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1965-03-27 第48回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十七日(土曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      伊藤 顕道君     木村禧八郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         吉江 勝保君     副主査         北村  暢君     委 員                 太田 正孝君                 日高 広為君                 木村禧八郎君                 羽生 三七君                 白木義一郎君                 岩間 正男君    国務大臣        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        通商産業大臣   櫻内 義雄君    政府委員        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵大臣官房会        計課長      新保 實生君        大蔵省主計局次        長        澄田  智君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        大蔵省国有財産        局長       江守堅太郎君        大蔵省国際金融        局長       渡邊  誠君        通商産業大臣官        房長       熊谷 典文君        通商産業大臣官        房会計課長    後藤 正記君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬郡  巖君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省軽工        業局長      伊藤 三郎君        通商産業省鉱山        局長       大慈彌嘉久君        通商産業省鉱山        保安局長     川原 英之君        通商産業省公益        事業局長     宮本  惇君        工業技術院長   馬場 有政君        特許庁長官    倉八  正君        中小企業庁長官  中野 正一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  この際、分科担当委員異動について御報告いたします。  伊藤顕道君が委員を辞任され、その補欠として木村禧八郎君が選任されました。     —————————————
  3. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 昭和四十年度総予算通商産業省所管議題といたします。時間の都合上説明はこれを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。順次発言を許します。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ぼくもすわってやりますから、櫻内さんもすわってでけっこうです。  中小企業の問題についてお伺いしたいんですが、まず第一点は、中小企業倒産件数実態について、それから第二の質問は、中小企業対策の基本的な考え方、これは予算委員会でちょっと質問をしたのですけれども、時間がなくて十分に質問できなかった。社会党の中小企業基本法もありますので、それと対比しながらお伺いしたいと思うのです。  まず最初に、中小企業倒産件数が昨年八月ごろから戦後最高記録を毎月更新していると言われているのですが、この数字は主として東京商工興信所調査によるものであって、大体負債総額一千万円以上の倒産件数が発表されているわけです。そこで通産省は、中小企業倒産について、東京商工興信所調査以外に実態把握として、たとえば負債総額一千万円以下のものについてもどの程度まで調査されておるのか。どうもわれわれ見てきますと、零細企業がつぶれておるのが非常に多いのですね。私は品川区ですけれども、あそこらの品川協——労働組合協議会というのがありますが、そういう人に聞きますと、小さいところがずいぶんつぶれているというのですね。今月に入って十件つぶれたとか、二十件とか。そうしますと、負債総額一千万円以下の倒産件数というのはかなり多いのじゃないかと思います。それで質問したいのですが、なぜ私はそういう質問をしようと思ったかと申しますと、たとえば日本勧業銀行調査部長中村孝士君がこういうふうな言い方をしているのです。中小企業倒産件数が戦後最高記録を示しているから、不況は深刻だというけれども、自分はそうは思わない、という意見を述べているのです。東京興信所調査は、昭和二十九年ごろから始めたのだ、あの当時は大都市中心であった、ところが最近は全地域にわたって調査を始めるようになったから、例産件数はふえるのは当然であって、また昭和二十九年から最近まで企業の絶対件数が非常にふえている、それから全体の企業の上に占める倒産件数比率が問題なのであって、これは手形不渡りその他についても同じようなことが言えるのだ、こういうふうに言われているのですね。だから、倒産件数が非常にふえたことをもって不況が深刻であるというふうにそれを断定するのは当たらない、ということを中村孝士君は言っておるわけです。その他いろいろほかの問題についても触れているのですが、不況が深刻でないということは、たとえば会社の決算なんかについても、商法の改正法人税法改正等によって減価償却は非常にふえているのだ、そういうことを考慮に入れないで、ただ昨年の三月決算と九月決算を比較して、一応増収減益ですか、増収減益ということだけを問題にしたのでは、それのみによっていまの不況が深刻化しているという証拠にはならないのだ、こういうふうに述べておるわけです。そういうことから、どうも実際はもっと零細企業のほうでかなり倒産件数がふえているのではないか、そういうものが統計にのってこないものですから、そこで表面的にただ見たのでは実態がつかめない。通産省はもっとそういう点について、こんなに問題が大きくなっているのですから、十分に実態を把握されているのじゃないか、またされていなければ私は怠慢じゃないかと思うのですが、どういうふうな御調査をされているか、通産大臣に伺いたいのです。
  6. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 率直に申し上げまして、現在通産省自身中小企業倒産実態掌握いたしてはおりません。それでいま木村先生の御指摘になった東京商工興信所資料と、それから全国銀行協会連合会資料、この二つ資料もとにいたしまして、それで地方通産局中心になってその地方その地方実態をつかんでおると、こういうことでございます。通産省自体資料は遺憾ながら持っておらないのであります。というのは、何といっても、商工興信所の場合を考えましても、あるいは記憶違いがあるかもしれませんが、たしか全国で六十二の支社で千五百人の調査員調べておるということでございます。木村委員御承知のように、この倒産が顕著にふえましたのは昨年の一月以降順次ふえまして、特に七月以降毎月件数記録的にふえておる、こういうことであります。三十八年当時には倒産問題はそうやかましくなかったのでございます。ですから、昨年の予算の上で、道庁省自身調査機能を持つ、こういうことについては非常に欠くるところがあったと思います。また四十年度においてはそれじゃどうか、こう申しましても、いま申し上げたような商工興信所の場合を考えましても、その人数規模というものが非常に大きいのでございますから、また、にわかにそういう機能を持ちましても、はたして実態をつかみ得るだけの能力も発揮できるかどうかということも考えられます。したがって、多年にわたる東京商工興信所とかあるいは銀行協会を主材料として、また地方通産局実情に沿うた掌握をしたい、こういうことでまいっておるのであります。この点は、どうも国会で非常に御批判を受けましたけれども、現実やむを得ないのではないか、こう思います。  それから第二点の中村さんの御見解を御引用になりましたが、私は三十八年の倒産の数とそれから三十九年のふえ方と、こういうものを見ていけば、三十八年と三十九年に企業数が非常に急にふえたとは思わないわけです。しかし、倒産は非常にふえておるのでありますから、そういう点からいたしますと、率直に申し上げて、一昨年十二月以降の金融引き締め中心とする倒産がふえたということはいなめないと思うのであります。もちろん、その原因金融引き締めだけではなくして、過去における放漫経営であるとか、あるいは成長経済に伴う設備投資が過大に過ぎたのであるとか、あるいはその他の構造的要因もあろうかと思いますが、いずれにしても、直接間接を問わず、金融引き締め一つ原因となって、そしていろいろな他の要因も加わって倒産がかくのごとき実態になった、こういうふうに私は考えております。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど私が申し上げました中村さんのああいう考え方ですね、これは単に中村さんだけの考えじゃないですね。もうすでにやめられたから言ってもかまわないと思うんですが、前に黒金さんが官房長官のとき、テレビで討論会をやったときに、政府考え方として、この中小企業倒産はそう深刻でない、それは倒産件数不渡り手形件数ですね、それを全体の企業増加数あるいは手形交換高増加数と比較して比率で論ずべきだと、こういうことを前にかなり強調されたことがあるんですよ。ところが、いま通産大臣のお考えは、そういう考え方はまあ当たらない、そういう説も一方にはあるけれども当たらないと。ですから、前の黒金さんのような見方ではない、あの当時と多少また事情も変わっておりますけれども、それで私は了承できるわけです。あくまでも、前に黒金さんが言ったような考え方、あるいは中村氏の言っているような見方ですと、私は実態把握に欠けるところがあるんじゃないかと思います。そこで、いま通産大臣の言われた現在までの実態把握のしかたですね、全国銀行協会調査、それから東京商工興信所調べもとにして地方通産局実態を把握するというやり方、これですと、やはり負債総額一千万円以上のものということになるんですね、限定されるんですよ。そこで私は労働組合に、これは労働省連絡をとってやったらいいかしれませんが、地区労というのがあるんですよ。地区労には零細企業中小企業組合がずいぶん入っているんです。地方に行きますと、そういう人に聞いたほうが実態がよくわかるんですよ。今度あそこがつぶれた、ここがつぶれた、ずいぶんわれわれ聞くんです。ですから、全国にいま労働組合協議会があるんです。地区労というのがありまして、ここに零細企業も入っておるんですから、そこらにやはり協力を求めて、あるいは総評に協力を求めてもいいですが、もっと実態把握をよくしたほうが——完全に全部を把握することは困難かもしれませんが、現在よりはかなり正確になりますよ。負債総額一千万円以下のものがかなり多いようなんですよ。ですから、そういう点もあわせ考えてみませんと、私はこの深刻な実態というものはよくわからない。そのほかにもつと調べ方法もあるかもしれませんが、不渡り手形のほうから調べていくとか。それからもう一つ私は知りたいと思いますのは、みずからやめるほう、自廃というのもかなり多くなっているんですね。労務関係から自廃ですね。そういうものも何か把握できないかと思うんですよ。通産大臣はいま率直に御答弁なさいましたが、私から言わせれば、こんなに中小企業倒産の問題が市大になっているのに、現在の調査では非常に重要部分実態把握が欠けているんですよ。これは私は責めるために言っているんじゃないんです。私はこれも御質問したいと思ったんですが、自由化影響等から見て、今後かなり長期にこういう倒産問題が続くのじゃないかと思うのです。これは通産省指導いかんにもよると思うのですけれども、そういう点いかがですか。通産大臣もう少しこまかく実態に合うような調査ですね、ずいぶん大きな部分が何か抜けているような気がするのですが、いかがでしょうか。
  8. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 木村委員の言われるように、通産省がそういう調査機能を持たないというだけに、あらゆる収集し得る材料を集めて、そしてその実態掌握につとめるということは当然のわれわれの責務だと思います。いまの地区労お話は、きょう初めて承りましたので、今後地方通産局によく地区労連絡せしめて、倒産実情をつかませたいと思いますが、ただいま木村委員お話の中にございました手形交換所不渡り状況、これも非常に有力な、実態調べる上によい材料じゃないかと思います。  それから、これは委員会でも御説明申し上げたのでありますが、通産省商工会あるいは商工会議所企業調査調査員というものを配置しておりますが、これが企業診断とかあるいは企業技術指導とかに当たっておりますが、そういう末端のほうに手が伸びておりますから、そういう方面調査員からつかんでくる情報というものも材料になると思うのであります。それらは、これもしばしば御説明申し上げましたが、地方通産局中心政府の三機関、あるいは日銀の出先である財務局、それから地方の自治体あるいは保証協会、そういうものを集めての金融懇談会をやっております。それが先ほど申し上げた地方通産局中心にして実態をつかむようにしておると、こういうのでございますが、それだけの機関が寄ってまいりますと、相当その地方地方実情がつかめておると思うのであります。これらがつかんだ模様というものは、地方通産局長会議をしばしばいたします。そのつど、特に最近この中小企業倒産問題がやかましいのでありますから、この倒産問題を議題として報告も受け、検討しておる、こういうことでございます。しかし、さらに一そう木村委員の言われるように、実態掌握につとめたい、こう思います。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私から言わせれば、地方通産局は一体何をしていたか、こういう実態把握が十分できてない。特に、負債総額一千万円以下の倒産についての実態把握が全然できていないということは、通産行政の性格をぼくはよくあらわしていると思うのです。中小企業対策といったって、零細企業については真剣に目を向けていないのですよ、これは商業についても工業についても。そういうことのあらわれがここに出てきた。こんなに倒産が問題になって、しかも負債総額一千万円以下は非常に多いのですよ。どこへいってお聞きになったってすぐわかりますよ。その実態把握さえできていない、これは重大な問題だと思うのですよ。今後いくら中小企業対策中小企業対策と言ったって、結局は中の上のほうを中心にしているのじゃないかということはしょっちゅう言われているのですけれども、はしなくも、いまのこの中小企業倒産実態把握からそのことが私は実証されたのではないかと思うのですが、そういうことが今後ないように、負債総額一千万円以下についても十分な調査地方通産局人手が足りないなら足りないで予算要求したらいいじゃないですか、こういう実態把握のために。だから通産局中心になって、財務局もありましょうし、地方商工会議所もありましょうし、地区労もあるでしょうが、そういうものを動員して、そしてもっとこれは開放経済体制に入った瞬間にもうそういう体制を整えていかなければいけないのですよ。だからこういう問題が起こる。準備体制一つでもあるわけなんですよ。そう思いますね。その点、いままでのことは、これは過ぎ去ったことだから、せめて今後の課題として、もっと零細のほうにも十分な実態調査をされる必要があるということと、それから、今後の倒産見通しですね、二月はもうわかりましたですね。三月も大体もう傾向がわかるだろうと思いますが、最近の傾向はどうなんですか。その二つを……。
  10. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) きのうあたり三月の大体見通しが出ておりますが、いま手元にある確実な資料では、二月が五百二十一件、四百六十億円、三月が二十三日までの日報ベースで三百二十四件、八百七十六億円の負債総額。これが五百七件かと思います。きのうあたり出た数は。それで、負債額のほうは九百九十億、これは概算でございます。件数は二月よりは少し減ったと、こういうことでございます。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金額はわかりませんか。
  12. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 金額はふえております。これは山陽特殊製鋼が影響いたしております。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、さっきのもっとこまかい零細のほうの調査について……。
  14. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 木村委員のおっしゃるように、調査に万全を尽くす、こういうことについては私も異論はございません。ただ、臨調の答申もあるこの機会で、また行政機構の問題はなかなかやかましいおりでございますので、通産省自身調査体制をつくるということについてはむずかしい点があろうかと思います。また、私企業に立ち入って検査をすることを役所がやるのもどうかというような批判もございまして、ただいまのところ調査努力をすることは当然でございますが、従来の民間の機関を活用しつつ、さらに木村委員の御指摘の点を考慮しながらやっていきたい。  先ほど商工会または商工会議所指導員の問題、調査員の問題をちょっと申し上げましたが、これは小規模事業対策推進費として通産省としては考えておるものでございまして、予算もわりあいについております。前年度が十四億一千万円ぐらいのところが四十年度は十七億四千三百万円ちょっとになっております。こういうわけで、この商工会商工会議所指導員調査員を活用するのも二つ方法ではないか、かように考える次第でございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま何か通産大臣はむずかしく考えているようですけれども私企業の立ち入りとか、調査関係とか、ほかの官庁との関係もあるとか、そんなにむずかしく考える必要はない。私企業に立ち入るといったって、倒産件数調べるのですから、倒産のことはむずかしく考えないでできるのじゃないかと思うのですよ。だから、そういう気がまえになって、いまのできる条件でもあらゆるものを動員してやれば、いまよりももっとできるのじゃないかと、こう思うのです。それから将来はもっとさらにはっきりさせて、制度的にも関連してやる。さしあたりいまの条件でもできないことはないと思う。それと、一体通産省は、ああいう東京商工興信所で発表されている倒産件数よりも、私はさっき言ったような零細のほうにうんとあると思うのです。そういう点については数字的にはいま把握できていないとしても、この事態についてはどういうふうな御認識になっているのですか。
  16. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中小企業庁長官から倒産実態掌握について一応御説明申し上げさせます。
  17. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま木村先生から御指摘がありました一千万円以下の倒産状況調査については、われわれも何とかこれをつかみたいという気持ちでおるわけでございますが、この前商工委員会興信所責任者を呼ばれて、たとえば国で費用を出して、そういう零細なものを調べるということにしたらどうかという話も出たのですが、それはとても一千万円以下の負債金額というのはなかなかつかみにくいらしいのですね。私どもはわかりますが、それで興信所もとてもそういう調査人手が足りないし、なかなか金をもらってもむずかしいということを言っておられましたが、私どものほうで大蔵省のほうと相談して、大臣からもお話があったと思いますが、全銀協に頼んで、銀行取引先で主としてそういうもので倒産したものを調べようということで、これは直接全部これが倒産とは限りませんが、この全国銀行で、全国手形交換所において取引停止処分を受けたもの、これは相当部分倒産になっておると思いますが、資本金法人については百万円以上のもの、個人については負債金額が一千万円以上のものということで調べてもらっております。この数字を見ますと、十月が千三十二件、十一月が千十五件、十二月が九百七十三件、一月が六百七十三件というふうになっておりまして、これは東京興信所のたとえば十月は四百四十九件なんですね。興信所のほうが十一月玉百十八件、したがって、全銀協調べのほうが大体倍程度数字になっております。全銀協のほうは十月は千三十二件、十一月は千十五件、十二月は逆に九百七十三件と減っておりますが、一月がやや落ちついて六百七十三件、大体興信所数字倍程度、大体、四百から五百件程度興信所数字でございますので、これは一つにはいま言った法人の百万円以上のものをつかまえておる。これをさらに負債金額一千万円以下についてもひとつ調べてもらえないだろうかということをいま大蔵省と相談しまして、これもなかなか銀行でもたいへんな仕事らしいので、もうちょっと準備をさしていただきたいということで、強制するわけにはいきませんので、これは原因別とか、業種別も全部調べておりますが、比較的全銀協調べが総体の動向をつかまえるには適切ではないかというふうに考えております。  それから、先ほど地区労との連絡ということを御指摘になったのですが、その点につきましては、ひとつ労働省のほうとよく連絡をとりまして、労働省のたとえば失業保険なんかの請求の数字とか、ああいうものもやはり倒産動向とか、失業関係企業実態がどうなっているかということの大きな一つの参考になりますし、労働省のほうでも事業を廃止した数、これなんかの数字が出ておりますから、まあ通産省と直接地区労ということにはいかないと思いますが、労働省出先十分連絡をとって、その方面調査も十分進めてまいりたいと思います。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま伺って、非常に努力はされているわけですね。全然努力しないわけでないということはわかりましたから、まあ一そうこれは実態把握は、対策とも重要な関係があるわけですから、そういう点にもっと詳細に実態を把握されるように希望しておきます。  それから、いまの報告によりますと、まあ正確には計数的にはわからないけれども、たとえば全銀協資本金百万円以上、負債総額一千万円以上、これはほんの目安程度だと思うんですけれども、それにしても東京商工興信所倒産件数よりはかなり多い、すぐ倍近いと断定していいかどうかわかりませんが、これだけでは倍近いものがある。かなり深刻であると見ていいと思うんですよ。東京商工興信所調査にあらわれてきてるよりはかなり深刻だと。そこで、この中小企業のこういう問題が、特に倒産件数からは昭和三十九年ごろからかなり深刻になってきたんですけれども、この中小企業問題はずいぶん前から日本では言われておるわけです。そういう従来からのいわゆる日本の二重構造的な中小企業特殊性の上に、自由化——開放経済体制に入ってきて、いよいよ影響を受けるようになったと思うんですけれども、それで事態がさらに深刻になったと思うんです。それから現在及び今後における日本中小企業問題の重点をどういうふうに通産省では把握されて、そして中小企業対策をおとりになり、またとっていこうとしているか、いわゆる日本中小企業問題意識です。また、諸外国と非常に違った特殊性もあるわけです。いわゆる二重構造と言われるような特殊性もあるんですが、どういう点に日本中小企業の一番の間起点があると認識されて中小企業対策をお立てになっているのか、その点伺いたい。
  19. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中小企業をめぐる現在の環境が非常に悪いんではないかと、たとえば先ほどのお話の労働力の需給の関係などは、これは一番いま深刻ではないかと思います。また、先ほどからお話が出ました倒産実情調査から見てまいりますと、過大投資とか資本の過小とかいうのが比較的パーセンテージが出ております。これは言うまでもなく中小企業の近代化、高度化の必要があった、しかしそれが過大になり過ぎて倒産を起こした。しかしこれは、倒産原因にはなっておっても、なだらかに中小企業の近代化、高度化が進められていかなきゃならないということは当然でございまして、この点は政府の施策の上におきましても、財政の上においても、また融資の上においても重点的に考えておるわけでございます。一般的な不況のための売り上げ金の回収難であるとか、業績の不振であるとか、これにつきましては全般の経済界の上向きの中で解決ができるのではないかと思いますが、しかし、現在の時点においては非常に大きな問題点であるということは論を待たないと思うんです。そういうような二つの角度から中小企業対策を立てまして、今後に処していきたいと、かように思います。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもはっきりしませんが、ではもう二つ角度を変えて伺いますが、中小企業基本法をおつくりになった意図、目的はどこにあったのですか。
  21. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはもうその時代の進運にこたえて、中小企業が取り残されてはいけないと、また成長経済が進むにつれまして、中小企業また農業にひずみがあらわれている、それらを改善しなければならない、ことに日本における中小企業の占めるウエートというものは非常に大きなものでございますから、そこでこの中小企業基本法もとに今後の中小企業を改善をしていきたい、また成長を期したい、こういうことで基本法がつくられたと認識しております。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは一般論であって、私が承知しているところでは、中小企業基本法のこの考え方の背景になっている点が、二つあると思う。一つは非常に中小企業の数が多過ぎる、そこでこの開放経済体制に入ったときに、そういう数が多くて過当競争をやっていることはよくないではないか、こういう点が一つと、もう一つは、この生産性が日本の場合非常に低い、だから設備の近代化をしていかなければならない、日本のこの中小企業基本法の背景になった問題意識は、主としてこの二つの点にあったように、私はあの当時の商工委員会等、あるいは公述人等の意見を聞いても、大体そのように了解しているのですよ。数が多過ぎると、それから生産性が低いと、そういうふうにお考えになって、中小企業対策を立てているのじゃないですか。設備の近代化とかいうこともそこから出てきているのですし……。
  23. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 木村委員がお示しのように、今後の中小企業の問題点の中に、協業化の必要性というものも、もとよりあると思う。しかし原則的に数が多いから、これを小なくせいという、こういうような出発点ではなかったと私は認識するのです。協業化の必要ということはありましたけれども、数が多過ぎるから少なくすべきだと、そういう方向じゃなかったのじゃないかと、私はそういうふうに考えるのであります。それからこの生産性が低い、こういう点については、これは先ほども申したとおり、そのために中小企業の近代化、高度化のねらいがある、これは私もそのとおりに考えております。しかし、なお詳細は中野長官のほうから御説明申し上げます。
  24. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま大臣からも御説明があったとおりでありまして、木村先生が言われた第二点の中小企業の生産性が低いと、これをまあ大企業中小企業の生産性の格差を縮小すべく近代化を大いに進めていかなければならぬという点は、御指摘のとおりだと思います。ただ、基本法ができました一つの背景は、要するに、最近における高度成長の結果、もう一つ自由化が進む、技術革新が進むというようなことで、中小企業を取り巻く環境というものが、ここ二、三年来すっかりもう変わってしまった、これは御承知のとおりでございまして、そういう情勢に対応して、中小企業をどういうふうに持っていくかということを考え直してみようということであったわけでございまして、いま申し上げましたように、従来の日本中小企業というのは、豊富低廉な労働力に依存をして、しかも限られた市場の中で経営をやっていくということができたわけでありますが、その二つ条件がすっかり変わってしまった。したがって、これからどうしたらいいかという非常にむずかしい問題にぶつかってきた。しかも、片方で大企業中小企業の生産性は、ほうっておいたんでは開く一方じゃないか、ところが、賃金のほうは御承知のように労働需給の状況が変わったわけでありますから、所得の平準化作用によりましてどんどん格差はなくなっていく。現在、大体白書でも述べておりますように、昭和三十七年で賃金はすでに大企業の六三%程度になっております。生産性のほうは四七%、まだ半分以下であります。こういうことでございまして、決して数が多いからこれをどうこうしよう——もちろん数が多い、したがって過当競争というふうなこと、それから零細なものが非常に数が多い。これも白書でも分析しておりますように、零細企業についてはその発展性はまことに停滞的でございます。またその従業員の数、生産額、出荷額、付価価値等から見てウェートがうんと減っております。中小企業全体から見ても、ここ数年来の傾向を見ますと、付価価値から見ても輸出の面から見ても、あるいは従業員のウエートから見ても、その地位は徐々に低下をいたしております。しかし、何といってもまだ付価価値の四七%、輸出の約半分を中小企業が担当し、しかも従業員は千七百二十万と全体のまだ六六%、七割近いものを占めて、しかも日本の国民経済の中で非常に大きなウェートを占めておるわけでありますから、これが成長発展、振興しないというと、結局国民経済全体のバランスのとれたいわゆる安定成長というものはあり得ないという観点から、基本法というものは、中小企業の物的生産性の向上、いわゆる体質改善と、それから中小企業を取り巻く環境を整備する、すなわち取引条件の不備の是正、この二つ方面に向かって国が大いに施策をやるべきであるということをうたっておるわけでございます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一般の中小業者あるいは零細業者の受け取り方は、昭和三十八年に中小企業基本法ができたときに、何かあれによって中小企業が安定化させられるんじゃないかと、そういう期待を非常に持ったと思うんですよ。あのころの国会の商工委員会における公述人、中小業者等の何はですね。ところが、その後金融引き締め、それから開放経済体制移行等がありましたが、中小企業基本法ができてから逆に中小企業倒産とか非常な困難な問題が起こってきた。一体中小企業基本法によって政府は何をやっているかということに私はなると思うんですよ。私に言わせれば、いまのお話で、大体日本中小企業の問題点、問題意識、それから中小企業基本法の制定の背景になったお話、これも一応伺いましたが、それは客観的な条件が変わってきたことも事実ですよ。労働力不足の問題とか、あるいは開放経済体制のこととか、しかし一つ重大な問題を落としているんじゃないかと私は思うんです。日本中小企業についての問題把握として。それは大企業、独占企業との関係についての認識が足りないんじゃないかと思うんですよ。あの中小企業基本法の中にもややありますけれども、非常に弱いのです。ウエートがね。最近手形の問題でも非常に問題になってきているでしょう。支払い遅延の問題等も問題になっていますし、また自由化を迎えて下請条件をもあすごくたたくとか。で中小企業零細企業は親企業に対して非常に弱い。大企業のほうはまた金融面でもいわゆる系列金融により系列銀行等から十分融資を受けられるが、中小企業は受けられないとか、あるいは税制面、あるいは財政面、政府からの発注面とか、そういう面について独占大企業との間に非常に差別があり、また独占大企業から、われわれのことばで言えば非常に収奪されているのですよ。そういう面に十分に着目されていないのです。この点は私は日本中小企業対策としての非常に一つの大きな欠陥であり、この面が非常に弱いのですよ。この点はどういうふうにお考えですか。
  26. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまの大企業との関係における中小企業にしわ寄せがある事実を私は全然否定する考えはございません。その改善のために努力をすることは当然でありまして、いまお話も出ましたように、それがために下請代金の支払いの促進にひとつ努力をしようとか、あるいはまた官需の問題にいたしましても、中小企業に対する発注につとめようとか、もちろんそれらの点について御批判のあることはよくわかっておりますが、しかし、施策としては、大企業との関係によるしわ寄せに対する施策はやっていないというわけでない。皆さんからいうと御批判の余地はあっても、われわれとしてはできるだけ対処しておる。したがって、大企業との関係においての考慮は、われわれしておる立場でございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ重大な日本中小企業問題についての問題意識の足りない点は、先ほど中野長官もちょっと触れたのですけれども、労働問題との関係ですよ。また、社会党の中小企業基本法考え方は、なるほど設備の生産性が低いということももちろんありますし、それから数が多過ぎる、過当競争をやっていることもある、だから設備近代化とか、協業化とかやらなければいけないという点にも重点を置いているのです。それ以上に重要な点は、大企業との関係と、もう一つ中小零細企業に働く労働者の労働条件が非常に悪い、この二つの点に日本中小企業の一番の問題点があるのじゃないかと思う。もちろん設備の悪いこと、それから数が多いことも、これもわれわれはそういうおくれた面を温存しておけというのじゃないのです。そういうものも改善しなければなりませんけれども、それ以上に大企業との関係と労働問題だと思うのです。そこで、時間もありませんから、具体的に今度対策として伺いたいと思うのですよ。まず、これはずいぶん言われたことなんですが、官公需の中小企業への確保、これを社会党では何%ということを大体主張しているのです。これは何か何%ぐらいというふうに規定される、あるいははっきり何%といわなくても、大体この程度は発注を確保したいというお考えはあるかどうか、まずその点お答え願います。
  28. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは官公需を確保するために基本法の二十条の規定で、官公庁における物品等の調達に際しては、できるだけ中小企業者に対して受注の機会を与えるようということにたしかなっておると思うのであります。で、この官公需の確保の上に、問題は中小企業者が役所に出入りして注文をとることについて、十分な企業者自身の認識が欠けておる点もあるのじゃないかと、こういうようなことで、官公需の受注の機会を確保しやすいような解説書をつくるとか、契約方法の周知徹底をはかるとかというようなことに努力をしておるわけでございますが、いまこのパーセンテージのお話がございましたが、大体この概数を、これは三十七年度で恐縮でございますが、たとえば中小企業と大企業の契約件数がどうなっているかと、こう申しますと、中小企業のほうが五十五万五千八百八十件、大企業のほうが十万四百九件、パーセンテージにいたしますと、中小企業八四%、大企業一五%、その契約金額はどうかというと、これは中小企業のほうが、金額の面でいくと三七%少し、大企業のほうが約六二%、この件数中小企業が多うございますが、契約金額のパーセンテージになりますと、その逆になっている、こういうことでございますが、しかし、官需の確保につとめておるということには間違いがないと思います。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはどういう御調査ですか。その内容をもしあったら資料として出していただけませんか。
  30. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは中小企業庁のほうで定期的に、契約件数金額につきまして、関係省へ調査を依頼しましてやっておるわけでありまして、いま大臣が申されたのは、昭和三十七年度でございまして、いまも調査をやっておりますが、たしか一年おきの数字調べるようにしていると思います。これは詳細の資料がございますので、資料として提出いたします。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから次は手形の問題ですね。これは佐藤首相もこの問題について何か触れられておりましたが、下請代金の支払い遅延の問題と関連して、これは前にずいぶん問題にされたのですけれども、期限超過の場合の利子を親会社に負担させるということですね。この問題は取り上げられないのですか。これをやればかなり私は実効があると思うのです。いかがですか。
  32. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま木村先生から御指摘のありましたとおりでございまして、下請代金支払遅延等防止法によりまするというと、下請の製品を親企業者が受け取ってから六十日以内に支払いをせにゃいかぬ、この支払いという意味が非常に問題になっておりますが、現金か、あるいは直ちに市中の普通の金融機関で割り引きし得る手形でなければいかぬ。しかも、それは六十日以内に割り引かれないときは、その後になると支払い遅延になるわけですから、これに対しては、調べて公正取引委員会が支払うようにという勧告を出しておるわけでありますが、もちろんこれは人手がなかなか足りないというようなことがあって、調査が十分に行なわれておりません。それで、最近中小企業庁のほうでもこれにお手伝いすることになりまして、昨年から中小企業庁で一年間を四回に分けまして、約八千の親事業者を主として、これは簡単な書面調査調査をする、それから入って、どうも支払い状況が悪そうだというものについては、さらに詳細な調査をし、立ち入り検査をし、どうしてもこれは法律違反の疑いが濃い、改善のあとがないというものについては、公正取引委員会に突き出して、審査請求をする、こういうことをやっております。一昨年までは、中小企業庁のほうは主として下請のほうを調べる、公正取引委員会は親企業のほうを調べるというような取りきめをしておったのですが、そんな取りきめをしておる時代ではないということでやっております。遅延になりました場合は、公正取引委員会規則できめる日歩四厘の遅延利息を払わなければいかぬということになっておりますが、これは罰則も、それから払わなかったときに公正取引委員会がとるべき措置も何にもきまっていなかったのですが、これは非常に欠陥じゃないかということを言われておりましたので、先般の閣議におきまして、その点は下請代金の支払いを遅延しておる親企業者に対して、遅延利子の支払いをしなさいという勧告ができる、だからおくれておる場合には支払え、現金で払いなさい、利息も合わせて払え、こういう勧告をし得るように法改正をいたしまして、いま衆議院のほうへ提案をしておるわけでございます。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは勧告だけでなく、支払わなければならぬ——下請関係調整法の改正でしょう。どうしてもっと払わなければならないというふうにはっきり改正されないのですかね。いつもざる法だというのは、罰則がないのですよ。それをいつまでやったって効果ありませんよ、罰則がなければ。少しぐらい不名誉になったってもうかりさえすればいいという。それはいままでの経験からはっきりしているのですよ。これは踏み切る必要があると思うのです。こんなに問題になっているのですからね。いかがですか。
  34. 中野正一

