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1965-03-25 第48回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十五日(木曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      丸茂 重貞君     井川 伊平君      戸叶  武君     稲葉 誠一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     委 員                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     理 事                 井川 伊平君                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 太田 正孝君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小林  武君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 浅井  亨君                 白木義一郎君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 林   塩君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  河野 一郎君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣参事官兼内        閣総理大臣官房        会計課長     高橋 弘篤君        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       松永  勇君        総理府総務長官  臼井 莊一君        内閣総理大臣官        房公務員制度調        査室長      岡田 勝二君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        警察庁長官    江口 俊男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁教育局長  島田  豊君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        防衛庁参事官   麻生  茂君        防衛施設庁長官  小野  裕君        防衛施設庁総務        部長       沼尻 元一君        防衛施設庁総務        部会計課長    大浜 用正君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省保護局長  武内 孝之君        法務省入国管理        局次長      中村 正夫君        外務政務次官   永田 亮一君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        大蔵大臣官房会        計課長      新保 實生君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省国有財産        局長       江守堅太郎君        大蔵省銀行局長  高橋 俊英君        文部大臣官房会        計課長      岩間英太郎君        文部省体育局長  前田 充明君        厚生政務次官   徳永 正利君        厚生大臣官房会        計課長      戸澤 政方君        厚生省公衆衛生        局長       若松 栄一君        厚生省薬務局長  熊崎 正夫君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省援護局長  鈴村 信吾君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林省農林経済        局長       久宗  高君        農林水産技術会        議事務局長    武田 誠三君        水産庁長官    松岡  亮君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        中小企業庁長官  中野 正一君        郵政大臣官房長  淺野 賢澄君        郵政省監察局長  稲増 久義君        郵政省電波監理        局長       宮川 岸雄君        郵政省経理局長  北脇 信夫君        建設大臣官房会        計課長      多治見高雄君        建設省河川局長  上田  稔君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        自治大臣官房長  松島 五郎君        自治大臣官房会        計課長      芦田 一良君        自治省選挙局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        国税庁直税部長  堀口 定義君        日本電信電話公        社総裁      大橋 八郎君    参考人        日本原子力研究        所理事長     丹羽 周夫君        財団法人オリン        ピック東京大会        組織委員会事務        総長       与謝野 秀君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、丸茂重貞君が辞任され、井川伊平君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上、衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。     —————————————
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、参考人出席要求についておはかりいたします。  鈴木強君から、本日の同君の質疑の際に、日本原子力研究所理事長出席を求められております。参考人として日本原子力研究所理事長丹羽周夫君の出席を要求することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  6. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより質疑に入ります。鈴木強君。
  7. 鈴木強

    鈴木強君 農林大臣にお尋ねいたします。昨日の漁業交渉妥結について、わが党はその結論については幾多の疑点と不満がございます。したがって、党声明にも明らかなように、もう少し慎重な配慮をすべきであるという結論でございます。したがって、問題になりました点を二、三私はこの際お尋ねをしておきたいと思います。  まず、農林大臣が従来主張をされておりましたこの漁業交渉については、かりに請求権問題について多少の譲歩はあっても、この問題については譲歩しないと、こういう非常にかたい信念で交渉に当たられておったと思うのでありますが、最終段階でかなり後退をしてきた、これは一体どういうわけですか。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 再々申し上げておりますように、交渉の目標を李ラインの撤回ということと日本漁業実績を維持していく、こういうことであったわけであります。それからその方針に従いまして専管水域とか共同規制水域とか、そういう線を引くことにつきまして、いささか後退したような感をお持ちになっておる点もあると思います。しかし、私は済州島の基線引き方等におきましても、先方の引き方が、済州島を含めて直線基線でもって、その中を内水としてその外へ専管水域を設けるといううような主張は断固排撃いたしたわけであります。そうして済州島の周辺も低潮線に基づく十二海里の専管水域を設け、そうして半島のほうは直線基線から十二海里を引いた、その間のくぼみにつきましての線の引き方等につきまして、何といいますか、歩み寄りをしたという点はございます。しかし、その低潮線の十二海里の線の内部に基点を置いて低潮線専管水域を引いたという痕跡といいますか、あとを残すために実は苦心をいたしたわけであります。接線によらず、接線から中へ入った点から線を引いた、このことは低潮線を基礎として十二海里の専管水域を設ける、こういうことの証拠といいますか、そういうあとを残すために苦心をしたということでございまして、そういう点におきまして、あるいは後退したかというようなそしりもあるかもしれませんが、私といたしましては、私ども基本方針その他を貫いてきた、こういうふうに考えております。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 この韓国の沿岸から四十海里も離れておるこの済州島の周辺に三角形の水域を設けて韓国内海とするがごときことは、やはり公海自由の私は原則に反すると思うのです。日本みずからがその権利を放棄したというふうになると私は思うのですね。これは非常に今後のわが国の国際漁業にも大な影響を及ぼすと私は考えます。そればかりではなくして、やはり国際法上から見ても非常に問題があると思う。あなたはそこでいろいろ言いますが、基線引き方について、これは一番大事なところですから、ひとつ地図か何かで説明してくれませんか、よくわかりませんから。
  10. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) たいへん誤解があるようでございます。いまのお話にも。あそこを内水として私が認めたようなことでございますけれども、再々これは申し上げておるんですけれども内水と認めません。内水と認めさせようとして向こう最初線引き方を、済州島を含めてすりばち型に持ってきて、直線基線で線を引く。そうすると、直線基線で線を引けば、その外十二海里が専管水域になるわけですから、だから向こうの初めの主張を通せば、あすこは内水なんです。ところが、私のほうはそういう直線基線向こうから済州島を含めた線の引き方はけったわけです。そして向こう半島のほう、韓国のほうは直線基線でこう周囲に十二海里を引く、それから済州島のまわりは低潮線から十二海里を引いていく、こういうことですから、これは専管水域です。内水ではございません。(「図面で説明してください、わからぬ」と呼ぶ者あり)地図の用意をせいと言えば、持ってきたんでしたが、いまあるかな……。
  11. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃぼくが持ってきたから。これ、けさ書いてきたんだ。そこに張って説明してください。ちゃんと準備してください。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 話のいきさつを申し上げますと、韓国側はこういうふうな線をもって、これを囲んで、これを内水化しよう。こういうことを提案したわけであります。こういう線を引きまするというと、これが直線基線でございまするから、その直線基線の十二海里外へ、これが、この外が専管水域、この直線基線の外十二海里が専管水域となって、日本漁場等共同規制区域というものが非常に狭くなってくるわけです。ばかりでなく、こういう離れておるところは、いま御指摘のように直線基線で結ぶべきものではない。こういう私どものほうの主張でございます。そういう主張から、済州島につきましては、これは国際慣例で十二海里の低潮線から専管水域、この外にはもうありません、これは専管水域。それから向こうの島のほうは、直線基線の起点を設けて、ここから十二海里の、これはもう少しちょっと減りますが、十二海里で専管水域を設ける。こういうことに。基線から十二海里ですね、この島を。ですから、これは内海じゃない専管水域、これが皆専管水域になるわけでございまするから内水ではない。ところが、こういうふうに向こうからやり、こっちからやったときに、ここにこういうものができたわけです。入り組みが、こういう入り組みができたものですから、去年、いわゆる赤城試案といいますか、こういうところの入り組みの紛争を避けるという意味から、この分だけを百二十七度七分にしようというのが初めの案でございました。それから、いきさつがありますが、向こうはとにかく最後にはこの十二海里の接線から百二十七度十三分で切ると、これをここまでにするという案でございます。私は十分までにしたのでございましたが、これは十三分に認めるように最終的にはいたしました。それから、この部分だけが専管水域と同じように扱う。ここは専管水域。こちらにつきましては、向こうは、やはり、こちらが接線できたのですから、この接線で私のほうで百二十六度で主張してきたのですが、百二十五度五十四分で線を引くと、こういうことを主張したわけでございます。ところが、こうなりまするというと、これは打ち明けた話ですが、どうも向こう主張のように内水化したんだというおそれが国際的に出るわけでございます。そういうことになりましては、私はほかに対しての主張や何か非常に日本の立場が薄くなりますから、どうしても、これは専管水域だから中からとらなくちゃだめだ、少なくともこっちだけ中からとらなくちゃだめだ。そうすればこの専管水域をここへ引いたという痕跡といいますか、ここに残る、そういう主張をしたわけです。この主張の初めは百二十六度でございましたが、これを斜めに——まあだんだん話し合いの結果、私のほうはこの線を主張し、向こうは依然としてこの接線主張しておったわけでございますが、最終的にはこれをこういうふうに立てた。しかし、この中に入り組んだということだけは、これは残しておかなければ、私は、済州島の回りを低潮線で線を引いたということにならないで内水的に引いたと、この接線でやられれば内水だと、直線基線で引いたと、こういう主張をされるおそれがありますから、これでここからやって、そうして話し合いで、これは専管水域ですぞと、この中は内水じゃありませんぞと、向こうでもこれは内水じゃない、こういうことを了承しておるわけでございます。そういう事情でございますので、私といたしましては、私の主張の線は歩み寄ったというか、譲ったという点も幾らかありますけれども方針というか、考え方につきましては依然として初めから考えておったことを通した、こういうことでございます。
  13. 鈴木強

    鈴木強君 その点はわかりました。それで、李ライン撤廃についてはたいへん御苦労いただいたようですが、問題は、韓国国内法によってあのラインを越したものは拿捕する、逮捕することができるという法律がございますね。これはもう明確に正式にまとまりますれば廃棄していくんだということについては、もうはっきりした保証があるのでございますか、その点。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) この点につきましては、事実上の問題といたしましては、こういう専管水域を設けたと、向こう管轄権といいますか、取り締まりにつきましても管轄権につきましても、漁業専管はここだけだ、だからいまの李ライン内で行使していた権限はこの中に狭まるわけであります。十二海里に。その先が共同規制水域でございます。その共同規制水域の中での取り締まり及び裁判管轄権旗国主義——同じ船の属する国、人の属する国、属人的な取り締まりということでございまするから、向こうではいままで李承晩ライン内で行使していた権限——権限といいますか、そういうことはもうやらないことになります。そのほかに調査区域等に線を引いて李ライン的なものを置かない、調査するにつきましても調査区域として線を引かない、こういう事実上李ライン撤廃回し効果をこれが発効すれば持つわけです。と同時に、私どもはそれだけではあきたりませんので、合意議事録等におきまして、国際法国内法に優先するのだ、条約ができればあんたのほうの国内法というものはなくなると回し効果を持たせなくてはならぬ、こういうようなこと、及び拿捕等はしない、いかなる場合にあってもこの専管水域以外におきまして拿捕抑留等はしないという約束をはっきり書くことに相なっております。これは合意議事録等におきましてはっきりさせたい、こういう話し合いがあったのでございます。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 結論だけでけっこうですから……。問題は、専管水域にからんで、韓国側では李ラインがまだあるのだということを言っているという一部の情報もあるわけですよ。ですから問題は、国内法によって逮捕するというそのことはこの協定によって消滅しているのだということは明確になっているか、保証がありますかという、その点だけです。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 話し合いでは明確になっております。でありまするから、それを書類の上においてあらわす、こういう段階を、何といいますか、イニシアルでもする場合にすると、こういう約束になっております。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 次に、この共同規制水域内の漁獲量の問題ですが、これ十五万トンにきまったわけですね。ところが、きのうも北村委員質問に答えて——従来の実績から見てどうかという御質問が出ました。私ちょっと調べてみますと、三十六年ないし三十八年間の実績というのは十六万トンないし十七万トンになっておりますね、実績が。そうしますと、今度の妥結によりますと実績よりか下回っております。こういう点はもう少し直すわけにはいかないのですか。主張できないのでしょうか、これは。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまのお話のように、実績は十六万トンから十七万トンになります。そういうことでありますので、十五万トンの上幅を一〇%、ベースからアローアンスといいますか、十六万五千トン、それ以上をとるような場合には自主的にこれはちょっと押えるような措置をとらなくちゃならぬ。しかし、あそこの中は単に漁獲量だけで漁の制限をしていくということには、魚の種類が非常に雑魚といいますか、でもありまするので、困難でもある。あるいはまたもとの李ラインの中でばかりとっているわけじゃございません。外でもとっているのでございます。そういうわけでございまするから、漁獲量で云々することは当を得ていない、こういうことを主張いたしまして、一応のめどとして最大十六万五千トンまでの場合を幅として話し合いをしましたが、船数で、船の数でひとつきめていこう、船の数できめて、船の数からもお互いに資源を保存していくというような関係から共同規制をしていく、こういうことならば実行もしやすいということ、こういうことで船の数で協定上はきめていこうじゃないか、実績を重んじて。でありまするから、内部にわたっての話はあまり申し上げるのは——まだ協定文ができたわけじゃございませんが、話としては協定の上においては隻数でいこう、合意議事録の中でめどとしての漁獲量を書いていこう、こういう話し合いになっております。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 それから、きのう御答弁のありました拿捕船舶に対する補償の問題ですが、これは外務大臣のこれからなさるほうの請求権のほうに持ち起したと、こういうお話でございましたが、本来これは漁業資金の援助の問題とあわして解決するのが筋ではなかったのでしょうか。私の心配するのは、請求権のほうにいってしまって、そのことがぼやされてたな上げされてしまうという危険性があるかどうか。これは外務大臣とも十分に連絡をとってやられたと思いますが、その点の確信がございますか。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業損害賠償の問題でございますが、私どものほうの漁業協力資金というものは政府資金ではございません。民間の資金をあっせんする、こういうことでございますので、そういう関係からこれと見合いの賠償というもので請求するのはどうか、それよりも全体としてこれは大きな問題でございます。そういうのでございますので、首席会談で大きくこれを取り上げて解決をはかったほうがよかろう、こういうことなものだから、私のほうでは首席会談の場にこれを移して、首席といたしましてもこれを強硬に主張して、そうしていろいろな請求権やその他の問題の解決とともに、この解決をはかるようにと、こういうことを強く首席のほうへも話して、そっちへ回しておるわけでございます。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 今度妥結を見ましたあとに残されたのは、協定に違反した場合の漁船の取り締まりの方法とか、あるいは新設される漁業共同委員会性格、それから漁業資源調査水域先ほどお話しの、決定の問題等ございますが、これらは、あなたの構想ですと、二十七日に大綱の仮調印をして、あと一カ月ぐらいかかってこれらの問題に対する結論を最終的に出すというような御方針のようですが、これらの問題に対する構想がございましたら、ひとつお聞かせをいただきたい。
  22. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業委員会構想は、ほかとの条約等にもありますように、資源の保存をどういうふうにしていくか、それから実際にそれに伴って漁獲量が多いか少ないか、こういうような問題で、あるいは漁獲量を次の年等においてアジャストするというような性格だと考えています。そのほか大体事務的な問題、取り締まりのほうはきまりました。取り締まりのほうは、先ほど言いましたように、旗国主義で取り締まる、裁判管轄といいますか。停船等のような話もありましたが、そういうことは避ける。停船どもしない。そういう違反の事項がありましたら通報をし合って、そのおのおのの国でこれに対して直していくとか、取り締まるとか、こういうことにしようということでございますから、その点も話はきまっております。その他大綱につきましては、私どもの先ほど申し上げました方針に従ってきまっておるようなわけでございます。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 この三つの問題については、大臣が直接折衝に当たられるわけですか。
  24. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いままでその三つの問題も折衝をいたしました。折衝をいたしまして、わがほうの主張といいますか、両方の主張が私どもの考えに合った主張で、私ども主張に合った線で話し合いがほぼできておる。中にははっきりできておるものもあります。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 ソウルからの電報によりますと、この日韓交渉について交渉全体、漁業問題も含みますけれども、かなり野党側においても反対の空気があるように伺っております。特に韓国野党が、岸内閣時代に日本政府が李ラインの承認を約束をした岸元首相と李承晩元大統領との親書について、これを公にするという報道が入っておりますが、そういった親書を岸さんから李承晩にやったことについては、これは御存じですか。これは外務大臣……。
  26. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は全然承知しておりません。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は聞いたこともございません。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、いま、いろいろと問題点についてお尋ねいたしましたが、それは御苦労は私もよくわかりますですね、交渉ですから、相手のあることですから。その点もわかりますが、やはり幾多の問題がある。特に西日本の漁民にとりましては、きのうあたりからの報道を見ますと、確かに拿捕されるというようなことに対する解消についての喜びは一方に持ちつつも、なおその専管水域基線引き方その他漁民補償の問題、いろいろ不満があるようです。ですから、そういった問題を解決しませんと、せっかくの漁業交渉がみんなに喜んでもらえないのではないか、こう思うのです。ですから、相手のあることだからむずかしいといえばそれまでですけれども、もう少しそういった問題を、きのうの妥結の結果、国民はどういう反響を持っているか、直接の漁民はどういう考え方を持っているか、そういったものを把握して、なお相手側と補償の折衝をするというようなことはできないものでございましょうか。
  29. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話しの点は、なおやります。私自身もやりまするし、なおまだ事務的といいますか、そういうので折衝の機会もずっと続けていくわけでございます。そういう点は十分注意して進めていきたいと、こう思っております。
  30. 藤田進

    ○藤田進君 内水であるなしの議論、あるいは漁獲量については、業界の失望が当たっていないように聞こえるのですが、私どものところにはかなり失望——ことに漁獲量中心に問題が提起されつつ現在あります。  それで、次のことをお尋ねいたしますが、十五万トンを中心に一割前後ということで、しかも旗国主義、この量の査定をどうするかという点であります。北洋漁業等における彼我の監視員を乗せるとか、これはないと承っておるように思います。とすれば、案外、将来言いがかりをつけられる。この点が、実際に操業している前線のものとしては、従来の李ライン等のいきさつから見て、こちらは不当であるといいながらも、韓国は明らかに国内法でやってくるという苦い経験を持ち、多数の被害者がある。これをどいうふうに合意の——わがほうだけではなくて彼我の間にきめられているのか。これは重大な問題であります。  それから第二の点は、調査地域と共同規制水域外に、どうもえたいの知れないような名称が残っている。よって李承晩ラインは実質的に撤廃したという表現にならざるを得ない。この辺は私は非常に微妙であり、韓国並びに日本の議会においては、それぞれ全く異なった答弁がなされることを予想いたします。おそらく韓国議会の批准を先に済ませておいて、かってなことを言っておいて、われわれが日本政府にこれを指摘すれば、そのことは聞いていない、知らない、われわれのほうの解釈はこうだと、全く違ったことで批准国会があるとすれば、これで御答弁になって、最後には数で押し切るというふうに見えてしかたがない、いまから。このような意味で、今度のそれぞれの仮調印については多くの問題を残している。一つのものを二面の解釈で押し切ろうとする姿が非常に濃厚である。よって李ラインというものが実質的に撤廃だと言うけれども国際法国内法関係の優先順位はわかるが、しかし、いや調査区域が設かっているのだというようなことでまた言いがかりをつけられて、事実上漁民は同じような被害をこうむらなければならないことになるのじゃないだろうか。とりあえずこの二点については明確にお答えをいただきたい。
  31. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 調査をしようと、こういうことが話になっています。資源の調査でございますから。しかし、これは共同水域内部におきまして——外部におきましても調査はすることになると思いますが、そのために線を引くと、こういうようなことは現在しない。将来そういう必要が、調査区域をどの辺にするかというようなもの、たとえばこの間話がありましたE域というのがあるのですが、そういうような問題が出るかもしれませんけれども、現在調査はするけれども、そのためにどこを調査するという線は引かない、こういうことでございます。  それから取り締まり等の点でございますが、私は、これが現実にこの条約ができたときに、絶対にその権限向こうが行使するというようなことは、私はすべきものでないし、しないという、まあ確信を持っております。  それから話し合いの中で裏表があるのじゃないか、こっちはこっちにいいような話、向こう向こうにいいような話し、これは話し合いの上においては絶対にそういうことはありません。いまの内水の問題でも、向こう専管水域というようなことで慰めさせているのです。話の上では。それをどういうふうに向こうで言うか私は知りませんけれども、私どもの話の中におきましては、向こうではこんなことを言ったらよかろう、こっちではこういいますというような、そういう何というか、そういう考えは絶対にございませんで、話し合いの上では一致した線になっているわけでございます。
  32. 藤田進

    ○藤田進君 それから漁獲量……。
  33. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 取り締まりの点につきましては、事務当局から……。
  34. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 最初のお尋ねは、漁獲量の把握のしかたに関連する取り締まりの御質問であったかと思いますが、御承知のように、現在でも漁業法に基づく省令で、漁獲をいたしました場所あるいは漁獲量というものは本人に申告をさせる制度になっております。あわせて、それを市場における水揚げ伝票等で裏づけをしながら統計資料をつくっているわけでございますので、今後もそのシステムに基づいて、本人の申告制で処理をしてまいるつもりでございます。  取り締まりにつきましては、先ほど大臣からもお答えを申しましたように、海上で停船をさせて臨検をするということはないわけでございます。たとえば現在日ソ等でも行なわれておりますように、ときおりオブザーバーのような者が陸上で、出港地とか水揚げ地に参りまして、そういう申告がうまく行なわれているかどうか、そのために規制措置がとられているかどうかという視察をするという程度のことで了解がついているわけでございます。
  35. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 関連質問はなるべく一回にしてもらいたい。
  36. 藤田進

    ○藤田進君 関連。端的に聞きますから端的に答えてください。李承晩ライン撤廃する、これははっきり両者合意なんすか、それだけ。
  37. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そういう表現はいずれといたしましても、これをなくすることを話し合って、合意しております。
  38. 鈴木強

    鈴木強君 それから日ソ漁業交渉のほうも、きのう妥結をみたようですが、内容を正式に、簡単に報告してもらいたい。
  39. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それは、船団が向こうが六、日本が四、こういう従来の船団でございまして、ソ連のほうの船団を七船団に、一船団ふやしました。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕 そのふやしたのは、日本のほうの四船団のうちから少しの量を出してやったのと、それからカニの全漁獲量をふやしました、そうして向こうの一船団分に充当した。すなわち漁獲量をふやして、大部分を向こうの一船団をふやしたのに充足して、その小部分を日本の四船団の中から出してやった。そうして向こうの一船団増した分を編成した、こういうことでございます。
  40. 鈴木強

    鈴木強君 漁獲量は。
  41. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 二十四万箱でございます。ちょっと事務当局から……そういう数でございます。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 日韓漁業交渉の陰に隠れて、日ソ漁業交渉がちょっとクローズアップされていないのですが、例年であったらこれはたいへんな問題であったろうと思うのですね。したがって、大臣も日韓のほうでお忙しいし、妥結した内容について、いま頭の中にないようですけれども、これはやはり明確に、私は、国会を通じて国民に、きのう妥結したカニ交渉結論については報告をしていただきたいと思います。
  43. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま申し上げましたように、カニにつきましては、昨年まで、向こうが六船団、日本が四船団、こういうことでございます。向こうの六船団を一船団ふやしたい、すなわち七船団にふやしたい、こういうことでございます。したがって、漁獲量は二十四万箱と私承知していますが、総漁獲量をきめまして、去年よりふやしたわけです。そのふやした分を、向こうの六船団から七船団にしたその一船団に充当した。それから日本の四船団の一船団分の小部分を出して、そうしてそれにつけ加えて、向こうの一船団の編成ができた。でありまするから、結果的には、向こうが六船団が七船団になった、日本の四船団はそのままである。しかし、四船団のうちの量は、少し一船団の量は減っている、こういうことでございます。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 六割は従来どおりであったということは、これは私はいいと思うんです。しかし、いま抽象的な御説明ですけれども、はっきりいって、二十四万箱についても、これは一万二千箱日本が減っているわけですね、相手側ソ連は四十二万箱で、従来よりも四万二千箱ふえているわけです。こういう段差をだんだんつけられては、日本の漁民にとって非常に不満ですよね。私はこういうところをもっと、日韓のほうもたいへんだったかもしれないけれども、もう少し日ソのカニ交渉についても本腰を入れて、少なくとも昨年の実績ぐらいを確保するようなことをやってもらわなければ納得できませんよ。
  45. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) カニにつきましては、大体いまの二十四万箱——少し減りましたが、昨年の実績を確保したわけでございます。しかし、向こうがふえた。それは全体の、何といいますか、カニの資源というものをふやした、こういうことになっています。なお交渉の過程におきまして、いろいろ大陸だな等の問題もありましたが、そういう問題をけったりなんかして、相当折衝には力をいたした次第でございます。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 操業開始の日と、それから、これからサケ・マスの交渉があると思うんですが、私は、このカニの交渉を苦い経験にして、サケ・マスについてはもっと日本に有利な交渉を進めてもらいたいと思うんですがね、その見通しはどうですか。
  47. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 見通しはいま何とも申し上げかねますけれどもお話しの点はよく頭に入れて交渉を進めていきたいと思います。
  48. 鈴木強

    鈴木強君 カニの操業開始。
  49. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 操業開始はきまっております。四月十五日でございます。
  50. 鈴木強

    鈴木強君 次に、外務大臣にお尋ねいたします。季外務部長官が一昨夕べ米国からの帰途、日本に立ち寄られました。政府は羽田に到着の際、自衛隊の栄誉礼をもって迎えておるんですが、私の知るところでは、外相級のお客さんに対して栄誉礼をもって迎えたということは、かつてないと思いますが、これは間違いだったら訂正しますが、何か特別意味があるんですか。あなたが向こうへ行かれたときに、栄誉礼をもって迎えられたそうですから、そのお返しですか。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ相互主義が大体国際的に行なわれておりますので、お返しということばが適当かどうかわかりませんが、私が向こうに参りましたときの招待ぶりを考慮に入れて、そうして丁重にこれを迎えたわけでございます。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 これからも各国の外相級の人が来たときには、そういう栄誉礼でやるんですか。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そのつど考えまして、栄誉礼をもって迎えるが適当であれば、そういたします。
  54. 鈴木強

    鈴木強君 すでに第二回までの李さんとの会談がなされておりますが、大体どういう御相談をなさっておりますか、経過をお知らせ願います。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ会談の中で進行中のものが、法的地位の問題、それから請求権問題もまだ片づいておりません。漁業会談はいま農林大臣から御答弁したような経過をとっております。竹島の問題、その他文化財の問題をどうするかとか、あるいは韓国置籍船をどうするかとか、あるいはまた、拿捕漁船に関する損害賠償の問題でありますとか、いろいろございますが、これらの問題につきまして、今後の進め方等を話しております。あまり内容に立ち至って、両者の間でそう長い時間まだ会談を遂げておりません。
  56. 鈴木強

    鈴木強君 アメリカから李外務部長官が韓国にお帰りになる途中でございますね。それで、報道によりますと、アメリカのジョンソン大統領やラスク国務長官は、あなたが先般きめました日韓基本条約に対する仮調印に対して非常に喜んでおるという報告があったですね。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあそういったような話を聞きました。
  58. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、どうも私たち考えるのに、相当にアメリカが日韓交渉全体の問題についてアドバイスをしているように受け取れるんですけれども、その点はいかがなんですか。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、アメリカにかかわらず、外交団の連中に会いますと、日韓会談が非常に順調に進んでまことにけっこうだという話を聞くんです。アメリカばかりじゃありません。それから、アメリカからこの会談の実質に関連していろいろな指図があったかというお話でありますが、全然ありません。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは聞きもしないことは答弁したり、答弁しなくていいことを答弁している。それはちょっとおかしいんで、私は、なにもほかの国がどうこうということでなくて、李さんがアメリカの報告をしたそうだから、そういうふうに思うが、どうかということを聞いているんだから、それだけ答えてください。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本側に対して、アメリカは日韓会談の内容にくちばしを入れておりません。それから、韓国側に対していろいろな指図あるいは勧告をやっておるということも、私は全然聞いておりませんし、さようなことはないと信じております。
  62. 鈴木強

