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1965-03-26 第48回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)    午前十時五十六分開会     —————————————  昭和四十年三月二十五日予算委員長において、  左のとおり本分科担当委員を指名した。                 井川 伊平君                 大谷藤之助君                 郡  祐一君                 迫水 久常君                 平島 敏夫君                 村山 道雄君                 山崎  斉君                 稲葉 誠一君                 千葉千代世君                 中村 順造君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         中村 順造君     副主査         村山 道雄君     委 員                 井川 伊平君                 大谷藤之助君                 郡  祐一君                 迫水 久常君                 平島 敏夫君                 山崎  斉君                 稲葉 誠一君                 千葉千代世君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       関  道雄君        宮内庁次長    瓜生 順良君        皇室経済主管   並木 四郎君        行政管理庁行政        監察局長     山口 一夫君        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省人権擁護        局長       鈴木信次郎君        大蔵省銀行局長  高橋 俊英君        厚生省薬務局長  熊崎 正夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局事務総長   関根 小郷君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君    説明員        会計検査院事務        総局事務総長   上村 照昌君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————   〔年長者平島敏夫主査席に着く〕
  2. 平島敏夫

    平島敏夫君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもちまして、私が正副主査互選を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平島敏夫

    平島敏夫君 御異議ないと認めます。  それでは、主査中村順造君、副主査村山道雄君を指名いたします。     —————————————   〔中村順造主査席に着く〕
  4. 中村順造

    主査中村順造君) ただいま皆さま方の御推薦によりまして、私が主査をつとめることになりました。御協力をいただきまして、本分科会の運営を行ないたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりをいたします。  本分科会所管は、昭和四十年度一般会計、同特別会計、同政府関係機関予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣及び総理府のうち防衛庁、経済企画庁、科学技術庁を除く部分及び法務省並びに他の分科会所管に属しないものを審査することになっております。議事を進める都合上、主査といたしましては、本日午前、皇室費及び会計検査院、今後は法務省及び裁判所、明二十七日午前、国会、二十九日午前、内閣及び総理府という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村順造

    主査中村順造君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  6. 中村順造

    主査中村順造君) それでは、昭和四十年度総予算中、まず皇室費を議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。  並木皇室経済主管から御説明を願います。
  7. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) 御説明申し上げます。  昭和四十年度の皇室費歳出予算について、その概要を御説明いたします。本歳出予算に計上いたしました金額は、三十九億一千七百四十五万三千円でありまして、その内訳につきましては、内廷費が六千八百万円、宮廷費が三十八億一千七十七万三千円、皇族費が三千八百七十五万円であります。これを前年度の予算に比較いたしますと、十五億七千八百八十五万七千円の増加となっております。  そのおもなものについて、事項別に申し述べますと、内廷費は、皇室経済法第四条の規定に基づき同法施行法第七条に規定する定額を計上したもので、前年度と同額となっております。  宮廷費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上いたしたものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費一億五千四百四十四万六千円、前年度より本体工事に着手いたしました宮殿の新営及びこれに関連する施設等に必要な経費三十二億七千九万九千円、皇居東側地区整備に必要な経費七千五百二十九万五千円、その他皇室用財産管理等に必要な経費三億一千八十六万三千円でありまして、前年度に比較いたしますと、約十五億六千三百万円の増加となっております。  なお、宮殿の新営につきましては、別に国庫債務負担行為として二十八億一千四百二十五万五千円を計上いたしております。  皇族費は、皇室経済法第六条の規定に基づき同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上いたすことになっておりますが、前年度より一千五百八十万円の増加となっております。これは、定額の改定を予定いたしておりまして、独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王のうち成年に達した者に対する年額による皇族費の額を実情に沿うよう改めるとともに、年額算定の基礎となる定額五百十万円を、本年度から六百二十万円に増額改定することによるものであります。これに伴う改正法律案は、今次国会に提出いたし、御審議願うことになっております。  以上をもちまして、昭和四十年度皇室費歳出予算概要説明を終わります。  よろしく御審議あらんことをお願いいたします。
  8. 中村順造

    主査中村順造君) それでは、ただいまの説明に対しまして、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法の第八条に、皇室財産授受国会議決のことが規定されておるわけでありますが、これは旧憲法とはどういうふうに具体的に違うのですか。
  10. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 旧憲法では、そういうような制限規定は全然ありませんでした。新憲法に新たにそういう制限が設けられたわけであります。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その理由はどういう理由なんですか。
  12. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、この新しい憲法では、皇室財産はすべて国有とすというのがあとのほうの条文にございます。以前ありました皇室財産は、これをすべて国有財産にするということになりました。そのことがきまりましたにもかかわらず、この国会のほうの御承知になっていないうちに、いろいろ財産の献上があって、また国有財産でなくて皇室財産ができていくというようなことはどうであろうというようなことであったと思います。  なお、これは受けられるほうですけれども、お出しになるほうのこともございますけれども、お出しになるほうの関係も、いろいろな方面にいろいろお出しになることによって、当時のこれは占領下考え方があったようでございますが、皇室が現在よりさらに何か特別にその力をずっと大きくされてもどうであろうかというようなことがあって、制限されたのであります。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、皇室財産を譲り渡したり皇室財産を譲り受けたり、皇室財産を賜与するのですか、賜わり与える、賜与するということは、国会議決に基づかなければならないのですが、これはいままであったのですか。
  14. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) いままで皇室受けられるために国会議決を経たものとしましては、たとえば皇太子殿下が御結婚になりました御結婚お祝いというので、いろいろ皆さんからお祝いを上げたいという御希望があって、それもやはりお受けになることが、一般の常識から見てよろしいということで、その場合に、国会議決を特にいただいたことがございます。  なお、付け加えて申し上げますと、これは皇室経済法の中で、お出しになるほうが年額六百五十万まで、それからお受けになるほうは二百二十万までの範囲であれば、国会議決が要らないということになっております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、戦前に、天皇財産御料というふうにいっておって、御料には世伝御料普通御料があったわけですね。そうすると、それが全部国有財産になったわけなんですか、その関係はどういうふうなんですか。
  16. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) さようでございます。全部国有財産になりまして、そのうち皇室が引き続きお使いになる必要のある部分は、国有財産でありますが、そのうちの皇室用財産ということになりました。たとえば、いま皇居のお住まいになっておりますような、ああいうところは国有財産でありますが、皇室用財産であります。それから、たとえば木曾御料林というようなのは、これは全然皇室を離れまして、林野庁所管の普通の国有財産になっております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、いわゆる御料というものですね。世伝御料普通御料とあるのでしょうが、世伝御料というのは、土地森林——国有林でなくて御料林という形で、相当日本国中にたくさんあったというふうに考えられるのですが、それがどのくらいあって、どのくらいが国有財産に編入されたのですか。
  18. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その当時の正確な数字は、ちょっといま記憶いたしておりませんが、いずれにしても、御料林は全部国有財産になりましたので、皇室用財産として残されたものは——残すということばは悪いですが、皇室用財産とされたものは全然ございません。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よく御料林御料林というのが、地方に行くとあるわけですが、これがどういうふうな形でできたかということは、これは歴史の問題であって、ここでいま論議することではありませんが、具体的に、それが国有財産になったときに幾らぐらい当時あったのか。それがいまの時価に直すと一体幾らぐらいになるのですか。総司令部の発表によると、当時昭和二十年九月三十日ですか、十五億九千万円であったというふうに言われているわけです。だから、その金額が正しいかどうかは別として、それは今に直すと幾らぐらいのものが、いわゆる天皇財産としてあったのでしょうか。数字が違いますか。
  20. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) いまおっしゃいました数字は、そうでございます。これは物価指数などをかけてみることが必要と思いますが、土地の値上がり物価指数と必ずしも同様でございませんし、正確な計算はありませんが、それの相当の倍数になると思います。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おもにどういうようなものですか。森林ですか。
  22. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 一番おもなものは木曾御料林同種木材御料林、そのほかにも小さな御料林が各地にありまして、一番大きなものは木曾でございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは国有財産になって、そうして国有財産皇室用財産宮内庁公用財産大蔵省の管理する普通財産と、こう三つに分かれるのですか。どういうふうにそれは分かれるのですか。
  24. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その当時いまおっしゃるような関係になったと思いますが、しかし、その国有普通財産でなくて、あるいは公共用財産というふうになった分もございます。これはたとえば皇居前の広場などは、これは国有財産公共用財産、つまり公園の用地というふうになった分もございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、皇室財産は当時物納されたのですか。
  26. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 最初財産として大体九割くらい物納されまして、それから残った分につきましては、憲法条文によりまして、憲法の八十八条「すべて皇室財産は、國に属する。」というこの条文によりまして、残った分はまた国のほうへ帰属になったわけでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは天皇財産と、それから天皇家財産と、こういうふうに分かれていたんですか、これはどうなのですか、私はよくわからぬもので。
  28. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この前の財産のうちの世伝御料といっていたのは代々伝えられていたもの、そのほかの普通財産というのは適当にまだ御処理できる財産
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在では皇居とか離宮、御所、御用邸、こういうのは皇室用財産になっているわけですね。伊勢神宮はどうなんですか。これは皇室との関係はどういうふうになっておりますか。
  30. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 伊勢神宮につきましては、以前も皇室財産ではなかったと思います。で、現在においては宗教法人伊勢神宮に属する財産で、皇室との関係はその点ではございません。ただお祭りされている御鏡については、これは歴史的な沿革によりまして、天皇伊勢神宮をして祭らしめられているということで、この御鏡については天皇に属する。つまり三種神器は主として天皇に属するものであるとされているわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その三種神器などは、これはいわゆる皇室経済法の七条にいう「由緒ある物」、こうなるのですか。
  32. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) さようでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その三種神器は「由緒ある物」としてだれの所有になるのですか。天皇私産になるのですか。
  34. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これはやはり私産というようなことばは当たらないかと——自由に処分できるような財産ではありませんで、皇室に属しておるというもので、代々お伝えになるべきものというふうに考えております。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法律的にいうと、ちょっとあいまいかもわかりません。そうすると、天皇の物というんじゃなくて、皇室の物だというんですか、三種神器は。話が横へいっちゃって恐縮ですが。
  36. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) そこらあたり表現がむつかしいですが、天皇陛下の私的な財産ではない。皇室の長とされて、国の象徴という立場にある天皇に属するということで、いわゆる普通の私産ではないということでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、皇室天皇というのは、どういう関係になるんですか。日本では戦後いわゆる家というものが解体されたわけですね。そうなってくると、皇室というのは家みたいで、いわゆるその戸主みたいなことで天皇はあるんですか。皇室天皇とはどういう関係なんですか。
  38. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この点は、皇室に関しては普通の民間の場合の民法適用受けるような関係とだいぶ違いまして、憲法に基づく皇室典範適用受けております。天皇の地位は世襲とするというふうになっております。まあ以前の民法のちょうど家督相続のような考え方が残っておるわけですね。いまの民法上の家庭ですと、家督相続ということはないわけですね、その長男があとを継ぐというようなことはないわけですね。財産相続平等相続でございますが、そういうような点は、戦前と戦後では民法の普通の家の観念がずっと変わっております。皇室関係については、いま申しましたように、この皇室という家の観念が、普通と違って、あるわけであります。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、皇室典範は、前の皇室典範といまの皇室典範とは内容は変わっているんですか。前のは一たん廃止されて新しくできたんですか。どういうふうになっておりますか。
  40. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 前の皇室典範は廃止になって、新しい皇室典範憲法の第二条に基づいてこの国会議決によってきめられた。で、この内容は以前のとはだいぶ違う点がございますが、しかし、皇位の継承というようなことが大前提としてきめられておりますので、そのきめられ方はおおむね前の考え方を踏襲しておるわけで、その他身分の関係などで前とだいぶ違う点はございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 予算の審議ですから、あまりそっちへいってもあれですから、もとへ戻しますが、伊勢神宮そのもの宗教法人だけれども、そこにある御神体というんですか、それは天皇財産になる、そういうことになる、こう考えていいですか。ちょっとラフな表現かもしれませんけれども。
  42. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 大体そういう考えですが、天皇財産というのは、そういう表現では、ちょっとああいう特殊のことでございますので言いませんが、天皇に属するものであるというふうに考えております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 伊勢神宮の性格についてはいろいろ法律的な問題があると思うんですが、そこでこの内廷費というのと宮廷費と分けてあるんですが、この内廷費というのはどういうふうなものなんですか。なぜ内廷費宮廷費というふうに分けてあるのでしょうか。
  44. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 内廷費は、この皇室経済法にもありますように、内廷におられる天皇、皇后、皇太子、同妃、いまですと浩宮さんといいますか、内廷にある方の必要な諸経費ということで、これは「御手元金となるものとし、宮内庁経理に属する公金としない。」ということもこの条文にありますけれども、これはまあ幾らかぴったりと同じとも言えませんが、ちょっとわれわれの俸給にも似たようなものではあります。で、いろいろ私的な御経費ということで、これによっていろいろ御生活関係の必要な経費をまかなっておられるわけであります。ただ、われわれの生活と違って、内廷には内廷職員というのもあります。そういう内廷職員人件費というようなものも含んでおります。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 内廷というのは意味がはっきりわからないんですがね。内廷というのはどういう…。
  46. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは天皇に直接属しておられる一つの御家庭、それからそのほかに皇族宮家があるわけです。現在ですと、内廷があって、そのほかに四宮家がある。常陸宮家秩父宮家高松宮家三笠宮家と、こういうことでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その内廷費はお手元金となるのであって、宮内庁経理に属する公金としないと、こういうふうになっておるんですが、そうすると、内廷には内廷経理をつかさどるというような人がいるわけなんですか。あるいは全然そういうふうなものはなくて、どういうふうに言ったらいいでしょうか、一種の自治にまかせられている、こういうふうなことになるんですか。
  48. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮内庁としては経理をしないわけですけれども、しかし、陛下の私的な御生活の面もお手伝いをするということが宮内庁としての任務の中にあるものですから、それで実は皇室経済主管、この予算説明しました皇室経済主管が、内廷職員として内廷会計主管という資格を兼ねてやっているわけでございます。その面は、これは公ではなくて、私的にお手伝いをするというような形であります。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは毎年ずっと額は同じなんですか、内廷費というのは。どういうふうになっているんですか。
  50. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは物価上がりだとか、それからいろいろな状況によりまして上がってきておるわけですが、現在六千八百万円ですが、その前は六千万円で、この前の国会で八百万円の増額をしていただいておるわけです。今年度のこの関係についてはその点をお願いしてありませんですけれども、これはやっぱり物価上がりなどいろいろありますけれども、実は、義宮さんが内廷におられたのが内廷から出て常陸宮家をおつくりになりましたので、義宮さんに必要であった経費がそれだけ省けるものですから、いろいろの点をそれだけカバーするというので、増額をお願いしていないわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その内廷というのには、勤務をしている人は何人ぐらいいるんですか。
  52. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 内廷職員としては二十五名おります。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その二十五名というのは、天皇のところとか、皇太子も入るわけですね。そういうところにつとめている人や何かまぜて二十五名なんですか。
  54. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 侍従長とか侍従とか、そういうのはこれは国家公務員でございます。宮内庁職員ですが、まあ秘書的な仕事になりますが、そうでない内廷で特に雇っておられる人といいますと、掌典長ですとか掌典とか、ああいう神事をつかさどる人は、国の経費でそれを出すのは憲法上どうかというようなことで、そういうのは内廷職員でございます。それから生物学の御研究所、これも私的な御趣味でなさっているものですから、そういうところでお手伝いしている人とか、そういうような人は内廷職員ということになっているわけでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまちょっと話が出たんですけれども、神道ですね。国家神道というか、神道。これは皇室とはどういう関係になっているんですか。
  56. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、いわゆる神ながらの道といって、天照大神皇室の御祖先としてお祭りになる、そのほか、ずっと皇室の伝統として神々をお祭りになっておりますが、皇室宗教としては、やはり神道をとうとんでおられるということで、そういう意味においては深い関係がございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 神道というのは、ぼくはよくわからないのですが、神道の中にいろいろあるのですか。
  58. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) いま世間でいう神道の中に、いわゆるまあ戦前ですと、皇室でとうとんでおられる神道神社関係神道ですけれども、神社関係神道は、これは戦前宗教とは別だというふうなことをいわれておった。内務省がそれを所管しておった。そのほかに黒住教だとか金光教だとかいろいろありますけれども、これは宗教的な神道だというふうに区別されておりました。戦後においても、そういう感じの上においては違いはございまするけれども、やはりいろいろ宗教学者あたりで、やはり神社のほうのも一つ宗教と考えるべきだろうというのが普通の説になっておりますので、神道というようなことばも、それに含まれておるというふうに考えております。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、天皇が信仰されるのは、いわゆる神道の中で国家神道というものなんですか。国家神道ということばはちょっとはっきりしないかもわかりませんがね。
  60. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 以前国家神道といっていたものになるわけであります。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、天皇家では、神道を信じておる人でないと内廷には入れないわけですか。
  62. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その点は、現在そういう特別の制限はございません。やはり宗教の自由というものがございますが、しかし、現在の方は、いろいろな宮中三殿で神事のある際はそこへそれぞれ参拝をされております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも予算の話から横へそれて恐縮なんですが、そうすると、結婚式なんかはやっぱり神道の形式にのっとってやるのですか、あれは。
  64. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) たとえば皇太子殿下の御結婚、それか義宮さま——あと常陸宮さまになられましたが、御結婚の際、神前の誓いというのは、いわゆる国家神道といいますか、いまおっしゃったそういうことでなさっておりますが、その場合に、皇太子殿下の御結婚の場合には、ちょうどお誓いをなさるところがそういう形でやられるわけで、結婚の儀という全体は宗教的なものではない、その中にお誓いをされる部分神道によられるものがあるというふうに解釈しております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、天皇の祖先というものは、いまでも神だというふうな考え方に立っているのですか。
  66. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その神という感じが、西洋でいうゴッドとは違うわけでして、そこらあたりが非常にアメリカあたり、入ったときもわかりにくかったわけですけれども、日本でもわれわれの先祖の神というのはたくさんあるわけですす。神という概念は、いわゆるキリスト教でいうゴッドとは違うわけで、現代のわれわれから見て、特にとうとび、あがめていく人が神なんでして、何か宇宙創造のゴッドとは非常に違うわけです。そこらあたりは外国人にはなかなかわかりかねるところがあるわけですけれども、そういう広い、日本的な意味においては、そういう祖先の神をあがめたっとんでいくというわけであります。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、天皇家の歴史というのは、日本ではどういう書物の中にずっと載っておりますか、あるのですか。たとえば古事記にあるとか、日本書紀にあるとか、いろいろありますね、あるいは皇統なら皇統だけのものが特別にあるとか、天皇の歴史というようなものは、一番正確には日本のどういう書物の中にあるのですか。
  68. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) ごく古いところでは古事記、日本書紀でありますが、それからあとはいろいろの記録が正確に残っておりますから、そういうのによって天皇家の歴史というのがわかってまいりますが、古事記、日本書紀の古いところになりますと、いわゆる科学的な歴史であるかどうかということにはいろいろ議論がございますけれども、それを一応基礎にしております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 戻りますが、そうすると内廷費がことしはふえなくて、それで皇族費ですか、これがふえるというのは、これはどういうわけなんでしょうか。
  70. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 内廷費のふえなくてもいいのは、先ほど申しましたようなことでございますが、皇族費関係内廷費で申し上げましたような事情はございません。一方、最近皇族さんの御交際というのが年々ふえてまいります。特に外国との交際は、これは外国の大公使館の数も年々ふえてまいります。そういうような関係で御交際もふえてまいりまするが、なお、国内でのいろいろな大会などにお出になることもだんだんふえてまいりますし、そういう広い意味の御交際がふえてきておる。それから一般の経済生活の基準が高くなってきている、物価上がり並びに一般生活の程度が上がってきております。それといろいろバランスをとるために、ある程度お上げしていかなくちゃならない。それから宮家には、宮家で雇っておられる職員というのがそれぞれありますが、そういう人の待遇の改善費というものが必要であります。これは公務員のベースアップもありますように、宮家の人についても考えなくちゃならない。宮家について特に検討してみますと、公務員よりもちょっと低目な点が実はあったものですから、こういう点もこの際直さなければいけない。それにはやはり皇族費上がりませんとそういう点がおできになりませんのですから、そういうことで人件費の増というようなことも考える。三つの柱がございまして、交際のほうの関係経費の増と、それから一般経済生活の上がっているということとの均衡、それから職員の待遇改善と、この三つの観点から増額が必要だというふうに考えております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、宮廷費が非常にふえているわけですが、十五億六千三百万円ふえているわけですが、その宮廷費のふえた分が皇族のいろいろな生活費やなんかの増額のほうには回らないんですか、これは別個なんですか。
  72. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは回りませんで、皇室の公的ないろいろ御活動される経費とか、皇室財産の管理とか、そういうような経費でございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、皇室の公的な活動というのは、具体的には何を意味するんでしょうか。
  74. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、対外的には、外国から元首とかあるいは相当の貴賓の人が見えますと、皇室でいろいろ接待をされる、そういうようなこと、あるいは国内も含みまして、まあ園遊会なんかをなさるのも公的な活動の中に入りますし、それから植樹祭とか国体があって、そういうところへお出ましになるというのも、そういう地方の行幸啓、そういうのも公的な御活動になるわけであります。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この一億五千四百四十四万六千円というのは、これはふえる分ですね。あるいは全部ですか。
  76. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは総額がそれだけですということでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは幾らふえるんですか。
  78. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 昨年に比較いたしますと、ちょうど一億円ぐらいふえております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その皇室の公的活動が去年に比べると一億もふえるわけですか。そうすると去年は約五千万円ぐらいだったんですか。
  80. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) さようでございます。これはえらいふえるようにお思いになりましょうが、これはいままで国賓が見えますと、そのたびごとに必要な経費を予備費でいただく、それから皇太子殿下あたりが外国へ公式に親善で御訪問になる、そういう場合もそういう経費を一々そのつど予備費でいただいておったんですから、当初予算になかったのございます。しかしながら、一々予備費でお願いするのは、そのたびごとの経費が、時によって新聞に出るわけです。お客を迎えるたびにその経費が出るのは感じが悪いものですから、やはり当初に組んで、そうして不用になったら不用額としてまた国庫のほうへお返しするというようなことにしようというので、一億ふえたわけであります。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、皇室の公的活動ということは、いまの憲法ではとういうふうに——制限と言うとことばが悪いかもわかりませんが、されているのですか。ことに、政治的な目的を持ったと考えられる行為は、天皇はできないわけですか。
  82. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 現在の憲法ではっきり出ていますことは、天皇の国事行為、七条に掲げてありますこと、これははっきりいたしておりますが、そのほかについては、この四条で「国政に関する権能を有しない。」とありまして、国政に関するような政治的なことはなさるわけにはいかないわけですが、儀礼的なことをなさる、国の特徴というお立場で、いろいろ政治的ではない儀礼的なことをなさるということは、それが公的な御活動。学者は公的な活動の中に、はっきりとここに国事行為として憲法にあげたもの、そのほかに先ほどちょっと申しましたようなそういう公的な御活動がある、そのほかにまた天皇の私的なこともあるというように、分けて言っております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 天皇が国外に行くという場合には、いまは法令的な制限というか規律というか、そういうものがあるわけですか。
  84. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その点につきましては、この前の国会で、天皇が大きな事故のある場合は摂政を置かれるわけですが、摂政を置かれる程度に至らない故障がおありになる場合には、皇族の方が臨時に代行することができるという法律を、国会議決していただいたのですけれども、これは昨年公布になったわけです。それができておりますから、万一御旅行になるという場合ですと、その際、お留守の間のいろいろな御署名が願えませんから、そういう場合に故障があるということで、臨時の代行者を置かれる、そういう場合も順序からいきますと、皇太子殿下がかわられる、皇太子殿下が御都合悪ければ義宮、今の常陸宮さまというふうになっております。そういうふうなわけでありますが、しかしいまのところ、別に海外に御旅行なさろうという予定は全然ございません。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠君 それは、天皇の海外旅行ということを前提として去年改正したわけですか。
  86. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは当時総理大臣が説明されておりましたとおり申しますと、この憲法の第四条の第二項に「天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。」という、そういう条文があるわけです。ところが、その「法律の定めるところにより」という法律がまだ出ていない。だからやはり憲法の必要な関係法律がまだ出ていないわけですから、やはりこういうことは制度として整えておいたほうがいい、将来に備えて制度として整えておくべきである、どういうときにどういうことがないとも限らない、まあいまの御旅行の場合以外にめったにないと思いますけれども、摂政を置かれる程度でない御病気ということもありましょうから、そういう場合にあわてて法律と言っても間に合いませんから、将来に備えて、この際こういう法律をつくっておこうということで、昨年つくったわけであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 天皇が外国へ行かれる場合は、親善とかいろいろ儀礼などの場合もありましょうが、直接か間接かは別として、一つの政治的な目的というか、政治的な効果をあげるということは当然考えられてくるのじゃないですかね。そこのところはどういうふうに考えておられますか。
  88. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 国交の親善、お互い地球上に住んでいる人間同士が親しくしていくという、広い意味でそういう効果がそれは確かにあると思いますが、まあそれまで政治的というふうには普通は申さないのですから、その程度は政治的なことではないというふうに考えております。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけど、天皇がそういうような形で国外へ出られるということが、何か政治的に利用と言うと、ことばが悪いかもわかりませんが、そういう効果を伴うということを期待されて行なわれる場合もなきにしもあらずだと、こういうふうに考えるのですが、当分の間はそういうふうなことはないというように考えているのですか。
  90. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) いまのところそういう予定はありません。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、ちょっと疑問に思うのですけれども、あるいは疑問でないかもわかりませんが、総理大臣やその他の大臣が天皇のところへ行く、何というのですか、拝謁というか、お伺いしますね。そこでいろいろ政治の問題やら何やら、これは報告するのですか、天皇のほうから来てくれと言うのですか。あれはどういうふうになっておるのですか。
  92. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これはいまは特にお呼び出しになるというようなことはありませんですけれども、総理とか大臣がお見えになっていろいろ説明されることはございます。というのは、これは憲法第七条の国事行為で、いろいろな法律、政令、条約を公布するという場合に天皇の御署名が要る。あるいは国会関係でいいますと、召集、解散とか、総選挙の施行の関係とか、あるいは栄典の関係、あるいは外交文書の認証の問題とか、大公使の接受とか、いろいろ国政の面での、内容を決定されるということではありませんが、形式的なことでございますが、なさることがあるわけですね。そういうことに関連してやはり内容についてお話をする、全般についての背景のことをお話しするということは、これはときどきあると思っています。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、ここにありまする宮殿の新宮というのは、これは具体的にはどういうふうなことなんですか。これはここにある予算三十二億幾らですか、そのほかに国庫債務負担行為として二十八億幾らですか、宮殿の新営というのはどういうふうなことなんですか。全体の予算はどういうふうになっているんですか。
  94. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) それを申し上げますと、この三十二億の中に国庫債務負担行為が重なっておりまして、そして御承知とも思いますが、宮殿でその工事の工程によりまして、契約はするけれども金は払わない、翌年度になるという金額がございますけれども、その中に含まれている金は二十八億一千四百二十五万五千円でございまして、そのうち四十年度に支払う金が十八億九千四百六十四万六千円で、四十一年度に支払う金が九億一千九百六十万九千円、こういうことになっております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで宮殿の新営というのは具体的にどういうふうな計画なんですか。
  96. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮殿の造営につきましては、工事は昨年の六月の末に起工式があって、それから始まっております。三カ年計画ということで工事が始まって、三十九年度、四十年度、四十一年度、三年度で完成の目途をもって始まったのであります。しかし、いまのところどうしても少しおくれぎみになりますから、四十二年度にやはり入ると思います。それで四十二年の早くて夏あるいは秋になるのじゃないかと思いますけれども、それでこの面積は全体で約七千坪くらい。いろいろ最近外国からの客も多いですし、また国内のいろいろの方をお集まり願っての行事もなるべく多数の方が参列できるようにという考え方からいたしておるわけです。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その皇室用財産管理に必要な経費三億幾らというのは、これはどういうふうなことですか。
  98. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) これをこまかく分けて申し上げますと、いろいろなこまかいものが入っておりますので、たとえば歴代天皇陛下の陵墓、お墓がございますですね、それを維持管理をする費用、それから埼玉と千葉にカモの猟場がございます。そういうものを管理する費用、それから牧場が下総にございますが、そういうものを維持管理する費用、それから皇室用財産、さっき次長の申された皇室用財産という土地建物がございますが、これは那須御用邸も皇居も全部含まれますけれども、こういうものの維持管理、そういったものを全体合わせますと、これだけの金額になるわけでございます。
  99. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど国有林とかその他、もとの皇室用財産というのが国に返されたと、こうおっしゃった。現在皇室が独自に使えるといっては恐縮ですが、そういうふうな財産というのはどのくらいあるのですか。たとえば那須の御用邸とか葉山の別邸とか、あれは皇室財産としてどういうふうになっているのですか。
  100. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) こまかい点になりますので、私から答弁申し上げますが、現在国有財産のうちの種別の皇室用財産というのは、宮内庁で直接管理している土地が七百九十万坪でございます。これは去年の三月三十一日現在でございます。それから建物といたしましては、同じく皇室用財産という国有財産が去年の三月三十一日現在で四万七千坪でございます。そのほかに公用財産といたしまして、いわゆる公務員の宿舎というものが別にございます。
  101. 千葉千代世