    政府委員中野正一君) いまの木村先生の御指摘になったところは、非常にむずかしい問題で、われわれもいろいろ研究はしているのですが、ざる法といわれる点は、いま言ったように、六十日以内に支払わなければならぬという義務は課してあるわけなんです。ところが、これに支払わなかった場合に、たとえば六十日たって現金化されなかった場合に、一々それを、たとえば懲役とか罰金というような体刑に処するということが、いまの行政上政府としてはたしてそういう政策をとることがいいのかどうか。これは外国の例もいろいろ調べているのですが、小切手については、これは要するに詐欺行為といいますか、そういうもので、小切手の一種の偽造ということになって、こういう点については、日本でも体刑がありますし、外国で毛みなそうなっております。罰金等がありますが、手形について、いま手形法の関係からいいましても、不渡り手形を出した場合に、体刑にするという例は、これはヨーロッパでもアメリカでも、まだわれわれの調査ではないわけなんです。しかし、それは日本の非常に特殊性だからいいじゃないかということも言い得るのじゃないかと思いますが、そうなりますと、罰金等を科するという場合には、非常にその条件をはっきり法定化しなければいかぬ。そうすると、たとえば三年とか四年というような手形を出したものは罰金にするとかいうようなことになるのか。この点は法務省ともよく相談しているのですが、なかなか手形関係の支払いが遅延したからといって、体刑とか罰金というようなことにすることは、はたしていまの下請と親との関係を適正化する的確な方策であるとはいまのところ私ども考えておりませんし、そこまで踏み切れませんでしたので、先ほど言ったように、遅延利息についても勧告——また、これは公正取引委員会お話を聞きますと、実際勧告をしたものは相当効果をいままでのところはあげているように聞いております。ただ、いままで十分効果があがらない場合でも公表をなるべく避けるということで、これは法律でも、新聞紙上等に発表することはできることになっているのですが、これは業者のほうでは非常にいやがるのですが、これはひとつ今度の法改正を契機に、そういうことをすると、その発表された親企業の命をとめるようなことになりかねなくて、かえってそれに関連している下請も困るというようなこともありまして、なかなかむずかしい問題ですが、今度は公取では、公表については相当踏み切ろうと言っております。いま言った罰金以上に非常にきつい制裁になるのじゃないかというふうに考えております。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままで期限超過の場合、親会社が利子を負担した例はあるのですか。期限超過した場合、六十日を。
  36. 中野正一

    政府委員中野正一君) それは要するに力関係で、そこが非常にむずかしい問題ですが、下請のほうから申し出るということがなかなかないわけなんですね。それでなかなか実態がつかみにくいのでありますが、一つの例としては、最近の例では、自動車関係については、最近、部品業者と自動車業界とが両方で協定をしまして、そうして大体、手形は原則として三カ月のものにしようじゃないか、そうして三カ月以上の手形を出すときは、その金利は親のほうが負担をする、こういうふうな取りきめをやりまして、それがだんだん実行に移されようとしているようでありますが、やはりそういうふうに業界同士で、ある程度これは通産省が中に入って、業種別に、手形のサイトは、繊維は短いし、機械関係は長いから、業種によって違いますから、そういう標準的な決済条件というようなものを、だんだん業界同士で、役所も中に入ってつくって、そして、それを自主的に守らせるようにしていくということが実際的じゃないかというふうに考えております。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に、社会党の中小企業基本法では、下請会社というのは弱い立場にあるから、自分から親会社のほうにそういう申し入れをやったりすると、じゃ、あなた下請契約をやめると言われますから、そこで、第三者を入れたそういう何かをつくらないと、結局言えないですよ。だから、下請会社を保護するためには、やはり第三者を入れたそういう権威のある機関をつくって、そこでこの下請条件を悪くしないようにさせる、そういうやはり構想も必要じゃないかと思います。どうしても。その点についてはいかがですか。  それともう一つ、時間がありませんから、ほかの方、質問ありますから、もう一つ伺いたいのは、金融の問題ですが、中小企業の金融の原資について、前に所得倍増計画をつくるときに、日本の重化学工業比率ですね、軽工業と重化学工業比率を前提にして、そうして設備資金なり、あるいは運転資金なり、中小企業にどのくらいのワクを与えるべきかという調査が行なわれて、これは前の所得倍増計画の中で、中小企業問題に対しての小委員会が行なわれました。それは長官よく御存じだと思うのです。詳細な調査があるわけです。ああいう構想ですね、あれはやはりお持ちになっておるのか。そういうことを今後おやりになるのか。ただ問題は、重化学工業比率ですよ、あれが非常に高いところを見込んでおったでしょう。所得倍増計画では、七三%でしょう。あれは荷過ぎる、実際はあれよりは中期計画ではもっと低いようにこの間伺いましたが、そういう作業をやって、やはり私は大ワクで、重化学工業と軽工業との比率考えながら、大ワクでやはり運転資金なり、あるいは設備資金を考えたやり方をやらないと、やはり大企業中心の金融になって、いつまでたっても金融問題がめどがつかない。それについての考え方、この二点について。
  38. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 弱い下請を強化していくために、何か団体をつくるのはどうかという御意見でございまして、これについては、先ほど中野長官からも申し上げましたように、業種別協議会をつくって、下請取引条件の改善、生産分野の調整等、下請全般の問題について検討させる、取引の適正化や、あるいは下請企業の近代化の促進に役立たしめようと、こう考えております。また、そうでなくて、この間うち、山陽特殊鋼なんかで見られましたように、下請の協同組合のようなものがないということも、これがやはり問題じゃないかというように見ておりまするので、下請企業の組織化を積極的に推進をしていこう、下請協同組合などをつくるようにわれわれが指導していきたい、かように考えるわけでございます。  それから次の、いまの金融の関係中小企業に対して、どういうふうに配慮していくか、これにつきましては、中野長官から御説明申し上げます。
  39. 中野正一

    政府委員中野正一君) 重化学工業化の方向にあるわけでありますから、長期の観点に立って、その目標というようなものをきめ、それによって金融面の政策のめどにしたらどうかと、これもまあ中小企業実態調査ということで、いま資金需要の調査もある程度やっております。なかなかむずかしい問題でございますが、通産省の中でも、そういうものがぜひ要るじゃないかという話も出ておりますので、せっかくひとつ今後とも十分研究してみたいと思います。
  40. 羽生三七

