運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-03-10 第48回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十日(水曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      阿具根 登君     鈴木  強君      亀田 得治君     稲葉 誠一君      小平 芳平君     渋谷 邦彦君      田畑 金光君     田上 松衞君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 大倉 精一君                 木村禧八郎君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 永岡 光治君                 羽生 三七君                 米田  勲君                 浅井  亨君                 渋谷 邦彦君                 田上 松衞君                 田畑 金光君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君    国務大臣        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        中央青少年問題        協議会事務局長  赤石 清悦君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁参事官   麻生  茂君        防衛施設庁長官  小野  裕君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        法務省刑事局長  津田  實君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       星  文七君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省関税局長  佐々木庸一君        大蔵省銀行局長  高橋 俊英君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        厚生省保険局長  小山進次郎君        社会保険庁医療        保険部長     坂元貞一郎君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省公益        事業局長     宮本  惇君        中小企業庁長官  中野 正一君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        郵政大臣官房電        気通信監理官   畠山 一郎君        郵政省監察局長  稲増 久義君        郵政省人事局長  曾山 克巳君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        建設省計画局長  志村 清一君        自治省選挙局長  長野 士郎君        自治省税務局長  細郷 道一君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 干冬君    説明員        日本電信電話公        社総裁      大橋 八郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、阿具根登君が辞任され、鈴木強君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、きのうに引き続き質疑を行ないます。向井長年君。
  4. 向井長年

    向井長年君 まず総理にお聞きしたいのですが、これは実は通告いたしておりませんので、ひとつ聞いていただきたいと思います。ちょうど先般わが党の曾祢委員から質問をいたしました、ベトナム問題のいわゆる平和解決への熱意を示せ、こういう点について総理に伺ったのでございますが……。
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 静粛にお願いします。
  6. 向井長年

    向井長年君 特に、昨日の夕刊に出ておりますけれども、このベトナム解決に対して、国連事務総長であるウ・タント氏から、新しい平和解決へのいわゆる提案がなされております。これに対しまして、わが国アジア一員とし、あるいはまた国連加盟国として、これを積極的に支持すべきである、こういうようにわれわれ考えるわけでありますが、総理の見解をまずお聞きしたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままでのところは新聞に出ただけでございまして、別に国連に加盟しておるわが国に対しても、これに協力ということは受けておりません、正確には。しかし、この種の動きはいかような動きにしろ、提案のあることはしごく賛成でございますので、私どもはけっこうなことだと、かように考えます。しかしながら、この問題自身、この提案自身は、関係国自身が全部了承すると、こういう結論にはまだもちろんなっていない、かように思いますので、ただ、この種の動きがあった。いずれにしても、あらゆる機会にこういう問題が早く平静に帰する、こういうような努力に対しては私ども協力をしますが、ただ、申し上げますように、全体がやはり話し合いが順調に進むと、こういう見通しではないと、具体的な問題についてどうこうと言いかねる、かように私は考えております。ただいままだ具体的な内容等は明確にしておりませんので、その点は御了承いただきたいと思います。
  8. 向井長年

    向井長年君 もちろん昨日の夕刊で出ておりまするが、十分これは調査もしてもらわなきゃなりませんけれども、しかし、先般の曾祢委員質問に答えて、総理は、国際の場で声を高らかにして平和解決の道を開くべくわが国努力しよう、こういう御答弁をされておるわけです。たまたまこういうウ・タント総長のいわゆる平和解決への道をいま提案しよう、こういう形になっておる以上は、わが国が少なくとも率先してこれを呼びかけるべきじゃないか。アジア諸国にも、あるいはまた国際の場で、強くこれを支持するという立場をとるべきではないか、こういうように考えますが、いかがでしょうか。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろんこの平和解決への努力、これは歓迎するところでありますが、その中身というものも、具体的な申し出というものも十分検討する必要があると思います。だから、そういう点でやや私ども明確を欠いておるというので、ただいま正確な情報が来るのを待っておる、かように申し上げておるのであります。
  10. 向井長年

    向井長年君 総理は、アジア平和自主外交立場から、少なくともみずからベトナム平和解決に乗り出そう、こういう意欲はないですか。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この前、曾祢君のお尋ねに対してお答えをいたしたのでありますが、曾祢君はまず自主独立、安全を尊重することだ、保障することだ、かように前提を立てておられましたが、私はわが国のような国柄、ことにまた、平和に徹するというような場合において、独立を尊重されない限り、平和はなかなか維持できないのだと、かように思いますので、ただいま申し上げるような東南アジアの諸地域においてもその独立が尊重され、そして保障され、外国からの何らの干渉を受けない、こういう状態がまず出てくることが望ましいのではないかと思います。ベトナム問題もこれは同様に考えてしかるべきじゃないか。ただいままでアメリカが攻撃したとか、あるいは北越からの間接侵略があるのだとか、こういうような議論がいろいろされておりますが、いずれにしてもただいまの状態では、南越の独立、その安全、これが確保されておるという状況でない。ここにまあ問題があるのですから、まず第一に各国ともそれぞれの国の独立を尊重する、こういうたてまえに立たない限り、世界の平和は維持できない、かように私は考えます。
  12. 向井長年

    向井長年君 特にこの問題は、事務総長が、まあ新聞情報を見ますと、具体的にやはり七カ国で予備会談を行なって、その予備会談の推移によって、その他の国も入れよう、こういうことになっておる。カンボジア等ですね。したがって、これは非常にいい一つ提案でなかろうか。だから総理が、熱意があるとするならば、わが国熱意があるとするならば、当然積極的にこれを推進すべきじゃないか。ただ内容がちょっとまだ不明であるからどうということでなくて、当然平和への解決熱意を持つとするならば、これは当然支持し、みずから呼びかけるべきじゃないか、こう考えますが、この点はいかがですか。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全然無関心であるというわけではございませんが、ただいまの御意見は十分これを伺っておりますので、参考にいたしたいと、かように考えます。
  14. 向井長年

    向井長年君 参考というよりも、熱意をもってこの問題にわが国も取り組んでいく、こういうような気持ちでおられるのか、その点もう一ぺんお願いします。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題に直ちに取り組むから熱意があるとか、これに賛成しないから熱意がないとか、こういうものでは私はないと思います。私の熱意はもう毎回国会を通じて皆様方にも申し上げております。その熱意についてはだれも疑いはないと、かように私は思います。ただいま向井さんのこの具体的な処置についての御意見もいろいろ伺いましたので、先ほどのようにお答えいたしたのでございます。
  16. 向井長年

    向井長年君 これと関連してアジアの問題といたしまして、特に中共が第二回目の核実験をやる動きがあるようでございますが、これに対しましても、平和愛好立場から考えて、他の諸国とともに中共に反省を求めなければならぬと思うのです。こういう点について、総理はどう考えておられますか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 向井君のただいまの御意見でございますが、中共核爆発に対して、いち早くかくあるべしという態度を私どもは表明しました。中共側にいたしてももちろんこれが反響を呼んでおると思います。中共側言い分では、向井さんも御承知のように、全面使用禁止だ、こういうことが各国で申し合わせができるなら、かような言い分を申しておるのも、この反響があったゆえんだと思います。私どもはもちろん全面核兵器禁止、そういう状態希望はいたしますけれども、やはり当面する国際情勢から見まして、一歩一歩進んでいく。今日まで核兵器を持たない国、これは持たないようにすることが、まず第一に全面核兵器禁止方向への協力だと、かように思うので、私ども態度を明確にいたしたのでございます。しかし不幸にして、中共側の同意もまた協力も得ていない、かように私は考えております。しかし、あえてこれは中共側の政策を非難しておるわけではありません。まあそれぞれの国にはそれぞれの考え方もあるだろう、かように思いますけれども、しかし国際平和、そういう観点に立ち、人類の共同の敵である、かような立場に立つならば、核兵器を持たない国が持つような方向ではなしことを心から願います。
  18. 向井長年

    向井長年君 外務大臣にお聞きしますが、いま詳細は、特にこのベトナム問題のウ・タント提案に対する問題は、まだ詳細はわかっていない、こういうことなんですが、これは八日に出されておるわけなんですが、外務省としてはこれに対して調査をされたんですか。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ公式にわれわれは通報を受け取っておりません。したがって、まだ調査もいたしておりません。
  20. 向井長年

    向井長年君 総理、この平和解決への熱意があるとするならば、こういう一つ提案がなされたならば、直ちに、これはわが国としてはこれの動き等調査して、わが国のそれに対して対処する態度を持っていかなければならぬと思う。まだ調査されておらぬということは、われわれはちょっと解せない。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、こういうことのために国連大使が派遣してございますので、国連大使がこれはいち早く報道すべき筋のものだと、かように思います。しかし、ただいま言われております新聞の記事、報道そのものが、いかなる形式の提案であったか、この辺もよく考えないと、ただ希望を述べたというだけで、積極的なアクションをとっていない、こういうような場合だと、これは国連情報一つの行動だと、かように考えることはいかがかと思います。しかし、いずれにしましても、国連内で議論のあったことだけは間違いないだろうと思います。ただいま言うように、国連大使から報告がないならば、こちらから尋ねることも当然でございましょうし、おそまきだといわれるかもわかりませんが、きのうのきょうでございますから、早速そういう処置をとってみたいと思います。
  22. 向井長年

    向井長年君 そういう措置をとられて、大体内容新聞に出てわれわれは了解しておるのですが、こういうような状態であるならば、もちろん平和解決への予備会談ですから、したがって、具体的に条件が云々の問題でないから、これは当然、これを成功さすために支持しなければならないと思う。これはひとつ最後に総理の所信を明確にしていただきたいと思う。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げるように、私はあらゆる機会において、あらゆる方法で平和への努力をすべきだと、かように考えます。かように申しております。そしてこの問題については、私はまず沿革的には、ジュネーブの十四カ国会議が取り上げるのが筋ではないだろうか、かようにも私の意向を明確にいたしております。今回はそのジュネーブの十四カ国会議でない別な会合でございますが、しかし、どんな会合だろうが、積極的にそういう処置がとられることは望ましいのですから、それがどういう効果になりますか、十分に検討して真剣に取り組んでまいる、かようにいたしたいと思います。
  24. 向井長年

    向井長年君 望ましいとなれば、それをやはりわが国が、先ほど言ったようにアジア一員であり、国連加盟国として他の諸国にも率先して呼びかける、こういう決意ありやいなや、総理に……。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま答えたとおりなんですが、これですぐ呼びかけるというところまで結論が出るか出ないか、しばらく私のほうにまかしていただきたいと思います。
  26. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、次の問題に移りたいと思いますが、いよいよ公労協の春闘が始まろうといたしておりますが、この問題につきまして、これは以前の池田内閣当時に、総評の太田議長当事者能力の問題で話し合ったと思う。現在、政府公企体当事者能力がただいま完全にあると考えておるかいなか、この点、労働大臣に伺いたいと思います。
  27. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 制度上は当事者能力があることになっております。しかしながら、公労法によって、予算上資金上支障のある場合は国会の議決を経なければならないという点について制約を受け、実質上は、予算編成権国会予算審議権、その他との関連においていろいろ制約を受けていることは御承知のとおりでございます。したがって、労使関係の上から申しまして、こういう状態の改善を必要とすると考えておりますので、昨年、関係次官会議でいろいろ協議をいたしました結果、恒久的な方策は、このILO関係法案の中で提出いたしておりまする公務員制度審議会において十分検討したあとでいいし、それまでの期間としては、現行法のワク内で、その合理的運営によって、できる限り当事者能力を付与せしめるようにするというふうに決定をいたしておる次第であります。将来にわたって検討を要すべき問題だと考える次第であります。
  28. 向井長年

    向井長年君 いま労働大臣は、そうすると、形式的には一応当事者能力はあるけれども、実体はないと、こういう答弁だと思うのですが、違いありませんか。
  29. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ないとは申しません。非常に制約を受けている、こういうことでございます。
  30. 向井長年

    向井長年君 制約を受けておるということは、当事者が、労使が話し合って解決することはできないと、こういうことなんですか。
  31. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 何から何まで関係方面了解をとらなければできないのだという意味ではございませんけれども了解なしにできないという意味において制約を受けておると、こう考える次第であります。
  32. 向井長年

    向井長年君 今度、労使の中で五百円回答して、それ以上一歩も進まないから公労委へ持っていったと思うのですが、これは、労働大臣、五百円で解決できると思いますか。
  33. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 五百円で解決できるかできないかは、労使の間の話し合いの将来、あるいは公労委調停委員会の御活動にかかわる問題でございますが、その範囲内、そういう金額を提示できるという範囲内においては当事者能力は付与されているものと考えるのでありますが、しかし、全く無条件の、いわゆる民間の労使関係のような当事者能力は、いろいろな事情から制約を受けておることは御承知のとおりでございます。
  34. 向井長年

    向井長年君 例年、ずっと公労委関係は、労使双方が話し合って解決した例がありますか、賃金について。
  35. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ございません。
  36. 向井長年

    向井長年君 ないでしょう。そうなると、当事者能力はないということになるんじゃないですか。話し合って解決するところの能力がなければ、これは事実上やはり当事者能力はないということなんです、現実に。
  37. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 完全に当事者能力があっても、意見の食い違いのために解決できない場合もございますが、しかし私は、当事者能力があるということを、完全にあるのだということを申し上げておるのではなく、そこに問題がありますので、その問題の処理を検討しなければならぬことだと考えておる次第であります。
  38. 向井長年

    向井長年君 常に当事者において話し合って解決できず、公労委の手をわずらわして、最終的には政府も話し合って、これに対する解決を見ているのが現在までの行き方だと思うのです。そういうことであるならば、当事者で、労使が団体交渉なり、あるいはまた労働協約を持っても、事実上解決できないという事態が起きているんじゃないですか。そうなれば、完全にやはり、この問題、賃金問題については当事者能力がないと見て差しつかえないと思うのです。ずっと例を見ましても。この点いかがですか。
  39. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 全くないとは考えられぬのでありますが、非常な制限を受けているということは事実でございます。しかし、これは国鉄その他三公社現業の性格から見まして、ある程度の制限というものを受けるのはやむを得ないと思われる面も非常に多いと存じます。予算編成権国会予算審議権その他の関連において、ただそれと、労使関係あり方としての話し合いでものをきめるというやり方との間の調和点をどう求めていくか、そこにこれらの課題があると存じております。
  40. 向井長年

    向井長年君 普通、労使関係というものは、十分やはり要求をし、あるいはいろいろ意見を述べて、最終的には平和的に解決しようというのが、これはたてまえだと思う。だから相手が、今度の場合は七千円程度出しておりますが、これに対して五百円の回答をして、それからもうどうもなりませんというようなかっこうで公労委へ行っておりますけれども、こういうことを毎年繰り返しておるようなことでは、これは当然、この労使不信というものは、これはどうしても避けることができない。それだから、少なくとも、この中から相互不信というものが出てきて、これでは力でいかなければならぬということで、いわゆる法的規制をされておるにもかかわらず労働運動の行き過ぎが出ておるのは、こういうところに原因があるのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  41. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 先ほどから申し上げておりますとおり、一般的に申しまして、労使関係というものは話し合いによって、それぞれが当事者能力を持ったその上において、責任を持って処理されるのが望ましいことは言うまでもございません。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、三公社現業、その他政府関係機関は、他の権限、予算編成権及び国会予算審議権、そのほかとの関連において、あるいはそれぞれが持っておりまする職務上の責任の上に立って、いろいろな意味制限を受けていることは、ある程度やむを得ないと思うのです。しかし、それと本来の労使関係とのあり方との調和点を、これからさらに追求していかなければならぬと存じます。また、その当事者能力が完全に付与せられていないということが、三公社現業労使関係の円満なあり方を妨げているというただいまの御指摘は、ある意味において一つ原因ではなかろうかと思っております。
  42. 向井長年

    向井長年君 かかるような状態を、労働大臣は今後どうしたらいいと思うか。
  43. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 先ほどから申し上げておりますとおり、これは解決点を求めていかなければならないことであると思うのであります。したがって、昨年一年間、関係次官会議を開いたり、政府としても、あとう限りの検討を継続いたしておることは御承知のとおりでありますが、他の公務員及び公共企業体の、あるいは政府関係機関の従業員各位の労使関係の基本の問題について、それぞれの関連において検討しなければならぬことが非常に多いので、ILO関係法案として提出いたしておりまする公務員制度審議会で御検討願いたい、その結論がすみやかに出ることが望ましい、と思っておるのであります。  どういう方向を目ざすべきかということでありますが、私ども立場から申しますと、でき得る限り当事者能力を付与して、話し合いで処理せられる方向へ進むべきだと思います。しかし、それぞれやはり他の権限を所管しておる関係者との調整ということがございます。私ども立場から見れば、先ほど申したとおりでございます。
  44. 向井長年

    向井長年君 そうすると、こういういわゆる状態の中で不信感が出てくる。したがって、行き過ぎはこれを処罰をする、また、財政措置については、いま言った当事者能力では解決ができない、したがって、これは従来どおりのような形に進まざるを得ない、というのが現状でしょうか。
  45. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現在の法律制度の中で検討すべき事柄が多いからといって、それだから現在の法律制度を無視していいということにはならないと思うのであります。これはやはり、問題点があれば、現行制度の問題点を法律的に改正する努力の上で前進してゆくべきものだと考えておるのでありますが、同時に、その法の運用の中でできる限りの努力を払い、その中で良識ある解決を求めていくことも必要であると思うのでありますが、現在の制度の中では、やはり公共企業体等労働委員会の調停、仲裁というところへ移行せざるを得ないし、そこで解決せられることが一番望ましいことだと考えております。現在の制度の中では。
  46. 向井長年

    向井長年君 この制度を改善しようという労働大臣の意欲はございませんか。
  47. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは、先ほどから申し上げておりますとおり、現在の制度の中にたくさん問題点がございますので、それは公務員制度審議会等において十分御審議をいただいて解決点を見出していきたいと思っております。その解決点を見出すべき方向は、労働大臣といたしましては、当事行能力を付与して、そして労使話し合い解決されるようにいくべきものだと思っておるのであります。また、現在の制度の中でも、協約が締結された場合、これが予算上資金上不可能の場合はそのまま国会の議決を求めることもできるようになっておりますが、運営上非常に困難であります。そういう意味合いも含めて、いいやり方を見出すように努力をしていくべきだと思っておる次第であります。
  48. 向井長年

    向井長年君 総理、こういう問題、毎年繰り返しておるのですが、去年も、そういうことで池田総理が乗り出されたのですが、公労委にいま提訴いたしておりますけれども、もっと最終的な実力行動という問題も出てくる。例年のごとく。こういう場合に、やはり当事者能力が問題になってくるわけなんですよ。最終的には。この点について、先般池田総理の当時には、この問題について何とか当事者能力の付与という問題を話し合って一応解決ついたと思うのです。おそらく、ことしもまた同じ形が出てくると思いますが、特に佐藤総理は、これに対処する考え方はどうするか、これを伺いたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほどのお話を伺いながら、こんな感じを持ちました。向井さんは、労使双方不信感という声を大にして言われるが、私は、こういう事柄で労使双方不信感が醸成されたり大きくなったりするとは思ません。もともと制度上から来ている仕組みでございますから、これは、組合側においても、その制度の置かれておる状況というものをよく理解されなければならぬ。また、経営者側においても、その制度のワクを越して交渉のできないこともよくわかるのであります。そういう点こそ、よく話し合えば、それによって直ちに不信がもたらされる、不信を醸成する、こういうものでは私はないだろうと思います。今日の公社制度そのものがいいのか悪いのか、そういうことがしばしば議論になっていますけれども、ただいま仰せのごとく、当事者能力を完全に付与する、こういうことになれば、これは制度自身も考えていき、改正せざるを得なくなる。しかし、今日の制度が一応納得がいくいい制度だ、かようになれば、その範囲内においての交渉、それが限度だろうと、かように思いますので、そういう意味においての交渉はあり得るだろう。一般の給与そのもの以外の問題については十分当事者能力は持っておる。給与そのものについて、ただいまのような状況に置かれておる、こういうことは、もう制度そのものができたときからわかっておる筋のものであります。私はかように考えます。ちょうど公務員の場合も同様でございますが、さような立場に立って、それが不信感を醸成するゆえんだと、かように言うことは、いかにもそれは理屈を求めて言っていることじゃないだろうか、かように考えまして、私自身どうも納得がいかないのでありまして、問題は、こういう制度のもとにおいて、いかにその制度を運用していくか、これをまず第一に考えなければならない。先ほど労働大臣の答えているのもそのとおりだと思います。私は、いまの労働大臣答弁で、このままでよろしいように思います。  ただいま言われるごとく、もっと労働運動そのものから申すと非常な問題が基本的にあるということについては、これは制度そのものについて検討を加えていかない限り解決はないだろう、かように私は思います。
  50. 向井長年

    向井長年君 制度の欠陥がしからしめている、こういうふうに総理は言われますが、しかし実際は、これは労働組合としては、少なくとも当事者と話し合って解決をしたいという意欲を持っておると思うのです。要求を出して、しかも例年ゼロ回答。少なくともこれが要求の根拠がある、いわゆる民間ベースの問題もありましょうし、あるいは生計費の問題もあるだろうし、あるいは経済の成長率、こういう問題等のいわゆる根拠を持った要求の中からゼロ回答している。こういう状態では、制度ではいかぬから、お前らは不信感を持つのはおかしいじゃないか、こういう考え方はどうかと思うのですが、この点はいかがですか。
  51. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労使関係の原則的、通常的なあり方というものは、いまおっしゃるとおりだと思うのですが、しかし、公務員とか、それからいわゆる三公社現業その他の現在置かれている立場、たとえば国鉄にしますと、全額政府の出資でございます。それからその予算特別会計予算として国会の議決を経なければなりません。そういう他の制度上の制約も当然受けるわけでございます。それから、同じような国家機関及び政府関係機関に働いている以上は、そう、その相互の間に大きな懸隔を生ずるわけにもいかないのでありまして、そういう点で、これは法律制度上というか、というわけではありませんけれども、慣習上当然の制約があります。そういう中で、そういう制度と他の制約、それから原則的な労使関係あり方の調和をどう求めていくかということは、これは、これからの課題であると思うのであります。したがって、いまの制度にも問題はあると思う。いろいろの問題がある。それは労使関係の上からいけば問題がございます。しかしながら、片一方側から言えば、そのあり方からしまして、これはやむを得ないのだという当然の考え方もあるわけでございます。その調和を求めていくということは、非常にむずかしい、かつ広範な問題でございますので、公務員制度審議会においても十分検討して、しょっちゅう変えなくてもいいような方向を見出していきたい。公共企業体及び政府関係機関が、他の民間と同じような当事者能力を持つべきだという議論は、いま直ちにそれに賛成するわけにはいかないと思います。
  52. 向井長年

    向井長年君 結局、最終的には、制度上の欠陥か当事者能力をなくしていくということになると思う、事実上。したがって、これはやはり早急に改善しなければならない、こう思うわけですが、この点、総理どうですか。
  53. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、先ほどから申し上げておりますとおり、制度上の欠陥と申しましても、原則論、労使関係の原則論から言えば、おっしゃるとおりですけれども、公共企業体、政府関係は、他の制約を受けているのであります。したがって、その状態の中にあるものが、直ちに七のものが欠点だと、欠陥なんだと言い切ることにも問題があると思うのでありますが、しかし、いまのあり方にいろいろな議論があり、それが円満な労使関係の進行に支障を来たしていることは、これは事実でございますから、それを、その両方の立場を、調和を求めていって、そうして恒久的な制度をつくっていく必要は認めます。したがって、公務員制度審議会でこれを検討してもらう、公務員制度審議会の御検討をいただく課題としているのでありまして、でき得る限りすみやかにその調和点を求めてまいりたい、こう考えているのであります。
  54. 向井長年

    向井長年君 あまり納得しがたいのですが、時間がありませんから次に進みますが、特に総理は、施政方針の中で、公務員はじめ、国民に奉仕する機関の中で綱紀の粛正と申しますか、この問題を出されているわけですが、現在の郵政当局あるいは国鉄の一部の中においても、非常に、何と申しますか、国民からひんしゅくを買うような暴力あるいは傷害事件が起きていることを総理は御存じですか。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、新聞等で報導されておるのを知っております。
  56. 向井長年

