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1965-03-15 第48回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十五日(月曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      中野 文門君     久保 勘一君      大竹平八郎君     佐野  廣君      源田  実君     古池 信三君      鈴木  壽君     松本 賢一君      小平 芳平君     中尾 辰義君      向井 長年君     田畑 金光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 鈴木 一弘君     委 員                 植竹 春彦君                 太田 正孝君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 竹中 恒夫君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 小林  武君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 米田  勲君                 鬼木 勝利君                 中尾 辰義君                 田畑 金光君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  河野 一郎君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        国防会議事務局        長        北村  隆君        公正取引委員会        委員長      渡邊喜久造君        行政管理庁行政        監察局長     山口 一夫君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁教育局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁衛生局長  軽部彌生一君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        防衛庁参事官   麻生  茂君        経済企画庁調整        局長       高島 節男君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        法務省矯正局長  大澤 一郎君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        文部省大学学術        局長       杉江  清君        文部省管理局長  齋藤  正君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        厚生省年金局長  山本 正淑君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     川原 英之君         —————        会計検査院長   小峰 保栄君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。本日、小平芳平君、向井長年君、中野文門君、鈴木壽君が辞任され、中尾辰義君、田畑金光君、久保勘一君、松本賢一君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、一昨日に引き続き質疑を行ないます。稲葉誠一君。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最初に日韓会談に関連をして質問いたします。  赤城農林大臣だと思いますが、漁業会談が現在どのように進行しておるか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  5. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業会談は、御承知のように、昨年も開かれたわけでございますが、このたび再開されましてから、昨年度の繰り返しのようなことをいまいたしております。専管水域共同水域、それから漁獲量については、あらましはできましたが、まだ船のほうはさまっておりません。基線の点は済州島近辺の基線がきまらない。こういう状態で、いま少しく時間をかしてもらえますれば、御報告申し上げる程度にはいくと思います。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは韓国農林大臣ですか、外務大臣ですかが本国へ訓令を受けに帰ったというのは、何か特別の事情というか、何といいますか、話がうまくいかないからという点があったからですか。
  7. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私どもが会って、向こう金大使その他が帰るのにつきましては、ほかのことのようなことを私には言ってきましたが、しかし、実際問題としては漁業交渉の問題だろうと思います。大体におきまして基線問題等ではなかろうかと、こう思っておるだけでございますが、聞いてみたわけでもございませんので、はっきりしたことは申し上げられません。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 去年の春に赤城さんと元農相会談というのがあって、そこで一定事項合意されたと、こういうふうに韓国側ではきのうも発表しておるわけですね。これは赤城・元会談でどういう点が合意になったのでしょうか。
  9. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 合意にはなりませんけれども、こういう方針だけは大体きまっておったわけであります。すなわち韓国の本土の近くに直線基線かあるいは低潮線から取って基線を引く。この基線から十二海里は漁業専管水域とする。その外へ共同規制水域というものを設ける。そうしてその共同規制水域におきましては平等、公平な漁獲両国でやる。それから漁業協力についての要求がありまして、その要求につきましては、ある程度年間漁業協力資金を出しても差しつかえない、こういう程度の話でございました。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その赤城・元会談というのは合意に達したと見ていいのですか。
  11. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 合意に達したとは見ておられません。ただ両方で話し合って、途中で韓国国内事情で帰りましたので、それではお互いに話し合ったことだけ各自まとめておこうじゃないか、こういう程度でございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、そこで各自話し合ってまとめたことと今度の漁業会談韓国側が提案したこととは相当開きがあるのですか。世上では、開きがある、韓国側が一たん赤城・元会談でまとまったことに対して不信行為をしておるのだ、こういうふうに伝えられておるようですがね。
  13. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 会談が始まった当時はだいぶいわゆる赤城・元会談よりもよりが戻った話をしてきましたが、現在においては、あのときの会談の線に沿うてその会談から先へ出ていこう、出てきめていこう、会談出発点といいますか、そういうことに相なっております。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この李ラインというのと魚族保護ラインというのとはこれはどういうふうに関係するのですか。
  15. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 魚族保護ラインというものはありません。新聞等に伝わっておりますが、そういう話はいましておりません。そういうラインは引くというような考えは持っておりません。調査をしようということにはなっておりますが、その調査をするために線を引くというようなことは全然話し合いに出ておりません。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本として譲歩し得るというと、ことばは悪いのですが、ぎりぎりの線、ここまではどうしても守らなきゃならないという線は漁業会談全体でどこのところなんですか。
  17. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 全体で見ましたならば、漁獲量等も譲歩というわけじゃござまいせんが、実績を重んずるというようなことで、日本のほうが非常に優位でありますからある程度優位性を譲るといいますか、その点はあるかと思いますが、しかし、結果においては実績で進めておりますから、これを譲るということもないかと思います。  漁業協力の金の点につきましては初めはなかった金でございます。漁業協力をしようということは考えておらなかったのでございますが、去年からそういう民間資金を出そうというようなことでございますから、その点は譲ったといいますか、譲ったといえば譲ったと思いますが、その他基線等におきましては、国際慣例等に従うということでございまするから、これは譲るとか譲らないとかという問題ではないと思います。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 漁業協力をしなければならない理由はどこにあるんでしょうか。
  19. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本韓国との間の漁業からいいまするというと、日本漁業が非常に発達しております。そういう関係共同規制区域をつくりまして、魚族の保存をしながら両国漁業の発達を競うということになりまするというと、非常に向こうが劣っておるということでございますので、その劣っておるのを助長してほしい、こういう希望がございまするので、それをある程度向こう漁業がよくなって漁民が伸びていくことは、これは考えてもいいんじゃないか、こういうような考え方から、漁業協力民間資金を、政府ではございませんが、民間資金を出すということにつきましては、けっこうなことではないかというような立場に立ちました。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その話はいつごろから出たんですか。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いつから出たか、実は、私が去年交渉を始めるときにそういう話がありまして、それで額の点で実は私は交渉に入ったんでございますが、去年は三千万ドルという額を出して話しておりました。私が交渉に入る前からそういう漁業協力の話があったのを引き継いだと、こういうことでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三千万ドルというのはどっちから出てきたんですか。
  23. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業協力の話、向こうは一億一千四百万ドルぐらいのことを言ってきましたから、日本では三千万ドルぐらいしか民間資金としては出せないだろうというような話に入ったのが去年の交渉の……。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまは、それは七千何百万ドルというところに話がいっているのですか。
  25. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) まだ話はことしは出ません。ことしは出ませんが、去年の話のときに、その程度はまあやむを得ないんじゃないかというような話があったわけでございます。これはことしはまだそこまでいってない。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのその漁業協力というのは、いわゆる請求権の三億、二億、民間協力一億ドル以上というのと一体どういうふうな関係にあるのでしょうか。これは外務大臣、説が分かれているのじゃないの、政府の中で。二つに分かれているでしょう。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三億、二億は請求権に関連する問題でございます。なお、このほかに相当多額民間資金融資が期待されるということをこれに言い添えてあるのでありますが、この多額民間資金が期待されるということを向こうとしては一定額以上というふうに表現したい、という申し入れがあったそうでございまして、それは別に差しつかえないことである、こういう了解を私は……そういうことでありまして、漁業資金協力資金は大体において民間資金、それ以外の民間資金という範疇に入るものと考えております。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、請求権のところで大平金メモにある民間協力一億ドル以上には入らないのだ、別個だ、こういうのですか、ちょっと聞き取れなかったので恐縮ですけど。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 請求権問題の解決としては、無償三億、有償二億、それ以外に相当民間資金というものの融資が考えられる、これは請求権の問題を離れた問題であります。で、今回の漁業資金ももちろん、請求権と離れた三億、二億は別個のいわゆる民間資金による協力である、かように考えております。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとはっきりしないのですがね。大平金メモで、民間資金が一億ドル以上というのはあるのでしょう。あればこれはその中に入っているのですか。入っていない別個のものなんですか。
  31. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 請求権処理の問題に関連しては三億、二億、なおこのほかに、請求権とは関係なく相当多額民間資金融通が考えられる、期待される、こういう申し添えをしたわけであります。その問題をつかまえて向こうは、一億ドル以上という表現を使っておるわけでありますが、漁業協力資金といたしましては、資金の性質上その民間資金に入るものと考えております。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この共同規制水域日本漁獲量が十五万トンだということは合意を見ているのだ、こういうふうに李公使韓国できのう話しているのですがね、この点はどうなんでしょうか。
  33. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 合意ということばがどういうことか知りませんが、十五万トンプラス一割上下のアローアンス漁獲量めどとしてやっていこう、しかし、正式には船の数で取りきめをしよう、こういうことでございますから、一応は合意と言えば合意でございますが、正式の取りきめは船でいこう、こういうふうに考えております。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いままでの李ラインを越えて行ってというか、これは不法なものだということを言われておる。そこで日本漁船拿捕されたりいろいろ損害を受けているわけですね。それは具体的には、どういうふうな数字でどのくらい日本損害を受けていることになるのですか。
  35. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 昭和二十二年以降韓国に不法拿捕された漁船及びその乗り組み員は、ことしの昭和四十年三月十二日現在までに調べたのでありますが、三百三十六隻、三千九百四人でございます。乗り組み員は全部帰還いたしましたが、漁船はそのうち百八十二隻が未帰還となっております。なお、昭和四十年に入ってからの拿捕は皆無でございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まだ帰ってこない船や抑留されたものが延べ三千九百四人、そのうち八人が連行途中や釜山の抑留所内で病死しているわけなんですがね。これら全体を通じての損害請求は、日本はこの漁業会談の中で韓国に対してどういうふうに主張しているわけですか。
  37. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは、そのつど損害賠償請求権を行使して要求しているわけでございます。でありますので、漁業会談の最終的な会談におきましては、両方におきまして納得のいくような解決をはかりたい、こう思っています。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、いままで日本はいつ、幾らぐらい、こういう損害根拠だからといって韓国請求していますか。その具体的事実を明らかにして、それに対して韓国はどういう返事をしているんですか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員からお答えいたさせます。
  40. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) いま農林大臣からお答えがございましたように、各拿捕事件が起こりましたたびに、原則としての賠償請求権その他の権利を留保しているわけでございます。各ケースごとについての金額等につきましては、その一々の討議のときにはまだメンションをしておりません。原則として賠償請求権を留保し、時が来たらツケを出すんだ、こういう権利を留保しているわけでございます。それに対しまして韓国側のほうは、自分のほうは合法的な国内法に従って、自分の国の国内法に従ってやったんだからということで、それに反駁する回答書をしょっちゅう、ケース・バイ・ケースにやはりよこしておりまして、両方平行線のままで、いま対峙し合っている、そういう状況であります。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、具体的にどういう計算の根拠でその損害額を算定するんですか。
  42. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 損害額につきましては、先ほど農林大臣御説明になりましたように、いろいろ試算による予定利益まで入れましたようなあれがあるわけでありますが、どこまでの範囲のものを損害額として具体的に外交上の要求として提出するかということは今後の交渉にかかってくる、そういうことであります。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうして、その損害額は、漁業会談の中で、漁業協力資金から差し引くとかなんとかいう形で解決するということなんですか。あるいは別な形でいいけれども、いずれにしても、もらえる分はちゃんとしてあるのだから、これはしっかりとした形で解決をするということなんですか、はっきりしないですか。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一括解決の際に、この問題については、はっきりとした区切りをつけたいと考えております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 おおよその目安は大体どのぐらいになるのですか、損害額は。おおよそでいいのです。いままでの。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 民間で言っている額は聞いておりますけれども、これは権威のある数字ではないと考えております。いずれにいたしましても、こういったようなことを基礎にして、最後にははっきりした解決をつけたいと考えております。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 民間は約百億と言っているのですか。どうなんですか。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たしか七十億と聞いております。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 初め百億であったのが、あとから七十億になったのですか。あなたのほうとしては——あなたのほうというか、政府は具体的に幾らぐらいを請求するつもりなのか。いまの段階ではまだはっきりしないというのですか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これから交渉したいと考えております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは資料として、いつ幾日、どういうふうに損害賠償請求韓国政府にしたか、その一覧表あとから出していただきたいと思います。問題は、十五万トンということにかりになった場合に、いままでそれ以上日本漁民がとっていたとなれば、その差額だけ日本漁民損失をこうむることになると思うのですが、その損失に対する補てんはどういうふうにするつもりなんですか。
  52. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十五万トン——アローアンス一〇%、十六万五千トン、これは実績に近いようでございます。御承知のように、先ほど申し上げましたように、船で正式にはきめますけれども、どこの国との交渉におきましても、大体その程度めどといいますか——がありまして、相当減ったということはあまりないものですから、いままでその減った分の賠償というような、国内賠償といいますか、補償といいますか、そういうことはしておりません。しかし、この問題は、またきまってからいろいろ検討してみたいと思います。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなたのお話によると、かりに漁獲量がきまり、隻数がきまっても、日本漁民には損害を与えないのだというふうに承ってよろしいですか、そういう答えで。
  54. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまのところは、損害を与えないというふうに私どもは見ておりますけれども、たいへん損害を与えるようなら、また考えなくちゃなりませんが、いまのところは損害を与えないで済むのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その隻数ですね。船がそこへ入ってくる、入っていかないかということは、一体だれがきめるのですか、隻数で制限した場合に。
  56. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それは、いままでもそうでございますが、お互いの国がきめるよりほかありません。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国がきめるのではなくて、隻数をきめて、それがその隻数の中にその船が入るかどうかということは、漁業組合か何かがきめるのじゃないですか、あるいは漁業会か何か。国がきめるのですか。船がたくさんある中で、何隻なら何隻だけが入れる、これ以外は入れないということは国がきめるのですか。この船、この船ということはどうやってきめるのですか。
  58. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本国内でも、どこへ行く船はどこというふうに許可しておりますから、そういう許可によりまして、そこへ入れる船と入れない船とはっきりさしたいと思います。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いままで共同規制水域に入って行った船に、許可からはずれて入れないものが出てくる、こういうことですね。こういうこともあり得ると、こういうのですね。
  60. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 政府委員から答弁させます。
  61. 和田正明

    政府委員和田正明君) まだ最終的に隻数がきまったわけではございませんが、きまりました上で、私どもといたしましては、漁業には、御承知のように、漁期とか最盛期とか不漁期とか、そういうことがございますから、いままで行っていた船が入れないようになるということがないように処理をするという方針でございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういうふうに処理するの。
  63. 和田正明

    政府委員和田正明君) 先ほど大臣から御答弁もございましたように、日本操業実態は十分尊重するという前提で話し合いをするわけでございますから、現在行っている船が出られなくなるということはないというたてまえで交渉しているわけです。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、漁獲量でも、あるいは隻数でも、日本漁民に何ら損害を与えないというなら、沿岸漁民がこんなにもして大騒ぎをするということはおかしいじゃないですか。そう思いますか。
  65. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 沿岸漁業損害のないようにいま交渉中でございます。あのほうはまだ話を聞いておりませんが、騒ぐとすれば、私ども交渉の内容を知らないで騒いでいる、こう思います。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大日本水産会が十日に佐藤総理にこの問題に関して陳情しているでしょう。それは御存じですね。
  67. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その点は、大日本水産会が、そのとき漁業代表佐藤総理に陳情しましたが、その前に私のほうにも陳情がありました。よく話を聞きました。それは、基線の引き方とかいろいろたくさんあります。漁獲量できめないで、船できめてくれ、こういうことでございましたが、漁獲量につきましてそうたいへんな不満というような強い不満はございません。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 和田水産庁次長に聞きますけれども、あなたは、河野さんのところに漁業問題のことで呼ばれたことはありますか。
  69. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私、水産庁の次長でございます。万事、この問題については赤城大臣の御指示に従って行動しております。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことを聞いてんじゃないですよ。あなた、河野さんのところへ漁業会談のいろんな取りきめというか、相談というか、そういうふうなことで呼ばれたことがあるでしょう。あるんならあると言ったらいいじゃないですか。別にそのことを隠す必要はないでしょう。
  71. 和田正明

    政府委員和田正明君) 御説明に参りましたことはございます。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのときに河野さんとあなたとの間で一つの案をつくったでしょう。案とまで行かぬのかもしらぬけれども、知らぬ顔しないで、つくったでしょう。だめだ、うそ言っちゃ。
  73. 和田正明

    政府委員和田正明君) 私のほうで、農林省として考えております案を御説明申し上げたという案と申しますか、実情の御説明を申し上げたということでございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 河野さんにお聞きしますけれどもね、あなたが日韓の問題でいろいろお骨折りいただいていると、佐藤総理に言わせると、心配をしていてくれると、こう言うんですがね。河野国務大臣、日韓交渉についてたいへん心配をしてくれておりますと、佐藤総理、こう答えておりますね。どういうようなことをあなた御心配されているんでしょうか。
  75. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 佐藤総理から、日韓問題をなるべくすみやかに妥結するようにしたいと自分は考えておるがという相談がございました。そこで、私もこの問題について一ぺんよく勉強してみようということで、和田水産庁次長に、どういう実情かということで説明を聞きました。諸般の情勢をいろいろ説明を聞きました結果、佐藤総理に、たいしためんどうな問題はないようだから、たぶん話はうまくいくだろうから進んでおやんなさいということを具申いたしました。幸いうまくいっておって安心しております。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 佐藤さんからあなたにお話があったのは、どういうわけであなたにお話があったのでしょうかね。赤城さん一生懸命やっておられるでしょう、こんな有能な方がね。何であなたにお話があったのでしょうかな。ちょっとわかりませんな。
  77. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 僭越なことを申し上げるようで恐縮でございますけれども、私は水産の問題についてはいささか各方面に関係が深うございます。いろいろ勉強もいたしておるつもりでございます。そういうようなことから、しかも、古くから日韓会談のことにつきましては、また、農林大臣をいたしておりました当時に李ライン問題等もありまして、いろいろこの問題について、経験ということではございませんけれども、勉強しておるというようなことで、過去の経緯等についても佐藤総理からどういうことだろうかという相談があり、なお、最近のことについて勉強が足らぬのでございますから、いま申し上げるように、和田君に来てもらって、最近どうなっておるかということを聞いた。そうして、自分で考えた結果、まあ、これならばまとまるだろうということで、佐藤総理に、そうたいしたこともなしにまとまると思うから大いにおやりになったらよろしいという意見を述べました。こういうことでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 佐藤さんからあなたにお話があったときに、佐藤さんがお話しするのですから、いろいろ話があったかもわかりませんが、立ち入って恐縮ですけれども、あなたとしても話があって出る以上は、心配する以上は、何といいますか、佐藤さんに対してあなたのほうから要望をされたのじゃないでしょうかね。私聞いている範囲では、総理に対して、最終ラウンドはおれにまかせてくれということをあなたが言われた。佐藤さんが、まかせるということで、あなたが御心配するようになったのだという筋書きのように聞いているのですがね。
  79. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、また、いま私も申し上げましたように、佐藤総理といたしましては、総理就任以来、日韓問題をひとつ自分の責任において妥結したいという強い意欲を持っておられることについては御承知のとおりでございます。そういう意味会いから特に私にもそういう相談があり、また、何とか自分もやりたいということであったのでありまして、私が、私にまかせろ、私がどうしてやるというふうなことは……
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最終ラウンドですよ。
  81. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 最終ラウンドは外務大臣農林大臣がやっておいでになるとおりでありまして、私はそういうふうに考えております。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの派に属する宇野宗佑という代議士がおられますね。その人は年来韓国へ訪問されているようですが、それはあなた御存じなんでしょう。
  83. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 宇野君は青年部長かなんかしておりまして、自民党の……。それで韓国へ一両回行って、帰って来て、そうして韓国事情を私に報告をしたことがございます。それを聞きまして、なかなか宇野君、韓国事情を勉強しているのだなということを思いました。実は日韓会談の話もあるようだが君どうかということを相談したことがあります。その後宇野君が一ぺんくらい行ったのじゃないかと思いますけれども、別に帰って来てのことを聞いておりません。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 金鍾泌の兄の金鐘洛という人が東京へやってきて、一カ月以上ヒルトン・ホテルに泊まったということは事実だと思います。あなたが和田次長を呼んで、その結果として一つの試案をつくって、それを宇野代議士に託した。それがまた丁一権首相の手に渡ったと。あなたが渡らした、こういう事実はあるのじゃないですか。宇野代議士が丁一権首相に会ったことは事実ですか。
  85. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は、金鐘洛さんですか、一度昨年の暮れでしたか、お会いしたことがございます。しかし、それ以上に立ち至って、私が案を出して丁総理になにしたということはございません。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 宇野代議士が丁一権総理に会ったことはあなたは御存じでしょう。
  87. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 宇野君が韓国へ行きまして丁氏と会って話をしたかしないかというようなことは、私は詳しくは存じておりませんが、宇野君が帰りましてから、丁総理と会って話ししたというようなことを聞いたことはございますけれども、その真相は深く心得ておりません。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたが宇野代議士に一つの案を出して、その案を丁一権首相に伝えさしたのじゃないですか。
  89. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) そういうことはございません。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私どもの聞いておるのと相当違いますけれども、まあ、これはこの程度にいたしておきましょう、あまり内部のことですからね。いずれにしても、この問題はいろいろ各方面で今後追及されていくことになるのじゃないかと、こういうふうに思っております。  外務大臣に日韓の基本条約に関連してお聞きをするのですが、明治四十三年、ちょっと古いのですが、日韓併合というのはどういうような状況から行なわれたのでしょうか。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員からお答えいたします。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと待ってください。これは仮条約に関係しているのじゃないですか。仮条約に関係しているのだし、明治四十三年、ぼくは生まれていないけれども、あなたは生まれているときだし、その当時どういうようなことから日本韓国と併合したか、これはあなたとしてはある程度御存じでなくっちゃならぬはずですよ。そうでなくっちゃ仮条約できないですよ。これはあなたから言いなさいよ。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私よく調べておりませんので、政府委員からお答えをすることにいたします。
  94. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 日露戦争の結果、日本韓国と保護条約を結んだのでありますが、その後、事態の発展に伴いまして日韓併合条約を明治四十三年に締結するに至ったのでございます。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは学校の本に書いてあるんですがね。そうすると、外務大臣ね、日韓併合が日本としては朝鮮人のしあわせになると、こう思ってやったんでしょう。
  96. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その間の事情はよく存じておりません。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなんじゃない。ぼくの言うことに答えてくださいよ、あなた。それだけのことなんだから。何も歴史の試験や社会科の試験をしているんじゃないんだから。ぼくの質問に答えてください。
  98. 中村順造

    ○中村順造君 議事進行。質問に関連して議事進行で申し上げますが、委員長によく普処してもらいたいと思います。  先ほど来、政府委員なり担当の大臣の答弁が非常に不まじめです。質問に答えてない。したがって時間が非常に長くかかりますから、尋ねたことをそのまま率直に答えてもらいたい。いやしくも所管の内容について大臣が知らないなんということはあり得ないことなんですから、その点は十分委員長からひとつ注意をしてもらいたいと思います。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の聞いているのは、決して何らかの意味があって聞いているわけじゃないんですよ。私の聞いている意味があなたのほうに先にわかったのかわからないのか知らないけれども、それで盛んに用心しちゃってあなた答えないんですよ。あぶないと思っているんだろうけれども。決してそんなあれじゃないですよ。決してそんな落とし穴をつくっているわけじゃないんだから。
  100. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは古い歴史の問題でありまして、これの解釈はいろいろあると思います。私は、両国の間にお互いにこれが生きていく道であるという合意のもとにさような併合条約が行なわれたものと考えております。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、その併合条約は、対等合併なんですか、吸収合併なんですか。
  102. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実際問題としてはそこに国力の差異はもちろんあったと思います。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何だかわからないですな。国力に差異があったからどうだというんですか。吸収合併だと——ここに議事録があるんですよ、明治四十三年の、ちょっと古いけれども。はっきり書いてありますよ、これに。
  104. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その当時の状況をよく勉強しておりませんので、突然おっしゃられても返答に困るわけでありますが、私の解釈としては、両国の間に合意が行なわれた、しかしながら、おのずから国力の差異というものはその間にあるということもこれは考えなくちゃいかぬと、さように考えております。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 では、お聞きしますけれども、日韓両国にとって著しい利益があると日韓共同コミュニケであなたが書いていますね。今度あなたが出したコミュニケですよ。韓国にとって日韓会談はどういう著しい利益があるんですか。
  106. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 孤立した繁栄というものはない、やはり連帯観念によってお互いの間の共存共栄をはかっていくというのが今日の国際情勢だと思うわけであります。日韓の間には長い間歴史的にもあるいは地理的にも文化的にも非常な緊密な関係があったのでございまして、不幸にしてその関係がただいま中断されておる。これをやはりお互いの共存関係を互恵平等の立場に立って共存共栄の関係を結んでいくことが、日本にとっても利益であり、韓国にとっても利益であると、かように考えたわけであります。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは抽象論で、著しい利益があると書いてあるんだから、具体的にどういう利水があるのかと聞いているんですよ。経済的に政治的に軍事的にどういう利益が日韓会談によって韓国側にもたらされるんですか。政治、経済、外交、軍事、こう分けてお答えください。
  108. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず国家の安全という点からいいますと、両方とも自由陣営に属しておる。すなわち、日本と国交正常化をすることによって、この点についてやはり利益であると考えるのであります。必ずしも日本は軍事協力ということはできませんけれども、しかしながら、日本の文化あるいは経済、そういうことと結びつくことによって政治的な安定感を幾らかでも強めることができる。経済の問題については申すに及ばず、文化の関係におきましても、両国の交流によってこの点が非常に前進すると、かように考えております。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもはっきりしませんね。日韓会談によって韓国の経済は具体的にどういう著しい利益を得るんですか。そこから始めてください、一つ一つ。
  110. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国が一番よく知っていると思いますが、われわれの側から言うと日本の利益であり、それが韓国にも経済の繁栄を来たさしめる一つの大きな利益であると思う。日本の利益、日本の今日の経済、これを結び合わせてそして有無相通ずるということによって経済は伸びていくのでありますから、一々具体的に申し上げることはこれは際限のないことで、この点でひとつ御了解を願います。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、日本にとっての経済的利益は何なんですか。
  112. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは、申すに及ばず、日本がいまあらゆる国と経済提携をしております。そして、あるいは非常な先進国、あるいは著しくおくれておる後進国、いろいろありますが、そのどれ一つをとっても日本にとっては非常にこれはマイナスであるというようなことはございません。国交正常化して有無相通ずるということによって日本はいかなる国との経済交流におきましても利益を占めておるのであります。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんな抽象論じゃなくて、具体的にどういうふうな日本に経済的な利益があるのかと聞いているんですよ。経済協力日本は金をやっちゃうでしょう、向こうへ。日本のほうは出るばかりじゃないんですか。それで日本に著しい利益があるとあなたコミニュケに書いているから、具体的にどういうような利益があるのかと聞いているんですよ。韓国の安い労働力を日本が行って使ったりなんかするということも日本としての著しい利益に入るんですか。
  114. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは一がいに言えない問題でございますが、とにかく日本の経済界は一日も早く韓国と国交正常化してもらいたいと、こういうことを言っております。私は一々何がどうだという説明をする必要もないと思いますが、よく御存じじゃないかと思います。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃ、韓国の労働力は日本の労働力と比べてどうなのか、賃金はどうなのかと、そういう点からひとつ説明してくれませんか。それはあなたでなくてもだれでもいいですよ。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本はただいま労働力が非常に不足しておるといわれておる。現に相当労働力が行き詰まっておる部面がございます。韓国の現状は、どうもそうじゃないように思われる。結局、経済の発達がまだ十分じゃない。十分じゃないということは、まだまだ手があいておるりっぱな労働力が多数に控えておる、労働予備軍というものがあるということになると思うのであります。でありますから、韓国は、今後経済の開発、組み立ていかんによっては非常な勢いで私は伸展を見るのではないかと考えております。それから、したがって、労働賃金は、やはり労働力が不足しておるところよりも余っておるところのほうがどうしても安いわけであります。そういうことは言えると思います。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、韓国の労働賃金は、日本と比べてどの程度か、三分の一ぐらいじゃないんですか。
  118. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員から……。
  119. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) お答え申し上げます。  国会配付資料で経済統計がお配りしてございますが、平均いたしますと、一日当たりのウォンでまいりますと、これは韓国銀行の統計でございますが、一九六一年で一日当たり二百五十ウォン、一九六二年で二百五十五ウォン、相当低いことは確かでございます。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本の資本家が韓国へ行って安い労働力を使って品物をつくる、それでほかへ売ればもっともうかるわけでしょう。それも日本の経済的利益なんじゃないですか。
  121. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もし韓国がそれを欲するならば、日本の産業が韓国に進出することができると思います。しかし、向こうが欲しない場合にはそういうことができない。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの判断では、韓国日本の資本が韓国へ進出するというか、そういうことを欲しているんですか、欲していないんですか。どういうふうにあなたはお考えなんですか。
  123. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ推測でございますから、これははっきり言えないと思います。ものによっては来てもらっちゃ困る、ものによっては来てほしいというものもあるだろうと思います。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたが共同コミニュケで言っているんですよね。日本にも著しい利益があるというんでしょう。だから、どういう日本に著しい利益があるのかというんですよ。どうもよくわからないですよね。日韓共同コミュニケに日韓両国にとって著しい利益であるばかりでなくと、こうあることは認めるんでしょう、あなたは。これがあるんだから。日本にとって一体どういう著しい利益があるのか、経済的に。どうもわからないですな。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国の人口はたしか二千数百万と思いますが、アジアのうちでも非常に教育も普及し、知識程度も高い。これが政情を安定し、そしてその上に経済を開発するということになりまして、各国民の水準が高くなるというような場合を考えますというと、これはもう非常に大きな日本にとっても市場ではないか、日本の商品にとって非常に大きな市場である、かように考えるのであります。でありますから、育成されるまではこれは相当にやはり肥やしをつぎ込まなければならぬと思いますが、しかし、これがほんとうに実りを見るというふうになりますと、非常なまあ日本にとっては大きな市場である、そういうことを私は考えざるを得ないと思います。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、無償三億、有償二億、民間協力一億ドル以上と、こう韓国にいくと、それによって日本の経済にも非常にプラスになるという結論ですね。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは、韓国のみならず、東南アジアを中心にするアジアの市場は、日本にとって非常に大切な市場でございます。しかし、これはもうだんだん行き詰まっておる。ということは、片貿易になって日本から輸出するものは多いが、向こうから買うものは少ない。日本はもう少し買ってくれなければ——日本の商品を買うだけの力がない、その力をつけてくれというような要望がございまして、これがまあいわゆる南北問題の一部である。日本はそういう意味において低開発国をとにかく長い目で将来を楽しみながらできるだけこれに経済協力を与えるという方針をただいまとりつつあるわけであります。韓国に対しましても概括的には同じ態度で臨むべきであると、かように考えております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この無償三億ドルというのは、これは金は使途は制限されないんですか。韓国側はどういうふうに使ってもいいのですか。
  129. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題は、金・大平了解という程度にいまとどまっておりまして、これから細目の交渉をいたしまして請求権問題をはっきりと固めなければならぬ。これからいろいろ微妙な交渉に移るわけでございます。ただいま詳しく申し上げる段階ではございません。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三億ドルの使途は、韓国にいけばそれは韓国で無制限に使っていいのかと聞いているんですよ。これはもうはっきりしているんじゃないですか。それが微妙な段階になっているんですか。
  131. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 三億ドルの無償供与をどれぐらいどういう方法でこれをやるか等につきましては、なお両国の間で折衝の余地があるのであります。その折衝の段階においていろいろな向こうの具体的な計画等も承知ができるものと考えております。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日韓の貿易の協定は、これはいわゆる一括方式というものの中に入るんですか、入らないんですか。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは日韓会談の中には入りません。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、ただいまノリの問題が起きているわけですが、これはどっちですか、農林大臣か、あるいは通産大臣か、国会の中で衆参の農林水産委員会で年に一億枚以上は輸入しないということが議決されているわけですが、それは御存じですか。
  135. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 知ってます。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、今度の貿易協定の中でもそれは守るつもりですか。
  137. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) なるたけその線に沿いたいとは思います。しかし、昨年御承知のようにノリ一億枚というやつはいろいろな事情から二億にふやした事情もございますので、その線は考えてはみますけれども、国会の委員会の議決でもあるので考えますけれども事情によりましてはあるいは変わるかもしれませんけれども、そのときはそのときにいろいろ了解を得てやっていきたいと思います。
  138. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 去年は一億枚ふやしたというのは、これは特殊な事情でしょう。ほとんど日本が寒流の関係か暖流の関係かでとれなかったという特別な事情からであって、これは一億枚以上は輸入しないということはしっかり守っていく筋合いのものじゃないですか。その点はどうなんです。
  139. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは行政の問題でありますので、事情の変化によりましてはよく話し合って変わることがあり得ると思います。
  140. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、五億枚を輸入するということは、それは妥結をみているんですか、あるいは、ある程度合意に達しているんですか。
  141. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 全然そういうことはありません。
  142. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私どもの聞くのは、このノリの輸入は、非常にもうかるわけですね。これは水産庁知っておるだろうと思うけれども、釜山を出るときと、日本に来たとき、それから市販の価格、どの程度の差があるか、水産庁知っていますか。
  143. 和田正明