    鈴木強君 この法的地位、対日請求権問題、竹島問題ですね、それから貿易問題もあるでしょうが、こういった諸般の問題で、日韓間においてまだ意見の対立している点が幾つかあると思います。そういう点について、李さんが今度訪日された機会に、大体結論を出して妥結の方向に持っていこうというようなスケジュールをいま話しておるということですか。
  63. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだいろいろ話が対立した状況にたくさんあるのでありますが、だんだん、それぞれ事務当局に対して指図をいたしまして、そうして問題を煮詰めて、それから最終会談に入ろう、こういうような予定で、私もそのつもりでおります。李外務部長官もその心組みでただいまおられるように考えております。
  64. 鈴木強

    鈴木強君 在日中に四回の会見をなされる予定が報道されておりますが、そうすると、二回の交渉ではそういう大まかな線だけであって、それ以上突っ込んでいない。そうすると、あと残された二回の中で、いま申された基本的対立問題を整理して、大体帰るまでに煮詰めようということなんでございますか。
  65. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あと二日半ございますので、この間にできるだけ話し合いを進めて、大綱的には最終の話し合いまで持っていきたい、そう考えております。
  66. 鈴木強

    鈴木強君 朴大統領の来日を佐藤総理が提案したというような話を聞きましたが、そうしますと、これが何か五月の中ごろ、大体そのころが調印のめどになるという構想で進んでおるのでございますか。
  67. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 佐藤総理が朴大統領を招待したということにつきまして、まだ私ははっきりと承知しておりません。  それから向こうの考え方は、なるべく早くに早期本調印に持っていきたいという希望は漏らしておられますけれども、お互いこれはいやしくも国と国とのかけ合いであって、同じその方向に道行きをするというわけじゃないので、スケジュールはこれはきめても無意味でありますから、なるべく誠意をもって早くに早期妥結に努力いたしましょうということだけを話してありますが、スケジュールのようなものは一切つくっておりません。
  68. 鈴木強

    鈴木強君 どうも日本外交について、ちょっと私は疑義を抱くのですがね。たとえば、これは儀礼的に李さんが佐藤さんをおたずねしたかどうかしりませんが、その際に来日を提案したと、これはラジオ、新聞すべてが報道していることです。しかも、大事なこういう問題について、外務大臣が知らぬということはおかしいじゃないですか、何をしているのですか。
  69. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) おかしいかもしれませんが、私、いまはっきり承知しておりません。
  70. 鈴木強

    鈴木強君 そんな答弁はないよ、委員長、ちょっと注意してくださいよ。非常に私は、そういう答弁をあなたがなさることは問題ですよ。
  71. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 調べて、すぐはっきり……。
  72. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣は、日本においては日本社会党以下、日韓会談に反対をしている事実は御存じでしょう。それから韓国においても、きのうの新聞などを見ますと、二万人くらいの集会が催されているとか、こういう両国内にあるこの会談に対する反対の空気というものは十分御承知だと思いますが、そういう空気をどういうふうにお考えになって今後交渉を進めていくんでございましょうか。
  73. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 野党の反対があることも承知しておりますが、最近では野党の、どっちかというと中堅以下の方はだんだん理解を示してきておる。(「どこの野党や、それは」と呼ぶ者あり)韓国のです。(笑声)韓国におきましてはだんだん野党の中堅以下が、(「中堅以下って何だ」と呼ぶ者あり)中堅から若いほうです。大体日韓会談そのものについては理解を深めておるということを聞いております。(「日本はどうだ」と呼ぶ者あり)日本も、野党の方も、昨晩の私のレセプションにもお見えになりましたようなわけでございます。だんだん理解が深まりつつあると考えております。(「うっかりレセプションにも行けないじゃないか、だれが行ったのか知らぬが、すぐ賛成したように言うんだ」と呼ぶ者あり)
  74. 鈴木強

    鈴木強君 まあ大臣の把握のしかたでございますから、私は、大臣はそのように理解されてるということでわかりますが、しかし、しかくそうでもないと思います。この交渉については非常に慎重を要する問題であろうと。これはもう国家百年のために——二つに分かれた朝鮮を相手にやる交渉でございますから、その点はもっともっと私は深く世論の把握をお考えになった上で、最終的な考え方をまとめていただくように希望しておきます。  それからきのう、ベトナムで使った毒ガスについて、公電が入っておらないとおっしゃいましたが、入りましたか。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ベトナムで使用したガスは、いわゆる毒ガスではなくて、一般に警察がデモ鎮圧に使用する催涙ガスと同じものであるようであります。で、効果は、涙が出て一時的不快感を起こすけれども、何らの後遺症を残さないと。それで、どうしてこれを使ったかということでありますが、ベトコンを掃討する場合、一般市民と区別がつかない。そこで、他の兵器を使用いたしますと間違って一般市民を殺傷するというようなおそれがあるのでこれを使ったと、こういうことでございます。
  76. 鈴木強

    鈴木強君 それはどこから入った公電ですか。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはマクナマラ国防長官の発表したものであります。
  78. 鈴木強

    鈴木強君 現地サイゴンからの報道はないんでございますか、外務省に対して。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現地のアメリカ当局もこれと同じ内容の発表をいたしております。
  80. 鈴木強

    鈴木強君 これはまだ私どもも的確な資料がありませんので、しかく簡単には言えないと思いますが、しかし、第一次世界戦争でドイツがガスを使って以来、今度初めてアメリカが使ったということになっております。これは一九二五年のジュネーブの議定書の、毒ガスの問題に対する違反だというふうに論評しているところもあるわけです。これだけ大事な問題ですから、もう少し私は的確に情報を現地からとっていただいて、そうしてそういう議定書に反するような行為であるならば、断固として日本がこの中止をアメリカに勧告すべきであると、こう思いますが、そういうことをしてくださいますか。
  81. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) なおよく的確に調べまして、その後において考えたいと思います。
  82. 鈴木強

    鈴木強君 次に、私は国費のむだづかいについてお尋ねいたします。  大蔵大臣にお尋ねしますが、今日まで幾らの国費のむだづかいがございますか。特に不正事件について、職員の横領金額、件数。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国費が幾ら乱費をせられたかということにつきましては、会計検査院でも大蔵省でも、その詳細をつかんではおりせん。おりませんが、会計検査院から指摘をせられた金額で申し上げまして、その批難金額の総額はわかります。でも、その中から回収したものもございまするし、でありますから、これが全部国費のむだづかいになったというわけでありませんが、批難金額で申し上げます。会計検査院の批難金額で申し上げますと、昭和二十四年から三十八年一ぱいまでの批難金額の総額は千三百九十一億八千七百万円というものでございます。これを件別に申し上げましょうか。
  84. 鈴木強

    鈴木強君 いや件別じゃない、件数。それから不正行為の……。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金額はいま申し上げたとおりでございます。
  86. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃ件数は。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 件数はいまちょっとわかりません。
  88. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃ不正の額と回収額、その横領したやつの。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げたのは、批難金額でございます。国損を来たしたものの総額は、同じく二十四年から三十八年までで十五億八千百万円、そのうち回収額は八億五千四百万円、未回収額が七億二千七百万円。回収率は五四%でございます。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 この会計検査院から批難された金額ですね、それから、特に職員の不正行為によって、これは端的に言ったら横領した額ですね、こういうものが非常に多いのであります。しかもそのあとを断たない、私は非常に遺憾に思いますが、以下、この大株主の順から言いますから、ひとつその省内の、いまのような批難金額と不正行為、回収額等を教えてもらいたい。大蔵大臣と、次は通産、農林、郵政、防衛、文部、厚生と、ひとつ各省からお願いします。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵省における分を申し上げます。  昭和二十一年度から同三十八年度までの間に、会計検査院の指摘を受けたものは百三十八件、一億千九百三十九万五千円でございます。それから前記損失につきまして、本人等に弁償せしめる等、回収につとめているわけでございますが、三十九年の九月末現在における処理済み額は七千三百五十八万三千円。回収未済の金額は四千五百八十一万二千円、件数で見ますと、七十八件が完全に処理済みとなっているわけでございます。
  92. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 通商産業省関係で、昭和二十一年度から三十八年度までの間に生じた公金横領等の不正事件は七件、金額にして合計一億六百万円余でございます。年別には、昭和二十四年度において三件、一億二百万円、この中には、鉱工品貿易公団の早船事件によるもの九千七百万円余が含まれており、次いで、二十五年度三件、三百六十四万、二十六年度一件、八十一万円余となっており、その後はこのような不正事件はございません。このうち回収等により処理した金額は二千八百万円余であり、未回収金額は七千八百万円余で、このうち早船関係七千七百万円余がございます。  それから、昭和二十一年度から三十八年度までの間に、会計検査における決算検査の結果、国会に批難事項として報告された件数は合計百七十三件、金額にして十二億一百万円余でございます。このうち、回収等により、処理済みになっている金額は十億五百万円余であり、未処理金額は一億九千六百万円余でございます。これらの未処理となっている残存債権の大部分は、債務会社等の実体が失われて資産が皆無のもの、実体は残っているが、資力の乏しいもの、または債務者の所在が不明のもの等であり、すでにその大部分のものについて強制執行等の法的措置を講じております。  以上でございます。
  93. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 昭和二十一年から三十八年まで、農林省におきまして、国庫補助金等、会計検査院から指摘されたものは六千二百三十六件、金額にいたしまして二百八十二億余円であります。このうち、農林省における職員による不正行為によるものの件数は二十四件、総額一億五百万円となっております。回収件数及び金額は十二件、四千九百万円でございまして、未回収の件数及び金額は十二件、五千五百万円でございます。なお、これら未回収は、主として債務者の無資産、生活困窮、服役中によるものでありまして、これらの未回収金額につきましては分割納入の措置をとらせる等、鋭意回収につとめておる次第でございます。
  94. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 昭和二十一年度から昭和三十八年度までの十八年間において、会計検査院の決算検査に記載されました郵政職員の不正行為は五百九件、四億五千四百一万四千円であります。この不正行為金額のうち、すでに回収できました金額はおおよそ二億八千九百三十七万二千円でありまして、残りの一億六千四百六十四万二千円が回収未済となっております。  なお、会計検査院から不当事項として国会に報告されましたものは、昭和三十四年度から昭和三十八年度までに総計八十九件でありますが、そのうち、不経済支出として指摘されましたものは三十九件でありまして、六千五百万円となっております。
  95. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 防衛庁におきまして会計検査院から指摘されましたものは、本庁、防衛施設庁の昭和二十五年から三十八年度に至る合計でございますが、件数として百五十八件、金額といたしまして二十二億八千八百七十六万六千円でございます。そのうち、職員の不正行為による件数として指摘されましたものは、やはりこれも本庁と施設庁合計二十三件、二千五百八万一千七百七十六円でございまして、そのうち、昭和三十八年度末までに回収された金額は合計九百七十一万六千三百五十円、消滅、整理各合計百九十八万三千六百九十五円でございまして、債権の現在額合計は一千三百三十八万一千七百三十一円となっております。
  96. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。文部省所管で不当事項として決算検査報告におきまして批難された件数、昭和二十一年度から三十八年度までの十八年間に二百二十件でございます。その金額は同じく十八年間に十二億二千七百十四万円となっております。  なお、不当行為のうち、職員の横領等による国損につきましては十八年間に十一件、千九百十三万円でございます。
  97. 鈴木強

    鈴木強君 回収は。
  98. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この国損のうちで、損害賠償の完全に済みましたものは一件、七十一万円でありますが、残り十件千八百四十二万円余につきましては、賠償手続を終えて、三百八十七万円を回収しておりますが、なお、残額についても、鋭意徴収に努力中でございます。
  99. 鈴木強

    鈴木強君 私は、十三省庁がこういう不正行為によって国に迷惑をかけております。ですから、全部の長から私は聞きたかったのです。また、この綱紀粛正について、各大臣は一体今日までどういうふうな方針でやられてきたか。今後またどうしていこうとしているのか。これはもう毎年毎年あとを絶たない問題ですから、私はこれらの点についても一々お伺いしたいのですけれども、時間の関係もありますから、代表してひとつ行政管理庁長官に伺いたいのですが、あなたは、佐藤総理が就任されたときに、綱紀粛正については特にアピールして、重大問題として、政府の方針として取り上げていくことになっておりますが、管理庁として、日本のこの実情に対して一体どういう方針で臨まれ、この不正事件を撲滅して、国民の血税の何千万という——千三百九十一億円ですか、こういったような批難事項について解消するためにどういうふうな方法をとられるのか、これをひとつ伺いたいのです。
  100. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 政府部内の行政管理庁の行ないまするものは、御承知のように、各省庁の行政事務の運営について監察を行なう、勧告を行なうという形で仕事をいたしておるわけでございます。各省庁の歳入歳出に関する問題は、会計検査院が憲法上独自の機関としてこれが検査を行ない、指摘をいたしておるのでございます。その線を通して事務の適正化及び綱紀の粛正という形で推進をいたしておるわけでございます。行政管理庁としては、行政一般の運営の改善という観点から監察をいたし、特に汚職というふうなことのないように、その点について努力をいたしておるわけでございます。その行政監察を、現在は特に行政運営窓口等に関する全般的な監察を実施中でございまして、この監察を通して綱紀の粛正についての具体的な勧告をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。会計検査院の行ないまする検査は、その指摘は、もとより行政管理庁の行ないまする監察に重要な関連を持っておりまするので、この指摘は十分にあとづけをいたしまして、これを取り入れて監察計画を立て、また、これに基づく監察、勧告によりまする綱紀の粛正をはかるように努力をいたしておるわけでございます。
  101. 鈴木強

    鈴木強君 私たちは国会で予算を審議する際に、またことしもこの中から数十億の批難事項と不正事件があるかと思うとき、非常に残念に思います。ですから、この問題については、さらに厳粛な、厳正な態度をもって、政府全体としてこの職員の不正行為のないような方法をひとつとっていただくように私は特にお願いしたい。  ここでひとつ公団関係の問題でお尋ねしますが、これは文部大臣にも関係がありますからちょっとお聞きいたしますが、日本原子力研究所の経費に非常に紊乱事件が出ておりまして、たとえば出張もしないのに出張したようにして金をとっておった。それから、前渡金を受け取っておるのだが、証拠書類が不十分で、どこへやったかわからないようなものとか、あるいは帳簿、経理の面で物品の所在が明らかでないとか、こういう事件があるわけですが、厚子力研究所なんというのは世界のトップをいくところで、人間だけが神代時代では困る。理事長が来ておられると思いますが、その真相をひとつここで明らかにしていただきたい。
  102. 丹羽周夫

    参考人丹羽周夫君) お答えいたします。  まあ簡単に申し上げますというと、日本原子力研究所の高崎研究所におきまして、一昨年の秋ごろから昨年の初めまでにわたって三つの問題が発生したと申し上げることができるかと思います。その一つは、いまも御指摘になりましたように、原子力研究所というところには前渡金制度というものがございまして、いまもおっしゃるとおりでございますが、その前に申し上げますことは、私、昨年六月一日に理事長を拝命したのでありますが、その直後にやはり就任されました新しい監事によりまして、会計検査と申しますか、経理監査を始めたのであります。その始めた直後に、七月に入ったところだったと思います。昨年の。所内の監事がそういうようなことを発見いたしましたので、とりあえずまだ調査はすこぶる不十分でありましたが、会計検査院にその旨をお届けをして、その後会計検査院も並行的にお調べになった。その結果、発生しておったということがわかりましたことが三件あります。そのうちの一つが、前渡金中、とりあえず使途の不明であるというふうに会計検査院に指摘されたアマウントが五百六十三万円ぐらいだったと思います。それが一つの問題。それから第二は、出張が実際なされていなかったのに五十万何千円とかという出張旅費が支払われておった。それが第二点。第三点は、高崎研究所は一昨年開所したのでありまするが、その前は駒込の富士前町に、ただいまもありまする施設で操業しておったのでありますが、その後移転をいたしました。その移転の最中に、とりあえず会計検査院が御指摘になりました物品の帳簿と実際とが合わないものが三十八点あった、この三つの問題でございます。そのうちの第一点、五百六十三万円ばかりは非常に資料が乏しかったので、関係先全部、銀行だとかいろいろな会社だとか何とかというものを詳細に照合いたしましたところ、結局どうしてもわからない所外流出金額は八十二万何千円というものが最後に残った。あとは使途明瞭になった。それが第一点。第二の出張旅費五十万円という件は、たとえば原因は別にいたしまして、これはそのとおりでありました。三十八点の物品所在不明のものは、その後十分に所内で調査いたしましたところが、残り十四点だったと思いますが、十四点だけがいまだにまだ所在不明。したがって、現在も引き続いて大いにその所在を検討中という状態でございます。これが発生した事実であります。  それなら、どうしてそうなったかということでありまするが、まず、第一及び第二の点でありまするが、一口に申しまして、結論的に申し上げますと、まことに遺憾であったと申し上げる以外にないと私は思います。長年こういうようなことをやってきました私といたしましても、会計手続と申しますかは、一言の余地もないくらいに幼稚であり、不満足であり、不完全であった。したがって、まことに遺憾であると申し上げる以外にないと思います。ただ、これははなはだしく弁解がましくなりまするが、しいて申し上げますならば、私も戦争直前ぐらいに、ある大工場の建設をしたことがありまするが、そのときにも、これよりはるかに大きな目にあっておりまするが、やはり人手不足、あるいは職制も、建設途上にあるようなものは職制もはっきりしてない。したがって、配置もなかなかうまくできない、現地採用が多かったりなんかいたしまして、結局そういうことにはなりがちであったということは言えるかもしれませんが、これは言いわけに過ぎないと私は思います。要するにそういうことが原因であったというふうに思います。それはいまの八十何万円の使途不明の問題でありますが、それにやはりやや似た点が人事行政制度と申しますか、あるいはやり方の貧困さであったとも言えるだろうと思いますが、ああいう建設途上であって、ずいぶん方々へいろいろな人間が出張いたしました。したがって、事実出張する予定であって、出張金を渡しておりながら、急にやめになった、そのやめになった事実の確認がおくれていたり、あるいはほんとうに出張しておることを確認しないでおったりとかいうことであって、これまた勤労行政と申しますか、人事行政と申しますか、はなはだ遺憾なことであったというふうに思います。  第三の点、物品の不明の点でありますが、これも言いわけになると思いますが、なにしろ駒込から高崎に移転した、おそらく何千点、何万点あるか知りませんが、ともかくも移転途上でこわれたものもありましょうし、あるいは紛失したものがある、要するに移転の手続といいますか、手配がまずかったということだろうと存じますが、しかしながら、幸いに三十八点中、十四点だけがいままだはっきりしない。こわれたものがあってみたり、あるいはほんとうに紛失したものであるかもしれません。しかし、これには不正事件が私はからんでいないと思います。それが大体の実情であります。  それじゃどういう措置をとったかということでありまするが、現在の私どもが拝命いたしましてから発覚した事件でありまするししますので、現在の理事の責任におきまして、八十三万円足らずの行く先不明の金額は回収いたしました。出張旅費の五十万円についても同様であります。  第三の紛失物件の点は、ただいま調査中でありますが、これに対しては、ほんとうにわからなくなったものに対する措置はまだとっておりません。これらが大体の実情でございます。
  103. 鈴木強

    鈴木強君 文部大臣に監督大臣として……。
  104. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 原研の問題につきましては、ただいま丹羽理事長からいさいを尽くして率直な説明がありましたとおりでございまして、事件そのものにつきましては、私もつけ加えて申し上げることはございません。しかし、当初こうしたことが発覚いたしましてから、先ほど御指摘もございましたように、原研というような非常な注目を浴びている大事な施設、場所のことでもございますから、特に厳重な事後の措置を必要と認めまして、処分としては、ただいまお話がございませんでしたが、高崎におきましては懲戒免職の者が二人処分されております。それから、その後管理体制、会計のやり方等につきましては、適正に、厳重に行なうように役所側からも指示をし、指導いたしております。今後こういうことが絶対に起きないように、十二分に戒心してまいりたいと考えております。こうした事件が起こりましたことについては、私といたしましても、まことに遺憾に存ずる次第でございます。
  105. 鈴木強

    鈴木強君 丹羽理事長は御就任前の事件だと思います。しかし、いま愛知文部大臣からも触れられましたように、少なくとも原子力研究所というような場所においてこういった経理の紊乱が天下に明らかになるというようなことは、まことにこれは恥だと思います。ですから、ひとつ内部牽制組織の完備、管理体制の強化をいたしていただいて、どうかひとつ再びこのようなことのないようにお願いしたいと思います。きのうも中村委員から指摘されたように、人事管理の面を見ましても、全国区に立候補を予定されている人が監事としておつとめになっておるとかいうようなことも、これは問題ですよ。ですから、ひとつ理事長として、もう少し原研の明朗化と民主化のためにひとつ御奮闘いただきたいと思います。
  106. 丹羽周夫

    参考人丹羽周夫君) 御報告の中で、大事なことを二つ忘れたように思います。いま愛知科学技術庁長官が幸いに一部をおっしゃっていただきましたが、私大事なことを二つ落として申しわけないと思います。  まず、その第一点は、愛知長官もおっしゃいましたような、その後の人事の措置の点であります。それはいま長官が触れられましたので省きますが、ただ一言だけ申し上げますというと、使途不明の八十三万円の中で、明瞭に本人の責任であると自供をいたしておりまする額が、二人について合計二十一、二万円あったと存じます。一人が十四万円ぐらい、一人が七万円ぐらいだったと思います。そういう事実がありますので、気の毒ではありましたが、これは懲戒解雇の処分にいたしました。それから、何ぶん本部のほうから前渡金を渡したりなんかしておるのであって、本部における監督の責任というような点もありまして、当時の財務課長をしておった者等々、合計何名でしたか——合計五名であります。一番重い者は一カ月の停職処分、その次が一カ月分の月給の十分の一を減給してみたり、あとは懲戒戒告というような処分にいたしました。  次に、もう一つ大事なことは、いま御指摘になりました、こういうことが行なわれないようにしっかり職制その他をやれというお話でありまするが、私実は驚きまして、現在ではちゃんとしたダブル・チェックができるようなシステムにいたしました。一昨年ぐらいまでは経理課なんというものが一つあったきりであって、しかも、それがどうも人手不十分でありました。いまは庶務課というものと経理課というものを二つに分けまして、ビジネスも少し分けるようにいたしました。なお、また、人事配置は、本部における非常なエキスパートを向こうに事務長として置きまして、その下に庶務課、経理課といったようなものを置いて、それぞれ相当エキスパートを配置いたしております。なお、その他いろいろな点におきまして、私着任後まだ日が浅いのでありまするが、極力いろいろな点をいま改正せんとしつつある途中でございます。失礼いたしました。
  107. 鈴木強

    鈴木強君 私は、まだほかに日赤の中央血液銀行の公金横領問題、それから、運輸省関係の航空局の航空用化学自動車の消防車の購入にからむ汚職問題、いろいろございます。時間の関係でこれらはすべて触れられませんけれども、ひとつどうぞ御出席の大臣は、いま丹羽さんからもお話がありましたが、ひとつ全体としてこの綱紀粛正の方面にもっと懸命な努力をしてもらいたいと思います。  そこで、河野国務大臣にお尋ねいたしますが、オリンピック担当大臣をなさいまして、たいへん御苦労いただきました。総締めくくりとして、東京オリンピック大会にかかりました費用の総額ですね、それから資金財団等で資金集めをいたしましたが、それらの額と国が支出した額、そうして残りましたのはどういうふうに処理されましたか、その点をまずお尋ねいたします。
  108. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいま御質問になりましたことにつきましては、四十年度も多少ありますので、なお決算も済んでおりません面もありますから、最終的な正確な数字というわけにはまいらぬというふうに御了承を……。これを申し上げますと、直接に使いました経費、競技場の施設でありますとか、その他組織委員会が使ったものというような、選手の技術の向上といえるものが二百九十五億円、間接的な経費といいますか、道路をつくったとか下水をつくったとか、東海道の新幹線をつくったとかホテルをやったとかというような、関連した公共施設等の整備に要した金が九千六百億ということに大体なります。これをさらに内訳で申しますと、その中で国庫から出しました金が、最初に申しました金の中で九十四億円が国庫から出したもの。間接経費のほうについて見ますると、国庫から直接支出いたしましたものが八百八十億円、財政投融資等によるものが五千八百六十億円、その他のものは地方公共団体等において負担をいたしております。こういうふうになります。  次に、資金財団の関係について申し上げますと、資金財団として集めた金が五十三億三千万円でございます。そのうちで、すでにいままでにオリンピック東京大会のために使った金、運営に充当したとか、その他選手強化その他に使いましたものは四十二億三千万円でございます。その残りの金は、一月末この財団を解散いたしまして、約二億円が日本武道会館に寄付をいたしました。さらに五千万円を日本体育協会の運営に出している。最後に残りました八億五千四百万円ほどをもちまして、スポーツ振興資金財団をつくってそのほうに繰り入れた、これが大体の数字でございます。
  109. 鈴木強

    鈴木強君 このスポーツ振興財団のほうはこの八億の金を受け入れまして、そのほかに何か補助金かなんかを集めて基金にしているわけでございますか。
  110. 前田充明

    政府委員前田充明君) スポーツ振興財団につきましては八億を受け取りまして、これを財団法人として一月三十日発足いたしまして、そうしてそれにはいわゆる財団法人としての監督がございます。文部省で許可をいたしておりますので、予算、決算についての報告は全部とっていくつもりでございます。
  111. 鈴木強

    鈴木強君 河野さん、オリンピック施設の処分はどういうふうになるのでございましょうか。たとえば選手村とか、いろいろ施設がございますね、民間のほうに払い下げるようになるのか、その点はどうなりますか。
  112. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 施設のあと始末につきましては、目下一つ一つこれを考えて、御期待に沿うように処置したいと考えておりますが、たとえばいま問題になっております埼玉県のボート競技場、これをあすこにつくりますときに、これを使ったらばあとをどうするという約束のようなものも実はあるわけであります。ところが、あれだけのものを、あとの使用について、この際はぜひボートの競技場としてそのまま残してほしいという要望が強くありますので、これはいま埼玉県と文部省との間にお話し合いを願い、なお適当な結論を得るように大体進めるようにいたしております。さらに、また、問題になっておりますものから順に申し上げますと、臨時につくりましたもの、たとえて申しますと、オリンピック組織委員会がつくりましたものは八王子の自転車競技場、これは取りこわしてもとのままにする。これについても問題があるようでありますが、一応施設はこわしたあと、河川敷でございますから、それを公園のようなかっこうで残したらどうだというようなことにいたしました。さらに、次に申しますと選手村でございます。この選手村は、一応大部分は森林公園に東京都のほうでしてもらう。あの中のおもなコンクリート建てのものについては、青年が将来これを使っていくようにしたらどうだというようなことで、順次処置をしてまいる。まああと大きなものが今後の運営に困りはせぬかというようなものがありますが、これらについてはケース・バイ・ケースで、ひとつあとにうまく残るように、十分利用できるようにすみやかに決定いたしたい、処置いたしたい、こうお世話申し上げておるというのがただいまの実情でございます。
  113. 鈴木強