    向井長年君 新聞で。報告で。所管大臣からそういう報告を受けておりませんか。
  57. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私、一応お答えいたします。
  58. 向井長年

    向井長年君 総理に、受けておるか受けておらないか聞いているのです。
  59. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいま御質問の郵政並びに運輸、国鉄の間に、いろいろな疑獄的なものがあるということは、まことに遺憾にたえません。私のあずかっておる仕事の中にかようなものが出ますことは、私どもの不徳のいたすところでありまして、これは、起こりました直後に、航空関係におきましても同様なことが起こったのでございますから、この官紀の弛緩といいますか、いわゆる精神力の欠除と申しますか、国民のサービス機関であって国民の公僕たるべき仕事をする人がかようなことでは……それよりもおそろしいことは、そういう官紀、綱紀の弛緩によって起こる問題は、大きな事故の発注、これが佐藤内閣の人権尊重の最も大きな問題でございますから、直ちに省議を開きまして、各関係全部を集めて、どういうふうにしたならばこの国民のひんしゅくを買っておる問題を解決することができるかということを検討いたしまして、直ちに各関係方面に対しましてそれぞれの警告を発しました。特に、石田総裁はああいう厳格な人でありますから、烈火のように怒って、それぞれの直接の監督者並びに全体を集めて一そう激励したようでございます。なお、今後もかようなことのないように、全力をあげて御期待に沿うようにいたしたいと存じます。
  60. 向井長年

    向井長年君 郵政大臣、特に郵政関係の職場で、先ほど言った暴力あるいは傷害事件が起きておるのですが、葛飾事件、あるいはまた松井田郵便局の事件、あるいはまた安西事件、こういう点について一応詳細報告していただきたい。
  61. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) ただいま御指摘になりましたように、郵政現場におきまして暴行事件がありまして、まことに遺憾に存じております。犯罪の、あるいはいま捜査中の問題等もございますので、詳細御質問ございますれば、政府委員から内容等については報告いたしたいと思いますが、ただいま葛飾郵便局の事件のお話がございました。葛飾郵便局の事件は、この局内にできておりまする第一組合、第二組合とございまして、その相互間の摩擦がかような結果を生んでおるようでございます。私どもは、たとい組合が二つございましょうとも、組合の健全なる発達をこいねがっておりますから、相互間にできるだけ友好親善を保たれつつ健全な発達をしていただくことを望んでいるわけでございますが、ちょっとした感情の行き違い等で暴力が発揮されまして、ついに警察ざたになっておりまして、いま司直の手によって取り調べられておるわけであります。しかし、それに至らざるまでの案件につきましては、郵政省でもすでに二人ばかり停職一カ月の処分等を行ないまして、反省を求め、自省を求めたのでありますが、その後、どうしても私どもの手で処理することのできないような事犯に進展いたしましたために、ただいま司直の手によって取り調べ中でございます。まあ、これに同情いたしましてか、あるいは便乗しましてか、新聞に出ておりますように、黒ワクの年賀状が郵便局長に千数百枚ほど行くというような事件がありまして、世間に及ぼします影響等も考えまするときに、ほんとうに申しわけないことだと思います。要は、この職員間、組合間の、調べてみれば両方の、一軒の家の争いでありますから、管理者としましても、できることなら、外に出さずに、平和に解決したいということで、過去におきましても努力したようでありますけれども、とうとうそれが外部に漏れるようなことになったわけです。その責任は一に私にもあるわけでございますので、機会あるたびに、そういうことがないように注意をいたしておるわけでございますが、まことに遺憾ながら、今日では司直の手に渡りまして、その結果によって処断をしなければならないような状態になっております。  松井田の事件でございますが、これは交換手が対立いたしましてリンチ事件を起こしまして、これも部外ではございません。部内の事件でございます。これらにつきましてはいろいろ説もあるようございまして、私も取り調べておりますが、これもすでに起訴されまして、その起訴されました諸君は休職にいたしてございますが、これもやはり管理者のほうの管理者能力にもあるいは欠けておった点があったのじゃないかとも思われる点もございます。あるいは勢力争いだったような点もございまして、結局、せんじ詰めれば、部内のお互い同士の仲間割れでございまして、こういうことも今後は十分気をつけて、さようなことのないようにいたしたいものと考え、それぞれの処置は講じておるわけでございますが、最近、そうしたようなリンチいたしましたり暴行いたしましたり、そういう事件が内輪に起こりましたことは、ほんとうに国民に対しても申しわけないと思っておりますが、私も誠心誠意、こういう問題につきましては、内輪の問題でございますから、十二分に恩情並び行なわれるよう努力いたしまして、そうして、世間に不信感を抱かせることのないように努力いたしたいと思います。なお、その他の案件につきまして御指摘がございますれば、その案件につきましては、政府委員からそれぞれ御答弁を申し上げたいと思います。
  62. 高橋等

    国務大臣高橋等君) いま郵政大臣から述べました事件は、御承知のように、検察でいま捜査中でございます。したがいまして、この事件について具体的な意見を申し述べることは差し控えたいと思いますけれども、民主主義の社会で暴力によってその主張を通すというようなことは、これは許されないことであることは当然、ことに公務員は全体に奉仕する職にあるものであって、これが、神聖な職場でこうした行為を行なうということ、これは非常に遺憾なできごとで、国民に相済まないと考えております。また、同じ職場で組合の対立によってこうした事件が発生するというようなことにつきましては、これは組合員の人々にも十分なる自覚を求めたいと考えておるのでございます。内閣におきましても、総理の施政方針でも、こうした綱紀粛正につきましては、その決意にも申し述べてありますように、不断の努力を続けておるのでございまするが、こうした事件が起こっておりますということは、まことに遺憾に存じております。この種の事件につきましては、検察当局に、法令の命ずるところによって厳正に処置をいたすように常々指示をいたしておりまするし、また、そういう運びにいたすことはもちろんでございますが、職場を管理いたす人々にも、こうした職場規律の維持に十分なる関心を払っていただく。両々相まってこうしたことの起こらないようにしていきたいということを念願いたしております。
  63. 向井長年

    向井長年君 郵政大臣にお聞きいたしますが、これは組合の対立感情と、こういうことだけで放置できない、あるいはまた、内部の行政、いわゆる管理行政の弛緩というものもこういう中に出てきておると思う。少なくとも、神聖な公器の場で、あるいは職場で、何と申しますか、まじめな職員が戦々恐々として仕事をしなきゃならぬという、精神的にも、肉体的にも、こういう問題はこれはゆゆしき問題だ。この点について行政管理上の責任は私は郵政大臣にあると思う。この点いかがですか。
  64. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) お説のとおりでございまして、管理者の責任というものは非常に重大だと思います。ただ、部内の同士の間の争いというようなことが原因でありますために、ややもすれば、管理者が臨機の処置をとればいいやつを隠蔽をして、なるべく内輪でおさめよう、おさめようとしたような形跡等もございまして、そういうこともだんだんに深くなった原因になっておるのではないかと思っております。それから一部で、御指摘になっておりますように、管理者にそういう者を管理する能力が足らないということも一つ原因のようにも思われる点もたくさんございます。でありますから、そういう点につきましては十分私どもは反省いたしまして、そうして、そういう問題を放置することなく、上司の指揮も仰ぎながら、遺憾のないような処置を今後とるように、幾ら自分の内輪の問題だからといって、自分で解決のつかない、管理のできないことをこう薬ばりをして、そうして、先に行って事件を起こさないように十分注意をするようにということを重ね重ね最近も注意をしておるわけでございますが、何しろ、一万五千の局長の中には、どうも管理にもたけていない人もございまするしするものでございますから、その点については非常に遺憾の点があると思います。こういう点につきましては、これは私の責任でございますから、十分今後も気をつけまして、重ねてそういうことのないように最大の注意を払い、私自身も反省いたしまして、御心配をかけないように努力いたしたいと思います。
  65. 向井長年

    向井長年君 労働大臣にお聞きしますが、こういう、いわゆる労働運動の中で第一組合、第二組合ですか、こういう二つの組合ができて、いま申しましたような非常に遺憾な状態があらわれておる。しかし、労働行政としてやはり組合指導の立場からこういう問題をどう考えられますか。
  66. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私ども、労働組合の発達は、労働者諸君の経済的利益を守るという共通の目的を持っているのでありますから、行き過ぎや何かは、できるだけその組合の内部の中で処理されていくことが望ましいと思います。しかしながら、それが分裂されたような場合におきましても、やはり目的は共通であるべきはずでありますから、感情にわたらないように、冷静に平和裏に処理されることを望ましいと思っておるのであります。ただ、それがその関係において暴力事犯その他に発展いたしました場合は、すでにこれは労働問題のらちを越えるのでありまして、当然司直の手によって処断されるべき問題だと思うのであります。きわめて遺憾なことだと存じております。ただ、いまおことばの中に労働組合の指導ということがございましたが、私ども労政をあずかっている上におきましては、そういう上において指導するという立場ではなくして、でき得る限り自主的な運営によって円満な発達を遂げられるように、条件を整えて、土俵をつくっていくということに努力をいたしたいと思っておる次第であります。
  67. 田畑金光

    田畑金光君 ちょっと関連。  関連でお尋ねしますが、最初に、総理はいまの問題について、向井委員質問に対し、こういう暴力行為については新聞では読んでおるがというお話でございますが、私は、総理のこの問題に対する基本的な考え方を承っておきたいと思います。いま言われておるのは、労働運動の面における暴力行為の問題だと、こう見ております。労働運動というのは、本来私は人間性尊重の上に立つ運動である。いわば資本主義の矛盾を解決しようとして自然発生的に生まれてきたのが労働運動であるとするならば、それはあくまでも人権擁護の立場に立ち、人間性尊重に立ち、自由と人権の上に立ったのが労働組合運動であると私は考えておるわけです。言うならば、総理のいわゆる人間尊重の精神と軌を一にする問題だと思う。労働組合運動の中にも、その行き方や思想的な立場やあるいは指導理念において、大きく言えば二つの流れがあることも厳然たる事実である。それは、どんな職場においても企業体の中においても、あるいは産別の中においても発生し得るし、発生しておるわけです。そういう労働運動の二つの中において、あるいは職場において、企業の中において、あるいは基幹工業の中において暴力行為が発生するということは、組合運動のあり方から見ても、これは本質的に間違っておると考えておるわけでありまするが、そういう問題について総理はどのように考えておられるのか、これを先ほど向井委員質問しておるわけであります。これが第一。  第二に、私はお尋ねしたいのは、この際、郵政大臣の職場においてはことにこのような傾向が多いわけです。郵政大臣のいまの答弁を見ますると、ただ今後注意いたします、また、管理職の職員によく注意しておきました、こういう程度で済まされておりまするが、あなたの職場においては、場所によっては、私は申し上げますが、管理機構というのが完全に機能を麻痺しておる職場がありはしませんか。私は、郵政省の職場の中においてしばしば起きるということは、当然あるべき管理機構がその機能を果たしていないためにこういう問題が起きておると見ておるわけであります。この点について、あなたはこのように頻発しておるこの問題について、もっと真剣に考えてみる必要があると思うがどうなのか。これをもう一度お聞きしたい。  同時に、第三としてお尋ねしたいのは、特に郵政省の職場においてもそうであるが、運輸大臣にもあわせてお尋ねしますが、国鉄関係の職場等においてこういう事例がいままでしばしばわれわれは聞いておるが、その引例を、この際、政府委員からでもよろしいが、この席上において具体的な事例をひとつ説明してもらいたい。事実をここで説明してもらいたい、ことに、私は郵政大臣について、郵政大臣の先ほど答弁というのは納得できない。ほんとうにあなたは部下の職場において、あなたの所管する職場においてこういう問題があるとするなら、もっと規律を厳正にして、このようなことが二度と起きないように、絶無を期すべきだと思う。たとえば、この間の群馬県のある郵便局における交換手たちの、女の職員たちのあのリンチ事件に相当するような問題等については、これは単なる労働問題のワクを越えた、また、われわれの常識から見ても考えられない職場におけるできごとであると思いますが、この点についてもう一度あなたの考え方を承りたい。これに関する善後措置をどうとっているのか、これをこの際明らかにひとつ説明してもらいたい。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、労働組合の基本的たてまえについていかに考えるかというお尋ねでございますが、御承知のように、新憲法下において、正しい民主主義のもとの組合の結成、組合の活動、これはちゃんと法律によって保護されておる、かようなものでございます。私は、本来民主主義、その立場に立ってそうして基本人権は擁護され、そして、私の言うような人間尊重、いわゆる人格が尊重されると、こういう立場になれば、必ずりっぱな組合活動も展開され、また成長していくことだと、かように思います。労使双方にただいまのような問題がしばしば起こるということ、また、組合員同士の間でかようなことが起こるということ、これはまことに遺憾なきわみだと思います。真に民主主義を理解し、正しい民主主義のもとにおいてこの労使双方が調整され、組合活動が展開されること、これを希望しておるのでございます。  また、最近起こった国鉄あるいは郵政の問題につきまして私の答弁が不十分でございまして、新聞で知ってて、それぞれのほうからの報告を聞いてないかのような印象を与えましたことは、私が説明をつけ加えます。重大な問題につきましては、主管大臣からそれぞれ伺っております。  また、第二、第三の問題でございますが、私も郵政大臣もし、また、国鉄には長くその職場にありまして、それぞれの従業員の気質もよく知っております。これらの方々は、在来はいわゆる公共に奉仕する、こういういわゆる奉仕精神がまず第一に働いていたと、かように思います。最近は、人権尊重あるいは基本人権、かような立場から、ときに公共奉仕の精神がやや薄らいだのではないか、かような誤解を受けるような行為のあることは、私はまことに遺憾に思います。しかし、本来の郵政従業員なり国鉄従業員というものは、本来その公共奉仕その精神は貫いている。この点においては誤解のないように願いたいと思います。  また、郵政省におきましても、監察事務が弛緩しているのではないか、かようなお話がございますが、これらの点についても、ただいま十分先ほど徳安大臣から説明しておるように、責任を持って組合の健全なる発達、そういう意味の指導をしておるし、また、従業員同士の間の問題等についても、間違いがないように気をつけておると、かように考えます。  先ほど、国鉄を担当しておる運輸大臣から、万一事故が起こる、かようなことがあってはまことに相ならないということで特に注意しておるということも申されましたが、先ほど来申しますように、国鉄、郵政、本来は公共奉仕、公共に奉仕するという基本的精神を貫いておる、これに誤解を持たれないようにお願いします。
  69. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) ただいま総理からいろいろお答えがございましたが、先ほど申し上げましたように、事件が発生いたしましてから私どもの耳に入るというようなことが、過去においてしばしばございますが、それは、先ほど申し上げましたように、なるべく内輪でおさめたいというような気持ちも手伝いまして、外にそうした恥を出したくないというような気持ちが多分手伝って、そして、労務管理もうまくいっていない面もあるんじゃないかというようなことが、事件の経過と発生した結果を見ますというと、見取れるわけであります。私どものほうでも、各郵政局長をして、あるいは監察官をして、それぞれ指導もさせ、監督もし、また指導もしているわけでございますが、そうした方面が、知らないうちにだんだんに深くなってしまう、ぬぐい去れないような案件になってしまっておる。初めて事件が表に出まして、何ということをしておったかというような問題があるわけでございます。そこで、私は、先般来から、各局長、各関係者に注意をいたしまして、内輪でおさめるということもけっこうです、恥を外に出すということも決して好ましいことじゃございませんから、これはもちろんお互いに責任を感じなくちゃならぬと思いますが、そういう案件で、そして、とても自分の力では話し合いで円満に話がつかないというような案件は、早く見通しをつけて、そして上司の意見を求め、報告をして、そして善後処置をとる、そして事が大きくならぬ先に話し合いをして話がおさまるように、そういう処置をとりなさい。特に郵便局は、御承知のように、局長も案外地方の方が多うございます。また、局員諸君もやはり地元の諸君が多うございますために、やはりこの処置につきましても、いま申し上げたように、なるべく外に出さぬようにという気持ちが過去において多分に手伝っておったのではないかと思います。こういう点がないように今後注意いたしまして、そして、局だけでは始末のつかないもの、局長だけでは判断に余るもの、そういうものは遅滞なく指図を受けて、そして、組合相互間のもちろん円満な協力も必要でございますから、ときによりましては、私どももその処置をとってもいいと思います。また、労務管理に欠けるところがございますれば、局長をかえることもけっこうでしょうし、また、他に適当な者を差しかえてもいいと思います。そういう、過去における欠点等も、だんだん究明すればあるわけでございますので、決してこれを放置しているわけではございません。そうした欠点を発見しつつありますから、私も、身を挺してそうした問題については十分の努力を払って御期待に沿いたいと、こう考えているわけであります。特に、先般のリンチ事件でございますとか、あるいは最近の葛飾の事件等につきましては、非常に世間を騒がせておりますから、何しろ両方とも火花が散ったようなときにどうかと思いますので、いまは差し控えておりますが、私は機会あるたびに、全逓の諸君にも、あるいは郵政労組の諸君の代表者にも会うたびに、仲よくしてひとついこうじゃないか、そういうことを世間に恥さらしにならないようにお互いに協力しましょうよ、それには、代表の諸君が協力してほしいということで、話し合いのときには、いつもそうしようということはしばしば話しておるわけなんですけれども、やはりそういうことは、まず下のほうにも徹底していないし、また、管理者のほうにも欠くるところがありまして、十二分の連絡がとれていない。これは私は責任を持って極力御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  70. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 田畑委員にお答え申し上げます。  御指摘になりましたように、まことに申しわけないと思っております。(「どこであったか」、「どこで何があったか言いなさい」と呼ぶ者あり)それにつきましては、まず人名まで詳しくは記憶いたしておりませんから、いま衆議院に鉄監局長が来ておりますから呼びに行っておりますので、人名その他は申し上げますが、まず、国鉄のほうでは、新幹線関係の事件に関連して数件事件が起こっております。(「何の暴力があるか」と呼ぶ者あり)新幹線の関係で……。(「はっきり言いなさい」と呼ぶ者あり)施設の問題であります。それから、航空関係におきましては、消防ポンプの納入に対するマージンの問題のように思っております。(「汚職じゃないか」と呼ぶ者あり)ということでありまして、その他の問題に対しましては、(「そんな)とを聞いてないじゃないか」、「暴力の問題、第一組合と第二組合の暴力の問題だ」と呼ぶ者あり)暴力の問題に対しましては、(「どこであったか」と呼ぶ者あり)いま呼びに行っておりますから、詳しいことはわかっておりませんので、帰りましたら申し上げたいと思います。  この経営に対する考え方を申し上げますが、(「そんなことは聞いてないよ」、「経営の問題は聞いてないよ」と呼ぶ者あり)その経営の基本的な考え方がやっぱり一致していかなければならないということで、三位一体の精神をもって経営いたしております。それは、そうおっしゃるけれども、これは企業は企業者のためにあるのでなくて、消費者のためにある。それを、経営と資本と勤労が一体となって全力を尽くして、喜ばれるようにならなければならないということを基本にしてやっております。いまの個所の問題、数の問題、人間の問題につきましては、いま鉄監局長が参りますから、お答えいたします。
  71. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、この問題も御指摘したいのですが、とにかく総理、昔は国鉄にしても郵政にしても、国民から最も信頼される事業であったはずなんです。最近では、国鉄あるいは郵政というものは、非常に国民からひんしゅくを買っている。こういうもろもろの事件を起こしているわけです。これは、大きくは、やはり政府責任である。佐藤総理の施政方針の中の綱紀粛正という問題が、逆の立場で出てきておる。これは、少なくとも郵政大臣あるいは運輸大臣……郵政大臣、横を向いておらぬと。郵政大臣、少なくともこれは、あなたは国民に謝罪しなければならぬ立場にあるのですよ。ただ単に、何と申しますか、内部をできるだけ監督しますとか、あるいは管理機構をできるだけ改めますとか、こんなことだけでは済まない大きな重大な問題である。一般の暴力を排除しなければならぬという立場に立っておるにもかかわらず、公器の場所でこういう問題が各所に起きている。これはゆゆしき問題なんです。これは、少なくとも郵政大臣なり所管大臣が辞職しても余りあるところの大きな重大な問題であるとわれわれは考えておる。今後、これに対して、ただ単にそういう問題だけではなくて、決意のほどを、国民に少なくとも謝罪し、今後こうしなければならぬという決意のほどをまず郵政大臣にお伺いしたいと思う。
  72. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 御説のとおり、もちろん私が責任を負っていかなければならないものもございまするし、その責任の程度におきましては国民に謝罪することもございましょうし、みずから挂冠することもございましょう。これらはもう十分責任を感じております。  ただ、最近、御指摘のような問題につきましては、先ほど申し上げましたように、私もまだ就任いたしましてわずか半年ぐらいのものでございますから、その内容等を究明いたしますのに、だんだん手ざわりからわかってきたようなわけでありまして、最初から私がその役所におりましたら、もう少し徹底した処置もとれたかと思いますが、だんだん事件が起きまして、そうして手ざわりをし感触を受け、報告を受け、みずからその場に立ち会いまして、そうしてだんだん究明をするわけであります。で、いまの段階におきましては、先ほど申し上げましたように、もちろん部内の暴力でございますから、その責任はあげて私にあることは申し上げるまでもございません。ただ、よって来たるゆえんを考えますというと、やはり組合の側にも多少自省をしていただかなければならぬ問題もあると思います。また同時に、管理者にも欠ける点があると思います。こういうような点を彼我よく検討いたしまして、双方に話し合いをつけながら、そうして、そのとるべき責任はとりますが、同時に、そうした諸君の協力も得て、そうして一日も早く国民の信頼感を失わないように努力をするというかたい決意をしておるということをひとつ御了承いただきたいと思います。
  73. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほどの補足を申し上げます。  ただいま鉄監局長を呼びましてよく調べましたが、第一組合と第二組合との暴力的な争いは、全然ございません。補足いたします。
  74. 向井長年

    向井長年君 運輸大臣、綱紀の問題とか新幹線の問題を言っておりますけれども、これはやはり管理能力の欠陥というものがあるのですよ。広島の駅長室にどういう事件があったかご存じですか。
  75. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いま局長みずからお答えさせます。
  76. 向井長年

    向井長年君 いいですよ。あのね、運輸大臣、ほかの不祥事もありますけれども、やっぱり郵政と同じように、管理機構が麻痺しているということは、国鉄の内部にも事実上あります。広島の事件は、駅長室に、はっきり言うならば、全く何と申しますか、人権じゅうりんのような形が一部に行なわれたことがある。これは、大臣御存じじゃない言えば、管理能力の欠除です、明確に。駅長室にのりをまいて、その中にビラをどんどん張りつけて、他の国民がその中に入って驚いた事件があるのですよ。こういう問題は、あなたはご存じじゃないでしょう。そういうことは、少なくとも管理行政上の大きな欠陥です、そういうことを平気でさせているということは。そういう問題もあわせてあなたに、今後十分な監督指導しなければならぬいうことを言っているわけです。  それから郵政大臣も、ただ単に組合の感情問題としておりますけれども、そうではない。安西事件にいたしましても松井田事件にいたしましても、その他品川事件にいたしましても、人権上の問題が出ている。あるいはまた管理能力の欠除の問題がこの中からあらわれている。時間がないから多くは言いませんけれども、そういう問題はあなたは十分承知じゃないと思う。葛飾問題、あるいは松井田事件だけをあなたはとっているけれども、無数にそういう問題は、各職場で出ているのですよ。これを十分あなたたちは考えなければならぬ。そういった意味で、この問題は特にゆゆしき問題として、総理は今後各省、いわゆる公器の職場においてのいわゆる弛緩という問題を十分ひとつ監督指導していただきたいと思います。決意のほどを。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御説はそれぞれごもっともでございます。私、最高の責任者として十分綱紀粛正、これに意を尽くしてまいるつもりでございます。
  78. 向井長年