    政府委員和田正明君) 昨年はやや事情が違いましたが、従来、一億枚ずつ入れておりましたときには、日本に持ってまいりますときの価格が、一枚四円ということで、それに関税が二円加わります。それで、品質によって市販の価格にはいろいろ差がございますが、それを輸入商社が扱いますときに、適切なるマージンを加算をいたしまして、残りの部分については、ノリの輸入問題の協議会というところへ積み立てをいたしまして、それを、たとえばノリの生産者対策というような形で支出するような形を、従前はとってまいりましたわけでございます。
  144. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、じゃ釜山を出るとき幾らくらいで、日本で市販されるとき幾らくらいになるのですか。二十倍以上になるのでしょう、これは。ばく大な利益があるのじゃないですか。
  145. 和田正明

    政府委員和田正明君) 釜山を出るとき幾らかというふうにおっしゃいましたけれども日本に参りますときに、従前の例だと一枚四円ということであります。それに関税が二円加わりまして六円になります。それから市販をされますときには、品質によって差がございますが、大体、いまおっしゃるように二十倍などという数字ではございませんで、最末端に参りまして、いま、はっきりとした平均数字は記憶がございませんが、十円前後であったかと記憶しております。
  146. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 去年は、釜山を出るとき一枚一円七十銭くらいで、最終市販は二十五円くらいになっているんじゃないですか。だから、そこで非常にばく大な利益があるので、この韓国ノリの輸入をふやしてくれふやしてくれといって、農林省や水産庁へ——これは大もの小ものですよ、どこの大もの小ものか知らぬけれども——行っているというので、水産庁でも困り切っているのじゃないですか。きのうはバナナ、きょうはノリというのが、まるで利権の合いことばになっているじゃないですか。この事実は、もっと僕らも明らかにしますけれども、時間がないからあれしますが、あなたのほうでも困っているのじゃないですか。通産省の通商局ですか、何とか交通整理してくれと言っているじゃないですか。あまり大もの小ものから、あっちこっちから電話がかかってくる、手紙は来る、入れてくれ入れてくれと。その分け方の問題で、利権の巣になっているじゃないですか、これは。そうでしょう、困っているのでしょう。
  147. 和田正明

    政府委員和田正明君) 昨年は、御承知のように国内の生産事情が、海潮の都合で非常に悪うございましたので、市販価格といいますか、国内生産のものも非常に高かったことは事実でございます。しかし、先ほど私が申しましたような数字は、一般的なベースとしてそういうような形で輸入をされてきたということで大体間違いないと御理解いただきたいと思います。  それから、輸入事情その他のことにつきましては、先ほど先生からもお話のございました一億枚程度しか輸入しないという両院の農林水産委員会の御決議の際に、輸入する時期、輸入する価格、輸入数量等につきましては、生産者側、輸入商社側、加工者側等が入りまして輸入の協議会というものをつくって、そこで話し合いをして処理をするという形になっておりますので、私どもとしましては、その線を動かさないで処理をしていきたいということで、過去においては処理をしてまいりましたわけでございます。
  148. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日韓会談関係は、法的地位の問題もあって、これも聞きたいのですが、これは分科会で聞くなり、ほかのところで聞きたいと思います。時間の関係で。  それで、不本意ですけれども、三矢の問題に移りたいと思います。  アメリカのいわゆるスリー・アローズの研究というか、計画というか、そういうものがあるというのですが、これはどんなものですか。
  149. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) アメリカのスリー・アローズということがよくいわれておりますが、さようなものはございません。
  150. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカのスリー・アローズと間違えられて困るということを、この前あなた衆議院で言っておったじゃないですか。そんなものはないんですか。
  151. 海原治

    政府委員(海原治君) 先般、当委員会において私が申し上げましたのは、この三矢研究というのが三矢計画という名前で置きかえられまして、そのことが、またアメリカのいわゆる三矢作戦、このことばに関連さしていろいろ論議されておりますが、そのアメリカの三矢作戦というものはございませんということを御説明した次第であります。アメリカの三矢作戦ということばは、昨年の十一月号の「文芸春秋」に出ております。そこでは、松本清張氏が、米軍がいわゆるスリー・アローズ作戦というものを持っておる。三本の矢があって、これはどうだという説明をしておられますが、そういうものはないということをこの前御説明した次第でございます。
  152. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この三矢研究というのは、これは公務としてやったのですか。
  153. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 自衛隊が年度年度にいろいろな研究を、図上演習等を行なっておりますが、やはりこのいわゆる三矢研究文書なるものも、その自衛隊の幕僚の研究の業務として行なったものでございます。
  154. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公務としてやったと、こう認めていいわけですね。
  155. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) さようであります。
  156. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、だれかがこれをやることについて決裁してやるわけですね。だれが決裁しているのですか。
  157. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 当時、統幕の事務局長が、統裁官という名のもとに、この図上研究を指揮をいたしておるのでございまするが、そのとき、私が聞いておりますところによりますれば、当時の志賀長官は、林統幕議長から、この種類の研究をするということを簡単に口頭で、事前事後に報告があったということを聞いております。詳しいことは政府委員から答弁をいたさせます。
  158. 海原治

    政府委員(海原治君) 大臣の御説明を補足いたしますと、毎年、自衛隊で教育訓練——このことばには図上研究も含みますが——いたします計画は、年度の業務計画という形でもって長官が決裁をいたします。その中には、三十八年度の図上研究をやるということが書いてあります。そういうことが行なわれることが、これによって決裁される。具体的に演習が行なわれますときには、ただいま大臣が御説明いたしましたように、統幕事務局長というものが統裁官を命ぜられて、この事務局長が計画をつくりまして、つくった計画は、統幕会議に報告をされまして、その研究を進める、こういうことであります。
  159. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、こういうふうな計画をやるということは、防衛庁長官も知っていたわけですね、前の——あなたじゃないけれども、知っていた。そうすると、これに加わった人が、こういうふうなプログラムでやる、こういうスケジュールでやるということも、統幕会議の議長ですかの決裁を経ているわけですか。
  160. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほど申しましたように、統幕の事務局長が、統裁官になるように命ぜられまして、事務局長が演習の細部につきまして計画をつくっております。これがいわゆる三矢図上研究の実施計画であります。これは、決裁は事務局長みずからいたします。自分できめるわけです。ただ、こういうことでこういう演習をやりたいということは、統合幕僚会議に、大体毎週一回集まっておりますが、そういう席上で報告をされております。すなわち決裁の形としましては、事務局長の決裁だけでございます。こういうことでやるからということにつきましては、統合幕僚会議に報告され、了承をされた、こういう形であります。
  161. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、こういうことでやるからというふうな報告は、文書でしたわけですか。
  162. 海原治

    政府委員(海原治君) 口頭でございます。
  163. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはあなたのほうで出した三矢研究の書類がありますね、これに基づいて聞きますからね、年度統合防衛計画というのは、これは毎年立案するようですが、それを立案するまでのプロセスですね、プロセスをひとつ詳細に説明していただきたいのですが。防衛庁長官、だめかな。わからないですか。防衛庁長官はその程度わかっているのじゃないのか。それは防衛庁長官、わかっていなければ、シビリアン・コントロールにならないよ。その程度わかっていなければ、シビリアン・コントロールがあるのかないかわからない。
  164. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) もちろんいろいろ大小の問題について報告は受けますが、いろんな事務的な恒例としてやっているようなことは、大体やはり文官である防衛局長が担当いたしてやっておりまして、それは口頭で報告を受けたりする程度でございますので、この問題につきましては防衛局長から詳細に答弁をいたさせます。
  165. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと待ってください。年度統合防衛計画というのは、できたのはあなたのところに行くのでしょうけれども、どういう形でそれが下から盛り上がってきてできるのか、あるいは上から命令してできるのか、その経過ですね、それを聞きたいわけなんですよ。それはあなたは御存じないですか。——知らないならしょうがないですね。
  166. 海原治

    政府委員(海原治君) 事務的なことでございますので……。
  167. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事務的じゃない、大事なことだ。
  168. 海原治

    政府委員(海原治君) 私からお答えすることをお許しいただきます。  毎年、年度の統合防衛計画といいますものは、その年度の始まりますときの各自衛隊の能力を見積もりまして、その能力に基づいて、その年度内にもし万一直接侵略あるいは間接侵略が起こった場合にはどういうことができるであろうか、どういうことをせねばならないだろうかということを詳細に検討するわけでございます。で、このことは大体、たとえば昭和四十年度の計画ということになりますと、三十九年の八月ごろに各幕僚の間でいろいろ最初の素案が検討されます。これが逐次段階を経まして、一応まとまりましたところで私のほうに相談する、それでいろいろ内局の関係部局とも意見を調整いたしました上で案がまとまりまして、この決裁を得ますのが、通常は前年度の十一月から十二月の間でございます。それから統合計画がきまりましてから、この計画を受けまして各幕がやはり同じような年度の防衛計画、警備計画をつくるわけでございますが、この作業は年度の統合防衛計画を立案する作業と並行してまいりますので、大体毎年十一月から十二月の間に翌年度の統合防衛計画及び各自衛隊の防衛計画、こういうものが作成されるのが従来の例でございます。
  169. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、年度の統合防衛計画というのは、これは長官の決裁を経たものですから、いわゆる正式な文書というか、記録になるわけですね。これは毎年あるわけでしょう。ひとっこれを、私どもは十分三矢とも関連をして研究をしたいから、年度の統合防衛計画というものを出していただきたいのですが。
  170. 海原治

    政府委員(海原治君) この年度の統合防衛計画というものは、いわば昔で申しますとこれは作戦計画でございます。したがいまして、一般に公表するようなものじゃございません。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 作戦計画だから出せないというその根拠はどこにあるのですか。国会が、国政調査権に基づいて請求した場合に、出せないという根拠はどこにあるのですか。防衛庁長官に伺います。
  172. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いわゆる作戦計画は、やはりこれはいろいろな場面を想定しての内輪の研究でございますので、やはり各役所にも正式に見解を決定するまでの段階においては、文書についてのやはり機密というのがありますように、防衛庁におきましても、最終段階に至るまで、あるいはこの間におけるいろいろな研究というものは、これは外部に出せるものではないということのしきたりになっております。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法とか国会法とか、それに基づいて出せないという理由を、ひとつ詳細に説明してくれませんか。
  174. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほども御説明いたしましたが、これは事の性質上、本来どの国でも、その国の防衛をいかなる形で、いかなる程度にできるかという機密は、国家機密にしております。そういうものを外に公表するということはまずあり得ないことでございます。具体的な法的な根拠につきましては、法制局のほうにはお尋ねいただきたいと思います。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 防衛庁は、しきたりとか国家機密だと言うのだけれども、国家機密というのは、日本の憲法で認められているの。
  176. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 国家機密ということばは適当でないかもしれませんが、やはり防衛庁は、防衛庁内において機密を保たなければならぬ分があるという意味でございます。
  177. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法なり国会法との関係において答えてください。憲法で国家機密を保護している条文はどこにあるのですか、国会が国政調査権を発動した場合、出さなくていいという根拠はどこにあるのですか、法律的に。
  178. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 法制上の問題でございますので、法制局長官が答弁するのが当然と思いますが、いまおりませんので、防衛庁の立場においての法制上の見解を、麻生参事官から申し上げさせます。
  179. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 先ほど大臣から答弁ありました範囲内で、私からお答えいたしたいと思います。国に機密がないかどうかということでございますが、これはまあ一国が存在いたしまして、国家生活を営むにあたりましては、そこにおのずから外に対しては秘匿すべき事項というものは、これはあるものと私は考えております。たとえば外交上とか防衛上とか、当然外に秘匿すべきものというものは、事柄の本質上当然あるものであるというふうに理解いたしております。  それから先ほどこの国会法の百四条との関連であろうかと思うのでございますが、国会法におきましては、「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告文は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」、こういう規定があるわけでございます。御質問の趣旨は、これといまの統合防衛計画を国会に出すかどうかという関係の問題ではないかというふうに考えるわけでございますが、この国会法のあとで、先生御承知のように、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律というのがあるわけでございます。これを読んで見ますと第一条に、「各議院から、議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人として出頭又は書類の提出を求められたときは、この法律に別段の定めのある場合を除いて、何人でも、これに応じなければならない。」、こういうのがあるわけでございます。それからこれに関連しまして、第四条におきまして、「証人は民事訴訟法」の一定「の規定に該当する場合に限り、宣誓又は証言若しくは書類の提出を拒むことができる。」というのがございまして、これは公務員の問題ではございませんので、第五条に参りまして、「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、出頭した証人が公務員である場合又は公務員であった場合その者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し上てたときは、当該公務所又はその監督庁の承認がなければ、証言又は書類の提出を求めることができない。」というのがあるわけでございます。この規定の適用がありました場合に、さらに申し上げますと、「当該公務所又はその監督庁が前項の承認を拒むときは、その理由を疏明しなければならない。その理由をその議院若しくは委員会又は合同審査会において受諾し得る場合には、証人は証言又は書類を提出する必要がない。」ところが、この理由を受諾することができない場合においては、「その議院若しくは委員会又は合同審査会は、更にその証言又は書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができる。その声明があった場合は、証人は証言又は書類を提出する必要がない。」、こういう規定があるわけでございます。この規定は、たしか国会法よりもあとでできた法律ではないかと私は思うのでございますが、この「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」に盛られていますところの、この国家の重大な利益に影響を及ぼすようなものは出さないでもいいというこの基本的な考え方というものは、百四条を適用する場合についても、この法理というものは考えてもいいんじゃないだろうかという考えを持っておるわけでございます。
  180. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。ただいまの参事官の御説明は、まことに私たちは全然わからないのです。でたらめの解釈です。そこで、いま稲葉委員が質問をしているのは、国家機密ということがあるのかどうか、防衛庁の防衛計画について国会が調査権の発動をした場合、それに応じられるか、応じられないかという話ですよ。いいですか。そういう前提に立っての質問なんです。日本の憲法において国家機密はないし、自衛隊法においても、国会法においてもないでしょう。したがって、国家機密に関するということに対する解釈は全然でたらめですよ。そんな、参事官が、しかも防衛庁の参事官でしょう、そんなかってな解釈をされて、国会に対して要求資料を出さぬということは、国会の権威にかけての問題ですから、そんなでたらめな答弁では納得できない。だから、これは、すみやかに政府は防衛対策をお持ち合わせならやってもらいたいと思うのです。そうしなければ、いつまでそんな国会の調査権を否認するような答弁を黙って聞いておられない。議事進行はできません。これは議事進行で私は申し上げます。委員長善処してください。
  181. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。
  182. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまの説明で議事進行の件は十分と思いますので……。
  183. 鈴木強

    鈴木強君 そんなばかな話はないよ。
  184. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君に許す必要はないと言っているのです。  ただいまの問題につきましては、法制局長官が参りますまで解決を延ばして、その他の点についての御質疑をお願いいたします。
  185. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、この出席をした図上参加者一覧というものをもらいましたのですが、この参加している者の、いろいろ書いてありますが、この人は一体どういう人なのか。いわゆる旧職業軍人なのか、それから、陸軍とか海軍とか、どういう階級の人だったのか、こういう点を明らかにしていただきたい。これは表がありますから、表に基づいて説明してください。
  186. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いまのお尋ねの件でございますが、人事局長からお答えをいたさせます。
  187. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) お答え申し上げます。各個別の資料を持ってまいっておりません。まとめましたものについて申し上げます。
  188. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 配ったでしょう、委員会に。これに基づいて説明しなければだめだよ。
  189. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) その詳細なやつは持ってまいっておりませんので。
  190. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この間聞くと言ったじゃないか、だめじゃないか。
  191. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) 統裁部十七名のうち、大学、再門学校卒一名。軍学校卒業十六名。研究部三十六名のうち、大学、専門学校卒三名、軍学校卒業三十三名でございます。
  192. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなこと聞いているのではないですよ。職業軍人はどれだけいるかということを聞いている、一人々々。これに基づいて説明しなさいよ、委員会に出したんだから、あなたのほうで。あなたのほうで出した資料だもの、一覧表は。これに基づいて一人々々説明してくれと言っている。ちゃんと前に通告してあるでしょう、この点聞くからと言って。旧職業軍人が何人いるかということを。
  193. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) お答え申し上げます。  前の階級等につきましては、詳細に資料を準備しておりませんので、職業軍人であったかどうかということで御了承いただきたいと思います。  田中義男、職業軍人でございます。これは統裁官でございます。
  194. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 陸軍大学か。
  195. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) そこがわからないのでございます。出身が陸士出身という意味でございます。
  196. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それを全部、旧職業軍人で陸軍大学を出ているか、海軍大学を出ているか。もとの大佐とか少佐とかあるでしょう。それは何かということを調べてくれと言って連絡したわけですよ。あるいはぼくの言い方が悪かったかもわからぬけれども
  197. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) 申しわけないのでございますが、職業軍人であったかどうか調べてくれと、こういうお話でございました。で、職業軍人の員数を申し上げたわけでございます。一々につきましては、私の手元にございますものでいま答えられる限度でお答え申し上げます。  統裁官田中、これは陸士卒でございます。大平、陸士。久原、海兵。山本、海兵。梅沢、陸士。高木、陸士。三村、東大経済。上杉、陸士。植村、陸士。新宅、これは機関学校。……
  198. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 陸海空軍以外の学校の人は、東大であるとか、どこであるとか、それは個人のことだから、そんなことはいいですよ。
  199. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) 職業軍人とおっしゃいますので、機関学校は海軍でございます。
  200. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、陸軍関係、海軍関係学校だけでよろしい。
  201. 堀田政孝

    政府委員(堀田政孝君) 谷村、陸士。酒井、陸士。町田、海兵。久須美、これは海兵。柏木、陸士。宝納、海兵。平川、海軍機関学校。研究部、内田、東大法学部。岩崎、海軍機関学校。高橋、陸士。来島、海軍兵学校。今井、海軍兵学校。大田黒、海軍兵学校。柏、陸士。徳武、陸士。富沢、陸士。川上、陸士。関、海軍機関学校。味岡、陸士。福島、これは東大工学部。中原、陸士。吉松、陸士。上阪、陸士。市来、陸士。馬来、陸士。井上、陸士。館、陸士。高品、陸士。田内、陸士。小岩井、これは航空士官学校と書いてございます。これは予備役の航空士官学校ではないかと思います。それから中尾、陸士。石隈、海兵。市来、海兵。斎藤、これは農閑学校。前田、海兵。新村、海兵。成合、海兵。馬場、商船学校。田代、陸士。桑原、陸士。影山、陸士。吉川、陸軍経理学校。山口、海兵。以上でございます。
  202. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ほとんど九割何分、五、六分くらいが旧職業軍人ですね。そこでですね、いろいろこの想定がありまするが、この想定は一体だれがきめたのですか。
  203. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 統幕の事務局長が統裁官としてやったのがこのいわゆる図上研究でございますので、統幕事務局長からこの想定の質問が出されたと私は考えますが、なおまた、詳細のことは政府委員から答弁をいたさせます。
  204. 海原治

    政府委員(海原治君) この図上研究は、ただいま大臣から申されましたように、統裁部とそれから研究部と分かれているわけです。統裁部は、いま大臣がおっしゃいましたように、全般の問題の想定であるとか、問題を出すとか、あるいはそれを取りまとめをするとか、こういう全般の演習の進行及び取りまとめについての責任を持つ。その問題を受けまして研究部がそれぞれグループに分かれております。そのおのおのが答案を出した、こういうのが図上研究の形でございます。
  205. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その想定なり問題はあれですか。防衛庁としては統幕会議の事務局長に一任していたのですか。
  206. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 先ほど申し上げたとおり、当時の事情を私は承ったのでありまするが、林統幕議長が当時の志賀長官に向かいまして、これくらいの人数で図上研究なるものをこれからやる、何月何日から何月何日くらいまでの間にやる計画であるということを簡単に口頭で報告がありまして、そして、その事後にも統幕議長から、演習が終わりました、非常にみな熱心に研究をして、こうだったというような、きわめて簡単な報告があったと承っているのでありまして、私のいままでに調べたところによっては、長官に直接、この想定の内容とか、そういう詳しいことは報告はなく、志賀長官も承知していないように存じておりますが、なおまた政府委員から補足答弁をいたさせます。
  207. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいま大臣から御説明したとおりでございますが、これは先般当委員会において御説明したと思いますが、全般の状況を第一動から第七動まで七つに分けて、それぞれの場合に一体自衛隊はどういうことをすべきかということについて研究したわけでございます。それに基づきまして、二十四の問題が出ております。こういう想定とか問題とかいうものは、先ほど申しましたように、これは全部統裁部でつくっております。
  208. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 統裁部というのがやったのですが、それは前もって志賀長官にも話をして、こまかい内容は別として、了解を、決裁を得ているというか、そういう形ですから、こういう想定とかあるいは問題というものは防衛庁自身が出したのだ、防衛庁がやったのだ、こういうふうに承ってもいいわけですね。これは統裁部がかってにやったのだ、こういうわけじゃないのでしょう。
  209. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 当時の志賀長官は、その想定の内容等については詳細に報告は受けておりませんで、先ほど申しましたようなこういう演習をやるという長官の大体の了解を求めた、そうして終わったらば終わったことを簡単に口頭で林統幕議長が長官に報告したということでございまして、内容等にわたっては詳しく承知してなかったんではないかと私は考えております。
  210. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、防衛庁長官は想定なり問題ということについては統幕会議の事務局長に一任したわけでしょう。
  211. 海原治

