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公述人(
小林恒夫君) 私、
商工組合中央金庫調査部長の
小林恒夫でございます。
本日、このような重要な席におきまして、私ごとき者がその所見を述べさせていただきます機会を得ましたことは、この上もない光栄と存ずる次第でございます。しかし、何分にもまだ未熟な者でございますゆえ、お役に立ち得るようなことを申し述べることができますかどうか、はなはだ危惧するところでございますが、何とぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。
さて、私に与えられました
課題は、
中小企業の見地からの問題ということでございます。
まず初めに、わが国の
中小企業が現在どのような問題に直面しておるかといった点を一応確認しておきたいと存じます。御承知のとおり、三十八年十二月の
預金準備率引き上げに始まりました
景気調整策は、去る一月九日の公定歩合一厘引き下げによりまして、解除の段階に入りましたが、ほぼ一年にわたった
景気調整策は、従来のそれに比べますと、きわめて特異な
現象を
産業界に生み出しております。それは
拡大均衡下における
不況現象というようなことばで言いあらわされておりますが、高水準の
生産活動が持続しながらも、一方では、
企業収益が低下し、いわゆる
増収減益の基調を示しておりますとともに、一部の業種では需給の不
均衡が生ずるといった
ぐあいに、各種の
不況現象が表面化してまいっております。こうした全体の
動きの中で、
中小企業におきまして
倒産や不渡りの発生が著しく増大いたしてまいっております。
東京商工興信所の調べによりますと、
負債金額一千万以上の
企業倒産は、昨年一年間で四千二百十二件、
負債総額で四千百八十一億円にも達しております。これは三十八年のそれと比べまして、それぞれ二・四倍、二・七倍の規模のものでございます。同時に、
東京発動機、
日本特殊鋼あるいは
サンウェーブ工業をはじめといたしまして、三十九年中に十二の
上場会社をも破綻に追いやるというような、きわめて深刻なものでございました。今回の
調整期における
不況現象は、従来の
調整期におけるものとは違いまして、
国内経済活動は底固く、
需要動向も比較的堅調でありながら、こうした
不況現象が生み出されたのでありまして、そこには、単なる
循環局面の問題とは趣を異にするような様相がうかがえるのでございます。
もちろん、
景気調整策による影響も確かにございましたし、それによって
中小企業の
経営がきびしく圧迫されたことも事実でありました。昨年一年間の
中小企業向け融資の実績を見ますと、
貸し出し増加額が
全国銀行では三十八年の四三%減となっております。さらに
相互銀行、
信用金庫の不振を反映いたしまして、民間の
中小企業専門金融機関の
貸し出し増加額も、三十八年の二七%減となっており、三十六、七年の
調整期におけるような補完的な
役割りを十分果たすことができなかったのであります。このために、
政府系三
金融機関が
追加財政投融資によりまして、積極的に
中小企業の
金融難に対処したのでございますけれども、
中小企業向け貸し出し増加額は、全体として見ますと、なお三十八年の二八%減となっております。そのために、
中小企業は深刻な
資金難におちいりました。一方、
企業間信用の面におきましても圧迫を受けまして、急速に
資金繰りの悪化度合いを深めていったのでございます。このような循環的
要因が
不況を生み出したという面も、むろん見解とすわけにはまいりませんけれども、
金融引き締め以前の三十八年後半から
倒産がすでに増加しつつあったということを考えますと、その
背後には、もっと根の深い構造的
要因が伏在しておりまして、それが循環的
要因とからみ合って作用していたと見なければならぬと思うのであります。したがいまして、昨今の
不況現象は短時日には解消しがたい、こういう性格を多分に帯びておると見られるのであります。その意味で、
金融が緩和の方向に向かった現在におきましても、なお不渡り
倒産が高水準で推移しておるという
事態に対しましては、とりわけ深い関心を抱かざるを得ないと存ずるのでございます。今月の初めには、特殊鋼大手の山陽特殊製鋼が行き詰まり、関連
中小企業に多大な不安をつのらせるといったこともありました。
中小企業は依然として苦しい
事態に直面しておるのであります。
この苦況を特色づけております構造的
