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説明員(
石田礼助君)
国鉄が
運賃値上げをするということは、結局私は、目的は三つあると思うのです。
第一は、
通勤通学における今日のようなあの交通地獄というものを緩和するということ、これが
一つ。それがために、第三次
計画においては五千百億以上の数字を出しておるわけです。
その次には、幹線における
輸送力の増強、これは御
承知のとおり、幹線における
輸送力が不足のために、まずスピードアップ。そうして、過密ダイヤの解消。全く外国の専門家から見れば、軽わざのようなことをやっておる。実に危険しごくな話。そうして、
輸送の安全というものに対して、万全な
——、
政府が第三次
計画をどうやりましたところで、この過密ダイヤの解消はできない。要するに、緩和をするだけのことです。また、
通勤通学にいたしましても、現在では三〇〇%、あるいはそれ以上詰め込んでおる。それを二三〇—四〇%くらいまでにしていくということなんで、それに対しては、どうしたって自己資金というものをつくらなければならぬ。自己資金をつくるには、やはり
運賃の
値上げということになると思うのであります。
それから、さらに、
瀬谷さんに申し上げたいのですが、私はその時分には
国鉄に
関係しておらなかったのですが、
国鉄の
運賃の
値上げをするという場合に、まずもっていわれることは、
運賃の
値上げをする前に、
国鉄がまずもって合理化に徹せよ、こういうことなんです。それはごもっとも千万です。それで、鉄道会館の問題とか、いろいろ問題が起きましたが、現在において、
国鉄がとにかく
運賃の
値上げを要求する場合には、
国鉄は徹底的に合理化をしてやらなければならぬ、これはごもっとも千万です。では、どこに一体合理化の余地があるかということなんですが、まず私は、
国鉄の合理化という点からいけば、消極的と積極的との二つの面があるのじゃないか。消極的の合理化というのは、要するに経費の減。ところが、経費というのは何かというと、人件費と動力費と業務費と修繕費、こういうことなんですが、このうちで一番大きなものは、人件費なんです。ところが、これは
瀬谷さん
国鉄におられたから十分
状況を御存じだと思うのですが、人に関する限りは、
昭和二十七年から今日まで、ちっともふえてないのです。それだけ人件費というものに対しては努力してきたわけです。それで、結局、経費のうちの大部分というものは、とにかく四十
年度の
予算なんぞから見ましても、人件費というものは、工場だとかなんとかに入っているものを入れるというと、約三千八百億に近い。それで、ほかの動力費、修繕費というようなものは千四、五億なんです。結局、人件費に関する問題で一番大きな問題は、やはりベースアップこのベースアップの問題については、これは仲裁裁定に持っていって、公平な裁判のもとにやらなければならぬ。
国鉄当局としては、いかようにもならない。要するに、人件費でもって合理化をするということになると、人間というものの数はできるだけ少なくして、生産性を上げていく、こういうことなんです。これに対しても、私は相当限度に来ているのじゃないか。
あとの動力費、修繕費、業務費というようなものは、これは千五百億ぐらいでありますが、これは、まだ多少合理化の余地はないとはいえない。そういうことで、この消極的の面におきましては、合理化しようといったって、もう合理化する余地はないと思う。
じゃ、どこに合理化する余地があるか。積極的に合理化する。要するに
投資効果をあげるということ。要するに、
国鉄の
経営という面で企業心を高揚していく、収益をふやすということなんです。この点につきましては、私は
国鉄総裁になります前に、監査
委員長を六年やっておったのでありますが、要するに、
国鉄人というものは、いままでのうしろに日の丸の旗が立っているということで、どんなことをやったってブロークンしない。そこに官僚精神というものが横溢している。これを払拭せにゃいかぬ。すべからく官僚センスというものを払拭すべきだということで、最近における
国鉄は、そとから見ると、どうも
国鉄は営利心に走っていかぬと、こういうことをいわれるまでに、企業心というものは、向上してきていると私ば考えているのです。その結果が
瀬谷さん御
承知のとおり、何に出ているかというと、急行列車の増発ですね。これは、昔はわずかだったですが、近ごろは千以上出ているでしょう。これが
国鉄の非常な大きな収益になっておる。四十年においては約五百億円になるのじゃないか。
通勤通学の収入は四百二、三十億、つまり、
通勤通学の収入以上の収入というものが、急行列車の料金から出ておる。こういうことは、私は企業心の高揚の最も顕著なる例だと思います。そういうぐあいに、
国鉄というものは、まず合理化というものに対しては相当のことをやっています。とにかく、この第三次
計画によりまして、
通勤通学のあの交通地獄というものが相当に緩和された。それで、幹線における
輸送力というものはふえてくる。
輸送力がふえるということは、国家経済の発展に資する、こういうことになりますので、これはぜひひとつ、
運賃値上げというものは
——今後ともそれをやるにつきましては、
借金だけではとても
国鉄は立っていけぬ。やはり自己資金を増加することに努力せにゃならぬ。しかも、その
運賃というものは目立って安い。安過ぎる。天下にこんな安い
運賃というものは私はないと思う。これをひとつ是正していかなきゃならぬ。
実は、この間、ある
委員会で、
通勤通学の問題のごとき
改善した
あとでもって
値上げをするというのならわかるけれ
ども、
改善しない前に
値上げをするということは、商売の常則に反するじゃないか
——全くそのとおりです。しかし、どうしてこれはそういうことになったかというと、過去における
過剰投資の
負担、それからまた
公共負担、これだって、三十九
年度ぐらいから五千億近くになるのじゃないですか。そうしてまた、国がこれに対しては補償しないのみならず、安い
運賃を
国鉄に押しつけてやらせた、こういうことが原因になっているのじゃないか。
運賃の
値上げというものは、
国鉄が立っていく上からいえば、合理的な
運賃にしてもらう必要が絶対にある。こういうふうに確信しております。