    鈴木強君 それから、オリンピック映画の問題でございますが、河野大臣はこれに対していち早く批判を加えられております。これは当時、組織委員会から市川崑さんに委嘱をして記録映画をつくるという、あの例のIOC憲章との関係ですね、やったものと思うのですよ。それで、その結果が組織委員会等にもあまり連絡がなく進んでおったというような経過になっているようですね。それで、文部省はこれを推薦映画にしないというようなことから、もうすでに各全国においてそれぞれ、もしオリンピック映画が見れるようになったらということで計画を進めておりますね、非常に混乱を起こしていると思うのですよ。ですから、どうもそのやり方は計画性が一貫してないように思うのでございます。これは見る人によっていろいろ批判はあると思いますけれども、その点、河野さん御批判になって、担当大臣として記録映画を作成する当時のお考えはどうなっておるのでございましょうか。その経過をちょっとお尋ねしたい。
  114. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、私が担当大臣になりましたのは、もう一切の準備が進んでから実は就任したわけであります。したがって、直接のオリンピックを遅滞なくどういうふうに開催するかということにつきましては、各方面に御協力を願って、一応りっぱにつとめた。ただいまの映画につきましては、これはまあ最近、後日物語と申しますか、初めからだいぶ問題があったようでございます。しかし、それはわれわれは不注意で、まありっぱにできるものと期待をし、また、同時に、いままで初めてやることではござませんから、当然記録映画ができるものと思っておりました。最初に市川さんがお受けになるときにも、芸術映画ということじゃない、記録映画なんだからということは、市川さんとの間によく話し合いがあったようでございますけれども、しかし、世間にいわれますように、市川さんに頼めば市川さんなりの映画ができることは初めからわかっておるじゃないかということをおっしゃいますけれども、しかし、記録映画をつくるということを目的でやっておるのでございまして、これは初めから芸術映画とか、それから商品としての映画をつくるということで組織委員会なりオリンピックに関係しておる者が映画をつくるということじゃない、この点はもうはっきりしておると思うのであります。しかし、市川さんのおつくりになった映画がどういうふうに評価されるかということは、これは別のことでございます。われわれが関与することじゃない。たまたまそれがそういう経緯でああいう映画ができたということでございまして、われわれとして期待するところのものは——ちょっとまことに潜越なことを申すようですが、私がオリンピック担当大臣としてあの映画がいいとか悪いとかいうことを発言した気持ちは実はないのです。私も陸連の会長をいたしておりまする関係から、競技に関係いたしておる者の一人として見ました場合に、一体あれでいいだろうかという点を私は指摘したのでございまして、だから、これが世間でいわれておりますように、芸術映画としてりっぱなものじゃないか、それはその点について私はとやかく言う気持ちは毛頭ございません。しかし、どこまでもオリンピック記録映画ということでオリンピックの組織委員会がつくっておる、これは間違いないことだと思うのであります。したがって、それがどういう芸術性があるとかないとかいうことを言っておるのじゃない。それは芸術映画としてはりっぱなものでしょう。しかし、それはオリンピックを芸術的に映画化する場合にはああいうものは非常に価値の高いものであるかないかは、それは私は別の話であって、ただ、われわれが言うところのものは、東京オリンピックを記録して、そしてこれをとどめておく。そして、これを記録して大衆にこれを観覧せしめるということには適当であるかないかということが問題だということでございまして、で、まあ見られる人が、何もスポーツマン——まあスポーツマンと言うと語弊がありますが、スポーツに非常に関心を持った人が見る場合と、そうでなく、いわゆる映画として芸術的価値を判断する人が見る場合と、見た人の気持ちはもうおのずからまた別だと思います。しかし、どこまでも私は記録映画としてあれで十分目的が達成されておるかどうかということになりますと、遺憾ながら、記録映画としては不十分な点がある。もう少し記録として残すべきものは、たとえば東京オリンピック大会がどなたからも無条件で推賞されるものは何かと言えば、私は施設だと思います。運営だと思います。施設とか運営だとかというものについては、もう世界最初のりっぱなものであるということは間違いないのでありますが、この点がどういうふうにあれに記録されておるかということになりますと、私は、遺憾ながら、ほとんどそういう点についてはこれで理解ができる点はないのじゃないかという点が第一に私は遺憾だと思います。具体的に申しますと、特に私ははなはだ遺憾だと思いましたことは、たとえば私は御承知のとおり——これも要らざることですが、マラソン競争をやったことがあるわけです。あの映画を見ますと、アベベ君が走っておるところは非常によく出ております。しかし、アベベ君の記録は世界最高の記録です。その世界最高の記録を出したアベベ君の走った道路というものは一体どういう道路であるか、これがどういうふうなコースを走ったかということになりますと、遺憾ながら、あの映画は芸術的価値はあるかもしれませんが、コースが平たんなコースであるということが何も記録されておりません。私は、おそらく世界のオリンピック・コースの中で、今回のコースほど平たんで、完全にコースとしてりっぱなコースはなかったのじゃないか、走りやすいコースはなかったのじゃないか、そういう点においても私は非常ないい記録が出たということの一つの証左になると思う。ところが、あの映画を見ますと、御承知のように、非常な勾配のあるところを走っておるようなことがまざまざとわれわれ見る者をして印象づけます。あれを国際的に出した場合に、東京大会のマラソン・コースはこんな坂があったのかということが出ます。この坂をこのタイムで走ったのかということになりますと錯覚が起こります。こういう点が私はどうしても了承できない点であります。そこで、私は、芸術性があるかないかということは別にして、記録映画として不適当だということを指摘したのでございます。そういう意味から言って、組織委員会がもう一本純記録映画をつくるということは正しい措置である、こう考えております。
  115. 鈴木強

    鈴木強君 河野さんが陸連会長に御就任になっておられるのですが、日本の陸上競技は、残念ながら、オリンピック大会でも非常に不振でございました。何かこれを立て直すような御構想をお持ちでございましょうか。
  116. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これを立て直すために私は陸連会長に推薦を受け、自分でその自信があってお受けしたわけじゃございませんけれども、まあ私も古い一人のスポーツマンとして考えます場合に、もうこの段階まで来ますれば、日本のスポーツは大衆のスポーツになるべきだ、いまのように特別な人を対象にしたスポーツではいけない。またスポーツ自身は、政治からこれを考えます場合にも文部省所管は不適当である。文部省でスポーツを担当するのは、いわゆる学校スポーツはむろん文部省でお世話願うことはけっこうでございますけれども、国民全体を対象として、その体力を向上して、りっぱな国民の体力の中から優秀な選手を出すということにいたします場合には、これはもう取り上げ方が少し範囲が狭い。これを全体として取り上げなければいかぬということだろうと思いますし、同時に陸連自身としても、学生の陸連じゃだめだ、また、しいて申せば一部の特定の会社の陸連じゃだめだ、国民全体の陸上競技連盟にならなければならぬというふうに、ひとつ改組をして、なるべくそういった底辺の広いものに組み立てていきたいというふうに考えております。
  117. 鈴木強

    鈴木強君 次に、警察庁長官にお尋ねします。  これは国家公安委員長にもお尋ねしたいのですが、例の吉展ちゃん事件はその後、捜査陣営の縮小がなされております。一体これは、今後どうなっていくか、非常に国民も心配しておるところでございますが、今日までの捜査の状況と今後の方針について簡単明瞭でいいですから答えてください。
  118. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  吉展ちゃん事件がいまもって解決をみないということにつきましては、私はじめ警察といたしましてはまことに遺憾に考えております。今回、警視庁におきまして、いわゆる捜査本部を現地から引き揚げましたのは、調べました事実等がだんだ狭くなってまいりまして、なおもちろん継続してやらにゃいけませんけれども、多数の人数をくぎづけにしてやるほどの材料がなくなったということで、四名の専従員で捜査一課のほうで継続して吉展ちゃん事件の捜査に当たっていくという処置をとったのでございます。もちろん、また新しい事実といいますか、情報というようなもので人手が要る状況になりますれば、それに応じた人員の増強をして捜査をするということは当然でございますが、とりあえず警察捜査にずっと従事するものは四名、これで現在残っておりまする情報の分析なり、さらに、いままでやりました情報をさらに検討するというように、根気強く、長くやっていくというようなつもりでああいうことになったという事情でございます。決して手をゆるめた、あるいはこの辺であきらめたというような気持はございませんことを御了承願います。
  119. 鈴木強

    鈴木強君 この事件は捜査段階における警察側の落ち度もございます。したがってそういう反省の上に立って、この事件を徹底的に追及されているということは、私たちもよくわかるのです。しかしながら、この捜査陣営の縮小によって、どうかすると、この事件はまた迷宮入りかというような気持ちをお互いに持ちます。非常にむずかしい捜査ではあると思いますが、今後、この問題についてもっと徹底的な捜査を続けるべきである、私はこう思うのです。にもかかわらず、陣営を縮小するということは、かりにいま長官がおっしゃるようなことを言われましても、具体的な事実としてあらわれている点を見ると、私にはそうは受け取れない。したがってこの点は、国家公安委員長もいらっしゃいますから、ひとつお聞きしたいのです。
  120. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 御指摘のように、吉展ちゃん事件がいまだ解決をしないのは、はなはだ私も遺憾に思っております。ただいま警察庁長官から、本部を下谷から警視庁へ移した経過を御説明申し上げましたが、私といたしましても徹底的にこれを追及いたしまして、何とかしてひとつ検挙をしたいという感じを持っておりまするから、御趣旨の線に沿いたいと思っております。
  121. 鈴木強

    鈴木強君 次に、東京都議会議長の選挙をめぐる贈収賄事件がございまして、三毛の都議会議員が逮捕されている。しかも、その議長が家宅捜査をされているという事件がございます。これはいま、どういう段階にあるのですか。
  122. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  私が答えるのはどうかと思いまするが、東京地方検察庁のほうでああいう事件があったという端緒を聞き込まれて、捜査をされている状況でございます。あと法務省のほうから。
  123. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 御指摘のように、東京都議会の議長選挙にかかわります事件は、いま検察庁において取り調べをいたしております。詳細はいま捜査中でございますので、しばらく御猶予願いたい。
  124. 鈴木強

    鈴木強君 これは、非常に遺憾な要件であると私は思います。自治大臣はどう思いますか。
  125. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私といたしましても、あのような事件が起こりますることは、はなはだ遺憾に思っております。元来、議長というものは規定にもございまするように議員の任期一ぱいが原則でございます。しかし実情は、一年または二年というようなことが往々にして行なわれているようでございます。これはまあ地方の実情に応じてやられることではございますが、しかし、その間にあのようなことが起こるということは、はなはだ遺憾でございまして、私どもといたしましても今後とも注意いたしたいと思います。
  126. 鈴木強

    鈴木強君 これは地方自治法等から見て違反であるとかないとかという論議は別として、私は少なくとも、任期四年の地方議員が一年ごとに議長がかわっていくということは、これは不自然だと思います。そこにはやはり東京で言うならば、二千五百万円の議長交際費があるとか、外国に一カ月間行っていられるとか、乗用車を持っているとか、いろいろなうわさが出てくるわけです。私が調べてみますと、東京都議会とか北海道議会、あるいは県、市——市の大きなところまでは大体一年交替ないしは二年交替で議長がかわっているのです。これは私は非常におかしなことだと思いますね。そこでやはり町村の場合をみますと、長いのです。これは四年とか三年とか長い。これはさっき言ったような利害の関係と私は無関係と言えないと思うのです。山梨県の富士吉田では市長が二人生まれて議会が混乱するなんという事態が起きているわけです。こういうことはまことに遺憾な点です。こういう点は法的にはいろいろ問題があるでしょうが、自治省あたりでもう少し行政指導というか、議員さんのことですから話せばよくわかると思うのですね。よく話して任期の点についてはもう少し検討してもらえますか。
  127. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私どもも、御指摘のようにしたいと思って、機会あるごとに申しておるわけでございます。東京都につきましても、一昨年監査をいたしました際に、やはりその点も勧告の中に指摘したところでございますけれども、実際いろいろな実情から二年あるいは一年というのがあるわけでございまして、これは一つは私、国民の世論というようなものの力によって、何とかしたいという感じを持っておりますが、役所といたしましても指導に力を入れたい。かように思います。
  128. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ警察庁長官に伺いますが、先般倒産をしました山陽特殊製綱の中で一部の重役が、正規の手続をしないで、多額の金を無利子で会社から借り出しておったというような事件がございました。これは飾磨署のほうで背任の疑いで調査をしておるということでございますが、これは御存じですか。
  129. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  もちろん捜査系統には現在連絡、報告がまいっておるかと思いますが、ただいま私は詳しいことを聞いておりません。新聞で承知しておる程度でございます。
  130. 鈴木強

    鈴木強君 これはひとつ、後ほどすみやかに事情を調査していただいて、別途御報告をお願いしたいと思います。ちょっと答弁してください。
  131. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 承知いたしました。
  132. 鈴木強

    鈴木強君 防衛庁と文部大臣にちょっとお尋ねいたしますが、南極観測を十一月再開なさいますが、過去数次にわたる観測の結果、どういう成果が得られておりますか。今度の観測の主目的はどこに置いておるのか。それから、準備体制については万全な体制ができておるのかどうなのか。まずこの点を伺います。
  133. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御承知のように、従来六回にわたります調査を行なっておりますけれども、これは国際地球観測年と関連いたしまして、私も専門的なことはよくわかりませんけれども、相当の効果をあげ、また国際的にも高く評価されているように思います。そこで、今年度から各方面の御要望、あるいはまた日本学術会議等の非常な綿密な計画に基づきまして、今年秋から再開、第一次から通計いたしますと第七次の観測を実行するわけでございます。一方、従来使っておりました「宗谷」は、船齢から見ましても、もはや使用に耐えない。そのために予算措置を講じまして、新しい船がいまでき上がりつつあるわけでありますが、七月十五日に竣工して十一月出発という予定になっておるわけでございます。なお、この船の活用等につきましては、従来の経験に徴しまして、自衛隊の協力なくしてはできませんので、海上自衛隊所属の艦艇の一つとして、「ふじ」という名前がすでに命名されておるわけでございます。四十人の観測隊員、そのうち十八人を越冬隊員にいたしますことに計画がなっております。先ほど申しましたように、学術会議等を中心にして文部省に推進本部が置かれているわけでございますが、国際的ないろいろのデータも基礎にし、十分な成果をあげますように万全の準備を現に整えておるわけでございますから、観測再開後におきましても十分の成果をあげ得るものと確信いたしておりますわけでございます。
  134. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 御指摘のように、南極観測の輸送を防衛庁が担当することに相なりましたのでその、体制について御報告を申し上げます。  先ほど進水式を行ないましたが、六月十日ごろまでに艤装工事の大半を終了をいたしまして、公式運転等を行ない、七月十五日に日本鋼管から防衛庁に引き渡しを受けるというような予定になっております。なお、観測船の運航に必要な食糧や被服、燃料、部品等については昭和四十年度の予算によって調達をいたし、十月末ぐらいまでに全部の納入を終わりたいと考えて準備をしておるわけでございます。  乗り組み員につきましては、総計百八十二名を決定いたし、そのうち海上要員が百四十七名、航空要員が三十五名ということになって、艦長以下それぞれ任命を了して乗船を待機いたしておるような次第でございます。  この南極観測の乗員の訓練につきましては、四月から七月までの四カ月間を艤装員としての基礎訓練を行ない、八月から約二十日間、慣熟訓練を行なって、その後、八月下旬から九月下旬まで約四十日間就役訓練を引き続いて行ない、さらに長期の航海訓練等々、順次訓練を行なう計画を立ててあります。  十一月初旬に、南極向け諸物資の搭載を行なって、東京へ回航をいたし、十一月下旬、南極へ向かって出発をさせるという段取りでございます。  なお、ヘリコプター二機を搭載することになっておりまするが、これも八月までにそれぞれこのヘリコプターも竣工いたしますので、それらの諸訓練を行なって、りっぱに目的の達成をいたしたいと、努力いたしておるような次第でございます。
  135. 鈴木強

    鈴木強君 文部大臣の今日までの観測の成果については、非常に抽象論でわかりません。もう少しはっきりできませんか。
  136. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申しましたように、南極地域の観測は、国際地球観測年と呼ばれる純学術的な国際協力事業であるわけでございまして、それにわが国も参加をいたして成果をあげてきたわけでありますが、特にわが国の観測基地になっております昭和基地は、南極地域においても最も著しい極光帯下に位置しておる、そういったような関係から、国際的に樹立された観測網の一つとして欠くことのできない重要な地点であるということが指摘されるわけであると思います。そうして昭和基地及びその周辺において、気象、電離層、オーローラ、地質、雪氷等の十四の観測部門について観測を実施してまいったわけでございます。これらの観測によりまして、いろいろの資料が収集されたわけでございますが、現在これをもとにいたしまして、超高層物理諸現象の解明とその相互関係、それから汎世界的な天気予報等の確立のための研究などが進められておるわけでございます。  それから再開の目的といたしましては、学術調査としては、一般論といたしましても、本質上できるだけ継続して、かつデータの比較検討をしなければならないと考えられるわけであります。また、他の方面から見ますと、南極条約の現署名国の一つとしての日本の国際的な責任というものを指摘されるかと思うわけであります。  なお、従来の成果についてどういう点があるか、具体的に、というお話でございまして、先ほど申しましたように、私も専門家でございませんけれども、常識的に一、二申しますと、たとえば南半球の毎日の天気図が描かれるようになって、南極大陸及びその周辺の気象条件がよくわかるようになり、南極地域の航空も可能になりつつあるというようなことも成果の一つとしてあげられるかと思います。それから南極地域における超高層の攪乱現象というものが、ひとり南極において発生するものではなくて、北極地域と同時に、しかも類似して発生するということが発見された。また、先ほどちょっと触れましたが、電離層、極光、それから地軸等の攪乱現象等についても、これらが個々に起こるものではなくて、同時に生起し、相互に密接な関係があるということも、この観測の結果わかりました事実でございます。あるいはまた、これらの地帯は、ほとんどが厚さ最高三十メートル、平均二十メートルというような雪氷におおわれておる、そういったような地帯の地盤地形について、人工地震、重力による調査などで、徐々にその起伏等の実態が解明されて、リュツォホルム湾付近の詳細な地図が作成されたということも成果の一つではないかと思いますが、今後におきましては、さらに内陸地帯の調査にも取り組んでまいりたいという意欲をもって再開に当たろうとしているわけであります。
  137. 鈴木強

    鈴木強君 次に、郵政大臣に一、二伺います。  放送法が今度の国会に提案できなかったことは非常に残念に思います。そこで、六月の再免許ということについては、今後とも勇断をもって当たっていただきたいと思いますが、時間の関係で、一つは、臨時放送関係法制調査会からの答申もございますように、現在のNHKが徴収をいたしております受信料を、わが国の放送界全体に役立つような使用のしかたを考えたらどうか、こういう意見もございます。したがって、郵政省として具体的にこの答申に沿って、そのような措置をおとりになりますかどうか、これが一つです。  それからもう一つは、例の郵便物の日曜配達の問題が問題になっておりますが、これはどうなります。いつから実施されますか。  それから年賀はがきも、四円をなくするという意見があるのですが、それはどうなりますか、これだけ。簡単でいいです。
  138. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) ただいま御質問になりました点でございますが、NHKの聴視料金につきましては、いまありましたような御意見も巷間相当ございます。また、いろいろな調査会等におきましても意見が出ておることも承知いたしております。しかし、現段階においては、まだそういう点に論議を及ぼすのには少し早計だと考えまして、ただいまのところでは、従来の方針どおりの、現在のNHKが収受しております料金はそのままで当分進んでいく考えでございます。  また、年賀郵便のお話でございますが、年賀郵便につきましては、これはもう四円を全部五円にしろという御意見もございまして、郵政審議会等からもそういう答申もございます。ただいまこの点につきましては検討いたしておりまして、来年度の予算を組みますまでには結論を出したいと考えております。  日曜配達でございますが、これは、私は、もう世界の大勢と申しますか、各国でもすでに実施されておりますので、日本でも適当な機会に実施したいという希望を持っておりますが、しかし、何ぶんにも長い間の習慣と長い間の経済取引等に利用されております関係から、即座にいつからいつ、全部をどうというようなことには、当分踏み切れぬと思います。しかし、可能なる部分から順次実施するという方針を立てまして、ただいま組合と私どものほうの関係者と相談をいたしております。できることならば、きわめて近い機会に、あまり影響の少ない方面から順次実行いたしまして、そして国民の世論あるいは経済界のこれによる日常生活、日常の経済に及ぼす影響等も勘案しながら、順次各方面に及ぼしていきたいと、こう考えておりますが、私の心づもりで申しますと、できれば、一部には可能な場所もあるように見受けられますので、きわめて近い時期に実施いたしたい、かように考えまして、これには組合との関係もございますから、そちらのほうと事務当局とが、せっかく折衝いたしておる最中でございます。
  139. 鈴木強

    鈴木強君 それに関連しまして、臼井総理府総務長官が先般沖繩を視察されておりますので、私はいろいろお伺いしたいのですが、時間がありませんから、この問題だけお尋ねしますが、先般日本からマイクロウエーブを沖繩まで通しまして、日本のラジオ、テレビが見えるようになりました。ところが、宮古や石垣島あたりですと、なかなかテレビが見えないというお話を聞いておるのですが、先般向こうに参られまして、そういった点をごらんになっていただきましたかどうか。もしごらんにならなかったとするならば、これは私の意見ですが、すみやかなる機会にひとつ現地のほうの視察をしていただいて、せっかく供与したマイクロを使ってのテレビが沖繩の人たちに見ていただけるようにしていただきたいと思いますが、この点いかがですか。
  140. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) お答えいたします。  この点につきましては、昨年八月に沖繩方面を視察いたしました際に、宮古、それから八重山のほうへも参りまして、ことに小学生のような人たちも大勢来て、ぜひ宮古のほうにもマイクロウエーブを引いてテレビが見られるようにしてもらいたい、こういう要望がございました。これは技術的にもなかなかむずかしい点もあるようでありますし、また相当の資金も必要かと思うのでありますが、本年度は、いずれにいたしましても、その調査の費用といたしまして二百七十六万円を予算に組みまして、その方面に調査を進めることにいたしております。
  141. 鈴木強

    鈴木強君 その次に、建設、大蔵関係ですが、多摩川に、旧多摩村というところですが、いまの府中市の是政地区というところに建設省が管理した旧堤防があるのですが、その堤防が都の管理になっておったのですが、いつの間にか旧地主が、登記のミスかどうかしりませんが、第三者に転売しておるという事実がありますが、国有地の管理について、これでは非常にずさんだと思うのですが、その経過について簡単に説明してください。
  142. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) 問題を申し上げますと、この是政地区の土地は、元来民有地を買収または補償でとったものじゃなくして、旧河川法によりまして、大正九年の十月五日に、河川管理者であった東京府知事が、適用河川多摩川の河川区域と認定した。そうなりますと、河川法の第三条の規定によりまして私権が消滅することになるわけであります。ところが、当時、その土地は未登記の土地であった。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕 本来ならば、未登記の土地は、こういう私権が消滅した場合には、東京都が保存登記をしまして、それをさらに抹消するという手続をとるべきであったのを、その手続を怠りまして、それで未登記のままであったので、登記の抹消手続をしておらなかったという事実があるわけであります。  その後、新しい河川工事ができまして、そこはいわゆる河川区域でなくなって公用を廃止することになったわけでありますが、それは昭和三十六年の六月二十日であります。このときに、東京都知事は公用を廃止して、廃川敷地としたのでありますが、この土地は一体それじゃだれの帰属になるのかといいますと、廃川敷地として公示をした瞬間には、これはだれの所有でもないということになるわけでありますが、ただ、河川法の規定によりまして廃川敷地処分令というのがありますが、これの規定によりますと、従前の所有者はこの廃川敷地として公示をした日から三カ月以内に申し出をすれば自動的にもとの所有者に戻るという規定があるわけであります。ところが、今度の場合には、この旧所有者はその申請をしておらない、しておりませんで、三十三年の三月三日に、まだいまの公示をしない、下付申請の手続をとらないうちに保存登記をしてしまった、旧所有者たちが。旧所有者たちが、これは自分の土地だというふうに考え違いをしたのかしれませんが、保存登記をして、その保存登記を信用して買った人がいるわけです。その買ったのはだれかというと、西武鉄道と都建材株式会社、この二つが買ったと、こういうわけなんでありまして、これが経過でございます。
  143. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣どうですか。おたくのほうは関係ないですか。このことは関係ないのですか。
  144. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、いま申されたとおりで、建設省が御答弁すべきものだと思います。なかなかむずかしい問題でございまして、河川法第三条によれば、河川並びにその敷地は私権の対象になっておらぬということでございますから、河川区域についての旧所有者と西武鉄道との売買契約は無効だという議会もございます。これはまだ公示前のことでありますから。……でございますが、しかし、先ほど建設大臣が申し述べましたように、廃川敷地の処分令によりますと、旧所有者が申請をすれば所有権が取得できるということにもなっておりまするので、建設省、東京都と旧所有者との問題でありまして、その間に円満に話し合いで話をするということ以外にはないと思います。大蔵省としては、大体本件に対する見解は、建設省にやってもらいたい、こういうことであります。
  145. 鈴木強

    鈴木強君 これは非常に手続上のミスかどうか私は知りませんけれども、管理をしておった都と建設省の責任だと思うのです。ですから、これはすみやかに相手方ともよく話し合いをしていただいて、問題の解決をひとつお願いしたいと思います。
  146. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) この問題は、法律的にもなかなかむずかしい点があります。いま申し上げたような経過でありますが、本来は私権が消滅しておるのでありますけれども、廃川敷となりますと、旧所有名は三カ月以内に申し入れをすることによって、また自分の所有土地になるという形成権を持っているわけでありますが、その形成権を行使しなかったという点に、一方の旧所有者は怠りがあったということが一つあるのと、それからもう一つは、その形成権を行使する前に登記をしてしまって売っておるという問題と、からみ合っておりまして、これは法律的にはいろいろな問題があると思うのでありますが、買ったほうは買ったほうで、登記を信用して買っておるのでありますので、これは建設省自体の問題ではなくて、東京都の土地の問題なんでありますが、われわれのほうとしましても、大蔵大臣も申しましたように、東京都知事及び買った相手方、それから売ったほうの旧所有者、この間に、何とか適正な結末が得られるように、いろいろな点であっせんその他助言をしたいと、こう思っております。
  147. 鈴木強

    鈴木強君 それから厚生大臣に伺いますが、選挙違反をやって罰金十万円と公民権停止の判決を受けた厚生省の元課長が、千葉県の衛生部長ですか、に推薦されたという事件があるのですが、これは私は非常にあきれ返った話であって、もってのほかだと思います。これはどういういきさつがあったのですか。
  148. 神田博

    国務大臣(神田博君) 選挙違反であって、その事件が経過したあと、千葉県の衛生部長ですか、に推薦をされたという新聞を、実は私もきのう新聞を見まして驚いたわけでございます。御承知のように、衛生部長の適任者というのは全国的に限られておりまして、都道府県に欠員等がありました場合に、厚生省の推薦を受けると申しましょうか、内交渉があるような習慣になっておるのでございます。千葉県におきましても、そういうような次第で、御相談があった。御相談があって、そういうような推薦といいますか、内話をしたことも、きのう調べてみましたら、事実のようでございます。しかし、これは今日では打ち切りまして、その話はもうないことになっておりますから、御了承願いたいと思います。
  149. 鈴木強

