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1965-03-23 第48回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十三日(月曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     藤田  進君      鬼木 勝利君     北條 雋八君      市川 房枝君     林   塩君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 草葉 隆圓君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 北村  暢君                 小林  武君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 北條 雋八君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        厚 生 大 臣  神田  博君        労 働 大 臣  石田 博英君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        総理府総務長官  臼井 莊一君        警察庁警備局長  秦野  章君        行政管理庁行政        監察局長     山口 一夫君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁教育局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁参事官   麻生  茂君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省国有財産        局長       江守堅太郎君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君    事務局側        事 務 総 長  河野 義克君        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、鶴園哲夫君、鬼木勝利君が辞任され、藤田進君、北条雋八君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 理事補欠互選を行ないます。  現在、当委員会においては理事が三名欠員になっておりますが、本日は都合によりまして理事一名の互選を行ないたいと存じます。その互選は、先例によりまして委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。それでは藤田進君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、前回に引き継ぎ質疑を行ないます。佐藤尚武君。
  6. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 本日は、外交官並びに一般語学教育の問題につきまして、外務大臣並びに文部大臣にいろいろお尋ねいたしたいと存ずるのでございます。  私の本日申しますることは、面接本年度予算関係するとか何とかいう問題ではございません。もっとも、語学教育を盛んにしてまいりますれば、行く行くは予算面にもあらわれてくることだろうと思いまするけれども、しかし本日はそういう問題と離れまして、一般的に関係大臣の方々の御意見を承りたいと思うのでございます。  椎名外務大臣もすでに御就任以来、たびたび外国へおいでになりまして、そして国際会議にお出になったという経験をお持ちになっているわけでありまして、実際上の模様はよく見て来られたことと信ずるのでありますが、日本のたとえば国際会議のおもなるもの、すなわち国連の総会に出る日本代表者は、最近慣例として日本語日本考え方ないしは主張を発表されるというようになってきております。私は、これは一向差しつかえないことで、最近では同時通訳という仕組みが発達をしてまいりましたし、それに外務省関係におきましても、りっぱな英語通訳官をお持ちになっている模様でありますからして、同時通訳でりっぱに日本主張が世界的に表明されるということになっている模様でございます。それはそれとしていいのでありまするけれども、委員会等に出まするというと、なかなかそうはまいるまいと思うのでありまして、久しく国連会議などから離れております私などは現状はよく承知しておりませんけれども、私が関係しました時代には委員会における同時通訳などということはまだできていなかったときでございます。そういう場合には日本語で話をするといたしましても、それが日本側の手でもって英語なりフランス語なりに通訳される、それをまた同時通訳公用語通訳されるというふうな調子で二重の手間がかかるわけで、なかなかてきぱきまいりませんのと、それからまた、討論に参加をするということになりますると、やはり外国代表のしゃべっていることがわからなければならない、また公用語一つでもって日本代表がどうしても発言していかなければならぬというような場合がくるわけであります。でありまするからして日本代表者日本語にのみたよるということでなくて、外国語でもって直接各国代表に話しかけるという心がまえがなければいかないと思うのであります。したがいまして、私は国際会議に直接関与をしなければならない日本外交官といたしましては、現在もすでに優秀な、語学の達者な外交官もおられる模様ではありまするけれども、単に英語が達者であるとかというようなことでなしに、少なくとも英仏独のうち二カ国語は十分に話のできるような外交官を養成されるということに注意をしていただかなければならぬように思うのであります。実際、私は国際会議というものに対しての訓練が日本外交官に行き届いておるかどうかということについて不安を持つのでありますが、一、二優秀な、代表的な外交官をお持ちにはなっておりまするけれども、こういうふうに国際会議がひんぱんに行なわれるようになりまするというと、なかなか一人や二人の達者な人にばかりたよっているというわけにはまいりませんので、やはり多くの適任者をつくらなければならぬと思うのであります。その点におきまして国際会議に出て十分に日本主張主張し、そしてまた、相手方の反駁に対してこちらからもそれに反駁を加えていく、日本主張を貫徹すべく努力をしなければならぬし、また相手主張もよく聞き分けて、そしてその間に協調の道を見つけ出すというようなことが、私は国際会議のあり方だろうと思うのでありまして、そのためには、日本語でやっておるというようなことでは、とてもピッチが合わない、早さが合わないといううらみがあります。たいへんに会議の面では日本が損をするというふうに思われますので、十分に外国語をあやつって、そうしていまの会議外交のよさを発揮するように、そうして日本の利益を擁護していき、同時に協調の面でも貢献をしていくというようなふうになってほしいものだと思うのでございます。でありますからして、私は日本外交官教育といたしまして、日本語意見を発表するという以外に、繰り返して申しまするが、外国語たんのう人たちを送り出すことができるように、それも少なくとも英仏二カ国語くらいは話すことのできるような外交官を養成される必要があると思うのであります。現在、外務省外務省研修所というものがあることも承知しておりまするけれども、たしか、わずか一年の修学にすぎないと思うので、これではとても語学たんのうな人を養成するというわけにはまいりますまいが、そういう点に関しまして、外務大臣語学という問題でどういうふうにお考えになっておるか。語学修得させるということに重きを置かなければならぬというような御意見でありますがどうですか、一応お伺いいたしたいと思いまするし、また続いて、あるいはこれは専門的な問題に入るかと思いますが、官房長あたりからでも御説明を願うというようなことになろうかと思いまするが、さしあたり大臣の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私もまだ短い体験でございますが、諸種の国際会議に出まして、語学というものにあらためて関心を持たざるを得ない、かように考えております。特に最近は、武力でおどしをかけるとかいうようなことより、もう協調外交、話し合いの外交、そういうことになってきておりますので、この点に関しましては一そう今後関心を持ち、適切なる施策をいよいよ強化すべきであると考えておりますものでございます。詳細に関しましては官房長からお答えいたします。
  8. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 では、官房長官にお尋ねしたいと思いますが、先ほども申しましたとおりに、研修所一年の修学ではとうてい語学教育を十分に与えるというわけにはまいりません。それで、すべての外交官国際会議で動いておるとは言えないと思うのでありまするが、そのうちから適任者と目されるような人をすぐって、そうしてイギリスなり、フランスなり、あるいはドイツなりに比較的長く駐在せしめて語学を研修させるというような、そういう仕組み、これは外務省ですでにずいぶん前から手をつけておられることとは思いまするけれども、戦後こういうふうに国際会議重要性を帯びてきました今日においては、一そうその方面に力を入れていただかなければならぬと思います。外務省で現在やっておられる状況について、官房長から御説明を願いたいと思います。
  9. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) お答え申し上げます。  ただいま大臣より御答弁がありましたように、外務省といたしましては、外国語修得に非常に力を入れておる次第でございます。仕組みを簡単に申し上げますと、まず第一に、外交官試験と申しますか、外務省上級試験には、一般の公務員の上級試験と違いまして、語学必須科目にしておりまして、現在、英、独、仏、ロシア語中国語、選択によりまして、どれか一つは必ず受けるようにしておるわけであります。それから外務省に採用されましてから、いまお話しの外務省研修所で勉強いたしまして、その後外国に赴任いたしました場合、大体二年間、その国の語学を勉強するということでございます。それから先ほど二次外国語の必要について触れられましたが、これは、外務省研修所におきまして、必ず自分の第一語学以外に第二語学を研修するということでございます。それから外国で二年ないし、特殊語学では三年でございますが、それを勉強したあとは、各人が任地におきまして、それを独力で自分で勉強して、大体みなレッスンをとって勉強いたしておるようでございます。
  10. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 いまの御説明によりまするというと、外交官のうち適当な人たち外国に駐在せしめて、二年間外国語修得させるというように私は伺ったのでありまするが、それは英、仏、独に限られておるのでありまするか。また、中国語もその中に入ってるようないまお話でありましたが、その二年間修得する中に、中国語ないしはロシア語も入っておるかどうか。つまり、英、仏、独、ロシア語中国語、そういうふうなことばの研究をさせるという、そういう意味での留学でありますか、重ねてお伺いしたいと思います。
  11. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 現在、試験を通ります場合には、大体英語フランス語ドイツ語が多いのでございますが、通ったあと本人希望ないし、いままで若干勉強していたという場合に、あるいは強制的にあるいは希望によりまして、ロシア語中国語スペイン語アラビア語等を、外国に行きまして第一語学として本人に二年間ないし三年間勉強さしておる次第でございます。
  12. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私がまだ外務省で働いておりました時分の経験から言いまするというと、外国語修得ということは非常にむずかしいことでありまして、私自身、はなはだしくその点足りないことを痛感させられておったのでありますが、とにかく、英語なりフランス語なり修得するとしまして、もう一カ国のことばフランス語をしゃべる人は英語も同時にしゃべる、英語の人はフランス語をしゃべるというような二カ国語をマスターしておる人というのは、その当時は非常に少なかったのであります。私は、その点で、現在はたしてその二カ国語を十分に話しすることのできる外交官たちが輩出しておるか、多く出ておるかどうかということについて、まだ十分安心感を得ないでいるわけなのでありまして、その点は、私たち時代には、若い外交官外国語修得させるということにつきましては、あまり重きを置かれていなかった時代でありまして、したがって、自分たちの力の足りないところをたな上げするようでありまするけれども、自然外国語修得の熱心さを持ち得なかったという欠点があったのでございます。でありまするから、私は、終戦後こういうふうに外国との交渉が激しくなってまいった今日としましては、外務省自身外国語修得させるという点に非常な熱意をお持ちになり、各般の便宜を供与されるということが何よりも大事なことだと思うのであります。そうすれば、自然若い人たちは一生懸命外国語修得に励むでありましょうし、それも一カ国語ばかりでなしに、少なくとも二カ国語を話すことができる、そういうような外交官が逐次出てくるのではなかろうかと思うのでございます。たいへんしつこいようでありますけれども、官房長にもう一度、そういう外務省としては熱意をもってやっておられるのか、あるいは単に制度上の問題として若い外交官語学修得させておるのかどうか、外務省としてのお考え説明していただきたいと思います。
  13. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 御説のとおり、外務省仕事をやってまいりますには、ことばが非常に大切であるということは、われわれも痛感いたしておりまして、制度上も、これを大いに促進していきたいと考えております。しかし、御承知のとおり、日本外務省の場合は、戦争の始まる前から戦争が終わってから数年間、全然外国に行けなかったということ、それから一時外国語軽視という風潮もございまして、その関係で、現在外務省にいる人も外国語を勉強する機会にあまり恵まれず、若干ボトルネック的なところがございますが、戦後におきましては、若い者で非常に優秀な者が、ことばを非常によくやる人がだんだんふえてまいりまして、最近は、戦前に負けないような語学の優秀な人が出てきたと思います。  それから第二語学の問題でございますが、これも、外務省といたしましては、先ほど説明申し上げましたとおり、英語ないしフランス語を受けた人には、ドイツ語とかスペイン語中国語アラビア語ロシア語等を、本人希望ないし素質によりまして第二語学にするように制度的にやっております。  それから現在外務省におきまして執務時間以外において、語学の優秀な人を呼びまして語学を研修し、ないし通信教育等をやっておりますし、また、在来におきましても、希望者には語学手当——英独仏語を勉強するのは当然でありますが、それ以外に、アラビヤ語とか、あまりほかの地域で通用しないことばを特に勉強する人には語学手当を出すというようなことで奨励いたしております。  しかし、語学というものは、本人心がまえ努力が第一でございまして、それからもう一つは、素質というものがあるかと存じます。外務省といたしましては、できるだけ本人にそういう雰囲気をつくってやる、それから刺激を与えるという心がまえで今後ともやっていきたいと考えておる次第であります。
  14. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 官房長、もう少しつけ加えてお尋ねしたいと思うのであります。  語学修得ということは、そして日本人としては、話をすることが非常に不得手な国民性を持っておるようでありまして、その点、たいへん日本人は損をしておると思うのでありまするけれども、よしんば話しすることがじょうずになっても、書くことを同時に修得しなければならないと思うのであります。ことに、外交文書を書いたり、あるいは声明書を発表したりするというような場合に、やはり自分自身で筆をとって、そして書きおろすというところまで進まなければならぬと思うのでありまして、ただぺらぺら話ができるから、それで外国語修得はいいのだというような考え方では、私はいけないと思うのであります。私自身のことを申し上げましてたいへん恐縮でありまするけれども、昔、帝政時代ロシア大使館に勤務しておりました時代に、この大使本野一郎さんであったのであります。この方はフランス語の非常に達者な方で、わきで見ていても、ほんとうにうらやましい限りでございました。そしてまた、英語相当話をされるというような、りっぱな外交官としての素質を持っておった方でありましたが、それが、若いわれわれに常に言われたことは、「君、語学はしゃべることばかりじゃだめだよ、書くことを練習したまえ」というようなことをよく言われたのでありまして、私は、それは至言、ほんとうにそうであったということを痛感させられておったようなわけであります。この本野大使、当時の大使のお考えは、いまもって私は理屈のあることだと思うのでありまして、そういう点につきまして、また官房長にひとつ外務省としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  15. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) お説のとおり、しゃべるだけでは不十分でございまして、書く、正確に書く、しかもじょうず外国語を書くということは非常に重要かと存じまして、外国留学中ももちろん、各種の大学で書く練習はしておると思いますし、現在、本省におきましても、いわゆる添削教授と申しますか、英、独、仏等ことばにおきまして問題を出されまして、仕事の余暇にそれに対して返事をして添削を受けておる者が年間約四百人ございます。そして課長級はもちろん、参事官級もこれに加わって、初歩のように、添削、書くほうを勉強しておる次第でございまして、外務省といたしましても、しゃべったり聞いたりするだけではなく、正確に書くということも心がけておる次第でございます。
  16. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 続いて、ロシア語中国語の問題について、これは大臣にお尋ね申し上げたいと思うのでありますが、実は、日本外交官の中で、ロシア語中国語を話しすることのできる人というものは、ごく数が少ないと感じております。現に、ロシアとの関係につきまして申しまするならば、私の承知しておりまする限り、帝政時代ロシア当時から現在のソビエト時代にわたりましての長い間に、ロシア語のわかる人、話せる人、また新聞を読める大使というものは、わずか私は二人あったきりだと思うのでございます。一体そういうふうでいいのか、ということを常に考えさせられるのでありますが、土地の新聞も読めないというようなことで、ただ単にロシア語通訳を使って、そうしてものごとを弁じるというようなことであっていいのか、ということを非常に疑問視するものであります。現在のロシア外務大臣は、あるいは外国語たんのうな人ではなかろうかと思うのでありまして、これは私、面識がございませんから承知しておりませんけれども、概して申しまするならば、ソビエト時代になりましてからは、外務大臣なり外務次官なり、外国語のわかる人というのは非常に少ないように思っております。昔は、ケチェリンなどという外務大臣がおった時代がございましたが、この人などは、英、仏、独の三カ国語を十分にあやつることのできる人でありました。しかし、それは例外でありまして、その他の外務大臣で、そうして私は、ロシア語以外に話すことのできる人に会ったことはなかったのでございます。そうなりますというと、やっぱし日本大使が相当ロシア語を身につけてて、そうしてこれらの相手国外務大臣ないしは次官の人たちと応待することができるようなことを考えなければならない。一々通訳をつけておったのでは、なかなかものごとがてきぱき運ばないといううらみがございます。  ロシア語はそういうことでありますが、中国語に至りましては、なおさらでありまして、私、日本大使戦前戦後におきましての日本大使として中国語の話せる大使があったことを承知いたしません。やれ、日本中国のことは一番よく知っておるのだとか、あるいは歴史的、地理的関係でもって日本は世界じゅうどこの国よりも中国をよく知っておる、中国人の性格などもよく知っておるのだ、というふうに口では言いまするけれども、さてしからば、実際相手中国人をとらえて直接通訳を介しないで話のできる大使があったかと言いまするならば、私は皆無であったと思うのであります。一体、こういうふうで何の中国関係外交があがるものでしょうか。私は非常に不満に思うのであります。やはり、大使がみずからその国のことばを話し、そうして自由に談笑をして、談笑の間に話を進めていくというようなことであってこそ、初めて外交の実があがるのじゃなかろうかと私は思うのでございます。  私自身経験といたしまして、非常にふしぎな場面に会ったことがございます。それは、ハルビン総領事をしておりました時代に、ボルシェビキの反乱が持ち上がりまして、そうしてそれまでには、ハルビンではほとんど領事団会議というものは開かれなかったのでありますけれども、世の中が乱れてまいりまして、外国人生命財産を保護しなければならぬという関係からして、領事団の会合がしばしば催されることになり、私がただ一人の総領事でありました関係で、その領事団の団長になっておったのであります。そして中国官憲としばしば交渉をしなければならぬ場面がございました。さてその際に、私が一緒に来てもらいましたのはイギリスの領事であったのでございまして、この領事はシナ出身の人でございます。でありまするからして、シナ語は相当達者に話もできまするし、また書いたものも読めた人であったのでございます。私はシナ語の通訳は持っておりました、しかし、悲しいかな、そのシナ語たるや、シナ語に限られておって、英語がわからない人でありましたし、また、日本のシナ通といわれる人たち外務省のシナ語の通訳をつとめてくれておる人たちは、例外は一、二あるかもしれませんけれども、多くは外国語の素養のない人でございます。でありまするから、いまの領事団の会合におきましても、私はその通訳を連れていくわけにいかないのでありまして、外交団としてはどうしても英語にたよらなければならないのでございます。そこで、私が向こうと話をし、談判をしまするにつきましても、私の通訳をつとめてくれたのは、あにはからんイギリスの領事であったのでございまして、日本通訳は全く用を足し得なかった、こういう実例がございます。この実例は、私は、単にハルビンに限らず、いまの中国の各地におきまして、多くの場合同じ場面が展開されているのではなかろうかと思うのであります。こういうようなわけでありまして、やっぱりその館長自身中国語をあやつらないことには、たいへんそこに欠陥が生ずるということを、身をもって痛感したようなことがございました。でありまするから、私は繰り返して大臣にお尋ねするようでありまするが、いまはすべて官制が変わりまして、外務省の官吏たちは事務官ということになっており、等級が分かれるのは俸給の関係でもって上下の区別があるかのように思っておりますが、しかし、昔で申しまするならば通訳生であるとか通訳官であるとかという階級の人たちは、シナ語ならシナ語一点ばりでやってきたのでありまして、外国語の素養がないというのが、現在でもそうではなかろうかと思うのでございます。もしそうだとしまするというと、私が体験しましたようなそこに不便が、今日においてもなおあることだろうと想像されまして、これではいけない、やはり館長自身ロシア語なりシナ語なりをあやつることができるところまで語学の勉強をしなければならない、また、させなければならないというふうに感ずるのでございます。そういう点につきまして、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか、概括論としてお考えをひとつお願いしたいと思います。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘は一々ごもっともでございますが、さらに今日中南米方面との交流が非常に濃密になってまいりましたので、これにさらにスペイン語を加えて、中国語ロシア語スペイン語、こういったようなものを、もっともっと盛んにする必要がある、かように考えております。
  18. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 本日は私一般語学教育の問題について文部大臣ともお話をいたしたいたいと思ったのでありまするけれども、何か文部大臣は少し健康上の理由でおくれられておるかのように承っております。私の文部大臣に対しまする質問は、でありまするからして他日の機会に譲ることといたしたいと存じまするが、外務省といたしましても、先ほど来くどくどしく申し上げ、また御意見を拝聴したように、語学に力を入れられるということが非常に必要であると同時に、一般教育の問題といたしましても、外国語の習得ということは、現在のような調子ではどうかしらという懸念があるのでありまして、つまり、繰り返しますが、話をすることに重きを置いて、書くことを忘れるということと、それからまた一般語学教育としては、文学のほうに重きを置いて、そして政治、経済、社会問題の方面に対しましての語学を習得させるということが私はたいへん欠けておるのではなかろうかと思うのであります。それでは外交官としてもまた一般教育としても、私は足りないと思うのでありまして、やはり各方面にわたっての語学を習得させる必要があろうかと思うのでございます。そういう点で、外務省の方々も、ひとつ注意を払っていただけるならば、たいへんいいのではなかろうかと思うのでございます。  わずかまだ時間が余っておるようでございますけれども、私の質問はこれで終わることにいたします。
  19. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 作藤君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  20. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に岩間正男君。
  21. 岩間正男

