凍処理計量的水利用方式、砂鉄から強靱鋳鉄を安くつくる方法等々について調査をやるというのが二番目でございます。  三番目がコールドチェーンに必要な経費でございますが、そこにございますように、コールドチェーン推進してまいるべく、本年に引き続きまして来年も強力に施策推進してまいりたいと思いますが、特に社会開発懇談会などでも、食生活の改善だとかあるいは生鮮食料品の需給安定に役立つように大いにやるべきであるという答申がございまして、コールドチェーンを大いに推進しなければならない社会的背景も強まっておりますので、これに力をつぎ込むべく調査費といたしまして三千万円、先ほど申し忘れましたけれども、すでに述べました特調費の中で研究費五千万円をこれに計上し、合計八千万円でこの問題の推進を、農林省その他の各省とよく連携をとって進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  七番目の国際交流促進でございますけれども開放経済体制のもとで、技術国際交流というものがますます重要性を加えておりますので、対OECD活動なり二国間の交流をさらに進めてまいりたいというふうな観点から、各種の予算をここに計上しておるわけでございますが、特にアタッシェをひとつぜひここでふやしたい、こういう予算を出しておるわけでございます。OECDの下部機構でございますENEAには、わが国もこの二月に準加盟をいたしております。将来共同研究予算も、(4)のところで国際原子力機関協力ということで事業参加費を計上いたしておりますが、共同研究等もさらに進める観点からアタッシェを出す。それから、カナダあるいはオーストラリア等にもそれぞれアタッシェをふやして、原子力あるいは一般科学技術についての連携を保っていきたいというふうに考えての予算でございます。  それから、第八番目が試験研究機関整備強化ということでございますが、これは申し上げるまでもなく、当庁の試験研究機関といたしまして、それぞれの試験研究機関を一そう整備していく。まず航空宇宙技術研究所につきましてはVSTOLの研究ロケット研究、そういう問題をより強力に進めるべく、また、金属材料技術研究所につきましては、すでに昨年踏み切ったわけでございますけれども金属材料技術試験等中心にいたしました材料試験を、大方の強い要望にこたえまして、国がその試験を実施して権威を与えてやるというようなことから、これについても重点的に金額をふやすというようなことを考えておるわけでございますが、昨年に引き続きまして最も大きな問題は、(3)番目の非金属無機材質基礎研究所の新設でございます。昨年この調査費が五百万円ついたのでございますが、今年はいよいよ実際に研究所をつくるための予算といたしまして、一億一千七百万円の予算を計上いたしました。具体的に研究グループ二つをつくりまして、来年からその建設及び研究に着手してまいりたい、かように考えておる次第でございます。それから(4)の理化学研究所につきましては、従来ございました移転計画が来年の秋に完成いたしますので、この第一期移転計画の完了のために必要な経費をここで計上しておるわけでございます。  なお、こういう国立試験研究機関の問題につきましては、科学技術庁といたしましては、当庁の研究所だけではございませんで、全省の研究機関経費見積もり方針調整をいろいろとはかっていくべき立場にあるわけでございます。さような意味で、科学技術振興経費見積もり方針調整の際に、国立試験研究機関のいわゆる人当研究費増額Aランクについていいますと、五十万円の現行制度を八十万円に引き上げる、こういうようなことからBランク研究所を、たとえば私どものほうの放射線医学総合研究所、それから警察庁にあります科学警察研究所等々の現在Bランク研究所Aランクに引き上げてその研究成果充実をはかってまいりたいという問題につきましても、大いに努力していく所存であるわけでございます。  それから、九番目の柱が科学技術庁庁舎の新営といたしまして九億一千九百万円の予算をこれに計上いたしております。科学技術庁は、御存じのように、現在文部省の中に間借りをしておりますが、人間もふえておりまして、だんだん手狭になっておりまして、事務の遂行上いろいろと支障を来たしておるわけでございます。そこで、私どものほうと、そのほか、たとえば公正取引委員会等総理府の中の事務庁舎を持っていないものが集まりまして、いわば第二総理府庁舎という形で新しい庁舎建設していただかなければならない、ぜひこれをお願いしたいということで、来年は、このために必要な土地購入経費を九億一千九百万円計上しておる次第でございます。これは当庁の予算に直接なるのではございませんで、総理府全体の予算の中に入るわけでございますが、当庁としては最も大きな関心のある一つ事項でございます。  そのほかの行政費は、お手元にございますように、人件費その他を入れて五億二千二百万円。以上合計二百四十億一千一百万円が来年度の当庁の予算要求ということで、本年度比三割増ということでございます。当庁のような全体の金額の少ないところで、しかも、行政事務として大いにやらなければならないことの多いところが、一律に三割のワクをかぶせられるということは、いろいろ問題もあるところでございますが、大体以上申し上げましたような三割増の線内におさめまして大蔵省のほうへ予算要求をし、現在交渉を始めておる、かような段階でございます。  以上、お手元資料により、来年度予算要求について御説明申し上げた次第であります。
