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1965-03-12 第48回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十二日(金曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員の異動  三月十二日     辞任         補欠選任      佐野  廣君     大竹平八郎君      青木 一男君     二木 謙吾君      古池 信三君     竹中 恒夫君      杉原 荒太君     源田  実君      永岡 光治君     加瀬  完君      千葉千代世君     小林  武君      浅井  亨君     鬼木 勝利君      渋谷 邦彦君     小平 芳平君      曾祢  益君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 大竹平八郎君                 草葉 隆圓君                 源田  実君                 木暮武太夫君                 郡  祐一君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 竹中 恒夫君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 野本 品吉君                 二木 謙吾君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 稲葉 誠一君                 大倉 精一君                 加瀬  完君                 木村禧八郎君                 小林  武君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 米田  勲君                 鬼木 勝利君                 渋谷 邦彦君                 高山 恒雄君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        警察庁長官    江口 俊男君        行政管理庁行政        監察局長     山口 一夫君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        文部省体育局長  前田 充明君        文部省管理局長  齋藤  正君        厚生省公衆衛生        局長       若松 栄一君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  小山進次郎君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林大臣官房予        算課長      太田 康二君        農林省農政局長  昌谷  孝君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬郡  巌君        運輸大臣官房長  堀  武夫君        運輸省港湾局長  佐藤  肇君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        運輸省自動車局        長        坪井 為次君        運輸省航空局長  栃内 一彦君        郵政省郵務局長  長田 裕二君        労働政務次官   始関 伊平君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       松永 正男君        建設省道路局        長       尾之内由紀夫君        建設省住宅局長  尚   明君        自治省財政局長  柴田  護君        自治省税務局長  細郷 道一君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、浅井亨君、佐野廣君、永岡光治君、千葉千代世君が辞任され、鬼木勝利君、大竹平八郎君、加瀬完君、小林武君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上、衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。大倉精一君。
  4. 大倉精一

    大倉精一君 きょうは三矢問題について若干お伺いしますけれども、資料の問題につきましては、すでに昨日米田委員が取り上げておりまするので、これには触れませんが、ただ、国民諸君疑惑を持っておるのは、この問題もまたうやむやになってしまうのではないか、こういう疑惑を持っておる。私も実はその一人であります。したがって、きょうはそういう方面から総理にお伺いするのでありますけれども、資料の問題についてはいま申し上げましたとおりでありますけれども、その前にぜひとも確かめておきたいことは、岡田君が提出した資料、これは間違っておるのか間違っていないのか、防衛庁長官からお答えを願いたいと思うのであります。
  5. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 岡田委員から衆議院予算委員会において指摘されました文書の件でございまするが、前の委員会においてもお答え申し上げましたとおり、全然同一と申し上げるわけにはまいりませんが、岡田委員指摘されたような、おおむね同じような内容を有する文書はございます。
  6. 大倉精一

    大倉精一君 全部同じじゃないと言われましたけれども、ではどことどこが違うか御指摘を願いたい。
  7. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 岡田委員がお持ちでございます文書も私のところのほうでは拝見をいたしておりませんので、先ほど申し上げましたような、おおむ同ねじような内容を持つ文書がございますというお答えをいたしておる次第でございます。
  8. 大倉精一

    大倉精一君 これはなぜ私がお尋ねするかといいますというと、閣僚諸君外部に参りまして、あるいは一部の妄想であるとか、あるいは刺激的な部分をとってかってに推測をしたものである、こういうことを発言をし、これが新聞雑誌その他に報道されております。これは非常にゆゆしい問題でありまして、岡田君も政治家としてこういう重要問題を予算委員会の中に提出する以上は、確信のあるものを提出しておると思うのであります。すなわち、政治生命にもかけて提出しておると思います。でありますから、これは防衛庁がはっきりしてもらいたい。どことどこが違うのか。見ておらぬとは言わせません。新聞にも書いてある。これははっきりしてもらいたい。
  9. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 先ほど申し上げましたとおり、岡田委員の御所有になっている文書等をまだこちらのほうでも拝見いたしておりませんので、そういう、詳細にわたってどこどこが違うということは、申し上げるわけにいきませんで、先ほど申し上げましたとおり、おおよそ同じような内容文書があることは事実である旨を申し上げておるわけでございます。
  10. 大倉精一

    大倉精一君 防衛庁長官、あなた一番初め冒頭に、おおむね同じと、大体同じだと言われた。これは読まずにどうしてわかりますか。おおむね同じだ、大体同じだというようなことは、あなた、これを読まずにどうしてわかりますか。
  11. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) おおむねと申し上げましたのは、岡田委員衆議院予算委員会において指摘された部分がございます。そういう点が、おおむね同じような文書があると申し上げたわけでございまして、岡田委員の御指摘になった部分でもあるいは全文が読まれていない部分もございますし、前段だけで後段が抜けているところもございますし、あるいは後段だけで前段を御省略になって読まれている点もございますので、おおむね同じような内容のものがあるということを申し上げたわけでございます。
  12. 大倉精一

    大倉精一君 それでわかりましたが、確かに、岡田君の資料というものは抜粋した資料です。したがって、私のお尋ねしておるのは、その抜粋した資料の中でどこが違うのだと、こう言っておるのです。全部を言っておりません。岡田君が抜粋して出しておりますから、その抜粋して出しておる部分のどこが違うのか、これをひとつ御指摘を願いたい。
  13. 海原治

    政府委員海原治君) 細部のことでございますので、私からお答えいたします。  一つの例を申し上げますと、岡田委員が配付されました資料の中で、情勢が切迫してまいりますというと在日米軍自衛隊指揮する、こういうような表現になっております。これは、そういうことは全然ございません。原文は、もともと、これは有事の場合のアメリカの陸海空の軍隊についての指揮権のことでございまして、原文には、これは在日米軍司令官と、司令官ということばが入っているわけです。この司令官があるとないとでは、非常に意味が違ってまいります。それで当該の個所であったところは、有事の場合には在日米軍司令官というものが陸海空米軍の部隊を指揮するということが書いてあるのでございます。岡田委員の御配付になりましたものは、在日米軍指揮する、こうなっておりまして、したがいまして、ある雑誌では、自衛隊在日米軍指揮を受けるようなことになるという批評が書いてございます。こういう点は一番顕著な違っております例でございます。
  14. 大倉精一

    大倉精一君 そのほかにありませんか。
  15. 海原治

    政府委員海原治君) 字句的には、私がいろいろ見ましたときに、先ほど大臣からお答えいたしましたように、形容詞が抜けておるとか、あるいは段落が違っておる、あるいは句読点の位置が違うということでございます。一番大きな、抜けておりますのは、いまの例でございます。さらに、たとえば、いわゆる徴用、徴集関係のあります人員強制募集という点につきましては、先ほど大臣が申されました、非常に重要な点が抜けておりまして、答案の中には、強制徴集ということは現行法——これは憲法を含んでございますが、現行法の範囲で非常に疑義があるということを、疑いがあるということをはっきり書いております。さらには、かりに強制徴集人員強制獲得というものが可能であったとしても、本来、防衛というものは国民防衛意識というものが前提にな仕ればならぬ、したがって、国民防衛意識が盛り上がらない場合において強制的に人を集めてみても何にもならぬ、こういうことが書いてございます。こういうことは申しております。
  16. 大倉精一

    大倉精一君 それでは、その違った個所はその他あると思うのですけれども七資料として出してもらえますか、指摘してもらえますか、文書として。
  17. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) ただいま御指摘のことにつきましては、十分検討いたしまして御返事を申し上げます。
  18. 大倉精一

    大倉精一君 これは、防衛庁長官、いけませんよ、何を検討するんですか。出すか出さぬかを検討するのか、あるいは、どこが違っておるかということを検討するのか、どっちですか。
  19. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) いま申されましたことを一切含めて検討いたしてみます。
  20. 大倉精一

    大倉精一君 これは出すんですね。長官、出すんですね。あいまいなことでなくて、ずばりずばりとものを言ってもらいたい、時間がかかるから。
  21. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 検討いたしました結果御返事を申し上げます。
  22. 大倉精一

    大倉精一君 これはなぜかというと、資料提出について前例があるから、前科があるから言うんですよ。出すか出さぬかだけ言ってください。いま局長も、違っておる一部を指摘されました。その他にもあれば、文書をもって出してもらいたい。いまの指摘を含めてですよ。出すか出さぬか。
  23. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 違った部分を、先ほど防衛局長が一、二指摘いたしましたが、そのほかにも、岡田委員が述べられたこと等十分検討いたしまして、出すか出さぬかということの一切を含めて検討いたし、後日御返事を申し上げるということを申し上げておるのであります。
  24. 大倉精一

    大倉精一君 いま指摘をされた部分は、そうたいしたことではない。そんなにたいしたことではない。その他の部分の違っておることを出して、そうしてこれをまた国民の前に明らかにしなければならぬ。社会党としても、この問題まっ正面に取り上げておるんですから、かりに違ったものを、字句はいいですよ、字句や何かこまかいことは、根本的に違っているようなものを出したということになればたいへんですから、ぜひとも出してもらいたい、もう一回聞きますが、出してください。
  25. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) いま申されましたとおり、国民の前に明らかにしなければならないと私どものほうでも考えまして、審議に御協力申し上げておるのでございまして、いまお申し出の点は、私のほうでもよく了解をいたしておりますので、十分検討をいたしまして御返事を申し上げるということでございまして、出さないと申し上げておるわけではございません。
  26. 大倉精一

    大倉精一君 先ほど局長指摘された以外に違ったところがあるかどうか。
  27. 海原治

    政府委員海原治君) 先ほど申し上げましたところが、現在私の記憶に残っているすべてでございます。
  28. 大倉精一

    大倉精一君 それじゃ、大体そのほかはないと見ます。でありますから、これもまた防衛庁長官は読んでおらぬと言うが、読んでおるからそういう違うところがわかるんですよ。うそは言わぬように。  そこで、その次に総理にお伺いしますけれども、こういうことを研究する、あるいはこういうようなかっこうでもって演習するということは、これはけしからぬことですか、あるいはあたりまえのことですか。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自衛隊自身研究すること、また演習すること、これは私は当然だろうと思います。その内容等につきまして、その演習の結果を採用したとか、こういうことだといろいろ問題が起こるのではないでしょうか。ただいま演習していること自身は、本来の責務、職務を遂行している、かように私は思います。
  30. 大倉精一

    大倉精一君 総理は、この問題が衆議院に提起されたときに、断じて許すことはできない、けしからぬ、こういう発言をせられておりますが、それから心理状態は変わってきましたね。あなたは、どうも空気の振動でことばが変わってくるようであれば、一体どれを信用していいかわかりませんので、衆議院冒頭において、これはけしからぬ、これは許しがたい、こうおっしゃったが、いかがですか。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時の速記をよく読んでいただけばよくおわかりだと思います。私は、岡田委員が、クーデターを計画しているとかいうことで、声を大にしてその演習報告を読み上げられた。いわゆる演習報告なるものを読み上げられた。そのとき私がお答えしたのは、もしさようなことがあるならば、これはけしからぬことですと、かように答えたのです。
  32. 大倉精一

    大倉精一君 あなたは、それに引き続いて、責任を持って処置する、政府におまかせください、こうおっしゃっているんです。何を処置するんですか。
  33. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えしたとおり、岡田委員のような考え方で演習をしているなら、これは不都合きわまることだ、かように思いますが、ただいままで調べましたところ、自衛隊は自然の、また本来の職務を遂行している。別に問題があるようには思いません。
  34. 大倉精一

    大倉精一君 非常にあなた変わってきたですね。私は非常にこの問題は重視しているんですよ。それじゃもう一ぺん聞きますけれども、差しつかえなければ、やはりこういうような内容でもってこれからもやらせるんですか。こういう内容演習はこれからもやらしても差しつかえないとお考えですか。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままでのところ、これはもうたびたび御報告いたしておりますように、この演習想定、それに基づく各部員報告——リポート集計等がかようなことでございます。今後どういうような演習計画を持ちますか、これは自衛隊防衛庁自身がいろいろ研究されるだろうと思います。私は、ただいま言われている政治優先、こういう立場、これはくずさないようにいたしたい、かように考えておりますが、いわゆる制服なるものがそう行き過ぎたことはしないだろう、かように私は思います。ただいま本年の演習計画はどういうようになっているか、私はそれを一々聞いてはおりません。
  36. 大倉精一

    大倉精一君 これは単なる研究と言いますけれども、与えられた想定というものが、現行憲法では断じて許されぬ想定なんです。こういう想定のもとに演習をやる、これは重大な問題じゃありませんか。たとえば、これは単なる想定の羅列であると、こうおっしゃいますけれども、この羅列した想定ということは、戦争遂行に必要なる想定なんです。あるいは演習遂行に必要なる想定なんです。そうでなかったら、こういうふうなものは別に何でもないのだ、まあ来たら、おれはこれは許可しないんだ、こうおっしゃれば、一体自衛隊は何の演習をやっているのでしょうか、架空演習をやっているのでしょうか、運動会の演習ですか、そうじゃないと思う。きっちりしたところの想定のもとに演習しなければ、自衛隊の任務はつとまらぬと思うのですね。こういうものを架空のものである、あるいはかってにやっているものである、そういうようなことでは、これは重大問題であると思うのですけれども、あなたはこれでもって差しつかえないのだ、そういう想定で差しつかえないのだ、こういうぐあいにお考えですか。
  37. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 例年図上演習なるものをば実施をいたしておりまするが、ただいま問題になっておりまするいわゆる三矢図上研究なるものは、例年のものよりは人員その他、少しく規模を大きくして広範にわたって図上研究をしたということでございます。将来——昭和四十年度並びに将来にわたって同じような図上演習が行なわれるということはないのでございまして、その年度年度において各幕において相当の設定をいたしましてこういう演習を行なっていくわけでございまして、今後はこういう問題についても十分細心な注意をいたしたいと考えております。
  38. 大倉精一

    大倉精一君 私の聞いているのは、防衛庁庁官、私の聞いているのは、将来特にこういうような想定のもとに演習をやらせるのかどうかということですよ。この想定が大事なんです。想定が。普通の演習ならば差しつかえない。こういうような現憲法下においては許されないような想定下において演習をやらせるのかということを聞いておるんですよ。
  39. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 元来、三矢図上研究なるものは、御承知のとおり内部の研究答案をまとめたものでございまして、外部に出すべきものではないというのがこの原則でございます。このいわゆる内輪の答案というものが外部に出たというところに問題が発生をしたのでございまして、こういう書類が外に漏れたということにつきましては、まことに申しわけないのでございまするが、これが公開さるるというような前提でつくったのではございませんので、公開いたしますると、用語その他の点については不適当なものがあることは否定できないのでございます。今後は、こういう想定等について、憲法に抵触するとか憲法をおかすとかというようなことをば、制服は毛頭考えておらないのでございまして、これが問題になりましてからも、制服諸君は、自分らが毛頭考えなかったことであると、これが憲法違反ではないか、憲法に抵触するのではないかというような一部世の中の論議に対しまして、彼らはむしろがく然といたしておるというのが今日の彼らの心境の実相でございます。将来にわたりまして、こういう想定のもとに図上研究をやらせるかという御質問に対しましては、私は、十分に将来こういう誤解がないように、規定その他についても慎重に注意しなければならぬということを先ほども申し上げており、また、その方針でございます。
  40. 大倉精一

    大倉精一君 いまの答弁の中で非常に重要な問題があるのですけれども、長官は、この想定憲法違反だと言われておる。ところが制服は、これが憲法に抵触するかといってがく然としたと、こうおっしゃる。そうしますと、制服には憲法の教育はしていないのですか、どうでしょうか。
  41. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 制服の中でがく然といたしておるという意味は、一部世評に対しましてがく然といたしておるのでありまして、自分らは憲法違反とか憲法に抵触するとかというような意図はごうも持っていなかったという意味において、がく然といたしておるということでございまして、彼らにそういう意図があっての想定研究であったとは、私はごうも考えないのでございます。さりながら、先ほど来申し上げましたとおり、社会の一部に相当な誤解を与えておりますので、今後は、図上演習といえども、想定その他については慎重な配慮をしなければならぬ、また十分注意していきたいということを申し上げておるわけでございます。
  42. 大倉精一

    大倉精一君 これは明らかに、どういうぐあいな言い回しをされましても、いわゆる与えられた想定、つまり朝鮮のほうに侵入してきた、こういうことに一体国家がどうあるべきか、どういう体制であるべきか、そういう当然研究がなされて、その上に立ってこういうものが必要であるということでもって演習に入る。当然ですよ、これは。がく然としたということは、やっておる最中に憲法違反を知らなかったからがく然としたんでしょう。憲法違反を犯せば当然国民はおこりますよ、不安を持ちますよ。私はもうこれ以上申しましても、あなたはぐるぐると逃げるだろうけれども、総理大臣、どうでしょうか、いま防衛庁長官が言われましたように、この与えられた想定というものは憲法違反である、でありまするから、憲法違反であれば、将来は、現憲法の存する限りは、こういう想定のもとでは演習はできない、こう当然断定すべきでありますけれども、いかがでしょう。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、そうは思わないのですが……
  44. 大倉精一

    大倉精一君 どうしてですか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たとえば自衛隊自身が、侵略を受けた、そういう場合におきまして軍事行動をする、これに対応する、それはだれも異存はない。これは異存はない。だから、その範囲においての演習は、これはやっぱりやるべきことだと思います。ただ、そういう意味のことはやるべきだ。しかして、行き過ぎがあったとただいま言われる。これを採用して、そうして政府の意向をきめたと、こういうことになったら、もう確かに行き過ぎだとおしかりを受けてもこれは当然だと思う。しかし、制服制服の考え方の上に立って、自分たちは戦闘行為を遂行していくのだが、こういうような状態では戦闘行為は遂行はできないと、そこで、どういうことを今度は政治の面において要求するとか、こういうようなことがあるのは、これは当然だろうと私は思いますけれども、だから、その自身がそこまでやるんだ、制服自身の責任においてやるのだ、こういうところに問題があるのではないか。私は、別に制服であろうが制服でなかろうが、また国民の一人であろうが、やっぱりそういう非常時に際して、政府に対してかくあるべしと、こういう要求をすることはちっとも差しつかえない、かように私は思います。
  46. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますると、制服というものは憲法に違反しておろうが、しておるまいが、こういう状態のもとでは政治というものはこういうぐあいにやってもらいたい、あるいは国家総動員をこういうぐあいにつくってもらいたいという要求をする。要求する以上は研究するのですけれども、それはあたりまえのことだと、こうおっしゃるのですね。しかし、これはあなたはおそらく許可されますまい。そうしますと、できない演習をやっている、できない演習を。何のための演習ですか。演習というのは、これは戦争というものをまねることじゃないですか。しかしそれはさておきましょう。さておいて、そうすると、制服というものは、やっぱり国を防衛するためには、そういう政治の問題なり、あるいは国家体制の問題なりを研究して、そうして政府のほうに要求する、これは当然だと、こうおっしゃるのですね。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも要求するということばは不適当のようですから、これはいま真剣にこの問題と取り組んでおりますから、そこに誤解がないように願いたいと思います。私は、望ましいことといって申し出ることはあり得るのではないか。これは制服であろうが、だれであろうが、民主主義国家においては、そういうことについて批判もし、そうして望ましいことであるならば、政府に対するそういう進言もする、かような状態になるだろうと、かように思います。ただいま三矢研究そのものがやや分を過ぎているのじゃないのかと、こういうような御批判であろうと思います。いずれそういう点は小委員会等で明確になるだろう、これもまた明確にすべきことだと、かように私は考えます。
  48. 大倉精一

    大倉精一君 いまあなたの答弁で非常に矛盾した点が二つ、三つあるんですが、それは、第一番には、最後に言われた小委員会において検討するとおっしゃるが、資料を出さずに何を検討するか。岡田君に出したものは公文書ではありません。あれをもとにして立法府が検討するというわけにはまいりません。あなたがそうおっしゃるなら、私はまた蒸し返す意図はありませんけれども、その資料を出してください。  それからもう一つは、いま国家体制はどうあるべきだ、あるいは政治はどうあるべきだということを進言するということは重要だとおっしゃるが、そのことは国防会議というものがありはしませんか。国防会議と合同演習をしなきゃほんとうはうそじゃありませんか。国防会議というものはどういうものなんですか。国防会議の役割りじゃありませんか。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの幕僚演習そのものは、いずれは一つの限度があるだろう。国家意思を決定すると、かような場合になりますと、いま御指摘になりましたあるいは国防会議と、こういうことになりましょうし、あるいはまたもちろん国会の賛同を得なきゃならない。これがただいまの憲法のたてまえでございます。私どもがかってなことはできない、かように私は考えております。したがいまして、いま問題になっておりますのは、その最終段階、そういう状況ではない。いまようやく第一歩が始めたばかりなんだ、こういうところをいまのお話のようにいかにも最終段階に政府がかくのごとく態度をきめたと、かようにきめつけられるということは非常に困る。また、制服も、かような立場で最終的な意思決定をしたと、かように考えられることは非常に迷惑だ。そういう点は今回の審議でも非常にはっきりしてまいるのではないかと私は思うのです。これはいずれにいたしましても、国民すべてがわが国の安全におきまして非常な心配をしている、安全に関する考え方をいかにあるべきかということをいろいろ考えておる際でございますだけに、この種のことははっきりさすことが望ましいと、かように私は思います。したがいまして、皆さんの御意見も中途でとめるようなことは私はしないつもりでございます。
  50. 大倉精一

    大倉精一君 国の安全は確かにみんな心配しております。おりまするが、自衛隊がそういうことをやること自体、これが国の安全に対して非常に国民が心配になるもとです。  そこで、今回の場合におきましては、そういう憲法違反の問題をかってに取り扱ったんですけれども、あなたは処置をなさる、こうおっしゃったが、責任者の処罰ということはどうなるのですか。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままでのところ、私が処分をしなければならないというものはないようでございますが、この扱い方につきましては、十分慎重にし、誤解を受けないように、こういうことはすでに注意もし、戒告も発しておるような次第でございます。
  52. 大倉精一

    大倉精一君 あなたのその言でいきますと、まあほおかぶりして済まそうと、こうお考えのようですね。国民もそういう心配がある。だから私は聞いておるのですけれども、そうしますと、自衛隊というものは政治に介入してはいけないということがありますね、自衛隊法第六十一条、これとの関係はどうなりますか。ちょっといま読んでみますけれども、自衛隊法第六十一条第一項に、「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し」——この次ですよ。「又は何らの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与し、」こういうことをしては相ならぬと書いてありますね。そこで、「政令で定める政治的目的」、これは、自衛隊法施行令第八十六条第五号、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。」。さっきあなたがおっしゃったですね、政治の方陣を変えますね、あの研究は。政府に要望しますね。そういうものを研究し、要望する、こういう目的、これは何らかの方法によってでも関与してはならぬとある。これはどういうことになりますか。
  53. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) いわゆる三矢研究文書の中にも、自衛官が政治に介入するとかというような事象は何らございません。また、もちろん先ほど来から申し上げますとおり、政治介入とか憲法違反とかというようなことは毛頭考えておるわけではないのでございます。たびたび申し上げますとおり、三矢図上研究なるものは、幕僚の研究の途上における答案の集まりでございまして、まだ統幕事務局で決定したものでもないし、防衛庁の正式文書でもありませんし、いわゆるシビリアン・コントロールの働くような段階までこれが持ってきておるわけでございません。全く答案の集積でございまして、政治介入とかあるいは憲法違反とかというような具体的事象はないのでございます。
  54. 大倉精一