    向井長年君 次に、先般も若干質問が出ましたが、特に中小企業の問題にからんだ問題でございますが、先般山陽特殊製鋼が会社更生法の適用を受けたわけでありますが、これに伴って特に三百有余の下請業者、中小企業、こういうところが同じ不況に立っている。こういう状態について、こういう原因はどこから出たかということをまず総理からお伺いしたい。わからなければ通産大臣。
  79. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先日この席で御説明を申し上げましたが、山陽特殊製鋼がかかる破局に面したということは、過去における無理な設備投資がまず第一ではないかと思うのであります。これは業績をずっと見ますと、資本金が八倍にも増大しておる。戦後におきましてどんどんと無理をした、拡張をしたというようなことが歴然といたしております。それとともに、三十六年以降特殊鋼業界が非常に不況でございまして、その影響も受けた。こういうようなことで、昨年の十二月に資金的に非常に行き詰まったのでありますが、いまから調べてみますと、昨年の九月の決算期に、従来一割二分の配当をしておったものが、これを一割の配当に落としました。この辺にそろそろ無理が出ておると思うのであります。また、この決算の状況にいたしましても、最近わかったことでございますが、三十六年以降の決算はおおむね粉飾決算である、こういうようなことでございます。したがって、ただいまのところわかることは、放漫経営であり、設備投資の過大であり、業界の不況であり、こういうものが重なって破局に面したと思います。実は、本年に入りまして、一月以降いろいろと、この十二月の金繰り状況からいたしまして、警戒をいたしておったのであります。この山陽特殊製鋼に対しては、五銀行が主力融資銀行でございます。すなわち、神戸銀行、三井、三菱、興銀、富士銀行、こういうところが融資をいたしております。また、系列会社と思われるものとして富士製鉄がございまして、五銀行と富士製鉄が一月以降山陽特殊製鋼のこういう破局をいかにして救うかということを非常に努力をしてまいったのでありますが、遺憾ながら、数字で申し上げますとわかるのでございますが、これらの銀行が一、二月にかけて調べた赤字額というものが百二十七億円ある。しこうして、経営の再建をはかるには本年度中に百三十五億円の追加融資を必要とするようなこういう事態でございました。しかしながら、そのような融資を現状からしてできにくいということで、この三日の日に、銀行団と冨士鉄も相談に乗っておったと思うのでありますが、この十日の決済をすべきものについてめんどうを見ることができない、こういうことに相なったのであります。ところが、この山陽特殊製鋼は、すでにお調べであろうと思いますが、特殊鋼業界の中では第二位の会社でございまして、軸受業界あるいは自動車メーカーに対する大きな影響がございまして、軸受関係などはたしかシェアが九〇%くらいに及んでおると思うのであります。この会社が生産をとめるということが非常に大きな影響があると、こういうふうに判断をいたしましたので、御相談がありましたときに、会社更生法を適用する申請はやむを得ないであろう、こういうことで、ちょうどきょうがその三月十日でございまして、きょうが渡れない、こういうことで会社更生法の適用をする、かように相なった次第でございます。そこで、いまお尋ねがございましたこれに伴う三百社以上と思われる関連企業、その中で下請企業としては七十社ぐらいあると思いますが、これらに対してどう対処するか、こういうことでございます私がいよいよ会社更生法でも適用しなければどうにもならぬということを承知したのが二日でございます。この二日には直ちに重工業局長と中小企業庁の長官を呼んで、地方通産局を通じて万全の手配をするように、また事情を十分把握するように申しました。三日の日には幸い閣議がございまして、経済閣僚懇談会もございまして、日銀総裁も見えておりまして、その席上で極秘のうちにいろいろと大蔵省にも日銀当局にもお願いをする、こういうことで、順次手を打ってまいりましたが、表面的な動きといたしましては、この八日に地元を中心としての金融懇談会をさせました。それから昨日には大阪通産局を中心としての金融懇談会をさせました。そうして、政府の三機関を動員して万全の対策を講じておりますが、この金融懇談会の結果、県なども協力していただきまして、県の預託を銀行にしてもらって融資の円滑をはかるとか、あるいは、保証協会に対する中小企業信用保険公庫の七〇%のてん補では保証が円滑にいきませんので、あとの三〇%を県で見てもらうというような具体的な措置も講じつつ、中小企業に対する連鎖倒産をでき得る限り避けるように万全の措置を講じておるような次第でございます。
  80. 向井長年

    向井長年君 通産大臣、これは三月の二日に知ったということですが、これは年末の経済雑誌にも報道されているのですよ、非常に危険な状態であるということは。少なくともこれは通産省の出先である大阪通産局あたりで当然これの監視なり調査をすべきだと思うのです。そういうことについては何ら報告はしてなかったのですか。
  81. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま説明が十分でなかったかと思いますが、三月二日のことは、いよいよもういけない、会社更生法の適用を申請するかどうかと、こういう問題であります。たしか私御説明申し上げたのでありますが、一月から二月にかけていろいろな動きがあった、そうしてまたその間に地方通産局を通じて実態を掌握するようにつとめた、これは申し上げたつもりでございます。
  82. 向井長年

    向井長年君 これはやっぱり一つ原因は、大臣も言われたように、設備投資の過剰という問題も大きな原因であると同時に、産業構造の変化という問題も認識しなきゃならぬと思う。あるいはまたこの設備過剰のいわゆるコントロールというものが十分いっていなかったのじゃないか、まあこういうような感じもするわけなんですが、とにかく金融機関との問題、特に大企業と金融機関とは、これは切っても切れない悪因縁なり悪循環を持っておると思うのですよ。そういう中からこういう問題も起きてきていると思うのです。これは、大蔵大臣、いかがですか。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融機関と企業との間の悪因縁といいますが、そういう批評が立っておるかどうかわかりませんが、いずれにしましても、戦後の無資本の状態から立ち上がった過程において、大企業の大株主は金融機関であり、金融機関の大株主は大企業であるというようなことはあります。ありますが、悪因縁というふうに解すべきではないと思います。また、今度の倒産がそういう状態においてできたというのではなく、この倒産の経過を見ますと、非常に特殊な分野を分担しておるにもかかわらず急速に伸ばし過ぎたというところに企業責任のある意味における欠如ということもあったと思います。まあお互いに分を知らなきゃならぬということでありますが、こういうケースを見ると、分を知っておるような経営の状態ではなかったようであります。しかも、一流銀行からメイン・バンクから経理担当の常務が何人か行っておったわけでありますが、内容をつかむことができなかった、こういうところに派遣する重役のあり方はどうあるべきか、こういう問題にも十分検討を必要とすると思います。
  84. 向井長年

    向井長年君 そこで、われわれはこの関連産業の倒産ということを非常に重要視するわけなんですが、現在会社更生法が適用されて、いわゆる中小関連産業の保護というものができないのじゃないかと思うのです。いわゆる債務は棚上げにされてそうして一応保護するというのがこの会社更生法の適用になってくるわけですが、しからば、その中で、民法上の先取特権がありますね、いわゆる賃金等の。これについては維持されるけれども、下請中小企業の関係については維持できない、それが適用されないという問題になってくると思う。したがって、そういうことから考えるならば、現在の会社更生法が非常に不備な状態であるのじゃないか。関連産業の保護という問題が何らこの中であらわれておらない。で、私は多くは申しませんが、こういう不備の会社更生法の改正というものが必要になってくると思いますが、この点はどうですか。総理あるいは大蔵大臣、どちらでもけっこうです。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 近ごろこう安易に会社更生法に逃げ込んでしまうと、こういう風潮に対しては手きびしい批判があることは承知いたしております。会社そのものを残したいということで、再建のためにやむを得ず会社更生法の適用ということでこの法律があるわけでございますが、いま申し上げたように、何でもかんでも更生法に逃げ込むほうが早いと、こういう考え方に対しては、法律の不備があれば適合するように直さなけりゃならぬということは御指摘のとおりである、こう思います。けさの新聞にも、山陽特殊製鋼の更生に対しては、取引先の大手メーカーは全部反対という意思表示をしております。この種の問題に対してこういう動きがあったことはなかったわけでありますが、金融機関の債権確保に有利であって、関連産業、下請企業等に対しては不利である、こういう見方から確かに更生法適用に反対の意見があるのだと思います。またこれからこういう問題も相当あると旭いますから、会社更生法本来の目的だけではなく、新しい事態に適合するように必要があれば改正を検討すべきだと思います。
  86. 向井長年

    向井長年君 いま、大蔵大臣、あればじゃなくて、これは衆議院の大蔵委員会でも法務省の民事局長ですか、これが明確に不備があると訴えられておる。したがって、事実上不備があると思う。これは少なくとも早急にこれに対する改正が必要だと思うのですが、この点はいかがですか。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 不備があるかないか、私にはまだ明確になっておりません。おりませんが、議論のあるところは十分承知をいたしております。おりますので、よりよき会社更生法、より完備した会社更正法、こういう立場検討いたしたいと思います。
  88. 向井長年

    向井長年君 それからもう一点、先ほど言った三百有余のこういう下請なり関連産業のいわゆる倒産防止のための金融のあっせん、あるいはまたそれに対するところの措置というものは、どう考えておられますか。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本件の会社更生法の適用に際しましては、特に異例ともいわるべき措置をとっております。大蔵省からは、銀行局長が各金融機関に対して、下請企業、特に関連産業につきましても、連鎖倒産、黒字倒産を起こさないように金融上万全の措置をとられたい、こういう依頼をいたしておりますし、また、日銀総裁も、この問題に対しては、特別談話を発表するだけではなく、各金融機関に対して関連倒産及び黒字倒産を避けるべくあらゆる措置を懇請いたしております。懇請だけではなく、これに必要な資金については日銀が特別にめんどうを見てもよろしい、こういうことまで言っておるわけでございます。しかし、けさの新聞には、関連産業の中で一件、倒産といいますか会社更生法の適用を受けたいというようなことも報道されておりますので、かかる問題に対しては十分実情を調査し、所期の目的を達成しなければならない、こう考えております。
  90. 向井長年

    向井長年君 次に、自動車産業の問題でございますが、これは三十七年当時の産業構造調査会ですか、こういう中でいろいろと討議されて答申が出ているようですが、その後各代の通産大臣がいろいろなことを言われておるのです。四月には自由化する、あるいはまた三月末には自由化するとか、いろいろなことを言われておりますが、これは自由化するのですかしないのですか、するとすればいつごろやるのですか、この点を通産大臣からお答え願いたい。
  91. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 自動車の自由化につきましては、私が就任した当時には、前福田通産大臣が秋にはすなわち三十九年の秋には自由化をいたしたい、こういう意思表示をしておった直後でございます。しかし、私就任後に一、二の自動車工業を視察してみまして、秋には少し早いのではないか、こういうふうな視察の結果感じを持ったのであります。しかして、担当の局長以下の意見を求めましても、お話のようにまだ自由化に対処する体制はできておらない、特に現状においては非常な過当競争をしておる、こういうことでございました。自由化に備えるように協力をするようにという指導をしてまいりましたが、そのころちょうど晴海ではなやかな自動車ショーもございました。これを見に行ってみましても、こんなにたくさんの種類の自動車をつくっているのかと驚くようなことでございましたが、しかし、そのときに私が気づきましたのは、これだけの競争をやっておることも無意味ではない、この競争がいずれは自由化の後に役立つだろう。しこうして、そのときに、私はやはり会社に対する一つのめどを与えるほうがよろしいということから、自由化については四月以降国際的にやるべき立場に日本はある、しかし、急がないが、まず九〇%の体制が整えば自由化はぜひやりたい、あとの一〇%は待っておれないと、まあわかったようなわからないようなことを申してまいったのでありますが、ことしの正月にたまたま自動車工業会の関係の会がございましたので、ここで少しはっきり言っておくほうがよろしいと、こういうことで、四十年度上期中には自由化をしたいから、ひとつ万全の対策を講じてもらいたい、こういうことを申したのであります。  その申し上げました背景はどういうことでそういうことを申したかというと、昨年度乗用車の輸入についての外貨の割り当て、それから実行の状況をずっと私検討いたしました。また、三十八年度当時のことを検討してみますと、簡単に申し上げますと、三十八年度では、一万二千台の割り当てのワクであったのが、実績が一万一千七百四台と、こういうことでございました。しかし、三十九年度におきましては、これも相当ワクを広げて一万八千台の割り当てをしてみたが、実情は一万三千台を少し割ると、こういうような状況でございます。これならば、どんどんどんどんもっと外車が入ってくるかと思ったら、割合に入ってこないし、国産車のほうがよく売れておると、こういう状況でもございました。それからまた、自由化をする上におきましても、一気に何もかも自由化をするのではなくて、ノックダウン方式についてはこれを考えようとか、あるいは外資の入ってくることについては外資法でチェックをしていこうとか、あるいは使用部品についての自由化は考えようとかいうような方針を立てまして、しこうして四十年度の上期にはこれを自由化をいたしたい、こういうふうにはっきり業界に申して、その体制を整備するように進める、また、一面、その体制整備のためには体制金融としての資金も用意をしておる、かような万全の措置を講じつつ、今後日本の自動車工業というものが相当国際的に伸びるべき要素を持っておる業界でございますから、健全な育成発展をつとめたい、かように考えておる次第でございます。
  92. 向井長年

    向井長年君 質問をしようとした先に答弁されておりますが、とにかく簡単に明瞭に答えてもらってけっこうです。四十年度の上期には自由化したい、こういう決意ですね。これは間違いありませんね。そうすると、自由化できる業界の体制ができておりますか、またやれますか、それまでに。また、やろうとすればどういう形でやるか。前通産大臣は、合併なりあるいは何といいますかそれに対する共同化、こういう問題を言われておりましたが、この点はどうするのか。
  93. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま申し上げたようなことを業界自体がよくかみ砕いて考えていただければ、おのずからこの結論が出ると思うのであります。いまの自動車工業の完成車のメーカー、これがこのままでいいとは思っておりません。また、全般的に見まして、ある程度企業合同をしてもいい要素を持っておる向きもございますから、私のいま申したようなことがだんだん浸透しておるようで、最近におきましてもトヨタやあるいは日産がそれぞれ系列会社との関係で合併などもしてまいったというようなことは御承知であろうと思いますが、だんだん空気は醸成しておると思います。また、完成車につきましては、現在自由化をいたしましてもそう大きな影響はない、こういう私は判断をしております。
  94. 向井長年

    向井長年君 その体制整備の問題ですが、業界ではいろいろ問題等もあるようですが、これはいま通産大臣が言われたような四十年度の上期には自由化をするという決意のもとに体制整備を行なう自信がございますか。
  95. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御説明申し上げましたように、ただ何も用意なく体制整備をせよというのじゃないので、一方におきましてはこの金のほうも用意しておるのであります。体制金融をつけるからと、こう言っておるのでありますから、賢明なる経営者であれば相当考えてくれると思うのであります。
  96. 向井長年

    向井長年君 通産大臣は業者の自由競争を黙認しておりますが、これは抑制方法をとらなければならぬ状態になってくるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  97. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 担当は重工業局長でございますが、自動車工業会のほうに対してお話のような所見は申して内面指導にはつとめておるのでございます。
  98. 向井長年

    向井長年君 次に、大蔵大臣、自治大臣にお聞きいたしますが、自動車のいわゆる物品税あるいは地方税の問題ですが、自動車の物品税は本年も一%上げて二〇%まで持っていきたい、こういう意向のようですね。それから地方税は五〇%上昇を、これは出しておるようですが、これは目的税であるのですか、何ですか。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 物品税は二〇%まで上げるべきだと、戻すべきだという議論が非常に強かったわけでございますが、段階的にということでこのたびは少しずつ上げるという態勢をとったわけであります。
  100. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 地方税の自動車税は、財産に対する財産税の一つと考えております。
  101. 向井長年

    向井長年君 これは財産税というが、それだったら、自治大臣、大体これは乗用車でしょう。財産税であるならば、いわゆるトラックにしても貨物にしても当然それに付して必要じゃないんですか。
  102. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 理論的に言えばそうでありまするけれども、しかし、タクシーでありますとか路線バス等は一般の大衆との関係もございまして今回は上げなかったのでございます。なお、今回上げましたこの自動車税の五〇%アップは、税制調査会の答申に基づきまして処置した次第でございます。
  103. 向井長年

    向井長年君 これは目的税も加味しておるのじゃないですか。とにかく財産税というような名目であるならば、これは当然持っておるいわゆるその他の自動車もかけるべきなんですよ、理屈から言えば。それをかけないでこれだけをかけた理由は、何か目的税だと思うんですが、どうなんですか。
  104. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように目的税ではございませんで、ただ、全般にかけるべきかもしれませんけれども、一般の大衆等の関係もございまして、ハイヤーと路線バスにつきましてはこれを上げなかった。その点も税制調査会の答申をそのまま実は採用しておる次第でございます。
  105. 向井長年

    向井長年君 総理ね、どうもわれわれが納得できないことは、営業用であるからこれは運賃等に影響するからという考え方はあると思うのですよ。ところが、この自動車の問題も、そろそろ先進国においては実用化されてきつつあると思うのです。道路整備が十分ではないにいたしましても、そういう状況下にある問題に対する五〇%の値上げ、あるいはまた、もう一点、これは総理が通産大臣当時に私からこの予算委員会で聞いたときに、電気ガス税の問題もこれはもうやめてもらいたい、こういう税金は、ということを大臣当時に言われたのです。こういう問題も、一部大口に対しては免税をしておいて、そして一般家庭にこれを取っておるという、こういう税のやはり取り方の不公平というか矛盾があるのじゃないですか。これは私は大体同じようなケースだと思うのですよ。この点はどうですか。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自動車税は、ただいま吉武君からお答えしたとおりでございます。  それから電気ガス税は、かねてから前池田総理も申しておりましたし、私も同じような考え方で、順次下げておる、ことしも一%引き下げておる、かように考えます。
  107. 向井長年

    向井長年君 これは一%下がって三%減税ということになりますが、これは大臣も通産大臣のときには一日も早くこれはもうやめてもらいたいという一とをここで主張したはずなんです。そうして池田総理は必要悪の税金だというような考え方で答弁されておるのですよ。毎年一%ずつ下げておりますけれども、これは全部がそういう形で取られておるのであればいいのですよ。ところが、大きな大会社等は免税されておるのですよ、これは。そういうところに不合理があるということなんです、物価に影響があるというけれども、一般家庭の必要品にかけておるということになるのですよ。これはどう考えても矛盾しておるわけなんで、この点は自動車税も、全く一緒とは言いませんけれども、同じような考え方じゃないかと思うのですが、この点はどうですか。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 電気ガス税は廃止したいということでございますが、地方税としては有力な財源でございます。でありますので、なかなかそう思い切って減税はできない。これを減税しますときに一%ずつ過去三カ年間やったわけでありますが、そのたびに一般会計から何か補てんしなければならぬ、こういうことになりますので、一般会計の財源そのものにもいろいろ問題のございますときになかなか思うようにできない、こう申し上げるほうがほんとうかと思います。  それから産業等に対しては減免税等を行なっておるということでございますが、これはいろいろな問題がございますが、産業奨励というこういう意味と、物価の問題その他があることは御承知のとおりでございます。一般の家庭につきましても免税点も引き上げておるということも御理解いただきたいと思います。自動車に対して税金を取っておるこの問題は、国民全部が自動車を持つということになるとかけないということになるかもわかりませんが、いまやはり自動車というものは、一般的なレベルから見て、乗用車は奢侈品ではございませんが、国民全体が用いないもの、こういう感じから考えますと税の対象になる。これがまた国民全部が持つ場合に免税になるのか、こう言いますと、なかなかむずかしい問題でございますが、とにかく現段階においてはいま申し上げたような状態だと思います。
  109. 向井長年

    向井長年君 これはまた委員会等でいろいろと討議いたしたいと思います。  そこでもう一つ、通産大臣、建設大臣に聞いておきたいのですが、先般の国会で電気事業法案が通って、次には、電気の保安という立場から、あるいはまたいわゆる過当競争を排そう、こういう立場から、特に電気工事事業法なるものを通産省で起案をして今国会で出したい、こういう意欲を燃やしておるけれども、建設業法との関係でどうしてもこれはうまくいかない、こういう状況下にあると私は聞いておりますが、この点は、通産大臣、建設大臣、どうですか。
  110. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいまお尋ねの電気工事事業法の制定についてせっかく研究しておることは事実でございます。また、通産省といたしまして、現在電気配線の工事のほうは建設業法の別表「六」の中に入ってまいります。それから電気工事を実施する資格要件については電気工事士法によるというようなことで、こういう二木立てで行政をやっておることはいかがかと思われる点もございます。また、お話しのように、現在電気工事事業者の過当競争的な血もあり、また、それがこういう工事でございますから、もし粗漏な工事でもございまして公共の秩序に影響があってはいけない。また、災害を起こしてもいけないというようないろいろ懸念される点がございます。しかし、現在どういうふうに最終的に案をまとめ上げるがいいか、電気工事事業法をつくって登録制度にいたしましてそしてある制限を加えていく場合に、はたしてそれが中小企業対策の見地からどうかというような疑問もございます。しかし、役所のほうとしては大体まとまってまいりまして、できれば今国会中にでも提案をしたいというように通産省側としては考えておるような次第でございます。
  111. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 電気工事というものは、一般の建設と一緒に請け負いがされるのが実態であります。そういう点を考えてみますると、この電気工事事業に関する法律は、その目的が、登録を実施して、そして業者の乱立を防止し、無用の競争を排除する、こういうのが目的でありますけれども、これは建設業法で一切すでに登録をしておりまして、そして、現にそういう無用の乱立を防止したり競争を排除したりする目的は達成されておるわけです。一方において先ほど申しましたような実態もありますので、かえってこういう二つの法律をつくることは業者に対する二兎行政になりはせぬだろうかという点で、いまわれわれとしてはこれはにわかに賛成しがたい、こういう態度でおるわけであります。
  112. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま建設大臣のお答えがございましたが、私が今国会に間に合わせたいという私の気持ちを申し上げましたが、なかなかいまの建設大臣のお答えもございまして見通しとしては困難であると、こういうことでございます。
  113. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 向井君、持ち時間を尊重していただきます。
  114. 向井長年

