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1965-03-16 第48回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十六日(火曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      稲葉 誠一君     大森 創造君      米田  勲君     鈴木  壽君      鬼木 勝利君     浅井  亨君      高山 恒雄君     曾祢  益君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 久保 勘一君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 竹中 恒夫君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 大森 創造君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小林  武君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 浅井  亨君                 中尾 辰義君                 曾祢  益君                 田畑 金光君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        労 務 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  河野 一郎君        国 務 大 臣  高橋  衛君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        人事院総裁    佐藤 達夫君        警察庁長官    江口 俊男君        警察庁交通局長        事務代理     鈴木 光一君        防衛政務次官   高橋清一郎君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁教育局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        跡衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁参事官   麻生  茂君        防衛施設庁総務        部会計課長    大浜 用正君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        大蔵省銀行局長  高橋 俊英君        国税庁長官    吉岡 英一君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        厚生省保険局長  小山進次郎君        社会保険庁医療        保険部長     坂元貞一郎君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬郡  巖君        運輸大臣官房長  堀  武夫君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  鮎川 幸雄君        建設省住宅局長  尚   明君        自治省行政局長  佐久間 彊君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、鬼木勝利君が辞任され、浅井亨君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。田畑金光君。
  4. 田畑金光

    田畑金光君 私は、初めに大蔵大臣山陽特殊製鋼の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、山陽特殊製鋼倒産は、設備投資の行き過ぎと販売競争の激化、業界の不振、特にワンマン社長放漫経営による経理内容の悪化によるものと言われておりますが、特に問題なのは、同社がこの数期にわたる実質赤字にかかわらず、毎期相当額利益金を計上して、一割ないし一割二分の配当をやってきた粉飾経理の問題であります。粉飾経理というのは、企業公共性社会性から見ても、投資者保護立場から見ても許されないことだと見ておりまするが、これは証券取引法を所管しておられる大蔵大臣にも私は責任もあると考えております。  まず、この粉飾経理をどうなくするかという問題について大蔵大臣の見解を承っておきます。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 山陽特殊鋼倒産原因は、積極経営一つ原因であります。同時に、二、三年前から特殊鋼業界が不振であったという問題もございます。いろいろ問題がございますが、はなはだ遺憾なことだと思います。粉飾経理、いわゆるタコ配というようなものにつきましては、公認会計士制度もございまして、公認会計士がその経理内容に対して監査報告をいたしておるわけでございますが、いまの制度企業膨大になっておる現状に顧みて必ずしも適切でないということで、公認会計士の責務の重大さにかんがみまして、公認会計士制度拡充等十分検討しなければならないと思います。  なお、粉飾経理を行ない、タコ配をやった企業責任者は、他の法規によってその責めを負うという法律的な制裁がございます。
  6. 田畑金光

    田畑金光君 私は、一番大事な点は証券取引法に基づく企業経理監査ということについては、証券取引法の二十六条によって大蔵大臣権限にあるわけです。この問題を忘れては問題の処理にならぬと考えますが、この点はどうでしょうか。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公認会計士制度の問題に対しては、ただいま申し上げたわけでございます。現行監査基準等につきましては、企業会計審議会にはかった上、所要の改正を行なわなければならないと考えております。先ほどから申し上げておりますように、いまの公認会計士制度では、企業膨大化に対処できないという問題がございます。でございますので、これらの問題を十分現状を把握して、より合理的な公認会計士制度をつくっていかなければならないということでございます。現在は個人契約ということになっておりますが、共同監査契約というようなことも考えられるわけでありますし、公認会計士に対する懲戒処分をさらに徹底するということもございますし、監査日数報酬等に対しても検討しなければなりませんし、公認会計士協会というものをより強く制度化して、この協会の力で企業経理監査をより厳重に行なうというように、制度上も強化をする必要があるということで、現在検討いたしているわけであります。
  8. 田畑金光

    田畑金光君 いつごろをめどにして具体化されるわけですか。またさらに、それは当然公認会計士法改正その他になるわけでありますが、いつごろをめどにして大蔵大臣としては考えておられるのか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) できるだけ早い機会に結論を得たいと考えます。現在上場しております優秀な企業が何年間にわたって粉飾決算を行ない——公認会計士の問題や証券取引法に対していろいろ議論があるところでありますから、十分検討して早急にめどを立てたいと思います。
  10. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣は昨年末、衆議院粉飾決算については、企業経営者責任確立が前提だが、企業定期監査はぜひやらなければならない、そのためには証券取引法公認会計士法改正する必要があると答弁なさっております。いまの御答弁公認会計士の問題だけを取り上げておられるわけです。これも私は重要な問題だと思っておりまするし、当然やってもらわなければならぬと思っておりますが、証券取引法についてはどのようにお考えですか。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 証券取引法改正案も現在国会で御審議中でございますが、これをもって足れりと考えておるわけではございません。証券取引法につきましては、非常に内容膨大でありますので、第一次改正、第二次改正、第三次改正というようなめどをつけていま検討をいたしているわけでございます。証券取引所権能をどうするか、また、いまの公認会計士との調和をどうするかというような問題は、非常に微妙な問題がたくさんありますので、これらの問題は、第二の段階において早急に結論を得たいという考えを持っておるわけであります。
  12. 田畑金光

    田畑金光君 粉飾決算というのは、大蔵大臣、単に山陽殊製鋼だとか、あるいは去年の年末つぶれた日本特殊鋼だとかいうだけでなくして、今日の上場会社はほとんど大なり小なり粉飾経理をやっておると言われているわけです。なぜこんなことをやらなければならないのか、どうお考えになりますか。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) なぜやらなければならぬのかという問題になりますと、いろいろな原因があると思います。ただ、赤字経理であるものを黒字経理であるようなかっこうをしながら、これによって増資を行なうというような悪質なものもあるわけでありまして、こういうものに対しては先ほどから申し上げましたように、公開市場から大衆資金を集めるという制度でありますので、企業会計経理明朗化というものに対しては先ほどから申し上げたような法制上の整備もしなければならない、このように考えておるのであります。私は、いろいろ倒産をしたり、また粉飾決算をしたような会社内容を見ますと、悪意のものばかりではなく、善意粉飾決算をしたというようなものも見受けられます。企業が非常に複雑になり、多様化され、非常に大きくなっておりますので、会社経営者と言われるような人たちが、みずからの会社経理の実態を把握しておらないということで、会社経理担当者決算書をそのままうのみにするというような、善意のものもあるようであります。いずれにしましても、証券市場から金を集めるのでありますし、大衆公認会計士監査を経て公表されるものをもって会社内容判断をするしかないのでありますから、これら紛飾決算というようなものに対して、法制上の整備は急を要するというふうに考えております。
  14. 田畑金光

    田畑金光君 今回の山陽特殊製鋼倒産を見ても、あるいは昨年来の、たとえばサンウェーブあるいは日本特殊鋼、近くは日本繊維工業などの倒産を見ても、これは結局池田内閣以来の高度成長政策の破綻が端的にいまあらわれてきておる。私は田中大蔵大臣も同罪だと思うんですが、どうですか。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 高度成長政策というものが倒産粉飾決算の因になったと、これはどうも少し飛躍論であります。先ほどから申したとおり、非常に過小資本であるというようなもの、それから急速に設備投資を行なうというようなもの、その中には市場占有率等が非常に少ないものであって、競争も非常に激しい中にもかかわらず、相当大幅な賃上げなども毎年行なっておると、そういう状態でありますから、なるべく市場から金を集めたいと、いろいろな原因があるわけであります。高度成長経済政策をとっておると粉飾決算を慫慂するといいますか、破産倒産を大いに奨励すると、こういうことは直接のつながりはございません。間接的なつながりがあるかということでございますが、これは私は、経理責任者の心がまえの問題でありますし、もう一つは、企業責任者というものがもっとまじめな状態でなければいかぬ。これはまあ率直に申し上げて、戦前は倒産ということに対しては非常に真剣でありました。これはやはり一つ企業というものに対しては——企業倒産をすると大株主というようなものはまず破産を免れなかったわけでありますが、戦後は、その企業を支配しておるような株主というものはなくなってきた。でありますから、大体借り入れ金でもってまかなっておるとか、会社がつぶれても自分の持ち株というものは非常に少ないとか、どうもみんな会社経営者というものが雇われ重役と、こういうふうな状態が、私はこういう無責任経理をする最も大きな原因だと思います。一流銀行から三人も四人も経理担当常務が入っておって、半年間調べたがわかりませんでしたと、こういうことが常識化しているというところに問題があるのであって、高度成長政策というものが、倒産やこういうふまじめな経営責任という観念を生んだものではありません。
  16. 田畑金光

    田畑金光君 私は、あまり議論していると持ち時間がなくなるので、もう端的に申し上げたわけですが、やはり生めよふやせよ、経済はできるだけ拡大しろという、池田さんやあんたの長年の経済政策というものが、やはり企業の中にこういう放漫経営を許した一つ原因だと、私は見ているわけです。粉飾決算は、金融対策だとか税金対策だとか、お話のように株価対策、これからきているわけですね。そこで、あなたの先ほどの御答弁の中に、善意粉飾決算もある、あるいはまた悪意粉飾決算もあるというわけですが、善意粉飾決算とは何であるか、善意なら粉飾決算してよろしいのか、ひとつ、それを明らかにしてください。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 善意であろうが、悪意であろうが、粉飾決算をするということは大衆に迷惑をかけるということでありますから、絶対に許すべからざる行為であります。大体、粉飾決算をするというような根性はよくないです。そういう企業者の魂をまず入れかえるということに真剣に取り組むべきであります。
  18. 田畑金光

    田畑金光君 特に大蔵大臣に、私はこの点をお伺いしたいのですがね。現行証券取引法の二十六条によれば、大蔵大臣は、公益または投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、有価証券届出書関係報告書、資料の提出を命じ、当該職員をしてその者の帳簿書類その他の物件を検査させることができる、この条項を発動して、疑わしき粉飾経理をやっていると思われるような会社については、当然この条文発動によって、事前に行政指導もできるはずだし、監視、監督もできるはずだと思うのです。証券取引法において、こういう大蔵大臣がやらねばならぬ重大な職責が明示されているにもかかわらず、大蔵大臣は、この条文に基づく正当な行政指導をやらなかったということで、私は一半の責任は免れ得ないというふうに見ているのですが、この点、どうですか。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵省が個々の企業経理をもっと厳重に監督すべきだと、こういう意見はございます。ございますが、これは大蔵省自体が直接企業経理にタッチをするということではなく、証券取引法に基づいて公認会計士制度があるわけでありますから、こういう制度の上で、十分やっていくべきものだと思います。御承知のように企業の数というものは非常に多いのでございまして、この企業全体に対して、有価証券届け出を契機にして、大蔵省役人内容を十分検査するということは、これはもう不可能に近いものでございます。しかし、いまの状態でいいという考えではございませんで、大蔵省出先機関である財務局等でもってやるほうがいいのか、上場基準をきめております証券取引所機能拡充すべきか、また公認会計士制度をより拡充してこれに対処すべきか、この問題は非常にむずかしい問題を含んでおりますので、いまそれらの問題に対して、十分検討をいたしているわけであります。
  20. 田畑金光

    田畑金光君 いや大蔵大臣、私がお尋ねしているのは、公認会計士制度改正——立法改正も必要です。認めます。またお話のように、証券取引所機能を充実することも必要です。問題は当面の証券取引法の所管である大蔵大臣が、二十六条によって、必要な場合はかくかくできるとなっておるのですね。この権限発動については、どう考えられるか、こういうことなんですよ。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、それを発動して、もっと手きびしくやれと、こういうことでございますが、いまの経理段階で、大蔵省職員が参って会社状態を聞くということも、なかなかむずかしいのであります。同時に、有価証券届け出につきましては膨大書類提出いたしておるわけでありまして、これを認めて許可をしたり届け出を受理したりしておるわけでありますが、大蔵省役人自体が各企業内容まで検討するということに対しては、いろいろな問題がございます。でありますから、先ほどから申し上げておりますように、取引所権能とか、公認会計士制度の上で、より強化をしていくという方法が合理的だという考え方に立っておるわけでございます。
  22. 田畑金光

    田畑金光君 先ほど大臣の御答弁の中に、一流銀行重役山陽特殊鋼に来ておるというお話がありましたね。どういう会社から、どういう銀行から、どういう重役が来ているのですか。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どういう会社へどういうということを申し上げることは適当でないかもわかりませんが、日本特殊製鋼等には、三菱銀行と第一銀行と思いますが、三井銀行でございますか、とにかく半年間にわたって検査をいたしました。が、なかなかつかめなかったということはあります。それから同社に対しては銀行からの派遣重役がいます。山陽特殊製鋼に対しましても、神戸銀行三菱銀行だと思いますが、これらの銀行から重役が派遣せられております。おられますが、週刊誌にも出ているとおり、あなたも十分おわかりでしょう。銀行から行って、銀行から行けば経理担当というのが常識でありますが、君は将来社長になるのだから、ひとつ現場に出て第一線で大いに勉強してくれというので現場に行っていたら、そのうちにこういうことになったということもいわれておりますが、むずかしい問題でございますが、こういうことは御承知だと思います。
  24. 田畑金光

    田畑金光君 いや、大蔵大臣三菱銀行神戸銀行ですね、その他大蔵省高級役人山陽特殊製鋼重役として入っておりますね。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 知りません。
  26. 田畑金光

    田畑金光君 知らぬことはないでしょう。銀行局長はこの間はっきり答えております。そういうようなことがあって、なおかつ銀行が、そうしてまた、そういう人方が半年も一年もいて、その紛飾経理がつかめないはずがないじゃないですか。そういう銀行監督するのも大蔵省じゃございませんか。あなた、自分の、やはり監督官庁としての一番の責任を負わねばならぬ金融政策等について、その銀行がだらしないというのは、あなたがだらしないということと同じことなんですよ。どうですか。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私もその責めを逃げるわけではございませんが、いま、金融機関に対してはできるだけ政府は干渉しない、金融機関の自主的な判断によってやっておることは御承知のとおりでございますが、金融政策全般から考えますと、このような会社に、このような企業に無制限な貸し出しを行なって大衆に迷惑をかけたという問題に対しては、結果的に、大蔵省大蔵大臣としても、もう少し手きびしく金融政策をやるべきであったという考え方に立っております。大蔵省から行ったという重役に対しては、私が知らないことでございますから、相当重要な地位についておるというものではないようであります。いま御説がありましたように、銀行局長にただしましたら、非常に古い、大蔵省につとめたことがある人が非常勤監査役として一人おるということでございますが、名前は承知いたしておりません。
  28. 田畑金光

    田畑金光君 どんな人が入っておるかですね。
  29. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 大蔵省から申しますが、三十一年に入っておりますが、しかし、直接大蔵省から直ちに行ったのではございません。一たんほかの会社に就職して、その後、この会社に三十一年の十一月に就任いたしております。非常勤監査役松井悦郎という方がおりますが、非常勤監査役でございますので、この企業についてはあまり、責任ある立場にあるとは申しがたいのであります。
  30. 田畑金光

    田畑金光君 証券取引法二百五条によれば、不正な目論見書を出したり報告義務違反者については、処罰規定がありますが、これを発動した事例がありますか。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 処分した例はないそうでございます。
  32. 田畑金光

    田畑金光君 一回もないということはけっこうな話かもしれんが、現実に、山陽特製鋼だけでなく、しばしば、いやほとんどころがっておるわけですね。しかるに二百五条の発動がない。そうなってきますと、二十六条に基づいて大蔵大臣はかくかくすることができるという権限を持っておりながらやっていない。証券取引法があってもなきがごとくじゃございませんか。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あってなきがごとくだと言われることは、多少極論だと思いますが、いずれにしても、証券市場確立強化を急いでおりますし、また公認会計士制度拡充も急いでおりますので、証券取引法に基づく大蔵大臣権限というものに対しましても、また新しい角度から検討をし、遺憾なきを期していきたいと思います。
  34. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣立ち入り検査というのは、確かに、私はこう言っても、しかく簡単に発動するということは、いろいろな影響も考慮されると思うのですね。さればといって、従来のように大蔵大臣が当然やらねばならぬことすらも、やらなくてもいいということは、今回の事例等を見ても反省すべきだと思うのです。だから、証券取引法における大蔵大臣権限行使等について十分考慮する用意があるかどうか、あらためてお尋ねします。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御発言のとおり、証券市場育成強化もはからなければなりませんし、自己資本比率の引き上げという問題に対しても、重大な問題として対処いたしておるわけでありますから、証券取引法に基づく大蔵大臣権限というものの発動に対しても逡巡することなく、事態に即応する態勢をとってまいりたいと思います。
  36. 田畑金光

    田畑金光君 これは大蔵大臣にお尋ねするのは、主管大臣でないので、どうかと思いますが、しかし、何でも御存じの大蔵大臣だから、そういう意味でお尋ねいたしますが、会社更生法を再検討しよう、また、再検討すべしという総理からの指示もあったと聞いておりますが、どういう角度で、どういう方向で再検討されるか。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 会社更生法の検討につきましては、総理大臣の指示もございまして、通産、大蔵、法務省等で検討をいたしております。どういう条文に重点を置いてどういうことをやるのかということは、及ぼす影響も非常に大きいものでありますから、いまここでにわかに申し上げられる段階ではございませんが、いずれにしましても、会社更生法の適用ということが非常に安易に考えられやすいということ、また会社更生法の中にはいろいろ共益債権等の規定もございますが、これらの問題に対しても、より拡大をして考える必要がないのか、また、会社更生法の適用になったものに対しては、担保をとっておる、いわゆる、積極的に申し上げますと金融機関等でございまいますが、こういうものだけが有利であって、他の下請企業その他に対して恩典が均てんしないという問題に対して、新しい角度から検討する心要はないか——まあ、いろいろ問題はございます。でありますから、会社更生法というものの適用が安易に考えられておるということから考えても、会社更生法そのものを、もう一ぺん新しい角度から事態に対処して検討する必要があるということで、検討を急いでおるわけでございます。
  38. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣は、手形法とか下請代金支払遅延防止法、これをまず急いで改正すべきだということを言っておられますが、これはどうですか。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 手形法につきましては、改正を必要とするという考えで、二年半ぐらい前から私は言っておるのですが、これは法務省所管のものでございまして、なかなか法制審議会との問題等、非常にむずかしいようであります。でありますから、手形法の改正まで至らなくとも、金融秩序の保持と、また正常化をはかるというような意味で、単行法等でいろいろな処理ができないかという角度から検討をいたしております。  それから下請代金支払遅延防止法につきましては、きょうの閣議でも、これを検討して、近く国会に提出をするという状態になっておりますが、これにつきましては、きょうも議論がございまして、もう一ぺん検討しようということになりました。  その議論ということはどういうことかといいますと、改正案の原案は、六十日以内に現金化されるように手形を出さなければならないと、こういう面から規定をいたしておりますが、手形を出すということになると、当然、一流企業の手形等はいつでも現金化ができるわけであります。できるわけでありますが、現実的には、その手形を受けた下請そのものの信用、そのものの銀行におけるワク、こういうもので制限を受けておりますので、長期の手形というものが、法律で明示をいたしておるようなもので、他の企業に持っていけば現金化ができても、信用度の低い下請企業等が金融機関に呈示してもこれは割れないというような現実的な問題がございますので、手形の現金化ということは、ただそのような条文だけで整理をすべきものではなく、六十日以内に現金化ができるような手形であって、しかも下請の都合で現金化ができなかったものについては百五十日とか百八十日とか、こういう期日が来たら、元請そのものは現金にこれをかえなければならないというような条文を挿入する必要があるかどうか、これを挿入するとすれば非常に画期的な法律になるわけであります。しかし、期日が来て現金化ができなかった場合、これに対する処罰的なものも起こってくるわけでありますが、無制限にその手形が現金化できるまでは当然法定利息が積み重ねられるように法定するのか、処罰が考えられるのか、なかなか検討するとむずかしい問題がたくさん出てまいります。しかし、いま企業間信用は非常に膨脹しておりますし、中には、今度の山陽特殊鋼のように、よく見たら二年前に振り出した手形がようやくいま落ちる。鉄材等の原材料等には二年半ぐらいの手形もあるということであるし、これは企業間信用の膨脹という問題、金融の正常化という問題にも直接影響がある問題でありますので、きようの段階においては、もう少し検討しよう——この法律は、御承知のとおり議員提案によるものでありますから、政府の案を出して、国会でより広い立場でもって検討して修正案をつくるかということもございましたが、政府として、より責任を明確にするためにもう一度検討しようということで、きょうは提出を保留をいたしたわけでございます。  でありますから、手形法の問題は、また下請代金支払遅延防止法の問題につきましても、政府はまっ正面から取り組んでおるということを申し上げます。
  40. 田畑金光

    田畑金光君 いま大臣お話の、あとの法案の問題、下請代金支払遅延防止法の問題ですね。もう一度検討しようということですが、この国会中には成案を得てこの問題の解決をやると、こういう方針に変わりないのですか。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きょう閣議で決定をすれば直ちに出したいと、こういうことでございましたものが、少しなまぬるくないかという立場で、再検討をしようということにいたしたわけでありますから、できるだけ近い機会に成案を得、もちろん今国会の御審議によりたいということであります。
  42. 田畑金光

    田畑金光君 最後に私、社内預金の問題について若干お尋ねしたいのですが、これも端的に承りますけれども、沿革的に見ても、社内預金というものを今日存続することば問題があると思うのです。ましてや、今回のような事例が起きてみますと、これはいよいよ再検討すべきじゃなかろうかと、こう思うのです。むしろ私は、金融の正常化という立場から見ると、預金者を保護することもできないこういう制度を残しておくこと自体に私は矛盾があると思うのですが、大蔵大臣はこれについて相当検討されておるやに聞いておるが、この際はっきりとした一つの見解を承っておきたい。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、基本的には社内預金の制度に反対であります。でありますから、できるだけ早くこれをやめたいという考え方でございます。しかし、あなたがいま御指摘になったように、歴史もあり沿革もありまして、現状いかんせんということで、労働基準法十八条に基づきまして、まあやむを得ざる処置として、五〇%以上の賛成があった場合労使の間における交渉としてこの預け金を管理するということになったわけであります。でありますから、こういう状態がある以上は労使間の責任に付すべきものでありまして、大蔵省がどうすることもできないわけであります。しかし、調子のいいときには一割五分も利息をもらい、調子が悪くなると返ってこないかもしらぬ。大体無制限に高い利息というようなものの場合は元本の保証というものは非常にむずかしいわけであります。利息の非常に安い郵便貯金などは、これはもう絶対に間違いございません。ですから、こういう、いいときはこれは絶対に保護しなければならぬ、悪いときになったら、これは共益債権だけでなく、先取特権を与えなければいかぬ、こういう考えでは前進がないわけであります。ですから、私は率直に申し上げて、これは一流企業だと、この間新聞に出ておりましたが、三百億も社内預金を持っておると、こういう抜け道があったら、金融政策はなかなかうまくいかない。私はそういう意味でも、この山陽特殊製鋼の問題等を契機にして、お互いにやはり前進態勢をとるべきだ。一年でやめられるわけはありませんから、この前も私はひそかに寝て考えたのですが、こういうものに対しては五年間ぐらいで全廃する、こういう話がつかないと、いま問題になっているからといって、歴史的に沿革的にやむを得ないものであるから、必要悪といいますか、まあこれに対しては保護したほうがいい、保護するなら、この制度はだんだんと大きくなっていく、こういうことになります。ですから、ここらでひとつけじめをつけたい。銀行局長にも、とにかくそういう姿勢でと言うのですが、これは労働省はどうしても残したいというようなことで、現にあるのですからということでありますが、これはひとつまあ総理裁断をやっても、ここらでひとつけじめをつけたいと思うのですが、これはやはりひとつ、在野党の皆さんも、将来を思うときに、それはよろしいと、こういうことで、やはり院の内外が一つになるような形でないと、なかなか片づかないわけであります。これは理想的な方向に持っていきたい。いま労働大臣とも意見の交換をしておるわけでありますから、そういう意味でひとつ御理解、御協力のほどをお願いしたいと思います。
  44. 田畑金光

    田畑金光君 私は率直に申しまして、社内預金というのは沿革的な歴史的なものがあるとしても、それは存続に値する沿革であるか、歴史であるかというと私は疑問なんです。したがって、いま大蔵大臣お話のように、すぐ撤廃ということはできなければ、年度計画を立てても、これはやはり私は廃止の方向に持っていくことこそ、金融の正常化などの面から見ても、また労働者の預金保護という立場から見ても、私は健全なあり方だ、ことに今日労働組合には労働金庫という独自の金融機関もあることだし、そういうところを強化拡大することこそ、ほんとうの労働者の利益である、私はそういう立場におるわけです。この問題は十分ひとつ御検討を願いたいと、こう思っております。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げたとおり、本件に対しては田畑さんと意見が完全に一致したわけでございます。私もそういう姿勢で検討をいたしますから、御協力、御援助のほどをお願いいたします。     —————————————
  46. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいま委員の変更がございました。高山恒雄君が辞任され、曾祢益君が選任されました。     —————————————
  47. 田畑金光