    大倉精一君 質問の要旨をしっかり聞いておってもらいたいと思うんですけれども、政治に介入したとか介入していないとかここに書いてないですよ。「関与し、」と書いてある。でありますから、いまもあなたこれは制服研究過程のものであってと、こうおうしゃる。そういうものを研究することは関与することでしょう。そういうのを研究しちゃいけないですよ、この自衛隊法で。そうなっていますよ。(「そうでない」と呼ぶ者あり)そうでないというなら、その根拠を聞かしてもらいたい。そう書いてある、法律には。
  55. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 政治に介入するとか…
  56. 大倉精一

    大倉精一君 関与ですよ。
  57. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 関与するとか、そういうような方向を全然とっておらないのでございまして、私は、自衛官が自衛隊法にのっとって、政治に介入するというようなことは全くない、自衛隊法がかたく守られておると信じておるわけであります。
  58. 大倉精一

    大倉精一君 介入とは言っていないですよ。この法律に書いてあるのは、「関与し、」と書いてある。しかも政令で定める目的の中に、「政治の方向に影響を与える意図」、こうでしょう。防衛庁長官、この非常事態の場合に、政治の方向に影響を与える意図を持っておるですね、これは。そうしてもう研究をしていることは、これは政治に関与しておるでしょう。どうですか。
  59. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 法律の解釈の問題でございますので、一応申し上げさしていただきます。  御指摘のように、自衛隊法六十一条には、御指摘の条文がございますが、この六十一条は、「これらの行為に関与し、」というのは、「寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもってするを問わず、これらの行為」、つまり、利益を求めたり受領したりすることについての行為の関与でございますから、これには当たらないことは明らかだと思いますが、そのあとで「政令で定める政治的行為をしてはならない。」というのがございます。むしろ御指摘はそちらのほうかもしれませんが、この政治的行為をするというほうは、本件の場合には全く研究課題における答案でございまして、政治的行為に関与する意図というものはそこには全然ないわけでございます。したがって、六十一条の問題が、まあ詳しく言えば、さらに「政令で定める政治的目的」に該当するかどうかと、かりにこの行為があるとして、さらにそういう問題がございますが、まずもってその行為には当たらない。とにかく行為をする意図というものはそこにはないわけでございますから、単なる答案でございますので、六十一条の問題がそのままなまで働くという段階にまでは立ち至っていないというふうに思うわけでございます。
  60. 大倉精一

    大倉精一君 長官、さっきあなたは総理発言を聞いておりますか。こういうような政治のあり方等について研究をしてそれを政府に要望進言することはこれは差しつかえないと、こうおっしゃった。進言する以上、研究して自信がなければできませんよ。これは明らかに政治の方向を変えることじゃありませんか。しかも、これを慎重に研究するということになれば、いわゆる政治に関与することになるのじゃないですか。違いますか。
  61. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 総理の御発言は、そういうことが望ましいと思うというような点にとどまっておられると思いますが、本件の場合は、実はそういうことではなくして、しばしばこちらで政府側の御答弁がありましたように、一つの研究課題に対する解答としての答案の中にそういうことが入っているだけで、そういう場合には、行為をする意図といいますか、そういうものがそこにあらわれていると見るほうが無理ではないかということでございます。
  62. 大倉精一

    大倉精一君 これは、長官ね、私は法律はしろうとですけれども、日本語で書いてあるから読めばわかりますよ、ちゃんとわかりますよ。さっき佐藤総理の言ったことは、明らかにこれに該当するんだ。該当するかしないかということを非常に疑問に思ったものですから総理にいろいろこう申してきたんですよ。そうしたら、研究をすることは差しつかえないんだ、研究して進言することはいいんだ、きめるのはこっちがきめるんだ、シビリアン・コントロールはそのときに発動するんだと、こうおっしゃる。そういうことを研究するのは、国防会議なり何なりでもって研究して、こういう想定でもってやれと、こうおっしゃるのは、これは別なんですよ。鉄砲を持っておる連中がこういうものを研究して政府にこれをおやりなさいと、あるいはやっていただきたいと、これは逆じゃありませんか。これは憲法違反ですよ。さっきも言ったでしょう、憲法違反ですよ。したがって、この六十一条の政令に該当するじゃありませんか。あなたどう言ったって該当する。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が法律を解釈すると政治的に解釈をするようにお考えだから、ただいま法制局長官に純法律的に説明させたつもりでございます。私が先ほど来申しているのは、これはもう国民全部がそういうことをやり縛るのだと、こういう意味のお話をしたつもりでございます。ところが、そういう点について制服がただいまのようなそれを目的に研究することは一体どうかと、こう言われると、これはいろいろの議論があるだろうと思います。たまたま研究の結果、そういうところへ到達したと、そういう意味でその研究も一応報告をまとめた、こういうことならば、いわゆる憲法違反としておしかりをする、まあしかるというわけにもいくまいし、もちろん先ほどから言われるように、国防会議もありますし、国会もあるし、そういう正規の機関を無視するわけにはいかぬ。しかし、一般国民全部がこの国防についてのいい考え方を持つ、わしはこういういい考え方を持っていると、こういうものがあれば、その考え方をとめる手はないのだ、かように私は思います。したがって、今回の三矢研究なるものが、問題は、行き過ぎたのかどうか、そういうところがいま疑問になっておるんだろうと思います。行き過ぎがあったのかどうか、そういう意味の御議論をされているんだと私は思います。もうこれが憲法違反だと、かようにきめつけることはどうかと思いますが、行き過ぎがあったかどうか、そういう点については、しばしば申し上げておりますように、これは報告した段階だと、さような研究でございますので、その点は御了承を、また同時に御洞察願いたい、御同情を賜わりた  い、かように私は思います。
  64. 大倉精一

    大倉精一君 あなたはまあ国民であればだれでも研究して考えることは自由だとおっしゃるが、なぜ自衛隊制服にこういう規定があるかといえば、これは武装していますよ、自衛隊は。武装しておる。武装しておりまするから、でありまするから政治に関与しては相ならぬと、こうなっておる。あなたは、それは国民の一人だからかまわぬと、こうおっしゃるが、たいへんですよ、これは。私はこれ以上論議しませんが、私はこれは明らかに自衛隊法の違反であると思います。長官、これがあなた違反ということがどこかではっきりしたらどうしますか。騒ぎますよ。それで、これはここでは平行線だからやめますけれども、もう一回お尋ねしますが、こういう自衛隊法に違反をするもの、あなたから言わせれば違反するおそれのあるもの、あるいは憲法違反——これは確かに憲法違反だ——憲法違反になるもの、そういう想定のもとの演習ということは、これは許されない、むしろ無意味ですね、戦争に役立たぬ演習だから。戦争に役立たぬ演習なんてのは無意味ですよ。でありまするから、こういうような演習はこれからはやらせない、こういうぐあいに承知していいですか、念のため最後に聞きます。
  65. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 先ほど来申し上げておりますとおり、三矢研究と同一のものをば今後やらせるかどうかということに対しましてもお答えをいたしておりまして、十分注意をいたし、想定等にも世上一部の誤解がないように、慎重な注意をいたすと申し上げておるのでございまして、今後の演習については、想定その他についても慎重なる注意を促しつつ、自衛隊としての当然な任務遂行のための図上演習その他はもちろん遂行をしていかなくてはならないのでございます。
  66. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。いまの問題に関連して質問いたしますが、総理の御答弁の中で、今回の研究が行き過ぎたかどうかということが問題である、こういうことが一つありました。法制局長官の答弁の中では、今回の案件については政治に関与するという内容のものではないというふうな判断が答弁でございました。そうすると、行き過ぎたかどうかということ、あるいは政治に関与したものではないといったような判断は、どうやって下すかということが問題だと思います。いままでのように、この問題についてひた隠しに隠されておると、われわれには行き過ぎたのか行き過ぎないのか、あるいは制服が政治に関与しているのかしていないのか、判断のしようがないじゃないですか。ですから、再三申し上げておるように、われわれが行き過ぎであるかないかを判断する上においても、資料を当然私は詳細に提示をするのがほんとうだと思う。それをひた隠しに隠すというのは、やはり表面にあらわせば、行き過ぎを指摘されることをおそれて隠しているというふうに判断せざるを得ない。だから、資料について提示をするという意味のことがありましたが、検討しておる、検討した上で回答するというんですが、国会が終わってしまってから回答されても間に合わないんですから、いつこの提示についてどういう内容のものを出すということの回答が得られるかということ、この点を明らかにしていただきたいと思います。  それから、防衛庁長官が、慎重に注意すると言われた意味は、漏れたことがよくないから、漏れないように慎重に注意をするんだというふうにわれわれには聞き取れた。漏れないようにやっておる分には何をやられてもこれはわからぬということになる。そういうふうに自衛隊制服国民に対して秘密を持っていいのかどうか。その研究内容は当然外交問題にもわたってくるわけです。外交上の判断、たとえば中共なり北朝鮮が日本に対して武力侵攻を行なうなどというようなことは、それ相応の根拠がなければならないことなんでありますし、外交上の問題であります。そういう外交上の問題、国政上の問題についての判断を自衛隊が独断で行なうということがいいかどうかということも当然あるわけです。ですから、これらのことを考えてみますと、資料の提示ということについては、やはり明らかにしてもらうことがこれは当然だと思います。だから、いつまでに出せるかということをここで総理からもはっきり言明していただきたい、こう思います。
  67. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 総理と私との間の考え方は同じございまして、総理が行き過ぎその他の点については十分考慮しなければならぬと申されましたのは、私も用語その他の点について今後十分慎重な注意をいたしたいと申し上げておるわけでございます。  なおまた、秘密を漏れないようにするということに慎重な注意をするのであるかどうかということでございまするが、もちろん各省とも決定の間に至る途中においては、やはり各省間の機密というものはあるのでございまして、そういう公表の段階に至らない以前においてそういうことが漏れることは好ましくないのでございまして、そういうものも十分注意いたしますとともに、また想定の出し方、あるいはその答案に対する用語等にも十分注意をしなければならないと、こういうふうな意味で申し上げておるわけでございます。  なお、資料の点につきましては、昨日も当委員会において総理大臣がさらに検討をしてみるということでございまして、私のほうでも総理の御趣旨に従いましてさらに検討をしておる段階でございまして、いつ幾日までにどういうものが出せるということは、今日の時点においては申し上げかねるのでございます。
  68. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 その検討しておりますだけじゃ見当がつかない。それは総理自身が言っているでしょう、行き過ぎがあったかどうか。あるいは法制局長官も内容は知っていると思う。内閣のほうでは内容を知っておって国会のほうでは全然わからない。だから、じゃこれは行き過ぎであるかどうかということは、事実を明らかにしてもらってからわれわれのほうで判断をさせてもらいたいと思うのです。だから、事実を明らかにしてもらいたいということを再三再四言っているわけなんです。その事実を明らかにすることすらも秘密であるからできないというふうにおっしゃるのかどうか。そうでないと言われるならば、何日までに明らかにするかわからぬというふうなことではなくて、今度の国会で現在審議をしているこの段階に間に合うように出すおつもりがあるのかどうかもあわせてはっきりさせていただきたいと思います。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 瀬谷君にお答えいたしますが、ちょうど昨日も同じような議論が再三再四あったわけでございます。そうして当時も政府側の意向もさらにもっと明確なお話もいたしました。しかし、皆さま方のたっての強い御要望がありましたので、昨日答弁いたしましたように、たっての御要望でございますので、さらに検討いたします。こういうことで進めさしていただいておるところであります。また、昨日の話がきょうは全然また新しい立場で展開されておるようでございますが、そういうことも審議の経過においてあったという点も御了承いただきたいと思います。
  70. 大倉精一

    大倉精一君 おそらくきょうの三矢問題の質疑応答を国民が聞いたら、全くあ然として嘆くだろうと思っております。もう少し総理として自衛隊に対する考え方をき然たるものを持ってもらわないというと非常に心配です。普通のグループじゃありませんから、あれは。き然たる態度を持ってもらいたいということを要望いたしておきます。  それからきょう日本経済新聞の一面トップに非常に重要な外交問題が載っておりまするが、いわゆる南ベトナムの最高権威筋ということで特に名を秘しておるようでありますけれども、生野特派員の報道によりまするというと、ようやく南ベトナムに終戦といいますか、機運が出てきた。そこで、日本より仲介に入ってもらうところはないということを言っておるようですけれども、近くまた松本さんも向こうに行かれるようですけれども、こういう向こうの要望があるということは非常に重要な問題だと思いますけれども、総理はこれに対しましてどういうぐあいなお考えを持っておいでになるか、念のために聞いておきたいと思っております。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ベトナム紛争につきましては、私がしばしばわが国の基本的態度を申し上げましたので、わが国の態度はもう非常にはっきりしていると思います。これはもう重ねて申しません。ただ、きょうの日本経済に出ているその記事について、またさらに平和へのあっせん、そういうことが一歩進むのではないか、こういう期待を持たれることこれ自身が、すでにこういう戦火を通っておるその立場からの人々の考え方だと思います。ただ、新聞に伝えられただけでございまして、まだ正確な情報はつかんでおりません。これに対しましてとやかく日本の態度を申し上げることはいかがかと思いますので、差し控えさしていただきます。
  72. 大倉精一

    大倉精一君 この問題につきましては、これは世界じゅうの人が注目をしているものでありまして、特にアメリカと親しい日本の動きというものもやはり世界じゅうの人の一つの注目ではなかろうかと思っております。私は、むしろ、この新聞にも書いてあるように、ベトナムのほうでは、特に日本がアメリカと親しい、こう書いてありまするが、そうであれば、むしろアメリカのほうに話をして、そうして早く終らせるようなそういう働きかけをするという役割りが日本にあるような気がするのでありますけれども、そういう点につきましてはお考えはいかがでありましょうか、念のためにお伺いしておきます。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもの主張またその立場はよく大使館等にも伝えてございますので、ただいま積極的な外交ルートでどうこうするという段階でないのでございます。もちろんこれは効果が上がることを考えなければならないものですから、そういう意味でやや慎重である、かようには言われるかもわかりませんが、まだ具体的にはさような態度をとるわけにいかない、かように思っております。
  74. 大倉精一

    大倉精一君 次に、外務大臣にお伺いしますけれども、きのう韓国の外務大臣との会談があったと聞いておりますけれども、その経過内容について御報告をお願いしたいと思います。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一昨日韓国の外務部長官がアメリカ訪問の途次、夕方日本に立ち寄りまして、一泊して、昨日アメリカに立ったのであります。正式には二十日数日過ぎたころに訪日をするということになっております。わずかの時間でございまして、表敬のために見えまして会談をいたしました。さらにこの機会において日韓会談と並行して日韓の貿易会議を開く、こういう行事をいたしたわけでございます。ただ、開会式をやったにすぎませんで、実質の討議は外務部長官の出席を待たず十七、八日ころから始まるということになっております。そういったような打ち合わせの問題、さらに日韓会談をめぐってのいろいろな日韓両国の環境、そういったようなものについての報告をし合ったという程度の会談でございます。
  76. 大倉精一

    大倉精一君 この問題についてはきのうのこの委員会でいろいろと取り上げられておりますので、ただ私は非常に国民全部が日韓会談については大きな関心を持っておりまするので、あくまでも基本線というものをしっかり守って、そうしてこの問題の解決のために努力していただきたいということだけを要望して一おきます。  そこで今度は総理大臣にひとつ激励演説になるかもしれませんけれども、今度の国会におきましては、いわゆる交通事故防止について、施政方針演説であなたはその熱意を披瀝されました。交通事故は大きな社会問題となっております。瞬時も放置できませんというぐあいな決意を表明されました。私たちは非常にけっこうだと思います。おそらく毎日生命の危険にさらされておる国民諸君は、この総理の演説をほんとうに拝むようにして実現を待っておるだろうと思っております。が、しかしながら、交通事故というものは作文はできまするけれども、なかなか容易なものではないと思います。何か関係閣僚懇談会で承認をされたパンフレットをもらいました。もらいましたが、ああいう程度の項目の羅列だったら三十分か四十分でできます。そのほかにも非常に深いものがあります。まず第一には、今日のようないわゆる交通問題が緊迫をしてきた原因というものは、これは交通基本問題調査会のいわゆる島田答申にも指摘をされておりますけれども、いわゆる物価と同じように高度成長経済だけを馬車馬のように走ったがために今日のような事態が起こった。私もここに統計を持っておりますけれども、一般産業投資に比して交通投資というものは非常に立ちおくれております。これが今日の原因になっておると思うわけでありまするが、そこでこの問題はえらい人がたくさん集まって議論をして何かかんか言うよりも、交通事故の原因になっておるのは何であるかということはだれでも知っておると思う。そうむずかしいものではない。問題はこれを具体的に解決をしていくこの熱意がなければ、この問題は解決できません。会議々々でやっておるうちにも何人か死んでいくと思います。でありまするから、具体的にこの問題と取り組んでいかなければなりませんが、これには予算の関係もあるでしょう。いろいろな関係はありまするけれども、そういうこのものの実態に関する総理大臣の御認識と決意のほどをもう一ぺんひとつこの機会を通じて国民に披瀝をしてもらいたいと思っております。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大倉さんから交通事故、交通による死傷、こういうものを防止しろという、これはたいへんな激励を受けたわけであります。私まず第一に考えますことは、この種の死傷につきまして、いわゆる社会の悲惨事、かように新聞その他で伝えておりますが、ほんとうにお互いが身近な問題としてこれを感じているだろうかということをまず第一に考えます。まとまって死傷する、たとえば夕張の炭鉱が爆発したとか、あるいは三池がどうしたとか、これはもう非常にはっきりしておる。またあるいは列車が転覆だとか、こういう事故、この事故を私ほ承認するわけではございませんが、こういう事柄についての関心は非常に大きく示される。しかしながら、日々全国にわたって生じておる交通の死傷事故というもの、これはそれにつながるほんとうの身近な方は、これはたいへんその災害を心で心配し、また、悲嘆にくれる、かようなことはあるだろうと思いますが、いわゆる国民全般の問題としてこういう問題を取り組んでいない、こういうところがいかにも残念でならないのであります。私はこれを取り上げて、そうして交通法規をいかにしろとか、あるいは道路の構造はかくあるべしとか、あるいは端はもっと使えとか、あるいは無免許運転は一切取り締まれとか、あるいは泥酔はこれをやめろと、かようなことを申すよりも、まず第一、一番大事なことは、国民自身が身近に起こっておるこの問題、これをほんとうに真剣に考える、そういうことが必要なのではないだろうか、かように思いまして、省議で取り上げるのはいかがかと思いましたが、実はことしの初めに取り上げたわけでございます。私はあらゆる面においていわゆる人間尊重といいますか、そういう立場からものごとを考えてみたい。また、これは同時に今度は個人の利益尊重も考えなきゃならぬ。最近の交通機関の発達は、これはすばらしいものでありますから、そういう意味でいわゆる歩行者優先、これがいつまでも守られると、こういう筋のものでもないだろう。やはり新しい便益にそれがフルに効用を発揮するようにあるべきだと思います。しかし、やはりどこかにというよりも、交通事故そのものについて国民が真剣に考えれば、あのむずかしい歩行者優先の原則も守られていくのじゃないか、かように私は思うのでございます。いずれ各界や各層の方を集めて、それらの方の御意見も聞くつもりでございますが、一番の基本的問題は、身近な問題にこの事柄を取り上げていく、それが一番の問題解決の要点だと、私は実は考えるのであります。これはしばしば言われておりますように、家庭の主婦の方々が、自分の子供は、あるいは孫は、はたして、きょう学校に行ったが、無事に帰ってくるだろうか、かように心配している。かようなことは、私どもも政治の面でこれと真剣に取り組んでいこう、これにはもちろん金もかかります。あるいはまた、法規も整備しなければならない。また、国民自身の協力を得なければこのことはできないだろう、かように思いますので、最もむずかしい事柄、その精神の面、同時に行動の面の協力、こういうことに重点を置いてのこの問題の解決に乗り出してみたい、かように私は思います。
  78. 大倉精一

    大倉精一君 交通関係閣僚懇談会で、国民会議をつくるということをおきめになって、そして十三日に発足をする、こういうことも聞きました。これもけっこうでしょう、けっこうでしょうが、ともすれば、従来、こういうような会議は、政治責任の隠れみのになるというおそれが十分にあります。何かいえば会議で相談してもらいまするから、何かいえば会議で検討してもらいまするから、こういうことになる。たとえば今度の会議でも、これが間違っておったならば訂正しますけれども、十三日の会議は、八十四名中発言をする人が十六名求めております。したがって、一人五分、一人五分ずつ十六名がぺらぺらしゃべって、二時間やって一体どんなものができるか。私はこの会議に反対するのではありませんよ。こういうものにあぐらをかいておってはいけないのであって、具体的な施策をどんどんやっていく。ただ、いま総理は、国民の協力とおっしゃる。おそらく国民の注意力なり精神力なりに求めておいでになりますけれども、これには限度があります。たとえば、早い話が警察庁の方がおいでになるかもしれませんが、これは間違っておれば訂正しますけれども、毎日新聞でありますか、読売新聞でありましたか、キャンペーンに書いてありましたが、全国で危険個所を調べて、これに要する費用は一千億、これだけあれば全部直ってしまう、こういうことも書いております。問題はそういうところに、私はこの交通事故の解決の、すべてではありませんけれども重要な問題だと思うのですね。ですから、私は、これから私の当面気のついておることを逐次項目ごとに関係閣僚にお伺いしますから、あなたの決意をこの回答によって裏づけをしてもらいたい、こう思うわけであります。  第一番に、交通事故というのはやはり人間と車がやるのでありますから、人間と車をどうするか、ここから始まるわけです。そこで私は、自分がドライバーではありませんからわかりませんけれども、運転免許の現在の制度、これは一体これでいいのか悪いのか、検討されたことがあるのかないのか、あればその意見を専門家から聞きたいと思っております。
  79. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 運転免許制度についてお答えいたします。  ただいまおっしゃるように、交通対策のうちの重要な部門として、運転者の教育といいますか、良質なる運転者の確保という点に大きな重点があると思いますが、率直に申し上げまして、従来の私たちの仕事のうちで最も立ちおくれておるといいますか、不斉一である点が運転免許の面にあるわけです。そういう点から、昨年でございましたか、特に、その専門の課を設けて検討をいたしておりますが、とりあえずは、今回、今国会に御審議を願っておりまする道交法の改正におきましても、運転免許の改正という点に一つの重点を置いてやっていくという案を提出いたしまして、目下御審議を願っておるところでございます。なお、それだけでももちろん十分だとは申せませんので、将来もこの点は力を入れる一番大きな仕事として努力をしたい、こういう考えでおります。
  80. 大倉精一