    ○羽生三七君 実は私も、中小企業関係について少しお尋ねしたいと思っておったのですが、大体、もう木村委員の御発言でほとんど大要尽きておりますので、ほかの問題を伺いますが、ただ、いまの問題で、中小企業の地位というものが、今日の問題というのは、単に金融だけの問題か、あるいは構造上の要因があれば、その構造上の要因の主要なものは一体何か。それから重化学工業との比率関係等いろいろあると思いますが、この前も総括質問の際に申し上げたように、投資効率だけに——これは投資効率も大事ですが、それにあまりこだわり過ぎるために、結局農業、中小企業がいつでも軽く扱われる。ちょうどこの中小企業の立場は農業と同じような立場に置かれていると私思う。でありますから、この前申し上げたことですが、投資効率ということと、浪費、むだづかい、非能率ということと厳格に区別して、そうして積極的な施策を進めなければ、本来こういう低生産部門については、そう簡単に効率があがらないことは自明の理ですから、その点について、財政上いろいろ問題はあっても、かなり構造上の要因一つ一つ確かめて、それを解消するための予算の積極的な確立を望むわけです。これは要望であります。  それで、お尋ねしたいことは、中共向けプラント輸出の問題ですが、これは実は非常に微妙な段階にあるようなので、どういうふうに申し上げていいかと思いますが、きょうの一部の報道なんかを見ると、通産当局その他一部には、この種の問題は本来輸銀自身が決定すべき問題で、政治的な介入は望ましくないのじゃないかというような意思表示もされているように思われます。原則的には、私はそのとおりだと思います。そのとおりだと思うが、いま当面している日本のプラント輸出、特に中共向けの問題を見る場合、これは政治的配慮なしに決定しがたいような仕組みとか条件になってきているわけです。でありますから、そういう面から見て、いま通産大臣が総理の最終的な決断を求めようとされているようですが、それから外務当局とも折衝されていると思いますけれども、これはもう長い間の懸案であるし、それからこれを問題にすると、この吉田書簡の効力等にも触れていくことになるので、それは外交上の分野のことですから、私は多く触れませんが、通産省としては、どういう——つまり最終的にどういう決定をされるかは別として、通産省自身としては、どういう立場でこの問題の最終結着をされようとしているのか、お差しつかえない範囲で、ひとつお聞かせをいただきます。
  41. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま当面問題になっている、輸銀を使う使わないという、そこへ問題をしぼっていきますと、遺憾ながら私どもは、使うといった場合も、使わないといった場合も、中共あるいは国民政府の内政干渉的な面へ引きずり込まれるような気がするのであります。この点については、すでに佐藤総理が国民政府の大使に、日本政府はこの問題については自主的に判断をしていくのだということを明白にしております。そういう事実から考えていきますと、現在、通産省としては、標準外決済として承認を求めてまいりましたのに対しては、これを許可するということで、問題になっておる日立についても、ニチボーについても、すでに許可を与えておるわけでございます。しこうして、その許可された両会社は、相手国のそれぞれの機関と契約を結んでおるのでありまして、その契約面からは、輸銀がどうこうという問題は起きてこないのであります。ですから、私としては、この契約がなだらかに履行されるべきである、具体的に申し上げますと、三〇%とか、二七・五%の頭金がまず出るのでありますが、それを使いつつ仕事をしていく。そしてこれらの企業者が輸銀を使わない場合にはこれだけの影響がある、しかし、ほかの方法でいけばこういうふうに補いがつくとか、いろいろ経済的に考えての要望が出てくると思うのであります。それを自主的に判断をしていくということが一番順序がいいのではないか。また、当初この問題が起きたときに、中共側においても、別に、ニチボーや日立が品物を入れてくれるについて、輸銀がどうだこうだということをしいて言っているのじゃないのだ、なぜそれを言うか、それは台湾が介入しておるから言うのだということであったと思うのです。しかし、その台湾の介入の問題については、すでに総理が大使に対して、自主的にやるのだ、こう言っておる以上には、通産省の立場から考えていけば、契約がスムーズに履行されることが一番この際いいのじゃないか、こういうふうに私は考えておるのであります。
  42. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは少し余談になりますが、いまのプラント輸出の問題と直接の関連性はないのですが、一番最初に、池田内閣ができたときに、実は私は郵便気象協定の問題に触れたときに、池田総理は、郵便気象協定結びましょうと、こういう答弁をしたのです。ところがこれは、某氏を介して中共側を打診したところが、向こうのほうで消極的でこれは実現できなかった。ところが、それから数年後して、今日、佐藤内閣になってから、佐藤さんが、郵便気象協定すら——この前は郵便航空協定と表現をされて、あとから、私の関連質問で取り消しをされたのですが、郵便気象協定については、政府間協定につながらないからこれは差しつかえないということで、そういう答弁をされて、そうして今度は、直接はできないので、ビルマ径由で小包協定——協定でもないけれども、実質上の小包の発送ができるようにいま進めているわけです。ですから、数年前まで、たとえばいまの問題一つ見ても、かなり進んでおったのが、むしろ逆にそういう面でも後退をしている。それから今度の、いまのプラント輸出の問題にしても、これは政経分離ということをはっきり言うからには——私はいまの政経分離というものはどういうものかいろいろな疑問を持っておりますが、その批判は別として、言うからには、やはり純然たる商行為でありますから、たとえば輸銀が政府機関であろうと、何であろうと、そんなに台湾に遠慮する必要はないのじゃないか。ところが、それが政治的になってきたから、輸銀自身がきめるべきことで、政治的介入を好まないということを、政府の中で一部言われる方があっても、問題自身がもう政治的になってきているのですから、やはり大所高所からの判断を必要としているわけです。そういう意味でも、やはり通産当局が積極的に動かないというと、総理だって外務省だって、なかなか決断がしにくい、そうじゃなくてさえ渋っているのでありますから、そういう意味で、重ねてお尋ねして恐縮ですが、少なくともいまの通産省の立場としては、さらに積極的にそれを進められて、見通しとしては、それは通産省が指向している方向に、望ましい方向に進んでいるのかどうか、この点をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  43. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私としては、省内でいろいろ討議をいたしました結果、ことしになりまして、この日立造船は、当初二月十五日までに許可を与えなければならない、また、ニチボーは、四月には許可を与えなければならないというようなことで、政経分離、民間ベースの見地に立ちまして標準外決済の許可について順次与えたわけであります。そうして契約をどんどん履行していけばいいのだ。ただ、それぞれの企業者が、この資金の供給源が、ただ市中銀行にたよれば高い、そのほかの方法によれば安くなるというようないろいろな問題があれば、これはそれぞれの企業者が考えて、それらの要望をしてくればいいというように考えてずっと終始しているのであります。しかし、お話のように、その間に問題も出ましたが、しかし、最近におきましては、総理も、ああやって自主的に政府はきめるのだ、こう言っているのであれば、いまの契約が、相手もそうでありますが、日本側においても、相手においても、これを履行していく、そこに問題が起きてくれば民間ベースで考える、その場合に、私としては、不当に企業者が大きな負担をしながらこういうものを輸出する必要はないと思いますから、そこに何らかの方法が当然考えられてくるのではないか、こういうふうに見通しをつけているわけでございます。で、いますぐこの三十一日までに云々というような事態をとらえて、そうしてここで何か特に考えなければならぬというようなことになると、そのこと自体が、私としては、内政干渉的なところへ引きずり込まれるきらいがあるのじゃないかというようなことで、まず契約がなだらかに進んでいく、そうしてその間にものごとを判断していく、こういう方針でいるわけでございます。しかし、まあいまきわめて微妙な段階でもございますので、通産省としては、前向きにこの問題に取り組んでいるということを申し上げて、お許しを願いたいと思います。
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 その三十一日が過ぎたような場合には、どういう反応が起こるかどうか、予測がつきませんか。
  45. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私の申しているような見解に立ってもらえば、ことさらに三十一日ということにこだわらないでいけるのではないか。このことは、三十一日の問題が起きた後に、総理が、ああやってはっきり自主的に判断をしますということを言っているので、その点の趣は私は多少違うのではないかというふうに考えてはおりますが、しかし、きわめていま微妙な段階でございますので、先ほど御説明申し上げたとおりわれわれとしては、前向きにものごとを処理していきたい、かように思う次第でございます。
  46. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、非常に微妙な段階にあるのでこれ以上申し上げません。積極的な努力を希望しまして次の問題に移りますが、もう一点のお尋ねは、この通産省関係予算に計上されているこの公害防止事業団の関係の、これは厚生省との関係もあるでしょうが、これは理屈から言うと、これはもう多くの方々から論じられた問題でありますが、この種の問題を、事業者自身のこの行為にゆだねなくて、政府が金を出してやるということを、私はどうかというふうに非常に大きな疑問を持っているわけであります。ですから、事業者としては、非常に安直な気持ちになってしまうわけですが、それはそれで一応現実論として具体的にどういう仕事をやろうとするのか、その仕事の内容を少し聞かせていただきたいと思います。
  47. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 事業団の主たる目的は、現に公害の起きている場所に対して、政府が配慮をしながら公害防止の施設をする、あるいはそういう施設を貸すというような考え方でございますが、第一が、公害防止の共同の施設をつくる、また、この共同利用の建物をつくる、あるいは工場移転のための敷地の造成をする、あるいは共同の福利施設の設置をする、そうしてそれらの譲渡とか、あるいは共同公害防止施設等への融資というようなことでございますが、具体的な対象になりますのは、隅田川の地域あるいは四日市の地域などについて、いま申し上げたような趣旨に沿う施設を考えたい、こういう方針でございます。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 これも余談ですが、実は私昨年の夏にソ連、東欧の諸国を回ってみて感じたのですが、まあこれは国の政治の体制が違うから、全然これは同一に論ずることのできない性質の問題ですが、向こうでは、もう都市の中にこれからつくる工場は全部禁止、それから現につくっているものも漸次移転、完全に都市の中は住宅とか官庁とか商店とかになって、工場は何もなくなるという計算でいまやっているのです。しかし、日本でそんなことできるはずはありませんから、そんなことをすぐ私は比較するわけではありませんが、まあそれはそれとしても、この種の公害防止をやる場合に、いまいろいろな例証をおあげになりましたが、それは私はばく大な金が要ると思うのですね。そんな簡単な、ちょっと高速道路に排気装置をつくるようなかっこうで簡単にできるものではないし、いまおあげになったのは、どのくらいの規模で、具体的にはどういう内容を持っているかよくわかりませんが、それにしても、今日見受けられる非常に多くの公害というものを防止するのに、ここに計上されているような予算で——これはこれが事業費のすべてではない、これから調査したりいろいろな施策の前提条件をつくるのですから、これが予算の全部ではないけれども、それにしても、たとえばいまお話しのような共同施設というような場合には、具体的にはどの種の公害にどういう施設をつくろうとするのか、どういう共同の、いまおあげになった幾つかの例証ですね、全部これは共同ということですが、ですから公害の対象によって、内容的には、どれにはどういう施策を持ち、どれにはどういう施策を持つというそういう例示がないと、非常に抽象的でわかりにくいので、これは大臣でなくても、政府委員からでよろしいが、お答えいただきたいと思います。
  49. 馬郡巖

    政府委員(馬郡巖君) この事業団の事業として考えております共同公害防止施設、これは大体事業団が、主として現在公害がひどくなっている地区を大体対象にいたしておりまして、たとえて申しますと、隅田川周辺におきまして約三千有余の企業がございますが、そのうちの大体八割から九割までは中小企業に類するものでございます。染色工場だとか、メッキ工場だとか、パウダー工場とか、比較的中小企業のうちでも小規模企業に類するような事業でございます。隅田川の河川浄化につきましては、すでに水質基準もきめましてこの四月一日から適用されることになっておりますが、この地区におきまする最も理想的なやり方から申しますと、下水道を早く設置いたしまして、下水道で共同的に処理してまいるというのが一番理想的でございますが、これにはなかなか下水道関係事業のほか、いろいろな問題がございまして、急速に普及してまいらないというようなことで、大きな企業につきましては、個々の工場でそれぞれの施設をやっていただくというように現在進めておりますが、小さな企業におきましては、第一その排水処理施設をつくる敷地すらないというような状態でございます。したがいまして、そういうものを片づけてまいりますためには、共同して共同の排水処理施設をつくっていかなければならぬ。あるいはこの幾つかの工場が集まりまして、工場を集約化してまいりまして、そこにあき地を見つけまして、共同の排水処理施設をやっていく。なお、そういうことによりましてもまだ困難な業種もございますので、こういうものにつきましては、工場を地方のほうに移転していただく、そのために工場の敷地をあらかじめ造成しておきまして、移転のしやすい環境をつくってまいる、こういうふうな事業考えておる次第であります。
  50. 羽生三七

    ○羽生三七君 この種の事業を国がやるのはどうかと、むしろ事業者自身が負うべき責任ではないかということを申し上げましたが、いまの隅田地域のような非常な小規模の事業者の場合、これは集団としては大きな問題になるが、個々を見れば非常に小さいという場合は、これは自己の責任でできるはずはないんですから、これは当然国が援助してやらなければならぬと思うのですが、しかし、こういう事業団をつくって予算に計上するからには、もう少し具体的に、単に隅田地域の例を一つおあげになりましたけれども、たとえばどういう工場が対象になっているのかどうか、隅田以外ではどういう地域が予定されているとか、かなり具体的でないと、こういう予算上出てこないと思うのですが、その点はもう少し詳しく伺えないものかどうか。それから工場を移転するというような場合は、あれですか、東京あるいは神奈川、その周辺にある大規模な工場なんかが対象になるのか、いまのお話のような小規模の集団地域をさしておるのか、その辺もあわせて具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  51. 馬郡巖

    政府委員(馬郡巖君) この事業団が対象と考えております地域は、京浜と千葉地区、それから四日市、阪神、この大体三地区を予定いたしておる次第でございます。で、その三地区を選びましたのは、特にこの近所の都市公害が一番激しい地域でございますので、この地域を対象地域として考えておる次第でございますが、京浜地区につきましては、ただいま申しました隅田川を大体中心考えておる次第でございます。で、多摩川も近く水質の試験が本年中には行なわれるものと考えておりますので、多摩川地区もそれに付随して考えてまいりたいというふうに考えております。それから四日市関係でございますが、四日市のは、ばい煙で亜硫酸ガスで現在問題を起こしておりますが、これにつきましては、比較的大規模の工場でございますので、それぞれの工場におきまして、現在いろいろな施設をしていただくように現在工事中でございますが、そのほかに四日市海域自体が、かなりいろいろな関係でよごれてまいっております。その排水につきまして、これを共同して処理するという考え方でございます。それから阪神地区でございますが、阪神も、メッキその他の廃液関係というものがいろいろ問題がございますので、その近所の関係をさしあたりの事業として考えております。  で、共同でやります事業と申しますのは、共同の処理施設なり、あるいは、工場アパートと申しますのは、どちらかと申しますと、排水が主ということになろうかと思います。で、煙の関係につきましてはどうかと申しますと、煙の関係は共同で処理するということではございませんので、大体個々に処理していくという形になりますが、個個の公害処理施設につきましては、従来からも開銀なり中小企業金融公庫が融資をしてまいりましたが、四十年度におきましては、特にこの金利につきましては、中小企業金融公庫につきましては、従来九分でありましたものを特に七分という利金にいたしました。あるいは開銀につきましては、これは八分七厘でありましたものを七分五厘ということにいたしまして、これらの施設の設置につきまして促進策をはかってまいりたいというふうに考えております。  なお、工場の集団移転の点でございますが、これは性質上どうしても一小さな企業ということになってまいるかと考えております。大企業につきましては、それぞれの工場につきまして、それぞれの処理施設をつけていただくという考え方で処理してまいりたいというふうに考えております。しかし、現在の都市河川におきます汚濁の状況、あるいはこれは下水道がだんだん布設されてまいりますと、下水道に通水することになると思いますが、下水道に流す料金もかなり高いものでございます。そういうことになりますと、現在の隅田川周辺にございます大企業の中におきましても、それぞれある程度の工場分散というものを考えているという向きもございますし、これらにつきましても、私たちはできるだけそういう方向に持ってまいりたいというふうに考えて、寄り寄り現在協議なり検討なりをいたしておる次第でございます。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで、この事業団をつくった場合には、これはそれによって別に収入というものはないわけですから、ずっと支出していくわけですね、政府の一般会計なり財投なりからの繰り入れということで。そうするというと、これはもしほんとうに効果のあがるような事業をやるとすれば、相当な規模の予算というものは今後要るのではないか。しかし、これは一方的なもので、収支ということを計算できない性質のものになるのですか、その辺は一体どういうことになる見通しなのか。
  53. 馬郡巖

    政府委員(馬郡巖君) 事業団のやります仕事は、大きく分けまして、みずから建設いたしましてこの施設を譲渡するという仕事と、若干の融資事業と、両方でございます。融資事業は、先ほど申しました開銀なり中小公庫と違う部門の融資事業でございます。これはいずれにいたしましても、期間としましてはかなり長期の十年ないし二十年という貸し付けなり譲渡期間というものを考えております。それぞれその期間に応じて金が返済されてくるということでございます。したがいまして、かなり長期に寝ます関係上、資金量もだんだんふえてくることかと思いますが、これは今後の、四十年度におきましては何ぶん発足早々でございますので、比較的少額の金額でございますが、四十一年度以降におきましては、それぞれの事情に応じまして、この拡大につとめてまいりたいと考えております。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。この事業団は、田中大蔵大臣が徹底的に反対したのですよ。こう言っていますよ、田中さんは。ちょうど汽車でごみをどんどん窓から外に捨てる、捨てたあとは国が拾ってあげますから、整理してあげますから。そういうことになると、じゃ、汽車の窓からごみを捨てるのを奨励するようなことになるではないか。事業者自体が、経営者自体が公害防止に積極的にならないで、公害が起これば国のほうでやってくれる、そういう面で田中さんなんかは徹底的に、予算委員会でも、自分は反対したのだと言っていましたよ、徹底的に。ですから、いま予算を十分つけるとかなんとか言っていましたけれども、大蔵大臣は徹底的に反対しているのですから、どういうわけで事業団ができるようになってしまったのか。私は、大蔵大臣の言うことも一理あると思うのですよ。確かに汽車からどんどんごみを捨てる、あとは国が捨ってやるといえば、それは事業者は安んじて公害を自分の負担でなくやるのですから、こういうことはもっと、その前に公害をもっと規制するようなことをきちんとやることのほうが先決じゃないかと、こう思うのですが、どういう経緯なんですか、これができてしまった経緯。
  55. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 経営者が今後新たに施設をつくる場合に、公害を起こさない配慮、これは当然だと思うのであります。ところが、現に公害が起こりつつある実態考えますときに、一つの工場では公害とまでいかなかったものが、その後逐次同じような工場がふえていって、その結果公害となってきたような場合、こういうものにやはり政府として対処しなければならない、しかも、それらの工場の経営者があまり能力がない、あるいはこういう公害に対する施設をするということが採算ベースに乗ってこないので進まない、かような実情がございますので、その実情にこたえるために事業団をつくって、共同施設をつくろう、また、それを譲渡してやろう、あるいは金融もつけてやろうというような考え方で出発したわけであります。予算折衝のときには、いま木村委員のおっしゃるように、もっとこの公害がどういうふうに起きておるのかとか、公害に対する技術をもっと開発したらいいじゃないかとか、そういうための公害研究所のごときも必要であるということを、一方において要求をしておったのでありますが、それはそれで通産省の従来の研究所の中でもやれるのじゃないか、それよりも現にいま公害を起こしつつあるところに、そうしてなかなかやってもらえないところに施策をするのがよかろうということで、厚生省と通産省の主張が最終的に通りましてこの事業団が認められた、こういう経緯でございます。
  56. 羽生三七

    ○羽生三七君 これで終わりますが、いまお話しのように、小さい自分ではどうにもできないような事業者が集団で存在してそこで公害が発生するという場合には、私は、政府考え方もある程度考えられると思うのです。しかし、そうでなしに、大規模の事業者で、当然自己負担でやるべき能力も持っておるような場合、そういうような場合には、もっと自己責任を明白にしないと、これがもし今後予算化していった場合には非常に大きなものになって、しかも、いま木村委員指摘したような問題が起こってくる。ですから、その辺の区分は明確にしておく必要があると思うのですが、その点だけを一つ伺っておきたい。
  57. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは御承知のように、水の汚濁あるいは大気の汚染というようなものは、それぞればい煙規制法とか、水に対する規制二法がございます。これによって標準をきめ監督もしておる、こういうわけでございます。もしこれに触れるのでありますれば、当然その事業経営者は、これに対する施設をやるべきであります。羽生委員の言われるとおりに、まず第一には、企業者がその責任を果たす、しかし過去にさかのぼっての、また、当初は公害と考えられなかったものが、集団的になってきて公害を起こすというようなものについて、なかなか企業者がやり得ないというようなものについては、先ほど申し上げたような考え方政府が施策をしていこう。原則論としては羽生委員のおっしゃるとおりだと思います。
  58. 白木義一郎

    白木義一郎君 初めに、いまの問題に関連してちょっとお尋ねしますが、大蔵大臣考え方を伺ったわけですが、やはりよその家へよその人がごみを捨てた、それを隣の家の主人が片づけなきゃならないというような考え方であれば、大蔵大臣考え方がまあ正しいというわけですが、家の子供が家の中を散らかしたのを親が片づけなくちゃならないというのが公害だと思うのですが、それはそれとして、いま隅田川隅田川という話が出ましたけれども、大阪の淀川も非常にきたなくて困っている。で、隅田川は飲料には使われないが、淀川はこれは大阪の人間が飲料水に使わなくちゃならないということで、現在非常に問題になっておるようですが、これに対して、きょうは、対策、また政府見通しだけをちょっと関連して伺っておきたいと思います。
  59. 馬郡巖

    政府委員(馬郡巖君) 淀川につきましては、すでに三十八年の七月に、水質保全法に基づきます指定水域になりまして水質基準の設定が行なわれております。この実施については、私どもとしましては、この水質基準に適合するような汚水処理施設をそれぞれの工場に設置させまして、年二回ずつ水質の検査をいたしておりますが、いずれも水質に適合いたしておる状態でございます。ただ一御承知のように、淀川の場合におきましては、これは当初この水質をきめますときから問題でございましたのは、淀川の汚水源の一つの有力な原因は、京都市内の家庭下水でございまして、この家庭下水の処理というものをできるだけ早くということで考えておったわけでございますが、下水道計画の遅延によりまして、まだ未処理のまま淀川に流入しているというような状態で、まだ汚濁が続いているような状態でございます。これは関係省とも相談いたしまして、できるだけ下水道計画を早く完成するようにということを、私たちのほうからも、かねがね頼んでおるところでございまするが、今後ともそのように進めていきたいと思います。
  60. 白木義一郎

    白木義一郎君 見通しはどうですか。
  61. 馬郡巖

    政府委員(馬郡巖君) ちょっと四十二、三年までかかるように私たち聞いております。
  62. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは大臣にお伺いしますが、先日同僚中尾議員がちょっとお尋ねしたのですが、出血輸出のことで確認をしておきたいと思います。重電機、特に火力発電工作機械等の輸出が出血輸出であると、こういうように業者が言っておるのですが、その点はどういうお考えをしているでしょうか。
  63. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 個々の品目についての御説明は通商局長がいたしますが、この前もお答えをしたと思いましが、一がいに出血輸出として批判をしていいかどうか、こういうことを考えますときに、国内価格と比較して輸出価格が非常に安い、しかし、それは現金化が容易である、あるいはロットが非常に大きい、まあいろいろあると思うのであります。生産が継続的にできるというようなことも、これは会社操業上非常に有利ではないかと思うのでございまして、現在特に出血輸出で批判をしなければならないというものは、私はない考えでおりますが、いま御指摘の、個々の機械につきまして、通商局長から御説明申し上げます。
  64. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 一般的な状態につきましては、ただいま大臣から申し上げたとおりでございます。重電機につきましては、御存じのように、世界的に重電機の製造能力が若干過剰ぎみになっておりまして、国際マーケットでかなり激しい競争が行なわれております。また、日本の国内におきましては、電源開発のテンポが三十九年はちょっとスローダウンをした感じがございます。これは、また新年度から上向きになることが予想されておりますけれども、そういう内外の情勢が重なりましたので、メーカーとしてはかなりつらい立場に立ったということは言えると思います。ただ、個々の案件につきまして、かなり条件が違いますので、一がいにどうということは申し上げられないと思います。まあ会社としても、出血して損をして出すということは、まずまず考えられないことでございます。ただもうけが従来に比べてかなり少なくても、しんぼうして出さざるを得ない、こういう状況は一部にあったと思います。機械全般として見ますと、輸出品の契約価格でございますが、三年ほど前に比べて大体横ばいという状況でございます。
  65. 白木義一郎