    田畑金光君 私は外務大臣にお尋ねいたしますが、日韓交渉の、特に請求権問題についてお尋ねいたしますが、昨日もこの問題には触れられました。そこで端的にお尋ねいたしますと、請求権問題は大平・金メモによって解決済みなのか、まだ話し合いの余地が多少残っておると御答弁がありましたが、その多少の余地とは何なのか。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 金・大平了解というものは、あくまでまだ法律的に形を整えておるものではないのでございます。これを大体基礎にして請求権問題の話し合いを進めてまいりたいと存じております。この実施の内容等につきまして、まだこまかい点まで必ずしもきまっているとは言えないのでございます。大綱についての了解は成立しておるのであります。これを基礎としてこれを考えていきたい、こう考えております。
  49. 田畑金光

    田畑金光君 いや、大臣、こまかい話し合いがついていないというのは、昨日も承りましたが、それはどんな点を言っておられるのですか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだこの三億なら三億の無償の問題、これをどう具体的に、期間あるいは金額等についてこれをはっきりと取りきめていかなければならぬ、有償の問題につきましても期限あるいは利子その他の条件、そういう問題がまだはっきりときまったわけでもない、大体の素案というものはございます。そういうことであります。
  51. 田畑金光

    田畑金光君 大体わかりましたが、そうしますと、たとえば、こういう帰国した韓国人が、持ち帰り制限で日本に残していった財産とか、かつて日本軍隊に徴用された韓国人の恩給であるとか、すでに帰国した韓国人がかつての日本の銀行に預けた預金であるとか、こういうようなものは全部話し合いは処理ついたわけですね。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうものを具体的にはっきりした証拠を物品によってこれを確認するということは非常にむずかしい問題で、時間もたっておりますし、それから朝鮮事変という非常な大混乱がございまして、いかにこれをたんねんに追求しても、とてもこれを突きとめることができない。そういうことで、別途、無償、有償の経済協力というものによってこれらの請求権の問題を解消すると、こういう考え方で進められたものでございます。したがって、このいま御指摘のような問題につきましては、主として無償だと思いますが、無償の三億の範囲だと思いますが、それを、いかに韓国政府がこれを配分するかということは今後の問題であって、両国の会談の内容ではなくして、それを韓国がいかに、そういう犠牲を払った人々に対していかに配分するか、そういう問題でございます。
  53. 田畑金光

    田畑金光君 結局のところ、韓国国民の対日請求権というものは一切なくなった、まあ大綱の決定によって一切なくなった、したがって、韓国の個人あるいは国民の対日請求権の問題は、全部国内問題として、韓国国内の問題として処理されるのだ、こういうことですね。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  55. 田畑金光

    田畑金光君 それじゃわかりましたが、そうしますと、在韓——韓国に残してきた日本人の財産、自然人、法人の財産、この請求権についてはどういうことになりますか。
  56. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは在韓アメリカ軍政府によって、軍令によって取り上げられておるのでございます。それをさらに米軍政府から韓国にこれ譲渡した、こういうことになっておりまして、これに対しましては、すでに条約の上において日本がこれを全部承認をしておりますので、請求権等は一切ないと、こういう状況であります。
  57. 田畑金光

    田畑金光君 いまのお話は、軍令三十三号によってアメリカ占領軍の在韓財産の処理については日本はこれを承認した、それを平和条約の第四条(b)項で確認したと、こういうことですか。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  59. 田畑金光

    田畑金光君 その場合問題になるのは、自然人や法人の、とにかく個人の財産権については、そうしますと、これも先ほどの韓国の事例と同じように、日本国内の問題として日本政府あてに補償要求すればいいと、こういうことになるわけですね。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはすでに補償要求権もないわけであります。法律上は。しかし、実際問題として、せっかく粒々辛苦してつくり上げた財産を根こそぎ没収されたわけでございますから、それらに対して実際の問題として、政府が請求権でなくて、新しい問題として、どういうような償いをするかということは、これは考える余地のある問題だと思います。すでに請求権というようなものはない、こう御了解願いたいと思います。
  61. 田畑金光

    田畑金光君 軍令三十三号に基づく在韓財産の没収を日本は認めたと言っておりますが、私は、軍令三十三号というのは、ヘーグ陸戦法規に照らしても違反していると、こう考えておりますが、この点はどうですか。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは占領軍の権限を規定したヘーグの陸戦法規に照らしまして、範囲を越えたものと認められるのではないか、こういう御意見だと思います。しかし、わが国は平和条約第四条(b)項によりまして、かような米軍政府の在韓日本財産の処理の効力を条約の面において承認をしている、こういうことでございますから、その問題は起こらない。
  63. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣、私のお尋ねしているのは、軍令三十三号というのは、ヘーグの陸戦法規に違反しないかどうか、これを端的に伺っているのです。その政治的な解釈じゃなくて。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その範囲を逸脱しているのでございますけれども、平和条約第四条(b)項によって、かような米軍政府の処理を有効と、これを認めている、こういうことでございますから問題はない、かように考えております。
  65. 曾禰益

    曾祢益君 関連。ただいま田畑委員の御質問に対する外務大臣の御答弁を伺っておりますると、私どもが、議会を通じて、従来の政府から伺っておった態度と違うのじゃないかという気がしてならないのですが。むろん、残念でありますけれども、平和条約によってアメリカ軍政府が、日本の財産並びに日本人の財産で、韓国、朝鮮にあったものを処分したことを有効だと認めさせられております。これは過去にやってしまったことの法的秩序をもう一ぺんひっくり返すことは、適当でないからでありまして、当時の日本の保守党政府は、これを説明して、平和条約の説明のときに、これは法的秩序を乱さない。したがって、有効を認めたのだけれども、日本側の請求権はあり得るのだ。こういう主張をしておったわけであります。その後、日韓会談が開かれ、いろいろな経緯があったが、ただいまのお話のように、日本側の公的な財産については、これは事実上請求権をもう主張しない。しかし、日本人個人の請求権はあるというのが、日本の従来の主張であった。そこに、アメリカのあっせん的な、調停的なことがございました結果、日本側の請求権については、韓国側の請求権の際に、いわゆることばははっきりおぼえておりませんが、実際上、それを相殺的に考えるということが、両国間がアメリカのあっせんを認め合うということで、これがむしろ大平・金会談で、いわゆる三億、五億の無償、有償の援助ということによって、請求権問題を事実上解決しよう、双方の請求権を解決しようということの根本であったと思います。言いかえるならば、田畑委員がおっしゃったような、日本人が、日本政府に対する請求権の問題がむろんあります。ありまするが、その前に、日本国民として、日本国民の利益において、利益の代弁者の政府として、日本国民の私有財産については韓国側に請求権があるのだ、あるけれども、それを韓国側と事実上相殺して、そうして三億ドル、二億ドルの援助を得ることによって、両方請求権を相互に放棄しよう、これが大平・金、事実上の了解の基礎になっている。いまの大臣お話を伺っていて私が一番心配する点は、外務大臣お話では、日本側の個人財産の請求権もなくなっているのだ。なくなっているのだったら、韓国側の請求権だけが初めからあったのなら、日韓会談がこれだけ紛糾することはなかった。したがって、もう一ぺんこれははっきり御訂正願わなければならぬと思うのですが、日本側の個人の請求権はあるのだ。あるのだけれども、それを両方で相殺的に片づける。それを片づける方法として、三億ドル、二億ドルの有償、無償の借款——経済援助という形の中に溶け込まして、両国の請求権の問題はこれで御破産にしようというのが趣意だと思う。請求権はあるのですよ。もう一ぺん確認します。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来の解釈と、いまの解釈と違うのではないかというお話でございますが、その間の事情につきまして、条約局長から申し上げます。
  67. 曾禰益

    曾祢益君 条約局長に聞いているのではない。外務大臣答弁を求めている。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまの日本政府の解釈は、いま田畑委員に申し上げたとおりでございます。
  69. 曾禰益

    曾祢益君 関連ですから、これ以上時間をとるのは避けたいと思いますが、それだと、従来の日本政府の解釈を変えた——従来は日本人個人の財産権の請求権はある。だから両方で相殺的に話し合った、これは明瞭です。これはひとつ委員長において議事録を調べていただけば、この委員会の記録において明瞭です。あらためて外務大臣はその解釈を変えて、初めから日本人個人の韓国に対する請求権はなかった——平和条約第四条の解釈はそういう解釈でございますか。もう一ぺん御確認願います。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまの日本政府がとっている解釈は、申し上げたとおりであります。その事情は、もし必要があれば条約局長に説明させます。
  71. 曾禰益

    曾祢益君 聞きましょう。
  72. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 平和条約第四条(b)項の解釈についての日本政府の従前の見解は、先ほど曾祢委員がおっしゃったとおりでございますが、これにつきまして、昭和三十二年末の日韓会談全面再開のときに、日本政府が従来の見解を変えまして、アメリカ政府の解釈を採用した。これは軍令第三十三号の解釈については、これを出したアメリカ政府の解釈に従うのが妥当であろうということで、そうしたわけでございますが、その内容は、先ほど大臣から申し上げたように、財産請求権というようなもの自体は、そのままの形ではもう残しておらない。ただ、そういうふうに日本の財産請求権が没収されてしまったという事実は依然として考慮さるべきである、こういうふうに前の見解を変えてまいったわけでございます。
  73. 曾禰益

    曾祢益君 一言。アメリカの解釈に従ったということは、当時から政府が言っておりました。しかし、それは、日本側の請求権を全然考慮しないことでなくて、韓国側の請求権を処理する場合に、日本側の放棄したということを考慮に入れるということがはっきり認められておる。すなわち、それを俗にいえば、日本側の請求権があって、それと相殺するのだ、こういう解釈に従来政府は説明してまいりました。このことは事実です。もしそれが日本側の請求権が全然なくなったという解釈をするならば、アメリカの解釈というものを、説明というものを言っているということは意味をなさなくなる、相殺というものはなくなるわけです。その意味において、いまの条約局長の説明を含めた外務当局の説明は、従来の日本政府の説明と違います。この点は、あとで記録によって調べて、さらに質問する権利を留保いたします。
  74. 田畑金光

    田畑金光君 実は、私の質問の重要な内容一つは、いまの軍令三十三号の、従来政府のとってきた解釈、いま条約局長は答えましたが、あなたの答えは、従前の政府の解釈を変えたわけですか。私は、特に念を押したいのは、請求権問題処理に当たっては、日本の韓国に対する請求権、韓国の日本に対する請求権、それを相殺するという、そういう思想のもとに、昭和三十二年十二月三十一日のアメリカの解釈も、私は、なっておると思うのです。昭和三十二年十二月三十一日、あなた方は、アメリカの解釈をもとにしてこの請求権問題を、大きくこれを転換しているわけです。話し合いの転換をはかっているわけです。しかし、このアメリカの解釈の中にも、請求権問題の処理に当たっては、相殺の思想というのはちゃんと入っているわけです。その前提に立って、私は、話し合いを進めてきていると思うのだが、その点はどうなんですか。
  75. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 処理したあとのものに対する請求権そのものが残っておるかどうかということについて、従前と現在とでは考え方が違うわけでございまして、いま仰せのとおり、アメリカ政府の解釈にもありますように、そういうぐあいに請求権までなくなったという事実は、依然として日韓間の会談において考慮に入れられるべき事実である、このことを否定するつもりはないのでございます。
  76. 田畑金光

    田畑金光君 そこで、これは外務大臣にお答え願いたいのですが、いまの条約局長答弁のごとくに、日本の対韓請求権というものも現実にあったが、しかし、それは、先ほど、軍令三十三号や、あるいは平和条約の四条(b)項によって日本は放棄させられた、しかし、最終的な請求権処理に当たっては、日本の対韓請求権というものも考慮に入れて請求権問題は最終的な話し合いになったのだ、妥結なら妥結にいったのだ、こういうふうに私たちは理解していいのですか。それでよろしいでしょうね。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本人の対韓請求権は、請求権という形においてはすでに消滅している。しかし、その請求権を没収されたという事実はあくまでこれは確認すべきものである、かように考えております。
  78. 田畑金光

    田畑金光君 その没収されたという事実を考慮の上において請求権問題の処理はなされた、そう私たちは見ているんですが、どうですか。条約局長はそれを認めているのじゃないのですか。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 無償、有償の、この金・大平了解をきめる際に当たりまして、一方日本人の対韓請求権というものが没収された、そういう事実ももちろん考慮に入れて考えられたものと思うのでありますが、しかし、この両者の関係をはっきりと確認をして、そうしてこの数字が出されたものとは、私はそういう因果関係まではいかがかと存じております。
  80. 田畑金光

    田畑金光君 この点は、いままでのあなた方の解釈とだいぶ違っているんですよ。これはあとにまた触れますが、そこで、その前にお伺いしたいことは、この軍令三十三号というのは、ヘーグの陸戦法規に照らして違反だと、こう思うのですが、陸戦法規の精神から見て、この四十六条によれば、私有財産は没収することを得ず、このヘーグの陸戦法規四十六条に明らかに違反する、こう思うのですが、その点どうですか、まず、その点確認しましょう。
  81. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先ほど申し上げたように、陸戦法規の範囲を越えている、かように考えております。
  82. 田畑金光

    田畑金光君 範囲を越えているというのは、どういうことですか。
  83. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 限界を越えている。
  84. 田畑金光

    田畑金光君 限界を越えているというのは、どういうことなんですか。
  85. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 適当でないと思うのであります。
  86. 田畑金光

    田畑金光君 結局陸戦法規に違反しているということと同じことですね。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 限界を越えたものである、かように考えております。
  88. 田畑金光

    田畑金光君 大臣、何もびくびくする必要ないのですよ。昭和三十八年の二月二日の衆議院予算委員会で、当時の池田総理は、わが党の春日委員の質問に対し、「それは、先ほど来お答えしている通りに、不法な行為であったということはわれわれも考えております。」明確にこれは認めているんですよ。そのときの総理大臣のあれと、あなたのほうとはもう違ったのですか。どうですか。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかく別途に、平和条約の第四条(b)項におきまして、米軍政府のかような処理は有効であるということを条約上において承認しておるのでございますから、この陸戦法規に照らして範囲を越えたかどうかということは、すでにもう問題にならなくなっておるのであります。
  90. 田畑金光

    田畑金光君 問題になるような実益があるかどうかは別にして、あなたもヘーグ陸戦法規に違反するということは率直に認めたわけですね。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御見解に同意いたします。
  92. 田畑金光

    田畑金光君 同意していただいてまことにありがたいと思っております。  それじゃ外務大臣にお尋ねしますが、それじゃ不法行為であり国際法の先例に違反するということを認めながら、明らかにそれが不法行為であっても、それをあなた方も認められたということは、不法行為を認めることによってこれは正当化されたと、こういうことになるわけですか。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和条約によって正当化されたと、こういうわけでございます。
  94. 田畑金光

    田畑金光君 一体国際法に明らかに違反する行為が、平和条約によってそれを合法化し正当化するということが許されることでしょうか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 許されることであると存じます。
  96. 田畑金光

    田畑金光君 条約局長の見解をひとつ承りましょう。
  97. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 平和条約では、敗戦国がそういうことを認めさせられるのがむしろ通例であるということだろうと思います。
  98. 田畑金光

    田畑金光君 条約局長答弁らしくないですね。少なくとも第一次世界大戦までの戦後処理の場合は、国際法というものが厳然と守られていたのではございませんか。
  99. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 戦争法規というものが、まあ武器の発達程度の関係もあるでしょうが、第一次世界大戦においては第二次世界大戦においてよりも非常によく守られておったということ、これは客観的な事実じゃないかと思います。先ほど私が申し上げましたのは、平和条約の条項では、いわば戦敗国が戦勝国に一方的に押しつけられて、戦争中にいろいろ戦勝国が勝手なことかしたのでももう文句を申しませんということを、一札言わされるのが普通でございますと、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。
  100. 田畑金光

    田畑金光君 条約局長、私は、いやしくも国際法というものが確立されて、ヘーグ陸戦法規というのは、御承知のように、多数国の参加した条約だと思うんです。それが一体いつ改正されたのか。改正されたとすれば、当然多数国の参加のもとにヘーグ陸戦法規というものが改正されなければならぬと思うが、改正されてないでしょう、そうして有効に生きておるんでしょう、有効に生きておるとするならば、その有効に生きておる国際法に照らして、平和条約は違法な条文を現実に持っておるということなんです。あなたの言っていることは、法解釈ではなくて、政治論を言っているのにすぎない。条約局長は、政治論ではなくて、法律論によって、平和条約はこうこういう違反の内容を持っておるが、しかし、こういう法律的な見解で、これは正当化されるなら正当化される、これをわれわれが納得できるように説明してもらいたい。
  101. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 陸戦法規というものが、その当事国間では依然として有効であるということは、仰せのとおりでございます。ただしかし、かりに戦争中にそれに違反するようなことを戦勝国がやったような場合には、その違反の罪を戦敗国に問うということを許すというようなことは、従来の国際関係においてもございませんという趣旨を申し上げておるわけでございまして、これは何も今度の大戦で初めて日本だけがそういうふうな目にあったわけではないというのでございます。
  102. 田畑金光

    田畑金光君 私は、これは外務大臣に聞いてもらいたいんですが、結局、先ほど来承りますと、政府みずからが不法行為であるということを認めておるわけですね。そうしますと、軍令三十三号及び平和条約第四条第二項というものは、少なくとも陸戦法規という国際法に違反しておるとするならば、この際、法の解釈について国際司法裁判所に提訴するなどして、この問題についての解釈を明確に求めるということも、私は一つのいき方だと思うんだが、これはどうお考えですか。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和条約第四条(b)項によって、すでに日本がこの処理に対しまして受諾をしたのであります。この上に立ってすべての事柄が運ばれておるのでございまして、いまさらこれを問題にする意思はございません。
  104. 田畑金光

    田畑金光君 どうせあなたに幾ら要求したって問題にする気持はないでしょうからね。それで、先ほどの平和条約第四条解釈の米政府の見解、これを見ると、こう書いてあるんですね、若干読みますと、「平和条約の起草者は第四条(a)にいう特別取決めにおいて当事国は韓国内の日本財産がすでに所属を変ぜられたという事実を考慮に入れるであろうと考え、このために、このような処理が特別取決めを考慮するに当たって「関連がある」ものであると前記の見解において表明した。したがって」これからあとですよ、「韓国と日本国との間の特別取決めは、韓国内の日本資産を韓国政府が引き取ったことにより、日本国に対する韓国の請求権がいかなる程度まで消滅され、または満たされたと認めるかについての決定を含むこととなろう」、明確にこの中には相殺の考え方が入っているんですね。それは従前あなた方がそういう立場に立っていた、政府は。変わりないんでしょう。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これらに関連するいわゆる金・大平了解というものをわれわれは尊重してやっております。でありますから、そういう事柄が考慮されて、そうしてこの了解が成立したものと考えております。
  106. 田畑金光

    田畑金光君 それならわかりましたが、それでは次に、韓国との関係における請求権の処理は、これは賠償なのか、補償なのか、贈与なのか、それとも独立のお祝いなのか、どうなんですか。
  107. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 大平・金了解におきましては、有償、無償の経済協力を韓国に与える、そうしてそれの随伴的効果として、請求権に関する問題が全部自然解消した、そういうたてまえで解決することになっております。
  108. 田畑金光

    田畑金光君 私がさきにあげた、いずれに該当するのかということを私は聞いておる。
  109. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 経済協力の随伴的効果として請求権問題が解消したということでありますから、請求権を直接弁済するとか、そういう解決ではないのですから、その意味におきましては、この請求権そのものの弁済ということは言えないと思うのでございますが、請求権、別途のやり方に、経済協力という別途の方法によりまして請求権問題を自然解消する、そういう解決方法をとったわけでございます。
  110. 田畑金光

    田畑金光君 かりに平和条約が諸懸案を解決して、請求権問題をもちろん妥結をして処理をみたという場合には、そんな書き方をして日韓両国は認め合うわけですか、どうですか。
  111. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のいずれの範疇にも属しない特殊のものでございます。そしてこの問題については、十分両国が合意に達するものと考えます。
  112. 田畑金光

    田畑金光君 政府は当初、この請求権問題については法律的根拠がありかつ事実関係の明らかなものに限るということで、六千万ないし七千万ドル程度の話し合いの爼上にのせていたわけですね。それで先ほどのような額にのぼったわけです。これは結局向こうの側からいうと、長い間の植民地的支配に基づく物質的な損害と精神的な苦痛をこれによって償うと、そういう賠償的な性格あるいは罪を償う的な性格のものに向こうは解釈したと私は見ておるのですが、どうなんですか。
  113. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その解釈はおのおの自由でございますが、いずれにしましても、かような形で合意が成り立つものと考えております。
  114. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、外務大臣、日韓のこの間の基本条約の取りきめが、管轄権の問題だの、あの日韓併合条約の解釈などについて、実行の時期、実施の時期について両国それぞれの解釈の違いがあるがごとく、請求権の処理にあたっても、これを何と見るかについては、両国それぞれかってに解釈をすることになるわけですね。
  115. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これを特別の範疇に、鋳型にはめて、そういう表現を用いる必要はない、かように考えております。
  116. 田畑金光

    田畑金光君 だから、特別の鋳型にはめる必要ないということだから、お互い自由な解釈は、それぞれの国あるいは国民世論に向くように解釈をお互いやりましようということを認め合ってつくるということですね。
  117. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことをお互いに認めるということも必要はないことであります。
  118. 田畑金光

    田畑金光君 条約を結ぶためには、お互いの解釈を統一することが必要じゃないのですか。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題は、現実的な処理の実体が問題であります。でありますから、無償幾ら、有償幾ら、こういうことで、そうして随伴的効果として請求権が解消する、この実体はあくまで両方で合意すべき対象でございまして、これを特にどういう範疇に属して、入れて考えるかというようなことは、この際は必要がないことであります。
  120. 田畑金光

    田畑金光君 実体はもちろん一致しなければ、話し合いはつかないでしょう。問題は、そういう実体に基づいて条約を結んだら、その解釈はどうなるのかと私は聞いているのですよ。解釈についてはそれぞれ両国が思い思いに解釈してもよろしい、そういう余韻を残して話し合いをまとめるわけですね。
  121. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一がいにこの解釈はどうでもいいということは言いませんけれども本件に関する限りはさような鋳型にはめて表現をする必要はない、かように考えております。
  122. 田畑金光

    田畑金光君 そこで、次に、私は日華平和条約の問題について若干お尋ねしますが、対韓請求権は平和条約第四条(b)項により放棄したとしても、台湾政権との関係は平和条約第四条(a)項に基づいて両国の財産請求権は相互取りきめの議題になる、こうなっておりますね。そこで、日華平和条約第三条には明確に、請求権取りきめについては近くお互い話し合いをしましょう、こうなっています。政府はこの問題の解決について中華民国政府とどんな話し合いをしてきたのか。
  123. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題につきましては、こちらから話し合いを申し入れましても向こうのほうでこれに応じてこないというようなのが現状でございます。
  124. 田畑金光

    田畑金光君 これは、大臣、日華平和条約の第三条というのは、これは明確に請求権というのが日本にあるわけですね。その権利を行使しないということならば政府の怠慢じゃございませんか。しからば、政府が請求権の行使をやらぬことによって現実に損失を受ける人方はどうなるのですか、どうするつもりですか。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまでも両者の間で話し合いをつけたいという考えのもとに、今後も努力いたしたいと思います。
  126. 田畑金光

    田畑金光君 今後も努力すると言っておりますが、いままでどんな努力をしましたか。いついかなる時期にこの条約、財産上に関する話し合いをしたのか、ここで明確にひとつ説明してください。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 過去の事実でございますが、アジア局長から答弁いたします。
  128. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 日華平和条約が発効いたしましてから、累次にわたりまして文書及び口頭をもって台北におきます日本の大使館から中華民国政府に対して申し入れをいたしました。私がアジア局長になりましてからも、昨年に一度、やはり文書をもって中華民国政府の注意を喚起しているのでございますが、いま大臣の御答弁がございましたように、先方はいまだその時期でないということで、まだ交渉に入ってきていないというのが実情でございます。
  129. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣、これは政治的な判断にまつ問題ですから、あなたに念を押してますが、その時期にあらずと、こういうことらしいのですが、この日華平和条約ができたのはいつですか、効力が発効したのはいつですか。昭和二十七年八月ですよ。何年たちますか。その時期にあらずということは結局、戻さない、話し合いはこれはできない、こういうことですね。
  130. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今後大いにこの点は努力してまいりたいと思います。
  131. 田畑金光

