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1965-03-26 第48回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)    午前十時二十五分開会  昭和四十年三月二十五日予算委員長において、  左のとおり本分科担当委員を指名した。                 植竹 春彦君                 鹿島 俊雄君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 竹中 恒夫君                 野本 品吉君                 加瀬  完君                 小林  武君                 鈴木  壽君                 鈴木 一弘君                 林   塩君     —————————————    委員異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      小林  武君     小柳  勇君      加瀬  完君     鈴木  強君     —————————————  出席者は左のとおり。    主 査          鈴木 一弘君    副主査          久保 勘一君    委 員                 植竹 春彦君                 草葉 隆圓君                 野本 品吉君                 竹中 恒夫君                 加瀬  完君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 林   塩君    国務大臣        労 働 大 臣  石田 博英君        自 治 大 臣  吉武 恵市君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働大臣官房会        計課長      岡部 實夫君        労働大臣官房労        働統計調査部長  大宮 五郎君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省労働基準        局労災補償部長  石黒 拓爾君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業安定        局失業対策部長  住  栄作君        労働省職業訓練        局長       松永 正男君        自治大臣官房長  松島 五郎君        自治大臣官房参        事官       宮澤  弘君        自治大臣官房会        計課長      芦田 一良君        自治省行政局長  佐久間 彊君        自治省財政局長  柴田  護君        消防庁次長    川合  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————   〔年長者野本品吉主査席に着く〕
  2. 野本品吉

    野本品吉君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって、私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらないで、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野本品吉

    野本品吉君 御異議ないと認めます。  それでは、主査鈴木一弘君、副主査久保勘一君を指名いたします。(拍手)     —————————————   〔鈴木一弘主査席に着く〕
  4. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) ただいま、皆さまの御推挙によりまして主査に指名されましたが、何ぶんふなれでございますけれども、皆さまの御協力をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  5. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 速記を起こして。  それでは、審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。  本分科会は、昭和四十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算のうち、文部省厚生省労働省及び自治省所管を審査することになっております。議事を進める都合上、主査といたしましては、本日の午前自治省、午後労働省、明二十七日厚生省、二十九日午前文部省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 昭和四十年度総予算中、自治所管を議題といたします。  まず、政府説明を求めます。吉武自治大臣。   〔主査退席、副主査着席
  8. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 自治省関係昭和四十年度歳入歳出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十年度の自治省所管一般会計予算は、歳入二千九百万円、歳出七千三百三億四千三百万円であります。歳出予算では、前年度の当初予算額六千二百八十九億二千四百万円と比較し、一千十四億一千九百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額六千四百四十六億九千一百万円と比較し、八百五十六億五千二百万円の増額となっております。  この歳出予算額を組織に大別いたしますと、自治本省七千二百九十億七千四百万円、消防庁十二億六千九百万円となっております。以下この歳出予算額のうちおもな事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるために必要な経費であります。  その総額は、七千一百六十二億一千一百万円でありまして、前年度当初予算額六千二百十四億八百万円と比較し、九百四十八億三百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額六千三百七十三億一千万円と比較し、七百八十九億一百万円の増額となっております。  この経費は、昭和四十年度における所得税法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の二九・五に相当する額の合算額に、昭和三十八年度における地方交付税でまだ交付していない額並びに昭和三十九年度及び昭和四十年度において借り入れる借り入れ金にかかる昭和四十年度分の利子の支払いに充てるため必要な額を加算した額を計上いたしたものでありまして、すべて交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れられるものであります。  次に、参議院議員通常選挙の執行に要する経費であります。その総額は、四十二億四千万円であります。  この経費は、公職選挙法第三十二条の規定に基づいて、昭和四十年六月一日に任期満了となる参議院議員通常選挙に要するものであります。  次に、選挙啓発関係経費であります。  まず常時啓発に要する経費でありますが、その総額は、五億五千万円でありまして、前年度と同額になっております。  この経費は、選挙を明るくし政治をよくする運動を強力に推進し、かつ、国民の政治意識向上をはかるために必要な経費であります。  次に、参議院議員通常選挙のいわゆる臨時啓発費でありますが、その総額は、三億三千九百万円であります。  この経費は、参議院議員通常選挙が明るくかつ適正に行なわれるように、選挙人に対し、参議院議員選挙重要性その他必要な事項を周知するため必要な経費であります。  次に、奄美群島振興事業関係経費であります。  まず奄美群島振興事業費につきましては、十六億一千四百万円を計上いたしております。  この経費は、昭和三十九年度に策定された奄美群島振興五カ年計画に基づき、産業振興及び公共土木施設整備等事業を行なうために必要な経費であります。  次に、奄美群島振興信用基金出資金につきましては、五千万円を計上いたしております。  この経費は、奄美群島における産業振興に必要な金融円滑化をはかるため、奄美群島振興信用基金に対する追加出資に必要な経費であります。これにより、同基金に対する昭和四十年度末における政府出資総額は、四億七千万円となります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金につきましては、十四億円を計上いたしております。  この経費は、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に交付するため必要な経費でありますが、前年度に比し、五千万円を増額しております。  次に、公共土木施設及び農地等の小災害地方債元利補給金につきましては、十八億七千七百万円を計上いたしております。  この経費は、昭和三十三年以降昭和三十九年までに発生した公共土木施設農地等の小災害にかかる地方債に対する昭和四十年度分の元利償還金相当額の全部または一部を当該地方公共団体に交付するため必要な経費でありますが、前年度の当初予算額に比し、一億三百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額に比し、一億七千八百万円の増額となっております。  次に、固定資産税特例債元利補給金につきましては、一億七千八百万円を計上いたしております。  この経費は、固定資産税制限税率引き下げに伴う減収補てんのため発行されました地方債に対する昭和四十年度分の元利償還金相当額関係市町村に交付するため必要な経費であります。  次に、市町村民税臨時減税補てん債元利補給金につきましては、十九億二百万円を計上いたしております。  この経費は、昭和三十九年度に引き続き市町村民税課税方式統一等を進めることとし、これに伴う市町村減収を補てんするための地方債のうち国が元利補てんを行なうものについて、昭和四十年度分の元利償還金相当額関係市町村に交付するため必要な経費でありますが、前年度に比し、十六億二百万円の増額となっております。  次に、新産業都市等建設事業債調整分利子補給金につきましては、八千一百万円を計上いたしております。  この経費は、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備促進をはかるため、一定事業地方債充当率引き上げにかかる特別調整ワク四十億円について、国が関係道県利子補給を行なうに必要な経費であります。  以上のほか、住居表示制度整備に必要な経費として六千五百万円、選挙制度調査研究等に必要な経費として六百万円、地方公営企業再建整備促進に必要な経費として六百万円、地方財政再建促進特別措置に必要な経費として三千二百万円等を計上しております。  なお、公営企業金融公庫に対する政府出資金増額するための経費一億円が、別に大蔵省所管産業投資特別会計に計上されております。  以上が自治省関係一般会計歳出予算概要であります。  次に、消防庁予算概要を御説明申し上げます。  まず、消防施設等整備費補助に必要な経費につきましては、九億五千八百万円を計上いたしております。  この経費は、消防ポンプ自動車化学車、はしご車、救急車防火水槽等消防施設費及び都道府県の消防学校設置費に対して補助するため必要な経費であり、前年度の当初予算額に比し、二億四千二百万円の増額とっており、前年度の補正後の予算額に比し、二億四千四百万円の増額となっております。  次に、退職消防団員報償に必要な経費につきましては、六千六百万円を計上いたしております。  この経費は、非常勤消防団員が多年勤続して退職した場合に、その功労に報いるため、国が報償を行なうに必要な経費であります。  次に、消防吏員及び消防団員に授与する賞じゅつ金につきましては、一千万円を計上いたしております。  この経費は、消防吏員及び消防団員が職務を遂行したことにより災害を受け、そのために死亡し、また不具廃疾となった場合において功労があったときに、賞じゅつ金を授与するため必要な経費であります。  次に、消防団員等公務災害補償等共済基金に対する補助につきましては、三千七百万円を計上いたしております。  この経費は、基金が行なっている非常勤消防団員等に対する公務災害補償及び非常勤消防団員に対する退職報償金制度実施に必要な事務費補助するため必要な経費であり、前年度に比し、三百万円の増額となっております。  次に、科学消防等研究に必要な経費につきましては、三千九百万円を計上いたしております。  この経費は、科学消防技術開発向上をはかるため、消防研究所の行なう経常研究及び特別研究に必要な経費であり、前年度の当初予算額に比し、一千万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額に比し、一千一百万円の増額となっております。  以上のほか、消防学校の寄宿舎を整備するため、別に九千六百万円が建設省所管庁営繕費に計上されております。  次に、特別会計予算概要を御説明申し上げます。  自治省関係特別会計といたしましては、大蔵省及び自治省所管交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、本会計は、歳入七千八百十八億四千四百万円、歳出七千八百十二億三千七百万円となっております。  歳入は、一般会計から地方交付税交付金等財源として受け入れる収入地方道路税石油ガス税及び特別とん税の租税収入並びに前年度の決算上の剰余金見込み額昭和四十年度において受け入れる収入借り入れ金その他であります。  歳出は、地方交付税交付金地方道路譲与税譲与金石油ガス譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金並びに前年度における借り入れ金元利償還金及び一時借り入れ金利子合計額国債整理基金特別会計へ繰り入れるための経費その他であります。  以上、昭和四十年度の自治省関係一般会計予算及び特別会計予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。     —————————————
  9. 久保勘一

    ○副主査久保勘一君) 委員異動について御報告いたします。  本日、小林武君が委員を辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。     —————————————
  10. 久保勘一

    ○副主査久保勘一君) これより質疑に入ります。質疑の通告がございますので、順次発言を許します。加瀬君。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 若干繰り返しに、いままでの質問の上から、なる点がございますが、明年度財政計画では、特にどういう点に一番考慮が払われておりますか。
  12. 柴田護

    政府委員柴田護君) 昭和四十年度の財源状況が従来に比べまして非常に伸びが悪いという実情でございますので、財政計画を策定するにあたりましては、まず既存財源確保、それからなお不足する分につきましては 極力財源充実をはかりましたことであります。それによりまして、義務的経費に必要な財源確保いたしますとともに、この計画を策定するにあたりましては、特にそういった財政事情のもとにありながら、なおかつ若干の配慮を払いました。その一つは、給与関係経費等につきまして、先般行ないました給与実態調査の結果に基づきまして、所要の積算基礎是正を行ないました。それから特別会計との関係正常化と申しますか——という観点から、繰り出し金等につきまして可及的にこれを充実いたしました。なお、従来ワク外に置かれておりました地方債等にかかる公債費につきましても、これを算入いたしまして規模の是正を行なっております。  最後に、いわゆる単独事業につきまして、政府におきましていろいろ策定いたしております長期計画との関連を明確にいたしますとともに、これも昨年行ないました地方団体実態調査等に基づきまして、可及的に単独事業計画化をはかりました。大体、歳入確保充実以外におきましては、以上申し上げましたような点に重点を置いたつもりでございます。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 この単独事業についての配慮、いま御説明がございましたが、もう一度もう少し詳しく御説明くださいませんか。
  14. 柴田護

    政府委員柴田護君) 単独事業積算は、加瀬先生御承知のとおり、従来から、過去の実績をある程度基礎にいたしまして、一定伸長率をかけまして積算をしていくという方法によっておったのでございますが、これではあまりはっきりいたしませんので、単独事業の持つ性格からいいまして、また財政計画の持つ性格から申しましても適当ではございませんので、何とかこれを計画化して、地方行政計画的に運営される方向に持っていきたいということを、従来から私ども念願いたしておったのでございますが、ちょうど昨年、地方団体につきまして超過負担実態を調べましたときに、各地方団体についての事業計画等を調べたわけでございます。それらに基づきまして、単独事業につきまして可及的に計画化をはかろうという措置をとったわけでございまして、財政計画には備考欄に明記いたしておりますけれども、道路治水治山、港湾、環境衛生の四項目につきましては、それぞれ長期計画がございますが、この長期計画の中に含まれております単独事業の四十年度分を積算計上いたしました。なお、住宅、厚生、産業経済費教育関係、これらにつきましては、昨年行ないました地方計画しております額、これの四十年度の実施見込み額の約八割見当の額を掲げました。あとは、残りは従来の積算方法による、こういう形にしたわけでございます。したがって、単独事業として指定される中身を細分し、これを計画的に組み直したという形になっております。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 緊縮均衡予算といったような性格が、このたびの財政計画内容にございますか。
  16. 柴田護

    政府委員柴田護君) 全体といたしましては、従来に対する増加額伸長率というものを見てまいりますれば、給与費関係におきましては非常に率はふえておりますけれども、その他の経費につきましては大体横ばいもしくは下回っている、特に投資的経費につきましては、直轄事業、いわゆる補助事業、それに単独事業、すべてを通じまして、伸び率は昨年に比べて非常に鈍化をいたしている、こういうふうなことに相なっております。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 歳入が非常に減っているわけですね。したがいまして、これに均衡をとるためには、歳出構成でも相当違った線を打ち出さなければ歳入歳出均衡という形はとれないわけですね。そういう意味で、一体歳出構成は、歳入伸び率の減に伴ってバランスをとるような性格が打ち出されているでしょうか。
  18. 柴田護

    政府委員柴田護君) お話のように、昭和三十九年度の一般財源増加額は三千六百七十七億、昭和四十年度の計画の対前年度の一般財源増加額は三千四百二十四億、その中で交付税譲与税並びに地方税、三つのものを考えますと、三十九年度の対前年度増加額は三千二百六十億、これに対して四十年度は二千九百億、お話のように一般財源は減っております。一方また逆に消費的経費につきましては、給与改訂の平年度化等によりまして、逆に消費的経費のものがふえております。約三百億見当ふえておるわけでございますので、差し引きいたしますと、相当苦しくなってきておるわけでございます。これを、ある部分経費の縮減という形をとり、ある部分地方債増額という形でもってきておるという形に相なっております。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 たとえば、三十七年度の伸び率は一六・六%増、三十八年度の決算では一四・八%、鈍化しておりますね。住民税個人分増加率が大幅に低下をしておる、あるいはたばこ消費税等低下をしておると自治省指摘をしておるわけでございます。そうであるならば、先ほどお話がございましたが、公共事業、特に政府長期計画に基づく公共事業については相当手直しをしていかなければ、この歳入減に見合う歳出計画ということにはならないと思うわけですが、   〔副主査退席主査着席〕 一体今度の財政計画で、あるいはこれからの地方予算でもそうでございますが、この高度成長政策影響としての産業基盤強化方針手直しというものは考えられておりますか。また、考えなくて一体バランスがとれますか。
  20. 柴田護

    政府委員柴田護君) なかなかむずかしい御質問でございますが、まあ要するに経済伸長が非常に激しかった、これに対して公共施設が追いつかなかった、それを追いつかす、それがある意味におきましてはひずみ是正という形にもなろうかと思うのでございます。そういう意味から申し上げますならば、公共事業等につきましては、むしろそういうおくれた面を早く追いつかす、そして、何と申しますか、公共施設というものの整備状況経済伸長との間の格差をなくするという方向をとっていかなければならぬ。しかし、財源はないものですから、重点的にやはりそういうものを考えていくという方向をとらざるを得ないと思うのでございます。この四十年度の地方財政計画では、国の方針とも見合わせまして、そういう経費重点化というものを、これは実際問題としては運営の問題になるわけでございますけれども、そういう面から、過剰投資が行なわれることを避けながら、しかもおくれた公共施設の必要な部分重点的にこれを追いつかすということに配慮をいたしているつもりでございます。したがって、総額におきましては、若干いずれも対前年度に比べましては逆に増加率も下回っているわけでございます。運営の面におきましては、これは重点的に使っていくということになろうかと思うのでございます。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 確かに、数字の上では、比率の上では、投資的経費公共事業なんかは前年度に比べて減っていますよね。しかし、いままでの公共事業等のための地方積み立て金の取りくずしを相当いたしておりますね。それが逆に、給与なんかの問題がふくらんでまいりますと、財源がなくてどうにもならないという一つ原因にもなっておるわけでございまして、こういう積み立て金の取りくずしをしなければ事業が進まないということは、そもそも地方事業としてはこれは無理があるということですね。で、その影響は、国の長期計画高度成長政策のあおりがもとだということになりますと、ここいらで、健全財政という立場からは、国がまるまる必要な仕事はやればいいことで、それに付随する地方負担というものは極力押えていくという方向をとらなければ、歳入が少なくて歳出はあまり変わらないということでは、健全財政均衝財政ということにはならないと思うわけです。その原因を国がつくっておる。これをいつまでも遮断しないでおきましては、解決がつかないように思われるわけですがどうでしょうこの点は。
  22. 柴田護

    政府委員柴田護君) その辺の問題は、まあいろいろ考え方があるかと思いますが、おことばを返すようなことになって恐縮でございますが、私どもは実は、過去において蓄積があるというのは、結局非常に困った事態に立ち至った場合にこれを使うために蓄積しておるわけでございますので、こういうような苦しい事態には、その蓄積分をやはり吐き出して住民の福祉に還元していくということになっていくのであり、またそのための積み立て金でなかろうかと思うのでございます。いろいろ経済成長のひずみが地方に寄っていることは事実でございますけれども、しかしまた、その原因が国だけにあるということになりますと、ここには議論があるところでございまして、地方側といたしましてもあるいはそれを積極的に推進してきたという面もないことはない。それはまあ国も地方も相ともに、どうしてひずみを是正していくかということに力を尽くすべきものじゃなかろうか。そのために必要な仕事があって、しかも過去において蓄積があれば、それはまあまさにこういうときにその蓄積分を放出して必要な目的に使っていくということじゃなかろうというように思うのでございます。まあ地方側にとってはいろいろの問題があることは、御指摘のとおりでございますが、しかしながら、それはそれといたしまして、必要なことは、国としても是正し、地方においても是正をしながら、現在の必要な施策というものを強力に推進していく、こういうようなたてまえをとって財政運営をしていくべきものじゃなかろうかというように考えておる次第でございます。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 この政府関係計画のために地方があおりを食って、しなければならない公共事業等負担というもが——単に積み立て金の取りくずしだけではないはずですね。むしろ、おっしゃるとおり、その金は、地方が自由に使う有事の場合の貯蓄でございますから、使うことをいなむ筋合いのものではございません。しかし、それならば、じかに住民の福祉につながる単独事業などの経費にそういったようなものが使えるかということになりますと、単独事業には使えない。使えないどころではなくて、その単独事業すらも削らなければ公共事業に補てんができないという現状を、一体許しておっていいのかどうか。たとえば、今度も、この均衝をとるように圧縮したと言っても、産業基盤整備のための道路というようなものは一三%、港湾などは一九%も伸びておりますね。これに比べて、単独事業というものの伸び率は非常に低い。こういう財政計画では、結局まだ、国のあおりで、地方はその単独事業をさいて、あるいは積み立て金をつぶしてその補てんをするという傾向は、是正をされないわけですね。こういう点が非常に多いと思う。ここらは、はっきりと地方の利益というものを、——何も国の利益と地方の利益は別々じゃございませんが、国の経済政策というもののあおりを住民が自分の身銭を切って補てんをする、こういうかっこうは、地方自治の本体からいっても私は正しい姿勢ではないと思うのですけれども、いかがでしょう。
  24. 柴田護

    政府委員柴田護君) 地方自治という立場、地方行政という立場から考えますれば、また仕事をこま切れにせずに総合的観点から地方団体がその趣旨に基づいて仕事をしていくという立場からいいますれば、できるだけ補助事業が少なくて、そして単独事業充実という方向に向かうべきものであろうという御意見、これはまあ私どももそういうつもりで地方財政の流通につとめてきたつもりでございますが、ただしかし、公共事業と申しましても、結局裨益するところは地方住民でございます。したがって、公共事業単独事業というものは、単独に存在するものではございませんで、相互補完的立場に立っている部面も相当多いことは、これまた御承知のとおりでございます。したがって、災害投資につきましても、よくございますように、公共事業が多い場合には、単独事業部分がその部分に関連する限りにおきましては、単独が少なくなっていく、逆に公共事業が非常に薄い場合には、その部分におきましては単独事業が非常にふえていっている、こういう関係が見られるわけでございます。その点から申し上げますならば、公共事業単独事業、ともに総計いたしまして、金額的に伸びが悪いということは、これは全体の影響でいたし方ございませんが、その中におきましても、公共事業単独事業というものは相互補完関係にある程度立って、そうして進めていかれるべきものではないか。地方側といたしましては、公共事業受け入れにあたりましても、自分の持つ施設の整備計画というものとにらみ合わせて、その採択に誤りのないように、こういうような形で在来でも主張してまいっておりますし、今後におきましても、そのような方針で主張してまいるつもりでございます。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 そういう公共事業もあるということですね。あるいはそういう関係単独事業公共事業バランスをとる、関係づけられるということもあり得る。しかし、大型の公共事業で投資をされるものは、そういうことではなくて、むしろ全体の地域ではなくて一部分の地域、全体の住民ではなくて一部分の人というものに関係が非常に強い。特に経済産業等の基盤強化といったような公共事業になりますと、これは住民一般の関係というのは非常に稀薄になる、しかしながら、そちらに非常に投資が多いということが問題点であろうと思うわけです。これは自治省自身も前から御指摘になっているところでございますので、私がつけ加える必要はないと思うわけであります。それではあらためて、一体、こういう産業基盤強化のような公共投資ばかりしておっては、単独事業ができないのではないかと思われる点で伺いたいのは、新産都市の財源配分の問題です。大体二百五十億ぐらいの、年平均すると額になりますか、新産都市に対しましては。
  26. 柴田護

    政府委員柴田護君) 新産都市自体といたしましては、経費総ワクは四兆三千億でございます。で、具体的にそれが単年度幾らになりますかという点につきましては、実はまだ正確なところは、補助事業が配分になってみませんと、どの地区にどの程度の事業がいって、そして、どの程度の地方負担が出てくるかということは正確にはわかりません。ただ、私どものところで大ざっぱに概算をいたしておりますところでは、地方負担といたしましては、四十年度でこの関係経費が県で四百五・六十億、市町村でやはり四百億程度というものが、この新産都市建設関係の所要の地方団体負担になってくるだろう、これを地方債一般財源とでまかなう、こういうことになるわけでございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 それで一体、これに対し財政計画は幾らと見たのですか。大蔵省に対する最初の要求額、それから財政計画で示された額、これはどうなっていますか。
  28. 柴田護

    政府委員柴田護君) 先ほど申しましたように、財政計画の中では、この新産関係経費を特に取り立てて区分けはいたしておりません。私がいま申し上げました数字は、三十九年度の実績等から推算をした一応の概算の見込み額でございますが、具体的には、それぞれこの公共事業費の中の国庫補助事業の中に溶け込んでおるわけでございます。したがって、その国庫補助事業が具体的にその新産業都市関係団体に配分されてまいりますれば、それに対する地方負担が固まっていく、その部分については、財政計画におきましては、地方負担額としてそれぞれ組まれておる、こういうことになるわけでございます。問題は、単独事業がどうなるかということが実は中心であり、これが今後どういうぐあいな関係でどういうふうな関連で行なわれていくようになっていくのかというのが、これからの問題でございますけれども、いまのところでは、公共事業すらも内容が明確になっておりませんので、残念ながら単独事業というものとの関係が明白でございません。私どもといたしましては、いま関係団体に照会いたしておりまして、どういうことにどういう計画を立て、どういうぐあいに国庫補助事業が配分されて、それとの関係単独事業がどういうふうになるかという計画を集めておる最中であります。これが集まりますと、それらのところの計画が明確になると考えております。しかし、一般的に申しますと、去年に比べて伸びが少のうございますけれども、しかし、この財政計画の中に含まれておる単独事業の範囲内で所要の措置ができるんじゃなかろうかというふうに現在は考えております。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 この単独事業の分ですか、何か百六十億程度を要求して四十億におさまったという数字は。
  30. 柴田護

