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1965-03-09 第48回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月九日(火曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員の異動  三月九日     辞任         補欠選任      栗原 祐幸君     山崎  斉君      森部 隆輔君     森 八三一君      稲葉 誠一君     亀田 得治君      中尾 辰義君     浅井  亨君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 木村篤太郎君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 阿具根 登君                 稲葉 誠一君                 大倉 精一君                 木村禧八郎君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 永岡 光治君                 羽生 三七君                 米田  勲君                 浅井  亨君                 小平 芳平君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        経済企画庁調整        局長       高島 節男君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        経済企画庁総合        開発局長     鹿野 義夫君        経済企画庁水資        源局長      鈴木 喜治君        外務政務次官   永田 亮一君        外務省欧亜局長  法眼 晋作君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        文部省大学学術        局長       杉江  清君        文部省体育局長  前田 充明君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省薬務局長  熊崎 正夫君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  小山進次郎君        厚生省年金局長  山本 正淑君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林大臣官房予        算課長      太田 康二君        農林省農政局長  昌谷  孝君        農林省農地局長  丹羽雅次郎君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        通商産業省軽工        業局長      伊藤 三郎君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     川原 英之君        中小企業庁次長  影山 衛司君        郵政省簡易保険        局長       田中 鎭雄君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働大臣官房労        働統計調査部長  大宮 五郎君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省労働基準        局労災補償部長  石黒 拓爾君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  鮎川 幸雄君        建設省河川局長  上田  稔君        建設省住宅局長  尚   明君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  昨日、曾祢益君、高山恒雄君、横川正市君が辞任され、向井長年君、田畑金光君、大倉精一君が選任されました。  本日、栗原祐幸君、森部隆輔君が辞任され、山崎斉君、森八三一君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。千葉千代世君。
  4. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、学校給食について文部大臣にお尋ねいたします。  昭和三十六年に学校給食制度答申で、政府は、小学校五カ年計画、中学校十カ年計画でもって年次計画を立てて、完全給食で、しかもこれが全校に実施されるようにという、こういう答申が出ているわけでございますけれども、すでに四年を経過しておりますが、現在の状況では、この答申に沿ってどのような普及率になっておりますか、お答え願いたいと思います。
  5. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまも御指摘がございましたように、なるべくすみやかに完全給食にたどりつこうということで毎年努力をいたしておるわけでございますが、これを具体的に四十年度で申し上げますと、学校給食関係予算といたしまして、総額約七十一億円余りになっております。その中で給食施設設備費補助等につきましては、たとえば共同調理場をできるだけ増設をしたいということで百四十カ所分を計上いたしてございます。学校にいたしましては七百校分の共同調理場を計上しております。そして、小中学校の単独でやっておりますものが千三百二十一校、僻地学校関係三百校、夜間の高校について二十校というような状況になっておりますが、さらに、なま牛乳をできるだけ給食に使いたいということに関連いたしまして、なま乳の殺菌施設を新規に設置するというようなこともあわせて行なっているようなわけでございます。  四十年度で例を申し上げたわけでございますが、そういったようなやり方を、これは四十年度だけを申したわけでございますけれども、今後一そう努力を新たにしてまいりたい、かように考えております。
  6. 千葉千代世

    千葉千代世君 完全給食で全部に実施できるようになるには、大体何年度目標にしていらっしゃいますか。
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、ただいまのところ、たとえば三年内とか四年内とかということを的確に申し上げるところまでいっておりませんけれども、なるべくすみやかにということで考えを進めていきたい。そこで、御案内と思いますが、保健体育審議会というようなものも、特にこの給食の問題を一番大きなテーマとして取り上げておりまして、昨年の秋から特に活発な御審議を願っておるようなわけでございます。これには従来からの線を伸ばしていくということはもちろんでございますけれども、たとえば最近のこの食品関係考え方としてコールドチェーンというようなことも大きな話題になっておりますけれども、こういったような技術的な工夫を学校給食にも取り入れるものがあるのではなかろうか。カロリーがよく、そして食べておいしく、かつ貯蔵、運搬等にも便利なようなもの、こういったような新しい意欲的な研究もあわせて取り入れていきたいというふうな考え方で、斯界の権威者たちにいろいろと知恵をしぼり、勉強していただいているような状況でございます。
  8. 千葉千代世

    千葉千代世君 完全給食、しかもそれがなま乳をずっと使っていく。それを大体全校に実施するのはいつでしょうか。大体の目標でございます。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御案内のように、三十九年度はなま乳四十万石、そして四十年度はその倍にいたしたいという考え方でございましたが、いろいろの関係で七十万石、ほぼ倍に近いことになりましたが、現在のこの計算で参りますと、学童給食に二百万石のなま乳を充てれば、ほぼ完全な域に達するのではなかろうか。そういたしますと、かりに今年の倍来年度やるということになると、百四十万石、こういう計算から申しますと、二、三年のうちにはほぼそこまで数字の上ではいくわけでございますけれども、ただこれは七十万石を倍の百四十万石、それにさらに六十万石足せば二百万石になる。ただ単純な計算なんでございまして、これにつきましてはいろいろと補助の問題もございましょうし、あるいはこの運搬とか、殺菌とか保存とか、いろいろ技術的な問題もございましょうから、単純にいま申しましたような計算だけではまいらないと思いますけれども目標としては二百万石で、完全に牛乳、なま乳を使うというところを目標にして、数年内にはその目標を完結いたしたい、かように考えております。
  10. 千葉千代世

    千葉千代世君 二百万石を大体用意して全校児童にやる、こういうお話なんですが、そうすると、脱脂粉乳は大体いつまで輸入を続けるつもりなんでしょうか。
  11. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま申しましたように、二百万石が完全に学童に向け得るように諸般の施設補助や、そういったようなことが完備いたしますれば、脱脂粉乳はほとんど使わなくて済むのではないか。これは表裏になっておる考え方でございます。
  12. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、いま大臣お答えにありましたように、大体二年から三年の間、それまではまだ輸入を続けると、こういうわけでございますか。
  13. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはやはり、なま牛乳を完全に晋及しますまでは、どうしても輸入はいたしかたないのではなかろうかと、いまのところは考えております。
  14. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま東京都内学校給食脱脂粉乳を使っておりますけれども、大体この三月時点で使っております脱脂粉乳製造した年月はどのくらいとお考えになっていらっしゃいますか。
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の記憶では、大体一年以内、一年前につくりましたもの以内のものを使っていると、私は覚えておりますけれども、なお詳細の点は確かめまして御返事申し上げます。
  16. 千葉千代世

    千葉千代世君 一年以内の製造というのはどこでお調べですか。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま申しましたように、私そういうふうに記憶をいたしておりますが、調べの出所その他ちょっとお待ちくだされば、すぐお答えいたします。
  18. 千葉千代世

    千葉千代世君 私の調べましたのでは、大体二年前製造したものでございました。学校給食の出でやはり新鮮なものというようなことが学校給食をやっている計画の中に取り上げられているわけですが、これは脱脂粉乳に限らず、魚であれ、肉であれ野菜であれ、新しいということ、これが一つの条件になっているわけなんです。昨年、脱脂粉乳が値上がりいたしましたですね。そのときに文部省のほうからアメリカへ対して五つの注文が出ておりますですね。それをちょっと答えていただきたい。
  19. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一の、とこで調べたかということは、文部省と、それから御承知のように日本給食協会というものがございますが、ここで掌握いたしております。そしてそこでの調べでは、いまも確かめましたところ、大体一年以内が原則であって、しかし、中にはそれ以上経過しておるものもある。で、給食協会並びに守部省といたしましてはできるだけ新しいものをということで指導をこの上ともしてまいりたいと考えております。  それから給食協会その他に出しました指令は、ただいま取りましてすぐお答えいたします。
  20. 千葉千代世

    千葉千代世君 重ねてお尋ねいたしますけれども脱脂粉乳製造年月日を明記しろということが去年の要求の中にあるわけなんですね。それによって明記されてきた会社名とか、それから製造年月日があるわけなんですが、これは二年ぐらいというのは新しいのでしょうか、古いのでしょうか、普通ですか。アメリカで使っているのは大体どういうのを使っているか。アメリカ自体脱脂粉乳を使う場合に、二年前のを使っているかどうか。
  21. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは先ほど申しましたように、私どもとしては、一年以内のものを新しいもの、かつ適当なものと考えておるわけでございまして、これはおそらく、私もつまびらかにはいたしませんけれどもアメリカあたりでもそういう例ではなかろうかと思います。したがって、二年というようなことは、それに比べて古い、これは望ましいものではない、こういう考えでございます。
  22. 千葉千代世

    千葉千代世君 昨年の春でございますけれども脱脂粉乳が値上がりしてきた。そういう中で、父兄の負担は、給食費がたいへん多くなると非常に騒いだわけです。お母さんや何か一生懸命に。そうしたら文部省は、騒ぐことはない、余っているお金を流用して使うからということで、そこからたしか五億のお金が出されて、値上げ分に充当したと思うんですけれども、それはいかがでしょう。
  23. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) たとえば、学校給食脱脂粉乳で申し上げますと、三十九年度は百グラム四円の補助をいたしておるわけでございます。で、これを、これでは不十分でございますので、四円六十銭の補助をいたすことに四十年度ではいたしておるわけでございます。ただいまお尋ねがございました五億円云々というのは、どういうことでございましたかわかりませんが、この脱脂粉乳その他、小麦粉等に対する補助も、年度の初めに予算がきまりましてから実行に移すわけでございますから、年度の途中でこの値上がり分に対する補助を増加したということは、事実はないのではなかろうかと思います。
  24. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは事実があるわけなんです。非常な問題になって、そして、学校給食会のほうにたまったお金がある、それを回すからと、たまったお金はどのくらいあるかと言ったら、約十二億ということが言われたわけです。そのお金は一体どうしてたまったんでしょうか。
  25. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、学校給食会学校給食に用いるのには不適当である原材料等民間等に払い下げました、その代金を充当したものかと思いますが、なお政府委員から詳しく御説明いたします。
  26. 前田充明

    政府委員前田充明君) ほかの委員会に出ておりまして恐縮でございます。  外国から来ました、アメリカから買いました脱脂粉乳が、途中におきまして、あるいは船から揚がった場合に、いわゆる不良ミルクとなるのでございます。それは主として飼料用に出すのでございますが、それは農林省許可ないしは指示によりまして、それを国内で売りますのでございますが、そういたしますと、学校給食川の脱脂粉乳は非常に安くアメリカで買うものでございますので、不良になって飼料用に売るもののほうが高いのでございます。したがって、まあ差益と申しますか、そういうものが出まして、それが結局積もりまして、特に、三十六年度であったかと思いますが、ちょうどアメリカ脱脂粉乳がなかったものですから、カナダから買った、その際にどういう都合でございましたか、非常に多く不良が出ました。そういう関係で相当額出まして、約十億という金がだんだん積もったわけでございます。それを今年度−三十九年度におきまして、ポンド、六セントで買ったのでございますが、その前年まで五セントでございました。一セント高くなったわけでございます。それの差額は、本来ならば子供から集めますのが高くなるわけでございますが、それを高くしないで、従来と同じ値段で売りましたものですから、そこで足りないその金に使ったわけでございます。
  27. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、過去二、三年間の輸入脱脂粉乳横流し総額というのは十億ですか。
  28. 前田充明

    政府委員前田充明君) それは、農林省指示ないしは許可、そういうことで売ったのでございまして、別に横流しということではないと思うのでございますが、そういうふうで、集まりました金が約十億と、そういうことでございます。
  29. 千葉千代世

    千葉千代世君 農林省文部省が相談して売ったと言うのですけれども、これは学童給食用として特別に安く入っているわけですね、具体的には、日本の岸壁の倉庫に蔵入りしました状態でトン当たり五万四千円だ、あるいは六万七千円、その幅がたいしてございませんけれども事故品とか給食不適品とか、ちょっとにおいがあるとか、湿気があるとかいった、こういうふうなものですね、そういうふうなものが、私どもがよく飲んでおりますコーヒー牛乳とか、いわゆる乳飲加工と、こういうふうな名目で全部出ているわけです。しかも、これは飼料としてかなり出ているわけです。すると、トン当たり、かりに五万四千円で買ったものを幾らで流しているのです。そのもうけは幾らです。
  30. 前田充明

    政府委員前田充明君) トン当たりにして二十三万五千八百十円でございます。売っているわけでございます。
  31. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは、たとえば三十六年度横流しした量とその額です。それから三十七年度幾らか、三十八年度幾らかと、年度別に答えていただきたいのです。
  32. 前田充明

    政府委員前田充明君) どうも、横流しとおっしゃるのですが、私は、横流しという意味ではちょっとお答えしにくいのでございますが、これは、農林省の指定した会社見積もり合わせと申しますか、入札によりまして、その農林省指示どおりにやっておりますので、それをひとつ御了解いただきたいと思うのです。三十五年度におきまして三千百十トン。これは、輸入数量と、この検査結果の不合格とは、ズレがございますので、はっきりと確定的ということは申し上げられませんが、三十五年度中で不合格品になったものが、いわゆる事故品でございますか、これが三千百十トン、三十六年度が八千四百三十二トン、この差異が、先ほど申しました特別な実例でございます。それから三十七年度が二千九百十ミトン、三十八年度が六千九百三十九トン、これはいわゆるミルク義務教育全部に飲ますという計画でやったのでございますので、総量がふえておりますが、それから三十九年度が二千三百十三トン、これは五・一%になっております。
  33. 千葉千代世

    千葉千代世君 横流しということばは取り消せとおっしゃるのですけれども、しいて言うならば、合法的な横流しなんですね。というのは、子供に対して来たものでしょう。それが横へ流れたのは横流しじゃないんですか。目的が違ってきたわけでしょう。横流しということばのニュアンスの問題ですが、私は、これは明らかに日本子供たちに当てて来たものが横へ流れて、しかもそれがたいへん商いお金で流れている。いま答弁の中にございましたのですが、私の調べましたのと心し違うようなんです。たとえば、三十六年度輸入総量が三万四百トンで、それを今度飼料用に一千七百五十五トン流している。トン当たりが八万五千円で流れているわけです。横へ流れている。加工用に六百三十六トン、トン当たりが二十四万五千円で、分量にしてほぼ一一%に当たっている。この横流し利益を概算しますと約二億円にのぼるわけです。同様に、三十七年度が、この利益は概算三億八千万円。三十八年度が大体トン当たりが二十三万円だ。こういうふうに、五万五千円から六万幾らで入ったものがたいへんな値幅で流れているわけなんです。  これは農林省に伺いますけれども、この輸入した額と、しかも今度はほかへ流れた額との差が非常に大きいのですが、その点について、これは妥当だと思っていらっしゃるのでしょうか。農林省指示だということを、いま文部省おっしゃったんですけれども
  34. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 政府委員から答弁いたします。
  35. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お答えをいたします。  アメリカからの学校給食用脱脂粉乳輸出価格、わがほうでいえば輸入価格というのは、これは特別な価格でございまして、アメリカ国内における一般流通価格よりも安いのでございます。それが入りましたもののうち、学校給食に供給いたしますのには、品質として適当でないというものについては他の用途に処分せざるを得ない。その処分の場合に、えさ用に使用をいたしますものと、えさ用にしなくとも、加工処理をすることによって衛生上の害もないというものは、一部食品用に回すということをいたしておるわけでございます。その場合の価格水準としては、えさ用は、脱脂粉乳の持っております飼料成分というものを一般穀物飼料成分との比価で計算いたしまして適当な価格をきめておるわけでございます。それが、ただいま申し上げました八万三千円ないし八万五千円という数字になるわけでございます。それから食品用価格については、これは国内で生産され販売をされております脱脂粉乳との均衡価格というものが結局入札価格となってあらわれるわけでございまして、品質の差がございますので、国内流通価格よりはやや安値に出ておるというのが事実でございまして、この国内事故品処分をいたしております価格は、国内流通市場における価格水準から見れば、私は適当であるというふうに考えております。
  36. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますというと、これだけ安く仕入れて高く売るとなるというと、ある意味で言えば、学校給食にすれば絶対に損をするが、たいへんもうかることになりますね。その点いかがですか。
  37. 前田充明

    政府委員前田充明君) 常識的なことばで言えば、もうかるということになるわけでございます。しかし、これはなぜそういう結果が起きたかというのは、いま畜産局長からお話し申しましたように、学校給食用のために特別な価格で、いわゆる国際価格よりもずっと下回った価格で特別に買っておるということによって、そういう結果が起きたわけでございます。
  38. 千葉千代世

    千葉千代世君 この不良品をそとへ出したということになるわけですが、この不良品の判定というものは、どうなんですか。基準。
  39. 前田充明

    政府委員前田充明君) 不良品の判定は、横浜へ船が着きますと、大体船の途中で不良になることが大部分でございます。したがいまして、そいつを横浜で、厚生省のほうで、係官がおりまして検査をいたしまして、これは飼料用である、これは加工用にすることができる、これは正常なものだ、そういう判定をしていただくわけでございます。
  40. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、学校に参りまして、ふたをあけた場合に、たとえば非常に製造会社によって、ぷんと鼻をついてきて使用できないようなものがありますね。そういうものについては、これはずっと回収するんでしょうか。それとも、がまんして飲めとやっているんでしょうか。
  41. 前田充明

    政府委員前田充明君) 横浜で検査をいたしまして、そこで通過した後におきまして、そのあと、まだ倉庫にございましたり、それから鉄道で各県へ配付しまして、それからまた各県の倉庫にある、そういうことによって、その途中の間に事故品となる場合があるわけですが、そういうものは、学校においてこれはおかしいと思ったものは、すべて事故品として取り扱って、学校給食会の全体の事故品の中に繰り入れまして、そうして、先ほど申しました農林省指示なり許可なりで払い下げをいたすわけでございます。
  42. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、その差し引いた分についての補てんしたものは、これは無料でございますか。無料といっては何ですけれども、その額は補償するわけですね。
  43. 前田充明

    政府委員前田充明君) それは、学校としては数字の中に入らないで処理されるわけでございます。
  44. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほどのお話の中に、大臣の御答弁の中に、大体まあ一年以内の製造年月日、このものがまあ妥当だとおっしゃったわけです。現実には二年以前のものが使用されている。そうすると、倉に入りますとき検査いたしましたのと、その後年月がたいへんだっておりますので、これが相当いたんでくることが想像できるわけです。倉庫の湿気状態その他によりまして。そうしましたとき、その処置はどうなさっているんでしょうか。
  45. 前田充明

    政府委員前田充明君) 学校で、非常に古いものはもちろん取りかえるわけでございます。先ほど大臣からお話し申し上げたそうでございますが、現在では、もう古いものは非常に少なくなっております。私も全部数字を見ておりませんが、昨年来特に新しいものをということを特別に話をしまして、そうしてそういうことになっておるわけでございます。
  46. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、一年以上たったものについて、これは不良品ということになりますか。使っておった場合には。
  47. 前田充明

    政府委員前田充明君) 全部もう一年以上たったから、これは形式的にもすべて事故品ということにはいたしませんで、検査によって判定をいたしたいと思います。
  48. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから昨年の春の値上げのときに、アメリカのほうから、この脱脂粉乳アメリカで余っているのではない、ブラジルとかイタリアとか、そういうふうなところがたいへんほしいと言っている、そう需給関係の都合で値が上がったという通告があったそうですが、それは事実でございますか。
  49. 前田充明

    政府委員前田充明君) もちろん、それは大きい原因でございますが、一般的に欧州方面で脱脂粉乳の需要が非常にふえてきたというような話を私どもとしては聞いております。
  50. 千葉千代世

    千葉千代世君 そのように値上がりしていって、しかもまだことしも値が上がっている、これからあとも値上がりを予想される、こういう中で考えました場合には、やはりこの際思い切って、なま牛乳の生産とあわせて、そうしてそれに転換していくというのは一日も早いほうがいいと思いますが、いかがでしょう。
  51. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点は、先ほど私が申し上げましたように、具体的に、今年度におきましても昨年度の約倍のなま牛乳を使うことにいたしたわけでございます。できるだけ早くなま牛乳学童給食に使うということは、いまの脱脂粉乳との関係のみならず、これは日本の畜産政策とも関連いたしまして、私どもとしてはたいへん望ましいことである、一日もそういう時期が早く来ることが望ましい、かように考えているわけでございます。
  52. 千葉千代世

    千葉千代世君 農林大臣にお尋ねいたしますけれども、農林大臣は酪農の会合に行きましたときに、なま牛乳を、赤ちゃん、それから子供、病人、妊婦、これらになるべく飲ませるように努力したい、その生産については、計画的にやればこれは補えるという話をしていらっしゃいますけれども、どのようにお考えになっていらっしゃるか。具体的には、二百万石を二年か三年以内ということを文部大臣は言っておりますけれども農林省のほうの需給計画では、その点はいかがでしょう。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 乳幼児といいますか、小さい赤ん坊等に、牛乳一般に飲めるようにしたいという希望は持っていますが、これは私の管轄でございませんので、そこまでの手当て、方法はまだ考えておりませんが、学校給食のほうにつきましては、先ほどからるるお話がございましたように、私どものほうでも計画を立てて、脱脂粉乳にかえて全部なま牛乳給食したい、こういう計画を持っています。先ほど文部大臣からお話がありましたように、ことしは七十万石でありますが、四十五年には完全になま牛乳脱脂粉乳にかえっていく、こう思っています。文部大臣のほうから二百万石というふうなお話がありましたが、これは途中でござまして、四十五年には三百五十万石ほどの牛乳で必要でございます。三百五十万石で四十五年度までには完全になま牛乳給食していきたい、こう考えております。
  54. 千葉千代世

    千葉千代世君 文部大臣の先ほどの数の二百万石も、私もふしぎに思ったのですが、それは小中だけのことですか。これは幼稚園とか、それから高等学校の定時制などを加えますと、大体どのくらいの予定になりますか。
  55. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど私二百万石ということを申し上げましたのは、中小学校中心にして、かつ、ここ、できるだけすみやかに到達し得る中間目標を申し上げたわけでございまして、いま農林大臣からお話がございましたように、そのほか範囲を広げ、かつ全部に行き渡るようにいたしますのには、三百五十万石というのが目標でございます。
  56. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、入学試験に関連してお尋ねいたしますけれども、いま、幼稚園から高等学校、大学と、ずっと一貫して非常な試験地獄の中に子供たちが放置されているわけなんですが、特に大学関係で見ていきますというと、これは衆議院でもたいへん問題になりましたんですけれども、私立学校に、公立、国立の責任をだいぶ転嫁されているような経済状態になっておりますが、いかがでしょうか。文部大臣のほうから……。
  57. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 公立と私立の関係でございますが、これは、義務教育については別に御説明するまでもないと思いますが、たとえば大学で申しますと、現在、御承知のとおり、おおむね百万人の学生が——昨年の春現在くらいでいえばさような状況であると思いますが、そのうち六十九万人、ほぼ七割が私立の大学もしくは短大の在籍者である、大体七対三ぐらいの割合になっているというのが現状でございます。したがって、別に意識的に転嫁しているわけでもございませんけれども、前からの状況、ことにいわゆる文科系と申しましょうか、そのほうの学生数は、従前から、あるいは戦前からも私立の大学に非常に多かった、こういう傾向がずっと続いている、そして現在は大体七対三というような状況である、というのが現状でございます。
  58. 千葉千代世

    千葉千代世君 ここに三月五日付の文部省の資料をちょうだいしたんですが、その三枚目でございますけれども、最近五カ年間における私立大学の入学時に一時に納めるお金の額が、慶応、早稲田、立教、明治、法政、中央、学習院大学、日本医科、日本女子大、東京女子大と、こういうふうに載っているわけですが、その一番上にあります。たとえば慶応大学でいきますというと、医学部に入りました場合に、昭和四十年度、ことしですね、一ぺんに五十万納めるようになっておりますんですけれども、この五十万円を払える家庭というのは、大体収入がどのくらいあったら払えるのでございましょうか。また月々お金が要りますけれども、とりあえずお金を払っていくのに借金しないで払える層です。
  59. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはなかなか手きびしい御質問で、私も実はそこまで的確に御納得のいけるような資料を持ち合わせておりませんが、ただ、最近の傾向を申し上げますと、非常にこの大学の進学率、志願者がふえております。そのことは、反射的に、たとえば特定の学校の名前を申し上げるのもいかがかと思いますが、従来富裕家庭の子弟が多かったといわれる有名校におきましても、このごろは従来よりもずっと低所得層の子弟が入るようになっております。これはいまここに、手元に持っておりませんけれども、相当的確な調査もできておるわけでございます。そういう点から申しますと、低所得者の家庭の人たち、あるいは自力で大学に進学したいという青年が非常にふえております。こういう人たちに、何とかその気持ちに報いなければならないというのが、もう私どものほんとうにこれは真剣な、深刻な問題になっておるということを申し上げたいと思います。
  60. 千葉千代世

    千葉千代世君 大体私、計算してみたんですが、間違っているかもしれませんが、このくらいのお金を払える家庭というのは、二百十万ぐらいの年収がないとやれないわけです。しかも、子供が多ければなおできない。それからボーナスを抜いて月に十七万円ぐらいの平均の収入。そうすると、この年収二百十万円という家庭は、世帯は、日本の全世帯の大体何%くらいに当たると思っていますか。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 六十万世帯くらいだと思います。的確な数字はよく調べなければわかりませんが。
  62. 千葉千代世

    千葉千代世君 これはたいへん違う。みな金持ちだから人ごとのように考えていらっしゃるのですが、全世帯の〇・三%にくらいしか当たらないのです。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうです。二千万の六十万ですから。
  64. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうですが。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連質問ですから簡単にいたしますが、詳細は分科会等で伺いたいと思うのですが、愛知文部大臣にお伺いしたいと思うのです。ただいま千葉委員から御質問ございましたが、私立大学の月謝あるいは入学金等の問題、これは御承知の慶応大学等でいろいろ問題になっておりますけれども、そこで、一番私立大学の経営のネックになっている問題は、銀行から多額の借り入れ金をやっているように聞いております。私学振興会もございますが、あれは一割以上のものについては共済会みたいなものがございまして、そこに多少の負担をするというように聞いております。詳しくはまた分科会等で伺いますが、そこで、大体一割以上、安くて九分くらいの銀行から金を借りているわけけです。そこで、さっき御答弁ありましたように、私立大学について政府が大学の施設あるいは大学教育等について私学に伝嫁しているわけではないと、こうお話ありましたが、しかし、私学も国立もその使命についてはあまり変わりないと思うのです。そこで、政府資金ですね、資金運用部資金等の政府資金、五分五厘くらいだと思うのです。あるいは六分、これをもっと私は融資すれば、かなりこれは緩和されるのじゃないかと思うのですが、この点をひとつお考えになったことがあるかどうか。これは詳細はまた分科会等で、どのくらい私立大学で借金があり、どのくらいの金利負担であるかということを詳細に伺いたいと思いますが、私は、政府がやる意思があるならばできると思うのですよ。そこで、これはもう一番のネックであるというように私も聞いております。したがって、この点については真剣にお考えになる意思がおありかどうか。詳細はまた分科会で伺いますが、その点について一点伺っておきたい。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申しましたが、この問題は非常に深刻な問題になっておりまして、私ももうあらゆる努力をこれに注ぎたいと考えておるわけでございますが、ただいま御指摘がございましたように、最近の私学の運営の状況を見てみますと、まさに御指摘のとおりで、債務償還費というようなものが非常に重圧になっております。で、これは限界まで来ておりますので、自然、学生及び学生を通じて父兄の負担になるような授業料はじめ入学金等にロードが急激にかかってくる。これはもちろん数百に及ぶ私立大学のことでございますから、それぞれの経営のやり方等によって一がいには申せませんけれども、相当有名な、りっぱな大学で、債務にあえいでいる、元利の支払いにきゅうきゅうとしておるというのが現状で、これは急速に何らかの打開策を講じなければならないと考えるわけでありまして、これは機会がございましたら、別にひとつ詳しく私ども考え方もお聞き取り願いたいと思うのでございますが、一応私といたしましては、四十年度に、大学の志願者の急増が始まる時期でございますから、私学振興会の融資のワクを百五十億にいたしまして、これは昨年に比べますと倍程度になっております。そのうち六十四億が志願者急増のための施設費等でございますが、これは私学側の借り入れ希望の四割五分くらいを占めておりますので、まずまず四十年度はひとつこれでやっていただいて、その間、ただいま御審議を願っておりますが、臨時私立学校振興方策調査会というものをつくっていただきまして、もうこれはほんとうに各方面から真剣にひとつ御討議をいただいて、応急策と恒久策をつくり上げたい。これは財政問題もございます。税制問題もございます。また、大学のあり方というようなもっと基本的な問題もあろうかと思いますが、そういうことを総合的に政府としても真剣に真正面に取り組んでいきたいと考えているわけでございます。
  67. 千葉千代世