要因のいろいろな様相をここで若干具体的にながめておきたいと思いますが、
不況現象に構造的
要因が働いておるというような意味には、いろいろ人によってニュアンスが違うようでございますけれども、それは結局のところ、国民
経済の長期的な発展に大きな影響を及ぼすような部面に変化が生じておる、その作用が
経済活動の面に強く及んでおるというように考えられます。
経済の長期的な発展を左右するもの、それはすなわち、
生産に従事する人と物、つまり、労働力と物的
資本、それに
需要の三つの側面から考察することができるかと存じます。これまでの急速な重化学工業化による
高度成長の過程で、各面に重要な構造的な変化が誘発されておるのであります。
こうした
動きを主として
中小企業の視角からとらえてみますと、まず第一に、労働の面では、わが国は基調的に労働力過剰
経済から労働力不足の
経済へ移行しつつありまして、このもとで、
中小企業における若年労働者を中心とする雇用難がひときわ深刻になっております。そこでは、さらに労働者の
企業内定着性の低下、賃金
上昇などの問題がありまして、従来、豊富低廉な労働力に依存してまいりました
中小企業経営の成り立つ余地を著しく狭めておる結果となっておるのであります。
第二に、
資本の面から見ますと、戦後目ざましく進展しました
技術革新が、原材料部門から加工部門あるいは消費財部門へと広く波及いたしまして、展開の中心場面を変えてきておるわけであります。このことは、
経済の発展に新しい性格を与えるものと思われます。
中小企業の立場から見ました場合、各種の新しい製品が大量廉価に生み出されて、これに加えまして、従来
中小企業固有の製品と見られておりましたものまでが、量産
方式によってつくり得るものに変わってきている点が注目されるのでございます。このために、大
企業のシェアが
拡大しまして、同業種の
中小企業の市場が圧迫されるというような問題が生じております。
第三に、
需要面、特に消費
需要の面にも質的な変化が進行しております。すなわち、所得水準が全般的に高まる過程で、生活の高度化あるいは欧風化が進みまして、
日本風のものにかわって欧風のものが嗜好され、電気製品を中心とする耐久消費財に多額の支出が向けられるというようなふうになってきております。このように消費者が生活の高度化、欧風化を通じまして買い向かうところの多くのものは、どちらかと申しますと、大
企業の量産
方式に乗りやすい規格化された商品でありまして、したがって、伝統的な
中小企業製品の
需要が逆に次第に減退するといったような傾向が見られるのでございます。
これらは、いずれもわが国
経済の内部に生じました構造的な変化でございますが、わが国
経済を取り巻く海外環境にも、後進国の進出、開放体制に伴う外国製品あるいは外国
資本の進出問題がありまして、
中小企業の市場
条件を一段ときびしいものにしておるのでございます。一方、こうした基本的な変化は、互いに作用し合って、さらに複雑な幾つかの変化を派生させてきております。すなわち、消費財部門における量産
方式の普及と、それによって大量につくり出されまする規格品に嗜好が向けられるというような
需要面の変化が起きておるわけでありますが、これは流通段階における変革を引き起こすということに通じております。従来の商業に近代的な姿への脱皮を要請するということに、結果的になっております。また、労働力の不足は、
人件費の
上昇を惹起しまして、大
企業の
収益性を圧迫しておりますが、これは
経営を多角化し、成長の見込まれるような分野へ向かおうとする大
企業の行動を助長しておるようにも見受けられるのでございます。ここ数年、大
企業が清涼飲料、石油ストーブ、魔法びん、あるいは、ちり紙などの、従来
中小企業の分野と目されておるような分野に進出してまいりまして、
中小企業を窮地に立たせるといったような事例が数多く出てまいっております。この問題と、先ほど申し上げました
技術革新や
需要面の変化から理解される問題であると思うのでございますが、また最近、大
企業が下請発注を行ないます場合に、効率のよい
企業に集中発注するとか、あるいは選別発注するというような
動きが出てまいっております。また、代金の支払いにつきましても、重要下請を優遇するといったような事例が見られます。このため、
生産性の低い下請
企業は、おのずから脱落していくということを余儀なくされておるのでございますが、こうした形をとって展開されてまいりますいわゆる下請系列の再編成も、開放体制を迎え、国際競争力強化の要請が強まったということのほかに、やはり