    政府委員柴田護君) 私どもが要求いたしましたときは、単独事業公共事業も突っ込みにいたしまして、そして地方負担と申しますか、地方負担の概算を考え、これに対する総合的な財政措置というものを考えて要求したのでございます。その際には、単独事業公共事業もぶち込みの計算でございました。それが交渉いたしております間に、いろいろ議論がありまして、御承知のとおりの経緯で、結局、公共事業だけについて財政援助措置を考えるということに落ちついたわけでございます。その分につきまして、残念ながら、私どもの考えが通らなかったわけでございます。しかし、実際の運用面につきましては、私どもの考えが通らなかったからといってほうっておくわけにはまいりません。特別の財政制度はつくりませんでしたが、既存の財政制度の活用によって、必要なる措置はそれぞれ講じていく、こういうことを考えておるわけでございます。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 次に、給与費の問題で伺いますが……。
  32. 鈴木壽

    鈴木壽君 主査
  33. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 関連ですか。
  34. 鈴木壽

    鈴木壽君 ええ。あとで私もその新産都市に対する財政題間についてお聞きしたいと思っておりましたが、いまの加瀬委員に対するお答えもちょっと確かめておきたいことがございますので、申し上げますが、新産都市の昭和四十年度における、何といいますか、事業量と申しますか、これはあなた方、一応三十九年度実績等からして二千三百三十九億円くらいかかるだろうと、こういうような推計をいたしておりますね。そこで、それが加瀬委員質問の中にあります地方財政計画の中にどう取り入れられておるかということを、もっと私ははっきりしていただきたいと思うのですが、財政計画によりますと、四十年度の投資的経費として一兆三千百十三億という数字が出ておるのでありますが、昨年からいたしまして一四%ですかの増になる、しかし、これの伸び率は、前年度三十九年度の財政計画で見られたような伸び率と比べてみた場合に、この数字からだけしますと、いわゆる新産としてのなすべき仕事事業量、そういうものを見ておらぬじゃないだろうかという気がするのです。また一方、もし見ておるとすれば、どうも他地方における投資的事業というものは、これは非常な圧縮された形において見ておるのじゃないか、こういうふうな感じがするのですが、そこら辺、もう少しはっきりさしていただきたいと思います。  なお、これは新産の場合、あとで私お尋ねをしたいと思っておりましたが、四兆三千億という全体の事業量が基本計画で示されておるようでありますけれども、具体的に、じゃ四十年度はどの程度の仕事をするのか、そのことについては、まだ固まっておらないようなところもあるようでございますから、その点どういうふうに財政計画の中に見ておられるのか、関連をしてひとつお答えをいただきたいと思います。
  35. 柴田護

    政府委員柴田護君) お話しの点はごもっともでございます。私どもも、実はそこを非常に心配をいたしておるわけでございます。二千三百三十九億円という四十年度の事業総額を推計いたしておりますのは、これも御指摘のように、三十九年度の実績から推計をしたものにすぎませんので、実際上、補助事業がどうなり、単独事業がどうなるかということは、各関係地方団体の四十年度の事業計画というものが明確になってまいりませんと、そこのところ確定しないのであります。しかしながら、この推計の額というものはこのとおりが各地方団体計画でありますれば、公共事業費なり単独事業費の中に吸収されているということになるわけでございまして、したがって、あるいは仰せのように、公共事業費の重点的な指向と申しますか、という形から、新産地区の事業に、公共事業等について重点が置かれておるという結論が出てまいるかもしれませんが、何ぶんにも、公共事業等がどうなるかということが明確になってまいりませんので、それによって単独事業がどうなるかということも、必ずしも明瞭を欠いておるというのが現状でございます。もっとはっきり申し上げますならば、四兆三千億の事業計画というものの中身がもっと確定をして、各年度ごとの実施計画というものができてまいらなければ、明確にならないのでございますが、現在、実施計画をどうするかという問題につきましては、関係各省の間において検討されておりまして、結論が出ておりません。したがって、はなはだお答えになっていないようなことを申し上げて恐縮でございますけれども、全体としては、少なくとも国庫予算の中において、これに見合う地方財政計画の中において事業量は吸収されている、含まれておる。しかし、それが具体的にどうなっておるかということは残念ながら、現状におきましては明確にできないというような状態でございます。
  36. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、いま具体的に四十年度でする事業量というようなものが固まっておらないという段階、これについてはいろいろ言いたいこともありますが、それは別としても、それとあなた方が推定された四十年度の二千三百三十九億円というもの、この中には、その地区における普通のベースにおいての仕事ももちろん入っておる。いわゆる新産という特別のそれだけでなしに、普通のベースでやる。新産の指定なくとも、何かやはり仕事を、いろいろ道路なり何かやらなければいけないということ、そういうことも含まり、さらに上積みされた形において新産として特にやらなければならない仕事、それをあわせたものというふうに考えていいと思うのですが、その点はいかがですか。
  37. 柴田護

    政府委員柴田護君) そのとおりでございます。
  38. 鈴木壽

    鈴木壽君 関連ですからあれですが、それで、あなた方の推定ですね、どうも各地の全体の事業量、それから中期計画に合わしたような形で四十五年度あたりまでのそれを立てておりますね。これは最終的な決定ということにはなっておらないかもしれませんが、それぞれ生産目標にしても、それから生産目標をあげるためのいろいろな根拠にすべき施設なり仕事なりというものを勘案をして、四十五年あたりまでのところは、一応各地区とも持っているようですね。それから今度は逆に割り出して、それじゃ四十年度はどうか、四十一年、二年、三年はどうかというふうにやってみますと、これはかりに四十五年度までの一応計画ができているとしても、平均的に、五で割れば一年分が出てくるというものじゃないだろうと思いますが、少なくとも四十年度では相当に仕事をしなければならないのじゃないだろうかというふうに、私は各地のそういうものから見るのですが、その観点からいたしますと、あなた方の見ている二千三百三十九億円というのは、どうも少ないのではないか。もしまた逆にこれでやっていくものとすれば、いま申したような、そういう全体の四兆三千億という仕事の進むペース、あるいは四十五年度までの進むペースなんというものは、非常にのろいペースになって、おそらく計画した、あるいは目標としたところの生産額というものはあがってこないのじゃないかというような気もするのですが、その点、もう一度、四十年度の事業量のあなた方推定にあたって、どのような——そういうふうないま私が申し上げたような配慮をしてこういうことになったのか、単なる、一応三十九年度の実績に、ある率をかけたのか、あるいは、どういう事業に対してはどういうふうに伸びると見てこういうふうな数字になったのか、そこら辺、もしありましたら、もう少し詳しくお聞きしたいと思うのです。
  39. 柴田護

    政府委員柴田護君) 大体、新産業都市建設計画として総額四兆三千億円の計画というのは、三十九年度から五十年まででやるという形になっておりますが、四十五年ぐらいに最高の山を置く、そうして山型に仕事を進めていくという計画経済企画庁の手元にございます。この計画もきわめて大ざっぱな計画でございますけれども、そこで前期三十九年度から四十五年度までの間にこの程度の仕事をするのだ、そういうことから、地方団体がいたします事業総量というものを、前期の六カ年計画の間に二兆三千億円ぐらいというふうに、まず計算が出てくるわけでございます。これは経済企画庁の計算と合っておりまして、これと三十九年度の間を結んで、これを漸進的にそのベースに近づけるということで計算いたしますと、三十九年度の実績を基礎にして計算する限り、二千三百三十九億円という事業量が出てくる、こういうことであります。実際にこの仕事をやってまいりますと、二千三百三十九億円でおさまるのかおさまらないのかということが、私どもも実は心配するわけであります。というのは、先ほど来申し上げておりますように、全体の事業の規模というものがありましても、実施計画というものが明確になっておらない。したがって、その実施計画の中で、単に公共事業だけではございませんで、これに関連する単独事業がどういう形におい出てくるかということがはっきりいたしておりません。そこで、私どもが四十年度の計画を早く集めようといたしておりますのは、その関係の誤差を見たい。それからまた、将来に起こってくるであろう誤差もあわせて見たい、こういう気持ちがありまして、いろいろいま資料を集めているわけでございます。ただ、積算基礎は、申し上げましたような形でもって一応の概算が出ておる。しかし、これがぴしゃりそのまま新産業都市建設事業全体の額でびた一文も狂わないということじゃございませんで、関連事業の出方によりましては、いろいろそこに問題が出てくるだろうと思うのでございます。事業をやります場合には、御承知のように、一つ計画がありましても、思わない出費というものも当然出てまいるわけでございますし、また、公共事業あるいは単独事業等、いずれにいたしましても、そのつき方によりましては、新たな単独事業を誘発することもあるわけでございますので、どういう形でこれが実際に進んでまいるかということは、半ば心配し、半ば期待を持っておるというような状態でおるわけでございます。一応の計画の推算をいたしました前提は、いま申し上げましたようなことを頭に置いて計算したものでございます。
  40. 鈴木壽

    鈴木壽君 四十五年度までの事業量なりというものについての一応、計画というものは、これははっきり企画庁あたりで固めておりますか。そして、これがこれでいくのだというふうなところまでいっておりますか。年度ごとのは別ですよ、四十五年度までの。最終の五十年度までの四兆三千億は、ああいうふうに発表されておりますね。四十五年度あたりまでの相当な速度と申しますか、あるいは事業量、相当多くやっていかなければいけない、そのことについてのやつを、ただ単に各地区の、その地区だけの考えでやっておるそれなのか、あるいは、それを企画庁で全体としてまとめて、そして、いわゆる長期計画の中における四十五年度分までと、こういうふうな形できめておるのかどうかということをひとつ、その点だけ……。
  41. 柴田護

    政府委員柴田護君) 全体の事業計画というのは、正式の基本計画ではございませんけれども、裏資料として四兆三千億というものがきまっておる。それから、そのうち、三十九年度から四十五年度までに二兆三千億という事業をやる、これはきまっておるわけでございます。ただ、個々の年度ごとのものはきまっていない、こういうのが実情でございます。私どもは、その個々の年度ごとにつきましても、ある程度の事業分量ぐらいのものはつかんでおりませんと、いろいろな措置をいたします場合にずれて困ってしまうだろう、だから、そういうことを何かやる必要があるだろうということを常々申しておるわけでございます。
  42. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあわかりましたが、四十五年度までのやつをはっきりしておかないと、四十年度でどうするか、四十一年度でどうするかということまでまだきまらぬというのですから、それはそれでやむを得ないと思いますが、四十五年度までのものをきめておかないと、この計画の中には工業生産の目標というものが出ていますね、五十年度ではこうなんだと、四十五年度ではこうなんだと、こうあるのですね。すると、四十五年度の生産目標を達成するためには、四十五年度までどういうような仕事をどうして、どういう工場が来てどういうふうな生産の状況になるかということがはっきりしないと、この目標というものが出てこないわけですね。そのためには、したがって、それまでの建設、現在の工場のほかにそれまでの新しいいろいろなものが出てくるでしょうし、企業が来なければいけないでしょうし、そういうものがきまらないと、したがって事業量というものははっきりしないというと、工業生産の四十五年度の目標というのは、これはそれこそ絵にかいたもちになってしまうわけですね。ですから、そこら辺を各地区の、何といいますか、さっきお尋ねしましたように、それぞれかってにめいめいおれのところはこれくらいにしたいのだというようなことだけではうまくないのではないかと思って、この計画の中にはっきり企画庁がそういうものをきめておるのかどうかということをお尋ねをしたので、大体お話ですと、四十五年度までの事業量も四兆三千億という中で一つ計画を持っているのだ、はっきりしているのだ、そういうことでございますね。
  43. 柴田護

    政府委員柴田護君) さようでございます。
  44. 鈴木壽

    鈴木壽君 それでは私、関連ですからこれで……。
  45. 加瀬完

    加瀬完君 給与関係費の問題ですが、給与改定が年度途中で行なわれるのが通例になっておるわけですね。そういたしますと、例年、財政計画では、一応人事院の勧告に伴う地方公務員の給与の改定というようなものまでは含ませて組んではないわけでしょう。そこで、途中でその財源をどうするかということで問題が繰り返されるわけでございますが、一体、四十年度でも、物価の上昇がとまらない限りは、給与の改定の勧告があると見なければならないわけになろうかと思うわけですが、そうなってまいりますと、一体、その財源はどう対処するのかという問題は、本年度と明年度でも変わりなくまた起こってくるわけですね。こういう問題をどうお考えですか。
  46. 柴田護

    政府委員柴田護君) 私どもは、もうこれも先生御承知のとおり、在来から、年度の途中で勧告を受けますと、地方財政の運営上いろいろ困ることがありますので、でき得べくんば、そういうことを避けてほしいということを在来から申しておるわけであります。今日におきましても、その態度は変えておりません。しかし、まあ勧告があるかないかというのは、過去の例を見ますれば、毎年ある。しかし、四十年度はどうなるかということは、いまの段階では何とも言えない。どう方法を立てるかということは、いろいろ立て方はございましょうけれども、私どもはそれを頭に置いて財政計画を組むわけにもいきませんし、また、このようなおしかりを受けるような財政計画財源保持をする余地は全然ないのでございます。現在の地方財政ではそういうことがかりに起こりますれば、起こったときに考える以外にないのでございます。現状においては、さようなことを頭に置いて計画をつくる、あるいは財政運営地方団体にしいるということはむずかしいと考えておるわけであります。ただ、まあしかし、財政運営の場合に極力冗費を節約していけということは、これは常々指導もしておりますし、また、ことしの国家予算の組み方等から考えますれば、そういった国と同じ基調で財政運営をするという立場から言いますれば、そういう意味合いの極力冗費を節し、経費の効率をあげるような指導はしてまいるつもりでございますが、財政計画を組みます場合に、あらかじめそういった財源保持をいたします余裕は、今日の地方財政にはないと考えております。
  47. 加瀬完

    加瀬完君 ことばじりをつかまえるようで恐縮ですが、一体、給与改定というものが到来した場合、費用の節減、局長のおっしゃる冗費というものが、給与費を生み出すほどたくさん地方予算の中にはまだまだ含まれているのだという御認定ですか。
  48. 柴田護

    政府委員柴田護君) 金額から言いますれば問題になりません。なりませんけれども、冗費がないとは言えない。やはり冗費はあると言わざるを得ないのでありまして、それは極力節約して効率化してくれというのが、財政運営の指導の立場から当然だろう、しかし、それによって給与改定の財源が生み出されるということは、とても考えておりません。
  49. 加瀬完

    加瀬完君 これはおたくの財政課長が、ある雑誌の中で、給与財源の不足分を捻出するためには、公共事業の返上、あるいは単独事業の打ち切りということがやむを得なくなってくるであろうという点を指摘しておるわけですがね。私はこのとおりだと思うのですよ。大臣はいかがでしょうか。
  50. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 四十年度における給与改定というものをどうするかという問題は、実は私どもとしては非常に憂慮しておるところでございます。どういうような勧告になるか、まだ予想はつきませんけれども、おそらく勧告があるであろう。そうすると、その勧告が、また昨年のような中途で行なわれるとするならば、その財源措置をどうするかという、また同じような苦しみを受けるのじゃないかという感じをいたしております。そうかといって、あらかじめどれくらいアップになるということを当初から見込んで計上することもできませんし、この問題については、国についても同様な問題でございまして、しばしばわれわれ関係閣僚との間でも相談をいたしましたけれども、どうもあらかじめ組むというわけにはいかぬということで、国の予算にも組まれていないのでございます。したがいまして、地方財政計画におきましては、あらかじめ組むということはいたさないのでありますが、しかし、いま財政局長から言いましたように、それではそういう事態が起こらないかということは、まあ一応予想されないことでもありませんので、先般の知事会議の際にも私が特に申しまして、甘く考えてはいけない。従来、先ほど来御指摘もございましたように、どちらかというと、自然増収が多かったために吸収ができたわけですね。ところが、昨年になりましてから、吸収ができなくなって騒いだようなわけでありますから、大体は地方団体もそれくらいはわかっていらっしゃるとは思いますけれども、特に私はこれを強調しまして、甘く考えてはいけませんよと、従来は自然増収でまかなえたから、つい安易な気持ちになられるかもしれませんが、今度はそうはいかない。したがって、予算を組む上においても、よほどひとつ控え目に、固く予算を組んでください。収入の見積もりも甘くしないで、固くまあやっていきなさい。それから経費その他の効率的使用を考えて、節約に節約をまあするように、余裕というか、あらかじめ御用意を願いたいということを強く要求したわけであります。しかし、財政局長が言いましたように、それで財源ができるかというと、できませんし、いま財政課長がこう言ったというようなこと、私、存じませんけれども、まあ去年は御承知のように、一部公共事業の繰り延べなんかをいたしまして処置いたしたこともございまするので、また四十年度もそういうことになるかもしれませんよという意味で言ったと思うのでありますけれども、私どもとしては、まあそういうことはできるだけ避けたいという気持ちでございます。  それじゃ、そのときになってどういうふうにするかということは、ちょっといま、私どもいまからここでどうするということは考えられないところでございまするけれども、御承知のように、人事院勧告というのは今日の段階におきましては、これを政府としては尊重せぜるを得ないし、また尊重すべきものであるという考えを持っておりまするので、その事態になりましてまた苦労はいたすでございましょうが、何とかひとつ考えていきたいと、かように存じております。
  51. 加瀬完

    加瀬完君 結局ですね、大臣がただいま御説明のように、三十八年度ごろまでは、自然増収の幅が大きかったので、伸び率が大きかったので、何とかやりくりがついた。しかし、三十九年度はやりくりがつかなかった。それで公共事業単独事業の打ち切りという形までもとらなければならなかった。その度合いは四十年度のほうが強い、こう見ていいと思うのですよ。たとえば地方税にいたしましても、交付税にいたしましても、伸び率が非常に低くなっておるわけですから、それで他の予算項目の支出というのは単価が高くなっておるわけでございますから、ますます財源という点にしぼれば、四十年度のほうが苦しさが倍加されておると考えなければならないと思うのです。それならば、去年でも困ったんだから何らか手を打ってかからなければ、本年度の二の舞いを来年度も繰り返すということになろうかと思うわけでございますが、この点ですね、このままに放置しておけば、おそらく国家公務員に比べてこの給与そのものを押えてかかると、こういう方法をとるか、あるいは事業費を繰り延べするとか、あるいは切り捨てするとかという方法をとるか、いずれかの方法をとらなければならなくなると思う。この点、財政局長どうお考えになりますか。財政計画の上に確かにあらわすわけにまいりませんけれども、一応財政計画が変更されるという見込みが顕著なんですから、対第だけは考えておかなけれりゃならない問題だと思いますが、どういう対策をお考えですか。
  52. 柴田護

    政府委員柴田護君) 私は、この財政計画をごらんになって、もういままでいろいろおしかりを受けたわけでございますけれども、私は、今日のこの財政事情で対策を講じられるような余地があれば、地方財政としてはけっこうでございますけれども、そういうような甘いものじゃない、とてもきびしいものだというように実は思うのでございまして、対策を立てるにも立てようがないと私は考えております。
  53. 加瀬完

    加瀬完君 よくわかりました。それでは、この給与経費というものははるかに増大しているというお考えですか。これは大臣に伺います。このごろ、あるいは給与費が膨張した膨張したと申しますけれども、ここ三、四年に比べて、給与経費がはるかに増大したという御認識ですか。
  54. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) これは給与実態調査もいたしておりますが、私は非常に増大をしておると思います。かたがた、先般、本会議でございましたか、地方行政委員会でも、先生方から御指摘になりましたように、いわゆる財政需要額の面からの比率は、給与費は横ばいの形になっていると思いますけれども、それは先ほど来申しましたように、決算においていわゆる自然増収が多く出てまいりまするために、構成比としては、あるいは横ばいだったかもしれませんけれども、だんだん給与実態伸びていっております。大体公務員を一〇〇にいたしますと、六大都市はたしか一三四くらいに、五年前でしたか、三十三年と比較してでございますが、そのときも六大都市は相当伸びておりましたが、伸び率は確かに国家公務員より伸びております。それから市の給与の場合は、公務員を一〇〇といたしまして、たしか一〇八くらいになっておるかと思いますが、これもいわゆる三十三年に比較しますると伸びております。町村ももちろん伸びております。町村はいままで低かったのですから、これが伸びることはまあ当然と申しまするか、でありまするけれども、都市においては相当伸びつつあるという感じはいたします。  それからもう一つは、これは一つは、その仕事がだんだんと住民福祉に関係する仕事がふえてまいりまするので、勢い市町村の事務がふえてくるからではございまするけれども、人員にいたしましても、まあふえてきておるわけでございます。そこで、地方行政委員会等でも実は問題になりましたように、プラスアルファの問題も、まあ従来のいろんないきさつはあったかもしれませんが、国が一〇〇なら一〇〇%で考えれば、まあ地方もそれ以上の上回るというようなことは、余裕があるときはかまいませんけれども、余裕のないときは、やはり考慮の余地があるんじゃないか。それから、人件費の中の内容的には教員の比率が相当、たしか四五%ぐらいまでは教員でございましょう。これも私はそう節約をするといっても、学級減らすわけにまいりませんから、これはある程度はやむを得ぬだろうし、また警察のいわゆる人数が約一割ぐらいだったと思いますが、これもちょっとこれ以上減らすわけにもいきません。一般の職員については、私はまだもうちょっと仕事を合理化し、節約する余地があるんじゃないかという感じが実はいたします。まあ、仕事がだんだんふえることですから、そう簡単にはいかないと思いますけれども、何としてもこの人件費というものが、三兆六千百二十一億のうち約一兆何ぼでしたか、三千億くらいになりますか、三千億近くを占めて、しかもこれが私は人事院勧告というのは、先ほど申しましたように、私どもとしては、そうだからといって、尊重しないという態度はとるつもりもございませんので、尊重せざるを得ないし、するならするで、人はできるだけ節約し、またその給与の支給方法については、やはりこういう財政の窮屈なときには、健全な方向にお考えを願えないものかどうかということを、知事会議等では指示しておるようなわけでございます。
  55. 加瀬完