    鈴木強君 ないことになったのは幸いだと思いますが、こういうばかなことは二度と再びやっていただきたくないと私は思います。  それから労働大臣に一つだけお尋ねしますが、三公社五現業の給与改定について、先般公労協の諸君とあなたがお会いになったときに、政府側としては、物価高などを考えると、これまでにしました五百円程度の賃上げで十分とは考えないが、いまの段階で第二次回答をすることは無理だ、しかし政府としても調停段階において問題が解決するように努力したい、こういうお話でございますが、これはこのとおりでよろしゅうございますか。
  150. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先般、公労協の代表の諸君とお目にかかりました際に、五百円を前後といたします現額回答をいたしましたことについては、これはわれわれとしては相当な努力の結果である、しかし、その金額について組合側が諸般の事情から不満を感じておるということはよくわかる、しかし、現在調停段階に入ったことであるから、その調停を通じて円満に平和裏に解決することが望ましい、それについて応分の努力をいたしたいと思うと、こうお答えいたしました。
  151. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣は、あくまでもこの問題については労使双方において円満に協議をして結論を出すことを期待すると、こう答弁されておりますね。そこで、調停段階で、ある省の担当の方々が、四月に入って民間賃金の働きその他を見て、やはり善処するというような発言をしたんだそうですが、それに対して大蔵省側からかなりの抵抗があるということを私は聞いているんですが、これは私は、毎年のことなんだが、おかしいと思います。これはどう思いますか、あなたの言っていることと違うでしょう。
  152. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 円満に話し合いが行なわれることを期待しております。これはもう基本的にはそのとおりでございます。大蔵省で中間においてどういうことがあったか、まだ聞いておりませんので、その事情はまた聞いて御報告申し上げます。
  153. 鈴木強

    鈴木強君 最後に、私は電電公社の総裁に伺いますが、いま電話が、百五十万も、申し込んでつかないのでございますが、あなたのほうでは、昭和四十七年になると申し込んだらすぐ電話をつけると、こうおっしゃっているんですが、その計画はそのとおり推進できますか。
  154. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答え申し上げます。  電信電話拡充計画の長期の計画といたしまして、四十七年度までに積滞を解消するという方針を立てたことはお説のとおりでございます。このために、現在は第一次、第二次の五カ年計画を終わって、第三次の五カ年計画の途中にあるわけでございますが、最近の電話に対する国民の需要というものが、当時私どもの想像していた以上に熾烈でありまして、いま御指摘になりましたように、現在すでに百五十万に達するような積滞があるわけでございます。ただ、現在の三次の計画においては、この五カ年間に五百万の電話を架設する、そうしてさらに第四次に七百七十万の電話を架設いたしますれば、大体いままでの積滞が解消すると、こういう見込みで、いままで計画を立てておったのでありますが、ただいまの趨勢からいいますと、この三次、四次の従来の考え方では、とうていその解消がむずかしいじゃないか、かように考えておりますので、何としても、これはもう少し拡大修正をして、もう少しよけいつけることを考えなきゃならぬということで、目下研究をいたしておる次第でございます。
  155. 鈴木強

    鈴木強君 時間がないから……。
  156. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時四十九分開会
  157. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。戸叶武君。
  158. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカの空軍は北ベトナムを爆撃し、最近は毒ガス弾と大型油脂焼夷ナパーム弾を使い出しました。このことは人道上並びに国際法上許しがたい行為であります。椎名外相は、二十四日の衆議院外務委員会で、国際条約で禁止されている毒ガスとはっきりすれば、条約当事国として抗議すると答弁しておりますが、防衛庁長官は、これに対してどういう見解を持っておりますか。
  159. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 米軍が、南ベトナムにおいてガスを使用している問題は、私どものほうでは新聞報道等を通じ、また、本来委員会において、椎名外務大臣の答弁において承知をいたしたという程度でございまして、直接連絡を受けておりませんので、明確なお答えはできないのでございます。
  160. 戸叶武

    戸叶武君 隣に火事が起きたときには、消防夫はすぐ出動の態勢に入るのですが、日本の防衛庁は、まあ戦力がない軍隊ですから、そんなのんきなことを言っているのですけれども、少なくとも極東における情勢というものは、非常に緊迫化していると思います。ここにきょうの毎日新聞の夕刊が届いておりますが、中共はベトコン援助を表明して、「必要あれば人員も……南ベトナム人民とともに戦う」という形を表明しております。これは、ベトコンの声明に対して呼応した立ち上がりだと思いますけれども、こういうふうに非常にきびしい情勢が生まれてきたというのは、アメリカの北ベトナム爆撃が巻き起こしたところの私は波紋だと思うのです。安保条約を結んで、アメリカとパートナーなどと言っている日本が、その防衛庁の長官が、そんなのんきなことでは困るのですが、アメリカの世論も、アメリカの国会でも、イギリスの国会でも、決議や何かしてまで大騒ぎをしているじゃありませんか。こういう急迫した情勢において、もう少しいまの状況に対して、的確な私は情報を把握していなければ、あの三矢事件なんというつまらぬ、とにかく妄想的なことで騒ぎ立てたのじゃ、ほんとうに役に立たないと思いますけれども、この毒ガスを使用する問題に対しては、どう考えるか。
  161. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) ベトナムの情勢に対応いたしまして、日本の防衛の体制については、前回も御質問がございましたが、いまだわが防衛庁といたしましては、平常の体制をそのまま持続しておりまして、特に、体制の上にあらたまった変更を加えていないというのが実情でございます。的確な情報を得ることはもちろん必要でございまするが、現在の段階においては、防衛庁自身として的確な情報を得るような組織や人員の配置もいたしておりませんので、いままでのところでは、外務省の方面を通じて情報を得ておるし、また、各国の新聞、通信網等からの情勢を把握しておる程度でございまして、この点はまことに私も遺憾に存じておる次第でございます。  なお、日米安保条約その他の問題につきましては、御承知のとおり、外務省から、必要がありますれば答弁をしていただきたいと存じております。
  162. 戸叶武

    戸叶武君 一九〇七年十月十八日にヘーグで調印せられた陸戦法規の条約で、この毒ガスの問題にも触れておりますが、これに対して、防衛庁長官は、どういう見解を持っていますか。
  163. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 今回のガス使用については、先ほどの当委員会において外務大臣からの答弁もございましたとおり、いわゆる毒ガスではなくて、相手方を死に至らしめない、通常私どもが申し上げておりまする、いわゆる一時的に催涙をさせるとかというような程度のものであって、毒ガスというようなものではないという御説明がございましたが、私どももそういうふうに承知をいたしておりまして、特に毒ガスの使用、そういう問題については、もちろんなすべきことではないと考えておるわけでございます。
  164. 戸叶武

    戸叶武君 外務省の条約局長に……。
  165. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 陸戦法規の規定でございますが、第二十三条の「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト」、これについておっしゃっておることと存じます。これは、特にガスのことではないわけでございます。  なお、この陸戦法規は、アメリカも当事国でございますが、この陸戦法規のカバリングになっております条約の第二条に、「第一条ニ掲ケタル規則及本條約ノ規定ハ、交戦國カ悉ク本條約ノ当事者ナルトキニ限、締約國間ニノミ之ヲ適用ス。」と、こういうふうになっておるわけでございます。
  166. 戸叶武

    戸叶武君 一九二五年六月十七日に署名せられ、一九二八年二月八日に発効した毒ガス等の禁止に関する議定書、これに対しては……。
  167. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) これは、アメリカも、ベトナムも、当事国ではございません。
  168. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣委員長、呼んでください。
  169. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  170. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記を始めて。
  171. 戸叶武

    戸叶武君 防衛庁のほうには、十分連絡をまだされていないらしいですが、外務省のほうで、どういう種類の毒ガスかという資料が入っているようですから、その説明を願います。
  172. 安川壯

    政府委員(安川壯君) アメリカ大使館から入手いたしました情報に基づきまして御説明申し上げます。  今回、米軍が提供しまして南ベトナムが使用しましたガスは、一般に各国の警察当局が暴動鎮圧力に使っておる、いわゆる俗に催涙ガスといわれておるものと全く同様なものでございまして、これは一般の市販に供せられている品物と全く同種のものだそうでございます。こまかく申し上げますと、種類が三つあるそうでございまして、これは記号でCS、CN、DMという三つの種類があるそうでございます。それぞれ概略申し上げますと、これを吸いますと涙が出る、それから普通かぜをひいたときのくしゃみ、あるいはせきを催させる、あるいは頭痛を催させる、それから非常にこれを大量に吸う場合には吐き気を催すこともあるということでございます。大体その効果が続きますのは、種類によって違うようでございますが、このDMというのにつきましては一時間半から三時間程度、それからCNというものにつきましては約三分間、それからCSというのにつきましては五分から十五分間効果が続くそうでございます。それでそれだけの一時的な効果を及ぼすだけでありまして、何ら後遺症というようなものを残す性質のものではないと言われております。  それからこれを使いました理由につきましては、マクナマラ長官の発表によりますと、従来まで三回南ベトナム軍が使っておると言われております。一番最近に使いましたのは一月の二十七日でございまして、マクナマラ長官の説明によりますと、ベトコンがある部落に逃げ込んで一般市民と混同しておったために、これに対して火器を使いますと一般市民の生命を害するおそれがあるので、ベトコンをその地域から追い出すためにこのガスを使った、こういうふうに説明をされております。さらに国務省の発表によりますと、こういうガスを使うことは国際法違反とは考えておらないということと、現在どこの国からもこれについて抗議を受けたことがないということを発表しております。
  173. 戸叶武

    戸叶武君 どこの国からも抗議を受けていないと言うけれども、アメリカ自体からも強烈な抗議が出てきていて、ニューヨークタイムズであろうが、ワシントンポストであろうが、こういう非人道な行為をやってはいけないと、かなりきびしい批判が載っているのです。それにもかかわらず、アメリカの言うことなら何でも、悪いことでもよい、黒いことでも白いというふうに、説明されればそのとおり伝達するのが、このごろは日本の外務省の役割りになっているようですが、そういう形では、アジアの今日における民族的苦悩というものを代表して日本が発言しても、その発言に対して権威がなくなると思うのです。先ほども条約局長が、当事国でないから——この解釈は非常に国際法の学者、のんきな学者ならそれでいいです。今日の問題は、この激動する世界において、国際間における道義性なり信義なりというものが重んぜられなければ、国際的な秩序というものは保てないのです。そういう国際法の古い化石化した概念でもってものを見るのじゃなくて、そういう行為がよいか悪いか、世論の反撃を受けるかどうか、そういう認定の上に立って一つの問題を処理していかなければ、旧式外交官のやり方では、私は外交というものは展開できないのだと思いますが、……どうしましたか、外務大臣は……。「春の海ひねもすのたりのたりかな」という俳句がありますが、佐藤内閣の各大臣は昼寝をしているらしいので、この極東の危機というものに対してぴんとこないらしいのですが、外務大臣、ぴんとするようなこれから質問を展開してあげますから、明快なる回答を願いたいと思います。これはきょうのあなた午さん会に行っちゃあ、夕刊の新聞も見ないでしょうが、戦争の一歩前というところに、あなたがぼんやりしている間に、もう極東の危機というものは迫ってきておるわけです。それからアメリカの北ベトナム爆撃に対してベトコンが世界の自分たちと手を結んでいける勢力に対して訴えをした。それに呼応して中共では、必要があれば人員を送り込もうというところまできているのです。この危機をどう食いとめるかということに対して、アメリカの国会の人でも、イギリスの国会の人でも、アメリカの新聞でもきびしく政府のやり方というものを批判しているのです。それなのに、アジアにおける先進国とみずから任じておる日本外務大臣が、この危機に対して危機感の持たないでは対処できないのだと思いますが、あなたはいま、このアメリカ軍が北ベトナムで使っておる毒ガスの問題が重大問題になってこういう反応を生んでおるのですが、それに対してどういう見解をお持ちですか。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 米軍の発表によって知ったのでありますが、今回ベトナムにおいて使っておるのは、いわゆる催涙ガス——涙が出る、そうして少し不快感を感ずるそうでありますが、あとに後遺症は一切残さない、こういう種類のものでございまして、いわゆる毒ガスではない。なぜそういうものを使ったかと申しますと、これはベトコンが普通の良民の間にまじっておって、これを掃討するというためにほかの道具を用いるということになりますと、良民を誤って害するというふうになるので、そこでかようなぐあいにやむを得ず催涙ガスを使ったと、こういう発表をしております。
  175. 戸叶武

    戸叶武君 そういう涙の問題じゃないのです。あなたの言っておる涙よりも、もっと深いところに世界の人々の涙がいま流されておるのです。そのアメリカにおける共和党のブラックフォード・モース氏らの下院議員六人がもう二十三日ジョンソン大統領あてに、南ベトナムの対ベトコン作戦でガス兵器使用を中止するように訴えている。その内容というものは、「ガス兵器はその強弱にかかわらず、すべての国民にとっていまわしいものであり、それを使用すれば世界の世論は反米となるだろう。また同兵器の使用は北ベトナムに〃侵略〃をやめさせる代りに、ますますその戦意を高めさせる可能性がある。アジアのすべての国民はこれにより米国を残酷で非人道的な抑圧者とみなし、反米の立場に団結することになろう。ガスが非死致性であることは技術的観点からは重要だが、心理的影響の点では大した問題ではない。」——人々に与える心の問題を、アメリカの国会では論じているんです。あなたまるで人間が何か催涙弾で刺激されて目から涙が出ているというような簡単な形でものを見ているが、もっと深刻な形で北ベトナムの戦いは展開されているというその事実をあなたは直視することはできないのですか。
  176. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私はこれは決して対岸の火災視すべきものではない、日本の置かれている立場はやはりアジアでございます。東南アジアの政治的動揺に対して、無関心であり得ない次第でございます。
  177. 戸叶武

    戸叶武君 防衛庁長官……。
  178. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 先ほども私の所見を求められまして、毒ガス等の使用はやるべきではないと、もちろん私どもはこういうことは好ましくないと私は考えておる次第でございます。
  179. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど外務大臣の留守のときに、一九〇七年のヘーグで調印せられた陸戦法規の問題で条約局長にお聞きしたのですが、あの陸戦法規のイに「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト」、ホに「不必要ノ苦痛ヲ興フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」と規定して、それらが「特別ノ条約ヲ以テ定メタル禁止ノ外、特ニ禁止スルモノ左ノ如シ。」という形で第二十三条に規定されているのですが、これにはアメリカも日本も当事国なんです。条約局長は当事国であるとか当事国でないとかいうことのみを問題にしておりましたが、このあとの毒ガスの禁止に関すルヘーグの宣言でも、また「毒ガス等の禁止に関する議定書」でも、みなそういう問題に触れておるので、これが催涙弾であって毒ガスでないということなどは、一つの言いのがれにすぎないと思うのですが、外務大臣はどうお考えですか。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは毒ガスでない。したがって国際法規にも違反しないと、かように考えております。
  181. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカの国会やイギリスの国会で、毒ガスのガス使用に対して国会議員が非難しているのは、これは間違いだという意味ですか。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカの国会を批判する立場ではございません。私はこれは毒ガスでないということを申し上げております。
  183. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカの有力紙としてのニューヨークタイムスなりワシントン・ポストなりが、この行為を堂々と社説において非難しているのにかかわらず、これは非難すべき事柄ではないという認定の上に外務大臣は立っているのですか。
  184. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 毒ガスではない。したがって国際法規に違反しない、かように申し上げております。
  185. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣に承りますが、毒ガスの概念規定はどうですか、正確な規定をあなた述べてください。
  186. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員から答弁いたします。
  187. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 毒ガスの禁止に関するジュネーブの議定書の書き方などは、御指摘のように非常に広範な形になっておりまして、「その他のガス」と、こうあるわけでございますが、しかしながらこういう宣言の趣旨からいいまして、それがくしゃみを催させる程度のガスまでも禁止する趣旨なのか、そうじゃなくて致死的なほんとに窒息から死に至らしめるような種類のガスが禁止されているのかといいますと、大体こういう条約類は国内法などと違いまして、こまかい概念規定をしていない場合が多いのでございまして、この宣言の趣旨は、条理上そういうような致死的なガスを禁止する趣旨であると解するのが妥当であろうと、かように考えます。
  188. 戸叶武

    戸叶武君 私たちの議論は、常識を基礎としてやっているので、あなたにくしゃみのことまで聞いていない。毒ガスということに対して議定書においても広範にものを言っているのは、広範な禁止が必要だからものをいっている。「窒息性、毒性又はその他のガス及びすべての類似の液体、材料又は考案を戦争に使用することは、文明世界の世論によって至当に非難されているので、また、右の使用の禁止は、世界の国の多数を当事国とする諸条約中に声明されているので、右の禁止が、諸国の良心及び実行をひとしく拘束する国際法の一部としてあまねく採用されるため、次のように宣言する。」これが前文だと思います。こういう前文で書かれているものは、すでに当事国であるとか当事国でないとかいう小手先の論議ではなくて、広い意味における毒ガスを禁止しなければならないという慣習法が、国際法規の中において常識化されていると思うのです。それが証拠に、アメリカの新聞でも、いままで二世紀にわたってこのようなことはなされていない。相手がしたときにするなら別であるが、アメリカがこういうことをするとは何ごとであるかといって、アメリカの言論界においては政府のやり方を非難しておるのです。日本の新聞でも……。あなたもアメリカでなくていいのだから、日本の新聞をみんな読んでみてください。どこの新聞があなたのようなおとぼけの答弁をして、この深刻なアジアにおける悲劇というものを軽視しておるところがありますか。各新聞とも筆をそろえて、このアメリカの行為というものに対して反省を求めているじゃありませんか。いまアジアにおいてみずからパートナーと称して、アメリカに対してえりを正しゅうしてアメリカに耳を傾けさせるような見識ある発言をしなければならないのは、日本じゃないですか。あなたはこれに対して、アメリカに対して日本の世論を代表してどういう意見を伝えようと考えておるか、それを承りたい。
  189. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題に対する私の判断は、以上申し上げたとおりでございますから、この判断に基づいて特別の行動をとろうとは思っておりません。
  190. 戸叶武

    戸叶武君 あなたはいままでローマ法王の使節とお目にかかっていたのですか。どういうお話をしてきたのですか。
  191. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう話といって、別にまとまった話ではございません。法王のお使いで日本のカトリックの教団に対する親善旅行ということでございます。
  192. 戸叶武

    戸叶武君 前になくなったピオ二十三世は、歴代法王中でもりっぱな人でした。一九六二年に百年に一度という宗教会議において、メッセージを各国の指導者に送っております。これを読んでケネディはキューバ事件を食いとめる決意をしたということを、彼自身が記録しておりますが、あなたはピオ二十三世の世界に与えた平和共存のメッセージを読んでおりますか。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 詳しく読んでおりません。
  194. 戸叶武

    戸叶武君 詳しく読んでないのなら、ざっと読んだのでしょうが、その内容はどういう趣旨が伝えられていますか。
  195. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま忘れてしまっております。
  196. 戸叶武

    戸叶武君 あなたはつまらないことだけ覚えていて、大切なことは忘れておりますが、それで外務大臣がつとまりますか。あのときも一九六二年、キューバ事件のあとですが、池田さんがローマ法王庁をたずねたとき、奥さんと娘さんと一緒に行ったらしいのですが、三十五分間書斎の間でお目にかかったときに、ピオ二十三世はどういう質問を池田さんにしましたか。当時、池田さんは総理大臣ですけれども、あなたは金と銀と石では何を一番好みますかと言ったら、池田さんは石ですと答えたのです。それは六十点程度です。その石は何ですかとピオ二十三世がさらに重ねて質問したのです。池田さんの頭には庭石ばかりしか入っていなかったから、ほんとうに答えができなかったから黙して語らず、これは四十点ぐらいに下がったわけです。語れば恥をかいたでしょう。ピオ二十三世が池田さんに問おうとしたのは、その石は路傍の石なんです。いま世界が東西対立してきびしい、けわしい時代にある。この対立を乗り越えてどうやって平和共存をつくり上げるか、声なき声としての路傍の石の庶民の声を聞いて政治をやるような指導者として、日本の指導者があってほしいということを注文をつけたわけですが、これは馬の耳に念仏と言っては悪いかもしれませんが、それだけのかまえがなければ——赤子の声に対してもこたえるだけのかまえを日本の古代における指導者というものは時っておったのですが、いまの指導者が、世界が狂瀾怒濤の時代に、ローマ法皇の使節が来たといっても、何だかわけのわからない、ただ昼めしを食べにいって、大切な国会を無視し、あの全世界にメッセージを送ったピオ二十三世の精神を受け継いで、世界に平和共存体制をどうやってつくり上げようかと模索しながら尽力している人たちのその心に触れることができない。これじゃあぶなくて、あなたたちに外交や政治をまかしておけない。もう一度会ってきなさい、待っていますから。  いま、アメリカの行為に対しては、私たちはほんとうに腹から憤りを持っています。いままで日本の軍国主義があやまちをおかしたから、われわれは長崎、広島の原爆をもがまんして忍んできたのです。いま、ベトナムで行なっているような行為を、西欧諸国なりアメリカでやってごらんなさい、白人の世界でやってごらんなさい、世界の世論は許しません。アジア民族に対するモルモット化された蔑視観から出ているのです。われわれは、民族的偏見でものを言うのじゃないが、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの民族が、いま民族独立の険しい道を歩んでいるときに、その民族的苦悩を理解することができないで、自分たちのイデオロギーを押しつけ、そして民族の苦悩を無視して、そこを戦乱のちまたに化している。共産主義に反対というけれども、じゅうりんされている民族というものは、共産主義よりもアメリカ帝国主義がこわいという、私は感じをいま植えつけていると思うのです。私は、アメリカがほんとうに反省しなければならないときに、アジアから遠慮会釈もなく——アメリカに対して友情をもって、アメリカのやり方は間違っている、アジアの混乱は、われわれが解決するからわれわれの手にまかしてくれというぐらいのことを言わなければ、外務大臣としての地位はつとまらないと思いますが、外務大臣、それでもっとまると思いますか。ひとつ所見を承りたい。
  197. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかくやっております。
  198. 戸叶武

    戸叶武君 とにかくやっておりますじゃなく、何か具体的な答弁を……。これは禅問答よりひどいですから。
  199. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 非常に、いわゆる流動的なきわめて困難な局面に対処いたしまして、われわれとしては、その方法を誤らずこれに対処してまいりたいと、さような心境をもってお役目をつとめておる次第でございます。
  200. 戸叶武

    戸叶武君 誤らないということばの内容が問題なんです。何か煙をつかむような、忍者の外交じゃあるまいし、これはほんとうに私はつかみどころのない——どこの国が見ても、日本の外交というのは何を考えて、どっちを向いて走っているのかわからないと思うのです。椎名忍法はやはり早くよして、そしてもっとみんなにわかるような外交をしてもらいたい。ソ連のフェドレンコ国連大使は、二十三日、ウ・タント国連事務総長訪問、侵略の定義についての国連委員会を四月に再開する必要を強調した書簡を手渡したということですが、この侵略の定義については、あなたはどういうふうにお考えですか。
  201. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 侵略の定義の御質問でございますが、いろいろな具体的な事実に即して、自分の政治的な、あるいは領土的な、そういう野望を達成するために用いる実力行使である、かように考えております。
  202. 戸叶武

    戸叶武君 いま外務大臣の言ったことは、アメリカの軍部が北ベトナムにやっている行為にぴったり当てはまるのですが、それもその範疇に属しますか。
  203. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカの軍事介入の根拠は、南ベトナムの政府から要請がありまして、このままでは独立と自由、平和が守っていけないというので、軍事介入をして、そして北からのこの継続的な侵略に対して、これに対処しておるのでございまして、これを北ベトナムの言うように、アメリカ軍が撤退すれば、それで事態が解決するというのではない、かように考えております。
  204. 戸叶武

    戸叶武君 南ベトナムと申しましても、これはかっての満州国のようなもので、ベトコン、その他のベトナム人民から見れば、アメリカのかいらい政府としか見られないと思うのです。日本が満州国から北支に戦火を拡大したときの状況と、いまアメリカのやっていることは非常に似ていると思うのです。これ以上深入りすると、また、日本の二の舞い以上にアメリカは災難にあわなければならない。日本はその体験を通じて、アメリカにもの申してよいのではないかと思うのですが、椎名さんはどうですか。
  205. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 満州に対する日本の軍事行動とは、基本的に違うように私は考えます。
  206. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣と気分問答をやるつもりはないですから、気分でものを言われちゃ困るのですが、テーラー大使の見解によると、中ソの介入なしとの判断に基づいて——中ソ対立の現状と、ソ連の政策から考えて、ソ連が積極的な介入に出ることはあるまい、こういう認定と、もう一つは、中国の戦力、特に空軍力が貧弱であるから、米空軍が中国大陸を爆撃したところで、中国が進んで火中のクリを拾うようなことはない、こういう認定の上に立って、いま北ベトナムの爆撃を行なっているんですが、こういうやり方というのは、非常にあぶないのじゃないでしょうか。やはり日本が支那事変をあのように収拾がつかない状態にしてしまったのは、アメリカがもうやってこない、イギリスもやってこない、ソ連もやってこないと、自分かっての独断で、結局深みに入ってあのようなひどい目にあったので、いまのやっているアメリカのやり方は、あれと同じだとは言いませんけれども、あれと同じ危険な道を歩んでいるというふうに私たちは思えるのですが、外務大臣は、それとは違った見解の上に立っておりますか。
  207. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本のシナ本土における軍事行動というものは、その中国から要請されて、そして中国の危機を救うというような、そういうような状態で軍事行動をとっているのではないのでございますから、いまの米軍の行動なり、立場なんというものとは、根本的に違うと私は考えます。
  208. 戸叶武

    戸叶武君 どうもあなたの見解はおかしいですが、二十三日に、ソ連のブレジネス首相も、侵略者に警告するという激しい表現で、ソ連の中央機関には、ベトナム国民の自由と独立の戦いに参加する用意があることを表明するソビエト市民の少なからぬ手紙が届いている。もうソ連も義勇軍をベトナムに送って、アメリカに対抗しなければならないというだけの私は腹をきめてきたのだと思います。また、ベトコンの要請に応じて、中共はベトコン援助をはっきり表明してきたのです。このように戦争はどんどん——あなたがのんきに春眠暁を覚えずというていで、ゆうゆうとして眠っている間に、極東の情勢は刻々と変化しているのじゃないかと思う。これを食いとめるのが日本の役割りだと思いますが、佐藤首相は、ジュネーブ十四カ国会議の再開ということを、私の質問にこの前答えておりましたが、あの問題に対して、外務大臣はいかなる手をその後打っておりますか。
  209. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ会議の議長団がイギリス及びソ連であることは、御承知のとおりでありますが、いろいろ折衝が行なわれたようでございまするけれども、ついに不調に終わっておる現状であると判断しております。
  210. 戸叶武

    戸叶武君 その不調に終わった問題点は、どういうところですか。
  211. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 話し合いに当事国が応じないということであれば、いかに議長団が奔走しても、話し合いの場というものはつくり得ないのでございますから、そういうことで不調に終わったのであろうと考えております。
  212. 戸叶武

    戸叶武君 当事国が応じないというのは、アメリカと北ベトナムですか。
  213. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカは、北ベトナムの北からの侵略が停止されるならば軍事行動を停止する、そして平和的な話し合いに応ずる、こういうことを言っておるのでありますが北ベトナムは、ただアメリカ軍だけの撤退を要求して、そのあと一体どういうことになるのか、一切約束しないのであります。すなわち、自分の侵略行動というものはやめるとは言わない。こういうような状況では、いかに議長団の努力がありましても、話し合いの場というものは、でき上がらない、かように考えるわけであります。
  214. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣に承りますが、けんかの仲裁というものは、両方でなぐり合いをしているときに、片方が相手をなぐりつけて、手をついてあやまってきてからじゃなければ話にならぬというのじゃ、これは仲裁にならぬと思います。やはり相手をなぐりつけることをやめる、爆撃なり侵略をやめる、その上に立って、アメリカなり北ベトナムなりが話し合いをするというのが、ほんとうの話し合いで、その仲介の労をとるのが、イギリスなり、ソ連なりのいままでの努力かと思いますが、ソ連なりイギリスなりの動きというものも、アメリカの動きを見ながら非常に慎重にやっておると思います。慎重にしても、やっておるのは事実です。日本は一体何をやっているのですか。川の流れを見て暮らすのですか。
  215. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり総理からもお答え申し上げたと思いますが、この問題の沿革、経緯から考えまして、やはりあの当時の関係国から行動を起す、日本は極東の一国として、絶対にこれは無関心でいられない問題でございますから、協力を求められればいかなることでもいたしたい、かように考えて待機しておる状況でございます。
  216. 戸叶武