    白木義一郎君 雑貨の方面ですが、六四年度の通商白書によりますと、六三年度の雑貨類の輸出が、前年度比三・五%の伸びを示しております。日本の総輸出が一一%に伸びていることを考えますと、雑貨の面でかなり下回ってきておりますが、もちろん日本の輸出構造が次第に重化学工業に移っているのですから当然の現象ですが、しかし、雑貨輸出の内容を検討してみますと、造花——有名な造花ですね、三三%の減少、はきものが二二%減少、おもちゃが一・一%の減少と、こういうように、次第に雑貨類の輸出の減少品目が多くなっている。これらの雑貨製品は、大部分中小企業の製品で、非常に従来から輸出の依存度が高い。この動向については、大いに注目しなければならないと思いますが、造花については、原料の塩化ビニールですね、この国内価格と外国向けの値段が非常に差がある。輸出用では一キロ百七十円、国内価格としては二百円、こういうような大きな開きがあって、非常に業者が困っている。また、香港等は労賃が非常に低い。昼めしさえ食わしてくれればいいというような状態で、香港の造花には業者が太刀打ちができない。したがって、原料の買い付けについては、国際価格、すなわち輸出並みの値段で購入したい、こういうことを非常に熱望しているわけですが、この点は、政府としてどういうように考えられておりますか。
  66. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま御指摘のような実態については私十分承知しておりませんので、軽工業局長からお答えさせます。
  67. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 輸出の場合におきましては、支払い条件が相当違っておりますし、また数量も相当まとまっておりますので、輸出価格のほうが国内価格より安い場合がございます。ただいま御指摘の造花用の原料でございますが、そういう点もあろうかと存じますが、やはり安い輸出価格というものがございます。そういうものにつきましてどういうふうにするかという点でございますが、私どももその原料全部についてということではなくて、輸出用の製品をつくっておる場合につきましては、そういう原料についてできるだけ安くするようにということを関係業界に要請してまいっておりますので、今後も引き続きそういうことで進めたいと思っております。
  68. 白木義一郎

    白木義一郎君 輸出の面ではそれでいいわけですが、そのために国内の製造業者が、外国の製品と太刀打ちできないで非常に困っておる、この問題をどうするかということなんですがね。
  69. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 化学製品の関係におきまして、国内の加工業者が輸入品に対して困る、価格競争に負けておるというようなものはほとんどないと存じます。また原料の輸入も、国内原料の供給が十分でないというところから、やむを得ず輸入しておるものもございますが、そういう化学工業品を原料とします加工業について、外国品との競争に国内で負けるというような場合はそうないと承知いたしております。
  70. 白木義一郎

    白木義一郎君 じゃ造花の問題ですがね。いま香港では非常に安い、こっちの輸出業者がそれに太刀打ちできない。それは原料の仕入れの値段に開きがあるので、輸出をふやすためにはどんどん安いものを売れと、同じ原料を国内で買って、そして製品にして輸出する。そうすると、出先で非常に労賃の関係等で値段が違ってくるために話にならない、こういう現況はよく御承知だと思いますが、その点なんですね。
  71. 伊藤三郎

    政府委員伊藤三郎君) 造花の輸出につきましては、御指摘のような事情もあろうかと思いますが、特に労働賃金の差によりまして、香港等の製品が非常に安く出ております。これは造花に限らず、人造真珠でもそういう点が出てまいっております。こういうものにつきまして、国内の原料メーカーが香港に安く売って、国内にはそれより高く売るということで、そういうコストの差に拍車をかけるというようなことがありましては、これはまことにぐあいが悪いのでございますが、先ほど申し上げましたように、輸出の場合と国内取引の場合では、契約数量とかあるいは取引条件というものの違いによりまして、取引価格に差が出てくるのはやむを得ないところでございますが、日本の輸出メーカーがそういう原料を使用します場合には、なるべく国内で安く原料を入手できるようにということをわれわれは関係の業界に要請してまいっております。そういう点で、原料面からくる違いというのは、極力少なくしてまいりたいと思っておりますが、ただ、労賃の差によるコストの影響というものは、これはどうも現在のところいかんともいたしかたないわけでございます。さらに、そういう後進国の競争品に対しましては、わが国の雑貨一般に言えることでございますが、より高度のものをつくりまして、品質によってそういうものを圧倒していくという方向に進むべきであるというふうに考え、またそのように指導してまいっております。
  72. 白木義一郎

    白木義一郎君 造花も、それから同じように今度同じ雑貨の中でおもちゃも、玩具類も、金属のほうは心配ないと、しかし、ビニール製の玩具はやはり同じような条件で非常に国内の業者が痛手をこうむっているというようなことについて、よくどうしようもないという点もわからないわけでもないわけですが、どうしようもないでは、業者のほうはたまったものではないわけですから、ある程度政府が何らかの対策を与え、また希望を与えてやらなければならないと思います。  さらに、その点の大きな問題として、いま御説明があったわけですが、労賃の問題ですが、これは全然対策がないわけですか。たとえば、厚生施設をつくるとか、労働条件の改善を与えていくとかというような方向で、国内の輸出業者を強力にしていく。また全体的な日本の輸出を伸ばしていくためには、政府として何か考えているのじゃないか、この点はいかがですか。
  73. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日本の輸出商品の中で重要な分野を占めておる雑貨につきまして、御指摘のような海外からの影響が起こりつつあるということは、きわめて遺憾であります。そこで、それに対する対策はどうか、これはただいま局長からお答えをしましたように、品質のよいものをつくって、その面で新しい分野を開拓していくということも一つでありましょう。また、新たなる市場を開拓していく、こういうことで、ジェトロなどの活動を、これを指導していきたいと思います。また主たる原因が現在の日本の国内における労働需給の逼迫ということでございますから、この労働需給の緩和のための施策、ただいまもお話があったような中小企業者に対する副利厚生施設をつくるように、融資をするとかあるいは税制の上で考えるとか、この方法がないわけではないと思います。それにましまして、現在行なわれている雑貨事業に対してのより一そうの近代化、あるいは協業化あるいはその他の施策を進めていく。結局、何か即効的にこれをやればすぐ直ちに競争力もできて、どんどんまた売れるようになるのだというわけには私はいかないと思うのであります。総合的に各種の施策をしまして、この激しい国際競争の中で、日本商品が勝っていくように努力したい、かように考えている次第であります。
  74. 白木義一郎

    白木義一郎君 もちろん、即効薬があれば一番いいわけですけれども、そんなことはだれも期待しているわけではありませんけれども政府の方針として、ただ観念論じゃなくて、具体的に希望を持でる方向を指示していく責任があると思うわけです。  それと同じような問題ですが、最近アメリカのテレビまたはトランジスタが非常に安くなった。これは二割ぐらい安くなったと言われているんですが、技術革新の結果こうなったと、そのために非常に今後日本の業者が被害をこうむるおそれがあるというようなことになっておるそうですが、この点はどうですか。
  75. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) アメリカの市場についていろんな傾向があるかと思います。昨年あたり、軍事予算の削減傾向がございまして、そのために電子機器メーカーが民生用機器に力を入れたということも、一つ影響であったようにも見ておるのでありますが、最近におけるようなベトナム情勢などでまたそういう事情の変化があるいは起きておるんではないかとも思われます。概して御指摘のテレビ、トランジスタ・ラジオなどにつきましては、まだ日本の競争力はあるものと思うのでございますが、さらに詳しい事情につきましては、通商局長のほうからお話し申し上げます。
  76. 山本重信

    政府委員(山本重信君) ただいま御指摘のございましたトランジスタ・ラジオ、テレビの関係は、実はアメリカの最近の動向は、先生御指摘のように非常に重大視しておるわけでございまして、一ころはアメリカがまだ本腰を入れない段階で日本の輸出が非常に伸びたのでございますが、最近は向こうの会社がかなり大規模なマスプロダクション方式を採用してまいっております。したがいまして、わがほうとしましても、それに負けないようにするためには、今後さらに合理化を推進する必要が出てまいっておるのであります。ただまあ、本件につきましては、まだまだ日本の力が相当ございますので、努力をしてまいれば、そう非常に悲観するような状態ではないというふうに考えております。
  77. 白木義一郎

    白木義一郎君 マスプロの点もわかるわけですが、一部には日本の部品がアメリカのほうへ流れているというようなうわさもあるわけです。で、これも以前にはそういうことがかつて過去にあったというようなことを言われてるわけですが、この点どうですか。香港とかそれから沖繩を経由して、日本の部品をアメリカがそれを使用して安い製品をつくっていると……。
  78. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 香港などを経由して部品がアメリカに安い価格で輸出され、そのためにアメリカのトランジスタなりその他の電子機器の値段が安くなってるというふうには、私ども聞いていないわけでございますが、そういうような事情があれば、部品の輸出等は、輸出承認にかけてある程度チェックをするという措置もとらなければならないと思いますが、いずれにしましても事情をよく調査して善処したいと思っております。
  79. 白木義一郎

    白木義一郎君 輸出マージンが低いとか、あるいは赤字輸出であるとかいうのは、どうしても国家的な立場で海外市場を獲得しなければならない。しかし実際はその急激な設備投資によって、企業が金利の負担が非常に重くなってきている、製品はどんどんつくらなくちゃならない。したがって多少損しても輸出によってどんどん現金にかえていかなくちゃならない、そういうような実情から、どうしても多少の赤字を覚悟で輸出を続けていかなくちゃならない、こういうような悪循環が現状だと思うわけですが、この点について、政府として今後どう対処していくか、お伺いしておきます。
  80. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま御指摘のような傾向が全然ないとは思いません。確かに最近における経済情勢下にさような傾向も認めるわけでございますが、いずれにしても、過当競争によりまして、マージンの非常に低いのもかまわずどんどん売り込んでいくと、まあこれはもし非常な悪影響があるということになってまいりますれば、さような過当競争による輸出の振興というのはいかがかと思うので、その場合何かカルテルでも考えるということも一つ方法かと思いますが、私としては輸出秩序が維持確立されて、そうして日本の貿易の伸びていくことを期待もし、また指導もしていきたいところであります。ただ実情からいたしまして、あるいはこのお話しのようなやむを得ない面があるのではないかということは否定はいたしませんが、健全な貿易の育成に努力をいたしたいと思います。
  81. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういったような非常に複雑な問題から、投資調整をという考え方が出ているわけですが、具体的にはどういうことを言わんとしているわけですか。
  82. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま大蔵大臣がおられますから、大蔵大臣のお考えもあろうかと思いますが、実は通産省の側からいまの御質疑に対してお答えをいたしますと、この産業政策上の考え方というものが、金融面に反映するのがいいのではないかと、そういうことで、日銀当局やあるいは市中銀行の首脳部と何回かの会談をいたしているのでございます。で、それが何かこの投資調整をしているのじゃないか、選別融資をするのじゃないかというようなふうに報道せられておりますが、私ども考え方としては、さような御批判を受けるようなことでなくて、産業政策全般の上から、この産業は資金がいま必要である、この産業については、多少過剰施設になっているから考えなければならないとかいうような、金融界の参考になるような意見を提供し、金融界もまたこれを受けて、投資の健全化をはかってもらいたいと、こういう趣旨でございます。
  83. 白木義一郎

    白木義一郎君 投資調整とそれから独禁法の関係ですが、公取委員会の公式見解としては、投資調整について業者が話し合うのはかまわない。しかし課徴金や監視規定など企業の自主競争を拘束する申し合わせば認めるわけにいかない、さらに官民協調懇談会で行なう投資調整は通産省の責任の限界さえはっきりするならば認める等々の公取委員会考え方が発表されております。従来のこの種の共同行為については、独禁法において不当な取引制限の禁止に抵触するものとして認められなかったのですが、それが一転して通産省の行政指導による投資調整を認めることにしたのは、独禁法後退の感じがある、こういうように思うわけですが、その点はいかがでしょうか。
  84. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは私どものほうとしては、独禁法の運用上かようにしてもらいたいということを要望しているほうでございまして、それが産業界のためになるという見解に立っておるのでございます。独禁法の後退ではないか、こういうことでございますが、いまの独禁法の運用面から、われわれの主張というものは、いま公取の見解が述べられましたとおりに、私は一向差しつかえないものだという考え方に立っておるのでございます。しかしながら、この独禁法の解釈についてのことでございますから、担当の局長から答えさせます。
  85. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) いま新聞等に報道された事柄の御質問でございますが、通産省といたしましては、御承知のように産業の業種によりましては、過当競争の結果、得意の拡大競争、したがってまた販売競争等において過当な結果を招いておる状況でございまして、最近の中堅企業における倒産もまた、それが原因になっておる面があるわけでございます。そこで、今後わが国のたとえば重化学工業が安定成長をしていくためには、やはりある程度の需要と供給とが見合う形において生産力をつくり上げていかなければならぬわけでございます。そういう意味で一定の目標を定めまして、その範囲内で各企業が自主的に、設備の競争をしないような形で、   〔主査退席、副主査着席〕 秩序ある設備投資が行なわれていくことが望ましいわけでございます。そういう観点に立ちまして考えますというと、おそらく企業が自主的にそういう国民経済的な望ましい姿に個々の企業活動が一致するのが望ましいわけでございますが、それに対しまして通産省といたしましては行政指導をいたしていく必要がある。設備の過剰を抑制するためにはしていく必要がある、こういうのが通産省の立場でございまして、そういう方向で指導する限りにおいては独禁法の問題ではない、こういうことであります。業界が話し合いをしまして投資調整のカルテルを形成することは、これは独禁法で認められておりません。したがいまして個々の企業がカルテルをつくるのではなくて、行政指導によって、あるいはその業界の動きが通産省の責任において認められる場合には、これは独禁法の問題でない、こういう意味でございます。
  86. 白木義一郎

    白木義一郎君 現況から言うと、ますますこの特に通産省日本経済に占める位置が非常に重要になってきている。逆に言えば、そういったような調整あるいは選別融資、そういったようなことから産業界に対して非常に通産省がウエートが強くなってきている。通産省に業界が何となく首根っこをつかまえられてきたような感じがする。あるいはもっと極端に言えば、官僚統制の心配がありゃしないか。こういうような意見があるわけですが、その点についてはっきり御見解を伺っておきたいと思います。
  87. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) こういうことを言うと、たいへん恐縮なんでございますが、私は全くの民間出のほうでございまして、いまお話しのようなそういう官僚統制の傾向というものを極力きらっておるほうでございます。ところで、実情はそれじゃどうか。いま経済界はこういう非常に困難な時期でございます。そのために業界だけで話し合って、そのために独禁法に抵触することをおそれる場合もございましょうし、また、それぞれ自主的にお話し合いをされたことでも、なかなかまとまりにくいということもございましょうし、また高度の立場から見ておりまして、どうしてもこの業界の行き過ぎを是正しなければならんという場合もございましょうし、いろいろなことから現在のこの経済界の困難性の中に、通産省がどうしても関与しなければならないような事情が間々あることは、これは私も認めておるんであります。それがどちらかというと少し目立って、その結果通産省の官僚統制の傾向が出てきたんじゃないかというような批判に進んだものと思いますが、現在私といたしまして、そういうようなことを全然考えてもおりませんし、また極力真にやむを得ないという場合に、通産省がそこに関与していく、こういう立場でございます。
  88. 白木義一郎

    白木義一郎君 じゃあ時間もないようですが、もう最後に一つだけもう少しはっきりしておいていただきたいのは、行政指導ですね。行政指導がどうしても行なわれていかなければならない。全般的な問題からやむを得ないとも思いますし、また政府としては当然政府の責任でしなければならないわけですが、現在の時点あるいは将来を考えた場合に、行政指導というと手っとり早いのが金の金融ですね、金融をどうするか。選別融資を強化していくか、それだけか、さらに具体的にですね、投資調整をして業界の立て直しをし、また強力にしていかなければならない。こういう立場から投資調整の主眼点といいますか、政府としてまたは通産省として、こういうところで業界をバックアップしていこうというような焦点を最後に伺って終わりたいと思います。
  89. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先般佐藤総理が業界の方々とお会いになったときに、特に企業家の責任体制の確立を強く望んでおったわけでございます。本来でありますれば、それぞれの企業者が経済事情を認識し企業責任に徹してまいりますれば、役所のほうがあまり介入する必要はなかろうと思うのでございます。しかるに過去におきまして、金融緩和の段階に至りますと、過剰投資あるいは二重投資というようなことが行なわれまして、そのためにまた国際収支を悪くしたというようなことがございます。今回、いま段階的に金融緩和が行なわれつつあるわけでございますが、この際に特に業界が考えてもらわなければならない、こういう基本的な態度を持っておるわけでございますが、いまお話のように、そういう点から、では投資調整をするのか、私ちょっとこのことばがこれは過ぎるように思うのであります。先ほども申し上げたとおりに、産業政策上の見地からその実態を十分に金融界に反映せしめると、金融界はそれそれの企業の経理内容等も考えながら、また一般的な産業政策を頭に置きながら自主的に金融はやっていく、こういうことで、特に何か規制をしていくということではないのでございます。しかし、今後における日本の経済の発展の中におきまして、現に過当競争をしているもの、あるいは投資設備の非常に過大なものといろいろございます。そういう点については通産省としては特に注意をしていきたい、かように思います。
  90. 北村暢

    ○副主査(北村暢君) 他に御発言はございませんか。——以上をもちまして通商産業省所管に関する質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  91. 北村暢

    ○副主査(北村暢君) 次に、昭和四十年度総予算大蔵省所管を議題といたします。  時間の都合上説明はこれを省略して、お手刀に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 北村暢