    千葉千代世君 この土地の七百九十万坪というのは、私は不勉強で存じませんが、税金はかからないのですか。
  102. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) これは国有財産でございますので税金はかかりません。ただ財産のあるところの市町村に交付する金はございます。
  103. 千葉千代世

    千葉千代世君 たとえば葉山の別邸とか那須の御用邸とかというのは。
  104. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) 同じく税金はかかりません。
  105. 千葉千代世

    千葉千代世君 そのかわりという意味ではないでしょうけれども、その土地に対して、寄付の形なんですか、交付金というのは。
  106. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) それは法律に基づきまして、国有財産所在市町村交付金というのがございます。それで出しております。
  107. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから各宮家ですね、宮家財産というのはこれに含まれていないで、たとえば三笠宮家なら三笠宮家財産というのはどれに。
  108. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) 三笠宮さんの名前が出ましたが……
  109. 千葉千代世

    千葉千代世君 三笠宮家というのは例を言ったんですが、特定でなくてけっこうですが。
  110. 並木四郎

    政府委員並木四郎君) 簡単なことですから申し上げますが、常陸宮さまがいま申し上げました土地建物の中に入っております。というのは、常盤松は皇室用財産土地でございまして、そこにできております御殿も皇室用財産でございます。ですから申し上げましたものの中に入っております。  それから秩父宮殿下につきましては、戦前の御殿が焼けまして、日本家屋が少し残っておりまして、そこへつけ足しまして、それを殿下のほうで皇室財産に寄付なさいまして、建物も土地も現在は皇室用財産になっております。  三笠宮殿下につきましては、土地は借りておられます。民有から借りておられます。建物は自分の御所有であって、申し上げました皇室用財産の中に入っておりませんです。
  111. 千葉千代世

    千葉千代世君 前に東久邇さんでいらっしゃいますか、高輪の地所の問題で、何か天皇が差し上げると言ったとかそうでないとか、訴訟がございましたですね。それはどういうふうに解決なさいましたか。
  112. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) あの訴訟の関係は、訴訟を取り下げをされまして、それでもう昨年になりますか、三十九年の何月でしたか、あそこが皇室用財産でございましたが、皇室用財産を解除されまして、普通の国有財産でなくて、普通財産にかわりました。これは大蔵省の管財局のほうでこれを処理をされるということで、これは管財局のほうで処置なさっております。したがって、あの訴訟事件は解決をしておるわけです。
  113. 千葉千代世

    千葉千代世君 解決したというのは、東久邇さんが御承知になって取り下げたんでしょうけれども、それに対して、条件というのは何かあったんですか。何も利子も上げないで解決した、こういうことですか。
  114. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、表面に出た条件はありませんですけれども、しかし、東久邇さんがお住みになる場所が必要ですから、お住みになる場所を——この三月の終わりにもう移転の準備なさっていると思いますけれども、別のところへ移転をされる。そういうようないろいろの世話は、宮内庁が直接関知しておりませんが、大蔵省なり、なお、あの土地の払い下げといいますか、払い下げを受けるほうの立場のほうで、立ちのき料とか、いろいろなものが要りますから、そういうようなことの中に含んで考慮されて、御生活の立つようにしておる次第であります。
  115. 千葉千代世

    千葉千代世君 内親王、具体的にいえば、いま三笠宮の御長女の方ですね、ああいう方が成長に達して、その方に対して、今度皇族費として差し上げるわけでしょう。その方がかりにお稼さんにいらっしゃいますときには、皇族を離れるわけですね。そうすると、それに対しては、島津貴子さんと同じような額の何か費用がお出になりますか。
  116. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは皇室経済法できまっておりまして、皇族としてもらわれる金額の十倍以内の金額を、皇室経済会議できめましてお上げするというふうになっております。
  117. 千葉千代世

    千葉千代世君 もう一つ、ちょっと横にそれて恐縮ですが、五月三日がじきまいりますが、この憲法記念日には、皇室ではどういうことをなさるかということと、それから、かつての紀元節、二月十一日ですね、いまは紀元節でございませんが、二月十一日には、どういうことを皇室でなさっていらっしゃるんでしょうか。それだけちょっと……。
  118. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 五月三日の憲法記念日、特別の行事は別にございません。それからかつての紀元節の日、二月十一日、これも特別のお祭りとかいうようなことはございません。
  119. 千葉千代世

    千葉千代世君 というのは、憲法を発布したその当時から続いて、いわゆる皇居前広場ですか、あれは宮城前広場というんですか、皇居前広場というんですか、正しい名前は何というんですか、そこに皆集まって天皇がお出になりまして、そうして憲法記念日を国民と一緒に祝ったですね。あれは途中取りやめになりましたね。それ以後は、全然何もなさっていないわけですね。
  120. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 憲法の発布の記念のあの行事が、皇居前広場でありましたが、あれは政府のほうでなさって、そこに天皇陛下がお出ましになると、こういう問題になりますと、政治的な問題になりますので、先ほどお話がありましたように、皇室としてはなさらないわけでございます。
  121. 中村順造

    主査中村順造君) 他に御質疑のおありの方はございませんか。——それでは以上をもちまして皇室費に対する質疑は終了したものと認めます。   〔主査退席、副主査着席〕     —————————————
  122. 村山道雄

    ○副主査村山道雄君) 次に、会計検査院所管を議題とし、まず、説明を聴取することにいたします。上村事務総長。
  123. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 昭和四十年度会計検査院所管歳出予算について御説明申し上げます。  昭和四十年度会計検査院所管一般会計歳出予算の要求額は、十三億九千七百二万円でありまして、これは、会計検査院日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づいて会計検査を行なうために必要な経費であります。  いま、要求額のおもなものについて申し上げますと、職員千二百十二人分の俸給、給与、手当等として九億七千五百五万一千円を計上いたしましたが、これは総額の七〇%に当たっております。職員を現地に派遣し実地について検査するための旅費として八千五百二十七万二千円を計上いたしました。なお、外国旅費として三百十七万三千円を計上いたしましたが、これはイスラエル国エルサレムにおいて開催されます第五回国際最高会計検査機関会議に出席するなどの経費及び沖繩援助費の実地検査に要する経費であります。事務上必要な備品、消耗品、通信運搬、印刷製本、光熱水料等の庁費関係経費として六千五百四十一万七千円を計上いたしました。庁舎施設関係経費といたしまして、前年度に引き続き庁舎増築工事費として二億四千七百七十八万二千円を計上したほか、エレベーター改修工事費として八百二十万円及び庁舎屋上漏水改修工事費として六百二十五万五千円を計上いたしました。  なお、検査を強化するため、参事官一人、上席審議室調査官一人の振りかえ設置を計上いたしました。  次に、ただいま申し上げました昭和四十年度歳出予算要求額十三億九千七百二万円を前年度予算額十一億三千百三十五万二千円に比較いたしますと、二億六千五百六十六万八千円の増加となっておりますが、その内訳について申し上げますと、職員の俸給、給与、手当等において四千五百八十五が九千円、実地検査の旅費において六百四十三万八千円、庁費関係経費において一千四百七十四万円、庁舎増築等の施設経費において一億九千七百七十三万四千円、その他の経費において八十九万七千円となっております。  以上、はなはだ簡単でございますが、昭和四十年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額の概要の御説明を終わります。よろしく御審議のほどお願いいたします。
  124. 村山道雄