    千葉千代世君 私学に対する助成の問題も当然大事なことです。国の責任でしていただかなければなりませんけれども、と同時に、奨学資金の増額という点についても御考慮いただきたいと思っております。具体的には、私の調べました範囲では、学生によっては違いますけれども、親戚や縁故関係に下宿している方は少なくて、やはり四畳半の部屋を借りて五千五百円、ひどいのは六千円も払って、それに食費を加える、通学費を加える、いろいろ加えますというと、出費がたいへんになってしまって、アルバイトを希望して、たとえば学徒後援会に毎日八百人から千人いるわけです。しかも、一カ月に直しますというと、大体まあ五千円くらい。奨学資金が三千円としまして、あとの八千円はかせぎ出さなければならない。このように考えてみますというと、奨学資金の増額、しかも、貸し付けではなくて給与をしていくという方法についての答弁を願いたいと思います。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 奨学資金をふやしていくことは大賛成でございまして、四十年度予算にも相当の増額をしているつもりでございます。それから、ただにしたら、くれてやるような制度はどうかというお尋ねでございますが、これは私の考え方とはちょっと違いまして、やはり返してもらうということにおいて、後進に対するまた奨学資金をふやすことにもなりますので、これはひとつ生かしていきたいと思っております。もっとも、しかし、一面におきまして、たとえば教職員になる人その他、これも今国会で御審議を願っておりますけれども、養護教諭になる人とか、あるいは幼稚園の保母になる人とかというような学科コースを学ぶ人で育英会の奨学金をもらうという方々に対しては、その借り入れ金の減免の措置を講ずるということをもちろんあわせてやっておりますけれども一般的に、ただの給付というのはいささかこれは理想に走り過ぎる考え方ではなかろうか、かように思っておりますことを率直にお答え申し上げます。
  69. 千葉千代世

    千葉千代世君 終わります。
  70. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 千葉君の質疑は終了いたしました。
  71. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、羽生三七君。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 きょうは主として佐藤内閣の経済の基本政策についてお尋ねいたしますが、その前に、最初にちょっとお尋ねしておきたいことは、前内閣の所得倍増計画を継承していくかどうか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる経済成長につきまして、高度経済成長、これは今回は中期経済成長計画、これにのっとって予算を編成いたしたのであります。所得倍増計画そのものを変えたという、こういうわけではございませんが、いずれにいたしましても、ただいまの経済を安定基調へ持っていくということを骨子にいたしまして、そして、それを第一の要務と考える、その観点に立って経済の鎮静、安定基調、こういう方向で努力していく、こういうことでございます。
  74. 羽生三七

    ○羽生三七君 名称もそのまま所得倍増計画ということで続けるのですか、変更する考えはありませんか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまも言われるように、倍増計画と申しますよりも、これを変えたというわけではございませんが、ただいまの中期経済計画、それを骨子にして進めていく。もちろん所得はふやしていかなければなりません。最初の十カ年の倍増計画、その線はただいままだくずしてはいない、かようにお考えいただいてもよいかと思いますが、これはまだ期間が残っております。とにかく、ただいま中期経済計画、そのほうに重点を置いている、かようにお考えいただきたいと思います。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 少なくとも農業面に関する限りは所得倍増計画は破綻したのではありませんか、いかがでありますか。
  77. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農業面が所得倍増計画と関連を持っておるのは、自立経営農家の育成ということであると思います。自立経営農家の育成につきましては、はかばかしくないので、所得倍増計画を捨てたのではないかという御指摘だと思います。自立経営農家の育成という面につきましては、農業基本法にもありまするように、二つの面から規定してあると思います。一つは、経営規模の拡大という点で自立経営を育成していく。一つは経営規模ということを離れはしませんが、所得が他と均衡を得られる、こういうふうなことで自立経営農家というものを規定している。規定のしかたによりまして二通りにとっております。しかし、私は両方とも自立経営農家育成だというふうに考えます。そういう点で、所有倍増計画におきましては、経営規模のほうに重点を置きまして、二町五反以上の農家百万戸を十年間に育成する、こういう点に重点を置いております。それから、今度の中期経済計画等におきましては、大体六十万以上の所得を得られる農家——粗収入で言えば百万以上の農家、こういうふうに所得の面からの自立経営農家を規定しているのでありますので、所得倍増計画を放棄したということではございませんが、所得倍増計画の自立経営農家に対する把握のしかたを変えてはおる。しかし、根本的にこの倍増計画考え方を捨てておらぬ、こういう次第でございます。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、数字で見る場合ですが、いまのお話の自立経営農家、経営規模、この農家数を三十五年二月と三十八年十二月を対比した場合に、一町歩から一町五反の農家数は九十九万四千戸が九十九万五千戸の増で、わずかに千戸、一町五反から二町の農家は四十万三千戸が四十二万九千戸で二万六千戸の増、二町以上は二十三万三千戸が二十六万六千戸で三万三千戸の増、これで過去三年間に、二町五反歩どころか、一町歩以上の増加総計がわずかに六万戸ですから、二・五ヘクタールの自立経営農家百万戸創設というその面に関する限りは、所得倍増計画はこの農政面の大目標が完全にこれは破れたわけです。私はこのわずかな、たとえば十カ年計画が一年か二年ずれて、せいぜい二、三年の差ができる、誤差が生ずる、これを言っておるのじゃありません。この趨勢でいけば、十年を二十年にしたところで全然達成される見込みはありません。でありますから、これだけの根本的な変化が生じたということは、倍増計画を放棄したとか放棄しないとかいう問題じゃないのです。完全に失敗したのではないか。ただ、私は、赤城さんの個人の責任を追及しておるのでもないし、それから、私がそれ見たことかと言ってりゅういんを下げるわけじゃない。毛頭そんなことは考えておらない。その視点に立って新しい農政を考えなければならないと思うのですが、その問題は一番あとに触れますから、それは倍増計画計画どおりにいかなかったということを率直に認めたほうがいいのじゃないかと思うのですが、これは総理いかがですか。
  79. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの、平均二町五反百万戸を十年間に達成するということにつきましては、そのとおりにいっておりません。いまのお話のように、一町五反以上の農家につきましても三十五年は六十四万戸ですか、三十八年は六十九万戸ということでございます。そういう速度でございますので、非常に期待どおりにいっておりません。それは率直に認めます。しかし、その方針は私は捨てるものではない。今度の計画によりましても、十年間という年度は切っておりませんけれども、平均二町五反——固定したものではございませんが、それを目標としての経営規模の面におきましても拡大していこうという方向は持っておるわけでございますが、それが実現できそうもない。いまのところ、それは率直に私は認めております。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、所得倍増計画という構想は悪いとは思わないのです。これは非常にけっこうなことだと思います。ただ、問題は、それが計画どおりに実現できない場合には、キャッチ・フレーズとしてはそれはいいかもしれません。しかし、国民に対して私ははなはだ罪深いと思う。本来、自由経済のもとでこういう計画を立てた場合には、強力な、それをしかも目標どおりに期間内に達成しようと思うならば、相当強い政治力とかあるいは規制力がなければ、これをできるはずがないのです。そうなのに、政府はあれだけこの所得倍増計画というものを非常なキャッチ・フレーズに使ってきた。しかも、それが一年か二年の誤差ならとにかく、十年を二十年にしても見込みのない部分が出てきたわけです。それでいまの農林大臣のお話のように、十年というワクを切ってしまったわけですね、倍増計画も、自立経営農家の面でも。これは十年計画と言って国民にはたいへんな一つの希望を与えたわけです。特に国民は、これは一応の政府目標と言われるでしょうが、国民のだれもが国民総生産、国民総所得で倍になると考えておるのじゃないですよ。一人一人の国民所得が倍になる。ところが、政府の倍増計画は、国民総生産、国民総所行です。これが実は物価値上がりのムードとなったし、それから、国民は非常なる期待を持って所得倍増ができると思っておるのに、これだけ計画が食い違った場合には、私は所得倍増計画という名前を経済十カ年計画とでも変えるべきではないか。これは、池田さんのときにも私は何回も申し上げました。これは政党のキャッチ・フレーズにはいいかもしれませんが、国民にはたいへん罪深いと思う。名前をお変えになる意思はありませんか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま所得倍増計画、これは国民と政府の間に大きなそごのあるということは御指摘のとおりでございます。私は、しかし、政治の姿勢として所得倍増計画、これはたいへんけっこうなことではないか、そういう意味の協力、また、そういう意味の一つのビジョン、そういうものを与えたことは確かにこの計画のいいところであったと、かように私思います。しかしながら、ただいま計画がそごしておる。本来自由経済のもとにおきましても、また、特別な団体主義的な統制のとれたところにおきましても、天候等に左右される農業、また農民の土地に対する愛着心、そういう点を十分念頭に置いてそうして計画を進めていかなければならない、かように思います。私は、ただいま農政にとっております態度は、遅々として進まない、また、その計画もはっきり変えるべきだ、かようなお話でございますけれども、これは、ただいまの態度はいいように思いますので、これは進めていきたいと、かように私は思います。ただいま言われるごとく、所得倍増計画、これは国民総所得、かような意味において考えられておる。またしかし、国民のほうは片一方で個々の個人の所得が倍になる、かように考えるわけですが、個人の所得が倍になること自身にも、実は少し疑問があると思います。ただいま五のものが倍になりましてもこれは十、十のものが倍になれば二十と、その差は大きく開いて今度は十になる、かように考えますので、いわゆる現在あるがままの姿による所得倍増、これは国民一人一人にしても必ずしも私はそれを考えていないと思うのです。今日、一方で非常に問題を起こしたものは、所得の平準化、また賃金の平準化。所得の平準化が各面に非党に急速に行なわれておる。こういうことが今日の経済にいわゆるひずみを生じた、こういう問題の原因でもあるのではないか、かように思いますので、いずれにいたしましても、これは長期計画に基づく、そうして一つのビジョンを持つ、そういう方向への協力、これを願わなければならない、かように私考えますので、ただいまの農政自身についての批判はいろいろおありだと思います。数はわずかでも自立農家ができる、あるいは専業農家が、在来からあまり進んでいないと言われながらも、その規模はだんだん大きくなりつつある。しかして、第一種あるいは第二種兼業の農業については、農家所得のふえるような政策をとっていく。あるいは、したがって、過密都市の分散であるとか、あるいは積極的な工場誘致であるとか、あるいは雇用の機会をふやしていくとか、かようないろいろの方法をとっておるわけです。私は、農業自身の生産性の向上、これが計画どおりにいかないからといって、農家自身が従来どおりの状況に置かれると、かようには私は考えませんので、階層によりましては農家所得をふやす、農業自身必ずしも自立農業、こういう形でなくても、農業農家収入をふやす、こういう点に特にまた力をいたしていくということで、総体としての経済の発展、それを期していきたい、かように私は考えます。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 農業問題は、一番あとに伺います。  そこで、高度成長から安定成長、社会開発、ひずみ是正、人間尊重、これが佐藤内閣の政策の基本であると思います。そこで、四十年度予算案で財投計画を見た場合、これは佐藤内閣の方針が部分的には出ております。けれども、全体としての政策は、少なくとも社会開発、ひずみ是正、人間尊重を最高の基本政策とした佐藤内閣の初の当初予算としては私は不十分だと思う。これは木村さんが先日指摘されたとおりであります。この予算案では、また同時に、高度成長政策の矛盾を思い切って手直しをするという強い積極的な姿勢を私はくみ取ることができない。その例証も木村さんがあげました。  そこで、まず政府の経済の基本政策に関連してでありますが、私の考えでは、政府は成長率をダウンさせる、それだけに問題の中心を置いているのではないか、そう感じられます。しかし、それだけではないんではないか。もう必要なことは、過去の荷度成長政策の性格そのものの再吟味、再検討、そこから出発すべきである。もちろん成長率も重要なこれはファクターであります。これは当然であります。しかし、この日本経済の高度成長が大企業中心の投資先行によってもたらされたとするならば、そこから生じたひずみを是正するというからには、この問題を根本的に検討し直さなければいけないと思います。なぜなら、成長率を単に下げるだけだとするならば、高度成長下に起こった諸矛盾は、多かれ少なかれ、そのまま縮小均衡の形で温存されます。もちろん、成長率を下げることによる寄与、これもひずみ是正や物価問題と関連して重要であることは、これは当然であります。しかし、今日は高度成長に対する批判と反省を通じて、そこから生じたひずみ是正、そのひずんだ部分全分野に、徹底的な施策に重点を移さなければいけないのではないか。それでなければ問題は解決はしない。その意味で、せめてこの二、三年、あるいは中期経済計画の期間中くらい、この立ちおくれた分野、すなわち農業とか零細企業の低生産部門をはじめ、総理の言うところの社会的ひずみ是正、さらに社会保障の強化等、この各分野にわたって徹底的に施策の重点を置きかえるべきでないか。私は、部分的にはその意味の政策があることを認めております。けれども、この程度では全然問題の解決にならない。だから、ここしばらくは徹底的に重点を置きかえるベきだ、こういうことであります。たとえばいまの農業の問題でも、農業年次報告では、格差の拡大を報告しておる。縮小どころか拡大を報告しております。それから、中小企業も、この中小企業白書でも、困難な今日の現状に触れて、その最後には、日本経済全体の発展のために、中小企業の飛躍的な体質強化が必要である、こう結んでおる。もちろん、四十年度予算には、中小企業対策費が前年度より多く組まれております。しかし、全予算に占める比率はわずか五、六%程度です。どうしてこれで飛躍的な体質改善ができますか。できるはずがない。だから、理屈っぽく言いますと、今日までの経済成長軍点機構——経済成長を重点としたこの機構を、格差縮小とかひずみ解消の機構に財政の中心点を転換すること、置きかえることだ。それがなければ、絶対にひずみ是正はできない。例証はだんだんあとからあげます。長い、永久なんということまでは言いません。ここしばらく——二、三年あるいは中期経済計画の期間中くらい、そういう首相の言われる社会開発、ひずみ是正に予算の重点を、少しずつ頭を出すのではない、根本的に置きかえる考えはありませんか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今度の予算を編成いたしましたが、それは経済安定への予算とでも申しますか、そういう意味でつくる。同時にまた、社会開発、これを推進する予算、かような意味で、社会開発そのものの予算というわけではございませんが、ただいまお話のように推進する予算、かようなたてまえをとってまいったのでございます。  どうも、もっと重点をはっきりさせたらいいじゃないか、これはお説のとおり、われわれも非常に努力してまいりました。しかし、今回の予算自身が安定成長への予算、かように考えると、どうしても財政的には刺激を与えないようにくふうしていかなければならない。そういう考え方予算の中で、ただい左御指摘になりますような社会開発の点等においては、重点的にこれを、倍率といいますか、あるいはその比率を高めて、増率を高めていく。したがって、総体として一二・四%の伸び率でありますが、しかし、特殊な項目についてはそれぞれこの一二・四をはるかに上回る数字に押えてきめていく、まあ、こういうところで、やや私ども計画の方向には向かいつつある、かように思います。  ただ、一言弁解がましいことを申し上げるわけではございませんが、この種の経済の状態というものは、これ一朝一夕にはなかなか直らない、また、社会開発というようなこの政治上の基本的姿勢になりますと、これまた一朝一夕にはなかなか解決のできるものではございません。この点は羽生さんもよく御理解いただけるものと思います。ただいま申し上げますように、それぞれの項目において、今回の予算編成においても、重点的にはすべてを考え、そうしてその点をまかなう、そうしていわゆる社会開発を促進する、進める、推進する予算、私はかように考えておるのでございます。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 この日本経済の高度成長は、一面で多くの矛盾を生んだし、また、犠牲をしいた半面、相当国際競争力を培養したことは、これは事実であると思います。三十九年度の輸出の伸びは、欧米諸国の景気の動向にささえられたということがあるにしても、同時に日本の企業の国際競争力を強化したあらわれでも私はあうたと思う。だから、そういう意味では、ある程度目的を達成したんです。だから、単に成長率をダウンさせるだけでなく、この辺で施策の重点を置きかえるのが佐藤内閣の使命だと思う。  そこで、これを裏づけるために、私は日本と欧米諸国との経済及び国民生活についての国際比較を数字でちょっと見てみたいと思います。まず成長率ですが、一九六三年実質で、アメリカが三・八%、イギリスが三%、西独三・二%、イタリア五%、フランス四・七%、EEC全体で三七%、OECDが三・八%、日本は実質一二・一%で最高。それから鉱工業生産指数は、一九五八年を一〇〇として、六四年十月で、アメリカが一四四、イギリスが二三〇、西独一五八、イタリア一七九、フランス一三六、日本は二七〇、これまた世界最高。それから消費者物価指数、これは成長率ほど差はありませんが、これも今日のところ日本が世界最高。ところが、一人当たり国民所得を見ると、一九六三年、アメリカが二千五百二十七ドル、イギリス千二百六十ドル、西独千三百七ドル、フランス千二百六十六ドル、日本は五百二十六ドルで最低です。  この数字でも明らかなように、経済の基本的な面では、それぞれ例示した国の中では日本が世界最高です。ところが、国民所得は最低である。したがって、さきにも申し上げましたように、こういうことの結果、多くの矛盾、格差や社会的ひずみが激化したんですから、それとともにまあ確かに企業の国際競争力も相当できてきた。でありますから、単に成長率を下げるだけでなしに、この辺で積極的に予算や財政、財投のウエートを変えるべきだと思う。私があげた数字はこれを立証すると思いますし、またあと、これから具体的なことをお伺いいたします。ですから、世界的に見たってこうなっておるんですから、山高きをもってとうとしとせずと同じように、成長率の高いだけが問題ではないんです。個人の生活水準が問題だ。だから、この辺で施策の重点を置きかえていい条件が備わっておる。でありますから、重ねてもう一度これをお伺いいたします。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年度から開放経済に向かっておりますので、予算も安定成長に移さなければならないということで、中期経済計画にあります平均八・一%の成長率に対しまして、今年度は実質七・五%、こういう目標を立てておるわけであります。また、安定成長に移すだけではなく、ひずみの解消、また、各種国民生活の向上をはかるために、予算の主点を変えて、あるものは一時停止し、あるものは倍増、三倍増、こういう御議論だと思いますが、御承知のとおり、一般会計の規模も大きいことは事実でございますが、戦後、先進国の経済体制に移ったり、また、先進国の生活様式、生活のレベル・アップをはかるためには、歳出要求というものは非常に大きいわけであります。戦後二十年間で先進国でやっておる社会保障の水準まで追いつこうというだけでも歳出要求は非常に大きいわけでございまして、現在の歳出規模の中で四十年度予算におきましては社会保障や社会開発、ひずみの解消ということに対して可能な限りの努力をいたしたわけでありまして、急激に一般会計の規模を大幅に縮小するというような状態にないという事実も御承知いただきたいと思います。しかし、あくまでも財政が経済を刺激をする、ひずみをなお拡大するというような状態ではならないわけでありますので、そういう面にも十分配意をしながら、もうすでに基礎的な投資が行なわれてしまって維持修繕の段階になっている先進国と、その水準まで早急に追いつかねばならない日本ということは、単純に比較できないことも御理解いただけると思います。何ぶんにも安定成長の中でひずみの解消をはかるべく、予算規模の圧縮も可能な限りはかったわけであります。
  86. 羽生三七

    ○羽生三七君 いま大蔵大臣の答弁された部分は、あとからだんだん触れていきます。そこで、日本の重化学工業化の比率ですね、国際比較。これは数字の資料を用意するようにお願いしましたから、ここで示していただきたい。
  87. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 日本の重化学工業化率を申し上げますが、これは製造工業におけるところの付加価値に占める重化学工業の比率をとってみたわけであります。昭和三十年が四九%、それが三十五年には六〇・二%、三十六年が六二・八%、三十七年が六三・二%、三十八年が六〇・一%、三十九年が六五・五、いずれも暦年でございます。年度じゃないです。それで、これに対応する外国の例を調べてみたのでございますが、これはいずれもそろった数字昭和三十六年暦年のものしか得られませんので、三十六年の数字を申し上げますが、アメリカでは六二・五、イギリスでは六二・六、西ドイツでは六三・八、イタリアが五五・九ということで、同じく三十六年の日本数字六二・八に比較いたしますると、大体重化学工業比率という点からは、それらの諸国と大体比肩する程度に至ったかと、かように見ている次第でございます。
  88. 羽生三七

    ○羽生三七君 新しい数字では、指数のとり方もありますが、重化学工業化でも日本が世界最高です。現時点では。所得倍増計画では、軽工業と重化学工業の比率を、軽工業三七・五%、重化学工業六二・五%と策定したのです。ところが、政府はこれを重化学工業の比率を七三%にした。したがって、中小企業が今日当面している倒産等の問題を金融面だけから見ている人がありますが、問題の本質は、それもそうでしょうが、同時に日本の重化学工業の比率が世界最高に伸びてきた、ここにもある。私はさきにソ連、東欧の社会主義国を見てみましたが、これらの国で問題になっているのは、やはり重化学工業と農業との比率で非常にこれらの諸国も悩んでいる。日本の中小企業、農業だって同じ問題だと思う。これはあわせて考えて非常に興味深いものが私はあると思う。  とにかく、いまの数字でも明らかなように、雑貨の国、おもちゃの国といわれた日本が、いまや重化学工業で世界最高になったわけです。したがって、経済成長の機構を、先ほど申し上げましたように、ひずみ是正の機構、格差縮小の機構に置きかえていく、そういう政治の基本的な姿勢やそれを裏づける予算の編成というものがなかった場合は、これは全然問題の解決にならない。大蔵大臣は経済成長の歴史的時期ということを言われましたが、日本の立ちおくれたそのことはあとから触れます。私は現時点でもう重大な政策変更——急激なことはできませんよ、それはものすごいショックを起こすようなことはできませんが、それにしてもまだ本年度予算編成ではその変化が少な過ぎる、もっと重点を置きかえる、これを言っているのです。いかがですか。
  89. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、日本も最近は賃金が相当上昇してまいりまして、雑貨とか、いわゆる繊維製品とか、またはおもちゃとか、そういうふうないわゆる軽工業製品というものは低賃金に依存する程度が非常に多い。しかも、東南アジアその他低開発国においてそういうふうな工業が最近ぐんぐんと発達してまいりました。そういうふうな関係上、たとえば繊維製品等においては輸出努力は私ども見るところでは非常な努力が行なわれておる。にもかかわらず、これの伸びはそれほど大きくなくて、むしろ技術革新がどんどん行なわれ設備投資のわりあいに進んだところの重化学工業製品がどんどん進んできたということは、羽生先生もよく御承知のとおりだと思います。  それから先ほど総理に対する御質問にもございましたが、中期経済計画におきましては、国際収支と消費者物価というものを安定させるという基本的な条件のもとにおいて最高の成長率を求めたいという考えを持っておる次第でございます。しこうして、消費者物価を安定させるためには、生産性の格差が中小企業と大企業との間、または農業とその他の産業との間に相当大きく存在している。したがって、この生産性の格差を縮小するということのためには、どうして本農林漁業とか中小企業に対して大きく政府の力を投入しなければいかぬ。そういう方向で政治の方向を中期経済計画は打ち立てた次第でございます。もちろん、羽生先生御指摘のとおり、一年にして画期的な大きな変化は望みにくいという点はございますけれども、しかし、たとえば中小企業について三一%の増、または農業の生産の助成のための基盤整備について一九・四%の増というふうに、政府としては相当そういうふうな方面に大きな力を注いだことにいたしておる次第でございます。しこうして、そういうふうな方面に資本の投下をいたしますことは結局資本効率のわりあいに低いところに多くの投資をするわけでございますから、そういうふうな関係から本全体の成長率がある程度低く参るという結果に相なっておる次第でございます。
  90. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの重化学工業のあれは、所得倍増計画の出発点の七三%、これは中期計画ではどうなっているんですか。
  91. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 総合計画局長から御説明申し上げます。
  92. 向坂正男

    政府委員(向坂正男君) お答え申し上げます。  中期経済計画では、製造業の付加価値に占める重化学工業の比率は、三十五年価格で見ますと、三十八年度は六一%、それが四十三年度には六七%へ高まることになります。
  93. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、当初計画の重化学工業比率七三%というのは、中期計画ではどうなったか。中こまかく分けてあるんですね、それを見ると。所得倍増の出発点のときです。
  94. 向坂正男

    政府委員(向坂正男君) 出発点のときの、四十五年度の七二%の内訳ですか。
  95. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、内訳は要りません。それは中期計画で総体の数字が変更になっているかどうか。
  96. 向坂正男