    加瀬完君 個々を比べれば給与が上がってるわけですから、非常に上がってるように見えるわけですね。いま大臣も御指摘の、給与ということになると、一番幅を食うのは学校の教職員ということになろうと思いますね。そこで、きのうも私は財政局長に伺ったわけでございますが、公教育費の一般行政費に占める割合、それからその推移というものの統計を文部省が出しておりまして、それによりますと、三十年は二一・九でございます。三十二年は二二・三であります。三十五年は二一・四、三十六年は二一・五、三十七年は二一・〇と、必ずしも比率で見れば、行政費の中に占める公教育費の割合というものは大きくなっておらないわけですね。それからですね、私立学校も入れての公私立学校の支出項目別比率という統計を出しておりますので、これを見ますと、消費的支出のうちで昭和十年を押えますと、消費的経費が七七・九、その中で給与の占める割合が五七・七、それからその他の消費的支出が二二・二。これが三十五年になりますとね、給与の占める割合が五四・五、その他の支出が二二・九、三十六年は給与が五三・八、その他の支出が二〇・一、三十七年は給与が五四・二、その他の消費的支出が二〇・一と、戦前に比べても、それからここ数年の傾向を見ましても、変動がないわけですね。去年は上がったんだとおっしゃられるかもしれませんが、去年の統計はございませんので申し上げるわけにはまいりませんが、あまり変動がない、構成の比率の上では。そうなってまいりますとね、それでやりくりがつかないということは、給与が高いとか、給与が大幅に出るということより前に、あまり構成の比率が変わっておらないのに、これをまかなえないというのは、これを裏づける財源が枯れてきているんだと、財源の問願のほうが、むしろ重視さるべきことではないかと思うわけでございますが、この点はいかがですか。
  56. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) そういう比率をおとりになると、私はあるいはそういうことかと思いますけれども、それは先ほど来申し上げましたように、一般の行政事務というものが多くなってきておりますから、一般行政費の経費が非常にかさんできている中で人件費の比をおとりになると、そういうふうに横ばいのような状況になるかもしれませんけれども、それは年を追うに従って、住民の福祉につながる仕事というのは、急角度にいまふえつつありますから、それで、それに同じように人件費がついていくということでは、一体あってはならないので、住民の福祉というものは幾らでもこれは余裕があればあるほどふえるべきことだと私は思うわけでございます。その点のとり方が、ちょっと私必ずしも肯定できないというところでございます。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 これは政府の中の文部省の統計でございますから、これは肯定をしていただかなければならないわけで、私の統計じゃございません。そこで、結局給与の中で一番幅をとっている教職員の給与というものが横ばいであまり変動がない。しかも、変動がないということは、給与が上がっているのに、ほかの行政費がふえたので横ばいのバランスが生まれたのだとおっしゃるならば、そういう行政水準を引き上げなければならなかったことを、一体是認するのか是認しないのかという問題が起こってくると思う。あるいは地方自体でやたらに行政水準の引き上げをやったのか、それとも政府のもろもろの企画あるいは方針によりまして、行政水準が国、地方ともに引き上がったということになれば、これは地方の責任だけではないわけです。特に給与費の対象になる人々は、何か特別に住民にサービスする仕事はほかのところにあって、人間というのはなるべく少ないほうがいいというようなどうも前提がありそうでございますけれども、いまの行政では人間そのものが住民に奉仕をしている場合が多いわけですよね。事業費の中に組み入れられておらないかもしれませんけれども、給与費の中に対象になっておるかもしれませんけれども、実際は人そのものが事業を推進しているという場合が多いわけですね。それはいまのものを全部是認しろとか、是認をすべきだということを私は申し上げるわけではございませんが、旧来の行政整理のいつも対象になる人員整理というものとは立場を変えて考えなければ、人員整理をすれば、行政整理をすれば、そのまま住民に対するサービス整理にもなるという状態になります点も御認識いただかなければならない問題だと思うわけです。それらがスムーズに行なわれておらないということは、それは大臣の御指摘のように、人そのものの配置にもずさんな点があるかもしれませんけれども、これがフルに動けないような財政というものの問題は、私は残ると思うわけです。  そこで、このたびも税の改正案が出まして、私どもいま審議をしておるわけでございますが、地方税というものをどういじってみたところで、これらのほんとうの財源の解決はつかないのじゃないか。特に私は、政府方針として地方地方の税でまかなえというので、地方税だけのワクの中で財源をふやそうとする傾きが強いと思うのです。そこで改めて伺いたいのは、国税と地方税と比べまして、個々の納税者の負担の比重というのが違ってきておると思うのですが、この点はいかがですか。
  58. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 国税と地方税負担の比重が違うというお話でございますが、御承知のように、国税にも地方税にもいろいろ税種がございまして、それが総合されて税体系ができているわけでございます。おそらく御質問は所得課税——国税の所得税地方における住民税、これとの負担の相違であろうと思います。御指摘のように、確かに国税と地方税、国税の所得税地方住民税を比べてみますと、私ども通常標準家庭、給与所得者で夫婦、子三人を標準家庭ということで比較をいたしているわけでございますが、この標準家庭の課税の最低限を比較をいたしてみますと、昭和四十年度におきまして所得税は五十四万四千二百五十九円であります。それから市町村民税は三十四万七千百八十五円、約二十万円の差があるわけでございます。これは御承知のように、国税につきましては逐次各種の控除の引き上げが行なわれておりますけれども、地方税につきましては、ここ数年来給与所得者につきましては、給与所得控除の引き上げが国税に準じて行なわれておりますが、それ以外の基礎控除その他につきましては、控除額の引き上げを行なっておりませんので、まあこのような差ができているわけでございます。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 いま宮澤参事官が御指摘になりましたように、三十六年で所得税影響というものを地方税住民税に遮断をいたしましたので、所得税ならば四十年度では五十四万四千二百五十九円という限界線があるわけです。来年はもっとこれは上に上がるでしょう。ところが、三十六年を押えられておりますから、住民税の場合は三十四万七千百八十五円というのが動かない。これから上はみんなかかってしまう。そこで一体五十四万四千二百五十九円というものを算定するときに、大蔵省は標準生計費が幾らかかるかということを、ひとつの基準に示すわけですね。大蔵省の四十年度の、あるいは三十九年度でもいい、標準家庭の生計費というものは幾らですか。で、これを地方住民税の場合は全然考慮しなくてもいいということですか。
  60. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 大蔵省のほうの積算基礎については、ただいま具体的な数字を持っておりませんが、ただ大蔵省が標準生計費を算定をいたしておりますけれども、標準生計費を算定をいたします場合には、標準生計費というのは一体何であるかということには、いろいろ議論があろうと思うんでありまして、標準生計費を算定をいたします場合には、まあ住民税も払うという前提のもとに算定をしているというふうにも考えられるわけでございます。それから課税最低限につきましては、ただいま御指摘のような相違があるわけでございます。政府の税制調査会におきましても、地方税所得税と違いまして地域社会の費用を広く負担をするという性格から、所得税とは課税最低限に差異があってしかるべきものだという答申をしているのでございます。しかし同時に、国民生活の向上に伴って、やはり地方税においても課税最低限を逐次引き上げるように検討すべきであるという考え方も出しているのでございまして、私どもといたしましては、御承知のように住民税につきましては、三十九、四十両年度にわたりまして課税方式の統一と税率についての標準税率化という作業をただいまやっておりますので、課税最低限の引き上げにつきましては、明年度以降検討をするようにいたしたいと、こういうように考えているわけでございます。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 三十九年の標準生計費は四十八万幾らという数字はございませんか……。それで、確かに負担分任とか応益性という原則が、地方住民税の場合は優先することは私も認めますよ。しかし人頭割りを払っているわけでしょう。頭割りで幾らという税金を払っているわけです。所得割りで。このような違いがあるわけですね。きのうも問題にしたわけでございますが、特に県民税になると比例段階制で二%と四%でございますから、むしろ高額所得者は三十六年度の改正で非常に減免、免ではありませんけれども減税になっている。ところが低額所得者のほうはむしろよけい取られておる、こういうような問題が起こっておるわけです。  そこで大臣に伺いたいわけでございますが、四十年度の予算でどうこうというわけにはまいらない問題でございますが、少なくも生活費が上がるわけでございますから、昭和三十六年の三十四万七千百八十五円という、所得税をかけられる限界線というものを、いつまでも地方住民税をかける限界線としておるのでなくて、これをやはり自然に五十四万四千二百五十九円にしなくても、幾らかずつ上げていかながければ合理的じゃないと思う。なぜならば、三十四万七千百八十五円というものを限界線にしたときには、所得税の場合幾らも上げてはなかった、ところが所得税はだんだんだんだん上がってきてしまったのに片方は据え置きでございますから、開きが非常に大きくなっている。三十四万では標準生計費にも及ばないわけですね、それの頭割りにかけるならともかくも、今度は所得割りにかけるということは、これは少し税体系の上からいっても、必ずしも当を得たものとは思われないわけです。県民税の問題にもそれぞれ触れたわけでございますが、これは住民税、市町村民税、県民税含めて御検討をいただくわけにはまいりませんでしようか。
  62. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) お話のとおりでございまして、何とか将来は考えていかなきゃならぬかと思います。これは税制調査会等におきましても御議論になっておったところかと思います。ただまあ御承知のように、地方財政も非常に苦しいときでもございまするし、また例の住民税の本文統一をいたしまして、まあ百五十億昨年も減税をし、今年も引き続き百五十億の減税をいたしておりますので、両方合わせまするというと相当になるもんですから、まあそれもやらなきゃならぬし、またこれもというわけにいかないので、まあことしは見送ったわけでございますが、まあ加瀬先生も国の所得税と同じとは言わぬけれども、まあしかしある程度は考えなきゃいかぬじゃないかということも、私どもも気のついているところでございまして、今後とも検討してゆきたいとこう思っております。
  63. 鈴木壽

    鈴木壽君 関連。いまの問題ですね。大臣お答えになってこれから何とかしたいと、こういう話でありますが、住民税に対しての基本的な一つの考え方というものが問題だと思うんです。実は。確かに地方の、いわゆる地域社会の必要な費用を住民が何といいますかね、おのおのの能力に応じて負担をしなきゃならぬ、しかも広く負担をしなきゃならぬ、こういう性格も全然排除せいという意味じゃございませんけれども、しかし、これは何といっても所得課税です。所得に対する課税ですね。私は基本はやっぱりそこに住民税の場合は置くべきだと思うんですね。ですから、いまのような形になっていますと、さっきお答えもあり指摘もされましたように、所得税では課税最低限がこれこれ、住民税はこれこれと、二十万も差があるんですね。これは何と考えたって不合理なんで、この負担分任ということは、住民税の所得割りにだけウエートを置いたようなこういう考え方というものは、捨てなきゃいけないと思うんです。私はもっと別の税において負担分任ということを考えていくべきだと思うし、それがまた現にやっているのがあるんです。固定資産税が私はその点ではいいと思うんですね。いいと思うし、また固定資産税においては、それぞれのそれによっての負担の分任をやっている。ただ私いまやっているだけでいいかどうかということについては、問題があると思いますが、住民税にだけこれをやって、広くしかも軽くということをいってますけれども、実は現在の状態は広く重くなっています。ですからこれが住民税というものの性格、これをやはり考え方を変えていかないといけないと思うのでありますが、まあこれは私の意思でございますが、来年度において、これはさっそく手をつけなければいけないことだと思うんですが、もう一度大臣この点。
  64. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 鈴木さんもある程度、地方は地域社会で住民がお互いにその経費を分担していくべきだということをお認めになっておる上の御議論でございまして、必ずしも国税と同じようにというお考えではない。が、しかし、何といっても住民税は所得というものをもとにしておるんだから考えるべきじゃないかというお尋ねでございまするので、その点は私もそうだと思います。そうだと思いますが、なかなかこの地方仕事というもの、住民の福祉につながる仕事というものが、どちらかというと加返的に多くなってきまして、私はそれ自体はけっこうだと思います。都会地にいる者だけが福祉に恵まれて、いなかは昔のようなふうであっていいわけじゃございませんので、やはりいなかに至るまで日の当たっていくほうが、私はけっこうだと思います。ところが、なかなか財源がございませんで、いま御指摘一つ固定資産税でございますが、固定資産税は私も確かに一つの考え方だと思います。だんだんと評価というものも変わっていくことでありまするから、それを一つ財源にすべきだと思いまするけれども、さてこれは収入は伴わない税金でございまするから、都会地は別として、いなかになりまするとなかなか言うべくして、それじゃあこれが上げられるかというと、上げていきにくい。農地はむしろ逆に低くしたらどうだというような御意見もあるくらいでございまするし、家屋にいたしましても、いなかでは決してこれが収入のもとになるわけじゃございませんので、上げにくいというのが、一つのこれは地方財源の悩みでもあります。かといって、御指摘になりましたいまの住民税の国税との関係についての御指摘の点は、確かにこれは考えていくべきものでございまするので、先ほど加瀬先生にも申し上げましたように、まあ本文方式に統一をするいま途上でございまするので、これはいま聞いてみますると、四十年度で一応済むということでございまするから、その点等もにらみ合わせまして、私は検討をすべきものであろう、こういうふうに考えております。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 あと一、二点伺いたいわけでございますが、大臣も御承知のように、東京の近郷の県が、このごろ公園住宅の受け入れというものに対して、はっきりとこれを拒否するような態度を示しておるわけでございまして、これはどう考えたって筋の通った話ではございませんけれども、問題は、昨日伺ったわけでございますが、公園を受け入れますと負政負担にたえかねるということにあろうかと思うわけでございます。具体的な例を申し上げますと、千葉県の柏市に豊四季団地というものができまして、したがって一つの小学校がつくられたわけでございます。現在の児童数は五百八十四人、四月に入学する一年生は二百三十人。ところが三十九年の八月から大体二月ごろまでに公団に住みまして、母子手帳を市役所に受け取りに来た方は八百九十六人。そうなりますと、六年後には八百人以上の一年生ができるということになりまして、六百人程度の学校をつくったところでどうにもならないということになるわけでございます。将来こういった学校をはじめ、環境衛生等の施設というものは、何か公団側で対処をして、あまり地元に負担をかけないという方法をとってもらうか、あるいは特別なその市町村財源を与えるか、いずれかの方法を講じていただかなければならない問題だろうと思うわけでございます。しかし東京の通勤の者でございますから、はるかに離れてしまったところに住宅を設けられても、これは問題でございますので、どうしても神奈川とか埼玉とか千葉、このまわりが適地ということになりますので、特別の方法を考えていただかなければならないのじゃないか。その将来についての対策をお考えをいただくとともに、当面いま交付税等で若干アルファをつけていただいているようでございますけれども、もう少し公団を受け入れても、あるいは社会増の人口を吸収しても、何とかやっていけるのだという方法を、至急に誌じていただかなければ、この公団反対の火の手というものはますます強くなる、こういう状態でございますので、この点についてひとつ大臣にお答えをいただきたい。
  66. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 御指摘のとおりだと思います。私もだんだんとそういう陳情も受けまするし、また実際から考えてみましても、いま数字でお示しになりまして、驚いたわけでございまするが五、六年生を考えますると、そういうふうな増加になるだろうと思いまして、地元の地方団体としては、たいへん困っている問題でございます。しかし困っているからといって、都市周辺はいわゆる一体的な生活還境にございまするので、やはりそういう団地をつくらざるを得ない。まあ、過密都市対策として基本的には考えつつございまするけれども、しかし目の前の処置としては、やはり周辺に団地をつくらざるを得ないのでありまするから、地元にたいへん御迷惑をかけるとは思いますけれども、しかしそれは何らかの方法で解決をしていくということでないと、そのままというわけにいかないと思います。したがって、さしあたっては地方交付税で財政需要の中にある程度見るとか、あるいは特別交付税で、お気の毒なところには特別な配慮を実はいたしているわけでございますが、いずれにいたしましても、その問題は考えていかざると得ぬということだけは、これはもう事実でございまするので、私のほうといたしましても、できるだけ考慮をいたしたいと思います。公団でやるという処置ができれば、一番けっこうでございまするけれども、公団といっても、なかなかむずかしい問題じゃないか。大阪でやっておりましたところを私は先般見ましたが、あれは千里丘ですか、千里丘なんかは府が団地をつくる際に、その団地の計画として学校もあわせてその計画の中で立てて、そして市町村に漸次移譲していくという方法をとる。これはたいへんうまい考え方だと思うのですけれども、住宅公団ということになると、これはまあ住宅自体が目的だものですから、それにそういうふうなところまでの施設までやれるかどうかという点は、ちょっと問題かと思いますが、しかしぼっておけない問題でございまするので、考えていきたいと思います。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 最後に、ただいま御説明をいただきました自治省関係予算概要の中で、奄美群島振興事業費というものがございます。奄美群島振興事業というものは、もう相当の、十年以上いろいろとこの予算が続いておるわけでございますが、問題は低開発地域といいますか、あるいはもっと限定するならば、低開発の指定を受けた地域の具体的な開発計画というものがあるのかということになろうかと思うわけです。私どもは奄美に参りました。公共事業の投資によって道路学校等よくなってはおりますけどれも、もっと具体的に所得をふやしていく産業振興というものを考えてやらなければ解決はつかないと思う。これは奄美にとどまりませんで、低開発地として指定をされたところも、ほとんどその地域の市役所等に受け入れ態勢のための室あるい課ができただけで、開店休業という状況ですね。具体的に一体予算の上で低開発地域を産業開発をする、そういうものも織り込まれておるのでしょうか、織り込まれるように指導がなされておるのでしょうか。
  68. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 奄美群島振興事業費についてお尋ねでございますが、御承知のとおり昭和二十九年から奄美群島復興事業を十カ年計画でやってきたわけでございますが、三十八年度で一応終了をいたしましたので、昭和三十九年度からさらに奄美群島復興事業振興事業と改めました。名前を改めたのみでなくて、内容的に申しますと、ただいま先生から御指摘がございましたように、単に復興的な公共施設整備というだけにとどまらず、むしろ地元の産業を育成する、それによって地元に経済力の充実をしていく、こういう考え方のもとに昨年度から法律改正もいたしまして、さらに計画を立てて実行に移しているわけでございます。したがいまして、ただいまやっております振興計画におきましては、いま申しましたように、従来に引き続き公共施設整備もやってまいりますけれども、さらにそれに加えまして産業振興という点に重点を移しているわけでございます。昨年度も奄美群島振興信用基金等の増額もいたしました。また、本年度も引き続き五千万円の増額をし、そういう産業資金の円滑化もはかるような方向に努力をしているわけでございます。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 その他の低開発地域の開発計画というものについて、具体的にどういうこれは企画庁は御連絡をしておりますか、あるいは地方に対して指導をしておりますか。
  70. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 低開発地域の工業開発促進法に基づきまして低開発地域を指定いたしますが、法のたてまえでは、低開発地域の計画を樹立するというふうな形にはなっておりません、現在は。ただ税の減免措置の規定があるわけでございます。それは実際の実益として企業を誘致するのに、かなり大きな魅力になっているかと思います。そのほかに法に規定されるところによりまして、その地域の施設の整備とか、あるいは資金的な融通についての政府の協力ということが規定されておるわけでございますが、この点につきまして、従来とも十分なされておるかどうかということについて、私らもなかなか指定の数が多く現在広きに及んでおりますので、いまの減免の措置によって企業が現実にかなり張りついてはおりますが、さらにそれに付随していろいろな公共施設等の整備あるいはそういう整備をやることによって、さらに企業が誘引されるといった全体的なその地方の将来のビジョン、あるいは計画というものについても、できるだけ企画庁といたしましても、各省と御相談しながら、そういう指導をはかっていきたいというにうに考えておるような次第でございます。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 はかっていきたいという御趣旨はわかりますが、はかってはおらない、具体的には。というのは、その減税とか免税措置というものは、地方だけだってやってできないことはないのです。こういう制度がない場合でも、行なっております県や市というものはあるわけですから。問題は、誘致するにも誘致する工場の対象がつかめない、それで困っておるわけです。ですからもっとその工場配置といいますか、工場分散といいますか、こういう問題で積極的にやはり政府が指導をしていただかなければ、低開発地域という名前だけつけられて、ますます低開発地域になって人間は減っていく、市の形成をしても人口が二万五千くらいになってしまうという実態がございますので、これはぜひ御指導をお願いを申し上げておきます。  それからこまかいことになって恐縮ですが、国有提供施設等所在市町村助成交付金の御説明がございました。これは別に私は問題にいたすわけではございません。ちょっと筋違いでございますが、特に飛行場のあるまわりの学校では、御存じのように防音施設が防衛施設庁によって行なわれるわけでございます。ところが非常に困ることは、防音施設はいたしますけれども、冷暖房の施設というものをほとんど何といいますか、計画の中に入れておらないわけです。ですから夏は四十度くらいになってしまって、むしろ夏は窓をよけいあけなければ授業ができないという実態なんです。これを市にやってくれといえば、市は金がなくてやれないと言う。まして町村なんかはやれるはずのものではないわけです。そこで国有提供施設等所在市町村の助成交付金の中にそういう条件を加味して、これは冷暖房をつける費用の一部だとか、あるいは何分の一の補助だとかいうことで新しく計算をしていただけるものかどうか。それとも、防音施設というなら冷暖房をつけなければほんとうの防音施設にならないんですから、厳重に冷暖房をつけるように、これは学習が進む進まないの問題じゃないでしょう。ぼうっとなってしまって人体にも影響する問題ですから、この問題を大臣ひとつ施設庁に交渉をしていただけるかどうか、どちらでもけっこうですから解決をお願いしたい。
  72. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) なるほど御指摘になりますと、私いま気がつきましたけれども、お話のとおりです。冷房のことだと思うのですが、ガラスの装置をすればお話のように、夏それはたいへんなことだと思います。これはひとつさっそく主務官庁のほうとも私お話を進めたいと思っております。
  73. 鈴木壽

    鈴木壽君 実は地方財政のいろいろな問題について加瀬委員からお尋ねがありましたので、私地方財政に関係する大きな問題として新産都市の問題ですね、それから公庫の関係の問題等について若干お尋ねをいたしたいと思います。  先ほどもちょっと新産都市の問題については、関連質問という形で一、二お伺いをいたしたのでありますが、いまのこの地方財政のこういう中で、新産都市の建設という相当大きな仕事をやっていかなければいけないことなのでありますが、率直に言って私なかなかたいへんなことじゃないだろうかと思うのであります。はたしてこれで現在の地方財政の状況、あるいは政府がこれから新産都市建設に対する財政のいろいろな措置、こういう状況から見ますと、たいへんなことになるのじゃないかという心配が実はあるのであります。そういう点から二、三お伺いをしてまいりますが、自治大臣、自治省に対して、さてこれはまた、どの程度質問していいのかどうか、ちょっと私迷うところがあるのであります。しかし、いま言ったように、地方財政の上から、これはかりに主管が企画庁であれ、他の省庁であれ、自治省としても無関心であり得ないことで、むしろ財政面においては、自治省が中心になってこれはやらなければいけないことじゃないかと思いますのでお尋ねをするわけなんでありますが、どうです。大臣、率直にいって、十三地区四兆三千億円の建設計画、さらに工特地区の二兆円に達する計画がまたできたようでありますが、こうしたものを含めて、いまの地方財政の状況からして、はたして五十年度までうまく達成できるのかという問題、あるいは、どうしても達成しなければいかぬとするならば、今後どのような地方財政あるいは国の財政措置について手を打たなければならないのか、こういうことについて、お考えになっていらっしゃるところがありましたら、ひとつ冒頭お聞きしたいと思います。
  74. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 鈴木さんからの御指摘になりましたようなことは、私も実は考えておるわけでございます。しかし、何ぶんいま企画庁で十年間の大ワクといいますか、大ワクとして四兆三千億、工特の二兆を入れまして六兆三千億という計画を立てられておりますが、その年次別なり、あるいは地域別なり、あるいは事業別というようなものをこまかく掘り下げていくということは、なかなか容易ではなかろうと思います。しかし、そうかといって、ほうっておくべきでなしに、いませっかく四十五年までの分でもということで取っ組んでいらっしゃるわけでございます。これは私のほうよりも企画庁の仕事のほうでございまするので、それにお願いをしているわけでありまするが、私、日本の産業は御承知のようにいまだんだんと伸展をしておるときでございまするし、また東京、大阪等に従来集中しておった工業というものが、過密度都市の現状でもございまするので、地方にも分散しなければならぬという点もございまして、私としてはおそらくそれくらいの計画伸びていくものであろうという気はいたします。ただ心配いたしまするのは、事業というのは、やはりそのときおりの景気の伸長というものに非常に左右されるものでございまして、そうかといって、計画なしにただその場その場でいくべきものではないことはもちろんでございます。ただ従来の感じを申し上げて、はなはだ恐縮でございますが、少し新産都市という問題が、いわゆる前景気にあおられて、つまり先行投資が相当行き過ぎたんじゃないかという感じがいたします。そういうことになりますと、地方財政にも非常に大きい響きをもってくるわけでございます。そうかといってあまりかたく、工場がいよいよここへこういうふうに来るぞということで計画したのでは、なかなか公共投資というものも間に合わないという痛しかゆしの点はございますが、私は、最近の新産都市の状況を見まするというと、相当その点は警戒ぎみで堅実な計画を立てられつつございまするので、四十年度は、さしあたり府県のいわゆる起債のかさ上げといいますか、四十億程度見込んでおります。これもほんの見込みでございまして、私どもはこれで済むとは思っておりません。大蔵大臣も、これは相当年を経るに従って増大をするぞということを言っておるようなわけでございまして、私どももさように思っておるし、また、そうあるべき、あってほしいと思っておるわけでありまするから、心配をしまするというと非常に心配に私もなってきておるわけでありますが、まあ、従来のような前景気でどんどんと先行投資をやっていくというようなことは、相当警戒ぎみになっておりまするので、だんだんと工場の進出というものとにらみ合わせながら、この新産都市の工業整備及びそれに伴う施設というものがいきますれば、私はまあそう心配はないんじゃないかという感じがいたしております。
  75. 鈴木壽