    政府委員(海原治君) 全般的な何と申しますか状態をまず御認識願いたいと思いますが、図上研究というものはこの三矢研究だけではございません。毎年各段階におきまして、たとえば師団のレベルだとか方面隊レベルだとか学校とかいろいろやっておりますが、したがいまして、その一々につきまして大臣がその詳細をお知りになることは絶対ございません。私自身防衛局長をいたしておりますが、三矢研究の想定等につきましては連絡を受けておりません。したがいまして、統幕会議におきまして、統幕の事務局長が統裁官となって有事の場合のいろいろ動き方について勉強するということについて、それ以後は全部まかされた形、先生おっしゃいますような一任したということは事実でございます。
  212. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それならそう言やいいんだよ。別にそのことでどうということはないですからね。防衛庁長官、防衛があまりうまくないよ。(笑声)まあよけいなことですが……。  そこで、問題となるのは、いま言ったような想定ね、いろいろ想定がありますね、これは常識的な想定だと、こういうふうにあなたはお考えでしょうか。
  213. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いろいろこれが公表されました結果は、字句、また想定の出し方、問題等について、相当不適当や、また、何と申しますか、多少の行き過ぎもあると存じております。いままでは、先ほど来お答え申し上げておりますとおり、統幕の統裁部に一任の形と申しますか、そういうことでこういうような想定で演練もしたということになるのでございまするが、私は、この事態にかんがみまして、将来はこういうたとえ想定に基づく図上演習であっても、こういう想定の大綱また設問の出し方等については長官自身が直接今後はこういうことをよく聴取いたし、そうして慎重な指示をすべきではないかと考えておるようなわけでございます。
  214. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その想定は常識的なものをはずれたものがあるのだ、何か不適当なものがあるのだというふうに聞こえるんです。あなたの話を聞くと。具体的にはどこですか。
  215. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いろいろな誤解を与えておる点がありまして、これははなはだ私どもも遺憾に存じております。それはやはり想定やことばの使い方等において不穏当がある。たとえば、国家総動員体制というようなことばが使われたり、あるいは法案のことに関しまして国会等にいろいろな要望をするというようなことが出ておる点は、今後、その内容においてはそうでなくても、ことばの使い方等において、問題の出し方等においては慎重に考慮しなければならないのではないかと考えておるわけであります。
  216. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま言われた国家総動員体制というのはどういうことなんですか。
  217. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) ただそういうことばが文章の中に見られるということでございまして、なおこの問題の内容につきましては政府委員から詳細に答えさせます。
  218. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと待ってください。政府委員から答弁するのはあととして、あなたの考えておる国家総動員体制というのは何なんですか。あなたのお考えになっている国家総動員体制というのは何なんですか。
  219. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) それは戦前行なわれましたことでございまして、私どもは今日の民主主義憲法下のもとにおいてはそういうことは考えておらないのでございます。
  220. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この本をちょっと見ていただきたいんですが、これは「陸上自衛隊法制概要」という防衛庁陸上幕僚監部監理部編という本ですがね、これはあなたのところで出した本ですか。まずそれから確かめないと、あとで質問しても、それは違うぞなどと言われると困るから、ちょっと見てください。あなたのところで出した本ですか。
  221. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) これに書いてありますように、防衛庁陸上幕僚監部の監理部が編さんして出したものでございます。
  222. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その本に書いてあることについては、防衛庁として責任を持ちますか、大臣
  223. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いま御指摘のものは陸上自衛隊の監部が解説君として書き、配ったものであるそうでございまして、防衛庁としての正式の文書ではございません。
  224. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは防衛庁の陸上幕僚監部監理部というのが勝手に出したんですか。防衛庁の長官の決裁も得ないし、防衛庁と全然関係なしに出したんですか。
  225. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 陸上監部として出したのでございますので、当無陸上監部としての部署部署ではもちろん責任を持って出したものと考えられます。ただ、それが防衛庁のいわゆる長官の決裁と申しますか、そのつかさつかさの責任はあるのでございまするが、防衛庁としての正式の文書ではないという意味のことを申したのでございます。
  226. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あれですか、陸上幕僚監部というんですか、これは杉山茂という人が序文書いているんですよ。「一般幹部及び隊員にとっても実務上の資料として参考とするに足るものと認め、刊行する次第である。」と、こう書いてありますよ。「初級幹部用」と書いてある。これは防衛庁と関係ないの。陸上幕僚監部ですかが出したものなんですか。そこではこの内容について責任を負うんですか。
  227. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いま御指摘のとおり、陸上幕僚監部として出したものでございますから、陸上幕僚監部としてはもちろん責任を負う性質のものでございます。
  228. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは防衛庁の責任とは関係ないんですか。大蔵省の責任かな。(笑声)
  229. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 陸上幕僚監部が出したことについては、もちろん防衛庁として責任がございます。その内容等については陸上監部だけの考え方で出しておるのでございまして、そういうふうに御理解をいただきたいのであります。(「それはおかしい」「防衛庁と関係ないのか」と呼ぶ者あり)
  230. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも押し問答していても始まりませんが、ここでははっきり「国家総動員」と書いてあるんですよ。国家総動員の欄で「国家は有事の国家総動員のため平時から計画及び準備を行なう必要がある。」と、こう書いてあるんです。はっきり。あなたのところに防衛次官をやっておった加藤陽三という人がおるでしょう、いまやめたけれども。この人が憲法調査会の第三委員会第二十二回の議事録の中にはっきり言っていますよ。「自衛隊といたしましては、できたら戒厳法というものを制定したいという希望をもって研究していられますか。」という問い、これは大西という人です。これに対して、加藤氏は、「非常事態に対処する方法は研究はいたしております。」と、こう言っているんですよ。だから、あなたのほうで国家総動員なり非常事態に対処する方法というのは研究しているわけでしょう。当然でしょう。防衛庁長官、それは当然でしょう。
  231. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 加藤前次官がお答え申し上げておりますとおり、いいまする戒厳令というようなことの研究はいたしておりません。ただ、国家総動員ということは、私が先ほど来申し上げておりますることは、いわゆる戦前における国家総動員というようなこととは毛頭考えておらないのでございまして、一朝有事の場合においてどういうような自衛隊として考え方をしなければならないかとか、どういうふうに備えをしていかなければならないかという点においては、いろいろな研究や演練をいたしておるのでございまして、ただ国家総動員という考え方が戦前の国家総動員というような考え方では毛頭ないという意味のことであることをつけ加えて申し上げておきます。
  232. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 戦前の国家総動員でなくても、じゃあなたの考えておる有事の際における国家総動員というのはどういうことなんですか。考えておられるというのでしょう、いま。どういうんですか、これは。
  233. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いわゆる有事の場合において自衛隊がどういうふうに全能力を発揮できるかというようなことについての研究や演練をいたしておるということでございますので、広範囲の国家総動員というようなことは自衛隊が考えるべきことではないというふうに私は申し上げておるのであります。
  234. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自衛隊の能力をどういうふうに発揮するかというなら、国家総動員でも何でもないじゃないですか。「国家は軍備ばかりでなく国家の各般の国力を総合してこれに当たる必要がある。」と、こういうふうにはっきり書いてあるんですよ、この木には。そして、「有事の国家総動員のため平時から計画及び準備を行なう必要がある。」と、こういうのですから。総動員というのは、総力の問題なんだから、自衛隊だけの問題じゃないでしょう。考えているなら考えている、研究しているなら研究している、ただそれはこういう内容なんだということならまた話はわかるんですよ。
  235. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 非常時の場合における自衛隊がいろいろ対処しなければならないことをば研究をいたしておるのでございまするが、それはあくまでも、いま稲葉委員がおっしゃいまする国家の総力をあげなければならないというようないわゆる国家総動員体制というようなことばで言いあらわすことは、一般論としては考えておるかもしれませんけれども、ほんとうの意味のいわゆる国家総動員というようなことは、私が先ほど申し上げたとおり、自衛隊が考えるべきことではなくて、政府や国会において検討さるべき問題であると、こういう意味のことを申し上げたのでございます。
  236. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただし、この三矢研究には自衛隊以外のところがどういうふうにするだろう、どういうふうにするだろうということを全部考えているのじゃないですか。ここにあるでしょう。あなたの出した四ページの終わりのほうに、「防衛庁以外の諸機関においてこうぜられるであろう施策を与件として想定しつつ、」と、こういうふうに書いてありますね。そうすると、「防衛庁以外の諸機関においてこうぜられるであろう施策」というのは何なんですか。どういう機関ですか。まず、どういう機関ですか。いろいろあるでしょう。——ちょっと待ってください。防衛庁長官無理かな。無理じゃないでしょう、この程度の質問は。(笑声)ここに書いてあるんだもの。
  237. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 政府とか外務省、その他各省のことに関しまして、いろいろ支障のある点をいわゆる想定という意味で取り上げたのでございまして、私はあくまでもこれは最終はいわゆる先ほど申し上げましたような政府、国会で決定をすることであって、これは総力をあげるというような自衛隊が有事の場合に任務遂行の上においての一般的な想定をいたしたにすぎない、かように考えておるのでございます。
  238. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「防衛庁以外の諸機関」の中に国会も入っているんですか。
  239. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 国会は最高の権威として存在をするのでございますので、これはもう大きな意味で含めてはもちろん最高は国会でございますから、各省、国会、それは入っておると私は解釈をいたしまするが。
  240. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、国会がどういうことを行なうであろうということを与件として三矢研究ではやったんですか、ひとつこれを詳細に説明してくれませんか。これは社会党とか自民党とかなんとかという政党だけの問題ではない。国会全体の問題ですから、ひとつ御説明願いたいと思います。
  241. 海原治

    政府委員(海原治君) 事実関係でございますので、私から御説明いたします。  先ほど来大臣からお答えしておりますように、この三矢研究というのは、有事の場合、すなわち日本がどこかほかの国と戦争をする、そういう場合を想定しておるわけであります。日本の国が外国から攻撃を受ける、そういう場合に、国としてどういうことが行なわれるだろうかということで考えておるわけでございますから、その時点にまずお考えをお置きいただきます。そういたしますと、法律上、自衛隊の部隊というものは、先生御存じのように、直接侵略、間接侵略に対処する任務を義務として与えられております。この自衛隊の部隊が出動いたしましてその任務を達成するためには、これはいろいろな条件が達成されることが必要であります。一例を申し上げますと、たとえば、平時におきましては航空管制というものは運輸省の手でやっておられます。しかし、有事の場合には、航空自衛隊の飛行機、米軍機、民間機含めて全部これは統制すべきでございます。これをどこでするかということになりますというと、先ほど来お話がございますように、政府の他の機関、すなわち運輸省との関連が出てまいります。あるいは海上を航行しておりますところの船舶、これの保護をどうするか、これは法律によりまして、有事の場合には海上保安庁を防衛庁長官が統制するようになっています。その統制の際にはどうするか、港湾の警備をどうするかということを考えてまいりますと、これは防衛庁だけでは何ともなりません。現実に空襲が予見されます場合には、当然灯火管制をせねばならない。しかし、灯火管制はどういう手続でやるかということは、まだこれはきまっておりません。そういうことをいろいろと考えてまいりますと、関係の立法が必要になってまいります。そこで自衛隊が出動しますためには、総理大臣の命令によって与えられました任務を遂行するためには、その自衛隊の部隊が動けるような状況ができておると、こう考えねばならぬわけでございます。そのためには、先ほど申しましたような法律が当然国会において整備されるであろう、こういうことを考えることもこれは当然かと思います。それが国会においてどうこうということの議論になるかと思いますが、およそ自衛隊の部隊が法律に定められました任務を遂行するために現在の法制ではまだふぐあいな点が多々ございます。そのふぐあいな点は、しかるべき手続によってしかるべき時期までに解決されるであろうということを前提にしなければ自衛隊の部隊は動けないわけでございます。そういうぐあいが是正されるであろうということを想定いたしますと、これは国会関係におきましては、関係の法令が整備されるということの想定になるわけであります。
  242. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのお答えは非常に大きな問題があると思って聞きますが、そうすると、いまの法制で自衛隊が何か出動するについてふぐあいがあるというのですか。具体的にどことどこがどういうふうにふぐあいがあるのですか、これを明らかにしてください。
  243. 海原治

    政府委員(海原治君) たびたび同じことを繰り返して恐縮でございますが、たとえば自衛隊の戦車が行動します場合に、これは橋をこわすことになります。橋をこわした場合には、その損害賠償をせんならぬ、その損害賠償するにはどうするか、あるいは部隊を展開して大砲のための陣地を設定するためには他人の土地を使用せねばならぬ。その使用者の同意が得られない場合には、一々収用委員会にかけてどうするということは、これは実際問題としてできません。そういう場合にはどうするかということは、これは先ほど申しましたように、日本の国がよその国から攻撃を受けて生きるか死ぬかの戦いをする場合でございます。現在の平時においてはまだそういう法制の整っておりません点がございます。それを先ほど加藤前事務次官もおっしゃったことと私は想像いたしますが、そういうふぐあいな点を行動のためにはやはり整備していただくということを自衛隊としては考えた次第でございます。
  244. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうするとあれですか、戒厳法というようなものが必要だと、こういうことになるのごすか。考えているのですか、そういうふうに。
  245. 海原治

    政府委員(海原治君) 私どもは、戒厳法というようなものが必要とは考えておりません。このことは先般の衆議院予算委員会でも問題になりました。しかし、かつての戒厳法の中に含まれておった事項の一部のようなものは場合によっては必要ではないか、こう考える者もあるかもしれません。その考えた者が、かつての戒厳的なことが必要であるということを言うために戒厳ということばを使う場合があるいはこれは想像されますが、しかし、その使い方は決して当を得たものとは思っておりません。
  246. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 かつての戒厳法、まあ戒厳令だね、かつては。戒厳令の中の一部が現在の自衛隊のいろいろな行動を起こすために必要と考えられるものもあるというのですが、具体的にどういうふうなものがあるのですか、これは防衛庁長官どうですか。どういうふうなものがあると考えておるか。
  247. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いろいろ演習の想定の中において、いろいろな場面が出てきて、いわゆる三矢図上研究の中にはあるのでございまするが、全般的な戒厳令というようなことについては、私が先ほど再三申し上げたとおり、防衛庁において戒厳令をつくってもらいたいとか、あるいはその必要があるとかというようなことは全然ございません。ただ、ただいま防衛局長が申しました戒厳令にあるような一部のことが要望をせられるということは、この三矢研究の想定の中にそういう一部のものが想定となってあらわれておったということを意味するのではないかと考えるのでございまして、私どもとしては、戒厳令をつくってもらいたいとか、また、戒厳令をつくらなければならないとかいうようなことは、今日考えておりません。
  248. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもはっきりしないのですがね。時間のあれもありますが、そうすると、国会が講ずるであろう施策というのは一体何なんですか。三矢研究で中身になっているのは何なんですか。資料に基づいて説明してください。
  249. 海原治

    政府委員(海原治君) 三矢研究でどういうものが予定されたかという趣旨の御質問と思いますが、そのためには再々同じことを繰り返して恐縮でございますが、まず三矢研究というものは、二十四の問題が出まして、その一々につきましてその問題を割り当てられたグループが答案を出した、それだけのものでございます。したがいまして、たとえば海原、私というものが書いたという答案がそのまま別に検討といいますか、推敲されたということになっておりません。したがいまして、ただいま問題になっておりますような非常事態の立法というところにつきましても、これは岡田議員が先般御配付になりましたあれを見ても、別紙Aと書いてございます。この別紙Aというものがそこに出てくる理由が実はわかりません。別紙Aというものがそこに入ってこなければならない理由は、前から読んでまいりましても、全然理論的についておりません。したがいまして、その別紙Aとしてそこに書いてあるものは、単に答案を書いた者の参考だったのか、あるいはその前に出ております一から七までのいろいろな統制機構的なものが書いてございますが、それのあるいは説明であったのか、この辺のところは私自身ずっと読んでまいりましたけれども、ときには答案を書いた者の説明の場合もございますし、たとえば経済統制につきましては、自分は門外漢であってよくわからぬ、だからこういう問題は専門家の検討に待つべきであるというようなことも書いてございます。そういう答案でございますので、その別紙Aに書いてございますところの非常時において立法を予定される法令というものの名前にいたしましても、どういう意味で出てきたのか、実ははっきりいたしません。したがいまして、責任をもって私からお答えするわけにいきませんのですが、ただ私が想像いたしますに、そういうような先ほど申しました事項をぜひ国会においていろいろと法令を整備していただきたいということの一つのメモ的なものでないか、こういうふうに実は判断しておるわけでございます。
  250. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いずれにしてもそれでは別紙Aの「戦時諸法案と補正予算案の国会提出と成立」というところは、説明してくださいよ、わからないから、聞いたって。一体これはだれが書いたのですか。二番目の質問、これはだれが書いたかという質問です。
  251. 海原治

    政府委員(海原治君) このことは再度同じことを繰り返して恐縮でございますが、そこに書いてございますように「法案成立の見とおし」ということで書いてあるわけでございます。「法案成立の見とおし」ということで……。
  252. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでもいいから内容を説明してくれというのです。
  253. 海原治

    政府委員(海原治君) ですから内容は私が申しましたように、どうしてそういうことばがそこに出てきているのかわからない点が多々ございます。したがいまして、それにつきまして当時の情勢を聞きましても、何しろこれは二年前のことでございます。二年前の一つの問題を与えられたときに、その問題に対する答解はこうであった、その場合の意味はどうだと聞きましても、これは普通人間の記憶としましては、そうはっきりしたことをこれは覚えておりません。先ほど申しましたように、これはそのつどそのつど問題が与えられまして、答案を出しますと、そのまま全部回収されておるわけでございます。したがいまして、先般も御説明いたしましたが、六月の二十二日に最終問題についての答案の提出を終わっております。そのあとは全部引きあげられております。したがいまして、当時参画した者に対して、どうしてこういうものが入ったのだろうかということを聞いてみましても、必ずしも内容ははっきりいたしません。ひとつこの辺の事情は、そのようにぜひ御了解願いたいと思います。
  254. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくの言うのは、ここに書いてある内容を「第一グループ法令」だとか、「第二グループ法令」だとか書いてあるでしょう。その内容が意味があるとかないとか、価値判断はどうとか、これはまた別個の問題なんですよ、これはみんなが判断するんだから。だけど現実にこの三矢研究の中で国会への提出と成立の関係についてどういうふうなことが書いてあるかということを聞いているのですよ。そうすると、あなたはいま確かめたけれどもよくわからないと言うんだけれども、一体このことはだれが書いてだれにこの事実を確かめたんだけれどもわからなかったのか、その点はっきりしなければだめじゃないですか、ただわからないと言ったって。だれが書いて、だれに確かめたけれどもはっきりしなかったのか。これをはっきりしなければ、こっちのほうだって進まないでしょう、国会に関連する大きな問題なんだから。
  255. 海原治

    政府委員(海原治君) 私の説明が不十分で御理解いただけないのはまことに申しわけないのですが、そこに書いてございます名前というものは、単に列挙してあるだけで、内容については何らの記述がございません。
  256. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書いてあるじゃないか、分けて。
  257. 海原治

    政府委員(海原治君) 分けて書いてあるのはただ名前が列挙してあるだけです。そこで先ほど申し上げましたように、その前には別紙Aということになっております。ところが、私が読んでみましても、別紙Aというものがそこに入ってこなくちゃならない理由は一つもないわけです。
  258. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうことを聞いているんじゃないですよ。この内容を説明してくれというのだよ。
  259. 海原治

    政府委員(海原治君) したがいまして、その内容が説明できないと、こういうことでございます。
  260. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなばかな話ないよ。別紙Aがどこから出てきたかわからないということとはそれはまた別の問題ですよ。ここに書いてあることは、どういうことが書いてあるのかということを聞いておるわけですよ。それを判断するのは、これは架空のことだとか、内容の根拠がないとか——これはみんなが判断すればいいことなんで、にはこれはどういうことが書いてあるのかということを聞いているわけですよ。それはあなたが言ったっていいでしょうが。私ども社会党に配られた、社会党でつくった資料ね、このとおり間違いないのかどうか。そういうことなんです。最終的にはね、それから、一体だれが書いたのか、これは一体。
  261. 海原治

    政府委員(海原治君) 私、実は気がつきませんでしたが、これは先般、当時岡田議員が御配付になりました資料というものについては、大体においてそういう内容のものであるということを私のほうの大臣から御説明しておりますので、私は違うところを二点ばかり当時申し上げました。それ以外にも実はございますけれども、大体においてこういうものでございます。したがって、いま御質問になっておりますところの戦時諸法案関係のことは……
  262. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 読んでくださいよ、これ全部。戦時諸法案関係、どういうふうに書いたのか、あなたのほうで読んでください。
  263. 海原治

    政府委員(海原治君) いや、これは先ほどから申しておりますように、大体そういうものが私どもの持っておりますものとほぼ同じであるということを申し上げることで御了解願いたいと思います。
  264. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だれが書いたのかということです。これ。
  265. 海原治

    政府委員(海原治君) だれが書いたかということにつきましては、これは部内の研究でございますので、私もまだ名前を承知いたしておりません。
  266. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなたの話を聞くと、この私どものほうでたとえば岡田さんが配ったこの内容については、第一グループ、第二グループに分けて、第一グループをイ、ロ、ハ、いろいろ分けてありますが、これは三矢研究のものと間違いないと、同じだと、こういうふうに承ってよろしいですか。
  267. 海原治

    政府委員(海原治君) 先般お答えしましたとおり、趣旨において大体そのとおりでございます。
  268. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この三矢研究をまとめて、そうしてそれをどういうふうにしたのですか、防衛庁としては。内容を検討したとかしないとか、あるいはそれをどういうふうにしたのですか。
  269. 海原治

    政府委員(海原治君) この三矢図上研究なるものは、再々大臣からも御説明しておりますように、先般私もここで御説明いたしましたように、有事の場合に自衛隊が行動する場合に一体どういうことになろうかということの勉強をしたわけであります。言うなれば、学校でいろいろゼミナールをして研究すると同じでございます。したがいまして、その研究すること自体に非常に意味があるわけでございます。その研究した結果は、そのときのいろいろ勉強した知識なり獲得した識能なりというものが、あとで常務のほうに反映してくるということは当然あり得ますけれども……
  270. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何に反映……。
  271. 海原治

    政府委員(海原治君) 常務−平常業務でございます。平常業務の上に反映してくる、幕僚の識能が向上する、これは当然に予期されることであるし、またそうでなければならぬことでございます。この三矢研究演習というのは、それだけのものでございます。  で、幕僚が集まりましていろいろ研究した結果は、その後、逐次当該問題についていろいろ計画立案されます場合には、当然にこれは取り入れられてくる、こういうものでございますから、三矢の研究が終わった、その結果が一から十までできた、その一から十までがすぐ年度の計画に採用された、こういうものではございません。
  272. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは公務だとさっき言われましたね。そうすると、防衛庁設置法のどこに基づいてこの研究が行なわれたのですか。
  273. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) お答えいたします。  防衛庁設置法の第二十六条におきましては、統合幕僚会議の所掌事務を規定しております。その中では、たとえば第一号に……
  274. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 たとえばじゃないよ。これはどれに基づいたのかということです。
  275. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 「統合防衛計画の作成及び幕僚監部の作成する防衛計画の調整に関すること。」、それから第二号には、「統合後方補給計画の作成及び幕僚監部の作成する後方補給計画の調整に関すること。」、それから第四号では、「出動時における自衛隊に対する指揮命令の基本及び統合調整に関すること。」というようなのがございます。その次には、統合部隊を非常時の場合設置した場合の統合部隊に関する指揮命令に関するような事項がございます。したがいまして、こうした統合幕僚会議の所掌事務があるわけでございますが、これを、防衛庁設置法二十八条によって事務局が設けられまして、この統合幕僚会議の事務をつかさどる、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、事務局に勤務する幕僚と、それから先ほど申しました各幕僚監部で、この出動時における指揮命令の基本なり、統合調整を受ける必要があるわけでございますが、関係の各幕僚監部の幕僚が、これらの統幕の機能というものを十分遂行するためには、平時からよく研究をして、そうしてその執務上十分な効果があがるようにする必要があるわけであります。そういう意味から、統合的な見地で、自衛隊の運用を中心として研究をし演練をした、そうして、かつこれらの幕僚の識能と申しますか、知識なり、能力というものの向上をはかったということでございます。
  276. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、それでは防衛庁設置法の二十六条の全部に基づいてこれが行なわれたのですか。あるいは一号ですか、統合防衛計画の樹立というか、そこに基づいてこれが行なわれたのか、どっちなんですか。
  277. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 先ほどお答えいたしましたように、これらの仕事全体が最も能率的に行なわれるという観点から行なわれたわけでございます。したがいまして、計画のことにつきましても、十分こういう図上研究によって研究をやっておきますれば、それによった知識あるいは能力というものを反映いたしまして、将来防衛計画をやる場合のその能力というものを高めるということは、これはできるわけでございます。また、出動時における自衛隊に対する指揮命令の基本及び統合調整に関連いたしましては、命令文の練習をもやっております。そういうことによって、非常時の場合に命令を円滑に出す、それからまた各幕僚監部との連絡の調整もうまくやって、命令を円滑に出し得る、そういう効果をねらったと、こういうことでございます。
  278. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 防衛庁長官にお尋ねしますが、そうすると、三矢研究というのは統合防衛計画と無関係ではないわけですね。
  279. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) もちろん、将来にわたって、あるいはその中の一部分でも、防衛計画の中に参考として取り入れられるというようなことになるかもしれませんし、また、あらゆるすべての演練、研究というものが、またそういうふうにならなければならないものだと考えておりますが、三矢図上研究なるものが、いままでは防衛計画の中に直接取り入れられたものではございませんが、将来また一部分は取り上げられるというようなことになることも予想されるのでありまして、全然無関係であるとも申し上げませんし、これが直接取り上げられておるということでもないのでございます。
  280. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの防衛庁長官の答弁はですね、非常に重要なものを含んでおると思うのです。私は時間がなくなりましたので、今後私どもの党の議員がその点はまたあらためて追及することになろうかと思います。  私は時間がありませんからあれですが、最後にもう一点だけ、最後に、アメリカ軍と共同して対処するために云々と、こういうふうに、こうあるわけですね。そうすると、アメリカ軍と共同をしてというのは、これはどうして必要なんですか。
  281. 海原治

    政府委員(海原治君) この点は、現在第二次防衛力整備計画の第三年目でございますが、この整備計画を御説明しましたときにも申し上げましたように、私どもは、三つの自衛隊というものは、やはり日米安保体制というものを背景に持っておりまして、現に特に在日米空軍の力というものは日本の防衛に非常に大きく貢献いたしております。したがいまして、わが国がかりにどこかから攻撃を受けるというときにおきましては、現状におきまして、このアメリカの陸海空の力というものを大いに期待するわけでございます。
  282. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、アメリカと共同するとなると、共同する場合は指揮官が私は必要になってくると思うのですが、その指揮官はどういうふうになっているのか。そして日米が共同していろいろ行動するのですから、前から日本とアメリカを一緒にしての演習計画なり、あるいは何なりがなければならないと思うのですが、そういうふうな点はどういうふうになっているのですか。
  283. 海原治

    政府委員(海原治君) 日本の三自衛隊と米軍とが共同いたします場合の指揮関係につきましては、まだ決定されておりません。このことは衆議院の段階におきましても当院におきましても、私、日米の共同作戦計画は存在しないということを申し上げております。その関係もございまして、そういうものについての検討あるいは決定はございません。ただし、この場合にいろいろと連絡をする必要がございますので、双方の幕僚の間では、いろいろと意思の疏通と申しますか、意見の交換は、これは行なっております。さらに日米の共同演習でございますが、これは毎年、たとえば海上自衛隊と向こうの駆逐艦、潜水艦あるいは航空自衛隊が向こうの飛行機の援助を借りて演習をやる、こういうことは毎年行なっております。
  284. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日米は同盟関係なので有事に備えて研究すると、こうあなたは言っていますね。具体的には日本の防衛庁とアメリカ軍との間でどういうような形でいつも研究をしているわけですか。あるいは研究をするについて、何か一つの協定みたいなようなものがなければならないと思うのですが、そこはどういうふうになっているのですか。演習をやるについても、演習をやるについて一つの取りきめがなければならない。ただ無計画でやるわけではない。その点はどういうふうになっているのですか。
  285. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほど御説明いたしましたように、防衛庁自体、毎年当該年度の防衛計画というものを持っております。これができましたあとでは、先ほど申しました私のほうの幕僚と在日米軍の幕僚といろいろ、もし万一のことが起こった場合には一体どういうことになるかという意味の研究、幕僚研究——スタッフ・スタディと申しておりますが、幕僚研究というものがいろいろな形において行なわれております。  次に、演習をするについては協定があるはずだとおっしゃいますが、現在までのところ、先生があらかじめ考えられておりますような、日本の部隊と向こうの部隊と全く同じような勢力で演習をするということは行っておりません。先ほど申しましたように、一応仮設的と申しますか、というような形で米軍の援助を受けております。そういう演習に際しての基本的な協定というものは現在存じておりません。
  286. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、登録番号「統幕三登第三十九甲二十八、一九六四年四月六日付」、こういうようなものはあるのですかないのですか。
  287. 海原治

    政府委員(海原治君) これは文書の番号でございますので、そういう番号の文書は、これはあると思います。私は確かめておりませんが、これもちょっと関係の知識さえあればわかるのでございまして、「三十九」というのは三十九年度、おそらく「登」というのは登録の「登」だと思います。あとはそれぞれの番号でございます。そういうものはあるかと思いますが、私はただいまはっきりとは記憶いたしておりません。
  288. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、私の質問は、時間がないからこれで終わりますが、次に私の同僚議員が質問しますから、それまでにあるかないか確かめておいてください。はっきり内容も確かめておいていただきたい。  時間が終わりましたので、もうさっきの質問に対する法制局長官の答弁をお願いしたいと思います。
  289. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私、別途御質問の要旨を伺いましたが、その点につきまして申し上げます。  まず、第一点は、現行法制上、国家機密と銘打って国防がそれ自体を保護しているものがあるかというような御趣旨だったかと思いますが、そういうものはございません。しかし、同時に、公務員について職務上の秘密の漏洩を禁止している立法がありますことは御承知のとおりだと思います。  それから、最後に問題になりますのは、職務上の秘密の保護と、それから捜査機関、調査機関の職務遂行との関係の調整につきましては、これは釈迦に説法みたいなものでございますが、その典型的なものとして民事訴訟法、刑事訴訟法、それから、また、先ほどお話が出たようでございますが、議院における証人の宣誓、証言に関する法律とか、そういうようなものにいろいろございます。まあたとえて言えば、民事訴訟法、刑事訴証法におきましては、国会議員を証人として尋問する場合も、職務上の秘密については院の許諾が要るというような関係もある。院の許諾がなければそれができないような規定があることも、これは御承知のとおりでございます。
  290. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最後の質問ですが、そうすると、国家機密だからですね。国政調査権の発動を正式にしてきた場合に、正式に拒否できるのかどうかということ、そうして国家機密ということをだれが一体判断するかということですよね、行政府がそれを判断していいかどうかということです。それだけお聞きしておきます。
  291. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) それは申すまでもなく、職務上の秘密というものは、国会が制定された法律の中に幾つもあるわけでございますが、その場合には、通常その職員がその職務上の秘密等につきまして証言をするとかいうような場合には当該監督庁の許可が要る。監督庁も——典型的には刑事訴訟法なり、議院における証人の宣誓、証言等の法律がございますが、その場合には、国家の利益に重大な影響がある場合には拒み得るというのがございますが、それで、御質問の要点は、さらに秘密の認定だと思います。秘密の認定につきましては、いま言ったような法律が当然予測しておりますのは、大体秘密というからには二つの要件が要ると思います。一つは秘密であるということ、これは存立要件と言ってもいいと思いますが、それから、それが漏れることによって公共の福祉、広い意味の公共の福祉に影響を及ぼすという、価値要件といいますか、そういう二つに分かれる思います。後段のほう——前のほうは、秘密であるかどうかというのは全く事実認定、あとのほうも認定ではむろんございますが、それは法が監督庁の許可とか、あるいは院の許諾とかいっているような場合から見て明らかでありますように、それぞれの者がその責任において認定する、こういうことでございます。
  292. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もう一点だけ。私の聞いているのは証人の問題ではなくて、たとえば国家が、政府が持っている正式文書がある。統合防衛計画というのは文書ですから、記録がある。その記録があるのを提出を求める、国政調査権で提出を求めるんですよ。ぼく個人じゃないんですよ。そうした場合に、向こうが秘密だといって拒否する、そうした場合に一体そういうことが許されるかどうかということ、国家機密はないと言うんだから許されるかどうか。それが秘密であるかどうかということは行政権の政府が判断するのか、国会自体が判断をするのかどうかということですよ。これは証人の法律とは違うんですよ、また。
  293. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私が申し上げました趣旨は、そういうことからおわかりいただけるかと思ったわけですが、もっと単刀直入に申し上げれば、この議院なり委員会なりから成規の要求があった場合、この場合につきましても、先ほど申し上げましたように、監督庁なり何なりがそいつを認定する、認定した場合に、秘密であるということであれば、これはいま言いました刑訴なり民訴なり、あるいは証人の宣誓、証言法なりの法理がそのまま働くことになることは、法律上は、法理論としては、これは当然なことじゃないかと思います。
  294. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなことはないよ。何のために国政調査権があるのかわからないじゃないですか。そんなばかな話はない。そんなことをしたら国会の調査権は全く意味がないよ。
  295. 鈴木強