    政府委員(向坂正男君) 四十五年度については今度の中期計画では計算しておりませんから、四十三年度のいま申し上げた六七%という数字だけしかございません。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。いま四十三年六七%ですね。そうすると、所得倍増計画では四十五年が七三%になっているわけですから、六七から四十五年までに七三に持っていくのですから、またものすごい重化学工業化ですが、そういう計画になっているのですか。
  98. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 中期経済計画におきましては、御承知のとおり、三十九年から四十三年度までを計画をいたした次第でございます。したがって、四十四年、四十五年の、つまり四十五年度においてどうなるという姿は、中期経済計画においては見通しを立てていない次第でございます。しこうして、ただいま御指摘のとおり、所得倍増計画におけるところの数字とはある程度実績の乖離を生ずるような関係になろうかという感じがする次第でございます。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっともう少しはっきりしていただきたいですね。これは非常に大きな問題だと思うのですよ。ただ数字だけのことを言っているわけじゃなく、目標としましていままでのいわゆる高度経済成長政策というのは重化学工業強化政策ですよ、実費はね。それがそのスピードが問題なんで、いまのお話ですと、所得倍増計画の基本の目標は変えないと言っておられますが、四十三年で六七%を四十五年に七三%まで重化学工業化をもし強化していくということになると、それはまた急激に設備投資なりあるいは財政投融資なりそういうものが必要ですし、またひずみが起こってくる。だから、私は、前に、資金計画、財政計画計画というのがなければ非常な混乱が起こるということを質問したわけです。その関連をひとつはっきりさせてください。
  100. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 具体的な数字は後ほど局長から申し上げますが、大体、四十五年度におけるところの製造業の生産額と申しますかは、予定よりも少しく繰り上がって、四十三年、四十四年近くごろには達成できるという見通しになっておる次第でございます。ただ、その構成比率として重化学工業の占める比率とそれからその他の軽工業の占める比率との関係は、ただいま申し上げましたとおり、ある程度の差ができていることも事実でございます。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 差というのはどういうのです。それをはっきりさせてくださいよ。私が聞いているのは非常に簡単なんです。はたして四十五年に七三%まで重化学工業比率を持っていくのか。倍増計画でそうなっているのですよ。いまのお話ですと、中期計画では六七%でしょう。それをあと二カ年間で七三%にもしなると、これはまたいままでの高度成長、いわゆる行き過ぎというようなことの問題がまた繰り返される。
  102. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり一応各産業について各製造工業について見当はつけておりますけれども、われわれの問題としておりますのは、全体としての国民総生産がそのときにおいてどの程度になるかという見通しを立てておる次第でございます。しこうして、その国民総生産の成長の度合いは、所得倍増計画において目標とされました四十五年度よりも一年ないし一年半程度繰り上がるという見通しに今日相なっておる次第でございます。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっとおかしいですね。私何回も確認するのですが、やりたくないのですよ。しかし、目標計画——目標でしょう。だから、目標で一番重要なのは、どの程度の重化学工業化の比率にするかということがこれは非常に重大な問題ですよ。中小企業なり大企業なり金融の問題についても、どの程度の重化学工業化に持っていくかという目標は、所得倍増計画の四十五年に七三%を目標にしてやる場合、これは設備投資なりその他について非常な大きな違いが出てくるのです。目標を掲げた以上、そっちに持っていかなければならぬのでしょう。それでなければ目標にならぬですよ。七三%という目標があるのですから、中期計画で六七%になったらそれをもう少し下げるとか、あるいは四五年に七三%の目標であくまでもずっといくのかどうかということなんですよ。そこのところを聞いているわけなんです。そうなったら、あとのほかの問題が、農業の問題でも、中小企業の問題でも、ずっと変わってくるのですよ。全体の産業構造が変わってくるのでしょう。それが長期計画ではありませんか。いまの一番の問題は重化学工業化なんですよ。高度成長とかなんとか言っても、それが一番重点なんです。それを、七三%、世界最高でしょう。おそらくそのころそんな国はないと思うのですが、そこまで四十五年までに持っていくのかどうか。それは無理であるなら無理である、そこは調整を考えなければならぬとか、何かそうしていただきませんと、もう出ているのですから、所得倍増計画が。それを今後われわれが基本的に考える場合、政府のほうではっきりしておいてくださらぬと、はっきり所得倍増計画で出ているのですから、それに対して再検討の余地があるとおっしゃるのか、やはりあくまでも四十五年に七三%まで持っていくつもりで全体の政策なり計画というものを立てているのかどうか、そこのところの関連を伺っているわけです。
  104. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 木村さんよく御承知のとおり、自由主義経済でございまして、しかもこれは外国のいろいろな輸出環境とかまたは各企業におけるところの輸出競争力の問題とか、いろいろな要素で関連して変わってくる問題でございますが、私どもの立場としては、所得倍増計画をやめたわけではございませんが、その所得倍増期間の中であるところの昭和三十九年度から四十三年度までの期間についてより的確な見通しを立てて、そしてただいま申し上げましたような大体の姿を描いてみたわけでございます。したがって、四十四年、四十五年については、これからなお今後の情勢を考えながら検討していきたい、かように考えている次第でございます。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はもうこれでやめたいと思うのですが、もう少しはっきり言ってください。これが一番重点になっているのでしょう。これは貿易だって中小企業だって何だってみなこれに関連してくるのです。七三%四五年目標にずっとやってきているのですから、あなたは計画経済ではないと言いますが、自由主義経済でも一応の目標ですから、そういう方向に努力していくのでしょう。ですから、七三%は、これは一応倍増計画で設定はしたけれども——最初はそうでなかったのですよ。中小企業の小委員会では最初六二・五%という目標だったんですよ。所得倍増計画をつくるとき民間の中小企業小委員会というのをつくったわけですよ。そこでは六二・五%四十五年の重化学工業化の比率、それを政府が七三%に非常に大きく引き上げているのです。それでいろいろと中小企業に対するところの設備投資なりあるいは運転資金の比率は非常にウエートが低くなってきているのです。そういう関係もあるんです。ですから、七三%はこれは非常に前につくったのであって、その後の情勢の変化が生じたから、これは改定する、いままでのあれは一応御破算にするとか、新しく考え直すというのならわかりますよ。倍増計画はやはり依然として続ける、それは間違いないというのですから、その目標は変えない、こうおうしゃっておるのですから、四十五年度における重化学工業比率は七三%というのはこれはまだ生きているわけです。そこは非常に重要な問題で、だからもう七三%はおやめになったのか、そこのところを、どういう関係なんですか、どういう作業をしたのですか。それをはっきりしてくれないと、今後ずいぶんいろいろな問題に関連していきますよ。
  106. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、所得倍増計画の期間の中におけるところの昭和三十九年度から四十三年度の五カ年間について、これまでの実績が計画数字と相当乖離してまいりました。また、海外の経済環境も変わってまいりましたので、あらためて現実に合うような、また実現性のあるような、また、日本の経済としていままで何度も国際収支の天井にぶっつかったりまたは消費者物価の問題が起こってまいりましたようなそういうようなことを繰り返さないようにということで、短期的な四十三年度までの計画をこの際中期経済計画として樹立いたしましたような次第でございます。したがって、その後の四十五年度目標についての再検討はいたしておりません。しかしながら、これはそのときにおけるところの重化学工業化比率がどうなるかということが問題ではないので、むしろ全体としての成長がどうなるか、鉱工業生産の総額がどうなるかというようなことがわれわれは問題であると、かように考えておる次第であります。したがって、経済情勢の変化に応じて日本のほんとうの真価を発揮して、そうして日本の経済力を伸ばしていく、経済の成長を達成するためにはどういう方向にすべきかということは、そのときどきの時点に立って最善の道を選ぶのが当然であろうかと、かように考えておる次第でございいます。したがって、上今日の時点においては、中期経済計画のこの期間においてはこの方針で行くことが最も妥当であるという考え方に基づいて経済の運営をいたしておる次第でございます。
  107. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、いずれまた分科会等でお伺いすることにいたしますが、これは非常に影響のある問題だと思います。  私、さきに、一昨年の十月でありましたか、当委員会で池田総理に次のように要望したことがあります。それは、大企業中心の政策を、農業、中小企業、零細企業、サービス部門、流通機構、その他広く社会資本の分野にわたってそのウエートを置きかえること、その結果として投資効率の関係で成長率はダウンするかもしれない、しかし個人の生活水準は確実によくなるはずである、こう申して、当時の池田総理も宮澤企画庁長官も、全くそのとおりだと。そこで、私は八項目の提案をいたしまして、その提案も全部のまれました、そのとおりだといって。そのことは字間があればあとで説明します。そこで、私はいまでもそのことをここで繰り返したい。ですから、投資効率のことをすぐ言われますが、これは、浪費、むだづかい、非能率と厳密に区分しなければいけないと思います。ですから、産業によっては、明らかに投資効率の低いものも最初からあり得るのです。それに過大な投資効果を期待したって無理です。日本のいろいろな財政のあり方、それから企業の進め方でも、投資効率、それだけが優先されている。低生産性部門、ひずみ是正をやる場合には、簡単に投資効率が上がりません。しかし、確実に個人の生活水準は上がる。だから、アメリカが、社会的な発展の歴史はあるにしても、成長率は日本の七分の一なのに、生活水準は日本の七倍、欧州は、成長率がときには日本の二、三分の一、しかし生活水準は日本の二、三倍、ここにあると思う。ですから、そういう面に重点を置きかえなければ、とても社会開発、ひずみ是正はできるものでないということを考えて、前に池田総理に申して、そういう意味で積極的に取り組みたいと言っておったけれども、内閣がかわってしまった。その佐藤内閣がそれをやってくれなければ困る。佐藤色をもし出すとすれば、それが存立のゆえんではありませんか。そういう意味で、根本的に経済の性格というものを変えてもらいたい。もう一度重ねて総理大臣にお尋ねいたします。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来のお話、私も羽生さんの御意見を、こまかなことは別といたしまして、とにかく、おくれている部門、ことに弱い部門、そういうものに力をかしたい。したがって、今回の予算編成にあたりましても、そういう点でまだ十分ではございませんが、伸び率は十分御披露のできる状態になっているということを先ほど申し上げたのでございます。こまかいことになるようですが、この点はよく御承知だと思いますので、私重ねて申し上げません。予算編成にあたって、あるいは中小企業、農業等あるいは生活環境の整備、住宅、文教等につきましてそれぞれいわゆる予算の伸びが一二・四%だが、これらの項目については特に配慮したということは、これを御了承いただきたいと思います。  ただいまいろいろ基本的な問題についてお話がございましたが、私、そばで聞いておりまして、経済企画庁長官が答えておりますように、四十三年までの中期経済計画は立てておる。しかし、四十四年、四十五年については検討しておらない、かように申しておりますが、しかし、もちろん経済は、幾ら計画経済をやらないにいたしましても、この経済の進行の模様によりまして、私どもがその計画についてさらに再検討することはこれは当然でございます。したがって、ただいま木村さんの御質問にも私、同時に答えたわけですが、いましばらくそういうものはいまの中期経済計画の推移をひとつ見て、しかる上で四十四年、四十五年についての検討をさしていただきたい、かように思います。  ただいまのまた予算編成についての羽生さんへのお答えには、私、数字は申し上げませんけれども、おそらく各予算項目について、社会開発の部門に該当するようなものについて特に考慮を払っていることは御承知だろうと思いますので、詳細は省略さしていただきます。
  109. 羽生三七

    ○羽生三七君 自由経済のもとではやむを得ないと言われますがね、それだから私は経済成長を経済十カ年計画と名前を変えろと言うのです。それは先ほどの問題にも——経済の問題なら、経済というか、成長の問題だけならいいですが、個人の所得に関係するから所得倍増計画というのは私は適当でないと、こういうことを申し上げているのです。  そこで、いまのように、低生産部門に重点を置いた場合、その場合、私は急激な経済変動は起こらぬと思います。大企業はその間拡大テンポをゆるめて企業内の体質を整えればよろしい。それから政策の進め方いかんでは雇用にそれほど悪影響はないと思う。また、こういう政策を実施する場合の貿易の輸入依存度、これは設備投資みたいに輸入依存度は高くない。したがって、国際収支のはね返りもそれほど心配したことはない。そういう面で個個の政策にはひずみ是正は若干出ております。出ておりますが、たとえばこの住宅政策は、かなり前進といわれておりますが、確かに前年度比、これは二二%増、ところが戸数にすると一万六千戸しかふえておりません。これは地価の暴騰にみんな食われてしまう。これはあとから申し上げます。でありますから、単にあっちこっちに少し費用をふやしたということでは足りないということです。そういうことを私は申し上げておきます。そういう意味でこのひずみ是正の予算を投資刺激的な拡大予算が圧殺しようとしている。そんなことはないと言われますが、まだそういう条件が残っているというのが昭和四十年度予算案、財投計画であると私はこう思うのです。そこでこの倍増計画では、当初から三年が九%、十年平均が七・二%、こう見込んだはずなんですが、実際には当初三年間は一一、二%になっている。この場合、中期計画では八・一%の成長を見込んでいるわけでございます。そこで四十年度予算案は相当に景気の刺激要因が強過ぎると言われておる。この場合総理の考えておられる安定成長とこれはつながるかどうか、この数字は。経済は、先ほど大蔵大臣からお話があったように、どこの国でも一応勃興とか拡大とかこういう歴史的な時期があると、こう言われておる。これは私宅承知しております。日本経済は高度成長から安定成長と言っておるけれども日本の経済の基調、その体質は安定成長を裏づけるような構造的な変化を示したのかどうか、こういう要素ができ上がったのかどうか。それと八・一%の関係です。これは大蔵大臣いかがです。企画庁長官からでも、どちらでもいいです。
  110. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 日本の経済についてOECDが昨年サーべーをいたしました。その結果、ごらんになっておられると存じますが、日本の経済が漸次先進国型になって、つまり設備投資リード型の経済から消費リード型の経済に急速に移行していくというような見方をいたしておりますが、私どもはそれに対しては賛成をいたしておらない次第でございます。と申しますのは、なるほど若年労働者につきましては相当労働の需給が逼迫してまいりました。むしろ非常な困難な状況にあるという状況でございますが、中高年層以上におきましては、なおかつ相当十分な能率をあげた職場を得られていない方々が相当多いというふうに考えざるを得ない。また、先ほど来御指摘のありましたように、農林漁業とか中小企業等におきましては生産性の格差が相当大きいという面から、そこに十分に能率をあげておられないという労働力が相当多数潜在をしておるというような観点から、日本の経済はまだまだ相当な成長力を持っておるのだという考え方を持っておる次第でございます。そういうふうな観点から、中期経済計画は、国際収支の問題、消費者物価の問題、この二つの前提条件を満たすしにおきましてもなおかつ実質八・一%の成長を保ち得るのだという結論を出しておる次第でございます。しかしながら、全般的に見まして、先ほど来御指摘のとおり、資本効率の少ないところの、農業とか中小企業等により多くの投資を振り向けることがこの際どうしても必要であるというふうな事柄も考えあわせ、また、全体として経済の基調を慎重なる態度をもって運営していくということを考えあわせますときに、昭和四十年度におきましては実質七・五程度の成長率をもっていくことが妥当である、かような結論に達したような次第でございます。
  111. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、この中期経済計画では個人消費支出を三十八年の五二・五彩から四十三年は五〇・七%と、こう策定しているわけです。どう考えてもこの供給超過基調ともいうべき今日のこの経済兼調のもとでこの計画はどういうことを意味するのか。だから四十年度の輸出見通しは七十六億五千万ドルで、前年度比一〇・五%の伸び率、ですから三十九年度の対前年度比二二・一%に比較すればその伸び率はほぼ半分。それなのに個人消費支出を低下させた場合に操短とか景気の停滞は起こらないのかどうか、こんなに下げて操短とか景気の停滞ということは起こらないのかどうか。
  112. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、先ほど実費成長率を八・一%ということにいたしました理由を申し上げましたが、かっては、いままでの過去の実績は、設備投資が平均いたしまして毎年二〇%近くの増を示しておったのでございます。これを大体今回の設備投資の伸び率は九・九、過去二十八年から三十八年の十年間の実績は一九・八、ちょうど半分にいたしておるわけでございます。しかして、消費支出についてどうかと申しますと、過去十カ年間の実質の伸び率が九・九%ということに相なっておりますが、これを昭和三十九年度から四十三年度の中期経済計画期間においては八・一%ということに見込んだわけであります。その結果として、厚生費が多少減ってまいったわけでございますが、これも厚生費のうち単純な個人消費支出と個人の住宅投資というものを加えてごらんいただければ、その合計はむしろ個人消費のほうが増加しておるという数字に相なっておる次第でございまして、こういうふうな姿の経済の運営が行なわれれば、これから相当数安定的な基調に経済を持っていけるというふうな見通しのもとにこういうふうな計画がつくり上げられた次第でございます。
  113. 羽生三七

    ○羽生三七君 公定歩合の再引き下げという説がありますが、これは大蔵大臣がおらぬとちょっとまずいのですから……。
  114. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ちょっと、さっき御説明申し上げた数字を読み違えましたので、訂正させていただきます。  個人消費支出の伸び率が過去十カ年の実績が七・二でございまして、それを今回の計画では七・三と、〇・一だけふえるということに相なっておるわけでございます。さっき申し上げました数字は国民総生産の数字と読み通えたわけでございます。訂正を申し上げます。
  115. 羽生三七

    ○羽生三七君 公定歩合再引き下げという説もありますが、私は時期のことは問いません。当委員会では、先日ほぼそういう条件が整ったという意味の大蔵大臣から御発言がありましたが、しかし、そういうことは景気動向あるいは国際収支の短期的な——短い期間——短期的な観点からそう見られておるのか、あるいは経済が高度成長から安定成長の圏内に入ったという、そういう意味の長期的な展望、そういう判断でこの問題をお考えになっておるのか。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕  三月にするとか四月にするとか、そんなことを私は言っておるのではない。短期的視野か、長期的展望で安全圏に入ったのかどうか。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際収支の見通しは御承知のとおり、非常に好転をいたしております。  なお、金融緩和の方向で一厘引き下げられました後は、これによって設備投資がまた過熱の状態に向かうというような状態ではなく、鎮静の状態であります。外貨準備高も二月の末で二十億五千万ドルという状態でございます。いろいろな状態を総合的に勘案をしますと、景気が再引き下げによって過熱をするというようなおそれにはないと判断をいたしております。同時に、一面において、非常に安定的な状態であると同時に、一面には、中小企業の倒産等、いろいろマイナスの面もあるわけでございます。そういう意味で、あとの一厘引き下げも、もう時期ではないかというような議論が相当あることも承知をいたしております。おりますが、御承知の昨年の十一月ごろからのポンドの問題等を契機にいたしまして、国際的な好況が去年のように引き続いて高い状態で続くかどうかという見通しもありますし、そういう意味で、倒産等に対してはきめこまかい配慮を具体的に行なうことによって、金融の全面緩和というものに対しては、開放経済下であと戻りができないという状態にありますので、慎重な態度をとつておるわけであります。その意味で、日銀当局及び政府間においても、意思の疎通は十分はかられておりますし、現在慎重な状態で最終的仕上げの段階に対処しようということでございます。
  117. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまお話しの、中小企業の倒産も三月が最高になるのじゃないかという、そういう予想があるわけですが、問題はさっきも触れましたけれども、金融引き締めの影響があることは事実だろうと思いますが、同時に、設備投資の行き過ぎもあるのではないか。そういう意味で、厳密に当面の危機対策と金融緩和というものは区分さるべきだと思う。それからそういう意味で、今日のこういう三月の戦後最大の倒産ということを見込まれながらも、これが最後の底入れだ、そういう見方もある。ですから、大蔵大臣がいまの御答弁でも、仕上げをするというようなことを言っておられますが、そういう、そう言っちゃ失礼ですが、小手先のことではなしに、長期的展望に立って、ほんとうに確信を持って、日本経済が安定成長圏の中に入ったのかどうか、短期的な視野ではないのです。もう一度言っていただかぬとどうもはっきりしない。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大体あなたがいま御発言のような考え方の認識を持っておるわけであります。八条国に移行しまして、もう再びあと戻りができない状態でありますので、長期拡大・安定という路線に対しては確実なつかみ方をしたいという考え方があります。同時に、半面、倒産等がございますので、倒産問題と、安定成長路線に入ったとしても国際的な環境の変化によってこれに対応できるかどうかという長期的な見通しとは区別をいたしまして、倒産その他に対しましては、先ほど申し上げましたように、具体的金融措置等できめこまかい措置をとることによりまして、全面的金融緩和に対しては慎重な推移を見ております。こう答えておるのであります。
  119. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理は衆議院予算委員会で、先日もどなたかちょっとお話がありましたが、四十年度予算案は無理を承知で編成をしたが、明年度あるいは明後年度になれば経済が成長化して本格的な予算ができるだろう、これは速記録のとおりです。そう答弁をされておる。しかし、これは私は少しおかしいと思うのですね。三十九年度の経済成長率は実質見通し七・四%、四十年度は実質七・五%を政策基準としながら、それで経済の成長化というのは一体どういうことなのか。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも予算委員会のときは舌足らずでございまして、これはたいへん予算編成について大蔵大臣が苦労し、社会開発その他にもいろいろ伸び率も考えて、そうして編成したということでございまして、いろいろ誤解を受けておるようですから、この機会に明確にしておきます。
  121. 羽生三七

    ○羽生三七君 率直でけっこうでございました。  そこで次は、私昨年の当委員会で、これは大蔵大臣記憶と思いますが、この高度成長から安定成長路線へ転換することによって、税の大幅な自然増収は期待できなくなる。それから他方、当然増経費及び各種の年次計画の平年度支出が計上されることによって歳出は増加する一方になる。今後はどのような予算編成を考えられておるのか、こう質問しました。結局は財投にたよることになると思いますが、しかし、それにも限界があると思います。しかも総理は、今後三年間は公債は発行しないとおっしゃった。実質的なあれは別ですが、一般会計赤字公債は発行しないということだろうと思う。そこへもってきて、公約の減税は実行せぬならぬ。そうすると、こういう条件のもとで、結局一般会計の増ワクのペースを落とす以外には明年度から予算編成の方法はないじゃないかという気がする。これは一両年中に経済を成長さして、むしろ楽になると言われた総理の衆議院の答弁はいま御訂正になったと思いますから、私はそれには関連させません。しかし、一体どういうことになるのか。これはほかにもまだ具体的な資料をお聞きしたいことがありますが、もう一度大蔵大臣から。
  122. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和三十六年、七年は御承知のとおり、対前年度比、当初予算に比べまして二四%余も膨張をいたしております。八年は一七・四%、三十九年は一四・二%、今度は一二・四%と、こういうふうになりまして、大体まる三カ年間を比べますと、一般会計で約三千億も圧縮されております。そういう意味では一般会計が景気刺激の要因になるということはなくなってまいったわけでございます。いやおうなしに健全財政ということでございますが、一面御指摘のように、当然増経費といいますか、五カ年計画その他によってしばられておる経費もございますし、先ほどから申されたとおり、新規にひずみ是正に重点的に予算を投資しなければならないということがございますので、四十年度、四十一年度、安定成長期に入りますと、税収の伸びは過去のように期待ができませんので、予算編成は苦しくなるということは事実でございます。でありますから、一例を申し上げると、今年度一体災害等があった場合どうなるのか、こういうことを一点で御答弁申し上げてもなかなか財源的にはたいへんであるということは申し上げられると思います。しかし、財源がなくなったから、財源の伸びが少なくなったから重点的にできないのか、こういうことになると、先ほどからの御質問の、もっと重点を変えろということにはならないわけであります。でありますから、既定経費の中で合理化ができるものに対しては大幅に合理化を進める、そして現在の予算のワクの中からも重点的な投資に振り向けられる財源を確保しなければならない、こういう問題がここに提起されたわけでございます。でありますので、国の財政、地方財政を問わず、合理化のできるものに対してはどうしても合理化を行ない、重点的な予算を限られた中で組まなければならない。でありますから、一般会計というものよりも財投等に移せるもの、特別会計に移せるもの等は移していくことによって合理的な予算が組めるわけでありますが、特別会計である水道やそういうものまで一般会計から補てんをしなさい、こういう議論がたくさんございます。こういうことになると予算はたいへんなことになるということであります。でありますから、やはりあなたが先ほど御指摘になったように、国がひずみ解消の立場で重点的に一般会計をもって、いわゆる一般的国民の税金をもって充てなければならないものと、企業会計として十分応益負担の原則でやれるものと、こういうものはやはり勇気を持って区別していくという原則を貫かないと、ひずみの解消はむずかしい、こういうことになるわけであります。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 四十年度予算を基準とした場合、四十一年度予算の当然増及び自然増経費は一体どのくらいになるのか、概算でよろしゅうございます。
  124. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十一年度……。
  125. 羽生三七

    ○羽生三七君 ええ、四十年度予算を基準にして四十一年度、これは先日、たとえば国庫債務負担行為はどうか、新政策の制度改善の平年度化に伴う費用はどうか、基準単価はどうかと詳細に項目をあげて資料要求してありますから……。
  126. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当然増経費ということ自体がなかなかむずかしいことでございますが、まあ地方交付税・交付金の法令の規定に基づいて特定の歳出に計上されておるもの、それから前年度の途中から始められた新規施策でありまして、その翌年度に平年度化するもの、過去の国庫債務負担行為等で当然歳出を重ねるもの、法令等の規定に基づきまして一定の事由があるときは当然に債務等負担しなければならない義務経費、こういうものでございます。しかし、これはまあこの  一番初めの地方交付税の問題につきましても、来年度の税収がきまらないと算定できないということになるわけでありまして、四十年度と四十一年度をいま比較をして当然増経費がどの程度になるかということはさだかに申し上げられない段階でございます。まあ災害の問題、災害等の義務費も災害があれば起こってくるわけでありまして、こういうものはいま算定できないわけでございます。しかし、当然増のうちある程度の数字が現在つかめますというものについて申し上げますと、国庫債務負担行為及び継続費の歳出化の増加額が四十一年度に及ぶもの、こういうものが約二百億程度ございます。さらに新規政策の平年度化によります経費の増は恩給のベースアップ等の平年度化があるわけでございます。恩給関係費だけで二百五十億ばかり増額になるのが典型的な当然増と、こう言われるわけでございます。まあしかし、そういう面から、ことしは参議院の議員の通常選挙の費用を四十億計上しておりますが、これは来年度はなくなる。こういうものを先に計算しなければならないわけであります。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕 まあいずれにいたしましても一番大きな地方交付税そのものの数字がつかめないということでありますから、さだかな数字はいま予測できないということで御理解いただきたいと思います。
  127. 羽生三七

    ○羽生三七君 数日前から資料要求をしていて、これははじき出せば出ると思うのです。まあしかし、これは出せないということならしようがない。  そういうことから予算の硬直性は今日大きな問題となっておりますが、これは一そう強まると思います。それからその硬直した予算の中にも当然必要なものがある。みなぶった切るわけにいかない。しかもそういう条件のところにもってきて、先日来、木村、鈴木委員からお話があったように、三十九年度の税収見積もりから見て、実質的に非常に苦しい。まあ八百何十億赤が出るかどうか、そんなことでなしに実質的に相当苦しくなる。そうすると、結局予算の重点を置きかえない限り、総花的にこうやっていって結局ひずみ是正に重点を置くということはなかなかできなくなる。それは若干ありますよ、少しばかりの出入りというものは。あるが、ひずみ是正、社会開発、人間尊重を唯一の政策とされた佐藤内閣が取り組む本格的な予算編成というものはそれではできない。それをやるのが私は佐藤内閣の存立の理由だ、そこに生命をかけてやっていただくことを私たちは期待している。その上に先ほど申し上げたように、一般会計が日本ではかなり長期にわたって景気の刺激的な役割りを果たしてきた。まだ私はことしもある程度それは温存されていると思う。そういう点でいよいよそういう重点施策ということをやる必要がさらに濃化している。いろいろな意味で申し上げたいけれども、時間がだんだんなくなってきますから。考えてみてもうそれをやらなければだめだという、要するに、成長経済機構からひずみ是正機構に予算の基本方針を変えていく。それは一挙に革命的な大転換はできっこないが、相当に思い切った施策をやらなければ絶対ひずみは解消されないということがあらゆる角度からこれは論証できる。これはひとつ総理からもう一度決意を伺っておきたい。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 四十一年度予算編成についてのいろいろの御意見を伺いました。政府ももちろん四十一年度予算編成をただいま考える時期でもございませんが、ただいまの御意見なども十分尊いたしまして、りっぱな予算をつくるように努力いたしたいものだと、かように考えております。
  129. 羽生三七

    ○羽生三七君 私がいままで提起した問題は、これは物価抑制策にも相当関連があるわけですね。そこで私は、三十八年に六月でしたか、この委員会で池田総理に先ほど申し上げたように、八項目の提案をいたしました。これは全部総理はそのとおりだとのまれたのです。ところが、その中の第四項目にあげた地価抑制、これに対しはいい知恵がございませんと、これも速記録に載っております。ところが、翌日一新聞が社説で、一番重大なものをいい知恵がないでは困ると、これは積極的にやってくれということを社説でやっております。そこで私は、八項目を全部言いません、時間がないから。その中の地価の問題です。これは日本経済の阻害要因の一つであるし、個人の生活問題にも重大な関連がある。実はこれがまた農業の土地の流動性をはばんでいる一つの理由でもあるのです。そこで土地というものは生産できない。これは議会ではつくれません。しかも需要は増加するのでありますから、いまの問題は今後さらに高まるかもしれません、この矛盾というものは。そこで、そういう意味から考えた場合、本来土地を商品として考えるのはちょっと間違いじゃないかと私は考えております。これはあるいは異論がある方があるかもしれません。そこで、この原則論はとにかくとして、何らかの規制措置の必要があるのではないか。これは建設大臣が宅地審議会等に諮問をして意見を取りまとめられておるようでありますが、その具体的な対策はあとからお聞きするとして、土地の公益性、社会性という問題にかんがみて、農地法すら憲法上合憲とされたんです。でありますから、私は、宅地についても相当強い規制を思い切ってやるべきだ。そうしなければ地価の抑制はできないし、日本経済の阻害要因を解消することはできぬ。また、物価問題にもこれは重大な関連がある。そういう意味でこの問題に取り組む総理の基本的な姿勢をお聞かせいただいたあと、具体的にひとつ建設大臣からお聞かせをいただきたい。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 地価問題のむずかしさは、ただいままでのお話でもよくわかります。しかし、これに対してのあり方を十分政府自身も取り組んでいかない限り、当面する、またこれから発展していく経済情勢に対しましても、十分こたえることができない、かように思いまして、佐藤内閣のもとにおきましても、これは在来のような扱い方でなしに、いわゆる事務当局に問題をあずけるというような筋でなしに、いわゆる閣僚レベルでひとつ話し合ってみようじゃないか、こういうことで実は真剣に取り組んでおるのでありますが、まだもちろん問題としての結論は出ておりません。ただいま建設大臣という名前が出ておりますが、建設大臣を中心にいたしまして、そうしてこの問題を真剣に取り組ましておるわけであります。私はこれを一がいに商品化、商品視するという事柄については、本来あまり感心しないほうでございますが、しかし、ただいま憲法のもと、あるいは各種法令等の、法律等の制約を受けてもおります。そういう意味で、この問題はさらに研究次第では、そういう、憲法に違反することはできませんけれども、他の法令等につきましても主要な改正を加える必要が出てくるんじゃないだろうか。ただいまお話にありますごとく、これはつくるわけにいかない。そういう限定されておるものでありますし、また、これはただ単に経済問題というだけでなしに、社会問題でもある、かような意味から各方面にわたっての研究をしていかなければならない。いずれにいたしましても、当面する最大の難物である。かような意味合いにおきまして、十分真剣に取り組んでまいる、かような考えでございます。
  131. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと建設大臣の答弁の前に、いま憲法の問題出ましたが、自衛力の問題では憲法九条をあれだけ拡大解釈をする政府が、土地問題ではこれを憲法上云々というのは、私はこれはおかしいと思う。幾らでも拡大解釈していいと思う。ですから、そういう意味で研究材料じゃ困るのです。強い姿勢で臨むと、佐藤内閣というのは。そういうことをひとつ表明していただく意思はないかどうか、決意を伺います。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも憲法問題を自衛隊と一緒にするわけにもいきません。これはしかしとにかく今後最大難物でございますが、十分各界の意見をまとめて、そうして一つの結論を出したい、かように私は意気込んでおることを、この機会に申し上げまして御了承を得たいと思います。
  133. 羽生三七