    鈴木壽君 大臣は、心配されながらも、しかし、そうまた心配する必要もないんじゃないかというふうな見方をしておられるようでありますが、私は率直にいって、現在の特に地方財政の状況からして、これはたいへんなことだと思うのですね。あとで少し数字的にもお尋ねをしてみたいと思っておりますが、確かにここ、二、三年前から、先行投資的なことはそれぞれこれは自粛といいますか、やってはおりますが、しかし、今度の三十九年度からといってもこれは実は四十年度からですから、四十年度からの事業計画、あるいは生産目標額なり、それに伴う建設計画、基本計画を見ますと、これは単に先行投資をやるやらぬということでなしに、計画をいわゆる計画的にじみちにやっていくにしても、これはたいへんなことになるのじゃないかと思うのですね。これはしかし、見方あるいは見解の相違というようなことになるかもしれません、私はそういうふうに見ておる。しかし、こういうふうなものが指定され、そうしてぜひ新産都市というものを目標どおり建設をしていかなければならぬという、こういうひとつかたい決意でやっていかなければならぬと思いますが、それには、いまの地方財政の状況というものからあるいは今後の見通しを立てて十分な手を打っていかないことにはいかないのじゃないかと、こういうふうに思うのですがね。  そこで一つお尋ねをしたいのですが、一体新産都市の建設というものを、ちょっとことばが悪いようでありますが、一体だれが、どっちが、地方が、あるいは国が責任を持ってやることであるのか、この問題、妙な言い方でありますけれども、これは私はっきりしておかなければいけないのじゃないかと思うのです。いままでだと、池田総理なんかは、地元でやるのだとこう言っておりましたね。地元のことだから地元でやるのだ、国はできるだけ援助していこう、まあ、こういう——だんだん少し変わってきているようでありますが、国が日本の経済の将来の展望に立ってこういう十三地区に新産都市の指定をなし、そして工業の生産目標も掲げ、これに対する建設計画の基本的な経費の問題等もやっている、こういうことからしますと、私はこれはやっぱり国が日本の全体の地域開発なり産業経済の発展という、そういう立場から国が本気になってやらないことにはいけないんじゃないか、性格的にそういうものじゃないだろうか、こう思うのですが、そういう点について、政府部内で何かこう突っ込んだ話なさっておりますか、あるいは意志統一がなされておりますかどうかですね。
  76. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 新産都市の建設は、促進法に基づきまして、地方公共団体の申請により地域を指定し、また、そのあとその地方の開発計画の基本になる方針を国として示しております。その方針に基づいて地方建設計画の大綱を作成いたしまして、国のほうの承認を得て、そしてその実際の建設に入っていく、そういう段階を踏むわけでございます。当然基本的な方針を国のほうで指示しておりますし、また、計画について、承認という行為を行なっておりますし、当然国としても、かなりといいますか、十分責任を持ってこれを育成していく、こういうことではないかと思います。また地方も、ただ国のほうで一方的にこれをつくり上げようと思ってもできないことでございますから、やはり地方の自主的な盛り上がりといいますか、建設しようという意欲と、国のほうでそういう方針に従ってひとつ一緒にやっていこうじゃないかということで、両者がほんとうに一致してやっていくということでなければ、十分な目的の達成はできないというふうに考えております。
  77. 鈴木壽

    鈴木壽君 局長はだいぶ用心しながら言っておられるようですがね。まあ局長の立場からすれば、あるいはそれ以上言えないかもしれませんが、これは火つけたのはやっぱり政府ですわな、実際はね。政府、自民党のほうで火つけて、まあ当時いきさついろいろありますけれども、新産都市という形になって、そうして今度名のりをあげてきたものは四十数カ所ある、四十四でしたか、三でしたか、ちょっといま私……、いずれ四十数カ所あった。私個人の考えでいえば、あんなにわいわいする必要はなかったと思うのですが、ともかくそういう形できて、そのうち十三地区が指定になった。これは地方の要望なり希望なりというもの、これは確かに無理もないところも私はあるとも思いますが、いずれにしても、そういう中から十三地区を指定をし、そしてそこに、何といいますか、日本全体の高度開発、経済開発、地域開発という、そういう観点からこうこうこうと、こうやって、しかもそれには、さっきも申し上げましたが、工業生産の目標というものはこうだと、国の経済全体の、工業生産全体の立場から、私はこういうものの目標というものは設定されたと思うのですね。単に地方がやりたいからということでなしに、これは地方から出てきた計画なり希望というものはもっともっと大きな金の必要なようなそれであったはずなんです。これは大体三分の二くらいに圧縮されておりますかね、建設計画の基本額からしますとね。そういう中で、いま言ったように、国が全体の経済の立場から、あるいは全体の日本の地域開発というような立場から地区を指定し、あるいは目標を定めた、こういうのですからね。私は、そういう国の経済の全体の立場から見た目標の達成のためには、やはり国が建設をするというそういうことが中心にならなければ、ただ口先だけで、地元からも協力するとか国も責任があるとかということでなしに、そうでなければ、私は新産都市の指定も、あるいは計画の策定というものも、意義が薄れてくると思うし、また、目標なんかは達成できないじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。ところが、残念ながら国がそういうふうな責任といいますか、というものをあまり感じておらないようなところに、実はこれからいろいろお尋ねをしたい問題が出てくるわけです。たとえば、いま自治大臣が、四十億の起債のことをおっしゃっておられます。そのほかにも、財政援助みたようなことが若干なされるように報告が出ておりますが、一体これで、さっき言ったような現在の地方財政の状況等からして、国が本気にやるというかまえであると見るべきであるのかどうかという点に対しては、非常に私疑問を持つわけです。後段のほうの疑問のあるなしは別にしても、どうです。その国の責任といいますかね、地方に熱意と協力を求める、しかし、この建設は国が主体になってやるべきだというふうな考え方はございますか、ございませんか、大臣、ひとつもう一度……。
  78. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 先ほどお尋ねになりました点で、企画庁からお答えがありましたのでございますが、これは私どもも、今回のこの新産業都市にしましても、工特地区の問題にいたしましても、やはり地方のこれは盛り上がりにまたざるを得ないので、やはりそこがもとだと思います。しかしながら、鈴木さんも御指摘のように、それじゃ地方のやってきたのをただ国が援助さえすればいいのかという性質のものではございませんで、国が相当の力を入れるべき私はこれは仕事だと思います。まあ私はこのごろつくづく考えまするのに、これは国の仕事地方仕事かということが、よく理論的に議論されますけれども、今日の日本の段階になりますと、国の仕事地方にまたなければならぬし、また、地方仕事も国に力を入れてもらわなければならぬ、だんだんとそこが私は接近をしてきておるような感じがするわけでございますけれども、理論的には、それはどっちの仕事か、こうお尋ねになりますと、企画庁が言われたように、それは地方仕事だというふうに言わざるを得ないかもしれませんが、それじゃ地方仕事だからと言いっぱなしにできない性質のものだと思います。元来は工場分散をし、あるいは地方を開発するというような観点から出発したと思いますが、今日東京、大阪をはじめ、過密都市の問題で相当問題になり苦しんでおるときで、やはりこういったように各地域に産業都市ができて、そこを中心にして産業が発達するということは、国全体から見てもぜひ必要な仕事ではございますし、また工場を誘致するにいたしましても、ただ地方地方なりの考え方でやるというようなことでは無計画になりますから、やはり国がそれに対して相当のめんどうを見、計画的に、したがって、計画の承認ということも出てくることであります。そこで、一応私ども、この財政援助をいたしまする際に、府県は普通の事業よりも新産都市として特別の、いわゆる事業量というものを考えなきゃならぬから、それは一応起債で、初年度は四十億です。これは私は、相当事業が進むにつれて膨大なものになるのじゃないかという予想をいたしておるのでありますが、そうして、それの利子補給をするということ、それと、府県の仕事に対しても、当初私どもは補助のかさ上げも実は考えたことば御存じのところでございます。しかしこれは、片一方に後進地域の補助のかさ上げの問題もございまして、それでいけるからということで、実は府県のほうは起債にとどめ、市町村のほうはそうはいきませんから、いわゆる補助のかさ上げをもって、これもほかの地域から比べれば、相当の国としては財政援助をすることになり、仕事が進むにつれて、私は相当の規模の財政援助になるんじゃないか。これは精算払いでありまするから、私は相当大規模なものになるであると思います。でありますから、御指摘のように、政府もこれは腰を入れてやるべきだぞという点は、私もそのように思います。それじゃ国の仕事としてやれよと、こうおっしゃいますと、やはりこの種の仕事は、地元の計画と地元の熱意というものをもとにしませんと、ただ、国が上から天降り式にこうやれああやれと言って押しつけてやるべき性質のものではない、やはり地域開発の基本的な問題でございますので、どこまでも地方自治体を尊重し、地方自治体の考え方をもとにしながら、国がこれに力を入れていくというふうで進めていくべきものじゃないだろうか、かように存じておるわけでございます。
  79. 鈴木壽

    鈴木壽君 地元の熱意とか、あるいはいろいろ地元の考え方を取り入れていく、これに対して、そんなもの必要じゃないというのではありません。それがもちろん、やはり大きなものにならなきゃならぬと思います。ただ仕事をしていく場合に、さっきから申し上げておりますように、このことは国全体の一つの政策として取り上げられたものだと思うのです。そうであったはずなんですね。大臣もいま述べられておりますように、過密都市対策とか、あるいは地域格差の是正とか、地域開発とか、こういう立場から地方にこういうものを分散した形において建設をし、その中で地域の発展をはかると同時に、国全体としての、これをやっていくという、こういうことなんですから、だから、そこを何か計画を承認をしたり、あるいは多少の調整をしたり、認めてやるとかやらぬとかいうそういうことだけで、国としてはほうっておけない問題だと、こういうことをもっとはっきりしなければいけないのじゃないか、こういうことなんです。それは地元の協力なり、地元でも負担をすべきものは負担をしてやっていかなければいけないことは当然です。当然であるが、一体ことばが少し悪くなるけれども、地元の協力、そういう意味では、地元の協力とはいいながら、中心は、大体責任を持ってやっていく——ことばは悪いかもしれないけれども、ものをどう規定しておかなければならぬかということに、私は、いまの情勢では若干の心配があるわけです。それを私ひとつはっきりすべきじゃないかと、こういう気持ちなんです。協力とかなんかということは当然のことで、あるいは地元の熱意とか、当然のことなんです。しかし、一体これをいわゆる地元がやるから、それを国としてもできるだけ援助をしていくというようなかっこうでは、私はいけないのじゃないか、こういうことを言って、それに対するお考えを聞いているわけなんです。
  80. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 御指摘のとおりだと思います。私は先ほど、まあ多少理屈に過ぎるかもしれませんけれども、たてまえとしては、企画庁が言われましたようなたてまえの上に立っておることを申し上げたのでありますけれども、実際はやはり国が相当の力を入れませんというと、なかなか私はスムーズにはいかないと思います。と同時に、また地方の公共団体においても、私の見ているところでは、相当熱意をもって熱心にいろいろの財界との関係等も誘致に努力をしておられますから、あんまり国のほうがおせっかいをして、あの工場がいかぬ、この工場がいいぞというようなことは、私はよしあしがあると思いますが、しかし、鈴木さんが御指摘になりましたように、ほうっておきますと、地方だけではなかなかうまく進まない点があるのじゃないか。したがって、これは国ではどこがやるようになるか知りませんが通産省と申しますか、あるいは企画庁等におきまして、やはり工場のそれぞれの地域に適合した計画というものも考えられているのでありまするから、計画だけでなしに、現実にそれを世話をして具体化していくということは、熱意はあってしかるべきだ、かように存じます。
  81. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは企画庁のほうへ念を押しますが、この建設計画の中には、国がやる仕事、それから地方がやる仕事——府県なりあるいは市町村なりを含めてです。それから民間でやる仕事、それから国の機関と一口に申しますと、公社だとか、そういうものがありますが、国の機関でやらなければならない仕事が相当量にのぼっておりますが、これについてはあれですか、いろいろな計画がこの機関にできるという、こういう前提だと思いますが、この点ひとつ確かめておきたい。たとえば鉄道とかいろいろなものがあるわけなんですが、そういうことに対してどうなのか。そうしてそれが今後の、鉄道であれば鉄道のいろいろな整備計画がありますね、あるいは電電公社関係にしてもいろいろあると思うのだが、そういうものの中に織り込んでおられるのかどうか、この点もあわせて。
  82. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 鈴木委員のおっしゃられますように、この四兆三千億の計画の中には、約—どのくらいのものですか、具体的に幾らぐらいがそういった公団、公社のたぐいがやるかということは、現段階ではきちっとはさまっておりません。しかし、相当な額がそういう国鉄あるいは電電、あるいは公団等のたぐいの公社、公団が建設を受け持っていくということは事実でございます。その個々の計画につきましては、具体的にこの基本計画の大綱を定めるときにも、電電公社にも国鉄にも十分打ち合わせをいたしましてまとめてきておりますので、電電なり国鉄が持っている計画と、たとえば五カ年計画とそういった長期的な計画と食い違っている点はないと、事務当局としては考えております。  なお、電電公社とか国鉄以外の、たとえば住宅のようなものですと、まだ住宅を一体公団がやるか、公庫の融資住宅というような形でやるか、あるいは公営住宅としてやっていくかというような点がまださだかでございませんので、その点は、これから実施段階になっての、年々の計画においての調整をされながらきまっていくというふうになっております。
  83. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと心配な点があるんですが、話し合いをなさったことはこれは確かでございましょうし、しかし、それが国鉄なりあるいは電電公社なり、公社関係、公団関係仕事計画の中にきちっと、これはまあことしやるとか来年やるとかということはともかく、ある期間にわたる計画の中に入っているかどうかという点については、私はちょっとお答えから心配な点がありますが、まあそれはそれでいいんですが、民間のもこれは相当計画の中に入っていますね。民間とのそれはどうなんですか。
  84. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 民間のといいますと、主として一般病院ですね。それからいま住宅のことを申し上げましたが、住宅の中の一種の融資住宅、住宅金融公庫からの融資による住宅分、いわばこれは民間の建設というふうになるかと思いますが、おも立ったものはその二つの問題が入り込んでいるわけですが、民間の病院がどうなるかというのは、もちろん民間の自主的な建設によっていくわけでございますが、一つは需要の面から考えて、これだけの都市をつくっていく場合には、国及び地方公共団体その他の持つ病院のほか、このぐらいの病床数が要るだろうというようなところからはじき出されておる計画になっておりますが、その点は民間の主体がどこにあるかということも、当然まだつまびらかになっておりませんので、今後の実際の毎年の実施において、ここいらは主として地方共公団体が主体になって調整してやっていただくという形になろうかと思います。
  85. 鈴木壽

    鈴木壽君 自治省にお尋ねしますが、四十年度の、さっきもちょっとお聞きした、総事業費というものを大体二千三百四十億ぐらい見ておると、この中で国庫負担が五百十三億、県負担が四百六十七億、市町村負担が四百二十一億円、公社、民間関係が九百三十八億円と、こう見ておられるようですね。どうですか、私がいまあげました数字について、そのとおりでよろしゅうございますか。さっき総事業費については、ちょっと私これではたしていいのかどうかという問題を一つ指摘してありますが、それはともかくとして、この内訳の県負担の四百六十七億円、市町村負担の四百二十一億円、こういう数字から一体負担がどうなるのか、一地区にして大体県関係では三十五、六億円になりましょうね。市町村関係では一地区三十億から三十二、三億になると思うのですが、この金を調達するということになりますと、これは相当な苦労の要ることだと思うのですが、苦労どころじゃない、ちょっと心配なんですが、これをどういうふうにごらんになっておりますか。
  86. 柴田護

    政府委員柴田護君) 先ほども申し上げましたように、ただいま鈴木委員からお話のありました数字は、三十九年度を基礎にした一応の推計数字でございます。したがって、具体的には個々の公共事業費の中身がきまり、各地区ごとに中身がきまってまいりますと、具体的にこの内容が明確になることでございまして、私どもは一応この推計で大ざっぱに計算し、従来の地方債の充当率等をごく平均値で見てまいりまして、今度のかさ上げ措置等を考えてまいりますと、大体この程度のものであれば吸収し得るのじゃなかろうか、かように考えるわけでございます。ただ、実際問題といたしました場合には、先ほども御指摘がございましたが、地方の具体的な各県、各市町村ごとの財政需要ということとにらみ合わせまして、財政収支をかき乱さずに、これがむらなく、無理なく吸収されていくかということになってまいりますと、たとえば岡山地区の倉敷のような問題も出てまいります。いろいろ個々の地方団体ごとに特殊事情があるわけでございますので、その辺の調整は具体的な問題として個々について処理を考えていかなければならぬだろうというふうに思うわけでございます。しかし、まあ全般的に考えて、私どもはこの程度の事業量であれば、昭和四十年度分としては何とか各地方団体ごとで吸収できるだろうというふうに思うのでございます。しかして、はたしてこの程度の事業量になるかならぬかという問題は、個々の公共事業の具体的な配分の結果、それに伴います各地方団体ごとの単独事業の配当のしかたといったようなこと、それと本来の地方団体ごとの財政需要というものと三つかみ合わせて考えなければなりません。したがって、いまここで軽々に結論を出すことは、そういう意味では困難でございますけれども、ただ事業総額というものと従来の財政措置法というものと今度の援助方式というものと三つかみ合わせて考えれば、この程度のものであれば、何とか吸収できるのじゃなかろうかというふうに思うのでございます。
  87. 鈴木壽

    鈴木壽君 四十年度の事業計画といいますか、それがまだはっきりしない段階ですから、あまり数字にわたることをいまここでどうのこうのと言っても始まらないと思いますからやめますが、全体として、私はこういういまあげたような一つの例からいっても、これは何とかやれるというふうな甘い考えではたいへんじゃないかと思うのですが、指定された地区の、私特に心配なのは市町村です。県の段階ではまだ起債とか何とか、好ましいことじゃないけれどの、何とかやれるかもしれません。あるいは後進地域に対する補助とか、かさ上げの措置もありますし、これは起債をもっと有利なような条件でやってやれば何とかできるのじゃないかと思うのですが、市町村はいまの段階ではそうはいかないと思うのです。この十三地区に指定された中の市町村の大体の財政状況を見ますと、これはあなた方も十分見ておられると思いますけれども、非常に心配ですね。北海道の道中地区では十八市町村があるうち十一の市町村が単年度赤字を出すような団体ですね。八戸地区では九市町村のうち三つが単年度赤字を出すような団体、郡山地区四十五市町村のうち三分の一の十五市町村が赤字を出している団体なんです。しかも、この赤字は三十八年度決算で大体拾って見ておるのですが、三十九年度、四十年度になったらもっとひどくなるような団体なんです。まあ時間の関係で一々各地区十三を申しておられませんが、岡山県南でも三十三市町村のうち十四の市町村が赤字を出している団体なんです。特に倉敷のような問題は、たいへんな問題を抱えている団体がある。全体でいまの区域内の市町村の数からしますと、二百六十三あるうち、九十五の団体が赤字を出している団体であり、全体のこの二百六十三の大体三六%の団体が赤字を出している団体ですね。一体こういうように大体三分の一も赤字を出している団体があるその区域で、その市町村で平均して、さっきもちょっと言いましたように、まだ数字はこれは固まっておりませんけれども、三十億も三十数億も負担をしなければならないと、こういうことになりますと、これは一体何としてやるのか。起債といっても、これ以上いま市町村に起債を背負わせて、後年度にまで非常な財政に圧迫を加えるような、こういう問題を簡単に私は起債とか何とかということではたいへんなことになると思う。そういう点からして、非常に私はあなたがたの何とかやれるんじゃないか、何とかできましょうというようなことを、そのままさようでございますかというふうに聞いておられないのですが、どうです。財政局長
  88. 柴田護

    政府委員柴田護君) たいへん御心配をいただきまして恐縮でございますけれども、やるときめた以上は万難を排してやらねばならない、そういうふうに私は考えております。御心配にいまなっております赤字団体でございますが、たしかに赤字団体は三十八年度決算で見てまいりますと、四十九団体が実質収支において、結末におきまして赤字を出しておる団体であります。そのうち財政再建団体になっておりますものが二十団体ぐらいあるわけでございます。しかし、四団体ぐらいは三十九年度で財政再建を完了する。したがって、こういうこの四十団体、四十五、六になりますか、この赤字団体の中でほんとうにはしにも棒にもかからぬ非常に心配だという団体は、調べてみますとそうよけいはない。私どもの計算では、非常にたいへん困るという団体は、まあせいぜいこのうちの半分、半分あるかないかだろう。ほんとうに困る団体はもっと少ないだろうと思います。相当考えてやらねばならない団体は半分ぐらいじゃないかと思うのであります。したがって、財政再建をやっております団体につきましては、特殊の財政再建計画上の配慮というものは、やはり考えてやっていかなければならぬだろうというように私どもは考えておるわけでございます。過般、倉敷市におきましても財政再建の決議をいたしましたが、この再建計画につきましては、やはりそういうような配慮をしていくことが必要であろうというように思うわけでございます。決して私どもも楽観しておるわけではございません。ございませんけれども、いろいろな手段を尽くして、地方財政に悪い影響を及ぼさずに、しかも着実に仕事ができるような方向で方途をめぐらしていきたいと考えておるわけであります。先ほど私が何とか吸収できるだろうと申し上げましたのは、事業自身だけについて財政措置というものを考えていけば何とかなりやせぬかと思うと、こういうことでございます。その際も申し上げましたように、その団体自身の財政からくるいろいろなひずみというものは、これは別途考えていかなければならぬというように思うのでございます。
  89. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  90. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 速記を起こして下さい。
  91. 鈴木壽