    ○岩間正男君 予定の質問に入るに先立って、私は去る二十日行なわれました佐藤総理の防衛大学における演説について、橋本官房長官の見解をただしたいと思います。ニュースの伝えるところによれば、佐藤総理は、この演説の中で、「自衛隊はただに武装した自衛隊たるにとどまらず、国民団結の中核とならねばならない、」と述べているようです。これは時節柄まことに重大な発言と言わなければなりません。これはとりもなおさず、換言すれば、自衛隊のまわりに国民が結集せよという言い方と同じ考えであります。これは全く軍部中心の思想です。今後の自衛隊の性格に大きな変化を与えずにはおかないものであると私は考えます。何よりも国防国家を目ざす、憲法否定の精神がここにはっきり出ている。佐藤総理は三矢作戦が衆議院で大きな問題になったときに、研究するだけでも絶対許せない、実にゆゆしい問題だなどといきまいておったのであります。それなのに、その後も全然責任追及はしないで、そうして、すっかり態度を豹変して、現在では百八十度の転換をしている。これでは一体国民は何を信用すればいいのか。この発言の背景は一体何なのか。これが佐藤内閣の正式見解なのか。この点についてまず橋本官房長官の見解をお伺いしたいと思います。
  22. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいま岩間さんの御質問でありまするが、総理が自衛隊の卒業式におきまして、「ただに武装した自衛隊たるにとどまらず、国民団結の中核とならなければならない」という意味のことを言われたことはどういう意味か、こういうような御質問でありますが、これは、卒業式に臨んで総理が一つの自衛隊に対する精神訓話であろうと思います。たとえば、青年団に臨みますれば、青年団の団員諸君に対して、諸君は国民の中核として大いは将来に臨むべきであるというような、いわゆる演説の修辞上普通使われることばでありまするが、ただ、御承知のように、日本は憲法第九条で戦力は放棄いたしております。国際紛争のために戦力を使うということは放棄している。しかしながら、防衛の義務を放棄しているわけではないのであります。したがって、総理がるる言われるこの意味は、国を守るという意味で自衛上の精神を強調したと私は理解し、また、岩間委員におかれてもさよう御理解願えれば結構だろうと思います。  三矢問題につきましていろいろ御意見があり、今日衆議院におきましても小委員会、調査会等が設置されまして、今後いろいろと御検討があろうと思いますからして、政府としてはその結論を持って善処をいたしたいと考えておりますが、当委員会におきましても、いろいろ委員各位からして御質問があったわけであります。もちろん、防衛庁長官がこの委員会においても答弁いたしましたように、その字句等において不適当なものがありましたけれども、いわゆる国を守るという点での研究等については、あえてこれに対して何らの異議を差しはさむものではないという答弁がしてあるのでありますが、政府といたしましては、とにかく、今日進められておりまする調査会での調査が進み、この調査の段階においてどういうような事態が出てまいりましょうか、その上において、もちろん逸脱した行為があれば適当な処置はとるつもりでありますけれども、原則として防衛義務における研究は何ら差しつかえないという見解を従来同様にとっておるわけであります。今後調査会の調査の進み次第によって考慮いたしたいと考えております。
  23. 岩間正男

    ○岩間正男君 官房長官は自衛隊の卒業式と言ったけれども、事実認識が非常に違っております。防衛大学です。防衛大学、そこでこのような演説をされたということは重大です。これは間違っております。それから、卒業式における精神訓話、これは修辞上のことばだ、こういうことを言っているけれども、これはそんなものとだれも受け取っていないだろうと思うのです。防衛大学の卒業式という重大な席上で、しかも、発言の内容そのものが非常にこれは中心に触れた問題です。「国民団結の中核とならねばならない」。先きにも言ったように、自衛隊のまわりに国民を結集せよと、このことばは、裏返せばなるのです。重大な問題です。そんな返事じゃだめです。私が聞いているのは、これは佐藤内閣の正式見解なのかどうなのか。単に、佐藤総理が態度をまるで変えて、先にも申しましたように、お口にするときにどんどん変わっている、そういう中で、気分的に言ったんだなどということで済まされるものではない。いやしくも一国の総理です。しかも、いま非常に三矢問題を中心として国民の目が集まっている。そういう中でこのような発言をするということは、よほどの決意なくして私はやれない問題だと思うのです。だから、ただいまのような御答弁ではこれははっきりしませんから、もう一度正式見解なのかどうかという点について明確にしてていただきたいと思います。
  24. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいま申し上げましたように、佐藤総理はもちろんのこと、国民各位皆さんにいたしましても、日本の憲法のあり方については、十分にこれは認識をいたしておるわけであります。したがって、自衛隊あるいは自衛隊員のあり方につきましても、われわれは憲法第九条に基づいて、いわゆる平和国家としてのあり方を強調いたしております。したがって、せんだっての三矢関係の資料にいたしましても、やはりこの内容説明等につきましては、シビリアン・コントロールが中心である、文民優位の立場をもって自衛隊につきましても指導をしておる、この旨を明らかにいたしております。その前提からお考えおきを願って、この立場において佐藤総理は防衛大の卒業式に接したのでありまして、いわゆる片言隻句によって、岩間さんから見れば重大な御発言とおっしゃられまするが、われわれは、その前提条件がまず第一である。ものの考え方がどこにあるか。むしろ総理はこの委員会を通じても、あるいはその他の文書につきましても、平和に徹するということを明らかにいたしております。その前提に立ってお考えおき願えれば、岩間さんの御心配になるような趣旨でないことが了解願えると思うのであります。
  25. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常に問題が大きくなっているやさき、いわゆる慎重に慎重を重ねなければならないときに、ことにシビリアン・コントロールという話がいま出ましたけれども、そういう態度で臨まなくちゃならないときに、まるで軍隊を扇動するような言い方じゃないですか。「国民団結の中核にならなければならない。」。そんな軽々しくこれは許すことはできない。こういうことばからムードが出て、そうして、先に行って、はっきり今度は国防国家への移行という、そういう萌芽が、この萌芽のうちにはっきりこの問題を明らかにするということは、私は重大だと思う。この背景には、佐藤総理の防衛問題に対する態度がまるでくるくる変わっている。そういう姿がはっきり出ている。最初はあれほど憤った。憤るのは私は当然だと思っていた。ところが、その後おそらくアメリカの軍部の圧力があったのじゃないか。日本の反動勢力の圧力があったのじゃないか。まるで態度を変えて、引き返してきて、百八十度転換してきた。そういう中で吐かれたことばなんです。軽々しく扱うことのできない問題です。もう一度聞きますけれども、これは政府の正式見解ではない、こう出言うのですか、どっちなんです。はっきりしてください。
  26. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいまお答え申しましたように、われわれ国民は、あえて自衛隊とわれわれ国民とを問わず、少なくとも日本国民という籍を有している以上は、われわれは国を守る義務を持っております。もちろん、相手を攻撃することは第九条によって不可能ではありますけれども、われわれは、外敵に対してみずからの国を守るというその責任は、あえて自衛隊と言わず、国民と言わず、持っているわけであります。したがって、…民の一部であり、また国を守るための技術を教えられているその大学において、国を守る一つの中核体としての意味でのあいさつをされることは、あえて逸脱したる発言とは私は考えておりません。国民各位が国を愛する以上は、あえて自衛隊と国民とを問わず団結して、そうした場合においての行動をとることは当然だろうと考えております。
  27. 岩間正男

    ○岩間正男君 しかも、そのあとの懇談会で、防衛省の昇格、これができないのは非常に申しわけない。いまに、そのうちにそういうことができるだろう、こういう激励もやっている。だから、これは単純なものだとは考えられません。  私は次にお聞きしますが、小泉防衛長官は、一体この総理発言というものをどう思うか。今後、こういう方針であくまであなたはやっていく気か。総理のこの発言についてどういう見解を持つか、はっきりしてください。
  28. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 総理の発言についての御質問でございますが、先ほど官房長官もるる申し上げておりますとおり、やはり国民全体が国を守らなければならない、自衛隊はその中核体としてやってもらいたいという意味の、いわゆる卒業式における訓示とは申しましても、いわゆる俗にいう式辞の中のあいさつでございますので、私は何ら差しつかえない、かように考えているわけでございます。
  29. 岩間正男

    ○岩間正男君 これではっきりしました。あなた差しつかえないと言っていますね。総理と同感なんですか。
  30. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) さようでございます。
  31. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは重大な問題です。これは時間の関係から、さらにそのうち追及したいと思います。次に、椎名外相にお聞きします。これは主としてベトナム問題についてであります。アメリカの北ベトナムに対する連続爆撃は、戦争か平和かの根本問題にかかわっていると思います。それは、アジアと世界がいま直面している最大の課題であることはもちろん、特にアメリカに軍事基地を提供している日本としては、寸時もゆるがせにできない問題です。したがって、これに対する政府の態度は、一国の政治をあずかる者としては、民族の運命をになう者として、慎重かつ確信に満ちたものでなければならないと思います。私は、このような観点に立って、以下二、三の問題について質問します。  まず、お伺いしたいことは、このたびの北ベトナム爆撃に対してとってきた政府の態度と措置についてであります。二月七日のドンホイ爆撃以来、アメリカはすでに十回にわたって大爆撃を続けていますが、これについて日本政府はそのつど正式な通告を受けているのか。もし受けているとすれば、これに対して日本政府はどんな措置をいままでとってきたのか。この一回一回について具体的に述べていただきたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そのつど一回一回通告は受けておりません。しかし、数回にわたって通告を受けております。
  33. 岩間正男

    ○岩間正男君 その数回の内容を言ってください。ちゃんと記録があるでしょう、何月何日に受けたか。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま正確に覚えておりません。調べて後刻お答えいたします。
  35. 岩間正男

    ○岩間正男君 その通告は、全部事後通告ですか、事前通告ですか。爆撃の前ですか、あとですか。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事前通告であります。
  37. 岩間正男

    ○岩間正男君 事前ですか。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ええ、事前。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはちょっとその資料をもらわないとわからないな。ちゃんとあなた持って来なきゃだめですよ。ベトナム問題を聞いているんだよ。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 正式発表の前、少なくとも前でございます。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 どのくらい前ですか、時間的に。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど申し上げたように、いま調べております。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 正式発表だって、ドカンとやってからあとじゃだめですよ。ドカンとやってから正式発表を何時間後にやる、その前に来たんだといったって、行為の前かあとかこれをはっきりしてください。爆撃の前かどうか、それをはっきりしてください。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 行為の前ではなかったと思います。
  45. 岩間正男

    ○岩間正男君 それなら事務局でいいです。ちょっといまのを詳しく資料的に言ってくださいよ。これをちゃんとつかんでいなきゃ話にならぬ、論議にならぬ。重大な問題だ。資料が届くまで待っていましょう。事務当局、どうなのか。
  46. 安川壯