    ○副主査村山道雄君) それでは、ただいまの説明に対しまして、質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 会計検査院の検査のやり方ですね、それにはどういうふうな方法があるのですか。私の聞きたいのは、普通の検査のほかに、特に、何といいますか、簡便な検査のやり方があるというふうに聞いておるものですから、その点をお聞きしておるわけですけれども……。
  126. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 一般的に申しますと、検査は書面検査と実地検査と、こういうふうに分かれておりますが、実地検査は、これはところによって、簡単にやるところと非常に綿密にやるところと、実際問題としてはあると思いますが、書面検査のほうにつきましては、一般に、私のほうで規則でどいうものを出せということを一般的に規定して、その書類を出さして検査しておるわけでございますが、その中で、あるいは俸給だとか、それから公務員の宿舎料だとか、あるいは収入が非常に少なくて数の多いというようなものについては、私のほうで特に指定いたしまして、証明書でよろしいというようなことで、簡易な形で証明さしております。なお、そのほかに、報償費とかあるいは捜査費、それから法務省関係の情報調査、大体そういうふうな特殊なものにつきましては、相手方官庁等から、記入して書類を出すのは遠慮したいというようなことで、私のほうも、もっともだということで、一応書類は簡易な形でとっておりますが、実地検査の際にこれを見るというたてまえでやっておるものがございます。以上でございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの書面審査なり実地検査の場合の規則というのは、どういうふうなものなんですか。正式な名前はどういうのですか。それと、いま言ったように、私の言う簡易検査、名前はちょっとどうか別として、警察、ことに警備警察、それから公安調査庁あるいは一般の刑事警察でもそうですが、そういうふうなもの、あるいは防衛庁の中にも入るかもしれませんが、そういうふうなものについては、会計検査院が実際にはほとんど検査をやっておらないと言っては語弊があるかもしれぬけれども、向こうの出し受け取りがいろいろあるわけです。受け取りの内容などについても、調査をしないというか、向こうが機密だと言われるために、ほとんどそこでやらないで済ましてしまうというふうなことがあるというふうにも聞くのですが、いまいうところの簡易検査でいいという規則は、どういう規則で、その正式な名前はどういうのですか。
  128. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私どものほうで証明規則というのがございますが、これで一般的の通則を定めておるわけでございます。その中の条文の十一条に、「特別の事情がある場合には、会計検査院の指定により、又はその承認を経て、この規則の規定と異なる取扱をすることができる。」、これも、一般に私のほうでは簡易証明ということでやっております。証明が出てくるのは、結局受け取りだとかというようなことで、内容はよくわかりません。できるだけこれは検査に行きまして詳細を、できるものは書面、できないものについては、十分説明を聴取して検査を終了しておる、こういうふうな状況でございます。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの特別の事情があるときには、会計検査院の指定する方法だとか、あるいは承認があれば簡易証明でやれるというのは、現実には、いまはどことどこの役所に対して会計検査院はやっているのですか。
  130. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) いまの簡易証明のほうの関係は、いまの報償費以外に、たとえば公務員の給与だとか、あるいは宿舎料あるいはその他非常にこまかいもので数の多いようなものについて、証明を省略しておりますが、これはどこそこということを、ちょっとあれですが……。
  131. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一般の……。
  132. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) いま、ほかのほうの関係内閣の報償費、総理府関係、警察庁関係の報償費、捜査費、それから法務省関係、これは公安調査庁ももちろん入りますが、報償費、調査活動旅費、それから外務省の報償費、こういうふうなものでございます。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、具体的には会計検査院はどういうような検査をやるのですか。いま言ったようなものについて全然やらないのですか。あるいは、やることはやるのですか。そこのところはどうなんですか。
  134. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) この中で書面検査では、先ほど申し上げましたように、受け取りくらいのものですから、これは十分わかりません。実地検査に行きまして、大体それはどういうふうに出しておるか、あるいはそこにある書面、そういうものから、その支出が適当であるかどうかということを検査しておるわけでございます。中には書類のとれないものにつきましては、相手方に十分聞きまして、大体よろしいのだという心証を得ておる。その場合に、たとえば公安調査庁だとかいうふうなものは、これは地方の部局が相当あるわけでございますので、これについては全部は施行しておりません。おそらく、全体でいえば四〇%くらいになっているのじゃないかと思いますが、中央官庁一本のところは、大体一応全体を実地検査において調査して検査を終了しておるというようなことです。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言われたのがちょっとよくわからない点もあったのですが、そうすると、内閣の報償費というのは、これは内閣調査室がおもですか。具体的にはどこなんですか、内閣の報償費というのは。
  136. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 内閣自体と、調査室も入っております。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あとは警察でしょう。警察は警備と捜査もあるというのですが、それから公安調査庁、それから外務省、これらのものがいろいろ情報をとるためとか、いろいろな形でお金を使うわけでしょう。そうすると、受け取りがあるものもあるし、その金がどういうふうに使われたかわからなくて、受け取りのないものもあるわけでしょう。そういう場合に、会計検査院としては、受け取りがなくてもかまわないのか、あるいは受け取りがあっても、ほんとうにそれがそこから支払ってもらってきた受け取りか、なかなか外部に説明ができない機密というか、捜査とか、いろいろな情報を探るために特殊に金を使っておる。そしてそれを明らかにできないからほかの形の受け取りで間に合わせるという、いわば虚偽の受け取りを使ってくることも相当あると思うのです。あるいは受け取りのないものもある、こういうような場合、これは会計検査院としては、現実にその受け取りがあって、その受け取りが真正なものであり、そこに現実に金が支払われたかどうか、こういうふうなことについては、これは書面にしろ、実地にしろ、やらないのじゃないですか。それがいわゆる簡易証明というものの本筋じゃないのですか。
  138. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 簡易証明の本筋とおっしゃいますと、前半に申し上げました分につきましては、これは全然問題はないと思いますが、あとのほうの問題につきましては、仰せのように、領収書のないものもこれはもちろんあると思います。それから、あるいは虚偽のものがあるかどうか、これは私もわかりませんが、おそらくある場合もあるのではなかろうかというふうには考えますが、これは相手方から事情を詳細に聞きまして、一応心証を得るといいますか、そういうことでございまして、その先まで追及するということは、現実の問題としては、やはりいろいろの面が、機密の問題でもございますので、そこまで入るのはどうだろうかということで、十分聞いた上で納得がいく範囲において了承して、これで大体資料としては適当だという判断のもとに検査を終了しておると、こういう形でございます。
  139. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言ったような内閣なり調査室の報償費とか警察警備関係、公安調査庁、その他こういうふうなものの費用というのは、相当ばく大な額にのぼっているわけですが、これは、いまはどの程度かはっきりいたしませんが、公安調査庁の調査費だけで大体五億から六億近くあるわけですね、いま。公安調査庁の調査費だけで、去年が五億一千万円でしたか。いま幾らありますか。
  140. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 六億でございます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから警備警察のいろいろな捜査費だとか、報償費だとか、いろいろあるわけですね。こういうふうなものが実際には何に使われているか。やはり会計検査院としては、つかもうと思うよりも、むしろそれは相手方の言うなりにまかしておいて、実際には内容に立ち入った検査をしないで済ましておるというのじゃないですか。
  142. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それは受け取り方についていろいろの考え方があると思いますけれども、私のほうとしては、国費の関係でいまの現在の状況においては、機密費というものはございませんので、できるだけ聞いて、そして怪しいものについては、なお聞いていって、それで最終的には一応了承するという形をとっておるわけでございます。その姿において、これではどうだろうかという御批判もあるいはあるかとも思いますけれども、われわれのほうとしては、検査を十分にしなければいかぬという基本的の考えで実は検査をしておるわけでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言ったようなものの検査は、検査をしたときに、その結果を会計検査院のほうに報告するのですか。それはどういうふうになっておるのですか。会計検査院の決算の証明書の中には、これらのものは国会出しますね、国会に出すものの中に入っておるのですか、入っていないのですか。
  144. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 全体の決算の確認という意味においては、もちろん確認の中に入っておるわけでございます。私のほうの取り扱いといたしましては、すべてのもの全部上まで上げて詳細検討するという全般的のたてまえはとっておらないわけでございます。課で検査いたしまして、いろいろ疑問の点は局で相談いたしまして、局でいろいろ検討した結果、検査報告にあげなければならぬというようなものにつきましては、順次上げてきまして、それを審議して、検査報告に個々の問題としてあげることが適当なものについては、これはあげていくという態度でございますので、いまの報償費、捜査費等の内容はどうであるということを、その年その年全般について、院全体としてこうだという形はとっておりませんが、検査のやり方が、全般的に、課でやり局で検討していくというたてまえでやっておりますが、そういう範囲においては、十分検査をしている、こういうことになっております。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実地検査で現地へ行って、あるいは東京でもあれですが、実際に検査をするわけでしょう。検査をして、いまあげたようなものの検査はこういうふうにやったのだ、こういうふうな問題点があるとか、こういうふうなことは、行った人から会計検査院のほうへ報告として復命するというか、出すのですか、やらないのですか。いま言った公安調査庁とか、警備警察とか、あるいは内閣調査室関係、こういうものはどういうふうになっているのですか。
  146. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私のほうで検査に行きまして、内容を調査して、これは非常に疑問があるとか、不当であるとかいうような問題につきましては、私のほうも、内部のあれといたしまして、大体申報書といいますか、書類として一応報告するという形になっております。いまの問題になっているものにつきましては、そういう報告が出ていることは、私は承知しておりません。それで具体的には、おそらく検査して大体よかったという判断をしておるのでございます。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま前にあなたが言われたのは、こういうふうなものの中には、受け取りがないものがあるというわけですね。受け取りがなくても会計検査院としてはかまわないわけですか。こういういまあげたような費用の出所については、かまわないわけですか。
  148. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) すべてのものについて、受け取りがあるのが原則であります。これが取りがたい場合はしかたがないと思います。
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 受け取りが取りがたいというのは、一般の役所の場合と違って、これらの場合には非常に多いわけなんでしょう。そういうことは、あなたのほうで認めているわけなんですか。
  150. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 取りがたいことにつきまして、認めているといいますか、全般的にそういう傾向があるということは、私どもも考えております。そういう場合につきましては、相手方からこれはどういうわけで取れないのだというような点を十分聞きまして、これは中にははっきり聞けなかったとかどうとかいうことがあるかもしれませんが、大体聞きまして、一応、了承しておるわけでございます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 了承したかしないかは、あとの問題として、たとえば、いまぼくがあげたようなところへ行ったところが、金の出たことは出たとして説明するけれども、受け取りはない。受け取りがないならないということが、あなたのほうで検査に行っ七、それを聞いて、こういう点について受け取りはなかった、こういう説明なんだが、こういうふうなことは、あなたのほうでも記述して、会計検査院のほうに検査に行った人が報告するのですか、しないのですか。
  152. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それは現実には報告しておりません。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうしてですか。
  154. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それは、たとえば公安調査庁について申し上げますと、やはり人の名前を出すのがいやだとか、現実に受け取った人がそれで偽名を使うということはあるだろうと思いますが、偽名を使ったという場合に、正当な領収書かというと、形は正当な領収書ですけれども、領収書ではない。そういうようなことが相当あるということは常識で考えられるわけであります。それについて一々報告するというたてまえをとらなくても、特にその中で不当だと思われるようなものがあるならば、これは報告することが当然だと思いますが、そうでないものについてまで報告することは、いまやっておりませんし、報告する必要はないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、公安調査庁とか警備警察、一般の都市警察、あるいは内閣調査室、こういうようなものの検査には、定期的に行くことは行くのですか。行って、その結果、どういう検査をしたかということの報告を、行った人が会計検査院に対してするのですか。これは、不当なものとか不正なものがあったときだけに報告をするのですか。会計検査院の検査のやり方というのは、そうではないでしょう。一般的にいって、検査をやれば何日かやるわけですから、いつ幾日行って、こういうようなことを具体的に検査した、この結果はこういう点だった、その中で、受け取りのないものは何枚ぐらいあった、その説明を聞いたところが、こういう説明だった、あるいは、内容で虚偽のように思われるものもあるならあるとか、こういう説明を向こうがすれば、それはあなたのほうとして、行った以上、ちゃんと向こうの言い分を書いておいて、何か残しておかなければならぬのじゃないですか。残さないのですか。
  156. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それまで公式文書では残しておりませんけれども、現実に行きました場合、これはどの程度聞いているかわかりませんけれども、報償費とか、いろいろな問題が問題になっておりますので、局長なりが、おそらくこれはどういうふうな状況だったかということは聞いて——局ではもちろん聞いていると思います。文書では、おそらくやってないと思います。
  157. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、聞くことは聞くけれども、聞きっぱなしで、それについて、全体の金額幾らで、どういうようなあれがあったとか、受け取りのないものが幾らぐらいあったとか、あるいは受け取りがあっても内容的に違うとか、いろいろなものが出てくると思うのですが、そういうものはどの程度あったかというようなことの結果を報告するということは、いままではずっとやっていない、こういうふうに承っていいわけですか。
  158. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) お話のとおりでございます。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたがさっき言われました四〇%ぐらいというのは何でしたか、ちょっと聞き取れなかった。
  160. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それは、たとえば内閣の報償だと、内閣の検査に行きますから、大体一応見るわけですが、たとえば公安調査庁の調査活動費だとか、あるいは警察の捜査費とかというものは、一カ所だけでありませんので、地方が相当ありますので、そういうものを入れた場合に、全部には実地検査で見ておるようになっておらないということでございます。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから防衛庁の場合は、やはり検査に行くのですか、どうなんですか。
  162. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 防衛庁のほうはもちろん検査に参っておりますが、防衛庁の報償費は、ちょっと、あるいは記憶違いかもしれませんが、一般報償費といいますか、たとえば隊員の報償というようなもののほかに、一部そういうものがあると思いますが、これは十分見ております。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本にいるアメリカの顧問団や何か、今度ああいうところに日本からも金が予算で出ているのですか。そういうようなところは、あれは全然会計検査の対象にはならないのですか。
  164. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) ちょっと私詳細な点を承知いたしておりませんので、顧問団のほうは、あれは別口で行っているのじゃないかと思います。行けば行ったというだけで、それから先は検査しておりません。
  165. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もういまの会計検査院の目的からいっても、いま私のお話ししたようなところの検査がもっと具体的にできてないというと、一体それらが何に使われたかさっぱりわからない。まるで暗黒政治かスパイ政治でも現実に行なわれているのを黙認しているというような結果になるのではないか、こう私は思うのですが、これは根本的な問題として、もっと論議しなければならぬのではないかと思うのです。現実に日本には国家機密はないということは、会計検査院認めるわけでしょう。   〔副主査退席、主査着席〕
  166. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 国家機密があるかないかということになると、いま経費のほうの関係で、昔と違いまして機密費というものがございませんから、これが機密費であれば、われわれも、ほったらかして、もちろん見ませんけれども、そういう意味の機密はない6ないが、やはり国政を執行していく場合に、相当の秘匿を要するというようなことで、われわれは検査をしているわけであります。機密だというふうに考えて。その機密ということばの取り方でございますけれども、昔のような意味では考えておりません。
  167. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、くどいようですが、公安調査庁とか警備警察とか内閣調査室とか、こういうようなものを現実に検査して、不正があるか、不当があるかは別にして、いつ幾日こういうようなところに行ってこういう検査をしたのだということの記録は、会計検査院にあるのですか、ないのですか。
  168. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 検査に行きました場合に、そこの一つの庁で検査する事項が十なら十ほどある、そのうち五つやったとか、三つやったとかということは、表示しておらないわけでございます。それで、そこの庁に行ったということは、これはもちろんわかるわけでございます。そういうところでありますれば、報償費なり、そういうものがあるものについては、これは現在は大体見ておるということになっております。
  169. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その報告が来ているのですか、会計検査院に。その記録はあるのですか。
  170. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 記録といいますか、行って、そこの役所を検査したということは記録にあるわけでございます。そのことは、やはり最近は、報償費とかそういうものは十分見ろということで話しておりますので、これは見ておるというふうに認定ができるように、総括的には、そこの役所を検査したということになっておりますので、わかるようになっておるわけでございます。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いつ幾日、そこの役所へ行って検査したということは、これはもう一行か二行ですね。そういうのじゃなくて、何と何をどういうふうに検査したならば、結果として、こういうふうなものであったのだということの報告というか、記録は、会計検査院に残っておるのですか、残っていないのですか。
  172. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 全般的には残っております。残っておりますというのは、報告事項があるものについては、記録として報告するということになっておりますので、これは残っておるわけでございます。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、報告事項というのは、不正や不当があっということを報告しろということなんですか。全般的にその検査の内容というものをこれは報告しろということはないのですか。
  174. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) これは全般的の思想から申し上げますと、個々の不当だけをやるということが任務じゃございませんので、全般的なことをもちろん考えております。そういう面で、全般的のことを考えなければならぬという点があるならば、これはもちろん記載させることにしております。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、私の言うのは、それは、全般的に直さなければならないところがあるということとか、不正とか不当とか、こういうようなことがあった場合に、会計検査院がその記録をつくっていたり、保存したりするということは、それはよくわかるのです。そうじゃなくて、いま言ったような公安調査庁とか察警庁とか、特に警備察警にしろ内閣調査室にしろ、そういうようなところへ行って検査したとかいうこと自身は、かりに不正とか、全般的にあれすべきところはなかったにしても、いつ幾日に行って、どういう内容のものを検査したのだということの、そういう内容程度のものはないのですか。
  176. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) これは公式記録としてはおそらくないと申し上げたほうがいいのじゃないかと思いますけれども、行きました人は、やはりいろいろなことを調べるわけでありますから、十分これは調査しております。それは局長にもおそらく来ておるのだと思います。
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実地に行って検査したり、あるいは書面審査をしたりするのでしょう。その報告は書くわけですか、書かないのですか、そうすると、職員は。
  178. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) これちょっと全般的には同じことになるかと思いますけれども、全般的には、Aという役所へ検査に行きますと、どういうことだということを報告することになっておるわけです。これを全般的に報告すると申しましても、全部、一から何まで書くわけにいきませんが、それで全般的のことを書かなければならぬものについては、これはもちろん書きますが、それと、それから、不当なり、あるいは経理を改めなければならぬというような面は、これは行った人の検査のしかた、受け取り方によって多少違いますけれども、一応書くというたてまえになっておるわけでございます。で、現実の問題といたしまして、捜査費、報償費、中には、私が記憶があるのでは、捜査費とか、そういうものでそういうものを書いて出しておったのもあるかと思いますけれども、全部が書いておるかとおっしゃいますと、ちょっといまの対象になっておる科目について、全部書いておるということは、ちょっと申し上げかねるわけでございます。
  179. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その職員を現地に派遣し、実地について検査するための旅費として、八千五百二十七万二千円ですか、計上してあるわけですが、これはどの程度のことを考えているわけなんですか。職員が千二百十二名いるということで、全部の人が出張して検査するというわけじゃないのでしょう。何人くらいの検査する人がいて、どうなんでしょうか。月にどの程度行くようなことになっているのですか。これはこまかいことですが、特に私が聞きたいのは、旅費が、旅費というよりは宿泊費、これは幾らくらいになっているのですか。
  180. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私の役所の検査のしかたは、大体、調査官というのがおるわけなんでございますが、その数が五百六十四名ということになっておりますが、そのほかに、やはり官房にいる調査官以上の者、あるいはそのほかで、調査官ではありませんが、やはり検査に出ていくというようなものがおるわけです。大ざっぱに申しまして八百名以上ぐらいに、全般としてはなっているのじゃないかと考えております。予算から申しますと八千五百万円で、大体一人当たりが十万円くらいの見当になるのじゃなかろうかと考えております。それで、どういうことを目標にしているかということでございますが、私どものほうとしましては、できるだけ実地検査を相当やりたい、こういうような考えでおります。まあそういうことで実は八千五百万円よりもう少し実は——もう少しといいますか、相当ほしいというもともとの考え方は持っているわけでございますが、本年度は前年度より六百万円、わずかではありますがふえる、それ以上は国家財政のいろいろの関係で無理だということで、八千五百万円で一応了承した、こういう実情でございます。
  181. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、一人平均して年間約十万円、その宿泊費は幾らぐらいになっているんですか。これはクラスによって違うでしょうけれどもね。
  182. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 検査に行きます一等級、二等級が、これは乙地で申しますと、二千百円でございます。それから三等級、これが千八百円でございます。それから四等級、五等級が千五百円、六等級以下が千二百円、こういうことになっておりまして、これは一般公務員と同じでございます。
  183. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、まあ一般公務員と同じで、公務員全体の旅費、宿泊料の問題にもなるのですが、会計検査院の人が出張していったときには、泊まるのは大体あれですか、検査する先が世話してくれるところが多いのですか。
  184. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 私のほうで、指定旅館といいますか、協定旅館というものをつくり、それからあるいは、できる場合には寮を利用する、寮といいますか、共済組合の寮、場合によれば向こうの寮も利用せざるを得ないという場合もあります。それから現実の問題といたしまして、それだけを使っているかというと、これはそうじゃございません。実際問題として行きます場合に、非常に九州なんかへ行きまして、桜の見どきに行きますと、やはり宿屋なんか込みます関係上、すぐそこへ行って泊まれるかというと、なかなか泊まれぬのが実情でございますので、ある程度やはり相手方に頼まざるを得ないということで頼んでいるような状況でございます。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実際は、最初の日は行って調べますね。そうしてその晩は相手のほうでどこか温泉に行って世話して案内して、そこで帰ってあくる日から検査のやり方ががらりと変わる。がらりと変わるというか、だいぶやわらかくなるということの効果もねらって、実際は温泉や何か相手方の官庁が世話しているのじゃないかと思うのですが、それはどうですか、実際は。
  186. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) いままでの現実の例は、私は役所におりながら、なかなかわからぬというのは、はなはだ申しわけないのでございますが、何といいますか、温泉につかってのんびりしていたということはもちろんないと思います。
  187. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 のんびりしているかどうかは別な問題として……。
  188. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 現在は、相手方にできるだけ迷惑をかけることを少なくしようということで、非常に実は努力しているわけでございますが、まあ接待とか、そういうものはこれは受けないように、やはり何といいますか、できるだけ向こうに経費がかからないようにということを主眼としていきたいということで現在はやっております。それでも検査に参りますと、私どものほうから見ますと、向こうの方が出てこられる、あるいは自動車をどうしても借りなければならぬということで、これは相当のやはり負担になるということは、われわれ十分考えておりますけれども、その中でもできるだけ負担を少なくするということに実は努力していきたい、こういうふうに実は考えているわけでございます。
  189. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ慣例として大体検査を受けるところが、旅館や何かをきめて、そこへ行ってもらって、そうしてある程度、接待というか何というか、する。その宿泊費ですね、ことに晩飯のあれですか、それらは出張した検査の人が払わない、向こうが持つという形は現実に行なわれているのじゃないですか。これは、全部だというわけではないですよ。そういうものもあるのじゃないですか。
  190. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) そういうものもないというたてまえで実はやっているわけですが、おそらくないと思いますが、現実に県なんかの人が来られた場合に、ところによって違いますと思いますけれども、聞きますと、県で相当安い旅館で指定というものをやっておられます。それは半分くらいじゃないかというと、いや、それはそうじゃないということで、現実には安いのだが、それでやっていけるというようなこともあります。これはそういうものはまだ聞いておりませんのでよくわかりませんけれども、おそらく、例外的にはあったかどうかちょっとわかりませんけれども、われわれとしては、相手方にそういう意味で負担させることは、これはいままでもないように私は考えておったわけですが、今後はそういう点を十分気をつけてやっていきたいということで、せっかくわれわれ現在努力しているわけでございます。
  191. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いろいろいまの点は聞くのですけれども、これはまあ別にして、ここにある沖繩援助費の実地検査に要する経費、これは具体的にいうと、どういうことなんですか。いままで沖繩援助費の実地検査というのをやっておられるわけですか。
  192. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 沖繩援助費は、だいぶ前からございましたけれども、実体的の工事だとか、そういうふうな関係は、これは繰り延べ、繰り延べで繰り越してきているわけです。それで三十八年度に、結局昨年にしましたのが三十七年度の繰り越しの関係の検査をやった、これが初年度でございます。おそらく実体的には、何と申しますか、ここくらいから始まっているのじゃないかと思いますが、今後は大体、毎年そういうふうな仕事がございますので、毎年行って検査をしたい、こういうふうに考えております。
  193. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的には、沖繩援助費の実地検査というのは、何をやるんですか。
  194. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 援助費でまあ金をやるという問題もありますけれども、今度行きましたのは、たとえば港湾とか道路とか、そういうふうな目に見えたものの工事関係とか、そういうものをやっておるわけでございます。そういうものを主として行って、検査しておるわけで、港湾工事、そのほかももちろんございますが、そういう関係を見てまいります。
  195. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それは相手の沖繩にある、何というか、琉球政府ですか、それの承諾を得て行くわけですか。アメリカのほうの弁務官ですか、その承諾も得て行くんですか、どういうふうになっているのですか。
  196. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) それは、総理府のほうで援助されます場合に、覚え書きを交換されておるわけです。覚え書きを交換されたものによりまして、一致の条件が整った場合には、日本政府が検査してよろしいということになっております。その条件が整いました場合に、現実にはわれわれが行って検査をするということになっております。
  197. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その覚え書きというのは、どんなもので、いままで沖繩援助費の実態についてどういうふうな検査を何回ぐらいやったのですか。いつ幾日、何人ぐらいの人が行って、何を検査したとか、そういうのはわかりませんか。
  198. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 沖繩に実地検査に行きましたのは、昨年が最初でございます。昨年の五月の終わりでございます。三人で行きまして、九日間ほど検査しております。
  199. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 覚え書きというのは、どういうふうなものですか。無制限日本が——日本というか、会計検査院が行って、検査をするのは認めてないわけですね。
  200. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 三十八年度の関係ですが、覚え書きの条項の9というところに、「総理府は、この覚え書きの条件に基づいて資金を交付した事業の完了及び補助金の適正な支出を確認するため職員を派遣することができる」ということで、それからそのほかに、「同職員は、総理府、高等弁務官府及び琉球政府によって同意された次の場合に派遣されるものとする。援助事業の進捗状況に関する四半期報告書が、事業の完了を示した後。すべての事業が完了した後。」、こういう条件のもとでやれるということでございます。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その結果についての報告は、まだ出てないわけですか。
  202. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 昨年検査いたしまして、検査の結果は、もちろんわかっております。これは、もちろん報告も出ておるわけですが、国会に報告するような不当な事項はないということで、検査を確認しておるわけでございます。
  203. 中村順造