    ○副主査(北村暢君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。順次御発言を願います。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に三点伺いたいのですが、一つは、予備費と継続費と国庫債務負担行為、この三つの点について、それから第二が、前にも分科会で御質問したのですが、国立高専の敷地の問題です。それから第三が国有財産の管理の問題についてです。  まず予備費について伺いたいのですが、四十年度の予備費が五百億で三十九年度より二百億ふえているのですが、非常にふえ方が大きいのですが、その理由を伺いたいのです。どうしてこんなに予備費をふやしたか。
  94. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 予備費は大体総予算の一%ぐらいでずっとまいったわけであります。昨年は三百億でございましたが、災害の状況といままでの予備費の使用状況等を勘案しました上に、今年度は大体五百億程度の計上が必要であると、こう考えたわけでございます。災害の状況を見ますと、大体三十六年ころの補正予算に計上しましたものが二百九十八億余でございます。それから三十八年が百五十六億、三十九年が百六十二億五千三百万円、大体そういう状態でございますので、災害の状況等を考えますと五百億の計上が必要であると、このように考えたわけでございます。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの御説明ですと、災害の過去の状況を勘案して計上したと言いますけれども、例年より特に多い。四十年度は財源難であるとか、いろいろ言われておったのですが、予備費のふえ高が、率からすればたいへんなふえ高ですね。ですから、何か災害が特に多いとか、その他、何かやはり予備費を三十九年度より特に多くしなければならないという何か積極的理由、ほかにもあるのですか。
  96. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三十九年度の予備費の使用状況を見ますと、大体三百億のうち二百八十三億見当でございます。それに補正が百六十二億五千三百万、大体四百七、八十億、こういう数字になるわけでございます。でございますから、これからいままでの予備費の使用状況等を見ますと、大体五百億程度必要である、こういう考えでございます。まあ木村さんは、それよりも一歩進めて、今度なかなか財源がない、また補正もむずかしい、こういう意味で少し無理をして予備費を計上したのではないかと、こういうお考えかと思いますが、そういう面も幾らかあると思います。あると思いますが、これは予備費は御承知の財政法の規定に基づいてやっておるわけでありますので、水増しをしておるということではなくて、いままででも予備費でもってどうしても出さなければならないようなものまで押えておると、こういう面もございます。でありますので、四十年度の状況を見ますと、とても三百億や三百五十億では足らないという感じを持ったわけでありまして、五百億の予備費を計上して大体一ぱいになるのじゃないかという見通しでございます。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや私が質問したい点は、当然一般会計に計上すべきものをどうも予備費に計上しているということを問題にしたいわけなんです。で、そういう点がかなりあるのじゃないですか。どうなんですか。当然一般会計で計上しなければならぬものを予備費に組んだと……。
  98. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、そういう意味で水増しをしたものじゃありません。これはきっと来年のいまごろになってみますと、五百億というのは、ほんとうに一ぱいだったなということがおわかりになると思います。いままで三百億の中で予備費支出を相当強く要求されているものでも、予備費が三百億であるために支出ができないというような面もございます。確かにいままでの使用状況等を十分見ますと、まあ五百億というものが必要になるだろうと、理屈で申し上げると、いままでの比率が、大体予備費と予算額に対する比率は一%弱になったり、一%余になったりということでございます。四十年度はその意味で一・三七%ということになると、少し大きいじゃないか、こういうことは言われると思います。言われると思いますが、いままで災害等予備費があれば、補正をしなくとも緊急に支出ができたものが、補正を組むために時間がおくれたというような面もございまして、ことしの状況から言いますと、予備費五百億というのは、大体妥当なものだという考えでございます。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予備費の額についても、多少多いような気もするのですが、多い理由が、御承知のように憲法八十七条では、予見しがたい予算の不足に充てるため、予備費を設けることができるということになっている。前は財政法は予備費を計上しなければならないということになっていたのを、今度は計上することができるということになったのですが、どうも予見しがたい予算だけではなく、大体予見できるものも予備費に予定してあるように思うのです。  それじゃ具体的に伺いますが、外務省で今後低開発国などと経済協力を進めるにあたっての基本政策をきめまして、その基本の政策の一つとして東南アジアの政治的安定のため総理大臣特別基金というものを設けるということが報道されておるのです。この総理大臣特別基金というもの、これは設置することになっているのですか、いないのですか。
  100. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 総理大臣特別基金というような構想はございましたが、私が大いに反対をしたわけであります。そういうものをつくるということはよろしくないということで私がそういうものに対して意見調整をした結果、現在は、そういう制度は四十年度予算には認めておりません。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは東南アジアとの経済協力の問題ですね。総理大臣特別基金はつくらない、大蔵大臣の反対でつくらないことになったために、かわって何かやることになったのですか。海外協力基金を使うとか何とか、どういうことになったのですか。
  102. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 総理大臣基金というようなことになりますると、国民から見ますと、どうしてもつかみ金のような感じを受けますから、そういう制度をつくるべきではないという考え方を私は持ったわけでございます。国連貿易開発会議におきましても、国民所得の一%を低開発国の開発援助に回す、こういうことに対しては日本も賛成いたしておりますので、こうなると非常に大きな金額であります。国民所得の一%というと六億ドルにもなるわけでありますから、そういう意味で海外経済協力基金というものは、いままで動かないという批判もございましたが、軌道にも乗ってまいりましたので、この法律の改正をお願いいたしまして、これに対処できるようにしようという措置はとったわけであります。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 海外経済協力基金は三十九年度末で国債として八十七億ですか、預け金十億、全体の資産として約九十五億あるわけですね。その中からどのくらい充てるのですか。
  104. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 海外経済協力基金でいま残っておりますものというのは八、九十億じゃないかと思います。しかし、そのものに対しても現在予定でまとまっておるものもございます。でありますから、いま海外経済協力基金でもって資金として残っておるものの中の幾ら東南アジアにやるというようなことではなく、借り入れ金の制度も開くようにいたしておりますし、必要な資金は海外経済協力基金でも出せるような状態をつくっております。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこをもう少し具体的に伺いたいのですがね。海外経済協力基金でまだ動いていないのがどのくらいあって、その中からどのくらいいま東南アジアに、これは無償で与えるのですか。そこをもう少し具体的にひとつ説明していただきたいのですが……。
  106. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 海外経済協力基金は、金利の非常に安い政府借款ベースというものに対して使ってきたわけでございます。しかし動きがにぶかったという状態でございますが、このごろは軌道に乗りまして、大体、当初予期したものの九〇%くらいの資金というものに対してはおおむねめどがつきつつございます。これからの新しいものにつきましては、今度基金法を改正いたしまして、新しくきまったものに対しては対処できるような制度をつくりたいということでございます。  いままでの実績等に対してはいま申し上げます。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから基金法の政正というのは、どういうふうに改正されるのか、その点を御説明いただきたい。
  108. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 海外経済協力基金の資金の運用状況を申し上げますと、昨年の十二月末におきまして出資十五億円、貸し出し六十七億二千万円、回収七億、繰り越しが九十七億でございます。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 基金はどのくらい残っているのですか。
  110. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 約百九億ほど残っております。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはいままで協力基金をつくりながら、預金をやってきたり公債を持ったりして非常に運用していなかったのですよね。まだ百十億基金残っている。これをどういうふうに運用するのですか、今後。
  112. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 海外協力基金につきましては、その運用は輸出入銀行で取り扱われないような、商業ベースで扱えないような案件につきまして、その投資の効率、協力の効率等を勘案いたしまして、個々の案件を審議して基金が貸し出し、投資等を決定しておるわけでございます。従来あまり実績があがりません理由は、この大部分が輸銀の投融資対象になるような案件が多くて、基金の投融資対象になるような案件が比較的少なかったからでございます。しかし、最近の状況におきましては、かなりそういう案件が出てまいりまして、基金の投融資活動というものがかなり活発化してまいっております。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十年度はどういうふうに運用していくのですか。
  114. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) これは、基金は経済企画庁の所管でございますが、四十年度におきましては一般会計からの出資が十億、それから借り入れが十億、合計二十億の資金増加を見込んでおります。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どこかへ貸し付けるとか、出資するのですか、運用ですよ。
  116. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 運用の計画等につきましては、これは企画庁のほうが当たっておりますので、的確に御返事は申し上げられませんが、結局、申請がありました案件につきまして輸銀と基金と相談いたしまして、基金に取り扱わせることが適当だという場合に、基金の投融資対象として取り上げるという手続になっております。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 手続を聞いているのじゃないですよ。どこへどういうふうに……。というのは、私の質問は、最初は外務省で、低開発国との経済協力をするのにあたって、最初東南アジアの政治的安定のための総理大臣特別基金を設ける、こういう案があったのだけれども、大蔵大臣はこれに対してまあ賛成しなかった。そういう情勢から、海外経済協力基金を活用するということになったと思うのです。ですから、それはどこの国にどういうふうに融資するということが知りたい。それと、それが今度やはり政治的安定というものを目的としてやるのかどうかですね。
  118. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 確かに経済協力基金は動きつつあります。動きつつありますというよりも、いままでのようなスピードではなく、軌道に乗ってまいっております。しかし、四十年度に具体的にどの国のどういうプロジェクトに対して基金がこれを担当するということに対しては、いままだきまっておりませんので、申し上げられるようなのはございません。こう申し上げているのであります。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣だいぶ軌道に乗っているといいながら、まだわかってないというのはおかしいじゃないですか。
  120. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) もう少し時間をおかし願いましたら経済企画庁、それに外務省が持っておりますものを、いままでの百七十億円に対して貸し付け等に使用したものを差し引き、約百億円ばかり残っておるものに対して、大体四十億円、内容がきまっているものもあるようですから、そういうものを詳細申し上げてもけっこうです。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはあとで資料として出してください。それで性格ですよ。性格が今度少し変わってくるのじゃないかと思うのです海外経済協力基金の。というのは総理大臣特別基金にかわるものというふうになってくると、役割りが。
  122. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 木村さんの先ほどの御質問、総理大臣基金というものの構想があったじゃないか、——ありました。なぜやらなかった、それは経済協力基金というような制度があるし、こういうものの拡充でやるべきものであって、総理大臣基金というように、つかみ金のような感じを受けるものはつくらないほうがよろしい、こういう決定をいたしました。こういう経過をずっと申し上げたわけであります。でありますから総理大臣基金という、唐突に出たもの、これは岸内閣のときも何かそんなことがありましたが、そういうものとこの経済協力基金との直接の関係はありません。もうすでに海外経済協力基金という制度があるのでありますから、総理大臣のいう総理大臣基金などという大げさなものをつくる必要はない。こう政治的に判断をしたわけでありまして、総理大臣基金を取りやめたから、それにかわるものとして、新たにこういたしましたというような直接の関係はありません。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ新聞の報道ですと、最初の総理大臣基金の場合は、当面三十六億から七十二億程度で発足させる。それで、これは東南アジアの政情及び民生安定のため、総理大臣が必要と認めた場合無償で供与するということになっているわけですね。これはそうなると経済協力基金の場合は無償じゃないでしょう、これは貸し付けですからね。そうしますと、これは外務省の所管かもしれませんが、それじゃこの構想はどうなるか、最初無償で向こうの政治的安定とか、民生安定のために供与するということになっておったのを、それでその対象が医薬品あるいは生活必需品、食品など、そういう物資も考える、こうなっているのです。
  124. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま御指摘になったようなものは、外務省の一つの案であります。外務省が大体持ち込んでくるものは、ただでやろうとか、そういう思想が非常に多いというのが、これは率直に申し上げた議論であります。しかし、とても日本も低開発国に対する協力援助はいたしたいという基本的な気持ちは、人後に落ちるものではありませんけれども、しかし、低開発国に対して、ただでもってどんどん物をやるというほど豊かではないわけであります。でありますから、将来、日本が非常によくなって、世界の各国もそういう制度に参加をするというなら別でありますが、いま、幾ら低開発国援助というものが必要であるとしても、日本の国内の状況考えても、そうそのつかみ金のようにして、ただで差し上げますというようなことは、これは何か災害があって救恤品を送るとか、そういう特別の問題に関しては別でございますが、そういう制度をつくるということは、どうも財政当局としてはとても賛成できるものではございません。もしそういう制度をつくるにしたならば、やはりアジア開発銀行というバンク・ローンの方式をとるか、また各国に対して、コンソーシアムの中に日本も入って協力をするか、もっと投資というものに対しては効率的な、価値のあるもの、こういう制度でなければ、とてものむわけには相なりません、こういうことを申して、立ち消えになったわけでございます。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問の意図は、これまで低開発国援助の場合、諸外国からいろいろな批判があったわけです。日本は、賠償とか、あるいは純然たるコマーシャル・ベース以外には、援助はやっていない。そういうことから、政治的なそういう援助もやるべきだ、こういう意見もありますし、前にも資料をいただきましたが、なるほど日本はよその国に比べて、国民所得に対して低開発諸国に対する援助の比率が非常に低いというあれもあったわけです。しかし、イギリスとかアメリカその他先進資本主義国の低開発国に対する援助については、かなり軍事的な、あるいは政治的な、そういうものもかなりあったと思うのです。それで、共産圏と競争して、そうしてかなり軍事経済的な援助もあったわけでして、日本が国内でもまだいろいろひずみ是正やなんかやらなければならぬそういうときにおいて、国民生活の水準からいったら、欧米よりは未だ低いわけです。全体の生産は非常にふえたのでございますけれども、国民所得一人当たりは非常に低いのですから、そういう国に引き込まれて、政治的な、軍事的な、そういう援助をやることになっては、私は問題だと思うのですよ。そういうことで質問したわけです。ですから海外経済協力基金、これの運用の内容が問題になってくると思うのです。私は、そういう軍事的、政治的、そういうような援助になることについては、これはかなり考えなければならぬ。大蔵大臣は、国民所得の一%云々とありましたが、その内容についてはやはり問題じゃないか。やはりあくまでも経済的なベースにおいてやるのが基本でなければならぬと、こう思うのですが、いかがですか。
  126. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まさにそのとおり考えております。政治的なもの、これは西欧諸国が東南アジアに対しても、第二次大戦までは植民地であったり特別の関連があったことによって、政治的に金を出すということはあるわけであります。またその代償として、自分たちの地域、特別な協定による地域に対しては、原料に対して関税が安かったり、いろいろな問題がありますから、日本はただ金額の比較だけで、低開発国の援助をやることではいかぬと思います。もちろん軍事的なものに対しては、そういうものを考えてはいけないということは言うまでもありません。ただ、日本考えなければならぬのは、日本の貿易の約五〇%は低開発国向けでありますから、非常に片貿易になっております。で、日本もこっちのものを買ってくれるか——買ってくれるということになると、一次産品だけでありますから、こういうものを無関税で入れるとか、制限なく入れるとか、こういうことになりますと、日本の農村とか中小企業とか、そういう問題にも一非常に影響があります。それでは一体何でバランスをとるかということになりますと、まあ投資をする、延べ払いをする、こういうことによって、日本の輸出を確保していく、こういう特別な状態がありますから、あなたが御指摘になったように人道的というものはございます。人道的というものは幾らかございますが、その大宗をなすものは、やはり経済ベースに乗るものという基本的な考えを前提といたしております。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま非常にアメリカと北ベトナムの問題等いろいろあるものですから、そういう点について、やはりわれわれとしては注目しなければならぬと思っているのです。最初、総理大臣基金を設けて、それを大体四十年度は予備費からまかなうということが新聞に出ておったものですから、予備費についてさっき問題にしたわけでございますけれども、これは設けないということになりましたから、この問題と予備費との関係は、これで一応問題がないということがわかりました。  それから第二に、厚生省関係なんですが、医師の実態調査予算が問題になりましたね。去年やるはずだったのが、去年やらなかった。ことしはやる。やる場合に予算に計上されていないのですね。それを移用かあるいは予備費でまかなう、こういう意味だったのですね。これはどうして——大体予見しがたい支出ではないと思うのですよ。どうしてこれを計上しなかったのですか。
  128. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは去年まで計上しておったわけでありますけれども、ことしはやめた、こういうことであります。これはなかなかできないということだったわけであります。まあ、医者が反対しておったりしたこともあったでありましょう。しかし、今度は予算を組んでからのあとの新しい事態、社会党の皆さんからの御質問、また支払い者側との会談、そういう意味で、医師の実態調査というものはもう徹底的にやるべきだ、こういう新しい事態が生じたわけでございます。でありますので、これを、もし結論が出て、予備費から使用しても、予見しがたかったと、こうは言い得ると思います。しかし、あなたが、そういう財政法というものはもっと厳密に考えるべきだ、こういう御主張もあると思いますから、そういうことも勘案しまして、その場合は厚生省の中でやりくりできるかと、こういうことを言ったわけでございます。厚生省は、非常に重要な問題でありますから、流用をやってもこの問題に対処したい。こういう熱意を示しております。でありますから、厚生省の中の流用か、もしくはお許しが願えるというような状態になって御了解が得られるというようなことになれば、予備費支出もまたやむを得ない、こう御答弁申し上げたわけであります。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、予備費との関係で伺いたいのですが、これは決算とも関係があるのですけれども、退官退職手当ですね、公務員の。この予備費の使用が非常に多いのですよ、予備費使用が。これはなぜあらかじめ予算に計上できないか。実際に退官退職手当に使用した予備費が、三十五年度は六億九千万円、三十六年度が八億三千七百万円、それから三十七年度が十六億三千九百万円、三十八年度が五億九千万円。それで、予算には計上されてあるのですね。それで足りないで、そこで予備費を使うわけですね。これは聞くところによると、財政法の規定によって、そういうものについては大蔵大臣の裁量によって、それで予備費を使うことができる制度にはなっているのです。しかし、それが、大体、予算に計上する場合、大蔵省が画一的に各省の給与総額の千分の二十を計上できるということになっているのですね。それで画一的に計上するわけなんですよ。ところが、もうそれでは例年足りないわけです。ずっと。だから、ここに私は、予算の計上のしかたに問題があるのじゃないかと思うのですね。毎年、予備費使用が恒常的にずっと退官退職手当は続いているわけです。ですから、これはもう過去に実績があるのですから、大体給与総額の率を上げればいいのだと思うのですがね。いま二〇%になっているのですから、それを、もう実績があるから、実績を勘案して、そうして、これは予算にやはり計上すべきじゃないかと思うのです。恒常的に予備費使用ということは、私は、財政法からいって予見しがたい支出とは言えないと思うのです。ですから、この計上のしかたに一つ問題があると思うのですが、この点を伺いたいのです。
  130. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 人件費総額が四十年度におきましては三千二百九十七億ということでございます。これに対して、百五十二億五千万円の退官退職手当等を計上しているわけであります。これはなかなか人数が多くて、実際において一律に幾ら計上するといって、こまかく、三億、五億不足というところまでなかなか計上できないのであります。でありますから、三十九年度に見ますと、三千四十九億というものに対して百三十億ばかり組んだわけであります。ところが、二十億くらい足らない。二十億までは足らないと思いませんが、どうも幾らか足らないということで、実績に徴しまして百五十二億五千万円組んだわけであります。今度は一ぱい一ぱいにいくのではないか、こういうふうに少しよけいに見たわけでありますが、どうもこういう予算は多目に見ておくということがなかなかできない。まあ、できるだけぎりぎり一ぱいの予算でございますので、退職手当が余ったということは、特別な状態でなければ余ったということはないと思いますが、やはり幾らかずつ足らないということは、厳密に組まなければ、どうしてもそういう結果になるわけでございます。まあ予備費から幾らかずつ使用さしていただいているということに対しては、まあそういう意味でございますから、また、退職退官というものに対しては、いろいろ事情があったりして伸びたりもございますし、実績によってまあ計算をするという以外に道がないわけでございますので、御理解賜わりたいと思います。
  131. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣は、財政法三十五条三項ただし書きで……。
  132. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ちょっといまのことについてもう一つ。多目に組みますと、流用財源としてはなかなかいい財源だということで、じき各省は利用するということで、相当厳密に組まなければならぬ。大蔵省の立場は、やはりこういう姿勢をとることが、健全財政という立場を守るということになるわけでもあります。
  133. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もちろん、大蔵大臣は安易な手続で使用が認められる場合があるわけですね、財政法三十五条三項で。いまお話しのように、非常に数が多いというようなときに、一々予算にきちんと計上するのはむずかしいから、やはりその場合には予備費を使ってもよろしいという規定はあるのですよ。それは財政法上違反とは言いません。手続上違反ではないのですけれども、過去の実績から見ても、絶えずしょっちゅうずっと予備費使用をしているような場合、何かわれわれは割り切れないのです。この点は、だから実績はもうすでにあるのですから、なるほど、いま大蔵大臣の言われる点も、私は了承いたしますよ。そういう点もあるでしょう。しかし、実績とあまりかけ離れていますからね。ですから、もう実績が出ているんですから、そこで、これから大体まあ給与費の千分の二十、四十年度も大体千分の二十というので組まれたと思うんです。大体その大ワクとして、さっきお話ししました給与費の千分の二十ですね、さっきの金額では大体そうだと思うんです。ですから、ここに千分の二十をどれだけに上げるかということが問題ですが、これは技術的な問題になるわけですから、そんなこまかいことまで私はどうこう言う必要もないと思うのですけれども、ただ、われわれが予算を審議し、あるいはまた、その予算を監督するといいますか、これは決算委員会の問題にもなるかと思うのですけれども、そういう点でやはりあまり予備費の使い方がルーズになってはいけないのではないかという点から、一つ問題にしたわけです。ですから、その点、大体実績に近づけるように——予備費の制度があるから、もう最初から安易にそういう予算を組むべきではない。あるいはまた邪推すれば、労働対策としてあまり予備費を組むとまずいということも考慮されて少な目に組んでおいて、そうして、あとで予備費を使う、こういうようなことも、ちょっと邪推すれば。
  134. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは百五、六十億の中でもって五億、六億というのですから、これはなかなか——ほんとうに厳密に組んでいるつもりですが、これだけ膨大なものでございますので、まあ一面、基本的には、あなたの言われるとおりでございまして、これは全く違わないものを組むべきであります。しかし、まあ予算が膨大になってまいりますと、複雑多岐になってまいりますし、まあ、とにかく三兆円余の予算の中で三百億の予備費を組むと、大体ぎりぎり一ぱい、十億か十五億残るか足らぬ——足らぬということはまあないわけでございますから、やはり五百億今度組みましたが、大体この予備費もうんと残るということもないと思います。そういう意味で、相当大蔵省としては可能な限りこまかく検討して組んでいるものだというふうにお考えいただきたいと思います。五億、六億というものを予備費から計上しても、労働対策として少な目に組んだというふうなことは、これは思い半ばに過ぎる御議論だと思います。そういう思想はございません。できれば一円も余さず、一円も不足せず、ぴしゃっと組みたいという、大蔵省にもそういうマニアのようなそういう気持ちもございまして、ぴしゃっと合わしたいというくらい熱心にやっているわけですから、まあ膨大なものの中で幾らかずつ誤差が出てくる、こういうことで御理解していただきたいと思います。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから退官退職手当の予算の計上のしかたについて、これは組織別に組まれてないですけれども、これはどうなんですかね。
  136. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 予算の要求が所管別に要求されているわけであります。しかし、その査定につきましては、こまかくやるわけでありますが、各局各課別にというわけにはまいりません。これはやはり中に組織の異動ということもございますので、所管別一本にまとめて計上いたしている、こういうことでございます。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれ予算を見る場合に、学術会議とか、あるいは近畿圏整備本部とか、公正取引委員会とか、あるいは土地調整委員会とか、首都圏整備委員会、こういうものの予算を見るときに、ここには退官退職手当の計上がないのですよ。だから、予算を見る場合に、そういう点に不便があるわけですよ。これは総理府関係ですね。だから一括して計上されておると思うんですね。だから、そういう組織別にこれは計上できないかどうか。
  138. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 私からお答え申し上げます。  従来から退官退職手当は、事柄の性質上、ある程度組織が大きくございませんと、その中で特定の人がやめるというような問題になりまして、御指摘のような首都圏整備委員会というようなことになりますと、職員が数十名というようなことで、その中から該当者に当たる者が一名とか二名とかということになりまして、その人がはたしてやめるものやら、どうやらわからぬ、こういうこともありまして、組織別に割り振って、そこまできめますことは、これは非常に正確にはなるわけですが、かえって結果的には誤算も出ますし、ぐあいが悪い、こういうことで所管一本で、それをさらに組織に割っておりません。これは事柄の性質上、そうせざるを得ないもあと、そう心得ております。
  139. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、決算にはちゃんと出ていますね、決算には。
  140. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 決算の場合は、はっきり組織に移しかえをいたしまして、いまお示しのような総理府の中の機関等の場合は、それぞれ移しかえをいたしまして、そういうときは、だれがやめた、だれに払ったという実績が出ておるわけですから、そういう形で整理をいたしております。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれ、決算を見なければ、大体予算ではわからぬわけですね、全然わからぬ。それはまだいろいろ問題がありますけれども、予備費については、それくらいにしておきます。ほかに質問もあるんですから。  次に、継続費と国庫債務負担行為につきまして、どうも私わからない点があるんですが、それは防衛庁の予算を見ますと、継続費は防衛庁だけなんです。ほかには継続費の計上がないんです。全然。それでまた、国庫債務負担行為も、一般会計では防衛庁の予算が非常に多いわけです。どういうわけで防衛庁以外は、国庫債務負担行為にほとんど依存しちゃって、どうして継続費というものを、予算を計上しないのか。まあ、せっかくと言っちゃ変ですけれども、われわれ反対していたんですけれども条件をつけて賛成しましたけれども、継続費については、財政法の改正で継続費ができるようになったんでしょう。ところが、それを利用しているのは防衛庁だけなんです。ほかの省はみんな国庫債務負担行為なんですよ。長期的にわたる予算については、どうしてそうなのか、この点私は疑問に思っているんですよ。継続費と国庫債務負担行為と、どこがどう違って、そうして防衛庁以外のところは、継続費ではどこがまずいのか、その点が知りたいわけなんですよ。どうしてほかの省は全然継続費に予算を計上しないで、そうして防衛庁だけが計上しておる。みんなほとんど——みんなと言っていいでしょうね、国庫債務負担行為。その点はどうなんですかね、実際を知りたいわけですよ。
  142. 澄田智