    政府委員(安川壯君) 従来、爆撃はたしか約八回行なわれたと記憶しておりますが、その半数以上について、ただいま大臣から御答弁ありましたように、爆撃を実際実施する事前ではございません、爆撃を実施した後に、正式発表前に通告を受けている。ただ、通告と申しましても、口頭による情報の提供でありまして、これは外交上いわれるいわゆる通告という性質のものではございません。したがって、書類であるとか資料であるとかいうものは一切ございません。
  47. 岩間正男

    ○岩間正男君 記録があるでしょう、記録が。外務省でそんな記録とってあるでしょう。そんなだらしないことでは……。
  48. 安川壯

    政府委員(安川壯君) ただいま申し上げましたように、これは正式の通告というものではございませんので、情報の提供を受けたということでございますから、資料その他は一切とってございません。
  49. 岩間正男

    ○岩間正男君 重大問題です。さっきのと食い違いがあります。そうでしょう。通告を受けていますと言った、外務大臣。しかも、公式発表の前に受けていますと。そうでしょう。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ俗に言う通告であって、外交上の厳格な意味の通告ではない。取り消します。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は正式な通告を受けているかと言ったんですよ。  それから、爆撃の数も八回とかいっていますが、これも正確に資料として出してください。そんなことじやだめです。これに対する態度が非常に不十分ですよ。こんなことでは、国民のいまの心配にこたえることができないですよ。いまはっきりしたことは、口答でむにゃむにゃと何か言ってくる、情報の提供があったと。それも十回やっているうちの十回じゃないんだ、半分ぐらい。そんなら、それに対して政府はどういう態度をとったんですか、政府のとった態度についてお伺いします。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 北ベトナムからの人員及び物資の浸透が行なわれ、これを基礎にして国内のテロその他の攻撃、動揺が行なわれておるのでございますから、南ベトナム及び米軍としてはこれを事前に排撃するということは、当時の状況から見てやむを得ざるものと、かような解釈をとっております。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 どういう態度を——支持しているのじゃないですか。どうですか。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまお答えしたとおりでございます。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 全部それをうのみにしているんでしょう、うのみに。そして、あくまでこの態度を支持する。しかし、最初はそれに対して不拡大を望むということを繰り返していましたけれども、どうですか、その望んだとおりになりましたか。どんどんどんどん拡大している。これはどうなんです。
  56. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカ当局は、戦火の不拡大をあくまで望んでおる、しかしながら、これを終局的に決定するものは北越の出方であると、こういうことを言っておるのであります。でありまして、北越からの浸透が絶えず行なわれておるという状況においてはやむを得ざるものであると、かように考えております。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 その北越の——北越なんていうことばはおかしいですが、この北ベトナムからの侵略の問題についてはあとで聞きます。基地提供その他で日本は事実上介入しておるんですよ、このまっただ中に。人ごとじゃないんですよ。不拡大云々などということを言っていますが、全くこれは侵略拡大のごまかしですよ。いかにもそれは名目だけはいいことをして、実際どんどんやっているじゃないですか。最近はことに熾烈になってきている。ほとんど連日やられている。こういうことでは、これは話にならない。  時間の関係から先に進みますが、それならお聞きしますが、政府は北ベトナム爆撃を正しいとしてこれを支持している。正しいとする根拠をお伺いしたい。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いわゆる自衛行為であると思います。
  59. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなことでいいですか。何に基づくのか。外務大臣の答弁は明確でない。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国際法においてすでに認められておるのでありまして、具体的にいえば国連憲章の第五十一条による個別的または集団的自衛行為であると、かように解釈いたします。
  61. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言っていますけれども、五十一条では武力の攻撃があった場合というんですね。そうすると、武力攻撃があったというんですか、北ベトナムから。そうなんですか。その根拠は何です。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 北ベトナムからの攻撃が絶えず継続しておる状況であります。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは何に書いてある、何に。そんなことは何でわかります。いかなる事実に基づいて。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 人及び物資の浸透が絶えず行なわれ、これに基づいて国内に随所にテロ行為が行なわれ、あるいは正式の攻撃が行なわれる、こういう一連の事実を総括してこれが攻撃の継続の状態であると、こういう解釈でございます。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはアメリカから通告があったのですか、正式に。あるいは、何かほかのアメリカの文書でですか。
  66. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君、立って質問してください。
  67. 岩間正男

    ○岩間正男君 何か根拠がありますか。そういう根拠をはっきりしてください、何に基づいてそう言っておるか。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般、アメリカが白書を公表しております。かくのごとき事実があったとすれば、これはやはり攻撃の継続してある状態である。これに対する排除、反撃を加えたということになりますから、個別または集団の自衛行為である、かように解釈いたします。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 それが唯一の根拠ですか。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 最も有力なる根拠であると思います。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなことを言っていますが、このベトナム白書に対しては世界が信用していませんよ。もうアメリカ国内だって信用していないんですよ、これは。たとえばシカゴ大学の芳名な政治学者モルゲンソー教授が新聞記者とのインタビューでこう言っておるんです。「自国の政治を批判するのは心苦しいがやらねばならない」と前置きして、「アメリカはあらかじめ新しい政策——つまり侵略政策ですが——これを決定しておいて、あとからそれを合理化する新事実をつくっておる」、こういうふうに指摘をしておる。この合理化する新事実というのは、これはベトナム白書ですよ。世界のだれもこれを信用していません。椎名さんくらいなものじゃないですか。日本の政府と椎名さんくらいなものがこれを信用しておるのじゃないですか。こういうものでこれを寄りどころにして北ベトナムからの侵略を口実にしておる。こんなことでいいのですか、どうですか。
  72. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中にはやはり少数説をはく人もあるのであります。われわれはこのシカゴ大学の教授の説に同調するものではありません。
  73. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一回言ってください。いまのはよくわからないですよ。いまの御答弁はどういうことですか、もう一回。
  74. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) シカゴ大学の教授の説には同調いたしかねます。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここで同調するとかしないとか言っておるのじゃなくて、そういう批判が国内から起こっておる。しかも、これが悪名高いことは外務省も情報機関を持っておるからつかんでいるでしょう。聞かず見ず、そういう態度をとっておるんですか。そんなことではとてもだめですよ、これは。  私はその次にお伺いしたいのですが、そんなら、北ベトナムが侵略しておるということを言っておるのですが、国際法上それはどういう種類の侵略だとあんたたち言っておるのですか。
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長から条約上の解釈でありますから申し上げます。
  77. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国際法では、侵略の種類をいろいろあげているということはないと思います。ただ、いまいわゆる間接侵略というような事態だと思いますが、それが人員、武器を穏密に送り込んだりして行なわれる場合には武力攻撃に該当すると認められる場合がある、こういうことは前々から政府が申し上げておることでございます。
  78. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまの答弁は、結局は間接侵略も直接侵略の一種だ、こういうでたらめな拡大解釈じゃないですか。そういうことをでっち上げている。現にもうそういうふうにたとえば加藤元防衛局長も言っておるし、条約局長もしょっ中言っておる。こんなでたらめな解釈で、北ベトナムからの侵略があるので自衛権の発動上やむを得ない爆撃だ、こういうことをアメリカはでっち上げているが、これをあなたたちは支持する。一体こんなことが許されると思っているんですか。どうです。この点についてもっと事態をはっきりつかんでその上に立っての新しい判断をなすべきだと思うが、どうです。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま御答弁申し上げたとおりであります。
  80. 岩間正男

    ○岩間正男君 南ベトナムの現実を見てください。そんな答弁で通用しません。まるでネコの目のように変わると言ったらいいと思うのですが、アメリカのかいらい南ベトナム政権がアメリカと共謀して自国人民に対して飽くなき弾圧と迫害を加えているのが現状でしょう。当然これに反撃する人民の戦いを、外部からの侵略のためとこじつけて、不法にも第三国である北ベトナムに武力攻撃を加えているのがまさに実態です。こうした論理、こうした解釈のしかたを許すならば、世界の至るところで戦争を行なっている国際ギャングを許すことになる。まさに国際ギャングの行為、また、これを支持する日本政府も国際ギャングの仲間ということになるんですよ。こんなことでいいんですか。
  81. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すでに御答弁申し上げたとおりであります。
  82. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁じゃだめでしょう、新たな事態をあげて聞いているんですから。
  83. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すでに御答弁申し上げたとおり、侵略の継続、拡大に対する自衛の行為である、こういうことを御答弁を申し上げたのであります。
  84. 岩間正男

    ○岩間正男君 外務大臣はかつて自衛ということで中国大陸を侵略したそういう経験の持ち主だ。そういうことを再びこのベトナム問題で同じような解釈をやっているんですか。そんなことで話になりません。もっと新しい事態を見て、この上に正確に立つということが大切ですよ。私は、ベトナム問題に正しく対処するためには、その大もとを正さなければならないと思う。そのためには少なくともジュネーブ協定成立以来のここ十年間の経緯を事実に基づいて明らかにする必要があると思います。この観点からさらに椎名外相にお伺いします。  そこで、質問のまず第一点は、ジュネーブ協定成立の際アメリカのとった態度についてであります。一九五四年七月二十一日、ジュネーブ協定が成立したこの日に、アメリカはアイゼンハワー大統領の声明を発して、アメリカ合衆国はジュネーブ会議の諸決議に拘束されないと公言し、また、これと前後してゴ・ジンジェムも同様な声明を発しました。それまでアメリカはジュネーブ協定に対して会議場では禁止条項は尊重する、破壊したりしないと宣言しておりながら、協議成立のまさにその瞬間で本国では大統領がこのような声明を出してこれを踏みにじったんです。椎名外相はこういうことをどういうふうに思いますか、はっきお伺いします。
  85. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ協定の当事者という点からいうと多少欠陥があると思うのでありますが、しかしながら、武力でこの問題を解決しない、あくまで平和裏にこの問題を解決しなければならぬという点を主張しておるのでありまして、精神においてはジュネーブ協定というものを尊重しておる、こう私は考えておりますが、なおその間の具体的ないきさつについてはアジア局長から御答弁申し上げたいと思います。
  86. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。  先ほど大臣から御答弁がございましたように、アメリカはジュネーブ協定の当事国でないことは御承知のとおりでございます。したがって、厳密な意味の法律的、条約的な意味では、このジュネーブ協定の権利義務の当聖者ではないわけでございますが、先ほど御指摘になりましたように、この会議で出ておりましたアメリカのペデル・スミス氏が、やはり立言を出しておりまして、アメリカとしては、国際関係において武力による威嚇または行使を慎むというふうに、一般原則に従いまして、このジュネーブ諸協定の条項を妨げるような武力による威嚇または行使をやらないということを、同時に宣言しているわけでございます。で、これによって道義的に、米国としましては、このジュネーブ諸協定の実施を妨げるような武力行使をしないという義務がある、そういうふうに解釈しております。
  87. 岩間正男

    ○岩間正男君 第一に、私はこういうまるでペテンにかけるようなやり方は正しいと思うかどうかと聞いているのです。  それから、当事国でないけれども、ペデル・スミスが云々という答弁がいまありましたけれども、まるでこれと反することをやっている。私は協定の最初から信義を破っている、この上に立っているのだという事態を、はっきりしなければならない。  次に、軍事顧問団について伺います。アメリカの軍事顧問団は、現在ベトナムに何人いるのですか。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アジア局長から御答弁申し上げます。
  89. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 顧問団としては二万二千でございます。約概数二万二千でございます。
  90. 岩間正男

    ○岩間正男君 ほかに……。
  91. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) ほかに、御承知のとおり、最近海兵隊がダナンのほうに派遣された。これは部隊でございまして、これは顧問団ではございません。
  92. 岩間正男

    ○岩間正男君 実数五万といわれているのではないですか。協定成立の当時の人員はどれくらいだったか、いまから十一年前……。
  93. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 協定成立のときは、まだアメリカの軍事顧問団というものはございません。
  94. 岩間正男

    ○岩間正男君 軍人はどのくらいいたでしょうか。いたはずですよ。いませんなんて言ったってだめですよ。
  95. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 訂正申し上げます。一九五〇年十二月の協定に基づきまして、MAAG、いわゆる軍事顧問団がおったわけでございますが、そのときには大体三百四十名ぐらいがおりました。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 その数字は少し違いますが、まあそれはおくとしまして、三百四十人くらい一これはどういう法的根拠でおったのですか、三百四十人というものは。われわれは二百人と見ておりますが……。
  97. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 法的根拠といたしましては、一九五〇年十二月二十三日にサイゴンで調印されまして、即日発効いたしましたインドシナ相互防衛協定というものに基づいております。
  98. 岩間正男

    ○岩間正男君 参加国は……・。
  99. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 参加国はインドシナ三国、米国とフランスの五カ国間でございます。
  100. 岩間正男