    主査中村順造君) 他に御質疑のおありの方はございませんか。——それでは以上をもちまして、会計検査院所管に対する質疑は終了したものと認めます。  午後一時三十分再開することにいたし、これにて暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  204. 中村順造

    主査中村順造君) これより予算委員会第一分科会を再開いたします。  まず、法務省所管を議題とし、説明を聴取することにいたしたいと存じます。高橋法務大臣。
  205. 高橋等

    ○国務大臣(高橋等君) 昭和四十年度法務省所管予算内容につまして、大要を御説明申し上げます。  昭和四十年度の予定経費要求額は五百四十三億三千六百三十四万三千円であります。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に一億八千九百十一万二千円が計上されております。前年度当初予算額四百九十四億一千二百九十万四千円に比して、法務省所管分は、四十九億二千三百四十三万九千円の増額となっております。なお、前年度の補正後予算額五百九億四千百二十三万六千円に比して、三十三億九千五百十万七千円の増額となっております。  増額分の内訳を大別して御説明いたしますと、第一に、人件費関係の四十九億五千四百九十九万一千円であります。これは、昨年実施されました公務員給与ベースの改定等に伴う増額分及び昇給等原資としての職員俸給等の増額分がおもなものでありますが、そのほかに、検事・法務事務官等百三十五名(ただし、欠員より充当の三十七名を含む。)の増員に伴う所要人件費が含まれております。  第二に、一般事務費としての八億七千二百六十七万四千円であります。これは、事務量の増加に伴い増額されたもののほか、積算単価の是正及び職員の執務環境または矯正関係収容者の処遇等の改善に伴う増額分等でありますが、そのおもな事項について申し上げますと、  一、治安対策の充実の一環としまして、暴力、公安検察交通事犯取り締まりの強化をはかるための検察体制の拡充強化経費、矯正収容者の衆情を安定させるための処遇改善等経費、不法出入国者取り締まりのための違反調査経費及び破壊活動調査機能の充実のための団体調査経費等の増額分として二億九千九百八万二千円があります。  二、国民の権利保全対策としまして、登記事務の適正迅速化をはかるための事務処理改善等経費、基本的人権擁護の伸長をはかるための人権侵犯事件調査経費増額分として六千四百三十五万四千円があります。  三、非行青少年対策としまして、青少年検察、少年院の教化活動・少年鑑別・保護観察・少年非行予防対策の研究等の充実強化をはかるための経費増額分として一億五千二十四万三千円があります。  四、臨時司法制度調査会答申対策の一環といたしまして、司法制度、検察組織等の調査研究経費、検察官の執務環境の是正をはかるための経費増額分として五千三百六十八万二千円があります。  第三に、営繕施設費でありますが、九億四百二十二万六千円の減額となっております。これは、法務局等施設の新営費等三億三千百六十七万五千円が増額となっておりますが、刑務所施設取得費の対象庁の変更に伴いまして前年度に比して十二億三千五百九十万一千円が減額となったことに基因するものであります。  なお、建設省所管計上の官庁営繕費につきましては、一億二千二百十一万六千円が増額されております。  次に、昭和四十年度新たに予算に計上された事項経費について申し上げますと、  第一に、来年度は、外国人登録法に基づく在日外国人の登録証明書の大量切りかえを行なう年度に当たりますので、これに要する経費として八千八百四十一万六千円が計上されております。  第二に、本年六月に実施を予定されている参議院議員の選挙の公正を期するため、適正な検察を行なう必要がありますので、これに要する経費として六千百十四万一千円が計上されております。  次に、増員百三十五名の内容といたしましては、一、治安対策の一環として、暴力事犯検察を強力に実施するため、検事五名。二、公判審理を迅速化するため、検事五名。三、登記事件の増加に対処して、その事務処理を円滑適正化するため、事務官八十名。四、非行青少年対策の一環として、青森、帯広少年院を開設するため、教官二十九名、技官等十一名、計四十名。五、羽田入国管理事務所における出入国者の増加に対処して、その出入国審査業務の処理を適正、迅速化するため、入国審査官五名となっておりますが、検事十名につきましては、検察事務官の欠員より振りかえ、また、教官等二十七名は、欠損より充当することになっておりますので、来年度の定数増員は九十八名となっております。  次に、おもな事項の経費について、概略を御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基づき在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費として一億三千七百九十二万五千円。第二に、法務局、地方法務局等において登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として七億九千三百十万六千円。第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種の犯罪事件の直接検察活動に要する経費として六億三千七百二十一万三千円。第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の昭和四十年度一日平均収容予定人員合計七万五千四百三十人の衣食、医療及び就労等に要する経費として六十一億三千三百八十二万八千円。第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき、刑余者及び執行猶予者を補導監督し、これを更生させるための補導援護に要する経費として八億一千二十六万五千円。第六に、出入国管理令に基づき、出入国者の審査並びに在日外国人の在留資格の審査事務を処理し、また、不法入国者の退去を強制される者の護送、収容、送還に必要な衣食、医療等に要する経費として八千三百二十一万円。第七に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費として八億九千四百八十八万八千円。第八に、法務局、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備に要する経費として三十二億八千九百六十五万四千円が、それぞれ前年度に引き続き計上されております。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の大要であります。  最後に、当省主管歳入予算について、一言御説明申し上げます。  昭和四十年度法務省主管歳入予算額は二百十八億一千九百四十五万一千円でありまして、前年度予算額百九十四億一千九百九十一万二千円に比して、二十三億九千九百五十三万九千円の増額となっております。これは、過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、罰金及び科料と刑務作業収入であります。  以上、法務省所管昭和四十年度予算について、その概要を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。     —————————————
  206. 中村順造

    主査中村順造君) 次に、裁判所所管を議題とし、説明を聴取いたします。関根最高裁判所事務総長。
  207. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 昭和四十年度裁判所所管予定経費要求額について御説明申し上げます。  第一、昭和四十年度裁判所所管予定経費要求額の総額は二百七十八億二千七百三十万三千円でありまして、これを前年度予算額二百四十八億九千九十八万八千円に比較いたしますと、差し引き二十九億三千六百三十一万五千円の増加になっております。  この増加額の内訳を大別して申し上げますと、一、人件費二十二億一千七百四十八万二千円。二、庁費三億一千三百八十三万七千円、三、営繕費三億二百二十二万円。四、裁判費七千二百六十五万七千円。五、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費等三千十一万九千円であります。  第二、次に、昭和四十年度予定経費要求額のうち、おもな事項について御説明申し上げます。  一、臨時司法制度調査会意見実現経費昭和三十七年九月内閣に設置されました臨時司法制度調査会が、わが国司法制度について二年間にわたり根本的に調査審議の結果、裁判所の運営にとりまして緊急に必要な具体策を含む意見を決定いたしました。この意見のうちに示された具体策を実現するに直接必要な経費として、1 簡易裁判所判事十六人の増員に要する人件費一千四百三十一万四千円。2 裁判官がいわゆる宅調にたよることなく研究や事務処理をなし得るよう、研究施設としての裁判官室の充実維持をはかるための裁判官研究庁費一億七千九百八十万円。3 裁判事務処理に要する能率器具、自動車等の整備経費八千百七十四万八千円。4 裁判所の配置改善に要する調査旅費、赴任旅費、移転費等九百二十二万七千円。5 司法研修所運営諮問委員会の設置に要する委員手当等十二万九千円。合計二億八千五百二十一万八千円が計上されました。  二、借地借家法の改正に伴い必要な経費。借地借家法の改正により、借地借家に関する紛争を特別の知識経験を有する鑑定委員会の関与のもとに特別の手続で調整解決する制度が設けられますので、この改正に伴い必要な会同旅費九十三万八千円が計上されました。  三、営繕に必要な経費、1 裁判所庁舎の継続工事二十七庁舎、新規工事十五庁舎の新営工事費二十二億六千九百五十九万五千円。2 その他、法廷の増築、庁舎の補修等の施設整備費二億六千万円。3 庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費二千万円。4 営繕事務費四千五百八十五万円。合計二十五億九千五百四十四万五千円が計上されました。  四、裁判に必要な経費。これは裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人の報酬、証人、調停委員等の日当、その他裁判に直接必要な旅費、庁費等十九億一千八百七十万八千円が計上されました。  五、国選弁護人、調停委員等の待遇改善に必要な経費。国選弁護人、調停委員等の活動は、国民の権利保護の適正に深甚な影響を持つもので、これらの活動を形式的なものにいたさないため待遇を改善する経費として、1 国選弁護人の報酬を一五%増額するに必要な経費三千六十二万五千円。2 調停委員等の日当を現行八百円から九百円に十月一日から増額するに必要な経費三千四百八十六万七千円。合計六千五百四十九万二千円が計上されました。  六、第二回アジア司法会議開催に要する経費。アジア諸国の最高裁判所長官が司法制度の運用並びに改善について討論し、あわせて相互の理解と親善を深めますため第二回アジア司法会議を東京において開催するに必要な経費八百八十八万五千円が計上されました。  以上が昭和四十年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     —————————————
  208. 中村順造