  4. 岡良一

    岡委員長 以上で説明の聴取を終わりました。質疑はございませんか。——別質疑もございませんので、次に移ります。     —————————————
  5. 岡良一

    岡委員長 それでは、引き続き、九月二十一日から開催される国際原子力機関の第九回東京総会について御説明を願います。村田原子力局長
  6. 村田浩

    村田説明員 すでに御案内のとおり、国際原子力機関の第九回総会が来たる九月二十一日から八日間にわたりまして、東京プリンスホテルを会場として加盟国九十三カ国、並びに関係国大使館代表約四百名を集めまして開催されることになっております。  御承知のとおり、国際原子力機関は一九五二年に第一回の総会を開いておりますが、自来毎年秋に総会を開いてまいりまして、今回は第九回になるわけでございます。この間、第八回、昨年まではこの本部事務所の所在地でございますウイーンで開かれてまいったわけでございますが、今回このウイーンを離れまして、はじめてそれ以外の地で総会が開かれることになったわけでございます。このことは、単に国際原子力機関そのものにとって画期的なことであるばかりでなく、この機関の創立以来理事国として活躍してまいりましたわが国にとりましても、また、さらに広くアジアの地域全体にとりましても、まことに意義の深いことと考えておるわけでございます。わが国としましては、この機会に、海外から参加された加盟諸国代表並びに事務局方々国連関係機関代表、そういった方々わが国原子力開発事情等に親しく接し、認識を深められるだけではなくて、広くわが国経済社会情勢等についても親しく自分の目で見て認識を深められる。これらのことが今後国際的な協力関係を進展する上に大きな効果をあげることと心から期待しておるわけでございます。総会におきましては、大体例年にならった議題がございまして、この議題を順次討議してまいるわけでございますが、この前の理事会で大体きまりました議事予定によりますと、そのおもなる議題といたしましては、まず第一に、今後この総会におきましての議長を選出することがございます。これにつきましては、これも慣例でございますが、開催地の国の首席代表議長に選ばれるというふうに国際的にも慣習がございますので、今回は、わが国代表議長に選ばれることに相なろうかと考えております。  それから事務的なことでございますが、国際原子力機関へ新たに加盟申請しておる国がございますので、その加盟を承認する手続がございます。今回の第九回総会では、新たにヨルダンが申請しておりまして、この加盟を承認する手続がとられることになっております。  それから、そういうような事務的な議題を片づけました後に、事務局長一般演説がございます。現在はエクルンドさんが事務局長でございますが、エクルンド事務局長から、過去一年にわたりますIAAの活動の概略につき、一般演説がございます。この演説が終わりましてから、参加加盟国代表の間で一般討論が行なわれ、そして理事会からの年次報告が審議されるわけでございますが、この一般討論の際に、主要国代表のいわゆる代表演説ということが行なわれるわけでございます。従来の例で見ますと、加盟国の約半分くらいの国々が代表演説を行なっておるようでございますが、もちろんわが国は当然この議題の中におきまして代表演説を行なう予定でございます。  その次に、この憲章の規定に従いまして、任期の参っております理事国の選出がございます。理事国の選出の方法につきましては、憲章の第六条にいろいろとこまかい規定がございますが、その規定によりまして、総会選出になっておるこの理事国のうち数カ国が今回任期が参りますので、それにかわる理事国の選出が行なわれるわけであります。  続きまして、国際原子力機関の一九六六度予算案を審議し、承認する手続がとられます。国際原子力機関は暦年制をとっておりまして、一九六六年の一月から十二月までの予算案を総会に上程いたしまして、その承認を得るわけでございます。  それから次には、今回出ます議題としまして、これまで、加盟諸国の分担金は、国民所得を標準といたしましてその比率をきめておったわけでございますが、最近の国民所得の変化等を考慮に入れまして、新たなる比率を提案してきております。これは理事会を通ってきておる案件でございますが、これを総会で決定していただく、こういう議題がございます。わが国も、従来、所要経費の二・〇九%を負担しておりましたが、今回この議題が審議され決定されますと、二・五%になる、こういう予定になっております。  それから次に、今次総会における最も重要なる議題でございます新保障措置制度の設定についての審議決定がございます。  