    鈴木壽君 局長の冒頭のおことばの、どうしてもやらなければいけない、これは私もそういうことを前提にしながら、しかし、どうしてもやらなければいけないという決意だけでは非常な心配な点があるもんだから、これからひとついろんな困難を克服しながらやれるようなことを考えていかなければならぬじゃないかということを前提にして、実は私質問しているのです。やめちまえというのじゃないですよ。そこで、その場合に、何とかやれるのじゃないかなんというのは、少し甘過ぎるのじゃないかと、私はそう率直に申し上げます。これは。具体的にたとえば東北の八戸地区とか、あるいは日向延岡、日南地区ですか、正式な名前は何でしたか、日向延岡地区ですね、あのあたりの日向の財政状況ですね、こう見ますと、これは小さなどこかの隅っこにあるような町や村で、地域に入っているけれども、あまり関係のないようなところのことを実は問題にしているのじゃなくて、そういうところがある。いま言ったような個所があるもんですから、そういうものを含めて、私は市町村財政というものがいまたいへんなときにきているのだから、このままで何とかやれるのじゃないかということから、かりに仕事をやっても、そのしわ寄せがとんでもないところに出てくると、こういう問題もあるもんですから、これはあまり楽観をしていられないぞと、こういうつもりで実は聞いておるのであります。時間もないようでございますから、実はいまできておるたとえば岡山県南あたりでは相当計画も進んでおります。こういうものについて地元負担といいますか、あるいは県の負担、あるいは市町村負担、大体これはあすこでは見通しを立ててつくっておりますがね、これはそのまま企画庁で認めるかどうか、これは問題があるとしても、そういうわけでありますので、一つ一つについて実は聞きたかったんでありますけれども、総じて申し上げますと、特に市町村財政の現在、あるいはこれからの推移を考えてみます場合に、非常に問題がある新産都市の建設計画だと、こういうことを私はいえると思うのです。ですから、そこでひとつさっきも言いましたように、これは地元でやるべきだとか何とかというのじゃなしに、この指定そのものの性質からいって、国が本気になって、いま言ったような市町村財政、地方の財政というものをもっと基本的に、こういうものができるような基盤ができるような形において考えていかなければ、何のために新産都市をやったのかということになると、こういうふうに思いますから、この点ひとつ注文でありますが、申し上げておきたいと思います。  それからいま一つ、いまの状況を見ておりますと、さっき自治大臣も言いましたが、工業誘致に地元が一生懸命血眼になってかけずり回っておりますね。しかも効果がなかなかあがらぬと、一体どうです。企画庁のほうで工業なり企業工場の再配置という問題について、このままの形にしておけますか。その点どうです。
  92. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 新産の全体の出荷額は、五十年で約七兆三千億でございますが、これは五十年の出荷額の見通しが国全体としてどの程度になるかが明確ではございませんが、大体の見当をつけますと、一割強になろうかと思います。現在の新産の全体の出荷額は、国全体に対しまして三十五年度で見ますと七・五%くらいですか、工業の分散をはかって新産都市の出荷額をかなり高めていこうということで、それ自体計画としてもかなり勇気のある計画であることは、私ども率直に申し上げて認めざるを得ない。ただ所得倍増計画のときに所得が二倍になるということは、同時に工業生産額はほぼ三倍を越すわけです。それだけの工業用地を実際にこの京浜地区とか、あるいは阪神地区に張りつけるということは、国全体としても非常に大きな問題を将来に残すのじゃないか、地方の分散をどうしても思い切ってはからねばならぬ、そういう一つの意慾があらわれて、こういった新産計画というものにだんだん固まってきたということは、先ほど来話の中にも出ているようですけれども、ただ、いまおっしゃられたように、具体的に工業が張りついていくかという問題になりますと、これは先ほどからるる申し上げているように、やはり一つの地元の方の意慾と企業との結びつきでそこに分散がはかられていくわけで、国といたしましても開発銀行とか、あるいは北東公庫とか、あるいは中小企業金融公庫とか、公庫金融を通しての援助、助力ということが当然なされますが、まさに国と地方と企業とが一体になって考えていかなければ容易ではないということは、私率直に申し上げて認めざるを得ないと思います。なかなかたいへんでありますが、さればといってそれでは、この程度のことができないかということになりますと、むしろ国の全体のあれからいえば、ぜひやり遂げていかなければ、将来の国の均衡ある発展は期し得ないじゃないかというふうに考えております。
  93. 鈴木壽

    鈴木壽君 局長さん、あなたのおっしゃった最後のおことばのように、これはぜひやり遂げなければならないと思うからこそ、いまのままでいったんではこれはだめですよ、率直に言って。企業誘致のために地元の知事はじめ関係市町村あるいは議会がどういう苦労をしているか、あなた方よくわかるでしょう。せっかくつくった土地もペンペン草がはえているというようなところもあるし、せっかく話ができかけたなと思うと、おまえのほうの条件がどうのこうのといってパーになることもあるし、特に経済がこういうようなことになって、設備投資の問題がこういうふうな状況になると、これはなかなか地元できてくれといったって、それからあなた方が計画した、このような産業をここに置きましょう、そして工業生産の目標はこうだと、こうやっても出てきませんよ、このままでは。企業だってペイしないところへ喜んで行くはずはないし、このままの形では私は工業生産の目標も何にも達成はできないと思う。しかし、これはおことばのように、また私が申し上げますように、これはやらなければいけないと思う、日本経済の全体から言って。それから三十七年度の実績がこの地区におけるものは大体七・三%ですね、あなた三十五年度で七・五%とか言ったが、四十五年度には、その調子で伸びていけば大体一一・七%くらいになるようです。それから五十年度には大体一二・一%ぐらい。ところが現在の、現在と言っちゃ悪いが、三十七年度の七・三%から五十年度の一二%、数字はたいしたことないようでありますが、日本全体の生産のそれからすると、私はこの数字を見るだけでは心配はないと思うが、しかし、いまのような状態にしておいて、新産都市にはたしてそれだけの目標を達成できるだけの企業が集まり、工業生産ができるかというと、私はそうでないと思う。もっとあなた方企業に対して、あなた方の計画に沿うような、規制ということはいまのあなた方の立場からはできないと、こうおっしゃるかもしれませんけれども、何かそういうものがないとこれはいけませんよ。また、きてもらうためには、とんでもない地元の条件を出さなければいけないところがある。あなた方も御承知でしょうが、広島県のほうのあれは福山ですが、工特のほうに入っているあの地区では、日本鋼管を誘致するために、土地造成のために漁業補償をしなければいけないというので、市が八億円もの金を出していますね。一体何のために市が漁業補償の金を出さなければならないのか、まことにこれは奇怪千万なことですが、そういうことでもやらなければ企業がこない。まあ、できるところはいいかもしれません。しかし、そういういまのような形にしておいたのではいけないと思うので、私はこの計画達成のために国が企業の分散配置について、もっと積極的な姿勢をとらないといけないと思うのですが、そういうことの御用意はありますか。
  94. 鹿野義夫

    政府委員(鹿野義夫君) 先ほども申し上げましたが、企業の誘致をしていく一つのてこ入れということですと、まず企業の立地しやすい条件をつくっていくということでの先行投資というのがやはり一つの大きなかなめだと思います。それから次に考えられますのは金融的な措置だと思うのですが、この点につきましては、開銀あるいは北東公庫等の地方開発のための融資のワクをかなり思い切ってふやしてきております。この点をさらに強く拡大していきたい。いくことによってそういう企業に対する援助といいますか、推進をはかっていく。もう一つは企業に対しての各新産都市の地区の状況をよく周知徹底さして、それを誘導していくような政策、これは主として通産省が立地指導その他でやっていた。現在、自由経済のもとにおいて、地方に企業を誘導していくということになりますと、主として大きく考えられるのはそのようなことかと思います。それらの施策について私どもといたしましても、できるだけ各省やあるい各機関にお願いして、新産の育成のことを御努力願っていただいておるわけですが、いまおっしゃられたように、工業の適正配置を規制するような法的な手段というのは、この前たしか予算委員会でもお話が出たかに思いますが、なかなか容易にいまの段階では考えられないというふうに考えております。いま申し上げましたような諸手段をできるだけ強力に推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  95. 吉武恵市

    国務大臣吉武恵市君) 鈴木さんの御指摘になりました御心配は率直に言って、私も実は同じ心配を持っておるのでございます。しかしながら、前向きに進んでいかなきゃなりませんので、結局、産業自体の配置計画及び努力は産業関係の官庁でおやりいただかなければなりませんが、しかし、しりは地方財政に響いてくる問題でございますので、私どもも重大な関心を実は持っておりまして、したがいまして、財政の計画、あるいは起債その他地方財政に響く問題につきましては、慎重にかつ総合的に私はやっていくつもりでございます。
  96. 鈴木壽

    鈴木壽君 まだ尋ねたいこともありますが、時間がありませんからやめます。私は結論として、さっきから申し上げておりますように、こういう指定をしてやるからには、ぜひりっぱな新産都市、十三地区ができ上がるように、工特地区もりっぱにできるように、しかし、こういうことのためには、現在のいろいろなこれを見ると、心配な点がたくさんあるものですから、そういう意味で二、三指摘をしてお考えを聞いたわけなんでございますが、いずれその新産都市の問題については関係法案もありますから、そういう機会にも関係のほうから来ていただいてお尋ねすることにして、きょうはこれで終わりたいと思うのです。
  97. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 以上をもって自治省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  午後は二時から労働省所管について審議を行なうことにいたし、暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  98. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) これより予算委員会第四分科会を再開いたします。  昭和四十年度総予算中、労働省所管を議題といたします。  まず、政府説明を求めます。石田労働大臣。
  99. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 昭和四十年度一般会計及び特別会計予算労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出予算額は九百八億六千百三十六万三千円でありまして、これを前年度予算額八百二十八億二千六百八万二千円に比較いたしますと、八十億三千五百二十八万一千円の増加となっております。  次に、そのおもな内容について、概略を御説明いたします。  その一は、積極的な雇用対策の推進に必要な経費であります。  最近の雇用、失業情勢は、経済の高度成長に伴い、全般的には好調に推移しておりますが、なお、若年労働者や技能労働者を中心とする労働力の不足、中高年齢失業者等の就職困難、地域間、産業間における労働力需給の不均衡等の問題があるのであります。  かかる事態に対処しさらに地域及び産業を通じ均衡ある経済の発展に寄与するため地域別産業別雇用計画を策定して、労働力の流動化、労働力需給の円滑な調整を推進することとし、これが実施を期するため、労働市場センターの整備促進とその業務の一部開始、公共職業安定所の機能の強化、移転就職者用宿舎の大量建設、雇用促進融資の拡大等の措置を講ずるとともに、中高年齢労働者の雇用促進、中小企業における労働力の確保、労働力の有効活用対策の充実など積極的な雇用対策を展開してまいることとし、これらに必要な経費として百二十三億九千四百五十二万九千円を計上しており、また、財政投融資計画中に、雇用促進融資として八十億円を計上いたしております。  次に、港湾労働対策につきましては、港湾運送に必要な労働力を確保するとともに、港湾労働者の福祉の増進をはかるため、港湾労働等対策審議会の答申の趣旨に沿って関係公共職業安定所における職業紹介体制の充実強化をはかるとともに、新たに、港湾雇用調整計画の策定、日雇い港湾労働者の登録及びその需給の調整、雇用調整手当の支給、技能向上のための訓練の実施、退職金共済制度の新設などの措置を講じ、さらに、福祉センター、簡易宿泊所の建設、雇用促進融資の活用等福祉施設の充実をはかるなど、総合的な港湾労働対策を実施することとし、これらに必要な経費として五億四千七百八十四万九千円を計上しております。  なお、このために、今国会に港湾労働法案を提出しております。  また、失業対策につきましては、再就職の困難な中高年齢失業者に対しては、就職指導、転職訓練等の就職促進措置を引き続き強力に推進するとともに、失業対策事業に就労する者に対しましては、雇用奨励制度を中心として一般雇用への復帰を一そう促進し、また失業対策事業については、その事業費単価の改善などを行なうこととし、これらに必要な経費及び失業保険国庫負担金に必要な経費として六百六十八億九千三百二十四万六千円を計上しております。  なお、炭鉱離職者につきましては、その就職促進をはかるため、就職指導、転職訓練等の就職促進措置を引き続き実施するとともに、移転就職者用宿舎の建設をはじめ、移住資金、雇用奨励金の支給などの援護対策を実施し、また、炭鉱離職者緊急就労対策事業は、就労者の生活の安定をはかるため、引き続きこれを実施することとし、これらに必要な経費として五十九億五千五百九十三万四千円を計上しております。その二は、中小企業労働対策の推進に必要な経費であります。  経済の成長発展を背景に、中小企業の労働条件等は、逐次改善されつつありますが、最近における中小企業の深刻な労働力不足等の事態に対処するため、事業内職業業訓練及びその施設の設置に対する助成を拡大して、中小企業における技能労働者の養成確保とその技能水準の向上をはかり、また、中小企業の労働面における近代化を一そう推進するため、新たに、中小企業集団に対して助成を行ない、その労務管理改善の自主的活動を促進するとともに、労働力の確保、労働条件の改善、労使関係の安定、労働福祉の向上等に関する行政指導を統一的、一元的に実施することとし、さらに、中小企業レクリエーションセンターの設置、勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設、福祉施設に対する融資の拡大、中小企業退職金共済制度の普及、最低賃金制の推進、小規模事業場に対する労災保険及び失業保険への加入促進等、福祉対策の充実をはかるなど、中小企業労働対策を総合的に推進することとし、これらに必要な経費として百二十五億一千九百六十二万五千円を計上しております。  その三は、技能労働者の育成と技能水準の向上に必要な経費であります。  技術革新の進展と経済の開放体制の本格化につれて、技能労働者の確保は、現下の喫緊の要務であり、特に中小企業における技能労働者の不足は、深刻なものがあります。  かかる事態に対処するため、事業内職業訓練の推進及び公共職業訓練施設の新設、拡充を行なって、積極的に技能労働者の養成につとめるとともに、就職の困難な中高年齢失業者等に対する職業訓練を実施して、その雇用の促進をはかり、さらに、技能検定の職種の拡大をはじめ民間の実施する技能競技大会に対する積極的な指導援助等を行なうほか、新たに通信技能講座開設の準備を行なうなど、技能水準を一そう向上させるための対策を積極的に推進することとし、これらに必要な経費として七十八億三千五百九十四万円を計上しております。  その四は、労働災害防止対策及び労働条件近代化対策の推進に必要な経費であります。  労働災害の防止につきましては、従来から鋭意努力を重ねてきたところでありますが、最近における新技術の導入、新原材の採用等の急速な進展に伴い、新しい種類の労働災害があらわれつつあり、その中には、一たん発生すると予想外に大規模化するおそれのあるものも少なくありません。かかる現状に対処し、人命尊重の基本的観点から、これらの労働災害の防止をはかるため、労働災害防止に関する諸施策を強力に展開することとし、特に昭和四十年度においては、労災防止対策部の新設、第一線監督機関の強化等、行政体制を整備するとともに、労働災害防止計画の樹立、科学技術の進歩に即応する安全衛生基準の設定、監督指導及び検査検定の強化、人命尊重観念の高揚、自主的災害防止体制の充実、安全及び衛生に関する研究機関の整備など、総合的労働災害防止対策の強化をはかることとし、また、産業構造の近代化の過程における賃金、労働時間に関する問題の合理的な解決をはかるため、所要の調査を実施するとともに、最低賃金制の実効ある実施、賃金制度の改善指導、長時間労働の排除等の施策を積極的に推進することとし、これらに必要な経費として九億七千四百五十二万八千円を計上しております。  その五は、合理的労使関係の樹立に必要な経費であります。  国民経済の繁栄と民主主義の発展のため、労使が相互信頼と協力の精神を基調とし、平和的、合理的な話し合いを通じて労使問題の解決をはかるという慣行を樹立するため、労働教育等の指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議の予防とその円満な解決につとめることとし、これらに必要な経費として一億四千八十四万四千円を計上しております。  その六は、婦人及び年少労働者対策に必要な経費であります。  婦人及び年少労働者対策といたしましては、婦人労働力の有効活用をはかるとともに、家事サービス、職業訓練の実施、内職相談施設の拡充等婦人の職業対策の充実をはかり、あわせて勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設、年少労働者産業カウンセリングの普及、年少労働者集団活動の健全化等、婦人及び年少労働者の福祉対策を増強するほか、新たに、農村婦人に対する指導援助、婦人の地位向上対策を進めることとし、これらに必要な経費として二億七千四百十七万七千円を計上しております。  以上のほか、勤労者の財産形成に関する調査及び啓蒙、国家労働行政の充実、その他一般行政事務費等に必要な経費が計上してあるのであります。  次に、労働者災害補償保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千十七億五百三十六万四千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は六百二十九億四千百万円で、また、じん肺等長期傷病者補償費国庫負担金の受け入れば、十二億五千九百二十八万三千円であります。  また、歳出のうちには、保険金に必要な経費としては五百三十八億五千百九十九万九千円を、労災病院等の施設の整備拡充のための労働福祉事業団出資金に必要な経費として二十五億六百六十七万一千円を計上しております。  なお、労働者災害補償保険制度の改善をはかるため、適用範囲の拡大、保険給付の年金化、零細事業主、一人親方等に対する特別加入制度の新設などを骨子とする労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしております。  最後に、失業保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千四百八十四億四千四百三十四万八千円でありまして、歳入のうち保険料収入は一千九十四億八千六百万円であり、失業保険国庫負担金受け入れば二百九十億四千九百万円であります。  また、歳出のうち、保険給付に必要な経費としては一千百四十八億二千百万円を総合職業訓練所の整備拡充、移転就職者用宿舎の建設、中小企業レクリエーションセンターの設置等のため、雇用促進事業団に対する出資金に必要な経費としては、百三十四億六千四百九十一万九千円を計上しております。  以上、昭和四十年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして概略御説明申し上げたのであります。  何とぞ本予算の成立につきまして、格段の御協力を御願い申し上げる次第であります。
  100. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) これより質疑に入ります。質疑の通告がございますので、順次発言を許します。小柳勇君。
  101. 小柳勇

    小柳勇君 初めに中高年齢者の雇用促進を中心とする雇用問題を中心にお尋ねいたします。  昨日の社労委員会で地域別、産業別雇用計画試案なるものを中心に担当局長、部長といろいろ質疑をかわしました。大臣が留守でありましたので、本日その結論的なものを大臣に質問いたします。地域別、産業別雇用計画試案なるものは中期経済計画が出る前につくられたのでありますから、若干数字的に違うようでありますが、この問題はあとでまた質問します。これで計画をして、雇う者は現在の資本主義社会の中における自由競争をやっている会社あるいは官公署、政府機関などでございますが、その労働力を調査して流動化などの実態を把握するけれども、それから雇用に結びつける点が不備である。きのう局長、部長の答弁を聞きましてもはっきりいたしません。したがって実態は労働市場センターなどを強化してもわかるでしょう。地域別にも産業別にもわかるでしょうが、それを雇用に結びつける対策として大臣はどのように今後考えておられるか、お聞きいたします。
  102. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) むろん私どもで立てました雇用計画の提起だけで問題が済むものとは思っておりませんで、ただ、まず現状からみて、労働力の動態というもの、特に将来にわたっての動態というものの認識が一般に企業者間にほとんどといっていいくらい欠けております。ざっくばらんに申しますと、たとえば年齢別人口構造の変化などというものも知識としてわかっているかどうかは別問題といたしまして、非常な変化を来たしておるのに、労働力を求めるのに依然として昔の若年労働者の比率が非常に高かった時代と同じような考え方で労働力の動態を考えておる。そういうような時代の変化、われわれの環境の大きな移り変わりということを理解させるということが、まず一番必要じゃなかろうか。それから職業を求ておる労働力というものが、どういう希望を持ち、そしてどういう姿であるかということをやはり知ってもらうことが一番必要であって、そして同時に、それに基づいた望ましいあり方というものをわれわれは計画したわけであります。これはこれだけでいくわけではないのでありまして、むろんこれと見合うような産業計画を各省において連絡をとってつくっていただきますとともに、企業者に対する、ただいままで申しましたような趣旨を含めた啓蒙宣伝をやってまいりまして、さらにそれに見合うような雇用促進の具体的な施策を行なうことによって、この計画に企業者が協力し、あるいはそれに沿った雇用をしてもらうように努めてまいりたい。こう考えておる次第でございます。
  103. 小柳勇

    小柳勇君 いまのことばの中にありました産業計画なり雇用計画なりの結びつきを各省と連絡をとってやる、そういうことばで表現されましたが、具体的にそれがありませんと、労働省だけでこの労働人口の動態を把握しましても、そのあとに今度産業計画がかわってまいりますと、移動した労働力がまたもとに返らなければならない、あるいはその地区から出た労働力は他の地区から補充しなければならぬ。そういういたちごっこをやる。そういうようなものもありますが、他の省との産業計画に対する労働大臣の発言なりあるいは取り組みなり、そういうものをお答え願いたい。
  104. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) その場合、そういうふうな懸念よりは労働力の実態と動き方というものを知らな過ぎた、計画のほうが先行する危険のほうがいまのところ多いのであります。われわれが労働力の実態、動態というものをここに明らかにすることによって、各省の産業計画産業政策というようなものは、これを基礎にして立ててもらうよう連絡をとっているのであります。特に、たとえば学校教育の内容方向と、それから社会の人に対する求め方の間にかなりのギャップがだんんだん生じてまいります。そういうようなものをあわせて考慮していきたい。具体的に各省との連絡を強化してまいりたいと思っている次第でございます。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 中期経済計画ですね、これと労働省の雇用計画との関係についてはどのように取り組んでおられるか。
  106. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは、私のほうで計画が先にできましたものですから、数字的にも若干問題があることは承知しております。ただこのわれわれのほうの計画というものを重要な参考にして、中期経済計画がつくられたものと思っておりますが、具体的な数字等の行き違いにつきましては、担当者からお答えさせます。
  107. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 中期経済計画の策定過程につきまして、私どもの雇用計画の考え方を、十分事務的には連絡調整して、できるだけのことはばかってまいったわけでございますが、基礎となる統計数字の取り方に若干食い違いがある。それは御承知のように、中期計画では労働力調査を使っておりますが、雇用計画では国勢調査を使っております。この点でもたとえば就業者の数におきましても、二百九十万ほどの開きがございます。  それからまた推計の方法につきましても、中期計画は御承知のように計量経済モデル方式によってはじき出されておりますが、雇用計画は生産所得と就業者との相関によって推計をいたしておりますので、その辺の推計方法の食い違いがございます。まあそういう点で若干の食い違いはございまするが、目下われわれのほうのこの試案につきまして各方面の御意見と、御検討を願っておりますので、われわれとしましてもできるだけ中期計画との調整をはかりながら、この雇用計画を決定版といたしていきたいと、かように考えておるわけであります。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 きょうは予算委員会でありますから、部分的な問題はまた別に論争いたします。けさ新聞を見ておりますと、私がきのう質問したようなことを、「人不足にっぽん」で書いているわけですが、その中で一番結論的に言っておりますのは、雇用計画産業計画に従属させるのか、あるいは対等にするのか、あるいは雇用計画をリードして産業計画を樹立するのかということが、一番中心的な、根本の問題だと書いているのです。この点について、大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  109. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いまの労働力の需給関係、それから経済に及ぼす労働力の影響の度合いというようなことを考え、それからたとえば人口の都市集中とかという社会的な影響を考えますと、私は、どちらが先とか何とかということは、特別に言う必要はないかもしれませんけれども、やはり雇用計画というものが、あるいは労働力の動態というものが基礎にならなければならないのだと、そしてまた同時に、政治は人が与えられたいい条件の中で自分の仕事をし、生活をするということに重点を置くべきでありますから、そちらに重点を置くべきだという考え方で私どもは雇用計画を立てました。雇用計画のいま出しておりますのは、むろんわれわれが立てた一つの試案でありまして、いろいろな御検討をいただいた上で、確定的なものにしたい、こう思っておるのであります。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、この予算案全体を流れております思想は、あと保護ですね。たとえば炭鉱が閉山になる、その離職者を職業訓練して、そして他の地区に配置転換する。そういう思想でこの予算が組まれているような気がしてならぬのです。一番冒頭に書かれてあります雇用政策に対する調査など、いま申し上げましたような調査というものをわずかに千二百万円、あと就職訓練あるいは移転旅費などの問題は、まあ不満でありますけれども非常に進歩しているわけですね。労働市場センターの設置にも関連するのですけれども、やはり産業の移動、産業の構造をキャッチしながら、それにあわしていくという対策ですね。そういうものが労働省の全体の思想の根底にある。そういうように私は見るのですが、この点いかがですか。
  111. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 産業経済の進歩に伴って、あるいは変化に伴って雇用の変動が生じてまいります。その場合は、そういう事態がもう現実の問題として出てしまってから対策を講ずるというのではなくして、そういう動き方というものをできるだけ早い時期につかまえて、そうして時間的なズレのないように施策の準備が行なわれるようにしていかなければならない。そういう意味においては先ばしるというのはおかしいのでありますが、事業の経営がむずかしくなったから、あるいは事業の社会の需要が変わったから人が動くという、あと始末の面が現実的に多くなることは、どうも仕事の性質上そういうことになりがちではございますが、でき得る限りそれを早い時点でとらえて、そして時間的ズレを少なくしていくという方向で努力をしていきたい、こう思っておるのであります。調査費は非常に少ないように見えるのでありますが、これは結局調査費でございますので、予算性格上そういう金額になっておりますが、効率的な運営で効果をあげてまいりたいと考えております。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 それで、いま一歩突っ込んで質問いたしますと、まあ具体的に産炭地に例をとります。産炭地振興事業団なるものが仕事をいたします。それでこれに工場誘致をやる。ところが運転資金がないために工場は倒れてまいる。そのように企業を誘致して、そこにおって離職した労働者を使うという政策と、それからその離職した労働者を訓練して外に出すという政策とが矛盾しながら、もし産業計画が雇用計画に対等か、あるいは従属していくとするならば——たとえば道路をつくることも、あるいは産炭地振興事業団が企業を誘致して、これをりっぱな企業として成長するために使うお金と、その離職訓練に使うお金とを計算してみたら企業誘致のほうに、あるいは道路をつくる方向にお金を使えば、そこの離職した労働者がそのまま使える。しかも、その誘致した産業に適する労働者を再訓練するという計画は、いまの計画よりももう一歩高度の計画がなされなければならぬと思うのです。たとえば非常に訓練がしやすいから塗装工をやろうとか、あるいはいま需要が大きいから自動車運転の訓練をしようとかということで、この産業を先に見ながらそれに合うように、合うように労働者が動いているような気がしてならぬのです。したがって、もう一度、雇用計画産業計画との関連を大臣からお聞きしておきたい。
  113. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いままでは確かに、御説のように名古屋とか大阪とか東京とかいう地域においてどういう種類の労働力が必要かということを追っかけて、それに対して訓練もし、あるいはそれに対して住宅も建て、レクリエーションセンターをつくるというような傾向があったことは、これはどうも認めざるを得ないと思うのであります。元来、政策としては、人間というものには結局、根底には地域的定着性というものがあるわけでありますし、それだけでなく、そういうことの積み重ねの結果の一つのあらわれが、人口の都市に対する過度の集中となり、中央と地方との地域格差が拡大する結果になったと思う。したがってこれは、前に、私就任しておりましたときから主張してまいったのでありますが、やはりその地域に産業を誘致し得られるような条件を整備して、そしてそれによって、その地域で仕事が得られるようにすることが先行していかなければならない、こう思っておるのであります。とりわけ最近は、人口の都市過度集中の議論が大きくなりまして、さらに地域格差の是正という要請も強まってまいりました。したがって、これからの労働行政は、需要があるところに追っかけて訓練し、そして人を送るということよりか、人のおるところに仕事を持ってくるという方向に向かっていかなければならない。そういう方向に変わるべきものだと、私は考えておるわけであります。     —————————————
  114. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 分科担当委員異動について報告いたします。  本日、加瀬完君が委員を辞任され、その補欠として鈴木強君が選任されました。     —————————————
  115. 小柳勇