    ○岩間正男君 当然、このジュネーブ協定が成立すれば、このインドシナ相互防衛協定というものは破棄されたものでしょう、どうでしょう。
  101. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 条約上の解釈、いろいろの余地はございましょうが、従来米国は、このジュネーブ協定にかかわらず、あの相互援助協定は生きているという見解をとっております。
  102. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは米国の一方的な見解ですよ。それは国際的に通用しない。インドシンナ防衛協定は破棄された、ジュネーブ協定によって。当然三百四十人の軍事顧問団は帰らなければならなかった。なぜそれが居残ったか、ここが大きな問題だ。今日の禍根はここにある。そうでしょう。この点どうなんでしょう外務大臣。そこのところをはっきり胸に入れておかなければ、今後あなたは外交はやれませんよ。だからいまのような答弁になってしまう。とても話にならない。何のために居残ったか。
  103. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 法的根拠の点だけ補足説明申し上げますと、先ほど申し上げましたように、米国もそれからベトナムも、ジュネーブ協定の当事国でないものでございますから、法的にはジュネーブ協定成立後も相互防衛援助協定が生きている、こういう見解をとっているわけでございます。
  104. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう見解でいられますものですか。五カ国の中で三カ国が抜けているんですよ。二つだけで持っている。そんなものは元の条約じゃないですね。こういうペテンをやっている。これは居残るために、そうしてアメリカの侵略的な軍事行動を合理化するために、大体ジュネーブ協定に最後のどたんばで不参加を表明をしたんです。そしてこの成立を妨害し、かいらい政府をつくり、合法政府の要請と称して軍事駐留を継続したんじゃないですか。こういうやり方です。  私は、ここでお聞きしますが、その後、まあゴ・ジンジェム以来、ネコの目のように変わるんだが、これは外務省はつかんでおられるでしょうか。この政府は何回変わっているか、その名前をちょっとあげてください。——外務大臣注意してください。外務大臣が知っておらなければだめですよ。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま調べております。
  106. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 内閣首班の名前で申し上げますと、トー、カーン、フォン、クワット、このくらいは少なくとも変わっております。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一回。
  108. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 補足して申しますと、トー内閣は六四年二月に成立、その次のカーン内閣は六四年十一月、それからその次のフォン内閣が六五年一月に成立しました。それから現在クワット内閣でございます。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 クーデータは何回起こったですか。
  110. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 六三年の十一月にゴ政権を倒しましたクーデーター以来七回でございます。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、ここ二年ばかりの間に七回、猫の目のように変わる、こういうものと組んで、アメリカがこれで集団自衛権の発動とか、そんなこと通用しますか、世界に。まるで問題にならない。この政府というものはすごいですよ。こういうことをやっているんですよ。南ベトナム政府というのはこういう性格をあらわしている、ダナン市からわずか十三キロメートル。これは肉眼でも見えるほど近い距離のところに、そこの小学校を爆撃して四十数名に及ぶ自分の国の小学生を殺傷して、しかも学校とは思わなかったといっている。このようなことをやってのける政府なんです。このような政府の要請によって援助しているんだ、一緒に共同しているんだ、集団行動をやっているんだ、こんなこと仙界に通りますか、もの笑いです。これを日本の政府が支持している。恥の上塗りだ、こんなことでいいですか。
  112. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御質問の要旨がよくわかりません。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間が私ないですから、もう一ぺん言わせないようにしてください。  こんな、問題にならない、世界に通用しないような、こんな内閣と二人三脚をやって、そうして集団自衛とか何とかいうような名前だけでごまかしている。これを日本政府が支持している、そんなことでいいですかと聞いている。
  114. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君、立ってやってください、御意見のようですから——答弁者にわかるように質問してください。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  115. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記を始めて。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 自分の国の小学校を爆撃するようなそういうまことに頼りない政府だ。そして七回もクーデータがあり、四回も内閣が、変わっている。それと二人三脚をやって、集団自衛行動とか何とかいう名前でやっている。こんなことを日本政府が支持していいかどうかということを聞いている。わかりましたか。
  117. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御質問の内容は非常にたくさんあったようでございますが、兵舎と学校を誤認して爆撃したことが事実だとすれば、それは私は正しくないと考えます。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 では、あなたは外務大臣だから内容的に聞きましょう。これは明らかに、すべての外国軍隊の入国、駐留を禁止し、そうして禁止したところのベトナム停戦協定、それから十六条、ジュネーブ共同宣言の四項、こういうものの違反で、そうして現在、軍事顧問団がいる。その軍事顧問団といまのような政府が共同してやっているということになるのですが、これはどうですか。この点ではどうですか、軍事顧問団の問題についてお尋ねします。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ協定の当事国でなかった、すなわちこの三国間の協定に基づいて、そうして北からの攻撃を防衛しておる南ベトナムの独立と自由を守るために米軍が引き続きおる、こういう事実は私は正当であると考えます。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 ジュネーブ精神を守るなんて口で言って、事実こういうふうにじゅうりんしておる。それはあなたたち支持したって話になりませんよ。  それでは次にお伺いいたします。ジュネーブ協定十四条(C)項、これにはどんなことが規定されておるか、お伺いいたします。
  121. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員から答弁させます。
  122. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 十四条(C)項には、読みますと、この条約の「各当事者は、人文は組織に対して、その者が敵対行為の期間中に執った行動を理由として報復又は差別を行なわないこと、及び民主主義的自由を保証することを約束する。」、こういうふうに規定しております。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは少しも守られていないのじゃないですか。協定の成立後十日もたたない八月一日に、協定成立の祝賀と護護を要求する平和行進がサイゴンで行なわれた。これに対して機関銃を撃ち込み、婦女子を含む数十人の市民を殺した。また、ことに民族解放闘争の激しかったミト地方の全住民を取り調べ、独立闘争参加者とわかったもの全部を獄にぶち込んだ。それから五九年にはフーロイ政治犯収容所では、青酸カリらしい毒物をこの収容者に飲まして、一挙に六千人余を毒殺しております。この怒りの声は数キロの遠くまで聞こえたといわれております。さらに、こういう事実ははっきり資料の上にもあらわれておる。国際民主法律家協会の資料によると、一九五四年から六〇年までの六年間に、何と実に五十二万七千人が逮捕され、七万七千五百人が殺されておる。こうした弾圧、虐殺の例はまことに枚挙にいとまがないのです。これがアメリカ帝国主義者と、かいらい政府の行なった人権じゅうりんの、しかもこれはごく一部分ですよ。こういうことについて、当然ジュネーブ協定を守り、ベトナムの領土主権の保全と人権を守れというベトナム人民の抵抗闘争が起こるのは当然過ぎるほど当然じゃないですか。どう思いますか。
  124. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘の事実に対してまだ十分に私も勉強しておりませんので、よく調べてみたいと考えます。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 勉強してということでございますが、これは外務大臣だから当然勉強しておると思ったのですが、非常に不勉強ですね。こんな基礎の上に立って、あなたね、いまの政治をやっておるのは話にならないですよ。しっかりしていただきたいと思うのです。  次にお聞きします。ジュネーブ協定第十七条には、そんならどういうことが規定されておりますか。
  126. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 十七条は膨大な規定でございますが、特に冒頭……。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 (a)項と(b)項を……。
  128. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) (a)項におきまして、「この協定の効力発生の後は、あらゆる種類の武器、弾薬その他の軍事物資を増援のためにヴィエトナムへ搬入することを禁止する。」となっております。(b)項におきまして、「もっとも、軍事物資、武器又は弾薬で敵対行為の終止の後に破壊され、損傷され、損粍され又は使い果されたものは、同一の形態及び同様の性質のものと一個対一個の原則に基づいて取り替えることができるものと了解される。」、こうふうに概略規定されております。
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 ビェンホアで米軍機が四十機、その大半がやられたという事件が起こった。今度調べてみると、B57水爆搭載中型戦略爆撃機だ、これははっきりしている。ダナンには御承知のようにホークが持ち込まれている。これはどうなんですか。この条約の同じ種類のもの、これを一対一でかえるという、こういう点から考えてどうですか、十七条違反でしょう、はっきり。いかがです。
  130. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事態は全く変わっておりまして、いまは南ベトナムの要請によって南ベトナムの独立と自由を守るために米軍が進駐しておる。こういう事態になってきておるのでありまして、全く協定の当時とは事情が一変しておる。そういう事態でありますから、必ずしもこれを四角四面に当てはめて違反であるとかないとかいうようなことは私は意味をなさない、かように考えます。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 ジュネーブ精神を守るといって守っていないでしょう、全然。これは違反した事実を私はあげておる。しかも、南ベトナムの自由を守るんだと。これはもうたくさん出ておりますからね、開高健氏の体験のあれなんかだってある。南ベトナムの側からみたってどうですか、いまの人民の動きは、この政府に対する、アメリカ軍に対する——はっきりしているでしょう。これは不勉強ですよ、あなた、そんなことでは。イギリスのバートランド・ラッセル卿はこう言っているんです。米国は、原水爆以外のあらゆる兵器を使って、第二次大戦のどの戦場にも劣らない大規模な残虐な戦争をしている。十年間に五十億ドル以上と言われている膨大な物量兵器がベトナムに投入された。だから、ベトナム民族開放戦線の人たちは、 このアメリカの武器を奪って戦っている。これはアメリカ白書にも——あなたのさっきあげた白書にもはっきり書てあるじゃないですか。武器の全部はほとんどそうでしょう。この事実をごまかして、北ベトナムから武器を搬入しているとか何とかいうことをでっちあげて、これを口実に自分の不法きわまる侵略を合理化しようとしても許せないことです。こんなことは通用しません。どうですか、外務大臣、はっきりしてください。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ協定の線をまずどちらが先にこれを破壊したかということに問題はかかっておるのでありまして、北ベトナムが南ベトナムを武力によって政治的目的を達成しようということがすべて前提をなしておるのであります。
  133. 岩間正男

    ○岩間正男君 根拠をあげて質問しているので根拠で答えなければだめですよ。答えられないでしょう、いまのは答えになっていません。こういうひどいことばかりやっている。どうですか。さらに、ジュネーブ協定第十九条を見ると、明らかにベトナム国内での軍事基地建設は禁止されているはずです。ところが、今度、新たに米海兵隊が三千五百人、韓国兵が二千人上陸した。ダナンを初めとしてプレーク、ビエンホア、そういうところに大小二百有余の軍事基地をつくって、これを足場としてベトナム人民の弾圧と侵略が行なわれている。これは国際監視委員会でもはっきり認めているんです。これどう思います。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 協定が両方から尊重されて、そうしてお互いに相手の立場を尊重するということでこの協定ができておる。それを一方からこれをこわして状態が一変しておるのでありますからその一変した状態において、それ以前の条項を一々あげて、これがどうのこうのということは意味をなさない。現在の状態はしからば何であるかといいますと、結局、南ベトナムの独立と自由を守るためにアメリカ軍が進駐しておる。アメリカとしては北からの攻撃がはっきりとまったということが確認されるならばいつでも話し合いに応ずる、こういうことを言っておる。北もまたアメリカの軍隊の撤退が唯一の解決の道である、こう言っておりますが、撤退した後に一体南ベトナムの自由と独立とを尊重するかということが非常に危惧される状況でございます。この現実の事態に即して、私はすべての事柄を論及しなければならぬ、かように考えております。
  135. 岩間正男

    ○岩間正男君 現に私は大もとをたださなければならぬと旨っておる。さっぱり大もとについてあなたはわからぬから、全く誤った判断と、そういう仮定の上に立ってものを言っておりますから、話になりません。とにかく北の侵略があるんだあるんだと言っておる。それはもう最近はっきりしているじゃないですか。さらにあげますと、ジュネーブ協定は、ベトナムの独立、領土保全の尊重そのものを根本原則として、その上に立って協定成立後二年の一九五六年七月には無記名秘密投票で南北ベトナムの統一と独立がきめられていたはずです。アメリカとかいらい政権によって、これは完全にじゅうりんされている。私はあげたら切りがない。しかし、時間の関係からこれくらいにしますけれども、以上の応答でもはっきりしているように、もうアメリカによってジュネーブ協定は完全に踏みにじられています。佐藤総理は、ベトナム紛争解決のためにはジュネーブ協定の精神を尊重していくというふうに答弁しています。椎名外相も同じですか。
  136. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーブ協定の線に立ち返って、そうしてお互いに相手方を尊重するということで、初めて問題の平和的解決が切り開かれると、私もかように感じております。
  137. 岩間正男

    ○岩間正男君 尊重するたって、都合のいいところだけとって都合の悪いところはうまく逆にやるようなことではだめですから、このジュネーブ協定というものをよく勉強して、それはどういうふうな事態に行なわれてきたかということを調べないうちに、いまのようなことではまずいと思う。ことばだけではだめですよ。  私は次に進めますが、アメリカ帝国主義者は、なぜこのように一体、現在ベトナムにしがみつくかという問題です。それは台湾、日本、韓国と結んだ対中国包囲線をあくまで維持強化し、中国封じ込め作戦、中国敵視政策をあくまで継続してアジアの支配権を維持しようとするからです。それはすでにタイを爆撃基地とし、アジア全体を戦争に巻き込もうとしておる。さらに日韓会談の早期妥結、そのようなものを目ざした三矢作戦のようなものもこのためだということが言えると思う、はっきりしております。これがアメリカの伝統的政策です。原因は遠く、その根源は深いと言わなきゃならない。一九五四年の一月二十六日W・S・ロバートソン国務次官補が、アメリカ下院予算委員会の証言で次のように言っておる。これをわれわれは思い起こす。わが国の対中国、台湾政策の基本は、絶えず中国を軍事的脅威のもとにさらし、それによって中国内部にいずれは反乱が起こることである。このことは基本的にはアメリカが無期限に極東の支配を続けることである。はしなくも本心をさらけ出しています。これこそはアメリカの伝統的アジア政策であり、今日その態度をごうも変えてはいない。北ベトナム侵略の今後の成り行きいかんでは、アメリカによる中国本土の爆撃が行なわれないという保証が一体あるのかどうか、これに対する椎名外相のはっきりした答弁をお伺いしたい。
  138. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私から、アメリカが中国の爆撃をするかしないかということを言えと、こうおっしゃいますが、さような立場にないことを御了承願います。
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常に事態は緊迫しておる大勢の中で、はっきりこの事態をつかんで、このような事態を起こさないように十分の努力をすべきだ。私は現在のアジアの情勢を見まして、今日アメリカ帝国主義者どもが世界の平和の破壊者であるということは天下周知の事実だと、先ほどの例で具体的にわかったと思う。したがって、この侵略者の手を押え、悪らつきわまる意図を粉砕することが、平和を願い、独立を求める世界諸民族の共通の戦いと今日ではなっています。ベトナム問題の真の解決もこれ以外にはないんです。したがってわが党はこのような基本的立場を堅持して戦い抜くとともに、当面する問題として次の諸点を日本政府にはっきり要求したいと思います。  第一に、アメリカ軍のベトナムからの完全な即時撤退、第二には、アメリカ軍の日本軍事基地使用を拒否する。第三には、医療、衣類、指定物資の調達、その他の経済的協力をはっきり断わる。当面これだけの要求を実現すべきだと思います。外相の答弁を求めます。
  140. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 遺憾ながらあなたと全然見解を異にいたします。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間の関係から、次へ進みます。  小泉防衛庁長官。第一に、防衛関係の秘密文書には、極秘、秘、取り扱い注意などの階級に分かれているようですが、そう分類せねばならぬほど、この文書というのは多いのですか。
  142. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 文書の取り扱い上、いろいろ段階を設けてやっておるわけでございまして、いま申されましたような、機密、極秘、秘密、取り扱い注意と四段階を事務の上で設けて文書の取り扱いをいたしておるようなわけでございます。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ秘密文書が指摘されると、防衛庁はよくつまらない文書だということを言うんですね。つまらないものをなぜ秘密だと言って、しまっておくんですか。
  144. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) やはり役所の内部におきまして公表に至るまでのいろいろな段階がございまするので、その間が、やはり庁内だけの機密というようなことの取り扱いをいたしておるわけであります。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも委員長、注意してください。私の聞いているのは、つまんない文書に、それをなぜ秘密扱いとしているかということを言っているんです。いまの答弁じゃ合わないですよ。はっきり質問に答えてください。もう一回お願いします。
  146. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) つまらないということがどういうことかよくわかりませんが、役所といたしましては、やはり先ほど申しますとおり、問題の性質、文書の仕切りによりましてそれぞれの段階を設けて機密の保持をいたしておるようなわけであります。
  147. 岩間正男

    ○岩間正男君 つまんない、つまんないってよく海原防衛局長なんかしょっちゅう言っているでしょう。三矢はつまんない文書になるんですか。それになぜ極秘だという銘を打っているんです。
  148. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま私を名ざされまして、海原がつまらないと言っておるということでございますのでお答え申します。  私は防衛庁の文書でつまらないということばを用いたことはないと思います。ただ、先般来、私の案でありましてごく未熟なものが出ておるというようなことは申しておりますが、こういうものは別に機密ではございません。先ほど大臣から申されましたように、役所の文書でございますので、おのずからそこには関係職員あるいはそれ以外に漏らしていいとか悪いとか、いろいろな区分がございます。したがいまして、内容を反映することはもとより、手続的にも秘密の区分を判断する機能がございます。内容がつまらない、つまらないものであれば別に機密にする必要ございません。たとえばこうかんな文書の中に、一部分先生のおっしゃいましたつまらないと申しますか、未熟な、外に出してはずかしいような文書がございます。これはままそういうこともあるかと思います。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまの三矢はどうです。三矢はつまらないのか、つまるのか。
  150. 海原治

    政府委員(海原治君) 三矢研究につきましては、従来たびたび大臣からも御説明いたしましたとおりの文書でございまして、私どもにとりましてはきわめて意味のある幕僚研究だと、このように考えております。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 この意味のあるというのは、次年度の計画にも一部適用すると、この前あなたそう言われておりますが、その意味ですか。
  152. 海原治