    ○羽生三七君 建設大臣、具体策。
  134. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 地価問題のむずかしさは歴代総理が申し上げておるとおりでありますが、結局、地価問題というのは需要と供給、このバランスがとれるかとれないかということに帰着するのであります。そういう意味で、単一でこれはきめ手だというきめ手は、これはもう当然ございません。一方においては供給をふやし、一方においては需要を鎮静化させる、こういう方向でいかざるを得ないわけでありますが、そこで、いろいろこの問題のむずかしさを一応申し上げておかないと、あとの対策は申し上げましても御理解いただけないかと思いまして、多少駄弁になるかもしれませんが申し上げますと、供給の増大ということは、いわば宅地を造成したり、あるいは山林、原野その他を造成したり、こういうことから供給は増大していくわけであります。一方において市街地について申しますと、たとえば土地の高度利用、つまり少ない面積に高い建物をつくる立体的な利用という方法があるわけであります。一方、需要はどうするかといいますと、需要はこれは鎮静させる方策はなきにしもあらずでありまして、いま安定成長ということをいわれておりますが、経済が安定成長していくことによって需要が急激な増大をしていかない、増大がなめらかにいくという点はあります。もう一つは、需要の分散化であります。つまり、われわれが新産都市をつくり、あるいは拠点都市をつくる、あるいは縦貫高速自動車道路をつくろうというのは、宅地に対する需要を一点に集中させない、これを分散化していくんだというところから出てくるのでありまして、供給の増大と需要の分散、これがまず何としかしても一番根本的な問題であろうと思います。そのほかにもう一つ出てまいります問題が、需要が急激に出てまいりますと、投機、思惑というのが出てまいります。投機、思惑を何とかして押えていかなければなりません。それで、最後に出てきますものが土地利用区分、土地の利用区分を一体どうするかという問題にぶつかってまいります。  そこで、順次とろうとしておる方策を申し上げていきますが、いままでのやり方では、なかなか地価対策は立たぬじゃないかと羽生先生おっしゃる、そのとおりであります。そこで新しい手法はないかというので、かねがね宅地審議会に答申を求めておりましたものが、いわゆる還元譲渡制による手法、これをいま、審議会の答申をもとにしまして、いまその法制化を進めております。これはできるだけ今国会に出したい、ぜひ出したいということで、その法制化を進めておるわけでありますが、これも一つの方法、手段であります。  そしてもう一つの根本的な問題としましては、これは土地の所有権の問題、私有財産権の問題とぶつかってくる問題でありますが、土地の利用の区分を定めておいて、そしてそれを利用する義務というものを与えたらどうかと、この問題は非常にむずかしい問題で、まだ学者の意見も一致しておりませんので、今後まだ慎重な配慮を要します。一番問題は、日本の土地の、地主の零細性、その地主が零細であるがために、土地が需要者の側のほうからいえば安いのにこしたことはないのでありますが、時代の要請に応ずる地価よりあまり低くなりますと、今度は零細な地主の生活保障の問題が起こってまいります。そういう問題がありまして、いろいろな面から検討しなければなりませんので、この土地の利用区分の問題については、さらにもっともっと突っ込んだ検討を進めていきたい、こう考えておるわけであります。
  135. 羽生三七

    ○羽生三七君 その法制化をしようとしておるものの内容はわかりませんか。
  136. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 大体の方向は、ある相当大規模な面積を市街地あるいは住宅地にするために一定の時点においてこれを政府所有に移す、政府が、たとえばある利用計画をきめまして、公示をしました時点でそれを政府所有に移しまして、その政府所有に移った土地について、評価基準を定めていきまして、評価基準をその時点で定めて、それをたとえば住宅にしたり、あるいは学校敷地をつくったり、道路をつくったり、公園をつくったりしますと相当の費用がかかりますが、その政府なり公共団体が出しました費用と、地主から一応政府なり公共団体を通じました土地の評価とを案分しまして、そうしてでき上がった造成された宅地を均分しまして、そうしてもとの地主に還元していこう、おおよその考え方はそういう方向で法案を準備しております。
  137. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間がないので深く申し上げるわけにいきませんが、まあこの鑑定士によって評価する場合に、特価の評価ということが問題になると思う。これが解決しないと、なかなか根本的な解決にならない。しかし、時間がありませんから、ほかの問題に移っていきます。  次は農業問題であります。倍増所得では、純農業収入を基準にしたわけですか、農家収入、どっちを基準にして計算をしておるのですか。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農家の収入を基準といたして立案しております。
  139. 羽生三七

    ○羽生三七君 ところが、もうずっとこの所得倍増計画発足以来、議会における答弁は、ほとんど農業収入とあったのが、昨年ごろから農家収入に変わってきたのです。これは明らかです。まあしかし、そんなことはよろしゅうございます。これはあとからまた……。  そこで、この間、戸叶君の質問の際の総理の御答弁にあったと思いますが、これは農業については専業化も進めるが、同時に現状として存在している兼業農家の育成強化をはかっていく、こう述べられております。これはもちろん零細農民の切り捨てでない限り、この兼業農家の育成をはかっていくということは当然だと思います。それはそうであるが、当然ではあるが、しかし、私はこれは当初計画から見ると、重大な農政の変化だと思う。専業農家を育成して、それで二・五ヘクタール、百万戸というものが唯一の農政の目標だった。唯一のと言ってはあれだが、最高の課題だった。それがいつの間にか兼業農家育成になった。これは速記録ですよ。私は速記録をそのまま読んでおる。これは重大な変更だと思われるが、いかがでありますか。
  140. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 兼業農家を育成するということではなくて、兼業農家が農業面において農業の生産拡大のために寄与するような方途を講じていこう、こういうことでございます。それから総理のほうで申し上げた兼業農家——農家としての収入はふえたほうがこれはもちろんいいので、兼業農家といたしましての収入のふえるような方途を講じていこう、それには工場等を地方へ分散するとか、あるいは就業の機会を地方に得させるとか、そういう方向によって農業の収入によって得られない分を、他の方面によって得られるような方針をとろう、こういうことでございまして、農業の収入というよりも、そういうことで、農家ではあるが兼業農家においては、他の収入をなお得させる方法をとろう、こういうことでございまするので、やはり農業としての方面よりも農業外の収入を得させる方法をとる、こういうことを申し上げたように私は理解しております。
  141. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはわかっておるのですよ。わかっておるけれども、当初計画から見れば、これは重大な修正だ。みな簡単に農業収入、農家所得と、簡単に総理はことばづかいをあれするが、これはたいへんな政策の変化だと思います。そこで、農業年次報告それから中期経済計画、これに示されておる今日の農政の問題点、これは政府がよく知っているから多くを申し上げませんが、第一に、農業が急激な兼業化、労働力の流出による農業就業者の老齢化、女性化、裏作を中心とする不作付地の増大、その結果として見られる農業生産力の低滞、これは部分的現象を除けば、農業と他産業との所得格差は、縮小どころか一そう拡大をすると報告しておるわけです。問題の所在がどこにあるか、ちょっとこちらから意見を申し上げますが、これは私は、農業問題は農業の分野だけでは解決できないと思う。要するに、農業問題は日本の産業構造、日本経済全体の問題として把握をして、その関連で対策を進める。それには、一つには社会保障制度の強化とか、さらには賃金生活者が賃金だけで生活できる条件を、可能な限りすみやかに確立することだと思う。賃金だけで生活できれば、年寄りや女子にわずかな零細耕地を守らせにゃならぬという理由はないわけです。だから日本の低賃金制打破の問題は、これは労働問題であるばかりでなくて、実は農政解決の重大な課題になると思う。古そういう意味で、もう一つは、それと関連して政府のもう一つ力を入れた農業構造改善、これは補助率が荷いとか低いとか、そういう議論は、きょうはしません。それは目標としては必ずしも間違っておらぬ。しかし、重大な一つの失敗は、それは生産性の向上には役立ったが、農地の流動化に全然つながらなかった、これは一つの見込み違い、これはたいへんな見込み違いです。こういうことで日本の農政の中心ともいうべき専業自立経営農家百万戸の創設という先ほど来のこの課題ですね、これは政府は期間をかけてゆっくりやるとおっしゃるに違いない。しかし、その目標を十年を二十年にしても、少なくともいまの倍増計画四年で済んだのに、たった六万戸増、あとまだ九十何万戸残っている。とてもこれはできっこない。だからこの重大な農業の転換期に際会して、私は農政はある程度修正する必要があるのじゃないか。いい点は残さなければなりませんよ。どういう意味の修正かということは、これからあとで申し上げます。そういう曲りかどに来たのじゃないでしょうか。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように第一兼業農家が農家のうちの四二%、土地の所有が二七%というものでございますから、そういうふうにふえてきております。でありますので、この問題から考えてみましても、農業問題が農業の分野だけで解決されるべきものではないということは、お説のとおりであります。ことに兼業農家の場合につきましては、これを社会保障制度的な面から相当解決していかなくちゃならぬ面が相当多いと思います。それからいまのように労働政策から、あるいは賃金政策から、そういう面から解決をしていかなければならぬという面も相当多いと思います。それから構造改善、いま御指摘の三番目の構造改善の面におきましても、いろいろ御指摘がございました。しかし木流といたしましては、やはり自立経営農家がより多く健全に発展していく、こういうことがやはり農業の政策の一つの木流をなしていると思うのでございます。というわけは、いまの所得格差の場合、生産性の格差の場合でも、先ほど申し上げましたように一般的にいいますならば、他産業の中小との生産性二九%くらいでございますが、やはり一町五反以上の耕作をしておる者は、四〇から五〇という生産性の格差の比率を持っております。あるいは生活水準につきましても一般的には七七%ぐらいでございますけれども、一町五反以上等におきましてその近くの環境の人と比較しますというと、九〇%以下になっている。こういう面から見ましても、やはり自立経営の農家を育成するというその方針は、私は望ましいことじゃないか、それは本流だ、こういうように考えます。ただ、先ほど構造改善の仕事につきましても、土地の流動化ができなくて、それが阻害されているじゃないかと、確かに構造改善の根本的のやり方は、やはり経営規模の拡大とか自立経営農家の育成というところにあったのでありますけれども、いま基盤整備とか、あるいは共同化の事業を進めるというようなことで、その根本的な問題に手をつけておらなかったというところにあろうと思います。でございますので、自立経営農家につきましても、先ほど申し上げましたように、あるいは経営規模の拡大、あるいは所得の増大、所得の面から、自立経営というもの、これは経営によりましても、御承知のようにあるいは養鶏等におきましては土地の面積をそんなに要しません。あるいは選択的拡大のうちでも花とか園芸等におきましては、それほどの土地経営の面積を要しない。そういうことでございますので、所得の面からと土地経営規模の拡大の面という両方の面から考えた自立経営農家の増大ということがやはり本流であろうと私は考えます。しかし、農政全体として、兼業農家が非常にふえている、こういう現状から見ましても、農業面から見まして、協業によってこれをやっていくというような面、それから先ほど申し上げました社会保障制度の面から、あるいは労働政策の面から、構造改善等につきましてももっと根本に立ち至った構造改善をしていかなければならぬというような面などが考えられます。しかし、やはり方向としては、私はこの方向はとってしかるべきものだ、こういうふうに考えております。
  143. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、この自立経営農家をたくさんつくるとか、構造改善事業を進めるとかということ、そのことに反対しているのじゃないのです。自己負担が多過ぎるということはありますけれども。それから、私は昔の農本主義で言っているのじゃない。近代化という線をある程度支持しながら長期展望に立って見ても、こういう趨勢も根本的に変わってきておる。その現状に即する実態的な農政の確立を要求しておるのです。実は、数日前私の郷里から新聞がきました、ここにありますように。私の郷里の九つの高等学校の新卒を調べたのです。二千九百五十七人の三月卒業生の中で、農村に残る者四十四人、うち九名女性、だから約三千人の中で三十五人しか残らぬ。たいへんな農業に暗い影として、地元が新聞を送ってよこしました。これが実態です。しかも、これは人口は流動化する。しかし、ちっとも耕地の流動化に結びつかない。この問題です。しかもこの趨勢は、かなり長期にわたる。ある意味では恒常的な趨勢になってきておる。そうなると、この年齢構成、あるいは婦人労働、あるいは零細耕地という、こういう条件に相応する——総理は兼業農家の育成と言われたが、私は農民切り捨てでない限りそれは当然だと思う。思うが、それじゃおかしいのですよ、兼業農家を育成するということは。これはことばのあやだからあまり深くは言いませんが、だから専業農家をつくりたいけれども、なかなか十年、二十年では達成できないということに問題があると思う。やむを得ざる現実として兼業が残っておる、それならそれが二年や三年なら……。長期的な趨勢で残るとするならば、それに必要な政策が進められなければならない。実は、あまり時間がないので多くを申し上げることはできませんが、そういう現状に立つと、たとえば共同化、これはもちろん必要になってくる。それから大型機械の導入も必要になってくる。あるいは農協、あるいは、私の思いつきですが、耕作組合のようなものをつくって、それに請負耕作をやらせる、これも一つの問題だと思う。それから、農地の流動化をはばんでおる膠着した農地法、だから昔の地主制度の復活ではありませんから、これは明確に一線を画しながらも、これを再検討する、あるいは農産物の加工その他ですね、そういう面にもっと重点的な施策を行なうこと。そういう意味の新しい現状に対応する施策に、そういう方面に、金をある程度つぎ込まなければ、これは全然結果的には農民の切り捨てと言われてもしかたがない。結果論ですよ。これは幾ら政府でも農民の首を切り捨てようと思って政治をやるはずはありませんが、結果的にはしかしそういうことになるのじゃないか。でありますから、そういう意味で、私は相当この農業というものが重要な曲がりかどにきている、その意味で、農政というものがもう一度再検討されなければならないのではないか。先ほど申し上げましたように、赤城さんの責任追及をやっているのじゃないのです。必ずしもそうじゃなしに、この趨勢をどう見て、どう新しい発展の糸口をつかんでいくか、そういうことを言っているのです。でありますから、経営規模の拡大は、これはもちろん当然であります。進めなければならぬが、長期的展望に立って、こういう趨勢になってきたのだから、そういう意味の施策もあわせて行なうという意味で、ただ、いままでの政策だけでは不十分だ、相当施策の重点を変えていかなければいかぬのじゃないか、そういう意味の私の意見です。いかがでしょうか。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) だんだんお話を聞いておりますと、私も同感でございます。この時期におきまして農業全体の視野から、あるいは農業自体の中からも、新しい方向をさらに進めて、力を入れていくべきところは入れていかなければならぬということは私も痛感いたしております。
  145. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間がありませんので、最後に貿易の自由化と日本の農業の関係であります。これは完全に自由化は、世界的な要請であろうと思いますけれども、しかしEECの諸国でも、みんな自国の農業保護のために対外折衝をやっております。でありますから、日本でも制約があるわけですね、耕地面積に。世界各国がたくさんな耕地面積を持っているのに、日本は一戸当たり一町歩に足りないという絶対的制約があるのです。ですから、所得倍増をやろうと思えば耕地面積が倍になるか収穫量が倍になるか農産物価格が倍になるか、それ以外にないでしょう。ところが農産物価格が倍になったら、これは消費者がたまらぬ。あるいは収穫量が急に倍になるはずもない。そうすると経営面積です。これがたくさん増加する可能性がないとすれば、おのずから限界があるでしょう、日本農業には。そこで、この日本の限界をはっきり外国に説明しながら、日本として育成すべき農産物はどれとどれか、それには徹底的助成をしていく、そういう取り組みを農産物の貿易自由化に早急にやらないと、なしくずし自由化では困る。この取り組みの姿勢を私はお尋ねしたい。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本の農産物がいまお話のような事情によりまして、非常にコスト高である、こういう事情にあります。しかしながら、生産性を向上していきながら価格政策を並行してやっていかなければならぬことはもちろんでございます。その段階におきまして自由化の波が押し寄せてきている。これに漫然とかまえておりましては、あるいは流されてしまうというような傾向がございます。でありますので、私は方針としては、やはり日本の食糧につきまして自給度を確保していく、こういうことが必要だと思います。しかしその中におきまして、やはりおのずから自給度を、世界的な観点から見ましても日本の現状から見ましても、増していかなくてわ、ならぬもの、それから、それほどではなく考えられるものとあると思います。そういうものをやはりにらみ合わせまして自由化に対処していくのには、農産物等を個々にこれを検討いたしまして、慎重に対処していくということが、お話のとおり必要である、こういうふうに考えます。
  147. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間がありませんからこれで終わります。
  148. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 羽生君の質疑は終了いたしました。  一時五十分再開することにし、これにて休憩いたします。    午後一時十八分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  149. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更がございました。中尾辰義君、稲葉誠一君が辞任され、浅井亨君、亀田得治君が選任されました。     —————————————
  150. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続いて質疑を行ないます。阿具根登君。
  151. 阿具根登

    ○阿具根登君 まず農林大臣にお伺いいたします。時間がありませんので、質問は簡単に申し上げますが、現在、農相の交渉段階の過程でございますので、詳しく御説明願いたいと思います。六日の農相会談において、漁獲量の問題が相当問題になっております。どういう状態であるのか、御説明願いたいと思います。
  152. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知でしょうが、韓国の沿岸に専管水域を設けて、その外側に共同規制水域を設ける、共同規制水域内におきましては、日本と韓国と公平平等な立場で漁獲をいたそう、こういう話し合いがだんだんに進んできておったわけでございます。そこで、日本側といたしましては、その共同水域内に出漁する船の数で、すなわち以西底びき、以東底びき、それからまき網、この三種の漁業につきましては隻数できめていこうではないか、こういう話し合いを引き続きしておるわけでございます。これは前の会談から続けております。この間の会談の中途におきまして、非常に韓国側で、船の数だけをやられるというと、日本の船が大挙押し寄せるような感じを持たれるから、魚族の保存という意味におきまして、規制区域内におきましての漁獲量をどの程度にするかということの話し合いを進めてもらえないか、こういう申し入れがあったわけでございます。そういう申し入れがありましたが、私どもとしてはあの中でどれくらいということをきめるのは非常にむずかしい、それからこの話ができるならば、できた暁におきましては、取り締まりは自分の国で取り締まる、そういう場合におきまして漁獲量で取り締まるということにするのは非常にむずかしい、そういう意味におきましても出漁する船できめていきたい、こういうことを主張して、まだ残っておるわけであります。そういう主張は。ところが、中途におきまして漁獲量も何とかめどとしてきめることができないかということでありますので、一応のめどとして、それではきめてみようじゃないかということから、両方で漁獲量を出し合いまして、それで漁獲量としては十五万トンとして、その上一〇%、下一〇%、そういうアローアンスを設けて、まあ上で言えば十六万五千トンぐらいが規制区域内における漁獲量のめどだということにしようじゃないか、しかし、あくまで私のほうでは船の数できめたいということが、船の数がまだきまりません。しかし、一応漁獲量としてはその辺のめどではないかという話し合いをしてあるだけでございます。
  153. 阿具根登

    ○阿具根登君 その隻数は双方どういう主張をされておりますか。
  154. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これはもともと話の始まるときに了解がありまして、実績を尊重する、実績を下らない程度において隻数もきめようじゃないか、こういうことになっております。でありますので、隻数につきましては、まだ数字がこちらで出したものの半分以下ぐらいに向こうでは日本のほうを言っておりますが、そういうことで非常に隔たりがありますので、そのままでまだ話し合いが進まない、こういう状況です。
  155. 阿具根登

    ○阿具根登君 隔たりがあることは新聞で知っておりますが、日本はどのくらい考えておられるのか、それによって漁獲量ということも考えておられると思うのです。相手はまたどのくらいの隻数を考えておるのか、その隻数によって漁種の問題も違ってくると思うのです。どういうふうなお互いに話し合いの差があるのか。
  156. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 以西底びき、以東底びき、まき網の点が隻数として話し合いのものになっております。それから沿岸漁業のほうは自主的にきめよう、こういうことで、私のほうではいままでの実績を基準とした隻数を向こうへ話しておりますが、向こうにおきましてはその半分以下あるいは三分の一くらいのものが日本として適当じゃないかというようなことを言ってきておりすす。非常に、先ほど申し上げましたように、隔たりがありますので、これがどういうふうにきまるかという点につきましては、相当のまだ回数を重ねて話し合いをしなければわからぬと思います。でございまするので、非常に相離れた隻数でございますので、いまここで隻数を申し出たものを申し上げるのは少し控えさせていただきたいと思います。
  157. 阿具根登

    ○阿具根登君 交渉の最中でありますので、私もそれを含みながら御質問申し上げておるつもりなんです。しかし、今日までの新聞その他で私たちが知る範囲内においては非常に不安を与えている。また、交渉のたびに非常に言われておることと違った形で出てきておるのではないか、こういう不安を持っておるわけなんです。たとえば、いまの御答弁聞いてみましても、一応漁獲量は十五万トンというようなめどができた、こうおっしゃるわけです。そうすると、隻数においては日本の半分以下で相手は要求されている、こういうことになるわけですね。それは一体どうなります。
  158. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁獲量としてはこれは一応話がついたことでございますから、ここで申し上げても差しつかえないと思いますが、日本の要求は、要求と言いますか、十七万トン、それが十六万五千トン、こういうことになったわけでございます。でございまするので、船の点をきめる場合にも、日本の申し出の半分になるということはないはずでございます。なお、船でいかなくちゃならぬという話をしていることの一つの根拠は、規制区域ができますが、規制区域の外でも船は魚をとるわけであります。規制区域内だけに限定されると、向こうは限定されるかもしれぬが、私のほうは限定されるというわけじゃございません。そうでございまするので、これにつきましては相当の弾力的なものでなければならない。こういうふうに主張して折衝しております。
  159. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこに疑問があり不安があるわけなんです。大臣は先ほど、隻数をまずきめるべきだということで一つもその態度は変えておらない、こういう交渉をやっておるのだと、こうおっしゃったわけなんです。そして、いま日本が要求しておる隻数、新聞で発表になっておるのが正しいか、いま農相が考えておられるのが別なのかわかりませんよ。しかし、十七万トンという日本側の意向を出されたならば、それに対してどれだけの船が要るのだということはお考えになっているはずなんです。ところが十五万トンで合意に達した、大臣は非常にこれを、まあ十六万五千トンといわれたけれども、それは拡大された場合で、上になった場合であって、下になった場合、十三万五千トンくらいになっておると思うのですね、新聞で見てみますと。そうすると、一番都合のいいところをそういうふうに発表されると、また国民は非常に不安を感じてくる。十五万トンというのは合意で、いまおっしゃったように、もう話はついたとおっしゃるのですが、ほんとうについたのかどうか、その点ひとつ。
  160. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十五万トンということは、一応話はついたわけでございますけれども、御承知のように、漁業の問題は一括してきまらなければその問題がきまったというわけにはまいりません。日韓交渉そのもの全体が一括妥結でありますが、漁業問題といたしましても一つだけきまった、それだけは動かすべからざるものだというようなわけにはまいりません。だから、一つ一つやって、いきますけれども、これは一応そういうふうにきめた、しかしこれはそれをもって正確なきめというふうにはいかない。私のほうでは、隻数できまったならば隻数のほうできめていくけれども、漁獲量は一応のめどだ、でありまするから、いまの話の十五万トンというのも、漁獲量で両方の規則をすることは非常にむずかしい、したがって、十五万トンにアローアンスという意味で一〇%、それで十六万五千トンぐらいまではこれはとっていくようなことがあるというような考え方から、正確にその数も十五万トンで押えるというわけにはまいらぬというような意味を持っております。それからまた先ほど言いましたように、それはきまったのかということでございますが、これは漁業問題につきましては、漁業問題として一括してそのほかの規制区域もまだきまっていないのですから、規制区域もきまっていないのに、漁獲量なんということは、話に入ったのは少しおかしいのですが、いきさつ上、そういうふうに一応はそういうめどをお互いにつけましたけれども、これでもって動かすべからざるものとか、きまったものだというわけには私どもまいらぬ、こういうふうに了承してございます。
  161. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで、いま大臣も言われたように、規制区域もきまっておらない、隻数もきまっておらない、それに漁獲量だけが合意に達したというのは一体何です。合意とは何なんです。上を、それをきめてしまえば、おのずから下の問題は私は枝葉末節になってきはせぬかと思う。逆になってくると思う。だから、西日本の漁民の皆さんがえらい心配しているわけです。それは一番最後にきめるやつじゃないですか。それがちゃんときまってしまって、それから船は何隻にするか、規制区域はどこにするかというのは逆じゃありませんか。
  162. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁獲量につきましては、先ほど申し上げましたように、めどをお互いに話し合ったということで、大体それでいこうかというめどをしただけで、それが合意というととじゃございません。ですから、順序としてはいまのお話しのとおりだと私も思っております。しかし、話の進行上、そういうふうな一応のめども漁獲量でつけようかというようなことでございまするから、めどのほうへ実は入り、片方のほうでは共同規制区域の範囲もきまっておらぬ、まだ隻数もきまっておらぬ、これは御指摘のとおりでございます。順序としてはそういうことでございましたが、話の進行におきましては、一応漁獲量につきましては、そういうめどのほうで入っていった、こういう順序であったわけでございます。
  163. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは完全に相手のペースで交渉されておるということになるわけです。大臣はめどだと言われるけれども、六日の農相会談でこれは合意に達したということで、相手側はそうとっておらないと私は見るわけです。だから、漁獲量がきまったんであるから、漁獲量と隻数を同時に協定書に書こうじゃないか、こういうことを言っておられるわけなんです。そうすると、その面だけを新聞で知る範囲内においては、相手側の言うのが正しくて、相手側のペースに日本大臣が巻き込まれてしまっておる、こういうふうにしか考えられないわけです。大臣がこういう大臣会談をやられて、大臣はめどと言われるけれども、どの新聞を見ても漁獲量は合意に達した、合意したということになっておるわけです。そうして今度、日本の発表によっては、これはめどである、あくまでもめどであって、隻数がきまらない限りはだめだと、こう言っておられるけれども、そうは私はとらない。相手側があることなんです。だから、合意とは何なのか、新聞で合意と書いてあるのはみんなうそなのか、この点をはっきりしてもらいたい。合意していないのだということであるならば、十五万トンということに何ら拘束されない、ただそれは話の合い間に出ただけであって、十五万トンに一切拘束されませんと、これははっきり言ってもらいたいと思います。
  164. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 拘束されるか拘束されないかは漁業問題が全部きまったとき、あるいは日韓会談が全部きまったときでございます。いまお話しのように、話の、交渉の過程でございまするから、いろいろな話が出ます。しかし、それが合意に達したというわけではございません。向こうでは合意だと言うかもしれませんが、いまのお話にもありましたように、向こうでは漁獲量と、あるいは船と両方一緒に合意に達したときには並べて併記しようじゃないかというようなことを言っております。私のほうでは、それは違う。私のほうとしては、船の数でもってもし協定ができたならば、これを付属文書へ書いて国民に出し、漁獲量というのはめどだから、これは合意議事録といいますか、そういうものへ書くことが至当だと、こういう主張をしておるのです。両方でまだ主張が一致しているとも、何にもそこまでいっていないのです。漁獲量だけには一応その程度のめどはつけてもよかろうということは、これは一致しておりますが、ですからこれを一応、共同規制区域内における規制を合意したと、こういうことにはとってもらわれては困ります。私もそういう  ふうには考えておりません。
  165. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、とってもらっては困るとおっしゃるけれども、新聞面を見て、あるいはあなたの答弁をみておって、そういうようにとられるんじゃないかということを心配しておるわけなんですよ。そうすると、隻数がきまり、規制区域がきまった場合はこれは問題にならないのですか。新聞で見てみますと、韓国側が十三万九千トン、日本側が十七万トン、それを中間の線で妥協したもので、上限十六万五千トン、下限十三万五千トン、こういうことまで話し合いができておるわけです。そうしたらこれは動かせない事実じゃないですか。これに何にも規制されぬ、これに何も拘束されないのですか。私はここまではっきり新聞にも書かれておる、これを見ますと。これは合意しておらないので、これは問題にならないのだということを言われるけれども、そうじゃないと思うのです。権威ある会議の立場で、会議の場所で、双方からこれだけ出し合って、そうしてその中に一つの数字が出てきたというならば、私はこれは動かせないものとして、これは今後交渉の中に生きてていくべきものだと、こういうふうに感ずるのですが、そうではないのですか。
  166. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それが生きていくかいかないかというような問題は、漁船の数がきまってからの問題でございますから、いまのところでそれが動かすべからざるものだというふうではないと、こういうことははっきり申し上げておきたいと思います。それで漁船の数がもしきまった場合に、その場合にいまの漁獲量の問題をどういうふうに協定の中に扱うかという問題も一致しておりません。反対なんです。私のほうの主張と向こうの主張と。でございますから、この漁獲量というものが、いま動かすべからざるものだと、こういうようには私も解しませんし、そういう性質のものではございません。
  167. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、これは新聞は全くうそであって、そうしてそういうものに一切拘束されない、隻数と規制区域によってこれは当然変え得るものだ、変わり得るものである。合意に達したものでもなんでもないし、話の合い間にそういうものが出ただけであって、何もこれは拘束されない、こういうことですか。
  168. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほどから申し上げましたように、拘束されないかされるかというのは、出漁する船の数がきまってからの問題でございます。船の数がきまってからにいたしましても、その漁獲量というものは、これが何といいますか、規制されたものということじゃなく、一つの標準として、めどとして了解すると、こういうふうな話し合いになっておるわけであります。だから、私のほうの主張としては、あくまでも船で拘束される。船がきまれば、船がきまったときに、いまの十六万五千トンあるいは十五トンを上下するという漁獲量というものは、それを標準として、それが標準にきまって、それ以上とるような場合があるとするならば、行政的に私のほうではひとつ控えようじゃないかということがあり得るわけでございます。だけれども、あくまで規制の基準、尺度としては船の数でいこう、こういうことになっておるのでありまするから、いまそれはいいかげんなものだというわけじゃございませんが、船の数がきまらなければ、いまの漁獲量というものの話し合いもきまったというわけにはまいりません。そのきまった上におきましても、漁獲量で拘束されるのではなくて、両方の規制は船で拘束されることにしよう、こういう話し合いをしている途中なのであります。
  169. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかりますけれども、この十五万トンというのが一応のものさしになってきまってきたということになれば、それから逆算して、隻数なりあるいは漁の種類なりということが論議されるようになりはしないかということを私は言っておるわけなんです。通常でしたら、そうなるわけなんです。だから、隻数がきまらなければこれはだめだというならば、隻数のきまらない前にこういう問題になぜ入っていったか、これは相手側のペースじゃないか、こういうことを言っておるわけなんですよ。そうでなければ、いま大臣がおっしゃるとおりであったならば、そういう問題に入る前に、隻数がきまらなければ一切量はきまりませんというのが正しいはずなんです。いまの御意見聞いておっても。また、日本国民はそういうような交渉をされておるものと思っておったわけなんです。また、そういう発表もされておったわけなんです。そうすると、これが拘束されないとおっしゃるけれども、それから逆算してくるような結果になってきやしませんか。そういうことは考えられませんか。
  170. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 逆算はされないとしても、それがある程度標準になるということはあり得ると思います。ただ、先ほど申し上げましたように、隻数というものがそこの中だけでとっているものじゃございません。外でもとるわけでございます。だから、それすなわち漁獲量即船の数というふうにはいきませんけれども、ある程度これは基準になるといいますか、船をきめる場合の基準にはなる、ある程度なるということは、認めざるを得ません。
  171. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、きょうこのあとまた交渉に行かれて、新聞で見ますと十一日、十二日ごろが一番の山場になるのだ、こういうことを書いてあるわけなんですが、基線について、いまの共同水域の問題から、基線について今度また問題になると思うんですが、そういう点はどうですか。
  172. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 基線につきましては、大体この前の会談のときに、専管水域のもととなるところの基線、それから専管水域、それからその外側へ共同水域というような線で、大体はこの前の話し合いからの継続でできておりますが、大きな問題は、済州島の近辺に私のほうの主張と向こうの主張とが対立したままでございます。
  173. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、済州島周辺だけの問題が残ってくるというようなことならば、また量の問題が最後まで残ってくる、隻数の問題が最後に残ってくる。そうすると、隻数が合意に達するようになれば、一体今度は済州島を抜かして、あとは一体どういうものが問題に残ってくるか。いま対立したところが四カ所かなんかあるということを言っておりますが、どういうところですか。
  174. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ちょっと、いま聞き飾れなかったのですが、もう一ぺん。
  175. 阿具根登