この新保障措置制度と申しますのは、さきに国際原子力機関におきまして採用いたしております保障措置制度が、熱出力でいいまして十万キロワットまでの原子炉についての保障措置制度であったわけでございますが、熱出力で十万キロワット以下と申しますと、研究用の原子炉を中心に動力用といたしましてもきわめて小さな、いわゆる実験用あるいは試験用の範囲しか入らないわけであります。しかるに、わが国におきましてはもとより、世界の各国におきまして、最近非常に大きないわゆる実用原子力発電所というものが続々と建設されてきておる情勢でありますので、それら大型の原子炉に対しても保障措置が適用されるように、先般来いろいろと理事会で検討してまいりまして、成案を得まして、これを新保障措置制度という形で今次総会に提出されたわけであります。この議題が審議の上決定されますならば、これまでは除外されておりました大型炉に対しても、IAAの保障措置を適用する、こういうことに相なるわけでございます。わが国では、御承知のとおり、東海村に電気出力十六万六千キロワットというかなり大きな原子力発電所を建設中でありまして、遠からずこれが営業運転に入ることになっております。この新しい保障措置制度が確立されますならば、この東海原子炉の供給国でありますイギリス政府と相はかりまして、これに対する保障措置をIAEAに移管するということも協議いたしてきておる次第であります。  最後に、IAEAの憲章の一部改定に関する議題があります。これは、先ほどの理事国の選出とやや関係があるわけでありますが、憲章の第六条のA項、これが理事国の選出手続について定めてございますが、その中の第2項に、核物質の生産国の中から代表いたしまして四カ国がリストアップされておりまして、その四カ国の中からまた二つの国を理事国として選出する、こういうような手続があります。この点につきまして、アフリカの新興国でございますコンゴから、この規定を変えて、特に生産国を四カ国と限定するようなことをやめてしかるべきではないか、こういう改定の提案があるわけでございます。  そのほか、事務的にいろいろございますが、予算案あるいはIAAの来年度事業計画等につきましては、総会のもとに二つの委員会が設置されまして、これら二つの委員会で十分事務的に審議検討が行なわれ、最終的に総会において審議決定する、このような手続になっております。  今回の総会に対しまして、わが国といたしましては、先ほども申し上げましたように、IAAが設立されて以来の理事国でありまして、したがいまして、総会にかかる議題は、ほとんどすべて理事会において十分審議されておる、その審議にわが国としても参加してやってきておるわけでございますので、そういった立場から慎重に対処してまいらなければならないと思っております。特に、今次総会の意義といたしまして、先ほども申しましたように、ウイーンを離れて初めてのアジアにおける会議である。それから昨年十月に中共が核実験をいたしまして、いわゆる世界における核拡散防止というものが特に大きな問題となってきております際の最初のIAEAの総会であるという事実、こういったことから、各国ともこういった問題に非常に強い関心を持って出席されることは当然予想されるわけでございますので、そういった点も十分考慮に入れまして、適切かつ積極的な態度で臨むように、代表団を通じて活躍するようにいたしたい、また、いたさなければならないと考えまして、現在外務省等とよく協議して準備を進めておるところでございます。  なお、今日まで判明いたしておりますところで、今次総会に各国から出席される方々のうち、おも立った方々をちょっとこの機会に御紹介申し上げておきますと、アメリカからはシーボルグ原子力委員長をはじめといたしまして、パルフレー、ラメー両原子力委員も代表の一員として御出席の予定でございます。それから、イギリスからは、イギリスの原子力公社の総裁でありますサー・ウィリアム・ペニーみずから代表として出席する予定でございます。フランスからは、フランスの原子力庁の最高責任者でございます行政長官のヒルシュさん、それから技術系統の最高責任者でございますペラン氏等が出られることになっております。また、ソ連からは、最近の連絡によりますと、原子力利用国家委員会の副委員長でありますエメリアノフ教授が出席されることになっております。カナダからは、これは毎年でございますが、カナダの原子力公社の総裁のグレーさんほか、カナダの原子力委員会のほうの委員でありますローレンスさん等が見える予定でございます。ノルウェーからは、原子力関係では非常に古くから活躍しておられますノルウェーの原子力委員会の委員長であるランダース博士、インドからは、同じくインドの原子力庁長官であるバーバ氏等が御出席の予定でございます。なお、IAEAからは、エクルンド事務総長以下事務局の幹部職員、合わせて百四十名出席されることは前にもちょっと申し上げたとおりでございます。国連本部からは、ラルフ・バンチ事務局次長がオブザーバーとして出席されると聞いております。わが国からは、昨日の閣議におきまして、代表団といたしまして合計二十八名を任命することが決定されております。すでに御案内と思いますが、代表には外務省顧問朝海浩一郎氏を任命し、代表代理には外務省並びに科学技術庁中心に、それに東大の向坊教授を加えまして七名、代表顧問には中曽根先生はじめ国会議員の先生方七名、原子力委員会の常勤委員三名、その他合わせまして、顧問として十四名、それから随員といたしましては、外務省並びに科学技術庁事務局から六名、合計しまして二十八名の代表団を構成することが決定いたしておるわけでございます。  以上、簡単でございますが、第九回総会準備状況並びに予定について申し上げました。