    大倉精一君 この問題を私は聞いておるのは、法律をつくることではない。法律はできますよ。文書を書けばできます。問題は、いかにして運転手というものを、何といいますか、優秀な運転手を世の中に出していくか、設備、施設の問題です。これはおそらく民間のほうに委託になっておると思うのですけれども、やはり、もう少し政府のほうで責任を持ったかっこうにしないというと、早い話が、修理をすることも知らないような人が町を走っておる、こういうかっこうがあるようでありまするけれども、そういう点も、この際、改めなきゃならぬと思いますけれども、いかがでしょうか。
  81. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 現在の運転免許のとり方は、従来は、ほとんど全部が府県の試験場に参りまして、実技、構造等すべて警察官の前で試験を受けまして、さらに法規試験を受けて通るというようなやり方でございましたが、非常に数がふえてまいったということと、それからまた、民間の教習所等を充実して、その協力を得るほうが適当であるということから、ここ最近、指定教習所というものを設けまして、これは一定の資格が要ります。また、設備についての一定の制限がございますが、その資格のあるところを卒業いたしました者につきましては、実技だけを省略して免許を与えるという実情でございまして、初めから終わりまで、すべてをそういうところにまかしてやってもらいたいというわけじゃ、もちろんございません。しかし、現在の運転免許をとる者の半数近くがそういうところで練習をしてくるという状況でございますから、将来はその教習所の充実と申しますか、そう簡単に、いまおっしゃったようなものを卒業させないというような方向で指導してまいりたいと考えます。
  82. 大倉精一

    大倉精一君 細部にわたっては委員会等でやるとしまして、特に人の問題が非常に重要でありまするから、国家公安委員長としても、特にひとつ留意をしてもらいたいと思っております。  それから労働大臣お急ぎのようですからお尋ねしますけれども、特に路面関係の労働者、これが非常に激しい労働強化で、しかも賃金は安い。そこで無理して走るということで、全く戦慄するような場面にちょいちょい会うのですけれども、この路面交通労働者の労働条件というものを労働者として特に監視をし、留意をする必要があると思うのですけれども、大臣の御所見と、どういうぐあいに施策を持っていくか、これについてお伺いしたいと思います。
  83. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御説のように、路面交通労働者の労働条件の過重のために、その労働者自身の条件が悪くなるばかりでなく、ほかの人口に影響を与えます。労働省といたしましては、昭和三十一年から特にこの路面交通労働者の労働条件の向上に留意をいたしまして、特に三十一年には、いままで基準法施行上特例を設けておりましたのを撤廃をいたしました。三十二年、ちょうど私初めて労働省に参りましたと声、いわゆる神風運転の問題がやかましくなっておりました。労働条件の向上、特に固定給を重視するというような指導をいたしてまいりました。その後も重点作業といたしまして、たとえば仮眠施設その他の充実、あるいは賃金問題としては固定給を拡大するというような方向で特に留意しつつ指導監督に当たっているところでございます。
  84. 大倉精一

    大倉精一君 この前の国会において労働災害の防止に関する法律、これが成立をいたしましたが、その後、これの成立後の運用の状況はどうなっておりますか。さらにまた、たしか労働組合の幹部が三十名ないし五十名か参画をする、いわゆる安全パトロールの要員として参画をする、こういうことになっておったと思うのですけれども、どういうような状況になっておるか御報告を願いたい。
  85. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 昨年の国会において成立を見ました労働災害の防止に関する法律に基づきまして、昨年の八月一日、まず全体の団体の設立を見まして、その後逐次各種業界ごとの団体の設立を見ておるところでございます。安全確保のために、まず第一、団体を通じまして人命尊重の観念を普及徹底させることに重点を置いておるのでありますが、その効果をあげますためには、それぞれ各種業態に応じた具体的な施策も必要と存じておるのであります。また、このために労働団体あるいは労働者代表の参加協力ということも非常に大切でございますので、その団体等におきまして、それぞれ具体策を練って、実行に移していくようになっております。本年度予算におきましても、この団体の活動その他について相当額援助をいたしておるところでございます。
  86. 大倉精一

    大倉精一君 時間がありませんからこまかいところは飛ばすとして、いままであまり取り上げられていなかった問題、つまり交通公害でありますが、地方道路を走るというと、沿道の民家は非常に悲惨な状態です。みんな戸を締めておる。これは確かに道交法違反になっておるはずだ。ドライバーは、道交法の第何条かによりますと、ぬかるみを通るときにはどろよけをつけるか徐行するかして、他人に迷惑を与えちゃいけないという法律がある。これは違反者は三万円ずつ払わなければならぬ。本来なら、三万円ずつ持って通らなければいかぬのですけれども、そういうような実態、大臣もお通りになったと思うのですけれども、これは何とかしなければいかぬと思うのですけれども、建設大臣いかがですか。そういうところを特に手当てする計画がありますか。
  87. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。ただいまのお話はどろよけのお話と伺っております。
  88. 大倉精一

    大倉精一君 どろよけじゃない。
  89. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 問題は、根本的に道路をよくしろというお話のようでありますから、私どもでやっておるところを申し上げますが、一番根本的にやりたいことは、舗装をやりたいわけであります。舗装につきましては、現在すでにどんどん進めておりまするし、いままでは改良してから舗装というふうな考え方も取っておったのでありますが、昨年度からは相当な幅があれば舗装するという制度に切りかえまして、四十三年までには県道以上七〇%ぐらいまでは舗装ができるつもりでおります。四十七年ぐらいになりますと、県道以上は全部舗装できる、こういう目標を立てまして、ただいま進めておりますが、そのほかにほこりよけとしましては、各県で現在やっておりますけれども、塩化カルシュウム系統のほこりどめで、簡単にほこりを押える方法がありますので、こういうようなことも奨励しながらやらしているわけであります。
  90. 大倉精一

    大倉精一君 総理にこの際特に要望しますけれども、いわゆるはなやかな道路建設の陰に隠れて、こういう地方の沿道の住民は、まことにどうも目をおおうような悲惨な状態にあるようでありますから、これは非常に関係官庁等も多岐にわたっておるようでありますから、総理として、この施政方針演説の中にあるこの決意をもって、特にひとつ御指示を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 交通事故から見ましても、必ずしも都市にだけ死傷者が集中するわけじゃございません。最近の統計を見ますると、警視庁管下、たいへん昨年に比べて成績がいいようであります。しかしながら、いなかと申しますか、地方においての事故がむしろふえておる。交通量も少ない、そういう場所でこういうことがある。私はまことにそれは残念に思います。ただいまこの交通事故と直接関係はないが、道路整備の問題についてお話がございました。大倉さんもだが、私自身もいなかが選挙区でございます。そういう意味で、いなかの方から、地方の方からそういう意味の御要望をしばしば聞きます。たとえば、雨が降った日はかさは空に向かってはさせないじゃないか。あるいはまたこのひさしは何度直してもいつもトラックにやられるのです。こういうようなことをしばしば伺いますので、道路整備という点におきましても、これは地方にまんべんなくいくように十分工夫していきたいものだ、かように私は考えます。これは地方を回れば必ずこのことは出てまいりますので、交通事故防止と同時にあわせて道路整備を十分いたしたいものだと、かように考えます。
  92. 大倉精一

    大倉精一君 それじゃこの点につきましては特にひとつ御留意を願いたいと思う。  そこで、港湾関係について御質問申し上げまするが、御存じのように、港湾労働等対策審議会から、去年の三月三日に答申が出ておりますが、労働省のほうからは、港湾労働法というのは出てまいりましたが、運輸省のほうにおいてはさっぱり何の音さたもないのですけれども、どういうこの答申に対する取り組み方をやっておいでになるか。運輸省のほうの取り組み方ですが、具体的にどういうぐあいにおやりになっておるか、これをひとつお尋ねしたい。
  93. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。いわゆる三・三答申について運輸省としての対策はどうかということでございますが、この答申は、港湾における雇用の安定と港湾運送事業の近代化及び港湾の管理運営の改善を円滑にするという、広般かつ画期的な対策の実施を示唆したものでありますが、答申に基づく施策の実施は、労働行政と事業行政とが両々相まって適切に実施されることこそ効果が期待されるものであります。答申の趣旨を十分に尊重いたしまして、これが実施を鋭意検討中でございます。
  94. 大倉精一

    大倉精一君 鋭意検討中ということですけれども、もうすでに一年たっておりますが、これは港湾局長でもいいですけれども、作業はどういうぐあいに進んでおるか、具体的にひとつ御説明願いたい。
  95. 佐藤肇

    政府委員佐藤肇君) 港湾運送事業の近代化につきましては、四十年度内におきまして、まず第一に、事業者団体を公益法人化して、これを一本として事業者もこの問題について意思を統一してもらうということで、公益法人化を目標にやっております。  次には、免許の切りかえが約八五%程度済んでおりますが、なお一五%残っておりますので、これにつきましては六月に完全に切りかえを終わるということを目標にして行政指導をしております。  なお、運送事業の近代化、また港湾労働というものを効率化するという意味から、荷役の機械化ということが必要でございますので、これは三十九年度におきましては、特定船舶整備公団との共有方式によりまして一億円の荷役機械の整備をしたわけでございますが、四十年度におきましては、その倍近くの二億円の整備をすることにいたしております。  それから四番目に、中小企業をいかにして近代化するかということでございますが、これにつきましては、すでに中小企業近代化資金助成法による融資の道がつけられまして、さらに合同を進めていく上におきまして、中小企業近代化促進法の対象とすることをいま通産省と折衝中でございます。  さらに、次の国会に提出することを目途といたしまして、限定免許、全部下請け禁止の規定というものを検討いたしまして、事業規模の拡大と一貫作業体制を強化する、こういう方針のもとに事業法の改正を現在検討中でございます。さらに、必要に応じましては、六大港におきまして近代的な埠頭業の確立をする、こういうことを考えまして、これらについての法的措置についても現在検討中でございます。
  96. 大倉精一

    大倉精一君 これは労働省と十分に連係をとって、そうして両方が一緒にいかぬというと、お互いに関係があるのでしょう、これは。ですから両方とも歩調をそろえていけるように緊密に連絡をとってやってもらわなければならない。  関連いたしまして、きのうも米田委員から暴力の問題がありましたが、特に港の暴力、これは非常に今度は根が深いのです。働く人がみずから暴力に対決するといって立ち上がっておりますから、労働大臣、運輸大臣並びに公安委員長のほうも警察庁のほうも御協力を願いたいのですが、一言だけ伺っておきます。
  97. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 港湾労働法は港湾労働に従事する諸君の福祉の増進と港湾労働の労働力の確保ということを主要な目標としてやっておるのであります。むろん先ほど発言のように、この効果をあげますためには運輸省との緊密な連絡を保たなければならないのは言うまでもございません。緊密な連絡を保ちつつ、かつ同時に急いでやらなければならないことと思っておる次第であります。  それからもう一つ、いま御指摘の暴力の問題ですが、福祉の増進と申しましても、何をおいても健全な文化的秩序の中で働けるようにならなければならないのでありまして、この法律の制定と実施に伴って労務秩序というものの確立を通じて、いまわしき世上の批判を浴びております状態の改善に努力いたすつもりであります。むろんこの数日来、特に労働組合あたりも、当該労働に従事しておられる労働組合が、みずから暴力的支配に対して立ち上がっておることを聞いております。非常に心強く感じております。労働省としてもあとう限りの協力を惜しまないつもりでございます。
  98. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 港湾荷役に介在する暴力団の排除につきましては、いま鋭意これに努力をしておるところでございます。できるだけこれを、先ほど労働大臣のお話のように近代化に向かって努力しております。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 暴力追放、これはなかなかたいへんな仕事であります。しかしながら、ただいま建設関係、非常に意気込んでこれをやって、また各界の協力も得ておる、こういうことで、たいへん私は喜んでおります。一日も早く明るい文化的な社会をつくる。ただ、ここで誤解のないように願いたいのは、この暴力あるいは組等におきましても、正業につくことをやっぱり考えてやる、そうして十分の配慮をしてやらないと全体としてはまずい結果になりやしないか、かように思います。また、ただいま港湾荷役等がいわゆる暴力に支配される、かような言い方をしておりますが、もちろん暴力に支配されることは困る、あるいは興行関係等においてもそういうことは厳罰主義でいくと、かように思いますが、ただその憎むあまり、これらの人たちが正業につくことをもはばむ、そういうようなことがあってはならない。その点は十分理解し、そうして協力のもとにこれを遂行して、明るい社会の建設に努力したい、かように思います。
  100. 大倉精一

    大倉精一君 運輸大臣の答弁抜けましたけれども、特に運輸大臣に要望したいことは、港の暴力、あるいは交通運輸関係の暴力団については、某新聞にはきちんと名前まであげてその幹部を指摘しております。特にこの交通関係の争議がありますというと、必ず暴力団が介入する。でありますから、こういうケースに対しましては、免許の取り消し、あるいは免許をしない、こういうひとつ大臣としても決意をして、この暴力団の消滅に御協力を願いたいと思いますが、いかがですか。
  101. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えをいたします。いま御指摘になりました点に対しましては、われわれのほうも非常に手配師の問題、このボスの問題に対しましては非常に心を痛めておりますが、ただいま労働大臣、自治大臣総理大臣の仰せになりましたような方向に向かって、いろいろとわれわれのほうも努力をいたしております。  また、港湾労働法が今年御審議願って通過していただくのでありますが、二カ年の間にやるというのを、こういった関係がありますので、この日雇い労働者というものに手帳を——登録制の制度を円滑に運営するためには相当の準備が必要になってくるのでございます。そこで運輸省といたしましては、この間におきまして、港湾労働者の近代化に対応するような港湾労働事業の近代化の対策のために、法的、予算的あるいは行政的の措置を講じまして、両々相まって港湾の近代化を促進するようにいたしたいと思うのでございます。  なお、ついでに申し上げたいのは、ここで問題になるのはあぶれ補償制度の問題でございます。これがどうも労働法から見れば実におかしなことでございますけれども、船が一ぺんに入ってくる、ところが月給で雇っておるものではなくて、一ぺんに人が大ぜい要るというと、散らばってしまったら集めることができなくなってしまう。また、特殊な技能が必要であります。そういうことで、神戸港といたしましてもいろいろと相談を受けました結果、まあある程度のあぶれ賃を出すということが一つの問題になりまして、荷主側と船主側、あるいは港湾運送事業者等がいろいろ資金を考えまして、そうしてこのあぶれ賃を出して日雇いの散らないようにする反面に、やはりこの手配師というようなものが、いままで暗躍といっては悪いのでありますが、まあお手伝いを受けなければならないといったような、この社会における近代社会に非常におくれた状況があることもお含み願いたいと思います。これに対しましては、石田労働大臣も非常に御理解を願いまして、労働省と自治省とわれわれのほうと、三位一体になって、これの近代化に努力をいたしたいと思って鋭意努力中でございます。
  102. 大倉精一

    大倉精一君 まああとはそれぞれ委員会におきまして、時間がありませんから。  最後に、航空問題について三百お尋ねしたいと思っております。まずもって、最近の全日空の飛行機がまた行くえ不明だというような話でありますけれども、どうなっているのか、大体の経過をひとつ御説明願いたいと思います。
  103. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) この間の全日空の事故に対しまして、その後鋭意努力して捜査いたしておりますが、いまだはっきりいたしませんけれども、その経緯に対しましては航空局長から答弁させます。
  104. 栃内一彦

    政府委員(栃内一彦君) 全日空の事故機のその後につきましては、海上保安庁、あるいは自衛隊の応援、また警察等が全力をあげて捜索いたしておりましたが、現在までまだ発見されておりません。現在の態勢といたしましては、いろいろな情報をもとにしまして、有力な情報がありましたら、その情報に基づいて直しに全日空の飛行機で捜索をするというような態勢になっている次第でございます。
  105. 大倉精一

    大倉精一君 最近、航空事故が非常に頻発をしておりますけれども、これもそのときの直接の原因ではなくて、やはり原因になるものが非常に多いと思います。特に航空関係におきましては、最近、過当競争が非常に激しい、こういうことを聞いておりますけれども、これによっていろいろな無理が生ずるのではないかと思うのですけれども、そういう状況について御報告を願い、さらにまた対策についての御答弁を願いたいと思います。
  106. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答え申し上げます。不当競争の防止対策いかんということでございますが、すでにローカル線につきましては、いままで非常に弱い経営をいたしておりました北日本航空、日東航空、富士航空の三社はすでに合併いたしました。そうして日本国内航空というものが成立いたしたのであります。中日航空の路線の部門は、全日空の空輸に統合されたのでございます。この企業の整理統合によりまして、過当競争の防止をはかってまいりました。また日本国内航空につきましては、さらに経営の基盤の強化をはかるために、幹線運労を新たに認めまして、この際、同社を含めた幹線運営三社に対しまして、その投入機数等については規制することにより、不当競争の発生を防止いたしたいと存じて、いろいろ手を打っておるのであります。日本国内航空につきましては、幹線運営の開始と宣伝に急のあまり、業界の秩序維持の点からは一部行き過ぎがあったと言われておりますが、これらに対しましては厳重に規制をいたしておりまして、秩序を破ってまで競争をして無理をしないように戒めてきておるのでございます。国際航空に対しましては、日本航空一手にまかせて、これらの路線の拡大に御承知のような努力をいたしておる次第でございます。
  107. 大倉精一

    大倉精一君 過当競争の問題もあり、それから人員、設備の不備という問題も非常に多いと思うのですね。ローカル線へ行きますというと、大体滑走路の長さが千六百メートル要るというのですけれども、あるいは千八百メートル要るというのですけれども、大体千二百から千四、五百しかない。こういうところもあり、夏は非常にあぶないということも聞いております。こういう設備もしてもらわなければならぬ。それからまた、全日空の救難の場合におきましても、救援態勢というものが確立されていない。たとえば海上保安庁、あるいは航空自衛隊、あるいは民間等々が独自にやっておるが、法的根拠がない。こういう救援の法的根拠を与えるというそういうお考えはないかどうか。
  108. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいまの海難のみならず、あらゆる災害に対する統一された基本的な法律が必要ではないかということはわれわれも痛感しておるのでございますが、これは関係閣僚並びに総理大臣と相談いたしまして、いろいろと今後研究を、早期にこれは必要であると思っておりますから、いたしたいと思っております。
  109. 大倉精一

    大倉精一君 時間がありませんから、詳しいことはできませんが、ただ一点、かつて小牧空港で非常に悲惨な事故が起こりましたが、そのときいろいろ国会でも審議をしまして、大臣からも、あるいは局長からも、いろいろな約束がありました。その後その約束に従ってどういうぐあいに改善されておるか、この具体的な内容について御説明願いたい。
  110. 栃内一彦

    政府委員(栃内一彦君) 小牧事件以後の事故対策につきましては、個々の問題非常に具体的でございますので、私からお答えいたします。  あの事故が起こりましてから、いろいろ対策が注がれましたが、一番大きく取り上げられましたのは管制の問題でございます。と申しますのは、小牧事故につきまして管制上の問題がからまっておったからであろうと思いますが、当時管制本部はいわゆるジョンソン基地の米軍の基地内の地下にございまして、非常に環境も悪うございましたので、これをまず環境のいいところに整備しなければならぬということで、これはおかげさまですでに久留米町に新設されました。そのほかレーダーによる管制、これも箱根のレーダーを設置中でございます。そのほか航空路管制につきまして、新しい施設を逐年整備しております。また、空港におきますレーダーにつきましても、主要な空港から逐次これを整備しておるというような点、あるいはまた管制官の待遇につきましても、一昨年でございますか、おかげさまで若干の優遇措置が講ぜられたというようなことで、逐次整備を進めておりますが、今後も引き続きこれらの基本的な問題の解決をして、事故が起きないようにという基盤を確立するように努力いたしたいと考えております。
  111. 大倉精一

    大倉精一君 まあその後の始末、非常に不満ですけれども、これはあと委員会でやるとしまして、ただ一点だけ、そのときの約束が果たされていないということ、それは軍民の飛行場を使用分離せい、こういうことで、時の楢橋運輸大臣も、分離をそういう方法で推進しますと。これまた当時の防衛庁長官であった赤城さんも、民間と軍の分離の方向に持っていきたいと思う、こういうぐあいに言っておられる。これはどうしてできないのですか、分離の方向に。
  112. 栃内一彦

    政府委員(栃内一彦君) 民間機と自衛隊機あるいは米軍機とが、同一の飛行場で離発着しますことは決して好ましいことではございません。当時も軍民分離ということが非常に叫ばれまして、当時関係各省の問で真剣にこの問題に取り組んだわけでございますが、何と申しましても、現在大きな飛行場をつくりますには用地の取得その他で非常に問題がございます。したがいまして、その後の具体的にとりました措置といたしましては、当時千歳の飛行場におきまして、まあ現在でも共用しておるわけでございますが、当時はいわゆる民間機の着くエプロンあるいはターミナル地域も、自衛隊の隊舎地域と申しますか、自衛隊の飛行機がパークするところと共用でございまして、これは非常に安全上問題でございますので、もちろん理想的には別個の飛行場をつくったほうがいいわけでございますが、現実的な解決としまして、民間の地帯を反対側に移すということで、この点もおかげさまですでに竣工いたしまして、誘導路は別になって、また民間機の着く場所も自衛隊とは分離するというような措置が講ぜられております。それから、これは明年度の予算でお願いしておる分でございますが、たとえば小松の飛行場、これもいわゆる自衛隊との共用でございます。民間関係の飛行機の誘導路を自衛隊の誘導路と分離するというような点から、第一年度の予算をお願いしまして、現在御審議を経ておるというようなことで、完全に分離というところまでいかない点はまことに残念でございますが、与えられた環境のもとにできるだけ安全の措置をやろうということで努力中でございます。
  113. 大倉精一

    大倉精一君 防衛庁長官、この軍民分離という問題を推進する御意思がありますか。
  114. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 大倉委員が申されますとおり、私どもといたしましても、分離をしたいということが熱望でございまして、そういう方向にもっていきたいといろいろ努力をいたしておりまするけれども、先ほど航空局長が申しましたとおり、飛行場の取得その他非常に現実的には問題がございまして、なかなか分離ということが早急にうまくいきませんので、その同じ飛行場内だけでも滑走路を別にするとか、ターミナルを別にするとか、できるだけ分離の方向に沿うよう努力を続けておる次第でございます。
  115. 大倉精一

    大倉精一君 ちょうど大蔵大臣がお帰りになりましたが、いろいろ申し上げましたが、時間がありませんからやめますけれども、結局は金の問題いまの飛行場の問題も大蔵大臣がうんと言わなきゃだめになってしまう。でありますから、総理大臣がこの交通事故防止に対しましては格段の熱意を示しておいでになりますが、これに対する予算の裏づけということに対しましても、大蔵大臣、ひとつ熱をもってもらわなければなりませんが、いかがですか。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 限られた予算でございますが、重点的に配分をいたしまして、御期待に沿いたいと思います。  一点申し上げておきたいのは、読売新聞でございますか、交通対策等で五カ年間二千億の費用があればということでございましたが、四十年度の予算をごらんになるとおわかりになるとおり、もうその基準をはるかに越した予算の配分をいたいsておるわけでございます。
  117. 大倉精一

    大倉精一君 減っていますよ、施設費は、航空関係は。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 航空関係ではなく、先ほどあなたが申された読売新聞を引用して申し上げているわけであります。もうその目標よりもはるかに越した予算配分をやっております。また、港湾、航空その他の御指摘のものにつきましても、できる限り財政の許す限り大いなる努力を傾けたいと思います。
  119. 大倉精一

