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国務大臣(
佐藤榮作君) ただいま所得倍増
計画、これは国民と
政府の間に大きなそごのあるということは御指摘のとおりでございます。私は、しかし、政治の姿勢として所得倍増
計画、これはたいへんけっこうなことではないか、そういう
意味の協力、また、そういう
意味の一つのビジョン、そういうものを与えたことは確かにこの
計画のいいところであったと、かように私思います。しかしながら、ただいま
計画がそごしておる。本来自由経済のもとにおきましても、また、特別な団体主義的な統制のとれたところにおきましても、天候等に左右される農業、また農民の土地に対する愛着心、そういう点を十分念頭に置いてそうして
計画を進めていかなければならない、かように思います。私は、ただいま農政にとっております態度は、遅々として進まない、また、その
計画もはっきり変えるべきだ、かようなお話でございますけれ
ども、これは、ただいまの態度はいいように思いますので、これは進めていきたいと、かように私は思います。ただいま言われるごとく、所得倍増
計画、これは国民総所得、かような
意味において
考えられておる。またしかし、国民のほうは片一方で個々の個人の所得が倍になる、かように
考えるわけですが、個人の所得が倍になること自身にも、実は少し疑問があると思います。ただいま五のものが倍になりましてもこれは十、十のものが倍になれば二十と、その差は大きく開いて今度は十になる、かように
考えますので、いわゆる現在あるがままの姿による所得倍増、これは国民一人一人にしても必ずしも私はそれを
考えていないと思うのです。今日、一方で非常に問題を起こしたものは、所得の平準化、また賃金の平準化。所得の平準化が各面に非党に急速に行なわれておる。こういうことが今日の経済にいわゆるひずみを生じた、こういう問題の原因でもあるのではないか、かように思いますので、いずれにいたしましても、これは長期
計画に基づく、そうして一つのビジョンを持つ、そういう方向への協力、これを願わなければならない、かように私
考えますので、ただいまの農政自身についての批判はいろいろおありだと思います。数はわずかでも自立農家ができる、あるいは専業農家が、在来からあまり進んでいないと言われながらも、その規模はだんだん大きくなりつつある。しかして、第一種あるいは第二種兼業の農業については、農家所得のふえるような政策をとっていく。あるいは、したがって、過密都市の分散であるとか、あるいは積極的な工場誘致であるとか、あるいは雇用の機会をふやしていくとか、かようないろいろの方法をとっておるわけです。私は、農業自身の生産性の向上、これが
計画どおりにいかないからといって、農家自身が従来どおりの
状況に置かれると、かようには私は
考えませんので、階層によりましては農家所得をふやす、農業自身必ずしも自立農業、こういう形でなくても、農業農家収入をふやす、こういう点に特にまた力をいたしていくということで、総体としての経済の発展、それを期していきたい、かように私は
考えます。