    小柳勇君 この問題の最後の質問として、意見も若干述べながら質問いたしますが、雇用計画の中に大臣が言われたように、教育の問題がありますね、教育をどうするかという問題。これも雇用計画が先行していかなければならないが、学校は、大学は大学、雇用は雇用ではいかぬのです。同時に、これにも書いてありますように住宅政策ですね。住宅政策も先行していかなければ雇用計画というものが成り立たぬから、したがってそういう問題については、いま少し他省との連関を持ちながら具体的に進めていただかなければならぬ。それからこの予算の冒頭にあります産業別、地域別の雇用の計画試案なるもの、試案でありますから、まだこれは、いろいろ改正されてまいるでしょうが、この経済企画庁で使っておる推計の方法と、労働省で使っておられるファクターが違うように思う。計算の方式などをみておりますと、違うように思うわけです。したがってこの中期経済計画も出たのでありますから、もう一ぺん検討してもらって、別の機会に、この問題については意見をお聞きしたいと思うのですが、その点いかがでしょう。
  116. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) この学校教育と、それから社会の労働力に対する需要とのアンバランス、これはもう常に、私は閣議でも、あるいは文部省に対しても申しておるのでありまして、特に大学教育は、大学という名前の学校がたくさんふえることは非常に悪いことではないかもしれませんけれども、文科系の大学卒業者に対する社会一般の需要というものは、ふえることが、それに応ずる形勢には決してないのが実情でありまして、それよりは、もっと社会の需要に応ずるような教育態勢をとってくれるように、われわれ、文部省で調べております資料を基礎として、それで問題が将来非常に深く残るんだということを常々申しております。これは今後ともそういう意味において、実際の労働力需給が社会の需要と合うように、教育の内容も変えてもらうように努力してもらいたいと思っております。  それから住宅であります。これは確かに御指摘のとおりでありまして、たとえば建設省の住宅政策、たとえば産労住宅のワクというようなものは一応折衝いたしますが、それがどういう地域、どういう産業にということになりますと、どうもわれわれの検討不足といいますか、欠けているところが確かにあるように思います。そういう点も、あわせて住宅政策の中の大きな部門を占めるものとして、検討してまいりたいと思っております。  それから、いまの中期経済計画と、われわれのつくりました試案との関係でございますが、これはあからさまに申しますと、中期経済計画の検討過程において、私ども、途中の報告を私聞いて納得のいかないことが実は非常に多かったのであります。この納得のいかない部分については、担当者にたびたび申し出させて検討させておるのでありますが、それでもなお私、いまでも中期経済計画の中には疑問があります。しかし同時に、こちらのほうが完全だというわけではないのでありまして、両方にらみ合わせまして、実態にふさわしいものにつくり上げていきたい、こう考えております。
  117. 鈴木強

    鈴木強君 いまの小柳委員の雇用問題に関連してお尋ねしたいのですが、最近は日本におきましても平均寿命が延びております。男子は六十八歳、女子は七十二歳。したがって私は、日本の雇用問題を論ずる場合に、中高年齢層をどういうふうに位置づけていくか、これは私非常に大事だと思うのです。将来日本の人口が、四十何年たったら何億になるかわかりませんですけれども、こういうことは厚生省の人口問題研究所等においても研究されているが、一体日本に何億の人が住んだら最高限度か、そういった問題が、将来の問題でありますが、戦後のベビー・ブームから現在、非常に若手労働者は、学校卒業者にしましても、かなり普段から見ると多いはずにもかかわらず、なおそれが足りない。こういう現状からまただんだんと出産率が落ちてきているというならば、落ちた分を将来ある程度高年齢層によってカバーするとか、そういう点を、私はやはり基本方針を確立していく必要があるんじゃないか、そう思います。で、諸外国などを私初めて具体的に見学させてもらったのでありますが、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、これらの国に行きましても、適材適所にそれぞれ中高年齢層の労働力を使っております。たとえばエレベーターに乗ると、日本ではああいう若い女子がやっておりますけれども、向こうでは高齢のおじいさんがちゃんとやっておる。理髪屋に行けば、七十過ぎたおじいさんが理髪をやっておる。自動車の運転手もかなりな年齢層、ドア・マンもそうだというように、中高年齢層の活用ということを非常にヨーロッパあたりでは考えております。これは日本より以上に、人口問題、労働力問題が違いますから、一がいに比較できませんですけれども、しかし、だんだんとそういうふうに日本もやらなければならないと思うのです。したがって労働省として、とかく経営者のほうは一人やめさして、若い人を二人雇う。そのほうが得ですからね。   〔主査退席、副主査着席〕  そうなりますよ。これは能率は多少落ちるかもしれませんが、しかし私は一般論としてまあ言うわけではなくして、何も年とったから全部をそうしろというわけではない。しかし、技術を持ち十分に産業の中で働ける力があるにかかわらず、労働政策上やめていくという問題もあるわけですから、そういう点を労働省としてどういうふうに調整し、将来に向かって確立していくかということは重大な問題だと思うわけです。だから関連をしてその点をひとつお伺いしたいのです。
  118. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) この毎年学校を出ます新規労働力から離脱や死んだりした人を引いて、労働力純増というものは昭和三十八、九年から四十年くらいの間を、つまり現在の時点を最高といたしまして、あとは減少の一途をたどってまいります。昭和五十五年くらいになりますと九十万を割るのではないかと推定されるのであります。また厚生省等の人口問題調査では、わが国の人口は一億五百万程度になりますとそれが天井であって、あとは下がるのじゃないか。そうして同時に年齢別人口構造は、底辺の長い高さの低い三角形から、底辺の短かい高さの高いはしご形に移っておる。十五才から六十才までを労働可能年齢といたしますと。その労働可能年齢の中に若年労働力の占める割合が昔は非常に多かったのですが、いまはそれが各年齢ごとにほぼ同じようにだんだんなってくる。そういうことが必至の勢いでありす。この必至の勢いということに対する理解が一般に少ない。これは先ほど小柳さんにお答えいたしましたとおりであります。そうして、昔あった労働の人口構造、昔の労働力の需給状態というものの考えの中で各企業が自己の労働力を求めておる。したがって、一方において若い者が足りぬといって、片っ方では中高年齢層は五十才以上で、求職者のほうは求人の七倍ぐらいありますが、それにもかかわらず若年層に殺到する。これも安定所の窓口にあらわれた数字そのものが実態ではどうもないようであります。たとえば水増しであります。現に大阪府下では一月と二月で二千五百人も若年労働の契約を解除した事例がありまして——必ずしもその実態ではないと思いますが、そういういわゆるムードを生んでおる。しかも、もう一つは、いま申しましたように、だんだんだんだんと労働力はいわゆる売り手市場になって不足を来たしてきて、人の力がだんだん貴重になってきているのに、なお労務管理という面においては不必要なところに若い労働力を配置しておる。そういう意味の傾向が非常に強い。だからやっぱり、このわれわれの乗っております客観条件の変化というものに応じた姿勢を企業者にとってもらうように、これは啓蒙が絶対必要であろうと思っておるのであります。しかし、にわかに中高年齢層の採用へなか踏み切れないのには、むろんそれにはそれなりの理由がある。それなりの理由の解除に行政の手で及ぶ限りのことをしなければならないと思っております。たとえばいわゆる年功別序列と、年功序列型の賃金、これの背景はいわゆる家族負担、年をとると家族負担がふえるというようなことがやっぱり一つの理由であります。したがって、これをほんとうの意味で同一労働同一賃金、諸外国の、先進国の型に変えていくのには、家族負担をどうするかという問題がやっぱり起こってくるだろうと思う。その家族負担についてはやはり児童手当なり何かという問題をやっぱり政府が積極的につくるようにして、そういう問題の処理に当たっていかなきゃならないだろう思うのであります。それから具体的に政府が、及び政府関係機関がまず範を示さなければならないのでありまして、これは前に、昭和三十五年に私就任いたしましたときも政府関係機関に要望いたしましたが、実効が上がりませんでした。昨年はこれを強く要望いたしました結果、すでに採用いたしました三十九年度採用分はこれは何ともしかたがないのですが、四十年度採用の分からについては、私どもの示した職種については若年層でなく中高年齢層をもって充てるというような方法をとっておるのであります。また、もう一つは、年がある一定限度に達しました場合に、それの労働力とその賃金が見合うかどうかという問題がございますが、そういうような問題も何か別の新しい検討を、具体的な検討を加える方法によって処理されるじゃないかと、まあはっきり言えば、たとえば恩給がついている人ならば、その恩給がついて何もほかに職がない人ならば、また同時に、年をとって子供も一人前になっておるというように、条件が違っておるということを考えていけば、形式的なそういうことにとらわれないでも実効のある措置もあるのではないか、そういうふうなこともあわせて検討していく必要があるのじゃないか。  それからもう一つは、わが国の各企業における定年制の考え方——先進各国においては、その定年制というものは本人の労働能力ということからも、むろんきておりますけれども、もう一つは社会保障とのつながりということを常に考えて行なわれておる。したがって、ある国などは六十五歳から社会保障が始まれば六十五歳から定年、六十歳で始まれば六十歳から定年ということになっておるが、わが国では社会保障の始発点が六十歳であるのに定年がどこでも五十五才、こういうものの考え方が私はやはりこれから行政の手で直していかなければならないと考えておる次第であります。
  119. 小柳勇

    小柳勇君 雇用関係に関連して二点ばかり質問いたしますが、一つは、昨日も質問いたしましたが、労働市場センターができて、電子計算機を入れて、いままで各地の職業安定所で取り扱っておった失業者の一切のことが中央で把握されるであろう。極端に言いますれば、一切の個人の経歴まで中央のほうで把握されるであろう。したがって、これはもう迅速に全国的に中央で把握できることは進歩でありますが、そのためにたとえば思想、信条の自由とかあるいは職業選択の自由とか——そういう思想統制、かつて特高的なものがこの労働センターの中に入り込むのじゃないだろうか、そういうすきがあるような気がしてならぬのです。したがって、私どもはあとで見学さしてもらいまするが、その中央にある失業者のカードなどには政党支持あるいは思想的なもの、そういうものについてば一切介入しない、そういうことで、きのう局長からはそういう言明をいただいておりますが、大臣からその概要についての御説明を、今後の取り扱いについて、失業者がそういう不安を持ちませんように言明をお願いします。
  120. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは技術的にどうなるか、これは私もしろうとでありますからよくわかりませんが、何を目標にしたかと申しますと、各地域にありまする職業安定所へまいる求職者と求人者、それを結びつけるのに現在の郵送能力をもってすると非常に時間がかかります。それを敏速にしようという、その条件を敏速に整えようというのが主眼であります。したがって、その土台になる調査はそれぞれやはり人がやるわけでありますから、現在より以上の詳細な調査というものはなかなか技術的に実際問題としてむずかしいのであります。もう一つは、いま御心配の思想とか信条というようなことは、これは職業安定法でも明確に禁じておりますし、これからもむろんやる意思はありませんし、そういうことまで電子計算機でできる能力はありませんから、それはもう絶対にやる意思がないことを明言いたしておきたいと思います。
  121. 小柳勇

    小柳勇君 第二は女子労働者の問題で、きのう家内工賃の問題を婦人少年局長から詳しく聞きました。これがまあ最低賃金との関連も出てまいりまするが、一番心配なのは、われわれが期待するのは——男子労働者の賃金引き上げによって女子労働者は家庭に帰るべきであるという考え方、これは帰るが、あと生活ができないから内職をやるわけですね。したがって、内職賃金との関連で労働者の賃金ともう密接に関連してまいるわけです。労働省として、もちろん内職については奨励かあるいは指導をやっておられるようでありますが、賃金が低いのだから内職をしなさいという奨励をやっておられるのか、将来の構想ですね、賃金に関連いたしまして家内労働、これはまあ普通の一般労働と考えなければなりません。いわゆる内職的的なものに対してどういうふうな施策をもっていかれるか、お聞きしておきたいと思います。
  122. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 内職しなければ生活の向上がはからないという状態は、好ましい状態ではないと思っております。しかし、経過的に、現実的にそういう必要があるという場合が、これはあるのでありますから、それに対しては助成をいたしてまいるつもりでございますが、あるべき姿として内職が多ければいいとは決して考えておりません。  それから、いま一つの一般的な男子の賃金が上がったり、若年層の賃金が上がったりしてまいりますると、女は家庭に帰るべきだという考えが起こるかどうか、どうも日本的に、いま起こっているというわけじゃありませんが、日本的にはそういう危険性を感じないわけではありませんけれども、それでは先進各国はどうかと申しますと、先進各国におきましては、二十歳前後までの女子の各年齢ごとの総人口における就業者の割合というものは、日本は非常に多いのであります。ところが年齢が上がるに従って、日本はうんと減ってきて、先進各国、すなわち賃金も高く、男子の労働条件もいいはずの国々において高年齢層の女子の就業者の率が非常に多くなってまいっております。したがって、一般的な傾向としては、私どもも、そういう形をたどっていくのではなかろうかと思います。一方もう一つにおいては、先ほどから申しましたように労働力の絶対数がだんだん減ってまいりまして、給源というものが少なくなってまいります。そうすると、いま申しました中高年齢はむろんでございますが、たとえばいま現在の企業者が女子の労働力の対象として考える婚前——結婚前の人たち、あるいはそれに続いておる人、こういう考え方ではなくして、むしろ逆に、つまり二度目の——家庭に入って子供が手を離れた二度目の働き場所、そういう労働力というものも当然考えざるを得なくなると思いますし、ひいては家庭婦人が社会にどんどん出ます場合には、やはり託児所とか、そういういうな施設の充実、それから家庭教育を補うような教育上の配慮ということがむしろ必要になってくるのであって、家庭に閉じ込められるという傾向は、またどうも日本的にはあり得るような危惧を持たないわけではありませんが、一般的な趨勢としては先進国では逆の方向にいっているように思っておる次第であります。
  123. 小柳勇

    小柳勇君 内職賃金の問題についてもう少しお聞きしとうございまするが、別の機会にいたしまして、いまの内職賃金に関連して最低賃金の問題から話を進めていきたいと思います。最低賃金で、きのうの新聞で、石炭産業は一万六千円の最低賃金の十六条方式で答申される、答申されましたならば、新聞の報ずるところでは、大臣決裁で四月一日から実施したいと書いてありましたが、答申されました場合に大臣の扱いをお聞きしたいと思います。
  124. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 新聞に書いてありますとおり四月一日から、答申がありましたら実施をするつもりでございます。
  125. 小柳勇

    小柳勇君 これは昨年三月の国会で、前の大橋大臣が言明しておられるところでありますが、「かように職権方式を交えて最低賃金の普及をはかりまして、三年間の実績によって法の改正に進もうというのが現在の方針に相なっておるわけでございます。」そうして、先のほうになりまして、「三年程度で現在の方式について根本的な再検討をしよう、」ただし四・一七の池田・太田会談の結果によりまして、「せめて一年くらいは短縮するようなことも考えたい。」というようなことを発言しておられるわけです。そのあとのほうの十六条方式を少し広げなければならぬ。そのために調査をしようということで、きのうの答弁でも調査業種が内定しておりまするが、この考えについてあらためて現大臣から御見解をお聞きしたい。
  126. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私も大橋前労働大臣のお考えと同じでありまして、できるだけすみやかに前進したいと思っております。ただ昨年十月に最低賃金審議会から一昨年の答申の具体化に対する答申が出ました。ただいまそれを鋭意実行中でございます。その行政効果をあわせて資料として見ていかなければならないと存じておりますが、しかし、現在の業者間協定を中心といたしまする最低賃金制度というものは、一つの役割りをおおよそつとめ終わった——終わりつつある。こういうように私どもは考えておりますので、これからこれを前進せしめるスケジュールについて具体的なものをつくっていきたいと思っておる次第であります。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 さっきの雇用政策にも関連するのでありますが、学校卒業者は賃金が高いほうにいくわけです。そうしますと、地方の企業というものは若手労働力を入手できないわけですね。したがって、一番必要なのは、全国一律に、せめて最低賃金だけはきめる。そうしますと、賃金が同じであれば、なるべく自分の育ったところにおって、そして家庭から通って働くというのが人情ではないかと思うのです。いまこそ、この石炭産業には一万六千円の最低賃金ができました。金額は不満でありますけれども、これでも一歩前進であろうと思うのですが、急速度に、十六条方式でもやむを得ないかもしれぬ、これにはわれわれ意見があります。われわれは全国一律の最低賃金をつくるべきだと要求しておるのでありまするが、いま一歩前進した大臣の決意が必要であろうと思うのです。いかがでございますか。
  128. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 最低賃金制というものは、これは理想の姿としては、やはりどこにいようと、その労働にふさわしい対価が与えられるということでありまして、地域的に差を設けるという議論は、これは生活給的な思想からきているんじゃないかと思います。そして同時に、そういう姿にできるだけ早く持っていくということが、やっぱり最低賃金制の目標でなければならぬという点では、全く同感でございます。賃金の基準決定をどういうふうにするかは別の問題とし、あるいは急速にそこに持っていくか、あるいは段階を設けるかその段階をどうするかということは別問題といたしまして、目標はそこへ置くべきだと、私も考えておるのであります。
  129. 小柳勇

    小柳勇君 石炭産業の離職者が緊急就労事業につくわけですが、緊急就労事業につきますと、その賃金は各公共事業できめますものです。予算単価は、事業単価として金が入って、働く労働者の賃金というものは、その事業主体がきめてまいるということ、ところが石炭産業労働者は一万六千円の最低賃金ができたのであります。この保障の糸が切れるわけです。離職すると同時に切れてまいります。きのうも主張したのですが、建設省など事業をやる役所あるいは地方公共団体などにまかせないで、労働省として、最低の生活を保障するだけの賃金に対する発言力を持っておらなきゃならぬと思うのですが、これについて大臣の見解を聞きます。
  130. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) むろん賃金はその労働にふさわしいと同時に、働く人の生活を保障するものでなきゃいけません。それを所管しておるのは労働省でありますので、そういう立場からの発言は常に行なっておるつもりでございますが、緊急就労事業実態につきましては、これは担当者からお答えをいたします。
  131. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 緊就事業の労働費単価は、御承知のように公共事業の労務費単価によるということで、今日までまいっておりますが、この原則を私どももいまここで改める必要はないんじゃないか。従来から共公事業の労務費単価を、それぞれの所管官庁が内面指導をしておりますので、私どもはその労務費単価に従って緊就事業を施行していけば、現在大臣から説明がありましたような賃金の趣旨にも合致していくというふうに考えております。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 大臣、こういう具体的な例で質問いたしますが、たとえば造船業について調べますと、同じ工業学校を出まして、甲板で働いている本雇いの本社の労働者と、その一番船底のほうで働いている下請会社の労働者は、同じ年齢で同じ学歴を持ちながら、賃金は三分の二くらいである。なぜかと、ずっと詰問してまいりますと、下請企業というものはその親会社のほうから事業単価としてその設計の予算が来るわけです。そうしますと下請会社はもう労働力というものを一番コストを引き下げて——もうけなきなゃりませんから、そういう例がたくさんあるわけですね。各事業にあるわけです。それはちょうど国が緊就などに使う事業費は、単価で予算を組みまして、流して、あとで働かせるという、そこの中にあると思うのですがね。そういう思想を労働者としては打破してまいりませんと、まあ業者間協定の最低賃金が一歩前進だと言われるけれども、その思想にもなってないわけですね。働く労働者の賃金は事業単価として払われているという、この思想は払拭しなきゃならぬと思うのです。そうしませんと、ほかの一般産業の賃金の二重構造というものは絶対打破できないと思う。いま具体例は範囲が広いのですけれども、そういう考えを打破することについては、いかがですか。
  133. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いままで親会社と下請の関係、あるいは元請と下請の関係、これは親会社がやるより下請会社がやるほうが安くなる。設備やなんかが安くなるから安くなるのではない、労働賃金が安くなるから安くなるという傾向が出ているのがたくさんあります。私は、こういうものは適当なものではないと考えます。したがって、先般、前に在任をいたしましておりましたときから、一例を日立製作所にとりますと、日立製作所の下請の企業、こういうようなものの縦の関係をつくらせまして、その労務管理、賃金その他の指導に親会社を関係させる。そういうことによって、たとえば、そういう関係のしかたをさせますと、原価計算をさせる場合、自分のところの賃金ベースは三万円だけれども、おまえのところは二万円でいいということにはいかなくなる。そういうことによって是正を求めていく試みを現在も継続中であります。したがって、私はそういうものの考え方は適当でないと思っております。同時に今度は、それが純粋の経済的な問題からいいましても、そういうことでは必要ないい労働力は得られない情勢になってきておりますので、早くそういう考え方は捨てさせることが必要だと思います。  それからもう一つは、請負関係——元請、下請というこの請負関係が、きわめて不明朗であるばかりでなく、たとえば、社会保険に対する責任の持ち方についても不明朗なものがあります。そこで、そういうものについてのあり方を明確にするように、建設省、運輸省、農林省等にこちらから呼びかけをやっておる次第であります。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 最賃十六条方式の基礎になる今後の調査ですね、中央五業種、地方は五十職種を、調査する。そしてあと十六条方式等を適用するときに、いま大臣おっしゃったような考えを入れるお考えはございますか。
  135. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは元請だとか、下請だとかいうことによって差別をつけるべき性質のものではないと、私は考えております。
  136. 小柳勇