    政府委員(澄田智君) いまお話しのように、継続費は防衛庁の艦船の建造だけでございます。国庫債務負担行為をとっておりますものの中でも、お話しのように、それと類似のケース、たとえば運輸省の関係の船舶の建造とか、そういうものもございますので、こういうものについても、継続費でやることは可能なわけでございます。ただ、防衛庁の場合は、御承知のように、継続費のほうはこれは五年以内で、はっきり初年度幾ら、二年度幾らと年額を限りまして、そうして翌年、予算の場合に、さらにそれをもう一度国会のほうで御審議になるということは妨げないわけですから、一応継続費で取りますと、毎年、額の支出もできる、こういうことで非常にはっきりしております。これに対して国庫債務負担行為のほうは、契約はできますけれども、もちろん、支払いは翌年度の予算を計上して御審議を願ったものでもって支出をする、こういうことになっております。そこで違うわけでありますが、防衛庁の場合は、防衛計画に基づいて毎年の艦船の建造の予定が非常にはっきりしている。しかも、その建造は相当長期で、予定を非常に立てやすい形でもって毎年建造が行なわれておりますので、事柄の性質上、一番継続費になりやすい。いま申し上げましたように、ほかの政府関係の船をつくる場合も同じではないかということでございますが、この場合は、防衛庁のあれに比べますと、二年間ぐらいでできる。防衛庁の艦船の建造ほど厳密に、各年の工程なり予定というものをそれほど厳密に立てないでも実行できるというようなことで、従来、いまほかの場合には国庫債務負担行為によっておりますが、性格においては似ているような場合は御承知のようにあるわけでございます。そのうちでもって継続費に一番乗りやすいものとして、現在は防衛庁の関係予算において継続費は用いておる、こういうことでございます。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも納得できませんね、それだけでは。国庫債務負担行為、もとは三年だったのですが、五年に延長されているのですよ、改正されて。ですから、実質的には、継続費も国庫債務負担行為もほんとうは変わらないはずなんですよ。国庫債務負担行為だって、それは年次的な計画を立てなければならぬのですよ、立てて承認を受けなければならない。ただ片一方は、既定経費でございます継続費、片一方は義務的経費になる、翌年度は支出の承認を得る必要がある。だけれども、何かそこにほんとうにやりいいというか、国会をごまかすと言っちゃ変ですけれども、継続費がぐっとふえてくると、何となく不健全予算考えられるので、国庫債務負担行為ですと翌年度の支出になるのですから、何かこう安易に考えやすいように思われるんですよ。しかし、実質は、もうほとんど同じになっているのですよ。いまいろいろお話があったのですけれども、実質は同じですよ。義務的経費だって、これはやらないわけにはいかないですよ。国庫債務負担行為を承認して、あとの次年度の予算でこれを否決したら、これは事業できませんからね、実際問題として。だから、それをいろいろに非難したり責めたりするのじゃなくて、実際知りたいのですよ。どとして継続費はほかの省は一つも使わないのですか、防衛庁以外はみなこの国庫債務負担行為になっている。継続費を、財政法を改正してそういう制度を設けたのに、よその省はなぜこれを使わないのか、ほんとうのところを聞かしてくださいよ。実際に使う継続費はどうして都合が悪くて、どうして国庫債務負担行為が都合がいいのかですね。それはすぐ、要するに、財政難になるから国庫債務負担行為にということなんですかね。それにしてもおかしい、初年度については同じ予算を計上しているのだから。
  144. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 私から申し上げます。  防衛庁でこれを用いる場合は、大型艦船の建造であります。全体として工程も工期もはっきりきめられまして、これでもって計画期間内に進めるということは非常につかみやすい、こういうことであります。さらに、こういう場合においては、一括全体をもちろん国会に御承認願っておかないと、着工することもできない。しかし、もちろん、実際の工程においては、これはずれてくるというような場合がありまして、こういう場合においては、承認をいただいている年割り額をさらにあとに繰り越すというようなことであって、経費の効率的な運用をはかるというようなことでやっております。ところが、小型の場合は、ここまでする必要がない。これはその年度内に済む場合が非常に多いことであるし、それから次に繰り越すというような場合であっても、いまのように、各年、ずっと将来にわたって年割り額をきめておいて、これをあらかじめ御承認願って、そうして、これがもし工程がずれれば、年割り額を繰り越していくというようなことがない、そういう必要はないということで、これは一括契約をする、そうして残りの部分は国庫債務負担行為で翌年の予算で御審議願う、こういうことで実際に処刑ができるというので、国庫債務負担行為によっておるわけであります。この点は、防衛庁の場合は、大型艦船については継続費、それから小型のものについては国庫債務負担行為、こういうことになっております。したがいまして、防衛庁以外の各省の船舶というような場合には、大体防衛庁の大型艦船に当たる、こういうことにもなります。それから船舶以外のものにつきましては、大体船舶のようなはっきりした年割り額をきめがたいような契約が多いわけでございまして、こういうものはすべて国庫債務負担行為によっておる、こういうことで、その間にいまお話しのようないろいろ実際的に事柄の性質上分けておるということでありまして、それ以上の特別な理由というようなものはございません。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで非常にはっきりしたのですが、継続費を財政法で認めるときに、これは結局、戦艦とか軍艦とか、そういうものをつくるために継続費を認めるようにするのじゃないかと言ったら、いや決してそうじゃないのだ、やはり今後、近代国家になれば、長期的な事業がたくさん多くなるのだから、そこで継続費予算を認めるのだといって、そうして継続費を財政法を改正して認めたら、それを使うのは防衛庁の戦艦だけじゃないですか。それだったら、みな国庫債務負担行為でまかなえているのじゃないですか。なぜ、ほかのほうは利用しないのか、防衛庁だけ。だから、結果から見ますと、はっきりこれは軍艦をつくるための、継続費を財政法に認めた結果は、そうなっているのですよ。国庫債務負担行為でまかなえるのを、継続費で認めることになって、結局、いまのお話のように、大型のものは、これは継続費でいかなければできないということになるでしょう。ですから、その点はどうも財政法を改正して継続費を認めたときの杞憂がはっきりここへ出てきた。これ以上議論になりますからこのくらいにしておきますが、あとではっきり、ほかの省はどうして継続費を使わないで債務負担行為ばかりやるのか、この点、いまの大型、小型の説明その他では十分に納得できませんけれども、打ち切ります。  それから次に、国立高専の問題ですけれども、ことしの三月十三日の予算委員会で、わが党の加瀬委員が愛知文部大臣質問した際に、愛知文部大臣がこういうふうに答弁している。それは、「四十年度におきましては、国立の高専その他の敷地等の問題についても、」強制的に寄付させるというようなことが「絶対に起こらないように処置をする、こういうかまえ方で用意をいたしております。それから、三十九年度以前におきまして、たとえば地元、あるいは県その他の所有の土地等の無償の提供を受けておるようなもの、こういうものにつきましても、漸次国有地と交換をする、あるいは有償で借り上げ料を払うというような処置をいたしまして、従来のものにさかのぼりまして筋を立ててまいりたい、かような私は決心で事に当たっておるつもりであります。」、こういう答弁をされておる。そうしますと、実際四十年度ではどういうふうになっておりますか。そうして国有地と交換をする、あるいは有償で借り上げ料を払う、しかも、従来のものにさかのぼって筋を立てる、こういう答弁をされておるのですよ。そうしますと、このとおりに処理されているのかどうかという点なんです。
  146. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いままで、三十七年から三十六校ですか、できておると思います。このほかに四十年度に七校ということであります。四十年度の分の七校は、舞鶴と北九州の分は国有地を使用いたします。あとの五校——釧路、小山、津幡、八王子、福井、この五カ所は国有地と交換をしたい、こういうことでいま検討いたしております。それから、愛知文部大臣も私も述べておりますが、いままでの三十六校分につきましても、国有地の使用が八校、国有地と交換予定のものが十七校、あと十一校残っております。その十一校が、その他、県期成同盟会からの借用、これが問題になっておるわけでございます。これに対しても、できるだけ国有地と交換をするというような方向で進めております。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 借り上げ料を払うんですか。
  148. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) どうも国会でこういう問題が出てきましたので、初めはもう無償でけっこうだと、こう言っておったのが、国会でもってだんだんと国有地と交換をすると、こういうことを言っておるんだから借用料を払えと、こういうことがこのごろになって出てきておることは事実であります。出ておりますので、いま困っております。とにかく、早く国有地と交換をしたい、こういうことで、いま借用料を払うということになりますと、ほかに及ぼす影響もなかなかたくさんあるわけであります。これは学校だけではなく、警察とか裁判所だとか、その他のものに対して寄付をしたものもございますし、ある意味において無償で借り上げているというものもあるわけでありますから、そういうものまでみな波及するということもございますし、とにかく、この国立高専に対しては、早急に国有地と交換したい、こういう基本的姿勢を明らかにいたしておりますし、その他の国の国費の支弁に基づく建物等に対しても、無償で提供してもらうようなことはやらないようにいたしますと、こういう基本的にお答えをしているわけでありますから、いますぐに有料にするということはたいへんむずかしいということで、いままあ苦慮しているわけであります。
  149. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはしかし、大蔵大臣、そういう御答弁で済まされませんよ。愛知文部大臣がはっきり、有償で借り上げ料を払うというような指貫をいたしまして従来のものにさかのぼって筋を立ててまいりたい、前のものまで。これはもうこれだけの御発言をしているんですから、なるほど、この予算措置をすると、これはたいへんなことになりますよ。もう前から、国立高専だけではありません。国立高専だけだって、ずいぶん前から使用しておるものもあるし、たとえば裁判所なんかで、昭和三年ごろから無償でずっと借りているのがあるんですから、これを筋を立てて従来にさかのぼって借り上げ料を払うということになるとたいへんになります。
  150. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ええ、なります。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、なるのにどうしてこういう答弁されるんです。また、これは地財法の違反ですよ。払わなければ、地財法の二十四条の違反ですよ。特に最近また地方公共団体が赤字に悩むようになってきているんですから。地方財政再建促進特別措置法の二十四条二項で寄付を禁じているわけです。しかし、その寄付も、表面は自発的のように見えても、実際には、強制的になる面もあるので、わざわざ政府がそういう点については、そういうようにわたらないようにというので通達をちゃんと出している。昭和二十三年一月三十日の閣議決定で、各官庁に対する寄付等の抑制についてと、こういうものをはっきり政府が出している。そうして、その準則をちゃんと定めておるのです。ですから、地財法の違反でもありますし、ですから、違反になるから愛知文部大臣もこういうふうに答弁をされたのですよ。大蔵大臣、これ、あいまいにされちゃ困りますよ、ここで。せっかく加瀬君が質問してここまで愛知文部大臣が答弁されたのを、大蔵大臣にうやむやにされてしまっては。
  152. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 地財法の違反にならないように、格段の注意をいたしております。まあ国が地方公共団体の林産または公の施設を使用する、こういう場合もなくはないわけでありますが、こういう場合は、地方公共団体の議会の同意を求めておる、同意がある場合はこの限りでない、こういうことでございますが、まあ精神としては、とにかく国の建物は国がつくるという原則を立てておることは、これは当然のことであります。ただ、明治から長い歴史、沿革がございまして、教育施設などは国からつくってもらうけれども、地元のためにもなるのだ、こういう思想で実際は期成同盟会をつくったり、わが子が入るところだと、こういう意向で、特に教育とか社会保障施設とか、こういうものに対しては、地元の熱意が相当多いわけであります。ですから、この寄付というものを良識の範囲で受けておった長い歴史がございます。しかし、地方財政の健全化という意味で、できるだけ税外負担という種のものは地方住民に与えないようにという趣旨で通逹も出され、法律の改正も行なわれておるわけであります。この国立高専のときも、初めはおしかりを受けるような答弁を政府側はしておったのです。これは長いこと、明治からやっておることでありまして、地元が好意的に寄付をされるというのでありますから、これを受けても法律違反にならないと思います。というような答弁をしておったのですが、地方財政法上、こうしたような精神に付してどう思うかというようなことで、だんだんと国有地を使います。交換をいたします。これからつくるものは、国有地以外のものではなるべくつくらないようにいたします。こういうことでだんだん、二年ばかりの間に非常に進歩してまいったことは、御理解いただけると思います。ですから、いま国有地と交換できないものもあります。確かに、その一部の中で、過当な国有地がない、まあ観光地の山の上をやるといっても、なかなかそう、うんと言わない、こういうところもありますので、そういうものは押し詰めていきますと、国がある時期に買収をするということになると思います。国が買収するまでの間、無料じゃいかぬので有料でどうだということでありますから、これは設立の経緯もございますし、地元期成同盟会でという、非常に熱意もあって今日に至っておりますので、まあ、いつまで、どうすると、こういうふうなひとつ御質問でなくて、あなたの御発言等を体して政府も前向きにひとつ善処をだんだんといたしてまいりますから、ぜひ御了解を賜わりたいと思います。いまここでどうと言われても、有料にいたしますと、こう言ったら、それは及ぶところが非常に大きいということは、これは木村さんも御了承いただけると思うのです。ですから、やはり良識の範囲で、また、国の財政も地方の財政も国民全体の利益を守るという立場にあるものでありますし、そういう意味で、ひとつ政府の苦衷もお察しいただきまして、同時に、政府の前向きの姿勢というものに対しても、ひとつ御観照賜わりたい、こう思います。
  153. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間もありませんので、簡単にお聞きしますが、大蔵大臣、東京都の場合、八王子が一つあるのですよ。東京都では補正予算まで組んで東京都が施設して国へ渡すのですね。それで、あとで国は国有地をくれることになっている。国有地はどこに予定してあるかというと、まだはっきりしない。東京都は水道料金を上げたり授業料を上げたり、いろいろするような財政状態になって、そういうときに補正予算を組んで一応東京都の負担でやるわけですよ。そういうふうに地方財政を圧迫をするわけです。それで、法律的に言えば、地方財政法の二条によりましても、国が地方に財政的な負担を与えちゃいけないと、こういうことになっているのです。それから地方財政再建促進特別措置法の二十四条の二項にも違反するし、財政法の十条にも違反します。ですから、そういうあれがありますから、この点については、国有地の交換というのは、みんな書いてあるのです。交換と言ったって、はっきり予定がないのですよ。具体的に聞きますと、じゃあどこをどういうふうに予定しているかというと、まだ考えておりません、そういうような、過去においてずっと無償で扱ってきている。この点については、今後何回も問題になると思いますので善処されたいと思います。  さらに私は、国有地の管理の問題を質問したいと思ったのですけれども、ほかの方の御質問がありますので、ただ政府に注意を促しておきたいと思います。それは「朝日ジャーナル」で「穴だらけの国有地管理」、こういう記事が載っておるのです。お読みになったかもしれませんが、これを見ますと、これは非常ないろいろな疑惑があります。ことに国有地、旧海軍工廠とか、あるいは陸軍、軍の持っていた土地をある会社に払い下げたら、その会社がよそに転売したとか、いろいろな問題があるわけです。したがって、政府から、政府のこれにも——大蔵省で出している「財政金融統計月報」の国有財産の管理状況、これを見ましても、ずいぶんいろいろな会社に国有地を売り渡しています。そのあとの実態調査を厳密にやらなければいけないと思うのです。これは私は注意を促しておきたいと思う。ただ、東プラ(東洋プライウッド会社)事件といって、前に愛知県の春日井市の問題が起こりましたけれども、これだけじゃないと思うのですよ。ですから、その点は私は十分注意を促しておきます。これについては大蔵大臣の御所見を伺って私の質問を終わります。
  154. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 国有地、なかんずく旧軍の財産の移管を受けたものにつきましては、台帳の整備その他に欠陥があったり、いろいろな問題があったことは、御指摘のとおりでございます。しかし、国有地の管理運営につきましては、十分な配慮をしなければならないということで、先国会にも国有財産法の一部を改正する法律案を御審議いただいたわけでございますが、現在は、戦後のような状態はございませんが、まだまだ国有地の中で、この間衆議院の大蔵委員会で問題になりました畦畔地の問題等もございます。まだいろいろの問題が残っておりますので、国有財産全般に対して管理をいたして、国民の御期待にこたえたいという姿勢でございます。
  155. 羽生三七

    ○羽生三七君 実はきょうは、年々硬直していく予算の硬直性を、どうしたらば弾力性を持たせることができるか、それは可能かどうか、そういう問題について、年々硬直していく予算の硬直性ですね、それをどうすれば弾力性を持たすことができるか。また、それは可能かどうか。そういう問題をお尋ねするつもりだったのです。ところが、もう時間がないそうなので、当面の問題を二、三点簡単に伺います。  日韓会談の財政上、資金上の手当ての問題です。それで、これはまあ全部きまっておるわけじゃなく、漁業関係だけですが、まあ近日妥結すると伝えられておる。だから、外交上の問題ですが、資金上、財政上の問題は大蔵省のことですから伺いますが、漁業協力の場合は、これは民間資金の活用、利子補給があるかどうかは別でしょうが、請求権問題の有償無償五億ドルというのは、どういう財政処置が考慮されているのか、どういう手当てのしかたをしようとするのか、その点をひとつ伺います。今年度予算には関係ありません。妥結を前にしてどういう考え方を持っているか。
  156. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは、日韓会談が正式に調印されて批准が終われば、当然支出をしなければならぬわけであります。その場合は、無償の分につきましては、当然補正予算を提出をして御審議をわずらわすということになろうと思います。それから有償の分につきましては、これは輸銀及び経済協力基金というようなものを使うということになると思います。それから、その後の漁業協力その他ハ項の問題がございますが、この問題につきましては、おおむね輸銀やその他民間金融機関ということになると思います。
  157. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、いま御答弁にありましたあれですね、もし妥結する——賛成、反対の議論は別として、妥結が早ければ、四十年度で補正を組むわけですね。四十一年度から始めるのじゃない、四十年度から補正を組むと、そういうことですね。
  158. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まだ批准問題もございますから、これはいまから四十年度に組みたいなどと言ったら、たいへんなことになるわけでございます。そういう考えはございません。まず国会の審議を尊重いたしまして、国会でもって批准が完成して、しかる後ということになりますので、これは四十年度になるか四十一年度になるか、まださだかにきまっておるわけじゃありませんので、その間の事情をひとつ御了解いただきたいと思います。
  159. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはおかしいですよ。いま大蔵大臣は、無償の分は補正を組みたいと、こう言われたから私が質問した。
  160. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そうは言いません。
  161. 羽生三七