    鈴木強君 関連。法制局長官ね、国会法第百四条に明確に規定されておりますように、国会が調査権の発動によって資料の要求をした場合に、これを出さなければならない、こう規定してあるわけですね。そこで、いまあなたの言われた刑事訴訟法なりの関連ですね、たとえば国家公務員がここにきて発言する場合も、これは非常に重大な問題である、自分で判断できない場合には、これは上司の許可を得なければならない、こういう規定だと思いますね。ですから、いま具体的に稲葉委員が質問しているのはそういうことなんですよ。だから正式に国会から、議決をされて、そうして要求があった場合、国家機密ということでもってこれが出せないということはないだろうと思います。それをはっきりしてくださいよ。
  296. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) まず最初に、国家機密について法律が定義づけて、そうしてさらにその機密の事態についてこの漏洩を禁じているというような立法はいまございません。しかし、同時に、官の機密、あるいは職務上の秘密というものを法律が考えていることも、これは明らかでございます。  そこで、同時に百四条のお尋ねでございましたが、百四条は、申すまでもなく、議院なり委員会なりがその意思によって要求したときに、その場合には、法律には「求めに応じなければならない。」こう書いてございます。書いてございますが、その場合に、むろん政府としては出せるものは出すべきであるということは当然でございますけれども、それが国家の利益に重大な影響を及ぼすとか、そういうたぐいのものであれば、これは出さないでもよろしい。よろしいというと無理に聞こえになるかもしれませんが、それは先ほど申した刑事訴訟法とか民事訴訟法とか、あるいは議院証言法とか、そういう法律が、そういう場合についても出さないでよろしいということに現行法上なっております。それと同じ法理はやはりその場合にも働くというのが、法律としてみればそう言わざるを得ないだろうと思います。
  297. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国家機密というのはだれが認定するのか。行政府が認定するのか国会が認定するのかということです。  最後にもう一点だけ伺って、これで終わります。あなたと押し問答してもはじまらんですから。あなたのような解釈に従えば、国会が正式に国政調査権の発動として要求しても、政府は、国家機密だ、重大な利害があるというようなことで何でも拒否できる、行政権の優位性ですよ。国権よりも行政権のほうが上になっているじゃないですか。だから、そういうような国家機密だとか、国家に重大な利益があるとか、そういうようなことは国会が判断をして、ないのだと考えて国政調査権の発動をした場合には、当然国が出さなければならない義務がある、こういうふうになるのじゃないですか。そうでなければ国会が最高機関だということがなくなっちゃうじゃないですか。時間がないからこれだけにしておきます。端的に答えてください。
  298. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは先ほどの証言法よく御承知でございましょうが、これが国会等で要求がありましたときに、証人として出る、あるいは記録を提出する、そういう場合に秘密であればやはり許可が要る。許可が要る場合には、許可をされて機密を提出できないという場合には、御承知のとおり、さらに国会はその理由の疎明を求めることができる、その理由を疎明して、それでいいということであればいいわけですが、なおそれに不満であるということであれば内閣声明を発することを求めることができる。内閣声明を発すれば、実はそれで事が終わりということに現行法のたてまえはなっております。そうして、その内容はどういう場合であるかといえば、国家の利益に重大な影響があるというような場合であれば、これは内閣が認定するわけでありますが、その場合には出さないでもいい、そういうふうに証言法等におきましては罰則をもって臨んでおるような、これはたいへんな規定でございますが、その規定の中にそういうたてまえになっております。その法理は、百四条等において——今度の場合は百四条がまだ出ている場合ではないのではないかと思いますが、百四条の場合についても同じような考えが法理としては当てはまる、こういうわけであります。
  299. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 納得できないけれども、時間がないからあれします。
  300. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 稲葉君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  301. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員の変更がございました。大竹平八郎君、源田実君が辞仕され、佐野廣君、古池信三君が選任されました。  午後一時三十分再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  302. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。木村禧八郎君。
  303. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 物価問題は、国民生活にとって差し迫った最も重大な問題として、今国会始まって以来、衆参両院を通じていろいろな角度からしばしば取り上げられてまいりましたが、政府は、いまだに国民に対し何ら納得のいく答弁をしていない。そればかりでなく、政府の答弁と実際に政府が行なっている物価政策とは矛盾をしていると思うのであります。物価を安定させるといいながら、政府みずから消費者米価やあるいは医療費を引き上げているわけです。こうして国会で物価問題を論議している間にも、物価は安定どころか、一そう上がろうとしているわけです。そこで、きょうは物価問題の一点に焦点をしぼって、政府の物価問題に対する基本的な考え方、基本的な物価政策についてみっちり質問をしてみたいと思うわけであります。  第一の質問は、物価問題の理論的側面についての質問であります。この質問に入る前に、大蔵大臣に伺っておきたいのですが、去る三月六日の当委員会におきまして、所得税の課税最低限の基本となるこの標準生計費の中で、成年男子一人二千五百カロリーで百六十七円四十八銭ですか、低過ぎるじゃないかという質問に対して、自衛隊は三千三百六十カロリーで百六十五円の単価でやっていると、こういうことでありました。その政府の食料費の計算と自衛隊の計算というのが、そんなに差ができるのはどういうわけか。この違いをはっきり、これは原価計算に基づいてひとつ示していただきたいのです。
  304. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘にございました献立は、課税最低限をきめるときに毎年きめておるものの一つでございます。今年度も成年男子が一日に必要とする二千五百カロリーに匹敵する献立を、国立栄養研究所に依頼をしてつくったものが、あの献立表でございます。  それから自衛隊の成年男子の一日の食料費につきましては、予算単価として計上をいたしておるものでございます。百六十三円かと思います。
  305. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 百六十五円と答弁をしておりますますよ。
  306. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは間違いだと思います。百六十三円だと思いますが、いずれにしても数字の問題に対しては、政府委員から答弁いたします。
  307. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) これは、私からお答えするのが適当かどうか存じませんが、防衛庁の隊員の食料費として予算に計上されておりますのは、一日三千三百六十カロリーを摂取することを前提といたしまして、単価一日当たり百六十三円になっております。
  308. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その違いを聞いておるのですよ、どうしてそういう違いができるのか。
  309. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 予算のほうの金額は、主計局のほうでやっておられますのでよく存じませんが、私どものほうはマーケットバスケット方式による食料費のほうは、先ほど大臣が御答弁を申し上げましたように、また例年やっておりますから木村委員のすでに御承知のとおりでございますが、国立栄養研究所に献立表をつくっていただきまして、その献立で昨年、三十九年一月から十二月までの物価でそれぞれの食品をマーケットバスケット方式で購入する場合、単価がどれだけになるかということを計算いたしまして、それに基づいて計算いたしますと、それは春夏秋冬それぞれ献立の内容が若干ずつ違っておりますから、単価が百六十五円くらいになるときもありますれば、あるいは百八十円くらいになるときもございます。それらを平均いたしましたものが、年間を通じますと成年男子の場合百六十七円四十八銭ということでございまして、抽象的には百六十七円四十八銭のものはございません。それより若干上下があるわけでございます。平均いたしますと、そうなるというのでございます。用いた献立表は、お手元へ差し上げているとおりでございます。それぞれに単価を乗じたものでございます。
  310. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問に答えてないですよ。委員長注意してください。防衛庁との比較を聞いているのに、ちっとも比較を答弁していない。
  311. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 私からお答え申し上げます。  ちょっと十分御質問の趣旨をあらかじめ伺っておらなかったものですから、特に比較したベースでいま用意いたしておりません。もちろん、たてまえが必ずしも同じじゃございませんが、防衛庁の食料費につきましては、一定の防衛庁としてのメニュー、献立がございます。その献立表に対しまして、それぞれの原価等で計算をいたしております。これは長い経過がございまして、その後、米の値段が上がりますとか、あるいは物価指数等によって手直しをやりまして、ただいまの百六十三円という単価が出てきております。  なお、詳細が必要でございましたらば、後刻、至急用意したいと思います。
  312. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、この問題にあまり深く立ち入っていると、あとの質問に差しつかえるのですが、私がこの質問をしたのは、佐藤総理大臣が、この大蔵省の最低課税の基礎になった食料費ですね、成年男子一人二千五百カロリーで百六十七円、防衛庁は三千三百六十カロリーで百六十三円ですかでやっているのだから、これでうまくできているというのですよ。だから大蔵省の最低課税限の基礎になった食料費は、これで十分やっていけるじゃないか、こういう答弁をしているのです。これは資料として比較で出してください。防衛庁の場合は、家賃も払っていないでしょう、電気、ガス、水道、そういったもの、あるいは人件費も入っていないでしょう。あるいはよそから材料を買うときの輸送費も入っていないと思いますよ。ところがマーケットバスケットで買う場合は、市場から買うのですから、電気、ガス、税金も皆入っているのですよ、それを出してください。非現実的なこんな比較をして、そうしてやっていけるなんということ、そういう答弁をするから、私はどうしてもここで一応比較して明らかにしてもらいたい。これもあとで資料として、防衛庁の単価はどういう原価計算でできているのか、それと大蔵省のを比較して資料として出してください。
  313. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 資料は後刻提出いたします。  なお、念のため申し上げますと、防衛庁の百六十三円と申しますのは、電気、水道、燃料を除いたものでございます。
  314. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 家賃は、税金は……。
  315. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) この四つだけです。それを合わせますと百六十六円八十五銭になっております。なお、おそらく大量購入の場合とか、いろいろな問題がそれぞれあると思いますから、別に資料でお出しします。
  316. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうことは言わないで、簡単に。ああいう、大蔵大臣が、自衛隊ですらできるじゃないか、そんな国民をまるでだますような答弁をするのじゃないですよ。さて、物価問題の理論的側面についての質問でありますが、これまで理論的質問が少ないようでございました。そこで物価対策は、総合的かつ大胆にして強力な措置を必要といたしますので、対策の基本となる理論が確立され、統一されていなければならないと思います。政府の物価問題に関するこれまでの国会の答弁が非常にあいまいであり、場当たり的であり、矛盾だらけである。その一番根本の原因は、物価対策に対する理論が欠けているからだと思います。そこで、私は、これまでインフレ問題、物価問題についていささか長い間研究しておりますので、そういうものの一つとして、この際、政府の物価政策の理論的側面について質問いたしたいと思います。  まず、政府は、物価政策について、どういう理論的な問題意識を持って取り組んでおりますか、企画庁長官にまずお伺いします。
  317. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 木村先生は長年物価の問題を研究しておられるその道の権威であることは、私も承知いたしております。  御承知のとおり、物価が何ゆえにこのように上昇するかという問題については、一面はいわゆるディマンド・プルと申しますか、国民の総需要に対して総供給のバランスがとれていないという面が、一つの原因をなしていると思います。いま一つは、やはりコストの面からコスト・プッシュと申しますか、その双方の原因から物価の上昇というものが出てきている、かように私どもは見ておる次第でございます。
  318. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はどうお考えですか。
  319. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 同じことです。物価に対しましては消費君物価と卸売物価がございまして、卸売物価は現在横ばいの状態でございますが、これは戦後の近代化等がございますから、普通の理論からいえばもっと下がっていくべきでございますが、賃金の急激な上昇等がありまして、現在の状態では横ばいを続けておるということでございます。消費者物価につきましては、ただいま企画庁長官が述べましたが、ただ消費者物価の指数だけの検討ではなく、国民生活の内容そのものにも相当質的に変化がありますので、新しい国民生活の様式によって消費者物価がどういう趨勢にあるかという見通しをつけて、消費者物価対策というものを考えていかなければならないというふうに考えております。戦前と戦争直後、現在、将来と比較をいたしますときに、ただ数字的に単純に比較をせらるべきものではなく、その時点における生活様式、生活の様態等の変化によっても、物価の状態はそういう立場でも厳密に検討していくべきものだと考えております。
  320. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 厚生大臣、どうお考えですか。
  321. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま経企庁長官、大蔵大臣が述べられたとおりに考えております。
  322. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公取委員長はどういうふうにお考えですか。
  323. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 御承知のように公正取引委員会としましては、独占禁止法の施行ということにその権限を持っているわけでございまして、したがいまして、その点を中心にしまして物価問題につきまして終始注目をしておりますが、政府の物価政策はいかがあるべきかという点につきましては、私が発言することはいささかその仕事が違いますので、申し上げることを差し控えたいと思います。
  324. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままでのそれぞれの答弁でわかりますように、いまの日本の物価問題に対する理論的な問題意識が非常に欠けていると思うのですよ。いまの御答弁の程度のきわめて貧弱な問題把握ですよ。で、私が各大臣に伺ったのは、この物価対策は総合的な強力な大胆な措置が必要なんですから、各閣僚みんな一つの統一した意思がなければならないのです。その基礎になるのは理論的把握ですよ。これが欠けているからなんだ。いまの単なる需給関係論、コスト・プッシュなんという、そんな単純なものではない。もう一度経企庁長官に伺いますが、いままで政府が物価対策をやりながら物価はどうしてもどんどん上がっているでしょう。だから物価が上がるのは今後不可避なのかどうか、どうしてもやむを得ないのかどうか、そういうように把握しているのかどうか。
  325. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 今日まで、特に昭和三十五年を境にして昭和三十六、七、八と三カ年度間、毎年六%台の消費者物価の上昇を示したわけでございます。しかも、その以前におきましても相当な高度成長でございましたけれども、その間においては消費者物価の上昇がほとんど〇・九%程度しか上がっておらない。それで一体その原因がどこにあるかという問題について、私どもいろいろと研究を進めておるのでございます。それで、その問題は、これはいろいろ学者によっても議論がございます。また決定的にこれだという結論を出すことは非常にむずかしい問題ではございます。が、しかし、一つにはいわゆる成長があまり急過ぎたという点、これがつまり国民総需要を非常に大きくした。したがってコストが上がった場合に、そのコストが直ちに価格に転嫁できるような体制をつくるということも一つの原因であったと思います。もちろん半面において、高度成長が今日の開放経済体制に入っても、なおかつ、日本が外国にどんどん輸出を伸ばしていけるという状況をつくったという長所もあるわけでございますが、そういうような点があったことは、これまた見のがすことのできないことであろうかと思います。しかし同時に、コストも相当上がってきておる。コストの中心になっているものは賃金でございますが、賃金が相当に急速に上昇しているという面も、これは看過すべからざる事実であろうと思います。同時に、この賃金の問題に対しましては、いわゆる大企業と中小企業、または農林漁業、その間に相当大きな開きがございます。  御承知のとおり、ここ数年間賃金、所得の平準化が急速に行なわれてまいっております。そこで、それらの数字——年度でございますけれども、少し数字のことを申し上げたいと思いますが、私どものほうで調査いたしました製造業についての問題でございます。製造業、しかも確実な資料で得られるところの、三十人以上の製造業だけでございますが、これを昭和三十年から三十九年まで暦年でとっております。それで、これを三十五年を一〇〇といたしました場合に、現金給与総額、これをひとつ一番確実な資料として労働省の「毎月勤労統計」、これをとってみたわけでございます。指数で申し上げますと、昭和三十五年を一〇〇といたしました際に、昭和三十年は七四・五、昭和三十九年は一四九・三と、こういうことに相なっておるのでございます。同時に今度は、労働生産性の問題も労働生産性本部で調査したデータでございます。ここでもまた同様に、三十人以上の製造業だけをとって調査いたしているのでございますが、これが三十五年を一〇〇といたしました際に、三十年におきましては六四・五、それから三十九年は、これは十二月の数字がまだとれておりませんので、多少の差はあるかと存じますが、一四一・七ということに相なっております。それでおわかり願えますように、三十年から三十五年の間に現金給与のほうは二五・五%上がったわけでございます。ところが、この間に労働生産性のほうは三五・五%上がっておるわけでございます。ところが、その三十五年を一〇〇といたしました際の三十九年の実績をとってみますと、三十九年におきましては四九・三の賃金の上昇に対して生産性の上昇は一四一・七、こういうことに相なっておるわけでございます。  しこうして、私ども付加価値をどういうふうに労働と利潤と、それから価格の面は要するに消費者に対する分配でございますが、そういうふうな方面にどういうふうに分配するのが妥当か、分配されておるかという問題も同時に検討を要する問題だと思いますが、こういうふうに物価をそのままな状態に置くと仮定いたしました際におきましては、賃金と生産性がバランスがとれれば、それで価格は同じでも、その企業は従来と同じ利潤を続けていくことができると、こういうことになろうかと思いますが、その際に考えなければならぬことは、外国の企業と日本の企業とは体質が相当変わっております。御承知のとおり自己資本比率というものが、外国の場合には六〇幾つまたは七〇というふうな状況になっております。日本の場合には今日二二とか三。したがって借り入れ資本によるところの部分が非常に多い。それはどういうことを意味するかと申しますと、労働生産性の上昇というものは、これは労働強化という形によって今日行なわれるものではございません。今日はどうしても設備の合理化、近代化、要するに労働節約的な設備改善によって労働生産性の向上が行なわれている、こう見るのが常識的であろうと存じます。しこうして、その労働節約的投資が自己資本によって行なわれている場合におきまして、または会社の留保された所得から行なわれた場合におきましては、これは当然に利潤に返っていくのでありましょうが、これが銀行からの借り入れという面から来ておるとするならば、これは当然にこれに対するところの利子と償却というものは支払わなきゃいかぬ、言いかえれば、その部分だけは労働生産性の上昇分からこれを差っ引いて、そうして差っ引いた労働生産性の上昇分と賃金とがバランスがとれた場合に、はじめてその製造業においては価格を上昇させなくても利潤は従来の程度を保ち得る、こういうふうに考うべきであると、かように考えておるのでございます。これは最も生産性の上昇のやりやすい製造業の三十人以上をとった場合の数字でございます。それが三十五年を境として、初めのほうのそれよりさかのぼっての五年間というものは生産性のほうが、ただいま申しました借り入れ金に対するところの資本費を除くという計算をかりにいたしました場合におきましても、生産性の上昇が一〇%高くなった、後半期においてはそれが一〇%低かったということが、これが消費者物価に大きく影響したものと私ども——程度の問題はいろいろあるでありましょうが、これが一つの原因であったということは、これは否定すべからざる事実であろうかと存じます。  なお、いま一つ申し上げたいと存じますのは、これはいわば中小企業も含んでおりますけれども、最も生産性の上昇のやりやすいところの製造業についての問題でございます。そこで、生産性の上昇が非常にむずかしいところの中小企業等において一体その実態がどうなっておるかということを、先般の中小企業白書において政府から発表になっております。その数字もついでに申し上げておきたいと存じます。これは先般発表になった数字ですでに御研究になっていると存じますが、この特殊分類によるところの消費者物価指数というものを、ずっと私どものほうで検討してみたわけでございます。要するに総合物価指数としては昨年、暦年一年間において三・八%の上昇に相なっております。そのうち中小企業が、どの程度これについてウエートを持っているかという調査をしてみたのでございます。まず第一に、加工食料品、これが上昇寄与率のうち二八・九%を占めております。その加工食料品のうち大企業性製品と中小企業性製品、これを分けて考えますと、中小企業性製品の寄与率が、二八・九%のうち実に二六・九%を占めているのであります。しこうして、その次には、その他の工業製品を調べてみますると、中小企業性の製品がその他の工業製品におきまして九・九を占めております。さらにまた、対個人サービスの面において、中小企業の部分でございますが、これが三六・五%を占めている。それで、それらを合計いたしますと、結局中小企業によるところの物価に対する寄与率というものは、一〇〇に対して実に七三・三というものを占めている。この中小企業性の製造工業またはサービス業等におきましては、ここにおきましては生産性の上昇というものは、どうしてもおくれがちでございます。中小企業白書等におきましても、生産性の格差というものを、はっきりと数字をもって出しているわけでございます。なかなかその生産性の格差が縮小してまいっておらぬということが実態でございます。これがやはりコストの上昇という面を通じて、消費者物価に相当影響いたしておると、かように私どもは判断いたしているのでございます。  なおまた、経済の成長を安定的な基調に持っていくということのために、総需要が漸次落ちてまいっているのが最近の実態でございます。したがって、私どもはよく中小企業の倒産等につきまして、構造的な要因が相当あるのじゃなかろうかということを言っているのは、その意味でございまして、要するにそういうふうにコストはどんどん上がりますけれども、そのコストを価格に転稼して消費者物価を押し上げるというだけの、つまり総需要の伸びがないというところから、結局、人件費等の増加が、そういうふうな倒産に追い込まれるところの一つの要因になっていると、かように見ているわけでございます。  なおまた、農林漁業等について申し上げますれば、たとえばお米の値段、これにつきましては、よく御存じのとおり、生産費及び所得補償方式という方式を今日用いているのでございまして、この生産費及び所得補償方式というのは、言うまでもなく都会の給料所得者の賃金、これと米をつくった場合におけるところの、必要な労働時間におけるところの時間当たりの収入というものをバランスさせようということが、根本のものの考え方です。したがって、農業等においての生産性の上昇が十分に見込めないというときにおきましては、どうしてもそこに生産者米価というものは引き上げざるを得ない。しかも食管制度を維持するためには、消費者物価もある程度の上昇はやむを得ぬということになる、そこに私どもは消費者物価の上昇の原因がある、かように判断をいたしているのであります。したがって、中期経済計画において申し上げておりますことは、まず第一に、経済の成長を安定的な基調に持っていく、そうして総需要、総供給の関係でもって、価格上昇が安易に行なわれるという環境をまずなくするというのが一つ。いま一つは、一番の大きな原因であるところの中小企業、農林漁業等におけるところの、生産性の格差の存在いたします部面に対するところの生産性の上昇に対して、あらゆる力を尽くしていく。もちろんその他流通部面の問題、労働の流動性の問題、その他今春物価対策として決定いたしましたような各般の施策を必要とするのでございますが、そういう点に重点を置いて物価対策を実行していきたい、そうしてしかも、それが私ども政府が意図したほどに急速にはまいらないことは、これは認めざるを得ないのでございまして、そのために昭和四十年度におきましても四・五というふうな——どもとしては、何とかもう少し低い目標を持って、そうしてそれを実現するということができないかという非常な苦労をいたしましたけれども、四・五というような率を掲げざるを得なかったという実情である、さように存じておる次第でございます。
  326. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私だいぶいろいろ説明を聞きましたが、企画庁長官の、日本の物価問題に対する考え方ですね。これは非常に重大な認識の間違いがあるのじゃないかと思うのです。それで、もちろん、あなた言われるように、この物価が上がる場合に、デマンド・プルの問題とコストインフレ、これが二つの大きな原因であるのですよ。いまの長官のお考えは、このコストインフレに非常に重点を置いているのです。あなたは先ほどいろいろ資料をあげましたが、この統計のとりようによって、いろいろ違うのですよ。労働省の、昭和三十年を一〇〇とする指数によると、労働生産性と実質賃金との比較——労働生産性のほうが昭和三十七年までずっと上回っておるのですよ。ある一時期だけをとらえて、ちょっとこの実質賃金が労働生産性を上回ると、すぐこれをコストインフレということは誤りですよ、そういう認識は。特にあなたは資本の寄与率のことを問題にしましたが、生産性から資本の寄与率を引いて、そうして、それを付加価値の分配の場合ですね、基準にするというのは、これは間違いですよ。資本がだんだん多くなれば、寄与率はこれは減っていくのはあたりまえです。その根本に、あなた、理論的に間違いがあります。よく庁内であなた研究されてごらんなさいよ。これはおかしいですよ、そういう理論は。あなたのは独特ですよ。そんな間違っているのはない。  それで問題なのは、私はもう少し順々に聞いてまいるつもりでおったのですが、ちょうどあなたはいまコストインフレ論言われましたし、それから、あなた就任早々ね、所得政策ということ言われたですね。日本の物価の値上がりには、賃金、コストインフレの要素が非常に強い、所得政策をやる必要があるということを言われたのです。で、あなたの言われる所得政策というのは一体何であるか。それを具体的に示していただきたい。で、ほんとにやる意思があるのか。
  327. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 木村先生一番よくそういう点御勉強になっておられるので、釈迦に説法の感があるかと存じますが、先般の大戦争の終息しました後、まずオランダにおいて、または英国において、所得政策ということが提唱されて、最近はOECD等の会合におきましては、所得政策というのは、何かこう一つの通りことばのようなかっこうになっておる次第でございます。しこうして、英国におきましても、新しいウィルソン労働党内閣はこの問題とまず取っ組みまして、そうして政府と労使というものが三者一体となって、この所得政策を何とか成功させよう、そのことによって英国を立て直そうという非常な強い熱意のもとに、御承知のとおり、十二月の十六日に三者の共同の声明が発表された次第でございます。  それで、その所得政策というのは、もちろん、所得——英語で申しまするとインカムズ・ポリシーでございまして、単純な賃金政策ではございません。インカムズ・ポリシー、つまり、賃金、利潤、それからその他の所得、そういうものを、すべて所得と称するものを全部、つまり、でき上がったところの付加価値をどういうふうに分配すれば安定的な経済がもたらされるか、そうしてしかも、経済の成長を最高度に求められるかという面から、所得政策というものが大体各国で提唱されておる、私どもはそう見ておるわけでございます。したがって、英国で、この共同声明によりましても、生産性の上昇を阻害するところの要因については、三者が協力して、あらゆる努力を傾注して、その生産性の上昇を阻害する原因を除去するのだ、そういうことを非常に強く表明をいたしております。同時に、賃金について、または利潤について、それぞれの項目においてそれが適正な程度に落ちつくようにという、お互い話し合いを続けておる。そうして具体的な方策を融通しようという非常に強いところの声明が出されたような次第でございます。  私は就任早々この問題を自分なりに検討いたしました。日本においてもやはり国民経済全体としての生面性の上昇の範囲において、国民の賃金も所得も利潤もバランスをとれて、それにふさわしい程度の上昇であれば、物価の騰貴というものは、これは安定さしていくことができるはずだ、そういう意味で、そういうような方面についての検討をすることは、これは当然に政府としても必要である、こういうふうに私は考えたわけでございます。  もちろん、この問題は、政府も労使もともに前向きで、それがそういう方向が正しいのだという考え方でもって、それぞれ御協力をいただかなければ、全部が協力していくという考え方でなければ、だれかの犠牲においてこの所得政策を使うというようなけちな考えであれば、これは絶対に成功のしょうがございません。そういう意味で、私、少なくともOECDの諸国、つまり、先進諸国においては、この問題が非常に大きな問題として取り上げられ、これこそは経済の成長を最高度に求めながら、しかも、物価その他安定した成長を得られるという一番のかぎであるという、大体各国の見解になっておるようでございますので、そういう方向に日本におきましても、少なくとも国民の各位がそういうことをよくおわかり願い、要するに、社会連帯性と申しますか、経済倫理性と申しますか、そういうふうな面から私は世論を喚起し、皆さんにそういうふうな事柄について御勉強願う、同時に、政府もその問題について検討していく、こういう姿勢をとるべきである、かように考えた次第でございます。
  328. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまイギリスの所得政策を参考にして、日本でもそういう問題を研究し、国民にいろいろ協力を求めてやっていきたいというお話なんですよ。ところが、この所得政策がそれを行なう前に問題があるわけですよ。その基本的な問題をはっきりさせないで、単にイギリスがやったから日本でも必要があるなんというような、そんな単純なものじゃないと思う。  まず第一は、この所得政策は、労働不足経済になって賃金インフレが発生している場合に、所得政策が問題になるということですよ。第二は、イギリス、ヨーロッパの経済と日本の経済とは非常に違うわけですね。雇用形態が違うんです。大体全就業者のうち、欧米では七割から八割が雇用者なんです。日本の場合、大体五割が雇用者です。したがって、わが国では、賃金と同時に、自営業者の所得をどうするかということが大きな問題になるわけです。そこに大きな違いがあるのですよ。ですから、単純にイギリスが所得政策をやったから、日本でも必要だろう、そんなね、それから国民に協力を求めるというようなものじゃないのです。  そこで、第一の、日本に賃金インフレが起こっているか起こっていないかが問題なんですよ。これを十分にあなたは検討しないで、あなたさっきお話しのように、都合のいい数字を持ってきて、そうしてコストインフレだと。しかもまた、資本の寄与率をあれから差っ引いて、そうして付加価値の分配の場合考えてみると、その根本において非常に疑問があります。もう少し研究される必要があると思うのですが、いかがですか、基本的ないまの二点について。
  329. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 日本の経済の構成が外国と違っておると、先進諸国と非常に違っておるという点は、御承知のとおりだと存じます。したがって、先ほども申しましたとおり、先進諸国においては、自己資本の比率が七〇%程度日本の場合には逆に二一、二%というように、非常に低い比率になっている。したがって、この高度成長というものが、結局、借り入れ資本によって行なわれるという、銀行からの借り入れ資本によって行なわれるというこの事実は、お認め願えると思うのであります。しこうして、この借り入れ資本以外の自己資本によって、たとえば企業におけるところの償却その他の留保によって行なわれる、または増資によって行なわれる分については、それがたとえ労働節約的な投資であろうと何であろうと、これは当然に利潤に分配さるべきものだと考えてしかるべきでありますけれども、現実に銀行から借りた金について、合理化投資をいたしました場合、その金利や償却というものを見ないでは、結局、同じ利潤率を保つということはとうてい不可能でございます。したがって、もしもそれを利潤に加えて考えれば、その分だけは当然に収益性の、つまり、企業としての収益性の低下という姿になって必ずあらわれてくる。したがって、収益性の低下をもたらさず、しかも、物価を上げないということを前提として考えれば、当然にこれは差っ引いて考えるのが当然であろうか、かように考えます。  しこうして、いま一つ前段の御質問でございまするが、OECD諸国、EECの諸国と日本とは経済発展の段階が違うじゃないかという御質問でございますが、この点は御指摘のとおり、相当に段階が違っていると存じます。日本では、なるほど、労働過剰経済から今日だんだん先進国型の労働不足経済に移行してまいっておると存じます。ことに若年労務者については、端的にそれがあらわれてきておる、かように見ておりますが、しかしながら、これが完全雇用の状態かと申しますと、なるほど、失業率というものは一%以下であって、たとえばアメリカの五%近く、またはイギリスの二%と比べまして、日本のは、失業率というものは低くはなっておりますけれども自分の能力を十分に発揮できないような職場におる人の数も非常に多数あるということは、私どもこれは事実として認むべきであると、かように存じます。そういうような観点からものを考えますならば、日本ではまだまだ、つまり、OECD諸国のようなパターンになる経済でなしに、まだまだ潜在的なつまり成長能力を持ったところの、バイタル・ソースを持ったところの体質を持った日本の経済である、かように私どもは考えておる次第でございます。その点は、先ほど木村さんの御指摘になったお考えと完全に同じだと存じますが、しかしながら、とにかく、少なくとも初任給については、これはもう完全に中小企業と大企業との間にほとんど差がないという状況になってきておることは、これは事実としてお認めくださると存じますし、また、中小企業と大企業におけるところの賃金の格差が年々どんどんと縮小してまいっておるという事実もまたお認めくださると存じます。また、先般、中期経済計画において発表いたしました数字、これがそのとおりの形で移行するといたしますれば、現在、勤労者の占める割合が五六%でございますが、それが六二・何%かになるという形を想定いたしておるわけでございます。言いかえれば、先進諸国のパターンに非常な急速度でもってどんどん追いついてきているという状況であると私どもは判断いたしておるのでございます。さような観点から、今日からこういう所得政策的な問題についても政府も検討をし、そして各方面にもそういうような問題についての考え方を御理解願い、そして漸次そういうふうな空気が醸成されていく、そうして政府も労使も一体となって、お互いにその経済倫理性と申しますか、社会連帯感と申しますか、そういうふうな考え方のもとに、安定した基盤の上に平和な最高度の成長を求め得るところの経済を建設していくということは、これは当然の理想でなければならぬかと、かように考えておる次第でございます。
  330. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 要するに、長官の所得政策というのは、炭塵性の向上の範囲内に賃金を押えるということなんでしょう。それが基本なんでしょう。
  331. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先ほどもお答えしましたように、インカムズ・ポリシーでございまして、賃金だけではございません。賃金も利潤もその他も、要するに、所得と称するものは総体として国民経済全体の成長、生産性の上昇の範囲にとどまっておれば物価は安定すると、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  332. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、賃金とそれから自営業者の所得と利潤をどうやって押えます。
  333. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 私どもの現在やっておることは、自由主義経済でございますから、統制的にこれをどうするということに主眼があるわけではございません。したがって、それであればこそ、そういう問題について各方面の、特に木村先生のような先覚者の方が、よくそういう問題についておわかりを願って、そうして国民全般がそういうことについて理解を持つようになれば、とそういうふうな空気ができ、円満にその目的を達成できるような事態をもたらしたい、かような考え方から申し上げておる次第でございます。
  334. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちっとも答弁になっておらないのですがね。私は逆の意味で所得政策が必要だと思うのです。  企画庁長官、伺いますが、いま欧米と日本の付加価値の分配率はどうなっていますか。付加価値の分配率は日本に非常に低いままでここで賃金を押えたら、いつまでたったって、日本の付加価値分配率はヨーロッパ並みにならないですよ。これはどうなっておりますか。
  335. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 現在、労働に対する付加価値の分配率がわりあいに少ないことは、これは御承知のとおりでございます。その理由は、一つは、日本の金利水準が非常に高い。それから、むしろ、よく外国からも指摘されておりますように、設備投資指導型の成長経済型ということになっているということ、そういう型でありますために、今日の現状においてはそういう姿になっておると、かように解釈いたしておる次第でございます。
  336. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはこまかく論争すると時間なくなりますけれども、金利が高いたって、これはよく調査されてごらん。金利水準が高いのじゃないんですよ。借り入れ金が多過ぎるのです。支払いの利息が多過ぎるのであって、水準の問題とはまた別ですよ。これはひとつ検討される必要があると思うのです。  それからもう一つ、賃金格差の問題があるんですね。賃金格差、いま生産性の範囲内に押えたら、格差ちっとも縮まらないじゃありませんか。その点どうしますか。
  337. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 金利水準が高いのじゃなしに、借り入れ金が多いのだというお話でございますが、これはもう木村先生百も御承知であろうと思いますが、自己資本の場合には、自己資本に対するところの実質上の資本費というものは借り入れ金よりもずっと大きくなっていることは事実でございます。かりに一割の配当をすれば、その一割の配当に対して相当な税金がかかります。積み立て金も必要といたします。その他の経費も付随してまいります。大体一割の配当をしようとすれば、二割二、三分の利益率を必要とするということは、これはもう常識でございます。したがって、それだけの自己資本に対する資本費がかかる、したがって、借り入れ金の比率が多いから資本費が多いのだというお考えには、私は御同意申し上げかねます。むしろ、借り入れ金が多いということが、日本の資本費のこれ以上大きくなることをむしろ押えているのじゃないかというふうにすら私は解釈いたしておる次第でございます。
  338. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が別の意味での所得政策が必要だと言うのは、付加価値の分配率が、日本は非常に労働者の分配率が低い。資本の取り分が多いわけです。それで設備投資をどんどんやるから、諸外国より成長率は大きいわけですよ。それで設備過剰になっているでしょう。消費と生産がアンバランスになってきているのですよ。だから、この点は逆に、ヨーロッパ並みに分配率を上げていかなければいけないと思う、付加価値の分配率を。そういうところに所得政策をやってきたら、いつまでたったって直らないじゃありませんか。この点は根本的に考え直さなければいけませんし、自営業者の所得を押えられますか。あなた、自由経済だから押えられないと言ったでしょう。押えられるのは、結局、公務員の賃金とか、また労働者の賃金ですよ。そういうことになってしまうわけです。ですから、軽々に所得政策をあなた、イギリスがやったからよさそうに見え——まあ十分研究されたかもしれませんけれども、思いつきかどうかしりませんけれども、これをもっと根本的に考えないで日本にやったら、これは問題です。その前に一番基本になるのは、日本で賃金インフレ、コストインフレが一体起こっているかどうか、つまり、いまの物価値上がりの根本の原因に関する問題です。  それで質問いたしますが、池田内閣のもとでは、一応物価問題で理論があったのですよ、これは曲がりなりにも。たとえば下村理論、池田さんもそれに基づいて答弁しました。成長率の大体三分の一程度は、これはたとえばサービス産業が三分の一あるので、賃金上がっていくので、どうしても不可避である、この点はやむを得ない、こういう理論を持っておりました。第二、池田さんは、卸売り物価さえ安定していれば、消費者物価が上がっても日本経済は心配ない、こういう理論を持っておりました。第三に、物価値上がりよりも所得の増加率のほうが大きいのであるから、消費者物価が上がっても、国民生活を圧迫しておらない、こういう考えをずっと持っておったわけです。ところが、いまの政府につきましては、こういうやはり池田内閣のもとでの物価に対する基本的な考え方を持っているのかどうか、それから成長率と物価との関係をどういうふうに考えているか、この点について伺いたい。
  339. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 私もずっと自由民主党の党員でございまして、その点いつも関係をいたしておりますので、よく承知をいたしておりますが、しかし、成長率の三分の一物価が上がるのだという理論は、これはどうも実証的にこれを裏づけることは困難じゃないかというふうに私どもは今日判断をいたしております。したがって、むしろ諸外国のいろんな先進諸国における物価上昇の割合等、また過去の実績等を勘案いたしまして、やはり物価というものは幾ら高くても三%以内に押えるという程度にすれば、国民生活に対するところの圧迫もわりあいに少ない、また国民自体が全体として安定した感じでもって生活を楽しんでいけるというふうな面から、いろいろな面から考えまして、中期経済計画をきめます際に、目標としてどういうパーセンテージをとるべきかということについてはずいぶん苦慮をいたしました次第でございますが、可能であり、しかもどうしても達成しなければならぬ目標として二・五%という目標を打ち立てたような次第でございます。  それから、先ほどの御質問にお答えするわけでございますが、御承知のとおり、最近において大企業と中小企業の賃金の格差はどんどん狭まってまいって、実績は御承知のとおりでございます。しこうして、中期経済計画においてもその傾向はどんどん進んでいくものだと、かように考えておるわけでございます。それで、そういう面でもって賃金全体の水準は相当に上がるでありましょうけれども、あまりに高いところの、つまり先頭をなすところのものが出てまいりますると、物価の安定というものは非常に困難だ。よく所得政策もどこの国でも申されておりますし、最近でも学者の間でもよく言われておるのでございますが、要するに、生産性の上昇の非常に成績のいい企業にあっては、単に賃金と利潤に分けるばかりじゃなしに、これは全部消費者にも均てんするという意味で価格の引き下げに回してもらいたい、そうでなければ物価全体の安定は期待できぬのだ、こういうことを言っておるのでございます。現実にまた過去の実績をとってみましても、日本では卸売り物価がまず安定している。食料品その他のものにつきましては相当な値上がりを示しておるのでございますが、いわゆる製造工業製品につきましては相当な値下がりを示している。その結果として、卸売り物価が安定をしてまいっている。消費者物価につきましてもその関係は同様でございまして、そういうような方向にぜひ行ってもらいたいということが私どもの一つの念願でございます。  それからいまひとつ何でございましたか。
  340. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 物価が上がってもそれ以上に所得がふえているから生活を圧迫していない……。
  341. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) その点は、過去の実績を私ども調べてみておるのでございますが、それも昭和三十五年に所得倍増計画をきめたものでございますから、その前と後とを比較をしておるわけでございますが、その前においては賃金の実質の増加率が年率にして四・四八、その後の平均が四・四五ということになっておる大体その程度の、つまり、実質の賃金の伸びが、物価上昇分をデフレートして計算した場合に、そういうふうな実績に相なっておるのでございますが、御承知のとおり、中期経済計画におきましては、年率の名目の上昇率を、二・五というつまり消費者物価の上昇率にとどめるためには、名目において七・六という賃金の上昇率が妥当であるという計算が出ておるわけでございます。しかしながら、七・六という数字は名目としては非常に低い数字でございますが、実質から申しますと四・四よりも相当高いところの五・一%というふうに相なっておるのでございます。そういうことで、私どもはただ実質的に賃金がふえればいいのだという考え方じゃなしに、やはり物価自体を安定させるためにも、冒頭に申しましたように、総需要、総供給の関係から申しまして、つまりコストが上がった場合にそれがすぐ価格に転嫁できるような経済の姿に置いておくということが物価を上げるところの非常に大きな原因になっておると、かような観点から、経済の成長を安定的な基調にもっていこうという趣旨はそこにあるのでございまして、ただ実質の賃金が少しでも上がればいいのだという考え方はとっておらない次第でございます。
  342. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この賃金と物価の問題については、これは重大な問題なんでして、そう簡単に長官が何かコストインフレ——あなた大体コストインフレ的な考えなんですよ。ハンセンがアメリカの経済について過去の実績から賃金と物価の問題についてずっと実証的に調べていますよ。そう簡単なものじゃないです。日本の場合も、賃金と物価と生産性の問題をあなたのほうで調査しているはずですよ。賃金が上がった第一の原因は生産性が上がったということ、第二は労働の需給関係が変わってきたのですよ。労働不足になる、前よりは。その二つにあって、むしろ物価に対しては賃金がおくれておるのですよ。これはもっと実証的にあなた研究される必要がある。簡単にすぐコストインフレ、賃金インフレ言いますけれども、もちろん賃金と物価とは関係ないとは言いませんけれども、だからここに根本的な日本の物価問題に対する認識がわれわれと非常に違うのです。これは重大な問題なんです。これはまた対策にも関連してくるのですよ。それであなたは、自民党員だから大体いままでの池田内閣のときの考え方と変わらぬと言ったでしょう。大体成長率の三%ぐらいの騰貴はやむを得ないと、こう考えておるのですね、やっぱり。そうすると、あなたは、政府が物価安定政策をやっておりますけれども、物価をいまぐらいの水準に押えようとしておるのか、三%程度上がるのはしようがないと考えておるのか、あるいはまた下げようと考えておるのか、どっちなんですか、具体的なメルクマールというものをどこへ置いておるのですか、それをはっきりしてもらいたい。
  343. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 何度もお答え申し上げておりますとおり、中期経済計画については、年率二・五%に押えたい、それを努力目標としてあらゆる経済運営の政策をこれに集中して経済の運営をやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  344. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 成長率八・一を大体三%にすると、それに近いのですよ。そうでしょう。大体近い。しかし、四・五%はどうです。四十年度。これは三%じゃないじゃないですか。
  345. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) この点についても何回も御答弁申し上げましたが、三十九年度は、実はこの中期経済計画の答申を受けました後閣議決定をしましたのが今年に入ってからの問題でございまして……。
  346. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十年については……。
  347. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 四十年については、三十九年の影響がどうしてもある程度残ります。そういうふうな関係上、現実にいろいろと積算をし、いろいろと政策を積み上げて考えてみました結果として、どうしても四・五程度には押えることが可能であり、また押えなければならぬということで、四・正という見通しを立てた次第でございます。
  348. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この全く不可能なことを、あなたできるがごとく言うのですけれども、一応三十九年度は除きましょう。除いて、四十年度四・五%として、平均二・五%残りの年度でやるとしますと、大体一・九%にしなければならぬでしょう。それができるかできないか。八・一%の成長率を前提として一・九%に押えられるかどうか。
  349. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 物価は経済諸元の動きによってその総決算として出てくる問題でございますから、これは統制経済ではございませんから、そのとおりできるかということになると、これはなかなかむずかしい問題でございますが、中期経済計画で示しておるような経済運営の方針をとっていくか、または成長の度合いが安定的な基調に乗り、また賃金の上昇率もその程度にとどまる、または政府の施策についても健全均衡財政がそのまま継続される、こういう四十三の要素を組み合わせた計画でございますが、そういうような経済諸元が中期経済計画に示しているような形でいけば、私はこれは可能である、かように考えております。また、そういうような方向に政府はあらゆる努力を傾倒すべきであると、かように信じている次第であります。
  350. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 中期経済計画をそのとおりにやればできないのですよ。中期経済計画は、高度経済成長政策と同じパターンの性格を持っております。たとえば、国民総生産のうち個人消費支出は昭和二十八年六一・四を四十三年には五〇・七%に下げていくのです。最初の案では四九%まで下げる案であったのですよ。そうして、民間の設備投資のほうは、昭和二十八年が一一・三であるのを、四十三年には一九・九、大体二〇%まで上げていくのですよ。高度経済成長政策が行き詰まったのは、この設備投資優先型、これが行き過ぎたのです。個人消費比率を、ですから、ほんとうは高くして、設備投資比率をむしろゆるくしていくのが、これが安定成長型でなければならないのに、高度経済成長政策のパターンと同じですよ、これではやはり。それで八・一%成長率をやるのでしょう。そして資金計画も何もないのです。ものすごい資金が要るのですよ。そして、シェアの拡大競争をできるような自由経済にしておいて、そうして物価が安定するなんていうのは、これは国民をごまかすものですよ。だから、はっきりと物価は安定できないのだ。中期経済型をやれば、どうしてもある程度上がらざるを得ない。上がらざるを得ない場合には、それに対してどういう手を打つか、こういう形なら納得できるのです。ところが、この中期経済型は高度成長政策と同じですよ。高度経済成長政策の段階に入ってから消費者物価は断層的に上がったのでしょう。昭和三十年から三十六年まで一〇%くらい成長率を遂げてどうして物価が上がらなかったか、三十六年からどうして断層的に上がったのですか、その原因は一体どこすでか。
  351. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 所得倍増計画とそれから実績がいかに乖離しておったかという事実も、またひとつよくごらん願いたいと思います。したがって、過去の設備投資の年平均率は約二〇%近い一九・九%でございます。それを今度の中期経済計画においては、その半分であるところの九・九という比率にいたしたのであります。しこうして、個人消費の伸びにつきましては、過去十年の実績が七・二%、それに対して七・三%、わずかではございますが、むしろ個人消費の伸びを多く見ておる。したがって、過去の実績と今度の中期経済計画とをしさいに御検討くだされば、それが本質的に違っているものだということは、木村先生ほどの方がそれがおわかりにならぬということは、ちょっとふしぎな気がいたします。
  352. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、佐藤内閣で人間尊重の政治をやるというので、その一つの社会開発を言い出して、ただ違っているのは、個人住宅投資が二十八年一・八%が四十三年五・六%に比率がふえた、これだけですよ。あとのパターンは同じです。高度経済成長政策と同じ性格のこういうパターンの中期計画でどうして物価が安定できますか。あなたは、じゃ、二・五%で安定できると思うのですね。自由経済ではあなたはできないというのでしょう。しかし、あなたが目標を掲げた以上は、それに努力していかなければならない。そこで、物価安定、安定と——政府みずから消費者物価を上げて、米価を上げて、医療費を上げて、そしてどうして安定できますか。ですから、ほんとうに安定できるのか、そこのところをひとつ。  それから、根本の原因は高度経済成長の行き過ぎにあったということはお認めでしょうね。
  353. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先ほど申しましたとおり、どうしても経済の成長を安定的な基調に持っていくということが、いわばコストが上がりました場合にもコストをすぐ価格に転嫁するという可能性をなくするという意味におきまして必要だということを、中期経済計画において指摘いたしておる次第でございます。  しこうして、特にその中期経済計画でごらん願いたいのは、成長の比率におきましても、過去十カ年の成長率は実質において約一〇%、過去三カ年は約一一%になっているわけでありますが、それを八・一というふうに、これは相当大幅な安定的な基調に持っていった数字であろうかと思います。特に昭和四十年度におきましては、これを七・五%というさらに低めたところの目標にいたしたゆえんも、また何とかして経済全体の基調を安定的な方向に持っていきたいという政策意欲をあらわしたものと、こう御了承願いたいと思います。  しこうして、何度も申し上げますけれども、設備投資が、年率二割に近いところの設備投資がどんどんふえてまいる。それを一割以内におさめるということ、これはまた相当大きな本質的な違いであろうかと、かように考えておる次第でございます。
  354. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この物価値上がりの根本原因を明らかにするために、次に伺いますが、卸売り物価と消費者物価との関連について伺います。これはどうお考えになるか。先ほどから、卸売り物価が安定しているからいい、また佐藤首相もこの前、卸売り物価が安定しているから心配ないような、池田内閣と同じようなことを言いました。  そこで、公取委員長に伺います。卸売り物価は、カルテル、独占価格、あるいは管理価格と非常に関係があるのです。いまの物価問題について、先ほどあなたは十分にお答えにならなかった。卸売り物価の問題をあなたはどう考えるか。
  355. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 先ほど来お話のありますように、生産性向上の著しい企業においての商品は、片方で賃金も上がる、また利潤もふえるでしょうが、同時にそのかなりの部面がやはり価格値下がりという方向でもって動いていくべきじゃないか、コストが下がるのですから。そういう意味におきまして、やはりそういう面の品物はそういうふうに動くのが自然の動きじゃないか。ただ、日銀の卸売り物価指数にあらわれている商品の品目を見てみますと、そうした大企業の品物もあれば、あるいは中小企業の品物もある。中小企業の場合には、生産性の向上に比べて、あるいは賃金のほうの上昇が高く、これはいわゆる格差是正とも結びつくと思いますが、そういうような関係でコストが上がり、値段が上がる。そういうものもあり、それらがかれこれからみ合いながら、現在の卸売り物価の指数——いわゆる横ばいといったような指数ができてくるのではないかというふうに一応感ぜられますが、ただ、われわれのほうの仕事との関連におきましては、特に生産性が相当上がっていると見られる商品でありながら、しかも価格が下がらない、あるいは場合によっては上がっているというような商品があるとすれば、その裏に、特にわれわれのほうの関心としては、いわゆる地下カルテル的なものがありはしないか。そういうところを中心としましてわれわれとしては調査を進めているというわけでございます。  で、過般の、昨年の暮れの委員会だと思いますが、木村委員の御質問にお答えしまして、昭和三十年から三十七年までの日銀の物価指数について調べたものが、これはほんとうの調査の手がかりですが、百六品目がほとんど動いてない。しかし、その後三十九年までの品物について調べてみますと、下落したものがあり、それから上がったものもある。下落したものが三十七品目、上がったものが二十三品目、それから横ばいが二十九品目、その後の数字を調べてみますと、五品目が——これはあまり好ましい方向ではありませんが、二十九品目の中から、上がるほうへ動いております。ただ、日銀の卸売り物価指数にとるいろいろな価格の数字は、そのときも申し上げたと思いますが、わりあいに、一つのやり方をきめておりますために、われわれのほうから見ますと、いろいろな市況調査から見まして当然下がっていると思われる品物、たとえばナイロンの繊維、テトロンの繊維なんというものが、われわれの耳に入っているところでは、ある程度やはり最近は過剰生産で下がっているように思いますが、これなどが日銀の卸売り物価指数の上では横ばいの中に入っている。で、一応、これは物価指数として一つの約束の上につくられたものでしょうから、こうしたものは、一応こうしたものとしてわれわれは認めますが、同時に、われわれのほうとしては、もう少し立ち入ったものとして、いろいろ物価の動き、物価というより価格の動き、これを見てまいりまして、特にわれわれのほうとしましては、いわゆる地下カルテル的なものがそこにありはせぬかどうかという問題に重点を置いて調べております。最近、この間、私のほうで問題にしまして取り上げたものでは、たとえば旭硝子ほか二十八社が苛性ソーダ、それから塩素につきまして、これは値上げのための価格協定というものをいたしました事実が表に出ました。昨年の暮れです。したがいまして私どもとしては、そうした協定はすぐに破棄するようにという勧告をいたしまして、関係会社もこれを受諾いたしまして、先日、それの勧告審決という、裁判でいえば判決ですがいたしましたが、こういったような事態は、われわれのほうといたしまして、絶えず注意しまして、特にそうした大きな企業におけるそうした地下カルテル的なものについては、今後とも厳重に取り締まっていく、こういうつもりでおります。
  356. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、これは日本のいまの物価問題、高度成長のもとでの物価問題の一番基本的な問題だと思うのですよ。前に、一万田日銀総裁のころですね、卸売り物価が下がらないということが問題なんだと、それで高度経済成長政策によりまして、産業の基幹部門、つまり大企業の支配するいろいろな部門へ、成長政策の結果、技術なり、資金なり、労働力が重点的に投資されたわけですね。そういう部門からの生産費が、非常に豊富になって、低廉になっていなければならぬはずなんですよ。そのための高度成長政策でしょう。それにもかかわらず、こうした部門の製品の価格がどうも、それは多く卸売り物価でございますが、下がらない。下がらないどころか、いまお話しのように上がっているものもある。だから、これは成長政策によるいわゆる経済構造の変化が、独占的な要因の成長をその中に含んでいる。こういう結果だと思うのですよ。つまり諸部門の諸価格の下方硬直性を非常に著しく強めた。これがやはり問題だと思うのです。そうして大資本一辺倒の成長政策は、農林漁業あるいは中小零細企業、あるいは対個人サービス業などの部門が放置されるようになって、当然期待されていい原材料費や、あるいは動力、燃料、輸送費などの価格が一向に下がらないために、採算性を総体的に悪くさして、その結果、こうした部門への新規投資や労働力の流入を一そう困難ならしめて、経営基盤の安定や発展が著しく阻害された。こうした事態がこういう部門での供給の弾力性を著しく失わして、家計収支の対象となる多くの消費財やサービス価格を普通以上に押し上げる原因となっている。これが私は日本の消費者物価騰貴の根本の原因じゃないかと思うのですよ。したがって、卸売り物価が安定して下がらないというところに問題がある。これは公取でもっと私は十分にこの点を調査しまして、そこのところに手を打たなければ、高度成長でうんと金をかけ、技術あるいは労働者をうんと導入しておいて生産性が上がっているのに価格を下げない。これではこういう態勢のもとでは、中期経済計画をどんどんやっても、下がりっこないじゃありませんか。この点をどういうふうにされていくか、企画庁長官、どういうふうにされますか。それは賃金インフレじゃありませんよ。
  357. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、日本では管理価格ということをよく申されますけれども、公取も相当活発に活動しておられます。通産省その他関係各省が目を光らしておる実態でございますので、管理価格というふうな実態がそれほどたくさん、つまり全体の物価に影響する程度に存在しているとは、私どもは判断をいたしておりません。むしろ最近はたとえば特殊鋼業界、その他よく社会党の皆さんも御指摘になりますように、生産過剰ぎみになっている。そのために表向きの価格よりも実際の価格が相当下がってきているというのが、最近の実態ではなかろうかとかように見ておる次第でございます。もちろん、理論としては、先ほども申しましたとおりに、生産性の上昇の著しい部門の企業におきましては、何とかして単にこれを賃金と利潤に分けるのじゃなしに、価格の引き下げにぜひ振り向けてもらいたい。そういうことによって物価を安定させながら国際競争力を増していくことができるだろう、かように私どもは考えて、その方向にあらゆる努力を傾注していきたい、かように考えている次第でございます。
  358. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。その大企業の生産性の上がった部分について、一部を消費者に還元する意味で価格を引き下げる、そういうことにあらゆる努力を払っておいでになると言っているが、どういう努力を払っておいでになるか。一昨年の六月の当予算委員会でわれわれが質問したあと、翌日福田通産大臣が談話を発表して、そうして大企業が生産性に見合って、生産性の上がった部分についてはできる限りコストを下げるという談話を発表していますよ。それはとにかくとして、具体的にどういう努力を払っておられるか。それからそういうことを単に希望するだけでなしに、現実の上に、単に公取が値上がりを抑制するというようなことでなしに、下げることについての行政、これはもう自由経済ですから、強制的なコントロールできませんが、しかし何らかのもっと具体的な指導が、希望だけでなしに、具体的な指導があっていいはずだ。
  359. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいま羽生さんのお話しのとおり、自由経済でございますから、それを政府の権限でもって何するということはできません。しかしながら、そういう状態として目につくものは、これは公取でもってずいぶんと活発に動いておられます。また自由化をいたしまして、どんどん外国の物資も輸入できるような状況になっており、またそういうふうな面につきましては、政府も努力をいたしている次第でございまして、何とかまあそういうふうな方向で物価の安定に注意していきたい、こういうふうな姿勢でいる次第でございます。
  360. 羽生三七