    ○阿具根登君 いまのは時間に入りませんからね。  基線の問題はあまり心配ないとおっしゃったわけです。済州島周辺の一番いい漁場の問題が今後問題になるだろうと、こうおっしゃった。そうすると、結局その漁獲量、それから隻数、それから種類——漁種ですか、こういう問題が一番やはり今後の問題になってきはしませんか。そのほかに三、四大きな開きがあるということも出ておるが、どういうものですか。
  176. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 一番大きな問題は基線の問題だと思います。共同規制水域がそれできまってくるのですから、一番大きな問題。それで、これはまあ一時的な問題ではございません。基線の問題が問題になってくるだろうという、それはお話のとおりでございます。それで、基線の問題がもしもきまれば、いま言うようにまだきまっているわけではございません、ほかも。確認したわけではございません。全体としてはさまっておりません。しかし、済州島近辺が一番向こうとこちらの意見の対立があるところでございますと、こういうことを申し上げたわけであります。そういうようなものもきまってきませんというと、隻数の問題もきめていくことが困難だということもあると思います。そういうものもやはりにらみ合いながらきめていかなくちゃなりませんが、いまのところ対立のままでございます。  それでございまするから、話の途中であまり、御注意はけっこうでございますが、どういうふうだああいうふうだと問い詰められましても、私ども交渉の途中でちょっとお話ししにくい点もございます。
  177. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。聞いていましてね、赤城さん、先国会まではこの問題についてかなり決意をもってやっておられるなという片鱗があったわけですが、どうも今度の交渉であなた腰砕けてしまっていますよ。隻数でいくということをあれほど、きのうも言明されていた。ところが、数日前の報道によると、いま阿具根委員から指摘するような、漁獲量が一つの標準にしろ意見の一致を見たということは、すなわち韓国はあくまでも量だと、こちらが隻数だということについては、少なくとも韓国ペースにあなたはすっかり乗せられてしまっている。標準なんだから、これはもし上限よりも多くなれば勧告をして、そして下げるようにということがあり得るということは、明らかにこれは拘束するものになるわけです。しかも、規制水域の垂線問題が相当対立しているという御答弁ですが、だとすれば、なおさらに漁獲量の標準をきめられるということは、もう足かせ手かせにわがほうからなってしまう。韓国の国会その他に対する報道では、漁獲量でものがきまったようなことになる。一つものを両者がかってに国民なり議会に答弁ができるようなことを、あまりコレクトし過ぎる。私は、もう少し筋を立て、標準量として一つのめどだとするならば、わがほうのこれは腹の中の話であって、漁獲量をイの一番にきめてしまって、あと基線はどうするかということは、本末転倒ではありませんか。私どもわからないのはここなんであります。  しかも、従来しばしば量ではいかない、隻数だと、あなたは非常に強く主張されてきたのであります。このことが数日前来、西日本、ことに九州周辺では大きな波紋を投げかけているのです。御承知だと思います。はっきりとそれはめどである、全然拘束がないのだということが言い得るのかどうか。私は重ねてお伺いをし、さらに基線問題との関係で、どうもすべてがきまらないのに量だけ先にめどをつけるということは、韓国の主張そのものをのんだと解してもしかたがないように思われる。  で、さらに第三点は、韓国自体の規制についてはどういうことになるのか、どういう話が出ているのか、お伺いしたいと思います。
  178. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それが確定的なものではないということは、先ほど申し上げたとおりであります。それからまた、船の数でいくべきだという主張を下げたわけでもございません。それはあくまでそれを通しておるわけでございます。ただ、交渉でございまするから、そうしてまた、これは両国規制区域内におきまして平等に魚類の保存をしていかなくちゃならぬ、こういう話になりまするならば、そういうことはこれはまあ私のほうとしても賛成でございます。そういう意味からいいまして、両方の魚族資源の点から漁獲量をどの程度の一応のめどをもってもらえるか、こういうような話でありまするから、いろいろ話の過程におきまして十五万トン、それに一割上限というような漁獲量をめどとしようというような話し合いになったわけでございます。しかし、これが拘束されるのか、動かすべからざるものであるかというようなことは、先ほど言いましたように、私のほうの主張は船ですから、船できまったもので拘束される、こういうことに相なる筋でございます。そしてそれはまたその筋を通しておるのでございますので、あるいはそういう韓国ペースに乗ったというような御批判もあるかと思いますけれども、私は、交渉でございまするから、ある程度向こうの考え方もこっちの基本方針を曲げない程度においては話し合いの過程において共通の問題についてはある程度了承するということは、これは話し合いとして必要だろうと思います。そういう点におきまして、一応のめどとして向こうの話とこっちの話との中間をとりましたけれども、しかし、それが拘束力をもってあくまでそれでいかなくちゃならないのだということではございません。繰り返して申しますように、漁船の数をいまきめようとして折衝しておる最中でございます。  それから、向こうはどうだということでございますが、これもまだ話までに入っておりません。向こうも当然規制されなければなりませんし、規制は平等で規制されるべきものである、こういうようなたてまえで話を進めておる、こういうことでございます。
  179. 阿具根登

    ○阿具根登君 同じことを言うとまずいと思うのですけれども、一番大事なところだから重ねて質問するのですが、それでは十五万トンというのを相手はめどだと了解しておりますか。これは動くものである、動くものであって拘束を受けないのだ、あくまでも一つの交渉のめどで、何かの話をしなければならぬのでこういう話が出たのだ、というように軽くとっておりますかどうか。
  180. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは向こうのとり方でございますが、交渉の内容をここでだんだんぶちまけるのはどうかと思いますけれども、そういう数字が出たときに、十六万五千トンになったらば、もうそれ以上とったら違反だということにはなりませんぞ。そういうことになった場合には、日本としてもひとつ船の数などを、来年度におきまして委員会ができることになりまするから、委員会等によりましてこれを調整しようというような、資料にしようとか、あるいはまたそれ以上になった場合にはひとつ少し差し控えようじゃないかというようなことはする、行政的なことはしようと。だけれども、それが違反になるとかなんとかというようなことにはなりませんぞということは、こっちから念を押しているのです。だから、向こうが合意ととるかとらないかは別といたしまして、私のほうではそれが確定的な合意だというようなふうには全然とっておりません、船の数でいくということを言っておるのですから。  ですから、向こうでどういうふうに宣伝しておるかどうか私存じませんけれども、私のほうではそういう余裕やなんかをもって話をしておるのでございますので、だんだん、あまりそのしゃべったことまでここで紹介するのはどうかと思いますが、せっかくのお尋ねでございまするから、そういうことは申し上げておきます。
  181. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう相手がどうしゃべった、こうしゃべったというような交渉の内容を聞いておるわけじゃない。しかし、私たちが新聞等で知る範囲内においては、相手はこれは合意だと思っておると。そうでなけらねば、この数字を協定文に書いて、それから隻数もそれに書こうじゃありませんかということを言うわけないです。そうすると、お互いがお互いの国に、自分が交渉に立っておるのに都合のいいような発表しておったら、今後ますますごたごたが起こってくるわけです。だから、私はこれをはっきり聞いておるわけです。  しかし、現実としてこういう数字が上がってきたというものは、これは動かせないものだということを心配するわけなんです。大臣はそれを心配すること要らぬと、これは拘束しないのだとおっしゃるけれども、今後一番問題だといわれる基線の問題等がどういう話し合いになるかわかりませんけれども、そういう問題とつれて、これはそのまま生きてくる可能性が非常にあると。そうして、それによって隻数ということもこれはさまってくると。だから、隻数が置き去りにされておる。隻数きまらなだめだとおっしゃるけれども、事実問題はもう漁獲量が先行しておる。だから、韓国のペースで交渉されたのだと、こういうように考えるということを言っておるわけなんです。  そういう点をひとつはっきり御答弁願って、たとえ基線の問題がきまっても、この漁獲量というものはただめどであって、隻数が自分の考えておる、いわゆる日本の漁民がこれだけ熱望しておるものについては、これがきまるまでは、たとえ基線の問題がきまっても、他の問題がきまっても、この交渉は妥結できないのだということを、はっきり申していただきたいと思うのです。
  182. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 漁業の問題すべてにきまらなければ、この問題がきまったというわけにまいりません。
  183. 阿具根登

    ○阿具根登君 総理に。まあこれは大臣がそう言ったのだから、総理もそのとおりだとおっしゃると思うのですけれども、いままで質問をいたしましたその範囲内において、私どもまだ釈然としておるわけじゃないのです。まあ交渉の最中でもありますし、時間もございませんので、これで次の問題に移るのですが、この問題についてどうお考えになっておるか。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農林大臣からお答えしたとおりでございますが、ただいまとにかく交渉中でございます。したがいまして、農林大臣としてもお尋ねの点にもう少し親切に答えたいという気持ちは十分あるようですが、どうもそれをしゃべっては残っている交渉がうまくいかないのじゃないか、こういうことでたいへん心配をしながらお話をしておるようです。大体御心配になる点も、日本の漁民等が——私もちょうど先ほど陳情にも会いました。あなたのいま仰せのごとく、漁民の連中がたいへん心配しておる。したがって、今日の漁業交渉に全部をかけておる、かような状態でございますが、農林大臣もよくそれらの事情を知っておりますので、それらのことを勘案しながら交渉をするのでございますから、いましばらく、この交渉中の事柄で、しゃべりたいこともようしゃべっておらないのだと、かように御了承いただきたいと思います。責任をもって交渉しておると。
  185. 藤田進

    ○藤田進君 農林大臣、ちょっと関連して。韓国側の規制については、これはもうやらなきゃならぬこれから話すというふうに聞こえたんですがね。こちらのことだけ攻めたくられて、同時に向こうのことも出すとか、交渉の技術的見地からのその辺はどうなっているでしょうか。
  186. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 大まかにいいますならば、実績を尊重するということになっております。向こうの実績の範囲内におきまして規制すると、こういうことになります。
  187. 阿具根登

    ○阿具根登君 次に移ります前に、この漁業問題についていままで私が申し上げましたように、非常に何か妥結をあせっておられるというような考え方を受けるわけなんです。あまり弱腰でなくて、基本線とおっしゃったのだから基本線どおりひとつ交渉を進めてもらいたい、かように思います。  それから次に移りまして、炭鉱の災害について、総理大臣にまずお尋ねいたします。三十八年の一月から十二月までの地下産業労働者の災害件数を見てみますと、五万七千七百四十六件ある。死亡者が千十四名、重傷者が二万五千八百八十一名、こういう大きな災害が一年間に起こっておりますが、これに対する対策をどういうようにお考えになっておられるか、総理大臣にお尋ねします。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この災害につきましてたいへん保安、監督、また労使双方の協力を得ながらもあとを断たない、まことに私は遺憾に思います。今回の夕張炭鉱の災害につきましては、本会議等で私の気持ちを卒直に御披露いたしまして、罹災者に対して心からのお悔やみを申し上げておるような次第でございます。ことに、私どもは三池の炭鉱で苦い経験をなめておる。そのときに、再びかような災害を起こさない、かように誓ったにかかわらず、今回また夕張にかような災害が起きた。これにつきましていろいろな見方があるのでありますが、私も本会議の席上でお答えしたように、人命の尊重なくして何の生産ぞや、かような立場でこれに真剣に取り組んでいる、かようなことを申しておるのでありまして、かような努力はいたしておりますが、なおその災害あとを断たない、まことに残念しごくに思っております。
  189. 阿具根登

    ○阿具根登君 その考え方はわかりますが、たとえば現在交通戦争だと言われて、非常な交通事故が起こっておる。それに対しましては、運転手に酒を飲ませた者も罰する、規制に違反した者は厳重な罰則があるわけなんです。炭鉱でこういう爆発が起こるのに、いまの法律のままでいいかどうか、どういう対策を考えておる、そういう問題をお尋ねしたい。
  190. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 地下産業の安全は、所管が通産省でございますから、通産大臣からもお答えがあると思いますが、労働基準法におきましては、その実効を確保いたしまするために、罰則がございます。したがって、事態を調査いたしまして、その責任がみな経営者にあると、こう判定をいたしました場合には、司法処分に処しておるのが通例でありまして、厳重な態度で臨んでおります。現に昨年度において、基準法違反で司法処分に処せられた者が約五百件ございますが、そのうち二百二十件くらいは安全衛生に対する責任の追及でございまして、なおこの上とも厳重に監督し、かつその監督の所在を明確にし、重度の者については司法処分を申請するということにいたしてまいる所存でございます。
  191. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいまお尋ねの、現行鉱山保安法令上の法規に違反した者についての処罰は、最高三年の懲役刑、あるいは最高三十万円の罰金刑を科することになっております。これは阿具根委員よく御承知のところと思いますが、そこで、私、道路交通法の関係調べてみましたところが、信号機破壊の場合、これは五年以下の懲役、十万円以下の罰金、業務上の過失は、六カ月以下の懲役、五万円以下の罰金、事故の場合の救護違反が、一年以下の懲役、五万円以下の罰金、無免許運転が、六カ月以下の懲役、五万円以下の罰金、こういうふうな一応形になっておりまして、現在の鉱山保安法令による法規違反は罰則が軽いと、お尋ねの交通犠牲者と比較して、法規上軽いか重いかというと、大体私としてはバランスがとれているのではないか、こういうふうに思うのであります。
  192. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう御答弁では、災害が減るということは考えられません。三十万の罰金と五万円以下の罰金と、どちらが大きいか、数だけお考えになってはそれは企業を御存じないことなんです。そういうことだから、そういう保安問題が起こるのです。私がしゃべると時間がなくなりますから、あまりしゃべりません。最大の原因は何だとお考えになりますか、通産大臣
  193. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先日、商工委員会のほうでもお尋ねございまして、重複いたしましてたいへん恐縮ではございますが、やはりこれは企業経営者の保安に対する責任感の徹底というものが欠けておると私は思います。また、私ども監督の衝にある者としても、これからの近代経営の中にありましては、特にこの保安というものが重要だということが、まずまっ先に頭におかれておらなければならないと思うのであります。そういう見地で、私といたしましては、こういう問題の起こる以前から、就任直後から、三池のことや昭和電工の問題があるが、おまえはどう考えるのか、こういうことをしばしば聞かれまして、これからの経営者が人命尊重ということに徹底する新しい産業道徳ともいうべき見地に立って処していかなきゃならないその心がまえは私も同様であると、こういうふうに申し上げてまいったのであります。しかしながら、これはただここで申しておっても効果がないのでありまして、ほんとうにそのことが実行されなければならないと思います。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは三井とか、北炭とか、三菱とかというのは、御承知のように、専門の教育を受けて何十年、坑内でそういうものと戦って仕事をしてこられておる方々なんです。この人たちが、坑内で実際生活したことのない監督官の方々に注意されねばならないというのが逆なんです。注意してやるくらいの経験と、それだけの常識があるはずなんです。それが注意されてやらないということは何なのか、そこに生産がまず先に立っておるということなんです。だから、今度の問題でも、ガスが一・七から二・二%あるということを注意されてやっておらないじゃありませんか、こういう点についてどうお考えになりますか。
  195. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私からいまさら申し上げるまでもないことでございますが、特に鉱山の場合に、保安ということが優先しなければ、私は生産はあげ得ないと思います。こういうことを申し上げるとほんとうに恐縮でありますが、まず掘っていく、支柱を立てる、それから湧水の状況はどうかと、あるいはガスの状況はどうかと、すべてが最初に保安というものが優先しておると思うのであります。したがって、先ほども申したように、今後の鉱山の経営者がそういうことがまず頭にあって、そうして生産ということを考えなきゃならない、その点の徹底が欠けておるのではないかと、こう思うのであります。さらに申し上げてみますと、かりに施設をいたしましても、炭車のごときは、おそらくこれはどちらの施設といえば生産施設でございましょうが、三池の炭鉱のああいう事故から考えてみますと、炭車の逸走ということが、これが炭じん爆発を起こした、こういうことになりますと、この生産施設もまた保安ということを考えなければやれないということになっていこうと思います。したがって、くどくどしく申し上げるまでもなく、まず保安あってそれから生産である、こういうふうに私は思うのであります。
  196. 阿具根登

    ○阿具根登君 あなたと討論しても困るのですけれども、三池の場合に、炭車が逸走したから爆発したのだというその考え方が間違っているのです。斜坑の場合は炭車は走るようになっているのです。何ぼ注意しても走る場合があります。また、坑内ではあらゆる金物を使っているから火花が出ます。電気を使っておるから火花が出る。そういう場合でも爆発が起きないように規定されているはずです。走っても爆発しないように炭じんは取っておかねばならぬのです。今度の場合でも火花が何から出たか何かわからないけれども、原因は何だと言われるけれども、原因はそうじゃないのです。それは直接の原因です。火花が出てもガス爆発しないようにガスは抜いておかたければならないことにきまっているのです。だから、そういう問題じゃないのです。だから、生産が先だとぼくは言っているわけですけれども、この問題について総理大臣に、これはもう歴代の総理大臣に、炭鉱の事故あるたびに私は質問しておりますから、今度くらいは前向きの御答弁ができると期待しておりますが、いまのちょうど考え方が、私は通産省という省に保安問題が所管されておるからこうなると思うのです。ちょうど会社が保安持っておると同じことだ。だから、労働省に移管がなぜできないのか。本会議ではいまのままでいいとおっしゃったが、なぜいまのままがいいか。なぜできないかお尋ねします。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、ただいまのところは生産と保安、これも同一官庁にあるのがいいと私はかように考えております。しかして、先ほど来御議論がございしまたが、この経営者自身、ひとつ事故を発生したらどうなるか。それにまず思いをいたしてもらいたい。そうすると、必ずその炭鉱はしばらく閉鎖する、これが復旧するまでにずいぶんかかる。その問生産はやむわけであります。同時にまた死亡者、罹災者等に対するたいへんな手当ても出さなければならないのです。会社自身として保安をないがしろにする、生産だけに打ち込んでいる、かような状態でないことはこの一事を見ても非常にはっきりしていると思います。私は、必ずしも通産省に行政を置いておることによって、その結果が生産第一主義に流れる、これが私はやや見方が間違っているのじゃないか、ただ私が考えますのに、最近のたとえば炭じんの爆発、あるいはガスの爆発、そういうことにつきまして、その濃度その他についてあるいは基準が少し甘いのではないか、もっときつい基準をとってもいいのではないか、そうしないと正確に、流動するガスだとか、また炭じんの動きぐあい、そういうものもなかなかわからないのじゃないか。そのようなことを考えるのです。私も三井の山に、三池の山ではございませんが、三井の田川に参りまして、最近の進んだ炭鉱、そういうところではもうあらゆる科学技術、これを採用でき、そうしてかような不祥事故の発生が防止できるはずだ、もっとなぜ科学技術がその面で取り入れられないか、そういう点がややぬかっておるのではないか。そういう意味の科学技術、これをもっと普及徹底さす。これでさらにこの種の災害も除けるのではないか。保安と生産、それが両省に分かれておる、そこにも原因があるかもわかりませんけれども、その原因より以上に、私は災害を未然に防止する、そういう措置としてはもっと科学技術というものが取り入れられてしかるべきである、かように私は考えるのでありまして、そういう意味で保安法なり、その他の規定も再び調べさすことがいい、かように思いますので、この前も三池炭鉱の災害の後においては、確かに炭じんなり、ガス等の許容量も、これを低めたといいますか、その率を変えたはずでありますが、今回の災害についてもそういう点もさらに考えるべきだろう、片一方で、生産技術のほうはよほど進んでおる。しかし、保安技術のほうがややおくれておるのではないか、そういう意味で、もしもこれが専門の労働省であるならば、もっとそれが進み得る、こういう御意見ならばこれは私も耳をかします。しかしながら、ただ単に保安と生産を通産省でやっておるだけではこれは不満だ、これではどうも納得ができない、私は、今回通産省自身も、保安監督官その他がさらにこういう面において十分意を尽すように研究をするだろう、そうして今日それがただ研究の結果を待つというのではなく、早急に措置をとるべきことではないだろうかと、かように私は考えます。もちろん基本的な問題について私は研究はしない、かようなものではございませんが、もう少し災害防止について最近の近代的な科学技術が役立ち得るのではないか、こういう点を考えておる次第でございます。
  198. 阿具根登

    ○阿具根登君 では、労働省で保安問題を担当したらなぜいけないか、それをお尋ねいたします。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはなぜいけないかと申し上げるよりも、現在の機構を改正するのですから、そのほうについての不都合な点を御指摘がいただきたいと思います。もちろん私は専門のことには触れたくありませんから、そういう点も全然研究しないと申すわけではございません。よくそれ本研究してみますけれども、ただいまもっともぬかっておるのは、そういう面ではないだろうか、先ほど申し上げますように、生産者自身が非常に困る、労働者自身も、そのために事故が発生したら、どういうような影響を受けるか、人命を落とすばかりではございません。人命を失うばかりじゃない、職場、大事な職場について、そこで働けないような状況が出てくるのですから、これは双方におきまして、さらに真剣に取り組んでまいるだろう、また、さようにあるべき事柄なんですね、これはただ単に、生産第一主義だからけしからぬということは、あまりにも理論的に簡単な見方ではないだろうか、そういう意味で十分考えてみたい、かように私は申しておるのであります。
  200. 阿具根登

    ○阿具根登君 どうも私が長くしゃべらなければいかぬようになって困るのですね。そういう御答弁を承りますとね、これは法を検討されることはけっこうなんです。だが今度の場合は法がまずかったからどうかという問題なんです。あまり専門的なことを総理おわかりございませんから申し上げたくないですけれども、たとえば今度の場合でもここには一・七のガスがあるから、電気のスイッチを押してはいけませんという注意をされているわけなんです。しかし、会社としては一・七ガスがあっても、その中でどうしたならばスイッチを入れられるだろうかという研究をするわけす。そのガスをのかすということではなくて、ガスをのかせば相当金がかかる、時間がかかるから、その中でどうすればいいかということで、ビニールを張ってやるとか何とかということをやられるわけなんですよ。だから法以前の問題なんです。だから労働省でやる場合何がだめかというようになってくると、おそらく生産が阻害されるのではないだろうかという考えが先に立つと思うんです。そうじゃなかったら、それじゃ建築業でも、トンネル掘りでも、なぜ労働省がそれじゃ保安担当しております。なぜ炭鉱だけ労働省が担当できないのか、これは生産を考えておられるからです。そうじゃなかったら、何で労働省だったらなぜそれじゃまずいのです。私は労働省でやったから災害がこれでなくなるということを言っておるわけじゃないのです。少なくとも精神的にも、それを会社に与え、法を守るために、何で労働省が持つのが悪いのか、その点をはっきりしてもらいたいのです。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろんその点も研究すると申し上げているのです。先ほど来申し上げますように、事故が起きたら、これはもう生産がとまるのです。だから生産増強だとかといっているのですが、生産第一主義と言っているが、そのことがわからないはずはないというのです。経営者自身。だから、いわゆる消極に立っているというような見方じゃなしに、ことに人命を失うという、こういう事故が、人命を失わないで、ただ単に山だけが作業をとめた、こういう事態ではないのです。だからそういうことについては経営者が非常に真剣だ。だから、その点はまず御了承いただいて、そうしてお互いに協力してこれを防ぐようにしよう。私は、労働省に持っていったら悪いかどうか、これはよく研究を要することだということで、その点は残しておりますよ。全然やらないとは言わないのだから、だからその点を十分私どもに研究さしていただきたい。ただいまの制度そのものでも、生産者自身は、これは生産第一に流れる、この考え方はやや是正してもらわなければいけないんじゃないかということを先ほどから声を大にして申し上げておるわけでございます。
  202. 阿具根登

    ○阿具根登君 いつもこの種の問題はそういうことで時間切れになるんですけれども、こういう事故が起これば、必ず人命が尊重されねばならぬ、生産第一じゃならぬということをおっしゃるけれども、先ほど数字を示しましたように、千十四名という人が一年間に死んでいる。この現実を見て一体どう考えられますか。三百四、五十名の人が毎年死んでいるわけです。こういう爆発がなくても。それに対していまの答弁で私はいいかどうか。人命尊重を一番最初に掲げられる総理です。これでいいかどうか。その答えだったらば全然池田さんのときと前進しておりません。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも総理が同じような考え方だからと言いますが、私も池田前総理並みの知識かと思います。そういう意味で私も喜んでいいのかどうかと思いますが、ただ、いま申し上げますように、私は全然研究しないというんじゃない。しばらくこの問題は研究さしてください、かように申し上げておるのでございますから、研究さしてください。また、ただいま数字はやや違っておるようですが、私ども調べたところでは、もっと数は少ないようですけれども、いずれにいたしましても、一人でも人命を損傷するということは、これはたいへんな問題でございますから、十分考えなければならない、かように私は思います。
  204. 阿具根登

    ○阿具根登君 どなたが入れ知恵されたか知らぬが、数字が違ったと言った人はここへ出てきて説明しなさい。だれが言った数字なのか、ここへ来て言いなさい。地下産業労働者で——これは時間がありませんので言いますが、三十八年一月から十二月まで五万二千九百四十七件が、これが炭鉱……。
  205. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) おそらく総理が多少阿具根委員のおっしゃった数と違うと言われたのは、三十九年の数字をお持ちであっのではないかと思います。三十九年のほうは死亡者は四百六十名でございまして、石炭鉱山では三百四十二名の犠牲、こういうことになっております。
  206. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうだと思うんです。私の言っているのは、三十九年の十二月までとれておりませんから、だから三十八年の一月から十二月まで一年間きれいにとったやつが、それが炭鉱で八百八十一名、それからこちらに百三十三名、全鉱で、鉱山で。間違いないです。数字は間違って私はものを言っておらぬ、こういう人命の問題で。だから、何か私が数字を誇大に言って質問をしているように総理に言われるのは心外です。私は真剣に質問しているつもりなんです。
  207. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 決して、いまお答え申し上げたとおり、そういう気持ちで申し上げておるのじゃないので、たまたまのは三十九年と三十八年の被害者の数の違いである、こういうことだと思います。いずれにしても、総理の言われるとおり、一名でもなくなるということは、これは重大である、こういうふうに総理も前提されておるのでございまして、決してそういう人命を尊重するという気持ちから離れて、何か数字の上で少ないぞ、こういうような気持ちでおっしゃっておることでは絶対ないと思います。
  208. 阿具根登

    ○阿具根登君 労働大臣にお尋ねいたしますが、この夕張炭鉱で、明治三十年生まれと明治三十三年生まれ、三十六年生まれという人が重傷しておりますが、これは最高の人は六十八歳になると思いますが、どうお考えになりますか。
  209. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私もその記事を見て驚いた一人であります。事情を調査いたしましたところが、定年退職後組夫になられた人であります。現在石炭産業において労働力が不足をしておりますので、熟練した経験のある人にできるだけ働いていただくという、これは必要でありますが、しかし、事故にあうような危険な場所で十分働き得るならば機械的に定年退職させる必要はないじゃないか、そう思います。それと同時に、法律上は最高限の規定はございません。しかしながら、普通常識上、そういう人々については他の職業をお世話するようにいたすのが企業としても当然であるし、また、私どもの役所としても、率先して積極的にそういう方向に指導すべきものだ。私も非常に驚いて実情を調査し、対策を協議しておるところでございます。
  210. 阿具根登