    大倉精一君 財政の許す限りということは便利なことばで、どう受け取っていいかわかりませんけれども、一言だけ申し上げておきますというと、交通安全施設の整備は一億六千五百万円減っていますよ。去年より減っています。あとで調べてください。  それから、櫻内通産大臣に要望するのですけれども、時間がなかったので詳しい御質問はできませんでしたが、いま一般の中小企業を含めて交通関係の業界にとりましても、不当競争でもって非常に困っている。そこでもって、この労働者に対しましてしわ寄せが来、無理な運転をする、こういうところでございますので、私はこの際、一般中小企業も含めて年末融資、これを長期融資に切りかえる必要があるのではないか、そういうことを考えるのですけれども、いかがですか。
  120. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 年度末の金融状況につきましては、二月の中旬以来ずっと警戒をしておるのでございます。ところが、たぶん御承知であろうと思いますが、政府三機関の金融状況はそう逼迫しておりません。国民金融公庫の年度末の、昨年十二月に手当てをいたしました半期の財投四十億、この分につきましてはあるいは猶予しなければならぬような状況が若干あるかと思います。ところで、商工中金のほうの七十億のほうは、商工中金債の償還もよろしゅうございますので、まず問題はないかと、こう思うのでございます。実のところ、一般の金融界のほうにおきましても比較的余裕があるのでございます。どちらかというと、金融界一般が非常に警戒したというところに欠陥があるのじゃないか。  このようなことから、連鎖倒産あるいは黒字倒産が起きないように、地方通産局を通じての各地域地域の金融懇談会で極力要請しておる、また中小企業庁のほうから直接各金融機関にもお願いしておる、こういうような実情でございます。
  121. 大倉精一

    大倉精一君 年末融資は長期融資に変えるという御意思はないのですね。
  122. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 国民金融公庫の分につきましては、ただいま申したように、四十億ほどの年末手当てした短期のものを、これを猶予するとか長期にするとかという必要があろうかと思います。しかし、商工中金のほうにつきましては、大体商工中金債の消化等で手当てがつく、こういう見通しでございます。
  123. 大倉精一

    大倉精一君 最後に、政府の交通基本問題調査答申というのがあります。島田答申といいます。これを全面的にひとつ尊重して実施に移されるという、こういう熱意を示してください。
  124. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答え申し上げます。  交通基本問題調査会の答申、三十九年三月二十七日に答申を受けております。その中に、いま御指摘になりました重要な案件は、交通安全基本法の制定を考慮すること。上述の交通安全基本法の趣旨に基づき、積極的に各省庁間にわたる交通安全行政の連絡調整をはかり、かつこれを強力に推進することのできる専任機関を内閣または総理府に設置すること、という答申を受けております。  これは先ほど総理大臣がるる申し上げられましたように、本甲の一月五日の初閣議におきまして、人権尊重のこの内閣は、一年に一万三千人も人命を失うというようなことでは使命を達成することができない。少なくとも各閣僚は全力をあげてこれを半減するというようなところまでもっていかなければならぬ。そのためには一つの機関を設けて、国民の総動員といいますか、総努力といいますか、運転する人も歩む人もともに注意をし合っていくという機関をつくり上げなければならぬというので、来たる十三日にまず中央の会を開きます。また、地方地方におきましても、都道府県に同様な会を開きまして、先ほど大倉さんからは、一人二分や五分しゃべってもどうにもならんとおっしゃるけれども、そういう指導階級の人がいろいろな意見を述べられることは、国民全体に非常な影響を及ぼしまして、これと呼応して国民全体が、このいわゆる交通戦争——日清戦争よりも二千人も多く死んでいるのですから、これと戦っていくということに国民全体が協力していくところに効果があがるのではないか。同時に、この基本法を制定することに対しましても、先ほど申し上げましたように、関係各省と相談いたしまして、早期に実現いたしたいと存じております。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどの答弁に対して、補足してもう一ぺん申し上げます。  航空安全施設の整備につきましては、一億一千五百万円減っているじゃないかということでございますが、これはお手元にそういう資料をお届けしたこちらのほうの責任でございまして、これは内容から見ますと、昨年三十九年度に五億二千九百万円というYS11の飛行機を一機見ておったわけであります。ところが、今年度は国庫債も七億でございまして、歳出で頭を出したものは一億六千九百万円しか見ておりませんので、実際はこの飛行機の分を引きますと、一般の航空安全施設の整備につきましては三億五千五百万円、三十九年度よりも増額をしたということでございますので、一応申し上げます。
  126. 大倉精一