    ○羽生三七君 具体的なことを言ってください。どういう努力をやっているか。
  361. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 私のほうで関係しておりますことにつきましては、先ほどもすでに申し上げた問題だと思っております。いわゆるカルテルとか、そうしたようなことによって、あるいは結局まあ硬直的な価格の問題において一番問題になりますのは、値段を下げてそうして需要を喚起するかわりに、値段を据え置いて、そのかわり生産なり出荷を調整するといったようなことがよく行なわれます。あるいは今度は安売り競争してもらっちゃ困るという名前のもとに、値段を下げることについてお互いが一定の金額でこれを保持しようじゃないか、まあこういったようなことがよく行なわれます。したがってわれわれとしましては、そういった意味における生産数量の制限、あるいは出荷の制限、あるいは価格の制限といった意味におけるカルテル行為、こういったものについて絶えず監視しておりまして、そうした事実が証拠ずけられれば、どしどしこれを摘発して処置していく、こういうことをやっておりまして、一つの例として先ほど申し上げたような事案も最近大きな会社の関連したものとしてある、こういうことでございます。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  362. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは自由経済一点張りでそういうことできないと言いますけれどもね、それじゃ公取にわれわれおまかせしていくわけにいかない。そこでこれは企画庁長官に伺っていいかどうかわからないが、国会内にその常任委員会を設置して、そうして証人の喚問とか、公聴会の開催を絶えず行なって、それで原価とか、経理、価格決定事情を審査してその結果、及び委員会の見解、勧告を広く社会に公表する、こういう考え方いかがですか。
  363. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) これは国会自体がお考えになることでございまして、政府としてとやかく言うべき筋合いの問題ではないと思いますが、しかしながら、物価の問題は、政府も国会も国民も全体がこれは関心を持って、そして監視もしながらこれが安定に協力していただくということが必要であると、かように考えておる次第でございます。
  364. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは自民党の政府にとっては、トラのひげをいじるようなもので、やはり独占価格の規制はできないでしょう。そうやってやはり政府にたくさん献金をされておるんですから、そういうことはやろうと思ったってできないでしょう。  そこで、次に私は伺います。この物価値上がりの問題、一つの原因としまして通貨と物価との関係についてあまり問題にしておりませんが、これはどういうふうに把握しておりますか。
  365. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 通貨の量は、これは実際上のつまり国民経済におけるところのいわば運転資金と申しますか、経済の規模が大きくなれば、それに応じて必要な程度のものはどうしても出さざるを得ぬと、かように存じておるわけでございます。もちろん、これがあまりに急激に増発されるということになれば、それが物価に影響なしとは言い得ないと思いますが、最近の数字をずうっとながめて見ておりますると、大体一三%ないし一四%程度の増発の程度でございまして、この程度は経済の成長その他いろんな流通部面の問題等を検討してみまして、大体健全な状態じゃなかろうかと、かように判断をいたしておる次第でございます。なお、これは大蔵大臣の所管でございますから、大蔵大臣からも答弁があると思います。
  366. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ大蔵大臣に伺います。いまの通貨には過剰がない、必要なだけ出ていると言いますね。そこで伺いますが、日本銀行券は、これは銀行券であるのか、あるいは不換紙幣であるのか。
  367. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 銀行券です。
  368. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 銀行券の特徴はどういうところにありますか。
  369. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 私から答えるのはちょっと角違いですが、質問の御趣旨を取り違えているかもしれませんが、いま伺いましたのは、銀行券か不換紙幣か、これはもちろん銀行券でございます。日本銀行が発行するところの銀行券でございますが、御質問の趣旨がちょっとよくわからないのですが。
  370. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま不換紙幣じゃないと言われたでしょう。どこが不換紙幣と銀行券と違うのか。どういうところで……。
  371. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) これはいろいろございましょうが、いわゆる一般に不換紙幣と申しますのは、政府紙幣で交換不能という場合に不換紙幣と申しております。それから、実質的に不換紙幣と同様の銀行券発行状態であるかどうかという問題は、これはインフレ論になりますから、これは別の問題だと思います。
  372. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府紙幣は兌換できないと、それじゃ不換銀行券と政府紙幣とどう違うんです。
  373. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 不換銀行券というのはちょっと私も……。
  374. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 免換できない……。
  375. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) いや、兌換できないということは、銀行券のもともとの性格としては考えられないことです。兌換を前提としておるところのものです。
  376. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金にだよ。いま管理通貨じゃないですか。
  377. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 金の話ですか。
  378. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、何に兌換なんです。兌換、兌換と言っているけれども
  379. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 一定の発行準備を持っているという意味においていま管理通貨の体制になっております。終局的に絶対いけないというのではないわけであります。いま金兌換を停止しているということでありまして、そのことから直ちに不換政府紙幣ということになろうとは、私は考えておらないのです。ここは私も専門ではございませんから、また議論があろうかと思います。
  380. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ明確な答弁は得られませんですね。だから私は日本の物価問題を考える場合に、やはり統一的な理論的なあれがどうしても必要なのです。政府に。銀行券の特徴は何かと聞いたのは、銀行券は還流するということが特徴なのですよ。銀行券の発行は貸し付けですから還流を特徴とする。還流するということは、英語のリフレックスで、フラートンの通貨調節論によく書いてあります。お読みになってごらんなさい、これが特徴なのですよ。手形の一種なんだから。そこであなたは過剰がないと言われたでしょう。これは一つの説明のように見える。ところが日銀の貸し出しはどうですか、一兆数千億ずっと貸し出しを続けているじゃありませんか、ちっとも還流しないじゃありませんか。ですから、ここに信用インフレが起こっている、こういうふうに考えるべきじゃないか、この点はいかがですか、どうして還流しないのですか、大蔵大臣から……
  381. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨年の十一、二月から非常に還流というものはよくなっております。いま四十年度に対しましては、大体一五・一%くらいの増発を考えておりますが、国民経済の発展の度合いから考えて、大体この程度で正常だと、こういう見方であります。
  382. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一兆円以上も日銀の貸し出し残高が残っているということは、これは銀行券としては、還流ということは貸し付けですから、当然これは戻るのがあたりまえでしょう。だから銀行券の機能を失っているじゃありませんか。だから政府紙幣に似たいわゆる政府紙幣じゃないから、信用インフレというわけですよ。信用インフレ、これがやはり日銀からシェアの拡大競争をやる。で、各銀行の系列にどんどん貸し出ししたんでしょう。このことが高度経済成長のいわゆる成長金融として、これを行き過ぎをさした一つの大きな原因なのですよ。管理通貨制度のもとでは非常にルーズになるんですよ。それで株価対策だといって千五百億円だ、二千億円だと貸し出ししているが、こういうものはインフレ・マネーですよ。こういうルーズになっておる点に、やはり一つのいま日本の物価が安定しない大きな原因があるのではないか。ですから、今後やはり通貨政策についても、単なる需給関係とか、賃金インフレとか、単純に経済企画庁長官は考えておるけれども、もっと総合的につかまなければだめなんですよ。この点について、大蔵大臣、いかがですか。
  383. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、大体一四、五%程度の日銀券の増発ということは、金融の調節をはかるためにも必要であるという考え方であります。いままで三十五年以後の状態を見ますと、国民総生産の伸びは約倍であるというときには、企業間信用の膨張は約三倍になっております。これは過当な売り込み競争というようなものが原因をしておるわけでありますが、金融の正常化をはかる意味からも、企業間信用の膨張というものに対しては十分押えていかなければならないということであります。しかし、昨年の十月、十一月、十二月から、一月、二月を見ますと、日銀券の還流は非常に順調でございますし、貨し出しというような事態も非常に鎮静化しておりますので、正常化の方向に向かいつつある、こういう評価をしております。
  384. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでの質問で、政府の答弁は非常に不明確ですし、理論的な把握もちょっともできていないのですが、しかし、大体この消費者物価の値上がりの原因が明らかになってきた。それは、企画庁長官がよく言われる自由企業の原則、自由経済のもとで、そうして投資優先型の経済をやる。そこでシェアの拡大競争が起こる。そうして系列銀行がどんどん融資し、日銀が、管理通貨制度のもとだからどんどんこの資金を貨し出す。そこに信用インフレが起こり、しかも、独占価格が形成されて、そうして投資をされてコストが下がっているのに卸し売り物価の硬直性を示しておる。こういうところにあるのであって、単純に賃金が上がったから物価が上がった、そんな単純なものではないということは非常に明らかになったと思う。そこで、実際問題として、今後物価は私は上がらないで、ずっと横ばいで安定するかどうか、この点を企画庁長官に伺います。
  385. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいまの木村さんのお説には私ども賛成はいたしかねますが、御質問の物価がこの状態でずっと安定するかどうかという問題につきましては、しばしばお答えいたしておりますとおり、今年度は四・八ということにならざるを得ない実情でございますが、昭和四十年度については、四・五につとめる、しこうして、その後において中期経済計画の見通しておりますところの二・五という率に、何とあってもひとつこれに安定させていきたい、かような考えを持っておる次第でございます。
  386. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことを言っても、過去の実績を見ますと、昭和三十六年が一・一%の見通しが六・二%に上がって、三十七年は二・八%の見通しが六・七%に上がっておる。三十八年は二・八%の見通しが六・六%、三十九年は四・二%を四・八%に訂正したでしょう。過去の実績から見て上がらざるを得ないですよ。そこで、私は、どうしても今後政府はいかに物価安定安定といっても、消費者米価、医療費が上がり、水道料金が上がってくる、だから、今後物価は上がらざるを得ないということを前提にして、そうしていろいろな政策を講じなければ、これは、私は、非常に国民を困らすばかりではないか。だから、実際問題として上がらざるを得ない。そこで、どういう対策を講ずるか。  それで、私は時間が少なくなりましたから、まず重点的に伺います。  愛知文部大臣に伺います。御茶の水女子大の助教授伊藤秋子さんという人が、昨年六月二十八日、日本人口学会でこういう報告をしております。いまの勤労者の所得をもとにして、そうして家族全部が十分な栄養をとろうとするならば、二人子供がある家庭の場合は、大体五〇%——四九%くらい食費に当てなければならない、三人子供がある家庭で六〇%、五人子供がある家庭の場合は、八三%も食費に当てなければならないが、実際当てていない。だんだん調査したら、教育費のための支出が非常に多いんだ、だから教育費の支出のために食を節している、食べ盛りの子供に十分食べさせてやれないという実態がわかったというんですよ。したがって、私は、この点について愛知文部大臣に、私立大学の融資につきましても資料をいただきましたが、市中銀行から非常に高い金利で借りているんです。前に、造船汚職の問題、佐藤さんが幹事長のとき問題が起こりましたが、外航船舶に非常な補助をしているんです。しかも、過去のものにさかのぼって補助しているんです。営利会社でない私立学校の施設に対しては、今後だけではなく、過去の負債についても、何らかの政府資金を投入すると、そして商利債と肩がわりをする。そういう点と、もう一つは、教育費が非常に上がっておりますので、教育費控除というものがどうしても私は必要だと思うんですよ。この二点について、ひとつ誠意ある御答弁を願いたい。
  387. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いまの調査の問題につきましては、私もその当時これを読んだことがございます。それから、先般この委員会でもちょっと申し上げましたが、私も非常な関心を持って調べておるのでありますけれども、一方から見ますと、たとえば昭和三十二年ごろから三十七年ごろ、五年間ぐらいをとってみますと、教育費の父兄負担といいますか、の増高は相当なものでありますけれども、その間の所得の増大よりはかなり内輪になっている、こういう見方もまたできるわけでございます。しかし、それはそれといたしまして、その私学の過去の債務償還費、これに関連して利子補給をしたらどうかというお尋ねでございますが、これも一つの考え方だと思うのであります。しかし、まあ申し上げるまでもないところでありますが、従来は、私学の経営ということについては、それぞれ自主的にやっております。いろいろ学校の特色もございますから、一がいに、過去の債務についての利子補給ということを一律的に考える二ともできないのではなかろうか。まあ対策といたしましては、ざっくばらんに申し上げますれば、過去は過去といたしまして、今後の措置としてどういうふうに考えていくかということを重点として考えていきたい。過去における債務償還あるいは利子補給ということについては、私もいまのところ全然考えておらないわけでございます。  それから、学費についての税金の減免の問題でございます。これは実は御承知かと思いますけれども、税制調査会に対しましても、私たちの非常な願望として、昨年夏以来、いろいろとわれわれの意見も聞いてもらっておるわけでありますが、今度のこの税制調査会の答申の中には、御承知のように、「学資金の控除についてもいろいろ考えてみた、たとえば学資金相当額の控除を行なうべしという議論があるけれども、税制上納税者の個別的な事情を配慮するにはおのずから限界がある、税の簡素化及び将来の所得税制の向かうべき方向を勘案して基礎控除等の一般的な控除の拡充により対処することが適当であって、これら新規控除の創設については慎重であるべきものと認めた、」ということで、取り上げていただくわけにはいかなかったわけで、一応これがわれわれの提案に対する判決ということになっておるわけであります。私としては非常にこれは残念に思っておるわけでございまして、なおひとついろいろの資料や考え方を整理いたしまして、さらに引き続いて、大蔵省はもとよりでありますし、税制調査会等に対しましても、認識を大いに新たにしてもらいたいと考えておるわけであります。たとえば、この所得控除についても、ここに答申にあげられておりますように、なるほど一般的な控除の拡充ということと、さらに理論的な根拠になっております考え方というのは、学校に子供を出せるような人についてはいいではないか、学校にも出せないような、あるいは学校にも通えぬような人のことを考慮する必要、というようなことも、いろいろの点で考える必要があるのではないかということが根拠になっているのではなかろうかとも考えられるのですが、これについては、われわれとしてもさらに考えを、何といいますか、考え方を積極的にしてもらう面からいいますると、資料の整理なり勉強のしかたも足りなかった点もあろうかと思いますので、私学助成方策調査会というようなものもできましたら、そこでもひとつ大いに取り上げて検討して前向きにやりたい、こういうように考えておるわけであります。
  388. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に切迫した問題なんですよ。勤労者の家計簿をお調べになってくださいよ。この教育費の貯蓄のために、どんなに家計が苦しくて、食費までも節約せざるを得ない、こういう状態ですよ。これは、いまの伊藤秋子さんだけではなく、日本銀行の中に、貯蓄増強推進委員会がありましょう、あの答申によりましても、そうなんですよ。物価がどんどん上がっちゃって、名目所得がふえたけれども、実質所得はあまりふえてない、そうしてだんだん主食あるいは副食までも切り詰めざるを得ない、こういう報告がはっきり出ているんですよ。こういう家計実態を十分にお調べになって、こそくな手段ですけれども、せめてこれから教育費が上がらざるを得ないという実態なら——根本的に上がることは反対でありますけれども、実際問題上がる以上は、少しでもいまの食費にまで影響がくるというような状態で、どうして体位の向上なんかはかれるでしょうか。この点をもっと深刻に考えてください。  それから愛知文部大臣、もう一つ私は、補助だけではなく、造船のほうに補給して、それで営利じゃない教育のほうに補助できぬというのはおかしい。補助できないなら、せめて政府資金を今度の百五十億だけじゃなく、過去の分にさかのぼっても、造船のほうでも過去にさかのぼって補助しているんですから、低利の政府資金をもう少し借りかえに充当できないかということです。
  389. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 木村先生がただいま御引例になりました伊藤秋子さんには、私も昨年お目にかかりまして、切々たるお話を伺いました。それでその後、つまり学費のために各家庭では食費を非常な節約をして、そのためにカロリーが不足になっているんだというお話を伺いまして、私、その点詳しく検討してみたわけでございます。なるほど厚生省の一人当たり栄養調査摂取量によりますると、大体横ばいでございまして、それほどふえておりません。しかし、これは間食費を全然含んでいないというお話でございます。それで農林省の食糧需給表の統計をとって調べてみますると、過去十年でございますが、昭和二十八年には、千九百七十カロリーでございました、一人当たり。これが十年後の昭和三十八年には、二千三百四十五カロリーという、こういうことになっておりまして、年々ある程度の向上はずっと見ておるわけでございます。そのほか、たん白質、脂肪等についても向上を見ておる実績でございます。もちろんこれで満足だと申し上げる次第ではございません。さらに食生活の内容が、実際に体位の向上に寄与できるような方向に向いていくということはぜひ必要なことではございますが、伊藤秋子さんがその当時お話しになったような状態とは、数字が違っているということを、この際申し上げておきます。
  390. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御意見は、私もよく理解できるのでありますけれども、先ほど申しましたように、実は私学の経営の実態については、私も念を入れて調べておりますし、それから公に発表いたしたものもございますけれども、従来長きにわたっていろいろ経営のやり方の違っている、千差万別でございますので、一がいに政府資金をそういったような高利債その他の借りかえ、あるいは過去にさかのぼって何かここで救済の措置をするというのには、実はまあ率直に言えば手が回らない、せめてこれから前向きに今後の措置を考えるということに行政的には重点を置かざるを得ないというのが、私の偽らざる感じでございます。  なお、よくいろいろ御提案については検討をいたすことにいたします。
  391. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題は、私は文部大臣あるいは政府の決意いかんだと思うのですよ。できないことはありませんよ。もっとほんとうに前向きで善処していただきたいというふうに要望しておきますが、最後に、厚生大臣に二つ質問いたします。  一つは、消費者米価を上げるときに、低所得層には困らないような手当てをすると言いましたが、どういう手当てをしたか。  それから、ボーダーライン層は減税の恩恵も受けない、社会保障の恩恵も受けないで、物価値上がりの負担だけをこうむるわけです。これに対してどういう手当てをしたか。  それから、今後社会保険等社会保障については、物価が上がるのはもう不可避である——われわれは反対ですけれども、不可避であれば、やはりスライド的なものを考えなければならぬと思うのです。年金につきましても。それでなければ、私は、非常にこれは罪悪ですよ、物価は上がって貨幣価値が下がってしまうんですから。前にもスライド的なことを年金等についてはお考えになるということを言っておられましたが、これに対して、具体的にどういうふうに措置されたか。今後またされていくのか。実は、賃金についても、これはスライトを採用しなきゃ——私は、労働基準法の二十四条を改正して、あそこで賃金については、貨幣というものは実質価値の貨幣であるというふうに改正すべきだと思うのですが、この点について最後に質問をいたしまして、質問を終わります。
  392. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答え申し上げます。  米価の値上げ、あるいは物価の値上がりに伴いまして低所得者階層にどういうような手当てをしたか、いわゆるボーダーライン層等を含めてどういうことをやったかということでございますが、まあ、御承知のように、生活保護基準の引き上げをやりまして、また、福祉年金、児童扶養手当等の額の引き上げ、あるいは所得制限の緩和、世帯更生資金、母子福祉資金等の貸し付け制度の拡充、あるいは妊産婦、乳幼児等の無償ミルクの供与というようなこと、さらにまた、この四十年度予算におきましては、第二種住宅建設並びにこれら住宅に入居する場合の減免をいたしたいというようなこと、あるいは学校給食等につきましても、この教材等につきましても減免の措置をとるとか、あるいは公共料金の抑制、さらにまた、国保の保険料等につきましての減免点の引き上げをいたしたい、こういうような総合的な施策をやっております。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕  それから、いまお尋ねございました年金のスライド制でございますが、先生のおっしゃるお気持ちはよくわかりますが、私ども、物価だけに一体スライドしていいかどうか、賃金等も含めて考えなければならぬじゃないかというような問題もあろうかと思っておりますので、そういうことを前向きでひとつ検討してみたい、こういうふうに考えております。
  393. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 木村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  394. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に鬼木勝利君。
  395. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 防衛庁長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、三矢研究について、私は視点を変えて、主としてシビリアン・コントロールの原則の面からこの問題を取り上げたいと思うのでありますが、図上作戦であれ、あるいは研究であれ、これが研究を進めた自衛隊の幹部諸君の感覚それ自体が私は問題だと、かように思うのでありますが、新憲法下において戦時諸法案の国会提出とか、あるいは法案成立の見通しにあらわれている想定とか、すべてを統制する国家総動員法の再現のようなことが今日許されると長官はお考えであるか、まずその感覚そのものをどう見ておられるか、その点をひとつ長官にお伺いいたしたい。
  396. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 防衛庁におきまして、文民優位の原則は守られておるのでございまして、また私も現に守られているとかたく信じているのでございます。制服の諸君がどういう考えを持っておるだろうかという御疑念のお尋ねでございまするが、今日の自衛官の諸君は民主主義擁護に徹底をしておりまして、あくまでも政治優先という原則は厳格に守らなければならないという心がけに徹底をいたしておると思います。現に、今回のこの三矢図上研究なるものが国会の問題になりましてからも、自衛官諸君の心境を私は尋ねたこともございまするが、自分らの意図はそういう、国会で御論議をいただき、また憲法に抵触するものではないかとか、あるいはクーデターの計画ではなかったかというような世評が一部に行なわれておるけれども、全くそういうことに対しては、自分ら自身がく然といたしておる、全くさようなことは毛頭夢想だにしなかったことであると申しておるのでございまして、いろんな面においてそういうような疑惑になるようなことば等がございましたことはまことに遺憾ではございまするが、彼らもそういう意図のなかったことを繰り返し申しておるわけでございまして、私どももさような意図のもとにおいて行なわれた研究ではなかったということを考えておるわけでございます。
  397. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 長官のただいまの御説明で、さもありなんと私は思いますが、今日軍人だけで戦うんだ、自衛隊だけで戦うんだというような、そういう考え方自体が間違いではないか。国民に親しまれる自衛隊、国民の自衛隊と言っておきながら、国民から遊離した、しかも、けさほどからの論議を聞いておりまするというと、大部分が旧軍人であったという点から考えまして、そういう危険性があるのではないか、長官の意思と反したことが常に考えられているんじゃないか、かように私は危惧の念で一ぱいであります。その点もう一度長官から御説明を承りたい。
  398. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 御指摘のとおり、三矢図上研究に従事いたしました自衛官諸君は、先ほどの本委員会においても政府委員から御報告申し上げましたとおり、旧軍人が大部分ではございますけれども、先ほど来申しますとおり、現在の民主主義体制下における自衛官の立場を十分認識しておるのみならず、むしろ私どもから考えますると、そういうような旧軍人であるから、そういう戦前の考え方がどこかにあるというような御疑念や、また誤解があってはならないと、彼ら自衛官の諸君は神経質くらいに非常に慎重でございますので、この点はどうぞ御疑念を晴らしていただきたいのでございます。なおまた、私先ほどの当委員会においても申しておりましたが、幕僚の図上演習における想定のごときも、いままでは統幕において一任をされる形でやっておりましたが、重要な大きな研究にはやはり長官が詳細を承知いたし、そうしてこういう想定の出し方等についても十分慎重な配慮を払っていかなければならぬと考えておる次第でございまして、将来こういう誤解が起きるようなことがないように、私どもも十分注意していかなければならないと考えておる次第でございます。
  399. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 私、考えますのに、自衛隊の一部にいまだそういう感覚を持っている人がおるということは、その一半の責任は、今日の自衛隊に対して、与野党がまっこうから反対し、共通の広場を持たない、かつまた、自衛隊が警察予備隊からなしくずし的に今日のように大きくなった、こういう点において政府及び防衛庁は、事防衛体制については、いま少し国民に明確にその立場を私は示すべきであると思う、しかるに、これを明確にせずして、いつも陰で仕事を進めていく、防衛計画を進めていく。といいますのは、歴代の内閣の総理の施政演説において防衛計画に対してはっきり方向を示していない。施政演説においては、ほとんど防衛問題に対しては歴代内閣の総理大臣が触れていない、常に逃げようとしておる。なぜもっと国民に、国民の自衛隊であるならば、国民にもっと密接に防衛計画をなぜ示さないか、その点に対して防衛庁長官の御見解をひとつ承りたい。
  400. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 鬼木委員から申されましたとおり、国防の全きを期する上に、また防衛施策というものはやはり国民の理解と協力がなければならないのでございますから、これはまず国民に周知徹底せしむるということは、仰せのとおり全く一番大事な事柄でございまして、私どももそれを念願をしてきておる次第でございます。ただいまの、いままで総理大臣の施政方針演説等にこの国防に関する問題が詳しく触れられなかったことは、私どもとしては遺憾なことでございまして、防衛庁長官としてもできるだけこういう問題を所信表明、施政方針演説等に盛り込んで広く国民に周知徹底をはかっていただきたいと、私も要望申し上げたことは事実でございます。いままでも、そういう総理の施政方針演説は別といたしましても、できるだけこれを徹底せしめる必要があると考えまして、広報活動等でできるだけやらしておるのでございまするが、いままで鬼木委員からおっしゃるとおりこれが十分でございませんでしたことは、私どもまことに遺憾でございます。今後は十分注意いたしまして、こういう問題を国民にまず明らかにし、国民の理解と協力を求めるということに万全の努力を払わなければならないということを今日痛感をいたし、今後できるだけそういう方向に努力いたしたいと存じます。
  401. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あなたの言うように非常にすなおに答弁されると、これはなかなかよく話が運ぶ。今回の三矢研究は、これは大体国防会議においてやるべきことではないか、まあ内容は別として。そういう研究をするならば国防会議でやるべきではないかと思いますが、その点長官の御答弁を伺いたい。
  402. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) もちろん図上研究でございますので、各幕でいままでどおり研究をいたしたということも、私はこれもまたそれはそれなりでやはり彼らの任務としてよかったと存じまするが、事次元の高い、何と申しますか、国の総力をあげて対処するというような問題、またそれが具体的な問題ではございませんでも、事法案に関する問題とか、国会に関連のある問題というような、いわゆる政治的に関係をする重要な国の施策につきましては、将来は当然こういう大きな次元の高い問題は国防会議等で十分に論議せらるるということが、きわめて適当ではないかと考えておる次第であります。
  403. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 当然載っているのですよ、国防会議に。しかも総理が主宰する。私はそういう点において今回の件は間違いだと思う。なぜ国防会議で、そういう大事な国家総動員をやるなんていうことは……、もう一度ひとつその点を。
  404. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究なるものは、御承知のとおり決して国会の立場に干渉をするとか、あるいは国家総動員的な問題をどうというのではございませんで、想定の中に、まあそういう国会の審議がこういうふうにやっていただいたというような想定があるだけでございまして、そういう問題の内容には立ち入っておらないのでございます。私がただいま申し上げましたのは、事法案に関する問題とか、国会に関連のある問題とかは、将来はやはり慎重を期して国防会議等で論議すべきが適当であると、かように申し上げたのでございまして、われわれはそういう方向に今後指導していきたいと考えておる次第でございます。
  405. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あなたもお忙しそうですから、これはいずれ内閣委員会でゆっくりお話を申し上げるということにして、この国防会議がいままで開かれたことがあるのですかないのですか、この点ひとつ承りたい。
  406. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) たびたび開いておりまして、二カ月に一回、三カ月に一回、また場合によっては、最近の例においてはF104ジェット戦闘機の追加生産の問題等について国防会議の御理解を得るために開くというようなことをやっておりまして、相当回数開催をいたしておるのでございます。
  407. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これは異なことを承りますが……。
  408. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 失礼いたしました。国防会議の懇談会というものをたびたび開いておりまして、最近正式の国防会議は開いておりません。訂正申し上げます。
  409. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 異なことを承ると思った懇談会は開いておられます。三回、四回。しかし正式な国防会議は一回も開いていない、三十六年以降。これでは無用の長物だ。何のための国防会議であるか。お茶飲み会議で国防会議をやられたのではとんでもない話だ。その点ひとつもう一度長官から。
  410. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 仰せのとおりでございまして、今後は私どもはできるだけ国防会議がたびたび開催をせられて、国防全般に対する重要な問題が論議せられることが望ましいことであると考えておるわけであります。
  411. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それで大体話がようやくわかりましたが、国防会議というようなそういう大事なものならば、もし必要ないならば、私はそういうものは解消すべきである、かように提唱したい。  なお、これの事務局というのは、一体何をしているのか、事務局の存在に対して承りたい。
  412. 北村隆