    田畑金光君 答弁になっていないでしょう。どんなに努力するのか、どういう話し合いをやるつもりなのか、それを答えてください。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外交ルートによって、あらゆる方法を尽くしてみたいと考えます。
  133. 田畑金光

    田畑金光君 どんな外交ルートを通じてですか。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外交ルートはちゃんときまっております。大使を通じて、従来どおり向こうが話し合いに応ずるように強く申し入れたいと考えます。
  135. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣先ほど韓国に対する質問のときに、ななたは、個人財産についてはこれは今後考慮すべき問題であるという御答弁がありましたね。そこで、もし政府が台湾にある在外財産請求権を放棄することがあるならば、当然私は政府に補償の義務がある、こう考えますが、この点はどうですか。
  136. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は十分に考慮してまいりたいと考えます。
  137. 田畑金光

    田畑金光君 十分に考慮するということですね。私はこれ以上追及しませんが、以上見てきたように、旧植民地に残してきた在外財産、あるいは法律上あるいは政治的な考慮から、事実上当該施政権者に無条件に引き渡す結果になっておるわけですね。また、連合国にある在外財産は、条約第十四条により賠償としてこれを放棄しあるいは没収をされておるわけです。  ところで、私は、賠償というのは国民全体の責任で払うべきものであって、国民の一部の犠牲によって払うべきものではないと考えるわけです。同じ敗戦国であるイタリア、西独の平和条約あるいは平和取りきめを見ますると、明らかに補償条項というのが載っておるわけですね。なぜ日本の平和条約だけ補償条項というのが落とされたのか、私は疑問でならないわけですが、何か沿革的な事情があるなら、この際外務大臣に御説明を願いたい。
  138. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長答弁させます。
  139. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 第十四条の規定は、非常に簡単なかっこうになっておりますが、これにつきましては、当時の連合国としましては、日本の当時の経済状態などを考えまして、何も連合国として日本に、政府と国民の関係のことまで立ち入って規定する必要はない、こういう見地に基づいているものと考えます。
  140. 田畑金光

    田畑金光君 いまの条約局長答弁は納得できないですよ。戦争の打撃による経済的な力がどうであったとかこうであったとかいうことなら、西独でもイタリアでも同じでしょう。あなたも御承知のように、一九四七年十一月に発効したイタリアの平和条約第七十四条を見ますと、イタリア国政府はこの条に基づいて賠償目的のために財産が取り上げられる一切の自然人また法人に対し補償を与えることを約束する、となっておりますね。七十九条ロ項にも同趣旨の内容が載っております。そうしてイタリアにおいては現実にこの補償条項に基づいて一九五四年に法律を制定し、五七年から補償を実際にやっておるわけですね。この事実を御存じか、外務大臣
  141. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 初めて伺います。いま初めて伺ったわけです。
  142. 田畑金光

    田畑金光君 驚いたな、全く。条約局長
  143. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 承知いたしております。
  144. 田畑金光

    田畑金光君 条約局長はそういう大事な問題を——私はきょうはこういう問題を質問するというので通告しておきましたが、大臣は聞いていないのですか。
  145. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま初めて伺ったわけです。
  146. 田畑金光

    田畑金光君 西ドイツは、一九五四年十月に結んだ対独平和取りきめ、すなわちパリ条約によって、同条約の第六章には賠償の項を設け、同じ趣旨の内容を規定しているわけです。そうして西独においてはこの条約を受けて一九六三年七月、賠償損害法案というものが連邦議会にかかっておるわけですね。そうして現在、実は一昨年からこの法律は継続審議になっている。これも御存じでないですか。
  147. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま初めて伺います。
  148. 田畑金光

    田畑金光君 条約局長
  149. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ドイツで在外ドイツ財産の問題についてそういうふうな処理の方法を考えているということは承知いたしております。
  150. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣あなたは不勉強だと自己反省されましたか、されませんか。御答弁願いたい。
  151. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あまり勉強するほうではありません。(笑声)
  152. 田畑金光

    田畑金光君 あなたはこういう大事な問題——外務大臣でしょう。日本の平和条約の条文、イタリアや西独の平和条約の条文くらいは、比較検討して読んでいないはずないでしょう。私の質問を聞いてどうお感じになりましたか、感想を述べてください。
  153. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) よく吟味をいたしまして、この問題に対処したいと考えます。
  154. 田畑金光

    田畑金光君 最後に。質問すれば幾らでもありますが、最後に、本年の一月三十日、東京高裁の民事四部で判決があった。それはかつてのカナダ在留邦人の秋山老夫妻が国を相手どって補償金請求訴訟をやったのですね。国は在外資産が賠償に充てられたことを承認し、その分だけ賠償義務を免れだのから、憲法の財産権の保障に従って補償する責任がある。だが、現在、在外財産の補償に関する法的措置がないので、具体的な請求はできない、こういう判決がありますが、この判決御存じですか。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 知っております。
  156. 田畑金光

    田畑金光君 外務大臣は知っておりますか。
  157. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 田中大藏大臣からお答えしたとおりでございます。
  158. 田畑金光

    田畑金光君 大藏大臣、それでは、その判決の内容は、かいつまんでどういう内容になっておりますか。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘の判決につきましては承知をしておりますし、その要旨は次のようなものだと了解いたしております。すなわち、国が自国民の有する在外財産が賠償に充当されることを承認し、その限度で賠償義務を免れた以上、それは日本国、すなわち日本国民全体の負担すべき賠償義務を、特定の在外資産所有者の犠牲において解決したものと見るほかはなく、国が戦争損害の賠償義務履行という公共の目的のためにみずからこれを処分したのと結果において何ら異なるところがないので、憲法第二十九条第三項の趣旨に照らし、正当な補償をなすべき責務を有するが、憲法のこの規定は、国が国民の財産権を保障し、これを公共の用に供する場合には正当な補償をなすべきであるとの方針をなすべきであるとの方針を明らかにしたにとどまり、これに基づく具体的な補償法規のない現在では、法の欠陥のゆえをもって、原告の補償請求は棄却されるべきである、と判示しておるものであります。
  160. 田畑金光

    田畑金光君 この問題はこの程度でおさめますが、特にひとつ外務大臣には、私の質問の趣旨をよく念頭に置かれて今後とも御努力を願いたいし、また大藏大臣も、せっかく判決書を読み上げられましたので、その精神に基づいて、今後諸般の問題の処理にあたっては十分その精神を尊重されることを強く要望しておきます。  そこで、時間もなくなりましたので、今度は労働大臣にお尋ねいたしますが、これはむしろ内閣官房長官と一緒にお聞き願ったほうがかえっていいと思いますけれども、しかし、労働大臣は十分御承知でありますので、労働大臣からお答えいただきたい。  この国会の実質審議も四月一ぱいといわれております。しかるところ、いまだにILO案件の審議に入る体制ができておりません。先般来、政府は総評との話し合いをなされておるが、この話し合いの進行というのがILO審議を軌道に乗せるかどうかの一つの重要な要素のようにわれわれは見ておりますが、この話し合いはどういう内容段階になっておるのか。
  161. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御承知のごとく、政府はドライヤー調査団の提案を受諾いたしまして、それに基づいて、内閣総理大臣の発意によりまして、官房長官を通じて総評側に対して、ドライヤー提案の中にあります定期的な会合を持とうという呼びかけをいたしました。それに対して総評側は、五点をあげて政府の見解をただしてまいりました。それについてわれわれは、まず定期的な会合を持つことが有意義であり大切であると考え、それの具体的な内容とされている問題点につきましては、予備会談を開いて相談をしようではないかということを総評側に申し入れました。そして、その回答を現在待っておる段階でございます。一方、ILO関係案件の審議のための特別委員会は、満場一致で設置が決定したにかかわらず、社会党がその委員を推薦してこないことによって、ただいま実質的な審議が行なわれていないことは御承知のとおりであります。これははなはだ遺憾なことでありまして、これは総評との会談とは実質的にも、また制度的にも別のものであり、満場一致で議決されたものでございますから、すみやかに委員の推薦を願いたいということを強く要望をいたしておるところでございますが、これは政府としても与党としてもいたしておるところでございますが、いずれ近く軌道に乗るに至るであろう、こう考えておる次第でございます。
  162. 田畑金光

    田畑金光君 佐藤総理は先般、ドライヤー委員長との会談で、八十七号条約はこの国会で必ず批准する、最悪の場合は多数で押し切るとの所信を述べたと伝えられておりますが、この多数で押し切るなんということはどうでもいいことです。政府の決意はどうなのか。ということは、まあとにかくここまできた以上は、一括批准などということも願わしいことであろうかもしれぬが、分離批准も考えなくちゃならぬし、あるいは条約だけでもこの国会で批准するくらいの気がまえで臨まなければ、この時期になってきたのでという心配も私は持っておりますが、ひとつ考えを聞いておきます。
  163. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ドライヤーの提案の中には、まず八十七号条約の批准とそれに直接関連のあります公労法四条三項、地公労法五条三項の改正というところに注意を向けるべきであるということがございまして、それはよく承知しておるのであります。ただ、政府といたしましては、ただいまのところ、提出いたしました関係法案と同時に議決されることを希望いたしております。それを含めまして、今国会にはぜひとも批准を完了いたしたいという強い決意を持っておるのであります。  なお、ドライヤー調査団と総理との会見の際に私もそばにおりましたが、多数をもって押し切る云々の発言は全然ございませんでしたことを申し上げておきたいと思います。
  164. 田畑金光

    田畑金光君 これは新聞で拝見いたしましたが、過般総評は、中央交渉の事実上の承認と官公労働者の労働基本権の保障の二つを条件に八十七号条約の単独批准に応じよう、こういう方針を明らかにしたと新聞は伝えておりますが、政府はこれを受けて立つだけの用意があるかどうか。
  165. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) まだ、新聞の報道、これは私もむろん承知しておりますが、それだけでございますので、それに対して総評の意見に対する回答として申し上げる段階ではないと思いますけれども、私どもが理解しておりますところでは、文部大臣と日教組との会見、これは交渉ということばは、いわゆる労使関係上の交渉ということばは私どもは使っておりませんけれども、この問題は非常に重要な論争点になっておるかと思います。これが重要な論争点になっております。もう一つの前提は、これは労使関係の相互の信頼が欠けておる、その信頼を回復をいたしますために定期的な会談が持たれることが望ましいというのがドライヤー提案であり、それを政府が受諾したのであります。したがって、まず定期的な労使の会談が行なわれ、それによって相互信頼感の回復があることによって解決していくべきものだと考えておる次第であります。  後段の問題でございますが、これはそれらを含めましてILO関係案件として提出しておりまする公務員制度審議会に労使関係の基本の問題として御議論を願って処理されることが望ましい、こう考えておる次第であります。
  166. 田畑金光

    田畑金光君 二月の二十四日です。政府は五つの条件を総評に示しておりますね。その際官房長官は、文相と日教組との個別会談にもいずれ応ずる考えがある、その時期も五月ごろから実現できるだろう、こう言明したそうですが、これはいまでも政府考え方なんですか。
  167. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 五つの条件を提示したのは総評でありまして、その総評から提示されました五つの条件に対して政府の回答をいたしましたその際に、官房長官がそういうことをお話しした事実を私は知りません。私、そばにおりましたけれども、聞いておりません。政府としては、まず定期的な会談を行なって、それによって相互の信頼を回復しつついろいろな懸案の処理をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  168. 田畑金光

    田畑金光君 先ほどの五条件というのは、これはいま大臣お話のとおり、私の思い違いでございました。総評から出された五条件に対し、政府が回答を行なった。そうしますと、話がなかった、お聞きにならなかったとすれば、これは何をかいわんやでございますが、いま個別会談などといわれておるのは、あれは団体交渉的な性格なものか、それとも陳情的な性格なものか、いずれをさしておるものですか。
  169. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) その御議論の話し合いというものは二つあると思うのでございます。一つは、いわゆるドライヤー提案にあります定期的な会談でございます。これにつきまして、提案を受諾いたしますときに、総評の岩井事務局長からドライヤー氏に対しまして、これは団体交渉を意味するのか、あるいは労使関係上の交渉を意味するものか、あるいは陳情であるというような意味の質問がありました。そのときドライヤー委員長からは、ことばは問うところではないのだ、この提案に書いてあるとおり、共通の議題について定期的に意見の交換を行なう、会って話をするということ自体が有意義なんだと思うのだと、こういう説明があり、政府も同様の理解のもとにこの提案を受諾いたしましたということを私から発言をいたしました。したがって、そういう意味でございます。  それから、日教組の幹部と文部大臣との関係につきましては、これは私どもは労使関係上の交渉ということではない、こう考えておる次第でございますが、しかし、これは相互信頼の回復を待って処理せらるべき問題であると思っている次第でございます。
  170. 田畑金光

    田畑金光君 また、政府の口頭回答ですか、政府と総評との話し合いの結果、記録に残せるものは当然文書にすることを確認されておりますね。これは了解事項として文書で確認するとすれば双方を拘束する文書だと、こう見ますが、それでよろしいですか。
  171. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 総評側の五つの条件の中にそういうことはございました。政府側としての回答文の中には、具体的にそれに触れておりませんけれども、むろん話し合いがまとまって意見の一致を見た分については、文書にしたほうがいいものは文書にしたほうがいい場合もあるだろうし、あるいは文書にすることがむずかしい場合はしない場合もあるだろう。そういう場合の取り扱いは、予備会談でいろいろ相談をしようじゃないかということに相なっておるという返事を政府側としてはいたしました。
  172. 田畑金光

    田畑金光君 政府回答を見ますと、公務員制度審議会の中立委員の人選や、審議会の結論などの問題については総評と話し合いをしましょうと、こう言っておるが、これは当然総評だけでなく、同盟とも話し合いをして進めていくものだと理解しておるが、この点はどうですか。
  173. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ただいまの御質問のような趣旨の回答をいたした記憶はございまいません。これについての回答は、設置さるべき公務員制度審議会において、公務員及び公共企業職員の労使関係の基本に関する事項については、当然審議の対象になり得るということでありまして、審議の対象になり得る問題についての政府の見解を述べたのでありまして、構成員のことについてはまだ触れておりません。ただし、これだけは申し上げておけると思うのでありますが、政府は、有力な労働組合の幹部の各位と定期的な会談をすることによって、労使関係の相互理解、相互信頼を深めていこうという強い熱意を持っておるのであります。その相手方はむろん総評ばかりではないのでありまして、当然同盟会議もその対象となると、こう思っておるわけであります。また、そのほかの団体もむろんその対象となると考えておる次第であります。委員等の人選につきましては、政府としてこの法案が通った後において協議したいと思うのでありますが、総評と相談するときは、むろん同盟とも御相談申し上げます。
  174. 田畑金光

    田畑金光君 これはむしろ官房長官にお尋ねしたいと思いましたが、おられませんから、時間もないし、お尋ねしますが、過般自民党では、三公社などの現業職員が地方議員を兼職している問題について協議し、今国会に兼職禁止を出す方針をきめたと新聞は報道しておりますが、それに対してどのようにお考えですか。
  175. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は、新聞報道では承知しておりますが、与党幹部から私のほうは通達連絡を受けておりません。そして、これは労働問題と申しますよりは、公務員の規律の問題だろうと、こう考えております。私が答弁申し上げることは適当でないと思います。
  176. 田畑金光

    田畑金光君 これは閣議の中で話し合いをされたのかどうかですよ。話し合いをされたとすればどういうような話し合いなのか、それを承っているのです。
  177. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私はこの二カ月ほど閣議には欠席はいたしておりませんが、私はそういうことは閣議で話をされた事実を承知いたしておりません。したがって、ない、なかったのであります。
  178. 田畑金光

    田畑金光君 それじゃ次。  このたびの政府の公務員法改正案を見ますと、管理職組合と一般職組合を分割することを提起し、管理職の範囲という問題が新たにできておるわけですね。そこで、私は人事院総裁にお尋ねしたいのですが、昨年の十二月二十一日に人事院は、管理職手当支給を大幅にふやして、中央は二五%、地方は一八%、末端は一二%の管理職手当を支給することにしておりますね。これは管理職手当支給の名において一般組合の総体的な弱体化をねらったのではないかと、時節柄。また、公務員法の改正の中に、先ほど冒頭申し上げたように、管理職組合というものを認めておる。それを私たちは疑わしく思っているのですが人事院総裁は、どういう性格の管理職手当なのか、それを御説明いただくと同時に、せっかくつくるなら、またどうしてこんなに中央、地方に格差を設けたのか、この問題等の御説明をいただくと同時に、労働大臣からひとつ、私の心配は単なる心配かどうか、見解を承りたい。
  179. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おっしゃるとおりの事実はございます。ただ、私どもの根本のたてまえは、これは管理職手当と通称しておりますけれども、法律的には特別調整額でございます。その実体は、超過勢務手当を一々やるには適しないもの、それをこの特別調整額としてそういう人たちに対して一括した金額を差し上げておる、こういうたてまえでございます。このことはずっと例年少しずつ拡大してまいっておりまして、何も今回の公務員法改正に関連したことではございません。ただし、ただいま申上げたように、中央と地方の問題等がございますけれども、今回は御指摘のとおり、地方庁のほうにこの拡充がなされておるわけであります。これについては、超過勤務手当との対照などを考えませんというと、逆に損をする人もあるという面も実際的にはございます。それでいろいろ勘案しまして、私どもとしては、給与法上の手当として、極力その趣旨においてやっておるわけでございます。
  180. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御質問の内容は、人事院が独自でおきめになりましたことでありまして、私どもは決定に何ら関与いたしておりません。したがって、いわゆる労働組合対策上の配慮というようなことは全然ございません。
  181. 田畑金光

    田畑金光君 人事院総裁にもう一度お尋ねいたしますが、今度の管理職手当制度を拡大されたことによって、全国的にどれくらい適用者がふえたのか。また、もう一つは、管理職手当を支給されたということは、同時にこれは非組合員ということになると私は見ておりますが、その点どうですか。
  182. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今回の手当てによりまして一万六千人新しく受ける者が増加いたします。しかし、その趣旨は先ほど申し上げましたとおりの趣旨でありまして、もっぱら給与法上の観点から対処したものでございます。
  183. 田畑金光

    田畑金光君 それから、管理職の者が労勧組合員になるかならぬかという問題。
  184. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そのほうは全然別個の問題として考えておる。私どものほうは、給与法の規定に基づいて、給与法上の措置としてもっぱら考えておる、こういうことでございます。
  185. 田畑金光

    田畑金光君 結局労働大臣、一万六千もふえたわけですね、管理職の手当をもらうのが。結局これは非組合員だと思うのですよ。それがやはり公務員法の改正に関連してとられた措置だ、こう見られてもしかたがないと思うのですが、どうですか。
  186. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) お断わり申し上げておきますが、私、公務員法担当の者ではございませんから、正確には責任のある人からお聞きいただきたいと思うのでありますが、今度の公務員法の改正にあたりましては、いわゆる管理職の範囲は人事院で御決定いただくことになっておるわけでございます。と同時に、先ほどから申し上げておりますとおり、今度の手当の増額については、私ども当初から何ら関知いたしておりません。現に私は幾ら上がったのか、いま承知いたしておりません。はなはだ不勉強といわれてもしかたがないのですが、承知しておりません。したがって、いわゆる国公関係の労働組合対策だと考えられることは迷惑でございます。
  187. 田畑金光

    田畑金光君 官房長官が見えましたから、もう一度あなたにお尋ねしますが、いま与党のほうでは、三公社など現業職員の地方議員兼職禁止の立法を出そうということで、現に与党の総務会では決定の段階まできているそうだが、この点は政府としてはどのように取り扱うわけですか。
  188. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 三公社五現業職員の地方議員の兼職禁止のお話でございますが、まだ私の手元には党の幹部からも話もありませんし、政府としてもまだこの問題について検討したというような事実もありませんので、目下は考慮いたしてはおりません。
  189. 田畑金光

    田畑金光君 もう時間もなくなってきましたから、最後に医療問題についてお尋ねしますが、二月の二十七日、政府・与党と支払い者七団体との間に、今後の医療行政について取りきめをやっておりますね。第一項を見ますと、「今次医療問題収拾の取り扱いについては佐藤総理大臣に預ける。」、「佐藤総理大臣に預ける」、何ですか、これは。
  190. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) この問題は、支払い者側のほうから、この医療問題についての混乱の問題についての提案が出ております。それに関しましていろいろ懇談をいたしました結果、基本的には、支払い者側のほうの考え方は、医療問題に対する総理大臣一つ考え方を知りたいということ、かつまた、今日までも種々の問題が起きておるが、これらに対して総理大臣が前向きで将来これを処理せられるよう希望する、こういうような諸問題をひっくるめまして、そこで全体的には、したがって、そのあとにあらわれてまいりまする何項目かの問題に対しましても、総理が前向きに解決をしたいという意向を示しての取り扱いにまかせる、こういうような解釈であの取りきめができたわけであります。
  191. 田畑金光

    田畑金光君 そうしますと、「総理大臣に預ける」というのは、前向きに解決する、こういうことですね。
  192. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) おっしゃるように、総理大臣はその会談には出席をいたしませんが、これが医療問題に関しては、総理大臣も前向きにこれを処理するような考え方を持っておるという意味において御了解を願いたいと思います。
  193. 田畑金光

    田畑金光君 この内容について、厚生大臣からひとつ説明してくれませんか。
  194. 神田博

    国務大臣(神田博君) 医療問題につきまして、政府側を代表して官房長官、また、与党を代表いたしまして幹事長、政調会長等が支払い側と御相談して、ある程度お約束をいたしましたこと、これは私も十分承知いたしております。それを説明をしろということでございますので申し上げたいと思います。  すなわち、医療保険財政の健全化に資するため、極力国底負担の増額等、必要な措置をとる。それから、保険三法の改正については審議会の答申を尊重する。薬価基準の引き下げを早急に行なうよう努力する。医療費の改定は医業経営実態調査に基づいて行なう。それから、保険医療機関の監査を励行する。さらに恒久的な措置として、政府に医療問題に関する調査会を設けて、医療制度全般についての根本的解決及び中医協のあり方を検討する。こういうことであると承知いたしました。私は、この話し合いの趣旨を今後十分尊重してまいりたいと、かように考えております。
  195. 田畑金光

    田畑金光君 厚生大臣、社会保険審議会の保険三法の答申は、おそらく四月中旬以降になるであろうといわれておる。そうなってくると、この国会でこの法律が成立せぬとすればどうするのですか、その赤字穴埋めは。
  196. 神田博

    国務大臣(神田博君) 私は、この国会に間に合うように答申がちょうだいできると、こういうことを信じまして、いま医療制度審議会、社会保険審議会及び社会保障制度審議会に出まして、極力御説明申し上げておる段階でございます。と申しますことは、いま田畑さんのお話のように、これが成案を得ない、国会が通らないということになりますと、保険財政を盛り立てていくという面からいたしまして非常に支障が生ずるわけでございまして、これはひとつそういうことのないようにこの保険制度を盛り立ててまいりたいと、こういうことでございます。また、両審議会におきましても、この保険制度が十分りっぱに運用されることを期待されておるようでございます。十分審議をしていただきまして、そうして答申をちょうだいできる、政府側といたしましては、先ほども申し上げましたように、答申を十分尊重いたしまして、そうしてりっぱに成案を得て御審議願いたい、こういうことでございます。
  197. 田畑金光

    田畑金光君 医業実態調査をほんとうにやるのですか。
  198. 神田博

    国務大臣(神田博君) そういうたてまえで諸般の打ち合わせをいたしまして、そうして処していきたい、こう考えております。
  199. 田畑金光

    田畑金光君 もう時間がまいりましたので、これで終わりますが、医業実態調査費として、昭和三十九年度の予算には五千万円計上しておりますね。医業実態調査を実際やったのですか、やるのですか、これから。これが第一の質問です。ほんとうにやるならやるで、まじめに取り組まれたらどうですかということです。  それから、まあ最後にお伺いしたいのは、実は山陽特鋼の問題に関連しまして、先般わが党の春日衆議院議員以下現地に調査に参りましたところ、同労組の副委員長から話がありましたのですが、それは従業員とその家族が健康保険証の使用を医師から拒否された、こういう届け出が約七件にも及んでおるそうですね。会社更生法を適用してこれは存続する会社だといわれておるが、そこですでに医師の診療拒否という問題が起きておるということ、この問題については事実を御承知かどうか、あるいはまた、かりにこれが事実だったとした場合には、これは医師法その他に照らしてどういうことになるのか。すでにこういう問題が従業員の中に、組合の中にも起きたというこの事態、これは問題だと思うんです。ましてや、これはその他の関連中小企業の問題等を考えてみるというと、いろいろな問題が起きてくると、こう思うんですが、この点について御存じなのか。もしこれが事実だとすればどういう御指導をなさるのか、これを承って私の質問を終わります。
  200. 神田博