    戸叶武君 これは驚いたですね。隣に火事が起きたときに、消防隊がかけつけないうちにおれは消火には従事しない。バケツに水も時っていかない。待機している。これじゃ隣人としてのつき合いができなくなるのじゃないでしょうか。それは、ジュネーブ会議における議長団としてのイギリスなり、ソ連なりというものが先に立って骨を折るのはこれは当然であります。しかしながら、アジアにおける、われわれは、この民族の流れが同じとも思われておるようなこのベトナムの人たちの苦しみに対して、この現状をこのままにしておいてはいけないという形で、やはり世界の人々に訴えるような努力はすべきであるし、また私は、国会からでも、超党派的で調査団なり何なりもっていって、やはりこのベトナムの状況を見るなり、そういうふうな努力をしなければならないと思うのですが、外務省としては、何か待機だけじゃ、これはえらい問題ですが、待機以外に、この間だれか大使を、松本さんを出したんでしょう。松木さんからどんなような報告が来ておりますか。
  217. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ報告がまいっておりません。
  218. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカでは、ベトナム問題に対して、学者の人たち、新聞の人、それから政界の人もずいぶん騒いでおりますが、三月十六日の夜には、デトロイトの市でクエーカー教徒のおばあさんのアリス・ハーズさんが、仏教徒にならって焼身自殺を企てて、そうして八十二歳の命をささげて、佐藤首相にも訴えをよこしたということでありますが、佐藤さんから、これはやはり外務大臣のほうにも、その手紙の内容というものは伝えられたと思いますが、その遺書にはどういうことが訴えられてありましたか。
  219. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ私見ておりません。
  220. 戸叶武

    戸叶武君 これは新聞に書いてあるのですが、「あすでは遅すぎます。」ということばで始まっているらしいです。全部、あなたのやっていることは、あすではおそ過ぎますです。世界は、すべての人間が人間らしく生きる平和な場所になるか、破滅させるか、それはみんなの手にあります。私は仏教徒の焼身自殺の方法で抗議します。こういうような内容のようでありますが、アメリカにおける最も戦闘的な平和主義者の集まりであるところのクエーカーのおばあさんが、八十二歳の自分を、仏教徒がベトナムで焼身自殺するような形で自分の命を断ってまで、この平和の悲願を訴えよう、そういう形において日本の佐藤首相に訴えてきても、その手紙は佐藤さんのところでどう処理されているかわからないけれども外務大臣には伝えられていないと、こういうことでは、私は全く日本の外交というものは、人々の心に触れることのできるような外交というのは出てこないのじゃないかということが心配でならないのです。やはりあすではおそ過ぎるのです。いま戦争を食いとめる努力をしなければ、戦争になってしまってから、あのときにあれをしておけばよかったのじゃ間に合わないのです。そういう意味において、この状態を食いとめるためには、ジュネーブ十四カ国会議というものがうまくいかないとするならば、次の方法を考えなければならないと思う。ウ・タント事務総長あたりも、私は模索し苦悩しているのだと思いますが、それに対して、あなたはどういうふうに考えますか。
  221. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 世界のいずれの方面におきましても、この問題に対しては、すみやかに平和の回復をこい願っておるものと考えるのでありまして、かような考え方のもとに合理的な解決が望ましいと、かように考えております。
  222. 戸叶武

    戸叶武君 まあ椎名さんには、のれんに腕押しですから、この程度で進軍することはやめます。  次に、中、ソ貿易の拡大と延べ払い方式に対して、通産大臣及び大蔵大臣にお尋ねします。  中国との貿易は、昨年度三億九百万ドル、ソ連とは四億七百万ドルと伸びておりますが、中、ソ貿易は順調に拡大するであろうと私は信じますが、それには相手国の立場を理解する必要がありますが、社会主義国家は、長期計画経済に基づいて国家計画経済を進めてまいりますので、したがって、その計画に組み入れるためには、契約は早期にし、しかも、支払いは長期延べ払い方式をとらなければ、貿易の拡大は困難だと思いますが、これに対して通産大臣はどのように対処しようとしておりますか。
  223. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ソ連に対しましては、いうまでもなく西欧並みということで延べ払いはやっておるわけでございます。  中共に対しましては、本年当初にニチボー、日立と、標準外決済で承認を求めてまいりましたので、これに対する許可を与えました。その後におきまして、それぞれの業者がそれぞれの立場で金融の問題に対処しておると思います。
  224. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤首相は、去る三月五日における私の質問に対して、延べ払い資金の調達方法は準国内問題であると答え、準国内問題として処理するにあたって、金利が安く、輸銀を使わなくても処理できる方法があるかどうかについて、西欧諸国の中には民間銀行の話し合いによって長期のクレジットを設定する方法もあり、そういうことをいま研究しているというような答弁でしたが、このことに関して、通産大臣並びに大蔵大臣から答弁願います。
  225. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 中共関係の両案件とも、すでに契約内容を御承知であろうと思いますが、頭金が三〇%あるいは二七・五%というようについておるのでございます。したがって、この頭金によって契約を履行していく。その中でどういう金融でやるかということにつきましては、それぞれの企業者が独自に考えることが適当であろうと、こういうふうに私は考えております。
  226. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸銀のほかに低利の金融があるかということでございますが、総理がお答えになったように、外国等は民間の金融機関が輸出金融をおおむねまかなっておるわけでございます。日本はしかし、輸出入銀行を中心にしていままでやってきておりますので、現在の状態で民間の新資金系統をつくって共産圏貿易に安い金利が提供できるかどうか、さだかではありません。
  227. 戸叶武

    戸叶武君 いままでの延べ払い方式は輸出入銀行八割、市中銀行二割の資金を使い、輸銀の金利四・五%、市中銀行の金利八・五%、合わせて五%程度であったが、市中銀行の手形を持っていても、延べ払い輸出の場合、日銀で輸出入銀行同様四・五、すなわち日歩一銭五厘ですか、こういう程度の低利でもって融資してもらえる可能性があるのですか。
  228. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在輸出入銀行や海外経済協力基金というものをはずして、他に低利な融資を行なうということになれば、日銀が関与するということになりますが、現在、日銀が直接そういうことができるかどうか、明確にお答えできる段階ではありません。
  229. 戸叶武

    戸叶武君 イギリス等では市中銀行で受けたものを中央銀行が割るというような方式もとっているし、外国においてはそういうこともやっていると思いますので、当然日本ではそういう方法をとらざるを得なくなると思いますが、日中関係を打開するために廖承志さんを迎えるということに対しては、佐藤さんも大いに歓迎だと言っておりますが、やはり廖承志さんを迎えるに対しては、吉田書簡なり、あるいは台湾の抗議によって日本の貿易に対する自主性が失われるという印象があると非常にまずいと思いますが、そういう点においては、政府もこのごろは決してそういうことに影響を受けないということを明確に言っておるようですが、そのとおりですか。
  230. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 自主的に貿易のことについては考えていくということが、これははっきりいたしておりますし佐藤総理も中国の大使とお会いになったときに、そういう見解をお述べになっております。
  231. 戸叶武

    戸叶武君 その見解の内容はどういうような内容ですか、通産大臣。
  232. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは総理にお聞きを願うほうがいいと思うのでありますが、中共からもまた台湾からもいろいろ言われずに、自主的に考えていくのだと、こういう内容のものであったと思います。
  233. 戸叶武

    戸叶武君 前からいわゆる三月危機説がいわれておりましたが、きょうあたりの新聞を見ると、株価もダウ千百五十七円五銭というふうに、三十五年八月二十六日以来の新安値になっております。非常に経済界も不安で、しかも中小企業だけでなくて、大どころも倒産するというような状態でありますが、いま倒産の状況はどうなっておりますか、一月、二月の。
  234. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 東京商工興信所調べの負債金額一千万円以上の企業倒産状況は、一月が四百二件、負債総領四百二十億円。二月、五百二十一件、負債総額四百六十億円。三月は、二十三日までの日報ベースで三百二十四件、八百七十六億円と、こういうことになっております。
  235. 戸叶武

    戸叶武君 山陽特殊製鋼の会社更生法適用に対しては、いろいろ問題が起きておるようでありますが、これに対して大蔵大臣、どういうふうに今後対処していきますか。
  236. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 山陽特殊製鋼の更生法適用に対しましては、まず出先の財務局等に指示をいたしまして、山陽特殊製鋼の件にからんで、下請企業が黒字連鎖倒産等を起こしてはならないということに対して、金融機関としましては、期日が来た山陽特殊製鋼振り出しの手形等に対しましても、買い戻しを急がしたり、そういうことのないように十分な配慮をしてもらいたいという措置はとってございます。  それからなお中小企業の下請に対しましては、関係金融機関はあげて資金的にめんどうをみるようにということで、金融機関にも要請をいたしております。また日本銀行といたしましても、山陽特殊製鋼に対し関連して金融機関が資金が必要であるならば、特別貸し出しも行なうという基本的な態度も明らかにいたして、これが関連倒産等を起こさないように配慮いたしておるわけでございます。
  237. 戸叶武

    戸叶武君 金融とともに、税のほうはどういうふうに対処しておりますか。
  238. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) こまかくは国税庁からお答えをいたしたほうがいいと思いますが、会社更生法の適用を受けますと、手形等につきましては、下請はその二分の一は税から控除をするという措置もいたしております。なお、二分の一だけではなく、その後の負債の状況等によりましては、特別にその上に税の配慮をいたすというような措置も考えておるわけであります。
  239. 戸叶武

    戸叶武君 もう少しこまかく。
  240. 堀口定義

    説明員(堀口定義君) 山陽特殊鋼のような、会社更生法の規定によりまして更生手続の開始の決定があったような場合とか、あるいは不渡り手形が出まして取引停止になったというふうな場合におきましては、その会社に対する債権の二分の一を無条件で償却特別勘定に入れまして、そこで整理することにして損金に落とすことができます。なおそれでも債権の取り立てがもっとできないというような場合には、国税局長等におきまして、その相当と認められる額をいまのような方法によりまして損金に入れることができます。そういうものを差し引きましても、さらに課税額があります場合にも、課税された額につきまして納付が非常に困難であるというふうな事情がありますれば、それは徴収関係で通則法の規定によりまして延納が認められることになっておりますので、まずこの場合、税の立場からは十分な措置がとられておるというふうに考えております。
  241. 戸叶武

    戸叶武君 私は昨年の二月十一日、この予算委員会で、開放経済体制下における金融政策のコントロールに言及して、さらに三月九日に日銀法改正に対して提言したのです。もう一年たっておりますが、日銀法はどういうふうになっておりますか。
  242. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日銀法の改正案につきましては、政府といたしましてほぼ成案を得て、最終的な段階として政府与党との間に意見調整等も行なっておったわけでございますが、いずれにいたしましても、参議院の選挙も近づいてまいりましたし、重要な法律案でありますので、十分審議を尽くすべきであるという国会内部の御意見もございましたので、いろいろ慎重に検討した結果、この国会には提出を見合わせると、こういう最終的態度を決定いたしました。
  243. 戸叶武

    戸叶武君 相互銀行法は新しい形においてつくり上げられておりますが、銀行法にしても、日本銀行法にしても非常に私は古いと思うんです。いままでずっと田中大蔵大臣の発言も研究してまいったんですが、三十六年十一月の長岡発言以来の田中さんの言っている線というものは、私はあくまで正しいんじゃないかと思うんです。やはり長い間の伝統でもって金融の中立性、中央銀行における中立性ということだけにこだわっておって、問題は金融の指導性の問題、それから責任体制の問題、特に責任内閣制の場合における中央銀行に対する政治責任という問題を、この際にやはりもっと明確化さなければ、ああいう古い形においては、金融政策というものが今後においては非常に重視されておるので、それが一年もたっても、日本銀行法が日銀の総裁の言い分、大蔵大臣の言い分、十分に話し合いが進まないでまとまらないというようなことでは非常に私はみっともないし、また間に合わないと思うのです。結局、まとまらないから、それならば、古いままでも何とかやってきたのだから、それでやっていろというような、こういうやり方がいまの官僚の一番悪いところだと思うんですが、どういう点が問題点になっているのですか。その点を明快にして、どういうふうにしてこれを切り開いていくかということも方向づけなくちゃいかぬし、今後やっぱり、今度の倒産でも個々の企業だけではなくて、金融機関というものは私はなまけていると思うのです。こういうことに対する政府の指呼性並びに責任というものを感じなければ、今後倒産の続出なんか救えないと思うのですけれども、それに対して田中大蔵大臣からひとつお答えを願いたい。
  244. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま日銀法を中心にしまして、金融請制度ができておるわけでございますから、在来の歴史の上に立って考えると、日銀法を改正をして、それを中心にして金融政策を行なうべきだと、こういう議論が一つございます。今度の日銀法の改正もそのような議論の上に立っての考え方でございます。しかし、国会でもいろいろ申されておりますように、日本銀行法といってもそれが金融の基本法にはならない。金融基本法というような、金融法といいますか、こういうものをまず前提にしてつくるべきである、その中に中央銀行としての日本銀行法、また都市銀行等に対する銀行法、それから相互銀行法、信用金庫法というようなものを体系的につくるべきだと、こういう意見もございます。しかし、金融基本法的なものをつくって、いままでの制度を全く変えることもなかなかたいへんな作業にもなるわけであります。これと同じ問題が放送法にございます。放送法というものは日本放送協会法、中身はそういうものでございますが、現在は放送法という放送基本法になっているわけでございます。ですから放送法、放送事業法、日本放送協会法、こういうふうに分けるべきである、こういうような考え方と同じように、金融法をつくり、中央銀行法をつくり、他の市中銀行等に対しても銀行法を制定すべきだ、こういう議論もございますが、非常にむずかしい議論を長いことやってまいりまして、まあやむを得ず、いまの状態ではやはり日本銀行法を改正しようということになったわけでございますが、国会においても、与党の中においてもいろいろな御議論がありまして、最終的に政府が金融政策において責任を負うのだから、政府の責任をもっと明確にすべきである、という議論もございますし、またその反面に、在来の議論として、中央銀行の中立性はもっと確保しなければいけないというようなものもございます。確かにお説のように、かつて昭和十七年時代に日本銀行法をつくったり、そういうときの状態と違いまして、戦後新しい事態がたくさん起きてまいりました。特に新しい事態の中に系統金融機関というものが非常に大きくなってまいりました。日本銀行法という在来の考え方で戦後の系統機関を含めた、しかも、輸出入銀行とか、開発銀行とか、不動産銀行とか、いろいろなものができておるわけであります。こういうものを全部合わせて現在の日銀法で一体政府が金融政策の最終責任を負えるのか、こういうような議論もございます。なかなかむずかしい問題でございましたが、いずれにいたしましても、金融制度調査会の答申を得た日銀法の御審議を願おうということで、紆余曲折はございましたが、最終案をきめたわけですが、どうしてもやはりこれをいよいよ提出をするという時期になりますと、また議論もございますし、金融の基本法という新しい金融のあり方に対して、国会においては十分な審議を必要とする、こういうことがございましたので、このあともう一カ月半くらいしか参議院選挙までないというときに、これを提案するということも考えものでございますし、いろいろ考えた結果、次の機会に譲って、それまでにもう一ぺん真剣な意味で検討をして、できるだけ早い機会に御審議をわずらわしたい、こういう結論に達したわけであります。
  245. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  246. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、小林武君。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  247. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 去る二十三日の本委員会における藤田委員質疑に対する答弁中訂正の要求がございました。防衛庁長官。
  248. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 去る二十三日、藤田委員の御質問に対しまして——それは極東の軍事情勢に対する御質問の中に、日本周辺にソ連のポラリス潜水艦がおるかというような意味の御質問があったのでございまして、それに対しまして私がポラリス潜水艦と申し上げましたが、これは原子力潜水艦の誤りでございますので、この点訂正をさしていただきたいと存じます。
  249. 藤田進

    ○藤田進君 そうなれば、ポラリス潜水艦ではなくて、通常在来の兵器を持つ原子力潜水艦、そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  250. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 申し上げます。ポラリス潜水艦と確言できるような詳しい情報に確信がございませんので、原子力潜水艦と申し上げることが適当であると、かような判断からただいまのような訂正をさしていただいたようなわけでございます。
  251. 藤田進

    ○藤田進君 ですから、ポラリス型か、あるいはノーチラス型か、そういったものが両者確認できない、いずれともしれないが五ないし八入っているということなのですか、それともポラリス型ではないとはっきり言うのか、そこを聞いているんです。
  252. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) ポラリス型があるいは入っているかも存じませんけれども、そういう点において断言できませんので、原子力潜水艦ということに申し上げたほうが適当であるということで、御訂正をいただいておるわけでございます。     —————————————
  253. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 小林君。
  254. 小林武

    ○小林武君 防衛庁長官にお尋ねいたします。昭和三十七年、次代の青少年に対して非常に重大な関心を持っているという、そういう防衛庁の態度から、文部省に対して学校教育に関する要望を行なったことがございますか。
  255. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 当時の防衛庁政務次官が、政務次官会議におきまして、国防意識の高揚、防衛に対する国民の関心が高まるような教育の要望をいたしたことがあるということは、私も承わっております。
  256. 小林武

    ○小林武君 政務次官会議において要望をしたということは、このことは防衛庁の正式な文部省に対立する要望と認めてよろしゅうございますね。
  257. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) この問題について私が調べたところによりますると、政務次官が政務次官会議において発言いたしまする前に、内局——教育局等において一応の意見を取りまとめて、それを政務次官が発言をしたと承知しておりますので、防衛庁の正式な見解であったと申し上げて差しつかえないと思います。
  258. 小林武

    ○小林武君 次にお尋ねいたしますのは、その後において防衛庁は文部省に対して教育に対する要望を行ないましたか、これを伺いたい。
  259. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) その後におきましては、何ら教育に関する要望はいたしたことがないと承知をいたしております。
  260. 小林武

    ○小林武君 それではお尋ねいたしますが、昭和三十七年の防衛庁の文部省に対する要望は、ただいま御答弁がございましたように、内局並びに教育局が十分検討の上に出された、これは防衛庁の正式な文部省に対する要望になるわけでございますが、その内容は一体どういうものでございますか。
  261. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 政府委員から答弁をさせます。
  262. 島田豊

    政府委員(島田豊君) お答え申し上げます。この学校教育に関する要望は、当時の発行されておりますところの教科書を中心といたしまして調査いたしました。現状において、高等学校及び中小学校における社会科の教育の現状を見ると、国民の正しい愛国心を説いて国民的な自覚を促し国の防衛の必要を教えるための教育は貧弱であって、等閑に付されておるということを申し上げても過言ではないということで、小学校の社会科の教科書七種類、中学校の社会科の教科書十三種類につきまして、たとえば小学校の教科書について申し上げますと、愛国心あるいは国旗等について積極的に書いたものが二件、愛国心について書いてあるものが一件、国旗について書いてあるもの二件、全く書いてないもの二件、こういうふうな一応の調査の結果の分類をつくりまして、そして、要望といたしまして、このような現状にかんがみまして、国防のあり方について教え、国力、国情に応じてみずからの手によってみずからの国を守ることが世界の平和に寄与するゆえんである。したがいまして、わが国の教育全般の改善の問題とも関連いたしまして、正しい国民的な自覚を促し、国の防衛について積極的な関心を助長するよう、そういう教科内容についての実現を要望する、こういう趣旨のものでございます。
  263. 小林武

    ○小林武君 長官にお尋ねいたしますが、一九六二年——昭和三十七耳からその後文部省に要望を行なわなかった、こういう先ほどの御答弁でございますが、どうしてその後その要望をしなかったか、また今後要望しようというような必要を現在認めていらっしゃるかどうか、この点について御答弁をお願いします。
  264. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) その後のことにつきましては、事務的には二、三機会あるごとに文部省と事務当局がこれに関連をいたしましてお話は申し上げたことがあるそうでございますが、特にあらたまって申し入れとか要望をいたしたということはないという意味でございます。  なおまた、どうして正式な申し入れや要望をその後しなかったかというお尋ねに対しましては、政務次官からそういう要望を申し上げたことがあるのでございまして、特にきわ立ってこの点を具体的に実現をしてもらわなければならないというようなこともなかったので、要望にとどめて、その後は正式な申し入れや要望をいたさなかったという次第でございます。  なお、今後この問題について要望なり正式な申し入れをするかどうかというお尋ねに対しましては、私どもは、現在の一般教育方針に十分同感、満足をいたしておりますし、防衛意識の向上ということはさらに望ましいことではございますので、そういう方面に一そうの努力を希望はいたしておりますけれども、特にあらたまって要望なり申し入れをしようという考え方は現在私は持っておりません。
  265. 小林武

    ○小林武君 お尋ねいたしますが、この機会あるごとに防衛庁から申し入れば行なった、しかしあらたまってということはなかったというようなことでありますが、あらたまって行なわなかったということは、おそらく文書その他正式ないわゆる申し入れとして行なわなかったという意味であろうと私は理解しますが、その機会あるごとに一体どういうことを申し入れたのですか。教育の問題でありますし、これがあらたまって行なうと行なわないとに限らずですね、これは防衛庁の一つの教育に対する希望でございますから、要望でございますから、内容が必ずこれに伴なうものだと私は考えるのでありますが、これについてひとつ御答弁をお願いいたします。
  266. 島田豊

    政府委員(島田豊君) お答え申し上げます。機会あるごとにということでございますが、そうしばしばそういう機会があったわけでもございません。ただ、いろいろ防衛庁といたしましても、隊員の教育をやります場合に、一般の教育におきますところの方針なりあるいは重点なりというものにつきまして十分承知した上で、それに沿って教育をしていくという必要がございますし、現在の小学校なりあるいは中学校におきまするところのたとえば学習指導要領というものは、どういう趣旨で、どういうねらいで作成されているか、こういう問題につきましても、われわれとしても承知をいたしておく必要がございますので、そういう点を事務的にお聞きし、それに対して、われわれといたしましても、いろいろ意見を述べるということはあるわけでございます。過去に具体的にどういう内容についてお話を申し上げたかということについては、私まだ実は拝命しましてからそう長くたっておりませんので、その辺は詳しく申し上げられませんけれども、とにかく、ただいま申し上げましたように、文部省のお考え、御方針というものを承りまして、われわれとしてこれを参考にしていくということはあり得るわけでございます。
  267. 小林武

    ○小林武君 ただいまの御答弁は、これは要望ということではなくて、むしろ、文部省の方針を知りたい、こういう立場からのあれでありますから要望にはならないと私は思うわけでありますが、そうすると、あなたのほうでは、一九六二年以来については特別な要望はなされなかった。その後やられておらない。また、今後やろうというお考えも、防衛庁の長官におかれてはないというお話でございますが、まあ内容的に言えば、あの要望によって効果はあがったと、こういうふうに判断してよろしいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  268. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 具体的に効果があがったとは考えておりませんが、防衛庁の要望というものの大体は文部省当局にわかっておいていただいたということには考えておるわけでございまして、今後格別あらたまって御要望申し上げるとか、あるいは何々の問題をこういうふうに実現していただきたいとかというふうな、差し迫った問題はございませんので、前回の御指摘の、政務次官会議において述べました要望にとどめて、いま特にあらたまって要望や申し入れをする考え方はないという意味で申し上げたわけでございます。
  269. 小林武

    ○小林武君 ひとつざっくばらんな話をしていただきたいわけです。当時の要望を見ますというと、国の防衛の必要を教えるための教育ははなはだ貧弱で、全く等閑視されていると言っても過言ではない。こう言って、まず幾つかの問題をあげておる。私は、日本の教育の現状が、あなたたちの目から見て、はなはだ貧弱で等閑視しておられないという、そういう現状認識の上に立って要望をなされたとしたら、その後相当の年数を経ても何ら効果があがらないということであるならば、あなたたちのこの意気込みからいって、一言もないということは私はおかしいと思うのです。要望に示された内容を見ましても、あるいは政府委員としての防衛庁の答弁を見ましても、なかなか強烈なものが中に入っておる。ことばとしてはきわめて強いものを持った語調で、いまのような内容の発言をしているわけでありますが、私は、そういう意味で、いまのような大臣の御答弁は、これは納得がいかないわけであります。効果があがったと、こう確認されたからこそ、おやりになっているのではないか、そう思うのですが、どうでしょう。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕
  270. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 当時の要望の内容には、いま小林委員の御指摘のようなことがございまするが、現在において私の考え方は、先ほど申し上げましたとおり、いまの一般の教育方針には同感であり、満足をいたしております。それから、もちろん、なお、国防意識の高揚という面などについての、さらに希望がございますけれども、特にあらたまって具体的にこういうことをこういうふうに具現してもらいたいというような、さしあたってのことはないので、私としては当分、そういう正式な申し入れや要望をする考え方はないということを申し上げておるわけでございまして、当時の問題については、私もその当時のことはよく承知しておりませんが、教育局長から当時のそういう情勢の報告を受けまして、私としては今後そういう要望や申し入れをするという考え方はないという私の所見を開陳をしておるわけでございます。
  271. 小林武

    ○小林武君 教育局というのはどういう仕事の内容を持っているのか、しかも、その仕事の性質上、単に部内の問題だけではなくて、防衛庁内部の問題、教育の問題に影響するところのもの一切に関心を持っておる、そういう性格のものだと思うわけでありますが、ひとつ教育局の立場から、もっとやはり具体的なお話を承りたい。いまのような、いわゆる大臣答弁ではなしに、先ほど説明がございましたように、小学校の社会科の教科書七種類について、これを四項に分けてそれぞれ分類して、一体、この社会科教科書というものはこのような傾向にあるというような断定を下して、しかも、貧弱であるというような評価も下しておる、等閑視されているというような評価も下されておる。中学校の教科書についても、五項目にわたってこれを分類し、国防、愛国心、そういうようなものについての教科書批判をやっているのでありますから、私は、この点について、あいまいな態度なり、あるいは考え方なりをもっておやりになったとは思われない。でありますから、結果処理において、防衛庁としては、それ以後絶対要望をしなかった理由というものがはっきりなければならないと思うのでありますが、もし、なかったら、何とはなしに黙っているというのであれば、それなりの理由がなければならないし、また、必要感をお持ちになっているという、一九六二年の当時のお考えを持っているならば、私は怠慢であると言わなければならないと思うところもある。そういう点からひとつ、大臣からでなくてけっこうでありますから、教育局という立場から、もっと具体的なそういう説明をお願いいたしたいと思います。
  272. 島田豊