    政府委員北村隆君) お答えいたします。  事務局は総理が御諮問になるような問題を想定いたしまして、主として現在は国際情勢、軍事情勢の判断、また防衛問題についての増勢途上にある、また将来増勢しなければならぬ、そういうような基礎的な問題を研究しておりまして、御諮問に備えております。
  413. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 具体的にどういうものを研究し、どういうものをつくりましたか。それをひとつここに提起してもらいたい。
  414. 北村隆

    政府委員北村隆君) 事務局内ではいろいろな想定をつくりまして、一応前内閣時代にも、将来予想される……
  415. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そういうのを具体的に言ってください。
  416. 北村隆

    政府委員北村隆君) たとえば防衛の基盤である国民の防衛意識をどういうように高めたらいいか、また今日増勢している装備につきまして、装備が多くイミテーションに終わっている面も多いので、これはむしろ日本がみずから研究開発していく方法はどうだろうという研究開発の方法を研究するとか、そういうような基本的な問題を常に研究しております。
  417. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そういう答弁では児戯に等しい、そういうのを相手にしません。いずれ内閣委員会でゆっくりまたお尋ねいたします。きょうは防衛庁長官がお忙しいそうですから……。  次にお伺いしたいのは第二次防衛計画に対して、綿密にお尋ねしたいのですが、一、二点ひとつお尋ねしたい。104ジェット機の三十機追加生産の問題ですが、これは二次防衛のワク内であるのかワク外であるのか、その点ひとつお伺いしたい。
  418. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 104ジェット戦闘機の追加生産の問題は、御承知のとおり、第二次防衛計画の航空自衛隊の七飛行隊を維持するという立場から、この追加生産をいたした次第でございまするが、ワク内かワク外かというお尋ねに対しましては、これは予算の面や二次防全体の計画等からいたしますれば、当然二次防の計画内には入っておるのでございます。なお予算面につきまする取り扱いにつきましては、政府委員から御説明をいたさせまして、御理解をいただきたいと思います。
  419. 大村筆雄