    政府委員(海原治君) 私がいままでいろいろな機会に申し上げておりますのは、三矢研究の結果、それ自体が直ちにほかの計画に採用されるということはございません。しかし、その研究をしました事柄が、何らかの形において間接的にいろいろな計画に取り入れられるということはこれはあり得ることだ、こう申しておる次第でございます。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 小泉防衛庁長官、あなたは国家機密について言っておられるが、あるのですか、ないのですか。これはどっちです。
  154. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 国家機密ということばはございませんが、やはり国家の利益に重大な影響を及ぼすというような機密は当然あるのでございます。
  155. 岩間正男

    ○岩間正男君 二つの違いはどうですか。国家機密と国家に重要な影響を持つもの、二つは同じですか、違うのですか。
  156. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  157. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけて。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ次に聞きますが、三矢の資料原本の公開は、国家の重大な利益をそこなうことになるのですか、ならないのですか。
  159. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いわゆる三矢研究文書の点につきましては、たびたび申し上げておりますとおり、各幕僚の答案を集めたものでございまして、まだ防衛庁が結論を調整したものでもございませんし、正式見解として決定したものでもございません。また同時に、この中には機密を要する内容もございますので公表すべき性質のものではないし、また、国会のいわゆる資料として御提出申し上げるわけにはいかない文書であるということをたびたび申し上げておるつもりでございます。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 国家の重大な利益になるかならぬか、国家の重大な利益をそこなうことになるのですか。
  161. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 正式見解、正式決定のものではございませんけれども、その一部分一部分が前後と切り離されて出ます場合には、国家の利益に影響を及ぼす面もあると存じまするので、なおさら公表を差し控えておるようなわけでございます。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 具体的にその利益に反することをあげてください。
  163. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 公表するわけにはいかないと申し上げておるのでございまして、その例をあげて申上げるわけにもいかないわけでございます。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 独断ということです。一方的にかってにきめているということですね。国家の重大な利益というのは一体どういうことなんです。これはお聞きします。どういうことなんです。一般的でいいです。一般的で。どういうことなんです。
  165. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いま申し上げましたとおり、公表するわけにはいかないのでございますが……。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 中のことを言ってない。一般に国家の重大な利益とは何かと聞いている。
  167. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 一般的には、やはりお互い常識上国家の利益に影響を与えると、こう申し上げる以外ないと思います。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなこと言っておりますがね。国家の重大な利益とは憲法を守ること、国の独立、平和、民主主義、さらに人民生活の安定、向上、これ以外にないでしょう。これ以外にないはずだ。どうですか。
  169. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 御指摘のとおり、そういう、いま申されましたようなことを中心として、いろいろとたくさん国家の利益というものはあると存じます。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたたちの言っている国家の利益というのは安保を守る、安保体制をつくる、アメリカの戦略の上に日本の国土と国民をあげて編入している。これが国家の利益だと言っている。はっきり対決をしている。そういう点では問題にならぬのです。  私は、次に聞きますけれども、公務員が公務中に憲法違反のことを研究するのは、これは差しつかえないのですか。どうなんです。
  171. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 公務員が公務中に憲法違反のことをやるわけはないと、またそういうことがあってはならないと考えております。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間ないから、それじゃ増原行政管理庁長官にお尋ねします。一般公務員と自衛隊員の公務員として共通な点と、それから区別される点、これをどういうふうに考えているのですか。
  173. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) たいへん広い意味の内容を持ったものについての比較でございまするので、もう少し具体的に御質問をいだきませんと、しっかりお答えをいたしかねるのでございます。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、憲法九十九条の規定を守る点についてだけ制限しましょう。どうです。
  175. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 公務員として憲法を順守すべき問題については、いささかも変わりはございません。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは小泉さんでも、増原さんでもいいですが、自衛隊にシビリアン・コントロールを設けたというのは、これは何のためです。
  177. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 憲法の精神にのっとりまして、あくまでも文官が優位、いわゆる軍事よりも政治が優位するということでなければならぬという観点から、文官優位の立場がとられておるのであります。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、さっきの佐藤総理の答弁なんか、これはさっきの演説なんか、まるで反していますね。そういう点は全く問題にならぬ。軍部専制を排するというのがこのシビリアン・コントロールでしよう。  私は、次にお聞きしますが、自衛隊員は、これは憲法をよく守っているというふうに考えていますか。どうです。
  179. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 自衛隊員は忠実に憲法を守っていると信じております。また自衛隊の教育につきましても、民主主義を体得をいたし、憲法を順守するような教育をいたしておるわけでございます。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間の関係から、増原長官に聞きますが、あなたは戒厳令の必要ということを、これは演説しておりますね。海外派兵のために憲法改正をすべきだ、朝鮮の事変が今後あった場合には自衛隊が行ったほうがいいということを言っていますね。こういうことを言っている方が行政管理庁長官なんですね。憲法を守るべきだ、こう言っている。矛盾感じませんか。見解を伺っておきます。
  181. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) その問題は私の個人的な発言でございまするが、私の申したところをお読みをいただいたことと思いますが、私は戒厳令ということばを使いはいたしましたが、その中にも書いておりますように、戒厳法とも言うべきもの、非常事態等に措置する、現在の総理大臣関係長官等の権限を強化する必要があるという趣旨を申したので、憲法に違反する趣旨のそういう法律をつくろうということを申したわけではないのであります。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 海外派兵どうでしょう、海外派兵……。
  183. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 海外派兵については、私は海外派兵をするという、するほうがよろしいということを申したことはございません。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 海外派兵ということばは使わないけれども、朝鮮に事態が起こったとき、自衛隊が出ていったらぐあいがいい、これ海外派兵、この点どうです。こういうことを言っているのです。
  185. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 朝鮮等に事態が起こった場合に、自衛隊が出ていったほうがいいということを申したことはございません。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはあとで証拠をはっきりさせますよ、そういうことを言っていますけれどもね。時間の関係がありますから、それでは人事院総裁にお聞きします。  国家公務員は憲法を守っていると思いますか。
  187. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほども他の大臣からお答えしたと思いますけれども、憲法を守らぬというような人はおらぬはずだと私は思っております。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ平和活動や原潜阻止のための運動は憲法を守るために重要な活動の一つだと私は思うのですが、どう考えますか。
  189. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 憲法に基づきまして、国家公務員法ができておることは御承知のとおりでございます。憲法において、公務員は全体の奉仕者ということを憲法第十五条においてはっきりうたっておるわけであります。全体の奉仕者である以上は、当然その立場は政治的中立でなければならぬということから、公務員法上政治的活動を規制しておるわけであります。そういう意味から一種のそこに限界があるということは明らかであろうと思います。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 原潜入港反対の活動に対して、人事院は何か見解を出したようですが、それはここにお持ちですか、資料としてもらえますか。中身はどんなものですか。
  191. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そういう問題につきましては、各省からいろいろ心得のために見当をつけたということでお尋ねがありました。そういうお尋ねに対して、われわれのほうが一応参考の意見を申し上げた、そういうことはございます。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 政治的中立を要求されている公務員の立場、これは非常に立法当時から、この公務員法の立法当時から大きな問題になった。憲法との関連、憲法を守る立場に立つべきか、それからいまの公務員法の中立ということで、そうしてどんどん実はもう職務規程やその他で圧迫されてきて、もう労働組合活動あるいは政治活動の自由が制限されている、こういう矛盾の中に立たされているのが現状ですね。ですから、人事院見解などというものが、次官会議の決定の結果出されて、そして憲法を守る当然の、最も基本的な九十九条にも当然これは積極的な意味を持つもの、こういうものが侵害されていく方向をとるということは、これは望ましくないと私は考える。第一に、憲法を守る者が弾圧され、憲法をじゅうりんする者が保護されている、この現実政治に対して私は痛烈な反省を要求したいと思う。これはもういままでたくさん起こっている。今度の三矢の問題が典型的だ。こんな矛盾した態勢の中で、日本の平和が守れますか。あなたたち、はっきり関係者は考えてもらいたい。  私は最後に、国家公安委員長にお伺いしますが、国家公安委員会はこの前、わが党の宮本書記長の盗聴器問題について、これは警察庁の科学警察研究所で現在これを調べている、こういうことを答弁されましたね。ところが、法務委員会で伺いますと、警察庁の警備局長は、これに対して全然違った意見を出しておるのです。これをお聞きになっていらっしゃいますか、どうですか。
  193. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先般本委員会で、岩間さんの御質問に対しまして、私が、警察庁の科学研究所で目下鑑定をしておると申しましたことは誤りでございます。警視庁の科学検査所で鑑定をいたしておるのでございます。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 なぜ誤ったのですか。その後どうしたのです。
  195. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それは私聞き誤りでございます。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 その後どうしたか、言ってください。
  197. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) その後は同検査所において検定中でございます。いろいろと専門的の意見を聞きながら、目下捜査中でございます。
  198. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君の時間は終わりました。
  199. 岩間正男

    ○岩間正男君 ええ。いまのような御答弁ですが、十二日までその警視庁の検査所でやった、しかし、どうも手に負えなくなった、そういうことで科学研究所のほうとも相談をして、所長と相談して、そしてだれか専門家に委嘱しなければならないのだ、こういうようなことを言っておるわけですね。最初から能力のないところにこれはやって、一週間も大体時間をかせいだことになるのじゃないですか。これは大体私たち聞いているのだが、専門家の話では、一時間か、一時間半もあれば、ここの性能なんか検査することはわけはないのだと言っている。なぜそういうふうな措置をとっているのだ。証拠保全のことが非常に大きな問題になっています。これは憲法と関連したところの通信の秘密を守ることができるのかどうか。ことにこの現情勢の中で、非常にそのような情報機関というものが不当な活動をこれはやっている節があるのだ。そういう態勢の中で、国民の権利を守る、基本的権利の一つとして、非常に重大な問題だとして、われわれはこの問題を重視している。これに対してどういう一体何をするのですか。この前の委員会が終わってから、時間はすでにもう半月近くたっている。それなのに、あれは誤りでしたなどという答弁を、国家公安委員長が繰り返しておって、この事態に対処できますか。はっきりあなたの決意と、それからあくまで証拠保全をやって、それからすぐにこの真相を明らかにして、これを国民の前に明らかにして、そしてさらにその背後関係を追及するという、そういうことこそが当然あなたの任務だと思いますが、いかがですか。
  200. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) これは私のほうでも、厳重にこの問題は鑑定を続けておるところでございます。慎重に検定をいたしておりまする際でございまするし、ただ、警視庁の検査所のみならず、警察庁の、先ほど申しました研究所とも相談をし、さらに第三者の専門的な意見も徴しながら、目下これを検定いたしておるところでございます。これをうやむやにするなどという考えは毛頭ございません。
  201. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君の質疑は終了いたしました。  午後二時再開することにいたしまして、これにて休憩いたします。    午後一時十四分休憩      —————・—————    午後二時十八分開会
  202. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。市川房枝君。
  203. 市川房枝

    市川房枝君 最初に外務大臣から実は辻政信氏のことを伺いたいと思っておりましたが、厚生大臣がお急ぎだそうでございますので、最初に、厚生大臣から伺うことにいたします。  三月九日の各新聞紙に大きく取り上げられておりました碑文谷マンションの件は、特にろうあ者の福祉施設でありますし、国会議員が関係しておるというので、国民は非常な疑いの目をもって見ておるようであります。  そこで私は同僚議員の名誉のためもありますし、この際、大蔵、厚生両大臣から、事の真相を伺いたいと思いますが、まず大蔵大臣から、新聞のいう福祉施設に払い下げた国有地がマンションに化けるということについて、まず説明していただきたいと思います。十八日に、大蔵委員会で柴谷委員がお取り上げになっておりましたが、国有地の問題だけもう一回はっきりと大蔵大臣からお伺いいたします。
  204. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 問題の経緯を申し上げます。この問題になった土地は、目黒区にある土地でございます。この土地の元所有主は、新聞でも御承知だと思いますが、相続人を持たない方がなくなられて、そうして国有財産に引き継がれたわけでございます。この土地の総額は約千五百坪でございます。この千五百坪のうち、千坪は目黒区がこれを使いたいということでありましたので、目黒区役所に払い下げをいたしました。あとの約五百坪——四百何坪でございますが、五百坪近いものは、社会福祉法人であった楽石社——楽石社というのは明治何年から非常に長い五、六十年間ろうあ者を収容したりしておるものでございます。これの職業訓練施設等に払い下げをしてくれという話がございました。それは三十五年の一月二十二日でございます。この楽石社というものが、そういう歴史的にも有名なものであり、長いことこういう施設で寄与しておるということと、特にこの社会福祉法人の楽石につきましては、文部省、厚生省、東京都等から証明があったわけであります。でありますので、この楽石社に払い下げをいたしました。ところが、楽石社は金がなくて、木造の建物を六〇%ぐらい建てて、資金難で困っておったようであります。立ち腐れといういうことでございます。その後、ベル福祉協会という同じ仕事をやっております。代表者は山下参議院議員でございますが、このほうに譲渡をしたいと、ベル福祉法人が使いたいというので用途指定をしてございましたので、その変更の思し出がございまました。そして大蔵省で調査をいたしておるうちに、まだ結論が出ないうちに、昭和三十八年の七月に、楽石社からベル福祉協会に全部が移転登記が終わった、こういうことでございます。そのうち、鉄筋コンクリートの建物ができて、その上部がマンションとして分譲されると、こういう事態が起きたわけであります。でございますので、大蔵省としましては、楽石社には安い値段で売り払っております。当時の価格は時価が四万円のものを坪二万円ということで売り払いをいたしておるわけであります。この種のものにはこのような減額の処置がなされるようになっておるのであります。でございますので、この楽石社に対しまして違約金約五百数十万円でございますが、違約金の徴収を行なうということと、楽石社からベル福祉協会へは坪当たり九万円で譲渡されておりますので、その九万円と、支払いを受けた二万円との差額七万円全額を差益徴収をいたすという方針をきめておるわけでございます。でありますから楽石社に対しましては、九万円マイナス二万円の七万円と、そのほかに五百万円余の違約金というものを追徴いたすつもりでございますので、総額において約四千二百万円余を追徴いたすという、いま方針でこの事件に対処したいということでございます。しかし、この福祉法人ベル協会というものは、これはその後のものでございまして、大蔵省が徴収をしなければならないというものは、楽石社に対する減額分と違約金を徴収するということでございます。  その後の問題は厚生省所管の法人でございますので、これはあとから調べましたら、当然こういう建物をつくったり、またアパート業というようなものを経営できるように定款でもなっておるようでございますし、また許可の条件もそのようでございますが、そのベル福祉法人というものに対しては、法律上の問題は現在全然ございません。しかし、その内容については、厚生大臣からお答えになると思います。
  205. 市川房枝

    市川房枝君 違約金というものは五百何万円とおっしゃいましたね、それはどういうところから計算をした金でございます。
  206. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは当時四万円のものを半額でもって、この法人の性格、社会福祉法人ということで減額されておるわけであります。これは国有財産の売り払いにつきましては、これが公共の用に供する場合とか、地方公共団体にやる場合には無償で貸与しているものもございまするし、非常に安い値段で減額をする方式がございます。また、学校等にこれを売り払う場合でも、二分の一に減額をするという制度があるわけでございます。でありますから、当然四万円の当時の時価の二分の一でこれを払い下げたのであるから、これを用途指定の上払い下げたのであるから、これを用途指定の上払い下げた契約の条文に違約をして他に転売したときとか指定用途の変更をしたら違約金をとりますよ、という契約になっているわけでございます。その契約金額が五百五十四万三千円、こういうことでございます。その上に、おなベル福祉協会から坪九万円とったわけでございますから、九万円と二万円との差額七万円も全部徴収するということでございまするので、これが全部行なわれれば、ベル福祉協会に売ったために差額を全部国庫に納めて、なお罰金のようにして五百五十四万円納めなければならぬ。こういうこうになるわけであります。
  207. 市川房枝

