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戸叶武君 あなたはつまらないことだけ覚えていて、大切なことは忘れておりますが、それで
外務大臣がつとまりますか。あのときも一九六二年、キューバ事件の
あとですが、池田さんがローマ法王庁をたずねたとき、奥さんと娘さんと一緒に行ったらしいのですが、三十五分間書斎の間でお目にかかったときに、ピオ二十三世はどういう
質問を池田さんにしましたか。当時、池田さんは総理大臣ですけれ
ども、あなたは金と銀と石では何を一番好みますかと言ったら、池田さんは石ですと答えたのです。それは六十点程度です。その石は何ですかとピオ二十三世がさらに重ねて
質問したのです。池田さんの頭には庭石ばかりしか入っていなかったから、ほんとうに答えができなかったから黙して語らず、これは四十点ぐらいに下がったわけです。語れば恥をかいたでしょう。ピオ二十三世が池田さんに問おうとしたのは、その石は路傍の石なんです。いま世界が東西対立してきびしい、けわしい時代にある。この対立を乗り越えてどうやって平和共存をつくり上げるか、声なき声としての路傍の石の庶民の声を聞いて政治をやるような指導者として、
日本の指導者があってほしいということを注文をつけたわけですが、これは馬の耳に念仏と言っては悪いかもしれませんが、それだけのかまえがなければ
——赤子の声に対してもこたえるだけのかまえを
日本の古代における指導者というものは時っておったのですが、いまの指導者が、世界が狂瀾怒濤の時代に、ローマ法皇の使節が来たといっても、何だかわけのわからない、ただ昼めしを食べにいって、大切な国会を無視し、あの全世界にメッセージを送ったピオ二十三世の精神を受け継いで、世界に平和共存体制をどうやってつくり上げようかと模索しながら尽力している人たちのその心に触れることができない。これじゃあぶなくて、あなたたちに外交や政治をまかしておけない。もう一度会ってきなさい、待っていますから。
いま、アメリカの行為に対しては、私たちはほんとうに腹から憤りを持っています。いままで
日本の軍国主義があやまちをおかしたから、われわれは長崎、広島の原爆をもがまんして忍んできたのです。いま、ベトナムで行なっているような行為を、西欧諸国なりアメリカでやってごらんなさい、白人の世界でやってごらんなさい、世界の世論は許しません。アジア民族に対するモルモット化された蔑視観から出ているのです。われわれは、民族的偏見でものを言うのじゃないが、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの民族が、いま民族独立の険しい道を歩んでいるときに、その民族的苦悩を理解することができないで、自分たちのイデオロギーを押しつけ、そして民族の苦悩を無視して、そこを戦乱のちまたに化している。共産主義に反対というけれ
ども、じゅうりんされている民族というものは、共産主義よりもアメリカ帝国主義がこわいという、私は感じをいま植えつけていると思うのです。私は、アメリカがほんとうに反省しなければならないときに、アジアから遠慮会釈もなく
——アメリカに対して友情をもって、アメリカのやり方は間違っている、アジアの混乱は、われわれが
解決するからわれわれの手にまかしてくれというぐらいのことを言わなければ、
外務大臣としての地位はつとまらないと思いますが、
外務大臣、それでもっとまると思いますか。ひとつ所見を承りたい。