    向井長年君 この問題は建設大臣は内容を知っておられないと思うのですよ。少なくともこれは電気工事の安全という問題と、いわゆる中小企業の過当競争の廃止という問題、特に大企業の分野の中でいわゆる分離発注、こういう問題が中心になってきておるので、閣内のいわゆる争いじゃなくて、当然正しい一つの今後の安全の立場から私は検討しなければならぬと思うのです。少なくとも通産省が今国会に出したいという意欲を燃やしている以上は、十分ひとつ話し合ってこの一つの法文化をしてもらいたい、こう総理に要望しておきたいと思います。  あと総合エネルギーの問題、あるいはまた医療問題を質問する予定でございまして、時間がなくなりましたので、これは適当な委員会でまた質問いたしたいと思います。これで私の質問は終わります。
  115. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 向井君の質疑は終了いたしました。  一時から再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時十一分開会
  116. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。小平芳平君、亀田得治君が辞任され、渋谷邦彦君、稲葉誠一君が選任されました。     —————————————
  117. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。佐藤尚武君。
  118. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 私、本日は主としてベトナムの問題について政府の考えを伺いたいと思うのでありますが、その前に、簡単に国連の問題について政府のお考えを伺いたいと思うのであります。  昨年から始まりました第十九回総会は、本年に入りまして、いろいろな難問に逢着して、あるいは国連派遣軍の分担金の問題であるとか、あるいはインドネシアの国連脱退の問題であるとか、いろいろあまり愉快でない問題が続出いたしまして、とうとう第十九回総会はていのいいお流れの形で、この本年の秋まで持ち越されたようなことになっております。私は、国連が現在のような危機に臨んだといたしますれば、一段と国連支持の力が加わらないことには、この国連の維持があるいはむずかしくならぬとも限りませんし、国連が消滅するようなことがありましたならば、世界平和の維持のために非常な大きな混乱を来たすことになるだろうと思うのでありまして、この際こそ、日本政府といたしましても一そう国連に対して強力な支持を与えるというような方策に出られるのが当然だと思うのでございます。実は本年は、一昨年インド首相になられたインド首相の提案によりまして、国連が結成されましてから満二十年になります本年を、国連協力年とすることにして、全世界でもって国連支持の運動を起こすことになっておったのであります。いま申し上げましたような事態で、国連自身が非常な危機に臨むということに相なりまして、お祭り気分でもってこの二十年を祝うというようなことには、どうもそういうことはできかねるような形勢に相なったのであります。まことにこれは不幸なことでありますが、先ほども申しましたとおりに、こういうときであればこそ一そう国連支持の力を全加盟国が結集して国連に与えるということでなければならぬと思うのであります。その点、日本政府ももちろんそういうお考えであろうとは存じますけれども、念のため政府のお考えを伺いたいと存じます。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御高説は、私全く同感でございます。御指摘のように戦後二十年、今日また国連の内部におきましてもインドネシアの脱退、その他分担金を納めないとかいう問題があり、たいへん重大な危機に当面していると思います。わが国は、かねてから国連中心主義、外交の基本的方針をそこに置いておりますし、また唯一の国際平和機構であるこの国連、これにわが国のとっている平和に徹するということ、この方針も合致するのでございますし、そういう意味で、あらゆる機会国連の強化、またこれを中心にこれに協力する、かような立場で今日まで努力してまいっております。過般、椎名外務大臣が出かけまして、そうしてあちらで話をしたのも、ただいま言われるような御趣旨に沿っておる、かように私考えております。
  120. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 どうも二十年という年月が、たいへんにぐあいの悪いことになるような気がいたしますので、第一次大戦の際に、一九一九年にベルサイユ条約ができ、それによって国際連盟が結成されたわけでありまするが、その後二十年たちまして、一九三九年にはヒットラー・ドイツのポーランド侵入となってしまったというようなわけで、それが第二次世界大戦のきっかけとなったようなわけでございます。今度国連が結成されてから満二十年になりまして、先ほど来申しましたような種々な重大なできごとが起きまして、そうして国連の根底をゆさぶるようなことに相なりましたのは、まことにどうも歴史は繰り返すというのが事実になってあらわれてきたような気がいたします。そうでありますれば、なおさら、ただいま総理が言われましたごとく、国連に対して強力な協力を与えるというようなお考え、ぜひそういうお考えをもってやっていただきたいということを、繰り返してお願いするわけでございます。  ベトナムの問題につきましては、すでに多くの同僚の議員たちから質問がありましたので、私自身の質問もかなりの程度重複するおそれがあります。そういう点で、なるべく重複を避けて、そうして政府のお考えをお伺いしたいと思うのでありますが、現在の調子でまいりまするというと、中共をはじめ北ベトナムないしはソ連のごとき、南ベトナムの問題に関しまする限り、非常な強気でもって臨んでまいっている。またアメリカ態度も、それに負けず劣らず強気のように察せられておるのであります。こういうようなやり方が今後長く続くといたしまするならば、世界情勢の上に大きな不安を投げかけるばかりでなく、それが高じて、ついに取り返しのつかないできごとにまで発展しないとも限らないようなわけでありまして、したがって、極東に存在しております日本の立場からいいましても、たいへんこれは不安、心配な問題であるわけでございます。何とかしてあのみじめな敗戦の経過並びに結果を味わった日本といたしましては、ぜひとも第三次大戦などが起こることを防止しなければならないようなわけでありまして、そのためには、いまの南ベトナムの問題は非常な大きな課題を日本に投げかけておるようなわけだと思うのでございます。いろいろな情報、私はあまりたくさんの情報は持ちませんが、それにしましても、南ベトナムの情勢を見てみまするというと、アメリカに対しての不満、批判が非常に強く持ち上がっておるように私にも見えるのであります。アメリカの帝国主義、アメリカの行動はみなアメリカの帝国主義というふうに非難されておるわけでありまして、ごうごうたる非難が上がっておる。その反面に、ベトコンに対しましての同情ないしは彼らの行動を是認するような批判もまたかなり根強いものがあるように見受けられます。南ベトナム自身、一般の民衆はもう戦争に飽き飽きしておるのは、これは当然でありましょうが、その結果、民族解放運動と目されておるベトコンの態度、攻撃は、一般の民衆からむしろ是認され、かつまた、これに対して大きな同情を注いでおるというふうに見えるのでありまして、アメリカベトナムにおける地位というものは、それだけに非常な不利な立場に立ち、また困難がわいてまいっておるというふうに見えるのであります。しかしそれにもかかわらず、アメリカは断固として、ベトナムに対して、このままでは譲れないという態度をとっておることは周知のとおりでございます。アメリカ態度は、私から申しましても、きわめて牢固なものがあるように見えるのでありまするが、それは何のためか。その根本をただしまするならば、いまアメリカ国際会議とかなんとかいうことでもって手を引く、漫然国際会議に臨むというようなことであったならば、南ベトナムは、これは共産主義に逸してしまう、共産主義のほうに投じさせてしまうということになるのである、それは自由国家としてとうてい認容することのできない問題であるという点に、非常な大きな理由を持っておるわけでありまして、このままで手を引いたならば、ベトナムは即刻にも共産化されてしまうという、そういうおそれでございます。したがって、その点でアメリカが安心を得るということでなければ、アメリカは手を引かない、こういう立場に立っておるかのように私には見えるのであります。そこにもってきてフランスのドゴール大統領の国際会議の提唱があったわけであります。この提唱は、武力をもって南ベトナムの問題を解決するということは不可能である。自分自身が、フランス自身が、もうすでに十年も前に経験をしたところであって、とうてい、武力解決は望むことができないのだ、しからば、国際会議を開いて、そしてそこで話し合いによる平和をもたらす以外に方法はないじゃないかと、こういうのがドゴール大統領の強い主張のように見受けられるのであります。私は、何もアメリカびいきをする立場にもおりません。漫然国際会議ベトナム問題を持ち込むということは、私自身もどうもふに落ちかねるのであり、賛成は軽々にできかねるという考えを持っているものでございます。というのはなぜかと申しまするならば、先ほども申しました共産化から救うだけの保障がないことには、この国際会議を、よしんば開いたところで意味をなさないことに相なるというふうに思われるからでございます。フランス自身も、自身苦い経験をなめた国でございまして、八年も長い間べトミンとベトナムで交戦を続け、そうしてこのゲリラ戦によってフランスは非常に苦難をなめたというので、その結果一九五四年のジュネーブ協定ということになり、その協定でもって休戦に持ち込んだということに相なったわけでありますが、その休戦協定を見まするというと、いま申しましたように赤化からベトナムを守るという点については、きわめてばく然とした規定しかないのでありまして、的確な保障、強力な保障というものはどこにも見当たらないというのがジュネーブ協定の大きな私は欠陥であったろうと思うのであります。それゆえにこそ、この協定が五四年に締結されましてから十年足らずの後に、再び依然フランスがベトミンと苦しい戦いを続けてまいって八年もかかった、そうしてとうとうきわめて不利なジュネーブ協定に到達したというようなことが繰り返されんとしているような情勢でございます。それをまたドゴール大統領が提唱しているというところに、私は非常にふしぎに感ずるのでありまして、ドゴール大統領自身の代表しているところのフランス自身が、すでに大きな苦い経験をなめて、そうして協定締結後十年足らずのうちに再び現在のような混乱を来たし、まさにベトナム全土赤化されんとしているような危険にベトナムをさらしているというようなことに相なっているのでございまして、そういうことを知っているフランスといたしまして、なおかつ何らの保障に関しての意見の交換もなしに国際会議を提唱するということは、どうも私には了解しがたいのでありますが、この問題につきまして、私から見まするならば、きわめてふしぎな応答がなされたように見える節がございます。それは、ある刊行物に記載されております一学者のまじめな研究でありますが、私はこの研究の内容につきまして、これを確認するだけの資料は持ちませんけれども、しかしまじめな研究としましてこれを見るときに、あるいはそういうこともあり得たのではなかろうかというような疑いを持つ問題がございます。それはボール国務次官がドゴール大統領に対して、ドゴール大統領の国際会議開催の提唱に関して反論をしたということでありまして、こういう国際会談というものは、東南アジアに対して共産化を招くという大きな危険があるのではないかということをボール次官が述べたそうであります。どういう機会に述べたか、ここには書いてございませんが、それに対してドゴール大統領の考えとして述べられているところが非常にどうもふるっているのでありまして、それは、ドゴール大統領もその危険は甘受しなければならぬ、そういう危険は当然あるのだ、これは甘受しなければならない、そうして今度は米国が甘受すべき番に当たっているのだ、こういうことを述べたという話でございます。フランスは東南アジアに軍隊を持っていないので、ただ自分たちがなし得ることは知恵を借してあげることだけのことだ。実力をもってそういう赤化の危険からベトナムを守るというようなことは、これはフランスの役目ではない。フランスは国際会議の招集ということをそれほど火急な問題とは考えていないが、しかしながら、だれにとっても早ければ早いほどいいに違いないということを言ったそうでございます。これからあとは、この研究者の意見でありますが、これは暗に、フランスが十年前に立たされた地位にアメリカが現在置かれているのであり、十年前にフランスがジュネーブ会談を甘受したように、今度はアメリカジュネーブ会議の開催を甘受すべきであるという論法だというふうに、ここに研究者の意見が付記してございます。私は、このボール国務次官とフランスの大統領との間の応答が、はたしてこのとおりであったのかどうかということを調べるだけの資料を持ちませんが、しかし、ドゴール大統領のいままで多くの機会に述べたところから推測いたしまするというと、大統領の考え方は、やはりこういうことではなかろうかと私にも思われるのであります。自分自身は極東に軍隊を持っていない、したがって、武力をもってこの国際会議の協定を保障する立場にはいない、むろん国際会議の結果、東南アジアが赤化されるというような危険はある、それはドゴール大統領も認めていることになりまするが、しかし、その危険はフランスが負担するのでなくて、今度はアメリカの番だ、アメリカが負担すべきものだ、もう自分たちは十年前にえらい経験をなめたのであって、今度はアメリカの番だと、どうもこれでは東南アジアの平和というものは、そういう意味での国際会議によっては持ち来たされないということになる、それは初めからわかっていることであります。ジュネーブ協定が先ほども申しましたが、的確な、そうして強力な保障の規定を欠いておったがために、今日のようなまことにみじめな結果をもたらしておることを考えまするという、ドゴール大統領のいま頭の中に考えておるそういう国際会議を提唱して、それでもって一時はしのげるかもしれませんけれども、十年もたたないうち、あるいは五年のうちに、またベトコンの勢力が浸透していく、ないしは北ベトナムの勢力が南へぐんぐん伸びてくるというときに、だれが一体平和の維持を保障してくれるのかという点になりますというと、全く心もとない提議だといわなければならぬように私には思われるのであります。スイスの中立条約などでは的確に中立の保障、スイスの独立、中立の保障を規定しておるわけでありまして、もちろん第一次、第二次大戦を通じてスイスが中立を守り通したにつきましては、利害関係国がスイスを侵すということは結局自分のためにならないという見地に立って、この独立を事実上承認したというようなこともあったのでございましょうが、しかし、中立条約それ自身的確な規定を持っておるということが何よりも力強いスイスの中立維持の理由であったといわなければならないのであります。  しかるに、ベトナム国際会議、ないしはもうすでにできておりまする一九六一年のラオスの中立に関する条約などを見ましても、そういったような的確な規定はどこにも見当たらないというのが私は大きな欠陥であったろうと思うのでありまして、それを再び繰り返すというようなことは、まことに危険千万なことでなければならないように思うのでございますが、政府はその点に対してどういうお考えをお持ちになっているか、総理もしくは外務大臣からお伺いすることができれば幸いだと思います。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さすがに佐藤さんは外交のベテランであり、また国際連盟以来の見方で、今回の国際連合についても、国際平和機構であるこの連合がその役割りを果たすようにと、こういう意味でいろいろお話をしてくださいました。たいへん参考になる点が多いのでございます。最後にただいまドゴール大統領、同時にボール次官との話などもるるお話になりました。私はこの機会にドゴール大統領あるいはボール次官がどういうように考えておるか、これにはあまり触れるという考えはございません。しかし、ベトナム自身、ベトナム民族が今日戦禍をこうむり、そうして苦しい状況に置かれておる、その立場に心から同情し、また一日も早く平和が招来されて、彼らがその生活を楽しめるように、そういうときが一日も早く実現するように願っておるものでありますし、また同時に今日の戦火がさらに拡大して、そうしてこれが世界平和にも影響を及ぼすというようなことのないように、ことに、私ども日本がアジアの一国である限りにおいて、ドゴール・フランス大統領とはまた違った意味において、たいへん身近にこの問題の処理が一日も早いことを希望して、また期待しておるのでございます。そういう意味で、あらゆる機会にこの問題について議論が展開されることを心から望んでおりますが、しかし、ただいま仰せになりましたごとく、基本的にはやはり国際信義が守られ、国際信頼が相互の間にあるということ、いわゆる一つの保障がそこに取りつけられる、こういうことが全部を解決するその基礎的な条件ではないだろうか。同時にまた、各国ともそれぞれの国の独立をどこまでも尊重していく、こういう立場に立って、そうして国際信用、信頼ができるならば、ただいま言われておりますような話し合いの場も容易に見つかるのではないだろうか。今日の国際情勢、これは必ずしも相互に国際信義、あるいは国際信頼、信義が守られ、国際信頼をつないでおる川かようには思えない。そういうところに今回のような問題が起きておるし、また同時に、一国の独立が尊重されて、他国がそういう内政の問題について干渉しない、こういうような立場であるならば、あまり問題は紛糾しなくて済むのではないだろうか。ただ、もちろん基本的には東西の対立というものがある。いわゆる国際共産主義に対してひとつの自由主義を守る、自由を守る、そういう立場の勢力の対立のあることも私は否定はいたしませんけれども、しかしながら、いずれにいたしましても、世界でもう核戦争、そういうことを想像するだけでもみんな人類はぞっとしておる、平和を心から願っておる、そういう立場だと、思想的な問題はあるにいたしましても、相互の間に調和の道ははかれるだろう。そうしてただいま申し上げるように、それぞれの国の独立は尊重していく、そうして国際信頼を取り戻す、かような状態になってくれば、平和への道が開けるのだ。私はまあそういう意味の事柄で、ただいまのような各方面においていろいろ論議の起こることを実は期待して、そうしてこのベトナム問題、これが最終的な結論を見出すように、そういう機会をつかみたいものだ、かように考えております。
  122. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 いまの総理のお考えを承っておりますというと、世界の世論を動かし、ことに利害関係国はもちろんのことでありまするが、世界の世論に訴え、世界の世論を動員して、そうして平和の傾向、平和の世界的な空気をもたらし持ち来たすということが、たいへん重要なことではなかろうかというようなお考えをお述べになったと思うのでありまするが、私はそれもむろんそうでありまして、世界の世論を動員することがこの際としましてたいへん必要なことと思うのでありますけれども、第一が、国際会議が招集されたとして、ある協定に達する場合に、先ほど繰り返し申し述べました平和維持保障の、侵略者に対しての適切な手当てをするという保障、そういう保障が、その国際会議によってきめられるべき協定の中に盛られていなければ意味をなさないということを申したのでありまして、この点に関しましては、どうも総理のお考えは私ははっきりつかむことができなかったのでありまして、いま一度お考えを願いたいと思うのでございます。私は先ほども、アメリカの決心はきわめてかたいものがあるということを申し上げました。これは私の貧弱な経験から申しましても、そうとしか思えないのでありまして、第一次大戦にアメリカが参戦いたしましたのもそうでありましたし、また第二次大戦、この大東亜戦争にアメリカが乗り出してきたということも、アメリカという国は非常に主義にこだわる国柄だと思うのでありまして、自分の奉持しておるところの主義が正しいものである、正しい主張を自分たちは持っているのだという、そういう点におきましては、想像以上にそれに執着するような傾向のある国柄ではないかと思うのであります。これは私のそういう判断が間違っておるかもしれませんけれども、たとえば大東亜戦争前、満州事変当時からのことを考えてみまするというと、当時のシナに対しましても門戸開放、機会均等という旗じるしを掲げて、そうしてアメリカはシナの保護者をもってみずから任じておるというふうな形でございました。満州事変のごときは、まさにそのアメリカのそういう主張にたてをついたものでありまして、そうしてこのアメリカの主張は、一九二〇年のワシントン条約の際にも明らかにされておったところでございました。一九二〇年以降ずっと満州事変、日支事変を通じましてアメリカはその主義主張を堅持してまいり、ついには日本と正面衝突せざるを得ないというふうな羽目におちいったのでありまして、そういうことから考えてみますると、今次のベトナム問題に関しましても、アメリカは自由を守り、そしてベトナムを赤化勢力から守り抜こうというその主張、これはアメリカが最も正しい主張として彼らが信奉しておるところであろうかと思うのであり、したがいまして、私の論法から言いまするならば、アメリカの今度海兵隊を入れたり、あるいは数次にわたる爆撃を北ベトナムの方面に加えたり何かしましたことも、すべてそういう考え方から出発しておるのではなかろうかと思われるのでありまして、つまり、アメリカの決心は、今次のできごとに関しまする限り、以前と同じようにきわめて強固なものがあるように思えるのであります。そうなってまいりまするというと、北ベトナムないしは中共の反撃というものもむろんこれはあり得ることであり、その結果、取り返しのつかないような大戦にまで持っていかれてしまうということも考えられまするし、日本としてはこれは非常な大きな関心事でなければなりません。したがいまして、ある時期が参りましたならば、日本もいままでのような傍観的態度を続けていくというのではなく、積極的に乗り出して、そうしてやはり国際会議の場でもってこのベトナム問題を解決する、ないしはインドシナの問題を解決するというところまで乗り出し、極東の平和維持、世界平和維持に協力をしなければならぬという時期が来るのではなかろうかと私もひそかにおそれておるのでありますが、その際には、やはり先ほども申しましたことを繰り返すようでありまするけれどもアメリカが安心して東南アジアから手を引き軍隊を撤退させることのできるような情勢をつくるのでなければ、このアメリカのかたい決心をひるがえさせるということはできない相談ではなかろうかと思うのでございまして、それはすなわち、アメリカが適当な保障を得て、そしてそこに安心を得て撤退をするということでなければならぬと思うのであります。それには、先ほど総理が述べられましたような、世界的な平和な、何と申しまするか、いまのことばで言いまするならばムードと申しますか、そういうムードを盛り上げるということが非常に必要なことではなかろうかと私自身も考えさせられておるのでありまして、新憲法のもと、武力を解除してしまいました日本といたしましては、実力を発してそして平和維持の保障をするというようなことはできない相談ではありまするが、しかし、この世界的な世論によって平和なムードを盛り上げる、そしてアメリカが安心して引けるような保障の条件にまで持っていくというようなことは、必ずしも不可能なことではなかろうと思うのであり、そのためには、日本といたしましても非常な決意をもって世界的に呼びかけなければなるまいかと思っておるのでございますが、そういう点に関しましても、総理のお考えを伺えれば幸いでございます。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、ただ平和へのムードをつくるということ、あるいは国際平和のその考え方だけだと、こういうのでは実はございません。先ほどお答えいたしましたように、やはりアメリカ一つの保障が得たい、また、私どももそういうような保障があればこれはほしいんだと。それが、先ほど来言われるごとく、世界の国際的な唯一の平和機構である国連自身が、そういう点について何らかの措置をとり得るかどうか。しかし、これは、ベトナム問題について、かつて米ソの間で議論され、そして国連軍がそこへ出て行くということでなしに、ただいまのように、米軍がベトナム政府の要請によって出かけるという、こういう事態になったのでありまするので、まあその後変わってはおりまするが、今日国連軍による保障授与ということはなかなかむずかしいと思います。ただ、私が先ほど指摘いたしましたように、各国がそれぞれその独立を尊重すると、こういう立場に立ち、そしてその内政についてはお互いに干渉しないと、かようになるならば、これは一つの行き方ではないか、かように私は申したのであります。しかしながら、今日の、国際信義は守られておらず、相互の国際信頼というものも非常に薄らいでおる、こういう事態が今日のような状態を引き起こしておるのだ、かようなことを申したのであります。したがいまして、具体的に申せば、ただいまのような国際会議なり、あるいは国際連合なり等におきまして、ただいま申し上げるような信頼を取り戻す、相互信頼を取り戻す、そしてそれぞれの国の独立を尊重していく、こういう立場に立っていけば、かような事態も平静に帰するのではないか、かように私は思う次第でありまして、あえてお答えをした次第であります。
  124. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 持ち時間が一ぱいになっております。
  125. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 簡単につけ加えさしていただきまするならば、いま総理の言われたごとく、国際連合によりまして平和を維持するというお考え、それは、国際連合軍を派遣するというような問題につきましては、私も機会あるごとに、そういう国際連合軍というものの使命を強調してまいった者ではありまするけれども、アフリカにおきましての最近の成績から申しまするというと、どうも国際連合というものがそれほどの力を発揮し得ないうらみが多々ございました。これは、むろん米ソの確執等々が大きな原因でありましょうが、したがいまして、ベトナムの問題などに、おきましても、国際連合がはたしてどれだけの力を発揮し得るやということにつきましては、私自身も非常に最近疑問を抱かざるを得ないようなことになっております。また、関係国による保障、ことに大国による保障が非常に望ましいことに相違はございませんけれども、いずれの国といえども、保障を甘受する国というものは、私は、めったにないだろうと思うのでありまして、むしろ保障を避けるという考え方のほうが強いかと思われるのでございます。したがいまして、この協定を有効ならしめるために保障が要るとしまするならば、日本が、そしてまた他日会議に臨むというようなことがありますとすれば、保障に踏み切らせるために非常な大きな努力を日本としては払わなければならぬ、このように思うのでございます。この点は政府におかれましても、真剣にひとつ御考究をお願いいたしたいと存じます。  これで私の質問を終わります。
  126. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 佐藤君の質疑は終了いたしました。
  127. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、岩間正男君。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、主として憲法問題について質問をします。  まず、総理に伺いたいことは、憲法改定は自民党の立党以来の基本方針であると思いますが、あらためてそれを確認してもよろしいですか。
  129. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法問題はまことに重大な問題でございますので、慎重に検討してまいるつもりでおります。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 立党以来の方針かどうかと聞いている、自民党の。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えしたとおりです。  この前もこの席で問題になったと思いまするが、立党以来、憲法問題とは慎重に取り組んでいく、これはもう民主主義の国として、民主国家においては当然のことでございます。絶えず検討していく……。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 立党以来の方針というのを確認します。  総理は、昨年七月の総裁選挙のときに、あくまで憲法を改正するという立党の精神で臨む、こういうことを言いながら、総理に就任するやいなや、現在直ちに憲法改正は考えていないと答弁されています。どっちが一体ほうとうなんですか、お伺いしたい。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法は、国民が改正するものでございます。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 二つの食い違いを聞いているのです。食い違いの点はどうなんですか。国民がやることである。——党の方針とあなたの国会答弁と食い違っている、その点を聞いている。
  135. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法問題は、これはまことに重大な問題でございますから、私がその立場に立って慎重に取り扱う、かように申すのに別に矛盾はない、かように私は考えております。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 もっと歯切れのいい答弁をしてもらいたいと思います。これは、勝間田委員に対して衆議院でもあなたは、この問題についてあなたの態度ははっきりしておりません。結局いまのような答弁で、憲法改正の考えは依然として捨てていない、まあ時期をねらっているのだ、こういうふうに解釈することができるけれども、現に橋本官房長官は、去る十二月十四日の記者会見で、池田首相は、在任中は憲法改正はしないと語ったが、佐藤内閣はそこまで言わなくてもよいと言っています。また、自民党内の憲法調査会憲法要綱作成小委員会は、最近、参議院選挙までに改正の宣伝に乗り出すことをきめているではないですか。こういう事実からそう考えるわけですが、いかがですか。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自由民主党は、まだ改正の方向へ乗り出してはおまりせん。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 小委員会でそのように決定したことは、新聞も伝えています。はっきりここにあります。そういう点で、じゃ聞きますが、自民党の小委員会ではすでに、第九条を削除し、自衛軍の設置を明記することをきめているようですが、第九条削除についての総理の見解を伺います。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小委員会でそういう研究をしておるということでございますが、総裁である私は、そこまでははっきり確認はしておりません。岩間さんのほうに先に伝わっているのがふしぎに思っております。しかし、私は、先ほど申し上げましたように、民主主義国家においては憲法、これこそは国民がつくる、かような立場で絶えず研究をしておるというのが正しい姿だと思います。ことに憲法につきましては、憲法調査会の答申も出ておる今日でございますから、絶えず研究はしておる。それはしかし、その扱い方は慎重であるべきでございます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 私の質問に答えるように、これは注意してもらいたいのです。小委員会でそういうことをきめたことが、新聞に出ているのです。これを総裁として知らないということはないです。新聞に出ています。二月十五日の東京新聞に出ています。ちゃんといま言ったような、九条の削除と自衛軍の設置について。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまも申し上げましたように、まだ党議で決定はいたしておりません。したがって、私は、総裁である立場において知らないという事実を私は申しておるのでございます。これが党議としてはっきりすれば、もちろん総裁は存じ上げる、知らなければならない、かように思います。  しかして、ただいまお尋ねになりますが、九条だけに限ることではございません。私は、憲法全般についてこれを絶えず検討していくことが、民主主義国家においては当然の国民の責務だと、かように私は考えております。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは総裁としてそういう答弁ですが、自民党内の動きは、はっきり小委員会が決定していることは事実です。私は、第九条削除というのは、憲法の一番中心の問題になる。このねらいの一つの中には、これは海外派兵の問題がはっきり含まれていると思う。すでにもう米軍と自衛隊の間には「日米共同作戦要領」というものが決定されて、緊急事態が起これば、自衛隊は米軍の指揮下に入ることになっているはずです。さらに安保条約の適用区域を見ると、台湾、韓国が入っています。このような条件のもとで韓国への出兵が要請されるという事態が起これば、これは断わり切れないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自衛隊が米軍の指揮下に入る、これは何かの間違いだろうと思います。私は、日米安保条約がありましても、その指揮下に入る、さようなものではない。共同してはやる。これは共同はいたします。その点ははっきり誤解のないように願っておきます。また、海外派兵ということは、かつて国会におきまして、自衛隊をつくる際に、決議も受けております。もちろんさような事態は私はない、かようにはっきりお答えします。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから私は、三矢作戦の全資料を公開しろと言っているのです。国民も非常にこの点は疑惑を持っているのです。そういう点をはっきりしないと、いまのような御答弁だけでは国民は納得できない。  時間の関係から、私は次に移りますが、それでは現行憲法は尊重され、完全に守られていると総理は考えておりますか。あるいは不十分だとお考えですか、お伺いします。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 現行憲法は守られておると、かように確信しております。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 政府は憲法を尊重し擁護しなければならないという第九十九条の精神を実現するために、それならいままでどういうことをしてきましたか。また、これからどういうことをしようとお考えになっておりますか。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもが国政を遂行していくのに、憲法のこの条章によってやる、これは私が確信をしてお答えができることでございます。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 何をやってきたかということを聞いている。話をそらされては困る。時間に関係することだから、そらされては困る。聞いていることは……、何を言っているのか。聞いているのは、九十九条を実現するために、どういうことをしたかというのです。これに対してお答え願いたい。
  149. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君にちょっと申し上げます。さっきの質問といまの質問とは内容が違う。——立って質問をしてください。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 違わない。よく聞いて……。
  151. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) よく聞いている。立ってやりなさい、岩間君。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 何もしてないでしょう。何もしていないから答弁できないのだ。ところが、「期待される人間像」というのを見るとどうでしょう、天皇のことが書いてある。しかし、憲法のことは一つも書いてない。これがいまの政府のやり方じゃないですか。こういうことで憲法を尊重しているということを口では言っているが、実際はそういうようになっていない。  次にお伺いします。よくお答え願いたい。現行憲法のどの条項がそれならば守られ、それからどの条項が比較的不十分だとお考えになりますか、首相の見解を伺います。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも岩間君のお尋ねは、どういう御趣旨かよくわからないのですが、御承知のように、私どもは、憲法のもとにおいて政府をつくっておる、憲法に違反した行動は一切していない、かように先ほど来申しております。違反しないではない、積極的にこの条章を守って、それによってわれわれは国政を運用している、かように申しておるのであります。だからこの点は、こういう点が憲法違反ではないか、かようなお尋ねを願わないと、私どもは何もかも憲法を守ってやっておる、こういう状態でございますから、どうもお答えのしかたがございません。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは一国の総理ですから、どの点、どの条項が守られているかどうかということは、明らかに知っておって当然ですよ。その点非常にばく然としている。それでは私はお聞きします。いまのように憲法は尊重されると言ってますが、日本の現実を見ると全く反した事実が多いんじゃないか。私は例をあげます。今年一月、富山の相互銀行で十九歳の女子労働者が、組合脱退と第二組合への加入を強制されて自殺した事件が起こってます。残された日記によると、あくまで第一組合に残る、自分の良心は守る、こう誓っていたのでありますが、攻撃に耐えかねて死をもって抗議したんです。これは、何ものも侵すことのできない生命及び良心の自由の侵犯であり、労働基本権のじゅうりんであります。こういう事例は最近特に目立ってきてます。日常不断に行なわれていると言ってもいい。特に公労協や全税関、全国税、全建労など、政府機関の労働機関に対して、政府みずからが職制や警察を使って組織破壊を行なっている事実は、これは明らかに憲法違反です。総理はいまあなたの足元で起こっているこういう事実を知っているのかどうか。また、労働大臣は労働基本権の侵犯についてどう考えるか、総理からこれはお聞きします。
  155. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいまおあげになりましたようなところにおいて、組合の分裂が起こっておることは承知しておりますが、それに対して職制が干渉したり、あるいはましてや政府みずからがそれに対して指導的な、あるいは干渉的な行為をしておる事実は承知しておりません。もしそれがあれば、国家公務員法の不利益処分に当然該当するものと思っております。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理、いかがですか。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま労働大臣が答えたとおりでございます。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言ってるが、これは時間の関係から詳細は述べませんけれども、事実は、職制が第二組合をつくって、これに強制加盟さして、それで不利益処分を与えてることは、もう枚挙にいとまないです。しかも、こういう労働基本権の侵犯についてわざわざILOの調査団まで日本に来てる。これは国際的な恥ですよ。こういう実態を無視して、いまのような答弁じゃ私は話にならぬ。  私は時間の関係があるから、次に移りますが、第二に聞きます。未曽有の冷害に悩んでいる北海道では、いま、生活保護の打ち切りが大きな問題になってます。芦別市では、生活保護受給者の多くが心身に障害を起こし、医者にかかっています。ところが、市当局は保護打ち切りのため、これらの人たちに強制的に就労させようとし、生活保護者には職業選択の自由はない、働けるか働けないかは、福祉事務所できめると言って、就労を断わる者には、保護費を打ち切ると圧力をかけています。総理はこうした事実を一体御存じかどうか。人命軽視は、最近の政治の特徴です。これは三池、夕張等相次ぐ炭鉱爆発や、また医療問題に対する政府の施策を見れば、きわめて明らかだと思います。一体これで憲法が守られていると言えるでしょうか。人間尊重を総理は口にされますが、総理の見解をはっきり伺いたいと思います。また、憲法二十二条の職業選択の自由、また第二十五条の健康で文化的な最低生活の保障、こういう問題とも関連して、厚生大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  159. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  北海道の冷害に関連いたしまして、何か市町村が生活保護を打ち切るようなことが行なわれているというようなお話がございましたが、そういうことは、私ども指導もいたしておりませんし、またそういう事実も承知いたしておりません。何らかの誤解じゃないかと考えております。  さらにまた、医療保障につきましても、政府といたしましては、できる限りのことをいたしております。そういうように御承知願いたいと思います。さらに生活保護の基準引き上げでございますが、四十年度におきましては、一二%の引き上げをいたしております。健康で最低の生活を保障する憲法の条章に基づいて、できるだけのことをいたしております。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 実際厚生大臣、そんなことであなた、実態を知らぬのでしょう。話になりませんよ。これはわれわれが調査したその結果に基づいているのでね、そういう実態知らないで、そういう報告を受けないから知らないと言ったって、事実がある。そんなことじゃ話になりません。それからちゃんとこの生活保護が完全に行なわれている、憲法違反じゃない、こういうように言われておりますけれども、そんなら私は芦別市の場合、生活保護費が一日幾ら、これは標準家族で一日幾らになるか、ちょっとお伺いしたい。
  161. 神田博