    大倉精一君 なお、交通基本法はつくるということをおっしゃいましたから、期待しておりますけれども、そこで総理に、たとえば石炭の問題が起これば石炭対策特別委員会というものが起こるんだが、これほど重大なる交通災害でありまするから、交通災害対策特別委員会、こういうものを国会に設けて、抜本的にこれを審議していくというお考えがないかどうか、考慮すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来申し上げるように、各党の協力を得、国民全般のまた御協力のもとに、この交通事故の絶滅とまではいかなくても、半減を期したい、かような意味で取り組んでおります。国会におきましても、この種の事柄につきまして最大の関心を寄せられることがたいへん私は望ましいことだと思いますので、ただいまの特別委員会等は国会の問題でございますから、多くは申し上げませんが、望ましいことだという私の考え方を申し上げておきます。
  128. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 大倉君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  129. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員の変更がございました。  青木一男君、古池信三君、曾祢益君、杉原荒太君が辞任され、二木謙吾君、竹中恒夫君、荷山恒雄君、源田実君が選任されました。     —————————————
  130. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、渋谷邦彦君。
  131. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 政府は、外交の基本的な方針といたしまして、先般、総理の施政方針演説においても明らかにされましたように、自主外交を強力に推進する、しかしてわが国の安全と国家利益というものを確保して、前向きの姿勢でもって進んでいきたい、このように述べられ、なかんずく世界外交の目ともいうべきアジア外交に重点を置く旨明らかにされました。いまなお山積いたしますアジアの諸問題の解決についても、わが国の果たす役割りというものは非常に大きいのだと。これはもちろん論をまたないところでございます。しかして、日本独自のアジア対策を具体化するためには、いろいろ今日起こっております問題の本質というものに関しまして、いかに的確に認識をするかという点からまず出発をしなければならない、このように思うわけであります。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕  そこで、私は、いままで論議されてまいりました点とできるだけ重複を避けつつ、まず最初に総利からお伺いしたいと思います。  何と申しましても、今日世界の焦点といわれておりますベトナム紛争は、日を追うごとに苛烈さを加えていき、ベトナム民衆の不幸というものはおそらく想像に絶するほど深刻なものがあることは否定できない。そこで、いま申し上げましたように、日本が果たさなければならない役割りの大きい点からかんがみまして、わが国として、なかんずく政府は、このベトナム問題について、この泥沼のような悲劇から、いかにして解決の道を探していくかという現状分析をどのように把握されているか、これをまず最初にお伺いしたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま渋谷君の言われるように、当方の考え方が一つ一番基本でありますし、同時にまた、当方の考え方を推し進めていく場合に現状の正確なる認識、これは大事なことだと思います。そういう意味では渋谷君と私の考え方は同一だと思います。私は、自主外交を唱えますが、同時に、日本のあり方といたしましては、絶えず申しておりますように、日本を守り、平和に徹する、その観点に立って日本の外交を自主的に進めていく、かように申しておるのでありまして、この点では何らの誤解は受けていないと思います。  ただいまのベトナムの現状につきましては、これは長い戦禍による国民の窮状、これは見るに忍びない。私ども心からの同情を寄せておることも御承知のとおりであると思います。しかして、同町に、民族には民族の使命がございますので、その民族的使命の立場に立てば、ベトナムはベトナム人の国だと、そのベトナム人の国のもとにおいて、そうして平静を保っていきたい。これがただいまの基本的な考え方だろうと思います。いわゆる南北ベトナムに分かれておること、これは民族の悲劇でもあります。そういう意味で、いわゆる自由主義陣営における南ベトナムというものは、自分たちの力により、これが完全にりっぱな生活が営めるように国の独立を保っていきたい。これはまた、ベトナム人の考え方だろうと、かように私は、南ベトナムについて認識をいたしておるのであります。ただいままでのところ、この観点に立ちまして、アメリカの援助を必要とするやいなや等についてのいろいろの見方がございます。しかし、私の見るところでは、南ベトナムの民族の考え方は、やはり自由を守るというところにあるようでありますので、一部で宣伝されておるような反米的な、また容共的な考え方はないようでございます。私はこの認識のもとに立って、ただいまのベトナムの問題の解決といいますか、平静がもたらされるように努力をしてまいるつもりでございます。
  133. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 第一次のインドシナ戦争解決のために結ばれましたジュネーヴ協定、これが先般来からも論議されておりますように、何らの効果も示さないまま国際協定としてはおよそ珍しいくらいに踏みにじられた、このようになっておりますことはまことに遺憾なことである。このように国際協定というものが何らの権威もなく信頼もなく、あるいは内容によっては拘束力も持たないということになった場合、これは非常に危険を伴う、このように思うのでございますが、政府としてこの種の協定に対しましてどのような見解をお持ちになっていらっしゃるか、総理にお伺いしたいと思います。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国際協定といわれる以上、この協定を尊重しなければならないことはもちろんでございます。この守られない原因が那辺にあるかということを究明する前に、とにかくいずれにいたしましてもこの協定を守るべきだと、この原則だけは私も守り抜いていきたいと、かように考えます。
  135. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今日このように、ただいま申し上げましたように現実的には破られておる。こういう結果を見ますときに、いかにしていま総理がおっしゃったように、尊重していこうという慣行をつくるといいましょうか、そういう機運を盛り上げていくためには、どのようにしたらいいかという点についての考え方をお伺いしたいと思うのでございます。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私にもこれというきめ手を持っておるわけではありませんが、私は内政におきましてやはり民主主義でこの国を、国政をよくしよう、その基本にはやはり人間尊重だ。それぞれの人格を尊重して、初めてこの社会ができるのだ。また、その間におきましても、他に自分の考え方をしいるというようなことは避けて、いわゆる調和の精神が必要じゃなかろうか、かようなことを申しておりますが、同時に、このことは国際社会にもそのまま適用されるのじゃないだろうか。どこまでもそれぞれの国がそれぞれの存立をお互いに保障し、いわゆる独立を尊重し、同時にまた、相互に調和をはかっていく、かような立場であれば平和ができるのじゃないか。これこそ人数の崇高なる願いじゃなかろうか、かように私は考えております。
  137. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 このときの協定調印に、米国及び南ベトナムは参加をいたしません。単独宣言を行なって、その宣言の内容を見ますと、協定はできるだけ尊重していく、こういう趣旨の内容であったと思うのです。しかしながら、この協定は、いま申し上げましたように明らかに侵されております。のみならず今日においてもなお米国は政治的解決を望んでいない、こういうことが伝えられております。もし米国がそうした態度をあくまでも頑強にひるがえさないということになりますと、この紛争というものはますます深みにはまっていくことはもう火を見るよりも明らかである。こうした米国の一方的と申しますか——いろいろな見解があるだろうと思うのですが、こうした米国の態度というものは当然改められなければならない要素を含むと私は思うのでありますが、政府として、まずこの紛争解決の糸口として、どのような対策を持って臨まれようといたしますのか、これをお伺いいたしたいと思います。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、米国を批判するだけではこの問題は片づかない。先ほど申しますように、それぞれの人間同士が社会においてその人格を尊重する、そのたてまえは必要だと。やはり国におきましては、それぞれの国が安全であり、また、その保障がなければならない。現状においてその保障が得られないということがただいまのような紛争を起こしておるゆえんではないか。また、この保障が国際信頼、信用を持ち得ないというところにも実はあるのではないか。で、今日ベトナム問題をベトナムだけの問題として見るわけにはいかない。かつてのラオスのその後の状況は一体どうなのか。ラオスの問題はしばしば論議され、ただいまは平静でございますが、この状態必ずしもきめたとおりには行なわれていないのじゃないか。そういうところに相互不信感がある。一番大事なことは、アメリカ自身もこういうことを好んでやっておらないと思います。もしそこに保障があるならば、アメリカも喜んでこういう爆撃というような挙には出ないのじゃないか、私はかように考えます。
  139. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただいま総理お答えでございますと、保障がないというようなお話でございました。それによってアメリカとしては引くに引けないという、こういう意味のことをおっしゃったのだろうと思うのでありますが、かつてダレス元国務長官は、政治的解決はインドシナを共産主義者の手に引き渡すことにある、このように言明しております。また米国内においては、戦場で失ったものを会議の席で取り戻すことはできないというような考え方がございました。しかも、一部には、今日アメリカにおいてもインド支那戦争の早期解決ということを望む声がある反面に、依然としていま申し上げたような考え方が支配的ではないかということを非常におそれるのでございますが、こうなりますと、先ほどの問題と関連いたしまして、新しくジュネーヴ会議がいま提案されつつあるようでございますが、こうした提案についても、米国がそれに応じないということになれば、きわめて望みが薄いんじゃないか、こう考えられます。総理としてこうした問題の経緯について、また、そのジュネーヴ会議が持たれるかどうかという見込みについてお伺いしたいと思います。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま直ちにジュネーヴ会議が持たれる、こういうことは望み薄いようでございます。また、国連におきましても、いろいろ仲介の労をとっている、かような立場でございますが、ただいままでのところでは、新聞の報するところ、これまた成功をおさめておりません。私は一日も早く心からそういう事態についても協力が得られることは望みますが、ただいまの状況ではなかなか困難ではないか、かような見方をしております。
  141. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 総理は、この紛争解決といたしまして、つい先ごろ申されております話の中に、ジュネーヴ会議の再開を希望し、この問題を取り上げるよう努力中だ、たしかこういうふうにおっしゃったと思うのです。ならば、具体的にその努力がどのようになされたか、また、その努力の効果が今日どのようにあらわれているか、これについて具体的にひとつお教えいただきたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは当時に申し上げましたように、政治的解決が望ましい、かようなことを申しました。最後はおそらく政治的解決になるだろう、そうして政治的解決を望むなら、沿革的に見まして、これはジュネーヴ会議がまず動き出すことが望ましいんではないか、かようなことを申し上げたのでございます。だからジュネーヴの諸国のうちにもそういう動きがある。同時に、国連等におきましても、唯一の国際的平和機構である国連等においてもその動きをしておる。私どもはただいまこういう事態を認識して、そうしてそれについて最善の協力をするという立場に置かれておるということでございますので、私どもの言動もその線を逸脱してはいないつもりでございます。こういうことをなお心から望んでいる、これはあらゆる機会に申し上げておるのでございまして、この国会におけるこの答弁も、もちろん他国に伝わることでございますし、日本の態度は、そういう意味で明らかにされている、かように御了承をいただきたいと思います。
  143. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまのお話を伺っておりますと、どうもはっきりしない点もあるようでございますが、やはり努力するということになれば、努力目標というものが必ずなければならない、こう思うのです。その折衝する場合の、必ず相手国あるいは相手の人、また、それに伴う具体的な内容、こういうものがあろうかと思うのでありますが、いまのお話ですと、やや抽象的に過ぎて、具体性がなかったように思うのでございますので、もう一度、こうした点についてお伺いしたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階は抽象的だと言われるが、まさしくそのとおりの状況でございます。私どもは現状につきまして、いろいろ人を派したりして、その把握もいたし、また、現地におけるその話し合い等にも協力をするつもりで、近く人を派するつもりでおりますが、そういう事柄もこの一助になるのではないか、努力の一つのあらわれではないか、かように御了承をいただきたいのであります。問題は、やはり、動きましても効果のないことは、これは私ども一国を代表するその立場において慎重であることは、これはやむを得ないことであります。かように御了承を願いたいと思います。効果が上がることが第一の目的でございます。
  145. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かに効果が上がることがこれはもう重大な問題だと思いますが、新聞でも報道されておりますように、いま総理の御答弁にございましたように、人を派遣する、この点についてはおそらく現地における重要な人たちにも会う機会があるだろうと思いますが、要望といたしまして、強く政府としての意向を伝えられるようにお願いしておきたいと思うのであります。  それから今後、いまのジュネーヴ会談に関連いたすわけでありますが、各国がそういう気運を盛り上げてまいりました結果、近い将来において十分会議の再開の可能性があるかという見通しについて、総理はどうお考えになっていらっしゃるか。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしいことでございますが、しかし、ただいまソ連にしても、中共にしても、たいへんこれらの問題については慎重な態度であるように見受けます。したがいまして、これが急速に激化の方向をたどるとは、かようにはまず第一考えません。またアメリカ自身も最初から申しておりますように、報復的な爆撃だと、かように申しておりますので、現地において、いわゆる間接侵略等の事実がだんだん下火になってくれば、おそらくそういう危機を招来してくることはない、かように思います。しかし、いずれにいたしましても、これらの事態は十分私ども把握できておりませんし、したがいまして、今日この段階において見通しを立てることはまことにむずかしいことでございます。
  147. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ことばじりをつかまえるようでございますが、アメリカが限定報復爆撃にとどまっておる、こう言っておるようでありますが、現実的には、けさの新聞等を見ましても、陸上軍を増強する、こうした報道がなされております。先ほどはダナンに海兵隊の上陸がありました。また、その前には相当大規模な爆撃が行なわれている。むしろ戦火がますます拡大して、これがあるいはインドシナ全域にわたる戦争誘発という危険が相当あることはだれしもが否定できない事実じゃないか、このように思うのでありますが、いまそうした総理お答えを聞いておりますと、何か非常な矛盾を感ずるのでございますが、この点はどうでございましょうか。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは渋谷さんと私の見方が違うように思いますけれども、アメリカの陸兵あるいは海兵隊が現地に行くということは、これは戦火拡大とかように見るか、あるいは陸兵あるいは海兵隊が出かけることが、アメリカの、アメリカ人同士の安全な確保する意味に働くか、そこらのことはこれから先の問題だと、かように思います。現状においては非常なアメリカ人自身が身の危険を感じておる、こういうことは言えるのじゃないか、かように私は思います。
  149. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そういうふうになってまいりますと、次に御質問申し上げようとする問題にも触れてくると思うのですが、先般外務大臣は、ベトナムにおける米国の軍事行動は、ベトナム政府の要請によるからあたりまえだ、もうやむを得ないのだ、こういう言明がございました。今日においてもその考え方は変わりないと思うのでありますが、これは現在の軍事行動というものが正当化されたものであると、政府としてもこれを支持していると、このように解釈してよろしいか、まず外務大臣にお伺いします。
  150. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 北ベトナムから人及び多量の武器の浸透工作が絶えず行なわれておる、そうしてこれに引き続いてまだ大規模の持続戦までは展開しないまでも、随所にいろいろなテロ行為が行なわれておる。この事実を総括して侵略戦争の継続状態である、こうアメリカは見、これに対してただ拱手傍観して非常な打撃をこうむるのを待つわけにはいかぬ、やはり自衛の措置として当然の措置であると、こう言っておるわけであります。もしかようなことが事実であるとすれば、これまたやむを得ざる反撃である、かように私は申した次第であります。
  151. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま外務大臣は、アメリカの自衛のためであると、これは非常にナンセンスだと思うのであります。アメリカと地理的な関係を顧みましても、相当遠距離でございます。アメリカが何をもって自衛のためとするか、おそらく共産主義思想の侵略に対してであろうとは思いますけれども、もっとアメリカ自身が東南アジアに対する自主性というものを尊重しながら、そうしたような方向に進むならばまだ許せると思うんですが、アメリカ自身が自衛行為だということは、自衛行為のために軍事行動を起こしたのかと、なれば当然戦争になる可能性はあり得ると、こう判断できるのでございますが、もう一度外務大臣、その辺の見解についてお伺いしたいと思います。
  152. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 南ベトナムの要請に基づいて、自由陣営の独立と平和を確保するためにアメリカが今日行動しておるのであります。それに対するいろいろな形において攻撃が継続しておる。アメリカのみならず、南ベトナム政府に対しても同様でありますが、それに対するやむを得ざる行為である、こう言っておるのでありまして、北からの人及び武器の浸透が絶えず行なわれておるというような事実がもしそのとおり解釈できるものであるならば、これまたやむを得ざる行為であるとわれわれは考えておるわけでございます。
  153. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 このベトナム問題についてますます紛糾させようとしている現象が最近あるんです。それは韓国がベトナムに派兵をしているという事実、この問題に対しては、政府としては、あるいは大統領、あるいは政府首脳部に対して思いとどまるような要請はございませんでしたか。
  154. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国が派兵をしておることは事実のようでありますが、これに対してわれわれは何ら関知せざる問題でございます。一切これに対して今後も関係しようとは考えておりません。
  155. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 外務大臣に引き続きお伺いしますが、関知しない、おそらく内政干渉というようなことをおそれられていると思うんですが、政府自体は、アジア問題は日本としても相当前向きに積極的にこれを進める役削りがあると、こういうふうに申されておりますと、何かその辺にただ拱手傍観して、ほかの国がやることについては一向にわれわれは責任がないんだ。責任がないと言えばないかもしれません。しかし、アジア全体の繁栄というものを築く上から考えてみれば、これは重大な問題だと思うんですが、今後もそういう態度、方針というものは貫かれていかれるのか、それについてお伺いします。
  156. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般私が韓国を訪問した際に、南ベトナムに対する部隊の派遣のうわさがあるが、これは実際であるかどうかということをただ聞いてみたのであります。これに対する当局者の答えは、直接の作戦行動をとるものではない。どうも工兵部隊じゃないかと思うので、長い間の戦乱のために橋がこわれ、道路がこわれ、一般の国民も非常にこのために難儀をしておる。そういうような戦いによって引き起こされた疲弊状態、それの救済として若干の部隊を派遣するのである、こういう説明をしました。これは説明を聞いただけでこの話は終わったのでありますが、もしこの言にして真なるならば、私は適切なる措置であると思います。
  157. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 どうもどこまでいっても納得のいく御返事はいただけないようでありますから、時間の関係もありますから、次の問題に移りたいと思います。  自主外交の推進ということについては、何といってもアジア外交であり、また、アジア外交をどう進めるか、そのアジア外交の中でも、中国の問題が最も焦点である。したがって、中国との和平といいますか、これを前提としてこれからも進めてまいらなければ実際の自主外交の展開ということは望めないと、このように思うのでありますが、総理としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いいたしたいと思います。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自主外交、そういう観点に立って考えさせられることは非常に多いのでございます。しかし、外交の問題は、まず第一に申し上げておきますが、非常に簡単に、この態度であした解決するとか、あさってはどうなるとか、こういうように非常に結果を急がれると、しばしばその立場上についての理解がそごしてくると、かように考えますので、ただいま仰せになりますこともそういう意味に私は解釈いたしますが、いますぐ変わった事態が直ちに出てくるわけでもない、かように思います。ことに自主外交は、これは前の内閣におきましてももちろんその線で行動してまいったことだと思います。また、ただいま御指摘になりましたような中国問題、これこそはアジアにある日本としてたいへんな問題なのだ。これはもう最も身近な重要問題だと、こういう意味において、アジア外交を推進していく上でこの問題が中心をなすであろうと、こういうことの認識は同じような立場に立っておる、こういうことは申し上げられるわけでありますが、直ちに自主外交だから中国との関係がすぐ右へいくとか解決するとか、かようなわけにはまいらないものでございます。
  159. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 中国問題について、これは今日までもいろんな角度から論議されてきている問題として、中共の国連加盟というものがあるわけでありますが、昨年の臨時国会において、椎名外務大臣は、中共の国連加盟は阻止する、それに基づいて、総理は、適当な機会に釈明もしくは取り消しさせるというようなことで、非常にこの中国問題については意見の不統一というものが言われておりました。今日自民党内におきましても、アジア問題研究会、あるいはアジア・アフリカ問題研究会というようなものがあるようでございますが、それぞれ意見の対立をしたまま今日にきている印象を受けるものでございます。今後その中国問題に対して、強力に政府並びに総理としてこれを進めるという段階になりますと、やはり党内の意見調整といいますか、確固たる将来に対する方向というものが明確にされていないということになれば非常にまずいのじゃないか、このように思うのでありますが、これについてお伺いしたいと思います。
  160. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 総理お答えする前に、私、名前が出ましたので申し上げたいと思います。重要事項の指定方式は中共の国連加盟を阻止するということに解釈してよろしいかという御質問でございます。私は、アルバニア方式、つまり中国の代表としてただいま中華民国政府が認められておりますが、これを中共に置きかえる、つまり中共が国連加盟を認められて、反面、中華民国が国連から追い出される、こういう内容のアルバニア提案というものをあくまで前提に置いた質問でございました。でありますから、重要事項指定方式は結局そういうことになりますということを申しましたが、私は旅行から帰ってまいりまして、この表現がいかにもまずい、かつ、正確でない、かように考えまして、重要事項指定方式そのものは別に目的があるわけじゃない、決議の方法にすぎない。でありますから、重要事項指定方式の採用は特別の含みを持っておるはずはないから、中共の国連加盟を阻止するということを言ったのは間違いである。ただし、アルバニア方式で中共が国民政府と入れかわるというこの内容については、これはつまりアジアあるいは世界の平和維持の関係から見て、中華民国を国連から追い出すということについては、われわれはあくまで反対であるから、その反対の意思は決して取り消したことにはなりませんということを申し上げてある。でありますから、私の発言に非常な飛躍がございましたその点を訂正したのでございまして、全体として、決して内閣の外交に関する意見の不統一というようなことはないのであります。御了承願います。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 党内におきましてもいろいろの議論のあることはそのとおりでございます。同時に、また、国民の各界各層におきましても、この問題をめぐりましていろいろの議論のあることは御承知のとおりだと思います。また、政党におきまして本、それぞれの立場によってまた意見がまとまっていない、こういうこともお認めになるだろうと思います。私どもは、他の政党の考え方はともかくといたしまして、一日も早く国民の大多数の方々が支持されるような方向、同時に、また、自民党が意見が統一されることを望んでおります。ただいまは十分自由に意見を交換さす、こういう段階でございますので、私のほうからそれを指導するとか、あるいは一つにまとめる、かような積極的な行動はとっておりません。必ずこういう事柄は各方面の意見が出ることになりまして、自然に落ちつくところがあるだろう、大衆は賢明なり、かように私は考える次第でございます。
  162. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 中国の主張しております政経不可分の原則というものについては、政府は今日まで政経分離の方針を貫いてまいっております。この状態が続く限りは国交の正常化というものもなかなかできない、こういうふうに感ずるわけであります。政府として中国との国交正常化についてはどういうふうに考えておられるのか。また、そのためには総理みずからが毛沢東主席であるとか周恩来首相に会おうとする用意はないか、この点についてお伺いしたいと思います。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 周恩来首相、毛沢東主席と会えとおっしゃるのじゃないかと思いますが、——会う用意があるかとおっしゃるようですが、私は、現状においてこれらの方々と会うということは、これは不適当だ、かように考えております。外務大臣からもお話があったことだと思いますが、国際連合におけるように、国際常識、国際認識、それが一つにまとまっていくこと、これが一番望ましい姿でありまして、そういう事態まではなかなか動くということは容易ではない、かように私は考えています。
  164. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もしそういう機運が起こった場合、総理として快く会われる腹がまえはあるのでございますか。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん私は平和に御するということを申しておりますので、いずれの国とも仲よくしたいという立場でございますから、ただいま言われるように、さような状態が起きたならばと、そういう——これは、よしそれが仮定の条件にいたしましても、そういうことがあれば、もちろん私どものほうで拒む、さような態度はとりません。
  166. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、この中国問題はもう年来の重大な課題であります。ただ、このままに国際情勢の変化というものを待つだけではなくして、総理が日ごろ言明されております近隣外交の実をあげる意味からも、また、アジアの問題はアジア人同士が、もっと認識と理解の上に立つてこれを積極的に解決をはかるようにつとめていかなければならない、これはもっとも、そのとおりだと思います。しかし、国連の場もけっこうでございましょう。ただ、今日までの国連の営まれてきた経緯というものを考えますと、必ずしも万全ではない、こういうふうに感ずるわけでございます。そのいろんな証明は、私から申し上げるまでもなく、あるはずでございます。そうなりますと、ただ向こうの出方を待ってこちらがそれに応ずるという行き方でいいのかどうか。もちろん断定がましく、今日の段階でこうだからこうだというような回答を総理から求めようとは私は思いません。ただ、将来の方向について、ただいまの状態が続く限りは、少なくとも日中問題については足踏み状態がおそらくいつまでも続くだろう。国交の正常化ということはたれしも願うところであろうかと思います。これはすでにイデオロギーという問題を乗り越えた上に立って、民族間のそういう同文同種というような感情もございますでしょう。そういう点から、もっともっと日本としても、イニシアチブをとる意味からも、積極的に今後の中国問題を進めていかなくちゃならぬ、こう思うわけでありますが、この国交正常化については、あくまでも現状維持を通していかれるのかどうか、これについてあらためてお伺いしたいと思います。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) わが党の先輩も中共を訪問されております。石橋あるいは松村謙三氏等、また、そのほか若い方々も出かけられた方がいます。また、日本社会党の方々もしばしば訪問されているようでございます。いわゆる政治家が全然接触がないわけではございません。しかし、政府自身が直ちに現状において矢面に立つか、かように言われると、私はその時期にあらずと、かように思います。
  168. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 おそらく中国の国連加盟ということについては、佐藤政権が存続中にあるいは可能性がある問題ではないか、こう思うのでありますが、先ほど外務大臣が重要事項指定の問題について申されましたが、政府として、この重要事項指定によらず、独自の立場で進める決意はないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第十九回国連総会は、ただいま分担金の問題等で本審議には入らないで、そのまま休会になっておるというのが現状でございますが、しかしこれが秋にもなれば、またこの問題が提出されるだろうということは一応わかりますが、あるいはまた、ただいまのところで心配しておりますのは、ベトナム問題などがこういうことにからんで誤解を受けるようなことがあると、またその時期がおくれるんじゃないかというようなこともございますので、いずれにいたしましても国際環境、これはなかなかいまから予断を許すわけにまいりませんので、そういう点を、冒頭に言われたごとく、十分な正しい認識のもとに立って外交行動に出ると、こういう態度でなければならないと、かように思いますので、しばらくこの情勢の推移なども見きわめたいと、かように私は思います。
  170. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 米国政府は、中国加盟を認めるということは好戦国中国の立場を強化することになる、こういう趣旨のことを言明しておるんです。おそらく大国の中では米国一国のみが中共の国連加盟を反対していると、こういう偏向的な傾向があるわけでありますが、政府としてはそうした米国の考え方、現在の態度をこれからも支持していかれる考えがあるのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米国が中共政府をいかに見ているかということは、私どもがとやかく言うことではございません。私は冒頭に申しましたように、自由を守り平和に徹する、こういう観点でどんな国とも仲よくしたい、こういう態度を声明しておりますので、その立場において進めてまいりたい、かように思います。
  172. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 総理は昨年、あるいは総理になる前だったと思うんですが、この記憶はちょっとはっきりしませんが、はっきり申されている考え方の中に、共産主義思想の侵略については断固として防御すると、これを強調されております。総理は具体的にどういうふうにお進めになっているか知りませんが、まあこれは個人的ないろいろな感情もございますでしょうし、私はあえてどうこうは申しませんが、しかしそれが政治の面に両国の今後の利益というものが阻害されるということになれば、これは非常に大きな問題ではないかと思うのであります。総理としてそうした考え方の上に立って、あるいは具体的にこの共産主義の侵略というものについて効果をおさめられるような働きをなさったのかどうか。それをお伺いしたいと思います。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしいお尋ねでございますが、私は共産主義はきらいでございます。また反対でございます。私はしばしば申し上げる自由を守り平和に徹する、こういうことはそういうことを間接的には表現しておるつもりでございます。したがって全体主義的ないき方は、私も同時に反対でございます。この点は私のはっきりした態度であり、日本国民大多数の方の支持する考え方でございます。しかしこの共産主義そのものとはまた別に、その共産主義国がそのままあってもよろしいじゃないか、またそういう意味の調和はとれないのか。こういうことが私の考え方でもあります。私が調和に徹するということは、この考え方であります。私はそういう意味でまた自主的でありますから、だから共産主義をしいられるということは、これはもちろん私は排撃をいたします。私どもはまたこの自由主義がいいと、これこそりっぱな主義だと、かように思っておりますが、それを好まない方にまで無理やりに押しつけようとは思いません。ただしかし、そういう国があるのです。現実に。ソ連しかり、中共しかり。かような状態のもとにおいてなお平和を維持していきたい。これは、思想が違うからというので真正面から衝突するということは避けたい。そこに調和の道があるんではないかと、かように考えております。そうしますと、ただいままでもいずれの国もそれぞれみんな経済行為はするんだ、経済行為による利益というものは各国とも享受しております。これは共産主義国であろうが、自由主義国であろうが、同じことだと、そういう意味では貿易はひとつ進めていこう。文化にはまたさような意味のかきねはないはずでありますから、文化の交流についても積極的にやっていただく。これは私がいまとっている調和の本来の姿、かように御理解をいただきたいと思います。
  174. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、郵政大臣にお伺いしたいのであります。最近中共との間に気象協定あるいは郵便協定というものが、相当なところまで進んでいるということを聞いているのでありますが、もしそれが事実だとするならば、政府間においてどういうところでその接触を保っておられるのか。それについてお伺いしたいと思います。
  175. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 郵便の交換につきましては、いずれの国とも正常に行なえることを望んでいることはもちろんでございます。中共につきましては、かつて私どものほうの郵政省と、向こうの郵政省と話し合いをいたしまして、理論的にいろいろと話を進めたいということで、だいぶ進んでおった時代もございましたけれども、先方に消極的な面もありましたし、いろいろの都合もあったと思いますが、とうとうそういう会議を持とうということも不調に終わってしまいました。しかしその後両者間でいろいろと理論的に話し合い等も進めておりますが、現在は書信、手紙などは香港政府を中介にいたしまして、中共全域に配達をされ、また向こうからもこちらに参っております。理屈は別として急がば回れで、そういうことをやろうじゃないかということでやっているわけであります。しかし何しろ中共は非常に範囲が広うございますので、こちらから送りますのも、向こうから来ますのも非常に時間がかかりますから、最近ではソ連にも話をいたしまして、ナホトカから届けてもらえないかということで、そのほうの交渉もただいまいたしております。しかしこれはまだ返事が参っておりません。これは郵便——手紙、はがきのことでございますが、小包はどういう関係ですか、なかなか中共のほうでうんと言いませんで、いろいろ業務的にも話をいたしましたけれども、まだ行なわれていなかったのであります。たまたま先般ビルマの郵政庁を通じまして、話をいたしましたところが、ついせんだって喜んで仲介をしよう、ビルマに送ってくれ、私どものほうから全域にわたって取り扱いをしようという返事が参りました。いつから実施するか等につきましては、これは政府も考えなくちゃならぬことでございますから、まだきめておりませんが、いまから準備いたしますれば、四月中旬ごろからはそうしたもののやり取りができるのではないかと思います。機会あるたびに、理論的にそういう面につきましては話し合いはいたしておりますし、ビルマ政府が喜んで仲介をするという裏には、ソ連も喜んでこれを受け入れるという返事に基づいてのものと考えますので、これもひとつ前進の一歩だと、こう考えております。今後につきましても郵便事業はなるべく全世界共通に制度化することが望ましいことでございますから、郵政省といたしましてもあらゆる機会をとらえまして、そうした問題をなるべく早く解決するように努力をいたしたいと考えております。
  176. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 続いて、いまの問題に関連するのですが、話の内容があるいはどういうふうに進んでいるかわかりませんが、大体小包の段階まで現状としてはきているということになりますと、信書の取り扱いはどういうふうに進められているのか、こういう問題が出てくると思うのでありますが、この点についてあわせてお伺いしたいと思います。
  177. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 先ほど御答弁申し上げましたように、信書等一切、香港政庁を経由いたしまして、ただいま中共全域に交換されております。
  178. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうしますと、現在政府間の責任において接触しているということはない、こう解釈してよろしゅうございますか。
  179. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 外交上の問題は、これは外務大臣関係になるかと思いますので、そちらからお答えする必要があると思いますが、私ども郵便関係は、郵便関係の役所同士で始終話し合いをいたしましたり、業務関係の取り引きなどもいたしております。また、私どものやっております範囲内におきましては逸脱した行為ではないというふうに考えまして、業務的には話し合いを始終進めておるわけでございます。
  180. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それはわかりましたが、いま私が申し上げましたことは、相当責任ある立場の人たち同士でもって中共との間に接触がされているのかどうか、これをお伺いしたわけであります。
  181. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) もちろん向こうも郵政省でございまするし、私のほうでも郵政省の立場から業務上の話し合いをしておるわけでございますから、全然責任のない者同士が話し合いをしておるというわけではございませんが、これは責任ある者同士が話し合いをしておるわけでございます。なお、業務関係につきましていろいろと話し合いたいこともございますが、現段階におきましては急速に進むということは考えられませんけれども、先方でも喜んでこれは受け入れようというようなぐあいで話し合いがつき、先方の国の政府からその回答が来ておるわけでありますから、だんだんに好転しつつある、かように考えておるわけでございます。
  182. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 責任者同士が話し合っておる。まあ話し合いということになると、当然その場所が必要になってまいります。どういう場所でいつごろからそうした責任者同士の——大臣同士のそうしたことはなかったと思うのですが、とにかく責任者同士の話し合いがなされ、また現在においてもそれが続けられておるのかどうか。
  183. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 先ほどもちょっと触れましたが、双方で場所をきめて話し合いをしたらということも出まして、いろいろ場所等も話し合ったこともございましたが、とうとうやはり両方の都合でうまくまいりませんで、両方が場所を定めて会議を開くところまでに至りませんでした。しかし、郵政省ですから、両方とも郵便や電報や、すべてそういうものはお手のものですから、始終両方で文書によっては交換をしておりますので、もういま言うことはソ連にきょう通じますし、向こうからも同様でありますので、四角張って代表権を持ってどうということは、これは外務省になりますけれども、そうでない業務的なものは、始終、手紙や通信等によりまして円満な連絡をとっておるわけでございます。
  184. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 外務大臣、その問題に対してどういうふうなバックアップをされておるのですか。
  185. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいわば業務協定でありまして、政府間の接触を必要としないものでございます。外務省としてはこれに直接タッチいたしません。
  186. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 時間がありませんので、次の問題に入りたいと思います。  インドネシアの国連脱退は非常に遺憾であったことは、これはだれしもが認めることでありますが、その脱退後において、政府としてどのような方法をもってインドネシア脱退に臨まれていらっしゃるのか、まず、総理にこれをお伺いしたいと思います。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、脱退したことはまことに遺憾でございます。この脱退の意向を明らかにした後に人を派して、そしてとどまるようにと、これを説得にかかりました。これはとうとう聞かれなくて脱退が実現したわけでございます。しかし、私考えますのに、日本は比較的にインドネシアをよく知っておる国でありますから、その後スバンドリオ外相が参りまして、日本に対して頼んだ。かように考えてもいいような事柄もございます。そういう話を実現したいということでいろいろ努力しておりましたが、また他面において別な話し合いがあるやにも伺い、そのほうで話ができるならばそれもけっこうだということで、しばらく模様を見ておりますが、どうも直接交渉の他の話はただいまのところ成功しない、かような状態になっておりますので、またもとへ返ってきたのじゃないか、かようにただいま考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、インドネシアと日本とはいろいろ交渉を持っておりますので、そういう点を通じまして、インドネシアの意向を明らかにし、同時にマレーシアの意向も明らかにしなければなりませんし、またマレーシアと同じような立場にあるフィリピンその他の関係国の意向も打診しておる。かような状態で、ただいまこの紛争が仲介し得る状況にあるやいなやということで、いろいろ実情の認識をしよう、こういうことでただいま努力中でございます。
  188. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 インドネシアは先般スバンドリオ外相が北京を訪れまして、その際に中共との共同官言にございますような——共同宣言には盛られてなかったと思いますが、そのニュアンスとしては、第二国連というものをつくる考え方があるように伝えられております。そうしますと、事実上、世界平和の上に大きなみぞをつくるようになることも考えられるのであります。こうした行き方について重ねて総理からお伺いしたいと思います。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第二国連をつくるかどうか、私は知りません。しかしインドネシアとマレーシアのただいまの紛争、これは発展させないで平静に帰するように、そういう意味で私どもが仲介の労がとれるような努力をしたいということでやっておるということを申し上げたのでございます。インドネシアもその点、私どもに対しましても、はっきり両国の間の調停の労をとっていただきたいというような意味合いの申し出がありましたので、この線で行動しておるところでございます。
  190. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 その調停について聞こうと思っておったのですが、現在どのように調停の段階が進んでおられますか。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、そういうことを日本に申し出、日本から帰りがけにタイに寄って、それでタイにおいては、また別に、直接インドネシアとマレーシアが話し合いができるというような観点に立っての依頼もいたしたようであります。しかしながら、このほうは最近の折衝ではスカルノ大統領も、その事柄については関知していない、新聞等で知っただけだというようなことで、直接交渉はただいまできないように私は見ております。したがって最初の考えは、これは四カ国会議、そういうものによって結論を出してくれないか、こういうことでございますから、関係国の意向をいま確かめておる。先ほど申しましたように、関係国といえばマレーシアと同時にフィリピンも、このことに重大な関心を持っておりますし、さらにまた、イギリス、豪州、カナダ等がございますので、それらの意向も確かめておるというのが現状でございます。
  192. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、アジア・アフリカ会議についてでございますが、いろいろな曲折を経てあるいは開かれるのじゃないかと予想されておりますが、政府として、このアジア・アフリカ会議に当初総理はだいぶ積極的に出席させる、こういう御意向でありましたが、訪米後その線は弱まったといわれております。その点についてお伺いしたいと思います。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはむしろ、アジア・アフリカ会議については私のほうに態度の変化があったというよりか、インドネシアの国連脱退、そういう事柄が影響しておる、かようにごらんになったほうが——訪米後云々とおっしゃると、何だかアメリカとの話し合いでというようにでも思われると誤解があるように思います。そういう点で、私のほうも、どういう国が集まるのか、また、どういう会議をするのか、こういう点について、よく事態、その会議の模様をはっきり把握しないと、これに対してどういう人を送るかということはきめかねるというのが、いまの現状でございます。もちろん、AA会議が開かれれば、ただいまのところ、これにはだれかを出席さしたい、かような気持ちでいることには、まだ変化はございません。
  194. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 会議が開催されれば適当な人を向けるという結論でございました。それは立って伺いたいことは、この会議に参加することによって、わが国が得られる効果というものはどういうふうになるのか、これについてお伺いしたいと思います。最初、外務大臣からひとつ御答弁いただけませんか。
  195. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう効果というお話でございますが、いま総理が答えられたように、この会議がいかなる規模で、どういう内容をもって行なわれようとしているかというようなことに深い関係を持つのでございまして、いまの段階では、これははっきり申せないと思うのであります。いずれにしましても、AAグループは、御承知のとおり新興国が多い、したがって、民族主義的な機運がこの会議においては相当盛り上がると考えるのであります。これらをどういうふうに正しく導いていくかというようなことは、やはり先進国である日本としても相当考えていかなければならぬ問題だと思うのでありますが、いまのところは、まだはっきりと、どういう効果があるか、どういう態度でこれに臨むかということは申し上げる段階ではないと思います。
  196. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 あるいは早急にそういう会議開催というものが考えられる段階になってきますと、現在検討中である、検討中であると、これでは一向にはっきりしないわけでありまして、やはり、相当な人を派遣するからには、もう今日の段階においては、すでに、いま外務大臣が申されましたように、いろいろな実情についてはもう広く知るところでございます。その上に立って、客観情勢の変化、そのまた推移というものは当然あるとは思いますけれども、そのわが国が得られるところの利益というものは、また、その反面に、この会議に出ることによって失うものは何だということは、もう当然、ある段階までは検討されているんじゃないかというふうに考えられるわけです。もちろん、現段階においては、秘密事項に属するがゆえにそれは発表できない、こうなれば、また問題は別だと思うのですが、その点について、もう一度外務大臣の、失われるものは何だ、得られるものは何だ、という点についてお伺いしたいわけであります。
  197. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう利害得失があるかということだろうと思いますが、それについては、十分に状況の推移を見て検討を加えて、そうしてこちらの態度をはっきり固めたいと存じます。
  198. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大臣は、どうも、そのAA会議に対して、アジア外交を展開するということを基本方針とされているにしては、あまりにも薄弱な論拠でありまして、われわれとしては、どうしても納得がいかない、こう思うわけなんであります。何かこう、先ほど来から話を伺っておりますと、一々その相手の国が何かの形で申し入れをしてこない限りにおいては、日本としては積極的に動かない、こういう印象を強く受けるのであります。これは私は逆じゃないかと思う。あるいはおせっかいというふうに、平たく言えばそういうような場合があっても、もっと積極的に——アジア外交を進めるにあたって、まだまだ足りない面もあるいはあるかもしれません。把握、情勢分析という問題について。そうした点を考えますと、何か、非常におくれておる、どうでもいいというふうにしかとれない。これでは、アジア外交を中心とされる佐藤内閣にとっては、非常にまずいことじゃないかと、これを心配するわけでありますが、総理として、ひとつその見解について伺いたいと思います。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま渋谷さんの言われるとおり、このAA会議、これに出かけようか、かように考えましたそのもとは、申すまでもなく、アジアに位置する日本として、当然この種の会合に出ていくことが、日本をより理解し、また日本の主張というものも正しくそういう会議において述べられるのではないか、そのことが望ましいのではないか、かように私は考えまして、そのAA会議というものを重視いたしております。ただいままでの経過のところ、先ほど来外務大臣から申しておりますように、そのAA会議の規模なり、あるいはまた議題なり、その他につきましても、なおもう少し確かめておく必要があることは、これは外務大臣ならずとも、おわかりだろうと思いまするが、そういう点も万全を期して、そうしてアジアの一国である日本、そうして同時にまた、今後展開しようと考えておる日本のアジア外交というもの、そういうものについて十分の理解を得たいと、かように考えておる次第でございます。
  200. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。議題がどうなる、そういうようなことを十分検討した上でなければはっきりした態度がきまらないような印象を受けるわけでありますけれども、むしろ先ほどから、外務大臣は先進国であるという、あるいは総理は、日本はアジアに位置する指導的な国であるような、そういう発言があったわけでありますが、いまのアジアのかかえておる問題というものは、かなり大きな問題ばかりである。日本が火の粉をかぶるようなことでなければならない。逆に議題をこちらが提供していくようなことでなければ、先進国であるということばも、うそになってまいりますし、アジアに位置しておる責任を感じておるということも、これは偽りであるというふうに印象せざるを得ない。積極的な提案なり、あるいは火の粉をかぶってもアジアの平和を維持していこうというような、そういう用意というものはないのでございますか、それを伺いたい。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま鈴木さんが御指摘になりましたような点も考慮に入れまして、外務省としては対策を立てていかなければならない、かような意味でございます。
  202. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 経済企画庁長官にお伺いするのでありますが、東南アジアへの経済協力促進を目的としましてあの経済協力基金というものが設定されておるわけでありますが、今日まで、東南アジア開発にどれだけ利用されているか、これについてお伺いしたい。
  203. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、海外経済協力基金は昭和三十六年に設立されたものでございますが、その後漸次出資の追加をしてまいりまして、現在の資本金は百六十九億円に相なっております。そうして、基金の発足以来現在までの投融資の実績は、三十六年度に約十億円、三十七年度に約十億円、三十八年度に約三十億円弱、今年度はまだ全部終わっておりませんが、ただいまの見通しでは、約五十億円程度というふうに見ておるわけでございます。したがって、現在までの実績の累計は九十五億。それで、その内訳を申し上げますと、出資は二件で十五億円、貸し付けが二十一件で七十一億円でございます。しこうして、現在手持の余裕金は約百億円余りあるのでございますが、昨年国連の貿易開発会議の論議の経過もございまするし、また、今後の東南アジア等を中心とするところの低開発国の経済開発協力というふうな観点からいたしまして、昭和四十年度におきましては、一般会計から出資を十億円いたしますと同時に、資金運用部資金から借り入れ金十億円を予定いたしておる次第でございます。そのための法律の改正も、ただいま御審議願っておる次第でございます。
  204. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 出資の状況についてはよくわかりましたが、国際的にどのように利用されているかという点について、重ねてお伺いしたいと思います。
  205. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、普通の延べ払い等で民間の金融機関等でカバーできない部分は、一般的には輸出入銀行でもって補完してまいっておりますが、期限の相当長いもの、または、やはり金利のさらに低いものを要請される、または多少危険が加わる、というようなものにつきましては、海外経済協力基金でもってそれを担当していくというたてまえをとっておる次第でございます。
  206. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 おもにどういう国に対して利用されておりますか。
  207. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、資金の中でということで御質問だと思いますから、一九六二年と一九六三年の二年度におけるものを申し上げます。  これは、償還受け取り額等を控除いたしまして、純支出総額、こういうことで申し上げたいと思います。  これは、低開発国に対しましては、一九六二年には二億八千二百万ドル、それから一九六三年には二億六千四百万ドル余でございます。このうち、東南アジア、御指摘の東南アジアにつきましては、一九六二年に一億四千万ドル余、一九六三年、一億八千万ドル余。六二年におきまして、この総額に対する東南アジアの比率は四九・九%、六三年においては六八・二%、こういうところでございます。
  208. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現在残っておる金があると思うのですが、この金については、今後どういうふうに使われる用意があるのか。これについてお伺いしたいと思います。
  209. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたが、現在までの投資融額につきましては、委員会政府から資料として詳しく提出申し上げておりますので、それでごらんを瀬いたいと思います。東南アジアは、そのうち、九十五億のうち、大体五十億円に相なっておるようでございます。しかして、ただいまの御質問は、現在残っておる百億円余りの金をどういうふうに投資融に使っていくか、という予定か、という御質問でございますが、現在までに、もうすでに契約をいたしまして承諾いたしました金額が、大体三十九年度でまだ実行しておりませんものが三十二億程度あるわけでございます。それで、そのほかに、今後の情勢を検討いたしますると、先ほども申しましたとおり、昨年の国連におけるところの貿易開発会議等におきまして、相当、低開発国については国民所得の一%に当たる程度の経済協力をしていこうというような議論が出まして、それに対してわが国はこれに賛成をいたしておるような次第もございまして、日本といたしましては、主として東南アジアを中心に、ものを考えていくべきであろうかとは存じますが、そういうふうな観点から申しますると、ただいま話のございますのも相当ございますが、相当前向きにものを考えていくとすれば、相当程度の資金の準備を必要とする、かような観点から、本年度十億の出資と、十億の借り入れというものを、その上に予定いたしたような次第でございます。
  210. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまの御答弁ですと、今後も相当前向きでもって、低開発国、おそらくその中でも東南アジアを対象とする援助計画というものが考えられておる、こう思うのでありますが、昨年三月、これは有名な問題でございましたが、国際貿易会議でございますか、この低開発国に対する日本のとった態度というものが非常にあいまいであったということで、盛んに抗議を受けた事実がございます。今後そういうような批判——もちろんその一方的な要求というものは、のめない場合も、それは当然あるとは思いますけれども、日本として、可能な限り、今後も低開発国に対する援助を進めていく用意があるか。あわせてまた、技術協力というものについても、どの程度積極的にこれを推進していく用意があるかどうか。これは総理か、経済企画庁長官でもけっこうだと思いますが。
  211. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先般来、よく御答弁申し上げておりますとおり、実は中期経済計画におきましては、昭和四十二年度において経常収支でバランスがとれるというふうに予定いたした次第でございます。しこうして、これは主として、長期資本収支としては、なお今後も相当に見込めるというふうに私どもは見ておるのでありますが、一方において、低開発国に対する経済協力を必要とする。ことに昨年の、ただいま御指摘になったような会議において、日本ははっきりと、国民所得の一%をやろうということについて賛成をいたしておるような関係もございまして、そういうような関係から、国際収支について、そういう態度をとったような次第でございます。
  212. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 時間もないようでありますので、一つだけ、当面する問題を総理にお伺いしたいのでありますが、昨日の新聞でありますか、日米航空協定については、ラスク・武内会談は不調に終わった、このように伝えられております。このような問題は、年来の、非常にわれわれとしても早く解決を願う問題でございますが、総理としては、今後この日米航空協定については、どういう腹がまえでもって推進されるおつもりか。また改定の可能性はあるのかどうか。これについてお伺いいたしたいと思います。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま当面しております条約の問題で、日米航空協定だとか、あるいは日米加漁業条約だとか、こういう条約は、いずれもが占領中あるいは占領後、いわゆるそういう不正常な時期に締結した条約だということで、これをぜひ改定したい、そういう実は要望を持っております。その内容は、御承知のように、ニューヨーク以遠といいますか、 今日ニューヨークにも飛んでいけないが、さらにまたニューヨークから大西洋を渡って、そうして欧州のロンドンあるいはパリ等に通ずるような航空路がいまできておりません。そういう意味の交渉をいたすのであります。これはたいへんむずかしい交渉ではございますが、私がジョンソン大統領と会いました際に、ただいまの二つの条約が日本として一番耐えられない条約なんだ、こういう意味で、その改定方を申し込んでおる。それで、できるだけ早くということでございまするが、ところが、その後の折衝が、なかなか順調にいっているとは必ずしも思えない。新聞で報ずるような事柄もあったようであります。しかし、運輸省、同時にまたパンアメリカン等の、いわゆる日本に入っております会社などとの折衝その他によりましても、これはぜひとも解決しなければならない問題だと、こういうことで、非常な意気込みを持って真剣に取り組んでおることは確かであります。私が話をいたしました際も、この種の条約はなかなか時日を要するものじゃないかと思うが、日米経済閣僚の合同委員会まで、それまで待つというと、いかにもおそいように思うがどうだと、かように申しましたら、ラスクは、もちろんその前に解決をつけたいというようなことを当時申したのであります。おそらく、その後どういう状況になっておりますか、まだ私は、あの新聞の報道どおりだと、かようには考えておりませんで、条件その他につきましていろいろ折衝すべきものがあるのではないか、また交渉すべきものがあるのではないか、かように炎は理解しておる状況でございます。いずれにいたしましても、わが国にとりまして、この条約はぜひとも改正したい強い希望でございますので、十分アメリカ側も説得して、そうしてわがほうの目的を達したいものだと、かように考える次第でございます。
  214. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最後に、先ほど来から申し上げました東南アジアの緊迫せる情勢にかんがみて、東陶アジア平和会議というものを東京に常設する必要があると考えられるのですが、これに対して政府はどのように考えていらっしゃるか、これをお伺いして終わりたいと思います。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、東南アジア平和会議を日本が招集することがいいか悪いか、これかまず一つの問題があると思います。しかしながら、いま世界の平和機構である国連、そういうものが東南アジアに対して格別の関心を示している。そこで、東京にその一部の仕事ができるような機関を設けることが望ましいのではないか、かように思いまして、実はウ・タント事務総長にも申し出たのでございます。しかし、もちろんこれは私の一応の腹案を口頭で申し述べたという程度でございますし、いわゆる正式な交渉をしたというのではございませんが、そういう点につきましても国連において研究してくれるものだと、かように考えているのでございます。
  216. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 渋谷君の質疑は終了いたしました。  午後三時二十分再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後一時五十二分休憩      —————・—————    午後四時二十四分開会
  217. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。渋谷邦彦君が辞任され、小平芳平君が選任されました。
  218. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。鈴木壽君。
  219. 鈴木壽