    政府委員(島田豊君) お答え申し上げます。  防衛庁の教育局は、自衛隊における教育訓練の基本に関する所項を所掌いたしております。教育訓練の中身、内容につきましては、非常に広範多岐にわたっておるわけでありますけれども、その中で特に精神面の教育というものがやはり大きな根幹をなしておるわけでございまして、これは隊員の各課程に応じまして、新しく隊員に入りました新隊員の教育、あるいは昔でいいます下士官、現在の曹の階級に従っていきます場合の教育、あるいは防衛大学校、あるいは幹部候補生学校における幹部要員としての教育、さらに、その後におきますところの幹部自衛官としての教育、こういった面におきまして、こういった民主主義下におけるところの自衛隊のあり方、あるいは、わが国の国防に対するところの明確なる認識、自衛隊の任務あるいは使命に対するところの徹底した考え方、こういうものを絶えず機会あるごとに教育をいたしておるわけでございます。  それから、文部省に対しまして、その後正式に何かを申し入れをしておらないということでございますけれども、先生御承知のとおり、こういう教育の方針を打ち出すということは、そうしかく簡単なものではないというふうに私は考えるわけでございまして、文部省におかれても、政務次官会議において出されましたところの資料というものは、やはり何らかの形で文部省の教育につきましても参考に資していただいておるのではなかろうかというふうに、私どもとしては期待をいたしておるわけでございます。毎年毎年私ども要求いたしまして、ぜがひでも教科書の中にそういうものを織り込んでもらいたいという要求自体、これは必ずしも私は適当でない。ただ、われわれとしては、やはり現在の教育につきまして、自衛隊の教育をやります面におきまして、いろいろ考えは持っておるわけでございますけれども、したがいまして、そういう点はできるだけ慎重に教育をいたしておりますけれども、絶えずそういうことを文部省のほうに要望するというふうな性質のものでもなかろうというように考えておるわけでございます。事務的に御連絡申し上げる場合には、いろいろ文部省の考えも聞き、ただいまわれわれも参考にいたしておりますけれども、そういう性質のものだというふうに考えますので、その後、特に正式には申し入れをしておらない、こういう状況でございます。
  273. 小林武

    ○小林武君 初めの意気込みがたいへん大きかったが、そのあとはたいへんどうも、ただいままでも答弁を総合いたしますというと、いわゆる竜頭蛇尾の感がある。私は、そういう御答弁の中には真実味というものはあまりないように思う。  それでは、ひとつお尋ねをいたしますが、あなたたちは、先ほど申し上げましたように、教科書についてずいぶん詳細に検討なさって評価をなさっておる。その後、小学校の教科書、中学校の教科書、高校の教科書というようなものは、先ほどのあなたの御答弁によっても、自衛隊の教育上非常に重要な影響を及ぼすものと考えますが、これについて検討したことはありませんか。検討したら検討したということをお話しいただきたい。検討の結果は、どういう評価をされておるのか。しかし文部省に言ったならば、あとは一切信用してよろしい、こういうお考えで、自後何も手を触れておらないというなら、またこれは別であります。
  274. 島田豊

    政府委員(島田豊君) その後は、教科書につきまして検討を具体的にいたしておることはございません。
  275. 小林武

    ○小林武君 私は、その後日本の教科書が大きく変化したという事実を知っているわけです。これは文部大臣もお認めになるだろうと思う。国防の問題にしろ、あるいは愛国心の問題にしろ、たくさんのそれについては反対論があったにもかかわらず、教科書というのは非常に変化している。私は文部大臣にお尋ねをしたいわけでありますが、ただし、このことは、防衛庁から申し入れがあったから文部大臣が直したろうなどというようなことは申し上げません。しかし、その後大きく教科書が変わったということだけは、これはお認めになるだろう。どうして、どういう手続で一体それが変わったのか。これは国定教科書でもなければ何でもない。会社でつくった、いわゆる営利会社のつくった教科書です。その教科書がそのように変わったのは、どういうわけでしょうか。手続的な立場からひとつ御説明を願います。
  276. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまもお話がありましたように、防衛庁から御希望があったから変わったとかいうようなことはないかと思いますが、手続の点でございましたら、政府委員から正確にお答えいたさせたいと思います。
  277. 福田繁

    政府委員(福田繁君) お答え申し上げます。  ただいま御質問になりましたことは、御承知のように、昭和三十三年に小中学校の教育課程は全面的に改訂をいたしまして、その改訂の一つの方針といたしましては、国に対する愛国心というようなものを涵養するということも一つの大きな眼目でございます。したがいまして、新しい指導要領に基づいて、昭和三十六年であたっと思いますが、小学校の教科書は全面的に改訂し、翌年中学校は改訂になったわけでございます。大体三年おきにこの大改訂をいたしますので、小学校につきましては、三十九年にまた全面改訂が行なわれたわけでございます。特にこの、ただいま大臣から申し上げましたように、防衛庁の御要求によって変わったわけではございませんが、そういう各方面からの御意見もあれば、私どもとしては謙虚に耳を傾けたいと思いますが、教科書自体は、学習指導要領の基本にのっとって検定をするわけでございます。したがって、愛国心その他国民として心要な事項につきましては、できる限り教科書の中でこれを取り扱っていくという方針でございます。
  278. 小林武

    ○小林武君 大臣をはじめ福田初中局長も、特に防衛庁からの申し入れがあったからではないという断わりがございましたが、そうおっしゃるのはなるほどというふうにも感ずるわけであります。そして、大体教育課程指導要領というようなものが出て教科書が変わった。しかし、つくるのは、先ほど申し上げましたように、それは教科書会社です。これは答弁は要りませんが、あなたたちはそれをどういう一体手続で、非常に防衛庁も安心して、再度申し入れを行なわなくてもいいような教科書ができたかというと、検定制度で締めつけたからであろうと私は思います。いずれ、そういう問題については、ひとつ十分ほかの機会にお尋ねをいたしたいわけでありますが、ここでひとつ防衛庁の長官にお尋ねをしたいわけであります。  要望の中に、私はなかなか重大なことが書かれていると思うのです。「右のような現状にかんがみ、青少年に対し、世界の政治、外交の現状に対して正しい知識を与えるとともに、このような情勢下における国防のあり方を教え、国力、国情に応じて」云々と書いてある。こういうことは教育に対して、あなたたちは青少年に対して、世界の政治の現状、外交の現状というようなものを正しく認識するということを求めておるわけです。私は、いまの非常に複雑なこの国際情勢、これに対処するのに非常にめんどうな外交の状態というものを考え、こういうことに対して明快なる考え方を青年に要求しておられる。この青年に対する要求は、教育に対して要求される、こう私はこの要望の中から判断しているわけです。   〔委員長退席、理事迫水久常君着席〕 それでは、現在のような国際情勢、世界の政治の情勢、外交の情勢をどう一体防衛庁としては御判断になったらいいのか。国の教育があなたたちに満足を与えるというのなら、一体どう判断したらいいのか。明快なる教育に対する要求があるわけでありますから、あなたたち自身が持っていなければならない。同時に、私は防衛庁の長官にお尋ねしたいのですが、防衛大学とか、あるいはその他あなたたちのほうの傘下の諸学校において、いまのような政治、外交についてどういう——われわれのことばで言えば教育課程をもって、教科書をもって教えているのか、その内容は一体どんなことなのか、この点について説明をしていただきたいと思うわけです。
  279. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 政務次官が政務次官会議で要望をいたしましたその内容につきましては、過去の事実問題でございまするので、政府委員から答弁をいたさせますが、現在の防衛大学その他の諸学校は、防衛大学等もほとんど一般大学と変わりのない教科目をば採用いたしておりまして、民主主義政治下における一般教育と同じような教育の方針でやっておるわけでございます。こういう問題につきましても政府委員から詳細に答弁をさせます。
  280. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 今日の世界におきまするところの外交なりあるいは政治の情勢について、どういうふうにしておるかということでございます。私、各課程を通じまして、ここにその教授の要目等につきまして、持参いたしておりませんので、御説明いたしかねるのでございますが、これは当然自衛官として、ことに幹部自衛官につきましては、やはりわが国における防衛問題を研究いたします場合に、当然世界における政治なりあるいは外交のあり方というものにつきまして、必要な知識を持って、その上に立って防衛問題を研究するということは当然のことでございまして、これは防衛大学校におきましても、また幹部候補生学校あるいはその他の幹部の教育をやりますところの各学校におきましても、それぞれやはりそういう問題は部内の講師あるいは部外の講師を招聘いたしまして、それに対するところの一つの確固とした考え方を持つというような教育はいたしておるのでございます。   〔理事迫水久常君退席、理事村山道雄君着席〕
  281. 小林武

    ○小林武君 はなはだどうも期待を裏切られた御答弁でございまして、教育に対してあれほどはっきりした要望を持ちながら、みずからはそういう問題について明確な答えを出さないということは、私はおかしいと思います。少なくともあなたたちの要望の趣旨に従えば、いまの外交の現状、政治の現状、あるいは特にアジアの問題、そういう問題について、少なくとも教育に当たられる教育局のあなたたちの態度というものは、もっと明確なものがなければならない。あなたがいま説明されたようなことをもって、小学校、中学校、高校の教員に、青年の教育は貧弱である、等閑視されておるというようなことを言うということは、まことに私は出過ぎた言い方だと思う。しかも、そのことによって教科書を変えるというような、そういう一体発言をするということは、どういうことなんですか。私ははなはだこれについては不満でございますけれども、こういう問題について、長々やっておるわけにもいきませんので、ひとつ防衛庁としては、もっと親切な、腹にあるようなここの話を率直に、やはり国会の場ですから、出していただきたいと思います。どうです。あなたもう一ぺんお立ちになって、もう少し、ましなひとつ答弁をしていただきたい。
  282. 島田豊

    政府委員(島田豊君) ただいまの要望書にあります文句につきましては、これは、特に政治、外交というものに対する小、中学生の認識がかくあるべきである、今日の世界の情勢なりあるいは外交、政治の現状について、かく認識をすべきであるというふうな意味合いで、ここに書いておるのではないのでございまして、要するに一般的に政治、外交というものに対するところの一つの正しい把握のし方をして、その上に立って、わが国の防衛という問題についても認識と関心を持ってもらいたい、こういうふうな意味でございまして、したがいまして、今日自衛隊の中でこういう問題について具体的にどういうふうな認識を持つべきであるか、あるいは現状の分析把握をすべきであるかということについて、私どもとして、その内容をそれぞれの学校に示しておるというわけではございませんので、おのずからそこには常識的な一つの基準というものが生まれまして、そして部外なり部内の講師によって具体的に教育が行なわれておる、こういうふうな状況にあるのでございます。
  283. 小林武

    ○小林武君 防衛庁長官にお尋ねいたしますが、防衛大学という場所でそういうあいまいな教育をおやりになっておるのですか。あなたのいわゆる防衛大学で、どういう一体教育課程に従ってどういう内容のことを教えておられるのか、ひとつはっきりここでお示しをいただきたい、具体的に。  なお、私は先ほどからしつこく申し上げますのは、あなたたちのほうが、単なる要望であれば、こういうことを言わない、貧弱である、等閑視しておるというようなことを。小学校の場合は教科書を七種類あげて、中学校は十三種類、高等学校は二十五種類、これにわたって詳細に検討しておる。私はその検討の態度はなかなかりっぱであると思う。そういう具体的なあなた方は立場に立ってやられたのですから、いいかげんな答えは私は聞きたくない。
  284. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 防衛大学の教科内容につきましては、先ほど申し上げましたとおり、一般大学と同じ基準に立ちまして、憲法、民主主義教育あるいは理工学その他ほとんど一般の大学と同じでございまして、もちろん特別な訓練等は一般の大学と違いまして、部隊運営の訓練等はいたしておりますが、特に特別な教科目を設けておることはないと存じます。その教科目等の詳細につきましては、政府委員から答弁いたさせます。  なお、また先ほどの政務次官が文部省方面に要望をいたしました内容についての御指摘がございましたが、意図はともかくといたしまして、私も御指摘をいただきますると、率直に考えまするに、文部省の教育方針に対しまして防衛庁側の要望としては、ことばその他について不適当な点がありはしないか、こういうことはもっと、同じ要望にいたしましても十分慎重な取り扱いをすべきではないかと考えておるわけでございます。
  285. 小林武

    ○小林武君 それでは問題をかえまして、防衛庁長官はこのことを御存じでしょうか。祝祭日の問題が出てまいりまして、建国記念日の問題がかなり政府の意向によって国民の間に論議されております。その中の賛成論の一部の中に、こういう議論が出てきたということをどうあなたはお考えになるのでしょう。日本の総理大臣も軍隊を指揮するところの資格がない、これは日本の自衛隊は天皇を必要としているという議論が出てきておる。天皇制復活の必要を説き、自衛隊に天皇の必要を説く議論というものが、そういうものと一緒に出てきておる。私は非常に重大に考えるわけです。三矢問題等とからんで私は考えますときに、私はこれは一つは統帥権独立の思想が再び日本に出てきたのではないかという、こういう私はおそれを持つのであります。こういう点について、あなたはどうですか。現状の自衛隊の精神を守って、これらの誤った考え方を断固はね返すだけの信念をお持ちでありますか。またこういう問題が起こっておることについて、どのようなあなたは感想をお持ちであるか、これを承りたい。
  286. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) ただいま、小林委員御指摘のことは、私も不勉強なせいか、初耳でございまして、むしろ驚いておるようなわけでございます。私はさような考え方があるべきではないというふうに考えております。将来、こういうことをば考える者があってはならないのであると、どなたの発言かは存じませんが、自衛隊の自衛官の中などに、そういう考え方がもし一人でもあるといたしますならば、今後、十分そういうことの誤りを是正をして、そういう考え方は一人もないようにしなければならないと考える次第でございます。
  287. 小林武

    ○小林武君 文部大臣にお尋ねをいたしたいのであります。こういうような実情については、あなたはどうお考えになっておるか、私はわかりませんけれども、あなたに直接関係のある問題を一つお尋ねしたい。「期待される人間像」の中間報告に、祖国を愛することが天皇を敬愛することと一つであると、こういう言葉がある。これは正確な表現でありませんけれども、これは、私は忠君愛国という言葉と同じだと思う。国を愛するということは君に忠なるゆえんだという忠君愛国の思想と、これは一致するものである。忠君愛国の思想というようなものは、天皇を神として、いわゆる当時の神勅による豊葦原瑞穂国というものが天皇の子孫の君たるべき地であるという、そういう発想の上に立って忠君愛国という思想の説明をやってきた。「期待される人間像」の中間報告の中に祖国を愛することと天皇を愛することと同一であると、こういう発想を、あなたは「期待される人間像」の中間報告として国民の批判を待ちたいと言って出された。このことについて、あなたの意見を承りたい。
  288. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 「期待される人間像」につきましては、しばしば申し上げておりますように、これは中教審の部会の研究の中間の草案でございます。その中身について私はとやこう申すべき立場にただいまございません。したがって、その中に書かれてあることに対して、私にコメントをお求めになりましても、私はストレートにお答えすることができません。それから私の考えはどうかということでございますが、私は現在の憲法における天皇は日本国の象徴である、国民統合の象徴である、これが一番いい考え方である、私は信念としてさように考えております。ただいま、忠君愛国というような言葉もお出しになりましたけれども、私は、民主主義、主権在民ということになりました今日の日本におきましては、そういう考え方はあり得ない。おそらく、中間草案で、いま言われましたような表現があることも、私は、承知しておりますけれども、先ほど申しましたように、ストレートにお答えできません。これは執筆者に直接お聞きいただくよりほかにはございません。しかし私の想像では、現在の憲法は天皇に関しては国の象徴である、国民統合の象徴である、その象徴に対して、国民としてどういう態度であったら望ましいかということを言われておるのではなかろうかと私は想像いたします。
  289. 小林武

    ○小林武君 はなはだどうも、文部大臣としては無責任な言い方だと思うのですよ。なぜ無責任だと私が言うかというと、国民の象徴という問題と、国を愛するということと、天皇を敬うということは同一のものであるという考え方が一体結びつくかどうかという問題、そのことを私は聞いている。私が無責任だというのは、そういう重大な問題を私ははらんでいると考えているが、それは中教審の諸君が出したことだから、批判もできなければどうもできない、私はそういう性格のものではないと思う。オリンピックの映画でさえ見ていけないなんていうことを簡単に言う人が、そういう重大なことをなぜ一体明確な、自分の意思発表ができないか、私はその点に不信を感ずるから申し上げた。
  290. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私は非常に重大な問題であると思いますから、私は誠意をもってお答えをしているつもりであります。私は天皇に関する限りにおいては、現行憲法における、いまも申しましたように、国の象徴である、国民統合の象徴である、これを正確に理解すべきである。私はこれは私の信念でございますから、そのとおりお答えをいたしておるわけでございます。
  291. 小林武

    ○小林武君 労働大臣に一言だけお尋ねをしたいわけであります。先ほど来からおいでにならなかったから、経過については御存じないかと思いますけれども、いろいろな面からのいろいろな要望があるわけであります。ただ一つ省略したことがあります。それは教育に対して、防衛庁が非常な発言をしたということを、一つ先ほど質問をいたしました。私が抜いたのは、日経連が三度にわたって、とにかく具体的な教育の問題についてのいろいろな意見を述べている。これは経営者の団体としての意見を述べている。憲法の問題に触れて、新教育制度の再検討に対する要望、当面の教育制度改善に関する要望、昭和四十年の一月二十七日には後期中等教育に対する要望、こういうものが出ている。これは私は文部大臣にお尋ねすることでありますから、あなたにはお尋ねいたしませんが、私はこのように防衛の面から、あるいは経営者の面から発言がなされた。ここで労働大臣は、日本の労働事情については最も詳しい方であるから申し上げるまでもないが、やっぱりここに日本の労働運動の中に、あるいは労使の関係において、非常に私は不明朗なものがある。いわゆるほんとうのルールというものが確立しておらない。こういう現状はどこから出てきているかというと、教育の面における労働者、日本国民、労働階級に対する啓発が十分に行なわれていないということが私は大問題だと思うのです。これについては、文部省も、初めは、日本の教師に対して、教員組合をつくって政党の横暴などは、教員組合の力でもってひとつはねのけろというふうなことまで、なかなか御親切な忠告を出しておる。教科書もずいぶん労働者の権利ということを強調した。しかし、いまや日本の教科書は大きく変貌して、昭和三十年の指導要領になるというと、労働組合をつくっているものもよい品物をたくさんつくって、そうしてもうけさせぬというと、お前も困るのだからという式の、大体労働基本権というようなものを尊重しないような方向にだんだん変わってきておる。このことについては、やや先を急いでいるので正確な表現にならないかもしれないけれども、労働基本権に対する考え方が非常に甘くなってきている。甘くなっているということよりかも、そのことの尊重が見失われている。私はこう解釈している。こういうときにあたって、労働大臣は一体これについてどういう御意見を持っているのか、教育というものを通して、労働者教育というものを通して、一体もっと労使の間のルールの確立ということについてお考えがあって、あるいは発言をなされておられるのかどうか、この点についてお伺いしたい。
  292. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) よりよき労使関係を確立いたしますためには、社会の各層において、労働問題についての十分な理解が持たれることが望ましいことでございます。そうしてその労働問題の一つの大きな基本は、憲法で保障されておる労働の基本権でございますから、その労働の基本権というものについての正しい理解が持たれることが望ましいことだと考えております。労働行政の一環としてそういう教育普及というものにも努力をいたしておるつもりでございまして、たとえば労働協会を設置いたしましたのも、一般的に労働問題についての理解と知識を普及さしたいというつもりでございます。  教科書に対する反映のしかたでございますが、私はたいへん不勉強でありまして、いま使用されておる教科書を読んではおりませんけれども、そういう理解のもとに教科書の編さんもなされているものと考えておる次第でございますから、したがって、われわれのほうから教科書編さんについての具体的な要求、要望等はいたしておりません。他の官庁はどうだか知りませんが、いたしておりませんけれども、いま申しました点についての普及徹底については努力いたしておるつもりでございます。
  293. 小林武

    ○小林武君 労働大臣が教科書のほうに干渉されてはたまらないのであります。が、しかし、政府の中においていろいろ教育について御発言を願う場合には、もう少し日本の教科書の中に労働者の権利というものがどのように扱われているか、しかもそれが昭和二十七、八年のころには一体どんな教科書が使われておったか、その教科書がどういう変わり方をしているかということについても目を投ぜられて、これは十分教育の問題、労働問題として御配慮を願いたいということを申し上げておくわけであります。  農林大臣にお尋ねをいたしますが、労働者の災害の問題というのが非常にこのごろ起きまして、たくさんの不幸な方が出たわけでありますが、北海道における漁船の問題をひとつ伺います。沿岸におけるところの漁船沈没というものは、これは相当大きな数を示しているわけであります。昨年一年間で、七十四隻沈んでおる、百七十九人が死亡あるいは行くえ不明になっておる、こういうのであります。これは、先ほどの夕張の炭鉱の問題を考えますというと、一時に六十一名の方がなくなられた。これも私は非常に重大な問題であると思う。しかし、いつ死んだかわからないような形で北海道の沿岸漁業の人たちが百七十四名も一昨年は死んだ。こういう事態について、農林大臣は一体どのような指導をなさろうとするのか、原因をどういうふうに把握されているか。  なお、労働条件といいますか、問題だと思いますのは、最近根室沖で沈んだ北海道の船などは、ボートも持っておらない。みすみす沈没してそのまま死んでしまう、こういう状態であった。こういう点について農林大臣の御意見をお伺いしたい。
  294. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁船の遭難、まことに遺憾でございます。その原因等につきまして、たくさん原因をあげることができますけれども、装備その他もありますが、船員の素質等が非常に低下しているといいますか、そういうことに大きい原因があるように考えております。それにつきましてそれぞれのこまかい措置をとっておるわけでございますが、要は乗り組み員の質と量とに相当問題がある、こういうふうに把握しております。
  295. 小林武

    ○小林武君 こういう災害のときには、船長が免状を持っておらなかった、あるいは無電の通信士が乗っておらなかった、こういう事態がそういう問題にかなりつきまとっている。しかし、これは一面船主の責任であるということはこれは申し上げるまでもないのですけれども、同時に、こういう船主というのはきわめて零細な企業、小規模な企業であろうと思う。このことを両面から指導改善の道を講じなければ絶対こういう災害を絶滅することは不可能だと思うわけですが、そういう点については農林省としては一体手を打たれているのかどうか。
  296. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに、最近、漁業におきまする労働力の不足が深刻化しております。特に船舶職員、いまお話しの船主とか航海士とか機関士、無線士の確保が困難になっておるような実情でございます。そのため、船舶職員法所定の船舶職員が欠員のままで、いまのお話のように免状等も持っておらぬというので出漁する漁民が多いので、海上保安庁の調べによりますと、昭和三十九年において、そういうために摘発した件数が約七百件あれしておる、こういうふうに聞き及んでおります。対策といたしまして、都道府県の行なっております漁船の運航、機関及び無線従事者の養成事業に助成をいたしております。また、船舶職員の養成にそういうところでつとめておるのでありますが、船舶職員の養成につきましてさらに一そう強化をいたしていきたい、こういうふうに考えております。
  297. 小林武

    ○小林武君 特段のひとつこの面の御配慮をお願い申し上げまして、農林大臣質問を終わります。  次に、法務大臣にお尋ねをいたしたいわけです。日韓会談における在日朝鮮人の法的地位に関する問題については、すでに近日のうちにこの問題について終止符を打たれるというような状況にまで進展しておるといろ話でありますが、法的地位の問題についてどの程度まで一体進んでいるのか。なお、その際、一体日本側の主張韓国側主張はどういうふうになっているのか、その主張は全く合意に達しているのか、その点について伺います。
  298. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 法的地位の問題につきましては、ただいま折衝中の点もございますので、そうした点は答弁を申し上げることが適当でないかと存じますが、申し上げておりますように、まず第一点は、法的地位を受ける韓国人の範囲という問題、また、この法的地位を受けた人が強制退去をする場合にどういう条件の者について強制退去をするかという問題、また、教育の問題、あるいは社会保障の問題等に、いま折衝をいたしております。たとえば強制退去等の問題につきましては、話が煮詰まってまいっております。内乱、外患の罪を犯した者でありますとか、あるいは麻薬に関する罪を犯した者の常習犯的な者であるとか、あるいは日本の外交に関しまして、外国元首あるいは使臣等に対して、日本の国の利益に反する行為があり、そうして禁錮以上の刑に処せられた者であるとか、あるいは凶悪な犯罪によって七年以上の刑に処せられておるというような者に対する強制退去の点は煮詰まってまいっております。範囲の問題でありますが、終戦時日本におりました朝鮮人につきまして、日韓条約が発効をしまして五年間までの人は、これは協定による居住権を認める、なお、それらの人々の子供に対しまして、成年に達するまで親と同じような状況の永住権を認めよというような点は、大体話は双方近づいておるのでございまするが、その他の点におきましてまだ一致をいたさない点がございまして、この問題の懸案としてなお折衝をいたしておるのでございます。  教育の問題につきましては、これは実質的には文部大臣のほうの所管に属する事項が多いのでございまして、そのほうからお聞き取りをお願いいたしたいと思います。  以上お答えいたします。
  299. 小林武

    ○小林武君 お話がございましたけれども、法的地位の問題については、文部大臣のほうからお聞きするのがこれは順序かどうか、私はちょっと理解ができないわけです。お尋ねしますが、まだ固まらないから話ができないというのは、新聞にはどんどん出ているわけですが、こういうところまでは進んでおるということにはなりませんか。たとえば教育の問題でいえば、合議事項として永住韓国人の世帯に対する生活保護及びその子弟に対する公立小中学の就学については、本人の希望に基づき当分の間続ける、この点はどうなんですか。その際、当分の間続けるというのは、当分というのはどういうことなのか。
  300. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は、ただいま法務大臣からお答えいたしましたように、在日韓国人の法的地位というものについて煮詰まっていないところもあろうかと思うのであります。しかし、ただいま法務大臣からお話がございましたように、かりに日韓正常化がまとまって、条約等ができました場合のあとを考えてみますと、日本に永住することを許された人たちが希望する場合におきましては、義務教育諸学校等に就学するという便宜を供与することが適当であろう、かように考えておりますが、これは同時に、従来からの在日朝鮮人の子弟の教育の問題について、前々からの政府の取り扱いということは、小林委員もよく御承知のところと思いますが、日本に帰化して国籍を持たない限り、将来までのところ、義務教育に就学する義務もございませんし、また権利もなかったわけであります。しかし、戦前からの経緯もございますから、義務教育諸学校に就学することを希望する場合においては、なるべくその希望をかなえてあげるように、義務教育諸学校を設置しておる市町村の教育委員会なり学校長の裁量によりまして就学を許可することにしておるわけでございます。
  301. 小林武

    ○小林武君 当分というのはどうですか。
  302. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その新文——いまお示しございましたが、当分の間ということは、まだ私も承知いたしておりません。
  303. 小林武