    主査中村順造君) それでは議題を進めてまいります。便宜上法務省及び裁判所所管を一括して質疑を行なうことといたします。  質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  209. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最初に、裁判所関係についてお伺いしますが、簡易裁判所の判事が十六名増員になったわけですが、この全体としての要求がなぜこの程度しか認められなかったのか、その点はいかがですか。
  210. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま稲葉委員からお尋ねのございました増員要求の問題なんでございますが、一番最初に大蔵省のほうに差し出しました私どもの案といたしましては、千二百七十五人——千三百人足らずの増員の要求をいたしたわけでございます。この中には、裁判官百四十九人、行政職(一)表の者六百五十三人、その他が含まれるわけでございますが、これは御承知のとおり、八月三十一日の締め切りをもって大蔵省のほうに提出いたしたわけでございますが、その後御承知のとおり九月の上旬に内閣のほうの閣議でもって給与問題その他と関連いたしまして、一般的な増員ということは認めないという方針がきまりました。なお欠員も補充しないというような方向で決定がされたわけでございますが、この点につきましては、私どもとしてはいろいろ意見を持っているわけでございますが、さしあたり増員につきましては必要最小限度にしぼり、これは欠員の状況、充員の見通し等も考慮いたしまして、ただいま御指摘のございました簡易裁判所判事十六人ということに最終的に落ちついたような次第でございます。
  211. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 全体を通じて千二百七十五名の増員で十六名しか認められないというのは、いかに何でも非常に例がないことだと、こう思うのですが、これはまた別に論議するとして、そうすると簡易裁の判事が十六人増員に伴って書記官とか事務官は増加しないでもやっていけるのですか。この点はどうなっているのですか。
  212. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま御指摘のございました点もまことにごもっともなところでございまして、従来大体におきまして裁判所の増員は裁判官と書記官と並行的に認めていただいてまいっておるわけでございます。しかしながら、これも年によりましてやや裁判官のほうに多い目に認めていただいたこともございました。また逆に昭和三十九年度のように裁判官は比較的少数で、書記官、事務官等の一般職のほうをそれに比べますとやや大幅に認めていただいたこともあるわけでございます。で、裁判官が増員になりますれば、当然それに伴ってある程度の書記官の事務の増加ということも出てまいるわけでございますので、そういう関係におきましては、裁判官の増員と並行して書記官の増員が望ましいわけでございますが、現在書記官の欠員がかなりございまして、これを充員いたします等の方法により全体として支障なく事務を処理できる、かような結論に達したわけでございます。
  213. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この行政職(二)表の職員が四百五十三名要求したと、それでそのうちの四百五十一名は機構の維持という事由で要求しているわけですが、これはどういう意味なんですか。
  214. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) この機構の維持という略称はきわめておわかりにくい面があるかと存じますが、これをもう少し内訳的に申し上げますと、まず既設庁舎の維持管理として三百十一名でございます。それから新営庁舎の維持管理という名目で四十八名でございます。さらに自動車の整備ということに関連いたしまして九十二名でございます。以上合計いたしまして四百五十一名ということになるわけでございます。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その他二名というのは何ですか。
  216. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは非常勤職員からの組みかえという名目で二名の要求になっております。
  217. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的にその既設の庁舎の維持の三百十一名というの、それから新営の四十八名、これは何をするために要求したわけですか。
  218. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) たいへんこまかい点になって話がかなりこまかくなってまいりまして恐縮でございますが、この既設庁舎の関係におきましては、主として要求いたしておりますのは、まず電話の交換手とそれから昇降機、エレベーターの運転手、それから汽かん士、かようなことになるわけでございます。それから新設の庁舎の関係の増員におきましても大体これと同じようなもので、このほかにさらに清掃関係職員が加わる、こういうようなことになるわけでございます。これらがその内容になるわけでございます。
  219. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 清掃関係職員として要求したというのは何人くらいなんですか。
  220. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 清掃関係職員として要求いたしましたのは、約十名でございます。
  221. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで金額としては幾らくらいですか、庁舎の清掃費として要求したのは。
  222. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ちょっといま正確な数字を調べておりますが、大体たしか三十万見当ではないかというふうに考えられます。
  223. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのは行(二)の職員として十名ですか。そのほかに庁舎の清掃費としての形で要求して、それがある程度認められたんじゃないでしょうか。
  224. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 庁舎の清掃費としまして庁費に三十九年度と同額の五百七十二万八千円が計上されております。
  225. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうするとその庁舎の清掃というのは、どういうふうに具体的にやるんですか。非常にこまかくなって恐縮なんですが、何か民間に委託をするというようなことで、民間委託、現実にやったんですか、何か騒ぎがあったように聞いておるんですが。
  226. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは従来庁舎の清掃に関しましては、裁判所では全部いまの(二)表職員の中でやっていただいておるわけですが、御承知のとおり在京の各省におきましてもたとえば農林省、大蔵省会計検査院等その他いろいろございますが、各官衙におきまして民間の清掃会社に委託して清掃を実施しておるという事例があるわけでございます。裁判所は事柄の性質上、これは清掃会社に委託できない部分もあるわけではございますが、しかしながらたとえば廊下でございますとか、その他一般の官庁と同様に民間の清掃会社に委託して少しも差しつかえない、まあそういう方法のとり得る部分もむろん多々あるわけでございます。そういう関係におきまして、これは昭和三十九年度におきまして新営になりました広島の庁舎、それからもう少し前に新営になりまして、いま現在建物の非常に新しい東京の地方裁判所の刑事部のこの二つの建物に限定をいたしまして、これは従来の日表職員による掃除、他は民間の清掃会社の掃除ということに切りかえる、そういう方法で実施いたしておるわけでございます。
  227. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのときにいわゆる庁婦の人、女の人がやめさせられるとかどうとかということで、いろいろと問題があったんじゃないですか。その結果はどうなったんですか。
  228. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの御指摘の点でございますが、いまの切りかえいたしましたうち、広島の関係につきましては、これはきわめてスムーズに何らのそういうことなしにまいったわけでございますが、先ほど申し上げました東京地方裁判所の刑事部の関係では、これはあとから考えますれば、私どものほうのそういうお話し合いということもあるいは不十分であったかと存じます。そうして職員の方のいろいろ誤解があったわけでございますが、結局いま稲葉委員の御指摘の首切りになるのではないか。あるいは強制配置転換として著しく不利益な扱いを受けることになるのではないかという、こういうような御心配をかけたわけでございます。私どもの考え方は当初から首切りというようなことは毛頭考えておりません、それから配置転換といたしましても、地方裁判所の刑事部から民事部にあるいは高等裁判所、あるいは最高裁判所すなわち霞ケ関の一画の建物の中で働いていただくという方針は終始変えておらないわけでございますが、その辺の御説明その他が不十分でございまして、やや御心配をかけたという面があったわけでございます。しかしながら、その点はいま申し上げましたようなことを十分組合のほうにもあるいは御本人にも御説明いたしまして納得していただいて、そうして清掃会社による清掃を開始し、また職員の方は、それぞれ民事部なり高裁なりということになっておるわけでございます。
  229. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、東京の場合は七名でしたか何名でしたか、ちょっと忘れましたが、どういうふうにいったわけですか。
  230. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 東京の場合は十五人おいでになりまして、しかしながら、当時民事庁舎のほうがやや手不足の状態でございましたので、そのうち八人ぐらいの方は民事庁舎のほうに回っていただきました。また第三新館のほうもやや手不足の状況がございましたので、このほうにも回っていただきました。それからなお、東京簡裁の調停庁舎のほうにも二人ばかり回っていただきました。こういうことでそれぞれ回っていただき、なお二、三人の方は事務なりその方向に回っていただいた方もあるように承知いたしております。
  231. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今後その問題で各地で民間委託という形でやっていくという方針なんですか。
  232. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま御指摘の点は、私どもの組合のほうからもいろいろ意見が出ておりますし、私どものほうからも御説明申し上げておりまして、先般来話し合いも何度もいたしておるわけでございますが、私どもといたしましては、これは大都会の清掃会社のしかるべきもののありますところで、ことに新営になりましたような場合に、これを公務員を大幅に増員して清掃に当たらせるという方法よりは、むしろこういうものは、しかるべき民間の清掃会社にお願いするほうが、そうして公務員の増員ということをその面ではそう大幅に要求しないという形のほうが、全体として好ましいのではないか、こういう考え方でございます。ただ、実際問題といたしまして、そのためにはしかるべき会社があることも必要でございますし、また当然これは首切りをしないという前提での仕事でございますから、あまりにそういう方向にどんどんまいりまして過員になりましても、問題がございますので、その辺を十分勘案しながら施策してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  233. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その場合に、現実につとめている行(二)の人ですか、いわゆる庁婦というんですか、そういう人の身分というか勤務状態というか、それはどういうふうにしたいと、こういうふうに考えているわけですか。
  234. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは裁判所が新営になります場合には、かなり従来の面積よりも広くなるわけでございます。したがいまして、本来ならばその清掃要員の増員が必要になるという関係にもなるわけでございますが、その増員を要求しないで会社の清掃にお願いするということでございますから、その限度では従来の方には関係ないわけでございます。ただしかしながら、同じ建物の中のある部分を清掃会社にお願いし、ある部分職員の方にお願いするということも必ずしも妥当でない場合もございまして、そういう場合は、たとえば今後いろいろ問題がございますが、裁判官が役所で仕事をする場合に、やはりある程度身の回りの世話をしてもらう人も必要になってまいる面があるわけでございまして、そういうほうにも仕事をやっていただく。なお、事務のできる方には事務の仕事をお手伝いしていただく場合もできてまいると思います。大体そういう考え方をいたしておるわけでございます。
  235. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうことによって職員が著しく不利な取り扱いを受けない、こういうことは約束できるわけですか。
  236. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) そのとおりでございます。
  237. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 話は別ですが、裁判官が宅調にたよることなくて研究や事務処理をなし得るよう、研究施設としての裁判官室の充実維持をはかるための裁判官研究庁費を一億七千九百八十万円ですか要求されているわけですけれども、これは具体的にはどういうふうに使うわけですか。それからまたその裁判官一人当たりにどういうふうに割り振るとか、あるいは裁判所ごとに割に振るとか、そういう点はどういうふうにするんですか。
  238. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) これは、裁判官がただいま自宅である程度公務を執務しておるという状況を、庁舎において完全に執務できる状態をつくり出したいということでございます。裁判官の部屋は、合議その他で使う以外に、裁判記録の閲覚、問題点の調査研究、こういったことがございまして、あるいは訴訟の当事者、代理人等と面会するという性格もございます。そういう点を、まあできれば理想的には、面会するためには面会室、研究するためには研究室、裁判それ自身に直接関係するような合議室、その他のあるいは修習生の指導と、それぞれのための特別の部屋をすべて必要とするわけでございます。現況におきましては、十分なところのスペースがございませんことから、まあいまのただいまの判事室を現在一応裁判官の待ち合い室程度に使われている現況を改めて、研究室としても使えるし、あるいは不自由ながら当事者等の面会等のためにも使うしというような状況でまずさしあたり整備していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。これはその点で使途で申しますと、まず裁判官に最も欠くことのできないものは資料でございます。資料を整備いたしますためには、書だなは当然必要になってまいります。それから、一日中精魂込めて仕事をしてまいるとなりますと、いわゆる単なる事務机程度のものでは足りない。肉体的な疲労をある程度防止できる程度の器具、備品も備えたい。それから当事者、代理人等との面接のためにもそのスペース、器具、備品等も必要である。それから、長らく執務するとすれば、湯茶等もセルフサービス等で飲むようなことも考えておきたい。それから記録、図書等を読み上げていくためには、相当照明も必要であると、いろいろな観点から、結局、裁判官室を事務室であると同時に研究室であるという形に整備いたしたいというために要求した金額でございます。御質問の一人当たりに割れば幾らかということになりますと、これは一応計算の基準で、裁判官全員に割りますと一人約七万五千円になります。で、判事、判事補、簡易裁判所と、こういうような裁判官等で分けてみますと、判事にすれば十万円、簡裁判事、判事補等で五万円という計算ではじいてみました金額と、それもそうすれば一応合う金額でございます。しかし、この金額では一挙に全国の庁舎を整備するわけにまいりませんし、庁費として要求いたしておりますことは、これを今後長きにわたって予算上計上していただくということを考えているわけでございます。
  239. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは「宅調にたよることなく」というのですから、宅調をやっているのを解消するというのが主眼なんですか。そうすると、宅調をやって、いるのは、いま六大都市で毛全部やっていないのじゃないですか。どの程度やっているのですか、宅調は。
  240. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) この宅調ということばには、実は二通りの意味がございまして、例の東京地方裁判所、大阪地方裁判所、あるいは東京高等裁判所等の特殊の庁では、毎日裁判所に登庁いたしましてもスペースあるいは器具等のないために登庁できないという状況の庁舎もございます。ところが、広義の——そういう裁判官は、自分の登庁しているスペース、デスクのない方々は自宅で仕事をされている。これを狭義の宅調と考えている。ところが、通常裁判所の執務をよく検討してみますと、毎日役所に出ておるられる方々でも、記録を全部自分のうちへ運んで、そうして帰宅した後に夜うちで記録を読み、図書をひもどき、判決を起草すると、こういった生態で現在いるわけでございます。そうした広い意味での自宅での執務、記録をうちに持って帰って自宅で記録を判読すると、ころいうようなことも同時になくしてしまって、公務はできるだけ役所の庁で完了したい。多少の記録、書き残りと申しますか、読み残りの本を自宅に持って帰って読むというようなことはありましても、記録はできるだけ自宅に持ち帰らないということで執務を処理いたしたい、こう考えているわけであります。
  241. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この前、裁判官といろいろ話したのですが、そうしたら俸給の問題よりもむしろいろいろ本が非常に必要なんだ、その本を買う費用を何とか国のほうで見てくれないか、そうすれば実質的に給与が上がったと同じことになるのだ、もちろん給与も上げてほしいのだけれども、本を買う、非常に本を買って勉強しなければならないのだ、その費用を何とかうんと見てくれないかという話を、この前裁判官といろいろ個人的に話をしたのですが、それの本の費用というのは、この中にどの程度入っているのですか。
  242. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 一応この金額では器具並びに図書、資料、こういうもので使う考えでおります。これは庁によりましては器具、備品の足りないところにはまず器具、備品を備えなければ、書物も横積みのままになってしまうというような状況がございますので、さしあたり当初の間は、まず書だな等の整備を行なうと同町に、中身も充実してまいりますが、書だな等の整備が終わりますと、資料のほうにより多く経費を回すことができるわけであります。御質問の裁判官の個人に予ての図書費を支出するということは、裁判所は永久に国家業務として続きますものでございますから、毎年新しく入ってこられる裁判官には古い本はないという、それほど長く昔の本でなくても、最近十年の本すら手元にないという状況でございます。各人が裁判官になった瞬間に、あらゆる書物を自宅に備えられるような費用を個人に支出するということはとうてい考えられません。そういう意味でいかなる、どんな裁判官がどこの庁に移っても、あるいは任官早々仕事をされるにしても、すべてその書籍が裁判所の中に整備されておるということが望ましいわけでございます。もう一点は、裁判所の判例集で考えましても、最高裁判所になりまして最高裁判所の判例集を手持ちしておりますのは、実はその当時裁判官であった者だけでございまして、その後に裁判官になられた方は常に古いといいますか、近々二十年の間の最高裁判所の判例集すら手元にないという状況でございます。これを毎年毎年再版して売り出すには人数もそれほど多くない。こうなればどうしても判例集等必要なものは庁に備えざるを得ないということになるわけでございます。
  243. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その庁に備えるか、個人にあれするかは別として、個人に俸給以外にいわゆる調査費というような形である程度のものをアルファするというふうなことも今後の研究課題だと、こう思うのですが、現在のところでは最高裁から書物というか、資料というふうなもので裁判官に無料でいっているものはどんなものがあるのですか。あまりないのですか。全部有料ですか。
  244. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは正確な資料を手元に持っておりませんが、私の記憶で申し上げますと、最高裁判所と高等裁判所の判例集、それから裁判所時報というものが各自の裁判官の手元にいっておると思います。
  245. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから裁判官室の備品の整備ということについては、これはどこに入っているのですか。この中にも入っているのですか。特にルームクーラーなどの設備をするというふうな話が非常に伝わっているのですがね、その点はどうなんですか。
  246. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 裁判官室を整備いたしますときの理想的と申しますか、形態を考えますと、真夏の酷暑の間に裁判官室で執務をいたしますためには、ルームクーラーも必要な事項かと考えておるわけでございます。しかしながら、ただいま私どもが考えておりますのは、まず、さしあたり必要なのは、資料とその資料を置くべき書架、人のすわるべきデスクあるいは照明等、こういったものをさしあたり考えているわけでございまして、裁判所であるからといって国民に先がけて、あるいは一般官庁に特に先がけて、それをそういった中身に使わないで外形的なものに貴重な金を使うといったようなことを考えているわけではございません。時勢の進展に応じてそういう状況が生ずれば、真夏の執務のためにそういうクーラーを使うということも将来はあり得るかと考えております。
  247. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なぜクーラーの話をしたかというと、一つの例として話したので、何か最高裁のほうで判事室にはそういったものを備えつけたいといったようなことで、具体的な計画を練っているのだということを聞いたわけですね。ところが、それはそれとして、書記官室などにもそういうふうな同じようなものの、クーラーを入れろという意味じゃないのですよ。設備その他のものについても裁判官室のほうはいろいろ改善をして予算を取ってやっていくけれども、書記官室のほうは、もうその点についてはさっぱりだと、さっぱりということばが当てはまるかどうかは別としてその点が不備である。こういうようなことは均衡を失しておるじゃないか、こういうようなことがあるものですから、一つの例としてお聞きしたのですが、裁判官室の備品等いろいろの整備、それから部屋の整備はわかりましたが、書記官室のほうの整備、それはどういうふうになっておるのですか。
  248. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) それは一般の事務官室、書記官室等の整備も、いわゆる執務環境の整備ということが、国会全体の問題となっておるおりからでもございますし、裁判所としても裁判官室のみを整備して他を顧みないというわけではございません。で、昭和四十年では約五千万の一般の裁判官研究庁費以外に職場環境の整備費というものが計上されておるわけでございまして、裁判官室を整備するに伴って、同時に、あるいは別々に、それはそのときのいろいろの組み合わせ、方針はございますが、一般職員の職場環境もできるだけ改善していく考えでいるわけでございます。
  249. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの約五千万円というのはこの説明書のどこに入っているわけですか。
  250. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 表がお手元にいっているかと思いますが、それの庁費というところに、これは裁判官の研究庁費も含んでおりますが、前年度の予算は八億八千万に対して庁費が十一億九千三百万で、増加額が三億一千三百万余りが計上されておりまして、三十九年度に比較いたしますと、三六%の増加になっております。この中にただいま申し上げました五千万が含まれております。
  251. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、一億八千万というのは裁判官室だけだ、五千万は書記官室、事務官室のものだ、こういうふうなことに承るわけですが、これは、裁判官室のほうはもちろん資料のほうも入っているようですが、書記官室、事務官室の整備というか改善は、今後も最高裁としてはずっと、もっとよりよいものにしていきたい、こういうようなことは考えておられるわけですか。
  252. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) そのとおりでございます。
  253. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとまた話が別になるわけですが、この司法修習生から裁判官になる、その前提の司法修習生がいろいろ裁判所で指導を受けるわけですが、この場合に裁判官のほうに指導手当というようなものは出るわけですか。
  254. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 裁判所のほうには出ておりません。弁護士会に委託して修習の指導をお願いする機会の分、その間の分として修習の委託費を予算上ある程度計上されておるだけでございます。
  255. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると司法修習生の修習に当たるときの特別手当というふうなものは、あれは弁護士だけですか。
  256. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) さようでございます。
  257. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 司法修習生の採用の人数というふうなものは、これは限定されているのですか。これは最高裁になるか法務省になるかはっきりしませんが、いまの段階では毎年何人とるということはどこできめているのですか。
  258. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) それは司法試験の管理委員会のほうで、当該年の司法試験合格者の数が決定されることになっております。もちろんその場合に、庁舎受け入れのすべての事務は、給与の支払いといいますか、報酬の支払いと申しますか、給与と俗に言って申しわけございませんが、その支払い事務も最高裁判所のほうで担当いたしておりますので、裁判所と緊密な連絡をとりながら、修習生の合格数が決定されているという状況でございます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 修習生から判事、検事、弁護士になる、そうして判事になる者が何名くらいということで、昭和四十年度は予定しているわけですか。その人数は、それは予算の中にはどういうふうにあらわされるわけですか。
  260. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 直接、担当でございませんので、明確なことは申しかねますが、その年の欠員と、それから新規の増員等がありましたその数の範囲内で採用を行なっておると思います。
  261. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が聞きたいのは、たとえば裁判官に、いままでに一番多いときで九十名くらいですか、百名までいかなかったと思いますが、六、七十名のときもあるのですが、それが百名なら百名、それ以上こえる希望があったときでも、それはちゃんと判事なら判事になれるようになっているわけですか、その場合の予算の仕組みはどういうふうになるのですか。
  262. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの御指摘の点は、結局、現在のところ、裁判官の欠員が相当にございますので、修習生から裁判官を希望した場合に、定員の関係で採用できないというような状況は、過去数年そういう状況にはなっていないわけでございます。ただその欠員が非常に埋まってまいりますと、将来においてもし裁判官の増員が行なわれない、あるいはそういう事態も予想されるわけでございますが、その場合には当然、増員をお願いするようなことになってまいるというふうに考えておるわけでございまして、現在のところ欠員の関係でまかなわれているという状況でございます。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 司法研修所ですね。ここは最高裁の管轄ですね。これは人事局長ですか、そうすると、そこで何人くらいの修習生を指導することが一番妥当だというふうに考えられておるのですか。その点がどうもはっきりしないのですが、あまり多いと、もちろんこれは指導も十分でないということも考えられると思いますが、何か物的な制限でもあるわけですか。
  264. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私の本来の所管ではございませんが、大体、私の承知しております範囲で御説明申し上げたいと存じますが、この修習生の採用人員の問題は、いろいろな面から規制されてまいるわけでございます。ただいま稲葉委員の御指摘になりました司法研修所の建物による制約ということも、実際上、現在の段階においては、ないとは申し上げられない状況でございますが、さらに、それといわば表裏をなしまして、修習生は相当長期に各現地で実務修習をいたすわけでございますが、現地へ参りますと、これは裁判所のみならず検察庁、それから弁護士会等で指導を受けるわけでございまして、その場合に、裁判所や検察庁の場合は、どちらかと言えば、それぞれの庁舎の建物による制約ということになるわけでございますが、弁護士会の場合におきましては、指導弁護士の数、それからその指導弁護士による指導をなし得る人数というようなものによる制約があるわけでございまして、そういう点からの制約のほうが、現在の時点ではかなりものをいっているという面もあるわけでございます。研修所では、それらの点を総合して、いろいろいまお話がございました、教育効果が最もあがる方法ほどういう方法であろうか、そのためには研修所における教育期間と、それから現地における教育期間との比率をどうすればいいかというようなことを、絶えず研究いたしておるわけでございまして、こういう点は、臨時司法制度調査会でもかなり検討はされたわけでございます。現在の段階におきましては、五百人ということが一応の基準になっておりますが、将来は、これを漸増すべきであるというのが臨時司法制度調査会の結論であったように承知いたしております。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここに司法研修所運営諮問委員会の設置に要する委員手当、わずかですが、出ているのですが、いままではなかったのですか。それから実際には何をやるか。
  266. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま御指摘のありました委員会のことは、これは時臨司法制度調査会の意見書に出てまいりました関係から、私どものほうで予算要求をしたということになるわけでございます。臨時司法制度調査会におきましては、たとえば日弁連のほうからおいでになっている委員の方は、司法研修所はむしろ弁護士会の所管にすべきであるという御意見もあるわけでございます。それからまた他面、現在司法試験は法務省所管になっているわけでございますが、その司法試験との一貫性を持たせるという意味では、これはまた考えようによっては、法務省のほうでおやりになることも考えられるわけでございます。しかしながら、裁判所法では最高裁判所所管ということになっておりますけれども、要するに法曹を養成する機構でございます以上、法曹三者が協力してその教育に当たるということが好ましいことは申し上げるまでもないわけでございまして、そのためにどういう機構を設ければいいかということで、いろいろな討議が行なわれました結果、一応こういう諮問委員会というものを最高裁判所に設けて、これに弁護士、検察官、あるいは法務省の方、学識経験者、こういう方が参加されまして、そこで指導の基本方針を一応答申されて、その答申を尊重しながら、最高裁判所の指導のもとに研修所の教育に当たる、こういう形が一番好ましいのではないかということになったわけでございます。そういうことで予算を要求いたしまして、大蔵省のほうの了解がとれまして、そこに計上されておる、こういうことになるわけでございます。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁判所の判事の退職金の問題で、前から問題になっているのですが、これはどういう点に問題があって、まだ解決に至らないわけですか。
  268. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) その点で一番問題になりますのは、ただいま最高裁判所の裁判官をしておられる方々の中で、弁護士からなられました方々のことが、まず問題になるわけでございます。と申しますのは、弁護士から最高裁の裁判官になられます場合に、五年にしましても、あるいは八年にしましても、弁護士として相当活躍なさっておられる方が裁判所に来られると、一般の公務員の退職金の計算では幾らにもならない。定年の七十になって、もう一度弁護士を始めるとかというような場合にだって、相当いわゆる時勢は変わっている。あるいは逆に数年間最高裁の判事としてつとめても、わずかな退職金であり、その後年金、諸外国にありますように一生給与をもらうということにもなっていない。そういうことから、安んじて最高裁の判事になりにくいという点から、何か特別の退職金制度、あるいは終身の給与というようなものが考えられないかという点が、問題の発端でございます。ただいまその点で、それを退職金の問題で解決するか、あるいは俸給の問題で解決するか、あるいは年金の問題で解決するかといういろいろな観点から検討いたしておるわけでございますが、年金関係は、共済組合の関係で吸収されておりまして、掛け金の問題がございますので、それを年金でやるにも非常に困難がございます。それから退職金の問題で一つ考えられておりますのは、公団あるいは公社等の、任期何年についてどのくらいの退職金というような計算でもして、その弁護士から来られた方々の退職金を計算をすることができないか。もしそういう計算ができるとすれば、キャリアの裁判官あるいは学者等から最高裁の裁判官になられました方々も、最高裁の裁判官というのは特殊の地位であり、特殊のポストであるということから、一応学者としてやめたときに退職金を支出して、最高裁は別途に考える、キャリアの裁判官も、通常、下級裁判所の裁判官をやめたときに一時退職金をもらって、その後の最高裁の期間というものはまた別途に考える、こういうようなことも考えられるのじゃないかというようなことで、いろいろな可能な方法を探求しようとしている現況でございます。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 さっきの書記官の整備費の五千万円の内容は、あのとおりでよろしいですか。
  270. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 五千万円というのは一般的な環境整備費でございまして、書記官等の、その他の事務室の整備費の費用は、五千万のうちの一部分だということになります。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣でも人権擁護局長でもけっこうですが、今月の二十四日に東京法務局に、かぜの薬を飲ませて実験したら、副作用が起きて、これは人権問題だ、こういうようなことで、これは正式には人権侵害申し立てですか、があったと言われておりますが、これはどういうふうなことが申し立てとしてあったのか——申し立てとしてあったのだということですね、まだ内容を調べているわけじゃないでしょうから、申し立てとしてどういうふうなことがあったのか、ここのところからお伺いさしていただきたいと思うのです。
  272. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 稲葉委員から御指摘のとおり、今月の二十四日に、東京法務局に対しまして、名古屋市にある興和株式会社という会社に勤務する薬剤師、事件の被害者に当たる中村晴子という方から、その代理人の内田という弁護士を通じまして、人権侵害事実調査申し立て書と題する書面の提出がございました。  その内容の概略は、興和株式会社が昭和三十八年十月十五日、かねて研究中の抗ビールス新薬キセナラミンを、その副作用を隠して、多数の社員に対して服用さした、人体実験を行ないましたところ、食欲不振、頭痛、発熱等の症状を訴える者が続出いたしまして、そのうち十七名が入院し、また、そのうち一名は死亡するに至った、これは人権侵害であるから調査をしてもらいたいという、そういう趣旨のものでございます。  しかし、この書面のみでは、まだ具体的な点につきまして明確でない点もございますので、現在、同局におきまして、まず右申し立て本人の中村晴子さんから事情を詳細聴取し、さらに、関係者について調査をいまから開始しようという段階に至っているところでございます。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 申し立ての段階ですが、その申し立てによって、人権擁護局として見た場合は、どういう点が人権侵害の問題点とされるのか、こういう点はいかがでしょうか。
  274. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 申し立て書によりますと、新薬について、同会社に勤務する職員に対して服用させまして、いわゆる人体について実験を行なったというものでありますが、新薬を使います場合は、最終的な段階において、どうしても人体について実験をする必要があるという場合が出てくるそうでございまして、すべての人体実験が人権侵害になるというふうには、私どもは考えておりませんが、いやしくも、新薬を人体につきまして実験する場合には、これはきわめて慎重な配慮が必要であろうと考えるのでございます。すなわち、まず、人体に対しましてどの程度の副作用があるかというふうなことを、動物実験を繰り返す等の方法によりまして、あらかじめ十分に研究調査した上、まあ九九・九九%ぐらいまでは無害であるということを確認しておくことがまず第一に必要だろうと思います。  それから第二番目に、万一あるいは生ずべき副作用に対する予防ないしは治療の態勢を整備しておくことが第二に必要だろうと思います。  それから三番目は、被実験者、すなわち、実験のためにそのからだを提供する人々に、実験の実情、これを十分に説明いたしまして、完全な同意を求める等の措置をとる。いささかでも生命身体に対し危険が予測される、または被実験者の同意が完全な自由意思によるものでないと思われるようなときは、これは人体実験は避けるべきだ、かように考えるのであります。  したがいまして、問題点といたしましては、まず事前に動物実験等を繰り返す等の方治によって十分に研究調査して、まずまず副作用がないのだという点までいった上で、初めて人体実験をしたかどうか。それから、万一副作用が生じたならば、それに対する予防あるいは治療の態勢ができているかどうか。それから第三番目は、実験に当たる方々に対して、その実情を十分に説明して、完全な同意のもとになされたかどうか。まあ、そういった点が調査の上で問題になるだろうと思っております。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務省としてはこれから調べることですから、いまの段階で、もちろん結論的なことは言えるものではないのは、これはぼくはよくわかるのですが、そうすると、いままでの段階で、申し立てによるというと、いまの一、二、三点において、どういう点が欠けていた、こういう申し立てになっているわけですか。
  276. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 申し立て書には、先ほど御説明いたしましたのよりももう少し詳しく書いてあるのでございますが、やはり事前の研究準備が十分でなかった。それから、会社の社員でありますから、会社の担当者から、会社が今度こういう新薬を出すについて、人体について実験したい、したがってこれに同意してもらいたいと言われた場合に、はたして完全な自由意思でこれに従事するかどうかを判断できるような状態にあったかどうか。さらに、いまの実験の実情について、十分に説明されたかどうか、こういった点、これは相当疑問があるのでありまして、これはやはり人権を侵犯するおそれがこの事件については相当あるのじゃないか、このように考えておりまして、事案の重要性にかんがみまして、できるだけ早く調査をいたしまして結論を出したい、かように考えているわけでございます。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 厚生省としては、この事件をいつごろ、どのような経過から知ったわけですか。
  278. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 実は、私のほうの、こういう許可申請になる前の薬の治験例を収集する段階についての取り扱いでございますが、ガン、結核、それから、らい、抗性物質あるいは放射線医薬品というふうに限定されたものについては、治験例収集に入ったというときに報告を求めるようになっておりますが、その他のものにつきましては、報告を求める手続をとるようにはなっておらないわけでございます。したがいまして、この事故があったということにつきましての報告は、会社のほうからは実は正式にいただいておりませんで、当時、昨年の三月でございましたか、新聞記者を通じて、こういう事件が名古屋のほうから出そうだということで、その記事が発表される前に、会社側のほうからこういうふうな事故がありましたからという報告をいただいているわけでございます。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その会社のほうから厚生省に報告があったのは、何かちょっとはっきりしませんが、去年の三月ごろで、新聞記者からそういう記事が出そうだということがわかって、会社側が厚生省に報告をしたんだ、こういうふうにちょっと聞こえるのですが、そういうふうに承ってよろしいですか。
  280. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) そのとおりでございます。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのときに、じゃ、どういうふうな、会社から厚生省に対して報告があったのですか。
  282. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 当時——現在もさようでございますが、興和の研究所長をやっております勅使河原という、これは薬剤師の方でございますが、勅使河原所長が参りまして、それで、新聞紙上で報道されております中身、大体それと同じでございますが、そういう報告をいただいたのでございます。で、私どもとしては、少なくとも社員を使ってそのようなことをやるのは適当ではないのじゃないかということで、今後そういうことを二度と起こさないようにということを、そのときには厳重に所長に申しますと同時に、またそれから二、三日たった後だと思いますが、社長も出て参りましたので、社長にもその旨を強く申し渡しておいたわけでございます。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前に申し立てのことを聞いたわけですから、一方的になってはいけませんから、会社側が厚生省に事故のことについて報告をした内容というものは、これはどういうことなんですか。これは会社側にも、会社側の言い分というか、何なりがあるに違いないのですから、どういうふうな報告を厚生省にしたのでしょうか。新聞に出ているのと大要同じだというだけじゃなくて、その点について、会社側はどういうふうに報告し、どういう点に問題点があり言い分があったのか、そこら辺を明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  284. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) その当時の、三月ごろの模様につきましては、当時の担当課長のところへ詳細に話があったかと思いますが、実は、私のほうに文書による報告といったものは参っておりませんで、口頭によります報告で、人数等につきましても、新聞に出ておりますような人数をそのまま報告を受けたわけでございます。しかし、その後、会社側のほうから——今度の人権擁護局への提訴というふうな事件の発生になりましてからあとは、会社側のほうから詳細な報告を私どもはいただいております。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、事件があって、いまの詳細な報告というのはいつごろのことですか。ちょっとはっきりしなかったんですが、それは会社側から文書による報告なんですか、いまのは。何か課長のほうへ口頭で来たのは去年の三月ごろの話で、あとからあなたが言われたのは、いつごろのことですか。
  286. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 今回問題になってから、すぐでございます。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 今回問題というのは、何ですか、二十四日に人権擁護の訴えがあってから、ということですか。
  288. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) さようです。
  289. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはどういうふうなことを報告してきたですか。これは口頭ですか、文書ですか。
  290. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 文書による報告でございまして、中身につきましては、学問的なデータその他も含めまして、相当詳しい中身になっております。
  291. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それは、いまの段階で、会社側が出してきたものを詳細に発表するというわけにはいかないわけですか。そんなことはないんじゃないですか。ある概略だけは発表してもいいんじゃないですか。
  292. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) これは会社側のほうで、そういう正式の文書という形で私のほうに報告があったわけではございませんで、いわば口頭で報告すべきものを文書にしたほうがよかろうということで、公にする筋合いのもとにつくられた中身じゃなしに、全く会社の中身を、急場でといいますか、当時の関係者の方々なり、いろいろな人の意見を総合して、それで便宜、文書にまとめたものでございまして、これを私は公表するということはいかがかと現在は思っております。
  293. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それはあなたのほうのあれとして、報告は、どういう場合にこういう製薬会社が厚生省に報告しなければならないことになっているんですか。
  294. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先ほど申し上げましたように、許可申請前に起こりました事件につきましては、会社側としては報告の義務も何もないわけでございます。ただ、今回の場合には、いろいろと事態が非常に人権問題ということでクローズアップされた中身でもございますので、一般的に製造業者として仕事をやっております製薬会社が、製薬会社の中身の問題として、内輪の中で起こった問題として私のほうに報告をいたした、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  295. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまあなたもお聞きになっておられたように、人権擁護の申し立てがあった、その中で、法務省の人権擁護局は三つの点をあげて、この事件の問題点があると——問題点があるという意味は、それはまだ解明されてない問題点があるというふうに聞いておるわけです。いまの段階としては、断定しているわけではございませんから。厚生省側としては、一体、この案件の中でどういう点が厚生省側から見た問題点であると、こういうふうにお考えなんでしょうか。おのずから角度は違ってきていいと思うんですが、この点はどうでしょうか。
  296. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) まず第一は、副作用の問題についてでございますが、これは実は私ども、この問題が起こりましてから、直接研究の主任者になりました中村教授——東北大の付属の病院長でございますが、中村教授から私は話を伺っておるわけでございます。それで、副作用の面につきましては、新聞で報道されております中身と若干違った中身をちょっと聞いております。  ちょっと時間がかかると思いますが、簡単に申し上げますが、まず、この新しい薬を開発しようというふうに考えました会社の動機につきましては、主としてイタリアで開発されておる。しかもイタリアの文献に相当副作用もなしに有効であるというデータで、しかも千二百人くらいのデータによって相当有効であるというふうなことを入手いたしまして、それで中村教授に話を持ち込んできた。中村教授としては、自分一人ではやれないということで、医学界の先生が十七人、これは東北大、東大、伝研、九州大学と全部網羅しております十七名からなる研究班を組織いたしまして、それでまず第一に動物実験をしました。動物実験につきましては、私どもの常識からいいましてもよい。この程度の動物実験は、安全性の問題については問題がないと思います。動物実験についての副作用がないということで、臨床実験に入りました。臨床実験は、東北大学と東大と九州大とで、それぞれ六十例について、入院しておる患者について臨床の実験をやったわけでございます。六十例については、大体副作用がない、ただし一名だけ黄だんになったという報告がございまして、この黄だんになった原因を調べてみますると、この薬の関係じゃなしに——クロルプロマジン等のその他の薬を飲んだためにそうなったのではなかろうか、しかも過敏性の患者ではなかったかという臨床報告があるそうでございます。したがいまして、六十例の症例は大体副作用なしに有効だということになったので、これは健康者に服用していいのではなかろうかというふうなことで、当初自衛隊のほうに大体二千人くらいのデータをお願いしようかというような計画を持ったそうでございますが、なおかつやはりその前に二百人程度の小グループのデータをとる必要がある、健康人からとる必要があるので、それで会社のほうにぜひ二百人ぐらいのデータを集めてもらえないかという依頼をしたそうでございます。それで会社のほうは、六十一例の症例についても副作用はないというふうな話を聞きまして、それで社員の方にぜひ協力してくれないかということを話をいたしまして、社員の協力によって行なわれた。しかも、投与される場合には、これは中村教授のほうから名古屋の日比野教授のほうへ——やはり研究員のメンバーでございますが、日比野教授に依頼方が参りまして、内科の医局員の方が名古屋と東京にそれぞれ出向きまして、それで東京の場合二、三日おくれたそうでありますが、出向きまして、途中におきましても問診その他をやって経過を見ておる、こういう報告を受けております。
  297. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、厚生省としては、いまの段階で、去年の三月の報告を口頭にしろ受けた。その後これだけの人が発病し、入院したり、あるいは一人の人がなくなった。まだ入院している人もあるようですが、こういう病気が、それは何によって起きたというふうに、厚生省側では、いまの段階で考えているわけなんですか。
  298. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) これにつきましては、これは私どももそういう客観的に入院なり事故というものから判定をいたしまして、この許可申請前の薬による事故ではなかろうかという、そういう客観的な事実に基づいた推定を下さざるを得ない。といいますのは、こういう事故が起こったために、その許可申請を会社側が断念をいたしております。これは直接研究に当たりました中村教授の御意見を聞きますと、その後中村教授は、自分の道徳的な責任もあるということで、その後の一年数カ月にわたり患者のトレースをずっとやっていただいております。しかし、中村教授の御言明によりますと、どうも自分としてはどういう原因でこうなったということについてはまだまだわからないという言明をいただいておりまして、特になくなった女性の方のあの中身につきましては、自分としてはどうも学問的な究明はむずかしいのではなかろうかというふうなおっしゃり方をいたしております。
  299. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 厚生省としては、去年の三月にこの事故についての口頭にしろ報告を受けた。そうすると、その後に本件についてとった処置、あるいは本件類似のいろいろ薬による事故などがあったと思いますが、その関係でとった処置というのはどういう処置をとったのでしょうか。まず、本件についてはどういう処置をとったのでしょうか。
  300. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先ほど申し上げましたように、会社の責任者を呼び出して厳重注意をした、それからそのあと直ちに、学術担当の重役、それから部長——この各社の学術担当の部長、重役の方は、この方々が各会社の研究所の統括をやっておる方々でございまして、安全性の動物試験の問題あるいは治験例の収集の問題については責任を持っておられる方々でございますが、この方々を集めまして、興和のこのような事件を紹介をし、二度とこういう社員を使ってデータを集めるようなことは好ましくない、そういうことは今後絶対にやらないようにしてくれというようなことを申し上げました。ただ、私どもとしましては、治験段階におきましてこの規制方法というものについては、実は薬事法の現在のたてまえからいって介入することができない性質のものでございまして、治験段階にありますこういった問題については、すべて医師の責任のもとにおいて行なわれるということをたてまえにいたしておりまして、薬事法は、新しい薬が許可申請されてから薬事法の規制に入る問題でございますので、治験段階におきます事故その他については、これはいわば医療行為中に行なわれる事故ということになるわけでございまして、私どもの行政の介入できないところだというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  301. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 薬事法の話は、これはあとにして、そうすると、だれを呼んでどういうふうに厳重に注意をしたのですか、そこのところがちょっとはっきりしないのですがね。
  302. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 先ほど申し上げましたように、会社側は勅使河原研究所長でございます。
  303. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで内容は……。
  304. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) これは、臨床データを集めるために社員を使って——学者にどうせ協力するということはわかっておりますから、学者の方から要望があったにしても、社員を使ってデータを集めるということは好ましくないという注意をいたしております。
  305. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 社員を使ってデータを集めることが好ましくないという、それだけの注意なんですか。それで、この本件の問題は、すでにこの当時わかっていたのですね。わかっていた事態の中で、それだけの注意で足りるのですか。もっと別な形でいろいろな面での注意の方法があったのじゃないですか。たとえば、副作用の面の注意についていま言われましたけれども、これについては現実にはどうなんだとか、それをどういうふうにしたら起こさなくて済んだとかいうふうな事実の究明はどうですか。それから、注意というのは、いま言ったように、どうも社員を使ってやることだけはいかぬというふうにとったのですが、あなたのほうとしては、どうもはっきりしませんね。
  306. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 実はそういう注意でございまして、副作用の中身がどうであったとか、あるいはその後の経過が、それぞれの発生した患者についてどういうような経過をたどったとかいうふうなことにつきましては、私どもは、実は申しわけございませんが、そのときには報告を受けておらないような状況でございます。   〔主査退席、副主査着席〕
  307. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それならば、私の聞き違いかもわからないので、恐縮ですけれども、そうすると、三十九年の三月に、何か新聞に出そうだからというので、会社側から報告があったというのでしょう。そのときは事故があったのか。事故がありそうだとかいうことの——ありそうだというのはおかしいですね、あったということの報告がなかったのですか。ただ社員を使って実験をしたということだけの報告なんですか。どうもちょっとはっきりしませんですね。
  308. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 社員を使って実験をし、それで実験をした方々の中でこれだけの事故者が出まして、その方々については、その当時入院その他の措置をとって、十分な手当てをいたしておりますという報告を受けております。
  309. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう報告は受けたけれども、それでは副作用はどうだったとか、どういう形でそういう事故が起きたとか、そういうふうな点について厚生省としては究明をしなかったという点が申しわけないと、こういうふうに言われるのですか。
  310. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) さようでございます。
  311. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、問題になりますのは、厚生省は、去年ですか、ことしですか、薬務行政というか、薬事行政について、行政管理庁から監察を受けておるのじゃないですか。それはどういうふうな監察を受けたのですか。これはまず厚生省側からお話しを願いましょうか。
  312. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 非常に薬務局の各課の仕事の中身につきまして詳細な勧告を受けておりまして、たとえば製薬許可業務についていろいろと仕事がたまっておる、その仕事のさばき方等について、人的配置等も含めた改善の余地があるのではなかろうか、また広告宣伝の取り締まり等についても、現在の監視課の陣容をもってしては十分な監視ができないので、もう少し考えたらどうだ、あるいは企業課の薬の輸入の申請があった場合のさばき方等についても改善の余地があるというふうな、ほとんど各課全般にわたりましての勧告でございまして、それにつきまして、私ども行政管理庁の方ともよく連絡をいたしまして、私どもの仕事の中身もよくわかっていただけるようにお話を申し上げまして、回答を現在準備をいたしておるところでございます。
  313. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは行管のほうにお伺いしますが、これはいつごろやった監察で、どういう点を中心にやり、その結果としてどういう点を勧告したのでしょうか。それは、一つは「薬務行政の担当組織について」、二つ目は「医薬品等の製造および輸入に関する許可、承認等の事務処理について」、三は「医薬品等の販売許可について」、四は「医薬品等の監視取締りについて」、四点に分けて勧告をしておると思うのですが、概略について行管のほうから御説明を願いたいと思います。
  314. 山口一夫