    国務大臣(神田博君) 芦別は三級地でございますから、生活標準世帯で一日これは四人世帯で九十円七十九銭となっております。一日当たりの平均飲食物費です。それから五人世帯で、九十三円九十七銭でございます。それから単身世帯は、三十五歳の男の日雇いと、こういう者に限りますと、百三十円十七銭、こういうことになっております。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 家賃や光熱費を除いているのですか、いまのは。
  163. 神田博

    国務大臣(神田博君) さようでございます。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは数字は少し食い違いがあるようですが、一日九十円、これで生活できると思っているのですか。これは何よりもいいのは、総理でも厚生大臣でも、一月と言わないですよ、一週間やってみたらいい、これで。これは一番政治の実態をつかむ最もいいことだ。厚生大臣、いかがです。あなた、やってみなさいよ。自分でテストしたらどうだ。
  165. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。これは生活の最低の基準でございますので、私の私生活とは違っております。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 佐藤総理に伺いますが、どうです。こういう実態、いかがに思います。憲法違反の問題。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はいわゆる憲法違反という問題はないように思いますが、ただいま言われておりますように、またお尋ねになりますように、これはあまり理屈っぽく言うよりも、もっと親切心のある取り扱い方が望ましいのじゃないか、そういう意味で私ども、もっとくふうしたいと、かように考えております。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 最大の親切は金をふやすことです。金はふやさないでおいて、どんな親切があるかということです。こんな憲法違反の事実が歴然としている。朝日訴訟でもはっきりしていることですよ。こんなことではだめです。  第三にお聞きします。つい最近のことですが、日本共産党宮本書記長の自宅の引き込み線から盗聴器が摘発されました。この事実は、わが党と電電公社側によって現場確認がなされ、ともに協力して真相を追及することが約束されていました。しかるに、公社側は信義を無視して、一方的に証拠品を警察に引き渡してしまったのです。これまでもわが党や労働組合、民主団体等に対する盗聴事件が頻発し、そのたびに警察や公安調査庁のスパイ事件が大きな問題になったことは周知のことです。そのやさきに、公社は自主的な捜査は何もせずに、証拠物件を警察に引き渡してしまったのです。これでは警察と公社がぐるになって証拠隠滅をはかっていると言われてもしかたがないではないか。これについて八日に宮本顯治氏から証拠保全申し立てが、東京地裁に出されております。総理は憲法二十一条の通信の秘密についてどう考えるか。またこのたびの事件に対する措置をどうするかについては、あわせて国家公安委員長、郵政大臣、法務大臣の意見をお聞かせ願いたいと思います。
  169. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 過日、共産党の宮本書記長の宅の電柱に盗聴器らしいものが備えつけられたということでございまして、これは荻窪の電報電話局から告訴がございましたので、警察といたしましては、目下厳重にその捜査に当たっておる次第でございます。
  170. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいまお話しの点は、いま申し述べられましたように警察で捜査中でございます。したがって、この段階で断定的なことは申し上げられませんが、この事件を受理いたしましたならば、十分な捜査を遂げまして事件の真相を明らかにし、法令の定めるところに従って厳正な処置をいたしたいと考えております。
  171. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 去る三月の四日、日本電信電話公社荻窪電報電話局長から、本件に対しましては、杉並区高井戸警察署長に告発をいたしたという報告を電電公社から受け取りました。その後内容等につきまして、わかり次第報告を求めてございますが、ただいまのところそれ以上のことは報告が参っておりません。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 大橋総裁見えておるようですが、その後どうなったか、その経過につきましてお伺いいたします。その次に吉武国家公安委員長には、あれから一週間暮れておる。一週間暮れてあの物件が盗聴器であるかどうかということははっきりしているだろうと思う。この結果を知らしてほしい。第三に徳安郵政大臣には、これは信義を全く破ったところのやり方です。しかも宮本氏と公社は、これはお互いにですよ、何でしょう、お客さんとそれから公社の関係になっておる。ところがそこで双方が立ち会ってこの真相を追及するということが決定され、現に私も立ち会っているが、その物件に対してはちゃんと封印までやった。その封印を一方的に破って、そうして警察にこれを渡してしまうというような、そういうやり方は、これは郵政、電電公社そのものの信義に関する、国民に対して非常に重大な疑惑を巻き起こす、信用に関することだ、どう思うか。三者の意見をお伺いしたい。
  173. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) ただいまお尋ねの件につきましては、告発いたしました後にその後警察でお取り調べ中と考えております。まだ御報告を得ておりません。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたのところで調べないのですか。あなたのところで全然知らないということはないでしょう。
  175. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) 犯罪を告発いたしました以上、それぞれの関係でお調べを願う。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 内部監査せないのですか。
  177. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) 証拠物件は警察のほうにお渡ししてございます。
  178. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 証拠物件はいま警察当局のほうで、警察科学研究所のほうで鑑定中でございます。近く判明するであろうと思います。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 近くって何日かかるのですか。一週間暮れておるのですよ、もう。そんなものわかるの簡単ですよ。一週間かからない。
  180. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 調査中でございます。厳重に調査をしておりまするから、近くわかることだろうと思っております。
  181. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 電電公社のとりました処置は、私どもは適法な処置だったと考えております。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 信用を聞いている。公社の信用というものは、こういうことでどうかということ。総理大臣の意見を聞きます。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 犯罪があれば、直ちに捜査当局が捜査に活動する。これが憲法のたてまえでございます。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 全く責任のないですね、ほんとうに憲法を守る意思がこれであるなどということが言えるか、いまの四者の答弁から、五者ですか、どうですか、これが日本の憲法に保障された通信の秘密は守る、そういう国のこれは大臣たちであり責任者たちですか。こんなことでは話になりません。  私は以上二、三の例をあげましたが、現行憲法は全くじゅうりんされています。さらに最近は民主商工会や民主診療所に対する数々の不当弾圧、また全自交に加えられておる警察の争議介入等々、さらに二十三条の学問の自由、二十六条の教育の平等、二十一条の集会、結社、出版言論の自由等々、憲法違反の事実はあげれば全く切りがありません。時間の関係から私は省いておるだけだ。特にここで指摘しておきたいのは、これらの違反事実は、安保条約が結ばれ、これとの関連で憲法改正論議がやかましくなってから、特に目立っているというこの事実、これははっきりしています。総理はこうした事実をどう考えるのか、憲法の平和条項、民主条項の完全実施について、いかに対処しようと考えているか、あらためて総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この平和憲法と言われる民主主義あるいは平和主義、あるいは人権の尊重、基本的人権の尊重、こういう事柄が今日の繁栄をもたらしたと、私はかように確信をいたしております。また、こういうふうな事柄はわが国民の血となり肉となる、かように考えておりますので、ただいま仰せのごとき事柄は起こらない。私は憲法をあくまでも守っておる。また守る、かように申し上げておる次第でございます。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ事実の上で、事実が何より証明しておるし、国民がどう思っておるか、このことを知らないで、憲法を改正するなんと言ったって話にならん。  まあ私は次に進みますが、次にそれじゃお伺いします。政府国会で約束したことは、あくまで忠実にこれを守らねばならぬ。こういうことを木村委員質問にも答えられておりますが、これは確認していいですか。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 誠意をもって解決に当たっておる。かように私が申し上げたとおりでございます。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは治安行動教範を出してほしいと思うのです。昨年の当委員会で、私は資料としてこの治安行動教範を要求しました。それに対して福田防衛庁長官は、三十九年度上半期までにはそれを完成して出すということを、正式の委員会の席上で確約しました。しかるにあれから一年近くなるのに、まだ提出されていないのです。約束を守って治安行動教範を出してもらいたい。委員長、速記録の資料がありますから、配ることを許してください。配ってください。国会の論議というのはどんなものだかということをはっきりわかるために、特にリプリントしました。これだけはっきり約束したものが守れないというのは、どういうわけですか、防衛庁長官。
  189. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 治安行動草案のことにつきましては、前の国会から御質問がありまして、お答えしておるとおりでございまするが、いまだ防衛庁として最終的な結論が出ておりませんので、今日の段階においてこれをお示しするわけにはいかないのでございます。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと、そういう答弁では話にならぬから、見てください。そんなばかなことは許されない。よく読んで、国会の約束というものはどういうものだと……。委員長もう一度答弁さしてください。それよく読んでくださいよ。読まないとまた答弁できない。
  191. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 前長官があのような答弁をいたしたということは私も承知いたしておりまするが、当時はそういう予定で作業を進めておったのでございまするが、御承知のように、治安行動教範は、国内法との関連もございまして、慎重に検討しなければならないということで、いまだ、先ほど申しますとおり、御提示申し上げる段階に到達をいたしておらないのでございます。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 仏の顔も三度ということがあります。そんな答弁ではもうごまかされませんよ。政府の違約はこれで二度です。三年前の当予算委員会でも、私は藤枝防衛庁長官に聞いた。そのときには、三十八年度までには出すと言った、約束した。ところが、結局出さなかった。こういうことをやっていて一体いいんですか。公約違反じゃないんですか。総理国会尊重はこれでいいんですか。理事会でもこれは出すことを政府に要求することがきまっている。当委員会の意思でもあります。私は、三矢作戦などの資料、こういうものとあわせて必ずこれを出すように総理から督促してもらいたい。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官から答えたように、そういうものがまだできていない、かように申しております。これははっきりした、たいへん歯切れのいい答弁をされておりますので、御了承願います。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 できていないで済まされないじゃないですか。それじゃ聞きます。長官に聞きます。長官の決裁済んでいるんですか、どうです。
  195. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 済んでおりません。目下作業の途中でございます。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁を何回もあなたたち繰り返してずるずるやっている。これは出せない理由ははっきりしているんじゃないですか。自衛隊の治安指導は、その行動指針である治安行動教範なしにはこれはやれないはずです。ところがどうです。三矢作戦を見ると、昭和三十八年六月十四日から十七日までの計画の5というところに、「治安出動に関連し、内局、統幕、各幕の示すべき事項を行動の基本、指揮命令の基本、指揮命令に区分し、それぞれの形式によって記述せよ。」と述べているところがあります。こんな具体的な作業は、すでに教範ができていなければやれないはずです。私は、こういう点から考えて、治安行動教範ははっきり完成して使われているはずです。なぜ一体それらを出さないんです。この点をはっきりしてください。
  197. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究と、ただいま御指摘の治安行動教範とは、何らの関連もございません。また、三矢図上研究におきましては、従来しばしば申し上げておりますとおり、幕僚の想定に基づく研究のレポートでございます。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうばかな一つ覚えみたいな答弁で国民を愚弄してはなりません。そんなこと国民はだれが信じていますか、いまごろ。あんたたちはできていて出さないんでしょう。なぜ出せないか——それはまっこうから憲法に抵触するからです。四年前に私はこの治安行動教範というものを明らかにした、当委員会で。それによると、人民を刺殺し、さらに銃撃し、さらに戦車、火災放射器、ヘリコプターなどまで使われるような教範になっています。最近はこれに対して、毒ガス、放射能、細菌まで使うCBR作戦部隊までがはっきりつくられていることは事実でしょう。これももう委員会で明らかにされたことです。さらに、航空機や艦艇を含めた海陸空の広範な人民圧殺の作戦要務令になっているのです。それで公表できないのじゃないですか。総理どうです。
  199. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) ただいま岩間議員が仰せられましたようなことはございません。  なおまた、治安行動教範は憲法に抵触するのではないかというおことばがございましたが、さようなことは毛頭考えておりませんし、現行法範囲内においていかに憲法に抵触しないものをつくるかということで慎重に考究をいたしておるような次第でございます。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、証拠を出しなさいと言ったでしょう。証拠を出さないでそういうことを言って、だれが信用しますか。この前だってそうでしょう。四年前に同じことをやっているんだ。そのときにちゃんとこれを使っているんだ。草案という名前で使っておったでしょう。事実です。そんなことでごまかされはしませんよ。私は、このような人民の税金で養われている自衛隊が人民を殺す作戦を持っている、人民を殺す訓練をしている、こんなことは断じてこれは憲法で許されることではないと考えます。憲法の一体どこを根拠としてそういうことがこれはできるのか。先ほど総理は、憲法は守られているということを言われましたが、こういう事態と照らし合わせて、はっきり私はその見解を伺いたいのであります。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛庁長官が責任を持って答えたのです。それをひとつはっきり信用していただきたいのです。それはなるほど、国民は賢明ですから、必ずこれを通して知っているでしょう。いずれが正しいか——防衛庁長官の答えていること、共産党の岩間君がいろいろ尋ねていること、いずれが正しいか、国民が判断するでしょう。先ほど来から長官は責任を持って答えている。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうふうにあんた、おこって人を圧するような言い方で言っちゃまずいですよ。総理というのはもっとやっぱりおとなしく……。  それから、責任を持って言ったと言うが、責任がない。責任がない長官が続いているじゃないですか、現に。そうでしょう。出すと言って、国会の正式の委員会ではっきり速記まで残っている。それが一回、二回、こういうことをやっていて、どこに責任がある長官と言うことができる。だから、そんなことを言ったって、それはあなたたちの一方的な言い方ですよ、そういうことじゃだめです。  私は次にそれじゃ伺います。次にお伺いしたいのは、非常事態の問題です。戦争などの非常事態に対して、何か非常措置を総理は考えていらっしゃいますか、どうですか。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま考えておりません。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 憲法調査会の報告書をお読みになったと思いますが、いかがですか。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは一応目を通しました。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 その中で多数意見として、憲法に非常事態の措置を入れるべきだという、そういうところをごらんになったと思いますが、総理はこれについてどうお考えになりますか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうことをも含めて、これは慎重に研究しております。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 研究しているのですか、よく聞こえなかった。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど、憲法問題は慎重に研究しているということを申しました。あらゆる点を含めてさような態度でございます。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常事態についての措置というのは、これはやっぱり将来とる可能性もあり得るということですね。私はそういう中でお伺いしたいのですが、戦時統制的なやり方や国家総動員的なやり方、高度国防国家を目ざす国家総力戦体制、こういうふうなものを一体総理はお認めになりますか、お認めになりませんか、この点をここで議場を通じてはっきり言明しておいていただきたい。
  211. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) かつての総動員法のような広範な議員立法をする考えはもちろんございません。またそれは許されない、かように考えております。
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 許されないというのは、憲法との関係ですか。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりです。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 ところが、あなたはそう言われておりますけれども、憲法の関係でそれは許されないと言っているものを、どうです、三矢作戦、これはもう全貌を出せばはっきりする。それから臨時国防基本法、こういうものを見てください。ここには国家総動員的なやり方が至るところに出てくるのです。ことに臨時国防基本法というものを見ると、これはそういう事態がもう明白です。「国家非常事態における特別措置」というその中には一章がある。その中に、国家非常事態の布告宣言ですね、これについて詳細に述べています。これは、この法案によると、総理権限に属するものだというのですが、総理これ御存じですか。
  215. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 臨時国防基本法の問題をたびたび御質問をいただいておるのでございまするが、これは三十八年十月空幕の会議に一事務官が作成した文字どおりの私案を提示いたしましたのが問題になったのでございまするが、これは内容もきわめて未熟なものであり、法的にもきわめて不穏当な点がございましたので、その一事務官の私案として、これをばさらに検討すべきものではないということで、そのままもう私案として解決をいたして、今日これには何らの検討も加えておらないのでございます。文字どおりの一事務官の私案でございましたので、注意をしてこの問題は解決をしておると私どもは了承をいたしておるのでございます。
  216. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは小泉さん御存じないでしょう。この前の委員会でも私は関連質問で明らかにしたように、私が昨年当委員会で明らかにした航空国家戦力ですね、それの整備に関する基本的見解、これと混同している。そのときも同じことを言ったのです。そうして、同じことを指摘されなければ平気でやっているというのですか、それでは十月まで。そんなことが言えないのですか。海原防衛局長、この前あなた間違ったことはっきりしていると思うのですが、どうですか。間違いであるということをここで言って、この前の何は取り消しなさい。
  217. 海原治

    政府委員(海原治君) 先般の委員会で臨時国防基本法が問題になりました際に、私は昨年の当委員会で御説明をしたように申し上げました。これは実は、調査いたしますと、私の記憶違いでございまして、当時「国防」という雑誌に載りました空幕防衛部の一空佐黒江君が書きました論文についてこの席で御質問がございましたのと思い違いをしておりました。しかし、この臨時国防基本法につきましては、昨年の暮れ十二月十八日の衆議院の内閣委員会におきまして大出先生から御質問がございまして、そのときに御説明してございます。したがいまして、先般私が昨年のこの参議院予算委員会で御説明したということは誤りでございます。しかし、先ほど申しましたように、十二月十八日の衆議院内閣委員会におきましては、ただいま大臣から御説明しましたように、これは三十八年十月の演習のときに一事務官がつくったものである、その取るに足らないことがいろいろ書いてあるからということをるる御説明しまして、私どもといたしましては御納得をいただいた、このように解釈しておるのでございます。
  218. 岩間正男