  7. 岡良一

    岡委員長 村田原子力局長説明に関連して、何か補足的な御説明がありましたら聴取いたしたいと思います。
  8. 松井佐七郎

    ○松井説明員 国際原子力機関の第九回総会東京開催につきましては、村田原子力局長から詳細な説明がございましたので、私としては特につけ加えることはないと思いますが、今度の会議の意義ということに関して私は一言申し上げておきたいと思います。  国際原子力機関総会ウイーンを離れて初めてアジアで開かれるということの意義は、はたして何かということを考える必要があると思います。今度の会議は、事務局から百四十名も参りまして会議をやりますが、実際その会議の重要議題はすべて理事会において検討されておるのでありまして、総会は、理事国が非理事国の発言を主として許すことになっており、一種の株主総会みたいな会議でございまして、ともすればお祭り騒ぎに終わりがちになるという傾向はどうしても否定し得ないと思います。このときに、日本が何をするか、何を主張するかということによって、会議の意義がかなり変わってくると思います。この点について私が指摘したいのは、原子力の平和利用に関しまして必然的に副産物として生産されるところのプルトニゥムを軍事利用に転用しない、すなわちエージェンシーが創立以来検討してまいりました国際的な、しかも無差別的な査察制度をさらに発展させるということにつきまして、飛躍的な発展を期待しなければいかぬ。この点につきまして、日本は従来バイラテラルの原子力協定によりまして、主として先進国から技術並びに原子力に関する物質を入手してまいりましたが、その原子炉の運転に伴って生産されるプルトニゥムを軍事利用に転用しないということの一連の査察は、すべてバイラテラルに行なうたてまえになっておりましたのを、日本政府が率先しまして、国際平和に関することであるから、公正無私な立場から国際機関にやらせるべきであるという立場を当初から堅持してまいりました。その立場から日英の動力協定、日米の動力協定におきまして、その査察をエージェンシー、国際機関に移譲するということを日本政府は従来から主張しておりまして、これは特に日英協定につきましては一応事実上の合意に達しております。日米協定も真近になっておりますが、これがはたして今度の総会前にできるかどうか問題がございますけれども、その意味におきまして、原子力の平和利用に伴う副産物を必ず平和利用に限るということを、世界平和の立場から、このエージェンシーを活用してやりたいということを、日本政府が世界に率先して主張することによりまして、原子力の平和利用のみならず、それと重ねて軍事利用防止をできるだけするという、世界平和に貢献するという立場につきまして、日本政府がもっと活躍すべきではないか。  それからもう一つは、原子力の平和利用に関しまして、日本政府が過去十年間やったその実績を、低開発国並びにアジアの国々に対してわかち合うということについて、もっと貢献すべきではないか。この点につきましては、はたして日本政府のやっていることが十分であるかどうかにつきまして、私はかなり問題があるのじゃないかと思います。  今度の会議で御参考までに申し上げておきたいのは、最近の国際会議一つの年中行事でございますが、南アの追放問題、ポルトガルの追放問題、あるいは中共の代表権、こういうふうな政治問題がかなりからんでくると予想されておりますので、外務省といたしましては、国際会議に練達な朝海前駐米大使を特に選んで会議に対処することにしておるわけでございます。  ちょっと話がポイントをはずれたかと思いますが、補足かたがた私見をまじえまして申し上げた次第でございます。
  9. 岡良一

    岡委員長 松井参事官説明を聴取いたしました。     —————————————
  10. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  11. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 IAEAの総会が初めてアジアで持たれ、しかも、それが日本で開催されるということは非常に重要な意味もあり、さらに、日本としても非常に重要に考えなければならない、こういう立場から、きょう科学技術振興対策特別委員会で、概略の御説明ないしは松井さんのほうからその内容とするところを強調してお話しになったことは、私は時宜を得たものであると思います。当然こうなければならないと思います。したがいまして、この件につきましては、政府としてもかなり十分な準備をしておられるように思うわけであります。私たちの一つ要望としては、初めてウイーンを離れて総会が行なわれるわけであります。それが日本でありますから、前例がオリンピックでございますので、ひとつ完ぺきの準備をしていただいて、諸外国からとやかく非難されるようなことのないようにしていただきたいと思います。それにつきましては、いま外務省のベース、それから科学技術庁のベースがあると思うのですが、その辺の連絡は十分いっておるかどうか、愚問かもしれませんけれども、これは私一つ心配をしておる点でありますのでお聞きをしておきたい。