    政府委員(大村筆雄君) お答えいたします。  第二次防衛力整備計画は、御承知のとおり、防衛方針のもとに一定の整備計画を定めまして、その計画の実施に必要な計画といたしまして、五カ年間の総額が一兆一千五百億ないし一兆一千八百億円と見込んでおりますが、ただし、各年度ごとの具体的に予算を策定いたします場合には、それぞれの各年度ごとの財政経済費を勘案いたしまして、民生の安定その他の諸施策等を考慮いたしまして決定されることになっているわけでございます。したがいまして、二次防の整備目標を維持達成するために、104の追加生産が必要である、そういう意味におきましては、これの二次防の計画達成に必要な経費のうちに含まれておるという意味では、ワク内であるということが言えるかと思います。ただ、当初、私どもが二次防の計画を達成するのに立てましたときに、防衛庁内部で事務的に参考資料として一応見積もったものがございますが、それには当初予定してなかったという意味においては、ワク外だという言い方もできるかと思います。
  420. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 昨年五十機追加生産するのだと。大蔵大臣は、ワク外ならできない、ワク内ならよろしいということで、折り合いがつかなくて、今度また三十機ということになった、大蔵大臣にひとつお尋ねいたします。
  421. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昨年の要求は五十機でございましたが、しかし、性能の問題、また減耗度がどの程度になるのかというようなことを調べるには、やはり予算編成期までに時期が非常に短かったのでございまして、三十九年度の予算には、これは入れることはできなかったわけでございます。しかし、四十年度まで——この要求は三十九年度の予算編成の三十八年十二月の初めに持ち込まれてまいったわけでございますが、四十年度予算までには、そのような技術的な面も十分検討しまして、五十機を三十機に削減をして、これを予算に計上いたしたわけでございます。二次防のワク内か、ワク外かということにつきましては、いま大村君が申したとおり、二次防のワク内、こういう考えが正しいと思います。
  422. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そこで、防衛庁長官にお尋ねしたいのですが、昨年五十機といって、今年三十機となっておる、そんなでたらめなあなた方の計画でございますか。その点ひとつ。
  423. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 昨年の時点におきましては、五十機の追加生酢をしなければ、七飛行隊の維持ができないという考え方に立って、五十機生産を要求をしたと聞いておりまするが、その後、この104の飛行の成績を見てみますると、幸いにして、非常に事故が各国の例に比しますると少なうございまして、イギリスはじめ、この104を使っておりまする国々が、どうして日本の104はそういう事故が少ないのであるかと、非常な世界的に驚異の目をもってみはっているというような実情でございます。大体一万時間にアメリカ、イギリスその他の例は相当——私、正確な数字は忘れましたが、相当数の損耗を見ておりまするが、日本におけるいままでの成績は、外国に比べて三分の一、四分の一というような程度の減耗にとどまっておりまして、今後、こういう成績を維持し、さらにこれをもっと事故率を少なく向上する努力を持つならば、当初五十機なければ、ここ四十五、六年まで、第一線機としての主戦機として七飛行隊の維持はできないと考えられていたのが、十分な今後の努力をば継続することにより、三十機あればどうにか七飛行隊の維持が可能ではないかというような結論に到達をいたしまして、財政上の見地等から見合わせまして、最小限度三十機で可能である、そうしてまた、最小限度三十機の追加生産でこの七飛行隊の維持を可能ならしめるということで、かような結果に相なったわけでございます。
  424. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ずいぶんそういうところにこれは問題があるのですよ。二十機落ちることを予想して、昨年は五十機よけいに頼んだ、今度落ちぬようになったから三十機にした、そんな子供だましのような——あとでこれはゆっくりあなたと御相談いたしましょう。  そこで、第二次防の総ワクということには変わりないというようないまのお話だが、内容はずいぶんもう自由に変えてあると、こういうふうにわれわれ解釈をしていいわけですね。
  425. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いま申し上げましたような104の問題等は、五十機が三十機になるという変更を来たしておりますが、全体の二次防計画において自由に変えられておるというようなことはございません。もちろん、ほかにも、予算の面等につきまして予定よりも金がそれだけ要らなかったものがある、さらにまた、当初の計画よりもさらに必要なものがあって、そのほうに予算を回したというのが二、三あるということは、私も承知いたしておりますが、二次防の計画そのもの自体が、全体的に自由に変更されておるというようなことはございませんので、御了承をいただきます。
  426. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 全体的に自由に変えられておらないけれども、一部分はかってに変えられておると、私はそういうふうに解釈をしておきます。  それから第二次防の計画には、隊員の隊舎の改築とか、あるいは隊員の優遇とか、基地の取得計画とか、あるいは演習場の取得計画とか、そういう施設設備その他の計画が第二次防の中に含まれておるかいないか、その点ひとつお伺いしたい。
  427. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 政府委員からお答え申し上げます。
  428. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そのくらいのこと、長官おわかりじゃないですかな。
  429. 大村筆雄

    政府委員(大村筆雄君) 第二次防衛力整備計画は、先ほど申し上げましたとおりに、一定の防衛方針のもとに一定の整備目標を設定いたしまして、それに要する、実施に要する経費の見積もりをしておるわけでございますが、したがいまして、計画内容は骨幹的なものでありまして、一々こまかいものまでは計画をやっておるわけではございません。  ただ、いま御質問の中にございました老朽隊舎の建てかえでございますが、これは五カ年間、総額八十億円という、これは先ほど申しましたように、防衛庁内における事務用の参考資料として見積もったものでございますが、一応八十億という予定をいたしております。それに対しまして、こういうものにつきまして特に重点を置きまして、四年目である四十年度におきまして、すでに総額の八十億円は目標を達成したと、そういう状況に相なっておるわけでございます。
  430. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 第二次防の計画の中には八十億入っているというようなお話ですが、隊員の優遇なんということは入っていない、あるいは土地の取得なんということも入っていない。しかも、隊員優遇に今回十億を長官が予算を計上されたと、その点の誠意に対しては、私は大いに了といたしますが、いまごろ、ろうばいしてそういうものを入れる。大体防衛産業尊重か、人間尊重か、佐藤総理方針がさっぱりこれはわからない。兵器尊重、防衛産業尊重か、人間尊重か、その点はひとつ防衛庁長官から責任を持って御答弁を願いたい。
  431. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 隊員の処遇の改善につきましては、私は最優先さるべきものであるという見解に立ちまして、この隊員の処遇改善、基地対策の推進というものが、装備の改善、近代化ということよりもむしろ最優先さるべきだということを、私は長官に就任いたしましてから、予算省議でも自分方針として宣明をいたしまして、予算折衝の段階におきましても、この点に最も力をそそいだつもりでございまして、もちろん十分ではございませんが、ここ二、三年来に比べますると、こういう基地対策の推進、隊員の処遇の改善というような方向には相当の進捗を見たわけでございまするが、今後とも、ただいま鬼木委員が仰せられまするように、やはり人間尊重の見地に立って、防衛力整備をいたしますについても、隊員の処遇の改善とか基地問題というものの解決に特に力をそそいでいかなければならないと考えておる次第でございます。
  432. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 歴代長官に比較すると、あなたはその点はなかなか理解が深いようで、大いに了といたしますが、現在陸上自衛隊に三万の欠員がおる。これは、一体どうしてこんな三万の欠員ができたか、長官はどのようにお考えですか。
  433. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) まことに、陸上自衛隊三万の欠員がございますることは、遺憾のきわみでございます。いろいろな原因がございまするけれども、やはり青少年に自衛隊というものが魅力が少ない。そうして、任期を終わりまして自衛隊を除隊をいたしまして一般民間に出ましても、また再就職をしていかなければならない。再就職等についての特別の特典もございませんし、また待遇等におきましても、最近の高度経済成長の発展に伴いまして、他産業と比べては、非常に自衛隊の待遇、環境というものがはなはだしく見劣りがいたしますので、そういうところにもってきて、さらに若年労働力の減少ということからいたしまして、ますますこの自衛隊の欠員というものが続いておると、一向目立った減り方を見せないというようなふうに考えておりますので、私どもは、この隊員の欠員を向上していくために、先ほども私が申し上げましたような隊員の処遇の改善というようなことを一番大事に考えて、これを具体化していき、そして青少年にやはり自衛隊に対する魅力を持つような施策をしていくと同時に、また募集広報活動等の強化をはかって、一日もすみやかに、たとえ一ぺんにこの欠員の補充ができませんでも、何とか徐々に充足率を上り坂に持っていきたいと、私はしょっちゅう念願をしておる次第でございます。
  434. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 私もそう思うのでありますが、地方連絡なんかが、これは私のことばが過ぎたらごかんべん願いたいが、巷間の客引きみたようなことをして集めておる。まことに不見識きわまりない。だから、私は、現時点において再編成をするというお考えはないか。現在の現員で、それを中心に再編成をするんだと、あくまで十三個師団十七万という空の数字をいつまでも持ち続けていくのか、こういう点をひとつ防衛庁長官にお尋ねしたい。
  435. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 欠員が多いから、実人員に適合した再編成をすべきではないかというお考えのようでございまするが、私どもは、やはり欠員が多いために計画の変更をすることは将来のためにならないと、あくまでも欠員補充ということを達成するように努力をいたしまして、やはり計画どおりの編成をもって進めていかなければならないと考えておるわけでございます。なかなか一朝一夕に人員の訓練ができるものでもございませんし、やはり目標どおりの達成をしていかなければ、部隊の編成、それから有効な運用というものはできないという見地に立ちまして、非常に困難ではございまするが、将来欠員を充足する方向に努力をして、いままでの編成を変更するとかいうような考え方は持っておらないのでございます。
  436. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ところが、この問題は、きょうあすの問題ではなくて、二次防前からの問題、三十五年からの問題ですよ。いつ解決するつもりなんですか、その点長官ひとつはっきり。
  437. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) もちろん、二年、三年続いた欠員の実情でございまするが、私どもは、これがこの先も何年もこのままで継続するようなことがあってはならない、またさようなことはあらしめてはならない、だんだんと国防意識の高揚、また自衛隊に対する国民の認識、協力というようなものが周まっていき、そうして一方環境の是正、隊員に魅力を持たせるようないろいろな施策を講ずることによって、この欠員の充足というものが必ずしも不可能ではないという見解に立っておるわけでございます。数年間続いて、鬼木委員の仰せられますとおり、一向何年間も同じではないかと仰せられますことは、全く一言もないわけでございまするが、最近においては、昨年の新潟震災におけるその後の影響というものは、新潟県を中心とするあの辺一体では一〇〇%の募集率をこして、それが相当継続をいたしておりますし、昨年十月のオリンピック東京大会における自衛隊に対する国民の認識、好感等も影響いたしましたと考えまするが、全国的にも相当程度——多少は上がっておりまして、これがさらに悪化するというようなこともございませんので、われわれはこれに希望を託して、今後充足率の向上ということに全力をあげたいと考えておるようなわけでございます。
  438. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 私がここ二、三年間内閣委員会あるいは予算委員会等において常に申し上げておることは、自衛隊を増強することが決していいことじゃない、現時点において隊員を処遇することだと、これが国民に親しまれることだ、決して自衛隊を膨張させることはよろしいことではないと、われわれは反対だと叫び続けてきたのでありますが、その顕著な例として、私は最も遺憾に思うのは、自衛隊の医官の問題です。お医者さんです。まことに遺憾です。わずかに五〇%以下という医官の充足率であります。五千人の駐とん部隊が全国に百五カ所もあるのに、その三分の一には医官が一人もいない。この事実を長官は何と考えられておる。とんでもない話だ。言語道断だ。それをひとつ答えていただきたい。
  439. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 私もたびたび内閣委員会において鬼木委員の御所見を承っておるのでございまするが、全く隊員の待遇を改善をしていくことが自衛隊が国民に親しまれていくゆえんであるというようなありがたいおことばに対しましては、いつも感謝をいたし、また私は全く同感でございまして、先ほど申し上げましたような、最優先に予算等においては取り組まなくちゃいかぬという、長官としては異例の予算省議における宣明をいたしたようなわけでございまして、その点は私といたしましても感謝を申し上げ、また隊員も、こういう御識見が国会において述べられておるということについて、わが自衛隊の隊員はひとしく感激をするであろうと存ずるわけでございます。  また、医官の問題につきましては、これまたほんとうに申しわけないわけでございまして、民間の病院等からいたしますれば、これまたあまりにも格差が大でございまして、そういうような結果に相なっておるのでございまするが、今後これらも隊員の処遇改善という一環のもとに、医官についてはさらに格段の配慮をしなければならないと存じております。なお衛生局長から詳細につきましては答弁をいたさせます。
  440. 軽部彌生一

    政府委員軽部彌生一君) 御指摘の医官の充足率の低いことはまことに申しわけないことに存じております。今回の御審議願っております予算におきまして、私どもも医官の補給源のその九五%を占めております。先生御存じの貸費学生、生徒でございます。この貸費学生の貸費額月額は四千五百円でございますが、これを六千円に増額いたすことに要求をいたしております。それから医官の給与の問題もさることながら、やはり自然科学を学びました若き学徒にとりましては研究の場ということ、これが非常に大事なことでございますので、今回の予算におきましてお願いいたしておりますのは、陸の中央病院の研究治療関係の資材の整備、あるいは海上自衛隊におきます潜水学実験部設置のための施設並びに機械、それから航空自衛隊におきましてはパイロットの健康管理を中心といたしまして、無響室というのがございますが、ここでは有響室という、音の人体に対する影響というものをさらに追究いたしますような施設を中心といたしまして、合わせまして約一億五千万円ほどの予算を計上いたしまして御審議をお願いいたしておるわけでございます。このようにいたしますとともに、中央病院を三幕の中心的な教育病院といたしまして、若き集まりました青年学徒が二年間腰をすえてレジデントの態勢で勉強をさせよう、このようなことを現在準備いたしております。私どもできるだけの努力をいたしまして、若き青年医官がわれわれとともに同じ職域に集まってくるようにということを、心から念願いたしておるのでございます。
  441. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 貸費学生に、あなた方が四千五百円を六千円にしたとおっしゃっているが、そういうこそくなことをして、そうして歩どまりはわずかに二五%、四分の一じゃないですか。あと四分の三は全部民間に出てしまっている。だったらそれを食いとめる確信があるのですか。衛生局長にひとつお尋ねしたい。
  442. 軽部彌生一

    政府委員軽部彌生一君) お説のとおり貸費学生制度を発足いたしましてから現在残っております歩どまりと申しますと二五%、仰せのとおりでございますが、今後それをいかにするかという問題、これはやはり教育の場、あるいは研究の場にそれぞれ魅力を持たせるということもさることでございますが、あわせてやはり貸費学生として学生期間を送っております間に、私どもできるだけの連絡をとりまして、心の通った間柄にいたしまして、わが陣営に参加を願おう、このような実はつもりでおるのであります。
  443. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 何とかことばたくみなことを言って実践が伴わないようなことをあまりおっしゃらないほうがいいと思うのだが、医官の不足のために隊員の生命とか、あるいは病状の進行等に与えた影響について何かデータがあったら、詳細ひとつ承りたい。
  444. 軽部彌生一

    政府委員軽部彌生一君) 私ども、そのような影響が出てはまいらぬかということで、絶えず監視をいたしておるのでございます。まあ現在自衛隊員全部の健康状態を申し上げますと、一日に千人当たり、仕事を休みます。勤務を排します程度の疾患にかかります者が約十五人見当はございます。で、この数字は、こういう数字の出し方がちょっとほかにございませんので、よくおわかりかねるかと思いますが、かつて国内に駐留いたしました米軍の空軍部隊、この数字が大体八から九の間でございますから、その約一倍半ぐらい程度の状態、しかし、これは編成当初から見ますと、約半分近くに下がってきておるのでございます。それから、先ほども出ました、老朽隊舎に住むために、やはりその健康に対して影響があるということも、実は心配いしたまして監視いたしておりますが、この点につきましては、老朽隊舎と新しいものとが混在するというような配置にはからずも相なっておりますために、老朽隊舎だけのところで数字的に、統計的な有意の差があるかというようなデータはまだ私ども持っておりません。いま統計をながめておりますと、大体発足当初からは年々減ってまいっておりますので、まあどうにか現在の状態でかろうじて持ちこたえておるというような程度じゃなかろうかと思うのでございますが、病気の内容そのものを見ましても、戦前の軍隊とほぼ同じような形をおよそとっておるようでございます。格段、現在の自衛隊員だけが特殊な疾病を持っているということを、いまのところ認めるものはございません。
  445. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いずれもまだ私納得がいかない、その答弁は不足ですけれども、防衛庁長官非常にお忙しいそうですから、どうぞ、これでお別れいしたましょう。  その次にお尋ねしたいのは、石炭問題で、通産大臣にお尋ねいたしたい。  第二次答申で、石炭調査団が炭価引き上げ、利子補給を中心とした答申が出されましたが、これは第一次答申のアフターケア的な性格の手直しのものだと思いますが、通産大臣は記者会見において、この答申を大いに尊重するのだと、こうおっしゃっておりますが、その点間違いございませんか。
  446. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 間違いございません。十二月十六日に答申を受けまして、予算折衝が切迫しておりましたが、でき得る限り四十年度予算の上に反映させたつもりでございます。
  447. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 第一次答申において、年間五千五百万トンの出炭と、炭価を千二百円引き下げる、非能率炭鉱を閉山するのだ、こうしたことを軸として四十二年度までには赤子を解消して黒子にするのだと、こういうことであったと思うのですが、それで炭鉱、山自体が自立のめどが立つのだ、こういうことで出発されたと思いますが、現実はそのとおりになったか、ならないか、その点通産大臣に。
  448. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 三十七年当時の調査の答申はそのとおりであったと思います。しこうして、その後の情勢の変化がございますので、今回のアフターケアによりまして、また、そのアフターケアに伴う答申による諸施策を講じますので、ほぼ目的どおりにいくものと推定いたしております。
  449. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 三十六年度で五百億、三十八年度で八百億という赤字が出たが、これは明らかに政府の石炭政策に対する失敗じゃなかったですか。大臣どうお考えです。その点ひとつ大臣の御見解を承りたい。
  450. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 失敗であったかどうかは別といたしまして、答申を実施していく過程におきまして、予想外の事態が種々起こったということは間違いのないところでございます。したがいまして、第二次調査団ということに相なったわけでございまして、四十二年までの間に、これらの点も改善されるものと、かように思います。
  451. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どういうところで見込みが違ったのか、見込み違いはどういうところにあったか、大臣のお考えを承りたい。
  452. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 答申にも指摘されておりますが、やはり第一には、予想外に労務者の離山ムードが強かったと思うのでございます。また、合理化整備に伴う企業経理が悪化したということを率直に認めなければならないと思います。また資金とか、料金等の値上がりによるコストが上がった、そういう面も考えなければならない。これらの点が総合されての結果だと、かように思います。
  453. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 さすがに通産大臣で、政府の経済政策、所得倍増政策どいうような点からして、物価や賃金が横ばいするのだとあなた方がお考えであったのが非常に上昇した。そういう点の見込み違いというようなことは、あなた方おっしゃらないようですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  454. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) コストに影響があったということは認めなければならないと思います。
  455. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 なお炭価を千二百円引き下げた。つまり競合エネルギーとの競争において、経済対抗策として千二百円下げられた、こう私は思うのですが、炭価さえ引き下げれば石油に対抗できると、かようにあなた方はお見込みを立てられたのであるかどうか、その点ひとつ承りたい。
  456. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 炭価千二百円の引き下げにつきましては、私は専門ではございませんので、にわかにお答えがしにくいのでありますが、当時、石炭調査団の答申に伴ってそういう方針をとった。しかし、この炭価引き下げにつきましても、調査団自身も、その後の状況から考えて、いろいろ検討すべき点が出たものだと、かように私は思います。
  457. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それに引きかえて、石油は四千円も下がっておる。ただ、石炭のことのみ考えて、炭価を千二百円引き下げれば石油に対抗できるのだというようなお考えを持っておられる。実際は石油は四千円も下がっておる。こういうところに石炭問題が解決しない原因の一端があるのじゃないかと、われわれは考えますけれども、その点、通産大臣はどういうふうにお考えですか。
  458. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) お話しのように、石油が大幅な値下がりをいたしました。したがって、国会でも御決議がございますように、ただ石炭だけ、あるいは石油だけということでエネルギー問題を考えておっても、問題が出てくるのじゃないかということから、総合エネルギー調査会によって今後慎重に検討していきたい、こういう方針をとっておる次第でございます。
  459. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あなたのおっしゃるとおり、総合エネルギー対策を立てて石炭の位置づけをするということは、私は最も大事なことと思うが、すでに石炭は十年も前からこれは問題になっておる。今日までそれを放置されておったという点に対しては、どういうお考えであったのか、その点ひとつ承りたい。
  460. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 別に放置されておったわけじゃないと思うのであります。御承知のように産業構造審議会の中におきまして、それぞれの部門を検討いたしてまいりましたが、総合性に欠けるところがあった、こういうふうに率直に認めまして、今後、両院のおすすめもあって総合的に考えていこう、こういうことで調査会を発足させることになっているわけであります。
  461. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 石炭エネルギー全体の中から見るということをしないで、ただ単に炭価を引き上げる、今回三百円引き上げるということになっておるのですが、利子補給をしていったところで、これは一時的な糊塗策であって、将来また二年、三年先には同じことを繰り返すのじゃないか、そういう点を私ら危惧しておりますが、老練な通産大臣の御見解はどうですか。
  462. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 各エネルギー資源を、これを長期的に安定した供給を得るということが、これが望ましい姿であるということは申すまでもないと思うのであります。そうして、その中における石炭は一体どうしていくのかということになりますと、われわれとしては、現在せっかくの二回にわたる調査団の報告でもございますので、四十二年に五千五百万トンを目標といたしまして、その長期引き取りに要する需要を確保するとか、また、山の経営状況から考え、今回の炭価引き上げを考え、またスクラップ・アンド・ビルドの施策を推進していくというようなこと、これを総合的な考え方の中においても、四十二年度を目標として、こういう施策が必要だというふうに観測しておるわけでございますが、今後、調査会が発足をいたしました以後、慎重にこれらのことを検討してもらう考えでございます。
  463. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がありませんので、その次に私はお伺いしたいのですが、先ほど大臣も離山ムードが非常に盛んになってきたということをおっしゃったが、某炭鉱でアンケートをとったところが、現在の生活で何を一番希望しているかということを炭住においてアンケートをとったところが、賃上げが高率でございましたが、その次は定職、その次は山に見切りをつけているというような離山ムード、これは第二次調査団もそういうことを答申しておられるようでございますが、こういうことに対してどういう抜本的な対策をお考えになっているのか、通産大臣
  464. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは炭鉱労務者の方々が安心して就業ができるということが第一であろうと思うのであります。したがいまして、炭鉱経営がこれが長期的に安定されるように持っていきたい。今回の炭価引き上げや利子補給施策というものは、それらのあらわれであろうと思うのであります。さらにはこの作業環境をよくするとか、あるいは厚生施設をよくするとかというようなことによりまして離山ムードを解消したいと、かように考えます。
  465. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 今日五千五百万トンが実際は五千二百万トンぐらいしか掘られていないと思いますが、三百円の炭価引き上げによって、電力会社等はますます供給を強力に要請すると思いますが、したがって、強制労働、労働過重ということになりますが、そういう点はどういうふうにお考えでございますか、通産大臣
  466. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 恐縮でございますが、ただいまの御質問の趣旨がちょっとわかりかねたのでありますが、今回の炭価引き上げによる電力界あるいは鉄鋼業界等の需要者に対するしわ寄せの不安感があるといたしますならば、これは重油の関税還付二年間延長という施策を弾力的に運用することによって補いをつけていく考えでおります。
  467. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がありませんので、最後に一番大事なことをお尋ねしたいが、先ほど申しましたように、労務者は足らない、ところが出炭量は五千五百万トン、これを無理に掘らせるということになりますというと非常に災害が多くなっておる、西欧諸国とこれを比較した場合に、日本は五倍も六倍にもなっている。そこで、保安対策ということに対して、通産大臣は出炭を優先にされるお考えか、保安を先にするお考えなのか、出炭と保安の関係について承りたいと思います。
  468. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 鬼木委員は石炭事情にお詳しいということを聞いておりますが、私がこういうことを申し上げると恐縮でございますが、委員会でもしばしば意見として触れたのでありますが、山を掘る上におきましては、まず支柱をどうするとか、ガスの状況はどうであるとか、湧水の状況はどうであるかというようなことが、これがよく調査せられておらなければ出炭のほうへはいけないと思うのであります。ですから、何としても鉱山経営者のまず考えるべきことは、それは保安が優先である、そうしてその次に生産がくるんである、こういうふうに私は真から考えておる次第でございます。
  469. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 まことに意を強くいたしますが、そういたしますと、今回の予算において鉱山保安監督官をどれだけ要求されたか。むろんこれは監督官だけで保安を確保、維持するということはむろんできないでしょう。山自体もむろんそうならなきゃならぬけれども、今日の山はいずれの山も赤字でよたよたしている、それに保安の全般の責任を負わせるということは少し苛酷である、やはり抱いてやらなきゃならぬ。それで保安官の要求をどれだけされたか、その点、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  470. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 要求は当時どの程度か私はっきり覚えておらないのでございますが、今回の四十年度予算で御審議をわずらわしておる増員は七名でございます。また、総合監督をすべき者を二名、合計九名、予算の上でいま御審議をわずらわしておるようなわけであります。もちろん鬼木委員の言われるように、この程度の増員で最近の災害の状況からいたしまして、はたして十分であるかどうかということは私も疑問に思いますが、しかし、これらの監督官の増員とともに、保安教育を十分いたそうというようなことで、その面の予算も相当計上してまいりましたので、ただいまの段階ではこの程度でひとつ万全を尽くしていきたい、かように思っております。
  471. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 保安優先だと、まことにけっこう、そのとおりだと思うのですが、わずかに七名くらいの増員で、全国に現在二百七十五名いらっしゃるそうですが、七名くらいの増員で、また第二、第三の夕張炭鉱みたいなことがあるのじゃないか、三池炭鉱みたいなことがあるのじゃないかと、私らはそれを非常に心配するものでありますが、保安第一、優先だと通産大臣は思われる、しかも、私はこれだけでは疑問に私も思っている、あなた自体でもそうおっしゃっている。それではもう少し、私はあなたのお考え方が徹底したお考え方じゃないと思うのです。なお、大蔵大臣にもお尋ねしたいのですが、炭鉱の今日の完璧を期するということに対して、保安がいかに大事であるかということに大蔵大臣はお考えを持っていらっしゃるだろうか、両大臣の御答弁をお願いいたしたい。
  472. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 保安の重要性については先ほど申し上げたとおりであります。なお、鬼木委員の御指摘については私も十分わかります。しかし、先ほども申したとおりに、今後の万全を尽くす上において、限られた人員ではございますが、あらゆる努力をしていきたい、私としては従来の保安方針が、監督官が一人、二人というように山に行くような場合が多いのでありますが、今後はチームをもって総合的に保安、調査、監督をせしめる、また、教育のほうも徹底していく、あるいは経営者の自覚も促していく、いろいろ方法はあると思うのであります。しかし、監督官ももう少し多いほうがよかろう、こういうふうに御指摘になれば多いにこしたことはないと思います。
  473. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 保安が重要なことはもう申すまでもありません。今度の北海道の災害を思うまでもなく、鉱害とか保安とか、こういうものに対しては確かに問題が多いようであります。これからは事業は収益を上げることもさることながら、保安というものが前提にならなければならぬ、事業はそうあるべきだと考えます。また、ことしの予算におきましても、労働者の予算等で人員をふやしまして、また、保安対策費につきましては、金融機関からの借り入れの道その他に対しましても特段の配慮をいたしておるわけであります。いずれにしましても、保安や鉱害という問題に対しては十分な対策が必要だと思います。
  474. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がございませんので、もう少しお聞きしたいのですが、その次に、通産大臣にちょっとお尋ねしたいが、第一次答申直後であったと思いますが、前総理池田さんが九州の筑豊地方にお見えになって、造幣局あるいは専売公社とか、あるいは政府機関の被服工場などをここへ誘致するのだ、こういうことを約束されたように思いますが、通産大臣は御存じであるかどうか。
  475. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) こまかくどういうものを誘致するというようなことについては私にあまり記憶がございませんが、前総理が相当積極的な意欲をもちまして産炭地振興のために工場誘致をされることを言われたことは記憶に残っております。
  476. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ところが、何にもしていないのだよ。空だ。そういうから手形を総理が出した。しかも、その衝に当たっておる通産大臣は、そういうことは聞いたことはあるけれどもというようなことで、大体あなたいいと思っていらっしゃるのですか、通産大臣
  477. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 現在までに九州のフィルター工場、飯塚市における自衛隊、九州の鉱業試験所等の誘致が実現しておるということでございます。なお、鬼木委員の御指摘のように、大きな工場を誘致するのが実際上に実情に沿うておるかどうか、こういう点について私も調べてみたんであります。そうしましたところが、現在誘致された工場が中小企業ではわりあいにあるそうでございます。大体百八十八くらいになっておる。あるいは増設を慫慂した工場というものは百を少しこえておりますというような報告も受けておりますので、必ずしも大工場あるいは大施設の誘致だけが、これが施策ではなかろうかと思うのであります。
  478. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それは知っております。私もね。自衛隊もフィルター工場も来ている。だけれども、あれはどこにあるかわからないような小さいもので、造幣局を持ってくるのだとか、政府機関の被服工場を持ってくるのだとか、専売公社を持ってくるのだとかいうことで、それに似たようなものでもひとつ持って来てもらわないと、現地はみんな待っている、まだかまだかと。その点ひとつお考え願いたいと思います。もう一度ひとつ大へん御苦労ですけれども
  479. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま申し上げたように、単に大きいだけということでなしに、私としては産炭地振興のためにいろいろいたしたい。また、ここでいいかげんなお約束をいたしまして、間違いを起こしてはしようがありませんので、この範囲でお許し願います。
  480. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あの中心地である直方地区に、事業団が工場団地をつくっておるのですが、ところが道路は来年一ぱいにできるかどうかわからない、工業用水なんか、これから何年先にできるかわからないというようなことでは、産炭地の振興はどういうふうに進んでいるのか。通産大臣は産炭地を振興するとおっしゃるが、一体どういう目途のために、方途のためにやっていらっしゃるのか、その点ひとつお伺いしたいと思います。
  481. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御指摘の点については、私つまびらかにいたさないのであります。いま局長をと思いましたが、おりませんので、これは後日、機会があったら答弁させたいと……石炭局長からお答えいたします。
  482. 井上亮