    ○羽生三七君 いいえ、そう言いました。はっきり答弁した。速記録を見てください。
  162. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それはまだ調印も行なわれないものでございますから、調印が行なわれて——国会ですんなりと、すなおにさっと批准ができて、さあ金がどうなるかということになれは、これは組まざるを得ないと思いますが、これはまだまだ先の問題であって、未確定要素がたくさんございます。でございますので、国会の批准が済めば、しかるべく措置しなければならぬことは事実でございます。
  163. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはわかっております。それは与党野党を問わず、国会の審議を経てから批准をするということはわかっておりますが、もう妥結を寸前に控えて、それで処置する場合にどうするかということは、大蔵省としてやらなければ、幾ら外交上の案文ができたって、具体的な解決にはなりませんので、かりにできた場合はということを私は言っている。これは仮定の問題じゃないのですよ。もう漁業の場合は九千万ドルときまって、その場合の利子はこうなりますと御答弁まであったわけです。これは民間資金の活用、輸銀の関係もありますから、おのずからこれは明白です。それ以外の部分については、おのずから自然発生的にお答えがあったように、当然補正を本年度に組まれる。その場合には、補正を組まれる場合、組む組まないは別として、組まれる場合には、どういうところから出されるのか。たとえば補正を組まれる場合、一度に出すのか、どこの資金を出すのか。
  164. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いままだ未確定の状態でございますが、一年間に幾らか払わなければならないわけでございます。   〔副主査退席、主査着席〕 三千万ドル払うにしても百億になります。二千万トル、二千五百万トル——これはきっと払う段階があると思いますが、すぐ批准が済んでということになりますか、それは問題はございますが、先ほど私が考えたのは、補正予算を提出しなければならぬでありましょうと、こう申したわけです。これは、ことしであれば補正予算でなければ措置できないわけです。来年であれば、来年度予算に組むということになるわけでございます。ですから、ことしの場合、どうして一体金を出す方法があるか、これは補正予算……。
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予備費から。
  166. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 予備費から出すということは考えられません。そうすべきでないということは、私は明らかにしております。それは予見しがたいというよりも、相当長い道行きがございますから、そんな安易な考えはございません。それは姿勢を正すために補正を出すという意見を申し上げました。賠特から出す——賠償特別会計から出すという手もありましょう。しかし、これも私は出すとすれば、法律改正が必要だと思います。これは私だけの考えで言えば——政府の統一見解ではございませんが、すなおな考え方からしては、こういうものを予定しておったわけでないから、私はやはり賠特から出すにしても、やっぱり法律の改正をお願いして出すようになると思います。補正予算というのは、私が慎重に言っているのは、補正予算を組むような一体財源があるのか、第二の段階があると思いますので、つい申したわけでありまして、なかなかむずかしい問題でございます。いずれにしても、国会の御審議を必要とする、御審議後に適切な処置を考えなければならぬと思います。
  167. 羽生三七

    ○羽生三七君 その場合、何年間でというようなことはまだきまっていないのですか。
  168. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 現在は十年という考え方でございます。
  169. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはこれでよろしゅうございます。  それから、先ほど木村委員が低開発国援助に関連をしていろいろ質問をされておったのですが、その一環にもなるわけですが、近日中に国府に一億五千万ドルの借款を与えるという——政府部内でおおよそ決定というように聞いておるのですが、これは確定したのですか。
  170. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まだ確定しておりません。これは国民政府側との話でございますが、台湾の経済事情、わが国の輸出振興というような観点から好意的に対処したいという基本的な考えもとに、経済協力の具体的内容を現在まだ検討中でございます。
  171. 羽生三七

    ○羽生三七君 一般的にいって、国府は先進国なのか後進国——低開発国なのか、どっちへ入りますか。
  172. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これはまあ精神的には先進国だと思います。経済的には、非常に国民政府努力をされて、現在よくなっておるというように理解しております。
  173. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど質問にも答弁にもあったように、先進国が低開発国に、国連貿易会議の要望もあり、大体国民所得の一%程度を低開発国に回そうという、そういうことで、しかも、必ずしもそれがまだ一%に及んでないわけですね、日本が。そういう状況で、まだ低開発国に実際援助すべきところがあるのに、いまも御答弁にあったように、むしろ先進国と思われる国府に——妥結してないけれども、きっとやるんでしょう、一億五千万ドル。必ずやると思う、近いうちに、いま答弁の技術上そうおっしゃっておるだけで。それで、一億五千万ドルを国府に与えると、借款を。しかも、非常な低利のもので、三分五厘ですか、構想は。しかも、非常な長期のものだと。それはどうも矛盾しやしませんか、先ほどの低開発国援助の考え方と。いかがですか。
  174. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ国府が先進国でありましても、日本と国府との歴史的なつながり、こういうことを考えて、まあ隣国でもございますし、非常にお世話にもなった国でございます。そういう政治的な立場で私は国民政府の要請にこたえていく、台湾の振興に資するという意味で、友国としての協力をするということは、私はいいことだと思うんです。これはまあ先進国、後進国の問題とはおのずから別な観点で考えていいと。日本も先進国の仲間入りをしたと、こう言ってるんですが、アメリカは日本に対しても、やはりいろいろな好意的なものをやるわけでありますし、そういう意味で、国府に対しては特別な感情を持っても間違いではないと。だから、好意的に検討しておる、やってあげたい、こういうことは間違いもありませんし、あまり議論することじゃないと私は思います。
  175. 羽生三七

    ○羽生三七君 じゃ外交の分野に属することが多いですから、私はこれ以上お聞きしませんが、国府に一億五千万ドル、韓国に、これも身近な国で、多年の懸案だと称して五億ドル、さらに九千万ドル、そうして前には南ベトナムに二百億と、もう片方の陣営にだけこういうふうに出していく——それは理屈は何とでもつきますよ。国府の場合は、内容はどういうことですか。ダム建設とか言われておりますが、内容についてはどういうことですか。
  176. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 内容は、いまお互いで検討中でございますので、まあこれはここで申し上げられるようなところまで固まっておりませんので、ごかんべんいただきたいと思います。これは固まればすぐ御報告申し上げますから、暫時ひとつお願いします。
  177. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで、これは午前中承った通産省所管の対中共向けのプラント輸出の問題、輸銀資金活用の問題で、これも何かそれに関連してきて、これは政治上の問題ですよ、全く。純経済上の問題でなしに、対中共、対国府、この輸銀資金の活用に関連して、いろいろな問題があるように思うけれども、これはまあそういうことで——まあいずれにしても、大体これはもう最終妥結には至らぬが、ほぼ確定的と見ていいのじゃないですか。
  178. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 台湾ですか。
  179. 羽生三七

    ○羽生三七君 ええ台湾です。
  180. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 基本的には一億五千万ドルの信用供与をするということ、大体私はそういうことを考えておりますので、そう理解していただいてけっこうだと思います。
  181. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはね、いずれまた外務委員会等の論議になりますから、そちらへ移して、私はきょうは時間がないし、あとの質問者の妨げになりそうなので、これで私はやめます。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 初めに、ここでぜひ田中大蔵大臣に見てもらいたいものがある。それはわが党の議長、野坂参三と私の名で集めたアンケートだ。われわれは血の出るような税金を取られているが、これが政府によってどのように使われ、どのようにわれわれの生活に役立てられているかについて、案外無関心だ。それではいけない。ここが政治の盲点になっている。そこで、私は今度予算委員会質問するにあたって、とりあえず皆さんの納めた税金をどう使ってほしいか、じかに要求をお聞きして、それを皆さんにかわって大蔵大臣にぶっつけてみたい、こういうことでアンケート用紙を配りまして、いまやっているわけですが、集めたんです。それをぜひ大蔵大臣に見てもらいたいと思うのです。その結果、これは非常に中間報告ですけれども、これは出ておりますから——こういう用紙です。  で、この中身は、第一に「物価を下げるために」「教育内容や施設をよくするために」「健康保険や生活保護費など社会保障をもっとふやすために」「安い賃金で住宅をつくるために」「中小企業や商店へ低い利子でもっと融資をする」「軍艦や飛行機などをつくる軍事費をもっとふやす」「日本も核兵器をもち武装をつよめる」「南ベトナムや韓国、台湾などへの投資、海外援助をふやす」「自衛隊をもっとふやす」「大工場にもっと金を融資して産業をひきあげる」、これはいろいろな要求がもっともっとあるわけですけれども、この十にしぼりまして、そうして、これについて四つマルをつけてもらいたい、こういうことで、この中間集計をやったわけです。  その結果、大体こういうことです。これはまあ数はまだ少ないのですが、目下どんどんやっているのですが、第一が、健康保険、生活保護その他社会保障の増加が、一番多くて八五%、それから「物価を下げるために」、これは七五%、それから低家賃住宅の大量建設、これは七二%、教育内容、施設改善六四%、中小企業零細企業への低利融資の増加、これは二四%、それから軍艦建造、軍事費の増加、これは〇・三%、それから南ベトナム、韓国、台湾などへの海外援助、これは〇・三%、大企業への融資、これは〇・三%、自衛隊をふやすはゼロ、日本の核武装ゼロ、こういう結果が出ている。これはむろん十分だとは言いません、それから急場のことですから。しかし、私たち共産党として努力したかったのは、予算委員会と大衆を直結するという問題ですね。ほんとうに大衆の要求が反映しているのか。なるほど、ここでは高度な経済理論で議論することはだいぶやられている。これも大切だ。非常に重要だ、これは。決してわれわれ過小評価するわけじゃありませんが、大衆の声をそのまま率直に反映するというこの基本的な態度というものを私たちはできるだけやりたい。それで、これは一つの試みでありますけれども予算委員会で使うのだからということで、これを集めてみたわけです。いまのような形で、まあ中間の意思でありますが、これは表明されているのですが、これに対して大蔵大臣、どう考えるか。
  183. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 国民各層の声を十分聞いて、予算に反映していかなければならぬという考えであります。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこで、どうでしょうか。私つくづく感ずるのですが、いま要求として出されたのは、切実な、身近な大衆の経済的要求、生活上の要求なんです。ところが、昭和四十年度の予算は、大づかみに言ってはたしてこのような大衆の要求にふさわしいようなものにこれはなっているかどうか。私はまるでこれはかけ離れているのではないか、そういうふうに大まかに言って言えると思うのです。第一に、人民生活の大きな要求になっている教育費、これがまあ四千七百五十七億ということで、一二%ふえたと言っているが、これなんかはしかし、実際はその中に科学振興費を入れている。これで込みに言っていますけれども、これを抜いて計算すると一〇・八%くらいです。社会保障費、これはまあ五千百六十四億ということになっています。それから住宅対策費は三百六十四億、まあ計算して八千九百三十六億——九千億そこそこです。三兆六千億の膨大な予算の中で、わずかにこれはもう三〇%足らずの、切実な要求に対しましてほんとうに三〇%足らず、二四・八%くらいです。こういうようなかっこうになっているのです。そして、それに対して軍事費や軍人恩給、これはまあ合わせて四千三百六十九億。それから大企業に対する公共投資、これが六千八百八十五億。財政投融資の一兆六千億。この膨大な予算の大部分が、やはり大産業中心にこれは統一されています。こういうことになりますと、大まかに言って、人民の要求はたな上げにされて、そうしてほんとうに大資本本位の政策が進められておる、こういうことが具体的に立証されると思うのです。私はなぜこういうようなアンケートを、ここでこの質問の最初に、これは特に大蔵大臣に聞いていただきたいかというのは、この要求というものが具体的に予算の上にあらわれていないという、こういう事実というものは、これは争うことのできない事実だと思うのです。こういう点について、これはどういうふうに考えられるか、この点をお伺いしておきます。
  185. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) どうも岩間さんはそういう見方で見るからそういう結果になるのでして、そういうことはございません。ものの考え方からやはり変えていただいて、すなおな気持ちで予算を見れば、可能な限り最大の努力をした、こういうふうに、自画自賛をするほどのことはございませんが、いずれにしても乏しい国民の税金の中でどうすれば一体全国民のためになるか、これはもう日夜おうのうしながら考え、結論を得たことでございますから、そういう見方はいけないと思います。大体において、公共投資八千億、九千億が全部大企業のためだという、こういう独断だと思います。それはまあ私は岩間さん非常に好きな人でありますから言いたくありませんけれども、そういうものの考え方は、それはやはり共産党的な見方である、これはもう私はそう言わざるを得ないわけであります。もっとすなおにものを考えていただいて、財政投融資の中の六〇%、七〇%、八〇%、こういうものは国民生活環境の整備ということに使われておるのだ。だからまあこういうふうにですね、十のアンケートをつくって、非常にマルをつけやすいような、こういうことでございますが、しかしこれは、道路をもっとよくしなくていいか、港湾を一体どうするか、鉄道の建設をやりたいと思うか、北海道の開発はどう必要か、奄美大島の開発は必要かどうか、こういうところにいろいろマルがつくわけであります。でありますから、私は、いまの予算が大企業中心の独占資本のものである、こういうような見方は、多少独断に過ぎるのではないか、こう考えます。まあしかし、物価を下げる、教育内容をよくする、いろいろ必要なことでございますので、こういうものに対しては将来とも大いに意を用いてまいりたいと思います。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 よく田中さんそういうことを予算委員会で何回もやってきているんです。私は質問する機会がなかったのだけれども、あなたの持論なんですね。それで、公共投資も結局は国民に返ってくるものだ、だから決して大資本本位でない。そうでしょう。それから開放経済に対するいろいろな援助、こういうものも結局は国民に返ってくるのだ、こういうことを言っておりますよ。しかし、そういう実態が、はたしてあなたの言っておるように運用されておるか、そういうことになっておるか、そこのところは、現実の認識というか、現実の把握が非常に私は違っていると思うのです。もう少し率直にやはりいまの国民生活の中に入っていって実態をつかんでごらんなさい。そういうようなことは、簡単に煙幕を張るようなやり方でごまかされはしないのです。すなおというが、私のほうがもっとすなおです。あなたのほうが、あなたの一つのちゃんと理論体系を持って、その上でものを言っておるので、そんなものでこの問題をごまかすことはできない。  その次に、これは税収の面から見ても、国税、地方税合わせてこれは約五兆になんなんとする、そのうちで国民に環元されるものは非常に少ない。これは地方財政なんかでも、むやみに出ている、環元されていない。どこに行っておるか、これは明白だと思うのですね。そういう点について、もっと科学的にはっきり分析すれば、これは明確だと思うのです。そういう点で、いまのような議論に対しまして、事実をあげる時間というものは非常に少ないわけだけれども、大づかみに言って、いまの問題についてはこれは十分検討し直す必要があることをここで明らかにしておく。このようなやり方で、実際は国民生活が破壊される。何よりも現実がものをいうんです。事実ですから。事実の上に立ってこれは立論する必要がある。そういう意味で、私はまず第一に、公務員のこれは俸給袋をここにたくさん持っておる。これは公務員の労働者たちから国会に提出されているんです。そういうものを見ますというと、政府の給与に対するいままでの説明、しかしそれは統計の上の説明であって、具体的な実際の姿を見るというと、ずいぶんこれは違っておると思う。  たとえばここに、これは地方裁判所に働いている人だが、二十九才、大学卒、勤続八年、こういう人で実質的に現金収入がどのくらいあるか、二万四百三十三円です。あるいはまた二十才の女子で、これは二年五カ月つとめておりますが、高校卒ですが、これが一万二千円、これは何回も、この切実な、こういう俸給袋を出してのこういう要求に私たちは触れてきた。何年も触れてきた。やられている。こういう実態が、ほんとうに国会での論議とかけ離れているところに、一つの大きな問題がある。こういう点については、実態をほんとうに把握せられておりますか、どうですか。
  187. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 月給が安いということについては、私もいろいろな問題に対して検討いたしております。おりますが、まあ特にあなたがあげられたその初任給とか学校出たての人の給与というものは、いままで戦後ずっと見まして、近年急速に収入が上がっておるということは数字の上で言い得るわけであります。まあ物価が上がっておるということを言われますが、物価が上がった率よりも収入のほうがよけいになっておるということも、数字の上では明らかでございます。しかし、そういう状態で甘んずべきものではない、もっと給与を二倍に三倍にしなければならない、こういうために政府考えておるわけであります。あなたはただその月給を上げろという面ばかり考えますが、働くなというほうもやっちゃ、これは上がらないんで、月給を上げるにはやはり国際競争力をつけなければならない。そこで、国際競争力がついて、だんだんと力が出てくる。何も大蔵大臣が札を印刷すれば幾らでも月給は上がるものだという感じではだめなんです。そうではないのです。やはり国際的に競争しなければならないのだ。相手がある仕事であります。そういう点、十分にやはり事実を承知して、そうして日本の産業自体がもっと大きくなっていく、こうなれば、自然に給与も国際水準、先進国水準に上げ得るわけであります。でありますから、物価が上がるということを前提にものを考えてはいけません。結局、物価を下げるように、物価を下げて実質的な給与が上がるように、こういうことであります。少なくとも、中小企業零細企業に働いておった人たちが大企業と同じように平準化が急速に行なわれたというだけでも、私は賃金政策や労働政策としては非常に大きな進歩をしていると思うわけであります。でありますから、分配の面だけで見られて、そういう面からではなく、もっと日本自体の経済力、国力というものが大きくなって、国民全体がその恩恵にあずかれる。いまでも私は、自分の選挙区などを回りますと、農村に対してもっと施策をしなくてはいかぬ。百六十七円四十八銭なんということを言っていますけれども、農村はその半分も食っておらぬ、こういう切実な声もあります。ですから、国民全体をレベルアップするという考え方に立って施策を進めておるわけであります。そういうことをするには、やはり御審議願っているような予算をつくらなければいかぬと、こういうことでありますから、どうぞそういう意味で、予算の内容を十分ひとつ御審議を賜わりたいと思います。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常に詳細な答弁で、感謝するわけでありますが、時間の関係もありますから、要点にしぼります。  いま、物価を上げることを前提に考えてはいけないと——だれも考えている人はないのだけれども考えないと生活できないのが実態でしょう。それから、所得を上げるのだ——所得倍増計画が、御承知のように五年前、これは池田内閣によってやられた。そのときには、問題があったわけでしょう。月給倍増論と、それから国民総所得を二倍にする。月給倍増じゃ困るので、これは所得倍増。そうして、その結果はどうです。物価が上がった。なるほど、国民の所得は少しは上がった。しかし、物価のほうがはるかにその二倍も上がっているというかっこうで、追いつけないという現状じゃないですか。そうして、国民ははっきり自分の生活体験を通して、所得倍増計画というのは、これは全くのごまかしだと。これは国家の総所得をいっているんです。その中には、大産業、大資本が何倍かこの間に利潤蓄積をやった。しかし、われわれの生活はどうなったか。はっきり知っているでしょう。だから、そういうようなごまかしをいままた持ってきて、同じことをやろうとしている。そうして、対外経済競争力をつけるため、そのためにはがまんしてもらいたい——耐乏生活ですよ。こんなことでは、これは了承することはできない。まあこれは時間の関係からここで長議論をやっておれませんが、それじゃその次聞きますが、全日自労の職安で働いている諸君の賃金ですが、これはどうですか。最高地域——東京、大阪、それから中間地域で、これは十万前後の中間都市、それから最低地帯といわれている、これは町村ですね、こういうもので非常に段階があると思うんですが、この賃金の大体の標準は押えておりますか、これはどうですか。——それじゃついでに、北九州市の場合は何級地になって一日一人どれくらいになるか、これを調べておいてください。これは生活保護の場合聞きますから、これを調べておいてください。
  189. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 調べます。——いま調べているのですが、ちょっとまだ時間がかかりますから……。
  190. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 岩間君、次の質問を……。
  191. 岩間正男