  12. 村田浩

    村田説明員 この総会準備状況についての御質問でございますが、この主務官庁といたしまして、国際会議でございますから、外務省が当たられるのは当然でございます。したがいまして、外務省に準備委員会というものを設けてございまして、準備委員長としては外務省の審議官がおられ、そのもとに委員並びに幹事を置きまして、関係各省から幹事役が出ます。私もその一名になっておりますが、そのように、外務省中心に諸般の準備を進めております。しかしながら、日本が主催いたします会と違いまして、主催は、あくまでといいますか、それを実際推進いたします母体はIAEAの事務局でございますから、事務局の行ないます準備と表裏一体になって、この準備が進められなければならないわけでありますが、そのような観点で、日本国側としては、外務省を中心準備委員会をつくり、この準備委員会とIAEAの事務局と緊密一体の連絡をとりつつ、必要な準備事務的なことでは非常にこまかいことがたくさんあるわけでございますが、それらを一つ一つ片づけてまいっておるわけでございます。その点につきましては、事務局も百四十名から見えておりますが、日本側からも百三十名の職員を補助として提供するということで、大部分は外務省側からこれをあっせんしておられるわけでございますが、一部は両省庁からも有能な職員を出しまして、事務局の仕事をお手伝いさせていただいておる、このような形で進んできております。準備と申しましても、このような事務的な、会議を開き、円滑に進めていくために必要な準備もございますし、それからもちろんわが国としまして、総会に臨みます基本的方針並びにその基本的方針をどのようにして実現するか、そういった内容についての準備もございます。内容につきましては、ただいま松井参事官のほうからもお話がございましたような大きな問題をかかえておりますので、そういったようなことを両省庁を中心に相談し合いますと同時に、今回代表団もきまりましたので、代表団としての御相談も進めてまいるようになるわけでございます。さらに、これらのほかに、第三のカテゴリーといたしまして、せっかく参加された諸外国の代表並びに事務局の職員等に対しまして、わが国原子力事情その他産業経済の発展状況等を親しく見ていただくことも非常に大切なことでありますので、その点についての準備も着々と進行しておるわけでございます。具体的に申しますと、わが国原子力研究のセンターでございます東海村へは、この総会の期間のうち一日をさいていだだいて、東京から相当数の出席者を招きまして見学をしていただくように手配いたしており、また、いろいろと一般の会社その他の見学等につきましても、できるだけ視察のごあっせんをするような準備を整えているところでございます。
  13. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 第二の問題点ですが、これは松井さんのほうからお話しになりました、日本で行なわれる以上、やはり日本としての主張すべき事柄、あるいは、また、力を入れて推進していかなければならない事柄、それは原子力の平和利用に徹することだ、このことで私も意を得たわけなんです。村田原子力局長のほうからは全体的なお話がありました。その中に、焦点的な問題点を述べられたが、しかし、一つ心配なのは、これははしなくもお話に出ましたように、ともすればお祭り騒ぎということと、もう一つは、これはさっきからのお話の中にありましたように、核実験の問題だとか、核拡散防止とか、さらにあとでお聞きしたいと思うのですが、ソ連からは、すでに外務省を通じて今回の会議に対しまして提案がなされている、そういうことから考えますと、これを外交的に処理してしまうか、あるいは技術庁として確信をもって、日本の科学技術庁の面目にかけて主張するか、ここにおいて、形式的に終わるか、あるいは実質的に終わるかというところの分岐点ができると思う。  そこで、松井さんからお聞きするか、あるいは科学技術庁の長官からお聞きするか、これはどちらでもけっこうですから、その方向づけですね。それに対するところの確信あるいは計画、こういうものがなければならぬと思うのです。私は、主張しっぱなしでは困ると思う。これを主張し、そうして決議でもとれるというような覚悟を持ってやってもらわなければ、仏つくって魂を入れぬことにもなり、何のために日本に引っぱってきたかということになる。聞くところによると、一億円もこれに金をかけるということですが、その意味がないと思う。やる以上、それに対するところの成果を私はあげてもらいたいと思うのですが、そのことに対する確信、あるいはどういうぐあいにしてやろうかという考え方、これは言えない点もあるかもしれません。しかし、可能な範囲でひとつ言っていただきたい。