収益性低下の問題が根底にからんでおるのではないかと、かように考えられるのでございます。ともあれ、
中小企業は、いまやこうした多くのきびしい構造問題に直面しておりまして、いやおうなしに合理化を迫られておるのでございます。このようなときにあたりまして、特に
中小企業の自覚と努力がまず要請されるのでございますけれども、いろいろな面で不利な立場に置かれております
中小企業が、このような大きな構造変化に独自に対応することは、なかなか容易なことではないと思うのでございます。この意味で、長期的かつ総合的な
中小企業の構造対策が現在特に必要とされる、かように考えるのでございます。
このような観点から今後の
中小企業対策のあり方ともいうべきものを考えてみますと、それはまず
中小企業の近代化、合理化を徹底的に推し進め、高度化をはかっていきますと同時に、構造変化に対応できないで衰退を余儀なくされるものにつきましても十分な施策を講じて摩擦を少なくすることが、最も基本的な
課題であると思います。その場合、特に次の配慮が望まれるのでございますが、その第一は、以上に申し上げました構造変化が個々の
中小企業に何よりも巨視的な観点に立っての近代
経営感覚と体質の改善を求めております点にかんがみまして、それを助成するような指導行政を強力に推進する必要があるということでございます。第二に、
中小企業が構造変化に即応して成長発展し得るためには、この個々の
中小企業の自主的努力を結集して、みずから積極的にこの苦難の道を切り開いていかなければならないのでありまして、そのために組織化の推進が施策の重要な一環とされなければならぬと、かように感ずるのでございます。こうして、さらに今後進展していくでありましょう構造問題の重圧に
中小企業が事前に対応できるような素地を築いていくことが、今後の
政策課題として特に要請される点ではないかと存ずるのでございます。最後に、
中小企業問題を抜本的に解決するにあたりましては、もちろんきめのこまかな施策を行なうことも必要でございましょうが、それと同時に
資金の潤沢な供給が必要であるということを申し上げたいと存じます。
さて、以上のような
中小企業が現在置かれた状況から四十年度
予算案の規模についてながめてみますと、
一般会計の
中小企業対策費は、三省所管分を含めまして二百十七億九千三百万円、これは三十九年度当初
予算に比べて三一・六%の
伸び率と相なっております。一方、
政府系三
金融機関への
財政投融資は二千四十五億円と、初めて二千億円の大台に乗せました。三十九年度当初に比べまして二六・五%の
伸び率と相なっております。これらはいずれも、国全体の
一般会計の
伸び一二・四%、
財政投融資の
伸び二〇・九%を大幅に上回っておりまして、
中小企業の合理化、近代化を積極的に推進していこうとする配慮がなされておると思うのでございます。しかし、
一般会計全体に占める
中小企業対策費の比重はわずか〇・五九%にすぎません。絶対額では
中小企業者をとうてい満足させることができないのではないかと、かように案ぜられるのでございます。もちろん、金額から見ましても明らかなように、
中小企業予算の主力は財投にございまして、もともと
一般会計の
中小企業に与える影響力は限られたものではないかと存ずるのでございますが、
中小企業全体への
政策となれば、
金融、税制面での配慮が圧倒的なウエートを占めているということになるかと思います。それにいたしましても、三百二十万以上を数える
中小企業関係の
予算が、
一般会計の一%にも達しないのでは、いかにも少ないというように感ぜられるのでございます。
ところで、四十年度
予算の焦点が、
中小企業の近代化を表面に打ち出した三十九年度のいわゆる革新的近代化
予算に続きまして、
中小企業基本法路線の二年目に当たりますゆえに、その近代化施策が
予算面にどのように反映されているかということにあると思うのであります。かような見地から四十年度
予算の
一般会計における
中小企業対策費について検討してみますと、そこにきわ立った
特徴としてあげられることは、
中小企業高度化
資金の大幅な増額でございます。これと並行いたしまして、小規模・零細層に対する配慮がかなり積極的に打ち出されているということでございます。前者は、商工業を通じてその集団化、協業化を促進し、事業規模の