    ○岩間正男君 国の予算単価はわかるでしょう、全日自労の。全日自労の人たちの要求が、実はここに持ってこないのだけれども、こんなに来ているのです。こういう中で、たとえば、十万前後ですから、まあ宮城県の第二都市の石巻市なんかの例ですが、人口十万、ここで大体四百二十円というのですね。そうして、これじゃとてもやれないから、八百円のこれは要求が出ているのです。これは切実な要求だと思うのですね。たとえば、こんなにたくさん——これは私あてに来たものですけれども、この中で子供のこういうものを読み上げてみると、「私の母は失対で働いていますが、一日四百二拾円で月二十二、三日しか働かせてくれません、私と妹は学級費や給食代もはらわれないときがあります。母の賃金をもっと上げて毎日働かせて下さい。もっと勉強して高校へも進学したいのですが、それもできません、先生、貧しい人達のために、もっと明るい生活ができるようにして下さい、お願いします」、こういう切実な要求と、それから全部これは八百円——少なくとも八百円の要求は、あの地方の十万前後の中都市の場合ですね、必要だと思うのです。稼働日数は二十二、三日でしょう。しかも、毎日の賃金の中から、これは二十円近くの失業保険費、それから健康保険費を取られるのです。そういう実態を見ますというと、これは全く切実な要求だと思うのです。これに対して、どういうお考えですか。
  192. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 四十年度の予算によりますと、失業対策費の単価でございますが、就労日数を二十二日として、賃金日額は、類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金を考慮して五十九円八十銭引き上げまして、平均五百六十一円七十銭ということであります。うち三円は冬季加算額でございます。それから夏季と年末特別対策分を三日間増加しまして二十八、五日分といたしておると、こういうことでございます。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ平均五百六十一円というととですね。そうすると、実際地方の町村なんかの場合にはもっともっとこれは低い。しかも稼働日数は御承知のように一カ月まるまる働けない、こういうことですから、全く生活が窮迫しているという実態は、これは蔵相も認められると思いますが、どうですか。そうして、いまのような五十円ぐらいの引き上げでは、とってもこれは物価の値上げには全然問題にならないと思うのですが、これはどうですか。
  194. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 失業対策事業費の単価の問題に対しては、いろいろ問題がございます。あなたのようなお考えもございます。私も必ずしも高いものだとは思いません。ただ、率直に申し上げますと、一面においては、人が足らぬ足らぬ、どうにもならないという一面があるにもかかわらず、失業対策の人員もなかなか減らないと、こういうことでございます。でまあ、全国平均に見ますと、なかなかやはり社会保障の一環としてやられておると、こういう考え方で、どうも仕事の量、こういうものに対してもまだ問題があるという面もございます。ですから、私は、いまの失業対策というものをもっと別な面で検討して、うんと働く、うんと働くかわりにもっと高い賃金を得られるというような制度が一体ないのかと、こういうことで、私自身もこういう問題に対してはもっと適切なものにならないかというふうにも考えております。それから、私も失業対策の——まあ私の選挙区などの人たちに対してもいろいろ調べておりますが、農村の人たち、こういう人たちは失業対策というものに就労をして出ております。出ておりますし、まあ賃金の単価を上げるというよりも、もっと請負的なものを、年齢にもよりますが、そういうこともできないか、そうして実質収入というものを現実に上げられないのかというような声もあるようでございます。失業というものに対しては、どうしてもそれ以外に働けないという面に対しては十分配慮しなければならぬと思いますが、働ける人たち、他に転職して十分やれる人たちというものも、やはりこの制度があるためにここへもう居ついてしまってというような状態にならないように、この制度の実態というものに対してももっと検討していく必要があると思います。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは一昨年の失対事業の法案の中で何回も論議したのだから、ここで繰り返さないけれども、実際いまの高度経済成長政策の中で生み出された、一つ政府が当然責任をとるべき問題なんです。これが非常に不十分で、そうしてかけ声だけはやるのだけれども、実際に即応していない、そうして低所得層が自分の生活をささえることができない、そういう中で、どうしてもこの問題を解決するために全日自労の諸君は団結して戦っているのです。そういう実態についてはっきりもっと目を向けて、そうしてほんとうにその要求のもとに、これは変えていくという、要求をほんとうに実現していくという方向をとらなければ、基本的にはこの問題は解決しないわけでしょう。そういうところが抜けてくるわけですね。  その次、私はお聞きしますが、生活保護費の例、北九州市の場合わかりますか。
  196. 澄田智

    政府委員(澄田智君) ただいま北九州市という御質問ですが、これはあとで調べまして、資料として提出させていただきたいと思います。
  197. 岩間正男

    ○岩間正男君 先に言っておいたのだが、どうも十分でないね。これはどのくらいになりますかね。何級地になりますか、あとで言ってください。  とにかく、北九州市の場合、直接国会へ二十人くらいの人たちが見えて、なまの切実な声を聞いたのですが、こういうことですよ。保護基準が非常に低い、それで多くの人が、ほとんどの人が借金でやっている。ところが、高利貸しが貸すわけですけれども、担保がない。何を担保にしているのかというと、受給カードと印鑑を担保にしている。それで、たとえば七人家族で、失業保険を一万円、それから生保一万五千円もらって、計二万五千円の収入のある生保の適用者が、四年前に二万円金を借りた。ところが、これが四年間に、高利貸しにかかったものですから、何と四十二万円。それで、法律相談所に行けということで、結局地方裁判所に行ったわけですが、地方裁判所の裁定では、一十五万円にこれを裁定した。そうして、当人は月五千円ずつ払うと言っているのを、一万円ずつ払えという、そういう裁定を下した。このような裁定に服しない、こういう人たちには、警察まで動員して、暴力的にこれを取り上げるという事態が起こっているわけです。私は、こういう中で、これは一体こういう問題をほんとうにつかんでいるのかどうか。第一に高利貸しですが、受給日になると、受給カードを渡し印鑑を渡す、それで金をもらってくる。そうするとちゃんと高利貸しはもう暴力団を出して、あんちゃんたちを張らして、それを全部引ったくるそうです。こういうかっこうで、全くにっちもさっちもいかない。働いても全部高利貸しのために奉仕をしているのだという。そういう深刻な事態が起こっているわけですね。これは金利の制限法に引っかからないのですか。高利貸しでも、四年間に二万円が四十二万円になるというのは、これはどうなんですか。これを裁判所が三十五万円に裁定したというのだが、こういうやり方はどうなんですか。あわせて、この生活保護の場合についてどういうふうな考えを持つか、見解を伺いたい。
  198. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 生活保護の問題につきましては、一二%引き上げて、東京都標準五人世帯で二万六千百四十七円であったものが一万八千四十八円、こういうふうに改定をいたしております。  それから、いまの高利貸しの問題は、そのケースよくわかりませんから申し上げられないと思いますが、二万円のものが四十二万円になるというのは、ちょっとどうもわからないわけであります。日歩三十銭が最高ですから……。
  199. 岩間正男

    ○岩間正男君 日歩三十銭をこえておりますから……。
  200. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日歩三十銭というと、どうなりますかね。——これはしかし、そう長いものに対しては日歩三十銭というような金利は適用しておらぬと思います。
  201. 岩間正男

    ○岩間正男君 それから、受給カードと、あれはどうですか、印鑑を担保にするというのは。
  202. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ですから、裁判所が三十何万円に裁定したというものに対しては、ケースがよくわかりませんから、的確なお答えができません。受給カードと印鑑を取ってしまうということは、これは暴力の範囲でございます。これは、こういうことが許されるということはおかしいことでありまして、こういうものは別な方面で取り締まるということだと思います。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかし、手入れだって、これは全然こういうところへ回らぬわけでしょう。金を借りる方法がなければ、背に腹はかえられなということで、借りてしまうのじゃないですか。そうして、あとは全く首を絞められるような事態におちいる。こういう実態をつかんでいるのですか。こういう実態をつかんで、ここにほんとうに政治の手を伸ばしていくという、そういうところまで行っているかどうか。田中さんのような人情大臣が、こういう問題をよそにして、そうしてここでやっぱり議論していても、ほんとうのこれは政治にならぬと思うのですが、どうですか。
  204. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 乏しい中でもって働いておる人に対して、高利貸しが若いあんちゃんと、こういうことでございましたが、最も労働しなければならない人たちがそういう状態でおるということは、やはり政治の貧困だと思います。こういうものに対しては、徹底的にやはり取り締まるという必要があると思います。
  205. 岩間正男

    ○岩間正男君 大蔵省調べますか。この事件具体的に調べてやっぱり……。
  206. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) あなたからひとつ……。
  207. 岩間正男

    ○岩間正男君 制限法には罰則がありましたな。
  208. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御提出があれば、検討いたします。
  209. 岩間正男

    ○岩間正男君 政府は、物価値上がりの分より国民の収入がふえているということを説明していますね。これはどういう根拠によっておりますか。どうもこの根拠がはっきりわからない。どういうことですか、説明してください。
  210. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) こまかい数字の問題は事務当局から申し上げますが、いずれにしても物価上昇率よりも貸金上昇率のほうが非常に多いということは数字で明らかでございます。また国民所得が非常にふえておるということも数字で明らかでございますが、ただ、あなたがきっと言われるのは、収入のない人は一体どうなるのか、こういうことだと思います。しかしこれは、私どもの申し上げておるのは、いまそういう人たちに対しては生活保護基準というような引き上げで対処いたしておるわけであります。
  211. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは何です。統計の根拠を示してください。
  212. 澄田智

    政府委員(澄田智君) 手元の国民所得統計で申し上げますと、三十五年の分配国民所得の一人当たりの国民所得をとりまして、この名目の額で申し上げますと、これが十二万七千八百三十円、これが三十九年の実績見込みで、名目額で二十万九千九百二十五円でございます。これを実質、すなわち物価でもって割り引いた実質額で申し上げますと、いまの三十五年の十二万七千七十九円というものが十七万九千五百五十九円ということになっておりますので、これは物価を考慮いたしまして出た数字でございます。したがいまして、物価の分をどう見るかというのは、これはこの場合国民所得統計でありますので、企画庁の国民所得部の計算で消費者物価の騰貴の割合をもって割り引いて計算したものだと思います。それがこのように、五年間に十二万七千七十九円が十七万九千五百五十九円というふうに上がっております。これは物価以上のこの分の所得が上がったもの、こういうことだと思います。
  213. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは政府統計によると、いつでもそういう説明でやっているわけですけれども、しかし、こういう中にも重役、社長、部課長級の賃金が含まれている、それから三十人以下の小企業の賃金というのは除かれておる、こういうかっこうで賃金を出しておりますね。そういう形になっておりますから、この根拠というのは非常にまずいと思う。三十人以下の小企業は一体全体の何%か、その賃金の実態はどうか、ここのところに目を置かぬと、これは非常におかしいことになる。さらに生活の実態が、先ほどからはきっり示されたように、何よりもこれは示している。実質賃金は下がっておる。そういう形で、当然これは労働者が大幅賃上げをやっておる。そうして、最低賃金制の確立を、本物のやつですね、これを要求して戦っているというのは、これは生活のそういう必然的な要求からきているのだという事態をほんとうに蔵相つかんでおるのかどうか、これは単なる数字のマジックで説明できないんです。この統計そのものが、非常にいろいろなからくりがあります。国会のここで論議していても、実際は合わない。この大きなズレというやつ、ここのところがいま政治の盲点になっています。この点どう考えるか。
  214. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 統計数字によってものを申し上げる以外にないわけでございますが、しかし、現実の世の中には統計数字と違う面も存在するということは、私は否定いたしません。そういう面につきましては、可能な限り政府も生活保護基準の引き上げその他いろいろな施策をもってこれに対処しておるわけであります。私はしかし、国民的立場で見ますと、物価の値上がりよりも確かに賃金の上がり方が多いということは、もうお互いの生活を見ても、また外を歩いてみても、生活内容が確かに物価の値上がりよりも多いということは、これは否定できないことだと思います。
  215. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間がないようだから、向こうで呼ばれているようですから、一ぺんに総括して聞きますから、総括して答えてください。  私は、政府資料を見ても、賃金の比率は一貫して下がっており、逆に利潤部分が上がっておる、これは明らかに逆行だと思います。  それから、政府の独占価格の問題ですが、本来なら下がるところだが、賃金が上がるので下がらないと、経企庁なんか説明しているわけですね。これは全くのごまかしではないかと思うのです。独占価格をつり上げて、また、つり上げないまでも、生産性向上に見合う当然の価格調整をこれはサボっておる。  それから、政府は、中小企業製品や対個人サービス業、農林企業の生産物の物価が上がっておるのは労働者の賃金が上がっておるからだと言っておるが、それが原因ではない。独占価格をつり上げる、ことに公共料金という名前の独占価格をつり上げる、それがみなはね返ってくるから物価値上がりがきているではないか。これははっきりしていると思うのです。  それから、それと関連して、水道料金の問題ですが、物価値上がりの大きな原因として、公共料金の値上がり、これが非常に大宗をなしていることは事実だ。先ほど言ったように、これは独占物価です。公共という名前で国家独占資本主義的なやり方で新しい収奪の形がとられておる。田中蔵相は、公共料金の安定のために起債、融資等の調達で特別の措置を講ずると答弁しておるが、これはどうなっておるか。私はお聞きしたいのだが、起債をふやせば、はたして公営企業の赤字は解消するのか。かえって元利償還がふえるばかりではないか。たとえば東京都の一般水道会計を見ると、赤字と言われる部分の大部分は、拡張費と元利償還費から成っています。これを料金を値上げしてまかなおうとしているが、現実にこれでいいのか。東京都の現状から言えば、拡張費はまだまだ拡大されるだろうし、したがって元利償還はますますふえるばかりで、さらにもう料金値上げが必至になる。イタチごっこです。これでは、物価安定どころか、まさに意識的な物価値上げ政策、こういうことになる。シャウプ勧告以来、公益事業の独立採算制をとっているが、これはアメリカ式な住民の収奪政策の継続ではないか。田中蔵相は、公益事業は応益主義、受益者負担が原則だと言っているが、あくまでこれを貫く気持ちかどうか。次には、工業用水道の場合などは、一般用と違うのではないか。東京都の工業用水道には、国庫補助に加えて、一般会計からの補助や起債を許して、料金は据え置きにしている、こういうこと。この額は幾らになるのか。こういうやり方では非常にこれはおかしいじゃないか。一般用水道の場合とまるで違うじゃないか。一般の場合は、応益主義、受益者負担ということを言っているけれども工業用の場合は全然この原則は破れている。政府の言う独立採算制、応益主義、受益者負担の原則とは、このように独占にはそのワクを適用せず、国庫補助や起債でこれを擁護し、そのしわは一般住民に寄せている、こういうかっこうじゃないか。ですから、結局まあ一般用の水道は、これは大体トン当たり十五円、工業用は四円五十銭ということ。新料金では、東京都の場合は二十一円四十五銭になるわけです。ところが、工業用は四円五十銭であくまでも据え置き。これは東京都議会で一応否決されたわけでありますけれども、これについてどういうような考えと処置をとるのか。これは単に水道だけじゃない。電力、ガスなどの場合もみんな同じです。電力料金は、一般の場合は十二円から十一二、四円、工業用は四円から五円ぐらい、こういうかっこうですが、この問題について、工業用を値上げし、一般用の水道料金の値上げはやめる、こういうはっきりした政策を国民の要求に従ってやる必要がある。  最後に聞きたいのは、国鉄、電力、鉄鋼、石油などの重点産業に入っている外国資本です。そのうちアメリカの資本が幾ら入っているか。その融資条件はどうなっているか。アメリカ資本との合弁会社は全体の何%あるのか。それから技術導入中アメリカからの技術導入の比率は幾らか。一九六〇年以後のアメリカとの貿易について、入超は幾らになっているか。その結果、アメリカ資本に対する利子配当、パテント料は幾ら支払っているか。そうして、このように日本経済はアメリカの支配のもとにある。物価値上がりの一つの隠された大きな原因になっている。アメリカの資本が背後から支配している。国民の目には見えない。それははっきり私は、この物価値上がりの一つの大きな要因として指摘しなければならないという問題がここにあるのです。国鉄運賃の値上がりのときに、融資条件がつけられた。国鉄の合理化、それから適正な運賃、そうして四年前のあの物価値上がり、現在の値上がりの一切の突破口がここで、一四%でしたか、あのとき開かれた。ところが、当委員会でこれが問題になった際に、七年ほど前に十河総裁は、私の在職中は運賃値上げをしませんと私に答弁をした。私は、この問題がありますから、あの四年前の値上げのときに、予算委員会でこれを突きつけたのです。ところが、国鉄総裁は、いやこれについては深いわけがございます。私は上げたくないけれども、岩間さんどうぞ了承してくださいと言ったので、満場爆笑したことがある。われわれは反対したけれども、多数決で通った。通るとすぐパン・アメリカンでアメリカに飛んだ。八千万ドルのこれは世銀借款をちゃんと成立させて帰ってきました。新東海道線につぎ込んだ。考えてみるというと、はっきり世銀の融資条件です。この中には、国鉄の合理化、そして適正な運賃というかっこうでの一四%の値上げ、これが一切の値上がりの突破口を切り開いたという歴史的なはっきり背景を持っているのです。  私は、こういうことを考えますというと、アメリカのこれは支配、しかも重点産業に対して、これは合弁会社のかっこう、それから向こうからの外資導入の形、技術導入の形、こういう形でこれが入るときに、日本の産業自体がこれは全く支配され、そうしてそれによって運賃というものが、あるいは生産性の向上に伴うところの当然の値下げをすべきなのに、これをさせない。さらに運賃を上げるとか、こういう事態が起こっているのです。だから、われわれのパン、それから町を歩いているお嬢さんたちの電髪の中にだって、はっきりこれはこのようなアメリカの支配が入っているのだという事実を私は明らかにしたいと思ったが、非常に時間がなくて残念ですけれども、以上たくさんのことを申し上げましたけれども、これについて大蔵大臣の御答弁を願いたい。
  216. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 数字的な問題に対しては事務当局からお答え申し上げます。政治的な面に対して私から二、三お答えを申し上げます。  物価を安定させなければならぬこと、これは当然のことでございまして、政府も大いに努力をいたしておるところでございます。公共料金の据え置きという問題に対しては、これはいままで据え置きの措置をとって物価安定に寄与さしてきたわけでありますが、やはりものには限度がありまして、長いこと一律に据え置くと、ただいま申し上げた、ある時期には一律に値上げを必要とする、こういうような議論にもなるのでありまして、物価に及ぼす影響を十分考慮しなければならないけれども、やはり公共企業といえども企業体系でありますので、これが運賃値上げ、是正という問題に対しては当然考えていくべきものであるということは、これはもうやむを得ないことだと思います。  それから、公益企業、公営企業というものに対して、岩間さんは、もっと国民の税金でやれ、こういうお考えでございますが、これは応益負担の原則というものはやはり貫いていくべきだと思います。これは、汽車に乗ったり電車に乗ったりする人たちが払うことはつらいから、国民全般が払う税金でまかなえ、こういうものにはおのずから限度がございます。でありますから、上水道事業についても、工業用水道事業についても、鉄道につきましても、その持つ使命は確かに公共的な使命が多くあるわけでございますが、やむを得ざる状態においては値上げもまたやむを得ない、これはもう当然な議論だと思います。そういう姿勢をとっておりますから、物価は五百倍にも六百倍にもなっておるが、大根は七百倍にもなっているという数字が出ておりますが、しかし、あくまでも鉄道運賃は二百九十倍に押えている、こういうことは、公益企業であるからであります。でありますので、私企業と同じように幾らでも値を上げていいのだということはございませんが、その最終的な結論が、押えれば必ず国民の税金でまかなわなければいけないという結論になりますので、応益負担という原則は貫いていくべきだと思います。  それから、水道事業等に対して一体財政的にどうしたかということでありますが、これは二十五年の起債の償還期限を三十年に延長するということを決定いたしました。  それから、工業用水道が安いのに、上水道はなぜ高いかということでありますが、工業用水道は、企業体が工業生産のために大量に使うということで、一般の上水道と違って、たんぼの中に家ができても山の上に家ができても水道から引っぱっていくというような問題はないわけであります。そういう意味で、施設費が非常に少ないという意味で、工業用水のほうがコスト的には安いということになるわけでございます。国が一部補助をしているというような問題はございます。まあ非常に小さいものになりますが、これは工業用水道等をどんどんとつくらせるように一つの奨励的な意味で補助をしているということでございます。  それから、アメリカから金を借りたから物価が上がるんだ、これは全く逆でございます。アメリカから金を借りて設備の近代化をやり、国際競争力をつけてきたからこそ、この程度で済んでいるので、借りなかったらたいへんなことでございます。これは、一体金を借りられなかった昭和二十三、四年には一体どうだったか、国会議員の姿は一体どうだったか、考えればすぐわかります。間違いのないことであります。こういうものに対して全く逆に言われることは、これはやはり、そういうあまりひどいことを言われると、これ一つだけでも岩間さん、あなたのためにも惜しいことだと思います。これはそんなことはありません。これは、アメリカが国際信用がなかったときでさえ金を貸してくれたというやはり行為に対しては、その評価を十分正しくすべきだと思います。技術援助とか、またアメリカからどの程度借りてどの程度払っているというような問題は、国際金融局長からお話をいたします。  なお、アメリカから金を借りたために日本企業がアメリカの統制を受ける——そんな人間じゃございません、それはもう全く自由濶達な日本人でございますから、そういう心配はごうまつもないことを明らかにしておきたいと思います。
  217. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 他に御発言はございませんか。——以上をもちまして、大蔵省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  次回は明後二十九日午前十時に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十六分散会      —————・—————