    国務大臣(神田博君) 実態調査の問題でございますが、これは昨年の二月からそれぞれ打ち合わせをいたしまして、早く軌道に乗せたいということで努力いたしております。御承知のように、医師の実態調査は、やはり医師会の御協力なくしては十分に資料を得られないというようなこと、さらにまた、学者の御援助を得なくては十分でないのでございます。そういう点を勘案いたしまして、さらに一そうの努力をいたしまして、そうしてひとつ調査をして、これをりっぱな資料にいたしたい、こういう所存でございます。  それから、第二の山陽特殊製鋼の問題でございますが、これはそういうことがきのうもきょうも実は新聞に出ておりまして、たいへん私ども困惑しているわけでございます。この事実は私ども承知いたしておりますが、少し話が違うように考えております。これらのことは、そういうことがあってはならないことでございますので、十分注意をいたしまして保険の実施の完璧を期したいと、こう考えております。
  201. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 田畑君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  202. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。稲葉誠一君が辞任され、大森創造君が選任されました。     —————————————
  203. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き、質疑を行ないます。瀬谷英行君。
  204. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外務大臣は所用がおありだようでありますから、先に外務大臣に質問をいたします。  昨日、本委員会でもいろいろ問題になりましたが、三矢研究の内容について、外務大臣は御存じだったかどうか、お聞きしたいと思います。
  205. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ごくおおよそのことしか存じませんが、大体知っております。
  206. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大体知っておるということは、研究当時から報告を受けておったという意味ですか、問題になってから聞いたということですか。
  207. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 問題になってから……。
  208. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、この研究が実際に行なわれた当時は、外務大臣内容について全然御存じなかった、こういうことでございますか。
  209. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうでございます。
  210. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国防会議のメンバーに入っておられる方で、防衛庁長官以外の方でこの三矢研究の内容を知っておった閣僚はおられたのかおられなかったのか。
  211. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私以外の閣僚が知っておったかどうかということは、一向存じません。
  212. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 大藏大臣はどうですか。
  213. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) さだかには知っておりません。ただ、週間誌や何かに松本清張氏が書いたというようなことを前に聞いたことはございますが、それはもう昔のことでありますからよく覚えておりません。
  214. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 防衛庁長官も、当時は御存じなかったんですか。
  215. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 私も、実は長官に就任いたしましてから、「文芸春秋」にこういう問題が出ましたときに、こういう文書が部外に漏洩をした形跡があるがというような、きわめて簡単な報告を受け、いまどういうところからそういうものが漏れたのであるかということを調査をしておるというような、きわめて概略の報告を受けただけでございまして、国会で問題になりましてから、いろいろと内容について調査をし、知ったような次第でございます。
  216. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この三矢研究は、中共、北鮮を仮想敵国というふうに想定をしてかかっているわけでありますが、中共なりあるいは北朝鮮に対日戦争を行なうという徴候、あるいは日本に対する侵略の計画といったようなものがあったのかどうか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
  217. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実の問題としては、そういう徴候は一切ございません。
  218. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この種の想定を考える場合には、現実の問題を取り上げて可能性のあることを想定とすべきではないかというふうに思うのでありますが、その点はたして三矢研究の想定そのものが妥当であったかどうか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  219. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究は、幕僚の演習上の想定にこたえた答案でございまして、仮想敵国というがごときことばを使うことは不適当であったと私は考えておるわけでございまするが、それは政治的に言う仮想敵国というような意味ではなくて、いわゆる演習想定における一つの対象というような、きわめて軽い気持ちから仮想敵国というようなことばが答案の中にあらわれたのではないかと考えておるのでございまして、これはあくまでも対象を置くとしても、作戦の想定の対象としてのことばを使うべきであって、仮想敵国というがごとき政治的に誤解があるようなことばを使うことは私は不穏当であると、たびたび委員会において申し上げておるわけでございまして、将来の演習想定上においては、こういうことに十分慎重な配慮をすべきであると考えておるわけでございます。
  220. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 演習を行なう場合に仮想敵国がどこの国であるかということは別として、仮想敵というものを想定しないとその相手の編制なり装備なり戦術なりというものがわからぬわけであります。そうすると、当然仮想敵というものを考えた上で演習をするのが一貫した方針になるのじゃないかと思うのでありますが、その点はどうでありましょうか。
  221. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 演習の想定の上には、やはり仮想敵国ということばが不穏当であるといたしましても、私が先ほど来申し上げておりまするやはり相手方と申しますか、対抗する対象と申しますか、そういうことを想定をして演習が行なわれるということは、いままでの事例に徴しましても、また各国における事例等においてもとらえておることであり、またこれは想定上やむを得ない、対象を想定いたしまして演習をするということもやむを得ないことではないかと考えるのであります。
  222. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまでの演習の場合の想定はいずれも北朝鮮もしくは中共を相手とみなして相手国の軍隊は中共なりあるいは北朝鮮の軍隊であるというふうにみなして演習をやってきておるのかどうか、それ以外の国を対象にして演習をするというようなことがあり得るのかどうか、お伺いしたいと思います。
  223. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 従来行ないました図上演習等においては、こういうことはおそらくなかったと私は存じております。前の委員会においても申し上げましたとおり、三十八年度のいわゆる三矢図上研究なるものは、在来の年度にやってきておりまする想定演習等よりも人員も多く、期間も長く、在来のものに比べると、少しく図上研究としては規模が大きかったというような点から何と申しますか外国を対象にしたというようなことになったと思いまするが、従来いずれかの国を仮想敵国として想定をして常に図上演習をしているということはないと存じます。なおまた、私の申し上げることが間違っていまするならば、政府委員から答弁もいたさせます。
  224. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは政府委員から補足してください。
  225. 海原治

    政府委員(海原治君) 大臣の御説明を補足いたします。従来図上演習あるいは図上作戦等をいたします場合には、対象国をA国とかB国とかいう形でやる場合もございます。あるいは色の赤と青でございますが、赤軍対青軍、これは敵と味方というものがなければいろいろ想定ができません。その便宜上敵を赤軍、わがほうを青軍というふうに表現する場合もございますし、A国B国ということもございます。先ほど先生おっしゃっておりましたが、対象国の勢力等につきましては、そのつど攻撃のA国の師団の兵力はわがほうとおおむね同じである、あるいはわがほうの一・五倍である、こういうふうな説明をつけ加えるわけです。先ほど大臣の御説明ございました特定の国をあげての三矢演習ということになっておりますが、これは先般も御説明いたしましたように、現実に起こりました朝鮮事変というものを一つの例といたしまして研究いたしますことが、研究者の研究に非常に便宜でございます。で、具体的に起こりました朝鮮事変というものは私ども現に体験しているわけでございますから、もしもあのような事変が起こった場合にはどういうことになるだろうかということを考えた次第でございまして、特定の仮想敵国を設けて演習をした、こういうことではございませんことをひとつ御了承願いたいと思います。
  226. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、特定の仮想敵国を明らかにした研究は三矢研究が初めてであるというふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  227. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究といえども、いま瀬谷委員が申されましたような特定の仮想敵国というものを定めたわけではございませんで、ひとつの対象国という想定をいたしたにすぎないのでございまするので、特定の仮想敵国を設けて演習をしたということはいままでもないのでございます。その点はこの三矢図上研究におきましても、ことばの点において、私は表現等において不適当な点があったというのはそのことでございまして、あくまでも想定の対象として用いたのでございまするので、政治的ないわゆる仮想敵国というようなことをば設定をして図上演習をしたことはいままでかつてないのでございます。
  228. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それは言い回しとしては政治的な仮想敵国を設定をしてやったことはないといっても、現に三矢研究そのものが中共並びに北朝鮮の軍隊が韓国に侵入をしたといった想定に立っていることは事実なんですね。事実だとすれば、やはり軍隊と国というのは別々の存在じゃないんですから、結果的にはこれは仮想敵国というふうにみなさざるを得ないんじゃないですか、その点はどうでしょう。
  229. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) そういう点が、私がたびたび申し上げておりまするいわゆる言いあらわし方と申しまするか、表現の不適当な点でございまして、幕僚研究の途上において仮想敵国という、純然たる仮想敵国と、私どもが政治的に言う仮想敵国というような意味の設定を幕僚の諸君が頭に描いてしたわけではない。あくまでも想定上の対象国ということであったということで御理解をいただき、今後はそういうことばの表現等について十分慎重な配慮をいたさなければならないと私が申し上げておるわけでございます。
  230. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 三矢研究の土台となったこの想定、つまり中央並びに北朝鮮を仮想敵国とみなしたところのこの想定は失敗であった、このように解釈をしてよろしゅうございますか。
  231. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 部隊の統合運用の研究といたしまして、自衛隊が任務遂行上やったことでございまして、先ほど申し上げますとおり、表現その他においては不適当なところがありましたけれども、研究それ自体は自衛隊の任務としてやるべきことであったと考えておるわけでございます。
  232. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 研究それ自体が自衛隊の任務としてやったことがいいか悪いかということを言っているわけではない。今回の三矢研究の土台となった想定が失敗であったのかどうか。失敗であったという言い力が言い過ぎであったとすれば、妥当でなかったというふうにお考えになっているかどうか、その点をお伺いしたわけであります。
  233. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 表現等におきまして、国会における法律案とか、いろいろ誤解を招く点がございますので、こういう点は今後は想定等についても、長官自身が十分演習の行なわれる前に事情も聴取し、慎重な配慮をしなければならぬということを私昨日の当委員会にも申し上げたのでございまするが、全体を通じては不穏当の、不適当の点もあったということは、われわれ深く反省をしているわけでございまして、幕僚の研究に従事した諸君の気持ちの中にはこういうことはなかったと私信じまするが、こういう表現等の問題については慎重なる配慮が欠けておった点は私もこれを認め、今後十分反省も促し、またわれわれ上司の者といたしましても、十分こういう問題については慎重な配慮をするよう指示しなければならぬと考えておるわけでございます。
  234. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外務大臣に対して御質問いたしますけれども、昨日稲葉委員の質問の中で、日韓併合条約がどういう状況で締結されたか、その意義等について質問があった際に、まあよく存じておりませんという意味の御答弁がありました。という意味は、この条約の功罪についての評価はむずかしいと、したがって何とも言えないと、こういう意味なんでしょうか、どういう意味であるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  235. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その当時の考え方に従えば、やはり国と国との合意でございまするから、それによって両国が栄えていこうという共通の目的のもとにかような条約が結ばれたと思いますが、しかし、国力の相違というものがそこに作用しておることは、これはまた否定することができない。いろいろの角度からいろいろに考えられると、こういう考え方をもって私は昨日でございましたか、答弁をしたわけであります。
  236. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いろいろな角度からいろいろに考えられるという御答弁じゃ、どういう意味なのかちょっとわかりませんが、いろいろな角度からいろいろ考えられるというのは、内容的にはどういうことなんでしょうか。
  237. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 簡単に言うと、両国それぞれの考え方が違っておったのと、それから両国の国民について見ても、いろいろなそこに考えの相違があったと思う。そのことを申し上げたのでございます。
  238. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この日韓併合条約が、両国にとってどういうものであったとお考えになっておるのか。それは外務大臣としては評価しがたいとおっしゃるのか。わからないとおっしゃるのか。どうなんでしょう。
  239. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その当時の両国の間でどういうふうに評価されておったかということについて、私は申し上げた。それを、ただいまの時点からこれを振り返って見るならば、一民族が他の民族を支配するという形は、これは決して、ただいまの国際情勢から見ましても、あるいは民族の感情という点からいいましても、決して健全な行き方ではないと、かように考えております。
  240. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日韓併合条約のあり方というのは、そうすると、一民族が他民族を支配をする形をとったものであって、健全じゃなかったと、こうお考えになっておるわけですか。
  241. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまからこれを振り返って見ますと、どうしてもそういう事実は否定できないのでございますが、特にこの長い歴史なり伝統なり文化というものを持った民族を他の民族が支配するというようなことは、これは決して妥当ではなかったと、かように考えております。
  242. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 沖縄では、アメリカが事実上、日本の国民である沖縄の島民を支配をしているわけです。施政権の返還をわれわれは幾ら要求しても耳をかさないわけであります。アメリカの方針というのは健全な行き方ではないと、こういうふうにお認めになるわけですか。
  243. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカのただいまのあり方は、かつて日韓の間に存在した状態とは、いささか状況を異にいたします。でありますから、日韓についての考え方を、そのままこれに適用するということは、私は無理が出てくると思います。
  244. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 韓国がよく主張しているのは、三十何年間統治をされた、支配を受けたということをよくいっているわけでありますが、沖縄はもう二十年たっているわけです。現実の問題として、沖縄の島民には、日本の国民と同じような権利義務というものは許されていない。かといって、アメリカの国民と同じような権利義務があるわけでもない。いわば植民地的な支配を受けているという形をとっておるわけであります。これが健全であるかないかということは、日本人として見た場合に、はっきり結論が出せるんじゃないかと思うのでありますが、どうでありましょうか。
  245. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓にかつてあった状態をそのままというのではないけれども、しかし、ただいまの状態は、決して正常な状態ではないと考えております。
  246. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 正常な状態ではないということは、遺憾である、好ましくない、このように考え、日本の政府としても、その考え方に立って今後米国と折衝をするというふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  247. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 施政権の返還については、これはもう究極の目標で、大目標でございます。ただしかし、さしあたりとしては、民生の福祉向上をはかり、そうして政治的な、自由というものを一そう拡大していく、いわゆる自治権の拡大と、こういう方向で、この正常でない状態を一歩一歩正常化するという努力を、われわれは絶えず続けておるような状況であります。
  248. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 正常でない行き方、日韓の条約の場合とは違うというふうにおっしゃいましたが、日韓の併合条約と、条約のあり方、その他事情が違っておることは間違いないですが、一民族が他民族を支配をしているという形態は、つまり健全ではないという形態はお認めになるということですね。
  249. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうです。
  250. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 アメリカの方針が、このような健全ではない、他民族支配という形態を現にわが国においてとっておると、こういう事実を認識した上に立って、安保条約等についても考えていかなければならないんじゃないかと、そういうふうに思うのでありますけれども、日米間の共同作戦といったようなことを描いた三矢研究等についても、外務大臣としては、やはり一応の確固たる考え方を持っていかなければならぬと思うのでありますが、あらためて三矢研究について、外務大臣立場から、いかにしなければならないかというふうにお考えになっているか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  251. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三矢研究は、まあいろいろこまかい問題を論ずると、是非の議論も立ちますが、これを全体として見ると、いわゆる図上研究でございますから、別に現実の外交政策とは何らの関係のない問題であると、かように考えます。
  252. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 図上研究というのは、遊びごとでやっておるわけじゃないんです。これは、有事の場合に備えて図上で研究しておるというだけの話なんです。したがって、これらの研究の前提となっておる想定、あるいはその基本になっておる外交問題に対する考え方を、外務大臣を抜きにして、防衛庁の幹部が、かってに判断をするということが、はたして妥当であるかどうか。この点については、外務大臣としても、しっかりとした考え方を明らかにしていただく必要があると思うのでありますが、どうでしょうか。
  253. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これが実際の政治あるいは外交というものに影響力を与えるつもりであるか、単なる防衛上の図上研究であるかというところに、問題の分かれ目があるのでありまして、いわゆる防衛的見地から見た図上演練、作戦であるということであれば、これはもう外交のらち外の問題でありますから、われわれは、これに対して深くこれをとやかく言うという立場にないことを御了承願います。
  254. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外交のらち外であるという考え方は少し私は危険だと思う。外交問題に対する正確な認識を持たないで、軍人が——あえて私は言いますけれども、自衛隊というのは事実上の軍人なんです。軍人がひとつの判断を下すということは、敵と味方を取り違えるということにもなりかねない。その意味では、国防会議等において、これらの想定をきちんときめてかかる、また、国防会議がこれらの研究の内容に参画をして指導をしなければならないというふうに考えるべきじゃないかと思うのでありますが、外務大臣としてはどうでしょうか。
  255. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは、ただいわゆる図上演習の一つの答案としての段階でございまして、私どもは、全然らち外の問題である、かように考えます。
  256. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これの押し問答をしていてもしようがありませんから、それでは、外務大臣の時間の都合もありますから、まとめてお聞きしますが、日韓会談の成り行き等については、現在交渉中であるということが再々述べられておりますけれども、韓国の国内に向けては、李ラインは堅持をするという主張をし、日本の国内に向けては、李ラインは事実上解消したというふうに宣伝をして、名目を変更し、事実上李ラインを、あるいは何かの名称のラインを残すというようなことが、妥協点として考えられるのではないかということが、いろいろ出ておりますけれども、そのような妥協ということがあり得るのかどうか。そういうことは絶対に考えていないというふうに言い切れるのかどうか。
  257. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 沿岸国の一方が、かってに自分の権益を設定して、そうしてこれを侵すものは、国内法によって処罰するというような、そういう独占的なものがいわゆる李ラインであったのであります。われわれは初めからこれを認めておりません。そこで、今度の日韓会談において、これが一体どうなるかという問題でありますが、ただいま農相会談におきまして、専管水域というものを、国際慣行に従って基線から十二海里、その外側は共同水域とし、両国が共同で全く対等の立場において魚族資源の関係上、漁獲量なり、隻数なりというものをきめて、そうしてこれを今後そういう独占的なラインというものは認めないという考え方に、だんだん会談が進みつつあるような状況でございまして、李ラインは、この漁業会談の成立によっておのずから消滅する、そうしてこれにかわる独占的な何ものかが生まれるかといいますと、それは生まれる余地はありません。全然李ラインというものは消滅し、これにかわるようなものは、いかに名前を変えようと、その実体は消えてしまう、こういうことに御了解を願います。
  258. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 事実上消えるという言い方をしきりになさいますけれども、要するに、完全にこれは撤廃するのだというふうにはっきりと確認をしてよろしいですか。
  259. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それでよろしゅうございます。ただ、われわれは、初めから李ラインというものを認めていないのですから、それを主張するという——一方的な主張がなくなれば、これはもうなくなったわけであります。さように御了承願います。
  260. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 三矢研究について、三月十日、十一日の予算委員会等で、たっての要望であるから一両日中に資料の提出をいたします。という意味の答弁が、総理あるいは防衛庁長官からございましたけれども、今日に至るまで、これが資料だという提示はございません。一体これはいつ御提示になる予定なのか。それとも方針を変更してやめるのか、どっちなんです。
  261. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) さきの委員会におきまして、すでに提出いたしました資料のほかに、さらに資料の御要求があり、総理大臣からも、さらに検討する旨の御答弁があり、私も、総理の意を受けて最大限の御協力を申し上げる意味において、さらに検討をいたします。と申し上げたのでございます。しかるところ、いろいろ検討考慮の結果におきましては、従来からたびたび申し上げておりますとおり、図上研究の幕僚の答案をまとめただけのものでございまして、防衛庁として、正式な見解として決定をしたものでもございませんし、いわゆる防衛庁の正式文書となっておるものではございませんので、これを国会に資料として提出することは不適当であると考え、御要求には残念ながら応じかねるというのが、私どもの考え方でございまして、先ほど検討中と申し上げましたが、今日までの段階では、せんだって提出いたしました以外の資料は、御提出がいたしかねるというわけでございます。
  262. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の答弁では、国家機密に属する内容もあるから出せない、こういう意味の御答弁がございましたが、国家機密だからという昨日の御答弁は取り消されるわけですか。
  263. 海原治

    政府委員(海原治君) 昨日私がお答えしましたときに、国家機密ということばを使用いたしましたのは、当時稲葉先生から、年度の統合防衛計画、これを出せ、こういう御要求がございました。これにつきまして、私は、そういうものは高度のいわゆる作戦計画でございまして、そういうものは、諸外国においても、国家機密として一般に公表するものではございません、こういうことを申し上げた次第でございます。なお、法律上の解釈につきましては、法制局のほうにお問いいただきたいことをつけ加えてございまして、私が申しましたのは、年度の統合防衛計画、いわゆる日本の国が外敵の侵略を受けた場合に、どのように自衛隊が行動するであろうかというようなことは、これは常識的に申しまして、国家機密的なものであるという意味の御説明をした次第でございます。したがいまして、いわゆる国家機密があって、その中にこれが属するというような申し上げ方はしておりませんので、私の説明が不十分でございましたら、そのようにひとつ御解釈願います。
  264. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 作戦計画というものが、諸外国においても国家機密であると、諸外国のことは別としまして、日本では、憲法で戦争はやらないことになっておる。すると、日本の場合は、国家機密だから作戦計画は出せないという理由は成り立たないんじゃないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
  265. 海原治