  14. 上原正吉

    ○上原国務大臣 この核拡散の防止とか、平和利用に徹するとか、そういうことは、核開発に関する当然の事業目的なのでございまして、これには、国としても、どこまでも主張し、努力しなければならぬと考えておりますけれども、諸外国に向かって日本の政府を代表するものは、やはり外務省でございますので、このことは国民の考え方、決意なりを、また、政府の考え方なり、決意なりを外務省に主張していただく以外に方法はない、こう思うのでございます。  具体的には松井さんにひとつお答えいただきますように、お願いいたしたいのでございます。
  15. 松井佐七郎

    ○松井説明員 お答えいたします。基本的なラインは、いま上原長官がおっしゃったとおりでございます。  ただ、問題を事務的に見ますと、今度の会議に臨むにあたりまして、基本的な問題は、まず、会議を開くということに対するロジスティックの面の準備、それにもう一つは、会議に臨む日本の抱負なり、政策をどう主張するか、この二つの問題があると思います。  第一の面につきましては、外務省に与えられた予算、私も予算を特に獲得したのですが、力が足りなくて必ずしも十分な予算だとは申し上げられないことは事実でございますが、与えられた予算の中で、事務局計画変更にかかわらず、百四十名を迎えまして、事務的には少なくともだれも文句を言わない程度にいけるだけの自信を持っております。私は、その準備委員会の事務局長をいたしまして、金の折衝、それから事跡折衝、その他いろいろ万般にわたってやってまいりました体験から、その方面の準備はまあまあだいじょうぶだろうと確信をもって申し上げられます。  日本政府がこの会議に向かって何を主張するかという問題は、まず、国際原子力機関の本来の憲章の立場と照らし合わせて考えてみることだと思います。  憲章上は、原子力の平和利用を進める、世界の平和と繁栄のためにこれを進めるのだということをうたっておりますので、まず、原子力の平和利用の技術の進歩と、その技術交流、学者の交流、それから、平和利用に伴う副産物の軍事上の転用を避けるネガチブの面、ポジチブには技術協力、あるいは原子力科学技術に関する学術上の情報交換、そういうふうなことが、今度のIAEAの総会の開催にあたり、当然おもなる問題になるだろうと思います。それに対しまして、さっき申し上げましたように、日本は、国際原子力機関の育成に当初から協力いたしまして、単に理事国になったのみならず——これは申し上げますが、国際原子力機関の中枢というものは理事会でございます。当初、国際原子力機関の憲章草案が示されたときに、私は約十年前に外務省の科学課長をしておりましたが、日本政府は、 この理事会がたった十三カ国しかないのに猛烈に反対いたしまして、これをふやせ、日本をぜひ入れるようにと猛烈に運動をいたしました。その案が受け入れられまして、日本は当初から理事国になっております。その意味におきましては、当初から活発な活躍をしておるし、計画の発展につきましては、日本は英米に劣らざる主導的立場をとってまいりました。いま申し上げました核拡散防止とか、核兵器の問題は、これはもちろん平和利用に徹する日本としては当然のことでございますが、かかる問題は非常に政治的な色彩が多く、現に国連の総会、その他適当な分野において行なわれておるので、これは、ある意味において、国際協力の分業が行なわれるのが会議の秩序、能率を期する上から当然だと思いまして、今度の会議において、日本政府は、核拡散防止、あるいは核実験、核兵器の問題について正式にリーダーシップをとる見解はございません。これは、国連の総会その他適当な場においてなさるべきものと考えております。  以上で終わります。
  16. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三番目の問題に多少触れられたわけですが、そうすると、ソ連のほうからの申し入れがあったわけですね。このことに対するところの日本政府のやり方というか考え方ということではなく、IAEAの全体の考え方になってくると思うわけですが、これについて、日本に対してソ連からああいう申し入れがあった。それに対して、下田次官のほうから、新聞を通じますと、ああいうような回答があったわけです。これは、いま松井さんが言われたことで当然解明はつくと思うのですけれども、そうしますと、この会議でそれをどういうぐあいに分離するかということについて、ソ連側はわざわざ提案をしてきておる。その点についてひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。  それから、私たちも、このたびIAEAの総会があるということの見通しに立って、東南アジアそのほか各国の方とお話をしてまいりましたが、原子力の平和利用に対しましては、それはごもっともです。