    ○小林武君 文部大臣にお尋ねをいたしますが、もうこれも文部大臣先刻御承知のことだと思うわけであります。日本に朝鮮人の学校がたくさんあるわけです。この学校が各種学校の扱いも受けておらない、若干の数のものは認可をされているらしいが、各種学校の扱いも、とにかく最近ではしないという方針です。これは知事がやることでございますけれども、文部省の方針がそういう方針だということで、どうも発展しない。そのことのために、この朝鮮人学校に通う子弟というものは、これは定期を買うについても便宜を与えられておらない、こういう問題が起こっているわけでありますが、私は文部大臣をはじめ皆さんのお考えの中に、朝鮮人を単なる外国人だというふうにお考えにはなっていないと思うわけであります。過去の行きがかり、いろいろなことを考えますというと、ある新聞の社説のごときは、これを準日本人と考えてこの問題を処理すべきだというような見解すら出ている、そう考えましたときに、いわゆるしゃくし定木に各種学校も認可しないというようなこういうやり方は、ひとつ改められるべきだ、しかも各種学校の扱いも受けてないばかりか、とにかく朝鮮人の学校を出れば大学にも行かれない、進学の望みがあっても行かれないというようなことになる。それに門を開いてくれている大学なんというものはほんのわずかである、国立の大学は全然これに門を閉じてしまっておる、こういう点についても、私はもう少し前進した考え方を、ここらあたりから文部省でお考えできないものかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  304. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は率直に申しまして、ただいま日韓会談が進捗しておるときでございますので、われわれからいえば、幸いにしてこの条約がまとまりまして在日朝鮮人の法的地位というものが両国間の合意によりましてまとまりました場合にどうするかという問題と、それから先ほど申しました従来からやっております政府の態度なり処理というものとごっちゃになりますと、多少お答えがしにくいのでありますけれども、従来から申しますと、ただいまも御指摘がございましたように、二、三年前と思いますけれども、政府としての方針も再確認されているわけでございますけれども、たとえば朝鮮人の子弟に対しまして朝鮮語でもって朝鮮の歴史やその他を中心としまして、朝鮮人としての民族性ということに徹した教育をされるというような場合におきまして、これらの教育あるいはいわゆる各種学校の認可というようなことを持ってこられました場合に、これを許可することが適当であるかどうかということは非常に私はこれは問題であると思うのであります。したがって、従来からこういう点につきましては許可をしない、要するに、朝鮮の民族教育ということに徹した教育を日本の国土の中において公式に認めるということはいかがであろうか、これは先ほど小林委員が御指摘になりましたように、朝鮮人というものに対する在来からのいろいろの沿革や経緯からいえば、これは相当考えなければならないという御指摘の点は、私はその中のある部分は非常によく理解できるのでありますけれども、ただいま申しましたように、朝鮮としての民族教育ということに徹した教育を日本の国土内で行なわれます場合、これを日本の法制のもとにおいて公認する、これに保護を与えるということはいかがであろうか、私としてはにわかに賛成しがたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  305. 小林武

    ○小林武君 文部大臣のお話の中に朝鮮の民族教育ということについての御見解が述べられた、私はこれが朝鮮人を理解する一つのやっぱり道だと思うのです。朝鮮人が朝鮮併合以来どういう扱いを受けたか、日本においてあるいは朝鮮において彼らは完全にその間に自信を喪失したといって私はよろしいと思う。彼らがほんとうにアジアにおける、東洋におけるりっぱな朝鮮の国民として生きていくためには、彼らに誇りを与えることではないか。民族的な自覚を彼らが持つことによって初めて私はそれを達成することができると思う。そういう場合、日本としては、これに対してもっとあたたかい、もうと援助的な立場でものを解決するということが必要ではないかと思うのです。このことは、ここでいま議論するつもりはありませんから、十分ひとつ今後の問題の発展に従って御考慮いただきたいと思うのです。  それから、最後に一つだけ法務大臣にお尋ねをしておきたいわけでございますが、実は、昨日朝鮮の方々の話を聞いてみて、日韓会談が始まるというと非常に深刻な問題が一つ起こってきた。北の人間であるか南の人間であるかというようなことを、非常に日本の警察官までがやかましく言うようになってきた、日韓会談が成立した場合には、北のやつらは、とにかくもっともっとよく徹底して何か取り調べをやるとかなんとかというようなことを言った。——ちょっと朝鮮のことはであったために、何か初め私もよく聞き取れないところがありましたが、言ってみるならば、警察がそれらについてさまざまな差別待遇をやるというような意味であります。片方にはゆるく片方には非常につらく当たる。そのことが、結局南につくか北につくかというようなことにまで発展していくような、そういうものであります。この点を非常に問題にしておりましたが、日韓会談が成立した、朝鮮人の法的地位が確立したと、こういう段階になってから、そういう事態が起こった際に、一体どういう措置をとるのか、日本として。あるいはその処遇において、一体全く平等な立場をとってくれるのかどうか、この点についてお尋ねをしたい。
  306. 高橋等

    国務大臣高橋等君) この日韓条約が成立をいたしました暁において、韓国籍を選ぶかどうかということは、全く自由の意思によってやる。それに対してわが国としまして、いろいろな干渉をやったり、ただいま述べられましたような警察の取り調べ、あるいは法務省の捜査等が差別を設けるというようなことは、これはいかなる外国人にも適用さるべきことではないのでございます。その点は非常な思い過ごしが彼らにあるのではないかと、こう考えます。  なお、北鮮系の、いわゆる韓国籍を取得していない人々の処遇につきましては、その特殊の地位というものはよくわかっております。そういうような特殊の地位と申しますものは、日本の国籍を前に持っておって、そうして自分の意思によらず国籍を失った、こうした特殊の地位というものはよくわかっております。そういうことを勘案いたしながら、条約が成立をいたしました後におきまして、いろいろの問題点もございますので、十分検討いたしていきたいと考えておる次第でございます。
  307. 小林武

    ○小林武君 一言だけ最後に。  法務大臣は笑いながらお話しになるほどたいへん楽観的でいらっしゃいますが、事実はそうでない。ということは、この新聞にも明らかであります。この内容は一々申し上げない。しかし、その中にきわめて複雑な問題が起こっているということをひとつ十分御認識いただいて、念には念を入れて、いまお話のようなことが日本の国内に起こらないというふうにお願いをしたいわけであります。  私の質問は終わります。
  308. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 小林君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  309. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) この際、参考人出席要求についておはかりいたします。  千葉千代世君から、同君の質疑の際、財団法人オリンピック東京大会組織委員会事務総長の出席を求められております。参考人として財団法人オリンピック東京大会組織委員会事務総長与謝野秀君の出席を要求することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  311. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 千葉千代世君。
  312. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、オリンピックの映画と体育振興並びに特殊教育、幼児教育等に関しまして関係大臣に質問いたします。  まず、愛知文部大臣にお尋ねいたしますが、あなたは三月十六日の閣議の決定のあとで記者会見なさっておりますが、そのときに、東京オリンピック、これは文部省推薦にすることはできないと映画を推薦することはできないということを述べていられますが、その根拠は何でしょうか。
  313. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず第一に、閣議決定とかなんとかということとは、これは全然関係がございません。それからオリンピック映画につきましては、本日午前中、当委員会で河野大臣からも所見の開陳がございましたが、大体私はそれと所見を一致いたしておるわけであります。実は、答弁が長くなって恐縮でございますが、私は実はこういうふうに考えておったわけでございます。東京オリンピックが非常な感銘のうちに終わりました。そしてオリンピック憲章に基づくところのいわゆるドキュメンタリーの映画というものが、かねがね組織委員会で、当然のことでありますが、計画されておる。これが昨年末にだんだん完成に近づいてきた。組織委員会から、記録映画というものをいよいよ完成することになったから、できるだけ活用してほしいという御要請がございました。これに対して私どもも非常に賛成でございました。したがって、小学生のごときに対するものは料金もできるだけ安くしてもらいたい、できれば無料にして見せて上げたい、あるいは十六ミリをさっそく複製して、僻地にも早く何らかの方法を講じて、配給と申しますか、そういう措置も講じてもらいたい。まあ常識的に申せば、私も非常に張り切って、あの感激をもう一度再現して、広く全国の少年少女諸君にも味わってもらいたい、こう思っておったわけでございます。ところが、去る十日に試写会でこれを拝見いたしますと、私の思い過ぎたのがいけなかったというわけでございましょう。いわゆる客観的に素直な私の常識的な頭で考えれば、ドキュメンタリーではなかった。すでにその前後からいろいろの批判も起こっておったようでございます。それからまた、その前後からすでにもう一ついわゆる記録映画、ドキュメンタリーのものをつくらなければならぬかというような話も出かかっておったときでございます。こういうような諸般の情勢から申しまして、これもたとえ話でございますが、寝た子まで起こして無理をして見させるというような意味をも含めて、積極的に文部省推薦でどんどんごらんくださいと言うほどの気には、実は私も失望いたしまして、なりませんでしたということを、記者会見の際に、私の感じをそのまま申したわけでございます。したがって、すでに組織委員会からの御要請によって、各地に連絡をしておりましたできるだけごらんなさいというような趣旨の通知などを撤回したものでもなければ、これを見てはいけませんと言ったことでもないし、見ることをすすめないということを積極的に言うたものでもない。私の気持ちが張り切っておりましただけに、積極的にこれをどんどんごらんなさいという意味で御推薦というふうな気持ちになりません、こう申したのが全体の偽らざる真相でございます。
  314. 千葉千代世

    千葉千代世君 たいへん失礼な伺い方ですけれども、オリンピックは私は第一番に参加するということが基本であったと思うのですが、その点についていかがお考えになりますか。オリンピックの目的というのは一体何でしょうか。
  315. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まあこの点もいろいろの見方がございますが、私も実はクーベルタンのことばというものが、参加することが目的であると、この点だけに一点にしぼって理解することがどうであろうか。実は、クーベルタンのあの有名なことばは、非常に長いスピーチと申しますか、所見の中の一つをとらえておるわけでありますから、もちろんその参加することに意義があるわけでございましょうが、そのほかの意味もいろいろ言っているわけであります。しかし、それは別に当面の問題ではありませんから、何も私がこういうふうに考えるということを申し上げることはなかろうと思います。私の言うドキュメンタリーと申しますのは、必ずしも記録が羅列されてある映画という意味ではございません。いわば、すなおに、主観を交えず客観的ないわゆる記録映画ですね。十秒幾らとか九秒幾らとかいう記録だけにとらわれたというものを必ずしも意味しませんが、主観の伴わないいわゆるドキュメンタリー映画であるということであろうと私は思い込んでおりました。それで、それがオリンピック憲章で期待しているところの映画ではなかろうかと、いまもって私はそう思っております。そういうものならば、あのオリンピックのあのままの姿をすなおにそのまま再生して、もちろん三時間の間で全部を再生することはできませんけれども、これを全国の児童にも見せてあげたい。また、同時に、これは広く外国の人にも喜ばれるであろうと、こう考えましたから、実は私はあの映画が私の期待するようなものであったならば、もっと積極的に三月十日以後に全国の若い方々に鑑賞していただくことをそれこそ陣頭に立っておすすめしたいと思っていましたが、それは私としてはやる気になりません。もっとつけ加えて言えば、私の気持ちはそういう気持ちでございます。
  316. 千葉千代世

    千葉千代世君 まあ芸術とか科学とかそういうものは、ある程度専門家にまかしていかなければいけないと思うのです。一国の大臣であるからといって軽率にこれはいいとか悪いとか、この部分がクローズアップが多過ぎるとかという部分的な問題をとらえて非常な影響を及ぼすような発言をされますというと、これが全国にどのようないま混乱を起こしているかということは御存じなんでしょう。私、もっと具体的に言えば、一国の大臣でございますだけに、行政の責任者として、水害があって人の命が奪われるとか、あるいは雪が降ってこういうふうに列車も通れないで困るとか、そういうときにはやはり相当強い考えをもって政策を進行していかなければ、これは手おくれになりますから、そういう場合は別ですけれども、そうでなくて、しかも芸術とか科学とかいう場合には、いわゆる特定の場合を除くほか、そういういい悪いということを簡単に表現されて、しかも全国的に約束違反を起こし、外国に対しても非常な恥ずかしい状態が国内で混乱が起きているということは非常に遺憾だと思うわけでございます。これは私が申し上げるまでもなく、政府はこれらの問題に介入すべきではないということの私は考えを持っているわけです。というのは、こういうものを公開いたしまして、それを皆さんが見て、国民が見て、これはこういう点が悪い、もっといいものをこうしてつくろうかと、こういう反省というものは積極的に受け入れてそして創造していくのがよい芸術の進歩ではなかろうか、あるいは映画の進歩ではなかろうか、科学の進歩ではなかろうかと、このように考えておりますが、そういう観点から文部大臣の考えを聞きますというと、あなたは、あなたの個人の考え方として、こうきまったからということを述べられたわけです。そうすると、あなたが格間機関としております文部省の教育映画、審査会の分科会では、この映画を一たん特選ときめたわけですね。この文相発言というのは分科会の意向というものを全然いれていないのですが、あなたは格間機関というものについてどのように考えていらっしゃいますか、これとの関連をお尋ねします。
  317. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 格間機関と申しますか、これは、申請がございますと、試写をやりまして、専門家の人たちの意見を聞きまして処理をすることになっておるわけであります。そこで、今回の場合におきましては、私の記憶があるいは違うかもしれませんが、私の記憶では三月の九日に申請がございましたが、そのときにもいろいろの議論が沸騰したように聞いておりますが。そうして、しかしとにかくこれだけの苦心の作であるから一応特賞というものを申請しようではないかという議が一応まとまったそうでございますが、その直後に、これは私は伝聞したわけでございますけれども、製作者側からも相当これは変更を必要とするという意見が自主的に出てまいりました。そうして、申請をして審査をするということは、その修正前のものであると正確な対象にならない、追って修正した上で再審査をしてほしいということになったそうでございます。それからしばらく時がたちまして、当事者の間にもいろいろの何と申しますか、考えがあったんでございましよう、あらためて審査は求めないというようなお話が私どものところに通ぜられておる、これが現状でございます。
  318. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部省は、その後、この審査会ですか、分科会を開いていらっしゃらないですね。修正を加えたものを出してそうして審査してほしいという要求が毎日のように文部省にいっていやしませんか。
  319. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は、毎日のように申請があるということは新聞で私見ましたから、念のために係にそういう事実の有無を確かめたのでありますが、先ほど申しましたようにどういうお考えか私直接聞いておりませんからわかりませんが、製作者のほうの側も当分申請するということは見合わせるということに相なっておるようでございます。
  320. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは私も実は新聞で見て申し上げるので、申請者に会ったわけではございせんからわかりませんけれども、あれだけの映画をつくって、だれやら何とかという大臣がですね、これはどうも意図に反しておるからだめだと言ったその一言で組織委員会も振り回されてしまう、文部省も振り回されてしまった、こういうやっぱり政治の介入というものに対して非常に悪いという考えを持っているわけなんです。で、これをやり直せとか、直せとか言われることは、製作者にとっては耐えられないと思うのです。しかし、それをしも受け入れる、そうして修正を加えた、それでしかもたいへんりっぱなものができていると思います。私も二回見ましたけれども、そういうふうになっておりますというと、これは申請がかりにもしあなたのおっしゃるとおりないというならば、申請がなければこれはほうっておいて、しかも何かきのう組織委員会の結論が出たように聞いておりますのですけれども、それとの関連はどうなんですか。
  321. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは別にとらわれてぎくしゃく申し上げておるわけではございませんが、この審査会というのでしたか、正確な名前はちょっと失念いたしましたが、この会は、製作者が申請をしてこられまして、何といいますか審査を求めるということで随時その会議を催しておるようでございます。申請者がない場合にはしばらくやらないこともあり、申請が多い場合におきましては一週間に一度やっていることもあるように聞いております。しかし、いずれにいたしましても、申請がないから審査しないとかなんとかぎくしゃく申し上げておるわけではございませんが、従来からのやり方がそうなんであります。  それからこれは組織委員会としてどういう御決定になったか、どういうお考えであるか、これは、参考人として事務局長をお呼びになっておられますから、直接お聞き取りを願いたいと思います。
  322. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣に伺いますけれども、現在、各県の教育委員会、あるいは市の教育委員会、婦人団体、あるいは青年団体等で特選とか推薦にしているのはどのくらいございますか、具体的に県名と市名をあげていただきたいと思います。
  323. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ちょっとその用意をいたしてまいりませんでしたから、すぐお答えができません。けれども、先ほど申し上げましたように、これは率直に申せば、世上で非常にいい映画だといわれておるものであってもずいぶん申請をしてこられないのではないかと思います。場合によれば、文部省推薦というようなことがあれば、かえって商業上は逆な効果のある場合もあろうかもしれませんし、その辺のところは非常に微妙な問題がございますので、何かこう法律解釈みたいに割り切れたような御説明や御答弁はできない、そういう性格の問題ではなかろうかと、私はさように理解いたしております。
  324. 千葉千代世

    千葉千代世君 私も、参議院のほうでオリンピックの準備促進委員をしておった関係で、これについては非常に関心を持っております。で、私重ねて伺いたいのは、どこで推薦しているかもわからない。たとえば、県によっては、総理府の中央青少年協議会と深い関係にある各県の青少年協議会が主になってつくった青少年育成条例の第一号によってこれを推薦している、特選にしている県もあるわけなんです。ですからそういうことを敏感にあなたがキャッチできないで、自分の考えだけでこれはいい悪いとか、自分が見た主観がこうであったからということは、私は文相の責任にある方としては非常にこれは責任をおとりになっていないと思うのです。しかも、一般の映画とかなんとかの関連で私は申し上げているわけではございません。しかしながら、子供たちが見る、それからおとなが見る、年寄りも若い者もみんなが見ていくというこういう中に、あのオリンピック精神の、みんなが参加する、しかも堂々として競技を競って、そしてどんなに負けておっても最後まで決勝点に行くとか、そういうような青少年に与える影響が非常に強い場面とかいろいろいい場面もうんとあるわけです。私はあの映画を見まして、あの場面でああこれはこうなると思うことは多少は考えております。しかし、全体的に見て、オリンピックの持つ意図というものがはずれているとも思わないし、世界じゅうの人が一緒になって命の躍動を続けているということ、見る人もやる人も方々の国も一緒になっているというこの姿が出てきたということについては、私はたいへんいいと思っているわけです。しかし、私もこの場でこれがいいから特選にしてくださいとか推薦にすべきだというそういう不遜な考えを述べる意思は毛頭ありません。なぜならば、あの映画をつくったスタッフの真剣な態度、組織委員会がたくさんの経費を払って、幾らかかったかあとで答えていただきますけれども、そういうふうにでき上がったものに対して国民の一人としての、あの映画の裏にあるもの、そういうものは汲み取っていくような善意のやはり批判というものが出なければならないと思うのです。そういう点についてどのようにお考えですか。
  325. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私は、この問題については当初から非常にありのまま率直に私の気持ちを申し上げておるわけでございますから、別につけ加えてお答えをすることは何もございません。これは、映画というものについての観賞の態度とか、その個々の人たちのそれに対する見識とかいうようなことにもなると思いますけれども、私は見てはいけないかどうかと言っているのではなくて、私はより多く積極的にうんとこれは宣伝もし、お手伝いもして、寝ている子も起こしてでも見せてやりたいと思うぐらいに思い込んでおったのが悪かったかもしれませんが、そういう点で率直にディスアポイントメントでありましたから、そういう措置まではいたしませんということなんであります。したがいまして、各県の教育委員会等から不当にこれによって混乱を起こさしたりしてはいけませんから、その趣旨は十分に各都道府県委員会その他にお伝えをしてあるつもりでございます。現に、御指摘のように、相当の県では、現在においては九県ほどの県の教育委員会では御推薦になっております。これもけっこうな見識のあるやり方である、何らこれに対して私は発言もしておりませんし、また、干渉すべきでもないし、干渉したからといって効果のあるものでもない。私はかように考えております。
  326. 千葉千代世

    千葉千代世君 こまかいようで恐縮ですけれども、その九県の推薦した県はどことどこでございますか。
  327. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 青森県、富山県、石川県、山梨県、岐阜県、大阪市、それから兵庫県は県映倫という名前で推薦をいたしております。それから岡山県、山口県、佐賀県、長崎県、県教育委員会として推薦しておりますのが、九県でございます。
  328. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは、青少年育成条例の第一号として特選または推薦している県はどこでしょうか。青少年に見せて非常にいいものだと、ぜひ皆に見せたいと、こういう趣旨で特選しているところがございますが、それはどこでしょう。
  329. 前田充明

    政府委員前田充明君) ただいま大臣がお答え——実は、これを調へましたのは、通牒等でやる時間がございませんでしたので、電話で話しましたので、ただいま大臣がお考えいたしました程度しかまだわかっておりません。
  330. 千葉千代世

    千葉千代世君 私の調べた範囲では、東京とか山梨とか茨城その他でございますが、そのほかに主として市民映画協会でこれを特選にしているとか、あるいは、大阪のようなPTAの協議会であるとか、婦人団体、青年団体等で特選にしているわけです。ところが、一方、同じ大阪でありましても、文部大臣は混乱はないようなことをおっしゃっておりますが、現に豊中では見せるという約束でみな子供たちも人数をそろえていつ幾日どこの映画館で見ると、こうまでなった。ところが、文相発言でこれがたいへんごたごたしてお手上げの形になっている、こういうところが出てきているわけなんです。  そこで、伺いますのは、文部省は去る一月に体育局長の名前で全国の都道府県教育委員会に対して、小中学生にこの映画を見せてほしいと、こういう趣旨の通達を出していますね。大臣はそれを御存じでしたでしょうか。
  331. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それは、先ほど申し上げたとおりでございます。十二月末に組織委員会から文書でもって御依頼がありましたから、それに対しまして、それを受けて、これはオリンピック憲章に基づくところのいわゆる、ことばは私わかりません、こういう問題について、どういうふうに言ったらいいか、いわゆる私の理解するドキュメンタリーの映画、あなたのおっしゃるのは、何かレコードが十秒幾らとかというようなのがずっと羅列してあるような記録映画とおとりになったかのように私さっき印象を受けましたけれども、要するに、客観的な世上いわゆるドキュメンタリーとして、ドラマティックのものでない、アーティスティックなものでない、そういう客観性の強いものであるということを期待したわけでございまして、そういうものであるということを前提にして、また、組織委員会としてそういうお考えじゃなかったかと私は推測するわけでありますけれども、こういうような組織委員会からの御依頼もあったから、よろしくお願いいたしますよということを体育局長名で出しましたことは、私もよく存じております。先ほど申しましたように、これでも足りないかと思っていたぐらいの私は気持ちなんです。その足りないかもしれないというような積極的な気持ちをここであらわすということは私としてはできませんと、こういうわけでございます。私は、さっき申しましたような閣議決定とかなんとかというのじゃなくて、閣議後のいろいろの記者団と定例の会見のときにその話が出ましたときに、私としては推薦するという気にならないということが非常に大きく伝わりまして、その点は先ほど御指摘がございましたように、大きな反響というか、新聞の話題にもなったということについては私もある意味においては遺憾に思っておりますけれども、したがって、ただいま局長から申しましたように、電話その他で連絡をとって、これは差しとめるとかなんとかという意味じゃないのだ、あの大臣の発言は、ということも念を入れて連絡をいたしておるようなわけでございます。
  332. 千葉千代世

    千葉千代世君 その一月に体育局長名で全国に出しますときに、あなたはいまのような心境の変化を見てからこう変わったとおっしゃるのですけれども、こういう映画ができるそうだと、じゃあ、見てから云々ということは一言もないわけですね。ぜひ見るようにということを言っているわけなんです。そうすると、子供たちは非常に楽しみにして、それでテレビで見たけれども、一体今度できた映画はどうなんだろうかとか、見に行かれなかったけれども、どうなんだろうかというようなことで、ものすごく張り切って待っているわけなんです。すでに見たところの子供たちは、これは、私大阪に行きましたから、大阪の子供たちから、見た子からも聞きましたし、それから新聞も見ました。新聞報道は云々と言うけれど、新聞は何も、何もないところを書くわけじゃないし、正直にこれは報道しているわけなんです。子供たちの意見もちゃんと言うし、私も豊中でずっと、それからその他の市で調べてまいったわけです。中学生の意見や何かを全部聞いてきたわけです。そのことは省略いたしますけれども、あの映画は見てつまらなかったと言う子は一人もいなかった。これはとてもよかったと言って、どんなことがよかったかと言うと、読むとたいへん長くなりますから、子供の書いたものですから長過ぎて読めませんけれども、世界じゅうの人がとにかく一緒になって、黒人も白人もどんなに小さい国もみんなが参加して一緒になった、おれらもこの中の一人なんだな、自分も参加したなあという気持ちが出て圧倒的によかったと言う。子供たちですから、あの場面、もっとこういう場面がほしいという子がずいぶんありました。けれども、総体的に見て、あの映画というものがとてもよかったということで感謝しているのです。ところが、文部大臣のほうでは、どうも見せる子供に対してふさわしくない、しり込みをしているようなことを言う。あまり子供たちの約束を破るということは、あなた方がおっしゃるいわゆる期待される人間像とか、いろいろ教育の道徳問題もありますけれども、私はやはり政治をするものは責任を持ってその約束にこたえていくということ、このためにどういう努力をなさっているかということを伺いたい。
  333. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この映画のことにつきましては、もういままでお答えいたしましたこと以外に、私は申し上げることはございません。しかし、たってのお尋ねでございますから申し上げますけれども、私はとめたり何かしたことは全然ない。私の気持ちからいえば、よりよきものを私としては期待しておった。ですから、現状で非常に喜んでくだすっておることはそれは非常にけっこうなことである、私はこう申し上げて、ほんとうにこれは私は誠意を尽くした答弁をしておるつもりなんであります。
  334. 藤田進