    ○岩間正男君 国会の意思というものを何と考えているのですか。昨年の当委員会で大きな問題になって、そのときにはこういうことを繰り返さないというような答弁をこれはしています。ここに速記録があるのです。それができたのは三十八年十月です。国防整備に関する基本的見解——同じく航空幕僚がつくったものです。ところが、今度またそれが、昨年の八月二十四日ですか、週刊誌に紹介されると、それが問題になるというと、同じことをまたやっている。何べんでもやっておるじゃないですか、何べんでも。知らなきゃ、もうほんとうにそのままで通り越していこうとする。そうして、いつでも問題になるというと防衛庁の倉から出てくるじゃないですか。なぜしまっておるのですか、こういうものを。そういうことをやっておいて、あなたたち国民を愚弄したってだめです。私は、こういう事態でいまのような答弁をあなたたちやられたとしたら、国民は絶対納得しない。私は、当然こういうものについて、これは資料を出してほしい。その資料はことに 「極秘」か「秘」でしょう。そういうものですよ。あんなに簡単に「秘」が押せるはずがない。この資料を出すべきだと思います。これは亀田委員が要求されておりますから、私はこの要求をあくまで支持して、これを出すことを要求したいと思います。どうですか、出せませんか。どうですか。
  219. 海原治

    政府委員(海原治君) この基本法につきましては、ただいま岩間議員が御指摘になりましたように、昨年の八月の二十四日の「週刊文春」という週刊誌に大きく取り上げられまして、私どもいろいろと調査をいたしました。その結果、先ほど申しましたようなことが判明いたしました。これは、その表紙に書いてございますように、私の案でございます。そういうものがいろいろと問題を起こすということは、まことに遺憾なことでございますので、全文回収いたしまして破棄いたしております。したがいまして、現在はございません。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 破棄したと言ったって、三十七年の「防衛年鑑」を見てごらんなさい。治安行動草案を破棄されたと書いている。それが生きているのじゃないですか。ですから、私は疑うのじゃありませんよ。総理、疑うのだと言っちゃいけないと思う。事実いままでのやっていることについて私は言っている、具体的な事実をあげて。私は、ことに、この臨時国防基本法というものは三矢作戦と関係ないということを防衛庁長官が言われましたが、これは深い関係があると思う。防衛局長はこの前否定されたし、防衛庁長官もいま否定されましたが、三矢では戦時体制即応の諸法案八十七がつくられることとになっておるはずです。その中で国家総動員体制に移行するものというのがこの結果準備されたのが、ほかならない臨時国防基本法ではないですか。三矢がちょうど三十八年の六月です。この法案は同じく三十八年の十月です。日時の上からもぴったりしているのです。これだけのこれは問題を持っている。この法案を私は出すのがあたりまえだと思いますが、どうですか。
  221. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) いろいろな御推測がなされておりまするが、私のほうでは、先ほど来申し上げておりますとおり、三矢図上研究とは何らの関連はございません。
  222. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、その内容を、そういう答弁を繰り返すよりは、出したほうがいいと思う、それを見れば一目りょう然ですから。私は資料をあくまで耕してもらいたいと思う。しかも、これは「週刊文春」に出されているのですから、天下周知のことですよ。これをここで隠すのはおかしいじゃないですか。  私はそこで小泉防衛庁長官にお伺いしますが、この前あなたは、三矢の資料、これは出せない、国家機密に属するから出せない。そうすると、国会との関係で、これは法的根拠を伺わなければならぬ。どうお考えですか。
  223. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究が国家機密に関することであるから出せないと私は申し上げたのじゃございませんで、国家機密に関する部分もあり、検討考慮をいたしておるという意味のことを申し上げたつもりでございまして……。
  224. 岩間正男

    ○岩間正男君 その前のほうをもう一回……。国家機密に何ですか。
  225. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 三矢図上研究が国家機密に関することであるから出せないと申し上げたわけではございませんので、国家機密に関する問題等もあり、資料全体についての私の概念を申し上げたつもりでございます。  なおまた、三矢研究資料については考慮検討を重ねておるということを申し上げたわけでございまして……。
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 出せない法的根拠……。
  227. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 一両日中に何らかの資料を提出したいと考えておるところでございます。
  228. 岩間正男

    ○岩間正男君 出せない根拠です。この前、亀田君の要求したのは、全資料の公開であったと思う。そういうような要綱などということでは、これは話にならぬと私は思う。  それで、法制局長官、あなたから伺いますが、こういうような秘密のある問題で、国会の資料提出とか、証人喚問とか、そういうものに応じない場合の、これは法律があると思うが、どういうものですか。
  229. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまの御質疑の中では、出せない根拠を言えということでございますが、この一定の資料を出すにつきましては、むしろ、出す義務がある場合と、そうでない場合と、いろいろ法律には規定がございます。したがって、義務をかぶっていない場合には、法律論として出す義務が生じないということがまず出てまいります。  ところで、いまお尋ねの件は、関係ある条規といたしましては、むろん国会法の規定、それから議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、この二つがあります。
  230. 岩間正男

    ○岩間正男君 その内容を言ってください。あとのほう……。
  231. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 中身ですか。
  232. 岩間正男

    ○岩間正男君 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、この内容を言ってください。これが関係する。
  233. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) では申し上げますが、いま御指摘の法律は、「各議院から、」——「議院」というのはハウスの意思によって、「議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人として出頭又は書類の提出を求められたときは、」——この法律に別なる規定がある場合は別ですが、何人でも、これに応じなければならぬ、こういうことになっています。
  234. 岩間正男

    ○岩間正男君 拒否することができるのですか。
  235. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) それは、この場合につきましても、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律につきましては、秘密であればそれを拒めるとか、拒んでも議院の側でそれが承服しがたい場合は理由を疎明するとか、さらに内閣声明をやるとか、いろいろな措置がございます。必要なら、私、御説明申し上げますが、大体はそういうことになっております。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 法制局長官、もう少し詳しく説明してください。
  237. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは法律でございますから、条文をお読みいただけると、きわめて明確におわかりでございますが、この法律の第五条に……。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 それをはっきり言ってください。
  239. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、出頭した証人が公務員である場合又は公務員であった場合その者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に」属する事実であるということを申し立てましたときには、その監督庁なり公務所なりの承認がなければ、提出することができない。その場合に、いま言いました公務所、監督庁等が承認を拒むときには、その理由を疎明しなければならない。その理由を議院なり委員会等が受諾する場合には、むろん提出する必要はないけれども、受諾できない場合には、「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができる。」これがありますと、提出する必要がない、こういうことになっております。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはあくまで、なんでしょう。職務上の機密でしょう。国家機密というようなものじゃないでしょう。国家機密とも関連すると言っている。全部国家機密だと防衛庁長官は言われましたけれども、私聞いているのは、国家機密に関係するという理由ですか。正確ではですね。拒否はできないことになるでしょう。これはどうです。
  241. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまの問題は、むしろ議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の場面であるよりも、この法律の場合であれば、いま申し上げたような御説明の段階になるわけでありますが、本件の場合には、この法律の適用というよりも、その前の段階と申しますか、一委員からの資料の要求の場合についての話でございますので、この法律そのものの問題ではないわけでございます。
  242. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすれば、この院の決議とかなんとか、そういう場合、ちゃんと委員会の決議がまとまれば、その手続をとらなければならない、そういうことですね。国家機密というのは憲法にあるかないか、これはまず総理大臣に伺っておきます。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもお尋ねがはっきりしませんけれども、憲法には国家機密ということばはない、かように私は思いますが、ただいま言われるように、もちろん国家には機密を守らなければならないとか、あいるいは国の全体に、安全等に悪影響を及ぼすとか、あるいは国民の利益に悪影響を与えるとか、いろいろ問題があるのだろうと思います。そういう立場に立って政府が判断するということでございます。
  244. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは国会が判断するのだと、それから、その内容そのものについて、いま言ったような機密の内容というものは、少なくとも憲法第九条、この憲法下にそういうような機密があるというような解釈は、非常に事実を曲げているのじゃないかと思います。私はそれでお聞きしますが、これも法制局長官に伺います。いまのあとの法律ですけれども、この法律が使われた——議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、これが使われた前例がございますか、ございませんか。
  245. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私も詳しくはございませんけれども、たしか、あったことがあると思います。
  246. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは調べてください。はっきりしてください、あったことだなんということではなしに。
  247. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは申し上げるまでもないことでございますが、各議院、あるいはその各議院の委員会等の問題でございますので、これは国会の事務局に照会すればすぐわかると思いますが、私、しかと覚えておらないものでございますから、さしあたり何かあった事例もあるのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  248. 岩間正男

    ○岩間正男君 法制局長官でしょう。そんなことではだめでしょう。そんなこと言ってもだめです。その例を言ってください。ないですか。事実を事実としてはっきりやらぬとまずいですよ。
  249. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) どうもその事例を的確に一々覚えておりませんけれども、たしか、私の記憶に間違いがなければ、参議院の法務委員会あたりの問題で、司法権の独立との関係でたいへん問題になった問題がございますが、証人の召喚を要求をされたことがあったことだけは、確実に覚えておりますが、そのほかの事例すべてということになりますと、私はいま直ちには、すべてをあげることはできないことをあしからずお許しを願いたいと思います。
  250. 岩間正男

    ○岩間正男君 造船疑獄の場合、どうです。造船疑獄の場合、はっきりこれ使われているでしょう。そうじゃないですか。あんた、一番大きいのを知らぬふりして、だめですよ。造船疑獄の場合、記憶ないと言えないでしょう、長い間内閣の法制局につとめていて。どうですか。事実を事実としてはっきり言いなさいよ。
  251. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君、いま調べて、いずれ、あなたの答弁中に返答するでしょうから、続けてください。
  252. 岩間正男

    ○岩間正男君 今度の問題と関連して重要ですよ。向こうが答えられないのに、こっちを請求することはないでしょう。
  253. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  254. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) つけて。
  255. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま調べております。議院の先例集等に載っていると思いますので、それを見ればすぐわかりますから、いま取り寄せておりますので、それによってお答え申し上げます。
  256. 岩間正男

    ○岩間正男君 明らかにしてもらわぬと、どうもいかぬな。ちょっと待ちましょう。
  257. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまこの記録を手に入れたところでございますが、これによりますと、第五回国会のときに、考査特別委員会においてその事例があるようでございます。第十回国会におきます行政監察特別委員会において同様の事例がございます。第十七回国会におきましては、大蔵委員会において、また、第十九回国会閉会中には、決算委員会において、第二十四回国会には、議院運営委員会において、そのほかにも幾らかあるようでございます。  さらに申し上げれば、第十九回国会閉会中には決算委員会、第二十回国会でも同様に決算委員会、第十八回国会では、法務委員会においてそういう事例がとられたようでございます。
  258. 岩間正男

    ○岩間正男君 いまの造船疑獄の場合はどれですか。第十九回あたりですか、二十ですか、はっきり知っているでしょう、あなたは。
  259. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げました第十九回国会閉会中の決算委員会においてというのが、造船融資に関する問題でございます。
  260. 岩間正男

    ○岩間正男君 だれを呼んだのですか。
  261. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは証人として吉田茂証人ということになっております。
  262. 岩間正男

    ○岩間正男君 二十国会は。
  263. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 同様に、証人吉田茂ということが、この記録に出ております。
  264. 岩間正男

    ○岩間正男君 拒否された例。政府の声明が出て、拒否されたことがあったでしょう。
  265. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 同じく第十九回国会における決算委員会に関連して、証言が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣声明を要求され、声明を行なった事例として、二十回国会にそういう事例がございます。
  266. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間の関係もありますから、いまの問題については、詳細な資料として出してもらいたい。いいですか。
  267. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私も実はいま、この衆議院委員会先例集というものを拝見しておりますが、委員会には、それぞれ記録があるようでございまして、その中には、明白にそういう事例が出ております。
  268. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは当時の検事総長佐藤藤佐氏、東京地検の検事正馬場氏、その他の人がこれは証人喚問をされ、そうして政府は、これは国家の重大な利益に合致しないということで声明を出して、そうして、その結果、これは拒否された、そういう先例がある。造船疑獄のときであります。それは私たちも知っておる。そのほかの事例を出してください。こういう事態を再び繰り返して、当国会委員会で非常に重要な資料の提出が拒否されるということは、非常になげかわしいことですから、佐藤総理、そういうことのないように御努力いただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 努力しろというお話は、私がたびたび申し上げておりますように、国会の審議に政府はもちろん協力する、かような立場でございますので、ただいまのような要求が出るまでもなく、もちろん努力はしなければならない。ただ、先ほど来申しますように、権威のある場に権威を持って政府が提出する書類なりやいなやということは、やはり考えさせていただきたい。これはもうしばしば防衛庁長官がお答えしておるとおりでございますので、私が国会の審議に協力しておる立場だけに、私も誤解を受けたくありませんし、そういう意味においては私も努力するつもりでございます。
  270. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは立場立場の違いがありましょうが、やはり民主主義の立場からいえば、少数の要求といえどもこれに応じて、そうして国民の前にその実体を明らかにするということが、当然の国会議員の任務ですから、その立場に立ってこれは考えていただきたい。私は、したがいまして、当然この臨時国防基本法の提出を望む。そういう詳細な資料を出してもらってから、詳しいことはお聞きしますが、ただ一点だけお聞きしておきたい。それは非常事態の布告というところです。総理大臣によって布告が発せられ、非常事態が宣言されますと、現行法の規定にかかわらず、建物、工作物、住居等の移転、除去、制限が命ぜられ、住民の交通、立ち入り禁止や、集会や多数運動の解散、さらに、報道の統制等が容易に行なわれることになります。さらに、住民を陳地構築、対敵監視、情報収集などの軍用に徴用することができ、官憲の土地、建物、船車、航空機などへの自由な立ち入り検査権が認められることになります。特に重視せねばならないのは、公務執行妨害、公共の秩序撹乱という名目で、予防拘禁を復活しようとしていることでございます。まさにこれは大東亜戦争時代のあの暗い悪夢を思わせるような恐怖政治の再現です。一体、総理は、このような憲法否定の百態をお認めになるのか、また、このような研究も自衛隊としてはしかたがないんだ、こう言い切られますか。私はこの際、確信ある答弁をお願いします。
  271. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 非常事態について先ほど考えておらない、こういうことを申しました。これは私の今日のはっきりした態度でございますので、この点をちゃんと前提に置いていただきたいと思います。  ただいまお読みになりましたものを、これは岩間さんの御意見も多分に入っているだろうと思いますが、ただ私考えますのに、こういう平静の状態において、いわゆる非常事態、それが何であるか、どういう事態であるか、それを考えないで、ただ非常事態、それについて考え方を、こういう平静なときにそれを言え、ということは無理なんじゃないでしょうか。私はどうも、ただいま御意見、お尋ねでありますから、私もまじめに答えたい、かようには考えますけれども、今時点においては、私はどうもお答えできるような筋のものでないということのほうが正直な言い方ではないか、かように思います。
  272. 小泉純也

    国務大臣(小泉純也君) 臨時基本法案は、先ほど申し上げておりますとおり、全く一事務官の試案でございまして、いままで岩間議員がお読み上げになりましたように、きわめて未熟であり、法的にも全く問題にならないものでございまして、こういうものを審議の対象にすべきものではないということで破棄いたしまして、厳重、本人にも注意して、この問題は解決をいたしておる次第でございますので、御了承いただきます。  なお、さような問題でございますので、当然これは国会でいう、いわゆる資料というべきものではございません。もう全然これは審議をしない、こういろことを審議すべきではないということで、全部破棄いたしておるのでございますから、資料の問題も、今後提出するような性質のものでないということを重ねて申し上げておきます。
  273. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁長官のそういう御答弁ですが、これは国会との間では、さらに国民との間では解決してない。あなた、そう言ったって、それじゃ通らないですから。ですから、私はあくまでも、これは資料として要求したい。  私は、次に進みます。治安行動教範あるいは臨時国防基本法、三矢作戦など、一連の秘密文書に共通しておることは、国家非常事態を予想し、国や地方自治体、社会施設などの全機構をあげて国家総動員体制を体制的につくり上げようとしておることです。これは、私は昨年も基本的な見解の中で明らかにした。それは体制という関連の網です。こういう中で国民はがんじがらめにされ、やむなく戦争に協力せざるを得なくなって、苦い苦いあの大東亜戦争時代の、われわれは体験を持っている。その体験に立脚して言ったのです。先ほど総理の御答弁がございましたその限りでは、そうかもしれませんけれども、非常事態に名をかりて、どんどんそのような戦争づくりをやっているということです。私は、人づくり、国づくりなどと言いながら、実は、戦争づくりのこの問題について、ほんとうに正体が明らかにされていないところに、日本の現実政治の姿がある、こういう観点から、特にこの点を要求しているのでありますから、この点について十分心をいたしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  274. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ねにありましたように、別にことばじりをとるわけじゃありませんが、非常事態を予想し、かように言われたのですが、だが、だんだん次にいってきますと、この事態がほんものであるかのような印象を受ける。どこまでも非常事態を予想して、そういう観点に立っての、ただいまのような御議論が、また一部にそういう議論が出ている、かように思いまするが、私は先ほどもお答えいたしましたように、今日この平静な状況のもとに非常事態を予想する、そういうこと自身が間違っておる。したがいまして、ただいまのような結論がすぐ出てくるとか、大体が予想に立ったその結論についてのいろいろの批判をすることは、私は差し控えたい、かように思います。
  275. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの御答弁だと、三矢などの全貌を明らかにしていただくことが必要です。それから日本の現実はどうですか、現にベトナムとの関係でどうですか、現在。国民は非常に心から憂えています。私は憲法改正の問題が非常に問題になっていますが、このねらいは遠くかつ深いといわなければならないと思う。元防衛庁研修所長小谷秀二郎氏は、この「日本の安全保障」という木の中で、第二次朝鮮事変というものが将来予想される、特に中共の核武装によって日本の世論が乱れる、しかも一九七〇年には日本でも安保改定のとき以上の大きな混乱が起こりそうだ。そういうことに対してアメリカ国防省の委託を受けて、そのための研究をやっているといっていますが、こうした考え方が三矢作戦などを生んだ背景ではないでしょうか。そして、これらのことばでも明らかなように憲法改正のねらいは、第一に、目下ベトナムで抜き差しならなくなっているアメリカが、その戦略体制を立て直すために第二次朝鮮戦争というものを想定して日韓会談の妥結を強要し、あらかじめ日本の自衛隊に戦力増強、核武装など全面的な協力をさせようとしていること。第二に、そしてそのために自衛隊の海外派兵、徴兵令の復活、したがって、第九条を中心とする憲法改定が必至の要件となっていること。第三に、日本の反動勢力がこれに協力するために国家総力戦体制をつくり、軍国主義、帝国主義復活の野望を達成しようとしていることであろうと思います。こうして憲法改悪の陰謀はすでに憲法がじゅうりんされ、ゆがめられている、このまざまざとした現状をさらに合理化し、積極化しようとすることにあることはきわめて明瞭であります。総理はこのような陰謀をお許しになるのかどうか。日本人民は安保条約と、これに協力する国内反動勢力によってもたらされようとしている憲法改悪を断じて許さないと思います。その陰謀を白日のもとにさらして粉砕するとともに、憲法の平和的、民主的条項の完全実施を求めて立ち上がるだろう、立ち上がって現におります。御承知だろうと思います。これはもう憲法改悪反対のそういう運動はほうはいとして起こりつつある。私はこのことを明らかにして私の質問を終わりたいと思います。
  276. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は自由を守り、日本の国の安全を確保し平和に徹する、これが私の基本方針でございます。ただいま共産党の岩間君からいろいろ私見を交えてのお話でございましたが、ゆるぎないわが国の国是と、かように確信をいたしておりますので、どうぞさように御了承願います。
  277. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  278. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に市川房枝君。
  279. 市川房枝

    ○市川房枝君 まず最初に総理に、参議院の政党化の問題についてお尋ねしたいと思います。  緑風会に所属されております四名の方々が全員今度立候補をお取りやめになったことから、一時九十六名の多数を占めておりました同会が自然消滅するというので、このところ参議院の政党化が新聞あるいはラジオなどで論ぜられております。緑風会が消滅いたしますれば、現在の参議院における中立無所属は事実ほんの一、二塩、二、三名ぐらいになり、全く衆議院と同様の政党化するということになるわけでございますが、総理はそういう現状をどういうふうにお考えになりますか、御意見を伺いたいと思います。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私は衆議院に席を置いておりますが、参議院の問題、これはただいま二院制でやっております。この二院制で、同じ政党でありましても、やはり参議院には参議院の行き方があるようでございまして、必ずしも政党色——非常に統制のとれた政党色だけで運営されておるとも思いません。これはやはり皆さま方の良識が二院制度を守り育てていると、かように私考えます。したがいまして、ただいまの具体的な例、緑風会が今度は立候補をなさらない、そういうことについての批判は私がすべきことではないように思いますから差し控えますが、ただ、この問題をめぐりまして、政党化することがいいのか悪いのか、こういう点についてはいろいろ議論あることも聞いております。しかし、私はやはりこれは各議員の方々の良識が一つの形をつくり、また二院制度のある存在の意義もそこにあるのだと、かように私は考えております。
  281. 市川房枝

    ○市川房枝君 御存じのように、憲法制定の当時、占領軍は、日本は単一国家だから一院制度でよろしいという意見であったようでございますけれども、当時の政府がチェック・アンド・バランス制度といいますか、衆議院の行き過ぎを押え、足りないところを補う、そういう役割をするために二院制度がいいということを説得をして今日の参議院ができたわけだと思うんでありますが、また、昭和二十一年の八月二十一日に開かれました第九十帝国議会の衆議院憲法改正特別委員会で附帯決議というものがついております。それを見ますると、こういうことを言っております。「参議院は衆議院と均しく国民を代表する選挙せられたる議員を以て組織すとの原則はこれを認むるも、これがために衆議院と重複する如き機関となり終ることは、その存在の意義を没却するものである。政府は須くこの点に留意し、参議院の構成については、努めて社会各部門各職域の智識経験ある者がその議員となるに容易なるよう考慮すべきである。」、こういうことをつけておりますが、これについては総理はどういうふうにお考えになりますか。
  282. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ基本的には、これはもう日本の憲法の問題もありますし、また、日本の民族性に合っておる二院制度というものが今日こういうような形で出ておるんだと、かように思います。占領当時いろんな議論がありましても、やはり二院制度をとったということは、これは歴史的、沿革的な意義があり、同時に国民になじみやすい、こういう立場だと思います。ただ、選挙そのものにつきまして、今日まで運用がうまくいっているかどうか、この点では選挙制度審議八人なぞがいろいろ審議をいたしております。ただいま審議の段階は、主として衆議院に置かれているようでございますが、この選挙制度審議会は、同時に、参議院の選挙のあり方等についてもいろいろ工夫しておるようでございますから、これは私どもが直接指導するよりも、いわゆる国民によりまして良識のある経験者の集まりによるその答申を尊重すると、こういうことで両院があってほしい、かように私は思います。
  283. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま、政府がするよりも国民がということをおっしゃいましたけれども、この附帯決議には、「政府は」ということをはっきりいっているのでございますけれどもね。法制局長官に伺いますけれども、この附帯決議というものは、私ども参議院で普通の法律につける附帯決議というものは、あまりたいして重要でないといいますか、あるいはまあ担当の大臣が御趣旨を尊重しますと言う程度で終わってしまうんですけれども、この憲法の特別委員会でつけられた附帯決議というもの、これもやはり同じようで、あまりたいしてこれは尊重されなくてもいいものかどうか、まあそれをひとつ伺いたいと思います。
  284. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。附帯決議そのものは、これは憲法制定の際につけられたものであろうとそのほかの法律の制定に際してつけられたものであろうと、それぞれの国会各議院の御要望を盛られたものとして、政府は誠心誠意その決議の線に沿ってものごとを考えるべく努力すべきものであろうと思います。ただ、その中には、一挙に政府の考えだけでできるものと、そうでなしに、いろいろな各般の事項を考慮してきめなければならぬものと、中身はいろいろあると思います。全体的に申しまして、附帯決議の趣旨というものはそういうものであろうと思います。
  285. 市川房枝