    鈴木壽君 私は主として地方自治、地方財政に関連する問題につきまして、総理はじめ関係大臣にお尋ねをいたします。  総理が今国会の施政方針演説の中に、「地方自治の確立は、国勢進展の基礎であります。私は、地方自治を尊重し、その充実強化をはかるとともに、国と地方公共団体との間における協力関係を  一そう緊密にしてまいりたい」、このようなことをおっしゃっております。歴代の総理の中で、そうしてその施政方針演説の中に、このように地方自治ということに対してはっきりした考え方を示されたものはあまりなかったようでありまして、そういう点から、私、総理のこのお考え方につきまして高く評価をいたしたいと思うものであります。ただ、問題は、現地のいわゆる地方自治、地方行財政の中にいろいろ問題があることは御承知のとおりでありますが、こういう事柄に対して  一体、総理はどのようなことがいま地方自治の問題となっておることであり、どうこれを処置していかなければならぬのかというようなことについて、もっと私は具体的な総理のお考え方をまず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま地方自治制度と、かように申しましても、わが国の地方自治制度は特異な存在だ、制度だと、かように考えます。中央と地方との行政の分配なり、あるいはまた歳入の分配なり、いろいろ問題が多い、かように考えておりますが、ことに、ただいま申し上げる中央政府との関係において、広域行政という面はまた別にいたしましても、中心課題は、何といっても中央政府と地方自治体との関係ではないだろうか、かように考えておるわけであります。
  221. 鈴木壽

    鈴木壽君 お話のように、いまいろいろ問題が地方自治あるいは地方行財政というものを考えます場合にあるわけであります。あるいは三割自治、二割自治と言われる、あるいはほんとうの意味の地方自治はもう崩壊しているんだ、少し極端な言い方のようでありますけれども、そういうことすら言う人もある、こういう状態であります。いま総理のお話、私もっと具体的にと、こうお尋ねしましたのですが、たとえば税配分の問題なり、事務配分の問題なり、そういうことについてどのようにお考えになり、どうこれからそれをさばいていくおつもりでありますか、少しお話を願いたいと思います。
  222. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 鈴木さんの地方自治に対するお尋ねでございますが、実は地方自治も財政が非常に悪くなりつつございまして、この点につきましては、私どももできるだけ健全化に進めていきたいと思っているわけであります。それでは健全化に進むについてはどういうことを考えられるのかというと、御指摘のように、事務配分をできるだけ地方に委譲するものは委譲し、ただ事務だけを委譲したのではどうにもなりませんから、それにできるだけの財源もつけて委譲するという点が一つであろうかと思います。  それからもう一つは、率直に言いまして、今日の地方財政が苦しくなりました一つの点は、二、三年前まで非常に地方財政が恵まれたという状態であります。恵まれたということばは当たらぬかもしれませんが、自然増収が国においても非常に多かった。したがって地方交付税も多く入ってくる。また地方の住民税あるいは事業税等も多く入ってきまして、わりかた財源が豊かでありましたから、まあそれに乗って仕事をどんどんやっていく、そうすると、その仕事が固定化いたしまして、さて、ことし来年度の予算のように健全化いたしまするというと、急に窮屈になってくる、こういうふうな点が一つの原因かと思うのであります。この点は、私どもといたしましても、できるだけ地方自治の節約といいますか、健全化といいますか、そのほうに踏み切っていかないというと、これが来年は非常によくなるだろうという甘い観察ではできないと思います。それともう一つは、これはまあよくいわれることでありまするが、国の持つ負担区分と地方の持つ負担区分というものをはっきりして、国が持つものは国が持ち、地方が持つものは地方が持つ、こういうふうにいきませんと、なかなかこれがうまくいかないのじゃないか、そういうふうな事務配分の点あるいはその負担区分をはっきりするという点、それからできるだけ節約をし、また健全化していく、こういうふうな点がおもな点じゃなかろうか、かように存じておる次第でございます。
  223. 鈴木壽

    鈴木壽君 私、総理にお尋ねしたのですが、いま自治大臣からお答えになった。私の聞いておることについてあまりお答えいただけないのでありますが、総理は、地方自治あるいは地方行財政というものを考える場合に、事務配分の問題なりあるいは税金配分、財源配分の問題があるのだ、こういうふうにお話になりましたから、そういう問題を一体具体的にどうやっていくのかということを実は総理からお答えしてもらいたかったのですが、地方財政の苦しさとか、あるいはそれに対する態度というお話でありますが、これはあとでその問題については私はあらためてお聞きします。総理からひとつ……。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお話にいたしましても、地方自治体、府県を対象にして話をするか、市町村を対象にして話をするかでまた違いますが、ただいま鈴木君のまず第一の問題は、市町村のほうはいましばらくおいても、とにかく府県単位で中央との話をしておられるのじゃないか、かように想像しておるのですが、しかし行政の配分ということになれば、これは府県と同時に市町村、そういうものが一緒になっておりますか  ら、その観点で話をするのがいいのかと思います。これは御承知のように、自治法が施行になりましたが、その以前から大体歴史的、沿革的な行政配分が行なわれておるわけでございます。ことに、地方の特殊性を取り入れなければならないというような行政事務については、どうしても自治体の言い分を立てる、そういう意味において中央よりも地方においてその意見が十分反映するような方法を講ぜられたい。したがって、それに対するいわゆる財源の分配等もこれまた中央において見られるだけのことはもともとこれを見ていっておる。ただいま大まかに申しまして、中央から地方に委譲しておる行政事務というものについては財政的な裏づけがある、かように思います。また地方の行政、自治体自身が独自の立場においてやるものについては独自の財源を付与する、これがしばしばいわれておる中央と地方との財源の分配の問題でございます。それがただいままで一応形が整いつつある。そうしてさらに足らない部分については交付税等の制度によりましてそれを補完していく、かように私は理解しておるのでございます。おそらく鈴木さんも同じような考え方ではないかと思います。行政とかように申しましても、中央と地方とのそれは密接に関連することによってこの行政の効果を一そうあげる、かようなものではないかというふうに考えます。
  225. 鈴木壽

    鈴木壽君 実は総理お答え、せっかくでございますが、まだ意に満たないところがございます。ただ、これからの質疑の段階で、私できるだけ地方財政の実態なり、そういうものが明らかになる過程でいろいろお尋ねしたいと思いますので、失礼ですが、よくお聞きいただいて、そのつどまた総理から考え方を聞きたいと、こういうことにしたいと思います。  次は大蔵大臣ですが、あなたの財政演説の中に大事な問題を含んだ点があるわけなんであります。地方財政は苦しくなっておるのだ、こういう認識、それといま一つは、しかし国も苦しいのだが、この地方財政の苦しさをこのままにしておけないので、地方財政の一そうの健全化をはかるためにと、こういうふうな交付税率の引き上げ等について述べられておるのです。これによって地方行政の水準が、また住民の福祉が一そう向上されるものと期待される、こういうことをおっしゃっておるのである。私お聞きしたいのは、大蔵大臣の言ういわゆる地方財政の窮乏の状態というものを一体どの程度にお考えになっておられるのか。というのは、交付税率の〇・六引き上げをもうたいへんなことのようにおっしゃって、しかも、その〇・六によってできてくる交付税のふえる額というものは百四十五億円であります。それでもって地方行政の水準が向上し、住民の福祉が一そう向上できるという、こういう期待が持てるのかどうか、私はその点になりますと、大臣とは見方が違うのでありますが、まあそれはともかくとして、地方財政のいまの状況、こういうことについての大臣の認識のしかたをひとつここでお述べいただきたいと思います。
  226. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたが地方財政に対して非常に好意をお持ちになっておるということはよくわかります。私もそうなんです。私も特に財源豊かならざる新潟県の出身でございますから、地方財政の苦しさは、あなたと同じくらいに認識しております。認識はいたしておりますが、国の立場と地方の立場を公平な目で見て評価をいたしておるのであります。何かこう国と地方とは全く利害対立しておるかのようにまあ言う人がございますが、しかし、国も地方もこれは同じものであります。国民のよりよき生活を築く、こういうことでありますから、制度が違うというだけであって、国民の負担を財源にしておるわけであります。地方も非常に苦しいと言うけれども、国も苦しいというのは同じことだと思います。ですから国も地方もあわせて思い切った合理化を必要とする、こういう立場に立っております。国の四十年度の一般会計のワクは三兆六千五百億でございます。また地方財政は三兆六千百億であります。まあ大体同じくなった、こういうことであります。四、五年前は国の半分ぐらいであったものが大体国と同じでありまして、しかし内容を見ますと、国の三兆六千五百億の中で七千数百億は地方の財源である交付税その他であります。また一兆円に近い九千数百億というのは国の支出金でございます。ですから、国の予算というものは、率直に申し上げると、一兆九千億ということでございます。それから三兆六千百億の中で国へ納付する直轄事業分担金は約五百億でありますから、おおむね三兆五千六百億は全部地方の財政規模であります。でありますから、財源を地方に譲与しろとか、財源配分をもっと考えなければいかぬということはいろいろ指摘をされますが、国会でも御指摘になっておるように、地域格差の是正とか、またいろいろなひずみの是正、こういうものに対しては、とうしても国が主力を置いて——国の財政負担ということが主になって行なわなければ、なかなかその効果があがらないということでございますから、いまの段階において国から地方に大幅に財源を移譲するというような状態にはないわけであります。私自身も低開発地開発促進論者でございますし、そういう意味でいまのままでおると、どうしても地域格差もだんだんと大きくなる。でありますから、私はこの三兆六千百億の地方財政の中で四割余が人件費であります。この人件費を減していくというわけにもいきません。四十年度は一律アップを含めて千八百億人件費だけでふえておるわけであります。これでももらうほうの給与を受ける側から見れば必ずしも理想的なものではないわけであります。こういう状態が一体続いていくのか、こういうことを毎々考えております。ですから私はただ大蔵大臣としての立場で国の財政さえ間に合えばという考えではありません。どうすればより合理的になるか、もうここらで本格的に国も地方もあわせて財政問題と正面から取り組むべきであると、こういうふうな考え方を持っております。健全財政といいますか、もう健全というよりも、ほんとうに国と地方があわせてわれわれの生活をよくするという立場で、より合理性、財政の合理性というものを追及しなければならない時期だと考えておるのであります。  また、こまかい、国がまだそれでも豊かじゃないかという御質問がございましたら申し上げます。
  227. 鈴木壽

    鈴木壽君 地方財政の窮迫に対する認識の度合いと申しますか、理解のしかたについてでありすすが、確かに国も苦しい、地方団体もまた苦しい。そこで、最後の大蔵大臣ことば、この機会に国も地方もそれを通じての財政のあり方、税財源の持ち方、こういうことについて検討すべき段階と、こういうふうにおっしゃいます。そのことは私も賛成でございます。ぜひそうじゃなければならぬと思いますし、そういうことを一日も早く検討をして、りっぱな筋道の立った税財政のあり方をむしろ確立したいという気持ちが、実はこれから私いろいろお尋ねをすることの中心になっていく考え方なんであります。  そこで、大蔵大臣と抽象的なことをやりとりしておってもわかりませんが、さっき自治大臣から地方財政の苦しさについてお話がありました。それからまた、それをどうしなければならぬかということについても、お考えの一端が述べられたと思うのでありますが、まずここで最初に、地方財政の実態がどうなっているのか、特に三十八年度決算にあらわれた赤字の問題、これに関連するさまざまな問題、これをひとつ明らかにし、さらに、これを一体どう改善をし、どう健全化させる道をたどらなければならぬか、こういうことについて、自治大臣からひとつ御所見を承りたいと思います。
  228. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 地方財政の現状は、先ほどもちょっと触れ、また大蔵大臣からもお話がございましたように、四十年度の地方財政計画で見ましても三兆六千百二十一億、これは国の三兆六千五百八十一億とほとんど匹敵をしておりますが、その中で給与費が一兆三千億にのぼっておるのであります。ですから、つまりこの三兆六千億の中の約三七%になりますか、四〇%近いものが給与費であることであります。これは毎年人事院勧告に従って地方公務員も国家公務員に準じてやる。今日地方公務員にしましても、国家公務員にしましても、争議権というものがございませんから、勢い人事院の勧告というものをもとにしまして給与ベースをきめていくということでありまするから、やむを得ぬところではございまするけれども、しかし、この三兆六千億の予算のうちの約三七%近くのものが給与費であるというところに一つの問題点がございます。これは四十年度にどういうような勧告が出るかしりませんけれども、もしこれが相当の勧告が行なわれるというと、やはりこれはやらなければならぬことになるのでありましょうが、ここに一つの大きな問題点が出てきておるのであります。  それからもう一つの点は、やはりそうかといって、今日地方における住民の福祉の問題というものは放置できない。特に総理は社会開発という点に重きを置かれておられまするので、やはり相当の社会開発的な仕事というものもやらざるを得ないというところに苦しさがございまして、そこで勢い税収入としては、先ほど申したように、なかなか伸びが鈍化をして多くを期待できない。地方税の総額が約一兆五千億——一兆四千九百億程度でございますが、この伸びというものは非常に減ってきた。先ほど申しましたように、自然増収というものが以前のように期待できなくなる。そうかといって、給与費は上がらざるを得ない。しかも、地方財政の社会開発的な仕事をやめるわけにいきませんから、それもある程度はやっていかなければならぬ。そこで、どういうふうなつじつまをつけましたかというと、やはりある程度地方債というものを広げまして、それで仕事をやっていくというほかしかたがないということで、来年度の財政計画では、地方債を、一般会計、特別会計を含めまして、前年度は三千九百億程度でありましたものを、四千八百億程度まで引き上げたのが一つと、先ほど少ないとはおっしゃいましたが、国の財政の中から、交付税の引き上げをいたしまして、百四十五億というものを捻出をした、こういうところに問題があるのであります。  したがいまして、今後のこの地方財政のあり方といたしましては、人件費の中は約四五%が学校の先生でございます。この学校の先生は、これをすぐ整理というか、減員するといいましても、学級というものがありまして、それぞれの定員もきめられておることでございまするから、これは多く期待できない。もう一つ、地方公務員の一割というものは警察官でありますが、この警察の職員にいたしましても、今日いろいろと仕事がふえていまして過労に困っているというような、むしろ増員をしなければならぬという状況でございます。あと残りの四五%程度のものが、府県及び市町村の一般職員でございますが、これは私はまだ節約の余地があるといいますか、あるいは、だんだんと年齢が高くなっておりまして給与が高まっていきまするから、これをある程度新陳代謝をしていくという必要が出てくるのじゃないだろうか、そこに、地方庁あたりからは定年制をぜひひとつしかざるを得ぬじゃないかという声も出てきておるところでございまして、これも一つの問題点ではなかろうかと思います。  そういうふうな点と、もう一つ、先ほど申しましたように、まだお尋ねではございませんが、おそらくお尋ねであろうと思われるのは、つまり国の負担すべき負担区分において、まるまる出していない、これをひとつ出したらというおそらくお含みのお尋ねだったかと思いますが、これはやはり私といたしましても、出すべきものは出していただくということで、昨年末の予算折衝におきましては、国民健康保険の事務費にいたしましても、百五十円から一躍二百円——二百円でも足りないといえば足りないかもしれませんが、大幅な補助率の引き上げ等もやっていただいたようなわけであります。  問題点を拾えば幾らもございますが、いま申しましたような点がおもな点であろうかと思います。
  229. 鈴木壽