    ○阿具根登君 御承知のように、定年退職になった人を今度は組夫として雇って、同じ炭鉱の坑内に下がって、賃金は今度は半分で、そして二十日以上働けば家賃は千五百円でよろしいが、二十日切れたならば六千円家賃を払え、こういうことは昔の監獄部屋なんです。病気になって二十日以上つとめられなかったならば賃金は減ることは当然です。その減った人が、今度は家賃を六千円飯場へも払わなければならぬということになれば、この人は病気になっても坑内に下がる。こういう制度はどうですか。
  211. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) それも私は知りまして、実情を調べさせました。たしか松村君なんとかいう——名前は忘れましたが、その組夫に対して住宅を借りて提供した。その場合、薪炭費とか電気代、そういうようなもので五千円と私は聞いておるのであります。五千円と私は聞いておる。ただし、二十日以上つとめた場合はそれは千五百円でいい、こういうような制度になっているようであります。これは出勤を奨励するという意味でそういう制度にしたものだと思うのでありますけれども、運営を一つあやまりますと、いまおっしゃったような問題を生じます。したがって、これについてはその実情を厳重に確めさせるようにいたしております。いま私が聞いております範囲では、けがとか病気とか、そういうことで出勤ができなかった場合は、それは出勤したものと認めて二十日のほうに入れるように実は聞いておるのでありますが、なお事情は調べてみたいと思っております。
  212. 阿具根登

    ○阿具根登君 いずれにしても、新聞でもいわれているごとく、同じ坑内で働いておって、一方は直接夫、一方は組夫、そして死んだ場合でも労災は半分です。百万円そこそこです。そうすれば、その半分だということは賃金が半分だということになる。こういう奴隷的な制度をまた昔のように復活しようとしているのがいまの炭鉱の姿なんです。これが合理化の姿なんです。人間は要らぬのじゃない、人間を首を切ってなるべく安く使おうとしているのがその組夫の制度なんです。そして、その組夫の中には、今度の問題でも、六十一名のうち、三名は住所がはっきりわからないから労災金を送れないというような現実まで出てきているということになると、ここが一番日本の暗い谷間にいまなりつつあるのであります。こういうことが第一次答申案でもやめろということをいわれておるわけです。だから、これについては労働省でも十分研究して、こういうことがないようにしてもらいたいということが一点と、坑内に下がる場合に、十八歳以下の青年と女子は坑内に下がることはできないが、上の限界がない、八十になっても下がっておる。六十八の人が重傷しているのです。坑外でも、六十八といえばなかなか使わないでしょう。それを坑内へ六十八歳の人を入れていいかどうか、そうすればここにも何かの規制をしなければならぬじゃないか。さらに、また、五十五歳でやめた人でも、そのまま役に立つならば五十五歳の定年制というのを考えたらどうか。一体どういうふうにお考えでしょうか。
  213. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、六十八歳であの事故にあうような場所で働けるならば、これは機械的に五十五歳で定年制を実施するという論拠が薄くなるわけであります。したがって、そういう場合、これは実例があるのでありますが、定年制の問題ということについてはむろん検討を要するかと存じます。それから、先ほどもお答え申しましたとおり、年齢の最高限の制限がございません。これは今度の事故にかんがみて、至急検討いたしたいと思っております。
  214. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間があまりないので、労働大臣にひとつ別の問題で質問いたしますが、山口県で、ある会社の工場長さんその他おえらい方々がゴルフに接待をして、そうしてゴルフで遊んで帰る途中で自動車事故にあって三人死んだ。その三人の人が労災の適用を受けて、三人で四百九十六万五千三百二十二円労災保険金を取られた、こういうことが出ておるわけなんです。これは事実なのかどうか、ひとつお尋ねします。
  215. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ちょっと私が承知しておるところと違う点がございますが、私の承知している点だけを申し上げて、あとは事務当局に補足をさせたいと存じます。  私が承知いたしておりますのは、山口県で、御承知のように、ある会社がお客さんを接待して、帰りに鉄道の踏切かどこかで事故にあってなくなられた。その場合、社長と副社長と、もう一人だれかがおって、社長はむろん経営者でございますから、労災保険の対象になりません。副社長は、外に対する場合は副社長という名刺を使っておったのだそうでありますが、その実体は工場長でありまして、まあ雇用者と認定されましたので、それは労災保険の対象になったと聞いております。で、むろん労災保険の対象になるのは、いわゆる社用族がお客の接待やゴルフその他に行って、その途中において生じた事故を業務上の事故と認定すべきでもありませんし、これはさせない方針で指導をいたしております。ただ、その場合、それではどういう理由で認証対象になったかと申しますと、私の聞いております範囲では、その呼んだお客さまがその会社の製品の七割か八割受注しておる企業の購買主任だと、それで非常に重要なお客さんであったために、社長の命令でみんなで接待に出かけた。そういうことから業務上と認定されたと、こう私は承知しておるのであります。で、具体的な認定は当該基準局でやりますことでございますけれども、正直に申しまして、いささか釈然としないものが私にもございます。ただ、実態をよく知りませんが、実態を見た上での認定と思っておる次第でございます。
  216. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の点につきましては、ポイントが、問題になる点が二つございます。一つは業務上の行為であるかどうかということと、労働者であるかどうかということでございます。新聞に伝えられましたのは、副社長が労災補償を受けたと、こういうふうに出ておりましたが、この問題は労働者であるかどうかということでございます。業務上であるかどうかという点につきましては、ただいま大臣が申されましたように、その行為が社命行為であるかどうか、あるいは恣意行為であるかどうかということによって、判断され得るのでありますが、この場合、実態判断をいたしましたところ、社命による一種の出張に類似した行為であるという判断をもちまして、しかも、往復の通路が通常通るべき通路であるということからいたしまして業務上というふうに認定を下し、さらには、労働者であるかどうかという点につきまして、新聞に副社長と出ましたけれども、工場長でございまして、俸給の支払いその他調べましたところが、通常の労働者と同様な給与の支払いを受けておるということが確認されましたので労災補償を行なった次第でございます。しかし、この問題は、大臣が申されましたように、一般の社用族に乱用されるべき筋合いのものでないことは当然でございまして、この種の問題につきましては、認定を厳格にいたしまして処理したい。考えておるような次第でございます。
  217. 阿具根登

    ○阿具根登君 どうもいまの答弁はおかしいので、副社長兼工場長になっているのです。それは工場長をどういうふうにお考えになったかわかりませんけれども、社命でゴルフに行って、その帰りに事故にあったのを労災だとおっしゃるのなら、マージャンで宴会でも、これは社長の許可がなかったらできないのです。おそらく。その金は会社から出ておるのです。個人で、プライベートで金を出して遊んでいるのは、そういうことはないのです。しかし、社用の接待で赤坂等で相当飲んでおられると思う、皆さんもあるいは。そうした場合に、それはみんな労災ですか。社長の許可を得なかったらそういうことできないのです。あそこの会社は非常に自分のいいお得意さんであるけれども、あそこの社長はマージャンが好きじゃ、おまえらマージャンやれと言われてマージャンやって、帰りに事故にあったら労災、あそこの社長は小うたが好きだ、おい、君行って赤坂のどこそこで小うた歌ってこい、そこで帰りに事故にあったら労災、そうなるじゃありませんか。おかしいと思うのですが、どうです。
  218. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これはおっしゃるとおりであります。私もおかしいと思います。したがって、そういうことは労働者災害補償保険の補償の対象にならないという方針で指示をいたしておるのであります。で、いまおっしゃいました副社長という地位であれば、むろんこれは経営者でありますが、副社長と称しておるのであって、実体は工場長として給与を受けておるのだと、こう私は報告を受けております。それから、それを社用と認定した基礎、先ほども申しましたように、私も釈然といたしません。したがって、これはさらに厳重に調査をいたします。一般的に——一般的と申しますか、私どもの方針としましては、そういう種類の社用は、これは一切労災の対象にならないという方針で指示、指導をいたしておるつもりでございます。
  219. 阿具根登

    ○阿具根登君 その問題はわかりましたけれども、そういう非常に痛切な労災の考え方も地方ではとっておられる反面、工場に通勤する道中でけがした人に労災が適用されておらないというのがあるわけなんです。これは一体どういうようにお考えでしょうか。
  220. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) そういう場合に起こった事故が経営者が負担をいたしております労災保険の対象になるべきものか、あるいは加害者が負担をすべきものか、それはその議論が分かれるところだと思うのでありますが、いまのところは加害者が負担をすべきものだというたてまえに立っておるわけでございます。しかし、その限界というものは非常にむずかしい問題でございますので、さらに検討をいたしたいと思っておりますが、これはやはり交通事故その他は加害者がその責めに任ずるというたてまえに立つべきものではなかろうか。交通事故の防止という意味から申しましても、もっとそういう場合の加害者の責任というものを厳格にしていくべきものではなかろうかと、私は個人として考えております。ただ、その加害者の負担能力がない場合、これは非常に困った問題になります。そういうときを勘案いたしまして、実態的に補償し得られるような方法を検討いたしたいと思っております。
  221. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がありましたら、あと労災問題を労働大臣に質問いたしますが、医療関係で大蔵大臣と厚生大臣に質問いたしますが、医療問題が今日のような状態まで非常に紛争に紛争を重ねた原因は、九・五%の値上げを大臣職権でやられたことに端を発しておるわけなんです。その場合、大蔵大臣と厚生大臣が、九・五%引き上げるかわりに入院料を上げる、薬価の半分上げる、注射料を上げる、あるいは総収入に対して率をかける、こういうような話し合いをされたと聞いておるのですが、これは事実かどうか。
  222. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  医療費の九・五%の引き上げに伴いましていろいろ紛糾しておりますことは、まことに遺憾の次第でございます。九・五を上げたということは、昨年の四月、中医協の有沢委員長答申がございまして、これを十一月の時点で計算いたしますと、上げ率が九・五%になる、こういうことでございます。当時有沢委員長の報告によりましても、八%と一応言っておるが、八%を下回るかもしらぬ、あるいは上回ってもよろしい。しかし、それは一〇%をこえてはいけないと、こういうようなことでございまして、その後の資料で調査をいたしまして積算いたしましたところ、物価の変動等がございまして九・五と、こういうことになったわけでございます。そこで九・五を引き上げたい、そこで中医協に諮問をいたしましたことは御承知のとおりでございますか、昨年の十二月二十二日以来、中医協に諮問をいたしまして、年内に六回ほど会合がございました。それから、一月に入りまして数回行なわれました。相当長時間にわたりまして、この種の審議といたしましては十分と認められる程度の審議を重ねておる。それぞれの支払い側、また、診療側の意見も、十分納得と申しましょうか。承知できましたようなわけでございます。公益委員からも独自の御意見がございまして、その意見をとったという——当時の公益委員は、この中医協をこれ以上継続するといっても、この結論に変わりはない。これ以上進展しないから、政府は諮問案を、ひとつ入院料と初診料に若干改定を加えて実施すべきである。こういうような答申でございまして、その答申を採用して実施をいたした、こういうことでございます。そのために紛糾になりましたことは、ただいまも申し上げましたように、はなはだ遺憾でございます。そこで、この問題と関連いたしまして、大蔵大臣と財政措置の問題につきまして詳細の話し合いがあったんじゃないかということでございましたが、これは御承知のように、三十八年度以来、保険に赤字が出てまいっております。特に政府管掌のほうに赤字が累積しております。それから日雇いの問題もそうでございます。これをどういうふうに措置するかというようなことを検討いたしまして、そして政府部内としては、あるいはまた与党も入れまして、一つの考え方をひとつ申し合わせよう、こういうようなことでございまして、値上げに関連して、それに結びついてそういう措置をとったというように伝えられておるのは少し考え過ぎじゃなかろうか、こう私考えております。
  223. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 医療費の九・五%アップのときに、ただいま厚生大臣が述べましたとおり、保険制度を将来に発展さしていくためには、薬価負担をやってもらったり医療費の引き上げをしないと、財政上も限度一ぱいにきておりますし、諸外国の例から比べても、イギリスを除けば世界最高の水準にありますし、このままでは保険制度そのものがたいへんなことになるので、ここらでひとつ将来のことに対して腰を落ちつけてやってもらわなければならぬ、こういう基本的な立場に立ちまして、薬価負担及び保険料の引き上げを願いたい、こういうことを申しました。党の三役も入っておりますので、党及び私と厚生大臣との間に、私が申し上げたことに対する申し合わせという書類ができましたことは事実であります。
  224. 阿具根登

    ○阿具根登君 普通の場合は私はそれでいいと思うのですよ。しかし、今度の場合は、一方は大臣職権によってもうすでにアップしておる。一方は、これは三法の改正をしなければならぬから、国会の議決を経なければならぬのです。国会にかからなければならぬわけです。それを一緒にやるということは、国会はこのまま通すんだということに通じはしないか。一方は大臣職権で上げるのですから、国会にかけずに上げるのですが、一方は法律の改正をしなければならぬ。そういう予算の裏づけを、これを政府が出されると別ですよ、政府予算に細まれるなら別。しかし、一般被保険者から取るというときに、そういうときに考えられたということは、もしも国会を通らなかったならばどういう責任をおとりになるつもりであったか、それをお伺いします。
  225. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が申し上げたのは、そういう変更は審議会に答申を求めなければならぬわけであります。厚生大臣はそういう案をつくってくれと、こういう趣旨の意思を明らかにしたわけでございます。でありまして、申し合わせのような諮問案ができまして、いま諮問をいたしておりますが、この案をのんでもらえるか、のんでもらえないでも別な答申が出るかということは、いまにわかに判断できない状態にあることは御承知のとおりであります。今度出ましたら、答申は尊重いたします。こう政府は明らかにいたしておりますので、私や神田厚生大臣が述べました申し合わせをしたことが審議会を拘束するものでもなく、審議会がのんだと、のませられたということになれば別でありますが、違う答申が出ても尊重いたしますということでございますので、拘束するものではない、また、国の審議等に対してももちろん拘束するものではないということは、結果的には御承知いただけるかと思います。財政当局者とすれば、こういうことをするときには、当然姿勢を正してもらわなければいかぬ、こういうことでお願いをしたわけであります。
  226. 神田博

    国務大臣(神田博君) いま大蔵大臣からお答えのとおりでございますが、その前に、九・五のアップをなぜ職権でやったか、こういうことでございますが、これは先ほども申し上げましたように、政府が一昨年の暮から医療費については緊急是正をする必要がある、こういうことでございまして、これを中医協に諮問いたしまして、昨年の四月答申があったわけでございます。その答申を実行いたしたい、その答申につきまして、配分案を諮問するにつきまして精査いたしまして、それを積算いたしますと九・五になる、こういうことでございまして、九・五は何か新規に聞こえるようでございますが、中医協の支払い側、診療側にいたしましても、八%なら、支払い側におきましては八%は一月一日にさかのぼってよろしい、残りの一・五についてひとつもっと調査したい、こういうことでございます。ところが、公益委員の意見もそうでありますし、私どももわりあいに中医協におまかせしたわけでございますが、これは物価の変動その他によって自動的にそういうような数字が出てまいったわけでございまして、これを二つに区別するということはおかしいんだと、そういうことはよろしくないんだと、こういう議論でございます。ですから、せんじ詰めて申し上げますと、八%ならもう私は問題はない。残りの一・五%は非常に問題があったと、こう考えております。一・五の健康保険に一体年間及ぼす影響ばどのくらいかといえば、約四十億程度でございます。緊急是正を叫ばれましてからまる一年余たっております。しかも医療費の改定がもう三年余もたってるようなときでございまして、緊急に是正しないというわけにはまいりませんので、これを取りはからったと、こういうように御了解願いたいとお思います。
  227. 阿具根登

    ○阿具根登君 ことばじりをとるようで恐縮なんですけれども答申の当時は八%であったけれども、それから物価が上がったので九・五%にされたというなら、それからいままで何%上がってますか。もうあなた一一%ぐらいにせにゃいかんのじゃないですか。自分の都合のいいときだけ物価をお使いになる。自分の都合の悪いときはお使いにならない。もうあなたが一月一日にさかのぼられてから三カ月たちます。そうするとあなた、政府の換算からいっても一・何%上がっておらにゃいかぬ。そうしおったらもうしょっちゅう動かさにゃいかぬじゃないですか。それは理屈にならないと思うんです。それを職権でやっておいて、そうしてその赤字は法律を変えて被保険者からとるんだと、その法律が通ったならばこうするんだというのはわかりますよ。しかし、もうすでに三カ月も前に上げておいて、そうしてこの国会で法律か通るからその金をそれに埋めるんだというの一は、これは逆じゃありませんか。さか立ちじゃありませんか。いかがです。
  228. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。阿具根さんのお話はよくわかりますが、御承知のように健康保険財政の赤字は三十八年から続いておりまして、しかも三十九年度に大幅な赤字になっております。これを収支の均衡を得るために、やはり保険三法の改正は当然のことでございます。しかるに、なおそれを上回るようなことになるような改正をしたのはけしからぬじゃないかというお気持ちはよくわかりますが、行政担当者といたしまして数年来の懸案をやはり片づける必要がある。さりとて診療側にいつまでもまかせておくというわけにはいかない。緊急是正でございますから、やはり適当なところでひとつ踏み切らなければならないんじゃないかということでございまして、それから同時になぜ八%にしなかったか、その上計算したんじゃないかということでございますが、八%というものは固定した答申のように私ども考えておらないのでございます。おおむね八%ということでございまして、その当時これを現実に配分するについてもう一ぺん調査してやれということでございましたが、それに基づいて調査をした。そうしますと物価の変動等もございまして、自動的に九・五%というものになった。こういうことでございまして、別にそこに主観を入れてやったと、他意があってやったということではございません。事務的に積算したものをそのまま取り入れて出したと、こういうことでございます。  それからそういうやり方なら、なおまた上がっているじゃないかということでございますが、これは一応緊急是正が済んだわけでございますので、その後ということはいま考えておりません。
  229. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは、保険三法の改正がどういう修正になるかしらぬけれども、国会で大修正になった場合は一体どうされるか。あるいは国会のことだからどういう重要な問題が出てくるかもわかりませんので、これが修正もできなかったといった場合、一体保険の赤字、九・五%上がった赤字は一体だれが負担するのか。当然国が負担になると思うんですが、そうすると、一方国民健康保険その他で非常に犠牲になられる方は一体どうなるのか。その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  230. 神田博

    国務大臣(神田博君) 先ほど来からお答え申し上げておるように、いま保険三法はそれぞれ審議会に諮問いたしております。社会保障制度審議会、また社会保険審議会等に諮問いたしておりますから、この答申を待ってやりたい、両協議会で慎重に審議を始めておられますから、この答申がどういうふうになってまいりますか、まいりましてからひとつ成案を得て御審議を願いたいと思います。それから審議会が答申がなかったらどうか、あるいは非常な大修正をしたらどうか、あるいはその他の点についても触れておられたようでございますが、いませっかく諮問をいたしまして、また両審議会とも非常に御熱心に御審議の途中でございますので、むしろそういうことをここで私お答え申し上げることは、審議会に対してこれは非礼になると思いますので、せっかくのことでございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  231. 阿具根登

    ○阿具根登君 審議会に対して非常にまあ非礼になるとか、丁重なことばを使っておられますが、審議会を無視されたのは神田厚生大臣じゃありませんか。審議会を今日まで激怒させて、そうしてここまで国民に不安の念を与えたのはあなたじゃございませんか。そのあなたがそういう経験から非常に謙虚に物を言われるということならわかりますけれども、自分が種をまいておいて、そうしていまそのことばは私は受け取りがたい、こう思うわけなんです。審議会のものをそのままとっておられればこんなにならなかったのですから、だから私はそのお答えはそう受け取るわけにはいきませんが、時間がまいりましたので、最後に一点御質問を申し上げておきたいと思うのですが、薬代の問題で、昔から薬九層倍といわれているのですね。いまはそれ以上だと私は思うのです。いま中小企業や大企業まで倒産でばたばたやっておりますけれども、もうかって、株が上がって配当が楽々とやられているのは薬会社だけだといわれているのです。そうしてその薬の宣伝が二百七十四億、薬の宣伝だけで二百七十四億という金がテレビ、ラジオ、新聞雑誌で使われているわけなんですね。そして御承知のようにテレビなんかでは、いやでも応でもこれを飲んだら病気にはならぬ、医者は要らぬというくらい宣伝をするわけなんです。それを飲んで今度死んだ人が七人も八人も出てきて、このアンプルを飲むなとこういっているのですが、一体これはだれが責任を負うのですか。飲め飲めといって飲ましておいて、それを飲んで死んだ。これは許可した人に責任があるのか、薬をつくった人に責任があるのか、死んだ人がばかをみるのか、一体どっちなんです。
  232. 神田博

    国務大臣(神田博君) いわゆるアンプルかぜ薬の服用によって死亡者の出たことにつきましては、まことに遺憾の次第でございます。そこでこれと関連いたしまして、広告が過大に行なわれているのじゃないかというようなことでございます。この点につきましては、いろいろそういう御批評も受けております。政府のほうにおきましては昨年の八月でございますか、いわゆる誇大広告の防止に対する規制をいたしておりますが、なおひとつ十分でないという点もございますので、今後十分にひとつ検討を加えまして、規制をしていくべきものは断固規制をする、こういうたてまえで取り扱ってまいりたいと思います。なおまた、薬を飲んでなくなられた、これは先ほど来申し上げますように、まことに遺憾でございますが、これらの方々の処遇はどうかというような意味に伺ったのでございますが、これらの薬は学識経験者等による審議会にかけまして、そしていずれも適当な条件のもとで売り出されたものでございます。したがいまして、この条件に反するものでございますると、おのずから責任の問題が明瞭でございまするが、その基準に従って販売をされた、こういうことでありますると、いろいろこの体質上の関係とか、あるいは服用の方法の問題とかいろいろの点がございまして、これが直ちに政府に責任がある、いわゆる言いかえれば賠償の責任があるというようなことにはまいらない、こういうふうに考えております。目下審議会に再諮問いたしまして、厳重にひとつ取り扱ってまいりたい、取り締まってまいりたい、こういう所存でありまして、急いで、しかも早く、なお慎重に検討するようにということをさせております。
  233. 阿具根登

    ○阿具根登君 急いで、早く、慎重に検討するとこう言われたわけなんですが、この種のアンプルの薬をまるで飲料水のように店頭に飾って売るのがいいかどうかという問題なんです。しかも、これは一体原価幾らかかっておるのか、小売りの店で百円以上で売っておるけれども、今度姿を変えて買えば三十円か四十円で何ぼでも売っておるわけです。薬というものはそういうものなのか、原価幾らかかっておるのかですね。正直に店頭で買った人は百円余まりで買っている、しかしそうでない人は三十円ぐらいで十分手に入ります。そんなべらぼうな値段というのがあるか、しかも、それを医者は要らないような宣伝を誇大にして、そうしてその薬を飲んだ人が死んでいった責任は政府じゃないとおっしゃる、そういうことがいいかどうか、そういう危険性のあるものだったら、ちゃんとこれはこういう危険性があるのだ、あるいはこれをたくさん飲めばこういう症状が起こりますとか、あるいは何年間服用すればどうなるというようなことがわからぬわけじゃないと思うんです。そんなことは一切言わずに宣伝ばかりしておるからみんなそれを飲んでいって、そうして死んでしまったら、あわてて今度はこれを回収命令出すことはできない、許可しているから。だから、何か集めてくださいなんというようななまぬるいことをやっておられるようです。だからこれをもらったところはどんどん安く売っておる、また回収しても金は払わぬという話、違う薬をそのかわりにやっておられる、だから製薬会社は一切損しない、こういうことになっているわけなんですよ。うそだったらよく教えてください。私はそういうふうに聞いてきたから。
  234. 神田博