拡大をはかろうとするもので、約四十四億円から約六十七億円にと五〇%以上の大幅増額となっており、また後者におきましては、特に出資及び補助七千万円を予定した小規模
企業共済事業団の創設があげられます。国民
経済の発展は
中小企業に多くの変化をもたらし、
中小企業分野においていわゆる両極分化の
現象が指摘されているのでございますが、今回の
予算案におきましては、そうした傾向を認めながら、これに沿った
政策意図が看取されるのであります。言いかえますれば、単なる一律的な近代化ではなく、発展成長すべきものにつきましては、さらに育成することによりましてより
重点的な近代化を推進し、一方
停滞的な傾向にあるかあるいは一挙に近代化が困難と思われる小零細規模の
企業層に関しましては、単なる
経済合理性のみでなく、事業転換等を含んだ対策をできるだけ円滑に遂行すべき段階に至っているのだと、こういうような判断に基づいて出されているものと思われるのであります。したがいまして、三十九年度
予算と比較した場合、全体の近代化の方向に沿いながら、これより生じてまいっている問題に積極的に対処しようとする姿勢は、一応看取することができるのであります。
まず、近代化促進費の増加につきましては、中でも高度化
資金の大幅な増額と貸し付け単価の引き上げ、償還期間の延長などの貸し付け
条件の改善が、かなり考慮されております。また、
設備近代化
資金につきましては、個々の
中小企業者の
体質改善の積極的推進をはかろうとしていますが、これに対し高度化
資金は、集団化、協業化による
企業規模の
拡大、
相互の連携強化を軸といたしまして、
中小企業構造の高度化を推進せしめようとしております。今回の
予算案におきまして、近代化
資金より高度化
資金のウエートが高くなっておりますことは、構造対策を進めるための高度化
資金拡充という方針を明らかにしたものと思われまして、適切なものと考えられるのでございます。すなわち、最近における労働需給の逼迫、急速に進展する
技術革新、
需要の構造変化、開放
経済への移行に伴う各種の
条件の基本的変化に適応するためには、
中小企業の集団化、協業化の促進によりまして体質の改善、合理化を行なうという方針は、現段階における
中小企業政策を明確にしたものでありまして、同時に都市における公害防止あるいは地域
経済開発の効果等もあわせて期待し得るものと思われるのでございます。
この点、工場集団化
資金につきまして、従来は
一つの団地の組成には二十
企業以上の参加が必須
条件でありましたのを、四十年度からは、後進地域における集団化の促進、過密地域からの移転の推進をはかるために、指定地域につきましては十
企業以上でも認めるよう集団化基準の緩和がはかられましたのは、三十六年にこの制度が発足しましてから五年目を迎えまして、実情に適した改善を行ない、もって実質的な集団化の積極的な前進を企図したものとして、評価したいと思うのでございます。
なお、国民
経済全体の見地からは、流通機構の近代化の問題として、また
中小企業自体にとってはそれぞれの態様に応じた合理化の問題としまして、卸商業の団地化、小売り業の店舗共同化、商店街の近代化の施策について
予算措置が講ぜられており、特に卸商業団地をはじめとしましてかなりの増額が見られるのでありますが、製造業に対する施策と比較いたしました場合に、流通部門に関しましては基本的、総合的な対策がやや立ちおくれておるように感ぜられるのでございます。
また、
設備近代化
資金につきましては、今回その対象として加工食料品製造業、サービス業関係品目につきまして追加指定が行なわれるようでございますが、これは
消費者物価安定に資するものとして時宜にかなった措置と考えられるのでございます。
次に、今回の
予算案中、
中小企業関係分で
一つの
特徴とも言える小規模
企業対策費について触れてみたいと存じます。小零細規模の
中小企業は、前に申し述べましたように、わが国
経済の急速な変貌の中にありまして傾向的には衰退の方向にあるものが多いのでございます。また、その数がきわめて多いということからみ合いまして、
中小企業近代化
政策を推進する上に大きな問題とされてきたのでありますが、本
予算案におきましては、従来の
経営改善普及事業の補強
予算のほかに、新たに小規模
企業共済事業団を創設し、
相互扶助の精神に基づいて、小零細事業者がきびしい
経済環境の中で直面しなければならない転廃業の問題も含めた諸問題に対処し、事業あるいは生活上の安定をできるだけ可能ならしめることをねらうとともに、他方
金融面につきましても、小零細規模なるがゆえの