    市川房枝君 違約金、それから高く売ってもうけた分だけをはき出させるということは、国民の側から言いますれば当然だと思うのですが、しかし、楽石社自身一つの社会事業といいますか、そうして地所は買ったけれども金がなくて建物もできなかったというほどの団体であるとすれば、その四千何百万円という金はとれますか、とれないときには一体国はどうすることになりますか。
  208. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) とるつもりでございます。これは御承知のとおり、楽石社の歴史的な背景、またいままで実績があるわけでございますから、楽石社がそういういい仕事をやっているということで、法律の定めに基づいて半額減額をして売り払ったわけでございます。これは学校に売り払っても同じことであります。学校の校舎を建てるといって、そうして地方に払い下げて、学校が建つ金がなかったから、これを他のボーリング場に売り払ったという場合は、同じ問題が起きるわけであります。地方に公園用地として貸しておったにもかかわらず、それを別なところに転売をしたということになれば、当然同じ問題が起こるわけでございます。楽石社がその後どういうことをやっているかは、厚生省がきっとよく調べておることと思いますが、厚生省等とも十分話をしながら結末をつける、いずれにしても、国会で申し上げる国の利益を守るという立場から言えば、当然違約金を徴収しなければいけませんし、また差額は当然国が受くべきものという立場に立っておりますので、これに対しては決定をして令書を交付する、しかし、それによって破産をしてしまう、いままでやっている仕事も皆できなくなって、その楽石社の歴史が非常に汚点を受ける、また、これでその歴史的に長かったこの協会がおしまいになってしまうというような問題もあると思います。こういう問題に対しては、厚生省当局とも十分御相談をし、実情に合うことをやらなければいかぬと思います。いずれにしても、いま国有財産の当局としましては、違約金は契約どおり徴収をするというたてまえであります。
  209. 市川房枝

    市川房枝君 楽石社そのものに関してといいますか、社会事業団体として払えない場合どうするかという問題、これは別としまして、やはりこういうふうに国有財産を安く買って高く売るという例がほかにもあるのじゃないかと思いますが、そういうことのために、やはり大蔵省としてはこういう問題は厳格にやってほしいと思うのですが、ところで、この買ったほうは、国有財産だからそういうことがあるということを御存じであったと思うのですが、これは知っていても知らなくても、全然何もそれには責任はないわけですね。
  210. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 善意の第三者に移っておるわけでございますから、この社会福祉法人であるベル福祉協会に対しては、大蔵省としては何も問題はございません。国としても全然問題はございません。
  211. 市川房枝

    市川房枝君 それでいいのかどうかということにも多少の疑問がありますけれども、一応法的にはないということになれば、いわゆる新聞で、払い下げた国有地がマンションに化けるということは、これは所有者であった山下さんに対してはたいへんお気の毒だったということにもなるわけでして、それに関する限りは何もなかった、こういうことになるわけですね。そうすると、問題は、あとの厚生省の問題になりまして、厚生大臣に伺いたいのですが、このベル福祉会館は、三十六年度の予算で三千万円の補助金をお出しになっておるわけなんですが、そのとき、どういう目的でというか、どういう名目でお出しになっておりますでしょうか。
  212. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまの問題、少し詳しく御説明を申し上げたいと思います。たいへん誤解が多いようでございますから。  社会福祉法人日本ベル福祉協会というものは、三十六年の九月、法人の認可をいたしております。それから三十八年に、定款変更をして事業に着手しておる、こういうことになっております。この事業の内容は、ろうあ者の福祉会館を設置して、ろうあ者の収容、授産事業をやる、ろうあ者の通所授産事業−通勤ですね、収容してやるのと通っている方に授産事業をやる。それから、ろうあ者の宿泊事業及びろうあ者の更生相談事業を行なう、こういう事業内容でございます。そうして、認可をいま申し上げたようにされたわけでございます。この福祉会館の建設費の一部といたしまして、いまお述べになりました国庫補助金を三千万円きめまして、これは三十七年の三月に決定になっておりまして、いまお話しのございましたような三十六年度の金でございますが、そのときの申請は、福祉会館は、地下一階、地上二階、延べ約八百坪でございます。建設費の総額が一億九千五百万円、うち国庫補助金が三千万円、こういうことでございます。その工業費の内訳は、工事が二千六百九十二万八千円、それからこの初度設備費が三百七万二千円、こういうことになっております。この福祉事業を行なうための施設と同一の建物の中で収益的な事業を行なうことは、必ずしも適当と考えられない点もありますので、ろうあ者の福祉会館の場合にも、慎重に検討を加えてまいったのでございますが、それをいま申し上げるような理由で、事情やむを得ないということで、いまいわゆるマンションといわれるようなものを認めたわけでございます。それは、このろうあ者の収容授産施設に対しましては、いま申し上げましたような運営費の公費補助金がありますが、これの福祉事業については補助金の道がない。会館運営のための経費の捻出が苦しい。これを一般の寄付金のみにたよることは困難であった事情に加え、また、ろうあ者福祉会館の性格上、市街地に近接——市街地に設置せざるを得ない事情がございまして、しかも、土地の効率的な利用の見地から、二階だけではむだが多いということで、三階以上も建築し、これを分譲することによって、ろうあ福祉会館の建設費に充当したい、こういうことでございます。三階以上の建物の使用目的が分譲住宅であり、社会的な影響も少ないものと認めまして、また、建物の構造上施設運営に支障がなく、かつ、他の目的に使用されることもないと考えられたこと、なお、この事業によって本来のろうあ者福祉会館の経営に支障を来たすようなことはない、こういう観点から、三十六年に許可したものを、三十八年の定款変更によってこれを認めた、こういう事情でございます。
  213. 市川房枝

    市川房枝君 私が聞いているところでは、この三千万円の補助金というのは、全日本ろうあ連盟、これはろうあ者の全国的な一番大きな団体のようですが、その団体の三十五年の総会で決議して、そうして陳情をした。ちょうど池田総理の御親族にろうあ者がおいでになるとかいうので、非常に当時の総理が熱心に御努力になって、そうして三千万が補助されることになった。実は、ろうあ者たちは、現在の国立聴力言語障害者センター、これができたときに、これはもう自分たち一つの会館ができるのだ、ここで自分たちの会合もできるし、あるいは身の上相談なんかもそこでできるのだ、こう思っていたところが、できてしまったら、それはできない。こういうことで非常に失望をして、それではやはり私たち自身の会館がほしいのだ。まあこういうことで、その会長をはじめ、その団体の人たちは非常に骨を折ったと、こういうことを聞いておりますし、それから最初の三十六年の補助金の名称といいますか、これはたしか中央ろうあ会館建設補助金とかという名目であったと思うのですが、それがいまお話しのように、ベル福祉会館のほうにこれが与えられることになった。ベル福祉会館というのは、これはろうあ者の団体ではありませんね。その関係がどういうふうになりますか、それをちょっとお伺いしたい。
  214. 神田博

    国務大臣(神田博君) ベル福祉協会はろうあ者の、先ほど申し上げましたような授産施設をやるとか、あるいは寄宿舎をやる、あるいはまた身の上相談をやるというようなことでできたように聞いております。  それから予算を最初どういう事情でとったかということにつきまして、実は私、詳しく申し上げたほうがいいと思いますので、社会局長が参っておりますから、政府委員からお答えいたさせたいと思います。
  215. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) ただいまの国庫補助金三千万円の補助対象でございますが、これは社会福祉法人日本ベル福祉協会に対する補助対象というふうになっております。補助の費目は、ろうあ者福祉会館の施設費補助ということでございますが、補助の対象は、初めからベル協会というふうになっているわけでございます。
  216. 市川房枝

    市川房枝君 それは初めの予算がきまったときから、実際に金を補助したときまでに、ある期間があってその間に変更になっている、こういうことだから、いまお述べになったようになっていると思います。ところで、でき上がったベル福祉会館には、地階と一、二階を使って三階から六階までは、いま厚生大臣がおっしゃったように、碑文谷マンションとして、一区画七百四十万円から千三百四十万円で、二十四ブロックつくって、そうしてそれを売り出しておいでになり、それが一つの問題となっておるわけなんですが、大臣、会館ごらんになりましたか。
  217. 神田博

    国務大臣(神田博君) まだ私見ておりません。いまだ述べになったようなことは承知いたしております。聞いておりますから。
  218. 市川房枝

    市川房枝君 社会局長、ごらんになりましたか。
  219. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) 見ております。
  220. 市川房枝

    市川房枝君 でき上がれば、補助金を出している関係上、厚生省は会館の監査をなさることになるわけですね。まだ監査は済んでないんですか。
  221. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) ただいままだ工事が最終的に完成しておりませんので、完成しましたときには、私どもも、その辺の収支、経理事情は十分監査をした上で事業の開始をするように指示したいと、かように考えております。
  222. 市川房枝

    市川房枝君 私も見てきました。まあ七号の国道ですか、碑文谷国道のところに沿っていて、非常にすばらしいものでして、マンションの名前に値するほどのりっぱな建物で、びっくりしてしまったのですが、そのりっぱなマンションの正面の玄関、大通りに面した玄関の横に黒い石があって、それに「ベル福祉会館」と書いてあるのですが、そこの地下と一階、二階がそうなんでしょうけれども、玄関の正面に立って見ますと、これはマンションのところまでみんなベル福祉会館と思えるのですが、それからちょっと横へまいりましたら、ちょうど二階の辺の壁のところに、「碑文谷マンション」と書いてあるのですよ。だから、そっち側から見ると、ベル福祉会館というものはちっともわからないのです。みんな碑文谷マンションみたいに見えるのですけれども、まあとにかく非常にりっぱなんで私驚いたのですが、建設について、ろうあ者の人たち意見といいますか、というものが十分に取り入れられているかどうか。実は最近のろうあ者の団体の機関紙を私拝見したのですが、そうしましたら、全国にいる十六万人のろうあ者が、自分たちのベル福祉会館ができるのだというので一生懸命金を出し合って、といいましょうか、そしてその総額が五十七万六千五百円という金を集めて、理事長のところへ持っていったという記事が出ておりまして、私はほんとうに涙が出るような感じを持ったのですが、そういうろうあ者のいまの生活といいますか、その人たちの状態と、あのマンションを比べてみると、ちょっと少しマッチしないという感じを持ったのですけれども、まあしかし、それはりっぱなものならばけっこうはけっこうで、それを建築なさる御苦労はたいへんだったろうと思うのですけれども、これは社会局長、よくごらんになって御相談にも乗っておいでになるけれども、どんな感じをお持ちになっておりますか。
  223. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) 私も再三拝見をして、まあただいま市川先生の御説明、多少違うところがございますので訂正させていただきますが、正面のとろに「ベル福祉協の金文字の看板がございまして、横からマンションは入るようになっておりまして、そこに「碑文谷マンション」というあれが書いてあるようであります。  それはとにかくといたしまして、高級住宅を分譲するということは、これは社会福祉事業のいわば収益事業の一部でございまして、収益事業としてはいろいろな事業がございますが、実際の例としては、たとえば製かん工場とか、その他いろいろな工場を経営して、その収益を社会福祉に充当しているというようなのもございます。しかし、高級住宅の分譲ということは、ただいま御指摘のような、あまり、適当であるかというと、私どもも、その点は多少ろうあ者の事業との関連で問題点はあろうかと思いますけれども、しかし、ああいう都市、市街地、市内で自分の資産活用としては、低家賃の住宅とか何かでは、経費はどうしてもそこに充当することができない。建設費がちょうどオリンピックの工事等と関連して非常に多額になって、予定されたように寄付金が出てこないというそういういろろな事情がございまして、この際私どもとしてもやむを得ないことではないかということで承認をした、かような状況でございます。
  224. 市川房枝

    市川房枝君 まあ、りっぱなものができて喜んでいるろうあ者の人もいると思いますが、中には多少不満を持っている人もあるらしいことを、私はここに持っているのですが、「日本聴力障害新聞」というのが、全日本ろうあ者の団体の機関新聞でありますが、その一月号を見ますると、感想が出ているのですが、この一月号には、さっきの寄付金のような金額というところまではいかないで、三十万円集めると、「貧しいろうあ者のふところから、三十万円集めたことは大したもので、日本ベル福祉協会側も、全国中のろうあ者の気持を十分尊重して運営してほしい」云々と、こう書いてあるし、「しかし問題は同会館の内容で、必ずしも全日ろう連の要望にそっていない様である」云々ということをちょっと書いてありますし、それから、このベル福祉協会の常任理事の一人として会長が参加しているらしいのですが、それについて、こういうことを書いているのですね。それは会長は藤本さんというのですが、「藤本先生が日本ベル福祉協会の常任理事としてふみとどまっている限り、発言権を強化、一般のろうあ者の声をとりあげて、多くのろう者が利用できるような会館になるよう強く要望してほしい。」、「ふみとどまっている限り」というのはどういうことか、これはちょっと私は、これを読んで、はてなという気を持ったのですけれども、それからもう一人ほかにも、名前を出していないが、全日聾連某理事と書いてあるのですが、そこの中に、「日本ベル福祉会館に対する補助金三千万円は明らかに中央ろうあ会館建設補助と銘打って厚生省から支出されたものであるから、全国ろうあ者十六万の意見にそって建設されるべきだ。」云々、それから「三階以上がマンションビルでは利用価値が低くなる。だから三千万円でもよくそれにふさわしい建物をたてれば維持費もそれだけに少くなるのでしょうか。」というようなことが実は出ているので、私は、そういう点が心配になるわけなんでございます。だから、維持でさましたら、これは社会局といいますか、厚生省が監督官庁としてといいますか、あるいは三千万円も国民の税金がほんとうにろうあ者のために生きるように、ろうあ者の会館として気持ちよく、あるいは部屋なんかも無料で使えるように、厚生省のほうで指導していただきたい。  それから、ろうあ者の意思が会館運営に私は十分反映できるようなひとつ組織をつくるように、これは厚生省側からひとつおっしゃっていただくようにしていただきたいし、それから将来の維持費ですね、上のほうは、建築費のために売っておしまいになったら、あとちょっと入ってくる金は、貸してあるなら入ってくるから維持費に回せるのですが、その点もちょっと私は心配になるのですが、これは厚生省として、維持費の問題も私は心配をしていただきたいと思います。  それからベル福祉会館の理事長として御苦労なさっている山下さんにも、どうかそういうろうあ者の気持ちを十分生かしてやってくださるように、いろいろ御苦労なさったその上になお私はお願いしたいと思う。世間の誤解が私は事実をもって解消するようにお骨折りをいただきたい、こう思います。  なお、先ほどからの大臣のお話もありましたが、社会局当局に対して、私はさらに注文を申し上げたいのは、社会福祉法人が収益事業をしてもいいということであって、だから、ここはマンションといいますか、私はね、マンションということばにもちょっとひっかかるのですけれどもね。こういうものをなさっても差しつかえないといえばないのですけれども、この例が私はほかの結局社会事業団体なんかがまねることになるのじゃないか、将来。それだから将来こういうふうな収益事業として、やはりこう人の目に立つといいましょうか、あるいはまあ社会福祉施設の人たちと直接に交渉を持つようなこういう収益事業に対しては、厚生省としてはどういう方針で行政的な指導をするかということを、この機会にいまから将来に対してよく御検討くださるほうが、国民の疑惑を招かないようになるのじゃないか、せっかく社会福祉事業をやっていてくださる方の善意が、私はむしろ逆にそれで何かうまいことをして金もうけでもしているんじゃないかというふうに国民に思われるのじゃ、まことにお気の毒だと思いますので、ひとつそれをお願いしたいと思いますが、大臣いかがでございますか。
  225. 神田博