    ○藤田進君 関連。与謝野さんもお見えいただいておるようでありますから、ちょっと関連してお伺いするのでありますが、映画のことが非常に反響を呼んでいるわけであります。私も先般機会があって見せていただきましたが、こうして、大臣の有力な方々が、けしからぬとか、佐藤さんは、あれはいい、中には芸術を知らない者もいるなあなんという、また、こうして、いいだの悪いだのと言うことがかなり国民の関心を高めて、あの映画を皆さんが見る率というものがかなり上がるんじゃないかという私は感想を持っているのですが、ただ、見た人の帰りぎわにそれとなく聞くと、かなりインテリゲンチャの言うのは、あの映画をもしやり直すということになると、いまどうもあれはけしからぬといっている人の顔が相当出てくるんじゃないだろうか、今度は。与謝野さんその他大写しで安川さんですか、出てくるのだが、熱心にオリンピックを推進した者の顔が出てこない。それを期待して見たところが、案外出てこないので、これはけしからぬということじゃないだろうかという、うがった——そういうことはないでしょうけれども、そこで私が心配するのは、いま映画の鑑賞眼といいますか、違いますよ。無声映画でだれかが活弁でやったってあまり興味がないでしょう。だんだんとテンポは早くなってきているし、相撲もあれですね、スポーツ・ニュース見たって、仕切りを何べんもしてそれからといったようなことでは、もう飽きてしまうのですね。ですから、NHKはちゃんと考えて、もういよいよ待ったなしから始めてざっとやる。あれでいいのですね。このように、おそらく今度はいろいろな人の顔がたくさんくどくどと出てきて、そうして、ただ記録的なものだけというか、羅列では、まああいつはないとおっしゃるが、かなりそれにウエートを置きますと、案外この間出てきたほうがいいのであって、聞けば、相当な経費をかけてまたおつくりになるというようなことの批判が出てくるんじゃないだろうかと、私は心配をいたします。ただ、にもかかわらず、圧力かどうかは別として、おつくりになるとすれば、外国向き等については、十分考慮を払っていただきたいことを私は申し上げておきたいのであります。たとえば、冒頭出てくる日本のラッシュ・アワー——人の流れですね、あれをクローズ・アップしてあんなに誇張しなければならぬだろうか。日本人は世界各地に行っていますが、日本の人口密度の高いことは世界の人知っているが、それをまざまざと、もう足の踏みどころもないような場面が冒頭出てきます。私は、あれだけがまだ頭に残っているような気がします。あれはどうも恥ずかしい次第で、ああいう部分的なものがあるといたしましても、全体としては、あまりあとから膨大な経費をかけられて、この批判が出てくるということは、将来スポーツに対する、必ずしも私はいい印象、傾向を残さないというふうに思います。どういう意図を持ち、どういう方向であるか、これらについてひとつ与謝野さんの御答弁をいただきたいのであります。
  335. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) お答え申し上げます。オリンピック記録映画につきましては、各方面からいろいろな批判をいただきまして、私ども、非常に不手ぎわの点、深く反省しているところでございます。これにつきましては、いろいろ批評もございますですが、正式には、組織委員会といたしまして、これが東京オリンピック大会の記録として残るべきものとしては不適当なのではないか、ここで再検討して、従来ありますいろいろな材料を集めて、もう一つ、いわば定本といったようなものをつくる必要があるんではないかという意見が圧倒的でありますために、こういう映画を一本作成するという方向で検討を進めるということにいたしております。従来の、今日までの公開されておりますものが、試写以後、修正が間に合わなくて、十七日になってやっと今日配給されているものができ上がったわけでございます。今後、海外に対するものは、時間の関係その他からさらに修正を要するというようなことがございますので、慎重に組織委員の皆さんの知恵を集めてりっぱなものをつくりたいと、こう考えておる次第でございます。
  336. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど私、いまオリンピックについてどう考えるかといったような質問をしたのですけれども、実は、オリンピック準備促進委員会ができた当時、体育協会の改組があったんです。そのときに、プリンス・ホテルでですね、体育協会の方々と、それからオリンピック準備促進委員会の人たちが集まって、そこで元気をつけるパーティが開かれた。そのときに、当時の文部大臣であった荒木萬壽夫さんがこういうことを言った、みんなを集めておいて。何でもあるだけの、見たのを全部日本でとってこいと、こういうあいさつをしたのです。そのときに私、これはたいへんなことになるんだなと、オリンピックというのはやはり参加することが目的なんで、それで、日本でやってですよ、しかも、あるだけの見たのを全部とってこいと。私らも耳で聞いているのですから、あすこで言われたときに。これは、この映画についても相当警戒しなくちゃならぬのだなあということを考えたわけです。そういう観点から考えていったときに、このできた映画を見て、何かこう救われたように思った。これは、私だけがそういうふうな主観であって、人に押しつけるということは、自分の主観を人に押しつけるということは、私きらいですからそういたしませんけれども、公平な子供たちが見て、さっきの中で落としましたけれども、小学校三年生の水木由美子さんという、この子が書いている中にこういうことを言っている。とても、小学校三年生ですから、その三年生の頭でとらえたものはどうだかということで。その中には、もう私たちは漫画を見るのがいやになりました、この映画はとてもよかった、私たちもこれはスポーツについて一生懸命やりたいな、こういうようなことがあったわけです。そのようにしていきますというと、やはりこれはみんなの批判の中でよいものをつくり上げていくという姿勢で進んでいかなければならないのじゃないか。そういう観点から組織委員会の事務総長さんにお尋ねいたしますけれども、昨日組織委員会で、別の記録映画をつくる、これは新聞の表現ですから、私もこれもわかりませんですけれども、正統派ということばをつかってあります。ある新聞で。正統派の映画がこれからできるということになるわけです。それについてもいろんな問題があるということを述べられているわけなんですけれども、現実に言うと、三月八日に河野大臣がごらんになって、もう一本つくるんだということがきのうの二十四日で確認されたような形になっておりますね。その点はいかがですか。
  337. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) お答えいたします。河野大臣が試写をごらんになったのは三月八日でございまして、まだ三月十日の手直しも入っていないときでございましたが、これでは少し困るのではないかという御意見だということを伺ったわけでございまして、まだとってあるフィルムもあることだし、記録映画としてつくり直すという方向で考えるということをわれわれは考えたのでありますが、これも昨日の組織委員会で初めて皆さんに確認されたわけで、その方向で一体どういうフィルムが利用できるのかというようなことから、至急案を立てるということで来ているわけでございます。
  338. 千葉千代世

    千葉千代世君 東宝と契約した、いま公開されているという映画の製作費は幾らですか。それから、今度つくろうとする予算は幾らでしょうか。
  339. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) お答えいたします。いままでの記録映画の費用といたしましては、当初の予算が二億五千万円というものでございましたが、これは回収するということが目算になっておりましたために、われわれとしてはこれが回収できるかどうかということに非常に重点を置いた面もあったわけでございますが、結局、会場の照明費その他として、いわゆる映画代と、間接にその映画をとる費用になっている照明をふやすというようなものがありましたために、結局、かかった費用は三億七千万円ぐらいかかったわけでございます。これにつきましては、組織委員会としては、回収して余裕が出る予算になっております。この次にさらに一本従来のフィルムから新しいものを編集するという場合の費用として、明年度予算として約四千万円を一応計上してございます。これは新しい予算と申しますより、昨年度の剰余金から出る予算内で編成しているわけでございます。
  340. 千葉千代世

    千葉千代世君 編集し直すにしましても、市川監督がメガホンを握ってその指揮下でとったものが大部分あるわけですね。それとほかのもございますでしょうけれども。そうすると、それらも入れていくわけでしょう。その関連もございますし、そういう点についても困難が起きるのじゃないかという心配があるのです。これは私の意見だけにしておきますが。それから、組織委員会では東宝との約束がございますですね、契約いたしますときに。今後五年間は類似の映画は公開しないという約束はどうなるんでございますか。
  341. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) お答えいたします。配給に関しましては今後五年間東宝に一切おまかせして、類似の映画は配給しないということになっておりますが、今後つくります映画は、いわゆるルートに乗るものであれば、東宝側としてもこれをまた引き受けるという用意はあろうかと思うのであります。また、先ほど御質問の、市川監督の作成したフィルムというものは、オリンピック映画製作協会というものが著作権を持っているのでありますが、こういう問題は必ずしも著作権がどうというようなことより、まず市川監督その他関係者の懇談が最も大切なことだと思っておりますが、まだそこまで問題は行っておらないというのが、今日の状態でございます。
  342. 千葉千代世

    千葉千代世君 それはたいへん商業道徳からいったって許しがたいと思うのですね。五年間、東宝と約束して、もうほかの映画は上映しないということを約束してつくらしているわけでしょう。それを、今度新しいのができてルートに乗ったら云々とか、まだそれは東宝でも話し合いに応ずるだろうと思います、と一方的でしょう。そういう話し合いも全然していないのに、一方的に、これは正統派で今度こういうものをつくるのだとか、その結果を待って、どちらをきめるかわからないとか、きのうの話し合いの中では、国会議員——だれが言ったか知りませんけどね、国会議員はこぞって否定したなんて、顔見たいと思うんですけれどね、そういうような問題について、やっぱりみんなの意見をすなおにいれていくという姿勢の中で解決していかなければならないと思うのです。もうちょっと、やはり懸命になってつくったものについて、この点とこの点がこうだということでちゃんとやっていないで、ただ見て、あれは気に入らないの、何がどうなんて言われて……。ですから、さっき藤田先生がおっしゃったように、君が代の回数が少なかったからどうとか、体操の選挙の名前が出なかったからどうとか、少なくとも巷間さまざまな疑惑を招くようなものをつくっていくということとはやはり非常に不見識であるし、外国に対しても、私非常に恥ずかしいと思う。特に外国から、四十八カ国から申し込みがあるということは、まことにそのとおりでしょうかということが一つと、ギリシャでは四月十八日、マレーシアでは四月八日に国王を招いて盛大な試写会をやるから、それに間に合わせてほしいというように外務省に来ているやに聞いているのですが、外務省の方、いらっしゃるでしょうか。組織委員会の方でもけっこうですが、それらに対する、やはり外国に対する責任といいますか、約束といいますか、そういうものはどうなさるおつもりなんですか。国内のそのままを、いや、ちょっと待ってくれ、今後これからつくり直すのだ、正統派の記録をやるのだ、できて見てからどちらかを推薦しますというような、そういうあやふやなことで私はごまかしてはならないと思うのです。国際的な規模でなされて、国際的に参加されたものに対して、やはり多少の非難があっても、その責任はき然としてとっていくという姿勢が結局道徳教育の基本じゃないかと、このように考えておりますが、いかがでしょう。
  343. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) お答えいたします。先ほどことばが足りなかったから誤解を招いたようでございますが、ルートに乗るということは、要するに、東宝がこれをルートに乗せて一般に公開できるというような場合、こういうことでありまして、商業道徳に反するというようなことは考えておるわけではございません。また外国の場合も、これはともかく過去のベルリンの大会、ローマの大会等が、二年なり一年半を要したのに、こういう短かい期間でできた。多少遅延することはあっても、できるだけ外国に出すものは早く編集して出していきたい、こう考えております。
  344. 千葉千代世

    千葉千代世君 その場合に、契約いたしました東宝と十分話し合って納得の上でなさるわけですね。
  345. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) まだ、一般に配給するような映画ができ上がるかどうかということも今後検討して、できるだけりっぱなものをつくりたいという皆さんの一致した意向なんでありますが、東宝とは当然その場合話しておりますし、すでに東宝とは十分連絡はとっておるわけでございます。
  346. 千葉千代世

    千葉千代世君 今度つくり直すと予定される映画のできます期日は、およそいつごろなんですか。
  347. 与謝野秀

    参考人(与謝野秀君) まだ、そういう方向で進もうということがきまりましたのは昨日でございまして、今日どれだけのフィルムがストックされているかということも検討しなくてはならぬ。期日の点で、これだけの間に仕上げるというようなことは、ちょっと私から申し上げかねる、御了承願いたいと思います。
  348. 千葉千代世

    千葉千代世君 少なくとも別の映画をつくるというからには、それ相当の計画と成算があっての議題だと思うのです。全然見通しもないし何もしないでそういうことをきめられるということも、私は非常に不審にたえないわけですが、そうすると、それがいつできるかわからない。その前に、この映画については、子供が見るのは適当でないというような発言を文部大臣なさっていらっしゃるのですけれども、その点についてやはり善処して、みんなでいつできるかわからないものを待つまでもなく、見させるというような方向にもっと努力できませんか、文部大臣。
  349. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し上げたとおり、全国的に非常にたくさんの人が見ておられます。それを別に阻止するというようなことは毛頭考えておりません。
  350. 千葉千代世

    千葉千代世君 スポーツに関連してお尋ねいたしますけれども、この前のオリンピックに出た選手の、たとえば水泳に例をとりますと、不振の原因という中の、たくさんあるけれども、その一つは、一中学生の対抗試合、あるいは対県試合ですか、対外試合を文部省が許さないからだということを言われたわけです。私はやはりいい選手をつくるには、相当底辺が多くなければいい選手はできないということを思っているわけです。というのは、この間の水泳でごらんになったように、若い選手がたいへん多い。かつてのロスアンジェルスの大会でも活躍した日本北村さん、宮崎さん、牧野さん、これらはやはり旧制中学の三、四年生で、十五、六歳であった。今度の大会で優勝したアメリカとかソ同盟とか、それから金メダルを四つ取りましたショランダーさん、これは米国ですが、十八歳の若さです。そうすると、日本ではそれに対して選手の層が薄いということをいわれているわけなんです。この薄いということは一体どういう原因があるかということをいろいろ探ってみたわけですけれども、時間の関係で省略いたしますけれども、私は、やはり現在の学校教育のあり方にも大きな問題があるんではなかろうか。具体的には、いまの中学生ですと、高校の入試の問題で頭が一ぱいで、補修授業とか、あるいはまた、いろいろ個人の家庭教師につくとか、たくさんな問題をかかえて、ほとんどスポーツを安心して楽しんではいけないわけです。アメリカでは、私が行って見ましたときには、これは高校は自由に入れる。学区制になっておって、自然と行かれるのです。選抜試験というのはないわけです。大学に行くと非常にきびしいのですけれども。そういったときに安心してスポーツを楽しんでいられる。そのように考えていきますというと、教育のあり方と不可分のものではないということと、その点で文部大臣が、中学校の対校試合については反対だという意見をこの間お漏らしになったのですけれども、その意見に変わりはありませんか。
  351. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いまのお説は、先ほどのお話と関連して私はお答えしたいのですけれども、私は、それは金メダルが多いにこしたことはないと思いますけれども、それこそクーベルタンのことばにありますように、まず参加することに意義があるということがよく世上にも伝えられているくらいでありますから、たとえば水泳が成績が悪かった、これは小中学校の対校試合を禁止しているからだと、すぐそういうふうに考え方を持っていく考え方というものは、私は短見であると思います。その点においては、お考えと同じかと私は思うのです。それですから、ただいま、いままででも、全国の相当数の学校にはプールをできるだけ早くつくってあげたいというようなことで、予算の上では大いに努力している、これは単なる一例でございますが、最近におきましては、われわれの子供の時代と違って、泳げる子供が非常に少なくなっている。この点はよく教育界からも指摘されているところでございまして、特定の人だけが速くなってレコードを競っている。層が非常に薄くなっている。泳ぎを知らない子供が都会にも農村にもふえております。こういう点は非常に残念であります。御指摘のように、これは学校教育のあり方にも関連していると思いますから、そういう点は十分考えていかなければならないと思います。
  352. 千葉千代世

    千葉千代世君 その点は同感ですが、いまおっしゃったプールの増設でございますが、やはり国の助成費といいますか、補助金が非常に少ないのですね。ほとんど、地方費がそれをまかなうというと地方財政が非常に逼迫して困る、それから、体育館の建設にしましても、雨天操場にしても、去年から法律を改正して補助をするようになったけれども、これとても資材の値上がりとか人件費が上がったので実際五分の四くらい地方が持つという、こういう隘路があるということと、それから、子供たちは川へ泳ぎに行きたくても、もう農薬でもって泳げる川というのはほとんどないそうです。そういうふうなことがある。そういう問題と、それからもう一つは、学校だけではなくて、地方地方の体育施設の充実という問題、つまり、国民がみな安心してスポーツを楽しんでいけるというような姿勢と、そういうふうな底辺を広くしていって、その中から選手なら選手の養成云々はその後の問題ではなかろうかと、このように考えておりますが、時間の関係あとは省略いたします。  次に伺いたいのは、心身障害児の教育の振興についてでございます。日本の教育の谷間といわれております僻地教育と特殊教育、これらについて、ことしは文部省のほうで特殊教育について教員定数その他について若干の増額が見られたことはたいへんけっこうなことですが、これだけではとても解決していかないわけなんです。というのは、心身障害児の方が約百万いて、その中で就学していない者が九十万いるというわけです。それを年に二万人ずつ増員して就学させるようにしても四十五年かかるというわけなんですね。そうすると、いま一歳でいらっしゃるお子さんたちが四十五年たたなければ全部が就学していけるというわけにはいかない。もちろん、すぐ就学できるお子さんもあるし、そうでないいろいろな身体の障害の度合いによって違うと思いますけれども、その個々の特性を生かして、持っている能力をもう最大に発揮させると、こういう観点からの障害児童の対策について伺いたいわけですが、一つ一つやっておりますと、もう時間がございませんので、私ここで要目を少し並べてきましたので、その点お答えしていただきたいと思います。  昭和三十九年度の学校基本調査によりますと、義務教育段階にある児童、生徒が約千六百五十万といわれているわけですが、そのうち心身に障害を持つ児童生徒は約百万といわれておる。めくらの方、あるいは弱視児、この出現率を考えていきましても四七%の就学率になっておる。それから口の不自由な方、あるいは耳の不自由な方、これが出現率が〇・一%として勘定していきますというと、就学率は大体一万四千五百名で、六七・六%になっておる。それから、精神簿弱児の方々に対しては、これはまた出現率が四・二%でございまして、六十九万七千九百五十名で、就学している者は六万五千六百九名で九・四%、これ非常に少ない。それから肢体不自由児の方は、これはまた就学している者が一六%強となっておる。こういうふうに考えてきますというと、まだまだこの特殊児童に対する国の政策というものは不十分だということがいわれるわけです。で、そこで、肢体不自由の方、精神薄弱の方、病弱、虚弱者の義務制化についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  353. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまおあげになりました数字のように、この面では相当対策がおくれておって、たいへん私どもとしても心痛いたしているわけでありますが、いろいろございますけれども、まず一つは肢体不自由児、それから精神薄弱児と病弱、虚弱児のための看護学校の問題でございますが、これについては三十五年度から計画的に推進してまいりましたが、できるだけ近い将来において都道府県が県立の養護学校を必置するように措置したいと、まあ、文部省としては、かような考え方で進めておるわけでございます。で、すなわち肢体不自由養護学校につきましては、四十一年度までに精神薄弱養護学校と、それから、病弱虚弱養護学校については四十三年度以降できるだけ早期に全県に設置いたしたい、かように考えておるわけでございます。それから、精神薄弱特殊学級でございますが、これについては、いま直ちに各市町村すべてに義務制のものを置くということはなかなか困難であると思いますけれども、最低限の特殊学級の設置ができますように助成することが急務でありますので、設置基準を設けまして、これは御承知のように、毎年度千学級の増設をはかっておるようなわけでございます。こういったようなわけで、ただいまお話がございましたように、なかなか措置がおくれがちでございますけれども、努力を新たにしてまいりたいと考えておるわけであります。
  354. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまの設置基準の問題でございますけれども、その設置基準を政令化してありますね。政令で担当実施時期がおくれているわけです。ですから具体的には学校教育法の制定以来十八年を過ぎておりますけれども、抜本的な対策がなかなかなされませんために、いま大臣のおっしゃったような問題と、もう少し問題と、もう少し問題の深い点がございますわけですけれども、時間の都合で省略いたしますが、その点についていま四十五年を待てというようなことがございますのですけれども、その点所信はやはり各県必置ということをおっしゃったのですけれども、具体的に数字はそれだけですか。その四十五年終わったあとの展望はどうなっているのですか。それがはっきりしませんと、九十万の就学していないお子さんたちの親御さんが安心できるのには四十五年かかるというわけですから、それで心配なんです。
  355. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま大臣からお答え申し上げましたように、養護学校につきましては現在まだ都道府県立の養護学校が少のうございまして、各府県ともいま普及に努力している最中でございます。そういった意味で養護学校の中でも肢体不自由児養護学校のほうがわりあいに各府県に普及してまいりました。したがいまして、御指摘のように政令の問題でございますが、私どもの目標としては四十一年度ぐらいには各府県に設置基準が課せられるのではないかというように期待をいたしておるわけでございます。それ以外の小学あるいは病弱、虚弱養護学校につきましては、これは四十一年度というわけにはまいりませんので、四十三年以降なるべく早い機会に各府県に設置義務が課せられるように国も助成をしながら普及をしていきたい、こういうつもりでございます。ただそれだけでは非常に不十分でございますので、これは政令の問題ではございませんが、私どもの一つの指導、勧奨といたしまして、養護学級について一つの設置基準を各府県に示しておるわけでございますが、それによりますと、大体人口一万未満あるいは一万から三万あるいは三万から五万、五万から十万あるいは十万以上というような段階を区切りまして、少なくとも人口一万未満の市町村におきまして小学校、中学校に少なくとも一つずつの特殊学校を置いていきたい、一万から三万までには小、中学校おのおの二学級ずつは置いていきたい、それから三万から五万までの市町村につきましておのおの三学級ずつ置いていきたい、あるいはまた、五万から十万までの市町村につきましては四学級ずつ置いていきたいという計画でございますが、これは第一次の計画でございまして、それが終わりますと、さらにまたそれ以上の計画を立てなければなりませんが、私どもといたしましては、とりあえずそういう目標を置きまして、できる限りこの教育を進めてまいりたい。ただこれにつきましては、市町村あるいは都道府県の教育委員会の努力もさることでございますが、父兄一般の方の御理解を願いませんと、これがなかなか実現できませんので、そういう面もあわせて今後できるだけPRを続けて努力をしてまいりたい、こういう計画でございます。
  356. 千葉千代世

    千葉千代世君 心身障害児あるいはその問題の福祉対策についてですけれども昭和四十年度の予算案の中で見てまいりますというと、いわゆる特殊教育関係の予算は三十九年度に比して二四%の伸び率なんですけれども、教育全体の伸び率から考えると幾らかいいようには思いますけれども、その総額はわずかに二億円なわけなんです。ですからそれらの中で新規予算というものを見てまいりますというと、これは就学奨励費の中の幼稚部の学校給食とか、中学校の技術家庭科設備費とかというものにすぎないわけですから、やっぱり抜本的に福祉施設とか、あるいは教育に対する配慮をもう少ししていただきたいと思うのでございます。  それから心身障害児の早期発見とか早期治療、早期訓練、早期教育の問題、これは関連しておりますものですから——私の資料によりますと、イギリスでは三歳児で幼児の検査を行なう。二歳でもって全部検査を行なって、そして分類して、それぞれ相当に合った治療と将来の教育計画に合わせて国の施設でやっているわけなんですが、大体これは先進国の様子を見ますというと、どの子でもその国の中にとっては大事な命であるからと一般の子供と同じように国が教育を見ていく。その上にさらに、そういう特殊な方々に対しては特別の配慮をしていくという、こういう中で治療と訓練と教育がなされているわけなんですが、そういう意味におきまして、今後のやはり日本の教育の中では技能訓練と相当な関係があると思うんです。特にその中で、身体障害児の中で非常に気の毒なというのは、この間のサリドマイドの方々に対して、厚生省が全額国費でこれを治療するということは、これ新聞で見たわけですけれども、それはどのくらいの予算をとってどのような計画でなさっておりますか。厚生大臣にお尋ねいたします。
  357. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  御承知のように、わが国のサリドマイド禍はごく最近でございまして、まだ学校に就学するにはだいぶ時間があるようでございますので、私どもといたしましては、ほぼ来年ごろからそういう予算をとりまして、そうして入学に備えたい、かように考えておるわけでございます。
  358. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうするとまだとりあえずそれに手をつけたというにすぎないわけですね。そうでございますか。
  359. 神田博

    国務大臣(神田博君) どうも失礼しました。御承知のように、先ほど申し上げましたように、まだいたいけない年齢でございまして、これからひとつやりたい、来年度からやりたい、こういうことでございますので、ことしはやっておりません。施設に収容いたしておりまして、来年度からそういうところを目途としてやってまいりたい、かように考えております。だいぶドイツ等よりおくれて生まれておりまするので、そのころがちょうどよろしいのじゃないか、こう考えております。
  360. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまサリドマイドの方々は非常に気の毒で、当然、国の責任でこれはしなければなりませんが、同時に、進行性の筋萎縮症児というのがございますね、これはかなり多いわけですね。それで、生まれたときはたいへん元気であって、だんだん手足がきかなくなってきて、しかも、これは原因不明だという。そういう方が非常に多いので、その方に対して厚生省はどのような考えを持って、いま全国でどのような施設があるのでしょうか。私の知った方ですというと、これは東大にも行き、方々にも行って、どうしても手がない。千葉県に一つ試みに置かれているという、印旛郡だと思いますが、その施設があるわけです。そういうわけで非常に手薄だと、いま発足したばかりで、手のつける措置がないと言うのですか。その点についても。
  361. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまお述べになりましたような事情でございまして、まだこれを治療するお医者さんがない、こう申しましょうか。非常に困っている段階でございます。そこで国立にお預かりしているとかあるいは施設にお預かりしておりますが、実は学問的にもまた実際的にも手がつかないで困っている状態でございます。父兄の方が会をつくっておりまして厚生省とも十分連絡がとれております。十分にひとつ意を尽くしてまいりたいと思っておりますから、そういう段階でございます。
  362. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま全国にそういう方々がどのくらいおりましょうか。というのは、サリドマイドにかかったあの方々は大体薬の禁止とか何とかで限度がありますね、発生の限度が。ところが、進行性筋萎縮症、この子供たちはまだどんどん出てくる可能性がある。しかも原因不明だというわけでございますが、ふえる率ですね、それから人数。
  363. 神田博

    国務大臣(神田博君) 非常に年齢によって発生の度合いが違いまして、つかみにくい数字でございます。幼児の場合に出たり、あるいは小学校に行って出たり、あるいは中学校で出るというようなこともございまして、非常につかみにくいのでございますが、現在わかっているのは二千数百名、こういうことでございます。  それからなお、ついでに申し上げて恐縮でございますが、サリドマイドのほうは二百名前後、こんなふうに見ております。
  364. 千葉千代世

    千葉千代世君 厚生省関係の予算の中で、重症心身障害児対策、四百七十床——病床、ベッドです。それに二百五十床の増床計画、ベッドをふやす計画があると聞いているのですが、三十九年度のこの充足率をちょっと答えていただきたいのです。
  365. 神田博

    国務大臣(神田博君) 政府委員からお答えさせたいと思います。
  366. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 約二百四十名程度の子供が収容されております。
  367. 千葉千代世

    千葉千代世君 それは全体の数ではございませんですね。収容数ですか。
  368. 竹下精紀

    政府委員(竹下精紀君) 収容数でございます。そのほかに、ベッドとしましては約百ベッドございますが、これは職員が充足されておりませんので空床になっております。
  369. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこが問題なわけなんです。まだたくさんのお子さんがいらっしゃいますから、これはやはりサリドマイドの方と同じように、やはりこれについて早急なこれは政策を打ち立てていただきたいと思います。  そこで最後に伺いますが、これはその問題と離れますけれども、厚生省にいらっしゃる方で、千葉県の県の部長に厚生省で推薦なさった方がありますね、選挙違反でこれは千葉の千葉日報ですか、これにたいへん大きく記事が出ているんです。県では上を下への大騒ぎをやったそうですが、私存じませんでしたけれども、以上で終わりたいと思いますが、とにかくもう一ぺん一言言っていただきましょうか、推薦なさったわけですね、厚生省で。
  370. 神田博

    国務大臣(神田博君) 御承知のように、衛生部長になり得る資格を持っている方々はそうたくさんあるわけじゃございません。たまたま数県の衛生部長の欠員その他で異動がございまして、千葉県から衛生部長の適任者を推薦してもらいたいというようなことでお話があって、下話のあったことをきのう私ちょっと承知いたしました。新聞を見たあとで承知いたしたのでございますが、今日の段階ではそういう推薦した方を取り消しまして別な方を御相談している、こういう段階でございます。
  371. 千葉千代世

    千葉千代世君 最後に、推薦なさったことは事実ですね、しかも千葉県からは新進気鋭というお話があった。ところが、御推薦いただいたのは選挙違反で罰金十万円ですか、公民権停止で五年間であったわけですね、それを新進気鋭と思ったかどうか、それだけでけっこうです。
  372. 神田博

    国務大臣(神田博君) 本省の環境衛生課長でそういうような選挙違反に問われたそうでございます。そこで本省といたしましては、課長を免じまして、いわゆる降職さして、そうして仕事をやってもらっておった、だいぶ年限もたちましたし、なかなかりっぱな方であってまあ災難を受けたんだというような考えのもとで、その後改悛の情が顕著だということで、事務的にこういう方はいかがであろうかという御相談したことは事実でございます。しかし、私、先ほども申し上げましたように、この話はもうないことにいたそうということになっておりまして、現在は別な方を選考いたしておる、こういう状況でございます。
  373. 千葉千代世

    千葉千代世君 時間がなくなり残念で、やめますけれども、私が聞いたのは、あなたはそういう方を新進気鋭な方と思っていらっしゃるかどうかということ、それだけでけっこうです。
  374. 神田博

    国務大臣(神田博君) 人物的には新進気鋭と承っておりますが、私も人から聞いたわけでございまして、詳しいことは存じておりません。
  375. 千葉千代世

    千葉千代世君 終わります。
  376. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 千葉君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、一般質疑通告者の発言は、全部終了いたしました。  総予算三案の一般質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  377. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 委員の変更がございました。戸叶武君が辞任され、稲葉減一君が選任されました。     —————————————
  378. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) この際、分科担当委員の選任について御報告いたします。去る二十二日の委員会において委員長に御一任いただいたのでありますが、お手元にお配りしてございまする分科担当委員氏名表のとおり決定いたしましたので、御了承願いたいと存じます。  次回の委員会の開会日時は、参議院公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会