それに徹するのは当然ですという意味のそういうお話でございました。ただ、戦争動乱の直前に会ったインドのバーバ博士にしましても、シャストリ首相にしましても、軍事利用に供するというような強い議会の要請もあるけれども、インド政府としては、これについては断固平和利用に徹して原爆はつくらないという平和宣言をされて、強い決意を示されておる。それで、日本としても、いまおっしゃるようなことならば、分業で、他の国際機関でやるべきだ、あるいは、この会議でやるべきだというようなことですけれども、すでにこういう線が出てきたわけですね。ソ連からこういう申し入れがある。その線をはずせば——拡散防止とか、あるいは原爆をつくらないということに徹するならば、平和利用ですから、平和利用に徹するというならば、こっちに触れなければ、一方を逃げて、そうして一方を主張するということがどうできるのかということですね。  それから、また、もう一つは、お祭り騒ぎと最初言われましたことと、それから他の国際機関でやるべきだということとの分離ができなければ、この会議がまた混乱におちいって、何をしたか、混乱のためにやったのかというような心配も私たちしろうとでわかりません。国際的な会議にいままで一回くらいは出席したことはありますけれども、そういう経験がありませんから、そういう点がひとつ心配になるわけです。せっかく行なわれるのですから、インドのように主張すべきことは、うんと主張してもらいたいと思うのです。しかし、それをやろうとすれば一方に触れなければなりませんし、触れようとすれば混乱するということで、下田次官のようになってしまうということになる。その点、どうも私たち心配なんです。
  17. 松井佐七郎

    ○松井説明員 お答えいたします。  正直に申しまして、ソ連の提案は、その時期から見まして、その内容から見まして、きわめて巧妙なる提案だと思っております。しかしながら、核兵器の製造禁止、あるいは全面的な軍縮という問題は、これは人類の悲願でございますけれども、御承知のとおり、かかる本質的な問題はそう簡単に解決する問題でないことは、人類の歴史がこれを立証しております。現に、ジュネーブにおきましては、核兵器の軍縮に関する十八カ国の委員会が小田原評定のようにやっております。私らは、日本の憲法の立場から見ましても、日本の原子力開発に関する基本法の立場から見ましても、核兵器というものは願わしくない。つくってもらってはいかぬという気持ちは、何人といえどもこれを否定する者はないと確信をいたしております。ただし、日本政府としては、主催国として責任があります。会議はわずか一週間ないし十日でございます。その間、通常のエッセンシャルな機能を発揮するに至る議題が盛りだくさんにございます。しかも、日本政府は、この会談を成功に終わらせるところの道義的な責任を持っております。その主催国としての立場から、理想論と現実論の間をどうしても着実に妥協していく責任があると思っております。そういう実際論の立場から見まして、核兵器のような本質的な問題をいま取り上げることは、会議の成功を保証するゆえんでないというふうに考えております。しかし、ソ連の提案というものは、よく見ますと歴史的に見まして新しいものではございません。国際原子力機関の場におきましても、従来ポーランドなりチェコを通じまして、ソ連の衛星国を通じまして、こういう議題理事会にものぼったことがございます。私もその理事会に日本政府の代表として臨んでおりましたが、趣旨においては私は反対いたしませんが、こういうふうな問題につきましては、議事手続の七十七条に規定がございます。国連のほかの場で議題として討議していることを、ことさらに重複することは、国際機関の能率から見ましても好ましくないし、それから国際原子力機関の主たる憲章の立場から見まして、平和利用の——もちろん平和利用と軍事利用はたての両面でございます。連関性があることは御指摘のとおり。しかし、現実の立場から進めるためには、そういう抽象論なり理想論のみに陶酔しては議事が進まない。どうしても現実の機関の能率、実際上の運営の効果というものを考えていかなければ、結局小田原評定で何も進まないということは、従来の国際機関の運営から見ましたら立証される一つの鉄則だと思っております。いま先生のおっしゃいました意見というものは、確かに連鎖点はございます。たての両面です。しかも、それを巧妙に政治的攻勢に出たソ連の外交というものは、なかなかあなどりがたきものがあるということは、私も認めるにやぶさかではございません。しかし、それだからといって、ソ連のペースに巻き込まれてしまったら、会議がこんとんとしまして、日本政府が何億の金を使って何をやったか、もの笑いの種になるということは必至です。外務省は実際上の責任がございますから、その会議の運営を現実的に着実に進めるために、この問題は、こういう非常に政治的な色彩の濃い問題にはあまり深く足を突っ込まないほうが賢明だ、そう考えております。したがって、政府の態度もそれに従って善処されるようになると私は思っております。  以上でございます。