    小柳勇君 次は、社内預金の問題で質問いたします。社内預金につきましては、先般も社会労働委員会で質問いたしましたが、労働省は中央労働基準審議会に諮問されたようでありますが、その後の経過について承っておきたいと思います。
  137. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいま御指摘のように、社内預金に直接かかわりを持ちます労使の意見を聞きたいということで、中央労働基準審議会に諮問いたしたわけでございます。中央労働基準審議会といたしましては、これを、いわゆる部会等におろさず、直接総会において審議検討を続けたいということでございます。そういう方式をとりつつ今後検討を進めるわけでございますが、その審議会で検討いたしますについて、必要な資料を事務的に収集、整理するという作業を急いでおる次第でございます。
  138. 小柳勇

    小柳勇君 山陽特殊製鋼の問題につきましては、具体的にあとでお答え願うことにいたしまして、現在社内預金がほうぼうでやられておるのですが、現在の実態について労働省は正確に把握しておられるかどうか、お聞きいたします。
  139. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) かなり全般的な調査をいたしましたのは三十八年三月でございます。そのときの調査によりますれば、預金額約四千七百億円、適用事業約三万三千、こういうことに相なっておりますが、その後そのような広範な調査はいたしておりませんが、一つの傾向を判断するために、たとえば東京株式に上場されております主要な会社について、決算報告の中におきます社内預金額をとりましてその推移を見てまいりますと、昭和三十八年に比較いたしまして、三十九年においては約二割以上の伸び率を示しております。これが全体を示すものかいなか、これは正確に判断できませんが、常識的に言えますことは、東京株式上場会社のそういった金額の増高傾向、一年間に約二〇%以上伸びておるといったような傾向から推しますれば、現在時点におきましては、かなりの金額に達しておるのじゃなかろうかというふうに推定をいたしておるような次第でございます。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 労働基準法の十八条で社内預金などに関する管理について相当きつく書いてありますが、三十八年の三月、ちょうど二年前ですね、二年前に調査しただけで推定しながら話すということについても若干不満でありますが、正確に把握するということをするのかしないのか、山陽製鋼の問題もありますから、いま非常に大きな社会問題になっておるし、使用者にも大きな問題であるし、労働者にも大きな問題でありますが、実態をキャッチしなければ対策が立たぬのではないかと思うのですがね。この点について、調査などについての決意をお伺いいたします。
  141. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先ほども申し上げましたように、中央労働基準審議会で審議を始めるわけであります。そのための必要な調査がございまして、いま御指摘のように、できるだけ広範な調査を早急に完了いたしたいというふうに考えておるような次第でございます。おそらくは、あと数カ月たちましたならば、一応の事務的目標といたしましては本年の六月末に集計を終わる見込みで目下調査をいたしておるような次第でございます。
  142. 小柳勇

    小柳勇君 実態が正確に調査されましたあとで、またこれは論議しなければなりませんが、週刊誌の書いておるところによりますると、社内預金約一兆五千億円と、こう書いておるわけです。これだけの社内預金を管理しなければならぬ労働省のほうで、監督官など、現地のほうの監督は一体どうしておられるのか、お聞きいたします。
  143. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これは、先生御承知のように、基準法上は、その貯蓄金管理契約が締結せられました際に、その書面を監督署に届け出るという制度に相なっております。でありますので、協定が結ばれて届け出られました時点におきます適用労働者数とか、そういうものにつきましては個別に把握が可能である。しかし、絶えず動いてまいります預金額とか、そういうものにつきまして報告をさせるといったような義務が課せられてないわけであります。したがいまして、労働省のほうから末端の監督署を通じて、こちらから出かけていって調査をするという方式をとらざるを得ないのでありますが、先ほど申しましたように、目下その調査をいたしておるような次第でございます。  なお、監督の方法といたしましては、特に昨年末のように倒産がかなり広範に及んだという場合には、特別通牒を発しまして、倒産の可能性のある会社等につきましては、事前指導を行なうという措置を講じております。また、基準法十八条によりますところの貯蓄金管理契約の中止命令を監督署長が発し得るような制度もございまするので、あぶないと思われるものにつきましては、中止命令を発しまして支払わせるというような措置も講じておる次第であります。そのような行政指導によりまして、できるだけ未然に社内預金の不払いを防止すると同時に、御承知のような山陽特殊鋼とか、そういった具体的なケースにつきましては、自後の支払い計画の作成、あるいはその実行を監督するといったような指導をいたしておるような次第でございます。
  144. 小柳勇

    小柳勇君 届け出て、それを現地のほうでは把握しておるんでしょうが、監督官の数が一体何人いるかわかりませんが、個別個別にたくさんの会社の社内預金の実態など、なかなか把握できておらぬのではないか。いままで一体、中止などを命令されたような例がございますか。
  145. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) たとえば、昨年長野県におきまして倒産の風評をキャッチいたしましたので、社内預金の支払いにつきまして厳重に指導いたしますと同時に、そのうちで倒産いたしました三件について支払い問題が生じましたので、中止命令を出させまして、三件とも支払わせたという事例がございます。  ただ、御指摘のように、監督官は現在約二千四百名でございまして、四十年度予算におきまして約二百名の増加を見込まれております。わずかではございますが、二千四百名が約二千六百名になる、こういう人員の増もございますので、できるだけ監督を徹底いたしたいと思っております。  ただ問題は、十八条の貯蓄金管理契約そのものか、かつては認可制でありましたものが届け出制に、むしろ緩和されたというような形に置かれ、行政的な措置としては中止命令の命令権がある、こういうような制度に相なっておりますことが、はたして制度として適当であるかどうかというような問題も考えられ得るわけであります。そういった問題につきましては、今後中央労働基準審議会で、そういった問題も含めまして御検討いただき、そういった審議の結果とも相まちまして、今後監督に遺憾なきを期していきたいと考えております。
  146. 小柳勇

    小柳勇君 山陽鋼の社内預金の支払い状況については、その後調査しておられますか。
  147. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 新聞であるいは御承知かと存じますが、従業員の中で主任以下の地位にある者に対しまして、一人当たり五万円を限度に払い戻しの通告がなされました。金額的には約三千万円を用意したようでありますが、預金労働者主任以下の数は千八百九十七名でございまするが、その中で払い戻しを請求した者は五百六十名ということでございまして、千三百三十名程度の者が払い戻しを請求しなかったというような状況にございます。今後におきましても、会社更生法による更生決定がなされたわけでございまするので、今後の支払いにつきましても問題が起こらぬように、行政的には地元の兵庫労働基準局長が、管財人その他関係者に対しまして、労働者保護の見地からいろいろ連絡をいたしておるような次第でございます。
  148. 小柳勇

    小柳勇君 大臣に御質問いたしますが、いまのようなことで、社内預金については非常に不安があるわけです。労働者保護の問題について、さきに労働大臣は、大蔵大臣の言明もありましたが、五年くらいの期間を置いて廃止の方向で検討したいという御答弁もありました。それまで、この基準法十八条は欠陥がありますから不安でありますが、その労働基準法十八条の改正をやるのか、あるいはその他行政措置によりまして労働者保護をやるのか、いずれか見解をお聞きいたしておきます。
  149. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 非常に問題が出てまいりました。したがって、先ほどからお答えをいたしておりまするように、中央労働基準審議会で御検討を願っておるのでありまするが、しかし、現実にその結論が出、あるいはまた、その結論が出ても、そのの対策が終了するまでの経過的な措置としては、たとえば行政的に申しますなら、各月々における動態をもっとしっかりつかめるように、あるいは動態を報告する義務を持たせるように、あるいは会社の資産状況その他を勘案して、届け出ればいいということでなくて、やはり認可監督を強化するというような方向で行政措置を強化いたしてまいりたいと思っておる次第であります。
  150. 小柳勇

    小柳勇君 次に、労働災害について問題点を質問いたしますが、まず、労働災害の発生状況について最近の実態を御報告願いたいと思います。
  151. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 産業全体におきます死傷件数、これは、鉱業をも含め、一方においては船員法の適用を受けますものが除外されておりますけれども、それを除きます全産業の死傷件数を見ますると、昭和三十六年の八十一万四千件をピークにいたしまして、三十七年は七十九万四千、三十八年は七十五万三千、三十九年は推計でございますが七十三万一千といったような傾向をたどっております。数において若干低下の傾向にあるとはいえ、まだかなりの多数の災害をみておりますることは、はなはだ遺憾でございます。  このことにつきましては、一方で産業活動の活発化ないしは産業に従事する労働者数の相当な伸びがございます。したがいまして、災害の状況を見ます一つの基準といたしましては、労働者千人について一年間にどれだけの人々が災害を受けたかという、死傷年千人率で見る方法もあるわけでございますが、これを見ますると、三十六年は三九・三でございましたが三十七年は三六・二、三十八年は三二・八、三十九年は推定で二九・九というふうに下降いたしております。しかしながらこれを産業別に見ますれば、鉱業であるとか、建設事業、貨物取り扱い事業、林業等におきましては、実数並びに死傷年千人率とも、かなり平均を上回る高水準にあるわけでございます。こういった点につきましては、今後さらに監督指導を強化する必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  152. 小柳勇

    小柳勇君 昨年七月発足いたしました労働災害防止団体の活動状況について御報告願います。
  153. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労働災害防止協会は、御承知のように、中央に中央労働災害防止協会、業種別協会といたしましては建設業、陸上貨物運送事業、林業、港湾貨物運送事業、鉱業の五つございます。これらの団体は、おおむね昨年の九月ころまでに創立総会を終了いたしまして、組織づくりを急ぎますと同時に、具体的な活動に漸次移行してまいっております。当面各団体が主力を注ぎましたのは支部組織の設立でございます。この点につきましては、港湾貨物関係を除きましたほかの業種別協会では、かなり組織化が進みまして、ほとんどの県において支部組織を完了したというような状態になっております。  ところで、一方事業内容といたしましては、安全のための各業種別の手引きを作成する、そうしてその手引きを印刷配付して、講習会を通じて啓蒙指導を行なうというような、調査研究と具体的な講習指導といった面の活動が目立ってきております。また一方、コンサルタントの活動もあるわけでございます。遺憾ながら、コンサルタントの人選につきましては、何ぶんにも相当な知識と能力、社会的な経験を持った人をお願いするということでございますので、まだ人選が十分ではございません。ただしかし、中央労働災害防止協会におきましては、すでに地元の依頼を受けまして、コンサルタント活動を実施いたしたのが二百三件というような数に相なっております。業種別協会のコンサルタント活動につきましては十分承知いたしておりませんが、中央協会と同じように相当な活動を目下展開しておる。さしあたりは、地方の具体的な現場、職場の指導ができますように、地方におけるコンサルタントの選任ということに努力をいたしておるような次第でございます。  なお、各協会とも本部の組織はできましたが、まだおくれておりますのは、参与の選任でございます。御承知のように、参与につきましては、法案制定当時にいろいろな御意見がございまして、これを法制上明らかにいたしたものでございます。この人選につきましては、労使関係方面にすでに御依頼をいたしておりますが、まだ推薦を見ておりませんので、実はごく最近におきましても、再度参与の推薦方をお願いしておるというような次第でございます。もうやがて四十年度に移行いたしますので年度早々におきましては参与の選任も行なわすようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  154. 久保勘一

    ○副主査久保勘一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  155. 久保勘一

    ○副主査久保勘一君) 速記をつけて。
  156. 小柳勇

    小柳勇君 労災の問題をもう少しやりますがね。いま言われたコンサルタントが労使関係に介入しておるという話を聞くが、コンサルタントの仕事は、何も労使関係に入るんではなくて、いま言われたように、労働災害の防止などを見て指導するものと思うがいかがですか。
  157. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私、俗称コンサルタントと言われておりますので、コンサルタントということばを使いましたが、法律上の名称は安全管理士となっておりまして、従来技術的に指導を行なってきた技術系の方々でございます。労使関係の問題については、従来の経験から見ましても比較的関係の薄かったような人々でございまして安全管理士が労使関係に関与するといった点については、私どもそういった事例を耳にしていないんでございますが、もし、なんでございましたら、安全管理士ではなくして、いわゆる労務管理士とか労務士とかいわれておるような人々の問題ではなかろうか。安全管理士については、そういった労使関係についていろいろ調整するといったような能力については、率直に申し上げまして、あまり、えてな方はおらぬようでございますので、なんでしたら、そちらのほうではなかろうかというふうに推察いたす次第でございます。
  158. 小柳勇

    小柳勇君 労務管理士というのはいるんですか。
  159. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 俗に労務管理士と呼ばれております者は、相当な数の団体に達しております。昨年八月労働基準局で調査いたしましたものによりますと、約七百五十人ばかりの人が、労務管理士とか、あるいは労務士とかいうような名称を用いまして、労務管理の問題についていろいろ仕事をしておられるというふうに承知いたしております。ただ、これらの人々の中にも、日本労務管理協会のように社団法人として登録をいたしまして、ある程度責任体制を明確にして労務管理指導を行なっておる団体と、そうでない、比較的少人数でしかるべくやっておるものと、いろいろ差があるようでございます。その業務の内容も、主として労働基準法、労災保険法、失業保険法等の法律による手続につきましていろいろ相談に応ずるといったものが比較的多い。いわゆるあっせん調停を行なうような意味の、労使関係介入といったような点については、業務の実態から見ますれば比較的少ないのではなかろうかというふうに想像いたしております。
  160. 小柳勇

    小柳勇君 いまの労務管理士という人が労使関係に介入して、日経連の下請的な行為をしておるというような報告がありますので、労働省としては十分把握がないようでありまするが、早急に調べてもらって、労使関係に介入することのないように指導してもらいたいと思います。これは私の希望だけ述べておきます。  労働災害防止に返りまして、総理府に産業災害防止対策審議会というのがありますが、これは一体具体的に動いておるのかどうか。
  161. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私どもも、産業災害防止対策審議会には臨席いたしまして、その状況を把握いたしておりますが、産業災害防止対策審議会といたしましては二つの部会を設け、第一部会と第二部会に分かちまして、第一部会におきましては、安全教育の問題、あるいは新しい機械施設の導入にかかわる特殊な安全管理及び組織の問題、それから第二部会におきましては、一般安全管理、衛生管理といったような問題につきまして相当活発に審議を行なっております。二月、三月、回数はちょっと正確に記憶しておりませんが、相当回数開きまして、数日前も、第一部会、第二部会の報告を審議会で行なったような次第でございます。大体一般的な検討を終わりまして、近く専門家の海外派遣等の問題につきまして具体的な人選を行なう、こういうような予定にいたしておりまして、昨年三月一たん総理府設置法で廃止されたあの段階以前における審議会の活動状況と、現段階におきます活動状況を比較いたしましたならば、相当な差があるのではなかろうか。審議会の委員先生には非常な御苦労をわずらわしておるというように私どもは承知いたしておるような次第でございます。
  162. 小柳勇

    小柳勇君 昨年、この労働災害防止団体等に関する法律案を審議するときに、労働者代表を基準監督官などに採用して労働災害を防止したいという御発言があったように記憶しておりまするが、その後、労働者代表の範疇に入るような方が労働基準監督官になった事例があるのかないのか、お聞きいたします。
  163. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私どもの承知いたしておりまする点は、まあ、安全監督についてはさらに監督官を大幅増員すべきであるという点と、それから安全の監督と申しますか、むしろパトロールという観点から、それを制度化するように考えたらどうであろう、それからまた、それと関連いたしまして、現在労働大臣が委嘱いたしております安全指導員という制度がございます。この安全指導員に、労働者であって安全に関する知識経験を持つ方をさらに大幅に採用いたしまして、そして事業場の指導に当たらせるべきではないか、こういうような問題があったようでございまして、いずれも相関連したような問題として提起されておったというふうに承知いたしております。この点につきましては、昨年以来、中央労働基準審議会におきまして、安全管理者、衛生管理者制度の検討、それに関連して、安全委員会とか、そういった制度を鋭意検討いたしております。いずれ遠からず御意見がまとまると思いますが、そういった際には、安全衛生規則の改正といったような問題と関連しまして、安全管理組織の改善がはかられると思います。  一方、予算的には、いま申しました安全指導員は、従来二千人のワクを持っていましたが、これをさらに千人増加いたしまして、今後安全指導員に何をやらすべきかということをいま審議会で労使公益三者の間で御審議いただいおりますので、その安全指導員の行なう任務がさらに明確になりました際には、かねての考えのとおり、労働代表と申しますか、労働者であって学識経験——学識と申しますか、特に経験を積んだ方を安全指導員として委嘱申し上げ、広い意味の安全監督の計画の中において御指導をお願いしたいというふうに考えておる次第でございます。
  164. 小柳勇

    小柳勇君 労働災害防止につきましては格段のひとつ御奮闘をお願いします。  なお、最後の問題は、後日質問いたします。  次は大臣に質問いたします。季節労働者の常用化について非常に問題になっておりまして、労働省としては、各地に働きかけて、日雇いあるいは月ぎめのものを常用化すべきであるという見解で努力中であると考えまするが、現在の実情についてお話をお聞きいたします。
  165. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 詳細は安定局長からお答えをいたしますが、季節労働者と申しますか、そういう不安定な雇用関係で働いているものを多く使っている業種は、建設業、食品加工業、農業、水産業というようなものであります。そのうちで一番多いのは建設業でありまして、地域的に申しますと、北海道、東北、北陸いわゆる積雪寒冷地であります。これらは、冬は工事ができないものだという前提の上に立って、ほとんど冬は工事発注が行なわれておりません。しかし私どもの見解、あるいは私どものほうの役所で調査をいたしましたり、あるいはILOの資料等を集めました材料からいいまして、不可能ではないのでありまして、もちろん、日本より条件の悪い、たとえばカナダとかスカンジナビア諸国、あるいはポーランド、ソビエトというようなところは冬の工事が行なわれておるのであります。それからILOの調査によりますと、冬の工事は工費が三%か四%高くかかるそうでありますが、現に行なわれておる。これは、先般私どものほうで係官を派遣をいたしましたので、報告も来ていると思いますので、あとで御報告をいたします。そういう観点から、まず、工事発注を季節にならして行なうように、建設省、農林省、それから運輸省と工事発注者、あるいはそれを通じて各地方自治体並びに出先にやってもらうように、こちらから呼びかけると同時に、具体的な検討を開始いたしております。同時に、それに応ずるような技術的な検討も必要でございますので、各業界がそういうことの検討を始めてもらうように、業界にも呼びかけております。  またその以外に、林野庁の関係の従業員がございます。これは、この間どこかの委員会で私も強く長官をそばに置いて申したのでありますが、これはやはり常用化のほうに向かうべきものでありまして、いまの必要労働力確保方法というのは、どうも私から考えますと問題がございますが、その問題点について林野庁の考慮を促した、こういう状態でございます。
  166. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) ただいま大臣から御説明がありましたように、二月の中旬だったかと思いますが、閣議において通年工事の話が出まして、それを受けまして、三月の十五日だったと思いますが、建設省側と事務的にこの通年工事の問題について意見交換を開始いたしました。建設省側におきましても、工事の施行についての通年化の問題と、それから必要労働力の建設業における確保の問題、あわせてこの機会に積極的に検討しようということで意見一致をみております。さらに、建設業界におきましても小委員会をつくりまして、これは主として施工の面における技術的な問題を中心に通年工事化の問題を検討いたしております。われわれの労働省の立場におきましても、ヨーロッパ、カナダ等の実情視察をいたしまして、所要の資料も収集いたしております。その結果によりますと、技術的にはほとんど問題はない。ただ、従来のいろいろな慣行を改めていかなきゃならぬ面が相当ありますので、これを漸次改めていく。それからさらに、何といっても冬場の工事についてはコストが若干上がります。ヨーロッパのように、大体寒冷地帯に位する国柄におきましては、このためのコスト上昇は二、三%ないし四、五%というふうな報告が出ておりますが、わが国の場合には、この切りかえについては、そう簡単に、その程度のコストアップでは済まされないと思いますが、漸次こういった方向で、関係業界、関係各省検討いたしておりますので、通年工事という方向に向かっていくと思います。こういった背景をもとに、雇用の通年化ということを大きく打ち出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  167. 小柳勇

    小柳勇君 季節労働者の問題は、家庭問題とか、その他相当大きな問題を含んでおりまするので、ただいまの大臣並びに局長方針のように、常用化の方向に各省が協力をされることをわれわれは期待しておるわけであります。そういうものが真の雇用政策ではないかと思うわけでありまして、日々雇用なり、不安定な職業を選ばなければならぬ農村などの生活実態、そういうものも十分把握されて、早急に常用化の方向にひとつ努力してもらいたいと思います。  最後は、電気産業のスト禁止の解除の問題でありますが、きのう局長には質問いたしまして、最後のほう、はっきりわかりませんが、検討しておるような、あるいはしておらぬような答弁でございましたので、大臣からひとつはっきり見解を聞いておかなければなりません。  先般開かれましたのILO理事会での再度問題になったが、これはもう討論すべきものでもないのだという結論のようです。電気産業の労働者に一切のストライキ権を剥奪したようなスト禁止法である。しかも、それが十二年前に通ったのであるが、当時の実態から三カ年の時限立法として当時の実態としては社会不安を除去するためにやむを得ないというような思想で発効されたものである。その後電気産業労働者に対して、生活の安定に対する何らの保障なく、いまなおスト規制をやっているのはけしからぬ、これはもう討論する余地はないのだということです。したがって、われわれは、今回の国会にもスト規制法廃止の法律案を出しておりまするが、それはそれとしてまた別途論議いたしますが、こういうふうに結社の自由委員会の第十二次報告で論議され、いま政府に対して注意を喚起していると思うのですが、大臣の見解をお聞きいたします。
  168. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) もう経過その他については、あらためて議論をする必要はないと思います。法律制定以来、電気産業及び石炭産業等について——石炭産業はまた別で、電気産業においては、確かにストライキが起こっておりませんし、平静に進行いたしております。そういう状態を踏まえながら、法制定当時の情勢というものが、このスト規制法を改めることによって変更を生じないかどうか、その他について検討をさせておるのであります。「させているかどうかわからぬ」のじゃなくて、させております。
  169. 小柳勇

    小柳勇君 きのうの局長の発言の中には、労働者側にも、改正といいますか、廃止について若干問題もあるというような、ちらっとそんな話が出ましたもので、おそらくそういうことはなかろうと思ったのですが、速記録に載っておると思いますから、その点はひとつはっきりしておいてもらって、ただいま大臣が言われたように、早急に——このような諸外国の識者が笑うような法律案は、早急に排除されることを私は期待するのでありますが、きのうの局長の発言で少し気にかかりますので、お聞きしておきます。
  170. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 私が説明の中で、組合側の方も事務的な連絡のときにはあまり賛成でないというようなくだりのところは、十二次報告にあります代償保障措置ですね、スト禁止に対する代償保障措置の件でございまして、そのような強制仲裁の制度は、電気関係の労働組合の方は、ストのかわりに強制的な代償保障措置、いわゆる強制仲裁の制度については賛成ではないような空気を生じておる、こういうことでございます。
  171. 小柳勇

    小柳勇君 この問題、最後でありますが、さっきの山陽製鋼の話のときに質問すればよかったのですが、会社が倒産いたしまして、失業者が出るわけでありますが、こういう例がまだほかにもありましょう。あるいは炭鉱地帯でも、計画以上に失業者が出ると思いまするが、とりあえず、山陽製鋼の倒産による失業者に対して、具体的な対策を立てておられるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  172. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 石炭産業等につきましては、最近また、まとまった失業者が出る事態が出てまいりました。このことについては、いま早急に具体的な対策を講じさせておりまするし、あるいは産炭地振興事業団等で大規模な企業融資というようなことも考えて対処したいと思って、関係各省と折衝中でございます。  全体的に、企業倒産に伴っての失業者の発生度合い、その失業者の求職活動の度合い等については、あとで安定局長から御説明を申し上げたいと思っておりますが、全然ないわけではありませんが、意外にそういう動き方は少ない。安定所のほうに求職活動というものが、実は私そのつど報告を求めておりますが、意外に少ないのであります。しかし、今度の場合は非常に規模も大きいのでありますので、まず、そういうことが出ないように、政府としてできるだけの措置はとっておりますが、その場合どういう状態に出てくるか、それを見合いながら、むろん就職のあっせん等に努力をいたしたいと思っております。まだ具体的な数字等がはっきりわかりませんのですが、それを早急につかんで対策を講じたいと思っております。  ただ、先ほど申しましたように、今度の倒産というものの雇用面に対するあらわれ方というものは、私ども就任以来、こういう傾向になって、そのつど報告をとって、たいへんだろうと思っているほどに比べますと、意外に少ないというような、非常な、ちょっと妙な現象であります。ただ、それも一月ごろからは、やっぱり少し増大しているように聞いております。具体的な報告は。
  173. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 山陽特殊製鋼関係の離職者の問題でございますが、特殊製鋼自体からは離職の手続はまだ出ておりませんが、下請関係に約七百ほど離職手続が出始めております。ただこれは、離職しても、失業保険の受給という形でまだ立ちあらわれておりませんので、そこを最終的に見届けなければわかりませんが、大臣からただいま御説明がありましたように、受給者になって安定所の窓口にあらわれる以前に再就職をしていくのではないか。もちろん、まあこの中から若干これは安定所を通じて再就職をはかるというケースが出てまいります。また、中高年について再就職が非常に困難な場合は、中高年の促進措置に乗せて積極的に再就職をはかってまいりたい、こういうかまえで万全の態勢をしいておる段階でございます。
  174. 小柳勇