    政府委員(海原治君) 昨日の当委員会におきまして、法制局長官も、この点について、法制局の見解を述べておられますが、これは国家としてやはり守るべき機密というような事項は認めておられるわけです。ただ現行法上、先ほど申しましたように、国家機密というものは何か。国家機密を直接に保護すると申しますか、そういうような法制はない、こういうようなことをはっきり言っておられるわけでありまして、たとえば証人の尋問につきましても、証人として、あるいは公務員としては、その機密を守るために宣誓を拒否する、証言を拒否するということも、きのう言っておられます。同じことを申し上げて恐縮でございますが、国家に機密があることは当然である、こういうことはぜひひとつ御了解願いたいと思います。
  266. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 証人の例なんかどうでもいいです。関係ないです。これには。それは何となく証人の場合もこうだといったようなことでごまかそうとされておるのでしょうが、問題は三矢研究にあり、あるいはまた防衛庁の年度計画にある。先ほど私の質問した際、外務大臣も、大蔵大臣も、三矢研究等については知らなかった、こうおっしゃったでしょう。非常に重要な内容を持っておるにもかかわらず、閣僚がこういうことを全然知らなかった。これで、はたしていいかどうかという疑問が起きるわけなんです。もし閣僚が知らないようなことを、自衛隊の中枢幹部が研究をして、これは機密であるから、国家の利益のために公表すべきではないと思うから、国会に対しても、国民の前に対しても明らかにしないのだということが通用するとすると、これはたいへんなことになると思うのです。はたしてそのように、国民の前に隠さなければならないような内容のものであるのかどうか。いかなる内容、いかなる理由によってこれを秘匿しなければならないのか。証人の例等は、私は要らないですから、もっと具体的に、こういうわけだからということをおっしゃっていただきたい。
  267. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) これは図上研究途上における各幕僚の答案を集めたものでございまして、その答案が調製をせられたとか、結論が出されたとか、そのいずれかが取捨選択が行なわれるという段階には、これは当然長官がシビーアン・  コントロールの原則によりまして、この取捨選択、良否を決定しなければならないのでございまするが、そこまでの段階にこの三矢研究文書なるものがいっていない。各幕僚の答案のしっばなしで、それがつづり込んであるというだけでございますので、まだ決定をしていない。表に正式に出すべきものでもない。防衛庁の正式な見解が決定をされないものでございますので、そういう意味において、外に出すべき性質のものではない。そこまでまだ整理が行なわれていないという意味において、これはいわゆる内輪の機密な文書ということで、ただしまってあったと私どもは解釈をいたしておるのでございまして、これが当然正式決定をみて、適当に取捨選択が行なわれる、あるいは年度防衛計画に組み込まれるというようなことになりますれば、これは当然秘匿すべきものではないのでございます。
  268. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私はこの内容、特に想定等について、非常に視野の狭い人たちがこの想定を作成をし、演習をしたという感じを受けるわけなんです。一幹部がというふうにおっしゃるけれども、この三矢研究に参画をした人は、自衛隊の事実上の、最高幹部というと、これは防衛庁長官が最高になるでしょうから、最高ということばは適当でないかもしれませんが、中枢幹部に該当する人じゃないのですか。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  269. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) この三矢図上研究を行なった制服の諸君は、申されますとおり中堅幹部の諸君でございます。
  270. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の答弁によりますと、ほとんど二、三の人を除いては全部陸士、海兵といった職業軍人出身の人が多いのでありますけれども、事実上これらの作戦計画に参画をし、あるいは研究を行ない、統裁を行なう人たちは、ことごとくと言ってもいいくらい、士官学校出、あるいは海軍兵学校出等の人によって占められているのですか、現実は。
  271. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いま瀬谷委員から御指摘がございましたとおり、陸士、海兵等の出身の諸君が多いのでございます。なおまた詳しいことにつきましては、人事局長から答弁いたさせます。
  272. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) お答え申し上げます。  昨日お答え申し上げました統裁部十七名中一名、これが軍学校以外の者でございます。研究部三十六名中三名、軍学校以外でございます。
  273. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 陸士、海兵何期というようなこと、わかりますか。
  274. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) ここには準備してまいっておりません。
  275. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 年配からいうと、何期ということを言われりゃ見当がつくのですが、それがわからないというと、年配からいうとどのくらいの人たちですか。
  276. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) 大体の見当で申し上げますと、一佐の方は四十七期から五十一期ぐらいまでの間であります。二佐の方は五十一期から五十四期です。
  277. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これらの幹部の考え方でありますが、現在の憲法を守るべきであるという認識をはたして持っているのかどうか、憲法というものは問題外と考えておるのかどうか、こういう点について私はいろいろな心配な点があるわけです。自衛隊の現在の幹部教育、防衛大学等における幹部教育の中で、憲法であるとかあるいは経済学であるとか教養課程一般についての教育がどのように行なわれておるか、御答弁願いたいと思います。
  278. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究を行ないました制服の諸君、また現在の自衛隊における旧海兵、陸士等の出身者のわが国憲法等に対する考え方についての御意見がございましたが、これらの諸君は、きわめて慎重にこの民主主義下における日本の民主憲法というものは厳守しなければならないという立場に立ち、いわゆる民主主義下における自衛隊の任務を遂行するということに彼らは慎重な配慮をいたしておるのでございまして、この前の席上でも私申し上げたことがございまするが、今回の三矢図上研究問題が国会の問題となり、世上いろいろな批判が行なわれており、またいろいろクーデターの計画ではなかったかとか、あるいは国会に介入する意思があるのじゃないかとかというような一部の批判が行なわれたことにつきましては、制服の諸君がむしろがく然といたしまして、われわれはさようなことは毛頭考えておらないのである、憲法に抵触するとか、政治に介入するとかというようなことは夢想だもしないところであるということで、非常に驚いておるわけでございまして、われわれがいろいろ聞いた人々に対しましても、さような考え方は、われわれは毛頭持っておらないのであるということをしきりに申しておるのでございまして、旧軍人の経歴の諸君といえども、すべての隊員が民主主義に徹しておる、かように私は信じて疑わないわけでございます。さようなことから、また防衛大学の教育について御配慮をいただいているわけでございまするが、これは申すまでもなく、将来自衛隊の中堅幹部、指揮官としての学生の養成でございまして、この面については一般大学基準に準拠いたしまして、あくまでも視野の広い、そうして技術上の思考力をば十分向上をさせ、国家社会の公共の一人としての人格の陶冶というような点に重点を置いて教育をいたしておりますし、そうしてまた、これが将来自衛官の中堅幹部、指揮官としてのりっぱな素質を備えるような教育に専念をいたしておるわけでございます。  教課内容等につきましては、教育局長から答弁をいたさせます。
  279. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 防衛大学校の教育につきましての御質問でございますので、私からお答え申し上げます。  防衛大学校は、御承知のとおりに一般の大学と同様に、高等学校を卒業しまして、四年間防衛大学校において将来幹部自衛官としての教育訓練を受けまして、その後の幹部としての勤務につくわけでございますけれども、幹部の卵としての教育は、防衛大学校における教育で完結するものではございませんで、防衛大学校を卒業しますと、さらに陸海空のそれぞれの幹部補生学校において約一年の教育を経て、初級幹部としての実際の実務につくわけでございますが、幹部としての教育は、さらにその後各職種に応じましてそれぞれの学校で特技の教育を受けますと同時に、三佐ないし二佐ぐらいのところから指揮官、幕僚としての一般的な素養、さらにまた上級幹部としての教育を受けまして、幹部としても多くの時間、いろいろな各種の教育を受けるわけでございます。  そこで、防衛大学校の教育の方針でございますけれども、基本的なことにつきましては、ただいま長官から申し上げましたが、特に広い視野を養う、また柔軟なる思考力を養う、さらに科学的な思考力を養う、また豊かな人間性を養うということを主眼といたしておるのでございまして、教育訓練、規律ある団体生活及び学生の自発的に行なう各種の活動におきまして心身を鍛え、徳操をみがき、人格の陶冶につとめるとともに、自主自律、積極敢為の気風を養い、国家及び社会の一員としてはもとより、幹部自衛官としての職責を尽くし得る性格を育成をするというのが一つでございます。さらにまた、教育課程におきまして、大学設置基準に準拠いたしまして、一般教養、理工学及び防衛学に関する学理及びその応用を授け、幹部自衛官として必要な基礎となる学力及び技能を育成する、これが第二点でございます。  訓練課程におきましては、自衛隊の必要とする基礎的な訓練事項につきまして練成し、幹部自衛官としての職責を理解して、これに適応する資質及び技能を育成をする、これが第三点でございます。さらに学生全員の参加する体育、活動及び各種の運動競技を奨励いたしまして、訓練とともに強健な体力と旺盛な気力を育成する、さらにあらゆる機会におきまして、陸、海、空各自衛隊の幹部自衛官となるべき者の間に、三自衛隊の間に理解協力の気風を育成する、こういうことを方針といたしまして教育をやっておるわけでございます。つまり、幹部自衛官となるべき資質を養いますると同時に、今等の新しい近代化された自衛隊におきまして、十分新しい兵器等を駆使いたしますに足りますところの科学的な技術的な能力を養うと同時に、旺盛な気力、さらにまた体力を養うということを主眼といたしておるわけでございます。  それで教育課程につきましては、ただいま申し上げましたように、一般大学の設置基準によりまして普通学を教育しておりますが、大体理工学系統の大学に準じまして人文科学なり、社会科学についても相当重要視しております。人文科学、社会科学それぞれ単位数は十四単位ずつ、時間にいたしまして二百十時間ずつでございまして、全体の授業時間のうちに占めます比率は、単位に換算いたしまして、単位におきまして約八%、時間において約五%ということになっておるのであります。それで一般教育科目の内容につきまして御説明申し上げますと、人文科学におきましては、哲学二単位、史学二単位、これは一単位が十五時間とお考えいただいてけっこうでございますが、さらに国文学が四単位、心理学二単位、それから社会科学になりまして、法学、この中に憲法が入るわけでありますが、法学が四単位、したがいまして六十時間。この中で憲法につきましては、憲法の由来、国民主権主義、基本的人権尊重主義、国会中心主義、永久平和主義、憲法とわが防衛組織、こういう内容について教育を行なっております。そのほか国際法につきましては、二単位、政治学二単位、経済学四単位、人文地理学二単位、こういうことでございます。御参考までに政治学につきましての授業目的を申し上げますと、デモクラシーの本質を解明し、それが議会、その他の政治機構の上においていかに展開されているか、デモクラシーに対する挑戦としての独裁の本質及び近代独裁機構の理論と実際を比較検討し、並びに今日の政治思想と国家間との関連において説き、現代政治の理論的基礎を理解させる、こういう内容の教育をやっておるのでございまして、私どもとしましては人文社会、こういういわゆる一般教育科目につきましては、相当重視をし、またその成果も見るべきものがあるというふうに考えておる次第でございます。
  280. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 社会科学あるいは憲法、国際法、政治学についても教えておるということでありますが、その教官はどういう人たちをどういう方法で選考し、どういう人たちが実際にその教授に当たっておるのか、それらの点についてもあわせてお教え願いたい。
  281. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 防衛大学におきます文官教官は約二百六十名でございますが、その中で人文社会科学を教授いたしております者が教授、助教授、講師入れまして十七名でございます。出身校につきましては、一人一人につきまして詳細調べておりませんけれども、大部分は東大をはじめとする旧帝大の出身者でございます。
  282. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私はその幹部の教育、特に幹部がどういう思想傾向を持つかということが、これから非常に重要な問題になるんじゃないかと思うのであります。いままではっきりした点を申し上げますと、三矢研究等の計画あるいはその内容等についてはともかく、政府の方針あるいは自衛隊の方針は国民の前に明らかにしない、できないということだけはっきりしました。しかも、昨日の答弁以来、あたかも国政の治外法権にあるかのような印象を受けたわけであります。そういうことがはたしていいかどうかという疑問が当然出てまいります。防衛庁長官をはじめ、閣僚、防衛局長に至るまで、あの当時は研究の内容を全然知らなかった、こういうふうにおっしゃっている。これでは、幾らあとになって弁明をされましても、これを秘密のベールの中に包み隠しておくならば、今後どのようなことを研究されようと、外に漏れさえしなければかまわぬということになっちゃうのじゃないですか。むしろ私は、漏らしたのはいかぬということよりも、こういう内容はやはり少なくとも国会の審議の前には公正に明らかにしていくことのほうが、方針として正しいのじゃないかと思うのでありますが、防衛庁長官どうお考えですか。
  283. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) もちろん、国の防衛というものは、国民全体の協力がなくしてはこれを遂行することはできないのでございまして、防衛整備計画その他につきまして全国民に明らかにいたしまして、その理解と協力を得るということは、一番大事なことであろうと考えております。しかしながら、この今回の三矢図上研究なるものは、先ほど来申し上げておりますように、まだこれが正式に決定をされておらぬ、結論も見出しておらない、取捨選択も行なわれていないという、いわゆる未定稿の未定稿と申しますか、全くの答案を集めたにすぎないのでございますので、こういうものを外に出すことは、防衛庁が責任の持てるものでもございませんし、またそういう未定稿のものが、防衛庁の正式見解、政府の防衛計画というようなことに誤解をされてもかえっていけませんので、この問題を公表することは差しつかえがあると申し上げておるのでございまして、私は、瀬谷委員が申されるような、全国民の協力を得るようにして、理解と協力を求める、できるだけ決定をしたことは国民の前に明らかにしていきたい、そういう基本的な考え方につきましては全く同感でございますし、今後そういうふうに努力すべきであると考えておるわけでございまして、三矢研究の想定の内容等について閣僚もだれも当時詳しく知らなかったというようなことは、決していいことであったとは考えておりませんので、先ほど来申し上げますとおり、今後は十分、こういう想定等をするにつきましても、長官がこういう問題についても十分承知をいたし、そうして慎重な指導をするように心がけていきたいと申し上げておるわけでございます。
  284. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 三矢研究はこういうわけだからということだけじゃなくて、防衛計画についてもきのうは公表できないというふうに言われました。こうなると、自衛隊のやっていることは皆目われわれにはわからぬということになってしまうのです。戦争をやるのに、自衛隊だけでやれるものじゃないのですからね。これはオリンピックとはわけが違うのです。国会の協力だって得なければできないことがたくさんあるわけです。そういう多岐にわたる問題について、国会にも内容を明らかにしないというようなことでは、極論をすればですよ、ないしょでやることが許されるならばクーデター計画をやったってわからぬ、これは。不穏当な話だけれども。そういうことは毛頭考えておりませんと言ったそうですけれども、考えておりますと言ったらたいへんだからこれはもう言いっこない。五・一五だって、二・二六だって、クーデター計画をあらかじめ公表するやつなんかありませんよ。その意味で、監督は厳重にするということと、国会がこれらの内容について明らかにする道を開くということも私は必要だろうと思うのでありますが、この点についての長官の見解をお伺いしたいと思うのです。
  285. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) お考え方の趣旨においては、私も全く同感でございまして、あくまでも国会が最高の機関でございまして、防衛庁のあらゆる計画、人員一人ふやすにも、国会の御承認をいただいて、国会の御承認のもとにやっているような状態でございますので、しいて国会に問題を秘密にするというようなことがあってはならないし、私もさように考えておりますけれでも、ただ、問題の事柄によっては、各省にもやはりその各省自体の機密というものはあるのでございまして、そういう防衛庁にも防衛庁としての機密に属することは、これは公表することのできない面もありますので、そういう点を私は申し上げているわけでございまして、できる限り国民の前に明らかにする、国会にも明らかにして、御審議、御検討をいただくという趣旨においては、全く瀬谷委員の仰せられるとおりであります。
  286. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 趣旨においてはもっともだと言いながら、実際上は出さなかった。今日依然としてなぞのまま、内容が解明されておりません。そのことを申し上げておきます。  それから、在日軍事援助顧問団というのがありますけれども、その任務なり予算等についてお伺いしたいと思います。
  287. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 在日軍事顧問団は、日米防衛相互援助条約によりまして、米軍からわが自衛隊に供与されております資材とか装備とか役務等についての進捗状況を見、またこれが指導に当たっているわけでございます。  これらの予算その他詳細にわたりましては政府委員から答弁をいたさせます。
  288. 大村筆雄

    政府委員(大村筆雄君) 御説明いたします。在日軍事援助顧問団交付金につきまして四十年度予算におきまして三億五千万円、住宅公団交付金におきまして六千五百万円、合計四億一千五百万円でございます。
  289. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その任務について。予算のほかに任務。
  290. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) お答えいたします。先ほど防衛庁長官から御説明がありましたように、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の第七条に、顧問団の任務が書いてあるわけでございます。これをお読みいたしますと、「日本国政府は、アメリカ合衆国政府職員で、この協定に基いて供与される装備、資材及び役務に関するアメリカ合衆国政府の責務を日本国の領域において遂行し、且つ、この協定に基いてアメリカ合衆国政府が供与する援助の進ちょく状況を観察する便宜を与えられるものを接受することに同意する。」と、こうなっているわけでございまして、いまお読みいたしましたように、このいわゆるMSA協定に基づきましてアメリカ政府が日本に対する装備なり資材なり役務等の援助を行なうわけであります。その援助を行なうにあたりまして、日本でアメリカ政府の仕事をやる必要がある、こういうことになるわけであります。また、援助いたしましたところの品物、供与されました援助に対しまして、その進捗状況がうまくいっているかどうかというものを観察をする、見るという、そういう任務を持っているわけでございます。要するに、これをもっと簡単に申しますと、アメリカ合衆国政府が日本政府に対していろいろ援助を与えます場合の、日本政府に対する現地の窓口になっているということでございます。
  291. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 南ベトナムでは、アメリカの顧問団というのがだんだんだんだんとその仕事を拡大しまして、事実上戦争に乗り出したという形態があるわけでありますが、在日軍事顧問団の任務も、防衛年鑑によれば、計画の立案であるとか、防衛問題の助言であるとか、供与品の整備であるとか、援助の成果報告であるとか、そういうものが書いてあるわけでございますが、これらの顧問団というものがなければ日本の自衛隊というものはやっていけないのか、都合が悪いのかどうか、また、これらの顧問団というものが、三矢研究であるとか、防衛計画とか、この種の自衛隊の演習あるいは研究といったものに対してどういう役割りを果たしているのか、御答弁願いたいと思います。   〔理事村山道夫君退席、委員長着席〕
  292. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 在日米軍事顧問団は、先ほどお答え申しましたりおり、供与品に対するところの技術指導等をいたしておるのでございまして、やはりアメリカから供与された装備等について、まだ日本の自衛隊だけではこれが運用その他に十分でございませんので、やはり軍事援助顧問団の指導を受ける必要が現在なおあるのでござござす。  なお、これら顧問団が、防衛庁の図上研究とか、あるいは防衛計画、そういうものにどういう関連があるかというお尋ねでございまするが、これは全く、先ほど申し上げておるとおり、軍事顧問団の任務以外にはやっておりません。また、わが方といたしましても、そういうこと以外に、軍事顧問団の意見を求めるとか、連絡をするとかいうことは全然ございませんので、そういう方面とは全く関係がございません。
  293. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、軍事顧問団というものは存在はしているけれども、予算も出しておるけれども、しかし、日本の自衛隊が、特に今回の三矢研究をはじめ、防衛計画等については、深くその指導を受けている、あるいは介入を受けるというような事実はないというふうに解釈してよろしいんですか。
  294. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) さようでございます。
  295. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私が心配するのは、南ベトナムにおける米国の顧問団の今日の役割り、彼らの行状——行状というと何ですけれども、そういう点から考えると、日本においてもいつの間にか名目的なものがだんだん大きくなって、むしろ日本の自衛隊が指導を受けるというよりもリードされるというようなことになっては一大事であるということを私は心配するのです。日本の国民として一番大きな心配なんです。だから、そういう点の心配があって、なおかつ三矢研究といったようなものが内容が明らかにされないということになると、いろいろな憶測を生むわけです。それらの点についてはっきり言えるかどうかちょっと私わからぬような気もするのですけれども、だいじょうぶだと、そういう心配はないのだということが明言できますか。
  296. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) その点については、だいじょうぶだと私は明言ができます。
  297. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。MSA協定の一番最初の前文をお読みになればはっきりすると思うのですが、この軍事顧問団は、MSA協定の第七条ですか、あの規定によって日本に来ていますが、そしてまた予算は日本の予算から人件費を払っていますが、その任務は、アメリカが日本に援助したその援助の進行状態を調査し、あるいはまたいろいろ助言するということですが、あの前文をお読みになりますと、あれはアメリカの国内法に基づくということになっているのです。それによりますと、もしアメリカが日本に与えた援助がアメリカの防衛と安全に役立たないと認めたときには取り消すことができることになっているのです。したがって、軍事顧問団はどういう調査をしているかと申しますれば、アメリカが日本に与えた援助がアメリカの防衛と安全に役立っているかどうかです。そういうことを調査しているわけでしょう。そうして軍事顧問団がアメリカの援助はアメリカ防衛に役立たないと認めたときには大統領に報告するんです。大統領がアメリカ防衛に役立たないと認めたときには取り消すことができることになっています。アメリカの国内法ですね、お読みになれば。はっきりとそういうことが書いてあります。したがって、先ほど防衛長官は、全然日本の自衛隊の行動等について影響がない、関連がないと申されましたが、日本の自衛隊はアメリカの援助なくしていま自立できない状態です。かなり基本的な技術その他について援助を受けているんでしょう。そこで、軍事顧問団の調査というものは、あるいは助言というものは、日本の防衛を主としているんじゃなくて、アメリカの防衛と安全、これを主として調査し、そうしてアメリカの援助がほんとうにアメリカに役立っているかを監督しに来ているんでしょう。ですから、関係がないと言えないと思うんです。ですから、三矢研究なども、これは非常にアメリカだって、軍事顧問団は関心を持たざるを得ないと思うんです。その間に何ら関連なくてこういう図上作戦というものは行なわれるはずがないんです。ですから、MSA協定をよくごらんになれば、一番最初の前文をごらんになれば、アメリカの防衛と安全に役立たないと認めたときは取り消すことができるんですよ。そういう前提条件なんです。ですから、何か軍事顧問団とそれからいまの日本の自衛隊のいろいろな研究行動というものについて全然関係がないと言われていますけれども、これは事実じゃないと思うんです。これはもっとお調べになってごらんなさい。そんな簡単なものじゃないと思うんです。ここで決していいかげんに御答弁されているんじゃないと思うけれども、先ほど国民に十分に実態を知らせる必要があるとお述べになったんですから、こういう点はもっとはっきり、日本の自主性を確保する上にも、このMSA協定とアメリカ援助と日本の自衛隊との関係ですね、もう少しはっきりと御説明願いたいと思います。
  298. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 私が瀬谷委員に御答弁申し上げましたのは、三矢研究等に関連をいたしてのアメリカ軍事顧問団というものとの関係等を主眼としてお答えを申し上げたわけでございまして、いま木村先生がおっしゃいますとおり、広範な面においては、全然関係かないと——いろんな国防全体というような広範な意味から申し上げますと、日米共同防衛体制でございますから、全然関係がないということは、これは適当でなかったと存じます。ただ、直接軍事顧問団の任務というものは明確になっておりますので、その任務を逸脱し、またいろいろなことに対してアメリカの軍事顧問団が立ち入っていない、またわれわれのほうでもそういう面の連絡はしていないという意味で関係がないと申し上げましたことを御了承をいただきたいと思います。
  299. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関係がないというふうにおっしゃっておりましたけれども、知らなかったということになると私は困ると思うんですよ。この前の三矢研究等については、御存じなかったわけなんですね、明らかに。今回もそういう点、いま木村さんから質問になったような事柄について、それは抽象的にはいいかもしれません。具体的には、どれだけの連携をとっているのかという疑問は、これは残りますね。これらの点について、年度の防衛計画等についても、これはアメリカの軍事顧問団は関係していない、こういうふうに断言できますか。
  300. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 年度の防衛計画には軍事顧問団は関係がございません。
  301. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日要求がございましたけれども、年度の防衛計画等についても隠したくないというふうにお考えになるならば、できる限りわれわれの前に明らかにしていただきたいということを要求しておきます。
  302. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。年度に関係ないと言いますけれども、四十年度の日本の防衛計画は、アメリカの援助を前提にしているんじゃないですか。関係がないなんということは言えないと思うんですよ。したがって、アメリカとやはり折衝しなければならぬはずですよ。関係がないというのはおかしいと思う。四十年度でもアメリカの援助を、ミリタリー援助をあれは前提としていると思うのです。関係ないというのは、おかしいと思うんですよ。
  303. 海原治