    政府委員(山口一夫君) 薬務行政に関する行政監察は、昭和三十九年の四月から六月にかけて実施をいたしました。その監察の結果につきましては、薬務行政全般にわたったのでございますが、特にそのうち血液行政に関係いたしました分が当時非常に問題が急を要しましたので、一応血液関係の監察内容を切り離しまして一足先に、昭和三十九年の九月だと思いますが、九月に勧告をいたし、続いてそれ以外の薬務行政全般にわたりまして、同じく昭和三十九年の十二月に勧告をいたしたのであります。この勧告に対しまして、薬務行政に関します分につきましては、本年の——昭和四十年二月に厚生大臣から回答が参っております。血液行政を除きますその他の分につきましては、ただいま熊崎局長からお話がございましたように、近く回答をいただくことになっております。それで、血液関係を除きまして、それ以外の一般の薬務行政の監察につきましては、お話しの四点について監察の結果を勧告いたしたのでございます。  その概要を申し上げますと、まず薬務行政の組織の関係につきまして、厚生省薬務局において、事務量に合った職員の配置を行なうとともに、関係各課の連絡を密にして、許可、承認等の事務の円滑な処理、薬事監視の徹底等、薬務行政の適正な運営をはかることを第一に勧告いたしました。第二に、医薬品等の製造、輸入に関する許可、承認等が長期未処理になっておりますものを一掃する等、事務の処理を適正に、かつ効率的に行なうこと、なお、都道府県が申請書類等を保健所あるいは政令市を経由して提出をさせております場合に、都道府県において経由機関が実施する業務等を明確に定めるように厚生省において指導することを第二点とし、第三に、医薬品等の販売許可申請書の添付書類の中には不必要と思われるものがあるほかに、都道府県独自の書類を添付させているもの等がありますので、これらについて再検討を加えること、なお、販売業の許可更新は年間の特定の時期に一斉に行なうことにして、事務処理の能率化をはかるよう都道府県を指導することを第三点とし、最後に第四といたしまして、医薬品等の総合的な監視計画を立てて都道府県に示達し、監視取り締まりの徹底をはかる、なお、保健所の薬事監視業務範囲等の明確化、輸入医薬品等に対する監視業務の効率化をはかること、不良医薬品の製造、販売あるいは虚偽広告など不適正事案に対して行政処分を厳正に行なうこと、以上の四点を勧告をいたした次第であります。  なお、ただいま熊崎局長からお話のございましたような内容をその中に盛りまして、回答の提出をただいま待っている状況でございます。
  315. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま山口さんの読まれたのは、相当遠慮して読んでいるのじゃないですか。これをそのままでなくて、省いて読んでいますね。これはもっときついことが書いてあるのじゃないですか。  たとえば、一が「薬務行政の担当組織について」、こういうふうに勧告は——これは行政監察月報のNo・64一九六五年一月——ことしの一月ですか、一の「薬務行政の担当組織について」、「薬務行政は、厚生省薬務局が担当しているが、事務分掌規定が実情にそっていないため、実際の事務分担は、規定と異なっており、また、各課の事務配分、連絡等に適切を欠く点があるため、許可、承認等の審査事務量に著しい不均衡を生じ、許可、承認等の審査未着手事案の滞積、監視の不徹底、諸帳簿の不備等が目立つ実情である。厚生省は、適正な薬務行政を実施するため、適切な事務配分および人員の配置について検討する必要がある。」、これが第一ですね。  第二、第三は省きますが、四のところの「医薬品等の監視取締りについて」、「国民の健康保持上、医薬品等はきわめて重要であるが、これに対する監視が不徹底で、不良医薬品等の売買、要指示医薬品の濫売、誇大広告等が行なわれているので、下記事項について改善または検討の要がある。(1)厚生省は都道府県に対し、総合的な監視計画の示達を行ない、かつ、都道府県の監視員の積極的な活用を図るため、保健所の薬事監視業務の範囲、方針等を明確ならしめるよう措置すること。また、輸入品に対する監視の効率化をはかること。(2)消費者保護の見地から、広告に対する規制方法等について改善するとともに、不良医薬品の製造、販売、違反広告等の不適正事案に対する行政処分の強化について検討すること。」、こういうふうになっているわけですが、そうすると、四のところで、厚生省が総合的な監視計画というもの、これはいままで立てていたのですか、これはどういうふうになっているのですか。これは薬務局の仕事ではないのですかね。
  316. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 監視計画は私どもの所管でございまして、総合的というふうな形で監視計画を実はやっておることにはなっておらないわけでございます。ただ、随時、不良医薬品等につきましては、薬事監視員が店頭からこれを発見次第摘発していくというふうなことをやっておりますが、ただ何ぶんにも、現在のところ医薬品並びに化粧品、医薬部外品全部を含めまして薬事監視員が二千名程度の陣容でやっておりまして、十分な監視が行なわれていないという事実は、私どもも率直に認めておるわけでございます。現在まず最もティピカルな方法として行なわれておりますのは、大体年度初めに、一カ月ないし二カ月をきめまして、毎年毎年品目を指定いたしまして、大体六ないし七品目につきまして、一斉に店頭からこれを回収して、国立衛生試験所で検査をして、不良医薬品かどうかということをやりますと同時に各都道府県におきましては、それと同じような方法によって、その他の品目について任意摘出をいたしまして各県の衛生研究所で検査をやり、その結果行政処分に付するというふうなことを、ある程度恒久的な仕事として従来ともやっているわけでございます。
  317. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間の関係でちょっとはしょりますが、そうすると、不良医薬品の製造、販売等についての行政処分というのは、いままでどの程度あったんですか。年度別に見ると、どの程度あったんですか。
  318. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 過去三十三年からちょっと簡単に申し上げますと、無許可無届業が三十三年当時は一万五千三百四十七ございましたのが、その後減ってまいりまして、三十八年はこれが二千八百二十九になっております。それから無許可品につきましては、次第にやはり過去五年においては減ってまいっておりますが、三十三年六百二十二が三十八年は三百四十九。それから不良品が、三十三年三千三十八ございましたのが、三十八年は千五百六十四。ところが、不正表示品等になってまいりますと、ふえてまいりまして、三十三年三千三百二十五が三十八年五千七百十九。それから虚偽誇大広告は、千百六十九が千二百三十七、若干ふえております。以上のように、非常に社会事情も安定してまいりました関係もございまして、無許可品とか無届あるいは不良品等につきましては比較的少なくなってきておるというふうな状況でございますが、しかし不正表示品あるいは虚偽誇大広告あるいは要指示医薬品の違反販売をやるというふうな事案はぐっとふえておりまして、参考に申し上げますと、要指示医薬品等につきましては、五千からないし六千ぐらい違反件数として摘発されております。
  319. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省の刑事局長来ておられるのでお聞きするんですが、本件の場合、刑事問題としてどういう点が問題になるかということをいろいろ考えてみると、副作用があるかもしれないというふうに認識をして服用させた、その結果としてここに出ておるような発病、入院があった、こういうことになってきた場合には、それは刑法上は何になるわけですか。
  320. 津田實