    国務大臣(神田博君) アンプルかぜ薬につきましても、いわゆる使用書というものを十分中へ同封いたしておりまして、注意していることは事実でございます。しかしこれを店頭にいまのように、おっしゃるように販売していることがいいかどうかという問題については、これはおっしゃるとおりだと思います。十分これは改める点があろうかと思っております。医師、薬剤師等に十分御相談して服用するようにという厳重な通知を出しております。  それから薬の回収の問題でございますが、いまお話のとおりでございますが、今回は製造者から自分のほうの責任においてすぐ製造も禁止する、販売も禁止して回収をする、こういうような誠意を持った申し出でございまして、これを許容したということでございます。  それから、その他の点についてもし詳しくということでございますれば、政府委員から答弁させたいと思います。
  235. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がまいりましたので終わります。
  236. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 阿具根君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  237. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、小平芳平君。
  238. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに総理に、佐藤内閣の経済政策について若干お尋ねしたいのであります。この問題はいろいろな面でダブってまいる点もありますけれども、非常に国民全体が注目している問題でもありますので、あまり私としてはダブった面を申し上げませんけれども、ひとつ結論的にはっきりした面をお答え願いたいと思う次第でございます。  池田内閣が高度成長政策、こういう点を非常に看板にされてやったことについて、一方ではひずみを生じた、そこで、池田内閣時代に、すでにもうひずみを是正しようじゃないかということで、政府もその面のひずみ是正ということを打ち出されておられましたが、今回の佐藤内閣の総理大臣の施政方針演説をずっと拝見いたしましても、初めのほうはアメリカ訪問、それから国際勢情、それから次に経済一般、次に社会開発、次にILOその他、結びというふうになっております。ここでもって池田内閣時代よりも一つ進んで、佐藤内閣となって社会開発という点を前面に押し出し、その面からいままでのような高度経済成長以外の何か新しいものが国民生活の上に実現されてくるのではないかというような期待を持たせるような施政方針演説と私は承ったわけであります。ところが、この社会開発をずっと読んでいきますと、そうしたひずみ是正とか、そういう面の住宅対策、生活環境施設、そういう面も出ておりますが、国土の総合的開発、治山治水、農林漁業の近代化、中小企業、社会保障全部ひっくるめたような感じも受けるわけであります。そこで、特に池田内閣当時のこの高度成長に対し、佐藤内閣として社会開発なり、社会開発とすれば特にどういう点を重点に置いて予算を編成し、今後の経済政策を推進していかれるのか、そういう点についてお尋ねいたします。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ねの点は、施政演説なり、あるいはまた予算編成方針の大蔵大臣の説明なり、またいままでもこの予算委員会を通じ、あるいはまた本会議等でもしばしば質問を受けた点でございます。その大綱は御承知のことだと思いますが、いわゆる高度経済成長、これはたいへんな成果をあげてまいりましたけれども、それから生ずる弊害の面、そのまずい点というものも相当露骨になってまいりました。いわゆるそれがひずみという形において指摘されるようになった。したがいまして、今回の予算編成にあたりましては、財政あるいは金融の面等においてこれに刺激を与えないむしろ経済を安定基調に乗せるということを第一に考えまして、そういう意味予算規模であり、またそういう意味の内容を持たしたものをつくっていくということで取り組んだわけでございます。したがいまして、今回の予算編成にあたりましては、前年あるいは一昨年等に比較いたしまして伸び率も非常に小さい、わずかに一二・四%、かような状況予算を組んだわけでありまして、いわゆる健全財政を貫き、しかも刺激を与えないように、そうして先ほど来御議論になっておりますいわゆる経済のひずみ、これを是正していく。このひずみは一体何か、申すまでもなく物価に対する問題同時にまた生産性の伸び率の低いこと、農業あるいは中小企業等に対する対策、あるいはまた地方開発、これがおくれておるということで、都市と地方との均衡をとろとか、あるいはまた労働の流動性に対応していくとか、あるいはまた教育の問題であるとか、あるいは生活環境の整備であるとか等々、いわゆる経済成長の面から取り残されたものに対する手当てをする、それに対する対策を立てるということを基本に考えたわけでございますが、予算総額が、先ほど申しますように健全財政であり、しかも、刺激を与えないようにと、かような立場でございますから、ただいま申し上げるような、いわゆる社会開発の面を推進するにいたしましても、金額的にはもちろん十分なものはお目にかけるわけにはまいりません。したがって、前質問者に対しましても答えたように、私の今回の予算は、正確に申せば経済安定成長への予算、また、社会開発を推進する予算、こういうことが言えるのではないだろうか。したがいまして、ただいまおくれておる面、しかも、調和のとれたような社会経済状態を招来するために特に力をいたさなければならないと思うような点は、予算一般の伸び率が一二・四であるにかかわらず、ものによりましては一三%、あるいは二割だとか、たいへん高率の伸び率を示しておる。そういうことでいわゆる重点施策というものをそれぞれ考えて遂行しておるような次第でございます。もちろん今回の私の考え方は、一年や二年ででき上がるようなそう簡単なものではございません。私はこの予算編成の基本的態度を維持して、さらに今後とも、片一方で減税にも努力をするし、また、重点的支出というようなことにも十分意を用いて、そしていわゆる調和のとれた、均衡のとれた経済社会を立てるように、そして経済全体が安定成長への歩みをするように、かように努力してまいるつもりであります。
  240. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどお尋ねしましたように、総理の社会開発についてのお考えをお尋ねしたいわけですが、それは、社会開発というものを、いま総理は、ひずみの是正または調和のとれた開発というふうにおっしゃておられますが、たとえば社会開発について、国連で問題にされている社会開発からいいますと、保健計画とか栄養計画、消費者支援計画、教育計画、労働計画、その他社会保護、難民保護、そういうような点が社会開発として問題にされておるわけでありますが、総理の言われる社会開発は、なお中小企業や農林漁業の近代化や総合開発まで含めておっしゃるか、その趣旨についてお尋ねをしたいおけであります。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業問題やあるいは中小企業問題これは申すまでもなく経済問題でもあります。しかしながら、同時にこれは経済問題だけでほうっておくわけにいかない。今日、やはり他の産業と比較しての格差を是正していく、これは経済問題だけで解決は実はできない、かように私は考えるのでありまして、いわゆる弱者という立場についての特殊な考慮を払う、そういう意味でこれもやはり社会開発の一環としてやることが望ましいのではないか、かような点がやや明確を欠いている。本来から申せば、私が言うように、純経済問題ということで処理すればいいわけです。しかしながら、農村の置かれておる農業振興、こういうような点になれば、同時に、農業自身が経済問題であるが、同時に社会問題としてこれを扱うところに意義がある。また、中小企業自身にいたしましても、これは産業自身ですから経済問題に違いない。しかしながら、同時に、中小企業が整備されることによりまして、あるいは高度化、近代化されることによりまして、いわゆる労働の流動性についての質の問題も解決できるわけでございます。したがって、これはただ単に経済問題だということだけでなしに、やはり社会開発的な意味も持っておる。それは格差是正に取り組んでいく、こういうことが望ましいのではないかと思います。また、教育問題、これなども、それぞれの立場においてこれは純教育問題だ、こう片づけるわけにいかないので、新しくやはり社会開発という観念を持って、そうして人の持つその能力を十二分に発揮できるように育てていく、こういうところにも問題があると思います。非常にわかりやすく社会開発と言われますならば、これは社会保障制度だ、あるいは生活環境整備だとか、かように言われますが、そういうものだけではない。もっと広範に考えて、そうしてこの施策を遂行していく、いわば政治自身一つの姿勢であると同時に、また調和を招来するゆえんであり、ここに社会開発の理念があるのじゃないかと、かように私は考えます。その非常に立ちおくれておる生活環境の整備、あるいはまた、住宅の問題などは、目に見えての社会開発の問題として取り上げられる問題だと思います。また、地方の農村の育成強化もさることですが、いわゆる地域格差を招来しておる地方の工業整備地域とか、あるいは新産都市の整備であるとか、こういうこともやはり積極的に進め、これによって初めて調和ある社会ができる、かように私は考えます。
  242. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、総理がいまお答えのように、社会開発というものを推し進めていくという基本的な観点から推し進めていく場合には、池田内閣時代の所得倍増計画、また、その後の中期経済計画、これは午前中も御議論があったように聞いておりますけれども、ほとんど意味がなくなる。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕 経済成長という点と、それから経済成長の計画と、それを主体にした考え方はどうしてもひずみを生ずる、あるいはいろいろな面で突き当たってしまう、もう動きがとれない。そこで新しく佐藤総理が社会開発というものを前面に押し出し、単なる社会保障のみならず、いろいろな面で中小企業も農業も近代化を含めて新しい社会開発を推し進めていくということになった場合に、中期経済計画どもほとんど意味がなくなるのじゃないか。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これが一つの基本的な考え方で、ぜひ小平さんに考えていただきたいと思いますのは、世の中を大企業と中小企業、あるいは小企業の対立、あるいは農村の対立、かように考えると、どうしても間違いが起こりやすいのであります。私は、ただいままでの高度経済成長、これは高度ということばに特別な意味があるかわかりませんが、いわゆる成長経済、これはぜひとも進めていかなければならぬと思います。ただ、これが成長する過程に取り残されるもの、そういうものに何ら手を差し伸べない、こういう考え方はいけない。とにかく、われわれの経済にいたしましても、政治にいたしましても、宗教もそうだと思いますが、すべてが相手の問題でございます。人間を尊重しないで、そうして経済の成長だけがはかられる、わずかのものではない。ことに社会を形成しておる以上、お互いに助け合って、協力し合っている面があるのでありますから、そういう面を十分に注意をして進んでいくべきだと思います。ことに私は、先ほどの羽生さんのお尋ねであったかと思いますが、国民一人一人の所得の面からこれを先進国に比べるならば、非常に少くない金額だ。いま国民一人当たりの所得をふやすことが一番今日の生活を豊かにするゆえんと、かように考えますので、それにはやはり何といっても経済を成長さし発展さしていかなければならぬと思います。しかしながら、この経済成長だけにとらわれて、そしておくれるものはそのままでよろしいとか、あるいは、それはもうしかたないのだ、これは自由競争の立場においてしかたないのだ、かようなことでは、これは私は、政治もなく経済もないことになる、かように申し上げておるのでありまして、だからやはり今回の経済成長の政策にいたしましても、安定基調にのせることが大事だ。これはいたずらに経済成長の高度の成長率を誇るよりも、やはり安定基調にのせていく。そして安定した上の所得の増加をはかっていく。そしてその場合に、特にわれわれが気をつけていかなければならないのは、調和をいかにしてとっていくか。ことに生産性の低いもの、これらのものをいかにして救済していくか。また、公共投資の面におきましても、われわれが産業本位にだけ考えないで、やはり人間尊重、そういう立場に立って生活環境の整備その他について特別な意を用いていく、こういうことが望ましいのではないか、かように私は思います。ただいま前内閣の施策そのものと私の考え方をお比べになりますが、私は、前内閣のやってきたことが、これはりっぱな成績をあげておる。もっと注意を今度は別な方面に向けていく必要があるのではないかということをただいま申し上げておるので、前内閣と全然別な方向だと、こういうものではございません。どこまでもやはり経済は成長し、お互いが繁栄への道をたどっていく、こういう方向でなければならぬ、かように思います。
  244. 小平芳平

    ○小平芳平君 私としても、前内閣と全然別なことをやっていると申し上げているわけでもないわけです。また、総理がおっしゃるように、安定基調といい、健全財政といい、また人間関係であるという点についても同感です。そこで実際問題が、社会開発関係のそれでは予算が前内閣時代に比べてそうびっくりするようにふえているかというと、そうともとれないわけです。しかし、まあ社会開発という一つの理念を立て目標を立てていこうという、そこに一つの進歩を私としても感ずるわけです。ただ総理も、午前中もここで問題になったように、実際問題が、いま国民が非常に望んでいる、たとえば消費者物価の安定にしましても、安定基調、健全財政といいながらも、消費者物価がはたして安定するかどうか、国民生活が安定できるかどうか、三十九年の経済成長は九四%の一二・九%で、消費者物価は四%以上上がることは間違いない。しかし、三十九年度は公共料金ストップをしておいたけれども、そうなんだ、四十年度は、特に変わったことがなければ、それ以上に消費者物価が上がることはどうしようもないんじゃないかというふうに大かたは見るわけでありますが、中期経済計画では、三十九年度は四%、四十年度以降は二%平均といいますが、とてもそれは、いまここで佐藤内閣が社会開発を前面に出したからには、それでいかれる〜、安定し健全に成長すると言い切れるものかどうか、それが非常に不安に思うわけなんです。
  245. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいま御指摘のとおり、三十九年度になりまして、大体年度間の目標は四・八%というふうに改定をいたしました。しかしながら、以前と比べまして、歴年と比較いたしますと、昭和三十八年は七・六の消費者物価の騰貴でございましたが、昭和三十九年におきましては三・八というふうに非常に安定的な方向に向かったのでございます。もちろんこれは公共料金のストップということが相当大きな影響を及ぼしておることも事実でございますけれども昭和三十八年の暮れから、金融の引き締めを通じて経済の調整過程に入ったということも、また一つの大きな原因になっておると思うのでございます。しこうして、その後公共料金の一年間ストップという措置は、これは期限がまいりましたから解除いたしましたけれども、公共料金の抑制という基本的な姿勢は何ら変わっておるわけではございません。のみならず、設備投資の状況を見てみましても、昭和三十九年の上半期はなお三十八年度時代からの影響が残っておりまして、非常に高度の設備投資が行なわれ、また、鉱工業生産もぐんぐん伸びておったことも御承知のとおりでございます。下半期ごろから、これがだんだんと鎮静化してまいりまして、ただいまのところ、大体設備投資は横ばいの状況に相なっておるかと思います。したがって、三十九年度の実質成長率は、ただいまのところ、九・四というふうに見通しておりますが、四十年度においては、実質七・五というふうに見通しを立てておるような次第でございます。そういうふうに非常に慎重な落ちついた経済運営の態度をもってまいりまするならば、昭和四十年度におきましては、三十九年度よりもより安定した四・五%程度に安定していける、さらにその先においてはこれを漸次安定して、中期経済計画目標といたしますところの二・五程度に究極は安定さしていきたいというのが、ただいまの経済運営に対する基本的態度でございます。
  246. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま長官がおっしゃるように、目標最終を中期経済計画の二・五にしたのでは、もうすでに四%以上も上がっているわけですから、三十九年度はそこで合わなくなってしまうわけですよ。
  247. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 物価の問題は、どうしても過去のいろいろな影響がずっとずれて残ってまいりますので、三十九年度は、ことに計画をきめましたときには、もうすでに一年度をだいぶ経過したごろに計画をきめたというような事情になっております。また、その三十九年度が九・四というような実質成長を見込まざるを得ないような状況でございます。その影響がどうしても四十年度にも残る、こういうような状況でございまして、中期経済計画の見通したような経済の運営が完全に行なわれるのには、いましばらくの時間が要るというところから、物価問題についてもそのような見通しを立てたようなわけでございます。これはもちろん政府といたしましては、かつては消費者物価について非常に低いところの目標を立てて、しかも、それが大きくずれたことが普通でございましたけれども、私どもは、何といっても目標を立てる以上は、それを絶対に実現するのだという意気込みをもって、決意をもって当たっておるというところからそういうふうになっておる次第でございますが、今後漸次経済の成長自体を安定的な基調に持っていくということ、その他中小企業とか農業などの生産性の格差が非常にはなはだしい面に対するところの投資を大いに増大するというような方法、その他労働の流通性の問題等について、いろいろな各般の施策を行ないますことによって、この意図したところの二・五%を来年度以降においては必ず実現するという決意をもって当たっておる次第でございます。したがって、全年度を通じて必ず中期経済計画のとおり、二・五%に落ちつけるというまでのことは、なかなか申し上げかねるかと思いますが、しかし、その方向に向かってあらゆる努力をしていくのだということをもってひとつ御了承願いたいと思います。
  248. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、この中期経済計画の見通しのようには運営はいかない、特に物価の見通しその他物価の変動というのは、そうはいかないというふうに理解するよりほかなくなるわけなんです。  大蔵大臣にお尋ねしますが、大蔵省が発表なさった、わざわざ減税の一つの計算されたおとな一人一日の食費百六十七円四十八銭と、こういうものをなぜ発表なさるか、百六十七円四十八銭で第一、一日食費がまかなえますか。
  249. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 発表しないでよければ発表しないわけでありますが、発表したほうが非常に国民に公正な判断を願えると、こういうことで、議論のあるところでございますが、あえて勇気をもって発表しておると、こういうことでございます。同じことを主税当局に言ってきて、こんな議論のあることをどうして発表したのだ——年々発表いたしておるということでございますので、来年もやはり発表しなければならぬということでございます。しかし、私のほうで検討してみたいと思います。この百六十七円四十八銭というのは、成年男子が一日にとらなければならぬカロリーが二千五百カロリーということで献立表をつくってもらいたいということで、国立栄養研究所で検討いたしましたのが、基準的な一つの献立と、こういうことで発表しておるわけでございます。これで食えるのかとこういうことでありますが、食えないというわけではないと思われます。これは物価問題簡単に申し上げてみますと、いま生鮮食料品で昭和十一年に比べて一番高いのは、七百倍の大根であります。四百倍ないし七百倍でございます。ですから、平均して約五百倍とこう見た場合、   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕 昔の一体一日当たり幾らか。朝めし七銭、昼めし十銭、夕めし十三銭、こういうものに五百倍かけると約百五十円になるわけであります。でありますから、そう全然生きられないというものではございません。また、現在御審議を願っております防衛庁の食費は一体幾らかと、こういうことになりますと、二千五百カロリーではなく、労働いたしますから三千三百何カロリーだと思いますが、この一日一人当たりの食事の単価は百六十三円であります。ですから、この基準によって大蔵省食堂をつくったらどうだろうという議論がございますが、基準的な一つの献立であることは事実であります。
  250. 小平芳平

    ○小平芳平君 基準的な献立であると、それでそれは実際のサラリーマンの生活や、あるいは所得税を納める五十何万円の収入、五十五、六万円の収入の人たちには合わないと、こういうわけですか。
  251. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一日百六十七円という数字は、成年男子が一日にとらなければならないカロリー、二千五百カロリーをとるにはこういうもので問に合いますと、こういう一つの基準的献立でございまして、これよりもくふうすればもっとうまい、じょうずな献立もできます。できると思います。
  252. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、自衛隊の食費をとれば、自衛隊はそれはもっと低くもなりましょうが、普通の一般サラリーマン家庭あるいはこうした五、六十万円の年間収入の家庭の生計費というものは、そういうふうにはなっておらない。かりに一日昼めしを外で食べれば幾らかかるか。そういうふうに百六十七円四十八銭で、実際におやじが外で弁当食べたら、夕めしは食わないでいなければならぬのじゃないですか。それでも発表したいから発表したとおっしゃれば、それでもいいのでありますけれども、要するに、そのほかにもまだ物価の値上がりとか地方税とか、そういうふうないろいろな問題が出てくるわけですが、要するにこれでもって減税がうまくいっているのだということにはならないと思うのです。
  253. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これでみんなこの献立で食べてくださいという献立でございません。間違わないでいただきたいのは、二千五百カロリーあれば成年男子が一日生きておられる、生きておれるじゃなく、活動していけると、こういうことであります。その二千五百カロリーの献立はどうかといって国立栄養研究所でつくってもらったらあれでございますから二千五百カロリーの献立と、こういうことになるわけであります。昭和三十九年の世帯人員四・一三人、四人ちょっとでございますが、これで人口五万以上の都市における食料費、一カ月一万七千二百六十五円であります。これを四・二二人で割りますと、実際は一人一日当たり百三十九円四十三銭こういう実質的な数字もございますが、これよりもよけいでございます。
  254. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、生きていかせるためにですね、食料費だけをこう合計してみたらそうなるという計算ならそれはできます。幾らでも。ただし標準五人世帯の生計費の、一つのそれがその減税の目標になるんだというものにしては、あまりにもそぐわない、こう申し上げているわけです。
  255. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三十九年の実質的な数字も先ほど申し上げたとおりでございまして、実質数字は百六十七円にはなっておらない、百三十九円何がしである、こういうことを申し上げたわけであります。しかしこういうことだけではなく、もっと生活は豊かなることが望ましいということで、年々課税最低限度を引き上げているということでございます。
  256. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうような不合理な面、それからまだいろいろ不合理な面を指摘したいわけですが、ここで一つ郵政大臣にお尋ねしますが、戦前に郵便年金に加入した人で不具廃疾者の終身年金なんです。この人は片手、両足が麻痺している人で、こういう不具廃疾者だけが加入できる終身年金にこの人は加入した。ところが戦前の金額ですから、年額二千四百円で加入して月二百円、これだけ一生涯もらえたならば、もう一生涯お前はからだが不具者でも心配はないぞということで、加入したわけです。ところが戦前の、昭和十五年ごろの加入だと思いますが、現在を考えてみれば、月二百円では、とてもその生活費の足しにも何にもならない、こういうような状態の人があるわけです。何万人かあるわけです。それでこういう人たちのために、恩給のほうはスライドしているのに、この終身年金はなぜそのまま据え置きで、何とも動かしようがないかということをお尋ねします。
  257. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) ただいまの御質問、まことにごもっともでございまして、私のみならず歴代郵政大臣は心を痛めて研究いたしたようでございます。私も就任以来、何とかこういう方をお助けする血の通った政治はできないかということで、いろいろと研究さしているのでありますが、この年金制度は、法律の上から申しますと、独立採算制でございまして、しかもその資金を運用する面につきましても、非常な制約等もございまして、かろうじてほんのわずかの剰余金しか抱いていないというような過去の実績にかんがみまして、法律的な面から見れば、もう全然突き当たってしまいまして、救済する方法がないのであります。しかしそれは何としても気の毒だということも考えますし、ただいま二百円というお話もございましたが、大正十五年に始めまして、年十二円月一円という加入者もあるわけであります。まことに気の毒な状態で、生きておられれば生きておられる間だけ毎月一円あてもらうというような形でありまして、ほんとうにお話にならぬのであります。しかし、何せこの法律のたてまえで救済の方法が行き詰まっているわけでございますので、政府のほうでも、いろいろと何か方法はないかと考えているわけでありますが、政治的と申しましても、他にいろんな影響があるものでございますので、軽率なごともできない、全く持ちあぐねてといいますか、知恵の出しどころがない状態になっているのであります。私は最近やむを得ませんので、郵政審議会の諸君にお願いしまして、何かこれ、ひとつ血の通った政治をするような方法はないものか、考えてみてもらえないかというので、いま諮問いたしております。あれこれ政治的に、法律的に、いろいろ研究さしておりますけれども、いまの法律の上では、どうにもならぬような状態でございます。特にいまのような廃疾不具者というような方々に対しては、私のところにも血のにじむような書面がたくさん参っております。こういう方々を救済することこそ、血の通った政治であると思いますけれども、いまのところではそれができませんので、——しかしあきらめたわけではございません。ただいま申し上げましたように、研究もいたしておりますし、大蔵大臣にもきょうもお話いたしまして、これを何とか助ける方法はないだろうかという話をしているのですけれども、ほんとうに気の毒だなということはみな言うのですけれども、じゃあ、どういう処置かといいますと、法律上ほんとうにあっちに行けばあっちにぶっつかり、こっちへ行けばこっちにぶっつかり、何かつかみ金でもできれば別ですけれども、そうでない限り、法律上いま困難だという状態でございます。といってあきらめているわけではございませんから、十分研究もしたいと思いますが、もしいいお知恵でもございましたらば私どものほうにもお聞かせいただい、そうしてともどもにこういう人たちを救う道が考えられるものなら考えてみたい。私ども決して冷酷無情な考えは持っておりません。どうぞよろしくお願いします。
  258. 小平芳平

    ○小平芳平君 それがただ困離だ、困離だ考えようがない、いい知恵があったら教えてくれとおっしゃいますが、ここに手紙があるわけなのです。この人は総理大臣に手紙を出したのです。そうしたら総理大臣から、まあ代理の方のまた代筆のように書いてはありますが、まず「大蔵省のほうの予算の問題もございますし、今年じゅうは無理のようですが、いずれ考えてあることですから改訂されることと存じます。」、こういう回答があるわけですが、どうですか。
  259. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本件につきましては、もう長い間の問題であります。私も十年ばかり前郵政省におりまして、同じ問題で御質問を受けたわけでありますが、制度の上ではなかなか救済のしかたがないわけであります。これは年金だけではなくて、当時の貯金をやった者、それから簡易生命保険に加入した者、非常に小さい金額でありますが、まあこれは、この金額をスライドして、当時一ドル対二円という時代は、ドル換算でもってやれば金額が出るではないか。一ドル対二円の場合はドル換算で三百六十円を百八十倍すればよろしいというような意見もございます。こういうことは、いま日韓交渉の中でもって、いろいろ向こう側の要求をしているものの中にもそういうものがございます。しかし、いまの法律の中でもって一体どこで線を引くか、これはなかなかむずかしい問題であります。ですから救済をするとすれば、いま私が代理で申し上げますれば、社会保障の中でこれを救済することが正しい。それにプラスをして考えることができるとすれば、その年金等を持っている方には一体、一般の社会保障プラスアルファということができるのか、いろいろな問題を検討しましたが、他との権衡がございまして、どうしても解決の方法がないということで現在に至っているわけであります。私は総理大臣にあてた陳情に対しまして、そういう回答が出ていることは承知しておりませんでしたが、いま明らかにせられましたので、検討いたします。検討いたしますが、検討いたします。検討いたしますで十年もきたわけですから、なかなかうまくいかない、こういうことでございます。まあ社会保障の中でどう救済するか、そういう方面で検討すれば、何らかの解決の道があるかもわかりません。
  260. 小平芳平

    ○小平芳平君 こうした個人の手紙や、それからその回答がどうこう言うわけじゃありませんけれども、実際問題は、何かいろいろな組織的な連絡でもお互いとっている人たちならば、わざわざそういう個人で総理大臣に手紙を出して問い合わせしなくても、およそのことはわかるだろうと思うんです。あるいはまたそういう陳情でも、大ぜいの力であるいは意見をまとめて陳情するということもできると思うんですが、こうした全くのもうからだの自由のきかない、ほんとうに父親の財産というものは、残してくれたものはたった何十円、百円か二百円のこの年金しかないといって、不自由の身で泣いている人たち、そういう人たちに対して、郵政大臣は、現状のままでは、どうもそういう血も、涙もないような状態ではならぬからというふうに郵政大臣もおっしゃっているわけです。今度それらの人たちに対して、いかにもいま検討中だ、今年中は無理かもしれないが、来年は何とかなるというふうな、こういうような答えを出されているわけですよ。ですから、だめならだめということをもう少しはっきりと個人個人にも納得がいくように、あるいは将来社会保障なら社会保障が——将来といってもあまり何十年も先じゃ困るわけなんですが、現実に困っているわけですが、もう少し何とか御回答はありませんか。総理大臣にこれは出したんですよ。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの問題は、郵政大臣並びに大蔵大臣からもお答えをいたしましたが、今日の状況においては、もちろんまだ研究は続けるようですが、いまのところ解決の見込みはない、かように私は聞き取っているわけであります。ただいま総理大臣から手紙が出された、その方がどういう立場の方か、これもよくわかりませんが、いわゆる社会保障で生活扶助あるいは他のめんどうが見れる方かどうか、そういう点もよく調査いたしまして、しかるべくこの問題は結末をつけたい、かように考えます。ただいまのは、池田総理から出されていたはがきのようでございますが、そのあて先等も私に参考のためにしばらく貸していただきたいと、かように思います。
  262. 小平芳平

    ○小平芳平君 その問題は、池田総理でありますが、その人は総理大臣に面会を申し込んだ、そのいろいろないきさつがありますので、このいきさつを後ほど差し上げますから、結末をつけると総理大臣がおっしゃいますから、次へ進みたいと思います。  次は、これも政治の基本に関する問題としてお尋ねするわけですが、伊勢湾高潮対策事業を国が行ないました。これは県工事でも行なった分がありますが、この伊勢湾台風は、昭和三十四年、一瞬にして五千人の命を奪うというような大災害であったわけであります。そのときには、政府も国会も特別委員会を設置したり、あらゆる努力をして、ふたたびこのような災害を起こさないようにということでやったことを、私も記憶しているのです。ところが、実際に高潮対策事業の、私がいま具体的に指摘しますのは、新川という川の堤防工事についてですが、これは堤防が完成したといって、このパンフレットには完成した堤防のまことにきれいな写真が出ているんですが、ところが、実際には堤防は完成しておらないのです。その間の事情を建設大臣から御説明願います。
  263. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。  ただいまのお尋ねは、新川堤防のうちで日の出橋付近の民家のことだと思いますが、これは伊勢湾台風のときには、在来の地盤が高いので、そこで被害を受けなかったというような事情がありまして、そこでこの高潮対策事業をやりますときには、その部分を残して工事をいたしたわけでありますが、そのために民家が五十二戸ばかり堤防外に取り残された形になっておるわけでありますけれども、これはいま申し上げましたような伊勢湾台風のようなああいう大災害のときにもそこは被害がなかったということから、そういうことになったのだろうと思います。しかし、実際問題としましては、その人たちも、堤防ができましてその外におるとなると、なかなかやはり万が一のことを考えますと、たいへん御心配であると思います。そこでどうするのかと申しますと、庄内川の中小河川改修事業というものをただいま検討いたしておるわけでございますが、その際にこれらの不安に思っておる方々の問題を解決したい、こういうふうに考えておるわけであります。
  264. 小平芳平

    ○小平芳平君 これも、建設省のほうから総理大臣に、建設省のほうに写真がありましたでしょう、写真をごらんに入れたら一番よくわかると思うのですが、要するに伊勢湾高潮対策事業といたしまして、これが県工事のところの分ですが、川がありまして、この堤防をこう来て、こういうふうに堤防が中へこうなるわけです。したがって、堤防の外へ、との人たちの場合は五十二軒、この人たちの場合は二十三軒、堤防の外へまるきりはみ出された民家が五十二軒と二十三軒残されているわけです。それで、これは、いま建設大臣の御説明だと、災害が起きないようなこともおっしゃいましたが、一年に一回、二回は必ず水がつくところなんです。そういうようなところに、しかも高潮対策事業が完成したといってこういうりっぱな写真入りの木まで発行しておきながら、実際問題はそういう何十軒かの人を堤防の外へはみ出しておくということは、これはもし災害がきて何十人、何百人の人が死んだら一体どうなるか、こういう政治のあり方というものが非常に国民の不信を買い、また本来の政治のあり方じゃないと思いますが、いかがですか。
  265. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 先ほどのお話は、一つは日の出橋のことでございますが、ただいまおっしゃいましたのは両部橋の上流のことだと思います。この部分は、これは小平さんも御承知だと思いますが、伊勢湾台風のために緊急に堤防をつくらなければならぬというときに、いろいろ地元住民との間に話し合いがありまして、そこで地元の住民の方々は、自分たちの前に堤防をつくられては困る、うしろのほうにつくってくれ、こういう強い御希望がありまして、その御希望に従ってうしろに堤防を引きました。そのために、堤防がかさ上げになったわけですから、そこで前面道路に、堤防に面している人たちは出入りが不便になりますので、そこの家屋を上げたり、川に面している方は、堤防を上げるためにいろいろ御不便になるということで補償を払ったり、そういうふうで、要するに非常に緊急を要する事業のために、住民の御希望があったためにそうした、こういうことであります。今後一体どうするかということでありますが、将来いずれは河川の改修をしなければなりません。その河川改修の際に、この堤内の方々の問題をどうするかということは、そのときに検討したいと、こう思って、おります。一
  266. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうような建設大臣言われると、総理にお聞きしたことを何か曲げて説明しているみたいに感ずるですよ。それでは、緊急緊急とおっしゃいますが、一体この工専はいつ着工なさったのですか。
  267. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたしますが、その伊勢湾台風は三十四年でありますけれども、これが堤防を完成したのは、おそらく三、四年たっていると思います。といいますのは、いまの用地の問題がありまして、愛知県の最初の案は川沿いに堤防をつくりたいということであったのが、住民の方々は、いや川沿いじゃ困る、うしろのほうにしてくれというふうなことで、相当その間にいろいろな折衝がありまして、まあ住民の方々の同意を得られるところのうしろ側につくった、こういうことで、事情はただいま申し上げたような哀情でございます。
  268. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから総理大臣、いま建設大臣が説明のように、三十四年の伊勢湾台風で三、四年してできたとおっしゃいますが、確かに四年になります。三十八年着工の、三十九年にできたところの工事のことです。それで、いずれにしても、確かに地元の人にもいろいろな意見があるのは、これは当然だと思います。しかし、地元の人からどんな意見があるにしても、人間尊重、社会開発の内閣の方針としまして、そうした災害復旧工事をやる場合に、何十軒の家を堤防の外へはみ出させることはよくないことだと思うのです。ですから、いま建設大臣は、河川改修事業でやるというわけですが、その辺もう少し明確に御答弁願いたい。
  269. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたしますが、この問題は、すでに補償関係その他は済んでいるわけです。そこで、河川改修の場合には、堤内地の人たちを立ちのかせるかどうかという問題が起こってまいりますから、その場合に、河川改修の事業とあわせてこの人たちの立ちのき先その他を考えていこう、こういう考え方であります。
  270. 小平芳平

    ○小平芳平君 また建設大臣そういうふうにおっしゃいますが、補償なんか全然もらってないわけですよ。
  271. 小山長規

    国務大臣小山長規君) これは、ご存じのように、愛知県の工事なんでありますが、愛知県からわれわれが承知しているところによれば、いまの両部橋のところは、堤防沿いの人々も、それから堤防外の人々も補償をしておる、こういうふうに聞いているわけです。
  272. 小平芳平