    鈴木壽君 私は、まず地方財政の現況、特に赤字の状況について、ひとつここではっきり説明をしてもらいたいと、こういうふうにお願いをしたはずですけれども、あらためて赤字の問題について。
  230. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 赤字の点は、財政局長から答弁をさせます。
  231. 柴田護

    政府委員(柴田護君) 昭和三十八年度の決算の状況でございますが、一般会計におきましては、二百七十二億円の赤字になっております。赤字団体は、東京都外四県で、百三十六市二百六十一カ町村であります。また、特別会計におきましては、国民健康保険会計は、百三十二億円、赤字団体は二百六十九市千百十八カ町村。公営企業会計では、三百七十六億円、三百三十二事業が赤字であります。それから、公営企業法を適用しておりません非適用の公営企業会計では、百三十一億円でありまして、八百六十五事業でございます。  昭和三十七年度と比較いたしますと、赤字団体数はあまりふえておりません。しかしながら、赤字額は、前年度に比べまして百十三億円ふえておりまして、特に、東京都及び大都市並びに都市の赤字の増加が著しゅうございまして、この都市及び大都市の赤字は、東京都を含めまして百五十二億円、全部の赤字二百七十二億円のうちで、そのうち百五十二億円がこれらの主として都市関係の赤字でございます。
  232. 鈴木壽

    鈴木壽君 自治大臣から先ほどお話がありましたことは、いまのような赤字の状態——赤字団体の数から、あるいは赤字の額、こういうものから地方財政がたいへんなことになっているんで、しかし、その原因はこうこうである、だからこういうふうにしていきたいと、こういうお話だったと思うんですが。
  233. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そのとおりでございます。
  234. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、その赤字の原因、悪化の原因としてあげられております点は、二つだったと思うのであります。一つは、人件費の予算歳出の中に占める割合が非常に大きいということ、それから一方、税初め一般財源の伸びが鈍化してきているということ、ここに赤字の大きな要因になっている点があるんだと、こういうことだったと思いますが、そのとおりだと理解してよろしゅうございますか。
  235. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そのとおりでありますが、もう一つは、先ほどちょっと申しましたが、公営企業におきましては、だんだん、水道にいたしましても、交通機関にいたしましても、病院にいたしましても、赤字がふえてきておる。これはまあ特別会計だものですから、一般会計とは別個の問題として申し上げなかったわけでございます。  なお、特別会計の点では、国保につきましても、先ほど財政局長から触れたかと思いますが、だんだんと繰り入れ金が多くなりまして、国保自体の赤字は三十七億でありまするけれども、そのほかに、市町村等からの繰り入れが約九十五億ある。こういう点も赤字の一つの原因になっておるかと思います。
  236. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、私、さらにお尋ねをしたいのでありますが、確かに予算の歳出の中に占める、あるいはまた、一般財源という、そういうものの収入から見た人件費の割合というのは高いのであります。しかし、いまの地方自治体の財政のこういう非常に困難な状態、悪化の状態、その赤字の原因が、こういうことだけで出ているんだというふうなこと——一般会計からの持ち出しの問題もありますが、主としてこういう原因だということについては、これはどうかと思うんです。私は、たとえば、あなた方は一般財源と人件費との割合を出して、伸びがこのようになっておるから、人件費の伸びが大きくて一般財源の入ってくるその伸びのしかたが小さいんだと、こういうふうなことも言っておるのでありますが、実は純計決算から見て、歳出の中に占める人件費の割合というのは、ここ数年変わっていませんね。変わっていませんよ。三十五年度三六・八%、三十六年度三四・八%、三十七年度三四・五%、三十八年度三四・八%、ほとんど変わっていません。この率でいいのかどうかということについては、いろいろあると思いますが、これが最近のような地方財政の悪化の主要な原因だとは、これは言えないと思います。  一方、さっき自治大臣からお話しありましたが、まさか首切るわけにもいくまいし、さらにまた、給与のアップということも予想せられるのだ、こういうようなことになってきますと、赤字の原因なり、あるいはそれに対する対策なりを考える場合に、この人件費の問題というのは、これはちょっとそう簡単に赤字の原因として扱える問題じゃないと私は思う。いまの地方財政のこのような状況は、府県、市町村、いわばおしなべて地方公共団体がいろいろ仕事の面でやらなければいけないものがたくさんある。特に国から委任されておるような事務がたくさんある。こういうことの仕事をたくさんかかえておるにもかかわらず、その仕事をやりおおせるような財源の手当てがなされておかるどうかという点になりますと、それが不十分であるから仕事も満足にできないし、そのしわよせがいろいろな形に出てきて、現在の地方財政のこの貧困、赤字の原因になっている、こういうふうに考えるべきだと思うのです。これは事実です。あとから私いろいろ数字的に申し上げたいと思いますが、この点について、自治大臣どうです。
  237. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 地方財政の中に占める人件費の構成比は、お話のように、ここ数年は大体横ばいになっていると思います。ベースアップにもかかわらず横ばいになっているかと思います。それは、過去三、四年の間は、最初の財政計画と決算とを比べますと、決算で約六千億ぐらい膨張をしておるわけであります。これはいまお話しになりましたように、いろいろの仕事をしなければならぬ、仕事がある、また、住民の福祉につながる仕事というものは、実は、それはまだまだもっとやりたい点もあろうかと思います。それができたのはどうかというと、従来は、自然増収というものが国にも多くあり、そしてそれが交付税としてはね返ってくるし、また、住民税や事業税にも、所得がふえてまいりますから財源がある。財源がありましたから、それでその財源によっていろいろ、単独事業にいたしましても、福祉につながる仕事がどんどんやっていけた。したがって、その膨張した財政計画の中の人件費の比というものは、御指摘になったように、三四、五%程度かもしれませんが、これからはそうはいかないということを私は申し上げたのであります。財源というものが伸び悩みになっており、しかも、人件費というものは、それじゃ切り下げができるかというと、なかなか容易に切り下げができない。今後のいわゆる人件費の比率、構成比というものは、私は、従来と違って変わってくるのじゃないか。そこで、この際やはりその点も考慮して健全化に踏み出さざるを得ないじゃないかというのが、まあ私の考えでございます。
  238. 鈴木壽

    鈴木壽君 地方財政の健全化を言う場合に、必ずその人件費の問題なり、あるいは事業を圧縮したらいいじゃないか、こういうことが言われるのであります。大蔵大臣の施政方針横説の中にも、事業を圧縮せよということが書いてある。——ありますよ、読みましょうか。おかしいのです。これは。一方、確かにさっき私が申し上げましたように、人件費の占める比率というものは、私これで理想的だと言うのじゃありませんけれども、一方、その行政事務において多くの仕事をかかえさせられ、また、国有の事務も持っておる。住民福祉のために、団体本来の仕事としてやらなければいけないこともたくさんある。そういうことに対してやれるだけの財源の付与が行なわれておらないというところに問題がある。たとえば国の委任事務、さっき言いましたように三割行政とか二割行政とか言われ、七、八割がいわば委任事務のような、そういう中で、その委任事務を行なっていく上にちゃんとやっていけるだけの財源的な裏打ちがあるのかどうかということなんです。それはやられておらないんじゃないですか。  一方、交付税の問題も持ち出しますが、交付税といっても、いまの交付税の計算のしかたは、交付税は本来地方の必要な財政需要のある一線だけは保証しようという、こういうたてまえに立っておるにもかかわらず、実はそうはなっておらない、実際の問題として。こういうところに問題がある。だから、仕事をやれば必ず赤字が出るようになっている。これはあとで別の角度からもひとつ検討してみたいと思います。国が地方にこういうことをやりなさいといって補助金を与えたり、国が負担している仕事がたくさんある。そのとおり国庫補助金を出すような形ではとてもやれないんです。非常な地方の持ち出しがある、こういうことがあるのです。だからそういうところに目をつぶっておって、やれ事業はどうも圧縮しなければいかぬとか、あるいは人間の問題も、これはもう少し合理的にどうのこうのというようなことをやったんじゃいけない。大蔵大臣は、歳出増加を極力抑制をするなんということを言っている。そして健全化をはかれと言っている。地方団体の仕事というものは、まあ時間がないのでやっておられませんが、もう質的に昔の市町村等のやっていた仕事と違ってきているのですよ。道路だって、人が歩けば、それで砂利をちょっちょっとやっておけばいいくらいだったが、それがいまそういう道路では、とてもじゃないがやれないから、道路工事にも……。極端な例のようでありますが、かつてはし尿処理なんかは町村、いなかでは問題になったことがございません。ところが、いま町村の中でし尿処理問題、その施設の問題が一番大きな問題になっているのです。事情がみんな変わってきているのですよ。一体し尿処理をやれるだけの施設等をやって、環境衛生なり生活環境の整備ということのやれるだけの力がいまの市町村にあるのかどうか。それだけの金を与えているのかどうかという問題なんです。まあひとつ、あまりしゃべっては時間が惜しくなりますから、大臣の答弁を願います。
  239. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 鈴木さんの御指摘のとおり、私もそう思います。したがいまして、金があれば幾らでもやりたい仕事はたくさんあるし、また自治体としてもやりたがっているところでありまするが、まあ二、三年前までは自然増収が多かったために、わりかたやりやすかった。ところが、昨年ごろから健全財政に入ってきまするというと、なかなかそうもできにくくなった。それじゃできにくくなったから、それじゃそういう仕事をやめて、やらなければいいじゃないかと言っても、そうはいかない。特に総理は社会開発の点を強調されておりまするし、いま御指摘になりましたような環境衛生その他の問題も、昔と違いましてやはり相当やっていかなければならない。そこで先ほど申しましたように、起債ワクを、財源、普通の税収やその他ではまかないきれませんので、ことしは一般会計において千六百三十億、前年に比べまして三百三十億という増を見込み、そのほかに特別会計、総体を合わせますというと、昨年の三千九百億が四千八百億、約八百億程度の起債ワクを広げまして、政府資金からも相当額を出していただいて、これで社会開発もあまり切り詰めないで、できるだけやらせようという苦心をしているわけであります。  それから、先ほど大蔵大臣からも御説明されましたように、それじゃ国でめんどうを見たらどうかということでありますが、国の三兆六、五百八十一億の中で、実を言いますと、その中の交付税として地方に回っている金が七千百三十二億、これだけのものは地方へそのまま素通りで入っていくわけである。そのほかに国庫支出金が九千八百九十六億、約一兆円近いものは国庫支出金、すなわち国の補助として地方へ、まあ国の負担金といいますか、補助金というか、そういう形でそれがみな地方の住民につながる仕事としていっているわけでありますから、仕事の内容といたしましては、国の大部分といいますか、相当の部分がやはり地方へ流れてやっておる。これは私は決して悪い傾向ではないので、そうあるべきことで、住民の福祉にだんだん金が使われていくということはけっこうでありますけれども、しかし、限られた財源の中でやることであります。交付税にいたしましても、昨年暮れに大蔵大臣とずいぶん折衝いたしました。もっと実は地方財政が苦しいからいただきたいのでありますけれども、国の四十四、五百億しかない自然増の中で、国も固定した義務的な支出がたくさんある。自由になる金はわずか一千億にも足りない中から、百四十五億というものを地方へぽんと出すのでありますから、これも私はやむを得ない、こういうふうに思っておるわけでありまして、決して圧縮して大蔵大臣が仕事をしないでもと、こういうことを言っているわけではございませんで、ともどもにできるだけ地方の仕事というものもこの中でやりくりをしていこう、こういう苦心をいたしていることを御了承いただきたいのであります。
  240. 鈴木壽

    鈴木壽君 いまのお話の中で、それからさっきも自治大臣は言っているのでありますが、起債ということを言っておりますね。簡単にあなた方は地方財政のことで、一般財源が足らないから起債をやって仕事をさせよう、それでいいじゃないか——これはたいへんな問題ですよ。実はこれは借金です。利息をつけて返さなければいけません。御承知のように六分五厘で二十カ年間で返すということは、ちょうど借りた金は元金と同じような額の利息がつきますよ。これは必ず返さなければなりません。しかし、金がないために、やむを得ずしてやっているのです。地方団体もやっている。国でしばしば公債問題が問題になりますね。国ではやっておりませんよ。何とか公債を発行しなくとも、大蔵大臣は苦しい苦しいと言うが、何とかやっている。やれるだけあるのです。公債を発行しなくとも、まず何とかやっていけるだけのものがある。それが地方にはないのですよ、ないことが問題だとさっきから私言っているのです。それを公債をやったらいいじゃないか、一般会計で公債をどんどん発行して仕事をやらしていくというこういうやり方というものは、私は地方財政をほんとうに考える立場からするならば、これは邪道だと思う。中には、起債をつけて仕事をさせるものもないわけではありません。しかし、一般的にいって、そういうようなことで、国は公債を発行しないのだ、地方団体は公債をどんどんつけてもらって仕事をしたらいいじゃないか、しかも、その起債というものは、利息をつけてとるくせに、いかにもお恵みのような形でやることは、これはけしからぬことなんです。どうですその点は、大蔵大臣総理大臣にも……、基本的な問題です。財政運営の。
  241. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私ども決して地方財政において、地方債がふえることは好ましいこととは思っておりません。しかしながら、先ほど申しましたように、地方税源といたしましても鈍化をして、昔のように伸びはいたしておりません。それから交付税も先ほど申しましたように相当増額をしてもらい、また国庫支出金も一兆円に近い国庫支出金を流しておって、なおかついまのようにやっていけない。つまり、義務的経費というものが非常に多くなっている。人件費は、私はそうだからといって、これをすぐカットするということを言っているわけじゃございませんが、とにかく三兆六千億のこの予算の中で、三六、七%を占めておるというときに、いわゆる住民の福祉につながる社会開発的な仕事をするということになりますれば、勢い起債によらざるを得ないので、やむを得ずやっておることでございます。その点を御了承いただきたいと思います。
  242. 鈴木壽

    鈴木壽君 実は、地方財政の中でいま公債費が非常に問題になっていると思うんです。私はそう思う。三十七年度決算、三十八年度決算で見ましても、決算の総額からしますと、あんまり目につかないような数字でありますけれども、地方税収入とこの公債費、年々の元利償還費を比べてみますと、地方税の収入の三十七年度では一〇・三%、三十八年度では一〇・五%であります。一割以上借金の返済のために使われてるんです。これがいまのような形でこうやっていきますと、三十九年度、四十年度、これは必ず私はこれより率が多くなってふくれていくと思うんです。しかも、これは後代にずっと続いていくんです。こういうかっこうは、私はやむを得ずとおっしゃっていますけれども、私に言われたからやむを得ずとなりましたけれども、さっきあなたは積極的に起債をつけてやるような話をしておった。大蔵大臣、これはどうです。この問題。地方財政のあり方、こういう起債を、やむを得ずであっても、とにかくつけなければならないような、こういう地方財政のあり方というものに対してどうなんです。
  243. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ戦後、国の財政でも地方の財政でも、何でもかんでも一挙に先進国の状態、理想的な状態に早くいかなきゃいかぬ。こういうことですから、国も地方も歳出要求が非常に多いということは、御理解いただけると思います。ですから予算委員会を、衆参両院二カ月通してみても、とにかく歳出規模が大きいという御議論もないわけではありませんが、いずれにしても、国保に対して金を出せ、農林に対して金を出せ、地方財政にもっと金を増額しろと、減税は少ない……、歳出の要求だけでこうでございます。でございますから、いまの状態で、まあ地方財政も、借金でありますから、起債が好ましい状態だと、こういうことを言っているわけじゃありませんが、自治大臣申し上げたとおり、このような財政事情の中で、なお先行投資を行なうということになると、やがては財源のもとになって返ってくるというようなものに対しては、どうしても起債措置で行なわざるを得ないと、こういうことになるわけであります。地方だけやらしておって、国は健全財政を誇っているということでございますが、そういうわけではございません。そういうわけではないのです。先ほども申し上げたのですが、まあ議論をするときに、国と地方は相対立していると、こういう立場で大体お話がありますが、国も地方も同じいのであります。ただ国が総合的に行なうことがより効率的だと、こういうことになれば、国にウエートが置かれるということであります。地方自治の姿だけでやりますと、財源豊かならざるところと豊なところと、どうしても大きな差がつくわけであります。地方財政の中で長いこと、財源調整ということを言っておりますが、まあこの問題には触れられない、なかなかうまくいかないということで、やむを得ず交付税制度でもって、特別交付税などでもって調整を行なっているわけであります。でありますから、国と地方を考えますときに、地方も起債でまかなう、まあやむを得ない状態においてやっているのであります。とにかく国も幾らか借金をして、そうして地方の起債を半分に減らして、国も半分ぐらいひとつ借金をしたらどうかということでありますが、これは外国から……。
  244. 鈴木壽

    鈴木壽君 そんなことを言ってやしない。
  245. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そういう議論している人もあります。そういうことになると、外国から見ると、国の財政の健全性ということが非常に高く評価をされているのでありますから、国が一般会計の財源として公債を出して、そうして財源を求めて、地方に対しては起債の率を少なくする、こういうことはなかなかできにくい状態でございます。まあ国も地方も、先ほど申し上げたとおり、安定成長に入りますと、税収は急激に減ってまいりますので、ここらでひとつ本格的に将来の財政のあり方、こういうものに対しても十分検討をしていかなければならぬと思います。国と地方財政とは同一のものとしてひとつ論じなければならないと、こういう考えを持っているわけであります。その面において、御批判をいただきたいと思います。
  246. 鈴木壽

    鈴木壽君 私も、何も地方に味方をして国に対立するとかいう、そんな考え方で申し上げているのじゃない。あなたのおっしゃるように、国と地方は同じ立場に立って考えなければならないというこういう観点からです。こういう観点から、国は公債を発行しなくてもやれるのだ、地方は発行しなくてはやれない、こういう状態にしておいていいのかどうかと言うのです。あなた、はっきり答えなさい。
  247. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国と地方とは一体である、こう申し上げたわけでありまして、海外から見ても、どこから見ても、国が健全財政の姿であるということは、日本人全体から考えれば非常に好ましい結果を得ることは、御承知になっていただけると思います。
  248. 鈴木壽

    鈴木壽君 私のお聞きしたいことに答えていませんね。私は国の財政をとやかく言っているのじゃないですよ。それはそのとおりでけっこうです。けっこうですが、地方は健全財政をとれなくて、借金政策をやっているのですよ。こういう地方財政のあり方でいいのかどうかということです。
  249. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方も国と同じく健全財政が望ましいと、こう考えます。考えますが、これは地方自治の制度ということとひとつあわせて考えていただきたいのであります。やはり恵まれないところの自治体は、急速な速度でもって、いろいろな社会施設その他をやりたい、こういう希望が非常に強いのであります。また国もそういう願望に対しては大いに協力をするという態勢でありますから、そうなれば現在の状態においては、起債をもって対処しなければならない事業に対しては、起債措置を行なうということはやむを得ない状態だと思います。国は一体借金をしておらぬじゃないかと、こういう点の御指摘だと思いますが、いまの国と地方の財政、しかも地方の財政の伸び方が、非常に国に比べて急速度に伸びているという状態からすなおに考えるときに、いまの態勢でやむを得ないと、こう考えているのでございます。
  250. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうもあなたのお話、わかりませんがね。そこで伺いたいことは、さっき、冒頭総理がお述べになったように、事務の再配分、税財源の再配分、これは一体のものでなければいけませんから、行政事務の再配分、財源を含めてですよ、そういうことをやらなければならぬと言っているのです。自治大臣もそうはっきり言っていらっしゃる。これをやればもっと地方財政の構造が変わってくるのですよ。だからこういうような、一々借金とかなんとかいうこれをやらなくてもいいような形にだんだん変わってきますよ。それをやらなければいけません。一体、どうです。これについて総理並びに自治大臣、大蔵大臣でもよろしゅうございます。
  251. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど総理お答えになりましたように、事務の再配分は、これはぜひやらなければいかぬと思います。目下この問題につきましては、地方制度調査会におきましても、重要な問題として審議をしていただいているのであります。しかし、事務を再配分をしたからといって、いまの地方財政の状況が非常に好転するかというと、私はなかなか期待はできないと思います。やることはけっこうであります。また先ほど申しましたように、九千八百億、一兆円に近い国庫の支出金、これはいわゆる国庫の負担金とそれからもう一つ補助金等でございますが、この補助金を整理して、整理した分を地方に交付して、そうして財源を与えたらどうかという問題もありますけれども、しかしそういう問題もありましても、実際は補助でいくか、あるいはまるまる与えてやらせるかというだけでございまして、金についてはそれがふえるわけじゃないわけであります。したがいまして、先ほど来申しましたように、社会開発の仕事もこれはおろそかにできない。進めるべきはしなければなりませんので、勢い起債で見たようなわけでございます。ただ、先ほど申しました起債の、本年度の四千八百億近い起債というのは、一般会計の起債としては千六百億程度でございまして、そのあとは特別会計、すなわち水道でありまするとかその他のそういう公益用に充てる起債等も含まれておるわけでございまして、これはいまのようなときにはどうしても投資せざるを得ない。それは企業でありますから、投資いたしましても、それがそのまま借金というわけじゃなくて、長い間に償還をするという方法もつくわけでありまするので、決してそう健全財政にもとるとは私は思っていないのであります。
  252. 加瀬完

    加瀬完君 関連。自治大臣は国庫支出金や交付税の交付金が非常に多いということをお述べになっておりますがね。国庫支出金はですよ、当然国が法律上の負担義務がありますものを正しく背負っておるかということになりますと、これは鈴木委員からも御指摘がありましたように、地方のほうに国の負担義務をむしろよけいに背負わしておる、過重負担をさせておるという問題があるわけですね。それをお考えにならないで、額だけ見て国庫支出金が多いから地方は楽だということにはならない。いまの国庫支出金では正しく法律上の負担義務を国が果たしておらないということを実際問題にしなくていいかどうかという点が一点。  それから、地方債は一般会計では御存じの千六百億、公債費は千三百億ですね。あまり隔たりがなくなってきた。とにかく、地方債まで募って仕事をやらせなければならないということは、これは地方の仕事としては必要な仕事とお認めになるでしょう。財源がないから地方債に肩がわりさせておるわけですけれども、地方債の財源の前に、当然交付税法によれば交付税の算定というものが変えられてこなければなりません。これをさっぱり問題にしておらないで、交付税もたっぷりいただいておりますというような御説明では、自治大臣としては了承ができない。その点をお答えをいただきます。
  253. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お話のように、国庫支出金の九千八百億は当然国が負担すべきものを負担しておるのは、御指摘のとおりでございます。それがまるまる負担をしないで、その一部が超過負担として地方に負担さしているということも、これは事実であって、私といたしましてそれを否定するわけじゃございません。しかし、それだけの国の三兆六千億の予算の中で一兆円近いものがやはり地方の住民のためにいろいろと使われておるということを申し上げたのでありまして、それ以上国から出せればけっこうでありますけれども、国の三兆六千億のうちからそれだけのものを出すということも私はこれは容易なことではなかろうかと思います。しかし、負担すべきときまったものを負担していただかないということは、これは困ることでございまして、先ほど申しましたように、昨年の暮れの予算編成にあたりましても、当然負担すべきものは負担していただこうということでお願いをし、若干の是正はしていただいておるようなわけでございます。
  254. 加瀬完