    国務大臣(神田博君) いまのお述べになりましたことは、私もまことに適切な御意見でございまして、同感の至りでございます。こうした社会福祉法人が、いろいろ事情があって事業を経営をするということは、これは私は好ましいことだと思っております。しかしその事業内容は、やはりあくまで社会福祉事業として説明しなくとも、すなおに世人にいれられていく、こういうものであって私はふさわしいのじゃないか、こう思っております。細々とした社会事業、これから大いに伸ばしてこれはいかなければならぬということでございますが、その上にデラックスのものにあぐらをかいておるようなかっこうは、これをおつくりになった事情がいろいろあっても共鳴できない感じがいたしています。今後こういうような問題で、監督なり行政をとっていくたてまえから、ひとつ基本的に考えまして、そうしてそういう言わけ的な説明をしなくとも、やはり社会事業としてふさわしい仕事をやっておる、あるいはまあそうした施設に入った方々が、もう就職もできるのだ、あるいは職業補導もできるのだというような、何か通ずるものがほしい。こういうふうに考えまして今後のひとつ監督指導に当たってまいりたいと思います。その他のことは政府委員からひとつお答えいたします。
  226. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) ただいまの大臣の御答弁で尽きていると思いますが、事務当局といたしましても、ただいまの先生の御趣旨十分拝聴いたしまして十分に指導をしていきたいと、かように考えております。
  227. 市川房枝

    市川房枝君 それでは次には、いま行くえ不明になおなっておられるまする同僚議員の辻政信氏の件について、外務大臣にお伺いしたいと思います。辻政信氏は、この六月一日で任期が満了となり議席がなくなりますので、この際、長く同じ無所属の控え室におりました私から、御家族並びに同氏の支持者であった六十八万余の全国の有権者の方々にかわって、責任者である外務大臣にお伺いしたいと思います。  この間、三月十八日に外務省顧問の松本俊一氏が特派大使としてインドシナ地方へおいでになったようですが、同地方で行くえ不明に辻さんはなられたのですけれども、同氏の、松本さんの任務の中にひとつ辻さんの問題も入っておりますかどうですか。それを伺いたい。
  228. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 松本俊一氏の旅行は、最近のベトナム並びにインドシナ三国の情勢がだんだん複雑な様相を示してまいりましたので、各三国の駐留の在外公館から逐一詳細な情報は受けておりますけれども、インドシナ全域にわたってさらに一段高い見地からながめた情報に乏しいのでございます。かたがたあの地方の情勢をまのあたり見て、そして詳細な事情をよりよく知りたい。こういうので特派大使、顧問として派遣をしたのでございまして、辻政信議員の消息につきましては、これは特にかような措置を講ずるまでもなく、いかなるささいな情報でも手に入れば、直ちに報告を受けるということになっておりまするので、その仕事は松本氏の任務ではございません。
  229. 市川房枝

    市川房枝君 そうしますとまあ受け身で、まああれば聞くけれども、なければないでそのままと、こういうことですか。
  230. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 何ぶん旅行の日限にも限りがございまするので、これは少しくこの際無理でございます。従来とも各在外公館をして、辻議員の消息については、あらゆる情報を入手して通知をするようにいたしてございまするので、その任務は特に課することがなかったのでございます。
  231. 市川房枝

    市川房枝君 まあ特別な、特別なといいますか、さっき大臣のおっしゃったような任務をお持ちになっておることは、私どもよく承知をしておりますけれども、どうせ在外の公館においでになり、向こうの人たちにお会いになるのだから、そういう機会にやはり辻さんのことも聞いてくださるということくらいの心づかいは、私はあっても当然じゃないかと思うのですけれども、どうもいまの大臣の御答弁、もちろん当然平生からやっておるからということだけでは、私は少しあまり満足できないんですけれども、まあそれはもう少しあとでまた申し上げましょう。  辻氏は三十六年四月一日の本院の本会議で請暇の許可を得て、公用旅券で四月四日に羽田を出発して、インドシナ四国へ旅行されたわけですが、これは辻氏は個人の見物旅行ではなくて、その当時の外務当局、政府当局とある程度の連絡があり、現在重大問題となっているベトナムなどの問題にもある程度関連があったのではないかと、私には思える節があるのですけれども、外務大臣どうですか。そういうことをお認めになりますか。
  232. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) お答え申し上げます。  御指摘のように辻先生は、四年前に公用旅券で東南アジアのほうに行かれるということで、外務省に旅券を申請されておりまして、主たる目的は先生御自身、あちらの方面の事情を調査されるということになっております。
  233. 市川房枝

    市川房枝君 まあいまになってそういうことを伺っても、それは関係あるとはちょっとおっしゃりにくいから、まあそういう答えを伺おうとするほうが無理かと思うのですけれども、大体、海外にいる日本人生命財産を守るのは、外務大臣の任務ですね。一般の国民の場合でも行くえ不明になった場合には、外務省は全力を尽くして捜査をすべきでありますが、特に辻代の場合は、国会議員であり、重要な任務を持っていられたと思われるので、その行くえ不明になってから四年近くなるのですが、ここ一年半というものは、何にも情報を外務省からもらっていないといいますか、外務省はそのままほうてあると、こう言ってもいいんだと思うのですけれども、一体どんなふうにいままで調査をしてくだすったか。これは政府委員からでけっこうですが、一通りおっしゃっていただきたいと思います。
  234. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 辻先生が昭和三十六年の四月ごろビエンチャンの北方百二十キロでそれ以後消息がございませんので、外務省といたしましてはラオス、カンボジア、タイ、ベトナムの在外公館に指令いたしまして、先生の消息について何らのちょっとした消息でもあったら至急知らせろということで、その後逐次その訓令はリマインドしている次第でございます。かたがた、赤十字を通じまして中共の紅十字会等にも連絡しております。それから、辻先生の御子息がたしか一年半ぐらい前に現地に行かれて、いろいろ情報を集められてまいりましたが、これにつきましても、在外公館におきましてできる限りの御後援をしたのでございます。大体以上のとおりでございます。
  235. 市川房枝

    市川房枝君 辻氏の消息が不明になってからのことについて、国会の事務局は非常に親切だった。しかし、外務当局は本省はじめ出先機関も不親切だった、非協力的であったということは、家族の持っておいでになる不満のようです。それで同じ国会議員でも、もし自民党の幹部の方が行くえ不明になったというんだったら、大騒ぎしてさがしてくださるでしょうけれども、辻氏は無所属で——私どもも同じ立案なんですけれども、なんで結局あまり力を入れてもらえないと、まあ不親切じゃないかというふうにちょっとひがみたくもなるんですけれども、外務大臣どうですか。そういう印象を与えているということについて、どうお考えになりますか。
  236. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来の取り扱いぶりに関して、何らか非常な御不満の念を与えておりましたとすれば、まことにそれは遺憾でございますが、ただいま官房長から説明申し上げたように、決して問題をなおざりにしておったわけではないのであります。しかし、さような印象を与えましたことにつきましては、何らかやはり至らない点があったのであろうと遺憾に考える次第であります。
  237. 市川房枝

    市川房枝君 六月一日以後になりますというと、辻氏は一国民という立場におなりになりますが、外務省はその後の同氏の捜査についてどういうふうにしてくださるんでしょうか。
  238. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省の任務といたしましては、日本の国民の海外における生命の安全をあくまで守るという任務にあるのでございますから、たとえ一国民になったといたしましても、決してその間に差等を設けるつもりはございません。
  239. 市川房枝

    市川房枝君 実は御家族は、いまの現状のもとに行くえ不明だというままではほんとうにつらい、だから推定でもいい、生きているかもしれない、あるいは死んだかもしれないというような推定を、外務省から何かもらえないだろうかというような希望もありますけれども、外務省いかがですか。
  240. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) お答えいたします。  御家族の御心労は非常に御同情にたえないと思いますが、現在われわれ外務省といたしまして、全力をあげて消息を探求しておりますし、大臣から先ほどいままで御答弁になって、六月一日以後も同じようにもちろん消息の究明には尽くすわけでございます。したがいまして、現在われわれといたしまして、どうであるかということは、われわれとしてはできるだけおさがし申し上げたいという以上には、お答え申し上げられないと思います。
  241. 市川房枝

    市川房枝君 まあ、さっきちょっと申しましたけれども、外務省は御家族に対して、直接いままで一度も連絡をなさったことがない。これは国会を通じてだからそれでいいと、こういうことだったかもしれませんけれども、六月一日以後は直接連絡をしていただかなければならぬし、その点も念を押しておきたいのですが、よろしいですか。
  242. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) いままでも、国会の事務局と密接に御連絡申し上げたのは当然でございますが、御家族の方とも、担当の課長が密接にいままで連絡しておりまして、今後ともわれわれも  ちろん直接御家族の方と御連絡いたしたいと思います。
  243. 市川房枝

    市川房枝君 次に、それじゃ国会の事務局にちょっと伺いたいのですが、辻氏の行くえ不明中の歳貿等の支払いは、どうなっておりますか。これは国民の中にそういう点を心配しておる人もありますので、この際はっきりしておいていただきたいと思うのですが。
  244. 河野義克

    ○事務総長(河野義克君) 辻氏は、六月一日まで参議院議員の身分を保有しておられますから、当然歳費はお支払いいたしておるわけであります。
  245. 市川房枝

    市川房枝君 それは歳費だけですね。ほかのいろいろな手当とか、いろいろなものは何もないわけですね。
  246. 河野義克

    ○事務総長(河野義克君) 国会議員が受けるべき給与のうち、国会議員の身分があれば、当然受けるべき給与は支給をいたしております。出席等のことを条件としている手当等は、支給しておりません。詳しく申し上げますれば、歳費、通信手当、閉会中の審査雑費、これは支給しております。滞在手当等は支給をいたしておりません。
  247. 市川房枝

    市川房枝君 まあ辻氏は衆議院、参議院両方合わせますと、ちょうど十二年にこの六月一日でおなりになるわけですから、そうすると年金をお受けになる資格があるわけだと思いますが、それはどうなるのでしょうか。
  248. 河野義克

    ○事務総長(河野義克君) 御指摘のとおり、六月一日以後衆議院、参議院を通じまして、辻氏は十二年余の議員としての在職期間を持つことになりますから、当然国会議員互助年金を受ける資格を持っておられるわけであります。その後の具体的な手続等については、一応は承知しておりますが、その手続に当たるのは、内閣の恩給を所管しているほうでやりますので、責任ある立場としては差し控えたいと存じます。
  249. 市川房枝

    市川房枝君 互助年金の何か規定には、御本人が申請をしなければいけない、もらえないということになっていると聞くのですが、そうすると、御本人がいらっしゃらないから、それももらえないということになりますね。それからまあ、まだ不明なんだから、もちろん御家族の方にも何もいかないということになりますね。
  250. 河野義克

    ○事務総長(河野義克君) 受けるべき資格があることはさいぜん申し上げたとおりであります。そういう権利を現実に発効せしめ、年金を受給するにつきましては、その手続が必要でございます。もちろん関連のあることでありまするから、私といたしましても大体は承知をいたしておりますが、その手続の執行等について現実の責任をにのうておるのは内閣の思給を所管する部局でございます。したがいまして、本委員会のごとき責任ある立場といたしましては、その所管の部局にお尋ねいただきたいと思います。
  251. 市川房枝

    市川房枝君 思給局の方に来ておっていただかなかったから、ちょっとはっきりしたことがわかりませんけれども、御家族としては、生死の問題で非常な御心配をなさっている上に、経済的にも六月一日後は影響をお受けになることになるわけでして、そういう点も御考慮くださって、外務省のほうはひとつ行くえの捜査について一そうの努力を私はしていただきたい、それを特に外務大臣にお願いをいたしておきます。  それから次に、辻氏の問題に関連しますけれども、海外においての日本人の行くえ不明になっている人がいま何人くらいいますか、それをちょっと……。
  252. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 海外旅行中に行くえ不明になった邦人の数はどれくらいか、こういうお尋ねでございましたが、ただいまのところ承知する限りにおいて、終戦後アジア地域において海外旅行中に行くえ不明になった邦人数は、辻議員一人のみでございます。
  253. 市川房枝

    市川房枝君 人数は私は案外あるのじゃないかと思っていたのですが、それならたいへんけっこうといいますか、少なくていいんですけれども、いま海外旅行ブームでたくさんの日本人が海外に出ていっておられますが、そういう人たちの生命、財産、これはやっぱり出先の公館がその保護をしてくださることになりますね。一体、具体的にどういうふうな手続でといいますか、どんなように生命、財産を保護をしてくださっているか、これは政府委員の方でけっこうですから、ちょっと伺わせていただきたい。
  254. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 海外に旅行される方は、本省でパスポートを受けられまして、外務省等の公の仕事等につきましては外務省に連絡がございまして、それから個人の資格で行かれる方でも、外務省に一応連絡をしてこられる、ないしは現地の在外公館へ——それ以外の方もいますが、戦前と違いまして、三カ月以上ないし二カ月以上その外国のある地点にとどまる人は、戦前は行政的に在留届けを出していただいておりますが、現在はその制度はございませんが、大体在外公館には連絡いただける場合が多いかと思います。それで、公的な、ないしは社用の、会社、銀行等の仕事でやっておられる方は、大使館、領事館と密接に連絡がございまして、この方のいろいろな保護と申しますか、生命、財産はもちろん、その他仕事上の御援助は申し上げておりますが、ただ、大使館、領事館等に連絡なくして旅行されているような場合、これはちょっとわれわれとしてはすぐには保護申しかねることがございます。しかし、病気になられたりないしは事故でおけがをされるという場合には、現地の官憲から、ないしは御本人から連絡を受ければ、そのケースによりましてあらゆる援護ないしは保護をしているわけでございます。ただし、在外公館のアドバイスなり意見に従わずにいろいろ行動される方がございますが、その方々に対しては、われわれとしては、強制的にこうしろとか、こうしちゃいかぬと言うわけにはまいりません。しかし、結果的にまずい事態が起こりましても、われわれとしては、これはあらゆる角度から御援助を与えておる次第でございます。
  255. 市川房枝

    市川房枝君 私たちが知っていることで言いますと、海外へ行っても、公館といいますか。大公使館あるいは領事館なんか全然寄られないで行く人もたくさんあるのですけれども、そういう人たちを一体どうなさいますか。そういう生命、財産を保護すると言ったって……。
  256. 高野藤吉

    政府委員高野藤吉君) 御承知のとおり、パスポートを持ってまいりまして、日本人であるということがわかりますと、現地の官憲がそれ相当の保護を与えております。それから、それ以上に何か病気になられたり事故があったりお困りになることがあった場合には、現地の政府ないしは、御本人から連絡を受けますれば、われわれとしてはできるだけの御援助、御保護申し上げておるということでございます。
  257. 市川房枝