    政府委員(海原治君) 年度の防衛計画につきましては、再三御説明したことでございますが、これは当該年度の始まりますときの自衛隊の能力というものを一応見積もりまして、その年度にもし万一、外敵の侵略があった場合にはどういうことができるか、どういうことをさせねばならないかということを、いわゆる、昔で申しますと作戦計画あるいは作戦準備計画でございます。したがいまして、その中には、アメリカのMAPがどうだということについては、これは先ほど大臣が申されましたように、関係がございません。ただ、予算案を作成しますとか、あるいは業務計画を作成しますとか、その際には、当該年度においてアメリカからどの程度の有償あるいは無償の援助が来るだろうということは、これは関係ございます。しかし、先ほど申しましたように、作戦計画的な意味におきますところの年度の防衛計画、これには軍事顧問団は全然関係ございません。
  304. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは防衛庁長官終わります。  今度は河野国務大臣に質問したいと思います。  先般、河野さんが、過密都市対策でもって、大東京構想というものを発表されましたけれども、過密都市対策としての河野試案であるのか、どういう考え方に基づいておられるのか、お聞きしたいと思います。
  305. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 別に私は試案を発表したことではございません。御承知のように、過密都市の対策につきましては、目下、政府におきまして、関係各省で検討、立案中でございます。私がこれらの各省の関係のものを取りまとめて、これから対策を立てようと、こういうことをいたしておるわけでございます。いまお話しの点は、おそらく私が先般、東京の商工会議所が中心になっておやりになりましたところに参りまして、ごあいさつ申し上げました。その際に、東京の現状から見て、東京に対する、ただ単に過密都市対策ということでなしに、将来の東京のあるべき姿としては、行政的にいろいろ最近ある、これらを広域に拡大をして、そうして、その中に同じ条件のもとに都市計画をやっていくほうが適当であろうということを申したのでございまして、いまお話しの、政府のやるところの過密都市対策につきましては、検討中でございますから、この点、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  306. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過密都市対策については、もう前から言われておって、検討中というのが続いているわけなんです。いつまで検討しているのか、ちょっと見当がつかないので、この構想というものはすみやかに明らかにしていただき、実施に移さるべきものだと思うのですけれども、具体化されているのかどうか、詳しく、できましたら御説明願いたいと思います。
  307. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、私も建設大臣を二年ほどいたしましたが、建設省は建設省として、それぞれの行政の範囲において対策を立て、実施をしております。道路、住宅、工場の分布、さらにまた、その他の点においても、それぞれ具体案を立ててやっております。また、それが通産省においては通産省、経済企画庁においてもまた同様なことをいたしておりますが、これを総合的に各省の調整をはかりつつどうしていこうかということが、いまお答え申し上げた点でございまして、実施は実施で進めておるものは進めておりますが、これを総合的にもう少し計画的にひとつやろうじゃないかということで私が申したのでございます。
  308. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いつまでにどういう成案を示し、どのようにこれから推進していくかという点について、明らかにできますか。できましたらお願いしたいと思います。
  309. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) いつまでにできるという目標よりも、なるべく早くということで、これをせっかく急いでおります。御案内のように、たとえば運輸省においても、それぞれこれらの輸送計画等について案を持っておいででございます。こういうものを総合して、都市計画と申しますか、国土計画と申しますか、というものをひとつ基本的に掘り下げてみようということでやっておるわけでございます。一応の目標としては、十分なものができるかどうかわかりませんが、明年度——明年度と申しますか、いまなら明年度ですが、この十二月の予算の編成までには一応のものを何かまとめ上げたいという目標でやっております。
  310. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先般の新聞に発表されましたものは、東京周辺の県境を取り払って大東京構想という形にいたしておりますけれども、まあ県知事の数と県会議員の数が減ると、行政面ではある程度便利になるというような点はわからないわけじゃありませんけれども、首都圏庁との関連、あるいはこういう形でもって輸送面での打開策といったようなものが、どのように期待できるか、これは運輸大臣からお答え願いたいと思います。
  311. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいまの御質問に対しましては、大体基本精神は、ただいま河野国務相がお答えになりましたのでございますが、過密都市対策は、過密地域への人口、産業の集中を軽減する施策と、過密地域における交通混雑緩和のための施策の二本立てにおいて進めることが必要であると考えております。  第一の、人口、産業の集中を軽減するための施策といたしましては、新産業都市の建設、工業整備特別地域の整備、その他の地域開発の促進、つまり、九州開発であるとか、北海道開発であるとかいう七地域の開発を進行いたしておりますが、そういう地域開発の進行、地方の発展をはかるべく、当省においても、鉄道、港湾、空港その他の整備方針に沿って積極的に進めることといたしております。  第二の、過密都市における交通混雑の緩和のための施策といたしましては、当面著しく隘路化している鉄道及び自動車輸送における輸送力の確保に特に力を注ぐことといたしております。まず、高速鉄道網の整備でありますが、これについては、現在の混雑緩和をはかるため、鉄道は新長期計画を強力に推進することとし、また、都市交通の根幹となる地下鉄においても、東京、大阪、名古屋の三都市の路線網を整備するとともに、郊外施設の輸送力の増強をはかることといたしたいのでございます。次に、自動車の輸送といたしましては、大都市の路面交通が、自動車交通量の激増と道路容量の不足によりまして、年々混雑と渋滞の度を加えつつあるので、バス及びトラック輸送力を増強するために、道路あるいは駅前広場、バス及びトラック・ターミナルの整備等を進める必要があるのでございます。トラックターミナルに対しましては、昭和四十年度予算政府原案にも盛られている日本自動車ターミナル株式会社——仮称でありますが、これを活用してその整備をはかることといたしたいのでございます。さらに、以上の輸送力増強策と並んで、輸送施設を有効に利用し混雑緩和に資するため、関係方面の御協力を得て、時差通勤、時差通学の実施を強力に推進して、応急対策を現在いたしておるのでございます。
  312. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この間の九日の予算委員会でありますが、建設大臣が羽生議員の質問に答えまして、地価対策でもって、供給の増大と需要の分散化ということを言っておりますが、宅地に対する需要を一点に集中させないで、これを分散化させていくと、こういうことを答弁しておられるわけです。そのことは、昨年六月に河野大臣在任中だったかと思いますけれども、首都移転の構想といったものを発表されましたけれども、この首都移転の構想とつながっておるのかどうか、あるいはまた、先ほどの河野大臣お話だと、大東京構想なんでありまして、これは必ずしも需要の分散化というのは軌を一にしていないような気がするのでありますけれども、この辺は一体どういうことになっているんでしょうか。
  313. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 誤解が起こるといけませんから、私から便宜お答えを申し上げます。  私、建設大臣当時に、首都を他に移転するということを申したことはございます。これは、その当時も申しましたとおりに、移転をしたらどうかという学界その他に意見がある、でございますから、そういうことをやるとすればどういうことかということの研究をする必要があるということで、これはもちろん国民大多数の世論の支持がなければやってよろしいことじゃないと私は思います。しかし、それに対する世論は一体どうなるだろうかというようなことで、政府のほうとしても研究はしておりますということで申したのでございまして、私自身、首都を移転すべしという議論に立って、また結論をもって申して、また、そういう研究をしておったんじゃないということを御了承いただきたいと思います。  なおまた、ただいま大東京構想はどうだということでございますが、この点は、先ほどお話で少し私の考えておりますことと違うことは、私は、知事の数が減るとか、県会議員さんの数が減るとかいうことはねらいじゃない。私の申しますのは、たとえて申しますれば、東京と埼玉、神奈川、山梨、千葉というような隣接しております県と行政区域が違うということのために、地方における住民の諸君が、施策の上において、公共投資の上において、どういう長所、短所があるか、非常に差があるんじゃないか、たとえば一つの例を水道にとってみても、東京の水道はいま御承知のように、利根川から水を引いておる。にもかかわらず、東京の水道は、いま東京では非常に高い高いということをおっしゃいますけれども、現に水道料金は高くない。上げたところで、日本の全体の水道の平準からいけば、決して高いことにならない、あるいは私は高くないから上げてよろしいという議論じゃございません。しかし、これを隣の埼玉県と比べてみて、東京に隣接しております埼玉県の都市に比べてみて、水の料金が東京は安い。一つ水道だけでも、隣の県から水を持ってきても、持ってくるほうの東京は水が安い。道路でも非常に東京はよろしいし、埼玉に行きゃ道路が悪い。学校施策も同様である。府県税に比べてみたらどういうことになるかというようなことで、県が違う、行政区域が違うということで、やはり東京に住んだほうが住みいいし、すべてにぐあいがいいように、便利であって、しかも、負担が少なくていいということになっておることが、東京を過密化することになるということであるから、これを広域行政にすることが、過密化を解消する一つ原因になるということから、私はそういうことを自分では考えておるが、しかし、これはなかなかむずかしいことでございますから、ただ私が言ったからといって、また、これは自治大臣と相談の上で私は言うたわけじゃない。そういうことについて大かたの御批判もしくは御検討をいただきたいということで私は申したのでございまして、政府につきまして、私が先ほど申し上げるようなこれらの点について、政府内部の意見の調整を十分はかってそうして政府の方針を決定した上で、政府はこうやる、ああやるということでやっていきたい。  で、いまの地価の問題につきましても、こういうふうにすることによって、私は、負担の均衡がとれ、もしくは受益の点について均衡がとれれば、おのずから大都市における、東京都内における過密化の解消になろうし、地価の点についても、合理的な、行政区域が違うということによって土地に対する需要度が変わってくるというようなことの解消にもなるだろうということで研究を進めておるということに御理解いただければたいへんけっこうだと思います。
  314. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 建設大臣が、先ほどちょっと私も触れましたが、宅地の分散化ということは、新産業都市等の構想等と関連をして、一体これを今後どういう方向に持っていくか、新産業都市がはたして周辺の土地の値上がりを見ていないのかどうか、新産業都市としての機能を果たし得る条件にあるのかどうかということも問題になってくるわけでありますが、その現状はどうでしょうか。
  315. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 私が地価の問題に関連しまして、人口、産業の分散化をはかることが先決問題だと申し上げましたのは、大体土地の値段が非常にたいへんな勢いで上がってくるということは、突き詰めて申し上げますと、一つの地域に対して、工場なりあるいは住宅なりのその需要が殺到する。しかも、一方においては供給は限られておる。これがまあ地価高騰の一番の大きな原因でありますから、地価の高騰を安定化しよう、こういう政策をとろうとすれば、どうしても根本的には人口、産業の分散化をはかる以外には方法はないじゃないかということを申し上げておるわけなのであります。そういう意味で、たとえば東京周辺にばかり、工場や、あるいはそれに伴って人口が集中してくるとなれば、東京周辺の宅地需要は非常な勢いでふえるわけでありますから、勢い値段が上がらざるを得ない。まあ、そういうことで、根本の問題はやはり人口、産業の分散化をはかる以外にないじゃないかということを申し上げておるわけでございます。  そこで、新産都市とか、あるいは工業開発都市とか、あるいは周辺における開発都市とかというものを選定をして、そして、そこを開発しようとしますのは、要するに、東京とか大阪とかというふうな過大都市に集まろうとする工場、したがって人口を、できるだけそういう方向に誘導しようというまあ政策のあらわれにほかならないわけであります。そのために、税制上の優遇をするとか、あるいは宅地の造成をするとかというようなことをやっておるわけでありますが、それじゃ、その新産都市そのものでも今度は地価が上るのではないかというお話になると思うのでありますけれども、それでも、たとえば東京や大阪などに集中して、ここの地価を非常な勢いで急上昇させるよりは、国家的に見てそう大きな弊害はないじゃないかというふうに考えておるわけでございまするし、新産都市その他におきましても、地価の安定的な上昇といいますか、土地というものは御承知のように、人口がふえ、そして開発の度合いが進んでいけば、土地の値段はまず普通は下がらない、ある程度は上昇するのでありますが、その上昇度合いをなだらかにしていきたいというのが、地価対策のねらいであろうと思いますので、そのように申し上げたわけでございます。
  316. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この地価騰貴の実態を一体今日どのように把握しておられるか。卸売物価指数あるいは消費者物価指数に比較して、地価の値上がりというものは、ちょっとこれは異常なものがあると思うのでありますが、中期経済計画等においても、この地価の騰貴が予想外になってくると、所得倍増計画が破綻に瀕したように、同じような失敗を繰り返すのじゃないかと思うのでありますが、企画庁長官としてはどのように見て、どのように策を講じておられるか、伺いたいと思います。
  317. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 地価の騰貴の状況でございますが、これは公の機関によるところの調査がございませんので、日本不動産研究所というのが「全国市街地価格指数」というのをつくっておりますので、これを申し上げますと、昭和三十年の九月を一つの基準にいたしまして、昨年の九月をとってみますと、全国の市街地におきましては、三十年度の九月が一〇六でありましたのが七二六、六大都市市街地におきましては一〇四七、また、六大都市を除く地域においては七一三、こういうふうに大体七倍程度騰貴いたしておるのが実態でございます。そしてただいまも御指摘にありましたとおり、中期経済計画によるところの経済の運営につきましても、地価の問題が相当大きなポイントになるわけでございます。しこうして、昨年も衆議院の本会議において、三党共同提案によるところの地価安定に対するところの決議も提案されましたような次第でございまして、ただいま建設大臣からお答え申し上げましたような方向で、政府としては、これが地価の安定的な方向に落ちつくような方策を鋭意検討いたしておる次第でございます。しこうして、今年の一月に、物価に対するところの十項目の「物価対策要綱」を決定いたしました次第でございます。これにおきましても、特に地価に対して一項目を掲げまして、具体的にどうするという問題は、まだ提案をするのはむずかしい問題でございますが、地価安定に対するところの一つの「目標を整理する」という書き方でその一項目を承認いたしておるような次第でございます。しこうして、中期経済計画におきましてもこの問題は取り上げておるのでございまして、大要につきましては、ただいま大体建設大臣からお答え申し上げましたので、重複を避けますが、要するに、一つは需給のアンバランスをなくするというふうな観点から、公的機関によるところの大量供給をはかるというようなこと、また、優良な民間宅地造成事業の助成をするという、供給面の対策をするということ、いま一つは、さらにこれは政府といたしましても、昨年来取り上げておる問題でございますが、この問題が特に大都市において顕著に起こっておりますで、産業人口分割をして、過度に大都市に集中するその傾向を根本的に是正していきたいというふうな観点から、ただいまそのための閣僚懇談会を設けまして、河野国務大臣がその中心となって、具体的なそれらの対策を検討中でございます。そういうことにいたしまして、何とかして大都市に集中し、しかもそのために大都市におけるところの地価の騰貴が非常に急速であるというような状況を緩和していくというのはどうしても必要である、かように考えておる次第であります。なお、政府といたしましては、二、三年前からたとえば新産都市建設促進法というふうな法律もつくり、または工特法をつくりましてそれぞれ地方の産業開発の拠点をつくりまして、その拠点を中心にして波及効果をねらい、そうして全国のバランスのとれた、調和のとれた全国全体としての発展を期待いたしておるのでございますが、そういうふうな新しい法律によるところの拠点開発方式をとる場合におきましても、その拠点におけるところの地価の問題が、やはりこれが障害となる可能性は十分にある次第でございます。そういうふうなところから、その開発基本計画を先般認可いたしましたが、その認可いたします場合におきましても、土地の利用区分をどういうふうにするかというような問題を必ず取り上げておるような次第でございます。もちろんこれらの抜本的な解決の方策としては、今後相当に思い切った法制的な措置を必要とするかと存じます。特に土地についてのいわゆる公共性、それから私権との間の調整をどういうふうに進めるかというふうな点が非常に大きな問題と相なるかと存ずるのでありますが、そういうふうな問題におきましても前向きに調整をしながら、その問題について積極的に取っ組んで解決策を講じていきたい、かように企画庁としては考えておる次第であります。
  318. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 この問題は、前々から前向きとか、積極的とかいうことばはよく聞くのですけれども、実際的には進んでいないわけですね。いま御答弁を聞きますと、公の機関による調査がないので、政府としてもまだ公式の機関としての実態把握をやっていない。具体的にどうするかという成案を得ていないというようなお話がありました。こういうことで一体その地価抑制に関する決議、昨年の衆議院で行なわれましたが、これらの決議を実行に移すことができるのかどうかという疑問を持ちます。でどの機関が中心になって、どこが責任を持って、どのように地価抑制についての具体策を今後講じていくのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  319. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 地価問題についての国会の御決議は十分に承知いたしておりまして、したがって、いまさっき河野国務大臣から御答弁がありましたように、地価問題に関する懇談会あるいは過密都市に関する懇談会はある程度やっておるわけでありますが、問題の本質は、私がいま、建設省が責任を持ってやっております。それで地価の抑制に対する方策というものについての研究をいたしておりますのが、建設省の諮問機関でありますところの宅地審議会であります。ここであらゆる問題をとらえて、フリートーキングをいままで数回やってもらっておるのでありますが、抜本的な地価対策となりますると、どうしても私権の制限というところに入ってこざるを得ません。そこで私権の制限は一体どの程度まで可能であろうか、そうしてまた、その場合にはどういう手法を使えばいいだろうかというような問題が、まだ十分に煮詰まっていないのでありますが、そういう問題をあらゆる面から検討しましたいわば中間的なものでありますけれども、これを今度の金曜日の経済懇談会に提示をいたしまして、そうしてそこで討論の上、さらにそれをまた宅地審議会におろしまして検討していただこう、こういうことで、御承知のように、宅地の問題は需要供給の問題がその根本にありまするし、それからまたもう一つは、これはもう瀬谷先生御承知のとおりでありますが、日本のように小さい地主がたくさんおります場合には、安い地価で買収を受けました場合に、その人たちは一体生業保障はどうなるのかという問題が一方にからんでまいります。そういう問題も含めて、非常にむずかしい事態が想像されますので、法制的にはどうしたらいいか、制度的にはどうしたらいいかというようなこまかい問題にいま入っておるわけであります。一般的に申し上げまして、一番やっかいなのは需要が殺到することなんであります。そこで需要の緩和という点に一番の主点を置いているわけでありますが、需要が殺到いたしますと、どうしてもそこに思惑が出てまいります。この思惑を押える方途も考えていかなければならぬのであります。このほか公共用地を取得する場合にもできるだけ安くなければなりませんが、同時に、土地価格を凍結したり抑制することが現在の憲法上どの程度まで許されるだろうかという点も、学者の意見も十分確かめておきませんといけませんので、そういう面にわたりましていま一つの点に焦点を合わせながら宅地審議会に諮問をしつつ検討を加えておる段階なのであります。これが実情でございます。
  320. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して……。技術的なことはいま建設大臣、それから企画庁長官からそれぞれお話もありましたが、それも大事だけれども、佐藤内閣が地価問題に取り組む姿勢の問題です。これはどの内閣でもよろしゅうございますが、この問題一つ解決することがどの内閣にもできたならば国民は非常に喜ぶだろうと思います。ですからこの問題の中心は河野さんがお扱いになっていると、いま建設大臣お話がありましたけれども、そういう姿勢をはっきりとさしてつくれば、かなり私はムード的には大きな影響を与えると思う。内閣が何か技術的なことだけを討議しておるような印象を非常に受けるので、私はこれに取り組む真剣な姿勢というものが出てくればムードの上でも私はうんと大きな違いがあると思うので、この機会に河野国務大臣の御見解を承りたい。
  321. 小山長規

    国務大臣小山長規君) ちょっとその前に羽生先生にお断わり申し上げたいと思いますが、河野国務大臣を中心にしてやっておりますのは過密都市対策でございまして、いま宅地問題の地価の問題は私のほうと企画庁とでまず素案をつくりまして、これは内閣全体で討議をしようとこうなっておりますので、先ほど河野国務大臣を中心にして宅地問題、地価問題をと申し上げたのは言い誤りでありますから御了承願います。
  322. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私のお答えで御満足いただけるかどうかわかりませんが、御承知のように、非常にむずかしゅうございます。だんだん各省の意見を取りまとめて前進をしようとすればなかなか前進が困難でございます。というので、私は具体的な問題に入る前に、総括して総合してひとつまず大きく国土計画から入っていくんでなければだめではなかろうかというような意味で、先ほどからお話のありますように、新産都市といい、工業都市といい、いろいろのことがあります。しかし、これらとてもそれによってどこまでいけるか、これはまあ、しいて言えば、私はこれも宅地の問題の解決には、出発点は違うが、あとからそういうものをやると、そこで人口が分散するからいいじゃないかということになっておりますが、ただそれだけではどうにも地価対策にはならなぬのじゃないかというような気がしまして、だんだんやれば、結局結論はいまの行政区域をそのままにしていく限りでは手が打ちにくいということになるような気がして、せっかく勉強しているのがいまの現状でございまして、真剣にやる気持ちはありますけれども、さればといって、それでは何か見当がついて、どっちの手を打つ見当がついているかと言われますと正直なことを申しまして、具体的にこうしてこの方向でこう固めていけばいいんだということは、私自身にもまだ見当がつきかねるというのが私自身の率直な答弁であります。
  323. 羽生三七

    ○羽生三七君 土地を最大の公共性とみなして公共料金と同じに取り扱うのは、これは筋違いでしょうが、そういう認識をもっとはっきりさせることだと思うのです。その面でもっと検討を進めていかないと、それは憲法上の私権の制限という関係もあるかもしれませんが——あるが、私はそれは技術的にもむずかしい問題ではあっても、政府がそういう取り組みのしかたをすれば全然不可能ではないと思う。だからこれが最大の公共性を持っているのですから、商品として扱わないように十分に検討をしなければ、むずかしいむずかしいといっていてはこれは私は解決がつかないと思います。真剣な取り組みを希望いたします。これは答弁は要りません。
  324. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ただいま御指摘の点につきましても私全く同感でございます。そういう意味合いでまず基本的には考えていかなければならぬ。第二には、いま具体的に悪い影響を与えているものとしては、各省が取得いたしまする公共用地等についての買収価額等についても悪い影響を与えていることも事実でございます。これは公社、公団等に及んでもそういうことが言えます。少なくともさしあたりこれらのものを一元的に一つの標準価格で買うということだけは厳に戒めていかなければならぬ。そういう方向をちゃんとして、さらに進んで土地というものにいまお話のような点において一般の認識を得るということが必要であろうということについては、私全く同感でございます。まあ、できるだけ一生懸命やりたいと思います。
  325. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 川越の税務署で汚職がありましたが、これも、土地ブームに便乗して不動産業者と税務署との間に汚職が発生した原因というのはやはり土地の値上がりなんです。そうすると、これはやはり非常に重大な社会問題だと思うのですが、私権の制限を考えなければできぬという意味のことがございましたが、私権の制限をあえて踏み越えてやらなければ私はできないのじゃないかと思います。それだけの勇断があれば私はできると思うのでありますが、それだけの勇断をふるって地価抑制を実行に移すという気がまえがあるかどうか、これは大蔵大臣に伺いたいと思います。
  326. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地価抑制の問題は非常に大きな政治問題でもありますし、社会問題でもあります。率直に申し上げると、憲法上の私権ということにいままで強くウェートを置き過ぎたという問題が根本にあると思います。ある一定の地域、大都市等でございますが、こういう指定地域内は、土地問題に対しては憲法上の私権の範囲内でも、当然公益は私益に優先するというたてまえをとらなければならぬと思います。イギリスがニュータウン法をつくりましたときに、あれだけの大事業を十年以内で行なっておるのでありますから、そういう制度を導入することは、もう時代としては当然の要求だと思います。それから日本人は特に独立した家屋という観念に立っておりますが、やはり人口は膨大になっても少なくはならないわけでありますから、建物の高層化、不燃化という問題も当然あわせて考えるべきだと思います。  もう一つは、言いにくい話ではございますが、ある一定以上の過密度を持っているところの土地に対しましては、公共団体がこれを使用する場合には、もう公益優先のたてまえで、収用権が原則として発動せられるというような制度も必要だと思います。それから現在の公共用の収用につきましても、時価ということでありますが、私は過去三年だったら三年間の平均価格で収用できるというような制度でもとらなければいかぬと思います。いまハワイ等でやっております不良街区の改良等は、新しい建物をつくっておいて、そこに公示の白から何日間の間に移らない場合には、非常に低廉な価格で収用されるという制度がございます。まあこういう制度も導入する必要があろうと思います。  それから一番最後に、言いにくい話ということを言いましたのは、私たちの立場で申し上げるのは非常にむずかしいことだとは思いますが、勇気を出して申し上げれば、東京とか大阪とか、こういうところは便利過ぎる。こういうものも非常に大きな問題であります。ですから、やはり九千万国民にあまねく恩恵が及ぶということが条件でなければ、当然人口や産業が過度に集中をするところはウナギ登りに土地が上がるという結果になるわけであります。いまこういうのを申し上げると、東京の水道は安いのが悪いんだと、こういうようにおとりになられると困りますが、これはただ一般論でございます。そういう意味で、条件がよ過ぎて、だれも、北海道開発に幾ら政府が力を入れても、北海道よりも生活条件がよければ東京に集まるというのは、これは当然のことであります。そういう問題に深刻に取り組んで初めて地価対策ができるのでありまして、何かこううまくやろうというようなところでは、答弁はできますが地価対策にはならない。こういう結論はどこの歴史にもあるわけでありますから、こういう問題をやはり国民的な立場で解決をしていくということになれば、私は地価対策ということは不可能なことではないと考えます。
  327. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 都市の過密化に伴って交通事故が非常に激増してまいりましたけれども、交通事故の激増の状況と、その対策等についてお伺いしたいと思います。
  328. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 自治大臣がお出でになるほうがいいと思いますが、私のほうは、自動車の認可をし、またこの検査をし、その運行管理をいたしておりますから、私のほうからかりに答弁いたしたいと思います。  自動車事故の防止に対しましては、非常に心を政府は痛めております。ことしの一月の五日の初閣議の日に、この間も申し上げたのでございますが、人命尊重を政策の一本の柱としておる佐藤内閣としては、一年に一万三千人も交通事故でなくなるというものに対しては、どうしてもこの内閣はこれを軽減しなければならない。直接その衝に当たる大臣といわず、閣僚全体が各面から協力していかなければならない。しかし、一応交通対策本部というものは、総務長官が中心になって事故防止の対策の徹底をしなければならぬ、そして緊密な連絡をして、各関係閣僚間に種々の対策を立てていかなければならぬということを決定いたしたのであります。  そこで、去る三月十三日に交通安全国民会議を開催いたしました。いろいろの批評をする人もありましたが、そういうような集まりの中で私の胸を打った一つがあります。それは緑のおばちゃんのお話であります。わずか三分ばかりの話でありましたが、それは子供は規則を守ってくれる。お母さんのほうが規則を守らない。子供は、白い線の上を歩くときは横断の橋を渡るつもりで、線を踏みはずしたら落ちるぞと言えば、ほんとうに線のまん中を歩いてくれる。おかあちゃんは赤いしるしが出ても、まだ自動車が走ってきよるところをとんで走る。それであっと思う間にやられるときがある。その晩は眠られないという話をしました。私はこの交通安全の最も必要なことは、政府と国民が一体になってやっていくのでなければこれはできないと思うのです。それはいままで私は運転手ばかりが悪いと思っておったんですが、始終自分が車に乗って歩いておりますというと、いま緑のおばちゃんの言われたような事故にときどきあいます。自分もあいます。でありますから、運転手も気をつける、また横断する人も気をつける、国民全体がこの交通戦に対する防戦をするという考えでなければ、いろいろな演説したり、会議したりしたのではだめなんです。国民全体がこれに気をつけるということになれば、二割や三割を減らすことは私は易々たるもんである、かように考えるものでございます。この事故防止に対しましては、当省としては自動車の保安の確保と自動車の運転、輸送事業者の運行管理及び車両の管理等の適正化、監督をはかる等の面から施策を進めていきたいと思っております。自動車の保安の確保については、自動車検査制度の充実、整備等技術上の向上、また整備事業の近代化及び事故防止のための研究等を一そう推進して、車両の欠陥に基づく事故の防止につとめていきたいと思っております。また、自動車の運送事業者に対する指導監督の面においては、運行管理体制等の一そう強化をさせまして、輸送の安全確保を徹底させることに、事業者に対する監査を実施して、管理の適正化及び指導監着を行ない、事業の内部に存在する事故発生の原因を徹底的に芟除したい、かように考えております。
  329. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、事故は、やはり被害者も気をつけてということもあるかもしれませんけれども、加害者が悪いことのほうが多いと思う。だから、気をつけるというだけでは、私はこれは事故防止はたかが知れているという気がするのです。  最後にまとめてお聞きしますが、先般宇都宮で酔っぱらい運転をやった者が、これが無罪の判決になったということが新聞に出ておりました。非常にこれは問題だと思うのでありますけれども、酔っぱらい運転——酔っぱらってやった行為というものが寛大な措置をもって報いられる、刑法上にもあまりおとがめがないというようなことは、問題だと思うのです。これは刑法の面で考えなければならぬことだと思うのでありますが、はたしてこれが妥当であるのかどうか、法務大臣としてのお考え方をお聞きしたいと思います。  それからもう一つ、通産大臣にお聞きしたいのですが、自動車の構造上の問題もあると思いますので、自動車産業に対する指導の面で事故が起きないようにするという方法は講ぜられないのか。いま、日本の道路事情におかまいなしに、自動車の広告を見てみますと、時速百何十キロというようなことを盛んに宣伝しております。百何十キロ以上出してもかまわないような自動車は日本じゃあまりないと思うのです。消防車と救急車以外は百キロ以上のスピードは私は出せないような道路事情じゃないかと思うのでありますが、むしろダンプ・カーであるとか、トラックであるとかはスピードがある程度以上出ないようにしてしまうとか、構造上の問題も指導の面で考えていいことではないかという気がいたしますが、以上、通産大臣と法務大臣に二点についてお伺いしまして、私の質問を終わります。
  330. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいま御指摘の、宇都宮で最近酔っぱらい運転をして事故を起こして、被告人が本年三月九日、宇都宮地方裁判所で、指路交通法違反、重過失傷害事件として判決があったのでありますが、被告人は犯行当時病的めいていによる心神喪失の状態にあったものと疑う余地があるとして無罪の言い渡しがあったようでございます。法務省におきましては、この判決の謄本が、本月の十八日以降に謄本が出ることになって、手に入ることになっておりますので、この謄本を十分に検討いたしませんと、その無罪の理由の詳細を申し上げるわけにいかないのでございまするが、謄本が出ましたら十分に検討いたしまして対処いたしたい、こういうつもりでございます。
  331. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 瀬谷委員のおっしゃるように、トラックなどに速度制限をしたらばどうか——これはひとつの考え方だと思います。しかし、現在の日本の自動車工業が、今後輸出工業として伸びていかなければならないのでございまして、速度も非常に重要な要素ではないかと思います。しかし、その他の面におきまして、たとえば方向指示器であるとかあるいはブレーキの状況、こういうようなものについて構造的に逐次改善されまして、運転上あやまちのないように期してはおるようなわけでございますが、瀬谷委員のはひとつの考え方として参考にさしていただきたいと思います。
  332. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 終わります。
  333. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  334. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいま委員の変更がございました。米田勲君が辞任、鈴木壽君が選任されました。     —————————————
  335. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、大森創造君。
  336. 大森創造