    政府委員(津田實君) その場合は、例として——本件がそうであるかどうかは別として、例として考えますると、業務上過失傷害になる場合と、あるいは未必の故意があれば傷害になる場合ということが考えられるわけです。しかしながら、傷害と申しましても、その機能の障害の程度が問題になるわけでございまして、ただ、承諾をいたしまして新薬の試験に進んで応じるといった場合に、ある程度障害の承諾がある——その障害の承諾につきましては、これは承諾があれば全面的に違法阻却するということはむろん申せないわけでありますけれども、一定の範囲においては違法を阻却する場合もあり得るということでありますから、その承諾があるかどうかという問題、それから承諾の程度の問題というようなことがやはり問題になってまいりまして、障害があってもあるいは違法阻却する場合があるのではないかということも考えられる。これは一般論として申すのであります。
  321. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 本件は、いま人権擁護の申し立ての段階ですが、その範囲で考えた場合に、普通の場合としては、副作用があるかもしれないということを認識していて飲ませておる、その結果として障害が起きたということになれば、これは製薬会社の場合ですから、業務上に該当して、業務上傷害になる、これは考えられるわけです。  それから、そんなものがないと思ってやったところが、それが起きたということになれば、そこで過失があったというふうに認定されれば——前の場合は未必の故意があるから業務上傷害ですね、あとの場合は過失ということになって、業務上過失傷害、こういうことになると思うのですが、承諾によって違法性を阻却するというのは、これは一般論としてはあるわけですよ。だけれども、飲むことを承諾したということが、じゃ副作用を起こしてもいいのだというところまでの承諾だというふうには一般の場合には考えられないのじゃないですか。いま刑事局長がそこまで言われたから、ぼくも論及せざるを得なくなってくるのですが、一体承諾によって違法阻却をするかどうかということは、いまここの問題となっているような案件の場合では、副作用を起こしてもいいのだという承諾があったというふうにはだれが見ても考えられないのじゃないでしょうか。きわめて軽微な、十分か二十分でなおるとかいう程度の承諾があったかどうかということは、これはあるいは議論になってくるかもわかりませんが、発病をして入院までするというようなことになっております。それを承諾をして服用したということ、それによって違法性が阻却されるということは、本件の場合、特に人権擁護局に申し立てがあったという、そのいまの内容でしかいまの段階ではもちろん判断できないわけですけれども、それを基本として言えば、その承諾による違法性の阻却というものは本件の場合無理なんじゃないでしょうか、そこはどうなんですか。   〔副主査退席、主査着席〕
  322. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいま仰せになりましたとおり、あるいは入院加療を要するというようなことを承諾するということは、常識ではあまり考えられないと思うのであります。いわば、ある程度実験でありますから、若干の障害を来たすということは、それはあらかじめ本人が承諾しておったかもしれません。たとえば、軽度の頭痛がある、吐きけがあるというようなことは、その程度のことはがまんして実験に応じるというようなことがかかりに承諾の内容であったといたしますると、あるいは違法性を阻却する場合もあり得るのではないかというふうに考えております。
  323. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、本件の場合は、結論的に言えば、業務上の過失傷害になる場合もあるし、普通の傷害になる場合もあると、こういうふうに考えていい、こう承ってよろしいですか、そういうふうな場合もあり得るということで。そういう場合と断定するわけにはまだいかぬと思いますがね。
  324. 津田實

    政府委員(津田實君) 本件の場合はもちろんわかりませんが、一般論としてはそういうこともあり得るということは言えると思います。
  325. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、仮説の例みたいになるかもわかりませんけれども、現実に副作用によって、入院しているということになってくるし、それからまた副作用があるかもしれないということの認識のもとに本件が行なわれたというように考えられてくると——まあ私はそう見ていいと思うのですが、なってくると、いま言われたように、一般論になるかもわかりませんが、業務上の過失傷害になり、普通の傷害になることがあり得る、こういうふうに承っておきます。  これはくどいことになりまするし、論争になりまするから、この程度にしますけれども、そういうような一般論にしても、そういう形の刑法犯というものが起こり得る余地は本件の場合にもある、そういうことは言えるわけですか。
  326. 津田實

    政府委員(津田實君) 具体的事件に即しませんと何とも申し上げられませんが、そういうこともあり得る可能性はないわけではないと思います。
  327. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 話は別のことになるのですけれども、厚生省の薬事課長とか監視課長ですか、これが非常に製薬会社に入っておるということを言うわけですが、どの程度入っておるのでしょうか。どうもよくわかりませんが。
  328. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 実は、厚生省の薬務局には、薬剤師の身分を持った薬剤技官といわれる方が実務を担当いたしておりまして、この方々は大学なり専門学校——旧制専門学校を出られた薬剤師の身分を持っておられる方々でございまして、やめた場合に、結局働く場所といいますのは、薬局を開局するなり、あるいは製薬会社で自分の技術を生かして仕事をやるか、この二つしかほかに道がないわけでございます。  それで、衆議院におきましても御質問がありましたときにお答えしましたが、製薬課長、これもむろん薬剤技官でございまして、製薬課長が二十八年から現在の課長まで四代続いておりますが、うち三人はそれぞれやめてからあと製薬会社のほうに入っておりますが、この場合には大体社長付というふうなことで、会社のことはわかりませんので、二、三年は社長付で勉強するという形で入っております。  それから、監視課長も、これは薬剤技官のポストでございますが、監視課長が現在まで五人ございまして、そのうち二人は団体の理事という形で入っておりまして、その他の方は、あとの二人はそれぞれ嘱託とかあるいは社長付というような形で製薬会社のほうに就職いたしておるわけでございます。
  329. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その製薬会社が薬をつくって、それを認可する場合に、厚生省としてはどういうふうな形で認可をしているのですか。
  330. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 許可申請を行ないます場合に、製薬会社としてはデータをつける必要がございます。そのデータをつける場合に、新薬につきましては非常にきびしいコントロールをいたしておりまして、まず動物実験をやることを前提にする。しかも、動物実験は、胎児にどのような影響があるかということで、胎児実験も同時にあわせて行なうということで、動物実験のデータをそろえて、それからあと臨床データ、いわゆる治験例と申しますか、この臨床データをそろえまして、それで新薬の許可申請ということで、厚生省に申請が出てくるわけでございます。申請が出てきましたならば、これは厚生大臣は中央薬事審議会にその新薬の許可申請を適当かどうかということを諮問いたすわけでございますが、諮問の段階におきまして、新薬につきましては、新薬特別部会という部会がございまして、その部会の下にやはり薬事審議会の委員であります新薬の特別調査会というものを置いております。この特別調査会のメンバーは、実際の仕事をやっております大学の研究機関の方々、あるいは国立衛生試験所の技官の方々、あるいは臨床の方々、そういった方々がそのデータの審査をやりまして、不足であるとすれば、この点が不足であるということでさらにデータの追加を要求するというふうな形で、しばしば会社側との文書の往復をやるわけでございますが、その審査が終わったところで特別部会に移す。特別部会では、これは特別部会にそれぞれ臨床、薬理学の一流の学者の方々をメンバーにいたしておりますが、この特別部会で審査を終えまして、そのあとで薬事審議会の正式の委員会にかけて許可をするという手続をとっておるわけでございます。
  331. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは全部書面審理なんですか。
  332. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 書面の審査でございます。
  333. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうして、そういうような新薬について、国立の薬物の検定所みたいなものを設けて、厚生省なり国が責任を持ってその現物を見て、それが実際に害があるとか、ないとか、そういう形で、書面だけでなくての、何といいますか、検査というか、それをどうしてやれないのですか。
  334. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 最近そのような御意見がどしどし出ておることは、私ども十分承知いたしております。ただ、そういう国立の研究機関、検定機関で、会社側の——会社側といいますか、そういう申請をやる場合に、チェックをしていくという制度をとっておりますところは、現在のところ、社会主義体制をとっております以外のところでは、国立でやるということはやっておりませんので、各民間の製薬会社のデータによってそれを審査してやっておるわけでございます。  ただ、日本の場合と違いまして、アメリカなり、西独なり、そういったところでは、大きな製薬会社が、とにかく日本の場合とスケールの違う非常に資本力も豊かな会社でございまして、会社のデータ自体が非常に精密な整備されたものである、こういうことは言えると思いますが、それを国立でさらにチェックするという形にはなっておらないわけでございまして、新薬開発には少なくとも、現在の日本の状況におきましても、大体新薬が出てくるまで最低二年なり三年を要するという形になっておりまして、これが世界の常識になっておるわけでございます。それをさらに国のほうでチェックするということになりますと、それに倍加した——倍加する以上の年月を要するということになろうかと思います。そういう点は、なかなか、実行にまで移すということになりますと、非常にむずかしい問題があるのではないかということを私どもは考えております。
  335. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、新薬ができるまで二年、三年かかるという話と、新薬ができてそれを厚生省に申請します場合に、申請してからどの程度の期間で普通許可になっているのですか。
  336. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 許可申請がありまして、大体六カ月ないし一年くらいは審査に費やしているわけでございますが、長いのは五年あるいは五年以上、まだ検討を要するということで、申請許可が——申請がありましても、まだ調査会の段階で研究段階というようなものもございます。
  337. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうのはあれですか、前言ったように、一年やるものも二年やるものも申請してからあるというのですが、全部書面審理なわけですね、いま言ったように。そうすると、年がら年じゅう——一年、二年たちますけれども、年がら年じゅうそのことをやっているのではないでしょう。ときたまやる程度じゃないですか。どうして書面審査なんですか。現物を見て審査をするということになると、秘密でも漏れてしまうのですか、それでできないのですか。国民の生命に非常に大きな影響があるものですから、当然国立のそういうものをつくって、現物で検査をすれば、こんなに時間がかからないでやれるのじゃないかと思うのですがね。ここのところはちょっとどうもわかりませんが。
  338. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) なお、現物自体はむろん添付してくるわけでございます。許可申請にあたっては、物質自体は。  それで、書面審査といいましても、大体新しい薬につきましては、新しい化学方程式が出てくるわけでございまして、その化学構造式その他添付されます詳細なデータによって、学者の方々は、薬理学なりあるいは般床学の大家の方々は、その書面審査でもって、この点が不備である、この点はなおかつどういうふうな検査をさらにもう一度追加したほうがよいというふうな形で、グループで審査をするものですから、その点は比較的私は公平に、しかも相当微細な点までも審査を続けておるというふうに信じているわけでございます。
  339. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまあなたの話を聞いておると、データの整備の度合いが、日本の場合は、アメリカや西ドイツの場合と比べると、何かおくれているというようなことを言われましたが、そういうようなことがあるわけですか。
  340. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) たとえば、これは一例でございますが、外国の製薬会社におきましては、動物実験はもとより、臨床実験までやれるような病院を会社の付属病院として持っておりまして、そこで一定の動物実験で安全性が確保されたものにつきましては、その会社自体で臨床データも求めるというふうなことまでやっておる会社もあるわけでございます。ところが、日本の場合には、動物実験はまさに会社の研究機関でやりますけれども、しかし、実際に臨床データまで求めるということになりますと、どうしても病院を会社自体が持つ能力もございませんので、大学病院あるいは権威ある研究機関に委託してそのデータを集めてもらうというふうな形になるわけでございまして、そういった点も含めますと、やはり外国の著名な製薬会社に比べますと、データの収集自体が必ずしも比べてみて完全であるとは言えないんではないかということを私は申し上げたのであります。
  341. 稲葉誠一

    稲葉誠君 法務大臣がおられますので、最終的にまとめとしてお聞きをしたいのは、一つは、人権擁護局にこれは申し立てがあったのですから、法務大臣としてどのような立場で本件について当たって、早急に事実を調べて、人権侵害に対する十分な救済をはかるかどうかということが第一点。それから第二点は、本件は刑事事件になる可能性の非常に大きい事件だと考えられます。ことに、副作用の点を中心として、その学術の雑誌には副作用があるんだということが書いてあったと、こういうふうに言っておられるところもありまするから、そういう点からいって刑事事件になる可能性もあることですから、法務省としては刑事事件の有無についても当然調べるべきだと、こういうふうに考えるんですが、その二点について法務大臣からお答えをお願いしたい、こういうふうに考えます。
  342. 高橋等

    ○国務大臣(高橋等君) 人間に試薬を服用させるということは、人命に関する重大な問題であります。したがって、その取り扱いは十分に慎重なるべきを要するということは、先ほど人権局長がお答えしたとおりでございます。目下、申し立て人、本人その他関係者から詳細な事情を聴取いたしておる段階でございますが、こうした事案の重要性にかんがみまして、重大な人権侵犯事件として、早急に調査の上結論を得たいというように考えて指令いたしております。  なお、刑事事件の問題につきましては、調査は実はいたしております。ただ、まだ捜査まではいたしておらない、このように御了承願いたいと思います。
  343. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、刑事事件になる可能性も私はある事件だというふうに思いますので、調査の段階から、必要の場合によっては捜査の段階に踏み切って、刑事事件としても当然取り上げるべきものは取り上げていただきたい、こういうふうに考えるんですが、その点についての法務大臣のお考えをお聞かせ願いたい、こういうふうに思うわけです。
  344. 高橋等

    ○国務大臣(高橋等君) 調査の上、これはぜひ刑事事件として取り扱うという必要を確信が出ますれば、捜査に着手いたすとこは当然でございます。
  345. 中村順造

    主査中村順造君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  346. 中村順造

    主査中村順造君) 速記つけて。
  347. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 社内預金の問題で、その法律的な問題点がいろいろあると考えますので、この点についてお伺いをしたいと、こう思うんですが、これは大蔵省なりあるいは法制局でもけっこうだと思いますが、まず大蔵省にお聞きしますか。——社内預金と銀行法との関係、それから相互銀行法との関係、それから出資の受け入れの法律がございますが、そういう法律との関係はどういうふうになってるか、どういう点に問題があるのか、これをお聞かせ願いたい、こう思うんですが、私はどうもこの社内預金というのが法律違反じゃないかという気がしてならないのですが、どうも十分に解明ができないものですから、まずその点からお伺いをしたいと、こう思います。
  348. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) この法律は、主管としては労働省でございますが、御質問の趣旨が銀行預金等との関係でございますので、私どものほうからお答えを申しますが、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律というのがございまして、これは金融機関でないものは原則としてみなできない、そういう預金を受け入れることはできないということになっているわけでございます。しかし、社内預金に関する限りは、労働基準法第十八条によりまして、強制貯金はいかぬけれども、使用者側と労働者の団体との書面による協定があって、届け出があれば、その範囲においては預かり金をしてもよろしいという特別な法律の条文があるわけでございまして、これによりまして、一般的な禁止とは別に、こういう社内預金が法律上有効妥当なるものとして存在し得ると、こういうことになっているわけであります。
  349. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、社内預金も、銀行法にいう預金であることは間違いないのですか。
  350. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 民法で申しますれば消費寄託でございますから、貸し金ではなくて預かり金でございます。
  351. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、銀行法の第一条第二項に、「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス」と、こうあるわけですね。ですから、この規定によって、社内預金を扱うということは銀行とみなされて、銀行の免許を受けなければできないのじゃないでしょうか、この関係はどういうふうになっているのですか。
  352. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 営業として行なうのは、これは銀行その他の金融機関でございますが、この場合、一般の事業者が預かり金をするのは、その種の営業には属しないと、こういうふうに解されるわけでございます。ですから、金融機関ではございませんが、労働基準法によって預かり金を預かることは正当視されている、こうなるわけでございます。
  353. 稲葉誠一