    市川房枝君 まあ受け身だということですね。何か事故が起こって警察なりほかから外務省へ来れば、それで対策を講ずると、これじゃちょいと心もとないのですけれども、何か外務省は、日本人の海外の生命、財産をなんと言われると、えらい責任を持っておってくださるようだけれども、実際からいうと何だかたよりない気がしますけれども、まあそれは私の意見です。  外務大臣、じゃけっこうです。  次は、家庭生活問題審議会と婦人問題連絡会議について、総務長官、労働大臣にお伺いしたいと思います。  政府は、今度総理府に、家庭生活問題審議会というのと、それから婦人問題連絡会議というものを設けることになすったようで、現在審議中の四十年度予算の中に、家庭問題のほうは予算として四十二万四千円、連絡会議のほうは二十万円が計上されておるようであります。名前だけ聞きますと、佐藤内閣は婦人関係の問題に非常に熱意を持っておってくださるみたいに思えるのですが、しかし、金高を見まするというと、三兆六千五百八十億の総予算の中で、たったスズメの涙ほどもないこれっばかしということで実は婦人の中にはこれでは女を侮辱するものだと言って憤慨している連中もおります。そこで、実は総括質問のときに総理から婦人対象の行政についての御意見を伺おうと思っておったのですが、実は時間がなくて伺えなかったのですが、この二つの会議は、これは臼井総務長官の所管なんですが、そこで家庭生活問題審議会というのは四十二万四千円で一体何をしてくださろうとしているのか。私は売春対策審議会委員をしておったのですが、あれはもうちょっと多いのですよ。それよりも少ないこれだけの金で一体何ができるのかと思うと、心配なんです。ちょっと教えてください。
  258. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) お答え申し上げます。  御指摘のように、家庭生活問題審議会にいたしましても、それから婦人問題連絡会議のほうにいたしましても、見ようによっては必ずしも予算が多いとは申し上げられないと思いますけれども、しかし、連絡会議のほうは、私のほうで、総務長官が会長になりまして、関係各省の次官が出席いたしまして、そして婦人問題等につきまして行政が効果のあるように連絡するというのが仕事でございますから、予算はそうたいして必要ございません。ほんとう会議のいわばお茶代というようなものでございます。それから、一方家庭生活問題審議会、これも、最近の婦人問題がますます重要性を加えますので、そこでいわば家庭の一つのビジョンを打ち出してもらうようにひとつ審議をしていただきたい、こういうことで審議会をつくりまして、もちろん家庭生活の中におきまして、重要な婦人問題、それから青年の問題、これらが当然含まれるわけでございます。で、仰せのとおり、予算は多いほうがよろしいわけでございますが、これも初年度でございまするし、したがって、ごく節約してやっていく審議会のたてまえから申しましても、一応これだけあれば何とかやれるじゃないか、ほんとうのやはりこれは会議費でございまして、委員は大体二十名程度でございます。なお、その間に予算が、たとえば会議費でもよほど足りぬという場合には、ほかにいろいろ審議会等がございまして、中には多少余裕のできる審議会もございますので、そちらのほうからも、もし不足が多少でも生じれば、弾力的に運用ができるようなふうに聞いておりますので、一応その線で了承いたした次第であります。
  259. 市川房枝

    市川房枝君 あの家庭生活問題審議会というのに対して、まあ婦人の間では、一体何をなさるのかしらんと、これは経済企画庁のほうには国民生活向上対策審議会というのがあるので、そうするというと家庭生活問題のほうは人的関係だけになるわけですか、いわば親子関係、あるいはしゅうと、しゅうとめの関係なんというような、そのことになる、それじゃ文部省のこれは所管になっちゃうのだけれどもと言って心配している向きもありますけれども、まあそういうことにならないようにひとつお願いをしたいと思います。これは注文だけちょっと申し上げておきます。  それから、もう一つの婦人問題連絡会議ですけれども、これは労働省の設置法の第三条の「(労働省の任務)」という中に「三」として「婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整」ということが入っておって、そうしてそれをするのが婦人少年局になっているのですが、私はこれは明らかに重複するといいますか、その婦人少年局でやっているのに、またできるということは、別のことばで言うと、これは婦人少年局でやっていないのだ、婦人少年局不信任だ、こういう意味にとれなくもないのですけれども、これは労働大臣、少し侵害されているわけですけれども、いかがですか。
  260. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は必ずしも、婦人少年局に対する不信とも、あるいは重複しているとも受け取っていないのでございますが、おっしゃるとおり、設置法には、婦人の地位及び婦人の問題についての調査、連絡調整ということはございます。今度の婦人問題連絡会議は、そのまま婦人問題全般に対する行政的効果をあげるために、また各省にまたがっておりまする婦人の問題についてのまあ広い視野の上に立っての連絡をやっていただくというふうに受け取っている、あるいは、この設置法上というか制度上、ことばの上で重複があるように見えますが、必ずしもそうでないと思えますことが一点。いまひとつは、この問題は、いろいろ言われますけれども、言われるとすぐ消えます。したがって、できるだけ大きくたびたびいろいろなことから取り上げていただくことが、世人の関心を高揚し、かつ持続させることにも相なろうかと存じまして、賛成をいたしたわけであります。
  261. 市川房枝

    市川房枝君 考えようによれば、私も、婦人少年局の中にある婦人問題の連絡調整というのが一つ格上げされて、総理府にまで上げられたと、こう考えれば、それは広くなる、重要さを増したということになって、必ずしも反対をする理由はない。私もそう思うのですが、ところで私、やはり婦人の問題は、これは総理府にありますと、総務長官にも申し上げたいのですが、やはり男の方々が審議会の方が御苦労でもやってくださるわけですが、やはり婦人少年局のほうの職員が実際には事務的なことは担当なさるほうが、重複もしないし、かえって内閣のほうもいいのではないか。これは運営の問題ですけれども、これは家庭生活問題審議会についても言えると思うのですけれども、やはり家庭の問題は、婦人のほうがその問題について一番関心が深いのですから、適当な婦人の方にそれを分担させる、事務的にさせる、あるいはどこかの役所からも婦人の人を出向させるというようなことをひとつ考えていただけるといいと思うのですが、いかがですか。
  262. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) ただいまの御質問、御意見、まことにごもっともでございまして、ただいま労働大臣のお話がございましたように、労働省の婦人少年局におきまして各省庁間の連絡調整の機能を果たすように法律的には規定されておりますが、ただその中に、他省が法律に基づいてその所掌に属せしめられた事項については、これを妨げるものでない、こういうただし書きみたいなものがついているものですから、したがって各省においては、それぞれの立場から、やはり婦人青少年問題を、相当に重要な問題でありますから、取り扱っております。そこで、今度総理府におきましては、さらに、いわば労働省の婦人少年局のお仕事の機能を一そう発揮できるように、くだいて言えばむしろお手伝いするというような平たい気持ちもありまするので、そこで庶務的な問題は、いまお説のとおり、労働省の婦人少年局と十分連絡して、そうしてそういう間にそごのないように、一そう局の仕事の能率をお上げ願えるように、私のほうでも連絡調整のほうに一そう努力したいと思っておりますので、どうぞひとつ御安心いただきたい。
  263. 市川房枝

    市川房枝君 労働省に婦人少年局があって、労働大臣は婦人少年行政の責任を持っていてくださるわけですが、その婦人少年局の行政について、どんなふうにお考えくだすっておりますか。もっとも、現在の婦人少年局批判ということでありますと、ちょっと御無理でしょうけれども、大臣の平生の婦人少年行政についてのお考えなら、伺えますね。
  264. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 婦人は、言うまでもなく全国民の半分を占めておりまするし、それから同時に労働力という観点から見ますと、現在すでに六百万人をこえているのであります。したがって、近代社会としてのわが国の中における地位の向上、確立ということは、国の基本的政策の一つでもあると考えておるのでありますが、それが一省の一局にあるということはむしろ過小過ぎると考えております。そういう意味において、先ほど申しました大きな視野から問題を取り上げることは、そういう意味の大きな前進であると考えておるのであります。  また、年少労働に対する問題でございますが、これは、一つにはわが国の産業の将来のにない手であり、と同時に、もう一つには、教育管理の対象として、きわめて微妙な要素をたくさん含んでおるのであります。特別な考慮と対策が必要であると考えておる次第であります。
  265. 市川房枝

    市川房枝君 婦人少年局は、終戦後の新しい婦人のための、あるいは少年のための役所で、唯一の婦人局長をはじめ、優秀な婦人の職員が多数おりますので、私どもはそれを一つの誇りとして今日まで来たわけであります。したがって、行政整理のたびに婦人少年局が問題になってまいりましたときに、一生懸命反対運動をやってきたのですが、最近はずっとそのまま安定をしております。ところが、一方、終戦後二十年近くになりますと、安定をしてきたかわりに、だんだん、私どもから言わせれば——これは批評することを許していただいて——前よりも少し官僚的になってきた、あるいは事務的になってきた、あるいは清新さといいましょうか、新しさがなくなってきた、少しマンネリズムになってきたということなんかを実は感じているわけなんですが、そこで、そういうことを改めるために、私の希望一つ申し上げれば、これは労働省内での人事の交流というものを、これは幾らかあることは承知しているのですけれども、あの程度でなく、もう少し交流をひとつやっていただくことが、婦人少年局のため、それから働いている人たちのためにもいいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  266. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 労働省内の人事の交流もむろんやっておるつもりでおりますが、ポジションの特殊性その他から見まして、そう広範囲になかなかできない面もございます。私は、近来特に心がけたいと思いますのは、各省庁内に婦人の優秀職員がたくさんおいででございます。それとの相互の交流ということをぜひやりたい。これがやはり、いまの御批判を打開する道では、なかろうか。最近も一、二の人についてそういうことを実行いたしましたが、これからもやってまいりたいと思います。  確かに、二十年に近い歳月がたちました。だけれども、婦人問題の特殊性から考えますと、これは十年や二十年で安定感を持っては困るのでありまして、むしろ、もっと長い期間にわたってパイオニアシップを持ち続けてもらう。そのためには、常にやはり新しい血液を注入する考慮が必要だろうと考えておる次第であります。
  267. 市川房枝

    市川房枝君 婦人少年局が弱いといいますか、弱いのは、執行すべき法律を持っていないということなんですが、そのかわり、私は、婦人並びに年少労働者に関するいろいろな問題点がある。ところが、大臣も御存じのとおり、婦人と年少の問題は、これはいろいろな役所に関係があって、みんななわ張り争いだ、行政が切れ切れになっておる。そこで、きょうは、ほんとうは総務長官に年少行政も伺おうと思ったけれども、時間がないから省きましたけれども、そこで私は、むしろ、今日の行政の組織の上では、婦人少年局が婦人問題、ことに婦人の勤労者の問題あるいは年少労働者の労働についての、全体的から見たいろいろな問題点というものを取り上げて、そして局長を通じて省内に、あるいは大臣を通じて他の省といいますか、いま大臣は、人事交流での他の省との間とおっしゃったこと、たいへんけっこうで、ぜひそれを進めていただきたいと思うのですが、そういう役割りを婦人少年局にもう少し与えてくださると、私はだいぶ空気が変わってくると思うのですが、それはいかがでしょうか。
  268. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 婦人の問題、特に年少労働者の問題を加えた婦人労働の問題、これは社会的に大きく取り上げられるようになりましたのは、何と申しましても戦後であります。それだけに、問題の取り上げ方が片寄ったり、あるいはまた、取り上げられるのを忘れたりした問題がございます。これは労働行政一般にも言えることでありますが、これを全体として整理をいたしまして、おもな問題点がどこにあるかということを整理をいたしまして、その中から婦人労働、年少労働の問題を取り上げていきたい、一度総ざらいをして、残っている問題はどこにあるかということをあげて、長い、少なくとも五年くらいの視野で検討することが必要なときに来たと、こう考えておりまして、その検討を事務当局に命じているものでございます。いろいろ批判はございますけれども、いままで市川先生よく御存じのような環境のもとにあって、それ相応の、あるいは相応以上の行政効果はやはりあげてきた、このように私は、身びいきかもしれませんけれども思っているのであります。  ただ、何と申しましても、一セクション、局でございます。そうして、おまけに、これは忌憚のないことばで申しますと、予算要求あるいは予算承認その他の規模がマル一つちょっと違うような感じを私は責任者としていつも持っております。これはマル一つ大きくした視野に立っていろいろ考えていきたい。まあしかし、婦人少年局が始めましたいろいろの制度は、ぼつぼつではありますが、生きつつあると先生お認め願いたいと存じます。
  269. 市川房枝

    市川房枝君 いや私は十分それは認めているつもりです。  婦人労働関係について少し伺いたいと思ったのですけれども、時間がありませんので、最後に一つだけ、非常に私が心配していることをちょっと申し上げます。  それは、いまちょうど就職シーズンで、毎日の新聞によると、地方から中学卒業生なんかが集団で東京へやってきます。それはまあ地方の職安が心配をして、そうして東京では職安が迎えに行って、そうして雇い主——中小企業、零細企業者の手元に届けてくださるのですが、そこまではいわゆる政府機関が心配してくださるのですけれども、それから先がどうなっているのか。私が承知している限りでは、その住み込みの、そういう中小企業なんかにいる子供たちの定着率といいますか、非常に少ない。数字にも出てきていますけれども、数字に出ないもう少し下のほうはもっと悪くなって、それで、そういうのが住み込みであるだけに、飛び出して、そうしたら今度は行きどころがない。それで結局は、私は、チンピラやあるいは暴力団だとか、男の子はそういう方面へまあ落ちていく。女の子ならば、やはりサービス業から売春に落ちていくということが相当あるのじゃないか。だから、そのあとですね、東京へ連れてきて、あとのめんどうは一体どこが見ているか。この心配は、それぞれのいろいろな関係の役所もありますけれども、やはり労働省が私は最後まで考える、そうして、ほかの関係の各省庁に、そういうことを申し入れるというか、それは大臣が閣議でもってそうおっしゃっていただきたい。私はこの前も予算分科会でこれは申し上げたのですけれども、たとえば、そういう子供たちの宿舎がないのですよ。安くて安心して泊まれる宿舎がない。いまの東京じゃ、わずかばかりの給料をもらっている中学卒業生なんかは、それは部屋がないのです。結局、まあ食べさせてくれ泊めてくれるようなところへ落ち込んでいくということになってしまうのであって、そういうことをひとつこの際、特にああいう子供たちの写真なんか見るたびに、私はそのことがどうも心配でならないのですけれども、ひとつそのお考えを伺いたい。
  270. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 最近は、労働条件が整備してないところへは、なかなか年少労働者が参りませんので、いわゆる住み込みというような状態は漸次減ってまいりました。それぞれの中小企業で、あるいは同業組合、地域組合等で共同の宿舎、住宅を建てるようになってまいりました。しかしながら、定着率が低いことは、これは事実であります。この集団就職いたしましたあとは、職業安定所と基準監督署が連絡をとりまして指導に当たっております。当初の労働条件と違うところがないか、あるいは労務管理上、基準法違反の事実はないかというような点については、厳重に監督をいたしている次第であります。また、しんぼうできなくなって出ていく場合、御指摘のように、転職先がどうもいかがわしいような、いま現在の時点においていかにもよく見えても、長い目で見るとよくないところへ移っていく場合が多い。たとえて申しますと、パチンコ屋なんかへ行く場合が非常に多いのであります。それがいままでは、どうもこちらの手も届かなかったせいもございますが、一見その賃金は高い、一見労働時間は短いというようには見えましても、年少、婦人の深夜労働あるいは超過勤務という事例がございますので、三月十日から、そういう業態に対する基準行政上の集中的な監督を行なっている次第でございます。  また、住宅の問題、住みかの問題でありますが、中小企業の従業員の住みか、これはまあ、やめて一時泊まるところという意味は、これはなかなかむずかしいのでございますが、中小企業に働いている人たちが休暇を過ごしたり、あるいは、そこから通ったり、いろいろするために、今年度は、五億六百万円ばかりのレクリェーション・センターの設置も認められました。漸次拡大してまいりたいと思っている次第でございます。
  271. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 市川君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明二十三日午前十時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十一分散会