    ○市川房枝君 法制局長官にもう一つ伺いたい。さっき読みましたように、この附帯決議には「政府は須くこの点に留意し、」云々と書いていっておりますが、憲法制定後、政府としてここに書いてあるようなことをどの程度考慮して、法律の上でといいますか、したかどうか、それをひとつ伺いたいのでございますが。
  286. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。御指摘のとおりに、御指摘の附帯決議には「政府は須く」というふうに書いてございます。これは憲法制定の当時でございまするので、やはりこの参議院の構成をつくります際には、考えていきます際には、やはり衆議院と全く同じような構成には、この附帯決議の趣旨にもありますように、できるだけこの構成にはある程度の特色を持ったものを考えなければならぬということで基本はあろうと思います。ところで、これは御承知のとおりに、いまの憲法では衆議院、参議院ともに全国民を代表する選挙せられた議員で組織するというふうになっておりますので、その原則はむろん堅持しなければなりませんし、その原則のもとで、当時の憲法制定の際にいろんな法律をつくります際には、案をつくって国会両院がそれを御議決になるわけでございますが、その際には、法律の段階でできるだけのことを当時として考えたことだと思います。まあそれは申し上げるまでもないことでございますが、被選挙権の年齢の相違であるとか、あるいは選挙区についての、全国選出議員の制度であるとか、そういうようなくふうをある程度こらしているものだと思います。しかし、おそらくそれでは不十分ではないか、さらに十分な措置を考えるべきではないかというのが御質疑の趣旨であろうと思いますが、その点につきましては、この附帯決議の線に沿って、当時、いま申し上げたような両院におけるある程度の相違、これを国会に法律案として提出して、それが法律として成立して今日に至っているわけでございますが、当時の政府としては、やはり相当のできる限りの、当時としては考慮は払ったものだと思います。その後におきましては、これは総理もいま仰せになりましたように、なおこれにつきましては憲法調査会等でも各種の議論があったようでございますが、将来あるべき姿につきましては、現行憲法のもとでもまあ考えられない余地がないわけでもございませんので、その辺は選挙制度審議会等に御諮問申し上げ、いい考えがあればその線に即してさらに考究を遂げていこう、こういうことであろうと思います。
  287. 市川房枝

    ○市川房枝君 もう一つ法制局長官に伺いますが、いまの御説明でちょっとはっきりしなかったのですけれども、ここの附帯決議にいう「政府」というのは、憲法制定当時の政府であって、現在のというか、その後の政府はこれは拘束をされない、これはさっき佐藤総理がおっしゃいましたけれども、それはその政府が考えるべきことでなくて、国民というか、選挙制度審議会というか、というところですべきだとおっしゃったのですが、それは私はどうも逃げ口上だというふうにちょっと思うのですけれども、それどうなんですか。
  288. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私が申し上げた趣旨は、何よりもこの附帯決議における当時の政府というのは、これは憲法ができ上がったわけでございまして、これを遠からず実施に運ばせていく、それについては参議院なり両院の構成等については当面問題になっておりますので、その際に構成については十分に、附帯決議にあるような趣旨をよく考えてやれ、こういう御注文であるのが、率直なところ当時の気持ちであったのではないがと思います。当時の政府としてはそういうような考慮も払い、法律案をつくって国会で御議決になったということがあると思います。しかし、その附帯決議の御趣旨が、実はその当時の政府だけがそれだけやれば十分なんで、あとはどうでもいいのだということでなしに、もしいまの制度について御批判がありとすれば、その辺は政府としてもよくそれを認識して、それぞれ必要な手続によって、何がいいかを考えていくということは、これはあってちっともおかしくないし、この「政府」は当時の政府限りであるということをきめつける必要もないだろうと思います。まあとにかく当時、「政府は」といいましたのは、憲法制定の機会でありましたから、その際に両院の構成がきめられる法律案についてよく考えろというのが御本旨であったろう、こういうことを申し上げているわけであります。
  289. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の答弁でちょっと誤解があるようですから申し上げます。政府はもちろんこういう事柄については関心は持ちますけれども、これはやはり両院の皆さん方にもよく考えていただきたいことだし、同時に、憲法の問題になれば国民自身によく考えていただきたい、かような意味を申し上げたのであります。政府責任を別に転嫁したつもりはございません。ただいまの選挙制度審議会なども政府が仕事をいたしますにしても、選挙制度についての所要の改正をいたすにいたしましても、いろいろ十二分にその関係者あるいは学識経験者、各方面の意見を徴する、そうして慎重にやっているということを実は申し上げたのでございます。誤解のないように願っておきます。
  290. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は参議院のあり方というものについては、最初の参議院のできますときの趣旨に沿って、参議院というものは衆議院を批判するところだと、こういうふうに考え、それにはやはり無所属としてが適当だと考えて、今日に至っておるわけであります。緑風会とは大体考えは同じようでありまして、まあ同会が消滅することを、私はまことに遺憾だと思っております。私が議員となりました十二年前の参議院は、いわゆるまだ良識の府としての機能をある程度発揮しておりました。そして、まあ私ども、無所属中立の少数意見も幾らか尊重されておりましたけれども、政党化が進むにつれ、無所属中立の数が減少するにつれて、少数意見はだんだん圧迫されるようになり、先例を無視して、政党を優先的に扱うという、運営の上でもそういうような情勢も出てきております。さっき総理は、参議院うまくいっているようにおっしゃいましたけれども、まあこれは見方にもよりましょうけれども、こういう参議院の現状に対して、奥むめお氏はついに、まあ見切りをつけたと、声明書でおっしゃっております。しかし、まあ私は、この参議院が——衆議院は、私は、政党本位であるべきだ、こう考えていつも主張しておりますが、この衆議院が政党本位である現在の選挙の状態では、無所属中立では選挙に当選することがすこぶる困難でございます。で、そうしますと、自然この参議院が政党化してくるということになったわけでありまして、これは別にふしぎではないと思います。まあしかし、ただ衆議院と同じようなものが二つあるという必要はないのであって、それならば税金がむだになる。国民の間から、私は、参議院無用論というものが出てくるんではないか。そこではたして、現在の参議院が、やはり参議院として、政党化してはきたけれども、参議院としての機能をある程度発揮しているのかどうか。そういう点なんかも私はまあ、総理として御遠慮なさらずにというか、いや総理は自民党の総裁でもおいでになるわけでありまするから、私はこういう機会に、謙虚にその参議院のあり方というものを再検討していただきたい。いや選挙制度審議会あるいはその他の機関でしていただいてもけっこうでありますけれども総理御自身が、やはり私は重大な問題として、ひとつお考えをいただきたいということを、お願いをしたいわけです。さっきの御説明で、最初の御答弁よりも幾らか変わりまして、私も安心いたしましたけれども、もう一ぺんその点を伺いたいと思います。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭に申しましたように、日本の国民に合うのが二院制だと、そういう立場で二院制を採用した。そういう点には市川さんも御納得がいくだろうと思います。さらにまた緑風会のごとく衆議院に根拠を持たなくて、緑風会という参議院だけで行動しておられる、そういうことが非常にいいのではないかと、かような御意見もわからないではございません。ただいま同じように自由民主党、これは衆参両院一体、あるいは日本社会党、これも衆参両院が一体と、かように申してはおりますが、必らずしも、いわゆる一糸乱れないかっこうにあるかどうかと申しますと、そうではないようでございます。私の党でも、参議院の特殊性というものは、やはり機会あるごとに述べられるようであります。おそらく日本社会党においても、これは参議院の特殊性を主張されるに違いないと思います。かように考えてまいりますといわゆる政党化と申しましても、一本化されておると、かようにきめてしまう、そして衆参両院が同じことをするのではないかと、かような結果には必ずしもならないのではないか、私は、現在の制度のもとにおきましても、それぞれの政党もその分野を考えておりますし、そして両院制度であるというそのたてまえはどこまでも尊重して、そして両院がそれぞれ独立立場に立って行動しておる、かように考えますので、ただいまの御意見のように一応動いておるのではないだろうか、かように思います。しかし、市川さんが御心配のごとく、今度は公明党も衆議院に出ていく、そうすると一そう一糸乱れない衆参両院の一つの政党になるのではないか、日本社会党も、自由民主党も同じになる、そうした同じことをやるならば、これは両院制度のあるという必要はないだろう、こういう議論もまたどっかに出てくると思います。しかし、いずれにいたしましても、国民がなじみやすい、また、国民の納得のいくような制度でないと、日本では新しいものはなかなかつくりにくい、かように思いますので、現状においては私は二院制度が望ましいのではないか、また、政党は、それぞれ衆参同一の政党であるかのように思いますが、それぞれ特殊性を主張しておられる現状においては、これまた、ただいま御心配になるような点までその理論を発展ささなくても済むのではないだろうか、かように私は思います。いずれにいたしましても、議会制度そのものは、しばしば言われますように、議会制度即政党政治だ、かようにも言われるのでありますので、そういう点もやはり考えのうちに入れておかないといけないのではなかろうか、ことに、私ども政党政治のよさは、いずれにいたしましても、国民に政策、政綱を公約しておる、そして自分たちが政権をとればその線で公約した事項を忠実に守る、こういう非常なプリミティヴな考えでありますが、非常にわかりやすい理論の上に立っておる政党を否認するわけにはいかない、かように思いますので、ただいま言われるとおり、ものごとが徹底すると困りますから、徹底しない、現状においてはまずこの制度で、また、この制度のもとにおいてそれぞれの特色を伸ばしていく、こういうように努力すべきではないか、かように私は思います。
  292. 市川房枝

    ○市川房枝君 参議院のあり方検討には、憲法の改正にまで及ぶかもしれませんけれども、私は、憲法の改正は将来のこととして、現状で、いま総理もおっしゃったように、参議院の特色が発揮できるようにひとつ考えていただきたい、いまの総理の御意見一つですが、それをもうちょっと徹底させて、これはちょっと思いつきなんですが、私自民党の参議院のほうからは、大臣だとか政務次官なんかお出しにならないようになったら、だいぶ参議院の自民党はお変わりになるのではないかと思うのですが、それから党議というものが、ほんとうに日本の政党はあまりきびし過ぎるのです。ことに参議院の政党はもう少し党議というものをゆるくする、衆議院に比べて。そういうことを、これは自民党はもちろん、社会党その他の政党にも私はお願いしたい、そうすれば、幾らか特色が出てくるのではないかと考えるわけです。それから参議院の選挙法を、私は、やはり衆議院は政党本位でいいけれども、参議院はやはり政党本位では困る、やはり個人本位で、その間に相違を置く、これは選挙制度審議会なんかでもそういう意見が出てくるのですが、おしまいになるとやはり政党の人たちが押してしまって、同じことになってしまうようなかっこうですが、これは選挙法の場合に少し考えていただきたい、ことに学識経験者といいますか、そういう人たちが当選しやすいような、金のかからない選挙法、それをひとつ考えていただくことをお願いを申し上げておきたいと思います。どうか総理、ひとつこの際そういう問題についてもお考えをいただきたいと思います。  次には……。
  293. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。  質問というより意見が多く入るのではなはだ恐縮でありますが、私も第一回国会以来、参議院におって感じたことを申し上げます。  それは、市川さんがおっしゃったとおりのことがたくさんあると思います。ただ私、昭和二十六、七年ごろだと思いますが、参議院の農林委員長をやっておりまして、しばしば法案の修正をいたしました。このときは両院協議会を開きまして、あの常任委員長室で、これは野党ではなしに、参議院代表十名、衆議院代表十名、双方があの常任委員長室に参会をして、そして参議院の修正に衆議院が同意しない場合は、衆議院が三分の二の多数で議決した場合にのみ衆議院の法案が成立するんですから、それがなかなか困難であったので、参議院の修正がしばしば成立をいたしました。そこで、いま市川さんのお話のように、この緑風会がだんだん減ってきて、いよいよ最後になる。このことについて、まあ緑風会には尊敬すべき議員がたくさんおったことをいまでも記憶しておりますし、現に存在されておると思います。その問題で、私、約十年ほど前に、ラジオで討論会をやったことがあります。そのときに、私は、是々非々であるべき緑風会が、是々非々でなしに是々非々になってしまった。何でも政府に同調されて、ほとんど全部、十出てくる法案は十みな賛成される——まあそうでない場合も幾らかありました。だから是々非々を貫けばその存立の意義がある。是々非々であればその存立の意義が失われるんじゃないかということを、討論会で私申し上げたわけであります。ですから、私はそういうこともあったんじゃないかと思います。参議院の政党化ということもあるし、それから選挙が、実に理想選挙が困難になったという理由もあると思いますけれども、そういう問題も歴史的に見れば大きな影響があったんじゃないか。現に存立しておる二院制——一院制か二院制かの議論はいたしません。二院制が存在しているんですから。これを考えた場合に、やはり私は党としての基本的な綱領、政策を逸脱するわけにはいかない。だがしかし、明らかに衆議院の決定に誤りがあったと思う場合——正しいことをやった場合に、参議院が二院制だからといってあえて異を行なう必要はありませんが、明らかに誤りがあったという場合には、やはり同じ政党であっても参議院が独自の立場でこれを修正する。それには自民党が過半数を占めておる今日においても、これに同調するということがなければ、私は二院制の存在意義はないんではないか。そういう意義をお互いが考えれば——これは総理に言ったってしょうがない話で、お互いの心がまえ、政党自身の問題でありますが、自分の経験から考えるというと、そういう問題もあるんではないか。これは質問ではありません。委員長、はなはだ恐縮でありますから、失礼いたします。
  294. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの羽生さんの御意見、たいへんけっこうでした。緑風会についての羽生さんの御意見、実は私もその点、それから緑風会が大臣、政務次官をお出しになったということに対しては、私は賛成できなかった。そういうような点で、しばしばすすめられたんですけれども、緑風会に入らないで、実は別にまいったようなわけでございます。いま羽生さんのおっしゃったように、社会党、それからもちろん自民党も、明らかに誤りのあるような法案に対して参議院が修正をしてくださると、私そういうことになれば、これは国民がはっきりそれを認めて、これは参議院の存在というものをはっきり認めるんではないか。そういう実績をひとつつくってくださる——これは総理に言うわけにもいきません。これは参議院の各党派の問題だと思いますけれども、非常にいい点をおあげになりましたので、ついでに私も申しわけであります。  次には、私、総理と自治大臣に、公明選挙の問題について伺おうと思います。いつも同じことを申し上げるようで少し気がさすのでありますが、総理が今国会の施政方針の演説の中で、「民間団体と協力して公明選挙運動を強力に推進し、特に、来たる参議院議員通常選挙につき、真に公明化の実をあげるよう努力いたします。」こう力強くおっしゃっておりますので、たいへんこれは私うれしいのでありますが、具体案は自治大臣から伺います。総理は、真に公明化の実をあげるとおっしゃるのは、単なることばだけではなくて、ほんとうにそう考えてくださったと思うのですが、その御決意のほどを伺いたい。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはひとしく、ただいまの選挙の実情には各党ともみな心配し、憂慮していると、かように私は思います。私は率直に、今日の選挙はずいぶん金のかかる選挙で、そのためにあるいは買収、供応その他の事柄がいろいろいわれております。この議会政治、また政党政治におきましては選挙が公明、公正に行なわれない限り、国民の信頼をつなげるということはまずできないことだと思います。そういう意味から、ただいまの公明選挙、公明ということばがいいかどうか、これはただいま私も考えつつあるのでございますが、とにかく選挙自身清く正しく、そうして公正に行なわれる、このことを民主政治の根本に考える、そういう立場でこの問題と取り組んでいく、かように私は、こんにちも、一そう選挙の期日が近まれば近まるほどその感を深くいたしておりますので、各方面の方にも御協力を願うように真剣に取り組んでまいるつもりでございます。
  296. 市川房枝

    ○市川房枝君 自治大臣から今度の参議院選挙に対しての、いまの総理のおっしゃる公明化の実をあげるための運動の内容並びにそのための予算何かを伺いたいと思います。特にいままでとちょっと幾らか違うはずだと思うのですけれども、そこをひとつおっしゃってください。
  297. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 公明選挙につきましては、市川先生から常に御指摘を受けているところでありまして、政府といたしましてもこれにはぜひひとつ公明化の実をあげたい、こういうことで、御承知のように一昨年でございましたか、国民の総参加を願わなければならぬということで、一千万人総参加運動というものを提唱いたしまして、各府県に呼びかけているところでございます。そうは言ってもなかなか一挙にそうはいきませんので、その中核となるべき指導者をひとつ養成しようというので、その中でも十万人を目途といたしまして、指導者をつくろうということで、こんにちまで続けているところでございます。昨年も、参議院選挙が近づくということで、十一月に、公明選挙の月間運動というものをやりまして、各地区で講演会等を催し、これは御承知のところだと思います。今度も、参議院選挙を控えましたので、さらにひとつ一段と力を入れよう、こういうことで、先ほど総理からもお話がありましたように、明るい正しい、清い選挙をひとつやろう、こういうことで、いま呼びかけているところでございます。予算といたしましては、常時啓発といたしましては、例年のことでございまするが五億五千万円を予算化いたしておりまして、地方団体に委任をしてやる仕事、また公明選挙連盟にお願いをしてやる仕事、また報道関係にお願いをしてやる仕事をいたしておりますが、ことしの参議院選挙に際しましては、特に三億四千万円の予算をこれに追加いたしまして、各地方団体あるいは公明選挙連盟あるいは報道関係等にお願いをいたしまして、目下その点に努力中でございます。せんだっても、新聞で御承知かと思いまするが、新らしい何かひとつ国民に呼びかける標語はないかということで、懸賞募集も出しているところでございます。また、ごく近日中に、これらの公明選挙運動の本部をつくりまして、一般と努力をささげたい、こういうふうな考えできております。
  298. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま自治大臣のお話になりましたこと、あるいは自治省のほうで御発表になりましたことなどを拝見いたしますと、運動の全部が有権者を対象としたものですね、一般の国民を対象としたものですね。つまり選挙を腐敗させている責任は国民にあるのだ、こういうので国民にしておいでになるように思われるのですが、選挙を腐敗させておる責任は候補者にもある、候補者のほうがむしろ重いのではないかと思うのですが、候補者に対する公明選挙運動というのは全然お考えになっておらないのですか、そういうものを必要とはお考えになりませんか。これは総理いかがですか。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が申すまでもなく、候補者、また、国民でございますが、第一に政党そのものから姿を正していく、国民が悪いわけではございません。しかし、そういう運動は、いずれにいたしましても大衆監視と、こういう意味合いにおいて国民の積極的協力を求めたいというのが現状ではないかと思います。候補者は別だとか政党は別だ、かような意味のものではなくて、政党みずからが率先して、同時に、国民の協力を得るということでこの問題と取り組んでいくということでございます。
  300. 市川房枝

    ○市川房枝君 二月十日の新聞によりますと、二月九日の政府・自民党の四者会談で、衆議院予算委員会で社会党の高田さんが、参議院選も近いおりから、腐敗選挙の防止のために超党派の機関をつくってはどうかという御質問をなすったのに、総理は、それに特に賛成のような御意思の表示がございましたね。それをお取り上げになって、自民党の四者会談で、三木幹事長にですか、自民党で具体案を取りまとめて、そうして各党の幹事長、書記長会談で話をしてみてはどうか、こういう御指示があったということが新聞に出ていたんですがね。これを拝見して私はたいへんけっこうだと思って、そのあとどうなっていくかと思って気をつけて新聞を見ているんですが、一向に出てこないんですが、これは一体どうなりましたでしょうか。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういう事柄は、社会党からの提案でございましたが、いいことはいいと、私かように考えますので、十分党の関係の方、執行部等でよく話し合ってほしいということを申しておるのですが、ただいままでのところ、国会運営その他では話をしておりますが、まだ選挙については具体的に話し合ったということを聞いておりません。
  302. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理、せっかく思い立ってくだすったことですし、社会党も賛成しておいでになればたいへんけっこうで、何とかひとつこれをお進めください。それが自治省で六億円もかけてする公明選挙運動よりも私はもっと重要ではないか、そして、その結果、もっと公明選挙の上には効果をあらわすのではないかと思いますので、ぜひお願いをしたいと思うのですが、その選挙が悪いということの一つの例になるのですけれども、これは三月一日の朝日新聞の「8ミリ政局」欄というところに出ておりました。今度の参議院の選挙の費用は、地方区の場合は、二人区は二千万円、三人区は三千万円、「五人区」と書いてあったんですが五人区は五千万円、全国区は一億円、こう出ておりました。そして、そのために自民党は十億円を用意するだろうとあったんですが、これじゃ全部選挙違反で、金のない人は出られないということになり、非常な不公明選挙ということになるわけだと実は私思うわけですが、三十七年のときの参議院選挙の全国区の法定選挙費用は六百五十万、地方区のほうで選挙費用の平均は約四百万円、今度も大体同じなんですね、多少は有権者の数で多くなりますかね。ところが、このときの届け出の選挙費用を集計してみますると、全国区は三百九十六万二千九百九十五円で、法定選挙の五〇・三%、地方区は二百一万八千四百二十九円で、法定選挙の五〇・二%、両方とも法定選挙の約半額です。全国区は四百万、地方区は二百万、こういうことになっておりますけれども、これはほんとうの届け出だとお思いになりますか。総理、自治大臣どうですか。これは三十七年のときの選挙です。
  303. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) そのような届け出になっておりまするので、そうだと思っております。
  304. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあ三年前と今度とではある程度違いましょうけれども、しかし、さっきの一億円なんというのとあまりにこれは違い過ぎるわけなんですが、これは私がこうやって伺えば、自治大臣はうそだとはおっしゃれないので、そうですとおっしゃるでしょうけれども、これは世間周知のことで、うそだということはわかり過ぎておるわけなんですが、私は、この届け出の選挙費用というものはあまりに軽視されているというか、どうせうそっぱちだということで、ほんとうは受け取りをつけて届けるんですね、選挙法の改正によって受け取りもつけて出す、そうして結果は、御承知のとおりに、各県の公報あるいは官報に載せて知らせるわけですね。ところが、全く注意を払われていない、こういうことになっていて、それを非常に残念に思うんですが、それは自治大臣がいまおっしゃったんですが、自治省自身が届け出の選挙費用というものを全く無視しておいでになるというか、軽んじておいでになるんじゃないかと私は思わざるを得ぬです。それが選挙が済みますと、これは参議院通常選挙の結果調べ、これは三十七年です。これは衆議院のときもこういうものが出るんです。そうしてその結果調べには、実にこまかくいろいろなことが出ておる。金のことは、この中に選挙区による法定選挙費用の額が出ておるんです。ただし、各候補者の届け出た選挙費用はこれには出ていないのでございます。私なぜ出さないのか、ご本人がちゃんと届け出なすったんですから書いてなぜ悪いのか、なぜそれを遠慮なさるか、私それをこういうところに書けば、だんだんそれはほんとうのことをお書きになるようになるというか、そういうものにみんなが気をつけるようになるのであって、これは私もっと前にも安井自治大臣のときですか、何かにも私それを申し上げたんですけれども、やっぱりそれが全然入っていないんですが、どうお考えになりますか。
  305. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 別に各個人の費用を出すことをきらってやっておることではございません。ただ、法定費用というものが定められておりまするので、大体選挙をされる方は、その法定費用の中ということでやっていらっしゃいますので、中にはそれよりもずっと少ない方もあるかもしれませんけれども、大体それに近いところでやっておるものですから、それで全体の費用が出ておるわけなんです。別に他意はございません。
  306. 市川房枝

    ○市川房枝君 今後どうですか、こういうところへお出しくださるような意思はございませんか。
  307. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) これはさらに検討いたしたいと思います。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  308. 市川房枝