    大森創造君 いままで三矢事件やそれから防衛の問題など、衆参両院の論議を通じて、ずっと私お伺いしておりまするというと、どうも私どもが考えている以上に政府が非常に警戒し過ぎているような感じがいたします。あまり資料を出したくない、どんなことがあっても出さないということについて、あまり神経質過ぎるんで、何かこれは表面にあらわれた以上の問題が相当あるのではないか、機密事項に相当するような問題が、これは氷山の一角であって、それ以外にもたくさんあるのではないかという気持ちが私もするし、いま国民の多くの人が考えているだろうと思います。衆議院の岡田委員の質問に対して佐藤総理大臣答弁、それから最近における参議院の予算委員会での政府側の答弁は、相当ニュアンスの違いがございます。その間に首尾一貫したものがないような気がいたしまするけれども、まずお伺いしたいのは、なぜ一体、岡田委員の質問やきのうの稲葉委員の質問、それからその他の方々の委員の質問で三矢事件の内容はほぼ尽くされていると思うし、それから、私の手元に持っております三月十日の「昭和三十八年度統合防衛図上研究(三矢研究)について」というこういう小冊子を防衛庁が出されましたけれども、これ以上の何ものかがあるのか。あるから出さないのだ。出さないことにあまりにも神経質に、いかにも真剣に取り組んでいるという、そういう印象を、疑惑を持ちますが、いかがでございましょうか。
  337. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) お答え申し上げます。  三月十日に当予算委員会に防衛庁といたしまして資料を提出いたしました次第でございますが、この三矢研究問題の解明につきましては、国会の審議にはできるだきるだけ協力申し上げるため、これを明らかにするための説明資料を提出いたしました次第でございます。いろいろ御疑念があろうと思うのでございまするけれども、現段階におきましては、当庁といたしまして最大限の努力の結果でありますことを御了承願いたいのでございます。
  338. 大森創造

    大森創造君 そうすると、この冊子で全部が尽くされていないということですか。その他に国会に提出しづらい問題が具体的に幾つかおありでございますか。
  339. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) これまでに行なわれました常任委員会あるいは当予算委員会等におきましても、大体ある程度論議された場面が重なっておるのでございますけれども、再度重複いたすかもしれません。  この研究は、自衛隊の部隊運用について行なわれまする研究訓練の一つでありまして、ある想定のもとに問題を出して関係幕僚の答案を求めまして、これを集めたものでございます。したがいまして、防衛庁及び統幕、各幕僚監部のいずれにおきましても正規に決定した文書ではないのでありまして、防衛庁といたしまして責任を持って外部に出すべき性質のものではないという解釈をいたしておる次第でございます。
  340. 大森創造

    大森創造君 そうすると、私が聞いたのはこういうことですよ。いままで国会で論議が尽くされている、尽くされてない部面もあるだろう、それから私のほうで要求しないのにこういう冊子を防衛庁のほうで出された、これは全部を説明しているものですか、どうですか。いわゆる原本というものは防衛庁の中にとっておいて、それをかってに解釈をして、国会と国民に、こういうものをこういうふうに納得しなさいという一方的なものを押しつけられるような感じがする。そうですよ、これは。いわば防衛庁は、ことばは悪いけれども、被告の立場ではありませんか。その被告がデータは出さないで、そしてかってな解釈を一方的に国会に出して、それなりに防衛庁の見解を押しつけようとする態度は越権ではないかと思う。少しあつかましいじゃないか、非礼じゃないかと思うのですよ。そういう防衛庁にどうもまかせておけない感じがいたしますが、一体これは、私は繰り返しまするけれども、このことの説明で尽くせない点、それから、岡田春夫委員はじめその他の委員が質疑した以外の重要な部面があるから発表できないのですか。
  341. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 決して、他意を持ちまして悪意に満ちたというスタートからとりまする態度ではございません。あとう限り、私ども防衛庁は防衛庁の立場におきましてこれが筋合いである、しかもなお誤解されておりまする分野が多いのでございまするから、国民に解明するという立場もとりまして、ある程度の抽象的な面もあろうと思うのでありまするけれども、真相を、そしてまた当庁の現時におかれました感懐なるものの一節をも加えまして申し述べましたような次第でございます。  なお、細部のことにつきましては、また政府委員のほうから答弁させます。
  342. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答え申します。防衛庁の出しました資料は、研究の性格、方法、若干の想定の原則、それからすでに予算委員会等で御指摘になりました事項につきまして、そういう事項がどういう取り扱いのもとで受け取られているかということを書いたものでございます。
  343. 大森創造

    大森創造君 とにかく、もとがないのにわれわれはどういう解釈をしていいかわからない。一方的な説明を押しつけられているというのが現状でございます。  そこで、伺いまするけれども、昨年ですかね、防衛力整備に関する基本的見解、そういう見解が出て、岩間議員や私などが予算委員会で論議をしたことがございます。そのときも、今度と同じように、当時の福田防衛庁長官は全然知らなかったこれと同じような防衛力整備に関する基本見解や、今度の三矢事件や、それと同じようないわゆるあなた方の言う機密に属する図上計画みたいなものが年じゅう行なわれているのと違いますか。さっき瀬谷委員の質問にございましたように、軍事顧問団の問題にしても何にしてもいろんな問題があって、ただ国会で資料がたまたま入手されたときにそれが問題になる。そいつについては防衛庁長官やその他の幹部がお知りにならないという事件が近ごろ頻発しております。こういう事情は、どうなんですかね、シビリアン・コントロールというのは実際行なわれているのですか。なるほど作文的な答弁はシビリアン・コントロールは確立されているというようなことをお答えでございましょうが、何しろわれわれは材料を与えられていないのだからこういう判断はできない。もう一回確信のある答弁をお願いします。
  344. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) ただいま御指摘になりました防衛力整備に関する基本的見解の問題でございますが、これは、先生御存じのように、いまから二年前、三十八年の八月にあった事件でございますけれども、三矢の今回の研究とは全然関連はございません。両者の間には全く関係のございませんことを御承知願いたいと思うのでございます。これは事情をある程度申し上げまするならば、防衛力整備に関する基本的見解なる文書でありますが、これは三十八年の八月でございますが、航空幕僚監部の一幕僚が正規の手続を経ることなくして航空幕僚監部の名称を付しまして部隊の主務者会同に配付いたしたものでございます。いま後段におきまして、先生のほうから、このようなことが頻発する、コントロールがなっておらぬじゃないかというようなことでございますけれども、この点につきましても、しばしば当予算委員会等におきまして小泉防衛庁長官あるいは総理大臣官房長官等から御説明ございましたごとく、絶対私どもといたしましては確立しておるという自信に満ちておる次第でございます。
  345. 大森創造

    大森創造君 それから、くどいようですが、この点をお伺いしますが、さっきの質疑を聞いてみまするというと、今度の三矢事件というものは、図上研究は、ああいうことは許されるんだ、ただ文章とか表現などが不適当なところがあるので、ああいう研究自体は許されるんだという趣旨の答弁が防衛庁長官からございましたけれども、そのことで確認してよろしゅうございまますか。
  346. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 今回のごとく、私どもといたしましては、長官または各幕長を通じまして公式な論議の場となり、それが正式に認容せられたというケースでございません事件でございますだけに、しかも一部幹部の、約四、五十名の程度の者でございまするけれども、責任を持ったコースをたどった事件でございませんだけに、そのような研究自体はいろいろ誤解はございまするけれども、研究そのものについての解釈といたしましては、強くこれを拒否する、絶対こうあってはならないというようなことはいたしておりません。
  347. 大森創造

    大森創造君 いまの答弁はわからんですがね、ぼくは、もう一回言いますよ。先ほど防衛庁長官の答弁によると、三矢図上研究なるものは、文章や表現は間違っているところがある、不適当なところがあるけれども、ああいう図上研究は差しつかえないんだという趣旨の答弁をされました。それからまた、結論が出ていないので未定稿であるということは言いましたけれども、ああいう内容の研究をすることは差しつかえないということを答弁されたのでありますが、その点を確認していいですか。
  348. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 先ほどお答えいたしました真意は、部隊の統合運用というものを中心にした場合のことを申し上げておるのでございます。どこの場面で長官がそういう答弁をされたか知りませんけれども、確かに今回の場面につきましては用語の選択あるいは文章の表現にやや欠くるところありと申しますか、誤解を招く個所が見られるところはございます。だと申しましても、これは決して私どもといたしましては憲法違反であるとかいうようなことは考えておりません。ただいま申しましたように、あくまでも部隊の統合運用ということを骨子としたものであるという御理解を賜わりたいと思うのであります。
  349. 大森創造

    大森創造君 それでは、やってもいいのですな、こういうことをふんだんに。
  350. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 細部につきまして政府委員より答弁させます。
  351. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 御承知のように、自衛隊では、部隊の運用につきまして、実員を用いて演習いたしましたり、また図上の演習をいたしましたり、さらに研究をいたしましたりしておりますが、そういったものがどの段階のどこであるかということは、大体その部局の職掌においてきまるのでございますが、統幕事務局では統合運用というものを中心にそういった研究をやることは職掌に入ることになります。ただ、先ほど政務次官が申しましたように、想定の中に、今度は少し手広くやったがために、多少、ことば、内容、表現等に適当でないところがあったのは認められると思います。
  352. 大森創造

    大森創造君 私は重大な問題だと思うのですがね、いまの御答弁は。これは岡田委員と総理大臣その他防衛庁長官の答弁をひとつあとで対照してごらんください。わずかの間にそこまで変わってきた。表現が不適当、文章が不適当であって、現在の自衛隊法ではああいう種類のものをどんどん遠慮会釈なくやっていいのですね。ただ、露骨に言うと、これがばれたから困るということだけのことなんですね。そうなると、世上を騒がしたということに対してあなた方は神経質になるけれども、その他の問題については何らやましいところがないという認識なんですね。
  353. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答え申し上げます。  ただいまは、そういう研究ができるかという御質問でございましたものですから、お答えいたしたのでございますが、いろいろ事の軽重によりまして、重いものは、やはり将来のあれとしましては、長官が相当詳しく知ってこれをし通していくという取り扱いをしていくことは、けさの委員会におきましても長官からお答えしたとおりでございまして、事の軽重によりまして文官が参与するということにつきましては、一段とくふうを重ねていきたいというふうに考えております。
  354. 大森創造

    大森創造君 その御答弁はよくわかりませんので、ひとつ総理大臣にかわって、内閣の番頭さんである橋本さんにお伺いいたしますが、いまのことでいいですか。
  355. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) せっかくの大森さんの御指名ではありまするが、総理大臣にかわって答弁というわけにもまいりませんけれども、官房長官としてお答えを申し上げますが、いま防衛政務次官並びに防衛庁の官房長が申されておりますることは、いわゆる図上研究あるいは演習等は、部内においてそれぞれの機関において研究しておる。問題は、大森さんのおっしゃられることは、その三矢研究のうちで総動員体制等に関する問題についての御意見であろうとも考えられます。防衛に関する点の研究については、当然これは自衛隊の職責からしてこれらの研究についての云々がお話しされておるのではなくして、せんだっての衆議院あるいは参議院等で問題になりました総動員法に近いようなああいう問題をはたして自衛隊内部において検討する必要があるか、こういう問題ではないかと思いまするが、これはせんだっての衆議院の小委員会に三矢研究に関する資料を提出しました際に当予算委員会にもお渡しした、先ほどお示しになりました小冊子がそれでありまするが、その中でも明らかにいたしておりまするように、いわゆる国内体制の問題については、これを想定として与えたものである、それに関して深くこれに対しての研究を進めたものではない、かような説明をいたしておるわけでございます。前段のいわゆる防衛に関する図上研究等は、先ほど来からして政務次官あるいは官房長あるいは防衛庁長官が御答弁申し上げましたように、当然の職務であると、かように解釈いたしておる次第でございます。
  356. 大森創造

    大森創造君 そうすると、前段に私が申し上げたように、ああいう図上研究はやってもよろしいと、ただ外部に漏れたことがまずいんだという認識ですね。くどいようですが、もう一回お答えいただきます。そういう認識はなかったはずですよ、当時衆議院段階では。あわてふためいたはずなんだから。
  357. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 漏れてあわてふためいたというようなことではございません。今日まで当然防衛庁の与えられておりまする任務を自営いたしまして、その任務の遂行に邁進しておる現況でございます。もちろん、先生御存じのように、国のいやしくも防衛でございまするから、防衛に関する機密も確かにあるわけでございます。当然あらねばなりません。たまたま本図上研究に関連いたしまして、あれこれの御注文もございました。全部を検討いたしまして、これではいけない、この点については機密の範疇に属するのでなかろうかというようなおもんばかりもございまして、先ほど申しましたような事情に基づきまして当予算委員会にあの程度の内容によりまする説明資料を提出いたしたような次第でございます。
  358. 大森創造

    大森創造君 この資料をなまのまま提出するしないという問答があって、昨日は法制局長官などの見解をただしたようでございますが、私の考えではそういう種類の問題ではないと思うんです。これは多分に政治的判断だろうと思うんです。なまのままここまでになったんだから出してしまって、白日のもとにさらして、そうして国民の疑惑を解くというほうが現政府にとっては私は得策じゃないかと思うのです。  そこで、お伺いいたします。私の判断はそうなんです。これをこのままほおかぶりしてしまうというと、怪しいものが永久に残りますよ。あなた方がお答えになったとおりであるならば、これは堂々と発表してもいいじゃないか。もう機密が機密でなくなりつつある。大体七、八割までこれは外部に漏れているんですから、あとはこれだけだという素材をなぜ出しませんか。そのほうが私は政治的に賢明だと思う。これをこのままで済ませるというと、佐藤内閣に対する不信感が永久に国民の問から取れないと思う。そこで、法制局長官が、国会が要求したときには、資料を出すとか出さないとか、そういうのは形式問答だ。そうではなくして、現政府としてこれを出すべきである、現段階において。そのほうが国民に与える影響がよいであろうという判断がつかないものかどうか。これはカニの甲羅みたいにじっと出さないということになっているから、政務次官やその他官房長などは、出さないと一本に口をつぐんで言わない。また、法制局長官は、こじつけではございせんが、法的にいえばこれは出さなくてもいいんだというような説明で終始しております。しかし、私は国民の一人として申し上げますが、事ここまでなった以上は、これ以上怪しまれてはいけないからすなおに出しなさい。出さなくてもいいんだ、出す必要ない、出す手続をとれということは形式論議でございますから、より高次な政治的判断に立って、現内閣としてはこの際すなおにお出しなさい。出す部分が残されたあと一割か二割ではありませんか。ほとんど大体ばれているでしょう。そういうことを出さないという方針をきめているのは一体だれなんです。一体。総理大臣ですか、それとも防衛庁長官ですか。閣内の意思統一で今度の三矢事件についての資料は一切出さないということに申し合わせでもしているのですか。だれの判断なんですか。
  359. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 責任の持てない今回の図上研究の内容であるということからしまして、ごく簡単な言い分でございますけれども、お断わり申し上げておる次第でございます。これはもちろん私ども防衛庁内部におきまして幹部総出で相談いたしました結論でございます。
  360. 大森創造

    大森創造君 まあ幹部が総出で相談した結果がそういうことであるならばけっこうでございます。永久に疑惑は残ります。こういうことにしておけば。私は、白日のもとにこういう次第でございますということを発表したほうが現内閣のおためになるであろう、そう思います。しかし、この問題についてはこれでとどめます。  それでは、官房長官にお尋ねいたしまするけれども、この三矢事件に関連してかしないでか、とにかく防衛庁のいわゆる防衛計画の政府見解なるものをこの際発表したほうがいいだろう、そういう論議があるやに聞いております。そのいきさつを御説明いただきます。
  361. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 実はこの三矢研究に関する資料を、先ほど来お手元にありまするような資料を出す出さぬのときに、閣議におきましてもこの資料を出すべきかどうかという議論がありましたが、まあその際に、小委員会が設置せられ、かつまた参議院において予算委員会が開かれてこの問題が同様に論議せられることは明らかであるからして、この機会に直接の資料を出すことはできないけれども、三矢研究というものはこのようなものであるという形での資料を出す必要があろうと、それに関連して国防の考え方等もあわせて検討してはどうであろうかというような話があったわけであります。そこで、いろいろ両者をあわせて検討をいたしましたが、防衛庁でつくられました三矢関係の資料等を検討いたしました際に、その間にシビリアン・コントロール、文民優位の立場も相当明確に記載されておりますので、あらためてこの機会に政府の国防に関する見解を出す必要もないのではないか。いずれにせよ政府が国防の見解を明らかにする中心は、御承知のように、憲法第九条で日本は戦力を放棄しておる、いわゆる国際紛争の解決を戦争の手段によって行なうことを憲法第九条は禁止しております。したがって、いわゆる戦争の手段となるべきような戦力は保持しない。しかも、その国防上の任務といいましようか、それは、文民優位の立場から、シビリアン・コントロールが中心となって防衛体制というものを考えるべきであるというのが、憲法を通じての精神であります。さような意味で、それらを中心にした政府見解を出す考え方もありましたけれども、いま申しましたように、三矢研究に関する資料の付属文書あるいはその中に、シビリアン・コントロールの点についても十分なる説明ができておりますので、そこで、あらためてこの問題をいまこの三矢研究に関連して出す必要はない、こういう結論になりましたので、いま直ちにこの問題をあらためて出す必要はなかろう。要するに、憲法第九条を中心にした従来の体制が、その資料の中でも明らかにされておりますので、その意味で、いま直ちに政府の国防に対する見解を出す必要はないという結論で、この問題は、いま見合わせの状態になっております。以上が経過であります。
  362. 大森創造

    大森創造君 国防に対する統一見解と申しますか、国防に対する政府考え方というものを再確認するようなそういう相談が、閣議なり何なりで、三矢事件を契機にしてあったことは事実のようですから、そこで、私は不思議に思うのは、これはざっくばらんな話、いまの日本の自衛隊というのは、たとえばいまの官房長官の御説明があったように、わからぬのじゃないかと思うのです。ほんとうのところ。これは極言かわかりませんが、総理大臣はじめ、官房長官はじめ、防衛庁長官もわからないんじゃないかと思います。アメリカがあり、沖縄があり、台湾があり、中国があり、安保条約の体制があるということで、そこで第二次防が進められていて、三千億近い金が使われているということ、シビリアン・コントロールということは、これはいわれておりまするけれども、勇ましい方々が相当おられる。どういう地位に日本の自衛隊を置くべきか、陸海空の二十七万の現実の兵隊をどういう地位に置くべきか、どういう解釈をすべきか、基本の姿勢が、自衛隊法を見ればわかるという問題でなくて、ぴんとこないものが私は総理大臣以下にあるんじゃないかと思います。いまの自衛隊の性格というものについて。いま、はしなくも官房長官が、憲法の問題との関連において言われました。そのとおりだと思います。だけれども、私は、わからないんじゃないか……。だから三矢事件でもってよたよたしてみたり、よたよたしないかもしれないけれども、事実はよたよたしてみたり、あるいは何だかんだの問題で資料を出すそうしてそれがつかまるという……。自衛隊いかにあるべきかという問題が、政府首脳においても、私は、わかるはずがない、わからぬのが真相じゃないかと思います。そこでこの際、三矢事件とは関係なしに、私もわかりませんから、ひとつ統一見解といいますか、日本の国防のあり方、基本的考え方を、一回は閣議で爼上にのせたほどだから、私はわからないし、わかった顔だけしているのです。わからないのですよ、だから、ひとつわかりやすく、この際、一つの契機ですから、お出し願うように私は要望いたしますが、官房長官いかがですか。
  363. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) むずかしい法規の問題からいいますというと、いろいろ論議があると思いますが、大森さんも村長さんをやったことがあります。私も町長をやったことがありまして、その経験から考えますというと、かつて消防隊というものは警察に付属しておって、警察のいわゆる指揮命令下にあった。お互いに町長、村長をやっておりまする際には、町村長がいわゆるコントロールした、消防隊を。そうして全体的な体制において消防というものを見るようになったと、まあこういう例がはたしていまのシビリアン・コントロールに適合するかどうかはわかりませんけれども、ものの考え方は、私はやはりここにシビリアン・コントロールといいましょうか、憲法第九条から出てくるところの文民優位の精神が流れておると思うのです。ただ、大森さんがおっしゃるように、はたしてわれわれにいたしましても、あるいは自衛隊関係にいたしましても、その点がほんとうにしっかり腹の中に入っておるかどうかという御疑念でありまして、その点に関しましては、もちろん、これは民主憲法下における政府の当然の責任であり、これをまた十分に理解せしめ、その文民優位の精神によって自衛隊というものは運営されるように、これはまあ当然努力しなければならぬのでありまして、いずれまた機会を得て、そうした問題についても政府の見解を言うべきときがありましょうけれども、いま、私はここでもって総理大臣にかわって申し上げる立場でもありませんので、いずれ当委員会なり、あるいは他の機会において申し上げる機会があろうと存じますので、御了承願いたいと思います。
  364. 大森創造

    大森創造君 私は、二十七万の軍隊を持っていて、そうして政府の統一見解がわからないと——わからないような官房長官の口ぶりでございました。だから、総理大臣もその他の大臣も、おそらくおわかりにならないだろうと思うのです。だから、ひとつこれは統一見解を出してほしいと思うし、なぜ統一見解を出さないかといえば、これは新聞の報道で、事実だと思いまするけれども、出すというと、薄められたもので出されちゃうということを書いてございますね、新聞に。そのうしろのほうで引っぱっておるのは何かというと、自民党の国防部会であると書いてありますね。国防部会の部会長はだれで、これが現在出されるというと、その自民党の国防部会や自衛隊当局のほうがねらっておるようないわゆる統一見解でなくて、だいぶ国会向きの、一般の国民が要望しておるような線を出さざるを得ない、現在政府が出すとすれば。だから、いまの時期には不適当であると、そういう理由で出さないのでしょう、事実は。
  365. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) この点は、佐藤総理が各委員の御質問に対しましてお答え申し上げておりまするように、もちろん、総理自身もそうですが、佐藤内閣といいましょうか、従来の内閣ともに、ことに佐藤総理は平和に徹するということを言っております。私自身も過去の経歴から考えまして、今日まで、私の言動の中にも御了解願えるように、平和精神はあえて他人に劣らざるものを持っておると考えております。したがって、国防の本義と申しましょうか、国防のあり方につきましても、あえて他からの制肘にわれわれは制限を受ける必要もありませんので、あくまで憲法の章条によって運営をしたいと考えておるし、また、国防のあり方もさようであるべきものとわれわれは確信をいたしております。その点につきましては、御心配なくひとつ文民優位の精神は、あくまで徹底せしめるという点を御理解願いたいと思います。
  366. 大森創造