  18. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 御答弁をいただきましたが、それは政府の見解で、松井さんの見解ではないと思います。  それはそれとしておきまして、もう一つ、くどいようですが、お聞きしたいのですが、会議をスムーズに進めるという、こういう責任があります。しかしながら、先ほどから、るる強調されておるように、日本はもう平和利用に徹するのだ、こういう立場からすれば、やはりその焦点には、混乱せぬ範囲で私は触れておいていただきたいと思うのです。何か決議の形か申し合わせの形か、そうせぬと、一方で主張したことが意味がないと私は思います。こういう用意があるかどうか。混乱せぬ範囲で、なるほど議事手続の七十七条にそういう規定があり、重複を避けるというそういう分離のしかたや、会議をスムーズに進める便法がありますけれども、しかしながら、そういうことをやらなかったら、私は意味がないと思いますので、そういう点の用意があるかどうか、ひとつお聞きしておきたい。  それからいま議題一つとして取り上げられておりました、これも当然日本としても考えなければなりませんし、私たちも今回回ってきたときに重要な一つの話し合いの要点にしてまいったことですが、低開発国という言い方は悪いかもしれませんけれども、お互いにアジアの国が互恵平等の立場で原子力平和利用に徹しなければならぬ、こういうことになってくれば、日本としてもそれに対するところの用意がなければならぬ。あるいは、後日、アジアの国々でまたそうした一つ会議を持つかどうか、こういう点も政府としては腹がまえを持っておいていただかなかったら、お互いに互恵平等で助け合おうという、そういう決意がまた希薄になってくる。これは今度の会議には関係ないかもしれない。しかしながら、その芽を出しておく必要があると思う。いずれにいたしましても、私は日本が原爆の被爆国として一つの悲願を持っている。それに悲壮なまでに軍事利用に原子力を使わない、こういうことを主張しようとするならば、こういう会議でもこれは別なものだと言わぬで、この会議一つの積み上げの要素として考えるべきだと思う。非常に俗な例ですけれども、私たちは政治的な一つの動きをする場合、たらいの中に水を入れて一本のはしでかきまぜて全部の水を動かそうと思っても、とても動くものではありません。しかし、何回となくこれを回していくうちに全体の水が動くわけですね。こういう問題は、もう十年の歴史を見ても、小田原評定に終わっておるじゃないかというが、私はこういうことは日本の決意が多少足らぬのじゃないかと思うのです。一本のはしになって水を回すとするならば、私は、やはり、この会議も、混乱におちいらぬ程度におきまして、この二つの問題を具体的にどう進めるかという強い決意がなければならぬ。その一つは平和利用、その一つはお互い技術援助し合う、この二つですね。これはいまお答えができなければ、こうして代表団が出られるのですから、そういう点をもう一つ明確にして臨んでもらいたいものだと思います。御答弁いただけるならひとつしてください。
  19. 松井佐七郎

    ○松井説明員 簡単に御答弁いたします。  まず第一に、技術協力の問題でございますが、日本は原子力の平和利用を始めまして十年に達し、予算も相当使っておるし、優秀な学者、技術者の訓練もできておる。したがって、応分の技術協力をすることは、国際的な責務だと思っております。ただ、現実的にどの程度までやれるかという問題は、これは予算関係もございますけれども、外務省としては、できるだけ推し進めるほうが妥当だと思っております。ただ、進め方の方法が、技術援助を進めるにあたって、私考えるべき点があるのではないかと思っております。というのは、最近パキスタンなりUARなり特定の国が、あるいはユーラトムのうちでもイタリアが原子力に関する協定を申し込んでおります。私は、特に低開発国からの技術協力の申し入れというのは好意的に考えるという基本的な立場は、これは当然でございますけれども、その進め方が、たとえば日本がパキスタンに対して技術援助を進めると、インドの政府は非常に警戒し、疑惑の念を持っている、あるいはUARに持ち込みをすると必ずイスラエルを刺激するだろうと思うのです。したがって、その技術協力なり援助のバイラテラルの方式についても、いろいろな政治的な要素も勘考して着実に慎重に進むべきだと思っております。しかも、当初は、原子力の基本的な情報の交換とか技術協力の点ならよろしゅうございますけれども原子力には実用的な段階がありまして、大きなリアクターに関する技術協力の問題になりますと当然査察の問題が起こるので、これはなるべく国際原子力機関の場を利用すべきではないかと考えております。  それから先ほどおっしゃった軍縮並びに核兵器の禁止に関するところの御意見は、承っておきます。
  20. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 終わります。
  21. 岡良一

    岡委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会