    ○市川房枝君 それでは、次は交際費及び寄付金の損金算入の問題について総理並びに大蔵大臣に伺いたいと思っております。今度租税特別措置法が改正されて、いままで銀行、会社等の法人に許されていた交際費に対して少しきびしく今度なるんですね、どの程度きびしくなるのか、その目的はどこにあるのか、一般の国民もわかるようにひとつ大蔵大臣から御説明をいただきたい。
  309. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 交際費につきましては基準がございまして、資本金等の千分の二・五プラス四百万円、こういうものでございます。その上に損金不算入の限度が三〇%ございましたが、これを四〇%までは税で特別措置をとっておったわけでございますが、五〇%まで今度は損金不算入の歩合を上げるということにいたしたわけでございます。これは一つには社用消費が非常に高いということで、世論もきびしいものがございますし、この社用消費といわれるものが年間に四千五百億というふうにも大きく見積られておりますし、そういう意味で、よりきびしくするほうがよろしいということで、三〇%の限度を五〇%までに引き上げた、こういうことであります。
  310. 市川房枝

    ○市川房枝君 三十八年度に銀行、会社が交際費として支出した推定総額は、いま大蔵大臣がおっしゃいましたように、四千五百二十億八千万円ですね。そうして、その中で損金に不算入の部分が三百九十一億八千百万円あって、それに対するその三〇%にいままで課税していた。ところが、今度は五〇%に課税をする、こういうことですね。この改正によって交際費が減るとお思いになりますか。どの程度減るというか、社用族に対する批判があるから高くしたのだとおっしゃいましたが、これは関西経済連合会から相当強い反対がきているようでありますけれども、これは少し減らないと改正の目的を達しないわけですね。
  311. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 社用消費を減らすという面もございますが、非常に社用消費に対しましてはきびしい批判もございます。しかし、営業をやっていく上においては交際費というものが当然必要なものでありまして、営業を継続するためには、ある程度の交際費の損金算入を認めるということは当然でございます。しかし、四千五百億というような非常に大きな交際費でございますので、初めは現行の三〇%を四〇%に引き上げようということでございましたが、最終段階におきまして五〇%まで引き上げました。これは相当きいておるということは事実でございます。いま一例において、御承知のように、週刊誌などでは、銀座の裏などは、かんこ鳥が鳴くようなものだということが週刊誌に書いてございます。社用消費は、大蔵省のほうで税制改正をやったよりか何倍も引き締められている、こういうことが言われておりまして、その意味ではこの処置だけではありません。まあ開放経済に向かって自立体制にいかなければいかぬという経営者自体の心の引き締め方にもよると思うのでありますが、タイミングは非常によかった、こういうふうには言えるわけでございます。しかも、先ほど市川さんが、飲んだり食ったりしたものが四千五百億と、こういうような御指摘のようでしたが、そういうことではない、交際費全体が四千五百億ということでございます。
  312. 市川房枝

    ○市川房枝君 その交際費として、——交際費、接待費あるいは機密費などというものも入ってるようでございますが……。
  313. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 機密費というような項目があるかないかわかりませんが、いずれにしても、交際費の中には、寄付金とか、相手方に対しての接待をいたす費用とか、もろもろのものがあります。機密費も、社長機密費といいますか、そういう手当のものが各企業にもあるのかどうか、さだかには知りませんが、いずれにしても、寄付金とか、そういうものは一切交際費のワク内で処理をせられておるということであります。
  314. 市川房枝

    ○市川房枝君 そういう交際費が四千五百二十億円というのは、いま非常に多いとおっしゃったのですが、事実三十八年の法人税全体の半分なんですね。私ども金の勘定はよくわからぬけれども、しかし、非常に大きな額になるのですが、物価安定のための総合対策として、この一月二十二日に閣議了解となった十項目の最後の十番目に、「消費の健全化及び消費者の協力」という中にこういう文句が入っておる。「この場合、まず、現在弊害の最も著しい社用消費の大幅な節減を求める必要がある。」と、こう書いてあるのですが、「弊害の最も著しい社用消費」、これは交際費のことを言っているのだと、これは経済企画庁でそうおっしゃっております。これは大蔵大臣も御承知のわけだと思うのですが、こういう点からいうと、さっきの五〇%の限度の超過した分だけに対する五〇%の税金くらい大したことないので、それじゃどのぐらい減りますか。銀座のバーなんかに、かんこ鳥が鳴くという、これはあとで計算してどのぐらい減ったかということは、数字的に出てこないとわからないかもしれませんが、何だかこういうふうにおっしゃったのに比べると、ほんとうにたいしたことないみたいな気がしますけれども、どうですか、もっときびしく私はしていただかなければならぬと思うのですけれども、ただ、この交際費の中に、いわゆるゴルフ、マージャン、キャバレー、バー、高級料理店等々いろいろなものがあって、社用族、公用族、そういう名前が非常に知られていて、これには政府並びに地方官庁の公務員の方もだいぶ恩恵に浴しておるわけです。だから、あまりちょっときびしくはしにくいのじゃないですか。
  315. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことはございません。恩恵に浴しているから特典を与える、こういうことになれば反対給付でございますから、そういうことは絶対にございません。ございませんが、事業をやってみますと、相当の交際費が必要であるということは事実でございます。大きな企業等を見ますと、よくもまあ寄付金がこんなにくるなというぐらいに、寄付金が相当出ておるということであります。いろいろな社会保障の問題等を見ましても、寄付金を集めるときには、このごろはもう資本金割りというような状態で、国民の考え自体がそういう考え方がいけないかもしれませんが、また、それを言えば社会保障費を増せ、こういうことになるかもわかりませんけれども、事業をやるためには交際費は必要であるということは、これは当然でございます。ただ、どの程度必要なのかをつかんで、より合理的なものにしなければいかぬ。もちろん交際費の名目の中の社用消費、社員や重役の家庭の費用まで社用消費の名において支出せられ税の特典を受けるということになれば、これは当然行き過ぎでありますから、こういうものはどうしてもつかまなければならぬわけでありますが、景気のいいときには社用消費というか、交際費が案外少なくて済むかもしれませんが、お互いに競争し合うということになると多くなるということがございます。できれば、税の考え方からいいますと、もうかるから、もうかったものを全部出せば税金に取られるので、無形の資産をつくるということでもってどんどんと広告宣伝をやるか、こういうもの、こういう広告宣伝費とか交際費の名において消費されるというようなものが社内蓄積、資本蓄積、社内留保に回って日本の企業の将来のプラスになるというふうにできるならば、そういう面に恩典を与えるということは筋だと思います。今度四〇%の限度を五〇%に引き上げましたが、仕事をしている人は、仕事をしておらぬからそんなばかなことを言うのであって、一体どこでもって金をもうけるのだ、こういう手きびしい反対論がございます。反対論も非常にありますし、週刊誌さえも、かんこ鳥が鳴く、社用消費の節約は相当実績が上がっておるというのですから、まあこのたびの五〇%はまあいいところだろう、私どもはこういうふうに見ておるわけです。
  316. 市川房枝

    ○市川房枝君 私どもは少しきびしいかもしれませんけれども、日本の商習慣というもの、これは特殊かもしれませんけれども、外国と違うんです。だから、少し無用な消費が多過ぎる、いわゆる交際費として。ですから、これはコストをつくり上げるだけでなくて、やはり公務員なり会社の職員のためにもこれはよくない。これは悪い点が付随してきますから、むしろだんだんとそういう日本の悪い商習慣というものを正していくという方向で、これはだんだん私は少なくしていってほしい。今度の改正は、まあ改正すればけっこうですけれども、来年はもっとたくさん課税するようにというか、ほんとうは私は基礎控除一律四百万円と資本金の千分の二・五というのは多過ぎると思うのですが、これは少し少なくしていただきたいと思うのですが、これは希望として申し上げておきます。  それから、大企業法人には、交際費のほかにもう一つ法人税法で一定限度までの寄付金を損金に算入することを認めている。つまり、税金をかけない、無税としておりますね。このほうの三十八年度の推定金額は大体どのくらいになっていますか。
  317. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 学校に対する寄付等は、一定の金額以上に寄付免税の別ワクを設けておりますが、それが現在どの程度かという集計はいたしておりませんので、申し上げられません。
  318. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は数字をもらいましたから、これを申し上げましょう。二百九十二億七百万円、約三百億円寄付金があるわけですね。いわゆる政党及び政治団体等への政治献金はこの中から寄付れさておるわけになりますが、政治献金はこの金額の中で一体どのくらいを占めておるかということも、ちょっとおわかりになりませんでしょうね。
  319. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) わかりません。
  320. 市川房枝

    ○市川房枝君 自民党は、私の調べたのでは、三十七年中にはちょうど参議院の選挙がありましたので、それを含めて十五億五千万円の収入がおありになったのです。三十八年には衆議院の選挙がありましたが、三十七年よりもずっと多くなって、五十三億八千万円の収入がおありになった。このほとんど全部がやはりいまの政治献金なんです。社会党、民社党にも財界から寄付されているのですけれども、それは自民党に比べれば非常にわずかなものなんです。この政治献金になるような寄付を損金として税金をかけないという税法は、これは日本だけなんだということを、私は前に大蔵省の主税局長からこれは私が大蔵委員会で質問して伺ったのですが、すると、日本では政治献金をさせるためにこういう税法上での特典を設けているようにも思われるのですけれども、これは交際費というものがあんなに——あそこの中から寄付金も出ているのですよ。私はそうにらんでおる。ところが、別にまた寄付金というものがある。だから、ちょっと私は納得がいきかねるのですけれどもね。
  321. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自民党が年間五十何億という数字は間違いだと思います。どこで……。
  322. 市川房枝

    ○市川房枝君 それは自治省の発表した数字から……。
  323. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五十何億ということは間違いだと思います。これは私のほうで調べます。  それから、いまちょっとお間違いのようでありますから。政治献金も一般の寄付金等も、法律で税法上認めておる限度内のものは課税はしないわけであります。一般の交際費ということでありますから、一般の交際費のワクをこす政治献金でも寄付金でも、これは全部課税対象になります。そういうことですから、これは誤解のないようにしていただきたい。  それから、政治献金をうまくやらせるためにこういう免税限度額を設けた。——こういうことはこれは思い半ばに過ぎるものでございます。そういうものではございません。これは資本金の何分の一ということでありますから、そういうことはございません。別ワクに寄付金制度が設けられておるということは、学校に対する教育寄付、こういうような指定寄付免税に対するものを別ワクに設けておるということでございますから、誤解のないようにしていただきたい。
  324. 市川房枝

    ○市川房枝君 学校だとか社会福祉法人なんかの寄付は免税になっている。これはこれでいいわけですけれども、そうしてもちろん政治献金だけでなく、一般の寄付もこれは寄付金限度額の中に入っているわけではありますけれども、大多数は政治献金に行っているのじゃないか、こういうふうに私はどうも思えるわけであります。これはよくそう言われるのですが、それは会社にもおつき合いがあるとおっしゃるが、別にこれは交際費というおつき合い費があんなにたくさんあって、こっちは知らぬと思ってそういうふうにごまかそうとされるのですけれども、それはそういう二つあるということは日本の特殊性かもしれませんけれども、やっぱりどうも納得しかねるのですが、これはことに政治献金というものが私はやっぱりだんだん選挙に金がよけい要るようになる、つまり、幾らでも金が出てくる道があるのだ。だから、政治資金規正法で幾ら法人からの寄付を禁止するときめたって、金の出る源をとめなければ何にもならない。同時に、寄付限度額のもっとパーセンテージを少なくするということをしなければ、私はやっぱり政治や選挙はきれいにならないという意味で、交際費も交際費ですが、政治献金の限度額のほうを非常に重要に実は考えるわけなんですが、総理、この選挙、政治と金の問題をどういうふうにお考えになりますか、ちょっと伺います。
  325. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど私が金のかかる選挙ということを申しまして、そうして「8ミリ政局」かなにか知らぬけれども、寄付が御議論になりました。しかし、これはどうもそんなに金も持っていない、そういう金も出ていない。ただ、選挙に直接関するかどうかわかりませんが、選挙が近いとかいうことになりますと、いわゆる政治寄付その他で支出が非常に多いのですね。こういう事柄もあわせて選挙の費用と、かように見ますと、はなはだ多くなる。どちらかといえば、国民を代表して、私どもが国民にかわって議政壇上において国政を議していく、審議をしていく、そういう立場なものですから、そういう観点に立ちますと、国民からいろいろな寄付なりその他というものをこれはセーブして、まあお互いにそういうことは注意し合ったらいいのじゃないか、かように思うわけなんです。もっと国民とのつながりが、別な意味におきまして、これは市川さんなどはそういう意味でりっぱな後援者を持っておられますけれども、そういう事柄が望ましいのです。したがいまして、これはいわゆる選挙——選挙費用かかる、かようには私は申しません。おそらくそれは法定費用で片づくことだと思います。しかしながら、選挙に関連する、あるいはその機会にということで、なかなか出費が多くなってきておる、こういうような事柄をお互いが慎み合わないと、それが競争するというようなことになると、自然に選挙の腐敗、かような印象を国民に与える、かように思います。  また、政治家が会社その他からきれいな献金をいただくならいいのですが、そのために会社といろいろな因縁なりができる、そのために特別なくされ縁ができる、こういうようなことになりますと、本来正しかるべき国政が曲げられる。そうでなくても、国民の一部からはそういう誤解を受ける。  こういうことで、よほど注意していかなければならないことだと、かように思うわけです。こういう点をあわせまして、いずれにいたしましても、もっと民主政治の基本、その選挙、これが正しくなければならない、こういう観点に立っての各界各層の御協力を得る、そういうことで進んでいきたい、かように思います。
  326. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間がだいぶなくなりましたが、大蔵省が最近発表なさいました給与所得者の標準の献立表についてちょっと伺いたいと思います。  大蔵省では最近、男子のおとな一日の食費が百六十七円四十八銭で栄養もとれるというふれ出しのいわゆる給与所得者標準献立表というものを発表なさいました。まず最初に伺いますけれども、大蔵大臣以下関係の大蔵省の局課長は、あの献立の食事を召し上がりましたか、試食なさいましたか。
  327. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) しません。
  328. 市川房枝

    ○市川房枝君 実験をやっぱりなさいませんでは、あれを発表だけして、ちょっと無責任だという気がしますがね。婦人雑誌なんかも献立を発表しますが、雑誌に出しますときには必ず、まずつくって、ちゃんと試食をして、それから出しているのです。いまからでもおそくないから、大蔵大臣だけでなく、これは総理もひとつ御一緒に閣僚の方皆さんで、いっぺんあの標準の百六十七円四十八銭というのを食べてごらんになってくださるといいと思うのですが、総理、いかかですか。これは閣議室ででもお昼にちょっと召し上がったらいい。
  329. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一ぺん近くやってみたいと思います。
  330. 市川房枝

    ○市川房枝君 ところで、あの献立は一体どういう目的でどういう方法でできたか、国民、ことに家庭の主婦にもわかるようにひとつ御説明いただきたいのですが、これは主税局長政府委員からでもけっこうです。
  331. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お答えいたします。  これは何も給与所得者の標準献立表というようなつもりでつくったものではございませんで、私どもが所得税の課税最低限を検討いたします際に、各世帯別の消費支出金額はどういうふうな割合になっているか、そういうことを検討するために、まず国立栄養研究所に、お願いいたしまして、成年男子が一日二千五百カロリーを摂取する場合の献立をつくっていただきまして、それをマーケットバスケット方式によりまして買います食糧費がどれだけかかるかということで食糧費を算出いたしまして、エンゲル係数で割り返しまして、全体の年間の消費支出金額というものをめどとして算出いたしまして、所得税の課税最低限はできるだけその消費支出金額より上回った姿にもっていったほうが望ましい、そういう意味検討いたしているものでございまして、ことに世帯別のそういう消費支出金額が違いますと、所得税の課税最低限を上げる際に基礎控除を優先さすべきか、あるいは配偶者控除を優先さすべきか、それとも扶養控除を優先さすべきか、こういったことの検討の資料になるのでございます。したがって、あの献立が勤労者の標準献立であるというようなことで申しておるのではございません。  ただ、栄養をとって、日本のいまの一般の国民の生活水準からすればどの程度の食糧というものが所得税の課税最低限を検討する際には基礎として見ていいか、こういう意味のものでございます。国立栄養研究所のほうで、春夏秋冬それぞれ食糧の内容が違いますので、別々につくっていただきましたものを発表いたしたような次第でございます。
  332. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの御説明でもありましたし、私も直接係官からいろいろ来ていただいて詳しく説明を伺ったのですが、あの献立は主税局とじて税額をおきめになる参考のためにおつくりになったらしいのですが、ただ、ああいう形で一般に発表になったので、一般の主婦からはちょうど自分たちが毎日苦労しておるその献立と比較して、そうしてこれは違う、これは実際的でないというような批判が非常に出ておりまして、それから値段があれはあんな値段じゃできぬ、もっと高いんだということで、えらく大蔵省は評判が悪い、あの献立をつくった栄養研究所まで実は評判が悪いわけなんですが、私はやはり大蔵省は発表のしかたを少しお考えにならなければいけないんじゃないかということを考えるわけなんですが、この問題で、この大蔵省の献立に対する反響が非常に大きかったということです。  それから考えさせられるのですが、家庭の主婦は、月給はたいして上がらない、ところが物価は毎日のように上がる、その中で家庭の中心である主人をはじめ育ち盛りの子供たちに何を食べさせるか、安くて栄養があっておいしいものは何か、その献立に毎日苦労しているわけなんです。ところが、それを指導してくれるところが実はどこにもないのですよ。だから、婦人雑誌を一生懸命繰ってみたりして苦労しているわけなもんですから、たまたまああいうものがあるというと、すぐ飛びついて、そうしてまあ批判する、こういうわけなんです。  政府のほうの経済企画庁の外郭団体に国民生活研究所というのがありますが、ここは数字ばかりなぶっていて、何も国民に役に立ってはいません。今度経済企画庁にできるはずの国民生活局も、実は一般の家庭に対しては何もしてくれそうもありません。厚生省の栄養研究所も、今度の献立でその存在を思い出したくらいのことで、一般の家庭の主婦とはだいぶ遠い存在でございます。こういう状態、こういう一般の家庭の主婦の、ものを言わないといいますか、要求といいますか、そういうものに対して、総理、何とかその要求にかなえるようなひとつ施策をどこかの役所で私は当然やるべきなんだ。いろいろやっていてくださるみたいですけれども、ちっとも要求には合わないのです。みんなどこも頭の上を素通りしていっているようなものばかりですけれども、これ総理からちょっとひとつ伺いたい。
  333. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの一人百六十七円、いかにも小さいようでありますが、これが一カ月になれば五千円になる。そうして三人あるいは四人家族というと、これは相当の家計費が支出されるということです。いままで私どもがよく若いころに言われたことは、一人口は食えないけれども二人口は食える、こういう表現をしばしば使っております。やっぱりただいま申し上げるような形において、そうしてくふうしていけば、まだくふうの余地はあるだろうと思います。これは私はいいとは、かようには申しません。もちろん、お互いの生活はもっと向上して、一日二百円にも、さらに三百円にもしなければならないのが政治でございますから、それはもちろんそういうふうに努力はしてまいる。  今日まで、あるいは厚生省なり、あるいは総理府等が、いろいろ骨を折っておりますが、経済企画庁あたりもそういう意味のことでは何かと相談には応じておりますが、いままで役所の機構も十分ではないし、これが、今後つくろうという生活局ですか、こういうものができれば、ただいまのような点もさらに普及していくのじゃないかと。国民栄養研究所そのものも、もっと堂々と日の目を見るように、そういう立場にもなっていくのではないか。ただいま言われておりますのは、今日の行政は、消費者行政、それについてもう少し力をいたせ、かようにも申されておりますし、私どもも消費者の立場に立って、やはり生産の面もこれに合わしていくようにする。ことに、最近また新聞等を見ますると、それぞれの政党においてもくふうしておられるようでありまして、最近民社党などが計画された、あるいは牛乳を組合で配達するとか、あるいは特別に大根を送る、こういうことで団地にそういう身近なものを世話するという、こういうようなこともあるようでございます。私は、やはりこういうような世の中になれば、政府の施策も施策でございますが、やはりかゆいところへ手の届くように、そういう思いやりのある政治をするのには、やっぱり各方面の協力を得なければならない、かように思いますが、基本的には、私どもの政治のねらいは、より生活を向上さすと、こういうところに目標を置きまして、あらゆる努力をしてまいりたいと、かように私は考えます。
  334. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 市川君の質疑は終了いたしました。
  335. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 本日の各委員の発言の中に、緑風会に対しましての、何かこの批判が行なわれておったのでありまするが、この批判の中には、当たっていることもあり、むろん当たっていないこともありまするので、縁風会の生き残りの一員といたしまして、緑風会のために弁明を要すると信じますからして、委員長に発言を求めます。よろしゅうございますか。
  336. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 佐藤君。
  337. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 市川議員の発言の中に、長々と緑風会に対する批判がございました。同情的なものもあり、手きびしい批判もありましたが、これは各委員の自由でありまして、その点に関しましては私は何ら発言の要を認めません。しかし、事実が違っている問題が一、二ありましたので、それは緑風会のために、釈明ではございません、釈明する必要は認めませんが、弁明をしておく必要があると思います。事実は事実として明らかにしておかなければならないと考えるからであります。  まず、市川委員の発言の中に、これは間違いでもなんでもございませんが、この参議院としては、参議院の政党からは大臣なり政務次官なりを出さないようにしてはどうかということで、総理意見を聞かれた節がございました。私ども緑風会といたしましては、とくにそのことは実行しておったのであります。まだ緑風会が余勢を保っておりました時代に、ある期間は緑風会から大臣を出したことあり——政務次官を出したことはなかったのでありますが、大臣を出したこともありました。しかし、その後緑風会は、できるだけ公正な立場に立たなければならぬという見地から、決議をもって大臣も政務次官も出さないということをきめたのでありまして、今日に及んでおります。それは市川議員もたぶん御承知のことだろうと思うのであります。  ただ、私が弁明をしておかなければならぬということは、羽生委員の発言の中に、緑風会では是々非々を標榜しておりながら是々是々でやってきたという点に対して、手きびしい批判がございました。これはその意味は、緑風会が政府提案ならば何でもかんでもうのみにして通すという、こういうことを指摘されたものと思うのでありまするが、緑風会の立場といたしましては、多数を占めておりました時代にも、政府に、そのときそのときの政府のやり方に対してできるだけ便宜を与え、政府の施策を容易ならしめるという立場に立っておったものであります。したがいまして、社会党の政府の場合にも、むろん是々非々の見地からして、社会党の政府に対しても、そういう意味合いで政府の施策に対して協力をしてまいったこともございました。しかし、自民党の内閣であるからといって、政府の提出議案に対して全部うのみにしでかかったということであるならば、これは間違いであります。たとえば破防法のときのごとき、これは私自身直接に関与しておりましたから、よく承知しておるのでありまするが、破防法を受け入れさせることを容易ならしめるために、緑風会が修正を持ち出して、そうして通過せしめたことがございました。教育二法案のときもしかり、警察法のときもしかりであったのであります。うのみにしたわけでは決してございません。ただ、緑風会はです、何と申しましても大部分の議員が保守系の人たちでございました、私自身もそうでありまするが。でありまするからして、自然、保守系の内閣に対して協力をするという立場に立ったというのは、これは当然過ぎるほど当然なことでございます。ただ、うのみにしなかったということだけは明らかにしておかなければなりません。  いや、そういうふうで、われわれとしましては、そのときそのときの政府協力をして施策を容易ならしめるという、そういう気持ちで立っておったということでありまするが、あるいは社会党の目から見れば、是々非々でなくて、是々是々であったかもしれませんけれども、われわれ保守系の立場から見まするならば、是々是々であることがあたりまえであって、われわれ緑風会としては、それでも是々非々であったわけであります。  こういう点は私は明らかにしておきませんというと、緑風会は自然消滅の、自然消滅の時期にいま際しておりまして、世間では新聞あたりで、かなり重要な、いま参議院のあり方について重要な論議が行なわれております。批判が行なわれ反省が示されておりますが、そういう際に、緑風会のいままでの経歴におきまして誤解があっては、これはたいへん世の中のためにならないと思いますので、いささか事実を事実として弁明したわけでございます。(拍手)
  338. 羽生三七

    ○羽生三七君 速記録を読んでください。ぼくは全部とは言っておりません。     —————————————
  339. 村山道雄

    ○理事(村山道雄君) 委員の変更がございました。  田畑金光君が辞任され、田上松衛君が選任されました。  本日はこの程度にいたしまして、明十一日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十分散会