    政府委員(井上亮君) お答えいたします。  産炭地振興の問題につきましては、ただいま通産大臣から御答弁されましたように、政府としましては、やはり特に炭鉱の整備に伴いまして、産炭地の疲弊の度合いが非常に急迫しております。したがいまして、私ども相当な重点を産炭地振興に置きまして、企業誘致の努力はもちろんでございますが、企業誘致をいたしますためには、やはり道路の整備とか、あるいは工業用水の確保の手段が、やはり先行的に必要になってまいりますので、そういった点につきまして総合的に産炭地振興計画をつくりまして、関係各省と一緒に、産炭地域振興審議会で検討しまして、現にそういった総合計画を立てております。で、それぞれその計画に従いまして、関係各省でも御努力をいただくというようなことを進めておるわけであります。特にこの工業用水につきましては、現在でも数個、地点地点を定めまして、政府の予算をいただきまして、これについて今後開発するための準備の調査を現在進めておる次第であります。
  483. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大体それでわかりましたが、この産炭地振興ということに対しては、私はすべての解決、これが根本的なものだと思うのです。それは離職者対策も大切でありましょう、失業救済あるいは職業訓練、いずれも大切だと思いますけれども、産炭地そのものを振興することによって、私はすべてが解決するのだ、かように存じておりますので、格段のひとつ通産大臣御努力を願いたい。  次に、文部大臣にお尋ねいたしますが、国立高専の問題で、一昨日でしたか、四十年度は決して寄付はもらわない、全部国有地でまかなうのだとういことをおっしゃっておったようですが、四十年度は七校のようでございますが、一体いつそれは国有地と交換されるのか、その点伺いたい。
  484. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 四十年度は七校開設をいたしまして、そのうち二校は国有地を使用いたします。それから自余のものは県有地と国有地とを交換をして、つまり地元の負担にならないように措置をすることに相なっております。
  485. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 交換することになっておると言って、たくさんそのまま放置してあるのがあるからお尋ねしている。いつこれは交換されるのですかということをお尋ねしたい。
  486. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 過去の経緯もいろいろございますから、四十年におきましてはすみやかに敷地を決定をする。大体もう話は済んでおるというふうに御了解いただいてよろしいかと思います。
  487. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それでは、三十七年度、三十八年度、三十九年度の三カ年間で、校地を全部国有地でまかなったもの、校地の一部を国有地でまかなったもの、純粋の民間負担で校地をまかなったもの、府県または市という地方公共団体で校地をまかなったもの、地方公共団体と民間と同盟会などをつくって同盟会などの名義で校地をまかなったもの、何校ありますか。その五項目について。
  488. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点については、しばしば当委員会でも問題になりました点でございますから、すでに御説明申し上げましたことと重複する点もあろうかと思いますけれども、こういう状態になっております。私といたしましては、四十年度においては、いま申しましたように、初めから原則的に国有地ということで処理をするという大方針といいますか、それで処理をいたしますが、同時に過去のものにつきましても、あとう限り御論議の対象になりましたようなものを処理をいたしたいと考えておるわけでございますが、用地の取得について、既設の国立高専が三十六校ございます。そのうち六校は当初から国有地を使用しております。それから二校はすでに交換を完了して国有地となっております。それから十七校については地元の希望によりまして用地の全部または一部について交換の話し合いを現に進めております。そのうち五校は交換の対象となる国有地の選定等がほぼ内定いたしましたと申し上げて間違いがないかと思います。したがって、早期に交換の完了が見込まれております。それからさらに残りの十一校につきましては、地方公共団体及び設置期成会等から無償で借用になっておりますので、現在の時点では交換の話し合いにまだ入っておりませんので、これらの点につきましては、交換ができるかどうか、あるいは借用料をどういうふうにしたらいいかというようなことに、さらに話し合いを進めたいと考えております。
  489. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 こういうことは、これは昭和二十三年一月三十日の閣議決定で、各官庁に対する寄付金等の抑制、これですね。私は、まあ大蔵大臣は強制したのじゃないと、こうおっしゃるが、寄付ということに関しては私は変わりはない、かように思いますが、無償で十一校借用していらっしゃる、あるいはまだ未解決のものは等価交換していないものがある。そういうずさんなことで、家を建てる、学校を建てる、これは地方財政を圧迫するものであって、当を得たものではないと、私は思うのです。文部大臣どういうふうにお考えですか。
  490. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは昨日も当委員会でも話が出ましたように、御承知のように、この国立高専の設置の要望というものが非常に熾烈でございます。その御要望の中には、たとえば土地には心配をするなというようなことも含めて、いろいろと地元の方々の御意見やあるいはいろいろと具体的に事を進められたような場合もございますが、いまにして思えば、私はしばしば申しますように、ことしの二月の参議院の決算委員会でも、違法という御指摘ではございませんが、少なくとも不適当ではなかろうかというような御指摘があったくらいでございますので、当局といたしましても、新たにそういうことは絶対にやらない、過去にその経過がどうであろうとも、なるべくすみやかに御趣旨のとおりに措置をしたいということで、ただいま御報告申し上げましたように、そのあるものはすでに具体的に実行が進みつつある。それから、自余のものにつきましても、できるだけすみやかに処理をいたしたいと考えておるわけでございます。  ただ、これも御承知のことと思いますけれども、無償でたとえば建物等を提供しておりますものも、具体的に点検をいたしてみますると、たとえば競技場の一部であったり、あるいは青年の家とか、高等学校の現在は不用となっておるものとかというものも多いようでございますので、直接に地方の財政を圧迫したというふうにも一がいに言えないかと思うのが多いんであります。しかし、これはやはりたてまえの問題でございますから、先ほど来申しておりますように、できるだけすみやかに処理をいたしたいと考えておるわけでございます。
  491. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 自治大臣にお伺いしますが、地方財政再建促進特別措置法の二十四条二項に、この寄付は自治大臣の承認を要するとなっておりますが、大臣はそのたびにこれは全部承認をされたのでありますか。
  492. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私、よく存じませんが、いま調べてみますると、許可の対象になったことはないそうでございます。
  493. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これは地方公共団体に、これはあとでまたたくさん例をあげますが、事実負担をさせておる。これは大蔵大臣に言わせるというと、強要じゃないというが、強要じゃないものが等価交換してくれと陳情に来たりあるいは財政的に逼迫して困っている、あえいでいると。その点、私は非常におかしいと思うのですが、大蔵大臣、どうお考えですか。
  494. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原則的には、先ほど文部大臣が申し上げましたように、国有地と等価交換をはかって、あとの残っております十一校の国立高専につきましてもそのような方向で処理をしたいと考えております。学校だけではなく、国の資源に基づく建物の地方の引き取り等につきましてもこのような例がありますが、こういうものも違法ではなくても妥当性がないという、また妥当性があっても議論の存するところであるということで、できるだけ早急に正常な状態にしたいと、財政当局にもこのように申しているわけでございます。  なぜこうなったかという問題を調べてみましたら、明治時代からなかなか長い歴史の存するところでありまして、これ、なかなか地元の熱意というものもあるのであって、ただこれを金銭的にだけ割り切ることもできないわけでありますが、あなたがいま指摘をせられましたように、強制寄付ではない、自発的な寄付であるといっても、国有地の交換等をしてくれといってくれば、これはそのとおりであります。特に私たちが国会でも国有地の等価交換等をいたしますと、こういう方向を明らかにいたしておりますので、もう学校も設置いたしましたし、そのあとはできるならば国有地と早く交換してもらいたいという申し出があるわけでありますが、いずれにしましても、地方の負担で国が仕事をするというようなことはしないように努力いたしたいと思います。
  495. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大蔵大臣のお考えはだいぶ変わってきて、以前は非常に、強要しているんじゃないのだから、これは寄付じゃないんだと、絶対そうじゃないと、こう突っぱられたものだから、それで私らもこれは大いにやるべきだと。だけれども、あなたのいまのようなお考えならば、だいぶこれは——そうして四十七度から一切そういうことはいたしませんと。だから、そういうふうに言われれば、これはだんだん少し話はわかってくるので、私もこれはしっかりやろうと思ってこんなに持ってきたんだけれども、少しこれはやっぱり変えなければならぬが、しかしですね、そういうことをおっしゃっておりますが、事実は、これは文部大臣にもひとつお伺いしたいのでありますが、地方財政を圧迫しておるという事実があるんです。  有明高専が三十九年度にできておりますが、これは大牟田市と荒尾市と三井鉱山会社と三者で二億円負担をしておる。大牟田市なんかは、これは再建団体になっておる。これを喜んで出すということはあり得ない。喜んでいないんだ。困っている。地方財政法第二条は、国は地方財政を助長するとあるんです。自治大臣、その見解は間違いありませんか。
  496. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 二条は御指摘のとおりでございます。
  497. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ところが、大牟田市はこれは再建団体ですよ。そうして自己財源の税収入というものは三十七年度においてわずかに十二億、その二十分の一を出しておる。それから、荒尾市は財政収入が一億九千万円。そうすると、これの五分の一に当たる四千万円を出しておる。大牟田市が六千万円。これは地方財政法の第二条に準拠して、第二条の精神が十二条になり、二十四条になっておると思う。自治大臣、どうお考えですか。
  498. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 御指摘のとおりでございます。
  499. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それでは、こういうのをいつ等価交換をしていただけるか。文部大臣、ひとつ。
  500. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この有明高専の問題につきましては、たとえば建物、校舎等で申しますと、中学校の分校を借用いたしたわけであります。それから、教員の宿舎等につきましては、民間の会社の寮を借り上げたものが九戸あるというようなわけでございまして、この場合におきましては必ずしも土地だけの問題ではございません。そうして土地につきましてはなるべくすみやかに処理をいたしたい。この件につきましては、先ほど申しましたように、まだはっきりとした話し合いがまとまらない分でございます。
  501. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 長野市は二億円負担しておりますよ。市長や助役は上京して、政府に陳情しておる。等価交換を一日も早くしてくれぬと困る。これが喜んで寄付とは言われない。文部大臣、ひと  つお答えください。
  502. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 長野の場合におきましても、校舎の一部を借り、あるいは教員の宿舎を借りたものもございますが、これらを含めまして、やはりこれも当時の事情、実際上私はつまびらかでございませんが、やはり設置の当初におきましては、そういったようなことについてできるだけのことをするのでぜひ早く設置をしてもらいたいということになって、その御要望にこたえたわけでございますが、しかし、先ほど来申しておりますように、それはそうとして、国としてもできるだけすみやかに適当の場所を見つけて国有地と交換をいたしたい。現にそういう措置を国としてなるべくすみやかにやりたいという姿勢でおりますので、長野の当局からも、早急に、すみやかにしてほしいというお申し出があり、ここで両者の話し合いが始まっておるという実情でございます。
  503. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 行政管理庁長官にお尋ねしますが、昭和三十七年の一月二十五日に法令外負担金、寄付金と地元予算措置についてということを勧告されておるが、この高専の問題に対してはいささかも勧告していらっしゃらない。触れていらっしゃらない。どういうわけですか。
  504. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 法令外の負担金、寄付金などの監察をいたしましたのは三十六年の一月でございます。このときには全般的に法令外の負担金、寄付金等についての監察をいたし、これについての勧告をいたしたわけでございまして、法令外の負担金、寄付金等の受納抑制の趣旨を徹底するということを一つ勧告をいたし、必要経費についての国の予算措置の励行ということを第二、第三は賃貸料改定についての適切な措置、四が人権擁護委員とか保護司等の特別のものでございますが、国と地方公共団体の経費分担区分を明確にしてもらう点、五は自治省の地方公共団体に対する指導監督の徹底、そういう五つの勧告をいたしたのでございます。包括的には入っておらないわけではございませんが、特に指摘をすることはいたさなかった、こういうことでございます。
  505. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がありませんので、あとまだ聞きたいことがあるから。  会計検査院長にお尋ねしたいのですが、検査院の第二局長は本院の予算委員会第二分科会でこういうふうに言っている。三十七年度、三十八年度の設置校についていえば、期成同盟会等から敷地の寄付の申し出のあるものはあるが、文部省はまだこれが寄付の採納をしておらぬ。同盟会から寄付を受けることが脱法行為であるかどうかは、同盟会の実情を十分調査して、また裏面の事情等を十分検討した上でないと一がいには申されない。こういうふうに見解を表明いたしておりますが、同盟会の裏面というのは一体どういうことであるか。そういうことを会計検査院が調査すべきものであるか。また、それから一年たっておりますから、どういうことを調査したか。そうしなきゃ見解を申し上げることはできぬと言っている。今日は見解を披瀝する時期に到達している、一年かかっているから。その点をお伺いしたい。
  506. 小峰保栄

    会計検査院長(小峰保栄君) お答えいたします。  一年前の予算分科会におきまして、私のところの第二局長がいまお読み上げになりました御説明をいたしたわけであります。どうも裏面というような、ちょっとあまりおもしろくないことばを使っておりますが、これは私ども局長にただしましたのでございますが、そこにも出ておりますが、期成同盟会と申しますか、こういうものが各所にたくさんできていたようでございます。これが寄付という、表面では自発的の寄付という形をいずれもとっていたわけでございますが、よく内容を調査するとあるいは強制に類するものも出るのではないか、こういうことを調査したい、こういう意味で裏面というような、裏面の状況も調査したいと、した上で態度をきめたい、こういうふうなことを申したのでございます。別にそう、裏面といいますと非常に妙なことばでございますが、そういう意味で申し上げたそうでございます。  この国立高専の用地の問題につきましては、ずいぶんいろいろ御議論が出ているわけでありますが、これは先ほども所管の大臣から御説明ありましたように、初めは寄付というようなことでスタートいたしまして、私どもも寄付ということでこれを見ていたわけであります。そこで、昨年のいまごろの所管局長の答弁でそういうような御説明をしたわけでありますが、その後、御承知のように、これは寄付というものはいろいろな弊害もありますし、おもしろくないと、こういうことで、国有地との等価交換という方向に政府方針が変わってきたようであります。現在、先ほどから御説明がありましたように、その方向に進んでおられる。私どもといたしましても、これは検査をずっと続けているわけでありますが、寄付ということになっておりました時代には、寄付の正式の行為があってから検査をしよう。会計検査は、御承知のように、あとからするのが大体の原則的な会計検査であります。そこで、正式の寄付の行為があってから検査をしてもおそくはなかろう、そういうようなことで、所管局長は当時、一年前には御説明したわけでありますが、その後、いま申し上げましたように、等価交換というようなことに変わってまいりまして、私どもとしては、現在では鋭意調査を進めている次第でございます。
  507. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これはまたあとで私は検査院にひとつよく聞きたいと思いますが、いやしくも政界とか同盟会の裏面を調査するなんというのはもってのほかですよ。どういう意味で裏面ということばを使ったのか。いまのあなたの御説明では納得できない。侮辱するもはなはだしい。裏面とは何です。もう一回その点をはっきりここで説明してもらいたい。
  508. 小峰保栄

    会計検査院長(小峰保栄君) 再び御説明いたしますが、先ほどの御説明を出ないかと思いますが、先ほども申し上げましたように、この寄付というものは自発的というのが一般の表面に出た形でありますが、これが強制でも伴っているのではないか。強制を伴いますと、先ほど御指摘がありましたように、二十三年の閣議決定というものから真正面にぶつかるわけであります。また、そういうものがあっては相ならぬ、こういうことで、十分に表面に、文書なんかに出ていない——自発という文書になっておりますが、それに出ていない面もよく調査したい、こういう意味で裏面という字をうっかり使ったと思うのでありますが、決していかがわしいようなつもりで使ったのではないのでありまして、これは私、実は、先ほどもお話ございましたが、決算委員会でもいろいろな御質問がありまして、そのときにこの一年前の局長の答弁というものを私、実は繰り返して読んだのであります。そのときも、裏面というような字はあまりおもしろくないではないだろうかというので確かめました。そういたしますと、いまのような説明でございましたので、私もああそうかということで、一応、いまさら取り消すわけにもまいりませんので、こういうふうに私としては了解したのでございます。どうもはなはだ妙なことばを申しまして恐縮でございますが、真意はそういうところにあるのでありまして、表面で自発というような形になっていても、実際は強制的なものではないだろうか、そういうものを調べたい、こういう趣旨で申し上げたそうで、ひとつどうぞ御了承願いたいと思います。
  509. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がありませんから、その程度にしておきますが、文部大臣にさらにお伺いしたい。  産炭地の教育についてですが、産炭地における児童生徒の生活はまことに言語に絶する悲惨をきわめておりますが、炭鉱離職者の生活困窮と地方財政の窮迫による社会環境の悪化が必然的にこの児童生徒に大きな影響を与えております。この産炭地の教育に対して抜本的にどういうふうに文部大臣はお考えになっておるか、また対策をどうお立てになっておるか、その点をお尋ね申し上げます。
  510. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この問題につきましては、私も非常に心を痛めておるのでございますが、御承知の有沢調査団、先ほども御指摘がございましたが、あの調査団の報告書の中にも、特に産炭地の教育問題、少年の惨たんたる状況ということについて御指摘がございまして、さらに、それに基づいて対策の示唆もあの報告書にも出ているわけでございます。私どもかねがね必要と思い、ある程度の措置をしておりましたところに、ちょうどその報告書もそうしたことを指摘されたわけでありますので、三十九年度の応急措置に引き続きまして、四十年度におきましてはこういうふうな措置を講じておるわけであります。  まず、一つは、就学援助の経費の問題でございます。これは従来も特別交付税等によって自治省にもたいへん御援助を願っておったわけでありますけれども、特に産炭地域における子供たちの就学の奨励につきまして、何と申しますか、別ワクと申しますか、五千万円程度の予算を組んでもらっておるわけであります。それから、ああいうところの特殊な状態でございますから、いわゆるカウンセラーという者の配置も非常に望まれておることであります。これにつきましては、全国的に三百二十人のカウンセラーの増員を認められておりますので、このうちで産炭地域になるべく多くの配当をいたしたいということで、ただいま関係の教育委員会等と鋭意打ち合わせ中でございます。それから、給食につきましても、できるだけの措置を、三十九年度以降引き続きさらにこれを増額して、給食の施設設備の整備費の補助金等についての配慮も加えておる次第でございます。なお、要保護、準要保護の家庭というものが全国の比率などとは比べものにならない非常な多くの比率を占めておりますので、要保護、準要保護家庭に対する措置は当然そのほうからも特別の措置ができるわけでございますが、ただいま御心配いただいておりますような点ごもっとも千万でございますので、なお十分の配慮をいたしてまいりたいと思っております。
  511. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ただいま大臣のお話しのとおり、私は、産炭地は一般の都会や地方とは全く様相を異にしておりますので、したがって産炭地教育の対策については特別立法によって文部大臣は国庫補助率の引き上げというようなことをお考えになっておるかどうか、そういう措置をおとりになるおつもりであるかどうか。あなたのおっしゃったような要保護家庭、準要保護家庭の補助率を二分の一を三分の二にするとか、教材費とか、あるいは理振法、産振法をもっと補助率を高めるとかいうようなお考えをお持ちであるかどうか、産炭地の教育は特別というお考えであるかどうか、ちょっとそれを。
  512. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま御説明いたしましたように、現在の制度の活用等によりまして特別の効更のある措置ができるものと信じて、これを進めておるわけであります。将来どうしても特別の立法というようなことが必要であるかどうかということは、また別の検討の課題であると思いますけれども、現在は、いま申しましたように、四十年度の各般の措置によりまして効更をおさめる、かように考えております。  なお、産炭地の特有の問題といたしまして、たとえば特殊学級の問題もございます。これも特殊学級の増加を年次計画で全国的にやっておりますけれども、その範囲の中で産炭地については特に、地元と十分協議をいたしまして、重点的に措置をしてまいりたいと考えておるわけであります。
  513. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いろいろお尋ねしたいのですが、産炭地における育英制度でございますが、高校生を対象として育英奨学資金の貸与人員のワクをふやすというようなお考えはいまのところございませんか。
  514. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 詳しい数字は、御必要であれば政府委員から御答弁いたしますが、実行上、現にやっておるのでございます。
  515. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あと政府委員の方からその数字を、私希望いたしますので、いただきたいと思いますが、次に、産炭地の現場の声として、学級編制の問題でございますが、もう少し学級増加をしてもらいたい、こういう声がございます。と同時に、職員の定員増、個人指導をする関係上、先生がよけい要るわけなんです。そういう声がございますが、そういう点においてどういうお考えをお持ちであるか、伺いたい。
  516. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御指摘のように、産炭地域の学校においての生徒指導の教員等の充実については、いろいろ御要望もございますし、それから、文部省といたしましても、何回かにわたりまして現地の実情も調査いたしております。四十年度におきましては、一例を福岡県にとりますると、標準定数の改善によりまして、大体三百人くらいの教員の配当の余裕と申しますか、これが出まするので、その分を配置いたします際に、産炭地域の特殊事情を十分考慮した教員配置を行なうようにいたしたいと考えております。この点につきましても、福岡県の県教育委員会と十分連携をとり、また、必要な指導を現にいたしておるような次第でございます。
  517. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 と同時に、義務教育において、小学校やあるいはは中学校において上級学校に進みたいと思っても、その家庭の貧困なために進学ができない、そこで義務教育の就学中に前途の希望をなくして、そして非行少年になる、親は失業しておる。せっかく優秀な頭を持って素質があっても、親は離職で、そして子は飢えに泣いておる、こういう悲惨な状態の家庭が多いのでありますが、そういう生徒児童に対して何か奨学資金でも貸与するというような制度をお考えであるかどうか、その点をもう一つついでにつけ加えてお伺いします。
  518. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほどもちょっと申しましたように、要保護、準要保護児童、生徒の援助につきましては、学用品とか教材費、修学旅行費、医療費、学校給食費といったような、いわゆる奨励費と申しますか、これにつきましては産炭地域振興臨時措置法というものもございますが、従来の既定の補助の上に、特に加算措置を数千万円行なうことにいたしたわけでございます。なお、それ以上にこの義務教育諸学校から上級の学校に進みたいというような人たちに対しましても、先ほど申しましたように、実行上できるだけ援助の手を差し伸べたいと考えておるわけでございます。それから、産炭地域はやはり特殊事情でございますので、いろいろと厚生省関係の問題その他と教育関係のほうが協力して指導しなければならない面も相当ございます。あるいは教職員がそのために過重な負担に悩んでおる場合もございます。そういう点につきましては、厚生省その他関係省と十分相談を進めておりまして、そういう点について遺憾のないように配慮をいたしておるつもりでございます。
  519. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 先ほどから大臣は、産炭地における特殊児童生徒の教育に対しても十分自分は考えておる、こういうお考えでございました。いま九州における産炭地において、中学校と小学校に特殊教育の該当者がほぼどのくらいおるように御調査になっておりますか。
  520. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまお尋ねの点は、いわゆる精薄児童と申しますか、そういう点にも触れてのお尋ねかと思います……。
  521. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そうです。
  522. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実数はただいますぐ調べてお話をいたしたいと思いますけれども、先ほど申しましたように、御案内のように、特殊教育は盲ろうとか養護学校とかいう問題と、それから、精薄の程度によりましては特殊学級で収容して教育をするわけでございますが、この特殊学級のほうにつきましては、全国で千学級四十年度も増加することになっております。小学校が四百十、中学校は五百九十でございますが、現在の実情から申しまして、この特殊学級も、できるだけ産炭地のような特殊の特殊児童がふえるところに配当をして教育をやりたいと考えておりますが、他と比べてどのくらいの人数になっておりますかは、ちょっとお待ち願いたいと思います。
  523. 福田繁

    政府委員(福田繁君) お尋ねの点は、福岡県の産炭地における、いわゆる特殊教育の対象となり得べき児童生徒の数であろうと思いますが、昨年五月現在で調べました数字によりますと、小学校で大体一万八千九十五人、中学校で一万六千三百九十三人となっております。  以上であります。
  524. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 さすがに福田局長だ、一名も間違えない。小学校では一万八千九十五人、中学校が一万六千三百九十三人、そのとおりです。ところが、それに対して収容人員が何人であるか、これをひとつ局長……。
  525. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 特殊学級に収容いたしております子供の数でございますが、これも昨年五月一日現在で調べたものでございますが、小学校で六百三十三人、約五十学級でございます。それから中学校で三百二人、約二十学級でございます。
  526. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それもそのとおり、小学校において六百三十三人、中学校において三百二人、この状態をごらんになってですよ、文部大臣、一万八千人からおるのにわずかに六百人、片方は一万六千人おるのにわずかに三百人、これで産炭地の教育を十分考えておるのだと仰せになる愛知文部大臣の感覚は、だいぶズレるんじゃないかと、産炭地は泣いておりますよ。悲痛な叫びをあげておりますよ。その点ひとつ文部大臣
  527. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点はまことに御指摘のとおりでございますが、ただ、同時に、全国で約六十三万人のこの種の生徒児童がございまして、これを特殊学級で収容しております。その比率は産炭地よりはるかに低いわけでございます。これは先ほど申しましたように、年次計画をつくって特殊学級をできるだけふやしていきたいという全国的な一つ問題がございます。したがって、これは産炭地域だけの問題ではなくて、これはまた産炭地域については御指摘のとおりでございますが、全国的にこの特殊教育の必要性、さらにこのスピードアップというこの施設学級等の増設の必要ということは、私も痛切に感じておる次第であります。
  528. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 だから私は申し上げた。全国的の問題であるから、なおさらこういうかわいそうな人たちを放置しておく、しかも、産炭地には他の地域よりもあなた力を入れているとおっしゃるが、その点は了といたしますが、私どもがかって学校長として長い間私も責任者でありましたが、事実そういう子供を扱ってまことに気の毒である。そういう児童生徒を持った親の心境というものはどうであるか。それが真に文部大臣として、青少年を教育するその任にある文部大臣としては重大な責任だと思います。この点をもう少しはっきり、本年度はこれだけやるのだ、何年後はこうやるのだ、法的にもはっきり特殊教育というのは載っておるのですからね。もう一回、ひとつ御迷惑千万だけれども、あなたの御見解を承りたい。
  529. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは先ほども申しましたけれども、私としてはできるだけすみやかな機会にいわゆる義務制というものを施行したい。しかし、それについては現実の収容の比率をまずできるだけ増加することが先決問題である、こういう認識のもとに、年次計画によって逐次学級をふやしていく、これを第一の着手の主眼といたしておるわけでございます。  それから、第二には、これは全国的に、特に全国の市町村等の当局者におかれても大いに関心を持っていただいて、特殊学級の設置等についての関心と熱意を大いに高揚する必要がある。これと文部省とがタイアップしていくということがどうしても必要である、私は機会あるごとにそれを各市町村の方々にも呼びかけているようなわけでございます。
  530. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間がきましたので、これでやめますが、最後に、先ほど文部大臣もその点に触れられましたので、私大いに満足ですが、産炭地における児童生徒の非行は、これは実に驚くべき状態でございまして、ゆゆしき私は社会問題だと思う。学校も警察もこの非行生徒の応接にいとまがない。実に学校の先生諸君は、授業もやらなければならない、家庭指導もしなければならない、また、非行生徒の指導もやらなければならい、学校の事務もやらなければならない、非常に労働過重になっている。そこで、先ほど大臣は校外補導というような意味においてカウンセラーというようなものも増員したい、まことにけっこうで、当然なことでありますが、現在産炭地、例は福岡県でよろしゅうございますが、どれだけのカウンセラーがいらっしゃるか、また、今回どれだけ増員しようというお考えであるか、これも現地のもう血の叫びです。これはカウンセラーをふやしたから非行がやまるということでもない、それのみでは私はやまるとは思わないけれども、少なくとも先生方の労働過重をいくらかでも緩和してあげる、そうして本然の教育の使命に渾身の力をいたして、後顧の憂いなく教べんがとれるように、そのようにしてあげたい、こう私は思う。その点ひとつ大臣のお考えを承りたい。
  531. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 昨年度福岡県におきまして、標準定数法のいわゆる定数の中で、小学校、中学校等に特に産炭地として増加した教員が、小学校におきまして約百四十八人、中学校におきまして二十一人という数字になっております。これは全部カウンセラーではございませんが、その大部分がそういった趣旨の職務をもって増置されたのでございます。  それから、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、四十年度におきましても、いわゆる福岡県の定数の中で、相当重点的にこの産炭地の教育に当たるべき教員を増置するというような計画をいま県教育委員会が持っておりますので、これにつきまして、まだ数は確定いたしておりませんけれども、四十年度におきましては、特に中学校の分野におきましてそういった職員を相当数置きたいという計画を持っております。したがいまして、私どもとしては県の教育委員会と協力しまして、いまその点を相談をいたしておる最中でございます。
  532. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 先ほど大臣は、三百名ほど定員をふやすのだということをおっしゃいましたが、その三百名の中にこのカウンセラーも含まれておるのか、三百名増員外に特別にまた考えていらっしゃるのか、その点ひとつ。
  533. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど三百人と申しましたのは、教職員の定数で配当し得る、何といいましょうか、人数でありまして、その中でできるだけ産炭地に比重を多くして配当をしていきたいものであるということで、県教育委員会と相談中であるが、カウンセラーはその別ワクになるわけでございます。
  534. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どうぞ産炭地の教育ということに対しましては、格段の御努力をお願いいたしたいと存じます。  じゃ、これをもって終わります。
  535. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 鬼木君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明十六日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会