    稲葉誠君 私の言うのは、営業として預かると言ったって、その営業という観念ですよね。これは、いわゆる業というのは、継続し反復する行為があれば業とみなされるわけですし、営利会社が資金を預かることは絶対的商行為でしょうから、当然これは商行為になってくるのですから、営業になるので、ですから、営業として預金の受け入れをなすことになるのじゃないですか、労働基準法は一応別として。だから、銀行としてみなされるのじゃないですか。この条文からいってどうなるのですか。これは大蔵省の見解でも、法制局でもいいのですがね。どうもよくわからないのですよ、これは。
  354. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) その点の純粋の法律的な見解につきましては、むしろ法制局の御見解のほうがいいかと思いますが、私はその場合において、反復継続することは、確かにそれが通常は業として行なうことになる、そう解するのが普通だと思います。しかし、いわゆる金融機関——われわれの観念するところの金融機関の業務として、そういう種類の営業行為というふうには解さなくてもいいのではないか。まあ相手も不特定——同じ従業員でありましても、解釈としては私はこれは不特定多数というものに入ると思いまして、本来ならば先ほど申しました預り金等の取締等に関する法律に触れるわけでございますが、法律に特別の根拠があるがゆえに、それは金融機関でなくても事業者として預かり金ができるのだと、そういう明文がある以上は、それは差しつかえないというふうに解釈しております。
  355. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法制局はあとから聞きますが、そうすると、この社内預金で社員から預かるのは、大蔵省としては不特定多数の者からの預かりだというふうに認定しているわけですか。これは非常に重要な点なんですよ。そういうふうに認定しているというなら、もうそれでいいのですが、ぼくもそう思うのですが。
  356. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) そういうふうに考えております。
  357. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、銀行法のいま言ったような第一条の一項は、「左ニ掲グル業務ヲ営ム者ハ之ヲ銀行トス」と、こう書いてあって、二項が「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス」と書いてあるのだが、第一条の二項はこれはどういうふうな意味なんでしょうか。特に第二項があるのは、これはどういう意味なんでしょうか。これは法制局のほうかな。ちょっとわかりにくいのですよ、私も。
  358. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 途中で入ってまいりまして、おくれまして申しわけありませんが、ただいまの解釈問題としては、おそらくは例の出資の受入等に関する法律の例の社内預金の問題に関連してのお話だと思いますが、さしあたり銀行法の一条の二項についての問題で、「業トシテ」というものについての解釈は、これはいろいろむずかしい問題がございますが、この一条の二項の「営業トシテ」という中には、先ほど大蔵省の当局からお話がありましたように、もしそれが社内預金のお話であるとすれば、それは入らないという結論は私は正しいのじゃないかというふうに思います。
  359. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどうしてですか。
  360. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) まあ、まず第一に「業トシテ」ということがございましょう。「営業トシテ」という「業」でございますが、その「業トシテ」という場合に、不特定多数というのが一般にいわれますが、対象とする場合として考えられておりますが、それが一般の会社の使用人というような場合に、それが特定であるか不特定であるか、これはまあいろいろ解釈問題であると思います。大蔵省の政府当局の考えとしては、いつまで不特定多数というふうに考えておったわけですね。それはそのようでありますし、またそう解する余地も十分にあると思いますが、まあそれにしましても、この銀行法の一条の二項の「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス者ハ」というのは、やはり当該この業態といいますか、業種といいますか、それの仕事として、それがまあいわゆる営業というようなものとしてなされているかどうかということになると思いますが、どうも預かり金でなしに社内預金というような場合に、これを「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス」というふうに解するのは、銀行法の一条の二項の「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス」というものには少なくもぴたりと当てはまらないというふうに文字の上から解せられると思うわけです。
  361. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、ぴたりと当てはまるか当てはまらないかで問題としているのじゃないんですが、営業というのは、あれでしょう、いまあなたの言われるのは、もっぱらそれを専門に営むという場合のことに限定されているようにとれるわけですよ。会社がそれは付随的にやるとしても、これは会社が営業のために社内預金を預かるというわけでしょう。それをほかの目的に、会社の業務目的に利用するために社内預金を預かるんじゃないんですか。それならば一つの絶対的な商行為でしょう。商行為としてやることになるのじゃないですか、それは。そこからやはり営業という概念が生まれてくるのじゃないのですか。そう狭く解釈しなくてもいいじゃないか。それをもっぱらそのことだけをやっているかどうかは別ですよ。社内預金を預かって、それを会社の資金計画の中に利用しようという目的でやっている場合に、これは商行為でしょう。絶対的商行為じゃないですか。
  362. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 労働基準法の十八条が社内預金の根拠と見られるわけでございますが、そこには「労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合」というふうに出ているわけでして、いまお話しのように、会社の便に供するためにというような意図というものは、少なくも社内預金というものについては、これは本来そういうものであるということを言うわけにはまいらぬのではないか。十八条の社内預金としては、「労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する」というようなことでありまして、いまお話にありますような性格のものというふうには、社内預金というもので、この十八条の趣旨のもとにおける預金というものであれば、いまお話しのような性格のものではないというふうに思うわけです。
  363. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「その委託を受けて管理する」というのは、どういう意味なんでしょうか。それから、消費寄託の場合に、その管理の範囲はどこまでなんですか。
  364. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 先ほどのお話がございましたのは、その会社の利用に供するためにというようなお話だったと思いますが、この消費寄託でございますので、これは通常は預かったものをそのままの姿で返すというのが、これはまあ釈迦に説法みたいなことでございますが、そういう性格のものだろうと思います。
  365. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 委託を受けて管理するなら、その管理の目的というか、管理の範囲があるわけですね、それにそむいてくれば、当然そこで、他人の業務を行なう者が自己の利益をはかるとか、あるいは第三者の損害を目的とかいうようになってくれば、委託を受けて管理している、その管理目的に反すれば、そこで背任罪の問題が当然起きてくるんじゃないですか、そこはどうなんですか。これは刑事局長のほうが専門かもわかりませんがね。
  366. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいまのお話でございますが、刑事面を持ちますところの法務省といたしまして考えております関係は、まず銀行法との関係から申し上げますが、銀行法の第一条の二項の「営業トシテ預金ノ受入ヲ為ス者ハ之ヲ銀行ト看做ス」ということになっております。「営業トシテ」というのは、業としてというとこになれば、反復累行してということ。営業というのは、その反復累行ずることに営利性を持たせる。つまり利益を追求するということを前提としているわけでありまして、銀行そのものはそのことを目的としてやるということになる。そこで、一般に反復累行して預かり金を受けますことを禁止している法律は、出資の受入、預り金の法律の第二条、これは「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定による者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」、したがいまして、この出資の受入の法律の第二条の一項は、営利性がなくても反復して預かり金をしてはいけないという趣旨であります。したがいまして、ここは銀行法の範囲より外に出ているということになる。そこで、この第二条の第一項の「他の法律に特別の規定」のある場合というのは何に当たるかということでありまして、本件の——本件のと申しますか、いわゆる社内預金というものの全部がそれに当たるかどうかは別といたしまして、少なくとも社内預金と通常言われておりますものは、労働基準法第十八条によって、貯蓄の契約をさせたり、貯蓄金を管理する契約を利用者がすると、こういうことであります。したがいまして、その範囲内においては、この出資の受入の法律の第二条第一項の「他の法律に特別の規定」のあるものというふうに該当するから、このもの自体は預かり金であっても、この出資の受入の法律の第二条には違反しない。もちろん、社内預金と申しますものは、それ自体、預金を受け入れるということ自体に営利性を持っておるわけでありませんので、つまりここに申します労働基準法の貯蓄金を管理することが預金の受け入れとなる場合というのに該当しようと思うのです。すなわち、労働基準法十八条の四項にあります「貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、」という規定になっております。それに当たるわけで、その預金の受け入れということを反復累行して不特定かつ多数の者からやるのではありまするけれども、営利を目的としてそのことをやっているのでありませんから、この点は銀行法には関係がない。したがって、また一面から申しますれば、出資の受入の法律の二条第一項の「他の法律」に該当して、そこで違法性がなくなるということによって、社内預金の適法ということが認められているというふうに考えます。
  367. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、いまの局長が言われたのは、社内預金というものが他の法律に特別の規定があるものというので、これは労働基準法十八条四項だと、こういうわけですが、そうすると、社内預金のいろいろな類型によっては違法なものもあるという意味なんですか。何かそういう意味にもとれるようなことを言われたのですが。
  368. 津田實

    政府委員(津田實君) まあ違法なものといいますか、少なくともこれに該当しないものがあり得ると、たとえば、これは労働者がやるわけでありますから、労働者以外の者がかりに社内預金の預金者になっておるということであれば、その部分自体は、いわゆるここにいう適法性がなくなる。もっとも、それが業として行なわれておれば、やはり出資の受入の法律に反するのではないかというふうに考えるわけです。個別的に、あるいは個々にやられている場合は、これは別として、単なる預かり金にすぎないと思います。
  369. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その労働基準法の十八条の四項——これは労働省の労働基準局長呼んでなかったので、ちょっと恐縮ですが、なぜこういう四項ができたんですか。これは労働基準局長呼んでないので恐縮ですが、大蔵省わかりませんか。
  370. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 社内預金がなぜできたかという点、これはごく簡単にかいつまんで申しますと、これは私、所管でありませんから正確でありませんが、戦前は労働者をある程度、何といいますか、身柄を拘束するような意味の雇用関係がございました。そういう場合に、逃げ出すことを、逃亡を防ぐ関係もあって、強制的に——賃金を支払うのですけれども、全部雇用者がそれを預かってしまう。ですから、逃げ出せばいままでの賃金がもらえなくなるというふうな意味で、そういうふうに使われておった。それで、これは十八条の第一項にその趣旨が書いてあるわけですが、そういう強制貯蓄の契約はいかぬと。そういう制度に対して、今度はもっと民主的な制度として、従業員の金を会社が預かることをある程度認めてはどうかという考えであったと思います。つまり、絶対的にこういうものを禁止のままにしておくか、いろいろな意味で——それほどひどい意味でなくて、かなりの大会社におきまして、これはたとえば外地にある満鉄のような会社におきましても、その当時における金融機関の発達が現地では非常におくれておった。そういうことから、非常にたくさんの従業員がおって、その貯蓄を管理するのに適当な方法がないということから社内預金が行なわれておったことを知っておりますが、これはそういう金融機関のあれを補うという意味もあったのでございましょう。そういうことから、従業員の福祉の目的でそういう制度が設けられておった例もございます。これは戦前においてすでにそういう例もあったのでございます。そういうことから、まあいつでも議論になるのですが、かなり工場の所在地等は山奥にも存在する。あまり近辺に市街地がない場合もある。こういう場合に、従業員は一々自分の現金を預けるのに相当遠隔地まで行かなければならぬ場合もある。これを工場が預かるという制度をつくってもよいのじゃないか、こういうようなことから、現に行なわれておりました社員のための福祉の施設として、こういう従業員の預金制度を認めたらいいのではないか。しかし、それには強制的な色彩は一切あってはならないから、労働者の代表とちゃんと書面で協定を結んでやらなければならない。それについて、また、労働基準監督署でございますが、これは監督をする。「行政官庁」とありますのは、むろん労働基準監督局の系統でございますが、それらが、管理のしかたがおかしければこれを注意する。それから無利子で預かるというふうな点は、これは労働者の福祉にならない。必ず一定の利子をつけなければならない。いつでも払い戻しの請求に応じなければならないというふうな制限をこの法律で付しているわけでございます。まあ大体いまの目的は従業員の福祉及び利便を考えての制度であるというふうに解されております。
  371. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その労働者の貯蓄金を委託を受けて管理するのですから、管理者の責任というのはどういうふうな責任になるわけですか。
  372. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 実際のところ、この行政官庁の監督規定はありますけれども、この管理の方法その他につきまして、労働基準法には全くその規定を欠いております。普通、昔の貯蓄銀行法のようなものでございますと、その資金はある割合は国債のようなものに投資をしなければならぬとか、非常に保護——支払い準備等についての規定があるわけでございますが、この場合には、管理の方法が基準法に何らないという点が一つの問題点であろうと思います。
  373. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、管理はもちろん善良な管理者の注意をもってやらなければならないと思うのですが、それに反した場合には、そのすべての場合に背任問題が起きるかどうかは、ちょっと議論があると思うのですが、自分の利益をはかる目的なり、あるいは第三者の利益をはかるとか、そういうふうな目的をもって善良なる管理者の注意にそむいたという場合には、社長とか重役がその場合にはやはり背任の問題は当然起きてくると考えていいと思うのですが、その点はどうでしょうか、法務省のほうで。
  374. 津田實

    政府委員(津田實君) もちろん背任罪の成立し得る場合もあり得ると思います。
  375. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この預かったお金を今度社員に貸した場合はどうなんですか。貸してはいけないのですか、これは。貸したら、ほかのまあ労働基準法違反なのか、あるいは銀行法違反なのか、何か法律違反になるのですか。これは罰則はあるのですか、この十八条は。四項はないな、罰則は。第一項だけですな、罰則は。一項と七項か。勉強会みたいになって恐縮だけれども。
  376. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 罰則の関係でございますと、この条文を引っぱり合わせてみれば、おのずからわかるわけですが、いまおっしゃっておりますように、一項と七項——一項については百十九条の第一号、それから七項につきましては百二十条の一号に規定があるのでございます。
  377. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何か法律の勉強会みたいになっちゃって、ほんとうに恐縮なんですがね。だから、この預かった金を、委託を受けて管理をしている金を社員に貸した場合はどうなんですか。これは貸し方、いろいろあると思いますが、貸すことを業としてやっていたような場合はどうなんですか。
  378. 津田實

    政府委員(津田實君) この十八条で見られますように、貯蓄金の管理が預金の受け入れである場合には利子をつけなければということになっておるわけです。したがいまして、会社自体は何らかの形においてこれを、預かり金を利用しなければ、これはできないわけです。そういたしますと、労働者に貸し付けるということももちろんあり得ますし、また、これを他に消費寄託するということもあり得る。たとえば銀行等に預けるとか、あるいは社債等に投資するということもあり得るということは当然考えられると思うのであります。しかしながら、個々の従業員に貸すことが貸し金業になるかどうかという問題になりますと、これはやはり個別的にどういう条件で、どういう場合に貸しておるかというようなことから見れば、あるいは貸し金業になる場合もあるかもしれませんが、ならない場合もあり得るというふうに考えられます。
  379. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはいま刑事局長の言うとおりだとぼくも思うのですよね。だから、なる場合もあるし、ならない場合もあるし、現実にはこの委託を受けて管理する金をどういうふうに使うかということは、これは労働基準法に規定がないのは、いま銀行局長言われたのでわかりましたが、それが何ら、その委託を受けて管理する金の使途についての規定というか、法律がないとしても、何らかの規制というふうなものは、大蔵省あたりでも考えてはいないのですか。いままで何もないのですか。
  380. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) もともとこれは私のほうのあれじゃありませんが、何もないと思います。その金をどのように運用するか規定がない。したがって、大部分の場合は、自分の会社がたとえば他の金融機関から金を借りる場合にかわる方法として管理いたしまして、自分の事業資金に使っている例が多いのではないかと思います。
  381. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、大蔵省としては社内預金というのは何か好ましくないので、だんだん撤廃さしていきたいのだうといふうな指導方針だということを聞いているのですがね、それはどうなんですか。
  382. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 大蔵大臣は国会におきまして二、三回、そのような発言をいたしております。方向としては、廃止の方向に持っていきたい。たとえば五年というふうな暫定猶予期限をつけて、その間に漸減する方針をとって、五年後には全廃するというふうなことが望ましい。望ましいと思うのは、大蔵省の立場でそう思うけれども、これは何しろ労働者とのいろいろな歴史的な問題がありますから、沿革がございますので、一がいに大蔵省の意見だけできめるわけにいかない。そこで労働省としては、ただいまこの問題につきまして労働省の側から提議いたしまして、中央労働基準審議会がございますが、そこに検討していただくために提議したということを承っております。
  383. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、たとえば山陽特殊鋼のような場合に非常なあれがあって、そして一般の人は非常に困っているわけですね。そうすると、その会社があぶなくなってくる、こういうふうなことがわかったときに、自分の社内預金を一方的に引き出しておるという例が非常にあるわけですね。それから、一方的に引き出したからといって、直ちにそれが犯罪になるかどうかはちょっと問題があるし、そう一がいに言えない点はあると、こう思うのですがね。ただ会社から借り入れ金を−一方において社内預金をしておき、一方から借り入れをする、そして、そいつをあとで相殺をしてしまうという形をとる。しかもその場合に、その借り入れについては、重役が借りるのですから、重役が会社の金を借りるのだから、役員会の議決が必要だ。いまの商法でそうなっているかどうかあれですが、そういう役員会の議決が必要だということになっているときに、役員会の議決を経ないで、自分の社内預金が取れそうもないので借り入れをして相殺をしてくるという形で社内預金を事実上引き出したという結果を生むと、こういうふうなことが、山陽特殊鋼ですか、ここで盛んに行なわれておるということが伝えられているわけですね。こういうふうになってくると、背任の問題がここで当然起きてくると思うのですが。しかも、前の社長が一億円十二年前から借り出しておる。しかも、その借り出しの形が、何か無利子で役員会の議決を経ずに借り出しているということになっていると、こういうのですが、取締役が会社から金を借りるのについては、いまは取締役会の議決を必要とするのですか。それはどうなっていましたか。
  384. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 取締役が会社と取引する場合の一つの例だと思いますが、これは商法の二百六十五条によりまして「会社ヨリ金銭ノ貸付ヲ受ケ其ノ他自己又ハ第三者ノ為ニ会社ト取引ヲ為スニハ取締役会ノ承諾ヲ受クル」、こうなっています。
  385. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、山陽鋼の場合は、はっきりわかりませんが、取締役会の議決を経ないで、社長とか取締役がだいぶ金を借り出しているわけですね。その場合には、これは商法違反ということですか、罰則としては。あるいは背任になる場合もあると思うのですが、そこはどうなっていますかな。
  386. 津田實

    政府委員(津田實君) その場合は背任罪を構成するということも考えられるわけですが、しかし、それを、金を会社のために使うということになると、これは背任罪にはならない場合も出てくると思います。
  387. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、この二百六十五条の商法違反はどうなるのです。
  388. 津田實

    政府委員(津田實君) 先ほど背任罪と申しましたのは、一般背任になるか、四百八十六条になるか、これはその場合場合によって違うと思います。
  389. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのは特別背任は、あれじゃないですか、条文は限定されているのじゃないですか。だから、特別背任にはならいのじゃないですか。あまりこまかいことで恐縮ですけれども、特別背任にならないのじゃないですか。一般背任になるかならないかの問題は起きてくるのですけれども、そうじゃないですか。商法四百八十六条、違いますか。商法違反の特別背任にならなくて、その他の商法違反にはいまのあれはならないようですね。それはあれですが、一般背任になる場合が事案によっては出てくるということが考えられるということじゃないですか。もちろんあれですから、まとめて——特別背任には該当しないようで、一般背任に該当する場合が、そういう場合にはあり得るのだ、こういうことで、その他の商法違反はないのだというのが結論じゃないかと思いますが、そうじゃないですか。
  390. 津田實

    政府委員(津田實君) 四百八十六条になり得る場合もあり得ると思うのです。
  391. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはこまかいことですからあとで研究しますが、いずれにしても、社内預金の問題で非常に問題があって、これは大蔵省もいまのように言われるというふうなこと、それから、これにからんでの、委託で管理ですから、そこで善良なる管理者の管理が非常に必要だと思うのですが、この管理義務に違反して背任罪になったりする場合が非常にあるのだ、こういうふうに考えますので、抜本的な解決というのを大蔵省なり、あるいは労働省なりがよくやってもらって、それから刑法上の事件がどうも起きる危険があるから、そういう問題については、法務省当局で、社内預金についての、ことに管理されたものの使い道というか、そういうような状況については十分管理をするようにやっていただきたい、こういうふうに考えまして、社内預金関係の質問は、一応これで終わります。
  392. 中村順造

    主査中村順造君) ほかに御質疑のおありの方はございませんか。——それでは、以上をもちまして、法務省及び裁判所所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこの程度にいたして、明二十七日午前十時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会