    小柳勇君 けさテレビを見ておりまして、北海道に帰る山陽製鋼の失業者の方の話を聞いたものですから質問したわけでありまして、下請会社などに相当発生するかもわかりませんし、現地の職安などを動かして、積極的に対策を立てていかれることを希望するものであります。  予算に対して、まだ具体的に問題がありますが、社会労働委員会などで後日質問することにいたしまして、質問を終わります。
  175. 鈴木強

    鈴木強君 私は二、三だけお伺いいたします。  労働大臣、この失保法の改正につきましては、従来私ども大臣から、改正をするということについては正式に伺っておらなかったのですが、そういう国会内における御発言については、そのように理解してよろしゅうございますか。
  176. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは、いま失業保険会計には、大きく申しまして三つ問題がございます。一つは季節労働、第二は結婚退職の問題、第三は五人未満の事業場に強制適用する問題、この三つでございます。  御質問重点が、要するに失業保険受給資格の期間を延長するとかなんとかということをする意思があるかどうかということの御質問ですが、そういう方法では解決しようとは思わない。むしろ、先ほどから御議論がございましたように、通年雇用をさせるようにするというようなことをやりながら、できるだけかわりの職業のあっせんをするということで問題を処理していきたいと思っておりますが、しかし、たとえば五人未満適用の問題とか、あるいは結婚退職者に対してどう扱うかという問題、これは非常に検討を要する問題だと思います。元来からいえば、結婚退職者という一般的概念から見れば、保険の対象にはならないわけでありますが、それだからといって。人によっては事情が違ってくる場合もあります。保険というものは短期の事故に対する保障ですから、掛け捨てが当然だ、したがって、掛け捨てすることを見込んで保険料があるのではないかと言われれば、それも一つの理屈でありますけれども、強制適用させているから、これはまあ大体婦人は結婚するにきまっていますから、九割五分まで結婚するでしょうから(笑声)、そういった場合に、その人に対しては掛け捨てを承知の上で強制加入をさせるというところに、やっぱり問題があるだろう、そういう点は検討しなければならぬと思っております。
  177. 鈴木強

    鈴木強君 新聞で、あなたが京都で御発言になったのが載っておりましたが、昨年からいろ社労委員会でも問題になりましてね、失業保険の改正についてはいろいろ問題点があるが、現段階においてそういう考え方はないという意見を聞いておっただけに、新聞を見まして、ははあこれは大臣ひとりのお考え方を述べておられると思って、言っておることは悪いことではないですから、だからそれは私は別に発言がどうということではないのですが、問題は、あなたの指向されている趣旨は私も賛成ですが、いまお述べになられましたような保険数理的な立場に立っての制度でございますから、はたして掛け金に利息をつけたものを返すような措置が、実際に失業保険会計の中でできるかどうか。これは私はよほど専門的に検討してみませんとむずかしいと思いますよ。現在でも保険金が足りない場合に、支払う場合、それは制度上の不備欠陥のあるのをうまく活用していろいろとやっておられる点もあるでしょう。いろいろの弊害もあるようですから、私はその弊害は是正しなければならぬと思います。ですから、そういうことをやりましても、なおかつ支払いがかなりふえてきているという段階だけに、構想は賛成だし、できれば私もすぐにでもやってもらいたいと思うが、はたして保険数理的な立場に立っての問題として、できるかどうかということを私は疑問に思ったのですよ。  もう一つは、あなたがよく言われている季節労務者の場合は、なかなかこれは打ち切ることはしかく簡単であっても、その人たちの生活の安定ということを基本的に考えなければ、なかなか私はむずかしいと思います。これは政治的にものごとをとらえなければなりませんからね。そういう意味において、いま直ちにそれをやるということは問題があると私も思います。しかし、行政指導その他において、また一面政治の面から、特に山村地域の林業労務者や農業労働者の生活の安定をもっと私は見てやらなければならぬと思うのです。そういう問題とあわせて考えなければならぬことですから、私は実は率直に、心配しているわけですよ。ですから、もう大臣、そういう点を、あなたはそつのない人ですから、検討を命じて、これは太鼓判を押したと。——従来非常に慎重でありましたようですから、これはひとつアドバルーンではなくて、そこまで検討してくれるだろうというふうに、私は半ば感謝の念を持って言うのです。だから、その点、ああいう発言になりますと、みな関心を持っていますから、実現せぬと、責任がありますからね。準備万端整っているとは思いますが、その点の確認を正式にこの委員会で伺いたいと思うわけです。
  178. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これはいまの御心配たいへんありがたい。おっしゃるとおりなんです。  それから保険理論から申しましても、先ほど申しましたように、当然の議論が出てまいります。ただ、京都で、府会でちょうど問題になったところでありまして、府会で問題になったときに、問題になった内容を記者団が話をしまして、それについてどう思うかと言うから、それはいろいろな方法があるだろう、問題はあるのだ、できるという意味ではないのだ、問題はあるんだけれでも、私自身の考えとしては、片一方に強制適用ということがある、婦人は九五%か何%かどうか知らぬけれども、とにかく大部分のものが結婚して退職をするんだ、その場合に、四年、五年、しかも長くても七年くらいで退職をするという人に、掛け捨ては当然じゃないかということは疑問があるから……。自分の金なんですね、あれは労使で掛けますから、経営者が掛けた分は別でありますけれども、自分で掛けた分ぐらいは何か方法はないだろうかと思って検討させておるのだ。しかし、保険理論から言えば問題があるのだ、こういうことを言ったのです。ところが、ただしのほうがみな抜けまして、ただし書きが抜けて出ましたために、いま問題になったわけでありますが、私はしたいと思っております。何とかしたいと思っております。しかし、それは簡単にできることではないということは十分に承知しております。これは、国のやっておる社会保険だけではなくて、保険制度全体に及ぼす影響が非常に大きいので、これは簡単にできるとは思っておりませんけれども、強制適用している以上は、大部分が掛け捨てを承知で強制適用をさせるということには、私は非常に問題があるということを私は申し上げておきます。
  179. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。私は大臣が積極的に記者団に語ったものと思いました。ですが、いまのいきさつでわかりました。ですから、聞かれたときに、こういう構想を持っているのだという意味の御発言であることがわかりました。しかし、まあ私も賛成ですから、これはひとつ検討していただいて、数字的にできるものならひとつ労働省が率先して、しっぽからやっていくというふうにお願いしたいと思います。  それからもう一つは、ちょっとそこの予算に、労使関係正常化ということが載っておりますね。一億何ぼですか。これは一体、そこにうたっている文句を見ますと、ちょっと気にかかるのですよ、私は。これはどういうふうに使うのですか。
  180. 石田博英

    政府委員(石田博英君) これは労政局の予算であります。労政局がいまやっております労政局所管予算を例年どおりちょうだいをいたしております予算であります。
  181. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃ、これはここで特別に……。これは款項目節のどこに当たるのですか。
  182. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 労働本省の項に当たるわけです。
  183. 鈴木強

    鈴木強君 いや、私の聞いておるのは、労政局の予算といいますと、款の中に入るわけですか。だからこれを再掲したのはどういう意味かということなんです。
  184. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 労働省の本省は、本省という一本で入っておりまして、そのうちの労政局の所掌しておる事務に関する予算、こういうことでございます。
  185. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、たいへん親切にこう書いたのだと思うのですけれども、こういうふうに抜粋して書かれておりますと——たとえば「国民経済の繁栄と民主主義の発展のため、労使が相互信頼と協力の精神を基調とし、平和的、合理的な話し合いを通じて労使問題の解決をはかるという慣行を樹立するため、」、ここまではいいのですね、これは。「労働教育等の指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議の予防とその円満な解決に努めることとし、」と、こうなっているのですが、少しさわるところがあるものですから私は伺ったんですが、そんなことは表現上のことで、まあ労使間の相互信頼というものを確立して、よき労使慣行の上に日本の産業が発展していくという、そういう趣旨のために使うということですか。何か特別の対策ではないのですか。
  186. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは例年請求し、例年ちょうだいをいたしております労政局所管予算であります。その中には、中央労働委員会、公共企業体等労働委員会等の費用もむろん入っております。
  187. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、ちょっとこっちのほうで明細のほうを見ると、中小企業集団といいますか、中小企業のほうにも何か出すでしょう。それば、補助金というのは、どういう意味ですか。
  188. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 四十年度から、従来各局に中小企業の労務改善のためのいろいろな経費が載っかっておったわけですが、これを今度は労政局関係ににおきましては、第一線の企業集団——これは協同組合とか地域集団をつかまえて、それに対して、いわゆる労務改善事業という名で、その協同組合なり企業集団について労務改善事業計画を作成させます。その作成した事業を遂行さすためには、国、県あわせて補助金を出そう、こういうことで、企業集団に対する労務改善事業についての援助、補助金、これは四十年度で約四百集団を指定していく、こういう考えでございます。
  189. 鈴木強

    鈴木強君 この補助金は、どういうふうに使ったかということについては、これは会計検査院がまさか行って見るわけにはいかぬ。半分以上が国の金で動く場合には、会計検査院で見られますが、二十万円か三十万円の金じゃ、ちょっと会計検査院が見るわけにはいかぬでしょう。そういう交付した金が適正に使われたかどうかということは、何で判断するのですか。
  190. 三治重信

    政府委員(三治重信君) これは、いま御説明しましたように、労務改善事業計画を提出させまして、その計画について補助金を出す。したがって、それについて実際の活動が行なわれる。その計画に従って行なわれるように、県においてこの対策協議会を設けさせまして、その対策協議会で審査し、それから実際に、その計画の中におきまして、県の段階における県の労務部関係、それから基準局関係から、その企業集団について、その計画に沿った時期に、それぞれ専門的に業務指導をしていく、こういう構想でございます。したがって、それを行なわないものについては、一たん補助金を出すように認定しても、その事業を行なわなければ、それは返還を命ずる、こういうことになっているわけです。したがって、支出も、その年間の計画につきましては、府県の対策協議会でその計画の実行の報告をまとめますとともに、一々その計画を承認する場合に、関係労務部並びに基準局のほうで、その計画時期にそういう改善事業や講習会をやるように指導していくつもりでございます。
  191. 鈴木強

    鈴木強君 労働教育、さっきの民主的発展と労使の相互信頼を深めて、協力の精神を強めていくという、その労働教育の指導啓蒙をやると、ここに書いてありますがね、その指導啓蒙というのは、二十五万円一カ所に金をやって、それで指導をするのですか。それとも、何か労働省としては、かくあるべきだという一つ方針を掲げて、それを啓蒙するために必要な経費として一カ所に二十五万円を流してやるのか、それともあるいは、時には労働省が出かけて行って講演したり、そういうふうなことも、この中には含まれているのでございますか。
  192. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 労働教育ということで特別に計上しておりますのは、これは労働組合の中堅幹部あるいは最高幹部、経営者の中のトップレベル、中堅労務担当職員というふうに、それぞれ種別を分けて、各都道府県で、そういう幹部講座、それから下級職員の講座を開きます。そういうものについてのいわゆる補助金と、それからそういう部面に使うときのいわゆる教育資料の発行費でございます。
  193. 鈴木強

    鈴木強君 大臣、これはちょっとあなたに伺いたいのですが、日本労働協会というものができましたね。日本労働協会は、本来労働省がおやりになる行政の中で、より具体的に効果的にやるためには日本労働協会のほうがよろしいということで設立されたと思います。したがって、私は、いまここに盛られているような内容だとすれば、むしろ日本労働協会がやったほうが私はいいと思う。そうでしょう。だから、そういうのは、もし予算に計上するならば、日本労働協会に交付する金もあるでしょうし、そういうものの中にぶち込んでやるべきじゃないでしょうか。こういう計上のしかたは、ちょっと、いまのお話を聞いてみると是正する必要があると私は思います。
  194. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 労働協会に対しまして、中小企業の労使関係近代化促進のための事業、青少年労働者に対する労働教育の推進等のための事業、労働教育のための刊行物の発行等というようなことを含んで五千三百二十万ほど出しておるはずであります。これは、この事務的な処理について、教育とか宣伝とかということは、おっしゃるとおり労働協会にやらしたほうがいいと思いますが、その所管を別に分けた理由を、ひとつ直接……。
  195. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 予算の立て方に若干関係をいたしておるようでございますので、私から事務的に説明さしていただきますと、先生御指摘の労働協会に対しますやつは、いわゆる労働教育全般についての事業を労働協会にやらせるというたてまえで考えておるわけでございます。  それで、後段で御質問いただきました中小企業を中心といたしました労使関係の安定に対しましては、先ほど局長が申しましたように、まず私どもの考え方は、第一義的には、中小企業者が自主的にいろいろ中小企業特有の労働問題を解決するための努力をお願いしたい。そのために、各種の団体で現にそういう努力もされておるわけでありますが、それに対しまして労働省といたしましては、その努力をさらに援助を協力していくというたてまえから、団体に対しまして一部その事業の活動を促進するための経費を出しております。それは、その事業自体につきましては、団体が最も自分らにふさわしい事業を選んでいただきまして、もちろん、それには一定補助要綱等で種類はきめてまいりますけれども、その事業を十全にやるために補助をしてまいるという考え方でございますので、直接の労働省の教育そのものというのとは、若干考え方を変えておるわけでございます。
  196. 鈴木強

    鈴木強君 予算の編成問題ともからむと思います。これは。日本労働協会というものに対しては、労働省からは交付金が年何十億かいくわけでしょう。日本労働協会のほうに労働省から交付金がいくわけですよ。したがって、日本労働協会に事業を委託するという中に、いま読み上げられたような三つの問題がございますが、これと、中小企業の労使関係の安定促進というものも、項目は別になっているけれども、内容を見ると同じです。これは。だから、日本労働協会に、どうしてもあなたのほうでやらなければならぬものを委託費として払うということと、日本労働協会の設立の趣旨からして、私は、このような内容のものについては、むしろ日本労働協会のほうの所管としてやったほうがいいんじゃないか、こういう考え方を持っているものですから、この予算を見ると、二十何億の交付金をやっている。額はあとで聞きます。額は私ちょっと見ておりませんけれども、何億かやっているでしょう。そうすると、こういうふうにしてできるだけ額を大きくしてやろうと、あっちからもこっちからもめんどうを見てやろう、こういう気持ちで項目もこういうふうにしたんじゃないかという気もする。ぼくはそんな悪意を持って見ませんけれども、とかくそういうことがありがちです。ですから、日本労働協会をつくったら、これがほんとうに目的を達成するように政府は見るべきです。金が必要なら幾らでも出して。だから、そういう趣旨に立って、その協会の業務の内容といいますか、そういうものとの関連で、もう少し検討してみたほうがいいんじゃないか、こう私は思います。
  197. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 運営上、労働協会には十五億円のファンドがありまして、その十五億円のファンドの運営上、運営利子が年間の費用になっておるわけであります。
  198. 鈴木強

    鈴木強君 交付金はないのですか。
  199. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 交付金は五千万円、これに入っております。五千三百万円くらい。で、それがたてまえであります。それで、労働協会自体でいろいろ事業をしていただくたてまえで、補助金を出したりなにかするということは、労働協会ではやっていないわけで、自分のところで出版物をやり、自分のところで講師の謝礼を出して講師を派遣するとかいうことはありますけれども、何かの団体へ労働協会からお金を出すということはしていないわけであります。それは地方に委託して補助金を出すというたてまえでありますので、別にしたものでございます。
  200. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、ちょっと、まだぼくはよく理解がいかないのですよ。日本労働協会というものの性格が、私も少しまだ十分ここで把握できていませんものですからね。しかしまあ、さっきからのお話を聞いていると、日本労働協会設立の趣旨等から見ましても、そちらのほうでやったほうがよりいいものは、そちらにやってもらってもいいんじゃないですか。あなた方がわざわざこれを委託しているのだから、そんなら向こうに頼んで、交付金は交付金として幾らでも出すように、きれいにしたほうがいいのじゃないかと、こう私は思うものですから、もう少し、その事務の問題と予算の問題とを検討していただきたい、こう思うのですよ。
  201. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは、私も予算編成技術のこまかいことはよくわからないのでありますが、労働協会自身が、いままで補助金、交付金というようなことをやっていなかったものでありますから、おそらくこういう立て方をしたのだろうと思うのであります。やろうと思う仕事方向は、労働協会の目標とするものと合致いたしますので、予算請求技術とか、編成技術は別といたしまして、運営上の検討はしたいと思っております。
  202. 鈴木強

    鈴木強君 それから婦人少年局長さんにちょっとお尋ねしますが、日本では、男女の同一労働同一賃金というのは守られているのですか。
  203. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) お答えをいたします。  基準法の施行に関しましては、基準局長所管しておりますから基準局長さんのほうからひとつ……。
  204. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 男女同一賃金の原則は基準法の第四条に規定されているのでございます。これは、先生御承知のように、使用者は、労働者が女子であることを理由として賃金について男子と差別的取り扱いをしてはならないということでございますが、労働の質が違います場合には、おのずから問題が別になってくるわけでございます。この点につきまして、しからば同質の労働ならば女子であることを理由にして差別待遇をしてはならぬと、こうなるわけでありますが、実はこの問題につきましては、ある労働が同質でありやいなやという場合の評価、認定が、一般的にはかなりむずかしいケースもあるわけでございます。しかし、明らかに同質の労働を同じ量だけ行なっておるという場合に、女子であることのみを理由にして差別待遇をするという場合には、これに該当してくるわけであります。そういう観点から、労働基準監督の場合におきましても、この規定の順守につきましては十分意を用いて監督をいたしておるような次第でございます。  そこで、監督はしておっても、どの程度の違反件数があったかということでございまするが、労働基準局の調べでは、昭和三十年以降の件数を申しますと、三十年五十件、三十一年四十四件、三十二年三十件、三十三年十二件、三十四年十二件、三十五年八件、三十六年六件というふうに、かなり違反件数も減少をしておるような次第でございます。
  205. 鈴木強

    鈴木強君 これは、どういう調査をなさったか、よくわかりませんが、労働基準局も、何か人が足りなくって十分に実態調査ができないのじゃないでしょうか。これはおおよそ幾つの事業所を見たのですか。
  206. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 大体年間二十万事業場を一応定期監督として監督を実施いたしております。その際の監督項目といたしましては、この基準法の第四条の規定なども監督の項目に入れまして監督を実施しておるような次第でございます。この規定の問題につきましては、先ほど申しましたように、労働の質が違うという場合にはこの規定ははずれる、いわゆる同一労働同一賃金というのとも、ちょっとずれた規定の書き方に相なっております。そこで、質の判断の問題もあわせて、もっと調べなければならないというような事情がございます。しかしながら、先ほども申しましたように、件数としてはわずかでございますけれども、明らかに違反もあるわけでございます。年間二十万事業場の監督そのものが数が少ないじゃないか、百九十万から二百万も年々適用事業場数が増加しておるという現状から見まするならば、監督の回数自体が少ないじゃないかというようなおしかりもちょうだいするかと存じます。先ほども小柳先生の御質問にお答えいたしましたように、監督官の増員も見ましたので、今後さらに違反の多い業種を重点といたしまして、こういった面の監督の徹底をさらに期したいと考えておる次第でございます。
  207. 鈴木強

    鈴木強君 この統計を見ますと、三十年からずっと減っておりまして、ごく最近は六件しかない、こういうことですが、いまもお話しのように、百九十万から二百万事業所が四条適用になっておるのから見ると、非常に少ないわけですから、それだけでも私は、同一労働同一賃金が守られているかどうかということの判定にはならぬと思います。一応の目安ではないかと思います。ですから、また基準監督官も少ないですから、そう無理も言わないですけれども、実態の調査については、これはやはり基準局が行かぬとわかりませんから、実際問題として、まさか会社に頼んでやってもらうというわけにはいかぬですから、その点ごくふうなさって、たいへん恐縮ですけれども、もう少し実態調査についての御配意をお願いしたいと思うのです。  それで、予算その他も非常に少ないと思うのです。大体日本の役所というのは、調査については非常に不勉強ですよ。資料なんかも、内閣統計局があるのですけれども、各省における統計関係は非常に私はお粗末だと思いますよ、欧米に比べてみると。ほんとうにお粗末だと思うのです。やはりこの科学的な時代には、データが絶対に必要なものであって、そのことがやはり私はすべての基本になると思うのです。特に労働省の場合には、たいへん御苦労な仕事でございますけれども、そういう点ひとつ予算的に必要があれば要求をして、何かこういう問題についても完ぺきな調査ができるようにひとつ御配慮をいただきたいと、こう思います。  それからもう一つ最後に伺いたいのは、海外に派遣されておる労働省の方々のことなんですが、現在は、何カ所、何名おりますか。
  208. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) ただいまはジュネーブのILO代表部に一名、ドイツのボンに一名、ロンドンに一名、アメリカのワシントンに一名、四名でございます。
  209. 鈴木強

    鈴木強君 私もちょっと、在外公館にお出しになっている、労働省から派遣の書記官の諸君にも会ってみましたが、それぞれ苦労されております。しかし、やはり日本の労働行政というのは、百年なり八十年なりおくれておりますから、やはり先進国のすぐれた行政を大いに勉強することが必要だと思うのです。そういう意味において、私は、金はかかりますけれども、必要なものはやはり出さなきゃならぬので、できるだけ各国の労働行政が、日本で、さっと、こう把握できるような体制をしいてもらいたいと思うのですよ。そのためには、もう少し現在行っておられる方々が、仕事の分野といいますか、目的というか、そういう点をはっきりさせる必要があると思うのですがね。結局、外務省に出向するわけでしょう。外務書記官として、出が農林だとかどことかいっても、向こうへいって、外務書記官として、本来の仕事ではないことを、やはり人が少ないものだから、やらされてしまえば、一生懸命勉強しても、一人でもってかけずり回って、なかなかポートを国に出すということもむずかしいような状態ですよ。たった一人ですからね。ですから、その点ひとつ十分配意していただきたい。  私は、ジュネーブなんかの場合は、特にILOがありますから、もう少し強化してもいいだろうと思いますし、他のところも陣容の面で強化をして、その目的を達成するか、せっかく派遣しておりましても、十分に向こうの事情がわがほうに伝わらないようになっても、結局これは金を損しちゃいますから、やはり、そこはもう少し強化してもいいから、やってもらいたいと思いますけれども、この在外派遣の労働担当官については、もっと私は強化してもらいたいと思いますが、大臣にこの際伺っておきます。
  210. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御説のとおりでありまして、できれば、必要なところには複数以上のものを置きたいと思っておりますが、いまのところは、個所をふやしたいという方針で、まあその次の機会には、今度日本のOECD加盟もありますものですから、フランスへやりたい。逐次ふやしていきたいと思っております。
  211. 久保勘一

    ○副主査久保勘一君) 以上で、労働省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会