金融上の不利、すなわち物的、人的担保の欠除あるいは不十分さをカバーするために、特別小口保険制度の新設が予定されておるようでございます。その考え方としまして、
経済の進展に伴う
中小企業の階層分化等が叫ばれてきております現在、当然の施策と言えるかと思いますが、小規模
企業共済事業団が対象とする製造業の従業員二十人以下、商業、サービス業の五人以下の
企業は、わが国全事業所数の八〇%以上にも達しておりまして、それだけにまたさまざまな問題をかかえておるわけでありますが、四十年度における出資及び補助合わせて七千万円の
予算規模はあまりにも少額に過ぎまして、これをもって所期の効果をあげることはなかなかむずかしいのではなかろうかと存ずるのでございます。今後これを契機といたしまして、小規模
企業対策の一そう適切なる運営と拡充をはかりますとともに、強力な
予算措置をとられますことが必要であるかと存ずるのでございます。
また、下請
中小企業関係といたしましては、下請取引のあっせん機関としまして下請
企業振興協会の新設が予定されておるようでございますが、もしその運営が適切に行なわれますならば、この種機関の活動によりまして、下請取引の機会確保、
条件改善あるいは季節的、地域的格差の解消などに役立つものであろうかと思われますが、残念ながら補助金の
予算規模はあまりにも少額に過ぎると考えられます。なおまた、下請代金支払遅延等防止法についての違反関係の取り締まり強化をはかるため、調査、検査費の充実に若干の
予算が計上されておりまするが、これもまた同様に金額過小と考えられるのでございます。
下請
企業は
中小企業の中でも
一つの大きな類型でございまして、国民
経済の構造変化に密接な関連を有しておりますので、専門
生産体制——社会的分業体制の確立と同時に、合理的な系列関係の整備と取引
条件の改善が急務かと考えられるのであります。したがいまして、これにつきましては、
中小企業政策審議会の下請小
委員会の答申等を十分御配慮いただきまして、そして基本的、総合的な対策の樹立及び推進をはかっていくことが必要ではなかろうかと存ずるのでございます。
最後に、税制について一言申し上げたいと存じます。
中小企業向け税制といたしましては、法人税率の軽減、事業税の事業主控除の引き上げその他によりまして、
中小企業の自己
資金の充実に貢献することが大きいとは思われますが、本
予算案の
中小企業対策費策定の中に見られます
中小企業の積極的な高度化
政策に対応したもう一段の
重点的軽減措置を検討すべきではなかろうかと、かように考える次第でございます。
以上総括いたしますと、
中小企業の角度から見た四十年度
予算案は、近代化及び
体質改善を推進すべき組織化の基盤の上に高度化
資金を
中小企業政策実現の主柱の
一つにしたという点におきまして、今後の施策の方向の明確化があると考えます一方、小規模
企業共済制度の創設につきましても、
停滞傾向にある小零細
企業層の問題を事業転換等の方法によりまして可能な限り前向きに解決していこうという点で、
経済の構造的
条件変化に積極的に対応しようとする
政策意思の反映があるかと思われるのであります。しかしながら、
一般的に申し上げますと、どのように
政策目標が明確化されたといたしましても、その裏づけとなる個々の
予算額が少額でありましては、その効果を減殺するばかりでなくて、場合によりましてはむしろ効果をほとんど期待し得ないというようなこともあり得るかと考えるのでございます。同時にまた、いわゆるきめのこまかい多岐多様にわたる
予算配分も必要ではありましょうけれども、重要な中心的施策につきましては、さらにより
重点的な金額の投入が必要であろうかと思うのであります。
四十年度
予算案を見ましても、下請
企業対策、小零細
企業層の関係での項目につきましては、特にこの点を痛感する次第でございます。
結論的に申しますと、わが国
経済のきわめて重要な構成部分であり、社会、
経済上も重要な
役割りをになわされ、しかも構造的
条件変化のもとに多くの問題をかかえております
中小企業に対する
予算額がいまだ
一般会計予算額のわずか一%にも満たないという事実、すなわち絶対額の過少ということがやはり最大の問題ではなかろうか、かように感ずるのでございます。
時間もだいぶ過ぎたようでございまして、まことに申しわけございませんでした。以上をもちまして私の
公述を終わらせていただくことにいたします。たいへんありがとうございました。(拍手)