    大森創造君 なるほど、その御答弁はそうだと思うのですが、どうもこの際の官房長官の答弁は信用できない。  ひとつ防衛庁の関係の人にお尋ねいたしまするけれども、この三矢事件に関係して、政府の国防に関する統一見解を出さなければならぬということは事実だ。河野さんなども、この際はそのほうがよろしいなんという発言をしたことも事実のようだ。それについて、小泉防衛庁長官の意思ではないけれども、防術庁長官の下におる勇ましい方々に、この際、三矢事件に関連してそういうものを出されたのでは困るのだという意見があったのは事実でしょう。お答えいただきたい。
  367. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 全然聞いておりません。
  368. 大森創造

    大森創造君 全然聞いていないというけれども、新聞は、根拠のないことを出さぬでしょう。国防部会のほうでは、この際出してもらっては困るのだと、それから小泉防衛庁長官はこういうことを言うてますね。この際出すというとうるさいから、防衛論議はそうでなくてもうるさいのに、防衛論議に火がつくから、この際はひとつ避けたほうがよろしいという見解を言うておられる。そういう配慮があったんでしょう、防衛庁の中に。
  369. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 御存じのように、当面の三矢研究問題を、まず国民の十分納得いたすように解決するということが当面の急務であるということを、私ども確信いたしております。したがいまして、かりにそうした統一見解というものを考えるにいたしましても、まず十分の納得の場を持って、しかる後ということになるだろうと思うのでありますし、私も随時長官のそばにおりまして、長官はそのような考え方を持っておると確信いたしておる次第でございます。
  370. 大森創造

    大森創造君 どうも、ことばどおり信用できればいいのですが、いまの私は、どうも人が悪くなっておりまして、あなた方の答弁をそのまま信用できません。これは一方的な見解でおそれ入りますが、真相はこうだ、三矢事件でごたごたしたと、そこで統一見解を出したほうが国民と国会の運営によかろうということで、閣議で相談をあそばされた。ところが横やりが入って、国防部会のほうで、いま出すというとだいぶ色が薄まったものが出てくるから、これは出さないほうがいいということと、それから参議院選挙を前にしてこういうことで国会でごたごたやられるのは不得策だという意見のほうが結論になってしまった。そうだと私は思う。そうだということを肯定できない立場にありますからね、皆さん方は。これは私の言うとおりだなんて言ったら、これはつとまりませんから、しかたがないから、これ以上の答弁は求めませんけれども、それに違いない。そうだとすると、シビリアン・コントロールなんというのは根底からおかしくなる。これはひとつちゃんと、勇気のある政府委員の人お答え願えませんか、だれか。私の言ったとおりだと思うのだ、新聞に書いてあるんだから。まんざら火のないところに煙は立ちませんから。もう一回ひとつお聞きいたします。
  371. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 先ほど政務次官からもお答えしましたとおり、私が長官からお伺いいたしましたのは、やはり三矢問題がひとまず問題になっておりますので、これが解明が済んでからこういった見解もあらためて出したほうがたいへんけっこうだというような御趣旨のことを、長官はお考えになっているということを聞いております。
  372. 大森創造

    大森創造君 最後に、防衛の問題でひとつ申し上げます。これは重大な問題ですから。その文書のていさいが悪いことと、それから表現が不適当なところがあったけれども、ああいう図上研究は今後もいたさなければなりませんと、そしてそいつは国会に発表いたしません、国民の目の触れないところであんなことは今後はいたしますと、こういうことですね。これだけは念を押しておきますよ。それは岡田春夫委員衆議院段階で質疑して、総理大臣以下防衛庁長官が答弁したこととそごいたしませんかな。これだけはひとつもう一回確認しておきます。
  373. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 私のたびたび申し上げておりますことは、御存じのように年度の防衛計画というものは、これはもう確実に策定されておるのであります。それは、もちろん長官をはじめ幹部全部集まりまして、いろいろ検討いたしたものでありますが、そうしたものについては、もちろん責任を持ち、その面の、また許された範囲内におきまして御協力申し上げることができると思うのでありますけれども、たびたび申し上げましたように、今回の三矢研究の内容なるものは、そういうものではございません。責任が持てないものでございまするからという意味であるのでございます。でありますから、こういうものは、随時幾らやっても云々というようなことにつきましては、回答の限りではなかろうと思うのであります。
  374. 大森創造

    大森創造君 責任を持てないということはどういうことなんです。責任を持っているんじゃないですか。責任を持てないことなら、黙っていたらいいじゃないですか。それを何かたのみもしないのに一方的な見解を出して釈明しておるじゃないですか。責任はないのですか、防衛庁は。私の聞き違いかもしれませんが、この文書については責任がないですか。一私文書ですか。全然こんなことあずかり知らないと、すわり直すのですか、あなた方は。
  375. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) ただいま政務次官が責任が持てないとお答えいたしましたのは、成規な手続によって決定された文書でありませんので、外部に対してこの文書を出しまして防衛庁の意思がそこにあると、あるいはあるかのごとき誤解を与える意味において、責任が持てないというふうに申したのであります。
  376. 大森創造

    大森創造君 何だか頭のいいような答弁でわかりませんけれども、とにかく防衛庁として外部に発表できるような責任が持てないと言うけれども、防衛庁の中のこれは現象ですよ、現実に行なわれておる図上作戦ですよ。図上研究ですよ。このことについては防衛庁責任があるでしょう。であるから、それに対して釈明が出たのでしょう。私が言うのは、これはどういうことか、一体こういうことを今後やるのかやらないのか、やることはひとつも差しつかえないのかということを何回も繰り返して私言っておる。これと同じようなことをやるのですか、これからも。
  377. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 研究そのものはいたしますが、ただ、その想定とか、その範囲につきましては、今度の事件等の性質もよく反省いたしまして、十分長官の御指導のもとに、しかるべき妥当な方法において想定を持ってきまして研究そのものはやっていきたいというふうに考えております。
  378. 大森創造

    大森創造君 これは防衛の問題についてわからぬのですよ、あなた方も。というのは、いま御答弁聞いてみても、これは内容的には差しつかえないということを、ちらちら、そういうことを言おうとしておる、あなた方は。だけれども、いまの答弁を聞いてみると、これは中国、北朝鮮を仮想敵国として云々というようなことは、少し規模が大き過ぎるから、それでは総評相手の戦争を実施しようとかあるいはクーデターあるいは総動員体制、こういうところまではいいのだというふうに聞こえるのですが、その点はどうなんですか。こういうことを詰めていくとわからぬでしょう、あなた方は。
  379. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) たびたび申しておりますとおり、自衛隊の行なう研究は、大小はございますが部隊の運用が中心でございまして、それに関係ある側面を、想定としてどの程度広げるかというところに判断の資があるわけでありますが、今度のような三矢研究のように幅の広い相当高い政治的次元の判断を要するものにつきましては、今後は、長官の指導のもとに妥当な方法においてそういう限度をつけていきたいというふうに考えておりまして、決してこれをもってクーデターとかそういうものではございません。単なる想定、予見でございまして、むしろそういうものはそうされるであろうという一つの軽い想定でございまして、本筋は、部隊の運用でございます。決してその書いたとおりに武力をもって政治に介入するというふうな記述は、どこを探してもございません。
  380. 大森創造

    大森創造君 そうすると、やってもいいのですか、あんなことを。あれほどの大規模な計画では不適当だけれども、小規模にしたものはやってもいい、今後も続ける、それが自衛隊の性格なんだと、こう言いたいのですか。
  381. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 部隊を運用する自衛隊の立場から申しまして、いろいろ運用の研究をやりますと、あっちこっち不ぐあいの点が感ぜられる、そういう点は、こういうところに問題がございますという点を発見いたしまして、順序を追ってそれを要望として上申するという仕組みになっておりまして、決して書いたことを直ちに制服が武力をもって実行しようというふうな研究ではございませんので、その点はひとつ御了解顧いたいと思っております。
  382. 大森創造

    大森創造君 そういうことは私にもわかっております。何もだてや酔狂で軍隊がいるんじゃありませんから、これは遊んでおるのじゃありませんから、いろいろやっておりますが……。私が申し上げるのは、ああいう三矢研究みたいな大規模なものはやらなくても、それを小規模にしたようなものは、今後図上研究をせざるを得ない立場に自衛隊はありますということですか。
  383. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 部隊の運用につきましては、陸、海、空、さらに統合部隊、大小いろいろな問題がございまして、あらゆる側面からそういうことを平時において研究しておくことは自衛隊の任務であるとわれわれ考えております。ただしかし、その想定度につきましては、これはよほど高い政治的次元の予解のもとにやるべき問題があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
  384. 大森創造

    大森創造君 それでは、原子力関係の問題について、関係大臣や関係の方にお伺いいたします。  東海村の原研センターには、現在どういう設備があって、そして放射能の危険防止という問題についてどういう方策がとられておりますか。
  385. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 東海村に現在ある施設等につきましては、法規の定めるところによりまして厳重な安全審査をいたしておるわけでございますが、現在、原子炉安全審査会の審査の結果として、万一の場合がありましても、そこから漏れる最大限の、たとえば放射能は二十五キュリーである、こういう状況でございますから、現在ある施設について考えてみた場合に、その周辺の住民に対して不安を与えることば絶対にない、かような状況でございます。
  386. 大森創造

    大森創造君 そうすると、現在ある設備について、放射する放射能の量は二十五キュリーであるということですね。
  387. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) さようでございまするし、また、仮定の事実として今後何らかの施設ができるという場合におきましても、安全審査を厳重にいたしますから、やはり現在程度以上の危険性ということは予想されない。いま申しましたのは、かりに将来どこの地域に原子炉関係の施設ができましても、同様の状態であると考えておるわけであります。
  388. 大森創造

    大森創造君 そうすると、原子力施設地帯整備構想というものをお持ちだろうと思うんだけれども、それは将来起こり得るであろう危険、そういうもの、それからいまよりももっと原子力関係の施設が拡大されるであろう、そういうものに伴う危険、そういうものに対する地帯整備構想だろうと思うんですが、地帯整備構想についてはいかがお考えですか。
  389. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この問題については、地元の状況もよく御承知のとおりと思いますけれども、昭和三十七年の九月に原子力施設地帯整備専門部会というものを原子力委員会で設置いたしまして、そこで東海地区原子力施設整備に関する関係につきましていろいろと研究をしていただいたわけでございます。どうしてこういう研究を特に部会を設けまして研究いたしたかと申しますと、これは、その当時におきまして、たとえば射爆場の返還ということについては年来私どもも要望しているわけでございますから、この射爆場が返還されたというような場合におきまして、原子力発電についての施設、あるいは再処理施設というようなことも、場合によったら考えたらばどうであろうかというような考え方もあったわけであります。それからまた、現在までのところ、原子力関係の施設については東海地区、東海村に集中いたしておるというような関係で、いろいろの意味で地元の方々からも御協力をいただいておる。そこで、地元の方々といたしましても、この際に、それらの地域についていろいろの都市計画あるいはそのほかの計画も、御要望もお持ちになっている。そういったようなことも合わせて、将来原子力施設の地帯の整備について、かくあったたらば最も適当であろうというような研究を進めておく必要があろうかというので、こうした特別の専門部会をつくりまして、いろいろの点から御検討を願っておったわけであります。その研究の結果が、昨年押し迫まってからでありますが、十二月の二十三日に答申に出ておるわけでございまして、この答申の中には、いろいろの点で地帯を整備することの提案がなされております。こういうふうな経過でこの地帯整備の問題を取り上げたわけでございます。
  390. 大森創造

    大森創造君 地帯整備という問題について愛知さんのお考えは、地元の振興と申しますか、そういう点に比重を置いているように御説明でございまするけれども、これは、危険に対していかにあるべきかということが基本だと私は思うのです。ヨーロッパでもインドでもアメリカでもそうだろうと思うのです。そこで、この原子力施設地帯整備方針の内容を見ますと、非常に重大なことが書いてあります。ちょっと読んでみます。東海発電所を中心とした隣接地区の昭和三十五年現在の人口は三千八十八人であり、四十五年の人口は三千七百人となると推定される、この地区についてはこの見通しを越える今後の人口増加は望ましくないと。人口増加は望ましくないのですよ。したがって、その原因となる——その原因となるというのは、人口増加の原因となる、住居のほか放射能の乳幼児、小児及び児童に対する影響にかんがみ、これらの多く集まる小学校の新設は避けるべきであり、大規模な保育園、産科病院、小児科病院などについても同様である、こう書いてある。これはどういう意味ですかな。これは非常に私は二十五キュリーなどという事態でなくして、相当大規模な放射能の危険ということを予想したものであるから、現在の東海村の原子力の施設というものをさらに拡大して、それに対処する意味で、そして、こういう地帯整備方針というのを審議をして試案を出されたのだろうと思う。内容は多岐にわたっておりますから、いま私が読み上げた問題についてあなたのお考えをお聞かせください。
  391. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 何ぶんにも、この原子力というのは新しい問題でございますし、日本としても、最初東海村中心に発達した新しい科学施設でございますから、先ほど申しましたように、現在、あらゆる良心的かつ科学的な審査の結果に基づきまして万々心配はございません。しかし、新しい科学の施設でもございまするし、また、ばく然たる、何となしにそういう新しいものに対する不安というものも、これは住民の方々にもあることは私は否定できないところであると、かように考えるわけでございます。そういう意味合いをも含めまして、この際、最も望ましい地帯の整備としてはどうであろうかという理想的な形態を、ここで答申が、研究の結果、出ておるわけでございますから、ただいまお読み上げになりましたように、望ましい姿としては、乳幼児、小児及び児童の多く集まる施設の新設は望ましくない、こういうような研究の結論になっておるわけでございます。そのために、たとえば公園緑地帯等の拡大でありますとか、あるいは農業地区としての発達を促進するとかというような積極的な提案もここになされておるわけでございます。
  392. 大森創造

    大森創造君 防衛庁のほうにちょっとお尋ねしますが、射爆場の返還の問題を長年茨城では超党的にやっておるのでございますが、これ御蔵島のほうに移転をするためにいろいろ調査をしているのだというお話を聞いて、鋭意努力をしているという答弁委員会で何回も承っておりまするが、これは事実ですかな。ほんとうにやっておりますか。そうして進捗状況はいかがですか。
  393. 高橋清一郎

    政府委員高橋清一郎君) 水戸の射爆場の件につきましては、駐男軍側といたしましては非常な固執のしかたをしておるのでありまして、これは絶対放したくないということなのでございます。代替地がない限りにおいては困るという率直な実情を申し述べます。したがいまして、当防衛庁といたしましては、何とか関係皆さま方の御熱意もございますので、たとえて申しますと、代替の条件について緩和するところがないかというようなことについても問い合わせいたしまする熱意をずっと今日まで継続してまいったのでございます。実情を申し上げます。  なお、細部の具体的な点につきましては、長官がおりますから答えさせます。
  394. 大森創造

    大森創造君 愛知さんにお伺いしますが、その射爆場返還したあとに、今度そのあとに原子力施設をつくるという構想がおありのようにいまの御答弁で承りましたが、それ事実でございますか。
  395. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 幸いにして射爆場の返還が早期に実現いたします場合を仮定いたしますと、一つの適地であるということは考えられておることは事実でございます。しかし、政府としてそういうふうに決定しているわけではもちろんございませんし、いろいろの立地条件等から、他にもいろいろと調査を進めているわけでございます。
  396. 大森創造

    大森創造君 それから、そのことを非常に私は既成事実がだんだんできてしまって、われわれ地元としてはこれを返してもらって、いろいろな、首都圏の関係の都市計画であるとか、あるいは平和産業を誘致しようなどということでやっているのでございますが、ぱっとこうすりかえられる危険性があると思うのです。  そこでさっきの質問に戻りますが、あなたの御答弁によるというと、人口増加は望ましくない。保育所の問題だとか、小学校だとか、あるいは産科病院などということを言っていることは、実際の危険は二十五キュリーしかないのだ。だから、それならばこんなこと必要ないのですか、こんなことは。
  397. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、非常に率直に申しますと、その危険性ということから、科学的に申しますれば、必要がないとも私は言えると思うのであります。しかし、先ほど申しましたように、何ぶんにも新しい科学的な施設でもございますし、また、あるいは将来さらに拡充ということも考えられる仮定の問題としては、そういう仮定のことを考えました場合に、地元の御協力をなお一そう安んじてしていただくためには、こうもあることが望ましいと、こういう意味の研究でございます。
  398. 大森創造

    大森創造君 それはうそでしょう。これは、こういうことを書かれますというと、地元の現象としてはどうかと、なると、みんなおそろしがって、現在ここに住まいしている人は住居を移転する騒ぎですよ、現実に。地価が下がっておりますよ、こういうことを言うというと。これは私は地帯整備というものは、その地方のいろいろな、公園だとか緑地をつくるなどということは付随的な問題であって、実は危険防止ののための具体的な措置が必要であると。なるほど、それは現状では二十五キュリーかもしれないけれども、一大事故が、しかも原子力の一連のセンターが完成してみた場合に、起こり得べき、考えられるべき大きな事故に対してはこのことが必要であるということで、こういうものが、私は地帯整備方針というものが出て来たんだろうと思う。それが、愛知さんが言われるように、率直に申せばその危険はないということならば、地元の不安を解消するような措置をとってください。こんな文章流さないほうがいいですよ。この文章を県に出して、県は地元の勝田市なり那珂湊市なり東海村のほうに、こういうことでやりますがどうですかということをいま打診しているのですよ。そうするというと、この地元の受け取り方深刻ですよ。これは受知さん間違いだと思うのですがね。こんな必要が万に一つもないことならば、こんなことはやらないほうがいいのですよ。必要があるからでしょう、これは。
  399. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 科学的な危険性ということは、現状においては断じてないという確信を持っております。しかし、先ほど申しましたように、地元としても、いろいろと、何といいますか、三十七年から計画研究をしたわけでございますから、その当時においてばく然たる不安というようなものも否定することはできなかったと私は率直に申し上げているわけでございます。そういうことをも考慮に入れまして、あり得べき理想的な形態はどうだろうかということを、一定の、何と申しますか、仮定の条件のもとに考え出されたものであって、これをひとつ御参考に、中央、地方でこれから具体的な問題については、望ましい方向において具体的な措考を進めていきたい。現在の状態は、そういうことで私ども考えているわけでありまして、こういう研究が不当に地元の方々に御心配をかけているという御心配もごもっともであると私は思います。そういう点につきましては、そういう御懸念や不安を一掃するようにつとめなければならない、かように考えております。
  400. 大森創造

    大森創造君 私は、愛知さんの言われるとおりならけっこうですが、そうでないと思うのです。これはICRP——国際的な委員会で危険防止の防護委員会みたいなものがあって、最低基準を示して、日本の原子力センターについてもこういうものが必要であるということに基づいていると私は考えている。そうでなければ、こういう文章を、何ですか、地帯整備の方針、都市計画の小委員会なるものが、少なくとも権威のなるものが、こういう一連の、時間がありませんから申し上げませんが、重要な内容を含んでいる規制措置を、これを地元のほうに一応するはずがない。これは、なるほど現在は事故、二十五キュリーか、あるいは現在のところの施設として考えられる危険に対しては、少しこの地帯整備方針というものは、この案というものは大き過ぎるかもしれないけれども、原子力関係というものはすべてそういうものではありませんか。だから、一大事故があった場合にはこの程度の規制はしなければならぬという意味のこれは試案ではございませんか。そうでしょう。
  401. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 考ええられる最大の事故が万々一起こったとしても、そこから出てくる放射能は危険性がない、こういう原子炉安全審査委員会の研究結果が同時に出ているわけでございます。最近におきまして。したがって、私はそういったような危険性ということは万々ない、こういうふうに考えております。しかし同時に、先ほど申しましたように、何しろ新しい施設のことでございますから、考えられる住民としてのばく然たる不安ということもおありでございましようから、それをも取り入れて、この際、何と申しますか、都市計画と申しますか、整備計画をつくるとすれば、こういうものが理想的形態である、これは原子力委員会から諮問をいたしましたので、その答申が先ほど申しましたように、昨年の暮に原子力委員会に対して出たわけでございます。これを政府としてどういうふうに扱っていくか、また、地元の方々に非常なこれがかえって逆に御不安を与えているというようなことでありますれば、それもごもっっともなことでありますから、そういったような趣旨でないということについては、十分私どもも解明につとめたいと思います。それからさらに、今後この方面に対しましてこれは他の省庁にもいろいろお願いしなければなりませんけれども、できるだけこういったかっこうで道路なりありいは市街地の計画なりを進める場合には、この答申も大いに参考にしていきたい、かようにいま考えているわけでございます。それから、くどいようでありますが、この諮問をいたしました当時におきましては、場合によれば再処理工場等も射爆場のあとその他にお考えってたことは事実、これは否定いたしません。そういうこともその当時予想されたものでありますから、そうすればなおまたばく然たる不安も出るかもしれない。そういった場合にも備えるということを一つのテーマとして研究をしていただいた、これが真相でございます。
  402. 大森創造

    大森創造君 再処理工場という話が出ましたからお尋ねいたしますが、再処理工場はどこに、いつ、つくる予定でございますか。
  403. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは実は今後の原子力発電を積極的に具体的に促進しなければなりませんが、その前提となるのは再処理の問題でありますから、われわれといたしましては、できるだけすみやかに適地にこれを建設したい、かように考えております。その地域は、実はこれは原子燃料公社が再処理を担当するということに従来から政策としてきめておりますので、原子燃料公社の専門家と政府との間で、どこを適地として、いつ建設に着手するかということについては、相談中でございますが、現在のところは、まだどこの場所ということをきめておりません。いずれにいたしましても、こういったような処理施設をいたします場合には、その地元の十分な理解と納得を前提とすることは申し上げるまでもないところである、かように考えているわけであります。
  404. 大森創造

    大森創造君 再処理工場というのは、再処理ということばを考えると、それほどの危険性を感じられませんが、再処理工場というのは一番危険度が高い。この再処理工場の設置については、使用済み核燃料は、当初英国に送り返すという条件があった。そこで茨城県としては原子燃料公社をあそこに設置する際に、外国に送り返すのだから、こっちに再処理工場はつくらないという約束があったはずです。ところが今井原燃理事長は、去年の十二月の二十七日に茨城県にきて、知事に再処理工場をつくりたいということを言うてきた。これは事実ですか。そうして、まだ、かたまっていないとはいうても、私はどうやら現地の状況を見まするというと、再処理工場の設置場所とおぼしきところに、もうすでに農地転用許可が行なわれていて、相当の面積が確保されております。これとの関連を考えてみまするというと、それから、詳細設計費が今度の予算に二億二千万円ばかり出ておりまするので、あそこの場所に再処理工場を、現地の反対を押し切ってでもいいから、つくろうという意図がおありなんではございませんか。
  405. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 再処理の問題につきましては、いまお話もございましたように、一つ考え方としては、使用済みの燃料を全部供給先の国に送り返す。これも確かに一つの方法でございます。しかし、総合エネルギー対策の一環としての原子力発電を自主的に日本としてやろうと、こういう考え方に立脚いたしますれば、再処理は日本でやはりやりたいと、これは私、本筋の考え方ではないかと、実は私としては考えているわけでございますが、そういう点から申しますと、やり方、方法等については、いろいろまだ詰めて、結論を出さなければならない点がございますけれども、日本国内のしかるべきところに、再処理工場をつくりたいと、これが私どもの考え方でございますが、くどいようでございますが、従来、あるいは従来からと申したらば、もっと正確かもしれませんが、いまお話しになっております地帯に再処理工場をつくりたいという考え方があるわけでございますけれども、しかし、これは全国的な視野に立ちまして、一番の適地をさがしたい。したがって、現在決定しているわけではございません。
  406. 大森創造

    大森創造君 最後に一言。再処理工場は結局だれが決定をするのですか。
  407. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは先ほども申しましたように、特殊法人でありますところの原子燃料公社の施設として決定するわけでございますが、しかし、予算的には全額政府の出資の特殊法人でございます。それから、問題が、本日もるる御意見を承りましたとおり、非常に大きな、これは問題でございますから、政府として十分燃料公社の計画を監視といいますか、注意をいたしまして、政府としても確信を得るところに燃料公社をして設定させたい。こういう考え方でございます。
  408. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 大森君の質疑は終了いたしました。本日はこの程度にいたしまして、明十七日は午前十時から公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会