    ○小平芳平君 補償のことはあとで質問いたしますから、いま私が質問していることは、補償のことではなくて、政治の基本的なあり方として総理からお答え願いたいと思いますが、政治の基本的なあり方として、何十軒の人をはみ出すのはおかしいんじゃないか。改修事業なり何なり早急にこれは解決しなければならないと思う。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま最初伺ったときに、何らか現地においていきさつがあるに違いないと、かように実は思いました。ただいま建設大臣から答弁いたしましたように、確かに現地においては問題があるようです。私は、こういう事柄こそ、いわゆる現地の方の協力を得なければこの種の工事は実を結ぶものではございません。また、道路一本つくるにしても、やはり同じようなことがございます。いわゆる補償は補償だが、どうも立ちのかない、そのために道が曲がったとか、こういうようなことがしばしばございますが、いずれにいたしましても、協力を得るというそのたてまえでこういう事柄は折衝するならば、ただいま言われるように、わざわざそれらの数軒あるいは数十軒を堤防の外に残しておいて堤防ができる、まことに不本意なことだと思います。私は、こういう事柄は、おそらくいろいろないきさつがあるだろうと思いますが、そういう事柄は別にいたしまして、とにかくそこに住んでおられる方々の協定を得るという、そういうたてまえで十分折衝することが望ましいのではないか。ただいまのことは県工事だと、かようなお話でございますが、建設省におきましても、県工事だといったからといって、全然関係ない、そういう形をとらないで、現地の実情等もよく調べて、そうして現地の方々の協力を得るようにいたしたいものだ、かように考えます。
  274. 小平芳平

    ○小平芳平君 県工事県工事といいますけれども、建設大臣、それじゃ国費が何割出ておりますか、それが一つ。  それからもう一つは、護岸工率がしてあるのです。ところが、その護岸工事も、建設省に写真がありますが、去年完成したばかりの護岸工事がもうぶっこわれて、石をほうり込んでささえておるような、そんな工事をどうしておやりになるのか。
  275. 小山長規

    国務大臣小山長規君) この工事については、伊勢湾台風の特例によりまして、たしか四分の三以上の国費が出ていると思いますが、小平さんがおっしゃることは、おそらくそういうことではなしに、こういう危険な地帯があって、この場合は、私は先ほどは住民の同意と言いましたが、実は猛烈な反対があったわけであります。そこで、おっしゃることは、おそらく、そういう反対があっても、将来のことを考えて強制収用でもしたらどうかというところに御質問の趣旨があろうかと思うのでありますが、この点が実は非常に行政上の問題として困りますのは、強制収用という手段はありますけれども、とにかく数人の方が反対されると、これを警察力を使ってというわけになかなかまいりません。そこで、いろいろ八方手を尽くして、そうして住民の方々の御協力を得るようにやっていると——愛知県ではやられたと思いますけれども、とうとうその同意を得ることができなかった。しかも、一方においてはやはり堤防をつくらなければならぬ。そこで、住民の方々が同意される川のうしろのほうにつくるということになったのだろうと思いますが、この点は確かに、もっと思い切って、たとえば強制収用でも断固としてやるという気がまえがあったほうがあるいはよかったのかもしれませんけれども、なかなかその点が行政上のむずかしい点であります。
  276. 小平芳平

    ○小平芳平君 いえ、そういうことを私は聞いているのじゃありません。住民の中に反対者があった——どういう人がどのくらい反対したか、私はそういうことは聞いておりません。全然。私がお尋ねしていることは、堤防の外へはみ出しているという現実、あるいはせっかくつくった護岸工事が一年もしてすぐぶっこわれているというこの事実、あるいは、堤防の上を道路にしているのですが、道路がまるっきりかまぼこみたいな道路で、歩けばすべり落ちるのですよ、下へ。どうしてそういうようなことになるのかということをお尋ねしておるのです。
  277. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 現地の事情を御存じないようでありますけれども、そのすべり落ちるような道路というのは、これは道路の建設用に応急に砂利道を——砂利道というのは、天が高くなってまるくかまぼこ型になっておるのが一番いい道なんでありますが、それを何とかして早く舗装しないと道路が使えないというので、そのまま舗装して使ったもののようであります。これは確かに非常に住民に不便を与えますので、四十年度では愛知県でこれをあたりまえの舗装道路にする計画を持っております。  それからいまの、前の護岸がくずれたというのは、これは設計のミスでありましたのか、あるいは調査が不十分であったのかもしれませんが、あとでそういうようなことがわかりまして、これを早急にその対策を講じまして、捨て石を打っている。今後は一体どうするかと、今後はやはりこの設計、調査の面に、入念な事前の調査、設計をしなければ、またこういうことが起こるかもしれないから、そういう点は十分に行政指導をやっていきたいと、こう考えておるわけであります。
  278. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも建設大臣はすぐにほかの話をなさるけれども、砂利道の舗装なんか言っているのじゃないですよ。堤防工事をしまして、それを道路に使用している。それが、普通の道路でもまん中で少々高いけれども、極端に高いものだから、歩いているとすべり落ちて民家の庭先へおっこちるという、そういうわけですよ。そんなばかな道路がありますか、一体。それから、そういうように簡単に設計のミスか調査不十分とおっしゃるけれども、そういうような政治のあり方がおかしいと言っているのですよ。
  279. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 政治のあり方の問題でございますから、私からお答え申し上げますが、むろん県の工事でありましても、われわれは監督の責任を負っているわけであります。実際問題としましては、県の工事は県が設計をし、監督をしてまいる、このことは御承知だろうと思いますが、だからそういう面を、こちらといたしましても、あらゆる面から、そういう苦情というものは、県からの報告を待たなくても、住民その他の苦情が出てまいるわけでありますから、そういう場合には、さっそくそれに対応する措置をとる、これは私どもの心がまえとしてそうでなければならぬと、こう思っております。
  280. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、住民の、そういうような道を歩いても落っこちるとか、あるいは川の堤防の外にはみ出すとか、そういうような点は除いていくと、こういうように了解してよろしいですね。
  281. 小山長規

    国務大臣小山長規君) いまおっしゃいましたようなことは、できるだけこれは排除していかなければなりません。いま申し上げましたように、その天井がかまぼこ型になっている道路は、四十年度計画で直すことをただいま愛知県から言ってきておりますから、そういうふうにいたしたいと思います。それから捨て石のほうは、これはもうすでに実施をいたしましたので、危険はないと思います。
  282. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、先ほど大臣がおっしゃった補償ですが、こういう工事をする場合ですね、これは県がやったのだから知らねとおっしゃるかもしれませんが、こういうような伊勢湾高潮対策事業をする場合に、補償金を出す場合に、どういう名目でどんな補償金を出されるか、これは政府委員のほうへ前もってお聞きしておいたのですが、お答え願いたい。
  283. 小山長規

    国務大臣小山長規君) これは公共補償の基準というものに照らして愛知県はやったはずでありますが、昨晩資料要求を受けておりましたので、さっそく愛知県のほうに問い合わせまして、愛知県としてはどういうことをやっておるかということをただいま調査いたしております。明日あたりはお答えできるかと思います。
  284. 小平芳平

    ○小平芳平君 あしたじゃ困ります。もう質問終わっちゃうから。  愛知県の発行したこれによりますと、たとえば一つの例として、三十九平方メートルの家に対して、見舞い金その他として十二万九千百円払っておる。その見舞い金その他十三万九千百円の内訳としては、今度は仮住まいに要する経費として九万四千四百円払っておる。それから建物かさ上げに要する経費として四万三千七百円払っておる。一体、何の金を払っておるのか。建設省なり愛知県なりが堤防工事をやり、おたくは補償金払いますよ、十三万九千百円、見舞い金その他上げます。こんなことでは、住民が反対運動とかいろいろな意見があったとおっしゃいますけれども、おさまらないのは当然じゃありませんか。
  285. 小山長規

    国務大臣小山長規君) 公共用地の補償基準でやっておると思いますが、この場合には、公共用地として取りました分には、つまり、買い上げた分については、当然その方式でやっておるのであります。ただ、買い上げないで、堤防が高くなったために、いろいろな不便を与えたり、あるいは家屋を上げなければならなかったり、そういうものがあると思いますので、そういう面の補償をしておると思うのでありますが、どういう基準でどうやったかをさっそく調査して御回答申し上げます。
  286. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、その見舞い金その他をよく調査していただきたいと思います。資料であとでお出し願いたいと思います。  次に、これは一般的に災害のあるたびによく問題になる点ですが、たとえば集中豪雨がある、そういうような場合に、がけの下に住まいが建っている、そういうような場合、そのがけくずれが来るのはもうわかっておる。けれども、現在の法律上どうしようもないとか、もう一つ例を申し上げますから、建設大臣あるいは自治大臣からお答え願いたいのですが、そういうようながけ下の部落、あるいは、これはあとで公害のことについてお尋ねしたいのですが、公害地のような場合でも、たとえば四日市の例ですけれども、市営住宅のあるそこに、道路一本隔ててわざわざ工場ができておるのですね。そういうような場合に、この救済方法はないものかどうかということをお尋ねしたい。
  287. 小山長規

    国務大臣小山長規君) お答えいたします。  このがけくずれの場合は、山陰のときに特に問題になったわけでありますが、そこで、これが一体どういうようにしているのかというお尋ねでありますけれども、現在のやり方としましては、新しくたとえばがけくずれがありそうなところに家を建てるというような場合には、これはいろいろな建築基準法による制限、あるいは土地の造成に対する制限等によって、これは危険を防止する制度ができ上がっておりますが、もうすでに建っておる、いかにも、この間のたとえば山陰の集中豪雨の場合に例をとりますと、同じような場所がたくさんあるじゃないか、これを一体どうするかということになりますと、現在ではこういうふうにいたしておるわけであります。地方公共団体の指導のもとに、そこのところはあぶないから移転したらどうだというふうな、そういうふうな指導をいたしまして、本人が移転を希望するというような場合には、これは公営住宅に優先入居を認めてあげるとか、あるいは住宅金融公庫の資金をあっせんしてあげるとか、そういうふうな方法をとるわけであります。また、新しくあぶないところに家を建てることについては、先ほど申し上げましたようないろいろな建築基準法によって制限をいたしておりまして、あぶないような場合には家を建てさせない、こういう制限措置をとっておるわけであります。
  288. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、産業公害の問題はあとでまたお尋ねします。  いまの、がけ下の危険区域とか、あるいは、先ほど申し上げました低湿地帯ですね、そういう夕立があってもすぐ水がたまるとか、あるいは、ちょっと大雨が降ると、もう床下まで水が入ってくるとか、そういうところに住んでおる人たちのための住宅政策というものを、もっともっと真剣にもう一歩前進した施策を私たちはやっていかなければならないと、こう思います。  次に、自治大臣にお尋ねしますが、これも縁故債という債券で、その縁故債の性格は、受益会社とか金融機関がその縁故債は引き受ける、それを地方公共団体が発行するというふうにお聞きしておるわけですが、去年の予算委員会のときに、早川自治大臣は、この縁故債について、その当時、名古屋市から小学校の講堂建設の縁故債が申請されてくるかもしれないということがあってお尋ねしたわけですが、そのときには、よく検討するというふうにおっしゃっておられましたが、その後の結論をお尋ねしたい。
  289. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お答えを申し上げます。  名古屋市における学校でございましたか、体育館の縁故債の件だと思うのであります。これは御承知のように、今日地方公共団体が、学校だとかその他の建物を建てる場合には、寄付を強制してならないということは、地財法ですでに禁止されておるところでございます。で、縁故債につきましては、ワクがない場合にはワク外として縁故債を許すことはございますが、その際も、その縁故債を地方住民あるいはPTA等に割り当てて強制的に押しつけるというようなことは、これは厳に戒めるように言っておるわけでございます。名古屋市の縁故債を認めるにも、その点を注意いたしまして、市長からも、そういうことをしないという請書も実はとっておるようなことでございます。その後どういうふうになりましたかは、調べてみぬとわかりませんけれども、私ども縁故債を認める際には、先ほど申しましたように、強制寄付を禁止しておると同じような精神で、これを各戸に割り当てて強制的に引き受けさせるというようなことは厳に戒めておる次第でございます。
  290. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、講堂建設に縁故債がよろしいわけですか。
  291. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いま言ったように、学校等において、ワク内で起債が認められぬ場合には、縁故債をやむを得ず認める場合はございます。それはございますが、先ほど申し上げましたように、その縁故債は、住民なりPTA等に割り当てて強制的に引き受けさせるというようなことのないようにということをよく注意をいたしまして認めておる例はあるようでございます。
  292. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう例はないじゃないですか。そういう例はなくて、強制にわたるのはいけないとおっしゃいますが、実際問題としては、ある学区では、町会費七十円にプラス五十円、それは小学校の寄付三十円、中学校の寄付二十円、そのほかに、学校の生徒のあるうちは百円、あるいは次の学区では、町会費百二十五円にプラス五十円、次の学区では、町会費五十五円を十倍にして集めようとか、あるいは次の学区では、町会費七十円にプラス七十円、こういうように、講堂建設ということを目標にして、それこそ一斉に寄付募集が始まっているわけです。
  293. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、そういうふうに一戸当たり割り当てて、そうして引き受けさせるというようなことは戒めておる次第でございます。縁故債を認めるというその緑故債は、市中の銀行であるとか、あるいは団体であるとか、その他から緑故でとるということでありまして、各戸に割り当ててやるということは認めていないわけでございます。ですから、先ほど申し上げましたように、名古屋市の際にも、その点は注意をして許しておるようでございます。
  294. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで了解しました。要するに、縁故債という債券は、金融機関が引き受ける、それで、緑故債という債券を各戸に割り当てるということは認めない。  それで、総理にちょっと最後にお尋ねをしたいんですが、いまも御説明いたしましたように、非常に学校の講堂建設、あるいはプール建設ということでそうした寄付が多いんです。それで、それは子供のためにといわれれば、やはり少々無理しても出す、あるいは町内のつき合いだからといおれれば、少々無理してもということになりますが、幾つか例を申し上げましたが、またもう一つここで申し上げる例としては、この町内では、廃品回収ということで講堂建設費を積み立てようと考えた。ところが、なかなか皆さんが廃品回収に協力してくれないから、ついに決心をして、一、一戸当たり毎月金五十円を寄付金として集める、一、現在就学児童のある家庭及び今明年中に就学する児童のある家庭は、右の拠出のほかに、別に一口金五十円の寄付金を一口以上すること、それで、なお、不賛成の方は八日までに会長または会計係までその理由を申し出ろと、こういうふうにやられたら、会長というのは相当な人ですから、とても一人や三人が反対だといっていかれないのが実情なんです。こういう点について、ひとつ総理大臣から、どういうふうにしていくというふうにお答え願いたい。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる税外負担というような形で寄付が横行しているとでも申しますか、各地において行なわれているこの事態には、私は必ずしも賛成するわけにまいりませんが、もちろん、寄付でございますから、それは自由な立場において金持ちが寄付するとか、あるいは住民が使用した場合に寄付する、こういうような特別なものについては、これもけっこうだと思いますけれども、どこまでも自由意思を尊重しない限り、この種のことはいけないことになっていると思いますし、また、してはいけないと思います。私はそういう意味で、いわゆる税外負担というものをなくしようということで、この財政のあり方等についても特別なくふうをしてもらっているように思います。ただいまのものは、形の上においてはいわゆる自由意思だと、かような立場にはなるだろうと思いますが、しかしながら、非常に厳重に、不同意の者は申し出ろということだと、税外負担という範疇に入るかもしらぬ。そういうことに対して、私はたいへん遺憾に思っております。そういうことがなくなることを望みます。
  296. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連して。先ほど自治大臣は、市長からも覚え書きみたいなものをとって、そうして決定したと言われたのですが、実際は内定じゃないのですか、現在は。そうして、内定しているうちに、名古屋市会あたりの議事録を見ますと、これはすでに確定しているようなものであるというようなことで、寄付をやっていることを公然と認めている。名古屋市では、この問題で大騒ぎになっているような状態です。しかも、いま小平委員の言われた、例の会長のところまで申し出ろというような圧力がかかっているのは、これは自民党の市会議員だそうでありますけれども、こういうようなことが公然と行なわれておる。これは市民全体に対しても、非常に影響が大きい。内定しているものであれば、どうしてその内定のうちにどんどんそういう寄付行為まで進んでいったか。これは認めないで、まだ内定のうちにわかったのでありますから、これを中止するなり、縁故債の応募を認めないなり、そういうことができないのかどうか。これは自治大臣からひとつお答え願います。
  297. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いま調べてみますると、まだ決定していないそうであります。問題があるので、実は慎重にいま調査をしているようでございます。したがいまして、もし許すとすれば、そういう割り当てにならないように注意をし善処したい、かように存じております。
  298. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ、ひとつ、事情を調べる場合も、いろいろありますから、こういう実際を調べていただきたいと思うのですよ。とにかく、もう委嘱状までくれるのですから……。  それで最後に、産業公害を主体にして若干お尋ねしたいのですが、時間もありませんので、まず基本的に、この産業公害を防止していくということは、どこが責任を持ってやっていくのがたてまえか、ということをお尋ねしたいのです。私がちょっと予算書を見ただけでも、たとえば水質汚濁対策というのは六省にまたがっている。あるいは公害防止事業団にしても、ばい煙にしても、新産あるいは工特開発地域の公害事前防止対策ということにしても、各省にみんなまたがっていて、実際問題、産業公害を受けた人がどこに苦情をいいに行き、どこに相談をしに行ったらいいか。そういう点については、どうでしょうか。
  299. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいまお話しのように、公害防止については各省に関連がございますが、水質関係の二法の所管は経済企画庁でございまして、水質汚濁防止法、並びに工場排水等規制法については、経済企画庁において水質審議会に諮問をいたしまして、それぞれ指定された河川の汚濁の許容される限度、それについての取り締まりを各省と連絡しながらいたしておるような次第でございます。もちろん、これが実行にあたりましては、厚生省がこれを監督するというような立場に相なるわけでございますが、基本の考え方、基方の方針そのものについては、経済企画庁において一応調整決定をいたしておる次第でございます。  なお、その他各省に関連いたしておりまして、たとえば、ばい煙規制等につきましては通産省でやっておりますし、また環境衛生、下水等の関係につきましては厚生省等と、それぞれ各省やっておりますが、新産都市とか工特等の法律の関係におきましては、基本計画政府がそれぞれ承認をいたしておりますが、その承認の過程におきましては、各省のそれぞれ意見を求めまして、現地で提出されました基本計画を各省でそれぞれ審査をいたしまして、その間の意見の調整を完全にいたして、そうして公害防止についてもそれで十分だという処置を確認した上で基本計画を承認をいたしまして、その後にそういうような問題の起こらないように、事前に処置をいたしておるような次第でございます。
  300. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かよく納得できないようなお話なんですが、かりに、それじゃここに市営住宅がある、この市営住宅にくっつけて大きな工場ができた、この大きな工場ができたためにこの市営住宅はいままでは非常に住みよい環境にあったのが、それにくっついて大工場ができたために非常に住みにくくなってしまった。一体どこへ持っていったらいいか、それをお尋ねしているのです。
  301. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  四日市の例をお述べになっておられるのじゃないかと思いますが、御承知のように、ばい煙等規制に関する法律がございまして、四日市もその指定都市になっております。ぼい煙規制法の施行が猶予期間が二年になっておりますので、まだ猶予期間中でございますが、そういう場合に、ばい煙の規制を工場が適用を受けましてやって、その住宅の被害を最小限度に食いとめる、こういう趣旨になっております。しかし、それが一工場である場合、あるいは数工場ある場合といろいろこれは問題が違ってくるだろうと思います。現に四日市にあります住宅の場合のごときは住宅が先にできて非常に風致がよかった。その先を埋め立てをして工場ができた、こういう例でございまして、非常に大気汚染がひどいということになっております。現実に調査いたしておりまして、除害の施設も打ち合わせをいたしておる最中でございますが、完全にという、そういうわけにはいきませんが、どの程度に除害できるか、その暁、住宅地としてそれに一体将来持続して住めるかどうかという問題が考慮されるだろうと思います。いずれにいたしましても、今度公害防止事業団というものができまして、そういう際に、いろいろ先ほど企画庁長官からもお話しございましたように、計画をいたしまして、自治省とも相談いたしまして、また公共団体とも相談いたしまして、そうして除害の施設をまず第一に取り上げる、除害がうまくいかない、どうしてもそこは住宅地区としては見込みがないというようなことでありますれば、住宅地区を適当なところに移転する、こういうような方法等も考えながら実施をしていきたい、こう考えております。
  302. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、将来とも新産都市あるいは公業開発特別地域ですか、そういうところが住民に対して公害の心配はないぞと、こういう専門機関があってこういうふうに公害防止を研究し、実施しているのだから……、そういうものをほしいと思うのですよ。ところが、実際問題は、住民は公害をまともにひっかぶる。それから会社のほうが、いろいろ企業努力として何千万円あるいは何億という金をかけて、それでばい煙防止なりいろいろなことは会社のほうが考えているのに、一番おくれているのが政府じゃないか、政府のほうが全く責任がどこにあるかもわからない。実際に政府が公害防止に何の働きをするかということも何となく私ははっきりしない。
  303. 神田博

    国務大臣(神田博君) 大気汚染あるいは水質汚濁等につきまして、政府の従来の取り締まりが緩慢であったということは、いまおっしゃったとおりだと思っております。そこでこの問題は、ここ数年間大きな問題になってまいりまして、先ほど企画庁長官からも説明がありましたように、政府部内一体としてそれらの除害施設をひとつ研究いたしまして、そうして会社、工場側に命ずるものは命じて除害の方法を講じていきたい。それから先ほど申し上げましたように、なかなか除害を命令しても、十分な効果があがらないというようなものもあり得ると思います。大気汚染に限らず、有毒ガスというような問題が出てまいっておりますから、そういう場合には、集団移転と申しますか、いろいろそれに総合した見合いの施設をひとつつくってまいりたい、それがいま御審議を願っておる公害防止事業団、こういうことになろうかと思います。
  304. 小平芳平

    ○小平芳平君 公害防止事業団とおっしゃるけれども、一体どれだけの事業をなさいますか。一年に実際問題として公害防止のためには、各会社は十億、十五億かけてやっておるのじゃないですか。そういうものに対して事業団ができたからそれで安心だと、どこまでいえるかというのですよ。あるいはそのほか、各一省一省私はお尋ねするつもりで用意したのですが、時間がありませんので申し上げませんが、ひとつ厚生省にそれでは一つだけお尋ねいたしますが、公害患者の調査というのはやっておられますか。その結果はどんなふうに出ておりますか。
  305. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  公害の人体に及ぼす影響につきましてはそれぞれ調査をいたしております。しかも、そういった被害の責任者は、これは当該工場が負うべきものでございまして、その現地現地におきまして、それぞれ公共団体と連絡いたしまして、そうして治療と申しますか、施療して適当な措置をとっております。
  306. 小平芳平

    ○小平芳平君 公害患者が出たのですか。
  307. 神田博

    国務大臣(神田博君) 四日市には出ております。
  308. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省が調査したら、その結果、四日市に公害患者が何人かいた、そういうわけですね。その治療はだれがやるわけですか。
  309. 神田博

    国務大臣(神田博君) この治療の責任者は加害者である工場側と思います。ただ四日市の場合は御承知のように工場がたくさんございまして、一体どの工場がどれだけどうしたかというような具体的なことになりますと、なかなかこれはいまの調査では十分だと思っておりません。そういうことが明確になりますれば、当然これは加害者である会社が負うべきものと考えております。現実の問題といたしましては、国立あるいは市立の病院に療養いたしておりまして、いま市のほうでやっております
  310. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、厚生大臣がおっしゃるのは、加害者の工場がなおすべきだと言いながら、またその次はいまは市でやっておりますとおっしゃるでしょう。実際には工場で公害患者の治療なんかやっていませんよ。実際には市がやっておるわけでしょう——やろうとしておるわけでしょう。それに対して厚生省は調査だけはしてあげましょう、この町に病人が何人います。この町は何人公害患者がいますときめてあげるだけで、実際は市がなおすならかってになおせ、あるいは本来からいえば会社がなおすべきものだ、これだけのものじゃないのですか。
  311. 神田博

    国務大臣(神田博君) こまかいことになってまいりますから、政府委員から答弁させたいと思います。
  312. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま大臣から申し上げましたように、患者が明らかに公害によるかどうかということがまず第一点として非常にむずかしい問題でございます。第二点として、明らかに公害によるということが明白になりまして、本来加害者がそれらの治療費等は負担すべきものでございましても、公害を起こす度合いの責任分担というものが多数の工場でございますと、明確でないということから、その治療は勢い公的施設等が受け持たざるを得ない結果になっておるわけでございまして、ただいままでの現実といたしましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、市立病院に入院し、あるいは県立病院に入院して、その治療費は、四日市におきましては四日市市が負担するという行き方をとっております。これに対しまして、国がどの程度治療費を持つべきかということは、現在のたてまえ上、本来企業側ができるだけ責任を負うべきもので、それに続いてその現地の市なり県なりが努力をいたす。その足りないところを国が援助する、かような方針で進んでおるわけでございまして、ただいまの段階では、四日市におきましては、四日市市がその治療を受け持っていただいておる。国としてはその検診までを実施いたしておる、かような段階でございます。
  313. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどから、厚生大臣、経済企画庁長官から、公害問題についての御答弁を申し上げておりますが、実はこの水質保全法とか、あるいは、ばい煙規制法によりまして指定地域がございます。ばい煙の指定地域は、京浜、阪神、北九州、名古屋、千葉、四日市、大牟田、こうなっております。また、水質汚濁については、石狩川、常呂川、江戸川、隅田川、木曾川、淀川、財田川水域というようなふうに、まずこういう指定があるわけでございます。そうして、この指定地域に対して、それぞれの法律による基準によって汚濁の状況がどうとか、ばい煙の状況がどうとかということを見まして、これについては都道府県知事に委任をして監督をし、基準以上のものになっている場合には、警告するというたてまえをとります。しこうして、この防止施設につきましては、これはただいま厚生大臣も申されましたように、やはり加害者が中心でございます。そこで、この加害者に対して、公害防止施設が迅速に行なわれるように、財政面、税制上の助成施策を政策はやっておるわけでございます。たとえば中小企業近代化資金の無利息資金を出すとか、あるいは開銀融資の七分五厘の特利を出すとか、中小企業金融公庫の七分の特利を出すとか、あるいは税制上では固定資産税の非課税措置とか、耐用年数の短縮とか、こういうようなことをやるわけでございます。しかしながら、それでも十分でないと、こういうことから公害防止事業団をただいま御審議をわずらわしまして、そうしてこの防止事業団が、特にいま問題になっておる東京とか四日市とか、そういうような地域の共同公害防止施設とか、あるいは共同利用建物とか、また、工場の移転用敷地を造成するというようなことを、この防止事業団はやっていこう、というような施策が、政府の公害に対する一般的な全般的な施策でございます。しこうして、先ほどこの公害防止の監督官庁がはっきりせぬじゃないか。——確かに個々の法律によってそれぞれの所管がございますので、そこで、現在は総理府に、公害対策推進連絡会議を置きまして、ここで調整をしてもらう。大体かいつまんで申し上げますと、そういうようなたてまえで公害対策に善処をしておる、こういうわけでございます。
  314. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうたてまえは、私もお聞きしておりましたが、要は、実際問題、公害防止の実際の効果というものは、まだあがる段階にいっていないと思うんですね。で、これは現在ぐらいでもういいと、大体さっき環境衛生局長ですか、言われた、企業がまず第一に負うべきだ、次は市だ、次は県だそれで足りない分は国だということも、それは事と性質によって何でもかんでもそういうふうに言い切れるかどうか、いろいろな問題が残されておると思うのです。したがって、今後、大蔵大臣にお尋ねしますが、予算は各省水質汚濁で六省、新産業都市で二省、そういうようにつけていらっしゃいますけれども、一体どういうふうな暗点的な推進をしていったら、一番実際の効果をあげるか、これが大事だと思いますが、いかがです。
  315. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公害はこれから非常に大きな問題になります。同時に、公害問題につきましては、長期な見通しを立てながら、強力にその方向を進めなければならぬと思います。いま政府委員から申しましたが、第一は企業の責任、第二は地方公共団体がやり、やむを得ざるものは国がやる、こういうことであります。こういうことでありますが、私は必ずしも国が主力をなしてやって公害が防止できるとは思っておりません。まず、世界の各国はどういうふうにしておるかということを見れば一目りょう然であります。国土計画の中で、公害を大きく出すようなものに対しては、地域の設定をいたしまして、その地域以外に設立を認めない、こういうことをやらなきゃなりません。ところが、東京、大阪その他都市計画法に基づくようなところは、全部工場地域、住宅地域があるのでありますが、どうも効率的な面からだけこのものが検討せられて、東京や大阪でさえもまだ新しい工場がどんどん建つ、こういうことをそのままにしておっては公害問題の解決にはならぬわけでございます。でありますから、公害が大きく出るようなものに対しては、地域を設定する、新しく工場をつくるものに対しては、公害に対する自己責任の確立ということを法制上も整備しなければなりませんし、事業を起こす人は当然その責任に任ずる、こういう基礎的な制限が必要であります。  それから、現在もうすでにある東京や大阪とか四日市とか、こういうものはどうするかということでありますが、これに対しては、企業がどの程度負担するのか、地方公共団体及び国がどういう率において負担をするのか、こういうけじめをつけて、公害問題にまっこうから取り組まなければならない。こういう考え方を持っております。
  316. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 小平君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明十日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会