    加瀬完君 交付税〇・六%というのは。
  255. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それから交付税の点でございますが、これは御承知のように、地方財政が相当引き続き窮迫をする場合には、国と地方との間の財源調整と申しまするか、負担区分の是正ということは考えなければなりませんので、先ほど申しましたように、昨年末におきましては交付税率の〇・六%、すなわち三税の二九車五%というものを地方に交付していただいておる、これが百四十五億であります。これは少ないという点ほおっしゃるかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、国の伸びというものが非常に少ない。従来非常に多かった自然増収が、四十年度では四千五百億ほどしかない。しかも、その中では国が義務的に当然約束づけられたものが大部分である。その中で百四十五億を交付税に回すということは、まあ私としては非常に最後までがんばりましたけれども、まあ大蔵大臣としては相当思い切って協力をしてくれた、かように存じておるわけでございます。
  256. 加瀬完

    加瀬完君 交付税の全体の伸びが少なくなれば、交付税率は当然変わるというのが交付税法のたてまえでしょう。交付税の総額が少なくなって、しかもですね、自治大臣おっしゃるように、これが当然引き続いて需要増があるわけです。それで、財政審議会は一・五%という勧告を出しておるのに、〇・六%でよろしいという結論は、交付税法の性格からいえば出てこないわけです。これは私はいまの御答弁では納得できません。もう一度お答えいただきたい。
  257. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私もこれで十分だとは思いません。したがって、先ほど申しましたように、国の財政の非常に苦しい中からでありまするので、この程度でやむを得なかったと、こういうことで、国の財政が伸びてきますれば、だんだんと地方財政は豊かになるということよりも、だんだんと窮乏の一途をたどりつつございまするので、国の財政の許す限りは交付税率というものを増加していくことはこれは必要であろうかと、かように存じます。
  258. 鈴木壽

    鈴木壽君 事務の再配分、税財源の再配分、これはおやりになりたいと、こういう話ですが、税調とか地方制度調査会ですか、こういうところにまかして、いつ答申が出てくるかわからぬというようなかっこうよりも、その気になってあなた方が案をつくって、これでどうですかというようなはかり方をしたらどうです。そういう御用意はありませんか。
  259. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私どももその用意はございますが、しかし、地方制度調査会で相当の専門家もお集まりになり、しかもこの点については熱心に御審議をされておりまするので、その御意見を尊重しながら取っ組んでいきたいと、かように存じております。
  260. 鈴木壽

    鈴木壽君 その場合に注意しなければならぬことは、さっき大臣がおっしゃったように、これはいまの補助金を、補助金でなしに、地方にただ預けるのだと、こういうのは、私の言う税財源の再配分なり事務配分に伴う措置のしかたじゃないですよ。そんなことをやったって、これは何にもなりません。事務の再配分をやったら、地方のなすべき仕事に対してどのくらいの手当てをしなければならぬかという、そういう見地に立って必要経費を見ていくための税財源の再配分をやらなければいけないと、こういうことなんですから、間違わないようにやっていただきたいと思うのです。  そこで、私、一般財源が不足だとか、税財源が伸びないというようなことから、当面やってすぐやれることがあるから、これは私ひとつ提案をします。やらなければいけないことがありますから、提案をします。これについての御意見なりそれを聞かしていただきたい。租税特別措置法によって、国税において三十九年度約二千億円、四十年度二千百億円ですか、これが地方にはね返ってくる分が相当高くなっておる。こういう地方税にはね返って地方税の減収になるようなこういう措置というものは、これは誤った措置だと思うのです。これをやめることによって数百億円の金が入ってきます。やめるおつもりでございませんか。これは自治大臣から。
  261. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 租税特別措置法によりまして、御指摘になるのは、おそらく配当課税の選択課税、あるいはまた利子課税等であるかと思いますが、これは従来とも資本蓄積のために資本利子税というものは源泉課税になっておりまするので、地方税としては捕捉することもできませんので、従来取っていないのであります。また、今回の配当の源泉課税、選択した場合につきましてでありますが、これは地方税としては五万円以上につきましてはやはり取ることにいたしております。五万円以下につきましては、従来とも三万円以下については支払い調書がございませんし、申告もさしていないので、取っていない。今回は、これが五万円になったのでありまするから、この点は従来のやり方をとりまして、やはり五万円以下を地方税としては取らないことにいたしたわけでございます。
  262. 鈴木壽

    鈴木壽君 どうもあなたは、地方税の国の租税特別措置法のはね返りについてよく御了解なさっておらないようですね。事務当局でいいんですが、地方税にどのくらいはね返って、どのくらいの減収になっておるのか、これをひとつ示していただきたい。三十八、三十九、四十年度くらいで……。
  263. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 国で、国税においてとられております租税特別措置のはね返りによります地方税の減収につきましては、三十九年度で申しますと五百四十九億、四十年度で申しますと五百七十七億であります。
  264. 鈴木壽

    鈴木壽君 このくらいあるのですよ。国が政策的におやりになることは、これは私どもいろいろ言いたいこともありますけれども、まあまあそれとしても、いまそういう制度ですから……。しかし、それを今度地方税にまでということは、これはとるべきことじゃないのですよ。どうしてもこれは理屈に合わないのです。私は、いま一挙に全部というわけにはいかない——五百七十七億四十年度に見込まれている全部ではないけれども、いま半分それを整理したにしても、約三百億近い金が地方に入るのです。  もう一つ、電気ガス税の非課税によって企業が得をしている額、これはどのくらいですか。
  265. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 約百七十億程度かと思います。
  266. 鈴木壽

    鈴木壽君 これも実におかしな制度であります。これをやめることによって、百七十億一挙にいまあしたからというわけにはいかぬでしょうが、少なくとも半分やめても百億程度の金は地方に入って、しかもこれは市町村にとってはたいへん大事ないい財源になっているのです。これをやめることによって財源がふえてきます。税が伸びてきます。しかも、こういうのは年々伸びるのです。これは。本質的に総理は電気ガス税は悪税だと、こういうふうに考えておられるようであります。われわれもその考え方についてはわかるのです。本質的な問題はともかくとして、現行のような制度においてこういうことをしておくことは、私は許されないと思うのです。  それから、地方交付税が一体——自治大臣、大蔵大臣、地方交付税が一体地方の財政需要のそれを見ておるのかどうか。何%上げたとか何とかといろいろなことを言っておりますが、必要財源の確保という点からいって、保証という点からいって、見ておるのかどうか、これをひとつはっきりお答えをいただきたい。
  267. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいまの御質問は電気ガス税についての問題かと思いますが、そうでございますか。
  268. 鈴木壽

    鈴木壽君 それが一つ。それから交付税として……。
  269. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) この点は、一般の電気ガス税の免税点の引き上げ、すなわち、従来三百円でありましたものを、今度は電気については四百円、ガスについては五百円に引き上げて、これは一般的でございまするから見ておりませんが、企業につきましては特に大幅に減税になりました。その減税の補てんは地方交付税で見ておるわけでございます。全部はまるまる見るわけじゃございませんが、相当見ておる次第でございます。
  270. 鈴木壽

    鈴木壽君 私の言い方も悪いかも知らぬが、どうもピントが合いませんね。電気ガス税の非課税はやっているでしょう、企業に対して。それをやめなさいということなんです。  もう一つの問題は、一般財源の充実という点からいって、現行の地方交付税で見ておるいわゆる基準財政需要額というものは、地方団体の仕事をやっていく上で必要最小限度のその額を保証しておらない、そういう計算のしかたしかできないということです。これをお認めになるかどうかと、こう二つの問題なんです。
  271. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 電気ガス税は、昨年まで年率一%ずつ下げてまいってきたわけであります。でありますから、電気ガス税に対しては、財源が許せばこれをできるだけ全廃の線まで持っていきたい、こういうことでございます。これは地方税に対していままでの年率一%ずつの引き下げに対しては、一時財源措置を行なって引き下げたわけであります。  それから、現行の交付税率二九・五%は一体正しいかどうか、こういうことでございますが、国の財政、地方財政等をすなおに見ましたときに、いまの二九・五%という交付税率は正しいものだと、こう考えております。
  272. 鈴木壽

    鈴木壽君 時間とらせないようにしてくれよ。  企業に対して電気ガス税を免除しているでしょう。重要産業だとか新規産業だとかいって何年もずっとやっている。これは相当な額ですよ。いまさっき税務局長から言ったように、百七十億もあるというのです。理屈に合わない。こういう免除のしかたはやめて、取るものは取りなさい、こういうことなんです。
  273. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産業政策上奨励という意味でやっておるわけでありまして、これが国民にはその利益がはね返っておるわけであります。
  274. 鈴木壽

    鈴木壽君 時間がないから、あとで別の機会にその問題を……。  そこで、もう一つ、地方財政が困っているときに、ぜひともこれは直してもらわなければならない問題、さっき加瀬委員からも指摘のありました問題、超過負担の問題、自治省で握っておる超過負担の現況、これをひとつここではっきり出していただきたい。
  275. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 現在の地方で超過して負担をしておりまする額は、一般会計におきまして六百七十億、特別会計におきまして百九十三億、合計いたしまして八百六十三億になっております。
  276. 鈴木壽

    鈴木壽君 もっと具体的に項目ごとに……。
  277. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) こまかく申し上げますると、補助職員の保健所費等について四十七億、農業改良普及事業につきまして四十億、職業訓練について十一億、その他四十二億で、補助職員につきましては百四十億でございます。それから普通の建設施設につきましては、警察施設について七億、公営住宅について二百五十一億、文教施設において百十三億、清掃施設において六十二億、その他について五十六億、合計四百八十九億であります。そのほかに失業対策事業が四十一億ございまして、それを集計いたしますと六百七十億になります。  なお、特別会計につきましては、国民健康保険費の事務費について八十六億、国民年金について八十五億、下水道終末処理について十五億等、合計百九十三億。  全体を集計いたしますと、先ほど申しましたように八百六十三億、こういうわけでございます。
  278. 鈴木壽

    鈴木壽君 お聞きになったと思いますが、いまのこの苦しい地方財政の中で出さなくともいい金を八百六十三億も負担をして、政府からのいろんな仕事をこれはやらされているのがいまの実情なんです。総理、よくこれはひとつお聞きいただきたい、あなたふだんはこんなこまかいことまでは手がつかないだろうと思いますが。私、実はきょう時間があれば、いま自治大臣があげられた、農林大臣の所管の項目、建設、それから労働、厚生、これは全部ひとつ洗ってみたいと思いましたが、時間もありませんからやめます。しかし、よく聞いておっていただきたいと思います。同時に、これは総理も、大蔵大臣も、これは予算編成での大問題だと思うのだから、自治大臣、これをこの解消のためにどうなさるつもりなのか、このままでいいのかどうか、よくなかったら、この解消のためにどうするつもりなのか、四十年度で一体解消のための手が打たれておるのかどうか、こういうことについてひとつお話しをいただきたい。
  279. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算編成につきましては、補助単価の是正等、補助金等合理化審議会の答申を尊重しながら、可能な限り努力をいたしてまいりました。
  280. 鈴木壽

    鈴木壽君 総理大臣……。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣が答えたとおりでございます。で、私はもう少し別な見方をしております。全体について。その考え方をひとつ申し上げてみたいと思います。  国民あるいは地方自治体の住民、かように申しましてもこれは同じものでございます。そういう意味で、いまの国から地方へ出せ、かような言い方をしておられますが、その負担はだれが持っておるのか、これはひとしく国民の負担でございます。地方自治体の住民の負担でございます。この点がしばしば言われますごとく、国民の負担はぜひ軽減しろと、こういう立場で減税もやっておる、そういうことでございますから、まず、その点を第一に考えていただきたい。地方住民と国民というものが別々ではない、これは対立するものではない。  第二の問題といたしまして、ただいまの府県単位あるいは市町村単位、この自治体区分、はたしてこれでいいのか、いまのままの姿でよろしいのか。これは現に指摘されるごとく、赤字団体もありますが、同時に黒字団体も非常に多い。その金額などもばく大な金額に、黒字の面ではなっておる、かように考えます。しかも、行政水準は全部が同じようにしたいものだという中央の要望がございます。これは、地方自治体はその要望にこたえてそれぞれの仕事をしておるのだと、かように私は思いますので、ただいま仰せになりますような点、まことに不都合だと、ただそれだけできめてしまうのはやや早計の感がいたすのではないか。私ども、やはり国民の立場において、これは地方住民と同一でございます。しばしば各大臣が答えておりますように、国と地方とが対立するものではないので、こういう観点に立って十分気をつけてまいらなければならない。しかも、地方の財源の関係等で見ますると、地方自治体で不公平が非常に多いのではないだろうか。ただいま地方の負担金というものは、地方だけの負担、こういう観点に立って見ましても、よほど不公平なものがあるのじゃないか。だからこそ、交付税の配分等につきましても、特別に、足らないところには交付税を配賦する、黒字のところには交付税を配賦しない、こういうようなことになっておる。これらのことを考えてみまして、大体大まかに見ますると、私は、ただいまの制度は当を得ておるのではないか。  ただいま超過負担について最後にお尋ねがございましたが、超過負担というものも、これは直していかなければならない。そういう意味で、年々大蔵当局におきましても、実情に合うようにこれを訂正しておる。かような点も御勘案願いまして、ただこれが不都合だとか、あるいは国民の負担がどうなっておるかというようなことも考えて、また、地方制度のあり方がはたしてこれでよろしいのかということも考えて、ただいまのような財源分配なり、あるいは行政事務の分配なりをとくと考えていただきたい。そういう意味では、たいへん私は議論のある点だと、かように思いますので これは自治省だけの案よりも ただいま地方制度調査会等が真剣に取り組んで、そのほうが、よりいい答申も得、また、政府がそういう本のを尊重することによって、りっぱな地方自治体の育成もできるのじゃないか、かように私は考えます。現状がよろしい、かように私は申し上げるのじゃないのですが、現状においては、ただいまのような状態はやむを得ない仕儀じゃないか、かように思います。
  282. 鈴木壽

    鈴木壽君 総理ね、私が取り上げ、自治大臣が答えておる超過負担ということについて十分な御理解がないのですよ。——いやいやこれでやむを得ない、これでいいんだ、法律にきめて、たとえば三分の二負担をするんだと、ところが、三分の二負担するどころじゃない、二分の一か三分の一くらいにしかならぬという、こういう問題。単価が低かったり、そういうことをいま私はやっているのですよ。法律にきちんときめてある。私は、念のために、時間があればと思ってちゃんと法律を書いてきていますがね、この小六法でもいいんですよ、ありますが、それは時間がありませんからやめますが、そういうことを言っているのでありまして、あなたのいまのお話は、おかしいんですよ。私は、ただ一ついいことは、こういうことを言っている——このままでいいわけじゃないから何とかしなきゃならぬと、こう言っている。だから、何とかするために、一体具体的にどうするのかということを聞きたい。
  283. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いわゆる超過負担というものにつきましては、国庫補助単価の不足に基因すると、こういうふうにおおむね言われておりますが、補助事業に関連した単独事業の施行や行政の実施能力の差等によって生ずるものもありますし、また、地域的に物価差がありますので、そういう土地の条件等もこれらの要因になっておるわけであります。現在の法律で三分の二補助する、二分の一補助する、三分の一補助するということでございますが、こういうものは実施したものに対して、精算した金額に対しての精算補助を行なうというたてまえではないのでありまして、標準単価によって、標準的な地方公共団体において、最も合理的な状態において事業が施行せられるという前提に立った標準単価で補助をすると、こういうたてまえでありますので、いまの状態で政府は法律違反を行なっておるという考え方ではありません。しかし、先ほど自治大臣が申し上げたとおり、超過負担という名のものが相当な金額にのぼっておるということでありますので、できるだけ実情に即した単価を予算に計七することが正しいと、こういう考え方で、先ほども申し上げましたが、補助金等合理化審議会の答申も尊重しながら、年度予算の編成に対しては、これが単価の是正等をはかって合理化に努力をいたしております。こう申し上げておるのであります。
  284. 鈴木壽

    鈴木壽君 一方的に、いわゆる標準単価とか基本額とかということをきめておるところに問題があるんですよ。最後にあなたは、実情に即するようにというようなことをおっしゃっていますが、いままでは、四十年度予算を見たって、これは実情に合わない、まだ。大体において——残念だけれども数字をあげていきましょうか。四十年度の単価はどうなっているか、実情はどうなっているか、だから、そういうことをやって法律違反でもないと、法律にもちゃんときめてある。政令によっているところもある。そういうことが行なわれない。しかも、地方財政法の中にも、ちゃんと地方団体に迷惑をかけてはいかぬということが、はっきりうたってある。  総理大臣、ちょっととっぴなようなことを聞きますが、補助金等の執行の適正化に関する法律というのを御存じでございますね。あの中には、国の補助金をやる場合に、条件をいろいろつけますね。地方で仕事をする場合に、条件どおりやらなければ罰則がある法律があるのです。いまの私の取り上げているこの超過負担の問題は、実行不可能なような、どうにもやれないような条件をつけて地方にやらしている、無理やりに。泣き泣き地方はやっている。その額が、さっき自治大臣から話がありましたように、総額八百六十三億円、もっとある。これは実は、自治省は控え目にしているのですよ。おかしくはありませんか、これは。この一点どうですか、総理
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、補助金等合理化審議会の答申を尊重しながら、年々実情に合うような単価に直しております。また、将来もこの姿勢でまいりたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。  それから念のために申し上げますが、この問題に対しては、長いこと議論がございますけれども、こういう超過負担というような事故が起こる事情は、これは地域住民の利害の面から見ますと、こういう事業が行なわれるということも、地域住民の福祉の内上のために行なわれておるという前提が一つあるわけであります。  もう一つ、法律にいう国庫補助は精算補助ではなく、これは標準単価による補助である、こういうことは、これはまあ言い過ぎなら私も取り消しますが、物価が上がる場合、標準単価でやるが、物価が下がってくる場合、一体その差額を返したか、こういうことになりますと、歴史は明らかになってくるわけであります。でありますから、国と地方との問題は、標準単価において補助をするんだ、こういうことは、もうこれは線でありますから、御理解をいただいて、ただ、現実問題として、地方財政が非常にそのために困難になる。これを具体的にどう解決するかという問題が残るわけでありますので、その面につきましては、地方財源の充実をはかるとともに、今回、〇・五%でございますが、交付税率を引き上げたということも、地方財源の充実に資する一つの施策であることも、御理解いただきたいと思うのであります。
  286. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 鈴木君の時間は終了いたしました。
  287. 鈴木壽

    鈴木壽君 ここ数年来、大蔵大臣、標準単価が実情より高くて地方が得をしたとか、返さなければいけないものを返さないでいるというような実例がありますか。おかしなことを言わないで、まじめにひとつ言わなければいけませんよ。
  288. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう答弁をしておりません。私がこの問題で言い過ぎになれば取り消しますが、ということでございますが、常識的に考えて、一体、標準単価でもって国が補助しているのであるのか、精算補助なのかということに対しては、明文がございませんが、いままでの歴史的事実から見ましても、標準単価としての補助でございます。こう私は断定をしてお答えをしているわけでございます。それは理論的に申し上げても、現在は標準単価よりも実施単価が高いから超過負担というようなものが起きますが、昔の状態であって、この標準単価でやりまして、実際、物価が下がっておった当時は、標準単価との間に差額ができても、これを国庫に返納するということがなかったという事実から見ても、標準単価における補助であるということは間違いはありません、こう申し上げておるわけであります。しかし、現実問題としては、地方財政の中に超過負担の財源を得るために非常に困難な状態でありますから、そういう状態につきましては、国も地方も、十分協議をしながら地方財源の確保に努力をいたします。こう申し上げたのであります。
  289. 鈴木壽

    鈴木壽君 最後に一つ文部大臣、地方財政の上でたいへん問題になっている国立学校の、大学なり、あるいは特に最近三十七年度からできました高専、これに対して地元負担が非常に多いですわ。土地、建物、そのほかのいろいろな工事費、これは数年前から問題になっておりますが、いつまでたってもやめませんね。なぜなんです。やめられませんか。大蔵大臣は決算委員会で、いや文部省から土地費なんか請求がないからつけないのだ、こんなことを言っているようでありますが、文部省、どうなんですか、これは。ある高専で、一億五千万円の地元負担をしておりますよ。最近、土地だけは国有地の交換をやろう、残り一億一千万円ばかりやはり持ち出し。これは市で持てとか、町村で持てとか、県で持てとか、てんやわんややっている。その中には、当然国がやらなければいけない、そういうものを全部地元にやらしているということはおやめなさい、どうです。
  290. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 国立高専の問題につきましては、これは決算委員会でもいろいろと御指摘がございましたとおりでありまして、三十九年度までは、特に土地の提供等について、地方に非常な御負担をかけた事実がございます。したがって、四十年度には、七つの国立高専を新設いたしますが、これは全部国有地の提供、あるいは国有地と県有地の等価交換ということでやることに決定いたしました。
  291. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと一つ、これはみんな学校を誘致したからの弱みもあります。何とかしてくれと、弱みもあります。ありますが、だからといってね、いろんなことを、これも寄付せい、整地費も寄付せい、校地も寄付せい、道路もつけろ、電気工房もやれ、電話も引け、給水排水の工事もやれ、ガスのそれもやれ、職員宿舎も何戸建てろ、完成まで二十戸も建てなきゃいかぬ、こういうようなこと、やるべきじゃないですよ。私、時間がないから、資料たくさん持ってますけれども、やめますが、これはぜひやめるように、総理からも、大蔵大臣からも、ひとつはっきりしたお答えをいただきたいと思います。それでやめます。
  292. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 学校その他裁判所とか検察庁とか、その他国の出先機関の庁舎等の建設に対して、敷地を寄付をしていただいたり、また、無料で借りたりしておった例は確かにいままでございます。しかし、この国立高専問題でいろいろ御指摘がございまして、できるだけ早い機会に国有地もしくは公有地と交換をするというたてまえでやっておりますので、これからは当然国が負担すべき国費の支弁に基づく建物を建てる場合、設備をする場合、地方に寄付を強要するとか、また、無償で貸与を受けるとか、このようなことは絶対に避けなければならないという基本的な考え方でございまして、いままでのものにつきましても、文部大臣の申し上げたとおり、国有地と交換等をはかりまして、かかることのないように将来とも考えていきたいと思います。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鈴木君も事情をよく御存じのようでございますから、多くを申しませんが、この種の問題はとかく地方の政治問題化す、かようなことのないよう、本来、中央においてきめることならば、それから先は事務的な考慮で進んでいくように特に戒心してまいりたいと、また、地方におきましても、そういう意味で、この問題の扱い方を厳正にひとつしていただくように、十分御協力のほどをお願いいたします。
  294. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑通告者の発言は全部終了いたしました。総予算三案の総括質疑は終了したものと認めます。  本日はこの程度にいたしまして、明十三日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会